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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112696
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】飼育システムおよび飼育方法
(51)【国際特許分類】
   A01K 63/04 20060101AFI20240814BHJP
   A01K 63/00 20170101ALI20240814BHJP
【FI】
A01K63/04 F
A01K63/04 C
A01K63/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017924
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】藤田 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】大塚 裕之
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 諒
【テーマコード(参考)】
2B104
【Fターム(参考)】
2B104AA17
2B104AA27
2B104AA38
2B104CA01
2B104CB04
2B104CB30
2B104DD01
2B104EB05
2B104EB19
2B104EB20
2B104ED15
2B104ED19
(57)【要約】
【課題】固形物の排出効率を向上させる。
【解決手段】飼育システム(100)は、水槽(1)と、無終端水路(10)と、主水流(S1)を発生させる水流機(20)と、無終端水路(10)における少なくとも1箇所に位置する排水口(H)と、無終端水路(10)における少なくとも順流区域(A1)に位置し、主水流(S1)による固形物(SM)の移送を促進させる副水流(S2)を発生させる散気管(30)と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水生生物が飼育される飼育水槽と、
前記飼育水槽の内部空間に設けられた無終端水路と、
前記無終端水路を循環する第1の水流を発生させる主水流発生部と、
前記無終端水路における少なくとも1箇所に位置し、前記飼育水槽から固形物とともに水を排水する排水部とを備え、
前記無終端水路は、前記第1の水流の方向が変化する転回区域と、前記転回区域以外の順流区域とを含み、
前記無終端水路における少なくとも前記順流区域に位置し、前記第1の水流による前記固形物の移送を促進させる第2の水流を発生させる副水流発生具をさらに備える飼育システム。
【請求項2】
前記排水部は、前記転回区域における少なくとも1箇所に位置している、請求項1に記載の飼育システム。
【請求項3】
前記排水部は、前記順流区域における少なくとも1箇所に位置している、請求項1に記載の飼育システム。
【請求項4】
前記第2の水流は、前記副水流発生具から鉛直上方向に向かう上昇流を含む、請求項1に記載の飼育システム。
【請求項5】
前記副水流発生具は、気泡を発生させる気泡発生具である、請求項4に記載の飼育システム。
【請求項6】
前記副水流発生具は、前記飼育水槽内の飼育水を移動させることにより前記上昇流を発生させる上昇流発生具である、請求項4に記載の飼育システム。
【請求項7】
前記副水流発生具は、前記順流区域における流路幅方向の中央に位置しているか、または、前記流路幅方向に並んで複数個設けられている、請求項1に記載の飼育システム。
【請求項8】
前記無終端水路は、前記排水部が設けられた第1の転回区域と、前記副水流発生具が設けられた第2の転回区域とを含み、
前記第2の転回区域では前記副水流発生具が前記無終端水路の流路中心よりも内側に位置している、請求項1に記載の飼育システム。
【請求項9】
前記排水部が設けられている前記転回区域に位置し、前記排水部に水を案内する第3の水流を生じさせる案内流発生具をさらに備える、請求項2に記載の飼育システム。
【請求項10】
前記排水部は、前記飼育水槽の底面に形成された排水口であり、
前記案内流発生具は、前記排水口の上方に位置している、請求項9に記載の飼育システム。
【請求項11】
前記排水部は、前記無終端水路の幅方向に延びる形状を有する溝である、請求項1に記載の飼育システム。
【請求項12】
前記主水流発生部および前記副水流発生具の出力を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記主水流発生部の流量を第1の周期にて周期的に変化させるとともに、前記副水流発生具の流量を前記第1の周期とは異なる第2の周期にて周期的に変化させるように制御し、
前記第1の周期と前記第2の周期とは、所定の時間間隔で最大流量のタイミングが重なるように設定されている、請求項1に記載の飼育システム。
【請求項13】
前記排水部は、前記転回区域における少なくとも1箇所に位置しており、
前記排水部が設けられている前記転回区域に位置し、前記排水部に水を案内する第3の水流を生じさせ、前記制御部によって出力を制御される案内流発生具をさらに備え、
前記副水流発生具および前記案内流発生具は、気泡を発生させる気泡発生具であり、
前記制御部は、前記副水流発生具の空気流量よりも、前記案内流発生具の空気流量が小さくなるように制御する、請求項12に記載の飼育システム。
【請求項14】
前記飼育水槽は、平面視で矩形形状を有し、
前記飼育水槽の内部空間に前記無終端水路を形成するように設置される仕切り部と、
前記飼育水槽の角部に位置して、当該角部への水の侵入を阻害する流路制限部材と、を備える、請求項1~13のいずれか一項に記載の飼育システム。
【請求項15】
内部空間に無終端水路が設けられた飼育水槽を用いて水生生物を飼育する飼育方法であって、
前記無終端水路を循環する第1の水流を発生させることと、
前記無終端水路における少なくとも1箇所に位置する排水部により、前記飼育水槽から固形物とともに水を排水することとを含み、
前記無終端水路は、前記第1の水流の方向が変化する転回区域と、前記転回区域以外の順流区域とを含み、
前記無終端水路における少なくとも前記順流区域において、前記第1の水流による前記固形物の移送を促進させる第2の水流を発生させることをさらに含む飼育方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水生生物を飼育する飼育システムおよび飼育方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ウニの陸上養殖では、矩形状の水槽(矩形水槽)内でウニを飼育することが一般的に行われている。陸上養殖においては不要な固形物を系外に迅速に排出することが重要であるが、矩形水槽を用いる場合、固形物を排出し難い。この固形物には、養殖対象物からの排泄物、および養殖対象物に摂餌されずに残存した餌(以下、残餌)等が含まれる。
【0003】
矩形水槽内に堆積した上記固形物は、飼育環境(水質)の悪化、並びに成長阻害および斃死の原因となり得る。そのため、清掃作業が必要となり、運用上の課題となっている。
【0004】
固形物の堆積への対策として、レースウェイ型の水槽(レースウェイ水槽)が知られている。魚貝類等の養殖において、矩形水槽の代わりにレースウェイ水槽が用いられることがある(例えば特許文献1を参照)。特許文献1には、水流を伴う長波動を水槽内に生起させることによって養殖環境を充実させる養殖方法について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4243068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術では、水槽の底部を波形に形成し、当該底部に分散的に多数の排水口を設けるとともに当該底部にアワビ等を付着させている。そして、水流を伴う長波動を利用して、排水口から固形物の排出除去を行っている。
【0007】
しかし、長波動発生装置を設置するための比較的大型の水槽および長波動の利用に適した設備構造等を有することが必要となり、システムの導入が容易ではない。
【0008】
水槽内部において固形物が堆積すると、堆積した固形物の清掃作業が必要となるため、固形物の排出効率を向上させることが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様における飼育システムは、水生生物が飼育される飼育水槽と、前記飼育水槽の内部空間に設けられた無終端水路と、前記無終端水路を循環する第1の水流を発生させる主水流発生部と、前記無終端水路における少なくとも1箇所に位置し、前記飼育水槽から固形物とともに水を排水する排水部とを備え、前記無終端水路は、前記第1の水流の方向が変化する転回区域と、前記転回区域以外の順流区域とを含み、前記無終端水路における少なくとも前記順流区域に位置し、前記第1の水流による前記固形物の移送を促進させる第2の水流を発生させる副水流発生具をさらに備えている。
【0010】
また、本発明の一態様における飼育方法は、内部空間に無終端水路が設けられた飼育水槽を用いて水生生物を飼育する飼育方法であって、前記無終端水路を循環する第1の水流を発生させることと、前記無終端水路における少なくとも1箇所に位置する排水部により、前記飼育水槽から固形物とともに水を排水することとを含み、前記無終端水路は、前記第1の水流の方向が変化する転回区域と、前記転回区域以外の順流区域とを含み、前記無終端水路における少なくとも前記順流区域において、前記第1の水流による前記固形物の移送を促進させる第2の水流を発生させることをさらに含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、固形物の排出効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態1における飼育システムの概略構成を模式的に示す図である。
図2】本発明の実施形態1における飼育システムについて、飼育水の全体的な流れを説明するための模式的な平面図である。
図3】本発明の実施形態1における飼育システムの模式的な平面図である。
図4】本発明の実施形態1における飼育システムの模式的な断面図である。
図5】本発明の実施形態1における飼育システムの全体構成を模式的に示す図である。
図6】本発明の実施形態1の別構成例における飼育システムが備える水槽の要部拡大図である。
図7】本発明の実施形態1の別構成例における飼育システムの模式的な断面図である。
図8】本発明の実施形態2における飼育システムが備える水槽の要部拡大図である。
図9】本発明の実施形態2における飼育システムの別構成例について模式的に示す図である。
図10】本発明の実施形態2の別構成例における飼育システムの散気管の配置の一例について示す図である。
図11】本発明の実施形態3における飼育システムの、水流およびエアレーションの出力制御の一例を示すグラフである。
図12】本発明の実施形態4における飼育システムが備える水槽を模式的に示す平面図である。
図13】本発明の実施形態5における飼育システムの模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。但し、以下の記載は発明の趣旨をより良く理解させるためのものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。以下の説明において参照する各図は、説明の便宜上、実施形態を説明する上で必要な主要部材のみを簡略化して示したものであり、公知の技術的事項については、簡潔化のために説明を適宜省略する。よって、本実施形態における飼育システムは、参照する各図に示されていない公知の構成部材を任意に備えていてよい。また、各図中の部材の形状および寸法は、実際の形状および寸法を必ずしも反映させたものではなく、図面の明瞭化および簡略化のために適宜変更している。
【0014】
本実施形態では、水生生物の一例としてのウニ(海栗)を養殖する飼育システムについて説明する。本発明の一態様における飼育システムは、ウニに限定されず、各種の水生生物の飼育に適用可能である。本発明の一態様における飼育システムは、例えば、水槽中への固形物の堆積が生じるような種類の魚類、貝類、甲殻類等の飼育に適用できる。飼育対象の一例として、アワビ、エビ、ナマコ等を挙げることができる。
【0015】
また、本発明の一態様における飼育システムは、水生生物の養殖(蓄養を含む)に限定されず、栽培漁業における種苗生産および中間育成に適用されてよく、水生生物を鑑賞用に飼育する場合に適用することもできる。
【0016】
(陸上におけるウニの養殖について)
ウニは、摂餌した餌の大部分を排泄物として排出する。ウニからの排泄物および残餌等の固形物を手作業によって除去(清掃)することは、煩雑であるとともにコスト増を招来する。従来、固形物を系外に排出するために、水槽を浅くしつつ速い水流を生じさせる、間欠的に大量の水流が発生するような特殊な構造を採用する、といった工夫が検討されている。しかし、多くの動力を使用して流速を高めることにより稼働コストが増加すると、現実的な運用にとって好ましくない。また、特殊な構造を採用することによれば、汎用性が低下するという問題がある。
【0017】
本発明の一態様における飼育システムは、以下に述べる構成を備えることによって、比較的簡便な構造にて、固形物の回収(系外への排出)効率を向上させる。本発明の一態様における飼育システムは、エネルギー消費量への影響を比較的小さくすることもできる。
【0018】
(飼育システムの要部構成)
本実施形態における飼育システム100について、図1を参照して概略的に説明する。図1は、飼育システム100の概略構成を模式的に示す図である。図1では、飼育システム100の全体ではなく、要部としての、ウニUを飼育する水槽1について示している。また、図1では飼育水の図示を省略している。図1の符号1001により示す図は、水槽1の平面図であり、図1の符号1002により示す図は、符号1001により示す図のI-I線矢視断面の一部を示す部分断面図である。
【0019】
図1に示すように、飼育システム100は、ウニ(水生生物)Uが飼育される水槽(飼育水槽)1と、水槽1の内部空間に設けられた無終端水路10と、無終端水路10を循環する主水流(第1の水流)S1を発生させる水流機(主水流発生部)20と、無終端水路10における少なくとも1箇所に位置し、水槽1から固形物SMとともに水を排水する排水口(排水部)Hと、主水流S1による固形物SMの移送を促進させる副水流(第2の水流)S2を発生させる散気管(副水流発生具)30と、を備えている。
【0020】
水槽1は、いわゆるレースウェイ水槽であり、水が巡回可能な流路を有する。本明細書では、このような流路を無終端水路と称する。無終端水路10は、転回区域A2および順流区域A1を含む。主水流S1は、順流区域A1(第1の順流区域)から転回区域A2を通過して、次の順流区域A1(第2の順流区域)へと流れる。転回区域A2は、無終端水路10を流れる主水流S1の方向が変化する部分である。転回区域A2において、主水流S1の空間的な進行方向(換言すればベクトル)が全体的に変化する。典型的には、転回区域A2において、主水流S1の空間的な進行方向が全体的に反対方向に転回する。転回区域A2は、水槽1の内部空間において流路が湾曲している部分であってよい。転回区域A2における流路の外周壁は、少なくとも1つの湾曲面を有していてよく、複数の平面を有していてもよい。順流区域A1は、転回区域A2以外の部分であり、典型的には流路が直線状となっている部分である。順流区域A1は、必ずしも直線状に限定されず、略直線状であってよく、流路幅が略一定であってもよい。
【0021】
水槽1における無終端水路10は、複数の転回区域A2および順流区域A1を含んでいてよい。図1に示す例では、無終端水路10は、2つの転回区域A2および2つの順流区域A1を有している。
【0022】
図1に示す例では、排水口Hは、転回区域A2における少なくとも1箇所に位置している。排水口Hは、複数の転回区域A2のうち少なくとも何れかに位置していてよく、図1に示す例では、2つの転回区域A2のそれぞれに1つずつ排水口Hが位置している。また、散気管30は、少なくとも順流区域A1に位置する。図1に示す例では、2つの順流区域A1のそれぞれに1本ずつ散気管30が位置している。
【0023】
水槽1に対して、給水器(図示省略)から飼育水Wが給水されるとともに、排水口Hから飼育水Wが排出されることにより、無終端水路10には、飼育水Wが部分的に換水されつつ一時的に貯留される。本明細書において、水槽1内の飼育水Wの水面に対して鉛直上方向から水槽1を見ることを平面視と称する。図1に示す例では、水槽1は、水槽1の底面1Bの外縁から立ち上がる外周壁1Aを有し、外周壁1Aは、平面視において長円状の形状を有している。また、水槽1は、平面視において、長手方向を有する仕切り部1Cを有しており、仕切り部1Cは、無終端水路10における2つの順流区域A1および2つの転回区域A2に接していてよい。外周壁1Aおよび底面1Bにより囲まれて画定される内部空間を仕切り部1Cが区分することにより、無終端水路10が形成されていてよい。
【0024】
散気管30は、水槽1の底面1Bの近傍に位置していてよく、底面1Bに接していてもよい。例えば、底面1Bと散気管30との距離は、散気管30の直径の3倍よりも小さくてよく、散気管30の直径よりも小さくてよい。散気管30は、気泡Bを発生させる気泡発生具の一例である。副水流S2は、散気管30から鉛直上方向に向かう上昇流S21を含む。散気管30には、図示を省略する給気管が接続されていてよい。散気管30は、支持具(図示省略)によって水槽1に取り付けられていてよく、散気管30の上方に位置する架設部材から吊り下げられて設置されていてもよく、具体的な設置態様は特に限定されない。
【0025】
散気管30は、順流区域A1における流路幅方向の中央(中央部)に位置していてよい。ここでいう中央部とは、例えば、順流区域A1の幅、すなわち外周壁1Aと仕切り部1Cとの距離をW1として、幅W1の1/3~2/3の間の部分であってよい。散気管30から発生した気泡Bは、飼育水W内を鉛直上方向に向かって浮上する。これにより、上昇流S21が生じる。その結果、固形物SMを浮遊させ易くすることができ、主水流S1による固形物SMの移送を促進させることができる。
【0026】
また、上昇流S21の発生に伴って、外周壁1Aから散気管30に向かう方向、および仕切り部1Cから散気管30に向かう方向の水流が、底面1Bに沿うように生じ得る。このような水流を掃流S22と称する。副水流S2は、掃流S22を含んでいてよく、上昇流S21および掃流S22によって、底面1Bに固形物SMが堆積することを効果的に阻害することができる。
【0027】
また、飼育システム100において、水槽1には、飼育(養殖)されるウニUが収容される飼育かご5が設置される。飼育かご5は、少なくとも順流区域A1に位置する。
【0028】
飼育かご5は、底面1Bとの間に所定の間隔(距離)を有する位置に設置される。飼育かご5は、例えば底面および側面が格子状(メッシュ状)の網によって構成されていてよい。例えば、プラスチック製の角目ネットを用いて飼育かご5を構成することができる。飼育かご5の材質は特に限定されない。網の間隙部を通じて、残餌およびウニUの排泄物が飼育水W内を鉛直下方向に沈降するとともに、気泡Bが飼育水Wの水面に向かって浮上する。飼育かご5の底面によって上昇流S21の流れが部分的に妨げられて、飼育かご5の底面に沿う方向の水流が生じる場合、図1の符号1002で示す断面視において、副水流S2は、回転するような方向に生じ得る。主水流S1と回転方向の副水流S2とが合成されて螺旋状に水流が生じることによれば、固形物SMの移送をより一層促進させることができる。
【0029】
本実施形態における飼育システム100では、転回区域A2に散気管30が位置していないことにより、転回区域A2において固形物SMを沈降させ易くできる。そのため、排水口Hの近傍に移送された固形物SMを効率よく排出させることができる。
【0030】
(飼育システムの各部)
本実施形態における飼育システム100について、図2図4を用いてさらに説明すれば以下のとおりである。図2は、本実施形態における飼育システム100について、飼育水Wの全体的な流れを説明するための模式的な平面図である。図2では、散気管30の図示を省略している。図3は、本実施形態における飼育システム100の模式的な平面図である。図4は、本実施形態における飼育システム100の模式的な断面図である。図4では、2つの飼育かご5の一方を図示省略し、水流機20の位置を破線で示している。
【0031】
図2~4に示すように、本実施形態における飼育システム100は、水槽1に飼育水Wを給水する給水管(給水器)40を備えていてよい。水槽1に飼育水Wを給水する方法は特に限定されないが、給水管40を用いて飼育かご5の上方から飼育水Wを散水することにより、ウニUに新鮮な飼育水Wを供給し易くできる。
【0032】
そして、本実施形態における飼育システム100では、排水流路6が排水口Hに連通して接続されており、飼育水Wおよび固形物SMが排水流路6を通じて水槽1外に排出される。詳しくは後述するように、水槽1から排出された飼育水Wは、所定の処理が行われつつ循環して給水管40に戻り、水槽1内に給水されてもよい。
【0033】
本実施形態における飼育システム100において、水槽1の材質は特に限定されず、例えば公知の樹脂およびガラス等であってよい。仕切り部1Cについても同様である。
【0034】
従来、水中に空気を溶かすため(いわゆるエアレーションのため)に散気管が用いられることがあるが、飼育システム100では、散気管30を利用してエアレーションを行いつつ固形物SMの排出効率を向上させる。散気管30は、例えば多孔管であってよい。気泡発生具は散気管30に限定されず、例えばエアストーンを用いてもよい。散気管30は、順流区域A1において、直列に複数本設置されていてよく、並列に複数本設置されていてもよい。散気管30は、平面視において飼育かご5と重なる位置に設置されていてよい。散気管30は、連続的に設置されていてよく、断続的に設置されていてもよい。散気管30は、1つの順流区域A1の流路長さの50%以上の長さを占めるように設置されていてよく、例えば、60%以上、70%以上、または80%以上の長さを占めるように設置されていてよい。上記割合の上限は、例えば、100%であってよく、90%または80%であってよい。
【0035】
散気管30から気泡Bを発生させることによって生じる副水流S2を利用することにより、固形物SMを移送するために水流機20に要求される出力を低減することができる。水流機20は、水中に設置して駆動されることにより主水流S1を発生可能な機器(主水流発生機)であってよく、水流機20として、例えば、水流ポンプ(サーキュレータ)等を用いることができる。水流ポンプは、比較的コンパクトかつ省電力でありながら、効率的に水流を生じさせることができる。水流機20は、支持具(図示省略)等によって水槽1内に設置されていてよく、ケーブル(図示省略)が接続されていてよく、具体的な設置態様は特に限定されない。
【0036】
飼育システム100では、複数台の水流機20が設置されていてよく、水流機20は、例えば、1台あたり2000~15000L/hの流量の水を送出可能な装置性能を有していてよい。本実施形態における飼育システム100では、平面視において、時計回り方向に主水流S1を生じさせている。これに限定されず、主水流S1は、平面視において、反時計回りの方向に流れていてもよい。主水流S1の方向は、水流機20の向き、換言すれば水流機20による水流の発生方向によって決定される。
【0037】
水槽1は、長手方向における長さL1が1~20mであってよく、短手方向における幅W2が0.5~5.0mであってよく、高さH1が0.2~3.0mであってよい。順流区域A1の幅W1は0.2~2.5mであってよい。水槽1において、飼育水Wの水面高さH2は0.1~3.0mであってよい。飼育水Wの水面と飼育かご5の上端の高さとが揃っていてもよい。水槽1は、例えば、水深が50cmとしたときの飼育水Wの容量が0.2~100トンであってよい。飼育かご5の高さH3は、水面高さH2よりも小さく、例えば10~50cmであってよい。この飼育かご5の高さH3は、飼育水Wの水面から飼育かご5の上端が露出している場合、飼育かご5における飼育水W中に浸っている部分の高さを意味する。
【0038】
直線状または略直線状の散気管30の端部から仮想的に延長線P1を延ばした場合に、水流機20は、延長線P1と重ならない位置に設置されていてよい。また、水流機20は、高さ方向において飼育かご5よりも下側に位置していてよい。上記構成によれば、飼育かご5の下方において、水流機20によって散気管30の両側に水流を生じさせることができ、この場合、固形物SMを効率的に移送させ易くできる。つまり、飼育かご5の下方の無終端水路10において、散気管30よりも外側(外周壁1Aに近い側)の領域を第1の移送空間A11、散気管30よりも内側(仕切り部1Cに近い側)の領域を第2の移送空間A12とすると、第1の移送空間A11および第2の移送空間A12のそれぞれに対応する水流機20を設置することができる。これにより、飼育かご5の下方において、1つの水流機20に対応する流路断面積を低減することができ、固形物SMを移送するために水流機20に要求される出力を低減することができる。
【0039】
飼育かご5の底面の位置(水面高さH2から飼育かご5の高さH3だけ低い位置)は、順流区域A1を水深方向における上部と下部とに仮想的に分ける境界位置とすることができる。水流機20の大きさは、水深方向における上記境界位置と水槽1の底面1Bとの互いの距離よりも小さくてよく、上記第1の移送空間A11または第2の移送空間A12の幅よりも小さくてよく、例えば直径2~20cmであってよい。水槽1の底面1Bから、水流機20の中央部までの高さH4は、水深方向における上記境界位置と水槽1の底面1Bとの互いの距離よりも小さくてよく、例えば0~0.5mであってよい。
【0040】
排水口Hは、転回区域A2における無終端水路10の流路中心CL(図6参照)に位置していてよく、流路中心CLよりも内側に位置していてよい。転回区域A2において、内側(仕切り部1Cに近い側)の流速が比較的遅くなり固形物SMが沈降し易い場合、排水口Hが内側寄りに位置することによって、固形物SMの回収効率を高め易くできる。
【0041】
(飼育システムの全体構成)
本実施形態における飼育システム100は、閉鎖循環式陸上養殖を行うように構成されていてもよい。閉鎖循環式陸上養殖とは、濾過システムを用いて飼育水を浄化しながら、飼育水を循環利用する養殖方式である。この方式では、基本的に飼育水を排水しないため、環境負荷を低減することができる。そのため、今後の市場拡大が期待されている。
【0042】
なお、飼育システム100は、かけ流し式陸上養殖を行うように構成されていてもよい。かけ流し式陸上養殖とは、天然環境から海水等を継続的に引き込み、飼育水として使用する養殖方式である。
【0043】
図5は、飼育システム100の全体構成を模式的に示す図である。図5中、水の流れを二点鎖線にて示し、空気の流れを一点鎖線にて示し、データ通信の流れを破線にて示している。図5において、丸囲みの記号Xは、図示の平明化のためのデータ通信線のジャンプを意味している。図5では、飼育水Wおよび飼育かご5の図示を省略し、給水管40の図示を一部省略している。
【0044】
図5に示すように、飼育システム100は、ろ過装置60と、副水流発生装置3と、調整槽4と、循環ポンプPと、制御部90とを備えていてよい。
【0045】
ろ過装置60は、物理的または化学的なろ過により、排水から固形物SMを除去する。排水口Hから流出した排水を例えば網形状を有する捕集具に通じることによって固形物SMを除去してもよい。飼育システム100は、図示を省略する水質測定槽を有していてもよい。調整槽4では、水質調整、殺菌、温度調整等の各種の処理が行われてよい。
【0046】
副水流発生装置3は、例えば散気管30に空気を送出するブロワであってよい。制御部90は、副水流発生装置3および水流機20と通信可能に接続され、副水流発生装置3および水流機20の出力を制御可能となっている。制御部90は、例えば、副水流発生装置3からの空気流量を制御することにより、散気管30からの気泡Bの発生量を制御し、気泡Bに関連して生じる副水流S2の流量を制御する。制御部90は、水流機20の出力を制御することにより、主水流S1の流量を制御する。制御部90は、循環ポンプP等についても制御可能となっていてよい。
【0047】
(飼育システムの利点)
本実施形態における飼育システム100は、レースウェイ水槽を用いることにより水流のエネルギーロスを低減しつつ、エアレーションを兼ねる散気管30の気泡Bによって副水流S2を生じさせる。そして、転回区域A2には散気管30を設置せず、その一方で排水口Hを設ける。これにより、省電力の水流機20を用いる場合であっても、順流区域A1にて固形物SMを効果的に移送させることができ、転回区域A2にて固形物SMを沈降させることにより、固形物SMの排出効率を高めることができる。また、転回区域A2のスペースを効率的に活用できる。
【0048】
なお、飼育システム100における主水流発生部は、水流機20に限定されず、水槽1内の無終端水路10を循環する水流(主水流S1)を発生させる循環流発生具を備えていてもよい。循環流発生具としては、外力によって飼育水Wを移動させることができればよく、具体的に限定されないが、例えば小型の回転羽根(スクリュー)であってよい。主水流発生部は、循環流発生具およびそれを制御する制御部を含んでいてよい。
【0049】
また、各種のポンプ(揚水ポンプ等)を用いて、送水管を通じて供給水を送水し、飼育水W中に位置する上記送水管の吐出口から供給水を吐出することによって上記循環流発生具として機能させてもよい。上記ポンプとして循環ポンプPを用いてもよく、上記送水管として給水管40とは別の給水管を、吐出口が飼育水W中に位置するように設置してよい。循環流発生具は、ポンプを制御する制御部を含んでいてよい。
【0050】
循環流発生具における水流の発生方向が主水流S1を生じさせようとする方向を向くように循環流発生具を設置することで、所望の方向に主水流S1を生じさせることができる。
【0051】
上記のようにポンプを用いて上記送水管の吐出口から供給水を吐出させる場合、主水流S1を発生させるために、送水管内の送水量(または水圧)を或る程度高めることが求められる。一般に、同流量の水流を生じさせる場合、水流機は、ポンプを使用する場合に比べて省電力である。本実施形態における飼育システム100は、ポンプではなく水流機20を用いることができ、水流機20を用いる場合、ポンプを用いる場合よりも電力消費量を効果的に低減できる。
【0052】
(実施例)
一実施例における飼育システム100では、水槽1は、長さL1が10m、幅W2が2m、高さH1が0.6m、幅W1が1mである形状を有し、この場合、水面高さH2を0.5m(水深を50cm)としたときの飼育水Wの容量は9.6トンであった。また、飼育かご5の高さH3は30cmであり、水流機20の大きさは直径7cmであり、水槽1の底面1Bから水流機20の中央部までの高さH4は20cmとし、水流機20は8000L/hの流量の水を送出可能な装置性能を有するものを4台設置した。排水口Hの直径は10cmであり、排水量は9600L/hとした。給水量は9600L/hに設定した。散気管30からのエアレーションを行うとともに水流機20を稼働させることにより、散気管30からのエアレーションを行わない場合よりも固形物SMの回収率が向上することが確認された。
【0053】
(飼育方法)
飼育システム100を用いる飼育方法は、以下のように整理することができる。すなわち、本発明の一態様における飼育方法は、転回区域A2と順流区域A1とを含む無終端水路10を循環する主水流S1を発生させることと、無終端水路10における少なくとも1箇所に位置する排水口Hにより、水槽1から固形物SMとともに水を排水することと、少なくとも順流区域A1において、主水流S1による固形物SMの移送を促進させる副水流S2を発生させることと、を含む。
【0054】
(別構成例1)
(A)飼育システム100の水槽1において、仕切り部1Cは、底面1Bに連続して一体に形成されていてもよく、底面1Bとは別体の部材が仕切り部1Cとして設置されていてもよい。また、水槽1は、無終端水路10を有していればよく、仕切り部1Cの代わりに、中空部を有していてもよく、この場合、中空部を囲むように内壁面が設けられていてよい。
【0055】
(B)散気管30は、断続的に複数本設置されていてもよい。また、散気管30は、流路幅方向に並んで複数個設置されていてもよい。例えば、順流区域A1の幅W1が比較的大きい場合、流路幅方向の中央部に2個の散気管30が並んで設置されていてよく、2個の散気管30は互いに離れていてもよい(間隔を有していてよい)。水流機20は、平面視において、複数個の散気管30のそれぞれの延長線P1(図3参照)と重ならない位置に設置されていてよい。
【0056】
(C)上記実施形態では2つの排水口Hを設けていたが、排水口Hは、少なくとも転回区域A2に1箇所設けられていてよく、排水口Hの数は特に限定されない。また、排水口Hは、平面視において、円形であってよく、楕円形または長円形であってよい。また、排水口Hは、平面視において、矩形であってよく、多角形であってもよい。
【0057】
図6は、別構成例における飼育システム100が備える水槽1の要部拡大図である。図6に示すように、飼育システム100は、排水部の一例として、無終端水路10における少なくとも1箇所に、排水溝Dを備えていてよい。排水溝Dは、無終端水路10の幅方向に延びる形状を有していてよい。図6に示す例では、排水溝Dは、転回区域A2に位置しており、平面視において流路中心CLを横切るように延びていてよい。排水溝Dは、水槽1の底面1Bに形成された凹部であってよく、格子状の蓋(いわゆるグレーチング)が被せられていてよい。排水溝Dは、主水流S1にて移送される固形物SMを落ち込ませて捕集し、排水溝Dの内部に形成された排水口Hから飼育水Wおよび固形物SMを排出してもよい。これにより、水槽1内における排水の流速を維持し易くでき、固形物SMを効率的に排出できる。
【0058】
(D)図7は、別構成例における飼育システム100の模式的な断面図である。図7に示すように、仕切り部1Cの高さが飼育水Wの水面よりも低くてもよく、この場合、比較的面積の大きい飼育かご5を仕切り部1Cに載せるように設置してもよい。無終端水路10は、水槽1の水深方向における少なくとも下部に形成されていてよい。
【0059】
(E)副水流発生具は、散気管30に限定されず、水槽1内の飼育水Wを移動させることにより上昇流S21を発生させる上昇流発生具であってよい。上昇流発生具としては、外力によって飼育水Wを移動させることができればよく、具体的に限定されないが、例えば小型の回転羽根(スクリュー)、ポンプ(水中ポンプ等)、供給水を吐出する給水管等が挙げられる。上昇流発生具における水流の発生方向が鉛直上方を向くように設置することで、上昇流S21を生じさせることができる。上昇流発生具として給水管を用いる場合、飼育システム100は給水管40を備えていなくてもよい。また、副水流発生具は、気泡Bを発生させつつ供給水を吐出してもよい。
【0060】
副水流発生装置3は、副水流S2を発生させるための動力または流体(空気、水等)を副水流発生具に送給する。飼育システム100では、制御部90により副水流発生装置3が制御されることによって、散気管30(気泡発生具)および上昇流発生具の出力が制御されてよい。これにより、副水流S2の流量を制御することができる。副水流発生具が副水流発生装置3を内蔵している場合には、副水流発生具は、制御部90によって直接的に制御されてもよい。
【0061】
一構成例における飼育システム100では、主水流発生部(および循環流発生具、循環ポンプP等)と、副水流発生装置(および副水流発生具)とは、共通の制御部90によって制御されてよく、それぞれに対応する別の制御部によって制御されてもよい。このことは、後述する案内流発生具についても同じである。
【0062】
(F)飼育システム100を用いて魚を飼育する場合、飼育かご5を設置しなくてよい。飼育かご5の底面に相当するような網を設置してもよく、この場合、当該網の位置を境界位置として、順流区域A1を水深方向における上部と下部とに分けることができる。当該下部に、前述の第1の移送空間A11および第2の移送空間A12を有していてよい。
【0063】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0064】
図8は、本発明の実施形態2における飼育システム100が備える水槽1の要部拡大図である。本実施形態における飼育システム100では、無終端水路10に、排水口Hが設けられた第1の転回区域A21と、散気管30が設けられた第2の転回区域A22とを含む。第2の転回区域A22では、散気管30が無終端水路10の流路中心CLよりも内側に位置している。
【0065】
上記構成によれば、第2の転回区域A22において、流路の内側(仕切り部1Cに近い側)の隅部に固形物SMが堆積する可能性を低減できる。散気管30は、順流区域A1から第2の転回区域A22にわたって連続して設けられていてよく、順流区域A1と第2の転回区域A22とで異なる散気管30が設けられていてもよい。水流機20は、主水流S1を発生させる流れ発生部(例えば水を送り出す送出部)が、平面視において散気管30と重ならないように位置していてよく、この場合、主水流S1および副水流S2を効率的に利用できる。
【0066】
(別構成例2)
図9は、本実施形態における飼育システム100の別構成例について模式的に示す図である。図9の符号9001により示す図は、水槽1の要部拡大図であり、図9の符号9002により示す図は、符号9001により示す図のIX-IX線矢視断面の一部を示す部分断面図である。
【0067】
排水口Hに水を案内する第3の水流を生じさせる散気管(案内流発生具)を散気管31と称する。図9に示すように、本実施形態における飼育システム100の別構成例では、転回区域A2に排水口Hおよび散気管31が設置されていてもよく、この場合、排水口Hの上方に散気管31が設置されていてよい。散気管31は、平面視において、少なくとも一部が排水口Hと重なる位置に設置されていてよく、排水口Hと重ならない位置に設置されていてもよい。
【0068】
排水口Hから排出される水の流れと、散気管31による上昇流S21および掃流S22とが合わさることにより、排水口Hに水を案内する第3の水流S3を生じさせることができる。第3の水流S3によって、固形物SMを排水口Hから排出させ易くすることができる。また、排水口Hの高さが周辺よりも低くなるように、排水口Hの周辺を傾斜させることなく、排水口Hへと固形物SMを案内し易くすることができる。
【0069】
つまり、飼育システム100は、排水口Hが設けられている転回区域A2(第1の転回区域A21)に位置し、排水口Hに水を案内する第3の水流S3を生じさせる散気管(案内流発生具)31をさらに備えていてよい。
【0070】
図9に示す例では、散気管31は、順流区域A1の散気管30と接続されており、散気管30と散気管31とは、水深方向における高さ位置が異なる。当該構成に限定されず、順流区域A1の散気管30とは異なる散気管31が転回区域A2に設置されていてよい。図10は、散気管31の配置の一例について示す図である。排水口Hの上方に、円弧状の散気管31が位置していてもよく、平面視において排水口Hを囲繞するように円形状の散気管31が位置していてもよい。散気管31は、端部を有する形状であってよく、無端形状であってもよい。散気管31は、図示を省略する給気管と接続されていてよい。
【0071】
案内流発生具は、排水口Hの上方に位置していてよい。案内流発生具は、散気管31に限定されず、例えば、エアリフトポンプであってもよい。エアリフトポンプによって、固形物SMを排水口Hに誘導する流れ(第3の水流S3)を形成することができる。また、エアリフトポンプによって固形物SMを吸い込んでもよい。
【0072】
一態様における飼育システム100では、制御部90と通信可能に接続された案内流発生装置を備えていてよく、案内流発生装置は、第3の水流S3を発生させるための動力または流体(空気、水等)を案内流発生具に送給する。飼育システム100では、制御部90により上記案内流発生装置が制御されることによって、案内流発生具の出力が制御されてよい。一構成例では、案内流発生具は、制御部90によって直接的に制御されてもよい。
【0073】
〔実施形態3〕
図11は、本発明の実施形態3における飼育システム100の、水流およびエアレーションの出力制御の一例を示すグラフである。
【0074】
本発明の実施形態3における飼育システム100は、水流機20および散気管30に接続された副水流発生装置3の出力を制御する制御部90を備えている(図4参照)。
【0075】
制御部90は、水流機20の流量を第1の周期PR1にて周期的に変化させるとともに、散気管30からの気泡Bの発生量(副水流発生具の流量)を、第1の周期PR1とは異なる第2の周期PR2にて周期的に変化させるように制御してよい。制御部90は、副水流発生装置3から散気管30へ送給する空気流量を制御することにより、散気管30からの気泡Bの発生量を制御できる。そして、第1の周期PR1と第2の周期PR2とは、所定の時間間隔で最大流量のタイミングが重なるように設定されていてよい。
【0076】
上記構成によれば、主水流S1の流速および副水流S2の強さを変化させることにより、無終端水路10における流れに変化をつけることができる。そのため、固形物SMを揺動させることができる。その結果、固形物SMをより一層効果的に移送することができる。
【0077】
また、1日のなかで、上記最大流量のタイミングが重なる時間を予め把握することができる。そのため、ろ過装置60の洗浄タイミングを設定し易くすることができる。さらに、例えば、給餌後に排泄物が多くなる水生生物を飼育する場合、給餌時間と運転周期とを調整することにより、固形物SMが系内に存在する時間を低減することができる。
【0078】
そして、水流機20および副水流発生装置3を、常に100%の出力で運転する場合に比べて、エネルギー消費量を低減することができる。
【0079】
(出力設定について)
散気管30へ送給する空気流量(副水流発生具の流量に対応)の100%は、例えば、散気管30の適正流量の最大値として設定してよく、具体的には、散気管30の長さ×40L/minとして設定することができる。
【0080】
また、以下のような予備実験により、水流機20の流量100%を設定することができる。すなわち、例えば、水槽1内に、固形物SM(ウニUの排泄物)を約3kg投入する。空気流量を100%に設定して散気管30からエアレーションを行いつつ、水流機20の装置流量を固定して2h運転後に停止させる。ろ過装置60(図5参照)で回収された固形物SMの重量と、水槽1に残存した固形物SMの重量とから、回収率を算出する。
【0081】
水流機20の装置流量を変化させて複数回試験を行うことにより、装置流量と回収率との関係が得られる。回収率が飽和する水流機20の装置流量を、制御部90によって制御される水流機20の100%の流量として設定することができる。つまり、制御部90によって制御される水流機20の100%の流量における出力は、水流機20の装置的な定格出力とは異なっていてよい。
【0082】
(別構成例3)
(3A)
飼育システム100は、流量が可変ではない水流機20を用いることもできる。この場合、飼育システム100に複数の水流機20を設置し、稼働台数を変化させることによって水流機20の出力を制御してもよい。例えば、1台あたり8000L/hの流量の水を送出可能な装置性能を有する水流機20を4台設置する場合、4台を稼働する状態が出力100%である。そして、1台稼働(25%、8000L/h)、2台稼働(50%、16000L/h)、3台稼働(75%、24000L/h)と出力を制御することができる。
【0083】
(3B)
制御部90は、順流区域A1に位置している散気管30(副水流発生具)の空気流量よりも、転回区域A2に位置している散気管31(案内流発生具)の空気流量が小さくなるように制御してもよい。これにより、排水口Hへと固形物SMを案内し易くできる。
【0084】
〔実施形態4〕
図12は、本発明の実施形態4における飼育システム100が備える水槽1を模式的に示す平面図である。
【0085】
図12に示すように、本実施形態における飼育システム100では、水槽1は、平面視において、矩形形状を有していてよい。そして、飼育システム100は、水槽1の内部空間に、無終端水路10を形成するように設置される仕切り部1Cと、水槽1の角部に位置して、当該角部への水の侵入を阻害する流路制限部材70とを備えている。
【0086】
このように、飼育システム100は、レースウェイ形状の水槽のみならず、矩形形状の水槽1に対しても適用することができる。仕切り部1Cおよび流路制限部材70を設置して無終端水路10を形成するとともに、水流機20および散気管30を前述の実施形態1~3のように設置し、排水部(例えば排水口H)を設置することにより、固形物SMの排出効率を向上させることができる。流路制限部材70は、平面視において三角形状であってよく、転回区域A2における流路の外周壁の少なくとも一部を形成する面が平面であってよく、当該面が面水槽1の角部側に向かって窪むように湾曲していてもよい。
【0087】
〔実施形態5〕
図13は、本発明の実施形態5における飼育システム100の模式的な平面図である。図13の符号1301により示す図のように、飼育システム100は、排水部の一例として、順流区域A1における少なくとも1箇所に位置する排水部を備えていてよい。例えば、順流区域A1に排水溝Dを備えていてよい。
【0088】
図13の符号1301により示す例では、順流区域A1における一方の端部に水流機20が設置され、他方の端部に排水溝Dが位置している。排水溝Dは、平面視において、水流機20からの主水流S1の発生方向を仮想的に延長させた仮想直線P2と少なくとも一部が交わるように順流区域A1の幅方向に延びる形状を有していてよい。また、排水溝Dは、平面視において散気管30と重ならないように位置していてよい。これにより、第1の移送空間A11および第2の移送空間A12を移送された固形物SMを効果的に排水溝Dに案内することができる。
【0089】
図13の符号1302により示す図のように、飼育システム100は、排水溝Dが水流機20の下方に位置していてもよい。水流機20の上流側では、主水流S1を発生させるために水流機20へと吸い込まれる飼育水Wの流れが存在する。この流れを利用して、転回区域A2を移送されてくる固形物SMを排水溝Dへと効果的に案内することができる。本発明の一態様における飼育システム100では、水流機20は、平面視において少なくとも一部が順流区域A1と重なり、一部が転回区域A2と重なるように設置されていてもよい。或いは、水流機20は、順流区域A1に位置し、平面視において転回区域A2と重ならないように設置されていてもよい。
【0090】
図13の符号1303により示す図のように、飼育システム100は、散気管30が設けられた第2の転回区域A22を有し、順流区域A1において、順流区域A1および第2の転回区域A22の境界と、水流機20との間の位置に排水溝Dが設けられていてもよい。上記構成によれば、第2の転回区域A22において移送された固形物SMを、効果的に排水溝Dに案内することができる。
【0091】
(別構成例5)
図13に示す排水溝Dは、排水口Hであってもよく、複数個の排水口Hが配置されていてもよい。また、本発明の一態様における飼育システム100では、排水部として、排水管または排水ホースを用いてもよい。排水管または排水ホースを用いる場合であっても、先端(吸水口)を底面1Bの近傍に配置させることにより、排水口Hまたは排水溝Dと同じ作用を生じさせることができる。
【0092】
〔まとめ〕
本発明の態様1における飼育システムは、水生生物が飼育される飼育水槽と、前記飼育水槽の内部空間に設けられた無終端水路と、前記無終端水路を循環する第1の水流を発生させる主水流発生部と、前記無終端水路における少なくとも1箇所に位置し、前記飼育水槽から固形物とともに水を排水する排水部とを備え、前記無終端水路は、前記第1の水流の方向が変化する転回区域と、前記転回区域以外の順流区域とを含み、前記無終端水路における少なくとも前記順流区域に位置し、前記第1の水流による前記固形物の移送を促進させる第2の水流を発生させる副水流発生具をさらに備えている。
【0093】
本発明の態様2における飼育システムは、前記態様1において、前記排水部は、前記転回区域における少なくとも1箇所に位置している。
【0094】
本発明の態様3における飼育システムは、前記態様1または2において、前記排水部は、前記順流区域における少なくとも1箇所に位置している。
【0095】
本発明の態様4における飼育システムは、前記態様1から3の何れか一態様において、前記第2の水流は、前記気泡発生具から鉛直上方向に向かう上昇流を含む。
【0096】
本発明の態様5における飼育システムは、前記態様1から4の何れか一態様において、前記副水流発生具は、気泡を発生させる気泡発生具である。
【0097】
本発明の態様6における飼育システムは、前記態様1から5の何れか一態様において、前記副水流発生具は、前記飼育水槽内の飼育水を移動させることにより前記上昇流を発生させる上昇流発生具である。
【0098】
本発明の態様7における飼育システムは、前記態様1から6の何れか一態様において、
前記副水流発生具は、前記順流区域における流路幅方向の中央に位置しているか、または、前記流路幅方向に並んで複数個設けられている。
【0099】
本発明の態様8における飼育システムは、前記態様1から7の何れか一態様において、前記無終端水路は、前記排水部が設けられた第1の転回区域と、前記副水流発生具が設けられた第2の転回区域とを含み、前記第2の転回区域では前記副水流発生具が前記無終端水路の流路中心よりも内側に位置している。
【0100】
本発明の態様9における飼育システムは、前記態様1から8の何れか一態様において、前記排水部が設けられている前記転回区域に位置し、前記排水部に水を案内する第3の水流を生じさせる案内流発生具をさらに備える。
【0101】
本発明の態様10における飼育システムは、前記態様1から9の何れか一態様において、前記排水部は、前記飼育水槽の底面に形成された排水口であり、前記案内流発生具は、前記排水口の上方に位置している。
【0102】
本発明の態様11における飼育システムは、前記態様1から10の何れか一態様において、前記排水部は、前記無終端水路の幅方向に延びる形状を有する溝である。
【0103】
本発明の態様12における飼育システムは、前記態様1から11の何れか一態様において、前記主水流発生部および前記副水流発生具の出力を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記主水流発生部の流量を第1の周期にて周期的に変化させるとともに、前記副水流発生具の流量を前記第1の周期とは異なる第2の周期にて周期的に変化させるように制御し、前記第1の周期と前記第2の周期とは、所定の時間間隔で最大流量のタイミングが重なるように設定されている。
【0104】
本発明の態様13における飼育システムは、前記態様12において、前記排水部が設けられている前記転回区域に位置し、前記排水部に水を案内する第3の水流を生じさせ、前記制御部によって出力を制御される案内流発生具をさらに備え、前記副水流発生具および前記案内流発生具は、気泡を発生させる気泡発生具であり、前記制御部は、前記副水流発生具の空気流量よりも、前記案内流発生具の空気流量が小さくなるように制御する。
【0105】
本発明の態様14における飼育システムは、前記態様1から13の何れか一態様において、前記飼育水槽は、平面視で矩形形状を有し、前記飼育水槽の内部空間に前記無終端水路を形成するように設置される仕切り部と、前記飼育水槽の角部に位置して、当該角部への水の侵入を阻害する流路制限部材と、を備える。
【0106】
本発明の態様15における飼育方法は、内部空間に無終端水路が設けられた飼育水槽を用いて水生生物を飼育する飼育方法であって、前記無終端水路を循環する第1の水流を発生させることと、前記無終端水路における少なくとも1箇所に位置する排水部により、前記飼育水槽から固形物とともに水を排水することとを含み、前記無終端水路は、前記第1の水流の方向が変化する転回区域と、前記転回区域以外の順流区域とを含み、前記無終端水路における少なくとも前記順流区域において、前記第1の水流による前記固形物の移送を促進させる第2の水流を発生させることをさらに含む。
【0107】
〔附記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0108】
1 水槽(飼育水槽)
10 無終端水路
20 水流機(主水流発生部)
30 散気管(副水流発生具、気泡発生具)
100 飼育システム
A1 順流区域
A2 転回区域
H 排水口(排水部)
S1 主水流(第1の水流)
S2 副水流(第2の水流)
図1
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