(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112775
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】フェーズドアレイ超音波システムを用いた異方性ロータブレードの欠陥検出方法
(51)【国際特許分類】
G01N 29/26 20060101AFI20240814BHJP
G01N 29/07 20060101ALI20240814BHJP
G01N 29/11 20060101ALI20240814BHJP
G01N 29/48 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
G01N29/26
G01N29/07
G01N29/11
G01N29/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024005455
(22)【出願日】2024-01-17
(31)【優先権主張番号】18/164,912
(32)【優先日】2023-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515322297
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】General Electric Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 8, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クマール ケーエム、マノージ
(72)【発明者】
【氏名】ラマスワミー、シバラマニバス
(72)【発明者】
【氏名】タパ、プラサド
(72)【発明者】
【氏名】モルデンハウアー、トーマス アーネスト
(57)【要約】 (修正有)
【課題】フェーズドアレイ超音波システムを用いた異方性ロータブレードの欠陥検出の改良。
【解決手段】フェーズドアレイ超音波システムのプローブを、軸方向中心線で異方性ロータブレードの植込部に配置することを含む。さらに、フェーズドアレイ超音波システムのプローブで、軸方向中心線に沿って異方性ロータブレードのセクターをスキャンすることを含む。さらに、幾何学的基準マーカーに対応するエコー信号の大きさ及び時間遅延を決定することを含む。さらに、幾何学的基準マーカーに対応するエコー信号の大きさ及び/又は時間遅延に基づいて、異方性ロータブレード又はプローブの一方の位置を調整することを含む。さらに、幾何学的基準マーカーに対応するエコー信号の大きさ及び時間遅延が所定の最大エコー範囲内に収まるまで、スキャン、決定及び調整を繰り返すことを含む。さらに、欠陥に関して異方性ロータブレードをスキャンすることを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェーズドアレイ超音波システムを用いて異方性ロータブレードの欠陥を検出する方法であって、前記異方性ロータブレードが、軸方向中心線に沿って延在し、かつ植込部及び翼形部を備えており、当該方法が、
前記フェーズドアレイ超音波システムのプローブを、軸方向中心線で前記異方性ロータブレードの植込部に配置するステップと、
前記フェーズドアレイ超音波システムのプローブで、軸方向中心線に沿って前記異方性ロータブレードのセクターをスキャンするステップであって、幾何学的基準マーカーが、前記異方性ロータブレードのセクター内に少なくとも部分的に配置されている、ステップと、
前記幾何学的基準マーカーに対応するエコー信号の大きさ及び時間遅延を決定するステップと、
前記幾何学的基準マーカーに対応するエコー信号の大きさに基づいて、前記異方性ロータブレード又は前記プローブの一方の位置を調整するステップと、
前記幾何学的基準マーカーに対応するエコー信号の大きさ及び時間遅延が所定の最大エコー範囲内に収まるまで、スキャン、決定及び調整ステップを繰り返すステップと、
欠陥に関して異方性ロータブレードをスキャンするステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記異方性ロータブレードのセクターをスキャンするステップが、
複数のトランスデューサで、検査平面に沿って前記異方性ロータブレードに複数の超音波ビームを送信するステップであって、前記超音波ビームが、前記異方性ロータブレードを伝搬しながら、前記異方性ロータブレードに関連する異方性傾斜角で前記検査平面から逸脱する、ステップと、
前記複数のトランスデューサで、前記幾何学的基準マーカーに対応するエコー信号を受信するステップであって、前記エコー信号の大きさが前記異方性傾斜角の大きさに関係付けられる、ステップと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記幾何学的基準マーカーに対応するエコー信号の大きさ及び時間遅延が所定の最大エコー範囲内に収まるまで、スキャン、決定及び調整ステップを繰り返すことによって、前記異方性傾斜角を決定するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記異方性傾斜角度を決定した後、当該方法が、さらに、
前記異方性傾斜角に基づいて前記異方性ロータブレードを最終インスタンスとして調整するステップと、
欠陥について前記異方性ロータブレードをスキャンするステップと
を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記幾何学的基準マーカーが、前記異方性ロータブレードの翼形部内に画成される冷却通路の天井である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記セクターをスキャンするステップが、前記プローブの複数のトランスデューサで、前記異方性ロータブレードに複数の超音波ビームを様々な角度で送信するステップを含んでおり、前記角度が、各々の超音波ビームと複数のトランスデューサに垂直な波面法線方向との間で定義され、前記角度が約-5°~約5°の間で変化する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記異方性ロータブレードが、単結晶合金から形成されている、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記異方性ロータブレードの植込部が根元面を含んでおり、当該方法が、
前記フェーズドアレイ超音波システムのプローブを、軸方向中心線で前記異方性ロータブレードの根元面上に配置するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
欠陥について前記異方性ロータブレードを最初にスキャンした後、当該方法が、
前記プローブを前記異方性ロータブレードの軸方向中心線から離して、前記植込部に沿って並進させるステップと、
欠陥について前記異方性ロータブレードの2度目のスキャンを行うステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記セクターをスキャンするステップが、前記プローブの複数のトランスデューサで、前記異方性ロータブレード内に複数の超音波ビームを様々な深さで送信するステップであって、前記深さが予め設定された関心領域によって規定される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記セクターをスキャンするステップが、前記異方性ブレード内への音波の同時多深度及び多角度集束を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
フェーズドアレイ超音波システムを用いて異方性ロータブレードの欠陥を検出する方法であって、前記異方性ロータブレードが、軸方向中心線に沿って延在し、かつ植込部及び翼形部を備えており、当該方法が、
前記フェーズドアレイ超音波システムのプローブを、軸方向中心線で前記異方性ロータブレードの植込部に配置するステップと、
前記フェーズドアレイ超音波システムのプローブで、軸方向中心線に沿って前記異方性ロータブレードのセクターをスキャンするステップであって、幾何学的基準マーカーが、前記異方性ロータブレードのセクター内に少なくとも部分的に配置されている、ステップと、
前記幾何学的基準マーカーに対応するエコー信号の大きさ及び時間遅延を決定するステップと、
前記幾何学的基準マーカーに対応するエコー信号の大きさに基づいて、前記プローブの遅延則を調整するステップと、
前記幾何学的基準マーカーに対応するエコー信号の大きさ及び時間遅延が所定の最大エコー範囲内に収まるまで、スキャン、決定及び調整を繰り返すステップと、
欠陥に関して異方性ロータブレードをスキャンするステップと
を含む、方法。
【請求項13】
前記異方性ロータブレードのセクターをスキャンするステップが、
複数のトランスデューサで、検査平面に沿って前記異方性ロータブレードに複数の超音波ビームを送信するステップであって、前記超音波ビームが、前記異方性ロータブレードを伝搬しながら、前記異方性ロータブレードに関連する異方性傾斜角で前記検査平面から逸脱する、ステップと、
前記複数のトランスデューサで、前記幾何学的基準マーカーに対応するエコー信号を受信するステップであって、前記エコー信号の大きさが前記異方性傾斜角の大きさに関係付けられる、ステップと
を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記幾何学的基準マーカーに対応するエコー信号の大きさ及び時間遅延が所定の最大エコー範囲内に収まるまで、スキャン、決定及び調整を繰り返すことによって、前記異方性傾斜角を決定することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記異方性傾斜角度を決定した後、当該方法が、さらに、
前記異方性傾斜角に基づいて前記プローブの遅延則を最終インスタンスとして調整するステップと、
欠陥について前記異方性ロータブレードをスキャンするステップと
を含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、フェーズドアレイ超音波システムを用いて異方性ロータブレードの欠陥を検出する方法に関する。特に、本開示は、異方性ロータブレード内の幾何学的基準マーカーに基づいてフェーズドアレイ超音波システムを較正することに関する。
【背景技術】
【0002】
ターボ機械は、エネルギー伝達のために様々な産業及び用途で利用されている。例えば、ガスタービンエンジンは、一般に、圧縮機セクション、燃焼セクション、タービンセクション及び排気セクションを含む。圧縮機セクションは、ガスタービンエンジンに入る作動流体の圧力を徐々に増大させ、その圧縮された作動流体を燃焼セクションに供給する。圧縮された作動流体と燃料(天然ガスなど)は燃焼セクションで混合され、燃焼室で燃焼して高圧高温の燃焼ガスを生成する。燃焼ガスは燃焼セクションからタービンセクションに流れ、そこで膨張して仕事を発生する。例えば、タービンセクションにおける燃焼ガスの膨張は、発電機などに接続されたロータシャフトを回転させる。燃焼ガスは次いで排気セクションを経てガスタービンから出る。
【0003】
フェーズドアレイ超音波探傷試験(PAUT;phased array ultrasonic testing)は、対象物(ガスタービン部品など)の傷、欠陥、特性又は異常を明らかにするため対象物又は部材の画像を得るのに用いられる走査方法/技術の一種である。フェーズドリニアアレイ超音波スキャナは、単一のリニアアレイに複数の電気的及び音響的に独立した超音波トランスデューサを有している。遅延基準を用いて超音波トランスデューサに印加される電気パルスのタイミングを変化させることによって、フェーズドリニア超音波プローブは、検査対象物内の異常及び変動を検出してそれらの異常及び変動の向きを特定するため、異なる角度(例えば0度~180度)で検査対象物を通過する超音波を発生させることができる。
【0004】
動作中、フェーズドリニアアレイ超音波プローブで発生させた超音波は、プローブを接触させた検査対象物に送信される。超音波が検査対象物を通過すると、超音波が検査対象物内の異常その他の物理的特性と相互作用するため、エコーと呼ばれる様々な反射が起こる。逆に、反射された超音波が超音波トランスデューサの圧電面で受信されると、トランスデューサを振動させて、トランスデューサの電極間に電圧差を生じ、トランスデューサにケーブルで接続した信号処理電子機器によって電気信号として検出される。信号処理回路は、電気パルスの送信と電気信号の受信との間の時間差を追跡するとともに、受信した電気信号の大きさを測定して、深さ、サイズ、位置、配向などの、対象物の異常及び特性の様々な属性を決定する。
【0005】
稼働時の高圧タービンブレードは、冷却穴の内部及びその周辺で亀裂を生じ易い。冷却通路は狭くて入り組んでおり、入手容易なプローブの使用も、入り組んだ空間を横断して信頼性の高い検査が行えるようにプローブをカスタマイズするのも難しいので、冷却通路の検査はかなりの難題である。超音波法は、ブレードの外面からこうした内部領域を検査できるという利点をもつが、複雑な外部形状のため、接触超音波法には極めて難題となる。材料の異方性は、反射超音波信号にゴーストエコーを生じる。検出すべき亀裂は極めて小さいことから、一振動子型浸漬超音波法からの信号対雑音比は非常に悪く、使用できない。
【0006】
そこで、当技術分野では、フェーズドアレイ超音波システムを用いて異方性ロータブレードの欠陥を検出するための改良法が望まれており、高く評価されるであろう。
【発明の概要】
【0007】
本開示に係る方法の態様及び利点について、以下の詳細な説明に記載するが、以下の詳細な説明から自明となるものもあろうし、或いは本技術の実施を通して習得できるものもあろう。
【0008】
一実施形態では、フェーズドアレイ超音波システムを用いて異方性ロータブレードの欠陥を検出する方法を提供する。異方性ロータブレードは、軸方向中心線に沿って延在しており、植込部及び翼形部を含んでいる。本方法は、フェーズドアレイ超音波システムのプローブを、軸方向中心線で異方性ロータブレードの植込部に配置することを含む。本方法は、さらに、フェーズドアレイ超音波システムのプローブで、軸方向中心線に沿って異方性ロータブレードのセクターをスキャンすることを含む。幾何学的基準マーカーが、異方性ロータブレードのセクター内に少なくとも部分的に配置される。本方法は、さらに、幾何学的基準マーカーに対応するエコー信号の大きさ及び時間遅延を決定することを含む。本方法は、さらに、幾何学的基準マーカーに対応するエコー信号の大きさ及び/又は時間遅延に基づいて、異方性ロータブレード又はプローブの一方の位置を調整することを含む。本方法は、さらに、幾何学的基準マーカーに対応するエコー信号の大きさ及び時間遅延が所定の最大エコー範囲内に収まるまで、スキャン、決定及び調整を繰り返すことを含む。本方法は、さらに、欠陥に関して異方性ロータブレードをスキャンすることを含む。
【0009】
別の実施形態では、フェーズドアレイ超音波システムを用いて異方性ロータブレードの欠陥を検出する方法を提供する。異方性ロータブレードは、軸方向中心線に沿って延在しており、植込部及び翼形部を含んでいる。本方法は、フェーズドアレイ超音波システムのプローブを、軸方向中心線で異方性ロータブレードの植込部に配置することを含む。本方法は、さらに、フェーズドアレイ超音波システムのプローブで、軸方向中心線に沿って異方性ロータブレードのセクターをスキャンすることを含む。幾何学的基準マーカーが、異方性ロータブレードのセクター内に少なくとも部分的に配置される。本方法は、さらに、幾何学的基準マーカーに対応するエコー信号の大きさ及び時間遅延を決定することを含む。本方法は、さらに、幾何学的基準マーカーに対応するエコー信号の大きさ及び/又は時間遅延に基づいて、プローブの遅延則を調整することを含む。本方法は、さらに、幾何学的基準マーカーに対応するエコー信号の大きさ及び/又は時間遅延が所定の最大エコー範囲内に収まるまで、スキャン、決定及び調整ステップを繰り返すことを含む。本方法は、さらに、欠陥に関して異方性ロータブレードをスキャンすることを含む。
【0010】
本開示技術の上記その他の特徴、態様及び利点については、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲を参照することによって理解を深めることができよう。添付の図面は、本明細書の内容の一部をなすものであり、本開示技術の様々な実施形態を例示するとともに、発明の詳細な説明と併せて本技術の原理を説明するためのものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本明細書では、本方法について、添付の図面を参照して、本システム及び方法を製造及び使用するための最良の形態を含めて、当業者が実施することができるように十分に開示する。
【
図1】本開示の実施形態に係るターボ機械の概略説明図。
【
図2】本開示の例示的な態様に係るロータブレードの部分断面図。
【
図3】本開示の実施形態に係るフェーズドアレイ超音波システム及び異方性ロータブレードの概略図。
【
図4】本開示の実施形態に従ってフェーズドアレイ超音波システムを用いて異方性ロータブレードにおける欠陥を検出する方法のフローチャート。
【
図5】本開示の実施形態に従ってフェーズドアレイ超音波システムを用いて異方性ロータブレードの欠陥を検出する方法のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本方法の様々な実施形態について詳細に説明し、その1以上の実施例を図面に示す。各実施例は、本技術を限定するものではなく、例示のためのものである。実際、特許請求の範囲に記載された技術的範囲及び技術的思想を逸脱せずに、本技術に様々な修正及び変更をなし得ることは当業者には明らかであろう。例えば、ある実施形態の一部として例示又は記載された特徴を、別の実施形態と共に用いてさらに別の実施形態とすることができる。従って、本開示は、添付の特許請求の範囲及びその均等の範囲に属する修正及び変更を包含する。
【0013】
「例示的」という用語は、本明細書では、「例、事例又は説明として役立つ」という意味で用いられる。本明細書で「例示的」と記載された実施態様は、必ずしも他の実施態様よりも好ましい又は有利であると解すべきではない。さらに、別途特定されていない限り、本明細書に記載されたすべての実施形態は例示的なものであると解される。
【0014】
発明の詳細な説明では、図面に記載された特徴を参照するために数字及び文字による符号を用いる。図面及び発明の詳細な説明において、同様又は類似の符号は本発明の同様又は類似の部材を示す。本明細書において、「第1」、「第2」及び「第3」という用語は、ある部品を他の部品と区別するために互換的に用いられ、個々の部品の位置又は重要性を意味するものではない。
【0015】
「流体」という用語は、気体でも液体でもよい。「流体連通」という用語は、流体が所定の領域間の接続をなすことができることを意味する。
【0016】
本明細書で用いる[上流」(又は「前方」)及び「下流」(又は「後方」)という用語は、流体経路における流体の流れに関する相対的な方向を示す。例えば、「上流」は流体が流れてくる方向をいい、「下流」は流体が流れていく方向をいう。ただし、本明細書で用いる「上流」及び「下流」という用語は、電気の流れを示すこともある。「半径方向」という用語は、ある部品の軸方向中心線に対して実質的に垂直な相対的方向をいい、「軸方向」という用語は、ある部品の軸方向中心線に対して実質的に平行及び/又は同軸である相対的方向をいい、「周方向」という用語は、ある部品の軸方向中心線の周りの相対的方向をいう。
【0017】
「約」、「略」及び「実質的に」のような近似的用語は、記載された厳密な数値に限定されない。少なくとも幾つかの事例では、近似表現は、その値を測定する機器の精度或いは部品及び/又はシステムの構築又は製造のための方法又は機械の精度に対応する。例えば、近似表現は、個々の数値、数値範囲、及び/又は数値範囲を限定するための上下限のいずれかの1%、2%、4%、5%、10%、15%又は20%以内の誤差をいうことがある。角度又は方向に関して用いる場合、かかる用語は、記載された角度又は方向の±10度以内を包含する。例えば、「略鉛直」とは、鉛直から任意の方向(例えば時計回り又は反時計回り)に10度以内の方向を包含する。
【0018】
「結合」、「固定」又は「取付け」などの用語は、本明細書に別途記載されていない限り、直接的な結合、固定又は取付けだけでなく、1以上の中間構成要素又は特徴を介しての間接的な結合、固定又は取付けも意味する。本明細書で用いる「含む」、「備える」及び「有する」という用語は、非排他的に含んでいることを包含するものである。例えば、列挙された特徴を含むプロセス、方法、物品又は装置は、必ずしもそれらの特徴に限定されるものではなく、明示的に列挙されてもおらず、またかかるプロセス、方法、物品又は装置に固有でもない別の特徴を含んでいてもよい。さらに、別途明示されていない限り、「又は」という用語は、排他的な意味での又はではなく、包括的な意味での又はをいう。例えば、A又はBという条件は、Aが真であり(又は存在し)、かつBが偽である(又は存在しない)場合、Aが偽であり(又は存在せず)、かつBが真である(又は存在する)場合、A及びBの両方が真である(又は存在する)場合のいずれにおいても成立する。
【0019】
本明細書及び特許請求の範囲において、数値限定の範囲は互いに結合及び/又は交換可能であり、かかる範囲はその上下限で規定され、別途記載されているか前後関係から明らかでない限り、その範囲に含まれるあらゆる部分範囲を包含する。例えば、本明細書に開示された範囲はすべて上下限を含んでおり、上下限は互いに独立して組合せることができる。
【0020】
ここで図面を参照すると、
図1は、ターボ機械の一実施形態の概略図を示すが、この図に示す実施形態ではターボ機械はガスタービン10である。本明細書では、産業用又は陸用ガスタービンについて記載及び説明するが、本開示は、特許請求の範囲に別途記載されていない限り、陸用及び/又は産業用ガスタービンに限定されるものではない。例えば、本明細書に記載したロータブレードは、限定されるものではないが、蒸気タービン、航空機用ガスタービン又は船舶用ガスタービンを始めとする、あらゆる種類のターボ機械に使用し得る。
【0021】
図に示すように、ガスタービン10は、一般に、吸気セクション12、吸気セクション12の下流に配置された圧縮機セクション14、圧縮機セクション14の下流に配置された燃焼器セクション16内の複数の燃焼器(図示せず)、燃焼器セクション16の下流に配置されたタービンセクション18、及びタービンセクション18の下流に配置された排気セクション20を含む。さらに、ガスタービン10は、圧縮機セクション14とタービンセクション18との間を結合する1以上のシャフト22を含んでいてもよい。
【0022】
圧縮機セクション14は、一般に、複数のロータディスク24(その1つを図示する)及び各ロータディスク24から半径方向外側に延在しかつ各ロータディスクに接続された複数のロータブレード26を含む。各ロータディスク24は、圧縮機セクション14を貫通するシャフト22に結合しているか或いはシャフト22の一部をなす。
【0023】
タービンセクション18は、一般に、複数のロータディスク28(その1つを図示する)及び各ロータディスク28から半径方向外側に延在しかつ各ロータディスクに接続した複数のロータブレード30を含む。各ロータディスク28は、タービンセクション18を貫通するシャフト22に結合しているか或いはシャフト22の一部をなす。タービンセクション18は、シャフト22及びロータブレード30の一部を周方向に取り囲む外側ケーシング31をさらに含んでおり、タービンセクション18を通る高温ガス経路32を少なくとも部分的に画成する。
【0024】
運転中、空気のような作動流体が吸気セクション12から圧縮機セクション14に流入し、そこで空気が漸次圧縮され、燃焼器セクション16の燃焼器に圧縮空気が供給される。圧縮空気は燃料と混合され、各燃焼器内で燃焼して燃焼ガス34を生成する。燃焼ガス34は、燃焼器セクション16から高温ガス経路32を通ってタービンセクション18に流れ込み、そこでエネルギー(運動及び/又は熱)が燃焼ガス34からロータブレード30に伝達され、シャフト22を回転させる。機械的回転エネルギーは、次いで、圧縮機セクション14を駆動するため及び/又は発電のために使用し得る。タービンセクション18を出た燃焼ガス34は、次いで、排気セクション20を介してガスタービン10から排出し得る。
【0025】
図2に示すように、ターボ機械10は、軸方向A及び軸方向Aの周りに延びる周方向Cを画成する。また、ターボ機械10は、軸方向Aに直交する半径方向Rを画成する。
【0026】
図2は、例示的なロータブレード50の斜視図である。ロータブレード50は、
図1を参照して説明したロータブレード26又はロータブレード28であってもよい。
図2に示すように、ロータブレード50は、一般に、植込部又はダブテール38を有する植込又はシャンク部36と、実質的に平らなプラットフォーム42から外側に(例えば略半径方向Rに沿って)延在する翼形部40とを含む。プラットフォーム42は、一般に、タービンセクション18(
図1)の高温ガス経路32を流れる高温燃焼ガス34に対する半径方向内側境界として役立つ。プラットフォーム42は、軸方向Aに沿って前面84から後面82まで延在する。
図2に示すように、植込又はシャンク部36の植込部38は、プラットフォーム42から半径方向内側に延在し、ロータブレード50をロータディスク28(
図1)に相互接続又は固定するように構成されたダブテールのような根元構造を含む。植込部38はさらに根元面86を画成していてもよく、これは、ロータブレード50の半径方向に最も内側の表面であってもよい。根元面86は、略平面(つまり平坦)であってもよく、根元面86に1以上の冷却通路入口60が画成されることもある。
【0027】
翼形部40は、正圧側壁44と反対側の負圧側壁46とを有する。正圧側壁44及び負圧側壁46は、プラットフォーム42から実質的に半径方向外側に延在し、翼形部40の根元48(翼形部40とプラットフォーム42との交線に画成し得る)から翼形部40の先端51までの翼長(スパン)をもつ。正圧側壁44は翼形部40の前縁52及びその下流側の後縁54で負圧側壁46とつながっており、翼形部40は前縁52と後縁54の間に延在する。正圧側壁44は概して翼形部40の空力的凹状外面をなす。同様に、負圧側壁46は概して翼形部40の空力的凸状外面を画成する。先端51は、半径方向に根元48と反対側に配置される。そこで、先端51は、一般に、ロータブレード50の半径方向に最も外側部分を画成し、ターボ機械10の静止シュラウド又はシール(図示せず)に隣接して配置されるように構成し得る。先端51は、先端キャビティ66を含んでいてもよい。
【0028】
図2に示すように、ロータブレード50は、少なくとも部分的に中空であってもよく、例えば、ロータブレード50は、その内部に画成された冷却回路72を含んでいてもよい。冷却回路72は、複数の冷却通路56(
図2に破線で部分的に示す)を含んでいてもよく、翼形部40を通して正圧側壁44と負圧側壁46の間に冷却剤58を導いて、それらを対流冷却するために、冷却通路56はロータブレード50内に囲繞されていてもよい。冷却通路56は、複数のリブ74によって、かつそれらの間に少なくとも部分的に画成し得る。リブ74は、例えば
図2に示すように、冷却回路72の一部を通って略半径方向Rに沿って延在している。リブ74は、例えば、
図2に示すように、正圧側壁44と負圧側壁46の間で冷却回路72の全体を通って延在していてもよい。複数のリブ74は、こうして、冷却回路72を区分けし、冷却通路56を少なくとも部分的に形成又は画成し得る。例えば、各リブ74は、半径方向に根元転回部76又は先端転回部78のいずれかの近傍を終端とし得る。根元転回部76は床77によって部分的に画成でき、床77は根元転回部76の半径方向に最も内側の境界を画成し得る。同様に、先端転回部78は天井79によって部分的に画成することができ、天井79は先端転回部78の半径方向に最も外側の境界を画成し得る。
【0029】
冷却剤58は、圧縮機セクション14(
図1)からの圧縮空気の一部及び/又は蒸気、その他翼形部40の冷却に適したガスその他の流体を含むことができる。1以上の冷却通路入口60が、ロータブレード50に沿って配置される。幾つかの実施形態では、1以上の冷却通路入口60は、植込部38の内部、植込部38に沿って又は植込部38によって形成される。冷却通路入口60は、1以上の対応する冷却通路56と流体連通している。複数の冷却剤出口64が、先端キャビティ66と流体連通していてもよい。各冷却通路56は、冷却剤出口64の1以上と流体連通している。幾つかの実施形態では、先端キャビティ66は、正圧側先端レール68及び負圧側先端レール70によって少なくとも部分的に囲まれていてもよい。
【0030】
図2に示すように、冷却通路56は、シャンク部36及び翼形部40の各々の内部に延在している。例えば、冷却通路56は、シャンク部36と翼形部40の間、例えばシャンク部36から翼形部40まで、例えばシャンク部36の1以上の冷却通路入口60から翼形部40の先端51の1以上の冷却剤出口64まで延在し得る。
【0031】
多くの実施形態では、異方性材料はロータブレード50が耐えることができる温度/応力を高めることができるので、特にロータブレード50をタービンセクション18で使用する場合、ロータブレード50は異方性媒体で構成し得る(例えばロータブレードを「異方性ロータブレード」と呼ぶことができる。)。異方性は、等方性材料とは対照的に、方向によって特性が異なると想定できる材料の特性である。特に、ロータブレード50は、ニッケル基合金のような単結晶合金から形成し得る。
【0032】
特に
図3を参照すると、本開示の実施形態に従って異方性ロータブレード200の欠陥の検出に使用し得るフェーズドアレイ超音波システム100が例示されている。フェーズドアレイ超音波システム100の例示的な実施形態では、タービンセクション18用の異方性ロータブレード200は、
図2を参照して説明したロータブレード50と同一又は類似の構成を有し得る。本発明のフェーズドアレイ超音波システム100及び方法によって検出し得る欠陥は、亀裂、腐食、ボイド、ピンホール、エアポケットなどである。
【0033】
フェーズドアレイ超音波システム100は、送信器108で発生させたパルスによって励起すると超音波エネルギーのバーストを各々発生する複数の別個に駆動されるトランスデューサ素子又はトランスデューサ106からなるトランスデューサアレイ104を有するプローブ102を含んでいる。試験対象物から反射されてトランスデューサアレイ104に戻る超音波エネルギーは、各トランスデューサ素子106によって電気信号に変換され、一組のスイッチ112を通して別々に受信器110に送られる。送信器108、受信器110及びスイッチ112は、デジタルコントローラ114(操作員が入力したコマンドに応答し得るものであってもよい)の制御下で操作される。完全スキャンは、一連のエコーを取得することによって実行されるが、各トランスデューサ素子106を励起するため送信機108を一時的にゲートオンし、次いで各トランスデューサ素子106で生成した後続のエコー信号を受信するためにスイッチをゲートオンし、次いでこれらの別個のエコー信号を受信器で合成して、ディスプレイ116上の画像のピクセル又はラインを生成するために用いられる単一のエコー信号を生成する。
【0034】
送信器108は、生成した超音波エネルギーをビームで偏向又はステアリングするようにトランスデューサアレイ104を駆動する。従って、Bスキャンは、トランスデューサアレイ104を物理的に移動させることではなく、このビームを一組の角度を通して点から点へ移動させることによって実行できる。これを達成するため、送信器108は、一連のトランスデューサ素子106に印加される各パルス150に時間遅延(Tk)を付与する。時間遅延がゼロ(Tk=0)の場合、全トランスデューサ素子106が同時に励起され、得られる超音波ビームは、トランスデューサ面に垂直な中心軸170に沿った方向に向かい、トランスデューサアレイ106の中心から発信される。ビームは無限遠で集束される。時間遅延(Tk)が増すと、超音波ビームは中心軸21から量θだけ下方に偏向する。トランスデューサアレイの一端(k=1)から他端(k=N)まで各々k番目の信号に連続して加算される時間遅延増分Tkの関係は、次の関係式で与えられる。
【0035】
【数1】
式中、dは隣接するトランスデューサ素子104の中心と中心の間隔であり、cは試験対象物中での音速であり、R
0は送信ビームが集束する範囲であり、T
kは遅延オフセットであり、すべての計算値(T
k)は必ず正の値となる。
【0036】
式(1)の時間遅延Tkは、ビームを所望の角度θにステアリングし、一定の範囲R0に集束させる効果をもつ。セクタースキャンは、連続する励起で時間遅延Tkを徐々に変化させることによって実行される。こうして角度θが段階的に変化するので送信ビームの方向は連続的にステアリングされるが、焦点距離R0は一定のままである。ビームの方向が中心軸21の上にあるときは、パルス150のタイミングは逆転されるが、式(1)の式は依然として適用される。複数の深さ(例えば多深度フォーカシング)で連続的にスキャンしてもよく、得られるエコーを一緒につなぎ合わせて、ディスプレイシステム116で視認可能なフルセクタースキャン画像を形成することができる。
【0037】
超音波エネルギーの各バーストによって生成するエコー信号は、超音波ビームに沿って連続的な位置(R)にある反射性物体から出てくる。これらは、トランスデューサアレイ104の各トランスデューサ素子106によって別個に感知され、ある特定の時点におけるエコー信号の大きさのサンプルは、特定の範囲(R)で起こる反射の量を表す。ただし、反射点Pと各トランスデューサ素子106との間の伝搬経路の差のため、これらのエコー信号は同時には発生せず、それらの大きさも等しくならないであろう。受信器110の機能は、これら別々のエコー信号を増幅及び復調し、各々に適切な時間遅延及び位相シフトを付与し、それらを合計して、角度θに配向した超音波ビームに沿って範囲Rに位置する点Pから反射された全超音波エネルギーを正確に示す単一のエコー信号を提供することである。
【0038】
各トランスデューサ素子106からのエコーによって生成した電気信号を同時に合計するために、時間遅延及び位相シフトが受信器110の各別個のトランスデューサ素子チャネルに導入される。受信用のビーム時間遅延は、上述の送信遅延と同じ遅延(Tk)である。ただし、受信ビームを動的に集束させるため、エコーの受信中に各受信チャネルの時間遅延及び位相シフトを連続的に変化させ、エコー信号が発せられる範囲Rで受信ビームの動的集束をもたらす。
【0039】
デジタルコントローラ114の指令の下で、受信器110は、受信器110のステアリングが送信器108によってステアリングされたビームの方向を追跡するようにスキャン中に遅延を提供し、一連の範囲でエコー信号をサンプリングして、ビームに沿った点Pに動的に集束させるための適切な遅延及び位相シフトを提供する。こうして、超音波パルス波形の各放射又は発射は、一連のデータ点の取得をもたらすが、これらのデータ点は超音波ビームに沿った対応する一連の点Pからの反射音の量(又は大きさ)を表す。ディスプレイシステム116は、受信器110で生成された一連のデータ点を受信して、データを所望の画像を生じる形式へと変換する。
【0040】
波面法線方向124は、トランスデューサ106の面に対して略垂直に延在してもよく、
図3では、軸方向中心線170と一致又は同軸に延在する。音波の群速度と位相速度が互いに一致する等方性媒体とは異なり、異方性媒体中での超音波伝搬は、伝搬方向が対称軸に沿っていない限り、波面法線方向124とは一致しない。この現象は、エネルギー流束偏差又はビームスキューとして知られている。音響エネルギーは、等方性媒体で起こるように、必ずしもトランスデューサ106の面に対して垂直な方向(例えば波面法線方向124)に伝搬するわけではなく、波面法線に対して斜めの角度又は異方性傾斜角122で歪む。
【0041】
特に、異方性ロータブレード200において、異方性傾斜角122は公知であることもあるが、約0°~約12°の範囲内、或いは例えば約1°~約10°などの範囲内で変動し得る。例えば、異方性傾斜角122は、軸方向中心線170から約0°~約12°の範囲内又は軸方向中心線170から約1°~約10°範囲内にあることがある。
【0042】
以下でさらに詳しく説明する通り、フェーズドアレイ超音波システム100を動作させるための例示的な方法は、好適には、異方性ロータブレード200での異方性傾斜角122を同定及び考慮して、エラー又はゴーストエコー(例えば欠陥を示すようにみえるが、実際には内部部材形状であるエコー)なしで欠陥について異方性ロータブレード200をスキャンできるようにする。異方性傾斜角122が決定したら、本方法では、プローブ102又は異方性ロータブレード200を回転させることによって、或いは音響波をステアリングするためにシステム100の遅延則を調整することによって、その異方性傾斜角を考慮に入れることができる。
【0043】
続けて
図3を参照すると、コントローラ114は、コントローラ114に含めることのできる適切な構成要素を例示するためのブロック図として示してある。図に示すように、コントローラ114は、様々なコンピュータ実装機能(例えば本願で開示するような方法、ステップ、計算等の実行、及び関連データの格納)を実行するように構成された1以上のプロセッサ134及び関連メモリーデバイス136を含んでいてもよい。
【0044】
本明細書で用いる「プロセッサ」という用語は、当技術分野でコンピュータに含まれるものとして言及される集積回路だけでなく、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロコンピュータ、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)、特定用途向け集積回路その他のプログラマブル回路もいう。さらに、1以上のメモリーデバイス136は、概して1以上のメモリー素子、例えば限定されるものではないが、コンピュータ可読媒体(例えばランダムアクセスメモリー(RAM))、コンピュータ可読不揮発性媒体(例えばフラッシュメモリー)、フロッピーディスク、コンパクトディスク読取専用メモリー(CD-ROM)、光磁気ディスク(MOD)、デジタル多用途ディスク(DVD)及び/又は他の適切なメモリー素子などを含むことができる。かかるメモリーデバイス(136)136は、一般に、1以上のプロセッサ134によって実行されたときに、コントローラ114が様々な機能及び/又は動作を実行するように構成された適切なコンピュータ可読命令を記憶するように構成してもよい。
【0045】
さらに、多くの実施形態では、プローブ102は、デジタルコントローラ114と(適切な無線通信プロトコルを介して)無線通信を行ってもよい。このようにして、プローブ102は、エコー信号128の大きさ及び/又は時間遅延を送信してもよく、デジタルコントローラ114は、これらのエコー信号128を解析して、プローブ102の遅延則に対する1以上の調整策を生成し得る。遅延則の調整はワイヤレスで行うことができる。
【0046】
次に
図4及び
図5を参照すると、本開示の態様に従ってフェーズドアレイ超音波システムを用いて異方性ロータブレードの欠陥を検出するための方法400,500の2つの異なる実施形態の流れ図が示してある。一般に、本明細書では、方法400及び500については、
図1~
図3を参照して説明したフェーズドアレイ超音波システム100、ガスタービン10、異方性ロータブレード200及びロータブレード50を参照して説明する。ただし、当業者には明らかであろうが、本方法400及び500は、一般に、適切なフェーズドアレイ超音波システム100と共に利用することができ、及び/又は他の適切なシステム構成を有するシステムに関して利用することができる。さらに、
図4及び
図5には、例示及び説明のため、特定の順序で実行されるステップが記載されているが、本に記載された方法は、特許請求の範囲に別途記載されていない限り、特定の順序又は配置に限定されるものではない。本明細書の開示内容から当業者には自明であろうが、本開示の方法の様々なステップを、本開示の技術的範囲から逸脱せずに、種々、省略、再構成、組合せ及び/又は適合させることができる。
【0047】
例示的な実施例では、タービンセクション18用の異方性ロータブレード200は、
図2を参照して説明したロータブレード50と同一又は類似の構成を有し得る。かかる実施形態では、
図3に示すように、異方性ロータブレード200は、軸方向中心線170に沿って延在しており、植込部38及び翼形部40を含む。冷却通路56は、
図2を参照して説明した冷却通路56のように、少なくとも部分的に軸方向中心線170に沿って異方性ロータブレード200内に画成し得る。冷却通路56は、天井79によって少なくとも部分的に画成されていてもよく、天井79は、冷却通路56の半径方向に最も外側の境界を形成し得る(
図2参照)。
【0048】
図4を具体的に参照すると、方法400は、ステップ(402)で軸方向中心線170における異方性ロータブレード200の植込部38にフェーズドアレイ超音波システム100のプローブ102を配置することを含む。例えば、プローブ102は、異方性ロータブレード200の植込部38に接触して配置し得る。特に、植込部38は、根元面86を含んでいてもよい。根元面86は、略平らな(例えば平坦)面であってもよい。かかる実施形態では、方法400は、軸方向中心線170における異方性ロータブレード200の根元面86上に、フェーズドアレイ超音波システム100のプローブ102を含んでいてもよい。具体的には、
図3に示すように、方法400の最初の段階として、複数のトランスデューサ106の各トランスデューサを含むトランスデューサアレイ104を、異方性ロータブレード200の根元面86に接触するように少なくとも部分的に異方性ロータブレードの軸方向中心線170に沿って(例えば幾つかの実施形態では軸方向中心線を中心として)配置し得る。
【0049】
方法400は、ステップ(404)で、フェーズドアレイ超音波システム100のプローブ102を用いて、軸方向中心線170に沿って異方性ロータブレード200のセクター204をスキャンすることをさらに含んでいてもよい。セクター204のスキャン操作(すなわち、システム100でセクタースキャンを実行すること)は、複数のトランスデューサ106の連続的な励起の際に時間遅延Tkを漸進的に変化させることを含んでいてもよい。こうして角度θが段階的に変化して、送信ビーム126の方向が連続的にステアリングされる。ビームの方向が中心軸21の上にあるときは、パルス150のタイミングは逆転される。幾つかの実施形態では、セクタースキャンは、固定焦点深度Pで実施し得る。他の実施形態では、セクタースキャンは、連続的に異なる深さを標的とし、得られる画像をディスプレイシステム116でつなぎ合わせることによって、多焦点深度を含んでいてもよい。
【0050】
多くの実施形態では、ステップ(404)でのセクターのスキャンは、プローブ102の複数のトランスデューサ106で、異方性ロータブレード200に、様々な角度θ(及び様々な焦点深度)で複数の超音波ビーム126を送信することを含んでいてもよい。例えば、ステップ(404)でのセクターのスキャンは、プローブ102の複数のトランスデューサ106で、異方性ロータブレード200内に異なる深さの複数の超音波ビーム126を送信することを含んでいてもよく、深さは予め設定された関心領域によって規定される。特に、深さは、翼形部40の様々なスパン長(例えば翼形部40のスパンの約0%~約100%の間)に対応し得る。関心領域は、1以上の冷却チャネル又は通路など、異方性ロータブレード200の故障を起こし易い領域とすることができる。
【0051】
角度θは、各々の送信超音波ビーム126と、複数のトランスデューサ106に垂直な波面法線方向124との間で定義することができる。例示的な実施形態では、複数の角度は約-5°~約5°の間、例えば約-4°~約4°の間で変化する。このようにして、スキャンされるセクター204は、2つの最外角度値(例えば-5°及び5°)の間に定義される。セクタースキャンの焦点深度(
図3に「P」で示す)も変化させることができ、セクタースキャンは、焦点深度Pの範囲(ディスプレイシステム116によって単一の画像につなぎ合わすことができる)を含む。焦点深度Pの範囲は、異方性ロータブレード200の長さ(軸方向中心線170に平行な方向で測定)の約0%~約100%とし得る。他の実施形態では、焦点深度Pの範囲は、異方性ロータブレード200の長さの約25%~約75%とし得る。
【0052】
様々な実施形態では、ステップ(404)でのセクターのスキャンは、異方性ブレード内への音波の同時多深度及び多角度集束を含んでいてもよい。例えば、プローブ102によって(例えば複数のトランスデューサを介して)、複数の深さ(例えばビーム126がロータブレード200内で進行する距離、
図3に「P」で示す)及び複数の角度θのビーム126(又は音波)を同時に送信してもよい。
【0053】
多くの実施形態では、幾何学的基準マーカー202が、セクター204内に少なくとも部分的に配置される。幾何学的基準マーカー202は、異方性ロータブレード200の識別可能な(例えばデジタルコントローラ114によって)又は既知の幾何学的特徴であってもよい。例えば、幾何学的基準マーカー202は、異方性ロータブレード200の内部/外部輪郭、冷却孔その他の幾何学的特徴を含んでいてもよい。例示的な実施形態では、幾何学的基準マーカー202は、異方性ロータブレード200の翼形部40内に画成された冷却通路56の天井79である。
図3に示すように、冷却通路56は、少なくとも部分的に軸方向中心線170に沿って配置し得る。
【0054】
例示的な実施形態では、方法400は、ステップ(406)で、幾何学的基準マーカー202に対応するエコー信号128の大きさ及び時間遅延を(例えばデジタルコントローラを用いて)決定することを含む。例えば、エコー信号128は、幾何学的基準マーカー202から反射された送信ビーム126であってもよい。エコー信号128の大きさは、エコー信号128の強さに基づくものであってもよい。時間遅延は、エコー信号128がトランスデューサ素子106に到達するのに要する時間とし得る。エコー信号128の大きさ及び/又は時間遅延を、所定の最大エコーと比較してもよく、エコー信号の大きさ及び/又は時間遅延が所定の最大エコー範囲から外れている場合には、異方性傾斜角122を考慮して異方性ロータブレード200及び/又はプローブ102の位置を調整し得る。
【0055】
例えば、方法400は、ステップ(408)で、幾何学的基準マーカー202に対応するエコー信号128の大きさ(及び/又は時間遅延)に基づいて、異方性ロータブレード200又はプローブの一方の位置を調整することをさらに含んでいてもよい。特に、エコー信号128の大きさは、(例えばデジタルコントローラ114によって)所定の最大エコー範囲と比較してもよく、所定の最大エコー範囲からのエコー信号の大きさのずれの程度に基づいて、異方性ロータブレード200又はプローブ102のいずれかの位置が変更される。同様に、エコー信号128の時間遅延(例えばエコー信号128がトランスデューサ素子で受信されるのに要する時間)を所定の最大エコー範囲と比較してもよく、所定の最大範囲からのエコー信号の時間遅延のずれの程度に基づいて、異方性ロータブレード200及び/又はプローブ102の位置を変更してもよい。所定の最大エコー範囲は、大きさ及び時間遅延の双方について所定の範囲を含むことができる。非限定的な例として、エコー信号128の大きさ(及び/又は時間遅延)が所定の最大エコー範囲の5%外側にあるときは、プローブ102及び/又は異方性ロータブレード200を1%回転及び/又は並進し得る。或いは/加えて、エコー信号128の大きさ(及び/又は時間遅延)は、コントローラ114のメモリー136内に格納されたルックアップテーブルでの回転及び/又は並進調整に対応し得る。例えば、エコー信号128の大きさ(及び/又は時間遅延)に基づいて、コントローラ114は、ルックアップテーブルを参照してプローブ102及び/又はロータブレード200の回転及び/又は並進を提案してもよい。プローブ102及び/又はロータブレード200の位置の調整は、プローブ102及び/又はロータブレード200を(例えば軸方向A、半径方向R又は周方向Cのいずれかに沿って或いはその周りで)回転及び/又は並進させることを含む。
【0056】
図4の(404)、(406)及び(408)に示し、上記で説明してきたスキャン、決定及び調整ステップは繰り返してもよい。エコー信号の大きさ及びその時間遅延が所定の最大エコー範囲内に収まり、もって異方性傾斜角122が考慮されたことが示されるまで、エコー信号128の大きさ及び/又は時間遅延を反復的に増加させるために上記ステップを繰り返してもよい。例えば、所定の最大エコー範囲は、異方性傾斜を考慮に入れたとき或いは異方性傾斜が0°のときのエコーの大きさ及び/又は時間遅延の範囲とし得る。こうして、エコー信号の大きさ及び/又は時間遅延が所定の最大エコー範囲内に収まると、このことは、異方性傾斜角122が(例えばロータブレード200及び/又はプローブ102を物理的に回転/並進させることによって)考慮されたことを示す。例えば、方法400は、ステップ(410)で、幾何学的基準マーカー202に対応するエコー信号128の大きさ及び/又は時間遅延が所定の最大エコー範囲内に収まる(例えばエコーの大きさ及びその時間遅延が範囲を上回らなくなる或いは下回らなくなる)まで、スキャン、決定及び調整ステップ(例えばステップ404、406及び408)を繰り返すことを含んでいてもよい。
【0057】
最終的に、ロータブレードのスキャンが異方性傾斜角122を考慮するように、ロータブレード200及び/又はプローブ102が物理的に調整されたら、方法400は、ステップ(412)で、欠陥に関して異方性ロータブレードをスキャンすることを含む。本フェーズドアレイ超音波システム100及び方法によって検出し得る欠陥は、亀裂、腐食、ボイド、ピンホール、エアポケットなどである。
【0058】
多くの実施形態では、ステップ(404)でのセクター204のスキャンは、複数のトランスデューサで、検査平面(例えば
図3の頁面又は別の2次元平面)に沿って異方性ロータブレード200に複数の超音波ビーム126を送信することを含む。かかる実施形態では、プローブ102はトランスデューサ106のリニアアレイ(例えば単一列)を含んでいてもよく、セクター204は2次元検査平面内にある。ロータブレードの異方性媒体の結果、超音波ビーム126は、異方性ロータブレード200を通して伝搬しながら、検査平面から異方性異方性傾斜角122だけ逸れることがある。異方性傾斜角122は、異方性ロータブレード200に関連し得る。異方性傾斜角122は、公知であることもあるが、ブレード毎に、約0°~約12°の範囲内、或いは例えば約1°~約10°などの範囲内で変動し得る。そこで、フェーズドアレイ超音波システム100の精度及び有効性を高めるために、異方性傾斜角122を決定して考慮しなければならない。かかる実施形態では、本方法は、複数のトランスデューサ106で、幾何学的基準マーカー202に対応するエコー信号を受信することを含む。複数のトランスデューサ106で受信されるエコー信号及びその時間遅延の大きさは、異方性傾斜角の大きさに関係付けられる。例えば、エコー信号の大きさ及び時間遅延は、履歴データ(コントローラ114のメモリーに格納し得る)に基づいて、或いはルックアップテーブルに基づいて、或いは別の相関に基づいて関係付けることができる。
【0059】
多くの実施形態では、方法400は、幾何学的基準マーカー202に対応するエコー信号128の大きさ及び/又は時間遅延が所定の最大エコー範囲内に収まるまで、スキャン、決定及び調整ステップ(例えばステップ404、406及び408)を繰り返すことによって、異方性傾斜角122を決定することを含む。例えば、所定の最大エコー範囲は、異方性傾斜を考慮に入れたとき或いは異方性傾斜が0°のときのエコーの大きさ及び/又は時間遅延の範囲とし得る。こうして、エコー信号の大きさ及び/又は時間遅延が所定の最大エコー範囲内に収まると、このことは、異方性傾斜角122が(例えばロータブレード200及び/又はプローブ102を物理的に回転/並進させることによって)考慮されたことを示す。異方性傾斜角122が考慮されると、それは(例えばロータブレード200及び/又はプローブ102に対してなされた移動/調整に基づいて、或いは遅延プロファイルに対してなされた調整に基づいて)コントローラ114によって決定し得る。かかる実施形態では、異方性傾斜角を決定した後、本方法は、決定した異方性傾斜角122に基づいて、異方性ロータブレード200及び/又はプローブ102の位置を最終インスタンスで調整し、異方性ロータブレード200の欠陥をスキャンすることをさらに含んでいてもよい。
【0060】
多くの実施形態では、欠陥について部品を最初にスキャンした後、本方法は、プローブ102をロータブレードの軸方向中心線170から離して、植込部38に沿って並進させることを含む。次いで、本方法は、フェーズドアレイ超音波システム100を用いて、欠陥について異方性ロータブレードの2度目のスキャンを行うことを含む。例えば、異方性傾斜角122が同定及び考慮されたら、異方性ロータブレード200の複数の部分をスキャンして欠陥を検出するために、根元面86に沿ってプローブ102を並進させることができる。
【0061】
図5を具体的に参照すると、方法500は、ステップ(502)で軸方向中心線170における異方性ロータブレード200の植込部38にフェーズドアレイ超音波システム100のプローブ102を配置することを含む。例えば、プローブ102は、異方性ロータブレード200の植込部38に接触して配置し得る。特に、植込部38は、根元面86を含んでいてもよい。根元面86は、略平らな(例えば平坦)面であってもよい。かかる実施形態では、方法500は、軸方向中心線170における異方性ロータブレード200の根元面86上に、フェーズドアレイ超音波システム100のプローブ102を含んでいてもよい。具体的には、
図3に示すように、方法500の最初の段階として、複数のトランスデューサ106の各トランスデューサを含むトランスデューサアレイ104を、異方性ロータブレード200の根元面86に接触するように少なくとも部分的に異方性ロータブレードの軸方向中心線170に沿って(例えば幾つかの実施形態では軸方向中心線を中心として)配置し得る。
【0062】
方法500は、ステップ(504)で、フェーズドアレイ超音波システム100のプローブ102を用いて、軸方向中心線170に沿って異方性ロータブレード200のセクター204をスキャンすることをさらに含んでいてもよい。セクター204のスキャン操作(すなわち、システム100でセクタースキャンを実行すること)は、複数のトランスデューサ106の連続的な励起の際に時間遅延Tkを漸進的に変化させることを含んでいてもよい。こうして角度θが段階的に変化して、送信ビーム126の方向が連続的にステアリングされる。ビームの方向が中心軸21の上にあるときは、パルス150のタイミングは逆転される。幾つかの実施形態では、セクタースキャンは、固定焦点深度Pで実施し得る。他の実施形態では、セクタースキャンは、連続的に異なる深さを標的とし、得られる画像をディスプレイシステム116でつなぎ合わせることによって、多焦点深度を含んでいてもよい。
【0063】
多くの実施形態では、ステップ(504)でのセクターのスキャンは、プローブ102の複数のトランスデューサ素子106で、異方性ロータブレード200に異なる角度θ(及び異なる深さ)で複数の超音波ビーム126を送信することを含んでいてもよい。角度θは、各々の送信超音波ビーム126と、複数のトランスデューサ素子106に垂直な波面法線方向124との間で定義することができる。例示的な実施形態では、複数の角度は約-5°~約5°の間、例えば約-4°~約4°の間で変化する。このようにして、スキャンされるセクター204は、2つの最外角度値(例えば-5°及び5°)の間に定義される。セクタースキャンの焦点深度(
図3に「P」で示す)も変化させることができ、セクタースキャンは、焦点深度Pの範囲(ディスプレイシステム116によって単一の画像につなぎ合わすことができる)を含む。焦点深度Pの範囲は、異方性ロータブレード200の長さ(軸方向中心線170に平行な方向で測定)の約0%~約100%とし得る。他の実施形態では、焦点深度Pの範囲は、異方性ロータブレード200の長さの約25%~約75%とし得る。
【0064】
多くの実施形態では、幾何学的基準マーカー202が、セクター204内に少なくとも部分的に配置される。幾何学的基準マーカー202は、異方性ロータブレード200の識別可能な(例えばデジタルコントローラ114によって)又は既知の幾何学的特徴であってもよい。例えば、幾何学的基準マーカー202は、異方性ロータブレード200の内部/外部輪郭、冷却孔その他の幾何学的特徴を含んでいてもよい。例示的な実施形態では、幾何学的基準マーカー202は、異方性ロータブレード200の翼形部40内に画成された冷却通路56の天井79である。
図3に示すように、冷却通路56は、少なくとも部分的に軸方向中心線170に沿って配置し得る。
【0065】
例示的な実施形態では、方法500は、ステップ(506)で、幾何学的基準マーカー202に対応するエコー信号128の大きさ及び時間遅延を(例えばデジタルコントローラを用いて)決定することを含む。例えば、エコー信号128は、幾何学的基準マーカー202から反射された送信ビーム126であってもよい。エコー信号128の大きさは、エコー信号128の強さに基づくものであってもよい。時間遅延は、エコー信号128がトランスデューサ素子106に到達するのに要する時間とし得る。エコー信号128の大きさ及び/又はエコー信号128の時間遅延を、所定の最大エコー範囲と比較してもよく、エコー信号の大きさ及び/時間遅延が所定の最大エコー範囲から外れている場合には、ビーム126をステアリングし、かつ異方性傾斜角122を考慮するため、プローブ102の遅延則を調整し得る。同様に、エコー信号128の時間遅延(例えばエコー信号128がトランスデューサ素子で受信されるのに要する時間)を所定の最大エコー範囲と比較してもよく、所定の最大範囲からのエコー信号の時間遅延のずれの程度に基づいて、ビーム126をステアリングし、かつ異方性傾斜角122を考慮するため、プローブ102の遅延則を調整してもよい。
【0066】
例えば、方法500は、ステップ(508)で、幾何学的基準マーカー202に対応するエコー信号128の大きさ及び/又は時間遅延に基づいて、プローブ102の遅延則を調整することをさらに含んでいてもよい。パルス150の各々の間の遅延(Tk)は、「遅延則(ディレイロウ)」と呼ぶことができる。各パルス150間の遅延(Tk)は、所望の経路に沿ってビーム126をステアリング又は偏向するように独立して調整又は操作し得る。従って、遅延則を調整すると、ビーム126が進行する経路の調整がなされるので、異方性傾斜角122が同定されればそれを考慮できるようになる。
【0067】
特に、エコー信号128の大きさ及び/又は時間遅延は、(例えばデジタルコントローラ114によって)所定の最大エコー範囲と比較してもよく、所定の最大エコー範囲からのエコー信号128の大きさ及び遅延のずれの程度に基づいて、遅延則を調整してもよい。非限定的な例として、エコー信号128の大きさ(及び/又は時間遅延)が所定の最大エコー範囲の5%外側にあるときは、遅延則を1%調整(例えば増減)し得る。或いは/加えて、エコー信号128の大きさ(及び/又は時間遅延)は、コントローラ114のメモリー136内に記憶されたルックアップテーブルでの遅延則調整に対応し得る。例えば、エコー信号128の大きさ(及び/又は時間遅延)に基づいて、コントローラ114は、ルックアップテーブルを参照してプローブ102及び/又はロータブレード200に対する遅延則の調整を提案してもよい。
【0068】
図5の(504)、(506)及び(508)に示し、上記で説明してきたスキャン、決定及び調整ステップは繰り返してもよく、アルゴリズムで最適化し得る。エコー信号の大きさ(及び/又は時間遅延)が所定の最大エコー範囲内に収ま収まり、もって異方性傾斜角122が考慮されたことが示されるまで、エコー信号の大きさ(及び/又は時間遅延)を反復的に増加させるために上記ステップを繰り返してもよい。例えば、所定の最大エコー範囲は、異方性傾斜を考慮に入れたとき或いは異方性傾斜が0°のときのエコーの大きさの範囲とすることができ、幾何学的基準マーカー202から反射されるビーム126の量が最大となる。こうして、エコー信号の大きさ(及び/又は時間遅延)が所定の最大エコー範囲内に収まると、このことは、異方性傾斜角122が(例えば遅延則に加えられた調整によって)考慮されたことを示す。例えば、方法500は、幾何学的基準マーカー202に対応するエコー信号128の大きさ及び遅延が所定の最大エコー範囲内に収まる(例えば大きさ及び/又は時間遅延が範囲を超えないか、又は下回っない)まで、スキャン、決定及び調整ステップ(例えばステップ504、506及び508)を繰り返すステップ(510)を含んでいてもよい。
【0069】
最終的に、ロータブレードのスキャンが異方性傾斜角122を考慮するように、遅延則が調整されたら、方法500は、ステップ(512)で、欠陥に関して異方性ロータブレードをスキャンすることを含む。本フェーズドアレイ超音波システム100及び方法によって検出し得る欠陥は、亀裂、腐食、ボイド、ピンホール、エアポケットなどである。
【0070】
多くの実施形態では、ステップ(504)でのセクター204のスキャンは、複数のトランスデューサで、検査平面(例えば
図3の頁面又は別の2次元平面)に沿って異方性ロータブレード200に複数の超音波ビーム126を送信することを含む。かかる実施形態では、プローブ102はトランスデューサ106のリニアアレイ(例えば単一列)を含んでいてもよく、セクター204は2次元検査平面内にある。ロータブレードの異方性媒体の結果、超音波ビーム126は、異方性ロータブレード200を通して伝搬しながら、検査平面から異方性異方性傾斜角122だけ逸れることがある。異方性傾斜角122は、異方性ロータブレード200に関連し得る。異方性傾斜角122は、公知であることもあるが、ブレード毎に、約0°~約12°の範囲内、或いは例えば約1°~約10°などの範囲内で変動し得る。そこで、フェーズドアレイ超音波システム100の精度及び有効性を高めるために、異方性傾斜角122を決定して考慮しなければならない。かかる実施形態では、本方法は、複数のトランスデューサ106で、幾何学的基準マーカー202に対応するエコー信号128を受信することを含む。複数のトランスデューサ106で受信されるエコー信号128の大きさ及び遅延は、異方性傾斜角の大きさに関係付けられる。例えば、エコー信号の大きさ及び時間遅延は、履歴データ(コントローラ114のメモリーに格納し得る)に基づいて、或いはルックアップテーブルに基づいて、或いは別の相関に基づいて関係付けることができる。
【0071】
多くの実施形態では、方法500は、幾何学的基準マーカー202に対応するエコー信号128の大きさ及び遅延が所定の最大エコー範囲内に収まるまで、スキャン、決定及び調整ステップ(例えばステップ504、506及び508)を繰り返すことによって、異方性傾斜角122を決定することを含む。例えば、所定の最大エコー範囲は、異方性傾斜を考慮に入れたとき或いは異方性傾斜が0°のときのエコーの大きさ及び/又は時間遅延の範囲とし得る。こうして、エコー信号の大きさ及び/又は時間遅延が所定の最大エコー範囲内に収まると、このことは、異方性傾斜角122が(例えば遅延則の変更又は調整によって)考慮されたことを示す。異方性傾斜角122が考慮されると、それは(例えば遅延則になされた調整に基づいて)コントローラ114によって決定し得る。かかる実施形態では、異方性傾斜角を決定した後、本方法は、決定した異方性傾斜角122に基づいて最終インスタンスを遅延則を調整し、欠陥について異方性ロータブレード200をスキャンすることをさらに含んでいてもよい。
【0072】
多くの実施形態では、欠陥について部品を最初にスキャンした後、本方法は、プローブ102をロータブレードの軸方向中心線170から離して、植込部38に沿って並進させることを含んでいてもよい。次いで、本方法は、フェーズドアレイ超音波システム100を用いて、欠陥について異方性ロータブレードの2度目のスキャンを行うことを含んでいてもよい。例えば、異方性傾斜角122が同定及び考慮されたら、異方性ロータブレード200の複数の部分をスキャンして欠陥を検出するために、根元面86に沿ってプローブ102を並進させることができる。
【0073】
本明細書では、本発明を最良の形態を含めて開示するとともに、装置又はシステムの製造・使用及び方法の実施を始め、本発明を当業者が実施できるようにするため、例を用いて説明してきた。本発明の特許性を有する範囲は、特許請求の範囲によって規定され、当業者に自明な他の例も包含する。かかる他の例は、特許請求の範囲と文言上の差のない構成要素を有しているか、或いは特許請求の範囲の文言と非本質的な差しかない均等な構成要素を有していれば、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に属する。
【0074】
本発明のさらなる態様を、以下の実施態様項に示す。
[実施態様項1]
フェーズドアレイ超音波システムを用いて異方性ロータブレードの欠陥を検出する方法であって、異方性ロータブレードが、軸方向中心線に沿って延在し、かつ植込部及び翼形部を備えており、当該方法が、フェーズドアレイ超音波システムのプローブを、軸方向中心線で異方性ロータブレードの植込部に配置するステップと、フェーズドアレイ超音波システムのプローブで、軸方向中心線に沿って異方性ロータブレードのセクターをスキャンするステップであって、幾何学的基準マーカーが、異方性ロータブレードのセクター内に少なくとも部分的に配置されている、ステップと、幾何学的基準マーカーに対応するエコー信号の大きさ及び時間遅延を決定するステップと、幾何学的基準マーカーに対応するエコー信号の大きさに基づいて、異方性ロータブレード又はプローブの一方の位置を調整するステップと、幾何学的基準マーカーに対応するエコー信号の大きさ及び時間遅延が所定の最大エコー範囲内に収まるまで、スキャン、決定及び調整を繰り返すステップと、欠陥について異方性ロータブレードをスキャンするステップとを含む、方法。
[実施態様項2]
異方性ロータブレードのセクターをスキャンするステップが、複数のトランスデューサで、検査平面に沿って異方性ロータブレードに複数の超音波ビームを送信するステップであって、超音波ビームが、異方性ロータブレードを伝搬しながら、異方性ロータブレードに関連する異方性傾斜角で検査平面から逸脱する、ステップと、複数のトランスデューサで、幾何学的基準マーカーに対応するエコー信号を受信するステップであって、エコー信号の大きさが異方性傾斜角の大きさに関係付けられる、ステップとを含む、実施態様項1に記載の方法。
[実施態様項3]
幾何学的基準マーカーに対応するエコー信号の大きさ及び時間遅延が所定の最大エコー範囲内に収まるまで、スキャン、決定及び調整ステップを繰り返すことによって、異方性傾斜角を決定するステップをさらに含む、実施態様項1又は実施態様項2に記載の方法。
[実施態様項5]
異方性傾斜角を決定した後、当該方法が、異方性傾斜角に基づいて異方性ロータブレードを最終インスタンスとして調整するステップと、欠陥について異方性ロータブレードをスキャンするステップとを含む、実施態様項1乃至実施態様項4のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様項5]
幾何学的基準マーカーが、異方性ロータブレードの翼形部内に画成される冷却通路の天井である、実施態様項1乃至実施態様項4のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様項6]
セクターをスキャンするステップが、プローブの複数のトランスデューサで、異方性ロータブレードに複数の超音波ビームを様々な角度で送信するステップを含んでおり、前記角度が、各々の超音波ビームと複数のトランスデューサに垂直な波面法線方向との間で定義され、前記角度が約-5°~約5°の間で変化する、実施態様項1乃至実施態様項5のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様項7]
異方性ロータブレードが単結晶合金から形成されている、実施態様項1乃至実施態様項6のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様項8]
異方性ロータブレードの植込部が根元面を含んでおり、当該方法が、フェーズドアレイ超音波システムのプローブを、軸方向中心線で異方性ロータブレードの根元面上に配置するステップを含む、実施態様項1乃至実施態様項7のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様項9]
欠陥について異方性ロータブレードを最初にスキャンした後、当該方法が、プローブを異方性ロータブレードの軸方向中心線から離して、植込部に沿って並進させるステップと、欠陥について異方性ロータブレードの2度目のスキャンを行うステップとをさらに含む、実施態様項1乃至実施態様項8のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様項10]
セクターをスキャンするステップが、プローブの複数のトランスデューサで、異方性ロータブレード内に複数の超音波ビームを様々な深さで送信するステップであって、前記深さが予め設定された関心領域によって規定される、実施態様項1乃至実施態様項9のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様項11]
セクターをスキャンするステップが、異方性ブレード内への音波の同時多深度及び多角度集束を含む、実施態様項1乃至実施態様項10のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様項12]
フェーズドアレイ超音波システムを用いて異方性ロータブレードの欠陥を検出する方法であって、前記異方性ロータブレードが、軸方向中心線に沿って延在し、かつ植込部及び翼形部を備えており、当該方法が、フェーズドアレイ超音波システムのプローブを、軸方向中心線で異方性ロータブレードの植込部に配置するステップと、フェーズドアレイ超音波システムのプローブで、軸方向中心線に沿って異方性ロータブレードのセクターをスキャンするステップであって、幾何学的基準マーカーが、異方性ロータブレードのセクター内に少なくとも部分的に配置されている、ステップと、幾何学的基準マーカーに対応するエコー信号の大きさ及び時間遅延を決定するステップと、幾何学的基準マーカーに対応するエコー信号の大きさに基づいて、プローブの遅延則を調整するステップと、幾何学的基準マーカーに対応するエコー信号の大きさ及び時間遅延が所定の最大エコー範囲内に収まるまで、スキャン、決定及び調整を繰り返すステップと、欠陥について異方性ロータブレードをスキャンするステップとを含む、方法。
[実施態様項13]
異方性ロータブレードのセクターをスキャンするステップが、複数のトランスデューサで、検査平面に沿って異方性ロータブレードに複数の超音波ビームを送信するステップであって、超音波ビームが、異方性ロータブレードを伝搬しながら、異方性ロータブレードに関連する異方性傾斜角で検査平面から逸脱する、ステップと、複数のトランスデューサで、幾何学的基準マーカーに対応するエコー信号を受信するステップであって、エコー信号の大きさが異方性傾斜角の大きさに関係付けられる、ステップとを含む、実施態様項12に記載の方法。
[実施態様項14]
幾何学的基準マーカーに対応するエコー信号の大きさ及び時間遅延が所定の最大エコー範囲内に収まるまで、スキャン、決定及び調整ステップを繰り返すことによって、異方性傾斜角を決定することをさらに含む、実施態様項12又は実施態様項13に記載の方法。
[実施態様項15]
異方性傾斜角を決定した後、当該方法が、異方性傾斜角に基づいてプローブの遅延則を最終インスタンスとして調整するステップと、欠陥について異方性ロータブレードをスキャンするステップとを含む、実施態様項12乃至実施態様項14のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様項16]
幾何学的基準マーカーが、異方性ロータブレードの翼形部内に画成される冷却通路の天井である、実施態様項12乃至実施態様項15のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様項17]
セクターをスキャンするステップが、プローブの複数のトランスデューサで、異方性ロータブレードに複数の超音波ビームを様々な角度で送信するステップを含んでおり、前記角度が、各々の超音波ビームと複数のトランスデューサに垂直な軸との間で定義され、前記角度が約-5°~約5°の間で変化する、実施態様項12乃至実施態様項16のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様項18]
異方性ロータブレードが単結晶合金から形成されている、実施態様項12乃至実施態様項17のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様項19]
異方性ロータブレードの植込部が根元面を含んでおり、当該方法が、フェーズドアレイ超音波システムのプローブを、軸方向中心線で異方性ロータブレードの根元面上に配置することを含む、実施態様項12乃至実施態様項18のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様項20]
欠陥について異方性ロータブレードを最初にスキャンした後、当該方法が、プローブを異方性ロータブレードの軸方向中心線から離して、植込部に沿って並進させるステップと、欠陥について異方性ロータブレードの2度目のスキャンを行うステップとをさらに含む、実施態様項12乃至実施態様項19のいずれか1項に記載の方法。
【符号の説明】
【0075】
38 植込部
40 翼形部
56 冷却通路
79 冷却通路の天井
86 ロータブレードの根元面
100 フェーズドアレイ超音波システム
102 プローブ
104 トランスデューサアレイ
106 トランスデューサ
108 送信器
110 受信器
112 スイッチ
114 コントローラ
116 ディスプレイ
122 異方性傾斜角
124 波面法線方向
126 超音波ビーム
128 エコー信号
170 軸方向中心線
200 異方性ロータブレード
202 幾何学的基準マーカー
204 セクター
【外国語明細書】