(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112594
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】制御回路及び電気機器
(51)【国際特許分類】
H01H 9/54 20060101AFI20240814BHJP
B25F 5/00 20060101ALI20240814BHJP
H01H 1/60 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
H01H9/54 Z
B25F5/00 G
B25F5/00 C
H01H1/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017736
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000227386
【氏名又は名称】日東工器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【弁理士】
【氏名又は名称】海老 裕介
(72)【発明者】
【氏名】井戸田 淳
【テーマコード(参考)】
3C064
5G034
5G051
【Fターム(参考)】
3C064AA08
3C064AB02
3C064AC02
3C064BA01
3C064BA04
3C064BA06
3C064BA18
3C064BB08
3C064BB52
3C064CA03
3C064CA06
3C064CA29
3C064CA54
3C064CA60
3C064CA61
3C064CA80
3C064CA81
3C064CB09
3C064CB17
3C064CB64
3C064CB71
3C064DA08
3C064DA11
3C064DA37
3C064DA56
3C064DA73
5G034AA14
5G051QA07
(57)【要約】
【課題】アーク電流をより適切に制御できるようにした制御回路を提供する
【解決手段】当該制御回路40は、マイクロコンピュータ20と、マイクロコンピュータ20の入力ポート32に入力される起動信号の状態を切り替えるための起動スイッチ14と、起動スイッチ14に直列に接続されたアーク用FET28と、を備える。アーク用FET28は、マイクロコンピュータ20の出力ポート30からの出力電圧によってON/OFF状態が切り替わる。起動スイッチ14とアーク用FET28がともにON状態であるときには、起動スイッチ14の接点にアーク放電を生じさせるのに十分な大きさのアーク電流(0.9A)が流れる。マイクロコンピュータ20は、起動スイッチ14がON状態に切り替ってから所定のアーク時間(10ミリ秒)が経過したら、アーク用FET28をOFF状態に切り替えて起動スイッチ14にアーク電流が流れないようにする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力部及び出力部を有する制御部と、
前記制御部の前記入力部に入力される起動信号の状態を切り替えるための起動スイッチと、
前記起動スイッチに直列に接続され、前記制御部の前記出力部からの出力信号によってON/OFF状態が切り替えられるようにされたアーク用スイッチング素子と、
を備え、
前記起動スイッチと前記アーク用スイッチング素子がともにON状態であるときに、前記起動スイッチの接点にアーク放電を生じさせるのに十分な大きさのアーク電流が前記起動スイッチ及び前記アーク用スイッチング素子を通って流れるようにされており、
前記制御部は、前記起動スイッチがON状態に切り替ってから所定のアーク時間が経過したら前記アーク用スイッチング素子をOFF状態に切り替えて前記起動スイッチに前記アーク電流が流れないようにする、制御回路。
【請求項2】
前記制御部は、前記アーク用スイッチング素子をOFF状態に切り替えてから所定の待機時間が経過するまでは、前記起動スイッチの状態に関わらず前記アーク用スイッチング素子をON状態に切り替えないようにされた、請求項1に記載の制御回路。
【請求項3】
主電源に対して前記アーク用スイッチング素子と直列に接続されたアーク用抵抗をさらに備え、前記アーク用抵抗は、前記起動スイッチに印加される前記アーク電流が8V以上の電圧で0.4A以上となるように選択される、請求項1に記載の制御回路。
【請求項4】
主電源からの電圧を所定の制御用電圧にまで降圧する制御用電圧生成回路と、
前記制御用電圧生成回路と直列に接続され、前記起動スイッチのON/OFF状態に合わせてON/OFF状態が切り替るようにされた制御信号用スイッチング素子と、
をさらに備え、
前記制御用電圧生成回路からの電圧が前記起動信号として前記入力部に入力されるようにされており、
前記起動スイッチがOFF状態のときには、前記制御信号用スイッチング素子がOFF状態となって、前記入力部に入力される前記起動信号がハイレベルとなり、
前記起動スイッチがON状態のときには、前記起動スイッチを通って流れる微小電流によって前記制御信号用スイッチング素子がON状態となって、前記入力部に入力される前記起動信号がローレベルとなるようにされた、請求項1に記載の制御回路。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の制御回路と、
前記制御回路の前記制御部によって制御されるモータと、
前記起動スイッチを操作するための起動操作部材と、
を備える、電動工具。
【請求項6】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の制御回路を備える電気機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動工具などの電気機器において使用される制御回路に関し、より詳細には起動スイッチを備える制御回路及びそれを備える電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電動工具などの種々の電気機器の操作を行なうために機械式のスイッチがよく使用されている。機械式のスイッチは、金属接点を開閉することにより、スイッチの端子間の導通状態(ON/OFF状態)を切り替えるようになっている。接点には種々の金属材料が使われるが、伝導率が大きく接触抵抗が低くなる銀又は銀合金が広く使用されている。一方で銀接点には酸化や硫化により被膜が形成されやすいという短所もある。例えば、電動工具において、外部交流電源やバッテリなどの主電源とモータとの間にスイッチを配置して、主電源からモータに供給される電力をスイッチで直接ON/OFFさせるようにした場合には、スイッチの接点間に比較的に大きな電流が流れることになるため、接点間でアーク放電が生じ易い。アーク放電が発生すると接点に形成されていた被膜が破壊されるため、被膜による接触抵抗の増加を防止することができる。
【0003】
一方で、電動工具の制御においては、スイッチの操作をマイクロコンピュータ等で検出して、マイクロコンピュータがモータ駆動回路を制御してモータを駆動させるようにすることも行なわれている。この場合には、スイッチには、モータに印加される電流は直接的には流れず、マイクロコンピュータに対して起動信号を送るために必要となる微小電流のみが流れるようになる。そうすると、スイッチの接点には被膜を破壊するほどのアーク放電は生じなくなり、接点に形成された被膜による接触不良が生じる可能性がある。
【0004】
このような微小電流に対して使用されるスイッチに形成される被膜を除去するために、例えば特許文献1では、微小電流が流れる負荷と並列に微分回路を接続して、接点が閉じたときに接点に流れる電流を一時的に増加させてアークにより被膜を除去するようにしている。微分回路は直列に接続されたコンデンサと抵抗からなり、接点が閉じてからコンデンサが充電されるまでの間、この微分回路を流れる追加の電流がスイッチに流れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の微分回路を用いた場合、追加の電流は接点が閉じた直後からコンデンサが充電されていくに従って徐々に小さくなっていく。アーク放電を生じさせるのに必要な電流は接点を閉じた直後に流れる電流だけであり、その後の電流は被膜の破壊にほぼ貢献しない電流となる。また、スイッチを閉じたときには、コンデンサから放電電流が流れることになる。これら電流は微分回路の抵抗に流れることになり、そのような比較的に大きな電流が流れる抵抗は大きく発熱することになる。さらには、スイッチが短時間の間に繰り返し開閉されると、その都度、大きな電流が抵抗に流れることになり、抵抗はさらに大きく発熱する。そのため、このような微分回路においては、定格電力の大きい抵抗を選定したり、放熱や冷却を考慮した発熱対策を施したりする必要がある。それにより、回路基板やその周辺構造が大型化する傾向にある。また、無駄な電力を消費することにもなり、特に主電源としてバッテリを使用している場合には、駆動時間が低下する虞もある。
【0007】
そこで本発明は、上記従来技術の問題に鑑みて、アーク電流をより適切に制御できるようにした制御回路、及びそのような制御回路を備える電動工具などの電気機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明は、
入力部及び出力部を有する制御部と、
前記制御部の前記入力部に入力される起動信号の状態を切り替えるための起動スイッチと、
前記起動スイッチに直列に接続され、前記制御部の前記出力部からの出力信号によってON/OFF状態が切り替えられるようにされたアーク用スイッチング素子と、
を備え、
前記起動スイッチと前記アーク用スイッチング素子がともにON状態であるときに、前記起動スイッチの接点にアーク放電を生じさせるのに十分な大きさのアーク電流が前記起動スイッチ及び前記アーク用スイッチング素子を通って流れるようにされており、
前記制御部は、前記起動スイッチがON状態に切り替ってから所定のアーク時間が経過したら前記アーク用スイッチング素子をOFF状態に切り替えて前記起動スイッチに前記アーク電流が流れないようにする、制御回路を提供する。
【0009】
当該制御回路においては、制御部がアーク用スイッチング素子を操作することにより、起動スイッチがON状態に切り替ってから所定のアーク時間の間だけ起動スイッチにアーク電流が流れるように制御されるようになっている。そのため、アーク放電を発生させるのに必要十分となる極短い時間に所定のアーク時間を設定することにより、アーク電流が流れる時間を必要最小限にして、他の回路素子が不要に加熱されることを防止することが可能となる。また、消費電力を低減させることも可能となる。
【0010】
また、前記制御部は、前記アーク用スイッチング素子をOFF状態に切り替えてから所定の待機時間が経過するまでは、前記起動スイッチの状態に関わらず前記アーク用スイッチング素子をON状態に切り替えないようにすることができる。
【0011】
接点上での酸化や硫化による被膜はそれほど短い時間には形成されないため、短時間の間にアーク放電を繰り返し発生させる必要は通常ない。上記待機時間を設定することにより、その待機時間の間に起動スイッチのON/OFFが繰り返されたときにはアーク電流が流れないようにすることができ、必要以上にアーク放電を発生させないようにすることができる。これにより、他の回路素子が不要に加熱されることをさらに防止することが可能となる。
【0012】
さらに、主電源に対して前記アーク用スイッチング素子と直列に接続されたアーク用抵抗をさらに備え、前記アーク用抵抗は、前記起動スイッチに印加される前記アーク電流が8V以上の電圧で0.4A以上となるように選択されるようにすることができる。
【0013】
また、
主電源からの電圧を所定の制御用電圧にまで降圧する制御用電圧生成回路と、
前記制御用電圧生成回路と直列に接続され、前記起動スイッチのON/OFF状態に合わせてON/OFF状態が切り替るようにされた制御信号用スイッチング素子と、
をさらに備え、
前記制御用電圧生成回路からの電圧が前記起動信号として前記入力部に入力されるようにされており、
前記起動スイッチがOFF状態のときには、前記制御信号用スイッチング素子がOFF状態となって前記入力部に入力される前記起動信号がハイレベルとなり、
前記起動スイッチがON状態のときには、前記起動スイッチを通って流れる微小電流によって前記制御信号用スイッチング素子がON状態となって、前記入力部に入力される前記起動信号がローレベルとなるようにすることができる。
【0014】
また本発明は、
上述の何れかの制御回路と、
前記制御回路の前記制御部によって制御されるモータと、
前記起動スイッチを操作するための起動操作部材と、
を備える、電動工具を提供する。
【0015】
さらに本発明は、上述のいずれかの制御回路を備える電気機器を提供する。
【0016】
以下、本発明に係る制御回路及び電気機器の実施形態を添付図面に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電気機器(ベルト式研削工具)の斜視図である。
【
図2】
図1のベルト式研削工具の上面断面図である。
【
図3】
図1のベルト式研削工具が備える、本発明の第1の実施形態に係る制御回路の回路ブロック図である。
【
図4】
図3の制御回路の動作を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の第2の実施形態に係る制御回路の回路ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態に係る電気機器1は、
図1に示すように、無端研削ベルト2を回転駆動して加工対象物の研削作業を行なうようにしたベルト式研削工具1である。このベルト式研削工具1は、ハウジング3の後端部に設けられたバッテリ装着部4に着脱可能に装着されるバッテリ5を主電源として動作する。
【0019】
図2に示すように、ベルト式研削工具1のハウジング3内には、モータ10と、モータ10を制御するための回路が搭載された回路基板12と、起動スイッチ14と、が配置されている。この起動スイッチ14は、銀接点を有するものである。ここでの銀接点には、接点が銀により形成されたものだけではなく、銀とニッケル、錫、タングステンなどの他の金属とで構成される銀合金により形成されたものも含まれる。ハウジング3の外側には起動操作部材16が配置されており、この起動操作部材16と起動スイッチ14とは連結部材18により連結されている。起動操作部材16を操作することにより、連結部材18を介して起動スイッチ14がON状態とOFF状態との間で切り替るようになっている。バッテリ5が装着された状態で起動操作部材16を操作して起動スイッチ14をON状態とすることにより、モータ10の駆動が開始されて無端研削ベルト2が回転駆動するようになっている。
【0020】
回路基板12には、
図3に示すように、マイクロコンピュータ(制御部)20と、モータ10を制御するためのモータ駆動回路22と、バッテリ5から供給される電圧を制御用の電圧にまで降圧する制御用電圧生成回路24とが搭載されている。当該実施形態において主電源となるバッテリ5は、満充電時に約18Vの電圧を出力する。制御用電圧生成回路24は、このバッテリ5の電圧を例えば3.3Vの制御用電圧にまで降圧するDC/DCコンバータにより構成されている。制御用電圧生成回路24により降圧された電圧は、マイクロコンピュータ20に供給される。バッテリ5がバッテリ装着部4に装着されることにより、マイクロコンピュータ20に自動的に電力が供給されてマイクロコンピュータ20は起動するようになっている。バッテリ5に対して、起動スイッチ14、アーク用抵抗26、及びアーク用FET(アーク用スイッチング素子)28が直列に配置されている。アーク用FET28のゲートは、抵抗29を介してマイクロコンピュータ20の出力ポート(出力部)30に接続されている。マイクロコンピュータ20の入力ポート(入力部)32は、プルアップ抵抗34を介して制御用電圧に接続されている。また、制御用電圧生成回路24に対してマイクロコンピュータ20と並列に制御信号用FET(制御信号用スイッチング素子)36が配置されている。この制御信号用FET36のゲートは、抵抗38及び起動スイッチ14を介してバッテリ5に接続されている。起動スイッチ14と、回路基板12に搭載された上述の各種素子とにより、制御回路40が構成される。
【0021】
バッテリ5が装着されて、起動スイッチ14がOFF状態のときには、マイクロコンピュータ20の入力ポート32には制御用電圧の3.3V(ハイレベル電圧)が起動信号として入力される。マイクロコンピュータ20は、入力ポート32にハイレベル電圧が起動信号として入力されることにより、起動スイッチ14がOFF状態であると判断する。起動スイッチ14がON状態に切り替ると、制御信号用FET36のゲートにバッテリ5からの電流が入力されて制御信号用FET36がON状態となる。これにより制御信号用FET36がON状態となり入力ポート32に入力される電圧がほぼ0V(ローレベル電圧)になる。マイクロコンピュータ20は、入力ポート32にローレベル電圧が起動信号として入力されることにより、起動スイッチ14がON状態であると判断する。マイクロコンピュータ20は入力ポート32がローレベルになった、すなわち起動スイッチ14がONになったと判断したら、モータ駆動回路22を動作させてモータ10の駆動を開始する。なお、本実施形態におけるモータ10は、ブラシレスモータである。また、抵抗38の抵抗値は10kΩであり、バッテリ5の電圧が18Vの場合に起動スイッチ14を通って制御信号用FET36のゲートに流れる電流は、1.8mAの微小電流である。
【0022】
アーク用FET28は、通常はOFF状態となっているが、マイクロコンピュータ20の出力ポート30の出力電圧(出力信号)がハイレベルになるとON状態になる。起動スイッチ14とアーク用FET28がともにON状態になると、起動スイッチ14及びアーク用抵抗26を通ってアーク電流が流れるようになる。本実施形態におけるアーク用抵抗26の抵抗値は20Ωであり、バッテリ5の電圧が18Vの場合のアーク電流は約0.9Aとなる。
【0023】
一般に、銀接点においてアーク放電を発生させるのに必要な最小アーク電圧は8V程度で、最小アーク電流は0.4A程度である。本実施形態においては、アーク用FET28がOFF状態のときには、起動スイッチ14に流れる電流は1.8mAの微小電流となり起動スイッチ14の接点にアーク放電は実質的に生じない。一方で、アーク用FET28がON状態のときには、起動スイッチ14には約0.9Aの電流が追加的に流れるようになり、これは接点にアーク放電を生じさせるのに十分な大きさのアーク電流となる。このアーク電流により銀接点にアーク放電が生じ、銀接点に生じた被膜が破壊されて適切な接触抵抗が維持されるようになる。
【0024】
図3に示した本発明の第1の実施形態に係る制御回路40の動作は、
図4に示すフローチャートの通りとなる。バッテリ5が装着されるとマイクロコンピュータ20に制御用電圧が印加されてマイクロコンピュータ20が起動し、制御が開始される(S1)。マイクロコンピュータ20は、出力ポート30からハイレベル電圧を出力信号として出力して、アーク用FET28をON状態にする(S2)。次に入力ポート32の状態を確認して(S3)、ローレベル(すなわち、起動スイッチ14がON)になったら、マイクロコンピュータ20は内蔵する第1タイマーをスタートさせる(S4)。第1タイマーが所定のアーク時間以上となるまで待機する(S5)。本実施形態においては、アーク時間は10ミリ秒に設定されている。第1タイマーがアーク時間(10ミリ秒)以上経過したら、出力ポート30をローレベルにしてアーク用FET28をOFF状態とする(S6)。よって、起動スイッチ14がON状態に切り替ってから所定のアーク時間(10ミリ秒)の間だけ約0.9Aのアーク電流が起動スイッチ14を流れて起動スイッチ14の接点にアーク放電を生じさせ、アーク時間経過後はアーク用FET28がOFF状態となり起動スイッチ14にアーク電流が流れないようになる。マイクロコンピュータ20はさらに、第1タイマーを停止してリセットし、別の第2タイマーをスタートさせ、さらにモータ駆動回路22の駆動を開始してモータ10を駆動させる(S6)。マイクロコンピュータ20は入力ポート32の状態を監視して、入力ポート32がハイレベル(すなわち、起動スイッチ14がOFF状態)になったら(S7)、モータ駆動回路22を停止してモータ10の回転を停止させる(S8)。
【0025】
S3において入力ポート32が一旦ローレベルとなって第1タイマーがスタート(S4)した後に、第1タイマーがアーク時間以上経過する前に入力ポート32がハイレベルとなったとき、すなわち、起動スイッチ14がONになってからアーク時間が経過する前にOFFに戻されたときには、第1タイマーを停止してリセットする(S9)。また、S8において入力ポート32がハイレベルとなりモータ10の駆動を停止(S8)させた後に制御がS3に戻るが、通常はこの時点ではまだ入力ポート32はハイレベルのままである。よって、マイクロコンピュータ20は、S9を行なった後に、第2タイマーが所定の待機時間以上経過しているかを確認する(S10)。なお、本実施形態においては、待機時間は60秒に設定されている。第2タイマーが待機時間(60秒)以上経過したら、マイクロコンピュータ20は出力ポート30をハイレベルにしてアーク用FET28をON状態にする(S2)。よって、起動スイッチ14が一度ONになってからOFFに切り替った後に、待機時間(60秒)以上経過する前に再び起動スイッチ14がONになったときには、アーク用FET28はOFF状態のままとなる。この場合、起動スイッチ14にアーク電流は流れず、よって起動スイッチ14の接点にアーク放電は発生しない。一方で、待機時間(60秒)が経過した後に起動スイッチ14がONになったときには、アーク用FET28はON状態となっているため、起動スイッチ14にアーク電流が流れてアーク放電が生じることになる。このようにすることにより、起動スイッチ14が短時間の間に繰り返し操作されたときに、その都度アーク電流が流れることが防止される。通常、接点に生じる酸化被膜は数分から数時間程度の短時間の間に大きく成長することはないため、アーク放電を短時間の間に繰り返し発生させる必要はない。また、比較的大きな電流であるアーク電流がアーク用抵抗26に短時間の間に繰り返し流れるとアーク用抵抗26が過度に発熱する虞もあるが、上記構成によりアーク用抵抗26の過熱が防止される。
【0026】
本発明の第2の実施形態に係る制御回路50は、商用交流電源52を主電源とするものである。当該制御回路50は、商用交流電源からの交流電圧を直流電圧に変換するための整流回路54を備える。また、整流回路54により生成された直流電圧(例えば100V)をアーク用電圧として適当な電圧(例えば18V)に降圧するためのアーク用電圧生成回路56を備える。このアーク用電圧生成回路56はDC/DCコンバータにより構成されている。他の構成は、上述の第1の実施形態に係る制御回路40と同様である。なお、アーク用電圧生成回路56は必ずしも必要ではなく、整流回路54からの直流電圧を起動スイッチ14に直接印加してアーク放電を発生させるようにしてもよい。
【0027】
本発明の上記実施形態に係る制御回路においては、マイクロコンピュータの制御によって、起動スイッチにアーク電流が流れる時間が予め設定されたアーク時間の間だけに限定される。そのため、アーク放電を発生させるのに必要十分となる極短い時間(例えば10ミリ秒)にアーク時間を設定することにより、アーク電流が流れる時間を必要最小限にして、アーク抵抗に流れる電流量を必要最小限に抑えることができる。これにより、アーク抵抗が不要に加熱されることを防止することが可能となる。また、消費電力を低減させることも可能となる。
【0028】
以上に本発明の実施形態について説明をしたが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態ではベルト式研削工具を一例として説明しているが、グラインダや電動ドライバなどの他の電動工具とすることもできる。また、電動工具以外の、例えばエアポンプやコンプレッサ、空気式マッサージ具などの他の電気機器に上記制御回路を採用することもできる。また、上記実施形態では制御部としてマイクロコンピュータを採用しているが、ASICやFPGAなどの他の制御用素子により制御部を構成することもできる。同様に、上記実施形態ではスイッチング素子としてFET(電界効果トランジスタ)を採用しているが、他の形態のトランジスタなどの素子とすることもできる。上記実施形態において示した電圧値、抵抗値、時間などの具体的数値は単なる例示であり、当然に他の値とすることもできる。
【符号の説明】
【0029】
1 電気機器、ベルト式研削工具
2 無端研削ベルト
3 ハウジング
4 バッテリ装着部
5 バッテリ
10 モータ
12 回路基板
14 起動スイッチ
16 起動操作部材
18 連結部材
20 マイクロコンピュータ(制御部)
22 モータ駆動回路
24 制御用電圧生成回路
26 アーク用抵抗
28 アーク用FET(アーク用スイッチング素子)
29 抵抗
30 出力ポート(出力部)
32 入力ポート(入力部)
34 プルアップ抵抗
36 制御信号用FET(制御信号用スイッチング素子)
38 抵抗
40 制御回路
50 制御回路
52 商用交流電源
54 整流回路
56 アーク用電圧生成回路