(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112828
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】消化管系へのペイロード送達のための、BTNL3/8を標的とする構築物
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20240814BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20240814BHJP
C07K 14/725 20060101ALI20240814BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240814BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20240814BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20240814BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240814BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C12N15/113 Z
C07K14/725
C07K16/28
A61K38/17
A61K47/64
A61P1/04
A61P29/00
C07K19/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024075673
(22)【出願日】2024-05-08
(62)【分割の表示】P 2020567809の分割
【原出願日】2019-06-05
(31)【優先権主張番号】62/680,932
(32)【優先日】2018-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513200313
【氏名又は名称】キングス・カレッジ・ロンドン
(71)【出願人】
【識別番号】519391608
【氏名又は名称】ガンマデルタ セラピューティクス リミティッド
【氏名又は名称原語表記】GAMMADELTA THERAPEUTICS LTD
【住所又は居所原語表記】1 Kingdom Street, W2 6BD London, United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】オリバー ヌスバウマー
(72)【発明者】
【氏名】オグザナ ポルヤコバ
(72)【発明者】
【氏名】ラジ メータ
(72)【発明者】
【氏名】アドリアン ヘイデイ
(72)【発明者】
【氏名】ピエーレ ヴァントウラウト
(72)【発明者】
【氏名】イヴァ ズラタレバ
(72)【発明者】
【氏名】デイジー メランドリ
(72)【発明者】
【氏名】ロビン ジョン キャンプベル ダート
(72)【発明者】
【氏名】アダム ライング
(57)【要約】 (修正有)
【課題】薬剤局所的送達のためのタンパク質構築物を提供する。
【解決手段】BTNL3/8を標的とする成分、ペイロード、及び該標的とする成分を該ペイロードへ結合する任意のリンカーを含む、タンパク質構築物が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
BTNL3/8を標的とする成分;
ペイロード;及び
該標的とする成分を該ペイロードへ結合する任意のリンカー
を含む、タンパク質構築物。
【請求項2】
前記BTNL3/8を標的とする成分はVγドメインを含み、
該Vγドメインの配列位置番号87のアミノ酸はアスパラギン酸又はヒスチジンであり、V
γドメインの配列位置番号90のアミノ酸はグリシン又はグルタミン酸であり、及び
該Vγ CDR4の残りの残基は、それぞれの位置で、ヒト又はマウス(murine)のVγドメイ
ンの対応残基から独立して選択される、請求項1記載のタンパク質構築物。
【請求項3】
前記VγドメインCDR4の残りの残基は、それぞれの残基位置で、ヒトVγ4、ヒトVγ2、
又はマウスVγ7の対応残基から独立して選択される、請求項2記載のタンパク質構築物。
【請求項4】
前記Vγドメインの位置番号87~90のアミノ酸配列は、配列番号:1である、請求項2記載
のタンパク質構築物。
【請求項5】
前記Vγドメインの位置番号87~90のアミノ酸配列は、配列番号:2である、請求項2記載
のタンパク質構築物。
【請求項6】
前記VγドメインCDR4の残りの残基は全て、ヒトVγ4、ヒトVγ2、又はマウスVγ7の対
応残基から選択される、請求項3記載のタンパク質構築物。
【請求項7】
前記Vγ CDR4の残りの残基は、ヒトVγ4の対応残基から選択される、請求項6記載のタ
ンパク質構築物。
【請求項8】
前記Vγ CDR4の残りの残基は、ヒトVγ2の対応残基から選択される、請求項6記載のタ
ンパク質構築物。
【請求項9】
前記Vγ CDR4の残りの残基は、マウスVγ7の対応残基から選択される、請求項6記載の
タンパク質構築物。
【請求項10】
前記VγドメインはヒトVγ2ドメインであり、その中ではCDR4のアミノ酸は、アミノ酸
配列位置番号87でアスパラギン酸又はヒスチジンで置換され、アミノ酸配列位置番号90で
グリシン又はグルタミン酸で置換されている、請求項2記載のタンパク質構築物。
【請求項11】
前記VγドメインはヒトVγ4ドメインである、請求項2記載のタンパク質構築物。
【請求項12】
前記VγドメインCDR3は、ヒト又はマウスのVγ CDR3配列である、請求項1~11のいずれ
か一項記載のタンパク質構築物。
【請求項13】
前記VγドメインCDR3は、ヒトVγ4 CDR3配列を含む、請求項12記載のタンパク質構築物
。
【請求項14】
前記VγドメインCDR3は、ヒトVγ2 CDR3配列を含む、請求項12記載のタンパク質構築物
。
【請求項15】
前記VγドメインCDR3は、マウスVγ7 CDR3配列を含む、請求項12記載のタンパク質構築
物。
【請求項16】
前記J領域はVγ J領域である、請求項2~15のいずれか一項記載のタンパク質構築物。
【請求項17】
前記J領域はヒトVγ J領域である、請求項16記載のタンパク質構築物。
【請求項18】
前記J領域はマウスVγ J領域である、請求項16記載のタンパク質構築物。
【請求項19】
前記J領域は、配列番号:15~18からなる群から選択される配列番号を含む、請求項16記
載のタンパク質構築物。
【請求項20】
前記BTNL3/8を標的とする成分は更に、ペアになったVδドメインを含む、請求項1~19
のいずれか一項記載のタンパク質構築物。
【請求項21】
前記Vγドメイン及びVδドメインは、少なくとも1つのジスルフィド結合により共有的
に結合される、請求項20記載のタンパク質構築物。
【請求項22】
前記Vγドメイン及びVδドメインは、特異的なヘテロダイマー性相互作用によりペアに
なっている、請求項21記載のタンパク質構築物。
【請求項23】
前記ヘテロダイマー性相互作用はロイシンジッパー相補性である、請求項22記載のタン
パク質構築物。
【請求項24】
前記標的とする成分は配列番号:9を含む、請求項23記載のタンパク質構築物。
【請求項25】
前記標的とする成分は配列番号:10である、請求項23記載のタンパク質構築物。
【請求項26】
前記標的とする成分は配列番号:11である、請求項23記載のタンパク質構築物。
【請求項27】
前記標的とする成分は、Vγドメイン及びVδドメインの一本鎖インフレーム融合を含む
、請求項20記載のタンパク質構築物。
【請求項28】
前記VγドメインはVδドメインへのN末端である、請求項27記載のタンパク質構築物。
【請求項29】
前記VγドメインはVδドメインへのC末端である、請求項27記載のタンパク質構築物。
【請求項30】
前記Vγドメイン及びVδドメインの一本鎖インフレーム融合は、内部リンカー配列を含
む、請求項27~29のいずれか一項記載のタンパク質構築物。
【請求項31】
前記VδドメインはヒトVδドメインである、請求項20~24又は27~30のいずれか一項記
載のタンパク質構築物。
【請求項32】
前記ヒトVδドメインはVδ1、Vδ2又はVδ5である、請求項31記載のタンパク質構築物
。
【請求項33】
前記ヒトVδドメインはVδ1である、請求項32記載のタンパク質構築物。
【請求項34】
更に第一T細胞受容体定常領域を含む、請求項2~33のいずれか一項記載のタンパク質構
築物であって、該第一T細胞受容体定常領域は、VγドメインのC末端へインフレーム融合
している、前記タンパク質構築物。
【請求項35】
前記第一T細胞受容体定常領域は、ヒトT細胞受容体定常領域である、請求項34記載のタ
ンパク質構築物。
【請求項36】
前記第一T細胞受容体定常領域は、ヒトT細胞受容体β定常領域である、請求項35記載の
タンパク質構築物。
【請求項37】
前記第一T細胞受容体定常領域は、ヒトT細胞受容体α定常領域である、請求項35記載の
タンパク質構築物。
【請求項38】
前記第一T細胞受容体定常領域は、ヒトT細胞受容体γ定常領域である、請求項35記載の
タンパク質構築物。
【請求項39】
前記標的とする成分は更に、第二T細胞受容体定常領域を含む、請求項20~38のいずれ
か一項記載のタンパク質構築物であって、該第二T細胞受容体定常領域は、ペアになったV
δドメインのC末端へインフレーム融合している、前記タンパク質構築物。
【請求項40】
前記第二T細胞受容体定常領域は、ヒトT細胞受容体α定常領域である、請求項39記載の
タンパク質構築物。
【請求項41】
前記第二T細胞受容体定常領域は、ヒトT細胞受容体β定常領域である、請求項39記載の
タンパク質構築物。
【請求項42】
前記第二T細胞受容体定常領域は、ヒトT細胞受容体δ定常領域である、請求項39記載の
タンパク質構築物。
【請求項43】
前記Vδドメインと第二T細胞受容体定常領域とのインフレーム融合は、Vδドメインと
第二T細胞受容体定常領域との間の内部リンカー配列を含む、請求項39~42のいずれか一
項記載のタンパク質構築物。
【請求項44】
前記ペイロードは、標的とする成分へインフレーム融合されたタンパク質ペイロードで
ある、請求項1~43のいずれか一項記載のタンパク質構築物。
【請求項45】
前記ペイロードはポリペプチドである、請求項44記載のタンパク質構築物。
【請求項46】
前記ペイロードはペプチドである、請求項45記載のタンパク質構築物。
【請求項47】
前記ペイロードはサイトカインである、請求項45記載のタンパク質構築物。
【請求項48】
前記ペイロードは抗体である、請求項45記載のタンパク質構築物。
【請求項49】
前記ペイロードは一本鎖可変断片(scFv)である、請求項48記載のタンパク質構築物。
【請求項50】
前記抗体は、サイトカイン抗原に特異的な、少なくとも1つの抗原結合部位(ABS)を含む
、請求項47~49のいずれか一項記載のタンパク質構築物。
【請求項51】
前記抗体は、腫瘍壊死因子α(TNFα)抗原に特異的な、少なくとも1つのABSであり、を
含む、請求項47~49のいずれか一項記載のタンパク質構築物。
【請求項52】
前記抗体は、Fc受容体と相互作用可能なFcドメインを含む、請求項47~又は49~51のい
ずれか一項記載のタンパク質構築物。
【請求項53】
前記抗体は、Fc受容体と相互作用不可能なFcドメインを含む、請求項47又は48~51のい
ずれか一項記載のタンパク質構築物。
【請求項54】
前記ペイロードは小分子である、請求項1~42のいずれか一項記載のタンパク質構築物
。
【請求項55】
前記ペイロードはホルモンである、請求項54記載のタンパク質構築物。
【請求項56】
前記ペイロードは核酸である、請求項54記載のタンパク質構築物。
【請求項57】
前記ペイロードは阻害性RNA(RNAi)である、請求項56記載のタンパク質構築物。
【請求項58】
前記任意のリンカーは標的とする成分へインフレーム融合したペプチドである、請求項
1~57のいずれか一項記載のタンパク質構築物。
【請求項59】
前記任意のリンカーは、標的とする成分のC末端へインフレーム融合されている、請求
項58記載のタンパク質構築物。
【請求項60】
前記任意のリンカーは、標的とする成分のN末端へインフレーム融合されている、請求
項58記載のタンパク質構築物。
【請求項61】
前記任意のリンカーは、標的とする成分へコンジュゲートされた分子である、請求項1
~57のいずれか一項記載のタンパク質構築物。
【請求項62】
請求項1~61のいずれか一項記載のタンパク質構築物及び医薬として許容し得るキャリ
アを含む、医薬組成物。
【請求項63】
前記医薬組成物は非経口投与に適している、請求項62記載の医薬組成物。
【請求項64】
前記投与は静脈内投与である、請求項63記載の医薬組成物。
【請求項65】
前記投与は筋肉内投与である、請求項63記載の医薬組成物。
【請求項66】
前記投与は皮下投与である、請求項63記載の医薬組成物。
【請求項67】
消化管組織がBTNL3/8を発現する消化管系の状態を治療する方法であり、治療的有効量
の、請求項62~66のいずれか一項記載の医薬組成物を、消化管組織がBTNL3/8を発現する
状態の患者へ投与することを含む、前記方法。
【請求項68】
前記タンパク質構築物のペイロードは、抗炎症剤である、請求項67記載の方法。
【請求項69】
前記抗炎症剤は、アミノサリチレートである、請求項68記載の方法。
【請求項70】
前記抗炎症剤は、非ステロイド系抗炎症剤である、請求項68記載の方法。
【請求項71】
前記抗炎症剤は、抗炎症性サイトカイン、任意でインターロイキン10(IL-10)、インタ
ーロイキン22(IL-22)又はトランスフォーミング増殖因子β(TGFβ)である、請求項68記載
の方法。
【請求項72】
前記抗炎症剤は抗催炎症剤である、請求項68記載の方法。
【請求項73】
前記抗炎症剤はステロイドである、請求項68記載の方法。
【請求項74】
前記ステロイドはグルココルチコイドである、請求項73記載の方法。
【請求項75】
前記グルココルチコイドはプレドニゾンである、請求項74記載の方法。
【請求項76】
前記グルココルチコイドはヒドロコルチゾンである、請求項74記載の方法。
【請求項77】
前記ペイロードは免疫調節剤である、請求項67記載の方法。
【請求項78】
治療的有効量の、請求項62~66のいずれか一項記載の医薬組成物を、炎症性腸疾患の患
者へ投与することを含む、炎症性腸疾患の治療法。
【請求項79】
前記炎症性腸疾患は潰瘍性大腸炎である、請求項78記載の方法。
【請求項80】
前記炎症性腸疾患はクローン病である、請求項78記載の方法。
【請求項81】
前記タンパク質構築物のペイロードは、抗炎症剤である、請求項78~80のいずれか一項
記載の方法。
【請求項82】
前記抗炎症剤はアミノサリチレートである、請求項81記載の方法。
【請求項83】
前記抗炎症剤は非ステロイド抗炎症薬である、請求項81記載の方法。
【請求項84】
前記抗炎症剤は抗炎症性サイトカインである、請求項81記載の方法。
【請求項85】
前記抗炎症剤ペイロードは、抗催炎症剤である、請求項81記載の方法。
【請求項86】
前記抗炎症剤ペイロードは、ステロイドである、請求項81記載の方法。
【請求項87】
前記ステロイドはグルココルチコイドである、請求項86記載の方法。
【請求項88】
前記グルココルチコイドはプレドニゾンである、請求項87記載の方法。
【請求項89】
前記グルココルチコイドはヒドロコルチゾンである、請求項87記載の方法。
【請求項90】
前記タンパク質構築物のペイロードは、抗生物質である、請求項78~80のいずれか一項
記載の方法。
【請求項91】
前記抗生物質ペイロードは、リファキシミン、シプロフロキサシン、メトロニダゾール
、モキシフロキサシン又はアモキシシリンである、請求項90記載の方法。
【請求項92】
前記タンパク質構築物のペイロードは、カルシニュリン阻害剤である、請求項78~80の
いずれか一項記載の方法。
【請求項93】
前記カルシニュリン阻害剤は、シクロスポリンA又はタクロリムスである、請求項92記
載の方法。
【請求項94】
前記タンパク質構築物のペイロードは、免疫調節剤である、請求項78~80のいずれか一
項記載の方法。
【請求項95】
前記免疫調節剤は免疫抑制剤である、請求項94記載の方法。
【請求項96】
前記免疫抑制剤は、アザチオプリン、6-メルカプトプリン、メトトレキサート又はチオ
プリンである、請求項95記載の方法。
【請求項97】
前記タンパク質構築物のペイロードは、タンパク質ペイロードである、請求項78~80の
いずれか一項記載の方法。
【請求項98】
前記タンパク質ペイロードは、抗体、抗体断片又は一本鎖可変断片である、請求項97記
載の方法。
【請求項99】
前記タンパク質ペイロードは、TNFα抗原に特異的であり、かつ(comprises and)少なく
とも1つであるABSを含む、請求項97又は98記載の方法。
【請求項100】
前記タンパク質ペイロードは、アダリムマブ、インフリキシマブ又はセルトリズマブの
相補性決定領域(CDR)を含む、請求項99記載の方法。
【請求項101】
前記タンパク質ペイロードは、インターロイキン抗原に特異的な、少なくとも1つのABS
を含む、請求項97又は98記載の方法。
【請求項102】
前記インターロイキンは、IL-12、IL-23、又はそれらの組み合わせである、請求項101
記載の方法。
【請求項103】
前記タンパク質ペイロードは、ウステキヌマブ又はブリキヌマブ(brikinumab)のCDRを
含む、請求項102記載の方法。
【請求項104】
前記生物製剤ペイロードは、インテグリン抗原に特異的な、少なくとも1つのABSを含む
、請求項97又は98記載の方法。
【請求項105】
前記インテグリンは、α4インテグリンである、請求項104記載の方法。
【請求項106】
前記タンパク質ペイロードは、インフリキシマブ、ナタリズマブ又はベドリズマブのCD
Rを含む、請求項105記載の方法。
【請求項107】
前記タンパク質構築物は、鎮痛剤ペイロードを含む、請求項78~80のいずれか一項記載
の方法。
【請求項108】
前記タンパク質構築物は、栄養補助食品ペイロードを含む、請求項78~80のいずれか一
項記載の方法。
【請求項109】
治療的有効量の、請求項62~66のいずれか一項記載の医薬組成物を、過敏腸症候群の患
者へ投与することを含む、過敏腸症候群の治療法。
【請求項110】
治療的有効量の、請求項1~66のいずれか一項記載の医薬組成物を、憩室炎の患者へ投
与することを含む、憩室炎の治療法。
【請求項111】
前記ペイロードは、抗生物質である、請求項109又は110記載の方法。
【請求項112】
前記抗生物質ペイロードは、リファキシミン、シプロフロキサシン、メトロニダゾール
、モキシフロキサシン又はアモキシシリンである、請求項111記載の方法。
【請求項113】
治療的有効量の、請求項62~66のいずれか一項記載の医薬組成物を、セリアック病の患
者へ投与することを含む、セリアック病の治療法。
【請求項114】
前記ペイロードは免疫抑制剤である、請求項113記載の方法。
【請求項115】
前記免疫抑制剤は、アザチオプリン、6-メルカプトプリン、メトトレキサート又はチオ
プリンである、請求項114記載の方法。
【請求項116】
治療的有効量の、請求項62~66のいずれか一項記載の医薬組成物を、微生物感染してい
る患者へ投与することを含む、微生物感染の治療法。
【請求項117】
前記ペイロードは抗菌剤である、請求項116記載の方法。
【請求項118】
前記抗菌剤は、抗寄生虫剤、抗生物質、抗真菌剤又は抗ウイルス剤である、請求項117
記載の方法。
【請求項119】
治療的有効量の、請求項62~66のいずれか一項記載の医薬組成物を、代謝性障害又は代
謝性欠乏の患者へ投与することを含む、代謝性障害又は代謝性欠乏の治療法。
【請求項120】
前記ペイロードは栄養補助食品である、請求項119記載の方法。
【請求項121】
前記栄養補助食品は、酵素又はビタミンである、請求項120記載の方法。
【請求項122】
治療的有効量の、請求項62~66のいずれか一項記載の医薬組成物を、免疫関連症状の患
者へ投与することを含む、免疫系の制御方法。
【請求項123】
前記ペイロードは、免疫抑制剤である、請求項122記載の方法。
【請求項124】
前記免疫抑制剤は、アザチオプリン、6-メルカプトプリン、メトトレキサート又はチオ
プリンである、請求項123記載の方法。
【請求項125】
前記ペイロードは、免疫賦活剤である、請求項122記載の方法。
【請求項126】
前記免疫賦活剤はサイトカインである、請求項125記載の方法。
【請求項127】
前記BTNL3/8を標的とする成分及び/又はペイロードの少なくとも一部は、細胞内に移
行される、請求項67~126のいずれか一項記載の方法。
【請求項128】
前記BTNL3/8を標的とする成分及び/又はペイロードは、細胞内に移行されない、請求
項67~126のいずれか一項記載の方法。
【請求項129】
配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、及び配列番号:13から構成され
る群からの配列と少なくとも90%の配列同一性を有する少なくとも1つの配列を含む、組
換えγδTCRタンパク質。
【請求項130】
前記タンパク質は、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、及び配列
番号:13から構成される群からの配列と少なくとも90%の配列同一性を有する2以上の配列
を含む、請求項129記載の組換えγδTCRタンパク質。
【請求項131】
前記タンパク質は、配列番号:10と少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む、
請求項129~130のいずれか一項記載の組換えγδTCRタンパク質。
【請求項132】
前記タンパク質は、配列番号:10及び配列番号:11と少なくとも90%の配列同一性を有す
る配列を含む、請求項129~131のいずれか一項記載の組換えγδTCRタンパク質。
【請求項133】
前記タンパク質は、配列番号:9及び配列番号:10と少なくとも90%の配列同一性を有す
る配列を含む、請求項129~131のいずれか一項記載の組換えγδTCRタンパク質。
【請求項134】
前記タンパク質は、Hisタグ無しの配列番号:9又は、Hisタグ無しの配列番号:11のいず
れかと、少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む、請求項129~133のいずれか一
項記載の組換えγδTCRタンパク質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(1.関連出願の相互参照)
本出願は、2018年6月5日に出願された米国仮特許出願番号第62/680,932号の優先権を主
張し、その全体が引用により本明細書中に組み込まれる。
【0002】
(2.配列表)
本出願はEFS-Web経由で提出した配列表を含み、その全体は参照によって本明細書に組
み込まれる。そのASCIIコピーは2019年6月4日に作成され、名称は「GDT-P2577PCT-sequen
ce listing.txt」であり、サイズは17,284バイトである。
【背景技術】
【0003】
(3.背景)
ほとんどの薬物は、病的部位での充分な濃度を達成するためには、全身曝露に頼ってい
る。しかし、標的以外の組織への薬剤の曝露は、しばしば重大な毒性を引き起こす。従っ
て、特定の組織へ医薬剤を送達するための方法の開発が緊急に必要とされている。
【0004】
T細胞の組織選択的ホーミングは、正常な免疫応答のインテグレーション中の重要な要
素と考えられる。そのような「組織ホーミング」又は「組織常在性」T細胞の、興味深く
非常にユニークなクラスの1つはγδT細胞である。γδT細胞は高度に区分化されたT細胞
であり、例えば、マウス(murine)Vγ5T細胞は表皮にのみ見られるが、マウス(murine)Vγ
7T細胞は腸に特有である等の、特定の組織へのサブセットの局在化を示す。いくつかのマ
ウス(murine)及びヒトのIEL区画は、未解明の機構を介して、ブチロフィリン(BTN)及びブ
チロフィリン様(Btnl/BTNL)遺伝子等の、定常状態の上皮細胞によって発現されるタンパ
ク質にその発達と生存を依存している。(Di Marco Barrosらの文献、Cell. 2016; 167(1)
: 203-218; Kabelitzらの文献、F1000 Faculty Rev: 782; June 5, 2017)。
【0005】
ブチロフィリン及びブチロフィリン様タンパク質(BTN/BTNL)は、T細胞選択等の免疫、
並びに分化及び細胞運命決定等の発達プロセスに、影響を与えるイムノグロブリンスーパ
ーファミリーメンバーのファミリーである(Arnett及びVineyの文献、Nature Reviews, 20
14(14)pp. 559-569)。BTNLタンパク質(具体的には、BTNL3及びBTNL8)はヒト腸の腸細胞で
不釣り合いに高度に発現され、BTNL3/8はヒトVγ4+γδT細胞を特異的に調節できること
が示されている(Di Marco Barrosらの文献、Cell. 2016; 167(1): 203-218)。BTN及びBTN
Lタンパク質は、複数のT細胞応答を負又は正の様式で調節すると報告されているが、その
ようなシグナルがT細胞へどのように伝達されるかは明らかではない(Kabelitzらの文献、
F1000 Faculty Rev: 782; June 5, 2017)。
【0006】
炎症性腸疾患等の疾患の治療のために、消化管系への薬剤の局所的送達が求められてい
る。従って、BTNL3/8発現細胞、特に腸表皮のBTNL3/8発現細胞への治療剤ペイロードを標
的化できる化合物を含む、BTNL3/8発現細胞を標的化できる化合物が求められている。
【発明の概要】
【0007】
(4.概略)
このような(特性解明は不充分であるにもかかわらず)注目される組織/免疫区画の更な
る「形状化(shaping)」及び「ホーミング」を更に探求するために、それによりγδT細胞
組織への標的化及び特異化が達成される機構を探求することを試みた。最初に、組換えヘ
テロダイマー及びホモダイマーγδT細胞受容体タンパク質(TCR)のパネルを、ヒトγ鎖及
びδ鎖配列の開始点(starting)から遺伝子操作することを試みた。これを達成するために
、さまざまな融合相手を探求し、得られた組換えヘテロダイマー化及びホモダイマー化し
たγδ鎖が(例えば、HEK293細胞内で)発現され、無傷のまま維持され、精製時に(サイズ
排除クロマトグラフィーで測定して)凝集がほとんど起こらないことを確認した。これら
の実験から、(i)抗体Fc融合ドメイン相手の使用、及び(ii)操作したロイシンジッパーと
組み合わせたTCRα-β鎖定常ドメイン相手の使用、を含む、いくつかのより好ましい融合
相手を特定した(Xuらの文献、PNAS, 2011Vol. 108; pp. 2414-2419)。しかしながら、こ
れらの成功した実験は網羅的ではなかった場合には、当業者は現在、組換えγδのホモダ
イマー、ヘテロダイマー、及びモノマーサブユニットを作成する別のアプローチを特定す
る動機が与えられるだろうと認識できる。
【0008】
このヒトγδ配列由来のT細胞受容体組換えタンパク質のパネル又はライブラリを作成
し、次にそれを使用して、(もしあるなら)どの組換えγδペアがいずれかの組織特異性又
は選択性を示すかを探求した。従って、これらタンパク質を、BTNL3/8を過剰発現する細
胞株でインキュベートした。前例のないことに、対照比較試験を通じて、BTNL3/8タンパ
ク質を特異的に認識するある種の組換えT細胞受容体(例えば、組換えγ4δ1TCR及び、組
換えγ4δ2TCR)を特定する一方、認識しなかった他の受容体(例えば、組換えγ2δ1TCR及
び、組換えγ8δ1TCR)も特定した。これは、初めて、γδTCRを含むγ4が、細胞表面に発
現されたBTNL3/8と直接的に相互作用することを示している。
【0009】
更に又、TCRディープシーケンシングは、BTNL3/8応答性である画分内の、γ4TCRを発現
するγδT細胞の選択的富化があったことを示した。つまり、シーケンシングデータ及び
組換えTCR実験は、γ4サブユニットを含むTCRペアリングがBTNL3/8へ選択的に結合するこ
とを示した。
【0010】
従って、第一の態様では、タンパク質構築物が提供される。このタンパク質構築物は、
BTNL3/8を標的とする成分、ペイロード、及び標的とする成分をペイロードへ結合する任
意のリンカーを含む。
【0011】
ある実施態様では、BTNL3/8を標的とする成分はVγドメインを含み、Vγドメインの配
列位置番号87のアミノ酸はアスパラギン酸又はヒスチジンであり、Vγドメインの配列位
置番号90のアミノ酸はグリシン又はグルタミン酸であり、Vγ CDR4の残りの残基は、それ
ぞれの位置で、ヒト又はマウス(murine)のVγドメインの対応残基から独立して選択され
る。
【0012】
ある実施態様では、VγドメインCDR4の残りの残基は、それぞれの残基位置で、ヒトVγ
4、ヒトVγ2、又はマウスVγ7の対応残基から独立して選択される。一の実施態様では、V
γドメインの位置番号87~90のアミノ酸配列は、配列番号:1である。一の実施態様では、
Vγドメインの位置番号87~90のアミノ酸配列は、配列番号:2である。一の実施態様では
、VγドメインCDR4の残りの残基は全て、ヒトVγ4、ヒトVγ2、又はマウスVγ7の対応残
基から選択される。一の実施態様では、Vγ CDR4の残りの残基は、ヒトVγ4の対応残基か
ら選択される。一の実施態様では、Vγ CDR4の残りの残基は、ヒトVγ2の対応残基から選
択される。一の実施態様では、Vγ CDR4の残りの残基は、マウスVγ7の対応残基から選択
される。一の実施態様では、VγドメインはヒトVγ2ドメインであり、その中ではCDR4の
アミノ酸は、アミノ酸配列位置番号87でアスパラギン酸又はヒスチジンで置換され、アミ
ノ酸配列位置番号90でグリシン又はグルタミン酸で置換されている。一の実施態様では、
VγドメインはヒトVγ4ドメインである。
【0013】
一の実施態様では、VγドメインCDR3は、ヒト又はマウスのVγ CDR3配列である。一の
実施態様では、VγドメインCDR3は、ヒトVγ4 CDR3配列を含む。一の実施態様では、Vγ
ドメインCDR3は、ヒトVγ2 CDR3配列を含む。一の実施態様では、VγドメインCDR3は、マ
ウスVγ7 CDR3配列を含む。一の実施態様では、J領域はVγ J領域である。一の実施態様
ではJ領域はマウスVγ J領域である。ある実施態様では、J領域は、配列番号:15~18から
なる群から選択される配列番号を含む。
【0014】
ある実施態様では、タンパク質構築物のBTNL3/8を標的とする成分は更に、ペアになっ
たVδドメインを含む。一の実施態様では、Vγドメイン及びVδドメインは、少なくとも1
つのジスルフィド結合により共有的に結合される。一の実施態様では、Vγドメイン及びV
δドメインは、特異的なヘテロダイマー性相互作用によりペアになっている。一の実施態
様では、ヘテロダイマー性相互作用はロイシンジッパー相補性である。一の実施態様では
、標的とする成分は配列番号:9を含む。一の実施態様では、標的とする成分は配列番号:1
0である。一の実施態様では、標的とする成分は配列番号:11である。一の実施態様では、
標的とする成分は、Vγドメイン及びVδドメインの一本鎖インフレーム融合を含む。一の
実施態様では、VγドメインはVδドメインへのN末端である。一の実施態様では、Vγドメ
インはVδドメインへのC末端である。一の実施態様では、Vγドメイン及びVδドメインの
一本鎖インフレーム融合は、内部リンカー配列を含む。一の実施態様では、Vδドメイン
はヒトVδドメインである。一の実施態様では、ヒトVδドメインはVδ1、Vδ2又はVδ5で
ある。一の実施態様では、ヒトVδドメインはVδ1である。
【0015】
ある実施態様では、タンパク質構築物は、更に第一T細胞受容体定常領域を含み、その
第一T細胞受容体定常領域は、VγドメインのC末端へインフレーム融合している。一の実
施態様では、第一T細胞受容体定常領域は、ヒトT細胞受容体定常領域である。一の実施態
様では、第一T細胞受容体定常領域は、ヒトT細胞受容体β定常領域である。一の実施態様
では、第一T細胞受容体定常領域は、ヒトT細胞受容体α定常領域である。一の実施態様で
は、第一T細胞受容体定常領域は、ヒトT細胞受容体γ定常領域である。一の実施態様では
、標的とする成分は更に、第二T細胞受容体定常領域を含み、その第二T細胞受容体定常領
域は、ペアになったVδドメインのC末端へインフレーム融合している。一の実施態様では
、第二T細胞受容体定常領域は、ヒトT細胞受容体α定常領域である。一の実施態様では、
第二T細胞受容体定常領域は、ヒトT細胞受容体β定常領域である。一の実施態様では、第
二T細胞受容体定常領域は、ヒトT細胞受容体δ定常領域である。一の実施態様では、Vδ
ドメインと第二T細胞受容体定常領域とのインフレーム融合は、Vδドメインと第二T細胞
受容体定常領域との間の内部リンカー配列を含む。
【0016】
ある実施態様では、ペイロードは、標的とする成分へインフレーム融合されたタンパク
質ペイロードである。一の実施態様では、ペイロードはポリペプチドである。一の実施態
様では、ペイロードはペプチドである。一の実施態様では、ペイロードはサイトカインで
ある。一の実施態様では、ペイロードは抗体である。一の実施態様では、ペイロードは一
本鎖可変断片(scFv)である。一の実施態様では、抗体は、サイトカイン抗原に特異的な、
少なくとも1つの抗原結合部位(ABS)を含む。一の実施態様では、抗体は、CD3抗原に特異
的な、少なくとも1つの抗原結合部位(ABS)を含む。一の実施態様では、抗体は、腫瘍壊死
因子α(TNFα)抗原に特異的な、少なくとも1つのABSを含む。一の実施態様では、抗体はF
c受容体と相互作用可能なFcドメインを含む。一の実施態様では、抗体は、Fc受容体と相
互作用不可能なFcドメインを含む。一の実施態様では、ペイロードは小分子である。一の
実施態様では、ペイロードはホルモンである。一の実施態様では、ペイロードは核酸であ
る。一の実施態様では、ペイロードは阻害性(inhibitory)RNA(RNAi)である。
【0017】
ある実施態様では、任意のリンカーは標的とする成分へインフレーム融合したペプチド
である。一の実施態様では、任意のリンカーは、標的とする成分のC末端へインフレーム
融合されている。一の実施態様では、任意のリンカーは、標的とする成分のN末端へイン
フレーム融合されている。一の実施態様では、任意のリンカーは、標的とする成分へコン
ジュゲートされた分子である。
【0018】
ある態様では、本明細書に記載されているのは、上記いずれかのタンパク質構築物及び
医薬として許容し得るキャリアを含む、医薬組成物である。一の実施態様では、医薬組成
物は非経口投与に適している。一の実施態様では、投与は静脈内投与である。一の実施態
様では、投与は筋肉内投与である。一の実施態様では、投与は皮下投与である。
【0019】
ある態様では、本明細書に記載されているのは、消化管組織がBTNL3/8を発現する消化
管系の状態を治療する方法であり、治療的有効量の、請求項62~66のいずれか一項記載の
医薬組成物を、消化管組織がBTNL3/8を発現する状態の患者へ投与することを含む方法で
ある。この方法の一の実施態様では、タンパク質構築物のペイロードは、抗炎症剤である
。一の実施態様では、抗炎症剤は、アミノサリチレートである。一の実施態様では、抗炎
症剤は、非ステロイド系抗炎症剤である。一の実施態様では、抗炎症剤は、抗炎症性サイ
トカインである。一の実施態様では、抗炎症剤は抗催炎症剤である。一の実施態様では、
抗炎症剤はステロイドである。一の実施態様では、ステロイドはグルココルチコイドであ
る。一の実施態様では、グルココルチコイドはプレドニゾンである。一の実施態様では、
グルココルチコイドはヒドロコルチゾンである。一の実施態様では、ペイロードは免疫調
節剤である。
【0020】
ある態様では、本明細書に記載されているのは、治療的有効量の、上記いずれか記載の
医薬組成物を、炎症性腸疾患の患者へ投与することを含む、炎症性腸疾患の治療法である
。一の実施態様では、炎症性腸疾患は潰瘍性大腸炎である。一の実施態様では、炎症性腸
疾患はクローン病である。一の実施態様では、タンパク質構築物のペイロードは、抗炎症
剤である。一の実施態様では、抗炎症剤はアミノサリチレートである。一の実施態様では
、抗炎症剤は非ステロイド抗炎症性である。一の実施態様では、抗炎症剤は抗炎症性サイ
トカイン、任意でインターロイキン10(IL-10)、インターロイキン22(IL-22)又はトランス
フォーミング増殖因子β(TGFβ)である。一の実施態様では、抗炎症剤ペイロードは、抗
催炎症剤である。一の実施態様では、抗炎症剤ペイロードは、ステロイドである。一の実
施態様では、ステロイドはグルココルチコイドである。一の実施態様では、グルココルチ
コイドはプレドニゾンである。一の実施態様では、グルココルチコイドはヒドロコルチゾ
ンである。一の実施態様では、タンパク質構築物のペイロードは、抗生物質である。一の
実施態様では、抗生物質ペイロードは、リファキシミン、シプロフロキサシン、メトロニ
ダゾール、モキシフロキサシン又はアモキシシリンである。一の実施態様では、タンパク
質構築物のペイロードは、カルシニュリン阻害剤である。一の実施態様では、カルシニュ
リン阻害剤は、シクロスポリンA又はタクロリムスである。一の実施態様では、タンパク
質構築物のペイロードは、免疫調節剤である。一の実施態様では、免疫調節剤は免疫抑制
剤である。一の実施態様では、免疫抑制剤は、アザチオプリン、6-メルカプトプリン、メ
トトレキサート又はチオプリンである。一の実施態様では、タンパク質構築物のペイロー
ドは、タンパク質ペイロードである。一の実施態様では、タンパク質ペイロードは、抗体
、抗体断片又は一本鎖可変断片である。一の実施態様では、タンパク質ペイロードは、TN
Fα抗原に特異的であり、かつ(comprises and)少なくとも1つであるABSを含む。一の実施
態様では、タンパク質ペイロードは、アダリムマブ、インフリキシマブ又はセルトリズマ
ブの相補性決定領域(CDR)を含む。一の実施態様では、タンパク質ペイロードは、インタ
ーロイキン抗原に特異的な、少なくとも1つのABSを含む。一の実施態様では、インターロ
イキンは、IL-12、IL-23、又はそれらの組み合わせである。一の実施態様では、タンパク
質ペイロードは、ウステキヌマブ又はブリキヌマブ(brikinumab)のCDRを含む。一の実施
態様では、生物製剤(biologic)ペイロードは、インテグリン抗原に特異的な、少なくとも
1つのABSを含む。一の実施態様では、インテグリンは、α4インテグリンである。一の実
施態様では、タンパク質ペイロードは、インフリキシマブ、ナタリズマブ又はベドリズマ
ブのCDRを含む。一の実施態様では、タンパク質構築物は、鎮痛剤ペイロードを含む。一
の実施態様では、タンパク質構築物は、栄養補助食品ペイロードを含む。
【0021】
ある態様では、本明細書に記載されているのは、治療的有効量の、上記いずれかの医薬
組成物を、過敏腸症候群の患者へ投与することを含む、過敏腸症候群の治療法である。複
数の実施態様では、本明細書に記載されているのは、治療的有効量の、上記いずれかの医
薬組成物を、憩室炎の患者へ投与することを含む、憩室炎の治療法である。ある実施態様
では、ペイロードは抗生物質である。ある実施態様では、抗生物質ペイロードは、リファ
キシミン、シプロフロキサシン、メトロニダゾール、モキシフロキサシン又はアモキシシ
リンである。
【0022】
ある態様では、本明細書に記載されているのは、治療的有効量の、上記いずれかの医薬
組成物を、セリアック病の患者へ投与することを含む、セリアック病の治療法である。あ
る実施態様では、ペイロードは免疫抑制剤である。ある実施態様では、免疫抑制剤は、ア
ザチオプリン、6-メルカプトプリン、メトトレキサート又はチオプリンである。
【0023】
ある態様では、本明細書に記載されているのは、治療的有効量の、上記いずれかの医薬
組成物を、微生物感染している患者へ投与することを含む、微生物感染の治療法である。
ある実施態様では、ペイロードは抗菌剤である。ある実施態様では、抗菌剤は、抗寄生虫
剤、抗生物質、抗真菌剤又は抗ウイルス剤である。
【0024】
ある態様では、本明細書に記載されているのは、治療的有効量の、上記いずれかの医薬
組成物を、代謝性障害又は代謝性欠乏の患者へ投与することを含む、代謝性障害又は代謝
性欠乏の治療法である。ある実施態様では、ペイロードは栄養補助食品である。ある実施
態様では、栄養補助食品は、酵素又はビタミンである。
【0025】
ある態様では、本明細書に記載されているのは、治療的有効量の、上記いずれかの医薬
組成物を、免疫関連症状の患者へ投与することを含む、免疫系の制御方法である。ある実
施態様では、ペイロードは、免疫抑制剤である。ある実施態様では、免疫抑制剤は、アザ
チオプリン、6-メルカプトプリン、メトトレキサート又はチオプリンである。ある実施態
様では、ペイロードは、免疫賦活剤である。ある実施態様では、免疫賦活剤はサイトカイ
ンである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
(5.図面の簡単な説明)
【
図1】ヒトVγ4(hVγ4)、ヒトVγ2(hVγ2)及びマウスVγ7(mVγ7)可変(V)ドメインのアミノ酸配列アラインメントを示す。本明細書で示されるアミノ酸位置の番号付けは、18アミノ酸リーダー配列(図示せず)を含む、完全なT細胞受容体(TCR)タンパク質配列に基づく。アラインメント中の46位及び117位のダッシュは、アラインメントを最適化するために導入されたmVγ7配列のギャップを示す。CDR領域を太字フォントで示す。CDR1は、アラインメントのアミノ酸45~50位に位置する。CDR2は、アラインメントのアミノ酸68~75位に位置する。CDR3の最初の5アミノ酸は、アラインメントのアミノ酸114~118位に位置する。CDR4は、アラインメントのアミノ酸85~100位に位置する。アラインメント87位及び90位に位置するヒトVγ4-CDR4内の下線付きアミノ酸を、hVγ2内の対応するアミノ酸で置き換えた場合に、機能が無効になる(
図7を参照)。
【0027】
【
図2】応答する上皮細胞間リンパ球(IEL)から単離したγδT細胞受容体を同定、クローニング及び試験するために使用した実験的アプローチを示す。
【0028】
【
図3】
図3Aは、TCR欠損Jurkat細胞内のTCR構築物中の、単離されたIEL由来のγδTCR可変ドメインの発現に使用したレンチウイルスベクターバックボーンのダイヤグラムである。
【0029】
図3Bは、TCR欠損Jurkat(J76細胞)内のγδTCR可変ドメイン由来の、クローニングしたC
DR3ペアを有するTCR構築物の形質導入後72時間での発現を示す。
【0030】
【
図4】
図4Aは、Vγ4Vδ1形質導入したJ76細胞のBTNL3/8誘導された応答の表示例を示す。抗CD3刺激での陽性対照も又、(アイソタイプ対照に対して)表示する。
【0031】
図4Bは、3つの独立した、Vγ4Vδ1形質導入したJ76系統は、Vγ9Vδ2系統とは異なり、
BTNL3/8発現細胞へ応答したことを示す。B3、C11及びH7は、
図2に示す方法で得られた3つ
の異なるCDR3ペアを表す。
【0032】
【
図5】空ベクター(EV)を発現する細胞に対して正規化した形質導入細胞(+ve細胞)内でのCD69発現%の倍数変化(FC)、及び、Vγ4TCR又はVγ2TCRを発現するJ76細胞内でのTCRダウンレギュレーションパーセントを示す。応答するVγ4 H7 TCRの全VドメインをVγ2コード配列(Vγ2H7)で置換した場合(ただし、CDR3γ及び全デルタ鎖は置換しない)、BTNL3/8発現細胞によるTCR活性化は失われた。しかし、応答するVγ4 H7 TCRのCDR1(H7 CDR1
V
γ2)及び/又はCDR2(H7 CDR2
Vγ2)をVγ2コード配列で置換した場合、BTNL3/8発現細胞によるTCR活性化は維持された。
【0033】
【
図6】
図6Aは、ヒトVγ2及びヒトVγ4の一部分のVドメイン配列アラインメントを示す。CDR1、CDR2及びCDR3は、網掛け四角内で示される。合計9個の(9)アミノ酸が異なる。4個の異なるアミノ酸は、CDR2とCDR4との間のフレームワーク領域3内に位置し、本明細書では「CDR4」として定義する。
【0034】
図6Bは、Cn3Dを使用して整列させた、Vγ4/Vδ1ペアにした可変ドメイン及びVγ5/Vδ1
ペアにした可変ドメインの既に公開されている構造を示す。CDR4領域は、従来のCDRと区
別できない適切なループを形成する。特記されるのは、Vγ4のCDR4ループとVγ5のCDR4ル
ープとでは、顕著な立体構造の違いを示すことである。
【0035】
【
図7】空ベクター(EV)を発現する細胞に対して正規化した形質導入細胞(+ve細胞)内でのCD69発現%の倍数変化(FC)、並びに、Vγ4TCR(H7 WT)、H7 CDR3を伴うVγ2TCR(Vγ2 H7)、及びCDR4内のアミノ酸置換を伴うVγ4TCRを発現するJ76細胞内でのTCRダウンレギュレーションパーセントを示す。アミノ酸87位及び90位でのYA置換は、BTNL3/8発現細胞によるTCR活性化を失わせた一方、アミノ酸94位及び98位でのNL置換は、BTNL3/8発現細胞によるTCR活性化を失わせなかった。
【0036】
【
図8】
図8は、本発明の実施態様における、2つの鎖がロイシンジッパー相補性によってヘテロダイマー化する、可溶性ヘテロダイマー性γδTCRのポリペプチド鎖のデザイン概略図である。Vγドメイン又は、Vδドメインはそれぞれ、膜貫通型ドメインを欠くTCRα又はTCRβ定常領域にインフレーム融合され、その次にロイシンジッパー配列及びヒスチジンタグ/リンカーが続く。Vγ含有ポリペプチド及びVδ含有ポリペプチドが発現され、翻訳後にダイマー化された。
【0037】
【
図9】
図9Aは、可溶性Hisタグ付きVγ4δ2 TCR及びAPC抗Hisタグ抗体で染色した後の、BTNL3及びBTNL8構築物又は空ベクターで形質導入したHEK293T細胞のフローサイトメトリー結果を示す。
【0038】
図9Bは、抗FLAG及び抗HA抗体で並行染色した後の、BTNL3及びBTNL8構築物又は空ベクタ
ーで形質導入したHEK293T細胞のフローサイトメトリー結果を示す。
【0039】
【
図10】
図10は、
図8に記載したように構築した可溶性TCRの染色を示す。Vγ4Vδ1可溶性TCR及びVγ4Vδ2可溶性TCRは、BTNL3+BTNL8を発現する細胞株への強い結合を示すが空ベクター(EV)対照細胞株は示さない。
【0040】
【
図11】
図11Aは、可溶性Hisタグ付きTCR及び抗Hisタグ抗体と共に4℃でインキュベートしたBTNL3+BTNL8発現細胞を示す概略図である。
【0041】
図11Bは、可溶性Hisタグ付きTCR及び抗Hisタグ抗体と共に37℃でインキュベートしたBT
NL3+BTNL8発現細胞を示す概略図である。
【0042】
【
図12】BTNL3+BTNL8発現細胞による37℃での可溶性TCRの内部移行の時間経過である。
【0043】
【
図13】
図13Aは、BTNL3及びBTNL8構築物を発現する染色細胞での、抗BTNL3抗体及び可溶性TCRの比較を示す。
【0044】
図13Bは、可溶性TCRと比較して、抗BTNL3抗体と共にインキュベートした細胞の蛍光の
減少を示す。
【0045】
【
図14】可溶性TCRによるペイロード送達を評価する方法を示す概略図である。
【0046】
【
図15】
図15Aは、BTNL3及びBTNL8構築物を発現する細胞内での、可溶性TCR+α-His抗体複合体の内部移行を評価する実験結果を示す。
図15Bは、可溶性TCR+α-His抗体複合体と共に、4℃及び37℃でインキュベートした細胞内での、トリプシン処置後に残存する蛍光シグナルを示すグラフである。
【0047】
【
図16】
図16Aは、可溶性TCR+α-His抗体複合体と共に、4℃及び37℃でインキュベートし、DMEM処理した293T.L3
RIL8細胞のイメージングサイトメトリー結果を示す。
【0048】
図16Bは、可溶性TCR+α-His抗体複合体と共に、4℃でインキュベートし、DMEM又はトリ
プシン処理した293T.L3L8細胞のイメージングサイトメトリー結果を示す。
【0049】
図16Cは、可溶性TCR+α-His抗体複合体と共に、37℃でインキュベートし、DMEM又はト
リプシン処理した293T.L3L8細胞のイメージングサイトメトリー結果を示す。
【0050】
上記図面は、図解の目的だけのために本発明の様々な実施態様を示す。当業者は、下記
考察から、本明細書に記載された本発明の原理から逸脱することなく、本明細書に示す構
造及び方法の代替的な実施態様を採用できることを容易に認識するであろう。
【発明を実施するための形態】
【0051】
(6.詳細な記載)
(6.1.定義)
他に明記しない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明の
属する分野の当業者により、通常理解される意味を有する。本明細書で使用される次の用
語は、下記に基づく意味を有する。
【0052】
本明細書で使用される「タンパク質構築物」は、少なくとも2つの機能的エレメント、B
TNL3/8を標的とする成分及びペイロードを含む1以上のポリペプチド鎖を示す。ペイロー
ドは、タンパク質ペイロードであってもなくてもよい。
【0053】
本明細書で使用される「BTNL3/8」は、ブチロフィリンタンパク質3(BTNL3)及びブチロ
フィリンタンパク質8(BTNL8)タンパク質を示す。「BTNL3/8」は、BTNL8無しのBTNL3、BTN
L3無しのBTNL8、又はBTNL3及びBTNL8のヘテロダイマーを示すこともある。
【0054】
本明細書で使用される「BTNL3/8を標的とする成分」は、特異的にBTNL3/8と結合する分
子を示す。ある実施態様では、BTNL3/8を標的とする成分は、抗原結合タンパク質である
。ある実施態様では、BTNL3/8を標的とする成分は、Vγドメインポリペプチドの少なくと
も一部である。
【0055】
本明細書で使用される「Vγドメイン」は、T細胞受容体(TCR)γ鎖の可変ドメインを示
す。このVγドメインは、J領域及び相補性決定領域(CDR)、CDR1、CDR2、CDR3及びCDR4を
含む。Vγドメイン残基の番号付けを
図1に示すが、図中で残基19は、シグナル配列切断後
の成熟VγドメインのN末端アミノ酸である。
図1に示されないVγドメインのための、残基
の番号付けは、
図1の配列への最良のアラインメント後に割り当てられる。Vγドメインの
「対応残基」は、対応するとされた残基と同じ番号付けされた位置にあるアミノ酸である
。
【0056】
本明細書で使用される「VγドメインCDR4」は、CDR2領域とCDR3領域との間に位置するV
γドメインの連続した16アミノ酸部分を言い、
図1のアミノ酸配列位置85~100に対応する
。ヒトVγ4ドメインのCDR4のアミノ酸配列は、配列番号:3の配列を有する。ヒトδγ2ド
メインのCDR4のアミノ酸配列は、配列番号5である。マウスVγ7ドメインのCDR4のアミノ
酸配列は、配列番号:4である。
[0001] 本明細書で使用される「ペイロード」は、目的の標的細胞(例えば、BTNL3/8を
発現する細胞及び/又は腸上皮細胞)へ送達されるいずれかの分子を示す。ペイロードは
、ヌクレオチド、ヌクレオチド(例えば、検出可能成分若しくは毒素を含む、又は転写を
阻害するヌクレオチド)、DNA及びRNA等の核酸(例えば、mRNA、RNAi、miRNA、siRNA、snRN
A、snoRNA、piRNA、exRNA、scaRNA及びlncRNA)、アミノ酸(例えば、検出可能成分若しく
は毒素を含む、又は翻訳を阻害するアミノ酸)、ポリペプチド(例えば、酵素、生物製剤)
、脂質、炭水化物、小分子(例えば、小分子薬及び小分子毒素)並びにそれらの組み合わせ
を含むことができる。ある実施態様では、ペイロードは治療薬である。治療薬には、次に
限定されるものではないが、化学療法薬、造影剤(例えば、放射性同位元素)、免疫調節剤
(例えば、サイトカイン、ケモカイン、又はチェックポイント阻害剤)、及び毒素(例えば
、細胞毒性剤)が含まれる。ある実施態様では、ペイロードは抗体である。
【0057】
本明細書で使用される「リンカー」は、タンパク質構築物の機能的エレメント(例えば
、標的とする成分及びペイロード)を結合するために使用できるいずれかの分子を示す。
ある実施態様では、リンカーは、タンパク質構築物の機能的エレメント(例えば、標的と
する成分及びペイロード)への分子の部位特異的コンジュゲーションを可能にするために
使用できる。ある実施態様では、リンカーは、タンパク質構築物をインビトロ又はインビ
ボで、同定又は検出するために使用できる。
【0058】
本明細書で使用される「ペプチドリンカー」は、ポリペプチドであるリンカーを示す。
ある実施態様では、ペプチドリンカーは、タンパク質構築物(例えば標的とする成分及び
ペイロード)の機能的エレメントへ、インフレームで融合される。ある実施態様では、ペ
プチドリンカーは、タンパク質構築物のエレメントへの、分子の部位特異的コンジュゲー
ションを可能にする。ペプチドリンカーは、ペプチドリンカーが融合する機能的エレメン
トの、求められる立体構造を可能とするなら、どんな長さ及び種類のアミノ酸配列でもよ
い。
【0059】
本明細書で使用される「内部リンカー」は、そのN末端及びC末端両方で、少なくとも1
つの追加的なポリペプチドと共有結合するポリペプチド配列を示す。ある実施態様では、
内部リンカーは、標的とする成分(例えば、VγドメインとVδドメインとの間の内部リン
カー)内のポリペプチド鎖である。内部リンカーは、どんな長さ及び種類のアミノ酸配列
でもよいが、それは内部リンカーが融合する追加的なポリペプチドが、求められる立体構
造を維持できるものである。
【0060】
本明細書で使用される「抗体」は、少なくとも1つの抗原結合部位(ABS)を含む少なくと
も1つの抗体可変ドメインを含む、いずれかの抗体タンパク質構築物を含む。抗体は、次
に限定されるものではないが、可変ドメインのみの分子、一本鎖可変断片(scFv)、一本鎖
Fab断片(scFab)、二重特異性抗体、ハイブリッドIgG、Fab融合タンパク質、Fc改変IgG、
付加IgG、ダイアボディ、一本鎖ダイアボディ、DART、タンデムダイアボディ(tandAb)及
びミニボディを含む。
【0061】
本明細書で使用される「一本鎖インフレーム融合」は、一本鎖インフレーム融合T細胞
受容体可変ドメイン(scTv)を示し、T細胞受容体の少なくとも2つのポリペプチド可変ドメ
インの少なくとも一部は一本鎖の融合ポリペプチド鎖として生成され、その可変ドメイン
配列はインフレーム融合されている。一本鎖インフレーム融合T細胞受容体可変ドメイン(
scTv)は、1を超える可変ドメイン及び/又は定常領域を含むことができ、任意の起源のT細
胞受容体とペアになってもよい。従って、scTvは、2以上の可変ドメインがインフレーム
融合されているタンデムscTvを含む。
【0062】
本明細書で使用される「抗原結合部位」(ABS)は、所与の抗原又はエピトープを特異的
に認識しそれと結合する抗体分子の領域を示す。ABSは、特異的な抗原又はエピトープに
特別な親和性で結合するといわれる。本明細書に記載された「親和性」は、ある分子と別
の分子との間の非共有的分子間力の相互作用の強さを示す。親和性、即ち、相互作用の強
さは、解離平衡定数(KD)として表すことができ、低KD値は、分子間の相互作用が強いこと
を示す。抗体構築物のKD値は、当分野で周知の方法によって測定され、次に限定されるも
のではないが、バイオレイヤー干渉法(例えば、Octet/FORTEBIO(登録商標))、表面プラズ
モン共鳴(SPR)技術(例えば、Biacore(登録商標))、及び細胞結合アッセイを含む。ABSと
その同種(cognate)抗原又はエピトープとの間の親和性は、10-6M、10-7M、10-8M、10-9M
、又は10-10M未満のKD値を有する。
【0063】
本明細書で使用される「小分子」は、900ダルトン>未満の低分子量を有する分子を示
し、ペプチドを含まない。小分子は、生物学的プロセスを調節する可能性があり、1nmオ
ーダーのサイズを有する有機分子を含む。
【0064】
本明細書で使用される「抗炎症性サイトカイン」は、抗炎症活性を有するいずれのサイ
トカインを示す。抗炎症性サイトカインは、次に限定されるものではないが、インターロ
イキン(IL)IL-1ra、IL-4、IL-6、IL-10、IL-11、IL-13、及びトランスフォーミング増殖
因子β(TGFβ)を含む。
【0065】
本明細書で使用される「抗催炎症剤」は、炎症誘発性サイトカインの活性又は発現を阻
害するいずれかの分子又は薬剤を示す。抗催炎症剤は、炎症誘発性サイトカインの阻害剤
を含み、それは、次に限定されるものではないが、インターロイキン-1(IL-1)、IL-12、I
L-18、腫瘍壊死因子α(TNFα)、インターフェロンγ(INF-γ)及び顆粒球-マクロファージ
コロニー刺激因子を含む。抗催炎症剤は、可溶性腫瘍壊死因子受容体p55、可溶性腫瘍壊
死因子、p75、可溶性IL-1受容体II型、IL-18結合タンパク質等の、抗炎症活性を有する可
溶性サイトカイン受容体を含む。抗催炎症剤は又、膜結合型IL-1受容体II型等の炎症誘発
性サイトカイン受容体と競合する細胞内シグナル伝達を欠くサイトカイン受容体も含む。
【0066】
本明細書で使用される「免疫調節剤」は、免疫系の細胞の免疫応答及び/又は活性を変
化させるいずれかの分子を示す。ある実施態様では、免疫調節剤は、免疫抑制剤又は免疫
賦活剤である。「免疫抑制剤」は、免疫系の細胞の免疫応答及び/又は活性を低下させる
いずれかの分子又は薬剤を示し、一方「免疫抑制剤」は、免疫系の細胞の免疫応答及び/
又は活性を増加させるいずれかの分子又は薬剤を示す。
【0067】
本明細書で使用される「免疫関連症状」は、免疫系の活性の変化と関連するいずれの症
状又は障害をも示す。免疫関連症状は、免疫応答の増加又は減少と関連する症状が含まれ
る。免疫関連症状は、次に限定されるものではないが、自己免疫性疾患、炎症症状、アレ
ルギー反応、免疫不全、造血性癌及びその他の造血性異常を含む。
【0068】
本明細書で使用される「炎症症状」は、炎症組織の炎症の増大又は存在と関連するいず
れの症状又は障害をも示す。炎症症状は、次に限定されるものではないが、喘息、アテロ
ーム性動脈硬化、自己免疫性疾患、自己炎症性疾患、癌、セリアック病、慢性前立腺炎、
大腸炎、憩室炎、糸球体腎炎、化膿性汗腺炎、過敏症、炎症性腸疾患、間質性膀胱炎、扁
平苔癬、マスト細胞活性化症候群、マスト細胞症、耳炎、骨盤炎症性疾患、再灌流障害、
リウマチ熱、関節リウマチ、鼻炎、サルコイドーシス、移植拒絶及び血管炎を含む。
【0069】
本明細書で使用される「消化管系症状」は、消化管系のいずれかの組織と関連するいず
れの症状又は障害をも示す。消化管系症状は、次に限定されるものではないが、消化管系
の免疫関連症状、消化管系の炎症症状、消化管系組織の微生物感染、及び摂食異常、代謝
性障害又は代謝性欠乏によって引き起こされる症状を含む。消化管系症状は、次に限定さ
れるものではないが、炎症性腸疾患、セリアック病、過敏性腸症候群、憩室炎、クローン
病、及び癌(例えば、結腸癌、直腸癌、胃癌)を含む。
【0070】
本明細書で使用される用語「処置」又は「治療」は、治療的処置及び予防的又は防御的
措置の両方を示し、その目的は、多発性硬化症、関節炎、又は癌の進行等の、望ましくな
い生理学的変化又は障害を防御又は減速(軽減)することである。有益な又は求められる臨
床的な結果は、次に限定されるものではないが、検出可能又は検出不可能のいずれかの、
兆候の緩和、疾患範囲の減少、安定化した(すなわち、悪化しない)疾患状態、疾患の進行
の遅延又は鈍化、病状の改善又は寛解、及び(局所的又は全体的な)緩解を含む。「治療」
にはまた、治療を受けない場合に予測される生存と比較して、生存を延長させる意味もあ
る。治療が必要な人には、すでにその症状又は障害を有する人と同様に、その症状又は障
害を起こしやすい人、又はその症状又は障害を防御すべき人も含まれる。
【0071】
「対象」又は「個体」又は「動物」又は「患者」又は「哺乳動物」は、全ての対象を意
味し、特に、診断、予後診断、又は療法が求められる哺乳類対象を意味する。哺乳類対象
は、ヒト、又は、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、畜牛、乳牛
その他等の、家庭内動物、家畜、及び動物園の動物、運動用動物、若しくは愛玩動物を含
む。
【0072】
用語「充分な量」は、求められる効果を生じるのに充分な量、例えば、細胞内タンパク
質凝集を調節するのに充分な量を意味する。
【0073】
用語「治療的有効量」は、疾患の兆候を改善するのに効果的な量である。予防は療法と
見なすことができるため、治療的有効量は「予防的有効量」である場合もある。
【0074】
本明細書全体で言及される用語「組換えヒトγδTCRタンパク質」又はこの用語の派生
的表現は、ヒトγδTCR配列又はその機能的誘導体若しくはホモログから、標準的な遺伝
子工学的方法論によって生成されるいずれかの組換えタンパク質を示す。そのような組換
えタンパク質はまた、ダイマー化ドメイン等の追加的な融合エレメントを含むことができ
る。その非限定的例は、TCRの正しい折り畳みをサポートするための融合、膜貫通型ドメ
インとして作用するための融合(例えば、細胞膜の表面でTCRの正確な提示をサポートする
ため)、又は半減期を延長する、若しくはサイズを大きくするための融合(例えば、ヒト血
清アルブミン融合ドメイン)又は本明細書で別に記載されるペイロード融合を含む。これ
らの追加的な融合エレメントは、γδTCR配列又はその誘導体及びホモログに由来する配
列で生成することができ、又それとは別に、この融合配列は起源が非TCRでもよい。
【0075】
本明細書全体で言及される用語「組換えγδTCR配列」若しくは「組換えヒトTCRライブ
ラリ」若しくは「組換えヒトTCRパネル」又はそれらに由来する派生的用語は、1を超える
組換えヒトγδTCRタンパク質のコレクション、又は2、若しくは3、若しくは4、若しくは
5、又は10を超える組換えヒトγδTCRタンパク質のコレクションを示す。このコレクショ
ンは、少なくとも1つ以上のアミノ酸において異なる配列のコレクションを含むこともあ
る。この組換えTCRのコレクションは、可溶性形状で提示されることもできる。或いは、
ディスプレイ目的のために、このコレクションは又、無機又は有機材料(非限定的例とし
ては、「ビーズ」又は「プレート」又は「カラム」又は「ファージ」が含まれる。)へ結
合、又は融合、又は繋ぎ止めることもできる。或いは、このようなコレクションは又、無
傷細胞若しくは生細胞中にみられるような膜、又はミセル等の非生命の膜の、1の膜上又
は複数の膜コレクション上で、提示又はディスプレイすることもできる。そのようなコレ
クションを1又は複数の生細胞上で発現及び提示する場合、通常は、同種発現ベクターの
コレクションも又生成する。この同種発現ベクターのコレクションを使用して、最初に1
又は複数の細胞を操作し、この組換えヒトγδTCRタンパク質、又はこのタンパク質のラ
イブラリ若しくはパネル若しくはコレクションをディスプレイし、このTCRタンパク質を
発現する細胞のライブラリを作成することができる。
【0076】
本明細書全体で言及される用語「同種結合相手」若しくは「同種結合相手候補」又はそ
れらに由来する派生的用語は、配列特異的な様式で組換えヒトγδTCRタンパク質に結合
すると特定されたタンパク質又はその誘導体を示す。そのような同種結合相手の発見又は
スクリーニング又は検証のために、それらはそれらの自然な環境(例えば、1又は複数の細
胞の表面上)で提示又はディスプレイされることができる。それらはまた、そのような細
胞からの抽出物若しくは分泌物、それらから精製した誘導体として、又は組換え形状で、
提示又はディスプレイされることができる。
【0077】
(6.2.他の解釈規則)
他に特記しない限り、本明細書の配列に関する全ての参照はアミノ酸配列に関する。
【0078】
本開示中、「を含む(comprises)」、「を含んでいる(comprising)」、「を備えている(
containing)」、「を有する(having)」、「を含有する(includes)」、「を含有している(
including)」、及びその語学的な変異形は、米国特許法に記載された意味を有し、それが
明示的に列挙する範囲を超えて、追加的な要素の存在を許容するものである。
【0079】
本明細書で提供される範囲は、列挙された終点を含む、範囲内の全ての値の省略形であ
ると理解される。例えば、1~50の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13
、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33
、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、及び50から構成
される群からの、任意の数、数の組み合わせ、又は部分範囲を含むと理解される。
【0080】
特記しない又は文脈から明白でない限り、本明細書で使用される用語「又は」は、包括
的であると理解される。特記しない又は文脈から明白でない限り、本明細書で使用される
用語「1の(a)」、「1つの(an)」、及び「この(the)」は、単数形又は複数形であると理解
される。
【0081】
特記しない又は文脈から明白でない限り、本明細書で使用される用語「約」は、当技術
分野における通常の許容誤差範囲内、例えば平均の2標準偏差内であると理解される。「
約」は、記載された値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、
0.1%、0.05%、又は0.01%範囲内と理解できる。他に、文脈から明白でない限り、本明
細書で提供される全ての数値は、この用語「約」によって改変される。
【0082】
(6.3.BTNL3/8を標的とする成分を含むタンパク質構築物)
第一の態様では、タンパク質構築物が提供される。このタンパク質構築物は、BTNL3/8
を標的とする成分、ペイロード、及び、標的とする成分をペイロードへ結合する任意のリ
ンカー、を含む。
【0083】
(6.3.1.1 BTNL3/8を標的とする成分)
BTNL3/8を標的とする成分は、特異的に、ヒトBTNL3、ヒトBTNL8及び/又はヒトBTNL3/8
ヘテロダイマーへ結合する。ある実施態様では、BTNL3/8を標的とする成分は、下記に更
に詳細に記載するように、T細胞受容体(TCR)Vγドメインポリペプチドの少なくとも一部
である。別の実施態様では、BTNL3/8を標的とする成分は抗体の抗原結合部位である。あ
る実施態様では、BTNL3/8を標的とする成分は、そのBTNL3/8を標的とする成分がBTNL3/8
へ結合すると、BTNL3/8の機能を阻害又は部分的に阻害する。ある実施態様では、BTNL3/8
を標的とする成分は、そのBTNL3/8を標的とする成分がBTNL3/8へ結合すると、BTNL3/8の
機能を刺激又は活性化する。ある実施態様では、BTNL3/8を標的とする成分は、そのBTNL3
/8を標的とする成分がBTNL3/8ヘテロダイマーへ結合すると、BTNL3/8ヘテロダイマー機能
を阻害又は部分的に阻害する。ある実施態様では、BTNL3/8を標的とする成分は、そのBTN
L3/8を標的とする成分がBTNL3/8ヘテロダイマーへ結合すると、BTNL3/8ヘテロダイマー機
能を刺激又は活性化する。
【0084】
(6.3.1. TCRγ可変ドメイン)
ある実施態様では、BTNL3/8を標的とする成分は、T細胞受容体(TCR)Vγドメインポリペ
プチドの少なくとも一部を含む。通常の実施態様では、BTNL3/8を標的とする成分はVγド
メインポリペプチドを含む。
【0085】
ある実施態様では、BTNL3/8を標的とする成分は、Vγ4由来のCDR4領域を含む。ある実
施態様では、BTNL3/8を標的とする成分はVγドメインを含み、そのVγドメインの配列位
置番号87のアミノ酸はアスパラギン酸又はヒスチジンであり、Vγドメインの配列位置番
号90のアミノ酸はグリシン又はグルタミン酸であり、Vγ CDR4の残りの残基は、それぞれ
の位置で、ヒト又はマウス(murine)のVγドメインの対応残基から独立して選択される。
【0086】
ある実施態様では、VγドメインCDR4の残りの残基は、それぞれの位置で、ヒトVγ4、
ヒトVγ2、又はマウスVγ7の対応残基から独立して選択される。いくつかの実施態様では
、VγドメインCDR4の残りの残基は全て、ヒトVγ4、ヒトVγ2、又はマウスVγ7の対応残
基から選択される。一の実施態様では、Vγ CDR4の残りの残基は全て、ヒトVγ4の対応残
基から選択される。一の実施態様では、Vγ CDR4の残りの残基は全て、ヒトVγ2の対応残
基から選択される。一の実施態様では、Vγ CDR4の残りの残基は全て、マウスVγ7の対応
残基から選択される。一の実施態様では、Vγドメインの位置番号87~90のアミノ酸配列
は、配列番号:1である。一の実施態様では、Vγドメインの位置番号87~90のアミノ酸配
列は、配列番号:2である。
【0087】
ある実施態様では、Vγドメインは
図1に示されるVγドメイン配列である。ある実施態
様では、VγドメインはヒトVγドメインである。一の実施態様では、VγドメインはヒトV
γ4ドメインである。一の実施態様では、VγドメインはヒトVγ2ドメインであり、その中
ではCDR4のアミノ酸は、アミノ酸配列位置番号87でアスパラギン酸又はヒスチジンで置換
され、アミノ酸配列位置番号90でグリシン又はグルタミン酸で置換されている。
【0088】
ある実施態様では、VγドメインはヒトVγ3又はヒトVγ5である。特別な実施態様では
、VγドメインはヒトVγ3又はヒトVγ5であり、その中ではCDR4のアミノ酸は、アミノ酸
配列位置番号87でアスパラギン酸又はヒスチジンで置換され、アミノ酸配列位置番号90で
グリシン又はグルタミン酸で置換されている。ある実施態様では、VγドメインはヒトVγ
4と少なくとも70%の配列同一性を有するヒトVγドメインである。
【0089】
ある実施態様では、Vγドメインは、非ヒト哺乳動物VγドメインであるVγドメインで
ある。ある実施態様では、VγドメインはヒトVγ4と少なくとも70%の同一性を有する非
ヒト哺乳動物Vγドメイン配列である。
【0090】
いくつかの実施態様では、VγドメインCDR3は、ヒト又はマウスのVγ CDR3配列である
。ある実施態様では、VγドメインCDR3は、ヒトCDR3配列を含む。特別な実施態様では、V
γドメインCDR3は、ヒトVγ4 CDR3配列を含む。特別な実施態様では、VγドメインCDR3は
、ヒトVγ2 CDR3配列を含む。ある実施態様では、VγドメインCDR3は、非ヒト哺乳動物CD
R3配列を含む。一の実施態様では、VγドメインCDR3は、マウスVγ7 CDR3配列を含む。
【0091】
いくつかの実施態様では、J領域はVγ J領域である。ある実施態様では、J領域はヒトV
γ J領域である。ある実施態様では、J領域はマウスVγ J領域である。一の実施態様では
、J領域は、配列番号:15~18からなる群から選択されるポリペプチド配列を有する。
【0092】
(6.3.1.1.1 Vδとのペア)
ある実施態様では、タンパク質構築物のBTNL3/8を標的とする成分は更に、ペアになっ
たVδドメインを含まない。ある実施態様では、タンパク質構築物のBTNL3/8を標的とする
成分は、少なくとも1の追加的なVγドメインとペアになったVδドメインを含む。ある実
施態様では、BTNL3/8を標的とする成分はVγ4ホモダイマーである。ある実施態様では、
タンパク質構築物のBTNL3/8を標的とする成分は更に、ペアになったVδドメインを含む。
ある実施態様では、VδドメインはヒトVδドメインである。ある実施態様では、ヒトVδ
ドメインは、Vδ1、Vδ2、Vδ3、Vδ5、又はVδ8である。一の実施態様では、ヒトVδド
メインはVδ1である。ある実施態様では、Vδドメインは非ヒト哺乳動物Vδドメインであ
る。
【0093】
((a)ヘテロダイマーフォーマット)
いくつかの実施態様では、Vδドメインは、第一及び第二ポリペプチドのヘテロダイマ
ー化によりペアになっており、そのポリペプチドのうちの1つはVγドメインを含み、その
ポリペプチドのうちの1つはVδドメインを含む。
【0094】
ヘテロダイマー性相互作用は、Vγドメイン及びVδドメインを含む複数のポリペプチド
間の共有的相互作用及び/又は非共有的相互作用を含むことができる。通常の実施態様で
は、Vγドメイン及びVδドメインは、ヘテロダイマーよりもホモダイマーのほうが形成さ
れにくい直交特色によってペアになっている。
【0095】
いくつかの実施態様では、それぞれVγドメイン及びVδドメインを含むポリペプチドは
、遺伝子操作した少なくとも1つのジスルフィド架橋によって共有結合する。遺伝子操作
したジスルフィド架橋は、2以上のドメインが会合したときに非ネイティブのジスルフィ
ド結合が形成されるように、2以上のドメインに非内因性システインアミノ酸を提供する
アミノ酸配列である。これらの実施態様のあるものでは、少なくとも1つのジスルフィド
架橋が、Vγドメイン及びVδドメイン内に設計されている。ある実施態様では、少なくと
も1つのジスルフィド架橋は、可変領域とインフレーム融合した定常領域内のような、可
変領域の外側のドメイン内に設計される。
【0096】
いくつかの実施態様では、ヘテロダイマー性相互作用はロイシンジッパー相補性である
。
【0097】
ある実施態様では、ペアになったVγ/Vδヘテロダイマーの、1以上のポリペプチドは更
に、T細胞受容体定常領域を含む。ある実施態様では、第一T細胞受容体定常領域は、ペア
になったVγドメインのC末端へインフレーム融合している。一の実施態様では、第一T細
胞受容体定常領域はヒトTCR定常領域である。一の実施態様では、第一T細胞受容体定常領
域はヒトTCRβ定常領域である。一の実施態様では、第一T細胞受容体定常領域はヒトTCR
α定常領域である。一の実施態様では、第一T細胞受容体定常領域はヒトTCRγ定常領域で
ある。一の実施態様では、ペアになったVγ/Vδヘテロダイマーのポリペプチドは更に、
第二T細胞受容体定常領域を含み、その第二T細胞受容体定常領域はペアになったVδドメ
インのC末端へインフレーム融合している。一の実施態様では、第二T細胞受容体定常領域
はヒトTCRα定常領域である。一の実施態様では、第二T細胞受容体定常領域はヒトTCRβ
定常領域である。一の実施態様では、第二T細胞受容体定常領域はヒトTCRδ定常領域であ
る。
【0098】
いくつかの実施態様では、Vγドメインの、第一定常領域とのインフレーム融合は、Vγ
ドメインと第一TCR定常領域との間の内部リンカー配列を含む。いくつかの実施態様では
、Vδドメインの、第二TCR定常領域とのインフレーム融合は、Vδドメインと第二T細胞受
容体定常領域との間の内部リンカー配列を含む。
【0099】
一の実施態様では、BTNL3/8を標的とする成分は配列番号:9を含む。一の実施態様では
、BTNL3/8を標的とする成分は配列番号:10を含む。一の実施態様では、BTNL3/8を標的と
する成分は配列番号:11を含む。
【0100】
ある実施態様では、BTNL3/8を標的とする成分は、1を超えるVγドメイン及び/又はVδ
ドメインを含む。ある実施態様では、1を超えるVγドメイン及び/又はVδドメインは、
多量体化している。ある実施態様では、1を超えるVγドメイン及び/又はVδドメインの
全部又は一部は、T細胞受容体定常領域へインフレーム融合している。ある実施態様では
、1を超える多量体化Vγドメイン及び/又はVδドメインは、1以上の内部リンカーを含む
。
【0101】
更なる態様では、組換えγδTCR構築物が提供される。従って、更なる態様においては
、配列番号:9(任意で、C末端Hisタグ無し)を含む組換えγδTCRタンパク質が提供される
。別の態様では、配列番号:10を含む組換えγδTCRタンパク質が提供される。別の態様で
は、配列番号:11(任意で、C末端Hisタグ無し)を含む組換えγδTCRタンパク質が提供され
る。別の態様では、配列番号:12を含む組換えγδTCRタンパク質が提供される。別の態様
では、配列番号:13を含む組換えγδTCRタンパク質が提供される。
【0102】
((b)一本鎖インフレーム融合)
ある実施態様では、BTNL3/8を標的とする成分は、Vγドメイン及びペアになったVδド
メインの一本鎖インフレーム融合を含む。いくつかの実施態様では、VγドメインはVδド
メインに対してN末端である。いくつかの実施態様では、VγドメインはVδドメインに対
してC末端である。様々な実施態様では、Vγドメイン及びVδドメインの一本鎖インフレ
ーム融合は、内部リンカー配列を含む。
【0103】
いくつかの実施態様では、VδドメインはヒトVδドメインである。一の実施態様では、
ヒトVδドメインは、Vδ1、Vδ2又はVδ5である。一の実施態様では、ヒトVδドメインは
Vδ1である。ある実施態様では、一本鎖インフレーム融合は更に、少なくとも1のT細胞受
容体定常領域を含む。ある実施態様では、一本鎖インフレーム融合は更に、第一T細胞受
容体定常領域を含み、その第一T細胞受容体定常領域は、VγドメインのC末端へインフレ
ーム融合している。一の実施態様では、第一T細胞受容体定常領域は、ヒトT細胞受容体定
常領域である。一の実施態様では、第一T細胞受容体定常領域は、ヒトT細胞受容体β定常
領域である。一の実施態様では、第一T細胞受容体定常領域は、ヒトT細胞受容体α定常領
域である。一の実施態様では、第一T細胞受容体定常領域は、ヒトT細胞受容体γ定常領域
である。一の実施態様では、一本鎖インフレーム融合は更に、第二T細胞受容体定常領域
を含み、その第二T細胞受容体定常領域は、ペアになったVδドメインのC末端へインフレ
ーム融合している。一の実施態様では、第二T細胞受容体定常領域は、ヒトT細胞受容体α
定常領域である。一の実施態様では、第二T細胞受容体定常領域は、ヒトT細胞受容体β定
常領域である。一の実施態様では、第二T細胞受容体定常領域は、ヒトT細胞受容体δ定常
領域である。一の実施態様では、Vδドメインと第二T細胞受容体定常領域とのインフレー
ム融合は、Vδドメインと第二T細胞受容体定常領域との間の内部リンカー配列を含む。
【0104】
ある実施態様では、一本鎖インフレーム融合は、1を超えるVγドメイン及び/又はVδ
ドメインを含む。ある実施態様では、1を超えるVγドメイン及び/又はVδドメインは、
多量体化している。ある実施態様では、1を超える多量体化Vγドメイン及び/又はVδド
メインは、1以上の内部リンカーを含む。ある実施態様では、1を超えるVγドメイン及び
/又はVδドメインの全部又は一部は、少なくとも1のT細胞受容体定常領域へインフレー
ム融合している。
【0105】
(6.3.2.抗体ベースの標的成分)
ある実施態様では、BTNL3/8を標的とする成分は、特異的に、ヒトBTNL3、ヒトBTNL8及
び/又はヒトBTNL3/8ヘテロダイマーへ結合する抗体を含む。ある実施態様では、抗体は
、完全長抗体断片又は抗体フォーマットであり、次に限定されるものではないが、Fab断
片、Fv、scFv、タンデムscFv、ダイアボディ、scダイアボディ、DART、タンデムダイアボ
ディ(tandAb)、ミニボディ、ラクダ類VHH、及び、当業者に公知の他の抗体断片又はフォ
ーマットを含む。例示的な抗体及び抗体断片フォーマットは、Brinkmannらの文献、MABS,
2017,Vol. 9, No. 2, 182-212に詳細に記載されており、引用によりその教示全体が本明
細書に組み込まれる。
【0106】
一の実施態様では、抗体はFc受容体と相互作用可能なFcドメインを含む。一の実施態様
では、抗体は、Fc受容体と相互作用不可能なFcドメインを含む。ある実施態様では、抗体
は、抗体ドメインのアミノ酸配列中に1以上の遺伝子操作した変異を有し、それは本来的
にその抗体結合と関係しているエフェクター機能を低下させるものである。エフェクター
機能は、次に限定されるものではないが、抗体依存性細胞傷害(ADCC、抗体依存性細胞媒
介性細胞傷害とも呼ばれる)、補体固定化(fixation)(例えば、C1q結合)、抗体依存性細胞
貪食(ADCP)、及びオプソニン作用等、抗体のFc部分に結合するFc受容体から生じる細胞機
能を含む。エフェクター機能を低下させる遺伝子操作変異は、米国出願公開番号第2017/0
137530号、Armourらの文献(Eur. J. Immunol. 29(8)(1999)2613-2624)、Shieldsらの文献
(J. Biol. Chem. 276(9)(2001)6591-6604)、及びOganesyanらの文献(Acta Cristallograp
hica D64(2008)700-704)に詳細に記載されており、それらは引用により本明細書へその全
体が組み込まれる。特別な実施態様では、抗体は、FcR受容体によるROR結合分子のFc部の
結合を減少させる抗体ドメインのアミノ酸配列中に、1以上の遺伝子操作変異を有する。
いくつかの実施態様では、FcR受容体はFcRγ受容体である。特別な実施態様では、FcR受
容体はFcγRIIa及び/又はFcγRIIIA受容体である。特別な実施態様では、エフェクター
機能を減少させる、1以上の遺伝子操作変異は、抗体のCH2ドメイン内の変異である。
【0107】
(6.3.2.1ペイロード)
本タンパク質構築物は、ペイロードを含む。
【0108】
様々な実施態様では、ペイロードは、ヌクレオチド、更に検出可能成分若しくは毒素を
含む、又は転写を阻害するヌクレオチド、DNA、酵素等のポリペプチドをコードするmRNA
分子、他のRNA分子(例えば、RNAi、miRNA、siRNA、piRNA、snoRNA、snRNA、exRNA、scaRN
A及びlncRNA)等の核酸、アミノ酸(例えば、検出可能成分若しくは毒素を含む、又は翻訳
を阻害するアミノ酸)、ポリペプチド(例えば、酵素、生物製剤)、脂質、炭水化物、小分
子(例えば、小分子薬及び小分子毒素)並びにそれらの組み合わせを含むことができる。
【0109】
ある実施態様では、ペイロードは治療薬である。治療薬には、次に限定されるものでは
ないが、化学療法薬、免疫調節剤(例えば、サイトカイン、ケモカイン、又はチェックポ
イント阻害剤)、ホルモン及び毒素(例えば、細胞毒性剤)が含まれる。
【0110】
ある実施態様では、ペイロードは抗体である。一の実施態様では、抗体は、CD3抗原に
特異的な、少なくとも1つの抗原結合部位(ABS)を含む。一の実施態様では、抗体は、腫瘍
壊死因子α(TNFα)抗原に特異的な、少なくとも1つのABSを含む。一の実施態様では、抗
体はFc受容体と相互作用可能なFcドメインを含む。一の実施態様では、抗体は、Fc受容体
と相互作用不可能なFcドメインを含む。
【0111】
ある実施態様では、ペイロードはホルモンである。ある実施態様では、ペイロードは栄
養補助食品である。ある実施態様では、ペイロードは抗菌剤である。
【0112】
ある実施態様では、タンパク質構築物は、同一又は異なってもよい複数のペイロードを
含む。
【0113】
特別な実施態様では、ペイロードは、BTNL3/8を標的とする成分のC末端へ結合する。特
別な実施態様では、ペイロードは、BTNL3/8を標的とする成分のN末端へ結合する。
【0114】
(6.3.1.ポリペプチド)
様々な実施態様では、ペイロードはポリペプチドである。ある実施態様では、ペイロー
ドは、BTNL3/8を標的とする成分へインフレーム融合したポリペプチドである。特別な実
施態様では、ペイロードはBTNL3/8を標的とする成分のC末端へインフレーム融合している
。特別な実施態様では、ペイロードはBTNL3/8を標的とする成分のN末端へインフレーム融
合している。
【0115】
ある実施態様では、ポリペプチドペイロードはサイトカインである。ある実施態様では
、ペイロードは、インターロイキン10(IL-10)、インターロイキン22(IL-22)又はトランス
フォーミング増殖因子β(TGFβ)等の抗炎症性サイトカインである。
【0116】
ある実施態様では、ペイロードは抗催炎症性ポリペプチドである。特別な実施態様では
、抗催炎症性ポリペプチドは、1以上の炎症誘発性サイトカインの阻害剤である。特別な
実施態様では、抗催炎症性ポリペプチドは、1以上のインターロイキン-1(IL-1)、IL-6、I
L-12、IL-18、腫瘍壊死因子α(TNFα)、インターフェロンγ(INF-γ)又は顆粒球-マクロ
ファージコロニー刺激因子の、阻害剤である。ある実施態様では、抗催炎症性ポリペプチ
ドは、可溶性腫瘍壊死因子受容体p55、可溶性腫瘍壊死因子、p75、可溶性IL-1受容体II型
、IL-18結合タンパク質等の、抗炎症活性を有する可溶性サイトカイン受容体である。あ
る実施態様では、抗催炎症性ポリペプチドは、特異的に炎症誘発性サイトカインへ結合す
る抗体抗原結合部位を含む。
【0117】
いくつかの実施態様では、ペイロードはペプチドである。ある実施態様では、ペイロー
ドは、BTNL3/8を標的とする成分へインフレーム融合したペプチドである。
【0118】
(6.3.2.1.1抗体抗原結合部位)
ある実施態様では、ペイロードは、少なくとも1つの抗体抗原-結合部位(ABS)である。
ある実施態様では、抗体抗原-結合部位は、Fab断片、Fv、scFv、タンデムscFv、ダイアボ
ディ、scダイアボディ、DART、タンデムダイアボディ(tandAb)、ミニボディ、ラクダ類VH
H、ナノボディ、又は、当業者に公知の他の抗体断片又はフォーマットとして構成される
。例示的な抗体及び抗体断片フォーマットは、Brinkmannらの文献、MABS, 2017,Vol. 9,
No. 2, 182-212に詳細に記載されており、引用によりその教示全体が本明細書に組み込ま
れる。
【0119】
様々な実施態様では、少なくとも1つの抗体抗原-結合部位は、サイトカインに特異的で
ある。いくつかの実施態様では、抗原-結合部位は、炎症誘発性サイトカインに特異的で
ある。特別な実施態様では、少なくとも1つの抗原-結合部位は、インターロイキン-1(IL-
1)、IL-6、IL-12、IL-18、腫瘍壊死因子α(TNFα)、インターフェロンγ(INF-γ)又は顆
粒球-マクロファージコロニー刺激因子に特異的である。
【0120】
一の実施態様では、抗体は、インターロイキン10(IL-10)、インターロイキン22(IL-22)
又はトランスフォーミング増殖因子β(TGFβ)等の抗炎症性サイトカインに特異的な、少
なくとも1つの抗原結合部位(ABS)を含む。一の実施態様では、抗体は、抗催炎症剤に特異
的な、少なくとも1つの抗原結合部位(ABS)を含む。
【0121】
いくつかの実施態様では、抗体は、サイトカイン抗原に特異的な、少なくとも1つの抗
原結合部位(ABS)を含む。一の実施態様では、抗体は、腫瘍壊死因子α(TNFα)抗原に特異
的な、少なくとも1つのABSであり、を含む(is comprises)。
【0122】
(6.3.2.小分子ペイロード)
[0100]ある実施態様では、ペイロードは小分子である。ある実施態様では、小分子は治
療薬(即ち、小分子薬)である。ある実施態様では、小分子治療薬は免疫調節剤である。あ
る実施態様では、小分子は、細胞性タンパク質(例えば、受容体、他のシグナル分子、酵
素又は転写因子)の阻害剤又は活性化剤である。ある実施態様では、小分子治療薬は毒素
である。
【0123】
[0101]いくつかの実施態様では、ペイロードは、BTNL3/8を標的とする成分と化学的コ
ンジュゲーションにより結合する薬物である。
【0124】
[0102]本明細書に開示されたタンパク質構築物へ、薬物をコンジュゲートするために利
用できる、抗体薬物コンジュゲート(ADC)の調製法は、例えば、米国特許第8,624,003号(
釜(pot)式製法)、米国特許第8,163,888号(一段式)、米国特許第5,208,020号(二段式製法)
、米国特許第8,337,856号、米国特許第5,773,001号、米国特許第7,829,531号、米国特許
第5,208,020号、米国特許第7,745,394号、国際公開WO2017/136623、国際公開WO2017/0155
02、国際公開WO2017/015496、国際公開WO2017/015495、国際公開WO2004/010957、国際公
開WO2005/077090、国際公開WO2005/082023、国際公開WO2006/065533、国際公開WO2007/03
0642、国際公開WO2007/103288、国際公開WO2013/173337、国際公開WO2015/057699、国際
公開WO2015/095755、国際公開WO2015/123679、国際公開WO2015/157286、国際公開WO2017/
165851、国際公開WO2009/073445、国際公開WO2010/068759、国際公開WO2010/138719、国
際公開WO2012/171020、国際公開WO2014/008375、国際公開WO2014/093394、国際公開WO201
4/093640、国際公開WO2014/160360、国際公開WO2015/054659、国際公開WO2015/195925、
国際公開WO2017/160754、Storzの文献(MAbs. 2015 Nov-Dec; 7(6): 989-1009)、Lambert
らの文献(AdvTher, 2017 34: 1015)、Diamantisらの文献(British Journal of Cancer, 2
016, 114, 362-367)、Carricoらの文献(Nat Chem Biol, 2007. 3: 321-2)、Weらの文献(P
roc Natl Acad Sci USA, 2009. 106: 3000-5)、Rabukaらの文献(Curr Opin Chem Biol.,
2011 14: 790-6)、Hudakらの文献(Angew Chem Int Ed Engl., 2012: 4161-5)、Rabukaら
の文献(Nat Protoc., 2012 7:1052-67)、Agarwalらの文献(Proc Natl Acad Sci USA., 20
13, 110: 46-51)、Agarwalらの文献(Bioconjugate Chem., 2013, 24: 846-851)、Barfiel
dらの文献(Drug Dev. and D., 2014, 14:34-41)、Drakeらの文献(Bioconjugate Chem., 2
014, 25:1331-41)、Liangらの文献(J Am Chem Soc., 2014, 136:10850-3)、Drakeらの文
献(Curr Opin Chem Biol., 2015, 28:174-80)、及びYorkらの文献(BMC Biotechnology, 2
016, 16(1):23)に記載されており、引用により上記それぞれの教示全体が本明細書に組み
込まれる。
【0125】
(6.3.3.核酸ペイロード)
[0103]ある実施態様では、ペイロードは核酸である。核酸は、次に限定されるものでは
ないが、dsDNA、mRNA、miRNA、lncRNA及びsiRNA、piRNA、snoRNA、snRNA、exRNA及びscaR
NA等の、DNA又はRNAでもよい。
【0126】
(6.3.3.1任意のリンカー)
[0104]本明細書に記載されたタンパク質構築物は、任意で、標的とする成分をペイロー
ドへ結合するリンカーを含む。
【0127】
[0105]いくつかの実施態様では、任意のリンカーは、標的とする成分へインフレーム融
合したペプチドである。一の実施態様では、任意のリンカーは、標的とする成分のC末端
へインフレーム融合される。一の実施態様では、任意のリンカーは、標的とする成分のN
末端へインフレーム融合される。
【0128】
[0106]いくつかの実施態様では、任意のリンカーは、標的とする成分へコンジュゲート
された分子である。様々な実施態様では、タンパク質構築物は、追加的な機能的エレメン
ト(例えば、ペイロード、及びBTNL3/8を標的とする成分)を結合する等の下流プロセス及
び下流精製プロセスで使用できる、機能性基又は化学反応性基を含む、改変を有する。あ
る実施態様では、リンカーは、切断可能な分子(例えば、部位特異的プロテアーゼ又はリ
ンカーを2以上の断片へ切断可能とする他の分子によって、切断可能なペプチド)を含む。
ある実施態様では、改変は、次に限定されるものではないが、反応性チオール(例えば、
マレイミドベースの反応性基)、反応性アミン(例えば、N-ヒドロキシスクシンイミドベー
スの反応性基)、「クリックケミストリー」基(例えば、反応性アルキン基)、及びホルミ
ルグリシン(FGly)を有するアルデヒドを含む化学反応性基である。ある実施態様では、改
変は、次に限定されるものではないが、親和性ペプチド配列(例えば、HA、HIS、FLAG、GS
T、MBP、及びStrep systems等)を含む機能性基である。ある実施態様では、機能性基又は
化学反応性基は、切断可能なペプチド配列を有する。特別な実施態様では、切断可能なペ
プチドは、次に限定されるものではないが、光切断、化学的切断、プロテアーゼ切断、還
元条件、及びpH条件を含む手段によって切断される。特別な実施態様では、プロテアーゼ
切断は、細胞内プロテアーゼによって行われる。特別な実施態様では、プロテアーゼ切断
は、細胞外又は膜結合型プロテアーゼによって行われる。プロテアーゼ切断を採用したAD
C療法は、Choiらの文献(Theranostics, 2012; 2(2): 156-178.)に詳細に記載されており
、引用によりその教示全体が本明細書に組み込まれる。
【0129】
[0107]ある実施態様では、標的とする成分のペイロードへの結合に加え、リンカーは、
分子をタンパク質構築物の機能的エレメント(例えば、標的とする成分及びペイロード)へ
部位特異的コンジュゲーションすることを可能にするために使用できる。ある実施態様で
は、リンカーは、タンパク質構築物をインビトロ又はインビボで、同定又は検出するため
に追加的に使用できる。ある実施態様では、タンパク質構築物は、1を超える任意のリン
カーを含む。
【0130】
(6.4.他の標的成分)
[0108]ある態様では、本明細書に記載されるのは、組換えホモダイマー及びヘテロダイ
マーヒトγδTCRのパネル又はライブラリ、並びに、このパネル又はライブラリを、γδT
細胞の組織特異的分布を決定又は促進する、特異的な同種ヒト結合ドメイン又は相手を特
定するために使用する方法である。この結合相手は、しばしばヒト生来の「自己抗原」と
呼ばれ、本明細書に記載された発見がなされるまでは、更なる決定又は特徴付けが非常に
困難/不可能であった。本発明のある態様では、その天然の細胞環境内で示されるものと
似ている組織特異性又は結合性を示す組換えヒトγδTCRタンパク質を記載する。更なる
本発明の態様では、(i)少なくとも1つの組換えγδTCRを生成すること、(ii)この1又は複
数の組換えタンパク質を、好ましくは細胞表面上に発現している、潜在的な1又は複数の
同種結合相手へ、ディスプレイ若しくは提示する又は混合すること、並びに、(iii)次に
、特異的なγδTCR/結合相手との相互作用を、特定又は検証する、方法を記載する。本発
明のある態様では、結果的に特定されたγδTCR又はその由来配列を、標的とする成分と
して採用し、治療薬ペイロードを、同種結合相手を発現している標的組織又は細胞へ送達
する。更なる実施態様では、本明細書に記載された方法によって特定された、特定された
同種結合相手を発現する細胞は次に、抗体又はその誘導体等の別の標的とする成分で標的
化される。
【0131】
(6.5.作成方法)
[0109]本明細書に記載されたタンパク質構築物は、T細胞受容体又は抗体の生成に現在
使用されている、標準的な細胞フリー翻訳、一過性トランスフェクション、及び安定した
トランスフェクションアプローチを使用したタンパク質発現によって容易に生成できる。
【0132】
(6.6.精製方法)
[0110]当業者に公知の適切な精製方法が、タンパク質構築物の精製に使用できる。発現
したタンパク質は、アフィニティレジン(例えば、タンパク質構築物上の親和性タグに結
合するもの)を使用して、望ましくないタンパク質及びタンパク質複合体から容易に分離
できる。更なる精製は、当分野で日常的に使用されているように、イオン交換クロマトグ
ラフィーを使用して行うことができる。
【0133】
[0111]精製段階の有効性及び効率を評価する方法は、当業者に周知であり、次に限定さ
れるものではないが、SDS-PAGE分析、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマ
トグラフィー、及び質量分析を含む。純度も又、さまざまな基準によって評価することが
できる。基準の例は、次に限定されるものではないが:1)完全に組み立てたタンパク質構
築物から得られる溶出液中の全タンパク質のパーセンテージの評価、2)求める生成物を精
製する方法の富化倍数又は増加割合を評価、例えば、溶出液中の完全に組み立てられたタ
ンパク質構築物から得られる全タンパク質の、出発サンプルのそれとの比較、3)全タンパ
ク質のパーセンテージ又は、望ましくない生成物、例えば、上記不完全な複合体の減少割
合の評価、例えば、特定の望ましくない生成物(例えば、非会合性一本鎖ポリペプチド、
いずれかの組み合わせのポリペプチド鎖ダイマー、又はいずれかの組み合わせのポリペプ
チド鎖トリマー)のパーセント又は減少割合の決定、を含むものである。
【0134】
(6.7.医薬組成物)
[0112]別の態様では、本明細書に記載された、BTNL3/8を標的とする成分及びペイロー
ドを含むタンパク質構築物、並びに医薬として許容し得るキャリア又は希釈剤を含む、医
薬組成物が提供される。通常の実施態様では、医薬組成物は無菌である。ある態様では、
本明細書に記載されているのは、上記いずれかのタンパク質構築物及び医薬として許容し
得るキャリアを含む、医薬組成物である。
【0135】
[0113]一の実施態様では、医薬組成物は非経口投与に適している。一の実施態様では、
投与は静脈内投与である。一の実施態様では、投与は筋肉内投与である。一の実施態様で
は、投与は皮下投与である。
【0136】
[0114]様々な実施態様では、医薬組成物は、タンパク質構築物を0.1 mg/ml~100 mg/ml
濃度で含む。特別な実施態様では、医薬組成物は、タンパク質構築物を0.5 mg/ml、1 mg/
ml、1.5 mg/ml、2 mg/ml、2.5 mg/ml、5 mg/ml、7.5 mg/ml、又は10 mg/ml濃度で含む。
いくつかの実施態様では、医薬組成物は、タンパク質構築物を10 mg/mlを超える濃度で含
む。ある実施態様では、タンパク質構築物は、20 mg/ml、25 mg/ml、30 mg/ml、35 mg/ml
、40 mg/ml、45 mg/ml、又は更には50 mg/ml又はそれより高い濃度で存在する。特別な実
施態様では、タンパク質構築物は、50 mg/mlを超える濃度で存在する。
【0137】
[0115]様々な実施態様では、医薬組成物は、米国特許番号第8,961,964号、米国特許番
号第8,945,865号、米国特許番号第8,420,081号、米国特許番号第6,685,940号、米国特許
番号第6,171,586号、米国特許番号第8,821,865号、米国特許番号第9,216,219号、米国特
許出願番号10/813,483号、国際公開WO2014/066468、国際公開WO2011/104381、及び国際公
開WO2016/180941に詳細に記載されており、引用によりそれぞれの教示全体が本明細書に
組み込まれる。
【0138】
(6.8.使用のための組成物)
[0116]一の態様では、使用のための組成物も同様に提供される。一の実施態様では、本
明細書に記載された、BTNL3/8を標的とする成分及びペイロードを含むタンパク質構築物
を含有する、療法での使用のための組成物が提供される。組成物は、例えば、炎症症状、
炎症性腸疾患、過敏腸症候群、憩室炎、セリアック病、代謝性障害、癌、免疫関連障害、
自己免疫、移植拒絶、外傷後免疫応答、移植片対宿主病、虚血、卒中、及び感染症の治療
のために使用することができる。
【0139】
[0117]一の態様では、医薬品製造のための組成物の使用も同様に提供される。一の実施
態様では、本明細書に記載された、BTNL3/8を標的とする成分及びペイロードを含むタン
パク質構築物を含有する、医薬品製造のための組成物の使用が提供され、その医薬品は、
例えば、炎症症状、炎症性腸疾患、過敏腸症候群、憩室炎、セリアック病、代謝性障害、
癌、免疫関連障害、自己免疫、移植拒絶、外傷後免疫応答、移植片対宿主病、虚血、卒中
、及び感染症の治療のために使用される。
【0140】
(6.9.治療法)
[0118]一の態様では、治療法であって、本明細書に記載された、BTNL3/8を標的とする
成分及びペイロードを含むタンパク質構築物を、患者を治療するための有効量で患者へ投
与することを含む方法が提供される。本開示のタンパク質構築物は、それ自体で、又は医
薬組成物の形状で、例えば、炎症症状、炎症性腸疾患、過敏腸症候群、憩室炎、セリアッ
ク病、代謝性障害、癌、免疫関連障害、自己免疫、移植拒絶、外傷後免疫応答、移植片対
宿主病、虚血、卒中、及び感染症の治療のために、対象へ投与されてもよい。
【0141】
(6.9.1.1消化管系症状)
[0119]ある態様では、本明細書に記載されているのは、消化管系症状の治療法である。
消化管系症状は、次に限定されるものではないが、消化管系の免疫関連症状、消化管系の
炎症症状、消化管系組織の微生物感染、及び摂食異常、代謝性障害又は代謝性欠乏によっ
て引き起こされる症状を含む。消化管系症状は、次に限定されるものではないが、炎症性
腸疾患、セリアック病、過敏性腸症候群、憩室炎、クローン病、及び癌(例えば、結腸癌
、直腸癌、胃癌)を含む。ある態様では、本明細書に記載されているのは、消化管組織がB
TNL3/8を発現する消化管系の状態を治療する方法であり、治療的有効量の、請求項62~66
のいずれか一項記載の医薬組成物を、消化管組織がBTNL3/8を発現する条件下で、患者へ
投与することを含む方法である。この方法の一の実施態様では、タンパク質構築物のペイ
ロードは、抗炎症剤である。一の実施態様では、抗炎症剤は、アミノサリチレートである
。一の実施態様では、抗炎症剤は、非ステロイド系抗炎症剤である。一の実施態様では、
抗炎症剤は、任意でインターロイキン10(IL-10)、インターロイキン22(IL-22)又はトラン
スフォーミング増殖因子β(TGFβ)である、抗炎症性サイトカインである。一の実施態様
では、抗炎症剤は抗催炎症剤である。一の実施態様では、抗炎症剤はステロイドである。
一の実施態様では、ステロイドはグルココルチコイドである。一の実施態様では、グルコ
コルチコイドはプレドニゾンである。一の実施態様では、グルココルチコイドはヒドロコ
ルチゾンである。一の実施態様では、ペイロードは免疫調節剤である。
【0142】
(6.9.2.1炎症性腸疾患)
[0120]ある態様では、本明細書に記載されているのは、治療的有効量の、上記いずれか
記載の医薬組成物を、炎症性腸疾患の患者へ投与することを含む、炎症性腸疾患の治療法
である。一の実施態様では、炎症性腸疾患は潰瘍性大腸炎である。一の実施態様では、炎
症性腸疾患はクローン病である。一の実施態様では、タンパク質構築物のペイロードは、
抗炎症剤である。一の実施態様では、抗炎症剤はアミノサリチレートである。一の実施態
様では、抗炎症剤は非ステロイド抗炎症薬である。一の実施態様では、抗炎症剤は抗炎症
性サイトカイン、任意でインターロイキン10(IL-10)、インターロイキン22(IL-22)又はト
ランスフォーミング増殖因子β(TGFβ)である。一の実施態様では、抗炎症剤ペイロード
は、抗催炎症剤である。一の実施態様では、抗炎症剤ペイロードは、ステロイドである。
一の実施態様では、ステロイドはグルココルチコイドである。一の実施態様では、グルコ
コルチコイドはプレドニゾンである。一の実施態様では、グルココルチコイドはヒドロコ
ルチゾンである。一の実施態様では、タンパク質構築物のペイロードは、抗生物質である
。一の実施態様では、抗生物質ペイロードは、リファキシミン、シプロフロキサシン、メ
トロニダゾール、モキシフロキサシン又はアモキシシリンである。一の実施態様では、タ
ンパク質構築物のペイロードは、カルシニュリン阻害剤である。一の実施態様では、カル
シニュリン阻害剤は、シクロスポリンA又はタクロリムスである。一の実施態様では、タ
ンパク質構築物のペイロードは、免疫調節剤である。一の実施態様では、免疫調節剤は免
疫抑制剤である。一の実施態様では、免疫抑制剤は、アザチオプリン、6-メルカプトプリ
ン、メトトレキサート又はチオプリンである。一の実施態様では、タンパク質構築物のペ
イロードは、タンパク質ペイロードである。一の実施態様では、タンパク質ペイロードは
、抗体、抗体断片又は一本鎖可変断片である。一の実施態様では、タンパク質ペイロード
は、TNFα抗原に特異的であり、かつ(comprises and)少なくとも1つであるABSを含む。一
の実施態様では、タンパク質ペイロードは、アダリムマブ、インフリキシマブ又はセルト
リズマブの相補性決定領域(CDR)を含む。一の実施態様では、タンパク質ペイロードは、
インターロイキン抗原に特異的な、少なくとも1つのABSを含む。一の実施態様では、イン
ターロイキンは、IL-12、IL-23、又はそれらの組み合わせである。一の実施態様では、タ
ンパク質ペイロードは、ウステキヌマブ又はブリキヌマブ(brikinumab)のCDRを含む。一
の実施態様では、生物製剤(biologic)ペイロードは、インテグリン抗原に特異的な、少な
くとも1つのABSを含む。一の実施態様では、インテグリンは、α4インテグリンである。
一の実施態様では、タンパク質ペイロードは、インフリキシマブ、ナタリズマブ又はベド
リズマブのCDRを含む。一の実施態様では、タンパク質構築物は、鎮痛剤ペイロードを含
む。一の実施態様では、タンパク質構築物は、栄養補助食品ペイロードを含む。
【0143】
(6.9.3.1感染)
[0121]ある態様では、本明細書に記載されているのは、治療的有効量の、上記いずれか
の医薬組成物を、微生物感染している患者へ投与することを含む、微生物感染の治療法で
ある。ある実施態様では、ペイロードは抗菌剤である。ある実施態様では、抗菌剤は、抗
寄生虫剤、抗生物質、抗真菌剤又は抗ウイルス剤である。
【0144】
(6.9.4.1代謝性障害又は代謝性欠乏)
[0122]ある態様では、本明細書に記載されているのは、治療的有効量の、上記いずれか
の医薬組成物を、代謝性障害又は代謝性欠乏の患者へ投与することを含む、代謝性障害又
は代謝性欠乏の治療法である。ある実施態様では、ペイロードは栄養補助食品である。あ
る実施態様では、栄養補助食品は、酵素又はビタミンである。
【0145】
(6.9.5.1免疫系の制御)
[0123]ある態様では、本明細書に記載されているのは、治療的有効量の、上記いずれか
の医薬組成物を、免疫関連症状を有する患者へ投与することを含む、免疫系の制御方法で
ある。ある実施態様では、ペイロードは、免疫抑制剤である。ある実施態様では、免疫抑
制剤は、アザチオプリン、6-メルカプトプリン、メトトレキサート又はチオプリンである
。ある実施態様では、ペイロードは、免疫賦活剤である。ある実施態様では、免疫賦活剤
はサイトカインである。
【実施例0146】
(6.10.実施例)
[0124]下記実施例は、本発明を限定するものではなく、図解のためにのみ提供する。
【0147】
(6.10.1.1方法)
[0125]TCR Vγドメインを含むBTNL3/8標的成分を含むタンパク質構築物の設計及び分析
のための、非限定的で例示的な方法を下記に記載する。初代リンパ球の単離、BTNL3/8発
現HEK293細胞との共培養、及びディープシーケンシングの方法は又、Di Marco Barrosら
の文献、Cell. 2016,(167), pp. 203-218に記載されている。
【0148】
(ヒトサンプル及び初代リンパ球単離)
[0126]内視鏡生検を、日常的な検査で大腸内視鏡検査を受ける成人ドナーの上行結腸か
ら得た。初代腸リンパ球を、Clarkらの文献、2006, J. Invest. Dermatol.(126), pp. 10
59-1070記載の方法を適用して得た。生検を、5mLの洗浄培地(RPMI 1640 10%FCS、β-メ
ルカプトエタノール、ペニシリン[500U/ml]、ストレプトマイシン[500 mg/ml]、メトロニ
ダゾール[5 mg/ml、Guy's Hospital、薬部門]、ゲンタマイシン[100 mg/ml、Sigma-Aldri
ch]及びアンホテリシン12.5 mg/ml[Thermo Fisher Scientific])で20分間洗浄した。1の
内視鏡生検を各マトリックス上に置き、それを反転し、圧を加えて、生検をマトリックス
内に押しこんだ。マトリックスを24ウェルプレート(ウェルあたり1個)内に配置し、2 mL
RPMI 1640(10%FCS、β-メルカプトエタノール、ペニシリン[100U/ml]、ストレプトマイ
シン[100 mg/ml]、メトロニダゾール[1 mg/ml]、ゲンタマイシン[20 mg/ml]、アンホテリ
シン[2.5 mg/ml])、IL-2(100 U/mL、Novartis Pharmaceutical 英国)及びIL-15(10 ng/mL
、Biolegend)を補充したもの)で覆った。1mlの培地を1日おき(毎2日目)に吸引し、2×濃
縮サイトカインを含む完全培地と交換した。細胞を回収し、残りの生検及び空のウェルを
PBS 0.02 mM HEPESで洗浄した。細胞懸濁液を70mmナイロンセルストレーナに通し、400g
で5分間遠心分離し、追加的なサイトカインを含まない完全培地内で再懸濁させ、すぐに
共培養内に配置した。リンパ球を培養5~7日後に使用した。PBMCを、献血サービスから得
た血液からFicollグラジエントによって単離した。
(HEK293T共培養アッセイ)
空ベクター(EV)、BTNL3、BTNL8又はBTNL3+8のいずれかで形質導入した5×105のHEK293T
細胞、及び、新たに採取した2×105の初代ヒトリンパ球を、96ウェルプレート内で、補充
サイトカイン無しの完全培地で共培養し、37℃、5%CO2で16時間、インキュベートした。
【0149】
(ディープシーケンシング)
[0127]マウスTRDV遺伝子の、ソートしたVγ7+IELから精製したRNA由来のTCRδ CDR3の
増幅及びシーケンシング(配列決定)は、Amp2Seq Platform(iRepertoire)を使用して実施
した。ヒトTCRGVγ遺伝子:TCRγ CDR3の増幅及びシーケンシングは、immunoSEQ Platfor
m(Adaptive Biotechnologies)を使用して実施した。
【0150】
(可溶性γδTCRヘテロダイマーのデザイン)
[0128]下記実施例で使用した、T細胞受容体α及びT細胞受容体β定常領域を含む可溶性
γδTCRヘテロダイマーのデザインは、Xuらの文献、PNAS, 2011 Vol. 108; pp. 2414-241
9に従って行った。
【0151】
(6.10.2.1実施例1:ヒト腸組織由来の上皮細胞間リンパ球から単離したγδTCR可変領域は
、BTNL3/8へTCR活性の誘導を与えた)
[0129]ヒト腸由来かつBTNL3/8応答性の上皮細胞間リンパ球(IEL)のTCR可変領域をクロ
ーニングし、TCR欠損細胞内で発現させた(
図2)。IELをヒト腸組織から単離し、HEK293T細
胞内で共培養し、BTNL3/8を同時過剰発現させた。次に、TCR活性化(CD25の高発現及びダ
ウンレギュレーションVγ)を示した応答性IELを単一細胞ソートした。γ鎖及びδ鎖の可
変領域を増幅し、レンチウイルス発現ベクターへクローニングした(
図3A)。TCR欠損Jurka
t細胞(J76細胞株)を形質導入し、BTNL3/8を発現するHEK293T細胞と共培養した(
図3B)。次
に、J76細胞をTCR活性化(CD69発現及びTCRダウンレギュレーション)のためにソートした(
図4A)。抗CD3抗体をTCR活性化のための陽性対照として使用した。BTNL3/8発現細胞と共培
養した場合、Vγ4及びVδ1ドメインを有する形質導入TCR(H7 TCR)を発現するJ76細胞は、
CD69発現の増加とγδTCRのダウンレギュレーションを示した。Vγ4Vδ1で形質導入した3
つの独立したJ76系統であるB3、C11、及びH7は、
図2に示す方法で得られた3つの異なるCD
R3ペアを代表するが、Vγ9Vδ2系統(Vγ9Vδ2)とは違い、BTNL3/8発現細胞に応答した(図
4B)。これらの結果は、ヒトIELのVγ4Vδ1ドメインは、BTNL3/8へTCR応答性を与えるのに
充分であることを示す。
【0152】
(6.10.3.1実施例2:Vγ4のCDR4は、BTNL3/8へのTCR応答性のために必要である)
[0130]BTNL3/8への応答性に重要なVγ4領域を特定するために、H7応答性TCR系統の全V
γ4ドメインをVγ2領域で置換した(
図5)。BTNL3/8を発現するHEK293Tと共培養した時の、
Vγ4 TCR(H7 WT)又はVγ2置換されたTCRを発現する形質導入J76細胞内での、CD69発現%
の倍数変化(FC)及びTCRダウンレギュレーションパーセントを決定した。応答性Vγ4 H7 T
CRの全V領域をVγ2コード配列(Vγ2 H7)で置換すると(ただし、CDR3γ及び全δ鎖は置換
しない)、BTNL3/8発現細胞によるTCR活性化は失われた。しかし、応答性Vγ4 H7 TCRのCD
R1(H7 CDR1
Vγ2)及び/又はCDR2(H7 CDR2
Vγ2)をVγ2コード配列で置換すると、BTNL3/8発
現細胞によるTCR活性化は維持された。これらの結果は、BTNL3/8へのTCR応答にはCDR4が
必要であることを示す。
【0153】
[0131]BTNL3/8への応答に必須であるVγ4内の領域を更に解明するために、CDR4に位置
する2対のアミノ酸をVγ2配列で置換した(
図6及び7)。BTNL3/8を発現するHEK293Tと共培
養した時の、形質導入細胞内でのCD69発現%の倍数変化(FC)を決定し、かつ、Vγ4 TCRを
発現(H7 WT)、H7のCDR3を伴うVγ2 TCRを発現(Vγ2H7)、及びCDR4内のアミノ酸置換を伴
うVγ4 TCRを発現するJ76細胞内でのTCRダウンレギュレーションパーセントを決定した(
図7)。アミノ酸87位及び90位でのYA置換は、BTNL3/8発現細胞によるTCR活性化を失わせた
一方、アミノ酸94位及び98位でのNL置換は、BTNL3/8発現細胞によるTCR活性化を失わせな
かった。これらの結果は、Vγ4TCRのCDR4領域のアミノ酸87位及び90位は、BTNL3/8へのTC
R応答性に必須であることを確証している。
【0154】
(5.10.4.1実施例3:可溶性TCR Vγ4/Vδヘテロダイマーは、BTNL3/8発現細胞に結合する)
[0132]可溶性Vγ/VδTCRヘテロダイマーは、ロイシンジッパー相補性により発現され、
安定化された(
図8)。Vγ又はVδドメインは、膜貫通ドメインを欠くTCRα又はTCRβ定常
領域にインフレーム融合され、その次にロイシンジッパー配列及びヒスチジンタグ/リン
カーが続く。Vγ4/Vδ1ヘテロダイマーは、配列番号:10及び9に対応する。Vγ4/Vδ2ヘテ
ロダイマーは、配列番号:10及び11に対応する。Vγ2/Vδ1ヘテロダイマーは、配列番号:1
2及び9に対応する。Vγ8/Vδ1ヘテロダイマーは、配列番号:13及び9に対応する。
【0155】
[0133]可溶性TCRを使用して、Flag-BTNL3+HA-BTNL8又は空ベクターで形質導入したHEK2
93T細胞を染色した(
図10)。Vγ4/Vδ1可溶性TCR及びVγ4/Vδ2可溶性TCRは、BTNL3+BTNL8
を発現する細胞株への強い結合を示すが空ベクター(EV)対照細胞株へは結合しない。結果
は、Vγ4/Vδ1ドメイン又はVγ4/Vδ2ドメインを発現する可溶性TCRは、BTNL3/8発現細胞
には結合するが、BTNL3/8を欠く細胞には結合しないことを示す。まとめると、この結果
は、Vγ4 CDR4がBTNL3/8誘導TCR応答に不可欠であることを示し、又、Vγ4 CDR4がBTNL3/
8と相互作用することをも示唆する。
【0156】
[0134]BTNL3+8を発現する細胞への可溶性Vγ4
+TCR構築物の結合を更に評価するために
、HEK293T細胞を、提示されたBTNL3及びBTNL8構築物又は空ベクター(EV)をコードしてい
るpCSIGPWで形質導入した。次に、細胞を可溶性Hisタグ付きVγ4δ2 TCRで、4℃で45分間
染色し、2回洗浄し、APC抗Hisタグ抗体(α-His)で4℃で45分間染色し、再度2回洗浄し、
その後フローサイトメトリーで分析した(
図9A)。
図9Bに示す細胞集団を、抗FLAG及び抗HA
抗体で並行して染色し、可溶性TCR結合の欠如が、BTNL3+8構築物の発現の失敗によるもの
ではないことを確認した。この結果は、BTNL3+BTNL8を発現する細胞に結合する可溶性TCR
構築物の能力を示し、かつこの可溶性TCR構築物はVγ4
+ T細胞による応答を誘導できない
と以前の文献で記載されていた、IgVドメイン変異体(例えば、L3
GQFSS、L3
RI、L3
YQKAI)
のいずれにも結合しなかった。Melandriらの文献、Nat. Immunol. 2018を参照し、これは
その全体が引用により本明細書に組み込まれる。
【0157】
(6.10.5.1実施例4:BTNL3/8発現細胞へ結合する可溶性TCRは内部移行する)
[0135]BTNL3+BTNL8を発現する細胞の表面に結合した可溶性TCRが内部移行しているかど
うかを決定するために、HEK293T細胞を形質導入して野生型BTNL3及びBTNL8(293T.L3L8)
を発現させ、可溶性Hisタグ付きVγ4Vδ2 TCRで、37℃で120分までの間染色した(
図11B)
。293T.L3L8細胞を可溶性Hisタグ付きVγ4Vδ2TCRで、4℃で120分間染色して、低温で内
部移行が妨害された対照として使用した(
図11A)。次に細胞を、APCα-Hisタグ抗体(α-Hi
s)で4℃で45分間染色した。この結果、APCシグナルの減少が37℃でインキュベートした細
胞集団内での経時的に生じ、細胞が可溶性TCR構築物を急速に内部移行させることを示す(
図12)。
【0158】
[0136]可溶性TCRの内部移行が特異的であるか、又は細胞表面BTNL分子の急速なサイク
リング(cycling)の結果であるかを決定するために、実験を繰り返して、可溶性TCRを抗BT
NL3抗体(ウサギポリクローナル、Aviva Biosystems)(参考文献を含む)と比較した。HEK29
3T細胞を空ベクター(293T.EV)で形質導入し、α-BTNL3での染色における陰性対照として
使用した。HEK293T細胞をBTNL3構築物L3
RIL8(293T.L3
RIL8)で形質導入し、可溶性TCRでの
染色における陰性対照として使用した。結果は、α-BTNL3染色は4℃と37℃とで同一であ
ることを示し、α-BTNL3がBTNL3/8を発現する細胞へ特異的に結合する一方で、抗体は細
胞の表面に留まることが示された(
図13A)。結果の定量化を
図13Bに示す。
【0159】
(6.10.6.1実施例5:可溶性TCRは、ペイロードをBTNL3/8発現細胞へ送達する)
[0137]ペイロードがBTNL3/8発現細胞への可溶性TCRの結合を介して細胞内に送達され得
るかどうかを決定するために、293T.L3L8又は293T.L3
RIL8細胞を、APCα-Hisタグ抗体
で、可溶性TCR構築物のカルボキシ末端上に予め標識した可溶性TCRとともにインキュベー
トした。複合体を3μg/mL又は10μg/mLいずれかの量で、4℃又は37℃のいずれかで1時間
インキュベートした。次に細胞を洗浄し、15分間トリプシン又はDMEM(対照)で
図14に示す
ように処理した。結果は、可溶性TCR+α-Hisシグナル(APC蛍光)のフラクションは、細胞
を複合体と37℃でインキュベートして複合体の内部移行によってトリプシンから保護した
場合は、4℃でインキュベートの場合と比較して、トリプシン処理後に大きいことを示し
た(
図15A)。従って、結果は、可溶性TCRの内部移行が、ペイロードを細胞内でBTNL3/8発
現細胞に送達するための手段として使用できることを示す。結果の定量化を
図15Bに示す
。
【0160】
[0138]イメージングサイトメトリーを使用して、APCα-His抗体ペイロードの、可溶性T
CR経由細胞内送達を視覚化した。293T.L3
RIL8又は293T.L3L8細胞を、可溶性TCR+α-His抗
体複合体とともに1時間4℃又は37℃でインキュベートした。次に(上記のとおり)DMEM若し
くはトリプシン処理し、細胞を固定して透過処理(
図16A)又は固定して透過処理し、後期
エンドソームマーカーCD107aで染色した(
図16B及び16C)。陰性対照のイメージングサイト
メトリーにより、バックグラウンドAPCシグナルの評価が可能であった(
図16A)。TCR+α-H
is抗体複合体とインキュベートした細胞のイメージングサイトメトリー結果は、複合体を
4℃で細胞とインキュベートした場合、DMEM処理後は、細胞周囲で複合体が視覚化されて
複合体の大部分が細胞表面に結合していることが示された一方、トリプシン処理後ではシ
グナルは完全に失われた(
図16B)。しかし、37℃で細胞とインキュベートされた複合体は
、トリプシン処理後もCD107a
+区画近位の細胞内領域で検出される(
図16C)。
【0161】
(6.11.配列)
>ヒトVγ4アミノ酸87~90[配列番号:1]
【化1】
>マウスVγ7アミノ酸87~90[配列番号:2]
【化2】
>ヒトVγ4ドメインCDR4アミノ酸85~100[配列番号:3]
【化3】
>マウスVγ7ドメインCDR4アミノ酸85~100[配列番号:4]
【化4】
>ヒトVγ2ドメインCDR4アミノ酸85~100[配列番号:5]
【化5】
>ヒトVγ4アミノ酸19~118[配列番号:6]
【化6】
ヒトVγ2アミノ酸19~118[配列番号:7]
【化7】
>マウスVγ7アミノ酸19~118[配列番号:8]
【化8】
>ヒトVδ1、及び結晶構造30MZ由来のCDR3、CDR3がインフレーム融合しているTCRα定常
領域、ロイシンジッパー並びにC末端Hisタグ[配列番号:9]
【化9】
>ヒトVγ4、及び結晶構造4MNH由来のCDR3、CDR3が融合しているTCRβ定常領域、ロイシ
ンジッパー[配列番号:10]
【化10】
>ヒトVδ2、及び結晶構造30MZ由来のCDR3、CDR3がインフレーム融合しているTCRα定常
領域、ロイシンジッパー並びにC末端Hisタグ[配列番号:11]
【化11】
>ヒトVγ2、及び結晶構造4MNH由来のCDR3、CDR3が融合しているTCRβ定常領域、ロイシ
ンジッパー[配列番号:12]
【化12】
>ヒトVγ8、及び結晶構造4MNH由来のCDR3、CDR3が融合しているTCRβ定常領域、ロイシ
ンジッパー[配列番号:13]
【化13】
>ヒトVγ4のリーダー配列[配列番号:14]
【化14】
>ヒトVγ J領域、TRFJP[配列番号:15]
【化15】
>ヒトVγ J領域、TRFJP1[配列番号:16]
【化16】
>ヒトVγ J領域、TRFJP2[配列番号:17]
【化17】
>ヒトVγ J領域、TRFJP1/2[配列番号:18]
【化18】
【0162】
(7.文献引用による組込み)
本出願で引用する全ての刊行物、特許、特許出願及び他の文書は、個々の刊行物、特許
、特許出願又は他の文書が引用によりその全ての目的のために組み込まれると個別に表示
されているのと同じ程度に、あらゆる目的のために、引用によりその全体が本明細書に組
み込まれる。
【0163】
(8.均等物)
様々な特定の実施態様が例示及び説明されているが、上記明細書の記載は限定的なもの
ではない。本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことが可能で
あると理解されるだろう。本明細書を検討する当業者には、本発明の多くのバリエーショ
ンが明らかであろう。