(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112815
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】ステビオール配糖体の組換え生産
(51)【国際特許分類】
C12P 15/00 20060101AFI20240814BHJP
C12N 9/10 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
C12P15/00 ZNA
C12N9/10
C12P15/00
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024074215
(22)【出願日】2024-05-01
(62)【分割の表示】P 2022064344の分割
【原出願日】2012-08-08
(31)【優先権主張番号】61/521,084
(32)【優先日】2011-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/521,203
(32)【優先日】2011-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/521,051
(32)【優先日】2011-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/523,487
(32)【優先日】2011-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/603,639
(32)【優先日】2012-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/567,929
(32)【優先日】2011-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】514034102
【氏名又は名称】エヴォルヴァ エスアー.
【氏名又は名称原語表記】EVOLVA SA.
【住所又は居所原語表記】Duggingerstrasse 23,CH-4153 Reinach,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ホートン-ラーセン,ジェンズ
(72)【発明者】
【氏名】ヒックス,ポーラ,エム.
(72)【発明者】
【氏名】ネーズビー,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】オステルガード,タンジェ,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン,ヨルゲン
(72)【発明者】
【氏名】ダルガード ミッケルセン,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ハルケーア,ハンセン,エスベン
(72)【発明者】
【氏名】シモン,エルネスト
(72)【発明者】
【氏名】デ アンドラデ ペレイラ タヴァレス,サビーナ
(57)【要約】
【課題】
UDP-グリコシルトランスフェラーゼ(UGT)をコードする組換え遺伝子を発現するように操作された、組換え微生物、植物、および植物細胞が開示される。
【解決手段】
かかる微生物、植物、および植物細胞は、例えばレバウジオシドAおよび/またはレバウジオシドDなどの、食品および栄養補助食品における天然の甘味料として用いることができるステビオール配糖体を生産することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号152に記載のアミノ酸配列と少なくとも約80%の同一性を有するポリペプチドをコードする組換え遺伝子を含む、組換え宿主であって、
前記宿主が、任意に以下:
(a)UGT91d2eまたはUGT91d2mポリペプチド、例えば配列番号5の残基211および286に置換を有するUGT91d2eポリペプチド(例としては、配列番号5の残基211にメチオニンおよび残基286にアラニンを有するUGT91d2e-bなど)をコードする組換え遺伝子;
(b)
図12Cに記載のアミノ酸配列(配列番号164)(KAHe1)と約80%の同一性を有するステビオール合成酵素ポリペプチドをコードする組換え遺伝子;
(c)葉緑体輸送ペプチドを欠くent-コパリル二リン酸合成酵素(EC 5.5.1.13;CDPS)ポリペプチドをコードする組換え遺伝子;
(d)Arabidopsis thaliana由来のSUC1配列などのショ糖トランスポーター、およびCoffea arabica、Arabidopsis thalianaまたはS. rebaudiana由来のSUS1配列などのショ糖合成酵素をコードする1または2以上の外因性核酸であって、特に前記1または2以上の外因性核酸の発現およびグルコシルトランスフェラーゼの発現が、宿主におけるウリジン二リン酸グルコース(UDP-グルコース)レベルの上昇をもたらす、前記外因性核酸;
(e)
図13に記載のS. rebaudianaCPRアミノ酸配列(配列番号170)と少なくとも約80%の配列同一性を有するCPRポリペプチドをコードする組換え遺伝子;
(f)核酸の配列であって、該核酸が、オープンリーディングフレームに動作可能に連結された異種挿入配列を含み、ここで該異種挿入配列が、一般式(I):
-X
1-X
2-X
3-X
4-X
5- (I)
式中、X
2は、X
4の少なくとも4つの連続したヌクレオチドに相補的な少なくとも4つの連続したヌクレオチドを含み、式中、X
3は、ゼロヌクレオチドまたはヘアピンループを形成する1もしくは2以上のヌクレオチドを含み、式中、X
1およびX
5は、各々独立して、ゼロヌクレオチドまたは1もしくは2以上のヌクレオチドからなる、ここで前記オープンリーディングフレームは、スクアレン合成酵素(EC 2.5.1.21)をコードする、
を有する、前記核酸配列;
(g)S. rebaudianaKOポリペプチドをコードする1または2以上の外因性核酸であって、前記ポリペプチドが、配列番号138と少なくとも約80%の同一性を有する配列、および配列番号168などのA. thalianaCPRポリペプチドを含む、前記外因性核酸;
(h)A. thalianaKSポリペプチドをコードする組換え遺伝子であって、該ポリペプチドが、配列番号156と少なくとも約80%の同一性を有する配列を含む、前記組換え遺伝子;
(i)UGT85Cをコードするコドン最適化組換え遺伝子;および
(j)GGPPSをコードする組換え遺伝子、
の1または2以上を含む、前記組換え宿主。
【請求項2】
)
図12Cに記載のアミノ酸配列(配列番号164)と少なくとも約80%の同一性、例えば約85%の同一性、約90%の同一性、約95%の同一性、または約100%の同一性を有するポリペプチドをコードする組換え遺伝子を含む、組換え宿主。
【請求項3】
核酸配列を含む組換え宿主細胞であって、前記核酸が、オープンリーディングフレームに動作可能に連結された異種挿入配列を含み、ここで前記異種挿入配列は、一般式(I):
-X1-X2-X3-X4-X5-
式中、X2は、X4の少なくとも4つの連続したヌクレオチドに相補的な少なくとも4つの連続したヌクレオチドを含み、
式中、X3は、ゼロヌクレオチドまたはヘアピンループを形成する1もしくは2以上のヌクレオチドを含み、
式中、X1およびX5は、各々独立して、ゼロヌクレオチドまたは1もしくは2以上のヌクレオチドからなる、ここで前記オープンリーディングフレームは、スクアレン合成酵素(EC 2.5.1.21)をコードする、
を有する、前記組換え宿主細胞。
【請求項4】
核酸配列が、
i)プロモーター配列、これは
ii)異種挿入配列に動作可能に連結され、これは
iii)オープンリーディングフレームに動作可能に連結され、これは
iv)転写終結シグナルに動作可能に連結されている、
を含み、ここで前記異種挿入配列は、一般式(I):
-X1-X2-X3-X4-X5-
式中、X2は、X4の少なくとも4つの連続したヌクレオチドに相補的であり、かつこれとステム二次構造要素を形成する、少なくとも4つの連続したヌクレオチドを含み、および式中、X3は、X2とX4の間にヘアピンループを形成するヌクレオチドを含み、および式中、X1およびX5は、独立しておよび任意に、1または2以上の核酸を含み、および、
ここで前記オープンリーディングフレームは、発現すると、スクアレン合成酵素(EC 2.5.1.21)またはその生物学的活性断片と少なくとも約70%の同一性を有するポリペプチド配列をコードし、前記断片は、前記スクアレン合成酵素と、少なくとも100個のアミノ酸のオーバーラップの範囲内で少なくとも約70%の配列同一性を有する、
請求項3に記載の細胞。
【請求項5】
細胞が、前記細胞内でGGPPSの発現を指向する核酸配列に動作可能に連結したGGPPSをコードする異種核酸をさらに含む、請求項3または4に記載の細胞。
【請求項6】
葉緑体輸送ペプチドを欠くent-コパリル二リン酸合成酵素(EC 5.5.1.13;CDPS)ポリペプチドをコードする組換え遺伝子をコードする組換え遺伝子を含む、組換え宿主。
【請求項7】
ポリペプチドが、非修飾のZea maysCDPSポリペプチドのカルボキシ末端から50個のアミノ酸を欠くZea maysCDPSである、請求項6に記載の宿主。
【請求項8】
宿主がさらに、以下:
配列番号3に記載のアミノ酸配列と約90%以上の同一性を有するUGT85Cポリペプチドをコードする組換え遺伝子;
配列番号7に記載のアミノ酸配列と約90%以上の同一性を有するUGT76Gポリペプチドをコードする組換え遺伝子;
組換え遺伝子などの、UGT74G1ポリペプチドをコードする遺伝子;および
UGT91D2機能性ホモログをコードする遺伝子;
の1または2以上を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の前記宿主。
【請求項9】
宿主がさらに、以下:
(i)ゲラニルゲラニル二リン酸合成酵素をコードする遺伝子;
(ii)二機能性のコパリル二リン酸合成酵素とカウレン合成酵素とをコードする遺伝子、または、配列番号129~131に記載のアミノ酸配列と少なくとも約90%の配列同一性を有するコパリル二リン酸合成酵素などの、コパリル二リン酸合成酵素をコードする遺伝子および、配列番号132~135または配列番号156に記載のアミノ酸配列の1つと少なくとも約90%の配列同一性を有するカウレン合成酵素などの、カウレン合成酵素をコードする遺伝子、
(iii)配列番号138~141に記載のアミノ酸配列の1つと少なくとも約90%の配列同一性を有するカウレン酸化酵素などの、カウレン酸化酵素をコードする遺伝子;
(iv)配列番号142~146および164に記載のアミノ酸配列の1つと少なくとも約90%の配列同一性を有するステビオール合成酵素などの、ステビオール合成酵素をコードする遺伝子;
(v)切断型HMG-CoAをコードする遺伝子;
(vi)CPRをコードする遺伝子;
(vii)ラムノース合成酵素をコードする遺伝子;
(viii)UDP-グルコースデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子;および
(ix)UDP-グルクロン酸デカルボキシラーゼをコードする遺伝子、
の1または2以上を含み、
ここで特に、(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)、(vi)、(vii)、(viii)、または(ix)の遺伝子の少なくとも1つが組換え遺伝子である、
請求項1~8のいずれか一項に記載の宿主。
【請求項10】
宿主が微生物、例えばSaccharomyces cerevisiaeなどの酵母菌である、請求項1~9のいずれか一項に記載の宿主。
【請求項11】
ステビオール配糖体を生産する方法であって、
a)請求項1~10のいずれか一項に記載の宿主を培養培地中にて、遺伝子が発現される条件下で、例えば1または2以上の前記遺伝子の発現を誘導して、増殖させること;および
b)前記宿主により生産されたステビオール配糖体を回収すること;
を含む、前記方法。
【請求項12】
ステビオール配糖体が、EUGT11ポリペプチドで形質転換された透過化宿主細胞中で生産される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ステビオール配糖体がレバウジオシドAであり、レバウジオシドDが、糖供与体からのグルコース部分の、レバウジオシドAへの転移の際に生産される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
細胞におけるUDP-グルコースレベルを上昇させて、UDPレベルを低下させる方法であって、該方法は、ショ糖を含む培地中で、組換えショ糖合成酵素および組換えショ糖トランスポーターを細胞内に発現させることを含み、ここで前記細胞はショ糖分解が欠乏しているか、または前記の発現が細胞におけるUDPレベルの低下およびUDP-グルコースレベルの上昇をもたらし、これにより細胞におけるグリコシル化を増加させる、前記の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2011年8月8日に出願された米国特許出願第61/521,084号、2011年8月8日に出願された米国特許出願第61/521,203号、2011年8月8日に出願された米国特許出願第61/521,051号、2011年8月15日に出願された米国特許出願61/523,487号、2011年12月7日に出願された米国特許出願61/567,929号、および2012年2月27日に出願された米国特許出願61/603,639号の優先権を主張し、これらの全ては、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本開示は、ステビオール配糖体の組換え生産に関する。特に本開示は、レバウジオシドDなどのステビオール配糖体の、組換え微生物、植物、または植物細胞などの組換え宿主による生産に関する。本開示はまた、ステビオール配糖体を含有する組成物を提供する。本開示はまた、スクアレン経路のテルペノイド前駆体生合成の調節による、テルペノイドを生産するためのツールおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
甘味料は、食品、飲料、または菓子産業において最も一般的に使用される成分として知られている。甘味料は、生産時に最終食品中に組み入れるか、または単独で使用することができ、適切に希釈した場合は卓上甘味料として、または家庭でのベーキングにおける砂糖の代替品となる。甘味料には、ショ糖、高果糖コーンシロップ、糖蜜、メープルシロップ、および蜂蜜などの天然甘味料、ならびにアスパルテーム、サッカリンおよびスクラロースなどの人工甘味料が含まれる。ステビア抽出物は、多年生低木のStevia rebaudianaから分離して抽出することができる天然甘味料である。ステビアは、ステビア抽出物の商業生産のために、南米やアジアで一般に栽培されている。様々な程度に精製されたステビア抽出物は、食品もしくはブレンド中の高甘味度甘味料として、または単独で卓上甘味料として、商業的に使用されている。
【0004】
ステビア植物の抽出物は、甘味に寄与するレバウジオシドおよび他のステビオール配糖体を含有するが、ただし各配糖体の量は、多くの場合異なる製造バッチごとに異なる。既存の市販製品の大部分はレバウジオシドAであり、より少ない量のレバウジオシドC、D、およびF等の他の配糖体を含む。ステビア抽出物はまた、異臭に寄与する植物由来の化合物などの不純物を含有し得る。これらの異臭は、食品系または選択の用途に応じて、多かれ少なかれ問題となり得る。潜在的な不純物としては、顔料、脂質、タンパク質、フェノール類、糖類、スパツレノール(spathulenol)および他のセスキテルペン、ラブダンジテルペン、モノテルペン、デカン酸、8,11,14-エイコサトリエン酸、2-メチルオクタデカン、ペンタコサン、オクタコサン、テトラコサン、オクタデカノール、スティグマステロール、β-シトステロール、α-およびβ-アミリン、ルペオール、β-酢酸アミリン、五環性トリテルペン、センタウレイジン、ケルセチン、エピ-α-カジノール、カリオフィレンおよびその誘導体、β-ピネン、β-シトステロール、およびジベレリンが挙げられる。
【発明の概要】
【0005】
概要
本明細書で提供されるのは、微生物、植物、または植物細胞などの組換え宿主であって、その発現がステビオール配糖体、例えばレバウジオシドA、レバウジオシドC、レバウジオシドD、レバウジオシドE、レバウジオシドF、またはズルコシドAなどの生産をもたらすところの1または2以上の生合成遺伝子を含む、前記組換え宿主である。特に、本明細書に記載のウリジン5’-ジホスホ(UDP)グリコシルトランスフェラーゼであるEUGTl1は、単独で、または1もしくは2以上の他のUDPグリコシルトランスフェラーゼ、例えばUGT74G1、UGT76G1、UGT85C2、およびUGT91D2eなどと組み合わせて、組換え宿主中でのまたはin vitroの系を用いた、レバウジオシドDの生産および蓄積を可能とする。本明細書に記載されるように、EUGTl1は、強力な1,2-19-O-グルコースのグリコシル化活性を有し、これはレバウジオシドD生産の重要なステップである。
【0006】
典型的には、ステビオシドおよびレバウジオシドAは、商業的に生産されるステビア抽出物中の主な化合物である。ステビオシドは、レバウジオシドAよりも苦味が強く甘味が少ないことが報告されている。ステビア抽出物の組成は、植物が成長する土壌や気候に応じてロット毎に変化し得る。ソースとなる植物、気候条件、および抽出プロセスに応じて、市販製剤におけるレバウジオシドAの量は、総ステビオール配糖体含量の20~97%で変動することが報告されている。他のステビオール配糖体は、ステビア抽出物中に様々な量で存在する。例えば、レバウジオシドBは典型的には1~2%未満で存在し、一方レバウジオシドCは7~15%の高いレベルで存在することができる。レバウジオシドDは、典型的には総ステビオール配糖体の2%以下のレベルで存在し、レバウジオシドFは、典型的には3.5%以下の組成で存在する。マイナーなステビオール配糖体の量は、ステビア抽出物の風味特性に影響を与える。さらに、レバウジオシドDおよび他の高グリコシル化ステビオール配糖体は、レバウジオシドAより高品質の甘味料であると考えられている。したがって、本明細書に記載の組換え宿主および方法は、例えば、多くの高効力の甘味料よりも優れた機能的および感覚的特性のノンカロリー甘味料として用いるための、増加量のレバウジオシドDを有するステビオール配糖体組成物を生産するために特に有用である。
【0007】
一側面において、本文書は、配列番号152に記載のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するポリペプチドをコードする組換え遺伝子を含む組換え宿主を特徴とする。
本文書はまた、第2糖部分をルブソシドの19-O-グルコースのC-2’に転移する能力を有するポリペプチドをコードする組換え遺伝子を含む、組換え宿主を特徴とする。本文書はまた、第2糖部分をステビオシドの19-O-グルコースのC-2’に転移する能力を有するポリペプチドをコードする組換え遺伝子を含む、組換え宿主を特徴とする。
別の側面において、本文書はまた、第2糖部分を、ルブソシドの19-O-グルコースのC-2’とルブソシドの13-O-グルコースのC-2’とに転移する能力を有するポリペプチドをコードする組換え遺伝子を含む、組換え宿主を特徴とする。
【0008】
本文書はまた、レバウジオシドDを生産するために第2糖部分をレバウジオシドAの19-O-グルコースのC-2’に転移する能力を有するポリペプチドをコードする組換え遺伝子を含む、組換え宿主を特徴とし、ここでポリペプチドの触媒反応速度は、反応が対応する条件下で行われた場合、配列番号5に記載のアミノ酸配列を有する91D2eポリペプチドより、少なくとも20倍速い(例えば25倍または30倍速い)。
本明細書に記載の任意の組換え宿主において、ポリペプチドは、配列番号152に記載のアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性(例えば90%、95%、98%、または99%の配列同一性)を有することができる。ポリペプチドは、配列番号152に記載のアミノ酸配列を有することができる。
本明細書に記載の任意の宿主はさらに、配列番号3に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するUGT85Cポリペプチドをコードする組換え遺伝子を含むことができる。UGT85Cポリペプチドは、配列番号3の残基9、10、13、15、21、27、60、65、71、87、91、220、243、270、289、298、334、336、350、368、389、394、397、418、420、440、441、444、および471において、1または2以上のアミノ酸置換を含むことができる。
【0009】
本明細書に記載の任意の宿主はさらに、配列番号7に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するUGT76Gポリペプチドをコードする組換え遺伝子を含むことができる。UGT76Gポリペプチドは、配列番号7の残基29、74、87、91、116、123、125、126、130、145、192、193、194、196、198、199, 200、203、204、205、206、207、208、266、273、274、284、285、291、330、331、および346において、1または2以上のアミノ酸置換を含むことができる。
本明細書に記載の任意の宿主はさらに、UGT74G1ポリペプチドをコードする遺伝子(例えば組換え遺伝子)を含むことができる。
本明細書に記載の任意の宿主はさらに、機能性UGT91D2ポリペプチドをコードする遺伝子(例えば組換え遺伝子)を含むことができる。UGT91D2ポリペプチドは、配列番号5に記載のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有することができる。UGT91D2ポリペプチドは、配列番号5の位置206、207、または343において、変異を有することができる。UGT91D2ポリペプチドはまた、配列番号5の位置211および286において、変異を有することができる(例えばL211MおよびV286Aであり、UGT91D2e-bと呼ぶ)。UGT91D2ポリペプチドは、配列番号5、10、12、76、78、または95に記載のアミノ酸配列を有することができる。
【0010】
本明細書に記載の任意の宿主はさらに、以下の1または2以上を含むことができる:
(i)ゲラニルゲラニル二リン酸合成酵素をコードする遺伝子;
(ii)二機能性のコパリル二リン酸合成酵素とカウレン合成酵素とをコードする遺伝子、または、コパリル二リン酸合成酵素をコードする遺伝子およびカウレン合成酵素をコードする遺伝子;
(iii)カウレン酸化酵素をコードする遺伝子;
(iv)ステビオール合成酵素をコードする遺伝子。(i)、(ii)、(iii)、および(iv)の遺伝子の各々は、組換え遺伝子であることができる。
本明細書に記載の任意の宿主はさらに、以下の1または2以上を含むことができる:
(v)切断型HMG-CoAをコードする遺伝子;
(vi)CPRをコードする遺伝子;
(vii)ラムノース合成酵素をコードする遺伝子;
(viii)UDP-グルコースデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子;
(ix)UDP-グルクロン酸デカルボキシラーゼをコードする遺伝子。(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)、(vi)、(vii)、(viii)、または(ix)の遺伝子の少なくとも1つは、組換え遺伝子であることができる。
【0011】
ゲラニルゲラニル二リン酸合成酵素は、配列番号121~128に記載のアミノ酸配列の1つと90%を超える配列同一性を有することができる。コパリル二リン酸合成酵素は、配列番号129~131に記載のアミノ酸配列と90%を超える配列同一性を有することができる。カウレン合成酵素は、配列番号132~135に記載のアミノ酸配列の1つと90%を超える配列同一性を有することができる。カウレン酸化酵素は、配列番号138~141に記載のアミノ酸配列の1つと90%を超える配列同一性を有することができる。ステビオール合成酵素は、配列番号142~146に記載のアミノ酸配列の1つと90%を超える配列同一性を有することができる。
いずれの組換え宿主も、各遺伝子が発現される条件下で培養された場合に、少なくとも1種のステビオール配糖体を生産することができる。ステビオール配糖体は、ルブソシド、レバウジオシドA、レバウジオシドB、レバウジオシドC、レバウジオシドD、レバウジオシドE、レバウジオシドF、ズルコシドA、ステビオシド、ステビオール-19-O-グルコシド、ステビオール-13-O-グルコシド、ステビオール-1,2-ビオシド、ステビオール-1,3-ビオシド、1,3-ステビオシド、ならびに他のラムノシル化もしくはキシロシル化中間体からなる群から選択することができる。ステビオール配糖体(例えば、レバウジオシドD)は、前記条件下で培養された場合、培養培地の少なくとも1mg/リットルまで(例えば、少なくとも10mg/リットル、20mg/リットル、100mg/リットル、200mg/リットル、300mg/リットル、400mg/リットル、500mg/リットル、600mg/リットル、または700mg/リットル、またはそれ以上)、蓄積することができる。
【0012】
本文書はまた、ステビオール配糖体の生産方法を特徴とする。方法は、本明細書に記載の任意の宿主を、培養培地中にて遺伝子が発現される条件下で増殖させること;および宿主により生産されたステビオール配糖体を回収すること、を含む。増殖のステップは、1または2以上の遺伝子の発現を誘導することを含むことができる。ステビオール配糖体は、13-O-1,2-ジグリコシル化および/または19-O-1,2-ジグリコシル化ステビオール配糖体(例えば、ステビオシド、ステビオール1,2ビオシド、レバウジオシドD、またはレバウジオシドE)であることができる。例えば、ステビオール配糖体は、レバウジオシドDまたはレバウジオシドEであることができる。ステビオール配糖体のその他の例としては、レバウジオシドA、レバウジオシドB、レバウジオシドC、レバウジオシドF、およびズルコシドAを含むことができる。
本文書はまた、組換え宿主を特徴とする。宿主は、(i)UGT74G1をコードする遺伝子;(ii)UGT85C2をコードする遺伝子;(iii)UGT76G1をコードする遺伝子;(iv)第2糖部分をルブソシドまたはステビオシドの19-O-グルコースのC-2’に転移する能力を有するグリコシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子;および(v)任意に、UGT91D2eをコードする遺伝子、を含み、ここで遺伝子の少なくとも1つは、組換え遺伝子である。一部の態様において、各遺伝子は組換え遺伝子である。宿主は、遺伝子(例えば、組換え遺伝子)の各々が発現される条件下で培養された場合に、少なくとも1つのステビオール配糖体(例えばレバウジオシドD)を生産することができる。宿主はさらに、(a)二機能性のコパリル二リン酸合成酵素とカウレン合成酵素とをコードする遺伝子、または、コパリル二リン酸合成酵素をコードする遺伝子およびカウレン合成酵素をコードする遺伝子;(b)カウレン酸化酵素をコードする遺伝子;(c)ステビオール合成酵素をコードする遺伝子;(d)ゲラニルゲラニル二リン酸合成酵素をコードする遺伝子、を含むことができる。
【0013】
本文書はまた、本明細書に記載の任意の宿主によって生産されるステビオール配糖体組成物を特徴とする。この組成物では、ステビア抽出物と比較して、ステビア植物由来の不純物のレベルが低下している。
さらに別の側面において、本文書は、本明細書に記載の任意の宿主によって生産されるステビオール配糖体組成物を特徴とする。この組成物は、野生型ステビア植物のステビオール配糖体組成物と比較して、レバウジオシドDが富化されたステビオール配糖体組成物を有する。
さらに別の側面において、本文書は、ステビオール配糖体組成物の生産方法を特徴とする。方法は、本明細書に記載の宿主を、培養培地中にて各遺伝子が発現される条件下で増殖させること;および宿主(例えば微生物)により生産されたステビオール配糖体組成物を回収すること、を含む。組成物は、野生型ステビア植物のステビオール配糖体組成物と比較して、レバウジオシドA、レバウジオシドB、レバウジオシドC、レバウジオシドD、レバウジオシドE、レバウジオシドF、またはズルコシドAが富化されている。宿主(例えば微生物)により生産されたステビオール配糖体組成物では、ステビア抽出物と比較して、ステビア植物由来の不純物のレベルが低下している。
【0014】
本文書はまた、第2糖部分をステビオール配糖体における19-O-グルコースのC-2’または13-O-グルコースのC-2’に転移するための方法を特徴とする。方法は、ステビオール配糖体を、本明細書に記載のEUGT11ポリペプチドまたは本明細書に記載のUGT91D2ポリペプチド(例えばUGT91D2e-b)およびUDP-糖と、第2糖部分をステビオール配糖体に転移するための好適な反応条件下で、接触させせることを含む。ステビオール配糖体はルブソシドであることができ、ここで第2糖部分はグルコースであり、ステビオシドは第2グルコース部分の転移の際に生産される。ステビオール配糖体はステビオシドであることができ、ここで第2糖部分はグルコースであり、レバウジオシドEは、第2グルコース部分の転移の際に生産される。ステビオール配糖体はレバウジオシドAであることができ、レバウジオシドDは、第2グルコース部分の転移の際に生産される。
本明細書に開示されるように、改良された下流のステビオール配糖体経路の別の態様において、材料および方法がショ糖合成酵素の組換え産生のために提供され、宿主におけるUDP-グルコース生産の増加のための材料および方法が、特にin vivoでのUDP-グルコースの利用可能性を増加させるために、細胞におけるグリコシル化反応を促進する目的で、および、細胞におけるUDP濃度を低下させる方法が提供される。
【0015】
本文書はまた、ショ糖トランスポーターおよびショ糖合成酵素をコードする1または2以上の外因性核酸を含む組換え宿主を提供し、ここで、グルコシルトランスフェラーゼを有する1または2以上の外因性核酸の発現は、宿主におけるUDP-グルコースレベルの上昇をもたらす。任意に、1または2以上の外因性核酸は、SUS1配列を含む。任意に、SUS1配列は、Coffea arabicaからのものであるか、またはCoffea arabicaのSUS1配列によりコードされるショ糖合成酵素の機能性ホモログをコードするが、しかし本明細書に記載のように、Arabidopsis thalianaまたはStevia rebaudianaのSUSも同様に用いることができる。本発明の組換え宿主において、1または2以上の外因性核酸は、配列番号180に記載の配列、またはこれと少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする配列を含むことができ、および任意に、1または2以上の外因性核酸は、SUC1配列を含む。一態様において、SUC1配列はArabidopsis thalianaからのものであるか、またはSUC1配列は、Arabidopsis thalianaのSUC1配列によりコードされるショ糖トランスポーターの機能性ホモログをコードする。組換え宿主において、1または2以上の外因性核酸は、配列番号179に記載の配列、またはこれと少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする配列を含むことができる。組換え宿主は、1または2以上の外因性核酸を欠く対応する宿主と比較して、外部ショ糖を分解する能力が低下している。
【0016】
組換え宿主は、微生物、例えばSaccharomyces cerevisiaeなどの酵母菌であってよい。代替的に、微生物は、Escherichia coliである。代替的態様において、組換え宿主は、植物または植物細胞である。
本発明はまた、細胞内でUDP-グルコースのレベルを上昇させ、UDPのレベルを低下させる方法を提供し、該方法は、細胞内で、ショ糖を含む培地中、組換えショ糖合成酵素配列および組換えショ糖トランスポーター配列を発現させることを含み、ここで前記細胞はショ糖の分解を欠いている。
本発明はさらに、細胞内で、ショ糖を含む培地中、組換えショ糖合成酵素配列および組換えショ糖トランスポーター配列を発現させることを含む、細胞内でのグリコシル化反応を促進する方法を提供し、ここで発現により、細胞内でのUDPレベルの低下および細胞内でのUDP-グルコースレベルの上昇がもたらされて、細胞内でのグリコシル化が増加する。
【0017】
UDP-グルコースのレベルを上昇させるかまたはグリコシル化を促進するためのいずれかの方法において、細胞はバニリングルコシドを生産することができて、細胞によるバニリングルコシド生産の増加がもたらされるか、または、ステビオールグルコシドを生産することができて、細胞によるステビオールグルコシド生産の増加がもたらされる。任意に、SUS1配列は、A. thaliana、S. rebaudiana、もしくはCoffea arabicaのSUS1配列であるか(例えば
図17、配列番号175~177を参照)、または、A. thaliana、S. rebaudiana、もしくはCoffea arabicaのSUS1配列によりコードされるショ糖合成酵素の機能性ホモログをコードする配列である。組換えショ糖合成酵素は任意に、配列番号180に記載の配列またはこれと少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸を含み、ここで任意に、組換えショ糖トランスポーター配列はSUC1配列であるか、またはここで任意に、SUC1配列はArabidopsis thalianaのSUC1配列であるかまたはArabidopsis thalianaのSUC1配列によりコードされるショ糖トランスポーターの機能性ホモログをコードする配列であるか、またはここで任意に、組換えショ糖トランスポーター配列は、配列番号179に記載の配列またはこれと少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸を含む。いずれの方法においても、宿主は、微生物、例えば任意にSaccharomyces cerevisiaeなどの酵母菌であってよい。または宿主はEscherichia coliであってよい。または宿主は、植物細胞であってよい。
【0018】
本明細書でさらに提供されるのは、その発現がジテルペノイドの生産をもたらす1または2以上の生合成遺伝子を含む、微生物などの組換え宿主である。かかる遺伝子には、ent-コパリル二リン酸合成酵素(CDPS)(EC 5.5.1.13)をコードする遺伝子、ent-カウレン合成酵素をコードする遺伝子、ent-カウレン酸化酵素をコードする遺伝子、またはステビオール合成酵素をコードする遺伝子が含まれる。これらの遺伝子の少なくとも1つは、組換え遺伝子である。宿主はまた、植物細胞であることができる。ステビア植物におけるこれらの遺伝子(単数または複数)の発現は、植物におけるステビオール配糖レベルの上昇をもたらすことができる。一部の態様において、組換え宿主はさらに、葉緑体輸送ペプチド配列を欠くCDPSポリペプチド(EC 5.5.1.13 )をコードする組換え遺伝子の複数コピーを含む。CDPSポリペプチドは、
図14に示す切断型CDPSアミノ酸配列と、少なくとも90%、95%、99%、または100%の同一性を有することができる。宿主はさらに、KAHポリペプチド、例えば
図12に示すKAHアミノ酸配列と少なくとも90%、95%、99%、または100%の同一性を有するKAHポリペプチドをコードする組換え遺伝子の複数コピーを含むことができる。宿主はさらに、次の1または2以上:(i)ゲラニルゲラニル二リン酸合成酵素をコードする遺伝子;(ii)ent-カウレン酸化酵素をコードする遺伝子;および(iii)ent-カウレン合成酵素をコードする遺伝子、を含むことができる。宿主はさらに、次の1または2以上:(iv)切断型HMG-CoAをコードする遺伝子;(v)CPRをコードする遺伝子;(vi)ラムノース合成酵素をコードする遺伝子;(vii)UDP-グルコースデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子;および(viii)UDP-グルクロン酸デカルボキシラーゼをコードする遺伝子、を含むことができる。例えば、2または3以上の外因性CPRが存在することができる。1または2以上のかかる遺伝子の発現は、誘導性であり得る。(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)、(vi)、(vii)または(viii)の遺伝子の少なくとも1つは組換え遺伝子であることができ、いくつかの場合においては、(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)、(vi)、(vii)または(viii)の各遺伝子は、組換え遺伝子である。ゲラニルゲラニル二リン酸合成酵素は、配列番号127に記載のアミノ酸配列と90%を超える配列同一性を有することができる;カウレン酸化酵素は、配列番号138に記載のアミノ酸配列と90%を超える配列同一性を有することができる;CPRは、配列番号168に記載のアミノ酸配列と90%を超える配列同一性を有することができる;CPRは、配列番号170に記載のアミノ酸配列と90%を超える配列同一性を有することができ、およびカウレン合成酵素は、配列番号156に記載のアミノ酸配列と90%を超える配列同一性を有することができる。
【0019】
一側面において、本文書は、配列番号5に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする単離された核酸であって、該ポリペプチドが配列番号5の位置211および286に置換を含んでいる前記核酸を特徴とする。例えば、ポリペプチドは、位置211にメチオニンを、位置286にアラニンを含むことができる。
一側面において、本文書は、
図12C(配列番号164)に記載のアミノ酸配列と、少なくとも80%の同一性(例えば少なくとも85%、90%、95%、または99%の同一性)を有するポリペプチドをコードする単離された核酸を特徴とする。ポリペプチドは、
図12Cに記載のアミノ酸配列を有することができる。
別の側面において、本文書は、
図12C(配列番号164)に記載のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性(例えば少なくとも85%、90%、95%、または99%の同一性)を有するポリペプチドをコードする核酸に動作可能に連結した調節領域を含む、核酸コンストラクトを特徴とする。ポリペプチドは、
図12Cに記載のアミノ酸配列を有することができる。
【0020】
本文書また、
図12Cに記載のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性(例えば少なくとも85%、90%、95%、または99%の同一性)を有するKAHポリペプチドをコードする組換え遺伝子(例えば組換え遺伝子の複数コピー)を含む組換え宿主を特徴とする。ポリペプチドは、
図12Cに記載のアミノ酸配列を有することができる。宿主は、酵母菌(例えば、Saccharomyces cerevisiae)またはEscherichia coliなどの微生物であることができる。宿主は、植物または植物細胞(例えば、ステビア、ヒメツリガネゴケ(Physcomitrella)、またはタバコ植物または植物細胞)であることができる。ステビア植物または植物細胞は、Stevia rebaudianaの植物または植物細胞である。組換え宿主は、各遺伝子が発現される条件下で培養された場合に、ステビオールを生産することができる。組換え宿主はさらに、UGT74G1ポリペプチドをコードする遺伝子;UGT85C2ポリペプチドをコードする遺伝子;UGT76G1ポリペプチドをコードする遺伝子;UGT91D2ポリペプチドをコードする遺伝子;および/またはEUGT11ポリペプチドをコードする遺伝子を含むことができる。かかる宿主は、各遺伝子が発現される条件下で培養された場合に、少なくとも1種のステビオール配糖体を生産することができる。ステビオール配糖体は、ステビオール-13-O-グルコシド、ステビオール-19-O-グルコシド、ルブソシド、レバウジオシドA、レバウジオシドB、レバウジオシドC、レバウジオシドD、レバウジオシドE、レバウジオシドF、および/またはズルコシドAであることができる。組換え宿主はさらに、次の1種または2種以上を含むことができる:デオキシキシルロース5-リン酸合成酵素(DXS)をコードする遺伝子;D-1-デオキシキシルロース5-リン酸レダクトイソメラーゼ(DXR)をコードする遺伝子;4-ジホスホシチジル-2-C-メチル-D-エリスリトール合成酵素(CMS)をコードする遺伝子;4-ジホスホシチジル-2-C-メチル-D-エリスリトールキナーゼ(CMK)をコードする遺伝子;4-ジホスホシチジル-2-C-メチル-D-エリトリトール2,4-シクロ二リン酸合成酵素(MCS)をコードする遺伝子;1-ヒドロキシ-2-メチル-2(E)-ブテニル4-二リン酸合成酵素(HDS)をコードする遺伝子;および1-ヒドロキシ-2-メチル-2(E)-ブテニル4-二リン酸還元成酵素(HDR)をコードする遺伝子。組換え宿主はさらに、次の1種または2種以上を含むことができる:アセトアセチルCoAチオラーゼをコードする遺伝子;切断型HMG-CoA還元酵素をコードする遺伝子;メバロン酸キナーゼをコードする遺伝子;ホスホメバロン酸キナーゼをコードする遺伝子;およびメバロン酸ピロリン酸デカルボキシラーゼをコードする遺伝子。別の側面において、本文書は、ent-カウレン酸化酵素(EC 4.2.3.19)をコードする遺伝子;および/またはジベレリン20-酸化酵素(EC 1.14.11.12)をコードする遺伝子をさらに含む組換え宿主を特徴とする。かかる宿主は、各遺伝子が発現される条件下で培養された場合に、ジベレリンGA3を生産する。
【0021】
本文書また、
図13に記載のS. rebaudianaのCPRアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性(例えば少なくとも85%、90%、95%、または99%の配列同一性)を有するCPRポリペプチドをコードする単離された核酸を特徴とする。一部の態様において、ポリペプチドは、
図13に記載のS. rebaudianaのCPRアミノ酸配列(配列番号169および170)を有する。
本明細書に記載の宿主のいずれにおいても、1または2以上の遺伝子の発現が誘導可能である。
本明細書に記載の宿主のいずれにおいても、内因性ホスファターゼをコードする1または2以上の遺伝子は、内因性ホスファターゼ活性が低下するように削除または破壊することができる。例えば、酵母遺伝子DPP1および/またはLPP1を破壊または削除して、ファルネシルピロリン酸(FPP)のファルネソールへの分解が低減され、ゲラニルゲラニルピロリン酸(GGPP)のゲラニルゲラニオール(GGOH)への分解が低減されるようにすることができる。
別の態様において、本明細書に記載されるように、ERG9を以下に規定するように修飾することができて、その結果スクアレン合成酵素(SQS)の生産の減少および、テルペノイド前駆体の蓄積がもたらされる。前駆体は、培養培地中に分泌されても分泌されなくてもよく、ひいてはテルペノイド前駆体を所望のテルペノイドに代謝することができる酵素に対する基質として用いることができる。
【0022】
したがって、本発明の主要な側面は、核酸配列を含む細胞であって、前記核酸が、
i)プロモーター配列、これは
ii)異種挿入配列に動作可能に連結され、これは
iii)オープンリーディングフレームに動作可能に連結され、これは
iv)転写終結シグナルに動作可能に連結されている、
を含み、ここで前記異種挿入配列は、一般式(I):
-X1-X2-X3-X4-X5-
式中、X2は、X4の少なくとも4つの連続したヌクレオチドに相補的であり、かつこれとヘアピン二次構造要素を形成する、少なくとも4つの連続したヌクレオチドを含み、および
式中、X3は任意であり、もし存在する場合は、X2とX4の間のヘアピンループの形成に関与する不対ヌクレオチドを含み、および
式中、X1およびX5は、独立しておよび任意に、1または2以上のヌクレオチドを含み、および、
式中、前記オープンリーディングフレームは、発現すると、スクアレン合成酵素(EC 2.5.1.21)またはその生物学的活性断片と少なくとも約70%の同一性を有するポリペプチド配列をコードし、前記断片は、前記スクアレン合成酵素と、少なくとも100個のアミノ酸のオーバーラップの範囲内で少なくとも70%の配列同一性を有する、
前記細胞に関する。
【0023】
本発明の細胞は、工業的に興味深いテルペノイドの収量を高めるのに有用である。したがって、本発明の別の側面は、細胞培養物において、スクアレン経路を介して合成されるテルペノイド化合物を生産するための方法に関し、該方法は、次のステップを含む:
(a)本明細書上記で定義した細胞を提供すること、
(b)ステップ(a)の細胞を培養すること、
(c)テルペノイド生成物の化合物を回収すること。
本明細書上記で定義した遺伝子操作されたコンストラクトを含む細胞を提供することによって、テルペノイド前駆体の蓄積が増強される(例えば
図20を参照)。
したがって、別の側面において、本発明は、ファルネシルピロリン酸(FPP)、イソペンテニルピロリン酸(IPP)、ジメチルアリルピロリン酸(DMAPP)、ゲラニルピロリン酸(GPP)、および/またはゲラニルゲラニルピロリン酸(GGPP)からなる群から選択されるテルペノイド前駆体に由来するテルペノイドを生産するための方法に関し、前記方法は、以下を含む:
(a)前記前駆体を、スクアレン合成酵素経路の酵素と接触させること、
(b)テルペノイド生成物を回収すること。
【0024】
本発明は、少なくとも部分的に、リボソームのRNAへの結合を立体的に妨げることによって操作されてもよく、こうしてスクアレン合成酵素の翻訳を低減する。したがって本発明の一態様は、機能性スクアレン合成酵素(EC 2.5.1.21)の翻訳速度を低減するための方法に関し、前記方法は以下を含む:
(a)本明細書上記で定義された細胞を提供すること、
(b)ステップ(a)の細胞を培養すること。
同様に、本発明の別の側面は、本発明は、ファルネシル-ppのスクアレンへの転換を低減するための方法に関し、前記方法は以下を含む:
(a)本明細書上記で定義された細胞を提供すること、
(b)ステップ(a)の細胞を培養すること。
【0025】
図20に示すように、ERG9のノックダウンは、スクアレン合成酵素への前駆体の増加をもたらす。したがって一側面において、本発明は、ファルネシルピロリン酸、イソペンテニルピロリン酸、ジメチルアリルピロリン酸、ゲラニルピロリン酸およびゲラニルゲラニルピロリン酸からなる群から選択される化合物の蓄積を増強するための方法に関し、該方法は、次のステップを含む:
(a)本明細書上記で定義された細胞を提供すること、
(b)ステップ(a)の細胞を培養すること。
一態様において、本発明は、ゲラニルゲラニルピロリン酸(GGPP)および、ゲラニルゲラニルピロリン酸(GGPP)から調製することができる他のテルペノイドの生産に関する。
【0026】
本発明のこの態様において、上記のスクアレン合成酵素(SQS)の生産の減少は、FPPをゲラニルゲラニルピロリン酸(GGPP)に変換する、ゲラニルゲラニルピロリン酸合成酵素(GGPPS)の活性の増加と組み合わせることができ、GGPPの生産の増加をもたらす。
したがって、一態様において、本発明は核酸配列を含む微生物細胞に関し、前記核酸は、
i)プロモーター配列、これは
ii)異種挿入配列に動作可能に連結され、これは
iii)オープンリーディングフレームに動作可能に連結され、これは
iv)転写終結シグナルに動作可能に連結されている、
を含み、ここで前記異種挿入配列およびオープンリーディングフレームは、本明細書に定義された通りであり、
ここで前記微生物細胞はさらに、前記細胞内でのGGPPSの発現を指向する核酸配列に動作可能に連結された、GGPPSをコードする異種核酸を含む。
さらに、本文書は、ステビオールまたはステビオール配糖体を生産するための方法に関し、ここで該方法は、上記の微生物細胞の任意の1つの使用を含む。
【0027】
本明細書に記載の全ての宿主は、微生物(例えばSaccharomyces cerevisiaeなどの酵母、またはEscherichia coli)、または植物もしくは植物細胞(Stevia rebaudianaなどのステビア、Physcomitrella、またはタバコ植物または植物細胞)であることができる。
他に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本発明を実施するために、本明細書に記載のものと類似または同等の方法および材料を用いることができるが、適切な方法および材料を以下に記載する。全ての刊行物、特許出願、特許、および本明細書に記載の他の参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。矛盾する場合、定義を含む本明細書が支配する。さらに、材料、方法、および実施例は例示のみであり、限定を意図するものではない。本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかである。出願人は、特許法における標準的な慣行に従って、「含む」、「本質的に~からなる」、または「~からなる」の移行句を使用して、任意の開示された発明を代替的に請求する権利を留保する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、様々なステビオール配糖体の化学構造の図である。
【
図2A】
図2Aは、ステビオール配糖体の、ステビオールからの生合成のための代表的な経路を示す図である。
【
図2B】
図2Bは、ステビオール配糖体の、ステビオールからの生合成のための代表的な経路を示す図である。
【
図2C】
図2Cは、ステビオール配糖体の、ステビオールからの生合成のための代表的な経路を示す図である。
【
図2D】
図2Dは、ステビオール配糖体の、ステビオールからの生合成のための代表的な経路を示す図である。
【
図3】
図3は、EUGT11とUGT91D2eによる19-O-1,2-ジグリコシル化反応の概略図である。数字は、液体クロマトグラフィ-質量分析(LC-MS)クロマトグラムからの、反応の基質または生成物の平均シグナル強度である。
【
図4】
図4は、in vivoでの転写または翻訳UGT91D2e(配列番号5)(左パネル)またはEUGT11(配列番号152)(右パネル)を用いた、レバウジオシドA(RebA)からのレバウジオシドD(RebD)の生産を表す、LC-MSクロマトグラムの図である。LC-MSは、ステビオール+5グルコース(例えばRebD)、ステビオール+4グルコース(例えばRebA)などに対応する特定の質量を検出するように設定した。各「レーン」は、最大のピークに従ってスケーリングする。
【0029】
【
図5】
図5は、ルブソシドのステビオシドおよび化合物「2」および「3」(RebE)への、UGT91D2e(左パネル)およびEUGT11(右パネル)による変換を示す、LC-MSクロマトグラムの図である。
【
図6】
図6は、EUGT11(配列番号152、最上段のライン)のアミノ酸配列と、UGT91D2e(配列番号5、最下段のライン)のアミノ酸配列のアラインメントを示す図である。
【
図7】
図7は、EUGT11(配列番号152)のアミノ酸配列、EUGT11をコードするヌクレオチド配列(配列番号153)、および酵母での発現のためにコドン最適化されたEUGT11をコードすヌクレオチド配列(配列番号154)を示す図である。
【
図8】
図8は、UGT91D2eとUGT85H2およびUGT71G1の二次構造予測のアラインメントを示す図である。二次構造予測は、3種類のUGTのアミノ酸配列を、ワールドワイドウェブcbs.dtu.dk/services/NetSurfP/のNetSurfP ver. 1.1 - Protein Surface Accessibility and Secondary Structure Predictionsに供することにより行った。これにより、タンパク質中のαへリックス、βシートおよびコイルの存在と位置を予測した。これらは、UGT91D2eについて示されるように、その後に標識した。例えば、最初のN末端βシートをNβ1標識した。y軸は予測の確実性を表し、これが高いほどより確実であり、x軸はアミノ酸位置を示す。これらのUGTの間の一次配列の同一性は非常に低いが、二次構造は非常に高い保存の程度を示す。
【0030】
【
図9】
図9は、UGT91D1とUGT91D2e(配列番号5)のアミノ酸配列のアラインメントを示す図である。
【
図10】
図10は、UGT91D2eの二重アミノ酸置換変異体の活性の棒グラフである。黒い棒は、ステビオシドの生産を表し、白い棒は、1,2-ビオシドの生産を表す。
【
図11】
図11は、ステビオール配糖体の生合成のためのUDP-グルコースの再生の概略図である。SUS=ショ糖合成酵素、ステビオール=ステビオールまたはステビオール配糖体基質、UGT=UDPグリコシルトランスフェラーゼ。
【
図12A】
図12Aは、Stevia rebaudianaKAHをコードするヌクレオチド配列(配列番号163)を示す図であり、これは本明細書においてSrKAHe1と呼ぶ。
【
図12B】
図12Bは、酵母での発現のためにコドン最適化された、Stevia rebaudianaKAHe1をコードするヌクレオチド配列(配列番号165)を示す図である。
【
図12C】
図12Cは、Stevia rebaudianaKAHe1のアミノ酸配列(配列番号164)を示す図である。
【0031】
【
図13A】
図13Aは、S. cerevisiae(NCP1遺伝子によりコードされる)(配列番号166)から、A. thaliana(ATR1およびATR2によりコードされる)(配列番号148および168)から、およびS. rebaudiana(CPR7およびCPR8によりコードされる)(配列番号169および170)からのCPRポリペプチドのアミノ酸配列を示す図である。
【
図13B】
図13Bは、酵母での発現のためにコドン最適化されたATR1ヌクレオチド配列(アクセッション番号CAA23011)(配列番号171);酵母での発現のためにコドン最適化されたATR2ヌクレオチド配列(配列番号172);Stevia rebaudianaのCPR7ヌクレオチド配列(配列番号173);およびStevia rebaudianaのCPR8ヌクレオチド配列(配列番号174)を示す図である。
【
図14A】
図14Aは、Zea maysからのCDPSポリペプチド(配列番号158)をコードするヌクレオチド配列(配列番号157)を示す図である。太字と下線の配列は、葉緑体輸送配列をコードする配列を除去するために削除することができる。
【
図14B】
図14Bは、Zea maysからのCDPSポリペプチド(配列番号158)をコードするアミノ酸配列(配列番号158)を示す図である。太字と下線の配列は、葉緑体輸送配列をコードする配列を除去するために削除することができる。
【0032】
【
図15A】
図15Aは、Gibberella fujikuroiからの二機能性CDPS-KSポリペプチド(配列番号162)をコードするコドン最適化ヌクレオチド配列(配列番号161)を示す図である。
【
図15B】
図15Bは、Gibberella fujikuroiからの二機能性CDPS-KSポリペプチド(配列番号162)をコードするアミノ酸配列を示す図である。
【
図16】
図16は、S. cerevisiaeの2つの株である、強化されたEFSC1972(T2で示す)およびArabidopsis thalianaのカウレン合成酵素(KS-5)の過剰発現を有する強化されたEFSC1972(T7で示す、四角)の、増殖のグラフを示す図である。y軸上の数字は、細胞培養物のOD600値であり、x軸上の数字は、30℃における完全合成ベースの培地中での増殖の時間を表す。
【
図17】
図17は、A. thaliana、S. rebaudiana(contig10573 selection_ORF S11Eより、S11をグルタミン酸(E)へ変化させる変異を太字の小文字で示す)、およびコーヒー(Coffea arabica)ショ糖合成酵素をコードする核酸配列を示す図である(それぞれ配列番号175、176、および177)。
【0033】
【
図18】
図18は、EUGT11または空のプラスミド(「空」)で形質転換された、透過化処理したS. cerevisiaeにおけるrebD生産の棒グラフを示す図である。細胞は、対数増殖期まで増殖させ、PBS緩衝液中で洗浄し、続いてTriton X-100(PBS中0.3%または0.5%)にて30℃で30分間処理した。透過化処理後、細胞をPBS中で洗浄し、100μMのRebAおよび300μMのUDP-グルコースを含有する反応ミックス中に再懸濁した。反応は、30℃で20時間進行させた。
【
図19A】
図19Aは、A. thalianaUDP-グリコシルトランスフェラーゼUGT72E2のアミノ酸配列を示す図である(配列番号178)。
【
図19B】
図19Bは、A. thaliana由来のショ糖トランスポーターSUC1のアミノ酸配列を示す図である(配列番号179)。
【
図19C】
図19Cは、コーヒー由来のショ糖合成酵素のアミノ酸配列を示す図である(配列番号180)。
【
図20】
図20は、酵母におけるイソプレノイド経路の概略図であり、ERG9の位置を示す
【
図21】
図21は、Saccharomyces cerevisiaeCyc1プロモーター(配列番号185)およびSaccharomyces cerevisiaeKex2プロモーター(配列番号186)のヌクレオチド配列を示す図である。
【0034】
【
図22】
図22は、それぞれがERG9プロモーターまたはERG9オープンリーディングフレーム(ORF)の5’末端内のゲノム配列の一部と相同な2つの領域、HR1およびHR2を含む、PCR産物の概略図である。また、PCR産物上には、Creリコンビナーゼによるその後の切除用の2つのLox部位(L)の間に埋め込むことができる、抗生物質マーカーNatRが存在する。PCR産物はさらに、野生型ScKex2、野生型ScCyc1のいずれか等のプロモーターを含むことができ、該プロモーターはさらに、ヘアピン(配列番号181~184)等の異種インサートをその3’末端に含むことができる(
図23参照)。
【
図23】
図23は、翻訳開始部位(矢印)のすぐ上流にヘアピンステムループを有するプロモーターおよびORFの概略図、ならびに、野生型S. cerevisiae CYC1プロモーター配列の一部とERG9 OPRの初めのATGであって、異種インサートを含まないもの(配列番号187)、および4つの異なる異種インサート(配列番号188~191)を有するものの、アラインメントを示す図である。75%は、ScCyc1プロモーターと続いて配列番号184を含むコンストラクト(配列番号191)を示す;50%は、ScCyc1プロモーターと続いて配列番号183を含むコンストラクト(配列番号190)を示す;20%は、ScCyc1プロモーターと続いて配列番号182を含むコンストラクト(配列番号189)を示す;5%は、ScCyc1プロモーターと続いて配列番号181を含むコンストラクト(配列番号188)を示す。
【0035】
【
図24】
図24は、宿主ゲノムのERG9遺伝子の前に挿入された異なるプロモーターコンストラクトを有する酵母株において生産された、アモルファジエンを示す棒グラフである。CTRL-ADSは、修飾なしの対照株を示す;ERG9-CYC1-100%は、ScCyc1プロモーターを含み、インサートなしのコンストラクトを示す;ERG9-CYC1-50%は、ScCyc1プロモーターに続いて配列番号183を含むコンストラクトを示す(配列番号190);ERG9-CYC1-20%は、ScCyc1プロモーターに続いて配列番号182を含むコンストラクトを示す(配列番号189);ERG9-CYC1-5%は、ScCyc1プロモーターに続いて配列番号181を含むコンストラクトを示す(配列番号188);ERG9-KEX2-100%は、ScKex2プロモーターを含むコンストラクトを示す。
【
図25】
図25は、Saccharomyces cerevisiae、Schizosaccharomyces pombe、Yarrowia lipolytica、Candida glabrata、Ashbya gossypii、Cyberlindnera jadinii、Candida albicans、Saccharomyces cerevisiae、Homo sapiens、Mus musculus、およびRattus norvegicusからのスクアレン合成酵素ポリペプチドのアミノ酸配列(配列番号192~202)、ならびにAspergilus nidulansおよびS. cerevisiaeからのゲラニルゲラニル二リン酸合成酵素(GGPPS)のアミノ酸配列(配列番号203および167)を示す図である。
【
図26】
図26は、ERG9-CYC1-5%株およびERG9-KEX2株における72時間後のゲラニルゲラニオール(GGOH)の蓄積を示す棒グラフである。
【
図27】
図27は、UGT91D2eおよびEUGT11によるRebF生産のための、ルブソシドのキシロシル化中間体への変換を示す代表的なクロマトグラフの図である。 様々な図面における同様の参照記号は、同様の要素を示す。
【発明の詳細な説明】
【0036】
本文書は、レバウジオシドA、レバウジオシドC、レバウジオシドD、レバウジオシドE、レバウジオシドF、またはズルコシドAなどのステビオール配糖体の生合成に有用なポリペプチドを発現する、植物細胞、植物、または微生物などの組換え宿主を開発できるという発見に基づくものである。本明細書に記載の組換え宿主は、レバウジオシドDの生産に特に有用である。かかる宿主は、ステビオール配糖体の生産に適するウリジン5’-ジホスホ(UDP)グリコシルトランスフェラーゼ類の1または2以上を、発現することができる。様々な微生物のシャーシ内でのこれら生合成ポリペプチドの発現は、ステビオール配糖体を、例えば、糖、グリセロール、CO2、H2および太陽光などのエネルギー源および炭素源から、一貫した再現可能な方法で生産することを可能にする。組換え宿主により生産される各ステビオール配糖体の割合は、予め選択された生合成酵素を宿主に組み込み、それらを適切なレベルで発現させることによって調整可能であり、一貫した味プロファイルの甘味料組成物を生産することができる。さらに、組換え宿主により生産されるステビオール配糖体の濃度は、ステビア植物において生産されるステビオール配糖体のレベルよりも高いことが予想され、これは下流での精製の効率を向上させる。かかる甘味料組成物には、ステビア抽出物中に存在する不純物の量と比べて、ほとんどあるいは全く、植物ベースの不純物が含まれていない。
【0037】
遺伝子の少なくとも1つは組換え遺伝子であり、特定の組換え遺伝子(単数または複数)は、使用のために選択される種または株に依存する。追加の遺伝子または生合成モジュールを含有させて、ステビオール配糖体の収量を増加させ、そのエネルギー源および炭素源がステビオールおよびその配糖体に変換される効率を改善し、および/または細胞培養物または植物からの生産性を向上することができる。かかる追加の生合成モジュールには、テルペノイド前駆体、イソペンテニル二リン酸およびジメチルアリル二リン酸の合成に関与する遺伝子が含まれる。追加の生合成モジュールには、テルペン合成酵素およびテルペンシクラーゼ遺伝子、例えばゲラニルゲラニル二リン酸合成酵素およびコパリル二リン酸合成酵素をコードする遺伝子が含まれる;これらの遺伝子は、内因性遺伝子または組み換え遺伝子であってよい。
【0038】
1.ステビオールおよびステビオール配糖体生合成ポリペプチド
A.ステビオール生合成ポリペプチド
ステビア抽出物中に見出されるいくつかの化合物の化学構造を、ジテルペンステビオールおよび様々なステビオール配糖体を含んで
図1に示す。CAS番号は以下の表Aに示す。また、Harriet Wallin, Food Agric. Org. (2007)により作成されたSteviol Glycosides Chemical and Technical Assessment 69th JECFAも参照のこと。
【表1】
【0039】
微生物等の宿主における特定の遺伝子の発現は、その宿主にステビオール配糖体を合成する能力を付与することが発見された。以下でより詳細に説明されるように、かかる遺伝子の1または2以上は、宿主中に天然に存在し得る。しかしながら典型的には、かかる遺伝子の1または2以上は、それらを天然に有しない宿主中に形質転換された、組換え遺伝子である。
ステビオールを生産するための生化学的経路には、ゲラニルゲラニル二リン酸の形成、(-)コパリル二リン酸への環化、続いて酸化および水酸化によるステビオールの形成が関与する。したがって、組換え微生物におけるゲラニルゲラニル二リン酸のステビオールへの変換には、カウレン合成酵素(KS)をコードする遺伝子、カウレン酸化酵素(KO)をコードする遺伝子、およびステビオール合成酵素(KAH)をコードする遺伝子の発現が関与する。ステビオール合成酵素はまた、カウレン酸13-ヒドロキシラーゼとしても知られている。
【0040】
好適なKSポリペプチドが知られている。例えば、好適なKS酵素には、Stevia rebaudiana、Zea mays、Populus trichocarpa、およびArabidopsis thalianaによって作られたものが含まれる。表1および配列番号132~135および156を参照。これらのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、配列番号40~47および155に記載されている。配列番号40~43に記載のヌクレオチド配列は、酵母での発現のために修飾され、一方、配列番号44~47に記載のヌクレオチド配列は、KSポリペプチドが同定されたソースとなる生物からのものである。
【表2】
【0041】
好適なKOポリペプチドが知られている。例えば、好適なKO酵素には、Stevia rebaudiana、Arabidopsis thaliana、Gibberella fujikoroiおよびTrametes versicolorによって作られたものが含まれる。表2および配列番号138~141を参照。これらのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、配列番号52~59に記載されている。配列番号52~59に記載のヌクレオチド配列を、酵母での発現のために修飾した。配列番号56~59に記載のヌクレオチド配列は、KOポリペプチドが同定されたソースとなる生物からのものである。
【表3】
【0042】
好適なKAHポリペプチドが知られている。例えば、好適なKAH酵素には、Stevia rebaudiana、Arabidopsis thaliana、Vitis viniferaおよびMedicago trunculataによって作られたものが含まれる。表3および配列番号142~146;米国特許公開第2008-0271205号;米国特許公開第2008-0064063号およびGenbankアクセッション番号gi 189098312を参照。Arabidopsis thalianaからのステビオール合成酵素は、CYP714A2として分類される。これらのKAH酵素をコードするヌクレオチド配列は、配列番号60~69に記載されている。配列番号60~64に記載のヌクレオチド配列は、酵母での発現のために修飾され、一方、ポリペプチドが同定されたソースとなる生物からのヌクレオチド配列は、配列番号65~69に記載されている。
【表4】
【0043】
さらに、本明細書中で同定されたStevia rebaudianaからのKAHポリペプチドは、組換え宿主で特に有用である。S. rebaudiana KAH(SrKAHe1)(配列番号164)をコードするヌクレオチド(配列番号163)を、
図12Aに示す。酵母での発現のためにコドン最適化されたS. rebaudiana KAHをコードするヌクレオチド(配列番号165)を、
図12Bに示す。S. rebaudiana KAHのアミノ酸配列を、
図12Cに示す。S. rebaudiana KAHは、S. cerevisiaeにおいて発現された場合に、Yamaguchiら(米国特許公開第2008/0271205 A1号)に記載のArabidopsis thalianaのent-カウレン酸ヒドロキシラーゼと比較して、顕著に高いステビオール合成酵素活性を示す。
図12Cに示すS. rebaudiana KAHポリペプチドは、米国特許公開第2008/0271205号からのKAHと20%未満の同一性を、および米国特許公開第2008/0064063号からのKAHと35%未満の同一性を有する。
【0044】
一部の態様において、組換え微生物は、KOおよび/またはKAHポリペプチドをコードする組換え遺伝子を含む。かかる微生物はまた、典型的にはシトクロムP450還元酵素(CPR)ポリペプチドをコードする組換え遺伝子を含有するが、これは、KOおよび/またはKAHポリペプチドの特定の組み合わせが、外因性CPRポリペプチドの発現を必要とするためである。特に、植物起源のKOおよび/またはKAHポリペプチドの活性は、外因性CPRポリペプチドをコードする組換え遺伝子を含むことによって、顕著に高めることができる。適切なCPRポリペプチドが知られている。例えば、適切なCPR酵素としては、Stevia rebaudiana およびArabidopsis thalianaにより作られたものが含まれる。例えば、表4および配列番号147および148を参照。これらのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、配列番号70、71、73、および74に記載されている。配列番号70~72に記載のヌクレオチド配列は、酵母での発現のために修飾した。ポリペプチドが同定されたソースとなる生物からのヌクレオチド配列は、配列番号73~75に記載されている。
【表5】
【0045】
例えば、SrKAHe1によってコードされるステビオール合成酵素は、遺伝子NCP1(YHR042W)によってコードされるS. cerevisiaeのCPRにより活性化される。SrKAHe1によってコードされるステビオール合成酵素のより良い活性化は、遺伝子ATR2によりコードされるArabidopsis thalianaCPRまたは遺伝子CPR8によってコードされるS. rebaudiana CPRが共発現されている場合に、観察される。
図13Aは、S. cerevisiae、A. thaliana(ATR1およびATR2遺伝子由来)およびS. rebaudianaのCPRポリペプチド(CPR7およびCPR8遺伝子由来)のアミノ酸配列を含む(配列番号166~170)。
図13Bは、A. thalianaおよびS. cerevisiaeCPRポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む(配列番号171~174)。
【0046】
例えば、酵母遺伝子DPP1および/または酵母遺伝子LPP1は、ファルネシルピロリン酸(FPP)のファルネソールへの分解を低減し、かつゲラニルゲラニル二リン酸(GGPP)のゲラニルゲラニオール(GGOH)への分解を低減するように、破壊または削除することができる。代替的に、ホスファターゼをコードする内因性遺伝子のプロモーターまたはエンハンサーエレメントは、それらがコードするタンパク質の発現が改変されるように変更することができる。相同組換えを用いて、内因性遺伝子を破壊することができる。例えば「遺伝子置換」ベクターは、選択マーカー遺伝子を含むような方法で構成することができる。選択マーカー遺伝子は、5’および3’末端両方において十分な長さの遺伝子の部分に動作可能に連結して、相同組換えを媒介することができる。選択マーカーは、宿主細胞の栄養要求性を補完し、抗生物質耐性を与え、または色の変化をもたらす、任意の数の遺伝子のいずれかとすることができる。遺伝子置換ベクターの直鎖化DNA断片は次に、当技術分野で周知の方法を用いて細胞に導入される(下記参照)。ゲノムへの直鎖状断片の組込みおよび遺伝子の破壊は、選択マーカーに基づいて決定することができ、例えば、サザンブロット分析によって確認することができる。選択におけるその使用に続いて、選択マーカーは、例えば、Cre-loxPシステム(例えばGossen et al. (2002) Ann. Rev. Genetics 36:153-173および米国特許公開第20060014264号を参照)により、宿主細胞のゲノムから除去することができる。代替的に、遺伝子置換ベクターは、破壊されるべき遺伝子の一部を含むような方法で構築することができ、ここで該一部は、任意の内因性遺伝子のプロモーター配列を欠いており、遺伝子のコード配列をコードしないか、またはその不活性断片をコードする部分である。「不活性断片」は、遺伝子の完全長コード配列から産生されるタンパク質の活性の、例えば約10%未満(例えば約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、または0%)を有するタンパク質をコードする遺伝子の断片である。遺伝子のかかる部分は、既知のプロモーター配列が遺伝子配列に動作可能に連結されず、ただし停止コドンおよび転写終結配列が、遺伝子配列の一部に動作可能に連結されるような様式で、ベクターに挿入される。このベクターは、遺伝子配列の一部において続いて直鎖化され、細胞に形質転換することができる。単一の相同組換えの方法により、この直鎖化ベクターは次に、遺伝子の内因性対応物に組み込まれる。
組換え微生物におけるこれらの遺伝子の発現により、ゲラニルゲラニル二リン酸のステビオールへの変換がもたらされる。
【0047】
B.ステビオール配糖体生合成ポリペプチド
本明細書に記載の組換え宿主は、ステビオールをステビオール配糖体に変換することができる。かかる宿主(例えば微生物)は、1種または2種以上の、UGTとしても知られているUDPグリコシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子も含む。UGTは、活性化ヌクレオチド糖から、この場合はステビオールまたはステビオール誘導体の-OHまたは-COOH部分である受容体部分に、単糖ユニットを転移する。UGTは、配列相同性に基づいて、ファミリーおよびサブファミリーに分類されている。Li et al. J. Biol. Chem. 276:4338-4343 (2001)。
【0048】
B.1 ルブソシド生合成ポリペプチド
ルブソシドの生合成には、ステビオールの13-OHおよび19-COOHのグリコシル化が関与する。
図2Aを参照のこと。微生物などの組換え宿主における、ステビオールのルブソシドへの変換は、グルコース単位をステビオールの13-OHまたは19-COOHにそれぞれ転移する、UGT85C2およびUGT74G1をコードする遺伝子の発現により、達成することができる。
好適なUGT85C2は、ウリジン5’-ジホスホグルコシル:ステビオール13-OHトランスフェラーゼ、およびウリジン5’-ジホスホグルコシル:ステビオール-19-O-グリコシド13-OHトランスフェラーゼとして機能する。機能性UGT85C2ポリペプチドはまた、ステビオールとステビオール-19-O-グルコシド以外のステビオール配糖体基質を利用するグルコシルトランスフェラーゼの反応を、触媒することができる。
好適なUGT74G1ポリペプチドは、ウリジン5’-ジホスホグルコシル:ステビオール19-COOHトランスフェラーゼ、およびウリジン5’-ジホスホグルコシル:ステビオール-13-O-グリコシド19-COOHトランスフェラーゼとして機能する。機能性UGT74G1ポリペプチドはまた、ステビオールとステビオール-13-O-グルコシド以外のステビオール配糖体基質を利用する、またはウリジン二リン酸グルコース以外の受容体からの糖部分を転移する、グリコシルトランスフェラーゼの反応を、触媒することができる。
【0049】
機能性UGT74G1および機能性UGT85C2を発現する組換え微生物は、ステビオールが培地中の原料として使用されている場合、ルブソシドおよび両方のステビオールモノシド(すなわち、ステビオール13-O-モノグルコシドおよびステビオール19-O-モノグルコシド)を作ることができる。このような遺伝子の1または2以上は、宿主中に天然に存在してもよい。しかし典型的には、かかる遺伝子は、天然にそれらを有していない宿主(例えば、微生物)中に形質転換された組換え遺伝子である。
本明細書で用いる場合、組換え宿主という用語は、少なくとも1つの組み込まれたDNA配列によってそのゲノムが増強されているところの宿主を指すことを意図する。かかるDNA配列としては、限定はされないが、天然には存在しない遺伝子、通常はRNAに転写されないかまたはタンパク質に翻訳(「発現」)されないDNA配列、および非組換え宿主中に導入することが望まれるその他の遺伝子またはDNA配列を含む。典型的には、本明細書に記載の組換え宿主のゲノムは、1または2以上の組換え遺伝子の安定な導入によって増強されることが理解される。一般に、導入されたDNAは、DNAのレシピエントである宿主中に本来常在していないが、所与の宿主からのDNAセグメントを単離するために、および、続いてそのDNAの1または2以上の追加のコピーを同一の宿主に導入するために、例えば、遺伝子の産物の産生を増強または遺伝子の発現パターンを変化させるために、本発明の範囲内である。一部の例において、導入されたDNAは、例えば、相同組換えまたは部位特異的突然変異誘発によって、内因性遺伝子またはDNA配列を修飾し、または置き換えることもする。好適な組換え宿主には、微生物、植物細胞、および植物が含まれる。
【0050】
用語「組換え遺伝子」は、レシピエント宿主に導入される遺伝子またはDNA配列であって、かかる宿主に同一または類似の遺伝子またはDNA配列がすでに存在し得るか否かには関係しない。この文脈において「導入された」または「増強された」とは、当技術分野において、人の手によって導入されるかまたは増強されることを意味するとして知られている。したがって、組換え遺伝子は、別の種からのDNA配列であってもよく、または同じ種に由来するかこれに存在するDNA配列であってもよいが、組換え宿主を形成するために、組換え方法によって宿主に組み込まれている。宿主に導入された組換え遺伝子は、形質転換される宿主に通常存在するDNA配列と同一であり得ること、および、DNAの1または2以上の追加コピーを提供するために導入され、これによりそのDNAの遺伝子産物の過剰発現または修飾された発現を可能にすることが、理解される。
好適なUGT74G1およびUGT85C2ポリペプチドとしては、Stevia rebaudianaにより作られたものが含まれる。ステビアからの機能性UGT74G1およびUGT85C2ポリペプチドをコードする遺伝子は、Richman, et al. Plant J. 41: 56-67 (2005)に報告されている。S. rebaudianaのUGT74G1およびUGT85C2ポリペプチドのアミノ酸配列は、それぞれ配列番号1および3に記載されている。酵母での発現のために最適化されたUGT74G1およびUGT85C2をコードするヌクレオチド配列は、それぞれ配列番号2および4に記載されている。UGTの85C2、91D2e、74G1および76G1についてDNA2.0コドン最適化された配列は、それぞれ配列番号82、84、83および85に記載されている。以下の「機能性ホモログ」の節に記載された、UGT85C2およびUGT74G1の変異体も参照のこと。例えば、65、71、270、289および389の位置に置換を含有するUGT85C2ポリペプチドを用いることができる(例えばA65S、E71Q、T270M、Q289H、およびA389V)。
【0051】
一部の態様において、組換え宿主は微生物である。組換え微生物は、ルブソシドを生産するために、ステビオールを含有する培地上で増殖させることができる。別の態様においてはしかし、組換え微生物は、ステビオール生合成に関与する1または2以上の組換え遺伝子、例えばCDPS遺伝子、KS遺伝子、KO遺伝子および/またはKAH遺伝子を発現する。好適なCDPSポリペプチドが知られている。例えば適切なCDPS酵素には、Stevia rebaudiana、Streptomyces clavuligerus、Bradyrhizobium japonicum、Zea mays、およびArabidopsisにより作られたものが含まれる。例えば、表5および配列番号129~131、158、および160を参照。これらのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、配列番号34~39、157および159に記載されている。配列番号34~36に記載のヌクレオチド配列は、酵母での発現のために修飾された。ポリペプチドが同定されたソース生物からのヌクレオチド配列が同定され、配列番号37~39に示されている。
【0052】
一部の態様において、非修飾ポリペプチドのアミノ末端に葉緑体輸送ペプチドを欠くCDPSポリペプチドを使用することができる。例えば、
図14に示す(配列番号157)、Zea maysCDPSコード配列の5’末端からの最初の150ヌクレオチドを、除去することができる。これにより、葉緑体輸送ペプチドをコードする、
図14(配列番号158)に示すアミノ酸配列のアミノ末端の50残基が除去される。切断型CDPS遺伝子を新しいATG翻訳開始部位に取り付け、プロモーター、典型的には構成的または高発現プロモーターに、動作可能に連結することができる。切断型コード配列の複数のコピーを微生物発現に導入すると、プロモーターからのCDPSポリペプチドの発現により、ent-カウレン生合成を指向する炭素フラックスの増加がもたらされる。
【表6】
【0053】
CDPS-KS二機能性タンパク質(配列番号136および137)を使用することもできる。表6に示すCDPS-KS二機能性酵素をコードするヌクレオチド配列を、酵母での発現のために修飾した(配列番号48および配列番号49を参照)。ポリペプチドが初めに同定されたソース生物からのヌクレオチド配列は、配列番号50および51に記載されている。Gibberella fujikuroiの二機能性CDPS-KS酵素をコードするヌクレオチド配列を、酵母での発現のために修飾した(
図15A、配列番号161を参照)。
【表7】
【0054】
このように、UGT74G1とUGT85C2に加えてCDPS遺伝子、KS遺伝子、KO遺伝子およびKAH伝子を含む微生物は、ステビオールを原料として使用する必要なしに、ステビオールモノシドおよびルブソシドの両方を生産することができる。
一部の態様において、組換え微生物はさらに、ゲラニルゲラニル二リン酸合成酵素(GGPPS)をコードする組換え遺伝子を発現する。好適なGGPPSポリペプチドが知られている。例えば、好適なGGPPS酵素には、Stevia rebaudiana、Gibberella fujikuroi、Mus musculus、Thalassiosira pseudonana、Streptomyces clavuligerus、Sulfulobus acidocaldarius、Synechococcus種およびArabidopsis thalianaにより作られるものが挙げられる。表7および配列番号121~128を参照。これらのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、配列番号18~33に記載されている。配列番号18~25に記載のヌクレオチド配列を、酵母での発現のために修飾し、一方ポリペプチドが同定されたソース生物からのヌクレオチド配列は、配列番号23~26に記載されている。
【0055】
【表8】
一部の態様において、組換え微生物はさらに、ジテルペン生合成またはテルペノイド前駆体の生産に関与する組換え遺伝子、例えばメチルエリスリトール4-リン酸(MEP)経路の遺伝子または下で説明されるメバロン酸(MEV)経路の遺伝子を発現することができ、低下したホスファターゼ活性を有し、および/または本明細書で説明するように、ショ糖合成酵素(SUS)を発現する。
【0056】
B.2 レバウジオシドA、レバウジオシドD、およびレバウジオシドEの生合成ポリペプチド
レバウジオシドAの生合成には、アグリコンステビオールのグルコシル化が関与する。具体的には、レバウジオシドAは以下により形成される:ステビオールの13-OHのグルコシル化による13-O-ステビオールモノシドの形成、ステビオールモノシドの13-O-グルコースのC-2’のグルコシル化によるステビオール-1,2-ビオシドの形成、ステビオール-1,2-ビオシドのC-19カルボキシルのグルコシル化によるステビオシドの形成、およびステビオシドのC-13-O-グルコースのC-3’のグルコシル化。各グルコシル化反応が起こる順序は変えることができる。
図2Aを参照。
レバウジオシドEおよび/またはレバウジオシドDの生合成には、アグリコンステビオールのグルコシル化が関与する。具体的には、レバウジオシドEは以下により形成される:ステビオールの13-OHのグルコシル化によるステビオール-13-O-グルコシドの形成、ステビオール13-O-グルコシドの13-O-グルコースのC-2’のグルコシル化によるステビオール-1,2-ビオシドの形成、1,2-ビオシドのC-19カルボキシルのグルコシル化による1,2-ステビオシドの形成、および1,2-ステビオシドの19-O-グルコースのC-2’のグルコシル化によるレバウジオシドEの形成。レバウジオシドDは、レバウジオシドEのC-13-O-グルコースのC-3’のグルコシル化により形成される。各グルコシル化反応が起こる順序は変えることができる。例えば、19-O-グルコースのC-2’のグルコシル化は、経路の最後のステップであってもよく、ここでレバウジオシドAは経路における中間体である。
図2Cを参照。
【0057】
組換え宿主における、ステビオールのレバウジオシドA、レバウジオシドD、および/またはレバウジオシドEへの変換は、次の機能性UGT:EUGT11、74G1、85C2、および76G1、および任意に91D2を発現することによって達成できることが発見された。したがって、これらの4種または5種のUGTの組み合わせを発現する組換え微生物は、ステビオールを原料として用いる場合に、レバウジオシドAおよびレバウジオシドDを作ることができる。典型的には、これらの遺伝子の1または2以上が、天然にそれらを持たない微生物中に形質転換された組換え遺伝子である。また、本明細書においてSM12UGTと呼ぶUGTは、UGT91D2を置換可能であることも発見された。
一部の態様において、5種未満(例えば、1、2、3または4種)のUGTが、宿主中で発現される。例えば、機能性EUGT11を発現する組換え微生物は、レバウジオシドAを原料として用いた場合、レバウジオシドDを作ることができる。2種の機能性UGT、すなわちEUGT11および76G1、ならびに任意に機能性91D12を発現する組換え微生物は、ルブソシドまたは1,2-ステビオシドを原料として用いた場合、レバウジオシドDを作ることができる。別の代替案として、3種の機能性UGT、すなわちEUGT11、74G1、76G1、および任意に91D12を発現する組換え微生物は、培地中にモノシドであるステビオール-13-Oグルコシドを与えた場合に、レバウジオシドDを作ることができる。同様に、組換え微生物中での、ステビオール-19-O-グルコシドの、レバウジオシドDへの変換は、培地中にステビオール-19-O-グルコシドを与えた場合、EUGT11、85C2、76G1、および任意に91D12のUGTをコードする遺伝子の発現により、達成することができる。典型的には、これらの遺伝子の1または2以上は、天然にそれらを持たない宿主に形質転換された組換え遺伝子である。
【0058】
好適なUGT74G1およびUGT85C2ポリペプチドには、上述のものが含まれる。好適なUGT74G1は、ステビオール1,2配糖体であるアクセプター分子のC-13-O-グルコースのC-3’に、グルコース部分を付加する。従ってUGT74G1は、例えば、ウリジン5’-ジホスホグルコシル:ステビオール13-O-1,2グルコシドC-3’グルコシルトランスフェラーゼおよびウリジン5’-ジホスホグルコシル:ステビオール19-O-グルコース、13-O-1,2ビオシドC-3’グルコシルトランスフェラーゼとして機能する。機能性UGT76G1ポリペプチドはまた、グルコース以外の糖類、例えば、ステビオールラムノシドおよびステビオールキシロシドを含有するステビオール配糖体基質を利用するグルコシルトランスフェラーゼ反応を触媒することもできる。
図2A、2B、2Cおよび2Dを参照のこと。好適なUGT76G1ポリペプチドとしては、S. rebaudianaによって生産され、Richman, et al. Plant J. 41: 56-67 (2005)に報告されているものを含む。S. rebaudianaUGT76G1ポリペプチドのアミノ酸配列を、配列番号7に示す。配列番号7のUGT76G1ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を、酵母での発現のために最適化し、これを配列番号8に示す。「機能性ホモログ」の節に記載されたUGT76G1変異体も参照のこと。
【0059】
好適なEUGT11またはUGT91D2ポリペプチドは、ウリジン5’-ジホスホグルコシル:ステビオール-13-O-グルコシドトランスフェラーゼ(ステビオール-13-モノグルコシド1,2-グルコシラーゼとも呼ばれる)として機能し、グルコース部分を、アクセプター分子であるステビオール-13-O-グルコシドの13-O-グルコースのC-2’に転移する。
好適なEUGT11またはUGT91D2ポリペプチドはまた、ウリジン5’-ジホスホグルコシル:ルブソシドトランスフェラーゼとして機能し、グルコース部分を、アクセプター分子ルブソシドの13-O-グルコースのC-2’に転移して、ステビオシドを生産する。EUGT11ポリペプチドはまた、グルコース部分を、アクセプター分子ルブソシドの19-O-グルコースのC-2’に転移して、19-O-1,2-ジグリコシル化ルブソシドを生産する(
図3の化合物2)。
【0060】
機能性EUGT11またはUGT91D2ポリペプチドはまた、ステビオール13-O-グルコシドおよびルブソシド以外のステビオール配糖体基質を利用する反応を、触媒することもできる。例えば、機能性EUGT11ポリペプチドは、ステビオシドを基質として用いて、グルコース部分を19-O-グルコース残基のC-2’に転移して、レバウジオシドEを生産することができる(
図3の化合物3参照)。機能性EUGT11またはUGT91D2ポリペプチドはまた、レバウジオシドAを基質として用いて、グルコース部分をレバウジオシドAの19-O-グルコース残基のC-2’に転移して、レバウジオシドDを生産することができる。例に示すように、EUGT11は、反応を類似の条件下、すなわち、類似の時間、温度、純度およい基質濃度で実施した場合に、対応するUGT91D2e(配列番号5)の速度よりも少なくとも20倍速い速度で(例えば、少なくとも25倍または少なくとも30倍速く)、レバウジオシドAをレバウジオシドDに変換することができる。したがって、EUGT11は、類似の条件下でインキュベートされた場合に、UGT91D2eよりも大量のRebDを生産する。
さらに、機能性EUGT11は、ルブソシドまたはステビオシドを基質とする顕著なC-2’の19-O-ジグリコシル化活性を示し、一方UGT91D2eは、これらの基質を用いて、検出可能なジグリコシル化活性を有さない。したがって、機能性EUGT11はUGT91D2eから、ステビオール配糖体基質特異性の違いにより区別することができる。
図3は、EUGT11およびUGT91D2eによる、19-O-1,2ジグリコシル化反応の概略図を提供する。
【0061】
機能性EUGT11またはUGT91D2ポリペプチドは通常、グルコース部分を、C-13位置に1,3結合グルコースを有するステビオール化合物へと転移せず、すなわち、グルコース部分の、ステビオール1,3-ビオシドおよび1,3-ステビオシドへの転移は起こらない。
機能性EUGT11およびUGT91D2ポリペプチドは、ウリジン二リン酸グルコース以外の供与体からの糖部分を転移することができる。例えば、機能性EUGT11またはUGT91D2ポリペプチドは、ウリジン5’-ジホスホD-キシロシル:ステビオール-13-O-グルコシドトランスフェラーゼとして作用することができ、キシロース部分をアクセプター分子、ステビオール-13-O-グルコシドの13-O-グルコースのC-2’へと転移する。別の例として、機能性EUGT11またはUGT91D2ポリペプチドは、ウリジン5’-ジホスホL-ラムノシル:ステビオール-13-O-グルコシドトランスフェラーゼとして作用することができ、ラムノース部分をアクセプター分子、ステビオール-13-O-グルコシドの13-O-グルコースのC-2’へと転移する。
好適なEUGT11ポリペプチドは本明細書に記載されており、Oryza sativa(GenBankアクセッション番号AC133334)からのEUGT11ポリペプチドを含むことができる。例えば、EUGT11ポリペプチドは、配列番号152に記載のアミノ酸列と、少なくとも70%の配列同一性(例えば、少なくとも75、80、85、90、95、96、97、98、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を有することができる(
図7参照)。配列番号152のアミノ酸列をコードするヌクレオチド配列は、配列番号153に記載されている。配列番号154は、酵母での発現のためにコドン最適化された、配列番号152のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列である。
【0062】
適当な機能性UGT91D2ポリペプチドには、本明細書に開示されているもの、例えば、UGT91D2eおよびUGT91D2mと指定されたポリペプチドを含む。Stevia rebaudiana由来の例示的なUGT91D2eポリペプチドのアミノ酸配列を、配列番号5に示す。配列番号6は、酵母での発現のためにコドン最適化された、配列番号5のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列である。配列番号5のポリペプチドをコードするS. rebaudianaヌクレオチド配列を、配列番号9に示す。S. rebaudiana由来の例示的なUGT91D2mポリペプチドのアミノ酸配列を、配列番号10および12に示し、これらは、それぞれ配列番号11および13に示す核酸配列によりコードされる。さらに、配列番号5のアミノ酸残基206、207、および343における置換を含んでいるUGT91D2変異体を用いることができる。例えば、配列番号95に示すアミノ酸配列であって、野生型UGT92D2e(配列番号5)G206R、Y207C、およびW343Rについて次の変異を有するものを用いることができる。さらに、アミノ酸残基211および286における置換を含むUGT91D2変異体を用いることができる。例えば、UGT91D2変異体は、配列番号5(UGT91D2e-b)の位置211においてロイシンに対してメチオニンの置換を、位置286においてバリンに対してアラニンの置換を含むことができる。
【0063】
上述したように、本明細書においてSM12UGTと呼ぶUGTは、UGT91D2を置換することができる。適当な機能性SM12UGTポリペプチドとしては、Ipomoea purpurea(日本アサガオ)によって作られ、Morita et al. Plant J. 42, 353-363 (2005)に記載されているものが含まれる。I. purpureaIP3GGTポリペプチドをコードするアミノ酸配列は、配列番号76に記載される。配列番号77は、酵母での発現のためにコドン最適化された、配列番号76のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列である。別の好適なSM12UGTポリペプチドは、R25S変異を有するBp94B1ポリペプチドである。Osmani et al. Plant Phys. 148: 1295-1308 (2008)およびSawada et al. J. Biol. Chem. 280:899-906 (2005)を参照のこと。Bellis perennis(赤デイジー)UGT94B1ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号78に記載される。配列番号79は、酵母での発現のためにコドン最適化された、配列番号78のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列である。
【0064】
一部の態様において、組換え微生物は、レバウジオシドAおよび/またはレバウジオシドDを生産するために、ステビオール-13-O-グルコシドまたはステビオール-19-O-グルコシドを含有する培地上で増殖させる。かかる態様において、微生物は、機能性EUGT11、機能性UGT74G1、機能性UGT85C2、機能性UGT76G1、および任意に機能性UGT91D2をコードする遺伝子を含有してこれを発現し、ステビオール、ステビオールモノシドの一方もしくは両方、またはルブソシドを原料として用いた場合に、レバウジオシドAおよびレバウジオシドDを蓄積することができる。
別の態様において、組換え微生物は、レバウジオシドAおよび/またはレバウジオシドDを生産するために、ルブソシドを含有する培地上で増殖させる。かかる態様において、微生物は、機能性EUGT11、機能性UGT76G1、および任意に機能性UGT91D2をコードする遺伝子を含有してこれを発現し、ルブソシドを原料として用いた場合に、レバウジオシドAおよび/またはレバウジオシドDを生産することができる。
【0065】
別の態様において、組換え微生物は、ステビオール生合成に関与する1または2種以上の遺伝子、例えばCDPS遺伝子、KS遺伝子、KO遺伝子および/またはKAH遺伝子を発現する。したがって、例えば、CDPS遺伝子、KS遺伝子、KO遺伝子およびKAH遺伝子を、EUGT11、UGT74G1、UGT85C2、UGT76G1、および任意に機能性UGT91D2(例えば、UGT91D2e)に加えて含んでいる微生物は、培養培地中にステビオールを含む必要なしに、レバウジオシドA、レバウジオシドD、および/またはレバウジオシドEを生産することができる。
一部の態様において、組換え宿主はさらに、ジテルペン前駆体ゲラニルゲラニル二リン酸のレベルを上昇させて、ステビオール生合成経路を通るフラックスを増加させるために、組換えGGPPS遺伝子を含んでこれを発現する。一部の態様において、組換え宿主はさらに、ゲラニルゲラニル二リン酸、ent-カウレン酸またはファルネシルピロリン酸を消費する非ステビオール経路の発現を抑制するコンストラクトを含み、これにより、ステビオールおよびステビオール配糖体生合成経路を通るフラックスを増加させる。例えば、エルゴステロールなどのステロール生産経路へのフラックスは、ERG9遺伝子の下方制御により低減することができる。以下のERG9の節および例24~25を参照。ジベレリンを産生する細胞では、ジベレリン合成を下方制御して、ent-カウレン酸のステビオールへのフラックスを増加することができる。カロテノイド産生生物では、ステビオールへのフラックスは、1または2以上のカロテノイド生合成遺伝子の下方制御によって増加することができる。一部の態様において、組換え微生物はさらに、ジテルペン生合成またはテルペノイド前駆体の生産に関与する組換え遺伝子、例えば下記のMEPまたはMEV経路の遺伝子を発現することができ、低下したホスファターゼ活性を有し、および/または本明細書に説明するようにSUSを発現する。
【0066】
当業者は、異なるUGT遺伝子の相対的発現レベルを調節することにより、組換え宿主が、ステビオール配糖体生成物を所望の割合で特異的に生産するように、調整できることを認識する。ステビオール生合成遺伝子およびステビオール配糖体生合成遺伝子の転写調節は、当業者に周知の技術を用いて、転写活性化と抑制との組み合わせによって達成することができる。in vitroでの反応では、当業者は、UGT酵素の様々なレベルの組み合わせを加えることで、または異なるUGTSの組み合わせの相対的活性に影響を及ぼす条件下で、合成を、各ステビオール配糖体の所望の割合に指向させることを認識する。当業者は、レバウジオシドDまたはEのより高い割合、またはレバウジオシドDまたはEへのより効率的な変換は、13-O-グルコシド反応(基質レバウジオシドAおよびステビオシド)と比較して、19-O-グルコシド反応についてのより高い活性を有するジグリコシル化酵素により、得ることができる。
【0067】
一部の態様において、微生物などの組換え宿主はレバウジオシドD富化ステビオール配糖体組成物を生産し、これは、総ステビオール配糖体の重量の少なくとも3%より多くのレバウジオシドD、例えば、少なくとも4%のレバウジオシドD、少なくとも5%のレバウジオシドD、10~20%のレバウジオシドD、20~30%のレバウジオシドD、30~40%のレバウジオシドD、40~50%のレバウジオシドD、50~60%のレバウジオシドD、60~70%のレバウジオシドD、70~80%のレバウジオシドDを有するものである。一部の態様において、微生物などの組換え宿主は、少なくとも90%のレバウジオシドD、例えば、90~99%のレバウジオシドDを有する、ステビオール配糖体組成物を生産する。存在するその他のステビオール配糖体としては、
図2Cに示すもの、例えばステビオールモノシド、ステビオールグルコビオシド、レバウジオシドA、レバウジオシドE、およびステビオシドが挙げられる。一部の態様において、宿主(例えば微生物)により生産されたレバウジオシドD富化組成物はさらに精製され、こうして精製されたレバウジオシドDまたはレバウジオシドEは次に、他のステビオール配糖体、香料、または甘味剤と混合することができて、望ましい香料系または甘味料組成物を得る。例えば、組換え宿主により生産されたレバウジオシドD富化組成物は、異なる組換え宿主により生産されたレバウジオシドA-、C-、またはF-富化組成物と組み合わせることができ、ここでレバウジオシドA、F、またはCは、ステビア抽出物から精製されたか、またはin vitroで生産されたものである。
【0068】
一部の態様において、レバウジオシドA、レバウジオシドD、レバウジオシドB、ステビオールモノグルコシド、ステビオール-1,2-ビオシド、ルブソシド、ステビオシド、またはレバウジオシドEは、適切なUDP-糖および/またはUDP-糖の再生のための無細胞系を供給しつつ、in vitroの方法を用いて生産することができる。例えば、Jewett MC, et al. Molecular Systems Biology, Vol. 4, article 220 (2008);Masada S et al. FEBS Letters, Vol. 581, 2562-2566 (2007)を参照。一部の態様において、ショ糖およびショ糖合成酵素は、グリコシル化反応の間に生成されたUDPからUDP-グルコースを再生するために、反応槽内に供給してもよい。
図11を参照。ショ糖合成酵素は、任意の適切な生物に由来することができる。例えば、Arabidopsis thaliana、Stevia rebaudianaまたはCoffea arabicaからのショ糖合成酵素コード配列を、適切なプロモーターの制御下で発現プラスミドにクローニングし、例えば微生物または植物などの宿主中で発現することができる。
【0069】
複数の反応を必要とする変換は、同時にまたは段階的に実施することができる。例えば、レバウジオシドDは、濃縮抽出物として市販されているかまたは生合成を介して生産されたレバウジオシドAから、UDP-グルコースおよびEUGT11の理論量または過剰量を添加して、生産することができる。代替として、レバウジオシドDは、EUGT11および好適なUGT76G1酵素を用いて、ステビオシドおよびレバウジオシドAについて富化されたステビオール配糖体抽出物から生産することができる。一部の態様において、ホスファターゼは、二次生成物を除去し、反応収率を改善するために使用される。in vitro反応のためのUGTおよび他の酵素は、可溶性形態または固定化形態で提供することができる。
【0070】
一部の態様において、レバウジオシドA、レバウジオシドD、またはレバウジオシドEは、植物抽出物由来のステビオール配糖体の混合物を含むステビオールおよび/またはステビオール配糖体などの前駆体分子を含有する原材料を供給された全細胞を用いて、生産することができる。原材料は、細胞増殖中または細胞増殖の後に供給することができる。全細胞は懸濁液中にあるか、または固定化することができる。全細胞は、例えば、アルギン酸カルシウムビーズまたはアルギン酸ナトリウムビーズなどのビーズに捕捉されていてもよい。全細胞は、中空繊維管反応器系に連結されてもよい。全細胞を濃縮し、膜反応器系内に封入してもよい。全細胞は、発酵ブロス中または反応緩衝液中であってもよい。一部の態様において、透過化剤は、基質の細胞内への効率的転移のために利用される。一部の態様において、細胞を、トルエンなどの溶媒、またはTriton-XまたはTweenなどの洗浄剤を用いて透過化処理する。一部の態様において、細胞を、界面活性剤、例えば臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)などのカチオン性界面活性剤で透過化処理する。一部の態様において、細胞を、エレクトロポレーションまたはわずかな浸透圧ショックなどの周期的な機械的ショックにより透過化処理する。細胞は1種の組換えUGTまたは複数の組換えUGTを含むことができる。例えば、細胞は、ステビオシドとRebAの混合物が効率的にRebDに変換されるように、UGT 76G1とEUGT11を含むことができる。一部の態様において、全細胞は、第IIIA節に記載の宿主細胞である。一部の態様において、全細胞は、E. coliなどのグラム陰性細菌である。一部の態様において、全細胞は、例えばBacillusなどのグラム陽性細菌である。一部の態様において、全細胞は、例えばAspergillusなどの真菌種、またはSaccharomycesなどの酵母である。一部の態様において、用語「全細胞生体触媒」とは、上記のように全細胞を増殖させて(例えば、培地中に、および任意に透過化処理して)rebAまたはステビオシド等の基質を提供し、細胞からの酵素を用いて最終産物に変換するようなプロセスを指すために用いられる。細胞は、生存可能であってもなくてもよいし、生物変換反応の間に増殖しても、しなくてもよい。対照的に発酵では、細胞は増殖培地で培養され、炭素およびグルコースなどのエネルギー源が供給され、最終産物は生細胞で産生される。
【0071】
B.3 ズルコシドAおよびレバウジオシドCの生合成ポリペプチド
レバウジオシドCおよび/またはズルコシドAの生合成には、アグリコンステビオールのグルコシル化およびラムノシル化が関与する。具体的には、ズルコシドAは以下により形成することができる:ステビオールの13-OHのグルコシル化によるステビオール-13-O-グルコシドの形成、ステビオール-13-O-グルコシドの13-O-グルコシドのC-2’のラムノシル化による1,2ラムノビオシドの形成、および1,2ラムノビオシドのC-19カルボキシルのグルコシル化。レバウジオシドCは、ズルコシドAのC-13-O-グルコ-スのC-3’のグルコシル化により形成することができる。各グリコシル化反応が起こる順序は変えることができる。
図2Bを参照。
【0072】
組換え宿主における、ステビオールのズルコシドAへの変換は、次の機能性UGT:85C2、EUGT11および/または91D2e、および74G1をコードする遺伝子(単数または複数)の発現によって達成できることが発見された。したがって、これらの3種または4種のUGTおよびラムノース合成酵素を発現する組換え微生物は、培地中にステビオールを供給した場合、ズルコシドAを作ることができる。代替的に、2種のUGT、すなわちEUGT11と74G1、およびラムノース合成酵素を発現する組換え微生物は、モノシド、ステビオール-13-O-グルコシドまたはステビオール-19-O-グルコシドを培地中に供給した場合に、ズルコシドAを生産することができる。同様に、組換え微生物におけるステビオールのレバウジオシドCへの変換は、ステビオールを供給する場合は、UGTである85C2、EUGT11、74G1、76G1、任意に91D2、およびラムノース合成酵素をコードする遺伝子(単数または複数)の発現により;ステビオール-13-O-グルコシドを供給する場合は、UGTであるEUGT11、および/または91D2、74G1、および76G1、およびラムノース合成酵素をコードする遺伝子の発現により;ステビオール-19-O-グルコシドを供給する場合は、UGTである85C2、EUGT11、および/または91D2e、76G1、およびラムノース合成酵素をコードする遺伝子の発現により;または、ルブソシドを供給する場合は、UGTであるEUGT11、および/または91D2e、76G1、およびラムノース合成酵素をコードする遺伝子の発現により、達成することができる。典型的には、これらの遺伝子の1または2以上は、天然にそれらを持たない微生物中に形質転換された組換え遺伝子である。
【0073】
好適なEUGT11、UGT91D2、UGT74G1、UGT76G1およびUGT85C2ポリペプチドとしては、本明細書に記載の機能性UGTポリペプチドが含まれる。ラムノース合成酵素は、ステビオール化合物受容体のラムノシル化のためのUDP-ラムノース供与体の量を増加させる。適切なラムノース合成酵素には、Arabidopsis thalianaにより作られたものを含み、例えばA. thalianaRHM2遺伝子の産物である。
一部の態様において、UGT79B3ポリペプチドは、UGT91D2ポリペプチドを置換する。好適なUGT79B3ポリペプチドには、Arabidopsis thalianaにより作られたものを含み、これらはステビオール13-Oモノシドをin vitroでラムノシル化することができる。A. thalianaUGT79B3は、グルコシル化化合物をラムノシル化して、1,2-ラムノシドを形成することができる。Arabidopsis thalianaのUGT79B3のアミノ酸配列を配列番号150に示す。配列番号150のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を、配列番号151に示す。
【0074】
一部の態様において、レバウジオシドCは、UDP-糖の再生のための適切なUDP-糖および/または無細胞系を供給しつつ、in vitroの方法を用いて生産することができる。例えば、Jewett MC, Calhoun KA, Voloshin A, Wuu JJおよびSwartz JRによる、“An integrated cell-free metabolic platform for protein production and synthetic biology” in Molecular Systems Biology, 4, article 220 (2008)およびMasada S et al. FEBS Letters, Vol. 581, 2562-2566 (2007)などを参照。一部の態様において、ショ糖およびショ糖合成酵素を、グリコシル化反応の間にUDPからUDP-グルコースを再生するために、反応槽内に供給してもよい。
図11を参照のこと。ショ糖合成酵素は、任意の適切な生物に由来することができる。例えば、Arabidopsis thaliana、Stevia rebaudianaまたはCoffea arabicaからのショ糖合成酵素コード配列を、適切なプロモーターの制御下で発現プラスミドにクローニングし、宿主(例えば、微生物または植物)において発現することができる。一部の態様において、RHM2酵素(ラムノース合成酵素)をNADPHと共に供給して、UDP-グルコースからUDP-ラムノースを生成することができる。
【0075】
反応は、同時にまたは段階的に行うことができる。例えば、レバウジオシドCは、理論量のUDP-ラムノースおよびEUGT11の添加と、続くUGT76G1および理論量または過剰なUDP-グルコースの添加により、生産することができる。一部の態様において、ホスファターゼを用いて二次生成物を除去し、反応収率を改善する。in vitro反応のためのUGTおよび他の酵素は、可溶性形態または固定化形態で提供することができる。一部の態様において、レバウジオシドC、ズルコシドA、または他のステビオールラムノシドは、上述のように全細胞を用いて生産することができる。細胞は、1つの組換えUGTまたは複数の組換えUGTを含むことができる。例えば、細胞は、ステビオシドとRebAの混合物が効率的にRebDに変換されるように、UGT76G1とEUGT11を含むことができる。一部の態様において、全細胞は、第IIIA節に記載された宿主細胞である。
他の態様において、組換え宿主は、ステビオール生合成に関与する1種または2種以上の遺伝子、例えばCDPS遺伝子、KS遺伝子、KO遺伝子および/またはKAH遺伝子を発現する。したがって、例えば、CDPS遺伝子、KS遺伝子、KO遺伝子およびKAH遺伝子を、UGT85C2、UGT74G1、EUGT11遺伝子、任意にUGT91D2e遺伝子、およびUGT76G1遺伝子に加えて含んでいる微生物は、培養培地中にステビオールを含む必要なしに、レバウジオシドCを生産することができる。さらに、組換え宿主は典型的には、ラムノース合成酵素をコードする内因性または組換え遺伝子を発現する。かかる遺伝子は、ステビオール化合物受容体のラムノシル化のためのUDP-ラムノース供与体の増加した量を提供するのに有用である。適切なラムノース合成酵素としては、A. thaliana RHM2遺伝子の産物などの、Arabidopsis thalianaによって作られたものが含まれる。
【0076】
当業者は、異なるUGT遺伝子の相対的発現レベルを調節すること、およびUDP-ラムノースの利用可能性を調節することにより、組換え宿主が、ステビオール配糖体生成物を所望の割合で特異的に生産するように、調整できることを認識する。ステビオール生合成遺伝子およびステビオール配糖体生合成遺伝子の転写調節は、当業者に周知の技術を用いて、転写活性化と抑制との組み合わせにより達成することができる。in vitroでの反応では、当業者は、UGT酵素の様々なレベルの組み合わせを加えることで、または異なるUGTSの組み合わせの相対的活性に影響を及ぼす条件下で、合成を、各ステビオール配糖体の所望の割合に指向させることを認識する。
一部の態様において、組換え宿主はさらに、ジテルペン前駆体ゲラニルゲラニル二リン酸のレベルを上昇させてレバウジオシドA生合成経路を通るフラックスを増加させるために、組換えGGPPS遺伝子を含みこれを発現する。一部の態様において、組換え宿主はさらに、ゲラニルゲラニル二リン酸、ent-カウレン酸またはファルネシルピロリン酸を消費する非ステビオール経路の発現を抑制または低減するコンストラクトをさらに含み、これにより、ステビオールおよびテビオール配糖体の生合成経路を介してフラックスを増加させる。例えば、エルゴステロールなどのステロール生産経路へのフラックスは、ERG9遺伝子の下方制御により低減することができる。以下のERG9の節および例24~25を参照。ジベレリンを産生する細胞では、ジベレリン合成を下方制御して、ent-カウレン酸のステビオールへのフラックスを増加することができる。カロテノイド生産生物において、ステビオールへのフラックスは、1または2以上のカロテノイド生合成遺伝子の下方制御によって増加することができる。
【0077】
一部の態様において、組換え宿主はさらに、ジテルペン生合成またはテルペノイド前駆体の生産に関与する組換え遺伝子、例えばMEPまたはMEV経路における遺伝子を含んでこれを発現し、低下したホスファターゼ活性を有し、および/または本明細書に説明するようにSUSを発現する。
一部の態様において、微生物などの組換え宿主は、総ステビオール配糖体に対して少なくとも15%より多くのレバウジオシドCを、例えば少なくとも20%のレバウジオシドC、30~40%のレバウジオシドC、40~50%のレバウジオシドC、50~60%のレバウジオシドC、60~70%のレバウジオシドC、70~80%のレバウジオシドC、80~90%のレバウジオシドCを有するステビオール配糖体組成物を生産する。一部の態様において、微生物などの組換え宿主は、少なくとも90%のレバウジオシドCを、例えば90~99%のレバウジオシドCを有するステビオール配糖体組成物を生産する。存在するその他のステビオール配糖体としては、
図2AおよびBに示されているもの、例えばステビオールモノシド、ステビオールグルコビオシド、ステビオールラムノビオシド、レバウジオシドA、およびズルコシドAを含んでよい。一部の態様において、宿主により生産されたレバウジオシドC富化組成物はさらに精製され、こうして精製されたレバウジオシドCまたはズルコシドAは次に、他のステビオール配糖体、香料、または甘味剤と混合されて、所望のフレーバー系または甘味組成物を得る。例えば、組換え微生物により生産されたレバウジオシドC富化組成物は、異なる組換え微生物によって生産されたレバウジオシドA、FまたはDが富化された組成物と、ステビア抽出物から精製されたレバウジオシドA、FまたはDと、またはin vitroで生産されたレバウジオシドA、FまたはDと、組み合わせることができる。
【0078】
B.4 レバウジオシドF生合成ポリペプチド
レバウジオシドFの生合成には、アグリコンステビオールのグルコシル化およびキシロシル化が関与する。具体的には、レバウジオシドFは、以下により形成される:ステビオールの13-OHのグルコシル化による、ステビオール-13-O-グルコシドの形成、ステビオール-13-O-グルコシドの13-O-グルコースのC-2’のキシロシル化による、ステビオール-1,2-キシロビオシドの形成、1,2-キシロビオシドのC-19カルボキシルのグルコシル化による、1,2-ステビオキシロシドの形成、および1,2-ステビオキシロシドのC-13-O-グルコースのC-3’のグルコシル化による、レバウジオシドFの形成。各グルコシル化反応が起こる順序は変えることができる。
図2Dを参照。
組換え宿主におけるステビオールのレバウジオシドFへの変換は、以下の機能性UGT:85C2、EUGT11、および/または91D2e、74G1、および76G1をコードする遺伝子を、内因性または組換え発現されたUDP-グルコースデヒドロゲナーゼおよびUDP-グルクロン酸デカルボキシラーゼと共に発現することによって達成できることが発見された。したがって、これらの4種または5種のUGTを内因性または組換えUDP-グルコースデヒドロゲナーゼおよびUDP-グルクロン酸デカルボキシラーゼと共に発現する組換え微生物は、培地中にステビオールを供給した場合に、レバウジオシドFを作ることができる。代替的に、2種の機能性UGT、EUGT11または91D2e、および76G1を発現する組換え微生物は、培地中にルブソシドを供給した場合に、レバウジオシドFを作ることができる。別の代替案として、機能性UGT76G1を発現する組換え微生物は、1,2-ステビオラムノシドを供給した場合に、レバウジオシドFを作ることができる。別の代替案として、76G1、EUGT11および/または91D2e、76G1を発現する組換え微生物は、培地中にモノシド、ステビオール-13-O-グルコシドを供給した場合に、レバウジオシドFを作ることができる。同様に、組換え微生物における、ステビオール-19-O-グルコシドのレバウジオシドFへの変換は、ステビオール-19-O-グルコシドを供給した場合、UGTである85C2、EUGT11、および/または91D2e、および76G1をコードする遺伝子の発現により達成することができる。典型的には、これらの遺伝子の1または2以上は、天然にそれらを持たない宿主中に形質転換された組換え遺伝子である。
【0079】
好適なEUGT11、UGT91D2、UGT74G1、UGT76G1およびUGT85C2ポリペプチドには、本明細書に記載の機能性UGTポリペプチドが含まれる。一部の態様において、上述のように、UGT79B3ポリペプチドはUGT91を置換する。UDP-グルコースデヒドロゲナーゼおよびUDP-グルクロン酸デカルボキシラーゼは、ステビオール化合物受容体のキシロシル化のためのUDP-キシロース供与体の量を増加させる。好適なUDP-グルコースデヒドロゲナーゼおよびUDP-グルクロン酸デカルボキシラーゼとしては、Arabidopsis thalianaまたはCryptococcus neoformansによって作られたものが含まれる。例えば、好適なUDP-グルコースデヒドロゲナーゼおよびUDP-グルクロン酸デカルボキシラーゼポリペプチドは、それぞれ、A. thalianaのUGD1遺伝子およびUXS3遺伝子によってコードされることができる。Oka and Jigami,
FEBS J. 273:2645-2657 (2006)を参照。
一部の態様において、レバウジオシドFは、UDP-糖の再生のための適切なUDP-糖および/または無細胞系を供給しつつ、in vitroの方法を用いて生産することができる。例えば、Jewett MC, et al.
Molecular Systems Biology, Vol. 4, article 220 (2008);Masada S et al.
FEBS Letters, Vol. 581, 2562-2566 (2007)を参照。一部の態様において、ショ糖およびショ糖合成酵素を、グリコシル化反応の間にUDPからUDP-グルコースを再生するために、反応槽内に供給してもよい。
図11を参照のこと。ショ糖合成酵素は、任意の適切な生物に由来することができる。例えば、Arabidopsis thaliana、Stevia rebaudianaまたはCoffea arabicaからのショ糖合成酵素コード配列を、適切なプロモーターの制御下で発現プラスミドにクローニングし、宿主(例えば、微生物または植物)において発現することができる。一部の態様において、適切な酵素、例えばArabidopsis thalianaのUGD1(UDP-グルコースデヒドロゲナーゼ)およびUXS3(UDP-グルクロン酸デカルボキシラーゼ)酵素をNAD+補因子と共に供給することにより、UDP-キシロースをUDP-グルコースから生産することができる。
【0080】
反応は、同時にまたは段階的に行うことができる。例えば、レバウジオシドFは、ルブソシドから、理論量のUDP-キシロースおよびEUGT11の添加と、続いてUGT76G1および過剰または理論量のUDP-グルコースの添加により、生産することができる。一部の態様において、ホスファターゼを用いて二次生成物を除去し、反応収率を改善する。in vitro反応のためのUGTおよび他の酵素は、可溶性形態または固定化形態で提供することができる。一部の態様において、レバウジオシドFまたは他のステビオールキシロシドは、上述のように全細胞を用いて生産することができる。例えば、細胞は、ステビオシドとRebAの混合物が効率的にRebDに変換されるように、UGT76G1およびEUGT11を含むことができる。一部の態様において、全細胞は、第IIIA節に記載された宿主細胞である。
他の態様において、組換え宿主は、ステビオール生合成に関与する1種または2種以上の遺伝子、例えばCDPS遺伝子、KS遺伝子、KO遺伝子および/またはKAH遺伝子を発現する。したがって、例えば、CDPS遺伝子、KS遺伝子、KO遺伝子およびKAH遺伝子を、EUGT11、UGT85C2、UGT74G1、任意にUGT91D2e遺伝子、およびUGT76G1遺伝子に加えて含んでいる微生物は、培養培地中にステビオールを含む必要なしに、レバウジオシドFを生産することができる。さらに、組換え宿主は典型的には、UDP-グルコースデヒドロゲナーゼおよびUDP-グルクロン酸デカルボキシラーゼをコードする内因性または組換え遺伝子を発現する。かかる遺伝子は、ステビオール化合物受容体のキシロシル化のためのUDP-キシロース供与体の増加した量を提供するのに有用である。適切なUDP-グルコースデヒドロゲナーゼおよびUDP-グルクロン酸デカルボキシラーゼとしては、Arabidopsis thaliana またはCryptococcus neoformansによって作られたものが含まれる。例えば、適切なUDP-グルコースデヒドロゲナーゼおよびUDP-グルクロン酸デカルボキシラーゼポリペプチドは、それぞれ、A. thalianaのUGD1遺伝子およびUXS3遺伝子によってコードされることができる。Oka and Jigami, FEBS J. 273:2645-2657 (2006)を参照。
【0081】
当業者は、異なるUGT遺伝子の相対的発現レベルを調節すること、およびUDP-キシロースの利用可能性を調節することにより、組換え宿主が、ステビオール配糖体生成物を所望の割合で特異的に生産するように、調整できることを認識する。ステビオール生合成遺伝子の転写調節は、当業者に周知の技術を用いて、転写活性化と抑制との組み合わせによって達成することができる。in vitroでの反応では、当業者は、UGT酵素の様々なレベルの組み合わせを加えることで、または異なるUGTSの組み合わせの相対的活性に影響を及ぼす条件下で、合成を、各ステビオール配糖体の所望の割合に指向させることを認識する。
一部の態様において、組換え宿主はさらに、ジテルペン前駆体ゲラニルゲラニル二リン酸のレベルを上昇させてレバウジオシドA生合成経路を通るフラックスを増加させるために、組換えGGPPS遺伝子を含んでこれを発現する。一部の態様において、組換え宿主はさらに、ゲラニルゲラニル二リン酸、ent-カウレン酸またはファルネシルピロリン酸を消費する非ステビオール経路の発現を抑制するコンストラクトをさらに含み、これにより、ステビオールおよびテビオール配糖体の生合成経路を介してフラックスを増加させる。例えば、エルゴステロールなどのステロール生産経路へのフラックスは、ERG9遺伝子の下方制御により低減することができる。以下のERG9の節および例24~25を参照。ジベレリンを生産する細胞では、ジベレリン合成を下方制御して、ent-カウレン酸のステビオールへのフラックスを増加することができる。カロテノイド生産生物において、ステビオールへのフラックスは、1または2以上のカロテノイド生合成遺伝子の下方制御によって増加することができる。一部の態様において、組換え宿主はさらに、ジテルペン生合成に関与する組換え遺伝子、例えば下記のMEP経路の遺伝子を含み、これを発現する。
【0082】
一部の態様において、微生物などの組換え宿主はレバウジオシドF富化ステビオール配糖体組成物を生産し、これは、総ステビオール配糖体の重量に対して少なくとも4%より多くのレバウジオシドFを、例えば少なくとも5%のレバウジオシドF、少なくとも6%のレバウジオシドF、10~20%のレバウジオシドF、20~30%のレバウジオシドF、30~40%のレバウジオシドF、40~50%のレバウジオシドF、50~60%のレバウジオシドF、60~70%のレバウジオシドF、70~80%のレバウジオシドFを有するものである。一部の態様において、微生物などの組換え宿主は、少なくとも90%のレバウジオシドFを、例えば90~99%のレバウジオシドFを有するステビオール配糖体組成物を生産する。存在するその他のステビオール配糖体としては、
図2AおよびDに示されているもの、例えばステビオールモノシド、ステビオールグルコビオシド、ステビオールキシロビオシド、レバウジオシドA、ステビオキシロシド、ルブソシドおよびステビオシドを含んでよい。一部の態様において、宿主により生産されたレバウジオシドF富化組成物は、他のステビオール配糖体、香料、または甘味剤と混合して、所望のフレーバー系または甘味組成物を得る。例えば、組換え微生物により生産されたレバウジオシドF富化組成物は、異なる組換え微生物によって生産されたレバウジオシドA、CまたはDが富化された組成物と、ステビア抽出物から精製されたレバウジオシドA、CまたはDと、またはin vitroで生産されたレバウジオシドA、CまたはDと、組み合わせることができる。
【0083】
C.その他のポリペプチド
ステビオールまたはステビオール配糖体のより効率的またはより大規模な生産をその発現が促進するところの追加のポリペプチドに対する遺伝子も、組換え宿主に導入することができる。例えば、組換え微生物、植物、または植物細胞はまた、ゲラニルゲラニル二リン酸合成酵素(GGPPSまたはGGDPSと称される)をコードする1または2以上の遺伝子も含有することができる。別の例として、組換え宿主は、ラムノース合成酵素をコードする1または2以上の遺伝子、またはUDP-グルコースデヒドロゲナーゼおよび/またはUDP-グルクロン酸デカルボキシラーゼをコードする1または2以上の遺伝子を、含有することができる。別の例として、組換え宿主はまた、シトクロムP450還元酵素(CPR)をコードする1または2以上の遺伝子を含有することができる。組換えCPRの発現は、NADP+の循環を促進してNADPHを再生し、これはテルペノイド生合成のための補因子として利用される。他の方法もNADHPレベルを再生するために使用することができる。NADPHが制限的となる状況において、株はさらに、外因性トランスヒドロゲナーゼ遺伝子を含むように修飾することができる。例えば、Sauer et al., J. Biol. Chem. 279: 6613-6619 (2004)を参照。所望の補因子レベルが増大されるように、NADH/NADPHの比率を低下するかまたはその他で変更するための他の方法は、当業者に周知である。
別の例として、組換え宿主は、MEP経路またはメバロン酸経路における1または2以上の酵素をコードする1または2以上の遺伝子を含有することができる。かかる遺伝子は有用であり、その理由は、ジテルペン生合成経路への炭素のフラックスを増加させることができて、ゲラニルゲラニル二リン酸をイソペンテニル二リン酸から、およびジメチルアリル二リン酸を経路により生産するからである。こうして生産されたゲラニルゲラニル二リン酸は、ステビオール生合成ポリペプチドおよびステビオール配糖体生合成ポリペプチドの発現により、ステビオールおよびステビオール配糖体生合成へと指向される。
【0084】
別の例として、組換え宿主は、ショ糖合成酵素をコードする1または2以上の遺伝子を含むことができ、さらに、所望によりショ糖取り込み遺伝子を含有することができる。ショ糖合成酵素反応は、発酵宿主においてまたは全細胞生物変換プロセス中での、UDP-グルコースプールを増加するために使用することができる。これは、グリコシル化の間に生産されたUDPおよびショ糖からUDP-グルコースを再生し、効率的なグリコシル化を可能にする。一部の生物において、内因性インベルターゼの破壊は、ショ糖の分解を防止するのに有利である。例えば、S. cerevisiaeSUC2インベルターゼが破壊されてよい。ショ糖合成酵素(SUS)は、任意の適切な生物由来であり得る。例えば、限定はされないが、Arabidopsis thaliana、Stevia rebaudianaまたはCoffea arabicaからのショ糖合成酵素コード配列を、適切なプロモーターの制御下で発現プラスミドにクローニングすることができ、宿主(例えば、微生物または植物)において発現される。ショ糖合成酵素はかかる株において、ショ糖トランスポーター(例えば、A. thaliana SUC1トランスポーターまたはその機能性ホモログ)および1または2以上のUGT(例えば、UGT85C2、UGT74G1、UGT76G1、およびUGT91D2e、EUGT11またはその機能性ホモログの1または2以上)と組み合わせて、発現することができる。ショ糖を含む培地中で宿主を培養することは、UDP-グルコースだけでなく、1または2以上のグルコシド(例えばステビオール配糖体)の生産を促進することができる。
さらに、本明細書で説明するように、組換え宿主は低下したホスファターゼ活性を有し得る。
【0085】
C.1 MEP生合成ポリペプチド
一部の態様において、組換え宿主は、イソプレノイド生合成のためのメチルエリスリトール4-リン酸(MEP)経路に関与する酵素をコードする1または2以上の遺伝子を含む。MEP経路の酵素としては、デオキシキシルロース5-リン酸合成酵素(DXS)、D-1-デオキシキシルロース5-リン酸レダクトイソメラーゼ(DXR)、4-ジホスホシチジル-2-C-メチル-D-エリスリトール合成酵素(CMS)、4-ジホスホシチジル-2-C-メチル-D-エリスリトールキナーゼ(CMK)、4-ジホスホシチジル-2-C-メチル-D-エリスリトール2,4-シクロ二リン酸合成酵素(MCS)、1-ヒドロキシ-2-メチル-2(E)-ブテニル4-二リン酸合成酵素(HDS)および1-ヒドロキシ-2-メチル-2(E)-ブテニル-4-二リン酸合成酵素(HDR)を含む。1または2以上のDXS遺伝子、DXR遺伝子、CMS遺伝子、CMK遺伝子、MCS遺伝子、HDS遺伝子および/またはHDR遺伝子を、組換え微生物に組み込むことができる。Rodriguez-Concepcion and Boronat, Plant Phys. 130: 1079-1089 (2002)を参照。
DXS、DXR、CMS、CMK、MCS、HDSおよび/またはHDRポリペプチドをコードする適切な遺伝子としては、E. coli、Arabidopsis thalianaおよびSynechococcus leopoliensisによって作られるものが含まれる。DXRポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、例えば米国特許第7335815号に記載されている。
【0086】
C.2 メバロン酸生合成ポリペプチド
一部の態様において、組換え宿主は、イソプレノイド生合成のためのメバロン酸経路に関与する酵素をコードする1または2以上の遺伝子を含む。宿主への形質転換に適した遺伝子は、メバロン酸経路における酵素をコードし、例えば、切断型3-ヒドロキシ-3-メチル-グルタリル(HMG)CoA還元酵素(tHMG)、および/またはメバロン酸キナーゼ(MK)をコードする遺伝子、および/またはホスホメバロン酸キナーゼ(PMK)をコードする遺伝子、および/またはメバロン酸ピロリン酸デカルボキシラーゼ(MPPD)をコードする遺伝子である。したがって、1または2以上のHMG-CoA還元酵素遺伝子、MK遺伝子、PMK遺伝子、および/またはMPPD遺伝子は、微生物などの組換え宿主に組み込むことができる。
メバロン酸経路ポリペプチドをコードする適切な遺伝子が知られている。例えば、適切なポリペプチドとしては、E. coli、Paracoccus denitrificans、Saccharomyces cerevisiae、Arabidopsis thaliana、Kitasatospora griseola、Homo sapiens、Drosophila melanogaster、Gallus gallus, Streptomyces種KO-3988、Nicotiana attenuata、Kitasatospora griseola、Hevea brasiliensis、 Enterococcus faecium、およびHaematococcus pluvialisにより作られたものを含む。例えば、表8および米国特許第7,183,089号、第5,460,949号、および第5,306,862号を参照。
【表9】
【0087】
C.3 ショ糖合成酵素ポリペプチド
ショ糖合成酵素(SUS)は、UDP-糖を生成するためのツールとして使用することができる。SUS(EC 2.4.1.13)は、UDP-グルコースおよび果糖の、ショ糖およびUDPからの形成を触媒する(
図11)。したがってUGTの反応により生成されたUDPは、ショ糖の存在下でUDP-グルコースに変換することができる。例えば、Chen et al. (2001) J. Am. Chem. Soc. 123:8866-8867;Shao et al. (2003) Appl. Env. Microbiol. 69:5238-5242;Masada et al. (2007) FEBS Lett. 581:2562-2566;およびSon et al. (2009) J. Microbiol. Biotechnol. 19:709-712を参照。
ショ糖合成酵素は、UDP-グルコースを生成してUDPを除去するために使用することができ、様々な系における化合物の効率的なグリコシル化を促進する。例えば、ショ糖を利用する能力が欠損した酵母を、ショ糖トランスポーターおよびSUSを導入することにより、ショ糖上で増殖させることができる。例えば、Saccharomyces cerevisiaeは効率的なショ糖取り込み系を有さず、ショ糖の利用には細胞外SUC2に依存する。内因性のS. cerevisiae SUC2インベルターゼを破壊することと組換えSUSを発現することの組み合わせは、細胞外ではなく細胞内のショ糖を代謝可能な酵母株をもたらした(Riesmeier et al. ((1992) EMBO J. 11:4705-4713)。この株は、cDNA発現ライブラリによる形質転換および、ショ糖を取り込む能力を得た形質転換体の選択によって、ショ糖トランスポーターを単離するために用いられた。
【0088】
本明細書に記載されるように、in vivoでの組換えショ糖合成酵素とショ糖トランスポーターの合わせた発現が、UDP-グルコースの利用可能性の増加と望ましくないUDPの除去をもたらすことができる。例えば、組換えショ糖合成酵素、ショ糖トランスポーター、およびグリコシルトランスフェラーゼの機能的発現を、天然のショ糖分解系(S. cerevisiaeの場合はSUC2)のノックアウトと組み合わせて、増加した量のグリコシル化化合物、例えばステビオール配糖体を産生可能な細胞を生産するために用いることができる。このより高いグリコシル化能力は、少なくとも、(a)UDP-グルコースをよりエネルギー効率の高い様式で産生する高い能力、および(b)増殖培地からのUDPの除去(UDPがグリコシル化反応を阻害できるため)、によるものである。
ショ糖合成酵素は、任意の適切な生物に由来することができる。例えば、限定はされないが、Arabidopsis thaliana、Stevia rebaudiana、またはCoffea arabicaからのショ糖合成酵素コード配列(例えば、
図19A~19C、配列番号178、179および180参照)を、適切なプロモーターの制御下で発現プラスミドにクローニングし、宿主(例えば、微生物または植物)中に発現することができる。本明細書の実施例に記載されるように、SUSコード配列をSUC2(ショ糖加水分解酵素)欠損のS. cerevisiae株に発現させて、酵母による細胞外のショ糖の分解を回避することができる。ショ糖合成酵素を、かかる株において、ショ糖トランスポーター(例えば、A. thalianaSUC1トランスポーターまたはその機能性ホモログ)および1または2以上のUGT(例えば、UGT85C2、UGT74G1、UGT76G1、EUGT11およびUGT91D2e、またはそれらの機能性ホモログの1種または2種以上)と組み合わせて発現させることができる。ショ糖を含有する培地中で宿主を培養することは、UDP-グルコースだけでなく、1または2以上のグルコシド(例えば、ステビオールグルコシド)の生産を促進することができる。いくつかの場合において、ショ糖合成酵素およびショ糖トランスポーターは、特定の化合物(例えば、ステビオール)の生産のための組換え体でもある宿主細胞において、UGTと共に発現可能であることにも留意されたい。
【0089】
C.4 ERG9活性の調節
本開示の目的は、スクアレン経路のテルペノイド前駆体の蓄積を増加させるという概念に基づいて、テルペノイドを生産することである。テルペノイドの非限定的な例としては、ヘミテルペノイド、1イソプレン単位(5個の炭素);モノテルペノイド、2イソプレン単位(10C);セスキテルペノイド、3イソプレン単位(15C);ジテルペノイド、4イソプレン単位(20C)(例えばギンコライド);トリテルペノイド、6イソプレン単位(30C);テトラテルペノイド、8イソプレン単位(40C)(例えばカロテノイド);および多数のイソプレン単位のポリテルペノイドが挙げられる。
ヘミテルペノイドとしては、イソプレン、プレノールおよびイソ吉草酸が挙げられる。モノテルペノイドとしては、ゲラニルピロリン酸、ユーカリプトール、リモネンおよびピネンが挙げられる。セスキテルペノイドとしては、ファルネシルピロリン酸、アルテミシニンおよびビサボロールが挙げられる。ジテルペノイドとしては、ゲラニルゲラニルピロリン酸、ステビオール、レチノール、レチナール、フィトール、タキソール、フォルスコリンおよびアフィジコリンが挙げられる。トリテルペノイドとしては、スクアレンおよびラノステロールが挙げられる。テトラテルペノイドとしては、リコピンおよびカロテンが挙げられる。
テルペンは、数個のイソプレン単位の組み合わせから得られる炭化水素である。テルペノイドは、テルペン誘導体と考えることができる。テルペンという用語は、テルペノイドを含むように広く用いられることもある。テルペンと同様にテルペノイドも、用いられるイソプレン単位の数に応じて分類することができる。本発明は、テルペノイドに、および特に、前駆体であるファルネシルピロリン酸(FPP)、イソペンテニルピロリン酸(IPP)、ジメチルアリルピロリン酸(DMAPP)、ゲラニルピロリン酸(GPP)および/またはゲラニルゲラニルピロリン酸(GGPP)からスクアレン経路を介して誘導されるテルペノイドに焦点を当てる。
【0090】
テルペノイドとしては、以下が理解されている:限定はされないがイソプレン、プレノールおよびイソ吉草酸などの、ヘミテルペノイドクラスのテルペノイド;限定はされないがゲラニルピロリン酸、ユーカリプトール、リモネンおよびピネンなどの、モノテルペノイドクラスのテルペノイド;限定はされないがファルネシルピロリン酸、アルテミシニンおよびビサボロールなどの、セスキテルペノイドクラスのテルペノイド;限定はされないがゲラニルゲラニルピロリン酸、ステビオール、レチノール、レチナール、フィトール、タキソール、フォルスコリンおよびアフィジコリンなどの、ジテルペノイドクラスのテルペノイド;限定はされないがラノステロールなどの、トリテルペノイドクラスのテルペノイド;限定はされないがリコピンやカロテンなどの、テトラテルペノイドクラスのテルペノイド。
一態様において、本発明は、ゲラニルゲラニルピロリン酸(GGPP)から生合成されるテルペノイドの生産に関する。特に、かかるテルペノイドはステビオールであってよい。
一態様において、本発明は、ゲラニルゲラニルピロリン酸(GGPP)から生合成されるテルペノイドの生産に関する。特に、かかるテルペノイドはステビオールであってよい。
【0091】
細胞
本発明は、第III節に記載の任意の宿主などの細胞であって、
図22に示したコンストラクトを含むように修飾された前記細胞に関する。したがって主要な側面において、本発明は、核酸配列を含む細胞であって、該核酸配列が、
i)プロモーター配列、これは
ii)異種挿入配列に動作可能に連結され、これは
iii)オープンリーディングフレームに動作可能に連結され、これは
iv)転写終結シグナルに動作可能に連結されている、
を含み、ここで前記異種挿入配列は、一般式(I):
-X
1-X
2-X
3-X
4-X
5-
式中、X
2は、X
4の少なくとも4つの連続したヌクレオチドに相補的であり、かつこれとヘアピン二次構造要素を形成する、少なくとも4つの連続したヌクレオチドを含み、
および式中、X
3は任意であり、存在する場合は、X
2とX
4の間のヘアピンループの形成に関与するヌクレオチドを含み、
および式中、X
1およびX
5は、独立しておよび任意に、1または2以上のヌクレオチドを含み、および、
式中、前記オープンリーディングフレームは、発現すると、スクアレン合成酵素(EC 2.5.1.21)をコードし、例えばスクアレン合成酵素(EC 2.5.1.21)またはその生物学的活性断片と少なくとも70%の同一性を有するポリペプチド配列をコードし、前記断片は、前記スクアレン合成酵素と、少なくとも100個のアミノ酸のオーバーラップの範囲内で少なくとも70%の配列同一性を有する、
を有する、前記細胞に関する。
【0092】
異種挿入配列を含む上述の核酸に加えて、細胞はまた、1または2以上の追加の異種核酸配列(例えば、第I節のステビオールおよびステビオール配糖体生合成ポリペプチドのいずれかをコードする核酸)を含んでもよい。1つの好ましい態様において、細胞は、該細胞におけるGGPPSの発現を指向する核酸配列に動作可能に連結されたGGPPSをコードする異種核酸を含む。
異種挿入配列
異種挿入配列は、ヘアピンの二次構造要素をヘアピンループに適合させることができる。ヘアピン部分は、互いに相補的でハイブリダイズする部分X2およびX4を含む。X2およびX4部分は、ループ、すなわちヘアピンループを形成するヌクレオチドを含む部分X3に隣接する。相補的という用語は、当業者により、互いにヌクレオチド毎に、5’末端から3’末端または逆向きに数えて比較した2つの配列を意味すると理解される。
異種挿入配列は、ヘアピンを完成するのに十分長く、異種挿入配列の3’末端直後のインフレームに存在するORFの限定翻訳を可能にするのに十分短い。したがって一態様において、異種挿入配列は、10~50ヌクレオチドを、好ましくは10~30ヌクレオチド、より好ましくは15~25ヌクレオチド、さらに好ましくは17~22ヌクレオチド、より好ましくは18~21ヌクレオチド、より好ましくは18~20ヌクレオチド、より好ましくは19ヌクレオチドを含む。
【0093】
X2およびX4は、独立して、X2の少なくとも4個のヌクレオチドの連続した配列が、X4の少なくとも4個のヌクレオチドの連続した配列に相補的であれば、任意の適切な数のヌクレオチドからなることができる。好ましい態様において、X2およびX4は、同数のヌクレオチドからなる。
X2は例えば、4~25の範囲(4~20の範囲など)、例えば4~15の範囲(6~12の範囲など)、例えば8~12の範囲(9~11の範囲など)のヌクレオチドからなってよい。
X4は例えば、4~25の範囲(4~20の範囲など)、例えば4~15の範囲(6~12の範囲など)、例えば8~12の範囲(9~11の範囲など)のヌクレオチドからなってよい。
好ましい一態様において、X2は、X4のヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列からなり、すなわちX2の全てのヌクレオチドは、X4のヌクレオチド配列に相補的であることが好ましい。
好ましい一態様において、X4は、X2のヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列からなり、すなわちX4の全てのヌクレオチドは、X2のヌクレオチド配列に相補的であることが好ましい。非常に好ましくは、X2およびX4は同数のヌクレオチドからなり、ここで、X2は、X2とX4の全長にわたってX4に相補的である。
【0094】
X3は不在であってよく、すなわち、X3はゼロのヌクレオチドからなってよい。X3はまた、1~5の範囲のヌクレオチド、例えば1~3の範囲からなることも可能である。
X1は不在であってよく、すなわち、X1はゼロのヌクレオチドからなってよい。X1はまた、1~25の範囲(1~20の範囲など)、例えば1~15の範囲(1~10の範囲など)、例えば1~5の範囲(1~3の範囲など)のヌクレオチドからなることも可能である。
X5は不在であってよく、すなわち、X5はゼロのヌクレオチドからなってよい。X5はまた、1~5の範囲のヌクレオチド、例えば1~3の範囲からなることも可能である。
配列は、本明細書上記で定義された要件を満たす任意の好適な配列であってもよい。したがって、異種挿入配列は、配列番号181、配列番号182、配列番号183、および配列番号184からなる群から選択される配列を含んでもよい。好ましい態様において、挿入配列は、配列番号181、配列番号182、配列番号183、および配列番号184からなる群から選択される。
【0095】
スクアレン合成酵素
スクアレン合成酵素(SQS)は、ステロールの生産を導く生合成経路に最初に関与する酵素である。これは、ファルネシルピロリン酸から中間のプレスクアレンピロリン酸を経由するスクアレンの合成を触媒する。この酵素は、テルペノイド/イソプレノイドの生合成において重要な分岐点となる酵素であり、ステロール経路を介してイソプレン中間体のフラックスを調節すると考えられている。酵素は、ファルネシル二リン酸ファルネシルトランスフェラーゼ(FDFT1)と呼ばれることもある。
SQSのメカニズムは、2単位のファルネシルピロリン酸を、スクアレンに変換することである。
少なくとも1つの原核生物が、機能的に類似した酵素を有することが示されてはいるが、SQSは、真核生物または高等生物の酵素であると考えられている。
構造および力学の観点から、スクアレン合成酵素はフィトエン合成酵素に最も密接に類似しており、このフィトエン合成酵素は、多数の植物において、多くのカロテノイド化合物の前駆体であるフィトエンの精緻化に重要な役割を果たす。
【0096】
高レベルの配列同一性は、第1の配列が第2の配列に由来する可能性を示している。アミノ酸配列同一性は、2つの整列した配列間で同一のアミノ酸配列を必要とする。したがって、参照配列と70%のアミノ酸同一性を共有する候補配列は、アラインメントに続いて候補配列中のアミノ酸の70%が、参照配列中の対応するアミノ酸と同一であることを必要とする。同一性はコンピュータ解析の支援によって決定することができ、例えば、限定はされないが、D節に記載のようにClustalWコンピュータアラインメントプログラムである。デフォルト設定でこのプログラムを使用して、クエリおよび参照ポリペプチドの成熟(生物活性)部分を整列させる。完全に保存された残基の数を計数し、参照配列ポリペプチドの長さで割り算する。ClustalWアルゴリズムは、ヌクレオチド配列の整列のために同様に使用してもよい。配列同一性は、アミノ酸配列について示されたものと同様の方法で計算することができる。
1つの重要な態様において、本発明の細胞は、本明細書に定義のように、発現の際に、スクアレン合成酵素が配列番号192、配列番号193、配列番号194、配列番号195、配列番号196、配列番号197、配列番号198、配列番号199、配列番号200、配列番号201、配列番号202、からなる群から選択される前記スクアレン合成酵素に対して、少なくとも75%、例えば少なくとも76%、例えば少なくとも77%、例えば少なくとも78%、例えば少なくとも79%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも81%、例えば少なくとも82%、例えば少なくとも83%、例えば少なくとも84%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%、例えば少なくとも99.5%、例えば少なくとも99.6%、例えば少なくとも99.7%、例えば少なくとも99.8%、例えば少なくとも99.9%、例えば100%同一であるところのスクアレン合成酵素をコードする核酸配列を含む。
【0097】
プロモーター
プロモーターは、特定の遺伝子の転写を促進するDNAの領域である。プロモーターは、それらが調節する遺伝子の近くに、同一鎖上、典型的には上流側に位置している(センス鎖の5’領域に向かって)。転写が起こるためには、RNAポリメラーゼとして知られているRNAを合成する酵素が、遺伝子の近くのDNAに付着しなければならない。プロモーターは、特定のDNA配列ならびに、RNAポリメラーゼおよびRNAポリメラーゼを動員する転写因子と呼ばれるタンパク質のための、安全な初期結合部位を提供する応答エレメントを含有する。これらの転写因子は、特定のプロモーターに付着して遺伝子発現を調節する対応するヌクレオチドの、特定のアクチベーターまたはリプレッサー配列を有する。
細菌において、プロモーターは、RNAポリメラーゼおよび関連するシグマ因子によって認識され、次に多くの場合、近くにあるそれ自身のDNA結合部位に結合するアクチベータータンパク質によって、プロモーターDNAに運ばれる。真核生物においてプロセスはより複雑であり、少なくとも7つの異なる因子が、RNAポリメラーゼIIのプロモーターへの結合のために必要である。プロモーターは、他の調節領域(エンハンサー、サイレンサー、境界要素/絶縁体)と協調して働き、所定の遺伝子の転写レベルを指示することができる、重要な要素を表す。
プロモーターは通常、問題のオープンリーディングフレーム(ORF)に直接隣接しており、プロモーター中の位置は転写開始部位に対して指定され、ここでRNAの転写が、特定遺伝子に対して開始される(すなわち、上流の位置は-1から計測される負の数であり、例えば-100は、100塩基対上流の位置である)。
【0098】
プロモーターエレメント
・ コアプロモーター―適切に転写を開始するために必要なプロモーターの最小部分
O 転写開始部位(TSS)
O 開始部位の約-35bp上流および/または下流
O RNAポリメラーゼの結合部位
・ RNAポリメラーゼI:リボソームRNAをコードする遺伝子を転写
・ RNAポリメラーゼII:メッセンジャーRNAおよび特定の小核RNAをコードする遺伝子を転写
・ RNAポリメラーゼIII:tRNAおよび他の低分子RNAをコードする遺伝子を転写
O 一般的な転写因子結合部位
・ 近位プロモーター―プライマリ調節エレメントを含有する傾向がある遺伝子の上流の近位配列
O 開始部位の約-250bp上流
O 特定の転写因子結合部位
・ 遠位プロモーター―多くの場合に近位プロモーターよりも弱い影響を有する追加の調節エレメントを含み得る遺伝子の上流の、遠位配列
O さらに上流の全て(ただし、その影響が位置/方向に依存しない、エンハンサーまたはそ他の調節領域を除く)
O 特定の転写因子結合部位
【0099】
原核生物プロモーター
原核生物において、プロモーターは、転写開始部位の上流の-10および-35位置の2つの短い配列から構成される。シグマ因子は、RNAPのプロモーターへの結合を高めるのに役立つだけでなく、RNAPが、転写する特定の遺伝子を標的化することも助ける。
-10における配列は、プリブノーボックスまたは-10エレメントと呼ばれ、通常は6つのヌクレオチドTATAATで構成されている。プリブナウボックスは、原核生物において転写を開始するのに不可欠である。
-35における他の配列(-35エレメント)は、通常7つのヌクレオチドTTGACATで構成されている。その存在により、非常に高い転写速度が可能となる。
【0100】
上記のコンセンサス配列の両方は、平均的には保存されているが、ほとんどのプロモーター中で無傷では見出されない。平均して各コンセンサス配列中の6塩基対のわずか3個が、任意の所与のプロモーター中に見出される。-10および-35の両方で無傷のコンセンサス配列を有するプロモーターは、今日まで同定されていない;-10/-35ヘキサマーの完全な保存を有する人工プロモーターは、非常に高い効率でRNA鎖の開始を促進することが見出されている。
いくつかのプロモーターは、UPエレメント(コンセンサス配列5’-AAAWWTWTTTTNNNAAANNN-3’;W=AまたはT;N=任意の塩基)を、-50を中心に含有する;-35エレメントの存在は、UPエレメント含有プロモーターからの転写に重要ではないように思われる。
【0101】
真核生物プロモーター
真核生物のプロモーターは、通常、遺伝子(ORF)の上流に位置しており、転写開始部位から数キロ塩基(kb)離れて調節エレメントを有することができる。真核生物において、転写複合体は、DNAがそれ自体に折り返すことを誘導でき、これは、実際の転写部位から遠く離れて調節配列を配置すること可能にする。多くの真核生物プロモーターはTATAボックス(配列TATAAA)を含み、これは次にRNAポリメラーゼ転写複合体の形成を助けるTATA結合タンパク質に結合する。TATAボックスは通常、転写開始部位に非常に近く位置する(多くは50塩基以内)。
本発明の細胞は、プロモーター配列を含む核酸配列を含む。プロモーター配列は、本発明のために限定されず、選択した宿主細胞に適した任意のプロモーターであることができる。
本発明の一態様において、プロモーターは、構成的または誘導性プロモーターである。
本発明のさらなる態様において、プロモーターは、内因性プロモーター、PGK-1、GPD1、PGK1、ADH1、ADH2、PYK1、TPI1、PDC1、TEF1、TEF2、FBA1、GAL1-10、CUP1、MET2、MET14、MET25、CYC1、GAL1-S、GAL1-L、TEF1、ADH1、CAG、CMV、ヒトUbiC、RSV、EF-1α、SV40、Mt1、Tet-On、Tet-Off、Mo-MLV-LTR、Mx1、プロゲステロン、RU486、およびラパマイシン誘導性プロモーターからなる群から選択される。
【0102】
転写後調節
転写後調節は、RNAレベルでの遺伝子発現の制御であり、したがって遺伝子の転写と翻訳の間である。
調節の最初の例は転写においてであり(転写調節)、ここでクロマチン構造により、および転写因子の活性のにより、遺伝子が差動的に転写される。
産生された後、異なる転写物の安定性および分布は、転写物の様々な工程および速度を制御するRNA結合タンパク質(RBP)によって調節される(転写後調節):例えば選択的スプライシング、核分解(エキソソーム)、プロセシング、核輸出(3つの代替経路)、貯蔵または分解のためのDCP2体における隔離(sequestration)、および最終的に翻訳などのイベントである。これらのタンパク質は、転写物の特定の配列または二次構造、通常は転写物の5’および3’UTRに結合するRNA認識モチーフ(RRM)によって、これらのイベントを実現する。
キャッピング、スプライシング、ポリ(A)尾部の添加、配列特異的な核輸出速度などを調節すること、およびいくつかの文脈においてはRNA転写物の隔離を調節することは、真核生物で起こるが、原核生物では起こらない。この調節はタンパク質または転写物の結果であり、このタンパク質または転写物は次に制御されて、特定の配列に対して親和性を有し得る。
【0103】
キャッピング
キャッピングは、5’-5’結合によりmRNAの5末端を3末端に変更し、これはmRNAを、外来RNAを分解する5’エキソヌクレアーゼから保護する。キャップはまた、リボソーム結合も支援する。
スプライシング
スプライシングは、RNAに転写された非コード領域であるイントロンを除去して、mRNAがタンパク質を作製できるようにする。細胞はこれを、イントロンのいずれかの側にスプライセオソームを結合し、イントロンを結合円にループして、次にこれを切断することにより行う。次に、エクソンの両端が一緒に接合される。
【0104】
ポリアデニル化
ポリアデニル化は、ポリ(A)尾部の3’末端への付加であり、すなわちポリ(A)尾部は、複数のアデノシン一リン酸から構成される。ポリA配列は3’エキソヌクレアーゼに対するバッファとして作用し、したがってmRNAの半減期を延長する。さらに、長いポリ(A)尾部は、翻訳を増加させることができる。このようにしてポリ(A)尾部は、本発明のコンストラクトの翻訳をさらに調節して、最適な翻訳速度に到達するために用いることができる。
真核生物では、ポリアデニル化は、翻訳のための成熟したメッセンジャーRNA(mRNA)を生成するプロセスの一部である。
ポリ(A)尾部はまた、mRNAの核外輸送、翻訳、および安定性のために重要である。
一態様において、本明細書上記で定義される本発明の細胞の核酸配列は、ポリアデニル/ポリアデニル化配列をさらに含み、好ましくは該ポリアデニル/ポリアデニル化配列の5’末端は、オープンリーディングフレーム、例えばスクアレン合成酵素をコードするオープンリーディングフレームの3’末端に、動作可能に連結されている。
【0105】
RNA編集
RNA編集は、RNA分子中の配列変化をもたらすプロセスであり、酵素によって触媒される。これらの酵素には、mRNA分子の特定のアデノシン残基を加水分解脱アミノ化によりイノシンに変換する、Adenosine Deaminase Acting on RNA(ADAR)酵素が含まれる。3種類のADAR酵素、ADAR1、ADAR2およびADAR3がクローニングされたが、最初の2つのサブタイプのみが、RNA編集活性を有することが示されている。多くのmRNAはRNA編集の影響を受けやすく、これらは以下を含む:グルタミン酸受容体サブユニットのGluR2、GluR3、GluR4、GluR5およびGluR6(AMPAおよびカイニン酸受容体の成分である)、セロトニン2C受容体、GABA-アルファ3受容体サブユニット、トリプトファンヒドロキシラーゼ酵素TPH2、デルタ肝炎ウイルスおよびマイクロRNAの16%以上。ADAR酵素に加えて、CDAR酵素が存在し、これらは、特定のRNA分子中のシトシンをウラシルに変換する。これらの酵素は「APOBEC」と呼ばれ、口蓋心臓顔面症候群(22q11)で生じる染色体欠失に近くかつ精神病にリンクされている領域である22q13に、遺伝子座を有する。編集処理はウイルスの機能を変更するため、RNA編集は、広く感染症に関連して検討されている。
【0106】
転写後調節エレメント
転写後調節エレメント(PRE)の使用は多くの場合、特定用途のための十分な性能を有するベクターを得るために必要である。Schambach et al in Gene Ther. (2006) 13(7):641-5には、ウッドチャック肝炎ウイルス(WHV)の転写後調節エレメント(PRE)の、レトロウイルスおよびレンチウイルス遺伝子導入ベクターの3’非翻訳領域への導入が、力価および導入遺伝子発現の両方を増強することが報告されている。PREの増強活性は、その配列の正確な構成およびベクターの前後関係(context)、およびそれが導入された細胞に依存する。
したがって、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)などのPREの使用は、遺伝子治療アプローチを使用する場合、本発明の細胞の調製に有用であり得る。
したがって一態様において、本明細書に定義された細胞の核酸配列はさらに、転写後調節エレメントを含む。
さらなる態様において、転写後調節エレメントは、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)である。
【0107】
末端反復
宿主DNAに遺伝子配列を挿入するには、ウイルスは多くの場合、何千回も繰り返されるDNAの配列、いわゆる反復、または長末端反復(LTR)および逆方向末端反復(ITR)を含む末端反復を使用し、ここで前記反復配列は、5’末端反復および3’末端反復の両方であってよい。ITRは、一本鎖ベクターDNAが、宿主細胞DNAポリメラーゼ複合体によって二本鎖DNAに変換された後の、核におけるコンカテマー形成を支援する。ITR配列は、ウイルスベクター例えばAAV2などのAAVに由来し得る。
一態様において、本明細書に定義された細胞の核酸配列またはベクターは、5’末端反復および3’末端反復を含む。
一態様において、前記5’および3’末端反復は、逆方向末端反復(ITR)および長末端反復(LTR)から選択される。
一態様において、前記5’および3’末端反復は、AAV逆方向末端反復(ITR)である。
【0108】
ゲラニルゲラニルピロリン酸合成酵素
本発明の微生物細胞は、好ましい態様において、ゲラニルゲラニルピロリン酸合成酵素(GGPPS)をコードする異種核酸配列を含有してもよい。例えば表7を参照。GGPPSは、1個のファルネシルピロリン酸(FPP)分子を、1個のゲラニルゲラニルピロリン酸(GGPP)分子に変換する化学反応を触媒する酵素である。GGPPSをコードする遺伝子は、例えば、メバロン酸経路を含有する生物において見出され得る。
本発明で使用されるGGPPSは、ファルネシルピロリン酸(FPP)分子のゲラニルゲラニルピロリン酸(GGPP)分子への変換を触媒することができる、任意の有用な酵素であってよい。特に本発明で用いられるGGPPSは、以下の反応を触媒することができる任意の酵素であってよい:
(2E,6E)-ファルネシル二リン酸+イソペンテニル二リン酸->二リン酸+ゲラニルゲラニル二リン酸。
本発明と共に使用するGGPPSは、EC 2.5.1.29の下に分類される酵素であることが好ましい。
GGPPSは、例えば細菌、真菌または哺乳動物などのさまざまなソースからのGGPPSであってよい。GGPPSは、あらゆる種類のGGPPSであることができ、例えばGGPPS-1、GGPPS-2、GGPPS-3、またはGGPPS-4である。GGPPSは、野生型GGPPSまたはその機能性ホモログであってよい。
【0109】
例えば、GGPPSは、S. acidicaldariusのGGPPS-1(配列番号126)、A.nidulansのGGPPS-2(配列番号203)、S. cerevisiaeのGGPPS-3(配列番号167)、M. musculusのGGPPS-4(配列番号123)、または前述の任意のものの機能性ホモログであってよい。
前記GGPPSをコードする異種核酸は、前記GGPPSをコードする任意の核酸配列であってよい。したがって、GGPPSが野生型タンパク質である本発明の態様において、核酸配列は、例えば、前記タンパク質をコードする野生型cDNA配列であってもよい。しかしながら、異種核酸が任意の特定のGGPPSをコードする核酸配列であり、ここで前記核酸が特定の微生物細胞に対してコドン最適化されているケースは多い。例えば微生物細胞がS. cerevisiaeである場合、GGPPSをコードする核酸は、好ましくはS. cerevisiaeでの最適な発現のためにコドン最適化されている。
【0110】
GGPPSの機能性ホモログは好ましくは、上記の活性を有し、参照GGPPSの配列と少なくとも70%のアミノ酸同一性を共有するタンパク質である。配列同一性を決定するための方法は、本明細書の節「スクアレン合成酵素」およびD節に上述されている。
一態様において、本発明の微生物などの細胞は、GGPPSまたはその機能性ホモログをコードする核酸配列を含み、ここで前記機能性ホモログは、配列番号123、配列番号126、配列番号167および配列番号203からなる群から選択されるGGPPSと、少なくとも75%、例えば少なくとも76%、例えば少なくとも77%、例えば少なくとも78%、例えば少なくとも79%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも81%、例えば少なくとも82%、例えば少なくとも83%、例えば少なくとも84%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも86%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも88%、例えば少なくとも89%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%、例えば少なくとも99.5%、例えば少なくとも99.6%、例えば少なくとも99.7%、例えば少なくとも99.8%、例えば少なくとも99.9%、例えば100%、同一である。
GGPPSをコードする前記異種核酸配列は、一般に、微生物細胞内でGGPPSの発現を指令する核酸配列に動作可能に連結されている。微生物細胞内でGGPPSの発現を指令する核酸配列は、プロモーター配列であってよく、好ましくは、前記プロモーター配列は、特定の微生物細胞に応じて選択される。プロモーターは、例えば、本明細書の上の節「プロモーター」に記載されたプロモーターのいずれかであってもよい。
【0111】
ベクター
ベクターは、外来遺伝物質を別の細胞に転移するための媒体として使用されるDNA分子である。ベクターの主な種類は、プラスミド、ウイルス、コスミド、および人工染色体である。すべての操作されたベクターに共通するのは、複製の起点、マルチクローニング部位、および選択可能なマーカーである。
ベクターそれ自体は一般的には、インサート(導入遺伝子)およびベクターの「主鎖」として機能するより大きな配列から構成される、DNA配列である。遺伝情報を別の細胞に伝達するベクターの目的は、典型的には、インサートを単離し、掛け合わせ、または標的細胞に発現することである。発現ベクター(発現コンストラクト)と呼ばれるベクターは特に、標的細胞における導入遺伝子の発現のためであり、一般に、導入遺伝子の発現を駆動するプロモーター配列を有する。転写ベクターと呼ばれる単純なベクターは、転写されることができるのみであり、翻訳されない:それらは、標的細胞内で複製されることができるが、発現ベクターとは異なり、翻訳されない。転写ベクターは、それらのインサートを増幅するために使用される。
ベクターの標的細胞への挿入は、通常、細菌細胞については形質転換、真核細胞についてはトランスフェクションと呼ばれ、ただしウイルスベクターの挿入は多くの場合、形質導入(トランスダクション)と呼ばれる。
【0112】
プラスミド
プラスミドベクターは、宿主細胞内で自動的に複製可能な、二本鎖で一般に環状のDNA配列である。プラスミドベクターは、最小限、宿主内でのプラスミドの半独立の複製を許容する複製起点と、導入遺伝子インサートから構成される。現代のプラスミドは一般に多くの機能を有し、特に、インサートの挿入のためのヌクレオチドオーバーハングを含む「多重クローニング部位」、およびインサートの両側に複数の制限酵素コンセンサス部位を含む。転写ベクターとして利用されるプラスミドの場合には、細菌をプラスミドと共にインキュベートすると、何時間かのうちに細菌内に数百または数千のベクターのコピーが生成され、このベクターは細菌から抽出することができ、多重クローニング部位を制限酵素により切断することができて、百倍または千倍に増幅されたインサートを切り出すことができる。これらのプラスミド転写ベクターは、特徴的に、翻訳されたmRNAにおけるポリアデニル化配列と翻訳終結配列をコードする重要な配列を欠き、転写ベクターからのタンパク質発現を不可能にする。プラスミドは、接合性/伝達性および非接合性であってよい:
-接合性:接合を介してDNAの転移を媒介し、したがって細菌細胞の集団の中で急速に拡散する;例えば、 Fプラスミド、多くのRおよび一部のcolプラスミド。
-非接合性:接合を介してDNAを媒介しない、例えば、多くのRおよびcolプラスミド。
【0113】
ウイルスベクター
ウイルスベクターは一般に遺伝子操作されたウイルスであり、非感染性にされた修飾ウイルス性DNAまたはRNAを保有するが、ウイルスプロモーターおよび導入遺伝子は含んでおり、したがってウイルスプロモーターによる導入遺伝子の翻訳を可能にするものである。しかし、ウイルスベクターは多くの場合感染性配列を欠いているので、それらは、大規模トランスフェクションのためのヘルパーウイルスまたはパッケージングラインを必要とする。ウイルスベクターはしばしば、インサートの宿主ゲノムへの永久的な組込みのために設計されるため、導入遺伝子の組込み後に、宿主ゲノム中に特有の遺伝マーカーを残す。例えばレトロウイルスは、挿入後に特徴的なレトロウイルス組込みパターンを残し、これは検出可能であり、ウイルスベクターが宿主ゲノム中に組み込まれたことを示す。
一態様において、本発明は、培養可能な細胞などの宿主細胞、例えば酵母細胞または任意の他の適切な真核細胞をトランスフェクトすることができる、ウイルスベクターにも関する。ベクターは次に、前記細胞を、本明細書に記載の異種挿入配列を含む核酸を用いて、トランスフェクトすることができる。
ウイルスベクターは、レンチウイルス、HIV、SIV、FIV、EAIV、CIVを含むレトロウイルス科に由来するベクターからなる群から選択されるウイルスベクターなどの、任意の適切なウイルスベクターであり得る。
【0114】
ウイルスベクターはまた、アルファウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、バキュロウイルス、HSV、コロナウイルス、ウシパピローマウイルス、Mo-MLVおよびアデノ随伴ウイルスからなる群から選択されてもよい。
微生物細胞がGGPPSをコードする異種核酸を含む本発明の態様では、該異種核酸は、スクアレン合成酵素をコードする核酸を含有するベクター上に位置するか、またはGGPPSをコードする異種核酸は、異なるベクター上に位置してよい。前記のGGPPSをコードする異種核酸は、本明細書上述のベクターのいずれかに含まれていてもよい。
微生物細胞がHMCRをコードする異種核酸を含む本発明の態様では、該異種核酸は、スクアレン合成酵素をコードする核酸を含有するベクター上に位置するか、またはHMCRをコードする異種核酸は、異なるベクター上に位置してよい。前記のHMCRをコードする異種核酸は、本明細書で上述のベクターのいずれかに含まれていてもよい。GGPPSをコードする異種核酸およびHMCRをコードする異種核酸は、同一または個別のベクター上に配置されてもよいことは、本発明の範囲内である。
【0115】
転写
転写は、すべてのベクターに必要な要素である:ベクターの前提条件は、インサートを増加させることである(ただし発現ベクターは後に、増加したインサートの翻訳も駆動するが)。したがって、安定な発現は安定した転写によって決定され、これは一般的に、ベクター内のプロモーターに依存する。しかし発現ベクターは、様々な発現パターンを有する:構成的(一貫した発現)または誘導的(特定の条件または化学物質のもとでのみの発現)。この発現は異なるプロモーター活性に基づくものであり、転写後の活性には基づかない。したがって、これら2つの異なる種類の発現ベクターは、異なる種類のプロモーターに依存する。
ウイルスプロモーターは、プラスミドおよびウイルスベクターにおいて構成的発現のために多く使用されるが、これは、それらが通常、多数の細胞株および種類の一定した転写を確実にもたらすからである。
誘導的発現は、誘導条件に応答するプロモーターに依存する:例えば、マウス乳癌ウイルスプロモーターは、デキサメタゾンの適用後にのみ転写を開始し、ショウジョウバエの熱ショックプロモーターは、高温の後にのみ惹起される。転写はmRNAの合成である。遺伝情報は、DNAからRNAにコピーされる。
【0116】
発現
発現ベクターは、例えばポリアデニル化尾部(本明細書の上記参照)をコードする配列を必要とし:mRNAをエキソヌクレアーゼから保護し、かつ転写および翻訳終結を確実にする、転写されたプレmRNAの末端にポリアデニル化尾部を作成し:mRNA産生を安定化する。
最小UTR長さ:UTRは、転写または翻訳を妨げ得る特定の特性を含むため、最適な発現ベクターには、最短のUTRまたはUTRなしがコードされる。
Kozak配列:ベクターはmRNAに、mRNA翻訳のためにリボソームを組み立てるKozak配列をコードしなければならない。
上記の条件は、真核生物の発現ベクターには必要であるが、原核生物では不要である。
【0117】
現代のベクターとしては、導入遺伝子インサートおよび主鎖以外の追加の特徴を包含してよく、例えば以下である:プロモーター(上述)、遺伝マーカーであって、例えばベクターが宿主のゲノムDNAに組み込まれたことを確認可能にするもの、抗生物質選択のための抗生物質耐性遺伝子、および精製のための親和性タグ。
一態様において、本発明の細胞は、発現ベクターなどのベクターに組み込まれた核酸配列を含む。
一態様において、ベクターは、プラスミドベクター、コスミド、人工染色体およびウイルスベクターからなる群から選択される。
プラスミドベクターは、細菌、真菌および酵母中で維持および複製が可能であるべきである。
本発明はまた、プラスミドおよびコスミドベクター、ならびに人工染色体ベクターを含む細胞に関する。
重要な因子は、ベクターが機能的であり、かつベクターが、本明細書に記載されるように異種挿入配列を含む少なくとも核酸配列を含むことである。
一態様において、ベクターは、真菌および哺乳動物細胞において機能的である。
一態様において、本発明は、本明細書に定義されたベクターで形質転換または形質導入された細胞に関する。
【0118】
テルペノイドの生産方法
本明細書で上述したように、本発明の細胞(例えば組換え宿主細胞)は、工業関連のテルペノイドの収量を高めるのに有用である。
従って本発明の細胞は様々なセットアップで用いることができ、テルペノイド前駆体の蓄積を増加させ、したがって前記(上流)テルペノイド前駆体の酵素的変換から得られるテルペノイド生成物の収量を増加させることができる。
したがって一態様において、本発明は、細胞培養物における、スクアレン経路を介して合成されるテルペノイド化合物を生産するための方法に関し、該方法は、以下のステップ:
(a)本明細書上記で定義された細胞を提供すること、
(b)ステップ(a)の細胞を培養すること、
(c)テルペノイド生成物の化合物を回収すること、を含む。
本明細書上記で定義された遺伝子操作されたコンストラクトを含む細胞を提供することによって、テルペノイド前駆体の蓄積が増強される(
図20)。
したがって別の側面において、本発明は、ファルネシルピロリン酸(FPP)、イソペンテニルピロリン酸(IPP)、ジメチルアリルピロリン酸(DMAPP)、ゲラニルピロリン酸(GPP)および/またはゲラニルゲラニルピロリン酸(GGPP)からなる群から選択されるテルペノイド前駆体に由来するテルペノイドを生産するための方法に関し、該方法は、
(a)前記前駆体をスクアレン合成酵素経路の酵素に接触させること、
(b)テルペノイド生成物を回収すること、
を含む。
【0119】
一態様において、本明細書上記で定義した方法のテルペノイド(生成物)は、ヘミテルペノイド、モノテルペン、セスキテルペノイド、ジテルペノイド、セステルペン、トリテルペノイド、テトラテルペノイド、およびポリテルペノイドからなる群から選択される。
さらなる態様において、テルペノイドは、ファルネシルリン酸、ファルネソール、ゲラニルゲラニル、ゲラニルゲラニオール、イソプレン、プレノール、イソ吉草酸、ゲラニルピロリン酸、ユーカリプトール、リモネン、ピネン、ファルネシルピロリン酸、アルテミシニン、ビサボロール、ゲラニルゲラニルピロリン酸、レチノール、レチナール、フィトール、タキソール、フォルスコリン、アフィジコリン、ラノステロール、リコピンおよびカロテンからなる群から選択される。
テルペノイド生成物は、追加の精製プロセスにおける出発点として使用することができる。したがって一態様において、この方法はさらに、ファルネシルリン酸を脱リン酸化して、ファルネソールを生産することを含む。
対象生成物のテルペノイド化合物を調製するプロセスで使用される1つの酵素または複数酵素は、好ましくは、テルペノイド前駆体であるファルネシルピロリン酸、イソペンテニルピロリン酸、ジメチルアリルピロリン酸、ゲラニルピロリン酸およびゲラニルゲラニルピロリン酸などの「下流に位置する」酵素であり、例えば、
図20のスクアレン合成経路に示された、ファルネシルピロリン酸、イソペンテニルピロリン酸、ジメチルアリルピロリン酸、ゲラニルピロリン酸およびゲラニルゲラニルピロリン酸などのテルペノイド前駆体の下流に位置する酵素である。目的生成物テルペノイドを調製するプロセスで使用される酵素であって、本発明による前駆体の蓄積に基づく前記酵素は、したがって、ジメチルアリルトランスフェラーゼ(EC 2.5.1.1)、イソプレン合成酵素(EC 4.2.3.27)およびゲラニルトランスフェラーゼ(EC 2.5.1.10)からなる群から選択することができる。
【0120】
本発明は、少なくとも部分的にリボソームのRNAへの結合を立体的に妨げて、スクアレン合成酵素の翻訳を低減することにより、動作することができる。したがって一側面において、本発明は、機能性スクアレン合成酵素(EC 2.5.1.21)の翻訳速度を低減するための方法に関し、前記方法は以下を含む:
(a)本明細書上記で定義された細胞を提供すること、
(b)(a)の細胞を培養すること。
同様に、別の側面において、本発明は、ファルネシル-ppのスクアレンへの転換を低下させるための方法に関し、前記方法は以下を含む:
(a)本明細書上記で定義された細胞を提供すること、
(b)(a)の細胞を培養すること。
図20に示すように、ERG9のノックダウンは、スクアレン合成酵素の前駆体の増加をもたらす。したがって一側面において、本発明は、ファルネシルピロリン酸、イソペンテニルピロリン酸、ジメチルアリルピロリン酸、ゲラニルピロリン酸およびゲラニルゲラニルピロリン酸からなる群から選択される化合物の蓄積を増強するための方法に関し、該方法は、以下のステップを含む:
(a)本明細書上記で定義された細胞を提供すること、および
(b)(a)の細胞を培養すること。
【0121】
一態様において、本明細書上記で定義された本発明の方法はさらに、ファルネシルピロリン酸、イソペンテニルピロリン酸、ジメチルアリルピロリン酸、ゲラニルピロリン酸およびゲラニルゲラニルピロリン酸化合物を回収することを含む。回収された化合物は、所望のテルペノイド生成物の化合物を生産するためのさらなるプロセスで使用されてもよい。さらなるプロセスは、本明細書上記で実施および定義されるプロセスと同一の細胞培養物中で行うことができ、例えば、本発明の細胞によるテルペノイド前駆体の蓄積である。代替的に、回収された前駆体を別の細胞培養物または無細胞系に添加して、所望の生成物を生産してもよい。
前駆体は中間体であり、主に安定した中間体ではあるが、テルペノイド生成物の特定の内因的生産が、テルペノイド前駆体基質に基づいて起こる場合がある。また、本発明の細胞はさらなる遺伝子修飾を有していてもよく、これにより、テルペノイド前駆体(本発明の細胞のコンストラクト)の蓄積および、所望のテルペノイド生成物への全てのまたは実質的に全ての後続の生合成プロセスの両方の実施が可能となる。
【0122】
したがって一態様において、本発明の方法はさらに、スクアレン経路を介して合成された化合物を回収することを含み、該化合物は、前記ファルネシルピロリン酸、イソペンテニルピロリン酸、ジメチルアリルピロリン酸、ゲラニルピロリン酸および/またはゲラニルゲラニルピロリン酸に由来するものである。時には、本発明の細胞を培養する場合に、スクアレン合成酵素阻害剤を含むことが有利であり得る。スクアレン合成酵素の、例えばラパキスタットによる化学的阻害は、当該技術分野において知られており、例えば心血管疾患の予防においてコレステロールレベルを低下させる方法として調査されている。また、この酵素の変異体は高コレステロール血症の遺伝的関連の一部となり得ることが示唆されている。他のスクアレン合成酵素阻害剤としては、ザラゴジン酸およびRPR 107393が含まれる。
したがって、一態様において、本明細書上記に定義された方法(複数可)の培養ステップは、スクアレン合成酵素阻害剤の存在下で行われる。
本発明の細胞はさらに、特定のキーとなるテルペノイド前駆体の生産をさらに増強するように、遺伝子操作されてもよい。一態様において、細胞は、以下からなる群から選択される1または2以上の酵素の活性を強化する、および/または過剰発現させるように、さらに遺伝子操作される:ホスホメバロン酸キナーゼ(EC 2.7.4.2)、ジホスホメバロン酸デカルボキシラーゼ(EC 4.1.1.33)、4-ヒドロキシ-3-メチルブタ-2-エン-1-イル二リン酸合成酵素(EC 1.17.7.1)、4-ヒドロキシ-3-メチルブタ-2-エニル二リン酸還元酵素(EC 1.17.1.2)、イソペンテニル二リン酸δ-イソメラーゼ1(EC 5.3.3.2)、短鎖Z-イソプレニル二リン酸合成酵素(EC 2.5.1.68)、ジメチルアリルトランスフェラーゼ(EC 2.5.1.1)、ゲラニルトランストランスフェラーゼ(EC 2.5.1.10)およびゲラニルゲラニルピロリン酸合成酵素(EC 2.5.1.29)。
【0123】
本明細書上記のように、本発明の一態様において、微生物細胞は、本明細書上記のスクアレン合成酵素をコードする核酸、およびGGPPSをコードする異種核酸の両方を含む。かかる微生物細胞は、GGPPおよびGGPPがその生合成における中間体であるテルペノイドの調製に、特に有用である。
したがって一側面において、本発明は、GGPPを調製する方法に関し、該方法は以下のステップを含む:
a.核酸配列を含む微生物細胞を提供すること、ここで該核酸は、
i)プロモーター配列、これは
ii)異種挿入配列に動作可能に連結され、これは
iii)オープンリーディングフレームに動作可能に連結され、これは
iv)転写終結シグナルに動作可能に連結されている、
を含み、ここで前記異種挿入配列およびオープンリーディングフレームは、本明細書上記に定義の通りであり、
ここで前記微生物細胞はさらに、前記細胞内でのGGPPSの発現を指向する核酸配列に動作可能に連結されたGGPPSをコードする異種核酸を含み;
b.aの微生物細胞を培養すること;
c.GGPPを回収すること。
【0124】
別の側面において、本発明は、そのGGPPが生合成経路における中間体であるところのテルペノイドの調製方法に関し、ここで該方法は以下のステップを含む:
a.微生物細胞を提供すること、ここで該微生物細胞は核酸配列を含み、該核酸は、
i)プロモーター配列、これは
ii)異種挿入配列に動作可能に連結され、これは
iii)オープンリーディングフレームに動作可能に連結され、これは
iv)転写終結シグナルに動作可能に連結されている、
を含み、ここで前記異種挿入配列およびオープンリーディングフレームは、本明細書上記に定義の通りであり、
ここで前記微生物細胞はさらに、前記細胞内でのGGPPSの発現を指向する核酸配列に動作可能に連結されたGGPPSをコードする異種核酸を含み;
b.aの微生物細胞を培養すること;および
【0125】
c.テルペノイドを回収すること、
ここで前記テルペノイドは、GGPPをその生合成中間体として有する、上記の節「テルペノイド」に記載の任意のテルペノイドであってよく;および前記微生物細胞は、本明細書上記の節「細胞」に記載の任意の微生物細胞であってよく;および前記プロモーターは、本明細書上記の節「プロモーター」に記載の任意のプロモーターなどの、任意のプロモーターであってよく;および前記異種挿入配列は、本明細書上記の節「異種挿入配列」に記載の任意の異種挿入配列であってよく;および前記オープンリーディングフレームはスクアレン合成酵素をコードし、これは本明細書上記の節「スクアレン合成酵素」に記載の任意のスクアレン合成酵素であってよく;および前記GGPPSは、本明細書上記の節「ゲラニルゲラニルピロリン酸合成酵素」に記載の任意のGGPPSであってよい。
この態様において、前記微生物細胞は任意に、前記テルペノイドの生合成経路に関与する1または2以上の酵素をコードする1または2以上の追加の異種核酸を含有してもよい。
【0126】
1つの特定の側面において、本発明は、ステビオールを調製する方法に関し、ここで該方法は以下のステップを含む:
a.微生物細胞を提供すること、ここで該微生物細胞は核酸配列を含み、該核酸は、
i)プロモーター配列、これは
ii)異種挿入配列に動作可能に連結され、これは
iii)オープンリーディングフレームに動作可能に連結され、これは
iv)転写終結シグナルに動作可能に連結されている、
を含み、ここで前記異種挿入配列およびオープンリーディングフレームは、本明細書上記に定義の通りであり、
ここで前記微生物細胞はさらに、前記細胞内でのGGPPSの発現を指向する核酸配列に動作可能に連結されたGGPPSをコードする異種核酸を含み;
b.aの微生物細胞を培養すること;
【0127】
c.ステビオールを回収すること、
ここで前記微生物細胞は、本明細書上記の節「細胞」に記載の任意の微生物細胞であってよく;および前記プロモーターは、本明細書上記の節「プロモーター」に記載の任意のプロモーターなどの、任意のプロモーターであってよく;および前記異種挿入配列は、本明細書上記の節「異種挿入配列」に記載の任意の異種挿入配列であってよく;および前記オープンリーディングフレームはスクアレン合成酵素をコードし、これは本明細書上記の節「スクアレン合成酵素」に記載の任意のスクアレン合成酵素であってよく;および前記GGPPSは、本明細書上記の節「ゲラニルゲラニルピロリン酸合成酵素」に記載の任意のGGPPSであってよい。
この態様において、前記微生物細胞は任意に、ステビオールの生合成経路に関与する1または2以上の酵素をコードする1または2以上の追加の異種核酸を含有してもよい。
【0128】
別の側面において、本発明は、そのGGPPが生合成経路における中間体であるところのテルペノイドの調製方法に関し、ここで該方法は以下のステップを含む:
a.微生物細胞を提供すること、ここで該微生物細胞は核酸配列を含み、該核酸は、
i)プロモーター配列、これは
ii)異種挿入配列に動作可能に連結され、これは
iii)オープンリーディングフレームに動作可能に連結され、これは
iv)転写終結シグナルに動作可能に連結されている、
を含み、ここで前記異種挿入配列およびオープンリーディングフレームは、本明細書上記に定義の通りであり、
ここで前記微生物細胞はさらに、前記細胞内でのGGPPSの発現を指向する核酸配列に動作可能に連結されたGGPPSをコードする異種核酸を含み、
およびここで前記微生物細胞はさらに、前記細胞内でのHMCRの発現を指向する核酸配列に動作可能に連結されたHMCRをコードする異種核酸を含み;
b.aの微生物細胞を培養すること;
【0129】
c.テルペノイドを回収すること、
ここで前記テルペノイドは、GGPPをその生合成の中間体として有する、本明細書上記の節「テルペノイド」に記載の任意のテルペノイドであってよく;ここで前記微生物細胞は、本明細書上記の節「細胞」に記載の任意の微生物細胞であってよく;および前記プロモーターは、本明細書上記の節「プロモーター」に記載の任意のプロモーターなどの、任意のプロモーターであってよく;および前記異種挿入配列は、本明細書上記の節「異種挿入配列」に記載の任意の異種挿入配列であってよく;および前記オープンリーディングフレームはスクアレン合成酵素をコードし、これは本明細書上記の節「スクアレン合成酵素」に記載の任意のスクアレン合成酵素であってよく;および前記GGPPSは、本明細書上記の節「ゲラニルゲラニルピロリン酸合成酵素」に記載の任意のGGPPSであってよく;および前記HMCRは、本明細書上記の節「HMCR」に記載の任意のHMCRであってよい。
この態様において、前記微生物細胞は任意に、前記テルペノイドの生合成経路に関与する1または2以上の酵素をコードする1または2以上の追加の異種核酸を含有してもよい。
【0130】
特定の側面において、本発明は、ステビオールの調製方法に関し、ここで該方法は以下のステップを含む:
a.微生物細胞を提供すること、ここで該微生物細胞は核酸配列を含み、該核酸は、
i)プロモーター配列、これは
ii)異種挿入配列に動作可能に連結され、これは
iii)オープンリーディングフレームに動作可能に連結され、これは
iv)転写終結シグナルに動作可能に連結されている、
を含み、ここで前記異種挿入配列およびオープンリーディングフレームは、本明細書上記に定義の通りであり、
ここで前記微生物細胞はさらに、前記細胞内でのGGPPSの発現を指向する核酸配列に動作可能に連結されたGGPPSをコードする異種核酸を含み;
b.aの微生物細胞を培養すること;
【0131】
c.ステビオールを回収すること、
ここで前記微生物細胞は、本明細書上記の節「細胞」に記載の任意の微生物細胞であってよく;および前記プロモーターは、本明細書上記の節「プロモーター」に記載の任意のプロモーターなどの、任意のプロモーターであってよく;および前記異種挿入配列は、本明細書上記の節「異種挿入配列」に記載の任意の異種挿入配列であってよく;および前記オープンリーディングフレームはスクアレン合成酵素をコードし、これは本明細書上記の節「スクアレン合成酵素」に記載の任意のスクアレン合成酵素であってよく;および前記GGPPSは、本明細書上記の節「ゲラニルゲラニルピロリン酸合成酵素」に記載の任意のGGPPSであってよく、および前記HMCRは、本明細書上記の節「HMCR」に記載の任意のHMCRであってよい。
この態様において、前記微生物細胞は任意に、ステビオールの生合成経路に関与する1または2以上の酵素をコードする1または2以上の追加の異種核酸を含有してもよい。
【0132】
一態様において、細胞はさらに、以下:アセトアセチルCoAチオラーゼ、HMG-CoA還元酵素またはその触媒ドメイン、HMG-CoA合成酵素、メバロン酸キナーゼ、ホスホメバロン酸キナーゼ、ホスホメバロン酸デカルボキシラーゼ、イソペンテニルピロリン酸イソメラーゼ、ファルネシルピロリン酸合成酵素、D-1-デオキシキシルロース5-リン酸合成酵素、および1-デオキシ-D-キシルロース5-リン酸レダクトイソメラーゼおよびファルネシルピロリン酸合成酵素、からなる群から選択される1または2以上の酵素の活性を強化する、および/または過剰発現させるように、さらに遺伝子操作される。
本発明の方法の一態様において、細胞は、ERG9オープンリーディングフレーム内に変異を含む。
本発明の方法の別の態様において、細胞は、ERG9[デルタ]::HIS3欠失/挿入対立遺伝子を含む。
さらに別の態様において、本発明の方法の化合物を回収するステップは、細胞培養培地からの該化合物の精製をさらに含む。
【0133】
D.機能性ホモログ
上記ポリペプチドの機能性ホモログはまた、組換え宿主においてステビオールまたはステビオール配糖体の生産に使用するのにも適している。機能性ホモログは、参照ポリペプチドと配列類似性を有し、参照ポリペプチドの生化学的または生理学的機能(単数または複数)の1または2以上を実行するポリペプチドである。機能性ホモログおよび参照ポリペプチドは、天然に存在するポリペプチドであってよく、配列類似性は、収束的または発散的進化的事象に起因し得る。このように、機能性ホモログは、文献においてホモログ、またはオルソログ、またはパラログなどと称されることもある。天然に存在する機能性ホモログの変異体、例えば野生型コード配列の変異体によってコードされるポリペプチドは、それ自体が機能性ホモログであり得る。機能性ホモログはまた、ポリペプチドのコード配列の部位特異的突然変異誘発を介して、または別の天然に存在するポリペプチドのコード配列からのドメインを組み合わせることによって(「ドメイン交換」)、作ることもできる。本明細書に記載の機能性UGTポリペプチドをコードする遺伝子を修飾するための技術は周知であり、特に指向進化技術、部位特異的突然変異誘発技術およびランダム突然変異誘発技術を含み、ポリペプチドの特異的活性を増大させ、基質特異性を改変し、発現レベルを変化させ、細胞内局在を変化させ、またはポリペプチド:ポリペプチドの相互作用を所望の方法で変更するのに有用である。かかる修飾ポリペプチドは、機能性ホモログと考えられている。用語「機能性ホモログ」は、機能的に相同なポリペプチドをコードする核酸に適用されることもある。
【0134】
機能性ホモログは、ヌクレオチドおよびポリペプチド配列のアラインメントの分析によって同定することができる。例えば、ヌクレオチドまたはポリペプチド配列のデータベースに対してクエリを実行して、ステビオールまたはステビオール配糖体生合成ポリペプチドのホモログを同定することができる。配列分析には、GGPPS、CDPS、KS、KOまたはKAHアミノ酸配列を参照配列として用いる、非重複データベースのBLAST、相互(reciprocal)BLASTまたPSI-BLAST分析を含む。アミノ酸配列は、いくつかの例では、ヌクレオチド配列から推定される。40%以上の配列同一性を有するデータベース内のポリペプチドは、ステビオールまたはステビオール配糖体生合成ペプチドとしての適合性のためのさらなる評価の候補である。アミノ酸配列類似性は、例えば、1つの疎水性残基の別のものとの置換、または1つの極性残基の別のものとの置換などの、保存的アミノ酸置換を可能にする。所望により、かかる候補の手動による検査を実施して、さらに評価すべき候補数を絞り込むことができる。手動検査は、例えば保存された機能的ドメインなどの、ステビオール生合成ポリペプチド中に存在するドメインを有すると考えられる候補を選択することによって、行うことができる。
【0135】
保存領域は、ステビオールまたはステビオール配糖体生合成ポリペプチドの一次アミノ酸配列内の領域であって、反復配列であり、幾つかの二次構造(例えば、ヘリックスおよびβシート)を形成し、正または負に荷電したドメインを確立し、またはタンパク質モチーフもしくはドメインを表す前記領域を位置付けることによって同定することができる。例えば、種々のタンパク質モチーフまたはドメインについてのコンセンサス配列を記述するPfamのウェブサイト、ワールドワイドウェブのsanger.ac.uk/Software/Pfam/およびpfam.janelia.org/を参照。Pfamデータベースに含まれる情報は、Sonnhammer et al., Nucl. Acids Res., 26:320-322 (1998);Sonnhammer et al., Proteins, 28:405-420 (1997);およびBateman et al., Nucl. Acids Res., 27:260-262 (1999)に記載されている。保存領域はまた、近縁の種からの同一または関連するポリペプチドの配列を整列させることによっても決定することができる。近縁の種は、好ましくは、同一ファミリーからのものである。一部の態様においては、2つの異なる種からの配列のアラインメントが適切である。
典型的には、少なくとも約40%のアミノ酸配列同一性を示すポリペプチドは、保存領域を同定するのに有用である。関連するポリペプチドの保存領域は、少なくとも45%のアミノ酸配列同一性(例えば、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%のアミノ酸配列同一性)を示す。一部の態様において、保存領域は、少なくとも92%、94%、96%、98% 、または99%のアミノ酸配列同一性を示す。
【0136】
例えば、組換え宿主内でステビオール配糖体を生産するのに適したポリペプチドとしては、EUGT11、UGT91D2e、UGT91D2m、UGT85C、およびUGT76Gの機能性ホモログを含む。かかるホモログは、EUGT11(配列番号152)、UGT91D2e(配列番号5)、UGT91D2m(配列番号10)、UGT85C(配列番号3)、またはUGT76G(配列番号7)のアミノ酸配列に対して90%を超える(例えば少なくとも95%または99%の)配列同一性を有する。EUGT11、UGT91D、UGT85C、およびUGT76Gポリペプチドの変異体は、典型的には、一次アミノ酸配列中に10以下のアミノ酸置換を、例えば7以下のアミノ酸置換、5または保存的アミノ酸置換、または1~5のアミノ酸置換を有する。しかしながら一部の態様において、EUGT11、UGT91D、UGT85C、およびUGT76Gポリペプチドの変異体は、10以上のアミノ酸置換(例えば、10、15、20、25、30、35、10~20、10~35、20~30、または25~35のアミノ酸置換)を有することができる。置換は、保存的、または一部の態様では、非保存的であってもよい。UGT91D2eポリペプチド内の非保存的変化の非限定的な例としては、グリシンからアルギニンへ、およびトリプトファンからアルギニンへの変化を含む。UGT76Gポリペプチド内の非保存的置換の非限定的な例としては、バリンからグルタミン酸へ、グリシンからグルタミン酸へ、グルタミンからアラニンへ、およびセリンからプロリンへの置換を含む。UGT85Cポリペプチドへの変化の非限定的な例としては、ヒスチジンからアスパラギン酸へ、プロリンからセリンへ、リジンからスレオニンへ、およびスレオニンからアルギニンへの変化を含む。
【0137】
一部の態様において、有用なUGT91D2ホモログは、予測ループの外側のポリペプチドの領域におけるアミノ酸置換(例えば、保存的アミノ酸置換)を有することができ、例えば、残基20~26、39~43、88~95、121~124、142~158、185~198、および203~214は、配列番号5のN末端ドメインの予測ループであり、残基381~386は、C末端ドメインの予測ループである。例えば、有用なUGT91D2ホモログは、配列番号5の残基1~19、27~38、44~87、96~120、125~141、159~184、199~202、215~380、または387~473に、少なくとも1つのアミノ酸置換を含むことができる。一部の態様において、UGT91D2ホモログは、配列番号5の残基30、93、99、122、140、142、148、153、156、195、196、199、206、207、211、221、286、343、427、および438からなる群から選択される1または2以上の残基において、アミノ酸置換を有することができる。例えば、UGT91D2機能性ホモログは、残基206、207、および343の1または2以上においてアミノ酸置換を有することができ、例えば配列番号5の残基206におけるアルギニン、残基207におけるシステイン、および残基343におけるアルギニンである。配列番号95を参照。UGT91D2の他の機能性ホモログは、以下の1または2以上を有することができる:配列番号5の、残基30におけるチロシンまたはフェニルアラニン、残基93におけるプロリンまたはグルタミン、残基99におけるセリンまたはバリン、残基122におけるチロシンまたはフェニルアラニン、残基140におけるヒスチジンまたはチロシン、残基142におけるセリンまたはシステイン、残基148におけるアラニンまたはスレオニン、残基152におけるメチオニン、残基153におけるアラニン、残基156におけるアラニンまたはセリン、残基162におけるグリシン、残基195におけるロイシンまたはメチオニン、残基196におけるグルタミン酸、残基199におけるリシンまたはグルタミン酸、残基211におけるロイシンまたはメチオニン、残基213におけるロイシン、残基221におけるセリンまたはフェニルアラニン、残基253におけるバリンまたはイソロイシン、残基286におけるバリンまたはアラニン、残基427におけるリシンまたはアスパラギン、残基438におけるアラニン、および残基462におけるアラニンまたはスレオニンのいずれか。別の態様において、UGT91D2機能性ホモログは、残基211にメチオニンおよび残基286にアラニンを含む。
【0138】
一部の態様において、有用なUGT85Cホモログは、1または2以上のアミノ酸置換を、配列番号3の残基9、10、13、15、21、27、60、65、71、87、91、220、243、270、289、298、334、336、350、368、389、394、397、418、420、440、441、444、および471において有することができる。有用なUGT85Cホモログの非限定的な例としては、以下を有するポリペプチドが挙げられる:(配列番号3に対して)残基65(例えば残基65にセリン)における置換、残基65おける置換と、残基15(残基15にロイシン)、270(例えば、残基270にメチオニン、アルギニン、またはアラニン)、418(例えば、残基418にバリン)、440(例えば、残基440にアスパラギン酸)、または441(例えば、残基441にアスパラギン)との組み合わせ;残基13(例えば、残基13にフェニルアラニン)、15、60(例えば、残基60にアスパラギン酸)、270、289(例えば、残基289にヒスチジン)、および418;残基13、60および270における置換;残基60および87における置換(例えば、残基87にフェニルアラニン);残基65、71における置換(例えば、残基71にグルタミン)、220(例えば、残基220にスレオニン)、243(例えば、残基243にトリプトファン)、および270;残基65、71、220、243、270、および442における置換;残基65、71、220、389における置換(例えば、残基389にバリン)、および394(例えば、残基394にバリン);残基65、71、270、289における置換;残基220、243、270、および334における置換(例えば、残基334にセリン);または残基270および289における置換。以下のアミノ酸変異は、85C2ポリペプチドにおける活性の損失を生じなかった:V13F、F15L、H60D、A65S、E71Q、I87F、K220T、R243W、T270M、T270R、Q289H、L334S、A389V、I394V、P397S、E418V、G440D、およびH441N。活性なクローンで見られた追加の変異としては、K9E、K10R、Q21H、M27V、L91P、Y298C、K350T、H368R、G420R、L431P、R444G、およびM471Tが含まれる。一部の態様において、UGT85C2は、位置65(例えば、セリン)、71(グルタミン)、270(メチオニン)、289(ヒスチジン)、および389(バリン)での置換を含む。
【0139】
Stevia rebaudianaUGTの74G1、76G1および91D2eであって、ヒトMDM2タンパク質の最初の158のアミノ酸の、N末端のインフレーム融合を有するもの、およびStevia rebaudianaUGT85C2であって、合成PMIペプチド(4 X TSFAEYWNLLSP、配列番号86)の4つの繰り返しのN末端のインフレーム融合を有するものを、それぞれ配列番号90、88、94および92に示す;融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列については、配列番号89、92、93、および95を参照。
一部の態様において、有用なUGT76Gホモログは、配列番号7の残基29、74、87、91、116、123、125、126、130、145、192、193、194、196、198、199、200、203、204、205、206、207、208、266, 273、274、284、285、291、330、331、および346において、1または2以上のアミノ酸置換を有することができる。有用なUGT76Gホモログの非限定的例としては、置換(配列番号7について)を、残基74、87、91、116、123、125、126、130、145、192、193、194、196、198、199、200、203、204、205、206、207、208、および291;残基74、87、91、116、123、125、126、130、145、192、193、194、196、198、199、200、203、204、205、206、207、208、266、273、274、284、285、および291;または残基74、87、91、116、123、125、126、130、145、192、193、194、196、198、199、200、203、204、205、206、207、208、266、273、274、284、285、291、330、331、および346、において有するポリペプチドが挙げられる。表9を参照。
【0140】
【表10】
例えばEUGT11またはUGT91D2eの基質特異性を改変する方法は当業者に知られており、限定されないが、部位特異的/合理的突然変異誘発アプローチ、ランダムな方向進化アプローチ、およびランダム突然変異誘発/飽和技術を酵素の活性部位付近で実施する組み合わせがあげられる。例えばSarah A. Osmani, et al.
Phytochemistry 70 (2009) 325-347を参照。
【0141】
候補配列は、典型的には参照配列の長さの80%~200%の長さを有し、例えば参照配列の長さの82、85、87、89、90、93、95、97、99、100、105、110、115、120、130、140、150、160、170、180、190、または200%の長さを有する。機能性ホモログポリペプチドは典型的には、参照配列の長さの95%~105%の長さを、例えば参照配列の長さの90、93、95、97、99、100、105、110、115、または120%、またはその間の任意の範囲の長さを有する。任意の候補核酸またはポリペプチドの、参照核酸またはポリペプチドに対するパーセント同一性は、次のように決定することができる。参照配列(例えば、核酸配列またはアミノ酸配列)を、1または2以上の候補配列に対して、核酸またはポリペプチド配列のアラインメントをそれらの全長にわたって(グローバルアライメント)行うことを可能にするコンピュータプログラムClustalW(バージョン1.83、デフォルトパラメータ)を用いて整列させる。Chenna et al., Nucleic Acids Res., 31(13):3497-500 (2003)。
【0142】
ClustalWは、参照配列および1または2以上の候補配列の間のベストマッチを計算し、同一性、類似点および相違点を決定できるようにそれらを整列させる。1または2以上の残基のギャップを、参照配列、候補配列、またはその両方に挿入して、配列アラインメントを最大にすることができる。核酸配列の高速のペアワイズアライメントのために、以下のデフォルトのパラメータが使用される:word size:2;window size:4;scoring method:パーセンテージ;number of top diagonals:4;およびgap penalty:5。核酸配列の多重アラインメントのために、以下のパラメータが使用される:gap opening penalty:10.0;gap extension penalty:5.0;およびweight transition:yes。タンパク質配列の高速なペアワイズアライメントのために、以下のパラメータが使用される:word size:1;window size:5;scoring method:パーセンテージ;number of top diagonals:5;およびgap penalty:3。タンパク質配列の多重アラインメントのために、以下のパラメータが使用される:weight matrix:blosum;gap opening penalty:10.0;gap extension penalty:0.05;hydrophilic gaps:オン;hydrophilic residues:Gly、Pro、Ser、Asn、Asp、Gln、Glu、Arg、およびLys;residue-specific gap penalties:オン。ClustalWの出力は、配列間の関係を反映する配列アラインメントである。ClustalWは、例えばワールドワイドウェブ((searchlauncher.bcm.tmc.edu/multi-align/multi-align.html)のBaylor College of Medicine Search Launcherサイトおよび、ワールドワイドウェブ(ebi.ac.uk/clustalw)のEuropean Bioinformatics Instituteサイトで実行することができる。
【0143】
候補核酸またはアミノ酸配列の参照配列に対する同一性パーセントを決定するために、配列をClustalWを使用して整列させ、アラインメントにおける同一マッチの数を参照配列の長さで除算し、その結果を100倍する。同一性パーセント値は、最も近い10分の1の値に丸めることができることに留意されたい。例えば、78.11、78.12、78.13、よび78.14は78.1に切り捨てられ、78.15、78.16、78.17、78.18および78.19は、78.2に切り上げられる。
機能性UGTは、グルコシル化または酵素によって行われる他の酵素活動に関与しない追加のアミノ酸を含み得ることが理解され、したがってかかるポリペプチドは、それ以外の場合よりも長い可能性がある。例えば、EUGT11ポリペプチドは、精製タグ(例えば、HISタグまたはGSTタグ)、葉緑体輸送ペプチド、ミトコンドリア輸送ペプチド、アミロプラストペプチド、シグナルペプチド、またはアミノ末端またはカルボキシ末端に付加された分泌タグを含むことができる。一部の態様において、EUGT11ポリペプチドは、レポーターとして機能するアミノ酸配列、例えば緑色蛍光タンパク質または黄色蛍光タンパク質を含む。
【0144】
II.ステビオールおよびステビオール配糖体生合成核酸
本明細書に記載のポリペプチドをコードする組換え遺伝子は、ポリペプチドを発現するのに適した1または2以上の調節領域にセンス方向に動作可能に結合しているそのポリペプチドのコード配列を含む。多くの微生物は、多シストロン性mRNAからの複数の遺伝子産物を発現することができるため、所望の場合、複数のポリペプチドの発現が、それらの微生物のための単一の調節領域の制御下で可能である。調節領域が配列の転写または翻訳を調節するのに有効であるように調節領域とコード配列が配置されている場合に、コード配列と調節領域は動作可能に連結されていると考えられる。典型的には、コード配列の翻訳リーディングフレームの翻訳開始部位は、単シストロン性遺伝子のための調節領域の下流1~約50個のヌクレオチドの間に位置される。
【0145】
多くの場合、本明細書に記載のポリペプチドのコード配列は、組換え宿主以外の種において同定された、すなわち異種核酸である。したがって、組換え宿主が微生物の場合、コード配列は他の原核生物または真核微生物由来、植物または動物由来であり得る。しかしいくつかの場合においては、コード配列は、宿主に先天的に(native)存在して、その生物に再導入された配列である。ネイティブ配列は多くの場合、外因性核酸に結合した非天然配列の存在により、例えば、組換え核酸コンストラクト中のネイティブ配列に隣接する非ネイティブ調節配列により、天然に存在する配列から区別することができる。加えて、安定に形質転換された外因性核酸は、典型的には、ネイティブ配列が見出される位置以外の位置に組み込まれている。
【0146】
「調節領域」とは、転写または翻訳の開始および速度、および転写または翻訳産物の安定性および/または移動度に影響を与えるヌクレオチド配列を有する核酸を指す。調節領域としては、限定はされないが、プロモーター配列、エンハンサー配列、応答エレメント、タンパク質認識部位、誘導性エレメント、タンパク質結合配列、5’および3’非翻訳領域(UTR)、転写開始部位、終結配列、ポリアデニル化配列、イントロン、およびそれらの組み合わせを含む。調節領域は、典型的には、少なくともコア(基本)プロモーターを含む。調節領域はまた、少なくとも1つの制御エレメント、例えばエンハンサー配列、上流エレメントまたは上流活性化領域(UAR)などを含んでもよい。調節領域は、調節領域が配列の転写または翻訳を調節するのに有効であるように調節領域とコード配列を配置することにより、コード配列に動作可能に連結される。例えば、コード配列とプロモーター配列を動作可能に連結するために、コード配列の翻訳リーディングフレームの翻訳開始部位は、典型的にはプロモーターの下流1~約50ヌクレオチドの間に配置される。しかし調節領域は、翻訳開始部位の上流約5,000ヌクレオチド、または転写開始部位の上流の約2,000ヌクレオチドまでに配置することが可能である。
【0147】
含められる調節領域の選択はいくつかの要因に依存し、限定はされないが、効率性、選択性、誘導性、所望の発現レベル、および特定の培養段階での優先的発現を含む。当業者にとって、コード配列に対して調節領域を適切に選択して配置することにより、コード配列の発現を調節することは、日常的事項である。1つより多くの調節領域、例えば、イントロン、エンハンサー、上流活性化領域、転写ターミネーター、および誘導性エレメントが存在し得ることが理解される。
1または2以上の遺伝子を、組換え核酸コンストラクト中に、ステビオールおよび/またはステビオール配糖体の生産の離散的側面に有用な「モジュール」として組み合わせることができる。複数の遺伝子を、モジュール内、特に多シストロン性モジュール内に組み合わせることにより、様々な種におけるモジュールの使用を容易にする。例えば、ステビオール生合成遺伝子クラスター、またはUGT遺伝子クラスターは、適切な調節領域を挿入した後に、モジュールを様々な種に導入することができるように、多シストロン性モジュール内に組み合わせることができる。別の例として、UGT遺伝子クラスターは、各UGTコード配列が別個の調節領域に動作可能に連結されてUGTモジュールを形成するように、組み合わせることができる。かかるモジュールは、単シストロン性発現が必要であるかまたは望まれる種において、用いることができる。ステビオールまたはステビオール配糖体の生産に有用な遺伝子に加えて、組換えコンストラクトは、典型的には、複製起点および適切な種におけるコンストラクトの維持のための1または2以上の選択マーカーも含有する。
【0148】
遺伝コードの縮重のため、多数の核酸が特定のポリペプチドをコード可能であることが理解され、すなわち、多くのアミノ酸に対して、アミノ酸のコドンとして機能する1より多くのヌクレオチドトリプレットが存在する。したがって、所与のポリペプチドに対するコード配列中のコドンは、特定の宿主における最適な発現が、その宿主(例えば、微生物)のための適切なコドンバイアス表を用いて得られるように、変更することができる。配列番号18~25、34~36、40~43、48~49、52~55、60~64、70~72、および154は、ステビオールおよびステビオール配糖体の生合成のための特定の酵素をコードするヌクレオチド配列であって、酵母での発現の増加のために修飾されたものを示す。単離された核酸のように、これらの修飾された配列は、精製された分子として存在することができ、組換え核酸コンストラクトのモジュールを構築するために使用するベクターまたはウイルスに組み込むことができる。
【0149】
いくつかの場合において、内因性ポリペプチドの1または2以上の機能の阻害は、代謝中間体をステビオールまたはステビオール配糖体の生合成に転用するために望ましい。例えば、酵母株においてステロールの合成を下方制御して、例えばスクアレンエポキシダーゼを下方制御して、ステビオールまたはステビオール配糖体の生産をさらに増加することが望ましい場合がある。別の例として、特定の内因性遺伝子産物、例えば、本明細書で説明するように二次代謝産物またはホスファターゼからグルコース部分を除去するグリコヒドロラーゼの、分解機能を阻害することが望ましい場合がある。別の例として、ステビオール配糖体の輸送に関与する膜輸送体の発現を抑制して、グリコシル化ステビオシドの分泌が阻害されるようにすることができる。かかる調節は、ステビオール配糖体の分泌を微生物の培養中の所望の時間抑制し、これにより収穫時の配糖体産物(単数または複数)の収量を増大させるために、有益であり得る。このような場合において、ポリペプチドまたは遺伝子産物の発現を阻害する核酸は、株に形質転換された組換えコンストラクト中に含まれてもよい。代替的に、突然変異誘発を用いて、その機能を阻害することが望まれる遺伝子において、突然変異体を生成することができる。
【0150】
III.宿主
A.微生物
多くの原核生物および真核生物は、本明細書に記載の組換え微生物の構築に使用するのに適しており、例えば、グラム陰性細菌、酵母および真菌である。ステビオールまたはステビオール配糖体生産菌株として使用するために選択された種および菌株は、初めに、どの産生遺伝子が菌株に対して内因性であるか、およびどの遺伝子が存在しないかを決定するために、分析される。内因性の対応物が株には存在しない遺伝子は、1または2以上の組換えコンストラクト中に集められ、その後、欠落している機能(複数可)を供給するために株に形質転換される。
例示的な原核生物および真核生物の種を、以下により詳細に説明する。しかし、他の種も好適となり得ることが理解される。例えば適切な種は、以下の群から選択される属であってよい:Agaricus、Aspergillus、Bacillus、Candida、Corynebacterium、Escherichia、Fusarium/Gibberella、Kluyveromyces、Laetiporus、Lentinus、Phaffia、Phanerochaete、Pichia、Physcomitrella、Rhodoturula、Saccharomyces、Schizosaccharomyces、Sphaceloma、XanthophyllomycesおよびYarrowia。かかる属の代表的な種としては、Lentinus tigrinus、Laetiporus sulphureus、Phanerochaete chrysosporium、Pichia pastoris、Physcomitrella patens、Rhodoturula glutinis 32、Rhodoturula mucilaginosa、Phaffia rhodozyma UBV-AX、Xanthophyllomyces dendrorhous、Fusarium fujikuro/Gibberella fujikuroi、Candida utilisおよびYarrowia lipolyticaを含む。一部の態様において、微生物は、Gibberella fujikuroi、Kluyveromyces lactis、Schizosaccharomyces pombe、Aspergillus niger、またはSaccharomyces cerevisiaeなどの子嚢菌であることができる。一部の態様において、微生物は、Escherichia coli、Rhodobacter sphaeroides、またはRhodobacter capsulatusなどの原核生物であることができる。特定の微生物を用いて、高スループット様式で目的の遺伝子をスクリーニングおよび試験することができ、一方で、所望の生産性または増殖特性を有する他の微生物を用いて、ステビオール配糖体の大規模生産ができることが、理解される。
【0151】
Saccharomyces cerevisiae
Saccharomyces cerevisiaeは、合成生物学において広く使用されているシャーシ生物であり、組換え微生物プラットフォームとして使用することができる。変異体のライブラリ、プラスミド、代謝に関する詳細なコンピュータモデルおよび、S. cerevisiaeについて利用可能なその他の情報が存在し、生成物の収量を高めるための様々なモジュールの合理的設計を可能にする。組換え微生物を作製する方法は知られている。
ステビオール生合成遺伝子クラスターは、多数の既知のプロモーターのいずれかを用いて、酵母中で発現することができる。テルペン類を過剰生産する株が知られており、ステビオールおよびステビオール配糖体の生産に利用可能なゲラニルゲラニル二リン酸の量を増加するために使用することができる。
【0152】
Aspergillus種
Aspergillus spp種、例えばA. oryzae、A. nigerおよびA. sojaeは、食糧生産に広く用いられている微生物であり、組換え微生物プラットフォームとしても使用することができる。A. nidulans、A. fumigatus、A. oryzae、A. clavatus、A. flavus、A. niger、およびA. terreusのゲノムについてヌクレオチド配列が利用可能であり、フラックスの強化および生成物の収量増加のための、内因性経路の合理的な設計と変更を可能にする。Aspergillusについて代謝モデルが開発されており、またトランスクリプトーム研究やプロテオミクス研究もなされている。A. nigerは、クエン酸およびグルコン酸など多くの食品成分の工業的生産のために培養され、したがってA. nigerなどの種は、一般に、ステビオールおよびステビオール配糖体などの食品成分の生産に適している。
Escherichia coli
Escherichia coliは、合成生物学において広く使用されている別のプラットフォーム生物であり、組換え微生物プラットフォームとしても使用することができる。Saccharomycesと同様に、変異体のライブラリ、プラスミド、代謝に関する詳細なコンピュータモデルおよび、E. coliについて利用可能なその他の情報が存在し、生成物の収量を高めるための様々なモジュールの合理的設計を可能にする。上記Saccharomycesに対するものと同様の方法を用いて、組換えE. coli微生物を作製することができる。
【0153】
Agaricus、Gibberella、およびPhanerochaete種
Agaricus、Gibberella、およびPhanerochaete種は、培養中に大量のジベレリンを生産することが知られているので、有用であり得る。したがって、大量のステビオールおよびステビオール配糖体を生産するためのテルペン前駆体は、既に内因性遺伝子によって生産されている。したがって、ステビオールまたはステビオール配糖体生合成ポリペプチドのための組換え遺伝子を含むモジュールを、メバロン酸またはMEP経路遺伝子を導入する必要なしに、かかる属の種に導入することができる。
Arxula adeninivorans(Blastobotrys adeninivorans)
Arxula adeninivoransは、珍しい生化学的特性の二形性酵母(温度42℃まではパン酵母のように出芽酵母として増殖し、この閾値を上回ると糸状形で増殖する)である。これは広範囲の基質上で増殖することができ、硝酸塩を同化することができる。これは、天然プラスチックを生産できる株の生成に、または環境試料中のエストロゲンについてのバイオセンサーの開発に、成功して適用されている。
【0154】
Yarrowia lipolytica
Yarrowia lipolyticaは、広い範囲の基質上で増殖することができる二形性酵母である(Arxula adeninivoransを参照)。これは、産業用途に高いポテンシャルを有するが、商業的に利用可能な組換え産物はまだ存在しない。
Rhodobacter種
Rhodobacterは、組換え微生物プラットフォームとして使用することができる。E. coliと同様に、利用可能な変異体のライブラリならびに適切なプラスミドベクターが存在し、生成物の収量を高めるための様々なモジュールの合理的設計を可能にする。カロテノイドとCoQ10の増産のために、イソプレノイド経路がRhodobacterの膜性細菌種において操作された。米国特許公開第20050003474号および第20040078846号を参照。上記のE. coliに対するものと同様の方法を用いて、組換えRhodobacter微生物を作製することができる。
Candida boidinii
Candida boidiniiは、メチロトローフ酵母(メタノールで増殖することができる)である。他のメチロトローフ種、例えばHansenula polymorphaおよびPichia pastorisと同様に、これは、異種タンパク質の生産のための優れたプラットフォームを提供する。分泌された外来タンパク質の複数グラム範囲の収量が報告されている。計算方法であるIPROによれば、最近になって、Candida boidiniiのキシロース還元酵素の補因子特異性を、NADPHからNADHへ実験的に切り替える変異が予測された。
【0155】
Hansenula polymorpha(Pichia angusta)
Hansenula polymorphaは、別のメチロトローフ酵母である(Candida boidiniiを参照)。これはさらに、広範囲の他の基質上で増殖が可能である;熱耐性があり、硝酸塩を同化することができる(Kluyveromyces lactisも参照)。これはまた、B型肝炎ワクチン、インスリンおよびC型肝炎の処置のためのインターフェロンα-2aの生産、さらに技術的酵素の範囲に適用されている。
Kluyveromyces lactis
Kluyveromyces lactisは、ケフィアの生産に定期的に適用される酵母である。これはいくつかの糖で増殖することができ、最も重要なのは、牛乳やホエイに存在する乳糖で増殖できることである。これはチーズの生産のために、特にキモシン(仔牛の胃に通常に存在する酵素)の生産に、成功して適用されている。生産は、40,000Lスケールで発酵槽にて行われる。
Pichia pastoris
Pichia pastorisは、メチロトローフ酵母である(Candida boidiniiおよびHansenula polymorphaを参照)。これは、外来タンパク質の生産のための効率的なプラットフォームを提供する。プラットフォーム要素は、キットとして入手可能であり、タンパク質の生産のために学術分野で世界的に用いられている。株は、複雑なヒトグリカン(酵母グリカンは類似しているが、ヒトに見出されるものと同一ではない)を生産できるように操作されている。
Physcomitrella種
懸濁培養で増殖させた場合のPhyscomitrellaコケは、酵母または他の真菌培養物と類似した特性を有する。この属は、他の種類の細胞では生産が困難となり得る、植物二次代謝産物の生産のための重要な細胞種類となっている。
【0156】
B.植物細胞または植物
一部の態様において、本明細書に記載の核酸およびポリペプチドは、全体的なステビオール配糖体の生産を増加させるため、または他に比例して特定のステビオール配糖体の生産を富化するために、植物または植物細胞に導入される。したがって宿主は、本明細書に記載の少なくとも1つの組換え遺伝子を含む植物または植物細胞であることができる。植物または植物細胞は、そのゲノム内に組換え遺伝子を組み込むことによって形質転換することができ、すなわち、安定に形質転換することができる。安定に形質転換された細胞は、典型的には、各細胞分裂において、導入された核酸を保持する。植物または植物細胞はまた、組換え遺伝子がそのゲノムに組み込まれないように、一過性に形質転換することもできる。一過性に形質転換された細胞は、典型的には、各細胞分裂において導入された核酸の全てまたは一部分を失い、導入された核酸は十分な数の細胞分裂の後に、娘細胞において検出できなくなる。一過性形質転換および安定形質転換されたトランスジェニック植物および植物細胞は、本明細書に記載の方法において有用となり得る。
【0157】
本明細書に記載の方法において使用されるトランスジェニック植物細胞は、植物全体の一部または全てを構成することができる。かかる植物は、栽培箱、温室、または耕地でのいずれかで、考慮している種に適切な方法で成長させることができる。トランスジェニック植物は、特定の目的のために、例えば、組換え核酸を他の系統に導入するため、組換え核酸を他の種に転移するため、または他の望ましい形質のさらなる選択のために、必要に応じて栽培できる。代替的に、トランスジェニック植物は、かかる技術に適した種のために、栄養繁殖させることができる。本明細書で用いる場合、トランスジェニック植物はまた、後代が導入遺伝子を継承しているとの条件下で、最初のトランスジェニック植物の後代も指す。トランスジェニック植物が生成した種子を成長させ、次いで自家受粉させて(または異種交配後に自家受粉させて)、核酸コンストラクトのホモ接合種子を得ることができる。
トランスジェニック植物は、懸濁培養物、または組織もしくは器官培養で増殖させることができる。本発明の目的のために、固体および/または液体組織培養技術を使用することができる。固体培地を使用する場合は、トランスジェニック植物細胞は、媒地上に直接配置することができるか、または、フィルター上に配置してこれを次に媒地と接触して配置することができる。液体培地を使用する場合は、トランスジェニック植物細胞は、浮遊装置に、例えば液体媒地に接触する多孔質膜上に配置することができる。
【0158】
一過性形質転換された植物細胞を用いる場合、レポーター活性を有するレポーターポリペプチドをコードするレポーター配列を、形質転換手順に含めることができ、レポーター活性または発現のためのアッセイは、形質転換後の適当な時期に行うことができる。アッセイを実施するのに適した時間は、一般的に、形質転換の約1~21日後、例えば約1~14日、約1~7日、または約1~3日後である。一過性アッセイの使用は、異なる種における迅速な分析のため、または以前に特定のレシピエント細胞においてその発現が確認されていない異種ポリペプチドの発現を確認するのに、特に便利である。
単子葉植物および双子葉植物に核酸を導入するための技術は当技術分野で周知であり、限定はされないが、アグロバクテリウム媒介形質転換、ウイルスベクター媒介形質転換、エレクトロポレーションおよび粒子銃形質転換、米国特許第5,538,880号、第5,204,253号、第6,329,571号、および第6,013,863号を含む。細胞または培養組織を形質転換のためのレシピエント組織として用いる場合、所望により、植物は形質転換された培養物から、当業者に周知の技術によって再生することができる。
【0159】
トランスジェニック植物の集団を、導入遺伝子の発現により付与される形質または表現型を有する集団のメンバーについてスクリーニングする、および/または選択することができる。例えば、単一の形質転換事象の後代の集団を、ステビオールまたはステビオール配糖体生合成ポリペプチドまたは核酸の発現の所望のレベルを有する植物について、スクリーニングすることができる。物理的および生化学的方法を、発現レベルを同定するために用いることができる。これらには、ポリヌクレオチドの検出のためのサザン解析またはPCR増幅;RNA転写物を検出するための、ノーザンブロット、S1 RNase保護、プライマー伸長、またはRT-PCR増幅;ポリペプチドおよびポリヌクレオチドの酵素またはリボザイム活性を検出するための酵素アッセイ;およびポリペプチドを検出するための、タンパク質ゲル電気泳動、ウェスタンブロット、免疫沈降、および酵素結合イムノアッセイが含まれる。in situハイブリダイゼーション、酵素染色、および免疫染色などの他の技術もまた、ポリペプチドおよび/または核酸の存在または発現を検出するために、用いることができる。参照された全技術を実行するための方法が知られている。別の方法として、独立した形質転換事象を含む植物の集団を、ステビオール配糖体の生産またはステビオール配糖体の調節された生合成などの所望の形質を有する植物について、スクリーニングすることができる。選択および/またはスクリーニングは、1または2以上の世代に渡り、および/または、2つ以上の地理的位置において、行うことができる。いくつかの場合において、トランスジェニック植物を、所望の表現型を誘導する条件、またはトランスジェニック植物において所望の表現型を生成するのに必要とされる他の条件の下で、成長させ選択することができる。また、選択および/またはスクリーニングは、表現型が植物によって示されることが期待される特定の発達段階の間に、適用することができる。選択および/またはスクリーニングは、導入遺伝子を欠く対照植物と比べて、ステビオール配糖体レベルに統計的に有意な差を有するトランスジェニック植物を選択するために、実施することができる。
【0160】
本明細書に記載の核酸、組換え遺伝子およびコンストラクトは、多くの単子葉植物および双子葉植物および植物細胞系を形質転換するために使用することができる。適切な単子葉植物の非限定的な例としては、例えば、イネ、ライムギ、モロコシ、キビ、コムギ、トウモロコシ、およびオオムギなどの作物を含む。植物はまた、アスパラガス、バナナ、またはタマネギなどの非穀物単子葉植物である。植物はまた、ステビア(Stevia rebaudiana)、ダイズ、ワタ、ヒマワリ、エンドウ、ゼラニウム、ホウレンソウ、またはタバコなどの双子葉植物である。いくつかの場合において、植物は、典型的には細胞質およびミトコンドリア中に見出される、メバロン酸経路などのフェニルリン酸産生のための前駆体経路を含むことができる。非メバロン酸経路は、植物プラスチドにおいてより頻繁に見出される[Dubey, et al., 2003 J. Biosci. 28 637-646]。当業者は、ステビオール配糖体生合成ポリペプチドの発現を、リーダー配列の使用により適切な細胞小器官に標的化して、ステビオール配糖体の生合成が、植物細胞の所望の部位で起こるようにすることができる。所望により当業者は、適切なプロモーターを使用して、合成を例えば植物の葉に指向させる。発現はまた、所望により、カルス培養や毛状根培養などの組織培養中で生じてもよい。
【0161】
一態様において、本明細書に記載の1または2以上の核酸またはポリペプチドは、ステビア(例えばStevia rebaudiana)に導入されて、全体的なステビオール配糖体の生合成が増加されるか、または全体的なステビオール配糖体組成物が、1または2以上の特定のステビオール配糖体(例えばレバウジオシドD)について選択的に富化されるようにする。例えば、1または2以上の組換え遺伝子をステビアに導入して、EUGT11酵素(例えば配列番号152またはその機能性ホモログ)が単独で、または以下の1または2以上と組み合わせて、発現されるようにすることができる:UGT91D2e(例えば配列番号5またはその機能性ホモログ)、UGT91D2m(例えば配列番号10)などのUGT91D酵素;「機能性ホモログ」の節に記載の変異体などのUGT85C酵素、「機能性ホモログ」の節に記載の変異体などのUGT76G1酵素、またはUGT74G1酵素。核酸コンストラクトは典型的には、UGTポリペプチドをコードする核酸に動作可能に連結された適切なプロモーター(例えば、35S、e35S、またはssRUBISCOプロモーター)を含む。核酸は、Agrobacterium媒介の形質転換により;プロトプラストへのエレクトロポレーション媒介の遺伝子転移、または粒子照射により、ステビア中に導入することができる。Singh, et al., Compendium of Transgenic Crop Plants: Transgenic Sugar, Tuber and Fiber, Edited by Chittaranjan Kole and Timothy C. Hall, Blackwell Publishing Ltd. (2008), pp. 97-115を参照。ステビアの葉由来カルスの粒子照射について、パラメータは以下である:距離6cm、1000psiのHe圧力、金粒子、および1回の照射。
【0162】
ステビア植物は、上記Singh et al., 2008に記載されるように体細胞不定胚形成によって再生することができる。特に、葉切片(長さ約1~2cm)を、5~6週齢のin vitroで栽培した植物から取り出し、ビタミンB5、30gのショ糖および3gのゲルライトを補充したMS培地上でインキュベート(向軸側を下向き)することができる。2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)を、6-ベンジルアデニン(BA)、カイネチン(KN)、またはゼアチンと組み合わせて使用することができる。前胚形成塊(proembryogenic mass)は8週間の継代培養の後に現れる。継代培養の2~3週間以内に、体細胞胚が培養物の表面に現れる。胚は、BAを2,4-D,a-ナフタレン酢酸(NAA)、またはインドール酪酸(IBA)と組み合わせて含有する培地中で成熟させることができる。発芽し小植物を形成した成熟体細胞胚を、カルスから切り出すことができる。小植物が3~4週に到達した後、小植物をバーミキュライトと共に鉢に移して、順化のために栽培箱内で6~8週間成長させ、温室に移す。
一態様において、ステビオール配糖体は、イネで生産される。イネおよびトウモロコシは、Agrobacterium媒介形質転換などの技法を用いて容易に形質転換可能である。バイナリーベクター系は、単子葉植物へのAgrobacterium外来遺伝子導入のために、一般に利用される。例えば、米国特許第6,215,051号および第6,329,571号を参照。バイナリーベクター系において、1つのベクターは目的の遺伝子(例えば、本明細書に記載のUGT)含むT-DNA領域を含み、他のベクターは、vir領域を含有する武装解除したTiプラスミドである。共組込みベクターおよび可動性ベクターを用いることもできる。形質転換すべき組織の種類および前処理、使用されるAgrobacterium株、植菌の持続時間、Agrobacteriumによる異常増殖および壊死の予防は、当業者により容易に調整することができる。イネの未熟な胚細胞を、バイナリーベクターを使用して、Agrobacteriumによる形質転換のために調製することができる。使用される培養培地には、フェノール化合物が補充される。代替的に、形質転換は、真空浸潤を用いて植物体に行うことができる。例えば、WO 2000037663、WO 2000063400、および WO 2001012828を参照。
【0163】
IV.ステビオール配糖体の生産方法
本明細書に記載の組換え宿主は、ステビオールまたはステビオール配糖体を生産する方法において使用することができる。例えば組換え宿主が微生物である場合、方法は、組換え微生物を培養培地中、ステビオールおよび/またはステビオール配糖体生合成遺伝子が発現される条件下で、増殖させることを含み得る。組換え微生物は、フェッドバッチまたは連続プロセスで増殖させることができる。典型的には、組換え微生物は発酵槽中、規定の温度(単数または複数)で所望の期間増殖される。方法で使用される特定の微生物に依存して、例えばイソペンテニル生合成遺伝子およびテルペン合成酵素およびシクラーゼ遺伝子などの他の組換え遺伝子もまた、存在し発現され得る。基質および中間体のレベル、例えばイソペンテニル二リン酸、ジメチルアリル二リン酸、ゲラニルゲラニル二リン酸、カウレンおよびカウレン酸などのレベルは、公表された方法に従って分析用に培養培地から試料を抽出することにより、決定することができる。
組換え微生物を、培養物中で所望の期間増殖させた後、ステビオールおよび/または1または2以上のステビオール配糖体を、次に当技術分野で周知の様々な技術を用いて培養物から回収することができる。一部の態様において、透過化剤を添加して、宿主に入る供給原料および出力される生成物を支援することができる。組換え宿主が植物または植物細胞である場合、ステビオールまたはステビオール配糖体を、当技術分野で周知の様々な技術を用いて植物組織から抽出することができる。例えば、培養された微生物または植物組織の粗溶解産物を遠心分離して、上清を得ることができる。得られた上清は次に、例えばC-18カラムなどのクロマトグラフィーカラムに適用し、水で洗浄して親水性化合物を除去し、次にメタノールなどの溶媒で目的の化合物(単数または複数)の溶出を行う。化合物(単数または複数)は、次いで分取HPLCによりさらに精製することができる。WO 2009/140394も参照。
【0164】
生産されたステビオール配糖体(例えばレバウジオシドD)の量は、約1mg/L~約1500mg/L、例えば約1~約10mg/L、約3~約10mg/L、約5~約20mg/L、約10~約50mg/L、約10~約100mg/L、約25~約500mg/L、約100~約1500mg/L、または約200~約1000mg/Lであることができる。一般に、より長い培養時間は、より大量の生成物につながる。したがって組換え微生物は、1日~7日、1日~5日、3日~5日、約3日、約4日、または約5日、培養することができる。
なお、本明細書で説明する様々な遺伝子およびモジュールは、1種の微生物よりもむしろ、2種または3種以上の組換え微生物中に存在し得ることが理解される。複数の組換え微生物を使用する場合、それらは、ステビオールおよび/またはステビオール配糖体を生産するために、混合培養物中で増殖させることができる。例えば、第1の微生物は、ステビオール生産のための1または2以上の生合成遺伝子を含むことができ、一方第2の微生物は、ステビオール配糖体生合成遺伝子を含む。あるいは、2または3以上の微生物それぞれを別々の培養培地で増殖することができ、第1の培養培地の生成物例えばステビオールは、第2の培養培地中に導入することができて、これは後続の中間体に変換されるか、またはレバウジオシドAなどの最終製品に変換される。第2の、または最終微生物によって生産された生成物は、その後回収される。一部の態様においては、組換え微生物が、培養培地以外の栄養源を用い発酵槽以外のシステムを利用して増殖されることも、理解されるであろう。
【0165】
ステビオール配糖体は、異なる食品系において必ずしも同等の性能を有する必要はない。したがって合成を、選択したステビオール配糖体組成物に指向する能力を有することが望ましい。本明細書に記載の組換え宿主は、特定のステビオール配糖体(例えば、レバウジオシドD)について選択的に富化され、一貫した味プロファイルを有する組成物を生産することができる。したがって、本明細書に記載の組換え微生物、植物、および植物細胞は、所与の食品用の所望の甘味プロファイルを満たし、かつバッチ間で一貫した各ステビオール配糖体の割合を有するように調整された組成物の生産を、促進することができる。本明細書に記載の微生物は、ステビア抽出物中に見られる望ましくない植物副産物を生成しない。したがって、本明細書に記載の組換え微生物によって生産されたステビオール配糖体組成物は、ステビア植物から誘導される組成物とは区別される。
【0166】
V.食品
本明細書に開示する方法によって得られたステビオール配糖体は、食品、栄養補助食品および甘味料組成物を製造するために使用することができる。例えば、レバウジオシドAまたはレバウジオシドDなどの実質的に純粋なステビオールまたはステビオール配糖体は、アイスクリーム、炭酸飲料、フルーツジュース、ヨーグルト、焼き菓子、チューインガム、ハードおよびソフトキャンディ、およびソースなどの食品に含まれることができる。実質的に純粋なステビオールまたはステビオール配糖体はまた、医薬品(pharmaceutical product)、医薬品(medicinal product)、栄養補助食品(dietary supplements)および栄養補助食品(nutritional supplements)などの非食品に含めることができる。実質的に純粋なステビオールまたはステビオール配糖体はまた、農業およびペット産業両方のための動物飼料製品に含まれていてもよい。代替的に、ステビオールおよび/またはステビオール配糖体の混合物を、組換え微生物を別々に培養するか、それぞれが特定のステビオールまたはステビオール配糖体を生産する異なる植物/植物細胞を成長させ、各微生物または植物/植物細胞から実質的に純粋な形態でステビオールまたはステビオール配糖体を回収し、次いで化合物を組み合わせて所望の割合で各化合物を含有する混合物を得ることにより、製造することができる。本明細書に記載の組換え微生物、植物、および植物細胞は、現在のステビア製品と比較してより正確で一貫した混合物を得ることを可能にする。別の代替では、実質的に純粋なステビオールまたはステビオール配糖体を、例えばサッカリン、デキストロース、ショ糖、果糖、エリスリトール、アスパルテーム、スクラロース、モナチン、またはアセスルファムカリウムなどの他の甘味料と一緒に、食品に組み込むことができる。ステビオールまたはステビオール配糖体の、他の甘味料に対する重量比は、最終食品において良好な味を達成するために、必要に応じて変えることができる。例えば、米国特許公開第2007/128311号を参照。一部の態様において、ステビオールまたはステビオール配糖体は、風味モジュレーターとして香味料(例えば、柑橘類)と共に提供されてもよい。例えば、レバウジオシドCは、特に炭水化物ベースの甘味料のための、甘味増強剤または甘味モジュレーターとして使用することができ、食品中の砂糖の量を低減可能である。
【0167】
本明細書に記載の組換え微生物、植物、または植物細胞によって生産される組成物は、食品に組み込むことができる。例えば、組換え微生物、植物、または植物細胞によって生産されるステビオール配糖体組成物は、食品中に、ステビオール配糖体および食品の種類に応じて、乾燥重量ベースで、約20mgのステビオール配糖体/食品kgから約1800mgのステビオール配糖体/食品kgの範囲の量で、組み込むことができる。例えば、組換え微生物、植物、または植物細胞によって生産されるステビオール配糖体組成物は、デザート、冷菓子(例えばアイスクリーム)、乳製品(例えばヨーグルト)、または飲料(例えば炭酸飲料)中に、食品が乾燥重量ベースで最大500mgのステビオール配糖体/食品kgを有するように、組み込むことができる。組換え微生物、植物、または植物細胞によって生産されるステビオール配糖体組成物は、焼き菓子(例えばビスケット)中に、食品が乾燥重量ベースで最大300mgのステビオール配糖体/食品kgを有するように、組み込むことができる。組換え微生物、植物、または植物細胞によって生産されるステビオール配糖体組成物は、ソース(例えばチョコレートシロップ)中または野菜製品(例えばピクルス)中に、食品が乾燥重量ベースで最大1000mgのステビオール配糖体/食品kgを有するように、組み込むことができる。組換え微生物、植物、または植物細胞によって生産されるステビオール配糖体組成物は、パンの中に、食品が乾燥重量ベースで最大160mgのステビオール配糖体/食品kgを有するように、組み込むことができる。組換え微生物、植物、または植物細胞によって生産されるステビオール配糖体組成物は、ハードまたはソフトキャンディ中に、食品が乾燥重量ベースで最大1600mgのステビオール配糖体/食品kgを有するように、組み込むことができる。組換え微生物、植物、または植物細胞によって生産されるステビオール配糖体組成物は、加工果実製品(例えば、フルーツジュース、フルーツフィリング、ジャムおよびゼリー)の中に、食品が乾燥重量ベースで最大1000mgのステビオール配糖体/食品kgを有するように、組み込むことができる。
【0168】
例えば、かかるステビオール配糖体組成物は、90~99%のレバウジオシドAおよび検出不可能な量のステビア植物由来の不純物を有することができ、食品中に乾燥重量ベースで25~1600mg/kgで、例えば、100~500mg/kg、25~100mg/kg、250~1000mg/kg、50~500mg/kgまたは500~1000mg/kgで、組み込まれることができる。
かかるステビオール配糖体組成物は、3%を超えるレバウジオシドBを有するレバウジオシドB富化組成物であることができ、食品中に、製品中のレバウジオシドBの量が乾燥重量ベースで25~1600mg/kgとなるよう、例えば、100~500mg/kg、25~100mg/kg、250~1000mg/kg、50~500mg/kgまたは500~1000mg/kgとなるように、組み込まれることができる。一般的には、レバウジオシドB富化組成物は、検出不可能な量のステビア植物由来の不純物を有する。
かかるステビオール配糖体組成物は、15%を超えるレバウジオシドCを有するレバウジオシドC富化組成物であることができ、食品中に、製品中のレバウジオシドCの量が乾燥重量ベースで20~600mg/kgとなるよう、例えば、100~600mg/kg、20~100mg/kg、20~95mg/kg、20~250mg/kg、50~75mg/kgまたは50~95mg/kgとなるように、組み込まれることができる。一般的には、レバウジオシドC富化組成物は、検出不可能な量のステビア植物由来の不純物を有する。
【0169】
かかるステビオール配糖体組成物は、3%を超えるレバウジオシドDを有するレバウジオシドD富化組成物であることができ、食品中に、製品中のレバウジオシドDの量が乾燥重量ベースで25~1600mg/kgとなるよう、例えば、100~500mg/kg、25~100mg/kg、250~1000mg/kg、50~500mg/kgまたは500~1000mg/kgとなるように、組み込まれることができる。一般的には、レバウジオシドD富化組成物は、検出不可能な量のステビア植物由来の不純物を有する。
かかるステビオール配糖体組成物は、3%を超えるレバウジオシドEを有するレバウジオシドE富化組成物であることができ、食品中に、製品中のレバウジオシドEの量が乾燥重量ベースで25~1600mg/kgとなるよう、例えば、100~500mg/kg、25~100mg/kg、250~1000mg/kg、50~500mg/kgまたは500~1000mg/kgとなるように、組み込まれることができる。一般的には、レバウジオシドE富化組成物は、検出不可能な量のステビア植物由来の不純物を有する。
かかるステビオール配糖体組成物は、4%を超えるレバウジオシドFを有するレバウジオシドF富化組成物であることができ、食品中に、製品中のレバウジオシドFの量が乾燥重量ベースで25~1000mg/kgとなるよう、例えば、100~600mg/kg、25~100mg/kg、25~95mg/kg、50~75mg/kgまたは50~95mg/kgとなるように、組み込まれることができる。一般的には、レバウジオシドF富化組成物は、検出不可能な量のステビア植物由来の不純物を有する。
【0170】
かかるステビオール配糖体組成物は、4%を超えるズルコシドAを有するズルコシドA富化組成物であることができ、食品中に、製品中のズルコシドAの量が乾燥重量ベースで25~1000mg/kgとなるよう、例えば、100~600mg/kg、25~100mg/kg、25~95mg/kg、50~75mg/kgまたは50~95mg/kgとなるように、組み込まれることができる。一般的には、ズルコシドA富化組成物は、検出不可能な量のステビア植物由来の不純物を有する。
かかるステビオール配糖体組成物は、2つの位置すなわち13-O-グルコースまたは19-O-グルコースのいずれかでキシロシル化されたルブソシドについて富化された組成物であることができる。かかる組成物は、4%を超えるキシロシル化ルブソシド化合物を有することができ、食品中に、製品中のキシロシル化ルブソシド化合物の量が乾燥重量ベースで25~1000mg/kgとなるよう、例えば、100~600mg/kg、25~100mg/kg、25~95mg/kg、50~75mg/kgまたは50~95mg/kgとなるように、組み込まれることができる。一般的には、キシロシル化ルブソシド富化組成物は、検出不可能な量のステビア植物由来の不純物を有する。
【0171】
かかるステビオール配糖体組成物は、2つの位置すなわち13-O-グルコースまたは19-O-グルコースのいずれかでラムノシル化された化合物について、または、1つのラムノースおよび複数のグルコースを含有する化合物(例えばステビオール13-O-1,3-ジグリコシド-1,2-ラムノシド)について、富化された組成物であることができる。かかる組成物は、4%を超えるラムノシル化化合物を有することができ、食品中に、製品中のラムノシル化化合物の量が乾燥重量ベースで25~1000mg/kgとなるよう、例えば、100~600mg/kg、25~100mg/kg、25~95mg/kg、50~75mg/kgまたは50~95mg/kgとなるように、組み込まれることができる。一般的には、ラムノシル化化合物について富化された組成物は、検出不可能な量のステビア植物由来の不純物を有する。
一部の態様において、実質的に純粋なステビオールまたはステビオール配糖体は、卓上用甘味料または「cup-for-cup」製品に組み込まれる。このような製品は、典型的には、当業者に周知の例えばマルトデキストリンなどの1または2以上の増量剤で、適切な甘味レベルまで希釈される。レバウジオシドA、レバウジオシドC、レバウジオシドD、レバウジオシドE、レバウジオシドF、ズルコシドA、またはラムノシル化もしくはキシロシル化化合物について富化されたステビオール配糖体組成物は、乾燥重量ベースで例えば10,000~30,000mgのステビオール配糖体/製品kgで、卓上用に小袋に包装することができる。
【0172】
一部の態様において、本開示は、以下の項目に関する:
1.核酸配列を含む組換え宿主細胞であって、該核酸が、オープンリーディングフレームに動作可能に連結された異種挿入配列を含み、ここで前記異種挿入配列は、一般式(I):
-X1-X2-X3-X4-X5-
式中、X2は、X4の少なくとも4つの連続したヌクレオチドに相補的な少なくとも4つの連続したヌクレオチドを含み、
式中、X3は、ゼロヌクレオチドまたはヘアピンループを形成する1もしくは2以上のヌクレオチドを含み、
式中、X1およびX5は、各々独立して、ゼロヌクレオチドまたは1もしくは2以上のヌクレオチドからなり、式中、前記オープンリーディングフレームは、スクアレン合成酵素(EC 2.5.1.21)をコードする、
を有する、前記組換え宿主細胞。
2.項目1に記載の組換え細胞であって、核酸が、5’から3’の順序で、オープンリーディングフレームに動作可能に連結された異種挿入配列に動作可能に連結されたプロモーター配列を含み、ここで前記異種挿入配列およびオープンリーディングフレームは、項目1に定義の通りである、前記組換え細胞。
【0173】
3.核酸配列を含む細胞であって、該核酸が、
i)プロモーター配列、これは
ii)異種挿入配列に動作可能に連結され、これは
iii)オープンリーディングフレームに動作可能に連結され、これは
iv)転写終結シグナルに動作可能に連結されている、
を含み、ここで前記異種挿入配列は、一般式(I):
-X1-X2-X3-X4-X5-
式中、X2は、X4の少なくとも4つの連続した核酸に相補的であり、これとヘアピン二次構造要素を形成する、少なくとも4つの連続した核酸を含み、および
式中、X3は、不対核酸を含み、これによりX2とX4の間にヘアピンループを形成し、および
式中、X1およびX5は、独立しておよび任意に、1または2以上の核酸を含み、および、
式中、前記オープンリーディングフレームは、発現すると、スクアレン合成酵素(EC 2.5.1.21)またはその生物学的活性断片と少なくとも約70%の同一性を有するポリペプチド配列をコードし、前記断片は、前記スクアレン合成酵素と、少なくとも100個のアミノ酸のオーバーラップの範囲内で少なくとも約70%の配列同一性を有する、
を有する、前記細胞。
【0174】
4.異種挿入配列が、10~50のヌクレオチド、好ましくは10~30のヌクレオチド、より好ましくは15~25のヌクレオチド、より好ましくは17~22のヌクレオチド、より好ましくは18~21のヌクレオチド、より好ましくは18~20のヌクレオチド、より好ましくは19のヌクレオチドを含む、項目1~3のいずれか一項に記載の細胞。
5.X2およびX4が、同数のヌクレオチドからなる、項目1~4のいずれか一項に記載の細胞。
6.全てのX2が、4~25の範囲、例えば4~20の範囲、例えば4~15の範囲、例えば6~12の範囲、例えば8~12の範囲、例えば9~11の範囲のヌクレオチドからなる、項目1~5のいずれか一項に記載の細胞。
7.全てのX4が、4~25の範囲、例えば4~20の範囲、例えば4~15の範囲、例えば6~12の範囲、例えば8~12の範囲、例えば9~11の範囲のヌクレオチドからなる、項目1~6のいずれか一項に記載の細胞。
8.X2が、X4のヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列からなる、項目1~7のいずれか一項に記載の細胞。
9.X4が、X2のヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列からなる、項目1~8のいずれか一項に記載の細胞。
【0175】
10.X3が不在である、すなわちX3がゼロのヌクレオチドからなる、項目1~9のいずれか一項に記載の細胞。
11.X3が、1~5の範囲、例えば1~3の範囲のヌクレオチドからなる、項目1~9のいずれか一項に記載の細胞。
12.X1が不在である、すなわちX1がゼロのヌクレオチドからなる、項目1~11のいずれか一項に記載の細胞。
13.X1が、1~25の範囲、例えば1~20の範囲、例えば1~15の範囲、例えば1~10の範囲、例えば1~5の範囲、例えば1~3の範囲のヌクレオチドからなる、項目1~11のいずれか一項に記載の細胞。
14.X5が不在である、すなわちX5がゼロのヌクレオチドからなる、項目1~13のいずれか一項に記載の細胞。
15.X5が、1~5の範囲、例えば1~3の範囲のヌクレオチドからなる、項目1~13のいずれか一項に記載の細胞。
16.異種挿入配列が、配列番号181、配列番号182、配列番号183、および配列番号184からなる群から選択される配列を含む、項目1~15のいずれか一項に記載の細胞。
17.異種挿入配列が、配列番号181、配列番号182、配列番号183、および配列番号184からなる群から選択される、項目1~16のいずれか一項に記載の細胞。
【0176】
18.スクアレン合成酵素が、配列番号192、配列番号193、配列番号194、配列番号194、配列番号195、配列番号196、配列番号197、配列番号198、配列番号199、配列番号200、配列番号201、配列番号202からなる群から選択されるスクアレン合成酵素に、少なくとも75%同一である、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも87%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%、例えば100%同一である、項目1~17のいずれか一項に記載の細胞。
19.プロモーターが、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターである、項目1~18のいずれか一項に記載の細胞。
20.プロモーターが、内因性プロモーター、GPD1、PGK1、ADH1、ADH2、PYK1、TPI1、PDC1、TEF1、TEF2、FBA1、GAL1-10、CUP1、MET2、MET14、MET25、CYC1、GAL1-S、GAL1-L、TEF1、ADH1、CAG、CMV、ヒトUbiC、RSV、EF-1α、SV40、Mt1、Tet-On、Tet-Off、Mo-MLV-LTR、Mx1、プロゲステロン、RU486およびラパマイシン誘導性プロモーターからなる群から選択される、項目1~19のいずれか一項に記載の細胞。
21.核酸配列がさらに、ポリアデニル配列を含む、項目1~20のいずれか一項に記載の細胞。
【0177】
22.ポリアデニル配列の5’末端が、項目1の核酸の3’末端に動作可能に連結されている、項目21に記載の細胞。
23.核酸配列がさらに、転写後調節エレメントを含む、項目1~22のいずれか一項に記載の細胞。
24.転写後調節エレメントが、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)である、項目23に記載の細胞。
25.核酸が、5’末端反復および3’末端反復を含む、項目1~24のいずれか一項に記載の細胞。
26.5’末端反復および3’末端反復が、逆方向末端反復(ITR)および長末端反復(LTR)から選択される、項目25に記載の細胞。
27.核酸配列がベクターに組み込まれている、項目1~26のいずれか一項に記載の細胞。
28.ベクターが発現ベクターである、項目27に記載の細胞。
29.ベクターが、プラスミドベクター、コスミド、人工染色体およびウイルスベクターからなる群から選択される、項目27に記載の細胞。
【0178】
30.プラスミドベクターが、細菌、真菌および酵母において維持されて複製することができる、項目29に記載の細胞。
31.ウイルスベクターが、レンチウイルス、HIV、SIV、FIV、EAIV、CIVを含むレトロウイルス科由来のベクターからなる群から選択される、項目29に記載の細胞。
32.ウイルスベクターが、アルファウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、バキュロウイルス、 HSV、コロナウイルス、ウシパピローマウイルス、Mo-MLVおよびアデノ随伴ウイルスからなる群から選択される、項目31に記載の細胞。
33.ベクターが、哺乳動物細胞において機能的である、項目27~32のいずれか一項に記載の細胞。
34.細胞が、項目27~33のいずれか一項に記載のベクターで形質転換または形質導入される、項目1~33のいずれか一項に記載の細胞。
35.細胞が真核細胞である、項目1~34のいずれか一項に記載の細胞。
36.細胞が原核細胞である、項目1~34のいずれか一項に記載の細胞。
【0179】
37.細胞が、例えば酵母およびアスペルギルス等の真菌細胞;クロレラ属およびプロトセカ属などの微細藻類;植物細胞;および、ヒト、ネコ、ブタ、サル、イヌ、ネズミ、ラット、マウスおよびウサギ細胞などの哺乳動物細胞からなる群から選択される、項目35に記載の細胞。
38.酵母が、Saccharomyces cerevisiae、Schizosaccharomyces pombe、Yarrowia lipolytica、Candida glabrata、Ashbya gossypii、Cyberlindnera jadinii、およびCandida albicansからなる群から選択される、項目37に記載の細胞。
39.細胞が、CHO、CHO-K1、HEI193T、HEK293、COS、PC12、HiB5、RN33b、BHK細胞からなる群から選択される、項目37に記載の細胞。
40.細胞が、E. coli、Corynebacterium、Bacillus、PseudomonasまたはStreptomycesである、項目36に記載の細胞。
41.原核細胞または真菌細胞が、メバロン酸独立経路の酵素の少なくとも一部を発現するように遺伝子操作されている、項目35~40のいずれか一項に記載の細胞。
【0180】
42.細胞がさらに、該細胞におけるGGPPSの発現を指向する核酸配列に動作可能に連結されたGGPPSをコードする異種核酸を含む、項目1~41のいずれか一項に記載の細胞。
43.GGPPSが、配列番号126、配列番号123、配列番号203、配列番号167、および前述のいずれかと少なくとも75%の配列同一性を有するそれらの機能性ホモログからなる群から選択される、項目42に記載の細胞。
43.スクアレン経路を介して合成されるテルペノイド化合物を生産する方法であって、該方法が、以下のステップ:
(a)項目1~42のいずれか一項に記載の細胞を提供すること、
(b)ステップ(a)の細胞を培養すること、
(c)テルペノイド生成物の化合物を回収すること、
を含む、前記方法。
【0181】
44.ファルネシルピロリン酸(FPP)、イソペンテニルピロリン酸(IPP)、ジメチルアリルピロリン酸(DMAPP)、ゲラニルピロリン酸(GPP)、および/またはゲラニルゲラニルピロリン酸(GGPP)からなる群から選択されるテルペノイド前駆体に由来するテルペノイドを生産するための方法であって、以下:
(a)前記前駆体を、スクアレン合成酵素経路の酵素と接触させること、
(b)テルペノイド生成物を回収すること、
を含む、前記方法。
45.テルペノイド生成物が、ヘミテルペノイド、モノテルペン、セスキテルペノイド、ジテルペノイド、セステルペン、トリテルペノイド、テトラテルペノイド、およびポリテルペノイドからなる群から選択される、項目44または45に記載の方法。
46.テルペノイドが、ファルネシルリン酸、ファルネソール、ゲラニルゲラニル、ゲラニルゲラニオール、イソプレン、プレノール、イソ吉草酸、ゲラニルピロリン酸、ユーカリプトール、リモネン、ピネン、ファルネシルピロリン酸、アルテミシニン、ビサボロール、ゲラニルゲラニルピロリン酸、レチノール、レチナール、フィトール、タキソール、フォルスコリン、アフィジコリン、ラノステロール、リコピンおよびカロテンからなる群から選択される、項目44に記載の方法。
【0182】
47.方法がさらに、ファルネシルリン酸を脱リン酸化してファルネソールを生産することを含む、項目46に記載の方法。
48.スクアレン合成酵素経路の酵素が、ジメチルアリルトランスフェラーゼ(EC 2.5.1.1)、イソプレン合成酵素(EC 4.2.3.27)、およびゲラニルトランストランスフェラーゼ(EC 2.5.1.10)からなる群から選択される、項目44に記載の方法。
49.機能性スクアレン合成酵素(EC 2.5.1.21)の翻訳速度を低下させる方法であって、方法が、
(a)項目1~42のいずれか一項に記載の細胞を提供すること、
(b)(a)の細胞を培養すること、
を含む、前記方法。
50.ファルネシル-ppのスクアレンへの転換を低下させるための方法であって、方法が、
(d)項目1~42のいずれか一項に記載の細胞を提供すること、
(e)(d)の細胞を培養すること、
を含む、前記方法。
51.ファルネシルピロリン酸、イソペンテニルピロリン酸、ジメチルアリルピロリン酸、ゲラニルピロリン酸およびゲラニルゲラニルピロリン酸からなる群から選択される化合物の蓄積を増強するための方法であって、方法が、次のステップ:
(a)項目1~42のいずれか一項に記載の細胞を提供すること、および
(b)ステップ(a)の細胞を培養すること。
を含む、前記方法。
【0183】
52.ファルネシルピロリン酸、イソペンテニルピロリン酸、ジメチルアリルピロリン酸、ゲラニルピロリン酸またはゲラニルゲラニルピロリン酸化合物を回収することをさらに含む、項目51に記載の方法。
53.スクアレン経路を介して合成された化合物を回収することをさらに含み、ここで該化合物が、ファルネシルピロリン酸、イソペンテニルピロリン酸、ジメチルアリルピロリン酸、ゲラニルピロリン酸および/またはゲラニルゲラニルピロリン酸に由来するものである、項目51または52に記載の方法。
54.細胞を培養するステップが、スクアレン合成酵素阻害剤の存在下で行われる、項目43~53のいずれか一項に記載の方法。
55.細胞がさらに、ホスホメバロン酸キナーゼ(EC 2.7.4.2)、ジホスホメバロン酸デカルボキシラーゼ(EC 4.1.1.33)、4-ヒドロキシ-3-メチルブタ-2-エン-1-イル二リン酸合成酵素(EC 1.17.7.1)、4-ヒドロキシ-3-メチルブタ-2-エニル二リン酸還元酵素(EC 1.17.1.2)、イソペンテニル二リン酸δ-イソメラーゼ1(EC 5.3.3.2)、短鎖Z-イソプレニル二リン酸合成酵素(EC 2.5.1.68)、ジメチルアリルトランスフェラーゼ(EC 2.5.1.1)、ゲラニルトランストランスフェラーゼ(EC 2.5.1.10)およびゲラニルゲラニルピロリン酸合成酵素(EC 2.5.1.29)からなる群から選択される1または2以上の酵素の活性を増強し、および/またはこれを過剰発現するように遺伝子操作されている、項目43~54のいずれか一項に記載の方法。
【0184】
56.細胞がさらに、アセトアセチルCoAチオラーゼ、HMG-CoA還元酵素またはその触媒ドメイン、HMG-CoA合成酵素、メバロナートキナーゼ、ホスホメバロン酸キナーゼ、ホスホメバロン酸デカルボキシラーゼ、イソペンテニルピロリン酸イソメラーゼ、ファルネシルピロリン酸合成酵素、D-1-デオキシキシルロース5-リン酸合成酵素、および1-デオキシ-D-キシルロース5-リン酸レダクトイソメラーゼおよびファルネシルピロリン酸合成酵素からなる群から選択される1または2以上の酵素の活性を増強し、および/またはこれを過剰発現するように遺伝子操作されている、項目43~55のいずれか一項に記載の方法。
57.細胞が、ERG9オープンリーディングフレームの変異を含む、項目43~56のいずれか一項に記載の方法。
58.細胞が、ERG9[デルタ]::HIS3欠失/挿入対立遺伝子を含む、項目43~57のいずれか一項に記載の方法。
59.化合物を回収するステップが、該化合物を細胞培養培地から精製することを含む、項目43~58のいずれか一項に記載の方法。
【0185】
VI.例
本発明は以下の例においてさらに説明されるが、これらの例は、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定するものではない。本明細書に記載の例において、特に断らない限り、次のLC-MS法をステビオール配糖体およびステビオール経路中間体の分析に用いた。
1)ステビオール配糖体の分析
LC-MS分析は、Agilent 1200 SeriesHPLCシステム(Agilent Technologies, Wilmington, DE, USA)を用いて、これにPhenomenex(R) kinetexのC18カラム(150×2.1mm、2.6μm粒子、100Åの細孔サイズ)を取り付け、TSQ Quantum Access(ThermoFisher Scientific)トリプル四重極質量分析計に接続し、加熱エレクトロスプレーイオン(HESI)源を用いて行った。溶出は、溶離液B(MeCNに0.1%ギ酸)および溶離液A(水に0.1%ギ酸)の移動相を用いて、勾配を、0.0分から1.0分でB:10→40%に増加させ、1.0分から6.5分でB:40→50%に、および6.5分から7.0分でB:50→100%に増加させ、最後に洗浄して再平衡化することにより、実施した。流速は0.4ml/分、およびカラム温度は30℃であった。ステビオール配糖体の検出は、ポジティブモードでSIM(Single Ion Monitoring)を用いて、次のm/zトレースにより行った。
【0186】
【表11】
ステビオール配糖体レベルは、LGC規格の認証標準物質を用いて得られた検量線と比較することで定量した。例えば、0.5~100μMのレバウジオシドAの標準溶液を、検量線を作成するために一般に用いた。
【0187】
2)ステビオールおよびent-カウレン酸の分析
ステビオールおよびent-カウレン酸のLC-MS分析を、上記のシステムで行った。分離のために、Thermo Science Hypersil Goldカラム(C-18、3μm、100×2.1mm)を用い、20mMの酢酸アンモニウム水溶液を溶離液Aとして、およびアセトニトリルを溶離液Bとして用いた。勾配条件は、0.0分から1.0分でB:20→55%、1.0分から7.0分で55→100%、最後に洗浄および再平衡化であった。流速は0.5ml/分、およびカラム温度は30℃であった。ステビオールおよびent-カウレン酸の検出は、ネガティブモードでSIM(Single Ion Monitoring)を用いて、次のm/zトレースにより行った。
【表12】
【0188】
3)UDP-グルコースのHPLC定量化
UDP-グルコースの定量のために、Agilent 1200シリーズHPLCシステムを、Waters XBridgeBEHアミド(2.5μM、3.0×50mm)カラムと共に用いた。溶離液Aは10mMの酢酸アンモニウム水溶液(pH9.0)であり、溶離液Bはアセトニトリルであった。勾配条件は、0.0分~0.5分:95%のBを保持、0.5分~4.5分:Bを95~50%に低下、4.5分~6.8分:50%のBを保持、および最後に95%のBに再平衡化であった。流速は0.9ml/分、およびカラム温度は20℃であった。UDP-グルコースは、UV262nmの吸光度により検出した。
UDP-グルコースの量は、市販の標準(例えばSigma Aldrichから)を用いて得られた検量線と比較することにより定量した。
【0189】
例1―EUGT11の識別
15種類の遺伝子を、RebAの1,2-グリコシル化活性について試験した。表10を参照。
【表13】
【0190】
これらの遺伝子のin vitroの転写および翻訳を行い、得られたUGTをRebAおよびUDP-グルコースと共にインキュベートした。インキュベーション後、反応をLC-MSにより分析した。EUGT11(イネ、 AC133334、配列番号152)を含有する反応混合物は、かなりの量のRebAをRebDに変換することが示された。
図4のLC-MSクロマトグラムを参照。
図4の左側のパネルに示すように、UGT91D2eは、RebAを原料として用いた場合に、微量のRebDを生産した。
図4の右側のパネルに示すように、EUGT11は、RebAを原料として用いた場合に、かなりの量のRebDを生産した。生産されたRebDの量の予備的定量化により、EUGT11はUGT91D2eよりも、RebAのRebDへの変換について約30倍効率的であることが示された。
さらなるEUGT11の特徴付けおよび、UGT91D2eとの定量的比較のために、EUGT11をコードするヌクレオチド配列(配列番号153、非コドン最適化、
図7)を、1つはN末端にHISタグを含み、1つはN末端にGSTタグを含む、2つのE. coli発現ベクターにクローニングした。EUGT11を両方の系を用いて発現させ、精製した。精製された酵素をUDP-グルコースおよびRebAと共にインキュベートすると、RebDが生産された。
【0191】
例2―EUGT11反応の同定
EUGT11を、in vitroの転写および翻訳によって生産し、RebD経路において種々の基質と共にインキュベートした。同様の実験を、in vitroで転写および翻訳されたUGT91D2eを用いて実施した。
図3は、EUGT11とUGT91D2eが行う、19-O-1,2-ジグリコシル化反応の概略図を示す。化合物1~3は、質量および推定保持時間のみによって同定された。
図3に示す数字はLC-MSクロマトグラムから得られた指示されたステビオール配糖体の平均ピーク高さであり、定量的ではないが、2つの酵素の活性を比較するために使用することができる。EUGT11とUGT91D2eは、ステビオールを基質として用いることができなかった。両酵素はステビオール19-O-モノグルコシド(SMG)を化合物1に変換することができ、EUGT11はUGT91D2eよりも、19-SMGの化合物1への変換について約10倍も効率的であった。
【0192】
両酵素は、同等の活性でルブソシドをステビオシドに変換することができ、ただしEUGT11のみが、ルブソシドを化合物2および化合物3(RebE)に変換することができた。
図5を参照。
図5の左側のパネルは、ルブソシドのステビオシドへの変換のLC-MSクロマトグラムを示す。
図5の右側のパネルは、ルブソシドの、ステビオシド、化合物2および化合物3(RebE)への変換のクロマトグラムを示す。ルブソシドの化合物3への変換は、ステビオールの19および13位置において、2回の連続した1,2-O-グリコシル化を必要とする。UGT91D2eは、1つの実験で微量の化合物3(RebE)を生産することができ、一方EUGT11は、かなりの量の化合物3を生産した。
両酵素は、RebAをRebDに変換することができた。しかしEUGT11は、RebAをRebDに変換することにおいて、約30倍優れていた。全体的にEUGT11は、ルブソシドのステビオシドへの変換を除きすべての反応(同様の時間、濃度、温度、および酵素の純度)において、UGT91D2eよりも多くの生成物を生産するようである。
【0193】
例3―酵母におけるEUGT11の発現
EUGT11をコードするヌクレオチド配列をコドン最適化し(配列番号154)、全4つのUGT(UGT91D2e、UGT74G1、UGT76G1、およびUGT85C2)をコードする核酸と共に酵母に形質転換した。得られた酵母株を、ステビオールを含有する培地中で増殖させ、蓄積したステビオール配糖体をLC-MSで分析した。EUGT11は、RebDの生産のために必要であった。他の実験では、RebDの生産はUGT91D2e、UGT74G1、UGT76G1、およびUGT85C2で観察された。
【0194】
例4― 19-O-1,2-ジグリコシル化ステビオール配糖体でのUGT活性
EUGT11によって生産された19-O-1,2-ジグリコシル化ステビオール配糖体は、 RebDに変換されるためにさらなるグリコシル化を必要とする。以下の実験を行って、他のUGTが、これらの中間体を基質として使用できるかどうかを決定した。
1つの実験では、化合物1の19-SMGからのin vitroでの生産を、UDP-グルコースの存在下でEUGT11またはUGT91D2eのいずれかにより行った。試料を煮沸した後、UGT85C2およびUDP-グルコースを添加した。試料をLC-MSにより分析し、化合物2が検出された。この実験は、UGT85C2が化合物1を基質として使用できることを示した。
別の実験では、化合物2を、UGT91D2eおよびUDP-グルコースと共にインキュベートした。反応物をLC-MSにより分析した。UGT91D2eは、化合物2を化合物3(RebE)に変換できなかった。化合物2をEUGT11およびUDP-グルコースと共にインキュベートすると、化合物3の生産がもたらされる。UGT76G1は、RebEをRebD生産のための基質として使用することができた。
このことは、ステビオール配糖体の19-O-1,2-ジグリコシル化が、RebD生産の任意の時に生じ得ることを示し、これは、下流の酵素が19-O-1,2-ジグリコシル化中間体を代謝可能だからである。
【0195】
例5―EUGT11とUGT91D2eの配列の比較
EUGT11のアミノ酸配列(配列番号152、
図7)、およびUGT91D2eのアミノ酸配列(配列番号5)を、FASTAアルゴリズム(Pearson and Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci., 85:2444-2448 (1998))を用いて整列させた。
図6参照。EUGT11およびUGT91D2eは、457個のアミノ酸にわたり42.7%同一である。
【0196】
例6―UGT91D2eの19-1,2-ジグリコシル化活性の修飾
多くのUGTについて、結晶構造が利用可能である。一般に、UGTのN末端半分は主に基質結合に関与し、一方でC末端半分は、UDP-糖供与体の結合に関与している。
UGT91D2eの二次構造を、結晶化されたUGTの二次構造上にモデル化することにより、
図8に示すように高度に分岐した一次配列にもかかわらず、二次構造の保存されたパターンを明らかにした。UGT71G1およびUGT85H2の結晶構造が報告されている(例えばH. Shao et al,
The Plant Cell November 2005 vol. 17 no 11 3141-3154およびL. Li et al.,
J Mol Biol. 2007 370(5):951-63を参照)。公知のループであるαヘリックスおよびβシートが、
図8のUGT91D2eに示されている。これらのUGTの一次構造レベルでの相同性はかなり低いが、二次構造は保存されているように見え、UGT85H2およびUGT71G1におけるかかるアミノ酸の位置に基づいた、UGT91D2eへの基質結合に関与するアミノ酸の位置についての予測を可能にしている。
【0197】
基質結合に一般に関与する領域をUGT91D2eに重ね合わせて、これがUGT91D1(GenBankアクセッション番号タンパク質アクセッション番号AAR06918、GI:37993665)からの22個のアミノ酸の違いとほぼ一致することが示された。UGT91D1はステビアで高度に発現され、機能性UGTであると考えられている。しかし、その基質はステビオール配糖体ではない。このことは、UGT91D1が、UGT91D2eとは異なる、22個のアミノ酸によって定義することができる別の基質を有することを示唆している。
図9は、UGT91D1とUGT91D2eのアミノ酸配列のアラインメントである。ボックスは、基質結合に関与することが報告されている領域を表す。濃い灰色で強調表示したアミノ酸は、UGT91D1とUGT91D2eの間の22個のアミノ酸の違いを示す。星印は、結晶構造が決定されたUGTでの基質結合に関与することが示されているアミノ酸を意味する(特定の1つのアミノ酸の下の複数の星印は、2つ以上の構造決定されたUGTにおいて、基質結合が示されていることを意味する)。2つのUGT91の間の22アミノ酸の差異には強い相関があり、これは基質結合に関与することが知られている領域であり、結晶構造決定UGTの基質結合に実際に関与するアミノ酸である。これは、2つのUGT91の間の22アミノ酸の違いが、基質結合に関与することを示唆する。
【0198】
全22種類の変更された91D2eを、pGEX-4T1ベクターからXJb自己溶解E. coli株で発現させた。酵素の活性を評価するために、in vitroとin vivoの2つの基質供給実験を行った。ほとんどの突然変異体は野生型よりも低い活性を有したが、5つの変異体が増大した活性を示した。これは、in vitroでの転写および翻訳(IVT)で再生され、C583A、C631AおよびT857Cが、野生型UGT91D2eよりも約3倍高いステビオシド形成活性を有しており、一方、C662tおよびA1313Cは、約2倍のステビオシド形成活性を有することを示した(ヌクレオチド番号)。これらの変更は、それぞれ、L195M、L211M、V286A;およびS221FおよびE438Aに対応するアミノ酸変異を引き起こす。増大した活性は基質によって異なり、C583AおよびC631Aは、13-SMGを基質として用いてほぼ10倍の増加を示し、ルブソシドを基質として用いて約3倍の増加を示し、一方、T857Cは、13-SMGまたはルブソシドいずれかを基質として用いて、3倍の増加を示した。
これらの変異が加法的であるかどうかを調査するために、ある範囲の二重変異体を作り、活性について分析した(
図10)。この特定の実験では、前の4つの実験よりも活性の高い野生型のレベルが観察された;しかし、変異の相対的な活性は同じままである。ルブソシドは、4種のUGT(UGT74G1、UGT85C2、UGT76G1、およびUGT91D2e)を発現するS. cerevisiae株の多くに蓄積するため、ステビオシド形成活性は、ステビオール配糖体生産の増加により重要となり得る。このように、二重変異体C631A/T857C(ヌクレオチド番号)は有用であり得る。この変異体はUGT91D2e-bと名付けられ、これはアミノ酸修飾L211MおよびV286Aを含有する。実験は、S. cerevisiae発現のUGT91D2e変異体を用いてin vitroで再現されている。
【0199】
UGT91D2eの19-1,2-ジグリコシル化活性を改善するため、UGT91D2eとUGT91D1の間の22アミノ酸の違いの、UGT91D2eの指向性飽和変異原性スクリーニングを実施した。GeneArt’s(R)(Life Technologies, Carlsbad, CA)の部位飽和突然変異誘発を用いて、それぞれの変異を含むライブラリを得た。ライブラリを、91D2eの突然変異型をGST融合タンパク質として発現する、pGEX4T1細菌発現プラスミドのBamHIおよびNotI部位にクローニングし、新しいライブラリを得た(Lib#116)。Lib#116を、XJbAutolysis E. coli株(ZymoResearch, Orange, CA)に形質転換して、418の予想変異(すなわち、各位置で19個の異なるアミノ酸を有する、22の位置)を含有する約1600のクローンを生成した。91D2e(EPCS1314)、91D2e-b(EPSC1888)またはEUGT11(EPSC1744)ならびに空のpGEX4T1(PSB12)のGSTタグ付きバージョンを発現する他のプラスミドも、同様に形質転換した。
【0200】
LC-MSによるスクリーニング
UGT91D2eの約1600の変異体クローンを分析するために、E. coli形質転換体を、96ウェルフォーマットで、アンピシリン(100mg/l)およびクロラムフェニコール(33mg/l)を含有する1mlのNZCYM中30℃で一晩増殖させた。翌日、150μlの各培養物を、24ウェルフォーマットで、アンピシリン(100mg/l)、クロラムフェニコール(33mg/l)、アラビノース3mM、IPTG0.1mMおよびエタノール2%(v/v)を含有する3mlのNZCYMに植菌し、20℃および200rpmで~20時間インキュベートした。翌日細胞を遠沈し、ペレットを、10mMのトリス-HCl、pH8、5mMのMgCl2、1mMのCaCl2、および完全ミニプロテアーゼ阻害剤EDTAフリー(3つの錠剤/100ml)(Hoffmann-La Roche, Basel, Switzerland)を含有する100μlの溶解緩衝液中に再懸濁し、-80℃で少なくとも15分間冷凍して、細胞溶解を促進した。ペレットを室温で解凍し、50μlのDNaseミックス(H2O中1μlの1.4mg/mlのDNase(~80000/ml)、1.2μlの500mMのMgCl2および47.8μlの4×PBS緩衝液)を各ウェルに添加した。プレートを、ゲノムDNAの分解を可能にするために、500rpmで室温で5分間振とうした。プレートを4℃で30分間、4000rpmで遠沈し、GST-91D2e-bについて記載したように、ルブソシドまたはレバウジオシドAを基質として用いて、6μlの溶解物をUGTのin vitro反応において使用した。各場合において、得られた化合物であるステビオシドまたはレバウジオシドD(rebD)は、LC-MSにより測定した。結果を、対応する対照(91D2e、91D2e-b、EUGT11および空のプラスミド)を発現する溶解物によって生産されるステビオシドまたはrebDと比較して分析した。91D2e-bを発現するものと同様またはこれより高い活性を示すクローンを、一次ヒットとして選択した。
【0201】
1600のクローンの半分および対応する対照を、ルブソシドおよびレバウジオシドAをグリコシル化するそれらの能力について検定した。ステビオシドおよびRebDをLC-MSにより定量した。使用した条件下で、ネイティブUGT91D2eを発現するクローンからの溶解物は、両方の基質についてほぼバックグラウンド付近の活性を示し(約0.5μMのステビオシドおよび1μMのRebD)、一方、UGT91D2e-bを発現するクローンは、一貫して改善された生成物形成を示す(>10μMのステビオシド;>1.5μMのRebD)。EUGT11を発現するクローンは、特に基質としてRebAを用いると、一貫して高いレベルの活性を示す。スクリーニングにおいて、クローンを一次ヒットとして検討するためのカットオフは、一般に両方の生成物について1.5μMとしたが、いくつかのケースでは、それぞれ独立のアッセイのために調節した。
【0202】
例7―EUGT11ホモログ
EUGT11タンパク質配列を用いたNCBInrデータベースのBlastp検索により、14の植物種から約79の潜在的UGTホモログが明らかにされた(そのうちの1つはステビアUGT91D1であり、保存されたUGT領域においてはEUGT11と約67%同一であるが、全体としては45%未満)。保存された領域において90%以上の同一性を有するホモログは、トウモロコシ、ダイズ、Arabidopsis(シロイヌナズナ)、ブドウ、およびSorghum(ソルガム)から同定された。完全長EUGT11ホモログの全体的な相同性は、アミノ酸レベルで28~68%にすぎなかった。
RNAの植物材料からの抽出は、Iandolino et al.(Iandolino et al., Plant Mol Biol Reporter 22, 269-278, 2004)に記載された方法、RNeasy Plant mini Kit(Qiagen)を製造業者の使用説明書に従って、またはFast RNA Pro Green Kit(MP Biomedicals)を用いて製造業者の使用説明書に従って行った。cDNAは、AffinityScript QPCR cDNA Synthesis Kit(Agilent)により製造業者の使用説明書に従って生成した。ゲノムDNAは、FastDNAキット(MP biomedicals)を用いて製造業者の説明書に従って抽出した。PCRをcDNAに対して、Dream Taqポリメラーゼ(Fermentas)またはPhusionポリメラーゼ(New England Biolabs)のいずれかおよび、ホモログを増幅するように設計されたプライマーのシリーズを用いて行った。
【0203】
PCR反応は、SyberSafe含有アガロース-TAEゲル中で電気泳動により分析した。DNAは、トランスイルミネーターでUV照射によって可視化した。正しいサイズのバンドを切り出し、製造業者の仕様に従ってスピンカラムで精製し、TOPO-Zeroブラント(Phusionポリメラーゼによって生成された生成物用)またはTOPO-TA(Dream Taqで生成された生成物用)にクローニングした。PCR産物を含有するTOPOベクターは、E. coliDH5Bαに形質転換し、適切な選択抗生物質を含むLB-寒天プレート上にプレーティングした。DNAを生存コロニーから抽出し、配列決定した。正確な配列を有する遺伝子は、SbfIおよびAscIでの制限消化により切り出し、同様に消化したIVT8ベクターにクローニングし、E. coliに形質転換した。PCRはすべてのクローニングされた遺伝子について実施して、in vitroの転写および翻訳に必要な遺伝子およびフランキング領域を増幅した。タンパク質を、製造者の指示に従ってPromega L5540、TNT T7 Quick for PCR DNA Kitを用いて、PCR生成物からin vitroの転写および翻訳により生成した。タンパク質の生成を、35S-メチオニンの取り込みと、続くSDS-PAGEによる分離とTyphoon蛍光イメージャー上での可視化により評価した。
【0204】
活性アッセイをセットした:各in vitro反応の合計20%(容量で)、0.1MのルブソシドまたはRebA、5%のDMSO、100mMのトリス-HCl、pH7.0、0.01単位の高速アルカリホスファターゼ(Fermentas)、および0.3mMのUDP-グルコース(最終濃度)であった。30℃で1時間のインキュベーション後、試料をLC-MSにより、上記のようにステビオシドおよびRebDの生産について分析した。UGT91D2eおよびUGT91D2e-b(例6に記載の二重変異体)を陽性対照として、EUGT11と共に使用した。初期のアッセイ条件下で、クローンP64B(表11を参照)は、ルブソシドおよびRebAを使用して微量の生成物を生産した。表11は、EUGT11と比較したアミノ酸レベルでの同一性パーセントを、UGTの全長について示し、これは28~58%の範囲であった。高い量の相同性(96~100%)は配列の短いストレッチにわたって観察され、植物のUGTの高度に保存されたドメインを示すことができる。
【表14-1】
【表14-2】
【0205】
例8―Reb-Dの無細胞生体触媒による生産
無細胞アプローチは、RebA、ステビオシドまたはステビオール配糖体混合物がRebDに酵素的に変換される、in vitroの系である。この系は理論量のUDP-グルコースを必要とし、したがってショ糖合成酵素を使用したUDPおよびショ糖からのUDP-グルコースの再生を用いることができる。さらに、ショ糖合成酵素は、反応中に生成されたUDPを取り除き、これは、グリコシル化反応について観察される緩和された生成物阻害により、グリコシル化生成物への変換を向上させる。WO 2011/153378を参照。
【0206】
酵素の発現および精製
UGT91D2e-b(例6に記載)およびEUGT11は、RebDを産生するRebAのグリコシル化を触媒する重要な酵素である。これらのUGTは細菌(E. coli)中で発現されたが、当業者は、かかるタンパク質はまた、異なる方法および宿主(例えば、Bacillus種などの他の細菌、Pichia種またはSaccharomyces種などの酵母、他の真菌(例えばAspergillus)、またはその他の生物)を使用して調製可能であることを理解する。例えばタンパク質は、in vitroの転写および翻訳により、またはタンパク質合成によって生産することができる。
UGT91D2e-bおよびEUGT11遺伝子を、pET30aまたはpGEX4T1プラスミド中にクローニングした。得られたベクターを、XJb(DE3)自己溶解E. coli株(ZymoResearch, Orange, CA)に形質転換した。最初にE. coli形質転換体をNZCYM培地中で30℃で一晩増殖させ、次に3mMのアラビノースおよび0.1mMのIPTGで誘導し、さらに30℃で一晩インキュベーションした。対応する融合タンパク質を、親和性クロマトグラフィにより、6HIS-またはGST-タグおよび標準的な方法を用いて精製した。当業者は、例えばゲル濾過または他のクロマトグラフィ技術などの他のタンパク質精製法も、例えば硫酸アンモニウムによる沈殿/結晶化または分別と共に使用され得ることを理解する。EUGT11は初期条件を用いて良好に発現したが、UGT91D2e-bは、タンパク質の溶解度を増加させるために、基本プロトコルにいくつかの変更を必要とし、これには、一晩の発現の温度を30℃から20℃へ低下させ、発現培地に2%エタノールを添加することを含む。一般的に、2~4mg/Lの可溶性GST-EUGT11および400~800μg/lのGST-UGT91D2e-bが、この方法で精製された。
【0207】
EUGT11の安定性
反応を行って、種々のRebAからRebDへの反応条件下でEUGT11の安定性を探求した。基質を反応混合物から省略し、EUGT11を様々な時間プレインキュベーションした。酵素の、100mMのトリス-HCl緩衝液中でのプレインキュベーションに続いて、基質(100μMのRebA)および他の反応成分(300μMのUDP-グルコース、および10U/mLのアルカリホスファターゼ(Fermentas/Thermo Fisher, Waltham, MA))を添加した(インキュベーション開始の0、1、4または24時間後)。次いで反応を20時間進行させ、その後反応を停止し、RebD生成物の形成を測定した。実験は、異なる温度で繰り返した:30℃、32.7℃、35.8℃、および37℃。
酵素を37℃でプレインキュベーションすると、EUGT11の活性は急速に低下し、1時間後に約半分の活性に達し、4時間後にはほとんど活性を有しなかった。30℃では、活性は4時間後には顕著に低下せず、24時間後に約3分の1の活性が残った。これは、EUGT11が熱不安定性であることを示唆する。
【0208】
EUGT11の熱安定性を評価し、これをステビオールグリコシル化経路における他のUGTと比較するために、タンパク質の変性温度を示差走査熱量測定(DSC)を用いて決定した。変性温度TDを推定するDSCサーモグラムの使用は、例えばE. Freire in Methods in Molecular Biology 1995, Vol. 40 191-218に記載されている。DSCを、6HIS精製EUGT11を用いて実施し、見かけのTDとして39℃を得た;一方、GST精製91D2e-bを用いた場合、測定されたTDは79℃であった。参考のために、6HIS精製のUGT74G1、UGT76G1、およびUGT85C2を用いて測定したTDは、全ケースにおいて86℃であった。当業者は、酵素固定化または熱保護剤の反応物への添加により、タンパク質の安定性を向上させることができる。熱保護剤の非限定的な例としては、トレハロース、グリセロール、硫酸アンモニウム、ベタイン、トリメチルアミンオキシド、およびタンパク質が挙げられる。
【0209】
酵素反応速度論
一連の実験を行って、EUGT11および91D2e-bの速度論パラメータを決定した。両酵素について、100μMのRebA、300μMのUDP-グルコース、および10U/mLのアルカリホスファターゼ(Fermentas/Thermo Fisher, Waltham, MA)を反応に使用した。EUGT11については、反応は、100mMのトリス-HCl、pH7および、2%の酵素を用いて37℃で行った。91D2e-bについては、反応は、20mMのHepes-NaOH、pH7.6および20%(容量)の酵素を用いて30℃で行った。初期速度(V0)は、生成物対時間のプロットの線形範囲で算出した。
初めに線形区間を調査するために、初期の時間過程を各酵素について実施した。EUGT11は、100μMのRebAおよび300μMのUDP-グルコースの初期濃度で37℃で48時試験した。UGT91D2e-bは、200μMのRebAおよび600μMのUDP-グルコースの初期濃度で37℃で24時試験した。これらの範囲決定の研究に基づき、EUGT11については最初の10分、およびUGT91D2e-bについては最初の20分が、生成物の形成に関して線形範囲であることを決定し、したがって各反応の初期速度をこれらの区間で算出した。EUGT11の場合、試験したRebA濃度は、30μM、50μM、100μM、200μM、300μM、および500μMであった。UDP-グルコースの濃度は常にRebA濃度の3倍であり、インキュベーションは37℃で行った。計算されたV0を基質濃度の関数としてプロットすることにより、ミカエリス-メンテン曲線を作成した。V0の逆数と[S]の逆数をプロットすることにより、ラインウィーバー-バーク図を得て、ここでy=339.85x+1.8644;R2=0.9759であった。
【0210】
VmaxとKMパラメータは、xおよびy切片から算出した曲線適合ラインウィーバー-バークのデータから求めた:(x=0、y=1/Vmax)および(y=0、x=-1/KM)。さらに、同じパラメータは、Excelのソルバー機能を用いて、非線形最小二乗回帰によっても計算した。両方の方法で得られたEUGT11とRebAについての結果を、この例のすべての速度論パラメータと共に表12に示す。非線形最小二乗適合法およびラインウィーバー-バークプロットの両方からの結果を表12に示す。Kcatは、Vmaxをアッセイにおけるタンパク質のおよその量で割った値に基づいて算出する。
【0211】
【0212】
グリコシル化反応におけるUDP-グルコースの濃度、およびEUGT11のUDP-グルコースに対する親和性の影響を調べるために、同様の反応速度論解析を実施した。EUGT11を、増加量のUDP-グルコース(20μM、50μM、100μM、および200μM)と共にインキュベートし、過剰量のRebA(500μM)を維持した。速度論パラメータは上記のように計算し、表12に示した。
UGT91D2e-bの場合、試験したRebA濃度は、50μM、100μM、200μM、300μM、400μM、および500μMであった。UDP-グルコースの濃度は常にRebA濃度の3倍であり、インキュベーションは30℃にて、UGT91D2e-bのための上記の反応条件で行った。速度論パラメータは前述のように計算し、得られた動力学的パラメータを表12に示す。さらに、UDP-グルコースに対するUGT91D2e-bの速度論パラメータも決定した。UGT91D2e-bを、増加量のUDP-グルコース(30μM、50μM、100μM、および200μM)と共にインキュベートし、過剰量のRebA(1500μM)を維持した。インキュベーションは30℃にて、UGT91D2e-bのための最適条件で行った。速度論パラメータは前述のように計算し、結果を表12に示す。
EUGT11と91D2e-bについての速度論パラメータの比較により、91D2e-bが、より低いKcatおよびRebAに対するより低い親和性(より高いKM)を有し、しかし91D2e-bのUDP-グルコースに対するKMは、EUGT11より低いと結論付けられた。UGT91D2e-bは、特定の基質についての触媒反応の速度(Kcat)と酵素-基質結合の強度(KM)についての情報を組み合わせると、触媒効率の測度であるKcat/KMについて、より低い値を有する。
【0213】
反応における制限因子を決定する
EUGT11のための上記の条件下では、与えられたRebAの約25%がRebDに変換された。これらの条件の制限因子は、酵素、UDP-グルコースまたはRebAのいずれかである。これらの可能性を見分けるための実験を設定した。標準的なアッセイ過程を4時間実施した。次に、余分なRebA基質、余分な酵素、余分なUDP-グルコース、または余分な酵素とUDP-グルコースのいずれかを添加した。余分な酵素の添加は、約50%の変換率の相対的増加をもたらし、余分のRebAまたはUDP-グルコースのみの添加は、変換を顕著に増加させず、しかし酵素とUDP-グルコースの同時添加は、変換をおよそ2倍に増加させた。
RebAのRebDへの変換反応における、ボーラス量のUDP-グルコースと新鮮な酵素の添加のこの利点の限界を調べるために、実験を行った。追加の酵素または酵素とUDP-グルコースを、1、6、24および28時間後に添加した。余分なEUGT11とUDP-グルコース両方を添加した場合に、70%以上の変換が達成された。他の成分は、変換に有意な影響を及ぼさなかった。これは、EUGT11が反応の主要な制限因子であるが、UDP-グルコースも制限的であることを示す。UDP-グルコースはRebAよりも3倍高い濃度で存在するため、これはUDP-グルコースが、少なくともEUGT11の存在下では、反応混合物中でいくらか不安定であり得ることを示している。あるいは以下に説明するように、EUGT11はUDP-グルコースを代謝する可能性がある。
【0214】
阻害試験
ショ糖、果糖、UDP、生成物(RebD)および純度の低いステビア抽出物原材料の不純物などの要因が、ステビオール配糖体基質のRebDへの変換の程度を阻害するかどうかを決定するために、実験を実施した。標準反応混合物において、潜在的な阻害剤(ショ糖、果糖、UDP、RebD、またはステビオール配糖体の商業的ブレンド(ステビア、Steviva Brands, Inc., Portland, OR))の過剰量を添加した。インキュベーション後、RebD生産を定量した。商業的なステビアミックス500μg/ml(LC-MSでの評価により、約60%の1,2-ステビオシド、30%のRebA、5%ルブソシド、2%の1,2-ビオシド、1%未満のRebD、RebC等)の添加は、阻害的とは見出されず、しかし全体的なRebDの生産を(添加なしで約30μMから約60μMへ)、ブレンドによって最初に添加されたRebD(約5μM)をはるかに超えて増加させた。試験した分子の中でUDPのみが、LC-MSにより測定されるように、使用される濃度(500μM)においてRebD生産に対する阻害効果を有することが示された。生産されたRebDは、7μM未満であった。この阻害はRebD生産のためのin vitroまたはin vivoでの反応において緩和することができ、それは、酵母によるか、またはショ糖と共に添加されたSUS(ショ糖合成酵素酵素)のいずれかにより、UDPリサイクル系をUDP-グルコースに含めることによる。さらに、より少ない量のUDP-グルコース(300μM)で作業する場合、UDP-Gを除去するためのアルカリホスファターゼの添加は、in vitroでのグリコシル化により生産されるRebDの量を増加させず、生産されたUDPは、これらの濃度では阻害的でない可能性を示唆する。
【0215】
RebA対粗ステビオール配糖体ミックス
いくつかの実験において、粗ステビオール配糖体ミックスを、精製RebAの代わりにRebA源として使用した。このような粗ステビオール配糖体ミックスは、RebAとともに高い割合でステビオシドを含むため、UGT76G1を反応物に含めた。in vitroの反応を上記のように、0.5g/lのSteviva(R)ミックスを基質としておよび酵素(UGT76G1および/またはEUGT11)を用いて実施し、30℃でインキュベートした。ステビオール配糖体の存在は、LC-MSにより分析した。
UGT76G1のみを反応物に添加した場合、ステビオシドは、非常に効率的にRebAに変換された。未知のペンタ-グリコシド(4.02分に保持時間ピークを有する)も検出された。EUGT11のみを反応物に添加した場合、大量のRebE、RebA、RebDおよび未知のステビオールペンタグリコシド(3.15分に保持時間ピークを有する)が見出された。EUGT11とUGT76G1の両方を反応物に添加した場合、ステビオシドのピークが低下し、ほぼ完全にRebAおよびRebDに変換された。微量の未知のステビオール-ペンタグリコシド(4.02分にピーク)も存在した。RebEは検出されず、第2の未知のステビオールペンタグリコシド(3.15分にピーク)も同様であった。この結果は、RebDをin vitroで生成するための基質としてのステビア抽出物の使用は、EUGT11およびUGT76G1を組み合わせて用いる場合に可能であることを示唆する。
【0216】
非特異的UDP-グルコース代謝
EUGT11が、RebAのRebDへの変換からは独立して、UDP-グルコースを代謝することができるかどうかを決定するために、GST精製EUGT11をRebA基質の存在下または不在下でインキュベートし、TR-FRETTranscreener(R)キット(BellBrook Labs)を用いて、UDP-グルコースの使用をUDPの放出として測定した。Transcreener(R)キットは、抗体に結合したトレーサー分子に基づく。トレーサー分子は、UDPまたはADPにより高感度かつ定量的に置き換えられる。FPキットには、抗体に結合したAlexa633トレーサーが含まれる。トレーサーはUDP/ADPによって置き換えられる。置き換えられたトレーサーは自由に回転し、蛍光偏光の低減をもたらす。したがって、UDPの生産は偏光の低減に比例する。FIキットには、抗体に結合したクエンチされたAlexa594トレーサーが含まれ、これはIRDye(R) QC-1クエンチャーに結合している。トレーサーはUDP/ADPによって置き換えられ、これにより、置き換えられたトレーサーはクエンチされず、蛍光強度の正の増加をもたらす。したがって、UDPの生産は蛍光の増加に比例する。TR-FRETキットには、抗体-Tbの複合体に結合されたHiLyte647トレーサーが含まれる。UV範囲(約330nm)でのテルビウム錯体の励起は、トレーサーへのエネルギー転移および、時間遅延の後により高い波長(665nm)での発光をもたらす。トレーサーはUDP/ADPによって置き換えられて、TR-FRETの減少を引き起こす。
測定されたUDP-グルコースは、RebA基質の存在から独立して、同一であることが観察された。UDPの放出は、酵素の不在下では検出されなかった。これは、UDP-グルコースのEUGT11による非特異的分解を示す。それにもかかわらず、RebAが添加されるとRebDは生産され続け、EUGT11が、非特異的UDP-グルコース分解よりもRebAグリコシル化を優先的に触媒することを示唆する。
【0217】
RebAまたは他の明らかなグリコシル化基質の不在下における、グルコース分子の移動先を探すために、実験を設定した。以前のすべての反応における1つの共通因子は、トリス緩衝液および/または微量のグルタチオンの存在であり、両方が、潜在的なグリコシル化部位を含む。これらの分子の、非特異的UDP-グルコース消費に対する効果を、RebAの存在下または不在下で、GST精製されたEUGT11(グルタチオンと共に)およびHIS精製酵素(グルタチオンを含まない)を用いて、in vitro反応においてアッセイした。UDP-グルコースの使用を、TR-FRETTranscreener(R)キットを用いて、UDP-放出として測定した。UDPの放出はすべての場合に発生し、RebAの存在とは無関係であった。UDPの放出は、HIS精製酵素を用いた場合に遅かったが、RebAのRebDへの変換における酵素の全体的な触媒活性も低く、アッセイにおいて存在する活性で可溶性酵素の量の低下を示唆している。したがって、EUGT11によるUDP-グルコース代謝は、試験した条件下で基質の存在とは無関係であり、反応におけるグルタチオンの存在とは無関係であるように見える。
EUGT11によるUDP-グルコースの代謝に対するトリスの効果を試験するために、GST-EUGT11を、溶出のためにトリスまたはPBSベースの緩衝液を用いて精製し、いずれの場合にも同様の量のタンパク質を得た。トリス-およびPBS-精製酵素を、上記と同様の方法で、RebAの存在下または不在下で、それぞれ緩衝液としてトリスおよびHEPESを用いるin vitro反応において使用した。両方の条件では、UDPの放出は、RebAが添加されたかどうかに関わらず反応において同一であり、EUGT11によるUDP-グルコースの代謝が、反応におけるRebAおよびトリス両方の存在から独立していることを示す。これは、検出されたUDP放出が、何らかの形でEUGT11の特性に起因する人工産物であるか、あるいは、EUGT11がUDP-グルコースを加水分解できることを示唆する。EUGT11は、RebAのRebDへの優先的変換において依然として効率的であり、UDP-Gの損失は、以下に記載のショ糖合成酵素リサイクル系の付加により補償することができる。
【0218】
RebAの溶解性
RebAの溶解性は、全細胞アプローチおよび無細胞アプローチ両方のために使用できる濃度を決定する。いくつかの異なるRebAの水溶液を作製し、室温で数日間放置した。貯蔵の24時間後、RebAは、50mM以上の濃度で沈殿した。25mMのRebAは4~5日後に沈殿し始め、一方10mM以下の濃度のものは、4℃で保存した場合でさえも溶液のままであった。
RebDの溶解性
RebDの溶解性を、いくつかの異なるRebDの水溶液を作製し、30℃で72時間インキュベートすることによって評価した。RebDは、最初に1mM以下の濃度でも水に溶解性であることが見出され、一方0.5mM以下の濃度は、より長時間安定であることが判明した。当業者は、溶解性が、pH、温度、または異なるマトリックスなどの任意の数の条件によって影響され得ることを認識する。
【0219】
ショ糖合成酵素
ショ糖合成酵素(SUS)は、他の小分子のグリコシル化のために、UDPおよびショ糖からUDP-グルコースを再生するために(
図11)用いられている(Masada Sayaka et al. FEBS Letters 581 (2007) 2562-2566)。A. thaliana、S. rebaudiana、およびコーヒー(Coffea arabica)からの3種類のSUS1遺伝子を、pGEX4T1 E. coli発現ベクターにクローニングした(配列については
図17を参照)。EUGT11について記載されたものと同様の方法を用いて、約0.8mg/lのGST-AtSUS1(A. thalianaのSUS1)を精製した。CaSUS1(Coffea arabicaのSUS1)およびSrSUS1(S. rebaudianaのSUS1)の初期発現と続くGST精製は、タンパク質を大量に生産しなかったが、しかしウェスタンブロットにより分析した場合、GST-SrSUS1の存在が確認された。GST-SrSUS1を2%エタノールの存在下、20℃で発現させた場合、約50μg/lの酵素が生産された。
【0220】
精製されたGST-AtSUS1およびGST-SrSUS1のUDP-グルコース再生活性を評価するため、実験を行った。in vitroアッセイを、100mMのトリス-HCl、pH=7.5および1mMのUDP(最終濃度)で行った。~2.4μgの精製GST-AtSUS1、~0.15μgのGST-SrSUS1、または~1.5μgの市販のBSA(New England Biolabs, Ipswich, MA)も添加した。反応は、~200mMのショ糖の存在または不在下で行われ、37℃で24時間インキュベートした。生成物UDP-グルコースは、分析の節で説明したようにHPLCにより測定した。AtSUS1は、ショ糖が存在する場合に~0.8mMのUDP-グルコースを生産した。 SrSUS1または陰性対照(BSA)を用いた場合、UDP-グルコースは観察されなかった。SrSUS1について観察された活性の欠如は、精製された酵素の低品質および濃度によって説明可能である。AtSUS1によるUDP-グルコースの生産はショ糖依存性であり、したがってAtSUS1は、小分子のグリコシル化(
図11、上記)のために、EUGT1または他のUGTで用いるUDP-グルコースを再生するための連結された反応に使用できると結論された。
SUSは、
図11に示すように、ショ糖およびUDPからのUDP-グルコースと果糖の形成を触媒する。このUDP-グルコースは次に、RebAをグリコシル化してRebDを生産するために、EUGT11によって使用することができる。上記のようなin vitroアッセイを行い、~200mMのショ糖、1mMのUDP、100μMのRebA、~1.6μgの精製されたGST-AtSUS1および~0.8μgのGST-EUGT11を添加した。生成物であるRebDの形成は、LC-MSによって評価した。AtSUS、EUGT11、ショ糖およびUDPをRebAと混合した場合、81±5μMのRebDが形成された。反応はAtSUS、EUGT11、およびショ糖の存在に依存していた。変換速度は、前に外因的に提供されたUDP-グルコースを用いて観察されたものと同様であった。このことは、AtSUSが、EUGT11によるRebD形成のためのUDP-グルコースの再生に使用できることを示す。
【0221】
例9:RebDの全細胞生体触媒の生産
この例では、RebAまたは他のステビオール配糖体からのRebDの生産において全細胞生物触媒系を使用するための因子である、いくつかのパラメータを検討した。細胞膜を横断する原材料の能力およびUDP-グルコースの利用可能性は、2つのかかる因子である。透過化剤および異なる細胞型を検討して、どの系がRebD生産のための最も有益であるかを確認した。
【0222】
透過化剤
いくつかの異なる透過化剤が、通常は細胞膜を横断することができない様々な化合物の細胞内酵素変換を可能にすることが、以前から示されている(Chow and Palecek, Biotechnol Prog. 2004 Mar-Apr;20(2):449-56)。いくつかの場合において、アプローチは細胞の部分的な溶解に似ており、酵母においては多くの場合、洗浄剤による細胞膜の除去と、小さな分子に対して透過性である残りの細胞壁内部への酵素の封入に依存する。これらの方法に共通するのは、透過化剤への曝露と、次いで基質添加前の遠心分離ステップによる細胞のペレット化である。例えば、酵母の透過性に関しては、Flores et al., Enzyme Microb. Technol., 16, pp. 340-346 (1994);Presecki & Vasic-Racki, Biotechnology Letters, 27, pp. 1835-1839 (2005);Yu et al., J Ind Microbiol Biotechnol, 34, 151-156 (2007);Chow and Palecek, Cells. Biotechol. Prog., 20, pp. 449-456 (2004);Fernandez et al., Journal of Bacteriology, 152, pp. 1255-1264 (1982);Kondo et al., Enzyme and microbial technology, 27, pp. 806-811 (2000);Abraham and Bhat, J Ind Microbiol Biotechnol, 35, pp. 799-804 (2008);Liu et al.,: Journal of bioscience and bioengineering, 89, pp. 554-558 (2000);およびGietz and Schiestl, Nature Protocols, 2, pp. 31-34 (2007)を参照。細菌の透過化処理に関しては、Naglak and Wang, Biotechnology and Bioengineering, 39, pp. 732-740 (1991);Alakomi et al., Applied and environmental Microbiology, 66, pp. 2001-2005 (2000);およびFowler and Zabin, Journal of bacteriology, 92, pp. 353-357 (1966)を参照。この例に記載したように、細胞が生存可能なままであれば、de novoのUDP-グルコース生合成を保持可能であることが決定された。
【0223】
E. coliおよび酵母中における透過化の条件を確立するために、実験を行った。増殖する細胞(S. cerevisiaeまたはE. coli)を、透過化剤の異なる濃度/組合せで処理した:S. cerevisiaeの透過化にはトルエン、クロロホルム、およびエタノール、E. coliの透過化にはグアニジン、乳酸、DMSOおよび/またはリトンX-100。RebAおよび高濃度の他の潜在的基質に対する両モデル生物の耐性も評価した。透過性は、RebA含有培地でのインキュベーション後のEUGT11発現生物から生産されるRebDの量により測定した(供給実験)。酵素活性のモニタリングは、透過化剤への暴露の前後に、細胞を溶解してin vitroアッセイで放出されたUGTの活性を分析することにより行った。
酵母では、試験した透過化処理条件のいずれも、検出されたバックグラウンド(すなわち、供給に用いたRebAストックに存在する不純物RebDレベル)を上回るRebDの増加をもたらさなかった。これは、試験した条件下で、酵母細胞がRebAに対して不透過性のままであるか、および/または、溶媒に起因する細胞生存度の低下が、EUGT11活性の低下ももたらすことを示す。
【0224】
E. coliでは、試験した条件のいずれも、細胞の透過化および、続くバックグラウンドレベルを上回るRebDの生産をもたらさなかった。検出可能レベルのRebDは、EUGT11を発現する株からの溶解物をin vitro反応で用いた場合に測定され(データは示さず)、これは、すべての透過化処理の後にもEUGT11酵素が存在して活性であることを示す(ただし活性レベルは変化する)。透過化処理は細胞の生存度にほとんどまたは全く影響しなかったが、ただし、0.2Mのグアニジンおよび0.5%のトリトンX-100で処理した培養物は例外であり、この場合は生存度が大幅に低下した。
S. cerevisiaeはまた、トリトンX-100、N-ラウリルサルコシン(LS)、または酢酸リチウム+ポリエチレングリコール(LiAc+PEG)を用いて、細胞のさらなる増殖を許容しない透過化アッセイに供した。すなわち、これらの条件下で、細胞は透過化により、内側に酵素およびgDNAを保つためのバリアとしての細胞壁を保持しつつ細胞膜を完全に除去することによって、成長不能にされる。このような方法においては、UDP-グルコースは、上記のように補足されまたは再循環することができる。純粋なin vitroのアプローチに対する透過化処理の利点は、個々の酵素を個別に生産して単離する必要がないことである。
【0225】
N-ラウリルサルコシン処理はEUGT11の不活性化をもたらし、LiAc/PEGが適用された場合に、RebDのわずかな増加のみが検出された(データは示さず)。トリトンX-100の0.3%または0.5%での処理はしかし、EUGT11の活性を維持しつつ、RebDの量をバックグラウンドレベルよりも増加させた(
図18を参照)。トリトンX-100アッセイについては、一晩培養物をPBS緩衝液で3回洗浄した。6単位のOD
600に対応する細胞を、それぞれ0.3%または0.5%のトリトンX-100を含有するPBS中に再懸濁した。処理した細胞を30℃で30分間ボルテックスおよびインキュベートした。処理後、細胞をPBS緩衝液中で洗浄した。GST-EUGT11について記載したように、5単位のOD
600に対応する細胞をin vitroアッセイにおいて使用し、0.6単位のOD
600を、LS処理試料について記載したように、反応緩衝液中に再懸濁し、30℃で一晩インキュベートした。未処理試料を対照として用いた。
EUGT11を発現する形質転換体からの溶解物は、細胞が未処理またはLiAC/PEGもしくはトリトンX100での処理後の場合に、いくらかのRebAをRebDに変換することができた(反応物中8~50μMが測定された)。しかし、LSで処理された細胞ペレットの溶解物中では、RebDは測定されなかった。透過化処理したが非溶解の細胞は、0.3%または0.5%のトリトンX-100で処理した場合に、いくらかのRebDを生産することができ(1.4~1.5μMが測定された)(
図18)、LSまたはLiAC/PEGで処理した試料では、RebDは見出されなかった。これらの結果は、全細胞を用い、トリトンX-100を透過化剤として用いた場合に、RebDがRebAから、生体触媒により生産できることを示す。
【0226】
例10:コドン最適化UGT配列のアセスメント
UGTの91d2e、74G1、76G1、および85C2のための最適なコード配列を、GeneArt(Regensburg, Germany)(それぞれお配列番号6、2、8および4)またはDNA2.0((Menlo Park, CA)(それぞれお配列番号84、83、85および82)によって供給される2つの方法論を用いて、酵母発現のために設計および合成した。UGTの91d2e、74G1、76G1、および85C2のアミノ酸配列(それぞれ配列番号5、1、7および3)は変化しなかった。
野生型、DNA2.0、およびをGeneArtの配列をin vitro活性についてアッセイし、ステビオール配糖体経路の基質における反応性を比較した。UGTを高コピー(2μ)ベクターに挿入し、強力な構成的プロモーター(GPD1)(ベクターP423-GPD、P424-GPD、P425-GPD、およびP426-GPD)から発現させた。プラスミドは、汎用Watchmaker株EFSC301(WO2011/153378の例3に記載)に個別に形質転換し、アッセイは、等量の細胞(8OD単位)から調製した細胞溶解物を用いて行った。酵素反応のために、6μLの各細胞溶解物を30μLの反応物中、0.25mMのステビオール(最終濃度)と共にインキュベートしてUGT74G1およびUGT85C2クローンを試験し、0.25mMの13-SMG(13SMG)(最終濃度)と共にインキュベートして76G1UGTおよび91D2eUGTを試験した。アッセイは30℃で24時間行った。LC-MS分析の前に、1容量の100%DMSOを各反応物に添加し、試料を16000gで遠心分離し、上清を分析した。
【0227】
GeneArt最適化遺伝子を発現する溶解物は、試験した条件下で高レベルのUGT活性を提供した。野生型酵母に対する割合として表した場合、GeneArt溶解物は、UGT74G1について野生型と同等の活性を、UGT76G1について170%の活性を、UGT85C2について340%の活性を、およびUGT91D2eについて130%の活性を示した。S. cerevisiaeで発現された場合、UGT85C2を用いると、RebAおよびRebD生産のための細胞の全体的なフラックスおよび生産性を向上させることができる。
コドン最適化UGT85C2が19-SMGの蓄積を減らし、ルブソシドおよび高度にグリコシル化されたステビオール配糖体の生産を増加できるかどうかを判断するために、さらなる実験を実施した。19-SMGおよびルブソシドの生産を、野生型UGT74G1およびコドン最適化UGT85C2を強力な構成的プロモーター(GPD1)(それぞれ、ベクターP426-GPDおよびP423-GPD)の下で高コピー(2μ)ベクターから発現するS. cerevisiae株BY4741の、ステビオール供給実験において分析した。総グリコシドレベルについて、全培養試料(細胞除去なし)を取り、等量のDMSOに入れて沸騰させた。報告の細胞内濃度は、細胞をペレット化し、採取元の培養試料の体積に対して50%のDMSOに再懸濁させ、続いて沸騰させることによって得た。「総」グリコシドレベルおよび、正規化された細胞内レベルを、その後、LC-MSを用いて測定した。野生型UGT74G1と野生型UGT85C2を用いて、合計で約13.5μMのルブソシドが生産され、最大の正規化細胞内濃度は約7μMであった。対照的に、野生型UGT74G1とコドン最適化UGT85C2を使用した場合、最大で26μMのルブソシドが生産され、または野生型UGT85C2を用いて生産されたものの約2倍が生産された。さらに、ルブソシドの最大正規化細胞内濃度は13μMであり、再び、野生型UGT85C2を使用して生産されたものの約2倍であった。19-SMGの細胞内濃度は、野生型UGT85C2を使用した場合の最大35μMから、コドン最適化UGT85C2を使用した場合の19μMに大幅に低下した。その結果、約10μM低い合計の19-SMGが、コドン最適化UGT85C2について測定された。これは、より多くの19-SMGがルブソシドに変換されることを示し、野生型UGT85C2がボトルネックであることを確認する。
【0228】
多様性スクリーニングの間に、UGT85C2の別のホモログが、Stevia rebaudianaのcDNAクローニングの際に発見された。このホモログは、保存されたアミノ酸多型の以下の組み合わせを有する(野生型S. rebaudianaUGT85Cのアミノ酸番号については、コード配列はアクセッション番号AY345978.1に記載):A65S、E71Q、T270M、Q289H、およびA389V。このクローンはUGT85C2のD37と呼ばれ、PCR産物のin vitro転写/翻訳を通して発現された(TNT(R)T7 Quick for PCR DNA kit、Promega)。発現産物を、ステビオール(0.5mM)を糖受容体として用い、アッセイを24時間インキュベートしたことを除いてWO/2011/153378の記載と同様にして、グリコシル化活性についてアッセイした。野生型UGT85C2対照アッセイと比較して、D37酵素は、約30%高いグリコシル化活性を有するようである。
【0229】
例11:新規なS. rebaudianaKAHの同定
部分配列(GenBankアクセッション番号BG521726)は、ステビアKAHといくらかの相同性を有するStevia rebaudianaのESTデータベースにおいて同定された。部分配列を、生のStevia rebaudianaのパイロシーケンシング読み取りに対し、CLC Main Workbenchソフトウェアを使用してblast検索した。部分配列の末端に部分的に重なった読み取りが同定され、部分配列の長さを増加するために用いられた。配列が開始および終止コドン双方を包含するまで、これを数回行った。完全な配列を、生のパイロシーケンシング読み取りに対して完全な配列をblast検索することにより、導入され得るヌクレオチド置換およびフレームシフト突然変異について分析した。得られた配列を、SrKAHe1と指定した。
図12を参照。
SrKAHe1によってコードされるKAHの活性を、S. cerevisiaeのバックグラウンド株CEN.PK 111-61Aにおいてin vivoで評価した;この株は、酵母二次代謝産物イソペンテニルピロリン酸(IPP)およびファルネシルピロリン酸(FPP)からステビオール-19-O-モノシドへの生合成経路全体を構成する酵素(ただし、ent-カウレン酸をステビオールに変換するステビオール合成酵素を除く)をコードする遺伝子を発現するものである。
【0230】
簡単に説明すると、S. cerevisiae株CEN.PK 111-61Aを修飾して、TPI1およびGPD1酵母プロモーター駆動の転写と共に、染色体に組み込まれた遺伝子のコピーから以下を発現するようにした:Aspergillus nidulansのGGPPS、150nt切断型Zea maysCDPS(新しい開始コドンと共に;以下を参照)、S. rebaudianaのKA、S. rebaudianaのKOおよび、Stevia rebaudianaのUGT74G1。これらの全ての遺伝子を発現するCEN.PK 111-61A酵母株を、EFSC2386と指定した。このように、EFSC2386株には次の組込み遺伝子が含まれている:Aspergillus nidulansゲラニルゲラニルピロリン酸合成酵素(GGPPS);Zea mays ent-コパリル二リン酸合成酵素(CDPS);Stevia rebaudianaent-カウレン合成酵素(KS);Stevia rebaudianaent-カウレン酸化酵素(KO);およびStevia rebaudiana UGT74G1を、IPPおよびFPPからステビオール-19-O-モノシドへの経路と組み合わせて、ただしステビオール合成酵素(KAH)は含まない。
異なるステビオール合成酵素の発現(エピソーム発現プラスミドからの)を、EFSC2386株において種々のCPR(エピソーム発現プラスミドから)の発現と組み合わせて試験し、ステビオール-19-O-モノシドの生産を、培養物試料抽出物のLC-MS分析により検出した。CPRをコードする核酸を、p426 GPD塩基性プラスミドのマルチクローニング部位に挿入し、一方、ステビオール合成酵素をコードする核酸は、P415 TEF塩基性プラスミドのマルチクローニング部位に挿入した(Mumberg et al., Gene 156 (1995), 119-122によるp4XX塩基性プラスミドシリーズ)。ステビオール-19-O-モノシドの生産は、機能的なステビオール合成酵素が存在する場合に生じる。
【0231】
EFSC2386株においてエピソーム発現プラスミドから発現されたKAHは、以下である:「indKAH」(Kumar et al.,アクセッション番号DQ398871;Reeja et al.,アクセッション番号EU722415);「KAH1」(Brandle et al., 米国特許公開第2008/0064063 A1号からのS. rebaudianaステビオール合成酵素);「KAH3」(Yamaguchi et al., 米国特許公開第2008/0271205 A1号からのA. thalianaステビオール合成酵素);「SrKAHe1」(上記のように、S. rebaudianacDNAからクローニングされたS. rebaudianaステビオール合成酵素);および「DNA2.0.SrKAHe1」(S. rebaudianaステビオール合成酵素をコードするコドン最適化配列(DNA2.0)、
図12B参照)。
EFSC2386株においてエピソーム発現プラスミドから発現されたCPRは、以下である:「CPR1」(S. rebaudiana NADPH依存性P450還元酵素(Kumar et al.,アクセッション番号DQ269454);「ATR1」(A. thalianaCPR、アクセッション番号CAA23011、
図13も参照);「ATR2」(A. thalianaCPR、アクセッション番号CAA46815、
図13も参照);「CPR7」(S. rebaudianaCPR、
図13も参照、CPR7は「CPR1」に類似);「CPR8」(S. rebaudianaCPR、Artemisia annuaCPRと類似、
図13参照)および「CPR4」(S. cerevisiae NCP1(アクセッション番号YHR042W、
図13も参照)。
表13は、EFSC2386株における、ステビオール合成酵素とCPRの様々な組み合わせによるステビオール-19-O-モノシド(μM)のレベルを示す。
【0232】
【0233】
S. cerevisiaeで発現された場合、KAH3および、SrKAHe1によりコードされたステビオール合成酵素のみが、活性を有していた。ステビオール合成酵素をコードするDNA2.0コドン最適化SrKAHe1配列は、それぞれが最適なCPRと共発現させた場合に、コドン最適化KAH3と比べて約一桁高いステビオール-19-O-モノシドの蓄積レベルをもたらした。この例で提示される実験において、KAH1とATR2 CPRの組み合わせは、ステビオール-19-O-モノシドの生産をもたらさなかった。
【0234】
例12-CPRとKOの対合
この例で言及されるCEN.PK S. CerevisiaeのEFSC2386株およびCPRは、例11に記載されている(「S. rebaudianaKAHの同定」)。EFSC2386には、次の組込み遺伝子が含まれている:Aspergillus nidulansゲラニルゲラニルピロリン酸合成酵素(GGPPS);Zea maysent-コパリル二リン酸合成酵素(CDPS);Stevia rebaudianaent-カウレン合成酵素(KS);およびStevia rebaudianaent-カウレン酸化酵素(KO)。この株は、LC-MS分析で検出されるent-カウレン酸を生産する。
シトクロムP450還元酵素(CPR)のコレクションをEFSC2386株において発現させ、試験した;「CPR1」(S. rebaudianaNADPH依存シトクロムP450還元酵素、Kumarら、アクセッション番号DQ269454);「ATR1」(A. thalianaCPR、アクセッション番号CAA23011)、「ATR2」(A. thalianaCPR、アクセッション番号CAA46815)、「CPR7」(S. rebaudianaCPR、CPR7は「CPR1」に類似)、「CPR8」(S. rebaudianaCPR、Artemisia annuaのCPRに類似;および「CPR4」(S. cerevisiae NCP1、アクセッション番号YHR042W)。
【0235】
S. cerevisiaeの内因性ネイティブCPR(表14でCPR4と呼ぶ)の過剰発現、および特にA. thaliana CPRの1つすなわちATR2の過剰発現は、Stevia rebaudianaカウレン酸化酵素の良好な活性化を提供し(後者は表14においてKO1と呼ばれる)、ent-カウレン酸の蓄積の増加をもたらす。LC-MSクロマトグラムのent-カウレン酸ピークの曲線下面積(AUC)を示す表14を参照のこと。KO1は、CPRの追加の過剰発現のないent-カウレン酸生成酵母対照株である。
【表17】
【0236】
例13-ステビオール経路におけるKS-5とKS-1の評価
酵母株EFSC1972は、以下をコードする組込み遺伝子コピーにより発現される、IPP/FPPからルブソシドへの生合成経路を有するCEN.PK 111-61AのS. cerevisiae株である:Aspergillus nidulans GGPPS(内部名はGGPPS-10)、Stevia rebaudianaのKS(KS1、配列番号133)、Arabidopsis thalianaのKAH(KAH-3、配列番号144)、Stevia rebaudianaのKO(KO1、配列番号138)、Stevia rebaudianaのCPR(CPR-1、配列番号147)、完全長Zea maysのCDPS(CDPS-5、配列番号158)、Stevia rebaudianaのUGT74G1(配列番号1)およびStevia rebaudianaのUGT85C2(配列番号3)。さらにEFSC1972は、内因性プロモーターの銅誘導性プロモーターCUP1との置き換えによる、ERG9遺伝子発現の下方制御を有する。
【0237】
EFSC1972が、TEF1プロモーターからStevia rebaudianaのSrKAHe1を発現するCEN/ARSベースのプラスミドで形質転換され、および、Synechococcus種のGGPPS(GGPPS-7)およびGPDプロモーターからのZea mays CDPS(切断型CDPS-5)の切断バージョンを発現する2μベースのプラスミドで同時形質転換された場合、その結果は、ルブソシド(および19-SMG)の増殖を障害されたS. cerevisiae生産者が得られる。この株は、以下のテキスト中で「強化EFSC1972」と呼ばれる。遅い増殖率が、毒性の経路中間体ent-コパリル二リン酸の蓄積によって引き起こされているかどうかを判断するために、カウレン合成酵素(KS)遺伝子のコレクションを「強化EFSC1972」株において発現させ、その後の増殖とステビオール配糖体の生産を評価した。
A. thalianaKS(KS5)の発現は、「強化EFSC1972」株の改善された増殖とステビオール配糖体生産をもたらした。
図16を参照。増殖に対する同様のプラスの効果は、強化EFSC1972におけるStevia rebaudianaのカウレン合成酵素(KS-1)のさらなる過剰発現によっては達成できない。
【0238】
例14-酵母株EFSC1859
Saccharomyces cerevisiae株のEFSC1859は、ゲノムに組み込まれて強力な構成的GPD1およびTPIプロモーターから発現される、GGPPS-10、CDPS-5、KS-1、KO-1、KAH-3、CPR-1およびUGT74G1のコード配列を含んでいる。表15参照。さらに、酵母ERG9遺伝子の内因性プロモーターは、ERG9スクアレン合成酵素の下方制御のために銅誘導性プロモーターCUP1と置き換えられた。標準的な酵母増殖培地において、かかる培地中の銅濃度が低いため、ERG9遺伝子は非常に低いレベルで転写される。この株におけるエルゴステロール生産の減少は、イソプレノイド生合成に利用可能なイソプレン単位の量の増加をもたらす。また、EFSC1859株は、GPD1プロモーターを用いて、2ミクロンのマルチコピーベクターからUGT85C2を発現する。EFSC1859は、ルブソシドおよびステビオール19-O-グリコシドを生産する。
Zea maysCDPSのDNAは、葉緑体シグナルペプチドの存在または不在のもとで、GPDプロモーターを用いて、2ミクロンのマルチコピープラスミドから発現された。Zea maysCDPSのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を、
図14に示す。葉緑体シグナルペプチドはヌクレオチド1~150によってコードされ、アミノ酸配列の残基1~50に相当する。
【0239】
【表18】
EFSC1859+トウモロコシの全長CDPSプラスミド、およびEFSC+トウモロコシの切断型CDPSプラスミドを、4%グルコースを有する酵母選択培地中で増殖させた。ルブソシドおよび19-SMG生産はLC-MSにより測定して、生産レベルを推定した。プラスチドリーダー配列の除去は、野生型配列と比較して、ステビオール配糖体の生産を増加させたようには見えず、CDPS輸送ペプチドは、ステビオール配糖体生合成の消失を引き起こすことなく、除去可能であることが実証される。
【0240】
例15-酵母株EFSC1923
Saccharomyces cerevisiae株CEN.PK 111-61Aを、様々な生物からのステビオール配糖体経路酵素の導入によってステビオール配糖体を生産するように修飾した。修飾された株は、EFSC1923と指定した。
EFSC1923株は以下を含む:Aspergillus nidulansのGGPP合成酵素遺伝子発現カセットをS. cerevisiaeのPRP5-YBR238C遺伝子間領域に、Zea maysの全長CDPSとStevia rebaudianaのCPR遺伝子発現カセットをMPT5-YGL176C遺伝子間領域に、Stevia rebaudianaのカウレン合成酵素とCDPS-1遺伝子発現カセットをECM3-YOR093C遺伝子間領域に、Arabidopsis thalianaのKAHとStevia rebaudianaのKO遺伝子発現カセットをKIN1-INO2遺伝子間領域に、Stevia rebaudianaのUGT74G1遺伝子発現カセットをMGA1-YGR250C遺伝子間領域に、Stevia rebaudianaのUGT85C2遺伝子発現カセットを、TRP1遺伝子のORFを置き換えることにより組み込む。表15を参照。また、酵母ERG9遺伝子の内因性プロモーターは、銅誘導性プロモーターCUP1で置き換えた。
EFSC1923株は、4%のグルコースを有する酵母選択培地上で、約5μMのステビオール配糖体、ステビオール19-O-モノシドを生産した。
【0241】
例16-酵母株EFSC1923における切断型トウモロコシCDPSの発現
表15に示す、Zea maysのCDP合成酵素コード配列の5’末端の150のヌクレオチド(配列番号157、
図14参照)を削除し、コード配列の残りの部分に新たな翻訳開始ATGを設け、切断配列を、Saccharomyces cerevisiaeのEFSC1923のマルチコピープラスミドp423GPD中のGPD1プロモーターに動作可能に連結した。プラスミドp423GPDは、Mumberg, D et al,
Gene, 156 : 119-122 (1995)に記載されている。EFSC1923とEFSC1923に、p423GPD-Z.m.tCDPSを加えたものを、4%のグルコースを含む酵母選択培地で96時間増殖させた。これらの条件下で、EFSC1923+p423GPD-Z.m.tCDPS(切断型Zea maysCDPS)によって生産されたステビオール19-O-モノシドの量は、プラスミドなしのEFSC1923によって生産されたものの約2.5倍以上であった。
表15からのArabidopsis thalianaKAHコード配列を、GPD1プロモーターの制御下で、p426GPDと指定されたマルチコピープラスミドに挿入した。プラスミドp426GPDはMumberg, D et al,
Gene, 156 : 119-122 (1995)に記載されている。EFSC1923+p426GPD-A.t.KAHおよびプラスミドなしのEFSC1923により生産されたステビオール19-O-モノシドの量の間には、有意差は観察されなかった。
【0242】
EFSC1923を、p423GPD-Z.m.tCDPSおよびp426 p426GPD-A.t.KAHの両方で形質転換した。驚くべきことに、これらの条件下で両方のプラスミド(すなわち、切断型Zea maysCDPSおよびArabidopsisKAH)を保有するEFSC1923により生産されるステビオール19-O-モノシドの量は、EFSC1923のみによって生産される量より6倍以上多かった。
Gibberella fujikuroiからの二機能性CDPS-KS(NCBIアクセッション番号Q9UVY5.1、
図15)をクローニングして、切断型CDPS-5と比較した。二機能性GibberellaCDPS-KSを、GPDプロモーターと共に2μプラスミドにクローニングし、GPDプロモーターからの2μベースのプラスミドからのArabidopsis thalianaKAH-3を発現するプラスミドを用いて、EFSC1923中に形質転換した。振盪フラスコ実験において、この二機能性CDPS-KSは、KAH-3のみを有するEFSC1923株よりも、ステビオール19-O-モノシドの生産において約5.8倍も高活性であった。しかし試験した条件下において、KAH-3と切断型CDPSの組み合わせよりは最適ではないことが見出された。したがって、さらなる株を、KS-5と切断型CDPSを用いて構築した。
【0243】
例17-中間体の毒性
S. cerevisiaeの活力に対する、ゲラニルゲラニルピロリン酸(GGPP)、ent-コパリル二リン酸(CDP)またはent-カウレンの生産の効果を、実験室のS. cerevisiae株CEN.PKのバックグラウンドにおいて、次の発現によって調べた:Synechococcus種GGPPのみ(GGPP生産)、GGPPと共に50アミノ酸のN末端切断型Zea maysCDPS(例16を参照)(CDP生産)、または、GGPP、切断型CDPS、およびArabidopsis thalianaカウレン合成酵素(KS5)を共に(ent-カウレン生産)。遺伝子は、GPDプロモーターが切断型CDPSおよびKS5の転写を駆動して、2μプラスミドから発現され、一方GGPPSの転写はADH1プロモーターによって駆動される。これらのプラスミドの様々な組み合わせ(GGPPのみ;GGPP+切断型CDPS;またはGGPP+切断型CDPS+KS5)または遺伝子挿入なしのプラスミドにより形質転換された、S. cerevisiae CEN.PKの増殖が観察された。GGPPの生産、特にCDPの生産は、最終製品として生産された場合、S. cerevisiaeに対して毒性であった。興味深いことに、ent-カウレンは、この実験における生産量では、酵母に対して毒性ではないようであった。
【0244】
例18-内因性ホスファターゼ活性の破壊
酵母遺伝子DPP1とLPP1は、それぞれFPPとGGPPをファルネソールとゲラニルゲラニオールに分解するホスファターゼをコードする。遺伝子をコードするDPP1を、EFSC1923株において取り除き(例15に記載)、ステビオール配糖体の生産に影響したかどうかを判断した。このdpp1変異株を、葉緑体移行配列を欠いたZea maysCDPSを発現するプラスミドでさらに形質転換すると(例16)、大小両方の形質転換体が出現した。「大コロニー」タイプの株は、「小コロニー」タイプの株およびDPP1無削除株と比べて、試験条件の下で~40%多い19-SMGを生産した。これらの結果は、DPP1の削除がステビオール配糖体生産に対して正の効果を有することができ、したがって酵母でのプレニルピロリン酸の分解は、ステビオール配糖体の生産に負の影響を与える可能性があることを示している。
【0245】
例19-破壊されたSUC2遺伝子による、グルコースからバニリングルコシドを生産する遺伝的に安定な酵母レポーター株の構築
グルコースからバニリングルコシドを生成する酵母株を、基本的にBrochado et al.((2010) Microbial Cell Factories 9:84-98)(株VG4)に記載のようにして作製したが、ただし、酵母ゲノム中のECM3間座の領域に、酵母TPI1プロモーターによって制御されるE. coli EntD PPTaseを有する発現カセットをさらに組込み(Hansen et al. (2009) Appl. Environ. Microbiol. 75(9):2765-2774に記載されているように)、コード配列をMET15発現カセットで置換することによりSUC2を破壊し、および、コード配列をTn5ble発現カセットで置換することによりLEU2を破壊してフレオマイシンに対する耐性を付与した。生じた酵母株をV28と呼ぶ。この株はまた、
図19に示すアミノ酸配列を有する組換えA. thaliana UDP-グリコシルトランスフェラーゼ(UGT72E2、GenBankアクセッション番号Q9LVR1)をコードする(配列番号178)。
【0246】
例20-既にバニリングルコシドを生合成している酵母におけるショ糖トランスポーターおよびショ糖合成酵素の発現
Arabidopsis thaliana由来のショ糖トランスポーターSUC1は、プルーフリーディングPCRポリメラーゼを用いて、A. thalianaから調製したcDNAからPCR増幅により単離した。得られたPCR断片を、SpeIおよびEcoRIでの制限消化によって転移し、強力なTEFプロモーターから遺伝子を発現させることが可能な低コピー数の酵母発現ベクターP416-TEF (CEN-ARSベースのベクター)の対応する位置に挿入した。得られたプラスミドをpVAN192と名付けた。コードされたショ糖トランスポーターの配列を
図19Bに示す(GenBankアクセッション番号AEE35247、配列番号179)。
Coffea arabicaからのショ糖合成酵素SUS1(アクセッション番号CAJ32596)を、プルーフリーディングPCRポリメラーゼを使用して、C. arabicaから調製したcDNAからPCR増幅により単離した。PCR断片を、SpeIおよびSalIでの制限消化によって転移し、強力なGPDプロモーターから遺伝子を発現させることが可能な高コピー数の酵母発現ベクターp425-GPD(2μmベースのベクター)の対応する位置に挿入した。得られたプラスミドをpMUS55と名付けた。コードされたショ糖合成酵素の配列を
図19Cに示す(GenBankアクセッション番号CAJ32596;配列番号180)。
【0247】
pVAN192とpMUS55を、遺伝的形質転換により、酢酸リチウム形質転換プロトコルを用いて酵母株V28に導入し、酵母株V28::pVAN192::pMUS55を作製した。対照株は、V28を空のプラスミドP146-TEFとP425-GPDで形質転換することにより作製した。
これら2種の酵母株を、500mlの三角振とうフラスコ内の200mlの培養物中で、芳香族アミノ酸なしのSC(完全合成)増殖培地に2%グルコースおよび2%ショ糖を補充しpHを5.0に調整したものを用いて増殖させた。培養物を、中程度の回転数(150rpm)で30℃で72時間インキュベートした。試料を72時間で取り出し、バニリングルコシドの含有量を決定した。下記の表から分かるように、対照株(空のプラスミドP146-TEFおよびP425-GPDを含む)におけるVG生産は330mg/LのVGであったが、ショ糖合成酵素およびショ糖トランスポーターを発現する酵母株V28::pVAN192::pMUS55は、445mg/LのVGを生産し、これはVG生産における34.8%の増加に相当した。
【0248】
【表19】
これは、ショ糖合成酵素とショ糖トランスポーターおよびグリコシルトランスフェラーゼの同時発現が、小分子アグリコンをグリコシル化する能力を増加させ、グリコシル化されたアグリコンの濃度が顕著に増加したことを示している。この場合には、バニリングルコシル化の顕著な改善により、最終生成物バニリン-O-β-グルコシドの力価の顕著な増加がもたらされた。
【0249】
例21-ステビオール配糖体生産株の改良
Saccharomyces cerevisiaeEFSC2763の菌株構築
酵母株EFSC2763は、3つの栄養要求性の修飾、すなわちURA3、LEU2およびHIS3の欠失を含む、野生型Saccharomyces cerevisiae株に由来している。株の遺伝学は安定化されており、規則的な二倍体または倍体酵母株として使用することができる。EFSC2763は、4つのDNAコンストラクトのゲノム組込みによって、ステビオール配糖体生産酵母に変換された。各コンストラクトは、酵母ゲノム中に相同組換えによって導入された複数の遺伝子を含んでいる。さらに、コンストラクト1および2は、相同組換えにより組み合わされる(assembled)。
最初のコンストラクトは8つの遺伝子を含み、DPP1遺伝子座に挿入され、DPP1を破壊しかつ部分的に削除する(例18参照)。挿入されたDNAは以下を含む:NatMX遺伝子(選択マーカー)を発現するA. gossypiiTEFプロモーターと続いてA. gossypiiからのTEFターミネーター;ネイティブ酵母GPD1プロモーターから発現される、Gene Artコドン最適化S. rebaudiana UGT85C2(例10参照)と、続いてネイティブ酵母CYC1ターミネーター;TPI1プロモーターを用いて発現されるS. rebaudianaCPR-8(
図13参照)と、続いてネイティブ酵母TDH1ターミネーター;PDC1プロモーターから発現されるA. thalianaカウレン合成酵素(KS-5、例13参照、配列番号156)と、続いてネイティブ酵母FBA1ターミネーター;TEF2プロモーターを用いて発現されるSynechococcus種GGPPS(GGPPS-7)と、続いてネイティブ酵母PFI1ターミネーター;TEF1プロモーターから発現されるDNA2.0コドン最適化S. rebaudiana KAHe1(例11参照、配列番号165)と、続いてENO2ターミネーター;FBA1プロモーターを用いて発現されるS. rebaudianaKO-1と、続いてネイティブ酵母TDH2ターミネーター;およびPGK1プロモーターを用いて発現されるZea mays切断型CDPS(例14参照)と、続いてネイティブ酵母ADH2ターミネーター。
【0250】
第2のコンストラクトがYPRCΔ15座に挿入され、これは以下を含む:KanMX遺伝子(選択マーカー)を発現するA. gossypiiからのネイティブ酵母TEFプロモーターと、続いてA. gossypiiからのTEFターミネーター;PGK1プロモーターから発現されるGene Artコドン最適化A. thalianaATR2(
図13B参照)と、続いて酵母ADH2ターミネーター;TPI1プロモーターから発現されるS. rebaudiana UGT74G1と、続いて酵母TDH1ターミネーター;TEF1プロモーターから発現されるGene Artコドン最適化S. rebaudianaUGT76G1と、続いて酵母ENO2ターミネーター;およびGPD1プロモーターから発現されるGene Artコドン最適化S. rebaudianaUGT91D2e-b(例6参照)と、続いて酵母CYC1ターミネーター。
第1および第2のコンストラクトは、交配および切開によって同じ胞子クローン中で合わせた。この酵母株はその後、第3および第4のコンストラクトを用いて2つの連続イベントで形質転換した。
【0251】
第3のコンストラクトは、遺伝子PRP5とYBR238Cの間に組み込まれており、以下を含む:K. lactisLEU2遺伝子を発現するA. gossypiiからのTEFプロモーターと、続いてA. gossypiiからのTEFターミネーター;DNA2.0最適化S. rebaudianaKAHe1を発現するGPD1プロモーターと、続いてCYC1ターミネーター;およびZea mays切断型CDPSを発現するTPI1プロモーター。第4のコンストラクトは、遺伝子ECM3とYOR093Cの間に発現カセットと共に組み込まれており、発現カセットは以下を含む:K. pneumoniaehph遺伝子を発現するA. gossypiiからのTEFプロモーターと、続いてA. gossypiiからのTEFターミネーター;GPD1プロモーターから発現されるSynechococcus種のGGPPSと、続いてCYC1ターミネーター;およびA. thalianaカウレン合成酵素を発現するTPI1プロモーター。利用した4つの遺伝子マーカーは、その後削除された。
細胞および培養液からの総ステビオール配糖体をDMSO抽出後にLC-MSで分析した結果、EFSC2772は、3mlのSC(完全合成)培地中30℃で、ディープウェルプレート内320RPMで振盪しつつ4日間増殖させた後に、40~50μMまたは2~3μM/OD600のレバウジオシドAを生産する。
【0252】
Saccharomyces cerevisiaeEFSC2772の菌株構築
EFSC2772は、遺伝子マーカーが除去されなかったことを除いて2763株とよく似ており、この株は、形質転換により2つのプラスミドp413TEF(HIS3マーカーを有するパブリックドメインCEN/ARSシャトルプラスミド)およびp416-TEF(URA3マーカーを有するパブリックドメインCEN/ARSシャトルプラスミド)を導入することによって原栄養体性にされており、EFSC2772と呼ぶ。
細胞および培養液からの総ステビオール配糖体のDMSO抽出後にLC-MSで分析した結果、EFSC2772は、ディープウェルプレートでの増殖後に、2763と同様のレベルのレバウジオシドAを生産する。高い光学濃度と高い力価が、2L(作業容量)の発酵槽内での好気性フェッドバッチ増殖を介して得られ、この増殖には、基本培地中(完全合成培地)での約16時間の増殖期と、続く~100時間の、炭素およびエネルギー源として利用されるグルコースを、微量金属、ビタミン、塩、および酵母窒素ベース(YNB)および/またはアミノ酸の補足と組み合わせて供給することが含まれる。pHは5付近に維持し、温度設定は30℃であった。LC-MSによって証明されるように、合わせた細胞および細胞外生成物の濃度は、2つの異なる実験において、920~1660mg/LのRebAと、約300~320mg/LのRebDの間であり、より高い力価の結果が得られた場合の培養液中には、約700mg/LのRebAが検出された。さらに、RebBの大きなピークが見られ、当業者は、UGT74G1の追加のコピーまたはUGT74G1の上方制御が、RebBのRebAへの変換をさらに増加させることを認識する。
EFSC2743株を上記と同様の方法で作製したが、ただし、原栄養体性を付与する二つのプラスミドは用いず、TEFプロモーターからEUGT11を発現するp416(CEN/ARS)ベースのプラスミドを追加した。この株は、上記のようにフェッドバッチ発酵で増殖させた。この株は、920mg/LのRebDの総量を生産し、さらに約9:1のRebD対RebAの比率が見られた。約360mg/LのRebDが、培養液中に見出された。
【0253】
例22-UDP-グルコース容量
例21において、酵母が、1mMを超えるステビオール、例えばRebD、RebBおよびRebAなどを、完全にグリコシル化できることが示された。同様に、Saccharomyces株は、60mMもの他の小分子生成物をグリコシル化することができる(データは示さず)。しかしながら、酵母のネイティブのUDP-グルコース再生系のグリコシル化の限界は未知であるか、または、細胞壁合成に必要なUDP-グルコースのプールを補充する速度は未知である。したがって、UDP-グルコース生産の増加が、酵母におけるグリコシル化の速度を増加させるかどうかを調べるために、実験を設計した。suc2欠失変異体を、ショ糖トランスポーターをコードするA. thalianasuc1遺伝子、UGT74G1およびA. thalianaSUSを有するプラスミドで形質転換した。UGT74G1は急速に、ステビオールをステビオール19-O-モノグルコシド(19-SMG)にグリコシル化することができる。形質転換体は、ロイシン、ヒスチジンおよびウラシルを欠いた4mlのSC培地を含む13mlの培養管中で一晩事前に増殖させた。翌日、2OD600単位に相当する細胞を遠沈し、2%ショ糖および/または100μMのステビオールを含む新鮮な培地2mlに再懸濁した。培養物を、培養管中で30℃で3日間振とうした。1時間、3時間、6時間、21時間および46時間後、アリコートを採取した。100μlの培養物のアリコートを遠沈し、等量のDMSOを添加した。試料をボルテックスし、80℃で15分間加熱し、遠心分離し、19-MG含量をLC-MSにより分析した。試験した時点で、野生型株とSUS1増強株の間に、ステビオールのグリコシル化の速度の差は観察されなかった。これは、UGT74G1によるステビオールのグリコシル化が、酵母により再生されるUDP-グルコースよりも遅い速度で進行し、余分なUDP-グルコースが、in vivoでの小分子のグリコシル化の高い力価を達成するために必要とされないことを示唆している。それにもかかわらず、SUSの、in vitroでUDP-グルコースをリサイクルするための使用は、例8に示されており、したがってin vivo系におけるその使用は、UDP-グルコースが制限的となる場合に、ステビオール配糖体の生産速度を増加させることが予想される。
【0254】
例23-グルコースからのin vivoでのRebCおよびRebFの生産
ステビオールからのRebCの生産
これまでの実験(公開番号WO/2011/153378)により、組換え発現されたArabidopsis thalianaRHM2(ラムノース合成酵素、遺伝子座タグAT1G53500)が、UDP-グルコースをUDP-ラムノースに変換できることが示された。このUDP-ラムノースは、in vitroでUGT91D2eおよびステビオール-13-O-モノグルコシドと共にインキュベートした場合に、ステビオール-13-O-グルコピラノシル-1,2-ラムノシドを生産するために使用することができる。
【0255】
さらに実験が行われて、in vivoで酵母において全4種のUGTおよびRHM2を発現させ、続いてステビオールを供給することにより、ステビオールからのRebCの生産が確認された。EFSC301株(MAT alpha, lys2ADE8 his3ura3leu2trp1)を、野生型の遺伝子配列を発現する以下のプラスミドで形質転換した:野生型UGT74G1を発現するp424GPD(アクセッション番号AY345982);野生型85C2を発現するp423GPD(アクセッション番号AY345978.1);および野生型UGT76G1(アクセッション番号AY345974)およびUGT91D2eをGPDプラスミドのもとで発現するp426GPD由来プラスミド。RHM2または空のp425GPD対照プラスミドのいずれかを発現するプラスミドp425GPDは、UGTで同時形質転換した。形質転換体は、ロイシン、ヒスチジン、トリプトファンおよびウラシルを欠くSC培地2~3mlを含む13mLの培養管中で一晩事前に増殖させた。翌日、増殖が0.4のOD600単位に達した後、細胞を遠沈し、25μMのステビオールを含む新鮮な培地に再懸濁し、培養管中30℃で3日間振盪した。100μLの培養物のアリコートを遠沈した。200μLの50%DMSOをペレットに添加しながら、等容量のDMSOをこの試料の上清に加えた。試料をボルテックスし、80℃で15分間加熱し、遠心分離し、ステビオール配糖体含量をLC-MSにより分析した。RebCは、RHM2遺伝子をUGTと共発現させた場合にのみ、増殖培地と細胞抽出物中に検出された。定量化により、ほぼ等量のRebAとRebCが生産されたことが示された。これは、RHM2が、in vivoでかなりの量のUDP-ラムノースを生産することができ、UGT91D2eがin vivoで効率的にラムノシル化できることを示している。他の2つの化合物はLC-MSにより、それぞれ5.64および5.33の保持時間、ならびに1グルコース-および1ラムノース(ステビオール-1,2ラムノビオシド)および2グルコース-および1ラムノース(ズルコシドA)に対応するm/z比であることが観察された。これは、ステビオール配糖体経路の残りのUGTがラムノシル化中間体を受容できること、すなわち、ラムノシル化ステップが最後に行われる必要がないことを示唆している。
【0256】
さらに、一連のin vitro実験を行って、レバウジオシドC経路に何らかのデッドエンド反応が発生するかどうかを判定した。
図2Bを参照。例えば、ルブソシドに対するUGT91D2eのラムノシル化活性および、その後のUGT76G1による生成物のRebCへの変換が、in vitro反応を用いて実証された。この実験では、組換え的にE. coliで発現され精製されたUGT91D2eとRHM2を、ルブソシド、NADPH、NAD
+およびUDP-グルコースと共に一晩インキュベートした。続いて反応混合物を沸騰させて酵素を変性させた。反応物のアリコートを、UGT76G1とUDP-グルコースの酵素調製物に添加した。ルブソシドは、UGT91D2eとRHM2の存在下で、m/zが2-グルコースおよび1-ラムノースのステビオールに対応する化合物に変換された。次いでこの化合物を、UGT76G1の存在下でRebCに変換し、これは、中間体がズルコシドAであることを示す。この実験はしたがって、UGT91D2eが、ルブソシドをラムノシル化でき、UGT76G1がこの生成物をRebCに変換できることを実証する。
【0257】
同様に、in vitroでの反応により、UGT91D2eによる13-SMGのラムノシル化(1グルコースと1ラムノースのステビオール化合物を形成する)およびUGT76G1による2グルコースと1ラムノースの化合物のその後の形成が示された。この化合物は、固有の保持時間(4.56分)を有し、ステビオール13-O-1,3-ジグリコシド-1,2-ラムノシドであると考えられている。この化合物はまた、ステビオールを、4種のUGTおよびRHM2を発現する酵母に供給した場合にも観察された。
現在のデータから、UGT91D2eは13-SMGとルブソシドをラムノシル化できることが示されている。また、UGT74G1とUGT76G1は、13-SMGからUGT91D2eによって生成されたラムノシル化化合物を代謝できることが示されている。これらの化合物を、残りのUGT(前のステップにどのUGTを使用したかに応じて、UGT74G1またはUGT76G1)と共にインキュベートすると、RebCが形成される。これは、UGT74G1とUGT76G1がラムノシル化基質をグリコシル化することができるために、グリコシル化の順序は、ほとんど重要ではないことを示す。
【0258】
グルコースからのRebCの生産
RHM2およびUGTの76G1と91D2eを発現するプラスミドを、安定したルブソシドの生産者であるEFSC1923株に形質転換した(例15を参照)。この酵母は、UGTの85C2(アクセッション番号AY345978.1)および74G1(アクセッション番号AY345982)をゲノムに組み込まれ、また栄養要求性の修飾を有する、Saccharomyces cerevisiaeのCEN.PK 111-61A誘導体である。EFSC1923株(例15を参照)において、ERG9によってコードされているスクアレン合成酵素の発現は、内因性プロモーターをCUP1銅誘導性プロモーターで置き換えることによって下方制御された。EFSC1923株は、さらに以下も含む:Aspergillus nidulansGGPP合成酵素(GGPPS-10)発現カセットをS. cerevisiaePRP5-YBR238C遺伝子間領域に;Zea mays全長CDPS(CDPS-5)およびStevia rebaudianaCPR(CPR-1)遺伝子発現カセットを、MPT5-YGL176C遺伝子間領域に;Stevia rebaudianaカウレン合成酵素およびCDPS(KS-1/CDPS-1)遺伝子発現カセットを、ECM3-YOR093C遺伝子間領域に; Arabidopsis thalianaKAH(KAH-3)およびStevia rebaudianaKO(KO-1)遺伝子発現カセットを、KIN1-INO2遺伝子間領域に;Stevia rebaudianaUGT74G1遺伝子発現カセットを、MGA1-YGR250C遺伝子間領域に;および、TRP1遺伝子ORF20を置き換えることにより組み込まれたStevia rebaudianaUGT85C2遺伝子発現カセット。挿入されたステビオール経路遺伝子は、公開されたPCT WO/2011/153378の表11に記載されている。
【0259】
EFSC1923株は、GPDプロモーターの制御下で、GPDプロモーターを用いて野生型UGT74G1およびUGT85C2配列を発現するp423GPD由来のプラスミド、および野生型UGT74G1(アクセッション番号AY345974)およびUGT91D2e(配列番号5を参照)を発現するp426GPD由来のプラスミドで形質転換した。Arabidopsis thalianaRHM2(酵素遺伝子座タグAT1G53500)または空のp425GPD対照プラスミドを発現するプラスミドp425GPDを、共形質転換した。形質転換体は、ロイシン、ヒスチジン、およびウラシルを欠くSC培地2~3mlを含む13mLの培養管中で、一晩事前に増殖させた。翌日、増殖が0.4単位のOD600に達した後、これを遠沈し、新鮮な培地に再懸濁し、培養管中30℃で3日間振盪した。100μLの培養物を遠沈した;200μLの50%DMSOをペレットに添加しながら、等容量のDMSOをこれの上清に加えた。試料をボルテックスし、80℃で15分間加熱し、遠沈し、ステビオール配糖体含量をLC-MSにより分析した。
培地およびこの株の正規化された細胞内含有量の分析は、RebCの生産を示した。LC-MSにより、約8μMのRebCと4μMのRebAの生産が決定された。さらに、ステビオール供給後の中間体の生産は、この実験では検出されなかった。RebCの蓄積は、厳密にRHM2の発現に依存していた。この例は、グルコースからのRebCのde novo生合成を実証する。
【0260】
ステビオールおよびグルコースからの追加のステビオール配糖体の生成
上記と同じGPDベースのプラスミドを用いて、UGT74G1とUGT85C2を含有する安定ステビオール生産株のEFSC1923を、RebB(UGT76G1およびUGT91D2e/EUGT11)、RebE(UGT91D2e/EUGT11)、およびズルコシドA(RHM2、UGT91D2e/EUGT11)を生産するために必要なUGTと共に形質転換した。より高いジグリコシル化活性を有することが判明した野生型EUGT11(NCBI NP_001051007)を、この実験のためにp424GPDにクローニングした。形質転換体を、ロイシン、ヒスチジン、トリプトファンおよびウラシルを欠くSC培地2~3mlを含む13mLの培養管中で一晩事前に増殖させた。翌日、増殖が0.4のOD
600単位に達した後、細胞を遠沈し、25μMのステビオールを含有する新鮮な培地に再懸濁し(グルコース実験を除く)、培養管中30℃で3日間振盪した。100μLの培養物のアリコートを遠沈した。200μLの50%DMSOをペレットに添加しながら、等容量のDMSOをこの試料の上清に加えた。試料をボルテックスし、80℃で15分間加熱し、遠心分離し、ステビオール配糖体含量をLC-MSにより分析した。LC-MS分析により、S. cerevisiaeにおける、グルコースまたはステビオールからのRebB、RebE、およびズルコシドAのin vivoでの生産が確認された。例えば
図2Aおよび2B参照。高濃度のステビオール配糖体が、ステビオール供給後に観察された(クロマトグラムによる判定)。
【0261】
EUGT11を用いたRebF経路中間体の特徴付け
UGT91D2eとEUGT11のキシロシル化特性を、in vitroで比較した。糖供与体としてUDP-キシロースを使用することにより、UGT91D2eは以前に、ステビオール-13-O-モノグルコシドをキシロシル化し、RebF生合成における重要な中間体を形成することが示された(公開番号WO/2011/153378)。EUGT11とUGT91D2eを用いた同様のin vitro実験により、これらのUGTはルブソシドをキシロシル化可能であることが示されている。UGT91D2eを用いる場合、LC-MS分析は、2つのグルコース分子および1つのキシロースのステビオールに対応するm/z比を有する新たなピークを示す。
図26を参照。保持時間のシフトにより、このピークは、13-O-グルコース上でキシロシル化されたルブソシドに対応すると考えられている。EUGT11を用いる場合、LC-MS分析は、保持時間3.99および4.39分において、2つのグルコースと1つのキシロースのステビオールに対応するm/z比を有する、同様の大きさの2つの新しいピークを示す。これらの生成物は、13-O-グルコースまたは19-O-グルコースの2つの位置のどちらかの上でキシロシル化されたルブソシドに対応する可能性が高い。
【0262】
グルコースからのRebFの生産
RebFのin vivo生産には、ArabidopsisからのUGD1(UDP-グルコースデヒドロゲナーゼ)およびUSX3(UDP-グルクロン酸デカルボキシラーゼ)のクローニングが、UDP-キシロースの生産のために必要である。UGD1とUXS3を、2つの発現カセットを含むP425-GPD由来の高コピー(2μ)ベクターに挿入し、強力な構成的プロモーター(それぞれTPI1とGPD1)から発現させた。プラスミドは、RebA生産株のEFSC2763(例21に記載)に形質転換し、選択培地(SC-leu)で3日間培養した。LC-MSの結果は明らかに、保持時間4.13分において3つのグルコースおよび1つのキシロースのステビオールに対応するm/z比を有する新たなピークの出現を示し、これはRebFとして同定され(商業的なRebF規格に基づく)、および2つのグルコースおよび1つのキシロースのステビオールに対応するm/z比を有する、別の新たなピーク(上記)の出現も示し、UGT91D2eが、in vivoでキシロシル化を行うことが可能であることを示した。これらのピークは、陰性対照においては見られなかった。
【0263】
例24-異種インサートを用いたスクアレン合成酵素(ERG9)下方制御の影響
Saccharomyces cerevisiaeなどの酵母では、メバロン酸経路は、スクアレンへの生合成経路における多くのイソプレノイドリン酸中間体を生成する(
図20参照)。酵母におけるスクアレン合成酵素は、ERG9である。以下のGenBankアクセッション番号を参照:Saccharomyces cerevisiaeのスクアレン合成酵素についてはP29704.2;Schizosaccharomyces pombeのスクアレン合成酵素についてはP36596;Yarrowia lipolyticaのスクアレン合成酵素についてはQ9Y753;Candida glabrataのスクアレン合成酵素についてはQ9HGZ6;Ashbya gossypiiのスクアレン合成酵素についてはQ752X9;Cyberlindnera jadiniiのスクアレン合成酵素についてはO74165;Candida albicansのスクアレン合成酵素についてはP78589;Saccharomyces cerevisiaeのラノステロール合成酵素についてはP38604;ホモサピエンスのスクアレン合成酵素についてはP37268;Mus musculusのスクアレン合成酵素についてはP53798;およびRattus norvegicusのスクアレン合成酵素についてはQ02769。
図25を参照(配列番号192~202)。
【0264】
ERG9遺伝子の5’UTR中のステムループ構造の導入
野生型ERG9プロモーター領域を、相同組換えによりCYC1プロモーター配列および5’UTR配列に置き換えた。5’UTR領域は、ステムループ構造を形成することができる配列を含んでいる。配列番号181~183を参照。配列番号184を使用することもできる。
配列番号181(異種インサート1):TGAATTCGTTAACGAATTC
配列番号182(異種インサート2):TGAATTCGTTAACGAACTC
配列番号183(異種インサート3):TGAATTCGTTAACGAAGTC
配列番号184(異種インサート4):TGAATTCGTTAACGAAATT
特定のメカニズムに束縛されることなく、ステムループは、AUGに対する5’-3’指向リボソームスキャンを部分的にブロックし、転写物の翻訳を減らすことができる。異なる度合の塩基対を有するステムループを試験して、酵母株の増殖に影響を与えることなしにFPPのレベルを高めるのに十分な程度まで、ERG9転写物の翻訳を低減するステムループを見出した。
【0265】
ERG9プロモーター上流配列を含むDNA断片(相同組換えのため)、ヌーセオスリシンに対する耐性を付与する遺伝子(NATR)の発現カセット、CYC1プロモーター(配列番号185、
図21)、ステムループ構造を有する5’UTR配列、およびERG9のORF配列(相同組換えのため)を、PCRにより生成した。CYC1プロモーターまたはKEX2プロモーター(配列番号186)のいずれかを含むがステムループを含まないDNA断片も、対照として生成した。組換えのための隣接ERG9配列およびステムループ構造を、PCRオリゴを介して導入した。相同組換えのためのコンストラクトの概要を
図22に示す。DNA断片を、S.cerevisiaeの宿主株に形質転換し、これを次にヌーセオスリシン含有の増殖プレート上で選択した。ネイティブERG9プロモーターのCYC1プロモーターへの成功した交換とステムループ含有5’UTR配列とを有するクローンを同定した。ステムループ領域の概要と配列を
図23に示す。5%と同定された配列は、配列番号181を有する異種インサートに対応し、20%と同定された配列は、配列番号182を有する異種インサートに対応し、および50%と同定された配列は、配列番号183を有する異種インサートに対応する。
【0266】
FPP蓄積の評価(増大効果)
アモルファ-4,11-ジエン合成酵素(ADS)遺伝子は、植物Artemisia annuaにおいて、1つのFPP分子をアモルファ-4,11-ジエンに変化させる化学反応を触媒する。遺伝子はS.cerevisiaeにおいて機能的および効率的であり、ERG9遺伝子の異種の5’UTRに導入されたステムループ構造を有する菌株におけるFPPの蓄積を、間接的に評価するために使用することができる。ADSをコードするS.cerevisiaeコドン最適化核酸(GenBankアクセッション番号AAF61439)を、PGK1プロモーターの制御下で、マルチコピープラスミド(2μ)にクローニングし、野生型に形質転換し、S.cerevisiae株を操作した。Ro et al. 2006. Nature 440(7086):940-943;Paradise et al. Biotechnol Bioeng. 2008 Jun 1;100(2):371-8;Newman et al. Biotechnol Bioeng 95(4):684-691)に記載されているようにして、アモルファ-4,11-ジエンの生産を測定し、標準化合物であるカリオフィレンと比較した。
【0267】
化学物質
ドデカンおよびカリオフィレンは、Sigma-Aldrich(St.Louis, MO)から購入した。完全合成(SC)培地の配合のための完全サプリメント混合物は、Formedium(英国)から購入した。他のすべての化学物質はSigma-Aldrichから購入した。
酵母培養
操作された酵母株は、ウラシルを除いた2%グルコースのSCで増殖させた。培養物を30℃で一晩増殖させ、次いで25mlのSC培地を含む250mLの振盪フラスコ中で主培養物に植菌するために用いて、600nmで0.1の光学密度まで増殖させた。主培養物を、30℃で72時間増殖させた。非常に低濃度のアモルファジエンは水性培養物から揮発性であるため、2.5mlのドデカンを各培養フラスコに添加して、生産されたアモルファジエンを捕捉して保持した。10μlのドデカン層をサンプルし、GC-MSによる定量のために酢酸エチル中で100倍に希釈した。
【0268】
アモルファジエンのGC-MS分析
GC-MSを用いて、酵母培養物からのアモルファジエンの生産を測定した。試料は以下のような方法を用いて分析した:使用したGCオーブン温度プログラムは、80℃で2分、次に160℃まで30℃/分で、次に170℃まで3℃/分で、最後に300℃まで30℃/分で上昇、および2分間の最終の保持であった。インジェクタとMS四重極検出器の温度は、それぞれ250℃および150℃であった。1μlをスプリットレスモードで注入した。MSは、フルスキャンモードで操作した。総イオンを用いたカリオフィレン標準曲線を用いて、(-)-tran-カリオフィレン当量におけるアモルファジエン濃度を算出した。
異なるプロモーターコンストラクトを含む異なる株の分析は、配列番号181のクレオチド配列を有する異種インサートを用いた場合に、インサートなしまたは配列番号182および183のクレオチド配列を有するインサートを用いた場合と比較して、アモルファジエンの生産の増加(2.5x)を示した。
図24参照。配列番号181に記載の異種インサートは、最も安定な二次構造を有する。比較のために、非修飾ERG9を有する野生型酵母も分析し(
図24:CTRL-ADS)、この株は、さらに低いアモルファジエンの生産を示した。逆に、常に弱いプロモーターScKex2を含むコンストラクトは、より高いアモルファジエンの生産を示した(6x)。
【0269】
例25-スクアレン合成酵素(ERG9)下方制御およびGGPPS過剰発現のGGPP生産に対する影響の解析
GGPP蓄積の評価
S.cerevisiaeは、GGPPS(BTS1)を含む。BTS1に加えて、S.cerevisiaeにおいて機能的かつ効率的ないくつかの異種GGPPS酵素が存在する。機能性GGPPSがS.cerevisiaeで過剰発現されると、これはGGPPの蓄積をもたらし、これはS.cerevisiae酵素のDPP1およびLPP1によってゲラニルゲラニオール(GGOH)に変換され得る。GGOHは、部分的に酵母培養培地に輸送される。GGOHはGC-MSによって測定することができ、その蓄積は、GGPPを基質として使用する酵素が利用可能なGGPPの潜在的プールを評価するために、間接的に用いることができる。
4つの異なるGGPPS(GGPPS-1(S.acidicaldarius、表7参照)、GGPPS-2(A. nidulans、
図25、配列番号203)、GGPPS-3(S.cerevisiae、BTS1、
図25、配列番号167)、およびGGPPS-4(M. musculus、表7参照))を評価した。GGPPS-1、GGPPS-2、およびGGPPS-4をコードするヌクレオチド配列は、S.cerevisiaeコドン最適化した。GGPPSポリペプチドをコードする全ての核酸は、PGK1プロモーターの制御下でマルチコピープラスミド(2μ)にクローニングし、2つの異なるERG9下方制御株、KEX2-ERG9およびCYC1(5%)-ERG9に形質転換した(例24参照)。
【0270】
操作された酵母株は、ウラシルを除いた2%グルコースのSCで増殖させた。完全合成(SC)培地の配合のための完全サプリメント混合物は、Formedium(英国)から購入した。他のすべての化学物質はSigma-Aldrich (St.Louis, MO)から購入した。全ての光学濃度の測定は、600nmのODで行った。培養物を30℃で一晩増殖させ、25mlのSC培地を含有する250mlのバッフルなしの培養フラスコに、0.1のOD600で植菌するために使用した。主培養物を30℃で72時間増殖させた。
GGOHの蓄積を測定するために、酵母細胞(ペレット)および酵母培養培地(上清)を別々に抽出し、GC-MSによる分析の前に合わせた。上清は、ヘキサンで1:1の比率で抽出した。ペレットは、最初に20%のKOHと50%のエタノールを含む溶液中で鹸化を行い、溶解した細胞は、最終的にヘキサンで1:1の比率で抽出した。使用したGCオーブン温度プログラムは、80℃で2分、次に160℃まで30℃/分で、次に170℃まで3℃/分で、最後に300℃まで30℃/分で上昇、および2分間の保持であった。インジェクタおよびMS四重極検出器の温度はそれぞれ、250℃および150℃であった。2μlをスプリットレスモードで注入した。MSは、フルスキャンモードで操作した。
GGPPSが、CYC1(5%)-ERG9株またはKEX2-ERG9株において過剰発現された場合、全4種のGGPPSポリペプチドにおいて、GGPPSが発現されなかった対照と比較して、GGOH(GGPP)生産の大幅な増加が観察された。注目すべきことには、CYC1(5%)-ERG9株は、KEX2-ERG9株よりも2~4倍高いGGOH(GGPP)の蓄積を示した。結果を
図26に示す。
【0271】
その他の態様
本発明をその詳細な説明と併せて説明してきたが、前の記述は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を説明することを意図し、限定を意図するものではないことが理解されるべきである。他の側面、利点、および改変は以下の特許請求の範囲内である。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-05-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的ステビオール配糖体または標的ステビオール配糖体組成物を生産するためのin vitroの方法であって、13-O-グルコース、19-O-グルコース、または13-O-グルコースおよび19-O-グルコースの両方を有する前駆体ステビオール配糖体、および/またはそれらの混合物、前駆体ステビオール配糖体の13-O-グルコース、19-O-グルコース、または13-O-グルコースおよび19-O-グルコースの両方のC2’をベータ1,2グリコシル化することができる第1の組換えポリペプチド、および1以上のUDP-糖を、反応混合物に添加すること、ならびにそれにより標的ステビオール配糖体または標的ステビオール配糖体組成物を生産することを含み;
第1の5’-UDPグリコシルトランスフェラーゼポリペプチドは、配列番号152に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する、
前記方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
(a)ステビオール13-O-モノシドをラムノシル化することができるポリペプチド;
(b)ステビオールまたは前駆体ステビオール配糖体をそのC-19カルボキシル基でグリコシル化することができるポリペプチド;
(c)ステビオールまたは前駆体ステビオール配糖体をそのC-13ヒドロキシル基でグリコシル化することができるポリペプチド;
(d)前駆体ステビオール配糖体の13-O-グルコース、19-O-グルコース、または13-O-グルコースおよび19-O-グルコースの両方のC3’をベータ1,3グリコシル化することができるポリペプチド;および/または
(e)前駆体ステビオール配糖体の13-O-グルコース、19-O-グルコース、または13-O-グルコースおよび19-O-グルコースの両方のC2’をベータ1,2グリコシル化することができる第2のポリペプチド
のうちの1つ以上を、反応混合物に添加することをさらに含み;
ここで、少なくとも1つのポリペプチドは、組換えポリペプチドである、
前記方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、
(a)ステビオール13-O-モノシドをラムノシル化することができるポリペプチドが、配列番号150に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するポリペプチドを含む;
(b)ステビオールまたは前駆体ステビオール配糖体をそのC-19カルボキシル基でグリコシル化することができるポリペプチドが、配列番号1に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するポリペプチドを含む;
(c)ステビオールまたは前駆体ステビオール配糖体をそのC-13ヒドロキシル基でグリコシル化することができるポリペプチドが、
(i)配列番号3に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するポリペプチド;もしくは
(ii)配列番号3のK9E、K10R、V13F、F15L、Q21H、M27V、H60D、A65S、E71Q、I87F、L91P、K220T、R243W、T270M、T270R、Q289H、Y298C、L334S、K350T、H368R、A389V、I394V、P397S、E418V、G420R、L431P、G440D、H441N、R444G、およびM471Tの1以上のアミノ酸置換を有するポリペプチド
を含む;
(d)前駆体ステビオール配糖体の13-O-グルコース、19-O-グルコース、または13-O-グルコースおよび19-O-グルコースの両方のC3’をベータ1,3グリコシル化することができるポリペプチドが、
(i)配列番号7に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するポリペプチド;もしくは
(ii)配列番号7のM29I、V74E、V87G、L91P、G116E、A123T、Q125A、I126L、T130A、V145M、C192S、S193A、F194Y、M196N、K198Q、K199I、Y200L、Y203I、F204L、E205G、N206K、I207M、T208I、P266Q、S273P、R274S、G284T、T285S、L330V、G331A、およびL346Iの1以上のアミノ酸置換を有するポリペプチド
を含む;および/または
(e)前駆体ステビオール配糖体の13-O-グルコース、19-O-グルコース、または13-O-グルコースおよび19-O-グルコースの両方のC2’をベータ1,2グリコシル化することができる第2のポリペプチドが、
(i)配列番号5に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するポリペプチド;
(ii)配列番号5の残基206でアルギニン、残基207でシステイン、および残基343でアルギニンを有するポリペプチド;
(iii)配列番号5の残基30でチロシンまたはフェニルアラニン、残基93でプロリンまたはグルタミン、残基99でセリンまたはバリン、残基122でチロシンまたはフェニルアラニン、残基140でヒスチジンまたはチロシン、残基142でセリンまたはシステイン、残基148でアラニンまたはスレオニン、残基152でメチオニン、残基153でアラニン、残基156でアラニンまたはセリン、残基162でグリシン、残基195でロイシンまたはメチオニン、残基196でグルタミン酸、残基199でリジンまたはグルタミン酸、残基211でロイシンまたはメチオニン、残基213でロイシン、残基221でセリンまたはフェニルアラニン、残基253でバリンまたはイソロイシン、残基286でバリンまたはアラニン、残基427でリジンまたはアスパラギン、残基438でアラニン、および残基462でアラニンまたはスレオニンを有するポリペプチド;
(iv)配列番号5の残基211でメチオニンおよび残基286でアラニンを有するポリペプチド;もしくは
(v)配列番号10、12、76、78または95に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド
を含む、
前記方法。
【請求項4】
1以上のUDP-糖が、UDP-グルコース、UDP-ラムノース、および/またはUDP-キシロースを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
標的ステビオール配糖体が、ステビオール-13-O-グルコシド、ステビオール-1,2-ビオシド、ステビオール-1,3-ビオシド、ステビオール-19-O-グルコシド、ステビオシド、1,3ステビオシド、ルブソシド、レバウジオシドA、レバウジオシドB、レバウジオシドC、レバウジオシドD、レバウジオシドE、レバウジオシドF、ズルコシドA、ステビオールモノグルコシド、ステビオールラムノシド、またはステビオールキシロシドを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
標的ステビオール配糖体組成物が、ステビオール-13-O-グルコシド、ステビオール-1,2-ビオシド、ステビオール-1,3-ビオシド、ステビオール-19-O-グルコシド、ステビオシド、1,3ステビオシド、ルブソシド、レバウジオシドA、レバウジオシドB、レバウジオシドC、レバウジオシドD、レバウジオシドE、レバウジオシドF、ズルコシドA、ステビオールモノグルコシド、ステビオールラムノシド、および/またはステビオールキシロシドまたはそれらの組み合わせを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、
(a)前駆体ステビオール配糖体が、ステビオール-13-O-グルコシド、ステビオール-19-O-グルコシド、ルブソシド、ステビオール-1,2-ビオシド、ステビオシド、またはレバウジオシドB、および/またはそれらの混合物であり、
1以上のUDP-糖が、UDP-グルコースであり、
ステビオール、前駆体ステビオール配糖体、および/またはそれらの混合物が、
前駆体ステビオール配糖体の13-O-グルコース、19-O-グルコース、または13-O-グルコースおよび19-O-グルコースの両方のC2’のベータ1,2グリコシル化をすることができ、および配列番号152に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するポリペプチド、ならびに
ステビオールまたは前駆体ステビオール配糖体をそのC-13ヒドロキシル基でグリコシル化することができるポリペプチド、ステビオールまたは前駆体ステビオール配糖体をそのC-19カルボキシル基でグリコシル化することができるポリペプチド、前駆体ステビオール配糖体の13-O-グルコース、19-O-グルコース、または13-O-グルコースおよび19-O-グルコースの両方のC2’のベータ1,2グリコシル化をすることができる第2のポリペプチド、および、前駆体ステビオール配糖体の13-O-グルコース、19-O-グルコース、または13-O-グルコースおよび19-O-グルコースの両方のC3’のベータ1,3グリコシル化をすることができるポリペプチドのうちの1つ以上
と接触され;および
レバウジオシドAが、1以上のUDP-グルコースから、ステビオール、前駆体ステビオール配糖体、および/またはそれらの混合物への1以上の糖部分の転移の際に生産される;または
(b)前駆体ステビオール配糖体が、ステビオール-13-O-グルコシドまたはステビオール-1,2-ビオシド、および/またはそれらの混合物であり、
1以上のUDP-糖が、UDP-グルコースであり、
ステビオール、前駆体ステビオール配糖体、および/またはそれらの混合物が、
前駆体ステビオール配糖体の13-O-グルコース、19-O-グルコース、または13-O-グルコースおよび19-O-グルコースの両方のC2’のベータ1,2グリコシル化をすることができ、および配列番号152に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するポリペプチド、ならびに
ステビオールまたは前駆体ステビオール配糖体をそのC-13ヒドロキシル基でグリコシル化することができるポリペプチド、前駆体ステビオール配糖体の13-O-グルコース、19-O-グルコース、または13-O-グルコースおよび19-O-グルコースの両方のC2’のベータ1,2グリコシル化をすることができる第2のポリペプチド、および、前駆体ステビオール配糖体の13-O-グルコース、19-O-グルコース、または13-O-グルコースおよび19-O-グルコースの両方のC3’のベータ1,3グリコシル化をすることができるポリペプチドのうちの1つ以上
と接触され;および
レバウジオシドBが、1以上のUDP-グルコースから、ステビオール、前駆体ステビオール配糖体、および/またはそれらの混合物への1以上の糖部分の転移の際に生産される;または
(c)前駆体ステビオール配糖体が、ステビオール-13-O-グルコシド、ステビオール-19-O-グルコシド、ルブソシド、ステビオール-1,2-ビオシド、またはステビオシド、および/またはそれらの混合物であり、
1以上のUDP-糖が、UDP-グルコースであり、
ステビオール、前駆体ステビオール配糖体、および/またはそれらの混合物が、
前駆体ステビオール配糖体の13-O-グルコース、19-O-グルコース、または13-O-グルコースおよび19-O-グルコースの両方のC2’のベータ1,2グリコシル化をすることができ、および配列番号152に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するポリペプチド、ならびに
ステビオールまたは前駆体ステビオール配糖体をそのC-13ヒドロキシル基でグリコシル化することができるポリペプチド、ステビオールまたは前駆体ステビオール配糖体をそのC-19カルボキシル基でグリコシル化することができるポリペプチド、前駆体ステビオール配糖体の13-O-グルコース、19-O-グルコース、または13-O-グルコースおよび19-O-グルコースの両方のC2’のベータ1,2グリコシル化をすることができる第2のポリペプチド、および、前駆体ステビオール配糖体の13-O-グルコース、19-O-グルコース、または13-O-グルコースおよび19-O-グルコースの両方のC3’のベータ1,3グリコシル化をすることができるポリペプチドのうちの1つ以上
と接触され;および
レバウジオシドEが、1以上のUDP-グルコースから、ステビオール、前駆体ステビオール配糖体、および/またはそれらの混合物への1以上の糖部分の転移の際に生産される;または
(d)前駆体ステビオール配糖体が、ステビオール-13-O-グルコシド、ステビオール-19-O-グルコシド、ルブソシド、ステビオール-1,2-ビオシド、ステビオシド、レバウジオシドA、レバウジオシドB、またはレバウジオシドE、および/またはそれらの混合物であり、
1以上のUDP-糖が、UDP-グルコースであり、
ステビオール、前駆体ステビオール配糖体、および/またはそれらの混合物が、
前駆体ステビオール配糖体の13-O-グルコース、19-O-グルコース、または13-O-グルコースおよび19-O-グルコースの両方のC2’のベータ1,2グリコシル化をすることができ、および配列番号152に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するポリペプチド、ならびに
ステビオールまたは前駆体ステビオール配糖体をそのC-13ヒドロキシル基でグリコシル化することができるポリペプチド、ステビオールまたは前駆体ステビオール配糖体をそのC-19カルボキシル基でグリコシル化することができるポリペプチド、前駆体ステビオール配糖体の13-O-グルコース、19-O-グルコース、または13-O-グルコースおよび19-O-グルコースの両方のC2’のベータ1,2グリコシル化をすることができる第2のポリペプチド、および、前駆体ステビオール配糖体の13-O-グルコース、19-O-グルコース、または13-O-グルコースおよび19-O-グルコースの両方のC3’のベータ1,3グリコシル化をすることができるポリペプチドの1つ以上
と接触され;および
レバウジオシドDが、1以上のUDP-グルコースから、ステビオール、前駆体ステビオール配糖体、および/またはそれらの混合物への1以上の糖部分の転移の際に生産される;または
(e)前駆体ステビオール配糖体が、ステビオール-13-O-グルコシド、ステビオール-19-O-グルコシド、ルブソシド、またはステビオール-1,2-ラムノビオシド、および/またはそれらの混合物であり、
1以上のUDP-糖が、UDP-グルコースおよびUDP-ラムノースであり、
ステビオール、前駆体ステビオール配糖体、および/またはそれらの混合物が、
前駆体ステビオール配糖体の13-O-グルコース、19-O-グルコース、または13-O-グルコースおよび19-O-グルコースの両方のC2’のベータ1,2グリコシル化をすることができ、および配列番号152に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するポリペプチド、ならびに
ステビオールまたは前駆体ステビオール配糖体をそのC-13ヒドロキシル基でグリコシル化することができるポリペプチド、ステビオールまたは前駆体ステビオール配糖体をそのC-19カルボキシル基でグリコシル化することができるポリペプチド、前駆体ステビオール配糖体の13-O-グルコース、19-O-グルコース、または13-O-グルコースおよび19-O-グルコースの両方のC2’のベータ1,2グリコシル化をすることができる第2のポリペプチド、および、ステビオール13-O-モノシドをラムノシル化することができるポリペプチドの1つ以上
と接触され;および
ズルコシドAが、1以上のUDP-グルコースおよびUDP-ラムノースから、ステビオール、前駆体ステビオール配糖体、および/またはそれらの混合物への1以上の糖部分の転移の際に生産される;または
(f)前駆体ステビオール配糖体が、ステビオール-13-O-グルコシド、ステビオール-19-O-グルコシド、ルブソシド、ステビオール-1,2-ラムノビオシド、またはズルコシドA、および/またはそれらの混合物であり、
1以上のUDP-糖が、UDP-グルコースおよびUDP-ラムノースであり、
ステビオール、前駆体ステビオール配糖体、および/またはそれらの混合物が、
前駆体ステビオール配糖体の13-O-グルコース、19-O-グルコース、または13-O-グルコースおよび19-O-グルコースの両方のC2’のベータ1,2グリコシル化をすることができ、および配列番号152に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するポリペプチド、ならびに
ステビオールまたは前駆体ステビオール配糖体をそのC-13ヒドロキシル基でグリコシル化することができるポリペプチド、ステビオールまたは前駆体ステビオール配糖体をそのC-19カルボキシル基でグリコシル化することができるポリペプチド、前駆体ステビオール配糖体の13-O-グルコース、19-O-グルコース、または13-O-グルコースおよび19-O-グルコースの両方のC2’のベータ1,2グリコシル化をすることができる第2のポリペプチド、ステビオール13-O-モノシドをラムノシル化することができるポリペプチド、および、前駆体ステビオール配糖体の13-O-グルコース、19-O-グルコース、または13-O-グルコースおよび19-O-グルコースの両方のC3’のベータ1,3グリコシル化をすることができるポリペプチドの1つ以上
と接触され;および
レバウジオシドCが、1以上のUDP-グルコースおよびUDP-ラムノースから、ステビオール、前駆体ステビオール配糖体、および/またはそれらの混合物への1以上の糖部分の転移の際に生産される;または
(g)前駆体ステビオール配糖体が、ステビオール-13-O-グルコシド、ステビオール-19-O-グルコシド、ルブソシド、1,2-ステビオールキシロシド、またはステビオール-1,2-キシロビオシド、および/またはそれらの混合物であり、
1以上のUDP-糖が、UDP-グルコースおよびUDP-キシロースであり、
ステビオール、前駆体ステビオール配糖体、および/またはそれらの混合物が、
前駆体ステビオール配糖体の13-O-グルコース、19-O-グルコース、または13-O-グルコースおよび19-O-グルコースの両方のC2’のベータ1,2グリコシル化をすることができ、および配列番号152に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するポリペプチド、ならびに
ステビオールまたは前駆体ステビオール配糖体をそのC-13ヒドロキシル基でグリコシル化することができるポリペプチド、ステビオールまたは前駆体ステビオール配糖体をそのC-19カルボキシル基でグリコシル化することができるポリペプチド、前駆体ステビオール配糖体の13-O-グルコース、19-O-グルコース、または13-O-グルコースおよび19-O-グルコースの両方のC2’のベータ1,2グリコシル化をすることができる第2のポリペプチド、前駆体ステビオール配糖体の13-O-グルコース、19-O-グルコース、または13-O-グルコースおよび19-O-グルコースの両方のC3’のベータ1,3グリコシル化をすることができるポリペプチド、UDP-グルコースデヒドロゲナーゼ(UGD1)ポリペプチド、および/またはUDP-グルクロン酸デカルボキシラーゼ(UXS3)の1つ以上
と接触され;および
レバウジオシドFが、1以上のUDP-グルコースおよびUDP-キシロースから、ステビオール、前駆体ステビオール配糖体、および/またはそれらの混合物への1以上の糖部分の転移の際に生産される;または
(h)前駆体ステビオール配糖体がステビオール-13-O-グルコシドであり、
1以上のUDP-糖が、UDP-グルコースであり、
ステビオール、前駆体ステビオール配糖体、および/またはそれらの混合物が、
前駆体ステビオール配糖体の13-O-グルコース、19-O-グルコース、または13-O-グルコースおよび19-O-グルコースの両方のC2’のベータ1,2グリコシル化をすることができ、および配列番号152に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するポリペプチド、ならびに
ステビオールまたは前駆体ステビオール配糖体をそのC-13ヒドロキシル基でグリコシル化することができるポリペプチド、ステビオールまたは前駆体ステビオール配糖体をそのC-19カルボキシル基でグリコシル化することができるポリペプチド、および、前駆体ステビオール配糖体の13-O-グルコース、19-O-グルコース、または13-O-グルコースおよび19-O-グルコースの両方のC2’のベータ1,2グリコシル化をすることができるポリペプチドの1つ以上
と接触され;および
ステビオール-1,2-ビオシドが、1以上のUDP-グルコースから、ステビオール、前駆体ステビオール配糖体、および/またはそれらの混合物への1以上の糖部分の転移の際に生産される;または
(i)前駆体ステビオール配糖体がステビオール-13-O-グルコシド、ステビオール-19-O-グルコシド、ステビオール-1,2-ビオシド、またはルブソシド、および/またはそれらの混合物であり、
1以上のUDP-糖が、UDP-グルコースであり、
ステビオール、前駆体ステビオール配糖体、および/またはそれらの混合物が、
前駆体ステビオール配糖体の13-O-グルコース、19-O-グルコース、または13-O-グルコースおよび19-O-グルコースの両方のC2’のベータ1,2グリコシル化をすることができ、および配列番号152に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するポリペプチド、ならびに
ステビオールまたは前駆体ステビオール配糖体をそのC-13ヒドロキシル基でグリコシル化することができるポリペプチド、ステビオールまたは前駆体ステビオール配糖体をそのC-19カルボキシル基でグリコシル化することができるポリペプチド、前駆体ステビオール配糖体の13-O-グルコース、19-O-グルコース、または13-O-グルコースおよび19-O-グルコースの両方のC2’のベータ1,2グリコシル化をすることができる第2のポリペプチド、および、前駆体ステビオール配糖体の13-O-グルコース、19-O-グルコース、または13-O-グルコースおよび19-O-グルコースの両方のC3’のベータ1,3グリコシル化をすることができるポリペプチドの1つ以上
と接触され;および
ステビオシドが、1以上のUDP-グルコースから、ステビオール、前駆体ステビオール配糖体、および/またはそれらの混合物への1以上の糖部分の転移の際に生産される、
前記方法。
【請求項8】
1以上のUDP-糖の再生のための無細胞系を添加することをさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
生産された標的ステビオール配糖体または標的ステビオール配糖体組成物を反応混合物から単離することをさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法であって、
単離するステップが、反応混合物の固相から反応混合物の液相を分離して、生産された標的ステビオール配糖体または標的ステビオール配糖体組成物を含む上清を得ること、および
(a)生産された標的ステビオール配糖体または標的ステビオール配糖体組成物の少なくとも一部を得るために、上清を1以上の吸着樹脂と接触させること;または
(b)生産された標的ステビオール配糖体または標的ステビオール配糖体組成物の少なくとも一部を得るために、上清を1以上のイオン交換クロマトグラフィーカラムまたは逆相クロマトグラフィーカラムと接触させること;または
(c)生産された標的ステビオール配糖体または標的ステビオール配糖体組成物を結晶化または抽出すること;
これにより、生産された標的ステビオール配糖体または標的ステビオール配糖体組成物を単離すること
を含む、前記方法。
【請求項10】
生産された標的ステビオール配糖体または標的ステビオール配糖体組成物を反応混合物から回収することをさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法であって、回収された標的ステビオール配糖体または標的ステビオール配糖体組成物は、植物由来のステビア抽出物から得られるステビオール配糖体組成物と比較して、低下したレベルのステビア植物由来成分を有する、前記方法。
【請求項11】
(a)前駆体ステビオール配糖体の13-O-グルコース、19-O-グルコース、または13-O-グルコースおよび19-O-グルコースの両方のC2’のベータ1,2グリコシル化をすることができ、および配列番号152に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する組換えポリペプチド;
(b)標的ステビオール配糖体または標的ステビオール配糖体組成物;
(c)UDP-グルコース、UDP-ラムノース、および/またはUDP-キシロース;および
(d)反応緩衝液および/または塩
を含む、反応混合物。
【外国語明細書】