(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112673
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】包装用紙
(51)【国際特許分類】
B65D 65/42 20060101AFI20240814BHJP
D21H 19/82 20060101ALI20240814BHJP
D21H 19/44 20060101ALI20240814BHJP
D21H 19/36 20060101ALI20240814BHJP
B32B 27/10 20060101ALI20240814BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240814BHJP
B32B 29/00 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
B65D65/42 C
D21H19/82
D21H19/44
D21H19/36 Z
B32B27/10
B32B27/30 A
B32B29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017882
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】兼子 了
(72)【発明者】
【氏名】浦崎 淳
(72)【発明者】
【氏名】池澤 善実
(72)【発明者】
【氏名】松本 真一郎
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
4L055
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AB02
3E086AC07
3E086AD14
3E086BA04
3E086BA14
3E086BA15
3E086BA24
3E086BB01
3E086BB02
3E086BB51
3E086BB55
3E086BB62
3E086BB68
3E086BB71
3E086BB74
3E086BB90
3E086CA01
3E086DA08
4F100AA01B
4F100AC03B
4F100AJ11C
4F100AK01B
4F100AK12C
4F100AK25B
4F100AK25C
4F100AK70C
4F100AK73B
4F100AL01C
4F100BA03
4F100BA10C
4F100CA13B
4F100DG10A
4F100EH46B
4F100EH46C
4F100GB15
4F100JB09B
4F100JD04
4F100JK12
4F100JL12
4F100YY00
4F100YY00A
4F100YY00B
4L055AA02
4L055AA03
4L055AC06
4L055AG04
4L055AG08
4L055AG27
4L055AG48
4L055AG50
4L055AG51
4L055AG59
4L055AG63
4L055AG64
4L055AG71
4L055AG76
4L055AG89
4L055AH02
4L055AH09
4L055AH11
4L055AH13
4L055AH16
4L055BE09
4L055EA07
4L055EA08
4L055EA14
4L055FA30
4L055GA05
(57)【要約】
【課題】ヒートシール性を有し、デッドホールド性及び水蒸気バリア性を従来よりも両立して有する包装用紙を提供することである。
【解決手段】課題は、紙基材と、前記紙基材の少なくとも片面に対して第一塗工層と、前記第一塗工層に対して第二塗工層とを有し、前記第二塗工層が最表層に位置し、前記紙基材の密度が0.5g/cm3以上1.2g/cm3以下であり、前記第一塗工層が水分散性樹脂及び無機顔料を含有し、前記第二塗工層がアクリル系樹脂及びワックスを含有し、並びに第一塗工層及び第二塗工層を有する側の面を測定して得られるISO/DIS-15184:1996に準拠する引っ掻き硬度(鉛筆法)によって求められる塑性変形がHB以下である包装用紙によって解決できる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材と、前記紙基材の少なくとも片面に対して第一塗工層と、前記第一塗工層に対して第二塗工層とを有し、前記第二塗工層が最表層に位置し、前記紙基材の密度が0.5g/cm3以上1.2g/cm3以下であり、前記第一塗工層が水分散性樹脂及び無機顔料を含有し、前記第二塗工層がアクリル系樹脂及びワックスを含有し、並びに第一塗工層及び第二塗工層を有する側の面を測定して得られるISO/DIS-15184:1996に準拠する引っ掻き硬度(鉛筆法)によって求められる塑性変形がHB以下である包装用紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば食品等の包装用途に使用するヒートシール性を有する包装用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば食品等の包装用途に使用する包装用紙は、封止及び包装形態等の加工を達成するためにヒートシール性を有するものがある。例えば、紙基材上にスチレンアクリル酸エステル系共重合樹脂を含有するヒートシール層を有する包装用途に好適なヒートシール紙が公知である(例えば、特許文献1参照)。
また、基材と、前記基材を被覆する被膜層と、前記被膜層上にシリカ層とを備え、前記被覆層が樹脂を含み、並びに前記シリカ層がシリカ微粒子を含む、耐油性および耐水性に加えて食品の硬質部分による破損を抑制できる食品包装シートが公知である(例えば、特許文献2参照)。特許文献2では、食品包装シートを温度25℃、相対湿度40%に保たれた高温高湿室に放置し、クレメンス型引掻き硬度試験機を用いてJIK K5600-5-4に従い引っかき硬度を測定することで傷つき性を評価する。特許文献2では、B以上の硬度であれば食品の硬質部分による破損に関して実用可能であるとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-070171号公報
【特許文献2】特開2017-024787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
包装用紙及び包装フィルムのような包装材料には、包装材料の加工工程、包装工程及び包装体の運送工程における取扱においてデッドホールド性(ひねり又は折り曲げ等の変形を受けた状態を維持できる性質)が要求される。
一方、包装用紙には、食品等の被包装物の湿気による劣化を抑制する観点及び衛生的観点、並びに包装体の取り扱い易さの観点から、ヒートシール性だけでなく水蒸気バリア性を有するが必要である。
特許文献1に記載されるが如くのヒートシール紙では、ヒートシール性及びリサイクル時の離解性を良好にすることが目的であるために、デッドホールド性及び水蒸気バリア性の課題を含まない。
特許文献2に記載されるが如くの包装シートでは、耐油性及び耐水性を有すること並びに食品の硬質部分による破損を抑制することが目的であるために、デッドホールド性及び水蒸気バリア性の課題を含まない。
【0005】
樹脂製シート及び樹脂製フィルムと比べて、紙基材は、デッドホールド性に優れ及び水蒸気バリア性に劣る。一般に、包装用紙は、紙基材に対して水蒸気バリア性を発現する樹脂を含む塗工層又は基本的に樹脂から成るラミネート層を設けて水蒸気バリア性を得ることができる。しかしながら、前記塗工層及びラミネート層を設けた包装用紙では、従来、デッドホールド性を悪化する傾向にある。さらに、前記塗工層及びラミネート層を設けた用紙では、従来、ひねり又は折り曲げ等の変形を受けた部分の水蒸気バリア性が悪化する傾向にある。
【0006】
本発明の目的は、ヒートシール性を有し、デッドホールド性及び水蒸気バリア性を従来よりも両立して有する包装用紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、紙基材、ヒートシール性を発現する樹脂及び塗工層について検討を重ねた結果、本発明の完成に至った。すなわち、本発明の目的は以下によって達成される。
【0008】
[1]紙基材と、前記紙基材の少なくとも片面に対して第一塗工層と、前記第一塗工層に対して第二塗工層とを有し、前記第二塗工層が最表層に位置し、前記紙基材の密度が0.5g/cm3以上1.2g/cm3以下であり、前記第一塗工層が水分散性樹脂及び無機顔料を含有し、前記第二塗工層がアクリル系樹脂及びワックスを含有し、並びに第一塗工層及び第二塗工層を有する側の面を測定して得られるISO/DIS-15184:1996に準拠する引っ掻き硬度(鉛筆法)によって求められる塑性変形がHB以下である包装用紙。
【発明の効果】
【0009】
本発明の包装用紙は、ヒートシール性を有し、デッドホールド性及び水蒸気バリア性を従来よりも両立して有する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
包装用紙は、紙基材と、前記紙基材の少なくとも片面に対して第一塗工層と、前記第一塗工層に対して第二塗工層とを有し、なおかつ前記第二塗工層が最表層に位置する。すなわち、包装用紙は、紙基材に対して、紙基材に近い方から第一塗工層及び第二塗工層を有し、なおかつ第二塗工層が最表層となる。最表層となる第二塗工層がヒートシール性を発現する。
【0011】
いくつかの実施態様において、包装用紙は、紙基材の両面に第一塗工層及び第二塗工層を有する。この理由は、包装用紙の表裏に関係なく取り扱いができるからである。
いくつかの実施態様において、包装用紙は、紙基材の片面に対してのみ第一塗工層及び第二塗工層を有する。この理由は、製造コストの観点で有利だからである。
いくつかの実施態様において、包装用紙は、紙基材の片面(当該面を「表面」と定義する。)に第一塗工層及び第二塗工層を有する場合、紙のカール防止又は寸法安定性の向上等を目的として紙基材の裏面にバックコート層を有する。
いくつかの実施態様において、包装用紙は、紙基材と第一塗工層との間及び/又は第一塗工層と第二塗工層との間に従来公知のガスバリア層を有する。この理由は、包装用紙がガスバリア性を有することができるからである。
【0012】
第一塗工層は、紙基材が有する空隙を目止めする機能及び水蒸気バリア性の発現を補助する機能を有する。包装用紙は、紙基材の空隙に起因して第二塗工層に欠陥を発生する場合がある。包装用紙は、目止めする機能を有する第一塗工層に対して第二塗工層を設けることによって欠陥の発生を抑制することができる。例えば、包装用紙は、第二塗工層に欠陥が存在する場合、水蒸気バリア性が悪化する傾向を示す。また、包装用紙は、第二塗工層に欠陥が存在する場合、ヒートシール時において包装用紙の第二塗工層どうしの密着に悪影響し、結果としてヒートシール性が悪化する傾向を示す。
【0013】
第一塗工層は、水分散性樹脂及び無機顔料を含有する。
水分散性樹脂は、塗工紙分野で従来公知のものである。水分散性樹脂とは、水溶性ではないものの水中に分散することが可能な樹脂である。水分散性樹脂は、水分散状態から一旦乾燥した後は熱水にも実質的に溶解しない点で水溶性樹脂と区別される。水分散性樹脂は、例えば、スチレンブタジエン系共重合樹脂、アクリロニトリルブタジエン系共重合樹脂及びスチレンブタジエンアクリロニトリル系共重合樹脂等の共役ジエン系共重合樹脂、(メタ)アクリル酸エステル系重合樹脂、スチレン(メタ)アクリル酸エステル系共重合樹脂及び(メタ)アクリル酸エステルブタジエン系共重合樹脂等のような水分散性のアクリル系樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル系共重合樹脂及び塩化ビニリデンアクリロニトリル系共重合樹脂等のビニル系共重合樹脂、ポリウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、ポリエステル系樹脂、並びにこれらの各種変性共重合樹脂、メラミン樹脂及び尿素樹脂等の熱硬化合成樹脂、並びに天然ゴム等を挙げることができる。水分散性樹脂は、これらから成る群から選ばれる一種又は二種以上である。
いくつかの実施態様において、包装用紙は、第一塗工層の水分散性樹脂がスチレンブタジエン系共重合樹脂である。この理由は、下記無機顔料への接着に優れるスチレンブタジエン系共重合樹脂の属性によって第一塗工層の被膜を良好に形成するため、第一塗工層の紙基材が有する空隙を目止めする機能及び水蒸気バリア性の発現を補助する機能が良化するからである。
スチレンブタジエン系共重合樹脂は、樹脂の主鎖を構成する単量体としてスチレン系単量体及びブタジエンの合計が樹脂の主鎖において50モル%超を占めるものである。スチレン系単量体は、例えば、スチレン及びα-メチルスチレン等のビニル基に置換基を有するスチレン誘導体、並びにビニルトルエン及びp-クロルスチレン等のベンゼン環に置換基を有する誘導体を挙げることができる。少なくとも一つの実施態様において、スチレンブタジエン系共重合樹脂は、スチレン系単量体の少なくとも一種がスチレンである。この理由は、材料として入手し易いからである。
【0014】
無機顔料は、塗工紙分野で従来公知のものである。無機顔料は、例えば、通常のカオリン、デラミネーティッドカオリン、焼成カオリン及びエンジニアードカオリン等の各種カオリン、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、シリカ、珪酸アルミニウム、珪藻土、活性白土、アルミナ、アルミナ水和物、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、炭酸マグネシウム並びに水酸化マグネシウム等を挙げることができる。無機顔料は、これらから成る群から選ばれる一種又は二種以上である。
いくつかの実施態様において、包装用紙は、第一塗工層の無機顔料が各種カオリンから成る群から選ばれる一種又は二種以上である。この理由は、表面電荷を有して上記水分散性樹脂との接着に優れる各種カオリンの属性によって第一塗工層の被膜を良好に形成するため、第一塗工層の、紙基材が有する空隙を目止めする機能及び水蒸気バリア性の発現を補助する機能が良化するからである。
【0015】
いくつかの実施態様において、第一塗工層の水分散性樹脂がスチレンブタジエン系共重合樹脂でありかつ無機顔料が各種カオリンから成る群から選ばれる一種又は二種以上である。
少なくとも一つの実施態様において、第一塗工層の水分散性樹脂がスチレンブタジエン系共重合樹脂でありかつ無機顔料がカオリンである。この理由は、第一塗工層の紙基材が有する空隙を目止めする機能及び水蒸気バリア性の発現を補助する機能が、より良化するからである。
【0016】
いくつかの実施態様において、第一塗工層における水分散性樹脂と無機顔料との含有質量比は、水分散性樹脂100質量部に対して無機顔料が100質量部以上300質量部以下である。この理由は、第一塗工層の紙基材が有する空隙を目止めする機能及び水蒸気バリア性の発現を補助する機能が良化するからである。
【0017】
いくつかの実施態様において、第一塗工層は、必要に応じて、塗工紙分野で従来公知の各種添加剤を含有することができる。添加剤は、例えば、上記水分散性樹脂以外の各種樹脂、界面活性剤、分散剤、増粘剤、流動性改良剤、有機顔料、カチオン化剤、滑剤、耐水化剤、消泡剤、発泡剤、浸透剤、着色剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤及びバリア剤等を挙げることができる。
【0018】
いくつかの実施態様において、第一塗工層は、第一塗工層を形成する乾燥固形分に対して水分散性樹脂及び無機顔料の合計が80質量%以上である。また、いくつかの実施態様において、第一塗工層の塗工量は、紙基材の片面あたり乾燥固形分で5g/m2以上20g/m2以下である。これらの理由は、材料コストを抑えながら、第一塗工層の紙基材が有する空隙を目止めする機能及び水蒸気バリア性の発現を補助する機能が良化するからである。
【0019】
第二塗工層は、アクリル系樹脂及びワックスを含有する。
上記アクリル系樹脂は、アクリル酸系単量体を樹脂の主鎖を構成する単量体として50モル%超で含有する樹脂である。アクリル酸系単量体は、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸塩及び(メタ)アクリル酸エステルを挙げることができる。(メタ)アクリル酸塩の例としては、(メタ)アクリル酸リチウム、(メタ)アクリル酸ナトリウム、メタアクリル酸カリウム及び2-スルホエチル(メタ)アクリル酸ナトリウム等を挙げることができる。(メタ)アクリル酸エステルの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-アミル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸デシル及び(メタ)アクリル酸ウンデシル等を挙げることができる。さらに、アクリル酸系単量体の例としては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、モノ(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル、モノ(メタ)アクリル酸グリセロール、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸(ポリ)エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,2-プロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,3-プロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,3-ブチレングリコール、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、テトラ(メタ)アクリル酸テトラメチロールメタン、ジ(メタ)アクリル酸1,4-ブタンジオール、ジ(メタ)アクリル酸1,6-ヘキサンジオール、ジ(メタ)アクリル酸ネオペンチルグリコール、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸ジアセトン、並びに(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-(2-エトキシエトキシ)エチル、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸アセトニル、(メタ)アクリル酸2-(アセトアセチルオキシ)エチル、及び(メタ)アクリル酸(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル等を挙げることができる。
【0020】
アクリル系樹脂は、アクリル酸系単量体以外にアクリル酸系単量体と共重合可能な他の単量体を含有することができる。他の単量体の例としては、ブタジエン、スチレン系単量体、酢酸ビニル、塩化ビニル、(メタ)アクリロニトリル、エチレン、プロピレン、ジビニルベンゼン、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N′-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ビニルスルホン酸ナトリウム、p-スチレンスルホン酸ナトリウム、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、3-アリロキシ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンスチレン化フェニル硫酸ナトリウム、グリセリンモノアリルエーテルモノスルホコハク酸ナトリウム、(メタ)アクリルアミドステアリン酸ナトリウム、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、アクロレイン、ホルミルスチロール、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、(メタ)アクリロイルオキシアルキルプロペナール、及びジアセトン(メタ)アクリルアミド等を挙げることができる。
【0021】
いくつかの実施態様において、アクリル系樹脂は、上記アクリル酸系単量体から成る群から選ばれる一種又は二種以上の単量体を重合して成る樹脂である。
いくつかの実施態様において、アクリル系樹脂は、上記アクリル酸系単量体から成る群から選ばれる一種又は二種以上の単量体と、上記アクリル酸系単量体以外のアクリル酸系単量体と共重合可能な他の単量体から成る群から選ばれる一種又は二種以上とを共重合して成る樹脂である。
いくつかの実施態様において、アクリル系樹脂は、上記アクリル酸系単量体から成る群から選ばれる一種又は二種以上の単量体と、スチレン系単量体から成る群から選ばれる一種又は二種以上の単量体とを少なくとも共重合して成るスチレンアクリル系共重合樹脂である。少なくとも一つの実施態様において、アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルから成る群から選ばれる一種又は二種以上のアクリル酸系単量体とスチレンとを少なくとも共重合して成るスチレンアクリル系共重合樹脂である。
これらの理由は、包装用紙の水蒸気バリア性が良化するからである。
【0022】
アクリル系樹脂は、公知の乳化重合法によって合成することができる。合成は、例えば、所定の反応容器に各単量体、乳化剤及び水を配合し、ラジカル重合開始剤を加えて撹拌及び加熱する方法である。共重合樹脂において、各単量体の含有質量比率は、反応容器に配合する各単量体の配合量で調整できる。
【0023】
ワックスとは、蝋とも称され、化学的に厳密な意味において、脂肪酸と水に不溶性な高級一価アルコール類又は二価アルコール類とのエステルをいう。本発明においてワックスとは、化学的に厳密な意味だけでなく蝋状物質を含む広義的な意味として従来公知のワックスを指す。ワックスは、天然系ワックスと、炭化水素類、脂肪酸エステル類、脂肪酸アミド類、エーテル類、アミン類及びケトン類等である合成系ワックスとに大別できる。天然系ワックスは、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、モンタンワックス、カルナバワックス及びキャンデリラワックス等を挙げることができる。また、合成系ワックスは、例えば、ポリエチレンワックス及びポリプロピレンワックス等のポリオレフィン系ワックス、エーテル類に該当するポリアルキレングリコール等を挙げることができる。ワックスは、これらから成る群から選ばれる一種又は二種以上である。
【0024】
いくつかの実施態様において、第二塗工層におけるアクリル系樹脂とワックスとの含有質量比は、アクリル系樹脂100質量部に対してワックス3質量部以上15質量部以下である。いくつかの実施態様において、ワックスは、パラフィンワックスである。
これらの理由は、包装用紙のシール性を著しく悪化させることがなく、かつデッドホールド性及び水蒸気バリア性を良化することができるからである。
【0025】
第二塗工層は、上記アクリル系樹脂以外に必要に応じて従来公知の各種添加剤を含有することができる。添加剤は、例えば、上記アクリル系樹脂以外の各種樹脂、無機顔料、有機顔料、界面活性剤、分散剤、増粘剤、流動性改良剤、カチオン化剤、ワックス以外の滑剤、耐水化剤、消泡剤、発泡剤、浸透剤、着色剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤及び防バイ剤等を挙げることができる。
【0026】
いくつかの実施態様において、第二塗工層は、第二塗工層を形成する乾燥固形分に対してアクリル系樹脂及びワックスの合計が80質量%以上である。また、いくつかの実施態様において、第二塗工層の塗工量は、紙基材の片面あたり乾燥固形分として5g/m2以上20g/m2以下である。これらの理由は、デッドホールド性及び水蒸気バリア性が良化するからである。
【0027】
包装用紙の実施形態では、被包装物と対向する包装用紙の面が第一塗工層及び第二塗工層を有する側である。包装用紙は、被包装物が食品等を包装した一次包装体であって、前記一次包装体の1つ又は2つ以上を被包装物として内包する二次包装用紙に好適である。
【0028】
紙基材は、木材パルプ及び/又は非木材パルプから成るスラリーに対して填料、サイズ剤、バインダー、定着剤、歩留り剤及び紙力剤等の各種添加剤を必要に応じて添加した紙料を、酸性、中性又はアルカリ性の条件で、従来公知の抄紙方法によって抄造した抄造紙、前記抄造紙をサイズプレス液でサイズプレス処理した原紙、前記抄造紙を表面処理液で表面処理した原紙、又は前記抄造紙若しくは前記原紙に対してカレンダー処理を施した普通紙である。上記紙料には、その他の添加剤として顔料分散剤、嵩高剤、増粘剤、流動性改良剤、ピッチコントロール剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、保湿剤、防腐剤、防バイ剤、耐水化剤、湿潤紙力増強剤及び乾燥紙力増強剤等から選ばれる一種又は二種以上を、本発明の所望の効果を損なわない範囲で、適宜添加することができる。
加えて紙基材は、例えば、前記抄造紙、前記原紙又は前記普通紙に印刷適性向上のための塗工層を設けた塗工紙、クラフト紙、片艶紙及びトレーシングペーパー等を挙げることができる。
【0029】
カレンダー処理とは、ロール間に紙を通すことによって平滑性及び厚みを平均化する処理である。カレンダー処理の装置は、例えば、マシンカレンダー、ソフトニップカレンダー、スーパーカレンダー、多段カレンダー、マルチニップカレンダー等を挙げることができる。
【0030】
木材パルプは、製紙分野で従来公知のものである。木材パルプは、例えば、LBKP(Leaf Bleached Kraft Pulp)及びNBKP(Needle Bleached Kraft Pulp)等の化学パルプ、GP(Groundwood Pulp)、PGW(Pressure GroundWood pulp)、RMP(Refiner Mechanical Pulp)、TMP(ThermoMechanical Pulp)、CTMP(ChemiThermoMechanical Pulp)、CMP(ChemiMechanical Pulp)及びCGP(ChemiGroundwood Pulp)等の機械パルプ、並びにDIP(DeInked Pulp)等の古紙パルプを挙げることができる。
非木材パルプは、製紙分野で従来公知の非木材繊維からなるパルプである。非木材繊維の原料は、例えば、コウゾ、ミツマタ及びガンピ等の木本靭皮、亜麻、大麻及びケナフ等の草本靭皮、マニラ麻、アバカ及びサイザル麻等の葉繊維、イネわら、ムギわら、サトウキビバカス、タケ及びエスパルト等の禾本科植物、並びにワタ及びリンター等の種毛を挙げることができる。
紙基材の木材パルプ及び/又は非木材パルプは、前記木材パルプ及び前記非木材パルプから成る群から選ばれる一種又は二種以上である。
【0031】
填料は、製紙分野で従来公知の顔料である。顔料は、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、シリカ、珪酸アルミニウム、珪藻土、活性白土、アルミナ、アルミナ水和物、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、炭酸マグネシウム及び水酸化マグネシウム等の無機顔料を挙げることができる。さらに、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン系プラスチックピグメント、尿素樹脂、メラミン樹脂及びマイクロカプセル等の有機顔料を挙げることができる。
紙基材の填料は、前記無機顔料及び前記有機顔料から成る群から選ばれる一種又は二種以上である。
【0032】
いくつかの実施態様において、紙基材は、填料を実質的に含有しない。この理由は、包装用紙の水蒸気バリア性が良化するからである。ここで、「填料を実質的に含有しない」とは、填料を含有することによって紙の透気性が増大する程の含有量未満を指す。例えば、填料は、紙基材中のパルプ100質量部に対して0.5質量%未満である。
【0033】
いくつかの実施態様において、紙基材の灰分は3質量%以下である。この理由は、紙基材の灰分が3質量%以下であれば紙基材の透気性の増大が無く、得られる包装用紙の水蒸気バリア性に有利になるからである。紙基材の灰分は、ISO1762:2001「Paper, board and pulps - Determination of residue(ash) on ignition at 525 degree C」に準拠して求められる値である。
【0034】
サイズ剤は、製紙分野で従来公知の内添サイズ剤である。内添サイズ剤は、例えば、酸性紙であればロジン系サイズ剤、中性紙であればアルケニル無水コハク酸、アルキルケテンダイマー、中性ロジン系サイズ剤及びカチオン性スチレンアクリル系サイズ剤等を挙げることができる。
また、サイズプレス液に用いる表面サイズ剤は、製紙分野で従来公知のものである。表面サイズ剤は、例えば、澱粉系サイズ剤、セルロース系サイズ剤、ポリビニルアルコール系サイズ剤、スチレンアクリル系サイズ剤、オレフィン系サイズ剤、スチレンマレイン酸系サイズ剤、及びアクリルアミド系サイズ剤等を挙げることができる。
【0035】
サイズプレスは、製紙分野で従来公知のサイズプレス装置である。サイズプレス装置は、例えば、インクラインドサイズプレス、ホリゾンタルサイズプレス、フィルムトランスファー方式としてロッドメタリングサイズプレス、ロールメタリングサイズプレス、ブレードメタリングサイズプレスを、ロッドメタリングサイズプレスとしてシムサイザー、オプティサイザー、スピードサイザーを、ロールメタリングサイズプレスとしてゲートロールコーター、ビルブレードコーター、ツインブレードコーター、ベルバパコーター、タブサイズプレス、及びカレンダーサイズプレス等を挙げることができる。
【0036】
包装用紙は、紙基材の密度が0.5g/cm3以上1.2g/cm3以下である。紙基材の密度は、ISO534:2011「Paper and board-Determination of thickness, density and specific volume」に準じて求められる値である。紙基材の密度は、包装用紙の状態から包装用紙の第一塗工層及び第二塗工層を削除して得た紙基材から求めることができる。紙基材の密度は、製紙分野で従来公知の方法、例えば、パルプ種、パルプの叩解度、填料の種類及び含有量、抄紙工程における紙料の供給量、抄紙工程におけるプレスパート条件、抄紙工程における乾燥条件、並びにカレンダー処理の有無若しくはカレンダー処理条件によって調整できる。
【0037】
紙基材に対して第一塗工層及び第二塗工層のような塗工層を設ける方法は、製紙分野で従来公知の方法であって、特に限定されない。塗工層を設ける方法は、例えば、製紙分野で従来公知の塗工装置及び乾燥装置を用いて塗工層塗工液を塗工及び乾燥する方法を挙げることができる。塗工装置は、例えば、フィルムプレスコーター、ロッドコーター、エアーナイフコーター、ロッドブレードコーター、バーコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、カーテンコーター、Eバーコーター、フィルムトランスファーコーター等を挙げることができる。乾燥装置は、例えば、直線トンネル乾燥機、アーチドライヤー、エアループドライヤー、サインカーブエアフロートドライヤー等の熱風乾燥機、赤外線加熱ドライヤー、マイクロ波等を利用した乾燥機等の各種乾燥装置を挙げることができる。実験室における包装用紙の試作では、紙基材に対して塗工層塗工液を手塗用ワイヤーバーで塗工及び簡易熱風乾燥機で乾燥する方法を採用することができる。
【0038】
包装用紙は、第一塗工層を塗工及び乾燥して設けた後にカレンダー処理を施すことができる。また、包装用紙は、第二塗工層を塗工及び乾燥して設けた後にカレンダー処理を施すことができる。
【0039】
第一塗工層のための塗工層塗工液が水分散性樹脂、無機顔料及び必要に応じて各種添加剤を含有することによって、並びに第二塗工層のための塗工層塗工液がアクリル系樹脂、ワックス及び必要に応じて各種添加剤を含有することによって、包装用紙の第一塗工層は水分散性樹脂及び無機顔料を含有することができ、また、第二塗工層はアクリル系樹脂及びワックスを含有することができる。
【0040】
包装用紙は、第一塗工層及び第二塗工層を有する側の面を測定して得られるISO/DIS-15184:1996に準拠する引っ掻き硬度(鉛筆法)によって求められる塑性変形がHB以下である。ここで、鉛筆法の評価に使用する鉛筆の硬度は以下である。「HB以下」の「以下」とは(軟)側を指す。
(軟)6B-5B-4B-3B-2B-B-HB-
F-H-2H-3H-4H-5H-6H(硬)
第一塗工層及び第二塗工層を有する側の面の引っ掻き硬度によって求められる塑性変形は、塗工紙分野で従来公知の方法、例えば、第二塗工層の樹脂成分を増量、第二塗工層に粒径分布の広い無機顔料の含有、第二塗工層を設ける際の乾燥速度の低下、第二塗工層へのカレンダー処理及び強めの処理条件によって上記鉛筆の硬度が(硬)側になる傾向を示す。
【0041】
包装用紙は、第一塗工層が水分散性樹脂及び無機顔料を含有し、第二塗工層がアクリル系樹脂及びワックスを含有し、紙基材の密度が0.5g/cm3以上1.2g/cm3以下であり、並びに第一塗工層及び第二塗工層を有する側の面で測定した包装用紙の塑性変形がHB以下であることの相乗効果によって、ヒートシール性を有しながらデッドホールド性及び水蒸気バリア性を従来よりも両立して有することができる。
紙基材の密度又は包装用紙の塑性変形が上記範囲から外れるとデッドホールド性及び水蒸気バリア性を従来よりも両立して得ることができない。例えば、紙基材の密度が0.5g/cm3未満では、水蒸気バリア性が悪化する傾向を示す。紙基材の密度が1.2g/cm3超では、デッドホールド性が悪化する傾向を示す。包装用紙の塑性変形がHB超では、デッドホールド性が悪化する傾向を示す。
【実施例0042】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されない。ここで「質量部」及び「質量%」は、乾燥固形分量あるいは実質成分量の各々「質量部」及び「質量%」を表す。塗工層の塗工量は乾燥固形分量を表す。
【0043】
<紙基材>
以下の紙料を調成した。
LBKP(濾水度350~480mlcsf) 50質量部
NBKP(濾水度350~480mlcsf) 50質量部
硫酸バンド 1質量部
ロジン系サイズ剤 0.4質量部
紙力剤 0.9質量部
【0044】
上記配合の紙料を長網抄紙機を用いてプレスパート及び乾燥の条件を調整しつつ抄造し、表面サイズ剤として酸化澱粉をサイズプレスで片面当たり1g/m2付与して、坪量40g/m2の原紙を得た。これに、所定の密度になるように条件を調整しつつカレンダー処理を施して紙基材を得た。
【0045】
紙基材の密度は、ISO534:2011「Paper and board-Determination of thickness, density and specific volume」に準じて測定した。
【0046】
<第一塗工層用の塗工層塗工液>
水を媒体として以下の第一塗工層用の塗工層塗工液を調製した。
カオリン 200質量部
樹脂 100質量部
【0047】
<第二塗工層用の塗工層塗工液>
水を媒体として以下の第二塗工層用の塗工層塗工液を調製した。
樹脂 100質量部
ワックス 10質量部
【0048】
ここで、表1において、樹脂Aにはアクリル酸エステル系共重合樹脂を、樹脂Bにはスチレンブタジエン系共重合樹脂を、樹脂Cにはポリビニルアルコールを、樹脂Dにはスチレンアクリル酸エステル系共重合樹脂を、樹脂Eにはエチレンアクリル酸エステル系共重合樹脂を、ワックスAにはパラフィンワックスを、及びワックスBにはポリプロピレンワックスを用いた。
【0049】
<第一塗工層>
紙基材の片面に対して、第一塗工層用の塗工層塗工液をエアーナイフコーターで塗工及び熱風乾燥機で乾燥した。第一塗工層の塗工量は、10g/m2になるようにコーター条件を調整した。
【0050】
<第二塗工層用の塗工層塗工液>
第一塗工層に対して、第二塗工層用の塗工層塗工液をロッドコーターで塗工及び熱風乾燥機で乾燥した。第二塗工層の塗工量は、10g/m2になるようコーター条件を調整した。
【0051】
紙基材に対して第一塗工層及び第二塗工層を設けた包装用紙について、下記項目の評価を行った。
【0052】
<塑性変形>
包装用紙の塑性変形は、ISO/DIS-15184:1996に準拠する引っ掻き硬度(鉛筆法)により測定した。測定には包装用紙の第一塗工層及び第二塗工層を有する側の面を用いた。鉛筆の硬度がHB以下となった包装用紙をA、及び鉛筆の硬度がHB超となった包装用紙をBとした。
【0053】
<ヒートシール性>
同じ構成の2枚の包装用紙を用いて、包装用紙の第二塗工層を有する側の面どうしを対向させてヒートシーラーにより圧力0.5MPa、130℃、1秒間の条件によってヒートシールを施した。
包装用紙のヒートシール性の評価は、ヒートシールした包装用紙を15mm幅で切り出し、温度23℃、相対湿度50%で24時間静置後、引張り試験機を用いて、引張り速度300mm/分、引張り角度180度でヒートシール箇所の剥離強度を測定することによって行った。測定は、サンプル数5部で行い、5部の平均値とした。本発明において、包装用紙は、測定値が2N/15mm以上であればヒートシール性を有するものとする。
包装用紙のヒートシール性を評価した結果、各実施例及び各比較例の包装用紙では、測定値が2N/15mm以上となって、ヒートシール性を有した。
【0054】
<水蒸気バリア性>
包装用紙の水蒸気バリア性の評価は、JIS Z0208:1976「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)」に準じて実施した水蒸気の透湿度に関する測定結果から行った。測定は、第一塗工層及び第二塗工層を有する側を内側にして測定した。温湿度の条件は、40±0.5℃,90±2%とした。本発明において、包装用紙は、AまたはBの評価であれば従来以上の水蒸気バリア性を有するものとした。
A:透湿度50g/m2・24h以下。
B:上記Aよりも劣るものの、透湿度80g/m2・24h以下。
C:上記Bより劣り、透湿度80g/m2・24h超。
【0055】
<デッドホールド性>
包装用紙を2cm×4cm角に裁断し、これを試験片とした。該試験片を、温度23℃及び湿度65%RHの雰囲気下で24時間放置した。放置後に、試験片の4cm辺において二つ折りを施し、折り目箇所に200gの重りを5秒間載せた。5秒後、折り目箇所から重りを除去した。包装用紙のデッドホールド性の評価は、重り除去後、5秒間静置して包装用紙の折り目箇所の開いた角度を測定することで行った。二つ折りは、同一種の試験片について、第一塗工層及び第二塗工層を有する側を内側にして折る場合及び第一塗工層及び第二塗工層を有する側を外側に折る場合の二パターンで行った。内側折りで試験片5枚及び外側折りで試験片5枚を用いて、それぞれの平均値を求め、小数点以下を四捨五入した。内側折り及び外側折りにおいて、開いた角度の大きい方を最終的な測定値とした。
包装用紙は、開いた角度が小さいもの程デッドホールド性が良好であって、包装用紙のデッドホールド性は、平均値から下記の基準で評価した。本発明において、包装用紙は、AまたはBの評価であれば従来以上のデッドホールド性を有するものとした。
A:50度以下。
B:90度以下50度超。
C:90度超。
【0056】
結果を表1に示す。
【0057】
【0058】
表1から、本発明の包装用紙に該当する実施例1~6は、ヒートシール性を有しつつ、デッドホールド性及び水蒸気バリア性を従来よりも両立して有する、と分かる。
一方、本発明の包装用紙の構成を満足しない比較例1~6は、ヒートシール性を有しつつ、デッドホールド性及び水蒸気バリア性を従来よりも両立して有することができない、と分かる。