(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112571
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】内視鏡
(51)【国際特許分類】
A61B 1/00 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
A61B1/00 715
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017705
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上原 洋平
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 夏美
【テーマコード(参考)】
4C161
【Fターム(参考)】
4C161AA26
4C161CC06
4C161DD06
4C161FF35
4C161FF43
4C161FF45
4C161FF46
4C161LL02
(57)【要約】
【課題】挿入部の先端部分に撮像素子が設けられる内視鏡において、挿入部の強度を確保しつつ、先端部分の太径化を抑制する。
【解決手段】実施形態の一例である涙道内視鏡1は、涙道に挿入される管状の挿入部2と、挿入部2の基端が固定された基部3とを備える。挿入部2は、外管40と、外管40の先端部において管内に設置された撮像ユニット10とを有する。外管40は、厚肉部41と、外管40の先端部に形成された薄肉部42とを含む。厚肉部41と薄肉部42は、互いに一体成形され、同じ外径を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内に挿入される管状の挿入部と、前記挿入部の基端が固定された基部とを備える内視鏡であって、
前記挿入部は、
外管と、
前記外管の先端部において前記外管内に設置された撮像素子と、
を有し、
前記外管は、厚肉部と、前記先端部に形成された薄肉部とを含み、
前記厚肉部と前記薄肉部は、互いに一体成形され、同じ外径を有する、内視鏡。
【請求項2】
前記外管の前記薄肉部における管厚は、前記厚肉部における管厚の15%以上50%以下である、請求項1に記載の内視鏡。
【請求項3】
前記薄肉部は、前記厚肉部に近づくほど次第に管厚が大きくなったテーパ領域を含む、請求項1に記載の内視鏡。
【請求項4】
前記外管は、金属製である、請求項1に記載の内視鏡。
【請求項5】
前記薄肉部は、前記外管の先端から5mm以下の長さ範囲のみに形成されている、請求項1に記載の内視鏡。
【請求項6】
前記挿入部は、さらに、前記外管内に配置された照明用の光ファイバ及び送気・送液用のチューブを有し、
前記光ファイバは、前記挿入部の先端面において、少なくとも前記外管の径方向両側から前記撮像素子を挟むように前記撮像素子の周囲に配置されている、請求項1に記載の内視鏡。
【請求項7】
前記光ファイバは、前記挿入部の先端面において、前記撮像素子の三方を囲むように前記撮像素子の周囲に配置され、
前記チューブは、前記挿入部の先端面において、前記撮像素子の残りの一方に対向配置されている、請求項6に記載の内視鏡。
【請求項8】
前記チューブは、前記挿入部の先端面において、前記外管の径方向両側から前記撮像素子を挟むように前記撮像素子の周囲に配置されている、請求項6に記載の内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡に関し、特に挿入部先端に撮像素子を有する内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、体内を観察するための内視鏡が広く使用されている。内視鏡は、体内に挿入される管状の挿入部を備える。内視鏡としては、光ファイバの束を用いて画像を伝送する所謂ファイバースコープが知られているが、近年、撮像素子の小型化に伴い、撮像素子を用いた内視鏡も開発されている(例えば、特許文献1,2参照)。特許文献1,2の内視鏡の挿入部は、その先端に設けられた撮像素子と、照明光を先端まで導光するためのライトガイド(照明用の光ファイバ)とを有する。
【0003】
特許文献1は、ライトガイドを扁平に形成し、撮像ユニットの最大外径部分を避けるようにライトガイドをS字状に配置した構造を開示する。また、特許文献2は、外管により撮像素子及びレンズユニットを埋入する樹脂モールド部の外周面が覆われた構造を開示する。特許文献2には、可撓性を有する樹脂材からなる外管の厚みを薄くすることにより、外管を挿入部の先端まで延ばしてモールド部を覆うことが可能になることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3826053号
【特許文献2】特許第6588381号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
撮像素子を用いた内視鏡は、鮮明な画像を取得でき、また画像をモニターに表示させることが容易である等の利点がある。一方で、撮像素子が設けられる挿入部の先端部分が太くなるという課題がある(例えば、特許文献1の
図3等参照)。挿入部の先端部分が太くならないように、特許文献2の内視鏡のように、外管の厚みを薄くすることも考えられるが、この場合は、外管の強度が低下するという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、挿入部の先端部分に撮像素子が設けられる内視鏡において、挿入部の強度を確保しつつ、先端部分の太径化を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る内視鏡は、体内に挿入される管状の挿入部と、前記挿入部の基端が固定された基部とを備える内視鏡であって、前記挿入部は、外管と、前記外管の先端部において前記外管内に設置された撮像素子とを有し、前記外管は、厚肉部と、前記先端部に形成された薄肉部とを含み、前記厚肉部と前記薄肉部は、互いに一体成形され、同じ外径を有することを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、撮像素子が設置される挿入部の先端部分を薄肉化することで、外径を大きくすることなく管内のスペースを拡大でき、先端部分の太径化を抑制できる。そして、その他の部分は厚肉部とすることにより、挿入部の強度を確保できる。即ち、挿入部の強度を確保しつつ、先端部分の太径化を抑制できる。また、厚肉部と薄肉部が一体成形されるため、挿入部の組立が容易であり、先端部分が別部材で構成される場合に想定される先端部分の脱落も発生しない。
【0009】
本発明に係る内視鏡において、前記外管の前記薄肉部における管厚は、前記厚肉部における管厚の15%以上50%以下であることが好ましい。
【0010】
上記構成によれば、挿入部の強度の確保と、先端部分の太径化の抑制をより効率良く実現できる。厚肉部だけでなく薄肉部における強度も十分に確保でき、また挿入部の細径化を図ることができる。
【0011】
本発明に係る内視鏡において、前記薄肉部は、前記厚肉部に近づくほど次第に管厚が大きくなったテーパ領域を含むことが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、テーパ領域によって管厚が徐々に変化するため、厚肉部と薄肉部の境界部分に作用する応力を分散でき、境界部分での外管の変形を十分に抑制できる。
【0013】
本発明に係る内視鏡において、前記外管には、例えば、金属製の外管が用いられる。
【0014】
この場合、外管の強度及び耐久性がさらに向上する。本発明に係る内視鏡は、例えば、金属製の外管を備えた硬性内視鏡である。
【0015】
本発明に係る内視鏡において、前記薄肉部は、前記外管の先端から5mm以下の長さ範囲のみに形成されていることが好ましい。
【0016】
この場合、外管の強度及び耐久性がさらに向上する。即ち、薄肉部の形成範囲を必要最小限の範囲に限定することで、挿入部の強度を確保することが容易になる。
【0017】
本発明に係る内視鏡において、前記挿入部は、さらに、前記外管内に配置された照明用の光ファイバ及び送気・送液用のチューブを有し、前記光ファイバは、前記挿入部の先端面において、少なくとも前記外管の径方向両側から前記撮像素子を挟むように前記撮像素子の周囲に配置されることが好ましい。
【0018】
上記構成によれば、例えば、撮像対象をムラなく照らすことができ、鮮明な画像を取得することが容易になる。
【0019】
前記光ファイバは、前記挿入部の先端面において、前記撮像素子の三方を囲むように前記撮像素子の周囲に配置され、前記チューブは、前記挿入部の先端面において、前記撮像素子の残りの一方に対向配置されていてもよい。
【0020】
前記チューブは、前記挿入部の先端面において、前記外管の径方向両側から前記撮像素子を挟むように前記撮像素子の周囲に配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る内視鏡によれば、挿入部の強度を確保しつつ、撮像素子が設置される先端部分の細径化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施形態の一例である涙道内視鏡の斜視図である。
【
図2】涙道内視鏡の挿入部の長さ方向断面図である。
【
図4】涙道内視鏡の挿入部の径方向断面図であって、挿入部の先端から離れた部分の断面を示す。
【
図5】涙道内視鏡の挿入部の先端面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る内視鏡の実施形態の一例について詳細に説明する。以下で説明する実施形態はあくまでも一例であって、本発明は以下の実施形態に限定されない。また、以下で説明する複数の実施形態、変形例を選択的に組み合わせてなる形態は本発明に含まれている。
【0024】
図1は、本発明の実施形態の一例である涙道内視鏡1の斜視図である。以下では、実施形態の一例として涙道内視鏡1を例示するが、本発明に係る内視鏡はこれに限定されない。本発明の実施形態の他の一例としては、関節内視鏡、喉頭内視鏡、経口内視鏡、経鼻内視鏡、体腔内視鏡、胆道内視鏡、小腸内視鏡、大腸内視鏡などが挙げられる。
【0025】
図1に示すように、涙道内視鏡1は、体内に挿入される管状の挿入部2と、挿入部2の基端が固定された基部3とを備える。基部3は第1接続部4を有し、第1接続部4には、図示しないコンソールにつながるリード60が接続されている。また、基部3は、空気、生理食塩水などを供給するためのチューブが接続される第2接続部5を有する。基部3の筐体は、全体として略円筒状に形成され、軸方向一端に挿入部2が固定され、軸方向他端に接続部4,5が形成されている。本実施形態では、当該軸方向一端を先端、当該軸方向他端を基端とする。
【0026】
挿入部2は、涙道に挿入される部分であって、その先端部に撮像素子が設置された細長い管である。詳しくは後述するが、挿入部2は、金属製の外管40と、外管40の先端部において外管40内に設置された撮像素子とを有する。外管40の先端部には、CMOSセンサ等の撮像素子を含む撮像ユニット10が設置されている。挿入部2は、樹脂製の外管を有していてもよく、柔軟で曲げることが可能であってもよいが、本実施形態では、硬くて曲がらないように構成されている。
【0027】
一般的に、柔軟で様々な方向に湾曲する湾曲部を備えた内視鏡が軟性内視鏡、硬くて曲がらない挿入部を備えた内視鏡が硬性内視鏡と呼ばれ、本発明の構成はいずれの内視鏡にも適用できる。但し、本発明の構成は、硬性内視鏡に適用された場合により効果的である。涙道内視鏡1は、硬質の挿入部2を備えた硬性内視鏡である。
【0028】
挿入部2は、全長にわたって真っ直ぐに形成されていてもよく、また全長にわたって緩やかに湾曲していてもよいが、
図1に示す例では、基部3に固定された基端から真っ直ぐに延び、途中で折れ曲がった形状を有する。挿入部2は、基端よりも先端の近い部分に屈曲部2aを有する。屈曲部2aから先端までの部分は、屈曲部2aから基端までの部分と同様に真っ直ぐに形成されている。挿入部2の長さは、例えば、30mm以上60mm以下である。詳しくは後述するが、挿入部2の外径は、全長にわたって一定である。
【0029】
基部3は、挿入部2を涙道に挿入して目的部位を撮像する際に把持される部分であって、グリップとして機能する。基部3の形状は特に限定されないが、
図1に示す例では、接続部4,5が形成された基端部分は他の部分よりも太く、挿入部2が固定された先端部分は先端に向かって縮径したテーパ形状となっている。基部3の先端部には、挿入部2が基部3の内部に差し込まれた状態で固定されている。基部3の筐体は、例えば、金属又は硬質の樹脂で構成される。
【0030】
上記コンソールは、涙道内視鏡1を制御するコントローラである。コンソールは、撮像素子により取得される画像を表示するモニターを備えていてもよい。なお、コントローラとモニターが一体化された一体式のコンソールであってもよく、コントローラとモニターが別体で構成されたセパレート式のコンソールであってもよい。また、コンソールは照明用の光源を備える。
【0031】
図2は、挿入部2を長さ方向に切断した断面図であって、挿入部2の先端及びその近傍を示す。
【0032】
図2に示すように、挿入部2は、外管40と、外管40の先端部において外管40内に設置された撮像ユニット10とを有する。外管40は、長さ方向で管厚が変化した円筒状のパイプであって、厚肉部41と、薄肉部42とを含む。薄肉部42は、厚肉部41よりも管厚が薄くなった部分であって、外管40の先端部に形成されている。厚肉部41と薄肉部42は、互いに一体成形され、同じ外径を有する。即ち、外管40は、厚肉部41と比べて薄肉部42で内径が拡大し、管内のスペースが大きくなっている。
【0033】
挿入部2は、さらに、外管40内に配置された照明用の光ファイバ20と、送気・送液用のチューブ30とを有する。光ファイバ20は、挿入部2の先端面から基部3の内部まで延び、第1接続部4を介してコンソールに接続される。チューブ30についても同様に、挿入部2の先端面から基部3の内部まで延び、第2接続部5を介して生理食塩水等の供給源に接続される。また、挿入部2は、撮像ユニット10から延びたケーブル11を有する。ケーブル11は、撮像ユニット10により取得された画像データを伝送するためのケーブルであって、第1接続部4を介してコンソールに接続される。
【0034】
撮像ユニット10は、撮像素子を含むユニットであって、レンズ、フィルタ、カバーガラス等を含んでいてもよい。撮像ユニット10は、例えば、一辺0.5mm以下の略正方形状の受光面を有し、受光面が挿入部2の先端面に位置するように外管40内に設けられる。なお、外管40には、撮像ユニット10、光ファイバ20、及びチューブ30を収容可能なパイプが用いられるが、細径化のニーズは大きい。このため、外管40の外径は、1mm以下であることが好ましい。撮像ユニット10の厚みは、例えば、1.5mm以下である。
【0035】
撮像ユニット10に含まれる撮像素子は、光を電気信号に変換するフォトダイオードを基板上に多数配置した素子であって、固体撮像素子又はイメージセンサとも呼ばれる。撮像素子の好適な一例としては、CCDイメージセンサ、又はCMOSイメージセンサが挙げられる。本実施形態では、撮像素子としてCMOSイメージセンサを用いるものとするが、撮像素子はこれに限定されない。撮像素子に入射した光は電気信号に変換され、取得された画像データはケーブル11を介してコンソールに伝送される。
【0036】
光ファイバ20は、照明用の光源の光を挿入部2の先端面まで導くためのライトガイドである。涙道内視鏡1では、光ファイバ20から出射された光が、観察したい目的部位に照射されて反射し、その反射光が撮像素子に入射することで目的部位の画像データが取得される。光ファイバ20は、挿入部2の先端部において、撮像ユニット10の周囲に複数本配置される。光ファイバ20の本数は特に限定されないが、一例としては、10本以上100本以下である。複数の光ファイバ20は、ある程度まとまった束の状態で配置されることが好ましい。
【0037】
送気・送液用のチューブ30は、空気を送るためのチューブ、生理食塩水等の液体を送るためのチューブ、又は送気、送液の両方を行うためのチューブであって、挿入部2の先端面に開口している。涙道内視鏡1では、挿入部2の先端面から空気、生理食塩水等を噴出させることで、例えば、観察したい部位から付着物等を除去する、或いは撮像ユニット10に対する付着物を除去する。チューブ30には、ポリイミド等の樹脂製のチューブを用いることができる。また、チューブ30は、処置具を通す鉗子孔、或いは吸引孔として使用されてもよい。なお、内視鏡の種類によって、チューブ30の大きさや機能が異なり、またチューブ30を有さない場合もある。
【0038】
外管40には、上記のように、互いに同じ外径を有し、管厚が異なる厚肉部41と薄肉部42が形成されている。これにより、薄肉部42が形成された外管40の先端部分では、外径を大きくすることなく管内のスペースを拡大でき、その他の部分は厚肉部41とすることにより、挿入部2の強度を確保できる。また、外管40は金属製のパイプであって、厚肉部41と薄肉部42は一体成形されている。このため、挿入部2の組立が容易であり、先端部分が脱落するといった問題も発生しない。外管40を構成する金属の一例は、ステンレス鋼である。
【0039】
薄肉部42は、撮像ユニット10の収容に支障がない長さで形成されていればよい。例えば、撮像ユニット10の厚みは1.5mm以下であるから、薄肉部42は外管40の先端から5mm以下の長さ範囲のみに形成されることが好ましい。薄肉部42を必要最小限の長さにすることで、外管40の強度を確保することが容易になる。薄肉部42の長さLの好適な一例は、2mm以上5mm以下、又は2mm以上4mm以下である。また、薄肉部42は外管40の周方向に沿って実質的に同じ厚みで形成されることが好ましい。厚肉部41についても同様に、外管40の周方向に沿って実質的に同じ厚みで形成されることが好ましい。
【0040】
薄肉部42における管厚T2は、厚肉部41における管厚T1の70%以下であることが好ましく、50%以下がより好ましい。この場合、外管40の太径化を効果的に抑制できる。一方、薄肉部42の管厚T2を薄くし過ぎると、例えば、先端部の強度が不十分になることが想定されることから、管厚T2は、管厚T1の10%以上が好ましく、15%以上がより好ましい。管厚T2は、管厚T1の15%以上50%以下が好ましい。例えば、厚肉部41の管厚T1は0.1mm以上0.4mm以下、又は0.2mm以上0.3mm以下であり、薄肉部42の管厚T2は0.03mm以上0.07mm以下、又は0.04mm以上0.06mm以下である。
【0041】
外管40は、例えば、少なくとも基部3から延出した部分の外径が一定であり、基部3に差し込まれた部分を含む全長にわたって外径が一定であることが好ましい。また、
図2に示す例では、外管40が2つの管厚T1,T2で形成されている。即ち、外管40の先端部以外、具体的には外管40の先端から5mmを超える範囲は、厚肉部41となっている。そして、厚肉部41と薄肉部42の境界では管厚、即ち内径が急峻に変化し、境界部分に段差が形成されている。
【0042】
図2に例示する形態では、光ファイバ20とチューブ30が、厚肉部41と薄肉部42の境界部分で曲がっている。光ファイバ20とチューブ30は、厚肉部41において、ケーブル11と共に外管40の長さ方向に沿うように配置されているが、そのまま真っ直ぐに延ばした位置には撮像ユニット10が存在する。このため、光ファイバ20とチューブ30は、撮像ユニット10を避けるように、厚肉部41と薄肉部42の境界部分で外管40の径方向外側に屈曲している。
【0043】
図3に示すように、薄肉部42は、厚肉部41に近づくほど次第に管厚が大きくなったテーパ領域43を含んでいてもよい。換言すると、テーパ領域43は、外管40の先端に近づくほど次第に管厚が小さくなった部分であって、外管40の長さ方向に対して傾斜した部分である。テーパ領域43を形成することによって管厚が徐々に変化するため、厚肉部41と薄肉部42の境界部分に作用する応力を分散でき、境界部分での外管40の変形を十分に抑制できる。また、厚肉部41と薄肉部42の境界部分における光ファイバ20とチューブ30の屈曲の程度が緩やかになる。
【0044】
薄肉部42は、その全長にわたって管厚が変化し、外管40の先端までテーパ領域43が形成されていてもよいが、好ましくは非テーパ領域44を有する。薄肉部42には、非テーパ領域44とテーパ領域43が、外管40の先端側からこの順で形成されることが好ましい。この場合、薄肉部42の全体がテーパ領域43である場合と比べて、撮像ユニット10の組付けが容易になる。なお、非テーパ領域44の内周面は、厚肉部41の内周面と同様に、外管40の長さ方向に沿って形成されている。非テーパ領域44における管厚T2は、厚肉部41における管厚T1の15%以上50%以下が好ましい。
【0045】
外管40の長さ方向に沿った、テーパ領域43の長さL1と、非テーパ領域44の長さL2は、例えば、それぞれ1mm以上2mm以下である。テーパ領域43の長さL1は、非テーパ領域44の長さL2より長くてもよく、短くてもよい。
図3に示す例では、長さL1,L2が実質的に同じ長さとなっている。
【0046】
図4は、挿入部2を径方向に切断した断面図であって、外管40の厚肉部41における径方向断面を示す。
図5は、挿入部2の先端面を示す図である。
【0047】
図4に示すように、厚肉部41の管内には、撮像ユニット10に接続されるケーブル11が配置されている。そして、ケーブル11を囲むように、光ファイバ20とチューブ30が配置されている。光ファイバ20は複数本をまとめた束の状態で配置され、外管40内には、挿入部2の断面視において、ケーブル11の三方を囲むように、第1のファイバ群21、第2のファイバ群22、及び第3のファイバ群23が設けられている。チューブ30は、ケーブル11の残りの一方に対向配置されている。
【0048】
ファイバ群21,22,23を構成する光ファイバ20の本数は特に限定されないが、本実施形態では、各群が同数の光ファイバ20で構成されている。また、挿入部2の断面視において、ファイバ群21,23の長手方向が互いに平行となり、ファイバ群22の長手方向に対して垂直となるように、各群が配置されている。ファイバ群21,22,23の当該配置は、挿入部2の先端まで維持される。チューブ30の外径は、ケーブル11の直径と同程度であってもよい。厚肉部41の管内において、チューブ30の径方向断面の形状は、例えば、真円形状である。
【0049】
図4に示す例では、ケーブル11、ファイバ群21,22,23、チューブ30、及び厚肉部41の内周面は、互いに接触しておらず、それらの隙間は空洞になっているが、この空洞には接着剤が充填されていてもよい。
【0050】
図5に示すように、挿入部2の先端面には、撮像ユニット10が配置されている。撮像ユニット10はケーブル11よりも挿入部2の径方向に大きいが、挿入部2の先端部では薄肉部42によって管内のスペースが拡大しているため、外管40の外径が一定であっても撮像ユニット10を配置することが可能である。撮像ユニット10は、外管40の内周面に接触することなく、外管40の真ん中に配置されることが好ましい。撮像ユニット10は、例えば、接着剤51を用いてハウジング12に固定される。ハウジング12は、撮像ユニット10の周囲の少なくとも一部を覆い、ユニットを保護する。
【0051】
挿入部2の先端面において、光ファイバ20は、少なくとも外管40の径方向両側から撮像ユニット10を挟むように撮像ユニット10の周囲に配置される。撮像ユニット10は外管40の真ん中に配置され、外管40の内周面と、撮像ユニット10又はハウジング12との間のスペースが、光ファイバ20とチューブ30が配置されるスペースとなる。本実施形態では、光ファイバ20とチューブ30を配置可能な薄肉部42の管内のスペースが、厚肉部41の管内と比較して狭くなっている。このため、チューブ30の径方向断面の形状は楕円形状となっている。
【0052】
挿入部2の先端部には、ハウジング12、ファイバ群21,22,23、チューブ30、及び薄肉部42の内周面の間に形成される隙間に、接着剤50が充填されている。接着剤50を充填することで、撮像ユニット10等が安定に固定され、また外管40内への体液の浸入を防止できる。接着剤50,51には、例えば、アクリル系接着剤等の生体適合性を有する接着剤が使用される。
【0053】
図5に例示する形態では、挿入部2の先端面において、光ファイバ20の各群が、撮像ユニット10の三方を囲むように撮像ユニット10の周囲に配置され、チューブ30が、撮像ユニット10の残りの一方に対向配置されている。即ち、ファイバ群21,22,23及びチューブ30により、撮像ユニット10の四方が囲まれている。また、ファイバ群21,22,23の長手方向は、それぞれが対向する撮像ユニット10の各辺と平行になっている。
【0054】
挿入部2は、例えば、下記の方法により作製できる。
(1)外管40内にファイバ群21,22,23とチューブ30を挿入する。
(2)撮像ユニット10を固定する位置にピンを差し込み、その状態で外管40の先端部に接着剤50を充填する。
(3)ピンを外して挿入部2の先端面を研磨する。
(4)ピンを外すことで形成された凹部に、ハウジング12が装着された撮像ユニット10を差し込んで固定する。このとき、凹部又はハウジング12に接着剤51を塗布する。
【0055】
図6及び
図7は、挿入部2の先端面の変形例を示す図である。
【0056】
図6に例示する形態では、挿入部2の先端面において、2本のチューブ30が開口している点で、
図5に例示する形態と異なる。また、2本のチューブ30の開口部は真円形状である。この場合も、ファイバ群21,22,23及び2本のチューブ30により、撮像ユニット10の四方が囲まれている。なお、1本のチューブが途中で分岐して2本のチューブ30になっていてもよい。2本のチューブ30の一方を送液チューブ、他方を送気チューブとして使用することもできるし、両方を送液チューブ又は送気チューブとして使用することもできる。
【0057】
図7に例示する形態では、挿入部2の先端面において、2本のチューブ30が開口している点で、
図6に例示する形態と共通するが、ハウジング12及びファイバ群22が設けられていない点で、
図6に例示する形態と異なる。さらに、2本のチューブ30は、外管40の径方向両側から撮像ユニット10を挟むように撮像ユニット10の周囲に配置されている。この場合も、外管40の径方向両側から撮像ユニット10を挟むように、ファイバ群21,23が設けられている。なお、挿入部2の先端面において、ファイバ群21,23が並ぶ方向と、2本のチューブ30が並ぶ方向は、直交している。
【0058】
図7に例示する形態では、ハウジング12が存在しないため、光ファイバ20とチューブ30を配置可能なスペースが、
図6に例示する形態よりも大きくなっている。
図7に例示する形態では、
図6に例示する形態と比較して、ファイバ群21,23を構成する光ファイバ20の本数が多くなっている。なお、挿入部2の先端面において、チューブ30は3本以上配置されてもよく、例えば、撮像ユニット10の両側に2本ずつ配置されてもよい。
図6及び
図7に示す例では、各チューブ30の直径が同じであるが、各チューブ30の直径は互いに異なっていてもよい。
【0059】
以上のように、上記構成を備えた涙道内視鏡1によれば、撮像ユニット10が設置される挿入部2の先端部分に薄肉部42を形成することで、先端部分を大径化することなく管内のスペースを拡大できる。外管40の全体を薄肉に形成するのではなく、先端部分以外は厚肉部41とすることで、挿入部2の強度を十分に確保できる。このため、挿入部2の強度を確保しつつ、挿入部2の細径化を実現できる。また、厚肉部41と薄肉部42は一体成形されているため、挿入部2の組立が容易であり、先端部分が脱落するといった問題も発生しない。
【0060】
涙道内視鏡1の挿入部2は、例えば、外径が全長にわたって1mm以下又は0.9mm以下であり、かつ高強度である。このため、涙道内視鏡1は、操作性と耐久性に優れ、また患者負担の軽減にも寄与する。なお、撮像ユニット10の小型化が進めば、挿入部2のさらなる細径化も可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 涙道内視鏡、2 挿入部、2a 屈曲部、3 基部、4 第1接続部、5 第2接続部、10 撮像ユニット、11 ケーブル、12 ハウジング、20 光ファイバ、21,22,23 光ファイバ群、30 チューブ、40 外管、41 厚肉部、42 薄肉部、43 テーパ領域、44 非テーパ領域、50,51 接着剤、60 リード