(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112759
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】A/Dコンバータ
(51)【国際特許分類】
H03M 1/10 20060101AFI20240814BHJP
H03M 1/38 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
H03M1/10 A
H03M1/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023156554
(22)【出願日】2023-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2023017899
(32)【優先日】2023-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 玄明
【テーマコード(参考)】
5J022
【Fターム(参考)】
5J022AA02
5J022AB04
5J022BA03
5J022BA04
5J022CE08
5J022CF02
(57)【要約】
【課題】A/Dコンバータにより正確に動作させることを可能とする技術を提供する。
【解決手段】アナログ入力信号をデジタル出力信号に変換するA/Dコンバータ1,2は、デジタル入力に応じたアナログの出力信号を生成する容量性D/Aコンバータ10,40と、アナログの出力信号と比較基準電圧とを比較し、比較結果を出力する比較器20,60と、比較結果に基づいてデジタル入力を生成する制御回路30,62と、を備える。容量性D/Aコンバータは、デジタル信号に応じたアナログの出力信号を生成する変換回路と、変換回路の出力信号を変化させる補正回路とを有する。変換回路は、下位側回路と、上位側回路と、スケーリングキャパシタと、を含む。制御回路は、補正回路に入力されるデジタル信号を逐次的に変化させ、逐次的に生成される比較結果に基づいて、補正回路に変換回路の出力信号を補正させるためのデータを取得する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログ入力信号をデジタル出力信号に変換するA/Dコンバータであって、
デジタル入力に応じたアナログの出力信号を生成する容量性D/Aコンバータと、
前記アナログの出力信号と比較基準電圧とを比較し、比較結果を出力する比較器と、
前記比較結果に基づいて前記デジタル入力を生成する制御回路と、を備え、
前記容量性D/Aコンバータは、MおよびNをそれぞれ1以上の整数とするとき、(M+N)ビットのデジタル信号に応じた前記アナログの出力信号を生成する変換回路と、入力されるデジタル信号に応じて前記変換回路の出力信号を変化させる、アレイ状に配置された複数の補正キャパシタを含む補正回路とを有し、
前記変換回路は、前記(M+N)ビットのデジタル信号の下位Mビットの変換を担う、アレイ状に配置された複数の第1キャパシタを有する下位側回路と、前記(M+N)ビットのデジタル信号の上位Nビットの変換を担う、アレイ状に配置された複数の第2キャパシタを有する上位側回路と、前記下位側回路と前記上位側回路との間に配置されたスケーリングキャパシタと、を含み、
前記複数の補正キャパシタの共通ノードは、前記複数の第1キャパシタの共通ノードおよび前記複数の第2キャパシタの共通ノードの一方に接続され、
前記制御回路は、前記補正回路に入力されるデジタル信号を逐次的に変化させ、逐次的に生成される前記比較結果に基づいて、前記補正回路に前記変換回路の出力信号を補正させるためのデータを取得する、
A/Dコンバータ。
【請求項2】
前記複数の補正キャパシタの共通ノードは、前記複数の第1キャパシタの共通ノードに接続され、
前記補正回路は、入力されるデジタル信号に応じて、前記複数の補正キャパシタのそれぞれについて、共通ノードとは反対側の端部がオープンになるまたはグランドに接続されることによって、前記変換回路の出力信号を変化させる、
請求項1に記載のA/Dコンバータ。
【請求項3】
前記容量性D/Aコンバータは、前記複数の補正キャパシタの共通ノードに接続され、前記複数の補正キャパシタの共通ノードの電荷をリセット可能に配置されたリセットスイッチをさらに有する、
請求項2に記載のA/Dコンバータ。
【請求項4】
前記リセットスイッチは、一端が前記複数の補正キャパシタの共通ノードに接続され、他端がグランドに接続されるように配置されており、
前記複数の補正キャパシタの共通ノードの電荷量は、前記リセットスイッチがオンになることによってリセットされる、
請求項3に記載のA/Dコンバータ。
【請求項5】
前記制御回路は、前記リセットスイッチがオフの状態における前記容量性D/Aコンバータの出力信号に基づいて、前記リセットスイッチがオンの状態で、前記複数の補正キャパシタの共通ノードとグランドとの間における前記補正回路の容量値を切り替える、
請求項4に記載のA/Dコンバータ。
【請求項6】
前記複数の第2キャパシタの共通ノードに一端が接続され、他端に前記比較基準電圧が供給される基準スイッチをさらに備え、
前記制御回路は、前記容量性D/Aコンバータが第1の状態にあるとき前記基準スイッチがオンとなり、そのあと、前記基準スイッチがオンからオフに切り替わり、前記容量性D/Aコンバータが前記第1の状態が第2の状態に切り替わったときにおける前記容量性D/Aコンバータの出力電圧および前記比較基準電圧に基づいて、前記補正回路の容量値を切り替えるためのデジタル入力を前記容量性D/Aコンバータに入力し、
前記第1の状態は、すべてのビットを0とした前記Mビットのデジタル入力が前記下位側回路に入力され、最下位のビットを1とし、残りのビットを0とした前記Nビットのデジタル入力が前記上位側回路に入力される状態であり、
前記第2の状態は、すべてのビットを1とした前記Mビットのデジタル入力が前記下位側回路に入力され、すべてのビットを0とした前記Nビットのデジタル入力が前記上位側回路に入力される状態である、
請求項5に記載のA/Dコンバータ。
【請求項7】
前記補正回路は、前記補正回路の容量値を基準容量値から上げるための加算用回路と、前記補正回路の容量値を前記基準容量値から下げるための減算用回路と、を有し、
前記加算用回路は、アレイ状に配置された複数の補正キャパシタを有し、
前記減算用回路は、アレイ状に配置された複数の補正キャパシタを有し、
前記基準容量値は、前記加算用回路がその最小の容量値をとり、前記減算用回路がその最大の容量値をとるときの前記補正回路の容量値である、
請求項2に記載のA/Dコンバータ。
【請求項8】
前記複数の補正キャパシタの共通ノードは、キャパシタを介して前記複数の第2キャパシタの共通ノードに接続される、
請求項1に記載のA/Dコンバータ。
【請求項9】
前記制御回路は、前記補正回路が前記比較器のオフセットを打ち消すように、前記補正回路に入力されるデジタル信号を逐次的に変化させ、逐次的に生成される前記比較結果に基づいて、前記比較器のオフセットデータを取得し、
前記補正回路は、前記オフセットデータに応じたデジタル信号に基づいて、前記比較器のオフセットを補正するように、前記変換回路の出力信号を変化させる、
請求項8に記載のA/Dコンバータ。
【請求項10】
前記変換回路は、第1のデジタル信号に応じた第1の出力信号を生成し、前記第1のデジタル信号とは異なるコードを有する第2のデジタル信号に応じた第2の出力信号を生成し、
前記制御回路は、前記変換回路に前記第1のデジタル信号が入力されているとき、前記補正回路が前記第1の出力信号と前記第2の出力信号との差分を打ち消すように、前記補正回路に入力されるデジタル信号を逐次的に変化させ、逐次的に生成される前記比較結果に基づいて、前記第2キャパシタの容量誤差データを取得し、
前記補正回路は、前記容量誤差データに応じたデジタル信号に基づいて、前記第2キャパシタの容量誤差に応じた前記変換回路の出力信号の誤差を補正するように、前記変換回路の出力信号を変化させる、
請求項9に記載のA/Dコンバータ。
【請求項11】
前記制御回路は、前記アナログ入力信号を前記デジタル出力信号に変換するために、前記比較基準電圧と前記容量性D/Aコンバータの出力信号とを前記比較器が比較する際に、前記オフセットデータおよび前記容量誤差データに応じたデジタル信号を前記補正回路に入力する、
請求項10に記載のA/Dコンバータ。
【請求項12】
前記補正回路をα補正回路とするとき、前記容量性D/Aコンバータは、アレイ状に配置された複数の補正キャパシタを有するさらなる補正回路をさらに有し、
前記α補正回路が有する複数の補正キャパシタの共通ノードは、前記複数の第1キャパシタの共通ノードに接続され、
前記さらなる補正回路が有する複数の補正キャパシタの共通ノードは、キャパシタを介して前記複数の第2キャパシタの共通ノードに接続され、
前記α補正回路は、入力されるデジタル信号に応じて、複数の補正キャパシタのそれぞれについて、共通ノードとは反対側の端部がオープンになるまたはグランドに接続されることによって、前記変換回路の出力信号を変化させる、
請求項1に記載のA/Dコンバータ。
【請求項13】
アナログ入力信号をデジタル出力信号に変換するA/Dコンバータであって、
デジタル入力に応じたアナログの第1の出力信号およびアナログの第2の出力信号を生成する容量性D/Aコンバータと、
前記第1の出力信号と前記第2の出力信号とを比較し、比較結果を出力する比較器と、
前記比較結果に基づいて前記デジタル入力を生成する制御回路と、を備え、
前記容量性D/Aコンバータは、MおよびNをそれぞれ1以上の整数とするとき、(M+N)ビットのデジタル信号に応じた前記第1の出力信号を生成する第1変換回路と、入力されるデジタル信号に応じて前記第1の出力信号を変化させる、アレイ状に配置された複数の補正キャパシタを含む第1補正回路と、(M+N)ビットのデジタル信号に応じた前記第2の出力信号を生成する第2変換回路と、入力されるデジタル信号に応じて前記第2の出力信号を変化させる、アレイ状に配置された複数の補正キャパシタを含む第2補正回路と、を有し、
前記第1変換回路は、(M+N)ビットのデジタル信号の下位Mビットの変換を担う、アレイ状に配置された複数の第1キャパシタを有する下位側回路と、(M+N)ビットのデジタル信号の上位Nビットの変換を担う、アレイ状に配置された複数の第2キャパシタを有する上位側回路と、当該下位側回路と当該上位側回路との間に配置されたスケーリングキャパシタと、を含み、
前記第2変換回路は、(M+N)ビットのデジタル信号の下位Mビットの変換を担う、アレイ状に配置された複数の第3キャパシタを有する下位側回路と、(M+N)ビットのデジタル信号の上位Nビットの変換を担う、アレイ状に配置された複数の第4キャパシタを有する上位側回路と、当該下位側回路と当該上位側回路との間に配置されたスケーリングキャパシタと、を含み、
前記第1補正回路が有する複数の補正キャパシタの共通ノードは、前記複数の第1キャパシタの共通ノードおよび前記複数の第2キャパシタの共通ノードの一方に接続され、
前記第2補正回路が有する複数の補正キャパシタの共通ノードは、前記複数の第3キャパシタの共通ノードおよび前記複数の第4キャパシタの共通ノードの一方に接続され、
前記制御回路は、前記第1補正回路および前記第2補正回路のそれぞれに入力されるデジタル信号を逐次的に変化させ、逐次的に生成される前記比較結果に基づいて、前記第1補正回路に前記第1の出力信号を補正させ、前記第2補正回路に前記第2の出力信号を補正させるためのデータを取得する、
A/Dコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、A/Dコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
アナログ信号をデジタル信号に変換する逐次比較型ADC(A/Dコンバータ)が知られている。逐次比較型ADCでは、標本化したアナログ入力信号と、容量性DAC(D/Aコンバータ)から出力される信号とを比較器によって逐次比較し、その比較結果に基づいてデジタル信号を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
[概要]
しかしながら、容量性DACに生じる寄生容量、容量性DACのキャパシタの容量誤差および比較器のオフセットなどにより、比較器による比較を正確にできないことがあった。
【0005】
本開示はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その例示的な目的の一つは、A/Dコンバータにより正確に動作させることを可能とする技術を提供することにある。
【0006】
本開示のある態様のA/Dコンバータは、アナログ入力信号をデジタル出力信号に変換する。A/Dコンバータは、デジタル入力に応じたアナログの出力信号を生成する容量性D/Aコンバータと、アナログの出力信号と比較基準電圧とを比較し、比較結果を出力する比較器と、比較結果に基づいてデジタル入力を生成する制御回路と、を備える。容量性D/Aコンバータは、MおよびNをそれぞれ1以上の整数とするとき、(M+N)ビットのデジタル信号に応じたアナログの出力信号を生成する変換回路と、入力されるデジタル信号に応じて変換回路の出力信号を変化させる、アレイ状に配置された複数の補正キャパシタを含む補正回路とを有する。変換回路は、(M+N)ビットのデジタル信号の下位Mビットの変換を担う、アレイ状に配置された複数の第1キャパシタを有する下位側回路と、(M+N)ビットのデジタル信号の上位Nビットの変換を担う、アレイ状に配置された複数の第2キャパシタを有する上位側回路と、下位側回路と上位側回路との間に配置されたスケーリングキャパシタと、を含む。複数の補正キャパシタの共通ノードは、複数の第1キャパシタの共通ノードおよび複数の第2キャパシタの共通ノードの一方に接続される。制御回路は、補正回路に入力されるデジタル信号を逐次的に変化させ、逐次的に生成される比較結果に基づいて、補正回路に変換回路の出力信号を補正させるためのデータを取得する。
【0007】
本開示の別の態様のA/Dコンバータは、アナログ入力信号をデジタル出力信号に変換する。A/Dコンバータは、デジタル入力に応じたアナログの第1の出力信号およびアナログの第2の出力信号を生成する容量性D/Aコンバータと、第1の出力信号と第2の出力信号とを比較し、比較結果を出力する比較器と、比較結果に基づいてデジタル入力を生成する制御回路と、を備える。容量性D/Aコンバータは、MおよびNをそれぞれ1以上の整数とするとき、(M+N)ビットのデジタル信号に応じた第1の出力信号を生成する第1変換回路と、入力されるデジタル信号に応じて第1の出力信号を変化させる、アレイ状に配置された複数の補正キャパシタを含む第1補正回路と、(M+N)ビットのデジタル信号に応じた第2の出力信号を生成する第2変換回路と、入力されるデジタル信号に応じて第2の出力信号を変化させる、アレイ状に配置された複数の補正キャパシタを含む第2補正回路と、を有する。第1変換回路は、(M+N)ビットのデジタル信号の下位Mビットの変換を担う、アレイ状に配置された複数の第1キャパシタを有する下位側回路と、(M+N)ビットのデジタル信号の上位Nビットの変換を担う、アレイ状に配置された複数の第2キャパシタを有する上位側回路と、当該下位側回路と当該上位側回路との間に配置されたスケーリングキャパシタと、を含む。第2変換回路は、(M+N)ビットのデジタル信号の下位Mビットの変換を担う、アレイ状に配置された複数の第3キャパシタを有する下位側回路と、(M+N)ビットのデジタル信号の上位Nビットの変換を担う、アレイ状に配置された複数の第4キャパシタを有する上位側回路と、当該下位側回路と当該上位側回路との間に配置されたスケーリングキャパシタと、を含む。第1補正回路が有する複数の補正キャパシタの共通ノードは、複数の第1キャパシタの共通ノードおよび複数の第2キャパシタの共通ノードの一方に接続される。第2補正回路が有する複数の補正キャパシタの共通ノードは、複数の第3キャパシタの共通ノードおよび複数の第4キャパシタの共通ノードの一方に接続される。制御回路は、第1補正回路および第2補正回路のそれぞれに入力されるデジタル信号を逐次的に変化させ、逐次的に生成される比較結果に基づいて、第1補正回路に第1の出力信号を補正させ、第2補正回路に第2の出力信号を補正させるためのデータを取得する。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本開示の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る逐次比較型ADCの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、参考技術1に係る容量性DACの回路図である。
【
図3】
図3は、参考技術2に係る容量性DACの回路図である。
【
図4】
図4は、参考技術2に係る容量性DACの動作の一例を説明するための図である。
【
図5】
図5は、参考技術2に係る容量性DACの動作の一例を説明するための図である。
【
図6A】
図6Aは、参考技術2に係る容量性DACの動作の一例を説明するための図である。
【
図6B】
図6Bは、参考技術2に係る容量性DACの動作の一例を説明するための図である。
【
図6C】
図6Cは、参考技術2に係る容量性DACの動作の一例を説明するための図である。
【
図6D】
図6Dは、参考技術2に係る容量性DACの動作の一例を説明するための図である。
【
図6E】
図6Eは、参考技術2に係る容量性DACの動作の一例を説明するための図である。
【
図7】
図7は、本開示の一実施形態に係る容量性DACの回路図である。
【
図8A】
図8Aは、同実施形態に係る容量性DACの動作の一例を説明するための図である。
【
図8B】
図8Bは、同実施形態に係る容量性DACの動作の一例を説明するための図である。
【
図9A】
図9Aは、同実施形態に係る容量性DACの動作の一例を説明するための図である。
【
図9B】
図9Bは、同実施形態に係る容量性DACの動作の一例を説明するための図である。
【
図10A】
図10Aは、同実施形態に係る容量性DACの動作の一例を説明するための図である。
【
図10B】
図10Bは、同実施形態に係る容量性DACの動作の一例を説明するための図である。
【
図11A】
図11Aは、同実施形態に係る容量性DACの動作の一例を説明するための図である。
【
図11B】
図11Bは、同実施形態に係る容量性DACの動作の一例を説明するための図である。
【
図12】
図12は、同実施形態に係る容量性DACを駆動する制御回路の動作の一例を示すタイミングチャートである。
【
図13】
図13は、各種の信号が入力される容量性DACの信号線を示す図である。
【
図14A】
図14Aは、参考技術1に係る容量性DACを用いた場合の逐次比較型ADCにおける各コードのDNLの一例を示す図である。
【
図14B】
図14Bは、本開示の一実施形態に係る容量性DACを用いた場合について、α補正回路の容量値を最適化したあとにおける逐次比較型ADCにおける各コードのDNLの一例を示す図である。
【
図15】
図15は、第2実施形態に係る逐次比較型ADCのブロック図である。
【
図16】
図16は、第2実施形態に係る容量性DACの回路構成を説明するための図である。
【
図17】
図17は、サンプリング時における容量性DACの状態を説明するための図である。
【
図18A】
図18Aは、2回目の逐次比較において第1補正回路および第2補正回路に入力されるデジタル信号を示す図である。
【
図18B】
図18Bは、3回目の逐次比較において第1補正回路および第2補正回路に入力されるデジタル信号を示す図である。
【
図18C】
図18Cは、8回目の逐次比較において第1補正回路および第2補正回路に入力されるデジタル信号を示す図である。
【
図18D】
図18Dは、9回目の逐次比較において第1補正回路および第2補正回路に入力されるデジタル信号を示す図である。
【
図19】
図19は、比較器のオフセット、比較データ、反転データおよび取得されるオフセットデータとの関係を示す図である。
【
図20】
図20は、第1変換回路および第1補正回路の回路図である。
【
図21】
図21は、抽出できる容量誤差と、容量誤差を抽出するために変換回路に入力されるデジタル信号の2つのコードを示す図である。
【
図22】
図22は、サンプリング時における容量性DACの状態を説明するための図である。
【
図23】
図23は、1回目の逐次比較における容量性DACの状態を説明するための図である。
【
図24】
図24は、容量誤差、オフセット加算後の反転データおよび容量誤差データの関係を示す図である。
【
図25A】
図25Aは、サンプリング時における第1変換回路の状態を説明するための図である。
【
図25B】
図25Bは、1回目の逐次比較における第1変換回路の状態を説明するための図である。
【
図26】各逐次比較における第1補正回路の補正値を示す図である。
【
図27A】
図27Aは、サンプリング時における第2変換回路の状態を説明するための図である。
【
図27B】
図27Bは、1回目の逐次比較における第2変換回路の状態を説明するための図である。
【
図28】
図28は、各逐次比較における第2補正回路の補正値を示す図である。
【
図29】
図29は、第1補正回路および第2補正回路を使用しない逐次比較型ADCについて、各コードのDNLを計算した結果を示す図である。
【
図30】
図30は、第1補正回路および第2補正回路を使用しない逐次比較型ADCについて、各コードのINLを計算した結果を示す図である。
【
図31】
図31は、本実施形態に係る逐次比較型ADCについて、各コードのDNLを計算した結果を示す図である。
【
図32】
図32は、本実施形態に係る逐次比較型ADCについて、各コードのINLを計算した結果を示す図である。
【0010】
[詳細な説明]
(概要)
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。この概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、すべての実施形態の重要な要素を特定することも、一部またはすべての態様の範囲を線引きすることも意図していない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用いる場合がある。
【0011】
一実施形態に係るA/Dコンバータは、アナログ入力信号をデジタル出力信号に変換する。A/Dコンバータは、デジタル入力に応じたアナログの出力信号を生成する容量性D/Aコンバータと、アナログの出力信号と比較基準電圧とを比較し、比較結果を出力する比較器と、比較結果に基づいてデジタル入力を生成する制御回路と、を備える。容量性D/Aコンバータは、MおよびNをそれぞれ1以上の整数とするとき、(M+N)ビットのデジタル信号に応じたアナログの出力信号を生成する変換回路と、入力されるデジタル信号に応じて変換回路の出力信号を変化させる、アレイ状に配置された複数の補正キャパシタを含む補正回路とを有する。変換回路は、(M+N)ビットのデジタル信号の下位Mビットの変換を担う、アレイ状に配置された複数の第1キャパシタを有する下位側回路と、(M+N)ビットのデジタル信号の上位Nビットの変換を担う、アレイ状に配置された複数の第2キャパシタを有する上位側回路と、下位側回路と上位側回路との間に配置されたスケーリングキャパシタと、を含む。複数の補正キャパシタの共通ノードは、複数の第1キャパシタの共通ノードおよび複数の第2キャパシタの共通ノードの一方に接続される。制御回路は、補正回路に入力されるデジタル信号を逐次的に変化させ、逐次的に生成される比較結果に基づいて、補正回路に変換回路の出力信号を補正させるためのデータを取得する。
【0012】
この構成によれば、A/Dコンバータにより正確に動作させることができる。
【0013】
一実施形態において、複数の補正キャパシタの共通ノードは、複数の第1キャパシタの共通ノードに接続されてよい。補正回路は、入力されるデジタル信号に応じて、複数の補正キャパシタのそれぞれについて、共通ノードとは反対側の端部がオープンになるまたはグランドに接続されることによって、変換回路の出力信号を変化させてよい。
【0014】
一実施形態において、容量性D/Aコンバータは、複数の補正キャパシタの共通ノードに接続され、複数の補正キャパシタの共通ノードの電荷をリセット可能に配置されたリセットスイッチをさらに有してよい。
【0015】
一実施形態において、リセットスイッチは、一端が複数の補正キャパシタの共通ノードに接続され、他端がグランドに接続されるように配置されてよい。複数の補正キャパシタの共通ノードの電荷量は、リセットスイッチがオンになることによってリセットされてよい。
【0016】
一実施形態において、制御回路は、リセットスイッチがオフの状態における容量性D/Aコンバータの出力信号に基づいて、リセットスイッチがオンの状態で、複数の補正キャパシタの共通ノードとグランドとの間における補正回路の容量値を切り替えてよい。
【0017】
一実施形態において、A/Dコンバータは、複数の第2キャパシタの共通ノードに一端が接続され、他端に比較基準電圧が供給される基準スイッチをさらに備えてよい。制御回路は、容量性D/Aコンバータが第1の状態にあるとき基準スイッチがオンとなり、そのあと、基準スイッチがオンからオフに切り替わり、容量性D/Aコンバータが第1の状態が第2の状態に切り替わったときにおける容量性D/Aコンバータの出力電圧および比較基準電圧に基づいて、補正回路の容量値を切り替えるためのデジタル入力を容量性D/Aコンバータに入力してよい。第1の状態は、すべてのビットを0としたMビットのデジタル入力が下位側回路に入力され、最下位のビットを1とし、残りのビットを0としたNビットのデジタル入力が上位側回路に入力される状態であってよい。第2の状態は、すべてのビットを1としたMビットのデジタル入力が下位側回路に入力され、すべてのビットを0としたNビットのデジタル入力が上位側回路に入力される状態であってよい。
【0018】
一実施形態において、補正回路は、補正回路の容量値を基準容量値から上げるための加算用回路と、補正回路の容量値を基準容量値から下げるための減算用回路と、を有してよい。加算用回路は、アレイ状に配置された複数の補正キャパシタを有してよい。減算用回路は、アレイ状に配置された複数の補正キャパシタを有してよい。基準容量値は、加算用回路がその最小の容量値をとり、減算用回路がその最大の容量値をとるときの補正回路の容量値であってよい。
【0019】
一実施形態において、複数の補正キャパシタの共通ノードは、キャパシタを介して複数の第2キャパシタの共通ノードに接続されてよい。
【0020】
一実施形態において、制御回路は、補正回路が比較器のオフセットを打ち消すように、補正回路に入力されるデジタル信号を逐次的に変化させ、逐次的に生成される比較結果に基づいて、比較器のオフセットデータを取得してよい。補正回路は、オフセットデータに応じたデジタル信号に基づいて、比較器のオフセットを補正するように、変換回路の出力信号を変化させてよい。
【0021】
一実施形態において、変換回路は、第1のデジタル信号に応じた第1の出力信号を生成し、第1のデジタル信号とは異なるコードを有する第2のデジタル信号に応じた第2の出力信号を生成してよい。制御回路は、変換回路に第1のデジタル信号が入力されているとき、補正回路が第1の出力信号と第2の出力信号との差分を打ち消すように、補正回路に入力されるデジタル信号を逐次的に変化させ、逐次的に生成される比較結果に基づいて、第2キャパシタの容量誤差データを取得してよい。補正回路は、容量誤差データに応じたデジタル信号に基づいて、第2キャパシタの容量誤差に応じた変換回路の出力信号の誤差を補正するように、変換回路の出力信号を変化させてよい。
【0022】
一実施形態において、制御回路は、アナログ入力信号をデジタル出力信号に変換するために、比較基準電圧と容量性D/Aコンバータの出力信号とを比較器が比較する際に、オフセットデータおよび容量誤差データに応じたデジタル信号を補正回路に入力してよい。
【0023】
一実施形態において、補正回路をα補正回路とするとき、容量性D/Aコンバータは、アレイ状に配置された複数の補正キャパシタを有するさらなる補正回路をさらに有してよい。α補正回路が有する複数の補正キャパシタの共通ノードは、複数の第1キャパシタの共通ノードに接続されてよい。さらなる補正回路が有する複数の補正キャパシタの共通ノードは、キャパシタを介して複数の第2キャパシタの共通ノードに接続されてよい。α補正回路は、入力されるデジタル信号に応じて、複数の補正キャパシタのそれぞれについて、共通ノードとは反対側の端部がオープンになるまたはグランドに接続されることによって、変換回路の出力信号を変化させてよい。
【0024】
他の実施形態に係るA/Dコンバータは、アナログ入力信号をデジタル出力信号に変換する。A/Dコンバータは、デジタル入力に応じたアナログの第1の出力信号およびアナログの第2の出力信号を生成する容量性D/Aコンバータと、第1の出力信号と第2の出力信号とを比較し、比較結果を出力する比較器と、比較結果に基づいてデジタル入力を生成する制御回路と、を備える。容量性D/Aコンバータは、MおよびNをそれぞれ1以上の整数とするとき、(M+N)ビットのデジタル信号に応じた第1の出力信号を生成する第1変換回路と、入力されるデジタル信号に応じて第1の出力信号を変化させる、アレイ状に配置された複数の補正キャパシタを含む第1補正回路と、(M+N)ビットのデジタル信号に応じた第2の出力信号を生成する第2変換回路と、入力されるデジタル信号に応じて第2の出力信号を変化させる、アレイ状に配置された複数の補正キャパシタを含む第2補正回路と、を有する。第1変換回路は、(M+N)ビットのデジタル信号の下位Mビットの変換を担う、アレイ状に配置された複数の第1キャパシタを有する下位側回路と、(M+N)ビットのデジタル信号の上位Nビットの変換を担う、アレイ状に配置された複数の第2キャパシタを有する上位側回路と、当該下位側回路と当該上位側回路との間に配置されたスケーリングキャパシタと、を含む。第2変換回路は、(M+N)ビットのデジタル信号の下位Mビットの変換を担う、アレイ状に配置された複数の第3キャパシタを有する下位側回路と、(M+N)ビットのデジタル信号の上位Nビットの変換を担う、アレイ状に配置された複数の第4キャパシタを有する上位側回路と、当該下位側回路と当該上位側回路との間に配置されたスケーリングキャパシタと、を含む。第1補正回路が有する複数の補正キャパシタの共通ノードは、複数の第1キャパシタの共通ノードおよび複数の第2キャパシタの共通ノードの一方に接続される。第2補正回路が有する複数の補正キャパシタの共通ノードは、複数の第3キャパシタの共通ノードおよび複数の第4キャパシタの共通ノードの一方に接続される。制御回路は、第1補正回路および第2補正回路のそれぞれに入力されるデジタル信号を逐次的に変化させ、逐次的に生成される比較結果に基づいて、第1補正回路に第1の出力信号を補正させ、第2補正回路に第2の出力信号を補正させるためのデータを取得する。
【0025】
この構成によれば、A/Dコンバータにより正確に動作させることができる。
【0026】
(実施形態)
以下、好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施形態は、開示および発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも開示および発明の本質的なものであるとは限らない。
【0027】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る逐次比較型ADC1の構成を示す図である。本実施形態に係る逐次比較型ADC1は、アナログ入力信号A
INをデジタル出力信号D
OUTに変換する。本実施形態に係る逐次比較型ADC1は、容量性DAC10、比較器20および制御回路30を備える。
【0028】
容量性DAC10は、デジタル入力SCTに応じたアナログの出力信号SDACを生成する。具体的には、容量性DAC10は、制御回路30から入力されるデジタル入力SCTに応じた出力信号SDACを比較器20に出力する。容量性DAC10は、アナログ入力信号AINに基づく信号をサンプリングできる。アナログ入力信号AINに基づく信号は、たとえばサンプリングホールド回路(図示しない。)がアナログ入力信号AINをサンプリングしてホールドした信号であってよい。
【0029】
比較器20は、アナログの出力信号SDACと比較基準電圧とを比較し、比較結果SCTを出力する。制御回路30は、比較器20の比較結果SCRに基づいてデジタル入力SCTを生成する。制御回路30は、デジタル入力SCTを容量性DAC10に出力する。制御回路30は、後述する容量性DAC10のα補正回路に入力されるデジタル信号を逐次的に変化させ、逐次的に生成される比較結果SCRに基づいて、後述する変換回路の出力信号をα補正回路に補正させるためのデータを取得する。本実施形態では、制御回路30は、変換回路において生じる寄生容量を補正するためのデータを取得する。
【0030】
ここで、本実施形態に係る容量性DAC10の詳細を説明する前に、参考技術に係る容量性DAC90で容量性DAC10を置き換えた場合について説明する。
図2は、参考技術1に係る容量性DAC90の回路図である。参考技術1に係る容量性DAC90は、14ビットのデジタル信号に応じたアナログの出力信号DACOUTを生成する変換回路で構成される。
図2に示すように、容量性DAC90は、14ビットのデジタル信号の下位7ビットの変換を担う下位側回路900、14ビットのデジタル信号の上位7ビットの変換を担う上位側回路940およびスケーリングキャパシタ930を備える。
【0031】
下位側回路900は、共通線902(共通ノード)およびアレイ状に配置された複数のキャパシタ910~916(第1キャパシタ)を有する。キャパシタ910~916は、14ビットのうちの下位7ビットに対応する。キャパシタ910~916の容量値は、「C」を基準容量値とする(以下、同様に基準容量値を[C]とする。)と、それぞれ[1C]、[2C]、[4C]、[8C]、[16C]、[32C]および[64C]である。すなわち、キャパシタ910~916は、それぞれ、所定の比率で重み付けされた容量値(=2xC(ただし、x=0~6の整数))をもつ。
【0032】
キャパシタ910~916のそれぞれの一端は、共通線902に接続される。また、キャパシタ910~916のそれぞれは、信号b0~b6のそれぞれが他端に入力されるように配置される。信号b0~b6は、上側の基準電圧VREFHまたは下側の基準電圧VREFLであってよい。たとえば、キャパシタ910~916のそれぞれの他端には、スイッチ(図示しない。)が接続されており、そのスイッチの切り替えに応じてキャパシタ910~916の他端に基準電圧VREFHまたは基準電圧VREFLが供給されてよい。この場合、当該スイッチは、制御回路30からのデジタル入力SCTに基づき駆動してよい。
【0033】
上位側回路940は、出力線942(出力ノード)およびアレイ状に配置された複数のキャパシタ950~956(第2キャパシタ)を有する。キャパシタ950~956は、14ビットのうちの上位7ビット分に対応する。キャパシタ950~956の容量値は、それぞれ[1C]、[2C]、[4C]、[8C]、[16C]、[32C]および[64C]である。すなわち、キャパシタ950~956は、それぞれ、所定の比率で重み付けされた容量値(=2yC(ただし、y=0~6の整数))をもつ。
【0034】
キャパシタ950~956のそれぞれの一端は、出力線942に接続される。また、キャパシタ950~956のそれぞれは、信号b7~b13のそれぞれが他端に入力されるように配置される。信号b7~b13は、上側の基準電圧VREFHまたは下側の基準電圧VREFLであってよい。たとえば、キャパシタ950~956のそれぞれの他端には、スイッチ(図示しない。)が接続されており、そのスイッチの切り替えに応じてキャパシタ950~956の他端に基準電圧VREFHまたは基準電圧VREFLが供給されてよい。この場合、当該スイッチは、制御回路30からのデジタル入力SCTに基づき駆動してよい。
【0035】
スケーリングキャパシタ930は、下位側回路900と上位側回路940との間に配置される。具体的には、スケーリングキャパシタ930の一端は、下位側回路900の共通線902に接続され、スケーリングキャパシタ930の他端は、上位側回路940の出力線942に接続される。スケーリングキャパシタ930の容量値は、[1C]である。
【0036】
容量性DAC90には、容量性DAC90の構成に基づく寄生容量が生じる。たとえば、下位側回路900において、寄生容量904,920~926が生じる。寄生容量904は、容量値αを有し、一端が共通線902に接続され、他端が接地されるように生じる。寄生容量920~926のそれぞれは、キャパシタ910~916のそれぞれに並列に接続されるように生じる。寄生容量920~926のそれぞれの容量値は、l0~l6のそれぞれであるものとする。
【0037】
また、上位側回路940において、寄生容量944,960~966が生じる。寄生容量944は、容量値βを有し、一端が出力線942に接続され、他端が接地されるように生じる。寄生容量960~966のそれぞれは、キャパシタ950~956のそれぞれに並列に接続されるように生じる。寄生容量960~966のそれぞれの容量値は、m0~m6のそれぞれであるとする。
【0038】
さらに、スケーリングキャパシタ930と並列に接続されるように、寄生容量932が生じる。寄生容量932の容量値は、γであるものとする。
【0039】
容量性DAC90の出力信号DACOUTは、次式で表される。
【数1】
・・・(1)
【0040】
ここで、容量値α、β、γ、l0~l6、m0~m6を0とすると、出力信号DACOUTは、次の理論式で表される。
【数2】
・・・(2)
【0041】
式(1)において、右辺の分子に着目すると、コード(127)およびコード(128)は、次式で表される。
【数3】
・・・(3)
【数4】
・・・(4)
【0042】
LPE(Layout Parasitic Extraction)により抽出される各値を式(3)および式(4)挿入するとα=0.68559C,γ=0.05836C,m0=0.02137C,l0~l6=2.04751Cのとき、
DACOUT(コード127)=1.04425
DACOUT(コード128)=1.02137
となる。このとき、コード127>コード128の関係になっている。このため、容量性DAC90の逐次比較において、デジタル入力のコードがコード127からコード128に切り替わる際に、ミスコードが発生する。
【0043】
本来の正しい関係である(コード128)-(コード127)=1/128になるためには、次式が成り立つ必要がある。
【数5】
・・・(5)
【数6】
・・・(6)
【0044】
容量値l0~l6およびm0~m6を0とすると、α=127γとなる。したがって、下位側回路900のビット数をn(
図2に示す例ではn=7)とすると、α=(2
n-1)γとなる。
【0045】
図3は、参考技術2に係る容量性DAC92の回路図である。
図3では、
図2に示す容量性DAC90の構成と実質的に同一の機能を有する構成には同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。容量性DAC92は、制御回路30から入力されるデジタル入力に応じて、アナログの出力信号DACOUT91を比較器20に出力する。
【0046】
比較器20は、第1入力端子22および第2入力端子24を有する。差動式の場合には、第1入力端子22には、本実施形態に係る容量性DAC10と同様の構成を有する容量性DACを用意し、その容量性DACの出力信号が入力される。一方、シングルの場合には、第1入力端子22には、
図3に示されるように比較基準電圧が入力される。また、第2入力端子24には、容量性DAC10の出力信号が入力される。
【0047】
参考技術2に係る容量性DAC92は、参考技術1に係る容量性DAC90に加えて、α補正回路970およびスイッチ990を備える。下位側回路900と上位側回路940との間には、スケーリングキャパシタ934が配置される。
【0048】
α補正回路970は、下位側回路900の共通線902に接続され、容量値が切り替え可能に構成されている。α補正回路970は、アレイ状に配置された複数のキャパシタ971~976(補正キャパシタ)およびスイッチ981~986および共通線980を有する。キャパシタ971~976のそれぞれは、スイッチ981~986のそれぞれと対を構成する。キャパシタ971~976の容量値は、それぞれ[1C]、[1/4C]、[1/2C]、[1C]、[2C]および[4C]である。
【0049】
共通線980は、下位側回路900の共通線902に接続される。また、キャパシタ971~976のそれぞれは、一端が共通線980に接続され、他端がスイッチ981~986のそれぞれの一端に接続される。さらに、スイッチ981~986の他端は、グランドに接続される。スイッチ981~986のオン,オフは、たとえば制御回路30からのデジタル入力によって制御されてよい。
【0050】
スケーリングキャパシタ934の容量値C1は、C1=(1+1/127)Cで表される。この容量値C1の式の右辺第2項の分子1Cは、後述するように逐次比較の処理において最後に接地されるキャパシタ971の容量値1Cに対応する。この容量値は、寄生容量904の容量値αと同様に扱われ、上述したα=127γの関係で調整される必要がある。このため、容量値C1の式の右辺第2項は、1C/127となっている。また、スイッチ990は、一端が上位側回路940の出力線942に接続され、他端に比較基準電圧が供給されるように配置される。
【0051】
α補正回路970のスイッチ981~986のオン,オフを制御することにより、α補正回路970の容量値Correction_αを調整できる。式(6)より、α補正回路970の容量値Correction_αが次の式(7)を満たすとき、(コード128)-(コード127)=1/128になる。
【数7】
・・・(7)
【0052】
参考技術2に係る容量性DAC92では、コード128に対応する出力信号DACOUT91をサンプリングして、その出力信号DACOUT91を比較基準電圧とする。以降、α補正回路970の容量値を切り替えながら、コード127に対応する出力信号と比較基準電圧とを逐次比較し、その比較結果に応じてα補正回路970の容量値を切り替え、その容量値を最適な値に近づけていく。以下、
図4~
図6を参照しながら、α補正回路970の容量値を決定するまでの流れを説明する。
【0053】
まず、サンプリング時では、
図4に示すように、下位側回路900および上位側回路940のキャパシタ910~916,950~956に、コード128に対応する電圧を供給する。このとき、スイッチ990は、オンとなり、出力線942に比較基準電圧が供給される。容量性DAC92の各キャパシタ910~916,950~956には、この比較基準電圧およびコード128に対応する電圧に応じた電荷が保持される。
【0054】
具体的には、上位側回路940には、最下位のビットを1として、残りのビットを0とした7ビットのデジタル入力が入力され、上位側回路のキャパシタ950~956に、そのデジタル入力に応じた電圧が供給される。また、下位側回路900には、すべてのビットを0とした7ビットのデジタル入力が入力され、下位側回路900のキャパシタ910~916に、そのデジタル入力に応じた電圧が供給される。より具体的には、キャパシタ910~916,951~956の他端に電圧VREFLが供給され、キャパシタ950の他端に電圧VREFHが供給される。なお、下位側回路900および上位側回路940に入力されるデジタル入力は、制御回路30により生成される。
【0055】
このとき、α補正回路970のスイッチ981~986はすべてオフであり、α補正回路970の容量値は実質的に0である。以下、このコード128のときの出力信号DACOUT92を比較基準電圧として、コード127のときの出力信号と比較基準電圧とを逐次比較しながら、α補正回路970の容量値を調整する。このため、式(7)について、右辺をさらに1Cを減算した値が目標値となる。ここでは、目標のα補正回路970の容量値を3.9774Cとする。
【0056】
1回目の逐次比較では、
図5に示すように、スイッチ990をオンからオフに切り替えたあと、下位側回路900および上位側回路940のキャパシタに、コード127に対応する電圧を供給する。これにより、容量性DAC92の各キャパシタにおいて、コード127に応じた電荷移動が生じ、DACOUT93は、電荷移動に応じて比較基準電圧から変化した結果となる。この変化後のDACOUT93と比較器20の第1入力端子22に入力される比較基準電圧とが比較され、その比較結果に応じて、次の逐次比較時におけるα補正回路970の容量値が決定される。なお、差動式の場合には、サンプリング時と逐次比較時とにおける、比較器20に入力される2つの容量性DACの出力の変化に応じて、次の逐次比較時におけるα補正回路970の容量値が決定される。
【0057】
具体的には、キャパシタ910~916の他端に電圧VREFHを供給し、キャパシタ950~956の他端に電圧VREFLを供給する。このとき、α補正回路970のキャパシタ976に接続されたスイッチ986をオンにし、その他のスイッチ981~985をオフにする。これにより、α補正回路970の容量値は4Cとなる。比較器20は、このときの出力信号DACOUT93と比較基準電圧とを比較し、制御回路30は、その比較結果に基づいて、次の逐次比較におけるスイッチ986のオン,オフを決定する。
【0058】
以下、α補正回路970の容量値およびスイッチ990のオン,オフを切り替えながら出力信号と比較基準電圧とを逐次比較し、その比較結果に基づいて、α補正回路970の容量値が目標の補正容量値である3.9774Cに近づくように、スイッチ981~986のオン,オフを切り替えていく。
図5に示すα補正回路970の容量値は、4Cであり、目標の容量値よりも大きいため、次の逐次比較において、スイッチ986をオンからオフに切り替える。
【0059】
2回目の逐次比較では、
図6Aに示すように、スイッチ985をオフ、スイッチ981~984,986をオフにする。このときの容量性DAC92の出力信号と比較基準電圧が比較され、その比較結果に基づいて、次の逐次比較におけるスイッチ985のオン,オフが決定される。ここでは、α補正回路970の容量値が2Cであり、目標の容量値より小さいため、次の逐次比較において、スイッチ985をオンのままにする。
【0060】
3回目の逐次比較では、
図6Bに示すように、スイッチ981~983,986をオフ、スイッチ984,985をオンにする。このときの容量性DAC92の出力信号と比較基準電圧とが比較され、その比較結果に基づいて、次の逐次比較におけるスイッチ984のオン,オフが決定される。ここでは、α補正回路970の容量値が3Cであり、目標の容量値より小さいため、次の逐次比較において、スイッチ984をオンのままとする。
【0061】
4回目の逐次比較では、
図6Cに示すように、スイッチ981,982,986をオフ、スイッチ983,984,985をオンにする。このときの容量性DAC92の出力信号と、比較基準電圧とを比較し、その比較結果に基づいて、次の逐次比較のタイミングにおけるスイッチ983のオン,オフが決定される。ここでは、α補正回路970の容量値が3.5Cであり、目標の容量値より小さいため、次の逐次比較において、スイッチ983をオンのままにする。
【0062】
5回目の逐次比較では、
図6Dに示すように、スイッチ981,985,986をオフ、スイッチ982~984をオンにする。このときの容量性DAC92の出力信号と比較基準電圧とが比較され、その比較結果に基づいて、次の逐次比較におけるスイッチ982のオン,オフが決定される。ここでは、α補正回路970の容量値が3.75Cであり、目標の容量値より小さいため、次の逐次比較において、スイッチ982をオンのままにする。
【0063】
5回目の逐次比較の動作後には、
図6Eに示すように、サンプリング時に1Cを減算した分、スイッチ981をオンにして、キャパシタ971の容量値1Cをα補正回路970の容量値の一部として加える。これにより、下位側回路900およびα補正回路970の容量値を(127/128)Cに近づけることができる。
【0064】
以上のようにα補正回路970のスイッチ981~986を調整することにより、最適なα補正回路970の容量値を実現できる。しかしながら、上述の逐次比較の動作において、スイッチ981~986の切り替えの動作により、スイッチ981~986のフィードスルーが生じる。このフィードスルーが下位側回路900の共通線902の電荷量に影響を与えるため、適切な逐次比較の動作を実現できないことがある。
【0065】
図7は、本開示の一実施形態に係る容量性DAC10の回路図である。容量性DAC10は、参考技術1に係る容量性DAC90に加えて、α補正回路100、リセットスイッチ160およびスイッチ180(基準スイッチ)を備える。下位側回路900と上位側回路940との間には、スケーリングキャパシタ936が配置される。
【0066】
α補正回路100は、加算用回路120および減算用回路140を有する。加算用回路120は、α補正回路100の容量値を基準容量値から上げるための回路であり、減算用回路140は、α補正回路100の容量値を基準容量値から下げるための回路である。加算用回路120および減算用回路140のそれぞれは、複数のキャパシタを有し、それぞれの容量値を切り替え可能に構成されている。ここで、基準容量値は、加算用回路120がその最小容量値をとり、減算用回路140がその最大容量値をとるときのα補正回路100の容量値である。本実施形態では、加算用回路120の最小容量値は0であり、減算用回路140の最大容量値は、7.75Cであるため、基準容量値は、7.75Cである。
【0067】
加算用回路120は、共通線130、アレイ状に配置された複数のキャパシタ121~126およびスイッチ131~136(スイッチング素子)を有する。キャパシタ121~126のそれぞれは、一端が共通線130に接続され、他端がスイッチ131~136のそれぞれの一端に接続される。キャパシタ121~126の容量値は、それぞれ[1C]、[1/4C]、[1/2C]、[1C]、[2C]および[4C]である。スイッチ131~136のそれぞれの他端は、グランドに接続される。スイッチ131~136のそれぞれのオン,オフが切り替わることにより、加算用回路120の容量値が切り替わる。たとえば、スイッチ131~136がすべてオフのとき、加算用回路120の容量値は、最小容量値として0をとり、スイッチ131~136がすべてオンのとき、加算用回路120の容量値は、最大容量値として8.75Cをとる
【0068】
減算用回路140は、加算用回路120と共通の共通線130、アレイ状に配置された複数のキャパシタ141~145およびスイッチ151~155(スイッチング素子)を有する。キャパシタ141~145のそれぞれは、一端が共通線130に接続され、他端がスイッチ151~155のそれぞれの一端に接続される。キャパシタ141~145の容量値は、それぞれ[1/4C]、[1/2C]、[1C]、[2C]および[4C]である。スイッチ151~155のそれぞれの他端は、グランドに接続される。スイッチ151~155のそれぞれのオン,オフが切り替わることにより、減算用回路140の容量値が切り替わる。たとえば、スイッチ151~155がすべてオフのとき、減算用回路140の容量値は、最小容量値として0をとり、スイッチ151~155がすべてオンのとき、減算用回路140の容量値は、最大容量値として7.75Cをとる。
【0069】
リセットスイッチ160は、一端がα補正回路100の共通線130に接続され、他端がグランドに接続されるように配置される。リセットスイッチ160をオンにすることにより、共通線130を通じて下位側回路900の共通線902をグランドに接続し、共通線902の電荷量をリセットできる。
【0070】
スイッチ180は、一端が上位側回路940の出力線942に接続され、他端に比較基準電圧が供給されるように配置される。スイッチ180がオンになると、出力線942に比較基準電圧が供給される。
【0071】
本実施形態に係るスケーリングキャパシタ936の容量値C2は、C2=(1+8.75/127)Cで表される。この容量値C2の式の右辺第2項の分子8.75Cの内訳は、減算用回路140の基準容量値7.75Cと加算用回路120の接地されるキャパシタ121の容量値1Cとの和に対応する。この容量値は、寄生容量904の容量値αと同様に扱われ、上述したα=127γの関係で調整される必要がある。このため、容量値C2の式の右辺第2項は、8.75C/127となっている。
【0072】
比較器20は、第1入力端子22および第2入力端子24を有する。差動式の場合には、第1入力端子22には、本実施形態に係る容量性DAC10と同様の構成を有する容量性DACを用意し、その容量性DACの出力信号が入力される。一方、シングルの場合には、
図7に示すように、第1入力端子22に比較基準電圧が入力される。また、第2入力端子24には、容量性DAC10の出力信号DACOUT1が入力される。比較器20は、第1入力端子22に入力される信号と第2入力端子24に入力される信号との差分に応じた信号S
CRを制御回路30に出力する。
【0073】
以下、
図8~
図11を参照して、本実施形態に係る容量性DAC10の動作の一例を説明する。以下では、主として、容量性DAC10の出力電圧と比較基準電圧との逐次比較を3回行う例を説明する。
【0074】
まず、
図8および
図9を参照しながら、1回目の逐次比較の流れを説明する。まず、
図8Aに示すように、リセットスイッチ160をオンにし、その後、加算用回路120および減算用回路140のスイッチ131~136,151~155のオン,オフを設定する。リセットスイッチ160がオンになると、共通線130の電荷量がリセットされる。この状態でスイッチ131~136,151~155のオン,オフが設定されると、スイッチの切り替えに基づくフィードスルーによる共通線130の電荷量への影響が抑制される。次いで、
図8Bに示すように、リセットスイッチ160をオンからオフに切り替える。
【0075】
次いで、
図9Aに示すように、コード128に対応する電圧をキャパシタ910~916,950~956の他端に供給する。具体的には、最下位のビットを1とし、残りのビットを0とした7ビットのデジタル入力が上位側回路940に入力され、すべてのビットを0とした7ビットのデジタル入力が下位側回路900に入力される。これにより、キャパシタ910~916,951~956に下側の基準電圧が供給され、キャパシタ950に上側の基準電圧が供給されてよい。このとき、上位側回路940の出力線942に比較基準電圧が供給されるように、スイッチ180をオンとする。これにより、容量性DACの各キャパシタ910~916,950~956には、比較基準電圧およびコード128に対応する電圧に応じた電荷が保持される。
【0076】
次いで、
図9Bに示すように、スイッチ180をオンからオフに切り替え、コード127に対応する電圧をキャパシタ910~916,950~956に供給する。これにより、容量性DACの各キャパシタ910~916,950~956において、電荷移動が生じる。具体的には、すべてのビットを0とした7ビットのデジタル入力が上位側回路940に入力され、すべてのビットを1とした7ビットのデジタル入力が下位側回路900に入力される。これにより、コード127に対応する電圧がキャパシタ910~916,950~956の他端に供給される。具体的には、キャパシタ910~916に上側の基準電圧、キャパシタ950~956に下側の基準電圧が供給される。比較器20は、このときの出力信号DACOUT12と比較基準電圧とを比較する。制御回路30は、比較結果に応じて、加算用回路120および減算用回路140のいずれの容量値を切り替えるかを決定する。ここでは、減算用回路140の容量値が切り替わる例を説明する。
【0077】
図10を参照しながら、2回目の逐次比較の流れを説明する。
図10Aに示すように、リセットスイッチ160をオフからオンに切り替え、その状態で減算用回路140のスイッチ155をオンからオフにする。これにより、α補正回路100の容量値が基準容量値から4C下がる。その後、
図10Bに示すように、リセットスイッチ160をオンからオフに切り替える。これにより、スイッチ155の切り替えに応じたフィードスルーが共通線130の電荷量に影響を与えることを抑制しつつ、α補正回路100の容量値を切り替えることができる。
【0078】
次いで、
図9Aを参照して説明したように、スイッチ180をオフからオンに切り替え、コード128に対応する電圧をキャパシタ910~916,950~956に供給し、そのときの出力電圧を比較基準電圧とする。次いで、
図9Bを参照して説明したように、スイッチ180をオンからオフに切り替え、コード127に対応する電圧をキャパシタ910~916,950~956に供給する。比較器20は、このときの出力電圧と比較基準電圧とを比較する。制御回路30は、その比較結果に基づいて、次の逐次比較におけるスイッチ155のオン,オフを決定する。ここでは、スイッチ155がオフからオンに切り替わる例を説明する。
【0079】
次いで、
図11を参照しながら、3回目の逐次比較の流れを説明する。
図11Aに示すように、リセットスイッチ160をオフからオンに切り替え、その状態で減算用回路140のスイッチ155をオフからオンに切り替え、スイッチ154をオフからオンに切り替える。これにより、補正回路100の容量値が、基準容量値から2C下がる。その後、
図11Bに示すように、リセットスイッチ160をオンからオフに切り替える。これにより、スイッチ154,155の切り替えによるフィードスルーが共通線130の電荷量に影響を与えることを抑制しつつ、α補正回路100の容量値を切り替えることができる。
【0080】
次いで、
図9Aを参照して説明したように、スイッチ180をオフからオンに切り替え、コード128に対応する電圧をキャパシタ910~916,950~956に供給し、そのときの出力電圧を比較基準電圧とする。次いで、
図9Bを参照して説明したように、スイッチ180をオンからオフに切り替え、コード127に対応する電圧をキャパシタ910~916,950~956に供給する。比較器20は、このときの出力電圧と比較基準電圧とを比較する。制御回路30は、その比較結果に基づいて、次の逐次比較におけるスイッチ154のオン,オフを決定する。
【0081】
以降、1回目~3回目の逐次比較と同様にして、出力電圧と比較基準電圧との逐次比較が行われ、スイッチ153,152,151の順で、スイッチのオン,オフが決まり、α補正回路100の容量値が調整される。最後の逐次比較が終わると、スイッチ151のオン,オフの状態が決定され、加算用回路120のスイッチ131がオンとなり、キャパシタ121の他端がグランドに接続される。これにより、α補正回路100の容量値を最適な値に調整できる。
【0082】
図12は、本開示の一実施形態に係る容量性DAC10を駆動する制御回路30の動作の一例を示すタイミングチャートである。
図13は、信号r_timvins、r_lsborstp、vrefs[13:0]、r_calalp[10:0]が入力される容量性DAC10の信号線を示す図である。
【0083】
制御回路30は、リセットスイッチ160を制御する信号r_timvins、スイッチ180を制御する信号r_lsborstp、α補正回路100のスイッチ131~136,151~155を制御するための信号vrefs[13:0]、下位側回路900および上位側回路940のキャパシタ910~916,950~956に供給される電圧を制御するための信号r_calalp[10:0]を生成して容量性DAC10に出力する。これらの信号は、クロック信号CLKの立ち上がりに応じて、必要に応じて切り替わる。
【0084】
タイミングt0において、信号r_timvinsはロー、信号r_lsborstpはロー、信号r_calalp[10:0]は41Fである。このとき、
図13に示すように、リセットスイッチがオフ、スイッチ180がオフになり、α補正回路100のキャパシタ121~126,141~145に41Fのデジタル信号に応じた電圧が供給されるように、スイッチ131,151~155がオン、スイッチ132~136がオフになる。
【0085】
タイミングt1~t3では、スイッチの切り替えによるフィードスルーの影響を抑制しつつ、α補正回路100の容量値を基準容量値に設定する。具体的には、タイミングt1において、信号r_lsborstpがハイに切り替わり、リセットスイッチ160がオフからオンに切り替わる。次いで、タイミングt2において、信号r_calalp[10:0]が01Fとなり、スイッチ131がオンからオフに切り替わる。さらに、タイミングt3において、信号r_lsborstpがハイに切り替わり、リセットスイッチ160がオンからオフに切り替わる。
【0086】
タイミングt4~t6では、サンプリングおよび1回目の逐次比較が行われる。まず、タイミングt4において、信号r_timvinsがハイに切り替わり、比較器20に比較基準電圧が供給される。さらに、このタイミングで、vrefs[13:0]が0080となり、下位側回路900および上位側回路940の各キャパシタにコード128に対応する電圧が供給される。
【0087】
次いで、タイミングt5において、信号r_timvinsがローに切り替わり、スイッチ180がオフになる。さらに、vrefs[13:0]が007Fとなり、下位側回路900および上位側回路940の各キャパシタにコード127に対応する電圧が供給される。このときの容量性DAC10の出力信号と比較基準電圧とが比較(1回目の逐次比較)され、その比較結果に基付いて、次の逐次比較において、加算用回路120および減算用回路140のいずれの容量値を切り替えるかが決定される。
【0088】
次いで、タイミングt6において、信号r_timvinsおよび信号r_lsborstpがハイに切り替わり、リセットスイッチ160およびスイッチ180がオンになる。次いで、タイミングt7において、1回目の逐次比較に結果に応じて、vrefs[13:0]が21Fまたは00Fとなり、加算用回路120および減算用回路140のいずれかの容量値が切り替わる。次いで、2回目以降の逐次比較が行われ、α補正回路100の容量値が調整される。
【0089】
図14Aは、参考技術1に係る容量性DAC90を用いた場合の逐次比較型ADCにおける各コードのDNL(微分非直線性誤差)の一例を示す図である。
図14Bは、本実施形態に係る容量性DAC10を用いた場合について、α補正回路100の容量値を最適化したあとにおける逐次比較型ADC1における各コードのDNLの一例を示す図である。
【0090】
図14Aに示すように、参考技術1に係る逐次比較型ADCでは、寄生容量αの影響により、コード127~128において、ミスコードが発生することがわかる。一方、
図14Bに示すように、本実施形態に係る逐次比較型ADC1によれば、α補正回路100の容量値を最適化することにより、コード127~128におけるミスコードの発生を抑制できることがわかる。
【0091】
本実施形態では、上位側回路940に7ビットのデジタル信号、下位側回路900に7ビットのデジタル信号が入力される例を説明した。これに限らず、上位側回路は、任意のM1ビット(M1:正の整数)のデジタル信号が入力され、下位側回路は、任意のN1ビット(N1:正の整数)のデジタル信号が入力されてよい。この場合、上位側回路および下位側回路は、必要に応じた複数のキャパシタを有してよい。
【0092】
(第2実施形態)
図15は、第2実施形態に係る逐次比較型ADC2のブロック図である。本実施形態に係る逐次比較型ADC2は、差動型であり、アナログ入力信号(正のアナログ入力信号A
INP、負のアナログ入力信号A
INN)をデジタル出力信号D2
OUTに変換する。デジタル出力信号D2
OUTは、M2およびN2をそれぞれ1以上の整数として、(M2+N2)ビットの信号であり、本実施形態では、M2およびN2は、いずれも7である。本実施形態に係る逐次比較型ADC2は、容量性DAC40、比較器60および制御回路62を備える。
【0093】
容量性DAC40は、デジタル入力S2CTに応じたアナログの出力信号SDACP(第1出力信号)およびデジタル入力S2CTに応じたアナログの出力信号SDACN(第2出力信号)を生成する。また、容量性DAC40は、アナログ入力信号AINP,AINNをサンプリングできる。
【0094】
比較器60は、出力信号SDACPと出力信号SDACNとを比較し、比較結果を出力する。出力信号SDACNは、出力信号SDACPに対する比較基準電圧であり、出力信号SDACPは、出力信号SDACNに対する比較基準電圧である。
【0095】
制御回路62は、比較結果S2CRに基づいてデジタル入力S2CTを生成する。制御回路62は、アナログ入力信号AINP,AINNをデジタル出力信号D2OUTに変換するために、デジタル入力S2CTを逐次的に変化させる。制御回路62は、逐次的に生成される比較結果S2CRに基づいて、デジタル出力信号D2OUTを生成する。
【0096】
図16は、第2実施形態に係る容量性DAC40の回路構成を説明するための図である。容量性DAC40は、第1変換回路42、第2変換回路44、第1補正回路50、第2補正回路52、基準電圧ライン480、スイッチ482,484およびキャパシタ492,496を有する。
【0097】
第1変換回路42は、(M2+N2)ビットのデジタル信号bp00~bp13をアナログの出力信号SDACPに変換する。出力信号SDACPは、比較器60の反転入力端子に入力される。第1変換回路42は、下位側回路400と、上位側回路420と、スケーリングキャパシタ490と、を含む。
【0098】
下位側回路400は、(M2+N2)ビットのデジタル信号bp00~bp13の下位M2ビットの変換を担い、アレイ状に配置された複数の第1キャパシタ401~407を有する。複数の第1キャパシタ401~407の容量値は、それぞれ、[1C]、[2C]、[4C]、[8C]、[16C]、[32C]および[64C]である。複数の第1キャパシタ401~407の一端は、共通ノード410に共通に接続される。複数の第1キャパシタ401~407の他端には、下位M2ビットのデジタル信号bp00~bp06のうちの対応する信号がそれぞれ入力される。
【0099】
上位側回路420は、(M2+N2)ビットのデジタル信号bp00~bp13の上位N2ビットの変換を担う、アレイ状に配置された複数の第2キャパシタ421~427を有する。複数の第2キャパシタ421~427の容量値は、それぞれ、[1C]、[2C]、[4C]、[8C]、[16C]、[32C]および[64C]である。複数の第2キャパシタ421~427の一端は、比較器60の非反転入力端子に接続された共通ノード430に共通に接続される。複数の第2キャパシタ421~427の他端には、上位N2ビットのデジタル信号bp07~bp13のうちの対応する信号がそれぞれ入力される。
【0100】
スケーリングキャパシタ490は、下位側回路400と上位側回路420との間に配置される。具体的には、スケーリングキャパシタ490の一端は、下位側回路400の共通ノード410に接続され、スケーリングキャパシタ490の他端は、上位側回路420の共通ノード430に接続される。キャパシタ492は、上位側回路420と第1補正回路50との間に配置される。キャパシタ492の一端は、上位側回路420の共通ノード430に接続される。
【0101】
第2変換回路44は、(M2+N2)ビットのデジタル信号bn00~bn13をアナログの出力信号SDACNに変換する。出力信号SDACNは、比較器60の非反転入力端子に入力される。第2変換回路44は、下位側回路440と、上位側回路460と、スケーリングキャパシタ494と、を含む。
【0102】
下位側回路440は、(M2+N2)ビットのデジタル信号bn00~bn13の下位M2ビットの変換を担い、アレイ状に配置された複数の第3キャパシタ441~447を有する。複数の第3キャパシタ441~447の容量値は、それぞれ、[1C]、[2C]、[4C]、[8C]、[16C]、[32C]および[64C]である。複数の第3キャパシタ441~447の一端は、共通ノード450に共通に接続される。複数の第3キャパシタ441~447の他端には、下位M2ビットのデジタル信号bn00~bn06のうちの対応する信号がそれぞれ入力される。
【0103】
上位側回路460は、(M2+N2)ビットのデジタル信号bn00~bn13の上位N2ビットの変換を担い、アレイ状に配置された複数の第4キャパシタ461~467を有する。複数の第4キャパシタ461~467の容量値は、それぞれ、[1C]、[2C]、[4C]、[8C]、[16C]、[32C]および[64C]である。複数の第4キャパシタ461~467の一端は、比較器60の非反転入力端子に接続された共通ノード470に共通に接続される。複数の第4キャパシタ461~467の他端には、上位N2ビットのデジタル信号bn07~bn13のうちの対応する信号がそれぞれ入力される。
【0104】
スケーリングキャパシタ494は、下位側回路440と上位側回路460との間に配置される。具体的には、スケーリングキャパシタ494の一端は、下位側回路440の共通ノード450に接続され、スケーリングキャパシタ494の他端は、上位側回路460の共通ノード470に接続される。キャパシタ496は、上位側回路460と第2補正回路52との間に配置される。キャパシタ496の一端は、上位側回路460の共通ノード470に接続される。
【0105】
第1補正回路50は、アレイ状に配置された複数の第1補正キャパシタ501~509を有し、入力されるデジタル信号cp00~cp08に応じて第1変換回路42の出力信号SDACPを変化させる。複数の第1補正キャパシタ501~509の容量値は、それぞれ、[1C]、[2C]、[4C]、[8C]、[16C]、[32C]、[64C]、[128C]および[256C]である。本実施形態では、第1補正回路50には9ビットのデジタル信号が入力されるが、第1補正回路50は、任意のビット数のデジタル信号が入力されるように構成されてよい。
【0106】
複数の第1補正キャパシタ501~509の一端は、キャパシタ492の他端に接続された共通ノード510に共通に接続される。複数の第1補正キャパシタ501~509の他端には、それぞれ、デジタル信号cp00~cp08の対応する信号が入力される。第1補正回路50の共通ノード510は、キャパシタ492の他端に接続され、キャパシタ492を介して上位側回路420の共通ノード430に接続される。
【0107】
第2補正回路52は、アレイ状に配置された複数の第2補正キャパシタ521~529を有し、入力されるデジタル信号cn00~cn08に応じて第2変換回路44の出力信号SDACNを変化させる。複数の第2補正キャパシタ521~529の容量値は、それぞれ、[1C]、[2C]、[4C]、[8C]、[16C]、[32C]、[64C]、[128C]および[256C]である。本実施形態では、第2補正回路52には9ビットのデジタル信号が入力されるが、第2補正回路52は、任意のビット数のデジタル信号が入力されるように構成されてよい。
【0108】
複数の第2補正キャパシタ521~529の一端は、キャパシタ496の他端に接続された共通ノード510に共通に接続される。複数の第2補正キャパシタ521~529の他端には、それぞれ、デジタル信号cn00~cn08のうちの対応する信号が入力される。第2補正回路52の共通ノード530は、キャパシタ496の他端に接続され、キャパシタ496を介して上位側回路460の共通ノード470に接続される。
【0109】
基準電圧ライン480には、基準電圧VCMが供給される。基準電圧ライン480と共通ノード430との間には、スイッチ482が配置される。スイッチ482がオンになることにより、共通ノード430に基準電圧VCMが供給される。基準電圧ライン480と共通ノード470との間には、スイッチ484が配置される。スイッチ484がオンとなることにより、共通ノード470に基準電圧VCMが供給される。なお、スイッチ482,484の動作は、制御回路62からのデジタル入力S2CTによって制御されてよい。
【0110】
(比較器のオフセットの抽出)
比較器60の入力には、オフセットが生じる。比較器60にこのオフセットをキャンセルする機能がない場合、あるいはその機能が十分でない場合には、比較器60の入力にはオフセットが残る。本実施形態に係る逐次比較型ADC2は、そのオフセットを抽出し、第1補正回路50および第2補正回路52を用いて、そのオフセットをキャンセルできる。
【0111】
本実施形態に係る逐次比較型ADC2が比較器60のオフセットを抽出する動作を説明する。ここでは、比較器60の反転入力端子への入力に+10LSBのオフセット、比較器60の非反転入力端子への入力に-10LSBのオフセットがあるものとする。オフセットを抽出する処理では、容量性DAC40が基準のデジタル信号をサンプリングする。制御回路62は、比較器60のオフセットを打ち消すように、第1補正回路50および第2補正回路52に入力されるデジタル信号を逐次的に変化させる。制御回路62は、逐次的なデジタル信号の変化に応じて得られる比較結果S2CRに基づいて、比較器60のオフセットデータを取得する。
【0112】
図17は、サンプリング時における容量性DAC40の状態を説明するための図である。
図17に示すように、第1変換回路42および第2変換回路44のそれぞれには、0000hのデジタル信号(すべてV
REFL)が入力される。なお、第1変換回路42および第2変換回路44に入力されるデジタル信号は、0000hに限らず、任意の信号であってよい。第1補正回路50および第2補正回路52のそれぞれには、100h(最上位ビットがV
REFHで、残りがV
REFL)のデジタル信号が入力される。また、スイッチ482,484は、いずれもオンになっており、第1変換回路42の出力信号S
DACPおよび第2変換回路44の出力信号S
DACNは、いずれも基準電圧VCMとなっている。
【0113】
以降、制御回路62は、スイッチ482,484をオフにして、第1補正回路50および第2補正回路52に入力されるデジタル信号を逐次的に変化させながら、比較器60から比較結果S2CRを取得する。
【0114】
1回目の逐次比較のとき、第1変換回路42および第2変換回路44のそれぞれに0000hのデジタル信号が入力され、第1補正回路50および第2補正回路52のそれぞれに100hのデジタル信号が入力される。比較器60は、このときの出力信号SDACPと出力信号SDACNとを比較する。出力信号SDACPおよび出力信号SDACNは、いずれも基準電圧VCMであり、非反転入力端子に+10LSBのオフセット、反転入力端子に-10LSBのオフセットがある。このため、比較器60は、非反転入力端子への入力の方が反転入力端子への入力よりも20LSB低いと判定し、ロー(0)の比較結果S2CRを生成する。
【0115】
以降、制御回路62は、比較結果S2CRに基づいて、第1補正回路50および第2補正回路52が比較器60のオフセットを打ち消すように、第1補正回路50および第2補正回路52に入力されるデジタル信号を逐次的に変化させる。
【0116】
図18Aは、2回目の逐次比較において第1補正回路50および第2補正回路52に入力されるデジタル信号を示す図である。第1補正回路50および第2補正回路52には、1回目の逐次比較におけるローの比較結果S2
CRに応じたデジタル信号が入力される。具体的には、第1補正回路50には、最上位ビットに対応する信号をV
REFHからV
REFLに切り替え、その次のビットに対応する信号をV
REFLからV
REFHに切り替えたデジタル信号が入力される。第2補正回路52には、最上位ビットに対応する信号をV
REFHに維持し、その次のビットに対応する信号をV
REFLからV
REFHに切り替えたデジタル信号が入力される。
【0117】
このとき、出力信号SDACPは、VCM-32LSBとなり、出力信号SDACNは、VCM+32LSBとなる。比較器60のオフセットを考慮すると、非反転入力端子への入力は、反転入力端子への入力よりも44LSB大きいため、比較器60は、ハイ(1)の比較結果S2CRを生成する。
【0118】
図18Bは、3回目の逐次比較において第1補正回路50および第2補正回路52に入力されるデジタル信号を示す図である。第1補正回路50には、最上位から3ビット目に対応する信号をV
REFLからV
REFHに切り替えたデジタル信号が入力される。第2補正回路52には、最上位から2ビット目に対応する信号をV
REFHからV
REFLに切り替え、最上位から3ビット目に対応する信号をV
REFLからV
REFHに切り替えた信号が入力される。
【0119】
このとき、出力信号SDACPは、VCM-16LSBとなり、出力信号SDACNは、VCM+16LSBとなる。比較器60のオフセットを考慮すると、非反転入力端子への入力は、反転入力端子への入力よりも12LSB大きい。このため、比較器60は、ハイ(1)の比較結果S2CRを生成する。以降、4回目~7回目の逐次比較においても、制御回路62は、比較結果S2CRに応じたデジタル信号を生成し、そのデジタル信号に応じた比較結果S2CRを取得する。
【0120】
図18Cは、8回目の逐次比較において第1補正回路50および第2補正回路52に入力されるデジタル信号を示す図である。第1補正回路50には、011010110bのデジタル信号が入力され、第2補正回路52には、100101010bのデジタル信号が入力される。
【0121】
このとき、出力信号SDACPは、VCM-10.5LSBとなり、出力信号SDACNは、VCM+10.5LSBとなる。比較器60のオフセットを考慮すると、非反転入力端子への入力は、反転入力端子への入力よりも1LSB大きいため、比較器60は、ハイ(1)の比較結果S2CRを生成する。
【0122】
図18Dは、9回目の逐次比較において第1補正回路50および第2補正回路52に入力されるデジタル信号を示す図である。第1補正回路50には、最下位ビットの信号を切り替えた011010111bのデジタル信号が入力される。第2補正回路52には、最下位ビットおよび最下位から2ビット目の信号を切り替えた100101001bのデジタル信号が入力される。
【0123】
このとき、出力信号SDACPは、VCM-10.25LSBとなり、出力信号SDACNは、VCM+10.25LSBとなる。比較器60のオフセットを考慮すると、非反転入力端子への入力は、反転入力端子への入力よりも0.5LSB大きいため、比較器60は、ハイ(1)の比較結果S2CRを生成する。
【0124】
以上の9回の逐次比較の結果、逐次的に得られた比較結果を順に並べて011010111bの比較データが得られる。この比較結果は、比較器60のオフセットと反転しているため、この比較データを反転させ、100101000b(128h)の反転データを得る。比較器60にオフセットがない場合には、比較データは、100hとなる。このため、制御回路62は、反転データから100h減算して、オフセットデータを得る。比較データから100hを減算した結果が負になる場合には、制御回路62は、反転データから0FFh減算して、オフセットデータを得る。ここでは反転データが128hであるため、制御回路62は、反転データから100hを減算して、28h(40d)のオフセットデータを得る。ここで、第1補正回路50において、最上位ビットは64LSBの重みを有し、最下位ビットは0.25LSBの重みを有する。このため、抽出されるオフセットは、10LSB(=40d/4)となる。
【0125】
図19は、比較器10のオフセット、比較データ、反転データおよび取得されるオフセットデータとの関係を示す図である。
図19に示すように、各オフセットについて、オフセットデータを抽出できる。たとえば、オフセットが0.50~0.75の場合、比較データは0FDh、反転データは102hであり、002hのオフセットデータが抽出される。
【0126】
(容量誤差の抽出)
本実施形態に係る逐次比較型ADC2が上位側回路が有するキャパシタの容量誤差を抽出する動作を説明する。ここでは、比較器60の反転入力端子への入力に+10LSBのオフセット、比較器60の非反転入力端子への入力に-10LSBのオフセットがあるものとする。
【0127】
図20は、第1変換回路42および第1補正回路50の回路図である。ここでは、第2キャパシタ421~427のそれぞれにdp
n(n=7~13)の容量誤差があるものとする。第1補正回路50に100hのデジタル信号を入力し、第1変換回路42に2000hのデジタル信号を入力した場合、出力信号S
DACP2000は、次式で表される。
【数8】
・・・(8)
【0128】
第1補正回路50に100hのデジタル信号を入力し、第1変換回路42に1FFFhのデジタル信号を入力した場合、出力信号S
DACP1FFFは、次式で表される。
【数9】
・・・(9)
ここで、Σdp
mにおいて、m=7~12である。
【0129】
S
DACP2000とS
DACP1FFFとの差分は、次式で表される。
【数10】
・・・(10)
【0130】
式(10)の右辺の分子に着目すると、1/128は、1LSBに対応し、容量誤差の項は、
EP13=dp13-Σdpm
で表される。したがって、SDACP2000とSDACP1FFFとの差分に基づいて、上位側回路420の第2キャパシタ421~427の容量誤差EP13を抽出できる。
【0131】
図21は、抽出できる容量誤差と、容量誤差を抽出するために変換回路(第1変換回路42または第2変換回路44)に入力されるデジタル信号の2つのコードを示す図である。容量誤差EP
7~EP
13を抽出する場合には、対応する行の第1コードおよび第2コードのデジタル信号を第1変換回路42に入力したときの出力信号S
DACPの差分を用いる。容量誤差EN
7~EN
13を抽出する場合には、対応する行の第1コードおよび第2コードのデジタル信号を第2変換回路44に入力したときの出力信号S
DACNの差分を用いる。これらの抽出した容量誤差EP
7~EP
13,EN
7~EN
13を用いることにより、上位側回路420,460が有する第2キャパシタ421~427、第4キャパシタ461~467の容量誤差に応じた出力信号S
DACP,S
DACNの誤差(ずれ量)を補正できる。
【0132】
以下では、コード1FFFhのデジタル信号が入力されたときの出力信号SDACPとコード2000hのデジタル信号が入力されたときのSDACPとの差分を用いて容量誤差EP13を抽出する場合の逐次比較型ADC2の動作を説明する。容量誤差EP13を抽出する動作では、第1変換回路42で1FFFhのデジタル信号をサンプリングし、その後、2000hのデジタル信号を第1変換回路42に入力し、第1補正回路50に入力されるデジタル信号を逐次的に変化させる。この逐次的な変化に応じて生成される比較結果S2CRに基づいて、容量誤差が抽出される。
【0133】
図22は、サンプリング時における容量性DAC40の状態を説明するための図である。
図22に示すように、スイッチ482,484は、いずれもオンであり、第1変換回路42の出力信号S
DACPおよび第2変換回路44の出力信号S
DACNは、いずれも基準電圧VCMとなっている。第1変換回路42には、1FFFhのデジタル信号が入力され、第2変換回路44には、0000hのデジタル信号が入力される。第1補正回路50および第2補正回路52には、それぞれ100hのデジタル信号が入力される。
【0134】
図23は、1回目の逐次比較における容量性DAC40の状態を説明するための図である。
図23に示すように、スイッチ482,484は、いずれもオフである。第1変換回路42には、2000hのデジタル信号が入力され、第2変換回路44に入力されるデジタル信号はサンプリング時と同じである。第1補正回路50に入力されるデジタル信号はサンプリング時と同じである。第2補正回路52には、比較器60のオフセット(-10LSB)を補正するために、100101000bのデジタル信号が入力される。
【0135】
以降、制御回路62は、第1変換回路42、第2変換回路44および第2補正回路52に入力されるデジタル信号を維持したまま、比較器60の比較結果S2CRに基づき、第1補正回路50に入力されるデジタル信号を逐次的に変化させる。具体的には、制御回路62は、1FFFhのコードのデジタル信号に応じた出力信号SDACPと2000hのコードのデジタル信号に応じたデジタル信号SDACPとの差分を打ち消すように、第1補正回路50に入力されるデジタル信号を逐次的に変化させる。より詳細には、制御回路62は、この差分に加えて、比較器60のオフセット(+10LSB)を打ち消すように、第1補正回路50に入力されるデジタル信号を逐次的に変化させる。
【0136】
逐次的な比較の結果、比較結果S2CRを並べた011000011bの比較データが得られたものとする。この比較データは、比較器60のオフセット分(+10LSB)減算された値であるため、このオフセット分を比較データに加算し、オフセット加算後のデータを得る。
01100011b+000101000b=011101011b(0EBh)
【0137】
比較結果S2CRは、容量誤差に応じた出力信号SDACPの誤差に対して反転した値である。このため、制御回路62は、オフセット加算後のデータの全ビットを反転させ、反転データを得る。反転データは、100010100b(114h)となる。ここで、容量誤差およびオフセットがない場合には、比較データは104h(基準値)となるため、反転データからこの基準値を減算する必要がある。反転データが104hよりも小さい場合には、0からの絶対距離で考え、反転データから103h(基準値)を減算する。本例では、基準値で反転データを減算して得られる容量誤差データは、
010h(16d)=114h-104h
となる。ここで、第1補正回路50の最下位ビットは、0.25LSBの重みであるため、抽出される容量誤差は、+4LSB(=16d/4)となる。
【0138】
図24は、容量誤差、オフセット加算後の反転データおよび容量誤差データの関係を示す図である。
図24に示すように、各容量誤差について、容量誤差データを得ることができる。たとえば容量誤差が0.50LSB~0.75LSBの場合、オフセット加算後の反転データは106hとなり、002hの容量誤差データが得られる。
【0139】
(補正演算)
取得したオフセットデータおよび容量誤差データを用いて、逐次比較型ADC2がアナログ入力信号AINP,AINNをデジタル出力信号D2OUTに変換するに際して、出力信号SDACPおよび出力信号SDACNを補正する演算について説明する。
【0140】
アナログ入力信号AINP,AINNをデジタル出力信号D2OUTに変換する動作では、逐次比較型ADC2は、アナログ入力信号AINP,AINNをサンプリングし、容量性DAC42に入力するデジタル入力S2CTを逐次的に変化させる。逐次比較型ADC2は、逐次的に生成されるS2CRに基づきデジタル出力信号D2OUTを生成する。以下では、主として第1変換回路42および第1補正回路50に着目して、アナログ入力信号AINP,AINNをデジタル出力信号D2OUTに変換する動作の詳細を説明する。
【0141】
図25Aは、サンプリング時における第1変換回路42の状態を説明するための図である。アナログ入力信号A
INP,A
INNのサンプリングの際には、第1変換回路42には、アナログ入力信号A
INPが入力される。このとき、上位側回路420の共通ノード430には、基準電圧VCMが供給される(S
DACP=VCM)。
【0142】
図25Bは、1回目の逐次比較における第1変換回路42の状態を説明するための図である。1回目の逐次比較において、第1変換回路42には、2000hのデジタル信号が入力される。このとき、出力信号S
DACPは、次式で表される。
【数11】
・・・(11)
【0143】
しかしながら、式(11)の右辺第3項には、最上位ビットの第2キャパシタ427の容量誤差のみが含まれており、他の第2キャパシタ421~426の容量誤差が含まれておらず、本来の2000hのコード分となっていない。その本来の2000hのコード分からのずれ量は、次式で表される。
【数12】
・・・(12)
【0144】
式(12)において、左辺第2項が本来の2000hのコード分である。ここで、式(12)の右辺の分子に着目すると、容量誤差EP13の1/2であることがわかる。したがって、抽出した容量誤差EP13の1/2に相当するデジタル信号を第1補正回路50に入力することにより、式(12)のずれ量を補正することができる。
【0145】
2回目の逐次比較の際には、最上位から2ビット目の信号がVREFHに切り替わり、1回目の逐次比較の結果に応じて、最上位ビットの信号がVREFHに維持され、またはVREFLに切り替わる。
【0146】
最上位ビットがV
REFHに維持される場合、出力信号S
DACPは、次式で表される。
【数13】
・・・(13)
【0147】
最上位ビットがV
REFLに切り替わる場合、S
DACPは、次式で表される。
【数14】
・・・(14)
【0148】
式(13)の右辺第4項および式(14)の右辺第3項は、1000hのコードに対応するが、本来の1000hのコードの信号からずれており、そのずれ量は、次式で表される。
【数15】
・・・(15)
式(15)の最後の右辺における分子は、容量誤差EP
12と容量誤差EP
13とで表されることがわかる。
【0149】
最上位ビットがV
REFHに維持される場合には、式(13)、(15)より、ずれ量は、
【数16】
となる。このずれ量に対応するデジタル信号を第1補正回路50に入力することにより、ずれ量を補正することができる。
【0150】
最上位ビットがV
REFHに維持される場合には、式(15)、(16)より、ずれ量は、
【数17】
となる。このずれ量に対応するデジタル信号を第1補正回路50に入力することにより、ずれ量を補正することができる。
【0151】
以降、3回目~14回目の逐次比較においても、容量誤差EP7~EP13を用いて表される補正値のデジタル信号を第1補正回路50に入力することにより、ずれ量を補正することができる。
【0152】
図26は、各逐次比較における第1補正回路50の補正値(詳細にはその分子)ECP
0~ECP
13を示す図である。各逐次比較において、補正値に対応するデジタル信号を第1補正回路50に入力することにより、出力信号S
DACPのずれ量を補正することができる。
図26に示すb
07~b
13は、上位側回路420に入力される信号bp07~bp13の値(0または1)である。Eoffは、比較器60の反転入力端子のオフセットを補正するための補正値に対応する。8回目~14回目の逐次比較では、上位側回路420のデジタル信号が変化しないため、補正値が一定の値となっている。
【0153】
以上、第1変換回路42の上位側回路420が有する第2キャパシタ421~427の容量誤差に応じた出力信号SDACPの誤差(ずれ量)を補正する方法の一例を説明した。以下、第2変換回路44の上位側回路460が有する第4キャパシタ461~467の容量誤差に応じた出力信号SDACNの誤差(ずれ量)を補正する方法の一例を説明する。
【0154】
図27Aは、サンプリング時における第2変換回路44の状態を説明するための図である。アナログ入力信号A
INP,A
INNのサンプリングの際には、第2変換回路44には、アナログ入力信号A
INNが入力される。このとき、上位側回路460の共通ノード470には、基準電圧VCMが供給される(S
DACN=VCM)。
【0155】
図27Bは、1回目の逐次比較における第2変換回路44の状態を説明するための図である。2回目の逐次比較において、第2変換回路44には、1FFFhのデジタル信号が入力される。このときの出力信号S
DACNは、次式で表される。
【数18】
・・(18)
【0156】
しかしながら、式(18)の右辺第3項は、本来の1FFFhのコード分となっていない。その本来の1FFFhのコード分との差分は、次式で表される。
【数19】
・・・(19)
【0157】
式(19)において、左辺第2項が本来の1FFFhのコード分である。ここで、式(19)の右辺の分子を容量誤差EN
7~EN
13で表すと、ずれ量は、
【数20】
と表せる。このずれ量に相当するデジタル信号を第2補正回路52に入力することにより、このずれ量を補正することができる。
【0158】
2回目の逐次比較の際には、最上位から2ビット目の信号がVREFLに切り替わり、1回目の逐次比較の結果に応じて、最上位ビットの信号がVREFLに維持され、またはVREFHに切り替わる。
【0159】
最上位ビットがV
REFLに維持される場合、出力信号S
DACNは、次式で表される。
【数21】
・・・(21)
【0160】
最上位ビットがV
REFHに切り替わる場合、S
DACNは、次式で表される。
【数22】
・・・(22)
【0161】
式(22)の右辺第4項は、2000hのコード分に対応するが、本来の2000hのコードの値からずれており、そのずれ量は、容量誤差EN
13を用いて次式で表せる。
【数23】
・・・(23)
【0162】
式(21)の右辺第4項および式(22)の右辺第5項は、-1000hのコード分に対応するが、本来の-1000hのコード分からずれており、そのずれ量は、容量誤差EN
12,EN
13を用いて次式で表せる。
【数24】
・・・(24)
【0163】
したがって、最上位ビットがV
REFHに切り替わる場合、1回目の逐次比較におけるデジタル信号に加えて、
【数25】
に対応するデジタル信号を第2補正回路52に入力することにより、ずれ量を補正することができる。
【0164】
最上位ビットがV
REFLに維持される場合、1回目の逐次比較におけるデジタル信号に加えて、
【数26】
に対応するデジタル信号を第2補正回路52に入力することにより、ずれ量を補正することができる。
【0165】
以降、3回目~14回目の逐次比較においても、容量誤差EN7~EN13に対応するデジタル信号を第2補正回路52に入力することにより、ずれ量を補正することができる。
【0166】
図28は、各逐次比較における第2補正回路52の補正値(詳細にはその分子)ECN
0~ECN
13を示す図である。各逐次比較において、補正値に対応するデジタル信号を第2補正回路52に入力することにより、出力信号S
DACNのずれ量を補正することができる。
図28に示すb
07~b
13は、上位側回路460に入力される信号bn07~bn13の値(0または1)である。Eoffは、比較器60の非反転入力端子のオフセットを補正するための補正値に対応する。なお、8回目~14回目の逐次比較では、上位側回路460のデジタル信号が変化しないため、補正値が一定の値となっている。
【0167】
(DNLおよびINL)
本実施形態に係る逐次比較型ADC2と、第1補正回路50および第2補正回路52を使用しない逐次比較型ADCとについて、各コードのDNLおよびINL(積分非直線誤差)を計算した。
【0168】
図29は、第1補正回路50および第2補正回路52を使用しない逐次比較型ADCについて、各コードのDNLを計算した結果を示す図である。
図30は、第1補正回路50および第2補正回路52を使用しない逐次比較型ADCについて、各コードのINLを計算した結果を示す図である。
図31は、本実施形態に係る逐次比較型ADC2について、各コードのDNLを計算した結果を示す図である。
図32は、本実施形態に係る逐次比較型ADC2について、各コードのINLを計算した結果を示す図である。
【0169】
第1補正回路50および第2補正回路52を使用しない場合には、
図29に示すように、8192のコードにおいてDNLが6LSBを超え、
図30に示すように、最大で±3LSB程度のINLがある。これに対し、本実施形態に係る逐次比較型ADC2によれば、
図31および
図32に示すように、DNLおよびINLが抑えられていることがわかる。
【0170】
以上、本開示を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0171】
第1実施形態に係る逐次比較型ADC1と第2実施形態に係る逐次比較型ADC2について、任意の構成を組み合わせることも可能である。たとえば、第2実施形態に係る逐次比較型ADC2が有する第1変換回路42および第2変換回路44のそれぞれについて、第1実施形態に係るα補正回路100(およびその共通ノードの電荷をリセットするためのスイッチ)と同様の構成を有する回路を設けてよい。
【0172】
第2実施形態において、逐次比較型ADCが差動型である例を説明したが、シングル型で構成されてよい。具体的には、容量性DAC40から第2変換回路44および第2補正回路52を除き、比較器60の非反転入力端子に所定の比較基準電圧(たとえば基準電圧VCM)を供給するように容量性DACを構成してよい。
【0173】
(付記)
本明細書に開示される技術は、一側面において以下のように把握できる。
【0174】
(項目1)
アナログ入力信号をデジタル出力信号に変換するA/Dコンバータであって、
デジタル入力に応じたアナログの出力信号を生成する容量性D/Aコンバータと、
前記アナログの出力信号と比較基準電圧とを比較し、比較結果を出力する比較器と、
前記比較結果に基づいて前記デジタル入力を生成する制御回路と、を備え、
前記容量性D/Aコンバータは、MおよびNをそれぞれ1以上の整数とするとき、(M+N)ビットのデジタル信号に応じた前記アナログの出力信号を生成する変換回路と、入力されるデジタル信号に応じて前記変換回路の出力信号を変化させる、アレイ状に配置された複数の補正キャパシタを含む補正回路とを有し、
前記変換回路は、前記(M+N)ビットのデジタル信号の下位Mビットの変換を担う、アレイ状に配置された複数の第1キャパシタを有する下位側回路と、前記(M+N)ビットのデジタル信号の上位Nビットの変換を担う、アレイ状に配置された複数の第2キャパシタを有する上位側回路と、前記下位側回路と前記上位側回路との間に配置されたスケーリングキャパシタと、を含み、
前記複数の補正キャパシタの共通ノードは、前記複数の第1キャパシタの共通ノードおよび前記複数の第2キャパシタの共通ノードの一方に接続され、
前記制御回路は、前記補正回路に入力されるデジタル信号を逐次的に変化させ、逐次的に生成される前記比較結果に基づいて、前記補正回路に前記変換回路の出力信号を補正させるためのデータを取得する、
A/Dコンバータ。
【0175】
(項目2)
前記複数の補正キャパシタの共通ノードは、前記複数の第1キャパシタの共通ノードに接続され、
前記補正回路は、入力されるデジタル信号に応じて、前記複数の補正キャパシタのそれぞれについて、共通ノードとは反対側の端部がオープンになるまたはグランドに接続されることによって、前記変換回路の出力信号を変化させる、
項目1に記載のA/Dコンバータ。
【0176】
(項目3)
前記容量性D/Aコンバータは、前記複数の補正キャパシタの共通ノードに接続され、前記複数の補正キャパシタの共通ノードの電荷をリセット可能に配置されたリセットスイッチをさらに有する、
項目2に記載のA/Dコンバータ。
【0177】
(項目4)
前記リセットスイッチは、一端が前記複数の補正キャパシタの共通ノードに接続され、他端がグランドに接続されるように配置されており、
前記複数の補正キャパシタの共通ノードの電荷量は、前記リセットスイッチがオンになることによってリセットされる、
項目3に記載のA/Dコンバータ。
【0178】
(項目5)
前記制御回路は、前記リセットスイッチがオフの状態における前記容量性D/Aコンバータの出力信号に基づいて、前記リセットスイッチがオンの状態で、前記複数の補正キャパシタの共通ノードとグランドとの間における前記補正回路の容量値を切り替える、
項目4に記載のA/Dコンバータ。
【0179】
(項目6)
前記複数の第2キャパシタの共通ノードに一端が接続され、他端に前記比較基準電圧が供給される基準スイッチをさらに備え、
前記制御回路は、前記容量性D/Aコンバータが第1の状態にあるとき前記基準スイッチがオンとなり、そのあと、前記基準スイッチがオンからオフに切り替わり、前記容量性D/Aコンバータが前記第1の状態が第2の状態に切り替わったときにおける前記容量性D/Aコンバータの出力電圧および前記比較基準電圧に基づいて、前記補正回路の容量値を切り替えるためのデジタル入力を前記容量性D/Aコンバータに入力し、
前記第1の状態は、すべてのビットを0とした前記Mビットのデジタル入力が前記下位側回路に入力され、最下位のビットを1とし、残りのビットを0とした前記Nビットのデジタル入力が前記上位側回路に入力される状態であり、
前記第2の状態は、すべてのビットを1とした前記Mビットのデジタル入力が前記下位側回路に入力され、すべてのビットを0とした前記Nビットのデジタル入力が前記上位側回路に入力される状態である、
項目5に記載のA/Dコンバータ。
【0180】
(項目7)
前記補正回路は、前記補正回路の容量値を基準容量値から上げるための加算用回路と、前記補正回路の容量値を前記基準容量値から下げるための減算用回路と、を有し、
前記加算用回路は、アレイ状に配置された複数の補正キャパシタを有し、
前記減算用回路は、アレイ状に配置された複数の補正キャパシタを有し、
前記基準容量値は、前記加算用回路がその最小の容量値をとり、前記減算用回路がその最大の容量値をとるときの前記補正回路の容量値である、
項目2~6のいずれか一項に記載のA/Dコンバータ。
【0181】
(項目8)
前記複数の補正キャパシタの共通ノードは、キャパシタを介して前記複数の第2キャパシタの共通ノードに接続される、
項目1に記載のA/Dコンバータ。
【0182】
(項目9)
前記制御回路は、前記補正回路が前記比較器のオフセットを打ち消すように、前記補正回路に入力されるデジタル信号を逐次的に変化させ、逐次的に生成される前記比較結果に基づいて、前記比較器のオフセットデータを取得し、
前記補正回路は、前記オフセットデータに応じたデジタル信号に基づいて、前記比較器のオフセットを補正するように、前記変換回路の出力信号を変化させる、
項目8に記載のA/Dコンバータ。
【0183】
(項目10)
前記変換回路は、第1のデジタル信号に応じた第1の出力信号を生成し、前記第1のデジタル信号とは異なるコードを有する第2のデジタル信号に応じた第2の出力信号を生成し、
前記制御回路は、前記変換回路に前記第1のデジタル信号が入力されているとき、前記補正回路が前記第1の出力信号と前記第2の出力信号との差分を打ち消すように、前記補正回路に入力されるデジタル信号を逐次的に変化させ、逐次的に生成される前記比較結果に基づいて、前記第2キャパシタの容量誤差データを取得し、
前記補正回路は、前記容量誤差データに応じたデジタル信号に基づいて、前記第2キャパシタの容量誤差に応じた前記変換回路の出力信号の誤差を補正するように、前記変換回路の出力信号を変化させる、
項目9に記載のA/Dコンバータ。
【0184】
(項目11)
前記制御回路は、前記アナログ入力信号を前記デジタル出力信号に変換するために、前記比較基準電圧と前記容量性D/Aコンバータの出力信号とを前記比較器が比較する際に、前記オフセットデータおよび前記容量誤差データに応じたデジタル信号を前記補正回路に入力する、
項目10に記載のA/Dコンバータ。
【0185】
(項目12)
前記補正回路をα補正回路とするとき、前記容量性D/Aコンバータは、アレイ状に配置された複数の補正キャパシタを有するさらなる補正回路をさらに有し、
前記α補正回路が有する複数の補正キャパシタの共通ノードは、前記複数の第1キャパシタの共通ノードに接続され、
前記さらなる補正回路が有する複数の補正キャパシタの共通ノードは、キャパシタを介して前記複数の第2キャパシタの共通ノードに接続され、
前記α補正回路は、入力されるデジタル信号に応じて、複数の補正キャパシタのそれぞれについて、共通ノードとは反対側の端部がオープンになるまたはグランドに接続されることによって、前記変換回路の出力信号を変化させる、
項目1に記載のA/Dコンバータ。
【0186】
(項目13)
アナログ入力信号をデジタル出力信号に変換するA/Dコンバータであって、
デジタル入力に応じたアナログの第1の出力信号およびアナログの第2の出力信号を生成する容量性D/Aコンバータと、
前記第1の出力信号と前記第2の出力信号とを比較し、比較結果を出力する比較器と、
前記比較結果に基づいて前記デジタル入力を生成する制御回路と、を備え、
前記容量性D/Aコンバータは、MおよびNをそれぞれ1以上の整数とするとき、(M+N)ビットのデジタル信号に応じた前記第1の出力信号を生成する第1変換回路と、入力されるデジタル信号に応じて前記第1の出力信号を変化させる、アレイ状に配置された複数の補正キャパシタを含む第1補正回路と、(M+N)ビットのデジタル信号に応じた前記第2の出力信号を生成する第2変換回路と、入力されるデジタル信号に応じて前記第2の出力信号を変化させる、アレイ状に配置された複数の補正キャパシタを含む第2補正回路と、を有し、
前記第1変換回路は、(M+N)ビットのデジタル信号の下位Mビットの変換を担う、アレイ状に配置された複数の第1キャパシタを有する下位側回路と、(M+N)ビットのデジタル信号の上位Nビットの変換を担う、アレイ状に配置された複数の第2キャパシタを有する上位側回路と、当該下位側回路と当該上位側回路との間に配置されたスケーリングキャパシタと、を含み、
前記第2変換回路は、(M+N)ビットのデジタル信号の下位Mビットの変換を担う、アレイ状に配置された複数の第3キャパシタを有する下位側回路と、(M+N)ビットのデジタル信号の上位Nビットの変換を担う、アレイ状に配置された複数の第4キャパシタを有する上位側回路と、当該下位側回路と当該上位側回路との間に配置されたスケーリングキャパシタと、を含み、
前記第1補正回路が有する複数の補正キャパシタの共通ノードは、前記複数の第1キャパシタの共通ノードおよび前記複数の第2キャパシタの共通ノードの一方に接続され、
前記第2補正回路が有する複数の補正キャパシタの共通ノードは、前記複数の第3キャパシタの共通ノードおよび前記複数の第4キャパシタの共通ノードの一方に接続され、
前記制御回路は、前記第1補正回路および前記第2補正回路のそれぞれに入力されるデジタル信号を逐次的に変化させ、逐次的に生成される前記比較結果に基づいて、前記第1補正回路に前記第1の出力信号を補正させ、前記第2補正回路に前記第2の出力信号を補正させるためのデータを取得する、
A/Dコンバータ。
【符号の説明】
【0187】
1,2 逐次比較型ADC、10,40 容量性DAC、20,60 比較器、30,62 制御回路、42 第1変換回路、44 第2変換回路、50 第1補正回路、52 第2補正回路、90 変換回路、100 α補正回路、120 加算用回路、121~126 キャパシタ、131~136 スイッチ、140 減算用回路、141~145 キャパシタ、151~155 スイッチ、160 リセットスイッチ、401~407 第1キャパシタ、421~427 第2キャパシタ、441~447 第3キャパシタ、461~467 第4キャパシタ、501~109 第1補正キャパシタ、521~529 第2補正キャパシタ、492,496 キャパシタ、900 下位側回路、910~916 キャパシタ、930,490,494 スケーリングキャパシタ、940 上位側回路、950~956 キャパシタ。