(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112846
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】網膜色素上皮移植のためのフィブリン支持体を用いた方法及び材料
(51)【国際特許分類】
A61L 27/38 20060101AFI20240814BHJP
A61L 27/22 20060101ALI20240814BHJP
A61L 27/52 20060101ALI20240814BHJP
C12N 5/071 20100101ALN20240814BHJP
【FI】
A61L27/38 100
A61L27/22
A61L27/38 300
A61L27/52
C12N5/071 ZNA
C12N5/071
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024076448
(22)【出願日】2024-05-09
(62)【分割の表示】P 2022011439の分割
【原出願日】2017-11-13
(31)【優先権主張番号】62/431,259
(32)【優先日】2016-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.MATLAB
(71)【出願人】
【識別番号】501083115
【氏名又は名称】メイヨ・ファウンデーション・フォー・メディカル・エデュケーション・アンド・リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マーモスタイン,アラン ディー.
(72)【発明者】
【氏名】イエジ,レイモンド
(72)【発明者】
【氏名】ガンジー,ジャレル ケー.
(72)【発明者】
【氏名】プリド,ホセ エス.
(57)【要約】 (修正有)
【課題】網膜色素上皮移植を行うための方法及び材料を提供する。
【解決手段】(a)頂端面及び基底面を有する網膜色素上皮単層と、(b)該単層の該頂端面に付着したフィブリンヒドロゲル層とを含む網膜移植物を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)頂端面及び基底面を有する網膜色素上皮単層と、(b) 該単層の該頂端面に付着したフィブリンヒドロゲル層とを含む網膜移植物。
【請求項2】
前記フィブリンヒドロゲル層が約20μm~約400μm厚である、請求項1に記載の移植物。
【請求項3】
前記移植物がプラスミノーゲンを含む、請求項1~2のいずれか1項に記載の移植物。
【請求項4】
前記移植物が、1mL当たり約0.1Uのプラスミノーゲンから1mL当たり約40Uのプラスミノーゲン、又は1mL当たり約0.001Uのプラスミノーゲンから1mL当たり約40Uのプラスミノーゲンを含む、請求項1~2のいずれか1項に記載の移植物。
【請求項5】
網膜移植物の作製方法であって、
(a)頂端面及び基底面を有する網膜色素上皮単層を取得すること、並びに
(b)前記単層の前記頂端面上にフィブリノーゲン及びトロンビンのコーティングを沈着させること
を含む、上記方法。
【請求項6】
前記コーティングが約20μm~約400μm厚である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記コーティングが1mL当たり約20mgのフィブリノーゲンから1mL当たり約80mgのフィブリノーゲンを含む、請求項5~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記コーティングが1mL当たり約2Uのトロンビンから1mL当たり約1500Uのトロンビンを含む、請求項5~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記方法が、前記単層の前記頂端面上にプラスミノーゲンを沈着させることを含む、請求項5~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記コーティングが、1mL当たり約0.1Uのプラスミノーゲンから1mL当たり約40Uのプラスミノーゲン、又は1mL当たり約0.001Uのプラスミノーゲンから1mL当たり約40Uのプラスミノーゲンを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
プロテアーゼ阻害剤又は抗線維素溶解剤を含む培地中でフィブリン基底支持基質上で網膜上皮細胞を培養することを含む、網膜移植物の作製方法。
【請求項12】
前記培地が前記プロテアーゼ阻害剤を含み、前記プロテアーゼ阻害剤がアプロチニンである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記培地が、1mL当たり約5Uのアプロチニンから1mL当たり約500Uのアプロチニンを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記培地が前記抗線維素溶解剤を含み、前記抗線維素溶解剤がトラネキサム酸(transexamic acid)又はアミノカプロン酸である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記培地がプラスミノーゲンをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記培地が、1mL当たり約0.1Uのプラスミノーゲンから1mL当たり約40Uのプラスミノーゲン、又は1mL当たり約0.001Uのプラスミノーゲンから1mL当たり約40Uのプラスミノーゲンを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記フィブリン基底支持基質が内皮細胞を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記内皮細胞が、iPSC由来内皮細胞、血管内皮前駆細胞(BOEC)、内皮コロニー形成細胞(ECFC)、内皮前駆細胞(EPC)、及び臍静脈内皮細胞(UVEC)からなる群より選択される供与源から取得されたものである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
(a) 頂端面及び基底面を有する網膜色素上皮単層と、(b) 該単層の該基底面に付着したフィブリンヒドロゲル層とを含む網膜移植物。
【請求項20】
前記フィブリンヒドロゲル層が約20μm~約400μm厚である、請求項19に記載の移植物。
【請求項21】
前記移植物がプラスミノーゲンを含む、請求項19~20のいずれか1項に記載の移植物。
【請求項22】
前記移植物が、1mL当たり約0.1Uのプラスミノーゲンから1mL当たり約40Uのプラスミノーゲン、又は1mL当たり約0.001Uのプラスミノーゲンから1mL当たり約40Uのプラスミノーゲンを含む、請求項19~20のいずれか1項に記載の移植物。
【請求項23】
前記フィブリンヒドロゲル層がコーティングを含む、請求項19~22のいずれか1項に記載の移植物。
【請求項24】
前記コーティングが、基底膜タンパク質、マトリゲル(matrigel)、又はgeltrexを含む、請求項23に記載の移植物。
【請求項25】
網膜移植物の作製方法であって、
(a)フィブリンヒドロゲル層を取得すること、
(b)前記フィブリンヒドロゲル層の表面を剤でコーティングすること、並びに
(c)前記コーティング上に頂端面及び基底面を有する網膜色素上皮単層を形成することであって、前記基底面が前記頂端面よりも前記フィブリンヒドロゲル層に近いものである、
を含む、上記方法。
【請求項26】
前記フィブリンヒドロゲル層が約20μm~約400μm厚である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記フィブリンヒドロゲル層が、1mL当たり約20mgのフィブリノーゲンから1mL当たり約80mgのフィブリノーゲンを含む、請求項25~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記フィブリンヒドロゲル層が、1mL当たり約2Uのトロンビンから1mL当たり約1500Uのトロンビンを含む、請求項25~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記フィブリンヒドロゲル層が、1mL当たり約0.1Uのプラスミノーゲンから1mL当たり約40Uのプラスミノーゲン、又は1mL当たり約0.001Uのプラスミノーゲンから1mL当たり約40Uのプラスミノーゲンを含む、請求項25~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
プロテアーゼ阻害剤又は抗線維素溶解剤を含む培地中でフィブリン基底支持基質上で網膜上皮細胞を培養することを含む、網膜移植物の作製方法。
【請求項31】
前記培地が前記プロテアーゼ阻害剤を含み、前記プロテアーゼ阻害剤がアプロチニンである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記培地が1mL当たり約5Uのアプロチニンから1mL当たり約500Uのアプロチニンを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記培地が抗線維素溶解剤を含み、前記抗線維素溶解剤がトラネキサム酸(transexamic acid)又はアミノカプロン酸である、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記培地がプラスミノーゲンをさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
前記培地が、1mL当たり約0.1Uのプラスミノーゲンから1mL当たり約40Uのプラスミノーゲン、又は1mL当たり約0.001Uのプラスミノーゲンから1mL当たり約40Uのプラスミノーゲンを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記フィブリン基底支持基質が内皮細胞を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項37】
前記内皮細胞が、iPSC由来内皮細胞、血管内皮前駆細胞(BOEC)、内皮コロニー形成細胞(ECFC)、内皮前駆細胞(EPC)、及び臍静脈内皮細胞(UVEC)からなる群より選択される供与源から取得される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記フィブリン基底支持基質がコーティングを含む、請求項30~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記コーティングが、基底膜タンパク質、マトリゲル(matrigel)、又はgeltrexを含む、請求項38に記載の移植物。
【請求項40】
前記コーティングが、前記フィブリン基底支持基質上での前記網膜上皮細胞の培養前に存在していたものである、請求項38に記載の移植物。
【請求項41】
前記フィブリン基底支持基質がRPE下組織細胞集団を含む、請求項11又は30に記載の方法。
【請求項42】
前記RPE下組織細胞集団が、メラニン形成細胞、周皮細胞、又は線維芽細胞を含む、請求項41に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.技術分野
本文書は網膜色素上皮移植に関する。例えば、本文書は、網膜色素上皮移植のためにフィブリン支持体を使用するための方法及び材料に関する。
【背景技術】
【0002】
2.背景情報
黄斑変性疾患は、種々の疾患及び病因を表すが、一般的に網膜色素上皮(RPE)機能不全に由来する。ベストロフィノパチーを含む遺伝的黄斑変性は、RPE機能に関与するタンパク質変異のために起こる。ベストロフィノパチー(例えばベスト病)はBest1遺伝子の突然変異から生じ、RPE機能不全を引き起こし、最終的には光受容体が死に至る。罹患率は以前に16,000~21,500人に1人と報告されている(Dalvin et al., Ophthalmic Genet., Epub:1-5 (2016))。遺伝的に生じる黄斑変性は稀であるが、加齢黄斑変性(AMD)は先進国において失明の主な原因である。それは2050年に米国で500万の症例を占めると推定されている。AMDは直接RPE機能に影響を与える免疫と血管機能のより複雑な疾患である。
【0003】
黄斑変性の治療としてのRPE置換は、最近の歴史において一般的な焦点となっている。幹細胞技術における現代の進歩は、胚性(ES)幹細胞及び人工多能性(IPS)幹細胞を移植のための魅力的な候補にした。複数の報告が、両方の幹細胞供給源をRPE系統に分化させる能力を示している(Sonoda et al., Nat. Protoc., 4:662-673 (2009);Johnson et al., Ophthalmol. Vis. Sci., 56:4619 (2015);Brandl et al., NeuroMolecular Med., 16:551-564 (2014);Idelson et al., Cell Stem Cell., 5:396-408 (2009);Carr et al., Mol. Vis., 15:283-295 (2009))。ES-RPE及びIPS-RPEの両方は、細胞マーカー、食作用、及び色素沈着などの正常なRPE機能を示すことが示されている(Singh et al., Ophthalmol. Vis. Sci., 54:6767-6778 (2013))。
【発明の概要】
【0004】
本文書はRPE移植に関する。RPE移植のin vitroでの成功は達成されているが、臨床応用への翻訳において多くの困難が生じている。最も初期の試験は、乾燥AMD患者において網膜下腔にRPE単一細胞懸濁液を送達することを試みた(Peyman et al., Ophthalmic Surg., 22:102-108 (1991);及びSchwartz et al., The Lancet., 379:713-720 (2012))。有害反応は報告されていないため、これらの研究は安全性の有効性を示した(Schwartz et al., The Lancet., 379:713-720 (2012);Schwartz et al., The Lancet., 385:509-516 (2015);及びSchwartz et al., Ophthalmol. Vis. Sci., 57:ORSFc1-9 (2016))。しかしながら、移植は、低い割合のRPE付着及び生存を特徴としている。予想通り、視力の大きな改善は検出されなかった(Schwartz et al., The Lancet., 385:509-516 (2015))。
【0005】
上皮として、細胞間接触はRPEの生存及び機能に関与している。その後の試験では、移植用のRPE単層の増殖に焦点が当てられている。最近の研究では、RPEのコラーゲンゲル培養物及び移植の前に単層を単一ユニットとして分離するためのコラゲナーゼの使用が利用されていた(Kamao et al., Stem Cell Rep., 2:205-218 (2014);及びSun et al., Stem Cells, 33:1543-1553 (2015))。このモデルを支持されていないRPE単層に移植する動物実験は、移植後の付着細胞生存率の改善を示した。しかし、提示された懸念は、外科的処置を通して平坦でしわのない単層を維持することができないことであった。そのように、細胞付着は、標的外及び凝集表現型を伴って見られる。この手法を用いた最初のヒト試験が行われ(Mandai et al., N Eng J Med., 376:1038-1046 (2017))、そして臨床試験が進行中である。
【0006】
単層の維持を克服するために、一般的な組織工学手法は、分化プロセス及びその後の移植の間にRPEに対する基底支持体として合成ポリマー基質を利用することであった。現在臨床試験中の2つの材料には、パリレン(parylene)(Hu et al., Ophthalmic Res., 48:186-191 (2012);及びDiniz et al., Invest. Ophthalmol. Vis. Sci., 54:5087-5096 (2013))及びポリエステル(Stanzel et al., Stem Cell Rep., 2:64-77 (2014))が含まれる。これらの材料は、微細孔を作り出し、細胞接着を改善するように改変することができる(Lu et al., Biomed. Microdevices, 14:659-667 (2012);McHugh et al., Invest. Ophthalmol. Vis. Sci., 55:1754-1762 (2014);及びLai et al., PLoS ONE. 8:e54058 (2013))。これらの材料はまたゆっくり分解し、長いRPE分化プロトコルを通して細胞の培養を可能にする。このゆっくりとした分解のために、材料は数ヶ月から数年間移植後にRPEと脈絡膜との間に留まることができ、慢性炎症及び線維症、低い透過性及び潜在的に低減したRPE生存の懸念を引き起こす。さらに、材料の剛性のために、以前の動物実験で見られたように、基礎となる脈絡膜への損傷の懸念がある(Diniz et al., Invest. Ophthalmol. Vis. Sci., 54:5087-5096 (2013))。
【0007】
本文書は、RPE移植のためにフィブリン支持体を使用するための方法及び材料を提供する。フィブリンは、その自己重合性モノマーへの前駆体の活性化後に自発的に形成される架橋原線維(fibril)ネットワークであり得る。フィブリンは、典型的に、創傷治癒中に生理学的に形成する凝血塊を作り上げ、そして活性化、形成、分解及びクリアランスの十分に特徴付けられたカスケードを有する(Undas et al., Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol., 31:e88-e99 (2011))。例えば、フィブリンゲルは、プラスミノーゲンのプラスミンへの活性化、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)のような酵素により活性化されるプロセスを介して迅速に分解され得る。フィブリンは、フィブリン糊と呼ばれることが多く、軟部組織の外科的切開中に天然シーラントとして診療所で使用されており、市販されている。本明細書で使用されるフィブリンは、高度に接着性であり得、生体力学的剛性を有し得、生体適合性であり得、そして分解性であり得る。
【0008】
RPE移植のための基質としてのフィブリンの適合性を確認するため、フィブリンヒドロゲルが薄層を形成する特性、時間のスケールでの分解のための定義されたパラメータを有する硬質ヒドロゲルを変化させた。次に、最適化条件をiPSC-RPE単層に適用した。フィブリン-RPE(FRPE)移植物を剥離する能力を調べた。移植のための細胞の潜在的な有効性を保証するために、in vitroでの細胞生存率及び表現型を、ヒドロゲル分解を含む各ステップ後に評価した。本明細書に記載のように、フィブリンヒドロゲルは、RPE移植のための一時的な頂端支持又は基底支持基質として使用することができる。例えば、RPE移植は、本明細書に提供されるRPE単層/フィブリン移植物を使用して行うことができる。フィブリン足場は、改善されたRPE付着のために、RPE単層の頂端側又は基底側にあり得る。いくつかの場合において、RPEはフィブリン支持体上で増殖させて基底支持体を有する単層を開発することができる。これらの培養物は移植用の個々の単位を開発するために切断することができる。他の例では、フィブリン足場は、改善されたRPE付着のためにRPE単層の頂端側にあり得る。いくつかの場合において、複数(例えば、2、3、4又はそれ以上)のRPE単層/フィブリン移植物のモジュラータイリング(modular tiling)は広い範囲の被覆を提供することができ、そしてレーザー鋲付を使用して送達位置の正確さを可能にすることができる。いくつかの場合において、フィブリン足場は、例えばtPAを用いて、手術中に制御された条件下で分解することができる。
【0009】
一般には、本文書の一態様は、(a)頂端面及び基底面を有する網膜色素上皮単層と、(b)該単層の該頂端面及び/又は基底面に付着したフィブリンヒドロゲル層とを含む、又はそれらから本質的になる網膜移植物を特徴とする。フィブリンヒドロゲル層は、約20μm~約400μm厚であり得る。移植物はプラスミノーゲンを含み得る。移植物は、1mL当たり約0.1Uのプラスミノーゲンから1mL当たり約40Uのプラスミノーゲンを含み得る。いくつかの場合において、移植物は、1mL当たり約0.001Uのプラスミノーゲンから1mL当たり約40Uのプラスミノーゲンを含み得る。いくつかの場合において、フィブリンヒドロゲル層は同系細胞で(autologously)取得され得る。
【0010】
別の態様において、本文書は、網膜又は網膜下移植物の作製方法を特徴とする。この方法は、(a)頂端面及び基底面を有する網膜色素上皮単層を取得すること、並びに(b)前記単層の前記頂端面上にフィブリノーゲン及びトロンビンのコーティングを沈着させることを含む、又はそれらから本質的になる。コーティングは、約20μm~約400μm厚であり得る。方法のコーティングは、1mL当たり約20mgのフィブリノーゲンから1mL当たり約80mgのフィブリノーゲンを含み得る。方法のコーティングは、1mL当たり約2Uのトロンビンから1mL当たり約1500Uのトロンビンを含み得る。方法は、前記単層の前記頂端面上にプラスミノーゲンを沈着させることを含み得る。方法は、前記単層の前記頂端面上にフィブリンヒドロゲル内のプラスミノーゲンを沈着させることを含み得る。方法のコーティングは、1mL当たり約0.1Uのプラスミノーゲンから1mL当たり約40Uのプラスミノーゲンを含み得る。いくつかの場合において、移植物は、1mL当たり約0.001Uのプラスミノーゲンから1mL当たり約40Uのプラスミノーゲンを含み得る。
【0011】
別の態様において、本文書は、網膜又は網膜下移植物の作製方法を特徴とする。この方法は、プロテアーゼ阻害剤又は抗線維素溶解剤(例えば、小分子プロテアーゼ阻害剤)を含む培地中でフィブリン基底支持基質上で網膜上皮細胞を培養することを含む、又はそれから本質的になる。培地はプロテアーゼ阻害剤を含み得、プロテアーゼ阻害剤はアプロチニンであり得る。培地は、1mL当たり約5Uのアプロチニンから1mL当たり約500Uのアプロチニンを含み得る。培地はプラスミノーゲンをさらに含んでもよい。培地は、1mL当たり約0.1Uのプラスミノーゲンから1mL当たり約40Uのプラスミノーゲン(例えば、1mL当たり0.1Uのプラスミノーゲンから1mL当たり約30Uのプラスミノーゲン)を含み得る。いくつかの場合において、移植物は、1mL当たり約0.001Uのプラスミノーゲンから1mL当たり約40Uのプラスミノーゲンを含み得る。一部の例において、プラスミノーゲンは、移植の直前に培地に添加され得る。フィブリン基底支持基質は内皮細胞を含み得る。いくつかの場合において、内皮細胞は、iPSC由来内皮細胞、血管内皮前駆細胞(BOEC)、内皮コロニー形成細胞(ECFC)、内皮前駆細胞(EPC)、及び臍静脈内皮細胞(UVEC)からなる群より選択される供与源から取得されたものである。フィブリン基底支持基質は、RPE下(sub-RPE)組織細胞集団を含み得る。RPE下組織細胞集団は、メラニン形成細胞、周皮細胞、又は線維芽細胞を含み得る。いくつかの場合において、フィブリン基底支持基質は、同系細胞で(autologously)取得され得る。
【0012】
別の態様において、本文書は、(a)頂端面及び基底面を有する網膜色素上皮単層と、(b) 該単層の該基底面に付着したフィブリンヒドロゲル層とを含む網膜移植物を特徴とする。フィブリンヒドロゲル層は、約20μm~約400μm厚であり得る。移植物はプラスミノーゲンを含み得る。移植物は、1mL当たり約0.1Uのプラスミノーゲンから1mL当たり約40Uのプラスミノーゲン、又は1mL当たり約0.001Uのプラスミノーゲンから1mL当たり約40Uのプラスミノーゲンを含み得る。フィブリンヒドロゲル層はコーティングを含んでもよい。コーティングは、基底膜タンパク質、マトリゲル(matrigel)、又はgeltrexを含み得る。いくつかの場合において、フィブリンヒドロゲル単層は自家的に取得され得る。
【0013】
別の態様において、本文書は、網膜移植物の作製方法を特徴とする。該方法は、(a)フィブリンヒドロゲル層を取得すること、(b)前記フィブリンヒドロゲル層の表面を剤でコーティングすること、並びに(c)前記コーティング上に頂端面及び基底面を有する網膜色素上皮単層を形成することを含み、前記基底面は前記頂端面よりも前記フィブリンヒドロゲル層に近いものである。フィブリンヒドロゲル層は約20μm~約400μm厚であり得る。フィブリンヒドロゲル層は、1mL当たり約20mgのフィブリノーゲンから1mL当たり約80mgのフィブリノーゲンを含み得る。フィブリンヒドロゲル層は、1mL当たり約2Uのトロンビンから1mL当たり約1500Uのトロンビンを含み得る。フィブリンヒドロゲル層は、1mL当たり約0.1Uのプラスミノーゲンから1mL当たり約40Uのプラスミノーゲン、又は1mL当たり約0.001Uのプラスミノーゲンから1mL当たり約40Uのプラスミノーゲンを含み得る。いくつかの場合において、フィブリンヒドロゲル単層は自家的に取得され得る。
【0014】
別の態様において、本文書は、網膜移植物の作製方法を特徴とする。該方法は、プロテアーゼ阻害剤又は抗線維素溶解剤を含む培地中でフィブリン基底支持基質上で網膜上皮細胞を培養することを含む。培地はプロテアーゼ阻害剤を含むことができ、プロテアーゼ阻害剤はアプロチニンであり得る。培地は、1mL当たり約5Uのアプロチニンから1mL当たり約500Uのアプロチニンを含み得る。培地は抗線維素溶解剤を含むことができ、抗線維素溶解剤はトラネキサム酸(transexamic acid)又はアミノカプロン酸であり得る。培地はプラスミノーゲンをさらに含み得る。培地は、1mL当たり約0.1Uのプラスミノーゲンから1mL当たり約40Uのプラスミノーゲン、又は1mL当たり約0.001Uのプラスミノーゲンから1mL当たり約40Uのプラスミノーゲンを含み得る。フィブリン基底支持基質は内皮細胞を含み得る。内皮細胞は、iPSC由来内皮細胞、血管内皮前駆細胞(BOEC)、内皮コロニー形成細胞(ECFC)、内皮前駆細胞(EPC)、及び臍静脈内皮細胞(UVEC)からなる群より選択される供与源から取得され得る。フィブリン基底支持基質はコーティングを含んでもよい。コーティングは、基底膜タンパク質、マトリゲル(matrigel)、又はgeltrexを含み得る。コーティングは、フィブリン基底支持基質上での網膜上皮細胞の培養前に存在していたものであり得る。フィブリン基底支持基質はRPE下組織細胞集団を含み得る。RPE下組織細胞集団は、メラニン形成細胞、周皮細胞、又は線維芽細胞を含み得る。いくつかの場合において、フィブリン基底支持基質は自家的に取得され得る。
【0015】
他に定義しない限り、本明細書中で使用する全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術の熟練者により通常理解されるものと同じ意味を有する。本明細書中に記載したものと類似又は等価の方法及び材料は本発明を実施又は試験するために使用しうるが、適切な方法及び材料は後述されている。本明細書中に記載した全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、参照によりその全内容が組み込まれるものとする。矛盾がある場合には、定義も含め、本明細書を優先するものとする。加えて、前記の材料、方法及び実施例は単なる例示であって限定するものではない。
【0016】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明から、並びに特許請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1Aは、頂端フィブリンを有するRPE単層を作製し、それを外科移植デバイスに装填するための方法の概略である。
図1Bは、基底フィブリンを有するRPE単層を作製し、それを外科移植デバイスに装填するための方法の概略である。
【
図2】
図2Aは、黄斑変性を処置するために眼に頂端フィブリンを有するRPE単層を移植するための方法の概略である。
図2Bは、黄斑変性を処置するために眼に基底フィブリンを有するRPE単層を移植するための方法の概略である。
【
図4】
図4Aは、薄層フィブリンゲルを形成するための噴霧器システムの写真である。
図4Bは、噴霧器システムのノズルの拡大写真である。
【
図5】
図5は、一部の実施形態に従うフィブリンゲルの写真である。寸法は、1.5mm (W)×5mm (D)×200μm (H)である。
【
図6】
図6は、RPE単層に付着した頂端フィブリンの写真である。
【
図7】
図7は、頂端フィブリンに付着したRPE単層の生存/死滅染色の写真である。付着細胞は2時間後も生きている。
【
図8】
図8は、頂端フィブリンに付着したRPE単層の写真である。画像は、フィブリンに付着した連続単層を示す。
【
図9】
図9は、ZO-1(細胞間密結合タンパク質)染色(赤色)及び細胞核のDAPI(青色)染色の写真である。
【
図10】
図10は、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)による2時間の処理後の生体材料フィブリンの分解を示す写真を含む。フィブリン分解の時間レンジは1時間から72時間であり得る。
【
図11】
図11は、フィブリノーゲン濃度を変動させた場合の分解の動力学をプロットしたグラフを含む。プラスミノーゲン及びtPA濃度を固定した。分解は速度定数とは無関係であった。フィブリノーゲン濃度と分解時間との間に線形関係が観察された。
【
図12】
図12は、プラスミノーゲン濃度を変動させた場合の分解の動力学をプロットしたグラフを含む。フィブリノーゲン及びtPA濃度を固定した。速度定数はプラスミノーゲン濃度に依存した。プラスミノーゲン濃度と分解時間の間に非線形関係が観察された。
【
図13】
図13は、tPA濃度を変動させた場合の分解の動力学をプロットしたグラフである。フィブリノーゲン濃度及びプラスミノーゲン濃度を固定した。大きな範囲の分解時間が観察された。
【
図14A】
図14A~Cは、フィブリンゲル中の人工多能性幹細胞由来(iPSC)網膜色素上皮(RPE)細胞を含むプレートの画像であり、geltrexコーティングあり(
図14B)又はなし(
図14C)のプレート上でアプロチニン含有培地中で2週間培養した。培地へのアプロチニンの導入はフィブリンゲル分解を防止すると思われた。
【
図15】
図15A及び15Bは、プレートからゲルを剥離した後の、アプロチニンと共に基底フィブリンゲル上で培養したiPSC-RPE細胞を含むプレートの画像である。細胞はゲルを剥離した後も接着したまま残り(
図15A)、ゲルを切断した後最小の細胞除去があった(
図15B)。
【
図16】
図16A及び16Bは、geltrexコーティングあり(
図16A)又はなし(
図16B)のプレート上で、アプロチニン含有培地を用いてフィブリンゲル中で培養したiPSC-RPE細胞の画像である(ゲルの剥離及び切断後)。細胞をカルセイン-AMで染色し、このことは、これらが剥離及び切断後も生存したままであり、geltrexは生存のために必要ではない可能性があることを示している。
【
図17】
図17は、geltrexコーティングなしで培養したフィブリンゲルの端部におけるiPSC-RPE細胞の画像である。ゲルをプレートから遊離させ、切断し、細胞をカルセイン-AM(生存)及びエチジウムホモダイマー(死滅)で染色した。生細胞は緑色に見えるが、死細胞は赤色である。
【
図18A】
図18A及び18Bは、フィブリンゲル中で培養し、その後0.1U/mlプラスミノーゲン及び22U/ml組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)による消化で60時間(
図18A)又は96時間(
図18B)分解したiPSC-RPE細胞を含むプレートの画像である。細胞は単層としてプレートから剥離した。
【
図19】
図19は、フィブリンゲルをプラスミノーゲン及びtPAで96時間消化した後の単層におけるiPSC-RPE細胞の画像である。細胞をカルセイン-AM(生存)及びエチジウムホモダイマー(死滅)で染色した。生細胞は緑色に見えるが、死細胞は赤色に見える。
【
図20】
図20は、罹患網膜が広範な表面積に影響を及ぼすことを示す写真である。黄斑(丸で囲った領域)は直径5mm(25mm
2)である。網膜は1200mm
2である。本明細書に記載の方法及び材料を使用して、黄斑全体又は網膜の他の領域に対処することができる。
【
図21】
図21は、RPE単層/フィブリン移植物を眼内の対象の領域上に送達するための移植デバイスの使用を示す写真である。
【
図22】
図22は、移植物を滑り止めて、滑り落ちるのを防ぐためのレーザー器具を使用する結果を示す写真である。
【
図23】
図23は、第2のRPE単層/フィブリン移植物を眼内の対象の領域上に送達するための移植デバイスの使用を示す写真である。第2の移植物を第1のものに隣接して、好ましくは元の切開部を通して配置する。
【
図24】
図24は、第2の移植物を滑り止めて、滑り落ちるのを防ぐためのレーザー器具を使用する結果を示す写真である。
【
図25】
図25は、第3のRPE単層/フィブリン移植物を眼内の対象の領域上に送達するための移植デバイスの使用を示す写真である。第3の移植物を第2のものに隣接して、好ましくは元の切開部を通して配置する。
【
図26】
図26は、第3の移植物を滑り止めて、滑り落ちるのを防ぐためのレーザー器具を使用する結果を示す写真である。
【
図27】
図27は、異なるサイズ及び形状仕様に切断したフィブリン足場の写真である。
【
図28】
図28は、RPE単層/フィブリン移植物を眼内に移植するための移植デバイスの一例の概略である。
【
図29】
図29は、RPE単層/フィブリン移植物を眼内に移植するための移植デバイスの一プロトタイプの写真を含む。
【
図30】
図30は、
図29のプロトタイプにより送達し得る移植物の写真である。長さは約0.1mm~約3mmの範囲であり、幅は約0.1~約2mmの範囲であり得る。
【
図31】
図31は、RPE単層/フィブリン移植物を眼内に移植するための移植デバイスの別のプロトタイプの写真を含む。
【
図32】
図32は、眼内への複数の入り口を提供し、かつ眼圧を維持して眼の崩壊を防ぐカニューレポートの写真を含む。
【
図33】
図33は、眼内への複数の入り口を提供し、かつ眼圧を維持して眼の崩壊を防ぐカニューレポートの概略である。長さは約0.1mm~約4mmの範囲であり、幅は約0.1mm~約3mmの範囲であり得る。
【
図34A-B】
図34は、1.5mm×5mm形状で形成されたフィブリンゲルの機械的強度データである。
図34Aは、試験セットアップの例を示す。
図34Bは、サンプル力対変位グラフを示し、これから勾配(機械的強度)及び最大力データが得られる。
【
図34C-D】
図34Cは、フィブリンヒドロゲルのフィブリノーゲン濃度を20~80mg/mLで変動することによる機械的強度及び最大力を示す。
図34Dは、ヒドロゲル厚さを100~300μmで変動することによる機械的強度及び最大力を示す。
【
図35】
図35は、フィブリンヒドロゲル構造の画像を示す。
図35Aは、1.5mm×5mm形状に切断し始めた後のフィブリンヒドロゲルの巨視的画像を示す。
図35Bは、スペクトル領域光コヒーレンストモグラフィを使用したフィブリンヒドロゲルの断面図を示す。
図35Cは、フィブリンヒドロゲルの表面の走査型電子顕微鏡像を示す。
図35Dは、SEMを用いた高倍率のフィブリンヒドロゲル原線維構造を示す。
図35Eは、フィブリンヒドロゲルが、10mg/mLなどの低いフィブリノーゲン濃度においてカールするが、40mg/mLフィブリノーゲン濃度で形成された場合にはその形状を保持する十分な強度を有することを示す。
【
図36A】
図36Aは、組織プラスミノーゲン活性化因子+プラスミノーゲン(tPA+P)、プラスミノーゲン、又はtPAによる処理後の経時的なフィブリンの分解を示す写真を含む。
【
図36B】
図36Bは、フィブリノーゲン濃度を変動させた場合の分解の動力学をプロットしたグラフを含む。プラスミノーゲン及びtPA濃度を固定した。分解は速度定数とは無関係であった。プラスミノーゲン濃度を変動させた場合の分解の動力学をプロットしたグラフで線形関係が観察された。フィブリノーゲン及びtPA濃度を固定した。速度定数はプラスミノーゲン濃度に依存した。プラスミノーゲン濃度と分解時間の間に非線形関係が観察された。
図36Cは、tPA濃度を変動させた場合の分解の動力学をプロットしたグラフを含む。フィブリノーゲン濃度及びプラスミノーゲン濃度を固定した。tPA濃度と分解時間との間に非線形関係が観察された。
【
図37A-B】
図37は、プロテアーゼ阻害剤(アプロチニンなど)を含める必要性についてのデータを示す。
図37Aは、アプロチニン補充あり及びなしでフィブリン上で培養したiPSC-RPEの巨視的ビューを示す。アプロチニンなしの場合、フィブリンが分解し、細胞は付着することができず単層を形成することができない。
図37Bは、アプロチニンが8,000U/mLほど高くてもiPSC-RPEに対して毒性を示さないことを示す。
【
図37C-D】
図37Cは、アプロチニン濃度の変動がどのようにiPSC-RPE単層形成に影響を及ぼすかを示す。例えば、1U/mL未満の濃度において、単層内の穴の発生率は増大する。
図37Dは、種々のアプロチニン濃度における総iPSC-RPE単層の定量を示す。
【
図38A-D】
図38は、フィブリンヒドロゲル支持体上で増殖させたiPSC-RPEの特性決定である。
図38Aは、位相差光学顕微鏡下で見た場合にiPSC-RPEが着色し石畳状(cobblestone)のパターン化単層として現れることを示す。
図38Bは、フィブリン上で培養した場合にiPSC-RPEが生存していることを示すために生存/死滅アッセイを使用した。
図38Cは、iPSC-RPEによるVEGF及びPEDF 分泌のELISA定量を示す。
図38Dは、主要RPEマーカーであるBest1、RPE65及びCRALBPについてのウエスタンブロット分析を示す(参照B-アクチンを用いた)。
【
図38E】
図38Eは、Best1、エズリン及びZO-1についての免疫蛍光染色を示す。
【
図39A】
図39Aは、フィブリンゲル上で培養し、その後、経時的に0.1U/mLプラスミノーゲン及び22U/mL組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)で分解したiPSC-RPE細胞を含有するプレートの画像を含む。単層としてプレートから細胞が剥離し、しわ及び折れを形成した。
【
図39B】
図39Bは、フィブリンゲルが完全に分解した後のiPSC-RPEの生存/死滅アッセイを示す。
【
図39C】
図39Cは、フィブリン分解の前後の定量的iPSC-RPE生存率を示すグラフである。
【
図39D】
図39Dは、フィブリンが完全に分解した後のiPSC-RPE単層中のZO-1の免疫蛍光染色であり、これは単層の保持を示す。
【
図40-1】
図40は、PCRを使用してフィブリンゲル上で培養したiPSC-RPEのRNAプロフィールを示す表である。
【
図41】
図41は、ウサギ眼の網膜下腔に移植したフィブリンヒドロゲルの写真である。48時間後の眼内にフィブリンヒドロゲルの証拠は観察されなかった。
【
図42】
図42Aは、フィブリン(F)、フィブリン+マトリゲル、及びマトリゲル対照からのVEGF放出を比較するグラフであり、
図42Bは、フィブリン(F)、フィブリン+マトリゲル、及びマトリゲル対照からのPEDF放出を比較するグラフである。両方の増殖因子の分泌は3つ全てのサンプル間で類似していた。
【
図43】
図43は、フィブリン又はフィブリン+マトリゲル(F+MG)上で増殖させたiPSC-RPEを用いたエズリン及びZo-1についての免疫蛍光染色の画像を含む。両方の群が陽性の特徴的な染色パターンを示した。
【
図44】
図44は、フィブリン又はフィブリン+マトリゲル(F+MG)上で増殖させたiPSC-RPEを用いた生存/死滅アッセイの画像を含む。細胞生存率は群間で類似していた。
【
図45】
図45は、フィブリン(F)又はフィブリン+マトリゲル(FMG)上で増殖させたiPSC-RPEを用いたBest1、RPE65、CRALBP及びB-アクチンについてのウエスタンブロット分析の画像を含む。Lはサイズラダーである。Best1、RPE65及びCRALBPはRPEマーカーである。
【
図46】
図46は、一実施形態に係るフィブリンヒドロゲル支持体デバイスの側面図である。
【
図47】
図47は、一実施形態に係るフィブリンヒドロゲル支持体デバイスの上面図である。
【
図48】
図48は、一実施形態に係るフィブリンヒドロゲルと一緒のフィブリンヒドロゲル支持体デバイスの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本文書は網膜色素上皮移植に関する。例えば、本文書は、網膜色素上皮移植のためにフィブリン支持体を使用するための方法及び材料を提供する。本明細書に記載のように、フィブリンヒドロゲルは、RPE移植のための一時的な基質として使用することができる。フィブリンヒドロゲルは、RPEのための、基底支持基質(
図1B)又は頂端並置基質(
図1A)であり得る。いくつかの場合において、RPEは2つのフィブリンヒドロゲルの間にサンドイッチされてもよく、一方は基底支持基質でありもう一方は頂端並置基質である。
【0019】
本明細書に提供されるRPE単層/フィブリン移植物は、平らでしわのない単層としてRPEを維持することができる。いくつかの場合において、フィブリン構成は移植プロセス中に機械的支持及び保護を提供することができ、正しいRPE極性の移植を確実にすることができる。いくつかの場合において、本明細書で提供されるRPE単層/フィブリン移植物は、可能性ある慢性炎症、すなわちRPE/ブルッフ膜付着に対する障害物を低減することができ、脈絡膜からの拡散透過性を維持することができる。
【0020】
RPE単層のためのフィブリン基質を作製するために任意の適当な方法を使用することができる。ゲル化動力学はトロンビン濃度と直接関係し得、フィブリンヒドロゲルの機械的特性は初期フィブリノーゲン濃度と直接関連し得る。いくつかの場合において、フィブリノーゲン濃度が高いほど架橋が増加し、フィブリンヒドロゲルはより硬くなり得る。一般的には、フィブリンヒドロゲルは薄シートとして形成し得る。いくつかの場合において、フィブリンヒドロゲルの圧縮はヒドロゲルをさらに硬化し得る。
【0021】
いくつかの場合において、フィブリン薄フィルム沈着は、噴霧コーティング又はサンドイッチ法によって達成し得る。一例において、フィブリノーゲン及びトロンビン(及び場合によりプラスミノーゲン)の混合物をRPE単層の頂端側に噴霧し、完全にゲル化させて、頂端フィブリンコーティングを達成し得る。一例において、フィブリノーゲン及びトロンビン (及び場合によりプラスミノーゲン)の液滴混合物をRPE単層の頂端側に置き、液滴を圧縮して又は広げて、完全にゲル化させて、頂端フィブリンコーティングを達成し得る。
【0022】
いくつかの場合において、フィブリンの薄層の噴霧コーティングを使用してフィブリンヒドロゲルを形成することができる。噴霧器システム、例えば一般的及び腹腔鏡手術に使用するものなどを、本明細書に記載されるものなどのフィブリンヒドロゲルを製造するために転用し得る。また、Chaurasia et al.(Transl. Vis. Sci. Technol., 1:2 (2012))を参照のこと。本明細書で提供されるフィブリンヒドロゲルの厚さは、約10μm~約400μm(例えば、約20μm~約400μm、約50μm~約400μm、 約10μm~約200μm、又は約50μm~約200μm)であり得る。
【0023】
本明細書で提供されるフィブリンヒドロゲルは、外科用器具を使用して正確な方向と位置を簡単に操作することができる。いくつかの場合において、本明細書で提供されるフィブリンヒドロゲルは、その元の形状及び表面特性を維持しながら、柔軟であり得る。いくつかの場合において、接着細胞は本明細書で提供されるフィブリンヒドロゲルの表面から剥離しない。
【0024】
いくつかの場合において、本明細書で提供されるフィブリンヒドロゲルは、約0.01mg/mL~約80mg/mLのフィブリノーゲン(例えば、約20mg/mL~約80mg/mLのフィブリノーゲン)を含有する溶液を噴霧することにより作製し得る。いくつかの場合において、30mg/mLを超えるフィブリノーゲン(例えば、約30mg/mL~約80mg/mLのフィブリノーゲン)を使用して、ピンセットで操作することができるフィブリンヒドロゲルを製造することができる。いくつかの場合において、本明細書で提供されるフィブリンヒドロゲルは、約40mg/mL~約60mg/mLのフィブリノーゲンを含有する溶液を噴霧することにより作製し得る。
【0025】
いくつかの場合において、本明細書で提供されるフィブリンヒドロゲルは、本明細書に記載のようなフィブリノーゲン、及び約2U/mL~約1000U/mLのトロンビン(例えば、約10U/mL~約200U/mLのトロンビン)を使用して作製し得る。いくつかの場合において、5U/mLを超えるトロンビン(例えば、約10U/mL~約100/mLのトロンビン)を使用して、ピンセットを使用して操作することができるフィブリンヒドロゲルを作製し得る。いくつかの場合において、本明細書で提供されるフィブリンヒドロゲルは、約40mg/mL~約60mg/mLのフィブリノーゲン及び約10U/mL~約100U/mLのトロンビンを含有する溶液を噴霧することにより作製し得る。
【0026】
いくつかの場合において、本明細書で提供されるフィブリンヒドロゲルは、不活性プラスミノーゲンを予め充填し得る。例えば、不活性プラスミノーゲンをインタクトなフィブリンヒドロゲルに結合させることにより、不活性プラスミノーゲンをフィブリンヒドロゲルに予め充填し得る。いくつかの場合において、プラスミノーゲンの導入(inclusion)は、眼への移植のためのフィブリン支持RPEの送達前の、プラスミノーゲンのインキュベーション及びフィブリンゲルへの拡散によって達成し得る。いくつかの場合において、本明細書において提供される、プラスミノーゲンを含有するRPE/フィブリンヒドロゲル移植物を、その移植物を眼内に配置した後にtPAに曝露し得る。これらの場合において、tPA曝露はプラスミノーゲンをプラスミンに活性化し、これが次にフィブリンヒドロゲルを分解する。プラスミン濃度は、本明細書に記載するようなフィブリン分解動力学と直接関連する。いくつかの場合において、本明細書で提供されるフィブリンヒドロゲルは、約0.001U/mL~約40U/mLのプラスミノーゲン(例えば、約0.5U/mL~約4U/mLのプラスミノーゲン、約0.1U/mL~約30U/mLのプラスミノーゲン、又は約0.1U/mL~約40U/mLのプラスミノーゲン)を含有するように作製し得る。いくつかの場合において、本明細書において提供されるRPE/フィブリンヒドロゲル移植物は、眼への移植のためのプラスミノーゲン及び/又は組織プラスミノーゲン活性化因子を含む溶液中の懸濁液として送達し得る。
【0027】
いくつかの場合において、本明細書において提供されるRPE/フィブリンヒドロゲル移植物は、コラーゲンゲル全体に作製し得る。かかる場合、RPE/フィブリンヒドロゲル移植物は、コラゲナーゼ(例えば、約200U/mL~約1500U/mLのコラゲナーゼ)を用いて回収し得る。コラゲナーゼは細胞間相互作用を干渉せず、コラーゲンゲルからRPE単層が剥離するようにする。RPE単層はまたコラゲナーゼ処理後にフィブリンヒドロゲルに接着したままとなる。いくつかの場合において、ディスパーゼ(例えば、約0.5U/mL~約10U/mLのディスパーゼ)をコラゲナーゼに加えて又はコラゲナーゼに替えて使用し得る。
【0028】
いくつかの場合において、本明細書において提供されるRPE/フィブリンヒドロゲル移植物は、抗線維素溶解剤、例えばプロテアーゼ阻害剤であるアプロチニン(例えば、約5U/mL~約500U/mLのアプロチニン)の存在下で作製して、フィブリン足場を保護し、培養期間にわたるフィブリン支持体の分解を防止することができる。本明細書で記載のように使用することができる他の抗線維素溶解剤としては、限定されるものではないが、プロテアーゼ阻害剤(例えば、マクログロブリン、トロンビン、トロンビン活性化可能線維素溶解阻害剤、及びカルボキシペプチダーゼ)、セリンプロテアーゼ阻害剤(セルピン)ファミリーのメンバー(例えば、抗トリプシン、α2-抗プラスミン、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤1及び2)、メタロプロテイナーゼ阻害剤(例えば、メタロプロテイナーゼ1~4の組織阻害剤、バチマスタット、シペマスタット、及びイロラスタット)、並びに小分子(例えば、アミノカプロン酸(Amicar)、トラネキサム酸(Lysteda)、ヘパリン、α-N-アセチル-L-リジンメチルエステル(NALME))、ビタミンK、及びp-アミノメチル-安息香酸)が挙げられる。
【0029】
本明細書に記載のように、本明細書において提供されるRPE/フィブリンヒドロゲル移植物のフィブリンヒドロゲルは、RPE単層に送達するための短期間(例えば72時間未満、又は1週間未満)機械的支持体であり得る。例えば、フィブリンヒドロゲルは、眼の網膜下腔への送達のためのRPEの頂端(頂部)に付着することができ、生体適合性であり得、本明細書に記載のようにtPAを用いて制御可能な様式で迅速に分解可能となり得る。
【0030】
いくつかの場合において、本明細書において提供されるRPE/フィブリンヒドロゲル移植物は、有効なRPEを提供するために眼に移植することができる(
図2A及び2B)。
【0031】
本文書はまた、高近視、血管縞、黄斑変性症などの眼の状態を処置するために、本明細書において提供されるRPE/フィブリンヒドロゲル移植物を使用する方法を提供する。黄斑変性症として分類され、そして本明細書に記載されるように治療され得る疾患の一部としては、限定されるものではないが、加齢黄斑変性(AMD)、黄斑地図状萎縮、ベストロフィノパチー、レーバー先天性黒内障、コロイデレミア、脳回転状脈絡網膜萎縮、ソースビー眼底変性、ミトコンドリア遺伝性糖尿病及び難聴(MIDD)、クロロキン関連網膜症、家族性ドルーゼン(malattia leventinese)、ノースカロライナジストロフィー(North Carolina dystrophy)、高オルニチン血症、中心性漿液性脈絡網膜症、成人発症型中心窩黄斑ジストロフィー(adult-onset foveomacular dystrophy)、及びスターガルト(Stargardt)病が挙げられる。例えば、哺乳動物(例としてヒト)を眼手術のために準備することができ、網膜下剥離を作出して損傷を受けたRPE領域を曝す(
図20)。この時点で、移植デバイス、例えば
図28、29又は31に示すものなどを使用して、RPE/フィブリンヒドロゲル移植物を対象の領域上に送達し得る(
図21)。いくつかの場合において、カニューレ(例えば
図32及び33参照)を使用して眼にアクセスできるようにする。いくつかの場合において、RPE/フィブリンヒドロゲル移植物を定位置に押し出すために気相バブルを使用することができる。レーザー器具(例えば、糖尿病性網膜症に使用されるレーザー器具)を使用して、レーザー光凝固術により移植物を滑り止めて、滑り落ちるのを防ぐことができる(
図22)。この時点で、移植デバイスを使用して、第2のRPE単層/フィブリン移植物を眼内の対象領域に送達することができる(
図23)。第2の移植物は、好ましくは元の切開部又はカニューレを通して、第1の移植物に隣接して配置され得る。レーザー器具を使用して第2の移植物を滑り落ちないように固定することができる(
図24)。移植デバイスを使用して、第3のRPE単層/フィブリン移植物を眼内の対象領域に送達することができる(
図25)。第3の移植物は、好ましくは元の切開部又はカニューレを通して、第2の移植物に隣接して配置され得る。レーザー器具を使用して第3の移植物を滑り落ちないように固定することができる(
図26)。この節では、3つのRPE単層/フィブリン移植物の移植について説明しているが、処置する領域をカバーするために任意の適切な数を使用することができる。例えば、1、2、3、4、5、6又はそれ以上のRPE単層/フィブリン移植物を、処置対象の片眼に移植することができる。一般に、このモジュール式タイル張りアプローチは、臨床医が移植物を患者の必要性に応じて個別化することを可能にし、広い領域に拡張可能であり、網膜の任意の領域に適用可能であり、必要な切開数を減らす。
【0032】
いくつかの場合において、機械的パンチを使用して、特定の形状又はサイズを有するRPE単層/フィブリン移植物を設計し得る(例えば、
図27参照)。フィブリン移植物を成形する他の方法としては、特注鋳型を用いたゲルキャスティング、レーザー顕微解剖顕微鏡、及び3Dプリンティングがある。
【0033】
本明細書に提供されるRPE単層/フィブリン移植物を眼に移植するための移植デバイスは、放出の機械的制御を備えたプランジャ型デバイスであり得る。いくつかの場合において、移植デバイスは、種々のサイズのRPE単層/フィブリン移植物を送達するように、かつクリップスタイルの先端を用いて複数の移植物を迅速に挿入する能力を有するように設計され得る。いくつかの場合において、本明細書に提供される移植デバイスは、細胞及びヒドロゲルの水和を維持するように液体リザーバを備え得る。いくつかの場合において、本明細書に提供される移植デバイスは、片手操作及び使用のために設計し得る。
【0034】
フィブリン基底支持体の使用を含む場合には、血管新生前(pre-vascularization)戦略をRPE培養と組み合わせて、脈絡膜組織を形成し得る。フィブリンは、マイクロ流体装置(Moya et al., Methods Mol. Biol., 1202:21-7 (2014))、3Dプリンティング(Pinnock et al., Methods, 99:20-7 (2016))、及びマトリックス内の封入内皮細胞の自発的血管新生(Mishra et al., Biomaterials, 77:255-66 (2016))の使用を含む様々な方法で血管新生することができる。これらの戦略は、血管新生前フィブリンの上にあるRPE単層培養と組み合わせて、RPE-脈絡膜複合体を形成することができる。RPE-脈絡膜は、脈絡膜及びRPEの両方が機能不全である黄斑変性疾患(乾性AMDを含む)のための治療薬であり得る。内皮細胞(EC)は、種々の供与源から取得することができ、例えばiPSC由来内皮細胞、血管内皮前駆細胞(BOEC)、内皮コロニー形成細胞(ECFC)、内皮前駆細胞(EPC)、及び臍静脈内皮細胞(UVEC)であり得る。
【0035】
フィブリン基底支持体の使用を含む場合には、複数の細胞集団組織をRPE培養と組み合わせて移植組織を形成してもよい。フィブリン支持体を、RPE下組織に見出される他の細胞型(メラニン形成細胞、脈絡膜周皮細胞及び線維芽細胞を含む)と共に装填してもよい。
【0036】
本文書はまた、細胞培養培地中に懸濁したフィブリンヒドロゲル上で細胞を増殖させるために使用し得るフィブリンヒドロゲル支持体デバイスを提供する。いくつかの場合において、これにより、本明細書に提供されるRPE/フィブリンヒドロゲル移植物を、固体基質から足場を分離する必要性を回避し、そしてそれらが増殖及び分化するにつれて細胞の基底面への培地のアクセスを可能にする様式で形成することができる。一実施形態では、デバイスは、足場材料を懸濁液中に保持するために互いに容易に取り付けることができる2つの別々の部品を含むことができる(
図46~48)。トップピースは、底に挿入することができる円筒形の内管にすることができ、その間に挟まれたフィブリンヒドロゲル層を押して固定するためのベースピースである(
図48)。底部ベースピースは、側壁と中央開口部を有する環状底部とを含むことができる。頂部の円筒形の内管は底部のベースピースによって保持されかつ支持されることができる。2つの構成要素は、限定されるものではないが、例えば、射出成形によって、Teflon(登録商標)、シリコーン又は他のプラスチックを含む任意の適切な材料から作製され得る。いくつかの場合において、ポリスチレンを使用することができる。各構成要素の寸法は、
図46~48に示す通りであり得る。いくつかの場合において、上部円筒形の内管が、底部、スレッドを介したベースピース、スナップフィット、又はクリッピング機構と係合することができる。
【0037】
いくつかの場合において、本明細書で提供されるフィブリンヒドロゲルは、細胞を適用する前にコーティングすることができる。例えば、本明細書で提供されるフィブリンヒドロゲルは、細胞を適用する前に、基底膜マトリックス及び/又は基底膜タンパク質(例えば、マトリゲル(matrigel)又は他の剤)でコーティングし得る。本明細書において提供されるフィブリンヒドロゲルをコーティングするために使用し得る他の剤の例としては、限定されるものではないが、geltrex(ゲルトレックス)、ラミニン511、ラミニン521、ビクトロネクチン、コラーゲン、ゼラチン、及びそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの場合において、マトリゲル及びgeltrexは、それらが両方ともマウス肉腫細胞に由来する基底膜マトリックスであるため、互換的に使用し得る。
【0038】
本発明を下記実施例中でさらに説明するが、これらの実施例は特許請求の範囲に記載した発明の範囲を限定するものではない。
【実施例0039】
実施例1:IPSC-RPE移植のためのフィブリンヒドロゲルの使用
化学物質
フィブリノーゲンは3つの供与源から取得した:EvicelとしてEthicon(60mg/mL)から、TisseelとしてBaxter(95mg/mL)から、及び研究グレード材料としてSigma-Aldrich(57mg/mL)から。トロンビンもまた3つの供与源から取得した:Evicelの一部としてEthiconから、Tisseelの一部としてBaxterから、及び研究グレード材料としてSigma-Aldrichから。プラスミノーゲンは、研究グレード材料としてSigma-Aldrichから取得した。組換え組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)は研究グレード材料としてSigma-Aldrichから取得した。
【0040】
細胞
IPSC-RPE細胞を、他に記載されているように変更を加えて作製した(Johnson et al., Investig. Ophthalmol. Vis. Sci., 56:4619 (2015))。膜支持体を、トランスウエル又はHA膜のいずれかを含む、頂端及び基底培地と共に使用した。膜表面を、製造業者のプロトコルによりコラーゲンゲルでコーティングし、その後又はその替わりに、ゲルトレックス(geltrex)又はマトリゲル(matrigel)溶液で最大0.1mg/mLで37℃で2時間かけてコーティングした。続いて細胞をプレーティングし、最大1カ月にわたって単層を形成させた。この研究のため、健常対照患者からのIPSC-RPEを使用した。分化ステージ(diff stage)5の後の細胞を使用した。経上皮抵抗を100オーム以上で測定した。使用前に色素沈着が見られた。
【0041】
薄層フィブリンゲルの形成
フィブリノーゲン濃度及びトロンビン濃度を変動させてフィブリンゲルを形成させた。薄層ゲルを最初にプレートサンドイッチ法により形成させたが、その方法では、フィブリノーゲン及びトロンビン溶液の混合物を、200μmギャップ厚を有するプラスチック鋳型内の2層のパラフィルムの間に挟む。湿潤37℃で最大1時間にわたり溶液をゲル化させた。パラフィルムを除き、ゲルを使用前に水和してPBSで洗浄した。この方法により形成されたゲルは、196±90μmの平均厚を有していた。
【0042】
あるいは、噴霧器システムを使用して薄層フィブリンゲルを形成した。デュアルマイクロインジェクターシステム(WPI)を、コンピューターに接続されたポンプコントローラーに接続した。各々がフィブリノーゲン及びトロンビン溶液を有する2つの1mLシリンジをマイクロインジェクター装置に取り付け、そして2対1ミキサーコネクターをシリンジに取り付けた。次にミキサーを噴霧ノズル(The Lee Co)に接続した。噴霧のための空気圧を提供するために、CO
2ガスレギュレーターもノズルに取り付けた。
図4A及び
図4Bはその構成を示す。
【0043】
薄いフィブリンゲル形成を達成するため、空気圧及び分注される液体の量を変化させた(0.3~1.5バール)。噴霧器の時間と速度を変えるために特注のMATLABスクリプトを利用した。空気圧はレギュレータで変化させ、フットペダルによって制御した。噴霧後、溶液を湿潤37℃で最大1時間かけてゲル化させた。ゲルを使用前に水和し、そしてPBS中で洗浄した。
【0044】
ゲル厚測定
噴霧器システムを使用してゲル形成後、ゲルを0.01mg/mL FITCイソチオアネート(isothioanate)溶液で1時間かけて染色し、振盪した。続くPBSによる洗浄によって非標識FITCを除去した。共焦点z系画像をゲルを通して撮影し、そしてFITC染色スライスの測定値を測定して厚さを得た。
【0045】
メカニクス
他に記載されているように、圧縮試験を用いてゲルバイオメカニクスを得た(Uehara et al., J. Bone Joint Surg. Am., 97:1792-1798 (2015))。種々のフィブリノーゲン濃度でゲルを作製し厚みを測定した。簡単に説明すると、ゲルを特注のステンレス鋼ブロックに載せた。圧縮試験は、平らな円筒形アルミニウム圧子を用いて行った。直径の直径は1.3mmであった。試験は、Bose Electroforce 3200アクチュエータを使用して実施した。力は、10グラムのHoneywellミニチュアロードセルを用いて測定した。置換(displacement)は、Bose Electroforce 3200内部線形可変差動変換器(internal linear variable differential transformer)を使用して測定した。データはLabVIEWを使用して収集した。破壊まで電界偏向試験を0.05mm/sで行った。応力とひずみ曲線をグラフ化し、線形領域にフィッティングし、ヤングス率の値を得た。
【0046】
分解動力学
フィブリノーゲン濃度(40~60mg/mL)を変動させてサンドイッチ法により種々のゲルを作製した。トロンビン濃度は剛性(stiffness)又は分解動力学には影響を及ぼさないようであり、100U/mLで一定に保った。種々のプラスミノーゲン濃度(0.8~4.0U/mL)を、ゲル化前にフィブリノーゲン濃度と混合することによりゲル内にロードした。形成後、特注サイズのハンドヘルド中空パンチを用いてゲルをパンチした。形状は高さ1.5mm、幅5mmの楕円形とした(
図5)。パンチされたゲルを様々な濃度のtPA溶液(0.1~1,000U/mL)中でインキュベートした。経時的に、懸濁液溶液からサンプルを採取した。各変数(すなわち、フィブリノーゲン、プラスミノーゲン及びtPA濃度)の効果を明らかにするために、他の2つを一定に保ちながらそれぞれを変化させた。
【0047】
フィブリン分解産物(FDP)は、製造元のプロトコルに従って660nmプロテインアッセイを用いて定量した。吸光度値から濃度を得るために、既知のFDP濃度の標準曲線を使用した。指数関数的フィットモデルを使用して、時間に対する濃度のグラフを利用して速度定数を得た。
【0048】
フィブリン/RPE移植物の剥離
細胞の剥離は、フィブリンゲル並置の前及び後の両方で達成された。膜支持体上の細胞をPBSで洗浄した。細胞を、基礎750U/mL精製コラゲナーゼ(Worthington)又は1U/mLディスパーゼ(DMEM中(Stem Cell Tech))中で最大30分までインキュベートした。トランスウェルを取り出して乾燥し、その間に膜を切り取ってパラフィルムの上に置いた。次にフィブリンをその上に噴霧し、そして完全にゲル化させた。あるいは、サンドイッチ法を用いてフィブリノーゲン及びトロンビン混合物を頂端RPE単層上に並置し、そして完全にゲル化させた。水和後、ピンセットを用いてフィブリン/RPE系(FRPE)を剥がした。次いで、FRPEを培地中でインキュベートした。
【0049】
あるいは、膜支持体上のRPEをPBSで洗浄した。PBSを取り出した後、フィブリンを上部に噴霧し、完全にゲル化させた。水和後、細胞を、基礎750U/mL精製コラゲナーゼ又は1U/mLディスパーゼ(DMEM中)において最大30分までインキュベートした。膜を注意深く切り取り、ペトリ皿に置き、PBSに浸した。続いて、FRPEをピンセットを用いて剥がすか、又はセルスクレーパーを用いてかきとった。
【0050】
FRPE染色及びイメージング
単層表現型の維持を決定するため、FRPEをZO-1(上皮細胞に見られる細胞間結合タンパク質)について染色した。FRPEサンプルをパンチし、10%ホルマリン中で1時間かけて固定した。他に記載されているように(Johnson et al., Invest. Ophthalmol. Vis. Sci., 56:4619-4630 (2015))染色を実施した。固定細胞をNGSでブロッキングし、一次抗体中で4℃で一晩インキュベートし、二次抗体中で2時間インキュベートした。アクアマウント(aquamount)を用いてサンプルをスライドガラスに載せ、Nikon蛍光顕微鏡下でイメージングした。
【0051】
フィブリンとRPEの相互作用を見るためにTEMイメージを取得した。FRPEサンプルを2.5%グルタルアルデヒド中で1時間固定した。固定サンプルを樹脂包埋用に加工し、0.5μmの切片を切り出して載せた。イメージングはTEM顕微鏡で行った。
【0052】
生存/死滅アッセイ
パンチしたFRPE移植物を明視野顕微鏡を用いて経時的にモニターした。細胞生存率を決定するために、製造元のプロトコルに従って、生存/死滅キットをFRPEに対して利用した。生細胞をFITCスペクトル(吸光度:495 nm;発光:520 nm)下で可視化し、死細胞をTRITCスペクトル(吸光度:543 nm;発光:560 nm)下で可視化した。細胞生存率は百分率として算出した(染色された生細胞を可視化された総細胞で除したもの)。
【0053】
PCR
培養支持体からの剥離の24時間後及びフィブリン支持体の分解の24時間後に、細胞の機能性を確認するため細胞に対してPCRを実施した。マーカーには、PEDF、RPE65、Best1及び対照が含まれた。
【0054】
結果
図5は、RPEの頂端面へのフィブリンの付着及びディスパーゼを用いた培養表面からの剥離の成功を示す。機械的パンチ後、細胞は依然としてフィブリンに付着したままである。
【0055】
RPE細胞をゲルの表面に付着させ(
図6)、カルセイン-AM染色の存在は、フィブリンに付着した細胞が依然として生存していたことを示唆している(
図7)。単層及び色素沈着を維持する広い領域を有するRPE単層の頂端面へのフィブリンの付着の成功が観察された(
図8)。スケールは、この方法がより大きな移植物の作製にスケーラブルであるかを示した。DAPI(青色)及びZO-1(赤色)は、RPE単層の染色がフィブリンの頂端側に付着したことを明らかにした(
図9)。ZO-1の存在は、細胞間接合を介した単層の存在を示唆した。プラスミノーゲンの存在下では、tPAを使用してフィブリンゲルを溶解させた(
図10)。tPAなしの場合、プラスミノーゲンは活性化されず、ゲルは分解しなかった。
【0056】
一定のプラスミノーゲン及びtPA濃度を用いた場合、速度定数はフィブリノーゲン濃度とは無関係であるため(p=0.35)、フィブリノーゲン濃度はゲルの分解動力学に影響を及ぼさなかった(
図11)。一定のフィブリノーゲン及びtPA濃度を用いた場合、プラスミノーゲン濃度が上昇するにつれ速度定数が上昇したため(p=0.005)、プラスミノーゲン濃度はゲルの分解動力学に影響を及ぼした(
図12)。したがって、合計分解時間は、プラスミノーゲン濃度が上昇するにつれ指数関数的に減少する。一定のフィブリノーゲン及びプラスミノーゲン濃度では、tPA濃度は、分解時間における指数関数的減衰と相関して上昇する(
図13)。フィブリン足場上でのRPEの培養は、アプロチニンなしで観察された(
図14A)一方、RPEは3~4日以内にフィブリン基質を分解し、細胞の多くの死滅を生じた。非常にわずかな細胞が残存し、単層形成の表現型は観察されなかった。培養培地にアプロチニンを含めることにより、RPEの生存及び単層形成が観察された(
図14B)。この形成は、geltrexコーティングとは無関係であると思われ、このことは、RPEがフィブリンに直接付着(attach)し得ることを示唆している(
図14C)。
【0057】
フィブリン基底支持RPE培養の動員が観察され(
図15A)、RPEは機械的パンチ後も付着したままであった(
図15B)。
【0058】
フィブリン基底支持体に付着したRPEは、機械的パンチ後も可視可能であった(
図16)。さらに、生存率及び基質への付着はgeltrexコーティングとは無関係であった。
【0059】
パンチされたフィブリン基底支持RPEの生存/死滅イメージのクローズアップを得た(
図17)。極端な端(extreme edge)は、おそらく機械的パンチの間に耐えるストレスによる細胞生存率の損失の増大が明らかになった。この領域における細胞生存率は83.1%であった。
【0060】
フィブリン基底支持体の経時分解を得た(
図18)。60時間後、ゲルの端部が分解し、単層がそれ自体の上にカールしていることを示している。96時間後、ゲルの50%超が分解し、そして残りのRPE単層はそれ自体の上にカールし、折り畳まれていた。120時間後にゲルは完全に分解した。この結果は、RPEの平坦でしわのない表現型を維持するために、フィブリンからの機械的支持の必要性を実証している。
【0061】
ゲルが完全に分解した領域におけるRPE単層の生存/死滅イメージのクローズアップを得た(
図19)。倍率は、フォーカスが合っていない領域として見られた。全体として、細胞生存率は高いままであり、そして分解前の細胞の生存率に匹敵した。
【0062】
RPE/フィブリン移植物を送達するための外科用器具の使用が示された(
図29)。器具は静水圧を使用してデバイスの内外に移植物を流した。
【0063】
これらの結果は、40~60mg/mLのフィブリノーゲン濃度を使用して適切な剛性が達成され得ること、及びゲルの厚さが約50μm~約300μm(例えば、約100μm~約200μm、又は約50μm~約200μm)であり得ることを実証している。これらの結果はまた、コラゲナーゼ及びプラスミノーゲンによる処理後に細胞間接合(cell-cell junctions)が無傷のままであり得ることを実証している。
【0064】
本明細書に提供する結果は、フィブリン基質の分解動力学が、フィブリノーゲン、プラスミノーゲン及びtPA濃度を調整することによって約1.5時間~約20時間で変動し得ることを実証している。
【0065】
実施例2:フィブリン付着及び細胞生存率に対するアプロチニンの効果
フィブリンゲルの付着及び維持、並びに細胞生存率に対するアプロチニンの効果を決定するために研究を行った。50U/mLアプロチニンを含む培地中でgeltrex コーティングあり(
図14A)及びなし(
図14B)のフィブリンゲル上でiPSC-RPE細胞を2週間培養した。培地中へのアプロチニンの導入は、フィブリンゲル分解を防止するようであった。さらに、これらの試験は、フィブリンゲルへの細胞の付着がgeltrexの存在とは無関係に生じ得ることを示している。ゲルをプレートから取り出した後も細胞は接着したままであり(
図15A)、ゲルを切断した後も細胞の除去は最小限であった(
図15B)。
【0066】
アプロチニンを含む2週間の培養とその後のゲルの剥離及び切断後のフィブリンゲル中のiPSC-RPE細胞の生存率を評価するため、カルセイン-AM(生存)及びエチジウムホモダイマー(死滅)で細胞を染色した。geltrexが存在する(
図16A)又は存在しない(
図16B)かどうかにかかわらず、剥離及び切断後に細胞は生存したままであった。プレートからの取り出し及び切断後、アプロチニンを含みgeltrexあり又はなしで培養したゲルの端部の細胞を詳細に調べたところ、一部の死細胞がゲルの周囲に見られたが、ほとんどの細胞は生存可能であることが明らかになった(
図17)。
【0067】
培養細胞に対するゲル分解の効果を評価するために、iPSC-RPE細胞を含むフィブリンゲルを0.1U/mLのプラスミノーゲン及び22U/mLのtPAでの消化によって分解した。画像は60時間(
図18A)及び96時間(
図18B)に取得され、細胞が単層としてのプレートから剥離したことを示している。96時間のゲル消化後の生存率を評価するために、単層中の細胞をカルセイン-AM(生存)及びエチジウムホモダイマー(死滅)で染色したところ、ほとんどの細胞が生存していることが示された(
図19)。
【0068】
実施例3:頂端フィブリンを有する網膜色素上皮単層のためのプロトコル
(1)セルロースエステル膜フィルターインサート上への2.5mg/mLコラーゲンのゲル化。
a.1.0~5.0 mg/mLコラーゲン
b.セルロースエステル、ポリカーボネート、PTFE、TCPS膜フィルター
(2)マトリゲル(matrigel)の1:5希釈によるコラーゲン表面のコーティング。
a.範囲:1:1~1:50希釈
b.マトリゲル(Matrigel)、ゲルトレックス(geltrex)又は精製ラミニン
(3)0.5×106細胞/cm2での細胞のプレーティング。
a.0.1~2.0×106細胞/cm2
(4)約2週間にわたる培養
a.1~6週間
(5)PBSによる細胞の洗浄
(6)細胞表面の乾燥
(7)80μLの混合した50mg/mLフィブリノーゲン、2U/mLプラスミノーゲン及び100U/mLトロンビンの噴霧(合計流速80μL/秒、高さ10cmで1秒当たり0.8バール)。
a.30~200μLの混合物の噴霧
b.30~70mg/mLのフィブリノーゲン
c.0.1~4.0U/mLのプラスミノーゲン
d.10~600U/mLのトロンビン
e.30~400μL/秒の流速
f.0.6~1.2バール
g.5~15cm高
(8)37℃にて1時間フィブリノーゲンをゲル化。
a.30分から2時間ゲル化
(9)PBSによる再水和。
(10)750U/mLコラゲナーゼにインサートを配置することによる単層の剥離。
a.400-1500U/mLコラゲナーゼ
(11)PBSで穏やかに洗浄。
(12)フィブリン-RPE移植物を平面に移動しパンチして複数の移植物にする。
(13)移植物を外科用デバイスにローディング。
(14)眼を外科手術用に準備する。
(15)移植物を網膜下腔に入れる(Plunge)。
(16)レーザー鋲。
(17)複数の移植物を 網膜下腔内に敷き詰める(Tile)。
(18)眼を閉じる。
(19)24時間後、100μLの4,000U/mL 組織プラスミノーゲン活性化因子の硝子体内注射。
a.手術の3~72時間後
b.50~200μL注射
c.100~35,000U/mL。
このプロトコルは、頂端フィブリンヒドロゲルによって支持されたRPE単層を生じる。
【0069】
実施例4:基底フィブリン支持体を有する網膜色素上皮単層のためのプロトコル
(1)ゲルへの30mg/mLフィブリノーゲン及び100U/mLトロンビンの混合溶液のプレーティング
a.20~80mg/mLフィブリノーゲン
b.10~600U/mLトロンビン
c.均一な広がりを確保するためプレートを旋回する
d.鋳型を使用してゲルを所望の厚みに圧縮する
e.厚み:50μm~1mm
f.混合物をTCPS、ポリカーボネート、セルロースエステル上にプレーティングする
g.あるいは、フィブリンゲルの平面シートを鋳型を使用して予め形成し、細胞培養インサートに載せる
h.混合物を表面上に噴霧する
(2)1:5希釈マトリゲルによるゲル表面のコーティング。
a.範囲:1:1~1:50希釈
b.マトリゲル(Matrigel)、ゲルトレックス(geltrex)、ラミニン521、ラミニン511
c.コーティングステップは必要ない
(3)細胞を0.5×106細胞/cm2でプレーティング
a.0.1~2.0×106細胞/cm2
(4) 50U/mLアプロチニンを含む培地を用いて2週間培養。
a.範囲:20~150U/mL
b.1~10週間
(5)支持体からフィブリンをピールすることによりフィブリン-RPEを動かす。
(6)任意手順:基底フィブリンゲルへのプラスミノーゲンの導入。
a.プラスミノーゲン溶液中でのフィブリン-RPEのインキュベート
i.0.001~40U/mL(例えば1~40U/mL)プラスミノーゲン
ii.2~6時間
(7)任意手順:さらなる支持体のための頂端ゲル。
a.80μLの混合した50mg/mLフィブリノーゲン、2U/mLプラスミノーゲン及び100U/mLトロンビンの噴霧(合計流速80μL/秒、高さ10cmで1秒当たり0.8バール)。
i.30~200μLの混合物の噴霧
ii.30~70mg/mLのフィブリノーゲン
iii.0.1~4.0U/mLのプラスミノーゲン
iv.10~600U/mLのトロンビン
v.30~400μL/秒の流速
vi.0.6~1.2バール
vii.5~15cm高
b.37℃にて1時間フィブリノーゲンをゲル化。
i.30分から2時間ゲル化
(8)フィブリン-RPE移植物を平面に移動しパンチして複数の移植物にする。
(9)移植物を外科用デバイスにローディング。
(10)眼を外科手術用に準備する。
(11)移植物を網膜下腔に入れる(Plunge)。
(12)レーザー鋲。
(13)複数の移植物を 網膜下腔内に敷き詰める(Tile)。
(14)眼を閉じる。
(15)24時間後、100μLの4,000U/mL 組織プラスミノーゲン活性化因子の硝子体内注射。
a.手術の3~72時間後
b.50~200μL注射
c.100~35,000U/mL。
このプロトコルは、基底フィブリン支持体を有するRPE単層を生じる。
【0070】
実施例5:眼の処置プロトコル
診療所は、患者の皮膚生検を得て、それをGMP施設に送って、他に記載されているように(Sonoda et al., Nat. Protoc., 4:662-673 (2009); Johnson et al., Ophthalmol. Vis. Sci., 56:4619 (2015); Brandl et al., NeuroMolecular Med., 16:551-564 (2014); Idelson et al., Cell Stem Cell., 5:396-408 (2009);及びCarr et al., Mol. Vis., 15:283-295 (2009))iPSC-RPE細胞を作製する。iPSC-RPEは、細胞培養インサートを使用して最大3ヶ月間フィブリンヒドロゲル上で培養される。RPE/フィブリンゲルは、患者のニーズに合わせて切断される。切断された移植物は移植デバイスの先端部品に装填され、プラスミノーゲンを含む又は含まない培地に保存され、そして診療所に輸送される。
【0071】
RPE/フィブリンゲルがあらかじめ導入されたクリップ要素が移植デバイスに挿入される。患者は手術の準備をする。標準的な3ポート硝子体切除術を行い、続いて細いカニューレを用いてブレブを形成し、続いて網膜鋏を用いて網膜切開術を行う。切開(例えば、3mm又は1.5mm切開)を強膜(又は剥離を伴う網膜)に行う。移植デバイスの先端を網膜切開術の下の位置にある眼の中に挿入し、移植物を配置する。移植物を所定の位置に固定(鋲)するためにレーザーが使用される。処置される領域を覆うために追加の移植物を用いてこれが繰り返される。網膜剥離は、シリコーン油又は液体パーフルオロカーボンタンポナーデ(tampenade)を用いて閉鎖される。強膜切開部を縫合して閉じる。tPAを硝子体内注射する。患者は回復し治癒するようにする。治癒後、目視検査を行って処置を確認する。
【0072】
実施例6:RPE単層の移植のためのゼノフリー(xeno-free)かつ迅速分解支持体としてのフィブリンヒドロゲル
RPE移植のための基質としてのフィブリンの適合性を確認するために以下を行った。種々のフィブリンヒドロゲルを、フィブリノーゲン及びトロンビンの濃度を変化させて作製し、時間のスケールで分解に関する規定のパラメータを有する薄い剛性ヒドロゲルを形成した。続いて、最適化条件を使用してフィブリンゲルを作製し、その上でiPSC-RPEを培養し、十分に分化した単層を形成した。最後に、フィブリン支持体をin vitroで分解し、RPE単層に対するこの分解の影響を評価した。本明細書に提供する結果は、フィブリンヒドロゲルを幹細胞からのRPEの分化のための長寿命の基質として使用し得ること、そして網膜下腔への送達後は制御された環境下で迅速に分解し得ることを実証している。
【0073】
化学物質
フィブリノーゲン及びトロンビンは、Ethicon(Somerville, NJ)(Evicel, フィブリノーゲン、60mg/mL)、Baxter(Deerfield, IL)(Tisseel, フィブリノーゲン、95mg/mL)、及びSigma-Aldrich(St Louis, MO)(フィブリノーゲン、57mg/mL)から入手した。プラスミノーゲン及び組換え組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)をSigma-Aldrichから入手した。
【0074】
薄層フィブリンゲルの形成
フィブリノーゲン濃度及びトロンビン濃度を変化させることによりフィブリンゲルを形成した。最初の試験はトロンビン濃度による最小の変動を示し、全ての実験は最終濃度100U/mLのトロンビンを使用した。無細胞実験のために、薄層ゲルを、厚さ0~200μmの範囲の規定された厚さのスペーサーを有する2枚のポリカルボネートプレート及び2層のパラフィルムからなる特注厚の鋳型を用いて形成した。フィブリノーゲン及びトロンビン溶液の混合物を混合直後に2つの層の間に挟み、そしてその溶液を加湿インキュベーター中で37℃で1~2時間かけてゲル化させた。トッププレート及びパラフィルムを除去した後、ゲルを水和させ、そしてPBS中で洗浄した。特注機械的パンチを使用して、1.5mm×5mmの横長の形状に同様のサイズのゲルを切り出した。ピンセットを慎重に使用してゲルを操作した。
【0075】
ゲル厚測定
パンチしたゲルをOCTを使用して画像化し、厚みを決定した。Envisu R4110(Leica; Wetzlar, Germany)をゲルに向けたカメラ及び付属のテレセントリックレンズと共にAIMテーブルを使用してセットアップした。画像化の前に、透明60mmペトリ皿のPBS中にゲルを配置した。ゲルのA及びBスキャンを撮影し、ゲル当たりの厚みをランダムな4つの位置について平均化した。
【0076】
電子顕微鏡法
フィブリンヒドロゲルの走査型電子顕微鏡法(SEM)画像をHitachi S-4700(Hitachi High Technologies; Schaumburg, IL)及びHitachi SEMソフトウエア(V3.6)を使用して取得した。二価カチオンを含む0.1Mリン酸バッファーpH7中2.5%パラホルムアルデヒド及び1%グルタルアルデヒドにおいて一晩かけてゲルを固定した。続いてゲルを二酸化炭素を用いて臨界点乾燥し、アルミニウムスタブ上にマウントし、そして金-パラジウムを用いて60秒間スパッタコーティングした。
【0077】
メカニクス
ゲルバイオメカニクスは、他(Uehara et al., J. Bone Joint Surg. Am., 97:1792-1798 (2015))に記載の設定を使用してバルジテストを用いて取得した。種々のフィブリノーゲン濃度及び厚さで作製されたゲルを測定した。簡単に説明すると、ゲルを、グリップを高めるために研磨した内径2mmのリングピンセット(WPI; Sarasota, FL)にマウントした。ピンセットをXYステージ(Klinger; Irvine, CA)にマウントして、圧子(indenter)をゲルと整列させた(
図34A)。試験は、外径1.3mmの特注の平らな円筒形アルミニウム圧子を用いて行った。テストは、特注で作られたzステージドライバで行った。力を10gの小型ロードセル(Honeywell; Morris Plains, NJ)を使用して測定し、データをLabVIEW V12.0(National Instruments; Austin, TX)を使用して収集した。破壊まで1mm/秒で電界偏向試験を行った。線形領域が機械的応力値を与えるように力と変位(displacement)曲線をグラフ化してフィットさせた(
図34B)。最大荷重も曲線のピークとして得られた。
【0078】
分解動力学
ゲル分解動力学を、フィブリノーゲン、プラスミノーゲン、又は組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)の濃度を変動させることにより決定した。トロンビン濃度は剛性又は分解動力学に影響を及ぼさないようであり、10U/mLで一定に保った。同一サイズのゲル(1.5mm×5.0mm横長)を特注パンチを使用して作製した。パンチされたゲルは、種々の濃度のプラスミノーゲン(0.01~1U/mL)及びtPA溶液(0.1~1,000U/mL)中でインキュベートした。それぞれの変数(フィブリノーゲン、プラスミノーゲン、及びtPA濃度)の影響を解明するため、それぞれ他の2つを一定に保ったまま変動させた。
【0079】
経時的に、懸濁液溶液のサンプルを採取した。フィブリン分解産物(FDP)を、製造業者のプロトコルに従ってPierce 660 nmプロテインアッセイ(Life Technologies; Carlsbad, CA)を用いて定量した。既知のFDP濃度の標準曲線を使用して吸光度の値から濃度を得た。濃度対時間のグラフを使用して、一次動力学を仮定した指数関数的フィットモデルを用いて速度定数を得た。
【0080】
細胞
21歳の白人女性ドナーから作製されたiPSC 006-BIOTR-001株を使用した(Johnson et al., Investig. Ophthalmol. Vis. Sci., 56:4619 (2015))。この株から、他(Johnson et al., Investig. Ophthalmol. Vis. Sci., 56:4619 (2015))に記載されている分化プロセスを使用して、LAgen Laboratories (Rochester, MN)によりiPSC-RPE細胞が作製された。
【0081】
培養表面(60mm、6ウエルプレート、12ウエルプレート、又は12ウエルトランスウエルのいずれか)の底においてフィブリノーゲン溶液(最終:30mg/mL)及びトロンビン溶液(最終:10U/mL)を混合することによりフィブリンゲルを作製し、特注Teflonウェイトを使用してゲル表面を平らにし滑らかにした。続いてゲルを5%CO2、37℃加湿インキュベーターにおいて1~2時間インキュベートした。ゲルをプレーティング前にPBSで洗浄した。
【0082】
RPEを他(Johnson et al., Investig. Ophthalmol. Vis. Sci., 56:4619 (2015))に記載されているように継代した。再懸濁した細胞を、0.4~0.5×106細胞/mLの密度でフィブリン又はマトリゲル(matrigel)コーティング表面上にプレーティングした。RPE分化培地(RPEM(LAgen Laboratories)、2%(v/v) B27及び1%(v/v) 抗真菌剤/抗生剤(Life Technologies)を含む))に種々の濃度のアプロチニンを補充してフィブリンゲルを保存した。2日毎に培地を交換した。使用前に6~10週間にわたりRPEをゲル上で培養した。適当であれば、マトリゲルコーティング組織培養ポリスチレン上で培養したRPEを陽性対照として使用した。
【0083】
RPE免疫蛍光
iPSC-RPEにおけるタンパク質発現を可視化するために免疫蛍光を使用した。サンプルを100%氷冷メタノール中で-20℃で10分間かけて固定した。他(Johnson et al., Investig. Ophthalmol. Vis. Sci., 56:4619 (2015))に記載のように、以下の一次抗体を1:1000希釈で使用して染色を行った:ポリクローナルウサギ抗Best1(pAB125)、ポリクローナルウサギ抗エズリン(Cell Signaling; Danvers, MA)、及びポリクローナルウサギ抗ZO1(Life Technologies)。サンプルをFluoromountを使用してスライドガラスに載せ、Nikon E600蛍光顕微鏡(Nikon; Tokyo, Japan)を使用して画像化した。
【0084】
生存/死滅アッセイ
LIVE/DEAD生存力/細胞毒性キット(Live Technologies)を製造業者のプロトコルにより使用して生存/死滅アッセイを実施した。生細胞はFITCフィルター(吸光度:495nm/発光:520nm)を使用して可視化し、死細胞はTRITCフィルター(吸光度:543nm/発光:560nm)を使用して可視化した。フィブリン上で培養したRPE単層を分解の前又は後に使用した。100U/mL tPAを含む1U/mLプラスミノーゲンを使用して分解を達成した。細胞生存力を、可視化された総細胞で除した生染色細胞の割合(%)として計算した。実験群の結果を対照群に対して正規化した。
【0085】
PCR
フィブリン上で培養したRPEを1X DPBSに掻き取り、4℃にて5,000gで5分間遠心した。細胞をTrizol中で溶解し、そして全RNAを全RNA単離キット(Zymo; Irvine, CA)を用いて単離した。全RNAをRNase不含のDNAse I(Roche Bio; Basel, Switzerland)で処理した。Superscript III逆転写酵素(Life Technologies)を用いて全RNAからcDNAを合成した。全RNAをオリゴdT(Life Technologies)でプライミングした。プライマーは、Primer-BLASTソフトウエアを使用して設計した(Ye et al., BMC Bioinformatics, 13:134 (2012))。Sendai Viral Primer配列は、CytoTuneTM-iPS 2.0 Sendai Reprogramming Kitからのものであった。プライマーはIDT(Coralville, IA)から脱塩して注文した。10~100ngの投入cDNA及びPowerUp Sybr Green Master Mix(Applied Biosystems; Foster City, CA)を用いた40サイクルのPCRを、Applied Biosystems QuantStudio 5 qPCR装置で行った。プライマーセットのアニーリング温度に従ってPCR反応をバッチ処理した。CTが37サイクル未満であれば、遺伝子が存在するとみなした。
【0086】
ELISA
ELISAアッセイキット(RND Systems; Minneapolis, MN)を使用して製造業者のプロトコルに従って、プレコーティングしたプレートを用いて48時間後に回収された培地からVEGF及びPEDF分泌を定量した。総タンパク質は標準曲線を使用して決定した。
【0087】
ウエスタンブロット
RPEを、1%Triton-X、20mM Tris、150mM NaCl、及び5mM EDTA, pH 8.0を含むTPIバッファー中にフィブリンから掻き取った。細胞を4℃で1時間かけて溶解した。製造元の溶液キット及びプロトコルを用いて、サンプルを希釈し、そしてキャピラリー電気泳動に基づくウエスタンブロット装置(Protein Simple Wes; San Jose, CA)で分離した。一次抗体は、RPE65(401.8B11.3D9)、Bestrophin 1(pAB125)、CRALBP(B2)、及びβ-アクチン(AC-15)を含めた。
【0088】
統計
JMP 10(SAS; Cary, NC)を使用してデータを解析した。フィブリン機械的試験及び分解試験のために、一方向ANOVA検定を使用した。アプロチニン毒性試験のために、二方向ANOVA検定を使用した。ANOVA解析後、Tukey HSD検定を使用して群間の有意性を検定した。全ての細胞定量データについて、ステューデントのt検定を使用して個々の群を比較した。統計学的有意性はp<0.05について検討した。
【0089】
結果
ゲル形成機械的特性
RPE移植のために本明細書で提供される材料は、外科用器具で操作しながら平坦性を維持するのに十分な強度を有する薄い層状シートになるように設計することができる。フィブリノーゲン及びトロンビンの濃度を変えながら、特注鋳型(50mm×50mm平方、400μm厚)を使用して同じ厚さのゲルを製造した。トロンビン濃度は、他(Rowe et al., Acta Biomater., 3:59-67 (2007))に記載されているように、1U*mL-1*mg-2を超える濃度のフィブリノーゲンで製造されたフィブリンヒドロゲルの機械的特性に影響を及ぼさなかった。以下の研究は、一定のトロンビン濃度(100U/mL)を用いて行われた。
【0090】
フィブリンは、不透明な滑らかな薄く硬いゲルを生じた(
図35A)。水和後にフィブリンゲルの膨潤は認められなかった。ゲルの端部は明確であった。OCTイメージングにより、この方法で形成されたゲルの平均厚さは、鋳型の寸法に基づいて予想される範囲内で、200±30μm(
図35B)であることが実証された。フィブリンゲルのSEM画像は、フィブリンについて他(Filova et al., J. Biomed. Mater. Res. A., 90A:55-69 (2009);
図35D)に記載されているものと同様の原線維微細構造を有する滑らかな表面を示した(
図35C)。
【0091】
1.5mm×5mmの寸法を有する特注の長方形のパンチを使用して特注鋳型で形成された大きなシート状のフィブリンから同様のサイズのヒドロゲルを生成した。1.5mm×5mmの寸法は、移植を実施するための小さな切開を維持しながら黄斑の表面積(直径5mm)を覆う必要性のバランスをとるために選択された。これらの寸法では、3mm未満の切開を必要としながら、3個の移植物を黄斑の表面積の>90%を覆うように並べることができた。この形状でパンチされたフィブリンゲルは、フィブリノーゲン濃度が増加するにつれてより硬くなるようであった。フィブリノーゲン濃度が異なるゲルをPBSからピンセットで持ち上げて、その形状を維持し、その水和重量を支える能力を定性的に観察した(
図35E)。10mg/mL濃度のゲルは、PBSから取り出してそれ自身の上に折り畳んだときにゲルの即時カールを示した。20及び30mg/mLのフィブリノーゲン濃度で作製されたゲルは、減少したカールを示し、そして40mg/mL以上では、カールは示さなかった。全てのゲルは、PBSに戻した後に平らな形状に戻るのに十分な可塑性を示した。40mg/mL以上のフィブリノーゲン濃度で作製されたゲルは、柔軟で耐久性があり、そして様々な外科用器具を用いて操作可能であるように見えた。非常に高濃度のフィブリノーゲン溶液からゲルを得ることは、溶液の粘度が高いために困難である可能性があり、試験された最高濃度は80mg/mLであった。しかしながら、40 mg/mL及び80 mg/mLで作製されたゲルの間では、剛性についての観察可能な差は生じなかった。
【0092】
定量的には、機械的強度は300μmの一定の厚さでフィブリノーゲン濃度が増加するにつれて増加した(
図34C)。20、40、60、及び80mg/mLのフィブリノーゲンで作製されたゲルについては、機械的強度は、0.016±0.012 N/mm、0.039±0.011 N/mm、0.035±0.013 N/mm、及び0.045±0.012 N/mmであった(n=5、p=0.003)。群内では、20mg/mL濃度群は40mg/mL(p=0.027)及び80mg/mL(p=0.006)とは統計的に異なっていた。最大生産力もまた、フィブリノーゲン濃度の増加と共に増加した。20、40、60、及び80mg/mLのフィブリノーゲンについての最大力値は、それぞれ0.036±0.038N、0.081±0.039N、0.086±0.035N、及び0.111±0.033 N(n=5、p=0.030)であった。群内では、20mg/mL濃度群のみが80mg/mLと統計的に異なっていた(p=0.023)。
【0093】
様々な厚さのスペーサーを有する特注鋳型にゲルを注型した後、フィブリンゲルをパンチし、OCTを用いて画像化して実際の厚さを定量化し、そして機械的試験のためにマウントした。より薄いゲルの適切な取り扱いを確実にするために、厚さを変えながらフィブリノーゲン濃度を60mg/mLに固定した。OCTを用いて、実際の厚みは、100μm群は91±13μm、200μm群は198±10μm、そして300μm群は298±9μmであった(n=5)。厚さを変化させると、機械的強度と最大力の両方に対して直接的な指数関数の関係が示された(
図34D)。100μmの厚さは0.004±0.003N/mmの機械的強度及び0.004±0.003Nの最大力を生じたが、200μmの厚さは0.020±0.013N/mmの機械的強度及び0.032±0.028Nの最大力を生じた。300μmの厚さは、0.043±0.019N/mmの機械的強度及び0.094±0.031Nの最大力を生じた。機械的強度に対する厚さの有意な影響があり(n=3、p=0.034)、100μm群は300μm群とは統計的に異なっていた(p=0.029)。同様に、厚さは最大力に有意な影響を及ぼし(n=3、p=0.010)、300μm群は100μm群(p=0.009)及び200μm群(p=0.045)とは有意に異なる。定性的には、100μmゲルは、それらが簡単に破けるため、200μmゲル及び300μmゲルの両方に比べて外科用器具で操作するのが困難であった。200μmの厚さは、外科的操作のための十分な機械的強度を有する最も薄いゲルであるように見えた。
【0094】
フィブリンヒドロゲルの分解動力学
フィブリンゲルは、室温でPBS中に無菌的に貯蔵した場合、それ自体では顕著な分解を受けなかった。現在まで、フィブリンゲルは9ヶ月を超えて室温で保存されている。PBS中のフィブリンゲルは、tPAに曝露された場合に顕著な分解を受けなかった(
図36A)。しかし、プラスミノーゲンとtPAの組み合わせが添加された場合には、フィブリンゲルは急速に分解し始めた。分解はゲルの全体的な薄化として進行し、一部のゲルはより小さな断片に分解した。可視できる残存物がなくなったとき、分解は完了したとみなした。
【0095】
分解動力学試験には、機械的試験に使用されたのと同じ寸法(1.5mm×5mm、横長)の200μm厚のフィブリンヒドロゲルを使用した。3つの異なる成分濃度(フィブリノーゲン、プラスミノーゲン及びtPA)の効果は、他の2つを固定することによって試験した(
図36B)。一定のプラスミノーゲン(0.1U/mL)及びtPA濃度(100U/mL)において、種々のフィブリノーゲン濃度を使用して作製されたゲルの分解についての動力学的速度定数は、40mg/mLについて0.023±0.002分
-1、50 mg/mLについて0.025±0.001分
-1、55mg/mLについて0.025±0.005分
-1であった。速度定数(n=3、p=0.55)に対するフィブリノーゲン濃度の影響はなく(n=3、p=0.55)、ゼロ次動力学を示唆している。このように、分解時間はフィブリノーゲン濃度と線形関係があった:40mg/mLについて100±10分、50mg/mLについて113±13分、40mg/mLについて120±10分。40mg/mLを超えるゲルの機械的剛性には差が検出されなかったので、40mg/mLの濃度が迅速な分解が可能な硬質ゲルの最適条件であると決定された。
【0096】
一定のフィブリノーゲン濃度(40mg/mL)及びtPA濃度(100U/mL)において、プラスミノーゲン濃度の変動は分解速度定数及び総分解時間に影響を及ぼした。種々のプラスミノーゲン濃度における分解速度定数は、1U/mLについて0.363±0.048分-1、0.5U/mLについて0.116±0.008分-1、0.1U/mLについて0.025±0.002分-1、0.05U/mLについて0.0083±0.0055分-1、0.01U/mLについて0.0048±0.0013分-1(n=3、p<0.001)だった。群内で、1U/mL群(P<0.001)及び0.5U/mL群(p<0.003)は全ての他の群とは異なっていた。種々のプラスミノーゲン濃度における総分解時間は、1U/mLについて7±1分、0.5U/mLについて24±3分、0.1U/mLについて34±3分、0.05U/mLについて81±16分、0.01U/mLについて177±32分(n=3、p<0.001)だった。群内で、0.01U/mL群(p<0.001)及び0.05U/mL群(p=0.03)は、他の全ての群とは統計学的に異なっていた。
【0097】
一定のフィブリノーゲン濃度(40mg/mL)及びプラスミノーゲン濃度(0.1U/mL)において、tPA濃度に関して分解速度定数は100U/mLのプラトーに達するまで上昇した。種々のtPA濃度における分解速度定数値は、1U/mLについて0.011±0.003分-1、10U/mLについて0.021±0.003分-1、100U/mLについて0.039±0.002分-1、1,000U/mLについて0.042±0.005分-1(n=3、p<0.001)だった。群内で、1U/mL群(p=0.036)及び10U/mL群(p=0.036)は、他の全ての群とは統計学的に異なっていた。総分解時間も同様にtPA濃度100U/mLでプラトーに近づく。種々のtPA濃度における総分解時間は、1U/mLにおいて170±17分、10U/mLにおいて113±12分、100U/mLにおいて65±9分、1,000U/mLにおいて57±6分(n=3、p<0.001)だった。群内で、1U/mL群(p<0.001)及び10U/mL群(p=0.004)は、他の全ての群とは統計学的に異なっていた。
【0098】
フィブリン上でのRPE培養にはアプロチニンが必要である
RPE培養のため、メニスカスを平らにするための特注のテフロン(登録商標)ウェイトを使用して、フィブリンゲルを様々な細胞培養フォーマットに適合するように形成した。全ての細胞培養は、40mg/mLのフィブリノーゲン濃度で形成されたフィブリンゲルを用いて行った。最初にフィブリン上で培養したRPEは、最初の48時間以内に基質を分解した(
図37A)。これに対処するために、プロテアーゼ阻害剤であるアプロチニンを使用した。アプロチニンはヒトでの使用がFDAにより承認されている。
【0099】
有用と思われるアプロチニン濃度の範囲を決定するために、アプロチニンがiPSC-RPEに対して何らかの毒性を示すかどうかを決定した。これを達成するために、生存/死滅アッセイを96ウエルプレート中のiPSC-RPEに対して利用した。細胞に、2日間隔で、250U/mLから8,000U/mLの範囲の濃度のアプロチニンを補充した培地を供給した(
図37B)。生細胞の割合(%)は、0U/mLの対照群に存在する生細胞の割合に対して正規化した。試験したすべてのアプロチニン濃度についての生存率は対照と変わらなかった(
図37B)。二方向ANOVAを用いて、8週間の実験の過程にわたって試験したいずれの濃度のアプロチニンでも生存率の有意な効果の低下は観察されなかった(n=3、p>0.999)。
【0100】
フィブリン支持体を維持するのに必要なアプロチニンの最適量を決定するために、0.5U/mLから50U/mLの範囲の濃度でアプロチニンをRPE培養培地に添加し、そしてRPE単層を支持するフィブリンヒドロゲルの生存を経時的に定性的にモニターした。1週間後、8週間にわたって種々の群の顕微鏡写真を撮った(
図37C)。0U/mLでは、ゲルの大部分が分解され、最小の細胞付着が2日以内に観察された。表面に付着した細胞は単層を形成しなかった。0.5U/mL群では、大部分のゲルは培養2日後に無傷のままであった。この濃度では、iPSC-RPE細胞は、フィブリンゲルが残存していたパッチにわたって増殖したがゲルが分解した領域では増殖しなかった(
図37C、星印)。1~10U/mLを受けた群では、アプロチニン濃度が増加するにつれて、分解ゲルのパッチがより少なく観察された。
【0101】
10U/mLから50U/mLのアプロチニン濃度に曝されたゲルは無傷のまま残り、プレートの表面全体を覆い、iPSC-RPEの単層での被覆を示した。1週間後に定量的に、細胞付着を伴う表面積の%は、0U/mlで20.0±8.9%、0.5U/mLで93.6±1.3%、1U/mLで98.1±0.9%、5U/mLで99.7±0.5%、10U/mLで99.8±0.2%であった(n=3、p<0.001;
図37D)。群内で、0U/mL対照は他の全ての群と有意に異なっていた(p<0.001)。全体として、25U/mLのアプロチニンの添加は、8ヶ月を超えてフィブリンのRPE分解を防止した。
【0102】
フィブリン上でのRPEの表現型
フィブリン上で培養されたiPSC-RPEは着色し、そして石畳状(cobblestone)の細胞単層を形成する(
図38A)。生存/死滅アッセイは、細胞が生存可能であることを確認した(
図38B)。RPE表現型の検証は、20の主要RPEマーカーのパネルを用いてqPCRによって行った(
図40)。PCRの37サイクル目の前にピークが観察された場合、マーカーが存在すると見なした。マトリゲルコーティング組織培養プラスチック上で増殖したiPSC-RPEについて観察されたものと同様に、10週間フィブリンゲル上で増殖したiPSC-RPEにおいてすべてのRPEマーカー(特に、RPE65、CRALBP及びMITF)が検出された。多能性マーカーLIN28A及びセンダイウイルス送達「Yamanaka」因子(KLF、KOS、c-myc)のマーカーは、全ての群において陰性であった。
【0103】
ウエスタンブロット分析を用いて、RPEマーカーのタンパク質発現を確認した(
図38D)。RPE65、Best 1及びCRALBP(α-アクチンに対して正規化された)のバンドは、フィブリンゲル上で増殖したiPSC-RPEからの溶解物中に観察された。免疫蛍光染色を、Best 1、エズリン(Ezrin)及びZO-1について行った(
図38E)。以前に報告された、マトリゲルでコーティングされたトランスウェル上で増殖したiPSC-RPEにおけるBest 1、エズリン及びZO-1の染色を参照として使用した(Johnson et al., Investig. Ophthalmol. Vis. Sci., 56:4619 (2015))。Best1は細胞の側底面(バソラテラル面)に局在していた。微絨毛のマーカーであるエズリンは微絨毛の指標である細胞の頂端面に涙点として観察された。ZO-1は、全ての細胞の境界を概説するために観察され、接合複合体及び単一の単層の存在を示した。
【0104】
VEGF及びPEDFのRPE分泌をELISAによって定量した(
図38C)。RPEと共に48時間培養した後、フィブリン群由来の培地は6.46±0.23ng/mLのVEGF濃度を有した。PEDFについては、フィブリン群の濃度は6.41±1.61μg/mL、マトリゲル対照の濃度は6.10±0.53μg/mLだった(n=3、p=0.822)。したがって、フィブリンヒドロゲル又は組織培養プラスチック上で増殖させたRPEの間に差は見られなかった。
【0105】
同様の結果が、マトリゲルコーティングフィブリンヒドロゲル上でiPSC-RPEを培養して得られた。例えば、VEGF及びPEDFのELISAによる定量は、フィブリン+マトリゲルコーティング上で培養したiPSC-RPEの遊離が、フィブリルヒドロゲル単独及びマトリゲルコーティングTCPSの両方と同様であることを示した(
図42)。免疫蛍光染色は、フィブリン又はフィブリン+マトリゲルコーティング上で培養したiPSC-RPEの間で、同様のパターンのエズリン及びZO-1を示した(
図43)。生存/死滅アッセイは、フィブリン又はフィブリン+マトリゲル上で増殖したiPSC-RPEの類似の生存率を示した(
図44)。ウエスタンブロット分析は、フィブリン又はフィブリン+マトリゲル上で増殖したiPSC-RPEからのBest1、RPE65及びCRALBPの発現を示した(
図45)。
【0106】
フィブリンの分解は無傷のRPE単層を生じる
この試験の目的は、RPE単層の増殖及び移植のための急速に分解可能な支持体を作製することであった。急速に分解可能で適切なサイズ及び機械的強度を有するフィブリンヒドロゲルを製造するためのパラメータを確立したので、iPSC-RPE単層の存在及びアプロチニン中での増殖がゲルの分解動力学を変更するかどうか並びに分解がin vitroにおけるiPSC-RPEの生存力を変更するかどうかを決定するために以下を行った。iPSC-RPEのために(sans)ゲルを用いて蓄積されたデータに基づいて、0.5U/mLプラスミノーゲン及び100U/mL tPAを用いて分解試験を行った。
図39Aに示すように、フィブリンが分解し始めるにつれて、RPE単層は端部からそれ自体の上にカールし始めた(
図39A)。フィブリン支持体が残っていない領域でしわが見られた。フィブリンがまだ無傷の領域では、RPEは平坦に見えた。完全に分解された後、RPEは多くのカール及びしわを有する単層シートのままであり、そして外科用器具を用いて取り扱うことが困難になった。しかしながら、RPEは連続的な色素性組織として現れた(
図39A)。
【0107】
フィブリン支持体が分解された後のRPEの生存率を確認するために、フィブリンが完全に分解された24時間後に生存/死滅アッセイを実施した(
図39B及び39C)。生存率は、分解前のフィブリン上で培養された生存RPEの割合(%)に対して正規化した。分解前のRPEの正規化生存率値は100.0±3.9%であり、分解後は101.1±10.5%であった(n=3、p=0.877)。
【0108】
最後に、免疫蛍光を使用してフィブリン分解後のZO-1存在を検出した(
図39D)。完全なフィブリン分解の24時間後、固定されたRPE単層はZO-1について陽性染色を示した。支持されていないRPE単層の染色は、未分解のフィブリン上での単層のものとは区別がつかなかった。
【0109】
本明細書で提供される特定の結果はiPSC由来のRPEを使用して得られたが、本明細書に記載のフィブリンヒドロゲル材料がESC及び成体幹細胞などの他の供給源由来のRPEに使用できない理由はない。
【0110】
本明細書に提供される結果は、フィブリンがRPE移植のための材料として使用され得ることを実証している。フィブリンは、RPE送達に適切な機械的剛性及び分解特性を有して、様々な形状及びサイズで形成され得る。本明細書中に提供される結果はまた、アプロチニンなどのプロテアーゼ阻害剤を、フィブリンを分解するRPEの能力を遅くするために使用し得ることを実証している。さらに、iPSC-RPEをアプロチニンなどのプロテアーゼ阻害剤の存在下でフィブリン上で培養した場合に、細胞は表現型的にRPEと同様に見える可能性がある。フィブリンが分解された後、RPEは生存可能な単層として残ることができる。
【0111】
実施例7: RPE単層を含有するフィブリンヒドロゲルの移植
フィブリンヒドロゲルをウサギ眼の網膜下腔に移植した(
図41)。フィブリンヒドロゲルは、フィブリノーゲン溶液(最終:40mg/mL)及びトロンビン溶液(最終:100U/mL)を特注鋳型において混合して薄シート(200μm)を作製することにより調製した。移植後のゲルの視覚化を容易にするために、少量のトリパンブルーを加えた。移植物を1.5mm×5 mmの横長の形状にパンチした。調製後、移植物を移植デバイスに装填した。外科的移植を行うために、白色の雌ニュージーランドウサギ(3kg)を麻酔し、外科手術の準備をした。標準的な3ポート硝子体切除術を実施し、続いて細いカニューレを使用してブレブ(bleb)形成を行い、そして網膜切開術を網膜鋏を使用して作製した。強膜を通して切開部を作成するために3.2mmのスリットナイフを使用した。移植デバイスを眼に挿入し、網膜切開術の下に配置した。移植物は適所に配置された。移植デバイスを取り除いた後、強膜切開部を縫合して閉じた。動物が目覚める前は、移植物は平らな網膜の下に平面シートとして見えていた。動物を48時間後に犠牲にし、眼を摘出した。肉眼的解剖検査では、フィブリンハイドロゲルの証拠は残っていないことが明らかになった。
【0112】
他の実施形態
本発明をその詳細な説明と併せて記載してきたが、前述の記載は例示することを意図したものであって、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。他の態様、利点、及び改変は添付の特許請求の範囲内にある。
【0113】
[配列表]
SEQUENCE LISTING
<110> Mayo Foundation for Medical Education and Research
<120> METHODS AND MATERIALS FOR USING FIBRIN SUPPORTS FOR RETINAL
PIGMENT EPITHELIUM TRANSPLANTATION
<130> PA24-142
<150> US62/431,259
<151> 2016-12-07
<160> 76
<170> PatentIn version 3.5
<210> 1
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 1
aacttgggtt tggcaagagc 20
<210> 2
<211> 23
<212> DNA
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<220>
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<400> 2
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<400> 4
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<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 7
actgcctgga tgaactgtat ga 22
<210> 8
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 8
gagctctcca gcaactgtgt 20
<210> 9
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 9
tggtctccaa caagcgtctc 20
<210> 10
<211> 21
<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 10
tcacaaaact tgtcggactg g 21
<210> 11
<211> 23
<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 11
ccttcctcac caagtacctg aaa 23
<210> 12
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 12
ctcttgctgg aaggctggat 20
<210> 13
<211> 21
<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 13
aagctgcttg agagggtctt t 21
<210> 14
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 14
acggccttgc catcatactt 20
<210> 15
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 15
ccagggttca ggtttggttc 20
<210> 16
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 16
catctgtgga gggtcttggg 20
<210> 17
<211> 24
<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 17
aatacaggaa cttgaaatgc aggc 24
<210> 18
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 18
atgctgaagg aggtcttggc 20
<210> 19
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 19
cgggagatct ctgagaccga 20
<210> 20
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 20
ggatgagagt gcccagttcc 20
<210> 21
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 21
cgcatcaagg agttgggaat 20
<210> 22
<211> 17
<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 22
ctccaggcgg cgagagt 17
<210> 23
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 23
ctgctcatcg gctgttggta 20
<210> 24
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 24
gagcattggg aaccacaggt 20
<210> 25
<211> 21
<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 25
tgcctgggat tcttctcaca g 21
<210> 26
<211> 22
<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 26
tgcttcataa gtctgcgcct at 22
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<211> 24
<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 27
ttgacagtat ttttgagcag tggc 24
<210> 28
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 28
gacacagcaa gctcacaagc 20
<210> 29
<211> 21
<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 29
tctgaaggtt ctgatgccag c 21
<210> 30
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 30
gctggtgatg agagcaaggt 20
<210> 31
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 31
aagcaagtga agggatctgc 20
<210> 32
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 32
tcacagaggt ttggcttccg 20
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<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 33
cgctctaagg gttctgctct 20
<210> 34
<211> 21
<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 34
tcctgggcag acaccttctt a 21
<210> 35
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<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 35
atcctgctta tccttgtgct ga 22
<210> 36
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<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 36
gggtcattgt cagccgcttt 20
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<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 37
ggtggacacc atcgtgaaag 20
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<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 38
gaagccattt catagcgggc 20
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<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 39
aatgtcacct ggggcattca 20
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<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 40
aaaagcccat cctgtacatt acaaa 25
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<211> 21
<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 41
cttcaagggg cagtgggtaa c 21
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<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 42
ggacttggtg acttcgcctt 20
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<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 43
tccgaaccaa gcttcgtatc 20
<210> 44
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 44
tagcgaaagt gccaaagctg 20
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<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 45
tggacacctc ctggctattg 20
<210> 46
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 46
gggccaggat gaagtcgtag 20
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<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 47
ctgcagttcg aggtgctcat 20
<210> 48
<211> 15
<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 48
aggcggccgg cagag 15
<210> 49
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 49
accactttta ggtcggctca 20
<210> 50
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 50
tctggtccgg agattctgct 20
<210> 51
<211> 21
<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 51
aactcttcct gaggcaggtg g 21
<210> 52
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 52
ggaatctacg gggtgggttt 20
<210> 53
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 53
gccagacgat catgcagcta 20
<210> 54
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<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 54
gcagtctaca tgctaaatca gagg 24
<210> 55
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 55
tcgagggtgc aggtatggtt 20
<210> 56
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 56
tctgaactca cttcccgagc 20
<210> 57
<211> 23
<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 57
gatcaagatc attgctcctc ctg 23
<210> 58
<211> 22
<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 58
ctgcgcaagt taggttttgt ca 22
<210> 59
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<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 59
ctctgctcct cctgttcgac 20
<210> 60
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 60
accaaatccg ttgactccga 20
<210> 61
<211> 22
<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 61
agatcaaaag gagacaggtg ct 22
<210> 62
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 62
aatagccccc acccattgtg 20
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<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 63
actgacggag cccgagaag 19
<210> 64
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 64
ttgctcggtt ctcttcaccc 20
<210> 65
<211> 22
<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 65
ttggcttaat gagactggga cc 22
<210> 66
<211> 21
<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 66
acatcaccac accaacactg a 21
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<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 67
gtgacgcaga aggcctca 18
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<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 68
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<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 69
ggatcactag gtgatatcga gc 22
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<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
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<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 71
ttcctgcatg ccagaggagc cc 22
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<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 72
aatgtatcga aggtgctcaa 20
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<211> 23
<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 73
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<210> 74
<211> 21
<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 74
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<212> DNA
<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
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taactgacta gcaggcttgt cg 22
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<213> Artificial
<220>
<223> synthetic oligonucleotide
<400> 76
tccacataca gtcctggatg atgatg 26