(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112691
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】関節用サポータ
(51)【国際特許分類】
A61F 5/01 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
A61F5/01 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017916
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】橋田 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】京本 政之
(72)【発明者】
【氏名】長坂 優志
(72)【発明者】
【氏名】新居 秀明
【テーマコード(参考)】
4C098
【Fターム(参考)】
4C098AA02
4C098BB12
4C098BC08
4C098BC13
4C098BC15
4C098BD07
4C098BD13
(57)【要約】
【課題】ユーザの動きに応じて、ユーザの関節部を効果的に矯正する。
【解決手段】関節用サポータは、ユーザの関節部を含む領域に装着され、ユーザの動きに応じて関節部を矯正方向に押圧する作動部(11)と、流体(14)を貯留する貯留部(12)と、作動部と貯留部との間を流体が移動可能な流体通路(13)とを備え、作動部は貯留部から流体通路を介して流体が供給されることにより変形し、関節部を矯正する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの関節部を含む領域に装着され、前記ユーザの動きに応じて、前記関節部を矯正する作動部と、
流体を貯留する貯留部と、
前記作動部と前記貯留部との間を前記流体が移動可能な流体通路と、を備え、
前記作動部は、前記貯留部から前記流体通路を介して前記流体が供給されることにより変形し、前記関節部を矯正する、関節用サポータ。
【請求項2】
前記作動部は、ユーザの膝部に装着され、前記ユーザの歩行状態に応じて、前記貯留部から前記流体通路を介して前記流体が供給されることにより膨張変形し、前記膝部を押圧して矯正する、請求項1に記載の関節用サポータ。
【請求項3】
前記貯留部は、前記ユーザの足裏部の少なくとも一部が接地している間、前記作動部に前記流体を供給する、請求項2に記載の関節用サポータ。
【請求項4】
前記貯留部は、前記足裏部に装着され、前記貯留部を介して前記足裏部の少なくとも一部が接地している間、前記ユーザの体重によって圧縮される、請求項3に記載の関節用サポータ。
【請求項5】
前記足裏部が接地していることを検知するセンサと、
前記センサが前記足裏部の少なくとも一部が接地していることを検知している間、前記貯留部から前記作動部に前記流体を供給する流体供給部とを、さらに備える、請求項3に記載の関節用サポータ。
【請求項6】
前記足裏部に複数の分割された前記貯留部を備え、
前記足裏部の複数の分割された前記貯留部の少なくとも一部が接地することで、前記作動部に前記流体を供給する量を変化させる機構を、さらに備える、請求項3に記載の関節用サポータ。
【請求項7】
前記足裏部に複数の分割された前記貯留部を備え、
前記足裏部の複数の分割された前記貯留部の少なくとも一部が接地することで、前記作動部に前記流体を供給するタイミングを変化させる機構を、さらに備える、請求項3または6に記載の関節用サポータ。
【請求項8】
前記貯留部は、前記足裏部が接地していない間、前記作動部から供給される前記流体を収容する、請求項3に記載の関節用サポータ。
【請求項9】
前記貯留部は、前記ユーザの膝前部の少なくとも一部が屈曲している間、前記膝前部の屈曲によって圧縮し、前記作動部に前記流体を供給する、請求項2に記載の関節用サポータ。
【請求項10】
前記作動部は、前記流体が供給されることにより伸長し、該伸長の頂部が前記膝部を外側側から内側側へ押圧する、請求項2に記載の関節用サポータ。
【請求項11】
前記作動部は、前記流体が供給されることにより屈曲し、該屈曲の頂部が前記膝部を外側側から内側側へ押圧する、請求項2に記載の関節用サポータ。
【請求項12】
前記作動部は、ユーザの膝部に装着され、前記ユーザの歩行状態に応じて、前記貯留部から前記流体通路を介して前記流体が供給されることにより硬化して添え木状となり、前記膝部が内反した状態となることを防ぐ、請求項1に記載の関節用サポータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、関節用サポータに関する。
【背景技術】
【0002】
下記の非特許文献1には、脊髄損傷、小児麻痺、加齢に伴う筋力低下等により、下肢の運動能力が低下したユーザの身体の動きを支援するための、ソフトロボティクスソリューションが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Facundo Gutierrez and Khashayar Razghandi, 「MotorSkins-a bio-inspired design approach towards an interactive soft-robotic exosuit」, Bioinspiration & Biomimetics,Vol.16,066013,2021.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような従来技術において、ユーザの歩行時における関節部のサポートを向上させる余地があった。
【0005】
本開示の一態様は、ユーザの動きに応じて、ユーザの関節部を効果的に矯正するサポータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る関節用サポータは、ユーザの関節部を含む領域に装着され、前記ユーザの動きに応じて、前記関節部を矯正する作動部と、流体を貯留する貯留部と、前記作動部と前記貯留部との間を前記流体が移動可能な流体通路と、を備え、前記作動部は、前記貯留部から前記流体通路を介して前記流体が供給されることにより変形し、前記関節部を矯正する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、ユーザの動きに応じて、ユーザの関節部を効果的に矯正するサポータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の実施形態1に係る膝用サポータの外観を示す図である。
【
図2】
図1に示す膝用サポータの構成を示す模式図である。
【
図4】歩行周期とラテラルスラストとの関係を示す図である。
【
図5】
図1に示す膝用サポータの押圧部が伸長した状態を示す模式図である。
【
図6】
図1に示す膝用サポータを靴下に適用した例を示す外観図である。
【
図7】
図1に示す膝用サポータの動作を示すフローチャートである。
【
図8】本開示の実施形態2に係る膝用サポータの押圧部が屈曲した状態を示す模式図である。
【
図9】本開示の実施形態3に係る膝用サポータを説明する図である。
【
図10】
図9に示す膝用サポータの構成を示す模式図である。
【
図11】本開示の実施形態4に係る膝用サポータを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔実施形態1〕
以下、本開示の実施形態1について、図面に基づいて説明する。以下では、本開示に係る関節用サポータを、ユーザの膝部に装着する膝用サポータ1とした例に基づいて説明するが、本開示はこの例に限らず、ユーザの関節部を含む領域であれば装着して使用することができるものである。また下記では、ユーザの変形性膝関節症の進行を防ぐ例について説明するが、これに限らず、ユーザの関節部の矯正が必要な場合等についても、適用可能である。膝関節以外の関節部としては、例えば、足関節、股関節、肩関節、指関節および肘関節の少なくとも1つを挙げることができる。
【0010】
<歩行周期90>
図3は、変形性膝関節症の患者の歩行に特徴的な、ラテラルスラストを説明する図である。ラテラルスラストとは、
図3に示すように、歩行時に患者の膝関節が、内側側から外側側へP方向に横ブレする症状のことであり、ラテラルスラストを放置すると、変形性膝関節症が悪化する。
【0011】
図4は、人の歩行周期90とラテラルスラストが発生する際に生じる膝の内外反角速度との関係を示す図である(
図4は、Chang A et al.(2013),"Varus Thrust and Knee Frontal Plane Dynamic Motion in Persons with Knee Osteoarthritis", Osteoarthritis Cartilage,Vol.21,No.11,1668-1673, doi:10.1016/j.joca.2013.08.007. に基づく)。
図4の上方には、人の歩行周期90が人型の図で示されており、下方には、人の歩行周期90においてラテラルスラストが発生するタイミングをグラフで示している。
【0012】
歩行周期90とは、一方の足20に注目して、踵部23が接地してから再び接地するまでの連続動作または時間のことである。
図4の人型の図に示すように、歩行周期90は、足裏部22の少なくとも一部が接地している立脚期91、および足裏部22が接地していない遊脚期92を含む。ここで、立脚期91を時系列で以下に説明する。踵部23が接地する初期接地期91a、足裏部22のほぼ全体が接地する荷重応答期91b、一方の足20のみが接地している立脚中期91c、踵部23が離地する立脚終期91d、およびつま先部24が離地する前遊脚期91eが、この順で含まれる。
【0013】
また、立脚期91における、足裏部22の接地状態は、まず踵部23から接地し、次に足裏部22のほぼ全体が接地し、次に踵部23が離地し、その後つま先部24が離地するというように、動的に変化する。
【0014】
図4のグラフに示すように、ラテラルスラストは、歩行周期9において、ほぼ歩行の初期91fに発生する。ここで、歩行の初期91fとは、歩行周期の1サイクルに要する時間を100%としたとき、踵部23が接地してから概ね10%以内の範囲を指す。つまり、ラテラルスラストは、踵部23が接地してから、踵部23寄りの部分に荷重がかかる歩行の初期91fに発生する。
【0015】
このため、少なくとも歩行の初期91fを含む期間に、患者の膝部21を押圧し、膝関節を矯正することにより、ラテラルスラストの発生を効果的に防ぐことができる。
【0016】
膝用サポータ1は、詳しくは後述するが、例えば変形性膝関節症の患者の歩行の初期91fに、膝関節を押圧して矯正し、ラテラルスラストの発生を防ぐことができる。膝用サポータ1を膝部21に装着することにより、患者であるユーザの歩行状態に応じて、膝部21を外側側から内側側へ押圧して矯正し、変形性膝関節症が進行するのを防ぐことができる。
【0017】
<膝用サポータ1>
次に、本開示の実施形態1に係る膝用サポータ1について、図面を参照して説明する。
【0018】
膝用サポータ1は、関節用サポータであり、ユーザの関節部を含む領域に装着され、ユーザの動きに応じて、ユーザの関節部を矯正方向に押圧する。例えば、関節用サポータは、ユーザの膝部21に装着される膝用サポータ1であり、ユーザの歩行状態に応じて、膝部21を押圧する。
【0019】
図1は膝用サポータ1の外観を示す図であり、
図2は膝用サポータ1の構成を示す模式図である。
図1の符号100Aで示す図は、膝用サポータ1を装着したユーザの足を正面側から見た図であり、符号100Bで示す図は横側から見た図である。
【0020】
図1および
図2に示すように、膝用サポータ1は、膝部21を押圧する押圧部11(作動部)、流体14を貯留する貯留部12、押圧部11と貯留部12とを連通し流体14が移動可能な流体通路13、被覆部15、および固定部材16を備える。押圧部11、貯留部12、および流体通路13は、液密に構成される。
【0021】
貯留部12は、流体14を貯留する貯留空間121を備えており、例えば、シリコーンゴム、ラテックス、イソプレンゴム、軟質塩化ビニール、またはポリウレタン等の弾性体で構成される。貯留部12は、ユーザが歩行の際に貯留部12を踏むことができるように、ユーザの足裏部22に配置される。貯留部12の足裏部22の位置は、歩行周期90に応じて適宜設定することができる。すなわち、初期接地期91aから押圧力を与え始める場合には、ユーザの足裏部22の下方(踵方向)に配置される。
【0022】
貯留空間121の体積は、例えば、得られる押圧力、ユーザの感覚またはユーザの足のサイズなどに応じて決定される。貯留部12は、ユーザが靴を履いた際に違和感が少なくなるように、厚みが、例えば、靴底またはソールよりも薄くなるように設定されていてもよい。もしくは、貯留部12は、押圧力を確保するために、厚みが、例えば、靴底またはソールよりも厚くなるように設定されていてもよい。
【0023】
貯留部12は、ユーザの足裏部22の少なくとも一部が接地している間、押圧部11に流体14を供給する。ユーザが足裏部22で貯留部12を踏むことにより、足裏部22の少なくとも一部が接地している間、貯留部12はユーザの体重によって圧縮され、貯留空間121内の流体14は、流体通路13を介して押圧部11に供給される。
【0024】
一方、歩行によりユーザの足裏部22が離地して貯留部12の圧縮が解除されると、弾性体である貯留部12は元の形状に戻る。これにより、押圧部11に供給されていた流体14は、押圧部11から流体通路13を介して、再び貯留部12の貯留空間121内に収容される。
【0025】
流体14は、例えば、油圧オイル、または防腐処理水等からなる、非圧縮性の液体である。流体14が非圧縮性を備えることにより、ユーザの足裏部22で貯留部12が圧縮されても、流体14の体積を大きく減少させずに、流体14を押圧部11に供給することができる。
【0026】
流体通路13は、押圧部11と貯留部12との間を流体14が移動可能な通路であり、押圧部11と貯留部12とを連通して形成される。流体通路13は、例えば、ゴムまたは樹脂製のホースの外側に、繊維または金属からなる補強層および外装を備える油圧ホース等の可撓性材料で構成される。
【0027】
また流体通路13は、例えば、多層構造体として形成され、内部に少なくとも一つの隔壁と、当該隔壁により仕切られた複数の内部流路を備えていてもよい。各内部流路は、少なくとも一か所で互いに連結されていてもよいし、互いに連結しない独立した構造であってもよい。
【0028】
押圧部11は、例えば、シリコーンゴム、ラテックス、イソプレンゴム、軟質塩化ビニール、またはポリウレタン等の可撓性材料で構成される。上述したように、ユーザが貯留部12を踏むことにより、流体14が貯留部12から押圧部11に供給される。これにより押圧部11は膨張変形して、膝部21を外側側から内側側へQ方向に押圧する。これによって、歩行時に膝関節が内側側から外側側へP方向に横ブレするラテラルスラストの発生をカウンタ的に防ぎ、変形性膝関節症が進行するのを防ぐことができる。
【0029】
図5は、膝用サポータ1の押圧部11が伸長した状態を示す模式図である。
図5の符号500Aで示す図は、貯留部12から流体14が供給されていないときの押圧部11の状態を示す模式図であり、符号500Bで示す図は、流体14が供給されているときの押圧部11の状態を示す模式図である。
【0030】
符号500Aで示すように、貯留部12から流体通路13を介して流体14が供給されていないときは、押圧部11は膨張変形しないため、ユーザの膝部21を押圧しない。
【0031】
一方、符号500Bで示すように、貯留部12から流体通路13を介して流体14が供給されると、押圧部11は、膨張変形してQ方向に伸長し、伸長した頂部が膝部21を外側側から内側側へQ方向に押圧する。
【0032】
また押圧部11は、流体通路13の管軸方向の延長に、流体通路13と一体的に構成されてもよい。この場合、押圧部11は、流体通路13から流体14が供給されると、管軸方向に膨張し伸長する。
【0033】
再び
図1および
図2に戻って説明する。上述したように、歩行によりユーザの足裏部22が離地して貯留部12の圧縮が解除すると、貯留部12から供給された流体14は、押圧部11から流体通路13を介して、貯留部12の貯留空間121に戻る。これにより、押圧部11は収縮して元の形状に戻るため、押圧部11による膝部21への押圧は解除される。
【0034】
このように、ユーザが歩行の際に貯留部12を踏むことにより、押圧部11が膨張変形して膝部21を押圧し、ユーザの足裏部22が離地すると、押圧部11は収縮して膝部21を押圧しなくなる。これにより、ユーザの歩行動作と同期して、押圧部11は、膝部21の押圧と、押圧の解除とを繰り返し行うことができる。このため、膝部21の血流を妨げることなく、ユーザに不快感が生じるのを防ぐことができる。
【0035】
特に、ユーザの踵部23で貯留部12を踏む場合、ラテラルスラストの発生する歩行の初期91fに、ユーザの膝部21を押圧し矯正することができるため、ユーザの歩行状態に応じて、より効果的に膝用サポータ1を用いることができる。
【0036】
被覆部15は、例えば、綿、またはポリエステル等の肌触りの良い繊維材料で構成される。被覆部15は、概ね膝用サポータ1全体を覆い、少なくとも押圧部11および流体通路13と一体的に接合される。押圧部11および流体通路13が流体14の移動によって膨張変形または収縮変形したときは、押圧部11および流体通路13の変形に伴い、被覆部15も一体的に変形する。
【0037】
固定部材16は、ユーザの膝部21の上部を固定する第1固定部材16a、および膝部21の下部を固定する第2固定部材16bを備える。第1固定部材16aおよび第2固定部材16bは、膝用サポータ1をユーザの膝部21に固定できるものであればよく、例えば、ベルトであってもよいし、面ファスナーとして構成されてもよい。
【0038】
第1固定部材16a、および第2固定部材16bでユーザの膝部21を上下からしっかりと固定することにより、押圧部11を所望の位置に配置し、安定してユーザの膝部21を押圧することができる。
【0039】
また、膝用サポータ1を、ユーザの膝関節よりやや下方に装着してもよい。これにより、ユーザの膝関節において最も外側に位置する、下方脛骨側の腓骨頭を押圧することができ、効果的に矯正力を伝えることができる。
【0040】
膝用サポータ1は、上述した例のように、ユーザの膝部21に直接装着してもよいが、例えば、膝用サポータ1を靴下に組み込んで構成してもよい。
図6は、膝用サポータを靴下に適用した例を示す外観図である。
【0041】
図6に示すように、膝用サポータ1を靴下に組み込んで、靴下型膝用サポータ10として実現することができる。靴下型膝用サポータ10は、膝用サポータ1の被覆部15を、膝より長い靴下型にしたものである。靴下型膝用サポータ10は、被覆部15と同じく、綿、またはポリエステル等の肌触りの良い繊維材料で構成される。
【0042】
また、これに限らず、例えば、靴下型膝用サポータ10を靴に組み込んで、靴型膝用サポータとしてもよい。
【0043】
<膝用サポータ1の動作の流れ>
図7は、膝用サポータ1の働きを時系列に示すフローチャートである。
図7に示すように、まず、膝用サポータ1を装着したユーザが歩行を始める(S1)。
【0044】
上述したように、ユーザの歩行の際は、まず踵部23が接地する。これにより、踵部23の下方に配置された貯留部12が圧縮される(S2)。
【0045】
貯留部12が圧縮されると、貯留空間121に貯留されていた流体14が、流体通路13を介して押圧部11へ移動する(S3)。流体14が供給された押圧部11は、膨張変形してユーザの膝部21を押圧する(S4)。
【0046】
ユーザの歩行により、ユーザの踵部23が地面から離れると、踵部23の下方に配置の貯留部12の圧縮が解除される(S5)。
【0047】
これにより、押圧部11に供給された流体14が、流体通路13を介して貯留部12へ移動する(S6)。押圧部11は収縮し、ユーザの膝部21の押圧が解除される(S7)
ユーザが歩行を続けている間、上記S2からS7が繰り返され、ユーザの歩行は終了する(S8)。
【0048】
〔実施形態2〕
本開示の実施形態2について、以下に説明する。説明の便宜上、上記実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。これは、以後の実施形態についても同じである。
【0049】
図8は、本開示の実施形態2に係る膝用サポータ1Aの押圧部11Aが屈曲した状態を示す模式図である。
図8の符号800Aで示す図は、貯留部12から流体14が供給されていないときの押圧部11Aの状態を示す模式図であり、符号800Bで示す図は、流体14が供給されているときの押圧部11Aの状態を示す模式図である。
【0050】
実施形態2に係る膝用サポータ1Aは、実施形態1と同じく、ユーザが貯留部12を踏むことにより、流体14が貯留部12から押圧部11Aに供給され、押圧部11Aが膨張変形する点で共通する。
【0051】
しかし、
図8に示すように、実施形態1の押圧部11は、Q方向に伸長して膝部21を押圧するのに対し、実施形態2の押圧部11Aは、以下の点で相違する。押圧部11Aは、流体14が供給されることにより、略「く」の字型に屈曲して変形し、屈曲部の頂部111付近で膝部21をQ方向に押圧する。
【0052】
押圧部11Aは多層構造に構成され、少なくとも第1押圧部11aおよび第2押圧部11bを備える。第1押圧部11aと第2押圧部11bとは互いに一体的に接合される。
【0053】
ここで、第1押圧部11aの方が、第2押圧部11bより伸縮率が高い場合、流体14が供給されたとき、伸縮率が互いに異なる第1押圧部11aと第2押圧部11bとが一体的に接合されているため、押圧部11Aは屈曲して変形する。
【0054】
上述した例では、押圧部11Aが略「く」の字型に屈曲する例について説明したが、これに限らす、押圧部11Aは山形に屈曲してもよいし、円弧状に屈曲してもよい。
【0055】
〔実施形態3〕
次に、本開示の実施形態3に係る膝用サポータ1Bについて説明する。膝用サポータ1Bの貯留部12Bは複数に分割され、複数の分割貯留部を備える点で、実施形態1の貯留部12と相違する。
【0056】
図9は本開示の実施形態3に係る膝用サポータ1Bを説明する図である(
図9は、Saito I et al. "Foot Pressure Pattern and its Correlation With Knee Range of Motion Limitations for Individuals With Medial Knee Osteoarthritis", American Congress of Rehabilitation Medicine.に基づく)。
図10は膝用サポータ1Bの構成を示す模式図である。
図9の符号900Aで示す図は、膝用サポータ1Bの分割貯留部12a~12iを示す図であり、符号900Bで示す図は、ユーザの歩行時の足圧分布の例を示す図である。
【0057】
符号900Aおよび
図10に示すように、膝用サポータ1Bの貯留部12Bは、複数の分割貯留部12a~12iを備える。分割貯留部12a~12iのそれぞれについて、押圧部11a~11iがそれぞれ連通し、流体14が移動可能な複数の流体通路13a~13iをそれぞれ備える。各流体通路13a~13iは、互いに結合または連通することなく、独立した通路として構成される。また各押圧部11a~11iは、それぞれ膝部21周辺の異なる部位を押圧する。
【0058】
上記に限らず、各流体通路13a~13iは、互いに結合または連通してもよいし、各流体通路13a~13iが連通する押圧部11B(不図示)を一つだけ備えてもよい。また貯留部Bの分割数は限定されず、少なくとも2つ以上あればよいし、それぞれ大きさが相違するように構成してもよい。
【0059】
このように貯留部12Bを複数に分割することで、足裏部22の下方に配置される複数の分割貯留部12a~12iの少なくとも一部が接地することで、押圧部11に流体14を供給する量を変化させることができる。また、分割貯留部12a~12iの少なくとも一部が接地することで、押圧部11に流体14を供給するタイミングを変化させることができる。
【0060】
一方、符号900Bで示すように、ユーザが歩行する際には、ユーザの体重により足裏部22に荷重がかかる。この荷重による足圧の分布は、歩くときのユーザの体重のかけ方、歩き方等により個人差が生じる。また、歩行周期90により、踵部23からつま先部24へと、荷重のかかる場所が動的に変化するが、この変化のタイミングにも個人差が生じる。このような、ユーザの歩行状態は、加速度センサ、足圧センサ等で計測することができる。
【0061】
膝用サポータ1Bは、複数の分割貯留部12a~12iを備えることにより、ユーザの歩行状態に合わせて、押圧部11に流体14を供給する量、およびタイミングを調整することができる。これにより、ユーザごとに適切な押圧力、タイミング、押圧箇所で、ユーザの膝部21を押圧して矯正することができる。
【0062】
〔実施形態4〕
次に、本開示の実施形態4に係る膝用サポータ1Cについて説明する。膝用サポータ1Cは、貯留部12Cが足裏部22ではなく、ユーザの膝前部に配置されている点で、実施形態1の膝用サポータ1と相違する。
【0063】
図11は、本開示の実施形態4に係る膝用サポータ1Cを説明する図である。
図11の符号110Aで示す図は、貯留部12Cが圧縮されていない状態を示す図であり、符号110Bで示す図は、貯留部12Cが圧縮されている状態を示す図である。
【0064】
符号110Aで示すように、貯留部12Cは、ユーザの膝部21が曲げられていないときは、圧縮されないため、流体14は押圧部11に供給されず、押圧部11は膝部21を押圧しない。
【0065】
一方、符号110Bで示すように、貯留部12Cは、ユーザの歩行の際に、ユーザの膝部21が屈曲したとき、ユーザの膝前部に位置する被覆部15が伸長することによって圧縮される。貯留部12Cは、ユーザの膝前部の少なくとも一部が屈曲している間、膝前部の屈曲によって圧縮し、押圧部11に流体14を供給する。これにより、押圧部11は膨張変形し、ユーザの膝部21を押圧して矯正する。
【0066】
〔実施形態5〕
本開示の実施形態5に係る膝用サポータ1D(不図示)は、押圧部11の替わりに硬化部(作動部)を備えてもよい。
【0067】
膝用サポータ1Dは、ユーザの膝部21に装着され、ユーザの歩行状態に応じて硬化する硬化部、流体14を貯留する貯留部12、および硬化部と貯留部12との間を流体14が移動可能な流体通路13を備える。
【0068】
膝用サポータ1Dは、格子状に流路を構成した板に流体14を送り込むことで、硬化部の形状維持能力を向上させ、硬化部を硬化させることができる。
【0069】
硬化部は、貯留部12から流体通路13を介して流体14が供給されることにより、硬化して添え木状となり、ユーザの膝部21が内反した状態となることを防ぐ。
【0070】
〔実施形態6〕
上述した膝用サポータの例では、ユーザの歩行時の動作により貯留部12が圧縮され、押圧部11に流体14 が供給されるが、本開示の実施形態6に係る膝用サポータ1E(不図示)は、以下の点で相違する。
【0071】
膝用サポータ1Eは、足裏部22が接地していることを検知するセンサと、当該センサが足裏部22の少なくとも一部が接地していることを検知している間、貯留部12から押圧部11に流体14を供給する流体供給部としてのコンプレッサとを、さらに備える。
【0072】
本開示は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【0073】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る関節用サポータは、ユーザの関節部を含む領域に装着され、前記ユーザの動きに応じて、前記関節部を矯正する作動部と、流体を貯留する貯留部と、前記作動部と前記貯留部との間を前記流体が移動可能な流体通路と、を備え、前記作動部は、前記貯留部から前記流体通路を介して前記流体が供給されることにより変形し、前記関節部を矯正する。
【0074】
本発明の態様2に係る関節用サポータは、上記態様1において、前記作動部は、ユーザの膝部に装着され、前記ユーザの歩行状態に応じて、前記貯留部から前記流体通路を介して前記流体が供給されることにより膨張変形し、前記膝部を押圧して矯正してもよい。
【0075】
本発明の態様3に係る関節用サポータは、上記態様2において、前記貯留部は、前記ユーザの足裏部の少なくとも一部が接地している間、前記作動部に前記流体を供給してもよい。
【0076】
本発明の態様4に係る関節用サポータは、上記態様3において、前記貯留部は、前記足裏部に装着され、前記貯留部を介して前記足裏部の少なくとも一部が接地している間、前記ユーザの体重によって圧縮されてもよい。
【0077】
本発明の態様5に係る関節用サポータは、上記態様3において、前記足裏部が接地していることを検知するセンサと、前記センサが前記足裏部の少なくとも一部が接地していることを検知している間、前記貯留部から前記作動部に前記流体を供給する流体供給部とを、さらに備えてもよい。
【0078】
本発明の態様6に係る関節用サポータは、上記態様3から5のいずれかにおいて、前記足裏部に複数の分割された前記貯留部を備え、前記足裏部の複数の分割された前記貯留部の少なくとも一部が接地することで、前記作動部に前記流体を供給する量を変化させる機構を、さらに備えてもよい。
【0079】
本発明の態様7に係る関節用サポータは、上記態様6において、前記足裏部に複数の分割された前記貯留部を備え、前記足裏部の複数の分割された前記貯留部の少なくとも一部が接地することで、前記作動部に前記流体を供給するタイミングを変化させる機構を、さらに備えてもよい。
【0080】
本発明の態様8に係る関節用サポータは、上記態様3から7のいずれかにおいて、前記貯留部は、前記足裏部が接地していない間、前記作動部から供給される前記流体を収容してもよい。
【0081】
本発明の態様9に係る関節用サポータは、上記態様2において、前記貯留部は、前記ユーザの膝前部の少なくとも一部が屈曲している間、前記膝前部の屈曲によって圧縮し、前記作動部に前記流体を供給してもよい。
【0082】
本発明の態様10に係る関節用サポータは、上記態様2において、前記作動部は、前記流体が供給されることにより伸長し、該伸長の頂部が前記膝部を外側側から内側側へ押圧してもよい。
【0083】
本発明の態様11に係る関節用サポータは、上記態様2において、前記作動部は、前記流体が供給されることにより屈曲し、該屈曲の頂部が前記膝部を外側側から内側側へ押圧してもよい。
【0084】
本発明の態様12に係る関節用サポータは、上記態様2において、前記作動部は、ユーザの膝部に装着され、前記ユーザの歩行状態に応じて、前記貯留部から前記流体通路を介して前記流体が供給されることにより硬化して添え木状となり、前記膝部が内反した状態となることを防いでもよい。
【符号の説明】
【0085】
1、1A~1E 膝用サポータ(関節用サポータ)
11、11A 押圧部(作動部)
111 頂部
12、12B、12C 貯留部
13 流体通路
14 流体
21 膝部
22 足裏部