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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112606
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】蓄電デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20240814BHJP
   H01M 50/449 20210101ALI20240814BHJP
   H01M 50/46 20210101ALI20240814BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALI20240814BHJP
   H01G 11/84 20130101ALI20240814BHJP
   H01M 6/16 20060101ALN20240814BHJP
   H01M 6/10 20060101ALN20240814BHJP
【FI】
H01M10/04 W
H01M50/449
H01M50/46
H01M10/0587
H01G11/84
H01M6/16 D
H01M6/10 Z
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017762
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】伊勢田 泰助
(72)【発明者】
【氏名】西田 晶
【テーマコード(参考)】
5E078
5H021
5H024
5H028
5H029
【Fターム(参考)】
5E078AA14
5E078AB01
5E078CA02
5E078CA11
5E078CA12
5E078CA16
5E078LA07
5H021AA06
5H021BB05
5H021BB11
5H021CC04
5H021EE32
5H021HH00
5H021HH03
5H021HH04
5H021HH10
5H024BB05
5H024BB09
5H024BB14
5H024BB18
5H024CC12
5H024CC17
5H024DD09
5H024HH13
5H028AA05
5H028BB04
5H028BB07
5H028CC02
5H028CC08
5H028CC12
5H028HH01
5H028HH05
5H029AJ14
5H029AK03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AM03
5H029AM07
5H029BJ14
5H029CJ03
5H029CJ05
5H029CJ07
5H029DJ04
5H029HJ04
5H029HJ07
5H029HJ12
(57)【要約】
【課題】巻回電極体を備えた蓄電デバイスを生産性高く得ることができる技術を提供すること。
【解決手段】ここで開示される蓄電デバイス(ここでは、電池)の製造方法の一態様では、正極22と、負極24とを、セパレータ26を介して巻回し、巻回体20Aを製造する巻回工程S1と、巻回工程S1の後、巻回体20Aをプレス成形し扁平状の巻回電極体20a(20b,20c)とするプレス工程S2と、を包含する。巻回工程S1において、表面のうち少なくとも一方の表面に第1接着層1Aと第2接着層1Bとを有するセパレータ26を用いる。また、巻回工程S1において、第1接着層1Aと正極22とが接着され、第2接着層1Bと正極22とが、第1接着層1Aと正極22との接着力よりも弱い力で接着され、プレス工程S2において、第2接着層1Bと正極22とが、上記プレス工程の前の状態よりもより強く接着される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の第1電極と、帯状の第2電極とが、帯状のセパレータを介して巻回された扁平状の巻回電極体を備えた蓄電デバイスの製造方法であって、
前記第1電極と、前記第2電極とを、前記セパレータを介して巻回し、巻回体を製造する巻回工程と、
前記巻回工程の後、前記巻回体をプレス成形し扁平状の巻回電極体とするプレス工程と、を包含し、
前記巻回工程において、表面のうち少なくとも一方の表面に第1接着層と第2接着層とを有する前記セパレータを用い、
前記巻回工程において、
前記第1接着層と前記第1電極とが接着され、
前記第2接着層と前記第1電極とが、前記第1接着層と前記第1電極との接着力よりも弱い力で接着され、あるいは、前記第2接着層と前記第1電極とが接着されず、
前記プレス工程において、
前記第2接着層と前記第1電極とが、前記プレス工程の前の状態よりもより強く接着される、蓄電デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記第1接着層は、前記巻回工程における温度条件下において、粘着性を有する、請求項1に記載の蓄電デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記第1接着層は所定のパターン形成されており、前記第2接着層は所定のパターン形成されている、請求項1または2に記載の蓄電デバイスの製造方法。
【請求項4】
前記巻回工程に用いられる前記セパレータにおいて、
前記第1接着層の厚みT1は、前記第2接着層の厚みT2よりも大きい、請求項1または2に記載の蓄電デバイスの製造方法。
【請求項5】
前記巻回工程に用いられる前記セパレータにおいて、
前記第1接着層および前記第2接着層は、それぞれ複数のドット状に形成されており、
前記第1接着層のドットの径は、前記第2接着層のドットの径よりも小さい、請求項3に記載の蓄電デバイスの製造方法。
【請求項6】
前記巻回工程に用いられる前記セパレータにおいて、
前記セパレータの片面の面積Pに対する前記第1接着層の総形成面積Qの比(Q/P)の値は、0.01~0.3であり、
前記セパレータの片面の面積Pに対する前記第2接着層の総形成面積Rの比(R/P)の値は、0.01~0.3である、請求項1または2に記載の蓄電デバイスの製造方法。
【請求項7】
前記巻回工程に用いられる前記セパレータにおいて、
前記第1接着層の総形成面積Qは、前記第2接着層の総形成面積Rよりも小さい、請求項1または2に記載の蓄電デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許第5328034号公報には、正極、負極、およびセパレータを有する巻回電極体を備えた電池であって、該セパレータの表面に接着性樹脂を含む耐熱多孔質層を有する電池が開示されている。かかる巻回電極体は、正極と負極とを、セパレータを介して配置して重ね、巻回し、扁平状に押しつぶすことによって作製する旨、記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5328034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本発明者らの検討によると、各部材を巻回する際に、上述したような接着性樹脂を有するセパレータと電極とが強く接着すると、巻回体を押しつぶして変形する際に、該セパレータと該電極との位置関係が適切に変化しないことがあり、これによって、該セパレータに歪みやしわ等が生じるおそれがあることが分かった。一方、セパレータがかかる接着性樹脂を有さない場合、巻回体に巻きずれが生じるおそれがあるため、生産性等の観点から好ましくない。即ち、上述したような接着層を有する巻回電極体を備えた蓄電デバイス(例えば、電池)の製造において、生産性の向上という観点から、まだまだ改善の余地があることがわかった。
【0005】
本開示は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、巻回電極体を備えた蓄電デバイスを生産性高く得ることができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を実現すべく、本開示は、帯状の第1電極と、帯状の第2電極とが、帯状のセパレータを介して巻回された扁平状の巻回電極体を備えた蓄電デバイスの製造方法を提供する。かかる蓄電デバイスの製造方法は、上記第1電極と、上記第2電極とを、上記セパレータを介して巻回し、巻回体を製造する巻回工程と、上記巻回工程の後、上記巻回体をプレス成形し扁平状の巻回電極体とするプレス工程と、を包含し、上記巻回工程において、表面のうち少なくとも一方の表面に第1接着層と第2接着層とを有する前記セパレータを用い、上記巻回工程において、上記第1接着層と上記第1電極とが接着され、上記第2接着層と上記第1電極とが、上記第1接着層と上記第1電極との接着力よりも弱い力で接着され、あるいは、上記第2接着層と上記第1電極とが接着されず、上記プレス工程において、上記第2接着層と上記第1電極とが、上記プレス工程の前の状態よりもより強く接着される、蓄電デバイスの製造方法である。詳細については後述するが、かかる構成の蓄電デバイスの製造方法によると、巻回電極体を備えた蓄電デバイスを生産性高く得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態に係る電池の製造方法について説明するためのフローチャートである。
図2】一実施形態に係る巻回工程について説明するための模式図である。
図3】一実施形態に係るプレス工程前の巻回体を示す模式図である。
図4】一実施形態に係るプレス工程後の巻回体を示す模式図である。
図5】一実施形態に係るセパレータの構成を示す模式図である。
図6】一実施形態に係る巻回工程前のセパレータの態様を示す模式図である。
図7】一実施形態に係る巻回工程後におけるセパレータの態様を示す模式図である。
図8】一実施形態に係るプレス工程後におけるセパレータの態様を示す模式図である。
図9】一実施形態に係る電池を模式的に示す斜視図である。
図10図9中のX-X線に沿う模式的な縦断面図である。
図11図9中のXI-XI線に沿う模式的な縦断面図である。
図12図9中のXII-XII線に沿う模式的な横断面図である。
図13】封口板に取り付けられた巻回電極体を模式的に示す斜視図である。
図14】正極第2集電体と負極第2集電体が取り付けられた巻回電極体を模式的に示す斜視図である。
図15】一実施形態に係る電池の巻回電極体の構成を示す模式図である。
図16】一実施形態に係る正極と負極とセパレータとの界面を模式的に示す拡大図である。
図17】第2実施形態に係る図5対応図である。
図18】第3実施形態に係る図5対応図である。
図19】第4実施形態に係る図5対応図である。
図20】第5実施形態に係る図5対応図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、ここで開示される技術のいくつかの実施形態について図面を参照しながら説明する。以下の説明は、当然のことながら、ここで開示される技術を以下の実施形態に限定することを意図したものではない。以下の図面においては、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって、ここで開示される技術の実施に必要な事柄(例えば、本発明を特徴付けない電池の一般的な構成および製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここで開示される技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、本明細書において範囲を示す「A~B」の表記は、「A以上B以下」を意味する。また、「Aを超える」および「B未満」の意を包含するものとする。
【0009】
なお、本明細書において「蓄電デバイス」とは、充電と放電とを行うことができるデバイスをいう。蓄電デバイスには、一次電池、二次電池(例えば、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素電池)等の電池と、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ(物理電池)とが包含される。また、電解質は、液状電解質(電解液)、ゲル状電解質、固体電解質のいずれであってもよい。
【0010】
<電池の製造方法>
以下、ここで開示される蓄電デバイスの一実施形態であるリチウムイオン二次電池(以下、単に「電池100」ともいう)の製造方法を例に本技術について説明する。なお、以下では、第1電極を正極22、第2電極を負極24とした場合について説明するが、ここで開示される技術は、例えば第1電極を負極24、第2電極を正極22とした場合についても適用することができる。なお、以下では、巻回電極体20aに焦点を当てて説明するが、巻回電極体20b,20cについても同様である。
【0011】
図1は、本実施形態に係る電池100(即ち、帯状の正極22と、帯状の負極24とが、帯状のセパレータ26を介して巻回された扁平状の巻回電極体20a,20b,20cを備えた電池100)の製造方法について説明するためのフローチャートである。図1に示すように、本実施形態に係る電池の製造方法は、正極22と、負極24とを、セパレータ26を介して巻回し、巻回体20Aを製造する巻回工程(ステップS1);と、上記巻回工程の後、巻回体20Aをプレス成形し扁平状の巻回電極体20aとするプレス工程(ステップS2);と、を包含する。上記巻回工程においては、表面のうち少なくとも一方の表面に第1接着層1Aと第2接着層1Bとを有するセパレータ26を用いる。また、上記巻回工程においては、第1接着層1Aと正極22とが接着され、第2接着層1Bと正極22とが、第1接着層1Aと正極22との接着力よりも弱い力で接着され、あるいは、第2接着層1Bと正極22とが接着されないようにする。そして、上記プレス工程においては、第2接着層1Bと正極22とが、上記プレス工程の前の状態よりもより強く接着されるようにする。
【0012】
上述したような電池100の製造方法によると、上記巻回工程において、セパレータ26が有する第1接着層1Aのみと正極22とが接着される、あるいは、セパレータ26が有する第1接着層1Aと正極22とが接着され、かつ、セパレータ26が有する第2接着層1Bと正極22とが弱い力で接着される。そして、上記プレス工程において、セパレータ26が有する第1接着層1Aと正極22との接着性が保持されつつ、さらにセパレータ26が有する第2接着層と正極22とが強い力で接着される。換言すると、上記巻回工程においては、正極22とセパレータ26とが強く接着されず、上記プレス工程において、正極22とセパレータ26とが強く接着される。したがって、上記プレス工程において、正極22とセパレータ26との位置関係が変化する際に、該位置関係が適切に変化する。これによって、セパレータ26に歪みやしわ等が生じることを好適に抑制することができる。また、セパレータ26が接着層(第1接着層1Aおよび第2接着層1B)を有するため、巻回体20Aの巻きずれを好適に抑制することができる。即ち、上述したような電池100の製造方法によると、巻回電極体20a,20b,20cを備えた電池100を生産性高く得ることができる。以下、各工程について説明する。なお、以下では、上記巻回工程において、第1接着層1Aと正極22とが接着され、第2接着層1Bと正極22とが、第1接着層1Aと正極22との接着力よりも弱い力で接着される場合について説明する。
【0013】
(ステップS1:巻回工程)
上述したように、本工程では、正極22と、負極24とを、セパレータ26を介して巻回し、巻回体20Aを製造する。ここで、図2は、本実施形態に係る巻回工程について説明するための模式図である。図5は、本実施形態に係るセパレータの構成を示す模式図である。図6は、本実施形態に係る巻回工程前のセパレータの態様を示す模式図である。なお、図6では、説明し易くするために、一方のセパレータ26および正極22のみを記載しているが、他方のセパレータ26および正極22についても同様な効果を得ることができる。後述する図7および図8についても同様である。先ず、帯状のセパレータ26、帯状の正極22、および帯状の負極24を準備する。ここで、図5に示すように、本実施形態では、セパレータとして、一方の表面に第1接着層1Aと第2接着層1Bとを有するセパレータ26を用いる。また、図6に示すように、本実施形態では、第1接着層1Aの厚み(詳しくは、MD方向における厚み)T1を、第2接着層1Bの厚み(詳しくは、MD方向における厚み)T2よりも大きくなるようにしている。かかるセパレータとしては、予めセパレータ26の表面上に第1接着層1Aおよび第2接着層1Bが形成された市販のものを用いてもよいし、グラビア印刷やインクジェット印刷等によってセパレータ26の表面に第1接着層1Aおよび第2接着層1Bを形成したものを用いることもできる。また、後者の場合は、上記巻回工程の前に、塗布装置によってセパレータ26の表面の少なくとも一方の表面に接着層(ここでは、第1接着層1Aおよび第2接着層1B)を塗布する塗布工程を含むことが好ましい。また、かかる塗布工程は、例えば形成された接着層に異物等が吸着したりすることを好適に抑制するという観点から、上記巻回工程の直前に実施されることが好ましい。
【0014】
ここで、第1接着層1Aおよび第2接着層1Bは、接着バインダを含んでいる。接着バインダの一例としては、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、ゴム系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂やこれらの組み合わせ等が挙げられる。ゴム系樹脂の一例としては、スチレンブタジエンゴム(SBR)が挙げられる。また、高い柔軟性を有し、電極(ここでは、正極22)に対する接着性をより好適に発揮できることから、フッ素系樹脂やアクリル系樹脂が好ましい。フッ素系樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が挙げられる。接着バインダの種類は、耐熱層バインダと同じであってもよく、異なっていてもよい。第1接着層1Aおよび第2接着層1Bは、接着バインダを主体として構成されていることが好ましい。第1接着層1A(第2接着層1B)の全体を100体積%としたとき、接着バインダの割合は、例えば50体積%以上、60体積%以上であり、70体積%以上が好ましく、80体積%以上、さらには90体積%以上がより好ましい。これにより、正極22に対して所定の接着性が的確に発揮されるとともに、プレス成形においてセパレータ26が変形しやすくなる。また、第1接着層1Aを構成する樹脂のうち主体となる成分と、第2接着層1Bを構成する樹脂のうち主体となる成分とが、同じであることが好ましい。ここで、主体となる成分とは、第1接着層1A(第2接着層1B)を構成する樹脂全体を100体積%としたとき、例えば50体積%以上、60体積%以上であり、70体積%以上、80体積%以上、90体積%以上、95体積%以上(100体積%であってもよい)含有される成分のことを意味し得る。また、第1接着層1Aおよび第2接着層1Bは、取り扱い易さという観点から、常温(例えば、25℃程度)で粘着性を発現する(有する)ことが好ましい。ここで、粘着性(接着性)とは、例えばJIS Z 0237:2009に基づく90°剥離試験による剥離強度が、0.00001N/20mm~0.1N/20mm(好ましくは、0.0001N/20mm~0.01N/20mm)であることを意味し得る。ただし、これに限定されることを意図したものではない。
【0015】
第1接着層1Aおよび第2接着層1Bは、接着バインダに加えて、他の材料(例えば、アルミナ、チタニア、ベーマイト等の無機フィラー等)を含んでいてもよい。第1接着層1Aおよび第2接着層1Bが無機フィラーを含む場合、第1接着層1A(第2接着層1B)の総質量に対する無機フィラーの割合は、80質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。
【0016】
なお、本実施形態では、第1接着層1Aおよび第2接着層1Bの組成を同じとしているが、他の実施形態では、第1接着層1Aおよび第2接着層1Bの組成を異ならせてもよい。
【0017】
次に、図2に示すように、上記準備したセパレータ26、正極22、および負極24を、搬送ローラーAを用いて巻き芯Bまで搬送し、巻き芯Bに巻きつけることによって巻回体20Aを作製する。巻き芯Bとしては、ここでは円筒状のものを用いているが、これに限定されず、例えば扁平形状のものを用いてもよい。巻回体20Aの断面形状は、本実施形態のように扁平形状であってもよいし、真円形状、楕円形状、トラック形状等その他の形状であってもよい。幅方向Yの一方(図15の左側)の側縁から正極22の正極タブ22tのみが突出し、かつ、他方(図15の右側)の側縁から負極24の負極タブ24tのみが突出するように、各々のシートを巻回する。なお、巻回数は、目的とする電池100の性能や製造効率などを考慮して適宜調節することが好ましい。いくつかの態様において、かかる巻回数は20以上や30以上とすることができる。
【0018】
ここで、図7は、本実施形態に係る巻回工程後におけるセパレータ26の態様を示す模式図である。上述したように、本実施形態では、上記巻回工程前のセパレータ26において、第1接着層1Aの厚み(詳しくは、図6のMD方向における厚み)T1は、第2接着層1Bの厚み(詳しくは、図6のMD方向における厚み)T2よりも大きい。そして、巻回工程において、厚みの大きな第1接着層1Aと正極22とが接着され、厚みの小さな第2接着層1Bと正極22とが、第1接着層1Aと正極22との接着力よりも弱い力で接着される(図7を参照)。即ち、巻回工程において、セパレータ26と正極22とが接着層(ここでは、第1接着層1Aおよび第2接着層1B)によって接着されるため、巻回体20Aの巻きずれ(詳しくは、巻回体20A内におけるセパレータ26と正極22の位置ずれ。特に、巻回体20Aを巻き芯Bから抜くときに生じ易い。あるいは、後述するプレス工程までの搬送における巻きずれ。)を好適に抑制することができる。さらに、上記巻回工程において、セパレータ26と正極22とが強く接着されることを好適に抑制することができるため、後述するプレス工程において、正極22とセパレータ26との位置関係を適切に変化させることができる。ただし、他実施形態では、第1接着層1Aの厚みおよび第2接着層1Bの厚みT2は同じであってもよいし、第1接着層1Aの厚みT1は第2接着層1Bの厚みよりも小さくてもよい。
【0019】
なお、上記巻回工程における、第1接着層1A(第2接着層1B)の第1電極(ここでは、正極22)に対する接着力は、例えば以下のように測定された値とすることができる。具体的には、上記巻回工程における押圧力(例えば、0.01MPa~0.1MPa程度)を印加したときの、第1接着層1Aを有するセパレータ26(第2接着層1Bを有するセパレータ26)と第1電極(ここでは、正極22)との間の90°での剥離試験を実施した際に得られる剥離強度とすることができる。特に限定されるものではないが、第1接着層1Aの第1電極(ここでは、正極22)に対する接着力(剥離強度)は、例えば0.00001N/20mm~0.1N/20mm(好ましくは、0.0001N/20mm~0.01N/20mm)とすることができる。また、第2接着層1Bの第1電極(ここでは、正極22)に対する接着力(剥離強度)は、例えば0N/20mm~0.00001N/20mm(好ましくは、0N/20mm~0.000001N/20mm)とすることができる。そして、上記巻回工程における、第1接着層1Aの第1電極(ここでは、正極22)に対する接着力(剥離強度)と、第2接着層1Bの第1電極(ここでは、正極22)に対する接着力(剥離強度)の差は、例えば0.00001N/20mm~0.1N/20mm(好ましくは、0.0001N/20mm~0.01N/20mm)とすることができる。かかる剥離試験は、例えば以下の方法によって測定することができる。先ず、第1接着層1A(第2接着層1B)を有するセパレータ26および第1電極(ここでは、正極22)を、それぞれ縦:2.0cm、横:7.0cmのサイズに切り出し、該切り出したセパレータ26および正極22を重ねる。次に、セパレータ26と正極22とを、これらの角度が90°になるように折り曲げる。そして、引張試験機等を用いて、90°に開いたセパレータ26の片側と正極22の片側とを把持し、引張速度50mm/minで引張り、両者が剥離したときの強度を測定する。このようにして、剥離強度を測定することができる。なお、後述する第2接着層1Bの上記プレス工程前後の剥離強度についても、第2接着層1Bを有するセパレータ26および正極22を用いて、同様な方法で測定することができる。
【0020】
特に限定されるものではないが、上記T2に対する上記T1の比(T1/T2)の値は、例えば、1.2以上であり、上述したような効果をより好適に得るという観点から、好ましくは1.5以上(例えば、1.5超)であり、より好ましくは2以上(例えば、2超)である。また、上記比(T1/T2)の値の上限は、例えば3以下であり、2.5以下であってもよい。また、特に限定されるものではないが、上記T1および上記T2の大きさは、0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.5μm以上がさらに好ましい。また、上記T1および上記T2の大きさの上限は、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、3μm以下がさらに好ましい。上記T1および上記T2を上述したような範囲内とした場合、接着性、電池100の充放電反応の均一化、Li析出抑制等の観点から好ましい。上記T1および上記T2の大きさは、例えば0.1μm~10μmの範囲内であることが好ましい。
【0021】
図5に示すように、本実施形態では、第1接着層1Aは所定のパターン形成(所定の形状に形成)されており、第2接着層1Bは所定のパターン形成(所定の形状に形成)されている。本実施形態では、第1接着層1Aは部分形成されており、第2接着層1Bは部分形成されている。かかる構成によると、ここで開示される技術の効果をより簡便に(効果的に)得ることができるため、好ましい。また、図5に示すように、本実施形態では、かかるパターンをドット状(ここでは、セパレータ26の平面視において円形状であるドット形状)としている。そして、本実施形態では、第1接着層1Aおよび第2接着層1Bが、セパレータ26の短辺方向Yにおいて交互に配置されている。なお、本実施形態では、かかるドットの個数を、セパレータ26のY方向に6個としているが、これに限定されず、ドットの個数は、第1接着層1Aおよび第2接着層1Bの組成等によって適宜変更されることが好ましい。また、他の実施形態では、かかるパターンを、セパレータ26の平面視において円形状以外の形状(例えば、セパレータ26の平面視において楕円形状、多角形状等)を有するドット形状としてもよいし、ストライプ形状、トラック形状等とすることができる。また、かかるパターンとしては、上述したような形状が1種形成されていてもよいし、2種以上が組み合わせて形成されていてもよい。他のパターンの一例については、後述する第2~5実施形態のようなパターンを挙げることができる。そして、他の実施形態では、第1接着層1Aおよび第2接着層1Bが、セパレータ26の長辺方向Zにおいて交互に配置されていてもよい。
【0022】
また、図5および図6に示すように、本実施形態では、第1接着層1Aのドットの径(詳しくは、直径)D1は、第2接着層1Bのドットの径(詳しくは、直径)D2よりも小さい。かかる構成によると、後述するプレス工程後に、第1接着層1Aと第2接着層1Bとで、一つのドットの体積のばらつきが小さくなるため、電池100の反応の不均一化を好適に抑制することができる。特に限定されるものではないが、上記D2に対する上記D1の比(D1/D2)の値は、例えば0.1以上であり、上述したような効果をより好適に得るという観点から、好ましくは0.3以上であり、より好ましくは0.5以上である。また、上記比(D1/D2)の値の上限は、例えば0.8以下であり、0.6以下であってもよい。特に限定されるものではないが、ドット径D1およびドット径D2の大きさは、例えば50μm以上であり、75μm以上がより好ましく、100μm以上がさらに好ましい。また、ドット径D1およびドット径D2の上限は、例えば500μm以下であり、300μm以下がより好ましく、200μm以下がさらに好ましい。即ち、ドット径D1およびドット径D2の大きさは、例えば50μm~500μmの範囲内であることが好ましい。なお、他の実施形態では、ドット径D1およびドット径D2は同じであってもよいし、ドット径D1がドット径D2よりも大きくてもよい。
【0023】
好ましい一態様では、第1接着層1Aは、上記巻回工程における温度条件下において、粘着性を有する。かかる構成によると、上記巻回工程においてセパレータ26と正極22とを容易に接着させることができるため、好ましい。また、巻回体Aにおけるセパレータ26および正極22のずれを効果的に抑制することができるため、好ましい。なお、上記巻回工程における温度は、好ましくは50℃以下であり、より好ましくは40℃以下であり、さらに好ましくは35℃以下である。また、上記巻回工程は、10℃以上で実施されることが好ましい。なお、第2接着層1Bとしても、上記巻回工程における温度条件下において、粘着性を有するものを用いることができる。
【0024】
特に限定されるものではないが、セパレータ26の片面の面積Pに対するセパレータ26の片面における第1接着層1Aの総形成面積Qの比(Q/P)の値は、例えば0.005以上であり、セパレータ26と正極22との接着性を好適に担保するという観点から、好ましくは0.01以上であり、より好ましくは0.03以上であり、例えば0.05以上であってもよい。また、上記比(Q/P)の値の上限は、例えば0.5以下であり、抵抗が好適に低減された電池100(換言すると、出力特性の低下が好適に抑制された電池100)を得るという観点から、好ましくは0.3以下であり、より好ましくは0.2以下であり、さらに好ましくは0.1以下である。上記比(Q/P)の値は、例えば0.01~0.3の範囲内であることが好ましい。また、特に限定されるものではないが、セパレータ26の片面の面積Pに対するセパレータ26の片面における第2接着層1Bの総形成面積Rの比(R/P)の値は、例えば0.005以上であり、セパレータ26と正極22との接着性を好適に担保するという観点から、好ましくは0.01以上であり、より好ましくは0.03以上であり、例えば0.05以上であってもよい。また、上記比(R/P)の値の上限は、例えば0.5以下であり、抵抗が好適に低減された電池100(換言すると、出力特性の低下が好適に抑制された電池100)を得るという観点から、好ましくは0.3以下であり、より好ましくは0.2以下であり、さらに好ましくは0.1以下である。上記比(R/P)の値は、例えば0.01~0.3の範囲内であることが好ましい。なお、第1接着層1A(第2接着層1B)の総形成面積とは、セパレータ26の平面視における全ての第1接着層1A(第2接着層1B)の面積のことを意味する。
【0025】
また、図6に示すように、本実施形態では、第1接着層1Aの総形成面積Qは、第2接着層1Bの総形成面積Rよりも小さい。かかる構成によると、巻回工程時に第1接着層1A,第2接着層1Bおよび正極22が弱く接着し、プレス工程時に第1接着層1A,第2接着層1Bおよび正極22が強く接着するため、ここで開示される技術の効果を好適に得るという観点から好ましい。また、かかる構成によると、電池100の充放電反応の均一化を好適に実現することができる。特に限定されるものではないが、上記Rに対する上記Qの比(Q/R)の値は、例えば0.1以上であり、上述したような効果をより好適に得るという観点から、好ましくは0.2以上であり、より好ましくは0.3以上である。また、上記比(Q/R)の値の上限は、例えば0.7以下であり、0.5以下であってもよい。なお、他の実施形態では、第1接着層1Aの総形成面積Qおよび第2接着層1Bの総形成面積Rは同じであってもよいし、第1接着層1Aの総形成面積Qが第2接着層1Bの総形成面積Rよりも小さくてもよい。
【0026】
特に限定されるものではないが、セパレータ26の片面における第1接着層1Aの目付は、例えば0.005g/m以上であり、好ましくは0.01g/m以上であり、より好ましくは0.02g/m以上である。また、第1接着層1Aの目付の上限は、例えば2.0g/m以下であり、好ましくは1.0g/m以下であり、より好ましくは0.05g/m以下である。また、特に限定されるものではないが、第2接着層1Bの目付は、例えば0.005g/m以上であり、好ましくは0.01g/m以上であり、より好ましくは0.02g/m以上である。また、セパレータ26の片面における第2接着層1Bの目付の上限は、例えば2.0g/m以下であり、好ましくは1.0g/m以下であり、より好ましくは0.05g/m以下である。なお、「目付」とは、接着層の質量を形成領域の面積で割った値(接着層の質量/形成領域の面積)をいう。
【0027】
(ステップS2:プレス工程)
上述したように、本工程では、上記巻回工程で得られた巻回体20Aをプレス成形し扁平状の巻回電極体20aとする。ここで、図3は、本実施形態に係るプレス前の巻回体20Aを示す模式図である。図4は、本実施形態に係るプレス後の巻回体20Aを示す模式図である。先ず、図3に示すように、対向する一対の押圧面を有するプレス機Cに巻回体20Aを配置した後、白抜き矢印方向にプレスすることで、扁平状の巻回電極体20aを得る。ここで、プレス圧は、例えば0.1MPa~20MPa(好ましくは、5MPa~10MPa)の範囲内とすることができる。また、かかるプレスは、加熱無しのプレスであってもよいし、加熱プレスであってよい。加熱プレスの場合、加熱温度は、例えば50℃~100℃(好ましくは、70℃~90℃)の範囲内とすることができる。プレス成形後の扁平形状の電極体20aは、外表面が湾曲した一対の湾曲部20rと、当該一対の湾曲部20rを連結する外表面が平坦な平坦部20fとを有している。また、図示は省略するが、プレス成形後の扁平形状の巻回電極体20aの幅方向Yにおける一方の端部には、正極タブ22tが積層された正極タブ群23が形成され、他方の端部には、負極タブ24tが積層された負極タブ群25が形成される。そして、巻回電極体の幅方向Yの中央部には、正極活物質層22aと負極活物質層24aとが対向したコア部が形成される。また、プレス成形によって、セパレータ26の表面層と正極22(負極24)とを接着させることができる。
【0028】
ここで、図8は、本実施形態に係るプレス工程後におけるセパレータ26の態様を示す模式図である。図8に示すように、上記プレス工程においては、第2接着層1Bと正極22とが、上記プレス前の状態よりもより強く接着される。例えば、上記プレス工程後において、第2接着層1Bを有するセパレータ26と第1電極(ここでは、正極22)との間の90°での剥離試験を実施した際に得られる剥離強度が、上記プレス工程前の該剥離強度よりも大きくなるようにする。特に限定されるものではないが、第2接着層1Bの上記プレス工程前後の剥離強度の差は、例えば0.00001N/20mm~0.1N/20mm(好ましくは、0.0001N/20mm~0.06N/20mm)とすることができる。このように、上記プレス工程において、セパレータ26と正極22とが第2接着層1Bによって接着されるため、上記プレス工程後の巻回電極体20aの厚みの増加を好適に抑制することができる。即ち、巻回電極体20aの電池ケース10への挿入性を好適に向上させることができる。
【0029】
また、上記プレス工程後の第1接着層1Aの厚みt1および第2接着層1Bの厚みt2は、略同じであることが好ましい。また、プレス工程後における第1接着層1Aのドット径d1および第2接着層1Bのドット径d2は、略同じであることが好ましい。そして、プレス工程後における第1接着層1Aの体積および第2接着層1Bの体積は、略同じであることが好ましい。かかる構成によると、電池100の抵抗を好適に低減することができる。
【0030】
また、図示は省略しているが、本実施形態では、プレス成形後の巻回電極体20aの最外周の面にセパレータ26が配置されており、かかるセパレータ26の巻き終わりの端部に巻止めテープを貼り付けることで、巻回電極体20aの形状を保持する。巻止めテープとしては、巻回電極体に使用される従来公知のものを特に制限なく用いることができる。図示していないが、本実施形態では、正極22の巻き終わりの端部が電極体20aの湾曲部20rに配置されている。以上のようにして、本実施形態に係る電極体20a,20b,20cを作製することができる。
【0031】
次に、封口板14と一体化された電極体群20を作製する。具体的には先ず、図14に示すように、正極第2集電部52および負極第2集電部62の付設された巻回電極体20aを3つ用意し、巻回電極体20a,20b,20cとして、短辺方向Xに並べて配置する。このとき、巻回電極体20a,20b,20cは、いずれも、正極第2集電部52が長辺方向Yの一方側(図13の左側)に配置され、負極第2集電部62が長辺方向Yの他方側(図13の右側)に配置されるように、並列に並べてもよい。
【0032】
次に、図12に示すように複数の正極タブ22tを湾曲させた状態で、封口板14に固定された正極第1集電部51と、巻回電極体20a,20b,20cの正極第2集電部52と、をそれぞれ接合する。また、複数の負極タブ24tを湾曲させた状態で、封口板14に固定された負極第1集電部61と、巻回電極体20a,20b,20cの負極第2集電部62と、をそれぞれ接合する。接合方法としては、例えば、超音波溶接、抵抗溶接、レーザ溶接等の溶接を用いることができる。特に、レーザ等の高エネルギー線の照射による溶接を用いることが好ましい。このような溶接加工によって、正極第2集電部52の凹部および負極第2集電部62の凹部に、それぞれ接合部を形成する。
【0033】
続いて、上記のとおり作製した合体物を、外装体12の内部空間に収容する。具体的には先ず、例えば、ポリエチレン(PE)等の樹脂材料からなる絶縁性の樹脂シートを、袋状または箱状に折り曲げて、電極体ホルダ29を用意する。次に、電極体ホルダ29に電極体群20を収容する。そして、電極体ホルダ29で覆われた電極体群20を、外装体12に挿入する。電極体群20の重量が重い場合、概ね1kg以上、例えば1.5kg以上、さらには2~3kgである場合は、外装体12の長側壁12bが重力方向と交差するように(外装体12を横向きに)配置して、電極体群20を外装体12に挿入するとよい。
【0034】
最後に、外装体12の開口部12hの縁部に封口板14を接合して、開口部12hを封止する。そして、外装体12と封口板14とが溶接接合する。外装体12と封口板14との溶接接合は、例えばレーザ溶接等で行うことができる。その後、注液孔15から電解液を注入し、注液孔15を封止部材15aで塞ぐことによって、電池100を密閉する。以上のようにして、電池100を製造することができる。
【0035】
<電池の構成>
続いて、上述した電池の製造方法によって得られる電池100について説明する。
【0036】
図9は、電池100の斜視図である。図10は、図9のX-X線に沿う模式的な縦断面図である。図11は、図9のXI-XI線に沿う模式的な縦断面図である。図12は、図9のXII-XII線に沿う模式的な横断面図である。以下の説明において、図面中の符号L、R、F、Rr、U、Dは、左、右、前、後、上、下を表し、図面中の符号X、Y、Zは、電池100の短辺方向、短辺方向と直交する長辺方向、上下方向を、それぞれ表すものとする。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、電池100の設置形態を何ら限定するものではない。
【0037】
図10に示すように、電池100は、電池ケース10と、電極体群20と、を備えている。また、本実施形態に係る電池100は、電池ケース10と電極体群20の他に、正極端子30と、正極外部導電部材32と、負極端子40と、負極外部導電部材42と、外部絶縁部材92と、正極集電部50と、負極集電部60と、正極内部絶縁部材70と、負極内部絶縁部材80と、を備えている。また、図示は省略するが、本実施形態に係る電池100は、さらに電解液を備えている。電池100は、ここではリチウムイオン二次電池である。
【0038】
電池ケース10は、電極体群20を収容する筐体である。電池ケース10は、ここでは扁平かつ有底の直方体形状(角形)の外形を有する。電池ケース10の材質は、従来から使用されているものと同じでよく、特に制限はない。電池ケース10は、所定の強度を有する金属製であることが好ましい。電池ケース10を構成する金属材料の一例として、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金等が挙げられる。
【0039】
そして、電池ケース10は、外装体12と、封口板14と、ガス排出弁17を備えている。外装体12は、一つの面が開口部12hとなった扁平な角型の容器である。具体的には、外装体12は、図9に示すように、略矩形状の底壁12aと、底壁12aの短辺から上方Uに延びて相互に対向する一対の第2側壁12cと、底壁12aの長辺から上方Uに延びて相互に対向する一対の第1側壁12bと、を備えている。第2側壁12cの面積は、第1側壁12bの面積よりも小さい。そして、開口部12hは、上記一対の第1側壁12bと一対の第2側壁12cに囲まれた外装体12の上面に形成されている。封口板14は、外装体12の開口部12hを塞ぐように外装体12に取り付けられている。封口板14は、平面視において略矩形状の板材である。封口板14は、外装体12の底壁12aと対向している。電池ケース10は、外装体12の開口部12hの周縁に封口板14が接合(例えば、溶接接合)されることによって形成される。封口板14の接合は、例えばレーザ溶接等の溶接によって行うことができる。具体的には、一対の第2側壁12cの各々は、封口板14の短辺と接合され、一対の第1側壁12bの各々は、封口板14の長辺と接合される。
【0040】
図9および図10に示すように、ガス排出弁17は、封口板14に形成されている。ガス排出弁17は、電池ケース10内の圧力が所定値以上になった際に開口して、電池ケース10内のガスを排出するように構成される。本実施形態におけるガス排出弁17は、封口板14の外面から電極体群20側に向って窪んだ平面略円形の凹部である。かかるガス排出弁17の底面には、封口板14の厚みよりも薄い薄肉部が形成される。このガス排出弁17は、ケース内圧が所定値以上になった際に薄肉部が破断する。これによって、電池ケース10内のガスを外部に排出し、上昇したケース内圧を低減できる。
【0041】
また、封口板14には、上記ガス排出弁17の他に、注液孔15と、2つの端子挿入穴18、19と、が設けられている。注液孔15は、外装体12の内部空間と連通しており、電池100の製造工程において電解液を注液するために設けられた開口である。注液孔15は、封止部材15aにより封止されている。かかる封止部材15aとしては、例えば、ブラインドリベットが好適である。これによって、電池ケース10の内部で封止部材15aを強固に固定できる。また、端子挿入穴18、19は、封口板14の長辺方向Yの両端部にそれぞれ形成されている。端子挿入穴18、19は、封口板14を上下方向Zに貫通している。図10に示すように、長辺方向Yの一方(左側)の端子挿入穴18には正極端子30が挿入される。また、長辺方向Yの他方(右側)の端子挿入穴19には負極端子40が挿入される。
【0042】
図13は、封口板14に取り付けられた電極体群20を模式的に示す斜視図である。本実施形態では、複数個(ここでは3個)の巻回電極体20a,20b,20cが電池ケース10の内部に収容される。なお、1つの電池ケース10の内部に収容される巻回電極体の数は特に限定されず、1つであってもよいし、2つ以上(複数)であってもよい。なお、図10に示すように、各々の巻回電極体の長辺方向Yの一方側(図10の左側)には正極集電部50が配置され、長辺方向Yの他方(図10の右側)には負極集電部60が配置される。そして、巻回電極体20a,20b,20cの各々は、並列に接続されている。ただし、巻回電極体20a,20b,20cは、直列に接続されていてもよい。電極体群20は、ここでは樹脂製シートからなる電極体ホルダ29(図11参照)に覆われた状態で電池ケース10の外装体12の内部に収容される。
【0043】
図14は、巻回電極体20aを模式的に示す斜視図である。図15は、巻回電極体20aの構成を示す模式図である。ここで、図15では、見易くするために、セパレータ26の表面に形成されている第1接着層1Aおよび第2接着層1Bの記載を省略している。なお、以下では巻回電極体20aを例として詳しく説明するが、巻回電極体20b、20cについても同様の構成とすることができる。
【0044】
図15に示すように、巻回電極体20aは、正極22と負極24とセパレータ26とを有する。巻回電極体20aは、ここでは、帯状の正極22と帯状の負極24とが2枚の帯状のセパレータ26を介して積層され、巻回軸WLを中心として巻回された巻回電極体である。
【0045】
巻回電極体20aは、扁平形状を有している。巻回電極体20aは、巻回軸WLが長辺方向Yと略平行になる向きで、外装体12の内部に配置されている。具体的には、図11に示すように、巻回電極体20aは、外装体12の底壁12aおよび封口板14と対向する一対の湾曲部(R部)20rと、一対の湾曲部20rを連結し、外装体12の第2側壁12cに対向する平坦部20fとを有している。平坦部20fは、第2側壁12cに沿って延びている。
【0046】
正極22は、図15に示すように、正極集電体22cと、当該正極集電体22cの少なくとも一方の表面上に固着された正極活物質層22aおよび正極保護層22pと、を有する。ただし、正極保護層22pは必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。正極集電体22cは、帯状である。正極集電体22cは、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっている。正極集電体22cは、ここでは金属箔、具体的にはアルミニウム箔である。
【0047】
正極集電体22cの長辺方向Yの一方の端部(図15の左端部)には、複数の正極タブ22tが設けられている。複数の正極タブ22tは、帯状の正極22の長手方向に沿って間隔を置いて(間欠的に)設けられている。複数の正極タブ22tは、巻回軸WLの軸方向の一方側(図15の左側)に向かって、セパレータ26よりも外側に突出している。なお、正極タブ22tは、巻回軸WLの軸方向の他方(図15で示すと右側)に設けられていてもよいし、巻回軸WLの軸方向の両側の各々に設けられていてもよい。正極タブ22tは、正極集電体22cの一部であり、金属箔(アルミニウム箔)からなっている。ただし、正極タブ22tは、正極集電体22cとは別の部材であってもよい。正極タブ22tの少なくとも一部には、正極活物質層22aおよび正極保護層22pが形成されずに、正極集電体22cが露出した領域が形成される。
【0048】
図12に示すように、複数の正極タブ22tは、巻回軸WLの軸方向の一方の端部(図12の左端部)で積層され、正極タブ群23を構成する。そして、複数の正極タブ22tの各々は、外方側の端が揃うように折り曲げられている。これにより、電池ケース10への収容性を向上して電池100を小型化することができる。図10に示すように、正極タブ群23は、正極集電部50を介して正極端子30と電気的に接続される。具体的には、正極タブ群23と正極第2集電部52とは接続部Jにおいて接続される(図12参照)。そして、正極第2集電部52は、正極第1集電部51を介して正極端子30と電気的に接続される。なお、複数の正極タブ22tのサイズ(長辺方向Yに沿った長さおよび長辺方向Yに直交する幅、図15参照)は、正極集電部50に接続される状態を考慮し、例えばその形成位置等によって、適宜調整することができる。ここでは、湾曲させたときに外方側の端が揃うように、複数の正極タブ22tの各々のサイズが相互に異なっている。
【0049】
図15に示すように、正極活物質層22aは、帯状の正極集電体22cの長手方向に沿って、帯状に設けられている。正極活物質層22aは、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な正極活物質(例えば、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物等のリチウム遷移金属複合酸化物)を含んでいる。正極活物質層22aの固形分全体を100質量%としたときに、正極活物質は、概ね80質量%以上、典型的には90質量%以上、例えば95質量%以上を占めていてもよい。正極活物質層22aは、正極活物質以外の任意成分、例えば、導電材、バインダ、各種添加成分等を含んでいてもよい。導電材としては、例えばアセチレンブラック(AB)等の炭素材料を使用し得る。バインダとしては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)等を使用し得る。
【0050】
正極保護層22pは、図15に示すように、長辺方向Yにおいて正極集電体22cと正極活物質層22aとの境界部分に設けられている。正極保護層22pは、ここでは正極集電体22cの巻回軸WLの軸方向の一方の端部(図15の左端部)に設けられている。ただし、正極保護層22pは、軸方向の両端部に設けられていてもよい。正極保護層22pは、正極活物質層22aに沿って、帯状に設けられている。正極保護層22pは、無機フィラー(例えば、アルミナ)を含んでいる。正極保護層22pの固形分全体を100質量%としたときに、無機フィラーは、概ね50質量%以上、典型的には70質量%以上、例えば80質量%以上を占めていてもよい。正極保護層22pは、無機フィラー以外の任意成分、例えば、導電材、バインダ、各種添加成分等を含んでいてもよい。導電材およびバインダは、正極活物質層22aに含み得るとして例示したものと同じであってもよい。
【0051】
負極24は、図15に示すように、負極集電体24cと、負極集電体24cの少なくとも一方の表面上に固着された負極活物質層24aと、を有する。負極集電体24cは、帯状である。負極集電体24cは、例えば銅、銅合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっている。負極集電体24cは、ここでは金属箔、具体的には銅箔である。
【0052】
負極集電体24cの巻回軸WLの軸方向の一方の端部(図15の右端部)には、複数の負極タブ24tが設けられている。複数の負極タブ24tは、帯状の負極24の長手方向に沿って間隔を置いて(間欠的に)設けられている。複数の負極タブ24tの各々は、軸方向の一方側(図15の右側)に向かって、セパレータ26よりも外側に突出している。ただし、負極タブ24tは、軸方向の他方の端部(図15の左端部)に設けられていてもよいし、軸方向の両端部の各々に設けられていてもよい。負極タブ24tは、負極集電体24cの一部であり、金属箔(銅箔)からなっている。ただし、負極タブ24tは、負極集電体24cとは別の部材であってもよい。負極タブ24tの少なくとも一部には、負極活物質層24aが形成されずに、負極集電体24cが露出した領域が設けられている。
【0053】
図12に示すように、複数の負極タブ24tは、軸方向の一方の端部(図12の右端部)で積層されて負極タブ群25を構成する。負極タブ群25は、軸方向において、正極タブ群23と対称的な位置に設けられていることが好ましい。そして、複数の負極タブ24tの各々は、外方側の端が揃うように折り曲げられている。これにより、電池ケース10への収容性を向上して、電池100を小型化することができる。図10に示すように、負極タブ群25は、負極集電部60を介して負極端子40と電気的に接続されている。具体的には、負極タブ群25と負極第2集電部62とは接続部Jにおいて接続される(図12参照)。そして、負極第2集電部62は、負極第1集電部61を介して負極端子40と電気的に接続される。複数の正極タブ22tと同様に、ここでは、湾曲させたときの外方側の端が揃うように、複数の負極タブ24tの各々サイズが相互に異なっている。
【0054】
図15に示すように、負極活物質層24aは、帯状の負極集電体24cの長手方向に沿って、帯状に設けられている。負極活物質層24aは、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な負極活物質(例えば、黒鉛等の炭素材料)を含んでいる。負極活物質層24aの固形分全体を100質量%としたときに、負極活物質は、概ね80質量%以上、典型的には90質量%以上、例えば95質量%以上を占めていてもよい。負極活物質層24aは、負極活物質以外の任意成分、例えば、バインダ、分散剤、各種添加成分等を含んでいてもよい。バインダとしては、例えばスチレンブタジエンゴム(SBR)等のゴム類を使用し得る。分散剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)等のセルロール類を使用し得る。
【0055】
セパレータ26は、図15および図5に示すように、帯状の部材である。セパレータ26は、電荷担体が通過し得る微細な貫通孔が複数形成された絶縁シートである。セパレータ26の幅は、負極活物質層24aの幅よりも大きい。正極22と負極24との間にセパレータ26を介在させることによって、正極22と負極24との接触を防止すると共に、正極22と負極24との間に電荷担体(例えば、リチウムイオン)を移動させることができる。特に限定されるものではないが、セパレータ26の厚み(図16の積層方向MDの長さ。以下同じ)は、3μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましい。また、セパレータ26の厚みは、25μm以下が好ましく、18μm以下がより好ましく、14μm以下がさらに好ましい。
【0056】
セパレータ26は、ここでは1つの巻回電極体20aに2枚使用されている。セパレータ26は、本実施形態のように1つの巻回電極体20aに2枚、すなわち、第1セパレータおよび第2セパレータを含むことが好ましい。また、ここでは2枚のセパレータがそれぞれ同じ構成であるが、それぞれ異なっていてもよい。
【0057】
ここで、図16は、本実施形態に係る正極22と負極24とセパレータ26との界面を模式的に示す拡大図である。図16に示すように、本実施形態に係るセパレータ26は、基材層27と、基材層27一方の表面上に設けられる耐熱層28(Heat Resistance Layer:HRL)と、を有している。また、耐熱層28の表面上には、第1接着層1Aおよび第2接着層1Bが存在している。
【0058】
基材層27としては、従来公知の電池のセパレータに用いられる微多孔膜を特に制限なく使用できる。基材層27は、多孔質のシート状部材であることが好ましい。基材層27は、単層構造であってもよく、2層以上の構造、例えば3層構造であってもよい。基材層27は、ポリオレフィン樹脂からなることが好ましい。基材層27は、全体がポリオレフィン樹脂からなることがより好ましい。基材層27は、例えばポリエチレン製の微多孔膜であることが好ましい。これによって、セパレータ26の柔軟性を充分に確保し、巻回電極体20aの作製(巻回およびプレス成形)を容易に実施できる。ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、またはこれらの混合物が好ましく、PEからなることがさらに好ましい。
【0059】
特に限定されるものではないが、基材層27の厚み(積層方向MDの長さ。以下同じ)は、3μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましい。また、基材層27の厚みは、25μm以下が好ましく、18μm以下がより好ましく、14μm以下がさらに好ましい。基材層27の透気度は、30sec/100cc~500sec/100ccが好ましく、30sec/100cc~300sec/100ccがより好ましく、50sec/100cc~200sec/100ccがさらに好ましい。
【0060】
耐熱層28は、基材層27の上に設けられている。耐熱層28は、基材層27の上に形成されていることが好ましい。耐熱層28は、基材層27の表面に直接設けられていてもよいし、他の層を介して基材層27の上に設けられていてもよい。また、耐熱層28は、基材層27の片面または両面に形成されていることが好ましい。ただし、耐熱層28は必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。耐熱層28は、ここでは基材層27の正極22と対向する面全体に設けられている。これにより、セパレータ26の熱収縮をより的確に抑え、電池100の安全性の向上に貢献できる。耐熱層28の目付は、ここではセパレータ26の長手方向LDおよび巻回軸方向WDに均質である。特に限定されるものではないが、耐熱層28の厚み(積層方向MDの長さ。以下同じ)は、0.3μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましく、1μm以上がさらに好ましい。また、耐熱層28の厚みは、6μm以下が好ましく、4μm以下がより好ましい。耐熱層28は、無機フィラーと耐熱層バインダとを含むことが好ましい。
【0061】
無機フィラーとしては、従来公知この種の用途で使用されているものを特に制限なく使用できる。無機フィラーは、絶縁性のセラミック粒子を含むことが好ましい。なかでも、耐熱性、入手容易性等を考慮すると、アルミナ、ジルコニア、シリカ、チタニア等の無機酸化物や、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、ベーマイト等の粘土鉱物が好ましく、アルミナ、ベーマイトがより好ましい。また、セパレータ26の熱収縮を抑制する観点からは、特にアルミニウムを含む化合物が好ましい。耐熱層28の総質量に対する無機フィラーの割合は、85質量%以上が好ましく、90質量%以上、さらには95質量%以上がより好ましい。
【0062】
耐熱層バインダとしては、従来公知この種の用途で使用されているものを特に制限なく使用できる。具体例として、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂(例えば、PVdF)、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂等が挙げられる。なかでもアクリル系樹脂が好ましい。
【0063】
第1接着層1Aおよび第2接着層1Bは、正極22と対向する面に設けられ、正極22と当接している。第1接着層1Aおよび第2接着層1Bは、図16に示すように、少なくともセパレータ26の正極22側の面に形成されていることが好ましい。第1接着層1Aおよび第2接着層1Bは、ここでは耐熱層28の上に設けられている。第1接着層1Aおよび第2接着層1Bは、耐熱層28の上に形成されていることが好ましい。第1接着層1Aおよび第2接着層1Bは、耐熱層28の表面に直接設けられていてもよいし、他の層を介して耐熱層28の上に設けられていてもよい。また、第1接着層1Aおよび第2接着層1Bは、基材層27の表面に直接設けられていてもよいし、耐熱層28以外の層を介して基材層27の上に設けられていてもよい。第1接着層1Aおよび第2接着層1Bは、電解液との親和性が、例えば耐熱層28と比べて相対的に高く、電解液を吸収して膨潤する層であり得る。特に限定されるものではないが、巻回電極体20aにおける第1接着層1Aおよび第2接着層1Bの厚み(図16の積層方向MDの長さ。それぞれ、図8のt1およびt2に対応。以下同じ)は、0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.5μm以上がさらに好ましい。また、第1接着層1Aおよび第2接着層1Bの厚みは、10μm以下が好ましく、5μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましい。即ち、巻回電極体20aにおける第1接着層1Aおよび第2接着層1Bの厚みは、例えば、0.1μm~10μmの範囲内であることが好ましい。かかる範囲内とすることで、第1接着層Aおよび第2接着層1Bの接着性、電池100の充放電反応の均一化、および、Li析出抑制等を好適に実現することができる。
【0064】
第1接着層1Aおよび第2接着層1Bを構成する樹脂等に関しては、<電池の製造方法>における対応する箇所を参照されたい。
【0065】
電解液は従来と同様でよく、特に制限はない。電解液は、例えば、非水系溶媒と支持塩とを含有する非水電解液である。非水系溶媒は、例えば、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等のカーボネート類を含んでいる。支持塩は、例えば、LiPF等のフッ素含有リチウム塩である。ただし、電解液は固体状(固体電解質)で、電極体群20と一体化されていてもよい。
【0066】
正極端子30は、図10に示すように、封口板14の長辺方向Yの一方の端部(図10の左端部)に形成された端子挿入穴18に挿入されている。正極端子30は、金属製であることが好ましく、例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金からなることがより好ましい。一方、負極端子40は、封口板14の長辺方向Yの他方の端部(図10の右端部)に形成された端子挿入穴19に挿入されている。なお、負極端子40は、金属製であることが好ましく、例えば銅または銅合金からなることがより好ましい。これらの電極端子(正極端子30、負極端子40)は、ここでは、電池ケース10の同じ面(具体的には封口板14)からそれぞれ突出している。ただし、正極端子30および負極端子40は、電池ケース10の異なる面からそれぞれ突出していてもよい。また、端子挿入穴18、19に挿入された電極端子(正極端子30、負極端子40)は、カシメ加工などによって封口板14に固定されていることが好ましい。
【0067】
上述した通り、正極端子30は、図10に示すように、外装体12の内部で正極集電部50(正極第1集電部51、正極第2集電部52)を介して、各々の巻回電極体20a,20b,20cの正極22(図15参照)と電気的に接続される。正極端子30は、正極内部絶縁部材70およびガスケット90によって、封口板14と絶縁される。なお、正極内部絶縁部材70は、正極第1集電部51と封口板14との間に介在するベース部70aと、当該ベース部70aから巻回電極体20a側に突出する突出部70bとを備えている。そして、端子挿入穴18を通じて電池ケース10の外部に露出した正極端子30は、封口板14の外部において正極外部導電部材32と接続される。一方、負極端子40は、図10に示すように、外装体12の内部で負極集電部60(負極第1集電部61、負極第2集電部62)を介して、各々の巻回電極体20aの負極24(図15参照)と電気的に接続される。負極端子40は、負極内部絶縁部材80およびガスケット90によって、封口板14と絶縁される。なお、正極内部絶縁部材70と同様に、負極内部絶縁部材80も、負極第1集電部61と封口板14との間に介在するベース部80aと、当該ベース部80aから巻回電極体20a側に突出する突出部80bとを備えている。そして、端子挿入穴19を通じて電池ケース10の外部に露出した負極端子40は、封口板14の外部において負極外部導電部材42と接続される。そして、上述した外部導電部材(正極外部導電部材32、負極外部導電部材42)と封口板14の外面14dとの間には、外部絶縁部材92が介在している。かかる外部絶縁部材92によって外部導電部材32、42と封口板14とを絶縁できる。
【0068】
また、上述した内部絶縁部材(正極内部絶縁部材70、負極内部絶縁部材80)の突出部70b、80bは、封口板14と巻回電極体20aとの間に配置される。かかる内部絶縁部材の突出部70b、80bによって、上方への巻回電極体20aの移動が規制され、封口板14と巻回電極体20aとの接触を防止できる。
【0069】
<電池の用途>
電池100は各種用途に利用可能であるが、例えば、乗用車、トラック等の車両に搭載されるモータ用の動力源(駆動用電源)として好適に用いることができる。車両の種類は特に限定されないが、例えば、プラグインハイブリッド自動車(PHEV;Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、ハイブリッド自動車(HEV;Hybrid Electric Vehicle)、電気自動車(BEV;Battery Electric Vehicle)等が挙げられる。電池100は、電池反応のバラつきが低減されているため、組電池の構築に好適に用いることができる。
【0070】
以上、本開示の一実施形態について説明したが、上記実施形態は一例に過ぎない。本開示は、他にも種々の形態にて実施することができる。本開示は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。請求の範囲に記載の技術には、上記に例示した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上記した実施形態の一部を他の変形態様に置き換えることも可能であり、上記した実施形態に他の変形態様を追加することも可能である。また、その技術的特徴が必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することも可能である。
【0071】
例えば、上記実施形態では、セパレータ26の正極22と対向する側の表面に、第1接着層1Aおよび第2接着層1Bが形成されているが、これに限定されない。他の実施形態では、セパレータ26の負極24と対向する側の表面に第1接着層1Aおよび第2接着層1Bが形成されていてもよい。あるいは、セパレータ26の正極22に対向する側の表面およびセパレータ26の負極24に対向する側の表面に、第1接着層1Aおよび第2接着層1Bが形成されていてもよい。
【0072】
例えば、上記実施形態では、上記巻回工程において、第2接着層1Bと正極22とが接着しているが、これに限定されない。他の実施形態では、上記巻回工程においては、第2接着層1Bと正極22とは接着せず(換言すると、第2接着層1Bを有するセパレータ26と正極22との90°剥離強度が0N/20mm)、上記プレス工程においてはじめてそれぞれが接着するようにしてもよい。
【0073】
例えば、上記実施形態では、第1接着層1Aおよび第2接着層1Bの組成を同じとしているが、これに限定されない。第1接着層1Aおよび第2接着層1Bの組成は異なっていてもよい。かかる場合、第1接着層1Aを上記巻回工程において第1電極(ここでは、正極22)との粘着性が発現する樹脂から構成されるようにして、かつ、第2接着層1Bを上記巻回工程において第1電極(ここでは、正極22)との粘着性が弱く発現し(あるいは、粘着性が発現せず)、上記プレス工程においてはじめて第1電極(ここでは、正極22)との粘着性が発現するような樹脂から構成されるようにすることが好ましい。あるいは、第1接着層1Aを常温(例えば、25℃程度)および/または低圧力(例えば、0.1MPa~1MPa程度)で第1電極(ここでは、正極22)との粘着性が発現する樹脂から構成されるようにして、第2接着層1Bを加熱(例えば、50℃~100℃程度の加熱)および/または加圧(例えば、1MPa~20MPa程度の加圧)によって第1電極(ここでは、正極22)との粘着性が発現する樹脂から構成されるようにしてもよい。上述したような第1接着層1Aを構成する樹脂としては、例えばガラス転移点が常温以下であるものが好ましく、0℃以下であるものがより好ましく、-10℃以下であるものがさらに好ましい。また、第1接着層1Aを構成する樹脂のガラス転移点は、例えば-20℃以上であってもよい。かかる樹脂の一例としては、上述したような低いガラス転移点を有するPVdF、SBR、アクリル系樹脂等が挙げられる。また、上述したような第2接着層1Bを構成する樹脂としては、例えばガラス転移点が常温以上であり、好ましくは30℃以上であり、より好ましくは40℃以上、50℃以上である。また、第2接着層1Bを構成する樹脂のガラス転移点は、例えば60℃以下であってもよい。かかる樹脂の一例としては、PVdF、上述したような高いガラス転移点を有するアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられる。第1接着層1Aおよび第2接着層1Bは、上述したような無機フィラーを含んでいてもよい。なお、ガラス転移点とは、例えばJIS K 7121に規定の方法に基づいて測定することができる。
【0074】
特に限定されるものではないが、常温および/または低圧力において、第1接着層1Aと第1電極(ここでは、正極22)との間の90°剥離強度は、例えば0.00001N/20mm~0.1N/20mm(好ましくは、0.0001N/20mm~0.01N/20mm)であり得る。また、加熱および/または加圧したときの、第2接着層1Bと第1電極(ここでは、正極22)との間の90°剥離強度は、例えば0.00001N/20mm~0.1N/20mm(好ましくは、0.0001N/20mm~0.06N/20mm)であり得る。
【0075】
また、上述したように、第1接着層1Aおよび第2接着層1Bの組成が異なる場合、第1接着層1Aの厚みT1および第2接着層1Bの厚みT2は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。一方、ここで開示される技術の効果をより得やすくするという観点から、後者の方が好ましい。
【0076】
例えば、図17は、第2実施形態に係る図5対応図である。図17に示すように、第2実施形態では、セパレータ126が有するパターンの平面視における形状が円形状であるドット状であり、かつ、第1接着層101Aおよび第2接着層101Bのドット径を同じとしている。また、セパレータ126における第1接着層101Aの個数を、第2接着層1Bの個数よりも少なくしている。第2実施形態に係る電池は、パターンを変更すること以外は、上述した電池100と同様であってよい。
【0077】
例えば、図18は、第3実施形態に係る図5対応図である。図18に示すように、第3実施形態では、セパレータ226が有する第1接着層201Aおよび第2接着層201Bの平面視における形状を、セパレータ226の長尺方向Zに沿って伸びる線状としている。第3実施形態に係る電池は、パターンを変更すること以外は、上述した電池100と同様であってよい。
【0078】
例えば、図19は、第4実施形態に係る図5対応図である。図19に示すように、第4実施形態では、セパレータ326が有する第1接着層301Aおよび第2接着層301Bの平面視における形状を、セパレータ326の長尺方向Zに沿って伸びる線と、該長尺方向Zに沿って形成されたドットとが、交互に形成されている。かかる構成によると、巻回工程において離間した各一においてドット状の第1接着層301Aが正極22と接着し、プレス工程において線状の第2接着層301Bが正極22と強く接着する。第4実施形態に係る電池は、パターンを変更すること以外は、上述した電池100と同様であってよい。
【0079】
例えば、図20は、第5実施形態に係る図5対応図である。図20に示すように、第5実施形態では、セパレータ426が有する第1接着層401Aおよび第2接着層401Bの平面視における形状を、セパレータ426の長尺方向に対する直交方向Yに沿って伸びる線状としている。第5実施形態に係る電池は、パターンを変更すること以外は、上述した電池100と同様であってよい。
【0080】
また、他の実施形態では、セパレータ26において、全面に第2接着層1Bを配置し、その表面の一部に第1接着層1Aをパターン形成してもよい。
【0081】
以上のとおり、ここで開示される技術の具体的な態様として、以下の各項(item)に記載のものが挙げられる。
項1:帯状の第1電極と、帯状の第2電極とが、帯状のセパレータを介して巻回された扁平状の巻回電極体を備えた蓄電デバイスの製造方法であって、上記第1電極と、上記第2電極とを、上記セパレータを介して巻回し、巻回体を製造する巻回工程と、上記巻回工程の後、上記巻回体をプレス成形し扁平状の巻回電極体とするプレス工程と、を包含し、上記巻回工程において、表面のうち少なくとも一方の表面に第1接着層と第2接着層とを有する前記セパレータを用い、上記巻回工程において、上記第1接着層と上記第1電極とが接着され、上記第2接着層と上記第1電極とが、上記第1接着層と上記第1電極との接着力よりも弱い力で接着され、あるいは、上記第2接着層と上記第1電極とが接着されず、上記プレス工程において、上記第2接着層と上記第1電極とが、上記プレス工程の前の状態よりもより強く接着される、蓄電デバイスの製造方法。
項2:上記第1接着層は、上記巻回工程における温度条件下において、粘着性を有する、項1に記載の蓄電デバイスの製造方法。
項3:上記第1接着層は所定のパターン形成されており、上記第2接着層は所定のパターン形成されている、項1または項2に記載の蓄電デバイスの製造方法。
項4:上記巻回工程に用いられる上記セパレータにおいて、上記第1接着層の厚みT1は、上記第2接着層の厚みT2よりも大きい、項1~項3のいずれか一つに記載の蓄電デバイスの製造方法。
項5:上記巻回工程に用いられる上記セパレータにおいて、上記第1接着層および上記第2接着層は、それぞれ複数のドット状に形成されており、上記第1接着層のドットの径は、上記第2接着層のドットの径よりも小さい、項3に記載の蓄電デバイスの製造方法。
項6:上記巻回工程に用いられる上記セパレータにおいて、上記セパレータの片面の面積Pに対する上記第1接着層の総形成面積Qの比(Q/P)の値は、0.01~0.3であり、上記セパレータの片面の面積Pに対する上記第2接着層の総形成面積Rの比(R/P)の値は、0.01~0.3である、項1~項5のいずれか一つに記載の蓄電デバイスの製造方法。
項7:上記巻回工程に用いられる上記セパレータにおいて、上記第1接着層の総形成面積Qは、上記第2接着層の総形成面積Rよりも小さい、項1~項6のいずれか一つに記載の蓄電デバイスの製造方法。
【符号の説明】
【0082】
1A,1B 接着層
10 電池ケース
12 外装体
14 封口板
15 注液孔
15a 封止部材
16 断熱溝
17 ガス排出弁
18,19 端子挿入穴
20 電極体群
20a~20c 巻回電極体
22 正極
23 正極タブ群
24 負極
25 負極タブ群
26 セパレータ
27 基材層
28 耐熱層
30 正極端子
32 正極外部導電部材
40 負極端子
42 負極外部導電部材
50 正極集電部
60 負極集電部
70 正極内部絶縁部材
80 負極内部絶縁部材
90 ガスケット
92 外部絶縁部材
100 電池
A 搬送ローラー
B 巻き芯
C プレス機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図20