(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112824
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】組み換え修飾された繊維芽細胞成長因子及びその治療用途
(51)【国際特許分類】
C07K 14/50 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
C07K14/50 ZNA
C07K14/50
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024075396
(22)【出願日】2024-05-07
(62)【分割の表示】P 2020511867の分割
【原出願日】2018-05-04
(31)【優先権主張番号】62/502,529
(32)【優先日】2017-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/502,540
(32)【優先日】2017-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/584,624
(32)【優先日】2017-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYREX
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】519393956
【氏名又は名称】トレフォイル セラピューティクス,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エベリス,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ジェンキンス-エベリス,ジェニファー
(72)【発明者】
【氏名】サブラマニアム,アムサカナン
(72)【発明者】
【氏名】ブラッドショー,ラルフ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】修飾された繊維芽細胞成長因子(FGF)ポリペプチド、前記修飾されたFGFポリペプチドを含む医薬組成物及び薬物、並びに、FGFの投与から利益を得る疾病を処置又は予防するための前記修飾されたFGFポリペプチドの使用方法を提供する。
【解決手段】組み換え修飾FGF-1ポリペプチドであって、1つ以上の突然変異を伴う特定のアミノ酸配列を含み、該アミノ酸配列の第1の残基の上流に位置するN末端メチオニン残基を含む、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドが提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組み換え修飾FGF-1ポリペプチドであって、1つ以上の突然変異を伴うSEQ ID NO:1として明記される配列を含み、SEQ ID NO:1の第1の残基の上流に位置するN末端メチオニン残基を含む、組み換え修飾FGF-1ポリペプチド。
【請求項2】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは更に、前記N末端メチオニン残基とSEQ ID NO:1の前記第1の残基との間に位置する伸長ペプチドを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の組み換え修飾FGF-1ポリペプチド。
【請求項3】
前記伸長ペプチドは、SEQ ID NO:3の1つ以上のアミノ酸残基を含む、ことを特徴とする請求項2に記載の組み換え修飾FGF-1ポリペプチド。
【請求項4】
前記伸長ペプチドは、SEQ ID NO:4-8に明記される配列の何れか1つを含む、ことを特徴とする請求項3に記載の組み換え修飾FGF-1ポリペプチド。
【請求項5】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、その成熟した形態である、ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1つに記載の組み換え修飾FGF-1ポリペプチド。
【請求項6】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:14-18から選択される配列を含む、ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1つに記載の組み換え修飾FGF-1ポリペプチド。
【請求項7】
組み換え修飾FGF-1ポリペプチドであって、1つ以上の突然変異を伴うSEQ ID NO:1として明記される配列を含み、SEQ ID NO:1の第1の残基の上流に位置する伸長ペプチドを更に含む、組み換え修飾FGF-1ポリペプチド。
【請求項8】
前記伸長ペプチドは、SEQ ID NO:3の1つ以上のアミノ酸を含む、ことを特徴とする請求項7に記載の組み換え修飾FGF-1ポリペプチド。
【請求項9】
前記伸長ペプチドは、SEQ ID NO:4-8に明記されるような配列の何れか1つを含む、ことを特徴とする請求項8に記載の組み換え修飾FGF-1ポリペプチド。
【請求項10】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、その成熟した形態である、ことを特徴とする請求項9に記載の組み換え修飾FGF-1ポリペプチド。
【請求項11】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:24-28から選択される配列を含む、ことを特徴とする請求項7乃至10の何れか1つに記載の組み換え修飾FGF-1ポリペプチド。
【請求項12】
組み換え修飾FGF-1ポリペプチドであって、1つ以上の突然変異を伴うSEQ ID NO:1として明記される配列を含み、SEQ ID NO:1の最初の5つの残基の1つ以上のトランケーションを更に含み、且つ、前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドのN末端に伸長ペプチドを含む、組み換え修飾FGF-1ポリペプチド。
【請求項13】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:93-117から選択される配列を含む、ことを特徴とする請求項12に記載の組み換え修飾FGF-1ポリペプチド。
【請求項14】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、前記伸長ペプチドのメチオニン残基N末端を更に含む、ことを特徴とする請求項12に記載の組み換え修飾FGF-1ポリペプチド。
【請求項15】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、その成熟した形態である、ことを特徴とする請求項14に記載の組み換え修飾FGF-1ポリペプチド。
【請求項16】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:118-141から選択される配列を含む、ことを特徴とする請求項15に記載の組み換え修飾FGF-1ポリペプチド。
【請求項17】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、136のアミノ酸を含む形態で発現される、ことを特徴とする請求項1乃至16の何れか1つに記載の組み換え修飾FGF-1ポリペプチド。
【請求項18】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、その成熟した形態で少なくとも141のアミノ酸を含む、ことを特徴とする請求項1乃至16の何れか1つに記載の前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチド。
【請求項19】
SEQ ID NO:1の位置67に突然変異を含む、組み換え修飾FGF-1ポリペプチド。
【請求項20】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは更に、SEQ ID NO:1の最初の5つの残基の1つ以上のトランケーションを更に含む、ことを特徴とする請求項19に記載の組み換え修飾FGF-1ポリペプチド。
【請求項21】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:146-149から選択される配列を含む、ことを特徴とする請求項20に記載の組み換え修飾FGF-1ポリペプチド。
【請求項22】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、伸長ペプチドを更に含む、ことを特徴とする請求項20に記載の組み換え修飾FGF-1ポリペプチド。
【請求項23】
前記伸長ペプチドは、SEQ ID NO:3の1つ以上のアミノ酸残基を含む、ことを特徴とする請求項22に記載の組み換え修飾FGF-1ポリペプチド。
【請求項24】
前記伸長ペプチドのフラグメントは、SEQ ID NO:4-8に明記される配列の何れか1つを含む、ことを特徴とする請求項23に記載の組み換え修飾FGF-1ポリペプチド。
【請求項25】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、その成熟した形態である、ことを特徴とする請求項19乃至24の何れか1つに記載の組み換え修飾FGF-1ポリペプチド。
【請求項26】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:174-204から選択される配列を含む、ことを特徴とする請求項25に記載の組み換え修飾FGF-1ポリペプチド。
【請求項27】
SEQ ID NO:2に明記されるような配列を含む、組み換え修飾FGF-1ポリペプチド。
【請求項28】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、その成熟した形態である、ことを特徴とする請求項27に記載の組み換え修飾FGF-1ポリペプチド。
【請求項29】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、Cys16Ser、Ala66Cys、及びCys117Valから成る群から選択された1つ以上の突然変異を含む、ことを特徴とする請求項1、7、12、又は19の何れか1つに記載の組み換え修飾FGF-1ポリペプチド。
【請求項30】
組み換え修飾FGF-1ポリペプチドであって、SEQ ID NO:1の1つ以上の突然変異を含み、該突然変異は、Lys12Val、Cys16Ser、Ala66Cys、Cys117Val、及びPro134Valから成る群から選択され、前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは更に、ペプチドALTEKの少なくとも1つの残基を含む、組み換え修飾FGF-1ポリペプチド。
【請求項31】
以下のSEQ ID NO:1の突然変異:Cys16Ser、Ala66Cys、及びCys117Valを含み、SEQ ID NO:1の第1の残基の上流に位置するメチオニン残基、及びN末端メチオニンとSEQ ID NO:1の位置1との間に位置するペプチドALTEKの少なくとも1つの残基を含む、組み換え修飾FGF-1ポリペプチド。
【請求項32】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、伸長ペプチドにより発現されず、伸長ペプチドを取り除く工程を含まない方法によって産生される、ことを特徴とする請求項1に記載の組み換え修飾FGF-1ポリペプチド。
【請求項33】
請求項1乃至32の何れか1つに記載の組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを含む医薬組成物。
【請求項34】
薬学的に許容可能な担体、賦形剤、又は希釈液を更に含む、ことを特徴とする請求項33に記載の医薬組成物。
【請求項35】
液体眼用製剤である、ことを特徴とする請求項34に記載の医薬組成物。
【請求項36】
前記医薬製剤は、局所的に、微小針により角膜へ、又は前房内に投与される、ことを特徴とする請求項35に記載の医薬組成物。
【請求項37】
組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを産生するための方法であって、該方法は、前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを宿主細胞に発現する工程、及び宿主細胞の細胞質中の発現されたポリペプチドを成熟させる工程を含み、前記組み換え修飾ポリペプチドは、SEQ ID NO:1の1つ以上の突然変異を含み、且つ、SEQ ID NO:1の第1の残基の上流に位置するN末端メチオニン残基により発現される、方法。
【請求項38】
組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを産生するための方法であって、該方法は、前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを宿主細胞に発現する工程、及び宿主細胞の細胞質中の発現されたポリペプチドを成熟させる工程を含み、前記組み換え修飾ポリペプチドは、SEQ ID NO:1の1つ以上の突然変異、N末端残基とSEQ ID NO:1の位置1との間に伸長ペプチドを含み、且つ、N末端メチオニン残基により発現される、方法。
【請求項39】
組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを産生するための方法であって、該方法は、前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを宿主細胞に発現する工程、及び宿主細胞の細胞質中の発現されたポリペプチドを成熟させる工程を含み、前記組み換え修飾ポリペプチドは、SEQ ID NO:1の1つ以上の突然変異、伸長ペプチドのフラグメント、SEQ ID NO:1の最初の5つの残基の1つ以上のトランケーションを含み、且つ、SEQ ID NO:1の第1の残基の上流に位置するN末端メチオニン残基により発現される、方法。
【請求項40】
前記N末端メチオニン残基は前記ポリペプチドの成熟中に保持される、ことを特徴とする請求項37乃至39の何れか1つに記載の方法。
【請求項41】
前記N末端メチオニン残基は、前記ポリペプチドの成熟中に、開裂酵素によってポリペプチドから切断される、ことを特徴とする請求項37乃至39の何れか1つに記載の方法。
【請求項42】
前記開裂酵素はメチオニンアミノペプチダーゼ(metAP)である、ことを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項43】
metAPは細菌metAP、酵母菌metAP、又はヒトmetAPである、ことを特徴とする請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記開裂酵素は細菌metAPである、ことを特徴とする請求項43に記載の方法。
【請求項45】
SEQ ID NO:14又はSEQ ID NO:16に明記されるような配列を含む修飾FGF-1ポリペプチドを発現する工程を含む、ことを特徴とする請求項44に記載の方法。
【請求項46】
SEQ ID NO:2に明記されるような配列を含む修飾FGF-1ポリペプチドを発現する工程を含む、ことを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項47】
SEQ ID NO:2は、宿主細胞の細胞質における成熟後のポリペプチドの配列である、ことを特徴とする請求項46に記載の方法。
【請求項48】
組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを産生するための方法であって、該方法は、前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを宿主細胞に発現する工程、及び宿主細胞の細胞質中の発現されたポリペプチドを成熟する工程を含み、前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドはSEQ ID NO:1の位置67に突然変異を含む、方法。
【請求項49】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは更に、伸長ペプチドのフラグメント、及びSEQ ID NO:1の最初の5つの残基の1つ以上のトランケーションを含み、前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:1の第1の残基の上流に位置するN末端メチオニン残基により発現される、ことを特徴とする請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記方法は、臭化シアンを使用したN末端メチオニン残基の開裂を含む、ことを特徴とする請求項49に記載の方法。
【請求項51】
請求項1乃至32の何れか1つに記載の組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを産生するための方法であって、該方法は、
宿主細胞中に前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを発現し、発現されたポリペプチドを親和性物質にアフィニティータグを介して結合する工程;
前記ポリペプチドを放出するために前記アフィニティータグを切断し、前記ポリペプチドを前記親和性材料から薬剤を使用して溶出する工程
を含む、方法。
【請求項52】
前記アフィニティータグはポリ-ヒスチジン、ポリ-リジン、ポリ-アスパラギン酸、又はポリ-グルタミン酸を含む、ことを特徴とする請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記薬剤は、メタノール、2-プロパノール、又は他のアルコール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトン、又は他の有機溶媒を含む、ことを特徴とする請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記親和性物質はレジンフレームワークである、ことを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記親和性物質はイオン交換樹脂である、ことを特徴とする請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、宿主細胞の細胞質に発現され、且つ、細胞周辺腔へと分泌されない、ことを特徴とする請求項51に記載の方法。
【請求項57】
前記宿主細胞が微生物である、ことを特徴とする請求項56に記載の方法。
【請求項58】
微生物発現系は、E. coli発現系、Caulobacter crescent発現系、及びProteus mirabilis発現系から成る群から選択される、ことを特徴とする請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記微生物発現系はE. coli発現系である、ことを特徴とする請求項58に記載の方法。
【請求項60】
哺乳動物の眼の疾患、障害、又は疾病を処置又は予防する方法であって、請求項1乃至32の何れか1つに記載の医薬組成物を哺乳動物に投与する工程を含む、方法。
【請求項61】
前記眼の疾患、障害、又は疾病は、角膜又は眼の表面の疾患、障害、又は疾病である、ことを特徴とする請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記眼の疾患、障害、又は疾病は、角膜内皮の疾患、障害、又は疾病である、ことを特徴とする請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記角膜内皮の疾患、障害、又は疾病は、フックス角膜内皮ジストロフィー、水疱性角膜症、1型先天性遺伝性角膜内皮ジストロフィー、2型先天性遺伝性角膜内皮ジストロフィー、後部多形性角膜ジストロフィー、又はドライアイ症候群である、ことを特徴とする請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記眼の疾患、障害、又は疾病はフックス角膜内皮ジストロフィーである、ことを特徴とする請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記眼の疾患、障害、又は疾病は、角膜上皮の疾患、障害、又は疾病である、ことを特徴とする請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記角膜上皮の疾患、障害、又は疾病は、ドライアイ症候群、或いは、角膜手術又は移植による角膜上皮組織の損傷である、ことを特徴とする請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記角膜手術は、光屈折角膜切開術(PRK)又はレーザー角膜切削形成術(LASIK)である、ことを特徴とする請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記眼の疾患、障害、又は疾病は、角膜実質の疾患、障害、又は疾病である、ことを特徴とする請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記角膜実質の疾患、障害、又は疾病は、円錐角膜、格子状角膜ジストロフィー、顆粒状角膜変性症、斑状角膜変性症、シュナイダー結晶状角膜ジストロフィー、先天性間質性角膜ジストロフィー、又は斑点角膜ジストロフィーである、ことを特徴とする請求項68に記載の方法。
【請求項70】
哺乳動物に角膜細胞を移植する、或いは細胞移植の成功を向上させる方法であって、該方法は、哺乳動物への角膜細胞の移植の前、間、又は後に、請求項1乃至32の何れか1つに記載の組み換え修飾FGF-1ポリペプチド又は請求項33乃至36の何れか1つに記載の医薬組成物により、移植される角膜細胞を処置する工程を含む、方法。
【請求項71】
組織再生中に瘢痕化を防ぐ方法であって、請求項1乃至32の何れか1つに記載の組み換え修飾FGF-1ポリペプチド又は請求項33乃至36の何れか1つに記載の医薬組成物を投与する工程を含む、方法。
【請求項72】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、線維柱切除を受けた後の哺乳動物に投与される、ことを特徴とする請求項71に記載の方法。
【請求項73】
患者の化学物質又は発疱剤により誘導された損傷を処置又は予防する方法であって、請求項1乃至32の何れか1つに記載の組み換え修飾FGF-1ポリペプチド又は請求項33乃至36の何れか1つに記載の医薬組成物を患者に投与する工程を含む、方法。
【請求項74】
前記化学物質又は発疱剤により誘導された損傷は、眼損傷又は皮膚損傷である、ことを特徴とする請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記眼損傷は角膜外傷である、ことを特徴とする請求項74に記載の方法。
【請求項76】
患者の角膜外傷を処置する方法であって、請求項1乃至32の何れか1つに記載の組み換え修飾FGF-1ポリペプチド又は請求項33乃至36の何れか1つに記載の医薬組成物を投与する工程を含み、前記角膜外傷は化学物質又は発疱剤により誘導され、前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを投与する工程は、角膜の再生を促進し、前記角膜の変性を予防し、及び化学損傷に通じる長期的な後遺症を予防する、方法。
【請求項77】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、角膜組織の変性を予防するために約7日~約40年の期間にわたって投与される、ことを特徴とする請求項73乃至76の何れか1つに記載の方法。
【請求項78】
前記角膜組織は、角膜上皮、角膜実質、角膜内皮、又は角膜神経分布を含む、ことを特徴とする請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記角膜外傷は実質損傷である、ことを特徴とする請求項75に記載の方法。
【請求項80】
前記実質損傷は実質の瘢痕化及び角膜混濁を含む、ことを特徴とする請求項79に記載の方法。
【請求項81】
患者の長期角膜外傷を予防する方法であって、請求項1乃至32の何れか1つに記載の組み換え修飾FGF-1ポリペプチド又は請求項33乃至36の何れか1つに記載の医薬組成物を投与する工程を含み、前記角膜外傷は化学物質又は発疱剤により誘導される、方法。
【請求項82】
前記角膜外傷は角膜内皮損傷である、ことを特徴とする請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、角膜内皮細胞の機能を増強し、角膜の長期的な変性を予防又は減少する、ことを特徴とする請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを投与する工程は角膜浮腫及び副次的な前部角膜症を予防する、ことを特徴とする請求項82に記載の方法。
【請求項85】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを投与する工程は、角膜内皮細胞の損失を予防する、ことを特徴とする請求項82に記載の方法。
【請求項86】
前記角膜外傷は実質損傷である、ことを特徴とする請求項81に記載の方法。
【請求項87】
前記実質損傷は実質の瘢痕化及び角膜混濁を含む、ことを特徴とする請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記角膜外傷はマスタードガス角膜症(MGK)である、ことを特徴とする請求項75に記載の方法。
【請求項89】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドの投与は結果として、MGKに関連付けられる組織病理学的疾病の改善をもたらす、ことを特徴とする請求項86に記載の方法。
【請求項90】
前記組織病理学的疾病は、角膜上皮層の過形成、及び上皮-実質の細胞分離を含む、ことを特徴とする請求項89に記載の方法。
【請求項91】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドの投与は結果として、浮腫の減少、及び角膜びらんの排除をもたらす、ことを特徴とする請求項89に記載の方法。
【請求項92】
前記角膜びらんは角膜の脱上皮化により特徴づけられる、ことを特徴とする請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドの投与は、角膜の脱上皮化の重症度を低下させる、ことを特徴とする請求項92に記載の方法。
【請求項94】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドの投与は結果として、より迅速な角膜の再上皮化をもたらす、ことを特徴とする請求項93に記載の方法。
【請求項95】
化学物質又は発疱剤にさらされる患者の眼表面の上皮を再生する方法であって、請求項1乃至32の何れか1つに記載の組み換え修飾FGF-1ポリペプチド又は請求項33乃至36の何れか1つに記載の医薬組成物の眼投与を含む、方法。
【請求項96】
前記眼表面の上皮は角膜上皮である、ことを特徴とする請求項95に記載の方法。
【請求項97】
化学物質又は発疱剤にさらされる患者の眼上皮損傷を予防する方法であって、請求項1乃至32の何れか1つに記載の組み換え修飾FGF-1ポリペプチド又は請求項33乃至36の何れか1つに記載の医薬組成物の眼投与を含む、方法。
【請求項98】
前記眼損傷は発疱剤への曝露によって引き起こされた角膜外傷である、ことを特徴とする請求項97に記載の方法。
【請求項99】
前記角膜外傷は角膜上皮剥離である、ことを特徴とする請求項98に記載の方法。
【請求項100】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドの投与は結果として、発疱剤への曝露後の角膜上皮剥離の重症度の低下をもたらす、ことを特徴とする請求項99に記載の方法。
【請求項101】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドの投与は結果として、浮腫の減少、及び角膜びらんの排除をもたらす、ことを特徴とする請求項100に記載の方法。
【請求項102】
前記角膜びらんは角膜の脱上皮化により特徴づけられる、ことを特徴とする請求項101に記載の方法。
【請求項103】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドの投与は、角膜の脱上皮化の重症度を低下させる、ことを特徴とする請求項102に記載の方法。
【請求項104】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドの投与は結果として、より迅速な角膜の再上皮化をもたらす、ことを特徴とする請求項103に記載の方法。
【請求項105】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、最大2週間の期間にわたって、又は角膜上皮の完全再生まで投与される、ことを特徴とする請求項73乃至104の何れか1つに記載の方法。
【請求項106】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドの第1の投与量は、発疱剤への曝露後48時間以内に投与される、ことを特徴とする請求項105に記載の方法。
【請求項107】
前記化学物質は、塩素ガス、ホスゲン、アルカリ、又は酸を含む、ことを特徴とする請求項73乃至106の何れか1つに記載の方法。
【請求項108】
前記発疱剤は、硫黄マスタード(SM)、ナイトロジェンマスタード(NM)、ルイサイト、又はハーフマスタード(2-クロロエチルエチル硫化物(CEES))を含む、ことを特徴とする請求項73乃至106の何れか1つに記載の方法。
【請求項109】
前記発疱剤はNMである、ことを特徴とする請求項107に記載の方法。
【請求項110】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドの投与は、ADAM17の、NMにより誘導されたアップレギュレーションを抑える、ことを特徴とする請求項109に記載の方法。
【請求項111】
前記化学物質又は発疱剤により誘導された損傷は、化学火傷である、ことを特徴とする請求項73に記載の方法。
【請求項112】
前記化学火傷は、塩素ガス、ホスゲン、アルカリ、又は酸によって引き起こされる、ことを特徴とする請求項111に記載の方法。
【請求項113】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:1の位置16、66、及び117の突然変異を含む、ことを特徴とする請求項73乃至112の何れか1つに記載の方法。
【請求項114】
前記突然変異はCys16Ser、Ala66Cys、及びCys117Valである、ことを特徴とする請求項113に記載の方法。
【請求項115】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、発疱剤への曝露後に酸化を受けにくくなる、ことを特徴とする請求項114に記載の方法。
【請求項116】
前記発疱剤はNMである、ことを特徴とする請求項115に記載の方法。
【請求項117】
疱疹性角膜症を処置する方法であって、請求項1乃至32の何れか1つに記載の組み換え修飾FGF-1ポリペプチド又は請求項33乃至36の何れか1つに記載の医薬組成物を哺乳動物に投与する工程を含む、方法。
【請求項118】
前記疱疹性角膜症は単純疱疹ウイルスによる一次感染によって引き起こされる、ことを特徴とする請求項117に記載の方法。
【請求項119】
前記疱疹性角膜症は慢性疱疹性角膜症である、ことを特徴とする請求項118に記載の方法。
【請求項120】
前記疱疹性角膜症は、単純疱疹ウイルスによる感染症に付随する、ことを特徴とする請求項119に記載の方法。
【請求項121】
単純疱疹ウイルスによる感染症に付随する前記疱疹性角膜症は、神経障害性角膜症を含む、ことを特徴とする請求項120に記載の方法。
【請求項122】
請求項1乃至32の何れか1つに記載の組み換え修飾FGF-1ポリペプチド又は請求項33乃至36の何れか1つに記載の医薬組成物は、1日2回投与される、ことを特徴とする請求項117乃至121の何れか1つに記載の方法。
【請求項123】
請求項1乃至32の何れか1つに記載の組み換え修飾FGF-1ポリペプチド又は請求項33乃至36の何れか1つに記載の医薬組成物は、30日の持続期間にわたり投与される、ことを特徴とする請求項117乃至121の何れか1つに記載の方法。
【請求項124】
請求項1乃至32の何れか1つに記載の組み換え修飾FGF-1ポリペプチド又は請求項33乃至36の何れか1つに記載の医薬組成物の投与は、結果として角膜潰瘍の治癒、疼痛及び炎症の持続期間の減少、疼痛及び炎症の減少、角膜混濁、もや、瘢痕化、又はそれらの任意の組み合わせの減少をもたらす、ことを特徴とする請求項117乃至123の何れか1つに記載の方法。
【請求項125】
前記角膜潰瘍は疱疹性角膜潰瘍を含む、ことを特徴とする請求項117乃至124の何れか1つに記載の方法。
【請求項126】
患者における化学物質又は発疱剤で誘導された損傷を処置又は予防する方法であって、SEQ ID NO:1の位置12、16、66、117、及び134の1つ以上の突然変異を含む組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを患者に投与する工程を含む、方法。
【請求項127】
前記化学物質又は発疱剤により誘導された損傷は、眼損傷又は皮膚損傷である、ことを特徴とする請求項126に記載の方法。
【請求項128】
前記眼損傷は角膜外傷である、ことを特徴とする請求項127に記載の方法。
【請求項129】
患者の角膜外傷を処置する方法であって、SEQ ID NO:1の位置12、16、66、117、及び134の1つ以上の突然変異を含む組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを患者に投与する工程を含み、前記角膜外傷は化学物質又は発疱剤により誘導され、前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを投与する工程は、角膜の再生を促進し、前記角膜の変性を予防し、及び化学損傷に通じる長期的な後遺症を予防する、方法。
【請求項130】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、角膜組織の変性を予防するために約7日~約40年の期間にわたって投与される、ことを特徴とする請求項126乃至129の何れか1つに記載の方法。
【請求項131】
前記角膜組織は、角膜上皮、角膜実質、角膜内皮、又は角膜神経分布を含む、ことを特徴とする請求項130に記載の方法。
【請求項132】
前記角膜外傷は実質損傷である、ことを特徴とする請求項128に記載の方法。
【請求項133】
前記実質損傷は実質の瘢痕化及び角膜混濁を含む、ことを特徴とする請求項132に記載の方法。
【請求項134】
患者の長期角膜外傷を予防する方法であって、SEQ ID NO:1の位置12、16、66、117、及び134の1つ以上の突然変異を含む組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを患者に投与する工程を含み、前記角膜外傷は化学物質又は発疱剤により引き起こされる、方法。
【請求項135】
前記角膜外傷は角膜内皮損傷である、ことを特徴とする請求項134に記載の方法。
【請求項136】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、角膜内皮細胞の機能を増強し、角膜の長期的な変性を予防又は減少する、ことを特徴とする請求項135に記載の方法。
【請求項137】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを投与する工程は角膜浮腫及び副次的な前部角膜症を予防する、ことを特徴とする請求項136に記載の方法。
【請求項138】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを投与する工程は、角膜内皮細胞の損失を予防する、ことを特徴とする請求項137に記載の方法。
【請求項139】
前記角膜外傷は実質損傷である、ことを特徴とする請求項134に記載の方法。
【請求項140】
前記実質損傷は実質の瘢痕化及び角膜混濁を含む、ことを特徴とする請求項139に記載の方法。
【請求項141】
前記角膜外傷はマスタードガス角膜症(MGK)である、ことを特徴とする請求項128に記載の方法。
【請求項142】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドの投与は結果として、MGKに関連付けられる組織病理学的疾病の改善をもたらす、ことを特徴とする請求項139に記載の方法。
【請求項143】
前記組織病理学的疾病は、角膜上皮層の過形成、及び上皮-実質の細胞分離を含む、ことを特徴とする請求項142に記載の方法。
【請求項144】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドの投与は結果として、浮腫の減少、及び角膜びらんの排除をもたらす、ことを特徴とする請求項142に記載の方法。
【請求項145】
前記角膜びらんは角膜の脱上皮化により特徴づけられる、ことを特徴とする請求項144に記載の方法。
【請求項146】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドの投与は、角膜の脱上皮化の重症度を低下させる、ことを特徴とする請求項145に記載の方法。
【請求項147】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドの投与は結果として、より迅速な角膜の再上皮化をもたらす、ことを特徴とする請求項146に記載の方法。
【請求項148】
化学物質又は発疱剤にさらされた患者の眼表面の上皮を再生する方法であって、SEQ ID NO:1の位置12、16、66、117、及び134に1つ以上の突然変異を含む組み換え修飾FGF-1ポリペプチドの眼投与を含む、方法。
【請求項149】
前記眼表面の上皮は角膜上皮である、ことを特徴とする請求項148に記載の方法。
【請求項150】
化学物質又は発疱剤にさらされた患者の眼上皮損傷を予防する方法であって、SEQ ID NO:1の位置12、16、66、117、及び134に1つ以上の突然変異を含む組み換え修飾FGF-1ポリペプチドの眼投与を含む、方法。
【請求項151】
前記眼損傷は発疱剤への曝露によって引き起こされた角膜外傷である、ことを特徴とする請求項150に記載の方法。
【請求項152】
前記角膜外傷は角膜上皮剥離である、ことを特徴とする請求項151に記載の方法。
【請求項153】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドの投与は結果として、発疱剤への曝露後の角膜上皮剥離の重症度の低下をもたらす、ことを特徴とする請求項152に記載の方法。
【請求項154】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドの投与は結果として、浮腫の減少、及び角膜びらんの排除をもたらす、ことを特徴とする請求項153に記載の方法。
【請求項155】
前記角膜びらんは角膜の脱上皮化により特徴づけられる、ことを特徴とする請求項154に記載の方法。
【請求項156】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドの投与は、角膜の脱上皮化の重症度を低下させる、ことを特徴とする請求項155に記載の方法。
【請求項157】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドの投与は結果として、より迅速な角膜の再上皮化をもたらす、ことを特徴とする請求項156に記載の方法。
【請求項158】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、最大2週間の期間にわたって、又は角膜上皮の完全再生まで投与される、ことを特徴とする請求項126乃至157の何れか1つに記載の方法。
【請求項159】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドの第1の投与量は、発疱剤への曝露後48時間以内に投与される、ことを特徴とする請求項158に記載の方法。
【請求項160】
前記化学物質は、塩素ガス、ホスゲン、アルカリ、又は酸を含む、ことを特徴とする請求項126乃至157の何れか1つに記載の方法。
【請求項161】
前記発疱剤は更に、硫黄マスタード(SM)、ナイトロジェンマスタード(NM)、ルイサイト、又はハーフマスタード(2-クロロエチルエチル硫化物(CEES))を含む、ことを特徴とする請求項126乃至157の何れか1つに記載の方法。
【請求項162】
前記発疱剤はNMである、ことを特徴とする請求項161に記載の方法。
【請求項163】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドの投与は、ADAM17の、NMにより誘導されたアップレギュレーションを抑える、ことを特徴とする請求項162に記載の方法。
【請求項164】
前記化学物質又は発疱剤により誘導された損傷は、化学火傷である、ことを特徴とする請求項126に記載の方法。
【請求項165】
前記化学火傷は、塩素ガス、ホスゲン、アルカリ、又は酸によって引き起こされる、ことを特徴とする請求項164に記載の方法。
【請求項166】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:1の位置16、66、及び117の突然変異を含む、ことを特徴とする請求項126乃至165の何れか1つに記載の方法。
【請求項167】
前記突然変異はCys16Ser、Ala66Cys、及びCys117Valである、ことを特徴とする請求項166に記載の方法。
【請求項168】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、発疱剤への曝露後に酸化を受けにくくなる、ことを特徴とする請求項167に記載の方法。
【請求項169】
前記発疱剤はNMである、ことを特徴とする請求項168に記載の方法。
【請求項170】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:2及び9-206の何れか1つに明記されるような配列を含む、ことを特徴とする請求項126乃至169の何れか1つに記載の方法。
【請求項171】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:2及び9-204の何れか1つに明記されるような配列を含む、ことを特徴とする請求項126乃至169の何れか1つに記載の方法。
【請求項172】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:205及び206の何れか1つに明記されるような配列を含む、ことを特徴とする請求項126乃至169の何れか1つに記載の方法。
【請求項173】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:2に明記されるような配列を含む、ことを特徴とする請求項126乃至169の何れか1つに記載の方法。
【請求項174】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:205に明記されるような配列を含む、ことを特徴とする請求項126乃至169の何れか1つに記載の方法。
【請求項175】
前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:206に明記されるような配列を含む、ことを特徴とする請求項126乃至169の何れか1つに記載の方法。
【請求項176】
疱疹性角膜症を処置する方法であって、SEQ ID NO:205及び206の何れか1つに明記されるような配列を含む組み換え修飾FGF-1ポリペプチド、或いはこれを含む医薬組成物を哺乳動物に投与する工程を含む、方法。
【請求項177】
前記疱疹性角膜症は単純疱疹ウイルスによる一次感染によって引き起こされる、ことを特徴とする請求項176に記載の方法。
【請求項178】
前記疱疹性角膜症は慢性疱疹性角膜症である、ことを特徴とする請求項177に記載の方法。
【請求項179】
前記疱疹性角膜症は、単純疱疹ウイルスによる感染症に付随する、ことを特徴とする請求項178に記載の方法。
【請求項180】
単純疱疹ウイルスによる感染症に付随する前記疱疹性角膜症は、神経障害性角膜症を含む、ことを特徴とする請求項179に記載の方法。
【請求項181】
SEQ ID NO:205及び206の何れか1つに明記されるような配列を含む組み換え修飾FGF-1ポリペプチド、或いはこれを含む医薬組成物は、1日2回投与される、ことを特徴とする請求項176乃至180の何れか1つに記載の方法。
【請求項182】
SEQ ID NO:205及び206の何れか1つに明記されるような配列を含む組み換え修飾FGF-1ポリペプチド、或いはこれを含む医薬組成物は、30日の持続期間にわたり投与される、ことを特徴とする請求項176乃至181の何れか1つに記載の方法。
【請求項183】
SEQ ID NO:205及び206の何れか1つに明記されるような配列を含む組み換え修飾FGF-1ポリペプチド、或いはこれを含む医薬組成物の投与は、結果として角膜潰瘍の治癒、疼痛及び炎症の持続期間の減少、疼痛及び炎症の減少、角膜混濁、もや、瘢痕化、又はそれらの任意の組み合わせの減少をもたらす、ことを特徴とする請求項176乃至182の何れか1つに記載の方法。
【請求項184】
前記角膜潰瘍は疱疹性角膜潰瘍を含む、ことを特徴とする請求項176乃至183の何れか1つに記載の方法。
【請求項185】
疱疹性角膜症を処置する方法であって、SEQ ID NO:2及び9-204の何れか1つに明記されるような配列を含む組み換え修飾FGF-1ポリペプチド、或いはこれを含む医薬組成物を哺乳動物に投与する工程を含む、方法。
【請求項186】
前記疱疹性角膜症は単純疱疹ウイルスによる一次感染によって引き起こされる、ことを特徴とする請求項185に記載の方法。
【請求項187】
前記疱疹性角膜症は慢性疱疹性角膜症である、ことを特徴とする請求項186に記載の方法。
【請求項188】
前記疱疹性角膜症は、単純疱疹ウイルスによる感染症に付随する、ことを特徴とする請求項187に記載の方法。
【請求項189】
単純疱疹ウイルスによる感染症に付随する前記疱疹性角膜症は、神経障害性角膜症を含む、ことを特徴とする請求項188に記載の方法。
【請求項190】
SEQ ID NO:2及び9-204の何れか1つに明記されるような配列を含む組み換え修飾FGF-1ポリペプチド、或いはこれを含む医薬組成物は、1日2回投与される、ことを特徴とする請求項185乃至189の何れか1つに記載の方法。
【請求項191】
SEQ ID NO:2及び9-204の何れか1つに明記されるような配列を含む組み換え修飾FGF-1ポリペプチド、或いはこれを含む医薬組成物は、30日の持続期間にわたり投与される、ことを特徴とする請求項185乃至190の何れか1つに記載の方法。
【請求項192】
SEQ ID NO:2及び9-204の何れか1つに明記されるような配列を含む組み換え修飾FGF-1ポリペプチド、或いはこれを含む医薬組成物の投与は、結果として角膜潰瘍の治癒、疼痛及び炎症の持続期間の減少、疼痛及び炎症の減少、角膜混濁、もや、瘢痕化、又はそれらの任意の組み合わせの減少をもたらす、ことを特徴とする請求項185乃至191の何れか1つに記載の方法。
【請求項193】
前記角膜潰瘍は疱疹性角膜潰瘍を含む、ことを特徴とする請求項185乃至192の何れか1つに記載の方法。
【請求項194】
哺乳動物はヒトを含む、ことを特徴とする請求項176乃至193の何れか1つに記載の方法。
【請求項195】
哺乳動物はヒトを含む、ことを特徴とする請求項117乃至125の何れか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2017年5月5日出願の米国仮特許出願62/502,529号、2017年5月5日出願の米国仮特許出願62/502,540号、及び2017年11月10日出願の米国仮特許出願62/584,624号の利益を主張するものであり、各々がその全体の参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本明細書には、修飾された繊維芽細胞成長因子(FGF)ポリペプチド、前記修飾されたFGFポリペプチドを含む医薬組成物及び薬物、並びに、FGFの投与から利益を得る疾病を処置又は予防するための前記修飾されたFGFポリペプチドの使用方法が記載される。
【背景技術】
【0003】
FGFは、発達組織及び成体組織に広く発現される大きなポリペプチドであり(Baird et al., Cancer Cells, 3:239-243, 1991)、多数の生理機能において役割を果たす(McKeehan et al., Prog. Nucleic Acid Res. Mol. Biol. 59:135-176, 1998; Burgess, W. H. et al., Annu Rev. Biochem. 58:575-606 (1989). The FGF family includes at least twenty-two members (Reuss et al., Cell Tissue Res. 313:139-157 (2003))。
【発明の概要】
【0004】
本明細書には、一実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドが提供され、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、1つ以上の突然変異を伴うSEQ ID NO:1として明記される配列を含み、SEQ ID NO:1の第1の残基の上流に位置するN末端メチオニン残基を含む。幾つかの実施形態において、ポリペプチドは、N末端メチオニン残基とSEQ ID NO:1の第1の残基との間に位置する伸長ペプチドを更に含む。幾つかの実施形態において、伸長ペプチドは、SEQ ID NO:3の1つ以上のアミノ酸残基を含む。幾つかの実施形態において、伸長ペプチドは、SEQ ID NO:4-8に明記される配列の何れか1つを含む。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、その成熟した形態である。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:14-18から選択された配列を含む。
【0005】
一実施形態は組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを提供し、該組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、1つ以上の突然変異を伴うSEQ ID NO:1として明記される配列を含み、SEQ ID NO:1の第1の残基の上流に位置する伸長ペプチドを更に含む。幾つかの実施形態において、伸長ペプチドは、SEQ ID NO:3の1つ以上のアミノ酸を含む。幾つかの実施形態において、伸長ペプチドは、SEQ ID NO:4-8に明記されるような配列の何れか1つを含む。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、その成熟した形態である。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:24-28から選択された配列を含む。
【0006】
一実施形態は組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを提供し、該組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、1つ以上の突然変異を伴うSEQ ID NO:1として明記される配列を含み、SEQ ID NO:1の最初の5つの残基の1つ以上のトランケーションを更に含み、且つ、前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドのN末端に伸長ペプチドを含む。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:93-117から選択された配列を含む。幾つかの実施形態において、ポリペプチドは、伸長ペプチドのメチオニン残基N末端を更に含む。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、その成熟した形態である。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:118-141から選択された配列を含む。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、136のアミノ酸を含む形態で発現される。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、その成熟した形態で少なくとも141のアミノ酸を含む。
【0007】
一実施形態は、SEQ ID NO:1の位置67に突然変異を含む、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを提供する。幾つかの実施形態において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:1の最初の5つの残基の1つ以上のトランケーションを更に含む。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:146-149から選択された配列を含む。幾つかの実施形態において、ポリペプチドは更に伸長ペプチドを含む。幾つかの実施形態において、伸長ペプチドは、SEQ ID NO:3の1つ以上のアミノ酸残基を含む。幾つかの実施形態において、伸長ペプチドのフラグメントは、SEQ ID NO:4-8に明記される配列の何れか1つを含む。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、その成熟した形態である。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:174-204から選択された配列を含む。
【0008】
一実施形態は、SEQ ID NO:2に明記されるような配列を含む、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを提供する。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、その成熟した形態である。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、Cys16Ser、Ala66Cys、及びCys117Valから成る群から選択された1つ以上の突然変異を含む。
【0009】
一実施形態は、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを提供し、該組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:1の1つ以上の突然変異を含み、該突然変異は、Lys12Val、Cys16Ser、Ala66Cys、Cys117Val、及びPro134Valから成る群から選択され、前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは更に、ペプチドALTEKの少なくとも1つの残基を含む。
【0010】
一実施形態は組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを提供し、該組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、以下のSEQ ID NO:1の突然変異:Cys16Ser、Ala66Cys、及びCys117Valを含み、SEQ ID NO:1の第1の残基の上流に位置するメチオニン残基、及びN末端メチオニンとSEQ ID NO:1の位置1との間に位置するペプチドALTEKの少なくとも1つの残基を含む。幾つかの実施形態において、前記組み換え修飾FGF-は、伸長ペプチドにより発現されず、伸長ペプチドを取り除く工程を含まない方法によって産生される。
【0011】
一実施形態において、上記実施形態の何れか1つの組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを含む医薬組成物が提供される。幾つかの実施形態において、医薬組成物は更に薬学的に許容可能な担体、賦形剤、又は希釈剤を含む。幾つかの実施形態において、医薬組成物は液体眼用製剤である。幾つかの実施形態において、医薬製剤は、局所、微小針により角膜に、又は前房内に投与される。
【0012】
本明細書には、一実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを産生するための方法が提供され、該方法は、前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを宿主細胞に発現する工程、及び宿主細胞の細胞質中の発現されたポリペプチドを成熟させる工程を含み、前記組み換え修飾ポリペプチドは、SEQ ID NO:1の1つ以上の突然変異を含み、且つ、SEQ ID NO:1の第1の残基の上流に位置するN末端メチオニン残基により発現される。
【0013】
本明細書には、一実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを産生するための方法が提供され、該方法は、前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを宿主細胞に発現する工程、及び宿主細胞の細胞質中の発現されたポリペプチドを成熟させる工程を含み、前記組み換え修飾ポリペプチドは、SEQ ID NO:1の1つ以上の突然変異、N末端残基とSEQ ID NO:1の位置1との間に伸長ペプチドを含み、且つ、N末端メチオニン残基により発現される。
【0014】
本明細書には、一実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを産生するための方法が提供され、該方法は、前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを宿主細胞に発現する工程、及び宿主細胞の細胞質中の発現されたポリペプチドを成熟させる工程を含み、前記組み換え修飾ポリペプチドは、SEQ ID NO:1の1つ以上の突然変異、伸長ペプチドのフラグメント、SEQ ID NO:1の最初の5つの残基の1つ以上のトランケーションを含み、且つ、SEQ ID NO:1の第1の残基の上流に位置するN末端メチオニン残基により発現される。幾つかの実施形態において、N末端メチオニン残基はポリペプチドの成熟中に保持される。幾つかの実施形態において、N末端メチオニン残基は、ポリペプチドの成熟中に、開裂酵素によってポリペプチドから切断される。幾つかの実施形態において、開裂酵素はメチオニンアミノペプチダーゼ(metAP)である。幾つかの実施形態において、metAPは、細菌metAP、酵母菌metAP、又はヒトmetAPである。幾つかの実施形態において、開裂酵素は細菌metAPである。幾つかの実施形態において、前記方法は、SEQ ID NO:14又はSEQ ID NO:16に明記されるような配列を含む修飾FGF-1ポリペプチドを発現する工程を含む。幾つかの実施形態において、前記方法は、SEQ ID NO:2に明記されるような配列を含む修飾FGF-1ポリペプチドを発現する工程を含む。幾つかの実施形態において、前記方法は、SEQ ID NO:2は、宿主細胞の細胞質における成熟後のポリペプチドの配列である。
【0015】
一実施形態は、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを産生するための方法を提供し、該方法は、前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを宿主細胞に発現する工程、及び宿主細胞の細胞質中の発現されたポリペプチドを成熟する工程を含み、前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドはSEQ ID NO:1の位置67に突然変異を含む。幾つかの実施形態において、前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは更に、伸長ペプチドのフラグメント、及びSEQ ID NO:1の最初の5つの残基の1つ以上のトランケーションを含み、前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:1の第1の残基の上流に位置するN末端メチオニン残基により発現される。幾つかの実施形態において、前記方法は、臭化シアンを使用したN末端メチオニン残基の開裂を含む。
【0016】
一実施形態は、上記実施形態の何れか1つに記載の組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを産生するための方法を提供し、該方法は、宿主細胞中に前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを発現し、発現されたポリペプチドを親和性物質にアフィニティータグを介して結合する工程;前記ポリペプチドを放出するために前記アフィニティータグを切断し、前記ポリペプチドを前記親和性材料から薬剤を使用して溶出する工程を含む。幾つかの実施形態において、前記アフィニティータグはポリ-ヒスチジン、ポリ-リジン、ポリ-アスパラギン酸、又はポリ-グルタミン酸を含む。幾つかの実施形態において、前記薬剤は、メタノール、2-プロパノール、又は他のアルコール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトン、又は他の有機溶媒を含む。幾つかの実施形態において、親和性材料はレジンフレームワークである。幾つかの実施形態において、親和性材料はイオン交換樹脂である。幾つかの実施形態において、前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、宿主細胞の細胞質に発現され、且つ、細胞周辺腔へと分泌されない。幾つかの実施形態において、宿主細胞は微生物である。幾つかの実施形態において、微生物発現系は、E. coli発現系、Caulobacter crescent発現系、及びProteus mirabilis発現系から成る群から選択される。幾つかの実施形態において、微生物発現系はE.coli発現系である。
【0017】
一実施形態は、哺乳動物の眼の疾患、障害、又は疾病を処置又は予防する方法を提供し、該方法は、本開示に係る組み換え修飾FGF-1ポリペプチド又は本開示に係る医薬組成物を哺乳動物に投与する工程を含む。幾つかの実施形態において、前記眼の疾患、障害、又は疾病は、角膜又は眼の表面の疾患、障害、又は疾病である。幾つかの実施形態において、前記眼の疾患、障害、又は疾病は、角膜内皮の疾患、障害、又は疾病である。幾つかの実施形態において、前記角膜内皮の疾患、障害、又は疾病は、フックス角膜内皮ジストロフィー、水疱性角膜症、1型先天性遺伝性角膜内皮ジストロフィー、2型先天性遺伝性角膜内皮ジストロフィー、後部多形性角膜ジストロフィー、又はドライアイ症候群である。幾つかの実施形態では、眼の疾患、障害、又は疾病は、フックス角膜内皮ジストロフィーである。幾つかの実施形態において、前記眼の疾患、障害、又は疾病は、角膜内皮の疾患、障害、又は疾病である。幾つかの実施形態において、前記角膜内皮の疾患、障害、又は疾病は、ドライアイ症候群、或いは、角膜手術又は移植による角膜上皮組織の損傷である。幾つかの実施形態において、前記角膜手術は、光屈折角膜切開術(PRK)又はレーザー角膜切削形成術(LASIK)である。幾つかの実施形態において、前記眼の疾患、障害、又は疾病は、角膜実質の疾患、障害、又は疾病である。幾つかの実施形態において、前記角膜実質の疾患、障害、又は疾病は、円錐角膜、格子状角膜ジストロフィー、顆粒状角膜変性症、斑状角膜変性症、シュナイダー結晶状角膜ジストロフィー、先天性間質性角膜ジストロフィー、又は斑点角膜ジストロフィーである。
【0018】
一実施形態は、哺乳動物に角膜細胞を移植する、或いは細胞移植の成功を向上させる方法を提供し、該方法は、哺乳動物への角膜細胞の移植の前、間、後に、上記実施形態の何れか1つに記載の組み換え修飾FGF-ポリペプチドにより、移植される角膜細胞を処置する工程を含む。一実施形態は、組織再生中に瘢痕化を予防する方法を提供し、該方法は、上記の実施形態の何れか1つに記載の組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを投与する工程を含む。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、線維柱切除を受けた後の哺乳動物に投与される。
【0019】
一実施形態は、患者における化学物質又は発疱剤で誘導された損傷を処置又は予防する方法を提供し、該方法は、上記実施形態の何れか1つに記載の組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを患者に投与する工程を含む。幾つかの実施形態において、化学物質又は発疱剤で誘導された損傷は、眼損傷又は皮膚損傷である。幾つかの実施形態において、眼損傷は角膜外傷である。
【0020】
一実施形態は、患者の角膜外傷を処置する方法を提供し、該方法は、本開示に係る組み換え修飾FGF-1ポリペプチド又は本開示に係る医薬組成物を投与する工程を含み、前記角膜外傷は化学物質又は発疱剤により誘導され、前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを投与する工程は、角膜の再生を促進し、前記角膜の変性を予防し、及び化学損傷に通じる長期的な後遺症を予防する。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、角膜組織の変性を予防するために約7日~約40年の期間にわたって投与される。幾つかの実施形態において、角膜組織は、角膜上皮、角膜実質、角膜内皮、又は角膜神経分布を含む。幾つかの実施形態において、角膜外傷は実質損傷である。幾つかの実施形態において、実質損傷は、実質の瘢痕化及び角膜混濁を含む。
【0021】
一実施形態は、患者の長期角膜外傷を予防する方法を提供し、該方法は、本開示に係る組み換え修飾FGF-1ポリペプチド又は本開示に係る医薬組成物を投与する工程を含み、前記角膜外傷は化学物質又は発疱剤により誘導される。幾つかの実施形態において、角膜外傷は角膜内皮損傷である。幾つかの実施形態において、前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、角膜内皮細胞の機能を増強し、角膜の長期的な変性を予防又は減少する。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを投与する工程は、角膜浮腫及び副次的な前部角膜症を予防する。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを投与する工程は、角膜内皮細胞の損失を予防する。幾つかの実施形態において、角膜外傷は実質損傷である。幾つかの実施形態において、実質損傷は、実質の瘢痕化及び角膜混濁を含む。幾つかの実施形態において、角膜外傷はマスタードガス角膜症(MGK)である。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを投与する工程は、結果としてMGKに関連付けられる組織病理学的疾病の改善をもたらす。幾つかの実施形態において、組織病理学的疾病は、角膜上皮層の過形成、及び上皮組織-実質の細胞分離を含む。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを投与する工程は、結果として浮腫の減少及び角膜びらんの排除をもたらす。幾つかの実施形態において、角膜びらんは、角膜の脱上皮化により特徴づけられる。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを投与する工程は、角膜の脱上皮化の重症度を低下させる。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを投与する工程は、結果として迅速な角膜の再上皮化をもたらす。
【0022】
一実施形態は、化学物質又は発疱剤にさらされた患者の眼表面の上皮を再生する方法を提供し、該方法は、上記実施形態の何れか1つに記載の組み換え修飾FGF-1ポリペプチドの投与を含む。幾つかの実施形態において、眼表面の上皮は角膜上皮である。
【0023】
一実施形態は、化学物質又は発疱剤にさらされた患者の眼上皮損傷を予防する方法を提供し、該方法は、上記実施形態の何れか1つに記載の組み換え修飾FGF-1ポリペプチドの投与を含む。幾つかの実施形態において、眼損傷は、発疱剤への曝露によって引き起こされた角膜外傷である。幾つかの実施形態において、角膜外傷は角膜外皮剥離である。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを投与する工程は、結果として発疱剤への曝露後の角膜上皮組織の剥離の重症度の減少をもたらす。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを投与する工程は、結果として浮腫の減少及び角膜びらんの排除をもたらす。幾つかの実施形態において、角膜びらんは、角膜の脱上皮化により特徴づけられる。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを投与する工程は、角膜の脱上皮化の重症度を低下させる。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを投与する工程は、結果として迅速な角膜の再上皮化をもたらす。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、最大2週間の期間にわたって、又は角膜上皮の完全再生まで投与される。幾つかの実施形態において、前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドの第1の投与量は、発疱剤への曝露後48時間以内に投与される。幾つかの実施形態において、化学物質は、塩素ガス、ホスゲン、アルカリ、又は酸を含む。幾つかの実施形態において、前記発疱剤は更に、硫黄マスタード(SM)、ナイトロジェンマスタード(NM)、ルイサイト、又はハーフマスタード(2-クロロエチルエチル硫化物(CEES))を含む。幾つかの実施形態において、発疱剤はNMである。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを投与する工程は、ADAM17の、NMで誘導されたアップレギュレーションを抑える。幾つかの実施形態において、化学物質又は発疱剤で誘導された損傷は化学火傷である。幾つかの実施形態において、前記化学火傷は、塩素ガス、ホスゲン、アルカリ、又は酸によって引き起こされる。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを投与する工程は、SEQ ID NO:1の位置16、66、及び117の突然変異を含む。幾つかの実施形態において、突然変異は、Cys16Ser、Ala66Cys、及びCys117Valである。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、発疱剤への曝露後に酸化を受けにくい。幾つかの実施形態において、発疱剤はNMである。
【0024】
一実施形態は、疱疹性角膜賞を処置する方法を提供し、該方法は、本開示の何れかの実施形態に記載の組み換え修飾FGF-1ポリペプチド又は本開示に係る医薬組成物を哺乳動物に投与する工程を含む。幾つかの実施形態において、疱疹性角膜症は、単純疱疹ウイルスによる一次感染によって引き起こされる。幾つかの実施形態において、疱疹性角膜症は慢性疱疹性角膜症である。幾つかの実施形態において、疱疹性角膜症は、単純疱疹ウイルスによる感染症に付随する。幾つかの実施形態において、単純疱疹ウイルスによる感染症に付随する疱疹性角膜症は、神経障害性角膜症を含む。幾つかの実施形態において、本開示に係る組み換え修飾FGF-1ポリペプチド又は本開示に係る医薬組成物は、1日2回投与される。幾つかの実施形態において、本開示に係る組み換え修飾FGF-1ポリペプチド又は本開示に係る医薬組成物は、30日の持続期間にわたり投与される。幾つかの実施形態において、本開示に係る組み換え修飾FGF-1ポリペプチド又は本開示に係る医薬組成物の投与は、結果として角膜潰瘍の治癒、疼痛及び炎症の持続期間の減少、疼痛及び炎症の減少、角膜混濁、もや、瘢痕化、又はそれらの任意の組み合わせの減少をもたらす。幾つかの実施形態において、角膜潰瘍は疱疹性角膜潰瘍を含む。幾つかの実施形態において、哺乳動物は、ヒトである。
【0025】
一実施形態は、患者における化学物質又は発疱剤で誘導された損傷を処置又は予防する方法を提供し、該方法は、SEQ ID NO:1の位置12、16、66、117、及び134の1つ以上の突然変異を含む組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを患者に投与する工程を含む。幾つかの実施形態において、化学物質又は発疱剤で誘導された損傷は、眼損傷又は皮膚損傷である。幾つかの実施形態において、眼損傷は角膜外傷である。
【0026】
一実施形態は、患者の角膜外傷を処置する方法を提供し、該方法は、SEQ ID NO:1の位置12、16、66、117、及び134の1つ以上の突然変異を含む組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを患者に投与する工程を含み、前記角膜外傷は化学物質又は発疱剤により誘導され、前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを投与する工程は、角膜の再生を促進し、前記角膜の変性を予防し、及び化学損傷に通じる長期的な後遺症を予防する。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、角膜組織の変性を予防するために約7日~約40年の期間にわたって投与される。幾つかの実施形態において、角膜組織は、角膜上皮、角膜実質、角膜内皮、又は角膜神経分布を含む。幾つかの実施形態において、角膜外傷は実質損傷である。幾つかの実施形態において、実質損傷は、実質の瘢痕化及び角膜混濁を含む。
【0027】
一実施形態は、患者の長期角膜外傷を予防する方法を提供し、該方法は、SEQ ID NO:1の位置12、16、66、117、及び134の1つ以上の突然変異を含む組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを患者に投与する工程を含み、前記角膜外傷は化学物質又は発疱剤により引き起こされる。幾つかの実施形態において、角膜外傷は角膜内皮損傷である。幾つかの実施形態において、前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、角膜内皮細胞の機能を増強し、角膜の長期的な変性を予防又は減少する。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを投与する工程は、角膜浮腫及び副次的な前部角膜症を予防する。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを投与する工程は、角膜内皮細胞の損失を予防する。幾つかの実施形態において、角膜外傷は実質損傷である。幾つかの実施形態において、実質損傷は、実質の瘢痕化及び角膜混濁を含む。幾つかの実施形態において、角膜外傷はマスタードガス角膜症(MGK)である。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドの投与は、結果としてMGKに関連付けられる組織病理学的疾病の改善をもたらす。幾つかの実施形態において、組織病理学的疾病は、角膜上皮層の過形成、及び上皮組織-実質の細胞分離を含む。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドの投与は、結果として浮腫の減少及び角膜びらんの排除をもたらす。幾つかの実施形態において、角膜びらんは、角膜の脱上皮化により特徴づけられる。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドの投与は、角膜の脱上皮化の重症度を低下させる。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドの投与は、結果として迅速な角膜の再上皮化をもたらす。
【0028】
一実施形態は、化学物質又は発疱剤にさらされた患者の眼表面の上皮を再生する方法を提供し、該方法は、SEQ ID NO:1の位置12、16、66、117、及び134に1つ以上の突然変異を含む組み換え修飾FGF-1ポリペプチドの眼投与を含む。幾つかの実施形態において、眼表面の上皮は角膜上皮である。
【0029】
一実施形態は、化学物質又は発疱剤にさらされた患者の眼上皮損傷を予防する方法を提供し、該方法は、SEQ ID NO:1の位置12、16、66、117、及び134に1つ以上の突然変異を含む組み換え修飾FGF-1ポリペプチドの眼投与を含む。幾つかの実施形態において、眼損傷は、発疱剤への曝露によって引き起こされた角膜外傷である。幾つかの実施形態において、角膜外傷は角膜外皮剥離である。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドの投与は、結果として発疱剤への曝露後の角膜上皮組織の剥離の重症度の減少をもたらす。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドの投与は、結果として浮腫の減少及び角膜びらんの排除をもたらす。幾つかの実施形態において、角膜びらんは、角膜の脱上皮化により特徴づけられる。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドの投与は、角膜の脱上皮化の重症度を低下させる。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドの投与は、結果として迅速な角膜の再上皮化をもたらす。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、最大2週間の期間にわたって、又は角膜上皮の完全再生まで投与される。幾つかの実施形態において、前記組み換え修飾FGF-1ポリペプチドの第1の投与量は、発疱剤への曝露後48時間以内に投与される。幾つかの実施形態において、化学物質は、塩素ガス、ホスゲン、アルカリ、又は酸を含む。幾つかの実施形態において、前記発疱剤は更に、硫黄マスタード(SM)、ナイトロジェンマスタード(NM)、ルイサイト、又はハーフマスタード(2-クロロエチルエチル硫化物(CEES))を含む。幾つかの実施形態において、発疱剤はNMである。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドの投与は、ADAM17の、NMで誘導されたアップレギュレーションを抑える。幾つかの実施形態において、化学物質又は発疱剤で誘導された損傷は化学火傷である。幾つかの実施形態において、前記化学火傷は、塩素ガス、ホスゲン、アルカリ、又は酸によって引き起こされる。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを投与する工程は、SEQ ID NO:1の位置16、66、及び117の突然変異を含む。幾つかの実施形態において、突然変異は、Cys16Ser、Ala66Cys、及びCys117Valである。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、発疱剤への曝露後に酸化を受けにくい。幾つかの実施形態において、発疱剤はNMである。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:2及び9-206の何れか1つに明記されるような配列を含む。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:2及び9-206の何れか1つに明記されるような配列を含む。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:205及び206の何れか1つに明記されるような配列を含む。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:2に明記されるような配列を含む。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:205に明記されるような配列を含む。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:206に明記されるような配列を含む。
【0030】
一実施形態は、疱疹性角膜症を処置する方法を提供し、該方法は、SEQ ID NO:205及び206の何れか1つに明記されるような配列を含む組み換え修飾FGF-1ポリペプチド、或いはこれを含む医薬組成物を哺乳動物に投与する工程を含む。幾つかの実施形態において、疱疹性角膜症は、単純疱疹ウイルスによる一次感染によって引き起こされる。幾つかの実施形態において、疱疹性角膜症は慢性疱疹性角膜症である。幾つかの実施形態において、疱疹性角膜症は、単純疱疹ウイルスによる感染症に付随する。幾つかの実施形態において、単純疱疹ウイルスによる感染症に付随する疱疹性角膜症は、神経障害性角膜症を含む。幾つかの実施形態において、SEQ ID NO:205及び206の何れか1つに明記されるような配列を含む組み換え修飾FGF-1ポリペプチド、或いはこれを含む医薬組成物は、1日2回投与される。幾つかの実施形態において、SEQ ID NO:205及び206の何れか1つに明記されるような配列を含む組み換え修飾FGF-1ポリペプチド、或いはこれを含む医薬組成物は、30日の持続期間にわたり投与される。幾つかの実施形態において、SEQ ID NO:205及び206の何れか1つに明記されるような配列を含む組み換え修飾FGF-1ポリペプチド、或いはこれを含む医薬組成物の投与は、結果として角膜潰瘍の治癒、疼痛及び炎症の持続期間の減少、疼痛及び炎症の減少、角膜混濁、もや、瘢痕化、又はそれらの任意の組み合わせの減少をもたらす。幾つかの実施形態において、角膜潰瘍は疱疹性角膜潰瘍を含む。
【0031】
一実施形態は、疱疹性角膜症を処置する方法を提供し、該方法は、SEQ ID NO:2及び9-204の何れか1つに明記されるような配列を含む組み換え修飾FGF-1ポリペプチド、或いはこれを含む医薬組成物を哺乳動物に投与する工程を含む。幾つかの実施形態において、疱疹性角膜症は、単純疱疹ウイルスによる一次感染によって引き起こされる。幾つかの実施形態において、疱疹性角膜症は慢性疱疹性角膜症である。幾つかの実施形態において、疱疹性角膜症は、単純疱疹ウイルスによる感染症に付随する。幾つかの実施形態において、単純疱疹ウイルスによる感染症に付随する疱疹性角膜症は、神経障害性角膜症を含む。幾つかの実施形態において、SEQ ID NO:2及び9-204の何れか1つに明記されるような配列を含む組み換え修飾FGF-1ポリペプチド、或いはこれを含む医薬組成物は、1日2回投与される。幾つかの実施形態において、SEQ ID NO:2及び9-204の何れか1つに明記されるような配列を含む組み換え修飾FGF-1ポリペプチド、或いはこれを含む医薬組成物は、30日の持続期間にわたり投与される。幾つかの実施形態において、SEQ ID NO:2及び9-204の何れか1つに明記されるような配列を含む組み換え修飾FGF-1ポリペプチド、或いはこれを含む医薬組成物の投与は、結果として角膜潰瘍の治癒、疼痛及び炎症の持続期間の減少、疼痛及び炎症の減少、角膜混濁、もや、瘢痕化、又はそれらの任意の組み合わせの減少をもたらす。幾つかの実施形態において、角膜潰瘍は疱疹性角膜潰瘍を含む。幾つかの実施形態において、哺乳動物は、ヒトである。
【0032】
引用による組み込み
本明細書で言及される全ての刊行物と特許出願は、あたかも個々の刊行物又は特許出願がその全体において参照によって組み込まれるよう具体的且つ個々に示されているのと同じ程度にまで、参照によって本明細書に組み込まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】マスタードガスのシステインとの反応を例示する。
【
図2】ヒト角膜内皮細胞のインビトロの増殖に対する、本開示に係る典型的な修飾FGF-1ポリペプチド(TTHX1114及びTTHX1001)の効果を例示する。点線はTTHX1114に相当し、破線はTTHX1001に相当する。
【
図3】典型的なウサギ角膜の器官培養モデルシステムを例示する。
【
図4】角膜への発疱剤損傷に関する時間経過を示す。
【
図5】組織病理学的染色によって評価される、発疱剤で誘導された損傷に際する典型的な修飾FGF-1ポリペプチド(TTHX114)での処置の効果を例示する。
【
図6】発疱剤で誘導された角膜外傷の効果を評価するための、典型的な組織病理学的等級付けのスキームを示す。
【
図7】発疱剤曝露後の角膜及び実質の損傷の組織病理学的等級付けを示す。連続線(continuous like)は「上皮」に相当し、破線は「実質」に相当する。
【
図8】典型的な修飾FGF-1ポリペプチド(TTHX1114)で処置された角膜細胞における発疱剤損傷の組織病理学的等級付けの減少を示す。破線は「NM」に相当し、点線は「NM+TTHX」に相当する。
【
図9】発疱剤への曝露後のFGF-1の角膜レベルを実証する。
【
図10】発疱剤への曝露後の典型的な修飾FGF-1ポリペプチド(TTHX1114)で処置された角膜細胞におけるADAM17活性化の抑制を例示する。Aは、NMにさらされなかった角膜セクションを示し、Bは、典型的なポリペプチド(TTHX1114)での処置を伴う(下のパネル)又は伴わない(上のパネル)さらされた角膜の比較を示す。
【
図11】EdU取り込みによって測定される、発疱剤にさらされ且つ典型的な修飾FGF-1ポリペプチド(TTHX1114)で処置された角膜上皮細胞の増殖を例示する。破線は「NM」に相当し、実線は「NM+TTHX」に相当する。
【発明を実施するための形態】
【0034】
眼の疾患及び損傷はひどく衰弱性であり、種々様々な形態で生じる場合がある。眼疾患の1つの分類はマスタードガス角膜症である。マスタードガスは、第一次世界大戦中の1915年4月にイーペルでの戦場においてドイツ軍によって最初に放たれた発疱剤有毒ガスである。マスタードガスへの曝露は、数年にわたって進行する長期合併症を引き起こしかねない。角膜は瘢痕化され且つ不揃いになり、コレステロール及びカルシウムがその組織に堆積し、結果、視覚の進行性機能障害がもたらされる。細隙灯顕微鏡検査により、強膜上組織が特徴的な染付け(underglaze)を示すことが明らかになっている。白色磁器のような外観及びまれな血管形成異常が一般的である。これらは、場合により静脈瘤症及びソーセージの様な血管が付随するアムプラ状の輪郭(ampulliform outline)を伴う、拡大し歪曲した血管として現われる。時間の経過により、角膜の密な不透明化の結果は、上部が突出している眼瞼によって保護されているため、中央及び下方の部分で最も顕著である。MGKの主な組織病理学的特徴は、例えば、不規則な上皮組織の厚み、変性変化、厚くなった上皮組織の基底膜、角膜実質細胞欠損、及びボーマン膜の破壊を含む(Kanavi et al., Chronic and delayed mustard gas keratopathy: a histopathologic and immunohistochemical study, Eur. J Ophthalmol. 2010 Sep-Oct;20(5):839-43)。典型的に、角膜の発疱剤曝露の1日以内に、角膜上皮(CE)は基底膜(BM)から剥がれ、角膜浮腫が剥離した実質に進行し、全層の角膜実質細胞(keratocytosis)が創縁内で明らかとなる。5日までに、上皮組織の蓋(cap)は再生し、角膜浮腫はおさまり始める。曝露の1週間後、CEは部分的に階層化され、痕跡の半接着斑の付着が伴う。この明らかな改善にもかかわらず、暴露の3週間後早急に、角膜は、持続的に上昇した角膜浮腫を含む慢性損傷の臨床的シグネチャを発達させ、角膜びらん及び新生血管形成を再発させる。8週間までに、表皮基底膜領域は重度の変性を受ける。更に、MGKの影響を受けた角膜は、創傷治癒プロセスの遅れを示すと思われる。
【0035】
本明細書には、修飾FGF-1ポリペプチド、該修飾FGF-1ポリペプチドを含む医薬組成物及び薬剤、及び様々な疾病を処置するための前記FGF-1ポリペプチドの使用方法が提供され、前記疾病は、眼の疾患、障害、及び疾病(例えばフックス角膜内皮ジストロフィー)、発疱剤で誘導された角膜上皮及び内皮の損傷(例えばマスタードガス角膜症(MGK))、創傷治癒、循環器疾患(例えば虚血)、及び神経学的疾病(例えば筋萎縮性側索硬化症(ALS))などである。
【0036】
本明細書にはまた、修飾された繊維芽細胞成長因子(FGF-1)ポリペプチド、或いはこれを含む医薬組成物又は薬剤を投与することにより、化学物質又は発疱剤で誘導された損傷を処置する方法が提供される。幾つかの実施形態において、前記方法は、本明細書に記載される修飾FGF-1ポリペプチドを投与することにより、化学損傷、例えば化学火傷により誘導されるマスタードガス角膜症(MGK)を処置する工程を含む。幾つかの実施形態において、前記方法は、本明細書に記載される修飾FGF-1ポリペプチドを投与することにより、発疱剤、例えばナイトロジェンマスタード(NM)により誘導されるマスタードガス角膜症(MGK)を処置する工程を含む。幾つかの実施形態において、前記方法は、化学兵器、例えばホスゲンにより引き起こされる化学的又は温熱性外傷を処置する工程を含む。
【0037】
本明細書に記載される幾つかの実施形態において、修飾FGF-1ポリペプチドがN末端メチオニン(N-Met)残基で発現される場合、ポリペプチドは後に、N末端ペプチドの除去のためにタンパク質分解開裂を必要とする工程なしに、精製される。従って、幾つかの実施形態において、本開示は、N末端ペプチドの除去のためのタンパク質分解開裂の工程を含むことなく、急速な精製法によって調製される修飾FGF-1ポリペプチドを提供する。これは、適正製造基準(GMP)ガイドラインに従う修飾FGF-1ポリペプチドの産生に、特に都合が良い。その利点には、切断された生成物の後の精製、及び開裂に使用された試薬の除去に対する必要性を排除することを含む、開裂工程の欠如が挙げられる。この更なる利点は、取扱いの減少による収率の増加、開裂のために導入された残りの開裂試薬及び不純物の試験の必要性の緩和、及び未開裂の物質から切断された部分のその後の分離である。
【0038】
本明細書に記載される修飾FGF-1ポリペプチドは、安定性(例えば耐熱性)を増加させ、埋められた遊離チオールの数を減らし、及び/又は有効なヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)親和性を増加させることができる。
【0039】
他の様々な利点は、本明細書に記載される方法における修飾FGF-1ポリペプチドの使用に関連付けられる。例えば、本明細書に記載される修飾FGF-1ポリペプチドは、その医薬組成物又は製剤(例えば眼製剤)にヘパリンを含めることなく投与され、その生物学的由来に関連する起こり得る安全性の問題を回避することができる。加えて、ヘパリンの回避により、局所的なヘパリンで誘導された有害事象或いは先在する抗ヘパリン抗体から結果として生じる合併症をもたらすことなく、より多くの投与量の修飾FGF-1ポリペプチドの使用が可能になる。更に、ヘパリンがない場合、組織への修飾FGFの即時の結合は最大化され、全身分布は大幅に減少される。本明細書に記載される修飾FGF-1ポリペプチドはまた、局所的な分離を増強させ且つ再分布動態をへらすという利点があり、故に、送達部位での排出半減期及び平均滞留時間(MRT)が増加し、投薬頻度の減少が可能になる。このことは、安定性(例えば耐熱性)を増加させ、埋められた遊離チオールの数を減らし、及び/又は有効なヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)親和性を増加させる本明細書に記載される修飾FGF-1ポリペプチドの結果によるものであり得る。
【0040】
本開示のFGF-1ポリペプチドは、様々な実施形態において、付加、トランケーション、又は付加とトランケーションの組み合わせなど、ポリペプチドのN末端に修飾を含む。幾つかの実施形態において、修飾は単一のN末端メチオニン残基の付加である。幾つかの実施形態において、修飾は伸長ペプチドの付加である。幾つかの実施形態において、修飾は、FGF-1ポリペプチドの最初の5つの残基の1つ以上のトランケーションである。幾つかの実施形態において、FGF-1ポリペプチドは、N末端修飾に加えて、1つ以上の突然変異を伴うSEQ ID NO:1に明記されるような配列を含む。
【0041】
本明細書に開示される修飾FGF-1ポリペプチドの様々な例が、ポリペプチドの成熟形態においてN末端メチオニン(N-Met)残基を含む。アミノ酸がタンパク質のN末端に付加された時の生物活性の保持は、予測不能である。タンパク質の中にはこれに耐性を持つものもあれば、持たない物もあり、生物活性の保持及び安定性における変化の可能性のみが経験的に決定される。本開示は、N末端Met残基の付加が生物活性及び安定性の保持により耐用性を示すことを識別する。
【0042】
特定の用語
前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明は、典型的且つ例示的なものにすぎず、請求された主題の内容を限定するものではないことを理解されたい。本出願において、単数形の使用は、特に別記しない限り複数を含む。明細書と添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」、及び「the」は、他にその内容が明確に指示しない限り、複数の指示対象を含むということに留意しなければならない。本出願において、「又は」の使用は、特に明記しない限り、「及び/又は」を意味する。更に、用語「含むこと(including)」の使用は、「含む(include)」、「含む(includes)」、及び「含まれる(included)」といった他の形態と同じく、制限はない。
【0043】
本明細書で使用されるセクションの見出しは、単に構成上の目的のためであり、記載される主題を制限すると解釈されるものではない。別段の定めのない限り、本明細書で使用される技術用語と科学用語は、本願の主題が属するものと一般に理解されるのと同じ意味を持っている。本明細書の用語に複数の定義がある場合、このセクションの定義が優先される。本明細書で引用される特許、特許出願、公報、及び公開されたヌクレオチドとアミノ酸配列(例えばGenBank又は他のデータベースで入手可能な配列)は全て、参照により組み込まれる。URL又は他のそのような識別子或いはアドレスが言及される場合、そのような識別子は変更する場合があり、且つインターネット上の特定の情報は現れたり消えたりし得るが、同等の情報をインターネット検索により発見できることが理解される。これらに対する言及は、そのような情報の利用可能性と公的な普及を証拠づけるものである。
【0044】
本明細書で使用されるように、配列に対する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」という用語は、配列を整列させ、ギャップを導入して、必要に応じて最大のパーセント配列同一性を達成した後に、且つ、配列同一性の一部としてのいかなる保存的置換を考慮せずに、特定の配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基の割合として定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のための整列は、当該技術分野内の様々な方法で、例えば、EMBOSS MATCHER、EMBOSS WATER、EMBOSS STRETCHER、EMBOSS NEEDLE、EMBOSS LALIGN、BLAST、BLAST-2、ALIGN、又はMegalign(DNASTAR)のソフトウェアなどの公に利用可能なコンピュータソフトウェアを用いて達成可能である。当業者は、比較されている配列の完全長にわたって最大限の整列を達成するために必要とされるあらゆるアルゴリズムを含む、配列を測定するための適切なパラメータを決定することができる。
【0045】
標準的な化学用語の定義は、限定されないが、Carey and Sundberg “ADVANCED ORGANIC CHEMISTRY 4TH ED.” Vols. A (2000) and B (2001), Plenum Press, New York.を含む参考資料に見出すことができる。別段の定めのない限り、質量分光法、NMR、HPLC、タンパク質化学、生化学、組み換えDNA技術、及び薬理学の従来の方法である。
【0046】
特定の定義が提供されない限り、本明細書に記載される分析化学、有機合成化学、及び医薬品化学と製薬化学に関連して採用された命名法、及びこれらの検査法と技術は、当該技術分野で認識されているものである。標準的な技術は、化学合成、化学分析、薬剤の調整、製剤、及び送達、並びに患者の処置に使用することができる。標準的な技術は、組み換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、及び組織の培養と形質転換(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)に使用することができる。反応及び精製の技術は、例えば、メーカーの仕様書のキットを用いて、又は当該技術分野において一般に遂行されるように、或いは本明細書に記載されるように、実施することができる。前述の技術と手順は、一般に従来の方法で、及び、本明細書全体にわたって引用且つ議論される様々な一般的及びより具体的な文献に記載されるように、行うことができる。
【0047】
本明細書に記載される方法と組成物は、本明細書に記載される特定の方法、プロトコル、細胞系統、構築物及び試薬に限定されず、そのため変動し得ることを理解されたい。更に、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態だけを記載することを目的としており、本明細書に記載される方法、化合物、組成物の範囲を制限することを意図していない。
【0048】
用語「処置する」、「処置すること」、又は「処置」は、本明細書で使用されるように、疾患、障害、又は疾病の症状を緩和するか、軽減するか、或いは改善すること、追加の症状を防ぐこと、症状の根本的な代謝原因を改善するか、或いは予防すること、疾患、障害、又は疾病を阻害すること、例えば、疾患、障害、又は疾病の発生を妨げること、疾患、障害、又は疾病を軽減すること、疾患、障害、又は疾病の退行を引き起こすこと、疾患、障害、又は疾病によって引き起こされた状態を緩和すること、或いは疾患、障害、又は疾病の症状を止めることを含む。用語は「処置する」、「処置すること」、又は「処置」は、限定されないが、予防的及び/又は治療的な処置を含む。
【0049】
本明細書で使用されるように、製剤、組成物、又は成分に関して、用語「許容可能な」又は「薬学的に許容可能な」は、治療を受ける被験体の全般的な健康に対して持続的な有害な効果を及ぼさないことを指し、又は、本明細書に記載される修飾FGFの生物活性又は特性を抑止せず、比較的無毒である。
【0050】
本明細書で使用されるように、特定の修飾FGF又は医薬組成物の投与による、特定の疾患、障害、又は疾病の症状の「改善」という用語は、永続的か一時的か、持続的か暫定的かにかかわらず、修飾FGF又は医薬組成物の投与に帰する或いは関連付けられ得る、重症度の任意の低下、発症の遅れ、進行の鈍化、又は持続時間の短縮を指す。
【0051】
用語「組み合わせ」又は「医薬配合」は、本明細書で使用されるように、1より多くの有効成分の混合又は配合により生じた生成物を意味し、活性部分の固定配合と非固定配合の両方を含む。用語「固定された組み合わせ」とは、1つの有効成分(例えば、修飾FGF)と助剤が両方とも、単一の実体又は用量の形態で患者に同時に投与されることを意味する。用語「固定されていない組み合わせ」とは、1つの有効成分(例えば、修飾FGF)と助剤が、特定の介入時間の制限なく、同時に、並行して、又は連続して別個の実態として患者に投与され、こうした投与が患者の身体で2つの薬剤の効果的なレベルを与えることを意味する。後者はまた、カクテル療法、例えば3つ以上の有効成分の投与にも当てはまる。
【0052】
用語「医薬組成物」は、本明細書で使用されるように、担体、安定化剤、希釈剤、分散剤、懸濁化剤、増粘剤、及び/又は賦形剤などの1つ以上の他の化学成分を有する1つ以上の修飾FGF-1ポリペプチドを指す。医薬組成物は、生物体の修飾FGF-1ポリペプチドの投与を促進する。修飾FGF-1ポリペプチドを投与する複数の技術が当該技術分野に存在し、局所、眼、眼内、眼球周囲、静脈内、経口、エアロゾル、非経口投与の投与が挙げられる。
【0053】
用語「担体」は、本明細書で使用されるように、細胞又は組織への対象の薬剤(例えば修飾FGF)の取り込みを促進する、比較的無毒な化学化合物又は薬剤を指す。
【0054】
用語「希釈剤」は、送達前に対象の薬剤(例えば修飾FGF)を希釈するために使用される化学化合物を指す。希釈剤は、より安定した環境を提供できるので、薬剤を安定させるためにも使用され得る。緩衝液(pHの制御又は維持をもたらすこともできる)の中で溶解された塩は、当技術分野で希釈剤として利用され、リン酸緩衝生理食塩溶液を含むが、これに限定されない。
【0055】
用語「同時投与」などは、一人の患者への選択された薬剤(例えば修飾FGF又はその組成物と助剤)の投与を含むことを意味し、同じ又は異なる投与経路によって或いは同じ又は異なる時間で薬剤が投与される処置レジメンを含むように意図される。
【0056】
用語「有効な量」又は「治療上有効な量」は、処置される疾患、障害、又は疾病の症状の1つ以上をある程度緩和する、投与される本明細書に記載の修飾FGF-1ポリペプチド、薬剤、組み合わせ、又は医薬組成物の十分な量を指す。その結果、疾患の兆候、症状、又は原因を減少及び/又は軽減し、或いは生物系の他の望ましい変化をもたらすことができる。例えば、治療用途に対して「有効な量」は、不適当で有害な副作用のない病徴において、所望の薬理効果、治療の改善、又は臨床的に有意な減少をもたらすのに必要な、修飾FGF、薬剤、組み合わせ、又は医薬組成物の量である。任意の個々の症例における適切な「有効な量」は、用量漸増研究などの技術を使用して決定することができる。用語「治療上有効な量」は、例えば、予防に有効な量を含む。「有効な量」は、修飾FGF、組み合わせ、又は医薬組成物の代謝の変動、被験体の年齢、体重、全身状態、処置されている疾病、処置されている疾病の重症度、及び処方医師の判断次第で、被験体ごとに変動し得ることに留意されたい。一例において、治療上有効な量は、限定されないが段階的投与量増加臨床試験を含む慣例的な実験によって決定されることがある。
【0057】
用語「予防的に有効な量」は、処置されている疾患、障害、又は疾病の症状の1つ以上をある程度緩和する、本明細書に記載される修飾FGF、化合物、薬剤、組み合わせ、又は医薬組成物の量を指す。そのような予防用途において、そのような量は、患者の健康状態や体重などに依存し得る。限定されないが、投与量漸増臨床試験を含む慣例的な実験によってこうした予防的に有効な量を決定することは当業者に十分考慮されている。
【0058】
用語「被験体」又は「患者」は、本明細書で使用されるように、処置、観察、又は実験の対象である動物を指す。ほんの一例として、被験体は、限定されないがヒトを含む哺乳動物であってもよいが、これに限定されない。
【0059】
用語「増強する(enhannce)」又は「増強している(enhancing)」は、効力又は持続時間のいずれかにおいて、所望の効果を増加又は延長することを意味する。一例として、単独又は組み合わせで治療薬の効果を「増強する」とは、疾患、障害、又は疾病の処置に対する薬剤の効能、持続時間、及び/又は規模、効果の何れかにおいて増加又は延長させる能力を指す。患者への使用時、この用途に有効な量は、疾患、障害、又は疾病の重篤度及び経過、以前の治療、患者の健康状態及び薬物に対する反応、並びに処置を行う医師の判断に依存する。
【0060】
用語「調節する」は、標的(例えばFGF受容体)の活性を改質するように標的と直接的又は間接的に相互作用することを意味し、標的の活性の改質には、ほんの一例ではあるが、標的の活性の増強、標的の活性の阻害又は拮抗、標的の活性の制限、又は標的の活性の拡大が含まれる。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される修飾FGF-1ポリペプチド及び医薬組成物は、1つ以上のそれぞれの標的(例えば、1つ以上のFGF受容体)の活性を調節することができる。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される修飾FGF-1ポリペプチドは、細胞(例えば角膜内皮細胞)に対する1つ以上のFGF受容体の活性を調節し(例えば、増大させる)、結果として例えば細胞移動及び/又は細胞増殖をもたらす。
【0061】
本明細書で使用されるように、用語「標的」は、FGF受容体、或いは、本明細書に記載される選択的結合剤(例えば修飾FGF)又は医薬組成物により結合可能な生体分子の一部などの生体分子(例えば標的タンパク質又はタンパク質複合体)を指す。本明細書で使用されるように、用語「非標的」は、本明細書に記載される選択的結合剤又は医薬組成物により選択的に結合されない、生体分子又はその一部を指す。
【0062】
用語「標的活性」又は「細胞応答」は、修飾FGF、又は修飾FGFのFGF受容体への結合から結果として生じる任意の細胞応答によって調節可能な生物活性を指す。特定の典型的な標的活性及び細胞応答は、限定されないが、眼の疾患、障害、又は疾病に関連付けられる1つ以上の症状の結合親和性、シグナル伝達、遺伝子発現、細胞移動、細胞増殖、細胞分化、及び改善を含む。
【0063】
用語「ヘルペス性角膜炎」、「単純ヘルペス角膜炎」、「HSK」、「疱疹性角膜症」、「角膜疱疹」、及び「ヘルペス性角結膜炎」は、典型的に単純疱疹ウイルス(HSV)により引き起こされる、眼の疾患、障害、又は疾病を指す。
【0064】
修飾FGF-1ポリペプチドの発現形態及び成熟形態
FGFはファミリー7のFGF受容体アイソフォームを刺激し、各FGFは、その特異的な影響を達成するために異なるパターンの受容体を刺激する。例えば、Ornitz et al. (1996) The Journal of biological chemistry, 1996, 271(25):15292-7; Zhang et al. (2006) The Journal of biological chemistry, 2006, 281(23):15694-700)を参照。幾つかの実施形態において、修飾FGF-1ポリペプチドは、7つ全てのFGF受容体アイソフォームに結合し且つそれを刺激することから望ましい。Ornitz et al. (1996) The Journal of biological chemistry, 1996, 271(25):15292-7を参照。
【0065】
本明細書に開示される実施形態は、修飾FGF-1ポリペプチド、又は修飾FGF-1ポリペプチドを含む医薬組成物(例えば眼製剤)に関連する。本明細書に開示される実施形態はまた、修飾FGF-1ポリペプチド、又は修飾FGF-1ポリペプチドを含む医薬組成物(例えば眼製剤)を投与することにより化学物質又は発疱剤による損傷を処置する方法に関連する。修飾FGFポリペプチドは、本明細書で使用されるように、1つ以上の異なるアミノ酸残基の置換又は突然変異、及び/又は1つ以上のアミノ酸残基の1つ以上の欠失、及び/又はSEQ ID NO:1の1つ以上のアミノ酸残基の1つ以上の付加を含む、組み換えFGFを指す。
【0066】
本明細書には、一実施形態において、修飾FGF-1ポリペプチドが提供され、該修飾FGF-1ポリペプチドは、1つ以上の突然変異を伴うSEQ ID NO:1として明記される配列を含み、SEQ ID NO:1の第1の残基の上流のメチオニン残基を更に含む。幾つかの実施形態において、N末端メチオニン(N-Met)残基を含む修飾FGF-1ポリペプチドは、ポリペプチドの成熟形態である。幾つかの例において、修飾FGF-1ポリペプチドは、第1の実施形態に従い、SEQ ID NO:1の位置12、16、66、117、及び134に1つ以上の突然変異を含む。幾つかの実施形態において、修飾FGF-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:1の第1の残基の上流にメチオニン残基を有する宿主細胞に発現される。幾つかの実施形態において、修飾FGF-1ポリペプチドは、成熟中にN-Met残基の除去のためのN末端処理を受けない。故に、幾つかの実施形態において、修飾FGF-1の成熟形態は、N-Met残基、及び、SEQ ID NO:1の位置12、16、66、117、及び134に1つ以上の突然変異を含む。N-Met残基を含む典型的な修飾FGF-1配列は、SEQ ID NO:2として開示される。
【0067】
本開示は、成熟形態でN-Met残基を含む本明細書に記載されるような修飾FGF-1には、N-Met残基のない変形と同様の生物活性があることを識別している。N末端メチオニンの除去、即ち切除は、ポリペプチドがリボソームから現われるとすぐに生じる、同時翻訳プロセスである。N末端メチオニンの除去は、開裂酵素、即ちメチオニンアミノペプチダーゼ(metAP)の基質特異性を含み、これは、アラニン、グリシン、プロリン、セリン、トレオニン、又はバリンなどの小さな側鎖を持つアミノ酸残基を伴う、メチオニン残基を認識する。この基質配列特異性のために、フェニルアラニンを伴うN-Met残基を含む第1の実施形態の修飾FGF-1は、SEQ ID NO:1の位置1を確認し、metAPによって処理されない。故に、SEQ ID NO:1の上流に直接メチオニン残基を持つ修飾FGF-1を発現することによって、そのN末端としてメチオニンを含む成熟した修飾FGF-1を得ることができる。幾つかの実施形態において、第1の実施形態の修飾FGF-1は、N末端ペプチドにより発現されず、それ故、後の精製中にその除去のためのタンパク質分解開裂を受けない。
【0068】
第2の実施形態において、本明細書には、1つ以上の突然変異を持つSEQ ID NO:1として明記される配列を含む修飾FGF-1ポリペプチドが提供され、修飾FGF-1ポリペプチドは更に、SEQ ID NO:1の第1の残基の上流にメチオニン残基、及び、SEQ ID NO:3として明記されるペプチドの1つ以上のアミノ酸を含む。SEQ ID NO:3の1つ以上の残基を含むペプチドは、本明細書で「伸長ペプチド」と呼ばれる。故に、第2の実施形態に係る修飾FGF-1は、1つ以上の突然変異を持つSEQ ID NO:1として明記される配列、SEQ ID NO:1の第1の残基の上流にメチオニン残基、及びSEQ ID NO:1のメチオニン残基と第1の残基との間に位置する伸長ペプチドを含む。幾つかの実施形態において、N末端メチオニン、及び、SEQ ID NO:1のメチオニン残基と第1の残基との間に位置する伸長ペプチドを含む、修飾FGF-1ポリペプチドは、ポリペプチドの成熟形態である。幾つかの実施形態において、修飾FGF-1ポリペプチドは、ポリペプチドがSEQ ID NO:1の第1の残基の上流にメチオニン残基を持つ宿主細胞に発現される、SEQ ID NO:1の位置12、16、66、117、及び134に1つ以上の突然変異を、更にSEQ ID NO:1のメチオニン残基と第1の残基との間に位置する伸長ペプチドを含む。幾つかの実施形態において、第2の実施形態に係る修飾FGF-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:1のメチオニン残基と第1の残基との間に位置する、SEQ ID NO:3の5つの残基を含む伸長ペプチドにより発現される。幾つかの実施形態において、第2の実施形態に係る修飾FGF-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:1のメチオニン残基と第1の残基との間に位置する、SEQ ID NO:3の4つの残基により発現される。幾つかの実施形態において、第2の実施形態に係る修飾FGF-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:1のメチオニン残基と第1の残基との間に位置する、SEQ ID NO:3の3つの残基により発現される。幾つかの実施形態において、第2の実施形態に係る修飾FGF-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:1のメチオニン残基と第1の残基との間に位置する、SEQ ID NO:3の2つの残基により発現される。幾つかの実施形態において、第2の実施形態に係る修飾FGF-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:1のメチオニン残基と第1の残基との間に位置する、SEQ ID NO:3の1つの残基により発現される。伸長ペプチドの典型的な配列はSEQ ID NO:4-8を含む。
【0069】
幾つかの例において、伸長ペプチド及びN末端メチオニン残基を含む、第2の実施形態に係る修飾FGF-1ポリペプチドは、メチオニン残基の除去のためのN末端処理を受けず、一方で幾つかの例において、メチオニンは開裂酵素によって切除される。典型的に、開裂酵素はメチオニンアミノペプチダーゼ(metAP)である。故に、幾つかの例において、第2の実施形態に係る修飾FGF-1ポリペプチドの成熟形態は、本明細書に記載されるような伸長ペプチドを伴うN-Met残基を含む。N末端メチオニン、及び、SEQ ID NO:1のメチオニン残基と第1の残基との間に位置する伸長ペプチドの1つ以上の残基を含む、第2の実施形態に係る修飾FGF-1ポリペプチドの成熟形態の典型的な配列は、SEQ ID NO:9-13として明記され、配列は更に、SEQ ID NO:1の位置12、16、66、117、及び134に相当するアミノ酸にて1つ以上の突然変異を含む。N末端メチオニン及び伸長ペプチドを含む成熟した修飾FGF-1ポリペプチドの追加の典型的な配列は、SEQ ID NO:14-18として明記される。他の幾つかの例において、第2の実施形態に係る修飾FGF-1ポリペプチドの成熟形態は、N-Met残基を含まないが、伸長ペプチドのみを含む。SEQ ID NO:1の第1の残基の上流に位置する伸長ペプチドを含む第2の実施形態に係る修飾FGF-1ポリペプチドの成熟形態の典型的な配列は、SEQ ID NO:9-13として明記され、配列は更に、SEQ ID NO:1の位置12、16、66、117、及び134に相当するアミノ酸にて1つ以上の突然変異を含む。伸長ペプチドの1つ以上の残基を含む成熟した修飾FGF1ポリペプチドの追加の典型的な配列は、SEQ ID NO:24-28として明記される。幾つかの実施形態において、伸長ペプチドがアラニン(SEQ ID NO:4の中など)又はトレオニン(SEQ ID NO:5の中など)から出発すると、メチオニン残基はmetAPによって切断される。そのような例において、成熟FGF-1ポリペプチドはN末端メチオニン残基、例えばSEQ ID NO:19、21、24、及び26を含まない。
【0070】
本明細書には、第3の実施形態において、修飾FGF-1ポリペプチドが提供され、該修飾FGF-1ポリペプチドは、1つ以上の突然変異を伴うSEQ ID NO:1として明記される配列を含み、SEQ ID NO:1の第1の残基の上流に位置する伸長ペプチドを更に含む。幾つかの実施形態において、伸長ペプチドを含む修飾FGF-1ポリペプチドは、その成熟形態である。幾つかの実施形態において、修飾FGF-1ポリペプチドは、ポリペプチドがSEQ ID NO:1の第1の残基の上流に位置する伸長ペプチドの1つ以上のアミノ酸残基を持つ宿主細胞に発現される、SEQ ID NO:1の位置12、16、66、117、及び134に1つ以上の突然変異を含む。N末端メチオニン残基なしで発現される、伸長ペプチドを含む修飾FGF-1ポリペプチドの典型的な配列は、SEQ ID NO:19-23として明記され、配列は更に、SEQ ID NO:1の位置12、16、66、117、及び134に相当するアミノ酸にて1つ以上の突然変異を含む。伸長ペプチドの1つ以上の残基を含み、且つ、N末端メチオニン残基なしに発現される、成熟した修飾FGF-1ポリペプチドの追加の典型的な配列は、SEQ ID NO:24-28として明記される。
【0071】
本明細書には、第4の実施形態において、修飾FGF-1ポリペプチドが提供され、該修飾FGF15ポリペプチドは、1つ以上の突然変異を伴うSEQ ID NO:1として明記される配列を含み、SEQ ID NO:1の最初の5つの残基の1つ以上のトランケーションを更に含む。幾つかの実施形態において、最初の5つの残基の1つ以上のトランケーションを含む修飾FGF-1ポリペプチドは、その成熟形態である。幾つかの実施形態において、修飾FGF-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:1の位置12、16、66、117、及び134に1つ以上の突然変異を含み、最初の5つの残基の1つ以上は欠失させられる。場合によっては、トランケーションを含む修飾FGF-1ポリペプチドは、N末端メチオニン残基により発現される。例えば、第4の実施形態に係る修飾FGF-1ポリペプチドは、N-Met残基がSEQ ID NO:1の第2の残基、即ちアスパラギンを伴う配列を有し得る。場合によっては、修飾FGF-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:1の第3の残基、即ちロイシンを伴うN-Met残基を含む。場合によっては、修飾FGF-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:1の第4の残基、即ちプロリンを伴うN-Met残基を含む。場合によっては、修飾FGF-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:1の第5の残基、即ちプロリンを伴うN-Met残基を含む。伸長ペプチドは、N-Met残基と、SEQ ID NO:1の第1、第2、第3、第4、又は第5の残基との間に位置し得る。N-Met残基がSEQ ID NO:1の第1、第2、第3、第4、又は第5の残基を伴う第4の実施形態に係る修飾FGF-1ポリペプチドの成熟形態の例は、SEQ ID NO:37-40に示され、配列は更に、SEQ ID NO:1の位置12、16、66、117、及び134に相当するアミノ酸にて1つ以上の突然変異を含む。トランケーション及びN-Met残基を含む修飾FGF-1ポリペプチドの追加の例は、SEQ ID NO:41-44で提供される。
【0072】
本開示はまた、SEQ ID NO:1の1つ以上の突然変異を含む修飾FGF-1ポリペプチドに関連し、ここで、ポリペプチドは、伸長ペプチドを伴うN-Met残基により発現され、伸長ペプチドはSEQ ID NO:1の最初の5つの残基の1つ以上のトランケーションを伴う。幾つかの実施形態において、修飾FGF-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:1の位置12、16、66、117、及び134に1つ以上の突然変異を含み、ここで、ポリペプチドは、伸長ペプチドを伴うN-Met残基によりされ、伸長ペプチドはSEQ ID NO:1の最初の5つの残基の1つ以上のトランケーションを伴う。伸長ペプチドがSEQ ID NO:1の最初の5つの残基の1つ以上のトランケーションを伴う、伸長ペプチドを伴うN-Met残基により発現される前記配列の例は、SEQ ID NO:45-68として開示され、配列は更に、SEQ ID NO:1の位置12、16、66、117、及び134に相当するアミノ酸にて1つ以上の突然変異を含む。幾つかの例において、N末端メチオニンはN末端処理によって切断され、従って、修飾FGF-1ポリペプチドの成熟形態は、SEQ ID NO:69-92に例証されるように、SEQ ID NO:1の最初の5つの残基の1つ以上のことのトランケーションを伴うリーダーフラグメントの1つ以上の残基のみを含み、典型的な配列は更に、SEQ ID NO:1の位置12、16、66、117、及び134に相当するアミノ酸にて1つ以上の突然変異を含む。N-Met残基を含まないが伸長ペプチド及びN末端のトランケーションを含む、配列の追加の例は、SEQ ID NO:93-117に提供される。
【0073】
幾つかの例において、N-Met残基は、成熟した修飾FGF-1ポリペプチド配列に保持され、従って、成熟形態は、SEQ ID NO:1の位置12、16、66、117、及び134に相当するアミノ酸に1つ以上の突然変異を更に含む、SEQ ID NO:45-68に例証されるような配列を含む。N-Met残基、伸長ペプチド、及びN末端のトランケーションを含む配列の追加の例は、SEQ ID NO:118-141に提供される。
【0074】
SEQ ID NO:1の位置12、16、66、117、及び134に1つ以上の突然変異を含む修飾FGF-1ポリペプチドのトランケートされた変形は、第5の実施形態において、N末端メチオニン残基なしで、更に伸長ペプチドなしで発現される。幾つかの例において、第5の実施形態に係る成熟した修飾FGF-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:29-32に明記されるような配列を含み、配列は更に、SEQ ID NO:1の位置12、16、66、117、及び134に相当するアミノ酸にて1つ以上の突然変異を含む。幾つかの例において、第5の実施形態に係る修飾FGF-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:33-36から成る群から選択された配列を含む。
【0075】
SEQ ID NO:1の位置12、16、66、117、及び134に1つ以上の突然変異を含む修飾FGF-1ポリペプチド、又はそのトランケートされた変形が、伸長ペプチドを伴うN末端メチオニンにより発現される例において、メチオニン残基は、発現後のポリペプチドの成熟中にN末端に保持されるか、又はそこから切断される。幾つかの例において、修飾FGF-1ポリペプチドがN-Met残基の隣のアラニン、例えばSEQ ID NO:14により発現される場合、メチオニンは切断され、N-Met残基を含まない成熟FGF-1ポリペプチド、例えばSEQ ID NO:19をもたらす。幾つかの例において、修飾FGF-1ポリペプチドがN-Met残基の隣のトレオニン、例えばSEQ ID NO:16により発現される場合、メチオニンは切断され、N-Met残基を含まない成熟FGF-1ポリペプチド、例えばSEQ ID NO:20をもたらす。幾つかの例において、修飾FGF-1ポリペプチドがN-Met残基の隣のグルタミン酸、例えばSEQ ID NO:17により発現される場合、メチオニンは切断されず、N-Met残基を含む成熟FGF-1をもたらし、発現形態として同じ配列を持つ。
【0076】
第6の実施形態において、本明細書には、位置67に突然変異を含むSEQ ID NO:1として明記される配列を含む修飾FGF-1ポリペプチドが提供される。幾つかの実施形態において、修飾FGF-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:1の位置67に突然変異、位置12、16、66、117、及び134に1つ以上の更なる突然変異を含み、N-Met残基により発現される。位置67の内部メチオニンは、例えばアラニン残基と取り替えることができる。位置67に内部メチオニンがない状態で、修飾FGF-1ポリペプチドのN末端メチオニンは、発現の際に、臭化シアン(CNBr)、即ちメチオニン残基の後にアミド結合を特異的に切断する薬剤を使用して、切断することができる。場合によっては、第6の実施形態に係る修飾FGF-1ポリペプチドは、伸長ペプチドにより発現される。他の幾つかの例において、第6の実施形態に係る修飾FGF-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:142-149に例証されるように、SEQ ID NO:1の最初の5つの残基の1つ以上のトランケーションを含む形態で発現され、配列は更に、SEQ ID NO:1の位置12、16、66、117、及び134に相当するアミノ酸にて1つ以上の突然変異を含む。また他の例において、第6の実施形態に係る修飾FGF-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:151-175に例証されるように、伸長ペプチド、及びSEQ ID NO:1の最初の5つの残基の1つ以上のトランケーションを含む形態で発現される。第6の実施形態に係る修飾FGF-1ポリペプチドの追加の例は、それらの成熟した形態で、SEQ ID NO:174-204に明記される。内部メチオニン突然変異を含む形態で発現された修飾FGF-1ポリペプチドの中で、ポリペプチドが伸長ペプチドからのアラニン又はトレオニン残基、例えばSEQ ID NO:175、SEQ ID NO:177をそれぞれ伴うN末端メチオニンにより発現される場合、N末端メチオニンは、ポリペプチドの成熟中に、metAPにより又はCNBrを使用して、切断することができる。
【0077】
第7の実施形態において、本明細書には、本明細書に記載されるような方法に使用するための、SEQ ID NO:205として明記される配列を含む修飾FGF-1ポリペプチドが提供される。第8の実施形態において、本明細書には、本明細書に記載されるような方法に使用するための、SEQ ID NO:206として明記される配列を含む修飾FGF-1ポリペプチドが提供される。
【0078】
本開示は更に、SEQ ID NO:1の欠失、挿入、及び置換のあらゆる組み合わせを含む修飾FGF-1ポリペプチドに関連し、但し修飾ポリペプチドはSEQ ID NO:1の1つ以上の突然変異を含むことを前提とする。アミノ酸置換は、所望の活性、例えば、眼の障害の処置において保持又は改善された有効性、フックス角膜内皮ジストロフィーの改善における増加した効力、マスタードガス角膜症の改善された処置のためにスクリーニングされた修飾FGF-1ポリペプチド及び生成物へと導入され得る。アミノ酸置換はまた、所望の物理化学的性質、例えば、凝集の傾向の減少、改善された溶解度、延長された半減期、眼の医薬品としての製剤の容易さ、増強された安定性、改善された貯蔵期限のためにスクリーニングされた修飾FGF-1ポリペプチド及び生成物へと導入されうる。保存的且つ非保存的なアミノ酸置換が企図される。
【0079】
修飾FGF-1ポリペプチドは、上記実施形態の何れかにおけるように、少なくとも136のアミノ酸を含む形態で発現される。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、137のアミノ酸を含む形態で発現される。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、138のアミノ酸を含む形態で発現される。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、139のアミノ酸を含む形態で発現される。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、140のアミノ酸を含む形態で発現される。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、141のアミノ酸を含む形態で発現される。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、142のアミノ酸を含む形態で発現される。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、143のアミノ酸を含む形態で発現される。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、144のアミノ酸を含む形態で発現される。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、145のアミノ酸を含む形態で発現される。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、146のアミノ酸を含む形態で発現される。
【0080】
修飾FGF-1ポリペプチドは、上記実施形態におけるように、成熟形態で少なくとも136のアミノ酸を含む。幾つかの例において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、成熟形態で137のアミノ酸を含む。幾つかの例において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、成熟形態で138のアミノ酸を含む。幾つかの例において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、成熟形態で139のアミノ酸を含む。幾つかの例において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、成熟形態で140のアミノ酸を含む。幾つかの例において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、成熟形態で141のアミノ酸を含む。幾つかの例において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、成熟形態で142のアミノ酸を含む。幾つかの例において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、成熟形態で143のアミノ酸を含む。幾つかの例において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、成熟形態で144のアミノ酸を含む。幾つかの例において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、成熟形態で145のアミノ酸を含む。幾つかの例において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、成熟形態で146のアミノ酸を含む。
【0081】
幾つかの実施形態において、修飾FGF-1ポリペプチドの配列は、SEQ ID NO:1に対し50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を含み、但し、前記ポリペプチドはポリペプチドの成熟形態でN-Met残基を含むことを前提とする。幾つかの実施形態において、修飾FGF-1ポリペプチドの配列は、SEQ ID NO:9-13から選択された配列の何れかに対して50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を含み、但し、前記ポリペプチドはその成熟形態でN-Met残基を含み、SEQ ID NO:1の位置12、16、66、117、及び134に相当するアミノ酸にて1つ以上の突然変異を含むことを前提とする。幾つかの実施形態において、修飾FGF-1ポリペプチドの配列は、SEQ ID NO:14-18から選択された配列の何れかに対し50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を含み、但し、前記ポリペプチドはその成熟形態でN-Met残基を含むことを前提とする。幾つかの実施形態において、修飾FGF-1ポリペプチドの配列は、SEQ ID NO:19-23から選択された配列の何れかに対して50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を含み、但し、前記ポリペプチドはその成熟形態でN-Met残基を含まず、SEQ ID NO:1の位置12、16、66、117、及び134に相当するアミノ酸にて1つ以上の突然変異を含むことを前提とする。幾つかの実施形態において、修飾FGF-1ポリペプチドの配列は、SEQ ID NO:24-28から選択された配列の何れかに対し50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を含み、但し、前記ポリペプチドはその成熟形態でN-Met残基を含まないことを前提とする。幾つかの実施形態において、修飾FGF-1ポリペプチドの配列は、SEQ ID NO:19-23から選択された配列の何れかに対して50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を含み、但し、前記ポリペプチドはその成熟形態でN-Met残基を含まず、SEQ ID NO:1の位置12、16、66、117、及び134に相当するアミノ酸にて1つ以上の突然変異を含むことを前提とする。幾つかの実施形態において、修飾FGF-1ポリペプチドの配列は、SEQ ID NO:37-40から選択された配列の何れかに対して50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を含み、但し、前記ポリペプチドはその成熟形態でN-Met残基を含み、SEQ ID NO:1の位置12、16、66、117、及び134に相当するアミノ酸にて1つ以上の突然変異を含むことを前提とする。幾つかの実施形態において、修飾FGF-1ポリペプチドの配列は、SEQ ID NO:41-44から選択された配列の何れかに対し50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を含み、但し、前記ポリペプチドはその成熟形態でN-Met残基を含むことを前提とする。幾つかの実施形態において、修飾FGF-1の配列は、SEQ ID NO:45-68から選択された配列の何れかに対して50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を含み、但し、前記ポリペプチドはSEQ ID NO:1の位置12、16、66、117、及び134に相当するアミノ酸にて1つ以上の突然変異を含み、その成熟形態でN-Met残基を含まないことを前提とする。幾つかの実施形態において、修飾FGF-1の配列は、SEQ ID NO:69-92から選択された配列の何れかに対して50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を含み、但し、前記ポリペプチドはSEQ ID NO:1の位置12、16、66、117、及び134に相当するアミノ酸にて1つ以上の突然変異を含み、その成熟形態でN-Met残基を含むことを前提とする。幾つかの実施形態において、修飾FGF-1ポリペプチドの配列は、SEQ ID NO:93-117から選択された配列の何れかに対し50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を含み、但し、前記ポリペプチドはその成熟形態でN-Met残基を含まないことを前提とする。幾つかの実施形態において、修飾FGF-1ポリペプチドの配列は、SEQ ID NO:118-141から選択された配列の何れかに対し50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を含み、但し、前記ポリペプチドはその成熟形態でN-Met残基を含むことを前提とする。幾つかの実施形態において、修飾FGF-1の配列は、SEQ ID NO:29-32から選択された配列の何れかに対して50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を含み、但し、前記ポリペプチドはSEQ ID NO:1の位置12、16、66、117、及び134に相当するアミノ酸にて1つ以上の突然変異を含むことを前提とする。幾つかの実施形態において、修飾FGF-1ポリペプチドの配列は、SEQ ID NO:33-36から選択された配列の何れかに対し50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を含む。
【0082】
幾つかの実施形態において、修飾FGF-1ポリペプチドの配列は、SEQ ID NO:142-204から選択された配列の何れかに対し50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を含む。
【0083】
幾つかの実施形態において、修飾FGF-1ポリペプチドは、例えば突然変異Lys12Valを持つ位置12で突然変異したSEQ ID NO:1に対し50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を含み、前記修飾FGF-1ポリペプチドは、その成熟形態でN-Met残基を含む。幾つかの実施形態において、修飾FGF-1ポリペプチドは、最初の5つの残基の1つ以上のトランケーションを持つ、SEQ ID NO:1の位置12に突然変異、例えば突然変異Lys12Valを有する配列を含み、前記修飾FGF-1ポリペプチドはその成熟形態でN-Met残基を含む。幾つかの実施形態において、修飾FGF-1ポリペプチドは、伸長ペプチド、及び最初の5つの残基の1つ以上のトランケーションを持つ、位置12に突然変異、例えば突然変異Lys12Valを有する配列を含み、前記修飾FGF-1ポリペプチドはその成熟形態でN-Met残基を含む。幾つかの実施形態において、修飾FGF-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:1の位置12に突然変異、例えば突然変異Lys12Valを有する配列を含み、リペプチドは、SEQ ID NO:1の位置67にメチオニンの突然変異を更に含み、N末端にてメチオニンにより発現され、メチオニンはその成熟形態でポリペプチドから切断される。
【0084】
幾つかの実施形態において、修飾FGF-1ポリペプチドは、例えば突然変異Cys16Serを持つ、位置16にて突然変異したSEQ ID NO:1に対し50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を含み、前記修飾FGF-1ポリペプチドはその成熟形態でN-Met残基を含む。幾つかの実施形態において、修飾FGF-1ポリペプチドは、最初の5つの残基の1つ以上のトランケーションを持つ、SEQ ID NO:1の位置16に突然変異、例えば突然変異Cys16Serを有する配列を含み、前記修飾FGF-1ポリペプチドはその成熟形態でN-Met残基を含む。幾つかの実施形態において、修飾FGF-1ポリペプチドは、伸長ペプチド、及び最初の5つの残基の1つ以上のトランケーションを持つ、SEQ ID NO:16の位置16に突然変異、例えば突然変異Cys16Serを有する配列を含み、前記修飾FGF-1ポリペプチドはでN-Met残基を含む。幾つかの実施形態において、修飾FGF-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:1の位置16に突然変異、例えば突然変異Cys16Serを有する配列を含み、リペプチドは、SEQ ID NO:1の位置67にメチオニンの突然変異を更に含み、N末端にてメチオニンにより発現され、メチオニンはその成熟形態でポリペプチドから切断される。
【0085】
幾つかの実施形態において、修飾FGF-1ポリペプチドは、例えば突然変異Ala66Cysを持つ位置66で突然変異したSEQ ID NO:1に対し50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を含み、前記修飾FGF-1ポリペプチドは、その成熟形態でN-Met残基を含む。幾つかの実施形態において、修飾FGF-1ポリペプチドは、最初の5つの残基の1つ以上のトランケーションを持つ、SEQ ID NO:1の位置66に突然変異、例えば突然変異Ala66Cysを有する配列を含み、前記修飾FGF-1ポリペプチドはその成熟形態でN-Met残基を含む。幾つかの実施形態において、修飾FGF1ポリペプチドは、伸長ペプチド、及び最初の5つの残基の1つ以上のトランケーションを持つ、SEQ ID NO:1の位置66に突然変異、例えば突然変異Ala66Cysを有する配列を含み、前記修飾FGF-1ポリペプチドはN-Met残基により発現される。幾つかの実施形態において、修飾FGF-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:1の位置66に突然変異、例えば突然変異Ala66Cysを有する配列を含み、リペプチドは、SEQ ID NO:1の位置67にメチオニンの突然変異を更に含み、N末端にてメチオニンにより発現され、メチオニンはその成熟形態でポリペプチドから切断される。
【0086】
幾つかの実施形態において、修飾FGF-1ポリペプチドは、例えば突然変異Cys117Valを持つ、位置117にて突然変異したSEQ ID NO:1に対し50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を含み、前記修飾FGF-1ポリペプチドはその成熟形態でN-Met残基を含む。幾つかの実施形態において、修飾FGF-1ポリペプチドは、最初の5つの残基の1つ以上のトランケーションを持つ、SEQ ID NO:1の位置117に突然変異、例えば突然変異Cys117Valを有する配列を含み、前記修飾FGF-1ポリペプチドはその成熟形態でN-Met残基を含む。幾つかの実施形態において、修飾FGF-1ポリペプチドは、伸長ペプチド、及び最初の5つの残基の1つ以上のトランケーションを持つ、位置117に突然変異、例えば突然変異Cys117Valを有する配列を含み、前記修飾FGF-1ポリペプチドはその成熟形態でN-Met残基を含む。幾つかの実施形態において、修飾FGF-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:1の位置117に突然変異、例えば突然変異Cys117Valを有する配列を含み、リペプチドは、SEQ ID NO:1の位置67にメチオニンの突然変異を更に含み、N末端にてメチオニンにより発現され、メチオニンはその成熟形態でポリペプチドから切断される。
【0087】
幾つかの実施形態において、修飾FGF-1ポリペプチドは、例えば突然変異Pro134Valを持つ位置134で突然変異したSEQ ID NO:1に対し50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を含み、前記修飾FGF-1ポリペプチドはその成熟形態でN-Met残基を含む。幾つかの実施形態において、修飾FGF-1ポリペプチドは、最初の5つの残基の1つ以上のトランケーションを持つ、SEQ ID NO:1の位置134に突然変異、例えば突然変異Pro134Valを有する配列を含み、前記修飾FGF-1ポリペプチドはその成熟形態でN-Met残基を含む。幾つかの実施形態において、修飾FGF-1ポリペプチドは、伸長ペプチド、及び最初の5つの残基の1つ以上のトランケーションを持つ、位置134に突然変異、例えば突然変異Pro134Valを有する配列を含み、前記修飾FGF-1ポリペプチドはその成熟形態でN-Met残基を含む。幾つかの実施形態において、修飾FGF-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:1の位置134に突然変異、例えば突然変異Pro134Valを有する配列を含み、リペプチドは、SEQ ID NO:1の位置67にメチオニンの突然変異を更に含み、N末端にてメチオニンにより発現され、メチオニンはその成熟形態でポリペプチドから切断される。
【0088】
幾つかの実施形態において、修飾FGF-1ポリペプチドは、例えば突然変異Cys16Ser、Ala66Cys、及びCys117Valを持つ、SEQ ID NO:1の位置16、66、及び117にて突然変異したSEQ ID NO:1に対し50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を含み、前記修飾FGF-1ポリペプチドはその成熟形態でN-Met残基を含む。幾つかの実施形態において、修飾FGF-1ポリペプチドは、例えば突然変異Cys16Ser、Ala66Cys、及びCys117Valを持ち、及び最初の5つの残基の1つ以上のトランケーションを持つ、SEQ ID NO:1の位置16、66、及び117に突然変異を有する配列を含み、前記修飾FGF-1ポリペプチドはその成熟形態でN-Met残基を含む。幾つかの実施形態において、修飾FGF-1ポリペプチドは、例えば突然変異Cys16Ser、Ala66Cys、及びCys117Val、伸長ペプチド、及び、最初の5つの残基の1つ以上のトランケーションを持つ、SEQ ID NO:1の位置16、66、及び117に突然変異を有する配列を含み、前記修飾FGF-1ポリペプチドはでN-Met残基を含む。幾つかの実施形態において、修飾FGF-1ポリペプチドは、例えば突然変異Cys16Ser、Ala66Cys、及びCys117Valを持つ、SEQ ID NO:1の位置16、66、及び117に突然変異を有する配列を含み、リペプチドは、SEQ ID NO:1の位置67にメチオニンの突然変異を更に含み、N末端にてメチオニンにより発現され、メチオニンはその成熟形態でポリペプチドから切断される。
【0089】
幾つかの実施形態において、修飾FGF-1ポリペプチドの配列は、SEQ ID NO:2及び9-204から選択された配列に対し50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を含む。幾つかの実施形態において、修飾FGF-1ポリペプチドの配列は、SEQ ID NO:205又は206に対し50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を含む。
【0090】
幾つかの実施形態において、修飾FGF-1ポリペプチドは耐熱性である。本明細書で使用されるように、耐熱性FGF(例えば耐熱性FGF-1)は、同じ条件下でSEQ ID NO:1のポリペプチドよりも安定しているSEQ ID NO:1に対して修飾アミノ酸配列を持つFGFを指す。FGF(例えばFGF-1)に耐熱性を与えることができる突然変異の例、及び耐熱性を評価するための方法は、例えば米国特許7,790,682号;7,595,296号;7,696,171号;7,776,825号;7,659,379号;8,119,776号;8,153,770号;8,153,771号;及び8,461,111号;米国特許出願公開2011/0224404及び2013/0130983;及びXia et al. PloS one. (2012) 7(11):e48210に記載されている。幾つかの実施形態において、位置12及び/又は134は、耐熱性の修飾FGF-1を生成するためにFGF-1に突然変異される。
【0091】
幾つかの実施形態において、修飾FGF-1ポリペプチドは、反応性チオール(例えば遊離システイン)の数を減少させる1つ以上の修飾を含む。FGF-1におけるそのような修飾の例は、例えば米国特許7,790,682号;7,595,296号;7,696,171号;7,776,825号;7,659,379号;8,119,776号;8,153,770号;8,153,771号;及び8,461,111号;米国特許出願公開2011/0224404及び2013/0130983;及びXia et al. PloS one. (2012) 7(11):e48210に記載されている。幾つかの実施形態において、位置83及び/又は117は、反応性チオールの数を減らす修飾FGF-1を生成するためにSEQ ID NO:1において突然変異される。
【0092】
幾つかの実施形態において、修飾FGFは、内部ジスルフィド結合の形成を可能とする1つ以上の修飾を含む。幾つかの実施形態において、位置66は、内部ジスルフィド結合を含む修飾FGF-1を生成するためにSEQ ID NO:1において突然変異される。
【0093】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載される修飾FGF-1ポリペプチドは、安定性のために製剤中に外生のヘパリンを用いることなく投与することができ、ヘパリンを用いることなく製剤且つ適用することができ、故に、より組織ヘパランに結合することができる。そのような修飾FGF-1ポリペプチドは、外科的、外傷性、又は異栄養症の疾病及び疾患の状態に晒され、それ故に適用時に病変組織に結合する、組織ヘパランに対する高親和性を持つ。加えて、より熱的に安定している修飾FGF-1ポリペプチドは、室温での製剤及び保管に適している。修飾FGF-1ポリペプチドの安定性により、それらは溶液(例えば即時放出)及び徐放性製剤の両方における投与に適切となる。
【0094】
幾つかの実施形態において、修飾FGF-1ポリペプチドは、位置12、16、66、117、及び134の1つ以上にて修飾されたSEQ ID NO:1である。幾つかの実施形態において、修飾FGFは、位置16、66、及び117にて修飾されたSEQ ID NO:1である。アミノ酸位置は、例えばSer、Cys、Val、或いは修飾アミノ酸と野生型アミノ酸とのジスルフィド結合を作成する他のアミノ酸で置換され得る。幾つかの実施形態において、修飾FGFは、N-Met THX1114とも称される、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態において、修飾FGF-1ポリペプチドは、Lys12Val、Pro134Val、Ala66Cys、Cys117Val、及びPro134Valから成る群から選択された1つ以上の突然変異を含む。幾つかの実施形態において、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:2の配列を含む。
【0095】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載される修飾FGF-1ポリペプチド又は組成物は、プロドラッグとして調製され得る。「プロドラッグ」は、インビボで親薬物へと転換される薬剤を指す。幾つかの状況において、プロドラッグは親薬物よりも投与が容易であり得るため、多くの場合に有用である。それらは、例えば、経口投与によって生物学的に利用可能であり得るが、親薬物はそうではない。プロドラッグはまた、親薬物以上に医薬組成物において改善された溶解度を有し得る。
【0096】
本明細書に記載される修飾FGF-1ポリペプチドは、同位体的に(例えば放射性同位元素で)標識されるか、又は、限定されないが、発色団又は蛍光部分、生物発光標識、光活性化可能な標識又は化学発光標識の使用を含む他の手段によって標識され得る。
【0097】
本開示は更に、N末端修飾を含む修飾FGFポリペプチドに関連し、修飾FGFポリペプチドは、FGF-1(SEQ ID NO:1)、FGF-2、FGF-3、FGF-4、FGF-5、FGF-6、FGF-7、FGF-8、FGF-9、FGF-10、FGF-11、FGF-12、FGF-13、FGF-14、FGF-15、FGF-16、FGF-17、FGF-18、FGF-19、FGF-20、FGF-21、FGF-22、FGF-23、及びFGF-24を含む、FGFファミリーの任意のメンバーであり得る。
【0098】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載されるような修飾FGF-1ポリペプチドの合成は、当該技術分野で説明される手段を使用し、本明細書に記載される手段を使用して、或いはこれらの組み合わせによって達成される。
【0099】
幾つかの実施形態において、修飾FGFの配列は、例えばCys16Ser、Ala66Cys、及びCys117Valを持つ、1つ以上の位置16、66、及び117にて突然変異したSEQ ID NO:1に対し50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を含む。幾つかの実施形態において、修飾FGFは、例えばCys16Ser、Ala66Cys、及びCys117Valを持つ、位置16、66、及び117にて突然変異した野生型ヒトFGF-1配列を含む。
【0100】
修飾FGF-1ポリペプチドの調製のための組み換え技術
様々な宿主発現ベクター系が、本明細書で提供される修飾FGF-1ポリペプチドを産生するために利用され得る。そのような宿主発現系は、生成され、且つその後に精製されるだけでなく、適切なヌクレオチドコード配列で形質転換又はトランスフェクトされたときにインサイツで修飾遺伝子生成物を示すことができる細胞を表す。宿主発現系の例は、限定されないが、細菌、昆虫、植物、人を含む哺乳動物の宿主系を含み、該宿主系は、限定されないが、修飾FGF-1ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む組み替えウイルス発現ベクター(例えばバキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系;組み替えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)に感染した、或いは、修飾FGF-1ポリペプチドに対するコード配列を含む組み換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換される、植物細胞系;或いは、哺乳動物細胞の遺伝子由来のプロモーター、例えば、メタロチオネインプロモーター、或いは哺乳動物ウイルス由来のプロモーター、例えば、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、或いは酵母菌由来プラスミド由来のプロモーター、例えばpSH19、pSH15、或いはラムダ相及びその誘導体などのバクテリオファージ由来のプロモーターを含む組み換え発現構築物を抱えるヒト細胞系、例えばHT1080、COS、CHO、BHK、293、3T3を含む、哺乳動物細胞系などである。細菌発現系の例は、限定されないが大腸菌由来プラスミド(例えばpBR322、pBR325、pUC12、pUC13、及びpET-3);枯草菌由来プラスミド(例えばPUB110、pTP5、及びpC194)を含む。
【0101】
幾つかの実施形態において、挿入された配列の発現を調節するか、或いは特定の望ましい様式で遺伝子産物を修飾且つ処理するような宿主細胞株が選択される。そのようなタンパク質産物の修飾及び処理はタンパク質の機能に重要であり得る。様々な宿主細胞は、タンパク質及び遺伝子産物の翻訳後処理と修飾のための特定の機構を有している。適切な細胞株又は宿主系は、発現された異種タンパク質の適切な修飾と処理を確実に行うために選択可能である。この目的のために、遺伝子産物の主要な転写、グリコシル化、及びリン酸化の適正な処理のための細胞の仕組みを持つ真核生物の宿主細胞が、使用され得る。ヒト宿主細胞を含むそのような哺乳動物宿主細胞は、HT1080、CHO、VERO、BHK、HeLa、COS、MDCK、293、3T3、及びWI38を含むがこれらに限定されない。
【0102】
組み換えペプチドの長期間の高収率の産生のために、安定した発現が望ましい。例えば、組み換え修飾FGF-1ポリペプチドを安定して発現する細胞株が、操作され得る。幾つかの実施形態において、ウイルスの複製開始点を含有する発現ベクターを使用するよりもむしろ、宿主細胞は、適切な発現制御要素、例えば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位などによって制御されたDNA、及び選択可能なマーカーで形質転換され得る。外来DNAの導入後、操作した細胞を栄養強化培地において1-2日間成長させ、その後、選択培地に切り替える。組み換えプラスミド中の選択可能なマーカーは、選択に対する抵抗性を与え、細胞がプラスミドをその染色体へ安定的に組み入れ、成長するのを可能にして、次に細胞株へとクローン化され且つ広げられ得る病巣を形成する。幾つかの例において、この方法は、修飾FGF-1ポリペプチド生成物を発現する細胞株を操作するために都合よく使用され得る。そのような操作された細胞株は特に、遺伝子産物の生物学的なものに影響を与える化合物のスクリーニング及び評価において有用であり得る。
【0103】
修飾FGF-1ポリペプチドのジスルフィド結合形成
幾つかの実施形態において、本開示の修飾FGF-1ポリペプチドは、SEQ ID NO:1に突然変異、即ちCys16Ser、Ala66Cys、及びCys117Valを含み、ポリペプチドは、位置66と83にてシステイン残基間に内部ジスルフィド結合を含む。多くの組み換えタンパク質に関して、正確なジスルフィド結合の形成が、それらの生物学的に活性な三次元構成の達成に重要である。誤ったジスルフィド結合の形成は、タンパク質のミスフォールディング、及び封入体への凝集をもたらしかねない。E.coliにおいて、システイン酸化は典型的に周辺細胞質において生じ、そこでは、主としてDsbファミリー由来の無数の酵素によって触媒されたジスルフィド交換反応においてジスルフィド結合が形成される(Rosano, G. L., & Ceccarelli, E. A. (2014). Recombinant protein expression in Escherichia coli: advances and challenges. Frontiers in Microbiology, 5, 172)。対照的に、細胞質におけるジスルフィド結合形成は稀である。この状態は、Cys66とCys83との内部ジスルフィド結合を含む修飾FGF-1ポリペプチドなどの、細胞質中で産生されるジスルフィド結合による組み換えタンパク質の産生に影響を与える。従って、幾つかの例において、ジスルフィド結合形成を好む酸化細胞質環境を持つ、操作されたE.coli株が、修飾FGF-1ポリペプチドの発現のために宿主細胞として選択される(Rosano, G. L., & Ceccarelli, E. A. (2014). Recombinant protein expression in Escherichia coli: advances and challenges. Frontiers in Microbiology, 5, 172)。そのような株の例は、限定されないが、K-12バックグラウンドにtrxB-gor-遺伝子型を持つOrigami(Novagen)、及び、BL21(DE3)バックグラウンドにtrxB-gor-遺伝子型を持ち、且つジスルフィド結合イソメラーゼDsbCの染色体コピーを構成的に発現するSHuffle(登録商標)T7 Express株(NEB)を含む。DsbCが、誤って酸化されたタンパク質のその正確な形態への変換を促進し、及び、ジスルフィド結合を必要としないタンパク質のフォールディングを補助可能なシャペロンでもあることが、示されている。特定の理論に縛られることなく、DsbCの作用により、Cys66とCys83との内部ジスルフィド結合を含む修飾FGF-1ポリペプチドなどの、より少ない標的タンパク質が封入体へと凝集することが、企図されている。故に、特定の実施形態において、本開示は、Cys16とCys83との内部ジスルフィド結合を含む修飾FGF-1ポリペプチドの細胞質産生のための改善された方法を特定する。
【0104】
修飾FGF1ポリペプチドがN-Met残基により発現される幾つかの実施形態において、ポリペプチドは後に、N末端ペプチドの除去のためにタンパク質分解開裂を必要とする工程なしに、精製される。従って、幾つかの実施形態において、本開示は、N末端ペプチドの除去のためにタンパク質分解開裂を行う工程を含むことなく、本明細書に記載される修飾FGF-1ポリペプチドの急速な精製の方法を提供する。これは、適正製造基準(GMP)ガイドラインに従う修飾FGF-1ポリペプチドの産生に、特に都合が良い。その利点には、切断された生成物の後の精製、及び開裂に使用された試薬の除去に対する必要性を排除することを含む、開裂工程の欠如が挙げられる。この更なる利点は、取扱いの減少による収率の増加、開裂のために導入された残りの開裂試薬及び不純物の試験の必要性の緩和、及び未開裂の物質から切断された部分のその後の分離である。
【0105】
使用の方法
一実施形態において、本明細書には、上記実施形態に記載されるような修飾FGF-1ポリペプチドを哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物の眼の疾患、障害、又は疾病を処置する方法が提供される。幾つかの例において、本明細書に記載される方法に使用される修飾FGF-1ポリペプチドはSEQ ID NO:2及び9-204から選択された配列を含む。一実施形態において、本明細書には、SEQ ID NO:205又は206に明記されるような配列を含む修飾FGF-1ポリペプチドを哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物の眼の疾患、障害、又は疾病を処置する方法が提供される。
【0106】
幾つかの実施形態において、処置される眼の疾患、障害、又は疾病は、角膜内皮層の疾患、障害、又は疾病である。角膜内皮層の疾患、障害又は疾病は、限定されないが、フックス角膜内皮ジストロフィー、水疱性角膜症、1型先天性遺伝性角膜内皮ジストロフィー、2型先天性遺伝性角膜内皮ジストロフィー、後部多形性角膜ジストロフィー、又はドライアイ症候群を含む。
【0107】
理論に縛られることなく、眼の眼房水へと前房内注入される修飾FGF-1ポリペプチドの溶液は、内皮表面、具体的には健康な内皮層によって覆われていない角膜の任意の領域に結合すると考えられている。修飾FGFは、内皮細胞の増殖及び移動を刺激する。これにより、内皮ジストロフィーに関連付けられる角膜浮腫を軽減し、角膜又は内皮の移植の必要性の見込みを減少させる。修飾FGFの作用は、最大のジストロフィーの部位とは別の部位(典型的には角膜中心)に生じ、結果として、角膜の外周部における内皮細胞、及び線維柱帯(TM)における内皮祖先プール(endothelial progenitor pools)の刺激をもたらすことができる。
【0108】
幾つかの実施形態において、処置される眼の疾患、障害、又は疾病は、角膜上皮の疾患、障害、又は疾病である。角膜上皮の疾患、障害、又は疾病は限定されないが、ドライアイ症候群、スティーヴェンズ-ジョンソン症候群、及び角膜上皮欠損などの炎症性の疾病を含む。
【0109】
幾つかの実施形態において、処置される眼の疾患、障害、又は疾病は、疱疹性角膜症である。疱疹性角膜症は典型的に、単純ヘルペスウイルス(HSV)によって引き起こされる角膜感染症である。主な感染は、宿主粘膜の伝染性HSVへの直接的暴露の結果であり得る。主な感染、及び知覚神経節における潜伏の確立の後、ウイルスは、伝染性のサイクルに入り、そこから角膜に戻るように刺激され得る。一旦、この再発性感染が様々な合併症を引き起こすと、特に炎症反応は、十分に強い場合に角膜の保全性を損ない、角膜潰瘍、不透明、もや、瘢痕化、及び重度の場合には失明を引き起こしかねない。ヘルペス感染に付随して、慢性疱疹性角膜症、神経障害性角膜症、又はその両方の進行が存在し得る。例えば、免疫媒介性であり且つ先進国での角膜失明の主要原因である実質感染症は、慢性ウイルス再活性化の結果として生じ、神経障害性角膜症や退行性疾病を引き起こす。正常な角膜は密に神経分布しているが、血管を欠いている。主なウイルス感染後に続く発症は、神経を傷つけて角膜感覚の減少(角膜感覚減退)を引き起こすだけでなく、血管新生及び新生血管形成にも引き起こしかねない。
【0110】
更なる実施形態において、本明細書に記載される修飾FGF-1ポリペプチドは、上皮基底膜ジストロフィー、メースマン若年性上皮性角膜ジストロフィー、膠様滴状角膜変性症、リッシュ上皮性角膜ジストロフィー、上皮下粘液性角膜ジストロフィー、ライス-ビュックラー角膜変性症、又はティール-ベーンケ角膜ジストロフィー、及び再発性角膜びらんを処置するために使用され得る。
【0111】
幾つかの実施形態において、眼の疾病は、角膜(例えば角膜及び眼房水の界面における角膜表面又は内皮層)への損傷、又は、PRK、LASIK、及び任意の全層角膜手術又は角膜移植術を含む角膜手術によって引き起こされた外科的破壊を含む。
【0112】
本明細書にはまた、修飾された繊維芽細胞成長因子(FGF-1)ポリペプチド、或いはこれを含む医薬組成物又は薬剤を投与することにより、化学物質又は発疱剤で誘導された損傷を処置する方法が提供される。
【0113】
一実施形態において、本明細書にはまた、本明細書に記載されるような修飾FGF-1ポリペプチドを投与することにより、化学物質又は発疱剤で誘導された損傷を処置する方法が提供される、幾つかの実施形態において、前記方法は、化学薬品又は発疱剤によって引き起こされる皮膚損傷又は眼損傷を処置する工程を含む。幾つかの実施形態において、前記方法は、本明細書に記載される修飾FGF-1ポリペプチドを投与することにより、発疱剤、例えばナイトロジェンマスタード(NM)により誘導されるマスタードガス角膜症を処置する工程を含む。本明細書に記載されるような修飾FGF-1ポリペプチドによるMGKの処置の結果、幾つかの実施形態において、角膜上皮層の過形成、上皮-実質の細胞分離、浮腫、角膜びらんなどのMGKに関連付けられる組織病理学的疾病の改善がもたらされる。本開示の修飾FGF-1の投与の結果、特定の実施形態において、浮腫の減少及び角膜びらんの排除がもたらされる。角膜びらんは典型的に角膜の脱上皮化を特徴とし、幾つかの例において、修飾FGF-1の投与の結果、角膜のより迅速な再上皮化、又は角膜の脱上皮化の重症度の低下がもたらされる。一実施形態において、本明細書に記載されるような修飾FGF-1を投与することにより、化学物質又は発疱剤にさらされる患者の眼の表面上皮を再生する方法が記載される。幾つかの実施形態において、前記方法は、角膜の再生を促進し、角膜の変性を予防し、化学的損傷の長期的な後遺症を予防する。幾つかの例において、前記方法は、角膜内皮損傷、角膜上皮損傷、又は角膜実質損傷を処置する工程を含む。前記方法が角膜内皮損傷を処置する例において、本明細書に記載されるような修飾FGF-1の投与は、角膜内皮細胞の機能を増強し、角膜の長期的な変性を予防する。幾つかの例において、前記方法が角膜内皮損傷を処置する場合、本明細書に記載されるような修飾FGF-1の投与は、角膜浮腫及び副次的な前部角膜症を予防する。幾つかの例において、前記方法が角膜内皮損傷を処置する場合、本明細書に記載されるような修飾さFGF-1の投与は、角膜内皮細胞の損失を予防する。幾つかの実施形態において、前記方法は角膜上皮の分離の重症度の減少を結果としてもたらす。幾つかの実施形態において、前記方法は実質の瘢痕化及び角膜混濁などの実質損傷を処置する工程を含む。
【0114】
幾つかの実施形態において、眼疾病は、角膜への偶発性外傷、或いは化学的又は温熱性外傷を含む。幾つかの例において、化学的又は温熱性外傷は化学火傷である。幾つかの例において、化学的又は温熱性外傷は発疱剤によって引き起こされる。幾つかの例において、化学的又は温熱性外傷は化学兵器によって引き起こされる。
【0115】
多くの家庭用及び職業用の化合物には、眼及び皮膚の化学火傷を引き起こす可能性がある。迅速な介入なしに、不可逆的な視力喪失及び傷(disfigurement)が普及し得る。熱放出及び限定的な拡散なしに酸性とアルカリ性両方の薬剤を急速に中和する薬剤は、化学傷害を処置するのに有効であると企図される。典型的な化学傷害は、限定されないが、アルカリ損傷、酸損傷を含む。化学火傷の一般的な原因は、硫酸(H2SO4)、塩酸(HCl)、水酸化ナトリウム(NaOH)、石灰(CaO)、硝酸銀(AgNO3)、過酸化水素(H2O2)、塩素ガス、及び任意の強い酸化剤を含む。
【0116】
本明細書に記載される化学的又は温熱性外傷を引き起こしかねない典型的な化学兵器は、ホスゲン、じんま疹発生性のもの、又はネトル剤(nettle agent)である。ホスゲンは、室温と標準圧力では高度に毒性の無色のガスであり、0℃で発煙性の液体に凝縮する。その分子式はCOCl2である。ホスゲンは急性(短期)吸入曝露によって極めて毒性になる。肺水腫、肺気腫、及び死亡を含む、重度の呼吸器の影響が、ヒトにおいて報告されている。重度の眼の刺激及び皮膚火傷は、眼又は皮膚の曝露後に生じ得る。ホスゲンへの慢性(長期)吸入曝露も、気腫及び繊維症などの不可逆性の肺の変化を引き起こしかねない。その曝露は結果として、その迅速な浸透、及び即時の重度の皮膚損傷を引き起こす性能により、高い死亡率を含む広範囲で壊滅的な効果をもたらしかねない。近年の研究結果によると、ホスゲン蒸気への局所的な皮膚曝露は、マウスモデルにおいて、暴露後数分以内から8時間までに 紅斑性の環、壊死、浮腫、軽度の蕁麻疹、及び紅斑を伴う、暴露された皮膚の白化を引き起こすことが示されている。これら臨床的な皮膚徴候には、皮膚の厚みの増加、アポトーシス性細胞死、マスト細胞脱顆粒、好中球の浸潤を示すミエロペルオキシダーゼ活性、p53リン酸化及び蓄積、及びCOX-2とTNFαのレベルの増加が伴われる。局所的なホスゲン曝露は結果として、肝臓、脾臓、腎臓、肺、及び心臓の組織の血管におけるRBCの強健な増加を伴う、末梢血管の拡張ももたらす。これらの事象は、ショック、低酸素症、及び死亡を引き起こす血圧低下を引き起こす場合があることが、考慮される。Tewari-Singh N, Goswami DG, Kant R, Croutch CR, Casillas RP, Orlicky DJ, Agarwal R, Cutaneous exposure to vesicant phosgene oxime: Acute effects on the skin and systemic toxicity, Toxicol Appl Pharmacol. 2017 Feb 15; 317:25-32を参照。
【0117】
幾つかの実施形態において、修飾FGF-1ポリペプチドは、発疱剤曝露によって引き起こされた様々な皮膚損傷を処置、予防、又は改善する方法に使用され得る。
【0118】
発疱剤、発疱薬剤、又は発疱薬は、熱傷により引き起こされるものに似た皮膚損傷をもたらす毒性化合物である。吸入時にこれら薬剤は、上気道の他、肺にも影響して、肺水腫をもたらす。例えば、Ganesan, K., S. K. Raza, and R. Vijayaraghavan (2010) Chemical Warfare Agents, Journal of Pharmacy and Bioallied Sciences 2.3: 166-178を参照。これら薬剤は重度の眼の損傷も引き起こし得る。発疱剤の2つの形態:マスタード及び砒素剤が存在する。この分類の化学兵器において最も重要な物質は、硫黄マスタードである。他のメンバーは、ナイトロジェンマスタード(HN1、HN2及びHN3)、及び、ルイサイト(L1、L2及びL3)、エチルジクロロアルシン、メチルジクロロアルシン、フェニルクロロアルシン(phenyldichloriarsine)などのヒ素発疱剤を含む。
図12は、発疱剤の構造の幾つかの例を示す。発疱剤の特異的な例は、硫黄マスタード(SM)、ビス-(2-クロロエチル)硫化物、クロロエチルエチル硫化物(CEES)、ルイサイト、及び2-クロロ-N-(2-クロロエチル)-N-メチルエタンアミン塩酸塩、ナイトロジェンマスタード(NM)のファミリーのメンバーを含むがこれらに限定されない。本開示全体にわたって使用されるように、発疱剤、発疱を引き起こす薬剤、又は化学物質、発疱化薬剤などの用語は、具体的に本明細書に列挙されるような発疱剤、並びに、毒素及び/又は化学兵器などの他の化合物を意味すると取られる。硫黄マスタードは、WWIでの使用により、最高の軍事的有意性を持つ発疱剤である。ナイトロジェンマスタードは、1930年代に合成されたが、戦争のために大量に生産されなかった。メクロレタミン(HN2、Mustargen)は、癌化学療法剤として見出されてより穏やかに適用されており、長年にわたりこの目的のための標準の化合物のままであった。ルイサイト(L)は、マスタードと同様の非可燃性特性及び毒性により軍事目的のために1918年に合成されたが、恐らく戦場上で使用されていない。マスタードは類放射線であり、細胞の分割に対し極めて毒性である。マスタードは脂肪好性であり、皮膚、大半の織物、及びゴムに容易に浸透する。細胞膜を通過後、硫黄マスタードは高度に反応性のスルホニウムイオンに変換される。これは、不可逆的にDNA、RNA、及びタンパク質をアルキル化し、細胞死を引き起こし;最も重要な標的はDNAである。マスタードは、DNAのブリン塩基をアルキル化し、それらを破損する。ルイサイトは、更に迅速に皮膚により吸収され、影響を受けた器官に即時の疼痛及び刺激を引き起こし、より系統的な症状をもたらす。これはスルフヒドリル基に直接結合し、それらを不活性化する。
【0119】
化学戦における硫黄マスタード(SM)及び他の発疱化剤の使用が長く知られている。より最近では、2015年8月、SMは、イラクにおけるクルド人軍に対する攻撃の他、シリアにおける攻撃に、ISISにより使用された。マスタード薬剤は眼、皮膚、及び肺を傷つけ、眼が最も影響を受けやすい。症状は曝露の2~4時間後まで現れないので、露出された人は自身がマスタードにさらされたことを直ちに知ることができない。この遅れは、曝露の症状が最終的に進行した時に混乱とパニックの一因となる。眼に関して、これらは、眼瞼痙攣、流涙、刺激、疼痛、及び光線恐怖症から成る。硫黄マスタード(SM)蒸気への眼の曝露から結果として生じる角膜外傷は、化学戦での最も普及した損傷である。眼の曝露は、3つの別個の用量依存性の臨床的軌道:完全な損傷の解決、慢性傷害への即時の遷移、又は、その後の持続性の眼の徴候の進行を伴う明らかな回復を示す。これら後者2つの軌道は、総体的にマスタードガス角膜症(MGK)として知られる一連の角膜の症状を含む。急性損傷中の組織に特異的な損傷は、角膜内皮及び角膜縁の幹細胞の再生能力を減らすことができ、それにより角膜をMGKの慢性形態又は遅延形態に傾かせる。
【0120】
幾つかの患者に対し、MGKは曝露後に数週間で現われ;他の場合には発生に数年かかる。この角膜症は、角膜の結膜化及び角膜縁の幹細胞の欠損を特徴とする。ヒト角膜内皮において、CEC損失によるギャップ(gaps)は典型的に、近位のCECの拡散により満たされることが示されている。これらの形態学的変化は、角膜と眼房水との間の障壁がこれ以上維持できなくなるまで内皮欠損を補い、結果として持続性角膜浮腫及び副次的な前部角膜症をもたらす。成人ヒトCECはインビボで増殖しないので、CECの損失は故に、場合によっては内皮の性能の恒久的な減少を表わす。故に、内皮機能はCEC拡散による軽度の損傷後に修復することができる一方、より重度の損傷は、ヒト内皮の修復能力を超える場合がある。ウサギは、CEC増殖を受けることができ、CEC欠損からの回復をもたらす能力の改善をもたらすという点で、ヒトとは異なる。しかし、ヒトにおけるように、ウサギ内皮に対する十分に重度の損傷は結果として、不可逆的な角膜代償機能不全及び副次的な角膜症ももたらす。
【0121】
上記の研究に基づいて、発疱剤で誘導された内皮不全は、MGK病因の根幹をなす原因的な機構であり得ることが仮定されている。この仮説は、ヒト及びウサギに観察されたSMとMGKの発達との間の投与量依存の他、ヒト死傷者で報告された様々な臨床的軌道(回復した慢性MGK及び発症が遅延したMGK)と一致している。この仮説によると、低用量の発疱剤への角膜曝露は結果として急性上皮病変をもたらす場合があり、内皮毒性は最小であり、角膜は長期合併症を生じることなく回復する。代替的に、角膜内皮に回復不能の損傷を引き起こす、発疱剤の投薬への曝露は結果として、副次的な前部角膜症を伴う持続性浮腫をもたらす内皮障壁不全をもたらす。重度の損傷後、急性損傷とMGK発現との間に明らかな遅れが生じ得る。従って、硫黄マスタード及び同様に作用する化学毒物、特に化学兵器による損傷を最小化又は予防するための組成物又は方法は、米国国防総省で働く科学者にとって重要な追求である。近年の研究は、発疱化剤としてマスタード化合物が上皮-実質の付着の損失をもたらすことを示した。角膜において、microbullaeが形成され、一旦十分に生じると、角膜上皮は基底膜へと迅速に保持することができず、上皮組織は剥がれ落ちる。故に、SMに対して有効な曝露後治療は、角膜上皮が実質に付いたまま残る能力を増強することが望まれる。理論に縛られることなく、角膜上皮が実質に付いたまま残る能力は、幾つかの基礎的な角膜上皮がインサイツで回復する機会を得て、それらの基底膜及び実質との接続を維持することを可能にすることが、企図されている。また、上皮-実質の保全性における主要物質の1つがコラーゲンXVII(即ち、BP180)、半接着班の膜貫通型構成要素であることも仮定された。損傷後の、ADAM9、ADAM10、及び/又はADAM17を含むタンパク質のADAM(「A Disintegrin And Metalloproteinase」)ファミリーによるコラーゲンXVIIの開裂は、それらの基底膜から上皮細胞を放出し、この開裂によりそれらが移動可能となる。
【0122】
TNF-a転換酵素又はTACEとしても知られるADAM17は、損傷に対する一般的な反応であると共に、コラーゲンXVIIを放出するための「シェダーゼ」でもある。発疱剤曝露によって引き起こされる角膜の微小水疱形成は部分的に、コラーゲンXVIIを切断可能なADAM17の活性化によるものであることが、仮定された。実験データは、発疱剤NMに晒された角膜の表皮基底膜領域でのADAM17発現の誘導を確認した。故に、ADAM17発現の曝露後のアップレギュレーションを阻害可能な薬剤は、発疱剤によって引き起こされた角膜外傷の弱化に有用であると企図される。
【0123】
本開示は、悪影響を処置し、減少し、及び/又はSM及びNMなどの発疱剤への曝露の治癒を補助する、修飾FGF-1ポリペプチドを提供する。本明細書に開示される修飾FGF-1ポリペプチドは、SM及び/又はNMなどの発疱剤への曝露後のADAM17の過剰発現を予防することができる。
【0124】
本開示はまた、修飾FGF-1ポリペプチドを投与することにより、化学物質又は発疱剤で誘導された損傷の悪影響を処置、予防、減少し、及びその治癒を補助する方法を提供する。幾つかの実施形態において、本明細書に開示される方法は更に、SM及び/又はNMなどの発疱剤への曝露後のADAM17の過剰発現を予防する。
【0125】
野生型FGF-1タンパク質、例えばSEQ ID NO:1は、酸化及びアルキル化に敏感な、対になっていないシステイン残基を有する。
図1を参照。修飾FGF-1ポリペプチドが対になっていないシステイン残基を含まない本開示の幾つかの実施形態において、そのような修飾FGF-1ポリペプチドは、発疱剤による酸化及び/又はアルキル化にあまり敏感ではない。実験データはまた、FGF-1のレベルの減少を示し、及びそのmRNAは、マスタード薬剤への曝露から結果として生じることが知られており、この欠損は、角膜におけるマスタード誘発性病変の遅い治癒における役割を果たし得ると仮定されている。本開示の幾つかの実施形態において、遊離システイン残基を含まず、従ってシステイン修飾に対しあまり又は全く敏感ではない修飾FGF-1ポリペプチドは、角膜マスタード病変の治癒を速めるのに有効である。
【0126】
本開示の幾つかの実施形態において、前記方法は、対になっていないシステイン残基を含まない修飾FGF-1ポリペプチドを投与する工程を含み、修飾FGF-1ポリペプチドは発疱剤による酸化及び/又はアルキル化にあまり敏感ではない。本開示の幾つかの実施形態において、前記方法は、対になっていないシステイン残基を含まず、従ってシステイン修飾に対しあまり又は全く敏感ではない、修飾FGF-1ポリペプチドを投与する工程を含む。幾つかの実施形態において、本明細書に開示される方法は、MGKに関連付けられる角膜病変の治癒を速めるのに有効である。
【0127】
硫黄マスタード(SM)及びナイトロジェンマスタード(NM)などの発疱剤への曝露は、水疱形成の遅延を伴う重度の皮膚損傷を引き起こしかねない。それらの曝露の用量と時間に依存して、浮腫及び紅斑は場合により、水疱、潰瘍、壊死、落屑、及び色素沈着の変化へと進行し、これらは曝露後の数週間及び数年間持続する。例えば、Tewari-Singh N, Agarwal R, Mustard vesicating agent-induced toxicity in the skin tissue and silibinin as a potential countermeasure, Ann N Y Acad Sci. 2016 Jun; 1374(1):184-92を参照。他の典型的な発疱剤であるホスゲンオキシム(CX)、じんま疹発生性又はネトル剤も、潜在的な化学兵器及びテロリスト兵器である。
【0128】
幾つかの実施形態において、処置される眼の疾患、障害、又は疾病は、角膜実質の疾患、障害、又は疾病である。角膜実質の疾患、障害又は疾病は、限定されないが、円錐角膜、格子状角膜ジストロフィー、顆粒状角膜変性症、斑状角膜変性症、シュナイダー結晶状角膜ジストロフィー、先天性間質性角膜ジストロフィー、斑点角膜ジストロフィー、外傷、化学的又は温熱性外傷、又はトラコーマなどの感染症に付随する損傷を含む。
【0129】
更なる実施形態において、本明細書に記載される修飾FGF-1ポリペプチドは、角膜(例えば角膜内皮構造)の破壊に関与する、角膜移植処置(例えば、デスメ膜に関与する角膜移植又は処置)の前、間、又は後に適用可能であり、ここで、角膜又は眼表面の細胞治癒の加速、及び/又は損傷に対する細胞応答の(例えば、移植細胞の生存率及び/又は寿命の増大による)改善は、結果として治療効果をもたらす。
【0130】
更なる実施形態において、本明細書に記載される修飾FGF-1ポリペプチドは、移植のために調製される角膜細胞又は角膜前駆細胞の生存率及び健康を増大するために使用され得る。提供された角膜又は他の提供された角膜組織に対する器官培養培地に添加された修飾FGF-1ポリペプチドは、角膜細胞を刺激し、移植前に保管され得る角膜の時間の長さを増大する他、角膜が移植に有用となるのに十分に健康な細胞を持つ確率を増大する。また、修飾FGF-1ポリペプチドは、それら細胞の増殖を刺激するために角膜前駆細胞を培養するときに培養培地において使用することができる。
【0131】
更なる実施形態は、前記角膜内皮細胞を修飾FGF(例えばSEQ ID NO:2の配列を含むものなどの、修飾FGF-1)と接触させる工程を含む、角膜内皮細胞における1つ以上の繊維芽細胞成長因子受容体(FGFR)の活性を調節する方法に関する。そのような方法は、細胞移動及び/又は細胞増殖の増加を結果としてもたらし得る、1つ以上のFGFRの活性を増加又は刺激するために使用され得る。
【0132】
更なる実施形態において、本開示に係る修飾FGF-1ポリペプチドを投与することにより、代謝疾患を処置する方法が記載される。開示の修飾FGF-1ポリペプチドで処置可能な典型的な代謝疾患は、限定されないが以下を含む:(1)真性糖尿病(1型及び2型)、妊娠性糖尿病、高血糖症、インスリン抵抗性、異常なグルコース代謝、「糖尿病前症」(空腹時血糖異常(IFG)又は耐糖能障害(IGT))、及び、高血糖疾病、例えば膵臓β-細胞破壊などの組織病理学的変化に関連付けられる又はそれに起因する他の生理障害を含む、グルコース利用障害及びそれに関連する後遺症;(2)脂質異常症、及び、例えばアテローム動脈硬化症、冠動脈疾患、脳血管障害などのその後遺症;(3)肥満症及び体質量の上昇(限定されないが、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、及び多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)などの、共病的状態を含む)などのメタボリックシンドロームに関連付けられ得る、且つ血栓症、過剰凝血、及び血栓形成前期状態(動脈及び静脈)、高血圧症、循環器疾患、卒中、及び心不全も含む、他の疾病;(4)アテローム動脈硬化症、慢性炎症性腸疾患(例えばクローン病及び潰瘍性大腸炎)、喘息、紅斑性狼瘡、関節炎、又は他の炎症性のリウマチ障害を含む、炎症反応が関与する障害又は疾病;(5)例えば、脂肪肉腫、固形腫瘍、及び腫瘍を含む、脂肪細胞腫瘍、脂肪腫細胞腫などの細胞周期又は細胞分化プロセスの障害;(6)アルツハイマー病、多発性硬化症、パーキンソン病、進行性多病巣性白質脳症、及びギランバレー症候群を含む、神経変性疾患、中枢神経系及び末梢神経系の脱髄障害、神経炎症プロセスに関与する神経系疾患、及び/又は他の末梢神経障害;(7)紅斑性扁平上皮の皮膚病を含む、皮膚及び皮膚科学的な障害、及び/又は創傷治癒プロセスの障害;及び(8)X症候群、変形性関節症、及び急性呼吸窮迫症候群などの他の障害。また、治療上有効な量の開示の修飾FGF-1ポリペプチド(又はそれをコードする核酸分子)を投与することにより、供給時及び空腹時の血糖を減らし、インスリン感性及びブドウ糖負荷を改善し、全身の慢性炎症を減らし、哺乳動物の脂肪肝を改善し、食物摂取量を減らし、又はそれらの組み合わせを行う方法も、記載される。
【0133】
幾つかの実施形態において、修飾FGF-1ポリペプチドは創傷治癒のために投与される。創傷の例は、限定されないが、すり傷、開放性気胸(例えば、解放性気胸)、火傷、挫傷、銃創、切傷、解放創、穿通創、穿孔創、刺創、串線創、刺傷、外科的創傷、皮下創傷、糖尿病病変、又は節線創を含む。本明細書に記載される化合物及び組成物により処置可能な創傷の追加の例は、熱傷、化学的熱傷、放射線熱傷、紫外線の過剰な曝露によって引き起こされた熱傷(例えば日焼け)などの急性疾病又は創傷;労働及び出産の結果としての会陰縫線などの身体の組織の損傷;会陰切開術などの医療手技中に負った損傷;切り傷、切開、擦過創を含む、外傷により誘導された損傷;事故により負った損傷;手術後の損傷の他、床擦れ、褥瘡、糖尿病及び血行不良に関連する疾病、及び全てのタイプのざ瘡などの慢性疾病を含む。加えて、創傷は、膿痂疹、間擦疹、毛包炎、及び湿疹、歯科手術後の創傷;歯槽膿漏症;外傷後の創傷;及び腫瘍に関連する創傷を含み得る。創傷のまた他の例は、動物咬創、動脈疾患、虫刺及び咬傷、骨感染症、機能低下皮膚/筋移植、壊疽、皮膚裂傷又は裂創、皮膚老化、遅延型又は非治癒型の外科的創傷を含む外科的切開、脳内出血、動脈瘤、皮膚無力症、及び術後感染症を含む。
【0134】
本発明の治療用ペプチドはまた、限定されないが擦り傷、切り傷、裂創、咬傷、射創、刺傷、熱的創傷、化学的熱傷、外科的創傷、褥瘡、放射線障害、全ての種類の急性及び慢性創傷、審美的な皮膚処置によりもたらされる創傷又は病変により引き起こされる外傷を処置するために使用され得る。ペプチドは皮膚老化の効果を改善するためにも使用され得る。ペプチドは、外傷の創傷治癒を早め、及び/又は、創傷領域、或いは加齢及び疾患にさらされた皮膚の審美的外観を改善することができる。ペプチドは、心臓、骨、脳、脊髄、網膜、末梢神経、及び、急性及び慢性の損傷、疾患、先天性及び発生奇形並びに加齢のプロセスに一般的にさらされる他の組織と器官を含むがこれらに限定されない器官と組織に対する、疾患、手術、発砲、突き刺し、事故、梗塞、虚血性の損傷により引き起こされる内部損傷を処置するために使用される。
【0135】
幾つかの実施形態において、修飾FGF-1ポリペプチドは火傷を処置するために投与される。典型的な熱傷は、限定されないが「熱傷潰瘍」を含み、例えば、第一度熱傷(即ち、皮膚のの表面の赤くなった領域);第二度熱傷(水疱液が取り除かれた後、自然に治癒し得る水疱のある損傷部位);第三度熱傷(皮膚全体にわたる火傷、通常は創傷治癒のために外科的介入を要求);排尿痛(熱湯、グリース、又はラジエーター液から生じ得る);熱傷(炎から生じ得る、通常は全層熱傷);化学火傷(酸及びアルカリから生じ得る、通常は全層熱傷);電気火傷(家のまわりの低電圧、又は作業時の高電圧の何れか);爆発点滅(通常は体表損傷);及び閃光熱傷(通常は全層であり、マフラーの排気管、熱い鉄、及びストーブから生じ得る)を含む熱傷の結果として生じる潰瘍が挙げられる。本明細書で使用されるように、創傷治癒の遅延又は困難は、例えば、1)長期間の炎症相、2)細胞外マトリックス(ECM)の形成の遅さ、及び3)上皮化速度の減少を少なくとも部分的に特徴とする創傷を含み得る。成長因子、例えばFGF-1は、神経再生及び神経治癒において重要な役割を果たすことが示されている。FGF-1は、神経の増殖及び成長を刺激すると考えられ且つ神経保護的であり得るので、腕神経叢損傷などの脊髄損傷又は外傷、急性又は特発性横断脊髄炎(TM)などの神経免疫障害、或いは、ニューロン又は神経組織の再生及び/又は保護が望ましい他のあらゆる疾患又は疾病を伴う神経系組織の再生に使用するために示唆されている。例えば、Cheng, H. et al., “Spinal Cord Repair with Acidic Fibroblast Growth Factor as a Treatment for a Patient with Chronic Paraplegia,” SPINE 29(14):E284-E288 (2004);及びLin, P-H., “Functional recovery of chronic complete idiopathic transverse myelitis after administration of neurotrophic factors,” Spinal Cord 44:254-257 (2006)を参照。FGF-1は、神経組織栄養活性を持ち、軸索の増殖を促進し、脊髄損傷及び軸索再生のモデルにおける有益な効果を及ぼすと知られている。従って、幾つかの実施形態において、本開示の修飾FGF-1ポリペプチドは神経の再生を促進し、且つ、神経再生から利益を得る疾病を処置する方法に使用することができる。幾つかの方法の例において、神経学的疾病は筋萎縮性側索硬化症(ALS)である。幾つかの方法の例において、神経学的疾病は急性又は特発性横断脊髄炎(TM)である。特定の例において、修飾FGF-1ポリペプチドは、神経再生から利益を得る疾病を処置するために、他の成長因子に加え、他の薬学的に活性な成分と組み合わせて投与することができる。
【0136】
医薬組成物、投与の方法、及び投薬
本明細書に記載されるような修飾FGF-1ポリペプチドを含む医薬組成物は、薬学的に使用可能な調製物への活性化合物の処理を促進する賦形剤と助剤を含む、1つ以上の生理学的に許容可能な担体を使用して、従来の様式で製剤されてもよい。適切な製剤は、選択される投与経路に左右される。本明細書に記載される医薬組成物に適切な賦形剤に関する更なる詳細は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy, Nineteenth Ed (Easton, Pa.: Mack Publishing Company, 1995);Hoover, John E., Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, Pennsylvania 1975;Liberman, H.A. and Lachman, L., Eds., Pharmaceutical Dosage Forms, Marcel Decker, New York, N.Y., 1980;及びPharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, Seventh Ed.(Lippincott Williams & Wilkins1999)に見ることができ、これらは、そのような開示のための参照により本明細書に組み込まれる。
【0137】
医薬組成物は、本明細書で使用されるように、担体、安定化剤、希釈剤、分散剤、懸濁化剤、増粘剤、及び/又は賦形剤などの他の化学成分、並びに随意に、他の治療及び/又は予防成分と修飾FGFとの混合物を指す。医薬組成物は、生物体への修飾FGFの投与を促進する。本明細書で提供される処置方法又は使用方法を行う際に、本明細書に記載される治療上有効な量の修飾FGF-1ポリペプチドは、処置される眼の疾患、障害、又は疾病を抱える哺乳動物に医薬組成物として投与される。幾つかの実施形態において、哺乳動物は、ヒトである。治療上有効な量は、疾患の重症度、被験体の年齢及び相対的な健康状態、使用される化合物の力価、並びに他の要因に依存して変化する。薬学的に許容可能又は適切な組成物は眼科的に適切又は許容可能な組成物を含む。
【0138】
医薬組成物(例えば、注射による送達、又は点眼薬としての適用のためのもの)は、液体又は固体の形態であり得る。液体医薬組成物は、例えば、以下の1つ以上を含み得る:注射用水、食塩水、好ましくは生理食塩水、リンゲル溶液、等張食塩水などの無菌の希釈剤、溶媒又は懸濁媒として機能し得る固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、又は他の溶媒;抗菌物質;抗酸化剤;キレート化剤;塩化ナトリウム又はデキストロースなどの張度の調節のための緩衝液及び薬剤。非経口調製物はガラス又はプラスチックで作られたアンプル、使い捨て注射器、又は複数回投与用のバイアルに入れることができる。生理食塩水は一般的に賦形剤として使用され、(例えば点眼薬として)眼に送達される注入可能な医薬組成物又は組成物は、好ましくは滅菌されている。
【0139】
本明細書に記載される修飾FGFポリペプチド又は医薬組成物は、任意の適切な手段により被験体に送達することができ、例えば、局所、眼内、前房内、経口、非経口、静脈内、腹腔内、鼻腔内(又は、粘膜、例えば鼻、咽喉、及び気管支への他の送達方法)、或いは眼への局所投与、又は眼内或いは眼周囲のデバイスによるものが挙げられる。局所投与の形態は、例えば、局所適用、目薬、眼内注射、又は眼周囲注射を含み得る。眼周囲注射は典型的に、結膜下、又はテノン空間へ(眼に重なる線維組織の下)の化合物の注射に関与する。眼内注射は典型的に、ガラス質への修飾FGF又は医薬組成物の注射に関与する。特定の実施形態において、投与は、局所適用又は目薬などにより、非侵襲性である。幾つかの実施形態において、投与は、局所及び腔内の方法の組み合わせを介して行われる。
【0140】
本明細書に記載される修飾FGF又は医薬組成物は、薬学的に許容可能な(適切な)担体又はビヒクルの他、当該技術分野で慣例的に使用される技術を使用した投与のために製剤され得る。薬学的に許容可能又は適切な担体は眼科的に適切又は許容可能な担体を含む。担体は、特定の修飾FGFの溶解度に従って選択される。適切な眼科学的組成物及び製剤は、目薬や注射などにより、眼に局所投与可能なものを含む。目薬の場合、製剤はまた、例えば、塩化ナトリウムや濃グリセリンなどの等張化剤といった眼科的に適合可能な薬剤;リン酸ナトリウムや酢酸ナトリウムなどの緩衝剤;ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート(ポリソルベート80とも称される)、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などの界面活性剤;クエン酸ナトリウムやエデト酸ナトリウムなどの安定剤;塩化ベンザルコニウムやパラベンなどの防腐剤;及び他の成分を随意に含み得る。防腐剤は、例えば約0.001~約1.0%の重量/容量のレベルで使用可能である。製剤のpHは通常、約pH4~8の範囲内など、眼科学製剤に許容可能な範囲内である。
【0141】
注射のために、修飾FGF又は医薬組成物は、注入可能なリポソーム溶液や持続放出ポリマー系などの形態で、注射等級の食塩水において提供され得る。眼内及び眼周囲の注射は当業者に既知であり、例えば、Spaeth, Ed., Ophthalmic Surgery: Principles of Practice, W. B. Sanders Co., Philadelphia, Pa., 85-87, 1990を含む多くの刊行物に記載されている。
【0142】
幾つかの実施形態において、修飾FGF又は医薬組成物(例えば眼製剤)は、微小針を介して角膜に投与される(Jiang et al. (2007). Invest Ophthalmol Vis Sci 48(9): 4038-4043)。微小針アレイは、修飾FGF又は医薬組成物をコーティングされ、そして、微小針が角膜実質へと貫通するが角膜全体を貫通しないように角膜に対して押圧される。その後、微小針は取り除かれ、修飾FGF又は医薬組成物は角膜実質の後ろに残る。この修飾FGF又は医薬組成物は、角膜細胞を増殖且つ移動させ、間質細胞が通常受ける瘢痕化反応を抑えるために、角膜細胞を刺激することができる。
【0143】
鼻通路、咽喉、及び気道への送達を含む、粘膜経路を介した本明細書に記載される修飾FGF-1ポリペプチドの少なくとも1つを含む組成物の送達のために、組成物はエアロゾルの形態で送達することができる。化合物は、粘膜内送達のために液体又は粉末の形態であってもよい。例えば、組成物は、炭化水素推進薬(例えばプロパン、ブタン、イソブテン)などの適切な推進薬により、加圧エアロゾル容器を介して送達され得る。組成物は、ネブライザー又はアトマイザーなどの非加圧送達システムを介して送達され得る。
【0144】
適切な経口剤形は、例えば、錠剤、丸剤、小袋、或いは、ハード又はソフトゼラチン、メチルセルロース、或いは消化管に溶けやすい別の適切な材料のカプセルを含む。例えば、医薬等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン、滑石、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウムなどを含む適切な無毒の固体担体が使用され得る。(例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy (Gennaro, 21st Ed. Mack Pub. Co., Easton, PA (2005)を参照)。
【0145】
本明細書に記載される修飾FGF-1ポリペプチド又は医薬組成物は、徐放又は遅延放出のために製剤され得る。そのような組成物は通常、周知技術を使用して調製することができ、例えば、眼周囲、眼内、直腸、経口又は皮下の移植によって、所望の標的部位での移植によって、又は局所適用によって投与され得る。徐放製剤は、担体マトリックス内で分散される、及び/又は速度を制御する膜に取り囲まれたリザーバ内に含まれる、薬剤を含み得る。そのような製剤内に使用するための賦形剤は生体適合性であり、生物分解性でもある;好ましくは、製剤は比較的一定のレベルの活性成分の放出を提供する。徐放製剤内に含まれる活性化合物の量は、移植の部位、放出の速度及び予期される持続時間、並びに処置又は予防される疾病の性質に依存する。
【0146】
眼の経路を介して投与された薬物又は組成物の全身薬物吸収は、当業者に既知である(例えば、Lee et al., Int. J. Pharm. 233:1-18 (2002)を参照)。一実施形態において、本明細書に記載される化合物は、局所の眼送達方法により送達される(例えば、Curr. Drug Metab. 4:213-22 (2003)を参照)。組成物は、水性目薬、水性眼科用懸濁液剤、非水性目薬、及び非水性眼科用懸濁液剤、ゲル、眼軟膏剤などの、目薬、膏薬、又は軟膏などの形態であり得る。ゲル、例えばカルボキシビニルポリマー、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロースの調製のために、エチレン無水マレイン酸ポリマーなどが使用され得る。
【0147】
別の実施形態において、修飾FGF溶液又は医薬組成物(例えば眼製剤)は、快適な眼溶液を産生するために眼の耐容性、粘度、及びオスモル濃度を増加させるヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、又は他の多糖を含んでいる。
【0148】
本明細書に記載される、修飾FGF、又は修飾FGF-1ポリペプチドの少なくとも1つを含む医薬組成物の投与量は、患者(例えばヒト)の状態、即ち、眼の疾患、障害、又は疾病の段階、一般的な健康状態、年齢、及び投与量を決定するために当業者が用いる他の要因に依存して変動し得る。組成物が目薬として、例えば単位投与量当たり1滴~数滴、好ましくは1又は2滴(1滴につき約50μl)で使用されると、1日約1~約6回で適用され得る。
【0149】
医薬組成物は、医療業界の当業者によって決定されるように治療される(又は予防される)疾患、障害、又は疾病に適切な様式で投与され得る。適切な投与量及び投与の適切な持続時間と頻度は、患者の状態、患者の疾患、障害、又は疾病のタイプ及び重症度、有効成分の特定の形態、及び投与の方法などの要因によって決定される。一般に、適切な投与量及び処置のレジメンは、治療効果及び/又は予防効果(例えば、より頻繁な完全寛解又は部分寛解、或いはより長い無病生存全生存率、或いは症状の重症度の低下などの、臨床結果の改善)をもたらすのに十分な量で組成物を提供する。予防的な使用のために、投与量は、眼の疾患、障害、又は疾病の発症を予防し遅らせ、又はその重症度を縮小するのに十分でなければならない。一般に、実験モデル及び/又は臨床試験を使用して、適量が決定され得る。適量は、患者の体重、重量、又は血液量に依存し得る。
【0150】
様々な実施形態において、本開示の修飾FGF-1ポリペプチドは、1日量として、ある期間にわたり被験体に投与され得る。幾つかの実施形態において、本開示の修飾FGF-1ポリペプチドは慢性的に又は長期に投与され得る。幾つかの実施形態において、本開示の修飾FGF-1ポリペプチドは、数日間、数週間、数ヶ月、数年間、又は被験体の寿命にわたる治療継続期間で投与され得る。幾つかの実施形態において、本開示の修飾FGF-1ポリペプチドは、約7日、15日、約21日、約30日、約3ヶ月、約6ヶ月、約12ヶ月、約18ヶ月、約2年、約5年、約7年、約10年、約15年、約20年、約25年、約30年、約35年、又は約40年の期間にわたり投与され得る。幾つかの実施形態において、処置レジメンは様々な要因に依存して個々の被験体に対し決定され得る。幾つかの例において、処置レジメンは、発疱化合物などの化学的又は温熱性外傷を引き起こす化合物への曝露のレベルに依存する。幾つかの実施形態において、処置レジメンは、急性曝露に対して約2週間、及び長期曝露に対しては数ヶ月~1年である。幾つかの実施形態において、処置レジメンは慢性である。幾つかの例において、要因は、限定されないが、本開示の修飾FGF-1ポリペプチドの投与に応じた角膜組織の変性の程度の変化の決定を含み得る。幾つかの例において、要因は、限定されないが、本開示の修飾FGF-1ポリペプチドの投与に応じたMGK後遺症の改善を含み得る。幾つかの例において、要因は、限定されないが、本開示の修飾FGF-1ポリペプチドの投与に応じた角膜内皮病変の治癒を含み得る。幾つかの例において、要因は、限定されないが、本開示の修飾FGF-1ポリペプチドの投与に応じた角膜上皮細胞増殖を含み得る。幾つかの例において、要因は、限定されないが、本開示の修飾FGF-1ポリペプチドの投与に応じたフックス角膜内皮ジストロフィーに関連付けられる症状の減少を含み得る。実施形態において、組成物に対する即時の反応、例えば、フックス角膜内皮ジストロフィーに関連付けられる症状の即時の減少を示す被験体は、ある時間後に、又は数回の投薬後に組成物への反応を示す被験体よりも頻繁でない投与量を必要とし得る。
【0151】
修飾FGF-1ポリペプチド又は医薬組成物の投与量は、被験体の臨床状態、疾病、及び年齢や剤形などに依存して適切に選択することができる。目薬の場合、本明細書に記載される修飾FGFは、例えば約10ug/ml~約100mg/mlの修飾FGFで週に1~7回投与され得る。
【0152】
また、本明細書に記載される修飾FGF-1ポリペプチド及び医薬組成物を製造する方法も提供される。薬学的に許容可能な賦形剤又は担体、及び本明細書に記載される修飾FGF-1ポリペプチドの少なくとも1つを含む組成物は、本明細書に記載される、或いは、当該技術分野で実施される方法の何れか1つに従って修飾FGFを合成し、その後、化合物を薬学的に許容可能な担体と共に製剤することによって、調製され得る。組成物の製剤は適切であり、化合物の送達経路、投与量、及び安定性を含むがこれらに限定されない様々な要因に依存する。
【0153】
本明細書に記載される少なくとも1つの修飾FGFは、ヒト又は他の非ヒト脊椎動物に投与することができる。特定の実施形態において、修飾FGFは、例えば、合成方法の1つ以上の工程で作られる汚染中間物又は副産物などの他の有機分子を約5%未満、約1%未満、又は約0.1%未満含んでいるという点で、実質的に純粋である。他の実施形態において、本明細書に記載される1つ以上の修飾FGF-1ポリペプチドの組み合わせが投与され得る。
【0154】
本明細書に記載される組成物は、予防処置及び/又は治療処置のために投与することができる。治療用途において、組成物は、疾患又は疾病の症状を治癒する又は少なくとも部分的に阻止するのに十分な量で疾患又は疾病に既に苦しんでいる患者に投与される。この使用に有効な量は、疾患又は疾病の重症度と経過、以前の治療、患者の健康状態、体重、及び薬物に対する反応、並びに治療医の判断に依存する。
【0155】
予防用途において、本明細書に記載される組成物は、特定の疾患、障害、又は疾病の影響を受け易く、或いはその危険に曝されている患者に投与される。このような量は、「予防に有効な量又は投与量」であると定義される。この用途において、正確な量は、患者の健康状態、体重などにも依存する。
【0156】
患者の疾病が改善しない場合、医師の決定に従って、組成物の投与を慢性的に、即ち、長期間行ってもよく、前記長期間は、患者の疾患又は疾病の症状を改善させるか、さもなければ制御又は制限するために、患者の寿命が尽きるまでの間を含む。
【0157】
患者の状態が改善しない場合、医師の決定に従って、組成物を継続的に投与することもある。代替的に、投与されている薬物の投与量は、一時的に減らされるか、又は特定の長さにわたって一時的に停止される(即ち、「休薬日」)。
【0158】
一旦、患者の疾病の改善が生じると、必要ならば維持量が投与される。その後、用量又は投与頻度、或いはその両方は、症状に応じて、疾患、障害、又は疾病の改善が保持されるレベルにまで減少可能である。しかし、患者は症状の任意の再発時に長期間にわたって断続的な処置を必要とし得る。
【0159】
所望の投与量は都合よく、単回用量で提示されるか、或いは分割投与量として、同時に(又は短時間で)、或いは、適切な間隔で、例えば、1日当たり2、3、又は4回以上の下位用量として投与されてもよい。
【0160】
本明細書に記載される医薬組成物は、正確な用量の単回投与に適した単位剤形にある。単位剤形において、製剤は、適量の1以上の修飾FGF-1ポリペプチドを含む単位投与量に分割される。単位投与量は、製剤の離散量を含む包装の形態をしていてもよい。非限定的な例は、包装された錠剤又はカプセル、及びバイアル又はアンプルの中にある粉末剤である。水性懸濁液組成物は単回量の再密閉できない容器で包むことができる。代替的に、複数回投与用の再密閉できる容器を使用することができ、この場合、組成物中に防腐剤を含むことが典型的である。ほんの一例として、非経口的な注入のための製剤は単位剤形の中で提供されてもよく、これは、追加の防腐剤と共に、限定されないがアンプル、又は複数回投与用容器を含む。
【0161】
こうした治療レジメンの毒性と治療の有効性は、限定されないが、LD50(母集団の50%に対する致死投与量)と、ED50(母集団の50%で治療上有効な投与量)の測定を含む、細胞培養又は実験動物中の標準的な製薬手順によって判定することができる。毒性効果と治療効果との用量比は、治療指数であり、LD50とED50との比率として表すことができる。高い治療指数を示す化合物が好ましい。細胞培養アッセイと動物研究から得られたデータは、ヒトに使用される一連の用量を製剤するのに使用可能である。そのような化合物の用量は、好ましくは毒性が最小限のED50を含む、血中濃度の範囲内にある。用量は、利用された剤形及び利用された投与経路に依存して、この範囲内で変動し得る。
【0162】
併用処置
修飾FGF-1ポリペプチド及び医薬組成物はまた、処置される疾病の治療上の値に対して選択される他の治療剤と組み合わせて使用され得る。修飾FGF-1ポリペプチド及び医薬組成物はまた、発疱剤損傷を処置するための治療上の値に対して選択される他の治療剤と組み合わせて使用され得る。そのような薬剤は、同じ医薬組成物において投与される必要はなく、異なる物理的及び化学的な特徴により、異なる経路によって投与されなければならないこともある。投与の形態と投与の妥当性の判定は、可能な場合には、同じ医薬組成物において、十分に臨床医が考え得る範囲内である。最初の投与は、当該技術分野で認識されている確立されたプロトコルに従って行うことができ、その後、観察された効果、投与量、投与形態、及び投与の回数に基づいて、臨床医によって修正可能である。
【0163】
このような随意の追加の薬剤の特定の選択は、主治医の診断、及び患者の状態と適切な処置プロトコルの判断に依存する。薬剤は、疾患、障害、又は疾病の性質、患者の状態、及び使用される薬剤の実際の選択に依存して、一斉に(例えば、同時に、本質的に同時に、又は同じ処置プロトコル内で)、或いは、連続して投与されてもよい。処置プロトコル中の投与の順番と各治療薬の投与の反復回数との決定は、処置されている疾患と患者の状態を評価した後の医師が十分に考え得る範囲内にある。
【0164】
本明細書に開示された併用療法を構築する医薬品は、組み合わされた剤形であるか、又は、ほぼ同時の投与を意図した個別の剤形であってもよい。併用療法を構築する医薬品は、2段階の投与を要求するレジメンによって投与されている何れかの治療上の化合物と共に、連続して投与されてもよい。2段階の投与レジメンは、活性薬剤の連続投与、又は、別個の活性薬剤の間隔を空けた投与を要求し得る。複数の投与段階の間の期間は、医薬品の性能、可溶性、バイオアベイラビリティ、血漿半減期、及び速動性の特性といった、医薬品それぞれの特性に依存して、数分から数時間にまで及んでもよい。標的分子濃度の日周期の変化も、最適な投与間隔を決定する場合がある。
【0165】
薬物が併用処置に使用される場合、治療上有効な量は変動する場合がある。併用処置レジメンに使用するための薬物及び他の薬剤の治療上有効な用量を実験的に決定するための方法が、文献に記載される。例えば、メトロノミック投与の使用、即ち、毒性の副作用を最小限に抑えるために高頻度且つ低投与量で提供することは、文献に広く記載されている。併用処置は更に、患者の臨床管理を補助するために様々な時点で開始及び停止される定期的処置も含む。
【0166】
例えば、修飾薬物(modified)は、ステロイド、抗生物質、抗炎症薬、IL-1又はIL-1のアナログなどのサイトカイン、IL-17の阻害剤などのサイトカインのアンタゴニストなどの、他の有効成分を含む製剤へと組み込むことができる。
【0167】
他の典型的なサイトカインは、限定されないが、インターロイキン(例えばIL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-1α、IL-1β、及びIL-1 RA)、顆粒球コロニー刺激因子(G-コロニー刺激因子)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-コロニー刺激因子)、オンコスタチンM、エリトロポイエチン、白血病抑制因子(LIF)、相互担体、B7.1(CD80としても知られる)、B7.2(B70、CD86としても知られる)、TNFファミリーメンバー(TNF-α、TNF-β、LT-β、CD40リガンド、Fasリガンド、CD27リガンド、CD30リガンド、4-1BBL、Trail)、及び遊走阻止因子MIFを含む。
【0168】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載される組み合わせ又は医薬組成物は、免疫系の活性を低下させる、阻害する、又は予防するために免疫抑制療法で投与される。免疫抑制療法は、臨床的に、移植器官及び組織の拒絶を予防する;自己免疫由来の可能性が最も高い自己免疫疾患又は疾患を処置する;及び他の幾つかの非自己免疫性炎症性疾患を処置するために使用される。
【0169】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載される修飾FGF-1ポリペプチド及び医薬組成物は、非ステロイド性抗炎症性薬物(NSAID)及びコルチコステロイド(グルココルチコイド)を含むがこれらに限定されない、1つ以上の抗炎症薬と共に投与される。
【0170】
NSAIDとしては、限定されないが以下が挙げられる:アスピリン、サリチル酸、ゲンチジン酸、コリンマグネシウムサリチル酸、サリチル酸コリン、サリチル酸コリンマグネシウム、サリチル酸コリン、サリチル酸マグネシウム、サリチル酸ナトリウム、ジフルニサル、カルプロフェン、フェノプロフェン、フェノプロフェンカルシウム、フルオロビプロフェン、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナブトン(nabutone)、ケトロラク、ケトロラクトロメタミン、ナプロキセン、オキサプロジン、ジクロフェナク、エトドラク、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、メクロフェナム酸塩、メクロフェナム酸ナトリウム、メフェナム酸、ピロキシカム、メロキシカム、及びCOX-2特異的阻害剤(限定されないが、セレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、エトリコキシブ、ルミラコキシブ、CS-502、JTE-522、L-745,337、及びNS398など)。
【0171】
コルチコステロイドとしては、限定されないが以下が挙げられる:ベタメタゾン、プレドニゾン、アルクロメタゾン、アルドステロン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、シクレソニド、クロベタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチゾン、コルチバゾール、デフラザコート、デオキシコルチコステロン、デソニド、デスオキシメタゾン、デスオキシコルトン、デキサメタゾン、ジフロラゾン、ジフルコルトロン、ジフルプレドナート、フルクロロロン、フルドロコルチゾン、フルドロキシコルチド、フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチン、フルオコルトロン、フルオロメトロン、フルペロロン、フルプレドニデン、フルチカゾン、ホルモコータル、ハルシノニド、ハロメタゾン、ヒドロコルチゾン/コルチゾール、ヒドロコルチゾンアセポネート、ヒドロコルチゾンブテプレート、酪酸ヒドロコルチゾン、ロテプレドノール、メドリゾン、メプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、メチルプレドニゾロンアセポネート、フランカルボン酸モメタゾン、パラメタゾン、プレドニカルベート、プレドニゾン/プレドニゾロン、リメキソロン、チキソコルトール、トリアムシノロン、及びウロベタゾール。
【0172】
抗炎症薬として使用される他の薬剤は、参照により本明細書に組み込まれている米国特許公報第2005/0227929号に開示されたものを含む。
【0173】
幾つかの市販の抗炎症薬としては、限定されないが以下が挙げられる:Arthrotec(登録商標)(ジクロフェナク及びミソプロストール)、Asacol(登録商標)(5-アミノサリチル酸)、Salofalk(登録商標)(5-アミノサリチル酸)、Auralgan(登録商標)(アンチピリン及びベンゾカイン)、Azulfidine(登録商標)(スルファサラジン)、Daypro(登録商標)(オキサプロジン)、Lodine(登録商標)(エトドラク)、Ponstan(登録商標)(メフェナム酸)、Solumedrol(登録商標)(メチルプレドニゾロン、Bayer(登録商標)(アスピリン)、Bufferin(登録商標)(アスピリン)、Indocin(登録商標)(インドメタシン)、Vioxx(登録商標)(ロフェコキシブ)、Celebrex(登録商標)(セレコキシブ)、Bextra(登録商標)(バルデコキシブ)、Arcoxia(登録商標)(エトリコキシブ)、Prexige(登録商標)(ルミラコキシブ)、Advil(登録商標)、Motrin(登録商標)(イブプロフェン)、Voltaren(登録商標)(ジクロフェナク)、Orudis(登録商標)(ケトプロフェン)、Mobic(登録商標)(メロキシカム)、Relafen(登録商標)(ナブメトン)、Aleve(登録商標)、Naprosyn(登録商標)(ナプロキセン)、Feldene(登録商標)(ピロキシカム)。
【0174】
一実施形態において、本明細書に記載される組成物は、ロイコトリエン受容体拮抗薬と共に投与することができ、該ロイコトリエン受容体拮抗薬は、BAY u9733(1997年8月27日公開の欧州特許第00791576号を参照)、DUO-LT(Tsuji et al, Org. Biomol. Chem., 1, 3139-3141, 2003)、ザフィルルカスト(Accolate(登録商標))、モンテルカスト(Singulair(登録商標))、プランルカスト(Onon(商標登録))、及び、それらの誘導体又はアナログを含むが、これらに限定されない。
【0175】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載される修飾FGF-1ポリペプチド及び医薬組成物は、1つ以上のRhoキナーゼ阻害剤と共に投与される。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される修飾FGF-1ポリペプチド及び医薬組成物は、上皮成長因子(EGF)及び神経成長因子(NGF)を含むがこれらに限定されない1つ以上の追加の成長因子と共に投与される。例えば、Joyce et al. (2009) Invest Ophthalmol. Vis Sci. 50:2116-2122、血管内皮成長因子(VEGF)、形質転換成長因子α及びβ(TGFα及びTFGβ)、血小板誘導内皮成長因子(PD-ECGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、腫瘍壊死因子α(TNFα)、肝細胞増殖因子(HGF)、インスリン様成長因子(IGF)、エリスロポエチン、コロニー刺激因子(CSF)、マクロファージ-CSF(M-CSF)、顆粒球/マクロファージCSF(GM-CSF)、及び一酸化窒素合成(NOS)を参照。
【0176】
キット/製品
本明細書に記載される治療用途に使用するために、キット及び製品も本明細書中に提供される。このようなキットは、例えば、バイアル、チューブなどの1以上の容器を受けるために仕切られた、運搬装置、パッケージ、又は容器を含み、こうした容器の各々は、本明細書に記載される方法で使用される別個の要素の1つを含んでいる。適切な容器として、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、及び試験管が挙げられる。容器は、ガラス又はプラスチックなどの様々な材料から形成され得る。
【0177】
本明細書で提供される製品は、包装材料を含む。医薬品の包装に使用するための包装材料は、例えば、米国特許第5,323,907号、第5,052,558号、および、第5,033,252号を含む。医薬の包装材料としては、ブリスターパック、ボトル、チューブ、吸入器、ポンプ、バッグ、バイアル、容器、シリンジ、ボトル、及び、選択された製剤に、並びに投与及び処置の意図した様式に適切な任意の包装材料が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に提供される修飾FGF-1ポリペプチド及び医薬組成物の多様な眼製剤は、本明細書に記載される修飾FGF又は医薬組成物の投与から利益を得る任意の眼の疾患、障害、又は疾病の様々な処置であると考慮される。
【0178】
例えば、容器は、SEQ ID NO:2の配列を有する修飾FGF-1などの修飾FGFを含み得る。容器には随意に滅菌アクセスポートがある。このようなキットは、本明細書に記載される方法での使用に関する、識別(identifying)解説書、又はラベル、或いは説明書と共に、化合物を随意に含む。
【0179】
キットは典型的に1以上の追加の容器を含み、その各々は、本明細書に記載される修飾FGFの使用に対して商業的な観点とユーザの観点から望ましい1以上の様々な材料(例えば、随意に濃縮された形態及び/又はデバイス中の試薬)を含む。こうした材料の非限定的な例としては、限定されないが、緩衝液、賦形剤、フィルタ、針、シリンジ;運搬装置、パッケージ、容器、バイアル、及び/又は、内容物及び/又は使用説明を列挙したチューブラベル、及び使用説明を含むパッケージインサートが挙げられる。
1セットの説明書も典型的に含まれる。
【0180】
ラベルは、容器上にあるか、又は容器に付随させることができる。ラベルを形成する文字、数字、又は他の字が容器自体に結合しているか、成型されているか、或いは、エッチングされている場合、ラベルは容器の上にあり得る;ラベルは、容器を保持する入れ物又は運搬装置内に存在する場合、例えば、添付文書として容器に付けられる。ラベルは、内容物が特異的な治療用途に使用されることを示すために使用することができる。ラベルはまた、本明細書に記載される方法などによる内容物の使用のための指示を示すことができる。
【0181】
特定の実施形態において、修飾FGF医薬組成物は、本明細書に提供される化合物を含んでいる1以上の単位剤形を含むことが可能なパック又はディスペンサ装置において提供することができる。パックは、例えば、ブリスターパックなどの金属ホイル又はプラスチックホイルを含み得る。パック又はディスペンサ装置には、投与のための説明書を添付することが可能である。パック又はディスペンサはまた、薬の製造、使用、又は販売を規制する政府機関によって規定された形式で容器に付随された通知が添えられることもあり、この通知は、ヒト又は動物への投与のため薬物の形態に関する、政府機関による承認を反映する。こうした通知は、例えば、処方薬又は承認された製品挿入物に関して米国食品医薬品局により承認されたラベルである。適合可能な医薬担体の中で製剤される、本明細書に提供される修飾FGFを含有する組成物も調製され、適切な容器に入れられ、且つ、示された疾病の処置についてラベル付けされ得る。
【実施例0182】
これら実施例は例示目的のためだけに提供され、本明細書に提供される請求の範囲を制限するものではない。本明細書に記載される実施例に使用される出発物質及び試薬は合成される、又は商業的供給源から得ることができる。
【0183】
実施例1:N末端メチオニン(N-Met)を含む典型的な修飾FGF-1ポリペプチドは、N-Metを含まないバージョンと同様の活性を持つ
【0184】
研究は、SEQ ID NO:2(N-Met-TTHX1114)又はSEQ ID NO:205(TTHX1001)の配列を含む修飾FGF-1ポリペプチドを対象とする。修飾FGF-1ポリペプチドを、組み換え技術のセクションで上述されるような方法を用いて生成する。
【0185】
実験方法及び結果
【0186】
試験ポリペプチドの生物活性を、NIH-3T3細胞増殖反応測定法で評価する。結果は、線維芽細胞の増殖の誘導における有効性の観点から、SEQ ID NO:2とSEQ ID NO:205の修飾FGF-1ポリペプチドとの差異を示さない。
【0187】
実施例2:ヒト角膜内皮細胞(HCEC)増殖に対する修飾FGF-1ポリペプチドの効果
【0188】
研究は、SEQ ID NO:2(N-Met-TTHX1114)又はSEQ ID NO:205(TTHX1001)の配列を含む修飾FGF-1ポリペプチドを対象とする。
修飾FGF-1ポリペプチドを、組み換え技術のセクションで上述されるような方法を用いて生成する。
【0189】
実験方法及び結果
【0190】
健康なドナーのヒト角膜内皮細胞の一次培養物(継代1)を、ウシ胎仔血清(FBS、8%)の存在下で24ウェルプレート上に播種し、24時間後、低(0.8%)FBSを有する培地において、様々な濃度のN-Met-TTHX1114(SEQ ID NO:2)、TTHX1001(SEQ ID NO:205)、又はwt-FGF-1(SEQ ID NO:1)で処置した。8%のFBS群を陽性対照として使用する。結果は、N-Met-TTHX1114が、ヒト角膜上皮細胞増殖の刺激においてTTHX1001又はwt-FGF-1よりも強力であり、その中でも用量反応性であることを示す。N-Met-TTHX1114のEC50は、wt-FGF-1又は他の試験された修飾FGF-1ポリペプチド(TTHX1001;SEQ ID NO:205)よりも約100倍低い。
【0191】
実施例3:ナイトロジェンマスタードで誘導された角膜の損傷
【0192】
研究は、ナイトロジェンマスタード(NM)で誘導された角膜外傷の処置に対する、SEQ ID NO:2(N-Met-TTHX1114)の配列を含む修飾FGF-1ポリペプチドの効果を対象とする。修飾FGF-1ポリペプチドを、組み換え技術のセクションで上述されるような方法を用いて生成する。
【0193】
実験方法
【0194】
ウサギの角膜器官培養モデル系を使用し、NMへの曝露後の治癒を評価した。ウサギの眼(8-12週齢)を得て、2mmの強膜の縁を持つ角膜を眼から切り分け、上皮を下にして点滴板に配して、陥没部をダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)において558Cの溶融寒天(0.75%)で満たした。設定の非限定的な例を
図3に示す。一旦、溶液がゲル状になると、角膜は反転し、それにより上皮層がアクセス可能となる。培養物を60mm直径のpyrex組織培養皿に配する。高いグルコースDMEMを調製し、13MEM-NEAA(最小必須培地非必須アミノ酸)、13 RMPI 1640ビタミン溶液、13の抗生物質/抗真菌剤、アスコルビン酸(0.45mM)、及びシプロフロキサシン(10lg/ml)を含んでいた。高いグルコースDMEMを強膜の縁に加え、角膜を空気に晒したままにする。皿を、5%のCO
2を含む37℃の湿ったインキュベータに配する。各培養物の上皮を500μLの培地で湿らせ、7~9時間毎に中央角膜上へと液滴で加える。発疱剤(NM)を中央角膜上に液滴で加える。角膜サンプル(その寒天支持物から剥がされる)を、上皮を下にして、Optimal Cutting Temperature(OCT, Tissue-Tek; Sakura, Torrance, CA, USA)の化合物を含むクリオモルドに置き、組織学及び免疫蛍光検査のために急速冷凍し、或いは、ウエスタンブロット及びADAM17活性アッセイ(InnoZyme TACE activity assay kit; Calbiochem, Billerica, MA, USA)を含む更なるタンパク質分析のために直接スナップ冷凍(snap frozen)した。
【0195】
NMを使用して角膜外傷を誘導する。粉末固体形態(カタログ番号122564;Sigma-Aldrich)の中のNMを最初にPBSに溶かして100mMにし、その後に培地で希釈して10mMにする。10マイクロリットルを加えて、角膜に100nmolの発疱剤を送達する。中央角膜上へとNMを適用後、培養物を、発疱剤を取り除くことなく、2時間かけて37℃のインキュベータに戻す。このインキュベーション後、汚染された培地を取り除き、皿の高さが強膜の縁の上部に到達するまで新たな培地を中央角膜に加える。その後、晒されていない対照、及び晒された角膜を、22時間のインキュベーションにわたり37℃に戻し、これをわずか3つの短期間にわたり取り除き、N-Met-TTHX1114治療を受けない晒されたサンプルに20μLの培地を加え、或いは、中央角膜に対する治療として20μLのN-Met-TTHX1114を加える。第1のmet-TTHX1114適用は8時間、第2は9時間、及び第3は5時間残る。故に、2時間の曝露及び続く処置の長さは、合計24時間である。
【0196】
NM曝露がどれくらい速くADAM17を誘導したかを分析する実験のために、培養物を記載の通り設定する。最短の曝露時間に関して、NM溶液を角膜に適用し、その後すぐに洗い流し、サンプルをタンパク質単離抽出緩衝液に入れる。これを他の2つの角膜にも繰り返して行い、3つの0分の曝露を集める。5分及び10分の曝露に関して、NMを3つの角膜のセットに適宜加えて、どれもNMに対しては偶発的に過小又は過度には、確実に晒されなかった。全ての角膜を抽出し、ADAM17活性アッセイのために処理する。
【0197】
InnoZyme ADAM17/TACE活性キット(Calbiochem)を使用して、供給業者により提供されたプロトコルに従い角膜の抽出物からの酵素の活性を定量する。簡単に、400μLの洗浄緩衝液(InnoZymeキットのもの)を、抗ヒトADAM17抗体で予め被覆した96ウェルプレートに適用し、その後に洗浄を2回行う。角膜抽出物及びInnoZymeキット基準の3通りのサンプル(100μL)をそれぞれ、3セットのウェルに加える。プレートを密封し、室温で優しく振盪させながら1時間インキュベートする。その後、プレートを400μLの洗浄緩衝液により5回洗浄する。キット(100μL)に提供されたADAM17基質を各ウェルに加え、37℃で5時間インキュベートする。蛍光を、324nmの励起波長及び405nmの発光波長で測定し、グラフ上に相対的な蛍光単位として報告する。ADAM17の免疫検出に関して、スライド上のOCTを埋め込んだ切片を10分間、20℃のメタノールにおいて最初に固定する。非特異的結合を、0.05%のTween20(PBST)を含むPBSにおいて5%の正常なヤギ血清(NGS)により1時間遮断する。免疫蛍光検査によって活性酵素のみを検出することが分かっている、ヒトADAM 17(1.5%のNGS中の5μg/mL、MAB9304;R&D Systems, Minneapolis, MN, USA)の外部ドメイン(アミノ酸18-671)に対するマウスモノクローナル抗体を、室温で1時間のインキュベーションにわたりスライドに適用し、その後、スライドをPBST中で10分間、3回洗浄する。陰性対照スライドに関して、試験切片に使用される一次抗体ものと同じ容量のPBSTを切片に適用し、その後、同じ洗浄容量を適用する。1.5%のNGS中のAlexaFluor488(1:1000;Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)に抱合したヤギ抗マウスIgGを室温のインキュベーションに1時間適用する。PBSTで5分間3回の洗浄後、0.4mg/mLのDAPIを5分間切片に適用し、母核を対比染色する。Prolong Goldを、スライドを滑らせるカバーに使用する。
【0198】
結果
【0199】
角膜器官培養物におけるNMで誘導された損傷の組織病理学
【0200】
NMにより被られた損傷は、以下を含む:(a)実質へと下方に押す上皮細胞の数及び深度の増加によって明らかとなる上皮層の過形成。これは下方への過形成と呼ばれる。晒されていない(未処置)角膜はある程度の下方への過形成を示すが、NMに晒された角膜ほど広範ではない;(b)基礎の上皮細胞の上部に向かい上昇する基底細胞母核;及び(c)上皮-実質の分離。組織病理学的効果は、早くも曝露後4日で目視可能となる。NMで誘導された角膜外傷の効果を評価するための典型的な組織病理学的等級付けを、
図6に示す。組織病理学的等級付けはN-Met-TTHX1114での処置により改善される。N-Met-TTHX1114で処置した角膜切片は、未処置の角膜の切片と比較して低いスコア(より劣った損傷を示すもの)を示す。
【0201】
N-Met-TTHX1114による、NMに晒された角膜細胞の処置は、損傷を防ぐ
【0202】
TTHX1114による、NMに晒された角膜の処置は、NMで誘導された組織病理学的損傷から角膜を保護する。NM曝露後、N-Met-TTHX1114で処置した角膜は下方への過形成を示さない。更に、上皮-実質の分離は、N-MetTTHX1114で処置した角膜において目視不能である。
【0203】
NM曝露は、ウサギの角膜のFGF-1レベルを下げる
【0204】
NMに晒されたウサギの角膜切片を、抗FGF-1抗体によりインキュベートする。晒された角膜において、FGF-1レベルの減少を、
図9に示されるように観察する。NMに晒された角膜切片は、曝露の1日(
図9の上パネル)及び3日(
図9の下パネル)後、未処置の角膜切片と比較して増強されたFGF-1の抑制を実証する。
【0205】
NM曝露はウサギの角膜におけるADAM17活性化を誘導する
【0206】
NMに晒された角膜において、強い蛍光シグナルを表皮基底膜領域に観察し、そこでは、ADAM17酵素は、コラーゲンXVIIを分解するために位置決めされる必要があり、ADAM17は、晒されていない角膜ではあまり検出されない。
【0207】
N-Met-TTHX1114処置は、ウサギの角膜におけるNM曝露で誘導されたADAM17活性化を減少させる
【0208】
TTH1114での角膜の処置に際して、ADAM17蛍光シグナルを、周辺及び中央の角膜において弱める。ADAM17蛍光シグナルの弱化又は欠如は、角膜の上皮-実質の結合のより優れた組織学的外観に相当する。
【0209】
N-Met-TTHX1114処置は、角膜上皮増殖のNM曝露で誘導された抑制を改善する
【0210】
周辺角膜上皮層の刺激を、角膜上皮細胞(CEC)のEdU取り込みを介して評価する。ウサギのCECの一次培養物を、標準手順、例えばKay et alにより記載される手順(Kay et al. Investigative ophthalmology & visual science. 1993;34(3):663-72; Lee et al., Investigative ophthalmology & visual science. 2009;50(5):2067-76)を使用して確立する。細胞を2時間、NMに晒す。増殖アッセイを、例えばClick-ITアッセイキット(Life Technologies)を使用して、12ウェルプレートにおいて実行する。角膜上皮細胞へのEdUの取り込みは上皮増殖の指標である。EdUを組み込む角膜上皮細胞のパーセンテージは、NM曝露後にN-Met-TTHX1114で処置した時、未処置の対照よりも低い。
【0211】
実施例4:角膜内皮細胞の、硫黄マスタードで誘導された損傷
【0212】
研究は、硫黄マスタード(SM)で誘導された角膜外傷の処置に対する、SEQ ID NO:2(N-Met-TTHX1114)の配列を含む修飾FGF-1ポリペプチドの効果を対象とする。修飾FGF-1ポリペプチドを、組み換え技術のセクションで上述されるような方法を用いて生成する。
【0213】
実験方法
【0214】
8~16匹のコホートにおけるウサギを4ヶ月の期間中、硫黄マスタードに晒す。曝露の1日前、各ウサギの背中の4-in2領域を切り取り、フェンタニルパッチ(25μg/h)を肩甲骨の前方に配される。曝露の日に、ウサギに15mg/kgのケタミン及び7mg/kgのキシラジンの筋内投与により麻酔をかけ、生理学的パラメータを記録する。麻酔をかけたウサギの角膜を2.5分間、SM蒸気に晒す。曝露の2分後、晒された眼を10mLの滅菌生理食塩水により優しくすすぎ、残存する薬剤を洗い流す。
【0215】
ウサギの第1の群を、曝露の24時間後に屠殺する。屠殺の5分後、PBS(pH7.4)に溶解したAlexaFluor 488(Life Technologies, Carlsbad, CA)の0.1mg/mLの溶液の20μLを、100μLのハミルトンガラスシリンジ(Hamilton Company, Reno, NV)を使用して30ゲージの針を介して前眼房へと注入する。10分後、角膜を切除し、10mLのPBSにおいて1分間3回洗浄する。角膜を、100μLのPBSを含む14mLの丸底管(Becton Dickinson, Franklin Lakes, NJ)に移し、優しく撹拌しながら暗所で氷の上にてインキュベートする。30分後、上清をPBSにおいて1:5に希釈し、488±10nmの励起波長、524±10nmの発光波長、及び50の利得を使用してSynergy MX fluorophotometer(Biotek, Winooski, VT)上で蛍光を解析する。代表的な角膜を青色ダイオードで画像化し、FITCフィルタをVersadoc MP 4000(Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA)において設定する。
【0216】
残りのウサギを更に、様々な投与量のN-Met-TTHX1114で処置した試験群、及び、対照ビヒクルで処置した疑似対照群に分けた。処置を約2週間で実行する。ウサギは、ケージ及び提供された食物及び水に自由に返される。フェンタニルパッチを72時間毎に交換し、曝露後6日にわたり不快感を管理して、その後必要に応じて大量に適用する。動物を、疼痛及び苦痛の兆候について毎日モニタリングする。角膜外傷を、パキメトリー、フルオレセイン排除アッセイ、及びスリットランプ評価を使用して、臨床的に定期的に評価する。
【0217】
結果
【0218】
硫黄マスタード(SM)曝露は角膜内皮の損傷を引き起こす
【0219】
SM曝露の24時間後の走査電子顕微鏡検査(SEM)により370nmで視覚化した角膜は求心的な損傷を示し、中央角膜における角膜内皮細胞(CEC)が広範囲に欠損し、曝露縁の方への保持が増大する。角膜内皮におけるSMで誘導された変化のより包括的な概要を得るために、後部角膜の微細構造を電子顕微鏡検査によって評価する。晒されていない角膜の走査型電子顕微鏡写真を表に記入することで、指のように組まれた境界、先端の微絨毛、及び稀有な繊毛を伴う通常の形状及びサイズの多角形の細胞の連続的な層を明らかにする。曝露の24時間以内、全ての角膜内皮は、曝露周辺部における広範な中央CEC欠損及びより広範な発疱を伴う、急性病変の証拠を示す。露出領域内のCECは、2つの一般的な形態、即ち、拡大した(大いに弱められた)多形性細胞、及び円形又は紡錘体形状の細胞を表示する。大半のCECは非定型の頂端側細胞膜の形態を示し、細胞間の交互嵌合を欠く。CEC発疱の領域において、剥離されたデスメ膜(DM)は、CECラメリポディア及び糸状仮足の複合分枝状構造(complex arbor)によって覆われている。角膜の断面のTEM画像化は求心的な損傷パターンを確かにし、CEC形態は損傷縁に向かって次第に正規化する。中央病変付近の剥離されたDMを、広範囲に分枝状にされた細胞プロセスによって浸潤させる。より遠位の領域において、接合部複合体の損失を伴う細胞のプロセスの重なりは一般的であり、運動型の集団を示唆する。SEMによって観察された円形CEC集団は、排他的に重複する多形性内皮を見出され、壊死又はアポトーシスの兆候を示した。
【0220】
N-Met-TTHX1114での処置は角膜内皮の損傷を解決する
【0221】
曝露の8週間後、内皮細胞の形態及び構造を、試験群(解決された眼とも称される)と疑似対照群(後にMGKを進行させる)との間で比較する。解決された眼は、角膜びらん、新生血管形成、又は角膜のもやなどの臨床評価中の特徴的なMGK後遺症の欠如によって区別され、6週間まで疑似の晒された対照と統計的に判別不能である角膜の厚みを備えていた。解決された眼の走査顕微鏡写真図を表に記入することで、十分に組織化された多角形細胞の単層と共に、疑似の晒された対照に非常に類似していることが分かった。対照角膜と比較して、平均CECサイズは解決された眼において増大し;さもなくば、解決された角膜は、後面にわたって有意な変異性を示さない。対照的に、MGK内皮を持つ疑似の対照処置のウサギは、動的な損傷プロセスを示す、動物間の細胞形状及び細胞幅における広範な変異性を明らかにする。内皮の形態における巣状の変異性は個々の角膜において慣例的に観察され、一部の領域は、拡大したがモザイク状のCECを示し、他の領域は有意な組織崩壊を示し、様々な程度の先端の小疱形成があり、区域は剥離されたDMを示し、明確に線引きされた細胞境界は欠如している。これらの現象は、N-Met-TTHX1114で処置した解決された内皮には観察されない。N-Met-TTHX1114で処置した解決された角膜の透過電子顕微鏡画像は、未処置の内皮に非常に類似している。対照的に、MGK病態を伴う疑似対照の処置された内皮は、浮腫及び/又はretrocorneal線維膜の堆積の何れかに一致する、後部のDMの拡散性の肥厚を示す。MGK角膜はまた、細胞質の希薄化、過度の空胞化、及び膨潤した小胞体(endoplasmic reticuli)を含む、CECストレス又は損傷の広範なマーカーを示す。24時間の画像と同様であり、最近剥離されたDMに再生息する進行中の試みを示唆する、高頻度の重複する細胞プロセスが存在する。
【0222】
実施例5:修飾FGF-1(N-Met-TTHX1114)は創傷治癒において有効である
【0223】
研究は、創傷癒合の速度に対する、SEQ ID NO:2(N-Met-TTHX1114)の配列を含む修飾FGF-1ポリペプチドの効果を対象とする。
【0224】
実験方法
【0225】
11週齢のメスのC57BL/Ks-db/db糖尿病マウスをJackson Laboratoriesから入手し、滅菌水及び寝具を含む滅菌微隔離器ボックスに収容し、半障壁隔離施設に維持する。
【0226】
皮膚器官培養
【0227】
障害性のマウスの治癒による皮膚生検試料を、適切な培養培地において培養する。簡単に、組織サンプルは、0.25%の加熱不活性化したウシ血清(Gibco)により追加されたDMEM(Gibco)中の37 oCにインキュベートされる。皮膚試料を、2又は3日間毎日、0、1、10、及び100μg/mLのN-Met-TTHX1114により処置する。その後、組織サンプルを、4μCiの[メチル-3H]チミジン(20Ci/mmolを含む貯蔵液から;New England Biolabs)により24時間標識する。チミジン標識の後、皮膚試料を洗浄し、可溶化し、放射能数を分析した。
【0228】
創傷閉塞モデル
【0229】
マウスに、体重1kg当たりの110mgのケタミン及び9mgのキシラジンの腹腔内注入により麻酔をかける。中央後部及び胸の皮膚を削り、2%のクロルヘキシジン、その後70%のエタノールで外科的に磨く(scrub)ことにより殺菌した。
【0230】
直径1.6cmの鋳型を使用して中央背側の領域上の2.0-cm2の円をマーキングし、単一の全層創傷を、滅菌した曲線状の虹彩はさみによる鈍的切除によって作成する。創傷領域は典型的に、おそらくは創傷周囲に沿った真皮の縮小が原因で、損傷後すぐにおよそ2.3cm2に増大する。全ての外科的及び後の治癒の解析手順を、完全な無菌技術を使用してラミナーフローフードにおいて実行する。様々な投与量でのフィルタ滅菌ゼッド成長因子(Filter-sterili zed growth factors)、及び対応するビヒクル対照溶液を、損傷後0、3、及び7日目に、局所的に適用する。創傷を、保護、湿った環境の維持、及び痂皮形成の予防のために半透明のBioclusive包帯により覆う。創傷流体試料を損傷後10日目に得て、好気性及び嫌気性微生物のために培養する。1つの創傷につき50を超えるコロニーを示す培養物の動物を、研究解析から除外する。更に軽度又は無症状感染の予防は結果として、一貫した最大の治癒機能障害をもたらし、これにより、治療効果の評価のための大きな創傷治癒窓がもたらされる。
【0231】
治癒の解析
【0232】
創傷の外観を写真で記録し、それらの周囲は、一滴の滅菌生理的食塩水で予め湿らせた後に露出された創面に直接適用された滅菌スライドガラス上へと追跡される。
【0233】
創傷後直ちに、及びその後、創傷が完全に閉じるまで週に2回、測定を行う。創傷の領域及び周囲を、適切なコンピュータ化された画像分析(例えば、Presage C V-6; Advanced Imaging Concepts, Princeton, NJ)を使用して、スライドガラス追跡から判定する。群間の差異の統計的有意差を、独立両側スチューデントt検定を使用して評価する。初期の領域のパーセントでの減少として表される治癒を、創傷領域の差異を連続時間間隔での平均創傷周囲により割ることにより、創傷縁からの線形内殖に変換する。特定の時間の内殖の合計は、その時間までの増大の内殖距離の合計である。この形質転換は時間に応じて閉塞を線形化し、それにり、経時的に一定である動的速度としての治癒の発現を可能にする。創傷は、湿った肉芽組織がこれ以上明らかでないとき完全に治癒され、機能的な表皮の透水性障壁を示すと考慮される。
【0234】
結果
【0235】
治癒障害のマウスの皮膚生検試料を、N-Met-TTHX1114の1日量に応じて[メチル-3H]チミジンに組み込む。皮膚内の細胞は、用量依存的様式でN-Met-TTHX1114に分裂促進的に反応する。故に、N-Met-TTHX111は、皮膚器官培養におけるDNA合成を誘導する。
【0236】
更に、直径約1.6cmの全層の皮膚切除創傷は、対照ビヒクルでの処置と比較して、創傷開始後第1週の間に適用される、N-Met-TTHX1114の投薬に反応して実質的に速く閉じる。故に、N-Met-TTHX1114は創傷閉塞を加速させる。
【0237】
更に、ビヒクル及びN-Met-TTHX1114で処置した創傷の全体の外観及び平均サイズは、大幅に相違する。N-Met-TTHX1114で処置した創傷は、処置後早くも3日で目視可能な発赤及び漿液の漏出などの、新生血管形成の兆候を示す。対照的に、対照ビヒクルを受ける創傷は、目視可能な漿液をほとんど又は全く含んでおらず、血管新生の兆候は実質的に明らかではなかった。
【0238】
実施例6:修飾FGF-1ポリペプチド(N-Met-TTHX1114又はTTHX-1114)を使用する疱疹性角膜症の処置
【0239】
この研究は、疱疹性角膜症の処置のためのSEQ ID NO:2(N-Met-TTHX1114)又はSEQ ID NO:205(TTHX1001)の配列を含む修飾FGF-1ポリペプチドを対象とする。
【0240】
方法
【0241】
疱疹性角膜症の患者の群をこの研究のために選択する。患者を3つの亜群に分ける。第1の亜群の患者は、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)、0.3%のプロピレングリコール、0.4%のポリエチレングリコール400、及び0.05%のヒドロキシプロピルグアーにおいて製剤される、約500pg/ml(即ち、5μg/ml)のN-Met-TTHX1114(SEQ ID NO:2)を含む、目薬などの眼製剤を眼に投与される。第2の亜群の患者は、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)、0.3%のプロピレングリコール、0.4%のポリエチレングリコール400、及び0.05%のヒドロキシプロピルグアーにおいて製剤される、約500pg/ml(即ち、5μg/ml)のTTHX1001(SEQ ID NO:205)を含む、目薬などの眼製剤を眼に投与される。第3の亜群の患者は、N-Met-TTHX1114(SEQ ID NO:2)又はTTHX1001(SEQ ID NO:205)を含んでいないが、第1及び第2の亜群に投与されたものと同一である疑似の眼製剤を眼に投与される。3つ全ての亜群に関して、目薬は、患者自身により、或いは看護師又は介護人によって投与される。N-Met-TTHX1114(SEQ ID NO:2)を含有する眼製剤、TTHX1001(SEQ ID NO:205)を含有する眼製剤、及び疑似の眼製剤を、第1、第2、及び第3の亜群の患者にそれぞれ、最大30日にわたり1日2回投与する。
【0242】
結果
【0243】
N-Met-TTHX1114(SEQ ID NO:2)を含有する眼製剤、及びTTHX1001(SEQ ID NO:205)を含有する眼製剤は結果として、疼痛及び炎症の期間の減少に加えて、第1及び第2の亜群に属する患者の大部分において約14日内に疱疹性角膜潰瘍の治癒をもたらしたことが、観察される。更に、N-Met-TTHX1114(SEQ ID NO:2)を含有する眼製剤及びTTHX1001(SEQ ID NO:205)を含有する眼製剤それぞれで処置された、第1及び第2の亜群の患者の眼には、疑似製剤で処置した第3の亜群の患者よりも角膜のもや及び瘢痕化が少なかった。
【0244】
実施例7:修飾FGF-1ポリペプチド(N-Met-TTHX1114又はTTHX-1001)を使用する慢性疱疹性角膜症の処置
【0245】
この研究は、慢性疱疹性角膜症の処置のためのSEQ ID NO:2(N-Met-TTHX1114)又はSEQ ID NO:205(TTHX1001)の配列を含む修飾FGF-1ポリペプチドを対象とする。
【0246】
方法
【0247】
慢性疱疹性角膜症の患者の群をこの研究のために選択する。患者を3つの亜群に分ける。第1の亜群の患者は、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)、0.3%のプロピレングリコール、0.4%のポリエチレングリコール400、及び0.05%のヒドロキシプロピルグアーにおいて製剤される、約500pg/ml(即ち、5μg/ml)のN-Met-TTHX1114(SEQ ID NO:2)を含む、目薬などの眼製剤を眼に投与される。第2の亜群の患者は、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)、0.3%のプロピレングリコール、0.4%のポリエチレングリコール400、及び0.05%のヒドロキシプロピルグアーにおいて製剤される、約500pg/ml(即ち、5μg/ml)のTTHX1001(SEQ ID NO:205)を含む、目薬などの眼製剤を眼に投与される。第3の亜群の患者は、N-Met-TTHX1114(SEQ ID NO:2)又はTTHX1001(SEQ ID NO:205)を含んでいないが、第1及び第2の亜群に投与されたものと同一である疑似の眼製剤を眼に投与される。3つ全ての亜群に関して、目薬は、患者自身により、或いは看護師又は介護人によって投与される。N-Met-TTHX1114(SEQ ID NO:2)を含有する眼製剤、TTHX1001(SEQ ID NO:205)を含有する眼製剤、及び疑似の眼製剤を、第1、第2、及び第3の亜群の患者にそれぞれ、最大30日にわたり1日2回投与する。
【0248】
結果
【0249】
N-Met-TTHX1114(SEQ ID NO:2)を含有する眼製剤、及びTTHX1001(SEQ ID NO:205)を含有する眼製剤は結果として、疼痛及び炎症の減少に加えて、第1及び第2の亜群に属する患者の大部分においてに角膜潰瘍の治癒をもたらしたことが、観察される。更に、N-Met-TTHX1114(SEQ ID NO:2)を含有する眼製剤及びTTHX1001(SEQ ID NO:205)を含有する眼製剤それぞれで処置された、第1及び第2の亜群の患者の眼には、疑似製剤で処置した第3の亜群の患者よりも角膜混濁のもや及び瘢痕化が少なかった。
【0250】
実施例8:修飾FGF-1ポリペプチド(N-Met-TTHX1114又はTTHX-1001)を使用する神経障害性角膜症の処置
【0251】
この研究は、疱疹感染に付随する神経障害性角膜症の処置のためのSEQ ID NO:2(N-Met-TTHX1114)又はSEQ ID NO:205(TTHX1001)の配列を含む修飾FGF-1ポリペプチドを対象とする。
【0252】
方法
【0253】
神経障害性角膜症を抱える患者の群をこの研究のために選択する。患者を3つの亜群に分ける。第1の亜群の患者は、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)、0.3%のプロピレングリコール、0.4%のポリエチレングリコール400、及び0.05%のヒドロキシプロピルグアーにおいて製剤される、約500pg/ml(即ち、5μg/ml)のN-Met-TTHX1114(SEQ ID NO:2)を含む、目薬などの眼製剤を眼に投与される。第2の亜群の患者は、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)、0.3%のプロピレングリコール、0.4%のポリエチレングリコール400、及び0.05%のヒドロキシプロピルグアーにおいて製剤される、約500pg/ml(即ち、5μg/ml)のTTHX1001(SEQ ID NO:205)を含む、目薬などの眼製剤を眼に投与される。第3の亜群の患者は、N-Met-TTHX1114(SEQ ID NO:2)又はTTHX1001(SEQ ID NO:205)を含んでいないが、第1及び第2の亜群に投与されたものと同一である疑似の眼製剤を眼に投与される。3つ全ての亜群に関して、目薬は、患者自身により、或いは看護師又は介護人によって投与される。N-Met-TTHX1114(SEQ ID NO:2)を含有する眼製剤、TTHX1001(SEQ ID NO:205)を含有する眼製剤、及び疑似の眼製剤を、第1、第2、及び第3の亜群の患者にそれぞれ、最大30日にわたり1日2回投与する。
【0254】
結果
【0255】
N-Met-TTHX1114(SEQ ID NO:2)を含有する眼製剤、及びTTHX1001(SEQ ID NO:205)を含有する眼製剤は結果として、疼痛及び炎症の減少に加えて、第1及び第2の亜群に属する患者の大部分においてに角膜潰瘍の治癒をもたらしたことが、観察される。更に、N-Met-TTHX1114(SEQ ID NO:2)を含有する眼製剤及びTTHX1001(SEQ ID NO:205)を含有する眼製剤それぞれで処置された、第1及び第2の亜群の患者の眼には、疑似製剤で処置した第3の亜群の患者よりも角膜混濁のもや及び瘢痕化が少なかった。
【0256】
実施例9:修飾FGF-1ポリペプチド(N-Met-TTHX1114又はTTHX1001)を使用する再発性疱疹性角膜症の処置、及び潜伏ウイルスの再活性化の抑制
【0257】
この研究は、疱疹感染に付随する神経障害性角膜症の処置のためのSEQ ID NO:2(N-Met-TTHX1114)又はSEQ ID NO:205(TTHX1001)の配列を含む修飾FGF-1ポリペプチドを対象とする。
【0258】
方法
【0259】
再発性角膜症を抱える患者の群をこの研究のために選択する。患者は、疱疹性角膜症の少なくとも1つの症状(episode)を経験した。再発性疱疹性角膜症の処置、及び潜伏ウイルスの再活性化の抑制に関して、患者を3つの亜群に分ける。第1の亜群の患者は、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)、0.3%のプロピレングリコール、0.4%のポリエチレングリコール400、及び0.05%のヒドロキシプロピルグアーにおいて製剤される、約50pg/ml~約500pg/ml(即ち、5μg/ml)のN-Met-TTHX1114(SEQ ID NO:2)を含む、目薬などの眼製剤を眼に投与される。第2の亜群の患者は、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)、0.3%のプロピレングリコール、0.4%のポリエチレングリコール400、及び0.05%のヒドロキシプロピルグアーにおいて製剤される、約50pg/ml~約500pg/ml(即ち、5μg/ml)のTTHX1001(SEQ ID NO:205)を含む、目薬などの眼製剤を眼に投与される。第3の亜群の患者は、N-Met-TTHX1114(SEQ ID NO:2)又はTTHX1001(SEQ ID NO:205)を含んでいないが、第1及び第2の亜群に投与されたものと同一である疑似の眼製剤を眼に投与される。3つ全ての亜群に関して、目薬は、患者自身により、或いは看護師又は介護人によって投与される。N-Met-TTHX1114(SEQ ID NO:2)を含有する眼製剤、TTHX1001(SEQ ID NO:205)を含有する眼製剤、及び疑似の眼製剤を、第1、第2、及び第3の亜群の患者にそれぞれ、最大30日にわたり1日2回投与する。
【0260】
結果
N-Met-TTHX1114(SEQ ID NO:2)を含有する眼製剤、及びTTHX1001(SEQ ID NO:205)を含有する眼製剤は、無病期間を増大させ、且つ再活性化されたウイルス病変の重症度を低下させ、修飾FGF-1を受けた患者は、疑似製剤で処置される第3の亜群の患者よりも疾患の再発のない期間が長かったことが、観察される。
【0261】
実施例10:ヒト角膜内皮細胞(HCEC)増殖に対する修飾FGF-1ポリペプチドの効果
【0262】
研究は、SEQ ID NO:206(TTHX1114)又はSEQ ID NO:205(TTHX1001)の配列を含む修飾FGF-1ポリペプチドを対象とする。修飾FGF-1ポリペプチドを、組み換え技術のセクションで上述されるような方法を用いて生成する。
【0263】
実験方法及び結果
【0264】
健康なドナーのヒト角膜内皮細胞の一次培養物(継代1)を、ウシ胎仔血清(FBS、8%)の存在下で24ウェルプレート上に播種し、24時間後、低(0.8%)FBSを有する培地において、様々な濃度のTTHX1114(SEQ ID NO:206)、TTHX1001(SEQ ID NO:205)、又はwt-FGF-1(SEQ ID NO:1)で処置した。8%のFBS群を陽性対照として使用する。結果は、TTHX1114が、ヒト角膜上皮細胞増殖の刺激においてTTHX1001又はwt-FGF-1よりも強力であり、その中でも用量反応性であったことを示した。TTHX1114のEC50は、
図2に示されるようにwt-FGF-1又は他の試験された修飾FGF-1ポリペプチド(TTHX1001;SEQ ID NO:205)よりも約100倍低かった。
【0265】
実施例11:ナイトロジェンマスタードで誘導された角膜の損傷
【0266】
研究は、ナイトロジェンマスタード(NM)で誘導された角膜外傷の処置に対する、SEQ ID NO:206(TTHX1114)の配列を含む修飾FGF-1ポリペプチドの効果を対象とする。修飾FGF-1ポリペプチドを、組み換え技術のセクションで上述されるような方法を用いて生成した。
【0267】
実験方法
【0268】
ウサギの角膜器官培養モデル系を使用し、NMへの曝露後の治癒を評価した。ウサギの眼(8-12週齢)を得て、2mmの強膜の縁持つ角膜を眼から切り分け、上皮を下にして点滴板に配して、陥没部をダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)において558Cの溶融寒天(0.75%)で満たした。設定の非限定的な例を
図3に示す。一旦、溶液がゲル状になると、角膜は反転し、それにより上皮層がアクセス可能となった。培養物を60mm直径のpyrex組織培養皿に配した。高いグルコースDMEMを調製し、13MEM-NEAA(最小必須培地非必須アミノ酸)、13 RMPI 1640ビタミン溶液、13の抗生物質/抗真菌剤、アスコルビン酸(0.45mM)、及びシプロフロキサシン(10μg/ml)を含んでいた。高いグルコースDMEMを強膜の縁に加え、角膜を空気に晒したままにした。皿を、5%のCO
2を含む37℃の湿ったインキュベータに配した。各培養物の上皮を500μLの培地で湿らせ、7~9時間毎に中央角膜上へと液滴で加えた。発疱剤(NM)を中央角膜上に液滴で加えた。角膜サンプル(その寒天支持物から剥がされる)を、上皮を下にして、Optimal Cutting Temperature(OCT, Tissue-Tek; Sakura, Torrance, CA, USA)の化合物を含むクリオモルドに置き、組織学及び免疫蛍光検査のために急速冷凍し、或いは、ウエスタンブロット及びADAM17活性アッセイ(InnoZyme TACE activity assay kit; Calbiochem, Billerica, MA, USA)を含む更なるタンパク質分析のために直接スナップ冷凍した。
【0269】
NMを使用して角膜外傷を誘導した。粉末固体形態(カタログ番号122564;Sigma-Aldrich)の中のNMを最初にPBSに溶かして100mMにし、その後に培地で希釈して10mMにした。10マイクロリットルを加えて、角膜に100nmolの発疱剤を送達した。中央角膜上へとNMを適用後、培養物を、発疱剤を取り除くことなく、2時間かけて37℃のインキュベータに戻した。このインキュベーション後、汚染された培地を取り除き、皿の高さが強膜の縁の上部に到達するまで新たな培地を中央角膜に加えた。その後、晒されていない対照、及び晒された角膜を、22時間のインキュベーションにわたり37℃に戻し、これをわずか3つの短期間にわたり取り除き、N-Met-TTHX1114治療をない晒されたサンプルに20μLの培地を加え、或いは、中央角膜に対する治療として20μLのN-Met-TTHX1114を加えた。第1のTTHX1114適用は8時間、第2は9時間、及び第3は5時間残った。故に、2時間の曝露及び続く処置の長さは、合計24時間であった。
【0270】
NM曝露がどれくらい速くADAM17を誘導したかを分析する実験のために、培養物を記載の通り設定した。最短の曝露時間に関して、NM溶液を角膜に適用し、その後すぐに洗い流し、サンプルをタンパク質単離抽出緩衝液に入れた。これを他の2つの角膜にも繰り返して行い、3つの0分の曝露を集めた。5分及び10分の曝露に関して、NMを3つの角膜のセットに適宜加えて、どれもNMに対しては偶発的に過小又は過度には、確実に晒されなかった。全ての角膜を抽出し、ADAM17活性アッセイのために処理した。
【0271】
InnoZyme ADAM17/TACE活性キット(Calbiochem)を使用して、供給業者により提供されたプロトコルに従い角膜の抽出物からの酵素の活性を定量した。簡単に、400μLの洗浄緩衝液(InnoZymeキットのもの)を、抗ヒトADAM17抗体で予め被覆した96ウェルプレートに適用し、その後に洗浄を2回行った。角膜抽出物及びInnoZymeキット基準の3通りのサンプル(100μL)をそれぞれ、3セットのウェルに加えた。プレートを密封し、室温で優しく振盪させながら1時間インキュベートした。その後、プレートを400μLの洗浄緩衝液により5回洗浄した。キット(100μL)に提供されたADAM17基質を各ウェルに加え、37℃で5時間インキュベートした。蛍光を、324nmの励起波長及び405nmの発光波長で測定し、グラフ上に相対的な蛍光単位として報告した。ADAM17の免疫検出に関して、スライド上のOCTを埋め込んだ切片を10分間、208Cのメタノールにおいて最初に固定した。非特異的結合を、0.05%のTween20(PBST)を含むPBSにおいて5%の正常なヤギ血清(NGS)により1時間遮断した。免疫蛍光検査によって活性酵素のみを検出することが分かった、ヒトADAM 17(1.5%のNGS中の5μg/mL、MAB9304;R&D Systems, Minneapolis, MN, USA)の外部ドメイン(アミノ酸18-671)に対するマウスモノクローナル抗体を、室温で1時間のインキュベーションにわたりスライドに適用し、その後、スライドをPBST中で10分間、3回洗浄した。陰性対照スライドに関して、試験切片に使用される一次抗体ものと同じ容量のPBSTを切片に適用し、その後、同じ洗浄容量を適用した。1.5%のNGS中のAlexaFluor488(1:1000;Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)に抱合したヤギ抗マウスIgGを室温のインキュベーションに1時間適用した。PBSTで5分間3回の洗浄後、0.4mg/mLのDAPIを5分間切片に適用し、母核を対比染色した。Prolong Goldを、スライドを滑らせるカバーに使用した。
【0272】
結果
【0273】
角膜器官培養物におけるNMで誘導された損傷の組織病理学
【0274】
NMにより被られた損傷は、以下を含んでいた:(a)実質へと下方に押す上皮細胞の数及び深度の増加によって明らかとなった上皮層の過形成。これは下方への過形成と呼ばれる。晒されていない(未処置)角膜(
図4、下のパネル)はまた、ある程度の下方への過形成を示したが、NMに晒された角膜(
図4、上のパネル)ほど広範ではなかった;(b)基礎の上皮細胞の上部に向かい上昇する基底細胞母核;及び(c)上皮-実質の分離。組織病理学的効果は、早くも曝露後4日で目視可能となった。
【0275】
NMで誘導された角膜外傷の効果を評価するための典型的な組織病理学的等級付けスキームを
図6に示し、NMで誘導された角膜及び実質の損傷の組織病理学的等級はまた、
図7のプロットに例示される。
【0276】
TTHX1114による、NMに晒された角膜細胞の処置は、損傷を防ぐ
【0277】
TTHX1114による、NMに晒された角膜の処置は、NMで誘導された組織病理学的損傷から角膜を保護した。
図5に見られるように、NM曝露後4日目に、TTHX1114で処置した角膜は、下方への過形成を示さなかった(
図5の上と下のパネルを比較)。更に、上皮-実質の分離は、
図4の上のパネルに見られるように、TTHX1114で処置した角膜では目視可能でなかった(6日目、下のパネル、
図5)。
【0278】
NMで誘導された損傷の組織病理学的等級付けはまた、TTHX1114で処置した角膜において減少することが分かった。結果を
図8に示す。
【0279】
TTHX1114は、NM曝露がウサギの角膜のFGF-1レベルを下げるのを防ぐ
【0280】
NMに晒されたウサギの角膜切片を、抗FGF-1抗体によりインキュベートした。晒された角膜において、FGF-1レベルの減少を、
図9に示されるように観察した。NMに晒された角膜切片は、曝露の1日(
図9の上パネル)及び3日(
図9の下パネル)後、未処置の角膜切片と比較して増強されたFGF-1の抑制を実証した。
【0281】
NM曝露はウサギの角膜におけるADAM17活性化を誘導する
【0282】
NMに晒された角膜において、強い蛍光シグナルを表皮基底膜領域に観察し、そこでは、ADAM17酵素は、コラーゲンXVIIを分解するために位置決めされる必要がある(
図10Bの上のパネルは、曝露後1、4、及び6日目のADAM17免疫蛍光検査の結果を示す)。ADAM17は、晒されていない角膜ではあまり検出されなかった(
図10A)。
【0283】
TTHX1114処置は、ウサギの角膜におけるNM曝露で誘導されたADAM17活性化を減少させる
【0284】
TTH1114での角膜の処置に際して、ADAM17蛍光シグナルは、周辺及び中央の角膜において弱化した(
図10Bの下のパネル)。ADAM17蛍光シグナルの弱化又は欠如は、角膜の上皮-実質の結合のより優れた組織学的外観に相当した。
【0285】
TTHX1114処置は、角膜上皮増殖のNM曝露で誘導された抑制を改善する
【0286】
周辺角膜上皮層の刺激を、角膜上皮細胞(CEC)のEdU取り込みを介して評価した。ウサギのCECの一次培養物を、標準手順、例えばKay et alにより記載される手順(Kay et al. Investigative ophthalmology & visual science. 1993;34(3):663-72; Lee et al., Investigative ophthalmology & visual science. 2009;50(5):2067-76)を使用して確立した。細胞を2時間、NMに晒す。増殖アッセイを、例えばClick-ITアッセイキット(Life Technologies)を使用して、12ウェルプレートにおいて実行した。角膜上皮細胞へのEdUの取り込みを、上皮増殖の指標として評価した。EdUを組み込む角膜上皮細胞のパーセンテージは、
図11に見られるように、NM曝露後、TTHX1114で処置した時には低かった。
【0287】
実施例12:角膜内皮細胞の、硫黄マスタードで誘導された損傷
【0288】
研究は、硫黄マスタード(SM)で誘導された角膜外傷の処置に対する、SEQ ID NO:206(TTHX1114)の配列を含む修飾FGF-1ポリペプチドの効果を対象とする。修飾FGF-1ポリペプチドを、組み換え技術のセクションで上述されるような方法を用いて生成する。
【0289】
実験方法
【0290】
8~16匹のコホートにおけるウサギを4ヶ月の期間中、晒した。曝露の1日前、各ウサギの背中の4-in2領域を切り取り、フェンタニルパッチ(25μg/h)を肩甲骨の前方に配される。曝露の日に、ウサギに15mg/kgのケタミン及び7mg/kgのキシラジンの筋内投与により麻酔をかけ、生理学的パラメータを記録する。麻酔をかけたウサギの角膜を、前述のような蒸気カップ送達システムを使用して、2.5分にわたりSM蒸気に晒す。曝露の2分後、晒された眼を10mLの滅菌生理食塩水により優しくすすぎ、残存する薬剤を洗い流す。
【0291】
ウサギの第1の群を、曝露の24時間後に屠殺する。屠殺の5分後、PBS(pH7.4)に溶解したAlexaFluor 488(Life Technologies, Carlsbad, CA)の0.1mg/mLの溶液の20μLを、100μLのハミルトンガラスシリンジ(Hamilton Company, Reno, NV)を使用して30ゲージの針を介して前眼房へと注入する。10分後、角膜を切除し、10mLのPBSにおいて1分間3回洗浄する。角膜を、100μLのPBSを含む14mLの丸底管(Becton Dickinson, Franklin Lakes, NJ)に移し、優しく撹拌しながら暗所で氷の上にてインキュベートする。30分後、上清をPBSにおいて1:5に希釈し、488±10nmの励起波長、524±10nmの発光波長、及び50の利得を使用してSynergy MX fluorophotometer(Biotek, Winooski, VT)上で蛍光を解析する。代表的な角膜を青色ダイオードで画像化し、FITCフィルタをVersadoc MP 4000(Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA)において設定する。
【0292】
残りのウサギを更に、様々な投与量のTTHX1114で処置した試験群、及び、対照ビヒクルで処置した疑似対照群に分けた。処置を約2週間で実行する。ウサギは、ケージ及び提供された食物及び水に自由に返される。フェンタニルパッチを72時間毎に交換し、曝露後6日にわたり不快感を管理して、その後必要に応じて大量に適用する。動物を、疼痛及び苦痛の兆候について毎日モニタリングする。角膜外傷を、パキメトリー、フルオレセイン排除アッセイ、及びスリットランプ評価を使用して、臨床的に定期的に評価する。
【0293】
結果
【0294】
硫黄マスタード(SM)曝露は角膜内皮の損傷を引き起こす
【0295】
SM曝露の24時間後のSEMにより370nmで視覚化した角膜は求心的な損傷を示し、中央角膜における角膜内皮細胞(CEC)が広範囲に欠損し、曝露縁の方への保持が増大する。角膜内皮におけるSMで誘導された変化のより包括的な概要を得るために、後部角膜の微細構造を電子顕微鏡検査によって評価する。疑似の晒されていない角膜の走査型電子顕微鏡写真を表に記入することで、指のように組まれた境界、先端の微絨毛、及び稀有な繊毛を伴う通常の形状及びサイズの多角形の細胞の連続的な層を明らかにする。曝露の24時間以内、全ての角膜内皮は、曝露周辺部における広範な中央CEC欠損及びより広範な発疱を伴う、急性病変の証拠を示す。露出領域内のCECは、2つの一般的な形態、即ち、拡大した(大いに弱められた)多形性細胞、及び円形又は紡錘体形状の細胞を表した。大半のCECは非定型の頂端側細胞膜の形態を示し、細胞間の交互嵌合を欠く。CEC発疱の領域において、剥離されたデスメ膜(DM)は、CECラメリポディア及び糸状仮足の複合分枝状構造(complex arbor)によって覆われている。角膜の断面のTEM画像化は求心的な損傷パターンを確かにし、CEC形態は損傷縁に向かって次第に正規化する。中央病変付近の剥離されたDMを、広範囲に分枝状にされた細胞プロセスによって浸潤させる。より遠位の領域において、接合部複合体の損失を伴う細胞のプロセスの重なりは一般的であり、運動型の集団を示唆する。SEMによって観察された円形CEC集団は、排他的に重複する多形性内皮を見出され、壊死又はアポトーシスの兆候を示した。
【0296】
TTHX1114による処置は角膜内皮の損傷を解決する。
【0297】
曝露の8週間後、内皮細胞の形態及び構造を、試験群(解決されたとも称される)と疑似対照群(後にMGKを進行させる)との間で比較する。解決された眼は、角膜びらん、新生血管形成、又は角膜のもやなどの臨床評価中の特徴的なMGK後遺症の欠如によって区別され、6週間まで疑似の晒された対照と統計的に判別不能である角膜の厚みを備えていた。解決された眼の走査顕微鏡写真図を表に記入することで、十分に組織化された多角形細胞の単層と共に、疑似の晒された対照に非常に類似していることが分かった。対照角膜と比較して、平均CECサイズは解決された眼において増大し;さもなくば、解決された角膜は、後面にわたって有意な変異性を示さない。対照的に、MGK内皮を持つ疑似の対照処置のウサギは、動的な損傷プロセスを示す、動物間の細胞形状及び細胞幅における広範な変異性を明らかにする。内皮の形態における巣状の変異性は個々の角膜において慣例的に観察され、一部の領域は、拡大したがモザイク状のCECを示し、他の領域は有意な組織崩壊を示し、様々な程度の先端の小疱形成があり、区域は剥離されたDMを示し、明確に線引きされた細胞境界は欠如している。これらの現象は、TTHX1114で処置した解決された内皮には観察されなかった。TTHX1114で処置した解決された角膜の透過電子顕微鏡画像は、未処置の内皮に非常に類似している。対照的に、MGK病態を伴う疑似対照の処置された内皮は、浮腫及び/又はretrocorneal線維膜の堆積の何れかに一致する、後部のDMの拡散性の肥厚を示す。MGK角膜はまた、細胞質の希薄化、過度の空胞化、及び膨潤した小胞体(endoplasmic reticuli)を含む、CECストレス又は損傷の広範なマーカーを示す。24時間の画像と同様であり、最近剥離されたDMに再生息する進行中の試みを示唆する、高頻度の重複する細胞プロセスが存在する。
【0298】
実施例13:修飾FGF-1ポリペプチド(TTHX1114)を使用する疱疹性角膜症の処置
【0299】
この研究は、疱疹性角膜症の処置のための、SEQ ID NO:206(TTHX1114)の配列を含む修飾FGF-1ポリペプチドの使用を対象とする。
【0300】
方法
【0301】
疱疹性角膜症の患者の群をこの研究のために選択する。患者を2つの亜群に分ける。第1の亜群の患者は、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)、0.3%のプロピレングリコール、0.4%のポリエチレングリコール400、及び0.05%のヒドロキシプロピルグアーにおいて製剤される、約500pg/ml(即ち、5μg/ml)のTTHX1114(SEQ ID NO:206)を含む、目薬などの眼製剤を眼に投与される。第2の亜群の患者は、TTHX1114(SEQ ID NO:206)を含んでいないが、第1及び第2の亜群に投与されたものと同一である疑似の眼製剤を眼に投与される。両亜群に関して、目薬は、患者自身により、或いは看護師又は介護人によって投与される。TTHX1114(SEQ ID NO:206)を含有する眼製剤、及び疑似の眼製剤は、それぞれ、第1及び第2の亜群に、1日2回、最大30日間投与される。
【0302】
結果
【0303】
TTHX1114(SEQ ID NO:206)を含有する眼製剤は結果として、疼痛及び炎症の期間中の減少に加えて、第1の亜群に属する患者の大部分において約14日内に疱疹性角膜潰瘍の治癒をもたらしたことを、観察する。更に、TTHX1114(SEQ ID NO:206)を含有する眼製剤で処置した、第1の亜群の患者の眼は、疑似製剤で処置される第3の亜群の患者よりも、角膜のもや及び瘢痕化が少なかった。
【0304】
実施例14:修飾FGF-1ポリペプチド(TTHX1114)を使用する慢性疱疹性角膜症の処置
【0305】
この研究は、SEQ ID NO:206(TTHX1114)の配列を含む修飾FGF-1ポリペプチドの使用を対象とする。
【0306】
方法
【0307】
慢性疱疹性角膜症の患者の群をこの研究のために選択する。患者を2つの亜群に分ける。第1の亜群の患者は、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)、0.3%のプロピレングリコール、0.4%のポリエチレングリコール400、及び0.05%のヒドロキシプロピルグアーにおいて製剤される、約500pg/ml(即ち、5μg/ml)のN-Met-TTHX1114(SEQ ID NO:2)を含む、目薬などの眼製剤を眼に投与される。第2の亜群の患者は、TTHX1114(SEQ ID NO:206)を含んでいないが、第1及び第2の亜群に投与されたものと同一である疑似の眼製剤を眼に投与される。両亜群に関して、目薬は、患者自身により、或いは看護師又は介護人によって投与される。TTHX1114(SEQ ID NO:206)を含有する眼製剤、及び疑似の眼製剤は、それぞれ、第1及び第2の亜群に、1日2回、最大30日間投与される。
【0308】
結果
【0309】
TTHX1114(SEQ ID NO:206)を含有する眼製剤は結果として、疼痛及び炎症の中の減少に加えて、第1の亜群に属する患者の大部分において角膜潰瘍の治癒をもたらしたことを、観察する。更に、TTHX1114(SEQ ID NO:206)を含有する眼製剤で処置した、第1の亜群の患者の眼は、疑似製剤で処置される第3の亜群の患者よりも、角膜混濁のもや及び瘢痕化が少なかった。
【0310】
実施例15:修飾FGF-1ポリペプチド(TTHX1114)を使用する神経障害性角膜症の処置
【0311】
この研究は、疱疹感染に付随する神経障害性角膜症の処置のための、SEQ ID NO:206(TTHX1114)の配列を含む修飾FGF-1ポリペプチドの使用を対象とする。
【0312】
方法
【0313】
神経障害性角膜症を抱える患者の群をこの研究のために選択する。患者を2つの亜群に分ける。第1の亜群の患者は、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)、0.3%のプロピレングリコール、0.4%のポリエチレングリコール400、及び0.05%のヒドロキシプロピルグアーにおいて製剤される、約500pg/ml(即ち、5μg/ml)のTTHX1114(SEQ ID NO:206)を含む、目薬などの眼製剤を眼に投与される。第2の亜群の患者は、TTHX1114(SEQ ID NO:206)を含んでいないが、第1の亜群に投与されたものと同一である疑似の眼製剤を眼に投与される。両亜群に関して、目薬は、患者自身により、或いは看護師又は介護人によって投与される。TTHX1114(SEQ ID NO:206)を含有する眼製剤、及び疑似の眼製剤は、それぞれ、第1及び第2の亜群に、1日2回、最大30日間投与される。
【0314】
結果
【0315】
TTHX1114(SEQ ID NO:206)を含有する眼製剤は結果として、疼痛及び炎症の中の減少に加えて、第1の亜群に属する患者の大部分において角膜潰瘍の治癒をもたらしたことを、観察する。更に、TTHX1114(SEQ ID NO:206)を含有する眼製剤でそれぞれ処置した、第1の亜群の患者の眼は、疑似製剤で処置される第3の亜群の患者よりも、角膜混濁のもや及び瘢痕化が少なかった。
【0316】
実施例16:修飾FGF-1ポリペプチド(TTHX1114)を使用する再発性疱疹性角膜症の処置、及び潜伏ウイルスの再活性化の抑制
【0317】
この研究は、疱疹感染に付随する神経障害性角膜症の処置のための、SEQ ID NO:206(TTHX1114)の配列を含む修飾FGF-1ポリペプチドの使用を対象とする。
【0318】
方法
【0319】
再発性角膜症を抱える患者の群をこの研究のために選択する。患者は、疱疹性角膜症の少なくとも1つの症状を経験した。再発性疱疹性角膜症の処置、及び潜伏ウイルスの再活性化の抑制に関して、患者を2つの亜群に分ける。第1の亜群の患者は、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)、0.3%のプロピレングリコール、0.4%のポリエチレングリコール400、及び0.05%のヒドロキシプロピルグアーにおいて製剤される、約50pg/ml~約500pg/ml(即ち、5μg/ml)のTTHX1114(SEQ ID NO:206)を含む、目薬などの眼製剤を眼に投与される。第3の亜群の患者は、TTHX1114(SEQ ID NO:206)を含んでいないが、第1及び第2の亜群に投与されたものと同一である疑似の眼製剤を眼に投与される。両亜群に関して、目薬は、患者自身により、或いは看護師又は介護人によって投与される。TTHX1114(SEQ ID NO:206)を含有する眼製剤、及び疑似の眼製剤は、それぞれ、第1及び第2の亜群に、1日2回、最大30日間投与される。
【0320】
結果
【0321】
TTHX1114(SEQ ID NO:206)を含有する眼製剤は、無病期間を増大させ、且つ再活性化されたウイルス病変の重症度を低下させ、修飾FGF-1を受けた患者は、疑似製剤で処置される第2の亜群の患者よりも疾患の再発のない期間が長かったことが、観察される。
【0322】
配列
【0323】
【0324】
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【0330】
【0331】
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【0333】
【0334】
【0335】
【0336】
組み換え修飾FGF-1ポリペプチドであって、1つ以上の突然変異を伴うSEQ ID NO:1として明記される配列を含み、SEQ ID NO:1の第1の残基の上流に位置するN末端メチオニン残基を含む、組み換え修飾FGF-1ポリペプチド。