IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 豊田合成株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-リッド開閉装置 図1
  • 特開-リッド開閉装置 図2
  • 特開-リッド開閉装置 図3
  • 特開-リッド開閉装置 図4
  • 特開-リッド開閉装置 図5
  • 特開-リッド開閉装置 図6
  • 特開-リッド開閉装置 図7
  • 特開-リッド開閉装置 図8
  • 特開-リッド開閉装置 図9
  • 特開-リッド開閉装置 図10
  • 特開-リッド開閉装置 図11
  • 特開-リッド開閉装置 図12
  • 特開-リッド開閉装置 図13
  • 特開-リッド開閉装置 図14
  • 特開-リッド開閉装置 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112729
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】リッド開閉装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 15/05 20060101AFI20240814BHJP
   B62D 25/12 20060101ALI20240814BHJP
   B62D 25/24 20060101ALI20240814BHJP
   E05B 83/34 20140101ALI20240814BHJP
【FI】
B60K15/05 B
B62D25/12 B
B62D25/24 Z
E05B83/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017994
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 和輝
【テーマコード(参考)】
2E250
3D004
3D038
3D203
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250HH01
2E250JJ09
2E250LL13
3D004AA12
3D004AA13
3D004CA17
3D004CA41
3D038CA01
3D038CA33
3D038CB01
3D038CC16
3D203AA01
3D203CB23
3D203CB24
3D203DA31
(57)【要約】
【課題】リンク機構のクリアランスに起因するリッドのガタツキを抑えること。
【解決手段】リッド開閉装置は、リッドボックスと、リッドと、リッド用のアクチュエータと、アクチュエータ収容用のアクチュエータボックスと、アクチュエータとリッドとの間に介在するリンク機構と、を備える。リンク機構は、両ボックスの間でシャフト状に延在するシャフト部材を有する。シャフト部材は、両ボックスの組み付け前に、軸方向一端部でアクチュエータボックスに取り付けられる。リッドボックスは、シャフト部材の軸方向他端部が挿入される嵌合孔を有する。両ボックスは、嵌合孔へのシャフト部材の挿入による組み付け時に互いをガイドするガイド部を有する。ガイド部は、リッドボックスに設けられた、組み付け中にアクチュエータボックスをリッドボックスに対してシャフト部材軸回りにリッド閉側へ回動させる回動ガイド部を有する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間と、前記内部空間を外部に露出させる開口と、を有するリッドボックスと、
前記開口を閉じる閉位置と前記開口を開放する開位置との間で開閉動作するリッドと、
前記リッドを開閉動作させる動力を発生するアクチュエータと、
前記アクチュエータを収容し、前記リッドボックスの前記内部空間の外側に配置されるアクチュエータボックスと、
前記アクチュエータと前記リッドとの間に介在し、前記アクチュエータの発生する前記動力を前記リッドに伝達するリンク機構と、
を備え、
前記リンク機構は、前記アクチュエータボックス側と前記リッドボックス側との間でシャフト状に延在して、前記動力により回転するシャフト部材を有し、
前記シャフト部材は、前記アクチュエータボックスと前記リッドボックスとの組み付けが行われる前に、軸方向一端部で前記アクチュエータボックス及び前記リッドボックスのうちの一方側に取り付けられ、
前記アクチュエータボックス及び前記リッドボックスのうちの他方側は、前記シャフト部材の軸方向他端部が挿入される嵌合孔を有し、
前記アクチュエータボックス及び前記リッドボックスは、前記シャフト部材の軸方向他端部が前記嵌合孔に挿入されることにより前記組み付けが行われる際に、互いをガイドするガイド部を有し、
前記ガイド部は、前記アクチュエータボックス及び前記リッドボックスのうちの少なくとも片方に設けられた、前記組み付けが進行する過程で前記アクチュエータボックスを前記リッドボックスに対して前記シャフト部材の軸回りにリッド閉側へ回動させる回動ガイド部を有する、リッド開閉装置。
【請求項2】
前記回動ガイド部は、前記組み付けが進行する過程で前記アクチュエータボックス又は前記リッドボックスに接して、前記アクチュエータボックスを前記リッドボックスに対して前記リッド閉側に回動させる力を前記アクチュエータボックス又は前記リッドボックスに付与する傾斜面を有する、請求項1に記載されたリッド開閉装置。
【請求項3】
前記アクチュエータボックス及び前記リッドボックスは、前記リッド閉側への前記アクチュエータボックスの回動が完了した状態で互いを固定する取付固定部を有する、請求項1に記載されたリッド開閉装置。
【請求項4】
前記回動ガイド部は、前記組み付けが進行する過程で前記アクチュエータボックス又は前記リッドボックスに接して、前記アクチュエータボックスを前記リッドボックスに対して前記リッド閉側に回動させる力を前記アクチュエータボックス又は前記リッドボックスに付与する傾斜面を有し、
前記取付固定部は、前記アクチュエータボックス及び前記リッドボックスのうちの少なくとも何れかに前記傾斜面を利用して爪状に形成された係合部を有する、請求項3に記載されたリッド開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車体に取り付けられたリッドボックスの開口を開閉するリッドを開閉動作させることが可能なリッド開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アクチュエータを用いて、リッドボックスの開口を開閉するリッドを開閉動作させるリッド開閉装置が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1記載のリッド開閉装置は、アクチュエータとリッドとの間に介在するリンク機構を備えている。リンク機構は、アクチュエータの発生する動力をリッドに伝達する機構である。
【0003】
アクチュエータは、アクチュエータボックスに収容されている。アクチュエータボックスは、リッドボックスの外側に配置されている。アクチュエータボックスは、アクチュエータの回転軸に連結してリンク機構の一部をなす部材などをも収容している。そして、アクチュエータボックス側とリッドボックス側との間には、リンク機構の一部をなしてアクチュエータの動力により回転するリッドシャフトがシャフト状に延在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-110989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したアクチュエータとリッドとの間のリンク機構には、公差などに起因してクリアランスが存在している。このクリアランスを考慮することなくリッド開閉装置が組み立てられるものとすると、例えばリッドの閉位置が所望の位置からずれてリッドにガタツキが生じるおそれがある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、リンク機構のクリアランスに起因するリッドのガタツキを抑えることが可能なリッド開閉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、内部空間と、前記内部空間を外部に露出させる開口と、を有するリッドボックスと、前記開口を閉じる閉位置と前記開口を開放する開位置との間で開閉動作するリッドと、前記リッドを開閉動作させる動力を発生するアクチュエータと、前記アクチュエータを収容し、前記リッドボックスの前記内部空間の外側に配置されるアクチュエータボックスと、前記アクチュエータと前記リッドとの間に介在し、前記アクチュエータの発生する前記動力を前記リッドに伝達するリンク機構と、を備え、前記リンク機構は、前記アクチュエータボックス側と前記リッドボックス側との間でシャフト状に延在して、前記動力により回転するシャフト部材を有し、前記シャフト部材は、前記アクチュエータボックスと前記リッドボックスとの組み付けが行われる前に、軸方向一端部で前記アクチュエータボックス及び前記リッドボックスのうちの一方側に取り付けられ、前記アクチュエータボックス及び前記リッドボックスのうちの他方側は、前記シャフト部材の軸方向他端部が挿入される嵌合孔を有し、前記アクチュエータボックス及び前記リッドボックスは、前記シャフト部材の軸方向他端部が前記嵌合孔に挿入されることにより前記組み付けが行われる際に、互いをガイドするガイド部を有し、前記ガイド部は、前記アクチュエータボックス及び前記リッドボックスのうちの少なくとも片方に設けられた、前記組み付けが進行する過程で前記アクチュエータボックスを前記リッドボックスに対して前記シャフト部材の軸回りにリッド閉側へ回動させる回動ガイド部を有する、リッド開閉装置である。
【0008】
この構成によれば、リンク機構のクリアランスに起因するリッドのガタツキを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るリッド開閉装置をリッド閉位置で正面側から見た斜視図である。
図2】一実施形態のリッド開閉装置をリッド開位置で正面側から見た斜視図(但し、一部、透視図)である。
図3】一実施形態のリッド開閉装置のリッド開位置での正面図である。
図4】一実施形態のリッド開閉装置のリッド開位置での背面図である。
図5】一実施形態のリッド開閉装置のリッド開位置での側面図である。
図6】一実施形態のリッド開閉装置が備えるリンク機構の動作を説明するための図(具体的には、リンク機構を側方から見た図)である。
図7】一実施形態のリッド開閉装置の要部の分解図である。
図8】一実施形態のリッド開閉装置におけるリッドボックスにアクチュエータボックスを取り付ける前の状態を表した背面図である。
図9】一実施形態のリッド開閉装置におけるリッドボックスにアクチュエータボックスを取り付ける前の状態を表した側面図である。
図10】一実施形態のリッド開閉装置におけるリッドボックスにアクチュエータボックスを取り付ける際の動きを説明するための図(側面図)である。
図11図10に示すリッド開閉装置のXI-XI矢視図である。
図12】一実施形態のリッド開閉装置のリッドボックスに設けられた回動ガイド部の構造を表した図である。
図13】本発明の一変形形態に係るリッド開閉装置におけるリッドボックスにアクチュエータボックスを取り付ける直前の状態を表した図である。
図14図13に示すリッド開閉装置の側面図である。
図15図14に示すリッド開閉装置のXV-XV矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1図15を用いて、本発明に係るリッド開閉装置の具体的な実施形態について説明する。
【0011】
一実施形態に係るリッド開閉装置1は、リッドボックスに対してリッドを開閉動作させる装置である。リッド開閉装置1は、例えば、ガソリン車やディーゼル車,電気自動車,ハイブリッド自動車などの各種車両に搭載されており、図1に示す如く、車体側部や車体前部などの車体面2に設けられた取付孔2aに設置される。取付孔2aには、例えば車両へのエネルギ供給のための供給口(具体的には充電口や給油口など;図3参照)3が配置される。
【0012】
リッド開閉装置1は、図1図7に示す如く、リッドボックス10と、リッド20と、アクチュエータ30と、アクチュエータボックス40と、外力作動機構50と、リンク機構60と、を備えている。リッド開閉装置1は、アクチュエータ30の発生する動力をリンク機構60を介してリッド20に伝達することにより、リッド20をリッドボックス10に対して閉位置と開位置との間で開閉動作させる。
【0013】
尚、リッド開閉装置1は、少なくともアクチュエータ30の発生する動力によりリッド20を開閉動作させることが可能であればよく、アクチュエータ30の故障時などの緊急時にアクチュエータ30とは別の外力作動機構50の作動により発生する動力によりリッド20を開閉動作させることが可能であってよい。以下、リッド開閉装置1は、外力作動機構50の作動によってもリッド20を開閉動作させることが可能であるものとする。
【0014】
更に、以下では、リッド20の正面側から見たときの左右方向を左右方向Xとし、リッド20の手前側と奥側とを繋ぐ方向を前後方向Yとし、上下方向を上下方向Zとする。また、リッド20は、上下方向Zに開閉動作するものとする。
【0015】
リッドボックス10は、供給口3を収容する容器状或いは箱状のボックス体である。リッドボックス10は、取付孔2aに嵌るように車体面2に取り付け固定されている。リッドボックス10は、底壁部11と、側壁部12と、内部空間13と、開口14と、を有している。リッドボックス10は、筒状の有底部材である。リッドボックス10は、奥側に設けられた底壁部11と、底壁部11の周縁から手前側に立設する側壁部12と、底壁部11と側壁部12とにより囲まれる内部空間13と、内部空間13の手前側に設けられた開口14と、を有している。リッドボックス10は、樹脂などにより成形された射出成形体である。
【0016】
供給口3は、燃料タンクやバッテリなどに一端が接続する配管やケーブルの他端に設けられている。燃料タンクやバッテリは、底壁部11に設けられた第一貫通孔11aよりも奥側に配置されている。供給口3は、第一貫通孔11aを介して内部空間13に露出して収容されている。供給口3は、リッド20の閉位置でそのリッド20の奥側に隠れる一方、リッド20の開位置で燃料供給や充電が可能となるように開口14を介して車外に露出する。
【0017】
リッドボックス10は、枠部15を有している。枠部15は、開口14の周縁部に沿って環状に形成されており、開口14の周縁部から枠外方向に向けて延出するようにフランジ状に形成されている。リッドボックス10は、枠部15の裏面が車体面2の取付孔2a周縁のフランジ面などに当接することにより車体面2に位置決めされる。
【0018】
リッド20は、リッドボックス10の開口14を開閉する蓋部材である。リッド20は、板状に形成されている。リッド20は、開口14やその開口14の周縁における枠部15に合わせた大きさを有している。リッド20は、リッド20の閉位置で車体面2に面一になるように開口14を閉じる。尚、リッド20の表面は、車体面2に合わせて湾曲していてもよい。リッド20は、例えば樹脂により成形された射出成形体である。
【0019】
リッド20は、閉位置と開位置との間で開閉動作する。尚、閉位置とは、リッド20が開口14を閉じる位置のことである。また、開位置とは、リッド20が開口14を開放する所定位置のことである。リッド20は、リッドボックス10に対して位置移動することができるように支持されている。リッド20は、車両使用者などの操作者の手動操作によることなくアクチュエータ30の発生する動力により開閉動作する。
【0020】
アクチュエータ30は、リッド20を開閉動作させる動力を発生する動力発生部である。アクチュエータ30は、電力供給により回転して動力を発生する電動モータなどである。アクチュエータ30は、リッド20の開動作及び閉動作の双方を行うことが可能であり、正方向及び逆方向の双方に回転することが可能である。尚、アクチュエータ30は、リッド20の開動作及び閉動作のうち何れか一方のみを行うことが可能であってもよく、正方向及び逆方向のうち何れか一方のみに回転することが可能であってもよい。
【0021】
尚、正方向とは、リッド20を閉位置から開位置へ開動作させる方向のことであり、逆方向とは、リッド20を開位置から閉位置へ閉動作させる方向のことであってよい。また、以下では、正方向及び逆方向は、アクチュエータ30の動作に限らず、後に詳述するリンク機構60の各部品の動作にも適用するものとする。
【0022】
アクチュエータ30は、正方向及び逆方向のうち選択した方向に回転駆動することが可能である。アクチュエータ30は、リッド20の閉位置で操作者により所定のスイッチ開操作(例えば、図1図2、及び図3に示すスイッチ19への押圧操作)が行われた場合は制御装置からの開指令に従って正方向に回転駆動される。この場合、リッド20は、開動作する。また、アクチュエータ30は、リッド20の開位置で操作者により所定のスイッチ閉操作(例えば、スイッチ19への押圧操作)が行われた場合は制御装置からの閉指令に従って逆方向に回転駆動される。この場合、リッド20は、閉動作する。
【0023】
アクチュエータボックス40は、アクチュエータ30を収容する箱状のボックス体である。アクチュエータボックス40は、アクチュエータ30を作動(回転)可能に支持している。アクチュエータボックス40は、アクチュエータ30とリンク機構60の一部の部品とを収容する空間を形成するアッパボックス41及びロアボックス42を有している(図7参照)。アクチュエータ30とリンク機構60の一部の部品とは、アッパボックス41とロアボックス42とが締結されることにより、上記の空間内に収容される。アクチュエータボックス40は、上記の空間内に各種部品が収容された状態でリッドボックス10の内部空間13の外側に配置されてリッドボックス10に取り付け固定される。
【0024】
外力作動機構50は、手動操作に伴う外力をリッド20を開動作させる動力に変換するように作動する機構である。外力作動機構50は、図7に示す如く、回転部材51と、ワイヤ52と、を有している。
【0025】
回転部材51は、回転可能な部材である。回転部材51は、周方向に作用する力によって回転できる形状を有していればよく、扇状に形成されている。尚、回転部材51は、例えば円盤状や円筒状に形成されていてもよい。また、回転部材51は、リンク機構60に一体的に組み込まれてよい。
【0026】
回転部材51は、アッパボックス41とロアボックス42とに囲まれる空間の外側に配置されている。回転部材51は、ロアボックス42の外部(具体的には、ロアボックス42におけるアッパボックス41側とは反対側の外部)に露出して配置されている。回転部材51は、アクチュエータ30に対してリッドボックス10の配置される側と同じ側に配置されており、アクチュエータ30よりもリッドボックス10やリッド20の内側すなわち中央寄りに配置されている。回転部材51は、ロアボックス42に回転可能に支持されており、アクチュエータ30の出力軸と同軸上で回転可能である。回転部材51の回転軸は、アクチュエータ30の回転軸に一致しており、アクチュエータ30の回転軸と同軸上にある。
【0027】
回転部材51は、外縁に形成された溝51aを有している。溝51aは、径方向外方に向けて開口している。ワイヤ52は、回転部材51に外力を付与する外力付与部である。ワイヤ52の一端部は、回転部材51の外周上に固定されている。ワイヤ52は、その一部が回転部材51の溝51aに沿って嵌るように構成されている。ワイヤ52の他端部には、操作者が引っ張り操作することが可能な操作部52aが設けられている。ワイヤ52は、緊急時において操作部52aが引っ張り操作された場合に、回転部材51の外周上の固定箇所を支点にして接線方向に引かれることにより、その手動操作に伴う外力を回転部材51に付与する。回転部材51は、ワイヤ52から外力が付与された場合、その外力をリッド20を開動作させる動力に変換するように正方向に回転する。
【0028】
リンク機構60は、アクチュエータ30の発生した動力及び外力作動機構50の作動による動力をリッド20に伝達する機構である。リンク機構60は、アクチュエータシャフト61と、リッドシャフト62と、シャフト間伝達機構70と、リッドアーム機構80と、を有している。
【0029】
アクチュエータシャフト61は、アクチュエータ30の発生する動力により回転すると共に、外力作動機構50の作動による動力により回転し得る軸部材である。アクチュエータシャフト61は、アクチュエータ30の出力軸と同軸上に延びていると共に、回転部材51の回転軸と同軸上に延びている。アクチュエータシャフト61は、軸方向一端(具体的には、左端)でアクチュエータ30の出力軸に嵌合されている。また、アクチュエータシャフト61は、軸方向他端(具体的には、右端)で回転部材51の回転軸に嵌合されている。
【0030】
アクチュエータ30が作動してその出力軸が回転すると、アクチュエータ30からアクチュエータシャフト61の軸方向一端側に動力が伝達される。この場合、アクチュエータシャフト61は、アクチュエータ30の出力軸の回転に伴ってその出力軸と一体で軸心Z1を中心にして回転する。尚、アクチュエータシャフト61は、アクチュエータ30の出力軸自体であってもよい。また、アクチュエータシャフト61は、アクチュエータ30の出力軸と同軸上ではなく、減速機やリンクを介してその出力軸に接続されていてもよい。
【0031】
アクチュエータシャフト61は、アクチュエータ30に対して軸方向一方側に配置されており、具体的には、アクチュエータ30よりもリッドボックス10やリッド20の内側すなわち中央寄りに配置されている。アクチュエータシャフト61は、ロアボックス42の内側から外側(すなわち、アッパボックス41側とは反対側)へ軸方向に突出している。すなわち、アクチュエータシャフト61は、軸方向一端がアクチュエータ30の出力軸に接続されかつ軸方向他端がロアボックス42の外側に位置するように配置されている。アクチュエータシャフト61は、ロアボックス42に回転可能に支持されている。上記の回転部材51は、アクチュエータ30の出力軸ひいてはアクチュエータシャフト61と同軸上で軸心Z1を中心にして回転可能である。
【0032】
尚、外力作動機構50のワイヤ52の引っ張り操作による動力が生じていないときは、回転部材51が回転せずその回転に伴うアクチュエータシャフト61への動力伝達が行われず、アクチュエータシャフト61は回転しない。一方、ワイヤ52の引っ張り操作による動力が生じると、回転部材51が回転してその回転に伴うアクチュエータシャフト61への動力が行われる。この際、アクチュエータシャフト61は、回転部材51と一体で軸心Z1を中心にして正方向に回転する。
【0033】
リッドシャフト62は、アクチュエータシャフト61の回転に伴って回転してリッド20に動力を伝達する軸部材である。リッドシャフト62は、シャフト間伝達機構70を介してアクチュエータシャフト61に接続されている。アクチュエータシャフト61の延びる軸心Z1とリッドシャフト62の延びる軸心Z2とは、互いに平行に延びている。アクチュエータシャフト61とリッドシャフト62とは、互いに径方向に離れて配置されている。すなわち、リッドシャフト62の軸心Z2は、アクチュエータシャフト61の軸心Z1とは異なる位置でその軸心Z1と平行に延びている。
【0034】
リッドシャフト62は、アクチュエータボックス40(具体的には、ロアボックス42)に回転可能に支持されている。リッドシャフト62の軸方向一端部は、アクチュエータボックス40内の空間に収容されている。リッドシャフト62は、軸方向一端部(具体的には、左端部)で後述の第三リンク73に嵌合されている。リッドシャフト62は、アクチュエータボックス40から外側に突出してリッドボックス10側に向けて延びている。リッドシャフト62の軸方向他端部は、リッドボックス10の内部空間13に挿入されている。すなわち、リッドシャフト62は、アクチュエータボックス40側とリッドボックス10側との間でシャフト状に延在している。リッドシャフト62は、軸方向他端部(具体的には、右端部)で後述の第二アーム82に嵌合されている。
【0035】
シャフト間伝達機構70は、アクチュエータシャフト61とリッドシャフト62との間で動力伝達を行う機構である。シャフト間伝達機構70は、図6及び図7に示す如く、第一リンク71と、第二リンク72と、第三リンク73と、を有している。第一リンク71、第二リンク72、及び第三リンク73はそれぞれ、アーム状に形成されている。第一リンク71と第二リンク72と第三リンク73とは、その順でアクチュエータシャフト61からリッドシャフト62までの間で直列接続されている。第一リンク71、第二リンク72、及び第三リンク73は、アクチュエータボックス40のアッパボックス41とロアボックス42とに囲まれる空間に収容されている。
【0036】
第一リンク71は、一端部がアクチュエータシャフト61(具体的には、その軸上)に接続されてそのアクチュエータシャフト61と一体的に軸心Z1を中心にして回転可能であると共に、他端部が第二リンク72の一端部に相対回動可能に支持されるように構成されている。第二リンク72は、一端部が第一リンク71の他端部に相対回動可能に支持されると共に他端部が第三リンク73の一端部に相対回動可能に支持されるように構成されている。第三リンク73は、一端部が第二リンク72の他端部に相対回動可能に支持されると共に他端部がリッドシャフト62(具体的には、その軸方向一端部)に接続されてそのリッドシャフト62と一体的に軸心Z2を中心にして回転可能であるように構成されている。
【0037】
第一リンク71は、アクチュエータシャフト61の回転に連動してアクチュエータシャフト61と一体的に軸心Z1を中心にして回動する。第二リンク72は、第一リンク71の軸心Z1を中心とする回動に連動して移動(姿勢変化)する。また、第三リンク73は、第二リンク72の移動に連動してリッドシャフト62と一体的に軸心Z2を中心にして回動する。リッドシャフト62は、第三リンク73の回動に連動して軸心Z2を中心にして回転する。従って、リッドシャフト62は、アクチュエータ30の発生する動力により回転する。
【0038】
尚、第一リンク71は、アクチュエータシャフト61の外周面に一体で形成されていてもよいし或いはその外周面に一体化するように取り付け固定されていてもよい。また、第三リンク73は、リッドシャフト62の外周面に一体で形成されていてもよいし或いはその外周面に一体化するように取り付け固定されていてもよい。
【0039】
リッドアーム機構80は、リッドシャフト62とリッド20との間で動力伝達を行ってリッド20を開閉動作させる機構である。リッドアーム機構80は、図2図7などに示す如く、第一アーム81と、第二アーム82と、を有している。第一アーム81及び第二アーム82はそれぞれ、アーム状に形成されている。第一アーム81及び第二アーム82はそれぞれ、リッドボックス10側とリッド20側との間に介在している。
【0040】
第一アーム81及び第二アーム82は、リッドシャフト62の回転により互いに同期して回動することにより、リッド20を車体面2や開口14に対して平行な状態に維持させながら開閉動作させる。第一アーム81と第二アーム82とは、リッドボックス10側とリッド20側との間で互いに並列に配置されている。第一アーム81及び第二アーム82はそれぞれ、リッドボックス10の底壁部11を手前側と奥側とに貫通するように配置されている。
【0041】
第一アーム81は、リッド20の正面側から見たときに左右方向Xに離れて一対設けられている。また、第二アーム82は、リッド20の正面側から見たときに左右方向Xに離れて一対設けられている。以下、適宜、右側の第一アーム81を第一アーム81Rと、左側の第一アーム81を第一アーム81Lと、右側の第二アーム82を第二アーム82Rと、左側の第二アーム82を第二アーム82Lと、それぞれ称す。第二アーム82Rと第二アーム82Lとは、互いに連結バー83を介して連結されている(図7参照)。尚、第一アーム81Rと第一アーム81Lとは、互いに連結バーなどを介して連結されていてもよいが、互いに連結されていなくてもよい。
【0042】
リッドシャフト62は、軸方向一端部がシャフト間伝達機構70の第三リンク73の他端部に接続しかつ軸方向他端部がリッド20(具体的には、第二アーム82(例えば、左側の第二アーム82L))に接続するように構成されている。リッドシャフト62の軸方向一端部は、第三リンク73に一体化されている。リッドシャフト62の軸方向他端部は、第二アーム82に設けられた嵌合孔82aに挿入され第二アーム82に一体化されている。第二アーム82は、リッドシャフト62の回転に伴って軸心Z2を中心にして回動する。
【0043】
第一アーム81及び第二アーム82はそれぞれ、アーム長手方向の一端部がリッドボックス10に回動可能に支持されると共にアーム長手方向の他端部がリッド20に回動可能に支持されたアーム部材である。第一アーム81は、第二アーム82よりも上方に位置している。第一アーム81の回動支点と第二アーム82の回動支点とは、互いに異なる位置に設けられている。尚、第一アーム81及び第二アーム82それぞれの回動支点において軸の延びる方向は、上記の左右方向Xである。
【0044】
左右一対の第一アーム81R,81Lは、アーム長手方向の一端部において互いに同期して同軸上で回動すると共に、アーム長手方向の他端部において互いに同期して同軸上で回動する。左右一対の第二アーム82R,82Lも、アーム長手方向の一端部において互いに同期して同軸上で回動すると共に、アーム長手方向の他端部において互いに同期して同軸上で回動する。第一アーム81と第二アーム82とは、互いに同期して協働しながら各回動支点を中心にして回動することで、リッド20を車体面2や開口14に対して平行な状態に維持させながら開閉動作させる。
【0045】
リッドボックス10の底壁部11は、図2図4に示す如く、第二貫通孔11b及び第三貫通孔11cを有している。第二貫通孔11bは、右側の第一アーム81R及び第二アーム82Rが貫通する孔である。第三貫通孔11cは、左側の第一アーム81L及び第二アーム82Lが貫通する孔である。第二貫通孔11bは、第一貫通孔11aの右側に設けられている。第三貫通孔11cは、第一貫通孔11aの左側に設けられている。第二貫通孔11b及び第三貫通孔11cはそれぞれ、リッド20の開閉動作時における第一アーム81及び第二アーム82の回動が許容されるように、上下方向Zに延びて長孔状に形成されている。尚、第二貫通孔11b及び第三貫通孔11cはそれぞれ、第一貫通孔11aに接続して一体形成されていてもよい。
【0046】
本実施形態において、リンク機構60のリッドシャフト62は、アクチュエータボックス40とリッドボックス10との組み付けが行われる前に、アクチュエータボックス40側に取り付けられる。例えば、リッドシャフト62が軸方向一端部でシャフト間伝達機構70の第三リンク73に嵌合された後、その第三リンク73を含む各リンク71,72,73がアクチュエータボックス40に収容されることにより、リッドシャフト62の軸方向一端部がアクチュエータボックス40側に取り付けられる。
【0047】
アクチュエータボックス40及びリッドボックス10は、ガイド部90を有している。ガイド部90は、アクチュエータボックス40とリッドボックス10との組み付けが行われる際に両ボックス40,10間のガイドを行う部位である。両ボックス40,10同士の組み付けは、リッドシャフト62の軸方向他端部が第二アーム82の嵌合孔82aに挿入されて嵌合されることにより行われる。ガイド部90は、第一挿入ガイド部91(図7及び図8参照)と、第二挿入ガイド部92(図8参照)と、回動ガイド部93(図8図12参照)と、を有している。
【0048】
第一挿入ガイド部91及び第二挿入ガイド部92はそれぞれ、リッドシャフト62の軸方向他端部が第二アーム82の嵌合孔82aに挿入される際に、互いに相対移動するアクチュエータボックス40とリッドボックス10とをガイドする部位である。第一挿入ガイド部91は、アクチュエータボックス40に設けられている。第一挿入ガイド部91は、アクチュエータボックス40におけるリッドシャフト62を取り囲む箇所に配置されている。また、第二挿入ガイド部92は、リッドボックス10に設けられている。第二挿入ガイド部92は、リッドボックス10における第二アーム82の嵌合孔82aを取り囲む箇所に配置されている。
【0049】
尚、第一挿入ガイド部91は、リッドシャフト62自体であってもよく、また、リッドシャフト62を含んでいてもよい。第二挿入ガイド部92は、第二アーム82の嵌合孔82a自体であってもよく、嵌合孔82aを含んでいてもよい。
【0050】
第一挿入ガイド部91及び第二挿入ガイド部92はそれぞれ、アクチュエータボックス40とリッドボックス10との組み付け時に相対移動する方向(具体的には、左右方向X)に円柱状又は円筒状に延びている。第一挿入ガイド部91は、凸部を有している。第二挿入ガイド部92は、凹部を有している。第一挿入ガイド部91と第二挿入ガイド部92とは、第二挿入ガイド部92の凹部への第一挿入ガイド部91の凸部の挿入により互いに係合して、アクチュエータボックス40とリッドボックス10との左右方向Xの相対移動を補助する。アクチュエータボックス40は、第一挿入ガイド部91の凸部の外周面が第二挿入ガイド部92の凹部の内周面に摺動しながら第二挿入ガイド部92の凹部に挿入されることにより、リッドボックス10にガイドされる。
【0051】
回動ガイド部93は、第二アーム82の嵌合孔82aへのリッドシャフト62の挿入によりアクチュエータボックス40とリッドボックス10との組み付けが進行する過程で、互いに相対回動するアクチュエータボックス40とリッドボックス10とをガイドする部位である。回動ガイド部93は、その組み付けの進行過程でアクチュエータボックス40をリッドボックス10に対してリッドシャフト62の軸(すなわち、軸心Z2)回りにリッド閉側R(図10参照)へ回動させる。
【0052】
具体的には、回動ガイド部93は、アクチュエータボックス40とリッドボックス10との組み付けの進行過程で、アクチュエータボックス40側に軸方向一端部が取り付けられたリッドシャフト62の軸方向他端部がリッドボックス10側の第二アーム82の嵌合孔82aに挿入されて嵌合された後に、そのリッドシャフト62を含むアクチュエータボックス40を全体的にリッドボックス10に対して軸心Z2回りにリッド閉側Rへ回動させる。
【0053】
尚、回動ガイド部93によるリッドボックス10に対するアクチュエータボックス40の回動は、第二アーム82の嵌合孔82aへのリッドシャフト62の軸方向他端部の嵌合が開始された後に開始されればよく、具体的には、その嵌合が完了した後に開始されることが好ましい。また、「リッド閉側R」とは、リッドシャフト62が軸心Z2回りに回転する正方向及び逆方向のうち、リッド20が開位置側から閉位置側へ向けて閉動作する逆方向のことである。
【0054】
回動ガイド部93は、リッドボックス10に設けられている。回動ガイド部93は、リッドボックス10における、アクチュエータボックス40とリッドボックス10との組み付け時に相対移動する左右方向Xに向いてアクチュエータボックス40に対向する面に、アクチュエータボックス40側に突出するように形成されている。回動ガイド部93は、リッドシャフト62の軸心Z2とはずれた位置に設けられている。尚、回動ガイド部93は、リッドボックス10に一体に形成されたものであってもよく、また、リッドボックス10に後付けで溶接やボルト締めなどで取り付けられるものであってもよい。
【0055】
回動ガイド部93は、図12に示す如く、傾斜面93aを有している。傾斜面93aは、アクチュエータボックス40とリッドボックス10との組み付け時に相対移動する左右方向Xに対して前後方向Yへ傾斜する面である。傾斜面93aは、上記の組み付けが進行する過程でアクチュエータボックス40がリッドボックス10に対して軸心Z2回りにリッド閉側Rへ回動する向き(図12において左向き)に傾斜している。傾斜面93aは、傾斜面93aは、上記の組み付けが進行する過程でアクチュエータボックス40の外壁に接して、アクチュエータボックス40をリッド閉側Rへ回動させる力をアクチュエータボックス40に付与する。尚、傾斜面93aは、上下方向Zに延在していることが好ましい。
【0056】
尚、回動ガイド部93がアクチュエータボックス40をリッドボックスに対して軸心Z2回りにリッド閉側Rへ回動させる回動角度は、リンク機構60に生じ得る公差の範囲を考慮して定められればよく、その公差の最大値に対してもリッド20が開口14を閉じる状態が確保されるように設定されていることが好ましい。
【0057】
アクチュエータボックス40及びリッドボックス10は、取付固定部95を有している。取付固定部95は、アクチュエータボックス40をリッドボックス10に取り付けて両ボックス40,10を互いに固定する部位である。尚、取付固定部95が両ボックス40,10同士を固定する手法は何れであってもよく、例えば、ネジ止めや爪嵌合,接着,溶接などでもよい。以下、この固定手法はネジ止めのみであるものとする。
【0058】
取付固定部95は、取付突起部96(図6参照)と、取付孔部97(図6参照)と、ナット部98(図5参照)と、を有している。取付突起部96と取付孔部97とは、互いに対応した位置で互いに対応した形状に形成されている。具体的には、取付突起部96は、突起状に形成されており、取付孔部97は、取付突起部96が挿入可能な大きさに開いた孔である。
【0059】
取付突起部96の先端部には、雄ネジが形成されている。また、ナット部98には、雌ネジが形成されている。ナット部98は、雌ネジに取付突起部96の雄ネジが締め付けられることにより、取付孔部97に挿入された取付突起部96に締結される。これにより、アクチュエータボックス40とリッドボックス10とは、軸心Z2回りの配置角度関係を含め所定の相対位置関係に互いに固定される。
【0060】
取付突起部96は、リッドボックス10に二箇所設けられている。二箇所の取付突起部96は、軸心Z2回りに配置されている。取付孔部97は、アクチュエータボックス40に二箇所設けられている。二箇所の取付孔部97は、軸心Z2回りに配置されている。各取付孔部97は、軸心Z2回りに延在して長孔状に形成されている。この取付孔部97によれば、両ボックス10,40の固定前、取付突起部96が取付孔部97内で軸心Z2を中心にして所定角度分だけ移動することは許容されている。すなわち、アクチュエータボックス40とリッドボックス10とは、取付突起部96が取付孔部97に挿入された状態でその取付孔部97内で移動できる範囲を限度として軸心Z2回りに相対回動することが可能である。このため、アクチュエータボックス40とリッドボックス10との軸心Z2回りの配置角度を調整することが可能である。
【0061】
次に、リッド開閉装置1の組み立て手順について説明する。
まず、リッド開閉装置1を構成するすべての部品を準備する。そして、アクチュエータボックス40側を組み立てると共に、リッドボックス10側を組み立てる。
【0062】
アクチュエータボックス40側の組み立ては、例えば、リッドシャフト62が軸方向一端部でシャフト間伝達機構70の第三リンク73に嵌合され、ロアボックス42にアクチュエータシャフト61、リッドシャフト62、及び各リンク71,72,73が取り付けられ、そのロアボックス42にアクチュエータ30が取り付けられ、そのロアボックス42にアッパボックス41が締結され、そして、アクチュエータボックス40の外側に回転部材51やワイヤ52が取り付けられることにより行われる。また、リッドボックス10側の組み立ては、例えば、第一アーム81及び第二アーム82が一端部でリッドボックス10に取り付けられると共に他端部でリッド20に取り付けられることにより行われる。
【0063】
上記の各ボックス40,10での組み立てが行われた後、両ボックス40,10同士の組み付けが行われる。この組み付けは、まず、リッドボックス10においてリッド20の開閉位置が開口14が閉じられる状態とされ、そのリッドボックス10とアクチュエータボックス40との間に所定の配置角度関係が成立するように両ボックス10,40がセットされ、そのリッドボックス10側の第二アーム82の嵌合孔82aにアクチュエータボックス40側のリッドシャフト62の軸方向他端部が挿入されることにより行われる。
【0064】
尚、上記した「所定の配置角度関係」とは、リッドボックス10とアクチュエータボックス40とが取付固定部95により位置決めされて互いに取り付けられることが可能な軸心Z2回りの角度のことである。
【0065】
両ボックス40,10同士の組み付け過程では、まず、ガイド部90の第一挿入ガイド部91の凸部が第二挿入ガイド部92の凹部に挿入されて両挿入ガイド部91,92が互いに係合する。この係合が行われると、アクチュエータボックス40側のリッドシャフト62がリッドボックス10側の第二アーム82の嵌合孔82aに挿入されて嵌合される。この嵌合が完了すると、リッドボックス10側の部品のうち第二アーム82、その第二アーム82に接続する第一アーム81、及びリッド20を含む部品がアクチュエータボックス40側に取り付けられる。また、上記した両挿入ガイド部91,92の係合が開始されると、その後(好ましくは、その係合が完了した後)、アクチュエータボックス40がリッドボックス10側の回動ガイド部93の傾斜面93aに接する。
【0066】
アクチュエータボックス40が回動ガイド部93の傾斜面93aに接した状態で、上記組み付け(すなわち、両ボックス40,10の左右方向Xの接近方向への移動)が進行すると、アクチュエータボックス40が傾斜面93a上を滑って、そのアクチュエータボックス40に軸心Z2を中心にしてリッド閉側Rへ回動させる力が付与される。この場合、アクチュエータボックス40は、リッドボックス10に対して軸心Z2回りにリッド閉側Rへ回動する。このリッドボックス10に対するアクチュエータボックス40の軸心Z2回りの回動は、リッドシャフト62に接続する第二アーム82を含むリッドアーム機構80やリッド20の閉動作を伴って行われる。
【0067】
そして、両ボックス40,10の左右方向X端面同士が接して両ボックス40,10の接近方向への移動が停止し、或いは、アクチュエータボックス40と回動ガイド部93の傾斜面93aとが非接触となると、リッドボックス10に対するアクチュエータボックス40の軸心Z2回りの回動が停止される。その後、両ボックス40,10が取付固定部95にて所定の相対位置関係に互いに固定される。
【0068】
このように、リッド開閉装置1によれば、リッドシャフト62がシャフト間伝達機構70の第三リンク73に嵌合されたアクチュエータボックス40と、リッドアーム機構80及びリッド20が取り付けられたリッドボックス10と、の組み付けが進行する過程で、まず、アクチュエータボックス40側のリッドシャフト62を、リッドボックス10側の第二アーム82に嵌合させ、その後に、アクチュエータボックス40の外壁をリッドボックス10側の回動ガイド部93の傾斜面93aに接触させることにより、アクチュエータボックス40をリッドボックス10に対して軸心Z2回りにリッド閉側Rへ回動させることができる。
【0069】
リッドシャフト62が第二アーム82に嵌合した後に、アクチュエータボックス40がリッドボックス10に対して軸心Z2回りにリッド閉側Rへ回動すると、リッドシャフト62に嵌合するリッドボックス側10の第二アーム82が逆方向に回転してリッド20が閉位置に向けて閉動作する。
【0070】
従って、アクチュエータ30とリッド20との間のリンク機構60などに公差などに起因するクリアランスが生じていても、アクチュエータボックス40とリッドボックス10との組み付け時にアクチュエータ30側をリッドボックス10に対して軸心Z2回りにリッド閉側Rへ回動させることで、リッド20を閉位置に移動させることができ或いはリッド20がリッドボックス10の開口周縁に接触して開口14を閉じる力を増やすことができる。このため、リンク機構60のクリアランスに起因するリッド20のガタツキを抑えることができる。
【0071】
また、仮にアクチュエータボックス40とリッドボックス10とが誤組み付けされたとき、具体的には、両ボックス40,10の組み付け過程でのアクチュエータボックス40とリッドボックス10との間の軸心Z2回りの配置角度関係が所望のものとは異なっているときは、その組み付けが行われても、アクチュエータボックス40がリッドボックス10側の回動ガイド部93の傾斜面93aに接触する事態が生じ難く、リッドボックス10に対して軸心Z2回りにリッド閉側Rへ回動する事態が生じ難い。この場合は、リッドボックス10に対するリッド20の状態が閉位置に限定されなくなる。
【0072】
従って、アクチュエータボックス40とリッドボックス10とが誤組み付けされたときに、その誤組み付けが生じたことをその組み付けの作業者などに認識させ易くすることができる。すなわち、アクチュエータボックス40とリッドボックス10との組み付けが誤ることなく完了したときに、リッドボックス10に対するリッド20の状態を閉位置に限定することができるので、リッド開閉装置1の組み付け性を向上させることができる。
【0073】
次に、リッド開閉装置1の動作について説明する。
リッド開閉装置1において、スイッチ19への操作が行われておらずアクチュエータ30が回転駆動されておらずかつワイヤ52が引っ張り操作されていないときは、アクチュエータ30による動力及び外力作動機構50の作動による動力が発生しないので、リッド20は、摩擦力などにより閉位置でロックされている。
【0074】
リッド20の閉位置でスイッチ19への開操作が行われると、アクチュエータ30が、リッド20を開動作させる動力を発生するように正方向に回転する。かかる正方向の回転が生じると、その回転に伴って一体でアクチュエータシャフト61が軸心Z1を中心にして正方向に回転する。アクチュエータシャフト61が正方向に回転すると、動力がシャフト間伝達機構70を介してリッドシャフト62へ伝達される。かかる伝達が行われると、シャフト間伝達機構70の第三リンク73の回動に連動してリッドシャフト62が軸心Z2を中心にして正方向に回転する。
【0075】
上記の如くリッドシャフト62が正方向に回転すると、リッドシャフト62の回転により第二アーム82が正方向に回動し、第二アーム82の回動に同期して第一アーム81が正方向に回動する。第一アーム81及び第二アーム82が正方向に回動すると、リッド20が閉位置から車体面2や開口14に対して平行な状態を維持しながら開位置に向けて開動作する。このリッド20の開動作は、全開となる開位置まで継続して行われる。
【0076】
また、リッド20の開位置でスイッチ19への閉操作が行われると、アクチュエータ30が、リッド20を閉動作させる動力を発生するように逆方向に回転する。かかる第逆方向の回転が生じると、その回転に伴って一体でアクチュエータシャフト61が軸心Z1を中心にして逆方向に回転する。アクチュエータシャフト61が逆方向に回転すると、動力がシャフト間伝達機構70を介してリッドシャフト62へ伝達される。かかる伝達が行われると、シャフト間伝達機構70の第三リンク73の回動に連動してリッドシャフト62が軸心Z2を中心にして逆方向に回転する。
【0077】
上記の如くリッドシャフト62が逆方向に回転すると、リッドシャフト62の回転により第二アーム82が逆方向に回動し、第二アーム82の回動に同期して第一アーム81が逆方向に回動する。第一アーム81及び第二アーム82が逆方向に回動すると、リッド20が開位置から車体面2や開口14に対して平行な状態を維持しながら閉位置に向けて閉動作する。このリッド20の閉動作は、閉位置まで継続して行われる。
【0078】
従って、リッド開閉装置1においては、操作者によりスイッチ19への操作が行われた場合に、アクチュエータ30に動力を発生させ、その動力をリンク機構60のアクチュエータシャフト61→シャフト間伝達機構70→リッドシャフト62→第二アーム82及び第一アーム81→リッド20に伝達して、リッド20を閉位置と開位置との間で開閉動作させることができる。
【0079】
尚、リッド20の全閉位置で操作者の外力によりワイヤ52が引っ張り操作された場合は、その外力が回転部材51を介してアクチュエータシャフト61に伝達されて、アクチュエータシャフト61が正方向に回転する。この場合は、ワイヤ52の引っ張り操作による動力がシャフト間伝達機構70を介してリッドシャフト62へ伝達されるので、リッドシャフト62が正方向に回転し、第二アーム82及び第一アーム81が正方向に回動して、リッド20が閉位置から車体面2や開口14に対して平行な状態を維持しながら開位置に向けて開動作する。この動力によるリッド20の開動作は、全開となる開位置よりも手前まで行われる。
【0080】
従って、リッド開閉装置1においては、リッド20の閉位置で操作者によりワイヤ52が引っ張り操作された場合に、その操作者の手動操作に伴う外力をリッド20を開動作させる動力へ変換させることで、その第二動力をリンク機構60のアクチュエータシャフト61→シャフト間伝達機構70→リッドシャフト62→第二アーム82及び第一アーム81→リッド20に伝達して、リッド20を閉位置から開動作させることができる。
【0081】
尚、上記の実施形態においては、リッドシャフト62が特許請求の範囲に記載した「シャフト部材」に相当している。
【0082】
ところで、上記の実施形態においては、回動ガイド部93がリッドボックス10に設けられている。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、回動ガイド部93がリッドボックス10に代えて或いはリッドボックス10と共にアクチュエータボックス40に設けられていてもよい。回動ガイド部93がリッドボックス10及びアクチュエータボックス40の双方に設けられている場合は、それらの両回動ガイド部93が協働してアクチュエータボックス40をリッドボックス10に対してリッドシャフト62の軸心Z2回りにリッド閉側Rへ回動させるものとすればよい。
【0083】
また、上記の実施形態においては、アクチュエータボックス40とリッドボックス10との組み付け前に、リッドシャフト62がアクチュエータボックス40側の第三リンク73に取り付けられ、その後のアクチュエータボックス40とリッドボックス10との組み付け時に、リッドシャフト62がリッドボックス10側の第二アーム82の嵌合孔82aに挿入されて取り付けられる。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、逆に、アクチュエータボックス40とリッドボックス10との組み付け前に、リッドシャフト62がリッドボックス10側の第二アーム82に取り付けられ、その後のアクチュエータボックス40とリッドボックス10との組み付け時に、リッドシャフト62がアクチュエータボックス40側の第三リンク73の嵌合孔に挿入されて取り付けられるものとしてもよい。
【0084】
また、上記の実施形態においては、アクチュエータボックス40をリッドボックス10に固定する取付固定部95が設けられ、その取付固定部95が、リッドボックス10に設けられた取付突起部96と、アクチュエータボックス40に設けられた取付孔部97と、ナット部98と、を有するネジ止め型のものである。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、取付固定部95が爪嵌合型のものであってもよい。
【0085】
例えば図13図15に示す如く、リッド開閉装置100において、取付固定部95は、取付突起部96や取付孔部97などと共に、第一係合部101と、第二係合部102と、を有するものとしてもよい。第一係合部101及び第二係合部102は、互いに係合することによりアクチュエータボックス40とリッドボックス10とを互いに固定する部位である。尚、リッド開閉装置100は、図13図15に示す如く、上記したリッド開閉装置1とは異なり、リッド20の開閉動作が上下方向Zではなく左右方向Xに行われ、リッドボックス10やアクチュエータボックス40の配置関係が90°異なるものとなっている。
【0086】
第一係合部101は、爪状に形成された係合突起部である。第一係合部101は、リッドボックス10に設けられている。第一係合部101は、上記した回動ガイド部93に一体に形成されている。第一係合部101は、回動ガイド部93の傾斜面93aを利用して爪状に形成されている。第二係合部102は、第一係合部101が嵌って係合する孔状に形成された係合孔部である。第二係合部102は、アクチュエータボックス40に設けられている。第一係合部101と第二係合部102とが互いに係合すると、第一挿入ガイド部91と第二挿入ガイド部92とが互いに離れる方向へ移動しようとしても第一係合部101の爪先端部が第二係合部102の孔周縁部に当接してその移動が妨げられる。
【0087】
この変形形態によれば、アクチュエータボックス40とリッドボックス10との組み付け完了後に両ボックス40,10が互いに離れる方向へ移動するのを規制することができる。また、アクチュエータボックス40をリッドボックス10に対して軸心Z2回りに回動させるための回動ガイド部93(具体的には、傾斜面93a)を、両ボックス40,10を固定するための第一係合部101を構成する爪状突起部の一部として構成することができるので、リッド開閉装置1の構造の簡素化を図ることができる。
【0088】
尚、この変形形態においては、係合突起部である第一係合部101が、回動ガイド部93が設けられたリッドボックス10に設けられており、係合孔部である第二係合部102がアクチュエータボックス40に設けられている。しかしながら、回動ガイド部93がアクチュエータボックス40に設けられる場合は、係合突起部である第一係合部101もそのアクチュエータボックス40に設けられ、係合孔部である第二係合部102がリッドボックス10に設けられるものとしてもよい。
【0089】
また、第二係合部102が、第一係合部101が嵌って係合する係合孔部である。しかしながら、第二係合部102は、第一係合部101が係合する形状であれば何れの形状に形成されていてもよく、その第一係合部101と同様に爪状に形成された係合突起部であってもよい。
【0090】
更に、上記の実施形態においては、アクチュエータボックス40が、アクチュエータ30と、リンク機構60の一部(具体的には、少なくともシャフト間伝達機構70を含む。)と、を収容するものとし、リッドボックス10が、リンク機構60の他部(具体的には、少なくともリッドアーム機構80を含む。)を収容するものとしている。そして、シャフト間伝達機構70の第三リンク73とリッドアーム機構80の第二アーム82との間に延在すべきリッドシャフト62が、両ボックス40,10同士の組み付け前に軸方向一端側でアクチュエータボックス40側に取り付けられ、その組み付けによって軸方向他端側でリッドボックス10側に組み付くものとしている。
【0091】
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、アクチュエータボックス40がアクチュエータ30のみを収容するものとし、リッドボックス10がリンク機構60のすべてを収容するものとしてもよい。この構成においては、例えば、アクチュエータボックス40側とリッドボックス10側との間に延在するアクチュエータシャフト61が、両ボックス40,10同士の組み付け前に軸方向一端側でアクチュエータボックス40側に取り付けられ、その組み付けによって軸方向他端側でリッドボックス10側に組み付くものとしてもよい。この変形形態においては、アクチュエータシャフト61が特許請求の範囲に記載した「シャフト部材」に相当する。
【0092】
また、リンク機構60の少なくとも一部がアクチュエータボックス40及びリッドボックス10の外側に配置されるものとしてもよい。この構成においては、例えば、アクチュエータボックス40側の部品とリッドボックス10側の部品との間に存在するシャフト部材が、両ボックス40,10同士の組み付け前に軸方向一端側でアクチュエータボックス40側に取り付けられ、その組み付けによって軸方向他端側でリッドボックス10側に組み付くものとしてもよい。
【0093】
尚、本発明は、上述した実施形態や変形形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能である。また、本明細書は、出願当初に各請求項に記載された引用関係で示される技術思想を開示するだけでなく、各請求項に記載された事項を適宜組み合わせた技術思想を開示するものである。
【符号の説明】
【0094】
1,100:リッド開閉装置、10:リッドボックス、13:内部空間、14:開口、20:リッド、30:アクチュエータ、40:アクチュエータボックス、41:アッパボックス、42:ロアボックス、60:リンク機構、61:アクチュエータシャフト、62:リッドシャフト、70:シャフト間伝達機構、80:リッドアーム機構、81:第一アーム、82:第二アーム、90:ガイド部、93:回動ガイド部、93a:傾斜面、95:取付固定部、96:取付突起部、97:取付孔部、98:ナット部、101:第一係合部、102:第二係合部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15