(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112648
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】排泄ケア支援装置及び排泄ケア支援方法
(51)【国際特許分類】
G16H 10/60 20180101AFI20240814BHJP
【FI】
G16H10/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017845
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】古川 暁史
(72)【発明者】
【氏名】白木 正孝
(72)【発明者】
【氏名】長坂 政彦
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA13
(57)【要約】
【課題】被介護者の排便時刻を考慮した一斉排泄ケアを開始する時刻を提案する排泄ケア支援装置を実現する。
【解決手段】排泄ケア支援装置(1)は、プロセッサ(11)を備えている。プロセッサ11は、被介護者(Ua)の排便時刻をセンサ端末(2)に基づいて特定する第1特定処理と、前記第1特定処理にて特定した排便時刻から定まる、複数の時間帯の各々における合計排便回数を示す度数分布に応じて、前記被介護者群に対する一斉排泄ケアを開始する時刻を特定する第2特定処理と、を実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被介護者群に含まれる各被介護者の排便時刻を、該被介護者に装着されたセンサ端末であって、排泄センサを含むセンサ端末の出力信号に基づいて特定する第1特定処理と、
前記第1特定処理にて特定した排便時刻から定まる、複数の時間帯の各々における合計排便回数を示す度数分布に応じて、前記被介護者群に対する一斉排泄ケアを開始する時刻を特定する第2特定処理と、を実行する少なくとも1つのプロセッサを備えている、
ことを特徴とする排泄ケア支援装置。
【請求項2】
前記第2特定処理において、前記プロセッサは、前記複数の時間帯のうち前記合計排便回数が最大になる時間帯の終了時刻を、前記複数の被介護者の一斉排泄ケアを開始する時刻として特定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の排泄ケア支援装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、複数の前記被介護者群のそれぞれについて、前記第1特定処理、及び、前記第2特定処理を実行することによって、前記複数の被介護者群の各々に対して一斉排泄ケアを開始する時刻を特定する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の排泄ケア支援装置。
【請求項4】
前記度数分布に応じて、前記被介護者群に対する排泄ケアに必要な介護者の数を推定する推定処理を更に実行する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の排泄ケア支援装置。
【請求項5】
少なくとも1つのプロセッサが、被介護群に含まれる各被介護者の排便時刻を、該被介護者に装着されたセンサ端末であって、排泄センサを含むセンサ端末の出力信号に基づいて特定する第1特定処理と、
前記第1特定処理にて特定した排便時刻から定まる、複数の時間帯の各々における合計排便回数を示す度数分布に応じて、前記被介護者群に対する一斉排泄ケアを開始する時刻を特定する第2特定処理と、を含んでいる、
ことを特徴とする排泄ケア支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療/介護施設等において、介護者による被介護者の排泄ケアを支援するための排泄ケア支援装置及び排泄ケア支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療/介護施設等において実施されている排泄ケアには、一斉排泄ケアと個別排泄ケアとがある。一斉排泄ケアとは、1日数回、所定時刻に被介護者群に含まれる被介護者に対して一斉に実施される排泄ケアであり、個別排泄ケアとは、排泄ケアが必要な被介護者に対してのみ実施される排泄ケアである。多くの施設では、毎日決まった時刻に一斉排泄ケアを実施し、一斉排泄ケアで対処できない場合(例えば、一斉排泄ケア実施後に被介護者が排泄をした場合)には、個別排泄ケアを実施している。
【0003】
一斉排泄ケアにおいては、被介護者の排泄の有無によらず排泄ケアを実施するため、排泄していないのに排泄ケアを実施する空振りがあり、おむつ及び介護者の労力の無駄が生じている。また、一斉排泄ケアで空振りが多い場合には、個別排泄ケアでの対処が増えるため、介護者の大きな負担となっている。
【0004】
介護者の排泄ケアの負担を軽減する技術としては、例えば、特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1に記載の技術では、匂いセンサの出力信号と湿度センサの出力信号とに基づいて、被介護者の排泄物の種類及びおむつ漏れを判断し、介護者に排泄ケアの緊急度を通知している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のような技術は、排泄ケアの緊急度を通知することにより、効率的な個別排泄ケアの実施を可能にする。しかしながら、排泄ケアの実施回数自体を減少させるものではないため、排泄ケアに対する介護者の実質的な負担軽減には寄与していない。
【0007】
本発明の一態様は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、より多くの被介護者が排泄した後に一斉排泄ケアを実施することにより、個別排泄ケアの頻度を低減し、介護者の負担を軽減することが可能な排泄ケア支援装置及び排泄ケア支援方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る排泄ケア支援装置は、第1特定処理及び第2特定処理を実行するプロセッサを含んでいる。また、本発明の一態様に係る排泄ケア支援方法は、第1特定処理及び第2特定処理を含んでいる。ここで第1特定処理は、プロセッサが、被介護者群に含まれる各介護者の排便時刻を、該被介護者に装着されたセンサ端末であって、排泄センサを含むセンサ端末の出力信号に基づいて特定する処理である。第2特定処理は、前記第1特定処理にて特定した排便時刻から定まる、複数の時間帯の各々における合計排便回数を示す度数分布に応じて、前記被介護者群に対する一斉排泄ケアを開始する時刻を特定する処理である。
【発明の効果】
【0009】
より多くの被介護者が排泄した後に一斉排泄ケアを実施することにより、個別排泄ケアの頻度を低減し、介護者の負担を軽減することができる、かつ、排泄ケア支援装置及び排泄ケア支援方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1及び実施形態2に係る排泄ケア支援システムの構成を示す模式図である。
【
図2】
図1に示す排泄ケア支援システムに含まれる排泄ケア支援装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】実施形態1に係る排泄ケア支援システムにおいて実施する排泄ケア支援方法の流れを示すフロー図である。
【
図4】
図3に示す排泄ケア支援方法において通知端末に表示される表示画面の一例を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態2に係る排泄ケア支援システムにおいて実施する排泄ケア支援方法の流れを示すフロー図である。
【
図6】
図5に示す排泄ケア支援方法において通知端末に表示される表示画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態において
図1~
図6を参照して説明する。なお、明細書において、「排泄ケア」とは、典型的には、被介護者Uaが排便した際に実施する排泄ケア(例えば、おむつ交換や肛門近傍の清浄等)であり、また、「一斉排泄ケア」と「個別排泄ケア」とを総称した意味でも使用する。また、「被介護者群」とは、被介護者Uaの集合であり、排泄ケア支援システムSを使用する施設(以下、単に「施設」とも記載する)においては、n個の被介護者群(nは1以上の任意の自然数)が含まれている。なお、n個の被介護者群の各々に含まれる被介護者Uaの人数及び組合せは任意に設定することができる。例えば、施設において同じフロアで生活している複数の被介護者Uaを被介護者群としてもよいし、介護度や症状に基づいて被介護者Uaを組合せて被介護者群としてもよい。
【0012】
(排泄ケア支援システムの構成)
排泄ケア支援システムSの構成について、
図1を参照して説明する。
図1は、排泄ケア支援システムの構成を示す模式図である。
【0013】
排泄ケア支援システムSは、介護サービス又は医療サービスの提供を目的とする施設において、介護者Ubが実施する排泄ケアを支援するためのシステムである。
【0014】
排泄ケア支援システムSは、
図1に示すように、排泄ケア支援装置1と、複数のセンサ端末2と、少なくとも1つの通知端末3と、を含んでいる。センサ端末2及び通知端末3は、ネットワークを介し排泄ケア支援装置1と通信可能に構成されている。
【0015】
センサ端末2は、被介護者群i(iは1以上n以下の自然数)に含まれる被介護者Uaの各々に装着される。一例として、センサ端末2は、被介護者Uaの下着(おむつやパンツなど)の内部に装着される。センサ端末2には、排泄センサが内蔵されており、当該排泄センサが被介護者Uaの排便を検知した場合、その旨を示す出力信号(以下、「排便検知信号」とも記載する)を排泄ケア支援装置1に送信する。
【0016】
排泄ケア支援装置1は、各センサ端末2から排便検知信号を受信すると、受信した排便検知信号に基づいて各被介護者Uaの排便時刻を特定する。また、排泄ケア支援装置1は、特定した排便時刻から複数の時間帯の各々における合計排便回数を示す度数分布を生成し、生成した度数分布に基づいて被介護者群iに対して一斉排泄ケアを開始する時刻の特定、又は、被介護者群iに対して実施する排泄ケアに必要な介護者Ubの数を推定する。また、排泄ケア支援装置1は、特定した一斉排泄ケアを開始する時刻を含む情報(以下、「第1の通知情報」とも記載する)、又は、排泄ケアに必要な介護者Ubの数の推定結果を含む情報(以下、「第2の通知情報」とも記載する)を通知端末3に送信する。本実施形態においては、排泄ケア支援装置1として、排泄ケア支援システムSを使用する施設外(例えば、データセンタ)に配置されたワークステーションを想定するが、本発明は、これに限定されない。例えば、排泄ケア支援システムSを使用する施設内に配置されたデスクトップPC(Personal Computer)を排泄ケア支援装置1として用いてもよい。
【0017】
通知端末3は、ディスプレイを内蔵している端末であり、排泄ケア支援装置1から受信した各種情報を当該ディスプレイに表示する。通知端末3は、排泄ケア支援装置1から第1の通知情報を受信すると、排泄ケアを開始する時刻の一覧を示す画面をディスプレイに表示する。また、通知端末3は、排泄ケア支援装置1から第2の通知情報を受信すると、排泄ケアに必要な介護者Ubの数の一覧を示す画面をディスプレイに表示する。通知端末3は、第1の通知情報又は第2の通知情報の送信要求を排泄ケア支援装置1に送信してもよい。本実施形態においては、通知端末3として、排泄ケア支援システムSを使用する施設内(例えば、介護者Ubのであるステーション等)に配置されるノート型PCを想定するが、本発明はこれに限定されない。例えば、デスクトップ型PC、タブレットPC、又は、スマートフォン等を通知端末3として用いても良い。また、通知端末3として用いることができるこれらの装置が排泄ケア支援システムS内に混在していてもよい。
【0018】
(排泄ケア支援装置の構成)
排泄ケア支援装置1の構成について、
図2を参照して説明する。
図2は、排泄ケア支援装置1の構成を示すブロック図である。
【0019】
排泄ケア支援装置1は、
図2に示すように、プロセッサ11と、一次メモリ12と、二次メモリ13と、通信インタフェース14と、バス15と、を備えている。プロセッサ11、一次メモリ12、二次メモリ13、及び通信インタフェース14は、バス15を介して相互に接続されている。排泄ケア支援装置1として利用可能なデバイスは、例えば、クラウドサーバを構成するワークステーションを挙げることができる。
【0020】
二次メモリ13には、排泄ケア支援プログラムPが格納されている。プロセッサ11は、二次メモリ13に格納されている排泄ケア支援プログラムPを一次メモリ12上に展開する。そして、プロセッサ11は、一次メモリ12上に展開された排泄ケア支援プログラムPに含まれる命令に従って、後述する排泄ケア支援方法M1、M2に含まれる各処理を実行する。プロセッサ11として利用可能なデバイスとしては、例えば、CPU(Central Processing Unit)を挙げることができる。また、一次メモリ12として利用可能なデバイスとしては、例えば、半導体RAM(Random Access Memory)を挙げることができる。また、二次メモリ13として利用可能なデバイスとしては、例えば、HDD(Hard Disk Drive)を挙げることができる。
【0021】
通信インタフェース14は、ネットワークを介してセンサ端末2及び通知端末3と通信を行うためのインタフェースである。通信インタフェース14として利用可能なデバイスとしては、例えば、イーサネット(登録商標)インタフェースが挙げられる。また、利用可能なネットワークとしては、PAN(Personal Area Network)、LAN(Local Area Network)、CAN(Campus Area Network)、MAN(Metropolitan Area Network)、WAN(Wide Area Network)、GAN(Global Area Network)、又は、これらのネットワークを含むインターネットワークが挙げられる。インターネットワークは、イントラネットであってもよいし、エクストラネットであってもよいし、インターネットであってもよい。
【0022】
なお、プロセッサ11に排泄ケア支援方法M1、M2を実行させるための排泄ケア支援プログラムPは、コンピュータ読み取り可能な一時的でない有形の記録媒体に記録され得る。この記録媒体は、二次メモリ13であってもよいし、その他の記録媒体であってもよい。例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブル論理回路などが、その他の記録媒体として利用可能である。
【0023】
本実施形態においては、単一のプロセッサ(プロセッサ11)を用いて排泄ケア支援方法M1、M2を実行する構成を採用しているが、本発明は、これに限定されない。すなわち、複数のプロセッサを用いて排泄ケア支援方法M1、M2を実行する構成を採用してもよい。この場合、排泄ケア支援方法M1、M2を実行する複数のプロセッサは、単一のコンピュータに設けられ、バスを介して相互に通信可能に構成されていてもよいし、複数のコンピュータに分散して設けられ、ネットワークを介して相互に通信可能に構成されていてもよい。例えば、クラウドサーバを構成する複数のコンピュータの各々が備えるプロセッサが連携して排泄ケア支援方法M1、M2を実行する態様等も考えられる。
【0024】
(排泄ケア支援方法の流れ)
排泄ケア支援装置1が実施する排泄ケア支援方法M1について、
図3を参照して説明する。
図3は、排泄ケア支援方法M1の流れを示すフロー図である。
【0025】
排泄ケア支援方法M1は、
図3に示すように、第1特定処理M11と、生成処理M12と、第2特定処理M13と、通知処理M14と、を含んでいる。排泄ケア支援装置1がこれらの処理を実行するタイミングは、任意に設定され得る。例えば、排泄ケア支援装置1は、
図3に示す各処理を所定時間(例えば、24時間)毎に実行してもよいし、第1の通知情報の送信要求を通知端末3から受信する度に実行してもよい。
【0026】
第1特定処理M11は、被介護者群iに含まれる各被介護者Uaの排便時刻を特定するための処理である。第1特定処理M11において、排泄ケア支援装置1のプロセッサ11は、各センサ端末2から受信した排便検知信号に基づいて各被介護者Uaの排便時刻を特定する。一例として、排泄ケア支援装置1は、センサ端末2から排便検知信号を受信した時刻を当該センサ端末2が装着されている被介護者Uaの排便時刻として特定する。
【0027】
なお、第1特定処理M11において特定される各被介護者Uaの排便時刻は、センサ端末2に対応する被介護者Uaの識別情報と関連付けて特定されることが好ましい。これにより、被介護者Ua毎の介護記録として使用する等その他の用途に供することができる。
【0028】
生成処理M12は、被介護者群iにおいて、複数の時間帯の各々における合計排便回数を示す度数分布を生成するための処理である。生成処理M12において、排泄ケア支援装置1のプロセッサ11は、第1特定処理M11において特定した各被介護者Uaの排便時刻に基づいて、1日を複数の時間帯に区分した各時間帯を階級とし、合計排便回数を度数とする度数分布を生成する。なお、複数の時間帯における時間幅(階級幅)は、任意に設定可能であり、本実施形態においては、時間幅(階級幅)を15分とし、1日を15分毎に区切った時間帯を階級とする。
【0029】
第2特定処理M13は、被介護者群iにおける一斉排泄ケアを開始する時刻を特定するための処理である。第2特定処理M13において、排泄ケア支援装置1のプロセッサ11は、生成処理M12において生成された度数分布に応じて被介護者群iにおける複数の一斉排泄ケアを開始する時刻T1~Tj(jは2以上の任意の自然数)を特定する。
【0030】
なお、第2特定処理M13において特定される一斉排泄ケアを開始する時刻の数は任意に設定することができる。例えば、1日4回の一斉排泄ケアを実施する施設においては、一斉排泄ケアを開始する時刻T1~T4の各々を特定する。また、T1~T4の時間帯も任意に設定することができる。
【0031】
例えば、一斉排泄ケアを1日4回実施する施設において、朝食から昼食までの時間帯ΔT1、昼食から夕食までの時間帯ΔT2、夕食から就寝時刻までの時間帯ΔT3、及び就寝時刻から次の日の朝食までの時間帯ΔT4の各々で一斉排泄ケアを1回実施する場合、ΔT1における一斉排泄ケアを開始する時刻T1、ΔT2における一斉排泄ケアを開始する時刻T2、ΔT3における一斉排泄ケアを開始する時刻T3、及びΔT4における一斉排泄ケアを開始する時刻T4を生成処理M12において生成される度数分布のΔT1~ΔT4の各時間帯において、最も合計排便回数が多い(度数が高い)時間帯の終了時刻を一斉排泄ケアを開始する時刻T1~T4として特定する。なお、一斉排泄ケアを開始する時刻T1~T4の特定方法は、上述したものに限られない。
【0032】
また、排泄ケア支援装置1のプロセッサ11は、第2特定処理M13において、複数の時間帯の各々における合計排便回数を示す度数分布を説明変数とし、一斉排泄ケアを開始する時刻を目的変数とする教師データを用いて機械学習された時刻特定モデルに、生成処理M12において生成される度数分布を入力することにより、一斉排泄ケアを開始する時刻T1~Tjの各々を特定してもよい。時間特定モデルを生成するための機械学習には、公知の機械学習アルゴリズムが適用され得る。なお、時間特定モデルは、排泄ケア支援装置1の一次メモリ12及び二次メモリ13の何れか一方に格納されてもよいし、排泄ケア支援装置1以外の装置に格納されてもよい。
【0033】
通知処理M14は、第2特定処理M13において特定した一斉排泄ケアを開始する時刻を介護者Ubに通知するための処理である。通知処理M14において、排泄ケア支援装置1のプロセッサ11は、第2特定処理M13において特定した一斉排泄ケアを開始する時刻T1~Tjを含む情報(第1の通知情報)を通知端末3に送信する。一例として、この情報には、上述した一斉排泄ケアを開始する時刻T1~Tjの他に、生成処理M12において生成される度数分布から作成したヒストグラムを示す情報がさらに含まれている。なお、第1の通知情報に含まれる情報は限定されるものではなく、上述した各処理に関連するすべての情報を含み得る。
【0034】
第1の通知情報を受信した通知端末3は、当該第1の通知情報に含まれる各種情報を介護者Ubに表示するための表示画面を内蔵するディスプレイに表示する。表示画面の具体例については、参照する図面を代えて後述する。
【0035】
なお、上述した排泄ケア支援方法M1における各処理は、n個の被介護者群の各々において実施される。すなわち、n個の被介護者群の各々に対して一斉排泄ケアを開始する時刻を特定する。
【0036】
本実施形態においては、センサ端末2が被介護者Uaに常に装着されている場合を想定しているがこれに限らない。例えば、被介護者Uaは、所定期間(例えば、1ヶ月間)のみセンサ端末2を装着し、その所定期間内においては上述の排泄ケア支援方法M1における各処理を実行する。センサ端末2を取り外した後は、ユーザ(例えば、介護者Ub)が排泄ケア支援装置1に被介護者Uaの排便時刻を入力することにより、生成処理M12、第2特定処理M13、及び通知処理M14を実行してもよい。
【0037】
(表示例)
一斉排泄ケアを開始する時刻T1~Tjを介護者Ubに通知するために通知端末3に内蔵されているディスプレイに表示される表示画面の表示例について、
図4を参照して説明する。
図4は、排泄ケア支援方法M1において通知端末3に表示される表示画面の一表示例を示す図である。
【0038】
図4に示すように、表示画面には、n個の被介護者群の各々における複数の時間帯毎の合計排便回数を示すヒストグラムを表示する領域R11、n個の被介護者群の各々における一斉排泄ケアを開始する時刻T1~Tjの一覧を表示する領域R12が表示されてもよい。
【0039】
(排泄ケア支援システムの効果)
上述のように排泄ケア支援システムSは、排泄ケア支援方法M1を実施することにより、被介護者Uaの排便時刻を考慮した一斉排泄ケアを開始する時刻を介護者Ubに通知する。また、排泄ケア支援方法M1を繰り返し実施することで、被介護者Uaの体調等による排便時刻の変化にも容易に対応することができる。これにより、介護者Ubは、より多くの被介護者Uaが排便した後に排泄ケアを実施することができるため、一斉排泄ケアにおける空振り、おむつの無駄、及び個別排泄ケアの回数を減少することができる。
【0040】
(付加機能)
本実施形態に係る排泄ケア支援システムSは、さらに、排泄ケアに必要な介護者Ubの数を推定し、通知するための機能を有していてもよい。
【0041】
排泄ケア支援システムSが上述する機能を発揮するために実施する排泄ケア支援方法(以下、「排泄ケア支援方法M2」と記載する)について、
図5を参照して説明する。
図5は、排泄ケア支援方法M2の流れを示すフロー図である。なお、説明の便宜上、上述した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0042】
排泄ケア支援方法M2は、
図5に示すように、第1特定処理M11と、生成処理M12と、第2特定処理M13と、推定処理M25と、通知処理M24と、を含んでいる。これらの処理は、定期的に(例えば、1ヶ月毎に)実施される。
【0043】
推定処理M25は、排泄ケアに必要な介護者Ubの数を推定するための処理である。推定処理M25において、排泄ケア支援装置1のプロセッサ11は、生成処理M12において生成される度数分布に応じて、被介護者群iに対する排泄ケアに必要な介護者Ubの数を推定する。ここで、被介護者群iに対する排泄ケアに必要な介護者Ubの数は、1日を複数の時間帯に区分したΔt1~Δtk(kは2以上の任意の自然数)毎に推定してもよい。
【0044】
1日を1時間毎に区分した時間帯Δt1~Δt24の各々における排泄ケアに必要な介護者Ubの数を推定する場合、Δt1~Δt24を各階級とし、生成処理M12において生成される度数分布におけるΔt1~Δt24の各々に対応する時間帯の排便回数を度数とする度数分布を生成する。生成した度数分布におけるΔt1~Δt24の各々の度数に応じて必要な介護者Ubの数を推定する。度数と必要な介護者Ub数との対応は、任意に設定することができる。例えば、一人の介護者Ubが担当する排泄ケアの数を予め設定することにより、排便回数(度数)に対する必要な介護者Ubの数を推定してもよい。この場合、一人の介護者Ubが担当する排泄ケアの数は、排泄ケア支援装置1に予め入力されていることが好ましく、例えば、通知端末3を介してユーザ(例えば、施設管理者や介護者Ub等)により入力されてもよい。
【0045】
なお、被介護者群iに対する排泄ケアに必要な介護者Ubの数を推定する方法は上述したものに限らない。他の例としては、第2特定処理M13において特定される一斉排泄ケアの開始時刻を含むΔt1~Δt24には、被介護者群iの一斉排泄ケアに必要な介護者Ubの数をその時間帯における排泄ケアに必要な介護者Ubとして推定し、その他の時間帯においては、一人の介護者Ubが担当する排泄ケアの数に基づいて各時間帯の合計排便回数に対応する必要な介護者Ubの数を推定する方法等が挙げられる。
【0046】
また、排泄ケア支援装置1のプロセッサ11は、推定処理M25において、複数の時間帯の各々における合計排便回数を示す度数分布を説明変数とし、排泄ケアに必要な介護者Ubの数を目的変数とする教師データを用いて機械学習された介護者数推定モデルに、生成処理M12において生成される度数分布を入力することにより、Δt1~Δtkの各々における排泄ケアに必要な介護者Ubの数を推定してもよい。介護者数推定モデルを生成するための機械学習には、公知の機械学習アルゴリズムが適用され得る。なお、介護者数推定モデルは、排泄ケア支援装置1の一次メモリ12及び二次メモリ13の何れか一方に格納されてもよいし、排泄ケア支援装置1以外の装置に格納されてもよい。
【0047】
通知処理M24は、推定処理M25において推定した排泄ケアに必要な介護者Ubの数をユーザ(例えば、施設管理者)に通知するための処理である。通知処理M24において、排泄ケア支援装置1のプロセッサ11は、一例として、Δt1~Δtkの各々における排泄ケアに必要な介護者Ubの数の推定結果を含む情報(第2の通知情報)を通知端末3に送信する。この情報には、上述した排泄ケアに必要な介護者Ubの数の推定結果の他に、生成処理M12において生成される度数分布から作成したヒストグラムを示す情報等の上述した各処理に関連するすべての情報を含み得る。
【0048】
第2の通知情報を受信した通知端末3は、当該第2の通知情報に含まれる各種情報を介護者Ubに表示するための表示画面を内蔵するディスプレイに表示する。表示画面の具体例については、参照する図面を代えて後述する。
【0049】
なお、上述した排泄ケア支援方法M2における各処理は、n個の被介護者群の各々において実施される。この場合、Δt1~Δtkの各々における排泄ケアに必要な介護者Ubの数は、n個の被介護者群の各々において推定したΔt1~Δtkの各々における排泄ケアに必要な介護者Ubの数の和とする。
【0050】
また、本付加機能においては、センサ端末2が被介護者Uaに常に装着されている場合を想定しているがこれに限らない。例えば、被介護者Uaは、所定期間(例えば、1年間)のみセンサ端末2を装着し、その所定期間内においては上述の排泄ケア支援方法M2における各処理を実行する。センサ端末2を取り外した後は、ユーザ(例えば、介護者Ub)が排泄ケア支援装置1に被介護者Uaの排便時刻を入力することにより、生成処理M12、第2特定処理M13、推定処理M25、及び通知処理M24を実行してもよい。
【0051】
(表示例)
排泄ケアに必要な介護者Ubの数を通知するために通知端末3に内蔵されているディスプレイに表示される表示画面の表示例について、
図6を参照して説明する。
図6は、排泄ケア支援方法M2において通知端末3に表示される表示画面の一表示例を示す図である。
【0052】
図6に示すように、表示画面には、複数の時間帯毎の合計排便回数を示すヒストグラムを表示する領域R21、1日を複数の時間帯に区分したΔt1~Δtk(
図6においては、1時間毎に区分した時間帯)の各々における排泄ケアに必要な介護者Ubの数の一覧を表示する領域R22が表示されてもよい。
【0053】
(付加機能の効果)
上述のような変形例に係る排泄ケア支援システムSは、排泄ケア支援方法M2を実施することにより、排泄ケアに必要な介護者Ubの数を推定して通知する。これにより、ユーザ(例えば、施設管理者)は、排泄ケアに必要な介護者Ubの数を考慮した介護者Ubの勤務シフトを作成することができ、効率的な排泄ケア及びその他の業務の遂行に寄与する。
【0054】
(付記事項)
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0055】
(まとめ)
本実施形態の態様1に係る排泄ケア支援装置は、被介護者群に含まれる各被介護者の排便時刻を、該被介護者に装着されたセンサ端末であって、排泄センサを含むセンサ端末の出力信号に基づいて特定する第1特定処理と、前記第1特定処理にて特定した排便時刻から定まる、複数の時間帯の各々における合計排便回数を示す度数分布に応じて、前記被介護者群に対する一斉排泄ケアを開始する時刻を特定する第2特定処理と、を実行する少なくとも1つのプロセッサを備えている。
【0056】
上記の構成により、被介護者の排便時刻を考慮して一斉排泄ケアの開始時刻を特定することができる。これにより、一斉排泄ケア時の空振りを減らすことができる。
【0057】
本実施形態の態様2に係る排泄ケア支援装置は、上記態様1において、前記第2特定処理において、前記プロセッサは、前記複数の時間帯のうち前記合計排便回数が最大になる時間帯の終了時刻を、前記複数の被介護者の一斉排泄ケアを開始する時刻として特定する。
【0058】
上記の構成により、上記態様1と同様に一斉排泄ケア時の空振りを減らすことができる。
【0059】
本実施形態の態様3に係る排泄ケア支援装置は、上記態様1又は2において、前記プロセッサは、複数の前記被介護者群のそれぞれについて、前記第1特定処理、前記生成処理、及び前記第2特定処理を実行することによって、前記複数の被介護者群の各々に対して一斉排泄ケアを開始する時刻を特定する。
【0060】
上記の構成により、複数の被介護者群の各々に対して一斉排泄ケアを開始する時刻を特定することができるため、施設の規模等によらず効率的な一斉排泄ケアを実施することができる。
【0061】
本実施形態の態様4に係る排泄ケア支援装置は、上記態様1~3において、前記度数分布に応じて、前記被介護者群に対する排泄ケアに必要な介護者の数を推定する推定処理を更に実行する。
【0062】
上記の構成により、一斉排泄ケアを開始する時刻の特定に加えて、排泄ケアに必要な介護者の数を推定することができる。これにより、排泄ケアを行う介護者を十分に確保した勤務体系を組むことができ、排泄ケアとその他の業務の両方を効率的に行うことができる。
【0063】
本実施形態の態様5に係る排泄ケア支援方法は、少なくとも1つのプロセッサが、被介護群に含まれる各被介護者の排便時刻を、該被介護者に装着されたセンサ端末であって、排泄センサを含むセンサ端末の出力信号に基づいて特定する第1特定処理と、前記第1特定処理にて特定した排便時刻から定まる、複数の時間帯の各々における合計排便回数を示す度数分布に応じて、前記被介護者群に対する一斉排泄ケアを開始する時刻を特定する第2特定処理と、を含んでいる。
【0064】
上記の構成により、態様1と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0065】
1 排泄ケア支援装置
2 センサ端末
3 通知端末
11 プロセッサ
12 一次メモリ
13 二次メモリ
14 通信インタフェース
15 バス