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特開2024-112735揚砂バケットと、この揚砂バケットを使用した掘削方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112735
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】揚砂バケットと、この揚砂バケットを使用した掘削方法
(51)【国際特許分類】
   E21B 11/00 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
E21B11/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018002
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】523046338
【氏名又は名称】株式会社アンビック
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100228511
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彩秋
(74)【代理人】
【識別番号】100173462
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 一浩
(74)【代理人】
【識別番号】100194179
【弁理士】
【氏名又は名称】中澤 泰宏
(74)【代理人】
【識別番号】100166442
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋雅
(74)【代理人】
【識別番号】110002996
【氏名又は名称】弁理士法人宮田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水口 美喜男
【テーマコード(参考)】
2D129
【Fターム(参考)】
2D129AB16
2D129BA03
2D129DA03
2D129DC05
2D129EA13
2D129FA01
(57)【要約】
【課題】
ケーシングの内部に大量の水が滞留した状態においても、この水の底部に堆積した砂を効率よく地上に排出することができ、しかも信頼性に優れた揚砂バケットと、この揚砂バケットを使用した掘削方法の提供。
【解決手段】
揚砂バケット11は、筒状の胴体21と、胴体21の内部に収容される通水管24と、底面を塞ぐ底板23と、通水管24の上端面を塞ぐ可動蓋34などで構成し、胴体21の内部が収砂室25になるほか、可動蓋34は案内軸32に沿って移動可能とする。そしてケーシング62の内部に滞留した水を通水管24から噴出させ、これを可動蓋34で反射させて収砂室25に流入させ、この水に浮遊する砂を沈殿させることで、効率よく砂を排出できるほか、案内軸32の導入により、信頼性に優れている。なお実際の掘削方法においては、水没させた揚砂バケット11を上昇させることで砂の浮遊が促進され、大量の砂を排出可能になる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋め込まれたケーシング(62)の内部に堆積した砂を地上に排出するための揚砂バケットであって、
ケーシング(62)の内部に嵌まり込む筒状の胴体(21)と、胴体(21)の内部に収容され且つ上下方向に伸びる通水管(24)と、胴体(21)と通水管(24)の双方の下端面の間を塞ぐ底板(23)と、胴体(21)と通水管(24)の双方の上端部を連結するリブ(27)と、通水管(24)の上端面を塞ぐことのできる可動蓋(34)と、吊り下げのためのロープ(58)を接続する接続部(38)と、を有しており、胴体(21)と通水管(24)と底板(23)で囲まれた空間が収砂室(25)になり、
ケーシング(62)の内部に滞留した水を通水管(24)の上端面から噴出させ、この水に浮遊する砂を収砂室(25)に沈殿させることで地上に排出可能であることを特徴とする揚砂バケット。
【請求項2】
可動蓋(34)は案内軸(32)に沿って上下方向に移動可能としてあり、案内軸(32)の下端部はリブ(27)に取り付けてあることを特徴とする請求項1記載の揚砂バケット。
【請求項3】
請求項1または2記載の揚砂バケット(11)を使用した掘削方法であって、
水が滞留したケーシング(62)の内部に揚砂バケット(11)を差し入れて下降させ、ケーシング(62)が水没することで通水管(24)に水が流入し、この水で可動蓋(34)を押し上げ、通水管(24)の上端面から水を噴出させることで収砂室(25)に水を流入させ、
次に揚砂バケット(11)を水中で上昇させることで可動蓋(34)が通水管(24)を塞ぐと共に、揚砂バケット(11)の上昇による水流でケーシング(62)の内部に堆積した砂を浮遊させ、
その後、再び揚砂バケット(11)を水中で下降させ、通水管(24)に流入した水で可動蓋(34)を押し上げ、通水管(24)の上端面から水を噴出させ、この水に浮遊する砂を収砂室(25)に沈殿させた後、揚砂バケット(11)を上昇させることで砂を地上に排出することを特徴とする掘削方法。
【請求項4】
揚砂バケット(11)がケーシング(62)の内部で水没した状態において、揚砂バケット(11)の上昇と下降を繰り返すことで砂の浮遊を促進させ、収砂室(25)に沈殿する砂を増大させることを特徴とする請求項3記載の掘削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中にコンクリート製の杭を構築するために縦穴を形成する際、地中に埋め込まれたケーシングの内部に堆積した砂を地上に排出するための揚砂バケットと、この揚砂バケットを使用した掘削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大規模な建造物を施工する際は、その荷重を確実に受け止めるため、地中に大断面の杭を構築する必要があり、その規模により、工場で製造された既設杭の使用が難しいならば、場所打ち杭が選択されることになる。場所打ち杭は、地中を掘削して縦穴を形成した後、そこに鉄筋を落とし込み、さらにコンクリートを流し込むことで構築されるため、その深さや直径を自在に調整することができる。なお場所打ち杭の施工方法は様々だが、通常は、掘削された縦穴の崩壊を防ぐため、筒状のケーシングを継ぎ足しながら地中に埋め込んでいき、併せてケーシングの内部をハンマーグラブなどで掘削することになる。
【0003】
場所打ち杭の施工に関しては、後記の特許文献など、様々な技術が提案されており、そのうち特許文献1では、掘削土砂に含まれる水を排出する機能を有する掘削バケットが開示されている。この掘削バケットは、掘削刃や底蓋や周壁や頂壁などで構成された閉じた筒状であり、掘削刃によって掘削された土砂と共に水が内部に収容される。そして周壁には排水孔を設けてあり、さらに掘削バケットの内部は、エアブローなどで加圧可能な構成になっている。そのため掘削バケットの引き上げ時、加圧によって内部の水を排水孔から排出可能であり、掘削土砂の含水率を低下させ、その後の固化処理を回避することができる。
【0004】
次の特許文献2では、土砂除去バケットが開示されている。この文献では、地中に鋼管杭を挿入して縦穴を形成する際、縦穴の底に空気を供給して土砂を除去することを想定しているが、土砂が水分を含んでスライム状になっている場合、空気の供給だけでは、除去が不十分になることがある。そこでこの土砂除去バケットの底部には、空気流出口に加え、下側に突出する爪を設けてあり、土砂除去バケットを回転させることで、この爪が土砂を掻き上げる。そしてこの土砂は、土砂取込口を経て土砂除去バケットの内部に収容される。通常、スライム状の土砂は、粘度が高く比重も増大するため除去が難しくなるが、爪による撹拌でスライム状の土砂を分散させ、さらに空気流出口から空気を供給することで、このような悪い条件が緩和され、土砂を効率的に吹き上げ、より確実に土砂を除去することができる。
【0005】
そのほか特許文献3では、杭穴の底部に堆積したスライムを効率的に回収することのできるスライム処置バケットが開示されている。このスライム処置バケットは、杭穴に差し込み可能な筒状であり、その上部は開放しているが、底部は有底になっている。またスライム処置バケットの中央には、筒状の回収路を設けてあり、その両端面は開放しており、さらに回収路の開口上面を塞ぐため、開閉蓋を設けてある。そして、このスライム処置バケットを杭穴に挿入すると、スライムは、回収路を経てスライム処置バケットに収容され、地上に引き上げることができる。なおスライムの円滑な吸引除去を行うため、必要に応じてスライム処置バケットの下面にエア供給管を設けることも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-328865号公報
【特許文献2】特開2017-110404号公報
【特許文献3】特開平8-120674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
場所打ち杭を構築するため、地中にケーシングを埋め込み、その内部を掘削している際、地下水を豊富に含む層と交差すると、ケーシングの内部には水と砂が流入することになる。しかもその際、ケーシングの底部では土圧が緩和されるため、周辺の地盤が崩壊し、水と砂が際限なく流入して杭の構築が不可能になる恐れがある。そのためケーシングの内部には、あらかじめ水を注入しておき、ケーシングの底部での圧力を高めている。そしてこのように、ケーシングの内部に大量の水が滞留した状態において、その底部に堆積した砂を地上に排出するため、通常のハンマーグラブを使用した場合、その引き上げ時、ハンマーグラブから溢れ出る水流によって大量の砂が落下してしまい、一度での掘削量が低下し、作業時間の増大を招くことになる。そこでケーシングの内部に大量の水が滞留した状態でも、掘削能力を確保できる技術が待ち望まれている。
【0008】
そのほかケーシングの内部では、水と砂などが混合したスライムが生成されることがあり、その除去のため、スライムバケットを使用することがある。スライムバケットは、ケーシングの内部に差し入れて完全に水没させ、水中に浮遊するスライムを沈殿させた後、地上に引き上げることになる。そのためスライムバケットが円滑に水没できるよう、その大きさは、ケーシングに対して十分な余裕を確保する必要があり、容量が抑制され、必然的に一度で除去できる量が低下する。なお、前記の特許文献3で開示されたスライム処置バケットは、中央に回収路を設けてあるため大形化が容易であり、容量を増大させることができる。ただし開閉蓋が正常に機能しない場合、作業の継続が不可能になる。
【0009】
本発明はこうした実情を基に開発されたもので、ケーシングの内部に大量の水が滞留した状態においても、この水の底部に堆積した砂を効率よく地上に排出することができ、しかも信頼性に優れた揚砂バケットと、この揚砂バケットを使用した掘削方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の課題を解決するための請求項1記載の発明は、地中に埋め込まれたケーシングの内部に堆積した砂を地上に排出するための揚砂バケットであって、ケーシングの内部に嵌まり込む筒状の胴体と、胴体の内部に収容され且つ上下方向に伸びる通水管と、胴体と通水管の双方の下端面の間を塞ぐ底板と、胴体と通水管の双方の上端部を連結するリブと、通水管の上端面を塞ぐことのできる可動蓋と、吊り下げのためのロープを接続する接続部と、を有しており、胴体と通水管と底板で囲まれた空間が収砂室になり、ケーシングの内部に滞留した水を通水管の上端面から噴出させ、この水に浮遊する砂を収砂室に沈殿させることで地上に排出可能であることを特徴とする。
【0011】
本発明による揚砂バケットは、クローラクレーンなどの起重機で吊り下げた後、地中に埋め込まれたケーシングの内部に差し入れられ、ケーシングの内部に堆積した砂を地上に排出するためのものであり、主に胴体と通水管と底板と可動蓋で構成される。そして胴体は、揚砂バケットの外周面を形成する筒状であり、直立した状態でケーシングの内部に差し入れられるが、ケーシングに対して所定の隙間を確保できる大きさとする。なお胴体は、ケーシングの内部への差し入れに支障がなく、しかもケーシングの内部で円滑な昇降が可能な範囲で大径化するものとする。
【0012】
通水管は、文字通り、ケーシングの内部に滞留した水を通過させるための役割を担っており、胴体の内部に収容されるため、必然的に胴体よりも小径になるが、その軸線方向は胴体と同じであり、しかも通水管と胴体の双方の上下両端の高さは、概ね一致させるものとする。また底板は、胴体と通水管の双方の下端面の間を塞ぐドーナツ状の板であり、溶接などで胴体や通水管と一体化させる。その結果、胴体と通水管と底板で囲まれる空間では、水や砂などを保持することができ、この空間を収砂室と称するものとする。
【0013】
リブは、胴体と通水管の双方の上端部を連結する板材や棒材であり、通水管の上部を補強する役割を担う。収砂室を正常に機能させるため、揚砂バケットの上部に関しては、胴体と通水管との間を塞いではならない。したがって通水管の上部は、リブで補強することになるが、収砂室の機能を確保できるよう、リブの断面や使用数は、必要最小限に抑制すべきであり、仮にリブが板材であれば、直立した状態で配置することになる。またリブは、胴体の変形を抑制する役割も有する。本発明において胴体は、可能な範囲で大径化することが望ましく、その変形により、ケーシングの内部への差し入れが難しくなることも予想されるが、リブにより、このような事態を避けることができる。
【0014】
可動蓋は、通水管の上端面を塞ぐ平面状のものであり、必然的に通水管の上端面付近に取り付けられ、その表裏面の圧力差によって自然に移動可能な構成にしてあり、通水管の圧力が周囲よりも低くなることで通水管に引き寄せられ、その上端面を塞ぐことになり、以降、通水管の流れを止めることになる。これとは逆に通水管の圧力が周囲よりも高くなることで、可動蓋が押し上げられて通水管から離脱し、通水管の流れが確保される。
【0015】
接続部は、揚砂バケットを吊り下げるためのロープを接続する部位であり、その配置は自在だが、必然的に揚砂バケットの中心を挟み込むよう、複数箇所に配置する。なお本発明では胴体を大径化するため、仮に接続部を胴体の外側に配置した場合、ロープがケーシングに接触する恐れがある。そこで接続部は、胴体ではなく、リブの上方に配置することが望ましい。
【0016】
揚砂バケットを使用して実際に砂を地上に排出する際は、揚砂バケットをケーシングの内部に差し入れた後、さらに下降を続けていき、ケーシングの内部に滞留した水に突入させる。その際、水は揚砂バケットの底板で押圧され、通水管に流入して可動蓋を押し上げ、通水管の上端面から噴出して収砂室に流入する。そしてこの噴出した水に浮遊していた砂は、収砂室で沈殿し、その後、揚砂バケットを上昇させることで、砂と水を地上に排出することができる。なお砂は水よりも比重が大きいため、水流が減衰した後は、収砂室に留まることになる。
【0017】
請求項2記載の発明は、可動蓋の構成を特定するものであり、可動蓋は案内軸に沿って上下方向に移動可能としてあり、案内軸の下端部はリブに取り付けてあることを特徴とする。案内軸は、可動蓋を保持する棒状のものであり、通水管を挟み込むように複数本を配置する。そして可動蓋の外縁部には穴を形成し、この穴に案内軸を差し込むことで、可動蓋は上下方向に移動可能になり、可動蓋が落下した状態では、通水管の上端面を塞ぐことになる。なお案内軸の下端部は、溶接などでリブに取り付けるほか、案内軸の上部には、可動蓋の抜け落ちを防ぐための対策が必要になる。
【0018】
このように、案内軸に沿って可動蓋を移動させることで、その単純な動作原理により、可動蓋の信頼性が向上し、通水管の上端面を確実に塞ぐことができるほか、万が一の不具合に際しても、修理などの対応が容易である。しかも案内軸の直径などに余裕を持たせることで、耐久性を向上させることができる。また通水管の上端面から水が噴出した際、この水は可動蓋に接触して下向きに押し返され、自然に収砂室に流入するほか、通水管の上端面と可動蓋との間では、上向きと下向きの流れが衝突し、収砂室に入り込む水の流速が低下するため、砂の沈殿に要する時間が短縮される。
【0019】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の揚砂バケットを使用した掘削方法であって、水が滞留したケーシングの内部に揚砂バケットを差し入れて下降させ、ケーシングが水没することで通水管に水が流入し、この水で可動蓋を押し上げ、通水管の上端面から水を噴出させることで収砂室に水を流入させ、次に揚砂バケットを水中で上昇させることで可動蓋が通水管を塞ぐと共に、揚砂バケットの上昇による水流でケーシングの内部に堆積した砂を浮遊させ、その後、再び揚砂バケットを水中で下降させ、通水管に流入した水で可動蓋を押し上げ、通水管の上端面から水を噴出させ、この水に浮遊する砂を収砂室に沈殿させた後、揚砂バケットを上昇させることで砂を地上に排出することを特徴とする。
【0020】
本発明による揚砂バケットは、ケーシングの内部に堆積した砂を直接的に掻き出す機能を有していない。そこで、ケーシングの内部に滞留した水の底部付近まで揚砂バケット下降させた後、急速に上昇させることで砂を水中に浮遊させる。そして砂が浮遊した水を通水管の上端面から噴出させ、これが収砂室に流入した後、砂が徐々に沈殿していき、最後に揚砂バケットを上昇させて砂を地上に排出する。したがって請求項3記載の発明では、まず揚砂バケットを起重機で吊り下げてケーシングの内部に差し入れ、さらに揚砂バケットを下降させることで水没した状態になる。その際、通水管にも水が流入するため、可動蓋が押し上げられ、この水が収砂室に流入するほか、ケーシングと揚砂バケットとの隙間にも水が流入し、揚砂バケットは完全に水没した状態になる。なお最終的には、滞留した水の底部付近にケーシングを到達させることが望ましい。
【0021】
次に揚砂バケットを上昇させると、必然的に揚砂バケットの下方が負圧になり、それに伴って可動蓋が通水管の上端面を塞ぐほか、この負圧を埋め合わせるため、ケーシングの中央付近では上向きの水流が発生する。対して、ケーシングと揚砂バケットとの隙間では下向きの水流が発生するため、揚砂バケットの下方では、水が渦を巻くような状態になり、それに引き込まれて砂が浮遊することになる。
【0022】
その後、揚砂バケットを再び水中で下降させると、通水管の上端面から水が噴出することになるが、この水には砂が浮遊している。そのため揚砂バケットの下降を終えると、徐々に砂が沈殿していき、これが収砂室で保持されることになり、次に揚砂バケットを地上まで上昇させると、砂と水を地上に排出することができる。その際、砂と水では比重に差があり、砂の方が大きいため、収砂室で保持される砂が増えるにつれ、水は収砂室から追い出されることになる。
【0023】
請求項4記載の発明は、大量の砂を地上に排出するための掘削方法であり、揚砂バケットがケーシングの内部で水没した状態において、揚砂バケットの上昇と下降を繰り返すことで砂の浮遊を促進させ、収砂室に沈殿する砂を増大させることを特徴とする。前記のように、水没した揚砂バケットを上昇させることで、渦を巻くような水流が発生して砂の浮遊を促進させ、その後、揚砂バケットを下降させることで、水中に浮遊した砂が収砂室で保持される。ただし、この上昇と下降とからなるサイクルが一回だけでは、収砂室で保持される砂の量も限られる。そこでこの発明のように、上昇と下降とからなるサイクルを複数回繰り返すことで、より大量の砂を地上に排出することができる。
【発明の効果】
【0024】
請求項1記載の発明のように、胴体と通水管と底板と可動蓋などで揚砂バケットを構成することで、可動蓋が通水管の上端面を塞ぐことができる。そのため、ケーシングの内部に滞留した水に揚砂バケットを突入させた後、揚砂バケットを上昇させた際は、渦を巻くような水流が発生して砂の浮遊を促進させることができる。しかも浮遊した砂は、収砂室に沈殿するため、砂を確実に地上に排出することができる。その結果、ケーシングの内部に大量の水が滞留している場合でも、その影響を受けることなく掘削能力を確保することができ、作業時間の短縮が可能になる。
【0025】
請求項2記載の発明のように、可動蓋は案内軸に沿って上下方向に移動可能とするほか、案内軸の下端部をリブに取り付けることで、その単純な動作原理により、可動蓋の信頼性が向上し、通水管の上端面を確実に塞ぐことができるほか、万が一の不具合に際しても、修理などの対応が容易である。しかも案内軸の直径などに余裕を持たせることで、激しい外力が作用した場合でも、その変形を防ぎ、耐久性を向上させることができる。また通水管の上端面から水が噴出した際、この水は可動蓋に接触して下向きに押し返され、自然に収砂室に流入するほか、通水管の上端面と可動蓋との間では、上向きと下向きの流れが衝突し、収砂室に入り込む水の流速が低下するため、砂の沈殿に要する時間が短縮される。
【0026】
請求項3記載の発明のように、ケーシングの内部に差し入れた揚砂バケットを下降させ、水没した後に揚砂バケットを上昇させることで、渦を巻くような水流が発生して砂の浮遊を促進させることができる。その後、揚砂バケットを再び下降させることで、通水管の上端面から水を噴出させ、この水に浮遊する砂を収砂室に沈殿させ、次に揚砂バケットを上昇させることで、砂を効率よく地上に排出することができる。
【0027】
請求項4記載の発明のように、揚砂バケットがケーシングの内部で水没した状態において、揚砂バケットの上昇と下降を繰り返すことで砂の浮遊を促進させるほか、揚砂バケットを下降させる度に収砂室で保持される砂が増えていき、しかもこの増えた砂によって収砂室の水が押し出されるため、大量の砂を地上に排出することができ、掘削に要する作業時間の短縮が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明による揚砂バケットの構成例を示す斜視図と、その使用状態を示す断面図である。
図2図1の揚砂バケットの構成要素を示す斜視図である。
図3図1の揚砂バケットを使用してケーシングの内部に堆積した砂を地上に排出する過程の前半部分を示す断面図である。
図4図3の続きであり、図1の揚砂バケットを使用してケーシングの内部に堆積した砂を地上に排出する過程の後半部分を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、本発明による揚砂バケット11の構成例とその使用状態を示している。この図では、場所打ち杭を構築するため、地中に縦穴を掘削している状態を描いてあるが、縦穴の崩壊を防ぐため、あらかじめ地中にはケーシング62を埋め込んである。ケーシング62は、地上に設置された圧入機52により、回転を与えられながら地中に押し込まれていくが、一個のケーシング62の高さには限度があるため、複数を継ぎ足して所定の深さに到達させている。そしてケーシング62が地下水を豊富に含む層と交差すると、ケーシング62の内部には水と砂が流入することになるが、その際、ケーシング62の底部では土圧が緩和され、周辺の地盤が崩壊する恐れがある。これを防ぐため、ケーシング62の内部には、あらかじめ地表面付近まで水を注入してあり、この水の底部には、沈殿によって砂が堆積していくため、砂層が形成される。
【0030】
揚砂バケット11は、胴体21と通水管24と底板23と可動蓋34などで構成されており、砂層を構成する砂を地上に排出するために使用され、そのうち胴体21は、揚砂バケット11の外周面を形成する筒状であり、その直径は、ケーシング62に対して所定の隙間を確保できるよう調整してある。また通水管24は、文字通り、水を通すための管であり、胴体21の中央に配置される。そして底板23は、胴体21と通水管24の双方の下端面の間を塞ぐ板であり、胴体21と通水管24と底板23によってドーナツ状の空間が形成されるが、この空間は、砂などを保持する収砂室25になる。
【0031】
胴体21と通水管24の双方の上端面の間は、収砂室25への出入口になるため、板などで塞ぐことができない。ただし通水管24を底板23だけで支持すると、過大な外力で変形を生じる恐れがあり、胴体21と通水管24の双方の上端部をリブ27で連結している。この図のリブ27は板状であり、計四枚を十字状に配置して通水管24を補強している。またリブ27の上方には、門形の吊り枠31を配置してある。吊り枠31は、胴体21の上部中心をまたぐように配置してあり、その両端部はリブ27に接触しており、双方を溶接で強固に一体化してある。そして吊り枠31の上面の両端付近には、耳状に突出した接続部38を取り付けてあり、その中心部の穴を使用して揚砂バケット11を吊り下げる。なおリブ27により、胴体21の上部の変形を防ぐことができ、ケーシング62との隙間が過度に狭くなることを避けられる。
【0032】
可動蓋34は、通水管24の上端面を塞ぐことのできる円盤状である。また可動蓋34は、二本の案内軸32に沿って上下方向に移動できる構成になっている。この案内軸32は、リブ27から吊り枠31に向けて上方に突出しており、しかも通水管24を挟み込むように配置してある。ただし案内軸32は、通水管24からやや離れているため、この図では可動蓋34の上面に帯状のスライダ33を一体化させてあり、このスライダ33の両端部に穴を形成し、そこに案内軸32を差し込んでいる。そして通水管24の圧力が周囲よりも高くなった場合、可動蓋34は押し上げられて通水管24から離れることになるが、その際は、吊り枠31がストッパとして機能する。逆に通水管24の圧力が周囲よりも低くなった場合、可動蓋34は通水管24を塞ぐことになる。
【0033】
揚砂バケット11は起重機51で吊り下げられるが、起重機51のブームの先端からは吊り具53が垂れ下がっており、吊り具53に掛けられたロープ58が揚砂バケット11の接続部38に取り付けられている。そのため起重機51を操作することで、揚砂バケット11を自在に移動させることができる。なお揚砂バケット11の接続部38は、胴体21よりも中心側に配置してある。したがってロープ58がケーシング62に接触することはない。また揚砂バケット11の底面には、排砂耳28を取り付けてある。排砂耳28は、揚砂バケット11で保持された砂を地上で排出する際、揚砂バケット11を上下反転させるために使用する。
【0034】
図2は、図1の揚砂バケット11の構成要素を示している。胴体21と通水管24は、いずれも両端が開放した筒状だが、胴体21と通水管24の双方の下端面の間は、底板23で塞がれている。また胴体21と通水管24の双方の上端部は、十字状に配置された計四枚のリブ27で連結されており、胴体21と通水管24は強固な一体構造になっており、さらに胴体21と通水管24と底板23で囲まれるドーナツ状の空間が収砂室25になる。そのほか底板23には、排砂耳28を取り付けてある。
【0035】
吊り枠31は門形であり、その上面の両端付近に接続部38を取り付けてある。さらに吊り枠31の下端部には、リブ27を嵌め込むための溝を形成してあり、吊り枠31とリブ27は強固に一体化されるため、接続部38を介して揚砂バケット11を無理なく吊り下げることができる。また二本の案内軸32は、通水管24を挟み込むように配置してあり、その下端部はリブ27に固定されているほか、上端部は吊り枠31に固定されており、外力が作用した場合でも変形を生じにくい。
【0036】
可動蓋34は、通水管24の上端面を塞ぐため円盤状にしてあり、その上面には帯状のスライダ33を一体化させてある。スライダ33の両端部には穴を形成してあり、そこに案内軸32を差し込むことで、可動蓋34は、案内軸32に沿って上下方向に移動可能になるが、スライダ33が吊り枠31に接触することで、それ以上の移動は規制される。なおこの図の右上の揚砂バケット11は、可動蓋34が上昇した状態を描いてある。
【0037】
図3は、図1の揚砂バケット11を使用してケーシング62の内部に堆積した砂を地上に排出する過程の前半部分を示している。この図は、場所打ち杭を構築するため地中にケーシング62を埋め込み、その内部を掘削して縦穴を形成していく状態を想定しているが、この掘削によって周辺の地盤が崩壊することを防ぐため、ケーシング62の内部には、地表面付近まで水を注入してケーシング62の底部での圧力を高めており、この段階では、水の流れは止まっており、この水の底部には、沈殿によって砂層が形成されている。そして、この砂層を構成する砂を実際に地上に排出する際は、まず図の左上の(1/8)のように、揚砂バケット11をロープ58で吊り下げ、ケーシング62の真上に移動させるが、その後、揚砂バケット11を下降させ、ケーシング62の内部に差し入れていく。
【0038】
そして下降を続けていくと、やがて図の右上の(2/8)のように、揚砂バケット11が完全に水没する。その際、水は上方に押し出されることになるが、ケーシング62と胴体21との隙間は抑制してある。そのため通水管24への水の流入が促進され、この水は素早く通水管24の上端面に到達して可動蓋34を押し上げ、通水管24の上端面から水が噴出する。ただし押し上げられた可動蓋34は、吊り枠31に接触するため、それ以上、押し上げられることはない。その結果、通水管24から噴出した水は、可動蓋34に接触して下向きに反射することになり、直ちに収砂室25に流入し、上方への飛散が抑制される。
【0039】
揚砂バケット11が水没した後も、下降を継続していくが、やがて揚砂バケット11が水の底部付近に到達すると、図の左下の(3/8)のように、揚砂バケット11を静止させる。その際は、通水管24からの水の噴出がなくなるため、可動蓋34は自重で落下して通水管24を塞ぐほか、収砂室25には水が流入している。なおこの図では、揚砂バケット11を砂層に接触させることなく隙間を確保してあるが、実際の作業では揚砂バケット11の状態を把握することが難しく、砂層に接触することもある。
【0040】
その後、図の右下の(4/8)のように、揚砂バケット11を上昇させる。その際、揚砂バケット11の下方では圧力が低下するため、可動蓋34は通水管24を塞いだ状態を維持するほか、この圧力の低下を埋め合わせるため、ケーシング62の中心付近では上向きの流れが発生するほか、ケーシング62と胴体21との隙間では水が吸い寄せられて下向きの流れが発生する。その結果、揚砂バケット11の下方では、渦を巻くような流れが引き起こされ、その影響で砂層を構成する砂が水中を浮遊するようになる。このような砂の浮遊を促進させるには、揚砂バケット11を上昇させる距離を増大させる必要がある。この点においても、ケーシング62の内部に水を注入し、その水面をできるだけ高くすることが望ましい。なお揚砂バケット11を上昇させる際、収砂室25に流入した水は、そのまま持ち上げられる。
【0041】
図4は、図3の続きであり、図1の揚砂バケット11を使用してケーシング62の内部に堆積した砂を地上に排出する過程の後半部分を示している。揚砂バケット11を上昇させた後、図の左上の(5/8)のように、揚砂バケット11を停止させる。その際、収砂室25に流入した水はそのまま残っているほか、可動蓋34は通水管24を塞いでいる。また揚砂バケット11の上昇によって砂の浮遊が促進されたため、砂層が薄くなっている。なおこの図では、揚砂バケット11が上昇後も完全に水没しているが、実際の作業では揚砂バケット11の状態を把握することが難しく、その上部が水面に到達することもある。
【0042】
その後、図の右上の(6/8)のように、揚砂バケット11を再び下降させると、通水管24に流入した水で可動蓋34が押し上げられ、通水管24の上端面から水が噴出することになるが、この水には砂が浮遊している。そしてこの噴出した水は、可動蓋34に接触して下向きに反射するため、直ちに収砂室25に流入することになるが、砂は水よりも比重が大きいほか、収砂室25は周囲が閉じられた空間であり、水流が抑制されて砂の沈殿が促進され、しかも沈殿した砂によって収砂室25から水が追い出されるため、砂を効率よく保持することができる。
【0043】
揚砂バケット11の下降を継続させ、やがて水の底部付近に到達すると、図の左下の(7/8)のように、揚砂バケット11を静止させる。その際は、通水管24からの水の噴出がなくなるため、可動蓋34は自重で落下して通水管24を塞ぐほか、収砂室25で保持された砂は、その比重により、再び水中を浮遊することはない。なおこの図においても、揚砂バケット11を砂層に接触させることなく隙間を確保してあるが、実際の作業では揚砂バケット11の状態を把握することが難しく、砂層に接触することもある。
【0044】
その後、図の右下の(8/8)のように、揚砂バケット11を地上まで上昇させ、ケーシング62から離脱させる。さらに揚砂バケット11を上下反転させると、収砂室25の砂と水を排出することができる。なお実際の作業では、揚砂バケット11で大量の砂を保持することが望ましい。そのため図の右下の(8/8)のように、揚砂バケット11を上昇させる過程において、揚砂バケット11がまだ水没している段階で揚砂バケット11を下降させ、図4の右上の(6/8)のように、改めて収砂室25に砂を沈殿させることもできる。当然ながら図の右下の(8/8)のように、揚砂バケット11を上昇させる際も、砂の浮遊が促進される。このような揚砂バケット11の上昇と下降とからなるサイクルについては、揚砂バケット11の重量を把握しながら複数回繰り返すも可能であり、その結果、大量の砂を地上に排出することができる。
【符号の説明】
【0045】
11 揚砂バケット
21 胴体
23 底板
24 通水管
25 収砂室
27 リブ
28 排砂耳
31 吊り枠
32 案内軸
33 スライダ
34 可動蓋
38 接続部
51 起重機
52 圧入機
53 吊り具
58 ロープ
62 ケーシング
図1
図2
図3
図4