(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112690
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】資金繰り管理システム、資金繰り管理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/0637 20230101AFI20240814BHJP
【FI】
G06Q10/0637
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017915
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】523286071
【氏名又は名称】株式会社NTTデータ
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西山 彰人
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
5L010AA01
5L010AA06
5L049AA01
5L049AA06
(57)【要約】
【課題】資金繰りの管理を好適に支援可能な技術を提供する。
【解決手段】資金繰り管理システムは、取引における取引金額を含む取引情報を取得する取得部と、所定の取引を管理するか特定するための管理基準を入力させる基準入力部と、前記基準入力部での入力により特定された前記取引における前記取引金額である第1金額と、前記取得部によって取得された前記取引における取引金額のうち前記第1金額を除いた残りの取引金額である第2金額とを合わせた総額とにもとづいて、入金計画または出金計画の正確性の度合いを導出する導出部と、を備えた。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
取引における取引金額を含む取引情報を取得する取得部と、
所定の取引を管理するか特定するための管理基準を入力させる基準入力部と、
前記基準入力部での入力により特定された前記取引における前記取引金額である第1金額と、前記取得部によって取得された前記取引における取引金額のうち前記第1金額を除いた残りの取引金額である第2金額とを合わせた総額とにもとづいて、入金計画または出金計画の正確性の度合いを導出する導出部と、
を備えた資金繰り管理システム。
【請求項2】
前記取引情報には、取引先の名称が含まれ、
前記基準入力部は、取引先の名称を入力させるものであり、
前記管理をする取引は、前記基準入力部により入力された前記名称に対応した取引である
請求項1に記載の資金繰り管理システム。
【請求項3】
前記基準入力部は、取引金額の閾値を入力させるものであり、
前記管理をする取引は、取引金額が閾値以上の取引である
請求項1に記載の資金繰り管理システム。
【請求項4】
所定期間後の余剰資金と、所定期間後の預金残高とを予測し、予測された預金残高に対する、所定期間後の余剰資金にもとづいて、管理対象を入力する際の目安を求める予測部を備えた請求項1に記載の資金繰り管理システム。
【請求項5】
前記導出部は、前記総額に対する合計金額の割合を正確性の度合いとして導出する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の資金繰り管理システム。
【請求項6】
資金繰り管理システムの制御方法であって、
取引における取引金額を含む取引情報を取得する取得ステップと、
所定の取引を管理するか特定するための管理基準を入力させる基準入力ステップと、
前記基準入力ステップでの入力により特定された前記取引における前記取引金額である第1金額と、前記取得ステップによって取得された前記取引における取引金額のうち前記第1金額を除いた残りの取引金額である第2金額とを合わせた総額とにもとづいて、入金計画または出金計画の正確性の度合いを導出する導出ステップと、
を備えた資金繰り管理方法。
【請求項7】
資金繰り管理システムのコンピュータに、
取引における取引金額を含む取引情報を取得する取得ステップと、
所定の取引を管理するか特定するための管理基準を入力させる基準入力ステップと、
前記基準入力ステップでの入力により特定された前記取引における前記取引金額である第1金額と、前記取得ステップによって取得された前記取引における取引金額のうち前記第1金額を除いた残りの取引金額である第2金額とを合わせた総額とにもとづいて、入金計画または出金計画の正確性の度合いを導出する導出ステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、資金繰り管理システム、資金繰り管理方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
経営者等は、実績情報や経営計画等にもとづいて将来の収支を計画して、資金繰り表に記入する。この資金繰り表とは、経常収支、設備収支、財務収支の計画値と実績値を記入する表である。その収支計画値と収支実績値の差分の値と、現預金残高を比較することで将来の預金残高の過不足を事前に検知し、前もって資金調達等の対策につなげることができる。つまり、精度が高く期間が長い入金計画または出金計画(以下、「入出金計画」という)を立案するほど、将来の預金残高不足を、余裕をもって高い精度で把握することができる。
【0003】
余裕をもって高い精度で収支計画を立案するためには、必要な情報が様々あることに加え、情報収集に必要な労働力や情報の分析スキル面が課題となり、資本力に乏しい中小企業にとっては難しい場合が多い。
【0004】
さらに、入出金計画を立案するタイミングについても課題がある。入出金計画の立案は一般的に以下に示すタイミングである。1つめのタイミングは、請求書送付、受領タイミングである。「正確な」入出金計画の立案をしたいために、請求金額を確定した後で計画を立案したいと考える企業がこのタイミングで立案している。しかし、入金・支払日までの期間が短いため、できれば避けなければならない。
【0005】
2つめのタイミングは、売上、売上原価計上タイミングである。財務会計ソフトに売掛金や買掛金を入力するタイミングで計画立案をする。例えば売掛金として500,000円計上したとしても、その500,000円は様々な受注契約で受け取る金額の合計値であるため、この情報だけでは正確な入金時期の予測は難しい。そのため、この売掛金を受注契約毎にばらして入金時期や回収条件を設定する必要がある。
【0006】
入金時期や回収条件は、財務会計ソフトでは保持していないことが多いため、受発注管理ソフトとの連携が必要である。しかし、この連携をするためには、後述する受発注タイミングで取引情報を投入できていて、入出金計画の立案ができていることが前提となるため、結果的にこのタイミングで正確な入出金計画を立案することは難しい、ということになる。
【0007】
3つめのタイミングは、予算策定タイミングである。予算策定タイミングでは売上計画は立てられても確実な計画ではなく、あくまで推測の域を脱しないため、正確な一年の入出金計画を立案することは難しい。
【0008】
4つめのタイミングは、受発注契約タイミングである。受発注契約にもとづく契約書には、取引先情報、契約金額、納期等の情報が規定されているため、このタイミングで入出金計画の立案をすることが良いと思われる。しかし、このタイミングでは、部材不足等市場環境の影響による納品時期遅延や、設計変更依頼等、契約期間内の様々な計画変更が発生する可能性がある。仮に、計画変更の都度、計画値を変更できれば正確な入出金計画の立案ができるが、この計画値の変更が多い場合、変更作業に伴う稼働が負担になり、入出金計画の立案をできていない企業も存在する。
【0009】
以上の通り、正確な入出金計画の立案をするためには、金額が確定する請求書送付、受領タイミングが望ましいが、そのタイミングだと問題発生時の対処が遅れる可能性がある。そのため、問題発生時の対処を早めに行うためにも、受発注契約のタイミングで入出金計画の立案をすることが望ましいが、計画変更に伴う稼働が問題になる。市中には、この受発注契約のタイミングで入出金計画の立案ができる受発注管理ソフトが存在する。
【0010】
具体的には、「取引情報」登録機能と、「回収条件等」の設定機能を具備するソフトである。利用者は、サービス利用前に、取引先毎の「回収条件」(「締め日」、「入出金サイト」、「手形サイト」、「決済手段」等)を入力しておく。そして、取引があるたびに、受発注管理ソフトに「取引情報」(「取引先名」、「取引金額」、「納品日」等)を入力することで、納品日に対応した入出金日をシステムが自動計算できるようになるため、利用者は意識しなくとも入出金日がシステムに自動登録されるため、入出金計画を自動的に立案できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
受発注管理ソフトには、多くの取引情報を入力することになるため、入力稼働の負担が問題となる。さらに、先述の通り、入出金計画の計画値の変更が多い場合、変更作業に伴う稼働や求められるスキルの負担も大きい。この稼働や求められるスキルを持ち合わせていない企業は、入出金計画の立案をすることを諦めて(受発注管理ソフトの入出金計画の立案機能は使わないで)、受発注管理に最低限必要な取引情報のみを受発注管理ソフトに投入することになる。
【0013】
このような問題がありつつも、企業によっては、入出金計画の立案をすることを諦めずに、稼働量の負担を減らすためにメイン顧客との取引等、売上や費用の大半を占める取引に絞り、入出金計画の正確性の度合い(以下、「レベル」ともいう)を落とした入出金計画の立案をすることがある。
【0014】
しかし、入出金計画の正確性レベルを、画一的な判断基準にもとづいて定義していない場合は、経営者等の想定より低いレベルで入出金計画の立案をしていることに気づかないリスクがある、という問題がある。
【0015】
例えば、稼働量の負担を減らすことを意識しすぎて、管理対象取引を絞り込みすぎると、入出金計画の正確性レベルが想定以上に低くなり、資金不足を未然に防ぐことができないリスクがある。さらに、売上や費用の大半を占める取引は時期によって変わる可能性があるため、定期的に見直す必要があるが、その見直し作業に伴う稼働や求められるスキルの負担も問題となる。
【0016】
このように、従来の技術では、入金や出金に係る計画など、資金繰りの管理を好適に支援することができないという問題点があった。
【0017】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、資金繰りの管理を好適に支援可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、取引における取引金額を含む取引情報を取得する取得部と、所定の取引を管理するか特定するための管理基準を入力させる基準入力部と、前記基準入力部での入力により特定された前記取引における前記取引金額である第1金額と、前記取得部によって取得された前記取引における取引金額のうち前記第1金額を除いた残りの取引金額である第2金額とを合わせた総額とにもとづいて、入金計画または出金計画の正確性の度合いを導出する導出部と、を備えた資金繰り管理システムである。
【0019】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、資金繰り管理システムの制御方法であって、取引における取引金額を含む取引情報を取得する取得ステップと、所定の取引を管理するか特定するための管理基準を入力させる基準入力ステップと、前記基準入力ステップでの入力により特定された前記取引における前記取引金額である第1金額と、前記取得ステップによって取得された前記取引における取引金額のうち前記第1金額を除いた残りの取引金額である第2金額とを合わせた総額とにもとづいて、入金計画または出金計画の正確性の度合いを導出する導出ステップと、を備えた資金繰り管理方法。
【0020】
また、本発明の一態様は、資金繰り管理システムのコンピュータに、取引における取引金額を含む取引情報を取得する取得ステップと、所定の取引を管理するか特定するための管理基準を入力させる基準入力ステップと、前記基準入力ステップでの入力により特定された前記取引における前記取引金額である第1金額と、前記取得ステップによって取得された前記取引における取引金額のうち前記第1金額を除いた残りの取引金額である第2金額とを合わせた総額とにもとづいて、入金計画または出金計画の正確性の度合いを導出する導出ステップと、を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、この発明によれば、資金繰りの管理を好適に支援可能な技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図3】金額レンジ毎の取引実績の一例を示す図である。
【
図4】資金繰り管理システムの概略構成を示す図である。
【
図5】資金繰り管理装置に表示される画面名と遷移関係を示す図である。
【
図7】取引実績情報取得ボタンが選択された場合の処理を示すシーケンス図である。
【
図11】取引先単位ボタンが選択された場合の処理を示すシーケンス図である。
【
図13】決定ボタンが選択された場合の処理を示すシーケンス図である。
【
図14】取引金額レンジ単位ボタンが選択された場合の処理を示すシーケンス図である。
【
図15】取引金額レンジ毎実績結果画面を示す図である。
【
図16】金額レンジ毎取引情報の一例を示す図である。
【
図18】計算結果を反映させた取引金額レンジ毎実績結果画面を示す図である。
【
図19】決定ボタン選択された場合の処理を示すシーケンス図である。
【
図21】おすすめボタンが選択された場合の処理を示すシーケンス図である。
【
図22】おすすめ設定処理の結果をおすすめ設定確認画面に表示した画面例を示す図である。
【
図24】予測期間経過後預金残高の算出例を示す図である。
【
図25】資金繰り表作成機能に関連する画面名と遷移関係を示す図である。
【
図27】取引情報登録ボタンが選択された場合の処理を示すシーケンス図である。
【
図29】管理対象取引確認ボタンが選択された場合の処理を示すシーケンス図である。
【
図32】取引条件登録済確認ボタンが選択された場合の処理を示すシーケンス図である。
【
図37】登録ボタンが選択された場合の処理を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(発明の概要)
以下に説明される実施形態では、「企業が持ち合わせている稼働量やスキルが許容可能な「入出金計画の正確性レベル」」と、「可能な限り対応期間を確保しつつ資金不足を未然に検知できる「入出金計画の正確性レベル」」のバランスを考慮した、「ちょうど良いレベル」を稼働や求められるスキルの負担が少なく、ユーザが簡単に視覚的に設定できる技術について説明する。視覚的に設定できることで、資金繰りの管理を好適に支援可能となる。以下の説明において、入金計画または出金計画を「入出金計画」と表現することがある。
【0024】
本実施形態では、所定の取引を管理するか特定するための管理基準が入力される。管理をする取引として、取引先の名称に対応した取引と、取引金額が閾値以上の取引とがあり、管理基準は、これらを特定する。以下の説明において、「取引先の名称に対応した取引」における取引先と、取引金額が閾値以上の取引をまとめて「管理対象」と表現することがある。
【0025】
まず、「入金計画または出金計画の正確性の度合い」とは、後述するように、基準入力部での入力により特定された取引における取引金額である第1金額と、取得部によって取得された取引における取引金額のうち第1金額を除いた残りの取引金額である第2金額とを合わせた総額とにもとづいて導出されるものであり、金額ベースにおいて、どの程度の正確性があるかを示す。以下の説明において、「入金計画または出金計画の正確性の度合い」を単に「正確性レベル」と表現することがある。
【0026】
管理対象が取引先の場合には、取引先との取引金額の合計金額と、総額とにもとづいて正確性レベルが導出される。管理対象が閾値以上の取引の場合には、入力された閾値以上の取引の取引金額の合計金額と、総額とにもとづいて正確性レベルが導出される。
【0027】
具体的な金額を用いて説明する。例えば、4月に契約を締結し、7月に支払予定の取引が100件で合計1,000,000円(10,000円/件)あり、7月時点の手元資金が800,000円の場合を考える。この場合、全取引である100件分を管理していれば、4月時点で7月の合計支払額が全て分かり、4月の時点で7月の資金不足を検知することができるため、融資等の対応を7月までに行えれば、資金不足を未然に防ぐことができる。この例の正確性レベルは100%である。
【0028】
この例のように、100件分の取引を管理するための稼働やスキルを企業が持ち合わせていれば、全件管理すれば良い。しかし、難しい企業が多いのが実態であるため、「企業が持ち合わせている稼働量やスキルが許容可能な正確性レベル」まで正確性レベルを落として入出金計画を管理する必要がある。ただし、企業が持ち合わせている稼働量やスキルのみを考慮して、管理対象取引件数を減らせば良いか、というとそうでもない。
【0029】
上記の事例の場合、入力に伴う稼働量を極力減らすために、100件分の取引件数のうち20件(200,000円)を管理対象とした場合(正確性レベル=20%)、800,000円の支払を管理できず、経営者等が認識していない支払金額となる。その結果、7月時点で手元資金が800,000円しかないため、支払いタイミングになって初めて資金不足を認識することになり、融資等の対応が遅れる可能性が高い。したがって、この場合は正確性レベルが低すぎた、ということになる。
【0030】
そのため、今度は正確性レベルを、「企業が持ち合わせている稼働量やスキルが許容可能な正確性レベル」の範囲で、「可能な限り対応期間を確保しつつ資金不足を未然に検知できる正確性レベル」まで引き上げることで、ユーザにとって「ちょうど良いレベル」を設定できる。
【0031】
本実施形態の資金繰り管理システムは、上述した管理対象(取引先、閾値以上の取引)から導出された正確性レベルを資金繰り管理装置によってユーザに示すことで、稼働や求められるスキルの負担が少なく、簡単に視覚的にユーザにとって「ちょうど良いレベル」を設定できる。資金繰り管理システムによって資金繰りを支援する会社を好適に支援できる。
【0032】
まず資金繰り管理装置は、取引金額を取引ごとに取得する。本実施形態では、資金繰り管理装置は、取引ごとの取引金額が含まれる取引実績情報を取得する。
図1は、取引実績情報の一例を示す図である。
図1に示されるように、取引実績情報は、取引先名、取引日付、および取引金額を含む情報である。なお、本実施形態では、説明を簡単にするために、同じ取引先に対しては、入金と出金のいずれか一方のみを行うものとしている。例えば、材料を仕入れるX社との取引は、出金のみが行われ、製品の出荷先のY社との取引では入金のみが行われる。そして、1つの取引実績情報は、入金と出金のいずれか一方のみを示す。例えば、
図1に示される取引情報が、出金のみの取引を示す場合、A~D社は、いずれも支払先となる。
【0033】
取引実績情報は、管理対象が取引先および閾値以上の取引であっても最初に取得される。管理対象が取引先の場合について説明する。資金繰り管理装置は、取引実績情報を用いて、一定期間の全体取引金額(以下、「総額」ともいう)に占める、取引先毎の取引金額の合計金額の割合を求める。
【0034】
図2は、各社ごとの割合を示す図である。
図2によると、総額に占める、A社、B社、C社、D社の4社の合計取引金額の割合は82%であることと、合計取引件数は150件であることが分かる。仮に、今後もこの傾向が続くと仮定した場合、この4社との取引のみを管理し、残りの取引は大雑把に管理したとしても、82%の正確性レベルを実現できる。
【0035】
この82%の正確性レベルを「可能な限り対応期間を確保しつつ資金不足を未然に検知できる正確性レベル」であるとユーザが判断し、さらに、このレベルを実現する根拠である150件の取引件数の管理をユーザが許容できるのであれば、「企業が持ち合わせている稼働量やスキルが許容可能な正確性レベル」でもあるので、82%の正確性レベルが、ユーザにとって「ちょうど良いレベル」である。
【0036】
もし、150件の取引件数の管理をユーザが許容できないのであれば、管理対象の取引先を減らせば良い。上記の例で、例えばA社の取引を管理対象から減らすと、10件減った140件の取引件数に減らせるが、正確性レベルは、8%減った74%となる。このレベルでユーザが満足すれば、このレベルがユーザにとって「ちょうど良いレベル」となる。
【0037】
このように、ユーザが、管理対象の取引先を選択して管理対象取引件数を見ながら稼働量等を確認しつつ、全体取引金額に占める、管理対象取引先の合計取引金額の割合である正確性レベルも併せて確認することで、ユーザにとって「ちょうど良いレベル」を簡単に視覚的に設定することができる。
【0038】
次に、管理対象を取引金額が閾値以上の取引とする場合について説明する。取引金額が閾値以上の取引とする場合には、資金繰り管理装置は、金額レンジ毎の取引実績を求める。
図3は、金額レンジ毎の取引実績の一例を示す図である。
図3には、金額レンジ毎の取引実績、一定期間の全体取引金額に占める、金額レンジ毎の取引金額の合計金額の割合が示されている。
【0039】
図3に示される表によると、全体取引金額に占める、3,000,000円以上の取引の合計取引件数は150件であることと、この150件の合計取引金額の割合は81.6%であることが分かる。仮に、今後もこの傾向が続くと仮定した場合、3,000,000円以上の取引のみを管理し、3,000,000円未満の取引は大雑把に管理したとしても、81.6%の正確性レベルを実現できる。
【0040】
「取引先毎の取引実績」の分析結果を用いた「ちょうど良いレベル」の設定方法と同様に、ユーザが、管理対象の取引金額レンジをチェックボックス等で選択して管理対象取引件数を見ながら稼働量等を確認しつつ、全体取引金額に占める、金額レンジ毎の取引金額の合計金額の割合である正確性レベルも併せて確認することで、ユーザにとって「ちょうど良いレベル」を簡単に視覚的に設定することができる。
【0041】
このように、本実施形態では「取引実績情報」の取得と、取得した「取引実績情報」に基づいて「取引先毎の取引実績」と「金額レンジ毎の取引実績」の分析を行うこと。これにより、ユーザの稼働量等に直結する管理対象取引件数を確認しながら定義する「企業が持ち合わせている稼働量やスキルが許容可能な「入出金計画の正確性レベル」」と、一定期間の全体取引金額に占める、取引金額の割合を確認しながら定義する「可能な限り対応期間を確保しつつ資金不足を未然に検知できる「入出金計画の正確性レベル」」のバランスを考慮した、ユーザにとって「ちょうど良いレベル」を簡単に視覚的に設定できるようになる、という効果が得られることを特徴とする。
【0042】
上述した処理を実現するための資金繰り管理システムの具体的な構成例について説明する。
図4は、本発明の実施形態に係る資金繰り管理システム10の概略構成を示す図である。
【0043】
資金繰り管理システム10は、資金繰り管理装置100、入出金計画サーバ200、および取引記録サーバ300を含む。資金繰り管理装置100は、入出金計画サーバ200、および取引記録サーバ300とネットワーク400を介して通信可能である。
【0044】
資金繰り管理装置100は、取得部110、基準入力部120、導出部130、および予測部140で構成される。取得部110は、取引における取引金額を含む取引情報を取得する。基準入力部120は、所定の取引を管理するか特定するための管理基準を入力させる。導出部130は、基準入力部120での入力により特定された前記取引における前記取引金額である第1金額と、取得部110によって取得された前記取引における取引金額のうち第1金額を除いた残りの取引金額である第2金額とを合わせた総額とにもとづいて、入金計画または出金計画の正確性の度合いを導出する。予測部140は、所定期間後の余剰資金と、所定期間後の預金残高とを予測し、予測された預金残高に対する、所定期間後の余剰資金にもとづいて、管理基準を選択する際の目安を求める。
【0045】
本実施形態によれば、入金計画または出金計画の正確性の度合いを導出する対象として、例えば会社全体(経営全体)、事業単位(支社、部門など)、期間(年度、上半期など)とすることで、それらにおける入金計画または出金計画の正確性の度合いを導出することができる。
【0046】
入出金計画サーバ200は、基準入力部120によって入力された管理基準などを記憶する。取引記録サーバ300は、取引実績を記憶する。
【0047】
図4に示される各機能は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることでインストールされてもよい。
【0048】
上述した本実施形態の概要の詳細な説明を含む、本実施形態に係る資金繰り管理装置100の各種機能について、資金繰り管理装置100に表示される画面を用いて説明する。
【0049】
図5は、資金繰り管理装置100に表示される画面名と遷移関係を示す図である。資金繰り管理装置100は、取引実績情報取得画面610、取引実績結果表示画面620、選定条件選択画面630、取引先毎実績結果画面640、取引金額レンジ毎実績結果画面650、およびおすすめ設定確認画面660を表示する。矢印は遷移関係を示す。これら画面について順に説明する。
【0050】
図6は、取引実績情報取得画面610を示す図である。取引実績情報取得画面610には、期間入力欄611、および取引実績情報取得ボタン612が設けられる。期間入力欄611は、取得する取引実績の期間を入力するための欄である。取引実績情報取得ボタン612は、入力された期間に対応する取引実績を取得するためのボタンである。
【0051】
図7は、取引実績情報取得画面610を表示している状態で、取引実績情報取得ボタン612が選択された場合の処理を示すシーケンス図である。
図7において、資金繰り管理装置100は、取引実績情報取得ボタン612が選択されると(ステップS101)、取引実績取得処理を行う(ステップS102)。ここでは、入力された期間などから、取引記録サーバ300が検索するための検索条件を求める。資金繰り管理装置100は、検索条件や、資金繰り管理装置100を認証するための認証情報を取引記録サーバ300に送信する(ステップS103)。
【0052】
取引記録サーバ300は、受信した検索条件を用いて、データベースを検索し(ステップS104)、検索条件によって検索された取引実績を資金繰り管理装置100に送信する(ステップS105)。資金繰り管理装置100は、取引実績を取得すると、取引実績結果表示画面を表示し(ステップS106)、処理を終了する。
【0053】
図8は、取引実績結果表示画面620を示す図である。取引実績結果表示画面620には、取引実績結果621、戻るボタン622、および選定条件ボタン623が設けられる。取引実績結果621は、
図1に示した取引実績情報を表示した表である。戻るボタン622は、取引実績情報取得画面610に戻るためのボタンである。選定条件ボタン623は、選定条件選択画面630に遷移するためのボタンである。
【0054】
なお、資金繰り管理装置100は、取引実績結果表示画面620を表示する際に、取引実績だけではなく、他の財務情報や会計情報も取得して、
図9に示すような、損益計算書や貸借対照表を表示してもよい。
【0055】
図10は、選定条件選択画面630を示す図である。選定条件選択画面630には、取引先単位ボタン631、取引金額レンジ単位ボタン632、おすすめ設定ボタン633、および決定ボタン634が設けられる。取引先単位ボタン631は、管理対象を取引先とするボタンである。取引金額レンジ単位ボタン632は、管理対象を閾値以上の取引とするボタンである。おすすめ設定ボタン633は、おすすめ設定確認画面660を表示するためのボタンである。決定ボタン634は、取引先単位ボタン631、取引金額レンジ単位ボタン632、おすすめ設定ボタン633のいずれかの選択後に、それらを決定するためのボタンである。
【0056】
まず、取引先単位ボタン631が選択された場合の処理について説明する。
図11は、選定条件選択画面630を表示している状態で、取引先単位ボタン631が選択された場合の処理を示すシーケンス図である。
図11において、資金繰り管理装置100は、取引先単位ボタン631が選択されると(ステップS201)、取引先単位選択処理を行う(ステップS202)。ここでは、取引実績情報取得画面610において入力された期間などから、取引記録サーバ300が検索するための検索条件を求める。資金繰り管理装置100は、検索条件や、資金繰り管理装置100を認証するための認証情報を取引記録サーバ300に送信する(ステップS203)。
【0057】
取引記録サーバ300は、受信した検索条件を用いて、データベースを検索し(ステップS204)、検索条件によって検索された取引実績を資金繰り管理装置100に送信する(ステップS205)。資金繰り管理装置100は、取引先毎実績を取得すると、取引先毎実績結果画面640を表示し(ステップS206)、処理を終了する。
【0058】
図12は、取引先毎実績結果画面640を示す図である。取引先毎実績結果画面640には、割合等表示欄641、取引先毎実績結果642、決定ボタン643が設けられる。割合等表示欄641には、総額や管理対象の割合が表示される。管理対象の割合とは、総額に対する、ユーザが管理対象として入力した取引先の取引金額の合計金額の割合である。取引先毎実績結果642は、
図2に示した各社ごとの割合を表示した表である。取引先毎実績結果642には、管理対象を入力するためのチェックボックスが項目「管理対象」に設けられる。チェックボックスがチェックされると、チェックボックスに対応する取引先の取引が管理対象となる。このチェックボックスへのチェックが、取引先の名称を入力したこととなる。チェックボックスにチェックされると、管理対象割合も随時更新される。決定ボタン643が選択されると、管理対象は、その時点での管理対象として入出金計画サーバ200に送信される。
【0059】
図13は、取引先毎実績結果画面640を表示している状態で、決定ボタン643が選択された場合の処理を示すシーケンス図である。
図13において、資金繰り管理装置100は、取引先毎実績結果画面640を表示する(ステップS301)。資金繰り管理装置100は、管理対象取引先登録処理を行う(ステップS302)。ここでは、取引実績情報取得画面610においてチェックされたチェックボックスに応じて管理対象割合を更新するなどを行い、決定ボタン643が選択されると、管理対象となった取引先などを入出金計画サーバ200に送信する(ステップS303)。その後、資金繰り管理装置100は、選定条件選択画面630を表示し(ステップS304)、処理を終了する。入出金計画サーバ200は、受信した取引先にもとづいてデータベース更新し(ステップS305)、処理を終了する。
【0060】
このように、ユーザが、管理対象の取引先をチェックボックス等で選択/非選択して管理対象取引件数を見ながら稼働量等を確認しつつ、全体取引金額に占める、管理対象取引先の合計取引金額の割合である正確性レベルも併せて確認することで、ユーザにとって「ちょうど良いレベル」を簡単に視覚的に設定することができる。さらに、この管理対象取引先の選択は金融機関や外部専門家等第三者が選択した方が良い場合もある。その場合のために、第三者がセキュアに認証できるような仕組みを用意して、ユーザと相談しながら管理対象取引先を選択してもよい。
【0061】
次に、取引金額レンジ単位ボタン632が選択された場合の処理について説明する。
図14は、選定条件選択画面630を表示している状態で、取引金額レンジ単位ボタン632が選択された場合の処理を示すシーケンス図である。
図14において、資金繰り管理装置100は、取引金額レンジ単位ボタン632が選択されると(ステップS401)、金額レンジ毎取引情報取得処理を行う(ステップS402)。ここでは、取引実績情報取得画面610において入力された期間などから、取引記録サーバ300が検索するための検索条件を求める。資金繰り管理装置100は、検索条件や、資金繰り管理装置100を認証するための認証情報を取引記録サーバ300に送信する(ステップS403)。
【0062】
取引記録サーバ300は、受信した検索条件を用いて、データベースを検索し(ステップS404)、検索条件によって検索された金額レンジ毎取引情報を資金繰り管理装置100に送信する(ステップS405)。資金繰り管理装置100は、金額レンジ毎取引情報を取得すると、取引金額レンジ毎実績結果画面650を表示し(ステップS406)、処理を終了する。
【0063】
図15は、取引金額レンジ毎実績結果画面650を示す図である。取引金額レンジ毎実績結果画面650には、割合等表示欄651、金額レンジ入力欄652、レンジ等表示欄653、決定ボタン654が設けられる。割合等表示欄651には、総額や管理対象の割合が表示される。管理対象の割合とは、総額に対する、ユーザが管理対象として入力した閾値以上の取引の取引金額の合計金額の割合である。金額レンジ入力欄652は、ユーザにより金額レンジが入力される入力欄である。レンジ等表示欄653は、取引金額レンジ、レンジ単位取引件数、レンジ単位割合、管理対象を表示する欄である。レンジ等表示欄653には、管理対象を入力するためのチェックボックスが項目「管理対象」に設けられる。チェックボックスがチェックされると、チェックボックスに対応するレンジの取引が管理対象となる。このチェックボックスへのチェックが、取引金額の閾値を入力したこととなる。チェックボックスにチェックされると、管理対象割合も随時更新される。決定ボタン654が選択されると、管理対象は、その時点での管理対象として入出金計画サーバ200に送信される。
【0064】
図16は、金額レンジ毎取引情報の一例を示す図である。金額レンジ毎取引情報は、取引金額、取引件数、合計金額で構成される。この情報をもとに、資金繰り管理装置100は、金額レンジ入力欄652に入力された金額に応じて計算を行う。
図17は、金額レンジ入力欄652に入力された金額が「100」(100万円)の場合の計算結果例を示す図である。
図17に示されるように、取引金額レンジが、100万円単位に区切られる。これと同様に、金額レンジ入力欄652に入力された金額が「50」(50万円)の場合は、取引金額レンジが、50万円単位に区切られる。
【0065】
図18は、計算結果を反映させた取引金額レンジ毎実績結果画面650を示す図である。
図18は、金額レンジ入力欄652に入力された金額が「100」(100万円)の場合の計算結果例に応じた画面を示している。なお、
図18の例では、ユーザが管理対象として入力した閾値が300万円であるので、300万円以上の取引が管理対象として示されている。
【0066】
図19は、取引金額レンジ毎実績結果画面650を表示している状態で、決定ボタン654が選択された場合の処理を示すシーケンス図である。
図19において、資金繰り管理装置100は、取引金額レンジ毎実績結果画面650を表示する(ステップS501)。資金繰り管理装置100は、管理対象取引金額レンジ登録処理を行う(ステップS502)。ここでは、取引金額レンジ毎実績結果画面650においてチェックされたチェックボックスに応じて管理対象割合を更新するなどを行い、決定ボタン654が選択されると、管理対象となった取引金額レンジなどを入出金計画サーバ200に送信する(ステップS503)。その後、資金繰り管理装置100は、選定条件選択画面630を表示し(ステップS504)、処理を終了する。入出金計画サーバ200は、受信した取引金額レンジにもとづいてデータベース更新し(ステップS505)、処理を終了する。
【0067】
このように、ユーザが、金額レンジ入力欄652に入力した数字を変更し、管理対象取引件数を見ながら稼働量等を確認しつつ、総額に占める、管理対象取引金額レンジの合計取引金額の割合である正確性レベルも併せて確認することで、ユーザにとって「ちょうど良いレベル」を簡単に視覚的に設定することができる。さらに、この管理対象取引先の選択は金融機関や外部専門家等第三者が選択した方が良い場合もある。その場合のために、第三者がセキュアに認証できるような仕組みを用意して、ユーザと相談しながら管理対象取引先を選択しても良い。
【0068】
次に、おすすめ設定ボタン633が選択された場合の処理について説明する。以上説明した実施形態では、管理対象取引先の合計取引金額の割合である正確性レベルや、全体取引金額に占める、管理対象取引金額レンジの合計取引金額の割合である正確性レベルを、ユーザにとって「ちょうど良いレベル」に設定する内容を記載した。
【0069】
しかしながら、ユーザにとってどのようなレベルが「ちょうど良いレベル」であるか判断がつかない場合もあると考えられる。おすすめ設定ボタン633は、この場合にユーザに「ちょうど良いレベル」の目安を提示する処理を行うためのボタンである。
【0070】
図20は、おすすめ設定確認画面660を示す図である。おすすめ設定確認画面660には、目標手元資金入力欄661、予測期間入力欄662、おすすめボタン663、OKボタン664が設けられる。目標手元資金入力欄661は、予測期間後の手元資金の目標額を入力する欄である。予測期間は、現時点から予測する期間を入力する欄である。おすすめボタン663は、各入力欄に入力された内容で預金残高を予測させるためのボタンである。OKボタン664は、選定条件選択画面630を表示するためのボタンである。
【0071】
なお、目標手元資金入力欄661に、取引実績情報に基づいて計算した、平均月商Nか月分、限界利益Nか月分、および運転資金Nか月分のいずれかを示す値を初期表示しても良い。この場合のNはユーザ指定、固定値どちらでも良い。
【0072】
また、予測期間入力欄662に入力される期間は、主に、取引実績情報に基づいて計算した運転資金回転期間を想定しているが、ユーザが指定した任意の期間にしてもよい。さらに、CCC(キャッシュコンバージョンサイクル=売上債権回転日数+棚卸資産回転日数-仕入債務回転日数)を用いてもよい。なお、CCCは、取引実績情報に基づいて計算せずに外部の任意の媒体を用いて計算してもよいし、日数ではなくて月数にしてもよい。
【0073】
次に、おすすめボタン663が選択された場合の処理について説明する。
図21は、おすすめ設定確認画面660を表示している状態で、おすすめボタン663が選択された場合の処理を示すシーケンス図である。
図21において、資金繰り管理装置100は、おすすめ設定確認画面660が表示し(ステップS601)、目標手元資金入力欄661に金額が入力され、予測期間入力欄662に予測期間が入力され、おすすめボタン663が選択される(ステップS602)。
【0074】
おすすめボタン663が選択されると、資金繰り管理装置100は、入力された金額や予測期間などから、取引記録サーバ300が検索するための検索条件を求める。資金繰り管理装置100は、検索条件や、資金繰り管理装置100を認証するための認証情報を取引記録サーバ300に送信する(ステップS303)。
【0075】
取引記録サーバ300は、受信した検索条件を用いて、データベースを検索し(ステップS604)、検索条件によって検索された取引実績情報を資金繰り管理装置100に送信する(ステップS605)。資金繰り管理装置100は、取引実績情報を取得すると、おすすめ設定処理を行い(ステップS606)、おすすめ設定処理の結果をおすすめ設定確認画面660に表示し(ステップS607)、処理を終了する。
【0076】
図22は、おすすめ設定処理の結果をおすすめ設定確認画面660に表示した画面例を示す図である。目標手元資金入力欄661は、
図20で説明したように、予測期間後の手元資金の目標額を入力する欄である。予測期間は、
図20で説明したように、現時点から予測する期間を入力する欄である。さらに、おすすめ内容表示欄665が設けられ、ユーザへのアドバイスとして、管理対象を選択する際の目安を表示する。
【0077】
次に、おすすめ処理の具体例について説明する。資金繰り管理装置100は、予測根拠期間k月からN月の取引実績情報にもとづいて式1を計算する。予測根拠期間とは、予測を行うための根拠を計算するための過去における所定期間を示す。
Σ(j月の収支金額実績)…(式1)(Σは、j=kから、j=Nまでの総和を示す)
また、「j月の収支金額」とは、j月の収入金額(正の値)と、支出金額(負の値)の合計金額を示す。なお、予測根拠期間は、予測モデル構築に必要な期間であればどのような期間でも良い。
【0078】
ここで、収支金額実績は、主に本業で稼いだ経常収支を想定しているが、当該組織の資金繰りの予測モデル構築に必要であれば、月定額の返済金額の財務支出等様々な収支金額実績を含めても良い。
なお、この予測モデルについて、予測モデル構築上、一時的な収入は全て想定せず、かつ一時的な支払も全て想定しない。
「一時的な収入」として、例えば以下が挙げられる。
・財務収入のように返済が必要な収入
・設備売却に伴う収入
「一時的な支払」として、例えば以下が挙げられる。
・設備購入に伴う支払
【0079】
次に、式1に基づいて、j=k月からj=N月までの式1の計算結果をグラフにプロットする。。
図23は、プロット例を示す図である。
図23に示されるグラフは、横軸が時間を示し、縦軸が金額を示す。また黒丸がプロットされた値を示す。この時系列を追うことで、組織のお金の貯まりやすさが分かる。そしてこのプロットしたグラフに基づいて予測モデルを構築する。
図23に示す例では、線形回帰モデルを用いて得られた直線を用いるが、どのようなモデルを用いるかは問わない。なお、プロット期間は予測モデル構築上必要な期間であればどのような期間でも良い。
【0080】
次に、構築した予測モデルに基づいて、操作時点(おすすめボタン663の選択時)からの予測期間経過後預金残高を予測する。
図24は、予測期間経過後預金残高の算出例を示す図である。まず、操作時点預金残高から、線形回帰モデルを用いて得られた直線を適用して、予測期間経過後の預金残高を算出する。
【0081】
そして、以下に示す式2、式3を計算することで、「予測期間経過後預金残高」がどれだけ余裕があるかを計算する。
予測余剰資金=予測期間経過後預金残高―目標手元資金…(式2)
予測余剰資金割合=(予測余剰資金/予測期間経過後預金残高)×100…(式3)
【0082】
式2、式3の計算結果を求めて、ユーザが所属する組織が、どれだけ資金繰り管理を厳密にすべきかを提案する。例えば、予測期間経過後預金残高が100万円で、予測余剰資金が10万円の場合は、予測余剰資金割合は10%である。そのため、予測期間経過後も資金が不足することはないと思われるが、仮に10%程度予測を下回った場合に資金不足に陥る可能性があるため、90%の精度で資金繰り管理をしなければならない、と予想し、「可能な限り対応期間を確保しつつ資金不足を未然に検知できる正確性レベル」は90%と判断し、これを目安として提案する。
【0083】
以上の計算を行うことで、ユーザが所属する組織のお金の貯まりやすさの傾向が反映された予測モデルに基づいて、将来の資金不足の程度を定量的に予測することができるため、ユーザがどの程度資金繰り管理を厳密に行えばよいか、簡単に把握することができる。
【0084】
次に、資金繰り管理システム10が備える他の機能である資金繰り表作成機能について説明する。
図25は、資金繰り管理装置100に表示される、資金繰り表作成機能に関連する画面名と遷移関係を示す図である。資金繰り管理装置100は、取引情報登録画面710、管理非対象画面720、管理対象画面730、取引条件登録済画面740、取引条件未登録画面750、取引条件登録画面760、および最新資金繰り表画面770を表示する。矢印は遷移関係を示す。これら画面について順に説明する。
【0085】
図26は、取引情報登録画面710を示す図である。取引情報登録画面710には、取引先名入力欄711、取引金額入力欄712、納品部入力欄713、管理対象取引確認ボタン714、取引条件登録済確認ボタン715、取引情報登録ボタン716で構成される。
【0086】
取引情報登録画面710において、取引情報登録ボタン716が選択された場合の処理について説明する。
図27は、取引情報登録画面710を表示している状態で、取引情報登録ボタン716が選択された場合の処理を示すシーケンス図である。
図27において、資金繰り管理装置100は、取引情報登録画面710を表示し(ステップS701)、取引情報登録処理を行い(ステップS702)、取引情報を送信する(ステップS703)。取引情報は、取引情報登録画面710にユーザが入力した情報で、例えば、取引先名、取引金額、納品日等である。送信する情報として、入出金計画サーバ200の認証情報等も含めてもよい。
【0087】
取引情報を受信した入出金計画サーバ200は、受信した取引情報でデータベースを更新し(ステップS704)、取引情報と、取引条件情報にもとづいて資金繰り表を生成する(ステップS705)。入出金計画サーバ200は、生成した資金繰り表を資金繰り管理装置100に送信し(ステップS706)、資金繰り管理装置100は受信した資金繰り表を最新資金繰り表画面770として表示し(ステップS707)、処理を終了する。
【0088】
取引情報と取引条件情報を具体例を用いて説明する。まず、取引情報を以下の通りとする。
取引先名:三角製造
取引金額:1,000千円
納品日:4月10日
次いで、取引条件情報を以下の通りとする。ここで、「取引条件」とは、支払を現金で行うか手形で行うか、締め日等を取引先と決めた条件である。
取引先名:三角製造
支払い内容分岐条件:2,000千円以下が現金払い
締め日:月末
支払日:翌月20日払い
支払い手段:現金払い
【0089】
この場合、
図28に示されるように、4月の取引金額の1,000千円は、2,000千円以下であるので、三角製造の5月の計画値に1,000千円が登録される。そして、
図28の最新資金繰り表画面では、6月に預金残高が不足することが分かる。このように、資金繰り表に登録された全体収支に基づいて、今後の預金残高推移を確認することで、資金不足が不足する時期を確認することができる。
【0090】
次に、取引情報登録画面710において、管理対象取引確認ボタン714が選択された場合の処理について説明する。
図29は、取引情報登録画面710を表示している状態で、管理対象取引確認ボタン714が選択された場合の処理を示すシーケンス図である。
図29において、資金繰り管理装置100は、取引情報登録画面710を表示し(ステップS801)、管理対象取引処理を行い(ステップS802)、取引情報を送信する(ステップS803)。取引情報は、取引情報登録画面710にユーザが入力した情報で、例えば、取引先名、取引金額、納品日等である。送信する情報として、入出金計画サーバ200の認証情報等も含めてもよい。
【0091】
取引情報を受信した入出金計画サーバ200は、受信した取引情報でデータベースを検索し(ステップS804)、検索結果を資金繰り管理装置100に送信する(ステップS805)。ここでは、管理対象の取引先または取引金額が管理対象レンジに含まれるか否かの検索が行われる。資金繰り管理装置100は、検索結果が管理対象を示すか否かを判定する(ステップS806)。
【0092】
検索結果が管理対象を示す場合には(ステップS806:YES)、資金繰り管理装置100は、
図31に示す管理対象画面730を表示し(ステップS807)、その後取引情報登録画面を表示して(ステップS809)、処理を終了する。一方、検索結果が管理対象を示さない場合には(ステップS806:NO)、資金繰り管理装置100は、
図30に示す管理非対象画面720を表示し(ステップS808)、その後取引情報登録画面710を表示して(ステップS809)、処理を終了する。
【0093】
次に、取引情報登録画面710において、取引条件登録済確認ボタン715が選択された場合の処理について説明する。
図32は、取引情報登録画面710を表示している状態で、取引条件登録済確認ボタン715が選択された場合の処理を示すシーケンス図である。
図32において、資金繰り管理装置100は、取引情報登録画面710を表示し(ステップS901)、取引条件登録確認処理を行い(ステップS902)、取引先を送信する(ステップS903)。取引先は、取引情報登録画面710にユーザが入力した情報で、例えば、取引先名等である。送信する情報として、入出金計画サーバ200の認証情報等も含めてもよい。
【0094】
取引先を受信した入出金計画サーバ200は、受信した取引先でデータベースを検索し(ステップS904)、検索結果を資金繰り管理装置100に送信する(ステップS905)。ここでは、取引先の取引条件が
図33に示す取引条件情報に含まれるか否かの検索が行われる。資金繰り管理装置100は、検索結果が取引条件情報に含まれるか否かを判定する(ステップS906)。
【0095】
取引条件情報は、入出金計画サーバ200に記憶される。
図33に示されるように、取引条件情報には、取引先名と、取引条件とが含まれる。取引条件には、支払内容分岐条件、締め日、支払日、支払い手段、手形決済日など、一般的な取引条件が含まれる。入出金計画サーバ200は、この取引条件情報に含まれる取引先名において、受信した取引先を検索する。
【0096】
検索結果が取引先の取引条件が取引条件情報に含まれることを示す場合には(ステップS906:YES)、資金繰り管理装置100は、
図34に示す取引条件登録済画面740を表示し(ステップS907)、その後取引情報登録画面を表示して(ステップS910)、処理を終了する。一方、検索結果が取引先の取引条件が取引条件情報に含まれること示さない場合には(ステップS906:NO)、資金繰り管理装置100は、
図35に示す取引条件未登録画面750を表示し(ステップS908)、
図36に示す取引条件登録画面760を表示し(ステップS909)、その後取引情報登録画面710を表示して(ステップS909)、処理を終了する。
【0097】
図36は、取引条件登録画面760を示す図である。取引条件登録画面760は、取引先名入力欄761、支払内容分岐条件入力欄762、締め日入力欄763、支払日入力欄764、支払い手段入力欄765、手形決済日入力欄766、登録ボタン767で構成される。取引先名入力欄761は、取引先を入力する欄である。支払内容分岐条件入力欄762は、支払内容分岐条件を入力する欄である。締め日入力欄763は、締め日を入力する欄である。支払日入力欄764は、支払日を入力する欄である。支払い手段入力欄765は、支払い手段を入力する欄である。手形決済日入力欄766は、手形決済日を入力する欄である。登録ボタン767は、入力した各情報を登録するためのボタンである。
【0098】
この登録ボタン767が選択された場合の処理について説明する。
図37は、取引条件登録画面760を表示している状態で、登録ボタン767が選択された場合の処理を示すシーケンス図である。
図37において、資金繰り管理装置100は、取引条件登録画面760を表示し(ステップS1001)、取引条件登録処理を行う(ステップS1002)。ここでは、取引条件登録画面760において入力された各種情報を取引条件としてまとまる。資金繰り管理装置100は、取引条件や、入出金計画サーバ200の認証情報等を入出金計画サーバ200に送信する(ステップS1003)。
【0099】
入出金計画サーバ200は、受信した取引条件を用いて、データベースを検索し(ステップS1004)、登録が完了したことを示す登録完了を資金繰り管理装置100に送信する(ステップS1005)。資金繰り管理装置100は、登録完了を受信すると、不図示の取引条件登録完了画面を表示し(ステップS1006)、処理を終了する。
【0100】
以上のように、本実施形態によれば、資金繰りの管理を好適に支援可能な技術を提供することができる。
【0101】
なお、上述した説明では、取得部110と、基準入力部120と、導出部130と、予測部140が、資金繰り管理装置100に具備されることとして説明したが、これらの機能部の全部または一部が、他のコンピュータ装置に具備されていてもよい。例えば、これらの機能部のうち一部の機能部が、コンピュータ装置に具備されていてもよい。すなわち、資金繰り管理装置100に代わって、他のコンピュータ装置が、例えば、各機能部を備えるようにしてもよい。これらの機能部を備えるコンピュータ装置は、複数台であってもよいし、1台であってもよい。
【0102】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0103】
10 資金繰り管理システム、100 資金繰り管理装置、110 取得部、120 基準入力部、130 導出部、140 予測部、200 入出金計画サーバ、300 取引記録サーバ、400 ネットワーク、610 取引実績情報取得画面、611 期間入力欄、612 取引実績情報取得ボタン、620 取引実績結果表示画面、621 取引実績結果、622 戻るボタン、623 選定条件ボタン、630 選定条件選択画面、631 取引先単位ボタン、632 取引金額レンジ単位ボタン、633 おすすめ設定ボタン、634 決定ボタン、640 取引先毎実績結果画面、641 割合等表示欄、642 取引先毎実績結果、643 決定ボタン、650 取引金額レンジ毎実績結果画面、651 割合等表示欄、652 金額レンジ入力欄、653 レンジ等表示欄、654 決定ボタン、660 おすすめ設定確認画面、661 目標手元資金入力欄、662 予測期間入力欄、663 おすすめボタン、664 ボタン、665 おすすめ内容表示欄、710 取引情報登録画面、711 取引先名入力欄、712 取引金額入力欄、713 納品部入力欄、714 管理対象取引確認ボタン、715 取引条件登録済確認ボタン、716 取引情報登録ボタン、720 管理非対象画面、730 管理対象画面、740 取引条件登録済画面、750 取引条件未登録画面、760 取引条件登録画面、761 取引先名入力欄、762 支払内容分岐条件入力欄、763 締め日入力欄、764 支払日入力欄、765 支払い手段入力欄、766 手形決済日入力欄、767 登録ボタン、770 最新資金繰り表画面