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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112593
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】積層シート、容器、及び食品包装体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/36 20060101AFI20240814BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240814BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
B32B27/36
B32B27/00 H
B32B27/36 102
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017734
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】山口 啓太
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AD05
3E086AD06
3E086BA15
3E086BB05
3E086BB41
3E086CA01
4F100AK03A
4F100AK03C
4F100AK41D
4F100AK45D
4F100AK69B
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10D
4F100EH20
4F100GB16
4F100GB23
4F100JA04D
4F100JN01
4F100JN21D
(57)【要約】
【課題】成形性が良く、しかも加熱処理を施した際にも外観が良好に維持されやすい積層シートを提供する。
【解決手段】積層シート(1)は、内層(2)と、中間層(3)と、第一外層(4)と、第二外層(5)とを記載の順に積層して備える。第二外層(5)が、荷重たわみ温度が100℃以上のポリエステル系樹脂又はポリカーボネート系樹脂を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内層と、中間層と、第一外層と、第二外層と、を記載の順に積層して備え、
前記第二外層が、荷重たわみ温度が100℃以上の、ポリエステル系樹脂又はポリカーボネート系樹脂を含む、積層シート。
【請求項2】
前記第二外層が、荷重たわみ温度が100℃以上のグリコール変性ポリエチレンテレフタレートを含む、請求項1に記載の積層シート。
【請求項3】
前記第二外層の厚みが、シート全体の厚みの0.5%以上8%以下である、請求項1に記載の積層シート。
【請求項4】
前記内層が、ポリオレフィン系樹脂を含み、
前記中間層が、エチレン-ビニルアルコール共重合体を含み、
前記第一外層が、ポリオレフィン系樹脂を含む、請求項1に記載の積層シート。
【請求項5】
全体ヘイズが30%以下である、請求項1に記載の積層シート。
【請求項6】
JIS Z 8741に準拠して測定した入射角60°での前記第二外層の表面の鏡面光沢度が、100以上である、請求項1に記載の積層シート。
【請求項7】
食品包装用である、請求項1に記載の積層シート。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の積層シートを用いて形成された、容器。
【請求項9】
請求項8に記載の容器に食品を充填した、食品包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層シート、容器、及び食品包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば食品を充填して包装するための容器が、合成樹脂製の積層シートを用いて形成される場合がある。このような目的で使用される積層シートの一例が、米国特許第4425410号明細書(特許文献1)に開示されている。
【0003】
特許文献1の積層シートは、内層(poly-olefin structural layer 2)と中間層(EVOH oxygen barrier layer 3)と外層(poly-olefin structural layer 1)とを記載の順に積層して備えている。この積層シートは、内層及び外層がポリオレフィンで構成されているため耐熱性が高く、例えば容器の形成後に食品を充填した状態で、加熱殺菌処理を施すことができる。
【0004】
しかし、そのような加熱処理の際に、容器表面が濁化して透明性が低下する等、外観が悪くなる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4425410号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
成形性が良く、しかも加熱処理を施した際にも外観が良好に維持されやすい積層シートの実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る積層シートは、
内層と、中間層と、第一外層と、第二外層と、を記載の順に積層して備え、
前記第二外層が、荷重たわみ温度が100℃以上の、ポリエステル系樹脂又はポリカーボネート系樹脂を含む。
【0008】
この構成によれば、4層構成の積層シートにおいて最外層となる第二外層の荷重たわみ温度が100℃以上であることで、成形性に優れた積層シートとすることができる。また、第二外層がポリエステル系樹脂又はポリカーボネート系樹脂を含むことで、加熱処理を施した際にも透明性が確保されやすく、外観が良好に維持されやすい。これらのことから、成形性が良く、しかも加熱処理を施した際にも外観が良好に維持されやすい積層シートを実現することができる。
【0009】
以下、本発明の好適な態様について説明する。但し、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定される訳ではない。
【0010】
一態様として、
前記第二外層が、荷重たわみ温度が100℃以上のグリコール変性ポリエチレンテレフタレートを含むことが好ましい。
【0011】
この構成によれば、ポリエステル系樹脂の一種としてのグリコール変性ポリエチレンテレフタレートを第二外層に含ませることで、加熱処理を施した際にも外観が特に良好に維持されやすい。
【0012】
一態様として、
前記第二外層の厚みが、シート全体の厚みの0.5%以上8%以下であることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、第二外層の厚みを必要最小限に抑えつつ、成形性及び外観に優れた積層シートとすることができる。
【0014】
一態様として、
前記内層が、ポリオレフィン系樹脂を含み、
前記中間層が、エチレン-ビニルアルコール共重合体を含み、
前記第一外層が、ポリオレフィン系樹脂を含むことが好ましい。
【0015】
この構成によれば、積層シート全体としての耐熱性及び酸素バリア性を高めることができる。よって、当該積層シートを用いて所定形状の容器を成形した後に加熱処理を適切に施すことができ、また、酸素を遮断して内容物の品質を良好に維持することができる。
【0016】
一態様として、
全体ヘイズが30%以下であることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、透明性を高く維持することができる。
【0018】
一態様として、
JIS Z 8741に準拠して測定した入射角60°での前記第二外層の表面の鏡面光沢度が、100以上であることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、積層シートの外面に艶を出して、外観をさらに良好とすることができる。
【0020】
一態様として、
食品包装用であることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、食品を包装するのに適した形状に成形しやすく、また、包装した食品の加熱殺菌処理を施す際にも外観を良好に維持しやすい。よって、本発明の積層シートは、食品包装用の用途で特に好適に用いることができる。
【0022】
本発明に係る容器は、
上述したいずれかの積層シートを用いて形成される。
【0023】
この構成によれば、成形性が良く、しかも加熱処理を施した際にも外観が良好に維持されやすい容器を実現することができる。
【0024】
本発明に係る食品包装体は、
上記の容器に食品を充填して得られる。
【0025】
この構成によれば、食品包装体に食品を充填した状態で加熱処理を施すことで、食品の殺菌をすることができる。また、そのような加熱処理を行う場合でも、外観を良好に維持しやすい。よって、外観及び衛生面に優れた食品包装体を提供することができる。
【0026】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施形態の積層シートの断面図
図2】実施形態の容器の模式図
図3】実施形態の食品包装体の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0028】
積層シートの実施形態について、図面を参照して説明する。図1に示すように、本実施形態の積層シート1は、内層2と、中間層3と、第一外層4と、第二外層5とを備えている。内層2が積層シート1の一方の表面に設けられ、第二外層5が積層シート1の他方の表面に設けられ、それらの間に中間層3と第一外層4とが設けられている。内層2、中間層3、第一外層4、及び第二外層5は、記載の順に積層されている。
【0029】
本実施形態の内層2は、ポリオレフィン系樹脂を含む。ここで、ポリオレフィン系樹脂とは、オレフィン又はその誘導体を構成単位として有するポリマーであれば特に限定されない。内層2に含まれるポリオレフィン系樹脂は、1種のオレフィンの単独重合体であっても良いし、2種以上のオレフィンの共重合体であっても良い。
【0030】
オレフィンの単独重合体としては、特に限定されないが、例えば低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、及び高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレンや、ポリプロピレン等が例示される。
【0031】
オレフィンの共重合体としては、特に限定されないが、例えばエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、エチレン-アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、及びアイオノマー(ION)等のエチレン系共重合体や、例えばポリプロピレンランダムコポリマー(rPP)及びポリプロピレンブロックコポリマー(bPP)等のプロピレン系共重合体が例示される。
【0032】
内層2に含まれるポリオレフィン系樹脂は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。2種以上のポリオレフィン系樹脂が含まれる場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択して良い。また、内層2には、ポリオレフィン系樹脂以外の他の成分が多少含まれていても良い。
【0033】
積層シート1の透明性、成形性、及び耐熱性を高める観点からは、内層2に含まれるポリオレフィン系樹脂は、ポリプロピレン、又は、ポリプロピレンランダムコポリマー(rPP)及びポリプロピレンブロックコポリマー(bPP)等のプロピレン系共重合体であることが好ましい。
【0034】
内層2の厚みは、特に限定されないが、積層シート1全体の厚みを基準として例えば30%以上45%以下であることが好ましく、35%以上40%以下であることがより好ましい。
【0035】
本実施形態の中間層3は、エチレン-ビニルアルコール共重合体を含む。中間層3がエチレン-ビニルアルコール共重合体を含むことで、積層シート1に酸素バリア性を付与することができる。また、エチレン-ビニルアルコール共重合体は、透明性及び成形性の点からも好ましい。
【0036】
中間層3の厚みは、特に限定されないが、積層シート1全体の厚みを基準として例えば3%以上15%以下であることが好ましく、5%以上10%以下であることがより好ましい。
【0037】
本実施形態の第一外層4は、ポリオレフィン系樹脂を含む。第一外層4に含まれるポリオレフィン系樹脂としては、特に限定されないが、内層2に含まれるポリオレフィン系樹脂と同様のものを用いることができ、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン系共重合体、プロピレン系共重合体等が例示される。
【0038】
第一外層4に含まれるポリオレフィン系樹脂は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。2種以上のポリオレフィン系樹脂が含まれる場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択して良い。また、第一外層4には、ポリオレフィン系樹脂以外の他の成分が多少含まれていても良い。
【0039】
積層シート1の透明性、成形性、及び耐熱性を高める観点からは、第一外層4に含まれるポリオレフィン系樹脂は、ポリプロピレン、又は、ポリプロピレンランダムコポリマー(rPP)及びポリプロピレンブロックコポリマー(bPP)等のプロピレン系共重合体であることが好ましい。
【0040】
第一外層4の厚みは、特に限定されないが、積層シート1全体の厚みを基準として例えば40%以上55%以下であることが好ましく、45%以上50%以下であることがより好ましい。
【0041】
本実施形態の第二外層5は、ポリエステル系樹脂又はポリカーボネート系樹脂を含む。ここで、ポリエステル系樹脂は、多価カルボン酸とポリアルコールとを脱水縮合させて得られるポリマーである。ポリカーボネート系樹脂は、構成単位どうしがカーボネート基を介して結合されたポリマーである。第二外層5には、ポリエステル系樹脂及びポリカーボネート系樹脂うちのいずれかのみが含まれていても良いし、これらの両方が含まれていても良い。第二外層5がポリエステル系樹脂及びポリカーボネート系樹脂うちの少なくとも一方を含むことで、積層シート1の表面に光沢を付与することができ、その外観を良好なものとすることができる。
【0042】
ポリエステル系樹脂としては、特に限定されないが、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート等が例示される。
【0043】
第二外層5に含まれるポリエステル系樹脂は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。2種以上のポリエステル系樹脂が含まれる場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択して良い。また、第二外層5には、ポリエステル系樹脂以外の他の成分が多少含まれていても良い。
【0044】
ポリカーボネート系樹脂としては、特に限定されないが、例えば芳香族系ポリカーボネート系樹脂、より具体的にはビスフェノール型ポリカーボネート系樹脂等が例示される。第二外層5に含まれるポリカーボネート系樹脂は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。2種以上のポリカーボネート系樹脂が含まれる場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択して良い。また、第二外層5には、ポリカーボネート系樹脂以外の他の成分が多少含まれていても良い。
【0045】
積層シート1の外観向上の観点からは、第二外層5の構成樹脂はポリエステル系樹脂であることが好ましい。ポリエステル系樹脂は、透明性、成形性、及び耐熱性の点からも好ましい。中でも、第二外層5の構成樹脂は、変性ポリエステル系樹脂であることがより好ましく、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)がさらに好ましい。なお、変性ポリエステル系樹脂は、上述したポリエステル系樹脂を化学変性させたものであり、そのうちのグリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)は、ポリエチレンテレフタレート(PET)中のエチレングリコールの一部をシクロヘキサンジメタノールで置換したものである。
【0046】
第二外層5の好ましい構成樹脂の1つであるグリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)は、化学合成によって得られるものを用いても良いが、環境配慮の観点からバイオマス由来で得られるものを用いることが好ましい。
【0047】
第二外層5の構成樹脂(好ましくはグリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG))の荷重たわみ温度は、100℃以上である。荷重たわみ温度は、ASTM D648に規定されるB法(曲げ応力;0.455MPa)に準拠して測定される。第二外層5が、荷重たわみ温度が100℃以上のポリエステル系樹脂又はポリカーボネート系樹脂を含むことで、積層シート1の耐熱性を高めることができる。
【0048】
また、第二外層5が結晶質の樹脂で構成される場合、その構成樹脂のガラス転移温度は、特に限定されないが、例えば110℃以上であることが好ましい。ガラス転移温度は、JIS K 7121に準拠して測定される。第二外層5が、ガラス転移温度が110℃以上のポリエステル系樹脂又はポリカーボネート系樹脂を含むことで、積層シート1の耐熱性を高めることができる。第二外層5の構成樹脂のガラス転移温度は、115℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることがさらに好ましい。
【0049】
第二外層5の厚みは、特に限定されないが、積層シート1全体の厚みを基準として例えば0.5%以上8%以下であることが好ましく、1%以上5%以下であることがより好ましく、1.5%以上3.5%以下であることがさらに好ましい。
【0050】
内層2と中間層3との間、中間層3と第一外層4との間、第一外層4と第二外層5との間に、それぞれ接着層が設けられても良い。
【0051】
本実施形態の積層シート1において、第二外層5の表面の鏡面光沢度は、特に限定されないが、100以上であることが好ましい。ここで、本実施形態において、第二外層5の表面の鏡面光沢度は、JIS Z 8741に準拠して測定される入射角60°での鏡面光沢度を意味する。なお、JIS Z 8741に厳格に準拠するとすれば、入射角60°での測定値が70を超える場合は入射角20°で測定することとなっているが、本実施形態では、入射角60°での測定値が70を超える場合であってもその値をそのまま採用するものとする。第二外層5の表面の鏡面光沢度が100以上であることで、積層シート1の表面に艶を出して、外観を向上させることができる。
【0052】
本実施形態の積層シート1の全体ヘイズは、特に限定されないが、30%以下であることが好ましい。ここで、積層シート1の全体ヘイズは、JIS K 7136:2000に準拠して測定することができる。積層シート1の全体ヘイズが30%以下であることで、透明性に優れた積層シート1を得ることができる。積層シート1の全体ヘイズは、25%以下であることがより好ましく、22%以下であることがさらに好ましい。
【0053】
本実施形態の積層シート1は、例えば共押出によって形成しても良いし、別々の工程で形成された複数のシート(複層シート又は単層シート)どうしを貼り合わせて形成しても良い。
【0054】
本実施形態の積層シート1は、例えば他物を収容可能な容器10に成形して使用可能である。容器10は、積層シート1を用いて、例えばシート成形によって形成することができる。図2に示すように、容器10は、底面部12と、底面部12を取り囲んで上方に延びる周壁部14と、周壁部14の上端から外方に延びるフランジ部16とを有する。このとき、積層シート1を構成する各層は、内層2が内側(すなわち、容器10の収容空間側)に位置し、第二外層5が外側(すなわち、容器10の外側)に位置するように配置される。
【0055】
本実施形態の積層シート1を用いて形成された容器10は、例えば食品包装用の用途で使用することができる。この場合、図3に示すように、容器10に食品20を充填し、その状態で食品20を密封するように容器10(具体的には、フランジ部16)に蓋体30を接合させて、食品包装体100が得られる。
【0056】
このような食品包装体100では、内容物である食品20の殺菌処理を行うために、加熱殺菌処理(例えばボイル加熱処理)を行う場合がある。本実施形態の食品包装体100は、荷重たわみ温度が100℃以上のポリエステル系樹脂又はポリカーボネート系樹脂を含む第二外層5を備える積層シート1を用いて形成された容器10を使用しているので、加熱殺菌処理を施しても外観が良好に維持される。
【0057】
以下に複数の試験例を示し、本発明についてより具体的に説明する。但し、以下に記載する具体的な試験例によって本発明の範囲が限定される訳ではない。
【0058】
[試験例1]
ポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製、ノバテックPP EG7FTB)、接着性樹脂(三井化学株式会社製、アドマーQB515)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(三菱ケミカル株式会社製、G-ソアノールGH3804B)、接着性樹脂(三井化学株式会社製、アドマーQB515)、ポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製、ノバテックPP EG7FTB)、接着性樹脂(三井化学株式会社製、アドマーF534)、及びグリコール変性ポリエチレンテレフタレート(SKケミカル社製、ECOZEN T120)が記載の順に積層された積層シートを準備した。グリコール変性ポリエチレンテレフタレートの荷重たわみ温度は109℃であった。積層シート全体の厚さは1000μmとし、各層の厚さの割合は、上記の記載順にそれぞれ38%、2%、8%、2%、47%、0.5%、2.5%とした。
【0059】
[試験例2]
ポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製、ノバテックPP EG7FTB)、接着性樹脂(三井化学株式会社製、アドマーQB515)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(三菱ケミカル株式会社製、G-ソアノールGH3804B)、接着性樹脂(三井化学株式会社製、アドマーQB515)、ポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製、ノバテックPP EG7FTB)、接着性樹脂(三井化学株式会社製、アドマーF534)、及びグリコール変性ポリエチレンテレフタレート(SKケミカル社製、ECOZEN T120)が記載の順に積層された積層シートを準備した。グリコール変性ポリエチレンテレフタレートの荷重たわみ温度は109℃であった。積層シート全体の厚さは900μmとし、各層の厚さの割合は、上記の記載順にそれぞれ38%、2%、8%、2%、47%、0.5%、2.5%とした。なお、試験例2は、試験例1との比較において積層シート全体の厚さだけが異なっている。
【0060】
[試験例3]
ポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製、ノバテックPP EG7FTB)、接着性樹脂(三井化学株式会社製、アドマーQB515)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(三菱ケミカル株式会社製、G-ソアノールGH3804B)、接着性樹脂(三井化学株式会社製、アドマーQB515)、ポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製、ノバテックPP EG7FTB)、接着性樹脂(三井化学株式会社製、アドマーF534)、及びグリコール変性ポリエチレンテレフタレート(SKケミカル社製、ECOZEN T120)が記載の順に積層された積層シートを準備した。グリコール変性ポリエチレンテレフタレートの荷重たわみ温度は109℃であった。積層シート全体の厚さは1100μmとし、各層の厚さの割合は、上記の記載順にそれぞれ38%、2%、8%、2%、47%、0.5%、2.5%とした。なお、試験例3は、試験例1及び試験例2との比較において積層シート全体の厚さだけが異なっている。
【0061】
[試験例4]
ポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製、ノバテックPP EG7FTB)、接着性樹脂(三井化学株式会社製、アドマーQB515)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(三菱ケミカル株式会社製、G-ソアノールGH3804B)、接着性樹脂(三井化学株式会社製、アドマーQB515)、ポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製、ノバテックPP EG7FTB)、接着性樹脂(三井化学株式会社製、アドマーF534)、及びグリコール変性ポリエチレンテレフタレート(SKケミカル社製、ECOZEN T120)が記載の順に積層された積層シートを準備した。グリコール変性ポリエチレンテレフタレートの荷重たわみ温度は109℃であった。積層シート全体の厚さは1000μmとし、各層の厚さの割合は、上記の記載順にそれぞれ38%、2%、8%、2%、48.5%、0.5%、1%とした。なお、試験例4は、試験例1との比較において第1外層としてのポリプロピレン及び第2外層としてのグリコール変性ポリエチレンテレフタレートのそれぞれの厚さの割合だけが異なっている。
【0062】
[試験例5]
ポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製、ノバテックPP EG7FTB)、接着性樹脂(三井化学株式会社製、アドマーQB515)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(三菱ケミカル株式会社製、G-ソアノールGH3804B)、接着性樹脂(三井化学株式会社製、アドマーQB515)、ポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製、ノバテックPP EG7FTB)、接着性樹脂(三井化学株式会社製、アドマーF534)、及びグリコール変性ポリエチレンテレフタレート(SKケミカル社製、ECOZEN T120)が記載の順に積層された積層シートを準備した。グリコール変性ポリエチレンテレフタレートの荷重たわみ温度は109℃であった。積層シート全体の厚さは1000μmとし、各層の厚さの割合は、上記の記載順にそれぞれ38%、2%、8%、2%、44.5%、0.5%、5%とした。なお、試験例5は、試験例1及び試験例4との比較において第1外層としてのポリプロピレン及び第2外層としてのグリコール変性ポリエチレンテレフタレートのそれぞれの厚さの割合だけが異なっている。
【0063】
[試験例6]
ポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製、ノバテックPP EG7FTB)、接着性樹脂(三井化学株式会社製、アドマーQB515)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(三菱ケミカル株式会社製、G-ソアノールGH3804B)、接着性樹脂(三井化学株式会社製、アドマーQB515)、ポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製、ノバテックPP EG7FTB)、接着性樹脂(三井化学株式会社製、アドマーF534)、及びポリカーボネート(SABIC社製、LEXAN COPOLYMER HFD1413)が記載の順に積層された積層シートを準備した。ポリカーボネートの荷重たわみ温度は124℃であった。積層シート全体の厚さは1000μmとし、各層の厚さの割合は、上記の記載順にそれぞれ38%、2%、8%、2%、47%、0.5%、2.5%とした。なお、試験例6は、試験例1との比較において第2外層を構成する材料だけが異なっている。
【0064】
[試験例7]
ポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製、ノバテックPP EG7FTB)、接着性樹脂(三井化学株式会社製、アドマーQB515)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(三菱ケミカル株式会社製、G-ソアノールGH3804B)、接着性樹脂(三井化学株式会社製、アドマーQB515)、ポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製、ノバテックPP EG7FTB)、接着性樹脂(三井化学株式会社製、アドマーF534)、及びグリコール変性ポリエチレンテレフタレート(SKケミカル社製、ECOZEN T95)が記載の順に積層された積層シートを準備した。グリコール変性ポリエチレンテレフタレートの荷重たわみ温度は85℃であった。積層シート全体の厚さは1000μmとし、各層の厚さの割合は、上記の記載順にそれぞれ38%、2%、8%、2%、47%、0.5%、2.5%とした。なお、試験例7は、試験例1との比較において第2外層を構成する具体的な材料だけが異なっている。
【0065】
[試験例8]
ポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製、ノバテックPP EG7FTB)、接着性樹脂(三井化学株式会社製、アドマーQB515)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(三菱ケミカル株式会社製、G-ソアノールGH3804B)、接着性樹脂(三井化学株式会社製、アドマーQB515)、及びポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製、ノバテックPP EG7FTB)が記載の順に積層された積層シートを準備した。積層シート全体の厚さは900μmとし、各層の厚さの割合は、上記の記載順にそれぞれ45.5%、2%、5%、2%、45.5%とした。なお、試験例8は、試験例2との比較において第2外層の有無の点で異なっており、それに伴う事項(第3の接着層の有無や、各層の厚さの割合)が異なっている。
【0066】
【表1】
【0067】
得られた各試験例の積層シートについて、全体ヘイズ、外層側の鏡面光沢度、及び酸素透過量を測定し、また、ボイル加熱後の外観を観察した。
【0068】
全体ヘイズは、ヘイズメーター(日本電飾工業株式会社製、NDH 2000)を用い、JIS K 7136:2000に準拠して測定した。
【0069】
外層側の鏡面光沢度は、グロスメーター(コニカミノルタ株式会社製、型番:CM-26dG)を用い、入射角60°での鏡面光沢度をJIS Z 8741に準拠して測定した。なお、本実施形態では、得られた入射角60°での測定値を、その大きさによらずにそのまま鏡面光沢度として採用した。
【0070】
酸素透過量は、酸素透過量測定装置(MOCON社製、型番:OX-TRAN2/22L)を用い、JIS K 7126-2:2006に準拠して、温度23℃、相対湿度(RH)60%の条件下で測定した。
【0071】
ボイル加熱後の外観は、各試験片の積層シートを用いて形成された容器を90℃で30分間ボイル加熱し、加熱後の容器の外観を目視で観察し、以下の基準に基づいて評価した。
〇:変形しておらず透明性も維持されていた
×:変形、白濁、又は気泡が見られた
【0072】
これらの結果を以下に示す。
【0073】
【表2】
【0074】
第2外層が設けられない試験例8の積層シートは、全体ヘイズが35%と高く、また、ボイル加熱後の容器において白濁が見られた。また、第2外層が設けられてはいても、その第2外層が荷重たわみ温度が85℃のグリコール変性ポリエチレンテレフタレートで構成されている試験例7の積層シートは、全体ヘイズは21%と特に問題はなかったものの、ボイル加熱後の容器において変形及び気泡が見られた。
【0075】
これに対して、荷重たわみ温度が100℃以上のグリコール変性ポリエチレンテレフタレート又はポリカーボネートで構成された第2外層を備える試験例1~6の積層シートはいずれも、透明性に優れ、艶があり、ボイル加熱後の容器もその形状及び透明性を維持していた。
【0076】
以上、積層シートについて、具体的な実施形態及び試験例を示して詳細に説明したが、本発明はそれに限定されるものではない。本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 積層シート
2 内層
3 中間層
4 第一外層
5 第二外層
10 容器
12 底面部
14 周壁部
16 フランジ部
20 食品
30 蓋体
100 食品包装体
図1
図2
図3