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特開2024-112716モータ駆動制御システム、モータ駆動制御装置、ファンシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112716
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】モータ駆動制御システム、モータ駆動制御装置、ファンシステム
(51)【国際特許分類】
   H02P 5/46 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
H02P5/46 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017963
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】青木 政人
(72)【発明者】
【氏名】田端 剛
(72)【発明者】
【氏名】菊池 竜之介
(72)【発明者】
【氏名】海津 浩之
(72)【発明者】
【氏名】寺岡 進
【テーマコード(参考)】
5H572
【Fターム(参考)】
5H572AA10
5H572BB07
5H572DD02
5H572EE04
5H572GG02
5H572HB09
5H572HC07
5H572JJ03
5H572JJ16
5H572LL10
5H572LL32
5H572LL36
5H572LL47
5H572MM06
(57)【要約】
【課題】モータの外部温度を測定することなくモータの温度異常を判定する。
【解決手段】モータ駆動制御システム110は、第1のモータ21_1及び第2のモータ21_2のそれぞれに対応して設けられた第1のモータ駆動制御装置111及び第2のモータ駆動制御装置112を備え、第1のモータ駆動制御装置及び第2のモータ駆動制御装置の駆動制御部は、それぞれ、時期を合わせて第1のモータ及び第2のモータのそれぞれにおける内部温度を取得する内部温度取得部38_1,38_2を有し、第1のモータ駆動制御装置における第1の駆動制御部3_1は、第1のモータ駆動制御装置及び第2のモータ駆動制御装置それぞれの内部温度取得部が取得した内部温度に基づいて、モータの異常の判定を実行する異常判定部39を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のモータ及び第2のモータのそれぞれに対応して設けられた第1のモータ駆動制御装置及び第2のモータ駆動制御装置を備えたモータ駆動制御システムであって、
前記第1のモータ駆動制御装置及び前記第2のモータ駆動制御装置は、それぞれ、
対応する前記第1のモータ及び前記第2のモータのそれぞれの駆動を制御するための駆動制御信号を生成する駆動制御部と、
前記駆動制御信号に基づいて対応する前記第1のモータ及び前記第2のモータのそれぞれを駆動するモータ駆動回路と、を有し、
前記駆動制御部は、時期を合わせて前記第1のモータ及び前記第2のモータのそれぞれにおける内部温度を取得する内部温度取得部を有し、
前記第1のモータ駆動制御装置における前記駆動制御部である第1の駆動制御部は、前記第1のモータ駆動制御装置及び前記第2のモータ駆動制御装置それぞれの前記内部温度取得部が取得した前記内部温度に基づいて、前記第1のモータ及び前記第2のモータの異常の判定を実行する異常判定部を有する、
モータ駆動制御システム。
【請求項2】
前記異常判定部は、
前記第1のモータ駆動制御装置の前記内部温度取得部が取得した第1の内部温度と、前記第2のモータ駆動制御装置の前記内部温度取得部が取得した第2の内部温度と、の差である内部温度差と所定の閾値とに基づいて、前記第1のモータまたは前記第2のモータに異常が発生しているか否かを判定する、
請求項1に記載のモータ駆動制御システム。
【請求項3】
前記第1のモータ駆動制御装置及び前記第2のモータ駆動制御装置それぞれの前記内部温度取得部は、
時期を合わせてそれぞれ複数の前記第1の内部温度及び前記第2の内部温度を取得し、
前記異常判定部は、
前記第1のモータまたは前記第2のモータに異常が発生していると判定した場合に、複数の前記第1の内部温度及び複数の前記第2の内部温度に基づいて、異常が発生した前記第1のモータ及び前記第2のモータを特定する処理を実行する、
請求項2に記載のモータ駆動制御システム。
【請求項4】
前記異常判定部は、
複数の前記第1の内部温度のうち1つの前記第1の内部温度と、他の前記第1の内部温度との差、及び、複数の前記第2の内部温度のうち1つの前記第2の内部温度と、他の前記第2の内部温度との差に基づいて、前記第1のモータ及び前記第2のモータのいずれで異常が発生したかを特定する処理を実行する、
請求項3に記載のモータ駆動制御システム。
【請求項5】
複数のモータを備えたモータ駆動制御システムにおいて、複数の前記モータのそれぞれに対応して設けられたモータ駆動制御装置であって、
前記モータ駆動制御装置は、
前記モータの駆動を制御するための駆動制御信号を生成する駆動制御部と、
前記駆動制御信号に基づいて前記モータを駆動するモータ駆動回路と、
前記モータ駆動制御システムにおける他のモータ駆動制御装置と通信する通信部と、を有し、
前記駆動制御部は、前記モータにおける内部温度を取得する内部温度取得部と、
前記内部温度取得部及び前記他のモータ駆動制御装置が有する内部温度取得部が取得した前記内部温度に基づいて、複数の前記モータの異常の判定を実行する異常判定部と、を有する、
モータ駆動制御装置。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載のモータ駆動制御システムと、
前記第1のモータ及び前記第2のモータと、
前記第1のモータ及び前記第2のモータそれぞれに取り付けられていて前記第1のモータ及び前記第2のモータの回転力によって回転可能に構成されたインペラと、を備える
ファンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ駆動制御システム、モータ駆動制御装置、ファンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、モータ及びモータの駆動制御を行うモータ駆動制御装置において、モータの温度の変化に応じて異常判定を行う技術が知られている(例えば、特許文献1または特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4964536号公報
【特許文献2】特許第6174626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、モータによって駆動される複数のインペラの回転軸中心が軸流方向に揃うようにして配置されていて、互いに異なる方向にそれぞれのインペラを回転させる、いわゆる二重反転式の送風機を備えるファンシステムが知られている。このような二重反転式の送風機における温度による異常検知の方法としては、モータの内部温度とモータの環境温度(モータの外部温度)の差を算出し、その差分より温度異常を判定することが考えられる。
【0005】
しかしながら、二重反転式の送風機においてモータの内部温度と外部温度とに基づいて異常判定を行うためには、複数のモータの回転数や電流、モータの使用状態における外部温度を考慮した上で実験を行い、モータの内部温度と外部温度との差分と比較する閾値を適切に定める必要がある。つまり、二重反転式の送風機においてモータの内部温度と外部温度とに基づいて異常判定を行うためには、閾値を定めるために多くの時間が必要となる。
【0006】
また、二重反転式の送風機においてモータの内部温度と外部温度とに基づいて異常判定を行うためには、内部温度と外部温度とを取得するために、2つのモータそれぞれに2つの温度センサが必要になる。つまり、二重反転式の送風機においてモータの内部温度と外部温度とに基づいて異常判定を行うためには、装置を製造するためのコストの上昇という問題もある。
【0007】
本発明は、上述の課題を一例とするものであり、モータの外部温度を測定することなくモータの温度異常を判定することができるモータ駆動制御システム、モータ駆動制御装置、ファンシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係るモータ駆動制御システムは、第1のモータ及び第2のモータのそれぞれに対応して設けられた第1のモータ駆動制御装置及び第2のモータ駆動制御装置を備えたモータ駆動制御システムであって、前記第1のモータ駆動制御装置及び前記第2のモータ駆動制御装置は、それぞれ、対応する前記第1のモータ及び前記第2のモータのそれぞれの駆動を制御するための駆動制御信号を生成する駆動制御部と、前記駆動制御信号に基づいて対応する前記第1のモータ及び前記第2のモータのそれぞれを駆動するモータ駆動回路と、を有し、前記駆動制御部は、時期を合わせて前記第1のモータ及び前記第2のモータのそれぞれにおける内部温度を取得する内部温度取得部を有し、前記第1のモータ駆動制御装置における前記駆動制御部である第1の駆動制御部は、前記第1のモータ駆動制御装置及び前記第2のモータ駆動制御装置それぞれの前記内部温度取得部が取得した前記内部温度に基づいて、前記第1のモータ及び前記第2のモータの異常の判定を実行する異常判定部を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るモータ駆動制御システムによれば、モータの外部温度を測定することなくモータの温度異常を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施の形態に係るモータ駆動制御システムの概要を説明する図である。
図2】本実施の形態に係るモータ駆動制御システムを搭載したファンシステムの具体的な構成の一例を示す図である。
図3】本実施の形態に係るファンシステムにおける第1送風機及び第2送風機を示す斜視図である。
図4】本実施の形態に係るファンシステムを複数用いて構成された送風システムの一例を示す図である。
図5】本実施の形態に係るファンシステムが備える送風機のモータに異常が発生している例(1)を示すI(n)とO(n)との内部温度の遷移の模式図である。
図6】本実施の形態に係るファンシステムが備える送風機のモータに異常が発生している例(2)を示すI(n)とO(n)との内部温度の遷移の模式図である。
図7】本実施の形態に係るファンシステムが備える送風機のモータに異常が発生している例(3)を示すI(n)とO(n)との内部温度の遷移の模式図である。
図8】本実施の形態に係るファンシステムが備える送風機のモータに異常が発生している例(4)を示すI(n)とO(n)との内部温度の遷移の模式図である。
図9】本実施の形態に係るファンシステムが備える送風機のモータに異常が発生している例(5)を示すI(n)とO(n)との内部温度の遷移の模式図である。
図10】本実施の形態に係るファンシステムが備える送風機のモータに異常が発生している例(6)を示すI(n)とO(n)との内部温度の遷移の模式図である。
図11】本実施の形態に係るファンシステムが備える送風機のモータに異常が発生している例(1)~(6)と内部温度の遷移との関係を示す表である。
図12】第1のモータ駆動制御装置の第1の駆動制御部が行う処理動作の一例を示す第1のフローチャートである。
図13】第1のモータ駆動制御装置の第1の駆動制御部が行う処理動作の一例を示す第2のフローチャートである。
図14】第1のモータ駆動制御装置の第1の駆動制御部が行う処理動作の一例を示す第3のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
【0012】
〔1〕本発明の代表的な実施の形態に係るモータ駆動制御システム(110)は、第1のモータ(21_1)及び第2のモータ(21_2)のそれぞれに対応して設けられた第1のモータ駆動制御装置(111)及び第2のモータ駆動制御装置(112)を備えたモータ駆動制御システムであって、前記第1のモータ駆動制御装置及び前記第2のモータ駆動制御装置は、それぞれ、対応する前記第1のモータ及び前記第2のモータのそれぞれの駆動を制御するための駆動制御信号(Sd_1,Sd_2)を生成する駆動制御部(3_1,3_2)と、前記駆動制御信号に基づいて対応する前記第1のモータ及び前記第2のモータのそれぞれを駆動するモータ駆動回路(2_1,2_2)と、を有し、前記駆動制御部は、時期を合わせて前記第1のモータ及び前記第2のモータのそれぞれにおける内部温度を取得する内部温度取得部(38_1,38_2)を有し、前記第1のモータ駆動制御装置における前記駆動制御部である第1の駆動制御部(3_1)は、前記第1のモータ駆動制御装置及び前記第2のモータ駆動制御装置それぞれの前記内部温度取得部が取得した前記内部温度に基づいて、前記第1のモータ及び前記第2のモータの異常の判定を実行する異常判定部(39)を有する。
【0013】
〔2〕上記〔1〕に記載のモータ駆動制御システムにおいて、前記異常判定部は、前記第1のモータ駆動制御装置の前記内部温度取得部が取得した第1の内部温度と、前記第2のモータ駆動制御装置の前記内部温度取得部が取得した第2の内部温度と、の差である内部温度差と所定の閾値とに基づいて、前記第1のモータまたは前記第2のモータに異常が発生しているか否かを判定してもよい。
【0014】
〔3〕上記〔2〕に記載のモータ駆動制御システムにおいて、前記第1のモータ駆動制御装置及び前記第2のモータ駆動制御装置それぞれの前記内部温度取得部は、時期を合わせてそれぞれ複数の前記第1の内部温度及び前記第2の内部温度を取得し、前記異常判定部は、前記第1のモータまたは前記第2のモータに異常が発生していると判定した場合に、複数の前記第1の内部温度及び複数の前記第2の内部温度に基づいて、前記第1のモータ及び前記第2のモータのいずれで異常が発生したかを特定する処理を実行してもよい。
【0015】
〔4〕上記〔3〕に記載のモータ駆動制御システムにおいて、前記異常判定部は、複数の前記第1の内部温度のうち1つの前記第1の内部温度と、他の前記第1の内部温度との差、及び、複数の前記第2の内部温度のうち1つの前記第2の内部温度と、他の前記第2の内部温度との差に基づいて、前記第1のモータ及び前記第2のモータのいずれで異常が発生したかを特定する処理を実行してもよい。
【0016】
〔5〕本発明の代表的な実施の形態に係るモータ駆動制御装置(111)は、複数のモータ(21_1,21_2)を備えたモータ駆動制御システム(110)において、前記複数のモータのそれぞれに対応して設けられたモータ駆動制御装置であって、前記モータ駆動制御装置は、前記モータの駆動を制御するための駆動制御信号(Sd_1)を生成する駆動制御部(3_1)と、前記駆動制御信号に基づいて前記モータを駆動するモータ駆動回路(2_1)と、前記モータ駆動制御システムにおける他のモータ駆動制御装置(112)と通信する通信部(35_1)と、を有し、前記駆動制御部は、前記モータにおける内部温度を取得する内部温度取得部(38_1)と、前記内部温度取得部及び前記他のモータ駆動制御装置が有する内部温度取得部(38_2)が取得した内部温度に基づいて、複数の前記モータの異常の判定を実行する異常判定部(39)と、を有する。
【0017】
〔6〕上記〔1〕から〔4〕に記載のモータ駆動制御システムと、第1のモータ(21_1)及び第2のモータ(21_2)と、前記第1のモータ及び前記第2のモータそれぞれに取り付けられていて前記第1のモータ及び前記第2のモータの回転力によって回転可能に構成されたインペラ(62_1,62_2)と、を備えるファンシステム(1)として構成してもよい。
【0018】
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。
【0019】
≪実施の形態≫
まず、本実施の形態の具体的な構成を説明する前に、モータ駆動制御システムの概要について説明する。
【0020】
図1は、本実施の形態に係るモータ駆動制御システムの概要を説明する図である。
【0021】
図1に示すように、本実施の形態では、2つのファンを2つのモータにより駆動するためのモータ駆動制御システム110を例に挙げて説明する。本実施の形態のモータ駆動制御システム110は、モータ駆動回路2_1及び第1の駆動制御部3_1を有する第1のモータ駆動制御装置111と、モータ駆動回路2_2及び第2の駆動制御部3_2を有する第2のモータ駆動制御装置112と、第1のモータ駆動制御装置111と第2のモータ駆動制御装置112とを互いに通信を行うために接続する通信線45とを備えている。
【0022】
モータ駆動制御システム110は、第1のモータ駆動制御装置111を構成する集積回路装置(IC)と第2のモータ駆動制御装置112を構成する集積回路装置(IC)との2つの集積回路装置(IC)によって構成されている。
【0023】
図2は、本実施の形態に係るモータ駆動制御システムを搭載したファンシステム1の具体的な構成の一例を示す図である。図3は、本実施の形態に係るファンシステム1における第1送風機11及び第2送風機12を示す斜視図である。
【0024】
図2及び図3に示されるように、ファンシステム1は、上述したモータ駆動制御システム110を搭載しており、インペラ62_1,62_2(第1のインペラ62_1,第2のインペラ62_2)及びこれを回転させるモータ21_1,21_2(第1のモータ21_1,第2のモータ21_2)をそれぞれ有する2つの送風機11、12(第1送風機11、第2送風機12)を備える送風装置として構成されている。本実施の形態において、ファンシステム1は、インレット側(吸気側)の第1送風機11と、アウトレット側(排気側)の第2送風機12とを有している。
【0025】
第1送風機11と第2送風機12とは、それぞれ、互いのインペラ62_1,62_2の回転軸中心が軸流方向に揃うようにして配置されている軸流ファンである。第1送風機11と第2送風機12とは、互いに異なる方向にそれぞれのインペラ62_1,62_2を回転させる。換言すると、軸方向に見て、第1送風機11のインペラ62_1の回転方向は、第2送風機12のインペラ62_2の回転方向とは逆の方向である。すなわち、ファンシステム1は、いわゆる二重反転式の送風機である。本実施の形態において、ファンシステム1は、例えば、電子計算機やOA機器などの電子機器の内部で発生する熱を風力によって外部へ排出することにより電子機器の内部を冷却するファンモータである。
【0026】
第1送風機11は、第1送風機11の第1のインペラ62_1を回転させる第1のモータ21_1と、第1のモータ21_1を駆動する第1のモータ駆動制御装置111とを有して構成されている。第1のモータ21_1のロータの回転軸に、第1のインペラ62_1が取り付けられている。
【0027】
第2送風機12は、第2送風機12の第2のインペラ62_2を回転させる第2のモータ21_2と、第2のモータ21_2を駆動する第2のモータ駆動制御装置112とを有して構成されている。第2のモータ21_2のロータの回転軸に、第2のインペラ62_2が取り付けられている。
【0028】
図4は、本実施の形態に係るファンシステム1を複数用いて構成された送風システム801の一例を示す図である。
【0029】
図4に示されるように、ファンシステム1は、複数台まとめて用いることができる。例えば、送風システム801は、1つの制御装置800と、4つのファンシステム1(ファンシステム1A,1B,1C,1D)とを有している。ファンシステム1は、それぞれ、制御装置800に接続されている。ファンシステム1それぞれの第1送風機11及び第2送風機12は、制御装置800から入力される速度指令信号Scに基づいて、第1のモータ21_1及び第2のモータ21_2を駆動させる。
【0030】
送風システム801は、例えば、冷却対象である電子計算機などの電子機器900に対して、それぞれのファンシステム1から風を送風する。電子機器900は、電源装置や、CPUや、メモリや、記憶装置や、周辺装置などで構成されている。電子機器900は、送風システム801を構成するファンシステム1から電子機器900の内部に送られる風により、冷却され、正常に動作する状態を維持することができる。図2から図4に示すように、本実施の形態において、ファンシステム1は、例えば、電子計算機やOA機器などの電子機器の内部で発生する熱を風力によって外部へ排出することにより電子機器の内部を冷却するファンモータである。
【0031】
以下、第1のインペラ62_1と第2のインペラ62_2とを区別せず、インペラ62_1,62_2と表記することがある。第1のモータ21_1と第2のモータ21_2とを区別せず、モータ21_1,21_2と表記することがある。また、第1のモータ駆動制御装置111と第2のモータ駆動制御装置112とを区別せず、モータ駆動制御装置111,112と表記することがある。
【0032】
本実施の形態において、第1のモータ21_1及び第2のモータ21_2は、例えば3相のブラシレスモータである。各モータ駆動制御装置111,112は、第1のモータ21_1及び第2のモータ21_2のコイルに周期的に駆動電流を流すことで、第1のモータ21_1及び第2のモータ21_2を回転させる。
【0033】
第1送風機11と第2送風機12とに用いられる第1のモータ駆動制御装置111と第2のモータ駆動制御装置112とは、互いに通信を行うために通信線45により接続されている。第1のモータ駆動制御装置111と第2のモータ駆動制御装置112と通信線45とは、モータ駆動制御システム110として形成されている。
【0034】
ファンシステム1は、外部装置の一例である制御装置800に接続されている。本実施の形態において、制御装置800は、各送風機11,12に、第1のモータ21_1及び第2のモータ21_2の回転速度(回転数)に対応する速度指令信号Scを出力する。速度指令信号Scは、各モータ駆動制御装置111、112に入力される。各モータ駆動制御装置111,112は、速度指令信号Scに対応する回転数で第1のモータ21_1及び第2のモータ21_2を駆動することができる。なお、各モータ駆動制御装置111,112は、第1のモータ21_1及び第2のモータ21_2に対応する回転数信号S(例えば、FG信号など)を制御装置800に出力する。制御装置800は、回転数信号Sに基づいて、各送風機11,12の駆動状態を検知し、それに応じて、出力する速度指令信号Scの制御などを行うことができる。
【0035】
第1のモータ駆動制御装置111と第2のモータ駆動制御装置112は、第1のモータ駆動制御装置111のみに異常判定部39を設けていること以外は、同一のハードウエア構成を有している。本実施の形態において、第1のモータ駆動制御装置111と第2のモータ駆動制御装置112は、後述のように異常判定部39や互いに通信を行う部分の具体的な動作などを除いて、ほぼ同一の動作を行う。以下では、第1のモータ駆動制御装置111の構成と第2のモータ駆動制御装置112とに共通する構成要素については、代表して第1のモータ駆動制御装置111に基づいて説明し、異なる部分についてはそれぞれ説明する。
【0036】
各モータ駆動制御装置111,112は、モータ駆動回路2_1,2_2と、駆動制御部3_1,3_2と、を有している。なお、図2に示されているモータ駆動制御装置111,112の構成要素は、全体の一部であり、モータ駆動制御装置111,112は、図1に示されたものに加えて、他の構成要素を有していてもよい。
【0037】
本実施の形態において、各モータ駆動制御装置111,112は、それぞれ、駆動制御部3_1,3_2及びモータ駆動回路2_1,2_2がパッケージ化された個別の集積回路装置(IC)である。なお、個別の集積回路装置(IC)として構成された各モータ駆動制御装置111,112が1つの集積回路装置としてパッケージ化されていてもよいし、他の装置と一緒に各モータ駆動制御装置111,112がパッケージ化されて1つの集積回路装置が構成されていてもよい。また、駆動制御部3_1,3_2とモータ駆動回路2_1,2_2が異なる集積回路装置としてパッケージ化されていてもよい。
【0038】
モータ駆動回路2_1,2_2は、それぞれ、第1の駆動制御部3_1と第2の駆動制御部3_2とにより生成された駆動制御信号Sd_1,Sd_2に基づいて、駆動対象のモータ21_1,21_2を駆動する。
【0039】
モータ駆動回路2_1,2_2は、インバータ回路及びプリドライブ回路を有する。モータ駆動回路2_1,2_2は、駆動制御部3_1,3_2から出力された駆動制御信号Sd_1,Sd_2に基づいて、モータ21_1,21_2に駆動信号を出力し、モータ21_1,21_2を駆動させる。
【0040】
プリドライブ回路は、駆動制御部3_1,3_2による制御に基づいて、インバータ回路を駆動するための出力信号を生成し、インバータ回路に出力する。インバータ回路は、プリドライブ回路から出力された出力信号に基づいてモータ21_1,21_2に駆動信号を出力し、モータ21_1,21_2が備えるコイルに通電する。
【0041】
駆動制御部3_1,3_2には、制御装置800から出力された速度指令信号Sc_1,Sc_2が入力される。また、駆動制御部3_1,3_2は、制御装置800に回転数信号S_1,S_2を出力する。
【0042】
速度指令信号Sc_1,Sc_2は、モータ21_1,21_2の回転速度に関する信号である。例えば、速度指令信号Sc_1,Sc_2は、モータ21_1,21_2の目標回転速度に対応するPWM(パルス幅変調)信号である。換言すると、速度指令信号Sc_1,Sc_2は、モータ21_1,21_2の回転速度の目標値に対応する速度指令情報である。なお、速度指令信号Sc_1,Sc_2として、クロック信号が入力されてもよい。
【0043】
また、本実施の形態において、駆動制御部3_1,3_2には、モータ21_1,21_2から、3つのホール信号(位置検出信号)Hu,Hv,Hwが入力される。ホール信号Hu,Hv,Hwは、例えば、モータ21_1,21_2に配置された3つのホール(HALL)素子25u,25v,25wの出力信号である。ホール信号Hu,Hv,Hwは、モータ21_1のロータの回転に対応する信号である。駆動制御部3_1,3_2は、ホール信号Hu,Hv,Hwを用いてモータ21_1,21_2の回転状態を検出し、モータ21_1,21_2の駆動を制御する。すなわち、駆動制御部3_1,3_2は、ホール信号Hu,Hv,Hwを用いてモータ21_1,21_2のロータの回転位置を検出し、モータ21_1,21_2の駆動を制御する。また、駆動制御部3_1,3_2は、ホール信号Hu,Hv,Hwを用いてモータ21_1,21_2のロータの実際の回転数に関する実回転数情報を得て、モータ21_1,21_2の駆動を制御することができる。
【0044】
ホール信号Hu,Hv,Hwを出力する3つのホール素子25_1,25_2(図2においては、簡略化のため、モータ21_1,21_2について1つのホール素子25_1,25_2が示されている)は、例えば、互いに略等間隔(隣り合うものと120度の間隔で)でモータ21_1,21_2の回転子の回りに配置されている。3つのホール素子25は、それぞれ、モータ21_1,21_2のロータの磁極を検出し、ホール信号Hu,Hv,Hwを出力する。
【0045】
なお、駆動制御部3_1,3_2には、このようなホール信号Hu,Hv,Hwに加えて、又はホール信号Hu,Hv,Hwに代えて、モータ21_1,21_2の回転状態に関する他の情報が入力されるように構成されていてもよい。例えば、モータ21_1,21_2の回転子の回転に対応するFG信号として、回転子の側にある基板に設けたコイルパターンを用いて生成される信号(パターンFG)が入力されるようにしてもよい。また、モータ21_1,21_2の各相(U、V、W相)に誘起する逆起電圧を検出する回転位置検出回路の検出結果に基づいてモータ21_1,21_2の回転状態が検知されるように構成されていてもよい。エンコーダやレゾルバなどを設け、それによりモータ21_1,21_2の回転速度等の情報が検出されるようにしてもよい。
【0046】
駆動制御部3_1,3_2は、入力される信号に基づいて、モータ21_1,21_2を駆動させるための駆動制御信号Sd_1を出力する。具体的には、駆動制御部3_1,3_2は、速度指令信号Sc_1,Sc_2及びホール信号Hu,Hv,Hwに基づいて、駆動制御信号Sd_1,Sd_2をモータ駆動回路2_1,2_2に出力する。
【0047】
駆動制御部3_1,3_2は、モータ21_1,21_2を駆動させるための駆動制御信号Sd_1,Sd_2をモータ駆動回路2_1,2_2に出力し、モータ21_1,21_2の回転制御を行う。モータ駆動回路2_1,2_2は、駆動制御信号Sd_1,Sd_2に基づいて、モータ21_1に駆動信号を出力してモータ21_1,21_2を駆動させる。
【0048】
以上説明したモータ21_1の駆動を制御する駆動制御信号Sd_1を生成する処理を実現するために、第1の駆動制御部としての駆動制御部3_1は、モータ駆動制御処理部30_1と、通信部35_1と、内部温度取得部38_1と、異常判定部39とを機能部として有している。駆動制御部3_1は、これらの機能部により、モータ駆動制御機能や異常推定機能を実現している。また、以上説明したモータ21_2の駆動を制御する駆動制御信号Sd_2を生成する処理を実現するために、第2の駆動制御部としての駆動制御部3_2は、モータ駆動制御処理部30_2と、通信部35_2と、内部温度取得部38_2とを機能部として有している。駆動制御部3_2は、これらの機能部により、モータ駆動制御機能を実現している。このように、駆動制御部3_1と駆動制御部3_2とは、駆動制御部3_1にのみ異常判定部39が設けられている以外は、ほぼ同じ構成を有している。
【0049】
これらの駆動制御部3_1,3_2における機能部は、例えば、プログラム処理装置によって実現されている。例えば、CPU等のプロセッサと、RAM,ROM等の各種記憶装置と、カウンタ(タイマ)、A/D変換回路、D/A変換回路、クロック発生回路、及び入出力I/F回路等の周辺回路とがバスや専用線を介して互いに接続された構成を有するプログラム処理装置(例えばマイクロコントローラ)において、CPUがメモリに記憶されているプログラムに従って各種演算処理を実行し、その処理結果に基づいてA/D変換回路や入出力インターフェース回路等の周辺回路を制御することによって、上述した機能ブロックが実現されている。
【0050】
モータ駆動制御処理部30_1,30_2は、それぞれ、モータを駆動制御するための駆動制御信号Sd_1,Sd_2を生成するモータの駆動制御処理を実行する処理部である。モータ駆動制御処理部30_1,30_2は、それぞれ、例えば、外部装置からの駆動命令に基づいて、モータ駆動回路2_1,2_2に対してそれぞれ駆動制御信号Sd_1,Sd_2を生成する、モータの駆動制御処理を実行する。
【0051】
モータ駆動制御処理部30_1,30_2は、回転数算出部31_1,31_2と、速度指令解析部32_1,32_2と、PWM指令部33_1,33_2と、PWM信号生成部34_1,34_2とを機能部として有している。
【0052】
回転数算出部31_1,31_2には、3つのホール素子25_1,25_2から出力されたホール信号Hu,Hv,Hwが入力される。回転数算出部31_1,31_2は、入力されたホール信号Hu,Hv,Hwに基づいて、各相とモータ21_1,21_2のロータとの位置関係を示す位置信号を出力する。また、回転数算出部31_1,31_2は、ホール信号Hu,Hv,Hwに基づいて、位置信号の周期に対応する実回転数情報を生成して出力する。すなわち、回転数算出部31_1,31_2は、モータ21_1,21_2のロータの実際の回転数に関する実回転数情報を出力する。図においては、位置信号と実回転数情報とを合わせて、実回転信号S2_1,S2_2が示されている。実回転信号S2_1,S2_2は、PWM指令部33_1,33_2に出力される。
【0053】
回転数算出部31_1,31_2は、生成した実回転数情報を回転数信号S_1,S_2として制御装置800に出力することができる。
【0054】
速度指令解析部32_1,32_2には、速度指令信号Sc_1,Sc_2が入力される。速度指令解析部32_1,32_2は、速度指令信号Sc_1,Sc_2に基づいて、モータ21_1,21_2の目標回転数を示す目標回転数信号S1_1,S1_2を出力する。目標回転数信号S1_1,S1_2は、速度指令信号Sc_1,Sc_2に対応するデューティ比を示すPWM信号である。目標回転数信号S1_1,S1_2は、PWM指令部33_1,33_2に出力される。
【0055】
PWM指令部33_1,33_2には、回転数算出部31_1,31_2から出力された実回転信号S2_1,S2_2と、速度指令解析部32_1,32_2から出力された目標回転数信号S1_1,S1_2とが入力される。PWM指令部33_1,33_2は、実回転信号S2_1,S2_2と目標回転数信号S1_1,S1_2とに基づいて、実回転信号S2_1,S2_2が目標回転数信号S1_1,S1_2に一致するように、いわゆるフィードバック制御処理により調整したPWM設定指示信号S3_1,S3_2を生成して出力する。PWM設定指示信号S3_1,S3_2は、PWM信号生成部34_1,34_2に出力される。PWM設定指示信号S3_1,S3_2は、駆動制御信号Sd_1,Sd_2を出力するためのデューティ比を示す信号である。
【0056】
また、PWM指令部33_1,33_2には、後述のように通信処理部37_1,37_2から出力された調整信号S9_1,S9_2が入力される。PWM指令部33_1,33_2は、通信処理部37_1,37_2から調整信号S9_1,S9_2が入力されると、入力された調整信号S9_1,S9_2の内容に応じてさらにPWM設定指示信号S3_1,S3_2を調整して出力する。
【0057】
PWM信号生成部34_1,34_2には、PWM設定指示信号S3_1,S3_2が入力される。PWM信号生成部34_1,34_2は、PWM設定指示信号S3_1,S3_2に基づいて、モータ駆動回路2_1,2_2を駆動させるためのPWM信号S4_1,S4_2を生成する。PWM信号S4_1,S4_2は、例えば、デューティ比がPWM設定指示信号S3_1,S3_2と同一となる信号である。換言すると、PWM信号S4_1,S4_2は、PWM設定指示信号S3_1,S3_2に対応するデューティ比を有する信号である。
【0058】
PWM信号生成部34_1,34_2から出力されたPWM信号S4_1,S4_2は、駆動制御信号Sd_1,Sd_2として駆動制御部3_1,3_2からモータ駆動回路2_1,2_2に出力される。これにより、モータ駆動回路2_1,2_2からモータ21_1,21_2に駆動信号が出力され、モータ21_1,21_2が駆動される。
【0059】
内部温度取得部38_1は、第1のモータ21_1における、ケースの内部における温度(以下「内部温度」という。)を取得する。内部温度取得部38_2は、第2のモータ21_2における内部温度を取得する。内部温度取得部38_1,38_2は、それぞれ、第1のモータ21_1の内部温度である第1の内部温度(以下「内部温度I(n)」という。)及び第2のモータ21_2の内部温度である第2の内部温度(以下「内部温度O(n)」という。)を、温度センサ26_1,26_2から取得する。内部温度取得部38_1は、所定の時間ごと、例えば、t=10秒ごとに内部温度I(n)を取得する。内部温度取得部38_2は、所定の時間ごと、例えば、t=10秒ごと内部温度I(n)を取得する。なお、内部温度取得部38_1,38_2が内部温度I(n)及び内部温度O(n)を取得する時間間隔は、上述した例に限定されない。
【0060】
温度センサ26_1,26_2は、モータ21_1,21_2の内部において、例えば、軸受の外周側などの回転部分の周辺に設けられる。温度センサ26_1,26_2は、例えば、サーミスタなどの各種の温度検出センサである。温度センサ26_1,26_2は、検出した温度に応じた電気信号を内部温度取得部38_1,38_2に出力する。モータ21_1,21_2において、温度センサ26_1,26_2を設ける位置は、モータ21_1,21_2の内部の温度を取得することができる位置であればよく、上述した例に限定されない。
【0061】
異常判定部39が設けられている第1のモータ駆動制御装置111の内部温度取得部38_1で取得した内部温度I(n)は、異常判定部39に送られる。異常判定部39が設けられていない第2のモータ駆動制御装置112の内部温度取得部38_2で取得した内部温度O(n)は、通信部35_1,35_2により、通信線45を介して、第1のモータ駆動制御装置111の異常判定部39に送られる。
【0062】
上述したように、異常判定部39は、第1のモータ駆動制御装置111の駆動制御部3_1にのみ設けられている構成である。異常判定部39は、第1のモータ駆動制御装置111及び第2のモータ駆動制御装置112それぞれの内部温度取得部38_1,38_2が取得した内部温度I(n)及び内部温度O(n)に基づいて、モータ21_1,21_2の異常の判定を実行する。
【0063】
異常判定部39は、第1のモータ駆動制御装置111の内部温度取得部38_1が取得した内部温度I(n)と、第2のモータ駆動制御装置112の内部温度取得部38_2が取得した内部温度O(n)と、の差(以下「内部温度差X」という。)を算出する。異常判定部39は、内部温度差Xと所定の閾値とに基づいて、第1のモータ21_1または第2のモータ21_2の少なくともいずれか一方に異常が発生しているか否かを判定する。
【0064】
異常判定部39による、第1のモータ21_1または第2のモータ21_2の少なくともいずれか一方に異常が発生しているか否かを判定する処理は、例えば以下のように行われる。通常、二重反転式の送風機であるファンシステム1において、冷却対象である電子機器に近いインレット側の第1送風機11の第1のモータ21_1の内部温度I(n)は、時期を合わせて取得したアウトレット側の第2送風機12の第2のモータ21_2の内部温度O(n)よりも高い。内部温度O(n)が通常よりも高い場合には内部温度差Xが減少すると考えられる。そこで、内部温度差Xの下限値として閾値TH1を定める。内部温度差Xが閾値TH1よりも小さい場合、異常判定部39は、第2のモータ21_2を備える第2送風機12に異常が発生していると判定する。
【0065】
内部温度差Xが閾値TH1よりも大きい場合、つまり、インレット側の第1送風機11の第1のモータ21_1の内部温度I(n)とアウトレット側の第2送風機12の第2のモータ21_2の内部温度O(n)との差が閾値TH1よりも大きい場合、異常判定部39は、以下の処理を行う。第1のモータ21_1において、内部温度I(n)が通常よりも高い場合には内部温度差Xが拡大すると考えられる。そこで、内部温度差Xの上限値として閾値TH2を定める。内部温度差Xが閾値TH2よりも大きい場合、異常判定部39は、第1のモータ21_1を備える第1送風機11に異常が発生していると判定する。
【0066】
一方、内部温度差Xが閾値TH2よりも小さい場合、異常判定部39は、内部温度I(n)が閾値THIよりも大きいか否かを判定する。また、異常判定部39は、内部温度I(n)が閾値THIよりも小さい場合、内部温度O(n)が閾値THOよりも大きいか否かを判定する。閾値THI及び閾値THOは、例えば、第1のモータ21_1及び第2のモータ21_2の動作環境温度に応じて定められる内部温度I(n)及び内部温度O(n)の異常検知の上限の閾値である。異常判定部39は、内部温度差Xが上述した閾値TH1と閾値TH2との間の値であっても、内部温度I(n)が閾値THIよりも大きい場合には、第1のモータ21_1を備える第1送風機11及び第2のモータ21_2を備える第2送風機12に異常が発生していると判定する。また、異常判定部39は、内部温度差Xが上述した閾値TH1と閾値TH2との間の値であっても、内部温度O(n)が閾値THOよりも大きい場合には、第2のモータ21_2を備える第2送風機12及び第1のモータ21_1を備える第1送風機11に異常が発生していると判定する。
【0067】
そして、異常判定部39は、内部温度差Xが上述した閾値TH1と閾値TH2との間の値であり、かつ、I(n)が閾値THIよりも大きくなくO(n)が閾値THOよりも大きくない場合に、第1送風機11及び第2送風機12が正常であると判定する。
【0068】
異常判定部39は、第1のモータ21_1または第2のモータ21_2の少なくともいずれか一方に異常が発生していると判定した場合に、時期を合わせて取得した複数の内部温度I(n)及び内部温度O(n)の組み合わせに基づいて、第1のモータ21_1及び第2のモータ21_2のうち異常が発生したモータを特定する処理を実行する。
【0069】
異常判定部39は、内部温度取得部38_1が取得した複数の内部温度I(n)の差(以下「第1送風機温度差I(X)」という。)、及び、内部温度取得部38_2が取得した複数の内部温度O(n)の差(以下「第2送風機温度差O(X)」という。)に基づいて、第1のモータ21_1及び第2のモータ21_2のうち異常が発生したモータを特定する処理を実行する。内部温度取得部38_1が取得した複数の内部温度I(n)とは、例えば、時間t(n)に取得した内部温度I(n)、及び、時間t(n)から所定の時間経過後の時間t(n+1)に取得した内部温度I(n+1)である。この場合の第1送風機温度差I(X)は以下の式(1)に示す。
【0070】
I(X)=I(n+1)-I(n)・・・(1)
【0071】
また、内部温度取得部38_2が取得した複数の内部温度O(n)とは、例えば、I(n)と同様に時間t(n)に取得したO(n)、及び、I(n+1)と同様にt(n+1)に取得したO(n+1)である。この場合の第2送風機温度差O(X)は以下の式(2)に示す。
【0072】
O(X)=O(n+1)-O(n)・・・(2)
【0073】
なお、内部温度取得部38_1,38_2が取得した2つの内部温度I(n),O(n)は、I(n),I(n+1)またはO(n),O(n+1)のように連続して取得したものに限定されない。
【0074】
図5から図10は、ファンシステム1が備える送風機のモータに異常が発生している例(1)から(6)を示すI(n)とO(n)との内部温度の遷移の模式図である。図5から図10を参照して、異常判定部39において、所定の時間間隔における内部温度I(n)と内部温度O(n)との遷移により第1のモータ21_1または第2のモータ21_2の少なくともいずれか一方に異常が発生していると判定する例を説明する。以下の例において、内部温度I(n)~I(n+3)及び内部温度O(n)~O(n+3)を取得する時間t(n)~t(n+3)の間隔はいずれも10秒である。
【0075】
図5は、ファンシステム1が備える送風機のモータに異常が発生している例(1)を示すI(n)とO(n)との内部温度の遷移の模式図である。図5において、第1送風機11の第1のモータ21_1の内部温度I(n)は、上昇している。一方、第2送風機12の第2のモータ21_2の内部温度O(n)は、変化していないまたはほぼ変化していない。ここで、内部温度O(n)~O(n+3)の変化は、所定の温度変化の範囲内に収まっている。以上の内部温度I(n)及び内部温度O(n)は、以下の式(1-1)(1-2)のとおりである。
【0076】
I(n+1)-I(n)>0・・・(1-1)
【0077】
O(n)≒O(n+1)≒O(n+2)≒O(n+3)・・・(1-2)
【0078】
以上の場合において、内部温度I(n)のみ上昇しているため、異常判定部39は、第1のモータ21_1を備える第1送風機11に異常(以下「異常(1)」という。)が発生していると判定する。
【0079】
図6は、ファンシステム1が備える送風機のモータに異常が発生している例(2)を示すI(n)とO(n)との内部温度の遷移の模式図である。図6において、第1送風機11の第1のモータ21_1の内部温度I(n)は、上昇している。一方、第2送風機12の第2のモータ21_2の内部温度O(n)は、下降している。以上の内部温度I(n),O(n)の関係は、以下の式(2-1),(2-2)のとおりである。
【0080】
I(n+1)-I(n)>0・・・(2-1)
【0081】
O(n+1)-O(n)<0・・・(2-2)
【0082】
以上の場合において、内部温度O(n)が下降しているのに対して内部温度I(n)が上昇しているため、異常判定部39は、第1のモータ21_1を備える第1送風機11に異常(以下「異常(2)」という。)が発生していると判定する。内部温度O(n)が下降していることから第2のモータ21_2が異常であるとは考えられないからである。
【0083】
図7は、ファンシステム1が備える送風機のモータに異常が発生している例(3)を示すI(n)とO(n)との内部温度の遷移の模式図である。図7において、第1送風機11の第1のモータ21_1の内部温度I(n)は、変化していないまたはほぼ変化していない。ここで、内部温度I(n)~I(n+3)の変化は、所定の温度変化の範囲内に収まっている。一方、第2送風機12の第2のモータ21_2の内部温度O(n)は、下降している。以上の内部温度I(n),O(n)の関係は、以下の式(3-1),(3-2)のとおりである。
【0084】
I(n)≒I(n+1)≒I(n+2)≒I(n+3)>0・・・(3-1)
【0085】
O(n+1)-O(n)<0・・・(3-2)
【0086】
以上の場合において、内部温度O(n)が下降しているのに対して内部温度I(n)が下降していないため、異常判定部39は、第1のモータ21_1を備える第1送風機11に異常(以下「異常(3)」という。)が発生していると判定する。内部温度O(n)が下降していることから第2のモータ21_2が異常であるとは考えられないからである。
【0087】
なお、第1のモータ21_1を備える第1送風機11に発生している異常が異常(2)であるかまたは異常(3)あるかの判定は、第1送風機温度差I(X)の上限の閾値TH3をあらかじめ定めることで行うことができる。
【0088】
図8は、ファンシステム1が備える送風機のモータに異常が発生している例(4)を示すI(n)とO(n)との内部温度の遷移の模式図である。図8において、第1送風機11の第1のモータ21_1の内部温度I(n)は、変化していないまたはほぼ変化していない。一方、第2送風機12の第2のモータ21_2の内部温度O(n)は、上昇している。以上の内部温度I(n),O(n)の関係は、以下の式(4-1),(4-2)のとおりである。
【0089】
I(n)≒I(n+1)≒I(n+2)≒I(n+3)>0・・・・(4-1)
【0090】
O(n+1)-O(n)>0・・・(4-2)
【0091】
以上の場合において、内部温度O(n)のみが上昇しているため、異常判定部39は、第2のモータ21_2を備える第2送風機12に異常(以下「異常(4)」という。)が発生していると判定する。
【0092】
図9は、ファンシステム1が備える送風機のモータに異常が発生している例(5)を示すI(n)とO(n)との内部温度の遷移の模式図である。図9において、第1送風機11の第1のモータ21_1の内部温度I(n)は、下降している。一方、第2送風機12の第2のモータ21_2の内部温度O(n)は、上昇している。以上の内部温度I(n),O(n)の関係は、以下の式(5-1),(5-2)のとおりである。
【0093】
I(n+1)-I(n)<0・・・(5-1)
【0094】
O(n+1)-O(n)>0・・・(5-2)
【0095】
以上の場合において、内部温度I(n)が下降しているのに対して内部温度O(n)が下降せず上昇しているため、異常判定部39は、第2のモータ21_2を備える第2送風機12に異常(以下「異常(5)」という。)が発生していると判定する。内部温度I(n)が下降していることから第1のモータ21_1が異常であるとは考えられないからである。
【0096】
図10は、ファンシステム1が備える送風機のモータに異常が発生している例(6)を示すI(n)とO(n)との内部温度の遷移の模式図である。図10において、第1送風機11の第1のモータ21_1の内部温度I(n)は、下降している。一方、第2送風機12の第2のモータ21_2の内部温度O(n)は、変化していないまたはほぼ変化していない。以上の内部温度I(n),O(n)の関係は、以下の式(6-1),(6-2)のとおりである。
【0097】
I(n+1)-I(n)<0・・・(6-1)
【0098】
O(n)≒O(n+1)≒O(n+2)≒O(n+3)・・・(6-2)
【0099】
以上の場合において、内部温度I(n)が下降しているのに対して内部温度O(n)が下降していないため、異常判定部39は、第2のモータ21_2を備える第2送風機12に異常(以下「異常(6)」という。)が発生していると判定する。内部温度I(n)が下降していることから第1のモータ21_1が異常であるとは考えられないからである。
【0100】
なお、第2のモータ21_2を備える第2送風機12に発生している異常が異常(5)であるかまたは異常(6)あるかの判定は、第2送風機温度差O(X)の上限の閾値TH4をあらかじめ定めることで行うことができる。
【0101】
図11は、本実施の形態に係るファンシステムが備える送風機のモータに異常が発生している例(1)~(6)と内部温度I(n)及び内部温度O(n)の遷移との関係を示す表である。図11は、図5から図10に示した、異常判定部39により第1のモータ21_1または第2のモータ21_2の少なくともいずれか一方に異常が発生していると判定する例と、第1のモータ21_1及び第2のモータ21_2いずれも正常であると判定する例と、を示している。
【0102】
通信部35_1,35_2は、通信線45を介して通信を行う処理部である。通信部35_1,35_2は、送受信部36_1,36_2と、通信処理部37_1,37_2とを機能部として有している。
【0103】
送受信部36_1,36_2は、通信を行うインターフェースである。第1のモータ駆動制御装置111の送受信部36_1は、第2のモータ駆動制御装置112の送受信部36_2と、通信線45を介して接続されている。通信線45は、1本でも複数本であってもよく、通信は、シリアル通信であってもパラレル通信であってもよい。第1のモータ駆動制御装置111の送受信部36_1は、第2のモータ駆動制御装置112の送受信部36_2、及び、上位装置の一例である制御装置800と通信を行うことができる。第1のモータ駆動制御装置111における通信に関する制御は、通信処理部37_1によって行われ、第2のモータ駆動制御装置112における通信に関する制御は、通信処理部37_2によって行われる。
【0104】
通信処理部37_1,37_2は、送受信部36_1,36_2の動作を制御し、第1のモータ駆動制御装置111と第2のモータ駆動制御装置112との間の通信を制御する。すなわち、第1のモータ駆動制御装置111の通信処理部37_1は、第1のモータ駆動制御装置111の送受信部36_1を制御し、第2のモータ駆動制御装置112との通信を行う。第2のモータ駆動制御装置112の通信処理部37_2は、第2のモータ駆動制御装置112の送受信部36_2を制御し、第1のモータ駆動制御装置111との通信を行う。
【0105】
通信処理部37_1,37_2は、例えば、内部温度取得部38_1,38_2において取得した内部温度や異常判定部39における異常判定結果を、異常判定部39とPWM指令部33_1と第2のモータ駆動制御装置112との間でやりとりを仲介する。通信処理部37_1は、具体的には、第2のモータ駆動制御装置112に対して内部温度取得の要求を送り、内部温度取得部38_2において取得した内部温度を取得する。
【0106】
第1のモータ駆動制御装置111の通信処理部37_1は、送受信部36_1を介して異常判定部39における異常判定結果を制御装置800に異常判定信号St_1として出力する。異常判定信号St_1を受信した制御装置800は、異常判定に応じて、送風機11,12の第1のモータ21_1及び第2のモータ21_2の動作を制御する。例えば、異常判定信号St_1を受信した制御装置800は、異常判定が行われた送風機11,12に対して、第1のモータ21_1及び第2のモータ21_2の回転を停止するために、速度指令信号Scの出力を停止してもよい。また、異常判定信号St_1を受信した制御装置800は、異常判定が行われた送風機11,12の第1のモータ21_1及び第2のモータ21_2の回転速度を低下させるような速度指令信号Scを出力する。
【0107】
なお、第1のモータ駆動制御装置111の通信処理部37_1は、制御装置800を介することなく、異常判定結果を、異常判定が行われた第1のモータ21_1及び第2のモータ21_2の駆動を制御するPWM指令部33_1,33_2に調整信号S9_1,S9_2として出力してもよい。
【0108】
本実施の形態において、第1のモータ駆動制御装置111と第2のモータ駆動制御装置112とは、第1のモータ駆動制御装置111をマスター、第2のモータ駆動制御装置112をスレーブとして、互いの通信を行うように構成されていてもよい。例えば、第1のモータ駆動制御装置111の通信処理部37_1は、送受信部36_1を介して、第2のモータ駆動制御装置112の内部温度取得部38_2に対する問い合わせを第2のモータ駆動制御装置112に対して行う。すなわち、問い合わせは、第2のモータ駆動制御装置112における特徴量(内部温度)を第1のモータ駆動制御装置111に送信するように依頼するものである。第2のモータ駆動制御装置112の通信処理部37_2は、送受信部36_2を介して第1のモータ駆動制御装置111からの問い合わせを受信すると、問い合わせへのレスポンスとして、第2のモータ駆動制御装置112の状態すなわち第2のモータ21_2の駆動状態に関するメッセージを、送受信部36_2を介して第1のモータ駆動制御装置111に対して送信する。その他、第1のモータ駆動制御装置111と第2のモータ駆動制御装置112とは、例えば第1のモータ駆動制御装置111から第2のモータ駆動制御装置112に対して所定の指示コマンドを送信し、第2のモータ駆動制御装置112から第1のモータ駆動制御装置111に対して指示コマンドに対する応答を送信するというようにして、互いに通信を行うことができる。
【0109】
[モータ駆動制御システムの動作]
次に、以上説明した構成を備えるモータ駆動制御システム110の動作を、フローチャートに基づいて説明する。
【0110】
図12は、第1のモータ駆動制御装置111の第1の駆動制御部3_1が行う処理動作の一例を示す第1のフローチャートである。図12に示すように、第1の駆動制御部3_1における内部温度取得部38_1及び第2の駆動制御部3_2における内部温度取得部38_2は、それぞれ所定の時間tが経過したか否かを判定する(ステップS101)。時間tが経過している場合(S101:YES)、内部温度取得部38_1及び内部温度取得部38_2は、S102の処理に進む。一方、時間tが経過していない場合(S101:NO)、内部温度取得部38_1及び内部温度取得部38_2は、S101の処理を繰り返す。
【0111】
内部温度取得部38_1は、温度センサ26_1から第1のモータ21_1の内部温度I(n)を、内部温度取得部38_2は、温度センサ26_2から第2のモータ21_2の内部温度O(n)を、それぞれ取得する(ステップS102)。
【0112】
異常判定部39は、内部温度取得部38_1において取得した内部温度I(n)を取得するとともに、通信部35_1と通信部35_2とが通信することで第2のモータ21_2の内部温度O(n)を取得する(ステップS103)。
【0113】
異常判定部39は、取得した内部温度I(n)と内部温度O(n)とを用いて、第1送風機11と第2送風機12の内部温度の比較処理を行う(ステップS104)。S104の処理は、図13及び図14のフローチャートにて後述する。
【0114】
異常判定部39は、S104の処理の後、前回取得した内部温度の値を、今回取得した内部温度I(n)と内部温度O(n)に更新する(ステップS105)。内部温度I(n)と内部温度O(n)の値の更新後、第1の駆動制御部3_1は、S101の処理に戻る。
【0115】
図13は、第1のモータ駆動制御装置111の第1の駆動制御部3_1が行う処理動作の一例を示す第2のフローチャートである。図14は、第1のモータ駆動制御装置111の第1の駆動制御部3_1が行う処理動作の一例を示す第3のフローチャートである。
【0116】
第1の駆動制御部3_1の異常判定部39は、内部温度差X(X=I(n)-O(n))を算出する(ステップS201)。
【0117】
異常判定部39は、内部温度差Xが閾値TH1より大きいか否かを判定する(ステップS202)。
【0118】
内部温度差Xが閾値TH1よりも大きくないと判定した場合(S202:NO)、異常判定部39は、式(1),(2)に基づいて、内部温度取得部38_1が取得した内部温度I(n+1)と内部温度I(n)との差である第1送風機温度差I(X)、及び、内部温度取得部38_2が取得した内部温度O(n+1)とO(n)との差である第2送風機温度差O(X)を算出する(ステップS204)。
【0119】
内部温度差Xが閾値TH1よりも大きいと判定した場合(S202:YES)、異常判定部39は、内部温度差Xが閾値TH2より大きいか否かを判定する(ステップS203)。
【0120】
内部温度差Xが閾値TH2よりも大きいと判定した場合(S203:NO)、異常判定部39は、式(1),(2)に基づいて、第1送風機温度差I(X)、及び、第2送風機温度差O(X)を算出する(ステップS206)。
【0121】
内部温度差Xが閾値TH2よりも大きくないと判定した場合(S203:YES)、異常判定部39は、第1のモータ21_1の内部温度I(n)が閾値THIより大きいか否かを判定する(ステップS205)。内部温度I(n)が閾値THIよりも大きいと判定した場合(S205:YES)、異常判定部39は、第1送風機11及び第2送風機12に異常が発生していると判定し(ステップS207)、処理を終了する。一方、内部温度I(n)がTHIよりも大きくないと判定した場合(S205:NO)、異常判定部39は、S208の処理に進む。ステップS207において、第1送風機11及び第2送風機12のいずれにも異常が発生していると判断するのは、第1送風機11及び第2送風機12の双方の内部温度が上昇して内部温度差Xが閾値TH1と閾値TH2との間の値になっているにもかかわらず閾値THIよりも内部温度I(n)が大きくなっていると推定できるからである。
【0122】
異常判定部39は、第2のモータ21_2の内部温度O(n)が閾値THOより大きいか否かを判定する(ステップS208)。内部温度O(n)が閾値THOよりも大きいと判定した場合(S208:YES)、異常判定部39は、第2送風機12および第1送風機11に異常が発生していると判定し(ステップS209)、処理を終了する。ステップS209において、第1送風機11及び第2送風機12のいずれにも異常が発生していると判断するのは、第1送風機11及び第2送風機12の双方の内部温度が上昇して内部温度差Xが閾値TH1と閾値TH2との間の値になっているにもかかわらず閾値THOよりも内部温度O(n)が大きくなっていると推定できるからである。
【0123】
一方、内部温度O(n)がTHOよりも大きくないと判定した場合(S208:NO)、異常判定部39は、第1送風機11の第1のモータ21_1及び第2送風機12の第2のモータ21_2のいずれも正常であると判定し(ステップS210)、処理を終了する。
【0124】
S204においてI(X)及びO(X)を算出した後、異常判定部39は、第1送風機温度差I(X)が0よりも小さいか否かを判定する(ステップS211)。
【0125】
第1送風機温度差I(X)が0よりも小さい場合(S211:YES)、異常判定部39は、第2送風機温度差O(X)が閾値TH4よりも大きいか否かを判定する(ステップS212)。
【0126】
第1送風機温度差I(X)が0よりも小さくない場合(S211:NO)、異常判定部39は、第2送風機12において図8に示したような第2のモータ21_2の内部温度O(n)が上昇してしまう異常(4)が発生していると判定し(ステップS213)、処理を終了する。
【0127】
第2送風機温度差O(X)が閾値TH4よりも大きい場合(S212:YES)、異常判定部39は、第2送風機12において図9に示したような第2のモータ21_2の内部温度O(n)が上昇してしまう異常(5)が発生していると判定し(ステップS214)、処理を終了する。
【0128】
第2送風機温度差O(X)が閾値TH4よりも大きくない場合(S212:NO)、異常判定部39は、第2送風機12において図10に示したような第2のモータ21_2の内部温度O(n)が第1のモータ21_1の内部温度I(n)と比較して下降していない異常(6)が発生していると判定し(ステップS215)、処理を終了する。
【0129】
S206においてI(X)及びO(X)を算出した後、異常判定部39は、第2送風機温度差O(X)が0よりも小さいか否かを判定する(ステップS216)。
【0130】
第2送風機温度差O(X)が0よりも小さい場合(S216:YES)、異常判定部39は、第1送風機温度差I(X)が閾値TH3よりも大きいか否かを判定する(ステップS217)。
【0131】
第2送風機温度差O(X)が0よりも小さくない場合(S216:NO)、異常判定部39は、第1送風機11において図5に示したような第1のモータ21_1の内部温度I(n)が上昇してしまう異常(1)が発生していると判定し(ステップS218)、処理を終了する。
【0132】
第1送風機温度差I(X)が閾値TH3よりも大きい場合(S217:YES)、異常判定部39は、第1のモータ21_1において図6に示したような第1のモータ21_1の内部温度I(n)が上昇してしまう異常(2)が発生していると判定し(ステップS219)、処理を終了する。
【0133】
第1送風機温度差I(X)が閾値TH3よりも大きくない場合(S217:NO)、異常判定部39は、第1送風機11において図7に示したような第1のモータ21_1の内部温度I(n)が第2のモータ21_2の内部温度O(n)と比較して下降していない異常(3)が発生していると判定し(ステップS220)、処理を終了する。
【0134】
以上のように構成されているファンシステム1が備えるモータ駆動制御システム110は、第1のモータ駆動制御装置111及び第2のモータ駆動制御装置112に内部温度取得部38_1,38_2を有し、第1のモータ駆動制御装置111に異常判定部39を有する。異常判定部39は、内部温度差Xと所定の閾値とに基づいて、第1のモータ21_1または第2のモータ21_2の少なくともいずれか一方に異常が発生しているか否かを判定する。
【0135】
以上のようなモータ駆動制御システム110によれば、複数の送風機(第1送風機11及び第2送風機12)が有する第1のモータ21_1及び第2のモータ21_2の内部温度I(n),O(n)に基づいて、第1送風機11及び第2送風機12の外部温度を測定することなく温度上昇によるモータの異常判定を行うことができる。つまり、モータ駆動制御システム110によれば、外部温度を測定する温度センサを設けることなく、温度上昇によるモータの異常判定を行うことができる。
【0136】
また、以上説明したモータ駆動制御システム110によれば、第1送風機温度差I(X)と第2送風機温度差O(X)とに基づいて、第1送風機11及び第2送風機12において異常が発生しているモータを特定することができる。
【0137】
また、以上説明したモータ駆動制御システム110によれば、第1送風機温度差I(X)と第2送風機温度差O(X)とに基づいて、第1送風機11及び第2送風機12で異常が発生している状況における温度の遷移を特定することができる。
【0138】
また、以上説明したモータ駆動制御システム110によれば、内部温度I(n)及び内部温度O(n)と閾値THI及び閾値THOとをそれぞれ比較することにより、内部温度差Xが閾値TH1と閾値TH2との範囲内であっても、第1送風機11及び第2送風機12に異常が発生していることを特定することができる。つまり、モータ駆動制御システム110によれば、閾値THI及び閾値THOを用いることで、例えば、内部温度差Xは生じていないが第1送風機11及び第2送風機12の双方に異常が発生していることを特定することができる。
【0139】
《実施の形態の拡張》
モータ駆動制御システムやモータ駆動制御システムを搭載したファンシステムの回路構成は、上述の実施の形態に示されるような回路構成に限定されない。本発明の目的に適合するように構成された、様々な回路構成が適用できる。上記の実施の形態の特徴点が部分的に組み合わされて送風機やそのモータ駆動制御装置が構成されていてもよい。上記の実施の形態において、いくつかの構成要素が設けられていなくてもよく、あるいは、いくつかの構成要素が他の態様で構成されていてもよい。
【0140】
送風システム801は、図4に示すものに限定されず、4つ以上のファンシステム1を有するものであってもよい。モータ駆動制御システムを適用したファンシステムは、各送風機に対応したモータ駆動制御装置を備えたものを用いることができる。例えば、図4に示す送風システム801は、4つのファンシステム1A,1B,1C,1Dを有しているので、モータ駆動制御システム110は、4つのファンシステム1A,1B,1C,1Dそれぞれに設けられている。
【0141】
以上の実施の形態では、異常判定部39は、第1のモータ21_1及び第2のモータ21_2のいずれに異常が発生しているのかを特定する処理を実行する例を説明したが、これに限定されない。例えば、異常判定部39は、内部温度差Xの変化に基づいて第1のモータ21_1または第2のモータ21_2の少なくともいずれか一方に異常が発生していることを特定する処理のみを実行するものであってもよい。また、異常判定部39は、第1のモータ21_1及び第2のモータ21_2について、図5から図10に示した状況により異常が発生していることを特定せず、第1のモータ21_1または第2のモータ21_2のいずれに異常が発生していることまでを特定するものであってもよい。
【0142】
第1送風機のみが第2送風機との通信結果に基づいて第1のモータの駆動を制御し、第2送風機は第1送風機との通信結果にかかわらずに第2のモータの駆動を制御するようにしてもよい。
【0143】
第1のモータ駆動制御装置から第2送風機への問い合わせは、必ずしも定期的に行われるものに限られず、例えば不定期に行われるようにしてもてもよい。例えば、あるときには第1の間隔(例えば、100ミリ秒)をあけて次の問い合わせが行われ、その後の問い合わせが行われるまでの間隔が、第2の間隔(例えば、200ミリ秒)、第3の間隔(例えば、300ミリ秒)と変化するというように、問い合わせの間隔が変わることがあってもよい。
【0144】
第1送風機と第2送風機との通信方式や通信プロトコルは、上述の実施の形態の内容に限定されない。第1送風機と第2送風機とのいずれが通信におけるマスターとなってもよい。第1送風機と第2送風機とが、互いに無線通信を行うように構成されていてもよい。この場合、通信線が設けられていなくてもよい。
【0145】
本実施の形態のモータ駆動制御装置により駆動されるモータは、3相のブラシレスモータに限られず、他の相数のモータや、他の種類のモータであってもよい。ホール素子の数は、特に限定されない。ホール素子とは異なる検出器を用いて、モータの位置検出信号が得られるようにしてもよい。例えば、ホールIC等を用いてもよい。また、モータは、ホール素子やホールIC等の位置検出器を用いない、センサレス方式により駆動されるようにしてもよい。
【0146】
上述のフローチャートなどは、動作を説明するための一例を示すものであって、これに限定されない。フローチャートの各図に示したステップは具体例であって、このフローに限定されるものではなく、例えば、各ステップの順番が変更されたり各ステップ間に他の処理が挿入されたりしてもよいし、処理を並列化してもよい。
【0147】
上述の実施の形態における処理の一部又は全部が、ソフトウエアによって行われるようにしても、ハードウエア回路を用いて行われるようにしてもよい。例えば、制御回路部は、マイコンに限定されない。制御回路部の内部の構成は、少なくとも一部がソフトウエアで処理されるようにしてもよい。
【0148】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0149】
1,1A,1B,1C,1D…ファンシステム、2_1…第1のモータ駆動回路(モータ駆動回路)、2_2…第2のモータ駆動回路(モータ駆動回路)、3_1…第1の駆動制御部(駆動制御部)、3_2…第2の駆動制御部(駆動制御部)、11…第1送風機(送風機)、12…第2送風機(送風機)、21_1…第1のモータ(モータ)、21_2…第2のモータ(モータ)、25,25_1,25_2…ホール素子、26_1,26_2…温度センサ、30_1…,30_2…モータ駆動制御処理部、31_1,31_2…回転数算出部、32_1,32_2…速度指令解析部、33_1,33_2…PWM指令部、34_1,34_2…PWM信号生成部、35_1,35_2…通信部、36_1,36_2…送受信部、37_1,37_2…通信処理部、38_1,38_2…内部温度取得部、39…異常判定部、45…通信線、62_1…第1のインペラ(インペラ)、62_2…第2のインペラ(インペラ)、110…モータ駆動制御システム、111…第1のモータ駆動制御装置(モータ駆動制御装置)、112…第2のモータ駆動制御装置(モータ駆動制御装置)、800…制御装置、801…送風システム、900…電子機器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14