(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112785
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】高品質の半導体単結晶を製造するためのシステム、および高品質の半導体単結晶を製造する方法
(51)【国際特許分類】
C30B 23/06 20060101AFI20240814BHJP
C30B 29/36 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
C30B23/06
C30B29/36 A
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024016507
(22)【出願日】2024-02-06
(31)【優先権主張番号】23155497.3
(32)【優先日】2023-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】519167232
【氏名又は名称】サイクリスタル ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136744
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 佳正
(72)【発明者】
【氏名】ベルナルド エッカー
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ ミューラー
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ シュー
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ストックマイヤー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル フォーゲル
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077BE08
4G077DA02
4G077DA18
4G077EG01
4G077EG12
4G077EG18
4G077EG25
4G077EH08
4G077EH10
4G077HA12
4G077SA04
4G077SA08
4G077SA11
4G077SA12
(57)【要約】
【課題】バルク半導体単結晶を成長させるための、より具体的には、物理的気相輸送に基づいて炭化ケイ素などのバルク半導体の単結晶を成長させるためのシステムおよび方法を提供すること。
【解決手段】昇華成長法により半導体材料の少なくとも1つの単結晶を成長させるための昇華システムは、長手軸(120)を有し、少なくとも1つのシード結晶(110)のための固定手段と、原材料(108)を収容するための少なくとも1つの原材料区画(104)とを備えた、坩堝(102)と、坩堝の円周の周りで、坩堝の長手軸に沿った1つまたは複数の定められた高さに、不規則な温度場を生成するように形成された加熱システムと、加熱システムに対する、長手軸を中心とした固定手段の回転運動を生じさせるように動作可能な回転駆動装置と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇華成長法により半導体材料の少なくとも1つの単結晶を成長させるための昇華システムであって、前記昇華システム(100)が、
長手軸(120)を有し、少なくとも1つのシード結晶(110)のための固定手段と、原材料(108)を収容するための少なくとも1つの原材料区画(104)とを備えた、坩堝(102)と、
前記坩堝の円周の周りで、前記坩堝の前記長手軸に沿った1つまたは複数の定められた高さに、不規則な温度場を生成するように形成された加熱システムと、
前記加熱システムに対する、前記長手軸を中心とした前記固定手段の回転運動を生じさせるように動作可能な回転駆動装置と、を備える昇華システム。
【請求項2】
前記加熱システムが、電磁場を生成するように動作可能な誘導コイル(116)および/または抵抗加熱コイル(116)を備え、前記誘導コイル(116)および/または前記抵抗加熱コイル(116)が前記坩堝(102)を少なくとも部分的に取り囲んでいる、請求項1に記載の昇華システム。
【請求項3】
前記加熱システムが、前記電磁場を操作するための電磁場制御要素を備える、請求項2に記載の昇華システム。
【請求項4】
前記電磁場制御要素が、金属製の支柱部材および/または極片を備える、請求項3に記載の昇華システム。
【請求項5】
前記コイル(116)が、その巻き線の少なくとも1つに変形した断面を有する、および/または、前記コイル(116)が、隣り合う巻き線から異なる距離を有するように配置された少なくとも1つの巻き線を有する、請求項2から4の一項に記載の昇華システム。
【請求項6】
前記コイル(116)が、前記坩堝(102)に近接する軸方向位置に配置された、少なくとも1つの電気接点(124)を備える、請求項2から5の一項に記載の昇華システム。
【請求項7】
前記シード結晶(110)が前記坩堝(102)に対して回転可能となるように、前記回転駆動装置が前記固定手段に結合されている、および/または、前記坩堝(102)が前記加熱システムに対して回転可能となるように、前記回転駆動装置が前記坩堝(102)に結合されている、請求項1から6の一項に記載の昇華システム。
【請求項8】
前記昇華システム(100)が熱絶縁要素を備え、前記回転駆動装置が、前記熱絶縁要素と前記坩堝(102)とに結合されており、それにより前記熱絶縁要素および前記坩堝(102)が前記加熱システムに対して回転可能である、請求項1から7の一項に記載の昇華システム。
【請求項9】
前記回転駆動装置が、1rpmから60rpmの範囲の、好ましくは10rpmの、回転速度を生じさせるように動作可能である、請求項1から8の一項に記載の昇華システム。
【請求項10】
昇華成長法により半導体材料の少なくとも1つの単結晶を成長させる方法であって、
長手軸を有する坩堝(102)を用意し、少なくとも1つのシード結晶(110)を前記坩堝の固定手段に固定し、少なくとも1つの原材料区画(104)に原材料(108)を充填することと、
加熱システムを用いて、前記坩堝(102)の円周の周りに前記坩堝(102)の前記長手軸に沿って、不規則な温度場を生成することと、
前記成長する単結晶が時間変動する温度場に曝されるように、前記加熱システムに対する、前記長手軸を中心とした前記固定手段の回転運動を生じさせることと、を含む方法。
【請求項11】
前記坩堝(102)と前記加熱システムとの間に熱絶縁体ユニットが設けられ、前記固定手段を前記熱絶縁体ユニットとの関係で回転させる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記坩堝を、前記加熱システムとの関係で、および/または前記坩堝と前記加熱システムとの間に設けられた熱絶縁体ユニットとの関係で回転させる、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記坩堝と前記加熱システムとの間に熱絶縁体ユニットが設けられ、前記坩堝および前記熱絶縁体ユニットを前記加熱システムとの関係で回転させる、請求項10から12の一項に記載の方法。
【請求項14】
前記回転運動が、1rpmから60rpmの範囲の、好ましくは10rpmの、回転速度で行われる、請求項10から13の一項に記載の方法。
【請求項15】
前記生成される温度場が、互いと少なくとも2Kから15K以下異なる、好ましくは互いと5K異なる、領域を有する、請求項10から14の一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルク半導体単結晶を成長させるための、より具体的には、物理的気相輸送に基づいて炭化ケイ素などのバルク半導体の単結晶を成長させるためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化ケイ素(SiC)は、パワーエレクトロニクス、無線周波、および発光半導体部品などの幅広い用途の電子部品のための半導体基板材料として広く使用される。
【0003】
物理的気相輸送(PVT:physical vapor transport)は、一般に、バルクSiC単結晶を成長させるために、特に商業目的に使用される。SiC基板は、バルクSiC結晶から(例えば、ワイヤソーを使用して)スライスを切り出し、そのスライス表面を一連の研磨工程で仕上げ加工することによって製造される。完成したSiC基板は、エピタキシャル工程などで半導体部品の製造に用いられ、そこで、適切な半導体材料(例えば、SiC、GaN)の薄い単結晶層がSiC基板上に堆積される。堆積される単分子層およびそれから製造される部品の特性は、基礎となる基板の品質および均質性に決定的に左右される。この理由から、SiCの優れた物理的、化学的、電気的および光学的性質は、それを、パワーデバイス用途に好ましい半導体基板材料にしている。
【0004】
PVTは、基本的に、好適な材料の昇華とそれに続くシード結晶への再凝固を伴う結晶成長方法であり、シード結晶で単結晶の形成が起こる。原材料およびシード結晶が成長構造の内部に入れられ、原材料を加熱によって昇華させる。昇華した蒸気は次いで、原材料とシード結晶との間に設定された勾配を有する温度場に起因して制御された形で拡散し、シード上に堆積して単結晶として成長する。
【0005】
従来のPVTに基づく成長システムは、一般に、原材料を昇華させるために誘導加熱システムまたは抵抗加熱システムのいずれかを利用している。両方の場合とも、PVTに基づく成長システムの核となるのはいわゆる反応器である。基本的に、坩堝と、シード結晶のための固定手段とを備え、従来は絶縁のためのグラファイト材料および炭素材料から作られる成長構造は、反応器の内部に置かれ、反応器の外側に配置された誘導コイル、または反応器の外側もしくは内側に配置された抵抗ヒータのいずれかによって加熱される。成長構造内の温度は、成長構造のオーバーチュア(overture)の近くに設置された、1つもしくは複数の高温計または1つもしくは複数の熱電対によって測定される。真空シールされた反応器は、1つまたは複数の真空ポンプによって真空引きされ、1つまたは複数のガス供給を介して不活性ガスまたはドープガスの供給を受けて、制御されたガス(ガス混合物大気)を作り出す。すべてのプロセスパラメータ(圧力、温度、ガス流量等)は、コンピュータによって操作されるシステムコントローラによって調節、制御、および記憶することができ、コントローラは、すべての関連する構成要素(例えば、インバータ、高温計、真空制御弁、マスフロー制御(MFC)、および圧力計)と通信する。
【0006】
誘導加熱されるPVTシステムの場合、反応器は、通常、1つまたは複数のガラス管を含み、このガラス管は、場合により水で冷却され、両端に反応器の内部を大気に対して封止するためのフランジが設けられている。そのような誘導加熱されるPVTシステムの例が、特許、米国特許第8,865,324号明細書に記載されている。
図8は、そのような従来の誘導加熱されるPVTシステム800を示す。
【0007】
成長機構800は成長坩堝802を備え、これはSiC供給領域804および結晶成長領域806を含んでいる。粉末状のSiC原材料808は、成長工程の開始前に、前加工された出発材料として成長坩堝802のSiC供給領域804に注入され、例えばSiC供給領域804に配置される。シード結晶810が、結晶成長領域806内の、成長坩堝802のSiC供給領域804に対向する内壁、例えば坩堝の蓋812に、提供される。成長させるバルクSiC単結晶は、結晶成長領域806内に形成されるSiC成長気相からの堆積によってシード結晶810の上に成長する。成長するバルクSiC単結晶とシード結晶810とは、およそ同じ直径を有してよい。
【0008】
坩堝の蓋812を含む成長坩堝802は、導電性および伝熱性のグラファイトの坩堝材料から製造されてよい。その周囲に熱絶縁(図には図示せず)が配置され、これは、例えば気泡状のグラファイト絶縁材料を含んでよく、その空孔率は特に、グラファイト坩堝材料の空孔率よりも高い。
【0009】
熱絶縁された成長坩堝802は、管状容器814の内部に置かれ、容器は、石英ガラス管として構成されてよく、オートクレーブまたは反応器を形成する。加熱コイル816の形態の誘導加熱装置が、容器814の周囲に配置されて、成長坩堝802を加熱する。成長坩堝802は、加熱コイル816により、2000℃超の成長温度まで、特に約2200℃まで、加熱される。加熱コイル816は、成長坩堝802の導電性の坩堝壁(いわゆるサセプタ)に、電流を誘導結合する。この電流は、実質的に、円形かつ中空で円筒形の坩堝壁の中を周方向に循環電流として流れ、その過程で成長坩堝802を加熱する。サセプタは、グラファイト、TaC、WC、Ta、W、または他の耐熱金属から作られ得る。サセプタの主要な目的は、坩堝802の内側の熱源を提供することである。サセプタが誘導によって加熱されると、サセプタの表面は高い温度に達し、その温度が次いで、伝導および/または放射を通じて坩堝802の内側に移される。
【0010】
上述したように、誘導コイル816は、ガラス管814の外側に取り付けられ、通常は、電磁放射を遮断するための電磁遮蔽を形成するファラデーケージ(図面では見えていない)によって包囲される。誘導コイル816には等距離の巻き線が巻かれ、各巻き線は、隣の巻き線から距離d_1の距離にある。
【0011】
さらに、従来の抵抗加熱されるPVTシステムでは、加熱抵抗素子は反応器の内側に取り付けられる。反応器が金属製である場合、それは水または空気によって冷却することができる。抵抗加熱されるPVTシステムの例は、公開特許出願である米国特許出願公開第2016/0138185号明細書および米国特許出願公開第2017/0321345号明細書に記載されている。
【0012】
現在、これらのおよび上述のものと同様の構成要素を備える他の従来のPVT成長システムは、昇華したガス種がシードおよび成長する単結晶の方へ移動するための駆動力を設定するために、径方向に可能な限り均質な温度場で坩堝の内部を加熱し、定められた温度勾配を軸方向に提供するという発想に基づいている。
【0013】
高品質の結晶の成長のためには、径方向における成長坩堝への均質な熱の結合が極めて重要であると考えられる。可能な限り均質に熱を結合することにより、結晶も可能な限り均質かつ対称的に成長するはずである。中でも、これは、貫通螺旋転位(TSD:threading screw dislocation)、およびステップ転位とも呼ばれる貫通刃状転位(TED:threading edge dislocation)の形成を防止すべきであり、それらの形成には、不均質で非対称的な熱分布、およびそれに伴う不均質で非対称的な成長が好都合に働く。
【0014】
したがって、通常は、均質で、理想的な形で径方向に対称的である熱結合の成長システムを設計するためにあらゆる努力がなされ、現在の技術によると、誘導磁界に影響し得る構造要素は、そのような影響を回避するために、プラスチックまたは硬質紙または同様の複合材料および構造材料などの材料で作られる。
【0015】
しかし、本開示の発明者らは、最も均質で、理想的な形で径方向に対称的に熱を坩堝に結合する成長システムでも、最高品質の結晶、すなわち、可能な限り螺旋転位およびステップ転位がない結晶、を成長させることは可能でないことを発見した。
【0016】
公開された欧州特許出願公開第3699328号明細書に、特に均質な絶縁を使用することによってSiC単結晶の品質を改良する方法が記載されている。
【0017】
しかし、均質な隔離の使用はすでに、均質で、したがって低欠陥の成長に有利に働くにも関わらず、最適化された隔離の使用は、常に転位のない結晶を製造するには十分でない。
【0018】
さらに、公開された欧州特許出願公開第4060098号明細書は、螺旋転位を低減するための方法を開示しており、その方法では、シード結晶に存在する螺旋転位が、使用されるシード結晶の機械的な張力付与によって可動にされ、それにより、必要な場合には転位が出会ったときに互いを消滅させることができる。しかし、この方法は、結晶成長中に新たに形成される転位、特に螺旋転位およびステップ転位、を相互に消滅させるために可動化することはできない。その結果、可能な限り螺旋転位およびステップ転位のない結晶を成長させることが可能でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】米国特許第8,865,324号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2016/0138185号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2017/0321345号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第3699328号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第4060098号明細書
【特許文献6】欧州特許第2664695号明細書
【発明の概要】
【0020】
本発明は、従来技術の欠点および不都合点を鑑みてなされたものであり、その目的は、物理的気相輸送(PVT)により半導体材料の単結晶を成長させるためのシステム、および、改良された単結晶品質で、費用効果高く半導体材料の単結晶を製造する方法を提供することである。
【0021】
この目的は、独立請求項の主題によって解決される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0022】
本発明は、結晶成長中に、可能な限り均一で回転対称な、温度場を実現することを試みる代わりに、成長する結晶が時間可変の温度場を経験するようにすることも可能であるという発想に基づく。本開示の発明者らは、そのような時間的変動が、形成されている可能性のある螺旋転位および/またはステップ転位を動かし、それにより、転位が互いと遭遇し、互いを消滅させ得ることを発見した。詳細には、理想的に均質な場は、望まれる結晶品質を得るには明らかに十分でないため、ここに提示される手法は、転位が互いを打ち消し合うように、成長中に、周期的に変化する温度場によって転位の移動を誘起するものである。
【0023】
詳細には、昇華成長法により半導体材料の少なくとも1つの単結晶を成長させるための昇華システムが提供され、この昇華システムは、長手軸を有し、少なくとも1つのシード結晶のための固定手段と、原材料を収容するための少なくとも1つの原材料区画とを備えた、坩堝と、坩堝の円周の周りで、坩堝の長手軸に沿った1つまたは複数の定められた高さに、不規則な温度場を生成するように形成された加熱システムと、加熱システムに対する、長手軸を中心とした固定手段の回転運動を生じさせるように動作可能な回転駆動装置と、を備える。
【0024】
径方向の温度場および軸方向の温度場が区別されなければならないことに留意されたい。
【0025】
特に成長する結晶の領域内の、径方向の場は、回転装置によって結晶が一定して通過する不均質性を有さなければならない。これは、システムの種々の不規則性のために異なる角度範囲およびいくつかの高さで発生することもできる。
【0026】
軸方向の温度勾配は、主として成長のための駆動力であり、すなわち、シードが(粉末状)の原材料よりも冷たいので、昇華したSiおよびC種の輸送が発生することができる。しかし、周囲部の軸方向勾配は、径方向の勾配と同じように成長システムの不規則性によって乱される。
【0027】
したがって、この2つの勾配は、径方向および軸方向に結合される。
【0028】
有利には、昇華システムは、磁場を生成するように動作可能な誘導コイルおよび/または抵抗加熱コイルを備える加熱システムを有し、いずれの場合もコイルは坩堝を少なくとも部分的に取り囲んでいる。誘導であれまたは抵抗であれ、そのようなコイル型の加熱システムは、成長する単結晶がその中を移動する非対称の温度場を与えるように容易に変形させることができる。
【0029】
加熱システムが誘導コイルに基づく場合、加熱システムは、磁場を操作するための電磁場制御要素を備えてよい。そのような電磁場制御要素は、例えば、金属製の支柱部材および/または極片を備えてよい。それにより、コイル自体に干渉する必要なく、特に容易なやり方で不規則性を作り出すことができる。
【0030】
他方で、加熱システムは、その巻き線の少なくとも1つに変形した断面を有するコイル、および/または、隣り合う巻き線から異なる距離を有するように配置された少なくとも1つの巻き線を有するコイルを備えてもよい。言い換えると、コイルの一部が、断面が変形されるか、または残りの等距離の巻きに対して軸方向にずらされるかのいずれかである。これにより、不規則な温度場を作り出す、特に明確に定義された方式が可能になる。
【0031】
温度場に不規則性を導入する特に簡単な方法は、コイルが、昇華システムの周方向端部に位置するのではなく、坩堝に近接する軸方向位置に配置された少なくとも1つの電気接点を備える場合に実現され得る。
【0032】
シード結晶および成長する結晶が非対称な温度場を周期的に通過するようにさせるのに必要な回転を与えるために、様々な可能性が存在し、それらは、昇華システムのそれぞれの構造的条件に従って使用されてよい。回転駆動装置は、シード結晶および成長する単結晶が坩堝に対して回転可能となるように、固定手段に結合されてよく、および/または、回転駆動装置は、坩堝がシード結晶および成長する単結晶と共に、加熱システムに対して回転可能となるように、坩堝に結合されてよい。
【0033】
昇華システムが熱絶縁要素を備えている場合、回転駆動装置は、熱絶縁要素と坩堝とに結合されてもよく、それにより、熱絶縁要素および坩堝が加熱システムに対して回転可能となる。シード結晶が、径方向に非対称の温度場に対して移動する限り、可動の構成要素と固定された構成要素の任意の他の組合せも無論使用可能である。
【0034】
有利には、回転駆動装置は、1rpmから60rpmの範囲の、好ましくは10rpmの、回転速度を生じさせるように動作可能である。これらの速度は最良の結果を生むことが示され得る。
【0035】
本開示はさらに、昇華成長法により半導体材料の少なくとも1つの単結晶を成長させる方法を提供し、この方法は、
長手軸を有する坩堝を用意し、少なくとも1つのシード結晶を坩堝の固定手段に固定し、少なくとも1つの原材料区画に原材料を充填することと、
加熱システムを用いて、坩堝の円周の周りに坩堝の長手軸に沿って、不規則な温度場を生成することと、
成長する単結晶が時間変動する温度場に曝されるように、加熱システムに対する、長手軸を中心とした固定手段の回転運動を生じさせることと、を含む。
【0036】
上述したように、用語「非対称の」または「不規則的な」温度場は、円周の周りの異なる軸方向温度勾配が、異なる径方向温度勾配と相関することを意味する。
【0037】
有利な例によると、坩堝と加熱システムとの間に熱絶縁体ユニットが設けられ、固定手段を熱絶縁体ユニットとの関係で回転させる。
【0038】
坩堝は、加熱システムとの関係で、および/または、坩堝と加熱システムとの間に設けられた熱絶縁体ユニットとの関係で回転させてもよい。
【0039】
有利な例によると、坩堝と加熱システムとの間に熱絶縁体ユニットが設けられ、坩堝および熱絶縁体ユニットを加熱システムとの関係で回転させる。
【0040】
上述したように、回転運動は、1rpmから60rpmの範囲の、好ましくは10rpmの、回転速度で行われてよい。
【0041】
有利には、生成される温度場は、互いと少なくとも2Kから15K以下異なる、好ましくは互いと5K異なる、領域を有する。
【0042】
特に、5Kの温度差と10rpmの速度との組合せは、結果として、螺旋転位およびステップ転位を可動化するための理想的な条件をもたらす。
【0043】
回転装置と組み合わせた成長システムへの意図的な非対称性の導入を通じて、転位、すなわちTSDおよびTEDが可動化され、適切な条件下では、互いと出会ったときに互いを打ち消し合うことができる。これは、全体的な転位予算を低減し、成長した単結晶の品質を向上させる。
【0044】
添付図面は、本発明のいくつかの実施形態を図示するために本明細書に組み込まれ、本明細書の一部をなす。これらの図面は、説明と併せて、本発明の原理を説明する役割を果たす。図面は、本発明がどのように作製され、使用され得るかの好ましい例および代替例を図示する目的に過ぎず、本発明を図示および説明される実施形態だけに制限するものとは解釈すべきではない。さらに、実施形態のいくつかの態様は、個別にまたは異なる組合せで、本発明による解決法を形成し得る。よって、以下の説明される実施形態は、単独で、またはそれらの任意の組合せで考察され得る。添付図面に図示される、以下の本発明の様々な実施形態のより詳細な説明から、さらなる特徴および利点が明らかになるであろう。添付図面では、同様の参照符号は同様の要素を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】第1の例による昇華システムの模式的断面側面図である。
【
図2】さらなる例による昇華システムの模式的断面側面図である。
【
図3】さらなる例による昇華システムの模式的断面側面図である。
【
図4】さらなる例による昇華システムの模式的断面側面図である。
【
図5】さらなる例による昇華システムの模式的上面図である。
【
図6】さらなる例による昇華システムの模式的上面図である。
【
図7】さらなる例による昇華システムの模式的断面側面図である。
【
図8】知られている昇華システムの模式的断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明について、次いで図を参照しながら、最初に
図1を参照して詳細に説明する。
【0047】
図1は、本開示の第1の例による昇華システム100を示す。昇華システムという語は、昇華成長法を用いて半導体材料の少なくとも1つの単結晶を成長させるための任意のシステムを包含するように意図されることに留意されたい。好ましくは、この語は、
図8を参照して説明されたような、炭化ケイ素(SiC)ボリューム単結晶を成長させるための物理的気相輸送(PVT)システムを指す。
【0048】
昇華システム100は、成長坩堝102を備え、これは、原材料区画、特にSiC供給領域104および結晶成長領域106を含んでいる。粉末状のSiC原材料108が、成長工程の開始前に、前加工された出発材料として成長坩堝102のSiC供給領域104内に注入され、例えばSiC供給領域104に配置される。原材料108は、原材料108の密度を高めるために、高密度化されるか、または少なくとも部分的に固体材料から構成されてもよい。
【0049】
シード結晶110が、結晶成長領域106内の、成長坩堝102のSiC供給領域104に対向する内壁、例えば坩堝の蓋112に、提供される。成長させるバルクSiC単結晶は、結晶成長領域106内に形成されるSiC成長気相からの堆積によってシード結晶110の上に成長する。成長するバルクSiC単結晶とシード結晶110とは、およそ同じ直径を有してよい。結晶チャネルの直径がシード結晶110の直径よりも大きい場合、バルクSiC単結晶は、シード結晶110よりも大きい直径を有してもよい。しかし、成長したバルクSiC単結晶の使用可能な低欠陥直径は、通常、シード結晶の直径と同じ大きさである。
【0050】
坩堝の蓋112を含む成長坩堝102は、導電性および伝熱性のグラファイト坩堝材料から製造されてよい。その周囲に熱絶縁(図には図示せず)が配置され、これは、例えば気泡状のグラファイト絶縁材料を含んでよく、その空孔率は特に、グラファイト坩堝材料の空孔率よりも高い。
【0051】
誘導加熱の場合、熱絶縁された成長坩堝102は、管状の容器(
図1には図示せず)の内部に置かれ、容器は、石英ガラス管として構成されてよく、オートクレーブまたは反応器を形成する。加熱コイル116の形態の誘導加熱装置が、容器の周囲に配置されて、成長坩堝102を加熱する。加熱コイル116は、成長坩堝102の導電性の坩堝壁(サセプタ)内に電流を誘導結合することにより、所要の温度場を生成する。この電流は、実質的に、円形かつ中空で円筒形の坩堝壁の中を周方向に循環電流として流れ、その過程で成長坩堝102を加熱する。サセプタは、グラファイト、TaC、WC、Ta、W、またはその他の耐熱金属から作ることができ、また、坩堝102の一体部分であっても、または坩堝壁に近い別個の部分であってもよい。サセプタの主要な目的は、坩堝102の内側の熱源を提供することである。サセプタが誘導によって加熱されると、サセプタの表面は高い温度に達し、その温度が次いで、伝導および/または放射を通じて坩堝102の内側に移される。
【0052】
上述したように、コイル116は、誘導加熱の場合はガラス管の外側に取り付けられ、通常は、電磁放射を遮断するためのファラデーケージ(
図1では見えていない)によって包囲される。抵抗加熱の場合、コイル116は、反応器の中、および熱絶縁の中にも取り付けられ、それにより、坩堝102と密接する。本開示の原理は、両方の加熱技術に適用可能である。よって、コイル116は、以下ではより広く加熱手段と呼ばれ、誘導加熱と抵抗加熱の両方(またはそれらの組合せ)を包含する。さらに、本開示では、コイルの巻き線は、丸い、具体的には円形または楕円形の断面を有するものとして図示されることに留意されたい。しかし、コイル巻き線は、方形または矩形などの他の好適な断面を有してもよい。
【0053】
図1に示すように、コイル116は、少なくとも1つの変形領域115を有し、この領域では、コイル116の断面が、残りの巻き線の円形の断面から逸脱する。
図1では、この逸脱は、変形領域115内の楕円形の断面につながる圧縮として描かれている。無論、他の断面の不規則性がコイル116に適用されてもよい。変形領域115では、変形した巻き線と隣り合う巻き線との間の距離が、変形されていない残りの巻き線間の通常の距離d_1と比べて、距離d_2に拡大される。
【0054】
動作時、円周の例えば10°から90°、好ましくは10°から45°、をカバーし得る、この変形領域115に起因する構造的非対称性が、温度場に不規則性を生じさせる。この不規則性は、径方向(坩堝の円周の周り)と、軸方向(中心軸120に沿って)の両方に延びる。
【0055】
本開示によると、昇華システムはさらに回転駆動装置(図には図示せず)を備え、これは、加熱手段116が、空間的に変化する温度場を生成している間に、中心軸120の周りで矢印118によって表されるシード結晶110の回転運動を引き起こす。回転の方向は、言うまでもなく任意である。
【0056】
空間的に不均質な温度場内での成長する単結晶と併せたシード結晶の回転運動は、シード結晶が成長する単結晶と共に、時間変動する、言い換えると揺らぐ、温度場を経験するという効果を実現する。成長する結晶に作用する温度場のこの動的な変動は、成長する単結晶内部の螺旋転位およびステップ転位を動かして、転位が互いと遭遇して互いを消滅させる機会を得るようにする。
【0057】
言い換えると、成長する結晶は、構造的に非対称的な成長システムの、温度場との関連での成長する結晶の回転運動との組合せに起因する周期的な温度循環を受ける。
【0058】
螺旋転位およびステップ転位を可動化するために、シード結晶110の回転軸から同じ径方向距離にある、成長する結晶の特定の高さにある2つの点で測定される温度は、少なくとも2K、最大で15K、異ならなければならないことが示され得る。好ましくは、温度は5K異なるべきである。
【0059】
温度の不規則性の軸方向位置は、現在の成長/気相境界に対応してもよいし、またはシード結晶110と現在の成長/気相境界との間のいずれかの場所にあってもよい。これは、周期的な温度循環が、成長する結晶のまさに表面に、またはより深い領域に作用して、発生したばかりのまたは以前に発生した螺旋転位および/または刃状転位を可動化することを意味する。
【0060】
径方向距離は、成長した結晶から機械加工される基板の最終直径に対応し得るが、この対応に限定されない。また、直径は、結果的に得られるSiC基板の対応する半径よりも大きいまたは小さいことが可能である。
【0061】
成長する結晶はまた、様々な局所最大温度および最小温度に曝されることも可能であり、これは、構造的に非対称的な成長システムが、生じる温度場にその長手軸に沿って複数の非対称性および不規則性を有することができるからであり、各々は、円周の10°から90°、好ましくは10°から45°、の径方向の広がりを有する。
【0062】
例えば、150mmの基板直径(すなわち、75mmの半径)の場合、温度の不規則性の大きさは、10°から90°の径方向の広がりに対応してよく、よって、1.3cmから最大11.8cm、好ましくは10°から45°、よって最大5.9cmであり得る。これらの値は、円弧Lについての以下の式でr=7.5cmの半径を使用して計算されるものであり、
L=[α・π・r]/180
式中、αは、度単位の角度値である。
【0063】
したがって、200mmの直径の場合、それぞれの値は、半径r=10.0cmを使用して適合されればよい。
【0064】
さらに、螺旋転位およびステップ転位の最適な可動化は、シード結晶を、成長する単結晶と共に加熱手段との関係で、1rpm(毎分回転数)から60rpmの範囲、好ましくは10rpmの回転速度で回転させるときに達成することができる。
【0065】
本発明による回転は、不均質な温度場が、成長する単結晶に対して移動する限り、回転駆動装置を昇華システム100の様々な構成要素に取り付けることによって機械的に提供され得る。例えば、シード結晶110の固定部を加熱コイル116に対して回転させることができ、静止した絶縁体がある。さらに、加熱コイルおよび絶縁体が静止していて、坩堝102を回転させることができる。さらに、加熱コイルが静止している状態で、坩堝および絶縁体を加熱コイル116に対して回転させることができる。複数の要素を回転させるための任意の好適な組合せが適用されてもよい。
【0066】
図2は、不均一な温度場を作り出すためにどのようにして加熱手段116の回転対称性を乱し得るかの別の例を示す。昇華システム100の残りの特徴は、
図1に示される昇華システム100の特徴に対応することに留意されたい。
【0067】
図2によると、加熱手段は加熱コイル116を備え、これは、そのすべての巻きにわたって実質的に均一の断面を有するが、軸方向に(すなわち、中心軸120に沿って)変位された円周の一部にある巻きを少なくとも1つ有する。よって、残りの巻きはすべて互いから均一の距離d_1を有するのに対し、コイル116の変位領域122は、近い方の隣接する巻きに対しては低減した距離d_3(d_1よりも小さい)、遠い方の隣接する巻きに対しては増大した距離d_2(d_1よりも大きい)を有する。この意図的な非対称性により、不均一な温度場が生成され、これが、
図1を参照して上記で説明された回転運動と共に、結晶成長領域106内で成長する結晶によって動的な温度場が経験されることにつながる。
【0068】
コイル116の円周に沿って、通常の距離d_1からそれぞれ最大に変位した(最大)値d_2およびd_3への推移は、漸進的な推移であってよいことに留意されたい。しかし、無論、それぞれの急な曲げを適用することにより、段状の変位が提供されてもよい。ここでも、コイルの不規則性は、コイル116の全360°の円周の10°から90°、好ましくは10°から45°に沿って提供されてよい。
【0069】
そして、回転は、
図1に関して上記で述べられたように行われる。
【0070】
図3は、不均一な温度場を作り出すためにどのように加熱手段116の回転対称を乱し得るかの別の例を示す。昇華システム100の残りの特徴は、
図1に示される昇華システム100の特徴に対応することに留意されたい。
【0071】
図3に示される例によれば、コイル116のすべての巻き線が、増大した傾斜を有するように中心軸120に沿ってずらされる。よって、各巻き線の2つの互いに対向する領域同士は、例えば距離d_1だけ軸方向にオフセットされている。この結果は回転非対称の温度場となり、それを、
図1の例に関して述べられた構成のいずれかに従う回転により、成長する単結晶が周期的に通過する。
【0072】
さらに、意図的な構造的非対称性は、加熱コイル116の電気接点124を、坩堝102を取り囲むエリアに配置することによって昇華システム100に導入することもできる。この例が
図4に示される。電流を供給する電気接点124の少なくとも1つは、加熱コイル116の周方向端部に位置するのではなく、それらが坩堝102の近く、特に結晶成長領域106の近くに構造的非対称性を構成する領域へと、軸方向に移動される。よって、動作中、加熱コイル116は不均一な温度場を生成し、それを通して、成長する単結晶を回転させる。この回転は、成長する単結晶 パルス状の温度場につながり、ステップ転位および螺旋転位を可動化する。移動するステップ転位および螺旋転位は、互いと遭遇して互いを消滅させ、それにより成長した単結晶ブールの全体的な品質を大幅に向上させる可能性がある。
【0073】
図5は、本開示のさらなる例による昇華システム100の上面図を示す。この図では、加熱コイル116は、外部環境を電磁放射から遮蔽する遮蔽126の内部に配置されている。コイル116は、シード結晶110が内部にある反応器114を取り囲む。
【0074】
この有利な例によると、1つまたは複数の第1の磁極片128(極片とも呼ばれる)が、コイルの巻き線に沿って、1つまたは複数の異なる位置(および軸方向高さ)に配置される。これらの磁極片128は、コイル116によって生成される電磁場の誘導素子として機能する。よって、結果として生じる温度場に意図的な非対称性が導入される。前の例を参照して述べたように、昇華システム100はさらに回転駆動装置(図には図示せず)を備え、これは、加熱手段116が、空間的に変化する温度場を生成している間に、中心軸120の周りで矢印118によって表されるシード結晶110の回転運動を引き起こす。回転の方向は、言うまでもなく任意である。
【0075】
空間的に不均質な温度場内での成長する単結晶と併せたシード結晶110の回転運動118は、シード結晶110が成長する単結晶と共に、時間変動する、言い換えると揺らぐ、温度場を経験するという効果を実現する。この動的な変動は、成長する単結晶内部の螺旋転位およびステップ転位を動かして、転位が互いと遭遇して互いを消滅させる機会を得るようにする。
【0076】
言い換えると、成長する結晶は、構造的に非対称的な成長システムの、温度場との関連での成長する結晶の回転運動との組合せに起因する周期的な温度循環を受ける。
【0077】
本開示による回転は、不均質な温度場が、成長する単結晶に対して移動する限り、回転駆動装置を様々な構成要素に取り付けることによって機械的に提供され得る。例えば、シード結晶110の固定部を、加熱コイル116に対して回転させることができ、静止した絶縁体がある。さらに、加熱コイルおよび絶縁体が静止していて、坩堝102を回転させることができる。さらに、加熱コイルが静止している状態で、坩堝および絶縁体を加熱コイル116に対して回転させることができる。複数の要素を回転させるための任意の好適な組合せが適用されてもよい。
【0078】
追加または代替として、第2の磁極片130が、電磁遮蔽126に設けられて、遮蔽126とコイル116との間の間隙内に延びてよい。ここでも、この磁極片130は、坩堝102の近く、特に結晶成長領域106の近くに、構造的な非対称性を構成する。よって、動作中、加熱コイル116は不均一な温度場を生成し、それを通して、成長する単結晶を回転させる。この回転は、成長する単結晶 パルス状の温度場につながり、ステップ転位および螺旋転位を可動化する。移動するステップ転位および螺旋転位は、互いと遭遇して互いを消滅させ、それにより成長した単結晶ブールの全体的な品質を大幅に向上させる可能性がある。
【0079】
図6は、さらなる有利な例による昇華システム100を上面図として示す。この図に示すように、温度場の非対称性は、非対称の遮蔽126および遮蔽126の金属製ホルダ132によって生じさせてもよい。ホルダ132は有利には、コイル116と遮蔽126との間の間隙内に延びてよい。
【0080】
よって、動作中、加熱コイル116は不均一な温度場を生成し、それを通して、矢印118で示されるように、成長する単結晶を回転させる。よって、成長する単結晶中の螺旋転位およびステップ転位が可動化され、そのため、それらが互いと遭遇して互いを消滅させ得る。
【0081】
次いで
図7に移ると、本開示の原理はさらに、2つの単結晶ブールを同時に成長させるように動作可能な昇華システム200に適用されてよい。このために、坩堝202は、第1のシード結晶210Aおよび第2のシード結晶210Bを備えている。
図7は、
図4に示す構成と同様の例を示す。しかし、例えば欧州特許第2664695号明細書に記載されるように、非対称の温度場を生成する任意の他の可能性が、2つ以上の単結晶ブールを同時に成長させるための昇華システム200に適用されてもよいことが明らかである。
【0082】
詳細には、
図7は、2つのSiCバルク結晶を同時に成長させるための物理的気相輸送(PVT)成長システム200の模式的断面図を示す。システム200は坩堝202を備え、坩堝は、SiC原材料であるSiC粉末208を収容した中央の原材料区画234を含んでいる。
【0083】
2つのシード結晶210Aおよび210Bは、成長領域206Aおよび206Bに配置される。成長領域206Aおよび206Bの各々は、ガス透過性の多孔バリア236A、236Bによって粉末状の、圧縮された、または固体のSiC原材料208から隔てられている。よって、気体状のSiおよびC含有成分だけが成長領域206Aおよび206Bに入ることが確実にされる。加熱コイル216が、必要な温度場を与える。温度場の非対称性は、結晶成長領域206A、206Bの近傍に電気接点224を設けることによって実現される。
【0084】
シード結晶210A、210Bは両方とも、上記で
図1~
図6を参照して述べたように、成長する単結晶の中のステップ転位および/または螺旋転位を可動化するために、コイル216によって生成される非対称な温度場の中で回転させる。
【0085】
要約すると、本開示は、結晶成長中に、可能な限り均一で回転対称な温度場を実現することを試みる代わりに、成長する結晶が時間可変の温度場を経験するようにすることも可能であるという発想に基づく。本開示の発明者らは、そのような時間的変動が、任意の形成されている螺旋転位および/またはステップ転位を動かし、それにより、転位が互いと遭遇し、互いを消滅させ得ることを発見した。詳細には、理想的に均質な場は、望まれる結晶品質を得るには明らかに十分でないため、ここに提示される手法は、転位が互いを打ち消し合うように、成長中に、周期的に変化する温度場によって転位の移動を誘起するものである。
【0086】
この目的のために、いくつかの条件が満たされなければならない。螺旋転位およびステップ転位がほぼない結晶を成長させるという技術的問題の解決は、一方では、成長坩堝への不均質で径方向に非対称の熱結合を意図的に生じさせる成長システムの設計にある。
【0087】
そのような不均質で非対称的な熱結合は、例えば結晶成長システムの以下の特徴によって実現されてよい:
・不均等な位置合わせによる、コイル巻きの非等距離の間隔
・巻きの不均一な構成によるコイル巻きの非等距離の間隔
・サセプタおよび成長坩堝のエリア内のコイル/抵抗ヒータへの入口および出口
・(サセプタおよび成長坩堝のエリア内の)コイルの巻き線端
・1つまたは複数の誘導磁界ガイド、例えば少なくとも1つの金属製支柱、磁極片等の挿入;伝導性の構成要素は、誘導コイルに直接取り付けることも、または誘導コイルと電磁遮蔽との間に取り付けることも可能である
・電磁場の非対称な遮蔽の使用
【0088】
他方で、螺旋転位および/またはステップ転位がほぼない結晶を成長させるという技術的問題の解決は、不均質に熱結合する成長システム内に回転装置を設置することにある。
【0089】
回転は、以下の構成において転位の動態を引き起こすことができる:
・静止している絶縁体/コイル/抵抗加熱と併せたシードの回転
・静止している絶縁体/コイル/抵抗加熱と併せた坩堝の回転
・静止しているコイル/抵抗加熱と併せた坩堝および絶縁体の回転
・複数の要素を回転させるための組合せ
【0090】
螺旋転位およびステップ転位を可動化する動的な方法が実施されるのは、本発明による回転装置と非対称的な成長システムの組合せを通じてである。この可動化は、転位が互いと出会い、打ち消し合うことを可能にする。
【0091】
成長する結晶は、回転により、低温のエリアおよび高温のエリアを反復的に(正弦波状に)通過し、これは、この結晶成長システムの特殊な設計と、その結果生じる非対称的な熱結合とからもたらされる。
【0092】
転位を可動化するために、結晶から作製される基板の直径上の2つの点で測定される温度は、少なくとも2K、最大で15K、好ましくは5K、異ならなければならない。回転周波数は、転位の最適な可動化のためには、毎分1から60回転(rpm)、好ましくは10rpm、であるべきである。5Kの温度差と10rpmとのこの組合せは、結果として、螺旋転位およびステップ転位を可動化するための理想的な条件をもたらす。
【0093】
回転装置と組み合わせた成長システムへの意図的な非対称性の導入を通じて、転位、すなわちTSDおよびTEDが可動化され、適切な条件下では、互いと出会ったときに互いを打ち消し合うことができる。これは、全体的な転位予算を低減し、成長した単結晶の品質を向上させる。
【符号の説明】
【0094】
100、200 昇華システム、PVTシステム
102、202 坩堝
104 SiC供給領域、原材料区画
106、206A、206B 結晶成長領域
108、208 原材料
110、210A、210B シード結晶
112 坩堝の蓋
114 容器、反応器
115 変形領域
116、216 誘導または抵抗加熱コイル、加熱手段
118、218 回転運動
120、220 中心軸
122 変位領域
124、224 電気接点
126 遮蔽
128 第1の磁極片
130 第2の磁極片
132 ホルダ
234 原材料区画
236A、236B バリア
800 PVTシステム
802 坩堝
804 SiC供給領域
806 結晶成長領域
808 原材料
810 シード結晶
812 坩堝の蓋
814 容器、反応器
816 誘導加熱コイル
【外国語明細書】