IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社村田製作所の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112616
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】複合電子部品及びその実装構造
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20240814BHJP
   H03H 7/01 20060101ALI20240814BHJP
   H04B 1/10 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
H05K9/00 K
H03H7/01 Z
H04B1/10 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017781
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 啓雄
【テーマコード(参考)】
5E321
5J024
5K052
【Fターム(参考)】
5E321AA14
5E321AA17
5E321AA32
5E321GG05
5J024AA01
5J024BA02
5J024BA03
5J024BA05
5J024DA05
5J024DA21
5J024DA31
5J024DA33
5J024DA35
5J024EA08
5J024KA02
5J024KA04
5K052AA01
5K052EE02
(57)【要約】
【課題】高周波信号の伝送線路に重畳する不要な高周波成分を抑制することができる複合電子部品及びその実装構造を実現する。
【解決手段】複合電子部品1は、基板2に表面実装される2端子複合電子部品であって、第1端子6aと、第2端子6bと、第1端子6aと第2端子6bとの間に並列配置される第1本体部4及び第2本体部5と、を備える。第1本体部4は、第1端子6a及び第2端子6bのうちの少なくとも一方に電気的に接続される電極層8と、第1端子6aと第2端子6bとの間の電極層8よりも実装面側に設けられる第1部材(誘電体層DI)と、を有する。第2本体部5は、第1端子6aと第2端子6bとの間に設けられる第2部材(磁性体MG)を有する。第2部材は、同一周波数において第1部材よりも比誘電率が低い。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に表面実装される2端子複合電子部品であって、第1端子と、第2端子と、前記第1端子と前記第2端子との間に並列配置される第1本体部及び第2本体部と、を備え、
前記第1本体部は、
前記第1端子及び前記第2端子のうちの少なくとも一方に電気的に接続される電極層と、
前記第1端子と前記第2端子との間の前記電極層よりも実装面側に設けられる第1部材と、
を有し、
前記第2本体部は、
前記第1端子と前記第2端子との間に設けられる第2部材を有し、
前記第2部材は、同一周波数において前記第1部材よりも比誘電率が低い、
複合電子部品。
【請求項2】
請求項1に記載の複合電子部品であって、
前記第2部材の比誘電率は、30GHz以上の帯域において、前記第1部材の比誘電率よりも低い、
複合電子部品。
【請求項3】
請求項2に記載の複合電子部品であって、
前記第1部材は、非磁性体材料で構成され、
前記第2部材は、磁性体材料で構成されている、
複合電子部品。
【請求項4】
請求項3に記載の複合電子部品であって、
前記第1本体部及び前記第2本体部は略直方体形状を有し、
前記第1本体部と前記第2本体部との接合面間距離は、0.2mm以下である、
複合電子部品。
【請求項5】
基板に表面実装される2端子複合電子部品であって、第1端子と、第2端子と、前記第1端子と前記第2端子との間に並列配置される第1本体部及び第2本体部と、を備え、
前記第1本体部は、
前記第1端子及び前記第2端子のうちの少なくとも一方に電気的に接続される電極層と、
前記第1端子と前記第2端子との間の前記電極層よりも実装面側に設けられる第1部材と、
を有し、
前記第2本体部は、
前記第1端子と前記第2端子との間に設けられる第2部材を有し、
前記第2部材は、同一周波数において前記第1部材よりも比透磁率が高い、
複合電子部品。
【請求項6】
請求項5に記載の複合電子部品であって、
前記第2部材の比透磁率は、30GHz以上の帯域において、前記第1部材の比透磁率よりも高い、
複合電子部品。
【請求項7】
請求項6に記載の複合電子部品であって、
前記第1部材は、非磁性体材料で構成され、
前記第2部材は、磁性体材料で構成されている、
複合電子部品。
【請求項8】
請求項7に記載の複合電子部品であって、
前記第1本体部及び前記第2本体部は略直方体形状を有し、
前記第1本体部と前記第2本体部との接合面間距離は、0.2mm以下である、
複合電子部品。
【請求項9】
請求項1から8の何れか一項に記載の複合電子部品であって、
前記第1本体部を複数有し、2つの第1本体部の間に前記第2本体部が設けられている、
複合電子部品。
【請求項10】
請求項1から8の何れか一項に記載の複合電子部品であって、
前記第2本体部を複数有し、2つの第2本体部の間に前記第1本体部が設けられている、
複合電子部品。
【請求項11】
請求項1から8の何れか一項に記載の複合電子部品の実装構造であって、
前記第1端子及び前記第2端子は、前記基板の部品実装面においてそれぞれGNDパターンに接続され、
前記基板は、前記第1端子と前記第2端子との間に、平面視において前記第1本体部及び前記第2本体部に重なる配線パターンが設けられている、
複合電子部品の実装構造。
【請求項12】
請求項1から8の何れか一項に記載の複合電子部品の実装構造であって、
前記第1端子及び前記第2端子は、前記基板の部品実装面においてそれぞれGNDパターンに接続され、
前記基板は、前記第1端子と前記第2端子との間に、平面視において前記第1本体部及び前記第2本体部に重なる複数の配線パターンが設けられている、
複合電子部品の実装構造。
【請求項13】
請求項1から8の何れか一項に記載の複合電子部品の実装構造であって、
前記第1端子及び前記第2端子は、前記基板の部品実装面においてそれぞれGNDパターンに接続され、
前記第1本体部は、
前記第1端子に電気的に接続される第1電極層と、
前記第2端子に電気的に接続される第2電極層と、
を有し、
前記基板は、前記第1端子と前記第2端子との間に、平面視において前記第1電極層に重なる第1配線パターン、及び、平面視において前記第2電極層に重なる第2配線パターンが設けられている、
複合電子部品の実装構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合電子部品及びその実装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波信号の伝送線路に高周波ノイズ対策用のチップ部品を設けた場合、高周波信号線路とチップ部品との接続点において反射が発生し、インピーダンスの不整合が生じて、出力低下やノイズ発生の要因となる場合がある。高周波信号の配線パターン上に磁性体からなるチップ部品を配置することで、配線パターンによって発生する磁界エネルギーを吸収し、高周波ノイズの伝導及び反射を抑制する高周波ノイズ対策回路が開示されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6451689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術を用いて、高周波信号の配線パターン上に複数のチップ部品を配置してフィルタ回路を構成した場合、各チップ部品間の距離に応じた共振が発生し、高周波信号の伝送線路に重畳する不要な高周波成分を抑制できない場合がある。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、高周波信号の伝送線路に重畳する不要な高周波成分を抑制することができる複合電子部品及びその実装構造を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面の複合電子部品は、基板に表面実装される2端子複合電子部品であって、第1端子と、第2端子と、前記第1端子と前記第2端子との間に並列配置される第1本体部及び第2本体部と、を備え、前記第1本体部は、前記第1端子及び前記第2端子のうちの少なくとも一方に電気的に接続される電極層と、前記第1端子と前記第2端子との間の前記電極層よりも実装面側に設けられる第1部材と、を有し、前記第2本体部は、前記第1端子と前記第2端子との間に設けられる第2部材を有し、前記第2部材は、同一周波数において前記第1部材よりも比誘電率が低い。
【0007】
この構成では、第1本体部と第2本体部との間の距離を小さくすることができる。これにより、高周波信号の伝送線路に重畳する不要な高周波成分を抑制することができる。
【0008】
本開示の一側面の複合電子部品は、基板に表面実装される2端子複合電子部品であって、第1端子と、第2端子と、前記第1端子と前記第2端子との間に並列配置される第1本体部及び第2本体部と、を備え、前記第1本体部は、前記第1端子及び前記第2端子のうちの少なくとも一方に電気的に接続される電極層と、前記第1端子と前記第2端子との間の前記電極層よりも実装面側に設けられる第1部材と、を有し、前記第2本体部は、前記第1端子と前記第2端子との間に設けられる第2部材を有し、前記第2部材は、同一周波数において前記第1部材よりも比透磁率が高い。
【0009】
この構成では、第1本体部と第2本体部との間の距離を小さくすることができる。これにより、高周波信号の伝送線路に重畳する不要な高周波成分を抑制することができる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、高周波信号の伝送線路に重畳する不要な高周波成分を抑制することができる高周波回路を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態1に係る複合電子部品の基板上における実装例を示す概略平面図である。
図2図2は、実施形態1に係る複合電子部品の実装構造例を示す平面図である。
図3図3は、図2に示すA-A’断面図である。
図4A図4Aは、図2に示すB-B’断面図の第1例を示す図である。
図4B図4Bは、図2に示すB-B’断面図の第2例を示す図である。
図5図5は、図2に示すC-C’断面図である。
図6図6は、図2に示す実施形態1に係る複合電子部品の実装構造例による等価回路図である。
図7図7は、第1本体部と第2本体部との間の距離を模式的に示した概念図である。
図8図8は、実施形態1に係る複合電子部品の実装構造における理想的な入出力特性例を示す線図である。
図9図9は、図2に示す複合電子部品の実装構造例における入出力特性の第1例を示す線図である。
図10図10は、図2に示す複合電子部品の実装構造例における入出力特性の第2例を示す線図である。
図11図11は、実施形態2に係る複合電子部品の実装構造の第1例を示す平面図である。
図12図12は、図11に示す実施形態2に係る複合電子部品の実装構造の第1例による等価回路図である。
図13図13は、実施形態2に係る複合電子部品の実装構造の第2例を示す平面図である。
図14図14は、図13に示す実施形態2に係る複合電子部品の実装構造の第2例による等価回路図である。
図15図15は、実施形態3に係る複合電子部品の実装構造の第1例を示す平面図である。
図16図16は、図15に示すB-B’断面図の一例を示す図である。
図17図17は、図15に示す実施形態3に係る複合電子部品の実装構造の第1例による等価回路図である。
図18図18は、実施形態3に係る複合電子部品の実装構造の第2例を示す平面図である。
図19図19は、図18に示すB-B’断面図の一例を示す図である。
図20図20は、図18に示す実施形態3に係る複合電子部品の実装構造の第2例による等価回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、実施形態に係る複合電子部品の基板上における配置例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではない。
【0013】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る複合電子部品の基板上における実装例を示す概略平面図である。図2は、実施形態1に係る複合電子部品の実装構造例を示す平面図である。図3は、図2に示すA-A’断面図である。図4Aは、図2に示すB-B’断面図の第1例を示す図である。図4Bは、図2に示すB-B’断面図の第2例を示す図である。図5は、図2に示すC-C’断面図である。図6は、図2に示す実施形態1に係る複合電子部品の実装構造例による等価回路図である。
【0014】
本開示では、実施形態1に係る複合電子部品1の実装例として、例えばフロントエンドモジュールに実装される例を示している。フロントエンドモジュールは、図1に示すX方向及び当該X方向に直交するY方向を含むXY平面に略平行な基板2上に、XY平面に直交するZ方向に実装された複数の集積回路、及び各種機能部品を一体化した小型集積モジュールである。基板2は、例えば低温同時焼成セラミックス(LTCC:Low Temperature Co-fired Ceramics)基板等のセラミック積層基板や、樹脂多層基板やフィルム基板等が例示される。
【0015】
図1は、基板2の部品実装面をZ方向に見た平面視図である。実施形態1に係る複合電子部品1は、基板2の部品実装面に表面実装される表面実装部品(SMD:Surface Mount Device)である。基板2の部品実装面には、複合電子部品1やチップデバイス100等の電子部品が表面実装される。
【0016】
図1において、チップデバイス100は、例えばミリ波帯(30GHz~300GHz程度)の高周波信号を増幅する増幅回路が構成される集積回路(IC:Integrated Circuit)である。チップデバイス100は、例えばGaAs(ガリウム砒素)系のヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT:Heterojunction Bipolar Transistor)で構成されるHBTデバイス(集積回路、IC:Integrated Circuit)である。チップデバイス100は、フロントエンドモジュールの基板2上に、例えば銅ピラー等でバンプボンディングされる。
【0017】
図2から図5に示すように、実施形態1に係る複合電子部品1は、第1端子6aと、第2端子6bと、第1端子6aと第2端子6bとの間に並列配置される略直方体形状の第1本体部4及び第2本体部5と、を備えている。
【0018】
第1本体部4は、第1端子6a及び第2端子6bに接続される電極層8と、電極層8の基板実装面側に設けられる第1部材とを有する。本開示において、第1部材は、例えば誘電体層DIとされる。第1本体部4は、図4Bに示すように、第1部材(誘電体層DI)の間に電極層8が設けられた態様であっても良い。電極層8と誘電体層DIとは、Z方向に積層される。
【0019】
第1本体部5は、第1端子6aと第2端子6bとの間に設けられる第2部材を有する。本開示において、第2部材は、例えば磁性体MGとされる。第2部材(磁性体MG)は、同一周波数において第1部材(誘電体層DI)よりも比誘電率が低く、比透磁率が高い。
【0020】
第1部材(誘電体層DI)は、例えば非磁性セラミックス材料等の非磁性体材料で構成され、第2部材(磁性体MG)は、例えば、六方晶フェライトを樹脂に混合した磁性体材料で構成される。第2部材(磁性体MG)は、概ね30GHz以上の周波数帯域において、第1部材(誘電体層DI)よりも比誘電率が低く、比透磁率が高い。具体的に、50GHz~75GHzの周波数帯域において、第1部材(誘電体層DI)の一般的な一例として挙げられるアルミナ混合物の比誘電率は10程度であり、比透磁率は1程度である。一方、50GHz~75GHzの周波数帯域において、第2部材(磁性体MG)の比誘電率は8程度であり、比透磁率は1.2~1.4程度である。なお、第1部材(誘電体層DI)及び第2部材(磁性体MG)の比誘電率及び比透磁率は、ミリ波帯(30GHz~300GHz程度)の高周波信号を対象とした場合、例えばSパラメータ法の原理に基づいたフリースペース法を用いて測定することができる。
【0021】
第1本体部4と第2本体部5とは、絶縁性接着剤7により一体化される。具体的に、第1本体部4と第2本体部5との接合面間距離dは、例えば0.2mm以下とされる。なお、これに限らず、第1本体部4と第2本体部5とが一体成型される態様であっても良い。なお、接合面間距離dとは、本開示において、第1本体部4と第2本体部5の対向する面の最短距離のことを言う。
【0022】
第1端子6a及び第2端子6bは、それぞれ基板2の部品実装面の表層に設けられたGNDパターンに接続される。具体的に、第1端子6aと第2端子6bとは、それぞれ、GNDパターンの銅箔面に半田や導電性接着剤で接合される。
【0023】
基板2は、第1端子6aと第2端子6bとの間に、平面視において第1本体部4及び第2本体部5に重なる配線パターン3が設けられている。配線パターン3は、チップデバイス100から出力される高周波信号の伝送線路である。図2から図5では、基板2の部品実装面の表層に配線パターン3が設けられた態様を例示したが、これに限らず、基板2の内層の配線層に配線パターン3が設けられた態様であっても良い。
【0024】
図6は、図2に示す実施形態1に係る複合電子部品の実装構造例による等価回路図である。上述した実施形態1に係る複合電子部品1及び実装構造において、GND電位の第1本体部4の電極層8と配線パターン3との間にキャパシタCが構成され、配線パターン3に流れる高周波ノイズ成分によって発生する磁界エネルギーが第2本体部5の第2部材(磁性体MG)によって吸収されることによりインダクタLとして作用する。
【0025】
これにより、等価的に図6に示すC-L構成のL型ローパスフィルタ回路が構成される。
【0026】
図7は、第1本体部と第2本体部との間の距離を模式的に示した概念図である。図8は、実施形態1に係る複合電子部品の実装構造における理想的な入出力特性例を示す線図である。図9は、図2に示す複合電子部品の実装構造例における入出力特性の第1例を示す線図である。図10は、図2に示す複合電子部品の実装構造例における入出力特性の第2例を示す線図である。図8から図10は、第1本体部4の電極層8と配線パターン3との間に構成されるキャパシタCを1pF、第2本体部5の第2部材(磁性体MG)によって等価的に生じるインダクタLを1nHとしたときの入出力特性を示している。図8は、第1本体部4と第2本体部5との接合面間距離dが略ゼロである場合の理想的な入出力特性を示し、図9は、第1本体部4と第2本体部5との接合面間距離dが0.2mmである場合の入出力特性を示し、図10は、第1本体部4と第2本体部5との接合面間距離dが0.3mmである場合の入出力特性を示している。
【0027】
図8に示すように、第1本体部4と第2本体部5との接合面間距離dが略ゼロである場合には、理想的なC-L構成のL型ローパスフィルタ回路の特性となる。一方、図9に示すように、第1本体部4と第2本体部5との接合面間距離dが0.2mmである場合、300GHzを超える周波数帯域において共振現象が発生し、図10に示すように、第1本体部4と第2本体部5との接合面間距離dが0.3mmとなると、共振周波数が300GHz以下となる。本開示では、ミリ波帯(30GHz~300GHz程度)の高周波信号を扱うことを前提として、第1本体部4と第2本体部5との接合面間距離dを0.2mm以下とする。
【0028】
実施形態1に係る複合電子部品1は、上述したように、第1端子6aと第2端子6bとの間に、略直方体形状の第1本体部4及び第2本体部5が並列配置されている。第1本体部4は、第1端子6a及び第2端子6bに接続される電極層8と、少なくとも電極層8の基板実装面側に設けられる第1部材(誘電体層DI)とを有する。第1本体部5は、同一周波数において第1部材(誘電体層DI)よりも比誘電率が低く、比透磁率が高い第2部材(磁性体MG)を有する。第1部材(誘電体層DI)は、例えば非磁性セラミックス材料等の非磁性体材料で構成され、第2部材(磁性体MG)は、例えば、六方晶フェライトを樹脂に混合した磁性体材料で構成される。
【0029】
また、第1端子6a及び第2端子6bは、それぞれ基板2の部品実装面の表層に設けられたGNDパターンに接続される。基板2は、第1端子6aと第2端子6bとの間に、平面視において第1本体部4及び第2本体部5に重なる配線パターン3が設けられている。
【0030】
上述した実施形態1に係る複合電子部品1及び実装構造において、GND電位の第1本体部4の電極層8と配線パターン3との間にキャパシタCが構成され、配線パターン3に流れる高周波ノイズ成分によって発生する磁界エネルギーが第2本体部5の第2部材(磁性体MG)によって吸収されることによりインダクタLとして作用する。これにより、等価的にC-L構成のL型ローパスフィルタ回路が構成される。
【0031】
第1本体部4及び第2本体部5は、例えば絶縁性接着剤7により一体化、又は一体成型される。これにより、第1本体部4と第2本体部5との接合面間距離dに応じた共振現象の発生を抑制することができ、配線パターン3に重畳する不要な高周波成分を抑制することができる。
【0032】
(実施形態2)
図11は、実施形態2に係る複合電子部品の実装構造の第1例を示す平面図である。図12は、図11に示す実施形態2に係る複合電子部品の実装構造の第1例による等価回路図である。
【0033】
実施形態2に係る複合電子部品1aは、2つの第1本体部41,42の間に第2本体部5が設けられている。
【0034】
実施形態2に係る複合電子部品1a及びその実装構造において、GND電位の第1本体部41の電極層81と配線パターン3との間、及び、GND電位の第1本体部42の電極層82と配線パターン3との間にそれぞれキャパシタC1,C2が構成され、配線パターン3に流れる高周波ノイズ成分によって発生する磁界エネルギーが第2本体部5の第2部材(磁性体MG)によって吸収されることによりインダクタLとして作用する。
【0035】
これにより、等価的に図12に示すC-L-C構成のπ型ローパスフィルタ回路が構成される。
【0036】
図13は、実施形態2に係る複合電子部品の実装構造の第2例を示す平面図である。図14は、図13に示す実施形態2に係る複合電子部品の実装構造の第2例による等価回路図である。
【0037】
実施形態2に係る複合電子部品1bは、2つの第2本体部51,52の間に第1本体部4が設けられている。
【0038】
実施形態2に係る複合電子部品1b及びその実装構造において、配線パターン3に流れる高周波ノイズ成分によって発生する磁界エネルギーが第2本体部51の第2部材(磁性体MG)及び第2本体部52の第2部材(磁性体MG)によって吸収されることによりそれぞれインダクタL1,L2として作用し、GND電位の第1本体部4の電極層8と配線パターン3との間にキャパシタCが構成される。
【0039】
これにより、等価的に図14に示すL-C-L構成のT型ローパスフィルタ回路が構成される。
【0040】
(実施形態3)
図15は、実施形態3に係る複合電子部品の実装構造の第1例を示す平面図である。図16は、図15に示すB-B’断面図の一例を示す図である。図17は、図15に示す実施形態3に係る複合電子部品の実装構造の第1例による等価回路図である。
【0041】
実施形態3に係る複合電子部品1の実装構造において、基板2aは、第1端子6aと第2端子6bとの間に、平面視において第1本体部4及び第2本体部5に重なる第1配線パターン3a及び第2配線パターン3bが設けられている。
【0042】
第1配線パターン3a及び第2配線パターン3bは、チップデバイス100から出力される差動高周波信号の伝送線路が例示される。図16では、基板2aの部品実装面の表層に第1配線パターン3a及び第2配線パターン3bが設けられた態様を例示したが、これに限らず、基板2aの内層の配線層に第1配線パターン3a及び第2配線パターン3bが設けられた態様であっても良い。
【0043】
実施形態3に係る複合電子部品1の実装構造において、GND電位の第1本体部4の電極層8と第1配線パターン3aとの間にキャパシタCaが構成され、第1配線パターン3aに流れる高周波ノイズ成分によって発生する磁界エネルギーが第2本体部5の第2部材(磁性体MG)によって吸収されることによりインダクタLaとして作用する。また、GND電位の第1本体部4の電極層8と第2配線パターン3bとの間にキャパシタCbが構成され、第2配線パターン3bに流れる高周波ノイズ成分によって発生する磁界エネルギーが第2本体部5の第2部材(磁性体MG)によって吸収されることによりインダクタLbとして作用する。
【0044】
これにより、等価的に図17に示す2つのC-L構成のL型ローパスフィルタ回路が構成され、2つのC-L構成のL型ローパスフィルタ回路の入力側にキャパシタCabが構成される。
【0045】
図18は、実施形態3に係る複合電子部品の実装構造の第2例を示す平面図である。図19は、図18に示すB-B’断面図の一例を示す図である。図20は、図18に示す実施形態3に係る複合電子部品の実装構造の第2例による等価回路図である。
【0046】
実施形態3に係る複合電子部品1cの第1本体部4aは、第1端子6aに接続される第1電極層8aと、第2端子6bに接続される第2電極層8bとを有する。
【0047】
基板2aは、第1端子6aと第2端子6bとの間に、平面視において第1電極層8aに重なる第1配線パターン3a、及び、平面視において第2電極層8bに重なる第2配線パターン3bが設けられている。
【0048】
第1配線パターン3a及び第2配線パターン3bは、チップデバイス100から出力される差動高周波信号の伝送線路が例示される。図18では、基板2aの部品実装面の表層に第1配線パターン3a及び第2配線パターン3bが設けられた態様を例示したが、これに限らず、基板2aの内層の配線層に第1配線パターン3a及び第2配線パターン3bが設けられた態様であっても良い。
【0049】
実施形態3に係る複合電子部品1c及びその実装構造において、GND電位の第1本体部4aの第1電極層8aと第1配線パターン3aとの間にキャパシタCaが構成され、第1配線パターン3aに流れる高周波ノイズ成分によって発生する磁界エネルギーが第2本体部5の第2部材(磁性体MG)によって吸収されることによりインダクタLaとして作用する。また、GND電位の第1本体部4aの第2電極層8bと第2配線パターン3bとの間にキャパシタCbが構成され、第2配線パターン3bに流れる高周波ノイズ成分によって発生する磁界エネルギーが第2本体部5の第2部材(磁性体MG)によって吸収されることによりインダクタLbとして作用する。
【0050】
これにより、等価的に図20に示す2つのC-L構成のL型ローパスフィルタ回路が構成される。
【0051】
なお、上記した実施形態は、本開示の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本開示は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るとともに、本開示にはその等価物も含まれる。
【0052】
本開示は、上述したように、あるいは、上述に代えて、以下の構成をとることができる。
【0053】
(1)本開示の一側面の複合電子部品は、基板に表面実装される2端子複合電子部品であって、第1端子と、第2端子と、前記第1端子と前記第2端子との間に並列配置される第1本体部及び第2本体部と、を備え、前記第1本体部は、前記第1端子及び前記第2端子のうちの少なくとも一方に電気的に接続される電極層と、前記第1端子と前記第2端子との間の前記電極層よりも実装面側に設けられる第1部材と、を有し、前記第2本体部は、前記第1端子と前記第2端子との間に設けられる第2部材を有し、前記第2部材は、同一周波数において前記第1部材よりも比誘電率が低い。
【0054】
この構成では、第1本体部と第2本体部との間の距離を小さくすることができる。これにより、高周波信号の伝送線路に重畳する不要な高周波成分を抑制することができる。
【0055】
(2)上記(1)の複合電子部品において、前記第2部材の比誘電率は、30GHz以上の帯域において、前記第1部材の比誘電率よりも低い。
【0056】
(3)上記(2)の複合電子部品において、前記第1部材は、非磁性体材料で構成され、前記第2部材は、磁性体材料で構成されている。
【0057】
(4)上記(3)の複合電子部品において、前記第1本体部及び前記第2本体部は略直方体形状を有し、前記第1本体部と前記第2本体部との接合面間距離は、0.2mm以下である。
【0058】
(5)本開示の一側面の複合電子部品は、基板に表面実装される2端子複合電子部品であって、第1端子と、第2端子と、前記第1端子と前記第2端子との間に並列配置される第1本体部及び第2本体部と、を備え、前記第1本体部は、前記第1端子及び前記第2端子のうちの少なくとも一方に電気的に接続される電極層と、前記第1端子と前記第2端子との間の前記電極層よりも実装面側に設けられる第1部材と、を有し、前記第2本体部は、前記第1端子と前記第2端子との間に設けられる第2部材を有し、前記第2部材は、同一周波数において前記第1部材よりも比透磁率が高い。
【0059】
この構成では、第1本体部と第2本体部との間の距離を小さくすることができる。これにより、高周波信号の伝送線路に重畳する不要な高周波成分を抑制することができる。
【0060】
(6)上記(5)の複合電子部品において、前記第2部材の比透磁率は、30GHz以上の帯域において、前記第1部材の比透磁率よりも高い。
【0061】
(7)上記(6)の複合電子部品において、前記第1部材は、非磁性体材料で構成され、前記第2部材は、磁性体材料で構成されている。
【0062】
(8)上記(7)の複合電子部品において、前記第1本体部及び前記第2本体部は略直方体形状を有し、前記第1本体部と前記第2本体部との接合面間距離は、0.2mm以下である。
【0063】
(9)上記(1)から(8)の複合電子部品において、前記第1本体部を複数有し、2つの第1本体部の間に前記第2本体部が設けられている。
【0064】
(10)上記(1)から(8)の複合電子部品において、前記第2本体部を複数有し、2つの第2本体部の間に前記第1本体部が設けられている。
【0065】
(11)上記(1)から(8)の複合電子部品の実装構造において、前記第1端子及び前記第2端子は、前記基板の部品実装面においてそれぞれGNDパターンに接続され、前記基板は、前記第1端子と前記第2端子との間に、平面視において前記第1本体部及び前記第2本体部に重なる配線パターンが設けられている。
【0066】
(12)上記(1)から(8)の複合電子部品の実装構造において、前記第1端子及び前記第2端子は、前記基板の部品実装面においてそれぞれGNDパターンに接続され、前記基板は、前記第1端子と前記第2端子との間に、平面視において前記第1本体部及び前記第2本体部に重なる複数の配線パターンが設けられている。
【0067】
(13)上記(1)から(8)の複合電子部品の実装構造において、前記第1端子及び前記第2端子は、前記基板の部品実装面においてそれぞれGNDパターンに接続され、前記第1本体部は、前記第1端子に接続される第1電極層と、前記第2端子に接続される第2電極層と、を有し、前記基板は、前記第1端子と前記第2端子との間に、平面視において前記第1電極層に重なる第1配線パターン、及び、平面視において前記第2電極層に重なる第2配線パターンが設けられている。
【0068】
本開示により、高周波信号の伝送線路に重畳する不要な高周波成分を抑制することができる複合電子部品及びその実装構造を実現することができる。
【符号の説明】
【0069】
1,1a,1b,1c 複合電子部品
2,2a 基板
3 配線パターン
3a 第1配線パターン
3b 第2配線パターン
4,41,42,4a 第1本体部
5,51,52 第2本体部
6a 第1端子
6b 第2端子
7 絶縁性接着剤
8,81,82 電極層
8a 第1電極層
8b 第2電極層
100 チップデバイス
C,C1,C2,Ca,Cb,Cab キャパシタ
DI 誘電体層(第1部材)
L,L1,L2,La,Lb インダクタ
MG 磁性体(第2部材)
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20