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特開2024-11260信号処理装置、センサ装置、及び信号処理方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011260
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】信号処理装置、センサ装置、及び信号処理方法
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/16 20060101AFI20240118BHJP
   G01L 5/00 20060101ALN20240118BHJP
【FI】
G01L1/16 G
G01L5/00 101Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113133
(22)【出願日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100224546
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 龍
(72)【発明者】
【氏名】石▲崎▼ 守
【テーマコード(参考)】
2F051
【Fターム(参考)】
2F051AA17
2F051AB08
2F051AC01
(57)【要約】
【課題】センサに付与される外部刺激を正しく評価できる信号処理装置、センサ装置、及び信号処理方法を提供する。
【解決手段】信号処理装置は、外部刺激に伴って生じる電極の電位の変化に基づく信号を出力するセンサの信号を処理する信号処理装置であって、信号の時系列データである信号データを取得する信号データ取得部と、信号データを時間積分することにより得られる時間積分値を、信号データの一定割合の減衰にかかる時間を示す時定数で除することにより、信号データの減衰を補償するための補正データを算出する補正データ算出部と、補正データを信号データに加算する補正を行うことにより、補正後の信号データである補正信号データを生成する補正信号データ生成部と、を備える。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部刺激に伴って生じる電極の電位の変化に基づく信号を出力するセンサの前記信号を処理する信号処理装置であって、
前記信号の時系列データである信号データを取得する信号データ取得部と、
前記信号データを時間積分することにより得られる時間積分値を、前記信号データの一定割合の減衰にかかる時間を示す時定数で除することにより、前記信号データの減衰を補償するための補正データを算出する補正データ算出部と、
前記補正データを前記信号データに加算する補正を行うことにより、補正後の前記信号データである補正信号データを生成する補正信号データ生成部と、
を備える、信号処理装置。
【請求項2】
予め取得された信号データから得られる時定数を、前記信号データの前記時定数として設定する時定数設定部を更に備える、請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項3】
前記センサの前記電極と前記センサの対向電極との間が有する抵抗成分と、前記電極と前記センサの前記対向電極との間に生じる静電容量との積を、前記信号データの前記時定数として設定する時定数設定部を更に備える、請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項4】
前記信号データに含まれる複数の信号値のうち、前記外部刺激に伴って生じる前記信号データの時間変化を示すための基準となる前記信号値をベースラインとして設定するベースライン設定部を更に備え、
前記補正データ算出部は、前記ベースラインが差し引かれた前記信号データを時間積分することにより、前記時間積分値を算出する、請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項5】
前記外部刺激に伴って生じる前記信号データの時間変化の開始時間を検出する変化検出部を更に備え、
前記ベースライン設定部は、前記開始時間よりも所定時間前の時間における前記信号値を、前記ベースラインとして設定する、請求項4に記載の信号処理装置。
【請求項6】
前記外部刺激に伴って生じる前記信号データの時間変化の開始時間を検出する変化検出部を更に備え、
前記補正信号データ生成部は、前記開始時間よりも所定時間前の時間以降の前記補正データを用いて、前記補正信号データを生成する、請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項7】
前記外部刺激に伴って生じる前記信号データの時間変化の終了時間を検出する変化検出部を更に備え、
前記補正信号データ生成部は、前記終了時間よりも所定時間後の時間以前の前記補正データを用いて、前記補正信号データを生成する、請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項8】
前記電極の電荷蓄積のリセットを制御するリセット制御部を更に備え、
前記リセット制御部は、前記終了時間よりも所定時間後の時間以降に前記電荷蓄積のリセットを実行させる、請求項7に記載の信号処理装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の信号処理装置と、
前記電位の変化に基づく前記信号を出力する前記センサと、
を備える、センサ装置。
【請求項10】
外部刺激に伴って生じる電極の電位の変化に基づく信号を出力するセンサの前記信号を処理する信号処理方法であって、
前記信号の時系列データである信号データを取得するステップと、
前記信号データを時間積分することにより得られる時間積分値を、前記信号データの一定割合の減衰にかかる時間を示す時定数で除することにより、前記信号データの減衰を補償するための補正データを算出するステップと、
前記補正データを前記信号データに加算する補正を行うことにより、補正後の前記信号データである補正信号データを生成するステップと、
を備える、信号処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号処理装置、センサ装置、及び信号処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばヘルスケア及びセキュリティなどの分野において、圧力センサ、変位センサ、及び指紋センサといったセンサが注目されている。このようなセンサとして、例えば特許文献1~3に記載されたセンサが知られている。このようなセンサは、外部刺激に伴って生じる電極の電位変化を検出し、その電位変化に応じた信号を出力する。この信号に基づいて外部刺激に関する情報が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-163619号公報
【特許文献2】特開2015-097068号公報
【特許文献3】国際公開第2021/201247号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したようなセンサから出力される信号は、外部刺激が印加されてから時間の経過と共に徐々に減衰していく傾向がある。このような信号の減衰は、外部刺激の過小評価或いは外部刺激の見逃しといった事態を招き得る。従って、このような減衰が生じた信号では、外部刺激を正しく評価することが困難となり得る。
【0005】
本発明は、センサに付与される外部刺激を正しく評価できる信号処理装置、センサ装置、及び信号処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る信号処理装置は、外部刺激に伴って生じる電極の電位の変化に基づく信号を出力するセンサの信号を処理する信号処理装置であって、信号の時系列データである信号データを取得する信号データ取得部と、信号データを時間積分することにより得られる時間積分値を、信号データの一定割合の減衰にかかる時間を示す時定数で除することにより、信号データの減衰を補償するための補正データを算出する補正データ算出部と、補正データを信号データに加算する補正を行うことにより、補正後の信号データである補正信号データを生成する補正信号データ生成部と、を備える。
【0007】
本発明の別の側面に係るセンサ装置は、上述した信号処理装置と、電位の変化に基づく信号を出力するセンサと、を備える。
【0008】
本発明の更に別の側面に係る信号処理方法は、外部刺激に伴って生じる電極の電位の変化に基づく信号を出力するセンサの信号を処理する信号処理方法であって、信号の時系列データである信号データを取得するステップと、信号データを時間積分することにより得られる時間積分値を、信号データの一定割合の減衰にかかる時間を示す時定数で除することにより、信号データの減衰を補償するための補正データを算出するステップと、補正データを信号データに加算する補正を行うことにより、補正後の信号データである補正信号データを生成するステップと、を備える。
【0009】
上述した信号処理装置、センサ装置、及び信号処理方法では、外部刺激がセンサに付与されると、センサの電極の電位に変化が生じ、その電位の変化に基づく信号がセンサから出力される。この信号は、外部刺激が付与されてから時間の経過と共に徐々に減衰する傾向がある。このような信号の減衰は、外部刺激の評価に影響を及ぼし得る。これに対し、本発明者は、このような減衰の影響を低減すべく、鋭意検討を重ねた結果、信号データの減衰を補償する補正を行うことが可能であることを見出した。具体的には、本発明者は、信号データの時間積分値を時定数で除することによって得られる補正データが、信号データの減衰量に相当することを見出した。そして、本発明者は、このように算出された補正データを信号データに加算する補正を行うことにより、信号データの減衰が補償された補正信号データを得るに至った。このように減衰が補償された補正信号データを用いて外部刺激を評価すれば、信号データの減衰に起因する外部刺激の過小評価或いは外部刺激の見逃しといった事態を抑制することができる。これにより、外部刺激の評価を正しく行うことが可能になる。
【0010】
上述した信号処理装置は、予め取得された信号データから得られる信号データの時定数を、信号データの時定数として設定する時定数設定部を更に備えてもよい。時定数は、画素毎に値を有してよい。時定数の設定方法としては、製造直後に、所定の刺激(例えば一定の刺激値)を印加した時に取得された信号データから得られる時定数を、信号データの時定数として設定してよい。この場合、製品に最初から時定数を設定できる。あるいは、他の時定数の設定方法として、使用直前に、所定の刺激(例えば一定の刺激値)を印加した時に取得された信号データから得られる時定数を、信号データの時定数として設定してよい。この場合、信号データの時定数を容易に求めることができる。
【0011】
上述した信号処理装置は、センサの電極とセンサの対向電極との間が有する抵抗成分と、電極とセンサの対向電極との間に生じる静電容量との積を、信号データの時定数として設定する時定数設定部を更に備えてもよい。この場合、センサが有する抵抗成分及び静電容量を利用して、信号データの時定数を容易に求めることができる。
【0012】
上述した信号処理装置は、信号データに含まれる複数の信号値のうち、外部刺激に伴って生じる信号データの時間変化を示すための基準となる信号値をベースラインとして設定するベースライン設定部を更に備え、補正データ算出部は、ベースラインが差し引かれた信号データを時間積分することにより、時間積分値を算出してもよい。この場合、信号データのベースラインが0からずれていたとしても、ベースラインのずれの影響を加味して補正データを算出し、ベースラインのずれを補償しながら補正信号データを生成できる。その結果、補正信号データに基づく外部刺激の評価をより正しく行うことが可能となる。
【0013】
上述した信号処理装置は、外部刺激に伴って生じる信号データの時間変化の開始時間を検出する変化検出部を更に備え、ベースライン設定部は、開始時間よりも所定時間前の時間における信号値を、ベースラインとして設定してもよい。この場合、予め実験等によりベースラインを測定することなく、信号データからベースラインを直接的に求めることができる。
【0014】
上述した信号処理装置は、外部刺激に伴って生じる信号データの時間変化の開始時間を検出する変化検出部を更に備え、補正信号データ生成部は、開始時間よりも所定時間前の時間以降の補正データを用いて、補正信号データを生成してもよい。この場合、開始時間よりも所定時間前の時間以前の信号データに変動が生じていたとしても、その変動成分を加味せずに補正信号データを得ることができる。その結果、補正信号データに基づく外部刺激の評価をより正しく行うことが可能となる。
【0015】
上述した信号処理装置は、外部刺激に伴って生じる信号データの時間変化の終了時間を検出する変化検出部を更に備え、補正信号データ生成部は、終了時間よりも所定時間後の時間以前の補正データを用いて、補正信号データを生成してもよい。この場合、終了時間よりも所定時間後の時間以降の信号データに変動が生じていたとしても、その変動成分を加味せずに補正信号データを得ることができる。その結果、補正信号データに基づく外部刺激の評価をより正しく行うことが可能となる。
【0016】
上述した信号処理装置は、電極の電荷蓄積のリセットを制御するリセット制御部を更に備え、リセット制御部は、終了時間よりも所定時間後の時間以降に電荷蓄積のリセットを実行させてもよい。この場合、電極に残存する電荷が次の信号処理に影響を及ぼしてしまう事態を抑制できる。その結果、補正信号データに基づく外部刺激の評価をより正しく行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、センサに付与される外部刺激を正しく評価できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1(a)は、第1実施形態に係るセンサ装置が備えるセンサの例を示す断面図である。図1(b)は、第1実施形態に係るセンサ装置が備えるセンサの別の例を示す断面図である。図1(c)は、第1実施形態に係るセンサ装置が備えるセンサの別の例を示す断面図である。
図2図2は、図1(a)のセンサが備える薄膜トランジスタ層の構成の例を示す断面図である。
図3図3は、図2の薄膜トランジスタ層の構成を示す平面図である。
図4図4は、図2の薄膜トランジスタ層において構成される薄膜トランジスタアレイの回路構成を示す図である。
図5図5は、図1(a)のセンサが備える薄膜トランジスタ層の構成の別の例を示す断面図である。
図6図6は、図5の薄膜トランジスタ層の構成を示す平面図である。
図7図7は、図5の薄膜トランジスタ層において構成される薄膜トランジスタアレイの回路構成を示す図である。
図8図8(a)は、センサ装置の構成の例を示す図である。図8(b)は、センサ装置の構成の別の例を示す図である。
図9図9は、信号処理装置の構成の例を示す図である。
図10図10は、信号処理装置が備える制御回路の機能的構成の例を示す図である。
図11図11(a)は、信号データの例を示すグラフである。図11(b)は、信号データの別の例を示すグラフである。
図12図12(a)は、図1(a)のセンサの画素電極の近傍の回路構成を示す回路図である。図12(b)は、図12(a)の回路の等価回路図である。
図13図13(a)は、図1(b)のセンサの画素電極の近傍の回路構成を示す回路図である。図13(b)は、図13(a)の回路の等価回路図である。
図14図14(a)は、図1(c)のセンサの画素電極の近傍の回路構成を示す回路図である。図14(b)は、図14(a)の回路の等価回路図である。
図15図15(a)は、センサに対する外部刺激条件の例を示すグラフである。図15(b)は、図15(a)の外部刺激条件の下で取得される1画素分の信号データを示すグラフである。図15(c)は、図15(b)の信号データから算出した、信号データを補正するための補正データを示すグラフである。図15(d)は、図15(c)の補正データによって補正された補正信号データを示すグラフである。
図16図16(a)は、補正データと時定数の大きさとの関係を示すグラフである。図16(b)は、補正信号データと時定数の大きさとの関係を示すグラフである。
図17図17(a)は、センサに対する外部刺激条件の別の例を示すグラフである。図17(b)は、図17(a)の外部刺激条件の下で取得される1画素分の信号データを示すグラフである。図17(c)は、図17(b)の信号データから算出した、信号データを補正するための補正データを示すグラフである。図17(d)は、図17(c)の補正データによって補正された補正信号データを示すグラフである。
図18図18(a)は、センサに対する外部刺激条件の別の例を示すグラフである。図18(b)は、図18(a)の外部刺激条件の下で取得される1画素分の信号データを示すグラフである。図18(c)は、図18(b)の信号データから算出した、信号データを補正するための補正データを示すグラフである。図18(d)は、図18(c)の補正データによって補正された補正信号データを示すグラフである。
図19図19(a)は、センサに対する外部刺激条件の別の例を示すグラフである。図19(b)は、図19(a)の外部刺激条件の下で取得される1画素分の信号データを示すグラフである。図19(c)は、図19(b)の信号データから算出した、信号データを補正するための補正データを示すグラフである。図19(d)は、図19(c)の補正データによって補正された補正信号データを示すグラフである。図19(e)は、図19(d)の補正信号データからベースラインを差し引くことにより得られる補正信号データを示すグラフである。
図20図20(a)は、センサに対する外部刺激条件の別の例を示すグラフである。図20(b)は、図20(a)の外部刺激条件の下で取得される1画素分の信号データを示すグラフである。図20(c)は、図20(b)の信号データから算出した、信号データを補正するための補正データを示すグラフである。図20(d)は、図20(c)の補正データによって補正された補正信号データを示すグラフである。図20(e)は、図20(d)の補正信号データからベースラインを差し引くことにより得られる補正信号データを示すグラフである。
図21図21は、第1実施形態に係る信号処理方法の例を示すフローチャートである。
図22図22は、信号データ補正部の各機能を実現するハードウェア構成の例を示す図である。
図23図23は、第2実施形態に係る信号処理装置が備える制御回路の機能的構成の例を示す図である。
図24図24(a)は、センサに対する外部刺激条件の例を示すグラフである。図24(b)は、図24(a)の外部刺激条件の下で取得される1画素分の信号データを示すグラフである。図24(c)は、図24(b)の信号データから算出した、信号データを補正するための補正データを示すグラフである。図24(d)は、図24(c)の補正データによって補正された補正信号データを示すグラフである。図24(e)は、図24(d)の補正信号データからベースラインを差し引くことにより得られる補正信号データを示すグラフである。
図25図25(a)は、センサに対する外部刺激条件の別の例を示すグラフである。図25(b)は、図25(a)の外部刺激条件の下で取得される1画素分の信号データを示すグラフである。図25(c)は、図25(b)の信号データから算出した、信号データを補正するための補正データを示すグラフである。図25(d)は、図25(c)の補正データによって補正された補正信号データを示すグラフである。図25(e)は、図25(d)の補正信号データからベースラインを差し引くことにより得られる補正信号データを示すグラフである。
図26図26は、第2実施形態に係る信号処理方法の例を示すフローチャートである。
図27図27は、第3実施形態に係る信号処理装置が備える制御回路の機能的構成の例を示す図である。
図28図28(a)は、センサに対する外部刺激条件の例を示すグラフである。図28(b)は、図28(a)の外部刺激条件の下で取得される1画素分の信号データを示すグラフである。図28(c)は、図28(b)の信号データから算出した、信号データを補正するための補正データを示すグラフである。図28(d)は、図28(c)の補正データによって補正された補正信号データを示すグラフである。図28(e)は、図28(d)の補正信号データからベースラインを差し引くことにより得られる補正信号データを示すグラフである。
図29図29(a)は、センサに対する外部刺激条件の別の例を示すグラフである。図29(b)は、図29(a)の外部刺激条件の下で取得される1画素分の信号データを示すグラフである。図29(c)は、図29(b)の信号データから算出した、信号データを補正するための補正データを示すグラフである。図29(d)は、図29(c)の補正データによって補正された補正信号データを示すグラフである。図29(e)は、図29(d)の補正信号データからベースラインを差し引くことにより得られる補正信号データを示すグラフである。
図30図30は、第3実施形態に係る信号処理方法の例を示すフローチャートである。
図31図31(a)は、センサに対する外部刺激条件の例を示すグラフである。図31(b)は、図31(a)の外部刺激条件の下で取得される1画素分の信号データを示すグラフである。図31(c)は、図31(b)の信号データから算出した、信号データを補正するための補正データを示すグラフである。図31(d)は、図31(c)の補正データによって補正された補正信号データを示すグラフである。図31(e)は、図31(d)の補正信号データからベースラインを差し引くことにより得られる補正信号データを示すグラフである。
図32図32(a)は、センサに対する外部刺激条件の別の例を示すグラフである。図32(b)は、図32(a)の外部刺激条件の下で取得される1画素分の信号データを示すグラフである。図32(c)は、図32(b)の信号データから算出した、信号データを補正するための補正データを示すグラフである。図32(d)は、図32(c)の補正データによって補正された補正信号データを示すグラフである。図32(e)は、図32(d)の補正信号データからベースラインを差し引くことにより得られる補正信号データを示すグラフである。
図33図33(a)は、センサに対する外部刺激条件の別の例を示すグラフである。図33(b)は、図33(a)の外部刺激条件の下で取得される1画素分の信号データを示すグラフである。図33(c)は、図33(b)の信号データから算出した、信号データを補正するための補正データを示すグラフである。図33(d)は、図33(c)の補正データによって補正された補正信号データを示すグラフである。図33(e)は、図33(d)の補正信号データからベースラインを差し引くことにより得られる補正信号データを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係る信号処理装置、センサ装置、及び信号処理方法について、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を用い、重複する説明を適宜省略する。図面の寸法及び寸法比率は、必ずしも実際の寸法及び寸法比率とは一致していない。
【0020】
[第1実施形態]
図1(a)は、第1実施形態に係るセンサ装置1が備えるセンサ10の例を示す断面図である。センサ装置1は、センサ10に付与される外部刺激を検出する装置である。外部刺激は、センサ10に対して外部から付与される刺激である。このような外部刺激としては、圧力、曲げ、変位、又は振動などが挙げられる。外部刺激としては、センサ10に対する指等の物体の近接動作もあり得る。センサ10は、外部刺激に伴う画素電極25に生じる電位の変化を検出し、当該電位の変化を示す信号を出力する。画素電極25は、後述する走査配線61及び信号配線62(例えば、図3参照)の交点に対応する検知点に対して一個ずつ配置される電極であり、マトリクス状(二次元状)に複数配列されている。なお、本明細書では、走査配線61及び信号配線62の交点に対応する検知点を「画素」と称する。
【0021】
図1(a)に示すように、センサ10は、例えば、基板15と、薄膜トランジスタ層20と、複数の画素電極25と、被刺激層(例えば圧電体層)30と、対向電極35を備える。基板15は、例えば、絶縁材料によって構成された基板である。基板15は、センサ10に付与される外部刺激に応じて変形可能な可撓性を有してよい。図1(a)の場合、基板15の表面15a上には、薄膜トランジスタ層20と、複数の画素電極25と、被刺激層(圧電体層)30と、対向電極35とが順に積層されている。センサ10は、複数の画素電極25上を覆う絶縁層を更に有してもよい。例えば、図1(b)の場合、センサ10aは、複数の画素電極25と被刺激層30の間に接着層30Aを更に有する。図1(c)の場合、センサ10bの基板15上には、対向電極35Aと、薄膜トランジスタ層20と、複数の画素電極25と、被刺激層30が順に積層されている。対向電極35Aは、薄膜トランジスタ層20に内蔵されていてもよい。対向電極35Aと画素電極25の間は、薄膜トランジスタ層20の一部であってもよい。本開示の「センサ」としては、図1(a)~図1(c)のいずれのセンサが用いられてもよい。
【0022】
以下では、基板15の表面15aに沿った一方向をX方向とし、表面15aに沿い且つ当該一方向と直交する方向をY方向とし、表面15aに直交する方向(すなわち、基板15の厚さ方向)をZ方向として説明する。また、本実施形態では、Z方向から見ることを「平面視」と称し、Z方向における基板15側を「下」、その反対側である被刺激層30側を「上」と称することがある。
【0023】
図2は、薄膜トランジスタ層20の構成を示す断面図であり、図1(a)のA部を拡大して示している。図3は、薄膜トランジスタ層20の構成を示す平面図である。図2に示すように、薄膜トランジスタ層20は、基板15の表面15a上に順に積層されたゲート絶縁膜50及び層間絶縁膜51を有する。また、薄膜トランジスタ層20は、基板15の表面15a上においてマトリクス状に配列された薄膜トランジスタ群24を有する。薄膜トランジスタ群24は、画素ごとに一個ずつ配置されており、マトリクス状(二次元状)に配列されている。具体的には、薄膜トランジスタ群24は、X方向及びY方向に沿って一定のピッチでN行M列(M、Nは1以上の整数)に配列されている。
【0024】
薄膜トランジスタ群24のそれぞれは、複数の薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)の集合体である。薄膜トランジスタは、例えば、有機薄膜トランジスタ(有機半導体)又は酸化物薄膜トランジスタ(酸化物半導体)としてよい。以下、マトリクス状に配列された薄膜トランジスタ群24を薄膜トランジスタアレイと称することがある。
【0025】
薄膜トランジスタ群24は、例えば、画素用の薄膜トランジスタ21と、選択用の薄膜トランジスタ22と、を含む。薄膜トランジスタ群24は、例えば、1画素に2個の薄膜トランジスタ21,22を含む。薄膜トランジスタ21は、ゲート電極G1と、ソース電極S1と、半導体層SC1と、ドレイン電極D1とを含む。薄膜トランジスタ22は、ゲート電極G2と、ソース電極S2と、半導体層SC2と、ドレイン電極D2と、を含む。ゲート電極G1及びゲート電極G2は、基板15の表面15a上に配置されており、X方向において互いに離間している。ゲート絶縁膜50は、基板15の表面15a上においてゲート電極G1及びゲート電極G2を覆うように配置されている。ゲート絶縁膜50は、ゲート電極G1とゲート電極G2との間、及びゲート電極G1,G2と他の電極との間を電気的に絶縁する。
【0026】
ソース電極S1、ドレイン電極D1、半導体層SC1、ソース電極S2、ドレイン電極D2、及び半導体層SC2は、ゲート絶縁膜50上に配置されている。ソース電極S1、ドレイン電極D1、及び半導体層SC1は、ゲート絶縁膜50を介してゲート電極G1上に配置されている。ソース電極S2、ドレイン電極D2、及び半導体層SC2は、ゲート絶縁膜50を介してゲート電極G2上に配置されている。層間絶縁膜51は、ゲート絶縁膜50上において、ソース電極S1、ドレイン電極D1、半導体層SC1、ソース電極S2、ドレイン電極D2、及び半導体層SC2を覆うように配置されている。
【0027】
層間絶縁膜51上には、画素電極25が配置されている。層間絶縁膜51は、ソース電極S1、ドレイン電極D1、ソース電極S2、及びドレイン電極D2を含む電極群と、画素電極25との間を電気的に絶縁する。ゲート電極G1は、ゲート絶縁膜50内に形成されたビア配線53と、層間絶縁膜51内に形成されたビア配線54とを介して、画素電極25と電気的に接続されている。ゲート絶縁膜50は、ビア配線53の位置に開口を有する。層間絶縁膜51は、ビア配線54の位置に開口を有する。ソース電極S1は、接続配線55を介して、ドレイン電極D2と電気的に接続されている。
【0028】
複数の画素電極25は、例えば、画素ごとに一個ずつ配置される電極である。複数の画素電極25は、複数の薄膜トランジスタ群24と同様、X方向及びY方向に沿ってN行M列に配列されている。その結果、各画素電極25は、平面視において各薄膜トランジスタ群24と重なるように配置されている。各画素電極25はX方向及びY方向において互いに離間しており、各画素電極25の間の電気絶縁性が確保されている。各画素電極25の間の領域には、電気絶縁性の接着剤が設けられてもよいし、空気層が設けられてもよい。画素電極25の材料としては、例えば、モリブデン(Mо)、アルミニウム(Al)、又は銀(Ag)などの金属、或いはこれらの金属を含む合金が用いられてもよいし、金属粒子を含有する混合物(例えば焼結体など)が用いられてもよい。
【0029】
被刺激層30は、外部刺激を受ける層である。例えば外部刺激として圧力・曲げ・温度を用いる場合、図1(a)の構造を用い、被刺激層30として、圧電体を使用することができる。圧電体の材料としては、例えば、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)、ポリ(ビニリデンジフルオリド-トリフルオロエチレン)共重合体(P(VDF-TrFE))、又はポリ乳酸などが挙げられる。圧電体は、センサ10に対して外部刺激による応力が付与されたときに、圧電体に分極が生じる圧電効果によって、当該応力に応じた電圧を発生する。被刺激層30は、複数の画素電極25と対向電極35(共通電極)との間の電気絶縁性を確保する絶縁層としての機能も有する。
【0030】
あるいは外部刺激として圧力・曲げ・温度を用いる場合、図1(b)の構造を用い、被刺激層30として、圧電体を使用することができる。圧電体の材料としては、例えば、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)、ポリ(ビニリデンジフルオリド-トリフルオロエチレン)共重合体(P(VDF-TrFE))、又はポリ乳酸などが挙げられる。圧電体は、センサ10aに対して外部刺激による応力が付与されたときに、圧電体に分極が生じる圧電効果によって、当該応力に応じた電圧を発生する。被刺激層30は、複数の画素電極25と対向電極35との間の電気絶縁性を確保する絶縁層としての機能も有する。接着層30Aは、画素電極25と被刺激層30を接着するとともに、画素電極25と被刺激層30の間を高い静電容量で接続し、かつ隣接する画素電極25間を絶縁する。接着層30Aとしては、アクリル、エポキシ等を用いることができる。
【0031】
あるいは外部刺激として物体(例えば人体のように導電性を有する物体)の近接を用いる場合、図1(c)の構造を用い、被刺激層30自体は単純な絶縁層でよく、導電体の近接による静電容量変化によって画素電極25の電位が変化する。被刺激層30の材料としては、例えば、アクリル、エポキシ、フッ素系樹脂、又はシリコーン樹脂等を用いることができる。
【0032】
図1(a)の場合、対向電極35は、被刺激層30を介して複数の画素電極25とZ方向に対向し、静電容量成分を有している。図1(b)の場合、対向電極35は、被刺激層30及び接着層30Aを介して複数の画素電極25とZ方向に対向し、静電容量成分を有している。図1(c)の場合、対向電極35Aは、薄膜トランジスタ層20(またはその一部、例えば層間絶縁膜またはゲート電極)を介して複数の画素電極25とZ方向に対向し、静電容量成分を有している。図1(a)や図1(b)では、対向電極35は、例えば、平面視において全ての画素電極25と重なるように配置される1枚の共通電極である。図1(c)では、対向電極35Aは、複数の画素電極25との重なりを有する、Y方向に延びたストライプ形状である。対向電極35の材料としては、例えば、モリブデン(Mо)、アルミニウム(Al)、又は銀(Ag)などの金属、或いはこれらの金属を含む合金が用いられてもよいし、金属粒子を含有する混合物(例えば焼結体など)が用いられてもよい。対向電極35には、任意の一定の電圧が印加されてもよいし、グランド(GND)電位が印加されてもよい。
【0033】
図3に示すように、センサ10には、ドレイン配線60と、走査配線61と、信号配線62とが設けられている。ドレイン配線60は、ドレイン電極D1と接続されてY方向に沿って延びる配線である。ドレイン電極D1は、ドレイン配線60を介して電源と電気的に接続されている。走査配線61は、ゲート電極G2と接続されてX方向に沿って延びる配線である。信号配線62は、ソース電極S2と接続されてY方向に沿って延びる配線である。信号配線62は、ドレイン配線60とはX方向に離間して配置されている。平面視において、ドレイン配線60及び信号配線62は、走査配線61と交差(例えば直交)している。
【0034】
図4は、薄膜トランジスタ層20において構成される薄膜トランジスタアレイの回路構成を示す図である。図4に示すように、複数の薄膜トランジスタ群24は、N行M列にマトリクス状に配列されている。信号配線62は、X方向において間隔を空けて複数(例えばM本)並ぶように配列されている。各信号配線62は、Y方向に一列に並ぶ複数の薄膜トランジスタ群24のソース電極S2を接続している。各信号配線62は、走査配線61は、Y方向において間隔を空けて並ぶ複数(例えばN本)並ぶように配列されており、各信号配線62と交差(例えば直交)している。各走査配線61は、X方向に一行に並ぶ複数の薄膜トランジスタ群24のゲート電極G2を接続している。
【0035】
センサ10に外部刺激が付与されると、画素電極25には当該刺激に応じた電圧変化が発生する。電圧は、画素電極25に接続された薄膜トランジスタ21に入力される。簡単のため、1つの薄膜トランジスタ群24に着目すると、画素電極25の電圧は、薄膜トランジスタ21のゲート電極G1に入力される。その後、薄膜トランジスタ21は、ドレイン配線60に接続されるドレイン電源の電圧を基に、ゲート電極G1に入力された電圧に対応する信号を、ドレイン電極D1からソース電極S1に出力する。ソース電極S1に出力された信号は、薄膜トランジスタ22のドレイン電極D2に入力される。
【0036】
薄膜トランジスタ22は、ドレイン電極D2に入力された信号を信号配線62に出力するか否かを制御する。薄膜トランジスタ22のゲート電極G2には、走査配線61から、薄膜トランジスタ22のオン/オフを切り替えるゲート電圧が印加される。薄膜トランジスタ22は、ゲート電極G2に印加されるゲート電圧に基づいてドレイン電極D2とソース電極S2との間のオン/オフを切り替えるスイッチの役割を有する。薄膜トランジスタ22がオフになるゲート電圧(オフ電圧)が走査配線61からゲート電極G2に印加された場合には、ドレイン電極D2に入力された信号は、信号配線62に出力されない。一方、薄膜トランジスタ22がオンになるゲート電圧(オン電圧)が走査配線61からゲート電極G2に印加された場合には、ドレイン電極D2に入力された信号は、ソース電極S2から信号配線62に出力される。信号配線62に出力された信号は、後述する信号処理装置5(図8(a)及び図8(b)参照)によって画素ごとに検出される。
【0037】
図2図4に示したセンサ10に限らず、例えば、図5図7に示すセンサ10Aが用いられてもよい。図5は、センサ10Aが備える薄膜トランジスタ層20Aの構成を示す断面図である。図6は、図5の薄膜トランジスタ層20Aの構成を示す断面図である。図5及び図6に示す例では、センサ10Aは、薄膜トランジスタ層20に代えて薄膜トランジスタ層20Aを備える点で、センサ10とは異なる。薄膜トランジスタ層20Aが有する薄膜トランジスタ群24Aは、画素用の薄膜トランジスタ21、及び選択用の薄膜トランジスタ22に加えて、リセット用の薄膜トランジスタ23を含む。リセット用の薄膜トランジスタ23は、ゲート電極G3と、ソース電極S3と、半導体層SC3と、ドレイン電極D3とを含む。
【0038】
図6において、ゲート電極G3は、基板15の表面15a上に配置されており、X方向においてゲート電極G1及びゲート電極G2から離間している。ゲート電極G3は、基板15の表面15a上において、ゲート電極G1及びゲート電極G2と共にゲート絶縁膜50に覆われている。ソース電極S3、半導体層SC3、及びドレイン電極D3は、ゲート絶縁膜50上に配置されている。ソース電極S3、ドレイン電極D3、及び半導体層SC3は、ゲート絶縁膜50を介してゲート電極G3上に配置されている。ソース電極S3、ドレイン電極D3、及び半導体層SC3は、層間絶縁膜51に覆われている。
【0039】
ドレイン電極D3は、ビア配線53,54と接続されている。ドレイン電極D3は、ビア配線53,54を介して、薄膜トランジスタ21のゲート電極G1及び画素電極25と電気的に接続されている。図6に示すように、薄膜トランジスタ23には、共通配線63及びリセット配線64が設けられている。共通配線63は、ソース電極S3と接続されてY方向に沿って延びる配線である。共通配線63は、X方向においてドレイン配線60に対して信号配線62とは反対側に離間した位置に配置されている。共通配線63の電位Vcomは、対向電極35の電位Vcounterと同電位、または対向電極35とは異なる一定電位に設定される。リセット配線64は、ゲート電極G3と接続されてX方向に沿って延びる配線である。リセット配線64は、例えば、走査配線61と平行に配置されている。リセット配線64及び走査配線61は、平面視においてドレイン配線60、信号配線62及び共通配線63と交差(例えば、直交)している。リセット配線64には、薄膜トランジスタ23のオン/オフを切り替えるリセット電圧が印加される。
【0040】
図7は、薄膜トランジスタ層20Aにおいて構成される薄膜トランジスタアレイの回路構成を示す図である。薄膜トランジスタ23は、センサ10Aによる外部刺激の検出を行う前に、画素電極25を共通配線63に短絡する(すなわち、画素電極25を共通配線63の電位Vcomと同電位にする)ことで、画素電極25の電荷蓄積をリセットする機能を有する。図1(a)や図1(b)に示す圧力・曲げ・温度センサの場合、通常、電位Vcomは対向電極35の電位Vcounterと同電位であり、リセットによってVpix=Vcounterにすることで、静電容量Cの電位差を0にする。
【0041】
リセットを解除して外部刺激(圧力・曲げ・温度等)を印加すると、被刺激層30には外部刺激に比例した電圧が生じる。この電圧が図12(a)や図13(a)のキャパシタCに生じるのであるが、等価的には、この電圧e(t)が図12(b)や図13(b)の回路を通って、薄膜トランジスタ21のゲート電極G1に入り、その電圧に基づいた信号f(t)が信号配線62から出力される。このようなリセット機能を有する図7の回路では、図4の回路よりも精密な検出を行うことが可能となる。薄膜トランジスタアレイの回路構成は、図4及び図7に示す例に限られず、他の回路構成であってもよい。
【0042】
図1(c)に示す近接または指紋センサの場合、電位Vcomは電位Vcounterとは異なる一定値にしておく。リセットによってVpix=Vcomにすることで、静電容量Cの電位差をVcom-Vcounterにする。リセットを解除した時の画素電極25の電位はVcomであるが、図14(a)のように外部刺激(物体の近接)によって静電容量0~Cxが印加されると、静電容量Cの電位差は、Vcom-Vcounterよりも減少する。等価的にはこの近接時に減少する電圧e(t)が図14(b)の回路を通って、薄膜トランジスタ21のゲート電極G1に入り、その電圧に基づいた信号が信号配線62から出力される。なお、薄膜トランジスタアレイの回路構成は、図4及び図7に示す例に限られず、他の回路構成であってもよい。
【0043】
図8(a)は、センサ装置1の構成を示す図である。図8(a)に示すセンサ装置1は、センサ10と、信号処理装置5と、を備えている。センサ10は、リセット用の薄膜トランジスタ23を有しない薄膜トランジスタ層20(図2及び図3参照)を備えている。従って、センサ10は、画素電極25の電荷蓄積をリセットする機能を有しない。信号処理装置5は、センサ10と電気的に接続され、センサ10からの信号を処理する。具体的には、信号処理装置5は、センサ10の複数の信号配線62からそれぞれ出力される信号を区別して検出する。信号処理装置5は、例えば、検出回路75と、ADコンバータ79と、制御回路80と、駆動回路85と、を有する。
【0044】
図8(b)は、センサ装置1Aが備える信号処理装置5Aを示す図である。図8(b)に示すセンサ装置1Aは、センサ10Aと、信号処理装置5Aと、を備えている。センサ10Aは、リセット用の薄膜トランジスタ23を有する薄膜トランジスタ層20A(図5及び図6参照)を有している。従って、センサ10Aは、画素電極25の電荷蓄積をリセットする機能を有する。この場合、信号処理装置5Aの制御回路80Aは、画素電極25の電荷蓄積のリセットを制御するリセット制御部122(後述する図10参照)を有する。信号処理装置5Aは、制御回路80Aがリセット制御部122を有する点を除いて、信号処理装置5と同一の構成を有する。
【0045】
以下、信号処理装置5及び信号処理装置5Aを代表して、信号処理装置5Aの構成についてより具体的に説明する。図9は、信号処理装置5Aの構成を示す図である。図9における信号処理装置5Aの構成の説明は、信号処理装置5にも同様に適用できる。図9に示す例では、M本の信号配線62は、M本ごとにM個のブロックB(図9において破線で囲まれた部分)によって区分けされている。つまり、1個のブロックBにM本の信号配線62が設けられている。M、Mはそれぞれ、M=M×Mの関係を満たす2以上の整数である。
【0046】
検出回路75は、M本の信号配線62と電気的に接続され、M本の信号配線62から出力される信号を検出する。検出回路75は、各信号配線62から出力される各信号を区別して検出するために、各信号を行ごとに順次読み出すように構成されている。検出回路75は、例えば、M個の切替回路81と、M個のカウンタ82と、M個の負荷抵抗76と、M個のアンプ77と、1個の切替回路78とを有する。M個の切替回路81、M個の負荷抵抗76、及びM個のアンプ77は、M個のブロックBによってそれぞれ区分けされている。つまり、各ブロックBには、M本の信号配線62に加えて、1個の切替回路81と、1個の負荷抵抗76と、1個のアンプ77と、が設けられている。
【0047】
個のカウンタ82は、ブロックBごとに設けられている。つまり、1個のブロックBに対して1個のカウンタ82が設けられている。各ブロックBにおいて、カウンタ82は、切替回路81及び制御回路80Aと電気的に接続されている。カウンタ82は、制御回路80Aからの制御信号S82を受けて、切替回路81の接続先の切り替えを制御するための制御信号S81を切替回路81に出力する。このようにブロックBごとにカウンタ82が用いられる場合、ブロックBごとに1本ずつデジタル配線が制御回路80Aから各カウンタ82に接続される。この場合、制御回路80Aから多数のデジタル配線を各カウンタ82に接続する必要がないので、制御回路80Aのデジタル出力数が少ない場合に特に有効である。
【0048】
切替回路81は、例えば、M個の入力端と1個の出力端とを含むアナログマルチプレクサである。アナログマルチプレクサは、アナログ信号である信号の情報を失うことなく、高速で切り替えが可能である。但し、信号の電圧範囲が大きい場合など、アナログマルチプレクサによる対応が難しい場合は、アナログマルチプレクサに代えてリレーを採用してもよい。切替回路81のM個の入力端は、ブロックB内のM本の信号配線62とそれぞれ電気的に接続されている。切替回路81は、カウンタ82からの制御信号S81に応じて、出力端の接続先をM個の入力端のいずれかに切り替える。換言すると、切替回路81は、出力端の接続先として、M本の信号配線62のいずれかを選択する。
【0049】
アンプ77は、例えば、電圧検出型のオペアンプである。アンプ77は、例えば、ボルテージフォロワ回路である。アンプ77の+の入力端には、切替回路81の出力端が接続されている。アンプ77の-の入力端は、アンプ77の出力端に接続されている。アンプ77は、切替回路81を介して信号配線62から入力される信号を電流増幅する。負荷抵抗76は、切替回路81とアンプ77との間に配置されている。負荷抵抗76の一端は、切替回路81の出力端とアンプ77の一方の入力端とを接続する接続線に接続されており、負荷抵抗76の他端は、グランド(GND)に接続されている。
【0050】
切替回路78は、例えば、M個の入力端と1個の出力端とを含むアナログマルチプレクサである。M個の入力端は、M個のブロックBのアンプ77の出力端とそれぞれ接続されている。切替回路78は、制御回路80Aからの制御信号S78に応じて、出力端の接続先をM個の入力端のうちのいずれかに切り替える。換言すると、切替回路78は、出力端の接続先として、M個のブロックBのいずれかを選択する。ADコンバータ79は、切替回路78の出力端と電気的に接続されている。従って、ADコンバータ79は、切替回路81及び切替回路78によって選択されたいずれかの信号配線62と電気的に接続される。ADコンバータ79は、いずれかの信号配線62から出力された信号をデジタル値Dに変換して制御回路80Aに出力する。
【0051】
駆動回路85は、N本の走査配線61と電気的に接続されている。駆動回路85は、制御回路80Aからの制御信号S85を受けて駆動信号S61を走査配線61に出力することにより、N本の走査配線61のうちいずれかの走査配線61にオン電圧を印加しかつ他の全ての走査配線61にオフ電圧を印加する。制御回路80Aは、検出回路75及び駆動回路85と電気的に接続されており、検出回路75及び駆動回路85を制御する。制御回路80Aは、例えば、CPUといったプロセッサ、及び、メモリといった記憶装置などを備えるコンピュータ(例えば、マイクロコンピュータ)によって構成される。
【0052】
制御回路80Aは、検出回路75に対して、切替回路81の接続先をいずれかの信号配線62に切り替える制御信号S82を出力する。また、制御回路80Aは、切替回路78に対して、切替回路78の接続先をいずれかのブロックBに切り替える制御信号S78を出力する。そして、制御回路80Aは、駆動回路85に対して、いずれかの走査配線61にオン電圧を印加させかつ他の全ての走査配線61にオフ電圧を印加させる制御信号S85を出力する。
【0053】
その結果、1行の走査配線61のみにオン電圧が印加され、当該1行に並ぶM個の薄膜トランジスタ群24のそれぞれに接続される信号配線62に信号が出力される。そして、1画素の薄膜トランジスタ21から出力された信号は、切替回路81及び切替回路78などを介してADコンバータ79に入力され、デジタル値Dとして制御回路80Aに読み出される。これにより、1画素分の応力情報が得られる。次に、制御回路80Aは、1行の走査配線61のみにオン電圧が印加された状態で、1行分の各信号配線62から信号が順次読み出されるように、切替回路81の接続先及び切替回路78の接続先を切り替える。これにより、1行分の情報が得られる。
【0054】
次に、制御回路80Aは、次の行の走査配線61にオン電圧を印加させかつ他の全ての走査配線61にオフ電圧を印加させる制御信号S85を駆動回路85に出力する。この状態で、制御回路80Aは、上記と同様に、切替回路81の接続先及び切替回路78の接続先を切り替えることにより、各信号配線62から信号を順次読み出す。これにより、当該次の行分の応力情報が得られる。制御回路80Aは、上記の動作を繰り返すことにより、オン電圧が印加される走査配線61を順次切り替えながら、各行の信号を順次読み出す。そして、全ての行の信号が読み出されることにより、1画面分の信号Dが得られる。更に、以上の動作が繰り返されることで、複数画面分の信号D、すなわち、全画素についての時間依存の信号データf(t)が得られる。
【0055】
図10は、制御回路80Aの機能的構成の一例を示す図である。図10に示すように、制御回路80Aは、信号処理部110と、制御部120と、を有する。信号処理部110は、センサ10Aの各信号配線62から出力される信号を処理する機能を有する。制御部120は、センサ10A、及び信号処理装置5の他の回路を制御する機能を有する。制御回路80Aの各機能は、例えば、記憶装置に記憶されているプログラムをメモリにロードし、メモリにロードされたプログラムをマイクロプロセッサで実行することにより実現される。
【0056】
制御部120は、例えば、読出制御部121と、リセット制御部122と、を有する、読出制御部121は、上述したように、制御信号S78,S82,S85等を出力することにより、各信号配線62からの信号の読み出しを制御する。リセット制御部122は、リセット用の薄膜トランジスタ23のオン・オフの切り替えを制御することにより、画素電極25の電荷蓄積のリセットを制御する。薄膜トランジスタ23のオン・オフの切り替えは、リセット配線64へのゲート電圧の印加によって制御できる。リセット制御部122は、薄膜トランジスタ23をオンに制御する場合、薄膜トランジスタ23がオンになるゲート電圧がリセット配線64に印加されるようにリセット電圧V64を制御する。薄膜トランジスタ23がオンになると、画素電極25の電荷が放電され、画素電極25の電荷蓄積がリセットされる。
【0057】
一方、リセット制御部122は、薄膜トランジスタ23をオフに制御する場合、薄膜トランジスタ23がオフになるゲート電圧がリセット配線64に印加されるようにリセット電圧V64を制御する。薄膜トランジスタ23がオフになると、画素電極25の電荷の放電または充電が停止される。リセット制御部122による電荷蓄積のリセットは、信号処理装置5の立上げ時に自動で行われてもよいし、センサ10Aへの外部刺激が付与されていない期間の任意のタイミングにおいて手動で行われてもよい。画素電極25の電荷蓄積のリセットが手動で行われる場合、例えば、ユーザによってリセットボタンが押されたタイミングで、リセット制御部122がリセット電圧V64を制御してもよい。
【0058】
信号処理部110は、例えば、情報取得部130と、信号データ補正部140と、を有する。情報取得部130は、例えば、信号データ取得部131と、時定数設定部132と、ベースライン設定部133と、を有する。信号データ取得部131は、各信号配線62から出力される信号を時系列順に取得する。例えば、信号データ取得部131は、順次出力される信号Dを画素ごとに時系列順に並べて記憶し、それぞれの画素における信号Dの時系列データを信号データf(t)として取得する。信号データ取得部131は、画素ごとに信号データf(t)を区別して取得してよい。信号データf(t)は、センサ10Aに付与される外部刺激に応じて変化するため、信号データf(t)から外部刺激に関する情報(例えば、外部刺激により付与される応力の大きさ、及び外部刺激が付与された時間等)を得ることができる。これにより、センサ10Aに付与される外部刺激を評価できる。なお、信号データ取得部131は、全画素から出力される信号Dの合計を時系列順に並べた時系列データ、或いは全画素の中から選択される複数の画素から出力される信号Dの合計を時系列順に並べた時系列データを、取得した信号データf(t)から得てもよい。
【0059】
図11(a)は、信号データf(t)の例を示すグラフである。図11(b)は、信号データf(t)の別の例を示すグラフである。図11(a)の時間波形G10及び図11(b)の時間波形G20は、開始時間tから終了時間tまで外部刺激(圧力又は曲げ等)が付与されたセンサ10Aから得られる信号データf(t)の時間波形を示している。図11(a)及び図11(b)において、縦軸は、信号値(任意単位:arb.unit)を示しており、横軸は、時間(秒)を示している。
【0060】
図11(a)の時間波形G10では、開始時間tにおいてセンサ10Aへの外部刺激の付与が開始してから、終了時間tにおいてセンサ10Aへの外部刺激の付与が終了するまでの間に、時間の経過と共に徐々に信号値が減衰している。図11(b)の時間波形G20では、開始時間tから終了時間tまでの間に時間の経過と共に信号値が更に大きく減衰している。その結果、特に時間波形G20は、理想的な矩形波から大きく崩れた状態となっている。このように時間波形が崩れると、センサ10Aへの外部刺激を過小評価してしまうか、或いは、センサ10Aへの外部刺激の検出ができなくなる可能性がある。つまり、センサ10Aへの外部刺激を正しく評価できなくなる可能性がある。
【0061】
ここで、時間波形G10及び時間波形G20のような信号値の減衰が生じる原因について、図12(a)及び図12(b)を参照しながら説明する。図12(a)は、画素電極25の近傍の回路構成を示す回路図である。図12(b)は、図12(a)の回路の等価回路図である。センサ10Aに外部刺激が印加されると、外部刺激によって被刺激層30が分極し、画素電極25に電荷Qが発生する(図12(a)参照)。この電荷Qは、対向電極35と被刺激層30と画素電極25とによって構成されるキャパシタに蓄積される。この電荷Qがキャパシタから逃げなければ、画素電極25の電位Vは一定(V=Q/C)に保たれる。なお、Cは、キャパシタの静電容量である。そして、センサ10Aへの外部刺激の付与が終了すると、画素電極25の電位Vは0に戻る。画素電極25の電位は、薄膜トランジスタ21のゲート電極G1に印加され、ゲート電極G1の電位Vに近い電位が薄膜トランジスタ21のソース電極S1に出力される(図7参照)。
【0062】
しかしながら、図12(a)に示すように、実際には、静電容量Cに並列接続される抵抗成分Rpが存在する場合や、ゲート電極G1の入力抵抗Rgが無限大とみなせない場合が考えられる。なお、これらの合計の抵抗成分Rは、(1/Rp+1/Rg)と表すことができ、1/Rgが1/Rpに比べて充分に小さい場合には、Rgを無視して、RpをRとみなせる。このような抵抗成分Rが存在すると、画素電極25に蓄積された電荷は、抵抗成分Rによって放電されて徐々に減少する。その結果、信号データf(t)は、時間の経過と共に信号値が徐々に減衰する時間波形となる。これは、図12(b)において、センサ10Aに対する外部刺激条件e(t)が示す時間波形(後述する図15(a)参照)が、抵抗成分Rと静電容量Cとで構成されるCR微分回路によって、信号データf(t)が示す時間波形(後述する図15(b)参照)に変換されたと考えることもできる。
【0063】
信号データf(t)の減衰の程度は、時定数Tによって表すことができる。時定数Tは、センサ10Aへの外部刺激が印加されてから一定割合(ネイピア数の逆数)まで減衰する時間を示す指標である。信号値の減衰とは、信号値が刺激開始時の値から徐々に変化して最終値に向かって漸近することを意味する。信号データf(t)の時定数Tは、静電容量Cと抵抗成分Rとの積であるCRによって表される。従って、静電容量C及び抵抗成分Rが小さくなるほど、時定数Tが小さくなる。時定数Tが小さくなると、信号値の減衰速度が大きくなる。一方、静電容量C及び抵抗成分Rが大きくなるほど、時定数Tが大きくなる。時定数Tが大きくなると、信号値の減衰速度が小さくなる。
【0064】
図1(a)のセンサ10の場合のセンサ回路及び等価回路を図12(a)及び図12(b)にそれぞれ示したが、図1(b)のセンサ10aの場合のセンサ回路を図13(a)に、その等価回路を図13(b)に示す。この場合、図12(b)の静電容量Cの代わりにC・C/(C+C)を用いればよい。ここで、Cは、画素電極25の面積に対応する被刺激層30の静電容量であり、Cは、画素電極25の面積に対応する接着層30Aの静電容量である。図1(c)のセンサ10cの場合のセンサ回路を図14(a)に、その等価回路を図14(b)に示す。この場合、図12(b)の静電容量Cの代わりに、CまたはC+Cxを用いればよい。ここで、Cは、画素電極25と対向電極35の重なり面積に対応する薄膜トランジスタ層20の静電容量であり、Cxは、検出対象物の最近接による静電容量増加分である。
【0065】
このように、センサ10Aの回路に存在する静電容量C及び抵抗成分Rによって信号値の減衰が生じ、その減衰の度合いは、静電容量C及び抵抗成分Rの大きさに依存する。静電容量C及び抵抗成分Rの大きさは、被刺激層30、画素電極25、接着層30A、薄膜トランジスタ層20、対向電極35や、他の電極(ゲート電極G1等)の材料や形状に応じて変化する。従って、静電容量C及び抵抗成分Rが小さく時定数Tが小さい場合に、図11(b)に示すように、信号データf(t)の減衰の度合いがより大きくなり、理想的な矩形波から大きく崩れた時間波形となる。
【0066】
そこで、本実施形態に係る信号処理部110は、このような信号データf(t)の減衰を補償するための信号データ補正部140を備えている。図10に示すように、信号データ補正部140は、補正信号データ生成部141と、補正データ算出部142と、を有する。補正データ算出部142は、信号データf(t)の減衰を補償するための補正データg(t)を算出する。補正信号データ生成部141は、補正データg(t)を用いて信号データf(t)を補正し、補正後の信号データf(t)である補正信号データh(t)を生成する。
【0067】
以下、図15(a)、図15(b)、図15(c)、及び図15(d)を参照しながら、信号データ補正部140による補正処理について具体的に説明する。図15(a)は、センサ10Aに外部刺激条件e(t)の例を示すグラフである。図15(b)は、図15(a)の外部刺激条件e(t)の下で取得される1画素分の信号データf(t)の例を示すグラフである。図15(c)は、信号データf(t)から算出した、信号データf(t)を補正するための補正データg(t)の例を示すグラフである。図15(d)は、補正データg(t)を用いて信号データf(t)が補正された補正信号データh(t)の例を示すグラフである。
【0068】
図15(a)において、縦軸は、刺激値(任意単位:arb.unit)を示しており、横軸は、時間(秒)を示している。刺激値は、例えば、センサ10Aへの外部刺激(例えば、押圧又は曲げ等)によりセンサ10Aに付与される応力値としてよい。あるいは、刺激値は、センサ10Aへの検知対象物の近接度合(例えば指紋の山と谷で異なる)としてよい。図15(b)、図15(c)、及び図15(d)において、縦軸は、信号値(任意単位:arb.unit)を示しており、横軸は、時間(秒)を示している。
【0069】
図15(a)の外部刺激条件e(t)は、時間0から時間t00までの期間にセンサ10Aに一定強度の外部刺激を付与した場合の外部刺激波形を示している。外部刺激条件e(t)が示す外部刺激波形は、時間0にて立上がり、時間t00にて立下がる矩形波となっている。外部刺激条件e(t)の刺激値は、時間0から時間t00までの期間において例えば1(正の値)を示している。一方、図15(b)の信号データf(t)は、時間0から時間t00までの期間において徐々に信号値が減衰した時間波形を示しており、外部刺激条件e(t)が示す外部刺激波形のような矩形波から大きく崩れている。従って、図15(b)の信号データf(t)は、図15(a)の外部刺激条件e(t)を正確に反映したデータとなっていない。
【0070】
信号データf(t)の補正を行うための準備として、時定数設定部132は、信号データf(t)の時定数Tを設定する。時定数設定部132は、例えば、過去の実験により取得された信号データf(t)から求められる時定数Tを、信号データ取得部131が取得した信号データf(t)の時定数Tとして設定する。この場合、センサ10Aに対して外部刺激条件e(t)の下で外部刺激が付与されたときに取得される信号データf(t)から時定数Tが予め測定され、測定された時定数Tが記憶装置に記憶される。但し、過去の実験において信号データf(t)から測定される時定数Tには、実験誤差等によるばらつきが生じることが想定される。その場合には、例えば、過去の複数の信号データf(t)の時定数Tの平均値が信号データf(t)の時定数Tとして設定されてもよいし、過去の複数の信号データf(t)の時定数Tの最大値と最小値の相加平均値又は相乗平均値が信号データf(t)の時定数Tとして設定されてもよい。
【0071】
時定数設定部132は、例えば、所定の外部刺激(例えば一定の外部刺激)を印加した時の信号データf(t)から各画素の時定数Tを求め、その値を時定数Tとして設定する。この場合、現在の状態での時定数Tが測定されるので、最も精度がよい。
【0072】
あるいは、時定数設定部132は、センサ10Aが有する画素電極25・対向電極35間の静電容量C及び抵抗成分Rの積CRを、信号データf(t)の時定数Tとして設定してもよい。この場合、センサ10Aが有する静電容量C及び抵抗成分Rが予め測定され、測定された静電容量C及び抵抗成分Rの積CRが時定数Tとして設定されてもよい。或いは、センサ10Aと同一の材料で構成された測定用試料が作製され、その測定用試料を用いて静電容量C及び抵抗成分Rが予め測定されてもよい。測定用試料は、例えば、センサ10Aの1画素の面積よりも大きな面積を有し、センサ10Aと同様、絶縁層が画素電極及び対向電極によって挟まれた構成を有する。この場合、測定用試料には、センサ10Aと同様、静電容量C及び抵抗成分Rが生じる。静電容量Cは、LCRメータ等により測定可能であり、抵抗成分Rは、半導体パラメータアナライザ等により測定可能である。
【0073】
測定された静電容量C及び抵抗成分Rが、センサ10Aと測定用試料との面積比で換算されることにより、静電容量C及び抵抗成分Rの積CRが得られる。但し、静電容量Cは面積に比例し、抵抗成分Rは面積に反比例するので、面積比は消去される。時定数設定部132は、このように測定された静電容量C及び抵抗成分Rから計算される積CRを、時定数Tとして設定してもよい。なお、抵抗成分Rとしては、測定用試料に一定電圧を印加し続けて充電電流が流れなくなった定常状態での抵抗値を用いればよいが、それでも抵抗成分Rには時間的変動が残ることがある。このように抵抗成分Rが時間的変動成分を有する場合には、抵抗成分Rの変動範囲内の任意の抵抗値を用いてよい。
【0074】
また、静電容量Cに時間的変動が残ることもある。例えば静電容量式近接センサにおいて、定常状態における画素電極25と対向電極35Aとの間の静電容量がC0であり、外部物体が近接したときに画素電極25と外部物体との間に生じる静電容量がCxである場合、外部物体がGNDに接続されているとみなせる場合、画素電極25と対向電極35Aとの間の静電容量は、C0から(C0+Cx)に変化する。そして、画素電極25と対向電極35Aとの間の抵抗成分がRpであり、他の抵抗が無視できる場合には、時定数はC0Rpから(C0+Cx)Rpまで変動する。この場合、時定数設定部132は、C0Rpから(C0+Cx)Rpまでの任意の値を選んで時定数Tを設定してもよい。
【0075】
なお、抵抗成分R及び静電容量Cは、通常は画素電極25と対向電極35の間の抵抗成分Rおよび静電容量Cである。しかし、必ず画素電極25と対向電極35とによって構成される回路構成に生じるとは限定されない。抵抗成分R及び静電容量Cは、画素電極25とセンサ10A内の他の電極との間に存在し得る他の抵抗成分及び静電容量が加味された合計の抵抗成分及び静電容量であってよい。被検知物がセンサ10Aに近接する場合には、抵抗成分R及び静電容量Cは、センサ10A外の被検知物を含む測定系全体での、画素電極25と他物体との間に生じ得る抵抗成分及び静電容量であってよい。時定数設定部132は、設定した時定数Tを補正データ算出部142に提供する。
【0076】
ベースライン設定部133は、信号データf(t)のベースラインBLを設定する。ベースラインBLとは、信号データf(t)の時間変化を示す基準となる信号値である。ベースライン設定部133は、例えば、ベースラインBLを実験的に求める。この場合、ベースライン設定部133は、過去の実験において、画素電極25の電位Vpixを対向電極35の電位Vcounterに等しくした状態、かつ、センサ10Aに外部刺激が付与されない場合に取得される信号データf(t)の信号値を、ベースラインBLとして設定する。但し、画素電極25の電位Vpixを対向電極35の電位Vcounterに等しくした状態、かつ、センサ10Aに外部刺激を付与しない状態において得られる信号データf(t)の信号値に変動がある場合は、ベースライン設定部133は、その信号値の平均値をベースラインBLとして設定してもよい。図15(b)の信号データf(t)の例では、ベースラインBLは0であるため、ベースライン設定部133は、ベースラインBLを0に設定する。信号データf(t)の時間変化は、ベースラインBLと信号値との差によって表されることになる。ベースライン設定部133は、設定したベースラインBLを補正信号データ生成部141及び補正データ算出部142に提供する。
【0077】
信号データ補正部140は、時定数T及びベースラインBLを用いて、信号データf(t)の補正処理を行う。補正データ算出部142は、信号データf(t)および時定数Tを用いて補正データg(t)を算出する。具体的には、{f(t)-BL}を時間積分した値を時定数Tで割ったものを、補正データg(t)とする。補正信号データ生成部141は、補正データ算出部142によって算出された補正データg(t)を用いて、信号データf(t)を補正する。具体的には、補正信号データ生成部141は、補正データg(t)を信号データf(t)に加算することにより、補正信号データh(t)を生成する。
【0078】
この補正の合理性について説明する。まずは単純に考えるため、外部刺激条件e(t)を、時間0~t00までは1、他は0の矩形波であると仮定する(式(1))。式(1)において、u(t)は、時間tの単位ステップ関数である。外部刺激条件e(t)をラプラス変換した関数E(s)は、次の式(2)のように表される。この関数E(s)を図12(b)の回路に入力すると、出力は、関数F(s)になる(式(3))。式(3)において、CRは、図12(b)の回路の時定数Tである。関数F(s)をラプラス逆変換することにより、信号データf(t)は式(4)となる。
【数1】

【数2】

【数3】

【数4】
【0079】
式(4)を時間積分すると、t<t00では式(5)、t≧t00では式(6)となる。式(5)と式(6)を時定数T=CRで割ると、t<t00では式(7)、t≧t00では式(8)となる。こうして得た補正データg(t)を、信号データf(t)に加算すると、exp(1/CR)やexp{(t-t00)/CR}の項が消えて、得られた補正信号データh(t)は、式(9)のように、式(1)のe(t)に一致する。
【数5】

【数6】

【数7】

【数8】

【数9】
【0080】
ここまでは、e(t)が単純な矩形波として考えてきた。しかし、ラプラス変換や逆ラプラス変換は線形性を有しており、例えば式(1)でe(t)の代わりにa・e(t)+b・e(t)を用いた場合に、ラプラス変換はE(s)の代わりにa・E(s)+b・E(s)となる(式(2))。式(3)はF(s)の代わりにa・F(s)+b・F(s)となり、逆ラプラス変換はa・f(t)+b・f(t)となる(式(4))。また、式(4)がa・f(t)+b・f(t)の場合、積分は∫f(t)dt=a・∫f(t)dt+b・∫f(t)dtであり、時定数Tで割るとg(t)=(1/T)a・∫f(t)dt+(1/T)b・∫f(t)dt=a・g(t)+b・g(t)となって、式(9)はa・h(t)+b・h(t)となり、=a・e(t)+b・e(t)が成り立つ。即ち、e(t)の振幅が異なったり、時間軸が異なったり、複数の矩形波の和であったり、あるいは複雑な形状であっても、h(t)=e(t)は成り立つ。e(t)がどんなに複雑な形状であっても、振幅や時間の異なる複数の矩形波の和で表すことができるからである。
【0081】
信号データf(t)が時間毎のデジタル値である場合、時間tについての信号データf(t)の積分は時間tの信号値からベースラインBLを引いて、時間間隔Δtを掛けた値を、t-Δtの時の積分値に加算していくだけで容易にできる。その際、時間間隔Δtの代わりにΔt/Tを用いれば、時定数Tで割った値、すなわち補正データg(t)が直ちに求まる。信号データf(t)に補正データg(t)を加算すれば、補正信号データh(t)も直ちに求まる。
【0082】
なお、時定数Tで除することは、時間積分値に時定数Tの逆数1/Tを乗ずることと等価である。ここで、逆数1/Tは、1/CRと表すことができ、1/RはコンダクタンスGと表すことができるので、逆数1/TはG/Cと表すことができる。従って、時間積分値を時定数Tで除することには、時間積分に時定数Tの逆数1/Tで乗ずること、すなわち、時間積分にG/Cを乗ずること、が含まれる。一般的に掛け算の方が割り算よりも容易なので、時定数は、Tの値でなく、逆数(1/T)の値として保持することがより好ましい。
【0083】
補正信号データ生成部141は、生成した補正信号データh(t)を、表示装置(ディスプレイ)及び外部出力端子等に出力する。表示装置及び外部出力端子は、制御回路80Aの外部に設けられてもよいし、制御回路80Aに含まれていてもよい。表示装置は、例えば、補正信号データh(t)が示す時間波形を表示してもよい。表示装置は、補正前の信号データf(t)が示す時間波形を併せて表示してもよい。また、表示装置は、1画面分の補正信号データh(t)から得られる外部刺激の面内分布(応力分布)を表示してもよい。制御回路80Aは、補正信号データh(t)から得られる面内分布及び時間波形から、更に別の動作を行うように構成されてもよい。例えば、制御回路80Aは、規定の刺激値を超えた場合に、警報を出して記録を残してもよいし、得られた指紋データを登録済の指紋データと照合して判定結果を表示させてもよい。
【0084】
なお、上述したように、時定数Tに実験誤差等によるバラツキが生じている場合には、例えば、複数のキャリブレーションにおける時定数T(または時定数Tの逆数)の平均値、或いは複数のキャリブレーションにおける時定数T(または時定数Tの逆数)の最大値と最小値との間の任意の値を用いることができる。このように時定数T(または時定数Tの逆数)を調整する場合、信号データf(t)の本来の時定数Tからずれている可能性がある。つまり、信号データf(t)の本来の時定数Tを最適値としたときに、予め過去のキャリブレーションで取得した時定数Tが最適値からずれている可能性がある。このような時定数Tのずれは、補正データg(t)及び補正信号データh(t)に影響を及ぼす。
【0085】
図16(a)は、補正データg(t)と時定数Tの大きさとの関係を示すグラフである。図16(b)は、補正信号データh(t)と時定数Tの大きさとの関係を示すグラフである。図16(a)において、時間波形G11は、時定数Tとして最適値を用いたときの補正データg(t)を示している。時間波形G12は、時定数Tとして最適値の2倍の値を用いたときの補正データg(t)を示している。時間波形G13は、時定数Tとして最適値の半分の値を用いたときの補正データg(t)を示している。図16(b)において、時間波形G21は、図16(a)の時間波形G11を用いて補正された補正信号データh(t)を示している。時間波形G22は、図16(a)の時間波形G12を用いて補正された補正信号データh(t)を示している。時間波形G23は、図16(a)の時間波形G13を用いて補正された補正信号データh(t)を示している。
【0086】
図16(a)に示すように、時定数Tとして最適値の2倍の値が用いられた場合に得られる時間波形G12の信号値は、時間波形G11の信号値よりも小さくなる。その結果、図16(b)に示すように、時定数Tとして最適値を用いた場合に得られる時間波形G21と比べて、時間波形G22が過少に補正されていることが分かる。時間波形G22は、時定数Tとして最適値が用いられたときの時間波形G21と、補正前の図15(b)の信号データf(t)との間の波形となっており、補正前の図15(b)の信号データf(t)よりも改善されていることが分かる。
【0087】
一方、図16(a)に示すように、時定数Tとして最適値の半分の値が用いられた場合に得られる時間波形G13の信号値は、時間波形G11の信号値よりも大きくなる。その結果、図16(b)に示すように、時定数Tとして最適値を用いた場合に得られる時間波形G21と比べて、時間波形G23が過剰に補正されていることが分かる。時間波形G23では、時間の経過と共に信号値が増加している。
【0088】
その結果、図16(b)に示すように、過小補正された時間波形G22の方が、過大補正された時間波形G23よりも、適正補正された時間波形G21に近い時間波形となっている。これは、過大補正よりは過小補正の方が、より適切に信号データf(t)を補正できることを意味している。つまり、時定数Tとして最適値よりも小さな値を用いるよりは、時定数Tとして最適値よりも大きな値を用いる方が、信号データf(t)をより適切に補正できる。従って、時定数Tにバラツキがある場合には、時定数Tの最小値付近を時定数Tとして設定するよりは、時定数Tの平均値と最大値との間の値を時定数Tとして設定するとよい。
【0089】
外部刺激条件e(t)は、図15(a)に示す例に限られない。図17(a)は、外部刺激条件e(t)の他の例を示すグラフである。図17(b)は、図17(a)の外部刺激条件e(t)の下で取得される1画素分の信号データf(t)を示すグラフである。図17(c)は、図17(b)の信号データf(t)から算出した、信号データf(t)を補正するための補正データg(t)を示すグラフである。図17(d)は、図17(c)の補正データg(t)を用いて信号データf(t)が補正された補正信号データh(t)を示すグラフである。
【0090】
図17(a)の外部刺激条件e(t)が示す外部刺激波形は、時間0にて立下がり、時間t00にて立下がる矩形波となっている。外部刺激条件e(t)の刺激値は、時間0から時間t00までの期間において例えば-1(負の値)を示している。つまり、図17(a)の外部刺激条件e(t)は、図15(a)の外部刺激条件e(t)とは正負が逆転した時間波形を示している。これに応じて、図17(b)の信号データf(t)も、図15(b)の信号データf(t)とは正負が逆転した時間波形を示している。
【0091】
このように外部刺激条件e(t)の刺激値の正負が逆転した場合、信号データf(t)、補正データg(t)、及び補正信号データh(t)の正負が逆転するだけなので、上述した補正処理と同様の補正処理を図17(b)の信号データf(t)に施すことができる。つまり、図17(c)の補正データg(t)を用いて、図17(b)の信号データf(t)を補正することにより、図17(d)の補正信号データh(t)を得ることができる。
【0092】
図18(a)は、外部刺激条件e(t)の他の例を示すグラフである。図18(b)は、図18(a)の外部刺激条件e(t)の下で取得される1画素分の信号データf(t)を示すグラフである。図18(c)は、図18(b)の信号データf(t)から算出した、信号データf(t)を補正するための補正データg(t)を示すグラフである。図18(d)は、図18(c)の補正データg(t)を用いて信号データf(t)が補正された補正信号データh(t)を示すグラフである。
【0093】
図18(a)の外部刺激条件e(t)の刺激値は、図15(a)の外部刺激条件e(t)の刺激値よりも大きい2(正の値)を示している。このように外部刺激条件e(t)がk倍(kは実数)に設定された場合であっても、これ応じて、図18(b)の信号データf(t)、図18(c)の補正データg(t)、及び図18(d)の補正信号データh(t)の各信号値もk倍となるだけなので、上述した補正処理と同様の補正処理を図18(b)の信号データf(t)に施すことができる。つまり、図18(c)の補正データg(t)を用いて、図18(b)の信号データf(t)を補正することにより、図18(d)の補正信号データh(t)を得ることができる。
【0094】
図19(a)は、外部刺激条件e(t)の他の例を示すグラフである。図19(b)は、図19(a)の外部刺激条件e(t)の下で取得される1画素分の信号データf(t)を示すグラフである。図19(c)は、図19(b)の信号データf(t)から算出した、信号データf(t)を補正するための補正データg(t)を示すグラフである。図19(d)は、図19(c)の補正データg(t)を用いて信号データf(t)が補正された補正信号データh´(t)を示すグラフである。図19(e)は、図19(d)の補正信号データh´(t)からベースラインBLを差し引くことにより得られる補正信号データh(t)を示すグラフである。
【0095】
図19(a)の外部刺激条件e(t)は、図18(a)の外部刺激条件e(t)と同一の時間波形となっている。一方、図19(b)の信号データf(t)は、図18(b)の信号データf(t)と同様に減衰した時間波形となっているが、図18(b)の信号データf(t)のベースラインBLが0であるのに対して、図19(b)の信号データf(t)のベースラインBLが2(正の値)となっている。このように信号データf(t)のベースラインBLが0でない場合、ベースラインBLを加味して信号データf(t)の補正処理が施される。
【0096】
具体的には、補正データ算出部142は、図19(c)の補正データg(t)を算出する際、信号データf(t)からベースラインBLを差し引いた信号データ(f(t)―B)を算出する。そして、補正データ算出部142は、信号データ(f(t)―B)を時間積分することにより、信号データ(f(t)―B)の時間積分値を算出する。補正データ算出部142は、信号データ(f(t)―B)の時間積分値を時定数Tで除することにより、図19(c)の補正データg(t)を算出する。補正信号データ生成部141は、算出された補正データg(t)を信号データf(t)に加算することにより、図19(d)の補正信号データh´(t)を生成する。更に、補正信号データ生成部141は、補正信号データh´(t)からベースラインBLを差し引くこと(h´(t)―B)により、図19(e)の補正信号データh(t)を生成する。図19(e)の補正信号データh(t)は、図19(a)の外部刺激条件e(t)と一致する。
【0097】
このように、信号データf(t)のベースラインBLが0でない場合であっても、信号データ(f(t)―B)の時間積分値を時定数Tで除することで得られた補正データg(t)を信号データf(t)に加算すれば、減衰が補償された補正信号データh´(t)を得ることができ、更に、補正信号データh´(t)からベースラインBLを差し引くことで、補正信号データh(t)を得ることができる。
【0098】
図20(a)は、外部刺激条件e(t)の他の例を示すグラフである。図20(b)は、図20(a)の外部刺激条件e(t)の下で取得される1画素分の信号データf(t)を示すグラフである。図20(c)は、図20(b)の信号データf(t)から算出した、信号データf(t)を補正するための補正データg(t)を示すグラフである。図20(d)は、図20(c)の補正データg(t)を用いて信号データf(t)が補正された補正信号データh´(t)を示すグラフである。図20(e)は、図20(d)の補正信号データh´(t)からベースラインBLを差し引くことにより得られる補正信号データh(t)を示すグラフである。
【0099】
図20(a)に示すように、外部刺激条件e(t)は、矩形波に限らず、任意形状の時間波形を示してもよい。このような場合であっても、上述した補正処理と同様の補正処理を施すことができる。補正データg(t)の算出の際に用いられるラプラス変換は、線形性を有するからである。従って、図20(b)に示すように、信号データf(t)が複雑な時間波形を示す場合であっても、上述した補正処理と同様に、信号データ(f(t)―B)の時間積分値を時定数Tで除することで、図20(c)の補正データg(t)を算出できる。そして、図20(c)の補正データg(t)を図20(b)の信号データf(t)に加算することで、図20(d)の補正信号データh´(t)を得ることができる。更に、補正信号データh´(t)からベースラインBLを差し引くことで、図20(e)の補正信号データh(t)を得ることができる。
【0100】
[信号処理方法]
続いて、図21を参照しながら、本実施形態における信号処理方法について説明する。図21は、信号処理装置5Aによって実施される信号処理方法の例を示すフローチャートである。図21に示す例では、図7の薄膜トランジスタアレイの回路構成を有するセンサ10Aから得られる信号データf(t)を補正処理する場合について説明する。
【0101】
図21に示すように、まず、時定数設定部132が時定数Tを設定し、ベースライン設定部133がベースラインBLを設定する(ステップS101)。次に、リセット制御部122は、センサ10Aに外部刺激が付与されていない状態で、画素電極25の電荷蓄積のリセットを実行する(ステップS102)。具体的には、リセット制御部122は、リセット用の薄膜トランジスタ23をオンにすることにより、画素電極25の電荷蓄積をリセットする。そして、リセット制御部122は、一定時間が経過した後に、薄膜トランジスタ23をオフに切り替えることにより、画素電極25の電荷蓄積のリセットを解除する。
【0102】
次に、信号データ取得部131は、1画面分の信号データf(t)を取得する(ステップS103)。次に、補正データ算出部142は、信号データf(t)を補正するための補正データg(t)を算出する(ステップS104)。信号データf(t)のベースラインBLが0である場合には、補正データ算出部142は、信号データf(t)の時間積分値を時定数Tで除することにより、補正データg(t)を算出する。信号データf(t)のベースラインBLが0でない場合には、補正データ算出部142は、{f(t)―BL}の時間積分値を時定数Tで除することにより、補正データg(t)を算出する。
【0103】
次に、補正信号データ生成部141は、補正信号データh(t)を生成する(ステップS105)。このとき、補正信号データ生成部141は、補正データg(t)を信号データf(t)に加算することにより、補正信号データh(t)を生成する。信号データf(t)のベースラインBLが0でない場合には、補正信号データ生成部141は、補正データg(t)を信号データf(t)に加算することにより、補正信号データh´(t)を生成する。その後、補正信号データ生成部141は、補正信号データh´(t)からベースラインBLを差し引くことにより、補正信号データh(t)を生成する。
【0104】
次に、リセット制御部122は、画素電極25の電荷蓄積のリセットを実行するか否かを判断する(ステップS106)。リセット制御部122は、例えば、例えば、ユーザによってリセットボタンが押下されたか否かにより、画素電極25の電荷蓄積のリセットを実行するか否かを判断する。リセット制御部122は、画素電極25の電荷蓄積のリセットを実行すると判断した場合(ステップS106においてYes)、画素電極25の電荷のリセットを実行する(ステップS107)。その後、ステップS103に戻り、再度ステップS103~ステップS106が繰り返される。一方、リセット制御部122は、画素電極25の電荷蓄積のリセットを実行しないと判断した場合(ステップS106においてNo)、ステップS107が実行されずにステップS103に戻り、再度ステップS103~ステップS106が繰り返される。
【0105】
[作用効果]
以上に説明した、本実施形態に係る信号処理装置5A、センサ装置1A、及び信号処理方法によって得られる作用効果を説明する。以下の作用効果は、信号処理装置5及びセンサ装置1を用いた場合にも同様に得られる。
【0106】
本実施形態では、外部刺激がセンサ10Aに付与されると、センサ10Aの画素電極25の電位に変化が生じ、その電位の変化に基づく信号がセンサ10Aから出力される。この信号は、外部刺激が付与されてから時間の経過と共に徐々に減衰する傾向がある。このような信号の減衰は、外部刺激の評価に影響を及ぼし得る。これに対し、本発明者は、このような減衰の影響を低減すべく、鋭意検討を重ねた結果、信号データf(t)の減衰を補償する補正を行うことが可能であることを見出した。具体的には、本発明者は、信号データf(t)の時間積分値を時定数Tで除することによって得られる補正データg(t)が、信号データf(t)の減衰量に相当することを見出した。そして、本発明者は、このように算出された補正データg(t)を信号データf(t)に加算する補正を行うことにより、信号データf(t)の減衰が補償された補正信号データh(t)を得るに至った。このように減衰が補償された補正信号データh(t)を用いて外部刺激を評価すれば、信号データf(t)の減衰に起因する外部刺激の過小評価或いは外部刺激の見逃しといった事態を抑制することができる。これにより、外部刺激の評価を正しく行うことが可能になる。
【0107】
本実施形態のように、時定数設定部132は、予め取得された信号データf(t)から得られる時定数Tを、信号データf(t)の時定数として設定してもよい。例えば圧力・曲げ・温度センサの場合、一定の刺激値をかけ続けた時の信号データf(t)の減衰から得られた時定数Tを用いることができる。近接または指紋センサの場合、Vcom≠Vcounterの状態でリセットをかけて画素電極25に充電した後の信号データf(t)の減衰から得られた時定数Tを用いることができる。なお、時定数Tは、画素毎に値を有してよい。
【0108】
本実施形態のように、時定数設定部132は、センサ10Aの画素電極25が有する抵抗成分R(電荷の漏れに関わる)と、画素電極25と対向電極35(共通電極)との間に生じる静電容量C(電荷の保持に関わる)との積CRを、信号データf(t)の時定数Tとして設定してもよい。この場合、センサ10Aが有する抵抗成分R及び静電容量Cを利用して、信号データf(t)の時定数Tを容易に求めることができる。例えば、抵抗成分Rと静電容量Cとを実測し、それらの積CRを信号データf(t)の時定数Tとして設定できる。時定数Tは、画素毎に値を有してもよいが、特性が揃っている場合には単一の時定数Tを全画素に適用してもよい。例えば画素電極/絶縁層/共通電極以外の抵抗と静電容量が無視できて、画素電極/絶縁層/共通電極が時定数Tを支配している場合、画素電極/絶縁層/共通電極の構造を有する測定用試料を、製品と同じ材料・膜厚、製品のk倍の重なり面積で作製し、画素電極・共通電極の間の抵抗成分R/kと静電容量kCを測定して、T=R/k×kC=RCとして時定数Tを求めてもよい。この場合、単一の時定数Tを全画素に適用する。
【0109】
本実施形態のように、ベースライン設定部133は、信号データf(t)に含まれる複数の信号値のうち、外部刺激に伴って生じる信号データf(t)の時間変化を示すための基準となる信号値をベースラインBLとして設定してよい。補正データ算出部142は、ベースラインBLが差し引かれた信号データf(t)を時間積分することにより、信号データf(t)の時間積分値を算出してよい。この場合、信号データf(t)のベースラインBLが0からずれていたとしても、ベースラインBLのずれの影響を加味して補正データg(t)を算出し、ベースラインBLのずれを補償しながら補正信号データh(t)を生成できる。その結果、補正信号データh(t)に基づく外部刺激の評価をより正しく行うことが可能となる。ベースラインBLは、画素毎に値を有してよい。
【0110】
図2図4に示す例では、容量式センサと薄膜トランジスタアレイとの組み合わせによって構成される複数の画素を有するセンサ10を例示したが、画素は、複数行複数列に配列される場合に限らず、1行複数列に配列されてもよいし、1個(1行1列)配置されてもよい。或いは、薄膜トランジスタに代えてディスクリートのトランジスタが用いられてもよい。画素が1行複数列に配列される場合、或いは画素が1個(1行1列)配置される場合、駆動回路85(図9参照)及び薄膜トランジスタ22(図4参照)といった走査関連部分の構成が不要となり、同一の画素から信号が信号配線62に出力され続ける。このような場合、信号データf(t)を補正データg(t)で補正して補正信号データh(t)を得る一連の補正処理は、上述したようにプログラム等のソフトウェアにより実現される場合に限らず、電気回路等のハードウェアにより実現されてもよい。つまり、信号データf(t)の補正処理を行う信号データ補正部140の各機能は、その機能に特化した電気回路により構成されてもよい。
【0111】
図22は、信号データ補正部140の各機能を実現するハードウェア構成(回路構成)の一例を示す図である。図22に示す例では、信号データ補正部140は、ボルテージフォロワ回路240と、積分回路241と、差動回路242と、を有する。ボルテージフォロワ回路240は、アンプ243を含んで構成される。アンプ243の入力端243aには、信号データf(t)に相当する信号電圧が入力される。アンプ243の入力端243bは、アンプ243の出力端243cに接続されている。アンプ243は、信号電圧を、電圧値を変えずに電流増幅する。
【0112】
積分回路241は、時定数Tを有する反転積分回路である。積分回路241は、例えば、アンプ244と、抵抗素子245と、キャパシタ246と、を有する。アンプ244の入力端244aは、抵抗素子245を介して、ボルテージフォロワ回路240の出力端243cに接続されている。アンプ244の入力端244bは、GND(グランド)に接続されている。抵抗素子245は、抵抗成分Rを有する。キャパシタ246は、アンプ244の出力端244cと入力端244aの間に接続されている。キャパシタ246は、静電容量Cを有する。キャパシタ246及び抵抗素子245は、CR回路を構成する。積分回路241の時定数Tは、静電容量Cと抵抗成分Rとの積CRによって表される。ボルテージフォロワ回路240から出力された信号データf(t)は、時定数Tを有する積分回路241によって時間積分される。その結果、積分回路241から補正データ(-g(t))が出力される。従って、積分回路241は、補正データ(-g(t))を算出する補正データ算出部として機能する。なお、ベースラインBLが0でない場合、入力端244bをGNDでなくベースラインBLの値の電圧に接続すれば、{f(t)-BL}が積分される。また、図22の抵抗成分Rと静電容量Cは、図12の抵抗成分Rと静電容量Cに一致する必要はなく、積CRが一致すればよい。
【0113】
差動回路242は、例えば、アンプ247と、一対の抵抗素子248a,248bと、一対の抵抗素子249a,249bと、を有する。アンプ247の入力端247aは、積分回路241の出力端244cに接続されている。アンプ247の入力端247bは、抵抗素子248bを介して、ボルテージフォロワ回路240の出力端243cに接続されている。抵抗素子248aは、入力端247aと積分回路241の出力端244cとの間に接続されている。抵抗素子248a,248bはそれぞれ、抵抗成分R1を有する。抵抗素子249aは、アンプ247の出力端247cと入力端247aの間に接続されている。抵抗素子249bは、アンプ247の入力端247bとGNDの間に接続されている。抵抗素子249a,249bはそれぞれ、抵抗成分R2を有する。差動回路242は、入力端247bに入力される信号データf(t)と、入力端247aに入力される補正データ(-g(t))との差(f(t)-(―g(t))を算出することにより、補正信号データh(t)を生成する。従って、差動回路242は、補正信号データh(t)を生成する補正信号データ生成部として機能する。なお、図22に示す例では、補正信号データh(t)が定数倍(R2/R1)されたものとして差動回路242から出力される。
【0114】
このように、信号データ補正部140の各機能は、電気回路を含むハードウェアによって実現することができる。但し、図22の回路構成は、静電容量と並列にリセットスイッチ又は抵抗を接続する等、種々の変更が可能である。積分回路241は、反転出力タイプである必要は無く、非反転出力タイプであってもよい。差動回路242に代えて、同極性の加算回路が用いられてもよい。
【0115】
なお、センサ10Aへの外部刺激は、画素電極25と被刺激層30と対向電極35(共通電極)とによって構成されるキャパシタの画素電極25の電位の圧力又は曲げ等による変化によって検出されてもよい。或いは、センサ10Aへの外部刺激が指等の近接である場合、被刺激層30は絶縁層であって、画素電極25の電位の変化によって、外部刺激が検出されてもよい。
【0116】
[第2実施形態]
続いて、第2実施形態について説明する。以下の第2実施形態の説明では、第1実施形態と重複する箇所の説明を適宜省略し、第1実施形態と異なる箇所を主に説明する。
【0117】
図23は、第2実施形態に係る信号処理部110Aの一例を示す図である。図24(a)は、外部刺激条件e(t)の一例を示すグラフである。図24(b)は、図24(a)の外部刺激条件e(t)の下で取得される1画素分の信号データf(t)を示すグラフである。図24(c)は、図24(b)の信号データf(t)から算出した、信号データf(t)を補正するための補正データg(t)を示すグラフである。図24(d)は、図24(c)の補正データg(t)を用いて信号データf(t)が補正された補正信号データh´(t)を示すグラフである。図24(e)は、図24(d)の補正信号データh´(t)からベースラインBLを差し引くことにより得られる補正信号データh(t)を示すグラフである。
【0118】
図23に示すように、本実施形態では、情報取得部130Aが、信号データ取得部131、時定数設定部132、及びベースライン設定部133に加えて、変化検出部134を有する。変化検出部134は、外部刺激に伴う信号データf(t)の時間変化の開始時間tを検出する機能を有する。変化検出部134には、信号データ取得部131から信号データf(t)が提供される。図24(a)のように、外部刺激条件e(t)が、開始時間tにおいて急峻に立上がり、終了時間tにおいて急峻に立下がる正の時間変化を示す場合、図24(b)の信号データf(t)も、開始時間tにおいて急峻に立上がり、終了時間tにおいて急峻に立下がる正の時間変化を示す。
【0119】
この場合、変化検出部134は、信号データf(t)の立上がりを検出することにより、開始時間tを検出する。変化検出部134は、例えば、或る時間における信号データf(t)の信号値から、当該或る時間から所定時間前の時間における信号データf(t)の信号値を差し引いた値が閾値を超えたか否かを判定することにより、信号データf(t)の急峻な立上がりを検出する。そして、変化検出部134は、信号データf(t)の立上がりを検出した時間を開始時間tとして検出する。変化検出部134は、検出した開始時間tより所定時間(0または例えば100ms以下の時間)前の補正開始時間tを設定し、補正開始時間tをベースライン設定部133及び信号データ補正部140に提供する。一方、変化検出部134は、上記値が閾値以下である場合には、信号データf(t)の立上がりを検出しない。なお、変化検出部134は、開始時間tをベースライン設定部133及び信号データ補正部140に提供してもよい。この場合、ベースライン設定部133及び信号データ補正部140は、開始時間tから補正開始時間tを設定してもよい。或いは、変化検出部134は、開始時間t及び補正開始時間tの両方をベースライン設定部133及び信号データ補正部140に提供してもよい。
【0120】
ベースライン設定部133は、変化検出部134が設定した補正開始時間t以前のタイミングの信号データf(t)からベースラインBLを直接取得できる。具体的には、ベースライン設定部133は、補正開始時間tにおける信号データf(t)の信号値をベースラインBLとして取得してもよい。あるいは、ベースラインBLは、補正開始時間tよりもさらに一定時間(例えば100ms程度)前の信号データf(t)の信号値としてもよいし、補正開始時間tよりも前の一定時間内の複数の時間における信号データf(t)の信号値の平均値としてもよい。
【0121】
但し、近接センサを用いる場合、ベースラインBLを取得する際は、画素電極25の電位Vcomを対向電極35の電位Vcounterに等しくして、リセットをかけた後にベースラインBLを取得する。一方、近接センサを用いて検出を行う際には、電位Vcom値を電位Vcounterとは異なる値にしてリセットをかけ、静電容量Cに充電した状態にする。開始時間tより所定時間前の補正開始時間tから補正を開始することは、圧力・曲げ・温度センサと同様である。
【0122】
補正データ算出部142は、変化検出部134が設定した補正開始時間t以降の補正データg(t)を算出する。この場合、補正データg(t)は、補正開始時間t以降の信号値の時系列データのみを含み、補正開始時間tよりも前の信号値の時系列データを含まない。あるいは、補正開始時間t以前の補正データg(t)の信号値を0としてもよい。補正データ算出部142は、ベースラインBLを差し引いた信号データ(f(t)―B)に対して補正開始時間t以降で時間積分することにより、信号データ(f(t)―B)の時間積分値を算出する。そして、補正データ算出部142は、信号データ(f(t)―B)の時間積分値を時定数Tで除することにより、図24(c)の補正データg(t)を算出する。
【0123】
補正信号データ生成部141は、図24(c)の補正データg(t)を、図24(b)の信号データf(t)に加算することにより、図24(d)の補正信号データh´(t)を生成する。そして、補正信号データ生成部141は、補正信号データh´(t)からベースラインBLを差し引くことにより、図24(e)の補正信号データh(t)を生成する。これにより、補正開始時間t以降の信号値の時系列データのみを含む補正信号データh(t)が得られる。
【0124】
図25(a)は、外部刺激条件e(t)の別の例を示すグラフである。図25(b)は、図25(a)の外部刺激条件e(t)の下で取得される1画素分の信号データf(t)を示すグラフである。図25(c)は、図25(b)の信号データf(t)から算出した、信号データf(t)を補正するための補正データg(t)を示すグラフである。図25(d)は、図25(c)の補正データg(t)を用いて信号データf(t)が補正された補正信号データh(t)を示すグラフである。図25(e)は、図25(d)の補正信号データh(t)からベースラインBLを差し引くことにより得られる補正信号データh(t)を示すグラフである。
【0125】
図25(a)のように、外部刺激条件e(t)が、開始時間tにおいて急峻に立下がり、終了時間tにおいて急峻に立上がる負の時間変化を示す場合、図25(b)の信号データf(t)も、開始時間tにおいて急峻に立下がり、終了時間tにおいて急峻に立上がる負の時間変化を示す。この場合、変化検出部134は、信号データf(t)の立下がりを検出することにより、開始時間tを検出する。変化検出部134は、例えば、或る時間における信号データf(t)の信号値から、当該或る時間から所定時間前の時間における信号データf(t)の信号値を差し引いた値が負の閾値より下がったと判定した場合に、信号データf(t)の立下がりを検出する。そして、変化検出部134は、信号データf(t)の立下がりを検出した時間の所定時間(0または正の時間)前を補正開始時間tとして設定する。変化検出部134は、補正開始時間tをベースライン設定部133及び信号データ補正部140に提供する。一方、変化検出部134は、上記値が負の閾値以上である場合には、信号データf(t)の立下がりを検出しない。なお、上述したように、変化検出部134は、開始時間tをベースライン設定部133及び信号データ補正部140に提供してもよいし、開始時間t及び補正開始時間tの両方をベースライン設定部133及び信号データ補正部140に提供してもよい。
【0126】
変化検出部134が開始時間tを検出した後は、上述した補正処理と同様に、補正データ算出部142が、補正開始時間t以降の時系列データのみを含む図25(c)の補正データg(t)を算出する。そして、補正信号データ生成部141が、図25(c)の補正データg(t)を用いて、補正開始時間t以降の時系列データのみを含む図25(d)の補正信号データh´(t)生成し、補正信号データh´(t)からベースラインBLを差し引くことにより、図25(e)の補正信号データh(t)を生成する。
【0127】
なお、時定数Tとしては、第1実施形態と同様に、例えば、過去のキャリブレーションにより得られた信号データf(t)から求めた時定数Tが設定されてもよいし、センサ10Aに含まれる静電容量C及び抵抗成分Rから予め求めた時定数Tが設定されてもよい。また、リセット制御部122は、外部刺激が付与されていない状態で画素電極25の電荷のリセットを開始させてから、所定時間経過後に電荷蓄積のリセットが終了するように制御してもよい。リセット制御部122による電荷蓄積のリセットは、装置立上げ時に自動で行われてもよいし、センサ10Aへの外部刺激が付与されていない期間の任意のタイミングにおいて手動で行われてもよい。
【0128】
また、上述した例では、補正信号データh(t)が、補正開始時間t以降の信号値の時系列データのみを含む場合について説明したが、補正信号データh(t)は、補正開始時間tよりも前の信号値の時系列データを有していてもよい。この場合、補正開始時間tよりも前の補正信号データh(t)の時系列データは、補正開始時間tよりも前の未補正の信号データf(t)の時系列データと同一であってよい。
【0129】
また、変化検出部134による信号データf(t)の立上がり又は立下がりの検出は、画素ごとに個別に行われてもよいが、立ち上がったという認識は全画素で共通であることが望ましい。従って、立上りの検出は、全画素の中から選択された1つの代表画素の信号データf(t)に対してのみ行われてもよい。或いは、全画素の信号データf(t)を合計した合計信号データから立上がり又は立下がりの検出が行われもよいし、全画素の中から選択された複数の信号データf(t)を合計した合計信号データから立上がり又は立下がりの検出が行われもよい。これにより、変化検出部134による信号データf(t)の立上がり又は立下がりの検出回数の増大を抑制できるので、立上がり又は立下がりの検出のための処理負荷を低減できる。
【0130】
[信号処理方法]
続いて、図26を参照しながら、本実施形態における信号処理方法について説明する。図26は、信号処理装置5Aによって実施される信号処理方法の例を示すフローチャートである。図26に示す例では、図7の薄膜トランジスタアレイの回路構成を有するセンサ10Aから得られる信号データf(t)を処理する場合について説明する。
【0131】
図26に示すように、まず、時定数設定部132は、時定数Tを設定する(ステップS201)。次に、リセット制御部122は、センサ10Aに外部刺激が付与されていない状態で、画素電極25の電荷蓄積のリセットを実行する(ステップS202)。具体的には、リセット制御部122は、リセット用の薄膜トランジスタ23をオンにすることにより、画素電極25の電荷蓄積をリセットする。そして、リセット制御部122は、一定時間が経過した後に、薄膜トランジスタ23をオフに切り替えることにより、画素電極25の電荷蓄積のリセットを解除する。
【0132】
次に、信号データ取得部131は、1画面分の信号データf(t)を取得する(ステップS203)。次に、信号データ補正部140は、補正フラグが0であるか否かを判定する(ステップS204)。補正フラグは、信号データ補正部140による補正処理を行うかどうか示すフラグである。信号データ補正部140は、補正フラグが0である場合(ステップS204においてYes)、変化検出部134による信号データf(t)の時間変化の検出の有無を確認する(ステップS205)。例えば、信号データf(t)が正の時間変化を示す場合、変化検出部134は、信号データf(t)の立上がりを検出する。一方、信号データf(t)が負の時間変化を示す場合、変化検出部134は、信号データf(t)の立下がりを検出する。変化検出部134は、このように信号データf(t)の立上がり又は立下がり(開始点)を検出すると(ステップS205においてYes)、センサ10Aへの外部刺激の付与が開始した開始時間tを記憶し、開始時間tより所定時間(0または正の時間)前の補正開始時間tを設定する(ステップS206)。
【0133】
次に、ベースライン設定部133は、補正開始時間tを用いて、信号データf(t)のベースラインBLを設定する(ステップS207)。具体的には、ベースライン設定部133は、補正開始時間tまたはそれよりも前の信号データf(t)の信号値をベースラインBLとして設定する。但し、この方法は、圧力・曲げ・温度センサのように、リセットでVpix=Vcounterにして検知する場合に用いることができる。近接または指紋センサのようにリセットでVpix=Vcom≠Vcounterにして検知する場合には、別途リセットでVpix=Vcounterにして求めたベースラインBLを使用する。その後、補正フラグが1に設定される(ステップS208)。
【0134】
次に、補正データ算出部142は、補正データg(t)を算出する(ステップS209)。補正データ算出部142は、例えば、ベースラインBLを差し引いた信号データ(f(t)―B)に対して補正開始時間t以降で時間積分することにより、信号データ(f(t)―B)の時間積分値を算出する。補正データ算出部142は、信号データ(f(t)―B)の時間積分値を時定数Tで除することにより、補正開始時間t以降の時系列データのみを含む補正データg(t)を算出する。あるいは、補正開始時間t以前の補正データg(t)の信号値を0としてもよい。
【0135】
次に、補正信号データ生成部141は、信号データf(t)および補正データg(t)を用いて補正信号データh(t)を生成する(ステップS210)。具体的には、補正信号データ生成部141は、補正データg(t)を信号データf(t)に加算することにより、補正信号データh´(t)を生成する。その後、補正信号データ生成部141は、補正信号データh´(t)からベースラインBLを差し引くことにより、補正信号データh(t)を生成してもよい。
【0136】
なお、信号データ補正部140は、補正フラグが1である場合(ステップS204においてNo)には、ステップS205~ステップS208が実行されずに、ステップS209及びステップ210が実行される。また、信号データ補正部140が、信号データf(t)の立上がり又は立下がりが検出されていないと判断した場合(ステップS205においてNo)には、ステップS205~ステップS210が実行されずに、次のステップS211に移行する。
【0137】
次に、リセット制御部122は、画素電極25の電荷蓄積のリセットを実行するか否かを判断する(ステップS211)。例えば、リセット制御部122は、ユーザによってリセットボタンが押下された場合に、画素電極25の電荷蓄積のリセットを実行すると判断してよい。リセット制御部122が電荷蓄積のリセットを実行すると判断した場合(ステップS211においてYes)、補正フラグが0に設定される(ステップS212)。そして、リセット制御部122は、画素電極25の電荷蓄積のリセットを実行する(ステップS213)。具体的には、リセット制御部122は、リセット用の薄膜トランジスタ23をオンにすることにより、画素電極25の電荷蓄積をリセットする。そして、リセット制御部122は、一定時間が経過した後に、薄膜トランジスタ23をオフに切り替えることにより、画素電極25の電荷蓄積のリセットを解除する。その後、ステップS203に戻り、一連の補正処理が再度実行される。一方、リセット制御部122が電荷蓄積のリセットを実行しないと判断した場合(ステップS211においてNo)、ステップS212及びステップS213が実行されずに、ステップS203に戻り、信号データf(t)の取得と開始点の検出が再度実行される。
【0138】
[作用効果]
本実施形態によれば、第1実施形態と同様、減衰が補償された補正信号データh(t)を得ることができるので、第1実施形態と同様の効果が得られる。更に、本実施形態では、圧力・曲げ・温度センサのようにリセットでVpix=Vcounterにして検知する場合には、開始時間tよりも所定時間(0または正の時間)前の補正開始時間tにおける信号値、または補正開始時間tよりさらに一定時間前の信号値を、ベースラインBLとして設定できる。これにより、予め実験等によりベースラインBLを測定することなく、信号データf(t)からベースラインBLを直接的に求めることができる。近接または指紋センサのようにリセットでVpix=Vcom≠Vcounterにして検知する場合、ベースラインBLは別途求めた値を用いる。あるいは、測定前にVpix=VcounterにしてベースラインBLを求めた後に、Vpix=Vcomにして測定を行う。更に、本実施形態では、補正開始時間t以降の補正データg(t)を用いて、補正信号データh(t)が生成される。この場合、補正開始時間t以前の信号データf(t)に変動が生じていたとしても、その変動成分を加味せずに補正信号データh(t)を得ることができる。その結果、補正信号データh(t)に基づく外部刺激の評価をより正しく行うことが可能となる。開始時間tの検出は、画素毎に行うことも可能だが、センサ全体で開始時間tを共有する方が、動作を簡略化できて好ましい。なお、本実施形態では、開始時間tにおいて外部刺激が検出されてから、所定時間(0または正の時間)だけ過去の補正開始時間tから補正計算を開始することになるが、補正開始時間tと開始時間tとの時間差は僅かであるため、この時間差が大きな遅れに繋がることはない。あるいは、t-tの時間分だけ常に積分計算をしておき、立ち上がりの開始時間tを検出した場合に、その積分データを用いて積分を続けるようにすれば、計算遅れをなくすこともできる。あるいは、t=tの場合には、遅れは生じない。
【0139】
[第3実施形態]
続いて、第3実施形態について説明する。以下の第3実施形態の説明では、第1実施形態及び第2実施形態と重複する箇所の説明を適宜省略し、第1実施形態及び第2実施形態と異なる箇所を主に説明する。
【0140】
図27は、第3実施形態に係る信号処理部110Aの一例を示す図である。図28(a)は、外部刺激条件e(t)の一例を示すグラフである。図28(b)は、図28(a)の外部刺激条件e(t)の下で取得される1画素分の信号データf(t)を示すグラフである。図28(c)は、図28(b)の信号データf(t)から算出した、信号データf(t)を補正するための補正データg(t)を示すグラフである。図28(d)は、図28(c)の補正データg(t)を用いて信号データf(t)が補正された補正信号データh´(t)を示すグラフである。図28(e)は、図28(d)の補正信号データh´(t)からベースラインBLを差し引くことにより得られる補正信号データh(t)を示すグラフである。
【0141】
図27に示すように、本実施形態では、情報取得部130Bが、信号データ取得部131、時定数設定部132、及びベースライン設定部133に加えて、変化検出部134を有する。変化検出部134は、外部刺激に伴う信号データf(t)の時間変化の終了時間tを検出する機能を有する。変化検出部134には、信号データ取得部131から信号データf(t)が入力される。図28(a)のように、外部刺激条件e(t)が、開始時間tにおいて急峻に立上がり、終了時間tにおいて急峻に立下がる正の時間変化を示す場合、図28(b)の信号データf(t)も、開始時間tにおいて急峻に立上がり、終了時間tにおいて急峻に立下がる正の時間変化を示す。
【0142】
この場合、変化検出部134は、第2実施形態と同様、信号データf(t)の立上がりを検出することにより、開始時間tを検出する。更に、本実施形態では、変化検出部134は、信号データf(t)の立下がりを検出することにより、終了時間tを検出する。変化検出部134は、例えば、或る時間における信号データf(t)の信号値から、当該或る時間から所定時間前の時間における信号データf(t)の信号値を差し引いた値が負の閾値以下に下がったか否かを判定することにより、信号データf(t)の急峻な立下がりを検出する。変化検出部134は、上記値が負の閾値以下に下がったと判定した場合に、信号データf(t)の立下がりを認識する。そして、変化検出部134は、信号データf(t)の立下がりを検出した時間を終了時間tとして記憶し、終了時間tから所定時間後を補正終了時間tに設定する。変化検出部134は、補正開始時間t及び補正終了時間tを含む検出結果を、ベースライン設定部133及び信号データ補正部140に提供する。一方、変化検出部134は、上記値が負の閾値以上である場合には、信号データf(t)の立下がりを検出しない。なお、変化検出部134は、開始時間t及び終了時間tを含む検出結果を、ベースライン設定部133及び信号データ補正部140に提供してもよい。この場合、ベースライン設定部133及び信号データ補正部140は、開始時間t及び終了時間tから補正開始時間t及び補正終了時間tを設定してもよい。或いは、変化検出部134は、開始時間t、終了時間t、補正開始時間t、及び補正終了時間tを含む検出結果を、ベースライン設定部133及び信号データ補正部140に提供してもよい。また、変化検出部134は、補正終了時間tをリセット制御部122に提供する。変化検出部134は、終了時間tをリセット制御部122に提供してもよいし、終了時間t及び補正終了時間tをリセット制御部122に提供してもよい。
【0143】
ベースライン設定部133は、第2実施形態と同様、圧力・曲げ・温度センサのようにリセットでVpix=Vcounterにして検知する場合には、補正開始時間tを用いて、信号データf(t)からベースラインBLを直接取得できる。近接または指紋センサのようにリセットでVpix=Vcom≠Vcounterにして検知する場合には、別途Vpix=Vcounterにして求めたベースラインBLを使用する。補正データ算出部142は、補正開始時間t以降、且つ終了時間tよりも所定時間後の補正終了時間t以前の補正データg(t)を算出する。この場合、補正データg(t)は、補正開始時間tから補正終了時間tまでの間の信号値の時系列データのみを含み、補正開始時間tよりも前の信号値の時系列データ、及び補正終了時間tよりも後の信号値の時系列データを含まない。あるいは、補正開始時間t以前の補正データg(t)の信号値を0としてもよい。補正データ算出部142は、ベースラインBLを差し引いた信号データ(f(t)―B)に対して補正開始時間tから時間tまで時間積分することにより、信号データ(f(t)―B)の時間積分値を算出する。そして、補正データ算出部142は、信号データ(f(t)―B)の時間積分値を時定数Tで除することにより、図28(c)の補正データg(t)を算出する。補正データg(t)の算出は、補正開始時間tから補正終了時間tまで行う。なお、補正終了時間tは、終了時間tと同一であってもよい。
【0144】
補正信号データ生成部141は、図28(c)の補正データg(t)を、図28(b)の信号データf(t)に加算することにより、図28(d)の補正信号データh´(t)を生成する。そして、補正信号データ生成部141は、補正信号データh´(t)からベースラインBLを差し引くことにより、図28(e)の補正信号データh(t)を生成してもよい。このようにして、補正開始時間tから補正終了時間tまでの間の信号値の時系列データのみを含む補正信号データh´(t)が得られる。
【0145】
リセット制御部122は、補正終了時間tにおいて画素電極25の電荷蓄積のリセットを開始させる。そして、リセット制御部122は、補正終了時間tから所定時間後の時間tにおいて画素電極25の電荷蓄積のリセットを終了させる。その結果、図28(b)に示すように、信号データf(t)は、補正終了時間tから時間tまでの期間において信号値の時系列データを含まない。
【0146】
図29(a)は、外部刺激条件e(t)の他の例を示すグラフである。図29(b)は、図29(a)の外部刺激条件e(t)の下で取得される1画素分の信号データf(t)を示すグラフである。図29(c)は、図29(b)の信号データf(t)から算出した、信号データf(t)を補正するための補正データg(t)を示すグラフである。図29(d)は、図29(c)の補正データg(t)を用いて信号データf(t)が補正された補正信号データh(t)を示すグラフである。図29(e)は、図29(d)の補正信号データh(t)からベースラインを差し引くことにより得られる補正信号データh(t)を示すグラフである。
【0147】
図29(a)のように、外部刺激条件e(t)が、開始時間tにおいて急峻に立下がり、終了時間tにおいて急峻に立上がる負の時間変化を示す場合、図29(b)の信号データf(t)も、開始時間tにおいて急峻に立下がり、終了時間tにおいて急峻に立上がる時間変化を示す。この場合、変化検出部134は、信号データf(t)の立上がりを検出することにより、終了時間tを検出する。変化検出部134は、例えば、或る時間における信号データf(t)の信号値から、当該或る時間から所定時間前の時間における信号データf(t)の信号値を差し引いた値が閾値を超えたと判定した場合に、信号データf(t)の立上がりを検出する。そして、変化検出部134は、信号データf(t)の立上がりを検出した時間を終了時間tとして認識する。変化検出部134は、補正開始時間t及び補正終了時間tを含む検出結果を、ベースライン設定部133及び信号データ補正部140に提供する。一方、変化検出部134は、上記値が閾値以下である場合には、信号データf(t)の立上がりを検出しない。なお、上述したように、変化検出部134は、開始時間t及び終了時間tを含む検出結果を、ベースライン設定部133及び信号データ補正部140に提供してもよいし、開始時間t、終了時間t、補正開始時間t、及び補正終了時間tを含む検出結果を、ベースライン設定部133及び信号データ補正部140に提供してもよい。
【0148】
変化検出部134が補正開始時間tを検出した後は、上述した補正処理と同様に、補正データ算出部142が、補正開始時間tから時間tまでの信号の積分値を時定数Tで割った補正データg(t)を算出する。補正データg(t)の算出は、補正開始時間tから補正終了時間tまで行う。そして、補正信号データ生成部141が、図29(c)の補正データg(t)を用いて、補正開始時間t以降の時系列データのみを含む図29(d)の補正信号データh´(t)生成し、補正信号データh´(t)からベースラインBLを差し引くことにより、図29(e)の補正信号データh(t)を生成する。補正データg(t)の算出と補正信号データh(t)の生成は、並行して同時に行うことができる。
【0149】
なお、時定数Tとしては、第1実施形態と同様に、例えば、過去の実験により得られる信号データf(t)から求めた時定数Tが設定されてもよいし、センサ10Aに含まれる静電容量C及び抵抗成分Rから求めた時定数Tが設定されてもよい。また、リセット制御部122は、外部刺激が付与されていない状態で画素電極25の電荷のリセットを開始させた後に、所定時間経過後に電荷蓄積のリセットが終了するように制御してもよい。リセット制御部122による電荷蓄積のリセットは、装置立上げ時に自動で行われてもよいし、センサ10Aへの外部刺激が付与されていない期間の任意のタイミングにおいて手動で行われてもよい。
【0150】
また、上述した例では、補正信号データh(t)が、補正開始時間tから補正終了時間tまでの間の信号値の時系列データのみを含む場合について説明したが、補正信号データh(t)は、補正開始時間tよりも前の信号値の時系列データを有していてもよいし、補正終了時間tよりも後の信号値の時系列データを有していてもよい。この場合、補正開始時間tよりも前の補正信号データh(t)の時系列データは、補正開始時間tよりも前の未補正の信号データf(t)の時系列データと同一であってよい。補正終了時間tよりも後の補正信号データh(t)の時系列データは、補正終了時間tよりも後の未補正の信号データf(t)の時系列データと同一であってよい。
【0151】
また、変化検出部134による信号データf(t)の立上がり又は立下がりの検出は、画素ごとに個別に行われてもよいが、立ち上がった、立下がったという認識は全画素で共通であることが望ましい。従って、立ち上がり・立下りの検出は、全画素の中から選択された1つの代表画素の信号データf(t)に対してのみ行われてもよい。或いは、全画素の信号データf(t)を合計した合計信号データから立上がり又は立下がりの検出が行われもよいし、全画素の中から選択された複数の信号データf(t)を合計した合計信号データから立上がり又は立下がりの検出が行われもよい。これにより、変化検出部134による信号データf(t)の立上がり又は立下がりの検出回数の増大を抑制できるので、立上がり又は立下がりの検出のための処理負荷を低減できる。
【0152】
[信号処理方法]
続いて、図30を参照しながら、本実施形態における信号処理方法について説明する。図30は、信号処理装置5Aによって実施される信号処理方法の例を示すフローチャートである。図30に示す例では、図7の薄膜トランジスタアレイの回路構成を有するセンサ10Aから得られる信号データf(t)を処理する場合について説明する。
【0153】
図30におけるステップS301~S310は、図26におけるステップS201~S210と同一の処理である。ステップS301~S310の後、信号データ補正部140は、検出終了フラグが0であるか否かを判定する(ステップS311)。検出終了フラグは、センサ10Aに付与された外部刺激の検出が終了したかどうかを示すフラグである。信号データ補正部140は、検出終了フラグが0である場合(ステップS311においてYes)、終了点の検出が未完であるので、変化検出部134による信号データf(t)の時間変化の検出の有無を確認する(ステップS312)。例えば、信号データf(t)が正の時間変化を示す場合、変化検出部134は、信号データf(t)の立下がりを検出する。一方、信号データf(t)が負の時間変化を示す場合、変化検出部134は、信号データf(t)の立上がりを検出する。このように、変化検出部134は、信号データf(t)の立下がり又は立上がり(終了点)を検出すると、センサ10Aへの外部刺激の付与が終了する終了時間tを検出する。
【0154】
信号データ補正部140は、信号データf(t)の立下がり又は立上がりが検出されたと判断した場合(ステップS312においてYes)、変化検出部134が検出した終了時間tを記憶し、終了時間tから所定時間後の補正終了時間tを設定する(ステップS313)。その後、検出終了フラグが1に設定される(ステップS314)。その結果、補正開始時間tから補正終了時間tまでの期間において補正信号データh(t)が生成される。信号データ補正部140は、検出終了フラグが1であると判定した場合(ステップS311においてNo)には、外部刺激の検出が終了したと判断する。この場合、ステップS312~ステップS314が実施されずに、次のステップ315に移行する。また、信号データ補正部140が信号データf(t)の検知終了(立下がり又は立上がり)が検出されていないと判断した場合(ステップS312においてNo)、ステップ303に移行する。
【0155】
次に、リセット制御部122は、画素電極25の電荷蓄積のリセットを実行するか否かを判定する(ステップS315~S316)。例えば、リセット制御部122は、補正終了時間tに到達した場合や、リセットボタンが押された場合に、電荷蓄積のリセットを実行すると判定してよい。リセット制御部122が電荷蓄積のリセットを実行すると判定した場合(ステップS315またはS316においてYes)、補正フラグが0に設定される(ステップS317)。そして、検出終了フラグが0に設定され(ステップS318)、リセット制御部122は、電荷蓄積のリセットを実行する(ステップS319)。
【0156】
具体的には、リセット制御部122は、終了時間tから所定時間後の補正終了時間tにおいて、リセット用の薄膜トランジスタ23をオンにすることにより、画素電極25の電荷蓄積をリセットする。そして、リセット制御部122は、補正終了時間tから一定時間後の時間tにおいて、薄膜トランジスタ23をオフに切り替えることにより、画素電極25の電荷蓄積のリセットを解除する。その後、ステップS303に戻り、一連の補正処理が再度実行される。一方、リセット制御部122が電荷蓄積のリセットを実行しないと判定した場合(ステップS316においてNo)においても同様に、ステップS317~S319が実行されずに、ステップS303に戻り、一連の補正処理が再度実行される。
【0157】
[作用効果]
本実施形態によれば、第1実施形態と同様、減衰が補償された補正信号データh´(t)を得ることができるので、第1実施形態と同様の効果が得られる。更に、本実施形態では、補正終了時間t以前の補正データg(t)を用いて、補正信号データh´(t)が生成される。この場合、補正終了時間t以前の信号データf(t)に変動が生じていたとしても、その変動成分を加味せずに補正信号データh´(t)を得ることができる。その結果、補正信号データh´(t)に基づく外部刺激の評価をより正しく行うことが可能となる。終了時間tの検出は、画素毎に行うことが可能だが、センサ全体で終了時間tを共有する方が、動作を簡略化できて好ましい。また、リセットは、センサ全体で同時に行うことができる。なお、このように、補正終了時間tを終了時間tの所定時間後に設定することにより、外部刺激が確実に終了したことを確認できるようになる。更に、本実施形態では、補正終了時間t以降に電荷蓄積のリセットが実行される。この場合、画素電極25に残存する電荷が次の信号処理に影響を及ぼしてしまう事態を抑制できる。その結果、補正信号データh´(t)に基づく外部刺激の評価をより正しく行うことが可能となる。
【実施例0158】
以下、本発明に係る信号処理装置5、の実施例1~6について説明する。しかし、本発明は、実施例1~6に限定されるものではない。
【0159】
(実施例1)
図4図7のセンサ10Aと、図9の信号処理装置5Aとを備える、図8(b)のセンサ装置1Aを作製した。このセンサ10Aに一定強度の凸曲げ(具体的には、被刺激層30側が凸になる向きの曲げ)を1分間付与すると、信号データf(t)の時定数Tは、5秒~20秒のばらつきがあり、これらの相乗平均は10秒であった。そこで、時定数Tを10秒として設定し、図21の信号処理方法に従って信号データf(t)の信号処理を行った。
【0160】
図31(a)は、外部刺激条件e(t)を示すグラフである。図31(b)は、図31(a)の外部刺激条件e(t)の下で取得される1画素分の信号データf(t)を示すグラフである。図31(c)は、図31(b)の信号データf(t)から算出した、信号データf(t)を補正するための補正データg(t)を示すグラフである。図31(d)は、図31(c)の補正データg(t)を用いて信号データf(t)が補正された補正信号データh(t)を示すグラフである。図31(e)は、図31(d)の補正信号データh´(t)からベースラインBLを差し引くことにより得られる補正信号データh(t)を示すグラフである。
【0161】
図31(a)の外部刺激条件e(t)のように、一定強度の曲げをセンサ10Aに一定時間付与すると、図31(b)の信号データf(t)が得られた。図31(b)の信号データf(t)の時間積分値を時定数Tで除することにより、図31(c)の補正データg(t)が得られた。図31(c)の補正データg(t)を図31(b)の信号データf(t)に加算することにより、図31(d)の補正信号データh´(t)が得られた。補正信号データh´(t)からベースラインBLを差し引くことにより、図31(e)の補正信号データh(t)が得られた。図31(e)の補正信号データh(t)は、図31(b)の信号データf(t)と比べて、図31(a)の外部刺激条件e(t)のような矩形波に近くなった。
【0162】
(実施例2)
実施例1と同一のセンサ装置1Aを作製した。センサ10Aに対して、図20(a)の外部刺激条件e(t)の形状の外部刺激を付与した。具体的には、センサ10Aに対して、一定強度の凸曲げを一定時間付与した後、凸曲げの付与を徐々に解除して逆に凹曲げ(具体的には、被刺激層30側が凹になる向きの曲げ)を一定時間付与した。その結果、図20(b)の信号データf(t)が得られ、図20(c)の補正データg(t)を用いて図20(e)の補正信号データh(t)が得られた。図20(e)の補正信号データh(t)は、図20(b)の信号データf(t)と比べて、図20(a)の外部刺激条件e(t)が示す時間波形に近くなった。
【0163】
(実施例3)
実施例1と同一のセンサ装置1Aを作製した。センサ10Aに一定強度の凸曲げを一定時間付与した。時定数Tを10秒として設定し、図26の信号処理方法に従って信号データf(t)の信号処理を行った。図32(a)は、外部刺激条件e(t)を示すグラフである。図32(b)は、図32(a)の外部刺激条件e(t)の下で取得される1画素分の信号データf(t)を示すグラフである。図32(c)は、図32(b)の信号データf(t)から算出した、信号データf(t)を補正するための補正データg(t)を示すグラフである。図32(d)は、図32(c)の補正データg(t)を用いて信号データf(t)が補正された補正信号データh´(t)を示すグラフである。図32(e)は、図32(d)の補正信号データh´(t)からベースラインBLを差し引くことにより得られる補正信号データh(t)を示すグラフである。
【0164】
図32(a)の外部刺激条件e(t)の外部刺激をセンサ10Aに付与すると、図32(b)の信号データf(t)が得られ、図32(b)の信号データf(t)の立ち上がりより所定時間前の補正開始時間tから信号データf(t)を積分し時定数Tで割ることで、図32(c)の補正データg(t)を得た。図32(c)の補正データg(t)を信号データf(t)に加算し、図32(d)の補正信号データh′(t)が得られた。図32(d)の補正信号データh′(t)からベースラインBLを差し引くことで、図32(e)の補正信号データh(t)が得られた。図32(e)の補正信号データh(t)は、図32(b)の信号データf(t)よりも、図32(a)の外部刺激条件e(t)が示す時間波形に近くなった。
【0165】
(実施例4)
実施例1とは異なる被刺激層を有する図2図4のセンサ10と、信号処理装置5とを備える、図8(a)のセンサ装置1を作製した。このセンサ10に一定強度の圧力を1分間付与すると、信号データf(t)の時定数Tは、80秒~140秒のばらつきがあり、これらの中央値は110秒であった。そこで、中央値よりも大きい120秒を時定数Tとして設定し、図26の信号処理方法に従って信号データf(t)の信号処理を行った。このときの外部刺激条件e(t)は、図25(a)の時間波形を示す。図25(a)において、被刺激層30の向きに応じて、外部刺激条件e(t)は負の時間変化を示している。
【0166】
図25(a)の外部刺激条件e(t)の形状の外部刺激をセンサ10Aに付与すると、図25(b)の信号データf(t)が得られ、図25(b)の立ち下がりより所定時間前の補正開始時間tから信号データf(t)を積分し時定数Tで割ることで、図25(c)の補正データg(t)を得た。図25(c)の補正データg(t)を信号データf(t)に加算して、図25(d)の補正信号データh′(t)が得られた。図25(d)の補正信号データh′(t)からベースラインBLを差し引くことで、図25(e)の補正信号データh(t)が得られた。図25(e)の補正信号データh(t)は、図25(b)の信号データf(t)よりも、図25(a)の外部刺激条件e(t)が示す時間波形に近くなった。
【0167】
(実施例5)
実施例1と同一のセンサ装置1Aを作製した。センサ10Aに一定強度の凸曲げを一定時間付与した。時定数Tを10秒として設定し、図30の信号処理方法に従って信号データf(t)の信号処理を行った。図33(a)は、外部刺激条件e(t)を示すグラフである。図33(b)は、図33(a)の外部刺激条件e(t)の下で取得される1画素分の信号データf(t)を示すグラフである。図33(c)は、図33(b)の信号データf(t)から算出した、信号データf(t)を補正するための補正データg(t)を示すグラフである。図33(d)は、図33(c)の補正データg(t)を用いて信号データf(t)が補正された補正信号データh′(t)を示すグラフである。図33(e)は、図33(d)の補正信号データh′(t)からベースラインBLを差し引くことにより得られる補正信号データh(t)を示すグラフである。
【0168】
図33(a)の外部刺激条件e(t)の形状の外部刺激をセンサ10Aに付与すると、図33(b)の信号データf(t)が得られた。信号データf(t)のデータがない時間帯は、立ち下がりの終了時間tより所定時間後の補正終了時間tから一定時間後の時間tまでリセットをかけた期間である。図33(b)の立ち上がりより所定時間前の補正開始時間tから信号データf(t)を積分して時定数Tで割ることで、図33(c)の補正データg(t)を得た。補正は、図33(b)の立ち下がりより所定時間後の補正終了時間tまで行った。図33(c)の補正データg(t)を信号データf(t)に加算して、図33(d)の補正信号データh′(t)が得られた。図33(d)の補正信号データh′(t)からベースラインBLを差し引くことで、図33(e)の補正信号データh(t)が得られた。図33(e)の補正信号データh(t)は、図33(b)の信号データf(t)よりも、図33(a)の外部刺激条件e(t)が示す時間波形に近くなった。
【0169】
(実施例6)
実施例4と同一の被刺激層を有する図4図7のセンサ10Aと、図9の信号処理装置5Aとを備える、図8(b)のセンサ装置1Aを作製した。また、被刺激層30の両側に電極を付けて静電容量C及び抵抗成分Rを測定した。静電容量CをLCRメータで測定すると、1kHzにおいて静電容量Cは1000pFであった。抵抗成分Rを半導体パラメータアナライザで測定すると、抵抗成分Rは、70GΩ~120GΩであった。この結果から、静電容量Cと抵抗成分Rとの積CRは、70秒~120秒となり、これらの最大値と最小値との平均値は、95秒となった。そこで、時定数Tを100秒として設定し、図26の信号処理方法に従って信号データf(t)の信号処理を行った。このときの外部刺激条件e(t)は、図29(a)の時間波形を示す。図29(a)において、被刺激層30の向きに応じて、外部刺激条件e(t)は負の時間変化を示している。
【0170】
図29(a)の外部刺激条件e(t)の形状の外部刺激をセンサ10Aに付与すると、図29(b)の信号データf(t)が得られた。信号データf(t)のデータがない時間帯は、立ち上がりの終了時間tより所定時間後の補正終了時間tから一定時間後の時間tまでリセットをかけた期間である。図29(b)の立ち下がりより所定時間前の補正開始時間tから信号データf(t)を積分し時定数Tで割ることで、図29(c)の補正データg(t)を得た。補正は、図29(b)の立ち下がりより所定時間後の補正終了時間tまで行った。図29(c)の補正データg(t)を信号データf(t)に加算して、図29(d)の補正信号データh′(t)が得られた。図29(d)の補正信号データh′(t)からベースラインBLを差し引くことで、図29(e)の補正信号データh(t)が得られた。図29(e)の補正信号データh(t)は、図29(b)の信号データf(t)よりも、図29(a)の外部刺激条件e(t)が示す時間波形に近くなった。なお、補正データg(t)、補正信号データh´(t)、及び補正信号データh(t)は、信号データf(t)に対してわずかの時間(t-t)だけ遅れて計算され、直ちに表示されるので、観測時の支障は軽微であった。
【0171】
以下、本発明の要旨を示す。
[1] 外部刺激に伴って生じる電極の電位の変化に基づく信号を出力するセンサの前記信号を処理する信号処理装置であって、
前記信号の時系列データである信号データを取得する信号データ取得部と、
前記信号データを時間積分することにより得られる時間積分値を、前記信号データの一定割合の減衰にかかる時間を示す時定数で除することにより、前記信号データの減衰を補償するための補正データを算出する補正データ算出部と、
前記補正データを前記信号データに加算する補正を行うことにより、補正後の前記信号データである補正信号データを生成する補正信号データ生成部と、
を備える、信号処理装置。
[2] 予め取得された信号データから得られる時定数を、前記信号データの前記時定数として設定する時定数設定部を更に備える、[1]に記載の信号処理装置。
[3] 前記センサの前記電極と前記センサの対向電極との間が有する抵抗成分と、前記電極と前記センサの前記対向電極との間に生じる静電容量との積を、前記信号データの前記時定数として設定する時定数設定部を更に備える、[1]に記載の信号処理装置。
[4] 前記信号データに含まれる複数の信号値のうち、前記外部刺激に伴って生じる前記信号データの時間変化を示すための基準となる前記信号値をベースラインとして設定するベースライン設定部を更に備え、
前記補正データ算出部は、前記ベースラインが差し引かれた前記信号データを時間積分することにより、前記時間積分値を算出する、[1]~[3]のいずれかに記載の信号処理装置。
[5] 前記外部刺激に伴って生じる前記信号データの時間変化の開始時間を検出する変化検出部を更に備え、
前記ベースライン設定部は、前記開始時間よりも所定時間前の時間における前記信号値を、前記ベースラインとして設定する、[4]に記載の信号処理装置。
[6] 前記外部刺激に伴って生じる前記信号データの時間変化の開始時間を検出する変化検出部を更に備え、
前記補正信号データ生成部は、前記開始時間よりも所定時間前の時間以降の前記補正データを用いて、前記補正信号データを生成する、[1]~[5]のいずれかに記載の信号処理装置。
[7] 前記外部刺激に伴って生じる前記信号データの時間変化の終了時間を検出する変化検出部を更に備え、
前記補正信号データ生成部は、前記終了時間よりも所定時間後の時間以前の前記補正データを用いて、前記補正信号データを生成する、[1]~[6]のいずれかに記載の信号処理装置。
[8] 前記電極の電荷蓄積のリセットを制御するリセット制御部を更に備え、
前記リセット制御部は、前記終了時間よりも所定時間後の時間以降に前記電荷蓄積のリセットを実行させる、[7]に記載の信号処理装置。
[9] [1]~[8]のいずれかに記載の信号処理装置と、
前記電位の変化に基づく前記信号を出力する前記センサと、
を備える、センサ装置。
[10] 外部刺激に伴って生じる電極の電位の変化に基づく信号を出力するセンサの前記信号を処理する信号処理方法であって、
前記信号の時系列データである信号データを取得するステップと、
前記信号データを時間積分することにより得られる時間積分値を、前記信号データの一定割合の減衰にかかる時間を示す時定数で除することにより、前記信号データの減衰を補償するための補正データを算出するステップと、
前記補正データを前記信号データに加算する補正を行うことにより、補正後の前記信号データである補正信号データを生成するステップと、
を備える、信号処理方法。
【符号の説明】
【0172】
1,1A…センサ装置、5,5A…信号処理装置、10,10a,10b,10A…センサ、122…リセット制御部、131…信号データ取得部、132…時定数設定部、133…ベースライン設定部、134…変化検出部、141…補正信号データ生成部、142…補正データ算出部、BL…ベースライン、C…静電容量、D…信号、f(t)…信号データ、g(t)…補正データ、h(t)…補正信号データ、R…抵抗成分、T…時定数、t…開始時間、t…終了時間。
図1
図2
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