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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112653
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】車両用サイドシル構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
B62D25/20 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017850
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100218132
【弁理士】
【氏名又は名称】近田 暢朗
(72)【発明者】
【氏名】吉田 正敏
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BB06
3D203BB12
3D203CA04
3D203CA25
3D203CA52
3D203CA57
3D203CA74
3D203CB04
3D203CB05
(57)【要約】
【課題】側面衝突時の変形強度に優れるとともに、部品点数の低減および軽量化を実現可能な車両用サイドシル構造を提供する。
【解決手段】サイドシル1が、車幅方向に互いに接合されるサイドシルインナ部材10およびサイドシルアウタ部材20、および車幅方向に複数の中空部39a~39fが並ぶ閉断面構造を有するアルミ押出形材からなり、サイドシルインナ部材10およびサイドシルアウタ部材20により囲まれた内部空間1aに設けられる補強部材30を備える。サイドシルアウタ部材20が、上下フランジ21,22それぞれから車幅方向の外側へ延びる外側上壁23および外側下壁24を有する。補強部材30が、外側上壁23および外側下壁25それぞれと面接触状態で接合される補強材上壁31および補強材下壁32を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側上フランジおよび内側下フランジを有し、鋼板からなるサイドシルインナ部材と、
外側上フランジ、外側下フランジ、前記外側上フランジから車幅方向の外側へ延びる外側上壁、および前記外側下フランジから前記車幅方向の外側へ延びる外側下壁を有し、鋼板からなるサイドシルアウタ部材と、
前記内側上フランジと前記外側上フランジとを接合する上接合部と、
前記内側下フランジと前記外側下フランジとを接合する下接合部と
前記車幅方向に複数の中空部が並ぶ閉断面構造を有するアルミ押出形材からなり、前記サイドシルインナ部材および前記サイドシルアウタ部材により囲まれた内部空間に設けられる補強部材と、を備え、
前記補強部材が、
前記外側上壁と面接触状態で接合される補強材上壁と、
前記外側下壁と面接触状態で接合される補強材下壁と、を有する、
車両用サイドシル構造。
【請求項2】
前記補強部材が、
前記補強材上壁と前記補強材下壁の前記車幅方向の外側部同士を接続する補強材外側壁と、
前記補強材外側壁よりも前記車幅方向の内側で前記補強材上壁と前記補強材下壁とを接続する縦壁と、を有し、
前記縦壁が、前記上接合部および前記下接合部と前記車幅方向において隣接している、
請求項1に記載の車両用サイドシル構造。
【請求項3】
前記縦壁が、平面視において、前記上接合部および前記下接合部と重なる、
請求項2に記載の車両用サイドシル構造。
【請求項4】
前記上接合部において、前記内側上フランジと前記外側上フランジとは、車長方向に並ぶ複数の上側シル接合点にて互いに接合され、
前記外側上壁と前記補強材上壁とが、車長方向に並ぶ複数の上側補強材接合点にて互いに接合され、
前記上側シル接合点が、前記上側補強材接合点と前記車長方向において隣接している、
請求項1~3いずれか1項に記載の車両用サイドシル構造。
【請求項5】
前記下接合部において、前記内側下フランジと前記外側下フランジとは、車長方向に並ぶ複数の下側シル接合点にて互いに接合され、
前記外側下壁と前記補強材下壁とが、車長方向に並ぶ複数の下側補強材接合点にて互いに接合され、
前記下側シル接合点は、前記上側シル接合点とも前記下側補強材接合点とも前記車長方向において隣接している、
請求項4に記載の車両用サイドシル構造。
【請求項6】
前記外側上壁に、前記車幅方向の外側へ向かうほど下向きに傾斜する上座面部が設けられ、
前記補強材上壁が、前記車幅方向の外側へ向かうほど下向きに傾斜し、前記上座面部に接触する補強材上傾斜部を含み、
前記上座面部と前記補強材上傾斜部とが、接触状態で接合される、
請求項1~3いずれか1項に記載の車両用サイドシル構造。
【請求項7】
前記上座面部が、前記外側上壁を部分的に下方へ突出させることにより形成され、その前記車長方向の両縁部から上方へ延びる一対の上縦壁を介して前記外側上壁に連続する、
請求項6に記載の車両用サイドシル構造。
【請求項8】
前記外側下壁が、前記車幅方向の外側へ向かうほど上向きに傾斜する下座面部を含み、
前記補強材下壁が、前記車幅方向の外側へ向かうほど上向きに傾斜し、前記下座面部に接触する補強材下傾斜部を含み、
前記下座面部と前記補強材下傾斜部とが、接触状態で接合される、
請求項1~3いずれか1項に記載の車両用サイドシル構造。
【請求項9】
前記下座面部が、前記外側下壁を部分的に上方へ突出させることにより形成され、その前記車長方向の両縁部から下方へ延びる一対の下縦壁を介して前記外側下壁に連続する、
請求項8に記載の車両用サイドシル構造。
【請求項10】
前記外側下壁と前記補強材上壁とは、前記外側上壁の上方のみからの工具のアクセスにより接合を可能にする片面接合構造によって接合される、
請求項1~3いずれか1項に記載の車両用サイドシル構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用サイドシル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、サイドシルインナ、サイドシルアウタ、補強部材、および接続部材を備える車両用サイドシルを開示している。サイドシルインナおよびサイドシルアウタのどちらの部材も、ハット形断面を有する。両部材の上フランジ同士が車幅方向に接合され、下フランジ同士が車幅方向に接合される。サイドシルは、全体として、矩形状の中空断面を有する中央部と、中央部から上方および下方へそれぞれ突出する一対の接合部とを含む。接続部材は、車幅方向において上フランジにも下フランジにも挟み込まれ、中央部の内部を上下方向に延びる。補強部材は、中央部に収容され、接続部材に接続される。補強部材は、車両の側面衝突時に圧潰して衝撃エネルギーを吸収することを期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-111145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記サイドシル構造においては、補強部材を設置するために接続部材を要する。部品点数が多く、重量が大きくなる。
【0005】
そこで本発明は、側面衝突時の変形強度に優れるとともに、部品点数の低減や軽量化を実現可能な車両用サイドシル構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の形態は、内側上フランジおよび内側下フランジを有し、鋼板からなるサイドシルインナ部材と、外側上フランジ、外側下フランジ、前記外側上フランジから車幅方向の外側へ延びる外側上壁、および前記外側下フランジから前記車幅方向の外側へ延びる外側下壁を有し、鋼板からなるサイドシルアウタ部材と、前記内側上フランジと前記外側上フランジとを接合する上接合部と、前記内側下フランジと前記外側下フランジとを接合する下接合部と、少なくとも前記車幅方向に複数の中空部が並ぶ閉断面構造を有するアルミ押出形材からなり、前記サイドシルインナ部材および前記サイドシルアウタ部材により囲まれた内部空間に設けられる補強部材と、を備え、前記補強部材が、前記外側上壁と面接触状態で接合される補強材上壁と、前記外側下壁と面接触状態で接合される補強材下壁と、を有する、車両用サイドシル構造を提供する。
【0007】
上記構成によれば、車両の側面衝突時に、サイドシルアウタ部材が車幅方向に内側へ押し潰され、これに伴い補強部材も車幅方向の内側へ押し潰される。補強部材は、車幅方向に複数の中空部が並ぶ閉断面構造を有するため、側面衝突時に車幅方向に順次圧潰変形し、それにより衝撃エネルギーを吸収する。この閉断面構造からなる補強部材は、長手方向に延在する1本のアルミ押出形材により実現されており、サイドシルの変形強度の向上と軽量化、部品点数の低減が期待できる。補強部材の上壁および下壁は、サイドシルアウタ部材の外側上壁および外側下壁それぞれと接合される。補強部材がサイドシルアウタ部材に直接的に接合されるため、部品点数の低減や、軽量化を実現できる。
【0008】
前記補強部材が、前記補強材上壁と前記補強材下壁の前記車幅方向の外側部同士を接続する補強材外側壁と、前記補強材外側壁よりも前記車幅方向の内側で前記補強材上壁と前記補強材下壁とを接続する縦壁と、を有し、前記縦壁が、前記上接合部および前記下接合部と前記車幅方向において隣接していてもよい。これにより、車両の側面衝突時に、サイドシル自体の扁平化する(サイドシルアウタとサイドシルインナの接合部が上下に離間していく)ような変形を、サイドシルアウタ部材に接合された補強部材で抑制することが可能であり、部品点数を増加させずに、側面衝突時の変形強度を向上できる。
【0009】
前記縦壁が、平面視において、前記上接合部および前記下接合部と重なってもよい。これにより、縦壁がサイドシルアウタ部材の変形を阻止しやすくなり、高い変形強度が得られる。
【0010】
前記上接合部において、前記内側上フランジと前記外側上フランジとは、車長方向に並ぶ複数の上側シル接合点にて互いに接合され、前記外側上壁と前記補強材上壁とが、車長方向に並ぶ複数の上側補強材接合点にて互いに接合されていることが望ましい。そして、前記上側シル接合点は、前記上側補強材接合点と前記車長方向において隣接していてもよい。これにより、車長方向に互いに隣接する上側シル接合点と上側補強材接合点との協働により、外側上壁が上方へ延びるようなサイドシルの断面変形を防止でき、部品点数を増加させずに、側面衝突時の変形強度を向上できる。
【0011】
前記下接合部において、前記内側下フランジと前記外側下フランジとは、車長方向に並ぶ複数の下側シル接合点にて互いに接合され、前記外側下壁と前記補強材下壁とが、車長方向に並ぶ複数の下側補強材接合点にて互いに接合されていることが望ましい。そして、前記下側シル接合点は、前記上側シル接合点とも前記下側補強材接合点とも前記車長方向において隣接していてもよい。これにより、車長方向に互いに隣接する下側シル接合点と下側補強材接合点との協働により、外側下壁が下方へ延びるようなサイドシルの断面変形を防止でき、部品点数を増加させずに、側面衝突時の変形強度を向上できる。上下のシル接合点と上下の補強材接合点の4点が車長方向に互いに隣接するため、これら接合点の協働により、外側上壁および外側壁が上下に開いていくようなサイドシルの断面変形を抑止でき、変形強度が一層向上する。
【0012】
前記外側上壁に、前記車幅方向の外側へ向かうほど下向きに傾斜する上座面部が設けられ、前記補強材上壁が、前記車幅方向の外側へ向かうほど下向きに傾斜し、前記上座面部に接触する補強材上傾斜部を含み、前記上座面部と前記補強材上傾斜部とが、接触状態で接合されてもよい。このような構造であれば、カムなどを用いることなく、一方向からのプレス成形で座面を形成できる。さらに、上座面部が、車幅方向の外側に向かうほど下向きに傾斜していれば、被接合物である補強部材の位置決めが容易になり、接合作業を簡便に行えるため、さらに望ましい。
【0013】
前記上座面部が、前記外側上壁を部分的に下方へ突出させることにより形成され、その前記車長方向の両縁部から上方へ延びる一対の上縦壁を介して前記外側上壁に連続してもよい。これにより、上座面部が一対の上縦壁で囲まれるため、サイドシルアウタ部材と補強部材との接合箇所で剛性が向上する。この接合箇所以外では、外側上壁を補強部材から上方に離すことができる。そのため、補強部材をサイドシルアウタ部材に直接的に接合する構成を採用しながら、車両の振動時に補強部材がサイドシルアウタ部材に接触するのを回避でき、接触により異音が発生するのを抑止できる。
【0014】
前記外側下壁が、前記車幅方向の外側へ向かうほど上向きに傾斜する下座面部を含み、前記補強材下壁が、前記車幅方向の外側へ向かうほど上向きに傾斜し、前記下座面部に接触する補強材下傾斜部を含み、前記下座面部と前記補強材下傾斜部とが、接触状態で接合されてもよい。このような構造であれば、カムなどを用いることなく、一方向からのプレス成形で座面を形成できる。さらに、下座面部が、車幅方向の外側に向かうほど上向きに傾斜していれば、被接合物である補強部材の位置決めが容易になり、接合作業を簡便に行えるため、さらに望ましい。
【0015】
前記下座面部が、前記外側下壁を部分的に上方へ突出させることにより形成され、その前記車長方向の両縁部から下方へ延びる一対の下縦壁を介して前記外側下壁に連続してもよい。これにより、下座面部が一対の下縦壁で囲まれるため、サイドシルアウタ部材と補強部材との接合箇所で剛性が向上する。この接合箇所以外では、外側下壁を補強部材から下方に離すことができる。そのため、補強部材をサイドシルアウタ部材に直接的に接合する構成を採用しながら、車両の振動時に補強部材がサイドシルアウタ部材に接触するのを回避でき、接触により異音が発生するのを抑止できる。
【0016】
前記外側下壁と前記補強材上壁とは、前記外側上壁の上方のみからの工具のアクセスにより接合を可能にする片面接合構造によって接合されてもよい。これにより、閉断面構造を有する補強部材が長尺であっても、補強材上壁の下方への工具のアクセスを要さず、サイドシルアウタ部材と補強部材とを接合でき、接合作業を簡便に行える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、側面衝突時の変形強度に優れるとともに、部品点数の低減や軽量化を実現可能な車両用サイドシル構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態に係る車両用サイドシル構造を示す断面図。
図2図1の拡大図。
図3図1に示すサイドシル構造の側面図。
図4図1に示すサイドシル構造の部分斜視図。
図5A】補強部材とサイドシルアウタ部材を準備する工程を示す図。
図5B】補強部材をサイドシルアウタ部材に対して位置決めする工程を示す図。
図5C】補強部材をサイドシルアウタ部材に接合する工程を示す図。
図5D】サイドシルインナ部材およびサイドパネルを準備する工程を示す図。
図5E】サイドシルインナ部材と補強部材が接合されたサイドシルアウタ部材とサイドパネルを接合する工程を示す図。
図6図1に示すサイドシル構造の側面衝突時の変形を示す図。
図7】第2実施形態に係る車両用サイドシル構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。なお、同一のまたは対応する要素には全図を通じて同一の符号を付して詳細説明の重複を省略する。
【0020】
(第1実施形態)
図1および図2を参照して、第1実施形態に係るサイドシル1は、車体100の下部を構成し、車長方向に延び、車幅方向において対を成す。図1および図2は、右側のサイドシル1を示す。左側のサイドシル(図示略)は、右側のサイドシル1と同一の構造を有し、車両の車幅中心を基準にして線対称に配置される。
【0021】
特段断らない限り、「断面」とは、車長方向(サイドシル1の長手方向)に直交する断面、すなわち縦断面である。サイドシル1は、概略矩形状の断面を有する。サイドシル1は、車体100のアウタパネル2で車幅方向の外側から覆われる。フロアパネル3が、サイドシル1の上面に支持される。これにより、車室4が、サイドシル1の車幅方向内側且つフロアパネル3の上方に形成される。
【0022】
バッテリーケース5が、車幅方向において一対のサイドシル1の間であってフロアパネル3の下方に配置されてもよい。バッテリーケース5は、矩形枠状のフレーム5aと、フレーム5aの下面に取り付けられるアンダーカバー5bと、フレーム5aの上面に取り付けられるトップカバー5cとを備える。バッテリーケース5は、バッテリーBを収容し、バッテリーBは、車両の走行駆動源を構成する電気モータの電源として機能する。この場合に、フレーム5aはサイドシル1の下面に締結され、それにより、バッテリーケース5およびバッテリーBが、車体100に支持される。
【0023】
サイドシル1は、サイドシルインナ部材10、サイドシルアウタ部材20、および補強部材30を備える。サイドシルインナ部材10およびサイドシルアウタ部材20はいずれも、鋼板のプレス加工によって成形され、車長方向に延び、ハット形の断面を有する。
【0024】
サイドシルインナ部材10は、内側上フランジ11、内側下フランジ12、内側上壁13、内側下壁14、および内側側壁15を有し、全体としてハット形状である。内側上フランジ11および内側下フランジ12は、上下方向に延び、互いに上下方向に離れている。内側上壁13は、内側上フランジ11から車幅方向内側へと延び、内側下壁14は、内側下フランジ12から車幅方向内側へ延びる。内側側壁15は、内側上壁13と内側下壁14の車幅方向内側端部同士を上下方向に接続する。
【0025】
サイドシルアウタ部材20は、外側上フランジ21、外側下フランジ22、外側上壁23、外側下壁24、および外側側壁25を有し、全体としてハット形状である。外側上フランジ21および外側下フランジ22は、上下方向に延び、互いに上下方向に離れている。外側上壁23は、外側上フランジ21から車幅方向外側へと延び、外側下壁24は、外側下フランジ22から車幅方向外側へ延びる。外側側壁25は、外側上壁23と外側下壁24の車幅方向外側端部同士を上下方向に接続する。
【0026】
内側上フランジ11は、上接合部41において外側上フランジ21と接合され、内側下フランジ12は、下接合部42において外側下フランジ22と接合される。これにより、サイドシルインナ部材10およびサイドシルアウタ部材20が、車幅方向に接合される。
【0027】
具体的には、内側上フランジ11の側面は、外側上フランジ21の側面と車幅方向に重ね合わされ、内側上フランジ11および外側上フランジ21は、車長方向に間隔をあけて設定される複数の上シル接合点それぞれにて、車幅方向に点接合される。上接合部41とは、各上シル接合点において上フランジ11,21同士を接合している部位である。これと同様にして、内側下フランジ12の側面と外側下フランジ22の側面とが車幅方向に互いに重ね合わされ、内側下フランジ12および外側下フランジ22は、車長方向に間隔をあけて設定される複数の下シル接合点それぞれにて、車幅方向に点接合される。下接合部42とは、各下シル接合点において下フランジ12,22同士を接合している部位である。接合部41,42に適用可能な点接合として、抵抗溶接あるいはレーザ溶接を例示できる。
【0028】
このように接合されることで、サイドシルインナ部材10およびサイドシルアウタ部材20は、内側上壁11、外側上壁22、外側側壁25、外側下壁24、内側下壁14、および内側側壁15が、車幅方向内側且つ上側から時計回りに連なった矩形断面を構成する。また、サイドシルインナ部材10およびサイドシルアウタ部材20は、これらの壁13~15,23~25の内面によって画定された内部空間1aを形成する。
【0029】
補強部材30は、内部空間1aに設けられる。補強部材30は、車幅方向に複数の中空部39a~39fが並ぶ閉断面構造を有するアルミ押出形材からなる。本実施形態では、車幅方向に3つの中空部が並び、上下方向に2つの中空部が並び、補強部材30が、合計6つの中空部39a~39fを有するが、これは単なる一例である。
【0030】
補強部材30は、補強材上壁31、補強材下壁32、補強材外側壁33、補強材内側壁34、1以上の縦壁35A,35B、および1以上の横壁36を有する。なお、横壁36については、これが設定されていない構造や、これが1つ以上設定されていても良く、目標特性や形状に応じて適宜選択される。補強材上壁31および補強材下壁32は、車幅方向に延び、互いに上下方向に離れている。補強材外側壁33は、補強材上壁31および補強材下壁32の車幅方向外側端部同士を上下方向に接続する。補強材内側壁34は、補強材上壁31および補強材下壁32の車幅方向内側端部同士を上下方向に接続する。
【0031】
縦壁35A,35Bは、これら4つの壁31~34で画定された空間内で上下方向に延び、当該空間を車幅方向に仕切る。横壁36は、同空間内で車幅方向に延び、当該空間を上下方向に仕切る。本実施形態では、縦壁35A,35Bの個数が2つ、横壁36の個数が1つである。各縦壁35A,35Bの上下方向両端部は、補強材上壁31および補強材下壁32それぞれの内面に接合される。横壁36の車幅方向両端部は、補強材外側壁33および補強材内側壁34それぞれの内面に接合される。縦壁35A,35Bおよび横壁36は、4つの壁31~34で画定された空間内で井桁状に交差し、それにより当該空間が行列状に配列された複数の中空部39a~39fに仕切られる。
【0032】
補強部材30は、サイドシルアウタ部材20に直接的に接合される。補強材上壁31が外側上壁22と面接触状態で上下方向に接合され、補強材下壁32が外側下壁24と面接触状態で上下方向に接合される。補強部材30およびサイドシルアウタ部材20の接合には接着剤が併用されていてもよい。本実施形態では、補強材上壁31および外側上壁23は、車長方向に並ぶ複数の上側補強材接合点それぞれにて点接合されている。補強材下壁32および外側下壁24についても、これと同様である。
【0033】
サイドシルアウタ部材20と補強部材30とは、互いに異種材料で成形され、抵抗溶接のような冶金的接合を容易に適用できない。また、サイドシル1は比較的に長尺の部材であることから、補強部材30の裏面側に工具をアクセスするためには、背面側にトリム穴を設けることが必要である。この場合、トリム穴の設定により強度が低下することが課題になることから、補強部材30およびサイドシルアウタ部材20の点接合には、機械的接合、特に「片面接合構造」が適用されている。
【0034】
「片面接合構造」とは、サイドシルアウタ部材20の外方(外側上壁23の上方または外側下壁24の下方)のみからの工具のアクセスにより接合を可能とする機械的接合構造であり、逆に言えば、補強部材30の裏面側への工具のアクセスなしに接合を可能とする機械的接合構造である。例えば、通しボルト方式は、サイドシルアウタ部材20の外からのボルトの挿通と、補強部材30の裏面へのナットの設置とが必要であることから、片面接合構造には該当しない。片面接合構造としては、ブラインドリベット、FDS((Flow Drilling Screw)登録商標)、およびImpAcT(Impulse Accelerated Tacking)等を例示できる。いずれの施工法あるいは接合構造においても、リベットのような締結具51,52が、サイドシルアウタ部材20の外方から挿通されて補強部材30にまで到達し、それにより補強部材30がサイドシルアウタ部材20にかしめられる。
【0035】
図3を参照して、上側シル接合点(外側上フランジ21上に付された×印の位置を参照)は、補強材上側接合点(締結具51の位置を参照)と車長方向において隣接している。下側シル接合点(外側下フランジ22上に付された×印の位置を参照)は、補強材下側接合点(締結具52の位置を参照)と車長方向において隣接している。下側シル接合点は、上側シル接合点とも車長方向において隣接している。そのため、ここに挙げた4つの接合点は、車長方向において互いに隣接している。なお、ここでの「隣接」とは、補強材上側接合点と上シル接合点との間の車長方向における距離が、±15mmの範囲内であると定義されてもよい。これについては、接合座面の幅が約30mm程度であり、その半分が重なる範囲とすることで、接合部間を最短距離に保つ頃ができる範囲として例示する。
【0036】
図2図4を参照して、複数の補強材上側接合点は、外側上壁23に車長方向に間隔をおいて並ぶようにして設けられた複数の上座面部26に設定されている。上座面部25は、車幅方向の外側へ向かうほど下向きに傾斜する。上座面部26は、外側側壁25の上端部から車幅方向内側へ延びる外側部26aと、外側上フランジ21の下端部から車幅方向外側へ延びて外側部26aに連なるテーパ部26bとを有する。テーパ部26bは、外側部26aと比較して、車幅方向に対する上下方向への斜度が大きい。上座面部26は、外側上壁23を部分的に下方へ突出させることにより形成され、車幅方向に延びる。上座面部26は、上座面部26の車長方向の両縁部から上方へ延びる一対の上縦壁27を介し、外側上壁23の主部23aに連続する。主部23aは、車長方向に隣接する2つの上座面部26の間で車長方向に延びる。外側部26aは略水平に延びており、主部23aは、外側部26aと比較して、車幅方向に対する上下方向への斜度が大きい。
【0037】
他方、補強材上壁31は、車幅方向の外側へ向かうほど下向きに傾斜し、上座面部26(特に、テーパ部26b)に接触する上傾斜部31bを含む。上傾斜部31bの上面がテーパ部26bの下面に面接触した状態で、上傾斜部31bが上座面部26に上下方向に接合される。補強材上壁31は、上傾斜部31bの車幅方向外側端部から車幅方向外側へ延びる外側部31a、および上傾斜部31bの車幅方向内側端部から車幅方向内側へ延びる内側部31cを更に含む。外側部31aおよび内側部31cは、略水平である。
【0038】
外側下壁24および補強材下壁32の接合についても、これと同様である。外側下壁24には、外側下壁24を部分的に上方へ突出させることにより形成され、車幅方向の外側へ向かうほど上向きに傾斜する複数の下座面部28が設けられている。各下座面部28は、一対の下縦壁29それぞれを介して連続する外側下壁24の一対の主部24aにより車幅方向に挟まれる。下縦壁29は、下座面部28の車長方向の縁部から下方へ延びる。下座面部28は、外側側壁25の下端部から車幅方向内側へ延びる外側部28aと、外側下フランジ22の上端部から車幅方向外側へ延びて外側部28aに連なるテーパ部28bとを有する。テーパ部28bは、外側部28aと比較して、車幅方向に対する上下方向への斜度が大きい。
【0039】
他方、補強材下壁32は、車幅方向の外側へ向かうほど上向きに傾斜し、下座面部28(特に、テーパ部28b)に接触する下傾斜部32bを含む。下傾斜部32bの下面がテーパ部28bの上面に面接触した状態で、下傾斜部31bは下座面部28に上下方向に接合される。補強材下壁32は、下傾斜部32bに連続して略水平に延びる外側部32aおよび内側部32cを更に含む。
【0040】
縦壁35Aは、外側部31aと上傾斜部31bとの境界部位と、外側部32aと下傾斜部32bとの境界部位との間を上下方向に接続する。縦壁35Bは、上傾斜部31bと内側部31cとの境界部位と、下傾斜部32bと内側部32cとの境界部位との間を上下方向に接続する。横壁36は、補強材外側壁33、縦壁35A,35B、および補強材内側壁34の上下方向中央部同士を接続するようにして車幅方向に延びる。補強部材30の断面形状は、横壁36を基準として上下方向に線対称である。
【0041】
縦壁35Bは、上接合部41および下接合部42と車幅方向において隣接している。特に、本実施形態では、縦壁35Bは、平面視において、上接合部41とも下接合部42とも重なる。縦壁35Bと補強材外側壁33との間には、1つの縦壁35Aが存在する。そのため、上接合部41および下接合部42から見て車幅方向外側において、2つの中空部39c、39aが補強部材30の上部において車幅方向に並んでおり、2つの中空部39d,39bが補強部材30の下部において車幅方向に並んでいる。なお、ここでの「隣接」とは、縦壁35Bの車幅方向中心線と、内外の上フランジ11,21の合わせ面あるいは内外の下フランジ12,22の合わせ面との間の車幅方向における距離が、0mmから車幅方向外側に20mm程度であることを示す。
【0042】
上接合部41は、補強材上側接合点(締結具51の位置を参照)を介して補強部材30の縦壁35Bと連結されることで、上接合部41の上方向への移動を抑制する働きを有する。このため、これらの間の車幅方向距離はできるだけ近い方が望ましい。接合に要する座面の面積、サイドシルアウタ部材20の上フランジ21の肩Rなどを考慮すると、補強材上側接合点の接合中心とサイドシルアウタ部材20の上フランジ21との車幅方向距離は、10mm~30mm程度になる。そして、補強部材30の縦壁35Bは、補強材上側接合点に対してなるべき近い位置に設定することが望ましいが、接合部中心にリブを設定することはできず、バラつきも考慮すると、縦壁35Bは、補強材上側接合点の中心に対して10mm程度車幅方向内側にずらすことが必要になる。これらを考慮すると、縦壁35Bは、上接合部41に対して車幅方向距離で0mmから外側に20mm程度の範囲に設定することが望ましく、この範囲を隣接と定義する。
【0043】
図5A図5Eを参照して、サイドシル1の組立の手順を説明する。まず、図5Aに示すように、サイドシルアウタ部材20および補強部材30が準備される。サイドシルアウタ部材20は、外側上壁23、外側下壁24、および外側側壁25で区画された外側空間20aを有する。外側空間20aは車幅方向内側に開放され、外側上フランジ21および外側下フランジ22が上下方向および車長方向に延びる。
【0044】
次に、図5Bに示すように、補強部材30がサイドシルアウタ部材20の外側空間20a内に挿入される。補強部材30が挿入されていく過程で、上傾斜部31bがテーパ部26bに突き当たり、下傾斜部32bがテーパ部28bに接触する。突き当たった時点で、縦壁35Bは外側上フランジ21および外側下フランジ22と車幅方向において略同位置に位置付けられる。突き当たった後に更に、縦壁35Bのフランジ21,22に対する車幅方向の位置ずれを許容できる範囲において、補強部材30が僅かに押し込まれてもよい。これにより、外側上壁23が上方に弾性変形し、外側下壁24が下方に弾性変形し、補強部材30がサイドシルアウタ部材20に密着し、補強部材30のサイドシルアウタ部材20に対する位置が安定する。
【0045】
次に、図5Cに示すように、締結具51で補強材上壁31が外側上壁23と上下方向に接合され、締結具52で補強材下壁32が外側下壁24と上下方向に接合される。この接合には、上記された片面接合構造が適用される。これにより、補強部材30がサイドシルアウタ部材20に直接的に機械的に接合される。
【0046】
次に、図5Dに示すように、サイドシルインナ部材10、および車体100のアウタパネル2が準備される。サイドシルインナ部材10は、内側上壁13、内側下壁14、および内側側壁15で区画された内側空間10aを有する。内側空間20aは車幅方向外側に開放され、内側上フランジ11および内側下フランジ12が上下方向および車長方向に延びる。
【0047】
アウタパネル2は、車両の外板を構成して外側上フランジ21に接合される外板部2a、外側下フランジ22に接合されるフランジ部2b、およびサイドシル1を車幅方向外側から覆うカバー部2eを有し、カバー部2eは、外板部2aおよびフランジ部2bに対して車幅方向外側に位置付けられる。アウタパネル2は、外板部2aの下縁とカバー部2eの上縁とを接続する上接続部2c、およびカバー部2eの下縁とフランジ部2bの上縁とを接続する下接続部2dを更に有する。
【0048】
次に、図5Eに示すように、内側上フランジ11の側面が、外側上フランジ12の内側面に面接触され、内側下フランジ12の側面が、外側下フランジ22の内側面に面接触される。これにより、補強部材30の車幅方向内側部(例えば、補強材内側壁34、補強材上壁31の内側部31c、および補強材下壁32の内側部32cなど)が、サイドシルインナ部材10の内側空間10a内に挿入される。補強部材30は、サイドシルアウタ部材20に機械的に接合された状態で、サイドシルインナ部材10およびサイドシルアウタ部材20に内包される。
【0049】
更に、アウタパネル2が、車幅方向外側からサイドシル1を覆うようにして取り付けられる。外板部2aの内面が、外側フランジ12の外側面に面接触され、フランジ部2bの側面が、外側下フランジ22の外側面に面接触される。このように、車幅方向に3枚の部材が重ねられた状態で、上シル接合点および下シル接合点にて、溶接工具90を用いて点接合が行われる。これにより、サイドシルインナ部材10およびサイドシルアウタ部材20が、アウタパネル2とともに車幅方向に接合される。このサイドパネル2は、サイドシルアウタ部材20の接合部を覆うように配置されるため、車両外観の見栄えを確保することができる。
【0050】
図1に戻り、フロアパネル3は、サイドシルインナ部材10の内側上壁11に載置される。バッテリーケース5のフレーム5aは、サイドシルインナ部材10の内側下壁12に締結される。補強部材30は、上下方向に接合されるが、その接合相手がサイドシルアウタ部材20である。上下方向の接合は面接触状態で行われるので、補強部材30とサイドシルアウタ部材20との間には上下方向のクリアランスが小さい。一方、補強部材30は、サイドシルインナ部材10とは直接的に係合されておらず、そのため、内側下壁14と補強材下壁32の内側部32cとの間の領域では、比較的に大きいクリアランスが存在し、サイドシルインナ部材10の内側空間10aが補強部材30によって占有されていない。バッテリーケース5を締結するためのナット6bは、この空間領域に配置されている。このように、バッテリーケース5のような重量物を支持するにあたり、ナット6bを用いた強固な締結構造を無理なく配置できる。
【0051】
図6を参照して、上記のように構成されるサイドシル1において、車両の側面衝突が発生すると、その衝突エネルギーが、アウタパネル2を介してサイドシル1に車幅方向外側から内側に向けて入力される。すると、補強部材30は、複数の中空部39a~39fが車幅方向外側のものから順に圧潰されるようにして変形する。まず、車幅方向において最外に位置付けられた2つの中空部39a,39bが圧潰される。中空部39a,39bは、車幅方向に圧縮され、そのため、補強材上壁31、横壁36、および補強材下壁32の各外側部31a,36a,32aが、上下方向に折れ曲がる。この変形によって、衝突エネルギーが部分的に吸収される。次いで、これら圧潰された中空部39a,39bと車幅方向に隣接している2つの中空部39c,39dが圧潰される。
【0052】
また、衝突エネルギーが、アウタパネル2を介してサイドシル1に車幅方向外側から内側に向けて入力されると、サイドシルアウタ部材20の外側側壁25が車幅方向内側に押し込まれる。それにより、外側上壁23が上方へ開くようにして変形しようとする。これに伴い、外側上フランジ21が内側上フランジ11に対して上方へ移動しようとし、上接合部41が剪断荷重を受ける。これと同様にして、外側下壁24が下方へ開くようにして変形しようとする。これに伴い、外側下フランジ22が内側下フランジ12に対して下方へ移動しようとし、下接合部42が剪断荷重を受ける。
【0053】
本実施形態においては、外側上壁23および外側下壁24が、補強材上壁31および補強材下壁32それぞれと上下方向に接合されている。上補強材接合点および下補強材接合点において、外側上壁23および外側下壁24が上下に開こうとする変形を抑止できる。上補強材接合点および下補強材接合点では、締結具51,52が上下方向に挿し込まれる。リベットやボルトのような締結具51,52は、挿通方向の引張または圧縮荷重を受けるのに適している。上補強材接合点および下補強材接合点に生ずる引張荷重を締結具51,52で受け止め、外側上壁23および外側下壁24の変形を抑止できる。上接合部41および下接合部42で受けるべき剪断荷重が低減し、外側上フランジ21の上方移動および外側下フランジ22の下方移動が一層抑止される。なお、外側上壁23および外側下壁24が、衝撃エネルギーにより補強部材30に対して車幅方向内側に滑ろうとし、締結具51,52にとって不利な剪断荷重が入力されるおそれがある。しかし、外側上壁23および外側下壁24のこのような移動は、内側上フランジ11および内側下フランジ12により受け止められる。したがって、締結具51,52の接合強度が保たれる。
【0054】
上補強材接合点は上シル接合点と車長方向に隣接している。このため、締結具51と上接合部41とが協働して、外側上壁23および外側上フランジ21の変形あるいは移動を抑止できる。下補強材接合点および下シル接合点についても、これと同様である。
【0055】
更に、補強部材30と接合される上座面部26は、外側上壁23を下方へ突出させることによって形成され、そのため、上座面部26は上下方向に延びる一対の上縦壁を介して外側上壁23の主部23aと連続している。これにより、上補強材接合点の周囲において、外側上壁23が上方へ開こうとする曲げ変形に対する強度が高くなる。このように変形強度が高くなることで、締結具51,52における接合強度も高く保たれる。下座面部28および下補強材接合点についても、これと同様である。また、主部23a,24aが、補強部材30から上下方向に離れるので、車両の実用中の振動によってサイドシルアウタ部材20が補強部材30と接触して異音が発生するのを抑止できる。
【0056】
また、補強部材30の縦壁35Bが、上接合部41および下接合部42と車長方向に隣接しており、上接合部41(内外の上フランジ11,12)、縦壁35B、および下接合部42(内外の下フランジ12,22)が、上下方向に連続するように配置される。そのため、外側上フランジ21の上方移動および外側下フランジ22の下方移動が生じようとするときに、縦壁35Bが外側上フランジ21および外側下フランジ22の間で突っ張って、上方移動および下方移動が抑止される。この点からも、変形強度が高い。
【0057】
このように、サイドシルインナ部材10とサイドシルアウタ部材20とを接合している上接合部41および下接合部42や、補強部材30をサイドシルアウタ部材20に接合している上補強材接合点および下補強接合点において、高い変形強度が得られる。そのため、車幅方向の中央部の中空部39c,39dの変形の程度は、最初の中空部39a,39bの変形と比べると小さい。
【0058】
中央部の中空部39c,39dの変形によって衝撃エネルギーが吸収され、また、部材同士の接合点において衝撃エネルギーが効率的に受け止められることで、サイドシルインナ部材10の変形を抑止できる。また、補強部材の車幅方向の最内の中空部の変形を抑止できる。そのため、サイドシルインナ部材10に支持されるフロアパネル3、ひいてはこれによって画定される車室4が保護される。また、サイドシルインナ部材10に締結されるバッテリーケース5の変形、ひいてはこれに収容されるバッテリー5の破損を抑止できる。
【0059】
このようにして高い変形強度が得られるサイドシル1において、補強部材30は、サイドシルアウタ部材20に直接的に接合されている。補強部材30を支持しまたは取り付けるための部材が省略されるため、サイドシル1の部品点数の低減および軽量化を実現できる。補強部材30は、サイドシルアウタ部材20に上下方向に接合されている。その際、補強材上壁および補強材下壁が、サイドシルアウタ部材20と面接触してサイドシルアウタ部材20に接合される。補強材上壁および補強材下壁は、補強材外側壁および補強材内側壁とともに補強部材30の矩形外形を構成する部位である。補強部材30は、フランジのように、サイドシルアウタ部材20との接合のために外面から突出する部位を有さない。このような片端が自由端となる突出部がある場合は、熱間押出で形成される押出形材の製造において形状精度を確保することが難しくなる。そのため、補強部材30がアルミ押出形材からなる場合において、突出フランジを有さない補強部材30を用いる本構造は、補強部材30を簡便に製作でき、補強部材30の生産性が向上するという利点がある。
【0060】
(第2実施形態)
次に、図7を参照して、上記実施形態との相違を中心に、第2実施形態について説明する。
【0061】
本実施形態では、補強部材30が、第1実施形態と同様にして2つの縦壁35A,35Bを有する一方、第1実施形態とは異なり横壁36(図2を参照)を備えない。そのため、補強部材30は、車幅方向に並ぶ3つの中空部39a,39c,39eを有するものの、上下方向における中空部の段数は1つである。
【0062】
補強部材30の高さは、第1実施形態と対比して半減している一方、サイドシルインナ部材10の高さは、第1実施形態と同様である。サイドシルアウタ部材20は、このように低背化された補強部材30の補強材下壁32と上下方向に接続される。外側下壁24は、第1実施形態と同様にして外側側壁25の下端部から車幅方向内側へ延びるものの、外側側壁25の高さが第1実施形態に比して半減されている。その分、外側下壁24が上方に位置付けられ、補強材下壁32と上下方向に面接触できる。外側下フランジ22は、第1実施形態と同様にして外側下壁24の車幅方向内側端部を基点として当該基点から下方へ延びるものの、基点位置が第1実施形態に比して上方へ位置づけられる。
【0063】
上補強材接合点は、第1実施形態と同様にして、一対の上縦壁27で囲まれた上座面部26に設定されており、補強材上壁31の車幅方向中央部が上傾斜部31bを形成する。ただし、必ずしもこのような構成が採用されなくてもよい。下補強材接合点においては、外側下壁24が、車長方向に一様な断面を有し、略水平に延びる。これに呼応して、補強材下壁32の車幅方向の中央部32dも、略水平に延びる。締結具52は、外側下壁24の下方から上向きに挿し込まれ、これにより補強材下壁32が外側下壁24にかしめられる。
【0064】
サイドシル1は、鋼板からなり、車長方向に延び、サイドシルアウタ部材20と車体100のアウタパネル2との間に介在して外補強板60を更に備える。外補強板60は、外補強板60は、上下方向に延びる下フランジ61、下フランジ61の上端部から車幅方向外側へ延びる底壁62、底壁62の車幅方向外側端部から上方へ延びる側壁63、および側壁63の上端部から車幅方向外側へ延びる上フランジ64を有する。
【0065】
アウタパネル2は、上カバー部2eaおよび下カバー部2ebと、上カバー部2eaの下端部と下カバー部2ebの上端部とを車幅方向に接続する段差部2fとを含む。上接続部2cは、上カバー部2eaに連続し、下接続部2dは、下カバー部2ebに連続する。
【0066】
外補強板60の下フランジ61は、内側下フランジ12よりも上方で外側下フランジ22の外側面に面接触した状態で、外側下フランジ22に接合される。外補強板60の上フランジ61は、外側下壁24の車幅方向外側部の下面に面接触される。アウタパネル2の段差部2fが、外補強板60の上フランジ64の下面に更に面接触される。これら3つの
本実施形態においても、上記実施形態と同様にして、変形強度が高いサイドシル1が得られる。
【0067】
(変形例)
これまで実施形態について説明したが、上記構成は、単なる一例にすぎず、本発明の趣旨の範囲内で追加、変更、または削除可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 サイドシル
1a 内部空間
2 アウタパネル
3 フロアパネル
4 車室
5 バッテリーケース
10 サイドシルインナ部材
11 内側上フランジ
12 内側下フランジ
13 内側上壁
14 内側下壁
15 内側側壁
20 サイドシルアウタ部材
21 外側上フランジ
22 外側下フランジ
23 外側上壁
23a 主部
24 外側下壁
24a 主部
25 外側側壁
26 上座面部
26a 外側部
26b テーパ部
27 上縦壁
28 上座面部
28a 外側部
28b テーパ部
29 下縦壁
30 補強部材
31 補強材上壁
31a 外側部
31b 上傾斜部
31c 内側部
32 補強材下壁
32a 外側部
32b 下傾斜部
32c 内側部
33 補強材外側壁
34 補強材内側壁
35B 縦壁
41 上接合部
42 下接合部
51,52 締結具
60 外補強板
100 車体
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6
図7