(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112587
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】光送信モジュール
(51)【国際特許分類】
H01S 5/024 20060101AFI20240814BHJP
H01S 5/02212 20210101ALI20240814BHJP
【FI】
H01S5/024
H01S5/02212
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017727
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】板橋 直樹
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 智哉
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173MB01
5F173MB05
5F173MC11
5F173MD04
5F173MD59
5F173ME47
5F173ME53
5F173ME64
5F173ME85
5F173MF39
(57)【要約】
【課題】温調素子によって光素子の温度調節を効率よく行うことができる光送信モジュールを提供する。
【解決手段】一実施形態に係る光送信モジュールは、第1方向に延伸する信号端子、および第1方向に延伸する支持部、を有する金属ステムと、誘電体を含み、半導体実装面および熱伝導面を有する誘電体ブロックと、半導体実装面に実装された光半導体素子と、金属ステムと熱伝導面との間に配置された温調素子と、信号端子を光半導体素子に電気的に接続するための中継基板と、絶縁性を有し、支持部と中継基板との間に接続される断熱スペーサと、を備える。断熱スペーサの熱伝導率は、支持部の熱伝導率よりも小さく、かつ、中継基板の熱伝導率よりも小さい。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に延伸する信号端子、および前記第1方向に延伸する支持部、を有する金属ステムと、
誘電体を含み、半導体実装面および熱伝導面を有する誘電体ブロックと、
前記半導体実装面に実装された光半導体素子と、
前記金属ステムと前記熱伝導面との間に配置された温調素子と、
前記信号端子を前記光半導体素子に電気的に接続するための中継基板と、
絶縁性を有し、前記支持部と前記中継基板との間に接続される断熱スペーサと、
を備え、
前記断熱スペーサの熱伝導率は、前記支持部の熱伝導率よりも小さく、かつ、前記中継基板の熱伝導率よりも小さい、
光送信モジュール。
【請求項2】
前記断熱スペーサの熱伝導率が10W/(m・K)以下である、
請求項1に記載の光送信モジュール。
【請求項3】
前記中継基板は、信号配線およびグランド配線を有し、
前記グランド配線は、
前記中継基板の前記第1方向の第1端において前記金属ステムに電気的に接続され、かつ、前記中継基板の前記第1方向の前記第1端とは反対の第2端においてボンディングワイヤを介して前記光半導体素子と電気的に接続されている、
請求項1または請求項2に記載の光送信モジュール。
【請求項4】
前記中継基板と前記断熱スペーサとの接触面積は、前記中継基板の底面の面積よりも小さい、
請求項1または請求項2に記載の光送信モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光送信モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、TO-CAN型TOSAモジュールが記載されている。TO-CAN型TOSAモジュールは、気密封止用の誘電体と、高周波電気信号およびDC電流を流すための複数の配線端子とを有するステムと、ステム上に搭載された光半導体光源素子とを備える。ステムは、熱伝導率が高いSPC(Steel Plate Cold)で構成されたステム上層と、熱膨張係数が小さいFe(鉄)-Ni(ニッケル)-Co(コバルト)合金で構成されたステム下層と、ステム上層から突出したノーズとを有する。ノーズは、ステムのプレス加工時に一体形成されている。ノーズは、ステム上層と同じSPC等の金属製の材料で構成されている。ノーズには中継線路基板が半田によって固定されている。
【0003】
ステム上には冷却素子としてのペルチェ素子が搭載されている。ペルチェ素子上には、各種部品を搭載するためのキャリアが載置されている。キャリアには、光半導体光源素子からの光をコリメート光にするためのレンズと、サブキャリア基板とが搭載されている。サブキャリア基板には、光半導体光源素子として、レーザダイオードと光変調器部とをモノリシック集積したチップが搭載されている。キャリアは、複数のボンディングワイヤを介してノーズに接続されている。キャリアから延びる上記複数のボンディングワイヤは、ノーズに接続されており、かつ、ステムに直接接続されない構成とされている。
【0004】
特許文献2には、光サブアッセンブリが記載されている。光サブアッセンブリは、アイレットと、光レセプタクルとを含む。アイレットは、第1の面と、第1の面の反対側に配置された第2の面と、を有する。アイレットは、第1の面から第2の面までを貫通する第1の貫通孔を有する。第1の貫通孔には電気信号を伝送する第1のリード端子が挿入されている。第1の貫通孔と第1のリード端子との間には誘電体が充填されている。光サブアッセンブリは、アイレットの第1の面から第1の貫通孔の延伸方向に突出する導電性の台座を含む。アイレットと台座とは一体形成されており、アイレットと台座によってステムが構成されている。
【0005】
台座は、中継基板が載置される第3の面を含む。光サブアッセンブリは光信号と電気信号の光電変換を行う光素子を備え、中継基板は電気信号を当該光素子に電装する導体パターンを含む。中継基板と台座の第3の面との間にスペーサが介在している。スペーサは、中継基板の裏面と台座とを導通させる。このスペーサが設けられることにより、中継基板の厚みを0.2mmのように薄くすることが可能である。その結果として、中継基板の大型化が抑制される。スペーサは、窒化アルミニウム等のセラミック基板として構成される。また、セラミック基板内に複数の埋め込みビアホールが設けられ、スペーサの表裏を導通させる構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-108939号公報
【特許文献2】特開2020-098837号公報
【特許文献3】特開2011-197360号公報
【特許文献4】国際公開第2010/140473号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述したTO-CAN型TOSAモジュールでは、ステムは、SPCで構成されたステム上層から突出した金属製のノーズを有する。ノーズには中継線路基板が半田によって固定されている。ペルチェ素子は、キャリアに搭載された光素子に対して温度調整を行う。そして、キャリアは、複数のボンディングワイヤを介してノーズに接続されている。よって、ステムからの熱がノーズ、および複数のボンディングワイヤを介してキャリアに流入する。ステムからの熱がキャリアに流入すると、ペルチェ素子等の温調素子によって効率よく光素子の温度調節を行えなくなる可能性がある。
【0008】
本開示は、温調素子によって光素子の温度調節を効率よく行うことができる光送信モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る光送信モジュールは、第1方向に延伸する信号端子、および第1方向に延伸する支持部、を有する金属ステムと、誘電体を含み、半導体実装面および熱伝導面を有する誘電体ブロックと、半導体実装面に実装された光半導体素子と、金属ステムと熱伝導面との間に配置された温調素子と、信号端子を光半導体素子に電気的に接続するための中継基板と、絶縁性を有し、支持部と中継基板との間に接続される断熱スペーサと、を備える。断熱スペーサの熱伝導率は、支持部の熱伝導率よりも小さく、かつ、中継基板の熱伝導率よりも小さい。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、温調素子によって光素子の温度調節を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態に係る光送信モジュールの斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る光送信モジュールの側面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る光送信モジュールの平面図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る光送信モジュールの支持部、中継基板、および断熱スペーサを模式的に示す側面図である。
【
図5】
図5は、
図4の中継基板および断熱スペーサを模式的に示す平面図である。
【
図6】
図6は、第1変形例に係る中継基板および断熱スペーサを模式的に示す平面図である。
【
図7】
図7は、第2変形例に係る光送信モジュールの支持部、中継基板、および断熱スペーサを模式的に示す側面図である。
【
図8】
図8は、第2変形例に係る光送信モジュールの中継基板および断熱スペーサを模式的に示す平面図である。
【
図9】
図9は、第3変形例に係る光送信モジュールの中継基板および断熱スペーサを模式的に示す平面図である。
【
図10】
図10は、第4変形例に係る断熱スペーサを示す斜視図である。
【
図11】
図11は、第5変形例に係る断熱スペーサを示す斜視図である。
【
図12】
図12は、第6変形例に係る断熱スペーサを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示に係る光送信モジュールの実施形態を列挙して説明する。一実施形態に係る光送信モジュールは、(1)第1方向に延伸する信号端子、および第1方向に延伸する支持部、を有する金属ステムと、誘電体を含み、半導体実装面および熱伝導面を有する誘電体ブロックと、半導体実装面に実装された光半導体素子と、金属ステムと熱伝導面との間に配置された温調素子と、信号端子を光半導体素子に電気的に接続するための中継基板と、絶縁性を有し、支持部と中継基板との間に接続される断熱スペーサと、を備える。断熱スペーサの熱伝導率は、支持部の熱伝導率よりも小さく、かつ、中継基板の熱伝導率よりも小さい。
【0013】
この光送信モジュールは、信号端子および支持部を有する金属ステムと、誘電体ブロックとを備える。誘電体ブロックは半導体実装面および熱伝導面を有する。金属ステムと誘電体ブロックの熱伝導面との間には温調素子が配置されており、誘電体ブロックの半導体実装面には光半導体素子が実装されている。この光送信モジュールは、光半導体素子に電気的に接続される中継基板、および、中継基板と支持部との間に配置された断熱スペーサを有する。断熱スペーサの熱伝導率は、支持部の熱伝導率より小さく、かつ、中継基板の熱伝導率よりも小さい。よって、金属ステムの支持部からの熱は断熱スペーサによって断熱されるので、中継基板への熱の流入を抑制できる。したがって、金属ステムの支持部から中継基板への熱の流入が抑制されることにより、温調素子によって光素子の温度調節を効率よく行うことができる。
【0014】
(2)上記(1)において、断熱スペーサの熱伝導率が10W/(m・K)以下であってもよい。この場合、断熱スペーサの熱伝導率が10W/(m・K)以下であることにより、支持部から中継基板への熱の流入をより確実に抑えることができる。
【0015】
(3)上記(1)または(2)において、中継基板は、信号配線およびグランド配線を有してもよい。グランド配線は、中継基板の第1方向の第1端において金属ステムに電気的に接続され、かつ、中継基板の第1方向の第1端とは反対の第2端においてボンディングワイヤを介して光半導体素子と電気的に接続されていてもよい。
【0016】
(4)上記(1)から(3)のいずれかにおいて、中継基板と断熱スペーサとの接触面積は、中継基板の底面の面積よりも小さくてもよい。この場合、中継基板の底面の一部と支持部との間に空間が形成される。したがって、支持部から中継基板への熱の流入をより効果的に抑制できる。
【0017】
[本開示の実施形態の詳細]
実施形態に係る光送信モジュールの具体例を以下で図面を参照しながら説明する。図面の説明において同一または相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化または誇張して描いている場合があり、寸法比率及び方向等は図面に記載のものに限定されない。
【0018】
図1は、本実施形態に係る光送信モジュール1を示す斜視図である。
図2は、光送信モジュール1を示す側面図である。
図3は、光送信モジュール1の平面図である。光送信モジュール1は、電気信号を光信号に変換する。光送信モジュール1は、例えば、第1方向D1に沿って光信号を出力する。例えば、光送信モジュール1は、金属ステム10と、誘電体ブロック20と、光半導体素子30と、温調素子40と、レンズ50と、中継基板60とを備える。例えば、光送信モジュール1は、円筒状の筐体(不図示)をさらに備え、当該筐体と金属ステム10とによって光半導体素子30がハーメチックシールされていてもよい。光送信モジュール1は、例えば、同軸型のTOSA(Transmitter Optical Sub-Assembly)である。
【0019】
金属ステム10は、例えば、基台11と、信号端子12と、固定部材13とを有する。基台11は、円板状を呈する。基台11は、金属によって構成されている。これにより、基台11は、温調素子40からの熱を光送信モジュール1の外部に伝達する。例えば、基台11の材料は、軟鉄、冷間圧延鋼、およびFe(鉄)-Ni(ニッケル)-Co(コバルト)合金(Kovar、コバール)の少なくともいずれかを含んでいてもよい。基台11は、基台11を第1方向D1に貫通する貫通孔11bを有する。信号端子12は、貫通孔11bに通された状態で第1方向D1に延伸している。信号端子12は、一例として、第1方向D1に沿って延びる中心軸を有する円柱状を呈する。固定部材13は、信号端子12が通された貫通孔11bに充填される。金属ステム10は、例えば、光送信モジュール1が光トランシーバまたは光通信装置の回路基板に実装されたときに、グランド電位となるように構成されている。
【0020】
信号端子12は、貫通孔11bに充填される固定部材13によって基台11に固定される。信号端子12は、導電性を有する。信号端子12は、例えば、金属によって構成されている。信号端子12は、固定部材13によって基台11と絶縁されている。固定部材13は、一例として、封止用のガラス材である。なお、
図1、
図2および
図3のそれぞれにおいて、光送信モジュール1は、1本の信号端子12を有する。しかしながら、光送信モジュール1の機能等に応じて、信号端子12に類似した端子が設けられていてもよい。このように、光送信モジュール1は複数の端子を有していてもよい。当該端子は、例えば、光半導体素子30もしくは温調素子40に電源電圧を供給するための端子、基準電位を与えるための端子、または制御用の電気信号を伝達する端子である。
【0021】
金属ステム10は、温調素子40が搭載される第1面10bと、第1面10bとは反対方向を向く第2面10cとを有する。一例として、第1面10bおよび第2面10cのそれぞれは平坦面である。例えば、第1面10bは、第1方向D1に交差する第2方向D2、および、第1方向D1と第2方向D2の双方に交差する第3方向D3の双方に延在している。例えば、第1方向D1、第2方向D2および第3方向D3は互いに直交している。信号端子12の一端は、第1面10bから第1方向D1に突出している。また、信号端子12の他端は、第2面10cから信号端子12の一端と反対方向に突出している。信号端子12は、基台11と絶縁された状態で第1面10bと第2面10cとの間で電気信号を伝達することができる。
【0022】
光送信モジュール1は、さらに、金属ステム10から第1方向D1に延伸する支持部14を有する。支持部14は、金属ステム10の第1面10bから第1方向D1に突出している。なお、支持部14として金属ステム10とは別の部材が金属ステム10に接続されていてもよい。支持部14が金属ステム10とは別の部材である場合、第1面10bに接続される支持部14の位置を変更することができる。例えば、支持部14は、第1方向D1に延伸する直方体状を呈するブロックである。支持部14は、第1面10bに接着されていてもよい。例えば、支持部14は、第1面10bに対向する接着面を有し、当該接着面を第1面10bに接着することによって金属ステム10に固定される。支持部14は、金属によって構成されている。一例として、支持部14は、導電性接着剤を介して金属ステム10に電気的に接続されている。
【0023】
誘電体ブロック20は、例えば、光半導体素子30およびレンズ50を保持する。誘電体ブロック20は誘電体によって構成されている。一例として、誘電体ブロック20はセラミックスによって構成されている。当該セラミックスは、例えば、窒化アルミニウムである。誘電体ブロック20がセラミックスによって構成されていることにより、後述する誘電体ブロック20の半導体実装面23bの信号パターン21を伝搬する電気信号の周波数特性の劣化を抑制できる。
【0024】
誘電体ブロック20は、例えば、サブマウント22と、サブマウント22に搭載されるキャリア23とを有する。サブマウント22は、光学実装面22bを有する。光学実装面22bは、第1方向D1および第2方向D2の双方に延在している。光学実装面22bは、例えば、平坦面である。キャリア23は、例えば、光学実装面22bに搭載されている。キャリア23は、半導体実装面23bを有する。半導体実装面23bは、第1方向D1および第2方向D2の双方に延在している。
【0025】
例えば、半導体実装面23bは平坦面である。第3方向D3における光学実装面22bの位置と、第3方向D3における半導体実装面23bの位置とは互いに異なっている。例えば、半導体実装面23bの第3方向D3への高さは、光学実装面22bの第3方向D3への高さよりも高い。以下では、第3方向D3において、光学実装面22bに対して半導体実装面23bのある方向を「高い」と表し、半導体実装面23bに対して光学実装面22bのある方向を「低い」と表す。半導体実装面23bと光学実装面22bとの高さの差は、キャリア23の第3方向D3の長さ(厚さ)に相当する。誘電体ブロック20は、さらに、熱伝導面20bを有する。熱伝導面20bは、第2方向D2および第3方向D3に沿って延在する。一例として、熱伝導面20bは平坦面である。
【0026】
半導体実装面23bには、光半導体素子30が実装される。また、半導体実装面23bには、さらに容量または抵抗等が実装されてもよい。例えば、半導体実装面23bには導電パターンが形成される。例えば、半導体実装面23bには、当該導電パターンとして、信号パターン21と、接地パターン24とが形成される。信号パターン21および接地パターン24のそれぞれは導電性の材料によって構成されている。接地パターン24は、例えば、半導体実装面23bの平面視にて信号パターン21を囲むように形成されている。接地パターン24に囲まれる信号パターン21は、例えば、信号端子12から入力される電気信号を光半導体素子30に伝送する伝送線路である。信号パターン21が伝送線路であることにより、光半導体素子30への電気信号の伝送特性を向上できる。光半導体素子30は、例えば、接地パターン24上に設置される。
【0027】
半導体実装面23bには、光半導体素子30に加えて、例えば、終端抵抗、終端容量、バイパス容量、および端子の少なくともいずれかが実装されていてもよい。半導体実装面23bには、信号パターン21および接地パターン24以外の導電パターンが形成されていてもよい。半導体実装面23bにおいて、複数の導電パターン、終端抵抗、終端容量、およびバイパス容量が、光半導体素子30に所定の動作を行わせるための周辺回路を構成していてもよい。例えば、終端抵抗および終端容量は、上記の伝送線路を電気的に終端するための終端回路を構成する。
【0028】
光学実装面22bには、レンズ50が実装される。光学実装面22bは、レンズ50が実装されたときに、第3方向D3において、レンズ50の光軸と光半導体素子30から出力される光信号の光軸Lとが一致するように、半導体実装面23bよりも低い位置に設けられる。光学実装面22bの位置は、レンズ50の大きさが加味されて半導体実装面23bよりも低い位置とされている。これにより、レンズ50が光学実装面22bに実装されたときに、半導体実装面23bに実装された光半導体素子30から出力される光信号がレンズ50に好適に入射する。以上のように、半導体実装面23bと光学実装面22bとの間の距離がレンズ50の外形に応じて設定される。当該距離は、例えば、キャリア23の厚さを変えることによって調整することができる。
【0029】
例えば、光学実装面22bは、半導体実装面23bと平行になるように形成される。この場合、光半導体素子30から出力される光信号(ビーム)を、光学実装面22bに垂直に設けられたレンズ50の入射面に垂直に入射させることができる。例えば、第3方向D3における光学実装面22bの位置、および第3方向D3における半導体実装面23bの位置は、半導体実装面23bから光半導体素子30の光信号の出射点までの第3方向D3の距離と光学実装面22bからレンズ50の中心軸(光軸)までの距離とに応じて決定される。レンズ50は、例えば、硬化性樹脂によって光学実装面22bに固定されている。なお、光学実装面22bからレンズ50の中心軸(光軸)までの距離は、当該硬化性樹脂厚さによって調整されてもよい。
【0030】
光半導体素子30が実装される半導体実装面23b、およびレンズ50が実装される光学実装面22bは、例えば、第3方向D3に垂直、すなわち、第1方向D1に平行な面である。一例として、光学実装面22bの向き、および半導体実装面23bの向きは互いに同一である。この場合、光半導体素子30およびレンズ50を同じ方向から誘電体ブロック20に実装できる。光半導体素子30は、第1方向D1に沿って光信号を出力するように半導体実装面23bに実装される。すなわち、光半導体素子30は、出力する光信号の光軸Lが第1方向D1に沿うように半導体実装面23bに実装される。
【0031】
光半導体素子30は電気信号を光信号に変換する。光半導体素子30が光信号に変換する電気信号は、例えば、30GHz以上の高周波成分を含む。光半導体素子30は、信号端子12から信号パターン21を介して入力される電気信号により変調された光信号を生成する。光半導体素子30は、第1方向D1に沿って光信号を出射する。したがって、当該光信号の光軸Lは、第1方向D1に延伸する。光半導体素子30は、例えば、レーザダイオードまたは電界吸収型光変調器を含む。光半導体素子30が電界吸収型光変調器である場合、被変調光を生成するレーザダイオードと同じ半導体チップ上に光半導体素子30が設けられてもよい。
【0032】
例えば、光半導体素子30は、電界吸収型光変調器を集積した変調器集積型半導体レーザであってもよい。光軸Lは、光半導体素子30の構造に応じて半導体実装面23bから第3方向D3に所定の距離だけ離隔した位置に設けられる。光半導体素子30は、ボンディングワイヤB1を介して信号パターン21に接続されている。光半導体素子30は、例えば、ボンディングワイヤB2を介して終端回路(不図示)に接続されており、当該終端回路を介して接地パターン24に接続される。したがって、信号パターン21は、ボンディングワイヤB1およびボンディングワイヤB2を介して当該終端回路に接続される。
【0033】
次に、温調素子40について説明する。温調素子40は、金属ステム10と誘電体ブロック20の熱伝導面20bとの間に配置されている。温調素子40は、誘電体ブロック20の熱伝導面20bに接続される温調面40bを有する。誘電体ブロック20は、熱伝導面20bが温調素子40の温調面40bに接続されることにより、温調素子40によって冷却または加熱される。例えば、熱伝導面20bと温調面40bとは互いに対向するように設けられ、相互に面接触して固定される。それにより、誘電体ブロック20と温調素子40との間で熱が効率よく伝達される。すなわち、誘電体ブロック20の温度が後述する温調素子40の加熱作用あるいは冷却作用によって調整される。
【0034】
温調素子40は、例えば、熱電クーラー(TEC(Thermo Electric Cooler))である。温調素子40は、ペルチェ接合された複数のペルチェ素子41を備える。温調素子40は、例えば、金属ステム10に設けられた端子(不図示)から電力が供給されることにより、温調面40bに取り付けられた部品を冷却または加熱する。例えば、光波長多重通信を行うときに光半導体素子30が生成する光信号のピーク波長を所定の値に維持するため、光半導体素子30の温度を所定のレーザ温度に保つ必要がある。例えば、光送信モジュール1の外部の温度が所定のレーザ温度より高い場合には、温調素子40は、温調面40bを冷却させて光半導体素子30の温度を所定のレーザ温度に維持する(冷却作用)。光送信モジュール1の外部の温度が所定のレーザ温度より低い場合には、温調素子40は、温調面40bを加熱させて光半導体素子30の温度を所定のレーザ温度に維持する(加熱作用)。
【0035】
温調素子40は、金属ステム10の第1面10bと誘電体ブロック20の熱伝導面20bとの間に設けられる。例えば、熱伝導面20bは、接着剤によって温調面40bに固定される。温調素子40は、温調面40bとは反対側を向く放熱面40cを有する。放熱面40cは、接着剤によって第1面10bに固定される。このとき、放熱面40cと第1面10bとが互いに面接触することにより誘電体ブロック20と金属ステム10との間で熱が効率よく伝達される。放熱面40cは、温調素子40が温調面40bにて吸熱(冷却作用)を行うときには吸熱した熱を放熱し、温調素子40が温調面40bにて放熱(加熱作用)を行うときには放熱する熱を吸熱する。例えば、温調面40bおよび放熱面40cは互いに平行に延在している。この場合、光軸Lを金属ステム10の第1面10bに対して垂直にすることができる。
【0036】
温調素子40は、第1基板42と、第2基板43と、複数のペルチェ素子41とを備える。複数のペルチェ素子41は、第1基板42と第2基板43との間に設けられている。第1基板42は温調面40bを有し、第2基板43は放熱面40cを有する。ペルチェ素子41には電流が供給される。複数のペルチェ素子41に所定の向きに電流が供給されることにより、第1基板42において吸熱した熱を第2基板43において放熱し、温調面40bに接続された誘電体ブロック20を冷却する。複数のペルチェ素子41に当該所定の向きと反対の向きに電流が供給されることにより、第2基板43において吸熱した熱を第1基板42において放熱し、温調面40bに接続された誘電体ブロック20を加熱する。
【0037】
続いて、レンズ50について説明する。レンズ50は、例えば、光半導体素子30から出射された光信号が入射する光学レンズである。レンズ50は、例えば、光学ガラスによって構成されている。レンズ50は、光半導体素子30から出射された光信号を受け、平行光として光信号を出力する。レンズ50は、例えば、接着剤によって光学実装面22bに固定される。この接着剤は、例えば、紫外線硬化樹脂によって構成されている。レンズ50は、例えば、光半導体素子30から出力される光信号の光軸Lにレンズ50の光軸が第2方向D2および第3方向D3において一致するように調芯された状態で、光学実装面22bに固定されている。
【0038】
レンズ50は、光学実装面22bに対向する底面を有する。例えば、レンズ50の底面と光学実装面22bとの間に硬化前の接着剤が塗布される。そして、上記の調芯の後に当該接着剤が加熱され、紫外線が照射されて接着剤が硬化することにより、レンズ50が光学実装面22bに固定される。なお、光半導体素子30から出力される光信号は、光半導体素子30から離隔するにつれて第2方向D2および第3方向D3に広がるため、レンズ50の第1方向D1の位置は、レンズ50から出力される平行光の強度をモニタしながら調芯されてもよい。
【0039】
上述したように、温調素子40が金属ステム10に固定されるとともに誘電体ブロック20が温調素子40に固定されることにより、誘電体ブロック20に実装された光半導体素子30およびレンズ50が金属ステム10に対して固定されて保持される。また、誘電体ブロック20を介して温調素子40の冷却作用あるいは加熱作用によって誘電体ブロック20に実装された光半導体素子30の温度が調整される。なお、誘電体ブロック20、光半導体素子30、温調素子40、レンズ50および中継基板60は、円筒状の筐体の内部に収容され、当該筐体が第1面10bに接合されることにより当該筐体の内部が気密封止される。
【0040】
次に、中継基板60について説明する。例えば、中継基板60の材料は、窒化アルミニウム(AlN)またはアルミナである。中継基板60は、信号端子12を光半導体素子30に電気的に接続するために設けられる。中継基板60は、信号端子12からの電気信号を光半導体素子30に伝送する。中継基板60は、第1方向D1に沿って延在している。中継基板60の第1方向D1の長さは、例えば、2mm以上かつ5mm以下である。中継基板60は、第1方向D1および第2方向D2の双方に延在する上面60bを有する。中継基板60は、上面60bに、例えば、信号配線61と、第1グランド配線62(グランド配線)と、第2グランド配線63(グランド配線)とを有する。中継基板60は、第1方向D1に延在する端面60eを有する。端面60eは、誘電体ブロック20に近接する端面である(
図4参照)。
【0041】
信号配線61、第1グランド配線62および第2グランド配線63は、例えば、金属によって構成されている。信号配線61は信号端子12に接続される。第1グランド配線62および第2グランド配線63は接地される。信号端子12からの電気信号の波形品質を劣化させないため、信号配線61は、第1グランド配線62および第2グランド配線63とともに伝送線路を構成するように形成されている。例えば、信号配線61は、第1方向D1に延在しており、第2方向D2において第1グランド配線62と第2グランド配線63との間に挟まれて形成されている。信号配線61の一端は、信号端子12に電気的に接続され、信号配線61の他端は、信号パターン21に電気的に接続される。
【0042】
より詳細には、信号配線61は、例えば、信号パターン21にボンディングワイヤB3を介して接続される。第1グランド配線62は、接地パターン24にボンディングワイヤB4を介して接続される。第2グランド配線63は、接地パターン24にボンディングワイヤB5を介して接続される。第1グランド配線62および第2グランド配線63は、中継基板60の第1方向D1の第1端60cにおいて金属ステム10に電気的に接続される。第1グランド配線62および第2グランド配線63は、中継基板60の第1方向D1の第1端60cとは反対の第2端60dにおいてボンディングワイヤB4,B5を介して接地パターン24と電気的に接続されている。
【0043】
ボンディングワイヤB3,B4,B5のそれぞれは、例えば、第2方向D2に沿って延在している。例えば、第2方向D2におけるボンディングワイヤB3,B4,B5の位置は互いに同一となっている。ボンディングワイヤB3,B4,B5の長さは、寄生インダクタンスを小さくするために短く設定されることが好ましい。ボンディングワイヤB3,B4,B5の長さは、例えば、互いに同一である。中継基板60の上面60bの高さ(第3方向D3の位置)は、誘電体ブロック20の半導体実装面23bの高さ(第3方向D3の位置)に近いことが好ましい。この場合、ボンディングワイヤB3,B4,B5の長さを短くすることができる。
【0044】
ところで、中継基板60は誘電体ブロック20にボンディングワイヤB3,B4,B5を介して接続されるため、ボンディングワイヤB3,B4,B5を介して中継基板60から誘電体ブロック20に熱が流入しうる。例えば、温調素子40によって光半導体素子30を冷却するときに、中継基板60から誘電体ブロック20に熱が流入すると、冷却作用に必要な温調素子40の消費電力が増加する。したがって、光半導体素子30の温度調節を効率よく行うために、中継基板60から誘電体ブロック20への熱の流入は、できるだけ少なくすることが好ましい。この熱の流入を抑えることによって温度調節に必要な消費電力を低減できる。
【0045】
例えば、信号配線61の端部(一端)は、第1面10bから突出している信号端子12の一端と接続される。信号配線61の端部と信号端子12の一端との接続は、半田によって行われてもよいし、ワイヤボンディングによって行われてもよい。信号配線61の端部と信号端子12の一端とは、信号伝達の観点から、互いに近接していることが好ましい。例えば、信号配線61の端部と信号端子12の一端とが互いに近接するように、第1面10bにおける支持部14の位置が決められてもよい。
【0046】
図4は、支持部14および中継基板60を模式的に示す側面図である。
図4に示されるように、光送信モジュール1は、支持部14と中継基板60との間に断熱スペーサ70を備える。中継基板60は、断熱スペーサ70を介して支持部14に支持される。中継基板60を支持部14に直接接続した場合と比べて、断熱スペーサ70によって支持部14および中継基板60は互いに熱的に分離されている。そのため、後述するように、断熱スペーサ70は、熱伝導性の低い材料によって構成されることが好ましい。一般に金属は熱伝導率が大きいので、断熱スペーサ70は、金属以外の材料によって構成される。例えば、断熱スペーサ70は絶縁性を有する。この場合、支持部14は、中継基板60に対し、直接には電気的に接続されていない。断熱スペーサ70は、固形物であってもよい。また、断熱スペーサ70は、ペースト状であってもよい。一例として、断熱スペーサ70は平板状を呈する。断熱スペーサ70は、中継基板60および支持部14との間に断熱空間Aを画成してもよい。断熱空間Aについては、後述する。
【0047】
断熱スペーサ70は、例えば、第1方向D1および第2方向D2の双方に延在するとともに第3方向D3に厚みを有する。例えば、断熱スペーサ70の第3方向D3の厚みは、断熱スペーサ70の第1方向D1および第2方向D2のそれぞれの長さよりも小さい。例えば、中継基板60の厚さT1は、断熱スペーサ70の厚さT2よりも大きい。一例として、中継基板60の厚さT1は250μmである。断熱スペーサ70の厚さT2は、例えば、断熱スペーサ70が固形物である場合には100μm以上かつ150μm以下であり、断熱スペーサ70がペースト状である場合には数十μmである。断熱スペーサ70の厚さT2は、例えば、光送信モジュール1のサイズの制約上許容される範囲においてできるだけ厚いことが好ましい。断熱スペーサ70を厚くすることによって、支持部14と中継基板60との間の熱抵抗は大きくなり、支持部14と中継基板60との熱的な分離(断熱性)は向上する。
【0048】
断熱スペーサ70が固形物である場合、断熱スペーサ70は、例えば、接着剤によって支持部14および中継基板60に固定される。断熱スペーサ70がペースト状である場合、断熱スペーサ70自体が、支持部14および中継基板60に接着することによって支持部14および中継基板60に固定されてもよい。このように、中継基板60が支持部14に固定されることによって、中継基板60は、支持部14によって確実に支持される。断熱スペーサ70は、例えば、石英、ガラス、テフロン(登録商標)、または樹脂(一例としてプラスチック)によって構成されている。また、断熱スペーサ70は、非導電性樹脂によって構成されていてもよい。
【0049】
例えば、断熱スペーサ70は、FPC(Flexible Printed Circuit)またはPCB(PrintedCirsuit Board)によって構成されていてもよい。断熱スペーサ70の熱伝導率は、支持部14の熱伝導率よりも小さく、かつ、中継基板60の熱伝導率よりも小さい。例えば、断熱スペーサ70の熱伝導率は10W/(m・K)以下である。断熱スペーサ70が石英によって構成されている場合、断熱スペーサ70の熱伝導率は1.4W/(m・K)以上かつ1.9W/(m・K)以下であり、断熱スペーサ70がガラスによって構成されている場合、断熱スペーサ70の熱伝導率は1.0W/(m・K)程度である。断熱スペーサ70がテフロン(登録商標)によって構成されている場合、断熱スペーサ70の熱伝導率は0.25W/(m・K)程度であり、断熱スペーサ70が樹脂(またはプラスチック)によって構成されている場合、断熱スペーサ70の熱伝導率は0.1W/(m・K)以上かつ0.3W/(m・K)以下である。例えば、窒化アルミニウムの熱伝導率は、170~230W/(m・K)であり、断熱スペーサ70の熱伝導率はそれよりも1桁以上小さい。
【0050】
図5は、第3方向D3に沿って中継基板60を見た中継基板60の平面図である。
図5に示すように、第3方向D3に沿って中継基板60を見ることを「中継基板60の平面視」ともいう。
図4および
図5に示されるように、中継基板60は、ボンディングワイヤB3,B4,B5のそれぞれの一端が接続されるワイヤ接続領域Bを有する。ワイヤ接続領域Bは、
図3に示されるボンディングワイヤB3,B4,B5のそれぞれの一端を含む中継基板60の上面60b上の仮想の領域である。ワイヤ接続領域Bは、例えば、長方形状を呈する。ワイヤ接続領域Bは、ボンディングワイヤB3,B4,B5のそれぞれの一端を所定の距離以上内側に含んでいてもよい。例えば、当該所定の距離は、100μmである。
【0051】
第1方向D1に延伸し、誘電体ブロック20に近接するワイヤ接続領域Bの辺は、平面視において中継基板60の端面60eと重なっている。ワイヤ接続領域Bは、例えば、第2方向D2の長さ(第1距離)L1を有する。断熱空間Aは、中継基板60および支持部14の間に形成された空間である。断熱空間Aは、この部分において断熱スペーサ70が除去されていることによって形成されている。
図5に示されるように、中継基板60の平面視において、断熱空間Aを透視したとき、断熱空間Aは、ワイヤ接続領域Bを含むように形成される。なお、中継基板60の平面視において、断熱空間Aおよびワイヤ接続領域Bは、互いに同じ形状を有し、相互に重なっていてもよい。断熱空間Aが形成されることにより、中継基板60と断熱スペーサ70との接触面積は、中継基板60の底面65の面積よりも小さい。したがって、中継基板60と支持部14との間の熱抵抗は、断熱空間Aが設けられていない場合に比べて大きくなり、支持部14と中継基板60との間の断熱性は向上する。すなわち、ボンディングワイヤB3,B4,B5のそれぞれの一端には、断熱空間Aの周囲の断熱スペーサ70を通って熱が伝導するため、断熱空間Aが設けられていない場合に比べて支持部14からボンディングワイヤB3,B4,B5へ熱が伝わり難くなる。
【0052】
断熱空間Aは、例えば、断熱スペーサ70の除去部71と、中継基板60の底面65と、支持部14の上面15と、によって画成されている。除去部71は、断熱スペーサ70の第1内側面71bおよび第2内側面71cによって画成されている。断熱スペーサ70は、第3方向D3からの平面視において、第1方向D1に延在する端面70c、および第2方向D2に延在する端面70bを有する。端面70cは誘電体ブロック20に近接し、端面70bは金属ステム10の反対側に位置する。第1内側面71bは、断熱スペーサ70の端面70bに平行で、第1方向D1において端面70bよりも内側に位置する。第2内側面71cは、断熱スペーサ70の端面70cに平行で、第2方向D2において端面70cよりも内側に位置する。例えば、第2内側面71cの第1方向D1の長さは、第1内側面71bの第2方向D2の長さより長い。第3方向D3からの平面視において、断熱スペーサ70の端面70cは、中継基板60の端面60eと重なっている。なお、断熱スペーサ70の端面70cは、中継基板60の端面60eと重なっていなくてもよい。
【0053】
中継基板60は、金属ステム10に接続する側面66を有する。側面66は、第2方向D2および第3方向D3の双方に延在している。例えば、側面66はメタライズされている。中継基板60は、側面66を介して金属ステム10に電気的に接続されている。これにより、中継基板60においてグランド配線を構成できる。例えば、中継基板60の底面65はメタライズされ、メタライズされた側面66とメタライズされた底面65とは互いに電気的に接続されていてもよい。さらに、メタライズされた底面65と、上面60bに形成された第1グランド配線62および第2グランド配線63とは、貫通ビア64などにより電気的に接続されていてもよい。これにより、グランド電位を有する金属ステム10に第1グランド配線62および第2グランド配線63が電気的に接続され、上面60bに伝送線路を構成できる。なお、底面65は、全面がメタライズされずに、貫通ビア64との接続に必要な箇所を含むようにグランド配線が部分的に形成されていてもよい。それにより、当該グランド配線を経由して金属ステム10との間の熱の流出入を低減することができる。
【0054】
次に、本実施形態に係る光送信モジュール1から得られる作用効果について説明する。光送信モジュール1は、信号端子12および支持部14を有する金属ステム10と、誘電体ブロック20とを備える。誘電体ブロック20は半導体実装面23bおよび熱伝導面20bを有する。金属ステム10と誘電体ブロック20の熱伝導面20bとの間には温調素子40が配置されており、誘電体ブロック20の半導体実装面23bには光半導体素子30が実装されている。光送信モジュール1は、光半導体素子30に電気的に接続される中継基板60、および、中継基板60と支持部14との間に配置された断熱スペーサ70を有する。断熱スペーサ70の熱伝導率は、支持部14の熱伝導率より小さく、かつ、中継基板60の熱伝導率よりも小さい。よって、金属ステム10の支持部14から中継基板60への熱の流入は断熱スペーサ70によって低減されるので、中継基板60から誘電体ブロック20への熱の流入を低減できる。したがって、金属ステム10の支持部14から中継基板60への熱の流入が抑制されることにより、温調素子40によって光半導体素子30等の光素子の温度調節を効率よく行うことができる。それにより、温度調節に必要な消費電力を低減できる。
【0055】
本実施形態において、断熱スペーサ70の熱伝導率が10W/(m・K)以下であってもよい。この場合、断熱スペーサ70の熱伝導率が10W/(m・K)以下であることにより、支持部14から中継基板60への熱の流入をより確実に抑えることができる。
【0056】
従来は、支持部14と中継基板60との間に、断熱スペーサ70ではなく、半田が介在することがあった。以下では、支持部14と中継基板60との間に半田が介在する比較例に係る光送信モジュールと、本実施形態に係る光送信モジュール1との熱抵抗を比較する。この熱抵抗の比較において、中継基板60の厚さT1を2.5×10-4m(250μm)とし、上記半田の厚さt(第3方向D3の長さ)を1.0×10-5m(10μm)とする。第3方向D3から見た場合における断熱空間Aの第1方向D1の長さを1.0×10-3m(1mm)、第3方向D3から見た場合における断熱空間Aの第2方向D2の長さを2.0×10-4mm(0.2mm)とし、第3方向D3から見た場合における断熱空間Aの面積Sを2.0×10-7m2とした。この場合、中継基板60の上面60bと底面65との間の熱抵抗は以下の式(1)によって表される。
熱抵抗=T(またはt)/(S×熱伝導率)
=2.5×10-4(または1.0×10-5)/(2.0×10-7×熱伝導率)
・・・(1)
【0057】
中継基板60が窒化アルミニウム(AlN)によって構成されている場合、窒化アルミニウムの熱伝導率は170[W/(m・K)]であるため、中継基板60の熱抵抗は7.35[K/W]となる。また、中継基板60がアルミナによって構成されている場合、アルミナの熱伝導率は18[W/(m・K)]であるため、中継基板60の熱抵抗は69.4[K/W]となる。比較例の光送信モジュールの上記半田の熱抵抗は、半田の熱伝導率が57.3であるため、0.873[K/W]となる。一方、本実施形態に係る光送信モジュール1は、上記半田に代えて、断熱スペーサ70を備える。一例として、断熱スペーサ70が紫外線硬化樹脂によって構成されている場合、紫外線硬化樹脂の熱伝導率は0.7[W/(m・K)]であるため、半田を備える比較例と比べて熱抵抗を著しく高めることができる。具体例として、アルミナ基板である中継基板60の厚さを2倍にするときと同等の熱抵抗を得られる。
【0058】
本実施形態において、中継基板60は、信号配線61、第1グランド配線62および第2グランド配線63を有してもよい。第1グランド配線62および第2グランド配線63は、中継基板60の第1方向D1の第1端60cにおいて金属ステム10に電気的に接続され、かつ、中継基板60の第1方向D1の第1端60cとは反対の第2端60dにおいてボンディングワイヤB3,B4,B5を介して光半導体素子30と電気的に接続されていてもよい。
【0059】
本実施形態において、中継基板60と断熱スペーサ70との接触面積は、中継基板60の底面65の面積よりも小さくてもよい。この場合、中継基板60の底面65の一部と支持部14との間に空間(断熱空間A)が形成される。したがって、中継基板60の底面65の一部と支持部14との間に空間が形成されることにより、支持部14から中継基板60への熱の流入をより効果的に低減できる。
【0060】
以下では、種々の変形例に係る光送信モジュールについて説明する。後述する種々の変形例において、光送信モジュールの一部の構成は、前述した光送信モジュール1の一部の構成と同一である。よって、以下では、光送信モジュール1の説明と重複する説明を同一の符号を付して適宜省略する。
【0061】
図6は、第1変形例に係る光送信モジュールの中継基板60Aを示す平面図である。前述した実施形態では、側面66がメタライズされている中継基板60を備える光送信モジュール1について説明した。これに対し、第1変形例に係る光送信モジュールは断熱スペーサ70Aを有し、断熱スペーサ70Aは、断熱スペーサ70Aを第3方向D3に貫通する導電部であるビア72を有する。
【0062】
ビア72は、支持部14を中継基板60Aの底面65に電気的に接続するために設けられる。この場合、側面66のメタライズを不要とすることができる。断熱スペーサ70Aは、例えば、複数のビア72を有する。この場合、複数のビア72は、第2方向D2に沿って並んでいる。支持部14は、金属ステム10から突出して設けられている場合でも、別の部材として金属ステム10に接続されている場合でも、金属ステム10に電気的に接続されている。したがって、中継基板60Aの底面65を支持部14に電気的に接続することによって中継基板60の上面60bに伝送線路を構成することができる。複数のビア72は、熱を伝導するが、底面65の面積に比べて複数のビア72の面積は、例えば1/100以下に抑えられる。よって、支持部14から中継基板60Aの上面60bへの熱の流入を顕著に低減できる。また、第1変形例では、ビア72に代えて、断熱スペーサ70Aが、断熱スペーサ70Aを第3方向D3に貫通するスルーホール73と、スルーホール73に挿入されるピンとを有していてもよい。この場合もビア72を備える場合と同様の作用効果が得られる。
【0063】
図7は、第2変形例に係る光送信モジュールの断熱スペーサ70B、支持部14および中継基板60を示す側面図である。
図8は、中継基板60および断熱スペーサ70Bを示す平面図である。
図7および
図8に示されるように、第2変形例に係る光送信モジュールは、複数の断熱スペーサ70Bを備える。例えば、各断熱スペーサ70Bは柱状を呈する。各断熱スペーサ70Bの形状は、円柱状であってもよいし、角柱状(直方体状)であってもよい。第3方向D3から見た場合において、複数の断熱スペーサ70Bは分散して配置されている。一例として、第3方向D3から見た場合において、複数の断熱スペーサ70Bは格子状に配置されている。
図8において、個々の断熱スペーサ70Bは、互いに離隔して配置されている。なお、各断熱スペーサ70Bは、互いに接触していてもよい。
【0064】
断熱スペーサ70Bは、断熱空間A以外の位置に配置されている。例えば、断熱スペーサ70Bは、非導電性樹脂によって構成されている。この第2変形例において、中継基板60と各断熱スペーサ70Bとの接触面積の合計は、中継基板60の底面65の面積よりも小さい。したがって、中継基板60の底面65の一部と支持部14との間により広い空間が形成されることにより、支持部14から中継基板60への熱の流入をさらに効果的に抑制できる。なお、上記接触面積の合計は、個々の断熱スペーサ70Bの接触面積と断熱スペーサ70Bの数によって変わるため、当該接触面積および当該数の少なくともいずれかを減らすことにより小さくできる。接触面積の合計を減らすことにより中継基板60への熱の流入をより減らすことができる。例えば、接触面積の合計は、中継基板60の底面65の面積の半分以下であってもよい。
【0065】
図9は、第3変形例に係る光送信モジュールの中継基板60および複数の断熱スペーサ70Cを示す平面図である。
図9に示されるように、第3変形例に係る光送信モジュールは複数の断熱スペーサ70Cを有する。複数の断熱スペーサ70Cは、第1断熱スペーサ74と、第1断熱スペーサ74と離隔して配置された第2断熱スペーサ75とを含む。第1断熱スペーサ74は、中継基板60の第1方向D1の中心を通るとともに第2方向D2に沿って延伸する基準線Xよりも金属ステム10に近い位置に配置されている。第2断熱スペーサ75は、基準線Xよりも金属ステム10から遠い位置に配置されている。第1断熱スペーサ74は、第1方向D1に延在する端面70cを有する。第2断熱スペーサ75は、側面71cを有する。当該側面71cは、第1断熱スペーサ74の端面70cに平行で、第2方向D2において当該端面70cよりも誘電体ブロック20から離れて位置する。
【0066】
例えば、第1断熱スペーサ74は支持部14の第1方向D1の第1端部14bに載せられており、第2断熱スペーサ75は支持部14の第1端部14bとは反対の第2端部14cに載せられている。例えば、第1断熱スペーサ74の第2方向D2の長さは、第2断熱スペーサ75の第2方向D2の長さよりも長い。一例として、第1断熱スペーサ74は支持部14の第2方向D2の全体に延びている。これに対し、第2断熱スペーサ75は、支持部14における第2方向D2の断熱空間Aとは反対の端部から断熱空間Aの手前まで延びている。すなわち、第2断熱スペーサ75は断熱空間Aから離隔した位置に配置されている。例えば、第2断熱スペーサ75は、第2断熱スペーサ75の端面70cから第2方向D2に長さ(第2距離)L2離れている。長さL2は、ワイヤ接続領域Bの長さL1(
図5参照)よりも大きく設定されている。第1断熱スペーサ74と第2断熱スペーサ75との間には空気層Kが形成されている。空気層Kにおいて、中継基板60は支持部14から離隔している。この空気層Kによって支持部14から中継基板60への熱の流入を一層低減させることができる。中継基板60と複数の断熱スペーサ70Cとの接触面積の合計は、第1断熱スペーサ74の接触面積と第2断熱スペーサ75の接触面積に応じて変わるため、第1断熱スペーサ74の接触面積、および第2断熱スペーサ75の接触面積の少なくともいずれかを減らすことにより小さくできる。接触面積の合計を減らすことにより中継基板60への熱の流入をより減らすことができる。例えば、接触面積の合計は、中継基板60の底面65の面積の半分以下であってもよい。
【0067】
図10は、第4変形例に係る光送信モジュールの断熱スペーサ70Dを示す斜視図である。断熱スペーサ70Dは、支持部14に搭載される板状部76と、板状部76から第3方向D3に沿って延びる柱部77とを備える。柱部77は、中継基板60の底面65に接触する頂面77bを有する。断熱スペーサ70Dは複数の柱部77を有する。第3方向D3から見た場合において、複数の柱部77は、個々の柱部77が互いに離隔して第1方向D1に沿って並ぶとともに第2方向D2に沿って並ぶように形成されている。すなわち、第3方向D3から見た場合において、複数の柱部77は格子状に配置されている。この断熱スペーサ70Dでは、板状部76を支持部14に搭載することによって断熱スペーサ70Dを配置できる。第4変形例において、個々の柱部77は板状部76に固定されているので、一つ一つを支持部14の上に配置する必要はない。よって、
図7の断熱スペーサ70Bよりもさらに容易に断熱スペーサ70Dを配置することができる。なお、第2変形例と同様に、個々の柱部77の中継基板60との接触面積、および柱部77の数の少なくともいずれかを減らすことにより、中継基板60への熱の流入をより減らすことができる。例えば、接触面積の合計は、中継基板60の底面65の面積の半分以下であってもよい。断熱スペーサ70Dは、断熱スペーサ70と同様に除去部71を有していてもよい。
【0068】
図11は、第5変形例に係る光送信モジュールの断熱スペーサ70Eを示す斜視図である。断熱スペーサ70Eは、第1方向D1および第2方向D2の双方に延在するとともに第3方向D3に厚みを有する平板状を呈する。断熱スペーサ70Eは、中継基板60の底面65が接触する表面78bと、断熱スペーサ70Eを第3方向D3に貫通する貫通孔78cとを有する。断熱スペーサ70Eは複数の貫通孔78cを有する。複数の貫通孔78cは、例えば、それぞれの中心が互いに所定の間隔で並ぶように格子状に配列されている。表面78bは、例えば、平坦面である。一例として、貫通孔78cは円形状を呈する。この断熱スペーサ70Eでは、貫通孔78cの部分が支持部14と中継基板60の間の空間部として機能するので、前述した断熱スペーサ70D等と同様の作用効果を得られる。断熱スペーサ70Eは、貫通孔78cをドリル加工あるいは打抜き加工で開けることができるので、断熱スペーサ70Dよりも容易に作製することができる。第5変形例では、個々の貫通孔78の面積、および貫通孔78の数の少なくともいずれかを増やすことによって、断熱スペーサ70Eの中継基板60との接触面積を減らすことができ、中継基板60への熱の流入をより一層低減できる。例えば、表面78bの中継基板60との接触面積は、中継基板60の底面65の面積の半分以下であってもよい。断熱スペーサ70Eは、断熱スペーサ70と同様に除去部71を有していてもよい。
【0069】
図12は、第6変形例に係る光送信モジュールの断熱スペーサ70Fを示す斜視図である。断熱スペーサ70Fは表面79bと貫通孔79cとを有し、貫通孔79cが非円形状を呈する点が第5変形例と異なっている。例えば、貫通孔79cは長円形状を呈する。断熱スペーサ70Fは複数の貫通孔79cを有する。断熱スペーサ70Fは、貫通孔79cをドリル加工あるいは打抜き加工で開けることができるので、断熱スペーサ70Eと同様に比較的容易に作製することができる。表面79bの中継基板60との接触面積は、中継基板60の底面65の面積の半分以下であってもよい。断熱スペーサ70Fは、断熱スペーサ70と同様に除去部71を有していてもよい。
【0070】
断熱スペーサ70Fは、例えば、方向D4に沿って並ぶ複数の貫通孔79cからなる複数のグループCを有する。複数のグループCは方向D4に交差する方向D5に沿って並んでいる。複数のグループCは、第1グループC1と、第1グループC1に隣接する第2グループC2とを含む。例えば、第1グループC1における貫通孔79cの方向D4の位置は、第2グループC2における貫通孔79cの方向D4の位置からずれている。以上、長円形状を呈する複数の貫通孔79cを有する断熱スペーサ70Fからは、前述した断熱スペーサ70E等と同様の作用効果が得られる。
【0071】
以上、本開示に係る実施形態および種々の変形例について説明した。しかしながら、本発明は、前述の実施形態または種々の変形例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した要旨の範囲内において適宜変更可能である。また、本開示に係る光送信モジュールは、前述の実施形態、および第1~第6変形例のうちの複数の例が組み合わされたものであってもよい。例えば、本開示に係る光送信モジュールの各部の構成、形状、大きさ、材料、数および配置態様は、前述した実施形態または変形例に限られず適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0072】
1…光送信モジュール
10…金属ステム
10b…第1面
10c…第2面
11…基台
11b…貫通孔
12…信号端子
13…固定部材
14…支持部
14b…第1端部
14c…第2端部
15…上面
20…誘電体ブロック
20b…熱伝導面
21…信号パターン
22…サブマウント
22b…光学実装面
23…キャリア
23b…半導体実装面
24…接地パターン
30…光半導体素子
40…温調素子
40b…温調面
40c…放熱面
41…ペルチェ素子
42…第1基板
43…第2基板
50…レンズ
60,60A…中継基板
60b…上面
60c…第1端
60d…第2端
60e…端面
61…信号配線
62…第1グランド配線(グランド配線)
63…第2グランド配線(グランド配線)
64…貫通ビア
65…底面
66…側面
70,70A,70B,70C,70D,70E,70F…断熱スペーサ
70b…端面
70c…端面
71…除去部
71b…第1内側面
71c…第2内側面、側面
72…ビア
73…スルーホール
74…第1断熱スペーサ
75…第2断熱スペーサ
76…板状部
77…柱部
77b…頂面
78b…表面
78c…貫通孔
79b…表面
79c…貫通孔
A…断熱空間
B…ワイヤ接続領域
B1,B2,B3,B4,B5…ボンディングワイヤ
C…グループ
C1…第1グループ
C2…第2グループ
D1…第1方向
D2…第2方向
D3…第3方向
D4,D5…方向
K…空気層
L…光軸
L1…長さ(第1距離)
L2…長さ(第2距離)
S…面積
X…基準線