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特開2024-112634電動駆動装置及び電動パワーステアリング装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112634
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】電動駆動装置及び電動パワーステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 11/33 20160101AFI20240814BHJP
   H02K 5/00 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
H02K11/33
H02K5/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017821
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】妹尾 直樹
(72)【発明者】
【氏名】丸橋 昭夫
【テーマコード(参考)】
5H605
5H611
【Fターム(参考)】
5H605AA11
5H605CC01
5H605DD11
5H611BB01
5H611TT01
5H611TT05
5H611TT06
(57)【要約】
【課題】電力に重畳する高周波成分のノイズを除去する性能を高めつつ、製造工程を簡略化できる、電動駆動装置及び電動パワーステアリング装置を提供する。
【解決手段】電動駆動装置は、モータと、回路基板を含む電子制御装置とを含む。電子制御装置の回路基板は、負荷側の第1面及び反負荷側の第2面を有し、両面実装可能な基板本体と、少なくとも1つのリード付きコンデンサを備える。リード付きコンデンサのリード端子は、基板本体の第1面から基板本体の第2面へ貫通し、基板本体の第2面に配置された第1の接続ランドと電気的に接続している。コネクタ端子は、基板本体の第1面から基板本体の第2面へ貫通し、基板本体の第2面に配置された第2の接続ランドと電気的に接続している。
【選択図】図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷側から反負荷側へ軸方向に延びるシャフトと、
前記シャフトと連動するモータロータと、
前記モータロータを回転させるステータコアを備えるモータステータと、
前記モータロータ、及び前記モータステータを内側に収容するハウジングと、を含むモータと、
前記シャフトの前記反負荷側に設けられた磁石と、
前記モータの前記反負荷側に設けられるヒートシンクと、
前記ヒートシンクの前記反負荷側に配置された回路基板と、前記磁石の前記軸方向の延長線上にあり、かつ前記回路基板に取り付けられた回転角度センサと、を含む電子制御装置と、
前記回路基板に接続されるコネクタ端子を有するコネクタと、を備え、
前記回路基板は、負荷側の第1面及び反負荷側の第2面を有し、両面実装可能な基板本体と、少なくとも1つのリード付きコンデンサを備え、
前記リード付きコンデンサのリード端子は、前記基板本体の第1面から前記基板本体の第2面へ貫通し、前記基板本体の第2面に配置された第1の接続ランドと電気的に接続し、
前記コネクタ端子は、前記基板本体の第1面から前記基板本体の第2面へ貫通し、前記基板本体の第2面に配置された第2の接続ランドと電気的に接続している、電動駆動装置。
【請求項2】
前記回路基板は、チョークコイルをさらに備え、
前記リード付きコンデンサと、前記チョークコイルは、ノイズフィルタ回路を構成する、請求項1に記載の電動駆動装置。
【請求項3】
前記ヒートシンクは、前記ヒートシンクの第1面と、前記第1面よりも前記反負荷側にある前記ヒートシンクの第2面と、前記第1面と前記第2面との段差の壁から前記コネクタへ向かって突出する第1壁部及び第2壁部と、を有し、
前記チョークコイルは、前記基板本体の第2面に表面実装され、
前記第1壁部と前記第2壁部との間には、前記チョークコイルが挿入される、請求項2に記載の電動駆動装置。
【請求項4】
前記第1壁部と前記第2壁部とを連結する第3壁部をさらに備え、前記ヒートシンクは、前記第1壁部と前記第2壁部との間の底面と前記第2面との段差の壁、前記第1壁部、前記第2壁部及び前記第3壁部により、4方を囲む凹部を備える、請求項3に記載の電動駆動装置。
【請求項5】
前記ヒートシンクは、前記第1面よりも前記負荷側にあり、前記コネクタを搭載する載置面をさらに有し、前記第2面は、前記回路基板に対向し、前記回路基板の放熱をさせる放熱面である、請求項3に記載の電動駆動装置。
【請求項6】
前記軸方向にみて、前記第1壁部及び前記第2壁部の外側は、前記ヒートシンクの第1面である、請求項3に記載の電動駆動装置。
【請求項7】
前記チョークコイルは、前記コネクタ端子の近傍に配置されている、請求項2に記載の電動駆動装置。
【請求項8】
前記ヒートシンクは、前記シャフトが貫通する中空部を備え、前記中空部と前記チョークコイルとは、前記軸方向にみて前記ヒートシンクの第2面を挟む、請求項3に記載の電動駆動装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の電動駆動装置を備え、
前記電動駆動装置が補助操舵トルクを生じさせる、電動パワーステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モータの回転を制御する電子制御装置を備えた電動駆動装置及び電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータによって補助操舵トルクを発生させる電動パワーステアリング装置は、モータを制御する装置である電子制御装置を備えている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-034205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の電動駆動装置では、電子部品が表面実装されることで、高密度実装される。
【0005】
特許文献1の電動駆動装置では、コネクタのコネクタ端子は、反負荷側から負荷側に貫通し、電気的に接続される。コネクタのコネクタ端子は、ノイズフィルタ回路のコンデンサに接続される。ノイズ除去性能を高めるためには、大きな容量のコンデンサを使いたい要望がある。一方、表面実装可能なコンデンサは、容量が大きいと回路基板の面積を多く占有してしまうので、望ましくない。そこで、容量が大きなコンデンサとして、リード付きコンデンサが使用されると、特許文献1のコネクタ端子が回路基板の基板本体へ挿入する方向と、リード付きコンデンサのリード端子が回路基板の基板本体へ挿入する方向とが異なるため、製造工程が長くなってしまう可能性がある。
【0006】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、電力に重畳する高周波成分のノイズを除去する性能を高めつつ、製造工程を簡略化できる、電動駆動装置及び電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、一態様に係る電動駆動装置は、負荷側から反負荷側へ軸方向に延びるシャフトと、前記シャフトと連動するモータロータと、前記モータロータを回転させるステータコアを備えるモータステータと、前記モータロータ、及び前記モータステータを内側に収容するハウジングと、を含むモータと、前記シャフトの前記反負荷側に設けられた磁石と、前記モータの前記反負荷側に設けられるヒートシンクと、前記ヒートシンクの前記反負荷側に配置された回路基板と、前記磁石の前記軸方向の延長線上にあり、かつ前記回路基板に取り付けられた回転角度センサと、を含む電子制御装置と、前記回路基板に接続されるコネクタ端子を有するコネクタと、を備え、前記回路基板は、負荷側の第1面及び反負荷側の第2面を有し、両面実装可能な基板本体と、少なくとも1つのリード付きコンデンサを備え、前記リード付きコンデンサのリード端子は、前記基板本体の第1面から前記基板本体の第2面へ貫通し、前記基板本体の第2面に配置された第1の接続ランドと電気的に接続し、前記コネクタ端子は、前記基板本体の第1面から前記基板本体の第2面へ貫通し、前記基板本体の第2面に配置された第2の接続ランドと電気的に接続している。
【0008】
これにより、リード付きコンデンサが使用できることで、大きな静電容量(キャパシタンス)をノイズフィルタ回路に確保でき、ノイズ除去性能が高まる。リード端子及びコネクタ端子は、基板本体の同じ第2面に金属の接合材料を付着させる、フローはんだ工程やポイントディップはんだ工程で回路基板に電気的に接合できる。リード端子及びコネクタ端子は、互いに同じ方向に基板本体を貫通するので、互いに異なる方向に基板本体を貫通する場合と比較して、製造工程が簡略化できる。
【0009】
望ましい態様として、前記回路基板は、チョークコイルをさらに備え、前記リード付きコンデンサと、前記チョークコイルは、ノイズフィルタ回路を構成する。これにより、電動駆動装置は、電源に起因するノイズを抑制することができる。
【0010】
望ましい態様として、前記ヒートシンクは、前記ヒートシンクの第1面と、前記第1面よりも前記反負荷側にある前記ヒートシンクの第2面と、前記第1面と前記第2面との段差の壁から前記コネクタへ向かって突出する第1壁部及び第2壁部と、を有し、前記チョークコイルは、前記基板本体の第2面に表面実装され、前記第1壁部と前記第2壁部との間には、前記チョークコイルが挿入される。チョークコイルの熱は、第1壁部及び第2壁部に伝達され、第1壁部及び第2壁部から放熱される。
【0011】
望ましい態様として、前記第1壁部と前記第2壁部とを連結する第3壁部をさらに備え、前記ヒートシンクは、前記第1壁部と前記第2壁部との間の底面と前記第2面との段差の壁、前記第1壁部、前記第2壁部及び前記第3壁部により、4方を囲む凹部を備える。これにより、チョークコイルの5つの面は、凹の底面及び4つの内壁面に対向するので、放熱効率が高くなる。
【0012】
望ましい態様として、前記ヒートシンクは、前記第1面よりも前記負荷側にあり、前記コネクタを搭載する載置面をさらに有し、前記第2面は、前記回路基板に対向し、前記回路基板の放熱をさせる放熱面である。第1面と第2面との段差と、第1面と搭載面との段差を利用して、コネクタとチョークコイルを近づけることができる。
【0013】
望ましい態様として、前記軸方向にみて、前記第1壁部及び前記第2壁部の外側は、前記第1面である。これにより、リード付きコンデンサを挿入するスペースができるので、チョークコイルとリード付きコンデンサを基板本体の反負荷側に配置しても、軸方向の大きさを抑制できる。
【0014】
望ましい態様として、前記チョークコイルは、前記コネクタ端子の近傍に配置されている。これにより、高周波数成分除去の効率が高まる。
【0015】
望ましい態様として、前記ヒートシンクは、前記シャフトが貫通する中空部を備え、前記中空部と前記チョークコイルはとは、前記軸方向にみて前記第2面を挟む。これにより、万一、放熱材が第1壁部又は第2壁部を乗り越えても、収容部から中空部へは移動しにくい。その結果、放熱材がシャフトや磁石に付着しにくい。
【0016】
望ましい態様として、電動パワーステアリング装置は、電動駆動装置を備え、前記電動駆動装置が補助操舵トルクを生じさせる。これにより、電動パワーステアリング装置の製造工程が短縮される。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、電力に重畳する高周波成分のノイズを除去する性能を高めつつ、製造工程を簡略化できる、電動駆動装置及び電動パワーステアリング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、実施形態1に係る電動パワーステアリング装置を搭載した車両を模式的に示した斜視図である。
図2図2は、実施形態1に係る電動パワーステアリング装置の模式図である。
図3図3は、実施形態1に係るモータの断面を模式的に示す断面図である。
図4図4は、実施形態1に係るモータの配線を示す模式図である。
図5図5は、実施形態1に係るモータとECUとの関係を示す模式図である。
図6図6は、実施形態1に係る電動駆動装置の側面図である。
図7図7は、実施形態1に係る電動駆動装置の平面図である。
図8図8は、図6のVIII-VIII矢視の断面を示す断面図である。
図9図9は、図7のIX-IX矢視の断面を示す断面図である。
図10図10は、図7のX-X矢視の断面を示す断面図である。
図11図11は、図6のXII-XII矢視の断面を示す断面図である。
図12図12は、蓋体及び回路基板を取り外した実施形態1に係る電動駆動装置を説明する斜視図である。
図13図13は、図12の平面図である。
図14図14は、実施形態1に係る電動駆動装置において、回路基板の第2面の電子部品の実装状態を示す平面図である。
図15図15は、実施形態1に係る電動駆動装置において、回路基板の第2面の電子部品の実装状態を示す平面図である。
図16図16は、実施形態1に係る電動駆動装置において、コンデンサ及びコネクタの回路基板に対する実装状態を示す平面図である。
図17図17は、実施形態2に係る、図7のX-X矢視の断面を示す断面図である。
図18図18は、蓋体及び回路基板を取り外した、実施形態2に係る電動駆動装置を説明する斜視図である。
図19図19は、実施形態2に係る電動パワーステアリング装置の模式図である。
図20図20は、実施形態4に係る電動パワーステアリング装置の模式図である。
図21図21は、実施形態5に係る電動パワーステアリング装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本開示を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本開示が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0020】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る電動パワーステアリング装置を搭載した車両を模式的に示した斜視図である。図2は、実施形態1に係る電動パワーステアリング装置の模式図である。図1に示すように、車両101は、電動パワーステアリング装置100を搭載している。図2を参照して電動パワーステアリング装置100の概要を説明する。
【0021】
電動パワーステアリング装置100は、運転者(操作者)から与えられる力が伝達する順に、ステアリングホイール191と、ステアリングシャフト192と、ユニバーサルジョイント196と、インターミディエイトシャフト197と、ユニバーサルジョイント198と、第1ラックアンドピニオン機構199と、タイロッド172と、を備える。また、電動パワーステアリング装置100は、ステアリングシャフト192の操舵トルクを検出するトルクセンサ194と、モータ30と、モータ30を制御する電子制御装置(以下、ECU(Electronic Control Unit)という。)10と、減速装置75と、を備える。車速センサ182、電源装置183(例えば車載のバッテリ)、及びイグニッションスイッチ184は、車体に備えられる。車速センサ182は、車両101の走行速度を検出する。車速センサ182は、検出した車速信号SVをCAN(Controller Area Network)通信によりECU10に出力する。ECU10には、イグニッションスイッチ184がオンの状態で電源装置183から電力が供給される。
【0022】
図2に示すように、ステアリングシャフト192は、入力軸192Aと、出力軸192Bと、を備える。入力軸192Aは、一方の端部がステアリングホイール191に接続され、他方の端部がトーションバーに接続される。出力軸192Bは、一方の端部がトーションバーに接続され、他方の端部がユニバーサルジョイント196に接続される。なお、トルクセンサ194は、トーションバーのねじれを検出することで、ステアリングシャフト192に加わる操舵トルクを検出する。トルクセンサ194は、検出した操舵トルクに応じた操舵トルク信号TをECU10に出力する。ステアリングシャフト192は、ステアリングホイール191に付与された操舵力により回転する。
【0023】
インターミディエイトシャフト197は、出力軸192Bのトルクを伝達する。第1ラックアンドピニオン機構199は、第1ピニオンシャフト199Aと、第1ピニオンギヤ199Bと、ラックシャフト199Cと、第1ラック199Dと、を有する。第1ピニオンシャフト199Aは、一方の端部がユニバーサルジョイント198を介してインターミディエイトシャフト197に接続され、他方の端部が第1ピニオンギヤ199Bに接続される。ラックシャフト199Cに形成された第1ラック199Dは、第1ピニオンギヤ199Bと噛み合う。
【0024】
以上説明したように、ステアリングシャフト192の回転運動は、インターミディエイトシャフト197を介して第1ラックアンドピニオン機構199に伝達される。この回転運動は、第1ラックアンドピニオン機構199によりラックシャフト199Cの直線運動に変換される。タイロッド172は、ラックシャフト199Cの両端にそれぞれ接続される。
【0025】
モータ30は、運転者の操舵をアシストするための補助操舵トルクを発生させるモータである。モータ30は、ブラシレスモータでもよいし、ブラシ及びコンミテータを有するブラシモータでもよい。
【0026】
ECU10は、回転角度センサ23aを備える。回転角度センサ23aは、モータ30の回転位相を検出する。ECU10は、回転角度センサ23aからモータ30の回転位相信号を取得し、トルクセンサ194から操舵トルク信号Tを取得し、車速センサ182から車両101の車速信号SVを取得する。ECU10は、回転位相信号と操舵トルク信号Tと車速信号SVとに基づいて、アシスト指令の補助操舵指令値を算出する。ECU10は、算出された補助操舵指令値に基づいて、電流をモータ30に供給する。
【0027】
電動駆動装置1は、モータ30と、モータ30のシャフトの反負荷側に固定したECU10とを備える。また、電動駆動装置1は、ECU10とモータ30とを接続するアダプタを備えてもよい。
【0028】
減速装置75は、モータ30のシャフト31と一体に回転するウォームシャフトと、ウォームシャフトと噛み合うウォームホイールと、を備える。したがって、モータ30のシャフトの回転運動は、ウォームシャフトを介してウォームホイールに伝達される。なお、実施形態1において、モータの減速装置175側のシャフトの端部を負荷側端部といい、減速装置175とは反対側のモータのシャフトの端部を反負荷側端部という。
【0029】
ステアリングホイール191に入力された運転者の操舵力は、ステアリングシャフト192、及びインターミディエイトシャフト197を介して、第1ラックアンドピニオン機構199に伝達される。第1ラックアンドピニオン機構199は、伝達された操舵力をラックシャフト199Cの軸方向に加わる力としてラックシャフト199Cに伝達する。この際、ECU10は、ステアリングシャフト192に入力された操舵トルク信号Tをトルクセンサ194から取得する。ECU10は、車速信号SVを車速センサ182から取得する。ECU10は、モータ30の回転位相信号を回転角度センサ23aから取得する。そして、ECU10は、制御信号を出力してモータ30の動作を制御する。モータ30が作り出した補助操舵トルクは、減速装置75を介して出力軸192Bに伝達される。このようにして、運転者のステアリングホイール191の操舵が電動パワーステアリング装置100によりアシストされる。
【0030】
図2に示すように、電動パワーステアリング装置100は、ステアリングシャフト192の出力軸192Bにアシスト力が付与されるコラムアシスト方式である。
【0031】
図3は、実施形態1に係るモータの断面を模式的に示す断面図である。図4は、実施形態1に係るモータの配線を示す模式図である。本実施形態1において、周方向とは、シャフト31を中心とした同心円において、同心円に沿う方向である。径方向とは、軸方向Axに直交する平面において、シャフト31から離れる方向である。モータ30は、図3に示すように、ハウジング930と、ステータコア931を有するモータステータと、モータロータ932と、を備える。モータステータは、円筒状であるステータコア931と、複数の第1コイル37と、複数の第2コイル38を含む。ステータコア931は、環状のバックヨーク931aと、バックヨーク931aの内周面から突出する複数のティース931bと、を備える。ティース931bは、周方向に12個配置されている。モータロータ932は、ロータヨーク932aと、マグネット932bとを含む。マグネット932bは、ロータヨーク932aの外周面に設けられている。マグネット932bの数は、例えば8つである。モータロータ932の回転は、シャフト31の回転と連動する。
【0032】
図3に示すように、第1コイル37は、複数のティース931bのそれぞれに集中巻きされている。第1コイル37は、ティース931bの外周にインシュレータを介して集中巻きされる。全ての第1コイル37は、第1コイル系統に含まれる。実施形態1に係る第1コイル系統は、第1パワー回路25Aに含まれるインバータ回路251(図5参照)によって、電流が供給され、励磁される。第1コイル系統は、例えば第1コイル37を6つ含む。6つの第1コイル37は、2つの第1コイル37が周方向で互いに隣接するように配置されている。隣接する第1コイル37を1つのグループとした第1コイルグループGr1が、周方向に等間隔に3つ配置されている。すなわち、第1コイル系統は、周方向に等間隔に並べられた3つの第1コイルグループGr1を備えている。なお、第1コイルグループGr1は、必ずしも3つでなくてもよく、nを自然数としたときに周方向に等間隔に3n個配置されていればよい。また、nは奇数である方が望ましい。以上説明したように、本実施形態1では、コイルグループは、複数あり、3相毎に少なくとも第1コイルグループGr1と、第2コイルグループGr2の2系統に分けられ、かつステータコアが3相交流で励磁される。
【0033】
図3に示すように、第2コイル38は、複数のティース931bのそれぞれに集中巻きされている。第2コイル38は、ティース931bの外周にインシュレータを介して集中巻きされる。第2コイル38が集中巻きされるティース931bは、第1コイル37が集中巻きされるティース931bとは異なるティース931bである。全ての第2コイル38は、第2コイル系統に含まれる。第2コイル系統は、第2パワー回路25Bに含まれる第2のインバータ回路(図5参照)によって電流が供給され、励磁される。第2コイル系統は、例えば第2コイル38を6つ含む。6つの第2コイル38は、2つの第2コイル38が周方向で互いに隣接するように配置されている。隣接する第2コイル38を1つのグループとした第2コイルグループGr2が、周方向に等間隔に3つ配置されている。すなわち、第2コイル系統は、周方向に等間隔に並べられた3つの第2コイルグループGr2を備えている。なお、第2コイルグループGr2は、必ずしも3つでなくてもよく、nを自然数としたときに周方向に等間隔に3n個配置されていればよい。また、nは奇数である方が望ましい。
【0034】
図4に示すように、6つの第1コイル37は、第1U相電流I1uにより励磁される2つの第1U相コイル37Ua及び第1U相コイル37Ubと、第1V相電流I1vにより励磁される2つの第1V相コイル37Va及び第1V相コイル37Vbと、第1W相電流I1wにより励磁される2つの第1W相コイル37Wa及び第1W相コイル37Wbと、を含む。第1U相コイル37Ubは、第1U相コイル37Uaに対して直列に接続されている。第1V相コイル37Vbは、第1V相コイル37Vaに対して直列に接続されている。第1W相コイル37Wbは、第1W相コイル37Waに対して直列に接続されている。第1コイル37のティース931bに対する巻き方向は、全て同じ方向である。また、第1U相コイル37Ub、第1V相コイル37Vb及び第1W相コイル37Wbは、スター結線(Y結線)で接合されている。
【0035】
図4に示すように、6つの第2コイル38は、第2U相電流I2uにより励磁される2つの第2U相コイル38Ua及び第2U相コイル38Ubと、第2V相電流I2vにより励磁される2つの第2V相コイル38Va及び第2V相コイル38Vbと、第2W相電流I2wにより励磁される2つの第2W相コイル38Wa及び第2W相コイル38Wbと、を含む。第2U相コイル38Ubは、第2U相コイル38Uaに対して直列に接続されている。第2V相コイル38Vbは、第2V相コイル38Vaに対して直列に接続されている。第2W相コイル38Wbは、第2W相コイル38Waに対して直列に接続されている。第2コイル38のティース931bに対する巻き方向は、全て同じ方向であり、第1コイル37の巻き方向と同じである。また、第2U相コイル38Ub、第2V相コイル38Vb及び第2W相コイル38Wbは、スター結線(Y結線)で接合されている。
【0036】
図3に示すように、3つの第1コイルグループGr1は、第1UVコイルグループGr1UVと、第1VWコイルグループGr1VWと、第1UWコイルグループGr1UWと、からなる。第1UVコイルグループGr1UVは、周方向で互いに隣接する第1U相コイル37Ub及び第1V相コイル37Vaを含む。第1VWコイルグループGr1VWは、周方向で互いに隣接する第1V相コイル37Vb及び第1W相コイル37Waを含む。第1UWコイルグループGr1UWは、周方向で互いに隣接する第1U相コイル37Ua及び第1W相コイル37Wbを含む。
【0037】
図3に示すように、3つの第2コイルグループGr2は、第2UVコイルグループGr2UVと、第2VWコイルグループGr2VWと、第2UWコイルグループGr2UWと、からなる。第2UVコイルグループGr2UVは、周方向で互いに隣接する第2U相コイル38Ub及び第2V相コイル38Vaを含む。第2VWコイルグループGr2VWは、周方向で互いに隣接する第2V相コイル38Vb及び第2W相コイル38Waを含む。第2UWコイルグループGr2UWは、周方向で互いに隣接する第2U相コイル38Ua及び第2W相コイル38Wbを含む。
【0038】
第1U相電流I1uにより励磁される第1コイル37は、第2U相電流I2uにより励磁される第2コイル38に、ステータコア931の径方向で対向している。以下の説明において、ステータコア931の径方向は、単に径方向と記載される。例えば、図3に示すように、径方向で第1U相コイル37Uaが第2U相コイル38Uaに対向し、第1U相コイル37Ubが第2U相コイル38Ubに対向している。
【0039】
第1V相電流I1vにより励磁される第1コイル37は、第2V相電流I2vにより励磁される第2コイル38に、径方向で対向している。例えば、図3に示すように、径方向で第1V相コイル37Vaが第2V相コイル38Vaに対向し、第1V相コイル37Vbが第2V相コイル38Vbに対向している。
【0040】
第1W相電流I1wにより励磁される第1コイル37は、第2W相電流I2wにより励磁される第2コイル38に、径方向で対向している。例えば、図3に示すように、径方向で第1W相コイル37Waが第2W相コイル38Waに対向し、第1W相コイル37Wbが第2W相コイル38Wbに対向している。
【0041】
図5は、実施形態1に係るモータとECUとの関係を示す模式図である。図5に示すように、ECU10は、検出回路23と、制御回路24と、第1パワー回路25Aと、第2パワー回路25Bと、電源管理回路27とを備える。なお、図5において、説明が不要な回路については、適宜省略している。
【0042】
制御回路24は、制御演算回路241と、第1モータ駆動回路26A、第2モータ駆動回路26Bと、を有する。制御演算回路241には、操舵トルク信号T、車速信号SV等の入出力信号が、コネクタCNTを介して伝送される。回路基板20は、複数の導電層が設けられた多層樹脂基板であるので、コネクタCNTから制御回路24の制御演算回路241へ電気的に接続する接続配線は、回路基板20の内部導電層で引き回される。
【0043】
電源装置183からの配線PWは、コネクタCNTを介して電力を供給される。ノイズフィルタ回路90は、チョークコイル91、コンデンサ92A、コンデンサB及びコンデンサ92Cを有し、配線PWから供給される電力に重畳する高周波成分を除去する。コンデンサ92A、コンデンサBは、いわゆるYコンデンサである。これにより、コモンモードノイズが抑制される。コンデンサ92Aの一方端は、配線PWのプラス電位に接続され、他方端は、グラウンド電位に接続される。コンデンサ92Bの一方端は、グラウンド電位に接続され、配線PWのマイナス電位に接続される。
【0044】
コンデンサ92Aは、コンデンサ92Bよりも高い電位に接続される。コンデンサ92Aは、リード付きコンデンサである。コンデンサ92Bは、リード付きコンデンサでもよい。しかしながら、コンデンサ92Bがリード付きコンデンサであると、コンデンサ92Bの両リード端子が基板本体21のグラウンド層に接続されるため、リード端子と基板ランドとの間で接合するハンダなどの低融点金属の温度が上昇しにくい。このため、コンデンサ92Bは、表面実装型であることが望ましい。実施形態1のコンデンサ92Bは、表面実装型の積層セラミックコンデンサである。配線PWから供給される電力に重畳する高周波成分のノイズを除去するには、ノイズフィルタ回路90を構成するコンデンサの静電容量(キャパシタンス)の値が大きい方が望ましい。例えば、コンデンサ92Aの静電容量(キャパシタンス)の値を大きくすると、インピーダンスが小さくなり、ノイズフィルタ回路90のノイズ除去性能が向上する。一般的に、表面実装型のコンデンサは、コンデンサの静電容量(キャパシタンス)を大きくするほど、チップサイズが大きくなり、回路基板20に占める表面実装型のコンデンサの面積が大きくなる。また、チップサイズが大きくなると耐電圧が小さくなる傾向がある。コンデンサ92Aに、リード付きコンデンサが使用されることで、コンデンサ92Aが基板本体21に占める面積は、リード端子が接続される接続ランド程度となる。その結果、コンデンサ92Aの静電容量(キャパシタンス)の値を大きくしても、コンデンサ92Aが基板本体21に占める面積は変わらず、コンデンサ92Aの大型化が可能となる。また、コンデンサ92Aが基板本体21に表面実装されなかったので、他の部品を表面実装するスペースも増える。なお、コンデンサ92Aの耐電圧は、静電容量(キャパシタンス)を大きくした大きなサイズのチップを採用しても、通常サイズと同様のものを選択できる。
【0045】
コンデンサ92Cは、いわゆるXコンデンサである。これにより、ノーマルモードノイズが抑制される。2つコンデンサ92Cは、直列接続されている。直列接続されている2つのコンデンサ92Cの一方は、配線PWのプラス電位に接続され、他方は、配線PWのマイナス電位に接続される。直列接続されているコンデンサ92Cの1つが劣化しても他のコンデンサがあるため、配線PWがショートしない。実施形態1のコンデンサ92Cは、表面実装型の積層セラミックコンデンサである。
【0046】
回路基板20に引き回された接続配線は、電源装置183からの配線PWと接続する。接続配線の一端がノイズフィルタ回路90に接続し、接続配線の他端が、電源供給回路256を介して、第1パワー回路25Aのインバータ回路251又は第2パワー回路25Bのインバータ回路251と接続する。
【0047】
電源供給回路256は、ノイズフィルタ回路90と、インバータ回路251との間に配置されている。電源供給回路256は、電源遮断素子257及び逆接保護素子258を備えている。電源遮断素子257及び逆接保護素子258は、電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)である。逆接保護素子258の寄生ダイオードの順方向は、電源遮断素子257の寄生ダイオードの順方向と向きが逆となっている。このため、電源装置183から誤って逆極性の電力が供給されても、逆接保護素子258が逆極性の電力を遮断し、インバータ回路251を保護する。
【0048】
電源管理回路27は、回路基板20に実装された回路の電源のON/OFFや電力分配の配分をコントロールするスイッチングICである。電源管理回路27は、例えば、制御回路24で利用する電力の配分をコントロールする。接続配線の一端がノイズフィルタ回路90に接続し、接続配線の他端が電源管理回路27と接続する。
【0049】
検出回路23は、回転角度センサ23aと、センサ制御部23bと、を有する。第1パワー回路25Aは、インバータ回路251と、電流遮断回路255と、を有する。第2パワー回路25Bは、インバータ回路251と、電流遮断回路255と、を有する。
【0050】
第1モータ駆動回路26A、第2モータ駆動回路26Bは、それぞれ、ゲート駆動回路242、遮断駆動回路243、複数の電流検出回路244、昇圧回路245及び電源リレー駆動回路246を有している。
【0051】
電源リレー駆動回路246は、制御演算回路241の制御に基づいて、電源遮断素子257及び逆接保護素子258を導通させると、電源装置183からの電力がそれぞれのインバータ回路251へ供給される。
【0052】
また、インバータ回路251は、複数の駆動素子252を有する。駆動素子252は、電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)であり、スイッチング素子ともいう。高電位側に接続される駆動素子252は、上アームを構成し、低電位側に接続される駆動素子252は、下アームを構成する。シャント抵抗SRは、下アームの3つの駆動素子252にそれぞれ接続されている。なお、シャント抵抗SRは、3つの駆動素子252にそれぞれ1つ接続されるが、3つの駆動素子252に1つのシャント抵抗SRのみの接続としてもよい。
【0053】
制御演算回路241は、モータ電流指令値を演算する。センサ制御部23bは、モータ電気角θmを演算し、制御演算回路241に出力する。ゲート駆動回路242は、制御演算回路241から出力されるモータ電流指令値が入力される。ゲート駆動回路242は、モータ電流指令値に基づいて、第1パワー回路25A及び第2パワー回路25Bを制御する。このように、第1コイル37へ流れる電流と、第2コイル38へ流れる電流は、制御演算回路241にそれぞれ独立して制御される。
【0054】
ECU10は、図5に示すように、回転角度センサ23aを備えている。回転角度センサ23aは、例えば、磁気センサである。回転角度センサ23aの検出値がセンサ制御部23bに供給される。センサ制御部23bは、回転角度センサ23aの検出値に基づいてモータ電気角θmに応じた出力値を制御演算回路241に出力する。
【0055】
制御演算回路241には、トルクセンサ194で検出された操舵トルク信号Tと、車速センサ82で検出された車速信号SVと、センサ制御部23bから出力されるモータ電気角θmに応じた出力値と、が入力される。制御演算回路241は、操舵トルク信号T、車速信号SV及び上記出力値から演算したモータ電気角θmに基づいてモータ電流指令値を算出し、ゲート駆動回路242に出力する。
【0056】
ゲート駆動回路242(第1のゲート駆動回路)は、モータ電流指令値に基づいて第1パルス幅変調信号を演算し、第1パワー回路25Aのインバータ回路251にゲート駆動信号を出力する。ゲート駆動信号は、昇圧回路245で昇圧されたゲート電圧に基づいて生成されるパルスの信号である。インバータ回路251は、第1パルス幅調変信号のデューティ比に応じて、3相の電流値となるように駆動素子252をスイッチングして第1U相電流I1u、第1V相電流I1v及び第1W相電流I1wを含む3相交流を生成する。第1U相電流I1uが第1U相コイル37Ua及び第1U相コイル37Ubを励磁し、第1V相電流I1vが第1V相コイル37Va及び第1V相コイル37Vbを励磁し、第1W相電流I1wが第1W相コイル37Wa及び第1W相コイル37Wbを励磁する。
【0057】
ゲート駆動回路242(第2のゲート駆動回路)は、モータ電流指令値に基づいて第2パルス幅変調信号を演算し、第2パワー回路25Bのインバータ回路251にゲート駆動信号を出力する。ゲート駆動信号は、昇圧回路245で昇圧された電圧に基づいて生成される。インバータ回路251は、第2パルス幅調変信号のデューティ比に応じて、3相の電流値となるように駆動素子252をスイッチングして第2U相電流I2u、第2V相電流I2v及び第2W相電流I2wを含む3相交流を生成する。第2U相電流I2uが第2U相コイル38Ua及び第2U相コイル38Ubを励磁し、第2V相電流I2vが第2V相コイル38Va及び第2V相コイル38Vbを励磁し、第2W相電流I2wが第2W相コイル38Wa及び第2W相コイル38Wbを励磁する。
【0058】
インバータ回路251は、直流電力を交流電力に変換する電力変換回路である。上記のように、インバータ回路251は、複数の駆動素子252を有する。駆動素子252は、例えば、電界効果トランジスタである。インバータ回路251には、平滑用のコンデンサ253が並列に接続される。コンデンサ253は、例えば、電解コンデンサである。言い換えると、回路基板20は、並列に接続された複数の電解コンデンサを備える。
【0059】
また、電流検出回路244は、例えば、シャント抵抗SRに接続されている。シャント抵抗SRは、電流検出素子の一例である。電流検出素子は、ホール素子などであってもよい。電流検出回路244は、オペアンプを使用して差動増幅回路と、ローパスフィルタとを備えている。電流検出回路244の差動増幅回路は、シャント抵抗SRで検知した検出値を信号増幅し、信号増幅した検出値を、ローパスフィルタを介して遮断周波数より高い成分を減衰させ、シャント抵抗SRで検知した検出値を電流値として制御演算回路241に送出する。
【0060】
電流遮断回路255は、インバータ回路251と、第1コイル37又は第2コイル38との間に配置されている。電流検出回路254で検知した電流値が異常と判断される場合は、制御演算回路241は、遮断駆動回路243を介して電流遮断回路255を駆動し、インバータ回路251から第1コイル37へ流れる電流を遮断できる。また、制御演算回路241は、遮断駆動回路243を介して電流遮断回路255を駆動し、インバータ回路251から第2コイル38へ流れる電流を遮断できる。電流検出回路254で検知した電流値が異常と判断される場合は、制御演算回路241は、電源リレー駆動回路246を介して電源遮断素子257及び逆接保護素子258を非道通とし、インバータ回路251を保護する。
【0061】
図6は、実施形態1に係る電動駆動装置の側面図である。図7は、実施形態1に係る電動駆動装置の平面図である。図8は、図6のVIII-VIII矢視の断面を示す断面図である。図9は、図7のIX-IX矢視の断面を示す断面図である。図10は、図7のXI-XI矢視の断面を示す断面図である。図11は、図6のXII-XII矢視の断面を示す断面図である。図12は、蓋体及び回路基板を取り外した実施形態1に係る電動駆動装置を説明する斜視図である。図13は、図12の平面図である。図6及び図7に示すように、電動駆動装置1は、モータ30と、モータ30の反負荷側に配置されるECU10とを備える。
【0062】
図6及び図7に示すように、ECU10は、ヒートシンク40と、ヒートシンク40の反負荷側を覆う蓋体50を備える。図8に示すように、ヒートシンク40は、回路基板20を指示しており、蓋体50は、回路基板20を覆っている。図9に示すように、ヒートシンク40には、回路基板20と、コネクタCNTとが取り付けられている。軸方向Axからみて、モータ30のシャフト31の径方向外側からワイヤーハーネスのコネクタ端子が挿抜可能な方向にコネクタCNTが配置されている。以上説明したように、ECU10は、回路基板20と、回路基板20を支持するヒートシンク40と、コネクタCNTと、蓋体50を有する。
【0063】
図8に示すように、モータ30は、ハウジング930を備える。モータロータ932は、ロータヨーク932aと、マグネット932bとを含む。マグネット932bは、ロータヨーク932aの外周面に設けられている。ハウジング930は筒状であり、その内側にモータロータ932と、3相毎に2系統に分けられた複数のコイルグループ、例えば第1コイルグループGr1及び第2コイルグループGr2(図3参照)を含むステータと、シャフト31とを収容する。
【0064】
図8に示すように、回路基板20は、基板本体21と、基板本体21に実装された複数の電子部品と、を有する。基板本体21は、例えば、樹脂等で形成されたプリント基板である。回路基板20の内部には、複数の導電層が設けられた多層基板であり、回路基板20は、両面実装が可能となっている両面実装基板である。1枚の基板本体21に実装された複数の電子部品には、例えば、中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)、特定用途向け集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)、電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)、磁気センサ、電解コンデンサ、抵抗素子、ダイオード、サーミスタ等が含まれる。これら複数の電子部品により、図5に示した検出回路23、制御回路24、第1パワー回路25A及び第2パワー回路25Bが構成されている。
【0065】
図8及び図9に示すように、ヒートシンク40は、回路基板20を支持する。ヒートシンク40の一方の面(反負荷側)に、回路基板20が固定されている。ヒートシンク40は、放熱性の高いアルミニウム、銅などの金属材料で構成されており、回路基板20が発する熱を外部に効率よく放熱する。
【0066】
図8に示すように、シャフト31は、軸受33と、軸受34とにより回転自在に支持される。軸受33は、ヒートシンク40とシャフト31との間に介在している。ヒートシンク40の負荷側には、軸受支持部411があり、シャフト31が貫通するヒートシンク40の中空部45Hがある。軸受支持部411で囲まれる中空部45Hの内側35に軸受33が配置されている。軸受34は、ハウジング930とシャフト31との間に介在している。
【0067】
図8及び図9に示すように、シャフト31の一方の端部には、磁石フォルダ32Aを介して磁石32が取り付けられている。磁石32は、軸方向Axからみて半分がS極、半分がN極に着磁されている。あるいは、磁石32は、周方向にみて交互に配置されたS極及びN極を外周面に有するようにしてもよい。軸受33は、部品精度が高いので、ヒートシンク40の反負荷側に配置される磁石32の軸方向Axの位置が一定となる。磁石32がある端部が、シャフト31の反負荷側の端部である。
【0068】
シャフト31の他方の端部には、ウォームシャフト75A(図1参照)に回転を伝達するモータギヤ31Gがある。モータギヤ31Gがある端部が、シャフト31の負荷側の端部である。
【0069】
基板本体21は、第1面21bと、第1面21bの反対側に位置する第2面21aとを有する。図5に示す検出回路23、制御回路24、第1パワー回路25A及び第2パワー回路25Bは、第1面21b又は第2面21aに実装された1個以上の電子部品で構成されている。例えば、回転角度センサ23aは、基板本体21の第1面21bに実装された1個の電子部品で構成されている。
【0070】
また、図5に示す制御回路24は、基板本体21の第2面21aにそれぞれ実装された複数個の電子部品で構成されている。また、回路基板20は、基板本体21の第2面21aに実装されたコンデンサ253を含む。
【0071】
回転角度センサ23aは、シャフト31の反負荷側であって、磁石32の軸方向Axの延長線上に配置されている。基板本体21は、軸方向Axと直交する平面を回転角度センサ23aの実装面としている。回転角度センサ23aは、磁石32の磁場の変化を感知できるように、基板本体21に実装されている。磁石32と、回転角度センサ23aとは、軸方向Axにおいて、対向していることが望ましい。回転角度センサ23aは、基板本体21の第1面21bではなく、第2面21aにあってもよく、基板本体21の第1面21b及び第2面21aの両方にあってもよい。
【0072】
回転角度センサ23aは、例えば、スピンバルブセンサである。スピンバルブセンサは、反強磁性層等で磁化の向きが固定された強磁性体のピン層と、強磁性体のフリー層とで非磁性層を挟んだ素子で、磁束の向きの変化を検出できるセンサである。スピンバルブセンサには、GMR(Giant Magneto Resistance)センサ、TMR(Tunnel Magneto Resistance)センサがある。なお、回転角度センサ23aは、磁石32の回転を検出可能なセンサであればよい。回転角度センサ23aは、例えば、AMR(Anisotropic Magneto Resistance)センサ、又はホールセンサでもよい。
【0073】
蓋体50は金属製又は樹脂製であり、電動駆動装置1の内部に、異物や水分が侵入することを抑制する。図8に示すように、蓋体50は、ヒートシンク40の反負荷側に突出する支持柱451と、固定部材であるボルトCTとに挟まれて固定される。
【0074】
図9図10及び図11に示すように、ヒートシンク40は、コネクタCNTを支持する台座部44を備える。台座部44は、ハウジング930の内壁よりも径方向外側に突出している。台座部44の反負荷側には、コネクタCNTが配置される。
【0075】
コネクタCNTは、電源端子と、CAN通信を行う通信用端子と、CAN通信以外の方法でデータを入出力する入出力端子と、を含むコネクタCNTのコネクタ端子CNTPを有する。コネクタCNTの樹脂材料は、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT:Polybutylene terephthalate)である。コネクタCNTのコネクタ端子CNTPは、回路基板20に電気的に接続される。
【0076】
図8に示すように、回路基板20は、ヒートシンク40反負荷側に配置される。
【0077】
図12及び図13に示すように、ヒートシンク40は、ヒートシンク本体の反負荷側の第1面41と第2面42とに段差を設けている。なお、第1面41は、平坦面でなくてもよく、第2面42より、軸方向Axに低ければよい。載置面441は、第1面よりも負荷側にあり、第2面42は、第1面よりも反負荷側にある。
【0078】
図12に示すように、ヒートシンク40は、ヒートシンク本体の反負荷側の第1面41と第2面42とに段差43を設けている。なお、第1面41は、平坦面でなくてもよく、第2面42より、軸方向Axに低ければよい。第1面41と第2面42との間には、チョークコイルを収容する収容部が設けられている。
【0079】
収容部の凹部46には、放熱材63が充填されている。放熱材63は、例えばシリコーンポリマーに熱伝導性フィラーを混合した材料である。放熱材63は、例えばペースト状である。例えば、放熱材63の粘度は、200Pa・s以上300Pa・s以下である。放熱材63の粘度は、250Pa・s以上であると、収容部から放熱材63が流出しにくくなる。
【0080】
チョークコイル61が収容部の凹部46に挿入されると、放熱材の上面が上昇し、放熱材63がチョークコイル61の軸方向の3分の1以上に接している状態となる。その結果、チョークコイル61の熱が多方向に放散され、収容部に伝達される。
【0081】
図12に示すように、収容部の凹部46は、回路基板20に全て覆われる。図12に示すように、収容部の第1壁部461、第2壁部462、第3壁部463の外側面は、収容部の凹部46の深さよりも軸方向に長い。収容部の第1壁部461、第2壁部462、第3壁部463の外側面は、広い面積を有し、収容部の放熱性を高めることができる。
【0082】
図12に示すように、ヒートシンク40は、第1面41から反負荷側に突出する支持柱451、支持柱452を備えている。支持柱451、支持柱452には、反負荷側の上面から軸方向Axに開けられた雌ねじ部がそれぞれある。図12に示すように、支持柱451は、回路基板20よりも突出している。図8に示すように、蓋体50を貫通したボルトCTが、支持柱451の雌ねじ部に締結することで、ヒートシンク40に蓋体50が固定される。
【0083】
図12に示すように、軸方向にみて、第1壁部461及び第2壁部462の外側は、第1面41である。支持柱451、支持柱452と、収容部の第1壁部461との間に、隙間419がある。これにより、リード付きコンデンサ92Aを挿入するスペースができるので、隙間419に、コンデンサ92Aが配置される。チョークコイル91とリード付きコンデンサ92Aを基板本体21の反負荷側に配置しても、電動駆動装置1は、軸方向の大きさを抑制できる。
【0084】
図9に示すように、回路基板20を貫通したボルトBT1が、図12に示す支持柱452の雌ねじ部に締結する。これにより、回路基板20がヒートシンク40に対してずれないように固定されている。
【0085】
図9に示すように、コネクタCNTがヒートシンク40と回路基板20とに挟まれ、回路基板20とコネクタCNTとがボルトBT2により固定されている。これにより、コネクタCNTが回路基板20に対してずれないように固定されている。
【0086】
回路基板20と、ボルトBT2に隣接する位置に、ヒートシンク40とが固定されるボルトBT1を配置している。ボルトBT1(第2ボルト)とボルトBT2(第3ボルト)とが近接していることで、コネクタCNTが揺動しても、ボルトBT2の締結力に加え、ボルトBT1の締結力により、コネクタCNTの揺動を抑制できる。
【0087】
図12に示すように、電動駆動装置1は、第1コイルグループGr1と回路基板20とを接続する第1コイル配線321と、第2コイルグループGr2と回路基板20とを接続する第2コイル配線322と、を備える。第1コイル配線321及び第2コイル配線322は、ECU10に含まれてもよいし、モータ30に含まれてもよい。
【0088】
図12に示すように、回路基板20の貫通孔には、第1コイル配線321及び第2コイル配線322が挿入され、回路基板20と第1コイル配線321及び第2コイル配線322とが電気的に接続される。
【0089】
図12及び図13に示すように、回路基板20の発熱を放熱するために、第2面42は、回路基板20と対向している。そして、回路基板20とヒートシンク40の第2面42との間に、放熱材が塗布されている。放熱材は、例えば、シリコーンポリマーに熱伝導性フィラーを混合した材料であり、TIM(Thermal Interface Material)と呼ばれる。放熱材は、回路基板20の基板本体21よりも熱伝導率が大きい材料であれば、上記材料以外の他の材料でもよい。
【0090】
図11図12及び図13に示すように、台座部44の反負荷側には、コネクタCNTを搭載する載置面441と、載置面441よりも反負荷側に突出する突起部442と、突起部442の根元であって、載置面441よりも負荷側に凹む凹部443と、載置面441よりも負荷側に凹み、固定部材であるボルトBBTの頭部を収容する凹部444がある。
【0091】
図9及び図11に示すように、コネクタCNTは、負荷側に凹部CNTRがある。凹部CNTRには、突起部442が嵌め合わされる。シャフト31の径方向にみて、凹部CNTRは、コネクタCNTの両側端の中間に設けられている。これにより、最小限の凹部CNTRの体積があればよく、コネクタの導体スペースを確保することができる。
【0092】
図12に示すように、突起部442の形状は、角柱である。これにより、角柱の各面がコジリの力に反力を与え、コネクタCNTの揺動がより抑制される。突起部442は、金属製であるので、小さくても、コネクタCNTを支持できる。
【0093】
図10及び図12に示すように、台座部44を貫通したボルトBBTが、モータ30のフランジ933の雌ねじ部に締結することで、モータ30にヒートシンク40が固定される。
【0094】
図14は、実施形態1に係る電動駆動装置において、回路基板の第2面の電子部品の実装状態を示す平面図である。図15は、実施形態1に係る電動駆動装置において、回路基板の第2面の電子部品の実装状態を示す平面図である。
【0095】
図14に示すように、第1パワー回路25Aの配置領域A25Aと、第2パワー回路25Bの配置領域A25Bとは、基板本体21の第1方向PXに離隔して配置されている。配置領域A25Aには、第1パワー回路25Aのコンデンサ253が配置されている。配置領域A25Bには、第2パワー回路25Bのコンデンサ253が配置されている。第1パワー回路25Aの配置領域A25Aと、第2パワー回路25Bの配置領域A25Bとの第1方向PXの間には、第1モータ駆動回路26Aの実装領域A26A及び第2モータ駆動回路26Bの実装領域A26Bがある。
【0096】
図14に示すように、制御回路の実装領域A241には、制御演算回路241及び電源管理回路27が実装されている。制御回路の実装領域A241と、コネクタCNTのコネクタ端子CNTPが接続される端子の配置領域ACNTとは、第1方向PXと交差する第2方向PYにおいて、シャフト31の軸方向Axの延長線上の基準位置を挟む。また、制御回路の実装領域A241と、コネクタCNTのコネクタ端子CNTPが接続される端子の配置領域ACNTとは、第1方向PXと交差する第2方向PYにおいて、第1モータ駆動回路26Aの実装領域A26A及び第2モータ駆動回路26Bの実装領域A26Bを挟む。
【0097】
図15に示すように、基板本体21の第2面21aの電源回路領域A90には、チョークコイル91及び電源供給回路256が配置される。チョークコイル91は、基板本体21の第2面21aに表面実装されている。チョークコイル91は、コネクタ端子CNTPの近傍に配置されている。これにより、高周波数成分除去の効率が高まる。図15に示すように、基板本体21の第2面21aの電源回路領域A90には、コンデンサ92A、コンデンサ92Bが配置される。図14に示すように、基板本体21の第1面21bには、コンデンサ92Cが配置される。これにより、電源回路領域A90には、ノイズフィルタ回路90が実装されている。
【0098】
軸方向Axの延長線上の位置を基準位置として、基準位置から第1方向PXの一方へ順に、シャント抵抗SRの実装領域ASRA、第1パワー回路25Aに含まれるインバータ回路251の複数の駆動素子の実装領域A251A、電流遮断回路255の実装領域A255Aが配置されている。同じ基準位置から第1方向PXの他方へ順に、シャント抵抗SRの実装領域ASRB、第2パワー回路25Bに含まれるインバータ回路251の複数の駆動素子の実装領域A251B、電流遮断回路255の実装領域A255Bが配置されている。
【0099】
回路基板20の第1面21b及び第2面21aの電子部品の実装状態を重ねあわせると、シャフト31の軸方向Axの延長線上の位置を基準位置として、基準位置から第1方向PXの一方へ順に、第1モータ駆動回路26Aの実装領域A26A、第1の電流検出素子の実装領域ASRA、第1のインバータ回路251の複数の駆動素子の実装領域A251A、及び第1コイル配線321の配置領域A321が配置されている。
【0100】
同じ基準位置から第1方向PXの他方へ順に、第2モータ駆動回路26Bの実装領域A26B、第2の電流検出素子の実装領域ASRB、第2のインバータ回路251の複数の駆動素子の実装領域A251B、及び第2コイル配線322の配置領域A322が配置されている。
【0101】
第2方向PYにおいて、制御回路24の制御演算回路241の実装領域A241と、コネクタのコネクタ端子CNTPとが上記基準位置(シャフト31の軸方向Axの延長線上の位置)を挟む。基準位置(シャフト31の軸方向Axの延長線上の位置)を第2方向に通る基準線LYAxを境に、第1モータ駆動回路26Aの実装領域A26Aと、第2モータ駆動回路26Bの実装領域A26Bとが第1方向PXに振り分けられている。このため、基準線LYAxを境に、シャント抵抗SRの実装領域ASRAと、シャント抵抗SRの実装領域ASRBとが、第1方向PXに振り分けられている。同様に、基準線LYAxを境に、第1パワー回路25Aに含まれるインバータ回路251の複数の駆動素子の実装領域A251Aと、第2パワー回路25Bに含まれるインバータ回路251の複数の駆動素子の実装領域A251Bとが、第1方向PXに振り分けられている。第1パワー回路25Aに含まれるインバータ回路251の複数の駆動素子の実装領域A251Aと、第2パワー回路25Bに含まれるインバータ回路251の複数の駆動素子の実装領域A251Bとが、離隔しているので、駆動素子の発熱が分散される。
【0102】
第1モータ駆動回路26Aの実装領域A26Aと、第1の電流検出素子の実装領域ASRAとが隣接する。また、第2モータ駆動回路26Bの実装領域A26Bと、第2の電流検出素子の実装領域ASRBとが隣接する。これにより、第1モータ駆動回路26Aと第1の電流検出素子であるシャント抵抗SRとの配線が短くなるので、第1モータ駆動回路26A内の信号増幅におけるノイズが低減する。また、第2モータ駆動回路26Bと、第2の電流検出素子であるシャント抵抗SRとの配線が短くなるので、第2モータ駆動回路26B内の信号増幅におけるノイズが低減する。このように、電動駆動装置1は、電流検出素子であるシャント抵抗SRから制御回路24の制御演算回路241までの経路においてシャント抵抗SRで検出された検出値に重畳するノイズを低減することができる。その結果、制御回路24は、ノイズの少ない電流値に基づいてモータ30を駆動するので、モータロータに生じるトルクリップルが抑制される。
【0103】
図5に示すように、第1の電流検出素子であるシャント抵抗SRは、第1のインバータ回路251の複数の駆動素子のうち、下アームの駆動素子に流れる電流を検出する。同様に、第2の電流検出素子であるシャント抵抗SRは、第2のインバータ回路251の複数の駆動素子のうち、下アームの駆動素子に流れる電流を検出する。第1の電流検出素子の実装領域ASRAと第1のインバータ回路の駆動素子の実装領域A251Aとが隣接するので、シャント抵抗SRと第1のインバータ回路251の駆動素子との間の配線を短くすることができる。第2の電流検出素子の実装領域ASRBと第2のインバータ回路251の駆動素子の実装領域とが隣接するので、シャント抵抗SRと第2のインバータ回路の駆動素子との間の配線を短くすることができる。
【0104】
回路基板20は、ノイズフィルタ回路90及び電源供給回路256を配置する電源回路領域A90を備える。電源回路領域A90は、第2方向PYにおいて上記基準位置(シャフト31の軸方向Axの延長線上の位置)と、図14に示すコネクタCNTのコネクタ端子CNTPとの間に配置されている。これにより、電源回路領域A90は、コネクタCNTのコネクタ端子CNTPの近傍であって、かつ第1のインバータ回路251までの配線の距離と、第2のインバータ回路251までの配線の距離とに大きな差がないように配置できる。
【0105】
また、図5に示すように、第1モータ駆動回路26Aは、第1のインバータ回路251の複数の駆動素子を駆動するゲート電圧を昇圧生成する昇圧回路245を有している。前記第2モータ駆動回路26Bは、第2のインバータ回路251の複数の駆動素子を駆動するゲート電圧を昇圧生成する昇圧回路245を有している。図14に示すように、第1モータ駆動回路26Aと第1のインバータ回路251とが隣接しており、第2モータ駆動回路26Bと第2のインバータ回路251とが隣接している。その結果、第1モータ駆動回路26Aから、第1のインバータ回路251の複数の駆動素子までを繋ぐ配線の配線抵抗が与えるゲート電圧の信号波形への時定数の影響が小さくなる。そして、昇圧回路245で生成させるゲート電圧を抑制しても、第1のインバータ回路251を駆動できるようになる。同様に、第2モータ駆動回路26Bから、第2のインバータ回路251の複数の駆動素子までを繋ぐ配線の配線抵抗が与えるゲート電圧の信号波形への時定数の影響が小さくなる。そして、昇圧回路245で生成させるゲート電圧を抑制しても、第2のインバータ回路251を駆動できるようになる。そして、第1のインバータ回路251及び第2のインバータ回路251の駆動素子の動作は、高速かつ安定に動作しやすくなる。
【0106】
図14及び図15に示すように、複数の第1コイル配線321のうち、U相のコイル配線321u、V相のコイル配線321v、W相のコイル配線321wが第2方向PYに配列されている。また、複数の第2コイル配線322のうち、U相のコイル配線322u、V相のコイル配線322v、W相のコイル配線322wが第2方向PYに配列されている。複数の第1コイル配線321の相配列が、複数の第2コイル配線322の相配列と逆順である。これにより、第1U相電流I1u、第1V相電流I1v、第1W相電流I1wを供給する電力供給経路と、第2U相電流I2u、第2V相電流I2v、第2W相電流I2wを供給する電力供給経路とが同等となる。
【0107】
上述したように、回路基板20の基板本体21は、両面実装基板である。図15に示すように、第1のインバータ回路251の複数の駆動素子、及び第2のインバータ回路251の複数の駆動素子は、ヒートシンク40に対向する基板本体21の第1面21bに実装されている。図14に示すように、第1モータ駆動回路26A及び第2モータ駆動回路26Bは、第1面21bとは反対側であって、基板本体21の第2面21aに実装されている。第1モータ駆動回路26Aと、第1のインバータ回路251の複数の駆動素子とは、回路基板20の内部導電層を介して電気的に接続される。第2モータ駆動回路26Bと、第2のインバータ回路251の複数の駆動素子とは、回路基板20の内部導電層を介して電気的に接続される。これにより、電子部品の実装密度が向上し、回路基板20が小さくなる。また、第1のインバータ回路251の複数の駆動素子、及び第2のインバータ回路251の複数の駆動素子で発生する熱は、ヒートシンク40で放熱されるので、電動駆動装置1の信頼性が向上する。
【0108】
以上説明したように、実施形態1に係る電動駆動装置1は、モータ30と、モータ30を駆動制御するために、シャフト31の反負荷側に設けられたECU10と、コネクタCNTとを備える。ECU10は、シャフト31の反負荷側の端部の磁石32と、シャフト31の反負荷側であって、シャフト31の軸方向(例えば、軸方向Ax)の延長線上に配置された回路基板20と、を含む。回路基板20は、磁石32の回転を検出する回転角度センサ23aを含む検出回路23を有する。回転角度センサ23aは、磁石32の回転を検出する磁気センサである。
【0109】
図16は、実施形態1に係る電動駆動装置において、コンデンサ及びコネクタの回路基板に対する実装状態を示す平面図である。図14及び図16に示すように、基板本体21の第2面21aには、接続ランドCNTL及び接続ランド92Lが配置されている。リード付きのコンデンサ92Aのリード端子92Pは、基板本体21の第1面21bから基板本体21の第2面21aへ貫通し、基板本体21の第2面21aの第1の接続ランド92Lと、ハンダなどの金属の接合材料92Mで電気的に接続している。
【0110】
図14及び図16に示すように、コネクタ端子CNTPは、基板本体21の第1面21bから基板本体21の第2面21aへ貫通し、基板本体21の第2面21aの第2の接続ランドCNTLと、ハンダなどの金属の接合材料92Mで電気的に接続している。リード端子92P及びコネクタ端子CNTPは、同じ基板本体21の第2面21aに金属の接合材料92Mを付着させる、フローはんだ工程やポイントディップはんだ工程で回路基板20に電気的に接合できる。リード端子92P及びコネクタ端子CNTPは、互いに同じ方向に基板本体21を貫通するので、互いに異なる方向に基板本体21を貫通する場合と比較して、製造工程が簡略化できる。コンデンサ92Aは、リード付きコンデンサであり、大きなコンデンサ容量をノイズフィルタ回路に確保できる。このため、ノイズフィルタ回路90は、ノイズ除去性能が向上する。
【0111】
コネクタCNTは、シャフト31の径方向の側方に設けられる。ヒートシンク40は、反負荷側にチョークコイル61が挿入される凹部46を有し、かつ第1面41と第2面42との段差43の壁からコネクタCNT側に突出する収容部を有する。
【0112】
これにより、モータ30のシャフト31に平行な軸方向Axの大きさが抑制され、電動駆動装置1が小さくなる。チョークコイル61への通電により発生する熱は、収容部に伝達される。収容部が突出しているので、収容部の表面積が大きくなり、収容部自体の放熱性が高まる。その結果、収容部に伝達された熱は、収容部から放熱され、チョークコイル61の温度が上昇しにくくなる。
【0113】
ヒートシンク40は、載置面441よりも反負荷側にある第1面41と、第1面41よりも反負荷側にある第2面とを有している。第2面42は、回路基板20に対向し、回路基板20の放熱をさせる放熱面である。収容部は、第1面41から第2面42の間に設けられる。第1面41と第2面42との段差を利用して、収容部が設けられているので、省スペースで収容部が設けられる。
【0114】
また、電動パワーステアリング装置100は、上述の電動駆動装置1を備え、電動駆動装置1が補助操舵トルクを生じさせる。
【0115】
(実施形態2)
図17は、実施形態2に係る、図7のX-X矢視の断面を示す断面図である。図18は、蓋体及び回路基板を取り外した、実施形態2に係る電動駆動装置を説明する斜視図である。なお、上述した実施形態1で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。実施形態2では、第3壁部463がなく、開口463Aとなっている。
【0116】
ヒートシンク40は、第1面41と、第1面41よりも反負荷側にある第2面42と、第1面41と第2面42との段差43の壁からコネクタCNTへ向かって突出する第1壁部461及び第2壁部462と、を有している。第1壁部461と第2壁部462との間の底面46eは、第1面41の反負荷側にあり、第2面42の負荷側にある。底面46eは、第2面42からみて凹んでいる。そして、第1壁部461と第2壁部462との間には、チョークコイル61が挿入される。
【0117】
実施形態2のヒートシンク40には。第3壁部463がないので、コネクタCNTをヒートシンク40に取り付ける際、コネクタCNTの端子が第3壁部463に接触してしまう可能性がない。その結果、電動駆動装置1の信頼性が高まる。
【0118】
また、チョークコイル61の4つの面が底面46e及び4つの内壁面46a、46b、46cのそれぞれと対向するので、放熱効率が高まる。チョークコイル61への通電により発生する熱は、第1壁部461及び第2壁部462に伝達される。第1壁部461、第2壁部462の外側面は、広い面積を有し、収容部47の放熱性を高めることができる。例えば、コネクタCNTが鉛直方向の上方向から挿抜されるようになっていると、開口463Aが鉛直方向の上側を向くようになる。ここで、実施形態2の電動駆動装置1は、開口463Aが鉛直方向の上側を向いていることが望ましい。これにより、放熱材63が流出しにくくなる。
【0119】
コネクタCNTは、シャフト31の径方向の側方に設けられる。ヒートシンク40は、第1面41と第2面42との段差43の壁からコネクタCNT側に突出する第1壁部261と第2壁部262とを有する。第1壁部461と第2壁部462との間には、チョークコイル61が挿入される。
【0120】
これにより、モータ30のシャフト31に平行な軸方向Axの大きさが抑制され、電動駆動装置1が小さくなる。チョークコイル61への通電により発生する熱は、第1壁部461、第2壁部462、及び底面46eに伝達される。第1壁部461及び第2壁部462が突出しているので、第1壁部461及び第2壁部462の表面積が大きくなり、第1壁部461及び第2壁部462の放熱性が高まる。その結果、第1壁部461及び第2壁部462に伝達された熱は、第1壁部461及び第2壁部462から放熱され、チョークコイル61の温度が上昇しにくくなる。
【0121】
(実施形態3)
図19は、実施形態3に係る電動パワーステアリング装置の模式図である。なお、上述した実施形態1及び実施形態2で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0122】
図19に示すように、電動パワーステアリング装置100Aは、ラックパラレル方式である。モータ30のシャフト31は、動力伝達機構173に接続される。動力伝達機構173は、プーリー176及びベルト177を有している。ベルト177の回転は、ボールねじ装置178のナットを回転させる。これにより、モータ30のシャフト31の回転に基づいて、ラックシャフト199Cにアシスト力が付与される。
【0123】
(実施形態4)
図20は、実施形態4に係る電動パワーステアリング装置の模式図である。なお、上述した実施形態1から実施形態2で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。図20に示す電動パワーステアリング装置100Bは、第1ピニオンシャフト199Aに補助操舵トルクを与えるピニオンアシスト方式である。電動パワーステアリング装置100Bにおいて、トルクセンサ194は、第1ピニオンシャフト199Aに連結される。
【0124】
モータ30は、ウォームシャフトの減速装置175を回転させる。減速装置175のウォームホイールは、第1ピニオンシャフト199Aと一体で回転する。このため、モータ30が第1ピニオンギヤ199Bを回転できる。第1ピニオンギヤ199Bは、第1ラック199Dと噛み合う。その結果、電動駆動装置1が減速装置175を介して、第1ラック199Dにアシスト力を付与する。なお、第1ピニオンギヤ199Bは、第1ラック199Dに対し、直交配置であってもよく、直交からずれた斜交配置であってもよい。以上説明したように、実施形態4の電動パワーステアリング装置100Bは、シングルピニオンアシスト方式である。
【0125】
(実施形態5)
図21は、実施形態5に係る電動パワーステアリング装置の模式図である。なお、上述した実施形態1から実施形態4で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。電動パワーステアリング装置100Cは、第1ピニオンシャフト199A及び第1ピニオンギヤ199Bに加え、出力軸192B及び第2ピニオンギヤ171Bを備える。電動パワーステアリング装置100Cは、デュアルピニオンアシスト方式である。トルクセンサ194は、ピニオンシャフト195と第1ピニオンギヤ199Bとの間のトルクを検出する。
【0126】
モータ30は、ウォームシャフトの減速装置75を回転させる。減速装置75のウォームホイールは、出力軸192Bと一体で回転する。このため、モータ30が第2ピニオンギヤ171Bを回転できる。第2ピニオンギヤ171Bは、第2ラック171Cと噛み合う。その結果、電動駆動装置1が減速装置75を介して、第2ラック171Cにアシスト力を付与する。なお、第2ピニオンギヤ171Bは、第2ラック171Cに対し、直交配置であってもよく、直交からずれた斜交配置であってもよい。実施形態5の電動パワーステアリング装置100Cは、デュアルピニオンアシスト方式である。
【符号の説明】
【0127】
1 電動駆動装置
10 ECU
20 回路基板
21 基板本体
21a 第2面
21b 第1面
23 検出回路
23a 回転角度センサ
23b センサ制御部
24 制御回路
25A 第1パワー回路
25B 第2パワー回路
26A 第1モータ駆動回路
26B 第2モータ駆動回路
27 電源管理回路
30 電動モータ
31 シャフト
32 磁石
37 第1コイル
38 第2コイル
40 ヒートシンク
41 第1面
42 第2面
90 ノイズフィルタ回路
91 チョークコイル
92L 接続ランド(第1の接続ランド)
92A、92B、92C コンデンサ
100、100A、100B、100C 電動パワーステアリング装置
244 電流検出回路
245 昇圧回路
246 電源リレー駆動回路
251 インバータ回路
252 駆動素子
253 コンデンサ
254 電流検出回路
255 電流遮断回路
256 電源供給回路
257 電源遮断素子
258 逆接保護素子
321 第1コイル配線
321u、321v、321w コイル配線
322 第2コイル配線
322u、322v、322w コイル配線
930 ハウジング
931 ステータコア
932 モータロータ
CNT コネクタ
CNTL 接続ランド(第2の接続ランド)
CNTP コネクタ端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21