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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112682
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】手摺乾燥装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 31/02 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
B66B31/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017901
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川口 拓洋
(72)【発明者】
【氏名】中村 知至
【テーマコード(参考)】
3F321
【Fターム(参考)】
3F321EA17
3F321GA09
3F321HA03
(57)【要約】
【課題】復旧作業の際に手摺を容易に乾燥させることができる手摺乾燥装置を提供する。
【解決手段】手摺乾燥装置は、乗客コンベアの手摺を乾燥させるための装置であって、温風を送風する送風機と、袋状を呈し、送風機の温風を受け入れて送風機からの温風を内部に溜めることが可能な接触体と、接触体に設けられ、接触体の内部に溜められる気体の圧力を調整可能な調圧体と、を備え、調圧体は、手摺の一部において手摺の内側に納められた接触体が送風機からの温風によって手摺の内側に接触するまで膨らむような動作圧力となるように、接触体の内部の圧力を調整する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客コンベアの手摺を乾燥させるための装置であって、
温風を送風する送風機と、
袋状を呈し、前記送風機の温風を受け入れて前記送風機からの温風を内部に溜めることが可能な接触体と、
前記接触体に設けられ、前記接触体の内部に溜められる気体の圧力を調整可能な調圧体と、
を備え、
前記調圧体は、前記手摺の一部において前記手摺の内側に納められた前記接触体が前記送風機からの温風によって前記手摺の内側に接触するまで膨らむような動作圧力となるように、前記接触体の内部の圧力を調整する手摺乾燥装置。
【請求項2】
前記接触体は、
吸湿性の高い素材からなり、前記手摺の内側に納められたときに前記手摺の内側の面に接する接触部と、
前記接触部を構成する素材よりも吸湿性が低い素材からなり、前記手摺の内部に納められたときに前記手摺の内部の面に接しない非接触部と、
を有する請求項1に記載の手摺乾燥装置。
【請求項3】
前記調圧体に設けられ、前記接触体の内部の気体の温度を検出する温度センサ、
を更に備え、
前記接触体は、一端部から前記送風機の温風を受け入れ、
前記調圧体は、前記接触体における前記一端部とは反対側の他端部に設けられ、
前記送風機は、前記温度センサが検出した温度が閾値温度より高くなった場合に送風を停止する請求項1に記載の手摺乾燥装置。
【請求項4】
前記調圧体に設けられ、前記接触体の内部の気体の湿度を検出する湿度センサ、
を更に備え、
前記接触体は、一端部から前記送風機の温風を受け入れ、
前記調圧体は、前記接触体における前記一端部とは反対側の他端部に設けられ、
前記送風機は、前記湿度センサが検出した湿度が閾値湿度より低くなった場合に送風を停止する請求項1に記載の手摺乾燥装置。
【請求項5】
板状を呈し、前記接触体が前記手摺の内側に納められたときに、前記手摺の一対の湾曲部の一方から他方へ渡され、前記一対の湾曲部の端部の間の空間と前記接触体との間に存在する留板、
を更に備えた請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の手摺乾燥装置。
【請求項6】
前記留板には、温度を検出する中間温度センサが設けられ、
前記送風機は、前記中間温度センサが検出した温度が警戒温度よりも高い場合に、送風を停止する請求項5に記載の手摺乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、手摺乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、手摺乾燥装置を開示する。当該手摺乾燥装置は、エスカレーターの手摺が移動する領域の途中に設けられる。手摺は、手摺乾燥装置によって、循環移動しながら乾燥され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6-100282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、エスカレーターの一部が冠水する等によって手摺が濡れている状況では、エスカレーターの運転自体が停止する。作業員は、エスカレーターを復旧させる前に手摺を乾燥させる必要がある。この場合、特許文献1に記載の手摺乾燥装置では、手摺の濡れた部分を乾燥させることができない。
【0005】
本開示は、上述の課題を解決するためになされた。本開示の目的は、復旧作業の際に手摺を容易に乾燥させることができる手摺乾燥装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る手摺乾燥装置は、乗客コンベアの手摺を乾燥させるための装置であって、温風を送風する送風機と、袋状を呈し、送風機の温風を受け入れて送風機からの温風を内部に溜めることが可能な接触体と、接触体に設けられ、接触体の内部に溜められる気体の圧力を調整可能な調圧体と、を備え、調圧体は、手摺の一部において手摺の内側に納められた接触体が送風機からの温風によって手摺の内側に接触するまで膨らむような動作圧力となるように、接触体の内部の圧力を調整する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、接触体が送風機からの温風によって手摺の内側に接触するまで膨らむ。手摺の水分は、接触体に浸透する。このため、復旧作業の際に手摺を容易に乾燥させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1における手摺乾燥装置が適用されるエスカレーターの概要図である。
図2】実施の形態1における手摺乾燥装置が適用される手摺の断面図である。
図3】実施の形態1における手摺乾燥装置の構成を示す上面図である。
図4】実施の形態1における手摺乾燥装置の接触体の上面図である。
図5】実施の形態1における手摺乾燥装置が適用されるエスカレーターの要部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示を実施するための形態について添付の図面に従って説明する。なお、各図中、同一または相当する部分には同一の符号が付される。当該部分の重複説明は適宜に簡略化ないし省略される。
【0010】
実施の形態1.
図1は実施の形態1における手摺乾燥装置が適用されるエスカレーターの概要図である。図2は実施の形態1における手摺乾燥装置が適用される手摺の断面図である。
【0011】
図1には、乗客コンベアの一例であるエスカレーター1が示される。エスカレーター1は、建築物の上階と下階との間に設けられる。第1乗降口2aは、建築物の上階に設けられる。第2乗降口2bは、建築物の下階に設けられる。例えば、利用者は、第1乗降口2aからエスカレーター1の移動領域3、および第2乗降口2bを通って上階と下階との間を移動する。以降、左右方向は、移動領域3に沿った方向に対して垂直な方向のうちの水平な方向を意味する。
【0012】
欄干4は、左右方向において移動領域3の側方に設けられる。例えば、欄干4は、支柱を含む部材から構成される。手摺5は、無端状のベルトである。手摺5は、主に樹脂からなる。手摺5は、エスカレーター1の移動手摺として、欄干4の外周に巻き掛けられる。複数のステップ6は、無端状にそれぞれ繋げられる。複数のステップ6は、移動領域3の下方に設けられる。
【0013】
エスカレーター1が通常運転する時、複数のステップ6は、建築物の上階と下階との間を循環移動する。手摺5は、欄干4の周囲を、複数のステップ6と同期して循環移動する。この際、手摺5は、欄干4の上側を移動する部分と、欄干4の下側を移動する部分と、第1乗降口2aで欄干4の上側から下側へ折り返す部分と、第2乗降口2bで欄干4の下側から上側へ折り返す部分と、に分けられる。
【0014】
例えば、降雨、浸水、等の事象を原因として、手摺5のうちの第2乗降口2bで欄干4の下側から上側へ折り返す部分および欄干4の下側を移動する部分が濡れることがある。この場合、手摺5と欄干4との間の摩擦力が変化するため、エスカレーター1が非常停止する場合がある。その際の復旧作業において、手摺5の濡れている部分を清掃および乾燥させる作業が行われる。
【0015】
図2は、手摺5の長手方向に垂直な面による断面図を示す。手摺5は任意の部分において、同様の断面を有する。
【0016】
手摺5は、平坦部5aと一対の湾曲部5bとを有する。平坦部5aは、断面において、平坦な形状を有する部分である。一対の湾曲部5bは、平坦部5aの両端からそれぞれ延びる。一対の湾曲部5bは、互いに対称な形状を呈する。湾曲部5bは、断面において、U字状を呈する。一対の湾曲部5bは、欄干4の側方にそれぞれ位置する。一対の湾曲部5bの各々において、平坦部5aとは反対側に端部Eが形成される。一対の湾曲部5bの端部Eの間には、欄干4が通される隙間Sが形成される。
【0017】
内側面5sには、全体的に布5cが張られる。手摺5は、内側面5sで欄干4に接する。ここで、手摺5の内側とは、平坦部5aと一対の湾曲部5bと隙間Sとに囲まれた領域である。手摺5の内側には、布5cが張られ、欄干4の一部が通される。
【0018】
次に、図3図4とを用いて、濡れた手摺5を乾かすための装置を説明する。
図3は実施の形態1における手摺乾燥装置の構成を示す上面図である。図4は実施の形態1における手摺乾燥装置の接触体の上面図である。
【0019】
手摺乾燥装置20は、手摺5の一部が欄干4から取り外された後に使用される。図3に示されるように、手摺乾燥装置20は、送風機21と接触体22と風道体23と調圧体24と温度センサ24aと湿度センサ24bと複数の留板25と信号線26とを備える。
【0020】
送風機21は、温風を生成して、送風口から送風する。例えば、送風機21が生成する温風は、送風する際に約100℃程度となる。なお、温風の温度は、100℃より高くてもよいし、100℃より低くてもよい。送風機21は、制御器21aを有する。制御器21aは、プロセッサとメモリとを含む処理回路を有する。制御器21aは、送風機21の送風動作を制御する。
【0021】
接触体22は、袋状を呈する。また、接触体22は、内部に空洞が形成された筒状を呈する。例えば、接触体22の長手方向の長さは、1m程度である。接触体22の長手方向に垂直な断面において、接触体22の周の長さは、手摺5の内側の周の長さよりも長い。例えば、接触体22の大部分の素材は、帆布、化学繊維と天然繊維との混合繊維、等の布である。接触体22の表面は、風をあまり通さない。
【0022】
風道体23は、筒状を呈する。風道体23の一端は、送風機21の送風口に取り付けられる。風道体23の他端は、接触体22の一端部に取り付けられる。風道体23の内部には、送風機21から接触体22の内部へ至る風道が形成される。即ち、風道体23は、送風機21から送風された温風を接触体22の内部へ導く。
【0023】
調圧体24は、規定の圧力を超える気体を通過させる弁、即ち気体の圧力を調整する調圧弁である。調圧体24は、接触体22の一端部とは反対側の端部である他端部に取り付けられる。調圧体24は、接触体22の他端部を塞ぐ。
【0024】
調圧体24には、温度センサ24aと湿度センサ24bとが設けられる。温度センサ24aは、調圧体24を通る気体の温度または接触体22の内部において調圧体24の近くに存在する気体の温度を検出する。湿度センサ24bは、調圧体24を通る気体の湿度または接触体22の内部において調圧体24の近くに存在する気体の湿度を検出する。
【0025】
例えば、複数の留板25の各々は、板状を呈する。複数の留板25のある一辺の長さは、手摺5における一対の湾曲部5bの端部Eの間の距離よりも長い。複数の留板25の各々には、中間温度センサ25aが設けられる。
【0026】
信号線26は、信号を伝達可能な導線である。信号線26は、送風機21の制御器21aと温度センサ24aとを電気的に接続する。信号線26は、送風機21の制御器21aと湿度センサ24bとを電気的に接続する。信号線26は、送風機21の制御器21aと複数の留板25の各々の中間温度センサ25aとを電気的に接続する。
【0027】
制御器21aは、温度センサ24aが検出した温度を示す信号、湿度センサ24bが検出した湿度を示す信号、および複数の留板25の中間温度センサ25aが検出した温度を示す信号を任意のタイミングでそれぞれ取得する。
【0028】
手摺乾燥装置20が使用されるとき、接触体22は、手摺5の内側に納められる。即ち、接触体22は、手摺5の内側の領域に配置される。複数の留板25の各々は、手摺5の内側において一対の湾曲部5bの一方から他方へ渡される。接触体22の一端部の側は、風道体23を介して送風機21によって塞がれている。接触体22の他端部の側は、調圧体24によって塞がれている。
【0029】
その後、送風機21によって、接触体22の内部に温風が送風される。接触体22は、内部に受け入れた温風が溜められることで、膨らむ。接触体22の周の長さの関係から、接触体22の表面は、手摺5の内側の面である布5cに接触する。この際、布5cに対して隙間なく接触体22が接触することが好ましい。
【0030】
調圧体24は、接触体22が布5cに接触している状態が維持される程度の圧力で接触体22の内部から気体を放出する。この際、接触体22の内部の圧力は、動作圧力の値となるよう維持される。即ち、調圧体24は、接触体22の内部の気体の圧力が動作圧力となるよう調整する。動作圧力において、接触体22は、表面が手摺5の内側の面に密着する程度に膨らむ。
【0031】
留板25は、手摺5の湾曲部5bの端部Eと接触体22との間に挟まれる。留板25は、膨らんだ接触体22が一対の湾曲部5bの間の隙間から抜け出さないように、接触体22を手摺5の内側に留める。なお、複数の留板25は、送風機21が送風を開始して接触体22がある程度膨らんだ後に、手摺5と接触体22との間に取り付けられてもよい。
【0032】
布5cとの接触部分において、濡れた布5cの水分が接触体22に浸透する。浸透した水分は、接触体22の内側を向く内面まで拡散される。接触体22の内面では、温風によって水分が蒸発する。そのため、接触体22の内部の気体の温度が低下し、かつ気体の湿度が上昇する。温度および湿度が変化した気体は、調圧体24から放出される。このように、布5cの水分が連続的に接触体22へ浸透することで、布5cは乾燥される。
【0033】
なお、接触体22は、動作圧力が維持可能な程度の通気性を有してもよい、即ち内部の気体が動作圧力を維持可能な程度の量の気体を通過させてもよい。
【0034】
布5cから接触体22へ浸透する水分がなくなったとき、即ち手摺5の乾燥が完了したとき、接触体22の内部の気体の温度が低下しなくなる、かつ気体の湿度が上昇しなくなる。そのため、送風機21からの温風によって、接触体22の内部の気体の温度が上昇して、湿度が低下する。制御器21aは、内部の気体の温度および湿度のうち少なくとも一方に基づいて、乾燥が完了したことを検知し、送風機21の送風を停止する。具体的には、温度センサ24aが測定した温度が閾値温度よりも高い場合、制御器21aは、乾燥が完了したことを検知し、送風機21の送風を停止する。または、湿度センサ24bが測定した湿度が閾値湿度よりも低い場合、制御器21aは、乾燥が完了したことを検知し、送風機21の送風を停止する。なお、制御器21aは、温度センサ24aが測定した温度が閾値温度よりも高い場合、かつ、湿度センサ24bが測定した湿度が閾値湿度よりも低い場合に、乾燥が完了したことを検知し、送風機21の送風を停止してもよい。
【0035】
送風機21が動作中、複数の留板25の中間温度センサ25aの温度が警戒温度よりも高い場合に、制御器21aは、中間温度センサ25aからの信号によって接触体22の温度が異常に高いことを検知し、送風機21の送風を停止する。このような機能は、接触体22等が異常に高温にならないようにする安全機能である。
【0036】
図4の(a)は、接触体22の長手方向に垂直な面による断面図である。図4の(b)は、接触体22の上面図である。なお、図4において、手摺5の図示が省略される。図4に示されるように、接触体22は、接触部22aと非接触部22bとに少なくとも分かれる。長手方向に垂直な面の断面図は、接触体22の任意の位置で同じものとなる。即ち、任意の当該断面において、接触部22aと非接触部22bとは、同じ位置関係となる。
【0037】
接触部22aは、手摺5が乾燥される際に、手摺5の内側の面と接触する部分である。接触部22aは、吸湿性が高い素材からなる。例えば、接触部22aは、吸湿性が高い帆布である。また、接触部22aは、通気性が比較的高い素材であることが好ましい。なお、吸湿性が高い素材は、通気性が比較的高いことが多い。断面において、接触部22aの長さは、手摺5の長手方向に垂直な断面における平坦部5aの長さよりも長い。例えば、断面において、接触部22aの長さは、手摺5の長手方向に垂直な断面における平坦部5aの長さと一対の湾曲部5bの内側部分の長さとの和よりも長くてもよい。例えば、断面において、接触部22aの長さは、手摺5の長手方向に垂直な断面における布5cの長さと等しくてもよい。
【0038】
非接触部22bは、手摺5が乾燥される際に、手摺5の内側とは接触しない部分である。断面において、非接触部22bは、接触部22aではない部分である。非接触部22bは、接触部22aの素材よりも吸湿性が低い素材からなる。なお、吸湿性が低い素材は、吸湿性の低さに比例して通気性が比較的低いことが多い。非接触部22bは、接触部22aよりも厚い。非接触部22bは、気体を通さない素材からなることが好ましい。例えば、断面において、非接触部22bの長さは、手摺5の一対の湾曲部5bの端部E間の距離と等しい。
【0039】
次に、図5を用いて、作業員が手摺5を乾燥させる作業を説明する。
図5は実施の形態1における手摺乾燥装置が適用されるエスカレーターの要部を示す図である。なお、図5では、手摺乾燥装置20の図示は省略される。
【0040】
例えば、手摺5を乾燥させる作業は、エスカレーター1の動力が停止した状態で行われる。作業員は、手摺5が欄干4に取り付けられた状態で、手摺5の濡れている部分を欄干4の上側まで移動させる。その後、図5に示されるように、作業員は、手摺5の濡れている部分を欄干4から取り外す。
【0041】
その後、作業員は、手摺5の内側の面の汚れを確認し、清掃する。これは、手摺5の内側は、埃が水等によって固まった汚れ、油汚れ、等が付いていることがあるためである。当該汚れが付いた状態では、手摺5は正常に循環移動しない。そのため、手摺5が濡れた際の復旧作業では、手摺5の内側の汚れを確認して清掃する工程が必要となる。
【0042】
その後、作業員は、手摺5を乾燥させる作業を行う。作業員は、手摺乾燥装置20の各構成を図3に示されるようにセットし、送風機21を動作させる。制御器21aによって乾燥が完了したことが検知されると、送風機21は、送風を停止する。この間、作業員は、別の箇所の復旧作業を行うことができる。
【0043】
手摺5において、まだ濡れている部分が残っている場合、作業員は、当該濡れている部分へ接触体22を移動させて、同様の手順で乾燥を開始および完了する。作業員は、手摺5の全体が乾燥するまで当該作業を繰り返す。
【0044】
以上で説明した実施の形態1によれば、手摺乾燥装置20は、送風機21と接触体22と調圧体24とを備える。乗客コンベアであるエスカレーター1の復旧作業の際に、接触体22は、欄干4から取り外された手摺5の内側に納められる。調圧体24は、接触体22が手摺5の内側に接触するまで膨らむような動作圧力となるように、接触体22の内部の圧力を調整する。このため、手摺5の内側から接触体22に水分が浸透し、手摺5が乾燥する。この際、水分が浸透した接触体22は、送風機21からの温風によって乾燥される。その結果、復旧作業の際に、エスカレーター1を動作させることなく、手摺5を乾燥させることができる。また、従来、復旧作業において、作業員は、欄干4から取り外した手摺5をドライヤー等の機器を用いて手作業で乾燥させることが多かった。本実施の形態によれば、作業員は、接触体22を手摺5の内側に納めて送風機21を動作させるだけで、手摺5を乾燥させることができる。その結果、手摺5を容易に乾燥させることができる。
【0045】
また、接触体22は、接触部22aと非接触部22bとを有する。接触部22aでは、高い吸湿性によって手摺5から水分を浸透させることがより効果的に行われる。一方で、吸湿性が低い素材は、通気性が低く容易に空気を通過させない。非接触部22bでは、手摺5から水分を浸透させる必要がない。非接触部22bに吸湿性が比較的低い素材が使用されることで、非接触部22bから内部の空気が抜けていくことが抑制される。その結果、送風機21が送風する必要のある温風が少なくなることで、乾燥に必要なエネルギーを削減することができる。
【0046】
また、手摺乾燥装置20は、温度センサ24aを更に備える。送風機21は、温度センサ24aが検出した温度が閾値温度より高くなった場合に、送風を停止する。送風機21が送風しているときに、手摺5の乾燥が完了したかどうかを作業員が逐一確認する必要がない。このため、乾燥作業の手間を削減することができる。また、乾燥が完了した後も送風機21が温風を送風することで、手摺5等の温度が異常に上昇する恐れがなくなる。このため、作業員は、手摺乾燥装置20から離れた場所で、復旧のための別の作業を行うことができる。その結果、復旧作業を効率を向上させることができる。
【0047】
また、手摺乾燥装置20は、湿度センサ24bを更に備える。送風機21は、湿度センサ24bが検出した湿度が閾値湿度より低くなった場合に、送風を停止する。乾燥作業の手間を削減することができる。また、復旧作業を効率を向上させることができる。
【0048】
また、手摺乾燥装置20は、留板25を更に備える。留板25によって、膨らんだ接触体22が一対の湾曲部5bの間にある手摺5の開口部分から飛び出すことを抑制することができる。
【0049】
また、留板25には、中間温度センサ25aが設けられる。送風機21は、中間温度センサ25aが検出した温度が警戒温度よりも高い場合に、送風を停止する。このため、より安全に手摺5を乾燥することができる。
【0050】
なお、手摺乾燥装置20には、温度センサ24aおよび湿度センサ24bのうち少なくとも一方が設けられればよい。送風機21は、設けられている方のセンサの検出結果に基づいて送風を停止してもよい。
【0051】
以上の説明をまとめると、本開示に係る技術の取りうる構成は、以下に付記として示す各構成などを含む。
(付記1)
乗客コンベアの手摺を乾燥させるための装置であって、
温風を送風する送風機と、
袋状を呈し、前記送風機の温風を受け入れて前記送風機からの温風を内部に溜めることが可能な接触体と、
前記接触体に設けられ、前記接触体の内部に溜められる気体の圧力を調整可能な調圧体と、
を備え、
前記調圧体は、前記手摺の一部において前記手摺の内側に納められた前記接触体が前記送風機からの温風によって前記手摺の内側に接触するまで膨らむような動作圧力となるように、前記接触体の内部の圧力を調整する手摺乾燥手段。
(付記2)
前記接触体は、
吸湿性の高い素材からなり、前記手摺の内側に納められたときに前記手摺の内側の面に接する接触部と、
前記接触部を構成する素材よりも吸湿性が低い素材からなり、前記手摺の内部に納められたときに前記手摺の内部の面に接しない非接触部と、
を有する付記1に記載の手摺乾燥装置。
(付記3)
前記調圧体に設けられ、前記接触体の内部の気体の温度を検出する温度センサ、
を更に備え、
前記接触体は、一端部から前記送風機の温風を受け入れ、
前記調圧体は、前記接触体における前記一端部とは反対側の他端部に設けられ、
前記送風機は、前記温度センサが検出した温度が閾値温度より高くなった場合に送風を停止する付記1または付記2に記載の手摺乾燥装置。
(付記4)
前記調圧体に設けられ、前記接触体の内部の気体の湿度を検出する湿度センサ、
を更に備え、
前記接触体は、一端部から前記送風機の温風を受け入れ、
前記調圧体は、前記接触体における前記一端部とは反対側の他端部に設けられ、
前記送風機は、前記湿度センサが検出した湿度が閾値湿度より低くなった場合に送風を停止する付記1から付記3のいずれか一項に記載の手摺乾燥装置。
(付記5)
板状を呈し、前記接触体が前記手摺の内側に納められたときに、前記手摺の一対の湾曲部の一方から他方へ渡され、前記一対の湾曲部の端部の間の空間と前記接触体との間に存在する留板、
を更に備えた付記1から付記4のいずれか一項に記載の手摺乾燥装置。
(付記6)
前記留板には、温度を検出する中間温度センサが設けられ、
前記送風機は、前記中間温度センサが検出した温度が警戒温度よりも高い場合に、送風を停止する付記5に記載の手摺乾燥装置。
【符号の説明】
【0052】
1 エスカレーター、 2a 第1乗降口、 2b 第2乗降口、 3 移動領域、 4 欄干、 5 手摺、 5a 平坦部、 5b 湾曲部、 5c 布、 5s 内側面、 20 手摺乾燥装置、 21 送風機、 21a 制御器、 22 接触体、 22a 接触部、 22b 非接触部、 23 風道体、 24 調圧体、 24a 温度センサ、 24b 湿度センサ、 25 留板、 25a 中間温度センサ、 26 信号線、 E 端部、 S 隙間
図1
図2
図3
図4
図5