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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112629
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】歯科用色調マッチング補助具
(51)【国際特許分類】
   A61C 19/04 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
A61C19/04 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017812
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】390011143
【氏名又は名称】株式会社松風
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183265
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 剣一
(72)【発明者】
【氏名】内田 潤
(72)【発明者】
【氏名】塚本 雅広
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052NN05
4C052NN14
4C052NN15
(57)【要約】
【課題】人工歯または歯冠修復材の色調を決める際に用いる色調マッチング補助具を提供する。
【解決手段】表面と裏面並びに外縁を有するシート状部材を備え、シート状部材の表面には、外縁に沿った帯状の第1エリアと、第1エリアに隣接した帯状の第2エリアを有する。更に、外縁から、帯状の第1エリアを幅方向に横切り、帯状の第2エリアを幅方向にその中間位置まで延在する1つ又は複数の島状の第3エリアを有する。第1エリアを無彩色又は第1歯肉色とし、第2エリアを、無彩色又は第1歯肉色よりも明度が高い第2歯肉色とする色調マッチング補助具である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工歯または歯冠修復材の色調を決める色調マッチング補助具であって、
表面と裏面並びに外縁を有するシート状部材を備え、
シート状部材の表面には、
外縁に沿って、外縁から第1距離の幅を有する帯状の第1エリアであって、背景色で描かれた第1エリアと、
第1エリアに隣接し、第1エリアから第2距離の幅を有する帯状の第2エリアであって、歯肉色で描かれた第2エリアと、
一端が外縁に沿いつつ、外縁から、帯状の第1エリアを幅方向に横切り、帯状の第2エリアを幅方向にその中間位置まで延在する島状の第3エリアであって、シェード歯牙色で描かれた1つ又は複数の島状の第3エリアと、
が設けられており、
第1エリアの背景色を無彩色又は第1歯肉色とし、
第2エリアの歯肉色を、背景色の無彩色又は第1歯肉色よりも明度が高い第2歯肉色とする色調マッチング補助具。
【請求項2】
複数の第3エリアのシェード歯牙色は、互いに異なったシェード歯牙色とする、請求項1に記載の色調マッチング補助具。
【請求項3】
シート状部材は、紙、又はプラスチックである、請求項1に記載の色調マッチング補助具。
【請求項4】
シート状部材は矩形、円形、楕円形、半円形、扇形、ドーナツ形のいずれかである、請求項1に記載の色調マッチング補助具。
【請求項5】
第1の距離と第2の距離の比は、1:5~4:5である、請求項1に記載の色調マッチング補助具。
【請求項6】
複数の第3エリアは、互いに間隔を有している、請求項1に記載の色調マッチング補助具。
【請求項7】
間隔は、0.1mm~2.0mmである、請求項6に記載の色調マッチング補助具。
【請求項8】
1つの第3エリアの、外縁に沿った方向の長さは5.0mm~12.0mmである、請求項1に記載の色調マッチング補助具。
【請求項9】
1つの第3エリアの、外縁と垂直に延在する方向の長さは7.0mm~15.0mmである、請求項1に記載の色調マッチング補助具。
【請求項10】
第1エリアの外縁に沿ったラインと、第3エリアの外縁に沿ったラインとは同一の直線ラインである、請求項1に記載の色調マッチング補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、歯科領域において歯科医師や歯科技工士が人工歯または歯冠修復材の色調を決める際に用いる歯科用色調マッチング補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
損傷を受けた歯や、無くなった歯を復元するため、歯科用の修復材料である補綴材料や人工材料を使用して充填を施されることがある。損傷を受けた歯は補綴材料で治療されたり、また無くなった歯は人工材料で置換されたりする。例えば、無くなった歯は、歯冠、ブリッジ、移植、義歯などによる歯の復元が成される。この場合、口腔内に適切に保持される人工材料や補綴材料(以下、総称して修復材料と言う。)を使用して修復の処置がなされる。歯科医師は、上記のような治療や処置に当たって、損傷を受けた歯の残存部分の色調、または無くなった歯の隣接歯の色調に合った修復材料を調製して歯を復元するべく歯科用色調マッチング補助具を使用して、修復材料のカラーを適切なカラーとなるような選択を行う。
【0003】
一般的には、歯科用色調マッチング補助具は、複数本の歯科用色調ガイドを有し、色調の異なったシェード歯牙が歯科用色調ガイドの先端に設けられている。歯科医師は1本の適切な歯科用色調ガイドを選び出し、それと同じ色調の修復材料を使用する。具体的には、歯科医師は、複数本の歯科用色調ガイドを1本ずつ患者の歯に隣接して保持し、患者の歯のカラーに最もよく合ったカラーを有する歯科用色調ガイドを選択する。1本の歯科用色調ガイドが選択されると、そのガイドのシェード歯牙の種類(色番号)に従い、適切に着色された修復材料を選択する。
【0004】
特許文献1は、ガイド部およびハンドル部を備えた歯科用色調ガイドを複数本保持する歯科用色調ガイドホルダーを開示する。この歯科用色調ガイドホルダーは、複数本の歯科用色調ガイドを差し込む穴を有し、穴の底部に歯科用色調ガイドのハンドル部を差し込む貫通孔を有し、穴の壁面にはハンドル部を固定する手段を備える。これにより、歯科医師は、ホルダーごと持ち上げ、ホルダーをずらすことにより複数本の歯科用色調ガイドを順番に患者の歯と対比観察することができる。また、歯科医師はホルダーから1本の歯科用色調ガイドを抜き取り、それを患者の歯と対比観察することもできる。
【0005】
歯科医師は、歯科用色調ガイドを使用した後は、衛生管理のため殺菌処理し、ホルダーに戻した後、ホルダーを所定の収納場所に収納する。ホルダーなどのケースを有する歯科用色調ガイドは、かさ高になり、ある程度の大きさの収納場所が必要となり、収納性が問題となる。そして、別の患者に対しても、同じ歯科用色調ガイドを収納場所から取り出して再利用する。
【0006】
また、歯科用色調ガイドのシェード歯牙部は、ある程度の厚みがあるので、患者の歯との対比観察をする際は、患者の歯から少し前方に離れた位置に保持されて観察される。よって、歯科用色調ガイドは、口腔内の環境ではなく、口腔外の環境(より多くの周辺の光を受ける環境)で対比観察が成される。
【0007】
また、複数本、例えば2本の歯科用色調ガイドを隣り合わせにして患者の歯との対比観察した場合、2本の歯科用色調ガイドは患者の歯から少し前方に離れた位置に保持される。よって、1本の場合と同様に、2本の歯科用色調ガイドは口腔内の環境ではなく、口腔外の環境(より多くの周辺の光を受ける環境)で対比観察が成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008-220975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本開示は、収納性に優れた歯科用色調マッチング補助具を提供する。
【0010】
本開示は、患者の歯の面とほぼ同じ面に配置が可能な歯科用色調マッチング補助具を提供する。
【0011】
本開示は、歯科用色調ガイドのシェード歯牙部の周辺の色が自然歯の周辺の色の環境と合致する歯科用色調マッチング補助具を提供する。
【0012】
本開示は、安価で衛生面に優れた歯科用色調マッチング補助具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示における歯科用色調マッチング補助具は、人工歯または歯冠修復材の色調を決める色調マッチング補助具であって、表面と裏面並びに外縁を有するシート状部材を備え、シート状部材の表面には、外縁に沿って、外縁から第1距離の幅を有する帯状の第1エリアであって、背景色で描かれた第1エリアと、第1エリアに隣接し、第1エリアから第2距離の幅を有する帯状の第2エリアであって、歯肉色で描かれた第2エリアと、一端が外縁に沿いつつ、外縁から、帯状の第1エリアを幅方向に横切り、帯状の第2エリアを幅方向にその中間位置まで延在する島状の第3エリアであって、シェード歯牙色で描かれた1つ又は複数の島状の第3エリアと、が設けられており、第1エリアの背景色を無彩色又は第1歯肉色とし、第2エリアの歯肉色を、背景色の無彩色又は第1歯肉色よりも明度が高い第2歯肉色とする色調マッチング補助具である。
【発明の効果】
【0014】
本開示における歯科用色調マッチング補助具は、シート状部材で構成されるので、収納性に有効である。
【0015】
本開示における歯科用色調マッチング補助具は、シート状部材で構成されるので、シート状部材の厚み分だけ患者の歯の面とズレ、患者の歯の面とほぼ同じ面に配置が可能であると言う効果を有する。
【0016】
本開示における歯科用色調マッチング補助具は、シェード歯牙色で描かれた第3エリアの周辺の色が自然歯の周辺の色と合致する背景色や歯肉色を用いたので、周辺の色の環境と合致する効果を有する。
【0017】
本開示における歯科用色調マッチング補助具は、シート状部材で構成されるので、容易に洗うことができ、衛生面に優れた効果を有する。また、シート状部材は、紙やプラスチック製であるので、使い捨てにも適している。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施の形態1における歯科用色調マッチング補助具の平面図
図2】実施の形態2における歯科用色調マッチング補助具の平面図
図3】実施の形態3における歯科用色調マッチング補助具の平面図
図4】実施の形態4における歯科用色調マッチング補助具の平面図
図5A】実施の形態5における歯科用色調マッチング補助具の平面図
図5B】実施の形態5の変形例における歯科用色調マッチング補助具の平面図
図6】実施の形態6における歯科用色調マッチング補助具の平面図
図7】実施の形態7における歯科用色調マッチング補助具の平面図
図8】実施の形態8における歯科用色調マッチング補助具の平面図
図9】実施の形態9における歯科用色調マッチング補助具の平面図
図10】実施の形態1の第1変形例における歯科用色調マッチング補助具の平面図
図11】実施の形態1の第2変形例における歯科用色調マッチング補助具の平面図
図12】実施の形態1の第3変形例における歯科用色調マッチング補助具の平面図
図13】実施の形態1の第4変形例における歯科用色調マッチング補助具の平面図
図14】実施の形態1の第5変形例における歯科用色調マッチング補助具の平面図
図15A】実施の形態1の第6変形例における歯科用色調マッチング補助具の平面図
図15B】実施の形態1の第7変形例における歯科用色調マッチング補助具の平面図
図16】(A)~(D)歯科用色調マッチング補助具に用いられるシェード歯牙の形状を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。
【0020】
なお、添付図面や以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0021】
(実施の形態1)
以下、図1を用いて、実施の形態1を説明する。
【0022】
図1は、実施の形態1に係る歯科用の色調マッチング補助具1を示す。色調マッチング補助具1は、人工歯などの人工材料や補綴材料(以下、総称して修復材料と言う。)の色調を決める色調マッチング補助具であり、表面と裏面並びに外縁11を有するシート状部材10で構成される。シート状部材10は、紙又はプラスチックで形成され、その形状は、図1の実施の形態では長方形であり、外縁11は、図1に示す長方形の上側の長手の縁を言う。
【0023】
シート状部材10の表面には、外縁11に沿って、外縁11から第1距離D1の幅を有する帯状の第1エリア12であって、背景色で描かれた第1エリア12と、第1エリア12に隣接し、第1エリア12から第2距離D2の幅を有する帯状の第2エリア13であって、歯肉色で描かれた第2エリア13と、一端が外縁11に沿いつつ、外縁11から、帯状の第1エリア12を幅方向に横切り、帯状の第2エリア13を幅方向にその中間位置まで延在する島状の第3エリア14であって、シェード歯牙色で描かれた1つ又は複数の島状の第3エリア14と、が設けられている。すなわち、第3エリア14は、帯状の第1エリア12と帯状の第2エリア13の上に上書きされているとも言える。
【0024】
更に、第2エリア13に隣接し、第2エリア13から第3距離D3の幅を有する帯状の第4エリア15を設ける。第4エリアは任意の色、例えば白であり、任意の情報、例えば修復材料の品番や商品名を印刷することができる。第4エリア15は省略しても良い。
【0025】
図1の実施の形態1では、シート状部材10は、患者の口元にかざすことができる長方形であり、その大きさは、例えば外縁11に沿った横方向の長さが0.5cm~10cmであり、外縁11と垂直な幅方向の長さが2cm~7cmである。ある実施例では、横方向の長さが4.5cmであり、幅方向の長さが4cmである。
【0026】
図1の実施の形態1では、シェード歯牙の色サンプルを示す島状の第3エリア14は外縁11に沿って5個配列されており、隣同士の第3エリア14の間に間隔D4が設けられている。隣同士の間隔は無くても良い。間隔D4は、0.1mm~2.0mmであり、好ましくは、0.5mmである。シェード歯牙が描かれる島状の第3エリア14の一つの大きさは、横方向(外縁11に沿った方向)の長さが5.0mm~12.mmであり、幅方向(外縁11と垂直な方向)の長さが7.0mm~15.0mmである。ある実施例では、横方向の長さが7mmであり、幅方向の長さが9mmである。
【0027】
複数ある島状の第3エリア14の色は、互いに異なったシェード歯牙色である。例えば、左端から順番に5個の第3エリア14に描かれたシェード歯牙の色は、乳歯色、A2、A3、A3.5、CV(これらの色番号は基本的にビタクラシカルシェードガイド(ビタ社製)に基づき、色表記はグラスアイオノマーFX-LC(松風社製)に基づく。乳歯色、CVの色番号は特殊色である。)の色番号、又は色表記に相当する色で描かれている。色番号や色表記は、第2エリア13又は他の対応する位置に記入されていても良い。
【0028】
D1+D2+D3=1とした場合、帯状の第1エリア12の幅D1は、1/3~2/3であり、帯状の第2エリア13の幅D2は、1/3~2/3である。ある実施例では、D1:D2は1:5~4:5である。別の実施例では、D1:D2は11:12であり、D1よりもD2の方が大きい。
【0029】
また、第3エリア14のシェード歯牙色は、外縁11に向かって明度が異なるようなグラデーションを有しても良い。例えば、外縁11に向かって明度が低くなるようにしてもよいし、または、外縁11に向かって明度が高くなるようにしてもよい。
【0030】
第1エリア12の背景色を無彩色又は第1歯肉色とする。第2エリア13の歯肉色を、第1エリア12の色(背景色の無彩色又は第1歯肉色)よりも明度が高い第2歯肉色とする。逆に言えば、第1エリア12の色は、第2エリア13の色よりも明度が低い。これは、第1エリア12が口腔内の部分を表し、第2エリア13が歯肉(歯茎部分)を表しており、口腔内の部分の方が、歯牙や歯肉の影となり基本的に暗くなるからである。
【0031】
ここで、無彩色とは、グレーまたは黒を言う。ある実施例では、第1エリア12の色はグレーであり、測色機(コニカミノルタ社のCM-5)を用いて色測定した場合のグレーの測色データは、次の通りであった。
グレー(L*:54、a*:0、b*:0、Y:22)
測定条件は、SCI方式、光源D65、視野角2°、測定範囲Φ3mm、白色板上で測定し、L*a*b*色空間のL*、a*、b*値を測定した。
【0032】
また、ある実施例では、第1エリア12の色は黒であり、上述と同様の測色機、同様の測定条件で色測定した場合の黒の測色データは、次の通りであった。
黒(L*:28、a*:0、b*:0、Y:5)
また、ある実施例では、明度が低い第1エリア12の暗い歯肉色は、あずき色であり、上述と同様の測色機、同様の測定条件で色測定した場合の暗い歯肉色(あずき色)の測色データは、次の通りであった。
あずき色(L*:0~50、a*:-5~50、b*:-20~50、Y:0~50)
更に、ある実施例では、明度が高い第2エリア13の明るい歯肉色は、ピンク色であり、上述と同様の測色機、同様の測定条件で色測定した場合の明るい歯肉色(ピンク色)の測色データは、次の通りであった。
ピンク色(L*:30~80、a*:1~60、b*:-10~70、Y:5~70)
また、ある具体的な実施例では、明るい歯肉色(ピンク色)の測色データは、次の通りであった。
ピンク色(L*:63、a*:34、b*:9、Y:32)
上述のように、第1エリア12の色を、第2エリア13の色よりも低い明度で表したので、島状の第3エリア14の第1エリア12で囲まれる周りは、明確なコントラストが加えられ、隣同士に存在する島状の第3エリア14をくっきりと分けて表示すことができ、色調ガイドであるシェード歯牙の一つを適切に選択することができる。また、明度が低い第1エリア12の暗い歯肉色又は無彩色をバックとするように島状の第3エリア14を並べたので、色調マッチング補助具1は、現実の口腔内をバックとして自然歯が並んでいる状態と近似しており、適切に一つのシェード歯牙を選択することができる。
【0033】
以上のように構成された色調マッチング補助具1について、その動作を以下説明する。
【0034】
色調マッチング補助具1の第4エリア15を手で摘まんで保持し、複数の島状の第3エリア14の一つを、患者が治療を受けようとする歯(その歯が欠落していれば、隣接する歯)の真下に配置する。これにより、第3エリア14に描かれているシェード歯牙の色サンプルの一つと患者の歯とを対比観察して比較することができる。色調マッチング補助具1を横方向に移動することにより、別のシェード歯牙の色サンプルと患者の歯とを比較することができる。比較の結果、患者の歯の色調と一番マッチするシェード歯牙の色サンプルを見つけることができ、その色サンプルの色番号または色表記を特定し、特定した色番号または色表記に対応する修復材料を準備して患者の治療を行う。
【0035】
図2は、実施の形態2に係る歯科用の色調マッチング補助具1を示す。図1に示す実施の形態1と異なる点は、島状の第3エリア14の形状が丸みを帯びている点である。第3エリア14の上側、すなわち外縁11が存在する側、のエッジは山、谷、山が連なる形状になっている一方、下側、すなわち第2エリア13の中間位置まで延在している側、のエッジも山、谷、山が連なる形状になっている。山、谷、山が連なる形状は、上側または下側のいずれか一方だけであっても良い。上側の山、谷、山は、歯の先端の形状(特に奥歯)を連想させるものである。また、下側の山、谷、山は歯が歯茎に嵌合している形状を連想させるものである。
【0036】
なお、島状の第3エリア14の形状は、これ限定されず、種々の形状を採ることができる。例えば、図16(A)に示す矩形で四隅が丸みを帯びた第3エリア14h、図16(B)に示す爪型の第3エリア14i、図16(C)に示す円形の第3エリア14j、図16(D)に示す楕円形の第3エリア14kが可能である。
【0037】
図3は、実施の形態3に係る歯科用の色調マッチング補助具1を示す。図1に示す実施の形態1と異なる点は、島状の第3エリア14の部分について光沢処理が施されている点である。光沢処理を施すことにより、光沢のある歯に似せることができる。
【0038】
図4は、実施の形態4に係る歯科用の色調マッチング補助具1を示す。図1に示す実施の形態1と異なる点は、図1では平坦であったが、図4では島状の第3エリア14の部分についてエンボス処理が施されている点である。島状の第3エリア14のそれぞれについて、表側に丸みを帯びた起伏をつける。例えば、起伏のある金型の上に平坦な色調マッチング補助具1を乗せ、押圧処理することによりエンボス処理を施すことができる。これにより、表面が丸みを帯びた歯に似せることができる。
【0039】
図5Aは、実施の形態5に係る歯科用の色調マッチング補助具1を示す。図1に示す実施の形態1と異なる点は、図1では切り取り線はなかったが、図5Aでは島状の第3エリア14の部分について容易に切り取ることができるように、島状の第3エリア14の周りを切り取りエリアとしてミシン目14aを施した点である。ミシン目は連続した小孔で構成する。ミシン目に沿って島状の第3エリア14の一つ又は複数を切り離すことができる。切り離した一つの第3エリア14を手で持って歯に接近した位置に掲げることができる。
【0040】
また、図5Aにおいて、第2エリア13と第4エリア15の境界辺りにおいても直線のミシン目が施され、帯状の第4エリア15を切り離すことができる。そして、第4エリア15の横方向(外縁11に沿った方向)に見た場合の一端側において一対の切り目15a、15bが設けられている。直線のミシン目に沿って第4エリア15を切り離して長手部材とし、更に切り離した一つの第3エリア14を、切り目15a、15bに差し込むことにより、長手部材をシェード歯牙の色サンプルである一つの第3エリア14の柄として用いることができる。柄を手で持つことにより、手が邪魔にならずに第3エリア14に描かれているシェード歯牙の色サンプルと患者の歯とを対比観察して比較することができる。
【0041】
図5Bは、実施の形態5の変形例に係る歯科用の色調マッチング補助具1を示す。図5Aに示す実施の形態5と異なる点は、切り離し可能な第4エリア15の部分である。図5Bに示す変形例においては、第4エリア15の横方向に見た場合の一端側において追加第1エリア12’と、それに隣接する追加第2エリア13’が設けられている。第4エリア15の幅方向(外縁11と垂直な方向)の長さは、一つの島状の第3エリア14の横方向(外縁11に沿った方向)の長さよりも大きい。追加第1エリア12’と、追加第2エリア13’の幅(外縁11に沿った方向)は、それぞれ、図1で示した第1エリア12と、第2エリア13の幅と同様に、D1、D2である。また、追加第1エリア12’と、追加第2エリア13’の色は、それぞれ、図1で示した第1エリア12の色と、第2エリア13の色と同様に、背景色と、歯肉色で描かれている。第4エリア15を切り離すと、容易に長手部材の柄を準備することができる。切り離した第4エリア15の一端側に沿うように、切り離した一つの第3エリア14を付着させると、柄を伴う一つのシェード歯牙の色サンプルであって、シェード歯牙の周りの色を背景色と歯肉色で囲む色サンプルを準備することができる。このようにして準備した柄を伴う一つのシェード歯牙の色サンプルにあっても、シェード歯牙色で描かれ、付着された第3エリアの周辺の色が自然歯の周辺の色と合致する背景色や歯肉色を用いたので、周辺の色の環境と合致する効果を有する。なお、切り離した第3エリア14の付着を容易にするため、シート状部材10の裏面、少なくとも第3エリア14の裏面には水溶性の接着剤が塗布されていてもよい。
【0042】
なお、図5Bに示す変形例における第4エリア15と同様な形状や色彩を有する板状部材を柄補助具(図示せず)として、色調マッチング補助具1とは別に準備しておくことも可能である。
【0043】
図6は、実施の形態6に係る歯科用の色調マッチング補助具1を示す。図5Aに示す実施の形態5と異なる点は、図6に示す実施の形態6ではミシン目14bによる切り取りエリアが第3エリア14だけでなく、第2エリア13の一部であって、色番号や色表記が記入されている領域も含めている点である。これにより、切り取った後であっても色番号や色表記を容易に確認することができる。
図6の実施の形態6に対しても、図5Bで示した変形例と同様な変形例や柄補助具を提供することもできる。
【0044】
図7は、実施の形態7に係る歯科用の色調マッチング補助具1を示す。図5Aに示す実施の形態5と異なる点は、図7に示す実施の形態7では直線のミシン目14cが帯状の第1エリア12、帯状の第2エリア13および帯状の第4エリア15を交差して島状の第3エリア14を縦割りで切り離すことができるようになっている点である。これにより、一つの第3エリア14だけを手で持って歯に接近した位置に掲げることができる。
【0045】
図8は、実施の形態8に係る歯科用の色調マッチング補助具1を示す。図5Aに示す実施の形態5と異なる点は、図1のシート状部材は、一枚で構成されていたが、図8に示す実施の形態8では、シート状部材は、マットシートと、マットシートの上に貼り付けられたステッカーとで構成されたシールである点である。第3エリア14の周りには切り込み14dが入っており、第3エリア14をシールとして剥すことができる。剥されたシールは、例えば図5Aで説明した長手部材の端に貼り付けて長手部材を柄として利用することができる。この場合は、図8においても長手部材が切り取り可能になっている。
図8の実施の形態8に対しても、図5Bで示した変形例と同様な変形例や柄補助具を提供することもできる。
【0046】
図9は、実施の形態9に係る歯科用の色調マッチング補助具1を示す。図8に示す実施の形態8と異なる点は、図9に示す実施の形態9では、ステッカーに切り込み14eが、図6に示すミシン目14bと同様に第3エリア14だけでなく、第2エリア13の一部であって、色番号や色表記が記入されている領域も含めている点である。これにより剥されたシールには、色番号や色表記が記入されているので、容易に色番号や色表記を特定することができる。
図9の実施の形態9に対しても、図5Bで示した変形例と同様な変形例や柄補助具を提供することもできる。
【0047】
図10は、実施の形態1の第1変形例における歯科用色調マッチング補助具1を示す。図1に示す実施の形態1においては、色調マッチング補助具1は長方形であったが、この第1変形例においては扇型で構成されている。複数の島状の第3エリア14が扇形の丸みを帯びた外縁11に沿って配列されている。これにより複数の島状の第3エリア14の間隔を広くとることができる。
【0048】
図11は、実施の形態1の第2変形例における歯科用色調マッチング補助具1を示す。図1に示す実施の形態1においては、色調マッチング補助具1は長方形であったが、この第2変形例においてはかまぼこ型で構成されている。複数の島状の第3エリア14がかまぼこ形の底辺の直線、すなわち直線状の外縁11に沿って配列されている。これにより色調マッチング補助具1の面積を小さくすることができる。
【0049】
図12は、実施の形態1の第3変形例における歯科用色調マッチング補助具1を示す。図1に示す実施の形態1においては、色調マッチング補助具1は長方形であったが、この第3変形例においてはドーム型(円を半円以上の大きさで直線により切断した型)で構成されている。複数の島状の第3エリア14がドーム形の丸みを帯びた外縁11に沿って配列されている。これにより複数の島状の第3エリア14の間隔を広くとることができ、図10の第1変形例より多くの第3エリア14を含ませることができる。
【0050】
図13は、実施の形態1の第4変形例における歯科用色調マッチング補助具1を示す。図1に示す実施の形態1においては、色調マッチング補助具1は長方形であったが、この第4変形例においてはドーナツ型で構成されている。複数の島状の第3エリア14がドーナツ形の内側の丸みを帯びた外縁11に沿って配列されている。これにより複数の島状の第3エリア14の間隔を狭くし、多くの数の第3エリア14を採ることができる。
【0051】
図14は、実施の形態1の第5変形例における歯科用色調マッチング補助具1を示す。図1に示す実施の形態1においては、色調マッチング補助具1は長方形であったが、この第5変形例においてはドーナツ型で構成されている。複数の島状の第3エリア14がドーナツ形の外側の丸みを帯びた外縁11に沿って配列されている。これにより複数の島状の第3エリア14の間隔を広くし、かつ、多くの数の第3エリア14を採ることができる。
【0052】
図15Aは、実施の形態1の第6変形例における歯科用色調マッチング補助具1を示す。図1に示す実施の形態1においては、色調マッチング補助具1は長方形で、一方の長手の辺を外縁11として、その一方の長手の辺側だけに島状の第3エリア14を配列したが、この第6変形例においては、色調マッチング補助具1は長方形ではあるが、平行な一対の長手の辺を外縁11として、両方の長手の辺に沿って島状の第3エリア14を配列した。これにより、図1の実施の形態1よりも多くの第3エリア14を設けることができる。
【0053】
図15Bは、実施の形態1の第7変形例における歯科用色調マッチング補助具1を示す。図15Aに示す第6変形例と比べ、一方(例えば図15Bの上側)の外縁11に沿って配列した第3エリア14の数と、他方(同図の下側)の外縁11に沿って配列した第3エリア14の数を異なる様にすることができ、第3エリア14に配置するシェード歯牙の色サンプルを上側の外縁11に沿ったものと、下側の外縁に沿ったものの数を異なる様にすることができ、配置の自由度を上げることができる。
【0054】
上述の実施の形態や変形例は、本開示における技術を例示するためのものである。特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【0055】
以下、本開示に係る観点を列記する。
[観点1]
人工歯または歯冠修復材の色調を決める色調マッチング補助具であって、
表面と裏面並びに外縁を有するシート状部材を備え、
シート状部材の表面には、
外縁に沿って、外縁から第1距離の幅を有する帯状の第1エリアであって、背景色で描かれた第1エリアと、
第1エリアに隣接し、第1エリアから第2距離の幅を有する帯状の第2エリアであって、歯肉色で描かれた第2エリアと、
一端が外縁に沿いつつ、外縁から、帯状の第1エリアを幅方向に横切り、帯状の第2エリアを幅方向にその中間位置まで延在する島状の第3エリアであって、シェード歯牙色で描かれた1つ又は複数の島状の第3エリアと、
が設けられており、
第1エリアの背景色を無彩色又は第1歯肉色とし、
第2エリアの歯肉色を、背景色の無彩色又は第1歯肉色よりも明度が高い第2歯肉色とする色調マッチング補助具。
[観点2]
複数の第3エリアのシェード歯牙色は、互いに異なったシェード歯牙色とする、観点1に記載の色調マッチング補助具。
[観点3]
シート状部材は、紙、又はプラスチックである、観点1に記載の色調マッチング補助具。
[観点4]
シート状部材は、マットシートと、マットシートの上に貼り付けられたステッカーとで構成されるシールである、観点1に記載の色調マッチング補助具。
[観点5]
シート状部材は矩形、円形、楕円形、半円形、扇形、ドーナツ形のいずれかである、観点1に記載の色調マッチング補助具。
[観点6]
第3エリアのシェード歯牙色は、外縁に向かって明度が低くなるようなグラデーションを有する、観点1に記載の色調マッチング補助具。
[観点7]
第2エリアの歯肉色は、外縁に向かって明度が高くなるまたは低くなるようなグラデーションを有する、観点1に記載の色調マッチング補助具。
[観点8]
第1の距離と第2の距離の比は、1:5~4:5である、観点1に記載の色調マッチング補助具。
[観点9]
複数の第3エリアは、互いに間隔を有している、観点1に記載の色調マッチング補助具。
[観点10]
間隔は、0.1mm~2.0mmである、観点9に記載の色調マッチング補助具。
[観点11]
1つの第3エリアの、外縁に沿った方向の長さは5.0mm~12.0mmである、観点1に記載の色調マッチング補助具。
[観点12]
1つの第3エリアの、外縁と垂直に延在する方向の長さは7.0mm~15.0mmである、観点1に記載の色調マッチング補助具。
[観点13]
第1エリアの外縁に沿ったラインと、第3エリアの外縁に沿ったラインとは同一の直線ラインである、観点1に記載の色調マッチング補助具。
[観点14]
第1エリアの外縁に沿ったラインは直線である一方、第3エリアの外縁に沿ったラインは、直線より外側に突き出る円弧状のラインである、観点1に記載の色調マッチング補助具。
[観点15]
第3エリアを、シート部材の厚み方向に隆起させた、観点1に記載の色調マッチング補助具。
[観点16]
第3エリアを切り取り可能とする切り取り加工を第3エリアの外周に沿って施した、観点1に記載の色調マッチング補助具。
[観点17]
第3エリア及び第2エリアの一部を切り取り可能とする切り取り加工を第2エリアの一部を含む第1エリアの外周に沿って施した、観点1に記載の色調マッチング補助具。
[観点18]
第3エリアをステッカーとして剥せるように第3エリアの外周を切断した、観点4に記載の色調マッチング補助具。
[観点19]
第3エリア及び第2エリアの一部をステッカーとして剥せるように第2エリアの一部を含む第3エリアの外周を切断した、観点4に記載の色調マッチング補助具。
[観点20]
シート状部材の表面には、更に
第2エリアに隣接し、第2エリアから第3距離の幅を有する帯状の第4エリアが設けられており、第4エリアの全て又は少なくとも一部を帯状部品として切り取り可能とする切り取り加工を第4エリアに施した、観点16~19のいずれかに記載の色調マッチング補助具。
[観点21]
帯状部品の長手方向の一端に、少なくとも1本のカットが形成されている、観点20に記載の色調マッチング補助具。
[観点22]
帯状部品の長手方向の一端に、追加第1エリアと、それに隣接する追加第2エリアが設けられ、第4エリアの、外縁と垂直な方向である幅方向の長さは、一つの第3エリア14の外縁11に沿った横方向の長さよりも大きく、かつ、追加第1エリアの幅と、追加第2エリアの幅、すなわち外縁に沿った方向の幅は、それぞれ、第1エリアの幅と、第2エリアの幅と同様である、観点20に記載の色調マッチング補助具。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本開示は、歯科領域において、人工歯または歯冠修復材の色調を決める際に用いる色調マッチング補助具に適用可能である。
【符号の説明】
【0057】
10…シート状部材
11…外縁
12…第1エリア
13…第2エリア
14、14h、14i、14j、14k…第3エリア
14a、14b、14c…ミシン目
14d、14e…切り込み
15…第4エリア
15a、15b…切り目
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16