IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学の特許一覧

特開2024-112684光反応装置、光触媒性能試験装置、光触媒性能試験方法
<>
  • 特開-光反応装置、光触媒性能試験装置、光触媒性能試験方法 図1
  • 特開-光反応装置、光触媒性能試験装置、光触媒性能試験方法 図2
  • 特開-光反応装置、光触媒性能試験装置、光触媒性能試験方法 図3
  • 特開-光反応装置、光触媒性能試験装置、光触媒性能試験方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112684
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】光反応装置、光触媒性能試験装置、光触媒性能試験方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/59 20060101AFI20240814BHJP
   G01N 21/77 20060101ALI20240814BHJP
   B01J 35/39 20240101ALI20240814BHJP
【FI】
G01N21/59 Z
G01N21/77 B
B01J35/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017903
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】304024430
【氏名又は名称】国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002011
【氏名又は名称】弁理士法人井澤国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100072039
【弁理士】
【氏名又は名称】井澤 洵
(74)【代理人】
【識別番号】100123722
【弁理士】
【氏名又は名称】井澤 幹
(74)【代理人】
【識別番号】100157738
【弁理士】
【氏名又は名称】茂木 康彦
(74)【代理人】
【識別番号】100158377
【弁理士】
【氏名又は名称】三谷 祥子
(72)【発明者】
【氏名】谷池 俊明
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 健
(72)【発明者】
【氏名】柳山 鏡
【テーマコード(参考)】
2G054
2G059
4G169
【Fターム(参考)】
2G054AA02
2G054CE01
2G054EA01
2G054EA04
2G054FA06
2G054FA09
2G054FA10
2G054FA32
2G054FA33
2G054FA39
2G054GB01
2G059AA03
2G059DD03
2G059DD05
2G059DD16
2G059EE01
2G059FF11
4G169BA48A
4G169CA05
4G169CA10
4G169CA15
4G169DA05
4G169HB01
4G169HE05
4G169HF03
4G169HF05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】光触媒性能試験方法に関し、均等な条件で多数の被試験物に光照射して被試験物の光反応を開始・進行させる装置を提供する。
【解決手段】光反応装置10は。光照射部1、試料搭載部2、温度調節部を備え、光照射部が、複数の発光素子を平面上に規則的に配置した光源11を備え、試料搭載部2が、複数の容器21、ハウジング22、撹拌機構を備え、温度調節部が、温調液供給部,温調液排出部、温調液循環手段を備え、試料搭載部に配置された容器に収納された試料に光照射することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光照射部(1)、試料搭載部(2)、温度調節部(3)を備え、
光照射部(1)が、複数の発光素子を平面上に規則的に配置した光源(11)を備え、
試料搭載部(2)が、複数の容器(21)、ハウジング(22)、撹拌機構(23)を備え、
温度調節部(3)が、温調液供給部(31),温調液排出部(32)、温調液循環手段(33)を備え、
試料搭載部(2)に配置された容器(21)に収納された試料(4)に光照射することができる、
光反応装置(10)。
【請求項2】
光照射部(1)が、複数のLED素子を平面上に規則的に配置した光源(11)と拡散板(12)を備え、
試料搭載部(2)が、複数の瓶状の容器(21)と、複数の並列するハウジング(22)と、撹拌機(231)、動力源(232)、駆動機構(233)を含む撹拌機構(23)とを備え、各容器(21)が撹拌機(231)を収容することができ、
各ハウジング(22)に少なくとも1つの温調液供給部(31)と少なくとも1つの温調液排出部(32)が連結し、
試料搭載部(2)に配置された容器(21)に収納された試験対象化合物を含む液状試料(4)に光照射することができる、
請求項1に記載の光反応装置(10)。
【請求項3】
試料搭載部(2)の容器(21)に収納された半導体と色素とを含む試料水溶液(4)に波長が400nm以上650nm以下の光を照射することができる、
請求項1に記載の光反応装置(10)。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の光反応装置(10)と吸光度測定装置(5)とを含む、光触媒性能試験装置(11)。
【請求項5】
請求項1~3のいずれかに記載の光反応装置(10)を用いる、光触媒性能試験方法(12)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光反応装置に関する。本発明は特に上記光反応装置を含む光触媒性能試験装置と、上記光触媒性能試験装置を用いる光触媒性能試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光触媒は脱臭剤、浄水設備、排ガス処理装置、抗菌剤、防汚材などの環境浄化材料として多用されている。光触媒としては二酸化チタンなどの酸化物半導体がよく知られている。基本的な金属元素や微量元素(ドーパント)を様々に選択することによって様々な光触媒が見出されている。近年は水や大気などの地球環境に対する関心が高まっており、高性能の光触媒に対する需要が一層高まっている。そこで、できるだけ多数の候補から光触媒として有効な組成物を効率よく精度良く選択できる手段が求められている。
【0003】
光触媒の性能を評価する方法として色素法が普及している。特許文献1に記載された方法では、光触媒試験片と色素溶液を含む溶液に光照射し、この溶液の吸光度の変化から色素分解能(光触媒性)を評価する。特許文献2,特許文献3には光触媒活性評価の精度を向上するための装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-228589号公報
【特許文献2】特開2022-174893号公報
【特許文献3】特開2002-333401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これまで提案された光触媒活性評価手法では評価精度の向上を目的としており、光照射や測定などの操作効率には大きな変化が見られない。他の科学的試験機器でも、同時に多数の対象物に等しい条件で光反応を開始させる機器は見出されていない。
【0006】
光触媒に対する関心が高まっている今日、均一で安定した条件下で多数の被試験物の光反応を進行させる試験機が得られれば、光触媒の開発速度を高め、環境浄化技術に貢献することができると期待される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、安定した条件下で多数の被試験物に光照射し、多数の被試験物で均等な条件で光反応を開始・進行することができる手法を求めた。その結果、均等な条件で多数の被試験物に光照射して被試験物の光反応を開始・進行させる装置を見出した。すなわち本発明は以下のものである。
【0008】
(発明1)
光照射部(1)、試料搭載部(2)、温度調節部(3)を備え、
光照射部(1)が、複数の発光素子を平面上に規則的に配置した光源(11)を備え、
試料搭載部(2)が、複数の容器(21)、ハウジング(22)、撹拌機構(23)を備え、
温度調節部(3)が、恒温水温調液供給部(31),温調液排出部(32)、温調液循環手段(33)を備え、
試料搭載部(2)に配置された容器(21)に収納された試料(4)に光照射することができる、
光反応装置(10)。
(発明2)
光照射部(1)が、複数のLED素子を平面上に規則的に配置した光源(11)と拡散板(12)を備え、
試料搭載部(2)が、複数の瓶状の容器(21)、複数の並列するハウジング(22)、撹拌機(231)、動力源(232)、駆動機構(233)を含む撹拌機構(23)を備え、各容器(21)が撹拌機(231)を収容することができ、
各ハウジング(22)に少なくとも1つの温調液供給部(31)と少なくとも1つの温調液排出部(32)が連結し、
試料搭載部(2)に配置された容器(21)に収納された試験対象化合物を含む液状試料(4)に光照射することができる、
発明1の光反応装置(10)。
(発明3)
試料搭載部(2)に配置された容器(21)に収納された半導体と色素とを含む試料水溶液(4)に波長が400nm以上650nm以下の光を照射することができる、
発明1の光反応装置(10)。
(発明4)
発明1~3のいずれかの光反応装置(10)と吸光度測定装置(5)とを含む、光触媒性能試験装置(11)。
(発明5)
発明1~3のいずれかの光反応装置(10)を用いる、光触媒性能試験方法(12)。
【発明の効果】
【0009】
本発明の装置は、光照射部位を有する試験機として新規な構造と機構を有する。本発明の装置は、試験精度と処理効率の両方が優れる試験装置である。本発明の装置を用いることによって、色素法による光触媒活性評価を高精度かつ高効率で遂行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の光反応装置(10)の例。
図2】ハウジング(221)の例。図2(a)は上から(光照射部の上から)見た様子を示す。図2(b)は横から見た様子を示す。
図3】容器(21)と撹拌機構(23)の関係を模式的に示す図。
図4】容器(21)と撹拌機構(23)の関係を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[光反応装置(10)]
本発明の光反応装置(10)は、光照射部(1)、試料搭載部(2)、温度調節部(3)を備える。光反応装置(10)を使って、試料搭載部(2)に配置された容器(21)に収納された試料(4)に光照射することができる。光反応装置(10)の典型的な用途は光触媒の性能試験である。この場合、本発明の光反応装置(10)を使って、試料搭載部(2)の容器(21)に収納された試験対象化合物と色素とを含む試料水溶液(4)に光照射する。この時に照射する光の波長は一般的には400nm以上650nm以下の範囲にある。
【0012】
光反応装置(10)は多数の試料(4)に対して均一な照度で光照射して、均一な環境下で試料(4)の光反応を開始・進行させる。このような光反応装置(10)を構成する部位について以下に詳述する。
【0013】
[光照射部(1)]
光反応装置(10)の光照射部(1)は、試料(4)の全てに均一な照度で光照射する。光照射部(1)は、複数の発光素子を平面上に規則的に配置した光源(11)を備える。できるだけ小さい等間隔で配置した発光素子が、照度の均一化のために好ましい。更に好ましくは、光照射部(1)は、複数のLED素子を平面上に規則的に配置した光源(11)と拡散板(12)を備える。拡散板(12)も試料搭載部(2)における照度の均一化に有効である。
【0014】
上記平面の寸法は特に制限されない。効率よく試験するためには、光源(11)において発光素子を縦横各数十センチメートル程度の平面に配置する。典型的には面積が900cm以上、例えば縦横50cm×50cm程度の平面区域に発光素子を配置する。光照射部(1)からの発光色は試験に適したスペクトルに設定される。本発明の光反応装置(10)を光触媒性能の評価に用いる場合には、照射光の波長が400nm以上650nm以下の範囲となるようにLED素子を選択する。拡散板(12)として、各種LED照明設備に用いられている拡散板製品を制限なく使用することができる。照度均一化のために光照射部(1)と試料搭載部(2)との距離も適宜調節される。
【0015】
[試料搭載部(2)]
光反応装置(10)の試料搭載部(2)は、多数の試料(4)を反応させる部位である。試料搭載部(2)は、複数の容器(21)、ハウジング(22)、撹拌機構(23)を備える。試料搭載部(2)のハウジング(22)には、典型的には同じ形状・寸法の複数の容器(21)を配置することができる。各容器(21)に封入された液状の試料(4)は、試験中、撹拌機構(23)によって同じ強度で撹拌される。容器(21)の寸法形状や材質は光反応装置(10)と試料搭載部(2)に許容される限り制限されない。多種の試験対象を少量ずつ容器(21)に入れて試料搭載部(2)に配置する場合には、一般に「バイアル」「バイアル瓶」と呼ばれる容量が5ml以上30ml以下の金属製容器が用いられる。試料搭載部(2)の受光部は光学的に透明である。
【0016】
好ましい試料搭載部(2)は、複数の瓶状の容器(21)と、複数の並列するハウジング(22)と、撹拌機(231)、動力源(232)、駆動機構(233)を含む撹拌機構(23)とを備える。駆動機構(233)は容器(21)の全ての内部を均一な条件で撹拌するための部位である。
【0017】
本発明の光反応装置(10)の使用中は、各ハウジング(22)に瓶状の容器(21)が整列し、撹拌機構(23)が各容器(21)内の液状の試料(4)を均等な強度で撹拌する。液状の試料(4)は典型的には試験対象化合物を含む試料水溶液であり、例えば酸化物半導体と色素を含む水溶液である。
【0018】
各容器(21)は撹拌機(231)を収容することができる。撹拌機(231)としては、容器(21)の容量や試料(4)に応じて公知の手段が制限なく使用される。比較的小型の容器(21)に液状の試料(4)が封入される場合には、撹拌機(231)として磁気棒が好ましい。バイアル瓶内で用いる磁気棒(23)としては撹拌子、回転子、マグネチックスターラーなどの製品名で供給されている部材を使用することができる。磁気棒の形状と寸法は制限されず瓶状の容器(21)に合わせて選択される。動力源(232)は一般的にはモーターであり、各種試験装置に用いられるDCモーターが使用される。駆動機構(233)は、動力源(232)が発生する動力を伝達して容器(21)内の撹拌機(231)を回転させる。駆動機構(233)は、一般的には、ベルト(2331)、プーリー(2332)、永久磁石(2333)を含む。プーリー(2332)と永久磁石(2333)の対が各容器(21)の下側に配置される。撹拌機構(23)の運転時には、ベルト(2331)が各ハウジング(22)に整列する容器(21)に沿って循環して各容器(21)の底部で回転磁場が発生する。その結果、各容器(21)内で磁気棒(231)が旋回して液状試料(4)を撹拌する。磁気棒(231)を容器(21)内で旋回させる駆動機構(233)としては、この他に、電源(232)から各容器(21)の底部側のコイルに通電して磁場を発生させる機構であってもよい。
【0019】
[温度調節部(3)]
光反応装置(10)の温度調節部(3)は、各試料(4)の温度を一定に維持するための部位である。温度調節部(3)は、温調液供給部(31),温調液排出部(32),温調液循環手段(33)を備える。上記温調液としては一般的には水が用いられる。温調液循環手段(33)は一般的には水循環のためのタンク、ポンプ、パイプ、ヒーター、温度センサーなどからなる。
【0020】
温度調節部(3)は試料搭載部(2)に連結している。一般的には、温調液供給部(31)から試料搭載部(2)に一定温度の水が流入し、この水は容器(21)に沿って流れて温調液排出部(32)に達し、試料搭載部(2)から流出する。
【0021】
好ましくは、各ハウジング(22)に少なくとも1つの温調液供給部(31)と少なくとも1つの温調液排出部(32)が連結する。更に好ましくは、各ハウジング(22)が1つの温調液供給部(31)と1つの温調液排出部(32)を有する。この場合、試料搭載部(2)内の温調液流路は各ハウジング(22)の温調液供給部(31)から温調液排出部(32)までの短い流路に分割される。このため、恒温タンクを出た温調液の温度変化を最低限に抑えることができ、結果的に、光照射中でも試料搭載部(2)内の試料(4)の温度を精密に一定に保つことができる。
【0022】
[光触媒性能試験方法(11),光触媒性能試験方法(12)]
本発明の光反応装置(10)で光反応を完了した半導体と色素とを含む試料水溶液(4)の吸光度を測定することによって、試料(4)に含まれる半導体の光触媒性能を検出・評価することができる。例えば酸化チタン系半導体とメチレンブルーを含む試料水溶液(4)に光照射する場合には、酸化チタン系半導体の光触媒活性を試料水溶液(4)の660nm付近の吸光度の変化(減少)として検出・評価する。
【0023】
本発明の光反応装置(10)と吸光度測定装置(5)とを組み合わせた装置を、光触媒性能試験装置(11)として利用することができる。吸光度測定装置(5)は既存の装置を制限なく使用することができる。この光触媒性能試験装置(11)を用いると、多数の半導体について、予備実験や予測無しで多数の候補化合物の光触媒性能を精度良く効率よく検出・評価することができる。光触媒性能試験装置(11)は一種のハイスループット分析装置として利用される。本発明の光反応装置(10)を用いる光触媒性能試験方法(12)は、高精度かつ高効率な試験方法である。
【実施例0024】
[光反応装置(10)の例]
以下、図面を参照させて本発明の例を説明する。図面は本発明の光反応装置(10)及びその部材の1例を示す模式図であり、誇張や省略がある。本発明は図示された構造物に限定されない。
【0025】
図1に本発明の光反応装置(10)の例を示す。点線は内部構造の理解を助けるために付されており、実際には見えない。光照射部(1)の縦50cm×横50cmの平面区画に、縦64個×横64個のLED素子(日亜化学工業社製 白色LED NF2757G-F1)が配置されている。
【0026】
LED素子(11)の下側(試料搭載部(2)の側)にはサンドブラスト加工された5mm厚のフロートガラスからなる拡散板(12)が挿入されている。光照射部(1)には冷却ファン(図示せず)も付属する。
【0027】
光照射部(1)の下側に、試料搭載部(2)が配置されている。光照射部(1)の直下にある試料搭載部(2)上表面の縦46cm×横46cmの平面区画で、均一な照度が達成される。試料搭載部(2)はハウジング(22)を含む。ハウジング(22)は並列する3個のハウジング(221,222,223)からなる。ハウジング(22)に試料(4)を入れた容器(21)が整列している。容器(21)は市販のバイアル瓶である。
【0028】
図2に、ハウジング(221)の例を示す。図2(a)は上から(光照射部の上から)見た様子を示す。図2(b)は横から見た様子を示す。図2は試料(4)に光照射する直前の状態を示す。
【0029】
ハウジング(221)に合計44個のアルミ製バイアル瓶(21)が挿入されている。(ハウジング(221,222,223)を並列に配列すると、試料搭載部(2)には合計132個の試料(4)が搭載される。)バイアル瓶(21)の開口部は柔軟部材(o-リング)(24)を介して透明ガラス(25)に密着しており、バイアル瓶(21)の気密性が維持されている。
【0030】
ハウジング(221)の端部は、各々パイプとバルブを備える恒温水供給部(31)と恒温水排出部(32)とに連結する。各パイプはタンク(図示せず)とポンプ(図示せず)に連絡している。この例では、タンク内温度は20℃に維持され、温度が20℃に設定された水が毎分10リットルの流速でハウジング(221)内外を循環する。ハウジング(222),ハウジング(223)も同様の温度調節機構を備える。
【0031】
図3図4に、容器(21)と撹拌機構(23)の関係を模式的に示す。容器の数は実際とは異なる。図3図4に示す撹拌機構(23)では、撹拌機として磁石棒(231)、動力源としてDCモーター(232)を用い、駆動機構(233)はベルト(2331)、プーリー(2332)、永久磁石(2333)を含む。DCモーター(232)の動力でベルト(2331)が循環しプーリー(2332)が回転する。その結果、回転磁場が発生し、磁石棒(231)が旋回する。いずれの試料(4)も同様に撹拌される。
【0032】
[光反応装置(10)の性能]
図1~4に示す光反応装置(10)を使って、同時に132種の試料(4)に光照射しして試料(4)の光反応を開始した。開始から60分後に132個の容器(21)の開口部における照度を測定した。3回の測定で132地点のいずれでも照度の変化は全地点の平均照度に対して10%以下の範囲にあった。このことから、全ての試料(4)について極めて均一な照度で光照射したことが分かる。また、ハウジング(221,222,223)を循環する水温を光照射開始から60分後、65分後、70分後、75分後、80分後、85分後の合計5回各ハウジングの恒温水排出部(32)で測定したところ、水温に隔たりはなく、一定温度下で光反応が進行したことが分かった。
【0033】
このように、本発明の光反応装置(10)は、大面積に均一に光照射し、多数の試料毎に等しい条件で撹拌し、温調液を短い流路で循環させて多数の試料の温度を一定に維持することによって、高精度で効率よく光照射試験を行う。本発明の光反応装置(10)を光触媒性能評価に用いると、例えば、上述の例のように132種という多数の試料に光照射することができる。このようなハイスループット型の光触媒性能評価手法は新規で画期的である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の光反応装置(10)は、光照射工程を有する試験におけるハイスループットを実現する。本発明の光反応装置(10)を用いた光触媒性能試験装置(11)と光触媒性能試験方法(12)は、光触媒の開発と光触媒を用いた環境浄化技術の進展に貢献することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 光照射部
11 光源(LED素子)
12 拡散板
2 試料搭載部
21 容器(アルミ製バイアル瓶)
22 ハウジング
221,222,223 並列するハウジング
23 撹拌機構
231 撹拌機(磁石棒)
232 動力源(DCモーター)
233 駆動機構
2331 ベルト
2332 プーリー
2333 永久磁石
24 柔軟部材(o-リング)
25 透明ガラス
3 温度調節部
31 温調液供給部(恒温水供給部)
32 温調液排出部(恒温水排出部)
4 試料
10 光反応装置
図1
図2
図3
図4