(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112891
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】バックライトユニット、液晶表示装置及び情報機器
(51)【国際特許分類】
G02B 5/02 20060101AFI20240814BHJP
G02F 1/13357 20060101ALI20240814BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20240814BHJP
F21V 5/00 20180101ALI20240814BHJP
F21V 5/02 20060101ALI20240814BHJP
F21V 9/40 20180101ALI20240814BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240814BHJP
【FI】
G02B5/02 C
G02F1/13357
F21S2/00 481
F21V5/00 320
F21V5/00 530
F21V5/02 100
F21V5/02 300
F21V9/40 400
F21Y115:10
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024080197
(22)【出願日】2024-05-16
(62)【分割の表示】P 2022015101の分割
【原出願日】2022-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000165088
【氏名又は名称】恵和株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蔡 承亨
(57)【要約】
【課題】面内輝度均一性を向上させる。
【解決手段】バックライトユニット40は、液晶表示装置50に組み込まれ、複数の光源42から発せられた光を表示画面50a側に導く。バックライトユニット40は、表示画面50aと複数の光源42との間に、光出射面となる第1面21aと、光入射面となる第2面21bとを有する光拡散シート43を備える。第1面21aには、略逆多角錐状の複数の凹部22が設けられる。第2面21bの算術平均粗さは、1.0μm以上3.0μm以下である。光拡散シート43の内部ヘイズは、1.5%以下である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶表示装置に組み込まれ、複数の光源から発せられた光を表示画面側に導くバックライトユニットであって、
前記表示画面と前記複数の光源との間に、光出射面となる第1面と、光入射面となる第2面とを有する光拡散シートを備え、
前記第1面には、略逆多角錐状の複数の凹部が設けられ、
前記第2面の算術平均粗さは、1.0μm以上3.0μm以下であり、
前記光拡散シートの内部ヘイズが1.5%以下である
バックライトユニット。
【請求項2】
前記複数の凹部は、略逆四角錐状に形成される
請求項1に記載のバックライトユニット。
【請求項3】
前記複数の凹部の頂角は、80°以上100°以下である
請求項1又は2に記載のバックライトユニット。
【請求項4】
前記光拡散シートは、前記第2面を前記複数の光源の方に向けて配置される
請求項1~3のいずれか1項に記載のバックライトユニット。
【請求項5】
前記複数の光源は、前記光拡散シートから見て前記表示画面の反対側に設けられた反射シートの上に配置される
請求項4に記載のバックライトユニット。
【請求項6】
前記光拡散シートは、複数枚積層して前記表示画面と前記複数の光源との間に配置される
請求項4又は5に記載のバックライトユニット。
【請求項7】
前記複数の光源と前記光拡散シートとの間の距離は、10mm以下である
請求項4~6のいずれか1項に記載のバックライトユニット。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のバックライトユニットと、
液晶表示パネルとを備える
液晶表示装置。
【請求項9】
請求項8に記載の液晶表示装置を備える情報機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光拡散シート、バックライトユニット、液晶表示装置及び情報機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンやタブレット端末などの各種情報機器の表示装置として、液晶表示装置(以下、液晶ディスプレイということもある。)が広く利用されている。液晶ディスプレイのバックライトとしては、光源が液晶パネルの背面に配置される直下型方式、又は、光源が液晶パネルの側面の近傍に配置されるエッジライト方式が主流となっている。
【0003】
直下型バックライトを採用する場合、LED(Light Emitting Diode)等の光源からの光を拡散させて画面全体に亘って輝度や色度の均一性を上げるために、光拡散シートが使用される(例えば特許文献1参照)。
【0004】
光拡散シートは、光出射面に凹凸形状を付与することで生じる拡散や、シート基材内に当該基材と異なる屈折率を有する微粒子を分散させることで生じる拡散を利用して、光入射面から入射した光を拡散させる。
【0005】
ノートパソコンやタブレット端末などの薄型ディスプレイにおいては、光拡散シートとして、例えば、光出射面に逆ピラミッド状の凹部が形成され、光入射面がエンボス加工されたシートが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、直下型バックライトでは光源が表示画面の直下に配置されるため、ディスプレイの薄型化に伴って、光源から光拡散シートまでの距離や、光拡散シートの厚みが削減されると、光拡散シートによって光を十分に拡散させることが難しくなる。その結果、画面内での輝度の均一性(面内輝度均一性)が悪化するという問題が生じている。
【0008】
本開示は、面内輝度均一性を向上させることができる光拡散シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本開示に係る光拡散シートは、光出射面となる第1面と、光入射面となる第2面とを有する光拡散シートであって、前記第1面には、略逆多角錐状の複数の凹部が設けられ、前記第2面の算術平均粗さは、1.0μm以上3.0μm以下であり、内部ヘイズが1.5%以下である。
【0010】
本開示に係る光拡散シートによると、光入射面となる第2面の算術平均粗さが3.0μm以下であり、且つ内部ヘイズが1.5%以下であるため、第2面から入射した光は、シート内部で実質的に拡散することなく、凹凸面である第1面に到達する。このため、光源から光拡散シートに向けて直進してきた高輝度の光を第1面の凹部によって均一に拡散させることができるので、光源イメージを解消して面内輝度均一性を向上させることができる。また、光入射面となる第2面の算術平均粗さが1.0μm以上であるので、輝度の低下を抑制することができる。従って、さらなる薄型化や光源数の削減にも対応することができる。
【0011】
本開示に係る光拡散シートにおいて、前記複数の凹部は、略逆四角錐状に形成されてもよい。このようにすると、光源から直進してきた光を第1面で均一に拡散させることができる。
【0012】
本開示に係る光拡散シートにおいて、前記複数の凹部の頂角は、80°以上100°以下であってもよい。このようにすると、光源から直進してきた光を第1面で均一に拡散させることができる。
【0013】
本開示に係るバックライトユニットは、液晶表示装置に組み込まれ、複数の光源から発せられた光を表示画面側に導くバックライトユニットであって、前記表示画面と前記複数の光源との間に、前述の本開示に係る光拡散シートを備え、当該光拡散シートは、前記第2面を前記複数の光源の方に向けて配置される。
【0014】
本開示に係るバックライトユニットによると、前述の本開示に係る光拡散シートを備えるため、面内輝度均一性を向上させることができるので、さらなる薄型化や光源数の削減にも対応することができる。
【0015】
本開示に係るバックライトユニットにおいて、前記複数の光源は、前記光拡散シートから見て前記表示画面の反対側に設けられた反射シートの上に配置されてもよい。このようにすると、光拡散シートと反射シートとの間での多重反射によって光がさらに拡散されるので、面内輝度均一性がより一層向上する。
【0016】
本開示に係るバックライトユニットにおいて、前記光拡散シートは、複数枚積層して前記表示画面と前記複数の光源との間に配置されてもよい。このようにすると、各光拡散シートの第1面によって、光源から直進してきた光が繰り返し拡散されるので、面内輝度均一性がより一層向上する。
【0017】
本開示に係るバックライトユニットにおいて、前記複数の光源と前記光拡散シートとの間の距離は、10mm以下であってもよい。このようにすると、前述の本開示に係る光拡散シートの拡散性能によって、面内輝度均一性の悪化を抑制することができる。
【0018】
本開示に係る液晶表示装置は、前述の本開示に係るバックライトユニットと、液晶表示パネルとを備える。
【0019】
本開示に係る液晶表示装置によると、前述の本開示に係るバックライトユニットを備えるため、面内輝度均一性を向上させることができるので、さらなる薄型化や光源数の削減にも対応することができる。
【0020】
本開示に係る情報機器は、前述の本開示に係る液晶表示装置を備える。
【0021】
本開示に係る情報機器によると、前述の本開示に係る液晶表示装置を備えるため、面内輝度均一性を向上させることができるので、さらなる薄型化や光源数の削減にも対応することができる。
【発明の効果】
【0022】
本開示によると、面内輝度均一性を向上させることができる光拡散シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施形態に係る液晶表示装置の断面図である。
【
図2】実施形態に係るバックライトユニットの断面図である。
【
図3】実施形態に係る光拡散シートの断面図である。
【
図5】実施例1~8、及び比較例1、2の光拡散シートの面内輝度均一性の評価結果を示す図である。
【
図6】実施例1~8、及び比較例1、2の光拡散シートの輝度の評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(実施形態)
以下、実施形態に係る光拡散シート、バックライトユニット、液晶表示装置及び情報機器について、図面を参照しながら説明する。尚、本開示の範囲は、以下の実施の形態に限定されず、本開示の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0025】
図1は、本実施形態に係る液晶表示装置の断面図の一例であり、
図2は、本実施形態に係るバックライトユニットの断面図の一例であり、
図3は、本実施形態に係る光拡散シートの断面図の一例である。
【0026】
図1に示すように、液晶表示装置50は、液晶表示パネル5と、液晶表示パネル5の下面に貼付された第1偏光板6と、液晶表示パネル5の上面に貼付された第2偏光板7と、液晶表示パネル5の背面側に第1偏光板6を介して設けられたバックライトユニット40とを備えている。液晶表示パネル5は、互いに対向するように設けられたTFT基板1及びCF基板2と、TFT基板1とCF基板2との間に設けられた液晶層3と、TFT基板1とCF基板2との間に液晶層3を封入するために枠状に設けられたシール材(図示省略)とを備える。
【0027】
液晶表示装置50の表示画面50aを正面(
図1の上方)から見た形状は、原則、長方形又は正方形であるが、これに限らず、長方形の角が丸くなった形状、楕円形、円形、台形、又は、自動車のインストルメントパネル(インパネ)などの任意の形状であってもよい。
【0028】
液晶表示装置50では、各画素電極に対応する各サブ画素において、液晶層3に所定の大きさの電圧を印加して液晶層3の配向状態を変える。これにより、バックライトユニット40から第1偏光板6を介して入射した光の透過率が調整される。透過率が調整された光は第2偏光板7を介して出射されて画像が表示される。
【0029】
本実施形態の液晶表示装置50は、種々の情報機器(例えばカーナビゲーション等の車載装置、パーソナルコンピュータ、携帯電話、携帯情報端末、携帯型ゲーム機、コピー機、券売機、現金自動預け払い機など)に組み込まれる表示装置として用いられる。
【0030】
TFT基板1は、例えば、ガラス基板上にマトリクス状に設けられた複数のTFTと、各TFTを覆うように設けられた層間絶縁膜と、層間絶縁膜上にマトリクス状に設けられ且つ複数のTFTにそれぞれ接続された複数の画素電極と、各画素電極を覆うように設けられた配向膜とを備える。CF基板2は、例えば、ガラス基板上に格子状に設けられたブラックマトリクスと、ブラックマトリクスの各格子間にそれぞれ設けられた赤色層、緑色層及び青色層を含むカラーフィルターと、ブラックマトリクス及びカラーフィルターを覆うように設けられた共通電極と、共通電極を覆うように設けられた配向膜とを備える。液晶層3は、電気光学特性を有する液晶分子を含むネマチック液晶材料等により構成される。第1偏光板6及び第2偏光板7は、例えば、一方向の偏光軸を有する偏光子層と、その偏光子層を挟持するように設けられた一対の保護層とを備える。
【0031】
バックライトユニット40は、
図2に示すように、反射シート41と、反射シート41上に2次元状に配置された複数の光源42と、複数の光源42の上側に設けられた光拡散シート43と、光拡散シート43の上側に順に設けられた第1プリズムシート44及び第2プリズムシート45と、第2プリズムシート45の上側に設けられた偏光シート46とを備える。
【0032】
尚、
図2では、同じ構造の光拡散シート43を2層積層してバックライトユニット40に設ける場合を例示しているが、光拡散シート43は単層で用いてもよいし、或いは、3層以上積層して用いてもよい。
【0033】
反射シート41は、例えば、白色のポリエチレンテレフタレート樹脂製のフィルム、銀蒸着フィルム等により構成される。
【0034】
光源42の種類は特に限定されないが、例えばLED素子やレーザー素子等であってもよく、コスト、生産性等の観点からLED素子を用いてもよい。光源42は、平面視した場合に長方形状を有していてもよく、その場合、一辺の長さは10μm以上(好ましくは50μm以上)20mm以下(好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下)であってもよい。光源42としてLEDを用いる場合、複数のLEDチップを一定の間隔をもって反射シート41上に配置してもよい。また、光源42となるLEDの出光角度特性を調節するために、LEDにレンズを装着してもよい。
【0035】
光拡散シート43は、
図2及び
図3に示すように、基材層21を有する。基材層21は、例えばクリアポリカーボネートを母材(マトリックス樹脂)として構成される。基材層21は、実質的に拡散剤を含有しない。光拡散シート43(基材層21)は、光出射面となる第1面21aと、光入射面となる第2面21bとを有する。すなわち、光拡散シート43は、第2面21bを光源42の方に向けて配置される。
【0036】
光拡散シート43の第1面21aには、略逆多角錐状、例えば略逆四角錐状(逆ピラミッド状)の複数の凹部22が2次元配列される。一方、光拡散シート43の第2面21bの算術平均粗さは、3.0μm以下である。
【0037】
光拡散シート43(基材層21)の内部ヘイズは、1.5%以下である。尚、「内部ヘイズ」とは、全ヘイズのうち、表面形状(具体的には第1面21aの凹部22)に起因する表面ヘイズを除いたヘイズを意味する。
【0038】
凹部22の頂角θは、80°以上100°以下、例えば90°であり、凹部22の配列ピッチpは、例えば100μm程度である。ここで、凹部22の頂角θとは、光拡散シート43の第2面21b(水平面)に対して垂直な面(縦断面)で、逆多角錐の頂点を通り且つ当該頂点を挟んで向き合う一対の斜面を垂直に横切るように切断したときに現れる断面において、斜面の断面線同士がなす角のことである。また、凹部22の配列ピッチpとは、隣り合う凹部22のそれぞれにおける逆多角錐の頂点同士の間の水平距離(第2面21bに平行な方向に沿った距離)のことである。
【0039】
本実施形態では、光拡散シート43を、第1面21aに凹凸形状(凹部22)を持つ基材層21の1層構造で構成した。しかし、これに代えて、光拡散シート43を、両面が平坦な基材層と、一面に凹凸形状を持つ層との2層構造で構成してもよいし、或いは、一面に凹凸形状を持つ層を含む3層以上の構造で構成してもよい。
【0040】
また、本実施形態では、逆ピラミッド状(略逆四角錐状)の凹部22を二次元配列して第1面21aに凹凸形状を設けたが、凹部22は、他の略逆多角錐状であってもよいし、凹部22は、本発明の作用効果が失われない程度にランダムに配列されてもよい。
【0041】
尚、本開示では、通常の形状転写技術により幾何学的に厳密な逆多角錐の凹部を形成することが難しいことを考慮して、「略逆多角錐」との表記を用いるが、「略逆多角錐」は、真正の又は実質的に逆多角錐とみなせる形状を含むものとする。また、「略」とは、近似可能であることを意味し、例えば「略逆四角錐」とは、逆四角錐に近似可能な形状をいう。例えば、頂部が平坦な「逆多角錐台形」についても、本発明の作用効果が失われない程度に頂部面積が小さいものは、「略逆多角錐」に包含されるものとする。また、工業生産上の加工精度に起因する不可避的な形状のばらつきの範囲内で「逆多角錐」から変形した形状も、「略逆多角錐」に包含される。
【0042】
また、凹部22の「逆多角錐」形状としては、隙間なく二次元配置することが可能な三角錐、四角錐又は六角錐が好ましい。凹部22を設ける際の押出成形や射出成形等の製造工程で用いられる金型(金属ロール)の表面切削作業の精度を考慮して、「逆多角錐」として逆四角錐を選択してもよい。凹部22が規則的に2次元配列される場合、凹部22は、第1面21aに隙間無く設けられてもよいし、所定の間隔をあけて設けられてもよい。
【0043】
第1プリズムシート44及び第2プリズムシート45は、例えば、横断面が二等辺三角形の複数の溝条が互いに隣り合うように形成され、隣り合う一対の溝条に挟まれたプリズムの頂角が90°程度に形成されたフィルムである。第1プリズムシート44に形成された各溝条と、第2プリズムシート45に形成された各溝条とは、互いに直交するように配置される。第1プリズムシート44及び第2プリズムシート45は、一体に形成されてもよい。第1プリズムシート44及び第2プリズムシート45としては、例えば、PET(polyethylene terephthalate)フィルムにUV硬化型アクリル系樹脂を用いてプリズム形状をつけたものを用いてもよい。
【0044】
偏光シート46としては、例えば、3M社製のDBEFシリーズを用いてもよい。偏光シート46は、バックライトユニット40から出射された光が液晶表示装置50の第1偏光板6に吸収されることを防止することによって、表示画面50aの輝度を向上させる。
【0045】
以上に説明した本実施形態の光拡散シート43によると、光出射面である第1面21aには、略逆多角錐状の複数の凹部22が設けられ、光入射面である第2面21bの算術平均粗さが3.0μm以下であり、内部ヘイズが1.5%以下である。このため、第2面21bから入射した光は、光拡散シート43(基材層21)の内部では実質的に拡散することなく、凹凸面である第1面21aに到達する。このため、光源42から光拡散シート43に向けて直進してきた高輝度の光を第1面21aの凹部22によって均一に拡散させることができるので、表示画面50aにおいて光源42のイメージを解消して面内輝度均一性を向上させることができる。従って、さらなる薄型化や光源数の削減にも対応することができる。
【0046】
図4は、エンボス加工により第2面21bに凹凸形状が設けられた比較例の光拡散シート43Aの断面構成を示す。尚、
図4において、
図3に示す本実施形態の光拡散シート43と同じ構成要素には同じ符号を付す。比較例の光拡散シート43Aでは、光源42から直進してきた光が第2面21bでランダムに拡散されてしまうので、当該光を第1面21aの凹部22によって均一に拡散させることはできない。言い換えると、第1面21aにおいて光源42の位置に依存して光源42のイメージが解消される程度が異なってしまう。その結果、面内輝度均一性が悪化するという問題が生じる。
【0047】
この問題を解決するに、光拡散シート43において、光入射面である第2面21bの算術平均粗さを3.0μm以下にする。尚、面内輝度均一性を向上させる観点では、光拡散シート43の第2面21bの算術平均粗さは、0.5μm以下であることが好ましく、0.3μm以下であることがさらに好ましく、0.1μm以下であることがより好ましく、0.05μm以下であることがより一層好ましい。一方、輝度の低下を抑制する観点では、光拡散シート43の第2面21bの算術平均粗さは、0.1μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがさらに好ましく、1.0μm以上であることがより好ましい。
【0048】
また、面内輝度均一性が悪化する問題は、基材層21内に当該基材層21と異なる屈折率を有する微粒子(拡散剤)を分散させて光拡散を行う場合にも生じる。すなわち、本実施形態の光拡散シート43においては、拡散剤含有率つまり内部ヘイズは小さいほど好ましい。具体的には、光拡散シート43の内部ヘイズは、5%以下であることが好ましく、3%以下であることがさらに好ましく、1.5%以下であることがより好ましく、1.0%以下であることがより一層好ましい。
【0049】
本実施形態の光拡散シート43において、凹部22が略逆四角錐状に形成されると、光源42から直進してきた光を第1面21aで均一に拡散させることができる。
【0050】
本実施形態の光拡散シート43において、凹部22の頂角が80°以上100°以下であると、光源42から直進してきた光を第1面21aで均一に拡散させることができる。
【0051】
本実施形態のバックライトユニット40は、液晶表示装置50に組み込まれ、複数の光源42から発せられた光を表示画面50a側に導く。バックライトユニット40において、表示画面50aと光源42との間に、本実施形態の光拡散シート43が、第2面21bを光源42の方に向けて配置される。このため、光拡散シート43によって、面内輝度均一性を向上させることができるので、さらなる薄型化や光源数の削減にも対応することができる。
【0052】
本実施形態のバックライトユニット40において、光源42は、光拡散シート43から見て表示画面50aの反対側に設けられた反射シート41の上に配置されてもよい。このようにすると、光拡散シート43と反射シート41との間での多重反射によって光がさらに拡散されるので、面内輝度均一性がより一層向上する。
【0053】
本実施形態のバックライトユニット40において、光拡散シート43は、複数枚積層して表示画面50aと光源42との間に配置されてもよい。このようにすると、各光拡散シート43の第1面21aによって、光源42から直進してきた光が繰り返し拡散されるので、面内輝度均一性がより一層向上する。
【0054】
本実施形態のバックライトユニット40において、光源42と光拡散シート43との間の距離が10mm以下であると、光拡散シート43の拡散性能によって、面内輝度均一性の悪化を従来よりも抑制することができる。
【0055】
本実施形態の液晶表示装置50は、本実施形態のバックライトユニット40と、液晶表示パネル5とを備える。このため、バックライトユニット40によって、面内輝度均一性を向上させることができるので、さらなる薄型化や光源数の削減にも対応することができる。本実施形態の液晶表示装置50が組み込まれた情報機器(パーソナルコンピュータ、携帯電話など)においても同様の効果を得ることができる。
【0056】
尚、本実施形態において、光源42の配置数は特に限定されないが、複数の光源42を分散配置する場合は、反射シート41上に規則的に配置することが好ましい。規則的に配置するとは、一定の法則性をもって配置することを意味し、例えば、光源42を等間隔で配置する場合が該当する。等間隔で光源42を配置する場合、隣り合う2つの光源42の中心間距離は、0.5mm以上(好ましくは2mm以上)20mm以下であってもよい。
【0057】
また、本実施形態において、光拡散シート43(基材層21)は、本発明の作用効果が失われない範囲で拡散剤その他の添加剤を含んでいてもよい。含有可能な添加剤は、特に限定されないが、例えば、シリカ、酸化チタン、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の無機粒子であってもよいし、例えば、アクリル、アクリルニトリル、シリコーン、ポリスチレン、ポリアミド等の有機粒子であってよい。
【0058】
また、本実施形態において、基材層21のマトリックスとなる樹脂は、光を透過させる材料で構成されていれば、特に限定されないが、例えば、アクリル、ポリスチレン、ポリカーボネート、MS(メチルメタクリレート・スチレン共重合)樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、セルロールアセテート、ポリイミド等であっててもよい。
【0059】
また、本実施形態において、光拡散シート43の厚さは、特に限定されないが、例えば、3mm以下(好ましくは2mm以下、より好ましくは1.5mm以下、更に好ましくは1mm以下)で0.1mm以上であってもよい。光拡散シート43の厚さが3mmを超えると、液晶ディスプレイの薄型化の達成が難しくなる。一方、光拡散シート43の厚さが0.1mmを下回ると、前述の輝度均一性向上効果を発揮することが難しくなる。光拡散シート43は、フィルム状であってもよいし、プレート(板)状であってもよい。
【0060】
また、本実施形態において、光拡散シート43の製造方法は、特に限定されないが、例えば、押し出し成型法、射出成型法などを用いてもよい。
【0061】
押し出し成型法を用いて、凹凸形状を表面に持つ単層の光拡散シートを製造する手順は次の通りである。まず、ペレット状のプラスチック粒子(拡散剤が添加されていてもよい)を単軸押し出し機に投入し、加熱しながら溶融、混錬する。その後、T-ダイスにより押し出された溶融樹脂を2本の金属ロールで挟んで冷却した後、ガイドロールを用いて搬送し、シートカッター機により枚葉平板に切り落とすことによって、光拡散シートを作製する。ここで、所望の凹凸形状を反転した形状を表面に持つ金属ロールを使用して溶融樹脂を挟むことにより、ロール表面の反転形状が樹脂に転写されるので、所望の凹凸形状を光拡散シート表面に賦形することができる。また、樹脂に転写された形状は、必ずしもロール表面の形状が100%転写されたものとはならないので、転写度合いから逆算して、ロール表面の形状を設計してもよい。
【0062】
押し出し成型法を用いて、凹凸形状を表面に持つ2層構造の光拡散シートを製造する場合は、例えば、2つの単軸押し出し機のそれぞれに、各層の形成に必要なペレット状のプラスチック粒子を投入した後、各層毎に前述と同様の手順を実施し、作製された各シートを積層すればよい。
【0063】
或いは、以下のように、凹凸形状を表面に持つ2層構造の拡散シートを作製してもよい。まず、2つの単軸押し出し機のそれぞれに、各層の形成に必要なペレット状のプラスチック粒子を投入し、加熱しながら溶融、混錬する。その後、各層となる溶融樹脂を1つのT-ダイスに投入し、当該T-ダイス内で積層し、当該T-ダイスにより押し出された積層溶融樹脂を2本の金属ロールで挟んで冷却する。その後、ガイドロールを用いて積層溶融樹脂を搬送し、シートカッター機により枚葉平板に切り落とすことによって、凹凸形状を表面に持つ2層構造の拡散シートを作製してもよい。
【0064】
また、UV(紫外線)を用いた賦形転写によって、以下のように光拡散シート43を製造してもよい。まず、転写したい凹凸形状の反転形状を有するロールに未硬化の紫外線硬化樹脂を充填し、当該樹脂に基材を押し当てる。次に、紫外線硬化樹脂が充填されたロールと基材とが一体になっている状態で、紫外線を照射して樹脂を硬化させる。次に、樹脂によって凹凸形状が賦形転写されたシートをロールからはく離させる。最後に、再度シートに紫外線照射を行って樹脂を完全硬化させ、凹凸形状を表面に持つ光拡散シートを作製する。
【0065】
また、本実施形態においては、バックライトユニット40として、液晶表示装置50の表示画面50aの背面側に複数の光源42を分散配置させた直下型のバックライトユニットを用いている。このため、液晶表示装置50を小型化するためには、光源42と光拡散シート43との距離を小さくする必要がある。しかしながら、この距離を小さくすると、分散配置された光源42同士の間の領域上に位置する部分の表示画面50aの輝度が他の部分よりも小さくなる現象(輝度ムラ)が生じやすくなる。
【0066】
それに対して、本実施形態の光拡散シート43を用いることは、輝度ムラの抑制に有用である。特に、今後の中小型液晶ディスプレイの薄型化をにらみ、光源と光拡散シートとの距離を15mm以下、好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下、さらに好ましくは2mm以下、究極的には0mmとした場合に、本発明の有用性はより一層顕著になると考えられる。
【0067】
(実施例及び比較例)
以下、実施例及び比較例について説明する。
【0068】
実施例及び比較例には、クリアポリカーボネートを母材とする厚さ130μmの基材層を有する光拡散シートを用いた。実施例及び比較例ともに、光拡散シートの第1面(光出射面)には、90°の頂角を持つ略逆四角錐状(逆ピラミッド状)の複数の凹部を100μmピッチで2次元配列した。実施例としては、算術平均粗さRaがそれぞれ2.6μm、1.8μm、1.2μm、0.03μmとなるように加工した第2面(光入射面)を有する4種類の光拡散シートを用意した。比較例としては、算術平均粗さRaが3.4μmとなるように加工した第2面(光入射面)を有する光拡散シートを用意した。
【0069】
実施例の光拡散シートの製造方法は、以下の通りである。まず、ペレット状の母材樹脂(プラスチック樹脂)を押出成形機によって樹脂フィルム化した。その後、2本の金属ロールのうち一方のロールとして、表面が凸ピラミッド形状を持つロール、他方のロールとして、鏡面ロールを使用し、当該両ロールを樹脂フィルムに圧着して、一面に逆ピラミッド形状、他面に鏡面を持つ単層の光拡散シートを作製した。
【0070】
比較例の光拡散シートの製造方法は、以下の通りである。まず、ペレット状の母材樹脂(プラスチック樹脂)を押出成形機によって樹脂フィルム化した。その後、2本の金属ロールのうち一方のロールとして、表面が凸ピラミッド形状を持つロール、他方のロールとして、ランダムなマット形状を有するエンボスロールを使用し、当該両ロールを樹脂フィルムに圧着して、一面に逆ピラミッド形状、他面にエンボス形状を持つ単層の光拡散シートを作製した。エンボス形状を持つ表面の粗さの違いは、エンボスロール表面の粗さによって制御した。
【0071】
実施例及び比較例の光拡散シートの表面粗さ(算術平均粗さRa)は、ミツトヨ社製SJ-210を使用し、JIS B 0601-1994に準拠して、測定速度を0.5mm/s、測定距離を4mm、カットオフ値λcを0.8mmに設定して測定した。
【0072】
尚、実施例の光拡散シートの内部ヘイズ及び全光線透過率はそれぞれ、0.6%及び90.8%であった。内部ヘイズ及び全光線透過率は、光拡散シートの第1面の凹部(逆ピラミッド)をUV硬化樹脂(光拡散シートのマトリックス樹脂と同じ樹脂)で埋めて測定した。UV硬化樹脂には、光拡散シートのマトリックス樹脂と同じ屈折率を持つ樹脂を用いた。尚、内部ヘイズ及び全光線透過率の測定は、スガ試験機社製のヘイズメータHZ-2を用いて、JIS K 7136に準拠して行った。
【0073】
実施例及び比較例の光拡散シートの面内輝度均一性の評価は、以下のように行った。まず、2.8mmピッチで配列された青色LEDアレイの上に、実施例(4種類)及び比較例の光拡散シートを2枚又は3枚積層して配置し、その上にプリズムシート2枚を配置し、さらにその上にシート類の浮きを抑えるために透明ガラス板を載せて、トプコンテクノハウス社製の2次元色彩輝度計 UA-200を用いて、鉛直方向上向き(LEDアレイからガラス板に向かう方向)の輝度を測定した。次に、得られた二次元輝度分布画像に対して、個々のLEDの発光強度バラツキに対する補正を行い、異物等に起因する輝点・暗点ノイズを抑えるためのフィルタリング処理を行った後、全画素の輝度について平均値及び標準偏差を算出した。最後に、「面内輝度均一性」を「輝度の平均値/輝度の標準偏差」と定義して、実施例及び比較例の光拡散シートの面内輝度均一性を算出した。
【0074】
表1に、実施例及び比較例の光拡散シートの輝度及び面内輝度均一性の評価結果を示す。尚、表1に示す輝度は、同じ重ね枚数の比較例の輝度(平均値)を1とする相対輝度である。
【0075】
【0076】
表1において、実施例1~4は、算術平均粗さRaがそれぞれ2.6μm、1.8μm、1.2μm、0.03μmになるように加工された第2面(光入射面)を持つ前述の実施例の光拡散シートを2枚重ねて、輝度及び面内輝度均一性を評価した結果である。また、比較例1は、算術平均粗さRaが3.4μmになるように加工された第2面を持つ前述の比較例の光拡散シートを2枚重ねて、輝度及び面内輝度均一性を評価した結果である。また、実施例5~8は、算術平均粗さRaがそれぞれ2.6μm、1.8μm、1.2μm、0.03μmになるように加工された第2面を持つ前述の実施例の光拡散シートを3枚重ねて、輝度及び面内輝度均一性を評価した結果である。また、比較例2は、算術平均粗さRaが3.4μmになるように加工された第2面を持つ前述の比較例の光拡散シートを3枚重ねて、輝度及び面内輝度均一性を評価した結果である。
【0077】
図5は、実施例1~8、及び比較例1、2のそれぞれにおける光拡散シートの入光面の表面粗さ(算術平均粗さ)Raと面内輝度均一性との関係を示す。また、
図6は、実施例1~8、及び比較例1、2のそれぞれにおける光拡散シートの入光面の表面粗さ(算術平均粗さ)Raと輝度との関係を示す。
【0078】
表1及び
図5に示すように、光拡散シートの重ね枚数に関わらず、入光面の表面粗さRaが小さくなるに従って、面内輝度均一性が向上した。特に、入光面の表面粗さRaが最も小さい0.03μm(鏡面)の場合(実施例4、8)に、それぞれの重ね枚数において、面内輝度均一性が最大となった。また、入光面の表面粗さRaが3.0μm以下であれば、それぞれの重ね枚数において、鏡面と比べた場合の面内輝度均一性の低下が抑制された。
【0079】
一方、表1及び
図6に示すように、入光面の表面粗さRaが最も小さい0.03μm(鏡面)の場合(実施例4、8)には、それぞれの重ね枚数において、輝度の低下が見られた。また、入光面の表面粗さRaが1.0μm以上であれば、それぞれの重ね枚数において、輝度の低下が見られなかった。
【0080】
表1、
図5、
図6に示す結果から、入光面の表面粗さRaを3.0μm以下の範囲で適切に設定すると共に光拡散シートの重ね枚数を調整することによって、製品に求められる輝度及び面内輝度均一性の条件を満たせることが判明した。例えば、面内輝度均一性の向上と共に輝度の低下抑制が求められる製品では、光拡散シートの入光面の表面粗さRaを1.0μm以上3.0μm以下に設定すればよい。
【0081】
以上、本開示についての実施形態(実施例を含む。以下同じ。)を説明したが、本開示は前述の実施形態のみに限定されず、開示の範囲内で種々の変更が可能である。すなわち、前述の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0082】
1 TFT基板
2 CF基板
3 液晶層
5 液晶表示パネル
6 第1偏光板
7 第2偏光板
21 基材層
21a 第1面
21b 第2面
22 凹部
40 バックライトユニット
41 反射シート
42 光源
43 光拡散シート
44 第1プリズムシート
45 第2プリズムシート
46 偏光シート
50 液晶表示装置
50a 表示画面