(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112766
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
G01N 27/18 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
G01N27/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023189887
(22)【出願日】2023-11-07
(31)【優先権主張番号】P 2023017291
(32)【優先日】2023-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】米田 貞春
(72)【発明者】
【氏名】松尾 裕
(72)【発明者】
【氏名】海田 佳生
【テーマコード(参考)】
2G060
【Fターム(参考)】
2G060AA01
2G060AB09
2G060AE19
2G060AF07
2G060BA05
2G060BB02
2G060BD01
2G060HB06
2G060HC03
2G060KA01
(57)【要約】
【課題】感温素子及びこれを加熱するヒータを備えたガスセンサにおいて、環境温度が変化する場合であっても正確なガス濃度を検出する。
【解決手段】ガスセンサ1は、サーミスタRd1,Rd2を含みガス検知信号を生成するガスセンサ部11と、温度検知信号を生成する温度センサ部12と、サーミスタRd1,Rd2を加熱するヒータMH1,MH2と、信号処理回路20とを備える。信号処理回路20は、タイミングt1で得られる温度検知信号に応じてヒータの加熱温度を制御し、タイミングt2で得られる温度検知信号、並びに、タイミングt3で得られるガス検知信号に応じて、検出対象ガスの濃度を算出する。これにより、環境温度が変化している場合であっても、より正確なガス濃度を算出することが可能となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感温素子を含み、検出対象ガスの濃度に応じたガス検知信号を生成するガスセンサ部と、
環境温度に応じた温度検知信号を生成する温度センサ部と、
前記感温素子を加熱するヒータと、
第1のタイミングで得られる前記温度検知信号に応じて前記ヒータの加熱温度を制御し、前記第1のタイミングよりも遅い第2のタイミングで得られる前記温度検知信号、並びに、前記ヒータによって前記感温素子が加熱された状態である第3のタイミングで得られる前記ガス検知信号に応じて、前記検出対象ガスの濃度を算出する信号処理回路と、を備える、ガスセンサ。
【請求項2】
前記信号処理回路は、前記第2のタイミングで得られる前記温度検知信号に応じてリファレンス電圧のレベルを算出する制御回路と、前記第3のタイミングで得られる前記ガス検知信号と前記リファレンス電圧を比較するアンプとを含み、前記アンプの出力信号に応じて前記検出対象ガスの濃度を算出する、請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
前記信号処理回路は、前記第2のタイミングで得られる前記温度検知信号に応じて補正値を算出し、前記ガス検知信号及び前記補正値を用いて前記検出対象ガスの濃度を算出する、請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項4】
前記第2のタイミングと前記第3のタイミングが同時である、請求項3に記載のガスセンサ。
【請求項5】
前記第2のタイミングが前記第3のタイミングよりも遅い、請求項3に記載のガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はガスセンサに関し、特に、サーミスタ等の感温素子及びこれを加熱するヒータを備えたガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、サーミスタ及びこれを加熱するヒータを備えたガスセンサが開示されている。特許文献1に記載されたガスセンサは、サーミスタが所望の温度に加熱されるよう、環境温度に応じてヒータの加熱温度を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、環境温度の変化は、ヒータの加熱温度に影響を与えるだけでなく、検出対象ガスの濃度に応じたガス検知信号のリファレンスレベルにも影響を与える。
【0005】
本開示においては、サーミスタ等の感温素子及びこれを加熱するヒータを備えたガスセンサにおいて、環境温度が変化する場合であっても正確なガス濃度を検出する技術が説明される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面によるガスセンサは、感温素子を含み、検出対象ガスの濃度に応じたガス検知信号を生成するガスセンサ部と、環境温度に応じた温度検知信号を生成する温度センサ部と、感温素子を加熱するヒータと、第1のタイミングで得られる温度検知信号に応じてヒータの加熱温度を制御し、第1のタイミングよりも遅い第2のタイミングで得られる温度検知信号、並びに、ヒータによって感温素子が加熱された状態である第3のタイミングで得られるガス検知信号に応じて、検出対象ガスの濃度を算出する信号処理回路とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、サーミスタ等の感温素子及びこれを加熱するヒータを備えたガスセンサにおいて、環境温度が変化する場合であっても正確なガス濃度を検出する技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示に係る技術の第1の実施形態によるガスセンサ1の構成を示す回路図である。
【
図2】
図2は、ガスセンサ1の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図3】
図3は、ガスセンサ1の動作を説明するためのタイミング図である。
【
図4】
図4は、環境温度が上昇している場合における温度誤差の影響を説明するためのタイミング図である。
【
図5】
図5は、本開示に係る技術の第2の実施形態によるガスセンサ2の構成を示す回路図である。
【
図6】
図6は、ガスセンサ2の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図7】
図7は、ガスセンサ2の動作の第1の変形例を説明するためのタイミング図である。
【
図8】
図8は、ガスセンサ2の動作の第2の変形例を説明するためのタイミング図である。
【
図9】
図9は、ガスセンサ2の動作の第3の変形例において環境温度Temp3を推定する方法を説明するためのタイミング図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら、本開示に係る技術の実施形態について詳細に説明する。
【0010】
<第1の実施形態>
図1は、本開示に係る技術の第1の実施形態によるガスセンサ1の構成を示す回路図である。
【0011】
図1に示すように、第1の本実施形態によるガスセンサ1は、ガスセンサ部11、温度センサ部12、ヒータ抵抗MH1,MH2、及び信号処理回路20を備えている。特に限定されるものではないが、本実施形態によるガスセンサ1は、雰囲気中におけるCO
2ガスの濃度を検出するものである。
【0012】
ガスセンサ部11は、測定対象ガスであるCO2ガスの濃度を測定するための熱伝導式のガスセンサであり、直列接続されたサーミスタRd1,Rd2を含んでいる。温度センサ部12は、直列接続されたサーミスタRd3と固定抵抗R1を含んでいる。サーミスタRd1~Rd3は、例えば、複合金属酸化物、アモルファスシリコン、ポリシリコン、ゲルマニウムなどの負の抵抗温度係数を持つ材料からなる感温素子である。サーミスタRd1,Rd2は、いずれもCO2ガスの濃度を検出するものであるが、後述するように動作温度が互いに異なっている。また、サーミスタRd3は、環境温度を検出する温度センサとして機能する。環境温度とは、測定雰囲気の温度である。サーミスタRd3は、例えばヒータ抵抗MH1,MH2による加熱の影響を受けないよう、或いは、受けにくいように設計されていても構わない。
【0013】
図1に示すように、サーミスタRd1とサーミスタRd2は、電源電位Vccが供給される配線と接地電位GNDが供給される配線との間に直列に接続されている。サーミスタRd1はヒータ抵抗MH1によって例えば300℃近辺に加熱され、サーミスタRd2はヒータ抵抗MH2によって例えば150℃近辺に加熱される。測定雰囲気のガス濃度がある特定の値である場合、例えば、測定雰囲気中のCO
2ガス濃度が大気中における平均濃度(約400ppm)である場合に、サーミスタRd1はヒータ抵抗MH1によって例えば300℃に加熱され、サーミスタRd2はヒータ抵抗MH2によって例えば150℃に加熱される。サーミスタRd1は、300℃に加熱された場合に所定の抵抗値となるよう設計されている一方、サーミスタRd2は、150℃に加熱された場合に所定の抵抗値となるよう設計されている。サーミスタRd1とサーミスタRd2の接続点には、ガス検知信号Vgas1が現れる。
【0014】
検知用の感温素子であるサーミスタRd2を150℃近辺に加熱した状態で測定雰囲気中にCO2ガスが存在すると、その濃度に応じてサーミスタRd2の放熱特性が変化する。かかる変化は、サーミスタRd2の温度の変化、つまりサーミスタRd2の抵抗値の変化となって現れる。具体的には、CO2ガスは空気よりも放熱性が低いため、CO2ガスの濃度が高いほどサーミスタRd2の温度が上昇する。このため、例えば、測定雰囲気中のCO2ガス濃度が大気中における平均濃度よりも高い場合、サーミスタRd2の温度が150℃よりも高くなる。その結果、測定雰囲気中のCO2ガス濃度が大気中における平均濃度である場合と比べ、サーミスタRd2の抵抗値が低下する。一方、リファレンス用の感温素子であるサーミスタRd1を300℃近辺に加熱した状態で測定雰囲気中にCO2ガスが存在しても、その濃度に応じてサーミスタRd1の放熱特性はほとんど変化せず、サーミスタRd1の温度もほとんど変化しない。このため、300℃近辺に加熱されたサーミスタRd1のCO2ガスの濃度による抵抗値の変化は、150℃近辺に加熱されたサーミスタRd2のCO2ガスの濃度による抵抗値の変化よりも十分に小さい。300℃近辺に加熱されたサーミスタRd1のCO2ガスの濃度による抵抗値の変化は、ほとんど無くても構わない。サーミスタRd1とサーミスタRd2の接続点に現れるガス検知信号Vgas1は、信号処理回路20に供給される。
【0015】
サーミスタRd3と固定抵抗R1は、電源電位Vccが供給される配線と接地電位GNDが供給される配線との間に直列に接続されている。固定抵抗R1とサーミスタRd3の接続点には、温度検知信号Vtemp1が現れる。温度検知信号Vtemp1は、信号処理回路20に供給される。
【0016】
信号処理回路20は、アンプ21,22、ADコンバータ(ADC)23、DAコンバータ(DAC)24及び制御回路25を備えている。アンプ21は、ガス検知信号Vgas1とリファレンス電圧Vrefを比較することによって、増幅されたガス検知信号Vgas2を生成する。アンプ21は例えば差動アンプであり、例えばガス検知信号Vgas1とリファレンス電圧Vrefとの差分を増幅することによってガス検知信号Vgas2を生成して出力する。アンプ22は、温度検知信号Vtemp1を増幅することによって温度検知信号Vtemp2を生成する。ガス検知信号Vgas2及び温度検知信号Vtemp2は、ADコンバータ23に入力される。ADコンバータ23は、ガス検知信号Vgas2及び温度検知信号Vtemp2をそれぞれAD変換することによって、デジタル値であるガス検知データSgas及び温度検知データStempを生成する。デジタル値であるガス検知データSgas及び温度検知データStempは、制御回路25に供給される。
【0017】
制御回路25は、デジタル値であるヒータ指示値Smh1,Smh2及びリファレンス値Srefを生成し、これらをDAコンバータ24に供給する。DAコンバータ24は、ヒータ指示値Smh1,Smh2及びリファレンス値Srefをそれぞれヒータ電圧Vmh1,Vmh2及びリファレンス電圧Vrefに変換する。ヒータ電圧Vmh1,Vmh2はそれぞれヒータ抵抗MH1,MH2に印加され、これによりサーミスタRd1,Rd2が加熱される。また、リファレンス電圧Vrefは、アンプ21に供給される。
【0018】
制御回路25は、メモリ26~28を有している。メモリ26には、ガス検知データSgasと出力信号OUTとの関係を示す計算式又は変換テーブルが格納されている。出力信号OUTは、測定対象ガスであるCO2ガスの濃度を示す電圧値又はデジタル値であり、ガスセンサ1の外部に出力される。
【0019】
メモリ27には、温度検知データStempが示す環境温度とヒータ指示値Smh1,Smh2との関係を示す計算式又は変換テーブルが格納されている。このような計算式又は変換テーブルが必要なのは、サーミスタRd1,Rd2をそれぞれ所望の温度域(例えば、300℃近辺及び150℃近辺)に加熱するために必要なヒータ指示値Smh1,Smh2が環境温度によって変化するからである。
【0020】
メモリ28には、温度検知データStempが示す環境温度とリファレンス値Srefとの関係を示す計算式又は変換テーブルが格納されている。このような計算式又は変換テーブルが必要なのは、ガス検知信号Vgas1の中心レベル(例えば、1/2Vccレベル)が環境温度によって変化するからである。メモリ28に格納する計算式又は変換テーブルは、出荷前に行う実測の結果に基づいて生成される。例えば、CO2ガスの濃度を一定に保った状態でガス検知信号Vgas1の測定を複数の環境温度にて実行し、これにより得られた結果に基づいて、計算式又は変換テーブルを生成することができる。
【0021】
次に、第1の実施形態によるガスセンサ1の動作について説明する。
【0022】
図2は、ガスセンサ1の動作を説明するためのフローチャートである。また、
図3は、ガスセンサ1の動作を説明するためのタイミング図である。
【0023】
まず、ガスセンサ1に含まれる信号処理回路20は、温度検知信号Vtemp2の1回目のサンプリングを行う(ステップ100)。温度検知信号Vtemp2のサンプリングは、温度検知信号Vtemp1をアンプ22によって温度検知信号Vtemp2に変換し、これをADコンバータ23によって温度検知データStempにさらに変換し、これを制御回路25内に取り込むことにより行う。温度検知信号Vtemp2の1回目のサンプリングは、
図3に示すタイミングt1にて行われる。タイミングt1は、ヒータ抵抗MH1,MH2によってサーミスタRd1,Rd2の加熱を開始するタイミングt10の直前である。
【0024】
次に、制御回路25は、温度検知データStempに基づいて環境温度を算出した後(ステップ101)、メモリ27を参照することにより、環境温度からヒータ指示値Smh1,Smh2を算出する(ステップ102)。ヒータ指示値Smh1,Smh2は、DAコンバータ24によってヒータ電圧Vmh1,Vmh2に変換され、それぞれヒータ抵抗MH1,MH2に印加される(ステップ103)。これによりサーミスタRd1,Rd2の加熱が開始される。サーミスタRd1,Rd2の加熱開始は、
図3に示すタイミングt10にて行われる。
【0025】
サーミスタRd1,Rd2の温度は、加熱を開始したタイミングt10から所定の時間が経過するまでは安定しないことから、加熱を開始してからガス検知信号Vgas2のサンプリングを行うまでには、所定のスタンバイ時間が必要である。
【0026】
次に、信号処理回路20は、温度検知信号Vtemp2の2回目のサンプリングを行う(ステップ104)。温度検知信号Vtemp2の2回目のサンプリングは、
図3に示すタイミングt2にて行われる。次に、制御回路25は、2回目のサンプリングによって得られた温度検知データStempに基づいて再び環境温度を算出した後(ステップ105)、メモリ28を参照することにより、環境温度からリファレンス値Srefを算出する(ステップ106)。リファレンス値Srefは、DAコンバータ24によってリファレンス電圧Vrefに変換され、アンプ21に印加される(ステップ107)。これによりアンプ21は、ガス検知信号Vgas1とリファレンス電圧Vrefの比較が可能な状態となり、アンプ21からガス検知信号Vgas2が出力される。
【0027】
次に、信号処理回路20は、ガス検知信号Vgas2のサンプリングを行う(ステップ108)。ガス検知信号Vgas2のサンプリングは、ガス検知信号Vgas1とリファレンス電圧Vrefを比較することによりアンプ21から出力されるガス検知信号Vgas2をADコンバータ23によってガス検知データSgasに変換し、これを制御回路25内に取り込むことにより行う。ガス検知信号Vgas2のサンプリングは、
図3に示すタイミングt3にて行われる。タイミングt3は、サーミスタRd1,Rd2の加熱が開始されるタイミングt10から、少なくとも上記のスタンバイ時間が経過したタイミングである。
【0028】
そして、制御回路25は、メモリ26を参照することにより、ガス検知データSgasから出力信号OUTを算出し(ステップ109)、出力信号OUTを外部に出力する。タイミングt3が経過した後、制御回路25はヒータ指示値Smh1,Smh2をリセットし、サーミスタRd1,Rd2の加熱を停止する。サーミスタRd1,Rd2の加熱停止は、
図3に示すタイミングt20にて行われる。
【0029】
このような動作を所定の周期で繰り返し実行することにより、環境中に含まれる検出対象ガスの濃度をリアルタイムに検出することができる。
【0030】
このように、本実施形態においては、温度検知信号Vtemp2のサンプリングをタイミングt1とタイミングt2の2回に亘って実行し、タイミングt1に行ったサンプリング結果に基づいてサーミスタRd1,Rd2の加熱温度を制御するとともに、タイミングt2に行ったサンプリング結果に基づいてリファレンス電圧Vrefのレベルを制御している。そして、本実施形態においては、タイミングt2をガス検知信号Vgas2のサンプリングを行うタイミングt3の直前に設定していることから、環境温度の変化の影響を受けにくくなる。
【0031】
図4は、環境温度が上昇している場合における温度誤差の影響を説明するためのタイミング図である。
【0032】
図4に示す例では、タイミングt1における環境温度がTemp1であり、タイミングt2における環境温度がTemp2(>Temp1)であり、タイミングt3における環境温度がTemp3(>Temp2)である場合を示している。この場合、仮に、タイミングt1にて行ったサンプリング結果に基づいて、サーミスタRd1,Rd2の温度制御だけでなく、リファレンス電圧Vrefのレベル制御も行った場合、実際にガス検知信号Vgas2のサンプリングを行うタイミングt3においては、スタンバイ時間が長い分、環境温度に誤差△Temp13が生じてしまう。これに対し、本実施形態においては、タイミングt3の直前であるタイミングt2にて行ったサンプリングの結果に基づいて、リファレンス電圧Vrefのレベル制御を行っていることから、温度誤差△Temp23が温度誤差△Temp13よりも低減される。
【0033】
タイミングt2とタイミングt3の時間差T23は、信号処理回路20の制御が間に合う範囲でできるだけ短くすることが好ましく、タイミングt1とタイミングt3の時間差T13の1/2未満であることがより好ましい。換言すれば、タイミングt2とタイミングt3の時間差T23は、タイミングt1とタイミングt2の時間差T12よりも短いことが好ましい。
【0034】
また、
図2及び
図3に示した検出対象ガスの濃度測定方法は、メモリ28に格納する計算式又は変換テーブルの生成時にも適用可能である。これによれば、メモリ28に格納する計算式又は変換テーブルの精度を高めることが可能となる。
【0035】
<第2の実施形態>
図5は、本開示に係る技術の第2の実施形態によるガスセンサ2の構成を示す回路図である。
【0036】
図5に示すように、第2の本実施形態によるガスセンサ2は、メモリ28の代わりにメモリ29が設けられているとともに、DAコンバータ24がリファレンス電圧Vrefを出力しない点において、第1の本実施形態によるガスセンサ1と相違している。その他の基本的な構成は、第1の本実施形態によるガスセンサ1と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。メモリ29には、温度検知データStempが示す環境温度と、後述する補正値Cとの関係を示す計算式又は変換テーブルが格納されている。
【0037】
図6は、ガスセンサ2の動作を説明するためのフローチャートである。動作タイミングについては、
図3に示したとおりである。
【0038】
まず、ステップ100~105までの動作を行い、2回目のサンプリングに基づき環境温度を算出した後、メモリ29を参照することにより補正値Cを算出する(ステップ201)。補正値Cは、アンプ21に出力されるリファレンス電圧Vrefの環境温度に起因するずれに対応する成分である。本実施形態においては、アンプ21に出力されるリファレンス電圧Vrefのレベルは、環境温度に依らない固定値であっても構わない。
【0039】
次に、信号処理回路20は、ガス検知信号Vgas2のサンプリングを行うことにより、ガス検知データSgasを取得した後(ステップ108)、ガス検知データSgas及び補正値Cに基づいて出力信号OUTを算出する(ステップ202)。出力信号OUTの算出は、メモリ26を参照することにより、ガス検知データSgasから出力信号OUTを算出した後、補正値Cに基づいて出力信号OUTを補正することにより行っても構わないし、補正値Cに基づいてガス検知データSgasを補正した後、メモリ26を参照することにより、補正されたガス検知データSgasから出力信号OUTを算出することにより行っても構わない。
【0040】
このように、本実施形態においては、タイミングt2に行ったサンプリング結果に基づいてリファレンス電圧Vrefのレベルを制御するのではなく、タイミングt2に行ったサンプリング結果に基づいて補正値Cを生成し、補正値Cを用いた演算によって出力信号OUTの算出を行っている。このため、2回目のサンプリングを行うタイミングの自由度が高められる。
【0041】
例えば、
図7に示す第1の変形例のように、温度検知信号Vtemp2の2回目のサンプリングを行うタイミングt2と、ガス検知信号Vgas2のサンプリングを行うタイミングt3がほぼ同時であっても構わない。これによれば、
図4に示した時間差T23がほぼゼロとなることから、温度誤差△Temp23もほぼゼロとなる。
【0042】
或いは、
図8に示す第2の変形例のように、温度検知信号Vtemp2の2回目のサンプリングを行うタイミングt2を、ガス検知信号Vgas2のサンプリングを行うタイミングt3よりも後であっても構わない。
図8に示す例では、タイミングt2がサーミスタRd1,Rd2の加熱が停止されるタイミングt20よりも後であり、この場合、サーミスタRd1,Rd2の加熱に起因する環境温度の検出誤差を低減することが可能となる。
【0043】
また、
図9に示すように、タイミングt1における環境温度がTemp1であり、タイミングt2における環境温度がTemp2(>Temp1)である場合、タイミングt1とタイミングt2の時間差T12、タイミングt1とタイミングt3の時間差T13、並びに、タイミングt3とタイミングt2の時間差T32の比に基づいて、タイミングt3における環境温度Temp3の推定値を制御回路25によって演算し、環境温度Temp3の推定値から補正値Cを算出することも可能である。
【0044】
以上、本開示に係る技術の実施形態について説明したが、本開示に係る技術は、上記の実施形態に限定されることなく、その主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本開示に係る技術の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0045】
例えば、上記実施形態では感温素子としてサーミスタを用いたが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0046】
本開示に係る技術には、以下の構成例が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0047】
本開示の一側面によるガスセンサは、感温素子を含み、検出対象ガスの濃度に応じたガス検知信号を生成するガスセンサ部と、環境温度に応じた温度検知信号を生成する温度センサ部と、感温素子を加熱するヒータと、第1のタイミングで得られる温度検知信号に応じてヒータの加熱温度を制御し、第1のタイミングよりも遅い第2のタイミングで得られる温度検知信号、並びに、ヒータによって感温素子が加熱された状態である第3のタイミングで得られるガス検知信号に応じて、検出対象ガスの濃度を算出する信号処理回路とを備える。これによれば、環境温度が変化している場合であっても、より正確なガス濃度を算出することが可能となる。
【0048】
上記のガスセンサにおいて、信号処理回路は、第2のタイミングで得られる温度検知信号に応じてリファレンス電圧のレベルを算出する制御回路と、第3のタイミングで得られるガス検知信号とリファレンス電圧を比較するアンプとを含み、アンプの出力信号に応じて検出対象ガスの濃度を算出しても構わない。これによれば、制御回路の信号処理負担が軽減される。
【0049】
上記のガスセンサにおいて、信号処理回路は、第2のタイミングで得られる温度検知信号に応じて補正値を算出し、ガス検知信号及び補正値を用いて検出対象ガスの濃度を算出しても構わない。これによれば、第2のタイミングの設定自由度が高められる。この場合、第2のタイミングと第3のタイミングが同時であっても構わないし、第2のタイミングが第3のタイミングよりも遅くても構わない。
【符号の説明】
【0050】
1,2 ガスセンサ
11 ガスセンサ部
12 温度センサ部
20 信号処理回路
21,22 アンプ
23 ADコンバータ
24 DAコンバータ
25 制御回路
26~29 メモリ
MH1,MH2 ヒータ抵抗
R1 固定抵抗
Rd1~Rd3 サーミスタ