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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112664
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】かつら
(51)【国際特許分類】
   A41G 3/00 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
A41G3/00 H
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017867
(22)【出願日】2023-02-08
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000126676
【氏名又は名称】株式会社アデランス
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 久美子
(57)【要約】
【課題】 結び目が視認されにくい自然な外観を有するかつらを提供する。
【解決手段】 かつらベース4と、かつらベース4の糸状部材6に取り付けられた擬毛8と、を備え、糸状部材6の長手方向に対して直交する断面視において、擬毛8は、かつらベース4の表面F及び裏面Rを結ぶ方向に糸状部材6を貫通し、貫通部8Aから糸状部材6の外に出た擬毛8Bが糸状部材6の所定の領域を締め付けるようにして互いに結び付けられ、結び目8Cから擬毛8の先端部8Dが表面F側に延びており、糸状部材6のかつらベース4の内側に位置する領域が擬毛8Bで締め付けられており、締め付けられて変形した糸状部材6の外面に形成された凹部10の中に結び目8Cが配置されているかつら2を提供する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
かつらベースと、
前記かつらベースの糸状部材に取り付けられた擬毛と、
を備え、
前記糸状部材の長手方向に対して直交する断面視において、
前記擬毛は、前記かつらベースの表面及び裏面を結ぶ方向に前記糸状部材を貫通し、貫通部から前記糸状部材の外に出た前記擬毛が前記糸状部材の所定の領域を締め付けるようにして互いに結び付けられ、結び目から前記擬毛の先端部が表面側に延びており、
前記糸状部材の前記かつらベースにおける内側に位置する領域が前記擬毛で締め付けられており、
締め付けられて変形した前記糸状部材の外面に形成された凹部の中に前記結び目が配置されていることを特徴とするかつら。
【請求項2】
前記擬毛は、前記糸状部材の中心領域を通るように前記糸状部材を貫通していることを特徴とする請求項1に記載のかつら。
【請求項3】
前記凹部から出た前記擬毛の先端部が、前記糸状部材の前記擬毛で締め付けられていない領域の外面に当たって前記かつらベースから立ち上がるように延びていることを特徴とする請求項1に記載のかつら。
【請求項4】
前記糸状部材の長手方向に対して直交する断面視における前記糸状部材の中心角度において、前記中心領域及び前記かつらベースの表面を結ぶ方向に対して、10度以上80度以下の範囲の角度で交わる領域に前記結び目が配置されていることを特徴とする請求項2に記載のかつら。
【請求項5】
前記凹部から出た前記擬毛の先端部が前記かつらベースにおける外側に向けて延びていることを特徴とする請求項1に記載のかつら。
【請求項6】
前記糸状部材が、個々の糸が硬く編まれたマルチフィラメントの糸であることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載のかつら。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、かつらベースの糸状部材に擬毛が取り付けられたかつらに関する。
【背景技術】
【0002】
かつらベースの糸状部材に擬毛が取り付けられたかつらにおいて、擬毛が結び目を作らず、糸状部材で結び目を作って擬毛をかつらベースに保持したかつらが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のかつらでは、特に、糸状部材が肌色等の明色を有する場合には、結び目を目立たなくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-77208号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のかつらでは、肌色等の明色を有するとはいえ、糸状部材の結び目がかつらベースの表面に露出しているので、かつらの装着時に、この結び目が視認されて自然な外観が得られない虞がある。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するものであり、結び目が視認されにくい自然な外観を有するかつらを提供することを目的とする。
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るかつらは
かつらベースと、
前記かつらベースの糸状部材に取り付けられた擬毛と、
を備え、
前記糸状部材の長手方向に対して直交する断面視において、
前記擬毛は、前記かつらベースの表面及び裏面を結ぶ方向に前記糸状部材を貫通し、貫通部から前記糸状部材の外に出た前記擬毛が前記糸状部材の所定の領域を締め付けるようにして互いに結び付けられ、結び目から前記擬毛の先端部が表面側に延びており、
前記糸状部材の前記かつらベースにおける内側に位置する領域が前記擬毛で締め付けられており、
締め付けられて変形した前記糸状部材の外面に形成された凹部の中に前記結び目が配置されている。
【発明の効果】
【0007】
以上のように、本発明では、結び目が視認されにくい自然な外観を有するかつらを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の1つの実施形態に係るかつらを模式的に示す側面図である。
図2図1の断面A-Aを拡大して模式的に示す側面断面図である。
図3A図2に示すかつらを形成するため、かつらベースの糸状部材に擬毛を取り付ける方法を模式的に示す側面断面図である。
図3B】糸状部材としてマルチフィラメントの糸を用いる場合において、マルチフィラメントの糸を構成する個々の糸の編み方の状態と擬毛の取付状態との関係を模式的に示す斜視図である。
図4】結び目が視認され易い比較例を模式的に示す側面断面図である。
図5】結び目が視認され易いその他の比較例を模式的に示す側面断面図である。
図6】本発明の1つの実施形態に係るかつらにおける擬毛の結び目の好ましい位置を示す図である。
図7】本発明の1つの実施形態に係るかつらが有する凹部のその他の例を模式的に示す平面図である。
図8】結び目が視認され易い従来のかつらを模式的に示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための実施形態を説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本発明を以下のものに限定しない。
各図面中、同一の機能を有する部材には、同一符号を付している場合がある。要点の説明または理解の容易性を考慮して、便宜上実施形態や実施例に分けて示す場合があるが、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張して示している場合もある。
【0010】
(本発明の1つの実施形態に係るかつら)
はじめに、図1から図3Bを参照しながら、本発明の1つの実施形態に係るかつらの説明を行う。図1は、本発明の1つの実施形態に係るかつらを模式的に示す側面図である。図2は、図1の断面A-Aを拡大して模式的に示す側面断面図である。図3Aは、図2に示すかつらを形成するため、かつらベースの糸状部材に擬毛を取り付ける方法を模式的に示す側面断面図である。図3Bは、糸状部材としてマルチフィラメントの糸を用いる場合において、マルチフィラメントの糸を構成する個々の糸の編み方の状態と擬毛の取付状態との関係を模式的に示す斜視図である。図3Bでは、編み方の状態を明確に示すため、2本の糸でマルチフィラメントの糸が構成されている場合を示す。
【0011】
本発明の1つの実施形態に係るかつらは、かつらベース4と、かつらベース4に取り付けられた擬毛8とを有する。かつらベース4の少なくとも一部に、糸状部材6がメッシュ状になった植設領域4Aが配置されている。この植設領域4Aの糸状部材6に、擬毛8が結び付けられる。植設領域4Aのメッシュ形状として、4角形、6角形、8角形等の多角形や、それらの組み合わせをはじめとする任意のメッシュ形状を採用することができる。
【0012】
次に、図3A及び図3Bを参照しながら、このような構成のかつらベース4に擬毛8を植設する方法を説明する。図1の断面A-Aを示す図2図3Aは、糸状部材6の長手方向に対して直交する断面を示している。
【0013】
本実施形態では、擬毛8が糸状部材6を貫通するので、糸状部材6としてマルチフィラメントの糸を用いるが好ましい。その場合、図3Bの(a)に示すように、擬毛8を糸状部材6に貫通させるとき、擬毛8は、基本的にマルチフィラメント糸を構成する個々の糸の間を通って一端から他端へ達する。
【0014】
ただし、下記のような要件を満たす場合には、糸状部材6としてモノフィラメントの糸を用いることもできる。
(1)モノフィラメントの糸が、毛植え針を刺すことのできる素材であること。
(2)擬毛を補足した毛植え針を貫通させるのに十分な太さを備えること。
(3)毛植え針を刺した際にひび割れたりしない十分な弾性を有すること。
【0015】
マルチフィラメントの糸を構成する個々の糸またはモノフィラメントの糸として、任意の化学繊維または天然繊維を用いることができる。また、複数種類の異なる繊維を併用することもできる。図面では、糸状部材6の断面形状を模式的に円形で示してある。
【0016】
図3Aの(a)に示すように、毛植え針を用いて、擬毛8を糸状部材6に貫通させる。このとき、かつらベース4の表面F及び裏面Rを結ぶ方向に貫通するように毛植え針を通す。そして、貫通した領域から糸状部材6の外に出た擬毛8が、糸状部材6のかつらベース4における内側に位置する領域の周囲を覆うようにして、かつらベース4の表面F側で軽く結び付けられる。
【0017】
図3Aの(a)の点線で示すように、結び目の先に出た擬毛8を引いて、かつらベース4における内側方向に結び目が動くように絞る。そして、結び目を硬く締め付けることにより、擬毛8が糸状部材6に確実に結び付けられる。これに伴い、糸状部材6のかつらベース4における内側に位置する領域が締め付けられて変形、収縮する。これにより、糸状部材6の変形、収縮した領域に凹部10が形成される。基本的に、結び目8Cにより糸状部材6の外面が強く押されるので、結び目8Cが存在する領域に凹部10が形成される。よって、形成された結び目8Cは、凹部10の中に配置されることになる。結び目8Cからは、両側の先端部8Dがかつらベース4の表面F側に延びている。
【0018】
これにより、図2または図3Aの(b)に示すように、糸状部材6の長手方向に対して直交する断面視において、かつらベース4に取り付けられた擬毛8は、かつらベース4の表面F及び裏面Rを結ぶ方向に糸状部材6を貫通した貫通部8Aと、糸状部材6のかつらベース4における内側に位置する領域を締め付ける締付部8Bと、結び目8Cと、結び目8Cからかつらベース4の表面F側に延びた先端部8Dとを有する。
【0019】
なお、毛植え針を用いて、擬毛8を糸状部材6に貫通させるとき、糸状部材6の中心領域を通るように貫通させるのが好ましい。これにより、糸状部材6のかつらベース4における内側に位置する略半分の領域が締め付けられて変形、収縮して、確実に凹部10が形成される。また、擬毛8Cで締め付けられていない外側に位置する略半分の領域は、確実に凹みのない外形を有することができる。
【0020】
ただし、擬毛8が糸状部材6の中心領域を通らない場合であっても、糸状部材6のかつらベース4における内側に位置する領域に凹部10を形成することができ、外側に位置する領域は凹みのない外形を有することができる。例えば、糸状部材6の断面形状を円形とした場合の半径をRとするとき、糸状部材6の断の中心から0.5R程度の範囲内を擬毛8が通過するのであれば、糸状部材6のかつらベース4における内側に位置する領域に凹部10を形成することができ、外側に位置する領域は凹みのない外形を有することができる。
【0021】
ここで重要なことは、貫通部8Aに対して、かつらベースにおける外側ではなく、かつらベース4における内側に位置する糸状部材6の領域を擬毛8で締め付けることである。これにより、かつらベース4における内側の位置で凹部10が形成されるので、図2に模式的に示すように、かつら2の装着時に、締め付けられていない糸状部材6の前側の領域に遮られて、結び目8Cが視認されにくくなる。これにより、かつら2の装着時に自然な外観を得ることができる。
【0022】
ここで言うかつらベース4の内側及び外側は、かつら2の装着時における頭頂部側が内側に該当し、かつらベース4の外縁側(例えば、前頭側、後頭側、両側頭側)が外側に該当する。かつら2が、全頭かつらの場合だけでなく、部分かつらの場合も同様である。
【0023】
<従来のかつら>
比較のため、図8を参照しながら、擬毛を糸状部材の全周に回して結び付ける従来のかつらについて説明する。図8は、結び目が視認され易い従来のかつらを模式的に示す側面断面図である。
【0024】
従来のかつら102では、擬毛108を糸状部材106の全周に回して、かつらベースの表面F側で結び付けて結び目108Cを形成する。結び目108Cから、擬毛108の両側の先端部108Dが延びている。この場合、結び目108Cがかつらベース4の表面Fに露出しているので、図9に模式的に示すように、かつら102の装着時に結び目108Cが視認され易くなる。
【0025】
また、従来のかつら102では、擬毛108で糸状部材106の全周を囲んでいるので、糸状部材106の周囲の擬毛106も視認され易くなる。また、擬毛108で糸状部材106の全周を囲んで摩擦力で擬毛108の位置を保持しているだけなので、かつら102を使用している間に擬毛108の位置がずれる虞もある。
【0026】
一方、本実施形態に係るかつら2では、視認され易いかつらベースにおける外側に位置する糸状部材6の約半分の領域に擬毛8が存在しないので、糸状部材6の回りの擬毛8が視認されにくい。また、擬毛8が糸状部材6を貫通して取り付けられているので、かつら2を長期間使用しても擬毛8の位置がずれる虞がない。
【0027】
<比較例>
次に、図4及び図5を参照しながら、糸状部材6の所定の領域を擬毛8で締め付けたとしても、結び目8Cが視認される虞のある比較例の説明を行う。図4は、結び目が視認され易い比較例を模式的に示す側面断面図である。図5は、結び目が視認され易いその他の比較例を模式的に示す側面断面図である。
【0028】
図4に示す比較例では、貫通部8Aに対して、かつらベースにおける外側に位置する糸状部材6’の領域が擬毛8’で締め付けられている。これにより、かつらベースにおける外側の位置で凹部10’が形成されるので、図4に模式的に示すように、かつら2の装着時に結び目8C’が視認され易くなる。
【0029】
また、毛植え針をかつらベースの表面Fをすくうように動かして植設した場合には、図5に示すように、擬毛8’が糸状部材6’の表面F近くの領域を表面Fに沿って延びて貫通する。このため、かつらベース4の表面F側において、糸状部材6’は結び目8C’の部分が盛り上がる、または結び目8C’の周囲が均等につぶれる状態になり、凹部が適切に形成されない。図5は、かつらベース4の表面F側において、糸状部材6’の結び目8C’の部分が盛り上がった状態を示す。このため、図5に模式的に示すように、かつらの装着時に結び目8C’が視認され易くなる。
【0030】
以上のように、本実施形態に係るかつら2は、かつらベース4と、かつらベース4の糸状部材6に取り付けられた擬毛8と、を備え、糸状部材6の長手方向に対して直交する断面視において、擬毛8は、かつらベース4の表面F及び裏面Rを結ぶ方向に糸状部材6を貫通し、貫通部8Aから糸状部材6の外に出た擬毛8Bが糸状部材6の所定の領域を締め付けるようにして互いに結び付けられ、結び目8Cから擬毛8の先端部8Dが表面F側に延びており、糸状部材6のかつらベース4における内側に位置する領域が擬毛8Bで締め付けられており、締め付けられて変形した糸状部材6の外面に形成された凹部10の中に結び目8Cが配置されている。
【0031】
これにより、結び目8Cが視認されにくい自然な外観を有するかつら2を提供できる。
【0032】
このとき、擬毛8は、糸状部材6の中心領域を通るように糸状部材6を貫通するのが好ましい。これにより、糸状部材6のかつらベース4における内側に位置する領域に確実に凹部10を形成することができ、外側に位置する領域は確実に凹みのない外形を有することができる。
【0033】
更に、図2に示すように、本実施形態では、凹部10から出た擬毛8の先端部8Dが、糸状部材6の矢印Bで示す部分に当たって押し上げられて、かつらベース4から立ち上がるように延びている。擬毛8で締め付けられていない糸状部材6のかつらベース4における外側に位置する領域は、そのままの膨らんだ形状を有しているので、凹部10から出た擬毛8の先端部8Dは、擬毛8Bで締め付けられていない領域の外面Bに当たって持ち上げられる。このため、擬毛8が、かつらベース4から立ち上がって、かつら2に自然な外観を与えることができる。
【0034】
更に、図2に示すように、凹部10から出た擬毛8の先端部8Dが、かつらベース4から立ち上がるとともに、かつらベース4における外側に向けて延びている。このため、擬毛8の先端部8Dが、更に外側に位置する糸状部材6やその糸状部材6に形成された凹部10を覆うようになるので、糸状部材6や凹部10が更に視認されにくくなる。
【0035】
ここで、糸状部材6としてマルチフィラメントの糸を用いる場合、図3Bの(a)に示すように、糸状部材6であるマルチフィラメント糸を構成する個々の糸S1、S2が、十分に硬く編まれていることが重要である。マルチフィラメントの糸を構成する個々の糸S1、S2が十分に硬く編まれていることにより、擬毛8の結び目が配置される十分な凹部が形成される。一方、マルチフィラメント糸を構成する個々の糸S1’、S2’が緩く編まれている場合には、図3Bの(b)に示すように、擬毛8’で糸状部材6’を締め付けても、上記のような凹部が適切に形成されない。このため、かつら2の装着時に、擬毛8’の結び目が視認され易くなり、擬毛8’の先端部が擬毛8’で締め付けられていない糸状部材6’の領域の外面に当たっても立ち上がることはない。
【0036】
よって、糸状部材6が、個々の糸が硬く編まれたマルチフィラメントの糸であることにより、はじめて、擬毛8の結び目8Cが視認されにくいとともに、擬毛8の先端部8Dがかつらベース4から立ち上がった自然な外観を有することができる。
【0037】
<結び目の位置>
次に、図6を参照しながら、糸状部材6の長手方向に対して直交する断面視における結び目8Cの好ましい位置について、更に詳細に述べる。図6は、本発明の1つの実施形態に係るかつらにおける擬毛の結び目の好ましい位置を示す図である。図6では、擬毛8が糸状部材6の中心領域を通る場合を示す。
【0038】
図6に示すような糸状部材6の長手方向に対して直交する断面視において、糸状部材6の中央領域Dを回転中心とする中心角度で、擬毛8の結び目8Cの好ましい位置を検討する。図6において、擬毛8Aが貫通する方向、更に詳細に述べれば、糸状部材6の中心領域D及びかつらベース4の表面Fを結ぶ方向を矢印Cで示す。矢印Cで示す方向は、糸状部材6の中心領域D及びかつらベース4の表面Fを最短距離で結ぶ方向であり、かつらベース4の表面Fと直交している。時計方向で示せば、矢印Cが12時方向に該当する。
【0039】
凹部10の中に配置された擬毛8の結び目8Cは、矢印Cに示す方向に対して、θ1以上θ2以下の範囲の角度で交わる領域に配置されるのが好ましい。θ1として10度を例示でき、θ1として80度を例示できる。つまり、矢印Cに示す方向に対して、10度以上80度以下の範囲の角度で交わる領域に結び目8Cが配置されるのが好ましい。
【0040】
擬毛8の結び目8Cが、矢印Cに示す方向に対して10度未満の角度の領域に配置される場合には、かつらベース4の表面Fの近傍に結び目8Cが配置されるので、かつら2の装着時に視認され易くなる。
【0041】
一方、擬毛8の結び目8Cが、矢印Cに示す方向に対して80度より大きい角度の領域に配置される場合には、結び目8Cがかつらベース4の厚み方向での中央領域、またはかつらベース4の裏面R側に位置することになるので、擬毛8の先端部8Dをかつらベース4の表面F側に引き出すのが困難になる。
【0042】
このように、糸状部材6の長手方向に対して直交する断面視における糸状部材6の中心角度において、中心領域D及びかつらベース4の表面Fを結ぶ方向(矢印C参照)に対して、10度以上80度以下の範囲の角度で交わる領域に擬毛8の結び目8Cが配置される場合には、かつら2の装着時に結び目8Cが視認されにくいとともに、擬毛8の先端部8Dを容易にかつらベース4の表面F側に引き出すことができる。
【0043】
また、θ1が20度であり、θ2が70度の場合がより好ましい。糸状部材6の中心領域からかつらベース4の表面側へ延びる方向(矢印C参照)に対して、20度以上70度以下の範囲であれば、上記の作用効果をより確実に実現できる。
【0044】
更に、θ1が30度であり、θ2が60度の場合が更に好ましい。これを時計方向で示せば、糸状部材6の長手方向に対して直交する断面視における糸状部材6の中心角度において、中心領域D及びかつらベース4の表面Fを結ぶ方向(矢印C参照)を12時方向とすると、1時方向から2時方向の間の範囲の領域に擬毛8の結び目8Cが配置される場合が更に好ましい。この範囲であれば、上記の作用効果を更に確実に実現できる。
【0045】
<凹部のその他の例>
図2においては、長手方向に対して直交する断面視における糸状部材6の周方向の一部の領域に凹部10が形成されている。結び目8Cで糸状部材6の外面が強く押されるので、基本的に結び目8Cが存在する領域に凹部10が形成されるが、これに限られるものではない。糸状部材6の弾性や擬毛8による締め付けの度合いによっては、締め付けられた領域が全体的に凹む場合もあり得る。次に、図7を参照しながら、凹部のその他の例を説明する。図7は、本発明の1つの実施形態に係るかつらが有する凹部のその他の例を模式的に示す平面図である。
【0046】
図7は、かつらベース4の表面F側から1本の糸状部材6を見た平面図である。締め付けられた領域が周方向で全体的に凹んで、糸状部材6の長手方向において凹部10が形成された場合を示す。
【0047】
このような凹部10に擬毛8の結び目8Cが配置された場合も、上記と同様な作用効果を奏することができる。擬毛8の結び目8Cは、外側に位置する糸状部材6の擬毛8Bで締め付けられていない領域に遮られるので、かつら2の装着時に視認されにくくなる。また、凹部10から出た擬毛8の先端部8Dは、擬毛8Cで締め付けられていない領域の外面Bに当たって押し上げられ、擬毛8がかつらベース4から立ち上がるようにして外側に延びる。
【0048】
以上のように、糸状部材6のかつらベース4の内側に位置する領域が擬毛8Cで締め付けられて形成された凹部10は、図2に示すような形状も、図7に示すような形状もあり得る。何れの場合であっても、糸状部材6の長手方向に対して直交する断面視における糸状部材6の中心角度において、中心領域D及びかつらベース4の表面Fを結ぶ方向(矢印C参照)に対して、10度以上80度以下の範囲の角度で交わる領域に擬毛8の結び目8Cが配置される場合には、かつら2の装着時に結び目8Cが視認されにくいとともに、擬毛8の先端部8Dをかつらベース4の表面F側に引き出し易くなる。
【0049】
(全般的記載)
本発明の第1の実施態様では、
かつらベースと、
前記かつらベースの糸状部材に取り付けられた擬毛と、
を備え、
前記糸状部材の長手方向に対して直交する断面視において、
前記擬毛は、前記かつらベースの表面及び裏面を結ぶ方向に前記糸状部材を貫通し、貫通部から前記糸状部材の外に出た前記擬毛が前記糸状部材の所定の領域を締め付けるようにして互いに結び付けられ、結び目から前記擬毛の先端部が表面側に延びており、
前記糸状部材の前記かつらベースにおける内側に位置する領域が前記擬毛で締め付けられており、
締め付けられて変形した前記糸状部材の外面に形成された凹部の中に前記結び目が配置されていることを特徴とするかつらである。
【0050】
本発明の第2の実施態様は、第1の実施態様において、
前記擬毛は、前記糸状部材の中心領域を通るように前記糸状部材を貫通していることを特徴とするかつらである。
【0051】
本発明の第3の実施態様は、第1または第2の実施態様において、
前記凹部から出た前記擬毛の先端部が、前記糸状部材の前記擬毛で締め付けられていない領域の外面に当たって前記かつらベースから立ち上がるように延びていることを特徴とするかつらである。
【0052】
本発明の第4の実施態様は、第2または第3の実施態様において、
前記糸状部材の長手方向に対して直交する断面視における前記糸状部材の中心角度において、前記中心領域及び前記かつらベースの表面を結ぶ方向に対して、10度以上80度以下の範囲の角度で交わる領域に前記結び目が配置されていることを特徴とするかつらである。
【0053】
本発明の第5の実施態様は、第1から第4の何れかの実施態様において、
前記凹部から出た前記擬毛の先端部が前記かつらベースにおける外側に向けて延びていることを特徴とするかつらである。
【0054】
本発明の第6の実施態様は、第1から第5の何れかの実施態様において、
前記糸状部材が、個々の糸が硬く編まれたマルチフィラメントの糸であることを特徴とするかつらである。
【0055】
本発明の実施の形態、実施の態様を説明したが、開示内容は構成の細部において変化してもよく、実施の形態、実施の態様における要素の組合せや順序の変化等は請求された本発明の範囲及び思想を逸脱することなく実現し得るものである。
【符号の説明】
【0056】
2 かつら
4 かつらベース
4A 植設領域
6、6’ 糸状部材
8、8’ 擬毛
8A 貫通部
8B 締付部
8C、8C’ 結び目
8D 先端部
10、10’ 凹部
102 かつら
106 糸状部材
108 擬毛
108C 結び目
F 表面
R 裏面
S1、S2、S1’、S2’ 糸
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2023-12-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
かつらベースと、
前記かつらベースのメッシュ状になった糸状部材に取り付けられた擬毛と、
を備え、
前記糸状部材の長手方向に対して直交する断面視において、
前記擬毛は、前記かつらベースの表面及び裏面を結ぶ方向に前記糸状部材を貫通し、貫通部から前記糸状部材の外に出た前記擬毛が前記糸状部材の所定の領域を締め付けるようにして互いに結び付けられ、結び目から前記擬毛の先端部が表面側に延びており、
かつら装着時における前記かつらベースの頭頂部側を内側とし、前記かつらベースの外縁側を外側とすると、
前記糸状部材の前記かつらベースにおける内側に位置する領域が前記擬毛で締め付けられており、
締め付けられて変形した前記糸状部材の外面に形成された凹部の中に前記結び目が配置されていることを特徴とするかつら。
【請求項2】
前記擬毛は、前記糸状部材の中心領域を通るように前記糸状部材を貫通していることを特徴とする請求項1に記載のかつら。
【請求項3】
前記凹部から出た前記擬毛の先端部が、前記糸状部材の前記擬毛で締め付けられていない領域の外面に当たって前記かつらベースから立ち上がるように延びていることを特徴とする請求項1に記載のかつら。
【請求項4】
前記糸状部材の長手方向に対して直交する断面視における前記糸状部材の中心角度において、前記中心領域及び前記かつらベースの表面を結ぶ方向に対して、10度以上80度以下の範囲の角度で交わる領域に前記結び目が配置されていることを特徴とする請求項2に記載のかつら。
【請求項5】
前記凹部から出た前記擬毛の先端部が前記かつらベースにおける外側に向けて延びていることを特徴とする請求項1に記載のかつら。
【請求項6】
前記糸状部材が、個々の糸が硬く編まれたマルチフィラメントの糸であることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載のかつら。