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特開2024-112578射出成形用成形材料および射出成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112578
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】射出成形用成形材料および射出成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20240814BHJP
   C08K 7/02 20060101ALI20240814BHJP
   C08L 1/00 20060101ALI20240814BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K7/02
C08L1/00
B29C45/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017714
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000176637
【氏名又は名称】日本製紙パピリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】岸本 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】青嶋 健仁
【テーマコード(参考)】
4F206
4J002
【Fターム(参考)】
4F206AA03
4F206AA04
4F206AA11
4F206AA13
4F206AA29
4F206AB11
4F206AB19
4F206AB25
4F206AB28
4F206AR12
4F206AR15
4F206JA07
4F206JE11
4F206JF02
4F206JL02
4F206JM04
4F206JN11
4J002AA01W
4J002AB01X
4J002AD03X
4J002AF03X
4J002BB00W
4J002BB03W
4J002BB12W
4J002CL00W
4J002CL01W
4J002CL03W
4J002FA04X
4J002FD01X
(57)【要約】
【課題】樹脂単体の射出成形体と比べて高い引張強度および曲げ強度を有し、繊維感を有する射出成形体を得ることのできる成形材料と、この成形材料からなる樹脂成形体を提供すること。
【解決手段】天然繊維と熱可塑性樹脂とを含み、全体に対する前記天然繊維の配合率が40重量%以上80重量%未満であり、前記天然繊維の平均繊維長が0.7mm以上であり、射出成形用である成形材料と、この成形材料からなり、繊維感を有する射出成形体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然繊維と熱可塑性樹脂とを含み、
全体に対する前記天然繊維の配合率が40重量%以上80重量%未満であり、
前記天然繊維の平均繊維長が0.7mm以上であり、
射出成形用であることを特徴とする成形材料。
【請求項2】
前記天然繊維が、解繊されたパルプであることを特徴とする請求項1に記載の成形材料。
【請求項3】
前記天然繊維が、乾式解繊されたパルプであることを特徴とする請求項1に記載の成形材料。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の成形材料からなり、繊維感を有することを特徴とする射出成形体。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形用である成形材料とこの成形材料からなる射出成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
微細なセルロース繊維は、軽量で高い強度と高い弾性率を有し、また低い線熱膨張係数を有することから、樹脂組成物の補強材料として好適に使用されている。特許文献1には、パルプを機械的処理して得たセルロース繊維予備解繊物と樹脂とを一軸または多軸混練機を用いて混練してなる樹脂複合体において、セルロース繊維の平均繊維幅が1μm以下の割合が50体積%以上とすることにより、高い引張弾性率および高い引張強度を有し、さらに、引張伸びとのバランスに優れる樹脂複合体を提供することが開示されている。特許文献2には、セルロース繊維及びポリプロピレン樹脂からなる成形体において、アルコキシシラン変性ポリプロピレン樹脂を相溶化剤として用いることで樹脂成形体の機械強度を効果的に高めることが開示されている。特許文献3には、平均繊維幅0.1μm以上のマイクロ繊維セルロースが樹脂中の分散性に優れ、樹脂中でマイクロ繊維セルロースの三次元ネットワークが形成されることにより、樹脂の補強効果が高いことが開示されている。
【0003】
これらはいずれも、セルロース繊維を樹脂に含有させる目的が成形体の機械的強度を向上させることであり、セルロース繊維は樹脂中に均一に分散されている。そのため、従来の方法により得られるセルロース繊維を含む成形体の表面は均一で平滑であり、その外観からはセルロース繊維が含有されていることを判断することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第7108727号公報
【特許文献2】国際公開第2022-014539号
【特許文献3】特開2020-70379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、環境問題への関心の高まりから、環境へ配慮した商品を選択する消費者層が拡大している。そのため、セルロース等の天然繊維を含有した成形材料において、機械的強度の向上を図ると同時に、環境へ配慮した商品であることをより強くアピールしたいとの要求があった。
本発明は、樹脂単体の射出成形体と比べて高い引張強度および曲げ強度を有し、繊維感を有する射出成形体を得ることのできる成形材料と、この成形材料からなる樹脂成形体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の課題を解決するための手段は、以下のとおりである。
1.天然繊維と熱可塑性樹脂とを含み、
全体に対する前記天然繊維の配合率が40重量%以上80重量%未満であり、
前記天然繊維の平均繊維長が0.7mm以上であり、
射出成形用であることを特徴とする成形材料。
2.前記天然繊維が、解繊されたパルプであることを特徴とする1.に記載の成形材料。
3.前記天然繊維が、乾式解繊されたパルプであることを特徴とする1.に記載の成形材料。
4.1.~3.のいずれかに記載の成形材料からなり、繊維感を有することを特徴とする射出成形体。
【発明の効果】
【0007】
本発明の成形材料により、引張強度と曲げ強度の優れた射出成形体を得ることができる。本発明の成形材料から得られる射出成形体は、含有する天然繊維を視認することができ繊維感を有するため、環境に配慮した製品であることを強く訴求することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
「成形材料」
本発明の成形材料は、射出成形用であり、天然繊維と熱可塑性樹脂とを含む。
成形材料全体に対する天然繊維の配合率は、40重量%以上80重量%未満である。この配合率が40重量%未満では強度が十分に向上しない。一方、この配合率が80重量%以上であると成形性が不足する。成形材料全体に対する天然繊維の配合率は、51重量%以上が好ましく、また、75重量%以下が好ましい。
なお、本明細書において、繊維感を有するとは、天然繊維の面積率(表面積における天然繊維の占める割合)が10%以上であることを意味する。
【0009】
(天然繊維)
本発明において、天然繊維としては、植物、微生物、動物に由来する繊維を特に制限することなく使用することができる。具体的には、パルプ(晒又は未晒木材パルプ、晒又は未晒非木材パルプ、バンブー、精製リンター、ジュート、マニラ麻、ケナフ等の草本由来のパルプなど)、酢酸菌等の微生物によって生産されるセルロース等の天然セルロース、セルロースを高濃度アルカリ処理して得られるマーセル化パルプ、セルロースを銅アンモニア溶液、モルホリン誘導体等の何らかの溶媒に溶解した後に再沈殿された再生セルロース、およびこれらのセルロース原料に加水分解、アルカリ加水分解、酵素分解、爆砕処理、振動ボールミル等の機械的処理等をすることによってセルロースを解重合した微細セルロース、アセチル化変性セルロース、カルボキシル化変性セルロース等の各種セルロース誘導体等のセルロース系繊維、絹、羊毛、ヤギ毛等の獣毛などが例示できる。
【0010】
本発明で使用する天然繊維は、平均繊維長0.7mm以上である。平均繊維長が0.7mm未満では、樹脂成形体とした際に天然繊維が視認しにくく、繊維感が不足する。天然繊維の平均繊維長は、0.8mm以上が好ましく、0.9mm以上がより好ましく、1.0mm以上がさらに好ましい。平均繊維長の長さの上限は、射出成形性に問題がない範囲内であれば特に制限されないが、流動性の点からは3mm以下が好ましく、2.8mm以下がより好ましく、2.6mm以下がさらに好ましく、2.5mm以下がよりさらに好ましい。
また、本発明で使用する天然繊維は、平均繊維幅が20μm以上であることが好ましい。繊維幅が20μm未満であれば、繊維感に乏しい場合がある。
なお、本明細書において、平均繊維長と平均繊維幅は、長さ荷重平均繊維長と長さ荷重平均繊維幅を意味し、例えば、繊維長測定器(Techpap SAS社製、Morfi Compact等)により測定することができる。
【0011】
天然繊維としては、軽量で高い強度と高い弾性率を有し、低い線熱膨張係数を有することからセルロース系の天然繊維が好ましく、解繊処理したパルプが好ましい。パルプの解繊処理は、湿式、乾式のいずれか、または両方で行うことができ、乾式処理の方が繊維感の強い射出成形体を得られること、湿式処理と比較して水分率が低いため水蒸気を原因とする成形不良等を防止できること等の点から好ましい。
【0012】
(熱可塑性樹脂)
本発明において、熱可塑性樹脂としては、射出成形可能な樹脂を特に制限することなく使用することができる。例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、フッ素樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル、ポリ乳酸、乳酸とエステルとの共重合樹脂、ポリグリコール酸、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリフェニレンオキシド、ポリウレタン、ポリアセタール、ビニルエーテル樹脂、ポリスルホン系樹脂、セルロース系樹脂(トリアセチル化セルロース、ジアセチル化セルロースなど)等を使用することができる。また、これらの樹脂は、ホモポリマーとしての使用の他に、各種公知の機能を有する樹脂を半量以下含むコポリマーとしたブロック共重合体として使用することもできる。
【0013】
熱可塑性樹脂の中でもポリオレフィン樹脂は融点が低いため、天然繊維との混練を比較的低温で行うことができ、熱による天然繊維の劣化を抑えることができる。ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン(以下「PP」とも記す)、エチレン-プロピレン共重合体、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、ポリブタジエンなどを使用することが可能である。
【0014】
ポリアミド樹脂(PA)は、尿素の作用を受けていないセルロースの水酸基やアセチル基との相互作用も期待され、好適に使用することができる。PAとしては、ポリアミド6(ナイロン6、PA6)、ポリアミド11(ナイロン11、PA11)、ポリアミド12(ナイロン12、PA12)、ポリアミド66(ナイロン66、PA66)、ポリアミド46(ナイロン46、PA46)、ポリアミド610(ナイロン610、PA610)、ポリアミド612(ナイロン612、PA612))等の脂肪族PA、フェニレンジアミン等の芳香族ジアミンと塩化テレフタロイルや塩化イソフタロイル等の芳香族ジカルボン酸又はその誘導体からなる芳香族PA等を挙げることができ、これらの1種を単独で、または、相溶する2種以上を混合して使用することができる。これらの中で、セルロース系天然繊維との親和性が高い観点から、脂肪族PAを用いることが好ましく、PA6、PA11、PA12を用いることがより好ましく、PA6を用いることが特に好ましい。
【0015】
本発明の成形材料は、本発明の効果を損なわない範囲で各種添加剤を含むことができる。添加剤としては、射出成形用の成形材料に従来用いられている公知のものを用いることができ、例えば、可塑剤、無機充填材、有機充填剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候剤、離型剤、滑剤、顔料、染料、帯電防止剤、難燃剤等が挙げられる。
【0016】
「射出成形体」
本発明の射出成形用である成形材料を、公知の方法により射出成形することにより繊維感を有する射出成形体を得ることができる。
本発明の射出成形体は、繊維感を有し、天然繊維の面積率(表面積における天然繊維の占める割合)が10%以上である。この面積率は、12%以上が好ましく、13%以上がより好ましく、14%以上がさらに好ましく、15%以上がよりさらに好ましく、16%以上がよりさらに好ましい。
得られる射出成形体の用途は特に制限されず、例えば、食器類、文房具類、玩具類、配線器具、電化製品用部品、自動車用部品、航空機用部品、事務機器用部品、汎用機械用部品、各種筐体等とすることができる。
【実施例0017】
(パルプの解繊処理)
針葉樹クラフトパルプ(NBKP)のパルプシートを、乾式解繊装置 ATOMZ(株式会社石川総研、固定刃方式)を用い、スクリーン径25mmもしくは0.5mmの条件で乾式処理し、目的の平均繊維長となるように処理回数を調整して解繊し、解繊したパルプを得た。
(天然繊維形状の測定方法)
天然繊維(解繊したパルプ)について、繊維長測定器(Techpap SAS社製、Morfi Compact)を用い、JIS P8226-2(2011年版)「パルプ-光学的自動分析法による繊維長測定方法-第2部:非偏光法」に準拠して、長さ荷重平均繊維長を測定した。
平均繊維幅は、繊維長測定器(Techpap SAS社製、Morfi Compact)により求めた。
【0018】
(射出成形体の作製方法)
表1に示す配合量の天然繊維と熱可塑性樹脂とを含む成形材料を、MF式混合溶融機(東湘物産株式会社製、5000シリーズ)を用いて設定温度140~160℃にて溶融混合し塊状とし、これを粉砕して直径0.1mm~10mmのフレーク状とした。
これを原料として射出成形機(株式会社日本製鋼所製、J180ELIII)に投入し、加熱筒(シリンダー)の温度190℃、金型温度は75℃の条件で射出成形して、ダンベル型試験片(タイプA1、JIS K 7139)を得た。
【0019】
(成形性の評価方法)
上記した射出成形体(ダンベル型試験片)の作製時における原料の流動性、成形体の形状(欠損、亀裂)、色調(焦げ)を総合的に目視評価し、次の3段階で評価した。
〇:原料の流動性は良好で、成形体に欠損や亀裂がなく焦げが弱い
△:原料の流動性は良好で、成形体に欠損や亀裂がないが焦げが強い
×:原料の流動性は悪く、成形体に欠損や亀裂があり焦げが強い
【0020】
(成形体の物性測定方法)
成形したダンベル型試験片について、万能引張試験機(株式会社東洋ボールドウィン製)を用いて、試験速度5mm/分、初期標線間距離115mmの条件で引張強度を、試験速度2mm/分、支点間距離64mmの条件で曲げ強度を測定した。
また、熱可塑性樹脂のみを用いて同様にしてダンベル型試験片を成形し、上記と同様に引張強度、曲げ強度を測定し、この引張強度、曲げ強度を100としたときの、各サンプルの測定値の比率を補強率として算出した。
【0021】
(繊維感の評価方法)
各ダンベル両端部分について、デジタルマイクロスコープ(キーエンス株式会社製、VHX-8000)で30倍の表面画像を撮影し、10mm×7.5mmの領域を画像解析ソフト(三谷商事株式会社製、WinROOF)を用いて繊維部分の面積率を測定した。
1.リング照明で撮影した画像をモノクロ画像化し、表面に露出した繊維部分が明確になるように明るさとコントラストを調整した。
2.繊維部分を閾値(設定:85-145)にて二値化画像にした後ノイズ除去した。
3.二値化画像から繊維部分の面積率を算出した。
4.1サンプルについて10点測定し、最大値と最小値を除いた8測定値の平均値を面積率とした。
繊維感は、上記の測定で得られた面積率の値から、次の3段階で評価した。
(繊維感評価)
◎:面積率14%以上
○:面積率10%以上14%未満
×:面積率10%未満
面積率10%以上であれば、繊維感を有すると評価した。
【0022】
(実施例1)
マーセル化パルプ1を乾式解繊装置(スクリーン径:25mm)にて1回通しで解繊処理した。解繊処理後のパルプは、平均繊維長が2.42mm、平均繊維幅が38.7μmであった。
この解繊したパルプ40重量%とポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ株式会社製、ノバテックBC05B)60重量%を混合して成形材料を得た。
(実施例2)
実施例1で使用したものとは異なる樹種のマーセル化パルプ2を実施例1と同条件で処理した。解繊処理後のパルプは、平均繊維長が2.36mm、平均繊維幅が32.2μmであった。
この解繊したパルプ51重量%とポリプロピレン樹脂49重量%を混合して成形材料を得た。
(実施例3)
実施例2で用いたマーセル化パルプ2を乾式解繊装置(スクリーン径:0.5mm)にて5回通しで解繊処理した。解繊処理後のパルプは平均繊維長が0.84mm、平均繊維幅が32.3μmであった。
この解繊したパルプ75重量%とポリプロピレン樹脂25重量%を混合して成形材料を得た。
【0023】
(実施例4)
針葉樹晒しクラフトパルプ1を乾式解繊装置(スクリーン径:0.5mm)にて5回通しで解繊処理をした。解繊処理後のパルプは平均繊維長が0.78mm、平均繊維幅が32.7μmであった。
この解繊したパルプ51重量%とポリプロピレン樹脂49重量%を混合して成形材料を得た。
(実施例5)
実施例4で使用したものとは異なる樹種の針葉樹晒しクラフトパルプ2を実施例4と同条件で解繊処理した。解繊処理後のパルプは、平均繊維長が1.12mm、平均繊維幅が21.3μmであった。
この解繊パルプ51重量%とポリプロピレン樹脂49重量%を混合して成形材料を得た。
【0024】
(実施例6)
実施例1で用いたマーセル化パルプ1を乾式解繊装置(スクリーン径:25mm)にて1回通しで解繊処理をした。また別に、実施例4で使用した針葉樹晒しクラフトパルプ1を乾式解繊装置(スクリーン径:0.5mm)にて5回通しで解繊処理をした。この2種類の処理後パルプを重量比で1:1となるように混合した。この混合物における平均繊維長は1.50mm、平均繊維幅は32.2μmであった。
この混合した解繊パルプ51重量%とポリプロピレン樹脂49重量%を混合して成形材料を得た。
(実施例7)
実施例4で用いた針葉樹晒しクラフトパルプ1を湿式解繊(叩解処理)して、ろ水度60゜SRのパルプ懸濁液を得た。この懸濁液を漉し網で水分量30%まで搾水した。解繊処理後のパルプは平均繊維長が1.55mm、平均繊維幅が34.8μmであった。
この湿式解繊した解繊パルプ51重量%とポリプロピレン樹脂49重量%を混合して成形材料を得た。
なお、このろ水度とはJIS P 8121-1(2012年)によるショッパー・リーグラ法に基づきパルプ懸濁液の水切れの程度を測定した値である。
【0025】
(比較例1)
実施例2で得られた解繊パルプ35重量%とポリプロピレン樹脂65重量%を混合して成形材料を得た。
(比較例2)
実施例6で得られた混合した解繊パルプ80重量%とポリプロピレン樹脂20重量%を混合して成形材料を得た。
この成形材料は、電動成形機にてダンベル型の試験片の作製を試みたが、成形性が悪く試験片を得ることができなかった。
(比較例3)
実施例4で用いた針葉樹晒しクラフトパルプ1を湿式解繊(叩解処理)して、ろ水度90゜SRのパルプ懸濁液を得た。この懸濁液を漉し網で水分量30%まで搾水した。解繊処理後のパルプは平均繊維長が0.50mm、平均繊維幅が38.7μmであった。
この湿式解繊したパルプ51重量%とポリプロピレン樹脂49重量%を混合して成形材料を得た。
【0026】
【表1】
【0027】
本発明である実施例1~7で得られた成形材料からは、繊維感のある射出成形体を成形することができた。
比較例1、3で得られた成形材料からは、繊維感の乏しい射出成形体が成形された。
比較例2で得られた成形材料は、成形性が悪く試験片を得ることができなかった。
比較例3、実施例4~6、2より、平均繊維長が長くなるほど繊維感が強くなることが確かめられた。
実施例6、7より、乾式解繊したパルプのほうが、湿式解繊したパルプよりも、繊維感の強い射出成形体が得られることが確かめられた。