(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112749
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】ソフトコンタクトレンズ装用時及び/又は装着時の不快感低減剤
(51)【国際特許分類】
A61K 47/44 20170101AFI20240814BHJP
A61P 27/04 20060101ALI20240814BHJP
A61K 31/045 20060101ALI20240814BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
A61K47/44
A61P27/04
A61K31/045
A61K9/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094431
(22)【出願日】2023-06-07
(31)【優先権主張番号】P 2023027806
(32)【優先日】2023-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023017995
(32)【優先日】2023-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000115991
【氏名又は名称】ロート製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100176773
【弁理士】
【氏名又は名称】坂西 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100135242
【弁理士】
【氏名又は名称】江守 英太
(72)【発明者】
【氏名】松本 幸子
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076BB24
4C076CC10
4C076DD09
4C076DD21
4C076DD23
4C076EE37
4C076EE53
4C076FF56
4C076FF67
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA13
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA05
4C206MA37
4C206MA78
4C206NA06
4C206ZA33
(57)【要約】
【課題】テルペノイドを含有しながら、ソフトコンタクトレンズ装用時及び/又は装着時の不快感を低減することのできる製剤を提供すること。
【解決手段】(A)テルペノイド、及び(B)油性成分を含有する、ソフトコンタクトレンズ装用時及び/又は装着時の不快感低減剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)テルペノイド、及び(B)油性成分を含有する、ソフトコンタクトレンズ装用時及び/又は装着時の不快感低減剤。
【請求項2】
ソフトコンタクトレンズの弾性率を低減することでソフトコンタクトレンズ装用時及び/又は装着時の不快感を低減する、請求項1に記載の不快感低減剤。
【請求項3】
(A)テルペノイドがメントールである、請求項1又は2に記載の不快感低減剤。
【請求項4】
メントールの含有量が、前記不快感低減剤の総量を基準として0.015w/v%以上である、請求項3に記載の不快感低減剤。
【請求項5】
油性成分の含有量が、前記不快感低減剤の総量を基準として0.0001~1w/v%である、請求項1に記載の不快感低減剤。
【請求項6】
ソフトコンタクトレンズの弾性率を10~50%低減させる、請求項2に記載の不快感低減剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はソフトコンタクトレンズ装用時及び/又は装着時の不快感低減剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ソフトコンタクトレンズに用いられる製剤においては、ソフトコンタクトレンズ装用中の眼に清涼感を付与することを目的として、メントール等のテルペノイドが配合されることがある。(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ソフトコンタクトレンズは、弾性率が高いと、ソフトコンタクトレンズ装用時及び/又は装着時にゴロゴロ感やゴワゴワ感、装用感の悪さ等による不快感が生じるという問題がある。そのため、ソフトコンタクトレンズの弾性率を低減させ、不快感を低減することのできる製剤の創出が望まれる。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、テルペノイドを含有しながら、ソフトコンタクトレンズの弾性率を低減させ、ソフトコンタクトレンズ装用時及び/又は装着時の不快感を低減することのできる製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、テルペノイドを含有する製剤に、油性成分を配合することで、意外にもソフトコンタクトレンズの弾性率を低下させることができること、またこれにより、ソフトコンタクトレンズをふんわりとさせ、ソフトコンタクトレンズ装用時及び/又は装着時の不快感を低減できることを見出した。
【0007】
本発明は、例えば、以下の各発明を提供する。
[1](A)テルペノイド、及び(B)油性成分を含有する、ソフトコンタクトレンズ装用時及び/又は装着時の不快感低減剤。
[2]ソフトコンタクトレンズの弾性率を低減することでソフトコンタクトレンズ装用時及び/又は装着時の不快感を低減する、[1]に記載の不快感低減剤。
[3](A)テルペノイドがメントールである、[1]又は[2]に記載の不快感低減剤。
[4]メントールの含有量が、前記不快感低減剤の総量を基準として0.015w/v%以上である、[3]に記載の不快感低減剤。
[5]油性成分の含有量が、前記不快感低減剤の総量を基準として0.0001~1w/v%である、[1]~[4]のいずれかに記載の不快感低減剤。
[6]ビニル系高分子化合物を更に含有する、[1]~[5]のいずれかに記載の不快感低減剤。
[7]前記ビニル系高分子化合物がポリビニルピロリドンである、[6]に記載の不快感低減剤。
[8]眼科組成物である、[1]~[7]に記載の不快感低減剤。
[9]前記眼科組成物が点眼剤である、[8]に記載の不快感低減剤。
[10]前記点眼剤が人工涙液である、[9]に記載の不快感低減剤。
[11]防腐剤を含有しないことを特徴とする、[1]~[10]のいずれかに記載の不快感低減剤。
[12]pHが6.0~7.5である、[1]~[11]のいずれかに記載の不快感低減剤。
[13]ソフトコンタクトレンズの弾性率を10~50%低減させる、[2]に記載の不快感低減剤。
[14](A)テルペノイド、及び(B)油性成分を含有する、ソフトコンタクトレンズの弾性率低減剤。
[15]眼科組成物に(A)テルペノイド、及び(B)油性成分を配合することを含む、前記眼科組成物にソフトコンタクトレンズの弾性率を低減させる作用を付与する方法。
[16](B)油性成分を含有する、テルペノイドによる目の痛みの低減剤であって、テルペノイドを含有する眼科組成物に(B)油性成分を前記眼科組成物の総量を基準として0.0001~0.5w/v%となるように配合することを特徴とする、目の痛みの低減剤。
[17]テルペノイドを含有する眼科組成物に(B)油性成分を前記眼科組成物の総量を基準として0.0001~0.5w/v%となるように配合することを含む、テルペノイドによる目の痛みを低減させる方法。
[18](B)油性成分を含有する、テルペノイドによる眼部における清涼感の持続作用向上剤であって、テルペノイドを含有する眼科組成物に(B)油性成分を前記眼科組成物の総量を基準として0.0001~0.5w/v%となるように配合することを特徴とする、眼部における清涼感の持続作用向上剤。
[19]テルペノイドを含有する眼科組成物に(B)油性成分を前記眼科組成物の総量を基準として0.0001~0.5w/v%となるように配合することを含む、(A)テルペノイドによる眼部における清涼感の持続作用を付与する方法。
[20](A)テルペノイド、及び(B)油性成分を含有する、ソフトコンタクトレンズ装用時及び/又は装着時の目の疲れの低減剤。
[21]眼科組成物に(A)テルペノイド、及び(B)油性成分を配合することを含む、前記眼科組成物にソフトコンタクトレンズ装用時及び/又は装着時の目の疲れを低減する作用を付与する方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、テルペノイドを含有しながら、ソフトコンタクトレンズ装用時及び/又は装着時の不快感を低減することのできる製剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。本明細書において、特に記載のない限り、含有量の単位「%」は「w/v%」を意味し、「g/100mL」と同義である。
【0010】
本明細書において「ソフトコンタクトレンズ装用時」とはソフトコンタクトレンズを装用している状態を意味し、「ソフトコンタクトレンズ装着時」とはソフトコンタクトレンズを眼に装着する時を意味する。
【0011】
本実施形態に係るソフトコンタクトレンズ装用時及び/又は装着時の不快感低減剤(単に「不快感低減剤」とも表記する。)は、(A)テルペノイド(単に「(A)成分」とも表記する。)、及び(B)油性成分(単に「(B)成分」とも表記する。)を含有する。
【0012】
〔(A)テルペノイド〕
(A)成分は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。
【0013】
テルペノイドとしては、例えば、メントール、メントン、カンフル(「ショウノウ」又は「樟脳」ともいう。)、ボルネオール(「リュウノウ」又は「竜脳」ともいう。)、ゲラニオール、ネロール、シネオール、シトロネロール、カルボン、アネトール、オイゲノール、リモネン、リナロール及び酢酸リナリルが挙げられる。テルペノイドはd体、l体及びdl体のいずれであってもよく、l-メントール、d-メントール、dl-メントール、dl-カンフル、d-カンフル、dl-ボルネオール及びd-ボルネオールが挙げられる。ただし、ゲラニオール、ネロール及びシネオール等のようにテルペノイドによっては光学異性体が存在しない場合がある。
【0014】
また、テルペノイドとして、テルペノイドを含有する精油を使用してもよい。このような精油としては、例えば、ユーカリ油、ベルガモット油、ペパーミント油、ウイキョウ油、ローズ油、ケイヒ油、スペアミント油、樟脳油、クールミント及びハッカ油が挙げられる。
【0015】
テルペノイドとしては、本発明による効果をより一層高める観点から、メントール、カンフル、ボルネオール、メントン、ゲラニオール、ユーカリ油及びベルガモット油が好ましく、メントール、カンフル及びボルネオールがより好ましく、メントールが更に好ましく、l-メントールが更により好ましい。
【0016】
テルペノイドは、市販されているものを使用してもよい。テルペノイドは、1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0017】
本実施形態に係る不快感低減剤における(A)成分の含有量は特に限定されず、(A)成分の種類、他の配合成分の種類及び含有量、不快感低減剤の製剤形態等に応じて適宜設定される。テルペノイドの含有量としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、不快感低減剤の総量を基準として、(A)成分の総含有量が、0.0001~0.1w/v%であることが好ましく、0.001~0.08w/v%であることがより好ましく、0.01~0.05w/v%であることが更に好ましく、0.015~0.04w/v%であることが更に好ましく、0.015~0.035w/v%であることが更により好ましく、0.02~0.03w/v%であることが特に好ましい。なお、上記(A)成分として、テルペノイドを含む精油を使用する場合は、当該精油の含有量は、配合される精油中のテルペノイド含有量が上記含有量を満たすように設定される。
【0018】
テルペノイドとしてメントールを用いる場合、本実施形態に係る不快感低減剤におけるメントールの含有量は特に限定されず、他の配合成分の種類及び含有量、不快感低減剤の製剤形態等に応じて適宜設定される。メントールの含有量としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、不快感低減剤の総量を基準として、0.015w/v%以上であることが好ましく、0.0175w/v%以上であることがより好ましく、0.02w/v%以上であることが更に好ましく、0.022w/v%以上であることが特に好ましく、0.025w/v%以上であることが特により好ましい。また、メントールの含有量としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、不快感低減剤の総量を基準として、0.05w/v%以下であることが好ましく、0.04w/v%以下であることがより好ましく、0.03w/v%以下であることが更に好ましい。
【0019】
〔(B)油性成分〕
本実施形態に係る不快感低減剤は、更に(B)成分である油性成分を含有する。(B)成分は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。
【0020】
植物油としては、グリセリンに脂肪酸が結合した油を含むものが挙げられる。植物油としては、例えばゴマ油、ヒマシ油、ダイズ油、オリーブ油、トウモロコシ油、ツバキ油、ナタネ油、ラッカセイ油、アボカド油、ヒマワリ油、綿実油等が挙げられる。
【0021】
鉱物油としては、例えば流動パラフィン、ワセリン(白色ワセリン、黄色ワセリン等)等が挙げられる。
【0022】
動物油としては、例えば、ラノリン(精製ラノリン等)、オレンジラフィー油、スクワラン及び馬油等が挙げられる。
【0023】
(B)成分としては、本発明による効果をより一層高める観点から、植物油、鉱物油が好ましく、ゴマ油、ヒマシ油、流動パラフィン、ワセリンがより好ましく、ゴマ油、流動パラフィンが更に好ましく、ゴマ油が特に好ましい。
【0024】
(B)成分は、市販されているものを使用してもよい。(B)成分は、1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
本実施形態に係る不快感低減剤における(B)成分の含有量は特に限定されず、(B)成分の種類、他の配合成分の種類及び含有量、不快感低減剤の製剤形態等に応じて適宜設定される。(B)成分の含有量としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、不快感低減剤の総量を基準として、(B)成分の総含有量が、0.0001~1w/v%であることが好ましく、0.001~0.5w/v%であることがより好ましく、0.005~0.3w/v%であることが更に好ましく、0.01~0.1w/v%であることが更により好ましく、0.01~0.07w/v%であることが特に好ましい。
【0026】
本実施形態に係る不快感低減剤における、(A)成分に対する(B)成分の含有比率は特に限定されず、(A)成分及び(B)成分の種類、他の配合成分の種類及び含有量、不快感低減剤の製剤形態等に応じて適宜設定される。(A)成分に対する(B)成分の含有比率としては、本発明による効果をより一層高める観点から、例えば、本実施形態に係る不快感低減剤に含まれる(A)成分の総含有量1質量部に対して、(B)成分の総含有量が、0.001~100質量部であることが好ましく、0.01~10質量部であることがより好ましく、0.1~5質量部であることが更に好ましく、0.5~1質量部であることが更により好ましい。
【0027】
〔ビニル系高分子化合物〕
本実施形態に係る不快感低減剤は、更にビニル系高分子化合物を含有することが好ましい。不快感低減剤がビニル系高分子化合物を更に含有することで、本発明による効果がより顕著に奏される。ビニル系高分子化合物は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。
【0028】
ビニル系高分子化合物としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー等が挙げられる。ビニル系高分子化合物としては、本発明による効果をより一層高める観点から、ポリビニルピロリドンが好ましく、ポリビニルピロリドンK25、ポリビニルピロリドンK30、ポリビニルピロリドンK60、ポリビニルピロリドンK90がより好ましく、ポリビニルピロリドンK25、ポリビニルピロリドンK30、ポリビニルピロリドンK90が更に好ましく、ポリビニルピロリドンK90がさらにより好ましい。
【0029】
ビニル系高分子化合物は、市販されているものを使用してもよい。ビニル系高分子化合物は、1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
本実施形態に係る不快感低減剤におけるビニル系高分子化合物の含有量は特に限定されず、ビニル系高分子化合物の種類、他の配合成分の種類及び含有量、不快感低減剤の製剤形態等に応じて適宜設定される。ビニル系高分子化合物の含有量としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、不快感低減剤の総量を基準として、ビニル系高分子化合物の総含有量が、0.001~0.5w/v%であることが好ましく、0.005~0.1w/v%であることがより好ましく、0.01~0.075w/v%であることが更に好ましく、0.01~0.05w/v%であることが更により好ましい。
【0031】
本実施形態に係る不快感低減剤における、(A)成分に対するビニル系高分子化合物の含有比率は特に限定されず、(A)成分及びビニル系高分子化合物の種類、他の配合成分の種類及び含有量、不快感低減剤の製剤形態等に応じて適宜設定される。(A)成分に対するビニル系高分子化合物の含有比率としては、本発明による効果をより一層高める観点から、例えば、本実施形態に係る不快感低減剤に含まれる(A)成分の総含有量1質量部に対して、0.1~50質量部であることが好ましく、0.5~10質量部であることがより好ましく、1~5質量部であることが更に好ましい。
【0032】
〔緩衝剤〕
本実施形態に係る不快感低減剤は、更に緩衝剤を含有することが好ましい。不快感低減剤が緩衝剤を更に含有することで、本発明による効果がより顕著に奏される。緩衝剤は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。
【0033】
緩衝剤としては、例えば、無機酸由来の緩衝剤である無機緩衝剤、及び有機酸又は有機塩基由来の緩衝剤である有機緩衝剤等が挙げられる。
【0034】
無機緩衝剤としては、例えば、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤等が挙げられる。ホウ酸緩衝剤としては、ホウ酸又はその塩(ホウ酸アルカリ金属塩、ホウ酸アルカリ土類金属塩等)等が挙げられる。リン酸緩衝剤としては、リン酸又はその塩(リン酸アルカリ金属塩、リン酸アルカリ土類金属塩等)等が挙げられる。炭酸緩衝剤としては、炭酸又はその塩(炭酸アルカリ金属塩、炭酸アルカリ土類金属塩等)等が挙げられる。また、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤又は炭酸緩衝剤として、ホウ酸塩、リン酸塩又は炭酸塩の水和物を用いてもよい。より具体的な例として、ホウ酸緩衝剤として、ホウ酸又はその塩(ホウ酸ナトリウム、テトラホウ酸カリウム、メタホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、ホウ砂等);リン酸緩衝剤として、リン酸又はその塩(リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム等);炭酸緩衝剤として、炭酸又はその塩(炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カリウム、炭酸マグネシウム等)等が挙げられる。
【0035】
有機緩衝剤としては、例えば、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、乳酸緩衝剤、コハク酸緩衝剤、トリス緩衝剤、AMPD緩衝剤等が挙げられる。クエン酸緩衝剤としては、クエン酸又はその塩(クエン酸アルカリ金属塩、クエン酸アルカリ土類金属塩等)等が挙げられる。酢酸緩衝剤としては、酢酸又はその塩(酢酸アルカリ金属塩、酢酸アルカリ土類金属塩等)等が挙げられる。乳酸緩衝剤としては、乳酸又はその塩(乳酸アルカリ金属塩、乳酸アルカリ土類金属塩等)等が挙げられる。コハク酸緩衝剤としては、コハク酸又はその塩(コハク酸アルカリ金属塩等)等が挙げられる。また、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、乳酸緩衝剤又はコハク酸緩衝剤として、クエン酸塩、酢酸塩、乳酸塩又はコハク酸塩の水和物を用いてもよい。より具体的な例として、クエン酸緩衝剤として、クエン酸又はその塩(クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸二ナトリウム等);酢酸緩衝剤として、酢酸又はその塩(酢酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム等);乳酸緩衝剤として、乳酸又はその塩(乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸カルシウム等);コハク酸緩衝剤としてコハク酸又はその塩(コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム等)などが例示できる。トリス緩衝剤としては、例えば、トロメタモール又はその塩(トロメタモール塩酸塩等)等が挙げられる。AMPD緩衝剤としては、例えば、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール又はその塩等が挙げられる。
【0036】
緩衝剤としては、本発明による効果をより一層高める観点から、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、トリス緩衝剤が好ましく、ホウ酸緩衝剤がより好ましく、ホウ酸又はその塩が更に好ましい。
【0037】
緩衝剤は、市販されているものを使用してもよい。緩衝剤は、1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0038】
本実施形態に係る不快感低減剤における緩衝剤の含有量は特に限定されず、緩衝剤の種類、他の配合成分の種類及び含有量、不快感低減剤の製剤形態等に応じて適宜設定される。緩衝剤の含有量としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、不快感低減剤の総量を基準として、緩衝剤の総含有量が、0.01~5w/v%であることが好ましく、0.05~2w/v%であることがより好ましく、0.1~1w/v%であることが更に好ましい。
【0039】
本実施形態に係る不快感低減剤における、(A)成分に対する緩衝剤の含有比率は特に限定されず、(A)成分及び緩衝剤の種類、他の配合成分の種類及び含有量、不快感低減剤の製剤形態等に応じて適宜設定される。(A)成分に対する緩衝剤の含有比率としては、本発明による効果をより一層高める観点から、例えば、本実施形態に係る不快感低減剤に含まれる(A)成分の総含有量1質量部に対して、0.1~500質量部であることが好ましく、1~100質量部であることがより好ましく、10~50質量部であることが更に好ましい。
【0040】
〔無機塩類〕
本実施形態に係る不快感低減剤は、更に無機塩類を含有することが好ましい。不快感低減剤が無機塩類を更に含有することで、本発明による効果がより顕著に奏される。無機塩類は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。
【0041】
無機塩類としては、例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の金属の塩化物;塩化アンモニウム;硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム等の金属の硫酸塩;亜硫酸水素ナトリウム;亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0042】
無機塩類としては、本発明による効果をより一層高める観点から、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムが好ましく、塩化ナトリウム、塩化カリウムがより好ましく、塩化ナトリウムが更に好ましい。
【0043】
無機塩類は、市販されているものを使用してもよい。無機塩類は、1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0044】
本実施形態に係る不快感低減剤における無機塩類の含有量は特に限定されず、無機塩類の種類、他の配合成分の種類及び含有量、不快感低減剤の製剤形態等に応じて適宜設定される。無機塩類の含有量としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、不快感低減剤の総量を基準として、無機塩類の総含有量が、0.01~5w/v%であることが好ましく、0.05~2w/v%であることがより好ましく、0.1~1w/v%であることが更に好ましい。
【0045】
本実施形態に係る不快感低減剤における、(A)成分に対する無機塩類の含有比率は特に限定されず、(A)成分及び無機塩類の種類、他の配合成分の種類及び含有量、不快感低減剤の製剤形態等に応じて適宜設定される。(A)成分に対する無機塩類の含有比率としては、本発明による効果をより一層高める観点から、例えば、本実施形態に係る不快感低減剤に含まれる(A)成分の総含有量1質量部に対して、0.1~500質量部であることが好ましく、1~100質量部であることがより好ましく、10~50質量部であることが更に好ましい。
【0046】
〔アミノ酸〕
本実施形態に係る不快感低減剤は、更にアミノ酸を含有することが好ましい。不快感低減剤がアミノ酸を更に含有することで、本発明による効果がより顕著に奏される。アミノ酸は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。
【0047】
アミノ酸としては、例えば、タウリン(アミノエチルスルホン酸)、εアミノカプロン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、グリシン、アラニン、リジン、γ-アミノ酪酸、γ-アミノ吉草酸、トリメチルグリシン、及びそれらの塩等が挙げられる。アミノ酸としては、本発明による効果をより一層高める観点から、アスパラギン酸及びその塩、タウリンが好ましく、タウリンが更に好ましい。
【0048】
アミノ酸は、市販されているものを使用してもよい。アミノ酸は、1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0049】
本実施形態に係る不快感低減剤におけるアミノ酸の含有量は特に限定されずアミノ酸の種類、他の配合成分の種類及び含有量、不快感低減剤の製剤形態等に応じて適宜設定される。アミノ酸の含有量としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、不快感低減剤の総量を基準として、アミノ酸の総含有量が、0.001~2w/v%であることが好ましく、0.01~1.5w/v%であることがより好ましく、0.05~1w/v%であることが更に好ましい。
【0050】
本実施形態に係る不快感低減剤における、(A)成分に対するアミノ酸の含有比率は特に限定されず、(A)成分及びアミノ酸の種類、他の配合成分の種類及び含有量、不快感低減剤の製剤形態等に応じて適宜設定される。(A)成分に対するアミノ酸の含有比率としては、本発明による効果をより一層高める観点から、例えば、本実施形態に係る不快感低減剤に含まれる(A)成分の総含有量1質量部に対して、0.1~500質量部であることが好ましく、0.5~100質量部であることがより好ましく、1~50質量部であることが更に好ましい。
【0051】
〔非イオン界面活性剤〕
本実施形態に係る不快感低減剤は、更に非イオン界面活性剤を含有することが好ましい。不快感低減剤が非イオン界面活性剤を更に含有することで、本発明による効果がより顕著に奏される。非イオン界面活性剤は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。
【0052】
非イオン界面活性剤としては、例えば、モノラウリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノパルミチン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート40)、モノステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、トリステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート65)、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート80)等のPOEソルビタン脂肪酸エステル類;ポロクサマー407、ポロクサマー235、ポロクサマー188、ポロクサマー403、ポロクサマー237、ポロクサマー124等のPOE・POPグリコール類;POE硬化ヒマシ油40、POE硬化ヒマシ油50、POE硬化ヒマシ油60、POE硬化ヒマシ油80等のPOE硬化ヒマシ油;POEヒマシ油3、POEヒマシ油4、POEヒマシ油6、POEヒマシ油7、POEヒマシ油10、POEヒマシ油13.5、POEヒマシ油17、POEヒマシ油20、POEヒマシ油25、POEヒマシ油30、POEヒマシ油35、POEヒマシ油50等のPOEヒマシ油;モノステアリン酸ポリエチレングリコール(2E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(4E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(9E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(10E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(23E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(25E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(32E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(40E.O.、ステアリン酸ポリオキシル40)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(45E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(55E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(75E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(140E.O.)等のモノステアリン酸ポリエチレングリコール;POE(9)ラウリルエーテル等のPOEアルキルエーテル類;POE(20)POP(4)セチルエーテル等のPOE-POPアルキルエーテル類;POE(10)ノニルフェニルエーテル等のPOEアルキルフェニルエーテル類等が挙げられる。なお、上記例示した化合物において、POEはポリオキシエチレン、POPはポリオキシプロピレン、及び括弧内の数字は付加モル数を示す。
【0053】
非イオン界面活性剤としては、本発明による効果をより一層高める観点から、POEソルビタン脂肪酸エステル類;POE・POPグリコール類;POE硬化ヒマシ油;POEヒマシ油;モノステアリン酸ポリエチレングリコールが好ましく、POE硬化ヒマシ油;POEヒマシ油がより好ましい。
【0054】
非イオン界面活性剤は、市販されているものを使用してもよい。非イオン界面活性剤は、1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0055】
本実施形態に係る不快感低減剤における非イオン界面活性剤の含有量は特に限定されず、非イオン界面活性剤の種類、他の配合成分の種類及び含有量、不快感低減剤の製剤形態等に応じて適宜設定される。非イオン界面活性剤の含有量としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、不快感低減剤の総量を基準として、非イオン界面活性剤の総含有量が、0.01~10w/v%であることが好ましく、0.05~1w/v%であることがより好ましく、0.1~0.5w/v%であることが更に好ましい。
【0056】
本実施形態に係る不快感低減剤における、(A)成分に対する非イオン界面活性剤の含有比率は特に限定されず、(A)成分及び非イオン界面活性剤の種類、他の配合成分の種類及び含有量、不快感低減剤の製剤形態等に応じて適宜設定される。(A)成分に対する非イオン界面活性剤の含有比率としては、本発明による効果をより一層高める観点から、例えば、本実施形態に係る不快感低減剤に含まれる(A)成分の総含有量1質量部に対して、0.1~100質量部であることが好ましく、0.5~50質量部であることがより好ましく、1~20質量部であることが更に好ましい。
【0057】
〔糖類〕
本実施形態に係る不快感低減剤は、更に糖類を含有することが好ましい。不快感低減剤が糖類を更に含有することで、本発明による効果がより顕著に奏される。糖類は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。
【0058】
糖類としては、例えば、セルロース系高分子化合物、多糖類、ムコ多糖類、単糖類、二糖類等が挙げられる。セルロース系高分子化合物としては、例えば、セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等が挙げられる。多糖類としては、例えば、グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガム、アラビアゴム、カラヤガム、キサンタンガム、寒天、キトサン、アルギン酸及びその塩(ナトリウム塩等)、デンプン等が挙げられる。ムコ多糖類としては、例えば、ヘパリン類似物質、ヘパリン、ヘパリン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリノイド、キチン、ヒアルロン酸及びその塩(ナトリウム塩等)、コンドロイチン硫酸及びその塩(ナトリウム塩等)等が挙げられる。単糖類としては、例えば、ブドウ糖等が挙げられる。二糖類としては、例えば、スクロース、トレハロース等が挙げられる。
【0059】
糖類としては、本発明による効果をより一層高める観点から、セルロース系高分子化合物、ムコ多糖類、単糖類が好ましい。ムコ多糖類としては、ヒアルロン酸及びその塩、コンドロイチン硫酸及びその塩が好ましく、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウムがより好ましい。セルロース系高分子としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、ヒドロキシエチルセルロースが好ましく、ヒドロキシプロピルメチルセルロースがより好ましい。単糖類としては、ブドウ糖が好ましい。
【0060】
糖類は、市販されているものを使用してもよい。糖類は、1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0061】
本実施形態に係る不快感低減剤における糖類の含有量は特に限定されず、糖類の種類、他の配合成分の種類及び含有量、不快感低減剤の製剤形態等に応じて適宜設定される。糖類の含有量としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、不快感低減剤の総量を基準として、糖類の総含有量が、0.001~10w/v%であることが好ましく、0.01~5w/v%であることがより好ましく、0.1~2w/v%であることが更に好ましく、0.5~1w/v%であることが更により好ましい。
【0062】
糖類としてヒアルロン酸及びその塩を用いる場合、ヒアルロン酸及びその塩の含有量としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、不快感低減剤の総量を基準として、ヒアルロン酸及びその塩の総含有量が、0.0001~0.1w/v%であることが好ましく、0.0005~0.01w/v%であることがより好ましく、0.001~0.005w/v%であることが更に好ましい。
【0063】
糖類としてコンドロイチン硫酸及びその塩を用いる場合、コンドロイチン硫酸及びその塩の含有量としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、不快感低減剤の総量を基準として、コンドロイチン硫酸及びその塩の総含有量が、0.01~3w/v%であることが好ましく、0.1~1w/v%であることがより好ましく、0.25~0.5w/v%であることが更に好ましい。
【0064】
本実施形態に係る不快感低減剤における、(A)成分に対する糖類の含有比率は特に限定されず、(A)成分及び糖類の種類、他の配合成分の種類及び含有量、不快感低減剤の製剤形態等に応じて適宜設定される。(A)成分に対する糖類の含有比率としては、本発明による効果をより一層高める観点から、例えば、本実施形態に係る不快感低減剤に含まれる(A)成分の総含有量1質量部に対して、1~100質量部であることが好ましく、5~50質量部であることがより好ましく、10~40質量部であることが更に好ましい。
なお、糖類としてヒアルロン酸及びその塩を用いる場合、(A)成分に対するヒアルロン酸及びその塩の含有比率としては、本発明による効果をより一層高める観点から、例えば、本実施形態に係る不快感低減剤に含まれる(A)成分の総含有量1質量部に対して、0.01~5質量部であることが好ましく、0.05~1質量部であることがより好ましく、0.1~0.5質量部であることが更に好ましい。
【0065】
糖類としてコンドロイチン硫酸及びその塩を用いる場合、(A)成分に対するコンドロイチン硫酸及びその塩の含有比率としては、本発明による効果をより一層高める観点から、例えば、本実施形態に係る不快感低減剤に含まれる(A)成分の総含有量1質量部に対して、0.1~100質量部であることが好ましく、1~50質量部であることがより好ましく、10~30質量部であることが更に好ましい。
【0066】
〔キレート剤〕
本実施形態に係る不快感低減剤は、更にキレート剤を含有することが好ましい。不快感低減剤がキレート剤を更に含有することで、本発明による効果がより顕著に奏される。キレート剤は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。
【0067】
キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン二酢酸(EDDA)、エチレンジアミン三酢酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)及びそれらの塩等が挙げられる。
【0068】
キレート剤としては、本発明による効果をより一層高める観点から、エチレンジアミン四酢酸及びその塩が好ましく、エチレンジアミン四酢酸ナトリウムがより好ましい。
【0069】
キレート剤は、市販されているものを使用してもよい。キレート剤は、1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0070】
本実施形態に係る不快感低減剤におけるキレート剤の含有量は特に限定されず、キレート剤の種類、他の配合成分の種類及び含有量、不快感低減剤の製剤形態等に応じて適宜設定される。キレート剤の含有量としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、不快感低減剤の総量を基準として、キレート剤の総含有量が、0.001~0.5w/v%であることが好ましく、0.005~0.1w/v%であることがより好ましく、0.01~0.05w/v%であることが更に好ましい。
【0071】
本実施形態に係る不快感低減剤における、(A)成分に対するキレート剤の含有比率は特に限定されず、(A)成分及びキレート剤の種類、他の配合成分の種類及び含有量、不快感低減剤の製剤形態等に応じて適宜設定される。(A)成分に対するキレート剤の含有比率としては、本発明による効果をより一層高める観点から、例えば、本実施形態に係る不快感低減剤に含まれる(A)成分の総含有量1質量部に対して、0.1~50質量部であることが好ましく、0.5~10質量部であることがより好ましく、1~5質量部であることが更に好ましい。
【0072】
本実施形態に係る不快感低減剤のpHは、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される範囲内であれば特に限定されるものではない。本実施形態に係る不快感低減剤のpHとしては、例えば、5.5~8.5であってよく、6~8であることが好ましく、6.5~7.5であることがより好ましい。
【0073】
本実施形態に係る不快感低減剤は、必要に応じて、生体に許容される範囲内の浸透圧比に調節することができる。適切な浸透圧比は、不快感低減剤の製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定され得るが、例えば、0.5~1.8とすることができ、0.7~1.6とすることが好ましく、0.9~1.4とすることがより好ましい。浸透圧比は、第十七改正日本薬局方に基づき、286mOsm(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液の浸透圧)に対する試料の浸透圧の比とし、浸透圧は日本薬局方記載の浸透圧測定法(凝固点降下法)を参考にして測定する。なお、浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)は、塩化ナトリウム(日本薬局方標準試薬)を500~650℃で40~50分間乾燥した後、デシケーター(シリカゲル)中で放冷し、その0.900gを正確に量り、精製水に溶かし正確に100mLとして調製するか、市販の浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)を用いることができる。
【0074】
本実施形態に係る不快感低減剤の粘度は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される範囲内であれば、特に限定されるものではない。本実施形態に係る不快感低減剤の粘度としては、例えば、回転粘度計(TV-20型粘度計、東機産業社製、ローター;1°34’×R24)で測定した20℃における粘度が1~100mPa・sであることが好ましく、1~20mPa・sであることがより好ましく、1~10mPa・sであることが更に好ましい。
【0075】
本実施形態に係る不快感低減剤は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、上記成分の他に種々の薬理活性成分及び生理活性成分から選択される成分を組み合わせて適当量含有していてもよい。当該成分は特に制限されず、例えば、一般用医薬品製造販売承認基準2017年版(一般社団法人 レギュラトリーサイエンス学会 監修)に記載された眼科用薬における有効成分が例示できる。眼科用薬において用いられる成分として、具体的には、例えば、次のような成分等が挙げられる。
【0076】
抗アレルギー剤:例えば、クロモグリク酸又はその塩(例えば、クロモグリク酸ナトリウム)、トラニラスト、ペミロラストカリウム、アシタザノラスト、アンレキサノクス、イブジラスト等。
【0077】
抗ヒスタミン剤:例えば、クロルフェニラミン又はその塩(例えば、マレイン酸クロルフェニラミン)、ジフェンヒドラミン又はその塩(例えば、塩酸ジフェンヒドラミン)、イプロヘプチン又はその塩(例えば、塩酸イプロヘプチン)、レボカバスチン又はその塩(例えば、塩酸レボカバスチン)、ケトチフェン又はその塩(例えば、フマル酸ケトチフェン)、ペミロラストカリウム、オロパタジン又はその塩(例えば、オロパタジン塩酸塩)、エピナスチン又はその塩(例えば、エピナスチン塩酸塩)等。
【0078】
ステロイド剤:例えば、プロピオン酸フルチカゾン、フランカルボン酸フルチカゾン、フランカルボン酸モメタゾン、プロピオン酸ベクロメタゾン、フルニソリド等。
【0079】
充血除去剤:例えば、エピネフリン、塩酸エピネフリン、塩酸エフェドリン、塩酸フェニレフリン、dl-塩酸メチルエフェドリン等。
【0080】
眼筋調節薬剤:例えば、アセチルコリンと類似した活性中心を有するコリンエステラーゼ阻害剤、具体的にはトロピカミド、ヘレニエン、硫酸アトロピン、塩酸ピロカルピン等。
【0081】
消炎剤:例えば、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、アラントイン、トラネキサム酸、リゾチーム、塩化リゾチーム、インドメタシン、プラノプロフェン、イブプロフェン、イブプロフェンピコノール、ケトプロフェン、フェルビナク、ベンダザック、ピロキシカム、ブフェキサマク、フルフェナム酸ブチル、イプシロン-アミノカプロン酸、塩化ベルベリン、硫酸ベルベリン、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸又はその塩(例えば、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウム)、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛等。
【0082】
ビタミン類:例えば、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、酢酸トコフェロール、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、ピリドキシン塩酸塩、パンテノール、パントテン酸カルシウム、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム等。
【0083】
収斂剤:例えば、亜鉛華等。
【0084】
その他:例えば、スルファメトキサゾール、スルフイソキサゾール、スルフイソミジン及びそれらの塩等。
【0085】
本実施形態に係る不快感低減剤には、本発明の効果を損なわない範囲であれば、その製剤形態に応じて、常法に従い、様々な添加物を適宜選択し、1種又はそれ以上を併用して適当量含有させてもよい。このような添加物として、例えば、医薬品添加物事典2021(日本医薬品添加剤協会編集)に記載された各種添加物が例示できる。代表的な成分として次の添加物等が挙げられる。
【0086】
担体:例えば、水、含水エタノール等の水性溶媒。
【0087】
基剤:例えば、オクチルドデカノール、酸化チタン、臭化カリウム、プラスチベース等。
【0088】
pH調節剤:例えば、塩酸、酢酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等。
【0089】
イオン性界面活性剤:例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、N-アシルタウリン塩等の陰イオン界面活性剤;ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の両性イオン界面活性剤等。
【0090】
安定化剤:例えば、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(ロンガリット)、モノステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸グリセリン、シクロデキストリン、モノエタノールアミン、ジブチルヒドロキシトルエン、ピロ亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム等。
【0091】
防腐剤:例えば、アルキルポリアミノエチルグリシン類、第四級アンモニウム塩(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等)、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化ポリドロニウム、安息香酸ナトリウム、エタノール、クロロブタノール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、硫酸オキシキノリン、フェネチルアルコール、ベンジルアルコール、ビグアニド化合物(具体的には、塩酸ポリヘキサニド(ポリヘキサメチレンビグアニド)、アレキシジン等)、グローキル(ローディア社製 商品名)等。
【0092】
糖アルコール類:例えば、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、グリセリン等。
【0093】
グリコール類:例えば、プロピレングリコール、エチレングリコール等。
【0094】
本実施形態に係る不快感低減剤が水を含有する場合、水の含有量としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、不快感低減剤の総量を基準として、水の含有量が、80w/v%以上100w/v%未満であることが好ましく、85w/v%以上99.5w/v%以下であることがより好ましく、90w/v%以上99.2w/v%以下であることが更に好ましい。
【0095】
本実施形態に係る不快感低減剤に使用される水は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであればよい。このような水として、例えば、蒸留水、常水、精製水、滅菌精製水、注射用水及び注射用蒸留水等を挙げることができる。それらの定義は第十七改正日本薬局方に基づく。
【0096】
本実施形態に係る不快感低減剤は、所望量の(A)成分、(B)成分、及び必要に応じて他の成分を所望の濃度となるように添加及び混和することにより調製することができる。例えば、精製水でそれらの成分を溶解又は分散させ、所定のpH及び浸透圧比に調整し、濾過滅菌等により滅菌処理することで調製できる。
【0097】
本実施形態に係る不快感低減剤は、目的に応じて種々の製剤形態をとることができる。製剤形態として、例えば、液剤、ゲル剤、半固形剤(軟膏等)等が挙げられる。
【0098】
本実施形態に係る不快感低減剤は、眼科分野で、ソフトコンタクトレンズに接触するように使用されるものであれば、その製剤形態については制限されない。例えば、コンタクトレンズ用点眼剤(ソフトコンタクトレンズ装用中に点眼可能な点眼剤、ソフトコンタクトレンズを装着したまま使用可能な人工涙液を含む)、ソフトコンタクトレンズ用洗眼剤(ソフトコンタクトレンズ装用中に洗眼可能な洗眼剤。)、コンタクトレンズ用組成物[コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズケア用組成物(コンタクトレンズ消毒剤、コンタクトレンズ用保存剤、コンタクトレンズ用洗浄剤、コンタクトレンズ用洗浄保存剤)、コンタクトレンズパッケージ液等]として用いることができる。なお、「コンタクトレンズ」は、ハードコンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズ(イオン性及び非イオン性の双方を包含し、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ及び非シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの双方を包含する)を含む。
【0099】
ここで、ソフトコンタクトレンズの「イオン性」とは、医薬審第645号審査管理課長通知「ソフトコンタクトレンズ及びソフトコンタクトレンズ用消毒剤の製造(輸入)承認申請に際し添付すべき資料の取り扱い等について」(平成11年3月31日)に則り、原材料ポリマーの構成モノマーのうち陰イオンを有するモノマーのモル%が1%以上であるものをいう。
【0100】
また、ソフトコンタクトレンズの「含水率」とは、ソフトコンタクトレンズ中の水の割合を示し、具体的には以下の計算式により求められる。
含水率(%)=(含水した水の重量/含水状態のソフトコンタクトレンズの重量)×100
かかる含水率はISO18369-4:2017の記載に従って、重量測定方法により測定され得る。
【0101】
医薬審第645号審査管理課長通知「ソフトコンタクトレンズ及びソフトコンタクトレンズ用消毒剤の製造(輸入)承認申請に際し添付すべき資料の取り扱い等について」(平成11年3月31日)において、グループ1に分類されるソフトコンタクトレンズは非イオン性で含水率が50%未満であり、グループ2に分類されるソフトコンタクトレンズは非イオン性で含水率が50%以上であり、グループ3に分類されるソフトコンタクトレンズはイオン性で含水率が50%未満であり、グループ4に分類されるソフトコンタクトレンズはイオン性で含水率が50%以上である。
【0102】
本実施形態に係る不快感低減剤は、本願発明の効果をより顕著に奏する観点から、グループ2のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズに用いられることが好ましい。
【0103】
また、本実施形態に係る不快感低減剤は、ソフトコンタクトレンズの装用感の悪化を低減できることから、ソフトコンタクトレンズは、2週間連続装用又は、コンベンショナルタイプが好ましく、2週間連続装用がより好ましい。
【0104】
本実施形態に係る不快感低減剤は、本発明による効果をより顕著に発揮できることから、点眼剤(コンタクトレンズ装用中に点眼可能な点眼剤を含む。)として用いることが好ましい。本実施形態に係る不快感低減剤が点眼剤である場合、その用法・用量としては、効果を奏し、副作用の少ない用法・用量であれば特に限定されないが、例えば成人(15歳以上)及び7歳以上の小児の場合、1回1~3滴、1~2滴、又は2~3滴を1日2~4回、又は5~6回点眼して用いる方法を例示でき、1回1~2滴又は1回1~3滴を1日4回又は1日5~6回点眼して用いる方法が好ましく、1回1~3滴、1日5~6回がより好ましい。
【0105】
また、本実施形態に係る不快感低減剤が点眼剤である場合、本発明による効果をより顕著に発揮できることから、人工涙液であることも好ましい。なお、当該人工涙液は、抗アレルギー剤、抗ヒスタミン剤、ステロイド剤、充血除去剤、眼筋調節薬剤、消炎剤、ビタミン剤等の有効成分を含有しないことが好ましい。
【0106】
また、本実施形態に係る不快感低減剤は、本発明による効果をより顕著に発揮できることから、防腐剤の中でも、第四級アンモニウム塩(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等)、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチルを含有しないことが好ましく、アルキルポリアミノエチルグリシン類、第四級アンモニウム塩(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等)、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化ポリドロニウム、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、硫酸オキシキノリン、フェネチルアルコール、ベンジルアルコール、ビグアニド化合物(具体的には、塩酸ポリヘキサニド(ポリヘキサメチレンビグアニド)、アレキシジン等)、グローキル(ローディア社製 商品名)を含有しないことがより好ましく、アルキルポリアミノエチルグリシン類、第四級アンモニウム塩(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等)、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化ポリドロニウム、安息香酸ナトリウム、エタノール、クロロブタノール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、硫酸オキシキノリン、フェネチルアルコール、ベンジルアルコール、ビグアニド化合物(具体的には、塩酸ポリヘキサニド(ポリヘキサメチレンビグアニド)、アレキシジン等)、グローキル(ローディア社製 商品名)を含有しないことが更に好ましい。
【0107】
本実施形態に係る不快感低減剤は、任意の容器に収容して提供される。本実施形態に係る不快感低減剤を収容する容器については特に制限されず、例えば、ガラス製であってもよく、またプラスチック製であってもよい。好ましくはプラスチック製である。プラスチックとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド及びこれらを構成するモノマーの共重合体、並びにこれら2種以上を混合したもの等が挙げられる。好ましくは、ポリエチレンテレフタレートである。また、本実施形態に係る不快感低減剤を収容する容器は、容器内部を視認できる透明容器であってもよく、容器内部の視認が困難な不透明容器であってもよい。好ましくは透明容器である。ここで、「透明容器」とは、無色透明容器及び有色透明容器の双方が含まれる。
【0108】
本実施形態に係る不快感低減剤を収容する容器には、ノズルが装着されてもよい。ノズルの材質については特に制限されず、例えば、ガラス製であってもよく、またプラスチック製であってもよい。好ましくはプラスチック製である。プラスチックとしては、例えば、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート及びこれらを構成するモノマーの共重合体、並びにこれら2種以上を混合したもの等が挙げられる。ノズルの材質としては、本発明の効果をより一層高めるという観点から、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、ポリエチレンテレフタレートがより好ましい。
【0109】
本実施形態に係る不快感低減剤を収容する容器は、複数回の使用量が収容されるマルチドーズ型であってもよく、単回の使用量が収容されるユニットドーズ型であってもよい。
【0110】
本実施形態に係る不快感低減剤を収容する容器の形状及び容量は特に限定されず、用途に応じて適宜設定すればよい。例えば、容器が、点眼剤又はコンタクトレンズ装着液を収容する容器の場合、例えば、容量が0.3mL以上50mL以下であってよく、2mL以上40mL以下であることが好ましく、4mL以上25mL以下であることがより好ましい。また容器が、洗眼剤又はコンタクトレンズケア用液を収容する容器であれば、例えば、容量が40mL以上600mL以下であってよい。
【0111】
本実施形態に係る不快感低減剤を収容する容器は、包囲体に密封されてもよい。包囲体は特に制限されず、例えば、エージレスオーマック(三菱ガス化学社製)、オキシガード(東洋製罐社製)、オキシデック(東洋製罐社製)、オキシキャッチ(共同印刷社製)、ダイアミロン(三菱ケミカル社製)、ハイスターO2(スタープラスチック工業社製)、Cryovac(シールドエアー社製)等が挙げられる。
【0112】
本実施形態に係る不快感低減剤を収容する容器が包囲体に密封される場合、包囲体に脱酸素剤を同封してもよい。脱酸素剤は特に制限されず、例えば、エージレス(三菱ガス化学社製)、StabilOx(Multisorb社製)、ウェルパック(タイセイ社製)、エバーフレッシュ(鳥繁産業社製)、オキシーター(上野製薬社製)、キーピット(ドレンシー社製)、ケプロン(ケプロン社製)、サンソカット(アイリス・ファインプロダクツ社製)、サンソレス(博洋社製)、セキュール(ニッソー樹脂社製)、タモツ(大江化学工業社製)、バイタロン(常盤産業社製)、モデュラン(日本化薬フードテクノ社製)、ワンダーキープ(パウダーテック社製)、鮮度保持剤C(凸版印刷社製)をそのまま、又は適宜包装したもの等が挙げられる。
【0113】
(A)テルペノイド及び(B)油性成分を組み合わせた眼科組成物は、ソフトコンタクトレンズの弾性率を顕著に低下させる作用を有している。したがって、本発明の一実施形態として、(A)テルペノイド、及び(B)油性成分を含有する、ソフトコンタクトレンズの弾性率低減剤が提供される。また、本発明の一実施形態として、眼科組成物に(A)テルペノイド、及び(B)油性成分を配合することを含む、前記眼科組成物にソフトコンタクトレンズの弾性率を低減させる作用を付与する方法が提供される。また、本発明の一実施形態として、ソフトコンタクトレンズの弾性率低減剤の製造のための、(A)テルペノイド、及び(B)油性成分の使用が提供される。なお、本明細書において、「ソフトコンタクトレンズの弾性率」とは、AntonPaar社製のMCR302レオメーターを使用し、パラレルプレートPP12/P12を用いることで測定した値を意味する。
【0114】
また、ソフトコンタクトレンズの弾性率が低下すると、ソフトコンタクトレンズが柔らかくふんわりとし、これによりソフトコンタクトレンズ装用時及び/又は装着時のゴロゴロ感やゴワゴワ感、装用感の悪さによる不快感を低減し、快適に装用することができる。これらのことから、本発明の一実施形態として、(A)テルペノイド、及び(B)油性成分を含有する眼科組成物を対象に投与する、ソフトコンタクトレンズ装用時及び/又は装着時の不快感を低減する方法が提供される。また、本発明の一実施形態として、ソフトコンタクトレンズ装用時及び/又は装着時の不快感低減剤の製造のための、(A)テルペノイド、及び(B)油性成分の使用が提供される。
【0115】
本発明の一実施形態として、ソフトコンタクトレンズの弾性率を低減することでソフトコンタクトレンズ装用時及び/又は装着時の不快感を低減する、ソフトコンタクトレンズ装用時及び/又は装着時の不快感低減剤が提供される。当該実施形態において、ソフトコンタクトレンズの弾性率を低減させる割合(以下、「弾性率低下率」ともいう)は特に限定されないが、ソフトコンタクトレンズの弾性率低下率が10~50%であることが好ましく、10~45%であることがより好ましい。ここで、本実施形態におけるソフトコンタクトレンズの弾性率低下率は、以下の式で算出される。
[式]弾性率低下率(%)=(B)油性成分を含まないこと以外は不快感低減剤と組成が同一である組成物(比較組成物)の弾性率(Pa)-不快感低減剤の弾性率(Pa)/比較組成物の弾性率(Pa)×100
【0116】
ソフトコンタクトレンズの弾性率が高いと装着時にゴロゴロ感や不快感を生じやすく、ソフトコンタクトレンズが目にフィットしにくいところ、ソフトコンタクトレンズの弾性率を低減することでソフトコンタクトレンズの目への装着が容易になる。したがって、本発明の一実施形態として、(A)テルペノイド、及び(B)油性成分を含有する、ソフトコンタクトレンズの目への装着を容易にさせる剤が提供される。また、本発明の一実施形態として、眼科組成物に(A)テルペノイド、及び(B)油性成分を配合することを含む、前記眼科組成物にソフトコンタクトレンズの目への装着を容易にさせる作用を付与する方法が提供される。また、本発明の一実施形態として、眼科組成物に(A)テルペノイド、及び(B)油性成分を配合することを含む、ソフトコンタクトレンズの目への装着を容易にさせる方法が提供される。また、本発明の一実施形態として、ソフトコンタクトレンズの目への装着を容易にさせる剤の製造のための、(A)テルペノイド、及び(B)油性成分の使用が提供される。
【0117】
テルペノイドを含有する眼科組成物に、(B)油性成分を特定量となるように配合することで、テルペノイドによる眼部における清涼感を持続させる作用が奏される。したがって、本発明の一実施形態として、(B)油性成分を含有する、テルペノイドによる眼部における清涼感の持続作用向上剤であって、テルペノイドを含有する眼科組成物に(B)油性成分を前記眼科組成物の総量を基準として0.0001~0.5w/v%となるように配合することを特徴とする、眼部における清涼感の持続作用向上剤が提供される。また、本発明の一実施形態として、テルペノイドを含有する眼科組成物に(B)油性成分を前記眼科組成物の総量を基準として0.0001~0.5w/v%となるように配合することを含む、前記眼科組成物に清涼感の持続作用を付与する方法が提供される。また、本発明の一実施形態として、テルペノイドを含有する眼科組成物、及び(B)油性成分を対象に投与する、テルペノイドによる眼部における清涼感を持続させる方法であって、(B)成分の含有量が前記眼科組成物の総量を基準として0.0001~0.5w/v%である、方法が提供される。また、本発明の一実施形態として、テルペノイドを含有する眼科組成物のテルペノイドによる眼部における清涼感の持続作用向上剤製造のための、(B)油性成分の使用であって、(B)成分の含有量が前記眼科組成物の総量を基準として0.0001~0.5w/v%である、使用が提供される。なお、使用する(B)成分の種類、配合量、及び含有比率、その他に配合する成分の種類及びその配合量、並びに眼科組成物の製剤形態等については、上記本実施形態に係る不快感低減剤と同様である。
【0118】
また、テルペノイドを含有する眼科組成物に、(B)油性成分を特定量となるように配合することで、点眼した際に(好ましくはコンタクトレンズ装用中に点眼した際に)、うるおいを与えると同時に、テルペノイドによる眼部における清涼感を持続させる作用が奏される。
【0119】
眼科組成物において官能面で強い清涼感を求められることがあるが、テルペノイドを高配合とすると刺激や痛み等が伴うことがあり、高濃度のテルペノイドの配合と痛みの軽減の両立は難しい。これに対して、テルペノイドを含有する眼科組成物に、(B)油性成分を特定量となるように配合することで、高い清涼感を奏しながらも点眼後の目の痛みを低減させ、さらに、快適な清涼感を長く持続させる作用が奏される。したがって、本発明の一実施形態として、(B)油性成分を含有する、テルペノイドによる目の痛みの低減剤であって、テルペノイドを含有する眼科組成物に(B)油性成分を前記眼科組成物の総量を基準として0.0001~0.5w/v%となるように配合することを特徴とする、目の痛みの低減剤が提供される。また、本発明の一実施形態として、テルペノイドを含有する眼科組成物に(B)油性成分を前記眼科組成物の総量を基準として0.0001~0.5w/v%配合することを含む、前記眼科組成物にテルペノイドによる目の痛みを低減させる作用を付与する方法が提供される。また、本発明の一実施形態として、テルペノイドを含有する眼科組成物、及び(B)油性成分を対象に投与する、テルペノイドによる目の痛みを低減させる方法であって、(B)成分の含有量が前記眼科組成物の総量を基準として0.0001~0.5w/v%である、方法が提供される。また、本発明の一実施形態として、テルペノイドを含有する眼科組成物のテルペノイドによる目の痛みの低減剤製造のための、(B)油性成分の使用であって、(B)成分の含有量が前記眼科組成物の総量を基準として0.0001~0.5w/v%である、使用が提供される。なお、使用する(B)成分の種類、配合量、及び含有比率、その他に配合する成分の種類及びその配合量、並びに眼科組成物の製剤形態等については、上記本実施形態に係る不快感低減剤と同様である。
【0120】
ソフトコンタクトレンズの弾性が高いと角結膜上に適切な状態でフィットしにくいため、ソフトコンタクトレンズによる刺激が生じたり、ソフトコンタクトレンズ装用による不快感や違和感が生じるため、目の疲れを感じやすくなる。弾性率の低いソフトコンタクトレンズは装用時及び装着時の刺激が少なく、不快感や違和感が少なくなるため、目の疲れを感じにくい。したがって、本発明の一実施形態として、(A)テルペノイド、及び(B)油性成分を含有する、ソフトコンタクトレンズ装用時及び/又は装着時の目の疲れの低減剤が提供される。また、本発明の一実施形態として、眼科組成物に(A)テルペノイド、及び(B)油性成分を配合することを含む、前記眼科組成物にソフトコンタクトレンズ装用時及び/又は装着時の目の疲れを低減する作用を付与する方法が提供される。また、本発明の一実施形態として、眼科組成物に(A)テルペノイド、及び(B)油性成分を配合することを含む、ソフトコンタクトレンズ装用時及び/又は装着時の目の疲れを低減する方法が提供される。また、本発明の一実施形態として、ソフトコンタクトレンズ装用時及び/又は装着時の目の疲れの低減剤の製造のための、(A)テルペノイド、及び(B)油性成分の使用が提供される。なお、使用する(A)成分及び(B)成分の種類並びにそれらの配合量、含有比率、その他に配合する成分の種類及びその配合量、眼科組成物の製剤形態等については、上記本実施形態に係る不快感低減剤と同様である。
【実施例0121】
以下、試験例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0122】
[試験例1:コンタクトレンズの弾性率の評価]
<試験液とコンタクトレンズの準備>
表1及び表2に示す試験液を常法に従い調製した。生理食塩液(大塚製薬工場社製)を12ウェルプレート(BD Falcon、No.35-3043)に4mLずつ分注し、コンタクトレンズ(プレシジョン ワン:アルコン社製)を各ウェルに1枚ずつ浸漬させて、4時間以上室温で静置した。別の12ウェルプレート(BD Falcon、No.35-3043)に各試験溶液を4mLずつ分注し、水分をリントフリーペーパーで軽く拭き取ったコンタクトレンズを各ウェルに1枚ずつ浸漬させて、34℃で24時間静置した。
【0123】
<弾性率の算出>
MCR302レオメーター(AntonPaar社製)を使用し、パラレルプレートPP12/P12(直径12mm、格子目加工;1×0.5、製品番号:23935)、キャッププレートP-PTD200/80-77/SS/P2(格子目加工、製品番号:7894)、測定温度20℃、周波数1Hz、測定時間「時間設定なし」モードに設定し、ひずみ量0.01~1%に対するせん断応力(Pa)を測定した。具体的には、キャッププレートの上に生理食塩液0.5mLを滴下し、その上に水分を拭き取ったコンタクトレンズの凸面を載せ(キャッププレート側にレンズの凸面を向けて載せる)、生理食塩液0.5mLをコンタクトレンズの上に滴下した。パラレルプレートを降下させてキャッププレートに近づけ、2種のプレートの距離0.1mmでコンタクトレンズが挟み込まれるように位置を設定し、せん断応力(Pa)の測定を開始した。測定間隔は、ひずみ量0.01~0.1%を均等に5点およびひずみ量0.1~1%を均等に5点で測定した。ひずみ量0.01~0.1%の測定間隔2点目である0.0325%と、ひずみ量0.1~1%の測定間隔の1%を[式1]に用いて、弾性率(Pa)を算出した。測定は3回行い、その平均値を平均弾性率(Pa)とした。
[式1]弾性率(Pa)=せん断応力/ひずみ量=(ひずみ量1%のせん断応力)-(ひずみ量0.0325%のせん断応力)/(1-0.0325)
【0124】
<弾性率低下率の算出>
比較例1-1~1-2、実施例1-1~1-8における平均弾性率(Pa)を用いて、[式2]に従い、対応する比較例に対する弾性率低下率(%)を算出した。
[式2]対応する比較例に対する弾性率低下率(%)=対応する比較例の平均弾性率(Pa)-実施例の平均弾性率(Pa)/対応する比較例の平均弾性率(Pa)×100
実施例1-1~1-6に対応する比較例は、比較例1-1であり、実施例1-7~1-8に対応する比較例は、比較例1-2である。
【0125】
【0126】
【0127】
[試験例2:使用感試験]
表3に記載の処方に従い、各試験液(点眼剤)を調製し、これを被験液とした。各被験液は、濾過滅菌を行った後に、5mL容量用のポリエチレンテレフタレート製点眼容器に5mL充填した。充填後、点眼容器にポリエチレン製ノズルを装着した。
【0128】
被験者として、ソフトコンタクトレンズを装用しているオフィスワーカーを6名選定した。被験者6名が、各被験液を両眼に1滴ずつ点眼した後に評価を行った。具体的には、点眼直後から5分後まで1分ごとに清涼感の強さを10段階評価で評点を付けてもらうことで清涼感の持続性について評価を行った。
【0129】
また、0~100のメモリを付した10cmの直線を用いた「VAS法(Visual Analog Scale)」で点眼直後、及び5分後の目の症状(コンタクトレンズの装着している時の不快感、心地よさ、うるおい感)に対する改善効果を評価した。
【0130】
【0131】
実施例2-1を点眼した場合は、比較例2-1を点眼した場合と比較して、コンタクトレンズの装着している時の不快感、心地よさ、うるおい感のすべての指標において、点眼後直後及び5分後に、高い値を示すことが確認できた。特に、実施例2-1の試験液は、点眼後5分後においても十分に心地よい清涼感を感じられることが確認できた。
【0132】
[試験例3:使用感試験]
表4に記載の処方に従い、各試験液(点眼剤)を調製し、これを被験液とした。各被験液は、濾過滅菌を行った後に、15mL容量用のポリエチレンテレフタレート製点眼容器に15mL充填した。充填後、点眼容器にポリエチレン製ノズルを装着した。
【0133】
被験者として、ソフトコンタクトレンズを装用しているオフィスワーカーを6名選定した。ソフトコンタクトレンズを朝から装着し、装用後8時間以上経過した被験者6名が、各被験液を両眼に1滴ずつ点眼した後に、以下の方法で評価を行った。
具体的には、ビジュアルアナログスケール(VAS)法により、点眼直後、5分後、10分後に清涼感の強さ、点眼直後、5分後に目の痛みの強さ、10分後に目の疲れの強さの評価を行った。被験者は、比較例3-1を点眼し評価を行った後、1時間以上の時間を空けて、実施例3-1の評価を行った。
【0134】
「VAS法(Visual Analog Scale)」は、全く感じない(0cm)から、強く感じる(10cm)までのうち、被験者が感じた程度のところにチェックしてもらい、自覚症状の強さとしてこの長さ(mm)を測定し、これを各項目のスコアとした。6名の被験者のスコア平均値を算出することにより、各項目についての評価を行った。さらに清涼感の持続時間については評価した10分間で清涼感を感じた時間をスコアとし、6名の被験者のスコア平均値を算出することにより評価を行った。
【0135】
【0136】
表5に記載するように、実施例3-1を点眼した場合は、比較例3-1を点眼した場合と比較して、コンタクトレンズを装着している時の清涼感の指標がすべての時間で高いこと、及び痛みの指標が全ての時間で低いことが確認できた。さらに清涼感の持続時間に関しても、比較例3-1を点眼した場合と比較して、実施例3-1を点眼した場合のほうが清涼感を長く感じ続けていることが確認できた。清涼化剤を高濃度配合することで痛みを伴うことがある一方、実施例3-1の試験液は、高い清涼感を保持しながらも点眼後の痛みの軽減も両立することができ、快適な清涼感をより長く持続させることが確認できた。
【0137】
また、実施例3-1を点眼した場合は、10分後のソフトコンタクトレンズの装着に伴う目の疲れも顕著に低減することが確認できた。したがって、実施例3-1の試験液は、目の不快感を軽減できることが確認できた。
【0138】
【0139】
[製剤例]
下記表6及び7に記載の処方で、処方例1~13が調製される。処方例1~13を、ポリエチレンテレフタレート製の容器に充填し、低密度ポリエチレン製のノズルを装着したものを製剤例1~13とした。処方例1~13を、ポリエチレンテレフタレート製の容器に充填し、キャップ装着時(保存時)において、内容液と接液する可能性のある壁面の全部がポリブチレンテレフタレート製のノズルを装着したものを製剤例14~26とした。処方例1~13を、ポリエチレンテレフタレート製の容器に充填し、内容液と接液する可能性のある壁面の一部がポリエチレンテレフタレート製のノズルを装着したものを製剤例27~39とした。なお、製剤例10、23、及び36はそれぞれ包囲体に密封し、それぞれの包囲体には鉄系の脱酸素剤を同封した。
なお、表中の単位は特に明記しないかぎりw/v%である。
【0140】
【0141】