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特開2024-112737床フレーム昇降システム、構造物の構築方法、および構造物の解体方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112737
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】床フレーム昇降システム、構造物の構築方法、および構造物の解体方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/16 20060101AFI20240814BHJP
   E04G 23/08 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
E04G21/16
E04G23/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018005
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(72)【発明者】
【氏名】矢島 清志
(72)【発明者】
【氏名】市原 英樹
(72)【発明者】
【氏名】萱嶋 誠
(72)【発明者】
【氏名】野口 裕介
【テーマコード(参考)】
2E174
2E176
【Fターム(参考)】
2E174AA03
2E174BA01
2E174CA02
2E174CA13
2E174DA17
2E174DA21
2E174EA03
2E176AA07
2E176DD61
(57)【要約】
【課題】建物の構築時や解体時に床フレームの水平方向の揺れを抑制できる、床フレーム昇降システムを提供すること。
【解決手段】建物構築システム2は、クレーン設置床20、反力部材41、および昇降装置22を備える。昇降装置22は、クレーン設置床20を昇降させるストランドジャッキ43と、クレーン設置床20の水平方向の揺れを抑制する振れ止め装置24と、を有している。振れ止め装置24は、クレーン設置床20に支持された基部80と、基部80上に配置された移動部81と、基部80に対して移動部81を水平面内の所定方向に相対移動させる第1移動機構82と、支持柱11Aの側面に当接可能な柱押さえ部84と、柱押さえ部84を移動部81に対して水平面内の所定方向に交差する方向に相対移動させる第2移動機構85と、を備える。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床フレームを支持柱に沿って昇降させる床フレーム昇降システムであって、
前記床フレームと、
前記支持柱の上部に設置された反力部材と、
前記反力部材に取り付けられて前記床フレームを昇降させる昇降装置と、
を備え、
前記昇降装置は、前記床フレームを昇降させる昇降ジャッキと、前記床フレームの水平方向の揺れを抑制する振れ止め装置と、を有しており、
前記振れ止め装置は、前記床フレームに支持された基部と、
前記基部上に配置された移動部と、
前記基部に対して前記移動部を水平面内の所定方向に相対移動させる第1移動機構と、
前記支持柱の側面に当接可能な柱押さえ部と、
前記柱押さえ部を前記移動部に対して前記水平面内の所定方向に交差する方向に相対移動させる第2移動機構と、を備えることを特徴とする床フレーム昇降システム。
【請求項2】
請求項1に記載の床フレーム昇降システムを用いて構造物を構築する方法であって、
少なくとも4本の本設柱を支持柱とし、前記支持柱の上端部に反力部材を取り付けるとともに、前記支持柱に前記床フレームを仮支持させて、前記振れ止め装置により前記支持柱の側面を押さえることで前記床フレームの振れ止めを行う第1工程と、
前記構造物を所定フロア分構築する第2工程と、
前記支持柱の上に柱部材を取り付けて上方に延長するとともに、前記反力部材を揚重して上方に盛り替える第3工程と、
前記振れ止め装置による振れ止めおよび前記支持柱による前記床フレームの仮支持を解除し、前記昇降ジャッキ装置により前記床フレームを前記支持柱に沿って上昇させて、前記床フレームを前記支持柱に再度仮支持させて、前記振れ止め装置により前記床フレームの振れ止めを行う第4工程と、
前記第2工程から第4工程までを繰り返す第5工程と、を備えることを特徴とする構造物の構築方法。
【請求項3】
請求項1に記載の床フレーム昇降システムを用いて構造物を解体する方法であって、
少なくとも4本の本設柱を支持柱とし、前記支持柱の上端部に反力部材を取り付けるとともに、前記支持柱に前記床フレームを仮支持させて、前記振れ止め装置により前記支持柱の側面を押さえることで前記床フレームの振れ止めを行う第1工程と、
前記構造物を所定フロア分解体する第2工程と、
前記振れ止め装置による振れ止めおよび前記支持柱による前記床フレームの仮支持を解除し、前記昇降ジャッキ装置により前記床フレームを前記支持柱に沿って下降させて、その後、前記床フレームを前記支持柱に再度仮支持させて、前記振れ止め装置により前記床フレームの振れ止めを行う第3工程と、
前記支持柱の上部を解体するとともに、前記反力部材を揚重して下方に盛り替える第4工程と、
前記第2工程から第4工程までを繰り返す第5工程と、を備えることを特徴とする構造物の解体方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床フレーム昇降システム、この床フレーム昇降システムを用いた構造物の構築方法、および、床フレーム昇降システムを用いた構造物の解体方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、設備や躯体の老朽化を理由として、既存建物の解体が行われるが、この既存建物を解体する方法としては、以下のような方法がある。
例えば、特許文献1、2では、既存構造物を解体する解体システムが示されている。解体システムは、クレーンが設置されたクレーン設置床と、クレーン設置床を支持する既存柱である支持柱と、クレーン設置床を支持柱に沿って下降させる昇降装置と、を備える。既存構造物を解体する場合、昇降装置を駆動して、クレーン設置床を下降させて、支持柱に仮支持させることを繰り返しながら、既存構造物を上層から下層に向かって順に解体してゆく。このとき、地震時におけるクレーンおよびクレーン設置床の揺れを防止するため、クレーン設置床には、支持柱の側面に当接可能な振れ止め装置が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許6508958号
【特許文献2】特許6893136号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、建物の構築時や解体時に、支持柱のサイズが高さによって変化したり、支持柱の側面に凹凸があったりしても、床フレームの水平方向の揺れを抑制できる、床フレーム昇降システム、構造物の構築方法、および構造物の解体方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、構造物の構築時や解体時に、床フレームを昇降させる床フレーム昇降システムに、柱押さえ部、移動部、および移動機構を備える振れ止め装置を設け、この振れ止め装置の移動機構を駆動して柱押さえ部を支持柱の側面に当接させることで、支持柱の側面に凹凸がある場合や、支持柱のサイズが構造物の中間高さで変化する場合であっても、比較的容易に支持柱に床フレームを仮固定できるので、地震が発生した際に、床フレームの水平方向の揺れを防止できる点に着眼し、本発明に至った。
第1の発明の床フレーム昇降システム(例えば、後述の建物構築システム2、建物解体システム4)は、床フレーム(例えば、後述のクレーン設置床20)を支持柱(例えば、後述の支持柱11A)に沿って昇降させる床フレーム昇降システムであって、前記床フレームと、前記支持柱の上部に設置された反力部材(例えば、後述の反力部材41)と、前記反力部材に取り付けられて前記床フレームを昇降させる昇降装置(例えば、後述の昇降装置22)と、を備え、前記昇降装置は、前記床フレームを昇降させる昇降ジャッキ(例えば、後述のストランドジャッキ43)と、前記床フレームの水平方向の揺れを抑制する振れ止め装置(例えば、後述の振れ止め装置24)と、を有しており、前記振れ止め装置は、前記床フレームに支持された基部(例えば、後述の基部80)と、前記基部上に配置された移動部(例えば、後述の移動部81)と、前記基部に対して前記移動部を水平面内の所定方向に相対移動させる第1移動機構(例えば、後述の第1移動機構82)と、前記支持柱の側面に当接可能な柱押さえ部(例えば、後述の柱押さえ部84)と、前記柱押さえ部を前記移動部に対して前記水平面内の所定方向に交差する方向に相対移動させる第2移動機構(例えば、後述の第2移動機構85)と、を備えることを特徴とする。
【0006】
この発明によれば、第1移動機構および第2移動機構を適宜調整することで、振れ止め装置の柱押さえ部を支柱の側面に当接させて、床フレームが支柱に対して水平移動するのを防止する。よって、建物の構築時や解体時に地震が発生した場合でも、地震の水平荷重によって床フレームが水平方向に揺れるのを抑制でき、建物の構築や解体を短工期で施工できる。
また、第1移動機構および第2移動機構を適宜調整することで、振れ止め装置の柱押さえ部の支持柱に対する相対位置を容易に調整できるから、床フレームを昇降させる際に、支持柱のサイズが高さによって変化したり、支持柱の側面に凹凸があったりしても、振れ止め装置の柱押さえ部で支柱の側面を確実に押さえることができる。
【0007】
第2の発明の構造物の構築方法は、上述の床フレーム昇降システムを用いて構造物(例えば、後述の建物1)を構築する方法であって、少なくとも4本の本設柱を支持柱とし、前記支持柱の上端部に反力部材を取り付けるとともに、前記支持柱に前記床フレームを仮支持させて、前記振れ止め装置により前記支持柱の側面を押さえることで前記床フレームの振れ止めを行う第1工程(例えば、後述のステップS11)と、前記構造物を所定フロア分構築する第2工程(例えば、後述のステップS12)と、前記支持柱の上に柱部材を取り付けて上方に延長するとともに、前記反力部材を揚重して上方に盛り替える第3工程(例えば、後述のステップS13、S14)と、前記振れ止め装置による振れ止めおよび前記支持柱による前記床フレームの仮支持を解除し、前記昇降装置により前記床フレームを前記支持柱に沿って上昇させて、前記床フレームを前記支持柱に再度仮支持させて、前記振れ止め装置により前記床フレームの振れ止めを行う第4工程(例えば、後述のステップS15~S17)と、前記第2工程から第4工程までを繰り返す第5工程(例えば、後述のステップS18)と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、構造物の一部の本設柱を支持柱とし、この支持柱に仮支持させて床フレームを構築し、床フレームを支持柱に沿って上昇させながら、例えば床フレーム上に設置されたクレーンで構造物を構築する。
具体的には、支持柱による床フレームの仮支持、構造物の所定フロア分の構築、支持柱の延長、反力部材の上方への盛り替え、昇降ジャッキによる床フレームの上昇、を順に繰り返す。床フレームを支持柱に仮支持させる工程では、振れ止め装置により支持柱の側面を押さえることで、床フレームの水平方向の揺れを抑制する。よって、地震が発生した場合でも、建物を短工期かつ安全に構築できる。
【0009】
第3の発明の構造物の構築方法は、上述の床フレーム昇降システムを用いて構造物を解体する方法であって、少なくとも4本の本設柱を支持柱とし、前記支持柱の上端部に反力部材を取り付けるとともに、前記支持柱に前記床フレームを仮支持させて、前記振れ止め装置により前記支持柱の側面を押さえることで前記床フレームの振れ止めを行う第1工程(例えば、後述のステップS21)と、前記構造物を所定フロア分解体する第2工程(例えば、後述のステップS22)と、前記振れ止め装置による振れ止めおよび前記支持柱による前記床フレームの仮支持を解除し、前記昇降ジャッキにより前記床フレームを前記支持柱に沿って下降させて、その後、前記床フレームを前記支持柱に再度仮支持させて、前記振れ止め装置により前記床フレームの振れ止めを行う第3工程(例えば、後述のステップS23~S25)と、前記支持柱の上部を解体するとともに、前記反力部材を揚重して下方に盛り替える第4工程(例えば、後述のステップS26)と、前記第2工程から第4工程までを繰り返す第5工程(例えば、後述のステップS27)と、を備えることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、構造物の一部の本設柱を支持柱とし、この支持柱に仮支持させて床フレームを構築し、クレーン設置床を支持柱に沿って下降させながら、例えば床フレーム上に設置されたクレーンで構造物を解体する。
具体的には、支持柱による床フレームの仮支持、構造物の所定フロア分の解体、昇降ジャッキによる床フレームの下降、支持柱上部の解体、反力部材の下方への盛り替え、を順に繰り返す。床フレームを支持柱に仮支持させる工程では、振れ止め装置により支持柱の側面を押さえることで、床フレームの水平方向の揺れを抑制する。よって、地震が発生した場合でも、建物を短工期かつ安全に解体できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、建物の構築時や解体時に、支持柱のサイズが高さによって変化したり、支持柱の側面に凹凸があったりしても、床フレームの水平方向の揺れを抑制できる、床フレーム昇降システム、構造物の構築方法、および構造物の解体方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態に係る床フレーム昇降システムが適用された建物構築システムの側面図である。
図2】建物構築システムの平面図である。
図3図1の建物構築システムの破線Aで囲んだ部分の拡大図である。
図4図3の建物構築システムのI-I矢視図である。
図5図3の建物構築システムのII-II水平断面図である。
図6図3の建物構築システムのIII-III水平断面図である。
図7】建物構築システムを構成する反力部材の動作を示す図である。
図8】建物構築システムを構成する係止装置の動作を示す模式図(その1)である。
図9】建物構築システムを構成する係止装置の動作を示す模式図(その2)である。
図10図5の建物構築システムの破線Bで囲んだ部分の拡大図である。
図11図10の振れ止め装置のIV-IV矢視図である。
図12図10の振れ止め装置のV-V矢視図である。
図13】振れ止め装置の基部およびこの基部に取り付けられた部材の平面図である。
図14】振れ止め装置の移動部およびこの移動部に取り付けられた部材の平面図である。
図15】振れ止め装置の柱押さえ部および柱押さえ部に取り付けられた部材の平面図である。
図16】振れ止め装置の動作のフローチャートである。
図17】振れ止め装置の柱押さえ部を支持柱の側面に当接させた状態を示す図である。
図18】建物構築システムで建物を構築する手順のフローチャートである。
図19】建物構築システムで建物を構築する手順の説明図(その1)である。図18(a)は、建物構築システムの初期状態を示す。図18(b)は、建物構築システムを1層分上方に盛り替えた状態を示す。
図20】建物構築システムで建物を構築する手順の説明図(その2)であり、クレーン設置床を支持柱に再度仮支持させた状態を示す。
図21】本発明の第2実施形態に係る床フレーム昇降システムが適用された建物解体システムの側面図である。
図22】建物解体システムの昇降装置の動作の説明図である。
図23】建物解体システムで既存建物を解体する手順のフローチャートである。
図24】建物解体システムで建物を解体する手順の説明図(その1)である。
図25】建物解体システムで建物を解体する手順の説明図(その2)である。
図26】本発明の第3実施形態に係る支持板の振れ止め装置を取り付けた状態の平面図である。
図27】第3実施形態に係る支持板の振れ止め装置を取り外した状態の平面図である。
図28】第3実施形態に係る支持板の動作の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、昇降装置に床フレームの水平方向の揺れを抑制する振れ止め装置を設け、昇降装置により床フレームを支持柱に沿って昇降させる床フレーム昇降システムである。本発明の特徴は、この振れ止め装置が支持柱の側面に対して当接または離間可能な柱押さえ部84(図5図10参照)を備える点である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態の説明にあたって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
【0014】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る床フレーム昇降システムが適用された建物構築システム2の側面図である。図2は、建物構築システム2の平面図である。
建物構築システム2は、構造物としての建物1を構築するためのものである。構築中の建物1は、鉄筋コンクリート造の高層建物であり、複数のプレキャスト鉄筋コンクリート造の柱11と、複数のプレキャスト鉄筋コンクリート造の梁12と、プレキャスト鉄筋コンクリート造の床13と、を備える。ここで、柱11の一部を、建物構築システム2を支持する支持柱11Aとする。
柱11は、柱部材としてのプレキャストコンクリート部材14を上下に連結したものであり、柱11の互いに背中合わせの側面には、継手部15が突出して設けられている。梁12は、柱11の継手部15同士をプレキャストコンクリート部材で連結して構成されている。
建物1は、平面視で長方形状である。以下、この建物1(建物構築システム2)の長手方向をX方向とし、このX方向に略直交する短手方向をY方向とする。
【0015】
建物構築システム2は、床フレームとしてのクレーン設置床20と、クレーン設置床20上に設置されたクレーン21と、支持柱11Aに取り付けられてクレーン設置床20を支持柱11Aに沿って昇降させる昇降装置22と、クレーン設置床20に設けられて支持柱11Aの継手部15の上面に係止可能な係止装置23と、クレーン設置床20が水平方向に揺れるのを抑制つまり振れ止めを行う振れ止め装置24(図5参照)と、を備える。本実施形態では、支持柱11Aは6本であり、昇降装置22、係止装置23、振れ止め装置24は、6本の支持柱11Aのそれぞれについて設けられる。
【0016】
クレーン設置床20は、昇降装置22同士を連結する複数のH形鋼である梁部材30と、これら梁部材30の上に載置される覆工板である板状の床部材31(図2中斜線で示す)と、を備える。
クレーン21は、クレーン設置床20上に鋼材を井桁に架設して設けられたベース32と、このベース32上に架設されたマスト33と、このマスト33に旋回可能に支持されたクレーン本体34と、このクレーン本体34に起伏可能に支持されたジブ35と、このジブ35の先端に吊り下げ支持された図示しないフックと、クレーン本体34に設けられてフックを昇降させる巻上装置36と、を備える。
【0017】
図3は、図1の建物構築システム2の破線Aで囲んだ部分の拡大図である。図4は、図3のI-I矢視図である。図5は、図3のII-II断面図である。図6は、図3のIII-III断面図である。
昇降装置22は、支持柱11Aを囲んでクレーン設置床20の一部となる矩形枠状のフレーム40と、支持柱11Aの上端部に取り付けられた反力部材41と、フレーム40に設けられて反力部材41を引っ張る一対の昇降ジャッキとしてのストランドジャッキ43と、を備える。
【0018】
フレーム40は、矩形枠状のフレーム基部50と、支持柱11Aを挟んでフレーム基部50に回動可能に設けられた一対の門形状のジャッキ支持部51と、を備える。クレーン設置床20の梁部材30は、昇降装置22のフレーム基部50同士を連結している。
【0019】
フレーム基部50は、略平行にX方向に延びるH形鋼からなる一対の梁部材53Aと、この梁部材53A同士を連結して略平行にY方向に延びるH形鋼からなる一対の梁部材53Bと、を備える。
梁部材53Bの上面には、ジャッキ支持部51が回動可能に支持されている。ストランドジャッキ43は、ジャッキ支持部51に上向きに固定されている。
【0020】
反力部材41は、支持柱11A側面の継手部15に係止する一対の係止部60と、支持柱11Aを跨いで配置されて一対の係止部60同士を連結する連結梁61と、一対の係止部60のそれぞれに設けられて連結梁61を仮固定する梁仮固定機構62と、を備える。
一対の係止部60には、それぞれ、ストランドジャッキ43の吊り材42が連結されている。このように、一対の係止部60と一対の連結梁61とで、側面視で門形の剛性の高いフレームが形成される。
【0021】
係止部60には、連通孔63が形成されており、連結梁61は、この連通孔63に挿通されて水平移動可能となっている。
梁仮固定機構62は、連結梁61を係止部60に仮固定するくさび部材64と、このくさび部材64の移動を規制する押さえボルト65と、を備える。
くさび部材64は、先端に向かうに従って細くなる形状であり、水平移動可能となっている。くさび部材64が前進すると、このくさび部材64が係止部60の連通孔63と連結梁61との間に介装されて、連結梁61が係止部60に仮固定される。一方、くさび部材64が後退すると、連結梁61の係止部60に対する仮固定が解除される。押さえボルト65は、係止部60に螺合されており、押さえボルト65を回転させて、この押さえボルト65の先端面をくさび部材64の基端面に当接させることで、くさび部材64が後退するのを防止する。
【0022】
以上の昇降装置22では、ストランドジャッキ43が吊り材42を引っ張ると、クレーン設置床20が支持柱11Aに対して上昇する。一方、ストランドジャッキ43が吊り材42を送り出すと、クレーン設置床20が支持柱11Aに対して下降する。
また、図7に示すように、反力部材41の押さえボルト65を後退させるとともに、くさび部材64を後退させることで、連結梁61の係止部60に対する仮固定が解除されて、連結梁61が水平移動可能となる。その後、連結梁61を手動で水平移動させて、支持柱11Aの上方から退避する。これにより、一対の係止部60同士の連結が解除される。
【0023】
図8および図9は、係止装置23の動作を示す模式図である。
図5および図6にも示すように、係止装置23は、一対のかんぬき梁70と、この一対のかんぬき梁70同士を接近あるいは離間させる方向に略水平に移動する一対の開閉機構71A、71Bと、を備える。この係止装置23は、支持柱11Aの一対の継手部15の上面に一対のかんぬき梁70を載せて係止させる。
【0024】
開閉機構71Aは、図5および図6にも示すように、フレーム基部50の一方の梁部材53A上に設けられており、一対のかんぬき梁70の一端側を下から支持する一対の支持部72と、この一対の支持部72を略水平に移動する移動機構73と、を備える。
【0025】
支持部72は、かんぬき梁70の底面を下から支持する水平片721と、この水平片721の両端から鉛直方向に延びてかんぬき梁70の両側面に当接する一対の鉛直片722と、を備える。
支持部72の水平片721の上面から梁部材53Aの下面までの距離をh1は、かんぬき梁70の高さ寸法h2よりも僅かに高くなっている。これにより、かんぬき梁70を梁部材53Aに干渉することなく水平移動できる。
【0026】
移動機構73は、モータ74と、モータ74から水平方向に離れた位置に回転自在に設けられた滑車75と、これらモータ74と滑車75との間に巻き回されたチェーン76と、を備える。一方の支持部72は、チェーン76の上側の部分に固定され、他方の支持部72は、チェーン76の下側の部分に固定されている。また、ねじ77を回転させることで、滑車75がモータ74に対して接近あるいは離隔し、これにより、チェーン76の張力を調整可能となっている。
【0027】
開閉機構71Bは、図5および図6にも示すように、フレーム基部50の他方の梁部材53A上に設けられており、一対のかんぬき梁70の他端側を下から支持する一対の支持部72と、この一対の支持部72を略水平に移動する移動機構73と、を備える。これら開閉機構71Bの支持部72および移動機構73は、開閉機構71Aの支持部72および移動機構73と同様の構成である。
【0028】
係止装置23では、以下のようにして、クレーン設置床20を支持柱11Aから側方に突出した継手部15の上面に係止する(図3参照)。
すなわち、開閉機構71A、71Bのモータ74を駆動して、チェーン76を図8中矢印方向に回転させることで、支持部72に支持された一対のかんぬき梁70同士を接近させ、一対のかんぬき梁70を支持柱11Aの継手部15の上に位置させる。
この状態で、昇降装置22によりクレーン設置床20を下降させると、かんぬき梁70が支持柱11Aの継手部15の上面に係止し、このかんぬき梁70にクレーン設置床20の梁部材53Aが係止する(図3参照)。これにより、クレーン設置床20が支持柱11Aに支持される。
このとき、かんぬき梁70は支持部72に対して上方に相対移動するが、支持部72の一対の鉛直片がかんぬき梁70の両側面に当接しているので、かんぬき梁70が上方に移動しても、このかんぬき梁70の脱落を防止できる。
【0029】
一方、係止装置23では、以下のようにして、クレーン設置床20の継手部15の係止状態を解除する。
すなわち、昇降装置22によりクレーン設置床20を少し上昇させて、かんぬき梁70を支持部72に対して下方に相対移動させ、支持部72の水平片721の上に載せる。これにより、かんぬき梁70の上面と梁部材53Aの下面との間には、隙間が形成される。
この状態で、開閉機構71A、71Bのモータ74を駆動して、チェーン76を図9中矢印方向に回転させることで、支持部72に支持された一対のかんぬき梁70同士を離間させる。一対のかんぬき梁70を支持柱11Aの継手部15の上から退避させる。これにより、かんぬき梁70と梁部材53Aとが接触することなく、かんぬき梁70を円滑に水平移動できる(図5参照)。
【0030】
図10は、図5の建物構築システムの破線Bで囲んだ部分(振れ止め装置24)の拡大図である。図11は、図10の振れ止め装置24のIV-IV矢視図である。図12は、図10の振れ止め装置24のV-V矢視図である。
振れ止め装置24は、クレーン設置床20に設けられており、後述の柱押さえ部84で支持柱11Aの角部の側面を押さえることで、クレーン設置床20の水平方向の揺れを抑えるものである。具体的には、図5に示すように、振れ止め装置24は、各支持柱11Aにつき4つずつ配置されており、4つの振れ止め装置24の柱押さえ部84を支持柱11Aの角部の側面に当接させることで、支持柱11Aに対するクレーン設置床20の水平方向(例えば、X方向およびY方向)の相対移動を防止するものである。
【0031】
振れ止め装置24は、クレーン設置床20に支持された基部80と、基部80上に配置された移動部81と、基部80に対して移動部81をY方向に相対移動させる第1移動機構82と、移動部81の基部80に対するY方向への相対移動をガイドするガイド機構83と、支持柱11Aの角部の側面に当接可能な柱押さえ部84と、移動部81に設けられて柱押さえ部84をX方向に相対移動させる第2移動機構85と、柱押さえ部84を基部80に仮固定するロック機構86と、を備える。
【0032】
図13図15は、振れ止め装置24を3つに分解したものである。図13は、振れ止め装置24の基部80およびこの基部80に取り付けられた部材の平面図である。図14は、振れ止め装置24の移動部81およびこの移動部81に取り付けられた部材の平面図である。図15は、振れ止め装置24の柱押さえ部84および柱押さえ部84に取り付けられた部材の平面図である。
クレーン設置床20の梁部材53A、53Bには、略水平な支持板90が取り付けられている。基部80は、平板状であり、支持板90上に固定されている。
移動部81は、平板状であり、基部80の上に載置されている。
第1移動機構82は、基部80上に突出して設けられた一対の雌ねじ部821と、Y方向に延びて一対の雌ねじ部821に螺合されたボルト822と、を備える。
ボルト822の頭部は、後述の雄ねじ固定部851の側面に当接しており、ボルト822を回転させて雄ねじ固定部851の側面を押すことで、基部80に対して移動部81をY方向に相対移動させる。
【0033】
ガイド機構83は、移動部81にY方向に延びて形成された一対の長孔831と、基部80に螺合されて一対の長孔831に挿通された一対のボルト832と、を備える。ガイド機構83によれば、ボルト832が長孔831内を移動することにより、移動部81の基部80に対するY方向への相対移動がガイドされている。また、ボルト832を締め付けることにより、移動部81の基部80に対する位置および姿勢が仮固定される。
また、柱押さえ部84には、後述の雄ねじ852が挿通される円筒形状の挿通部841が設けられている。
【0034】
第2移動機構85は、移動部81上に突出して設けられた一対の雄ねじ固定部851と、X方向に延びて一対の雄ねじ固定部851同士の間に架設された雄ねじ852と、雄ねじ852に螺合されて柱押さえ部84の挿通部841を両端側から挟み込む一対のナット853と、を備える。一対のナット853を回転させることで、移動部81に対して柱押さえ部84の挿通部841をX方向に相対移動させる。
ロック機構86は、基部80に突出して設けられて長孔862が形成された柱押さえ保持部861と、柱押さえ部84に設けられて柱押さえ保持部861の長孔862に挿通された一対のボルト863と、各ボルト863に螺合されて柱押さえ保持部861を両側から挟み込む一対のナット864と、を備える。ロック機構86のナット864を緩めて、この状態で、柱押さえ部84をX方向およびY方向に移動し、その後、ロック機構86のナット864を締め付けて柱押さえ保持部861を挟み込むことで、柱押さえ部84の基部80に対する位置および姿勢が仮固定される。
【0035】
以上の振れ止め装置24の動作について、図16のフローチャートを参照しながら説明する。具体的には、図10に示す柱押さえ部84を支持柱11Aから離間した状態から、図17に示す柱押さえ部84を支持柱11Aの側面に当接した状態にする手順について説明する。
ステップS1では、ガイド機構83のボルト832を緩めるとともに、ロック機構86のナット864を緩める。
ステップS2では、第1移動機構82のボルト822を回転させることで、基部80に対して移動部81をY方向に相対移動させる。
ステップS3では、ガイド機構83のボルト832を締め付けることで、移動部81の基部80に対する位置を仮固定する。
ステップS4では、第2移動機構85のナット853を回転させることで、移動部81に対して柱押さえ部84をX方向に相対移動させる。
ステップS5では、ロック機構86のナット864を締め付けて、柱押さえ部84の基部80に対する位置を仮固定する。
【0036】
以下、建物1を構築する手順について、図18のフローチャートを参照しながら説明する。なお、図19および図20では、建物構築システム2の一部のみを示す。
ステップS11では、図19(a)に示すように、建物1の所定階(例えば、n階)に建物構築システム2を構築する。すなわち、建物1の所定階にクレーン設置床20、クレーン21、昇降装置22、係止装置23、振れ止め装置24を架設する。
具体的には、クレーン設置床20を構築する部分について、支持柱11Aの頂部に昇降装置22の反力部材41を取り付ける。また、係止装置23のかんぬき梁70を、支持柱11Aの継手部15上に載置することで、クレーン設置床20を支持柱11Aに仮支持させる。また、振れ止め装置24により支持柱11Aの側面を押さえることで、クレーン設置床20の振れ止めを行う。
【0037】
ステップS12では、クレーン21を用いて建物1を1層分構築する。
ステップS13では、図19(a)に示すように、反力部材41の連結梁61を移動して、支持柱11Aの直上から退避させ、この状態で、支持柱11Aの上にプレキャストコンクリート部材14を取り付けて、支持柱11Aを1層分上方に延長する。
ステップS14では、図19(b)に示すように、反力部材41をクレーン21で揚重して、1層分上方に盛り替えて、その後、連結梁61を移動して、再度、一対の係止部60同士を連結する。
【0038】
ステップS15では、支持柱11Aによるクレーン設置床20の仮支持を解除する。すなわち、振れ止め装置24によるクレーン設置床20の振れ止めを解除する。次に、ストランドジャッキ43により吊り材42に張力を導入して、クレーン設置床20を少し上方に持ち上げて地切り(係止装置23のかんぬき70を継手部15から離す)する。この状態で、係止装置23の開閉機構71A、71Bを駆動して、一対のかんぬき梁70を支持柱11Aの継手部15の上から退避させる。
ステップS16では、図20に示すように、ストランドジャッキ43を駆動して、クレーン設置床20を支持柱11Aに沿って1層分上昇させる。
【0039】
ステップS17では、図20に示すように、クレーン設置床20を支持柱11Aに再度仮支持させる。
すなわち、係止装置23の開閉機構71A、71Bを駆動して、一対のかんぬき梁70を支持柱11Aの継手部15の上に位置させる。次に、ストランドジャッキ43によりクレーン設置床20を下降させて、かんぬき梁70を支持柱11Aの継手部15の上面に係止させる。次に、振れ止め装置24によりクレーン設置床20の振れ止めを行う。
ステップS18では、ステップS12からステップS17までを繰り返す。
【0040】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)第1移動機構82および第2移動機構85を適宜調整することで、振れ止め装置24の柱押さえ部84を支持柱11Aの側面に当接させて、クレーン設置床20が支持柱11Aに対して水平移動するのを防止する。よって、建物の構築時や解体時に地震が発生した場合でも、地震の水平荷重によってクレーン設置床20が水平方向に揺れるのを抑制でき、建物1の構築や解体を短工期で施工できる。
また、第1移動機構82および第2移動機構85を適宜調整することで、振れ止め装置24の柱押さえ部84の支持柱11Aに対する相対位置を容易に調整できるから、クレーン設置床20を昇降させる際に、支持柱11Aのサイズが高さによって変化したり、支持柱11Aの側面から梁主筋や梁材が突出したり、支持柱11Aの側面に凹凸があったりしても、振れ止め装置24の柱押さえ部84で支持柱11Aの角部側面を確実に押さえることができる。
【0041】
(2)建物1の一部の本設柱11を支持柱11Aとし、この支持柱11Aに仮支持させてクレーン21が設置されたクレーン設置床20を構築し、クレーン設置床20を支持柱11Aに沿って上昇させながら、クレーン設置床20上のクレーン21で建物1を構築する。
具体的には、支持柱11Aによるクレーン設置床20の仮支持、建物1の1層分の構築、支持柱11Aの延長、反力部材41の上方への盛り替え、ストランドジャッキ43によるクレーン設置床20の上昇、を順に繰り返す。クレーン設置床20を支持柱11Aに仮支持させる工程では、振れ止め装置24により支持柱11Aの側面を押さえることで、クレーン設置床20の水平方向の揺れを抑制する。よって、地震が発生した場合でも、建物1を短工期かつ安全に構築できる。
【0042】
〔第2実施形態〕
本実施形態では、第2実施形態に係る床フレーム昇降システムが適用された建物解体システム4により、構造物としての鉄筋コンクリート造の既存建物3を解体する点が、第1実施形態と異なる。建物解体システム4は、以下の構成が、建物構築システム2と異なる。
図21は、建物解体システム4の側面図である。
すなわち、フレーム40Aでは、他方の梁部材53Bの上面には、ジャッキ支持部の代わりに、吊り材支持部52が設けられており、この吊り材支持部52には、吊り材42の一端が連結される。
【0043】
反力部材41Aは、支持柱11Aの上端に被せられて上端が塞がれた矩形筒状のボックス部材66と、ボックス部材66の上に設けられて略水平に延びる反力梁67と、を備える。
反力梁67は、互いに略平行な一対の水平部材68と、この一対の水平部材68の両端側同士の間に回転自在に支持された一対の滑車69と、を備える。
吊り材42は、一対の滑車69に巻かれており、一端側が吊り材支持部52に連結され、他端側がジャッキ支持部51に固定されたストランドジャッキ43に連結されている。
【0044】
以上の昇降装置22では、図22に示すように、ストランドジャッキ43が吊り材42を引っ張ると、クレーン設置床20が支持柱11Aに対して上昇する。一方、図7(b)に示すように、ストランドジャッキ43が吊り材42を送り出すと、クレーン設置床20が支持柱11Aに対して下降する。
【0045】
以下、建物解体システム4により既存建物3を解体する手順について、図23のフローチャートを参照しながら説明する。なお、以下の図24および図25では、建物解体システム4の一部のみを示す。
ステップS21では、図24(a)に示すように、ステップS11と同様に、既存建物3の所定階(例えば、n階)に建物解体システム4を構築する。このとき、振れ止め装置24により支持柱11Aの側面を押さえることで、クレーン設置床20の振れ止めを行う。
ステップS22では、クレーン21を用いて既存建物3を1層分解体する。
ステップS23では、ステップS15と同様に、支持柱11Aによるクレーン設置床20の仮支持を解除する。このとき、振れ止め装置24によるクレーン設置床20の振れ止めを解除する。
ステップS24では、図24(b)に示すように、ストランドジャッキ43を駆動して、クレーン設置床20を支持柱11Aに沿って1層分下降させる。
ステップS25では、ステップS17と同様に、クレーン設置床20を支持柱11Aに再度仮支持させる。このとき、振れ止め装置24によりクレーン設置床20の振れ止めを行う。
【0046】
ステップS26では、図25に示すように、反力部材41を下方に盛り替える。具体的には、反力部材41Aをクレーン21で吊り上げて、支持柱11Aから取り外して、クレーン設置床20上に仮置きする。次に、支持柱11Aを1層分撤去し、その後、反力部材41Aをクレーン21で吊り上げて、支持柱11Aの頂部に再度被せて仮固定しておく。
ステップS27では、ステップS22からステップS26までを繰り返す。
本実施形態によれば、上述の(1)の効果に加えて、以下のような効果がある。
【0047】
(3)建物1の一部の本設柱11を支持柱11Aとし、この支持柱11Aに仮支持させてクレーン21が設置されたクレーン設置床20を構築し、クレーン設置床20を支持柱11Aに沿って下降させながら、クレーン設置床20上のクレーン21で建物1を解体する。
具体的には、支持柱11Aによるクレーン設置床20の仮支持、建物1の1層分の解体、ストランドジャッキ43によるクレーン設置床20の下降、支持柱11A上部の解体、反力部材41の下方への盛り替え、を順に繰り返す。クレーン設置床20を支持柱11Aに仮支持させる工程では、振れ止め装置24により支持柱11Aの側面を押さえることで、クレーン設置床20の水平方向の揺れを抑制する。よって、地震が発生した場合でも、建物1を短工期かつ安全に解体できる。
【0048】
〔第3実施形態〕
本実施形態では、振れ止め装置24が載置される支持板90Bの構成が、第1実施形態および第2実施形態と異なる。
図26は、支持板90Bの振れ止め装置24を取り付けた状態の平面図である。図27は、支持板90Bの振れ止め装置24を取り外した状態の平面図である。
すなわち、支持板90Bは、クレーン設置床20の梁部材53A、53Bに取り付けられたベース板91と、ベース板91上にスライド可能に設けられたスライド板92と、を備える。
【0049】
ベース板91の梁部材53A、53B側の端縁には、梁部材53A、53B側に沿って延びて平面視で互いに略直交する壁部911A、911Bが設けられている。また、ベース板91の上面には、平面視で互いに略直交する壁部911A、911Bに対して略45°度で延びる溝912が形成されている。また、ベース板91には、溝912に沿って延びる長孔913が形成されている。
スライド板92の梁部材53A、53B側の端縁には、平面視で互いに略直交する壁部921A、921Bが設けられている。また、スライド板92の下面には、ベース板91の溝912に嵌合する突部922(図27図28中斜線で示す)が形成されている。また、スライド板92には、ベース板91の長孔913に挿通されてこの長孔913に係止するボルト923が設けられている。
【0050】
支持板90Bでは、図28に示すように、スライド板92をベース板91に対してスライドさせることで、スライド板92が支持柱11Aの角部に対して接近あるいは離間するようになっている。
具体的には、スライド板92の突部922がベース板91の溝912に摺動するとともに、スライド板92のボルト923がベース板91の長孔913に沿って移動することで、スライド板92がベース板91に対してスライドする。このとき、ボルト923が長孔913に係止することにより、スライド板92がベース板91から脱落しないようになっている。
【0051】
本実施形態では、図28に示すように、スライド板92をベース板91に対してスライドさせた後、ベース板91の壁部911とスライド板92の壁部921との間に山留めの裏込め材であるユニブロック(登録商標、株式会社日衡製)93A、93Bを配置して突っ張らせることで、振れ止め装置24の柱押さえ部84が支持柱11Aの側面に当接した状態を保持できる。
本実施形態によれば、上述の(1)~(3)と同様の効果がある。
【0052】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、上述の第3実施形態では、ベース板91の壁部911とスライド板92の壁部921との間でユニブロック(登録商標、株式会社日衡製)93A、93Bを配置して突っ張らせたが、これに限らず、ジャッキ機能を有していれば、どのような部材を用いてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…建物(構造物) 2…建物構築システム(床フレーム昇降システム)
3…既存建物(構造物) 4…建物解体システム(床フレーム昇降システム)
11…柱 11A…支持柱 12…梁 13…床
14…プレキャストコンクリート部材 15…継手部
20…クレーン設置床(床フレーム) 21…クレーン 22…昇降装置
23…係止装置 24…振れ止め装置
30…梁部材 31…床部材 32…ベース 33…マスト 34…クレーン本体
35…ジブ 36…巻上装置
40、40A…フレーム 41、41A…反力部材 42…吊り材
43…ストランドジャッキ(昇降ジャッキ)
50…フレーム基部 51…ジャッキ支持部 52…吊り材支持部
53A、53B…梁部材
60…係止部 61…連結梁 62…梁仮固定機構 63…連通孔
64…くさび 65…押さえボルト
70…かんぬき梁 71A、71B…開閉機構 72…支持部 73…移動機構
74…モータ 75…滑車 76…チェーン 77…ねじ
80…基部 81…移動部 82…第1移動機構 83…ガイド機構
84…柱押さえ部 85…第2移動機構 86…ロック機構
90、90B…支持板
721…水平片 722…鉛直片
821…雌ねじ部 822…ボルト 831…長孔 832…ボルト
841…挿通部 851…固定部 852…雄ねじ 853…ナット
861…保持部 862…長孔 863…ボルト 864…ナット
911A,911B…壁部 912…溝 913…長孔
921A、921B…壁部 922…突部 923…ボルト
93A、93B…ユニブロック
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
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図24
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図28