(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112862
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】保存効力又は光安定性が改善された点眼用医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4704 20060101AFI20240814BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240814BHJP
A61P 27/06 20060101ALI20240814BHJP
A61K 31/5575 20060101ALI20240814BHJP
A61K 31/382 20060101ALI20240814BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240814BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
A61K31/4704
A61K47/18
A61P27/06
A61K31/5575
A61K31/382
A61K45/00
A61K9/10
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024077741
(22)【出願日】2024-05-13
(62)【分割の表示】P 2022127009の分割
【原出願日】2017-08-22
(31)【優先権主張番号】P 2016162611
(32)【優先日】2016-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000206956
【氏名又は名称】大塚製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(72)【発明者】
【氏名】長濱 良治
(72)【発明者】
【氏名】近藤 文雄
(72)【発明者】
【氏名】大八木 優
(72)【発明者】
【氏名】平田 雄樹
(57)【要約】 (修正有)
【課題】カルテオロールの保存効力が増強され、及び/又は光安定性が改善された、点眼用医薬組成物を提供する。また、カルテオロールの保存効力を増強し、光安定性を改善し、及び/又は分解を抑制する方法も提供する。
【解決手段】カルテオロール又はその医薬的に許容される塩とエデト酸又はその医薬的に許容される塩を組み合わせることにより、上記課題を解決し得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルテオロール又はその医薬的に許容される塩及びエデト酸又はその医薬的に許容される塩を含む、点眼用医薬組成物。
【請求項2】
さらに等張化剤を含む、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
さらに持続化剤を含む、請求項1又は2のいずれか記載の医薬組成物。
【請求項4】
さらに緩衝剤及びpH調節剤を含む、請求項1~3のいずれか記載の医薬組成物。
【請求項5】
さらにプロスタグランジンF2α誘導体を含む、請求項1~4のいずれか記載の医薬組成物。
【請求項6】
さらに炭酸脱水酵素阻害剤を含む、請求項1~5のいずれか記載の医薬組成物。
【請求項7】
さらに眼圧を降下させる作用を有する別の薬剤を含む、請求項1~6のいずれか記載の医薬組成物。
【請求項8】
カルテオロール又はその医薬的に許容される塩の含有量が組成物の全量に対し0.1~5w/v%である、請求項1~7のいずれか記載の医薬組成物。
【請求項9】
エデト酸又はその医薬的に許容される塩の含有量が組成物の全量に対し0.01~0.2w/v%である、請求項1~8のいずれか記載の医薬組成物。
【請求項10】
pHが5.0~8.0である、請求項1~9のいずれか記載の医薬組成物。
【請求項11】
点眼剤である、請求項1~10のいずれか記載の医薬組成物。
【請求項12】
水性点眼剤又は懸濁性点眼剤である、請求項1~11のいずれか記載の医薬組成物。
【請求項13】
マルチドーズ型点眼剤として用いるための、請求項1~12のいずれか記載の医薬組成物。
【請求項14】
緑内障又は高眼圧症の治療用である、請求項1~13のいずれか記載の医薬組成物。
【請求項15】
カルテオロール又はその医薬的に許容される塩をエデト酸又はその医薬的に許容される塩と組み合わせることを特徴とする、カルテオロール又はその医薬的に許容される塩の保存効力を、エデト酸又はその医薬的に許容される塩により増強する方法。
【請求項16】
カルテオロール又はその医薬的に許容される塩をエデト酸又はその医薬的に許容される塩と組み合わせることを特徴とする、カルテオロール又はその医薬的に許容される塩の光安定性を、エデト酸、アルギン酸又はその医薬的に許容される塩により改善する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、β遮断薬であるカルテオロールを含む点眼用医薬組成物並びにその製造方法及び医薬用途に関する。本発明はまた、カルテオロールの保存効力を増強し、光安定性を改善し、及び/又は分解を抑制する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
β遮断薬として知られているカルテオロールは、化学名が5-[3-[(1,1-ジメチルエチル)アミノ]-2-ヒドロキシプロポキシ]-3,4-ジヒドロキノリン-2(1H)-オンであり、点眼用途では緑内障及び高眼圧症に対する治療効果が知られている。点眼剤は一般に、使用時の微生物等の混入による汚染を防ぐため、保存剤又は防腐剤を添加する必要がある。このような保存剤又は防腐剤としては、通常、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、パラベン類、クロロブタノール、ソルビン酸塩等が用いられている。しかしながら、これらの保存剤又は防腐剤は角膜等の人体組織に悪影響を与えうる。
【0003】
保存剤及び防腐剤に代えて、ホウ酸又はその塩等を添加して点眼剤に保存効力を付与する方法が知られている。しかしながら、ホウ酸等を用いた場合、副作用として眼瞼炎等の過敏症状が現れることがある(特許文献1)。
【0004】
保存剤及び防腐剤を含まない点眼剤としては、一回分の用量が個別包装された使い切り使い捨てタイプの一回量包装点眼剤(ユニットドーズ点眼剤)も利用されている。例えば、特許文献2には、カルテオロール塩酸塩を含む、静菌剤不含点眼剤であって、一回量が個別包装されたものが開示されている。しかしながら、このようなユニットドーズ点眼剤は、投与毎に使い捨て可能な個別容器が必要となるため、コスト及び保管場所の確保等の観点から長期間の継続投与には適切でない場合がある。
【0005】
長期間の薬物の継続投与を必要とする眼疾患、例えば緑内障及び高眼圧症等の治療では、保存効力が高く、安定な点眼剤が求められている。
【0006】
β遮断薬には光の照射によって分解するものもあり、カルテオロールもその一つである。そのため、カルテオロールを含む点眼剤は、通常、保管及び使用に際して、遮光が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2011/013794号公報
【特許文献2】中国特許公開第101461780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題の一つは、カルテオロールの保存効力が増強され、及び/又は光安定性が改善された、点眼用医薬組成物を提供することである。別の課題としては、カルテオロールの保存効力を増強し、光安定性を改善し、及び/又は分解を抑制する方法も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、カルテオロール又はその医薬的に許容される塩に、エデト酸又はその医薬的に許容される塩を組み合わせることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
ある態様において、本発明は、カルテオロール又はその医薬的に許容される塩及びエデト酸又はその医薬的に許容される塩を含む、点眼用医薬組成物を提供する。
本発明はまた、別の態様において、カルテオロール又はその医薬的に許容される塩をエデト酸又はその医薬的に許容される塩と組み合わせることを特徴とする、カルテオロール又はその医薬的に許容される塩の保存効力を、エデト酸又はその医薬的に許容される塩により増強する方法を提供する。
本発明はまた、さらに別の態様において、カルテオロール又はその医薬的に許容される塩をエデト酸又はその医薬的に許容される塩及び/又は持続化剤と組み合わせることを特徴とする、エデト酸又はその医薬的に許容される塩及び/又は持続化剤により、カルテオロール又はその医薬的に許容される塩の光安定性を改善し、又は分解を抑制する方法を提供する。
本発明はまた、さらに別の態様において、カルテオロール又はその医薬的に許容される塩をエデト酸又はその医薬的に許容される塩と組み合わせることを特徴とする、カルテオロール又はその医薬的に許容される塩及びエデト酸又はその医薬的に許容される塩を含む、点眼用医薬組成物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の医薬組成物は、保存剤及び防腐剤を含まなくても、保存効力又は制菌力を有し得る。本発明の医薬組成物はまた、改善された光安定性を有し得る。本発明の医薬組成物はまた、増強された保存効力及び/又は改善された光安定性を有しうることにより、長期間の薬物の継続投与を必要とする緑内障及び高眼圧症等の眼疾患の治療に有用である。
本発明によれば、本来弱いながら制菌力を有しているカルテオロール又はその医薬的に許容される塩に、エデト酸又はその医薬的に許容される塩を加えることにより、カルテオロール又はその医薬的に許容される塩の保存効力又は制菌力が増強され、保存剤及び防腐剤を含まない点眼剤が可能となり、更に光安定性が悪いカルテオロールの光安定性が改善され得る。さらに等張化剤(例えば、プロピレングリコール)及び/又は持続化剤(例えば、アルギン酸)の添加により、カルテオロール又はその医薬的に許容される塩の保存効力又は制菌力がより増強され、あるいは光安定性がより改善され得る。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、以下に例示される態様を含んでもよい。
項1.カルテオロール又はその医薬的に許容される塩及びエデト酸又はその医薬的に許容される塩を含む、点眼用医薬組成物。
項2.カルテオロール又はその医薬的に許容される塩の保存効力を増強し、及び/又は光安定性を改善することを特徴とする、エデト酸又はその医薬的に許容される塩を含む点眼用医薬組成物。
項3.さらに等張化剤を含む、項1又は2のいずれか記載の医薬組成物。ここで、等張化剤の例としては、プロピレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、トレハロース、マルトース、シュクロース、ブドウ糖、ソルビトール、マンニトール、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム及びこれらの組合せ等が挙げられる。
項4.さらに持続化剤を含む、項1~3のいずれか記載の医薬組成物。ここで、持続化剤の例としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム及びこれらの組合せ等が挙げられる。
項5.さらに緩衝剤及びpH調節剤を含む、項1~4のいずれか記載の医薬組成物。
項6.さらにプロスタグランジンF2α誘導体を含む、項1~5のいずれか記載の医薬組成物。ここで、プロスタグランジンF2α誘導体の例としては、ラタノプロスト、ビマトプロスト、トラボプロスト、タフルプロスト等が挙げられる。
項7.さらに炭酸脱水酵素阻害剤を含む、項1~6のいずれか記載の医薬組成物。ここで、炭酸脱水酵素阻害剤の例としては、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、アセタゾラミド、及びその医薬的に許容される塩等が挙げられる。
項8.さらにアドレナリンα2作動薬、ROCK(Rhoキナーゼ)阻害薬など、眼圧を降下させる作用を有する別の薬剤を含む、項1~7のいずれか記載の医薬組成物。ここで、アドレナリンα2作動薬の例としては、ブリモニジン酒石酸塩、ジピベフリン塩酸塩、クロニジン等が挙げられる。ROCK阻害薬の例としては、リパスジル塩酸塩水和物、Netarsudil Mesylate等が挙げられる。
項9.カルテオロール又はその医薬的に許容される塩の含有量が組成物の全量に対し0.1~5w/v%である、項1~8のいずれか記載の医薬組成物。
項10.エデト酸又はその医薬的に許容される塩の含有量が組成物の全量に対し0.01~0.2w/v%である、項1~9のいずれか記載の医薬組成物。
項11.エデト酸又はその医薬的に許容される塩の含有量がカルテオロール又はその医薬的に許容される塩の含有量に対し0.002~2.0w/w比である、項1~10のいずれか記載の医薬組成物。
項12.pHが5.0~8.0である、項1~11のいずれか記載の医薬組成物。
項13.点眼剤である、項1~12のいずれか記載の医薬組成物。
項14.水性点眼剤又は懸濁性点眼剤である、項1~13のいずれか記載の医薬組成物。
項15.マルチドーズ型点眼剤として用いるための、項1~14のいずれか記載の医薬組成物。
項16.緑内障又は高眼圧症の治療用である、項1~15のいずれか記載の医薬組成物。
項17.プロスタグランジン製剤と併用することを特徴とする、項1~16のいずれか記載の医薬組成物。ここで、プロスタグランジン製剤とは、プロスタグランジンF2α誘導体を含有する製剤である。
【0013】
項18.カルテオロール又はその医薬的に許容される塩をエデト酸又はその医薬的に許容される塩と組み合わせることを特徴とする、カルテオロール又はその医薬的に許容される塩の保存効力を、エデト酸又はその医薬的に許容される塩により増強する方法。
項19.カルテオロール又はその医薬的に許容される塩の保存効力を増強するための、エデト酸又はその医薬的に許容される塩の使用。
項20.カルテオロール又はその医薬的に許容される塩をプロピレングリコールと組み合わせることを特徴とする、カルテオロール又はその医薬的に許容される塩の保存効力を、プロピレングリコールにより増強する方法。
項21.カルテオロール又はその医薬的に許容される塩の保存効力を増強するための、プロピレングリコールの使用。
項22.カルテオロール又はその医薬的に許容される塩の保存効力を増強するための、エデト酸又はその医薬的に許容される塩とプロピレングリコールの組み合わせの使用。
項23.カルテオロール又はその医薬的に許容される塩をエデト酸又はその医薬的に許容される塩と組み合わせることを特徴とする、カルテオロール又はその医薬的に許容される塩の光安定性を、エデト酸又はその医薬的に許容される塩により改善する方法。
項24.カルテオロール又はその医薬的に許容される塩の光安定性を改善するための、エデト酸又はその医薬的に許容される塩の使用。
項25.カルテオロール又はその医薬的に許容される塩をアルギン酸と組み合わせることを特徴とする、カルテオロール又はその医薬的に許容される塩の光安定性を、アルギン酸により改善する方法。
項26.カルテオロール又はその医薬的に許容される塩の光安定性を改善するための、アルギン酸の使用。
項27.カルテオロール又はその医薬的に許容される塩の光安定性を改善するための、エデト酸又はその医薬的に許容される塩とアルギン酸の組み合わせの使用。
【0014】
項28.カルテオロール又はその医薬的に許容される塩とエデト酸又はその医薬的に許容される塩を混合する工程を含む、点眼用医薬組成物の製造方法であって、適宜、得られる医薬組成物のpHが5.0~8.0となるようにpH調節剤とともに混合してもよく、適宜、得られる医薬組成物の浸透圧比が0.8~1.2となるようにプロピレングリコール、アルギン酸又はこれらの組合せとともに混合してもよい、方法。
【0015】
本発明は以下に例示する具体的態様を含み、また当該具体的態様の任意の組合せも本発明の態様に含まれる。また、本明細書において用いられる各成分の原料は、医薬的に許容される限り、その水和物等の溶媒和物又は無水物であってもよい。
【0016】
本発明の医薬組成物は、カルテオロール又はその医薬的に許容される塩及びエデト酸又はその医薬的に許容される塩を含む。
本発明の医薬組成物はまた、保存剤又は防腐剤を含まなくても保存効力を発揮することができる。保存剤又は防腐剤としては、これらに限定されるものではないが、例えば塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、パラベン類、クロロブタノール、ソルビン酸塩等が挙げられる。ある態様において、本発明の医薬組成物は、保存剤又は防腐剤を含まないものであってよい。別の態様において、本発明の医薬組成物はまた、ホウ酸又はその塩を含まないものであってもよい。さらに別の態様において、本発明の医薬組成物は、ホウ酸又はその塩を含んでもよい。
【0017】
本発明の医薬組成物は、ある態様において、カルテオロール又はその医薬的に許容される塩を組成物の全量に対し0.1~5w/v%で含有してもよい。好ましいカルテオロール又はその医薬的に許容される塩の含有量(濃度)としては、組成物の全量に対し0.5~2.5w/v%が挙げられる。より好ましくは1~2w/v%である。
カルテオロールの医薬的に許容される塩としては、カルテオロールの無機酸との塩が挙げられる。好ましくは、カルテオロール塩酸塩である。
【0018】
本発明の医薬組成物は、さらにエデト酸又はその医薬的に許容される塩を組成物の全量に対して0.01~0.2w/v%で含有してもよい。好ましいエデト酸又はその医薬的に許容される塩の含有量(濃度)としては、組成物の全量に対し0.01~0.15w/v%が挙げられる。より好ましくは0.02~0.1w/v%であり、さらに好ましくは0.03~0.07w/v%である。
エデト酸又はその医薬的に許容される塩の含有量は、カルテオロール又はその医薬的に許容される塩の含有量に対し0.002~2.0w/w比であってもよい。好ましくは0.004~0.3w/w比、より好ましくは0.008~0.2w/w比、さらに好ましくは0.015~0.07w/w比、特に好ましくは0.025~0.06w/w比である。
エデト酸の医薬的に許容される塩としては、エデト酸(エチレンジアミン四酢酸;EDTA)の無機塩基との塩が挙げられる。好ましくは、エデト酸ナトリウム水和物である。
カルテオロール又はその医薬的に許容される塩は、エデト酸又はその医薬的に許容される塩により、カルテオロール自身が有する保存効力が増強され、光安定性が改善され、及び/又は分解が抑制されてもよい。
【0019】
本発明の医薬組成物は、必要に応じて、さらに等張化剤、持続化剤、緩衝剤、pH調節剤、可溶化剤、溶剤等の成分を含んでもよい。
【0020】
等張化剤としては、これらに限定されるものではないが、例えばプロピレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、トレハロース、マルトース、シュクロース、ブドウ糖、ソルビトール、マンニトール、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム及びこれらの組合せ等が挙げられる。好ましくは、プロピレングリコール及び塩化ナトリウムである。
等張化剤の含有量(濃度)としては、特に限定されるものではないが、医薬組成物の浸透圧比が0.8~1.2、好ましくは0.9~1.1の範囲になるような量が挙げられる。具体的には0.5~2.0w/v%である。好ましくは1.0~1.6w/v%である。
等張化剤の含有量は、カルテオロール又はその医薬的に許容される塩の含有量に対し0.08~20w/w比であってもよい。好ましくは0.16~4w/w比、より好ましくは0.2~2w/w比である。
等張化剤の含有量は、エデト酸又はその医薬的に許容される塩の含有量に対し3~200w/w比であってもよい。好ましくは4~100w/w比、より好ましくは6~70w/w比である。
【0021】
持続化剤としては、これらに限定されるものではないが、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム及びこれらの組合せ等が挙げられる。好ましくはアルギン酸である。
持続化剤の含有量(濃度)としては、特に限定されるものではないが、0.1~5w/v%が挙げられる。好ましくは0.5~2w/v%である。より好ましくは0.8~1.2w/v%である。
持続化剤の含有量は、カルテオロール又はその医薬的に許容される塩の含有量に対し0.25~2w/w比であってもよい。好ましくは0.4~1.2w/w比である。
持続化剤の含有量は、エデト酸又はその医薬的に許容される塩の含有量に対し5~100w/w比であってもよい。好ましくは10~40w/w比である。
【0022】
緩衝剤としては、これらに限定されるものではないが、例えばリン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム等のリン酸塩、ホウ酸及びホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム等のホウ酸塩、クエン酸及びクエン酸ナトリウム、クエン酸二ナトリウム等のクエン酸塩、酢酸及び酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等の酢酸塩、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の炭酸塩及びこれらの組合せ等が挙げられる。好ましくはリン酸塩である。より好ましくはリン酸二水素ナトリウム及びリン酸水素二ナトリウムである。
緩衝剤の含有量(濃度)としては、特に限定されるものではないが、0.01~1w/v%が挙げられる。好ましくは0.04~0.4w/v%である。
【0023】
pH調節剤としては、これらに限定されるものではないが、例えば塩酸、乳酸、クエン酸、リン酸、酢酸等の酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ塩基等が挙げられる。好ましくは塩酸又は水酸化ナトリウムである。
pH調節剤の含有量(濃度)としては、特に限定されるものではないが、医薬組成物のpHを5.0~8.5の範囲に調節する量が挙げられる。好ましくはpHを5.0~8.0に調節する。より好ましくはpHを6.0~8.0、更には6.2~7.2に調節する。
【0024】
可溶化剤としては、これらに限定されるものではないが、例えばポリソルベート80、ポリエキシエチレン硬化ヒマシ油60、マクロゴール4000、ポリビニルアルコール、チロキサポール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ステアリン酸ポリオキシル、ダイズ油等の植物油脂等が挙げられる。好ましくはポリソルベート80である。
可溶化剤の含有量(濃度)としては、特に限定されるものではないが、0.05~5w/v%が挙げられる。好ましくは0.1~3w/v%である。より好ましくは0.1~2w/v%である。
【0025】
溶剤としては、これらに限定されるものではないが、例えば精製水、滅菌精製水、注射用水等が挙げられる。好ましくは滅菌精製水又は注射用水である。
【0026】
本発明の医薬組成物は、さらにプロスタグランジンF2α誘導体を含んでもよい。プロスタグランジンF2α誘導体を組成物の全量に対し0.0005~0.1w/v%で含有してもよい。好ましいプロスタグランジンF2α誘導体の含有量(濃度)としては、組成物の全量に対し0.001~0.05w/v%が挙げられる。より好ましくは0.0015~0.03w/v%である。
プロスタグランジンF2α誘導体としては、これらに限定されるものではないが、例えばラタノプロスト、ビマトプロスト、トラボプロスト、タフルプロスト等が挙げられる。
【0027】
本発明は、別の態様において、プロスタグランジンF2α誘導体を含有する製剤(プロスタグランジン製剤)と併用することを特徴とする、医薬組成物であってもよい。本発明の医薬組成物は、プロスタグランジンF2α誘導体の投与と同時に又は一定の間隔の前後に、対象に投与してもよい。
【0028】
本発明の医薬組成物は、さらに炭酸脱水酵素阻害剤を含んでもよい。炭酸脱水酵素阻害剤を組成物の全量に対し0.1~5w/v%で含有してもよい。好ましい炭酸脱水酵素阻害剤の含有量(濃度)としては、組成物の全量に対し0.5~2.5w/v%が挙げられる。より好ましくは1~2w/v%である。
炭酸脱水酵素阻害剤としては、これらに限定されるものではないが、例えばドルゾラミド、ブリンゾラミド、アセタゾラミド、及びその医薬的に許容される塩等が挙げられる。
【0029】
本発明の医薬組成物は、さらに眼圧を降下させる作用を有する別の薬剤を含んでもよい。眼圧を降下させる作用を有する別の薬剤を組成物の全量に対し0.1~5w/v%で含有してもよい。好ましい眼圧を降下させる作用を有する別の薬剤の含有量(濃度)としては、組成物の全量に対し0.5~2.5w/v%が挙げられる。より好ましくは1~2w/v%である。
眼圧を降下させる作用を有する別の薬剤としては、これらに限定されるものではないが、例えばアドレナリンα2作動薬、ROCK(Rhoキナーゼ)阻害薬等が挙げられる。アドレナリンα2作動薬の例としては、ブリモニジン酒石酸塩、ジピベフリン塩酸塩、クロニジン等が挙げられる。ROCK阻害薬の例としては、リパスジル塩酸塩水和物、Netarsudil Mesylate等が挙げられる。
【0030】
本発明の医薬組成物は、好ましくは点眼用液剤であってもよい。より好ましくは精製水、滅菌精製水、注射用水等の水性溶剤を用いた水性点眼剤又は懸濁性点眼剤である。本発明の医薬組成物はまた、一回分の用量が個別包装されたユニットドーズ型点眼剤、又は繰り返し使用可能なマルチドーズ型点眼剤であってもよい。好ましくはマルチドーズ型点眼剤である。
【0031】
本発明の医薬組成物は、原発開放隅角緑内障、原発閉塞隅角緑内障、発達緑内障、続発緑内障、正常眼圧緑内障等の緑内障、及び高眼圧症等の眼疾患の治療に有用であり得る。本発明の医薬組成物はまた、カルテオロールが眼圧降下作用を有するため、原発開放隅角緑内障、原発閉塞隅角緑内障、発達緑内障、続発緑内障等の緑内障、及び高眼圧症等の眼疾患の治療に有用であり得る。
【0032】
本発明は、ある態様において、カルテオロール又はその医薬的に許容される塩が主効果とは別に有する微弱な保存効力を増強することを特徴とする、カルテオロール又はその医薬的に許容される塩及びエデト酸又はその医薬的に許容される塩を含む医薬組成物を提供する。
別の態様において、エデト酸又はその医薬的に許容される塩は、カルテオロール又はその医薬的に許容される塩との混合液にてカルテオロール又はその医薬的に許容される塩の保存効力を増強してもよい。当該混合液に、さらに等張化剤を混合することにより、カルテオロール又はその医薬的に許容される塩の保存効力をさらに増強してもよい。
【0033】
本発明は、別の態様において、カルテオロール又はその医薬的に許容される塩の悪い光安定性を改善し、又は分解を抑制することを特徴とする、カルテオロール又はその医薬的に許容される塩及びエデト酸又はその医薬的に許容される塩を含む医薬組成物を提供する。
別の態様において、エデト酸又はその医薬的に許容される塩は、カルテオロール又はその医薬的に許容される塩との混合液にてカルテオロール又はその医薬的に許容される塩の光安定性を改善し、又は分解を抑制し得る。当該混合液に、さらに持続化剤を混合することにより、カルテオロール又はその医薬的に許容される塩の光安定性をさらに改善し、又は分解をさらに抑制し得る。
【0034】
本発明は、別の態様において、点眼用医薬組成物の製造方法を提供する。本発明の製造方法において、カルテオロール又はその医薬的に許容される塩とエデト酸又はその医薬的に許容される塩を混合する工程を含む。カルテオロール又はその医薬的に許容される塩及びエデト酸又はその医薬的に許容される塩は、得られる医薬組成物のpHが5.0~8.5、好ましくは5.0~8.0、より好ましくは6.0~8.0、更には6.0~7.2となるように、適宜上記pH調節剤とともに混合してもよい。カルテオロール又はその医薬的に許容される塩及びエデト酸又はその医薬的に許容される塩はまた、適宜、上記等張化剤、持続化剤又はこれらの組合せとともに混合してもよい。等張化剤は、得られる医薬組成物の浸透圧比が0.8~1.2、好ましくは0.9~1.1になるように加えることができる。
【実施例0035】
以下に試験例及び実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。また、特段の記載がない限り、濃度は質量対容量%「w/v%」であり、「g/100mL」と同義である。
【0036】
〈保存効力試験〉
以下の試験例において、試験液の保存効力は、第十七改正日本薬局方参考情報 保存効力試験法に従って評価した。
具体的には、細菌(大腸菌(Escherichia coli ATCC 8739)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa ATCC 9027)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus ATCC 6538))及び/又は真菌(カンジダ・アルビカンス(Candida albicans ATCC 10231)、アスペルギルス・ブラシリエンシス(Aspergillus brasiliensis ATCC 16404))を用いて、それぞれの菌液を調製した。各菌液を、105~106CFU(コロニー形成単位)/mLになるよう試験液に接種し、20~25℃で保管した。接種7日後、14日後及び28日後に生菌数を測定した。保存効力の判定基準は、接種菌数に対する菌数の変化を指標とし、細菌(大腸菌、緑膿菌及び黄色ブドウ球菌)については、7日後に1.0log以上の減少、かつ14日後に3.0log以上の減少を示し、かつ28日後は14日後の菌数と同等又はそれ以下の減少を示した場合を「適合」とした。真菌(カンジダ・アルビカンス及びアスペルギルス・ブラシリエンシス)については、菌数が、7日後に接種菌数と同等又はそれ以下であり、かつ14日後及び28日後においても接種菌数と同等又はそれ以下である場合を「適合」とした。
【0037】
〈試験例1〉:カルテオロールの保存効力試験
以下の方法に従い、カルテオロールの保存効力を確認した。
〈実施例1~10の試験液の調製〉
実施例1~10の試験液組成を表1に示す。カルテオロール塩酸塩、無水リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム・二水和物及びNaCl(溶液の浸透圧比が0.9~1.1になる量)を量り、滅菌精製水を加えて溶解し、5N水酸化ナトリウム又は1%塩酸を加えてpHを5.0、6.0、7.0、8.0、8.5に調整し、滅菌精製水を加えて所定の容量とした。これらの溶液を0.22μmのメンブレンフィルターでろ過し、滅菌済みのガラス製容器に5mLずつ充填し、試験液とした。
【0038】
〈比較例1~4の調製:カルテオロール塩酸塩を含まない試験液〉
比較例1~4の試験液組成を表1に示す。無水リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム・二水和物及びNaCl(溶液の浸透圧比が0.9~1.1になる量)を量り、滅菌精製水を加えて溶解し、5N水酸化ナトリウム又は1%塩酸を加えてpHを5.0、6.0、7.0、8.0に調整し、滅菌精製水を加えて所定の容量とした。これらの溶液を0.22μmのメンブレンフィルターでろ過し、滅菌済みのガラス製容器に5mLずつ充填し、試験液とした。
【0039】
【0040】
実施例1~10および比較例1~4の試験液の保存効力試験を実施した。各実施例及び比較例の保存効力試験の結果を表2に示す。
個々の菌に対する保存効力試験の判定結果を総合考慮すると、実施例1~10は真菌に対して保存効力試験に適合し、細菌に対しても概ね保存効力を有することを確認した。カルテオロール塩酸塩を含まない比較例1~4は全て保存効力試験に適合しなかった。この結果より、カルテオロール塩酸塩は保存効力を有することを確認した。
【0041】
【表2】
〇:個々の菌に対する判定基準に適合する
×:個々の菌に対する判定基準に適合しない
【0042】
〈試験例2〉:エデト酸ナトリウム水和物の添加による保存効力の評価
以下の方法に従い、エデト酸ナトリウム水和物によるカルテオロール塩酸塩の保存効力の増強作用を確認した。
〈実施例11~15の試験液の調製〉
実施例11~15の試験液組成を表3に示す。カルテオロール塩酸塩、無水リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム・二水和物、エデト酸ナトリウム水和物及びNaCl(溶液の浸透圧比が0.9~1.1になる量)を量り、滅菌精製水を加えて溶解し、5N水酸化ナトリウム又は1%塩酸を加えてpHを5.0、6.0、7.0に調整し、滅菌精製水を加えて所定の容量とした。これらの液を0.22μmのメンブレンフィルターでろ過し、滅菌済みガラス製容器に5mLずつ充填し、試験液とした。
【0043】
〈比較例5~8の試験液:カルテオロール塩酸塩を含まない試験液の調製〉
比較例5~8の試験液組成を表4に示す。エデト酸ナトリウム水和物、無水リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム・二水和物及びNaCl(溶液の浸透圧比が0.9~1.1になる量)を量り、所定量の滅菌精製水を加え、5N水酸化ナトリウム又は1%塩酸を添加し、pHを5.0、6.0、7.0、8.0に調整し、滅菌精製水を加えて所定の容量とした。これらの液を0.22μmのメンブレンフィルターでろ過した。これを滅菌済みのガラス製容器に5mLずつ充填し、試験液とした。
【0044】
【0045】
実施例11~15および比較例5~8の試験液の保存効力試験を細菌(大腸菌、緑膿菌、及び黄色ブドウ球菌)に対して実施した。各実施例及び比較例の保存効力試験の結果を表5に示す。
実施例11~15は細菌に対し概ね保存効力を有したが、比較例5~8は保存効力試験に不適合であった。この結果より、カルテオロール塩酸塩とエデト酸ナトリウム水和物を組み合わせることにより保存効力が増強したことを確認した。
【0046】
【表5】
〇:個々の菌に対する判定基準に適合する
×:個々の菌に対する判定基準に適合しない
【0047】
〈試験例3〉:プロピレングリコールの添加による保存効力の評価
以下の方法に従い、プロピレングリコールの添加によるpH5.0及び6.0でのカルテオロール塩酸塩の保存効力への影響を確認した。
〈実施例16~19の試験液〉
実施例16~19の試験液組成を表6に示す。カルテオロール塩酸塩、無水リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム・二水和物、エデト酸ナトリウム水和物及びプロピレングリコールを表6に示す組成になるように量り、滅菌精製水を加えて溶解し、1%塩酸を加えて、pHを5.0又は6.0に調整し、滅菌精製水を加えて所定の容量とした。これらの液を0.22μmのメンブレンフィルターでろ過し、滅菌済みのガラス製容器に5mLずつ充填し、試験液とした。
【0048】
〈比較例9~16の試験液の調製〉
比較例9~16の試験液組成を表7に示す。カルテオロール塩酸塩、無水リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム・二水和物及びプロピレングリコール(比較例9~12)、無水リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム・二水和物、プロピレングリコール及びNaCl(溶液の浸透圧比が0.9~1.1になる量)(比較例13,14)、又はエデト酸ナトリウム水和物、無水リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム・二水和物、プロピレングリコール及びNaCl(溶液の浸透圧比が0.9~1.1になる量)(比較例15,16)を加えて溶解し、1%塩酸を加えて、pHを5.0又は6.0に調整し、滅菌精製水を加えて所定の容量とした。これらの液を0.22μmのメンブレンフィルターでろ過し、滅菌済みのガラス製容器に5mLずつ充填して試験液とした。
【0049】
【0050】
【0051】
実施例16~19および比較例9~16の試験液の保存効力試験を細菌(大腸菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌)に対して実施した。各実施例及び比較例の保存効力試験の結果を表8に示す。
カルテオロール塩酸塩とエデト酸ナトリウム水和物を含む組成にプロピレングリコールを添加した実施例16~19は全て細菌3菌種(大腸菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌)に対する基準を満たし保存効力試験に適合した。また、カルテオロール塩酸塩を含むがエデト酸ナトリウム水和物を含まない比較例9~12では、大腸菌又は緑膿菌に対して基準を満たさず、不適合であった。また、カルテオロール塩酸塩とエデト酸ナトリウム水和物を配合していない比較例13及び14は、プロピレングリコールのみの配合では保存効力試験に不適合であった。さらに、カルテオロール塩酸塩を配合していない比較例15及び16では、プロピレングリコール及びエデト酸ナトリウム水和物を添加したものの、基準を満たさず保存効力試験に不適合であった。この結果より、カルテオロール塩酸塩とエデト酸ナトリウム水和物とプロピレングリコールを組み合わせることにより優れた保存効力を示すことが明らかとなった。
【0052】
【表8】
〇:個々の菌に対する判定基準に適合する
×:個々の菌に対する判定基準に適合しない
【0053】
〈試験例4〉:アルギン酸の添加による保存効力の評価
以下の方法に従い、アルギン酸によるカルテオロール塩酸塩の保存効力の増強作用を確認した。
〈実施例20及び21の試験液の調製〉
実施例20及び21の試験液組成を表9に示す。カルテオロール塩酸塩、無水リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム・二水和物、エデト酸ナトリウム水和物、プロピレングリコール及びアルギン酸を表9に示す組成になるように量り、滅菌精製水及び5N水酸化ナトリウムを加えて溶解し、更に、5N水酸化ナトリウムを加えてpHを6.7に調整し、滅菌精製水を加えて所定の容量とした。これらの液を0.22μmのメンブレンフィルターでろ過し、滅菌済みのガラス製容器に5mLずつ充填し、試験液とした。
【0054】
〈比較例17及び18の試験液の調製:アルギン酸を含まない試験液〉
比較例17及び18の試験液組成を表9に示す。カルテオロール塩酸塩、無水リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム・二水和物、エデト酸ナトリウム水和物及びプロピレングリコールを表9に示す組成になるように量り、滅菌精製水を加えて溶解し、5N水酸化ナトリウムを加えてpHを6.7に調整し、滅菌精製水を加えて所定の容量とした。これらの液を0.22μmのメンブレンフィルターでろ過し、滅菌済みのガラス製容器に5mLずつ充填し、試験液とした。
【0055】
【0056】
実施例20,21及び比較例17,18の試験液の保存効力試験を細菌(大腸菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌)に対して実施した。各実施例及び比較例の保存効力試験の結果を表10に示す。
【0057】
【表10】
〇:個々の菌に対する判定基準に適合する
×:個々の菌に対する判定基準に適合しない
【0058】
〈試験例5〉:エデト酸ナトリウム水和物の添加による光安定性の評価
以下の方法に従い、エデト酸ナトリウム水和物によるカルテオロール塩酸塩の光安定性の改善作用を確認した。
〈実施例22~25の試験液〉
実施例22~25の試験液組成を表11に示す。カルテオロール塩酸塩、無水リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム・二水和物、及びエデト酸ナトリウム水和物を表11に示す組成になるように混合し、滅菌精製水を加えて溶解した。ここに、5N水酸化ナトリウムを添加してpHを6.7に調整し、滅菌精製水を加えて所定の容量とした。これらの液を、0.22μmのメンブレンフィルターでろ過し、滅菌済みのガラス製容器に5mLずつ充填し、試験液とした。
【0059】
〈比較例19及び20の試験液の調製:エデト酸ナトリウム水和物を含まない試験液〉
比較例19及び20の試験液組成を表12に示す。カルテオロール塩酸塩、無水リン酸水素二ナトリウム、及びリン酸二水素ナトリウム・二水和物を表12に示す組成になるように混合し、滅菌精製水を加えて溶解した。ここに、5N水酸化ナトリウムを添加してpHを6.7に調整し、滅菌精製水を加えて所定の容量とした。これらの液を0.22μmのメンブレンフィルターでろ過し、滅菌済みのガラス製容器に5mLずつ充填して試験液とした。
【0060】
【0061】
【0062】
実施例22~25及び比較例19及び20の試験液に対して光安定性試験を実施した。光は白色灯による照度3000Lxの白色光及びケミカルランプによる強度50μW/cm2の紫外線を400時間照射した。光照射後の各試料溶液と4℃の暗所に保管して光を照射していない試料溶液とを比較して、各試料溶液中のカルテオロール塩酸塩の光分解によって生成する分解物のうち3,4-デヒドロカルテオロールの生成量と分解物の合計量を測定し、表13に示した。なお、カルテオロール塩酸塩の分解物は高速液体クロマトグラフ(HPLC)法により分析した。
【0063】
(3,4-デヒドロカルテオロールの生成量測定のHPLC条件)
カラム:内径4.6mm、長さ15cmのステンレス管に5μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルを充填した。
移動相:1-ヘキサンスルホン酸ナトリウム1.51gに酢酸(100)3mL及び水1000mLを加えて溶かした。この液830mLにアセトニトリル170mLを加えた。
検出器:紫外吸光光度計
【0064】
【0065】
カルテオロール溶液にエデト酸ナトリウム水和物を添加することにより濃度依存的にカルテオロール塩酸塩の光分解物である3,4-デヒドロカルテオロールの生成量及び分解物合計が低下した。この結果より、エデト酸ナトリウム水和物はカルテオロール塩酸塩の光安定性を改善することを確認した。
【0066】
〈試験例6〉:アルギン酸の添加による光安定性の評価
以下の方法に従い、アルギン酸によるカルテオロール塩酸塩の光安定性の改善作用を確認した。
〈実施例26~29、60及び61の試験液〉
実施例26~29、60及び61の試験液組成を表14に示す。カルテオロール塩酸塩、無水リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム・二水和物、エデト酸ナトリウム水和物、プロピレングリコール及びアルギン酸を表14に示す組成になるように量り、滅菌精製水を加えて攪拌しながら5N水酸化ナトリウムを加えて溶解し、更に、5N水酸化ナトリウムを加えてpHを6.7に調整し、滅菌精製水を加えて所定の容量とした。これらの液を0.22μmのメンブレンフィルターでろ過し、滅菌済みのガラス製容器に5mLずつ充填し、試験液とした。
【0067】
〈比較例21~28の試験液の調製:エデト酸ナトリウム水和物及び/又はアルギン酸を含まない試験液〉
比較例21~28の試験液組成を表15に示す。カルテオロール塩酸塩、無水リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム・二水和物、エデト酸ナトリウム水和物、プロピレングリコール及びNaCl(溶液の浸透圧比が0.9~1.1になる量)を表15に示す組成になるように量り、滅菌精製水を加えて溶解した。次に、比較例21及び比較例25については溶液を攪拌しながらアルギン酸を添加し、5N水酸化ナトリウムを添加してアルギン酸を溶解した。更に、5N水酸化ナトリウムを添加してpHを6.7に調整し、滅菌精製水を加えて所定の容量とした。これらの液を0.22μmのメンブレンフィルターでろ過し、滅菌済みのガラス製容器に5mLずつ充填し、試験液を調製した。
【0068】
【0069】
【0070】
実施例26~29、60及び61並びに比較例21~28の試験液に対して光安定性試験を実施した。白色灯による照度3000Lxの白色光及びケミカルランプによる強度50μW/cm2の紫外線を400時間照射した後の各試料溶液において、カルテオロール塩酸塩の光分解によって生成する分解物のうち3,4-デヒドロカルテオロールの生成量と分解物の合計量を測定し、表16に示した。なお、カルテオロール塩酸塩の光分解物は高速液体クロマトグラフ(HPLC)法により分析した。
【0071】
(3,4-デヒドロカルテオロールの生成量測定のHPLC条件)
カラム:内径4.6mm、長さ15cmのステンレス管に5μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルを充填した。
移動相:1-ヘキサンスルホン酸ナトリウム1.51gに酢酸(100)3mL及び水1000mLを加えて溶かした。この液830mLにアセトニトリル170mLを加えた。
検出器:紫外吸光光度計
【0072】
【0073】
カルテオロール塩酸塩とエデト酸ナトリウム水和物を含有する試料液にアルギン酸を配合すると、カルテオロール塩酸塩の光分解が顕著に抑制され、アルギン酸又はエデト酸ナトリウム水和物のどちらか一方或いは両方を配合していない場合はカルテオロール塩酸塩の光分解物である3,4-デヒドロカルテオロールの生成量が増加した。また、アルギン酸及びエデト酸ナトリウム水和物の両方を含まない比較例22及び26では、アルギン酸(比較例21,25)或いはエデト酸ナトリウム水和物(比較例23,24,27,28)のどちらか一方のみを配合した試料よりも3,4-デヒドロカルテオロールの生成量及び分解物合計が顕著に増加した。この結果より、アルギン酸及びエデト酸ナトリウム水和物はカルテオロール塩酸塩の光分解を抑制し、光安定性を改善することが示唆された。また、アルギン酸及びエデト酸ナトリウム水和物を組み合わせることによりカルテオロール塩酸塩の光安定性をより改善することが示唆された。
【0074】
〈試験結果の判定〉
本発明の医薬組成物は第十七改正日本薬局方参考情報に記載されている保存効力試験に適合するとともに、カルテオロール塩酸塩の光分解を抑制して光安定化することが明らかとなった。
即ち、本発明において、塩化ベンザルコニウムやホウ酸といった副作用が懸念される防腐剤を配合しなくとも、β遮断薬にエデト酸ナトリウム水和物、適宜、等張化剤(例えばプロピレングリコール)及び/又は持続化剤(例えばアルギン酸)を添加することにより複数回の投与が可能な汎用の点眼容器に充填した場合でもβ遮断薬の保存効力を維持することが可能であることが明らかとなった。また、本発明の医薬組成物は、遮光保存しなくとも有効成分が光分解せずに保管することが可能であるほどの光安定性を有することが明らかとなった。
【0075】
〈製剤例1〉:プロスタグランジンF2α誘導体を含む製剤の製造例
以下の方法に従い、実施例30~39及び比較例29を製造した。
〈実施例30〉
ラタノプロスト0.005 g、ポリソルベート80 0.1 g及び精製水80 gを量り、60℃に加温して溶かした後、室温に戻した。この液に、カルテオロール塩酸塩2.0 g、アルギン酸1.0 g、ホウ酸1.0 g及びエデト酸ナトリウム水和物0.1 gを加え、さらに水酸化ナトリウムを加えて溶かしpH6.5に調整した後、精製水を加えて全量を100 gとした。この液を孔径0.2μmのメンブレンフィルターを用いて濾過して実施例30とした。
【0076】
〈実施例31〉
ラタノプロスト0.005 g、ポリソルベート80 0.1 g及び精製水80 gを量り、60℃にて加温して溶かした後、室温に戻した。この液に、カルテオロール塩酸塩2.0 g、アルギン酸1.0 g、塩化ナトリウム0.4 g、リン酸二水素ナトリウム・二水和物0.04 g、無水リン酸水素二ナトリウム0.04 g及びエデト酸ナトリウム水和物0.1 gを加え、さらに水酸化ナトリウムを加えて溶かしpH6.5に調整した後、精製水を加えて全量を100 gとした。この液を孔径0.2μmのメンブレンフィルターを用いて濾過して実施例31とした。
【0077】
〈実施例32〉
ラタノプロスト0.005 g及び精製水80 gを量り、60℃にて加温して溶かした後、室温に戻した。この液に、カルテオロール塩酸塩2.0 g、アルギン酸1.0 g、塩化ナトリウム0.4 g、リン酸二水素ナトリウム・二水和物0.04 g、無水リン酸水素二ナトリウム0.04 g及びエデト酸ナトリウム水和物0.1 gを加え、さらに水酸化ナトリウムを加えて溶かしpH6.5に調整した後、精製水を加えて全量を100 gとした。この液を孔径0.2μmのメンブレンフィルターを用いて濾過して実施例32とした。
【0078】
〈実施例33,36,39〉
実施例30に記載の方法に従って、実施例33,36及び39を調製した。
【0079】
〈実施例34,35,37,38〉
実施例31に記載の方法に従って、実施例34,35,37及び38を調製した。
【0080】
〈比較例29〉
ラタノプロスト0.005 g、ポリソルベート80 0.2 g及び精製水80 gを量り、60℃に加温して溶かした後、室温に戻した。この液に、アルギン酸1.0 g、ホウ酸1.5 g及びエデト酸ナトリウム水和物0.2 gを加え、さらに水酸化ナトリウムを加えて溶かしpH6.5に調整した後、精製水を加えて全量を100 gとした。この液を孔径0.2μmのメンブレンフィルターを用いて濾過して比較例29とした。
【0081】
【0082】
〈製剤例2〉
以下の方法に従い、塩化ベンザルコニウムを含まない製剤である実施例40~47を製造した。
〈実施例40〉
精製水80 g、カルテオロール塩酸塩1.0 g、アルギン酸1.0 g、プロピレングリコール1.3 g、リン酸二水素ナトリウム・二水和物0.04 g、無水リン酸水素二ナトリウム0.04 g、エデト酸ナトリウム水和物0.01 gを量りとり、かき混ぜながら水酸化ナトリウムを加えて溶かし、pH6.7に調整する。更に精製水を加えて全量を100 gとし、撹拌する。この液を孔径0.2μmのメンブレンフィルターを用いて濾過して実施例40とした。
【0083】
〈実施例41~47〉
実施例40に記載の方法に従って、実施例41~47を調製した。
【0084】
【0085】
〈製剤例3〉:炭酸脱水酵素阻害剤を含む製剤の製造例
以下の方法に従い、実施例48~59を製造した。
〈実施例48〉
カルテオロール塩酸塩2.0 g、ドルゾラミド塩酸塩1.113 g、エデト酸ナトリウム水和物0.01 g、D-マンニトール2.0 g、クエン酸ナトリウム・水和物0.3 gを量りとって水に溶かし、孔径0.2μmのメンブレンフィルターを用いて濾過滅菌した液と、別途、ヒドロキシエチルセルロース0.5 gを水に溶かし高圧蒸気滅菌した液を混合し、水酸化ナトリウムを加えてpH5.7に調整する。更に精製水を加えて全量を100 gとすることにより実施例48を調製した。
【0086】
〈実施例49~51〉
実施例48に記載の方法に従って、実施例49~51を調製した。
【0087】
〈実施例52〉
精製水80 g、カルテオロール塩酸塩2.0 g、ドルゾラミド塩酸塩1.113 g、エデト酸ナトリウム水和物0.01 g、プロピレングリコール0.7 g、クエン酸ナトリウム・水和物0.3 gを量りとって溶かし、水酸化ナトリウムを加えてpH5.7に調整する。更に精製水を加えて全量を100 gとし、撹拌する。この液を孔径0.2μmのメンブレンフィルターを用いて濾過して実施例52とした。
【0088】
〈実施例53~55〉
実施例52に記載の方法に従って、実施例53~55を調製した。
【0089】
〈実施例56〉
円筒状のガラス容器にチロキサポール0.025 gを量り、60℃に加熱した精製水6 gを加えて溶かし、ブリンゾラミド1.0 g、ジルコニアイットリアビーズ12 gを加えて密封し、121℃で20分間加熱して冷却した後、50rpmで20時間回転させてブリンゾラミド懸濁液とした。別に、50 gの精製水に、カルテオロール塩酸塩2.0 g、エデト酸ナトリウム水和物0.01 g、プロピレングリコール1.0 gを量り取って溶かし、これに、カーボポール0.4 gを量り、60℃の精製水25 gを加えて均一に分散した液を加え、121℃にて20分間加熱した後、水酸化ナトリウムを加えてpH7.2とし、溶媒とした。ろ過によって、ジルコニアイットリアビーズを取り除いたブリンゾラミド懸濁液と溶媒を混合し、精製水を加えて100 gとし、実施例56とした。
【0090】
〈実施例57~59〉
実施例56に記載の方法に従って、実施例57~59を調製した。
【0091】
【0092】
〈試験例7〉:実施例30~39及び比較例29の製剤の保存効力試験
上記保存効力試験方法に従い、実施例30~39及び比較例29の製剤の保存効力を確認した。結果を以下に示す。
【表20】