(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112714
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】ロボットおよびその推進方法
(51)【国際特許分類】
B25J 5/00 20060101AFI20240814BHJP
B64D 27/40 20240101ALI20240814BHJP
B64U 50/10 20230101ALI20240814BHJP
B64C 3/38 20060101ALI20240814BHJP
B64U 30/12 20230101ALI20240814BHJP
【FI】
B25J5/00 F
B25J5/00 E
B64D27/26
B64U50/10
B64C3/38
B64U30/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017952
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】北川 丈晴
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707BS27
3C707CS08
3C707CX01
3C707HS09
3C707HS20
3C707KS20
3C707LV15
3C707MT13
3C707WA03
3C707WA13
3C707WA26
(57)【要約】
【課題】 ロボットを歩行の体勢で推進装置により移動する場合に比べて、推進装置による移動に係るエネルギーの単位容量当たりの移動距離を長くする。
【解決手段】 胴体部に肩関節アクチュエータを介して接続されている腕部と、前記胴体部に股関節アクチュエータを介して接続されている脚部とを備えた歩行可能なロボットであって、当該ロボットは、ロボットに推力を与える複数の推進装置を備える。複数の推進装置のうちの少なくとも一つの推進装置は可動装置によって胴体部に可動可能に装着される。また、ロボットは、制御装置を備える。制御装置は、推進装置を用いて移動している推進時には、可動装置を制御することにより胴体部に装着されている推進装置の姿勢を歩行時から可変する姿勢制御を行う。制御装置は、股関節アクチュエータを制御することにより推進時における脚部の伸長方向が前進方向とは逆向きとなるように脚部の向きの制御を行う。
【選択図】
図17
【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴体部に肩関節アクチュエータを介して接続されている腕部と、前記胴体部に股関節アクチュエータを介して接続されている脚部とを備えた歩行可能なロボットであって、
当該ロボットに装着され当該ロボットに推力を与える複数の推進装置と、
当該複数の推進装置のうちの少なくとも一つの推進装置を前記胴体部に可動可能に装着させる可動装置と、
前記肩関節アクチュエータと前記股関節アクチュエータと前記複数の推進装置と前記可動装置のそれぞれの動作を制御する制御装置と
を備え、
前記制御装置は、前記推進装置を用いて移動している推進時には、前記可動装置を制御することにより前記胴体部に装着されている前記推進装置の姿勢を歩行時から可変する姿勢制御を行い、また、前記股関節アクチュエータを制御することにより推進時における前記脚部の伸長方向が前進方向とは逆向きとなるように前記脚部の向きの制御を行う
ロボット。
【請求項2】
前記複数の推進装置は、前記可動装置を介して前記胴体部に装着されている推進装置と、前記脚部に組み込まれている推進装置とを含む
請求項1に記載のロボット。
【請求項3】
前記制御装置は、前記肩関節アクチュエータを制御することにより前記腕部に翼又は翅の動きを模した動きを実行させる
請求項1又は請求項2に記載のロボット。
【請求項4】
前記胴体部には、さらに、羽が接続されている
請求項1に記載のロボット。
【請求項5】
前記推進装置には、前進方向の向きを制御するスラスターが設けられている
請求項1に記載のロボット。
【請求項6】
前記脚部は3本以上、備えられ、当該脚部のそれぞれに推進装置が組み込まれている
請求項1に記載のロボット。
【請求項7】
胴体部に肩関節アクチュエータを介して接続されている腕部と、前記胴体部に股関節アクチュエータを介して接続されている脚部とを備えた歩行可能なロボットに、当該ロボットに装着され当該ロボットに推力を与える複数の推進装置と、当該複数の推進装置のうちの少なくとも一つの推進装置を前記胴体部に可動可能に装着させる可動装置と、前記肩関節アクチュエータと前記股関節アクチュエータと前記複数の推進装置と前記可動装置のそれぞれの動作を制御する制御装置とが備えられているロボットの前記制御装置によって、
前記推進装置を用いて移動している推進時には、前記可動装置を制御することにより前記胴体部に装着されている前記推進装置の姿勢を歩行時から可変する姿勢制御を行い、
また、前記股関節アクチュエータを制御することにより推進時における前記脚部の伸長方向が前進方向とは逆向きとなるように前記脚部の向きの制御を行う
ロボットの推進方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行ロボットに係る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
歩行ロボットについての研究開発が進んでいる。例えば、特許文献1(特開2019-155505号公報)には、歩行ロボットの頂部に着脱自在に接続させた推進ユニットにより、歩行ロボットを吊り下げるような態様でもって移動させる技術が示されている。特許文献2(特開2006-297554号公報)には、鉛直上向きに浮上させる推進機を用いることにより、歩行ロボットを浮上させて移動可能とした技術が示されている。このように、歩行だけでなく、推進機を用いて浮上させて移動させる歩行ロボットが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-155505号公報
【特許文献2】特開2006-297554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような推進機を用いた飛行での移動が可能な歩行ロボットの用途として、人が到達することが難しい場所に飛行により移動して作業を行うというような用途が考えられる。しかしながら、そのような用途での歩行ロボットの活用可能な場所を次のような理由に因り広げにくいという問題がある。すなわち、歩行ロボットの機動性などを考慮すると、歩行ロボットに搭載することができる推進機の電力源(エネルギー源)であるバッテリーの大きさや重さ(換言すれば、蓄電容量)には制約が生じる。このバッテリーの蓄電容量の制約によって、歩行ロボットが飛行により移動可能な距離が限られてしまうこととなり、これにより、歩行ロボットが飛行により移動して作業を行う活用可能な場所の拡大が難しい。
【0005】
本発明は上述した課題を解決するために考え出された。すなわち、本発明の主な目的は、ロボットを歩行の体勢で推進装置により移動させる場合に比べて、ロボットを推進装置により移動させる場合における移動に係るエネルギーの単位容量当たりの移動距離を長くできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るロボットは、その一態様として、
胴体部に肩関節アクチュエータを介して接続されている腕部と、前記胴体部に股関節アクチュエータを介して接続されている脚部とを備えた歩行可能なロボットであって、
当該ロボットに装着され当該ロボットに推力を与える複数の推進装置と、
当該複数の推進装置のうちの少なくとも一つの推進装置を前記胴体部に可動可能に装着させる可動装置と、
前記肩関節アクチュエータと前記股関節アクチュエータと前記複数の推進装置と前記可動装置のそれぞれの動作を制御する制御装置と
を備え、
前記制御装置は、前記推進装置を用いて移動している推進時には、前記可動装置を制御することにより前記胴体部に装着されている前記推進装置の姿勢を歩行時から可変する姿勢制御を行い、また、前記股関節アクチュエータを制御することにより推進時における前記脚部の伸長方向が前進方向とは逆向きとなるように前記脚部の向きの制御を行う。
【0007】
また、本発明に係るロボットの推進方法は、その一態様として、
胴体部に肩関節アクチュエータを介して接続されている腕部と、前記胴体部に股関節アクチュエータを介して接続されている脚部とを備えた歩行可能なロボットに、当該ロボットに装着され当該ロボットに推力を与える複数の推進装置と、当該複数の推進装置のうちの少なくとも一つの推進装置を前記胴体部に可動可能に装着させる可動装置と、前記肩関節アクチュエータと前記股関節アクチュエータと前記複数の推進装置と前記可動装置のそれぞれの動作を制御する制御装置とが備えられているロボットの前記制御装置によって、
前記推進装置を用いて移動している推進時には、前記可動装置を制御することにより前記胴体部に装着されている前記推進装置の姿勢を歩行時から可変する姿勢制御を行い、
また、前記股関節アクチュエータを制御することにより推進時における前記脚部の伸長方向が前進方向とは逆向きとなるように前記脚部の向きの制御を行う。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ロボットを歩行の体勢で推進装置により移動させる場合に比べて、ロボットを推進装置により移動させる場合における移動に係るエネルギーの単位容量当たりの移動距離を長くできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る第1実施形態のロボットを模式的に表す斜視図である。
【
図2】第1実施形態のロボットにおける飛行体勢を説明する図である。
【
図3】第1実施形態のロボットの飛行を含む移動経路の一例を説明する図である。
【
図4】第1実施形態のロボットの飛行に係る制御動作の一例を説明する図である。
【
図5】第1実施形態のロボットの飛行に係る制御動作の一例を説明するフローチャートである。
【
図6】ロボットの飛行を含む移動経路のその他の例を説明する図である。
【
図7】ロボットの飛行に係る制御動作のその他の例を説明する図である。
【
図8】本発明に係る第2実施形態のロボットを胴体部の上方側から見た平面図である。
【
図9】第2実施形態のロボットの飛行を含む移動経路の一例を説明する図である。
【
図10】第2実施形態のロボットの飛行に係る制御動作の一例を説明する図である。
【
図11】腕部が傾いている状態の一例を表す図である。
【
図12】ロボットのその他の実施形態を説明する図である。
【
図13】ロボットの別のその他の実施形態を説明する図である。
【
図14】ロボットのさらに別のその他の実施形態を説明する図である。
【
図15】羽が閉じている状態の一例を表す図である。
【
図16】ロボットのさらに別のその他の実施形態を説明する図である。
【
図17】ロボットのさらに別のその他の実施形態を説明する図である。
【
図18】ロボットにおける飛行に係る制御動作の一例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0011】
<第1実施形態>
図1は、本発明に係る第1実施形態のロボットを模式的に表した斜視図である。このロボットは、歩行可能なロボットに飛行機能を付加したロボット(以下、飛行ロボットとも称する)1である。この飛行ロボット1は、
図1に表されているような歩行時の姿勢(歩行体勢)のまま飛行する場合に比べて、エネルギーの単位容量当たりの移動距離(飛行距離)を長くできる構成を備えている。
【0012】
すなわち、飛行ロボット1は胴体部3を備えている。この胴体部3を間にして2本の腕部5A,5Bが配置され、これら腕部5A,5Bは、それぞれ、肩関節アクチュエータ4A,4Bを介して胴体部3に接続されている。腕部5A,5Bは、肩関節アクチュエータ4A,4Bによって、胴体部3に接続されている部分を中心にして回転可能となっている。ここでは、腕部5A,5Bは、ロボットの腕として機能できればよく、腕部5A,5Bに装備される関節アクチュエータの有無やその数などを含む構成は限定されず、その説明は省略される。ただ、
図1の例では、腕部5A,5Bのそれぞれの先端側には、把持部13A,13Bが設けられている。把持部13A,13Bは、予め設定された把持対象の物体を把持できる構成を備えている。つまり、把持部13A.13Bは、把持対象の物体に応じた構成を備え、ここでは限定されない。これにより、把持部13A.13Bの構成の説明は省略される。
【0013】
ここで説明を容易にするために、互いに直交する3方向を設定する。3方向のうちの一つの方向は、腕部5A,5Bが胴体部3を介して並んでいる方向であり、左右方向と称することとする。3方向のうちの別の一つの方向は、ロボットが歩行する歩行時にロボットが前進または後退する方向であり、前後方向と称することとする。3方向のうちのさらに別の一つの方向は、上下方向と称することとする。
【0014】
胴体部3には、さらに、2本の脚部7A,7Bが股関節アクチュエータ6を介して接続されている。脚部7A,7Bは、股関節アクチュエータ6によって、当該股関節アクチュエータ6に接続されている部分を中心にして回転可能となっており、前の方や後ろの方に動かすことができる。
【0015】
脚部7A,7Bには、それぞれ、推進装置11A,11Bが組み込まれている。推進装置11A,11Bは、回転翼(図示せず)および当該回転翼の駆動機構を備えている。当該回転翼は、脚部7A,7Bの伸長方向(
図1の例では、上下方向)に沿う中心軸を中心にして回転可能に設けられている。推進装置11A,11Bは、駆動機構による回転翼の回転により、回転翼の回転中心軸に沿う方向(
図1の例では上向き)の推力を飛行ロボット1に与えることができる。
【0016】
脚部7A,7Bにおける推進装置11A,11Bに係る構成以外の構成は、飛行ロボット1の歩行を可能とする脚の構成を備えていればよく、その構成は限定されず、ここでは、その説明は省略される。なお、
図1の例では、脚部7A,7Bの先端側には、飛行ロボット1の起立時や歩行時における飛行ロボット1の安定性を図るために、突出片12が設けられている。突出片12の基端側には回転機構が設けられており、突出片12は、その基端側を中心にして、脚部7A,7Bの伸長方向との成す角度が可変する方向に回転変位可能となっている。このような突出片12は、飛行ロボット1の用途に応じて省略される場合もある。
【0017】
胴体部3には、さらに、飛行ロボット1の後ろ側(換言すれば、背面側)となる部分に可動装置15を介して複数の推進装置10A,10Bが接続されている。推進装置10A,10Bのそれぞれは、この例では、推進装置11A,11Bと同様な構成を持つ装置であり、駆動機構による回転翼の回転により、回転翼の回転中心軸に沿う方向の推力を飛行ロボット1に与えることができる。
図1の例では、推進装置10A,10Bは、上向きの推力が生じる状態となっている。
【0018】
可動装置15は、支持部材16と装置回転アクチュエータ17を備える。支持部材16は、胴体部3に固定され、推進装置10A,10Bのそれぞれを支持する部材である。推進装置10A,10Bは、装置回転アクチュエータ17を介して支持部材16に接続されている。装置回転アクチュエータ17は、推進装置10A,10Bを次のように回転させることによって推進装置10A,10Bの姿勢を可変する。この装置回転アクチュエータ17による推進装置10A,10Bの回転方向は、推進装置10A,10Bにおける回転翼の回転中心軸に沿う方向を、
図1における上下方向から前後方向に、または、その逆向きに回転する方向である。
【0019】
胴体部3の前面側には、さらに、空気抵抗軽減部材18が設けられている。この空気抵抗軽減部材18は、その一端側(
図1の例では上端側)がアクチュエータ(図示せず)を介して胴体部3に接続されている。空気抵抗軽減部材18は、そのアクチュエータによって、その他端側(
図1の例では下端側)が
図1のような下向きの状態から前に突き出る状態に、または、その逆に回転変位可能となっている。
【0020】
飛行ロボット1には、さらに、当該飛行ロボット1の歩行動作や飛行動作や把持動作などの動作の制御に用いる各種のセンサ(図示せず)が搭載されている。飛行ロボット1に搭載されるセンサの具体例としては、ジャイロ、加速度センサ、距離測定センサ、気圧センサなどが挙げられる。また、飛行ロボット1には、GPS(Global Positioning System)などのGNSS(Global Navigation Satellite System(全球測位衛星システム))を用いて所在位置を検知する位置検知装置が搭載されている。さらに、飛行ロボット1には、当該飛行ロボット1の周囲の状況を撮影する撮影装置(図示せず)が搭載される場合がある。さらに、飛行ロボット1には、他の装置と無線通信するためにアンテナ(図示せず)が搭載される場合がある。
【0021】
胴体部3には、さらに、制御装置20およびバッテリー(図示せず)が内蔵されている。バッテリーは、飛行ロボット1に装備されている各種アクチュエータや制御装置20や各種センサなどに電力を供給する電力供給源(エネルギー源)である。
【0022】
制御装置20は、コンピュータ装置であり、与えられているコンピュータプログラムを実行することにより当該コンピュータプログラムに基づいた機能を飛行ロボット1に持たせる。例えば、制御装置20は、各種センサから出力されたセンサ出力や、撮影装置による撮影画像や、位置検知装置による位置情報などを用いた演算処理を行う。そして、制御装置20は、飛行ロボット1に装備されている各種のアクチュエータなどの駆動制御を行うことにより、飛行ロボット1の歩行動作や飛行動作や把持動作などの動作を制御する。ここでは、飛行ロボット1における飛行動作以外の動作、つまり、歩行動作や把持動作などを制御する制御手法は限定されないので、その説明は省略される。
【0023】
第1実施形態では、制御装置20は、飛行ロボット1の飛行動作に係る制御として、飛行時には、推進装置10A,10Bの姿勢および脚部7A,7Bの向きを歩行時とは異なる状態に可変する制御を行う。すなわち、第1実施形態では、歩行時には、推進装置10A,10Bの姿勢および脚部7A,7Bの向きは、
図1に表されているような起立体勢である。つまり、
図1では、胴体部3は上下方向に沿って起立した状態である。また、推進装置10A,10Bは、それぞれ、回転翼の回転中心軸が上下方向に沿う姿勢となっている。さらに、脚部7A,7Bは、それぞれ、伸長方向が上下方向に沿う向きとなっている。
【0024】
これに対し、飛行時には、制御装置20は、股関節アクチュエータ6および可動装置15の装置回転アクチュエータ17を制御することにより、飛行ロボット1を
図2に表されているような飛行体勢(推進体勢)に可変制御する。つまり、胴体部3は、飛行時(推進装置を用いて移動している推進時)にも、歩行時と同様に、上下方向に沿って起立した状態であるのに対し、推進装置10A,10Bは、飛行時には、制御装置20による可動装置15の装置回転アクチュエータ17の制御により、その姿勢が、回転翼の回転中心軸に沿う方向が前後方向に沿う方向となるように可変制御される。これにより、飛行時には、推進装置10A,10Bにおける回転翼の回転により発生する推力の向きは前後方向となる。
【0025】
また、飛行時には、制御装置20による股関節アクチュエータ6の制御により、推進装置11A,11Bを含む脚部7A,7Bは、その伸長方向が前後方向に沿うように可変制御される。これにより、飛行時における推進装置11A,11Bの推力の向きも、推進装置10A,10Bと同様に、前後方向となる。このような推進装置10A,10B,11A,11Bの姿勢によって、飛行ロボット1の飛行方向(前進方向)は、
図2に表されるように、前後方向に沿った方向となる。換言すれば、推進装置10A,10B,11A,11Bの姿勢は目的の飛行方向に沿う方向の推力を飛行ロボット1に与えることができるように、可変制御される。また、飛行時には、脚部7はその伸長方向が飛行方向とは逆向きとなるように向きが制御されるから、脚部7による空気抵抗が軽減される。
【0026】
さらに、制御装置20は、空気抵抗軽減部材18と胴体部3を接続しているアクチュエータ(図示せず)の制御により、飛行ロボット1が起立体勢である場合には空気抵抗軽減部材18を
図1のように下向きとし、飛行時には、空気抵抗軽減部材18を
図2のように前に突き出る状態とする。
【0027】
飛行ロボット1は上述したように構成されている。以下に、飛行ロボット1における制御装置20の飛行に係る動作の一例を
図3~
図5を用いて説明する。なお、
図3は、飛行ロボット1の飛行を含む移動の経路の一例を表す図である。
図4は、
図3に表されるように飛行ロボット1が移動する場合における推進装置10A,10B,11A,11Bの出力の一例を説明する図である。
図5は、制御装置20の飛行に係る動作の一例を説明するフローチャートである。なお、
図4に表されている推進装置の出力は、回転翼を回転するモータ(例えば、ブラシレスモータ)の定格出力を100%とした場合の出力の大きさを表している。
【0028】
例えば、地上において飛行ロボット1は
図1に表されるような起立体勢であるとする。この状態において、制御装置20は、まず、背面側の推進装置10A,10Bも脚部7A,7Bの推進装置11A,11Bも始動し(
図5におけるステップ101)、それらの推進装置10A,10B,11A,11Bのそれぞれの出力を30%程度まで上げる。これにより飛行ロボット1が浮上する。引き続き、制御装置20は、推進装置10A,10B,11A,11Bの出力を上げていき、60%程度まで上げることにより、飛行ロボット1を起立体勢のまま、
図3に表されるように鉛直方向に上昇させる(ステップ102)。
【0029】
飛行ロボット1が目的の高さまで上昇したところで、制御装置20は、飛行ロボット1をホバリング状態に移行させる(ステップ103)。この際、例えば、制御装置20は、背面側の推進装置10A,10Bの出力を0%に下げ、脚部7A,7Bの推進装置11A,11Bの出力が60%である状態を維持する。
【0030】
また、制御装置20は、ホバリング状態において、可動装置15の装置回転アクチュエータ17および股関節アクチュエータ6を制御することにより、推進装置10A,10Bの姿勢および脚部7A,7B(推進装置11A,11B)の向きを
図2に表されるような飛行体勢に可変する。換言すれば、制御装置20は、飛行ロボット1の体勢を起立体勢から飛行体勢に可変する(ステップ104)。また、制御装置20は、空気抵抗軽減部材18の向きを可変する。さらに、
図2の例では、飛行時には、制御装置20は、肩関節アクチュエータ4A,4Bを制御して、腕部5A,5Bによる空気抵抗が小さくなる方向に腕部5A,5Bの向きを可変する。
【0031】
その後、制御装置20は、背面側の推進装置10A,10Bの出力を30%に上げることにより飛行ロボット1の飛行(水平移動)を開始させ(ステップ105)、飛行状態が安定すると、背面側の推進装置10A,10Bの出力を0%に下げる。一方、制御装置20は、脚部7A,7Bの推進装置11A,11Bの出力が60%である状態を維持する。
【0032】
そして、飛行ロボット1が目的地の上空に到達したところで、制御装置20は、飛行ロボット1をホバリング状態に移行させる(ステップ106)。この際、例えば、制御装置20は、背面側の推進装置10A,10Bの出力を30%に上げ、脚部7A,7Bの推進装置11A,11Bの出力を30%に下げる。また、制御装置20は、そのような推進装置の出力制御を行いつつ、ホバリング状態において、可動装置15の装置回転アクチュエータ17および股関節アクチュエータ6を制御して、推進装置10A,10Bの姿勢および脚部7A,7B(推進装置11A,11B)の向きを可変する。換言すれば、制御装置20は、飛行ロボット1を飛行体勢から起立体勢に可変する(ステップ107)。また、制御装置20は、空気抵抗軽減部材18の姿勢や腕部5A,5Bの向きを可変する。
【0033】
その後、制御装置20は、背面側の推進装置10A,10Bも脚部7A,7Bの推進装置11A,11Bも出力を10%程度まで下げることにより、飛行ロボット1を下降させる(ステップ108)。そして、飛行ロボット1が着地したところで、制御装置20は、推進装置10A,10B,11A,11Bの出力を0%に下げる。つまり、制御装置20は、推進装置10A,10B,11A,11Bを停止する(ステップ109)。
【0034】
このように、制御装置20は、推進装置10A,10B,11A,11B、可動装置15および股関節アクチュエータ6などを制御することにより、飛行ロボット1の飛行を制御する。なお、制御装置20は、飛行ロボット1の飛行の安定化のために、ピッチングやローリングやヨーイングなどの姿勢制御を行うべく各種センサを用いて推進装置10A,10B,11A,11Bのそれぞれの出力を制御する場合があるが、この制御手法は限定されないので、ここでは、その説明は省略される。
【0035】
第1実施形態の飛行ロボット1は上述したように構成されている。この飛行ロボット1は、歩行時も飛行時も胴体部3の姿勢が変化しない一方で、制御装置20の制御による可動装置15の動作によって推進装置10A,10Bの姿勢が変化する。これにより、推進装置10A,10Bのそれぞれが、飛行ロボット1に飛行方向の推力を与えることとなる。このため、推進装置10A,10B,11A,11Bの姿勢制御が行われず、例えば、4つの回転翼を備えるドローンのような状態である場合に比べて、飛行ロボット1の飛行方向の推進力を大きくすることができる。これにより、飛行ロボット1は、起立体勢(歩行の体勢)で飛行する場合に比べて、バッテリー(エネルギー源)の単位容量当たりの飛行による移動距離(飛行距離)を長くすることができる。換言すれば、飛行ロボット1は、上述したような推進装置の姿勢制御を行うことにより、歩行の体勢で推進装置により移動させる場合に比べて、ロボットを推進装置により移動させる場合における移動に係るエネルギーの単位容量当たりの移動距離を長くできる。特に、第1実施形態では、推進装置10A,10Bだけでなく、脚部7A,7Bに組み込まれた推進装置11A,11Bも、飛行時には飛行ロボット1に与える推力の向きが飛行方向となるように姿勢が可変する。このことは、飛行ロボット1が、バッテリー(エネルギー源)の単位容量当たりの飛行による移動距離(飛行距離)をさらに長くできることに寄与する。
【0036】
(第1実施形態の変形例)
上述した制御装置20による飛行に係る制御の例では、飛行ロボット1は、
図3に表されるように地上から鉛直方向に上昇し、また、地上に向けて鉛直方向に下降している。これに代えて、
図6に表されるように飛行ロボット1が斜め上昇や斜め下降するように制御装置20による飛行の制御が行われてもよい。また、空中で、制御装置20の制御により飛行ロボット1が起立体勢から飛行体勢に又はその逆に変形するのではなく、地上で変形してもよい。つまり、制御装置20は、次のような飛行に係る制御を行ってもよい。
【0037】
図7は、飛行ロボット1を
図6に表されるように移動させる場合における推進装置10A,10B,11A,11Bの出力制御の一例を表す図である。まず、制御装置20は、可動装置15、股関節アクチュエータ6および肩関節アクチュエータ4A,4Bを制御することにより、飛行ロボット1の体勢を起立体勢から飛行体勢に変形する。そして、制御装置20は、推進装置10A,10B,11A,11Bを始動することにより飛行体勢の飛行ロボット1の移動を開始させ、推進装置10A,10B,11A,11Bの出力を上げていくことにより、
図6に表されるように飛行ロボット1を加速滑走させた後に斜め上昇させる。斜め上昇させる場合には、制御装置20は、肩関節アクチュエータ4A,4Bの制御により、腕部5A,5Bの傾き制御を行う。この際の腕部5A,5Bは空気抵抗に起因した揚力を上げる方向に傾けられる。そして、制御装置20は、飛行ロボット1が目的の高さに達したところで、肩関節アクチュエータ4A,4Bの制御により腕部5A,5Bのさらなる傾き制御を行うことにより、飛行ロボット1に水平移動による飛行に移行させる。
【0038】
然る後に、飛行ロボット1が目的地に近付き下降開始ポイントに至ると、制御装置20は、肩関節アクチュエータ4A,4Bの制御による腕部5A,5Bの傾き制御により、飛行ロボット1の下降を開始させる。また、制御装置20は、推進装置10A,10B,11A,11Bの出力を下げていく。このような制御装置20による腕部5A,5Bの傾き制御および推進装置10A,10B,11A,11Bの出力の制御により、飛行ロボット1が
図6に表されるように斜め下降する。そして、飛行ロボット1が着地すると、制御装置20は、さらに、推進装置10A,10B,11A,11Bの出力を下げていき、飛行ロボット1は飛行体勢のまま減速しながら滑走し、目的の停止位置で推進装置10A,10B,11A,11Bの出力を停止することにより、飛行ロボット1を停止させる。その後、制御装置20は、飛行ロボット1を飛行体勢から起立体勢に変形させる。これにより、飛行ロボット1は、歩行が可能となる。
【0039】
上述したような制御装置20の制御によって飛行ロボット1の飛行を含む移動が制御される場合であっても、飛行時には、飛行ロボット1は飛行体勢でもって飛行するから、起立体勢でもって飛行する場合に比べて、飛行に係るエネルギーの単位容量当たりの飛行距離を長くすることができる。
【0040】
<第2実施形態>
以下に、本発明に係る第2実施形態を説明する。なお、この第2実施形態の説明において、第1実施形態における飛行ロボットの構成と同じ名称部分には同一符号を付し、その共通部分の重複説明は省略する。
【0041】
図8は、第2実施形態の飛行ロボット1を上方側から見た平面図である。第2実施形態では、肩関節アクチュエータ4A,4Bは、
図8に表されている前後方向と左右方向と上下方向の3方向のそれぞれに沿う3軸を回転中心軸として回転可能な3軸アクチュエータにより構成されている。また、腕部5A,5Bは、肘関節アクチュエータ(図示せず)を備えている。肘関節アクチュエータも3軸アクチュエータにより構成されている。これにより、腕部5A,5Bは、肘部分において曲げることが可能な構成となっている。
【0042】
このような腕部5A,5Bの構成により、腕部5A,5Bは動きの自由度が高くなる。このため、飛行ロボット1の上昇時や下降時において、制御装置20の制御により、腕部5A,5Bに鳥の翼や甲虫の翅の動きを模した動きを行わせることが容易となる。
【0043】
図9は、第2実施形態における飛行ロボット1の飛行を含む移動の経路の一例を表す図である。
図10は、
図9に表されるように飛行ロボット1が移動する場合における推進装置10A,10B,11A,11Bの出力および腕部の動きの一例を説明する図である。なお、
図10に表されている回転角度θx,θyは腕部5Bの回転角度を表す。回転角度θxは、肩関節アクチュエータ4Bによって
図8における左右方向に沿う方向の軸を回転中心軸として腕部5Bを回転させた場合の回転角度である。また、回転角度θxは、腕部5Bが上下方向に沿って下向きである状態をゼロ度とし、
図8における左側から右向きに腕部5Bを見た場合における時計回りが正の角度である。回転角度θyは、肩関節アクチュエータ4Bによって
図8における前後方向に沿う方向の軸を回転中心軸として腕部5Bを回転させた場合の回転角度である。また、回転角度θyは、腕部5Bが上下方向に沿って下向きである状態をゼロ度とし、後ろ側から前向きに腕部5Bを見た場合における時計回りが正の角度である。
【0044】
図9および
図10に表されている例では、制御装置20による推進装置10A,10B,11A,11Bの出力制御および各種アクチュエータの駆動制御により、飛行ロボット1は、起立体勢で浮上し、斜め上昇しながら飛行体勢に移行していく。そして、飛行ロボット1は、飛行中(水平移動中)には、
図2に表されるような飛行体勢で推進する。目的地に近付いて下降開始ポイントに達すると、制御装置20による肩関節アクチュエータ4A,4Bの制御によって腕部5A,5Bの傾き制御が行われて、飛行ロボット1は斜め下降を開始する。
【0045】
然る後に、飛行ロボット1は、一旦、上向いた後に着地する。換言すれば、飛行ロボット1は、斜め下降から跳ね上がった後に鉛直方向に下降して着地する。その跳ね上がりから下降に移行する際には、制御装置20による肩関節アクチュエータ4A,4Bの制御によって、腕部5A,5Bはそれぞれ
図11に表されるように左右方向に外側に開くように傾けられる。また、鉛直方向の下降時には、制御装置20による肩関節アクチュエータ4A,4Bの制御によって、腕部5A,5Bは下向きとなるように制御される。
【0046】
第2実施形態における飛行ロボット1における上述した構成以外の構成は第1実施形態の飛行ロボット1の構成と同様である。
【0047】
第2実施形態の飛行ロボット1においても、飛行時には、第1実施形態と同様に、推進装置10A,10Bの姿勢制御および脚部7A,7Bの向きの制御が行われるので、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。つまり、飛行ロボット1は、起立体勢(歩行の体勢)で飛行する場合に比べて、バッテリー(エネルギー源)の単位容量当たりの飛行による移動距離(飛行距離)を長くすることができる。
【0048】
また、第2実施形態では、腕部5A,5Bの動きの自由度を高める構成を備え、制御装置20によるアクチュエータの駆動制御により、上昇時や下降時において腕部5A,5Bを翼や翅のように機能させることが容易な構成を備える。これにより、飛行ロボット1の上昇や下降の安定性を高めることができる。
【0049】
<その他の実施形態>
本発明は第1や第2の実施形態に限定されず、様々な実施の態様を採り得る。例えば、第1と第2の実施形態では、可動装置15は、推進装置10A,10Bの両方の姿勢を併せて可変制御する構成を備えている。これに代えて、可動装置15は、推進装置10A,10Bの姿勢を個別に可変制御する構成を備えていてもよい。この場合、制御装置20は、推進装置10A,10Bの姿勢制御を個別に行うことが可能となり、例えば、飛行中における飛行ロボット1の姿勢を第1や第2の実施形態よりも細かく制御することが容易となる。
【0050】
また、胴体部3の形状は
図1などに表されている形状に限定されない。さらに、例えば、胴体部3の形状によっては空気抵抗軽減部材18が省略される。さらに、第1や第2の実施形態の構成に加えて、飛行中に尾翼として機能する部材を飛行ロボット1に装着してもよい。
【0051】
さらに、第1や第2の実施形態では、飛行ロボット1は、可動装置15によって胴体部3に接続されている推進装置10A,10B、および、脚部7A,7Bに組み込まれている推進装置11A,11Bを備えている。飛行ロボット1は、さらに、それら以外の推進装置を備えていてもよい。例えば、
図12には、推進装置25A,25Bがそれぞれ腕部5A,5Bに装着されている例が示されている。
図12の例では、推進装置25A,25Bは、推進装置10A,10B,11A,11Bと同様に回転翼を備えており、回転翼の回転中心軸が腕部5A,5Bの伸長方向に沿うように腕部5A,5Bに装着されている。これら推進装置25A,25Bの駆動制御も制御装置20により行われる。推進装置25A,25Bの駆動制御に関しては、他の推進装置10A,10B,11A,11B、腕部5A,5Bおよび脚部7A,7Bの制御と関連させた制御が行われる。
【0052】
さらに、飛行ロボット1は、胴体部3の底部に推進装置が装着されていてもよい。つまり、脚部7A,7Bの間となる領域に配置されるように推進装置が胴体部3の底部に装着されてもよい。このように、推進装置10A,10B,11A,11B以外の推進装置が、飛行ロボット1の飛行や、腕部5A,5Bや脚部7A,7Bの動きの妨げとならない適宜な場所に設けられてもよい。さらに、胴体部3の背面側に可動装置15を介して装着される推進装置は、2つに限定されず、例えば、推進装置の能力によっては1つでもよい。
【0053】
さらに、第1と第2の実施形態では、飛行ロボット1は2本の脚部7A,7Bを備えている。これに代えて、飛行ロボット1は、3本以上の脚部を備えていてもよい。
図13に表される例では、飛行ロボット1は4本の脚部7A,7B,7C,7Dを備えている。また、
図13の例では、4本の脚部7A,7B,7C,7Dのそれぞれに、推進装置11A,11B,11C,11Dが組み込まれている(換言すれば、全ての脚部のそれぞれに推進装置が組み込まれている)。推進装置11A,11B,11C,11Dの駆動制御も制御装置20により行われる。また、脚部の本数が3本以上であっても、制御装置20は、飛行中には脚部の向きを飛行体勢となるように制御する。
【0054】
さらに、第2実施形態では、飛行ロボット1は、腕部5A,5Bの機構と制御装置20の制御により、腕部5A,5Bを翼のように機能させる例を説明している。これに代えて、例えば、飛行ロボット1は、
図14に表されるような羽26A,26Bを備えていてもよい。これら羽26A,26Bは、アクチュエータ(図示せず)を介して胴体部3の背面側に接続されている。そのアクチュエータは、
図14に表される左右方向に沿う軸と、前後方向に沿う軸とをそれぞれ回転中心軸として羽26A,26Bを回転させることができる。これにより、羽26A,26Bは、それぞれ、制御装置20によるアクチュエータの制御により、
図14に表されている状態から、左右方向に沿う回転中心軸を中心にして羽26A,26Bの羽面の傾き制御が可能である。また、羽26A,26Bは、
図14のように広げた状態から、制御装置20によるアクチュエータの制御により前後方向に沿う回転中心軸を中心にして回転することにより、
図15に表されるような収納状態に変位可能である。
【0055】
さらに、推進装置に
図16に表されるようなスラスター28および当該スラスター28の向きを変化させる可変装置(図示せず)が備えられてもよい。スラスター28が備えられる場合には、制御装置20は、その可変装置を制御することによって、スラスター28の向きを制御し、これにより、飛行中における飛行ロボット1の飛行方向を制御する。
【0056】
さらに、第1と第2の実施形態では、推進装置10A,10B,11A,11Bは、エネルギーとしてバッテリーの電気を用いる装置である。これに代えて、例えば、推進装置10A,10B,11A,11Bは、エネルギーとしてガソリンを用いる推進装置であってもよい。また、推進装置10A,10B,11A,11Bは、電気とガソリンを用いるハイブリッドな推進装置であってもよいし、エネルギー源としての小型核融合炉や小型原子炉により発生するエネルギーを用いる推進装置であってもよい。推進装置が用いるエネルギーの種類は限定されず、推進装置はエネルギーの種類に応じた構造を備える。さらに、飛行ロボット1は有線給電が可能な構成を備えていてもよい。
【0057】
さらに、飛行ロボット1が物を採取する用途で用いられる場合には、第1や第2の実施形態の構成に加えて、飛行ロボット1は、採取したものを収納する収納容器を備えていてもよい。収納容器の大きさや形や設置場所は、腕部5A,5Bの可動範囲や推進装置の設置場所などを考慮して適宜に設定される。
【0058】
さらに、第1実施形態では、飛行ロボット1が浮上する際の体勢の一例として、
図1に表されるような起立体勢を挙げている。これに代えて、例えば、脚部7A,7Bは起立したまま胴体部3を倒すように飛行ロボット1が変形することにより、推進装置10A,10B,11A,11Bが並ぶような体勢とし、この体勢から飛行ロボット1を浮上させてもよい。さらに、上述したそれぞれの実施形態では、飛行機能を持つロボット(飛行ロボット)を例にして、本発明に係る実施形態を説明しているが、本発明は、水中を推進移動するロボットにも適用できる。この場合には、本発明が適用されるロボットは防水対策が考慮された構造をもち、また、推進装置は、水中での用途に対応可能な種類の推進装置が採用される。
【0059】
図17は、本発明に係るその他の実施形態のロボットを模式的に表す側面図である。このロボット50は、胴体部52を有し、胴体部52には肩関節アクチュエータ57を介して腕部53が接続され、また、胴体部52には、股関節アクチュエータ58を介して脚部54が接続されており、歩行可能となっている。さらに、ロボット50は、複数の推進装置(
図17の例では、推進装置55A,55B)を備えている。複数の推進装置は、それぞれ、ロボット50に推力を与える装置である。これら複数の推進装置のうちの少なくとも一つ(
図17の例では、推進装置55A)は、可動装置59を介して胴体部52に可動可能に接続されている。さらに、ロボット50は、制御装置56を備えている。制御装置56は、肩関節アクチュエータ57と股関節アクチュエータ58と複数の推進装置55A,55Bと可動装置59のそれぞれの動作を制御する装置であり、例えば、コンピュータ装置である。
【0060】
制御装置56は、推進装置を用いて移動している推進時には、可動装置59を制御することにより、胴体部52に装着されている推進装置55Aの姿勢を
図17における実線で表されるような歩行時の姿勢から点線に表されるような姿勢に可変する姿勢制御を行う。また、制御装置56は、股関節アクチュエータ58を制御することにより推進時における脚部54の伸長方向が
図17における点線のように、前進方向とは逆向きとなるように脚部54の向きの制御を行う。
【0061】
図18は、ロボット50が歩行の状態から推進時の状態に移行する際の推進装置55Aの姿勢と脚部54の向きの制御に係る制御装置56の制御動作の一例を表すフローチャートである。例えば、制御装置56は、可動装置59を制御することにより胴体部52に対する推進装置55Aの姿勢を制御し、これにより、推進装置55Aの姿勢を歩行時から予め定められた状態に可変制御する(ステップ201)。また、制御装置56は、股関節アクチュエータ58を制御することにより脚部54の向きが
図17における点線のような向きとなるように脚部54を変位させる。つまり、制御装置56は、脚部54の伸長方向が前進方向とは逆向きとなるように、股関節アクチュエータ58の制御により脚部54の向きを制御する(ステップ202)。
【0062】
ロボット50は、上述したような構成を備えている。この構成は、推進装置55Aの姿勢制御によって推進装置55Aからロボット50に与える推力の向きを制御できることとなり、推進装置55Aの推力の向きが制御されない場合よりもロボット50の推進力を大きくすることができる。また、推進時には、脚部54の伸長方向が前進方向とは逆向きとなるように脚部54の向きの制御が行われるから、脚部54が例えば鉛直下向きである場合よりも脚部54による空気抵抗を小さくできる。このような推進装置の姿勢制御による効果および脚部54の向きの制御による効果によって、ロボット50は、ロボットを歩行の体勢で移動させる場合に比べて、エネルギーの単位容量当たりの推進装置による移動距離を長くすることができる。
【符号の説明】
【0063】
1 飛行ロボット
3,52 胴体部
4,57 肩関節アクチュエータ
5A,5B,53 腕部
6,58 股関節アクチュエータ
7A,7B,54 脚部
10A,10B,11A,11B,55A,55B 推進装置
15,59 可動装置
20,56 制御装置
50 ロボット