IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ リヒター ゲデオン エヌワイアールティー.の特許一覧

特開2024-112833細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のグリコシル化プロファイルを変更する方法
<>
  • 特開-細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のグリコシル化プロファイルを変更する方法 図1
  • 特開-細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のグリコシル化プロファイルを変更する方法 図2
  • 特開-細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のグリコシル化プロファイルを変更する方法 図3
  • 特開-細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のグリコシル化プロファイルを変更する方法 図4
  • 特開-細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のグリコシル化プロファイルを変更する方法 図5
  • 特開-細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のグリコシル化プロファイルを変更する方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112833
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のグリコシル化プロファイルを変更する方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 21/08 20060101AFI20240814BHJP
   C12P 19/00 20060101ALI20240814BHJP
   C12P 21/00 20060101ALI20240814BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240814BHJP
【FI】
C12P21/08
C12P19/00
C12P21/00 C
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024075898
(22)【出願日】2024-05-08
(62)【分割の表示】P 2021524198の分割
【原出願日】2019-11-06
(31)【優先権主張番号】P1800376
(32)【優先日】2018-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】HU
(71)【出願人】
【識別番号】310008859
【氏名又は名称】リヒター ゲデオン ニュイルヴァーノシャン ミューコェデー レースヴェーニュタールシャシャーグ
【氏名又は名称原語表記】Richter Gedeon Nyrt.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】パルタ、ラースロー
(72)【発明者】
【氏名】プーティクス、アーコシュ
(72)【発明者】
【氏名】バログ、ティボール
(72)【発明者】
【氏名】ホルバート、バラージュ
(72)【発明者】
【氏名】ナジ、ガーシュパール
(57)【要約】      (修正有)
【課題】細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のグリコシル化プロファイルを変更する方法を提供する。
【解決手段】方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地にはフコース、マンガンおよびタウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のグリコシル化プロファイルは、かかる補給なしに培養した場合よりも参照糖タンパク質のグリコシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のグリコシル化プロファイルを変更する方法であって、
前記方法は、細胞培養培地中で前記組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、前記細胞培養培地にはフコース、マンガンおよびタウリンが補給されており、
前記生産される組換え糖タンパク質のグリコシル化プロファイルは、前記補給なしに培養した場合よりも参照糖タンパク質のグリコシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される、方法。
【請求項2】
変更後の前記グリコシル化プロファイルは、フコシル化プロファイルおよび/またはガラクトシル化プロファイルのうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
変更後の前記フコシル化プロファイルは、前記参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%であり、かつ/または、変更後の前記ガラクトシル化プロファイルは、前記参照糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記培地中のフコースの濃度は0.4mM~1.6mM、好ましくは0.4mM~1.2mM、より好ましくは0.6mM~1mMだけ補給により上昇する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記培地中のマンガンの濃度は0.02μM~0.1μM、好ましくは0.04μM~0.08μM、より好ましくは0.06μM~0.08μMだけ補給により上昇する、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
補給後の前記培地中のタウリンの最終濃度は12.5mM~50mM、好ましくは15mM~35mM、より好ましくは20mM~30mMである、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、前記細胞培養で生産される前記組換え糖タンパク質を単離するステップをさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記真核細胞はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記組換え糖タンパク質は大規模に生産される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記組換え糖タンパク質はIgG型の免疫グロブリンである、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記組換え糖タンパク質はモノクローナル抗体であり、オプションで治療用モノクローナル抗体である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記細胞培養は14日間行われる、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記培地の前記補給は培養3日目以降に2日ごとに行われ、オプションで培養13日目まで行われる、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記マンガンは塩化マンガン(MnCl)として補給され、MnClによる前記培地の前記補給は培養5日目以降に2日ごとに行われ、オプションで培養9日目まで行われる、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記培地の前記補給は前記細胞培養の生産期に行われる、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記細胞培養は37℃で行われる、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記細胞培養はpH7.05±0.05で行われる、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記細胞培養は流加培養である、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記糖タンパク質はVEGFアンタゴニストであり、好ましくは抗VEGF抗体である、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
変更後のフコシル化プロファイルは、参照VEGFアンタゴニスト、好ましくは前記抗VEGF抗体のフコシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%であり、かつ/または、変更後のガラクトシル化プロファイルは、参照VEGFアンタゴニスト、好ましくは前記抗VEGF抗体のガラクトシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記糖タンパク質は抗CD20抗体である、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
変更後のフコシル化プロファイルは、参照抗CD20抗体のフコシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%であり、かつ/または、変更後のガラクトシル化プロファイルは、参照抗CD20抗体のガラクトシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%である、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のグリコシル化プロファイルを変更する方法に関し、その方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地にはフコース、マンガンおよびタウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のグリコシル化プロファイルは、かかる補給なしに培養した場合よりも参照糖タンパク質のグリコシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。
【背景技術】
【0002】
糖タンパク質は、自然免疫系および適応免疫系を含む免疫系のすべてのアームの適切な機能に必須である。たとえば、糖タンパク質は、認識、結合、シグナル伝達ならびに、補体依存性細胞傷害(CDC)および抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)による脅威の排除に関与する(非特許文献1および非特許文献2)。
【0003】
哺乳動物の発現抗体は、そのH鎖(HC)のAsn残基上に単一のグリカンを有する。このグリカン構造の存在および組成は、抗体の受容体結合およびエフェクター機能に影響する(非特許文献1および非特許文献2)。たとえば、IgG(Fcγ)のFc領域のグリカン組成の変動は、Fc領域とFc結合受容体(FcR)との結合親和性に異なる影響を及ぼす。FcγRには、3つのクラス、すなわち、FcγRI、FcγRIIおよびγRIIIがある(非特許文献2、非特許文献3)。抗体とFcγ受容体との異なる親和性は、特定の抗原に対する宿主の免疫応答の動態を規定し、さらに、活性化、抑制、抗体の有効性/半減期、耐性および自己免疫応答に関与している可能性がある(非特許文献3)。異なる種類の受容体に対する抗体の親和性は、抗体が有するグリカンの存在と組成とに応じて変化し得るが、このことは、抗体の生物学的機能に関するオリゴ糖/タンパク質相互作用の重要性を浮き彫りにしている(非特許文献4、非特許文献2)。
【0004】
真核宿主細胞(たとえば哺乳動物宿主細胞)内のタンパク質の発現に続いて、タンパク質は、しばしば、一般に「グリコシル化」と呼ばれる糖残基の酵素的付加を含む翻訳後修飾を受ける。ポリペプチドのグリコシル化は、通常、N‐結合型またはO‐結合型のいずれかである。アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合はN‐結合型グリコシル化と呼ばれる。トリペプチド配列であるアスパラギン(Asn)‐X‐セリン(Ser)およびアスパラギン(Asn)‐X‐トレオニン(Thr)(式中、Xはプロリン以外の任意のアミノ酸である)は、アスパラギン側鎖への炭水化物部分の酵素的結合の認識配列である。最も一般的にはセリンまたはトレオニンであるが、5‐ヒドロキシプロリンまたは5‐ヒドロキシリジンも含めてもよいヒドロキシアミノ酸への、糖であるN‐アセチルガラクトサミン、ガラクトース、フコース、N‐アセチルグルコサミンまたはキシロースのうちの1つの結合は、O‐結合型グリコシル化と呼ばれる。哺乳動物によって生産されるタンパク質のグリコシル化パターンは、グリコシド結合型オリゴ糖はもちろん複合体構造、高マンノース構造およびハイブリッド構造を含むいくつかのグループに細分化することができる(非特許文献5)。
【0005】
過去数十年にわたり、多くの研究が、モノクローナル抗体などの治療用組換え糖タンパク質の生産に焦点を当ててきた。文献におけるアプローチの1つは、血清または加水分解物を含む培地を使用しているが、問題となる、複合成分のロット間変動を排除するために、化学的に定義された培地も開発された(非特許文献6)。細胞培養の理解の向上によって、増殖、生存能力、力価などを犠牲にすることなく、化学的に定義された培地への移行が可能になった。最適化され、化学的に定義された、7.5~10g/Lまでの力価のプロセスが報告されている(非特許文献7、非特許文献8、非特許文献9)。一般に、化学的に定義された高力価のプロセスは、培養時間11~18日の流加プロセスである。
【0006】
組換えタンパク質に関連するN‐グリカンのプロセシングは、各哺乳動物細胞に特異的であることが、多くの報告で明らかにされている(非特許文献10、非特許文献11)。これらの違いは、組換え糖タンパク質の抗原性、in vivoクリアランス速度および安定性に直接影響すること(非特許文献12)だけでなく、任意の所与の認可された治療用糖タンパク質のために満たす必要がある厳しい規制基準によっても、治療用糖タンパク質の生産に重要である。このように、これは、in vivoの安全性と有効性の結果を予測するために、治療用組換え糖タンパク質に結合しているグリカンを同定することができるようにするのに重要なだけでなく、潜在的宿主細胞におけるグリカンプロセシングを支える細胞制御を理解するのにも重要である(非特許文献13、非特許文献14)。
【0007】
モノクローナル抗体などの治療用組換え糖タンパク質の生産のために選択された真核細胞の場合と同様に、グリコシル化も、細胞培養培地および他の生産プロセスパラメータに大きく依存している(非特許文献15)。特に、アンモニア、グルタミン、グルコースおよび金属イオンの濃度を含む増殖培地およびフィード培地の組成は、抗体のグリコシル化に影響を及ぼすことができることが明らかにされた(非特許文献16)。そのため、増殖培地の補給によって組換え糖タンパク質のグリコシル化パターンおよびプロファイルまたはグリコシル化パターンもしくはプロファイルを制御するための戦略が開発されている。たとえば、特許文献1は、特定のレベルのフコシル化を示す糖タンパク質を生産するために、GDP‐ケト‐6‐デオキシマンノース‐3,5‐エピメラーゼ、4‐レダクターゼまたはGDP‐D‐マンノース‐4,6‐デヒドラターゼ活性を欠くように操作された細胞の培養物へのフコースなどのフコース源の補給を開示している。フコース補給は、単独で(特許文献2、特許文献3)またはニコチンアミドと組み合わせて(特許文献4)、抗体のアフコシル化グリコフォームを減少させるために、すなわち抗体のフコシル化を増加させるために使用されている。マンガン補給は、単独で(特許文献5、特許文献6、特許文献7)、銅と組み合わせて(特許文献8)、または鉄、銅および亜鉛と組み合わせて(特許文献9)、アフコシル化グリコフォームを増加させるために、すなわちフコシル化を低下させるために使用されている。マンガンは、治療用モノクローナル抗体アダリムマブのガラクトシル化プロファイルの制御のためにも使用されている(特許文献10)。
【0008】
このように、目的の組換え糖タンパク質のグリコシル化プロファイルを、すべての安全性、有効性および規制基準を満たす参照組換え糖タンパク質のグリコシル化プロファイルとよりよく類似するように、予測可能な方法で変更することができる方法を明らかにすることが当該技術分野で必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2017/079165号
【特許文献2】国際公開第2017/120359号
【特許文献3】国際公開第2017/120347号
【特許文献4】国際公開第2017/134667号
【特許文献5】国際公開第2017/021871号
【特許文献6】国際公開第2015/011660号
【特許文献7】国際公開第2013/114245号
【特許文献8】国際公開第2016/089919号
【特許文献9】国際公開第2015/128314号
【特許文献10】国際公開第2012/149197号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】ラッド(Rudd)ら、Science、第291巻、2370~2376ページ(2001年)
【非特許文献2】ジェフリース(Jefferis)ら、Immunol Rev、第163巻、59~76ページ(1998年)
【非特許文献3】ラヴェッチ(Ravetch)およびボランド(Bolland)、Annu Rev Immunol、第19巻、275~290ページ(2001年)
【非特許文献4】ラジュ(Raju)ら、Glycobiology、第10巻、477~486ページ(2000年)
【非特許文献5】F.W.パトナム(Putnam, F.W.)編、「The Plasma Proteins: Structure,Function and Genetic Control」、第2版、第4巻、特に271~315ページ、アカデミック・プレス(Academic Press)、ニューヨーク(1984年)
【非特許文献6】ルォ(Luo)およびチェン(Chen)、Biotechnology and Bioengineering、第97巻、第6号、1654~1659ページ(2007年)
【非特許文献7】ヒュアン(Huang)ら、Biotechnology Progress、第26巻、第5号、1400~1410ページ(2010年)
【非特許文献8】マー(Ma)ら、Biotechnology Progress、第25巻、第5号、1353~1363ページ(2009年)
【非特許文献9】ユー(Yu)ら、Biotechnology and Bioengineering、第108巻、第5号、1078~1088ページ(2011年)
【非特許文献10】ジェームズ(James)ら、Bio/Technology、第13巻、592~596ページ(1995年)
【非特許文献11】ライフリー(Lifely)ら、Glycobiology、第5巻、813~822ページ(1995年)
【非特許文献12】ジェンキンス(Jenkins)ら、Nature Biotechnol.、第14巻、975~981ページ(1996年)
【非特許文献13】グラベンホルスト(Grabenhorst)ら、Glycoconjug. J.、第16巻、81~97ページ(1999年)
【非特許文献14】ジェームズ(James)およびベイカー(Baker)著、「Encyclopedia of bioprocess technology: Fermentation, biocatalysis and bioseparation」、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)、ニューヨーク、1336~1349ページ(1999年)
【非特許文献15】ホー(Ho)ら、BioProcess International、第14巻、第4号、30~8ページ(2016年)
【非特許文献16】ホスラー(Hossler)ら、Glycobiol.、第19巻、第9号、936~946ページ(2009年)
【発明の概要】
【0011】
本発明者らは、フコース、マンガンおよびタウリンが補給された細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含む方法によって、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のグリコシル化プロファイルを変更することができることを見出した。本発明の方法によるグリコシル化プロファイルの変更は、生産される組換え糖タンパク質のグリコシル化プロファイルが、かかる補給なしに培養した場合よりも参照糖タンパク質のグリコシル化プロファイルとよりよく類似するように変更されることによって行われる。
【0012】
本発明の目的は独立請求項の主題によって解決される。好ましい実施形態は従属請求項から明らかである。
したがって、一実施形態において、本発明は、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のグリコシル化プロファイルを変更する方法であって、その方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地にはフコース、マンガンおよびタウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のグリコシル化プロファイルは、かかる補給なしに培養した場合よりも参照糖タンパク質のグリコシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。
【0013】
一実施形態において、変更後のグリコシル化プロファイルは、フコシル化プロファイルおよび/またはガラクトシル化プロファイルのうちの1つ以上を含む。好ましくは、変更後のフコシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%であり、かつ/または、変更後のガラクトシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%である。
【0014】
一実施形態において、培地中のフコースの濃度は0.4mM~1.6mM、好ましくは0.4mM~1.2mM、より好ましくは0.6mM~1mMだけ補給により上昇し、好ましくは0.8mMだけ上昇する。
【0015】
一実施形態において、培地中のマンガンの濃度は0.02μM~0.1μM、好ましくは0.04μM~0.08μM、より好ましくは0.06μM~0.08μMだけ補給により上昇し、最も好ましくは0.068μM±0.01μMだけ上昇する。
【0016】
一実施形態において、補給後の培地中のタウリンの最終濃度は、12.5mM~50mM、好ましくは15mM~35mM、より好ましくは20mM~30mMであり、好ましくは25mMである。
【0017】
一実施形態において、その方法は、細胞培養から生産される組換え糖タンパク質を単離するステップをさらに含む。
一実施形態において、真核細胞はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。
【0018】
一実施形態において、組換え糖タンパク質は大規模に生産される。
一実施形態において、組換え糖タンパク質はIgG型の免疫グロブリンである。
一実施形態において、組換え糖タンパク質はモノクローナル抗体であり、オプションで治療用モノクローナル抗体である。
【0019】
一実施形態において、細胞培養は14日間行われる。
一実施形態において、培地の補給は培養3日目以降に2日ごとに行われ、オプションで培養13日目まで行われる。
【0020】
一実施形態において、マンガンは塩化マンガン(MnCl)として補給され、MnClによる培地の補給は、培養5日目以降に2日ごとに行われ、オプションで培養9日目まで行われる。
【0021】
一実施形態において、培地の補給は細胞培養の生産期に行われる。
一実施形態において、細胞培養は37℃で行われる。
一実施形態において、細胞培養はpH7.05±0.05で行われる。
【0022】
一実施形態において、細胞培養は流加培養である。
一実施形態において、糖タンパク質はVEGFアンタゴニストであり、好ましくは抗VEGF抗体である。この実施形態において、変更後のフコシル化プロファイルは、好ましくは、参照VEGFアンタゴニスト、好ましくは抗VEGF抗体のフコシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%であり、かつ/または、変更後のガラクトシル化プロファイルは、参照VEGFアンタゴニスト、好ましくは抗VEGF抗体のガラクトシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%である。
【0023】
一実施形態において、糖タンパク質は抗CD20抗体である。この実施形態において、変更後のフコシル化プロファイルは、好ましくは、参照抗CD20抗体のフコシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%であり、かつ/または、変更後のガラクトシル化プロファイルは、参照抗CD20抗体のガラクトシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の抗VEGF抗体の全主要アフコシル化(MAF)グリコフォームに対するグアノシン、フコースおよびマンノースの影響。結果は培養12日目の結果である。黒いバー:培養培地添加剤を含まない対照バッチ。灰色のバー:2つの異なる濃度(20mMおよび60mM)でグアノシンを補給したフィード培地を供給されたバッチ;ドットバー:2つの異なる濃度(10mMおよび20mM)でフコースを補給したフィード培地を供給されたバッチ;斜めストライプ模様のバー:2つの異なる濃度(20mMおよび60mM)でマンノースを補給したフィード培地を供給されたバッチ。
図2】本発明の抗VEGF抗体の全主要アフコシル化(MAF)グリコフォームに対する異なるフコース濃度の影響。結果は、培養12日目のものである。黒いバー:フィード培地にフコースを補給していない対照バッチ;灰色のバー:10mMのフコースを補給したフィード培地を供給されたバッチ;ドットバー:20mMのフコースを補給したフィード培地を供給されたバッチ;斜めストライプ模様のバー:40mMのフコースを補給したフィード培地を供給されたバッチ。黒い線:本発明の参照抗VEGF抗体の全主要アフコシル化(MAF)グリコフォームの範囲。
図3】本発明の抗VEGF抗体の全主要アフコシル化(MAF)グリコフォームに対する異なるタウリン濃度の影響。結果は、培養14日目のものである。黒いバー:タウリンを補給した培地を含まない対照バッチ;灰色のバー:12.5mMのタウリンを補給した培地で培養したバッチ;ドットバー:25mMのタウリンを補給した培地で培養したバッチ;斜めストライプ模様のバー:50mMのタウリンを補給した培地で培養したバッチ。黒い線:本発明の参照抗VEGF抗体の全主要アフコシル化(MAF)グリコフォームの範囲。
図4】本発明の抗VEGF抗体の全主要アフコシル化(MAF)グリコフォームに対するタウリン、フコースおよびマンガンの影響。結果は、培養14日目のものである。黒いバー:1.7μMの塩化マンガンを補給したが、フコースおよびタウリンを補給していないフィード培地を供給された対照バッチ;灰色のバー:25mMのタウリンを補給した培地で培養し、1.7μMの塩化マンガンを補給したフィード培地を供給されたが、フコースを補給したフィード培地を供給されなかったバッチ;ドットバー:25mMのタウリンを補給した培地で培養され、20mMのフコースおよび1.7μMの塩化マンガンを補給したフィード培地を供給されたバッチ。黒い線:本発明の参照抗VEGF抗体の全主要アフコシル化(MAF)グリコフォームの範囲。
図5】本発明の、生産される抗VEGF抗体の全主要アフコシル化プロファイル(MAF)。結果は、それぞれ、培養7日目~13日目の毎日の試料分析または、培養7日目~14日目の毎日の試料分析によるものである。黒い線:タウリンおよびフコースを含まないが、マンガンを補給したフィード培地を供給された対照バッチ;点線ストライプの線:フコースおよびマンガンを補給したフィード培地を供給されたバッチ;ストライプの線:タウリンを補給した培地で培養され、マンガンを補給したフィード培地を供給されたバッチ;点線:タウリンを補給した培地で培養され、マンガンおよびフコースを補給したフィード培地を供給されたバッチ。灰色の線:本発明の参照抗VEGF抗体の全主要アフコシル化グリコフォームの範囲。
図6】本発明の、生産される抗VEGF抗体の非ガラクトシル化グリコフォーム(G0)プロファイル。結果は、それぞれ、培養7日目~培養13日目の毎日の試料分析または、培養7日目~培養14日目の毎日の試料分析によるものである。黒い線:タウリンおよびフコースを含まないが、マンガンを補給したフィード培地を供給された対照バッチ;点線ストライプの線:フコースおよびマンガンを補給したフィード培地を供給されたバッチ;ストライプの線:タウリンを補給した培地で培養され、マンガンを補給したフィード培地を供給されたバッチ;点線:タウリンを補給した培地で培養され、マンガンおよびフコースを補給したフィード培地を供給されたバッチ。灰色の線:本発明の参照抗VEGF抗体の非ガラクトシル化(G0)グリコフォームの範囲。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に例示的に説明されている本発明は、本明細書で具体的に開示されていない任意の要素または制限の非存在下で適切に実行することができる。
本発明は、特定の実施形態について説明するが、本発明はそれに限定されるものではなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0026】
本説明および特許請求の範囲において、用語「含んでいる(comprising)」を使用する場合、該用語は他の要素を排除しない。本発明において、用語「からなっている(consisting of)」は、用語「含んでいる(comprising)」の好ましい実施形態であるとみなされる。以下、ある群が少なくとも特定の数の実施形態を含むと定義される場合、これは、好ましくはこれらの実施形態のみからなる群を開示するとも理解されるべきである。
【0027】
単数名詞に言及するときに不定冠詞または定冠詞が使用される場合、たとえば「ある(a)」、「ある(an)」または「この(the)」は、他の何かが具体的に述べられている場合を除き、これはその名詞の複数形を含む。
【0028】
本明細書で使用される用語「ポリペプチド」または「タンパク質」は、ペプチド結合によって互いに結合されたアミノ酸の連続鎖のことをいう。この用語は、任意の長さのアミノ酸鎖に言及するために使用されるが、この用語が長い鎖に限定されるものではなく、ペプチド結合によって互いに結合された2つのアミノ酸を含む最小限の鎖を意味することができることは、当業者には明らかであろう。1つのポリペプチドが個別の機能単位であり、個別の機能単位を形成するために他のポリペプチドとの恒久的な物理的結合を必要とする場合、本明細書で使用される用語「ポリペプチド」と用語「タンパク質」とは同義で使用される。個別の機能単位が、互いに物理的に結合した2つ以上のポリペプチドを含む場合、本明細書で使用される用語「タンパク質」は、物理的に結合され、個別の単位として一緒に機能する複数のポリペプチドのことをいう。
【0029】
本明細書において、用語「糖タンパク質」は、アミノ酸残基の酸素含有側鎖または窒素含有側鎖(たとえば、セリンもしくはトレオニン残基(「O‐結合型」)またはアスパラギン残基(「N‐結合型」))を介してタンパク質に結合される少なくとも1つの炭水化物部分(たとえば多糖またはオリゴ糖)に結合されたポリペプチドまたはタンパク質を意味するために使用される。本明細書において、「糖タンパク質」は、最も広い意味で使用され、完全長糖タンパク質、遺伝子操作された糖タンパク質、組換え糖タンパク質、キメラ糖タンパク質、ヒト化糖タンパク質、完全ヒト糖タンパク質だけでなく、それらが機能を維持し、望ましい生物活性を示す限りは、このような糖タンパク質のフラグメント(たとえばペプチド)も含む。糖タンパク質の「生物活性」とは、in vitroまたはin vivoで測定することができる生物学的反応を誘発する糖タンパク質の能力のことをいう。
【0030】
用語「組換え糖タンパク質」とは、組換え手段によって調製され、発現され、作製され、または単離されたすべての糖タンパク質、たとえば、トランスジェニック宿主細胞(たとえばNS0もしくはCHO細胞)または糖タンパク質遺伝子トランスジェニック動物から単離された糖タンパク質、または、宿主細胞(たとえばSP2/0マウス骨髄腫細胞)にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを用いて発現された糖タンパク質のことをいう。
【0031】
用語「グリカン」とは、多糖またはオリゴ糖(たとえば単糖からなるポリマー)のことをいう。グリカンは、単糖残基のホモポリマーまたはヘテロポリマーの場合があり、また、直鎖または分枝鎖の場合がある。真核細胞(たとえば哺乳動物宿主細胞)におけるタンパク質の発現に続いて、そのタンパク質は、しばしばグリカンなどの糖残基の酵素的付加を含む翻訳後修飾を受ける。糖残基(たとえばグリカン)のこのような付加を、本明細書では「グリコシル化」と称する。「N‐結合型グリカン」とは、アスパラギン残基の側鎖に結合されるグリカンのことをいう。「O‐結合型グリカン」とは、通常はセリンまたはトレオニンであるが、5‐ヒドロキシプロリンまたは5‐ヒドロキシリジンも含めてもよいヒドロキシアミノ酸に結合されるグリカンのことをいう。グリコシル化は、たとえば、ガラクトシル化および/またはフコシル化を含む。
【0032】
本明細書で使用される、目的の組換え糖タンパク質の「グリコシル化パターン」とは、糖タンパク質の多糖またはオリゴ糖の様々な物理的特性、たとえば、存在する様々な単糖の量と質、分岐度および/または結合(たとえばN‐結合型またはO‐結合型)などのことをいう。糖タンパク質の「グリコシル化パターン」は、糖タンパク質のオリゴ糖および多糖によって付与される機能的特徴を意味することもできる。たとえば、糖タンパク質がFcγRIIIaに結合して抗体依存性細胞傷害(ADCC)を誘導することができる程度を意味する。
【0033】
本明細書で使用される場合、目的の組換え糖タンパク質の「グリコシル化プロファイル」または「グリコシル化度」とは、存在する様々な単糖の量のことをいう。グリコシル化プロファイルは、目的の糖タンパク質の別々に生産されたバッチの間で(たとえばバイオシミラー治療用糖タンパク質とその参照製品である糖タンパク質との間で)異なる可能性がある。グリコシル化プロファイルのある程度の変動は、治療用糖タンパク質のバイオシミラーの認可のための新たな臨床試験を必要とすることなく規制基準内であることが認められる可能性はあるが、参照糖タンパク質のグリコシル化プロファイルに可能な限り一致させ、それによって、参照糖タンパク質のグリコシル化プロファイルに可能な限り近いレベルで安全性と有効性も維持することが最も望ましい。組換え糖タンパク質のグリコシル化プロファイルは、たとえば、組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルおよび/またはガラクトシル化プロファイルを含んでもよい。
【0034】
用語「フコシル化」とは、多糖およびオリゴ糖(たとえばN‐グリカン、O‐グリカンおよび糖脂質)上のフコース残基の程度および分布のことをいう。用語「フコシル化プロファイル」または「フコシル化度」とは、多糖およびオリゴ糖(たとえばN‐グリカン、O‐グリカンおよび糖脂質)上のフコース残基の量のことをいう。治療用糖タンパク質(たとえば、非フコシル化N‐グリカンまたは「アフコシル化」N‐グリカンを有する抗体またはFc融合タンパク質)は、補体依存性細胞傷害(CDC)または抗原結合能の検出可能な変化なしに、FcγRIIIa結合能の増強による劇的に向上した抗体依存性細胞傷害(ADCC)を示す。特定の状況(たとえば癌治療)において、非フコシル化または「アフコシル化」抗体、すなわち低い「フコシル化プロファイル」を有する抗体は、それらが腫瘍細胞に対し高い細胞傷害性を誘発し、FcγRIIIaとの増強された相互作用を介してナチュラルキラー(NK)細胞における高いエフェクター機能を引き起こすとともに、低用量で治療効果を実現することができるため好ましい。他の状況、たとえば炎症性疾患または自己免疫疾患の治療において、ADCCとFcγRIIIaとの増強された結合は好ましくなく、したがって、それらのN‐グリカン中に高レベルのフコース残基、すなわち高フコシル化プロファイルを有する治療用糖タンパク質が好ましい場合がある。フコシル化プロファイルは、目的の糖タンパク質の別々に生産されたバッチの間で(たとえばバイオシミラー治療用糖タンパク質とその参照製品である糖タンパク質との間で)異なる可能性がある。フコシル化プロファイルのある程度の変動は、治療用糖タンパク質のバイオシミラーの認可のための新たな臨床試験を必要とすることなく規制基準内であることが認められる可能性はあるが、参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルに可能な限り一致させ、それによって、参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルに可能な限り近いレベルの安全性と有効性も維持することが最も望ましい。
【0035】
「ガラクトシル化」とは、多糖およびオリゴ糖(たとえば、N‐グリカン、O‐グリカンおよび糖脂質)上のガラクトース残基のタイプおよび分布のことをいう。用語「ガラクトシル化プロファイル」または「ガラクトシル化度」とは、多糖およびオリゴ糖(たとえばN‐グリカン、O‐グリカンおよび糖脂質)上のガラクトース残基の量のことをいう。「ガラクトース」とは、鎖状型および環状型を含む単糖の1グループのことをいう。ガラクトースの重要な二糖型は、ガラクトース‐α‐1,3‐ガラクトース(a‐gal)である。ガラクトシル化プロファイルは、目的の糖タンパク質の別々に生産されたバッチの間で(たとえばバイオシミラー治療用糖タンパク質とその参照製品である糖タンパク質との間で)異なる可能性がある。ガラクトシル化プロファイルのある程度の変動は、治療用糖タンパク質のバイオシミラーの認可のための新たな臨床試験を必要とすることなく規制基準内であることが認められる可能性はあるが、参照糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルに可能な限り一致させ、それによって、参照糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルに可能な限り近いレベルで安全性と有効性も維持することが最も望ましい。
【0036】
用語「グリコシル化プロファイルを変更する」、「フコシル化プロファイルを変更する」および「ガラクトシル化プロファイルを変更する」は、それぞれ、第2セットの培養条件下で(たとえば細胞培養培地中のフコース、マンガンおよび/またはタウリンの非存在下で)生産されるときの組換え糖タンパク質のグリコシル化プロファイル、フコシル化プロファイルおよびガラクトシル化プロファイルとそれぞれ比較した場合の、第1セットの培養条件下で(たとえば細胞培養培地中のフコース、マンガンおよび/またはタウリンの存在下で)生産されるときの組換え糖タンパク質のグリコシル化プロファイル、フコシル化プロファイル、およびガラクトシル化プロファイルの変更を意味する。第1セットの培養条件下で実現されるグリコシル化プロファイル、フコシル化プロファイルおよび/またはガラクトシル化プロファイルは、第2セットの培養条件下で実現されるプロファイルに対して増減する可能性がある。好ましくは、第1セットの培養条件下で実現されるグリコシル化プロファイル、フコシル化プロファイルおよび/またはガラクトシル化プロファイルは、第2セットの培養条件下でそれぞれ実現されるグリコシル化プロファイル、フコシル化プロファイルおよび/またはガラクトシル化プロファイルよりも、それぞれ、参照糖タンパク質のグリコシル化プロファイル、フコシル化プロファイルおよび/またはガラクトシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。より好ましくは、グリコシル化プロファイル、フコシル化プロファイルおよび/またはガラクトシル化プロファイルは、それぞれ、参照糖タンパク質のグリコシル化プロファイル、フコシル化プロファイルおよび/またはガラクトシル化プロファイルの少なくとも90%、よりさらに好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、最も好ましくは少なくとも98%であるように変更される。
【0037】
本明細書で使用される用語「参照糖タンパク質」、「参照VEGFアンタゴニスト」、「参照抗VEGF抗体」または「参照抗CD20抗体」は、目的の糖タンパク質のグリコシル化プロファイル、フコシル化プロファイルおよび/またはガラクトシル化プロファイルの点で一致しているか、またはより類似することが望ましい、関連する細胞培養で生産される同じ目的の糖タンパク質、アンタゴニストまたは抗体のことをいう。たとえば、参照糖タンパク質、アンタゴニストまたは抗体は、所与の糖タンパク質、アンタゴニストまたは抗体に関連する、安定性、有効性、安全性および/または他の特性などの有用な特性を有していてもよい。参照糖タンパク質、アンタゴニストまたは抗体は、たとえば、対象者(たとえばヒト対象者)における治療用途のために規制当局の認可を得た糖タンパク質、アンタゴニストまたは抗体であってもよい。この場合、グリコシル化プロファイル、フコシル化プロファイルおよび/またはガラクトシル化プロファイルを変更する方法で生産される糖タンパク質は、バイオシミラーであってもよい。
【0038】
本明細書で使用される用語「培養物」、「細胞培養物」および「真核細胞培養物」は、細胞集団の生存および増殖または生存もしくは増殖に適する条件下で細胞培養培地中で維持または増殖される、表面に付着した、または懸濁液中の真核細胞集団を意味する。本明細書で使用されるこれらの用語は、哺乳動物の細胞集団および、その集団が懸濁される細胞培養培地を含む組み合わせを意味することができる。細胞培養物は、たとえば、連続培養物、バッチ培養物、流加培養物または他の培養物タイプであり得る。
【0039】
本明細書で使用される用語「培養液」、「培地」、「細胞培養培地」、「培養培地」、「組織培養培地」、「組織培養液」および「増殖培地」は、培養される真核細胞の増殖を維持する栄養素を含む溶液を意味する。通常、これらの溶液は、必須および非必須アミノ酸、ビタミン、エネルギー源、脂質ならびに、最小限の増殖および生存または増殖もしくは生存のために細胞に必要な微量元素を提供する。溶液は、ホルモンおよび増殖因子を含む、最小限を超える生存および増殖または生存もしくは増殖を促進する成分を含むこともできる。溶液は、細胞の生存および増殖に最適なpHおよび塩濃度に調整される。培地は、タンパク質、加水分解物または未知の組成の成分を含まない無血清培地である「合成培地」または「化学的に定義された培地」を含むこともできる。定義された培地は、動物由来成分を含まず、また、すべての成分は公知の化学構造を有する。合成培地は、組換え糖タンパク質またはタンパク質、たとえば、限定するものではないが、ホルモン、サイトカイン、インターロイキンおよび他のシグナル伝達分子を含むことができる。
【0040】
細胞培養培地は、任意の哺乳動物起源の血清またはその画分を本質的に含まない(たとえばウシ胎児血清(FBS)を本質的に含まない)場合、一般に「無血清」である。「本質的に含まない」とは、約0~5%の血清、好ましくは約0~1%の血清、最も好ましくは約0~0.1%の血清を含む細胞培養培地を意味する。有利には、培地中の成分のそれぞれの同一性および濃度が公知の(すなわち、真核細胞の抽出物などの不確定な成分が培地中に存在しない)無血清合成培地を使用することができる。
【0041】
本発明の細胞培養は、培養される特定の細胞に適した任意の培地で行われる。いくつかの実施形態において、培地は、たとえば、無機塩、炭水化物(たとえばグルコース、ガラクトース、マルトースまたはフルクトースなどの糖)、アミノ酸、ビタミン(たとえばB群ビタミン(たとえばB12)、ビタミンA、ビタミンE、リボフラビン、チアミンおよびビオチン)、脂肪酸および脂質(たとえばコレステロールおよびステロイド)、タンパク質およびペプチド(たとえばアルブミン、トランスフェリン、フィブロネクチンおよびフェチュイン)、血清(たとえばアルブミン、増殖因子および増殖抑制剤を含む組成、たとえばウシ胎児血清、新生仔ウシ血清およびウマ血清)、微量元素(たとえば亜鉛、銅、セレンおよびトリカルボン酸中間体)、加水分解物(植物源または動物源由来の加水分解されたタンパク質)ならびにそれらの組み合わせを含む。5倍濃縮DMEM/F12(インビトロジェン社(Invitrogen))、CD OptiCHO feed(インビトロジェン社)、CD EfficientFeed(インビトロジェン社)、Cell Boost(ハイクローン社(HyClone))、BalanCD CHO Feed(アーバイン・サイエンティフィック社(Irvine Scientific))、BD Recharge(ベクトン・ディッキンソン社(Becton Dickinson))、Cellvento Feed(EMDミリポア社(EMD Millipore))、Ex‐cell CHOZN Feed(シグマ・アルドリッチ社(Sigma‐Aldrich))、CHO Feed Bioreactor Supplement(シグマ・アルドリッチ社)、SheffCHO(ケリー社(Kerry))、Zap‐CHO(インビトリア社(Invitria))、ActiCHO(PAA/GEヘルスケア社(PAA/GE Healthcare))、Ham’s F10(シグマ社(Sigma))、最小必須培地([MEM]、シグマ社)、RPMI‐1640(シグマ社)およびダルベッコ変法イーグル培地([DMEM]、シグマ社)などの市販培地は、本発明の方法に適した例示的な細胞培養培地である。さらに、ハム(Ham)およびウォレス(Wallace)、Meth. Enz.、第58巻、44ページ(1979年)、バーンズ(Barnes)およびサトウ(Sato)、Anal. Biochem.、第102巻、255ページ(1980年)、米国特許第4767704号、米国特許第4657866号、米国特許第4927762号、米国特許第5122469号、または米国特許第4560655号、国際公開第90/03430号、および国際公開第87/00195号で述べられている培地のいずれかを培地として使用することができる。これらの培地のいずれも、必要に応じて、ホルモンおよび/または他の増殖因子(インスリン、トランスフェリンまたは上皮成長因子など)、塩(塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウムおよび燐酸塩など)、緩衝液(HEPESなど)、ヌクレオシド(アデノシンおよびチミジンなど)、抗生物質(ゲンタマイシンなど)、微量元素(通常μM域の最終濃度で存在する無機化合物と定義される)、脂質(リノール酸または他の脂肪酸など)ならびにそれらの適切な担体およびグルコースまたは同等のエネルギー源を補給することができる。いくつかの実施形態において、培地は、無血清培地、タンパク質を含まない培地または化学的に定義された培地である。任意の他の必要な添加物を、当業者に公知の適切な濃度で含有することもできる。
【0042】
本明細書で使用される用語「基礎培養培地」、「基礎培地」または「基礎培養液」は、特定の1または複数の成分を補給するか、または選択的に除去することによる変更が行われていない、細胞を培養するために使用される任意の細胞培養培地のことをいう。
【0043】
本明細書で使用される用語「フィード培地」、「フィード培養液」または「フィード」は、細胞培養開始後に添加される任意の細胞培養培地のことをいう。この培地は、細胞培養開始時に使用される細胞培養培地よりもしばしば高濃度であり、使い果たされた栄養素を補充するか、または細胞培養物に添加物または添加剤を供給するのに役立つ。
【0044】
用語「補給」、「補給する」または「補給した」は、細胞培養培地(たとえば基礎培地またはフィード培地)への添加剤または添加物の添加を意味する。本明細書で使用される用語「添加剤」または「添加物」は、本開示で述べられている目標を実現するために基礎培地またはフィード培地に行われる任意の補給を意味する。添加剤または添加物は、1つの物質(タウリン、マンガンまたはフコースなど)を含むこともできるし、複数の物質(フコースおよびタウリン、フコースおよびマンガン、タウリンおよびマンガン、またはフコース、マンガンおよびタウリンなど)を含むこともできる。用語「添加剤」または「添加物」は、添加されるすべての成分を意味するが、同時に添加される必要はなく、また、同様に添加される必要もない。たとえば、添加剤または添加物の1つまたは複数の成分を、原液から1回のボーラス添加または2回以上のボーラス添加で添加することもできるし、同じ添加剤または添加物の他の成分を、フィード培地の一部として添加することもできる。添加物の添加は、継続的または半継続的に行うこともできる。さらに、添加剤または添加物のいずれか1つ以上の成分を、細胞培養開始から基礎培地中に存在させることができる。このように、補給は、培養開始時に行うこともでき、かつ/または、培養開始に続いて、たとえば増殖期および/または生産期において行うこともできる。
【0045】
本明細書で使用される用語「上昇し」または「上昇する」は、前記添加物の補給前の添加剤または添加物の濃度が、補給によって、補給後に、より高いその添加物または添加剤の濃度まで増加されることを意味する。すなわち、補給された細胞培養培地は、補給後に、添加物または添加剤の補給前よりも規定量分だけ高い、添加物または添加剤の濃度を有する。
【0046】
細胞培養の「増殖期」という用語は、細胞が、一般に急速に分裂している指数関数的細胞増殖期(対数増殖期)のことをいう。細胞培養の細胞の増殖サイクルの決定は、過度の実験を要することなく、想定される特定の細胞について決定することができる。増殖期において、細胞は、特定の細胞、たとえばある細胞株の細胞について最適の増殖が実現されるように、制御された雰囲気中で、一般に約25°~40℃で、好ましくは37℃で、必要な添加剤を含む細胞培養培地中で培養される。細胞は、約1~5日間、たとえば2~4日間、たとえば4日間、対数増殖期に維持される。たとえば、増殖期の長さとは、その培養が本発明の/上記で概説した増殖条件下に維持される場合、特定の細胞が、最大限に可能な生細胞密度の約20%~80%の範囲内の生細胞密度を再現することを可能にするのに十分な期間である。
【0047】
細胞培養の「生産期」または「タンパク質生産期」は、細胞増殖が定常期に到達する期間のことをいう。生産期では、対数的な細胞増殖は終わり、タンパク質生産が細胞培養における主な活動である。この期間中、培地は、一般に、継続的なタンパク質生産を維持し、望ましい糖タンパク質製品を得るために補給される。生産期は、通常、培養5日目で開始され、培養の終了まで、好ましくは培養14日目まで継続される。
【0048】
本明細書で使用される用語「細胞生存率」とは、所与の培養条件セットまたは実験変動の下で生存する、培養における細胞の能力のことをいう。本明細書で使用されるこの用語は、また、その時点での培養物中の生細胞と死細胞の総数を比較した、特定の時点で生きている細胞の部分のことをいう。本明細書で使用される用語「細胞密度」または「生細胞密度」とは、所与の量の培地に存在する生細胞の数のことをいう。
【0049】
本明細書で使用される用語「バッチ培養」は、細胞自体はもちろん、培地も含む、細胞の培養に最終的に使用されるすべての成分が培養プロセスの開始時に提供される、細胞の培養方法のことをいう。バッチ培養は、通常ある時点で停止され、培地中の細胞および/または成分が採取され、オプションで精製される。
【0050】
本明細書で使用される用語「流加培養」とは、培養プロセスの開始に続いて、ある時点で培養物に追加の成分が提供される、細胞の培養方法のことをいう。流加培養は、たとえば基礎培地を使用して開始することができる。培養プロセスの開始に続いてある時点で培養物に追加の成分が提供される培地は、「フィード培地」または「フィード溶液」である。流加培養は、通常、ある時点で停止され、培地中の細胞および/または成分が採取され、オプションで精製される。
【0051】
本明細書で使用される用語「連続培養」または「灌流培養」は、培養プロセスの開始に続いて培養物に継続的または半継続的に追加の成分が提供される、細胞の培養方法のことをいう。提供される成分は、通常、培養プロセス中に枯渇した、細胞のための栄養添加物を含む。培地中の細胞および/または成分一部が通常、継続的または半継続的に採取され、オプションで精製される。
【0052】
細胞培養は、通常、バイオリアクター中で行われる。本明細書で使用される用語「バイオリアクター」とは、哺乳動物細胞培養物の増殖に使用される任意の容器のことをいう。哺乳動物細胞の培養に有用である限りは、バイオリアクターは、培養の規模に応じて、任意の寸法にすることができる。通常、バイオリアクターは、少なくとも500ミリリットルであり、また1、10、50、100、250、500、1,000、2,000、2,500、3,000、5,000、8,000、10,000、12,0000、15,000、20,000リットルまたはそれ以上にすることもでき、任意の中間の容量にすることもできる。たとえば、バイオリアクターは、10~5,000リットル、10~10,000リットル、10~15,000リットル、10~20,000リットル、50~5,000リットル、50~10,000リットル、50~15,000リットル、50~20,000リットル、1,000~5,000リットルまたは1,000~3,000リットルである。バイオリアクターは、撹拌タンクバイオリアクターまたは振盪フラスコにすることができる。たとえばpHおよび温度を含むバイオリアクターの内部条件は、通常、培養期間中に厳密に制御される。バイオリアクターは、ガラス、プラスチックまたは金属を含む、本発明の培養条件下で培地中に懸濁される哺乳動物細胞培養物を保持するのに適した任意の材料で構成することができる。本明細書で使用される用語「生産バイオリアクター」は、目的の糖タンパク質または目的のタンパク質の生産に使用される最終的なバイオリアクターのことをいう。
【0053】
本明細書で使用される用語「大規模細胞培養」または「大規模生産」は、一定量の、通常、少なくとも500または1,000リットルの、好ましくは少なくとも5,000または8,000リットルの、最も好ましくは10,000または20,000リットルの生産バイオリアクター中の細胞培養のことをいう。
【0054】
用語「抗体」または「免疫グロブリン」は、本明細書において同義であり、最も広い意味で使用され、完全長抗体、遺伝子操作された抗体、組換え抗体、多価抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、二重特異性抗体、多重特異性抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体だけでなく、それらが生物学的な機能を維持し、望ましい生物活性を示す限り、このような抗体のフラグメントも含む。抗体の「生物活性」とは、抗原に結合して、in vitroまたはin vivoで測定することができる生物学的反応をもたらす抗体の能力のことをいう。
【0055】
天然に存在する抗体は、さまざまな構造を有する分子である。たとえば、天然IgG抗体は、ジスルフィド結合で連結された2つの同一のL鎖および2つの同一のH鎖で構成される約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各H鎖は、N末端からC末端に向かって、可変ドメイン(V)(可変HドメインまたはH鎖可変ドメインとも呼ばれる)と、それに続く3つまたは4つの定常ドメイン(C1、C2、C3およびオプションでC4)とを有する。同様に、各L鎖は、N末端からC末端に向かって、可変ドメイン(V)(可変LドメインまたはL鎖可変ドメインとも呼ばれる)と、それに続く定常L鎖(C)ドメインとを有する。抗体のL鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいてカッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる2つのタイプの1つに帰属してもよい。
【0056】
「完全長抗体」は、L鎖(V)およびH鎖(V)の抗原結合可変領域、L鎖定常領域(C)ならびにH鎖定常ドメインC1、C2およびC3を含む。
用語「抗体フラグメント」または「抗原結合フラグメント」は、本明細書において最も広い意味で使用され、好ましくはその抗原結合領域または可変領域を含む、完全長抗体の一部を含む。抗体フラグメントは、親免疫グロブリンの元の特異性を保持する。抗体フラグメントの例は、たとえば、Fab、Fab’、F(ab’)およびFvフラグメント、ダイアボディ、直鎖抗体、一本鎖抗体分子ならびに、抗体フラグメントから作製される多重特異性抗体を含む。好ましくは、抗体フラグメントはFabフラグメントである。
【0057】
「モノクローナル抗体」は、抗原の単一のエピトープに特異的な、すなわち抗原上の単一の決定基を標的とする抗体である。モノクローナル抗体を生産するための方法は、当業者に公知である。
【0058】
用語「組換え抗体」とは、組換え手段によって調製され、発現され、作製され、または単離されたすべての抗体、たとえば、トランスジェニック宿主細胞(たとえばNS0もしくはCHO細胞)から、または免疫グロブリン遺伝子トランスジェニック動物から単離された抗体、または、宿主細胞(たとえばSP2/0マウス骨髄腫細胞)にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを用いて発現された抗体のことをいう。
【0059】
本発明の抗体または免疫グロブリンは、好ましくはIgG分子(たとえばIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4分子)である。より好ましくは、免疫グロブリンはIgGlである。さらにより好ましくは、免疫グロブリンは、少なくともFc部分がヒト型のIgG1である。
【0060】
「キメラ抗体」(たとえばマウス‐ヒトキメラ抗体)は、Fc部分がヒト型であり、可変領域がマウス起源である抗体である。
本発明の一実施形態において、キメラ抗体はリツキシマブまたはインフリキシマブである。
【0061】
リツキシマブは、たとえば国際公開第94/11026号で詳細に説明されているキメラ抗CD20抗体である。
インフリキシマブは、たとえば国際公開第92/16553号で詳細に説明されているキメラ抗TNFa抗体である。
【0062】
「ヒト化抗体」は、抗原結合部分(相補性決定領域(CDR:complementarity‐determining region))が非ヒト種(たとえばマウス)由来のヒト抗体であり、したがって親免疫グロブリンと比較して異なる特異性を有する。CDRのタンパク質配列は、ヒトで天然に生産される抗体バリアントへのそれらの類似性を高めるように変更することができる。
【0063】
本発明の一実施形態において、ヒト化抗体は、トラスツズマブまたはベバシズマブである。
トラスツズマブは、たとえば国際公開第92/22653号で詳細に説明されているヒト化抗HER2抗体である。
【0064】
ベバシズマブは、たとえば国際公開第98/45331号で詳細に説明されているヒト化抗VEGF抗体である。
「完全ヒト抗体」は、すべての部分がヒト起源由来である抗体である。
【0065】
本発明の一実施形態において、ヒト抗体はアダリムマブまたはデノスマブである。
アダリムマブは、たとえば国際公開第97/29131号で詳細に説明されているヒト抗TNFa抗体である。
【0066】
デノスマブは、たとえば国際公開第03/002713号で詳細に説明されているヒト抗RANKL抗体である。
好ましい実施形態において、抗体はリツキシマブまたはベバシズマブである。
【0067】
用語「治療用抗体」とは、疾患の治療に使用される抗体のことをいう。治療用抗体は、様々な作用機序を有していてもよい。治療用抗体は、抗原に関連する標的に結合して、その正常機能を無力化してもよい。たとえば、癌細胞の生存に必要なタンパク質の活性を遮断するモノクローナル抗体は、細胞の死をもたらす。別の治療用モノクローナル抗体は、抗原に関連する標的に結合して、その正常機能を活性化してもよい。たとえば、モノクローナル抗体は、細胞上のタンパク質に結合して、アポトーシスシグナルを引き起こすことができる。さらに別のモノクローナル抗体は、病変組織でのみ発現される標的抗原に結合してもよい。化学療法薬または放射性薬剤などの毒性のペイロード(有効な薬剤)のモノクローナル抗体へのコンジュゲーションによって、病変組織への毒性のペイロードの特異的な(正常組織への傷害を低減する)送達のための薬剤を創出することができる。治療用抗体の「生物学的機能性フラグメント」は、無傷の抗体に起因する生物学的機能であって、少なくとも標的抗原への特異的結合を含む生物学的機能の、いくつかまたは全部でない場合でも少なくとも1つを示す。
【0068】
用語「重量オスモル濃度」は、水溶液中に溶解した溶質粒子の浸透圧の単位である。溶質粒子は、イオンと非イオン化分子の両方を含む。重量オスモル濃度は、水1kgに溶解した浸透活性を有する粒子の濃度(すなわちオスモル)で示す(37℃で1mOsm/kgHOは、2.5kPAの浸透圧(19mm Hg)と同等である)。培養物の重量オスモル濃度は、培養物が調節されているとともに安定化処理されている場合または培養物が調節されているかもしくは安定化処理されている場合を除き、細胞培養期間を通じて追加の溶質粒子がたとえば添加物として添加される場合に、または、細胞培養期間中もしくは追加の溶質粒子がたとえば添加物として添加される場合に、上昇する。したがって、細胞培養期間が長いほど、重量オスモル濃度は上昇する。
【0069】
「重量オスモル濃度」とは、溶液1リットルに溶解している溶質粒子の数のことをいう。したがって、培地への添加物(たとえばフコース、マンガンおよび/またはタウリン)などの溶質の添加は、その重量オスモル濃度を上昇させる。通常、所与の細胞培養は、最適の重量オスモル濃度範囲の細胞培養培地を必要とし、したがって、その重量オスモル濃度は、最適の重量オスモル濃度内に安定的に保たれなければならない。本明細書で用いられる場合、略語「mOsm」は「ミリオスモル/kg HO」を意味する。
【0070】
本明細書で使用される用語「力価」とは、細胞培養によって生産される組換え発現された糖タンパク質の総量を所与量の培地容量で割ったもののことをいう。力価は、通常、培地1ミリリットルあたりの糖タンパク質のミリグラムの単位、または培地1リットル当たりの糖タンパク質のグラムの単位で表現される。
【0071】
本明細書で使用される用語「単離している」、「単離する」、「単離された」、「精製する」、「精製している」および「精製された」は、組換え糖タンパク質が生産された細胞培養物を構成する細胞、細胞破片、細胞培養培地、細胞培養培地成分および他の材料の一部または全部の、組換え糖タンパク質からの除去または分離を意味する。一般に、通常、細胞培養物中に生産される糖タンパク質を単離することが望ましい。糖タンパク質は、たとえば、培地中に分泌されてもよく、それによって、細胞および他の固形物は、単離プロセスの第1ステップで、たとえば遠心分離または濾過によって除去することができる。あるいは、発現された糖タンパク質は、細胞培養物の細胞の表面に結合されていてもよい。この実施形態において、培地は除去され、糖タンパク質を発現している細胞は、精製プロセスの第1ステップで溶解される。哺乳動物細胞の溶解は、ガラスビーズによる物理的破壊および高pH条件への暴露を含む、当業者に周知の任意の数の手段によって実現することができる。糖タンパク質は、たとえば、クロマトグラフィー(たとえばイオン交換、親和性、サイズ排除、およびヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー)、ゲル濾過、遠心分離、分別溶解法、エタノール沈殿を含む標準法によって、または任意の他の使用可能なタンパク質精製技術によって単離および精製または単離もしくは精製することができる(たとえば、スコープス(Scopes)著、「Protein Purification Principles and Practice」、第2版、シュプリンガー・フェアラーク(Springer‐Verlag)、ニューヨーク(1987年)、S.J.ヒギンズ(Higgins, S.J.)およびB.D.ヘイムズ(Hames, B.D.)編、「Protein Expression: A Practical Approach」、オックスフォード大学出版局(Oxford Univ Press)(1999年)、およびM.P.ドイッチャー(Deutscher, M.P.)、M.I.サイモン(Simon, M.I.)、J.N.アベルソン(Abelson, J.N.)編、「Guide to Protein Purification: Methods in Enzymology」(Methods in Enzymology Series、第182巻)、アカデミック・プレス(Academic Press)(1997年)を参照のこと)。特に、イムノアフィニティクロマトグラフィーについては、糖タンパク質は、そのタンパク質に対して生産され、固定担体に固定された抗体を含むアフィニティカラムに対してそれを結合させることによって単離することができる。あるいは、たとえば、インフルエンザコート配列、ポリヒスチジンまたはグルタチオンS‐トランスフェラーゼなどのアフィニティタグは、適切なアフィニティカラムを通過させることによる簡単な精製法を可能にする標準的な組換え技術によって糖タンパク質に結合させることができる。単離および精製プロセス中または単離もしくは精製プロセス中の糖タンパク質の分解を減少または排除するために、全部または一部の段階において、フッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)、ロイペプチン、ペプスタチンまたはアプロチニンなどのプロテアーゼインヒビターを添加することができる。発現された糖タンパク質を分離および精製するために細胞が溶解されなければならない場合、プロテアーゼインヒビターは特に望ましい。正確な単離および精製技術または単離もしくは精製技術は、単離および精製または単離もしくは精製される糖タンパク質の性質、糖タンパク質が発現される細胞の性質ならびに、細胞が増殖される培地の組成に応じて変わることは、当業者には明らかであろう。
【0072】
たとえば、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のアフコシル化グリコフォームの量を減少させるために、たとえば糖タンパク質のADCCを減少させるために、かつ/または、参照糖タンパク質と類似したフコシル化プロファイルを有する糖タンパク質を生産するために、グリコシル化プロファイルを調節することが望ましい場合、その細胞培養物にフコースを補給してもよい(実施例2参照)。しかしながら、フコースの添加は、生産される糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルの減少をもたらす場合があり、その結果、参照糖タンパク質のグリコシル化およびガラクトシル化プロファイルまたはグリコシル化もしくはガラクトシル化プロファイルと類似していないため、かつ/または、生産される糖タンパク質の生物活性、安全性および/または有効性の点で、望ましくないグリコシル化およびガラクトシル化プロファイルまたはグリコシル化もしくはガラクトシル化プロファイルをもたらす可能性がある(ラジュ(Raju)およびジョーダン(Jordan)、MAbs、第4巻、第3号、385~391ページ(2012年5月1日)も参照のこと)。
【0073】
ガラクトシル化の減少への対策として、細胞培養中にマンガンをさらに補給してもよい。マンガンのこの追加の補給は、フコースのみの補給で認められた減少が引き起こされないように、すなわち、ガラクトシル化プロファイルが、参照糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルと類似する/より類似するように、生産される糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルを変えると同時に、それは、培養物の重量オスモル濃度の上昇ももたらす/追加する。たとえば11~18日の間、たとえば13~15日の間、たとえば14日間の、生産される糖タンパク質の量を増加させるための長期間の細胞培養によって引き起こされる比較的高い重量オスモル濃度に加えて、この重量オスモル濃度の上昇は、一方で、アフコシル化グリコフォームの生成を増加させる。すなわち、それは、糖タンパク質のフコシル化プロファイルの減少をもたらす(実施例3参照)。これは、もちろん、フコースの最初の補給によって実現されるべき効果の正反対であり、原因となる溶質のいかんにかかわらず、より高い重量オスモル濃度は、アフコシル化グリコフォームの減少(すなわちフコシル化されたグリコフォームの増加)をもたらすという、当該技術分野で以前に行われた観察と対照的である(今野(Konno)ら、Cytotechnology、第64巻、第3号、249~65ページ(2012年))。
【0074】
フコースとマンガンとによる細胞培養物の補給により認められる、アフコシル化グリコフォームのこの望ましくない増加を打ち消すために、浸透圧保護剤としてのタウリンのさらなる補給を試みた(実施例4参照)。驚くべきことに、タウリンは、細胞培養物の重量オスモル濃度を安定化させるのに役立ち得るだけでなく、アフコシル化グリコフォームの生成をさらに減少させるのに、すなわち生産される糖タンパク質のフコシル化プロファイルを増加させるのにも役立ち得ることが判明した(実施例5参照)。これによって、フコース、マンガンおよびタウリンによる細胞培養培地の補給は、細胞培養で生産される糖タンパク質のグリコシル化プロファイルを、フコシル化およびガラクトシル化プロファイルまたはフコシル化もしくはガラクトシル化プロファイルを含めて、補給が行われない場合よりも参照糖タンパク質のグリコシル化プロファイルとよりよく類似するように変えることができる。ベタインなどの、当該技術分野で広く使用されている浸透圧保護剤とは対照的に、タウリンの使用は、生産力価を上昇させるというさらなる利点も有する(国際公開第2017/024062号)。
【0075】
したがって、一実施形態において、本発明は、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルおよび/またはガラクトシル化プロファイルのうちの1つ以上を含むグリコシル化プロファイルを変更する方法を提供し、その方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地にはフコース、マンガンおよびタウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルおよび/またはガラクトシル化プロファイルのうちの1つ以上を含むグリコシル化プロファイルは、かかる補給なしに培養した場合よりも、参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルおよび/またはガラクトシル化プロファイルのうちの1つ以上を含むグリコシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。
【0076】
一実施形態において、本発明は、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルを変更する方法を提供し、その方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地にはフコース、マンガンおよびタウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルは、かかる補給なしに培養した場合よりも参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。好ましくは、変更後のフコシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%である。好ましくは、変更後のフコシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルの少なくとも98%である。
【0077】
別の実施形態において、本発明は、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルを変更する方法を提供し、その方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地にはフコース、マンガンおよびタウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルは、かかる補給なしに培養した場合よりも参照糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。好ましくは、変更後のガラクトシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%である。
【0078】
さらに別の好ましい実施形態において、本発明は、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルおよびガラクトシル化プロファイルを変更する方法を提供し、その方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地にはフコース、マンガンおよびタウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルおよびガラクトシル化プロファイルは、かかる補給なしに培養した場合よりも参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルおよびガラクトシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。好ましくは、変更後のフコシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%であり、変更後のガラクトシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%である。
【0079】
一実施形態において、培地中のフコースの濃度は0.4mM~1.6mMだけ補給により上昇し、たとえば0.4、0.44、0.48、0.52、0.56、0.6、0.64、0.68、0.72、0.76、0.8、0.84、0.88、0.92、0.96、1、1.04、1.08、1.12、1.16、1.2、1.24、1.28、1.32、1.36、1.4、1.44、1.48、1.52、1.56または1.6mMだけ上昇する。好ましい実施形態において、培地中のフコースの濃度は0.4mM~1.2mMだけ補給により上昇し、たとえば0.4、0.44、0.48、0.52、0.56、0.6、0.64、0.68、0.72、0.76、0.8、0.84、0.88、0.92、0.96、1、1.04、1.08、1.12、1.16または1.2mMだけ上昇する。好ましい実施形態において、培地中のフコースの濃度は0.6mM~1mMだけ補給により上昇し、たとえば0.6、0.64、0.68、0.72、0.76、0.8、0.84、0.88、0.92、0.96または1mMだけ上昇する。最も好ましい実施形態において、培地中のフコースの濃度は0.8mMだけ補給により上昇する。
【0080】
好ましくは、前述のように、フコースの補給は、フィード培地の一部としての補給によって実現される。ここで、フィード培地中のフコースの濃度は、10mM~40mMであり、たとえば10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39または40mMである。好ましい実施形態において、フィード培地中のフコースの濃度は10mM~30mMであり、たとえば10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30mMである。好ましい実施形態において、フィード培地中のフコースの濃度は15mM~25mMであり、たとえば15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25mMである。最も好ましい実施形態において、フィード培地中のフコースの濃度は20mMである。
【0081】
一実施形態において、本発明は、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のグリコシル化プロファイルを変更する方法を提供し、その方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地には、(細胞培養培地中のフコースの濃度を0.4~1.6mM、より好ましくは0.4~1.2mM、よりさらに好ましくは0.6~1mM、最も好ましくは0.8mM上昇させるための)フコース、マンガンおよびタウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のグリコシル化プロファイルは、かかる補給なしに培養した場合よりも参照糖タンパク質のグリコシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。
【0082】
一実施形態において、本発明は、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルを変更する方法を提供し、その方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地には、(細胞培養培地中のフコースの濃度を0.4~1.6mM、より好ましくは0.4~1.2mM、よりさらに好ましくは0.6~1mM、最も好ましくは0.8mM上昇させるための)フコース、マンガンおよびタウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルを、かかる補給なしに培養した場合よりも参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。好ましくは、変更後のフコシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%である。
【0083】
別の実施形態において、本発明は、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルを変更する方法を提供し、その方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地には、(細胞培養培地中のフコースの濃度を0.4~1.6mM、より好ましくは0.4~1.2mM、よりさらに好ましくは0.6~1mM、最も好ましくは0.8mM上昇させるための)フコース、マンガンおよびタウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルは、かかる補給なしに培養した場合よりも参照糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。好ましくは、変更後のガラクトシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%である。
【0084】
さらに別の好ましい実施形態において、本発明は、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルおよびガラクトシル化プロファイルを変更する方法を提供し、その方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地には、(細胞培養培地中のフコースの濃度を0.4~1.6mM、より好ましくは0.4~1.2mM、よりさらに好ましくは0.6~1mM、最も好ましくは0.8mM上昇させるための)フコース、マンガンおよびタウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルおよびガラクトシル化プロファイルは、かかる補給なしに培養した場合よりも参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルおよびガラクトシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。好ましくは、変更後のフコシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%であり、変更後のガラクトシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%である。
【0085】
一実施形態において、培地中のマンガンの濃度は、0.02μM~0.1μM、好ましくは0.04μM~0.08μM、より好ましくは0.06μM~0.08μM、最も好ましくは0.068μM±0.01μM上昇する。
【0086】
前述のように、好ましくは、マンガンの補給は、フィード培地中のマンガンの濃度が0.5μM~2.5μM、好ましくは1.0μM~2.0μM、より好ましくは1.5μM~2.0μM、最も好ましくは1.7μM±0.2μMであるフィード培地の一部として、補給によって実現される。
【0087】
一実施形態において、本発明は、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のグリコシル化プロファイルを変更する方法を提供し、その方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地にはフコース、(細胞培養培地中のマンガンの濃度を0.02μM~0.1μM、好ましくは0.04μM~0.08μM、より好ましくは0.06μM~0.08μM、最も好ましくは0.068μM±0.01μM上昇させるための)マンガンおよびタウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のグリコシル化プロファイルは、かかる補給なしに培養した場合よりも参照糖タンパク質のグリコシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。
【0088】
一実施形態において、本発明は、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルを変更する方法を提供し、その方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地にはフコース、(細胞培養培地中のマンガンの濃度を0.02μM~0.1μM、好ましくは0.04μM~0.08μM、より好ましくは0.06μM~0.08μM、最も好ましくは0.068μM±0.01μM上昇させるための)マンガンおよびタウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルは、かかる補給なしに培養した場合よりも参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。好ましくは、変更後のフコシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%である。
【0089】
別の実施形態において、本発明は、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルを変更する方法を提供し、その方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地にはフコース、(細胞培養培地中のマンガンの濃度を0.02μM~0.1μM、好ましくは0.04μM~0.08μM、より好ましくは0.06μM~0.08μM、最も好ましくは0.068μM±0.01μM上昇させるための)マンガンおよびタウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルは、かかる補給なしに培養した場合よりも参照糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。好ましくは、変更後のガラクトシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%である。
【0090】
さらに別の好ましい実施形態において、本発明は、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルおよびガラクトシル化プロファイルを変更する方法を提供し、その方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地にはフコース、(細胞培養培地中のマンガンの濃度を0.02μM~0.1μM、好ましくは0.04μM~0.08μM、より好ましくは0.06μM~0.08μM、最も好ましくは0.068μM±0.01μM上昇させるための)マンガンおよびタウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルおよびガラクトシル化プロファイルは、かかる補給なしに培養した場合よりも参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルおよびガラクトシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。好ましくは、変更後のフコシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%であり、変更後のガラクトシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%である。
【0091】
一実施形態において、本発明は、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のグリコシル化プロファイルを変更する方法を提供し、その方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地には、(細胞培養培地中のフコースの濃度を0.4~1.6mM上昇させるための)フコース、(細胞培養培地中のマンガンの濃度を0.02μM~0.1μM、好ましくは0.04μM~0.08μM、より好ましくは0.06μM~0.08μM、最も好ましくは0.068μM±0.01μM上昇させるための)マンガンおよびタウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のグリコシル化プロファイルは、かかる補給なしに培養した場合よりも参照糖タンパク質のグリコシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。
【0092】
一実施形態において、本発明は、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のグリコシル化プロファイルを変更する方法を提供し、その方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地には、(細胞培養培地中のフコースの濃度を0.8mM上昇させるための)フコース、(細胞培養培地中のマンガンの濃度を0.02μM~0.1μM、好ましくは0.04μM~0.08μM、より好ましくは0.06μM~0.08μM、最も好ましくは0.068μM±0.01μM上昇させるための)マンガンおよびタウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のグリコシル化プロファイルは、かかる補給なしに培養した場合よりも参照糖タンパク質のグリコシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。
【0093】
一実施形態において、本発明は、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルを変更する方法を提供し、その方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地には、(細胞培養培地中のフコースの濃度を0.4~1.6mM上昇させるための)フコース、(細胞培養培地中のマンガンの濃度を0.02μM~0.1μM、好ましくは0.04μM~0.08μM、より好ましくは0.06μM~0.08μM、最も好ましくは0.068μM±0.01μM上昇させるための)マンガンおよびタウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。好ましくは、変更後のフコシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%である。
【0094】
一実施形態において、本発明は、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルを変更する方法を提供し、その方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地には、(細胞培養培地中のフコースの濃度を0.8mM上昇させるための)フコース、(細胞培養培地中のマンガンの濃度を0.02μM~0.1μM、好ましくは0.04μM~0.08μM、より好ましくは0.06μM~0.08μM、最も好ましくは0.068μM±0.01μM上昇させるための)マンガンおよびタウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルは、かかる補給なしに培養した場合よりも参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。好ましくは、変更後のフコシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%である。
【0095】
別の実施形態において、本発明は、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルを変更する方法を提供し、その方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地には、(細胞培養培地中のフコースの濃度を0.4~1.6mM上昇させるための)フコース、(細胞培養培地中のマンガンの濃度を0.02μM~0.1μM、好ましくは0.04μM~0.08μM、より好ましくは0.06μM~0.08μM、最も好ましくは0.068μM±0.01μM上昇させるための)マンガンおよびタウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルは、かかる補給なしに培養した場合よりも参照糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。好ましくは、変更後のガラクトシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%である。
【0096】
別の実施形態において、本発明は、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルを変更する方法を提供し、その方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地には、(細胞培養培地中のフコースの濃度を0.8mM上昇させるための)フコース、(細胞培養培地中のマンガンの濃度を0.02μM~0.1μM、好ましくは0.04μM~0.08μM、より好ましくは0.06μM~0.08μM、最も好ましくは0.068μM±0.01μM上昇させるための)マンガンおよびタウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルは、かかる補給なしに培養した場合よりも参照糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。好ましくは、変更後のガラクトシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%である。
【0097】
さらに別の好ましい実施形態において、本発明は、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルおよびガラクトシル化プロファイルを変更する方法を提供し、その方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地に、(細胞培養培地中のフコースの濃度を0.4~1.6mM上昇させるための)フコース、(細胞培養培地中のマンガンの濃度を0.02μM~0.1μM、好ましくは0.04μM~0.08μM、より好ましくは0.06μM~0.08μM、最も好ましくは0.068μM±0.01μM上昇させるための)マンガンおよびタウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルおよびガラクトシル化プロファイルは、かかる補給なしに培養した場合よりも参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルおよびガラクトシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。好ましくは、変更後のフコシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%であり、変更後のガラクトシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%である。
【0098】
さらに別の好ましい実施形態において、本発明は、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルおよびガラクトシル化プロファイルを変更する方法を提供し、その方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地には、(細胞培養培地中のフコースの濃度を0.8mM上昇させるための)フコース、(細胞培養培地中のマンガンの濃度を0.02μM~0.1μM、好ましくは0.04μM~0.08μM、より好ましくは0.06μM~0.08μM、最も好ましくは0.068μM±0.01μM上昇させるための)マンガンおよびタウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルおよびガラクトシル化プロファイルは、かかる補給なしに培養した場合よりも参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルおよびガラクトシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。好ましくは、変更後のフコシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%であり、変更後のガラクトシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%である。
【0099】
一実施形態において、補給後の培地中のタウリンの濃度は12.5mM~50mMであり、たとえば12.5、15、17.5、20、22.5、25、27.5、30、32.5、35、37.5、40、42.5または50mMである。好ましい実施形態において、補給後の培地中のタウリンの最終濃度は15mM~35mMであり、たとえば15、17.5、20、22.5、25、27.5、30、32.5または35mMである。好ましい実施形態において、補給後の培地中のタウリンの最終濃度は20mM~30mMであり、たとえば20、22.5、25、27.5または30mMである。最も好ましい実施形態において、補給後の培地中のタウリンの最終濃度は25mMである。
【0100】
一実施形態において、本発明は、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のグリコシル化プロファイルを変更する方法を提供し、その方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地にはフコース、マンガンおよび、(補給後の細胞培養培地中の最終濃度が12.5~50mMの、より好ましくは15~35mMの、よりさらに好ましくは20~30mMの、最も好ましくは25mMの)タウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のグリコシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のグリコシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。
【0101】
一実施形態において、本発明は、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルを変更する方法を提供し、その方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地にはフコース、マンガンおよび、(補給後の培地中の濃度が12.5~50mMの、より好ましくは15~35mMの、よりさらに好ましくは20~30mMの、最も好ましくは25mMの)タウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルは、かかる補給なしに培養した場合よりも参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。好ましくは、変更後のフコシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%である。
【0102】
別の実施形態において、本発明は、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルを変更する方法を提供し、その方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地にはフコース、マンガンおよび、(補給後の細胞培養培地中の最終濃度が12.5~50mMの、より好ましくは15~35mMの、よりさらに好ましくは20~30mMの、最も好ましくは25mMの)タウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルは、かかる補給なしに培養した場合よりも参照糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。好ましくは、変更後のガラクトシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%である。
【0103】
さらに別の好ましい実施形態において、本発明は、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルおよびガラクトシル化プロファイルを変更する方法を提供し、その方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地にはフコース、マンガンおよび、(補給後の細胞培養培地中の最終濃度が12.5~50mMの、より好ましくは15~35mMの、よりさらに好ましくは20~30mMの、最も好ましくは25mMの)タウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルおよびガラクトシル化プロファイルは、かかる補給なしに培養した場合よりも参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルおよびガラクトシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。好ましくは、変更後のフコシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%であり、変更後のガラクトシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%である。
【0104】
一実施形態において、本発明は、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のグリコシル化プロファイルを変更する方法を提供し、その方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地には、(細胞培養培地中のフコースの濃度を0.4~1.6mM上昇させるための)フコース、マンガンおよび、(補給後の細胞培養培地中の最終濃度が12.5~50mMの、より好ましくは15~35mMの、よりさらに好ましくは20~30mMの、最も好ましくは25mMの)タウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のグリコシル化プロファイルは、かかる補給なしに培養した場合よりも参照糖タンパク質のグリコシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。
【0105】
一実施形態において、本発明は、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のグリコシル化プロファイルを変更する方法を提供し、その方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地には、(細胞培養培地中のフコースの濃度を0.8mM上昇させるための)フコース、マンガンおよび、(補給後の細胞培養培地中の最終濃度が12.5~50mMの、より好ましくは15~35mMの、よりさらに好ましくは20~30mMの、最も好ましくは25mMの)タウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のグリコシル化プロファイルは、かかる補給なしに培養した場合よりも参照糖タンパク質のグリコシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。
【0106】
一実施形態において、本発明は、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルを変更する方法を提供し、その方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地には、(細胞培養培地中のフコースの濃度を0.4~1.6mM上昇させるための)フコース、マンガンおよび、(補給後の細胞培養培地中の最終濃度が12.5~50mMの、より好ましくは15~35mMの、よりさらに好ましくは20~30mMの、最も好ましくは25mMの)タウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルは、かかる補給なしに培養した場合よりも参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。好ましくは、変更後のフコシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%である。
【0107】
一実施形態において、本発明は、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルを変更する方法を提供し、その方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地には、(細胞培養培地中のフコースの濃度を0.8mM上昇させるための)フコース、マンガンおよび、(補給後の細胞培養培地中の最終濃度が12.5~50mMの、より好ましくは15~35mMの、よりさらに好ましくは20~30mMの、最も好ましくは25mMの)タウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルは、かかる補給なしに培養した場合よりも参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。好ましくは、変更後のフコシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%である。
【0108】
別の実施形態において、本発明は、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルを変更する方法を提供し、その方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地には、(細胞培養培地中のフコースの濃度を0.4~1.6mM上昇させるための)フコース、マンガンおよび、(補給後の細胞培養培地中の最終濃度が12.5~50mMの、より好ましくは15~35mMの、よりさらに好ましくは20~30mMの、最も好ましくは25mMの)タウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルは、かかる補給なしに培養した場合よりも参照糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。好ましくは、変更後のガラクトシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%である。
【0109】
別の実施形態において、本発明は、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルを変更する方法を提供し、その方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地には、(細胞培養培地中のフコースの濃度を0.8mM上昇させるための)フコース、マンガンおよび、(補給後の細胞培養培地中の最終濃度が12.5~50mMの、より好ましくは15~35mMの、よりさらに好ましくは20~30mMの、最も好ましくは25mMの)タウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルは、かかる補給なしに培養した場合よりも参照糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。好ましくは、変更後のガラクトシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%である。
【0110】
さらに別の好ましい実施形態において、本発明は、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルおよびガラクトシル化プロファイルを変更する方法を提供し、その方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地には、(細胞培養培地中のフコースの濃度を0.4~1.6mM上昇させるための)フコース、マンガンおよび、(補給後の細胞培養培地中の最終濃度が12.5~50mMの、より好ましくは15~35mMの、よりさらに好ましくは20~30mMの、最も好ましくは25mMの)タウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルおよびガラクトシル化プロファイルは、かかる補給なしに培養した場合よりも参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルおよびガラクトシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。好ましくは、変更後のフコシル化プロファイルは参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%であり、変更後のガラクトシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%である。
【0111】
さらに別の好ましい実施形態において、本発明は、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルおよびガラクトシル化プロファイルを変更する方法を提供し、その方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地には、(細胞培養培地中のフコースの濃度を0.8mM上昇させるための)フコース、マンガンおよび、(補給後の細胞培養培地中の最終濃度が12.5~50mMの、より好ましくは15~35mMの、よりさらに好ましくは20~30mMの、最も好ましくは25mMの)タウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルおよびガラクトシル化プロファイルは、かかる補給なしに培養した場合よりも参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルおよびガラクトシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。好ましくは、変更後のフコシル化プロファイルは参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%であり、変更後のガラクトシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%である。
【0112】
一実施形態において、本発明は、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のグリコシル化プロファイルを変更する方法を提供し、その方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地にはフコース、(細胞培養培地中のマンガンの濃度を0.06μM~0.08μM上昇させるための)マンガンおよび、(補給後の細胞培養培地中の最終濃度が12.5~50mMの、より好ましくは15~35mMの、よりさらに好ましくは20~30mMの、最も好ましくは25mMの)タウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のグリコシル化プロファイルは、かかる補給なしに培養した場合よりも参照糖タンパク質のグリコシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。
【0113】
一実施形態において、本発明は、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のグリコシル化プロファイルを変更する方法を提供し、その方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地にフコース、(細胞培養培地中のマンガンの濃度を0.068μM±0.01μM上昇させるための)マンガンおよび、(補給後の細胞培養培地中の最終濃度が12.5~50mMの、より好ましくは15~35mMの、よりさらに好ましくは20~30mMの、最も好ましくは25mMの)タウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のグリコシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のグリコシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。
【0114】
一実施形態において、本発明は、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルを変更する方法を提供し、その方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地にはフコース、(細胞培養培地中のマンガンの濃度を0.06μM~0.08μM上昇させるための)マンガンおよび、(補給後の細胞培養培地中の最終濃度が12.5~50mMの、より好ましくは15~35mMの、よりさらに好ましくは20~30mMの、最も好ましくは25mMの)タウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルは、かかる補給なしに培養した場合よりも参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。好ましくは、変更後のフコシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%である。
【0115】
一実施形態において、本発明は、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルを変更する方法を提供し、その方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地にはフコース、(細胞培養培地中のマンガンの濃度を0.068μM±0.01μM上昇させるための)マンガンおよび、(補給後の細胞培養培地中の最終濃度が12.5~50mMの、より好ましくは15~35mMの、よりさらに好ましくは20~30mMの、最も好ましくは25mMの)タウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルは、かかる補給なしに培養した場合よりも参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。好ましくは、変更後のフコシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%である。
【0116】
別の実施形態において、本発明は、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルを変更する方法を提供し、その方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地にはフコース、(細胞培養培地中のマンガンの濃度を0.06μM~0.08μM上昇させるための)マンガンおよび、(補給後の細胞培養培地中の最終濃度が12.5~50mMの、より好ましくは15~35mMの、よりさらに好ましくは20~30mMの、最も好ましくは25mMの)タウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルは、かかる補給なしに培養した場合よりも参照糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。好ましくは、変更後のガラクトシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%である。
【0117】
別の実施形態において、本発明は、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルを変更する方法を提供し、その方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地にはフコース、(細胞培養培地中のマンガンの濃度を0.068μM±0.01μM上昇させるための)マンガンおよび、(補給後の細胞培養培地中の最終濃度が12.5~50mMの、より好ましくは15~35mMの、よりさらに好ましくは20~30mMの、最も好ましくは25mMの)タウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルは、かかる補給なしに培養した場合よりも参照糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。好ましくは、変更後のガラクトシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%である。
【0118】
さらに別の好ましい実施形態において、本発明は、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルおよびガラクトシル化プロファイルを変更する方法を提供し、その方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地にはフコース、(細胞培養培地中のマンガンの濃度を0.06μM~0.08μM上昇させるための)マンガンおよび、(補給後の細胞培養培地中の最終濃度が12.5~50mMの、より好ましくは15~35mMの、よりさらに好ましくは20~30mMの、最も好ましくは25mMの)タウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルおよびガラクトシル化プロファイルは、かかる補給なしに培養した場合よりも参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルおよびガラクトシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。好ましくは、変更後のフコシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%であり、変更後のガラクトシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%である。
【0119】
さらに別の好ましい実施形態において、本発明は、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルおよびガラクトシル化プロファイルを変更する方法を提供し、その方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地にはフコース、(細胞培養培地中のマンガンの濃度を0.068μM±0.01μM上昇させるための)マンガンおよび、(補給後の細胞培養培地中の最終濃度が12.5~50mMの、より好ましくは15~35mMの、よりさらに好ましくは20~30mMの、最も好ましくは25mMの)タウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルおよびガラクトシル化プロファイルは、かかる補給なしに培養した場合よりも参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルおよびガラクトシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。好ましくは、変更後のフコシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%であり、変更後のガラクトシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%である。
【0120】
一実施形態において、本発明は、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のグリコシル化プロファイルを変更する方法を提供し、その方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地には、(細胞培養培地中のフコースの濃度を0.4~1.6mM上昇させるための)フコース、(細胞培養培地中のマンガンの濃度を0.06μM~0.08μM上昇させるための)マンガンおよび、(補給後の細胞培養培地中の最終濃度が12.5~50mMの、より好ましくは15~35mMの、よりさらに好ましくは20~30mMの、最も好ましくは25mMの)タウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のグリコシル化プロファイルは、かかる補給なしに培養した場合よりも参照糖タンパク質のグリコシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。
【0121】
一実施形態において、本発明は、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のグリコシル化プロファイルを変更する方法を提供し、その方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地には、(細胞培養培地中のフコースの濃度を0.8mM上昇させるための)フコース、(細胞培養培地中のマンガンの濃度を0.06μM~0.08μM上昇させるための)マンガンおよび、(補給後の細胞培養培地中の最終濃度が12.5~50mMの、より好ましくは15~35mMの、よりさらに好ましくは20~30mMの、最も好ましくは25mMの)タウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のグリコシル化プロファイルは、かかる補給なしに培養した場合よりも参照糖タンパク質のグリコシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。
【0122】
一実施形態において、本発明は、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のグリコシル化プロファイルを変更する方法を提供し、その方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地には、(細胞培養培地中のフコースの濃度を0.4~1.6mM上昇させるための)フコース、(細胞培養培地中のマンガンの濃度を0.068μM±0.01μM上昇させるための)マンガンおよび、(補給後の細胞培養培地中の最終濃度が12.5~50mMの、より好ましくは15~35mMの、よりさらに好ましくは20~30mMの、最も好ましくは25mMの)タウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のグリコシル化プロファイルは、かかる補給なしに培養した場合よりも参照糖タンパク質のグリコシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。
【0123】
一実施形態において、本発明は、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のグリコシル化プロファイルを変更する方法を提供し、その方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地には、(細胞培養培地中のフコースの濃度を0.8mM上昇させるための)フコース、(細胞培養培地中のマンガンの濃度を0.068μM±0.01μM上昇させるための)マンガンおよび、(補給後の細胞培養培地中の最終濃度が12.5~50mMの、より好ましくは15~35mMの、よりさらに好ましくは20~30mMの、最も好ましくは25mMの)タウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のグリコシル化プロファイルは、かかる補給なしに培養した場合よりも参照糖タンパク質のグリコシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。
【0124】
一実施形態において、本発明は、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルを変更する方法を提供し、その方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地には、(細胞培養培地中のフコースの濃度を0.4~1.6mM上昇させるための)フコース、(細胞培養培地中のマンガンの濃度を0.06μM~0.08μM上昇させるための)マンガンおよび、(補給後の細胞培養培地中の最終濃度が12.5~50mMの、より好ましくは15~35mMの、よりさらに好ましくは20~30mMの、最も好ましくは25mMの)タウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルは、かかる補給なしに培養した場合よりも参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。好ましくは、変更後のフコシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%である。
【0125】
一実施形態において、本発明は、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルを変更する方法を提供し、その方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地には、(細胞培養培地中のフコースの濃度を20mM上昇させるための)フコース、(細胞培養培地中のマンガンの濃度を0.06μM~0.08μM上昇させるための)マンガンおよび、(補給後の細胞培養培地中の最終濃度が12.5~50mMの、より好ましくは15~35mMの、よりさらに好ましくは20~30mMの、最も好ましくは25mMの)タウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルは、かかる補給なしに培養した場合よりも参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。好ましくは、変更後のフコシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%である。
【0126】
一実施形態において、本発明は、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルを変更する方法を提供し、その方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地には、(細胞培養培地中のフコースの濃度を0.4~1.6mM上昇させるための)フコース、(細胞培養培地中のマンガンの濃度を0.068μM±0.01μM上昇させるための)マンガンおよび、(補給後の細胞培養培地中の最終濃度が12.5~50mMの、より好ましくは15~35mMの、よりさらに好ましくは20~30mMの、最も好ましくは25mMの)タウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルは、かかる補給なしに培養した場合よりも参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。好ましくは、変更後のフコシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%である。
【0127】
一実施形態において、本発明は、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルを変更する方法を提供し、その方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地には、(細胞培養培地中のフコースの濃度を0.8mM上昇させるための)フコース、(細胞培養培地中のマンガンの濃度を0.068μM±0.01μM上昇させるための)マンガンおよび、(補給後の細胞培養培地中の最終濃度が12.5~50mMの、より好ましくは15~35mMの、よりさらに好ましくは20~30mMの、最も好ましくは25mMの)タウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルは、かかる補給なしに培養した場合よりも参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。好ましくは、変更後のフコシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%である。
【0128】
別の実施形態において、本発明は、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルを変更する方法を提供し、その方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地には、(細胞培養培地中のフコースの濃度を0.4~1.6mM上昇させるための)フコース、(細胞培養培地中のマンガンの濃度を0.06μM~0.08μM上昇させるための)マンガンおよび、(補給後の細胞培養培地中の最終濃度が12.5~50mMの、より好ましくは15~35mMの、よりさらに好ましくは20~30mMの、最も好ましくは25mMの)タウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルは、かかる補給なしに培養した場合よりも参照糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。好ましくは、変更後のガラクトシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%である。
【0129】
別の実施形態において、本発明は、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルを変更する方法を提供し、その方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地には、(細胞培養培地中のフコースの濃度を0.8mM上昇させるための)フコース、(細胞培養培地中のマンガンの濃度を0.06μM~0.08μM上昇させるための)マンガンおよび、(補給後の細胞培養培地中の最終濃度が12.5~50mMの、より好ましくは15~35mMの、よりさらに好ましくは20~30mMの、最も好ましくは25mMの)タウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルは、かかる補給なしに培養した場合よりも参照糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。好ましくは、変更後のガラクトシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%である。
【0130】
別の実施形態において、本発明は、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルを変更する方法を提供し、その方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地には、(細胞培養培地中のフコースの濃度を0.4~1.6mM上昇させるための)フコース、(細胞培養培地中のマンガンの濃度を0.068μM±0.01μM上昇させるための)マンガンおよび、(補給後の細胞培養培地中の最終濃度が12.5~50mMの、より好ましくは15~35mMの、よりさらに好ましくは20~30mMの、最も好ましくは25mMの)タウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルは、かかる補給なしに培養した場合よりも参照糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。好ましくは、変更後のガラクトシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%である。
【0131】
別の実施形態において、本発明は、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルを変更する方法を提供し、その方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地には、(細胞培養培地中のフコースの濃度を0.8mM上昇させるための)フコース、(細胞培養培地中のマンガンの濃度を0.068μM±0.01μM上昇させるための)マンガンおよび、(補給後の細胞培養培地中の最終濃度が12.5~50mMの、より好ましくは15~35mMの、よりさらに好ましくは20~30mMの、最も好ましくは25mMの)タウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルは、かかる補給なしに培養した場合よりも参照糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。好ましくは、変更後のガラクトシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%である。
【0132】
さらに別の好ましい実施形態において、本発明は、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルおよびガラクトシル化プロファイルを変更する方法を提供し、その方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地には、(細胞培養培地中のフコースの濃度を0.4~1.6mM上昇させるための)フコース、(細胞培養培地中のマンガンの濃度を0.06μM~0.08μM上昇させるための)マンガンおよび、(補給後の細胞培養培地中の最終濃度が12.5~50mMの、より好ましくは15~35mMの、よりさらに好ましくは20~30mMの、最も好ましくは25mMの)タウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルおよびガラクトシル化プロファイルは、かかる補給なしに培養した場合よりも参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルおよびガラクトシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。好ましくは、変更後のフコシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%であり、変更後のガラクトシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%である。
【0133】
さらに別の好ましい実施形態において、本発明は、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルおよびガラクトシル化プロファイルを変更する方法を提供し、その方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地には、(細胞培養培地中のフコースの濃度を0.8mM上昇させるための)フコース、(細胞培養培地中のマンガンの濃度を0.06μM~0.08μM上昇させるための)マンガンおよび、(補給後の細胞培養培地中の最終濃度が12.5~50mMの、より好ましくは15~35mMの、よりさらに好ましくは20~30mMの、最も好ましくは25mMの)タウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルおよびガラクトシル化プロファイルは、かかる補給なしに培養した場合よりも参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルおよびガラクトシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。好ましくは、変更後のフコシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%であり、変更後のガラクトシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%である。
【0134】
さらに別の好ましい実施形態において、本発明は、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルおよびガラクトシル化プロファイルを変更する方法を提供し、その方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地には、(細胞培養培地中のフコースの濃度を0.4~1.4mM上昇させるための)フコース、(細胞培養培地中のマンガンの濃度を0.068μM±0.01μM上昇させるための)マンガンおよび、(補給後の細胞培養培地中の最終濃度が12.5~50mMの、より好ましくは15~35mMの、よりさらに好ましくは20~30mMの、最も好ましくは25mMの)タウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルおよびガラクトシル化プロファイルは、かかる補給なしに培養した場合よりも参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルおよびガラクトシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。好ましくは、変更後のフコシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%であり、変更後のガラクトシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%である。
【0135】
さらに別の好ましい実施形態において、本発明は、細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルおよびガラクトシル化プロファイルを変更する方法を提供し、その方法は、細胞培養培地中で組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、細胞培養培地には、(細胞培養培地中のフコースの濃度を0.8mM上昇させるための)フコース、(細胞培養培地中のマンガンの濃度を0.068μM±0.01μM上昇させるための)マンガンおよび、(補給後の細胞培養培地中の最終濃度が12.5~50mMの、より好ましくは15~35mMの、よりさらに好ましくは20~30mMの、最も好ましくは25mMの)タウリンが補給されており、生産される組換え糖タンパク質のフコシル化プロファイルおよびガラクトシル化プロファイルは、かかる補給なしに培養した場合よりも参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルおよびガラクトシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される。好ましくは、変更後のフコシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のフコシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%であり、変更後のガラクトシル化プロファイルは、参照糖タンパク質のガラクトシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%である。
【0136】
一実施形態において、前述の実施形態のいずれか1つに記載の方法は、生産された組換え糖タンパク質を細胞培養物から単離するステップをさらに含む。特定の実施形態において、単離ステップは、プロテインA精製を含む。
【0137】
本発明に従って、特に本発明の前述の実施形態のいずれか1つに従って、細胞培養が容易で、かつ組換え糖タンパク質を発現することができる任意の真核細胞または細胞型を使用することができる。たとえば、植物細胞、酵母細胞、動物細胞、昆虫細胞、鳥類細胞または哺乳動物細胞は、本発明に従って使用することができる。本発明に従って使用することができる哺乳動物細胞の例は、BALB/cマウス骨髄腫細胞株(NSO/1、ECACC No:85110503);ヒト網膜芽細胞(PER.C6(クルーセル社(CruCell)(オランダ、ライデン)));SV40(COS‐7、ATCC CRL 1651)で形質転換されたサル腎臓CVl細胞株;ヒト胎児腎臓細胞株(293細胞または、浮遊培養での増殖のためにサブクローニングされた293細胞;グラハム(Graham)ら、J. Gen Virol.、第36巻、59ページ(1977年));ベビーハムスター腎細胞(BHK、ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞±DHFR(CHO、ウアラウブ(Urlaub)およびチェイスン(Chasin)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第77巻、4216ページ(1980年))、たとえば、チャイニーズハムスター卵巣細胞株M(CHO‐M);マウスセルトリ細胞(TM4、メイザー(Mather)、Biol. Reprod.、第23巻、243~251ページ(1980年));サル腎細胞(CVl ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎細胞(VERO‐76、ATCC CRL‐1 587);ヒト子宮頸癌細胞(HeLa、ATCC CCL 2);イヌ腎細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳腺腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL5 1);TRI細胞(メイザー(Mather)ら、Annals N.Y. Acad. Sci.、第383巻、44~68ページ(1982年));MRC5細胞;およびFS4細胞を含む。
【0138】
本発明に適した真核細胞は、高レベルの糖タンパク質を生産するように選択または操作されることができる。しばしば、細胞は、たとえば目的の組換え糖タンパク質をコードする遺伝子の導入および/または目的の組換え糖タンパク質をコードする遺伝子(内在性または外来性を問わず)の発現を制御する調節因子の導入によって、高レベルの糖タンパク質を生産するように遺伝子操作される。
【0139】
真核細胞は、あるいは、または代わりに、無血清培地中での培養を可能にするように選択または操作されることもできる。
一実施形態において、真核細胞は、後にグリコシル化されるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを含む。
【0140】
別の実施形態において、少なくとも1つの糖タンパク質を発現する市販または非市販のハイブリドーマ細胞株を本発明に従って使用することができる。好ましい実施形態において、真核細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。好ましい実施形態において、CHO細胞は、後にグリコシル化されるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを含む。たとえば、CHO‐K1(ATCC CCL‐61)、CHO‐DUKX(ATCC CRL‐9096)、Lec1 ATCC CRL‐1735、CHO‐DG44(サーモフィッシャー社(ThermoFisher))、CHO‐M(セレクシス(Selexis))、CHO‐S(サーモフィッシャー社)またはCHO Pro‐5(ATCC CRL‐1781)が適している。
【0141】
特に好ましい実施形態において、真核細胞はSelexis SURE CHO‐M細胞株(CHO‐M)である。好ましい実施形態において、CHO‐M細胞は、後にグリコシル化されるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを含む。
【0142】
一実施形態において、前述の実施形態のいずれか1つに記載の方法によってそのグリコシル化プロファイルが変更される組換え糖タンパク質は、大規模に、つまり、少なくとも500または1,000リットル、好ましくは少なくとも5,000または8,000リットル、最も好ましくは10,000または20,000リットルの培養液量中で生産される。
【0143】
一実施形態において、前述の実施形態のいずれか1つに記載の方法でそのグリコシル化プロファイルが変更される組換え糖タンパク質は、小規模または実験室規模で、つまり、1、5、10または100リットルの培養液量中で生産される。
【0144】
一実施形態において、前述の実施形態のいずれか1つに記載の方法によってそのグリコシル化プロファイルが変更される組換え糖タンパク質は、IgG型の免疫グロブリンである。好ましい実施形態において、組換え糖タンパク質は抗体である。より好ましい実施形態において、組換え糖タンパク質はモノクローナル抗体である。最も好ましい実施形態において、組換え糖タンパク質は治療用モノクローナル抗体である。
【0145】
組換え糖タンパク質が生産される前述の実施形態のいずれか1つに記載の方法の細胞培養は、1~18日間、たとえば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17または18日間行うことができる。一実施形態において、細胞培養は、4~18日間、たとえば4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17または18日間行われる。好ましい実施形態において、細胞培養は、8~16日間、たとえば8、9、10、11、12、13、14、15または16日間行われる。より好ましい実施形態において、細胞培養は、10~14日間、たとえば10、11、12、13または14日間行われる。最も好ましい実施形態において、前述の実施形態のいずれか1つに記載の方法の細胞培養は、14日間行われる。
【0146】
前述の実施形態のいずれか1つに記載の方法における補給は、培養開始から培養の終了まで、継続的または非継続的に行うことができる。たとえば、添加剤または添加物の1つまたは複数の成分を、原液から1回のボーラス添加または2回以上のボーラス添加で添加することもできるし、同じ添加剤または添加物の他の成分を、フィード培地の一部として添加することもできる。さらに、添加剤または添加物のいずれか1つまたは複数の成分を、細胞培養開始から基礎培地中に存在させることができる。このように、補給は、培養開始時に行うこともでき、かつ/または、培養開始に続いて(たとえば増殖期および/または生産期において)行うこともできる。
【0147】
一実施形態において、細胞培養培地の補給は、培養開始から行われる。好ましい実施形態において、培養開始から行われる細胞培養培地の補給はタウリンの補給である。さらに好ましい実施形態において、培養開始から行われる細胞培養培地の補給は、補給後の細胞培養培地中の最終濃度が12.5~50mMのタウリンの補給である。最も好ましい実施形態において、培養開始から行われる細胞培養培地の補給は、補給後の細胞培養培地の最終濃度が25mMのタウリンの補給である。
【0148】
一実施形態において、培地の補給は、培養3日目以降に2日ごとに、好ましくはフィードの一部として行われる。好ましい実施形態において、培養3日目に以降に2日ごとに行われる培地の補給は、フコースの補給である。さらに好ましい実施形態において、培養3日目以降に2日ごとに行われる培地の補給は、細胞培養培地中のフコースの濃度を0.4~1.6mM上昇させるためのフコースの補給である。よりさらに好ましい実施形態において、培養3日目以降に2日ごとに行われる培地の補給は、細胞培養培地中のフコースの濃度を0.8mM上昇させるためのフコースの補給である。
【0149】
好ましい実施形態において、培地の補給は、培養3日目以降、培養13日目まで2日ごとに、好ましくはフィードの一部として行われる。より好ましい実施形態において、培養3日目以降、培養13日目まで2日ごとに行われる培地の補給は、フコースの補給である。より好ましい実施形態において、培養3日目以降、培養13日目まで2日ごとに行われる培地の補給は、細胞培養培地中のフコースの濃度を0.4~1.6mM上昇させるためのフコースの補給である。よりさらに好ましい実施形態において、培養3日目以降、培養13日目まで2日ごとに行われる培地の補給は、細胞培養培地中のフコースの濃度を0.8mM上昇させるためのフコースの補給である。
【0150】
一実施形態において、前述の実施形態のいずれか1つに記載の方法における培地の補給は、培養5日目以降に2日ごとに、好ましくはフィードの一部として行われる。好ましい実施形態において、培養5日目以降に2日ごとに行われる培地の補給は、マンガンの補給である。さらに好ましい実施形態において、培養5日目以降に2日ごとに行われる培地の補給は、細胞培養培地中のマンガンの濃度を0.04μM~0.08μM上昇させるためのマンガンの補給である。よりさらに好ましい実施形態において、培養5日目以降に2日ごとに行われる培地の補給は、細胞培養培地中のマンガンの濃度を0.068μM±0.01μM上昇させるためのマンガンの補給である。
【0151】
好ましい実施形態において、培地の補給は、培養5日目以降に2日ごとに行われ、培養9日目まで、好ましくはフィードの一部として行われる。さらに好ましい実施形態において、培養5日目以降に2日ごとに行われる培地の補給は、マンガンの補給である。より好ましい実施形態において、培養5日目以降に2日ごとに行われる培地の補給は、細胞培養培地中のマンガンの濃度を0.04μM~0.08μM上昇させるためのマンガンの補給である。よりさらに好ましい実施形態において、培養5日目以降に2日ごとに行われる培地の補給は、細胞培養培地中のマンガンの濃度を0.068μM±0.01μM上昇させるためのマンガンの補給である。
【0152】
好ましい実施形態において、前述の実施形態のいずれか1つに記載のマンガンによる培地の補給は、塩化マンガン(MnCl)でのマンガンの補給である。好ましい実施形態において、塩化マンガンでのマンガンの補給は、培養5日目以降に2日ごとに行われ、オプションで培養9日目まで、好ましくはフィードの一部として行われる。より好ましい実施形態において、塩化マンガンでのマンガンの補給は、細胞培養培地中のマンガンの濃度を0.04μM~0.08μM上昇させるために、培養5日目以降に2日ごとに行われ、オプションで培養9日目まで行われる。よりさらに好ましい実施形態において、塩化マンガンでのマンガンの補給は、細胞培養培地中のマンガンの濃度を0.068μM±0.01μM上昇させるために、培養5日目以降に2日ごとに行われ、オプションで培養9日目まで行われる。
【0153】
一実施形態において、前述の実施形態のいずれか1つに記載の方法における培地の補給は、培養開始からのタウリン、培養3日目以降に2日ごとのフコースおよび、培養5日目以降に2日ごとの、オプションで塩化マンガンでのマンガンの補給で行われる。好ましい実施形態において、培地の補給は、培養開始からのタウリン、培養3日目以降、培養13日目まで2日ごとのフコースおよび、培養5日目以降、培養9日目まで2日ごとの、オプションで塩化マンガンでのマンガンの補給で、好ましくはそれぞれフィードの一部として行われる。別の好ましい実施形態において、培地の補給は、補給後の細胞培養培地中の濃度が12.5~50mMの、培養開始からのタウリン、細胞培養培地中のフコースの濃度を0.4~1.6mM上昇させるための、培養3日目以降に2日ごとのフコースおよび、細胞培養培地中のマンガンの濃度を0.04μM~0.08μM上昇させるための、培養5日目以降に2日ごとの、オプションで塩化マンガンでのマンガンの補給で行われる。より好ましい実施形態において、培地の補給は、補給後の細胞培養培地中の最終濃度が12.5~50mMの、培養開始からのタウリン、細胞培養培地中のフコースの濃度を0.4~1.6mM上昇させるための、培養3日目以降、培養13日目まで2日ごとのフコースおよび、細胞培養培地中のマンガンの濃度を0.04μM~0.08μM上昇させるための、培養5日目以降、培養9日目まで2日ごとの、オプションで塩化マンガンでのマンガンの補給で行われる。別の好ましい実施形態において、培地の補給は、補給後の細胞培養培地中の最終濃度が25mMの、培養開始からのタウリン、細胞培養培地中のフコースの濃度を0.8mM上昇させるための、培養3日目以降に2日ごとのフコースおよび、細胞培養培地中のマンガンの濃度を0.068μM±0.01μM上昇させるための、培養5日目以降に2日ごとの、オプションで塩化マンガンでのマンガンの補給で行われる。最も好ましい実施形態において、培地の補給は、補給後の細胞培養培地中の最終濃度が25mMの、培養開始からのタウリン、細胞培養培地中のフコースの濃度を0.8mM上昇させるための、培養3日目以降、培養13日目まで2日ごとのフコースおよび、細胞培養培地中のマンガンの濃度を0.068μM±0.01μM上昇させるための、培養5日目以降、培養9日目まで2日ごとの、オプションで塩化マンガンでのマンガンの補給で行われる。
【0154】
一実施形態において、細胞培養培地の補給は、細胞培養の生産期に行われる。
一実施形態において、前述の実施形態のいずれか1つに記載の方法における細胞培養は、35~40℃で行われ、たとえば35、36、37、38、39もしくは40℃またはそれらの中間の任意の温度で行われる。好ましい実施形態において、細胞培養は36~38℃で行われ、たとえば36、37または38℃またはそれらの中間の任意の温度で行われる。最も好ましい実施形態において、細胞培養は37℃で行われる。
【0155】
一実施形態において、前述の実施形態のいずれか1つに記載の方法における細胞培養は、pH6~9で行われ、たとえば、pH6、7、8または9で行われる。好ましい実施形態において、細胞培養はpH7.05±0.05で行われる。
【0156】
特に好ましい実施形態において、前述の実施形態のいずれか1つに記載の細胞培養は、流加培養である。
一実施形態において、前述の実施形態のいずれか1つに記載の方法における糖タンパク質は、VEGFアンタゴニストであり、好ましくは抗VEGF抗体である(実施例1~5参照)。好ましい実施形態において、VEGFアンタゴニスト、好ましくは抗VEGF抗体のフコシル化プロファイルが変更される。より好ましい実施形態において、変更後のフコシル化プロファイルは、参照VEGFアンタゴニスト、好ましくは抗VEGF抗体のフコシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%である。別の好ましい実施形態において、VEGFアンタゴニスト、好ましくは抗VEGF抗体のガラクトシル化プロファイルが変更される。より好ましい実施形態において、変更後のガラクトシル化プロファイルは、参照VEGFアンタゴニスト、好ましくは抗VEGF抗体のガラクトシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%である。別のさらにより好ましい実施形態において、VEGFアンタゴニスト、好ましくは抗VEGF抗体のフコシル化プロファイルおよびガラクトシル化プロファイルが変更される。最も好ましい実施形態において、変更後のフコシル化プロファイルは、参照VEGFアンタゴニスト、好ましくは抗VEGF抗体のフコシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%であり、変更後のガラクトシル化プロファイルは、参照VEGFアンタゴニスト、好ましくは抗VEGF抗体のガラクトシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%である。
【0157】
一実施形態において、前述の実施形態のいずれか1つに記載の方法における糖タンパク質は、抗CD20抗体である(実施例6参照)。好ましい実施形態において、抗CD20抗体のフコシル化プロファイルが変更される。より好ましい実施形態において、変更後のフコシル化プロファイルは、参照抗CD20抗体のフコシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%である。別の好ましい実施形態において、抗CD20抗体のガラクトシル化プロファイルが変更される。より好ましい実施形態において、変更後のガラクトシル化プロファイルは、参照抗CD20抗体のガラクトシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%である。別のさらにより好ましい実施形態において、抗CD20抗体のフコシル化プロファイルおよびガラクトシル化プロファイルが変更される。最も好ましい実施形態において、変更後のフコシル化プロファイルは、参照抗CD20抗体のフコシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%であり、変更後のガラクトシル化プロファイルは、参照抗CD20抗体のガラクトシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%である。
【0158】
図面および前述の説明において本発明を詳細に例示し説明してきたが、このような例示および説明は例示または典型例とみなされるべきであって、限定とみなしてはならない。本発明は、開示された実施形態に限定されない。特許請求された発明の実施において、当業者は、図面、開示および従属請求項の検討から、開示された実施形態の他の変形を理解し、達成することができる。
【0159】
発明の詳細な説明は、本質的に単に例示であって、応用および使用を限定するものではない。以下の実施例は、本発明をさらに例示するものであるが、本発明の範囲を限定するものではない。当業者は、発明の詳細な説明に基づいて様々な改変および変更を行うことができ、このような改変および変更も本発明に含まれる。
【0160】
実施例
1.フコシル化プロファイルに対するフコース源の効果
抗VEGF抗体のフコシル化プロファイルを、ヒトにおける治療用途のために規制当局の認可を得た参照抗VEGF抗体のフコシル化プロファイルとよりよく類似するように調節するために、この場合、抗VEGF抗体のフコシル化プロファイルを、培地の補給なしに抗VEGF抗体が生産される場合よりも大きくなるように調節するために、異なる濃度でのグアノシン、フコースおよびマンノースの培地の補給およびフィードの補給の影響を試験するための一連の流加培養実験を行った。マンノースおよびグアノシンは、フコシル化のデノボ経路において重要な役割を果たしており(マンノースは、このプロセスの基質として役立ち、グアノシンは、この酵素プロセスにおける基質活性化に必要なグアノシン三リン酸の成分として役立つ)、フコースは、いわゆるフコシル化のサルベージ経路の基質として役立つ(グラマー(Gramer)ら、Biotechnol Bioeng、第108巻、1591~1602ページ(2011年))。
【0161】
細胞培養
細胞
通常のCHO K1細胞由来のチャイニーズハムスター卵巣細胞株M(CHO‐M)は、セレクシスSA社(Selexis SA、スイス)から購入した。このCHO‐M細胞を、化学的に定義された無血清G11.2基礎培地(アーバイン・サイエンティフィック US社(Irvine Scientific US))中で増殖するように順化させた。抗VEGF抗体を発現させるために、このCHO‐M細胞株に、抗VEGF抗体をコードする組換えDNAを導入する遺伝子操作を行った。
【0162】
この実験は、AMBR小規模振盪フラスコ/実験室用ベンチトップ型バイオリアクター(ザルトリウス・ステディム・バイオテック社(Sartorius Stedim Biotech GmbH)(ドイツ、ゲッティンゲン))中、1~10Lの作業容量で、または100Lプロセスバイオリアクターを用いて、実験室規模で行った。この実施例に使用した生産規模および最大培養液量は5000Lであった。
【0163】
細胞の培養
CHO‐M細胞は、好気性条件下(溶存酸素(DO)レベルは、40%に設定し、空気と純酸素ガスの混合物で調節した)で12日間培養した。pCOレベルは、必要に応じて、通気速度を調節することによって60mmHg未満に維持した。細胞は37℃で培養した。全培養期間中、12.3%(w/w)HPO溶液または0.5M NaHCO塩基溶液で、pHを7.05±0.05に維持した。グルコース制限を防止し、グルコース濃度を対象の10~30mMの対象範囲に保つために、必要に応じて、培養物に35%(w/w)グルコース溶液を添加した。発泡が認められる場合は、消泡剤を使用した。関連代謝物を毎日測定した。
【0164】
流加培養
流加培養は、初めに、化学的に定義された無血清G11.2基礎培地(アーバイン・サイエンティフィック US社)中で細胞を12日間増殖させることによって行った。培養(接種後)3日目以降、2日ごとに、ワンショット的に濃フィード溶液(フィードAおよびフィードB)を添加した。
【0165】
本実施例で使用した培地および追加添加物の供給者およびカタログ番号を以下に示す。
【0166】
基礎培地およびフィードの詳細な組成は、表1で確認できる。
【0167】
培養3、5、7、9および11日目に、全培養液量の4%の後添加フィードAおよび全培養液量の0.4%の後添加フィードBを細胞培養物に供給したが、フィードAには、さらに、グアノシン(シグマ・アルドリッチ社、カタログ番号:G6264)、フコース(L‐(-)‐フコース;シグマ・アルドリッチ社、カタログ番号:F2252)またはマンノース(D‐(+)‐マンノース;シグマ・アルドリッチ社、カタログ番号:M6020)のいずれかを、2つの異なる濃度の1つで(グアノシンは20または60mMで、フコースは10または20mMで、マンノースは20または60mMで)添加した。
【0168】
精製
プロテインAクロマトグラフィー
品質分析のために、得られた抗体を、プロテインAクロマトグラフィーを用いて発酵液からアフィニティ精製した。この捕捉は、Fc含有分子に優れた選択性を与え、それによって単一ステップで99.5%超の不純物が除去される。
【0169】
分析
生細胞密度および生存能力
生細胞密度および生存能力は、トリパンブルー染色法を用い、Countess(商標)自動細胞計数器(インビトロジェン社(カリフォルニア州カールスバッド、2008))によって測定した。
【0170】
グルコース
グルコース濃度は、Cedex Bio HT Analyzer(ロシュ社(Roche)(ドイツ、マンハイム))によって測定した。
【0171】
pCO2
溶存二酸化炭素含量(pCO2)は、ABL80血液ガス分析装置(ラジオメーター社(Radiometer)(デンマーク、ブレンスホイ))によって測定した。
【0172】
pH測定
in situ pHメータ再校正のためのアットラインpH測定は、S47SevenMulti pHメータ(メトラー・トレド社(Mettler Toledo)(スイス、チューリッヒ))を用いて行った。
【0173】
重量オスモル濃度
重量オスモル濃度は、Advanced Model 2020 マルチサンプル浸透圧計(アドバンスト・インストルメンツ社(Advanced Instruments)(マサチューセッツ州ノーウッド))によって測定した。
【0174】
力価
タンパク質力価は、プロテインAアフィニティHPLCによって測定した。
グリコシル化プロファイル
本発明の抗体のN‐グリカンプロファイルは、次のとおりに測定した:PNGase Fを用いた、37℃で3時間のオンカラム消化によるそれぞれの抗体試料の変性および脱グリコシル化の後、N‐グリカンを蛍光標識試薬(2‐AB)で標識した。過剰の色素は、クリーンアップカートリッジ(HILIC)を用いて、標識されたN‐グリカンから分離した。次いで、アミド固定相による親水性相互作用液体クロマトグラフィー(HILIC‐UHPLC)を用いて、標識され精製されたN‐グリカンを分離し、蛍光検出を用いて、標識されたグリカンの相対量を測定した。具体的には、抗体(200mg、350ml)を、Nanosep(登録商標)遠心装置(ポール社(Pall)、米国)を使ってギ酸アンモニウム緩衝液(10mM、pH8.6)に緩衝液交換した。48mlの試料を、2mlのPNGase F(500,000U/ml、ニュー・イングランド・バイオラボ社(New England Biolabs))で、45℃で1時間インキュベートすることによってN‐グリコシド結合オリゴ糖を放出させた。放出されたグリカンを、65℃で2時間、2‐ABで標識した(Glyko(登録商標)Signal 2‐AB Labeling Kit、プロザイム社(ProZyme))。過剰の2‐ABは、真空ステーションを備えたHyperSep‐96Diolカートリッジ(サーモ社(Thermo))を用いて除去した。標識されたグリカンを96%アセトニトリルで洗浄し、カートリッジから溶出し、Dionex RSLC Ultimate 3000RSまたはWaters ACQUITY UPLC(登録商標)システム上で、Waters BEH Glycan Separation Technologyカラム(2.1×150mm、1.7mm)を用いてHILIC‐UHPLCにより分析した。45分間のアセトニトリル勾配を適用し、蛍光シグナルは420nm(励起:330nm)で検出した。Chromeleon(著作権)ソフトウェアを用い、既定のパラメータに従ってピークを自動的に積分し、グリカンの相対組成を算出した。HILICおよびHILIC‐UHPLCについては、ロイシュ(Reusch)ら、mAbs、第7巻、1号、167~179ページ(2015年)でより詳細に説明されている。
【0175】
放出されたグリカンの量は、対応するピークの面積%値を用いて算出した。本発明の抗体の4つの主要グリカン(G0F、G1F、G1’F、G2F)を、それぞれの参照抗体と比較して評価した。抗VEGF抗体の判定基準は、G0F:≧73.4面積%、G1F:4~12.9面積%、G1’F:2.3~5.6面積%、G2F:0.5~1.7面積%、全主要アフコシル化(MAF):1.9~3.7面積%であった。抗CD20抗体の判定基準は、G0F:40~56面積%;G1F:28~38面積%;G1’F:9~13面積%およびG2F:5~12面積%であった。
【0176】
結果
培養12日後の抗VEGF抗体の全主要アフコシル化型に対する異なる添加物の影響を図1に示す。
【0177】
流加培養実験は、試験したフコースの代替物質であるグアノシンおよびマンノースと比較して、フコースを補給したフィードは、抗VEGF抗体の全主要アフコシル化型(MAF)の最も顕著な減少をもたらすことを示した。グアノシンを補給したフィードは、60mMのより高い試験濃度で、全MAFの減少に2番目によいと思われた。これは、10mMという、試験した、より低いフコース濃度において全MAFの減少に最も有効であった、フコースを補給したフィード後の測定結果と対照的であった。マンノースの場合も同様であり、60mMのマンノース補給フィードと比較して、全主要アフコシル化型の減少に、20mMの低濃度がより効率的であった。したがって、さらなる実験のためにフコースを選択した。
【0178】
2.フコシル化プロファイルに対するフコースの濃度依存的な影響
抗VEGF抗体のフコシル化プロファイルに対するフコースの影響をさらに分析するために、さまざまなフコースの濃度でのフィード培地の補給の影響を試験するための一連の流加培養実験を行った。
【0179】
特に記載のない限り、細胞培養、単離および分析は、上記実施例と同様に行った。
流加培養は、12日間行った。培養3、5、7、9および11日目に、全培養液量の4%の後添加フィードAおよび全培養液量の0.4%の後添加フィードBを細胞培養物に供給したが、フィードAには、さらに、フコース(L‐(-)‐フコース;シグマ・アルドリッチ社、カタログ番号:F2252)を、10mM、20mMまたは40mMのいずれかの濃度で添加した。
【0180】
結果
それぞれのフコース含有フィードの添加による抗VEGF抗体の全主要アフコシル化型の濃度依存的な減少を図2に示す。
【0181】
前述の参照抗VEGF抗体に対する抗VEGF抗体の生物学的類似性は、全主要アフコシル化型(MAF)、すなわちフコシル化プロファイルの点で改善された。この流加培養実験は、培地がフコースを欠く対照実験と比較して、培養12日目に測定された抗VEGF抗体の全主要アフコシル化型が、すべての試験濃度でのフコースのフィードによって減少しており、それは、参照抗VEGF抗体の全MAFの量に対するよりよい類似をもたらすことを示した。全MAFのこの減少は、最も顕著な減少が、40mMの濃度でフコースをフィードしたとき実現されたため、濃度依存的であった。しかしながら、細胞培養の重量オスモル濃度の上昇と、それに伴う望ましくない副次的影響とを防止するために、20mMの濃度でフコースを添加したフィードをさらなる実験のために選択した。20mMフコースでのフィードの補給は、参照抗VEGF抗体のフコシル化プロファイルとよりよく類似した抗VEGF抗体のフコシル化プロファイルをもたらすが、抗VEGF抗体のガラクトシル化度は、参照抗VEGF抗体と比較すると許容範囲を下回った。
【0182】
3.グリコシル化プロファイルに対するマンガンの濃度依存的な効果
参照抗VEGF抗体のガラクトシル化プロファイルとよりよく類似するように抗VEGF抗体のガラクトシル化プロファイルを変更するために、様々な時点での、β‐1,4‐ガラクトシルトランスフェラーゼの補因子であるマンガンのさまざまな濃度でのフィードの補給の影響を試験するための一連の流加培養実験を行った。
【0183】
特に記載のない限り、細胞培養、単離および分析は、実施例1と同様に行った。
流加培養は、11日間行った。培養3、5、7および9日目;5、7および9日目;7および9日目;または9日目に、表2に示した濃度で、塩化マンガン(II)四水和物(MnCl 4HO;シグマ・アルドリッチ社、カタログ番号:M5005)の形でフィードAにマンガンを補給した。
【0184】
結果
マンガンのフィードの補給によるグリコシル化プロファイル分析の結果を表2に示す。ガラクトシル化に対するマンガン添加の最も好ましい効果は、細胞を、最も高い特異的生産性で特徴づけることができる期間内の培養5日目~9日目に認めることができる。結果として、フィードAには、次の流加実験において、培養5、7および9日目に1.7μMの塩化マンガンを補給した。抗VEGF抗体のガラクトシル化プロファイルは、マンガンのフィードの補給によって改善することができるであろうが、マンガン添加が、アフコシル化グリコフォームレベルのかなりの上昇をもたらすことも認められる(たとえばG0はマンガンによって増加し、G0Fはマンガンによって減少する)。参照抗VEGF抗体のフコシル化プロファイルとよりよく類似するように抗VEGF抗体のフコシル化プロファイルを変更するために、さらなる培地の補給を考慮する必要があった。
【0185】
4.フコシル化プロファイルに対するタウリン補給の効果
重量オスモル濃度の望ましくない上昇と、次の実験のために計画された14日間に向けての細胞培養時間の延長によるさらなるフコシル化の抑制とに対処するために、細胞培養培地に浸透圧保護剤を添加する一連の流加培養実験を行った。タウリン補給は、細胞培養で生産される糖タンパク質の力価を上昇させることもできることは当該技術分野から公知であるため、可能性のある浸透圧保護剤としてタウリンが選択された。
【0186】
特に記載のない限り、細胞培養、単離および分析は、実施例1と同様に行った。
流加培養は、14日間行った。培養開始時(接種後0日目)に12.5mM、25mMまたは50mMの濃度で培地にタウリン(シグマ・アルドリッチ社、カタログ番号:T4571)を補給した。さらに、培養5、7および9日目に、1.7μMの濃度で、塩化マンガン(II)四水和物(MnCl 4HO;シグマ・アルドリッチ社、カタログ番号:M5005)の形でフィードAにマンガンを補給した。
【0187】
結果
基礎培地のタウリン補給による抗VEGF抗体の全主要アフコシル化型に対する濃度依存的な影響を図3に示す。
【0188】
驚くべきことに、基礎培地のタウリン補給による抗VEGF抗体の全主要アフコシル化型の濃度依存的な減少が認められた。この流加培養実験は、タウリンを欠く基礎培地における培養と比較して、培養14日後の抗VEGF抗体の全主要アフコシル化型(MAF)の量が、タウリンを補給したすべての培養物において減少したことを示した。高濃度のタウリン補給(50mM)は、参照抗VEGF抗体のフコシル化プロファイルのそれぞれの範囲に最も近いフコシル化プロファイルを示した。それにもかかわらず、細胞培養の重量オスモル濃度のさらなる上昇を防止し、かつ浸透圧保護剤としてのタウリンの作用を維持するために、次の実験のために、培地の補給のために25mMの濃度のタウリンを選択した。
【0189】
5.グリコシル化プロファイルに対するフコース、マンガンおよびタウリンの補給の効果
次に、フコースおよびマンガンのフィードの補給に加えた、基礎培地のタウリン補給による抗VEGF抗体のグリコシル化プロファイルの変更可能性を調べた。
【0190】
特に記載のない限り、細胞培養、単離および分析は、実施例1と同様に行った。
細胞培養
細胞
通常のCHO K1細胞由来のチャイニーズハムスター卵巣細胞株M(CHO‐M)は、セレクシス社(スイス)から購入した。このCHO‐M細胞を、化学的に定義された無血清G11.2基礎培地(アーバイン・サイエンティフィック US社)中で増殖するように順化させた。抗VEGF抗体を発現させるために、このCHO‐M細胞株に、抗VEGF抗体をコードする組換えDNAを導入する遺伝子操作を行った。
【0191】
流加培養
流加培養は、培養開始時(接種後0日目)に25mMのタウリン(シグマ・アルドリッチ社、カタログ番号:T4571)を添加した、化学的に定義された無血清基礎培地G11.2(アーバイン・サイエンティフィック US社)中で細胞を増殖させることによって14日間行った。
【0192】
培養(接種後)3日目以降、2日ごとに、20mMのフコースを添加した全培養液量の4%の後添加フィードAおよび、全培養液量の0.4%の後添加フィードBを、別々にワンショット的に培地に添加した。さらに、培養(接種後)5、7および9日目に、フィードA中1.7μMの濃度で、塩化マンガン(II)四水和物(MnCl 4HO;シグマ・アルドリッチ社、カタログ番号:M5005)の形でフィードAにマンガンを補給した。
【0193】
実施例5で使用した培地および追加添加物の供給者およびカタログ番号を以下に示す。
【0194】
実施例5で使用した基礎培地およびフィードの詳細な組成は、表3で確認できる。
【0195】
結果
抗VEGF抗体の全主要アフコシル化型に対するタウリン、フコースおよびマンガンの効果を図4に示す。
【0196】
この流加培養実験は、タウリンおよびフコースを欠く基礎培地における培養と比較して、培養14日後の抗VEGF抗体の全主要アフコシル化型(MAF)の量を、基礎培地に25mMのタウリンを添加することによって減少させることができるであろうことを示した。さらに、抗VEGF抗体の全MAFの量は、タウリン含有細胞培養物への20mMのフコースフィードの実施によって減少させることができるであろう。細胞培養物へのタウリンおよびフコースの添加の相乗効果は、参照抗VEGF抗体のフコシル化プロファイルのそれぞれの範囲内に十分に適合するフコシル化プロファイルをもたらす。
【0197】
図5は、培養(接種後)3日目以降の発酵液試料の毎日の分析によるフコシル化プロファイルを示す。
この分析は、1.7μMのマンガンのフィードの補給と、1.7μMのマンガンのフィードの補給と組み合わせた25mMのタウリンの培地の補給とに組み合わせた、20mMのフコースのフィードの補給が、単独で、全主要アフコシル化グリコフォーム(MAF)を減少させることができるであろうことを示している(図5の点線ストライプの線およびストライプの線)。しかしながら、最も低いMAFプロファイルは、3つすべての成分が一緒に補給されたときにのみ認められた(図5の点線)。このMAFプロファイルは、十分に全MAFプロファイルの範囲内、すなわち、参照抗VEGF抗体のフコシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%であった。
【0198】
同様に、毎日の分析による、それぞれの試料の非ガラクトシル化グリコフォーム(G0)のプロファイルを図6に示す。
これらの実験は、1.7μMのマンガンのフィードの補給と、1.7μMのマンガンのフィードの補給と組み合わせた25mMのタウリンの培地の補給とに組み合わせた、20mMのフコースのフィードの補給が、単独で、非ガラクトシル化グリコフォーム(G0)の量を減少させることができるであろうことを示している(図6中の点線ストライプの線およびストライプの線)。それにもかかわらず、ガラクトシル化プロファイルの範囲内である、すなわち参照抗VEGF抗体のガラクトシル化プロファイルの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%である最も低いG0プロファイルは、3つすべての成分がそれぞれ培地およびフィード中に補給されたときにのみ認められた(図6中の点線)。要するに、タウリン、マンガンおよびフコースによる培養物の併用補給によって、参照抗VEGF抗体への抗VEGF抗体の類似性は、非ガラクトシル化グリコフォーム(G0)のプロファイル、すなわちガラクトシル化プロファイルの観点から改善されることができるであろう。
【0199】
6.グリコシル化プロファイルに対するフコース、マンガンおよびタウリンの 補給の効果
抗CD20抗体を用いた類似した流加実験において、フコース、マンガンおよびタウリンによる培地の補給によるグリコシル化プロファイルの変更に関して同じ効果を実現することができるであろう。
【0200】
特に記載のない限り、細胞培養、フィーディングスキーム、単離および分析は、実施例5と同様に行った。
流加培養は、培養開始時(接種後0日目)に25mMのタウリン(シグマ・アルドリッチ社、カタログ番号:T4571)を添加した、化学的に定義された無血清基礎培地G11.2(アーバイン・サイエンティフィック US社)中で細胞を増殖させることによって12日間行った。
【0201】
培養(接種後)3日目以降、2日ごとに、20mMのフコースを添加した全培養液量の4%の後添加フィードAおよび、全培養液量の0.4%の後添加フィードBを、別々にワンショット的に培地に添加した。さらに、培養(接種後)5、7および9日目に、フィードA中1.7μMの濃度で、塩化マンガン(II)四水和物(MnCl 4HO;シグマ・アルドリッチ社、カタログ番号:M5005)の形でフィードAにマンガンを補給した。
【0202】
結果
表4は、培養(接種後)3日目以降の発酵液試料の毎日の分析による、抗CD20抗体ベースのグリコシル化プロファイルに対する異なるフィードの補給戦略の効果を示す。
【0203】
糖分析は、フコースを補給したフィードを供給された、タウリンを補給した培地中での3日または4日の培養は、抗CD20抗体のフコシル化プロファイルおよびガラクトシル化プロファイルに対して効果を示さなかったことを示している。培養5日目以降においてのみ、細胞培養物に、フコースおよびマンガンを補給したフィードが添加された場合に、すなわち、フコース、マンガンおよびタウリンの3つすべての成分が細胞培養物中に存在する場合に、抗CD20抗体のフコシル化プロファイルおよびガラクトシル化プロファイルを、参照抗CD20抗体のそれぞれのフコシル化プロファイルおよびガラクトシル化プロファイルとよりよく類似するように変更することができるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-06-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞培養で生産される組換え糖タンパク質のグリコシル化プロファイルを変更する方法であって、
前記方法は、細胞培養培地中で前記組換え糖タンパク質を発現する真核細胞を培養することを含み、前記細胞培養培地にはフコース、マンガンおよびタウリンが補給されており、
前記生産される組換え糖タンパク質のグリコシル化プロファイルは、前記補給なしに培養した場合よりも参照糖タンパク質のグリコシル化プロファイルとよりよく類似するように変更される、方法。
【外国語明細書】