IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オークマ株式会社の特許一覧

特開2024-112632工作機械の誤差補正方法及び誤差補正装置
<>
  • 特開-工作機械の誤差補正方法及び誤差補正装置 図1
  • 特開-工作機械の誤差補正方法及び誤差補正装置 図2
  • 特開-工作機械の誤差補正方法及び誤差補正装置 図3
  • 特開-工作機械の誤差補正方法及び誤差補正装置 図4
  • 特開-工作機械の誤差補正方法及び誤差補正装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112632
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】工作機械の誤差補正方法及び誤差補正装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/404 20060101AFI20240814BHJP
   B23Q 15/24 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
G05B19/404 G
B23Q15/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017819
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】近藤 康功
(72)【発明者】
【氏名】松下 哲也
(72)【発明者】
【氏名】小島 拓也
【テーマコード(参考)】
3C001
3C269
【Fターム(参考)】
3C001KA01
3C001KB04
3C001KB09
3C001TA02
3C001TB01
3C001TC05
3C269AB01
3C269BB03
3C269CC02
3C269CC15
3C269EF10
3C269EF22
(57)【要約】
【課題】加工方法に応じて補正基準点の座標値を自動で設定することができ、作業者に負担をかけることなく高精度な加工を可能とする。
【解決手段】オペレータから加工開始の指令が入力されると、S1にて加工プログラムの分析を行い、S2で加工方法を判定する。S3で、判定した加工方法が、工具の位置を演算する際に所定の補正基準点の座標値を用いるものとして予め設定された所定の加工方法であるか否かを判定する。判定した加工方法が設定された加工方法と一致しなければ、S4で、各軸の指令位置の座標値を補正値演算用座標値に設定し、判定した加工方法が設定された加工方法と一致すれば、S5で、加工プログラムに基づいて補正基準点の座標値を補正値演算用座標値に設定する。次に、S6にて工具の位置誤差を演算し、S7にて各軸の補正値の演算を行い、S8にて工具の位置の補正を行う。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持するテーブルと、工具を保持する主軸と、3軸以上の並進軸とを有し、前記主軸が前記テーブルに対して並進3自由度以上の相対運動が可能な工作機械において、前記被加工物に対する前記工具の位置を補正する方法であって、
前記被加工物を加工するための加工プログラムから加工方法を分析するプログラム分析ステップと、
前記プログラム分析ステップで分析された加工方法が、前記工具の位置を演算する際に所定の補正基準点の座標値を用いるものとして予め設定された所定の加工方法と一致するか否かを判定する加工方法判定ステップと、
前記分析された加工方法が前記所定の加工方法と一致しない場合には、前記工具の位置を演算する座標値として、前記並進軸の指令値座標系内の指令位置の座標値を設定し、前記分析された加工方法が前記所定の加工方法と一致する場合には、前記工具の位置を演算する座標として前記補正基準点の座標値を設定する座標値設定ステップと、
前記並進軸の指令値座標系内の指令位置の座標値又は前記補正基準点の座標値と、各軸間の幾何学的な誤差とに基づいて、前記幾何学的な誤差によって生じる前記工具の位置誤差を演算する位置誤差演算ステップと、
演算した前記工具の位置誤差を前記並進軸の指令値座標系に変換することにより、前記各軸の幾何学的な誤差に対する補正値を演算する補正値演算ステップと、
演算した前記補正値に基づいて前記工具の位置を補正する位置補正ステップと、
を実行することを特徴とする工作機械の誤差補正方法。
【請求項2】
前記座標値設定ステップでは、前記分析された加工方法が前記所定の加工方法と一致する場合、前記加工プログラムを分析して前記補正基準点の座標値を設定することを特徴とする請求項1に記載の工作機械の誤差補正方法。
【請求項3】
被加工物を保持するテーブルと、工具を保持する主軸と、3軸以上の並進軸とを有し、前記主軸が前記テーブルに対して並進3自由度以上の相対運動が可能な工作機械において、前記被加工物に対する前記工具の位置を補正する装置であって、
前記被加工物を加工するための加工プログラムから加工方法を分析するプログラム分析手段と、
前記プログラム分析手段で分析された加工方法が、前記工具の位置を演算する際に所定の補正基準点の座標値を用いるものとして予め設定された所定の加工方法と一致するか否かを判定する加工方法判定手段と、
前記分析された加工方法が前記所定の加工方法と一致しない場合には、前記工具の位置を演算する座標値として、前記並進軸の指令値座標系内の指令位置の座標値を設定し、前記分析された加工方法が前記所定の加工方法と一致する場合には、前記工具の位置を演算する座標として前記補正基準点の座標値を設定する座標値設定手段と、
前記並進軸の指令値座標系内の指令位置の座標値又は前記補正基準点の座標値と、各軸間の幾何学的な誤差とに基づいて、前記幾何学的な誤差によって生じる前記工具の位置誤差を演算する位置誤差演算手段と、
演算した前記工具の位置誤差を前記並進軸の指令値座標系に変換することにより、前記各軸の幾何学的な誤差に対する補正値を演算する補正値演算手段と、
演算した前記補正値に基づいて前記工具の位置を補正する位置補正手段と、
を備えることを特徴とする工作機械の誤差補正装置。
【請求項4】
前記座標値設定手段は、前記分析された加工方法が前記所定の加工方法と一致する場合、前記加工プログラムを分析して前記補正基準点の座標値を設定することを特徴とする請求項3に記載の工作機械の誤差補正装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、工作機械において幾何学的な誤差を補正するための方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1は、並進3軸と回転2軸とを有する5軸制御マシニングセンタ(以下、「5軸機」という。)Mの模式図である。
主軸頭2は、並進軸であり互いに直交するX軸、Z軸によって並進2自由度の運動が可能である。テーブル3は、回転軸であるC軸によってクレードル4に対して回転1自由度の運動が可能である。クレードル4は、回転軸でありC軸に直交するA軸によって、トラニオン5に対して回転1自由度の運動が可能である。トラニオン5は、並進軸でありX軸、Z軸に直交するY軸により、ベッド1に対して並進1自由度の運動が可能である。したがって、テーブル3に対して主軸頭2は、並進3自由度と回転2自由度とを有する。各軸は数値制御装置により制御されるサーボモータにより駆動され、被加工物をテーブル3に固定し、主軸頭2に工具を装着して回転させ、被加工物を任意の形状に加工する。
【0003】
この5軸機Mの運動誤差として、各軸間の誤差である幾何学的な誤差(以下、「幾何誤差」という。)がある。これらの運動誤差は被加工物の形状に転写され、被加工物の形状・寸法誤差の要因となる。
これに対して、幾何誤差を補正して制御することにより、高精度な加工を実現する技術が開発されている。
例えば特許文献1に記載された発明は、機械を制御する際に、各軸間に存在する幾何誤差すなわち、回転軸の中心位置のズレと、傾き誤差と、各軸の指令位置とをもとに、工具と被加工物との相対関係が誤差のない機械と同じになるように各軸の指令位置を補正するための補正値を算出し、指令位置に補正値を加算して各軸を駆動する方法を備えた装置である。
しかし、特許文献1に記載の発明では、回転軸の傾き誤差を補正する場合、並進軸の動作に伴って並進軸が補正指令されるため、並進軸を1軸だけ動作させても他の並進軸が微小動作して加工精度に影響を与えるおそれがある。そこで、特許文献2には、回転軸の動作の場合に、各軸の指令位置の座標値の代わりに予め設定した補正基準点の座標値を使って補正値を算出する発明が開示されている。この発明により、回転軸を割り出して平面加工や穴開け加工などを行った場合でも、各軸の補正値による微小動作で加工面精度・品位や工具寿命の低下を起こさず、高精度な加工を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-104317号公報
【特許文献2】特開2012-221001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載された発明は、補正値の算出に使用する補正基準点の座標値を人が予め指定する必要がある。この補正基準点の座標値を指定するには、作業者が加工内容を把握しており、なおかつ補正基準点の座標値の指定が必要な加工方法かを判定できる必要があり、作業者の負担が大きいといった問題がある。特に、穴あけ加工や平面加工が複数の箇所にある場合には、その都度座標値を指定する必要があり、作業者の負担が増大してしまう。
【0006】
そこで、本開示は、加工方法に応じて補正基準点の座標値を自動で設定することができ、作業者に負担をかけることなく高精度な加工を行うことができる工作機械の誤差補正方法及び誤差補正装置を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示の第1の構成は、被加工物を保持するテーブルと、工具を保持する主軸と、3軸以上の並進軸とを有し、前記主軸が前記テーブルに対して並進3自由度以上の相対運動が可能な工作機械において、前記被加工物に対する前記工具の位置を補正する方法であって、
前記被加工物を加工するための加工プログラムから加工方法を分析するプログラム分析ステップと、
前記プログラム分析ステップで分析された加工方法が、前記工具の位置を演算する際に所定の補正基準点の座標値を用いるものとして予め設定された所定の加工方法と一致するか否かを判定する加工方法判定ステップと、
前記分析された加工方法が前記所定の加工方法と一致しない場合には、前記工具の位置を演算する座標値として、前記並進軸の指令値座標系内の指令位置の座標値を設定し、前記分析された加工方法が前記所定の加工方法と一致する場合には、前記工具の位置を演算する座標として前記補正基準点の座標値を設定する座標値設定ステップと、
前記並進軸の指令値座標系内の指令位置の座標値又は前記補正基準点の座標値と、各軸間の幾何学的な誤差とに基づいて、前記幾何学的な誤差によって生じる前記工具の位置誤差を演算する位置誤差演算ステップと、
演算した前記工具の位置誤差を前記並進軸の指令値座標系に変換することにより、前記各軸の幾何学的な誤差に対する補正値を演算する補正値演算ステップと、
演算した前記補正値に基づいて前記工具の位置を補正する位置補正ステップと、を実行することを特徴とする。
第1の構成の別の態様は、上記構成において、前記座標値設定ステップでは、前記分析された加工方法が前記所定の加工方法と一致する場合、前記加工プログラムを分析して前記補正基準点の座標値を設定することを特徴とする。
上記目的を達成するために、本開示の第2の構成は、被加工物を保持するテーブルと、工具を保持する主軸と、3軸以上の並進軸とを有し、前記主軸が前記テーブルに対して並進3自由度以上の相対運動が可能な工作機械において、前記被加工物に対する前記工具の位置を補正する装置であって、
前記被加工物を加工するための加工プログラムから加工方法を分析するプログラム分析手段と、
前記プログラム分析手段で分析された加工方法が、前記工具の位置を演算する際に所定の補正基準点の座標値を用いるものとして予め設定された所定の加工方法と一致するか否かを判定する加工方法判定手段と、
前記分析された加工方法が前記所定の加工方法と一致しない場合には、前記工具の位置を演算する座標値として、前記並進軸の指令値座標系内の指令位置の座標値を設定し、前記分析された加工方法が前記所定の加工方法と一致する場合には、前記工具の位置を演算する座標として前記補正基準点の座標値を設定する座標値設定手段と、
前記並進軸の指令値座標系内の指令位置の座標値又は前記補正基準点の座標値と、各軸間の幾何学的な誤差とに基づいて、前記幾何学的な誤差によって生じる前記工具の位置誤差を演算する位置誤差演算手段と、
演算した前記工具の位置誤差を前記並進軸の指令値座標系に変換することにより、前記各軸の幾何学的な誤差に対する補正値を演算する補正値演算手段と、
演算した前記補正値に基づいて前記工具の位置を補正する位置補正手段と、を備えることを特徴とする。
第2の構成の別の態様は、上記構成において、前記座標値設定手段は、前記分析された加工方法が前記所定の加工方法と一致する場合、前記加工プログラムを分析して前記補正基準点の座標値を設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、加工プログラムを分析して補正基準点の座標値を用いて工具の位置を演算することが必要な加工方法であるかを判定し、加工方法に応じて補正基準点の座標値を自動で設定することができる。よって、作業者に負担をかけることなく、平面加工や穴あけ加工などを行う場合に加工面精度・品位や工具寿命の低下を起こさず、高精度な加工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】5軸制御マシニングセンタの模式図である。
図2】数値制御装置の制御構成を示すブロック図である。
図3】各軸のサーボ指令値生成を行う数値制御装置の機能ブロック図である。
図4】被加工物の穴あけ加工を行う場合の模式図の例である。
図5】誤差補正方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本形態では、穴あけ加工の場合を例に説明する。また、適用する工作機械としては、図1の5軸機Mを例に説明する。
図2は、5軸機Mの数値制御装置11の制御構成の一例を示すブロック図である。数値制御装置11は、本開示の第2の構成の誤差補正装置の一例であり、CPU及びCPUに接続された記録手段12及び表示手段13を含んで構成され、各軸のサーボモータ27a~27eを制御する。数値制御装置11には、被加工物の加工プログラム、後述する幾何誤差、補正基準点の座標値を用いて工具の位置を演算することが必要な加工方法等を設定するための入力手段14が設けられる。加工プログラム及び幾何誤差は、記録手段12へ非一時的に記録される。補正基準点の座標値を用いて工具の位置を演算することが必要な加工方法も、記録手段12へ非一時的に記録される。
【0011】
図3は、各軸のサーボ指令値生成を行う数値制御装置11の機能ブロック図である。
数値制御装置11では、被加工物の加工指令が入力されると、まず、記録手段12より加工プログラム21が読み出され、指令値生成手段22において各並進軸の指令位置の座標値が生成される。
次に、プログラム分析手段23にて、加工プログラム21の加工方法が、補正基準点の座標値を用いて工具の位置を演算することが必要な加工方法であるか否かを判定して、座標値の設定を行う。
次に、生成された指令位置の座標値もしくは補正基準点の座標値をもとに補正値演算手段24により各軸の補正値の演算を行い、指令位置の座標値と補正値との合計値がサーボ指令値変換手段25に送られてサーボ指令値が演算され、各軸のサーボ指令値が各軸のサーボアンプ26a~26eに送られる。各軸のサーボアンプ26a~26eはそれぞれサーボモータ27a~27eを駆動し、テーブル3に対する主軸頭2(工具)の相対位置を制御する。よって、数値制御装置11は、本開示のプログラム分析手段、加工方法判定手段、座標値設定手段、位置誤差演算手段、補正値演算手段、位置補正手段として機能する。
【0012】
次に、幾何誤差について説明する。幾何誤差を隣り合う軸間の相対並進誤差3成分および相対回転誤差3成分の合計6成分(δx、δy、δz、α、β、γ)で定義する。
本例の5軸機Mの場合、各軸間、C軸と被加工物間、Z軸と工具間に当該6成分の幾何誤差がそれぞれ存在するため、合計36個の幾何誤差が存在する。ただし、36個のうち冗長な関係のものを除くと13個であり、幾何誤差が存在する軸間を工具側からの順番を添え字として表すと、13個の幾何誤差は、α、β、α、β、γ、δy4、δz4、β、γ、δx5、δy5、α、βとなる。これらは順に、工具-Y軸間直角度、工具-X軸間直角度、Y-Z軸間直角度、Z-X軸間直角度、X-Y軸間直角度、A軸中心位置Y方向誤差、A軸中心位置Z方向誤差、A-X軸間直角度、A-Y軸間直角度、C軸中心位置X方向誤差、C軸中心位置Y方向誤差、A軸原点誤差、C-A軸間直角度である。これらの幾何誤差は予め測定して、記録手段12に記録しておく。
【0013】
続いて、本開示の第1の構成に係る数値制御装置11の誤差補正方法について、図4の模式図の穴1を加工する場合を例にして、図5のフローチャートを用いて説明する。この誤差補正方法は、記録手段12に予め記録されている誤差補正プログラムに基づいて実行される。
まず、オペレータは、記録手段12に、工具の位置を演算する際に所定の補正基準点の座標値を用いることが必要な所定の加工方法を予め設定しておく。この加工方法は複数であってもよい。
数値制御装置11は、オペレータから加工開始の指令が入力されると、ステップ(以下、単に「S」と表記する。)1にて、記録手段12に記録された加工プログラム21を読込んで分析を行い、S2で加工方法を判定する(S1,S2:プログラム分析ステップ)。
この分析では、加工が穴あけ加工か、平面加工か、形状加工かなど分析する。例えば、穴あけ加工の場合、工具6を被加工物7から離れた待機位置P1から、図4に示すように、穴1の直上位置P2に位置決めし、P3の位置に切削位置決めして穴あけ加工を行い、直上位置P2に戻り、次の穴2の直上位置P4に移動する動作を繰り返し行う穴あけ加工サイクルであるかによって判定する。または、加工に使用する工具6の情報(例えば、ドリル)と、切削位置決め指令がある場合には、穴あけ加工であると判定してもよい。
【0014】
次に、S3で、S2で判定した加工方法が、記録手段12に予め設定された所定の加工方法と一致するか否かの判定を行う(加工方法判定ステップ)。
よって、判定した加工方法が、予め設定された加工方法と一致しなければ、S4で、各軸の指令位置の座標値を補正値演算用座標値x、y、zに設定する。一方、判定した加工方法が、予め設定された加工方法と一致すれば、S5で、加工プログラム21に基づいて補正基準点の座標値を補正値演算用座標値x、y、zに設定する(S4,S5:座標値設定ステップ)。
補正基準点の座標値は、例えば、図4に示す穴あけ加工であれば、切削送りの開始点となる直上位置P2やP4が補正基準点となり、座標値は、直上位置P2やP4のX軸、Y軸、Z軸の座標値となる。
次に、S6にて、S4又はS5で設定した座標値と各軸間の幾何誤差とに基づいて、工具6の位置誤差を演算する(位置誤差演算ステップ)。
次に、S7にて各軸の補正値の演算を行い(補正値演算ステップ)、S8にて工具6の位置の補正を行う(位置補正ステップ)。
【0015】
次に、S6における工具6の位置誤差の演算方法および、S7における各軸の補正値の演算方法の詳細について、数式を用いて説明する。
まず、回転軸C軸、A軸の補正値ΔCc、ΔCaの演算方法について説明する。補正値ΔCc、ΔCaは幾何誤差6成分(δx、δy、δz、α、β、γ)による幾何誤差の変換マトリックスε (以下の数1)を用いて、以下の数2により求めることができる。
ここで、添え字jは、幾何誤差が存在する軸間を工具側から順番に表したものである。
【0016】
【数1】
【0017】
【数2】
【0018】
回転軸C軸、A軸と並進軸X軸、Y軸、Z軸の変換行列、主軸座標系での工具先端ベクトルPは、以下の数3で表すことができる。
【0019】
【数3】
【0020】
幾何誤差がない場合のワーク座標系での工具先端ベクトルは、数3の変換行列および工具先端ベクトルを用いて、以下の数4により求めることができる。
ここで、c、aは、回転軸の指令位置の座標値であり、x、y、zは、S4で設定した並進軸の指令位置の座標値もしくはS5で設定した補正基準点の座標値である。
【0021】
【数4】
【0022】
また、幾何誤差が存在する場合のワーク座標系での工具先端ベクトルは、幾何誤差の変換マトリックスε(数1)を用いて、以下の数5により求めることができる。
【0023】
【数5】
【0024】
幾何誤差によるワーク座標系での各工具先端の位置誤差ベクトルΔeは、との差分から以下の数6により求められる。
【0025】
【数6】
【0026】
また、位置誤差による並進軸の補正値は、位置誤差を指令値座標系に変換し、その逆符号として扱うことができる。補正値ベクトルΔCompを以下の数7に示す。
【0027】
【数7】
【0028】
このように、上記形態の誤差補正方法及び数値制御装置11は、被加工物7を加工するための加工プログラム21から加工方法を分析し、分析された加工方法が、工具6の位置を演算する際に所定の補正基準点の座標値を用いるものとして予め設定された所定の加工方法と一致するか否かを判定する。
そして、加工方法が一致しない場合には、並進軸の指令値座標系内の指令位置の座標値を設定し、加工方法が一致する場合には、補正基準点の座標値を設定して、設定した座標値と各軸間の幾何誤差とから、幾何誤差によって生じる工具6の位置誤差を演算して、演算した工具6の位置誤差を並進軸の指令値座標系に変換することにより、各軸の幾何誤差に対する補正値を演算し、演算した補正値に基づいて工具6の位置を補正する。
この構成によれば、加工プログラム21を分析して補正基準点の座標値を用いて工具6の位置を演算することが必要な加工方法であるかを判定し、加工方法に応じて補正基準点の座標値を自動で設定することができる。よって、作業者に負担をかけることなく、穴あけ加工を行う場合に加工面精度・品位や工具寿命の低下を起こさず、高精度な加工を行うことができる。
【0029】
なお、上記形態では、工具の位置を演算する座標値を設定するタイミングを、加工方法判定ステップの後としているが、このタイミングに限らず、その前の段階、例えば加工方法の判定と同時に座標値を設定してもよい。
上記形態では、工作機械として5軸機を例示して穴あけ加工を行う場合を例に説明したが、工作機械は、並進3軸のマシニングセンタや複合加工機、旋盤であってもよい。補正基準点の座標値を用いる加工方法は、平面加工を行う場合であってもよい。特に、A軸やC軸等の回転軸を割り出して行う平面加工や穴あけ加工等について補正基準点の座標値を用いるようにすれば、加工精度の低下を防止できる。
上記形態では、数値制御装置に本開示の誤差補正装置を設けた例を説明したが、誤差補正装置は、数値制御装置と別に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1・・ベッド、2・・主軸頭、3・・テーブル、4・・クレードル、5・・トラニオン、6・・工具、7・・被加工物、11・・数値制御装置、12・・記録手段、13・・表示手段、14・・入力手段、21・・加工プログラム、22・・指令値生成手段、23・・プログラム分析手段、24・・補正値演算手段、25・・サーボ指令値変換手段。
図1
図2
図3
図4
図5