(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112770
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】水添ブロック共重合体、水添ブロック共重合体組成物、及び成形体
(51)【国際特許分類】
C08F 297/04 20060101AFI20240814BHJP
C08L 23/00 20060101ALI20240814BHJP
C08L 53/02 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
C08F297/04
C08L23/00
C08L53/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023213125
(22)【出願日】2023-12-18
(31)【優先権主張番号】P 2023017563
(32)【優先日】2023-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】其田 侑也
【テーマコード(参考)】
4J002
4J026
【Fターム(参考)】
4J002AA01Y
4J002AC034
4J002AC03Y
4J002AE044
4J002BB03W
4J002BB03Y
4J002BB04Y
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4J002BB06W
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4J002BB15Y
4J002BB174
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4J002BN14Y
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4J002CN03Y
4J002EA016
4J002EA026
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4J002FD024
4J002FD026
4J002GB01
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4J002GJ01
4J002GK01
4J002GL00
4J002GN00
4J002GQ01
4J026HA05
4J026HA06
4J026HA07
4J026HA08
4J026HA26
4J026HA32
4J026HA39
4J026HA48
4J026HB05
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4J026HB07
4J026HB08
4J026HB14
4J026HB15
4J026HB16
4J026HB26
4J026HB32
4J026HB39
4J026HB42
4J026HB45
4J026HB48
4J026HC05
4J026HC06
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4J026HC39
4J026HC42
4J026HC45
4J026HC49
4J026HE02
(57)【要約】
【課題】優れた低反発性及び耐摩耗性を発揮する水添ブロック共重合体を得る。
【解決手段】条件(1)~(3)を満たす水添ブロック共重合体(イ)。
<条件(1)>:
ビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位とからなる水添共重合体ブロック(b)を少なくとも1個含有し、水添共重合体ブロック(b)の含有量が65~95質量%。
<条件(2)>:
水添共重合体ブロック(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量が40~75質量%。
<条件(3)>:
熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析装置により検出したピーク強度Pと、
(式I)により求められるP0の比率g=P/P0が0.75以上。
P0=k×RS (式I)
((式I)中、RSは水添ブロック共重合体(イ)全体に対する、ブロック(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量(質量%)である。
kはRS(質量%)とピーク強度Pを1次近似した際の比例定数を表す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位とを含み、
少なくとも1個のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(a)を含有し、
下記<条件(1)>~<条件(3)>を満たす水添ブロック共重合体(イ)。
<条件(1)>:
ビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位とからなる水添共重合体ブロック(b)を、少なくとも1個含有し、前記水添ブロック共重合体(イ)中の、水添共重合体ブロック(b)の含有量が65質量%以上95質量%以下である。
<条件(2)>:
前記水添共重合体ブロック(b)中の、ビニル芳香族単量体単位の含有量が、40質量%以上75質量%以下である。
<条件(3)>:
熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析装置により検出した、ピーク強度Pと、
下記(式I)により求められるP0の比率g=P/P0が0.75以上である。
P0=k×RS (式I)
((式I)中、RSは、水添ブロック共重合体(イ)全体に対する、水添共重合体ブロック(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量(質量%)である。
kは、水添ブロック共重合体(イ)全体に対する、水添共重合体ブロック(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量RS(質量%)と、均一重合の水添ブロック共重合体(イ)を熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析装置で分析した際に得られるピーク強度Pを1次近似した際の比例定数を表す。)
【請求項2】
前記ピーク強度Pと、
前記(式I)で求められるP0との比率g=P/P0が、0.9以上である、
請求項1に記載の水添ブロック共重合体。
【請求項3】
前記水添共重合体ブロック(b)中の、ビニル芳香族単量体単位の含有量が、
55質量%以上65質量%以下である、
請求項1に記載の水添ブロック共重合体。
【請求項4】
水添ブロック共重合体(イ)中の、水添共重合体ブロック(b)の含有量が、
75質量%以上85質量%以下である、
請求項1に記載の水添ブロック共重合体。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の水添ブロック共重合体(イ):1質量%以上50質量%以下と、
少なくとも1種類のオレフィン系樹脂(ロ):5質量%以上90質量%以下と、
少なくとも1種類の熱可塑性樹脂(ハ):1質量%以上50質量%以下と、
少なくとも1種類の軟化剤(ニ):5質量%以上90質量%以下と、
を、含有する、水添ブロック共重合体組成物。
【請求項6】
前記オレフィン系樹脂(ロ)が、少なくとも1種類のポリプロピレン系樹脂を含む、
請求項5に記載の水添ブロック共重合体組成物。
【請求項7】
請求項5に記載の水添ブロック共重合体組成物の成形体。
【請求項8】
発泡体である請求項7に記載の成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水添ブロック共重合体、水添ブロック共重合体組成物、及び成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物とからなるブロック共重合体の水素添加物は、加硫をしなくても加硫した天然ゴムや合成ゴムと同様の弾性を常温にて有し、しかも高温では熱可塑性樹脂と同様の加工性を有することから、プラスチックの改質剤、粘接着剤、自動車部品、及び医療器具等の分野で広く利用されている。さらに前記ブロック共重合体の水添物は、耐候性、耐熱性に優れていることから、特に自動車部品や医療器具等の材料として幅広く実用化されている。
【0003】
しかしながら、共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物とからなるブロック共重合体の水素添加物、例えば水添スチレン系エラストマー(以下、単に「TPS材料」と略記する場合がある。)は、耐摩耗性に劣るため、その用途に制約があるという問題点を有している。
上記問題点に対し、ビニル芳香族単量体単位の含有量が40質量%以上95質量%未満のランダム共重合体スチレン系エラストマーと、ポリプロピレン樹脂との樹脂組成物、及び当該樹脂組成物の成形体が提案されており、当該成形体は耐摩耗性に優れていることが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、近年、自動車の新たな方向性として自動運転化やモビリティサービスが注目されている。この潮流により、自動車内装材に要求される性能にも変化が生じている。例えば、自動運転化に伴い、自動車はより居住空間としての意味合いが強くなると予想されている。そのため、搭乗者がより快適に過ごせるような空間づくりが進んでおり、高級感のある触感を出すために、低反発な材料等が求められるようになっている。
また、モビリティサービスの観点からは、カーシェアの浸透に伴い、自動車の長寿命性と清潔性が要求されるようになると考えられている。そのため、自動車内装材は、従来よりも清掃される回数が増加し、自動車内装材の材料となる樹脂組成物には、より高い耐摩耗性が必要となる。
上記のように自動運転化やモビリティサービスの浸透によって、近年では、樹脂組成物の材料である重合体には、従来品以上の高い耐摩耗性、良好な触感が必要とされている。
【0005】
上述したような要求に鑑み、特定の温度領域にtanδ(損失正接)のピークを有する水添ブロック共重合体が提案されており、当該水添ブロック共重合体を用いた樹脂組成物はエネルギー吸収性に優れ、低反発性を発現できることが示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2003/035705号
【特許文献2】国際公開第2010/018743号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来提案されている水添ブロック共重合体は、未だ良好な触感すなわち低反発性、耐摩耗性に関して改善の余地があるという問題点を有している。
【0008】
そこで本発明においては、優れた低反発性、及び耐摩耗性を発揮し得る水添ブロック共重合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上述した従来技術の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の構造を有する水添ブロック共重合体であって、水添ブロック共重合体中のビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位とからなる水添共重合体ブロック(b)の含有量、前記水添共重合体ブロック(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量、及び所定のランダム性パラメーターgを特定することで、低反発性と耐摩耗性に優れた水添ブロック共重合体を提供し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記の通りである。
【0010】
〔1〕
ビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位とを含み、
少なくとも1個のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(a)を含有し、
下記<条件(1)>~<条件(3)>を満たす水添ブロック共重合体(イ)。
<条件(1)>:
ビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位とからなる水添共重合体ブロック(b)を、少なくとも1個含有し、前記水添ブロック共重合体(イ)中の、水添共重合体ブロック(b)の含有量が65質量%以上95質量%以下である。
<条件(2)>:
前記水添共重合体ブロック(b)中の、ビニル芳香族単量体単位の含有量が、40質量%以上75質量%以下である。
<条件(3)>:
熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析装置により検出した、ピーク強度Pと、
下記(式I)により求められるP0の比率g=P/P0が0.75以上である。
P0=k×RS (式I)
((式I)中、RSは、水添ブロック共重合体(イ)全体に対する、水添共重合体ブロック(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量(質量%)である。
kは、水添ブロック共重合体(イ)全体に対する、水添共重合体ブロック(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量RS(質量%)と、均一重合の水添ブロック共重合体(イ)を熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析装置で分析した際に得られるピーク強度Pを1次近似した際の比例定数を表す。)
〔2〕
前記ピーク強度Pと、
前記(式I)で求められるP0との比率g=P/P0が、0.9以上である、
前記〔1〕に記載の水添ブロック共重合体。
〔3〕
前記水添共重合体ブロック(b)中の、ビニル芳香族単量体単位の含有量が、
55質量%以上65質量%以下である、
前記〔1〕又は〔2〕に記載の水添ブロック共重合体。
〔4〕
水添ブロック共重合体(イ)中の、水添共重合体ブロック(b)の含有量が、
75質量%以上85質量%以下である、
前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載の水添ブロック共重合体。
〔5〕
前記〔1〕乃至〔4〕のいずれか一に記載の水添ブロック共重合体(イ):1質量%以上50質量%以下と、
少なくとも1種類のオレフィン系樹脂(ロ):5質量%以上90質量%以下と、
少なくとも1種類の熱可塑性樹脂(ハ):1質量%以上50質量%以下と、
少なくとも1種類の軟化剤(ニ):5質量%以上90質量%以下と、
を、含有する、水添ブロック共重合体組成物。
〔6〕
前記オレフィン系樹脂(ロ)が、少なくとも1種類のポリプロピレン系樹脂を含む、前記〔5〕に記載の水添ブロック共重合体組成物。
〔7〕
前記〔5〕に記載の水添ブロック共重合体組成物の成形体。
〔8〕
発泡体である前記〔7〕に記載の成形体。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、優れた低反発性及び耐摩耗性を発揮する水添ブロック共重合体が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではなく、本発明はその要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0013】
〔水添ブロック共重合体〕
本実施形態の水添ブロック共重合体(以下、水添ブロック共重合体(イ)と記載する場合がある。)は、ビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位とを含み、少なくとも1個のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(a)を含有するブロック共重合体の水添物であって、下記の<条件(1)>~<条件(3)>を満たす。
【0014】
<条件(1)>:
ビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位とからなる水添共重合体ブロック(b)を、少なくとも1個含有し、本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)中の、水添共重合体ブロック(b)の含有量が65質量%以上95質量%以下である。
<条件(2)>:
前記水添共重合体ブロック(b)中の、ビニル芳香族単量体単位の含有量が、40質量%以上75質量%以下である。
<条件(3)>:
熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析装置により検出した、ピーク強度Pと、下記(式I)により求められるP0の比率g=P/P0が0.75以上である。
P0=k×RS・・・(式I)
(RSは、水添ブロック共重合体(イ)全体に対する、水添共重合体ブロック(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量(質量%)である。
kは、水添ブロック共重合体(イ)全体に対する、水添共重合体ブロック(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量RSと、後述する特定の重合方法(均一重合法)で重合した水添ブロック共重合体(イ)を熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析装置で分析した際に得られるピーク強度Pを1次近似した際の比例定数を表す。)
【0015】
上述の構成を有することにより、優れた低反発性及び耐摩耗性を発揮する水添ブロック共重合体が得られる。
なお、本明細書中、重合体に組み込まれる前の状態を「化合物」と記載し、重合体に組み込まれた状態を「単量体単位」と記載する。
【0016】
(ビニル芳香族単量体単位)
本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)は、ビニル芳香族単量体単位を含む。
ビニル芳香族単量体単位を形成するビニル芳香族化合物としては、以下に限定されないが、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1-ジフェニルエチレン、N,N-ジメチル-p-アミノエチルスチレン、N,N-ジエチル-p-アミノエチルスチレン等に由来する単量体単位が挙げられる。
特に、コストと水添ブロック共重合体を含む樹脂組成物の機械的強度とのバランスの観点から、スチレンが好ましい。
これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
(共役ジエン単量体単位)
本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)は、共役ジエン単量体単位を含む。
共役ジエン単量体単位とは、1対の共役二重結合を有するジオレフィンに由来する単量体単位である。
このようなジオレフィンとしては、以下に限定されないが、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン等が挙げられる。
特に、良好な成形加工性と機械的強度とのバランスの観点から、1,3-ブタジエン、イソプレンが好ましい。
これらは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
(全共役ジエン単量体単位中のビニル結合量)
本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)は、全共役ジエン単量体単位中のビニル結合量については特に限定されないが、5質量%以上であることが好ましい。より好ましくは15質量%以上であり、さらに好ましくは20質量%以上である。
水添ブロック共重合体(イ)の全共役ジエン単量体単位中のビニル結合量が、5質量%以上であると、水添工程において、水添された共役ジエンブロックの結晶化による溶液中からの析出を抑制することができる。また、ビニル結合量が5質量%以上であると、水添された共役ジエンブロックの結晶化が抑制され、本実施形態の水添ブロック共重合体、その組成物、及び成形体において良好な柔軟性が得られる。
また、本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)は、全共役ジエン単量体単位中のビニル結合量が60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましい。水添ブロック共重合体(イ)の全共役ジエン単量体単位中のビニル結合量が60質量%以下であると本実施形態の水添ブロック共重合体、その組成物、及び成形体において良好な引張強度が得られる。
水添ブロック共重合体(イ)の全共役ジエン単量体単位中のビニル結合量は、例えば、後述する第3級アミン化合物又はエーテル化合物等の、調整剤(ビニル結合量調整剤)の使用により、上記数値範囲に制御できる。
また、前記ビニル結合量は、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
【0019】
(全ビニル芳香族単量体単位の含有量)
本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)は、全ビニル芳香族単量体単位の含有量が、50質量%以上80質量%以下であることが好ましく、55質量%以上80質量%以下であることがより好ましく、60質量%以上80質量%以下であることがさらに好ましい。
全ビニル芳香族単量体単位の含有量が50質量%以上であると、本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)は、耐油性が良好となる傾向にある。耐油性が良好であると、自動車材料等において、より厳しい耐油性が求められる用途に使用することができる。
より厳しい耐油性が求められる用途としては、例えば、自動車内装材等において、より薄肉の成形体成形時や、より複雑/大型の成形体成形時においても、より長期間使用した場合に、本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)を用いることにより、材料の変形や外観不良等を抑制できる傾向にある。
なお、本明細書中、「一般的な成形体」とは、厚みが2mm程度であり平板状のシンプルな150mm角程度の小型の成形体と定義する。このような「一般的な成形体」に比べて、薄肉の成形体や、複雑かつ大型の成形体は、耐油性、耐摩耗性、耐傷付き性、外観、低温特性、触感、形状維持等の各種特性が低下する傾向にあることが確かめられている。
また、耐油性が良好であると、後述する本実施形態の水添ブロック共重合体組成物において水添ブロック共重合体(イ)配合量上限が増加し、配合自由度が向上する傾向にある。
一般的に、後述する本実施形態の水添ブロック共重合体組成物中の水添ブロック共重合体(イ)配合量が少ないほど、耐油性が良好となる傾向にあるが、水添ブロック共重合体(イ)配合量が多いほど耐摩耗性や触感は良化する傾向にあるため、配合量の上限は高いほうが好ましい。
なお、本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)中の全ビニル芳香族単量体単位の含有量は、水素添加前のブロック共重合体や、水素添加後の水添ブロック共重合体を検体として、紫外線分光光度計を用いて測定できる。
また、水添ブロック共重合体(イ)の全ビニル芳香族単量体単位の含有量は、重合反応器中に加えるビニル芳香族化合物の量、反応温度、反応時間を主に調整することにより、上記数値範囲に制御することができる。
【0020】
なお、本明細書中、水添ブロック共重合体(イ)を構成する重合体ブロックに関して、「主体とする」とは、所定のブロック重合体中の割合が、85質量%以上であることを意味し、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上である。
なお、前記水添共重合体ブロック(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量は40質量%以上75質量%以下であるため(前記<条件(2)>)、前記重合体ブロック(a)と、水添重合体ブロック(b)とは明確に区別できる。
【0021】
(ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(a))
本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)は、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(a)を、少なくとも1個含有する。これにより、ペレットブロッキングを防止できる傾向にある。
また、本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)は、前記重合体ブロック(a)の含有量は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましい。
ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(a)の含有量が5質量%以上であると、水添ブロック共重合体(イ)のペレットの耐ブロッキング性が良好となり、本実施形態の水添ブロック共重合体、その組成物、及び成形体において良好な引張特性を発現する傾向にある。
【0022】
本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)のペレットが良好な耐ブロッキング性を示す場合、輸送時により長時間、より高い荷重、厳しい温度環境(例えば外気温が高い地域、寒暖差が激しい地域)といった条件下においてもブロッキングが起きにくい傾向にあり、コンパウンド成形時のペレット計量やブレンド等の容易化を図ることができる。また、粘着防止剤の配合量を低減することが可能となり、装置汚れ回避、環境負荷低減、予期せぬ物性低下、例えば透明性、機械強度等の低下を抑制する効果が得られる傾向にある。
【0023】
本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)中の前記重合体ブロック(a)の含有量は、水素添加前のブロック共重合体や水素添加後の水添ブロック共重合体を検体として、核磁気共鳴装置(NMR)を用いた方法(Y.Tanaka,et al.,RUBBER CHEMISTRY and TECHNOLOGY 54,685(1981)に記載の方法。以後「NMR法」と呼ぶ。)で測定できる。具体的には、後述する実施例に記載する方法により測定できる。
また、水添ブロック共重合体(イ)中の重合体ブロック(a)の含有量は、重合反応器中に加えるビニル芳香族化合物の量、反応温度、反応時間を主に調整することにより、上記数値範囲に制御することができる。
【0024】
(水添共重合体ブロック(b))
<条件(1)>
本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)は、ビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位とからなる、水添共重合体ブロック(b)を、少なくとも1個含有し、水添ブロック共重合体(イ)中の、水添共重合体ブロック(b)の含有量は、65質量%以上95質量%以下である。
【0025】
本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)中の前記水添共重合体ブロック(b)の含有量は、65質量%以上95質量%以下であり、70質量%以上90質量%以下が好ましく、75質量%以上85質量%以下がより好ましい。
本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)中の前記水添共重合体ブロック(b)の含有量が65質量%以上95質量%以下であると本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)が良好な耐摩耗性を発現する傾向にある。さらに、70質量%以上90質量%以下であるとより高い耐摩耗性が発現し、75質量%以上85質量%以下であるとさらに耐摩耗性の要求が厳しいような用途、例えば、自動車内装材等において、より薄肉の成形体において優れた耐摩耗性を要する用途や、自動車内装材用途において、乗車時想定で、より高い荷重や目の粗い布地、例えば、カナキン3号のような綿生地より目の粗い生地であるジーンズ生地等による耐摩耗性を要する用途での長時間外観維持が要求される場合に使用することができる。
また、耐摩耗性が良好であると、本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)を用いた水添ブロック共重合体組成物において水添ブロック共重合体(イ)の配合量の下限値を低下させることができ、配合自由度が向上する傾向にある。
一般に、後述する水添ブロック共重合体組成物中の水添ブロック共重合体(イ)の配合量が多いほど、耐摩耗性が良好となる傾向にあるが、水添ブロック共重合体(イ)の配合量が少ないほど耐油性や材料コスト等が良好となる傾向にあるため、配合量の下限値は低いほうが好ましい。
本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)中の、水添共重合体ブロック(b)の含有量が65質量%以上95質量%以下であると、優れた低反発性を発現するため、良好な触感が発現する傾向にある。さらに、70質量%以上90質量%以下であると、低反発性が向上し、より触感の要求が厳しいような用途に使用でき、75質量%以上85質量%以下であるとさらに触感の要求が厳しいような用途、例えば、自動車内装材等において、好適に使用することができる。
【0026】
<条件(2)>
本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)は、前記水添共重合体ブロック(b)(100質量%)中の、ビニル芳香族単量体単位の含有量が40質量%以上75質量%以下である。
【0027】
水添共重合体ブロック(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量は、40質量%以上75質量%以下であり、45質量%以上70質量%以下が好ましく、55質量%以上65質量%以下がより好ましい
水添共重合体ブロック(b)中におけるビニル芳香族単量体単位の含有量が40質量%以上75質量%以下であると、本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)が良好な耐摩耗性を発現する傾向にある。さらに、45質量%以上70質量%以下であるとより高い耐摩耗性が発現し、55質量%以上65質量%以下であるとさらにより耐摩耗性の要求が厳しいような用途、例えば、自動車内装材等において、より薄肉での成形体において優れた耐摩耗性を要する用途や、自動車内装材用途において、乗車時想定で、より高い荷重や目の粗い布地、例えば、カナキン3号のような綿生地より目の粗い生地であるジーンズ生地等による耐摩耗性を要する用途での長時間外観維持が要求される場合に使用することができる傾向にある。
水添共重合体ブロック(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量が40質量%以上75質量%以下であると、優れた低反発性を発現するため、良好な触感が発現する傾向にある。さらに、45質量%以上70質量%以下であると、低反発性が向上し、より触感の要求が厳しいような用途に使用でき、55質量%以上65質量%以下であるとさらに触感の要求が厳しいような用途、例えば、自動車内装材等において、使用することができる。
【0028】
なお、水添共重合体ブロック(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量は、核磁気共鳴装置(NMR)等により測定できる。
また、水添共重合体ブロック(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量は、重合反応器中に加えるビニル芳香族化合物、共役ジエン化合物の量や供給速度、反応温度等を調整することにより、上記数値範囲に制御することができる。
【0029】
(水添ブロック共重合体(イ)の重量平均分子量)
本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)の重量平均分子量(Mw)は、本実施形態の水添ブロック共重合体のペレット製造時の押出成形性と、良好な機械的強度を得る観点から、1万以上50万以下が好ましく、5万以上45万以下がより好ましく、10万以上40万以下がさらに好ましい。重量平均分子量(Mw)が1万以上であると、本実施形態の水添ブロック共重合体を用いた水添ブロック共重合体組成物において、良好な機械的強度を発現する傾向にある
また、重量平均分子量(Mw)が50万以下であると、水添ブロック共重合体のペレット製造時(押出成形時)に、水添ブロック共重合体(イ)が溶融しやすくなり、ストランドが安定し、押出成形性が向上する傾向にある。
なお、本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定を行い、市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)を使用して求められることができる。
【0030】
(水添ブロック共重合体(イ)の分子量分布(Mw/Mn))
本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)分子量分布(Mw/Mn)は、10以下であることが好ましく、1~8がより好ましく、1.01~1.10がさらに好ましい。
水添ブロック共重合体(イ)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定を行い、クロマトグラムのピークの分子量を、市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)を使用して求められる。水添ブロック共重合体(イ)の分子量分布(Mw/Mn)は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比率から求められる。
【0031】
(水添ブロック共重合体(イ)中の共役ジエン単量体単位の二重結合の水素添加率)
本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)中の共役ジエン単量体単位の二重結合の水素添加率は、本実施形態の水添ブロック共重合体を用いた水添ブロック共重合体組成物において良好な耐候性、低温特性を得る観点から、25モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、85モル%以上がさらに好ましく、92モル%以上がさらにより好ましい。
水添ブロック共重合体(イ)中の共役ジエン単量体単位の二重結合の水素添加率は、水素添加量の調整により、上記数値範囲に制御することができる。水添ブロック共重合体(イ)の水添率は、核磁気共鳴装置(NMR)等を用いて測定できる。
【0032】
(水添ブロック共重合体(イ)中のビニル芳香族単量体単位の芳香族二重結合の水素添加率)
本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)中のビニル芳香族単量体単位の芳香族二重結合の水素添加率については、後述する本実施形態の水添ブロック共重合体組成物において良好な耐候性を得る観点から、50モル%以下が好ましく、30モル%以下がより好ましく、10モル%以下がさらに好ましい。
水添ブロック共重合体(イ)中のビニル芳香族単量体単位の芳香族二重結合の水素添加率は、核磁気共鳴装置(NMR)等を用いて測定できる。
【0033】
(水添ブロック共重合体(イ)の結晶化ピーク)
本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)は、示差走査熱量測定(DSC)チャートにおいて、-25~80℃の範囲に、水添共重合体ブロック(b)に起因する結晶化ピークが実質的に存在しない水素添加物であることが好ましい。
ここで、「-25~80℃の範囲に水添共重合体ブロック(b)に起因する結晶化ピークが実質的に存在しない」とは、この温度範囲において、水添共重合体ブロック(b)部分の結晶化に起因するピークが現れないか、もしくは結晶化に起因するピークが認められる場合においても、その結晶化による結晶化ピーク熱量が3J/g未満、好ましくは2J/g未満、より好ましくは1J/g未満であり、さらに好ましくは結晶化ピーク熱量が無いことを意味する。
上述したように、-25~80℃の範囲に水添共重合体ブロック(b)に起因する結晶化ピークが実質的に存在しないと、本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)において、良好な柔軟性が得られ、後述する水添ブロック共重合体組成物の軟質化が図られ好適である。
-25~80℃の範囲に水添共重合体ブロック(b)に起因する結晶化ピークが実質的に存在しない水添ブロック共重合体(イ)を得るためには、ビニル結合量の調整やビニル芳香族化合物と共役ジエンとの共重合性の調整を行う所定の調整剤を用いて後述する条件下で重合反応を行うことによって得られる共重合体を水素添加反応すればよい。
【0034】
(水添ブロック共重合体(イ)の粘弾性測定チャートにおけるtanδ(損失正接)ピーク)
本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)は、粘弾性測定チャートにおいて、tanδ(損失正接)のピークが、-25℃以上45℃以下に少なくとも1つ存在することが好ましい。より好ましくは-5℃以上40℃以下、さらに好ましくは10℃以上35℃以下、さらにより好ましくは15℃以上30℃以下に少なくとも1つ存在する。
このtanδのピークは、水添ブロック共重合体(イ)における水添共重合体ブロック(b)に起因するピークである。このピークが、-25℃以上60℃以下の範囲に少なくとも1つ存在することにより、本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)において、低反発性を発現し、良好な触感を発現する傾向にある。
なお、水添ブロック共重合体(イ)のtanδは、粘弾性測定装置(ティーエイインストゥルメント株式会社製、ARES)を用いて、ひずみ0.5%、周波数1Hz、昇温速度3℃/分の条件下で測定できる。具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0035】
(水添ブロック共重合体(イ)のランダム性パラメーターg)
<条件(3)>
本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)は、熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析装置により検出した、ピーク強度Pと、
下記(式I)により求められるP0の比率:g=P/P0が0.75以上である。
P0=k×RS (式I)
((式I)中、RSは、水添ブロック共重合体(イ)全体に対する、水添共重合体ブロック(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量(質量%)である。
kは、水添ブロック共重合体(イ)全体に対する、水添共重合体ブロック(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量RS(質量%)と、後述する特定の重合方法(均一重合法)で重合した均一重合の水添ブロック共重合体(イ)を熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析装置で分析した際に得られるピーク強度Pを1次近似した際の比例定数を表す。)
【0036】
前記g=P/P0は、水添ブロック共重合体(イ)の熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析測定(以後、py-GC/MS測定と表記する場合がある)により得られる特定のピーク強度から算出することができ、水添ブロック共重合体(イ)のランダム性パラメーターである。
前記ランダム性パラメーターg(ランダム性を評価できる理由は後述する)は、水添共重合体ブロック(b)中のビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位がどれだけ均一に配列していることを表している。前記gの値が大きいほどビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位が均一に配列していることを示す。
前記ランダム性パラメーターgによりランダム性を評価できる理由は、後述するように、Pが水添共重合体ブロック(b)中の(ビニル芳香族単量体)-(共役ジエン単量体)-(ビニル芳香族単量体)の3連子構造の分解物と推定されるピークの強度合計値を表しているためである。すなわち、Pはビニル芳香族単量体と共役ジエン単量体がどれだけ均一に反応しているかを表している。
【0037】
本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)において、前記ランダム性パラメーターgは0.75以上であり、0.8以上が好ましく、0.85以上がより好ましく、0.9以上がさらに好ましい。
ランダム性パラメーターgが0.75以上であると、本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)が良好な耐摩耗性を発現する傾向にある。さらに、0.9以上であるとより高い耐摩耗性が発現し、より耐摩耗性の要求が厳しいような用途、例えば、自動車内装材等において、より薄肉の成形体において優れた耐摩耗性を要する用途や、自動車内装材用途において、乗車時想定で、より高い荷重や目の粗い布地、例えば、カナキン3号のような綿生地より目の粗い生地であるジーンズ生地等による耐摩耗性を要する用途での長時間外観維持が要求される場合に使用することができる。
また、ランダム性パラメーターgが0.75以上であると、本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)のtanδピークの高さが向上し、低反発性が向上し、良好な触感が発現する。さらに、0.9以上であるとより高いtanδピークが得られ、より優れた低反発性が得られ、より良好な触感が得られる傾向にある。
【0038】
[ランダム性パラメーターgの算出方法]
ランダム性パラメーターgは、py-GC/MS測定により得られる特定のピーク強度から算出することができる。
gの算出に用いるピーク強度Pは、水添共重合体ブロック(b)中の(ビニル芳香族単量体)-(共役ジエン単量体)-(ビニル芳香族単量体)構造の分解物と推定される3つのピーク強度の合計値であり、3つのピークは下記の2つの条件(i)、条件(ii)で定義されるものとする。
【0039】
(条件(i))
下記表1に示す条件下で、試料を測定した場合に検出される、スチレン2量体由来のピーク(標品測定により帰属)の保持時間を0minとした場合、それぞれ相対保持時間:1.83min、2.15min、2.45min(許容誤差0.01min程度)に検出されるピークである。
(条件(ii))
それぞれ質量値:252、264、276のフラグメントピークを持つ。
【0040】
上述のようにして定義した3ピークの絶対面積値の合計に対し、後述する装置感度補正を行った相対面積値をピーク強度Pとする。
ランダム性パラメーターgは、下記(式I)で求められるP0との比:g=P/P0によって算出できる。
P0=k×RS・・・(式I)
前記(式I)中、RSは、水添ブロック共重合体(イ)全体に対する、水添共重合体ブロック(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量(質量%)で、核磁気共鳴装置(NMR)等により測定できる。
前記(式I)中、kは、水添ブロック共重合体(イ)全体に対する、水添共重合体ブロック(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量RS(質量%)と、後述する特定の重合方法(均一重合法)で重合した水添ブロック共重合体(イ)を熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析装置(py-GC/MS)で測定した際のピーク強度Pを用いて、一次近似式により求めた比例定数である。
実験的に、kの値は、0.0056程度となる。
例えば、ある水添ブロック共重合体のRSが40質量%のとき、P0は、前記(式I)より、0.0056×40=0.224となる。
py-GC/MSで求めたピーク強度P=0.112である場合、
g=0.112/0.224=0.5と算出できる。
【0041】
P0は、後述する特定の重合方法(均一重合法)で水添ブロック共重合体(イ)を重合した際のpy-GC/MS測定のピーク強度Pの推定値であり、前記P0と実際に検出されたPの値を、ランダム性パラメーターg=P/P0として比較することで、水添共重合体ブロック(b)中のビニル芳香族単量体と共役ジエン単量体がどれだけ均一に配列していることを評価できる。
【0042】
py-GC/MS測定のMS検出器の検出感度はチューニングを行うごとに変化するため、外部標準物質を用いて感度補正を行う。
本明細書中では、特に断りがない限り、ピーク強度Pの値は、ピーク絶対面積値を外部標準物質の測定から得られる基準値Xで割った値としている。
外部標準物質としては、熱や酸素雰囲気化で分解しにくく、かつ取り扱いが容易なジブチルヒドロキシトルエン(2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、以後、BHTと表記する)を使用することが好ましい。
基準値Xは0.010mgの外部標準物質を、下記表1の条件で測定した際に得られるピーク面積値とする。
なお、表1中、「サンプル測定量」については、溶液を調製してサンプルカップに滴下した後に風乾した測定値であるため、測定サンプル量は固体0.10mgになるものとする。
【0043】
【0044】
[均一重合法]
本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)は、<条件(3)>のランダム性パラメーターgの算出において、均一重合法で作製されたものとする。
均一重合法による水添ブロック共重合体(イ)の製造においては、メトラー・トレド社製 in Situ FTIR分光光度計 ReactIR 45P(以後、ReactIRと表記する)を用いることが好ましい。前記ReactIRの使用によって、重合反応中のビニル芳香族化合物濃度と共役ジエン化合物濃度をリアルタイムで定量化できるため、定量結果をもとにビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物のフィード速度を制御し、高いレベルで均一なランダム共重合の製造が可能となる。
【0045】
本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)の製造方法の一例として、ある時間におけるビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物の反応性比を、ReactIRの測定により即座に求め、所望の反応性比になるように、重合モノマーであるビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物のフィード速度を即座に制御する方法がある。
所定の時刻t0~t1におけるビニル芳香族化合物のフィード量S0、共役ジエン化合物のフィード量B0と、所定の時刻t0~t1における反応系中のビニル芳香族化合物の変化量ΔSと、共役ジエン化合物の変化量ΔBから、ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物の反応性比(S0+ΔS)/(B0+ΔB)をリアルタイムで求め、所望の反応性比になるようにビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物のフィード速度を即座に制御する。
例えば、前記反応性比:(S0+ΔS)/(B0+ΔB)が、所望の反応性比より高い場合、共役ジエン化合物のフィード速度を速くする、もしくはビニル芳香族化合物のフィード速度を遅くすればよい。
【0046】
一般に、ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物の共重合において、所望の反応性比で均一に重合する場合には、ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物のフィード速度比を、所望の反応性比と同じにしてフィードを開始し、共重合終了時はビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物のフィードを同時に終了することが必要である。
例えば、スチレンとブタジエンの共重合を行う場合においては、一般に、ブタジエンの反応速度がスチレンの反応速度より速いため、フィード開始直後は、反応性比:(S0+ΔS)/(B0+ΔB)が、狙いとする値よりも小さくなる傾向にあり、徐々に狙いとする反応性比に近づく傾向にある。また、フィード終了直後は、反応性比:(S0+ΔS)/(B0+ΔB)が狙いとする値よりも大きくなる傾向にある。前記ReactIRを用いることにより、反応性比:(S0+ΔS)/(B0+ΔB)をリアルタイムで測定し、スチレンとブタジエンのフィード速度比を狙いとする反応性比になるように制御することにより、フィード開始直後とフィード終了時の反応性比:(S0+ΔS)/(B0+ΔB)を狙いとする反応性比に制御することができる。
【0047】
以下、具体的な3種類の水添ブロック共重合体(イ)-I~(イ)-IIIを得、それぞれ、熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析装置(py-GC/MS)で測定し、ピーク強度Pを求めた。
また、前記水添共重ブロック共重合体((イ)-I~(イ)-III)全体に対する、
前記水添共重合体ブロック(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量RS(質量%)と、前記ピーク強度Pとの一次近似式から、前記(式I)の係数kを、k=005563と算出した。
kの決定に用いた値を、下記表2に示す。
【0048】
<水添ブロック共重合体(イ)-I>
攪拌装置及びジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用してバッチ重合を行った。
先ず、スチレン質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.053質量部と、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(以下「TMEDA」とする。)をn-ブチルリチウム1モルに対して0.9モル添加し、65℃で1時間重合した。
次に、ブタジエン50質量部とスチレン30質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を加えて80℃で2時間重合した。この際、ReactIRで反応系中のブタジエン、スチレン濃度をリアルタイムで定量しつつ、それぞれが重合速度1:1(質量部換算)となるようフィード速度を適宜調整した。
その後、メタノールを添加し、重合反応を停止した。
上記のようにして得られたブロック共重合体は、スチレン含有量50質量%、水添ブロック共重合体(イ)全体に対する(b)水添共重合体ブロック中のビニル芳香族単量体単位の含有量RSは30質量%であった。
さらに、得られたブロック共重合体に、上記のようにして調製した水添触媒を、ブロック共重合体100質量部当たり、Ti基準で100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水素添加反応を行った。
次に、安定剤として、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、ブロック共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、水添ブロック共重合体(イ)-Iを得た。
得られた水添ブロック共重合体(イ)-Iの水素添加率は98モル%であった。
【0049】
<水添ブロック共重合体(イ)-II>
前記水添ブロック共重合体(イ)-Iの、ブタジエン50質量部とスチレン30質量部をブタジエン40質量部とスチレン40質量部に変えて、重合反応、及び水添反応を行い、水添ブロック共重合体(イ)-IIを得た。
水添反応前のブロック共重合体は、スチレン含有量60質量%、水添ブロック共重合体(イ)全体に対する水添共重合体ブロック(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量RSは40質量%で、水添ブロック共重合体(イ)-IIの水素添加率は98モル%であった。
【0050】
<水添ブロック共重合体(イ)-III>
前記水添ブロック共重合体(イ)-Iの、ブタジエン40質量部とスチレン40質量部を、ブタジエン30質量部とスチレン50質量部に変えて、重合反応、水添反応を行い、水添ブロック共重合体(イ)-IIIを得た。
水添反応前のブロック共重合体は、スチレン含有量70質量%、水添ブロック共重合体(イ)全体に対する水添共重合体ブロック(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量RSは50質量%で、水添ブロック共重合体(イ)-IIIの水素添加率は98モル%であった。
【0051】
【0052】
(水添ブロック共重合体(イ)の構造)
本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)の構造は、例えば、下記の一般式で表される構造を有するものが挙げられる。
c-(b-a)n、c-(a-b)n、c-(a-b-a)n、c-(b-a-b)n、c-(b-c-a)n、a-(c-b-c-a)n、a-c-(b-a)n、a-c-(a-b)n、a-c-(b-a)n-b、c-a-(b-a)n-c、a-c-(b-a)n-c、a-b-(c-a)n-b、a-c-(b-c)n-a-c、c-(a-b-c)n-a-c、a-(c-b)n-c-a、c-(a-c)n-b-c-a-c、[(a-b-c)n]m-X、[a-(b-c)n]m-X、[(a-b)n-c]m-X、[(a-b-a)n-c]m-X、[(b-a-b)n-c]m-X、[(c-b-a)n]m-X、[c-(b-a)n]m-X、[c-(a-b-a)n]m-X、[c-(b-a-b)n]m-X
なお、上記各一般式において、aはビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(a)、bはビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位からなる水添共重合体ブロック(b)、cは共役ジエン単量体単位を主体とする水添重合体ブロック(c)を示す。
nは1以上の整数であり、好ましくは1~5の整数である。
mは2以上の整数であり、好ましくは2~11の整数である。
Xはカップリング剤の残基又は多官能開始剤の残基を示す。
【0053】
(水添ブロック共重合体(イ)の構造の他の例)
本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)は、所定の官能基を有する原子団が結合した変性ブロック共重合体であってもよい。本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)を用いた組成物を作製する際に混練する樹脂の構造等に応じて、変性の有無、官能基の種類等を適宜設定すればよい。
また、水添ブロック共重合体(イ)を変性ブロック共重合体とした場合は、二次変性ブロック共重合体であってもよい。本明細書中、「二次変性」は製造方法によって特徴付けられる命名で、重合体に官能基を結合させる最初の工程を一次変性、その官能基に他の化合物を反応させる工程を二次変性と称する。例えば、溶液中で重合した後、重合終了末端に変性剤(例えばアミン)を反応させた一次変性品に、押し出し機中で他の化合物(例えばマレイン酸)を反応させて二次変性品を製造することが典型的な製造方法である。
【0054】
〔水添ブロック共重合体(イ)の製造方法〕
本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)の、水素添加前の状態であるブロック共重合体は、例えば、ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物とを、炭化水素溶媒中で有機アルカリ金属化合物等の重合開始剤を用いてリビングアニオン重合を行うことにより得られる。
【0055】
(炭化水素溶媒)
炭化水素溶媒としては、以下に限定されないが、例えば、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘプタン等の脂環式炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素が挙げられる。
【0056】
(重合開始剤)
重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、ビニル芳香族化合物及び共役ジエンに対し、アニオン重合活性があることが知られている脂肪族炭化水素アルカリ金属化合物、芳香族炭化水素アルカリ金属化合物、有機アミノアルカリ金属化合物等の有機アルカリ金属化合物が挙げられる。
有機アルカリ金属化合物としては、以下に限定されないが、例えば、炭素数1~20の脂肪族及び芳香族炭化水素リチウム化合物が好ましく、1分子中に1個のリチウムを含む化合物、1分子中に複数のリチウムを含むジリチウム化合物、トリリチウム化合物、テトラリチウム化合物が適用できる。
具体的には、n-プロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、n-ペンチルリチウム、n-ヘキシルリチウム、ベンジルリチウム、フェニルリチウム、トリルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとsec-ブチルリチウムとの反応生成物、ジビニルベンゼンとsec-ブチルリチウムと少量の1,3-ブタジエンとの反応生成物等が挙げられる。
さらに、例えば、米国特許第5,708,092号明細書、英国特許第2,241,239号明細書、米国特許第5,527,753号明細書に開示されている有機アルカリ金属化合物も適用できる。
【0057】
(調整剤)
重合開始剤として有機アルカリ金属化合物を用いて、ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物とを共重合する際に、所定の調整剤を用いることにより、重合体に組み込まれる共役ジエン化合物に起因するビニル結合(1,2-結合又は3,4-結合)の含有量や、ビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位とのランダム共重合性を調整できる。
このような調整剤としては、以下に限定されないが、例えば、第3級アミン化合物、エーテル化合物、金属アルコラート化合物等が挙げられる。
調整剤は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
第3級アミン化合物としては、以下に限定されないが、例えば、一般式:R1R2R3N(ここで、R1、R2、R3は炭素数1~20の炭化水素基又は第3級アミノ基を有する炭化水素基を示す)で表される化合物が挙げられる。
具体的には、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、N-エチルピペリジン、N-メチルピロリジン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラエチルエチレンジアミン、1,2-ジピペリジノエタン、トリメチルアミノエチルピペラジン、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルエチレントリアミン、N,N’-ジオクチル-p-フェニレンジアミン等が挙げられる。
【0059】
エーテル化合物としては、以下に限定されないが、例えば、直鎖状エーテル化合物及び環状エーテル化合物等が適用できる。
直鎖状エーテル化合物としては、以下に限定されないが、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等のエチレングリコールのジアルキルエーテル化合物類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のジエチレングリコールのジアルキルエーテル化合物類が挙げられる。
環状エーテル化合物としては、以下に限定されないが、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、2,5-ジメチルオキソラン、2,2,5,5-テトラメチルオキソラン、2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパン、フルフリルアルコールのアルキルエーテル等が挙げられる。
【0060】
金属アルコラート化合物としては、以下に限定されないが、例えば、ナトリウム-t-ペントキシド、ナトリウム-t-ブトキシド、カリウム-t-ペントキシド、カリウム-t-ブトキシド等が挙げられる。
【0061】
(重合方法)
重合開始剤として有機アルカリ金属化合物を用いて、ビニル芳香族化合物及び共役ジエン化合物を重合する方法としては、従来公知の方法を適用できる。
以下に限定されないが、例えば、バッチ重合、連続重合、あるいはこれらの組み合わせのいずれであってもよい。特に、耐熱性に優れた共重合体を得るためにはバッチ重合が好適である。
重合温度は、0℃~180℃が好ましく、30℃~150℃がより好ましい。重合時間は条件によって異なるが、通常は48時間以内であり、好ましくは0.1~10時間である。
また、重合系の雰囲気としては、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気が好ましい。
重合圧力は、上記温度範囲においてモノマー及び溶媒を液相に維持することができる圧力範囲に設定すればよく、特に限定されるものではない。
さらに、重合系内は触媒及びリビングポリマーを不活性化させるような不純物、例えば、水、酸素、炭酸ガス等が混入しないように留意することが好ましい。
【0062】
また、上記重合工程の終了時に、2官能以上のカップリング剤を必要量添加してカップリング反応を行ってもよい。
2官能のカップリング剤としては、公知のものを適用でき、特に限定されるものではない。例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジクロロジメトキシシラン、ジクロロジエトキシシラン、トリクロロメトキシシラン、トリクロロエトキシシラン等のアルコキシシラン化合物、ジクロロエタン、ジブロモエタン、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジブロモシラン等のジハロゲン化合物、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸フェニル、フタル酸エステル類等の酸エステル類等が挙げられる。
また、3官能以上の多官能カップリング剤としては、従来公知のものを適用でき、特に限定されるものではない。例えば、3価以上のポリアルコール類、エポキシ化大豆油、ジグリシジルビスフェノールA、1,3-ビス(N-N’-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン等の多価エポキシ化合物;一般式R4-nSiXn(ここで、Rは炭素数1~20の炭化水素基、Xはハロゲン、nは3~4の整数を示す)で表されるハロゲン化珪素化合物、例えば、メチルシリルトリクロリド、t-ブチルシリルトリクロリド、四塩化珪素及びこれらの臭素化物等;一般式R4-nSnXn(ここで、Rは炭素数1~20の炭化水素基、Xはハロゲン、nは3~4の整数を示す)で表されるハロゲン化錫化合物、例えば、メチル錫トリクロリド、t-ブチル錫トリクロリド、四塩化錫等の多価ハロゲン化合物等が挙げられる。また、炭酸ジメチルや炭酸ジエチル等を使用してもよい。
【0063】
(変性工程)
上述したように、本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)は、官能基を有する原子団が結合した変性ブロック共重合体であってもよい。官能基を有する原子団は、後述する水添工程の前工程として結合させることが好ましい。
前記「官能基を有する原子団」としては、以下に限定されないが、例えば、水酸基、カルボキシル基、カルボニル基、チオカルボニル基、酸ハロゲン化物基、酸無水物基、カルボン酸基、チオカルボン酸基、アルデヒド基、チオアルデヒド基、カルボン酸エステル基、アミド基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、ピリジル基、キノリン基、エポキシ基、チオエポキシ基、スルフィド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、ハロゲン化ケイ素基、シラノール基、アルコキシケイ素基、ハロゲン化スズ基、ボロン酸基、ホウ素含有基、ボロン酸塩基、アルコキシスズ基、フェニルスズ基等から選ばれる官能基を少なくとも1種含有する原子団が挙げられる。特に、水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を少なくとも1個有する原子団が好ましい。
前記「官能基を有する原子団」は変性剤により結合させることができる。
変性剤としては、以下に限定されないが、例えば、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジル-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン、4-メトキシベンゾフェノン、γ-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルジメチルフェノキシシラン、ビス(γ-グリシドキシプロピル)メチルプロポキシシラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノン、N,N’-ジメチルプロピレンウレア、N-メチルピロリドン等が挙げられる。
【0064】
変性ブロック共重合体は、特に限定されないが、例えば、アニオンリビング重合により、官能基を有する重合開始剤や官能基を有する不飽和単量体を用いて重合したり、リビング末端に官能基を形成したり、官能基を含有する変性剤を付加反応させたりすることにより得られる。
その他の方法としては、ブロック共重合体に有機リチウム化合物等の有機アルカリ金属化合物を反応(メタレーション反応)させ、有機アルカリ金属が付加したブロック重合体に官能基を有する変性剤を付加反応させることにより得られる。
但し、後者の方法の場合には、水添ブロック共重合体を得た後にメタレーション反応させてから、変性剤を反応させることにより、変性水添ブロック共重合体を作製することもできる。
変性反応を行う温度は、0~150℃が好ましく、20~120℃がより好ましい。変性反応に要する時間は他の条件によって異なるが、24時間以内であることが好ましく、0.1~10時間がより好ましい。
用いた変性剤の種類により、変性剤を反応させた段階で一般にアミノ基等は有機金属塩となっていることもあるが、その場合には水やアルコール等活性水素を有する化合物で処理することにより、アミノ基等に変換できる。なお、このような変性ブロック共重合体においては、変性ブロック共重合体中に、一部変性されていないブロック共重合体が混在してもよい。
【0065】
また、上述した変性ブロック共重合体は、二次変性ブロック共重合体であってもよい。二次変性ブロック共重合体は、変性ブロック共重合体に、当該変性ブロック共重合体の官能基と反応性を有する二次変性剤を反応させることにより得られる。
二次変性剤としては、以下に限定されないが、例えば、カルボキシル基、酸無水物基、イソシアネート基、エポキシ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を有する変性剤が挙げられ、これらの官能基から選ばれる官能基を少なくとも2個有するものが好ましい。
但し、官能基が酸無水物基である場合には、酸無水物基を1個具備するものであってもよい。
【0066】
上記のように、変性ブロック共重合体に二次変性剤を反応させる場合、変性ブロック共重合体に結合されている官能基1当量あたり、二次変性剤の使用量は0.3~10モルが好ましく、0.4~5モルがより好ましく、0.5~4モルがさらに好ましい。
変性ブロック共重合体と二次変性剤とを反応させる方法については、公知の方法が適用でき、特に限定されるものではない。例えば、後述する溶融混練方法や、各成分を溶媒等に溶解又は分散混合して反応させる方法等が挙げられる。なお、これら二次変性は、水添工程後に行うことが好ましい。
【0067】
二次変性剤としては、以下に限定されないが、例えば、無水マレイン酸、無水ピロメリット酸、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、トルイレンジイソシアナート、テトラグリジジル-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス-(3-トリエトキシシリルプロピル)-テトラスルファン等が好適なものとして挙げられる。
【0068】
また、本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)は、α,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体、例えば、その無水物、エステル化物、アミド化物、イミド化物でグラフト変性した変性ブロック共重合体とすることができる。
α,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体としては、以下に限定されないが、例えば、無水マレイン酸、無水マレイン酸イミド、アクリル酸又はそのエステル、メタアクリル酸又はそのエステル、エンド-シス-ビシクロ〔2,2,1〕-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸又はその無水物等が挙げられる。
α,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体の付加量は、水添ブロック共重合体(イ)100質量部当たり、好ましくは0.01~20質量部であり、より好ましくは0.1~10質量部である。
グラフト変性する場合の反応温度は100~300℃が好ましく、120~280℃がより好ましい。
グラフト変性する方法としては、特に限定されないが、例えば、特開昭62-79211号公報に記載の方法が適用できる。
【0069】
(水添反応工程)
本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)は、上述したような非水添の非変性又は変性ブロック共重合体を、所定の水添触媒を用いて水素添加反応に供することにより得られる。
水添触媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、公知の触媒である(1)Ni、Pt、Pd、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等に担持させた担持型不均一系水添触媒、(2)Ni、Co、Fe、Cr等の有機酸塩又はアセチルアセトン塩等の遷移金属塩と有機アルミニウム等の還元剤とを用いる、いわゆるチーグラー型水添触媒、(3)Ti、Ru、Rh、Zr等の有機金属化合物等のいわゆる有機金属錯体等の均一系水添触媒が挙げられる。
また、水添触媒としては、以下に限定されないが、例えば、特公昭42-8704号公報、特公昭43-6636号公報、特公昭63-4841号公報、特公平1-37970号公報、特公平1-53851号公報、特公平2-9041号公報に記載された水添触媒も使用できる。
好適な水添触媒としては、チタノセン化合物、還元性有機金属化合物、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
チタノセン化合物としては、以下に限定されないが、例えば、特開平8-109219号公報に記載されている化合物が使用できる。具体的には、ビスシクロペンタジエニルチタンジクロライド、モノペンタメチルシクロペンタジエニルチタントリクロライド等の(置換)シクロペンタジエニル骨格、インデニル骨格、あるいはフルオレニル骨格を有する配位子を少なくとも1つ以上有する化合物が挙げられる。
還元性有機金属化合物としては、以下に限定されないが、例えば、有機リチウム等の有機アルカリ金属化合物、有機マグネシウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機ホウ素化合物、あるいは有機亜鉛化合物等が挙げられる。
【0070】
水添反応について説明する。
反応温度は、一般的に0~200℃の温度範囲が好ましく、30~150℃の温度範囲がより好ましい。
水添反応に使用される水素の圧力は0.1~15MPaが好ましく、0.2~10MPaがより好ましく、0.3~5MPaがさらに好ましい。
水添反応時間は、通常3分~10時間が好ましく、10分~5時間がより好ましい。
水添反応は、バッチプロセス、連続プロセス、あるいはこれらの組み合わせのいずれであってもよい。
水添反応を経て得られた水添ブロック共重合体の溶液から必要に応じて触媒残査を除去し、水添ブロック共重合体を溶液から分離することが好ましい。
分離方法としては、以下に限定されないが、例えば、水添後の反応液にアセトン又はアルコール等の水添変性共重合体に対する貧溶媒となる極性溶媒を加えて重合体を沈澱させて回収する方法;反応液を撹拌下熱湯中に投入し、スチームストリッピングにより溶媒を除去して回収する方法;直接重合体溶液を加熱して溶媒を留去する方法等が挙げられる。
【0071】
なお、本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)には、各種フェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤、アミン系安定剤等の安定剤を添加してもよい。
【0072】
〔水添ブロック共重合体組成物〕
本実施形態の水添ブロック共重合体組成物は、水添ブロック共重合体(イ)、オレフィン系樹脂(ロ)、熱可塑性樹脂(ハ)、及び軟化剤(ニ)を含有する。
本実施形態の水添ブロック共重合体組成物は、本実施形態の(イ)水添ブロック共重合体:1質量%以上50質量%以下と、(ロ)少なくとも1種類のオレフィン系樹脂:5質量%以上90質量%以下、少なくとも1種類の熱可塑性樹脂(ハ):1質量%以上50質量%以下、及び少なくとも1種類の軟化剤(ニ):5質量%以上90質量%以下を含有する。
【0073】
((ロ)オレフィン系樹脂)
本実施形態の水添ブロック共重合体組成物を構成するオレフィン系樹脂(ロ)について以下説明する。
オレフィン系樹脂(ロ)としては、以下に限定されないが、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン等の、α-オレフィン類のホモ重合体が挙げられる。また、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン等から選ばれるオレフィンの組み合わせよりなるランダム共重合体、あるいはブロック共重合体が挙げられる。
具体的には、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-3-メチル-1-ブテン共重合体、エチレン-4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-1-オクテン共重合体、エチレン-1-デセン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-1-オクテン共重合体、プロピレン-4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン-プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-1-ヘキセン-エチレン共重合体、プロピレン-1-オクテン-エチレン共重合体等の、エチレン及び/又はプロピレン-α-オレフィン共重合体が挙げられる。
また、エチレン及び/又はプロピレンとの共重合体としては、他の不飽和単量体との共重合体も含まれる。
前記他の不飽和単量体との共重合体としては、以下に限定されないが、例えば、エチレン及び/又はプロピレンとアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸、アリールマレイン酸イミド、アルキルマレイン酸イミド等の不飽和有機酸又はその誘導体との共重合体;エチレン及び/又はプロピレンと酢酸ビニル等のビニルエステル類との共重合体;さらにエチレン及び/又はプロピレンとジシクロペンタジエン、4-エチリデン-2-ノルボルネン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン等の非共役ジエン等との共重合体が挙げられる。
(ロ)オレフィン系樹脂は、経済性や、本実施形態の水添ブロック共重合体組成物中の相溶性を良好なものとして高い透明性を得る観点から、少なくとも1種類のポリプロピレン系樹脂を含むことが好ましい。
【0074】
また、オレフィン系樹脂(ロ)は、所定の官能基によって変性されたものであってもよい。
官能基としては、特に限定されないが、例えば、エポキシ基、カルボキシ基、酸無水物基、水酸基等が挙げられる。
オレフィン系樹脂(ロ)を変性させるための官能基含有化合物又は変性剤としては、特に限定されないが、例えば、下記の化合物が挙げられる。
例えば、グリシジルメタアクリレート、グリシジルアクリレート、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等の不飽和エポキシドや、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、アリルコハク酸、無水マレイン酸、無水フマル酸、無水イタコン酸等の不飽和有機酸等が挙げられる。その他、特に限定されないが、例えば、アイオノマー、塩素化ポリオレフィン等が挙げられる。
【0075】
オレフィン系樹脂(ロ)は、経済性や、本実施形態の水添ブロック共重合体組成物中の相溶性を良好なものとして高い透明性を得る観点から、ポリプロピレンホモ重合体、エチレン-プロピレンのランダムあるいはブロック共重合体等のポリプロピレン系樹脂であることが好ましい。
特に、透明性、柔軟性の観点で、エチレン-プロピレンのランダム共重合体がより好ましい。
オレフィン系樹脂(ロ)は、1種のみの単独の材料により構成されていてもよく、2種以上を併用したものであってもよい。
【0076】
本実施形態の水添ブロック共重合体組成物は、水添ブロック共重合体(イ)と、少なくとも1種類のオレフィン系樹脂(ロ)とを含有し、水添ブロック共重合体(イ)の含有量が好ましくは1質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは1質量%以上45質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以上40質量%以下である。
水添ブロック共重合体(イ)の含有量が1質量%以上であると、水添ブロック共重合体組成物の耐摩耗性が向上し、硬度が低下する傾向にある。一方において水添ブロック共重合体(イ)の含有量が50質量%以下であると、本実施形態の水添ブロック共重合体組成物の耐油性が向上する傾向にある。
また、オレフィン樹脂(ロ)の含有量は、本実施形態の水添ブロック共重合体組成物の機械的強度の観点から5質量%以上であり、水添ブロック共重合体組成物の低温特性の観点から90質量%以下である。好ましくは7質量%以上85質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上80質量%以下である。
【0077】
本実施形態の水添ブロック共重合体組成物は、上述した本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)、ポリオレフィン系樹脂(ロ)に加え、少なくとも1種類の熱可塑性樹脂(ハ)を1質量%以上50質量%以下、少なくとも1種類の軟化剤(ニ)を5質量%以上90質量%以下、含有する。その他、改質剤、添加剤等が配合されていてもよい。
【0078】
前記軟化剤(ニ)は、本実施形態の水添ブロック共重合体組成物を柔軟化させ、かつ流動性(成形加工性)を付与する。
軟化剤としては、以下に限定されないが、例えば、鉱物油や液状もしくは低分子量の合成軟化剤が適用でき、特に、ナフテン系及び/又はパラフィン系のプロセスオイル又はエクステンダーオイルが好適である。
鉱物油系の軟化剤は、芳香族環、ナフテン環及びパラフィン鎖の混合物であり、パラフィン鎖の炭素数が全炭素の50%以上を占めるものがパラフィン系と呼ばれ、ナフテン環の炭素数が30~45%のものがナフテン系、また芳香族炭素数が30%を超えるものが芳香族系と呼ばれる。
合成軟化剤としては、例えば、ポリブテン、低分子量ポリブタジエン、流動パラフィン等が使用できるが、上述した鉱物油系軟化剤の方がより好ましい。
本実施形態の水添ブロック共重合体組成物に高い耐熱性、機械的物性が要求される場合には、適用する鉱物油系の軟化剤は、40℃の動粘度が60cst以上であることが好ましく、より好ましくは120cst以上である。
軟化剤は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0079】
前記改質剤は、本実施形態の水添ブロック共重合体組成物の表面の耐傷性を向上させたり、粘着性を改良したりする機能を有しているものとする。
改質剤としては、以下に限定されないが、例えば、有機ポリシロキサンが適用できる。これは水添ブロック共重合体組成物の表面改質効果を発揮し、かつ耐摩耗性改善助剤として機能する。
改質剤の形態としては、低粘度の液状~高粘度の液状物、固体状のいずれでもよいが、本実施形態の水添ブロック共重合体組成物への良好な分散性を確保する観点から、液状物、すなわちシリコンオイルが好適である。さらに改質剤の動粘度については、ポリシロキサン自体のブリード抑制の観点から、90cst以上が好ましく、1000cst以上がより好ましい。ポリシロキサンとしては、以下に限定されないが、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等の汎用シリコンオイルや、アルキル変性、ポリエーテル変性、フッ素変性、アルコール変性、アミノ変性、エポキシ変性等、各種変性シリコンオイルが挙げられる。特に制限されないが、耐摩耗性改善助剤としての効果が高いことから、ジメチルポリシロキサンが好適である。
これらの改質剤は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0080】
添加剤としては、充填剤、滑剤、離型剤、可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤、補強剤、着色剤、熱可塑性樹脂やゴム状重合体の配合に一般的に用いられるものであれば特に制限はない。
充填剤としては、以下に限定されないが、例えば、シリカ、タルク、マイカ、ケイ酸カルシウム、ハドロタルサイト、カオリン、珪藻土、グラファイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機充填剤、カーボンブラック等の有機充填剤が挙げられる。
滑剤としては、以下に限定されないが、例えば、ステアリン酸、ベヘニン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、エチレンビスステアロアミド等が挙げられる。
可塑剤としては、以下に限定されないが、例えば、有機ポリシロキサン、ミネラルオイル等が挙げられる。
酸化防止剤としては、以下に限定されないが、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。
熱安定剤としては、以下に限定されないが、例えば、リン系、硫黄系及びアミン系熱安定剤等が挙げられる。
光安定剤としては、以下に限定されないが、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、以下に限定されないが、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が挙げられる。
補強剤としては、以下に限定されないが、例えば、有機繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属ウィスカー等が挙げられる。
着色剤としては、以下に限定されないが、例えば、酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラック等が挙げられる。
その他、「ゴム・プラスチック配合薬品」(ラバーダイジェスト社編)等に記載されたものが挙げられる。
【0081】
((ハ)熱可塑性樹脂)
前記熱可塑性樹脂(ハ)としては、以下に限定されないが、例えば、共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物とのブロック共重合体及びその水素添加物(但し、上述した本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)とは異なる)、前記のビニル芳香族化合物の重合体、前記のビニル芳香族化合物と他のビニルモノマー、例えばエチレン、プロピレン、ブチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、アクリル酸及びアクリルメチル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸及びメタクリル酸メチル等のメタクリル酸エステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等との共重合樹脂、ゴム変性スチレン系樹脂(HIPS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂(ABS)、メタクリル酸エステル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂(MBS)等が挙げられる。
【0082】
また、前記(ハ)熱可塑性樹脂としては、以下に限定されないが、例えば、ポリエチレン、エチレンを50質量%以上含有するエチレン共重合体、例えば、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブチレン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体、エチレン-オクテン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体及びその加水分解物、エチレン-アクリル酸アイオノマーや塩素化ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、プロピレンを50質量%以上含有するプロピレン共重合体、例えば、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-アクリル酸エチル共重合体や塩素化ポリプロピレン等のポリプロピレン系樹脂、エチレン-ノルボルネン樹脂等の環状オレフィン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂及びその加水分解物等が挙げられる。
【0083】
また、(ハ)熱可塑性樹脂としては、以下に限定されないが、例えば、アクリル酸及びそのエステルやアミドの重合体、ポリアクリレート系樹脂、アクリロニトリル及び/又はメタクリロニトリルの重合体、これらのアクリロニトリル系モノマーを50質量%以上含有する他の共重合可能なモノマーとの共重合体であるニトリル樹脂、ナイロン-46、ナイロン-6、ナイロン-66、ナイロン-610、ナイロン-11、ナイロン-12、ナイロン-6ナイロン-12共重合体等のポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂、ポリ-4,4’-ジオキシジフェニル-2,2’-プロパンカーボネート等のポリカーボネート系重合体、ポリエーテルスルホンやポリアリルスルホン等の熱可塑性ポリスルホン、ポリオキシメチレン系樹脂、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテル等のポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリ4,4’-ジフェニレンスルフィド等のポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリエーテルケトン重合体又は共重合体、ポリケトン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリオキシベンゾイル系重合体、ポリイミド系樹脂、1,2-ポリブタジエン、トランスポリブタジエン等のポリブタジエン系樹脂等が挙げられる。
【0084】
上述した熱可塑性樹脂(ハ)のうち、ポリスチレン、ゴム変性スチレン系樹脂等のスチレン系樹脂、ポリエチレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレレン-ブチレン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体、エチレン-オクテン共重合体、エチレン-酢酸ビニル系共重合体、エチレン-アクリル酸エステル系共重合体、エチレン-メタクリル酸エステル系共重合体等のポリエチレン系重合体、ポリプロピレン、プロピレン-エチレン共重合体等のポリプロピレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂が特に好ましい。これらの熱可塑性樹脂(ハ)の数平均分子量は、一般に1000以上であり、好ましくは5000~500万、より好ましくは1万~100万である。
【0085】
本実施形態の水添ブロック共重合体組成物において、熱可塑性樹脂(ハ)の含有量は、機械的強度の観点から1質量%以上とし、耐油性の観点から50質量%以下とする。好ましくは3質量%以上47質量%以下であり、より好ましくは5質量%以上45質量%以下である。
また、上述した成分(イ)及び(ハ)の合計量を100質量部とした場合、成分(ハ)の含有量は、2~150質量部が好ましく、2~140質量部であることがより好ましく、2~130質量部であることがさらに好ましい。
【0086】
((ニ)軟化剤)
次に、本実施形態の水添ブロック共重合体組成物を構成する軟化剤(ニ)について説明する。
軟化剤(ニ)は、水添ブロック共重合体組成物を柔軟化させると共に加工性を付与するゴム用軟化剤であることが好ましい。
軟化剤(ニ)としては、以下に限定されないが、例えば、鉱物油や、液状若しくは低分子量の合成軟化剤が挙げられ、中でも、ナフテン系及び/又はパラフィン系のプロセスオイル又はエクステンダーオイルが好ましい。
鉱物油系軟化剤は、芳香族環、ナフテン環及びパラフィン鎖の混合物であり、パラフィン鎖の炭素数が全炭素の50%以上を占めるものがパラフィン系と呼ばれ、ナフテン環の炭素数が30~45%のものがナフテン系、また芳香族炭素数が30%を超えるものが芳香族系と呼ばれる。
本実施形態の水添ブロック共重合体組成物には合成軟化剤を用いてもよく、特に限定されないが、例えば、ポリブテン、低分子量ポリブタジエン、流動パラフィン等が使用可能である。中でも、上記した鉱物油系ゴム用軟化剤が好ましい。
【0087】
本実施形態の水添ブロック共重合体組成物において、軟化剤(ニ)の含有量は、表面感触の観点から5質量%以上とし、ブリードアウト抑制の観点から90質量%以下とする。好ましくは7質量%以上85質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上80質量%以下である。
また、成分(イ)及び(ロ)の合計量を100質量部とした場合、成分(ニ)の含有量は、2~150質量部であることが好ましく、2~130質量部であることがより好ましく、2~100質量部であることがさらに好ましい。軟化剤(ニ)の含有量が前記上限値以下であるとブリードアウトを抑制でき、表面感触が良好となる。
【0088】
本実施形態の水添ブロック共重合体組成物には、前記成分(イ)、(ロ)、(ハ)、及び(ニ)以外に、必要に応じて任意の添加剤を配合することができる。
添加剤の種類は、熱可塑性樹脂やゴム状重合体の配合に一般的に用いられるものであれば特に制限はない。
【0089】
本実施形態の水添ブロック共重合体組成物は、従来公知の方法により製造できる。
本実施形態の水添ブロック共重合体組成物の製造方法は、以下に限定されないが、例えば、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機、コニーダ、多軸スクリュー押出機等の混和機を用いて、各成分(上記水添ブロック共重合体(イ)と、ポリオレフィン系樹脂(ロ)、熱可塑性樹脂(ハ)、軟化剤(ニ)、その他添加剤)を、溶融混練する方法、各成分を溶解又は分散混合後、溶剤を加熱除去する方法等が用いられる。
特に、押出機による溶融混練法が生産性、良混練性の観点から好適である。
水添ブロック共重合体組成物の形状については、以下に限定されるものではないが、例えば、ペレット状、シート状、ストランド状、チップ状等、任意の形状とすることができる。また、溶融混練後、直接成形品を作製してもよい。
【0090】
(補強性充填剤及び補強性充填剤配合物)
本実施形態の水添ブロック共重合体又は前記水添ブロック共重合体組成物(以下、成分(A)と記載する場合がある)に、シリカ系無機充填剤、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸化物、カーボンブラックから選ばれる少なくとも1種の補強性充填剤(以下、成分(C)と記載する場合がある)を配合することにより、補強性充填剤配合物を調製することができる。
補強性充填剤配合物における成分(C)の含有量は、本実施形態の水添ブロック共重合体又は前記水添ブロック共重合体組成物(成分(A))100質量部に対して0.5~100質量部が好ましく、より好ましくは5~100質量部、さらに好ましくは20~80質量部である。
本実施形態の水添ブロック共重合体又は前記水添ブロック共重合体組成物(成分(A))を用いて、前記補強性充填剤配合物を調製する場合には、成分(A)100質量部に対して、0~500質量部、好ましくは5~300質量部、より好ましくは10~200質量部の、前記本実施形態の水添ブロック共重合体及び前記オレフィン系樹脂(ロ)及び前記熱可塑性樹脂(ハ)とは異なる、熱可塑性樹脂及び/又はゴム状重合体(以下、成分(B)と記載する場合がある)を、さらに包含することが好ましい。
【0091】
(成分(ロ)、成分(ハ)とは異なる熱可塑性樹脂及び/又はゴム状重合体)
前記熱可塑性樹脂及び/又はゴム状重合体(成分(B))としては、以下に限定されないが、例えば、ビニル芳香族単量体単位含有量が60質量%を超える共役ジエン単量体とビニル芳香族単量体とのブロック共重合樹脂及びその水素添加物(但し、本実施形態の水添ブロック共重合体(A)とは異なる);前記のビニル芳香族化合物の重合体;前記のビニル芳香族化合物と他のビニル化合物(例えばエチレン、プロピレン、ブチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、アクリル酸及びアクリルメチル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸及びメタクリル酸メチル等のメタクリル酸エステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等)との共重合樹脂;ゴム変性スチレン系樹脂(HIPS);アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂(ABS);メタクリル酸エステル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂(MBS);ポリエチレン;エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブチレン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体、エチレン-オクテン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体及びその加水分解物等の、エチレンと他の共重合可能なモノマーとからなるエチレン含有量が50質量%以上の共重合体;エチレン-アクリル酸アイオノマーや塩素化ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂;ポリプロピレン;プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-アクリル酸エチル共重合体や塩素化ポリプロピレン等のポリプロピレン系樹脂、エチレン-ノルボルネン樹脂等の環状オレフィン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂及びその加水分解物等の、プロピレンと他の共重合可能な単量体とからなるプロピレン含有量が50質量%以上の共重合体;アクリル酸及びそのエステルやアミドの重合体;ポリアクリレート系樹脂;アクリロニトリル及び/又はメタクリロニトリルの重合体;アクリロニトリル系モノマーと他の共重合可能な単量体とからなるアクリロニトリル系単量体含有量が50質量%以上の共重合体であるニトリル樹脂;ナイロン-46、ナイロン-6、ナイロン-66、ナイロン-610、ナイロン-11、ナイロン-12、ナイロン-6、ナイロン-12共重合体等のポリアミド系樹脂;ポリエステル系樹脂;熱可塑性ポリウレタン系樹脂;ポリ-4,4’-ジオキシジフェニル-2,2’-プロパンカーボネート等のポリカーボネート系重合体;ポリエーテルスルホンやポリアリルスルホン等の熱可塑性ポリスルホン;ポリオキシメチレン系樹脂;ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテル等のポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリフェニレンスルフィド、ポリ4,4’-ジフェニレンスルフィド等のポリフェニレンスルフィド系樹脂;ポリアリレート系樹脂;ポリエーテルケトン重合体又は共重合体;ポリケトン系樹脂;フッ素系樹脂;ポリオキシベンゾイル系重合体;ポリイミド系樹脂;1,2-ポリブタジエン、トランスポリブタジエン等のポリブタジエン系樹脂等が挙げられる。
これらの成分(B)は、水酸基、エポキシ基、アミノ基、カルボン酸基、酸無水物基等の極性基含有原子団が結合しているものでもよい。
【0092】
前記補強性充填剤(成分(C))として用いることができるシリカ系無機充填剤は、化学式SiO2を構成単位の主成分とする固体粒子であり、以下に限定されないが、例えば、シリカ、クレー、タルク、カオリン、マイカ、ウォラストナイト、モンモリロナイト、ゼオライト、ガラス繊維等の無機繊維状物質等が挙げられる。また、表面を疎水化したシリカ系無機充填剤や、シリカ系無機充填剤とシリカ系以外の無機充填剤の混合物も使用できる。シリカ系無機充填剤としてはシリカ及びガラス繊維が好ましい。シリカとしては、乾式法ホワイトカーボン、湿式法ホワイトカーボン、合成ケイ酸塩系ホワイトカーボン、コロイダルシリカと呼ばれているもの等が使用できる。
シリカ系無機充填剤は、平均粒径が0.01~150μmのものが好ましく、シリカ系無機充填剤が補強性充填剤配合物中に分散し、その添加効果を十分に発揮するためには、平均分散粒子径は0.05~1μmが好ましく、より好ましくは0.05~0.5μmである。
【0093】
前記補強性充填剤(成分(C))として用いることができる金属酸化物は、化学式MxOy(Mは金属原子、x、yは各々1~6の整数)を構成単位の主成分とする固体粒子であり、例えば、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等が挙げられる。また、補強性充填剤としては、金属酸化物と金属酸化物以外の無機充填剤の混合物を使用してもよい。
補強性充填剤として用いる金属水酸化物としては、以下に限定されないが、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、水和珪酸アルミニウム、水和珪酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、酸化錫の水和物、硼砂等の無機金属化合物の水和物等の水和系無機充填材が挙げられ、特に、水酸化マグネシウムと水酸化アルミニウムが好ましい。
補強性充填剤として用いる金属炭酸化物としては、以下に限定されないが、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。
また、補強性充填剤としては、例えば、FT、SRF、FEF、HAF、ISAF、SAF等の各クラスのカーボンブラックが使用でき、特に、窒素吸着比表面積が50mg/g以上、DBP(フタル酸ジブチル)吸油量が80mL/100gのカーボンブラックが好ましい。
【0094】
本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)又は水添ブロック共重合体組成物(成分(A))を用いた補強性充填剤配合物においては、シランカップリング剤(以下、成分(D)と記載する場合がある)を配合してもよい。
シランカップリング剤(D)は、本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)と前記補強性充填剤(C)との相互作用を緊密にするためのものであり、水添ブロック共重合体(イ)と補強性充填剤(C)の一方又は両方に対して親和性あるいは結合性の基を有している化合物である。
好ましいシランカップリング剤(D)としては、以下に限定されないが、例えば、シラノール基又はアルコキシシランと共に、メルカプト基及び/又は硫黄が2個以上連結したポリスルフィド結合を有するものが挙げられる。具体的には、ビス-[3-(トリエトキシシリル)-プロピル]-テトラスルフィド、ビス-[3-(トリエトキシシリル)-プロピル]-ジスルフィド、ビス-[2-(トリエトキシシリル)-エチル]-テトラスルフィド、3-メルカプトプロピル-トリメトキシシラン、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド等が挙げられる。
目的とする作用効果を得る観点から、シランカップリング剤(D)の配合量は、補強性充填剤配合物に対して好ましくは0.1~30質量%、より好ましくは0.5~20質量%、さらに好ましくは1~15質量%である。
【0095】
本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)又は前記水添ブロック共重合体組成物と補強性充填剤を含有する補強性充填剤配合物は、加硫剤で加硫して、すなわち架橋して加硫組成物としてもよい。
加硫剤としては、有機過酸化物及びアゾ化合物等のラジカル発生剤、オキシム化合物、ニトロソ化合物、ポリアミン化合物、硫黄、硫黄化合物(一塩化硫黄、二塩化硫黄、ジスルフィド化合物、高分子多硫化合物等が挙げられる。
加硫剤の使用量は、通常は、水添ブロック共重合体(イ)又は前記水添ブロック共重合体組成物100質量部に対し、0.01~20質量部、好ましくは0.1~15質量部の割合である。
加硫剤として用いる有機過酸化物(以下、成分(E)と記載する場合がある)としては、臭気性やスコーチ安定性(各成分の混合時の条件下では架橋しないが、架橋反応条件にした時には速やかに架橋する特性)の観点から、以下に限定されないが、例えば、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルペルオキシ)バレレート、ジ-tert-ブチルパーオキサイドが好ましいものとして挙げられる。
上記以外には、例えば、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、p-クロロベンゾイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルペルベンゾエート、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert-ブチルクミルペルオキシド等も用いることができる。
【0096】
また加硫する際には、加硫促進剤(以下、成分(F)と記載する場合がある)として、スルフェンアミド系、グアニジン系、チウラム系、アルデヒド-アミン系、アルデヒド-アンモニア系、チアゾール系、チオ尿素系、ジチオカルバメート系の化合物等を必要に応じた量で使用してもよい。
また、加硫助剤として、亜鉛華、ステアリン酸等を必要に応じた量で使用することもできる。
また前記加硫剤としての有機過酸化物を使用して補強性充填剤配合物を架橋する際には、特に、p-キノンジオキシム、p,p’-ジベンゾイルキノンジオキシム、N-メチル-N-4-ジニトロソアニリン、ニトロソベンゼン、ジフェニルグアニジン、トリメチロールプロパン-N,N’-m-フェニレンジマレイミド等のペルオキシ架橋用助剤(以下、成分(G)と記載する場合がある);ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレート等の多官能性メタクリレートモノマー;ビニルブチラート、ビニルステアレート等の多官能性ビニルモノマー(以下、成分(H)と記載する場合がある)等を、前記加硫剤としての有機過酸化物と併用することもできる。
このような加硫促進剤(F)、ペルオキシ架橋用助剤(G)、多官能性ビニルモノマー(H)は、通常、水添ブロック共重合体(イ)又は前記水添ブロック共重合体組成物(成分(A))100質量部に対し0.01~20質量部が好ましく、より好ましくは0.1~15質量部の割合で用いられる。
加硫剤で補強性充填剤配合物を加硫する方法としては、従来実施される方法を適用でき、例えば、120~200℃、好ましくは140~180℃の温度で加硫する。加硫した補強性充填剤配合物は、加硫物の状態で耐熱性、耐屈曲性や耐油性を発揮する。
【0097】
上述した本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)又は水添ブロック共重合体組成物を用いた補強性充填剤配合物の加工性を改良するために、軟化剤(以下、成分(I)と記載する場合がある)をさらに配合してもよい。すなわち水添ブロック共重合体組成物を構成する軟化剤(ニ)に加え、さらに、所望の量で軟化剤を配合することができる。
軟化剤には、鉱物油や、液状もしくは低分子量の合成軟化剤が適している。なかでも、一般にゴムの軟化、増容、加工性向上に用いる、ナフテン系及び/又はパラフィン系のプロセスオイル又はエクステンダーオイルが好ましい。
鉱物油系軟化剤は、芳香族環、ナフテン環及びパラフィン鎖の混合物であり、パラフィン鎖の炭素数が全炭素の50%以上を占めるものがパラフィン系と呼ばれ、ナフテン環の炭素数が30~45%のものがナフテン系、また芳香族炭素数が30%を超えるものが芳香族系と呼ばれる。
上述した補強性充填剤配合物には合成軟化剤を用いてもよく、ポリブテン、低分子量ポリブタジエン、流動パラフィン等が使用可能である。しかし、上記した鉱物油系軟化剤が好ましい。
補強性充填剤配合物における軟化剤(成分(I))の配合量は、水添ブロック共重合体(イ)又は前記水添ブロック共重合体組成物(成分(A))100質量部に対して0~100質量部が好ましく、より好ましくは1~90質量部、さらに好ましくは30~90質量部である。軟化剤の量が100質量部を超えるとブリードアウトを生じやすく、組成物表面にベタツキを生ずるおそれがある。
【0098】
本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)又は前記水添ブロック共重合体組成物を含む補強性充填剤配合物は、建築材料、電線被覆材や制振材料等として好適に用いることができる。また、その加硫物は、その特徴を生かしてタイヤ用途や防振ゴム、ベルト、工業用品、はきもの、発泡体等の材料に好適である。
【0099】
(架橋物)
本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)又は前記水添ブロック共重合体組成物は、加硫剤の存在下で架橋して、架橋物、すなわち架橋水添ブロック共重合体又は架橋水添ブロック共重合体組成物とすることができる。
本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)又は前記水添ブロック共重合体組成物を架橋することにより、耐熱性[高温C-Set(compression set)]や耐屈曲性を向上することができる。
本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)又は前記水添ブロック共重合体組成物を含有する前記補強性充填剤配合物の架橋物を調製する場合には、特に、水添ブロック共重合体(イ)又は水添ブロック共重合体組成物(成分(A))と、前記オレフィン系樹脂(ロ)や前記熱可塑性樹脂(ハ)とは異なる熱可塑性樹脂及び/又はゴム状重合体(成分(B))との配合割合は、成分(A)/成分(B)の質量比率で、10/90~100/0が好ましく、より好ましくは20/80~90/10、さらに好ましくは30/70~80/20である。
【0100】
本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)又は水添ブロック共重合体組成物を架橋する場合において、架橋の方法は特に限定はないが、所謂「動的架橋」を行うことが好ましい。
動的架橋とは、各種配合物を溶融状態において、加硫剤が反応する温度条件下で混練させることにより、分散と架橋を同時に起こさせる手法であり、A.Y.Coranらの文献(Rub.Chem.and Technol.vol.53.141-(1980))に詳細に記されている。
動的架橋は、通常、バンバリーミキサーや加圧式ニーダーのような密閉式混練機、又は一軸や二軸押出機等を用いて行われる。混練温度は通常130~300℃、好ましくは150~250℃であり、混練時間は通常1~30分である。
動的架橋に用いる加硫剤としては、有機過酸化物やフェノール樹脂架橋剤が好適に用いられ、その使用量は、通常は、水添ブロック共重合体(イ)又は水添ブロック共重合体組成物(成分(A))100質量部に対し0.01~15質量部であり、好ましくは0.04~10質量部である。
加硫剤として使用する有機過酸化物としては、前記成分(E)を使用することができる。有機過酸化物を使用して架橋する際には、加硫促進剤として前記成分(F)を使用することができ、また前記成分(G):ペルオキシ架橋用助剤や前記成分(H):多官能性ビニルモノマー等を併用することもできる。これらの加硫促進剤の使用量は、通常は、水添ブロック共重合体又は水添ブロック共重合体組成物(成分(A))100質量部に対して0.01~20質量部であり、好ましくは0.1~15質量部である。
【0101】
本実施形態の水添ブロック共重合体又は水添ブロック共重合体組成物(成分(A))を用いた架橋物には、その目的を損なわない範囲内で必要に応じて、軟化剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、老化防止剤、充填剤、着色剤、滑剤等の添加物を配合することができる。最終的な製品の硬さや流動性を制御するために配合する軟化剤としては、前記ゴム用軟化剤(I)を使用することができる。
軟化剤は、各成分を混練する時に添加してもよいし、水添ブロック共重合体(イ)の製造時に予め前記水添ブロック共重合体の中に含ませて、すなわち油展ゴムを調製しておいてもよい。
前記架橋物を調製する際の軟化剤の添加量は、水添ブロック共重合体(イ)又は水添ブロック共重合体組成物(成分(A))100質量部に対し、通常0~200質量部であり、好ましくは10~150質量部、より好ましくは20~100質量部である。
また、充填剤としては、前述の補強性充填剤である成分(C)を用いることができる。充填剤の添加量は、水添ブロック共重合体又は水添ブロック共重合体組成物(成分(A))100質量部に対し、通常0~200質量部であり、好ましくは10~150質量部、より好ましくは20~100質量部である。
前記架橋物は、ゲル含量(ただし、無機充填剤等の不溶物等の不溶成分は含まない)が好ましくは5~80質量%、より好ましくは10~70質量%、さらに好ましくは20~60質量%になるように動的架橋することが好ましい。ゲル含量に関しては、沸騰キシレンを用いてソックスレー抽出器で架橋物1gを10時間リフラックスし、残留物を80メッシュの金網でろ過し、メッシュ上に残留した不溶物の乾燥質量(g)を測定して求められる、試料1gに対する不溶物の割合(質量%)をゲル含量とする。ゲル含量は、加硫剤の種類や量、加硫する時の条件(温度、滞留時間、シェア等)を調整することで制御することができる。
前記架橋物は、上述した補強性充填剤配合物の加硫物と同様に、タイヤ用途や防振ゴム、ベルト、工業用品、履物、発泡体等に用いることができ、さらには医療用器具材料や食品包装材料としても用いることができる。
【0102】
〔水添ブロック共重合体(イ)又は水添ブロック共重合体組成物を用いた成形体〕
本実施形態の成形体は、本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)又は水添ブロック共重合体組成物の成形体であり、上述した本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)又は前記水添ブロック共重合体組成物を成形することにより得られる。
前記成形体は、例えば、押出成形、射出成形、二色射出成形、サンドイッチ成形、中空成形、圧縮成形、真空成形、回転成形、パウダースラッシュ成形、発泡成形、積層成形、カレンダー成形、ブロー成形等によって製造できる。
前記成形体としては、以下に限定されないが、例えば、シート、フィルム、各種形状の射出成形体、中空成形体、圧空成形体、真空成形体、押出成形体、発泡成形体、不織布や繊維状の成形体、合成皮革等多種多様の成形体が挙げられる。
これらの成形体は、例えば、自動車用部品、食品包装材料、医療器具、家電製品部材、電子デバイス部材、建築材料、工業部品、家庭用品、玩具素材、履物用素材、繊維素材等に利用できる。
【0103】
自動車用部品としては、以下に限定されないが、例えば、サイドモール、グロメット、シフトノブ、ウェザーストリップ、窓枠とそのシーリング材、アームレスト、アシストグリップ、ドアグリップ、ハンドルグリップ、コンソールボックス、ヘッドレスト、インストゥルメントパネル、バンパー、スポイラー、エアバッグカバー等が挙げられる。
医療器具としては、以下に限定されないが、例えば、医療用チューブ、医療用ホース、カテーテル、血液バッグ、輸液バッグ、血小板保存バッグ、人工透析用バッグ等が挙げられる。
建築材料としては、以下に限定されないが、例えば、壁材、床材等が挙げられる。
その他、特に限定されないが、例えば、工業用ホース、食品用ホース、掃除機ホース、電冷パッキン、電線その他の各種被覆材、グリップ用被覆材、軟質人形等が挙げられる。
前記成形体には、適宜発泡、粉末、延伸、接着、印刷、塗装、メッキ等の加工を施してもよい。
本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)及び前記水添ブロック共重合体組成物は、柔軟性、低反撥弾性、透明性、耐キンク性に優れた効果を発現するため、ホース、チューブ等の中空状の成形体の材料として極めて有用である。
【0104】
次に、本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)、水添ブロック共重合体組成物を用いた成形体について、目的別に、〔第一の成形体〕~〔第三の成形体〕に分けて説明する。
【0105】
〔第一の成形体〕
本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)を用いた成形体の第一の態様として、実質的に水添ブロック共重合体(イ)のみからなる成形体が挙げられる。
「実質的に水添ブロック共重合体(イ)のみからなる」とは、成形体を構成する重合体が水添ブロック共重合体(イ)のみであるという趣旨であり、後述の種々の添加剤を含有することを排除する趣旨ではない。また、水添ブロック共重合体(イ)の機能を損なわない範囲で、他の重合体を添加した態様を排除しない。許容し得る他の重合体の添加量は、重合体の構造や用途にもよるが、例えばポリプロピレン等のポリオレフィンとの樹脂組成物の場合、概ね5質量%以下である。他のエラストマーとの樹脂組成物であれば、前記他のエラストマーの構造にもよるが、その添加量は80質量%以下まで許容し得る。
第一の成形体は、医療用途等に用いられる透明のチューブ、バックに好適であるほか、保護フィルム向け粘着性フィルムを構成する粘着層としても利用できるが、第一の成形体は、上記に限定されるものではない。
【0106】
(チューブ)
本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)を用いたチューブは、透明性、柔軟性、耐キンク性、溶剤接着性、及び各特性のバランスに優れる。
チューブは、本実施形態の目的が損なわれない範囲で、本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)以外に、さらにその他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、以下に限定されないが、例えば、水添ブロック共重合体(イ)とは異なる構造の水添共重合体(スチレン系熱可塑性エラストマー)、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、可塑剤、光安定剤、結晶核剤、衝撃改良剤、顔料、滑剤、軟化剤、帯電防止剤、分散剤、難燃剤、銅害防止剤、架橋剤、難燃助剤、相溶化剤、及び粘着性付与剤等が挙げられる。これらのその他成分は、1種のみを用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0107】
<滑剤>
前記チューブは、チューブ表面同士又は内部同士の固着を防止するため、及び、手触り感等の風合いを良好なものにするために、滑剤を含有していてもよい。
滑剤としては、脂肪酸アミド系滑剤、ステアリン酸金属塩系滑剤、及び脂肪酸モノグリセリド系滑剤から選ばれる、少なくとも1種(好ましくは、少なくとも2種)の滑剤が好ましい。
脂肪酸アミド系滑剤としては、以下に限定されないが、例えば、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミド、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、N-ステアリルラウリン酸アミド、N-ステアリルステアリン酸アミド、N-ステアリルベヘン酸アミド、N-ステアリルエルカ酸アミド、N-オレイルオレイン酸アミド、N-オレイルベヘン酸アミド、N-ラウリルエルカ酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスエルカ酸アミド等が挙げられる。これらの中では、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミド、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、及びエチレンビスステアリン酸アミドが好ましく、オレイン酸アミドがより好ましい。
ステアリン酸金属塩系滑剤の金属種としては、例えば、亜鉛、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、リチウム等が挙げられる。これらの中では、ステアリン酸亜鉛が好ましい。
脂肪酸モノグリセリド系滑剤としては、以下に限定されないが、例えば、ラウリン酸モノグリセリド、ミリスチン酸モノグリセリド、パルミチン酸モノグリセリド、ステアリン酸モノグリセリド、オレイン酸モノグリセリド、ベヘン酸モノグリセリド等が挙げられる。これらの中では、ステアリン酸モノグリセリドが好ましい。
前記チューブ中の滑剤の含有量は、固着を防止する観点から、好ましくは0.05質量%以上であり、滑剤がチューブ内からブリードアウトしてチューブ表面への印刷性に支障をきたすのを回避する観点から、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.7質量%以下である。これらの観点から、前記チューブにおける滑剤の含有量は、好ましくは0.05~1.0質量%、より好ましくは0.05~0.7質量%の範囲内である。
脂肪酸アミド系滑剤、ステアリン酸金属塩系滑剤、及び脂肪酸モノグリセリド系滑剤は、それぞれ1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。その中でも、エルカ酸アミド、ステアリン酸亜鉛、及びエチレンビスステアリン酸アミドを併用することが好ましく、質量比は、エルカ酸アミド/ステアリン酸亜鉛/エチレンビスステアリン酸アミド=0.20/0.15/0.15が好ましい。
【0108】
<軟化剤>
前記チューブは、軟化剤を含有していてもよい。
軟化剤としては、以下に限定されないが、例えば、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、芳香族系オイル、パラフィンワックス、流動パラフィン、ホワイトミネラルオイル、植物系軟化剤等が挙げられる。これらの中でも、低温特性や耐ブリード性等の観点から、パラフィン系オイル、流動パラフィン、ホワイトミネラルオイルがより好ましい。
軟化剤の40℃における動粘度は、好ましくは500mm2/秒以下である。軟化剤の40℃における動粘度の下限値は特に限定されないが、10mm2/秒であることが好ましい。軟化剤の40℃における動粘度が500mm2/秒以下であれば、前記チューブの流動性がより向上し、成形加工性がより向上する傾向にある。軟化剤の動粘度は、ガラス製毛管式粘度計を用いて試験する方法等によって測定することができる。
【0109】
<粘着付与剤>
チューブは、粘着付与剤を含有してもよい。
粘着付与剤としては、以下に限定されないが、例えば、クマロン-インデン樹脂、p-t-ブチルフェノール-アセチレン樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、キシレン-ホルムアルデヒド樹脂、テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、テルペン-フェノール樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、脂肪族系炭化水素樹脂、脂肪族系環状炭化水素樹脂、脂肪族・脂環族系石油樹脂、脂肪族・芳香族系炭化水素樹脂、水添変性脂環族系炭化水素樹脂、水添脂環族系炭化水素樹脂、炭化水素系粘着化樹脂、ポリブテン、液状ポリブタジエン、シス-1,4-ポリイソプレンゴム、水添ポリイソプレンゴム、液状ポリイソプレンゴム、ロジン系樹脂等が挙げられる。
【0110】
<チューブの製造方法>
[チューブを構成する材料の製造方法]
チューブの構成する材料は、例えば、本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)、及び必要に応じて加えられる他の成分を、適宜選択し、これらをドライブレンドする方法、通常の高分子物質の混合に供される装置によって混合する方法等によって調製することができる。
混合装置としては、特に限定されないが、例えば、バンバリーミキサー、ラボプラストミル、単軸押出機、2軸押出機等の混練装置が挙げられ、押出機を用いた溶融混合法により製造することが生産性、良混練性の観点から好ましい。
混練時の溶融温度は、適宜設定することができるが、通常130~300℃の範囲内であり、150~250℃の範囲であることが好ましい。
【0111】
[チューブの成形方法]
チューブの成形方法としては、特に限定されないが、例えば、本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)、及び必要に応じて加えられる他の成分を、適宜選択し、押出機に投入して溶融し、これをダイに通して管状にし、水冷又は空冷してチューブとする方法が挙げられる。押出機としては単軸又は多軸の押出機を使用することができ、また複数台の押出機を使用して多層押出した多層チューブを成形することもできる。
チューブの形状は、特に限定されないが、通常円形、楕円形等のチューブが使用される。チューブの太さは特に限定されないが、例えば、外径で1~50mmのものが好ましく、2~30mmのものがより好ましく、3~20mmのものがさらに好ましい。また、チューブの厚みは0.3~30mmのものが好ましく、0.4~20mmのものがより好ましく、0.5~10mmのものがさらに好ましい。
【0112】
チューブは、本実施形態の目的を阻害しない範囲で他のポリマーを積層して多層チューブとしてもよい。前記他のポリマーは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて、単層又は層毎に種類が異なっていてもよく、多層で積層して用いることができる。さらには、多層化により、異なる2種以上のポリマーを適切に選択することで、部位によって硬度が異なり、それでいて継ぎ目を有しないチューブを得ることができる。上記多層構造であるチューブの上記したポリマーからなる層は、付与する所望の性能により、最内層、中間層、最外層のいずれにあってもよい。
【0113】
前記チューブにおいては、さらに、肉厚の増加を抑えて柔軟性を維持した上で耐圧性等を向上する観点から、編組補強糸や螺旋補強体を巻き付けて耐圧チューブ(ホース)とすることができる。
編組補強糸は、厚み方向での内部又は層間に設けられ、ビニロン、ポリアミド、ポリエステル、アラミド繊維、炭素繊維、金属ワイヤー等を用いることができ、螺旋補強体は外周に設けられ、金属、プラスチック等を用いることができる。
【0114】
前記チューブは、優れた透明性、柔軟性、耐キンク性、溶剤接着性、及び各特性のバランスを高度なレベルで良好なものにでき、特に用途を限定せずに用いることができる。
上記特性を活かして、家電用品用途、自動車内外装部品用途、日用品、レジャー用品、玩具、工業用品、食品製造機器用途、医療用途、飲料水用途等の幅広い用途に用いることができる。これらの中でも、前記チューブは、医療用途として特に好適に用いることができる。例えば、輸液セット用チューブ、経腸栄養セット用チューブ、エクステンションチューブ、薬剤投与チューブ、血液回路用チューブ、栄養チューブ、連結チューブ、翼付静脈針用チューブ、さらには、吸引用カテーテル、排液用カテーテル、経腸栄養カテーテル、胃管カテーテル、薬液投与カテーテル、腹膜透析用チューブ、血液カテーテル及びバルーンカテーテル、尿道カテーテル等としても好適に使用できる。
【0115】
(粘着性フィルム)
粘着性フィルムは、基材フィルムと、前記基材フィルム上に配され、本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)を含む、初期粘着性、粘着昂進性及び繰り出し性、それらの各種性能バランスに優れた粘着層を備える。
粘着性フィルムの粘着層には、粘着付与剤が含有されていてもよい。
粘着付与剤としては、粘着層に粘性を付与しうる樹脂であれば特に限定されるものではないが、例えば、水添テルペン樹脂、ロジン系テルペン系樹脂、水添ロジンテルペン系樹脂、芳香族変性水添テルペン樹脂、クマロン系樹脂、フェノール系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、水添テルペンフェノール樹脂、芳香族炭化水素樹脂、脂肪族炭化水素樹脂等の公知の粘着付与樹脂が挙げられる。特に、水添テルペン樹脂、芳香族変性水添テルペン樹脂、水添テルペンフェノール樹脂、及びテルペンフェノール樹脂が好ましい。
粘着付与剤は1種のみを単独で使用してもよく、2種類以上混合して使用してもよい。
粘着付与剤としては、例えば「ゴム・プラスチック配合薬品」(ラバーダイジェスト社編)に記載されたものが使用できる。粘着付与剤を用いることにより、粘着力の改良が図られる。粘着層中における粘着付与剤の含有量は、粘着層中、0.5~50質量%が好ましく、5~45質量%がより好ましく、10~30質量%がさらに好ましい。粘着層中の粘着付与剤の含有量が50質量%以下であれば、粘着昂進を効果的に防止でき、剥離の際の糊残り量をより低減できる傾向にある。0.5質量%以上であれば、適度な粘着力を得られる傾向にある。
【0116】
<基材フィルム>
基材フィルムの材料としては、特に限定されず、非極性樹脂及び極性樹脂のいずれも使用できる。性能や価格面等から、非極性樹脂としては、ポリエチレン、ホモ又はブロックのポリプロピレンが好ましいものとして挙げられ、極性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体及びその加水分解物等が好ましいものとして挙げ得られる。
基材フィルムの厚みは、1mm以下が好ましく、300μm以下がより好ましく、10~200μmがさらに好ましい。基材フィルムの厚みが10μm以上であると、被着体の保護を十分に行うことができ、基材フィルムの厚みが1mm以下であると、実用上良好な弾性率が得られ、良好な凹凸追随性が得られ、浮きや剥がれを効果的に防止できる。
【0117】
<粘着層>
粘着性フィルムは、前記基材フィルム上に、本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)を含む粘着層を有する。当該粘着層においては、後述するその他の材料を含有してもよい。
【0118】
[粘着層中のその他の材料]
<水添スチレン系エラストマー>
粘着性フィルムの粘着層は、水添スチレン系エラストマーをさらに含有してもよい。
水添スチレン系エラストマーとしては、以下に限定されないが、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)、スチレン-ブタジエンランダムポリマー(SBR)、SBSを水素添加により飽和させたスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(SEPS)が代表的な水添スチレン系エラストマーとして挙げられるが、その他、スチレン-エチレン-ブチレン(SEB)、スチレン-エチレン-プロピレン(SEP)、スチレン-イソブチレン-スチレントリブロック共重合体(SIBS)、といった構造のエラストマーでもよい。
また、前記水添スチレン系エラストマーとしては、種々の官能基を付与した反応性エラストマーを使用してもよい。前記官能基としては、以下に限定されないが、例えば、水酸基、カルボキシル基、カルボニル基、チオカルボニル基、酸ハロゲン化物基、酸無水物基、チオカルボン酸基、アルデヒド基、チオアルデヒド基、カルボン酸エステル基、アミド基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、ピリジル基、キノリン基、エポキシ基、チオエポキシ基、スルフィド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、ハロゲン化ケイ素基、アルコキシケイ素基、ハロゲン化スズ基、ボロン酸基、ホウ素含有基、ボロン酸塩基、アルコキシスズ基、フェニルスズ基が挙げられる。
【0119】
<オレフィン系樹脂、オレフィン系エラストマー>
粘着性フィルムの粘着層は、オレフィン系樹脂、オレフィン系エラストマーをさらに含有してもよい。
オレフィン系樹脂、オレフィン系エラストマーとしては、炭素数2~20のα-オレフィン重合体又は共重合体、エチレンと不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸エステルとの共重合体が挙げられる。
具体的には、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-4-メチルペンテン共重合体、エチレン-1-オクテン共重合体、プロピレン単独重合体、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体、1-ブテン単独重合体、1-ブテン-エチレン共重合体、1-ブテン-プロピレン共重合体、4-メチルペンテン単独重合体、4-メチルペンテン-1-プロピレン共重合体、4-メチルペンテン-1-ブテン共重合体、4-メチルペンテン-1-プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体等が挙げられる。
【0120】
<アクリル系共重合体>
粘着性フィルムの粘着層は、アクリル系共重合体をさらに含有してもよい。
アクリル系共重合体としては、以下に限定されないが、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、アクリルニトリル等と、酢酸ビニル、塩化ビニル、スチレン等との共重合体が挙げられる。
【0121】
<軟化剤>
粘着性フィルムの粘着層は、軟化剤をさらに含有してもよい。
軟化剤としては、特に限定されず、例えば、鉱物油系軟化剤及び合成樹脂系軟化剤のいずれも使用できる。
鉱物油系軟化剤としては、例えば、芳香族系炭化水素、ナフテン系炭化水素及びパラフィン系炭化水素の混合物が挙げられる。なお、パラフィン系炭化水素の炭素原子数が全炭素原子中の50%以上を占めるものがパラフィン系オイルと呼ばれ、ナフテン系炭化水素の炭素原子が30~45%のものがナフテン系オイルと呼ばれ、また、芳香族系炭化水素の炭素原子が35%以上のものが芳香族系オイルと呼ばれている。鉱物油系軟化剤としては、ゴム用軟化剤であるパラフィン系オイルが好ましく、合成樹脂系軟化剤としては、ポリブテン、低分子量ポリブタジエン等が好ましい。
【0122】
<酸化防止剤、光安定剤等>
粘着性フィルムの粘着層には、酸化防止剤、光安定剤等の安定剤を、さらに添加してもよい。
酸化防止剤としては、以下に限定されないが、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、n-オクタデシル-3-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル]-o-クレゾール、2-t-ブチル-6-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2,4-ジ-t-アミル-6-[1-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)エチル]フェニルアクリレート、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)]アクリレート等のヒンダードフェノール系酸化防止剤;ジラウリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネートペンタエリスリトール-テトラキス(β-ラウリルチオプロピオネート)等のイオウ系酸化防止剤;トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト等のリン系酸化防止剤が挙げられる。
光安定剤としては、以下に限定されないが、例えば、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤や2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、あるいはヒンダードアミン系光安定剤が挙げられる。
【0123】
<顔料、ワックス類、熱可塑性樹脂、天然ゴム、合成ゴム>
粘着性フィルムの粘着層は、上述した各種材料の他にも、必要に応じて、種々の添加剤を含むことができる。
前記添加剤としては、以下に限定されないが、例えば、ベンガラ、二酸化チタン等の顔料;パラフィンワックス、マイクロクリスタンワックス、低分子量ポリエチレンワックス等のワックス類;無定形ポリオレフィン、エチレンーエチルアクリレート共重合体等のポリオレフィン系又は低分子量のビニル芳香族系熱可塑性樹脂;天然ゴム;ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、エチレン-プロピレンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、イソプレン-イソブチレンゴム、ポリペンテナマーゴム等の合成ゴムが挙げられる。上記合成ゴムとしては、上記の他、「ゴム・プラスチック配合薬品」(ラバーダイジェスト社編)等に記載されたものが挙げられる。
【0124】
<飽和脂肪酸ビスアミド>
粘着性フィルムの粘着層は、粘着昂進の抑制効果がある飽和脂肪酸ビスアミドを含むことができる。
飽和脂肪酸ビスアミドとしては、以下に限定されないが、例えば、エチレンビスステアリン酸アミド(EBSA)、メチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸脂肪族ビスアミド、ならびに、m-キシリレンビスステアリン酸アミド、及びN,N’-ジステアリルイソフタル酸アミド等の飽和脂肪酸芳香族ビスアミドが挙げられる。
これらの飽和脂肪酸ビスアミドは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
さらに、粘着昂進を抑制する効果のある、スチレン系ブロック相補強剤を配合してもよい。スチレン系ブロック相補強剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、モノマー単位として、スチレン及びα-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-クロロスチレン、クロロメチルスチレン、tert-ブチルスチレン、p-エチルスチレン、ジビニルベンゼン等のスチレン系化合物が挙げられる。これらは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0125】
<粘着性フィルムの粘着層を構成する樹脂材料の製造方法>
本実施形態の粘着性フィルムの粘着層を構成する樹脂材料は、例えば、本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)、及び必要に応じて加えられる他の成分を、ドライブレンドする方法や、通常の高分子材料の混合に供される装置によって混合する方法等によって製造することができる。
混合装置としては、以下に限定されないが、例えば、バンバリーミキサー、ラボプラストミル、単軸押出機、2軸押出機等の混練装置が挙げられ、押出機を用いた溶融混合法により製造することが生産性、良混練性の観点から好ましい。
また、特に、粘着層を構成する樹脂材料中に粘着付与剤を配合する場合に、上記のドライブレンド法を用いる場合には、粘着付与剤はベトツキ性が強く、フレーク状であるためハンドリング性が悪くなるおそれがあるため、本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)に粘着付与剤を予め練り込んだマスターバッチを作製してもよい。粘着層を構成する樹脂材料の混練時の溶融温度は、適宜設定することができるが、通常130~300℃の範囲内であり、150~250℃の範囲であることが好ましい。
粘着層を構成する樹脂材料には、軽量化、柔軟化及び密着性の向上効果を図るため、発泡処理を施してもよい。発泡方法としては、以下に限定されないが、例えば、化学的方法、物理的方法、熱膨張型のマイクロバルーンの利用等がある。各々、無機系発泡剤、有機系発泡剤等の化学的発泡剤、物理的発泡剤等の添加、熱熱膨張型のマイクロバルーンの添加等により材料内部に気泡を分布させることができる。また、中空フィラー(既膨張バルーン)を添加することにより、軽量化、柔軟化、密着性の向上を図ってもよい。
【0126】
<粘着性フィルムの製造方法>
粘着性フィルムは、基材フィルム上に、本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)を含む粘着層を具備する。
粘着性フィルムの製造方法は、特に限定されないが、例えば、粘着層を構成する樹脂材料の溶液又は溶融物を基材フィルム上に塗工する方法、フィルム押出機を用いた方法等が挙げられる。ここで、粘着層を構成する樹脂材料の溶液や溶融物を用いる場合は、水添ブロック共重合体(イ)及びその他の成分を含有する樹脂材料とした後に溶液や溶融物としてもよいし、水添ブロック共重合体(イ)を加えた溶液や溶融物とした後、混合してもよい。
樹脂材料の溶液を塗工する方法により粘着性フィルムを製造する場合においては、以下に限定されないが、例えば、樹脂材料を溶解可能な溶剤に溶かし、コーター等を用い、基材フィルム上に塗工し、溶剤を加熱乾燥すること等によって製造できる。樹脂材料を溶融させ、塗工する方法においては、以下に限定されないが、例えば、ホットメルトコーター等を用い、基材フィルム上に溶融した樹脂材料を塗工すること等によって粘着性フィルムを製造できる。この場合、塗工温度より高いガラス転移温度、融点又は軟化点を有する各種の基材フィルムを用いることが好ましい。
フィルム押出機により粘着性フィルムを製造する方法としては、以下に限定されないが、例えば、樹脂材料を含む粘着層の成分と、基材フィルムを構成しうる熱可塑性樹脂等の成分とを、溶融共押出機にて、二つの流れにして、すなわち、粘着層形成用流体と、基材体フィルム形成用流体とをダイス口内で合流させて単一流体を形成して押し出し、粘着層と樹脂フィルム層とを複合することによって製造することができる。フィルム押出機による方法の場合、粘着層を形成する樹脂材料は、予め粘着層用の各成分をドライブレンドすることによっても製造できるため、生産性に優れた方法である。また、押出成形した場合、作製した粘着性フィルムの密着性、接着強度が特に優れる傾向にある。
粘着性フィルムは、導光板やプリズムシート等の光学系成形体、合成樹脂板、金属板、化粧合板、被覆塗装鋼板、各種銘板等の表面に仮着し、これら被着体の加工時や搬送、保管時の傷防止や汚れ防止用の保護フィルムとして利用できる。
【0127】
〔第二の成形体〕
第二の成形体は、上述した本実施形態の水添ブロック共重合体組成物の成形体である。
第二の成形体としては、自動車部材、例えば自動車内装表皮材、シート状成形体(シート、フィルム)、飲料水配管、飲料水チューブ、並びに包装材、例えば食品包装材、及び衣料包装材、保護フィルム向け粘着性フィルム、極性樹脂とのオーバーモールド成形体が挙げられるが、上記に限定されるものではない。
【0128】
(オーバーモールド成形体)
本実施形態の水添ブロック共重合体組成物は、極性樹脂に接着性を示す傾向にあるため、極性樹脂と共にオーバーモールド成形した多層成形体(オーバーモールド成形体)を形成することができる。
オーバーモールド成形体は、極性樹脂を含む層と、その層上に積層されている、本実施形態の水添ブロック共重合体組成物を含む層とを備える構成とすることにより、接着性に優れたものとなる。
【0129】
<極性樹脂>
極性樹脂としては、以下に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル、ABS、アクリロニトリル-スチレン共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチルのようなポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチルのようなポリメタクリル酸エステル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、及びポリウレタンが挙げられる。
極性樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0130】
極性樹脂を含む層は、極性樹脂に加えて、充填剤を含んでいてもよい。
極性樹脂を含む層における充填剤としては、以下に限定されないが、例えば、ガラス繊維、ガラス球、ガラス中空球、炭素繊維、セルロースナノファイバー、ワラストナイト、チタン酸カリウムウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、硫酸マグネシウムウィスカー、セピオライト、ゾノトライト、酸化亜鉛ウィスカー等のような繊維状の無機充填剤、タルク、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、炭酸亜鉛、ウォラスナイト、ゼオライト、ワラストナイト、シリカ、アルミナ、クレー、酸化チタン、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノケイ酸ナトリウム、酸化亜鉛、チタン酸カリウム、ハイドロタルサイト、硫酸バリウム、 チタンブラック、並びにファーネスブラック、サーマルブラック、及びアセチレンブラック等のようなカーボンブラック等が挙げられる。
繊維状の無機充填剤は、極性樹脂に対する親和性基又は反応性基を有する化合物で表面処理されていてもよい。
充填剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0131】
<水添ブロック共重合体組成物を含む層>
前記オーバーモールド成形体を構成する水添ブロック共重合体組成物を含む層としては、本実施形態の水添ブロック共重合体組成物とゴム状重合体を含有するものが挙げられる。
ゴム状重合体は、ビニル芳香族単量体単位を含み、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックを少なくとも1個含むことが好ましく、また、ビニル芳香族単量体単位を含み、ビニル芳香族単量体単位が60質量%以下のゴム又はエラストマーも好ましい。
ゴム状重合体としては、以下に限定されないが、例えば、スチレンブタジエンゴム及びその水素添加物(ただし、本実施形態の水添ブロック共重合体は除く)、スチレン-ブタジエンブロック共重合体及びその水素添加物、スチレン-ブタジエン・イソプレンブロック共重合体及びその水素添加物等が挙げられる。
【0132】
水添ブロック共重合体組成物を含む層は、上述した熱可塑性樹脂(ハ)の他、その他の熱可塑性樹脂を含有していてもよい。
上述した熱可塑性樹脂(ハ)及びその他の熱可塑性樹脂としては、以下に限定されないが、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン-プロピレン共重合ゴム(EPM)、及びエチレン-プロピレン-非共役ジエン共重合ゴム(EPDM)等のオレフィン系重合体;ポリエステルエラストマー、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系重合体;ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10、ポリアミド11、ポリアミド12、及びポリアミド6,12等のポリアミド系樹脂;ポリアクリル酸メチル及びポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂;ポリオキシメチレンホモポリマー及びポリオキシメチレンコポリマー等のポリオキシメチレン系樹脂;スチレン単独重合体、アクリロニトリル-スチレン樹脂、及びアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂等のスチレン系樹脂;ポリカーボネート樹脂;スチレン-ブタジエン共重合体ゴム、及びスチレン-イソプレン共重合体ゴム等のスチレン系エラストマー並びにその水素添加物又はその変性物;天然ゴム;合成イソプレンゴム及び液状ポリイソプレンゴム並びにその水素添加物又は変性物;クロロプレンゴム;アクリルゴム;ブチルゴム;アクリロニトリル-ブタジエンゴム;エピクロロヒドリンゴム;シリコーンゴム;フッ素ゴム;クロロスルホン化ポリエチレン;ウレタンゴム;ポリウレタン系エラストマー;ポリアミド系エラストマー;ポリエステル系エラストマー;軟質塩化ビニル樹脂等が挙げられる。
これらの熱可塑性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0133】
水添ブロック共重合体組成物を含む層は、上述した軟化剤(ニ)の他、その他の軟化剤を含有していてもよい。
上述し軟化剤(ニ)及びその他の軟化剤としては、以下に限定されないが、例えば、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、芳香族系オイル、パラフィンワックス、流動パラフィン、ホワイトミネラルオイル、植物系軟化剤等が挙げられる。
軟化剤の40℃における動粘度は、好ましくは500mm2/秒以下である。軟化剤の40℃における動粘度の下限値は特に限定されないが、10mm2/秒であることが好ましい。
軟化剤の40℃における動粘度が500mm2/秒以下であれば、熱可塑性エラストマー組成物の流動性がより向上し、成形加工性がより向上する傾向にある。軟化剤の動粘度は、ガラス製毛管式粘度計を用いて試験する方法等によって測定することができる。
【0134】
水添ブロック共重合体組成物を含む層は、上述した成分(ロ)の他、その他のオレフィン系樹脂、及オレフィン系エラストマーをさらに含有してもよい。
上述した成分(ロ)及びその他のオレフィン系樹脂、オレフィン系エラストマーとしては、以下に限定されないが、例えば、炭素数2~20のα-オレフィン重合体又は共重合体、エチレンと不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸エステルとの共重合体が挙げられる。以下に限定されないが、例えば、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-4-メチルペンテン共重合体、エチレン-1-オクテン共重合体、プロピレン単独重合体、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体、1-ブテン単独重合体、1-ブテン-エチレン共重合体、1-ブテン-プロピレン共重合体、4-メチルペンテン単独重合体、4-メチルペンテン-1-プロピレン共重合体、4-メチルペンテン-1-ブテン共重合体、4-メチルペンテン-1-プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体等が挙げられる。
【0135】
水添ブロック共重合体組成物を含む層は、粘着付与剤を含有してもよい。
粘着付与剤としては、以下に限定されないが、例えば、クマロン-インデン樹脂、p-t-ブチルフェノール-アセチレン樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、キシレン-ホルムアルデヒド樹脂、テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、テルペン-フェノール樹脂、水添テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、芳香族変性水添フェノール樹脂、スチレン樹脂、アルファメチルスチレン樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、脂肪族系炭化水素樹脂、脂肪族系環状炭化水素樹脂、脂肪族・脂環族系石油樹脂、脂肪族・芳香族系炭化水素樹脂、水添変性脂環族系炭化水素樹脂、水添脂環族系炭化水素樹脂、炭化水素系粘着化樹脂、ポリブテン、液状ポリブタジエン、シス-1,4-ポリイソプレンゴム、水添ポリイソプレンゴム、液状ポリイソプレンゴム、ロジン系樹脂等が挙げられる。
【0136】
水添ブロック共重合体組成物を含む層は、本発明の目的が損なわれない範囲で、上述した成分以外に、さらにその他の添加剤を含んでいてもよい。
その他の添加剤としては、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、可塑剤、光安定剤、結晶核剤、衝撃改良剤、顔料、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、及び相溶化剤等が挙げられる。
これらの添加剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0137】
<前記第二の成形体を構成する水添ブロック共重合体組成物製造方法>
第二の成形体を構成する水添ブロック共重合体組成物の製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法により製造できる。
例えば、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、インターナルミキサー、ラボプラストミル、ミックスラボ、単軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機、コニーダ、多軸スクリュー押出機等の一般的な混和機を用いた溶融混練方法、各成分を溶解又は分散混合後、溶剤を加熱除去する方法等が用いられる。
前記第二の成形体を構成する水添ブロック共重合体組成物の形状は特に限定されないが、例えば、ペレット状、シート状、ストランド状、チップ状等を挙げることができる。また、溶融混練後、直接成形品とすることもできる。
【0138】
<オーバーモールド成形体の製造方法>
オーバーモールド成形体は、本実施形態の水添ブロック共重合体組成物を含む層、及び極性樹脂を含む層を、それぞれ1層以上ずつ含んでいれば、積層の層数に特に限定はない。
オーバーモールド成形体の層形成方法は特に限定はないが、従来公知の方法、例えば、押出成形、射出成形(インサート成形、二色射出成形、サンドイッチ成形、中空成形、圧縮成形、真空成形、回転成形、パウダースラッシュ成形、発泡成形、積層成形、カレンダー成形、及びブロー成形を用いることができる。
本実施形態の水添ブロック共重合体組成物を含む層が、極性樹脂を含む層に熱融着されていることが好ましい。より具体的には、オーバーモールド成形体の製造方法は、射出成形法、インサート成形法、押出成形法、及び圧縮成形法からなる群より選択される少なくとも1つの方法を用いて、既に成形されている極性樹脂を含む層の上に、本実施形態の水添ブロック共重合体組成物を含む層を成形する工程を含むことが好ましい形態である。
オーバーモールド成形体の製造方法は、かかる工程の前に、極性樹脂を含む層を任意の方法、好ましくは射出成形法、インサート成形法、押出成形法、及び圧縮成形法からなる群より選択される少なくとも1つの方法により成形する工程を含んでいてもよい。
【0139】
オーバーモールド成形体は、例えば、自動車部品、工具、玩具、電気・電子機器部品、医療器具、建材・配管部材、カトラリー、生活・化粧用品、工業部品、各種ホース、各種筐体、各種モジュールケース、各種パワーコントロールユニット部品、筆記具、ロボットハンド、及び医療器具等の各種用途に応じた形状とすることができる。これらの中でも持ち手を有するもの、及び人が触れてグリップ力や良触感を必要とするものが好ましい。そのような成形体としては、以下に限定されないが、例えば、工具、電線、コネクター、ハンディー電子機器、歯ブラシ、シェーバー、並びにボールペン、タッチペン、及びスタイラスペンのようなペン、並びにフォーク、ナイフ、及びスプーンのようなカトラリー、並びにグリップ部を有する部材が挙げられる。特に、使用時の振動で人体にかかる負荷の大きい電動工具が好ましい。
前記グリップ部を構成する部材としては、例えば、工具のグリップ、電線被覆部材、コネクター筐体、ハンディー電子機器のグリップ、歯ブラシのグリップ、シェーバーのグリップ、カトラリーのグリップ、筆記具のグリップ、ロボットハンドのグリップ部、及び自動車内装部材のグリップ部から選択される少なくとも1種を構成することが好ましい。
【0140】
〔第三の成形体〕
第三の成形体は、本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)を、目的に応じて樹脂組成物の総質量の5~99質量%、又は5~80質量%、又は8質量%超60質量%以下、又は10~30質量%、又は70質量%未満含有する樹脂組成物の成形体であって、その他の樹脂成分としてポリオレフィン樹脂を10~40質量%含有する成形体である。
【0141】
第三の成形体を構成する樹脂組成物は、硬化剤又は硬化開始剤とも称されるラジカル発生化合物をさらに含むことが好ましい。このようなラジカル発生化合物としては、以下に限定されないが、例えば、アジド、過酸化物、硫黄及び硫黄誘導体が挙げられる。フリーラジカル開始剤が硬化開始剤として特に好ましい。
硬化触媒とも称されるラジカル発生化合物は、高温で、又はUV照射下で、さらには他の誘発エネルギー付加下でラジカルを発生する。ラジカル発生化合物により、樹脂組成物は、UV又は誘発エネルギーが存在せずとも低温での加工が可能であるが、活性化温度で、又はUV若しくは誘発エネルギーの導入下において、確実に高濃度のラジカルを発生する。
ラジカル発生化合物としては、高温で又はUV照射等の誘発エネルギーが付加されるとラジカルを生成することができる任意の化合物を用いることができる。
ラジカル発生化合物としては、以下に限定されないが、例えば、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)-ヘキサ-3-イン、ジ-t-ブチルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、ジ(t-ブチルペルオキシ-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、ジクミルペルオキシド等の有機過酸化物が挙げられる。
また、ラジカル発生化合物としての典型的な非ペルオキシ開始剤としては、例えば、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン、2,3-トリメチルシリルオキシ-2,3-ジフェニルブタン等の化合物が挙げられる。
また、ラジカル発生化合物としての典型的なUVラジカル開始剤としては、2,2-ジメトキシ-1,2ジフェニルエタン-1-オンが挙げられる。
硬化開始剤は、目的に応じて、樹脂組成物中、0.1~10質量%又は0.3~7質量%又は1~5質量%の量で使用することが好ましい。
【0142】
第三の成形体を構成する樹脂組成物は、多官能性共硬化性添加剤、ジエン系ゴム、ハロゲン化若しくは非ハロゲン化難燃剤、無機若しくは有機の充填剤若しくは繊維、モノビニル化合物、又は酸化防止剤、着色剤若しくは安定化剤、接着促進剤、強化剤、膜形成添加剤等の当技術分野で公知の他の添加剤を含有してもよい。また、その他の添加剤を、樹脂組成物の0.1~50質量%の範囲の量でさらに含んでもよい。
樹脂組成物は、少なくとも無機及び/又は有機の充填剤をさらに含むことが好ましい。無機充填剤は、熱膨張係数を抑制し、積層シートの靭性を改善するために使用してもよい。有機の充填剤は、積層シートの誘電率を低減するために使用してもよい。
【0143】
第三の成形体としては、プリプレグ、金属張積層板、CCL、プリント配線板、多層配線基板、及び電子機器等が挙げられるが、上記に限定されるものではない。
【0144】
〔水添ブロック共重合体のその他の用途〕
(プリプレグ、金属張積層板)
本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)は、金属張積層板用の誘電化合物及びそれから作製された印刷回路板に使用できる。本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)を使用することにより、加工性が良好で、溶液粘度が低く、優れた硬化性を有し、軟化点温度が高く、高周波数で誘電正接が低く、及び誘電率特性が低い樹脂組成物が得られ、さらには、前記樹脂組成物から金属箔と絶縁層との接着性に優れたプリプレグ及び金属張積層板が得られる。
【0145】
前記プリプレグは、基布又は補強布に本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)を含む樹脂組成物を含浸させることにより得られる、含浸された織物を指す。
金属張積層板は、印刷回路板又は回路基板の基材を指す。金属張積層板は、樹脂組成物に浸漬された後の補強材(例えば、ファイバーガラス布)の片面又は両面に金属、例えば銅クラッドを積層することによって得られる。
具体的には、銅張積層板(CCL)は、例えば、1層以上の銅箔に、1層以上のプリプレグを積層することによって得られる。積層は、1組以上の銅とプリプレグの重なりを、高温、高圧力及び真空条件下で一緒にプレスすることによって達成される。
印刷回路板は、CCLの銅表面をエッチングし、電子回路を作製することによって得られる。エッチングされたCCLは、層間に電気接続を確立するために貫通されメッキ処理された穴を備えた多層構成へとアセンブルされる。
【0146】
プリプレグや金属張積層板の製造時には、前記樹脂組成物の固形分を変更するため、及び樹脂組成物の粘度を調整するために、溶媒が添加されてもよい。
溶媒としては、以下に限定されないが、例えば、メチルエチルケトン等のケトン、ジブチルエーテル等のエーテル、酢酸エチル等のエステル、ジメチルホルムアミド等のアミド、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、及びトリクロロエチレン等の塩素化炭化水素が挙げられる。各溶媒は1種単独で使用されてもよく、これらの組合せで使用してもよい。
好ましい溶媒は、メタノール、エタノール、エチレングリコールメチルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン、酢酸メトキシエチル、酢酸エトキシエチル、酢酸プロポキシエチル、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールメチルエーテル、ガンマ-ブチロラクトン(GBL)及びジイソブチルケトン(DIBK)からなる群から選択される。
使用される溶媒の量は、成分の溶解度、充填剤の量、適用方法及び他の要因に依存する。溶媒は、溶液と固形分を合わせた総質量に対して10~50質量%の固形分、又は15~40質量%の固形分を含むように使用量を調整することが好ましい。
【0147】
前記樹脂組成物に、以下の添加剤;カップリング剤、硬化促進剤、界面活性剤、強化剤、粘度調整剤、湿潤剤、酸化防止剤、着色剤等のうちの少なくとも1種をさらに添加してもよい。
添加剤の選択は、用途、並びに回路サブアセンブリの電気的特性を増強する又は実質的に悪影響を及ぼさないように選択される所望の特性、例えば、誘電率、誘電正接、誘電損失及び/又は他の所望の特性に左右される。
硬化促進剤は、樹脂組成物の反応速度を上昇させるために添加される。
界面活性剤は、確実に無機充填剤が樹脂組成物中で均一に分布すること、及び無機充填剤の凝集を防止するために添加される。
強化剤は、樹脂組成物の靭性を改善するために添加される。
【0148】
前記樹脂組成物は、全樹脂組成物中の0.1~2質量%の量で、当技術分野で公知の接着促進剤、例えば、金属箔と複合体を形成することができるN含有複素環等の金属接着促進剤をさらに含むことができる。それによって金属箔と樹脂組成物層の接着を増強させることができる。接着促進剤は、水又は有機溶媒の溶液又は分散液の形態で、抵抗金属層中に含有させてもよい。
【0149】
前記樹脂組成物は、15質量%以下の、ポリ(アリーレンエーテル)、カルボキシ-官能化ポリ(アリーレンエーテル)、及び無水マレイン酸で官能化されたスチレン-エチレン/ブチレン-スチレン(SEBS)からなる群より選択される接着促進ポリマーをさらに含むことができる。
具体的には、硬化性の樹脂組成物は、コポリマー、硫黄硬化剤、及び過酸化物硬化剤から選択される硬化開始剤並びに共硬化添加剤としてのジエン系ゴムを含有することが好ましい。
【0150】
前記樹脂組成物は、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリオレフィン、スチレン系ポリマー、スチレン系ブロックコポリマー又は水素化スチレン系ブロックコポリマー、高Tg炭化水素ポリシクロオレフィン等の可溶性ポリマーをさらに含有してもよい。これらの可溶性ポリマーは、樹脂組成物を改質し、その膜形成能、耐衝撃性、Tg、加工特性を改善するために低量で使用される。
【0151】
本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)を含む前記樹脂組成物における、任意選択的な添加剤の量は、目的に応じて、樹脂組成物の総量の0.1~25質量%、又は0.2質量%超、又は0.5質量%超、又は10質量%未満、又は15質量%未満の範囲とすることができる。
【0152】
本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)を含む前記樹脂組成物は、印刷回路板用の積層体、例えば、銅張積層体に使用するために好適である。
前記積層体は、基板又は補強材、例えば、ガラス系繊維、織布、クロスプライ積層体等に樹脂組成物を含浸させ、続いて樹脂組成物を部分的又は全体的に硬化し、プリプレグを形成することによって製造できる。積層体を作製するために、1層以上のプリプレグに1層以上の銅を積層する。印刷回路板は多数の高周波高データ速度の電気及び電子用途に使用することができる。
【0153】
高周波CCL又は回路基板を作製するための一つの方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)、硬化開始剤、及び任意選択的な成分、例えば、ジエン系ポリマー等の多官能性共硬化剤、難燃剤、及び他の任意選択的な成分を含む前述の成分を混合し、樹脂組成物を得、前記樹脂組成物を、溶媒、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン(MEK)、及びそれらの混合物を用いて適切な粘度に希釈し、膠液又はワニスを形成する。補強材又は基板、例えば、繊維、ガラスフェルト、木材パルプ紙、ファイバーガラス布(任意選択的にカップリング剤で既に処理されている)を、所望の厚さまで膠液又はワニスに含浸する。次に、溶媒蒸発によって、含浸したファイバーガラス布から溶媒を除去し、プリプレグを形成する。
前記プリプレグは、溶媒を、硬化開始剤の活性化温度未満の温度で、又は溶媒が蒸発するのに十分であるが、ゲル化時間には至らない時間にわたって蒸発させることによって形成される。ゲル化時間は、材料が軟化し始めてからゲル化が起こるまでの時間を指し、ゲル化は粘性液体から弾性ゲルへの不可逆的な変化である。プリプレグは、樹脂組成物を基板、例えば、繊維品に含浸させ、得られる含浸した基板を半硬化させるか、コーティングされた繊維をさらなる樹脂組成物とともに、又は樹脂組成物を伴わずに熱プレスすることによって形成される。
次に、プリプレグを銅箔の間に積層し、150~250℃の温度及び20kg/cm2~70kg/cm2の圧力で硬化することによって、高周波CCL又は回路基板を形成する。
【0154】
〔発泡体〕
本実施形態の成形体は、発泡体であってもよい。
本実施形態の発泡体は、通常、本実施形態の水添ブロック共重合体組成物に発泡剤(ホ)を添加し、これを発泡させることにより得られる。
発泡方法には、化学的方法や物理的方法があり、いずれも無機系発泡剤や有機系発泡剤等の化学的発泡剤、或いは物理発泡剤を添加した上で、加熱等により発泡剤を揮発及び/又は分解させ、水添ブロック共重合体組成物内部に気泡を分布させればよい。水添ブロック共重合体組成物の成形体を発泡体とすることにより、軽量化、柔軟性の向上、意匠性の向上、制振・吸音特性の向上、断熱特性の向上等を図ることができる。
【0155】
(発泡剤(ホ))
前記発泡剤としては、無機系発泡剤や、有機系発泡剤、物理発泡剤を用いることができる。
無機系発泡剤としては、以下に限定されないが、例えば、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、アジド化合物、ホウ化水素ナトリウム、酢酸アルミニウム、金属粉等が挙げられる。
有機系発泡剤としては、以下に限定されないが、例えば、アゾジカルボンアミド、アゾビスホルムアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボン酸バリウム、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N’-ジニトロソ-N,N’-ジメチルテレフタルアミド、ベンゼンスルホニルヒドラジド、p-トルエンスルホニルヒドラジド、p,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、p-トルエンスルホニルセミカルバジド等が挙げられる。
物理的発泡剤としては、以下に限定されないが、例えば、ペンタン、ブタン、ヘキサン等の炭化水素;塩化メチル、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素;窒素、二酸化炭素、空気等のガス;トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロトリフルオロエタン、クロロジフルオロエタン、ハイドロフルオロカーボン等のフッ素化炭化水素等が挙げられる。
また、これらの発泡剤は組み合わせて使用してもよい。
発泡剤の配合量は、本実施形態の水添ブロック共重合体又は水添ブロック共重合体組成物100質量部に対して、0.1~30質量部が好ましく、より好ましくは2~25質量部、さらに好ましくは3~20質量部である。
【0156】
(発泡助剤)
前記発泡体の作製工程においては、発泡剤とともに、発泡助剤を用いてもよい。
発泡助剤としては特に限定はなく、従来、発泡助剤として汎用されているものを使用することができる。
例えば、尿素化合物、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ベンゼンスルフィン酸亜鉛、トルエンスルホン酸亜鉛、トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛、炭酸亜鉛等の亜鉛化合物、二酸化鉛、及び三塩基性鉛等の鉛化合物等が挙げられる。
発泡剤と発泡助剤とを併用する場合、その配合量は、発泡剤100質量部に対して、発泡助剤を0.1~1000質量部とすることが好ましく、0.5~500質量部とすることがより好ましく、1~200質量部とすることがさらに好ましい。
【0157】
(発泡核剤)
前記発泡体の作製工程においては、発泡核剤を用いてもよい。
発泡核剤としては、特に限定はなく、従来発泡核剤として汎用されているものを使用することができる。
例えば、酸化チタン、タルク、カオリン、クレー、珪酸カルシウム、シリカ、クエン酸ソーダ、炭酸カルシウム、珪藻土、焼成パーライト、ゼオライト、ベントナイト、ガラス、石灰石、硫酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸第二鉄、ポリテトラフルオロエチレン粉末が挙げられる。
発泡核剤の配合量は、本実施形態の水添ブロック共重合体又は水添ブロック共重合体組成物100質量部に対して、発泡核剤を0.01~100質量部とすることが好ましく、0.05~50質量部がより好ましく、0.1~10質量部がさらに好ましい。
【0158】
(発泡体の使用例)
本実施形態の発泡体は、シートやフィルムやその他の各種形状の射出成形品、中空成形品、圧空成形品、真空成形品、押出成形品等に適用することができる。
また、本実施形態の発泡体は、自動車内装材(インストルメントパネル、ドアパネル、シートバックパネル、ステアリングホイール等)、家電製品、工具、家具(クッション部等)、住宅建材等、クッション性を必要とする部材に広く使用することができる。
本実施形態の発泡体を自動車内装材用途に用いる場合、使用する発泡剤としては、健康有害性の低さの観点から、重炭酸ナトリウム又は窒素、二酸化炭素、空気等のガスが好ましい。
【0159】
(射出成形発泡の方法)
本実施形態の発泡体は、射出成形発泡により作製できる。
射出成形発泡の方法として、特に制限はないが、ショートショット法、フルショット法、コアバック法等が挙げられる。
上述の方法を用いることで、クッション性のある発泡層と、シボ面等の意匠性や発泡層と比べて硬さのあるスキン層を、同じ工程内で成形できるため、成形工程の削減に有効である。
また、射出成形発泡の方法として、コアバック法を適用する際は、成形体表面のスワルマークを消す目的等でカウンタープレッシャー装置を用いてもよい。
【0160】
(発泡体の成形に適する水添ブロック共重合体組成物)
発泡体の成形における、本実施形態の水添ブロック共重合体組成物中の水添ブロック共重合体(イ)の含有量は、1質量%以上50質量%以下が好ましく、10質量%以上49質量%以下がよりに好ましく、20質量%以上48質量%以下がさらに好ましい。
水添ブロック共重合体組成物中の水添ブロック共重合体(イ)の含有量が上記範囲内にあると、発泡体成形時に気泡が微細かつ気泡の独立性が高くなる(発泡性が高くなる)傾向にあるため、断熱性の向上や長期での気泡安定性や、コアバック成形時の成形外観の改善(ヒケ・アバタ、スワルマーク等の抑制)が期待できる。
また、本実施形態の水添ブロック共重合体(イ)の、JIS K7210に従って温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定したMFRは10以上であるが、発泡体成形に用いる水添共重合体組成物中の水添ブロック共重合体(イ)においては、前記MFRは15以上が好ましく、30以上がより好ましく、50以上がさらに好ましい。
MFRが高いと、良好な加工性が得られ、発泡体成形時の成形外観の改善(ヒケ・アバタ、スワルマークの抑制)や、発泡倍率の向上が期待できる。
発泡倍率の好ましい範囲は用途によるものの、一般的には1.5倍以上が好ましく、1.75倍以上がより好ましい。倍率が高いことで、軽量化、柔軟性の向上、意匠性の向上、制振・吸音特性の向上、断熱特性の向上を図ることができる。
【0161】
発泡体成形に用いる水添ブロック共重合体組成物中のオレフィン系樹脂(ロ)の含有量は、5質量%以上50質量%以下が好ましく、8質量%以上45質量%以下がより好ましく、12質量%以上40質量%以下がさらに好ましい。
オレフィン系樹脂(ロ)の含有量が上記範囲内にあると、発泡性と柔軟性のバランスが良好となる傾向にある。
【0162】
発泡体成形に用いる水添ブロック共重合体組成物中の熱可塑性樹脂(ハ)の含有量は1質量%以上50質量%以下が好ましく、5質量%以上40質量%以下がより好ましく、10質量%以上30%以下がさらに好ましい。
熱可塑性樹脂(ハ)の含有量が上記範囲内にあると、発泡性と柔軟性のバランスが良好となる傾向にある。
【0163】
発泡体成形に用いる水添ブロック共重合体組成物中の軟化剤(ニ)の含有量は5質量%以上90質量%以下が好ましく、10質量%以上70質量%以下がより好ましく、20質量%以上36質量%以下がさらに好ましい。
軟化剤(ニ)の含有量が上記範囲内にあると、発泡性と柔軟性のバランスが良好となる傾向にある。
【実施例0164】
以下、具体的な実施例及び比較例を挙げて本発明にについて詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例及び比較例により何ら限定されるものではない。
実施例及び比較例に適用した物性の測定方法、評価方法について下記に示す。
【0165】
〔共重合体の構造の特定方法〕
((1)水添ブロック共重合体(イ)中の、全ビニル芳香族単量体単位(スチレン)の含有量)
水添ブロック共重合体を用い、紫外分光光度計(島津製作所製、UV-2450)により、水添ブロック共重合体(イ)中の全ビニル芳香族単量体単位(スチレン)の含有量を測定した。
【0166】
((2-1)水添ブロック共重合体(イ)中の、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(ポリスチレンブロック)(a)の含有量)
水添ブロック共重合体を用い、核磁気共鳴装置(NMR)を用いて(Y.Tanaka,et al.,RUBBER CHEMISTRY and TECHNOLOGY 54,685(1981)に記載の方法。以後「NMR法」と呼ぶ。)、水添ブロック共重合体(イ)中のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(a)の含有量を測定した。
【0167】
((2-2)水添ブロック共重合体(イ)中の、水添共重合体ブロック(b)の含有量)
(100-水添ブロック共重合体(イ)中の水添共重合体ブロック(a)の含有量)を算出することにより、水添ブロック共重合体(イ)中の水添共重合体ブロック(b)の含有量を求めた。
【0168】
((3)水添ブロック共重合体(イ)中のビニル結合量)
水添ブロック共重合体を用い、核磁気共鳴装置(NMR)を用いてビニル結合量を測定した。水添ブロック共重合体(イ)中の共役ジエン単量体単位におけるビニル結合量は、NMR測定で得られたピーク中の共役ジエン単量体単位に関わる全てのピーク(1,2-結合、3,4-結合の割合、及び1,4-結合)合計面積に対する1,2-結合及び3,4-結合のピーク合計面積の比率により求めた。
【0169】
((4)水添ブロック共重合体(イ)の重量平均分子量、分子量分布)
水添ブロック共重合体を用い、GPC〔装置:HLC-82209PC(東ソー社製)、カラム:TSKgeguard colum SuperHZ-L(4.6mm×20cm)×3本〕により測定した。
溶媒はテトラヒドロフランを用いた。測定は、温度35℃で行った。
重量平均分子量は、クロマトグラムのピークの分子量を、市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)を使用して求めた。
なお、クロマトグラム中にピークが複数有る場合は、各ピークの分子量と各ピークの組成比(クロマトグラムのそれぞれのピークの面積比より求める)から求めた平均分子量を、重量平均分子量(Mw)とした。
分子量分布(Mw/Mn)についても、数平均分子量(Mn)を同様にGPCで測定し、Mw/Mnの比率より算出した。
【0170】
((5)水添ブロック共重合体(イ)の共役ジエン単量体単位の二重結合の水添率)
水添ブロック共重合体を用い、核磁気共鳴装置(JEOL RESONANCE社製、ECS400)を用いて、水添ブロック共重合体(イ)の共役ジエン単量体単位の二重結合の水添率を測定した。
【0171】
((6-1)水添ブロック共重合体(イ)全体に対する水添共重合体ブロック(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量RS、水添共重合体ブロック(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量)
前記(1)で測定した、水添ブロック共重合体(イ)における全ビニル芳香族単量体単位の含有量と、前記(2-1)で測定した水添ブロック共重合体(イ)におけるビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(a)の含有量の差から、ポリマー全体に対する水添共重合体ブロック(b)中のビニル芳香族単量体単位含有量RSを算出し、前記(2-2)で測定した水添ブロック共重合体(イ)中の水添共重合体ブロック(b)の含有量との比から、水添共重合体ブロック(b)中の、ビニル芳香族単量体単位の含有量を算出した。
【0172】
((6-2)水添ブロック共重合体(イ)全体に対する水添共重合体ブロック(b)中の共役ジエン単量体単位の含有量)
水添ブロック共重合体(イ)中の、水添共重合体ブロック(b)の含有量から水添ブロック共重合体(イ)全体に対する水添共重合体ブロック(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量を差し引くことで求めた。
【0173】
〔水添ブロック共重合体の物性の測定方法〕
((7)tanδピーク温度)
後述するように製造した「水添ブロック共重合体のプレス成形シート」を、幅12.5mm、長さ40mmのサイズにカットして測定用サンプルとした。
次に、この測定用サンプルを、装置ARES(ティーエイインスツルメントー株式会社製、商品名)の捻りタイプのジオメトリーにセットし、実効測定長さ25mm、ひずみ0.5%、周波数1Hz、昇温速度3℃/分の条件下で、-20~60℃のtanδピーク温度を求めた。
tanδピーク温度は、RSI Orchestrator(ティーエイインスツルメントー株式会社製、商品名)の自動測定より検出されるピークから求めた値とした。
【0174】
((8)tanδピーク高さ)
前記(7)で求めた-20~60℃のtanδピーク温度におけるtanδの値を-20~60℃のtanδピーク高さとした。
【0175】
((9)硬度)
後述するように製造した「水添ブロック共重合体のプレス成形シート」測定用サンプルとした。
JIS K6253に従い、デュロメータタイプAでそれぞれ瞬間の値を測定した。
測定用サンプルの上に硬度測定器の探針を降ろした瞬間の硬度値を測定した。
下記表4~表5中、硬度(JIS-A,瞬間)と記載した。
【0176】
((10)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分))
後述するように製造した「水添ブロック共重合体のプレス成形シート」測定用サンプルとした。
JIS K7210に従って、温度230℃、荷重2.16kgの条件で、MFRの測定を行った。
【0177】
〔水添ブロック共重合体を用いた成形体の特性の評価方法〕
((11)耐摩耗性)
学振型摩擦試験器(テスター産業株式会社製、AB-301型)を用い、後述する〔射出成形シートの作製〕により作製した射出成形シートの表面(皮シボ加工面)を、摩擦布カナキン3号綿、荷重500gで摩擦し、摩擦後の体積減少量によって、耐摩耗性を以下の基準で評価した。
<評価基準>
5:摩擦回数50000回後に、体積減少量が0.01ml未満
4:摩擦回数50000回後に、体積減少量が0.01ml以上0.05ml未満
3:摩擦回数50000回後に、体積減少量が0.05ml以上0.10ml未満
2:摩擦回数50000回後に、体積減少量が0.10ml以上0.15ml未満
1:摩擦回数50000回後に、体積減少量が0.15mlを超える
【0178】
耐摩耗性合格と判定可能な評点は3点以上であり、点数が高いほど、前記の、より薄肉/複雑な成形体を用いた場合、より高い荷重や目の粗い布地で摩耗した場合の耐久性向上、配合自由度向上の観点で優れるものとして評価した。
耐摩耗性が良好であると、自動車材料等において、より厳しい耐摩耗性が求められる用途に使用することができる。例えば、自動車内装材等において、より薄肉での成形時やより複雑/大型の成形体成形時においても、シンプルな形状で小型の一般的な成形体に遜色なく、より長期間使用した場合においても材料の外観維持が期待できる。
また、乗車時想定で、より高い荷重や目の粗い布地(例えば、カナキン3号のような綿生地より目の粗い生地であるジーンズ生地等)によって摩耗を受けた場合についても長期間材料外観維持が期待できる。
また、耐摩耗性が良好であると、本実施形態の水添ブロック共重合体組成物において水添ブロック共重合体(イ)配合量下限が低下し、配合自由度が向上する傾向にある。
一般に水添ブロック共重合体組成物中の水添ブロック共重合体(イ)の配合量が多いほど、耐摩耗性が良好となる傾向にあるが、水添ブロック共重合体(イ)の配合量が少ないほど耐油性や材料コスト等が良好となる傾向にあるため、配合量の下限は低いほうが好ましい。
【0179】
((12)低反発性:ダンロップ反撥弾性率)
後述するように製造した「水添ブロック共重合体のプレス成形シート」測定用サンプルとした。
ダンロップ反撥弾性試験機により、BS903に従い、23℃で反撥弾性率を測定した。
触感の観点から、反撥弾性率が20%以下であれば実用上良好であるものであり、数値が低いほど、優れる傾向にあるものと評価した。
【0180】
(水添ブロック共重合体のランダム性パラメーターgの算出)
水添ブロック共重合体(イ)について、下記表3の条件で、py-GC/MS測定を行い、ピーク強度Pを算出した。
また、水添ブロック共重合体(イ)全体に対する共重合体ブロック(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量RSから、P0=0.005563×RSにより、P0を算出し、g=P/P0によりgを算出した。
ここで、前記「0.005563」は、水添ブロック共重合体(イ)全体に対する、水添共重合体ブロック(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量RS(質量%)と、後述する特定の重合方法(均一重合法)で重合した水添ブロック共重合体(イ)を熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析装置で分析した際に得られるピーク強度Pを1次近似した際の比例定数(k)を表す。
【0181】
【0182】
〔水添ブロック共重合体の製造〕
(水添触媒の調製)
後述する実施例及び比較例において、水添ブロック共重合体を作製する際に用いる水添触媒を、下記の方法により調製した。
攪拌装置を具備する反応容器を窒素置換しておき、これに、乾燥、精製したシクロヘキサン1リットルを仕込んだ。
次に、ビス(η5-シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド100ミリモルを添加した。
これを十分に攪拌しながらトリメチルアルミニウム200ミリモルを含むn-ヘキサン溶液を添加して、室温にて約3日間反応させた。これにより水添触媒が得られた。
【0183】
(水添ブロック共重合体)
水添ブロック共重合体組成物を構成する水添ブロック共重合体(イ)-1~(イ)-10、(イ)-A~(イ)-Eを、下記のようにして調製した。
【0184】
〔実施例1〕
(水添ブロック共重合体(イ)-1)
攪拌装置及びジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用してバッチ重合を行った。
先ず、スチレン13質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.047質量部と、ビニル結合量調整剤N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(以下「TMEDA」とする。)をn-ブチルリチウム(n-BuLi)1モルに対して0.9モル添加し、65℃で1時間重合した。
次に、ブタジエン30質量部とスチレン44質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を加えて80℃で2時間重合した。この際、ReactIRで反応系中のブタジエン、スチレン濃度をリアルタイムで定量しつつ、それぞれが重合速度1:1(質量部換算)となるようフィード速度を適宜調整した。
ReactIRでは、1589cm―1の波長にてブタジエンモノマーを追跡し、775cm―1の波長にてスチレンモノマーを常時追跡し、所望の反応性比より10%以上高い場合には、ブタジエンのフィード速度を上昇させた。所望の反応性比より10%以上低い場合には、ブタジエンのフィード速度を低下させることで、反応が完結するまでの間、所望の反応比に調整した。
最後に、スチレン13質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を加えて65℃で1時間重合した。その後、メタノールを添加し、重合反応を停止し、ブロック共重合体を得た。
上記のようにして得られたブロック共重合体は、スチレン含有量70質量%、水添ブロック共重合体(イ)全体に対する水添共重合体ブロック(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量RS44質量%、ビニル結合量21質量%、重量平均分子量16万であった。
さらに、得られたブロック共重合体に、上記のようにして調製した水添触媒を、ブロック共重合体100質量部当たり、Ti基準で100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水素添加反応を行った。
次に、安定剤として、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、ブロック共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、水添ブロック共重合体(イ)-1を得た。
得られた水添ブロック共重合体(イ)-1の水素添加率は98モル%であった。
その他の物性を表4に示す。
【0185】
〔実施例2〕
(水添ブロック共重合体(イ)-2)
攪拌装置及びジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用してバッチ重合を行った。
先ず、スチレン12質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.048質量部と、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(以下「TMEDA」とする。)をn-ブチルリチウム1モルに対して0.9モル添加し、65℃で1時間重合した。
次に、ブタジエン31質量部とスチレン45質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を加えて80℃で2時間重合した。この際、ReactIRで反応系中のブタジエン、スチレン濃度をリアルタイムで定量しつつ、それぞれが重合速度1:1(質量部換算)となるようフィード速度を適宜調整した。
ReactIRでは、1589cm―1の波長にてブタジエンモノマーを追跡し、775cm―1の波長にてスチレンモノマーを常時追跡し、所望の反応性比より10%以上高い場合には、ブタジエンのフィード速度を上昇させ、所望の反応性比より10%以上低い場合には、ブタジエンのフィード速度を低下させることで、反応が完結するまでの間、所望の反応比に調整した。
最後に、スチレン12質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を加えて65℃で1時間重合した。その後、メタノールを添加し、重合反応を停止し、ブロック共重合体を得た。
上記のようにして得られたブロック共重合体は、スチレン含有量69質量%、水添ブロック共重合体(イ)全体に対する水添共重合体ブロック(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量RS45質量%、ビニル結合量20質量%、重量平均分子量16万であった。
さらに、得られたブロック共重合体に、上記のようにして調製した水添触媒を、ブロック共重合体100質量部当たり、Ti基準で100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水素添加反応を行った。
次に、安定剤として、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、ブロック共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、水添ブロック共重合体(イ)-2を得た。
得られた水添ブロック共重合体(イ)-2の水素添加率は98モル%であった。その他の物性を表4に示す。
【0186】
〔実施例3〕
(水添ブロック共重合体(イ)-3)
攪拌装置及びジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用してバッチ重合を行った。
先ず、スチレン8質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.048質量部と、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(以下「TMEDA」とする。)をn-ブチルリチウム1モルに対して0.9モル添加し、65℃で1時間重合した。
次に、ブタジエン34質量部とスチレン50質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を加えて80℃で2時間重合した。この際、ReactIRで反応系中のブタジエン、スチレン濃度をリアルタイムで定量しつつ、それぞれが重合速度1:1(質量部換算)となるようフィード速度を適宜調整した。
ReactIRでは、1589cm―1の波長にてブタジエンモノマーを追跡し、775cm―1の波長にてスチレンモノマーを常時追跡し、所望の反応性比より10%以上高い場合には、ブタジエンのフィード速度を上昇させ、所望の反応性比より10%以上低い場合には、ブタジエンのフィード速度を低下させることで、反応が完結するまでの間、所望の反応比に調整した。
最後に、スチレン8質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を加えて65℃で1時間重合した。その後、メタノールを添加し、重合反応を停止し、ブロック共重合体を得た。
上記のようにして得られたブロック共重合体は、スチレン含有量66質量%、水添ブロック共重合体(イ)全体に対する水添共重合体ブロック(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量RS50質量%、ビニル結合量21質量%、重量平均分子量16.1万であった。
さらに、得られたブロック共重合体に、上記のようにして調製した水添触媒を、ブロック共重合体100質量部当たり、Ti基準で100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水素添加反応を行った。
次に、安定剤として、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、ブロック共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、水添ブロック共重合体(イ)-3を得た。
得られた水添ブロック共重合体(イ)-3の水素添加率は98モル%であった。その他の物性を表4に示す。
【0187】
〔実施例4〕
(水添ブロック共重合体(イ)-4)
攪拌装置及びジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用してバッチ重合を行った。
先ず、スチレン7質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.049質量部と、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(以下「TMEDA」とする。)をn-ブチルリチウム1モルに対して0.9モル添加し、65℃で1時間重合した。
次に、ブタジエン35質量部とスチレン51質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を加えて80℃で2時間重合した。この際、ReactIRで反応系中のブタジエン、スチレン濃度をリアルタイムで定量しつつ、それぞれが重合速度1:1(質量部換算)となるようフィード速度を適宜調整した。
ReactIRでは、1589cm―1の波長にてブタジエンモノマーを追跡し、775cm―1の波長にてスチレンモノマーを常時追跡し、所望の反応性比より10%以上高い場合には、ブタジエンのフィード速度を上昇させ、所望の反応性比より10%以上低い場合には、ブタジエンのフィード速度を低下させることで、反応が完結するまでの間、所望の反応比に調整した。
最後に、スチレン7質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を加えて65℃で1時間重合した。その後、メタノールを添加し、重合反応を停止し、ブロック共重合体を得た。
上記のようにして得られたブロック共重合体は、スチレン含有量65質量%、水添ブロック共重合体(イ)全体に対する水添共重合体ブロック(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量RS51質量%、ビニル結合量21質量%、重量平均分子量16万であった。
さらに、得られたブロック共重合体に、上記のようにして調製した水添触媒を、ブロック共重合体100質量部当たり、Ti基準で100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水素添加反応を行った。
次に、安定剤として、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、ブロック共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、水添ブロック共重合体(イ)-4を得た。
得られた水添ブロック共重合体(イ)-4の水素添加率は98モル%であった。その他の物性を表4に示す。
【0188】
〔実施例5〕
(水添ブロック共重合体(イ)-5)
攪拌装置及びジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用してバッチ重合を行った。
先ず、スチレン8質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.050質量部と、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(以下「TMEDA」とする。)をn-ブチルリチウム1モルに対して0.9モル添加し、65℃で1時間重合した。
次に、ブタジエン39質量部とスチレン45質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を加えて80℃で2時間重合した。この際、ReactIRで反応系中のブタジエン、スチレン濃度をリアルタイムで定量しつつ、それぞれが重合速度1:1(質量部換算)となるようフィード速度を適宜調整した。
ReactIRでは、1589cm―1の波長にてブタジエンモノマーを追跡し、775cm―1の波長にてスチレンモノマーを常時追跡し、所望の反応性比より10%以上高い場合には、ブタジエンのフィード速度を上昇させ、所望の反応性比より10%以上低い場合には、ブタジエンのフィード速度を低下させることで、反応が完結するまでの間、所望の反応比に調整した。
最後に、スチレン8質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を加えて65℃で1時間重合した。その後、メタノールを添加し、重合反応を停止し、ブロック共重合体を得た。
上記のようにして得られたブロック共重合体は、スチレン含有量61質量%、水添ブロック共重合体(イ)全体に対する水添共重合体ブロック(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量RS45質量%、ビニル結合量24質量%、重量平均分子量16万であった。
さらに、得られたブロック共重合体に、上記のようにして調製した水添触媒を、ブロック共重合体100質量部当たり、Ti基準で100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水素添加反応を行った。
次に、安定剤として、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、ブロック共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、水添ブロック共重合体(イ)-5を得た。
得られた水添ブロック共重合体(イ)-5の水素添加率は98モル%であった。その他の物性を表4に示す。
【0189】
〔実施例6〕
(水添ブロック共重合体(イ)-6)
攪拌装置及びジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用してバッチ重合を行った。
先ず、スチレン8質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.050質量部と、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(以下「TMEDA」とする。)をn-ブチルリチウム1モルに対して0.9モル添加し、65℃で1時間重合した。
次に、ブタジエン38質量部とスチレン46質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を加えて80℃で2時間重合した。この際、ReactIRで反応系中のブタジエン、スチレン濃度をリアルタイムで定量しつつ、それぞれが重合速度1:1(質量部換算)となるようフィード速度を適宜調整した。
ReactIRでは、1589cm―1の波長にてブタジエンモノマーを追跡し、775cm―1の波長にてスチレンモノマーを常時追跡し、所望の反応性比より10%以上高い場合には、ブタジエンのフィード速度を上昇させ、所望の反応性比より10%以上低い場合には、ブタジエンのフィード速度を低下させることで、反応が完結するまでの間、所望の反応比に調整した。
最後に、スチレン8質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を加えて65℃で1時間重合した。その後、メタノールを添加し、重合反応を停止し、ブロック共重合体を得た。
上記のようにして得られたブロック共重合体は、スチレン含有量62質量%、水添ブロック共重合体(イ)全体に対する水添共重合体ブロック(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量RS46質量%、ビニル結合量22質量%、重量平均分子量15.9万であった。
さらに、得られたブロック共重合体に、上記のようにして調製した水添触媒を、ブロック共重合体100質量部当たり、Ti基準で100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水素添加反応を行った。
次に、安定剤として、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、ブロック共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、水添ブロック共重合体(イ)-6を得た。
得られた水添ブロック共重合体(イ)-6の水素添加率は98モル%であった。その他の物性を表4に示す。
【0190】
〔実施例7〕
(水添ブロック共重合体(イ)-7)
攪拌装置及びジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用してバッチ重合を行った。
先ず、スチレン8質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.047質量部と、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(以下「TMEDA」とする。)をn-ブチルリチウム1モルに対して0.9モル添加し、65℃で1時間重合した。
次に、ブタジエン30質量部とスチレン54質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を加えて80℃で2時間重合した。この際、ReactIRで反応系中のブタジエン、スチレン濃度をリアルタイムで定量しつつ、それぞれが重合速度1:1(質量部換算)となるようフィード速度を適宜調整した。
ReactIRでは、1589cm―1の波長にてブタジエンモノマーを追跡し、775cm―1の波長にてスチレンモノマーを常時追跡し、所望の反応性比より10%以上高い場合には、ブタジエンのフィード速度を上昇させ、所望の反応性比より10%以上低い場合には、ブタジエンのフィード速度を低下させることで、反応が完結するまでの間、所望の反応比に調整した。
最後に、スチレン8質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を加えて65℃で1時間重合した。その後、メタノールを添加し、重合反応を停止し、ブロック共重合体を得た。
上記のようにして得られたブロック共重合体は、スチレン含有量70質量%、水添ブロック共重合体(イ)全体に対する水添共重合体ブロック(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量RS54質量%、ビニル結合量17質量%、重量平均分子量16万であった。
さらに、得られたブロック共重合体に、上記のようにして調製した水添触媒を、ブロック共重合体100質量部当たり、Ti基準で100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水素添加反応を行った。
次に、安定剤として、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、ブロック共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、水添ブロック共重合体(イ)-7を得た。
得られた水添ブロック共重合体(イ)-7の水素添加率は98モル%であった。その他の物性を表4に示す。
【0191】
〔実施例8〕
(水添ブロック共重合体(イ)-8)
攪拌装置及びジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用してバッチ重合を行った。
先ず、スチレン8質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.047質量部と、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(以下「TMEDA」とする。)をn-ブチルリチウム1モルに対して0.9モル添加し、65℃で1時間重合した。
次に、ブタジエン29質量部とスチレン55質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を加えて80℃で2時間重合した。この際、ReactIRで反応系中のブタジエン、スチレン濃度をリアルタイムで定量しつつ、それぞれが重合速度1:1(質量部換算)となるようフィード速度を適宜調整した。
ReactIRでは、1589cm―1の波長にてブタジエンモノマーを追跡し、775cm―1の波長にてスチレンモノマーを常時追跡し、所望の反応性比より10%以上高い場合には、ブタジエンのフィード速度を上昇させ、所望の反応性比より10%以上低い場合には、ブタジエンのフィード速度を低下させることで、反応が完結するまでの間、所望の反応比に調整した。
最後に、スチレン8質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を加えて65℃で1時間重合した。その後、メタノールを添加し、重合反応を停止し、ブロック共重合体を得た。
上記のようにして得られたブロック共重合体は、スチレン含有量71質量%、水添ブロック共重合体(イ)全体に対する水添共重合体ブロック(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量RS55質量%、ビニル結合量17質量%、重量平均分子量16万であった。
さらに、得られたブロック共重合体に、上記のようにして調製した水添触媒を、ブロック共重合体100質量部当たり、Ti基準で100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水素添加反応を行った。
次に、安定剤として、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、ブロック共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、水添ブロック共重合体(イ)-8を得た。
得られた水添ブロック共重合体(イ)-8の水素添加率は98モル%であった。その他の物性を表4に示す。
【0192】
〔実施例9〕
(水添ブロック共重合体(イ)-9)
攪拌装置及びジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用してバッチ重合を行った。
先ず、スチレン8質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.048質量部と、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(以下「TMEDA」とする。)をn-ブチルリチウム1モルに対して0.9モル添加し、65℃で1時間重合した。
次に、ブタジエン34質量部とスチレン50質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を加えて60℃で2時間重合した。この際、ReactIRで反応系中のブタジエン、スチレン濃度をリアルタイムで定量しつつ、それぞれが重合速度1:1(質量部換算)となるようフィード速度を適宜調整した。
ReactIRでは、1589cm―1の波長にてブタジエンモノマーを追跡し、775cm―1の波長にてスチレンモノマーを常時追跡し、所望の反応性比より10%以上高い場合には、ブタジエンのフィード速度を上昇させ、所望の反応性比より10%以上低い場合には、ブタジエンのフィード速度を低下させることで、反応が完結するまでの間、所望の反応比に調整した。
最後に、スチレン8質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を加えて65℃で1時間重合した。その後、メタノールを添加し、重合反応を停止し、ブロック共重合体を得た。
上記のようにして得られたブロック共重合体は、スチレン含有量66質量%、水添ブロック共重合体(イ)全体に対する水添共重合体ブロック(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量RS50質量%、ビニル結合量24質量%、重量平均分子量16.1万であった。
さらに、得られたブロック共重合体に、上記のようにして調製した水添触媒を、ブロック共重合体100質量部当たり、Ti基準で100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水素添加反応を行った。
次に、安定剤として、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、ブロック共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、水添ブロック共重合体(イ)-9を得た。
得られた水添ブロック共重合体(イ)-9の水素添加率は98モル%であった。その他の物性を表4に示す。
【0193】
〔実施例10〕
(水添ブロック共重合体(イ)-10)
攪拌装置及びジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用してバッチ重合を行った。
先ず、スチレン8質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.048質量部と、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(以下「TMEDA」とする。)をn-ブチルリチウム1モルに対して0.5モル添加し、65℃で1時間重合した。
次に、ブタジエン34質量部とスチレン50質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を加えて80℃で2時間重合した。この際、ReactIRで反応系中のブタジエン、スチレン濃度をリアルタイムで定量しつつ、それぞれが重合速度1:1(質量部換算)となるようフィード速度を適宜調整した。
ReactIRでは、1589cm―1の波長にてブタジエンモノマーを追跡し、775cm―1の波長にてスチレンモノマーを常時追跡し、所望の反応性比より10%以上高い場合には、ブタジエンのフィード速度を上昇させ、所望の反応性比より10%以上低い場合には、ブタジエンのフィード速度を低下させることで、反応が完結するまでの間、所望の反応比に調整した。
最後に、スチレン8質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を加えて65℃で1時間重合した。その後、メタノールを添加し、重合反応を停止し、ブロック共重合体を得た。
上記のようにして得られたブロック共重合体は、スチレン含有量66質量%、水添ブロック共重合体(イ)全体に対する水添共重合体ブロック(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量RS50質量%、ビニル結合量17質量%、重量平均分子量16.0万であった。
さらに、得られたブロック共重合体に、上記のようにして調製した水添触媒を、ブロック共重合体100質量部当たり、Ti基準で100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水素添加反応を行った。
次に、安定剤として、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、ブロック共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、水添ブロック共重合体(イ)-10を得た。
得られた水添ブロック共重合体(イ)-10の水素添加率は98モル%であった。その他の物性を表4に示す。
【0194】
〔比較例1〕
(水添ブロック共重合体(イ)-A)
攪拌装置及びジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用してバッチ重合を行った。
先ず、スチレン18質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.045質量部と、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(以下「TMEDA」とする。)をn-ブチルリチウム1モルに対して0.9モル添加し、65℃で1時間重合した。
次に、ブタジエン22質量部とスチレン42質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を加えて80℃で2時間重合した。この際、ReactIRで反応系中のブタジエン、スチレン濃度をリアルタイムで定量しつつ、それぞれが重合速度1:1(質量部換算)となるようフィード速度を適宜調整した。
ReactIRでは、1589cm―1の波長にてブタジエンモノマーを追跡し、775cm―1の波長にてスチレンモノマーを常時追跡し、所望の反応性比より10%以上高い場合には、ブタジエンのフィード速度を上昇させ、所望の反応性比より10%以上低い場合には、ブタジエンのフィード速度を低下させることで、反応が完結するまでの間、所望の反応比に調整した。
最後に、スチレン18質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を加えて65℃で1時間重合した。その後、メタノールを添加し、重合反応を停止し、ブロック共重合体を得た。
上記のようにして得られたブロック共重合体は、スチレン含有量78質量%、水添ブロック共重合体(イ)全体に対する水添共重合体ブロック(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量RS42質量%、ビニル結合量21質量%、重量平均分子量16万であった。
さらに、得られたブロック共重合体に、上記のようにして調製した水添触媒を、ブロック共重合体100質量部当たり、Ti基準で100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水素添加反応を行った。
次に、安定剤として、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、ブロック共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、水添ブロック共重合体(イ)-Aを得た。
得られた水添ブロック共重合体(イ)-Aの水素添加率は98モル%であった。その他の物性を表5に示す。
【0195】
〔比較例2〕
(水添ブロック共重合体(イ)-B)
攪拌装置及びジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用してバッチ重合を行った。
先ず、スチレン2質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.050質量部と、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(以下「TMEDA」とする。)をn-ブチルリチウム1モルに対して0.9モル添加し、65℃で1時間重合した。
次に、ブタジエン39質量部とスチレン57質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を加えて80℃で2時間重合した。この際、ReactIRで反応系中のブタジエン、スチレン濃度をリアルタイムで定量しつつ、それぞれが重合速度1:1(質量部換算)となるようフィード速度を適宜調整した。
ReactIRでは、1589cm―1の波長にてブタジエンモノマーを追跡し、775cm―1の波長にてスチレンモノマーを常時追跡し、所望の反応性比より10%以上高い場合には、ブタジエンのフィード速度を上昇させ、所望の反応性比より10%以上低い場合には、ブタジエンのフィード速度を低下させることで、反応が完結するまでの間、所望の反応比に調整した。
最後に、スチレン2質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を加えて65℃で1時間重合した。その後、メタノールを添加し、重合反応を停止し、ブロック共重合体を得た。
上記のようにして得られたブロック共重合体は、スチレン含有量61質量%、水添ブロック共重合体(イ)全体に対する水添共重合体ブロック(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量RS57質量%、ビニル結合量20質量%、重量平均分子量15.9万であった。
さらに、得られたブロック共重合体に、上記のようにして調製した水添触媒を、ブロック共重合体100質量部当たり、Ti基準で100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水素添加反応を行った。
次に、安定剤として、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、ブロック共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、水添ブロック共重合体(イ)-Bを得た。
得られた水添ブロック共重合体(イ)-Bの水素添加率は98モル%であった。その他の物性を表5に示す。
【0196】
〔比較例3〕
(水添ブロック共重合体(イ)-C)
攪拌装置及びジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用してバッチ重合を行った。
先ず、スチレン8質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.054質量部と、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(以下「TMEDA」とする。)をn-ブチルリチウム1モルに対して0.9モル添加し、65℃で1時間重合した。
次に、ブタジエン51質量部とスチレン33質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を加えて80℃で2時間重合した。この際、 ReactIRで反応系中のブタジエン、スチレン濃度をリアルタイムで定量しつつ、それぞれが重合速度1:1(質量部換算)となるようフィード速度を適宜調整した。
ReactIRでは、1589cm―1の波長にてブタジエンモノマーを追跡し、775cm―1の波長にてスチレンモノマーを常時追跡し、所望の反応性比より10%以上高い場合には、ブタジエンのフィード速度を上昇させ、所望の反応性比より10%以上低い場合には、ブタジエンのフィード速度を低下させることで、反応が完結するまでの間、所望の反応比に調整した。
最後に、スチレン8質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を加えて65℃で1時間重合した。その後、メタノールを添加し、重合反応を停止し、ブロック共重合体を得た。
上記のようにして得られたブロック共重合体は、スチレン含有量49質量%、水添ブロック共重合体(イ)全体に対する水添共重合体ブロック(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量RS33質量%、ビニル結合量30質量%、重量平均分子量16万であった。
さらに、得られたブロック共重合体に、上記のようにして調製した水添触媒を、ブロック共重合体100質量部当たり、Ti基準で100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水素添加反応を行った。
次に、安定剤として、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、ブロック共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、水添ブロック共重合体(イ)-Cを得た。
得られた水添ブロック共重合体(イ)-Cの水素添加率は98モル%であった。その他の物性を表5に示す。
【0197】
〔比較例4〕
(水添ブロック共重合体(イ)-D)
攪拌装置及びジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用してバッチ重合を行った。
先ず、スチレン8質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.044質量部と、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(以下「TMEDA」とする。)をn-ブチルリチウム1モルに対して0.9モル添加し、65℃で1時間重合した。
次に、ブタジエン20質量部とスチレン64質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を加えて80℃で2時間重合した。この際、ReactIRで反応系中のブタジエン、スチレン濃度をリアルタイムで定量しつつ、それぞれが重合速度1:1(質量部換算)となるようフィード速度を適宜調整した。
ReactIRでは、1589cm―1の波長にてブタジエンモノマーを追跡し、775cm―1の波長にてスチレンモノマーを常時追跡し、所望の反応性比より10%以上高い場合には、ブタジエンのフィード速度を上昇させ、所望の反応性比より10%以上低い場合には、ブタジエンのフィード速度を低下させることで、反応が完結するまでの間、所望の反応比に調整した。
最後に、スチレン8質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を加えて65℃で1時間重合した。その後、メタノールを添加し、重合反応を停止し、ブロック共重合体を得た。
上記のようにして得られたブロック共重合体は、スチレン含有量80質量%、水添ブロック共重合体(イ)全体に対する水添共重合体ブロック(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量RS64質量%、ビニル結合量14質量%、重量平均分子量16.1万であった。
さらに、得られたブロック共重合体に、上記のようにして調製した水添触媒を、ブロック共重合体100質量部当たり、Ti基準で100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水素添加反応を行った。
次に、安定剤として、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、ブロック共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、水添ブロック共重合体(イ)-Dを得た。
得られた水添ブロック共重合体(イ)-Dの水素添加率は98モル%であった。その他の物性を表5に示す。
【0198】
〔比較例5〕
(水添ブロック共重合体(イ)-E)
攪拌装置及びジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用してバッチ重合を行った。
先ず、スチレン8質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.048質量部と、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(以下「TMEDA」とする。)をn-ブチルリチウム1モルに対して0.9モル添加し、65℃で1時間重合した。
次に、ブタジエン34質量部とスチレン50質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を加えて80℃で2時間重合した。この際、ReactIRは使用せず、フィード速度はブタジエン:スチレン=34:50になるよう一定速度でフィードを行った。最後に、スチレン8質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を加えて65℃で1時間重合した。その後、メタノールを添加し、重合反応を停止し、ブロック共重合体を得た。
上記のようにして得られたブロック共重合体は、スチレン含有量66質量%、水添ブロック共重合体(イ)全体に対する水添共重合体ブロック(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量RS50質量%、ビニル結合量25質量%、重量平均分子量16万であった。
さらに、得られたブロック共重合体に、上記のようにして調製した水添触媒を、ブロック共重合体100質量部当たり、Ti基準で100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水素添加反応を行った。
次に、安定剤として、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、ブロック共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、水添ブロック共重合体(イ)-Eを得た。
得られた水添ブロック共重合体(イ)-Eの水素添加率は98モル%であった。その他の物性を表5に示す。
【0199】
〔プレス成形シートの作製〕
上記のようにして作製した水添ブロック共重合体(イ)-1~(イ)-10、及び(イ)-A~(イ)-Eを、それぞれ単独で、4インチロールを用いて160℃でロール出しを行い、その後油圧プレスにより、200℃、100kg/cm2でプレス成形を行い、2mm厚のプレス成形シートを作製した。
【0200】
〔射出成形シートの作製〕
水添ブロック共重合体(イ)-1~(イ)-10、及び(イ)-A~(イ)-Eを用い、220℃で射出成形して、2mm厚の射出成形シートを作製し、物性測定片を得た。
【0201】
上述した〔実施例1~10〕、〔比較例1~5〕の水添ブロック共重合体(イ)-1~10、及び(イ)-A~Eについて、下記の項目の数値を測定した。
(構造分析値)
水添ブロック共重合体(イ)における全ビニル芳香族単量体単位(スチレン)の含有量(質量%)
水添ブロック共重合体(イ)におけるビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(ポリスチレンブロック)(a)の含有量(質量%)
水添ブロック共重合体(イ)における、ビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位とからなる水添共重合体ブロック(b)の含有量(質量%)
水添共重合体ブロック(b)中の、ビニル芳香族単量体単位の含有量(質量%)
水添ブロック共重合体(イ)全体に対する、水添共重合体ブロック(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量(質量%)
水添ブロック共重合体(イ)全体に対する、水添共重合体ブロック(b)中の共役ジエン含有量(質量%)
水添ブロック共重合体(イ)中のビニル結合量(質量%)
水添ブロック共重合体(イ)の分子量分布
水添ブロック共重合体(イ)の重量平均分子量(万)
水添ブロック共重合体(イ)の共役ジエン単量体単位の二重結合の水素添加率(モル%)
(物性)
・メルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg)
・粘弾性測定チャートにおける-20~60℃のtanδピーク温度(℃)
・硬度(JIS-A 瞬間)
【0202】
なお、重合体ブロック(a)~(b)は、それぞれ以下の重合体ブロックを表す。
重合体ブロック(a):ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック
共重合体ブロック(b):ビニル芳香族化合物単量体単位と共役ジエン単量体単位とからなる水添共重合体ブロック
【0203】
【0204】
【0205】
実施例1~10の水添ブロック共重合体は、耐摩耗性と低反発性に優れることが分かった。
本発明の水添ブロック共重合体は、自動車部品(自動車内装材料、自動車外装材料)、医療用具材料、食品包装容器などの各種容器、家電用品、工業部品、玩具等の分野において、産業上の利用可能性を有している。
前記補強性充填剤(成分(C))として用いることができる金属酸化物は、化学式MxOy(Mは金属原子、x、yは各々1~6の整数)を構成単位の主成分とする固体粒子であり、例えば、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等が挙げられる。また、補強性充填剤としては、金属酸化物と金属酸化物以外の無機充填剤の混合物を使用してもよい。
補強性充填剤として用いる金属水酸化物としては、以下に限定されないが、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、水和珪酸アルミニウム、水和珪酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、酸化錫の水和物、硼砂等の無機金属化合物の水和物等の水和系無機充填材が挙げられ、特に、水酸化マグネシウムと水酸化アルミニウムが好ましい。
補強性充填剤として用いる金属炭酸化物としては、以下に限定されないが、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。
また、補強性充填剤としては、例えば、FT、SRF、FEF、HAF、ISAF、SAF等の各クラスのカーボンブラックが使用でき、特に、窒素吸着比表面積が50mg/g以上、DBP(フタル酸ジブチル)吸油量が80mL/100g以上のカーボンブラックが好ましい。