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特開2024-112591固体酸化物形燃料電池システム、及びその制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112591
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】固体酸化物形燃料電池システム、及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0444 20160101AFI20240814BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20240814BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20240814BHJP
   H01M 8/04537 20160101ALI20240814BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20240814BHJP
【FI】
H01M8/0444
H01M8/04746
H01M8/04858
H01M8/04537
H01M8/12 101
H01M8/12 102A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017731
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 雅也
(72)【発明者】
【氏名】樋口 和宏
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA07
5H127AC02
5H127BA02
5H127BA05
5H127BA13
5H127BA18
5H127BA34
5H127BA37
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB19
5H127BB27
5H127BB37
5H127DB04
5H127DB55
5H127DC02
5H127DC22
5H127DC42
5H127EE02
5H127EE03
5H127EE29
(57)【要約】
【課題】比較的簡易な構成で経済性の高い構成を維持しながらも、燃料枯れ状態にあるか否かを良好に判定可能な固体酸化物形燃料電池システム、及びその制御方法を提供する。
【解決手段】燃料電池セルCの出力電圧を計測する電圧計測部Vを備え、制御装置Sは、出力を所定の目標出力となるよう燃料極側空間へ導かれる燃料流量と空気極側空間へ導かれる空気流量とを制御する出力制御部S1と、出力制御部S1にて目標出力へ制御している場合に、燃料極側空間へ導かれる燃料流量を予め設定された所定流量だけ増加させたときに、燃料流量が増加された燃料極空間に対応する燃料電池セルCの電圧変化量に基づいて燃料枯れを判定する燃料枯れ判定部S2とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体電解質層の一方側の面に相対して燃料極を設け、他方側の面に相対して空気極を設けて構成される固体酸化物形の燃料電池セルを前記燃料電池セル同士の間にインターコネクタを介在させた状態で複数積層して形成されるセルスタックを備え、
前記燃料極の表面と前記インターコネクタの前記燃料極側の表面との間には、前記燃料極へ供給される燃料が通流する燃料極側空間が形成されると共に、前記空気極の表面と前記インターコネクタの前記空気極側の表面との間には、前記空気極へ供給される空気が通流する空気極側空間が形成され、運転を制御する制御装置を備える固体酸化物形燃料電池システムであって、
前記燃料電池セルの出力電圧を計測する電圧計測部を備え、
前記制御装置は、出力を所定の目標出力となるよう前記燃料極側空間へ導かれる燃料流量と前記空気極側空間へ導かれる空気流量とを制御する出力制御部と、前記出力制御部にて前記目標出力へ制御している場合に、前記燃料極側空間へ導かれる燃料流量を予め設定された所定流量だけ増加させたときに、燃料流量が増加された前記燃料極側空間に対応する前記燃料電池セルの電圧変化量に基づいて燃料枯れ状態にあるか否かを判定する燃料枯れ判定部とを備える固体酸化物形燃料電池システム。
【請求項2】
前記燃料枯れ判定部は、前記出力制御部にて出力を前記目標出力へ制御している場合に、前記燃料極側空間へ導かれる燃料流量を前記所定流量だけ増加させたときに、燃料流量が増加された前記燃料極側空間に対応する前記燃料電池セルの電圧変化量が、予め設定された第1電圧変化閾値を超える場合に前記燃料枯れ状態にあると判定する請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池システム。
【請求項3】
前記燃料枯れ判定部は、
運転初期において、前記出力制御部にて出力を前記目標出力へ制御している場合に、前記燃料極側空間へ導かれる燃料流量を前記所定流量だけ増加させたときに前記電圧計測部により計測される電圧変化量を初期電圧変化量として計測し、
現時点において、前記出力制御部にて前記目標出力へ制御している場合に、前記燃料極側空間へ導かれる燃料流量を前記所定流量だけ増加させたときに、燃料流量が増加された前記燃料極側空間に対応する前記燃料電池セルの電圧変化量から、前記初期電圧変化量を減算した差が、予め設定された第2電圧変化閾値を超える場合に前記燃料枯れ状態にあると判定する請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池システム。
【請求項4】
前記電圧計測部は、複数の前記燃料電池セルから選択された少なくとも1つ以上の前記燃料電池セルの出力電圧を計測可能に構成され、
前記燃料枯れ判定部は、前記出力制御部にて出力を前記目標出力へ制御している場合に、前記燃料極側空間へ導かれる燃料流量を前記所定流量だけ増加させたときに、燃料流量が増加された前記燃料極側空間に対応する前記燃料電池セルに関し、所定の前記燃料電池セルにおいて計測される第1電圧変化量と、所定の前記燃料電池セルとは異なる他の前記燃料電池セルにおいて計測される第2電圧変化量との差が、予め設定された第3電圧変化閾値を超える場合に、前記燃料枯れ状態にあると判定する請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池システム。
【請求項5】
前記燃料枯れ判定部は、前記出力制御部にて出力を前記目標出力へ制御している場合に、前記燃料極側空間へ導かれる燃料流量を予め設定された所定流量だけ増加させたときに、燃料流量が増加された前記燃料極側空間に対応する前記燃料電池セルの電圧変化量が大きいほど燃料枯れの程度が大きいと判定する請求項1~4の何れか一項に記載の固体酸化物形燃料電池システム。
【請求項6】
前記電圧計測部は、複数の前記燃料電池セルから選択された少なくとも1つ以上の前記燃料電池セルの出力電圧を計測可能に構成され、
複数の前記燃料電池セルから選択された少なくとも1つ以上の前記燃料電池セルの前記燃料極側空間に対して、燃料流量を調整可能な選択燃料流量調整部を備え、
前記燃料枯れ判定部は、前記出力制御部にて出力を前記目標出力へ制御している場合に、前記選択燃料流量調整部により選択された少なくとも1つ以上の前記燃料電池セルの前記燃料極側空間へ導かれる燃料流量を予め設定された所定流量だけ増加させたときに、燃料流量が増加された前記燃料極側空間に対応する前記燃料電池セルの電圧変化量として、選択された少なくとも1つ以上の前記燃料電池セルの電圧変化量を用いて燃料枯れ状態を判定する請求項1~4の何れか一項に記載の固体酸化物形燃料電池システム。
【請求項7】
固体電解質層の一方側の面に相対して燃料極を設け、他方側の面に相対して空気極を設けて構成される固体酸化物形の燃料電池セルを前記燃料電池セル同士の間にインターコネクタを介在させた状態で複数積層して形成されるセルスタックを備え、
前記燃料極の表面と前記インターコネクタの前記燃料極側の表面との間には、前記燃料極へ供給される燃料が通流する燃料極側空間が形成されると共に、前記空気極の表面と前記インターコネクタの前記空気極側の表面との間には、前記空気極へ供給される空気が通流する空気極側空間が形成され、運転を制御する制御装置を備える固体酸化物形燃料電池システムの制御方法であって、
前記固体酸化物形燃料電池システムが、前記燃料電池セルの出力電圧を計測する電圧計測部を備えたものであり、
前記制御装置は、出力を所定の目標出力となるよう前記燃料極側空間へ導かれる燃料流量と前記空気極側空間へ導かれる空気流量とを制御する出力制御工程と、前記出力制御工程にて前記目標出力へ制御している場合に、前記燃料極側空間へ導かれる燃料流量を予め設定された所定流量だけ増加させたときに前記電圧計測部により計測される電圧変化量にて基づいて燃料枯れ状態にあるか否かを判定する燃料枯れ判定工程とを実行する、固体酸化物形燃料電池システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解質層の一方側の面に相対して燃料極を設け、他方側の面に相対して空気極を設けて構成される固体酸化物形の燃料電池セルを前記燃料電池セル同士の間にインターコネクタを介在させた状態で複数積層して形成されるセルスタックを備え、前記燃料極の表面と前記インターコネクタの前記燃料極側の表面との間には、前記燃料極へ供給される燃料が通流する燃料極側空間が形成されると共に、前記空気極の表面と前記インターコネクタの前記空気極側の表面との間には、前記空気極へ供給される空気が通流する空気極側空間が形成され、運転を制御する制御装置を備える固体酸化物形燃料電池システム、及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、酸化物イオンを伝導する膜として固体電解質層を用いたセルスタックを備えた固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)が知られている。固体酸化物形燃料電池においては、セルスタックは複数の燃料電池セルを多層構造として構成され、各燃料電池セルにおける固体電解質層の片面側に燃料ガスを酸化するための燃料極が設けられ、その他面側に空気(酸化剤ガス)中の酸素を還元するための空気極が設けられている。
説明を追加すると、このような固体酸化物形燃料電池のセルスタックは、燃料電池セル同士の間にインターコネクタを介在させた状態で複数積層して形成され、燃料極の表面とインターコネクタの燃料極側の表面との間には、燃料極へ供給される燃料が通流する燃料極側空間が形成されると共に、空気極の表面とインターコネクタの空気極側の表面との間には、空気極へ供給される空気が通流する空気極側空間が形成されており、燃料極側空間へ燃料ガス(改質燃料ガス)を通流させると共に、空気極側空間へ空気を通流させることにより、燃料ガス中の水素や一酸化炭素、炭化水素と空気中の酸素とが電気化学反応を起こすことによって発電が行われる。
上述の固体酸化物形燃料電池では、安定した発電を継続して行うために、燃料利用率を一定以下に維持する必要がある。特に、燃料利用率が高い状態(燃料が不足する燃料枯れ状態)で運転を継続すると燃料極が酸化し、発電継続が困難となる。
ここで、燃料利用率とは、燃料極側空間へ供給される燃料ガスに対する燃料極側空間にて消費される燃料ガスの割合である。
【0003】
そこで、特許文献1に開示の技術では、燃料枯れ状態を検知するべく、対象の燃料電池セルの燃料極側空間の入口と出口に酸素センサを配置して酸素分圧を推定すると共に、当該燃料電池セルの発電量及び改質用に導入する水蒸気量を測定し、それらの値を用いることにより、当該燃料電池セルの燃料利用率を推定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-244882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、特許文献1に開示の技術では、燃料利用率を推定することができるものの、燃料枯れの判定対象の燃料電池セルの燃料極側空間の入口と出口とに比較的高価な酸素センサを設ける必要があり、装置が比較的高価となり経済性の観点から好ましいとは言えず、構成が複雑になるという問題があった。
【0006】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、比較的簡易な構成で経済性の高い構成を維持しながらも、燃料枯れ状態にあるか否かを良好に判定可能な固体酸化物形燃料電池システム、及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための固体酸化物形燃料電池システムは、
固体電解質層の一方側の面に相対して燃料極を設け、他方側の面に相対して空気極を設けて構成される固体酸化物形の燃料電池セルを前記燃料電池セル同士の間にインターコネクタを介在させた状態で複数積層して形成されるセルスタックを備え、
前記燃料極の表面と前記インターコネクタの前記燃料極側の表面との間には、前記燃料極へ供給される燃料が通流する燃料極側空間が形成されると共に、前記空気極の表面と前記インターコネクタの前記空気極側の表面との間には、前記空気極へ供給される空気が通流する空気極側空間が形成され、運転を制御する制御装置を備える固体酸化物形燃料電池システムであって、その特徴構成は、
前記燃料電池セルの出力電圧を計測する電圧計測部を備え、
前記制御装置は、出力を所定の目標出力となるよう前記燃料極側空間へ導かれる燃料流量と前記空気極側空間へ導かれる空気流量とを制御する出力制御部と、前記出力制御部にて前記目標出力へ制御している場合に、前記燃料極側空間へ導かれる燃料流量を予め設定された所定流量だけ増加させたときに、燃料流量が増加された前記燃料極側空間に対応する前記燃料電池セルの電圧変化量に基づいて燃料枯れ状態にあるか否かを判定する燃料枯れ判定部とを備える点にある。
【0008】
上記目的を達成するための固体酸化物形燃料電池システムの制御方法は、
固体電解質層の一方側の面に相対して燃料極を設け、他方側の面に相対して空気極を設けて構成される固体酸化物形の燃料電池セルを前記燃料電池セル同士の間にインターコネクタを介在させた状態で複数積層して形成されるセルスタックを備え、
前記燃料極の表面と前記インターコネクタの前記燃料極側の表面との間には、前記燃料極へ供給される燃料が通流する燃料極側空間が形成されると共に、前記空気極の表面と前記インターコネクタの前記空気極側の表面との間には、前記空気極へ供給される空気が通流する空気極側空間が形成され、運転を制御する制御装置を備える固体酸化物形燃料電池システムの制御方法であって、その特徴構成は、
前記固体酸化物形燃料電池システムが、前記燃料電池セルの出力電圧を計測する電圧計測部を備えたものであり、
前記制御装置は、出力を所定の目標出力となるよう前記燃料極側空間へ導かれる燃料流量と前記空気極側空間へ導かれる空気流量とを制御する出力制御工程と、前記出力制御工程にて前記目標出力へ制御している場合に、前記燃料極側空間へ導かれる燃料流量を予め設定された所定流量だけ増加させたときに前記電圧計測部により計測される電圧変化量にて基づいて燃料枯れ状態にあるか否かを判定する燃料枯れ判定工程とを実行する点にある。
【0009】
発明者らは、図3に示すように、所定の燃料電池セルの出力電圧は、燃料利用率が増加するに従って減少し、その減少傾向は燃料利用率が増加するに従って大きくなることに着目した。
説明を追加すると、発明者らは、図3に例示するように、燃料利用率が比較的高いとき(例えば、90%)に一時的に燃料極側空間へ供給する燃料ガスを増加して燃料利用率を減少(例えば、90%→85%)させたときの出力電圧の変化量(増加量:ΔVufH)は、燃料利用率が比較的低いとき(例えば、80%)に一時的に燃料ガスを増加して燃料利用率を減少(例えば、80%→75%)させたときの出力電圧の変化量(増加量:ΔVufL)よりも大きくなるという知見に基づき、発明を完成させた。
【0010】
即ち、上記特徴構成の如く、出力制御部による出力制御工程にて出力を目標出力へ制御している場合に、燃料枯れ判定部による燃料枯れ判定工程にて、燃料極側空間へ導かれる燃料流量を予め設定された所定流量だけ増加させたときに、燃料流量が増加された燃料極側空間に対応する燃料電池セルの電圧変化量に基づいて燃料枯れ状態にあるか否かを判定するので、対象の燃料電池セルの大凡の燃料利用率と正の相関のある電圧変化量から、燃料利用率を直接測定(推定)することなく、燃料枯れ状態にあるか否かを判定できる。
これにより、比較的高価な酸素センサ等を用いることのない簡易な構成にて、燃料枯れ状態にあるか否かを良好に判定できる。
ここで、燃料利用率とは、燃料極側空間へ供給される燃料ガスに対する燃料極側空間にて消費される燃料ガスの割合である。
【0011】
固体酸化物形燃料電池システムの更なる特徴構成は、
前記燃料枯れ判定部は、前記出力制御部にて出力を前記目標出力へ制御している場合に、前記燃料極側空間へ導かれる燃料流量を前記所定流量だけ増加させたときに、燃料流量が増加された前記燃料極側空間に対応する前記燃料電池セルの電圧変化量が、予め設定された第1電圧変化閾値を超える場合に前記燃料枯れ状態にあると判定する点にある。
【0012】
燃料枯れ判定部は、例えば、出力を目標出力へ制御している場合に、燃料極側空間へ導かれる燃料流量を所定流量だけ増加させたときに、燃料流量が増加された燃料極側空間に対応する燃料電池セルの電圧変化量が、予め設定された第1電圧変化閾値を超える場合に燃料枯れ状態にあると判定する(以下、第1判定と呼ぶことがある)ことにより、燃料利用率を直接測定(推定)することなく、電圧変化量に基づいて燃料枯れ状態にあるか否かを良好に判定できる。
特に、当該判定によれば、予め設定された所定の閾値である第1電圧変化閾値を用いて燃料枯れ状態の判定を行うので、他の燃料電池セルの電圧変化等の影響を受けることなく、対象の燃料電池セルが燃料枯れ状態にあるか否かを良好に判定できる。
【0013】
固体酸化物形燃料電池システムの更なる特徴構成は、
前記燃料枯れ判定部は、
運転初期において、前記出力制御部にて出力を前記目標出力へ制御している場合に、前記燃料極側空間へ導かれる燃料流量を前記所定流量だけ増加させたときに前記電圧計測部により計測される電圧変化量を初期電圧変化量として計測し、
現時点において、前記出力制御部にて出力を前記目標出力へ制御している場合に、前記燃料極側空間へ導かれる燃料流量を前記所定流量だけ増加させたときに、燃料流量が増加された前記燃料極側空間に対応する前記燃料電池セルの電圧変化量から、前記初期電圧変化量を減算した差が、予め設定された第2電圧変化閾値を超える場合に前記燃料枯れ状態にあると判定する点にある。
【0014】
更に、燃料枯れ判定部は、例えば、出力を目標出力へ制御している場合に、燃料極側空間へ導かれる燃料流量を所定流量だけ増加させたときに、燃料流量が増加された燃料極側空間に対応する燃料電池セルの電圧変化量から、初期電圧変化量を減算した差が、予め設定された第2電圧変化閾値を超える場合に燃料枯れ状態にあると判定(以下、第2判定と呼ぶことがある)することにより、燃料利用率を直接測定(推定)することなく、電圧変化量に基づいて燃料枯れ状態にあるか否かを良好に判定できる。
特に、当該判定によれば、対象の燃料電池セルの運転初期に計測される電圧変化量である初期電圧変化量を用いて燃料枯れ状態にあるか否かの判定を行うので、他の燃料電池セルの電圧変化等の影響を受けることなく、対象の燃料電池セルが燃料枯れ状態にあるか否かを良好に判定できる。
【0015】
固体酸化物形燃料電池システムの更なる特徴構成は、
前記電圧計測部は、複数の前記燃料電池セルから選択された少なくとも1つ以上の前記燃料電池セルの出力電圧を計測可能に構成され、
前記燃料枯れ判定部は、前記出力制御部にて出力を前記目標出力へ制御している場合に、前記燃料極側空間へ導かれる燃料流量を前記所定流量だけ増加させたときに、燃料流量が増加された前記燃料極側空間に対応する前記燃料電池セルに関し、所定の前記燃料電池セルにおいて計測される第1電圧変化量と、所定の前記燃料電池セルとは異なる他の前記燃料電池セルにおいて計測される第2電圧変化量との差が、予め設定された第3電圧変化閾値を超える場合に、前記燃料枯れと判定する点にある。
【0016】
当該判定(以下、第3判定と呼ぶ場合がある)によっても、燃料利用率を直接測定(推定)することなく、電圧変化量に基づいて燃料枯れ状態にあるか否かを良好に判定できる。
ただし、当該判定によれば、所定の燃料電池セルに燃料ガスを導く第1燃料ガス流路と、当該所定の燃料電池セルとは異なる他の燃料電池セルに燃料ガスを導く第2燃料ガス流路との双方に閉塞が生じている、或いは第1燃料ガス流路と第2燃料ガス流路の上流側の流路にて閉塞が生じている等の理由で、所定の燃料電池セルと他の燃料電池セルとの双方が燃料枯れ状態にある場合は、燃料枯れ状態を適切に判定できない場合がある。
この場合、当該第3判定に加えて、上述の第1判定又は第2判定を併せて実行することで、第1判定又は第2判定により、燃料枯れ状態と判定されているにも関わらず、第3判定で燃料枯れ状態であると判定されなかった場合には、第1燃料ガス流路と第2燃料ガス流路の双方、或いは第1燃料ガス流路と第2燃料ガス流路の上流側の流路にて閉塞が生じている等の判断が可能となる。
【0017】
固体酸化物形燃料電池システムの更なる特徴構成は、
前記燃料枯れ判定部は、前記出力制御部にて出力を前記目標出力へ制御している場合に、前記燃料極側空間へ導かれる燃料流量を予め設定された所定流量だけ増加させたときに、燃料流量が増加された前記燃料極側空間に対応する前記燃料電池セルの電圧変化量が大きいほど燃料枯れの程度が大きいと判定する点にある。
【0018】
上述したように、発明者らが得た知見から、出力を目標出力へ制御している場合に、燃料極側空間へ導かれる燃料流量を予め設定された所定流量だけ増加させたときに、燃料流量が増加された燃料極側空間に対応する燃料電池セルの電圧変化量が大きいほど燃料枯れ状態(燃料不足状態)の程度が大きいと判定できる。
これにより、例えば、燃料枯れ状態と判定した後の対応制御では、燃料流量を増加する補正をした状態で運転を継続する制御等が実行されるが、このときの補正により増加する燃料流量を、燃料枯れの程度が大きいほど増加させるといった制御を行うことにより、より燃料枯れ状態の実態に応じた対応制御をとることができる。
【0019】
固体酸化物形燃料電池システムの更なる特徴構成は、
前記電圧計測部は、複数の前記燃料電池セルから選択された少なくとも1つ以上の前記燃料電池セルの出力電圧を計測可能に構成され、
複数の前記燃料電池セルから選択された少なくとも1つ以上の前記燃料電池セルの前記燃料極側空間に対して、燃料流量を調整可能な選択燃料流量調整部を備え、
前記燃料枯れ判定部は、前記出力制御部にて出力を前記目標出力へ制御している場合に、前記選択燃料流量調整部により選択された少なくとも1つ以上の前記燃料電池セルの前記燃料極側空間へ導かれる燃料流量を予め設定された所定流量だけ増加させたときに、燃料流量が増加された前記燃料極側空間に対応する前記燃料電池セルの電圧変化量として、選択された少なくとも1つ以上の前記燃料電池セルの電圧変化量を用いて燃料枯れ状態にあるか否かを判定する点にある。
【0020】
上記特徴構成によれば、例えば、複数の燃料電池セルへ燃料ガスを導く燃料ガス流路の夫々を開閉する開閉弁等から成る選択燃料流量調整部を備えることにより、燃料枯れの判定対象として所望の燃料電池セルを所望の数だけ選択できるから、対象の燃料電池セルを絞り込みながら、どの燃料電池セルが燃料枯れ状態にあるかを良好に判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態に係る固体酸化物形燃料電池システムの概略構成図である。
図2】セルスタックの一部断面図である。
図3】燃料電池セルの出力電圧と燃料利用率との関係を示すグラフ図である。
図4】燃料枯れ状態にあるか否かを判定する制御フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態に係る固体酸化物形燃料電池システム100及びその制御方法は、比較的簡易な構成で経済性の高い構成を維持しながらも、燃料枯れ状態にあるか否かを良好に判定可能なものに関する。
【0023】
以下、図1~4に基づいて、実施形態に係る固体酸化物形燃料電池システム及びその制御方法について説明する。
図1、2に示すように、固体酸化物形燃料電池システム100は、平板状の固体電解質層9の一方の平面に相対して燃料極7を設け、他方の平面に相対して空気極8を設けて構成される平板型の固体酸化物形の燃料電池セルCを、燃料電池セルC同士の間にインターコネクタ12を介在させた状態で複数積層して形成されるセルスタック6を備える。加えて、本実施形態の固体酸化物形燃料電池システム100は、脱硫部1と、気化部3と、改質部4と、燃焼部5と、熱交換部10とを備える。このうち、容器2の内部に、気化部3と、改質部4と、燃焼部5と、熱交換部10と、セルスタック6とが収容され、容器2の内部が高温に保たれている。
【0024】
各燃料電池セルCの燃料極7には改質部4で生成された水素を主成分とする燃料ガスが供給され、空気極8には空気(酸素)が供給される。そして、燃料電池セルCからは、発電反応に用いられなかった水素を含むガス(燃料極排ガス)が排出され、発電反応に用いられなかった空気(空気極排ガス)が排出される。
【0025】
燃料極排ガス及び空気極排ガスは、燃焼部5に供給されて燃焼される。そして、燃焼部5から排出される燃焼排ガスは熱交換部10に供給され、容器2の内部に導入された空気と熱交換した後(即ち、空気極8に供給される空気を加熱した後)で容器2の外部に排気される。
【0026】
脱硫部1では、炭化水素ガスを含む原燃料ガス(例えば、都市ガス等)に含まれる硫黄化合物が取り除かれる。気化部3には、改質用水と脱硫部1を通過した後の原燃料ガスとが供給される。気化部3は、供給される改質用水を、燃焼部5から伝達される燃焼熱を用いて加熱して蒸発させる。気化部3で生成された原燃料ガスと水蒸気との混合ガスは、改質部4に供給される。改質部4にも、燃焼部5で発生した燃焼熱が伝達される。そして、改質部4は、気化部3から供給される混合ガスに含まれる原燃料ガスの改質処理を行うことで、水素を主成分とする燃料ガスを生成する。
【0027】
セルスタック6に供給される燃料ガスは、燃料ガス通流路30から、燃料ガス通流支管31を介して、燃料極7の表面とインターコネクタ12の燃料極7側の表面との間に形成される燃料極側空間32へ流入し、燃料極側空間32を流れている間に燃料極7に供給され、燃料極側空間32を流れた燃料ガスの残部及び反応生成ガス(水蒸気、炭酸ガス)を含む燃料極排ガスは、燃料排ガス流出路33を介して、燃料極側空間32の外部へ流出するように構成されている。尚、燃料極側空間32は、インターコネクタ12の表面に溝が形成される形態で設けられている。
【0028】
セルスタック6に供給される空気は、空気通流路20から、空気通流支管21を介して、空気極8の表面とインターコネクタ12の空気極8側の表面との間に形成される空気極側空間22に流入し、空気は空気極側空間22を流れている間に空気極8に供給され、空気極側空間22を流れた空気の残部が、空気流出路23を介して、空気極側空間22の外部に流出するように構成されている。尚、空気極側空間22は、インターコネクタ12の表面に溝が形成される形態で設けられている。
ちなみに、空気は、ブロア等により流量が調整される形態で供給される。
【0029】
本実施形態では、燃料極側空間32を燃料ガスが通流する方向と、空気極側空間22を空気が通流する方向とが同じである。つまり、燃料電池セルCにおいて燃料ガスと空気とは並行して流れる。
【0030】
制御装置Sは、固体酸化物形燃料電池の動作を制御する。例えば、制御装置Sは、脱硫部1に供給される単位時間当たりの原燃料ガスの量、気化部3に供給される単位時間当たりの改質用水の量、セルスタック6から出力される電流などを調節することで、改質部4の温度、セルスタック6での発電反応、燃焼部5の温度などを制御している。図示は省略するが、気化部3の温度、改質部4の温度、燃焼部5の温度などの情報が制御装置Sに伝達され、固体酸化物形燃料電池の動作制御に利用される。このような制御装置Sは、公知のソフトウェアとハードウェアとの協働により実現される。
【0031】
ここで、例えば、図2に示すように、燃料電池セルCとして、第1燃料ガス通流支管31aから燃料ガスが供給される第1燃料極側空間32aと第1空気支管21aから空気が供給される第1空気極側空間22aとを有する第1燃料電池セルC1と、第2燃料ガス通流支管31bから燃料ガスが供給される第2燃料極側空間32bと第2空気支管21bから空気が供給される第2空気極側空間22bとを有する第2燃料電池セルC2と、第3燃料ガス通流支管31cから燃料ガスが供給される第3燃料極側空間32cと第3空気支管21cから空気が供給される第3空気極側空間22cとを有する第3燃料電池セルC3とを有し、第1燃料電池セルC1の第1燃料ガス通流支管31a又は第1燃料極側空間32aにおいて、流路の物理的な変形や析出物の発生等により、燃料ガスが通流する流路の一部が閉塞し、第2燃料電池セルC2及び第3燃料電池セルC3の燃料ガスが通流する流路では閉塞が発生していない状況が生じたとする。
この場合、第1燃料電池セルC1にて燃料が供給され難い状態となり、このような状態(燃料枯れ状態)で長時間運転すると、第1燃料電池セルC1の燃料極7が酸化し、セルスタック6として機能しなくなる虞がある。このため、燃料電池セルCが燃料枯れ状態にあるか否かを判定できることが好ましい。
【0032】
そこで、発明者らは、図3に示すように、燃料電池セルCの出力電圧の低下傾向が、燃料利用率が高くなるに従って、徐々に大きくなる点に着目した。
更には、発明者らは、燃料ガスが通流する流路が閉塞していない第2燃料電池セルC2及び第3燃料電池セルC3では、通常運転時の燃料利用率であり(例えば、80%)、一時的に所定流量だけ燃料を増加する制御を実行して燃料利用率が例えば80%→75%となる場合、比較的小さい電圧変化量ΔVufLとなるのに比べて、燃料ガスが通流する流路の一部が閉塞している第1燃料電池セルC1では、通常運転時の燃料利用率が高くなり(例えば、90%)、一時的に所定流量だけ燃料を増加する制御を実行して燃料利用率が例えば90%→85%となる場合、比較的大きい電圧変化量ΔVufHとなる点に着目し、発明を完成させた。
【0033】
即ち、当該実施形態に係る固体酸化物形燃料電池システム100は、セルスタック6を構成する燃料電池セルCの発電電圧を計測可能な電圧計V(電圧計測部の一例)を備えると共に、制御装置Sが、出力を所定の目標出力(例えば、1キロワット(kW))となるよう燃料極側空間32へ導かれる燃料流量と空気極側空間22へ導かれる空気流量とを制御して出力制御工程を実行する出力制御部S1と、出力制御部S1にて目標出力へ制御している場合に、燃料極側空間32へ導かれる燃料流量を予め設定された所定流量(例えば、目標出力での燃料流量の5%以上20%以下程度の流量)だけ増加させたときに、燃料流量が増加された燃料極空間に対応する燃料電池セルの電圧変化量に基づいて燃料枯れ状態にあるか否かを判定する燃料枯れ判定工程を実行する燃料枯れ判定部S2と、目標出力や燃料枯れ状態にあるか否かを判定する場合に増加する燃料ガスの流量を記憶する記憶部S3とを備えている。更に、記憶部S3は、後述する電圧変化閾値についても記憶している。
【0034】
説明を加えると、電圧計Vは、セルスタック6を構成する少なくとも1つ以上の燃料電池セルC毎に発電電圧を計測可能に構成されている。より詳細には、電圧計Vは、回路を適宜切り替えることにより、複数の燃料電池セルCから選択された少なくとも1つ以上の燃料電池セルCの出力電圧を計測可能に構成されている。尚、当該選択は、燃料枯れ状態にあるか否かの判定対象として、制御装置Sにより選択されるか、又は図示しない入力部から使用者等により入力されることで実行される。
更に、図示は省略するが、複数の燃料電池セルCから選択された少なくとも1つ以上の燃料電池セルCの燃料極空間に対して燃料流量を調整可能な選択燃料流量調整部として、燃料ガス通流支管31の夫々に燃料流量調整弁(図示せず)を備えている。
燃料枯れ判定部S2は、出力制御部S1にて目標出力へ制御している場合に、燃料流量調整弁により選択された少なくとも1つ以上の燃料電池セルCの燃料極側空間32へ導かれる燃料流量を予め設定された所定流量だけ増加させたときに、燃料流量が増加された燃料極側空間32に対応する燃料電池セルCの電圧変化量として、選択された少なくとも1つ以上の燃料電池セルCの電圧変化量を用いて燃料枯れ状態にあるか否かを判定する。
【0035】
次に、図4に基づいて、燃料枯れ状態の判定に係る制御フローを説明する。
固体酸化物形燃料電池システム100が運転されている状態で、燃料枯れ状態にあるか否かの判定に係る制御が開始されると、まず、出力制御部S1が、出力を記憶部S3に記憶される所定の目標出力(例えば、1キロワット(kW))となるよう燃料極側空間32へ導かれる燃料流量と空気極側空間22へ導かれる空気流量とを制御して出力制御工程を実行する(#01)。
【0036】
次に、燃料枯れ判定部S2は、燃料枯れ状態の判定対象として選択された少なくとも1つ以上の燃料電池セルCに対応する燃料ガス通流支管31に設けられる燃料流量調整弁(図示せず)の開度を現状の開度よりも記憶部S3に記憶される所定開度だけ増加させて、燃料流量を所定流量(例えば、目標出力での燃料流量の5%以上20%以下程度の流量)だけ増加する(#02)。
このとき、燃料枯れ判定部S2は、選択された少なくとも1つ以上の燃料電池セルCの合計の電圧変化量ΔVが、選択数量に応じて予め決定され記憶部S3に記憶される第1電圧変化閾値Vs(例えば、数十mV程度の値に選択された少なくとも1つ以上の燃料電池セルの数を乗算した値)を超える場合(#03でYes)、選択された少なくとも1つ以上の燃料電池セルCの何れかが燃料枯れ状態にあると判定し、以下の燃料枯れ対応制御を実行する(#04)。
尚、燃料枯れ判定部S2は、ステップ#03において、選択された少なくとも1つ以上の燃料電池セルCの電圧変化量ΔVが大きいほど燃料枯れの程度が大きいと判定する。
【0037】
ここで、燃料枯れ対応制御としては、例えば、固体酸化物形燃料電池システム100を記憶部S3に記憶された目標出力で運転する場合に、目標出力に対応する燃料流量を、上述した燃料枯れの程度が大きいほど多くする形態で、補正流量(例えば、目標出力での燃料流量の1%以上10%以下程度の流量)を増加する燃料流量増加補正制御を実行する。
制御装置Sは、燃料枯れ対応制御の後、固体酸化物形燃料電池システム100の運転を継続する(#05)。
【0038】
一方、ステップ#03において、燃料枯れ判定部S2は、選択された少なくとも1つ以上の燃料電池セルCの電圧変化量ΔVが、選択された燃料電池セルCの数量に応じて予め決定され記憶部S3に記憶される第1電圧変化閾値Vs以下である場合(#03でNo)、燃料枯れ対応制御を実行することなく、燃料流量調整弁を元の開度に戻して、燃料電池の運転を継続する(#05)。
【0039】
燃料枯れ判定部S2は、ステップ#05の後、上記ステップ#01~#05を、所定時間毎(#06)に、継続的に実行する。
【0040】
尚、制御フローへの図示は省略するが、制御装置Sは、燃料枯れ状態にあるか否かに係る判定制御において、セルスタック6を構成するすべての燃料電池セルCを、燃料枯れ状態の判定対象として順次選択する形態で、ステップ#01~#05により、順次判定していく。このとき、ステップ#04での燃料流量増加補正制御にて増加する燃料の補正流量は、順次加算される形で補正される。
【0041】
以上の構成及び制御により、当該実施形態に係る固体酸化物形燃料電池システム100では、酸素センサ等の比較的高価な構成部品を用いることなく、燃料枯れ状態の発生を良好に判定可能な固体酸化物形燃料電池システム100、及びその制御方法を実現している。
【0042】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、セルスタック6は、平板状の固体電解質層9の一方の平面に相対して燃料極7を設け、他方の平面に相対して空気極8を設けて構成される平板型の固体酸化物形の燃料電池セルCを、燃料電池セルC同士の間にインターコネクタ12を介在させた状態で複数積層して形成されるものを例示したが、円筒形状の構成を採用しても構わない。
【0043】
(2)固体酸化物形燃料電池システム100では、上記実施形態の如く選択することなく、予め決められた1以上の一群の燃料電池セルCに対して、燃料枯れ状態を判定可能なように、電圧計Vに係る回路、及び選択燃料流量調整部としての燃料流量調整弁(図示せず)を設けても構わない。
【0044】
(3)上記実施形態において、燃料枯れ対応制御としては、燃料流量増加補正制御を例示した。
当該燃料枯れ対応制御の他の例としては、制御装置Sが、燃料枯れ状態であると判定した場合に、出力を低下させる制御(例えば、1kWから数十W低下させる制御であって、燃料ガスの流量はそのままで電流を低下させる制御)を実行しても構わない。
【0045】
(4)燃料枯れ状態にあるか否かの判定において、上記実施形態では、予め設定された第1電圧変化閾値Vsを用いて判定したが、例えば、運転初期において、所定流量だけ燃料流量を増加させた場合の電圧変化量を用いて判定しても構わない。
詳細には、燃料枯れ判定部S2は、運転初期において、出力制御部S1にて出力を目標出力へ制御している場合に、燃料極側空間32へ導かれる燃料流量を所定流量だけ増加させたときに電圧計Vにより計測される電圧変化量を初期電圧変化量として計測し、現時点において、出力制御部S1にて出力を目標出力へ制御している場合に、燃料極側空間32へ導かれる燃料流量を所定流量だけ増加させたときに、燃料流量が増加された燃料極側空間32に対応する燃料電池セルCの電圧変化量から、初期電圧変化量を減算した差が、予め設定された第2電圧変化閾値(例えば、燃料電池セルCの数が一つの場合は数十mV程度の値で、セル数が複数の場合は数十mV程度の値にセル数を乗算した値)を超える場合に燃料枯れ状態にあると判定しても構わない。
【0046】
(5)燃料枯れ状態にあるか否かの判定において、上記実施形態では、予め設定された第1電圧変化閾値Vsを用いて判定したが、例えば、判定対象の燃料電池セルCの電圧変化量と、当該判定対象とは異なる他の燃料電池セルCの電圧変化量とを比較する形態で、燃料枯れ状態にあるか否かの判定を行っても構わない。
詳細には、電圧計Vは、複数の燃料電池セルCから選択された少なくとも1つ以上の燃料電池セルCの出力電圧を計測可能に構成され、燃料枯れ判定部S2は、出力制御部S1にて出力を目標出力へ制御している場合に、燃料極側空間32へ導かれる燃料流量を所定流量だけ増加させたときに、燃料流量が増加された燃料極側空間32に対応する燃料電池セルCに関し、所定の燃料電池セルCにおいて計測される第1電圧変化量と、所定の燃料電池セルCとは異なる他の燃料電池セルCにおいて計測される第2電圧変化量との差が、予め設定された第3電圧変化閾値(例えば、燃料電池セルCの数が一つの場合は数十mV程度の値で、セル数が複数の場合は数十mV程度の値にセル数を乗算した値)を超える場合に、燃料枯れ状態にあると判定しても構わない。
【0047】
(6)上記実施形態では、炭化水素ガスを含む原燃料ガスを、脱硫・改質して水素を主成分とする燃料ガスを生成し、燃料電池セルCへ供給する構成を示した。
これに替えて、水素を主成分とする燃料ガスを直接燃料電池セルCへ供給する構成を採用しても構わない。この場合、固体酸化物形燃料電池システム100は、脱硫部1、気化部3、及び改質部4を備えない構成のものが好適に採用される。
【0048】
(7)燃料枯れ判定工程において、設定される目標出力は定格出力である必要はなく、システムにて許容される出力を適宜選択可能である。
【0049】
(8)上記実施形態において、燃料極7のインターコネクタ12側の表面と、インターコネクタ12の燃料極7側の表面とは直接接触せず、その間に集電体(図示せず)を設ける構成を採用しても構わない。
また、空気極8のインターコネクタ12側の表面と、インターコネクタ12の空気極8側の表面とが直接接触せず、その間に集電体(図示せず)を設ける構成を採用しても構わない。
当該集電体としては、ニッケルメッシュや白金メッシュが好適に用いられる。
【0050】
(9)燃料極側空間32を燃料ガスFが通流する方向と、空気極側空間22を空気A1が通流する方向は、上記実施形態の如く、並行流であっても構わないし、対向流や直交流であっても構わない。
【0051】
尚、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の固体酸化物形燃料電池システム、及びその制御方法は、比較的簡易な構成で経済性の高い構成を維持しながらも、燃料枯れ状態にあるか否かを良好に判定可能な固体酸化物形燃料電池システム、及びその制御方法として、有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0053】
6 :セルスタック
7 :燃料極
8 :空気極
9 :固体電解質層
12 :インターコネクタ
22 :空気極側空間
32 :燃料極側空間
100 :固体酸化物形燃料電池システム
C :燃料電池セル
C1 :第1燃料電池セル
C2 :第2燃料電池セル
C3 :第3燃料電池セル
S :制御装置
S1 :出力制御部
S2 :燃料枯れ判定部
V :電圧計
Vs :第1電圧変化閾値
図1
図2
図3
図4