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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011290
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】車両後部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
B62D25/08 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113175
(22)【出願日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 真康
(72)【発明者】
【氏名】宮永 啓世
(72)【発明者】
【氏名】川辺 悟
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 康哲
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 尚
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BB07
3D203BB56
3D203BB57
3D203BB76
3D203BC10
3D203BC15
3D203CA26
3D203CA37
3D203CA42
3D203CA53
3D203CA55
3D203CA57
3D203CB19
3D203DA87
(57)【要約】
【課題】車両の上下方向の広範囲において、後方から衝突荷重を効果的に緩和することができ、衝突安全性を向上させることができる車両構造部構造を提供する。
【解決手段】本発明の一態様に係る車両後部構造は、車幅方向に延びるリアパネルセンタメンバ、及びリアパネルセンタメンバから上方に延びるリアピラー43を有するリアパネルと、リアパネルの前方に位置するリアホイールハウスと、リアパネルセンタメンバの上方において、車両前後方向に延びるとともに、リアピラー及びリアホイールハウス間を架け渡すリアパネル支え部材と、を備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に延びるリアパネルセンタメンバ、及び前記リアパネルセンタメンバから上方に延びる後方接続部を有するリアパネルと、
前記リアパネルの前方に位置する前方接続部と、
前記リアパネルセンタメンバの上方において、車両前後方向に延びるとともに、前記後方接続部及び前記前方接続部間を架け渡すリアパネル支え部材と、を備えている車両後部構造。
【請求項2】
前記前方接続部は、
後輪の一部が収容されるホイールハウス本体と、
前記ホイールハウス本体に対して車両内側に設けられたダンパ荷重受部と、を備え、
前記リアパネル支え部材の前端部は、前記ダンパ荷重受部に接続されている請求項1に記載の車両後部構造。
【請求項3】
前記ダンパ荷重受部は、
前記ホイールハウス本体を上方から覆う頂壁部と、
前記頂壁部の外周縁から下方に延び、前記ホイールハウス本体を後方から覆うコーナ部と、を備え、
前記リアパネル支え部材の前端部は、前記ダンパ荷重受部のうち前記頂壁部と前記コーナ部との稜線部を跨って接続されている請求項2に記載の車両後部構造。
【請求項4】
前記後方接続部は、閉断面構造をなし、
前記後方接続部のうち、前記リアパネル支え部材の後端部が接続される部分の内部には、補強部材が設けられている請求項1に記載の車両後部構造。
【請求項5】
前記リアパネル支え部材は、後方に向かうに従い下方に延びている請求項1に記載の車両後部構造。
【請求項6】
前記後方接続部は、前記リアパネルセンタメンバの両端部からそれぞれ上方に延びて車両の荷室開口部を区画する一対のリアピラーを含み、
前記リアパネル支え部材は、一対の前記リアピラーと前記前方接続部との間をそれぞれ架け渡している請求項1に記載の車両後部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両後部構造として、リアサイドメンバと、リアサイドバンパの後端部同士を車幅方向に接続するバンパレインフォースと、バンパレインフォースの上方に設けられたリアパネルレインフォースと、リアパネルレインフォース及びリアピラーレインフォース間を接続する荷重伝達ビームと、を備える構成が開示されている(下記特許文献1参照)。
この構成によれば、車両の後面衝突時において、バンパレインフォースを介してリアサイドメンバに衝突入力が作用するとともに、リアパネルレインフォースを介して荷重伝達ビームに衝突入力が作用することで、リアサイドメンバへの衝突入力の集中が回避できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-306192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術において、リアパネルレインフォースは、リアバンパの内側(前方)に設けられている。そのため、従来技術の構成では、バンパレインフォース及びリアパネルレインフォースの双方が車体の下部に設けられる。この場合、車体後部における上下方向の広範囲での衝突安全性に関して未だ改善の余地があった。従来技術にあっては、例えば衝突対象物がバンパレインフォースやリアパネルレインフォースに対して上方にオフセットした状態で衝突した場合、荷重伝達ビームへの荷重伝達が効果的に行われない可能性があった。
【0005】
本発明は、車両の上下方向の広範囲において、後方から衝突荷重を効果的に緩和することができ、衝突安全性を向上させることができる車両構造部構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の態様を採用した。
本発明の一態様に係る車両後部構造(例えば、実施形態における車両後部構造10)は、車幅方向に延びるリアパネルセンタメンバ(例えば、実施形態におけるリアパネルセンタメンバ42)、及び前記リアパネルセンタメンバから上方に延びる後方接続部(例えば、実施形態におけるリアピラー43)を有するリアパネル(例えば、実施形態におけるリアパネル26)と、前記リアパネルの前方に位置する前方接続部(例えば、実施形態におけるリアホイールハウス24)と、前記リアパネルセンタメンバの上方において、車両前後方向に延びるとともに、前記後方接続部及び前記前方接続部間を架け渡すリアパネル支え部材(例えば、実施形態におけるリアパネル支え部材50)と、を備えている。
【0007】
本態様によれば、例えば後突時において、車両の後方から入力される衝突荷重が、リアパネル及びリアパネル支え部材の双方に伝達される。これにより、衝突荷重を分散することができ、衝突荷重を効果的に緩和することができる。
しかも、本態様では、リアパネルセンタメンバとパネル支え部材とが後方接続部を介して接続されているため、衝突荷重の入力時にはリアパネルの下部領域(リアパネルのうちリアパネル支え部材よりも下方に位置する部分)がリアパネル支え部材を起点に前方に変位する。その結果、リアパネルの下部領域に発生する張力によって衝突荷重を緩和できる。この際、リアパネル支え部材自体の変形を抑制し、衝突対象物の車両への進入量を軽減した上で、衝撃荷重を緩和できる。このように、本態様では、後突時において、リアパネル支え部材を起点としてリアパネルの下部領域を変位させるので、リアパネル支え部材を比較的上方に配置して、リアパネルの下部領域に対して入力される衝突荷重に対して同等の挙動によって衝突荷重を緩和することができる。よって、上下方向の広範囲で同等の衝突安全性を確保し易い。
【0008】
上記態様に係る車両後部構造において、前記前方接続部は、後輪の一部が収容されるホイールハウス本体(例えば、実施形態におけるホイールハウス本体24a)と、前記ホイールハウス本体に対して車両内側に設けられたダンパ荷重受部(例えば、実施形態におけるダンパベース24b)と、を備え、前記リアパネル支え部材の前端部は、前記ダンパ荷重受部に接続されていることが好ましい。
本態様によれば、ホイールハウス本体を補強するダンパベースにリアパネル支え部材の前端部が接続されていることで、リアパネル支え部材を前方から強固に支持できる。これにより、衝突荷重が入力された際にリアパネル支え部材自体が前方に変位することを抑制できる。その結果、リアパネルの下部領域を効果的に変位させることができ、リアパネルの下部領域に発生する張力によって衝突荷重を緩和し易い。
【0009】
上記態様に係る車両後部構造において、前記ダンパ荷重受部は、前記ホイールハウス本体を上方から覆う頂壁部(例えば、実施形態における頂壁部35)と、前記頂壁部の外周縁から下方に延び、前記ホイールハウス本体を後方から覆うコーナ部(例えば、実施形態におけるコーナ部36)と、を備え、前記リアパネル支え部材の前端部は、前記ダンパ荷重受部のうち前記頂壁部と前記コーナ部との稜線部(例えば、実施形態における稜線部55)を跨って接続されていることが好ましい。
本態様によれば、リアパネル支え部材の接続箇所における剛性を確保し易いので、衝突荷重が入力された際にリアパネル支え部材自体が前方に変位することをより確実に抑制できる。
【0010】
上記態様に係る車両後部構造において、前記後方接続部は、閉断面構造をなし、前記後方接続部のうち、前記リアパネル支え部材の後端部が接続される部分の内部には、補強部材が設けられていることが好ましい。
本態様によれば、後方接続部の強度を確保し易くなるので、衝突荷重が入力された際に後方接続部のうちリアパネル支え部材との接続箇所が破断することを抑制できる。これにより、リアパネルの下部領域を効果的に変位させることができ、リアパネルの下部領域に発生する張力によって衝突荷重を緩和し易い。
【0011】
上記態様に係る車両後部構造において、前記リアパネル支え部材は、後方に向かうに従い下方に延びていることが好ましい。
本態様によれば、衝突荷重の入力時において、リアパネルの下部領域がリアパネル支え部材を起点に前方に変位し易い。これにより、リアパネルの下部領域に発生する張力によって衝突荷重を効率的に緩和できる。
【0012】
上記態様に係る車両後部構造において、前記後方接続部は、前記リアパネルセンタメンバの両端部からそれぞれ上方に延びて車両の荷室開口部(例えば、実施形態における荷室開口部2)を区画する一対のリアピラーを含み、前記リアパネル支え部材は、一対の前記リアピラーと前記前方接続部との間をそれぞれ架け渡していることが好ましい。
本態様によれば、車両の荷室開口部の開口面積を確保しつつ、衝突安全性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
上記態様によれば、車両の上下方向の広範囲において、後方から衝突荷重を効果的に緩和することができ、衝突安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】車両後部構造を前方から見た斜視図である。
図2】車両後部構造を後方から見た斜視図である。
図3】車両後部構造を側面から見た概略図である。
図4】車両後部構造を側面から見た概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の説明において、前後上下左右等の向きは、特に記載が無ければ車両1における向きと同一とする。この場合、図中の矢印FRは車両1の前方を示し、図中の矢印UPは車両1の上方を示し、図中の矢印LHは車両1の左方を示している。以下の説明において、例えば「平行」や「直交」、「中心」、「同軸」等の相対的又は絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差や同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
【0016】
図1は、車両後部構造10を前方から見た斜視図である。図2は、車両後部構造10を後方から見た斜視図である。
図1図2に示す車両1は、テールゲート(不図示)によって荷室開口部2が開閉可能な、いわゆるハッチバックタイプのものである。車両1は、車体の後部に車両後部構造10を備えている。車両後部構造10は、概ね左右対称の構成である。そのため、左右両側で対応する部材同士には同一の符号を付して、説明を適宜省略する。
【0017】
車両後部構造10は、一対のリアサイドフレーム21と、センタクロスメンバ22と、フロアパネル23と、一対のリアホイールハウス24と、リアサイドパネル25と、リアパネル26と、を備えている。
リアサイドフレーム21は、車両1における車幅方向の両端部にそれぞれ設けられている。リアサイドフレーム21は、例えば断面矩形状の閉断面構造をなしている。各リアサイドフレーム21は、サイドシル28(図2参照)から後方に向けて延びている。なお、リアサイドフレーム21は、車両1の後方から衝撃荷重が作用した場合に前後方向に圧壊可能に構成されている。
【0018】
センタクロスメンバ22は、各リアサイドフレーム21の前端部同士を車幅方向に架け渡している。
フロアパネル23は、荷室Sの床面を構成する。具体的に、フロアパネル23は、センタクロスメンバ22、リアサイドフレーム21及びリアパネル26(後述するアンダーパネル41)で囲まれた部分に設けられている。フロアパネル23の前端縁は、センタクロスメンバ22に接合されている。フロアパネル23における車幅方向の両端縁は、対応するリアサイドフレーム21にそれぞれ接合されている。フロアパネル23の後端縁は、リアパネル26に接合されている。フロアパネル23には、センタクロスメンバ22やリアサイドフレーム21の上面に対して下方に窪んだタイヤパン23aが形成されている。
【0019】
リアホイールハウス24は、各リアサイドフレーム21に対して車幅方向の外側に設けられている。リアホイールハウス24は、ホイールハウス本体24aと、ダンパベース(ダンパ荷重受部)24bと、を備えている。
ホイールハウス本体24aは、車幅方向の外側、かつ下方に向けて開放された凹状に形成されている。ホイールハウス本体24aには、ホイールハウス本体24aに対して車幅方向の外側から、後輪(不図示)の一部が収容される。具体的に、ホイールハウス本体24aは、ハウス縦壁31と、ハウス周壁32と、を備えている。ハウス縦壁31は、リアサイドフレーム21における車幅方向の外側端縁から上方に延びている。ハウス縦壁31は、車幅方向から見て(側面視)上方に向けて突の半円状に形成されている。ハウス周壁32は、ハウス縦壁31の外周縁から車幅方向の外側に延びている。ハウス周壁32は、側面視において上方に向けて突のアーチ状をなしている。
【0020】
ダンパベース24bは、ホイールハウス本体24aの上部に設けられている。ダンパベース24bには、ダンパ(不図示)の上端部が連結される。具体的に、ダンパベース24bは、頂壁部35と、コーナ部36と、を備えている。頂壁部35は、ハウス周壁32における前後方向の中間部分(最上部)を上方から覆っている。頂壁部35における車幅方向の外側端縁及び前端縁は、ハウス周壁32に接合されている。コーナ部36は、頂壁部35における後端縁に連なる後側部36aと、頂壁部35における車幅方向の内側端縁に連なる内側部36bと、を備えている。
後側部36aは、ハウス周壁32に倣って後方に向かうに従い下方に延びている。後側部36aの下端縁や車幅方向の外側端縁は、ハウス周壁32に接合されている。
内側部36bは、ハウス縦壁31に倣って下方に延びている。内側部36bの後端縁は、後側部36aの前端縁に連なっている。内側部36bの下端縁や前端縁は、ハウス縦壁31に接合されている。
【0021】
リアサイドパネル25は、荷室Sの側面を構成する。リアサイドパネル25は、車両1の後部における車幅方向の両側部にそれぞれ設けられている。リアサイドパネル25は、ホイールハウス本体24aにおける車幅方向の外側端縁から上方に延びている。そして、ホイールハウス本体24a、フロアパネル23、リアサイドパネル25、ルーフパネル(不図示)及びテールゲート(不図示)で囲まれた部分は、荷室Sを構成する。
【0022】
リアパネル26は、テールゲートとともに荷室Sの後面を構成する。リアパネル26は、前後方向から見て(正面視で)枠状の部材である。リアパネル26の内側は、荷室開口部2を構成している。すなわち、テールゲートが開位置にあるとき、荷室開口部2を通じて荷室Sが開放される。一方、テールゲートが閉位置にあるとき、荷室開口部2が閉塞される。
【0023】
リアパネル26は、アンダーパネル41と、リアパネルセンタメンバ42と、一対のリアピラー(後方接続部)43と、ルーフクロスメンバ44(図1参照)と、を備えている。
【0024】
アンダーパネル41は、側面視においてクランク形状に形成されている。具体的に、アンダーパネル41は、下板部41aと、屈曲部41bと、上板部41cと、を備えている。
下板部41aは、前後方向を厚さ方向として車幅方向に延びている。下板部41aは、リアサイドフレーム21の後端部同士を架け渡している。下板部41aのうち、リアサイドフレーム21間に位置する部分は、フロアパネル23(タイヤパン23a)の後端縁に接合されている。下板部41aのうち、正面視で各リアサイドフレーム21と重なり合う位置には、エクステンション45(図2参照)が設けられている。エクステンション45は、アンダーパネル41から後方に向けて突出する筒状の部材である。エクステンション45は、車両1の後方から衝撃荷重が作用した場合に、前後方向に圧壊可能に構成されている。なお、各エクステンション45の後端部には、各エクステンション45の後端部同士を架け渡すようにリアバンパビーム(不図示)が設けられている。
【0025】
屈曲部41bは、下板部41aの上端縁から後方に延びている。図示の例において、屈曲部41bは、後方に向かうに従い上方に延びている。
上板部41cは、屈曲部41bの後端縁から上方に延びている。
【0026】
リアパネルセンタメンバ42は、アンダーパネル41の上端部に設けられている。リアパネルセンタメンバ42は、側面視でL字状に形成されるとともに、車幅方向に延びている。リアパネルセンタメンバ42は、下板部41aの上端部及び上板部41cの上端部に前方から接合されることで、屈曲部41b及び上板部41cとともに側面視矩形状の閉断面(以下、閉断面部48という。)を構成する。
【0027】
一対のリアピラー43は、リアパネルセンタメンバ42における車幅方向の両端部から、それぞれ上方に向けて延びている。各リアピラー43は、上下方向から見た断面視で閉断面構造をなしている。図示の例において、各リアピラー43の下端部は、車幅方向の内側端部においてリアパネルセンタメンバ42に接合され、車幅方向の外側端部において対応するリアサイドフレーム21に接合されている。なお、対応する(車幅方向で同じ側に配置された)リアピラー43及びリアホイールハウス24同士は、前後方向で向かい合っている。
ルーフクロスメンバ44は、各リアピラー43の上端部同士を車幅方向に架け渡している。ルーフクロスメンバ44は、車幅方向から見た断面視で閉断面構造をなしている。
【0028】
ここで、リアサイドフレーム21及びリアパネルセンタメンバ42の上方において、前後方向で向かい合うリアホイールハウス24とリアピラー43との間には、リアパネル支え部材50が設けられている。リアパネル支え部材50は、前後方向に延びる円筒状の部材である。具体的に、リアパネル支え部材50は、後方に向かうに従い下方に向けて直線状に延びている。なお、リアパネル支え部材50は、後方に向かうに従い車幅方向(例えば、車幅方向の内側)に傾斜して延びていてもよい。
【0029】
リアパネル支え部材50の前端部は、ダンパベース24bに接合されている。本実施形態において、リアパネル支え部材50の前端縁は、ダンパベース24bのうち、頂壁部35と後側部36aとの稜線部55(図2参照)を跨った状態で頂壁部35及び後側部36aに接合されている。したがって、リアパネル支え部材50の前端部は、後輪の上端部と同等の高さ、若しくは後輪よりも上方に位置している。
一方、リアパネル支え部材50の後端縁は、リアピラー43に接合されている。リアピラー43の内部のうち、リアパネル支え部材50との接続箇所と正面視で重なる位置には、バルクヘッド等の補強部材(不図示)が設けられていることが好ましい。なお、リアパネル支え部材50は、ブラケット等を介してダンパベース24bやリアピラー43に接合されていてもよい。
【0030】
車幅方向において、リアパネル支え部材50は、リアサイドパネル25とリアサイドフレーム21との間に配置されている。したがって、リアパネル支え部材50は、リアサイドパネル25の内面から離間して設けられている。なお、リアパネル支え部材50の少なくとも一部は、平面視において、リアサイドフレーム21と重なり合っていてもよい。
【0031】
次に、図3図4を用いて車両後部構造10の作用について説明する。図3図4は、車両後部構造10を側面から見た概略図である。以下の説明では、車両1のうちパネル支え部材50のよりも下方に位置する部分(例えば、閉断面部48を含むリアパネル26の下部領域)に対して、車両1の後方からバリア100が衝突した際の作用について説明する。
図3図4に示すように、後突時において、バリア100がリアパネル26の下部領域に対して車両1の後方から衝突すると、車両後部構造10に対して前方に向けた衝突荷重F1が加わる。衝突荷重F1の一部は、アンダーパネル41等を伝ってリアサイドフレーム21に伝達される。これにより、リアサイドフレーム21が前方に向けて圧縮変形することで、衝突荷重F1が緩和される。一方、衝突荷重F1の一部は、リアピラー43を伝ってリアパネル支え部材50に伝達された後、リアホイールハウス24に伝達される過程で徐々に緩和される。
【0032】
ここで、リアパネル26の下部領域に対して衝突荷重F1が入力された場合には、リアサイドフレーム21及びリアパネル支え部材50のうち、リアサイドフレーム21のみが変形することになる。これにより、リアパネル26の下部領域が、リアパネル支え部材50を起点に前方に変位する。この際、リアパネル26の下部領域に張力(引張荷重)が発生することで、衝突荷重F1が緩和される。
【0033】
本実施形態の車両後部構造10では、リアパネルセンタメンバ42の上方において、前後方向に延びるとともに、リアピラー43及びリアホイールハウス24間を架け渡すリアパネル支え部材50を備える構成とした。
この構成によれば、後突時において、車両1の後方から入力される衝突荷重が、リアパネル26を介してリアサイドフレーム21及びリアパネル支え部材50の双方に伝達される。これにより、衝突荷重F1を分散することができ、衝突荷重F1を効果的に緩和することができる。
しかも、本実施形態では、リアパネルセンタメンバ42とパネル支え部材50とがリアピラー43を介して接続されているため、衝突荷重F1の入力時にはリアパネル26の下部領域がリアパネル支え部材50を起点に前方に変位する。その結果、リアパネル26の下部領域に発生する張力によって衝突荷重F1を緩和できる。この際、リアパネル支え部材50自体の変形を抑制し、衝突対象物の車両1への進入量を軽減した上で、衝撃荷重F1を緩和できる。このように、本実施形態では、後突時において、リアパネル支え部材50を起点としてリアパネル26の下部領域を変位させるので、リアパネル支え部材50を比較的上方に配置して、リアパネル26の下部領域に対して入力される衝突荷重F1に対して同等の挙動によって衝突荷重F1を緩和することができる。よって、上下方向の広範囲で同等の衝突安全性を確保し易い。
【0034】
本実施形態の車両後部構造10において、リアパネル支え部材50の前端部は、ダンパベース24bに接続されている構成とした。
この構成によれば、ホイールハウス本体24aを補強するダンパベース24bにリアパネル支え部材50の前端部が接続されていることで、リアパネル支え部材50を前方から強固に支持できる。これにより、衝突荷重F1が入力された際にリアパネル支え部材50自体が前方に変位することを抑制できる。その結果、リアパネル26の下部領域を効果的に変位させることができ、リアパネル26の下部領域に発生する張力によって衝突荷重F1を緩和し易い。
【0035】
本実施形態の車両後部構造10において、リアパネル支え部材50の前端部は、ダンパベース24bのうち頂壁部35と後側部36aとの稜線部55を跨って接続される構成とした。
この構成によれば、リアパネル支え部材50の接続箇所における剛性を確保し易いので、衝突荷重F1が入力された際にリアパネル支え部材50自体が前方に変位することをより確実に抑制できる。
【0036】
本実施形態の車両後部構造10において、リアピラー43の内部のうち、リアパネル支え部材50との接続箇所と正面視で重なる位置に、補強部材が設けられている構成とした。
この構成によれば、リアピラー43の強度を確保し易くなるので、衝突荷重F1が入力された際にリアピラー43のうちリアパネル支え部材50との接続箇所が破断することを抑制できる。これにより、リアパネル26の下部領域を効果的に変位させることができ、リアパネル26の下部領域に発生する張力によって衝突荷重F1を緩和し易い。
【0037】
本実施形態の車両後部構造10において、リアパネル支え部材50は、後方に向かうに従い下方に向けて直線状に延びている構成とした。
この構成によれば、衝突荷重の入力時において、リアパネル26の下部領域がリアパネル支え部材50を起点に前方に変位し易い。これにより、リアパネル26の下部領域に発生する張力によって衝突荷重F1を効率的に緩和できる。
【0038】
本実施形態の車両後部構造10において、リアパネル支え部材50は、一対のリアピラー43とダンパベース24bとの間をそれぞれ架け渡している構成とした。
この構成によれば、車両1の荷室開口部2の開口面積を確保しつつ、衝突安全性を向上させることができる。
【0039】
[その他の変形例]
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明はこれら実施例に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
例えば、上述した実施形態では、前方接続部としてダンパベース24bを例にした場合について説明したが、この構成に限られない。前方接続部は、例えばホイールハウス本体24aやリアシート、センタピラー、ルーフ等であってもよい。
上述した実施形態では、後方接続部としてリアピラー43を例にした場合について説明したが、この構成に限られない。後方接続部は、リアパネルセンタメンバ42から上方に連なり、パネル支え部材50の後端部がリアパネルセンタメンバ42の上方で接続される構成であればよい。
【0040】
上述した実施形態では、リアパネル支え部材50が車幅方向の両側部に一対で設けられた構成について説明したが、この構成に限られない。リアパネル支え部材50は、1つや3つ以上の複数設けられていてもよい。
【0041】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1:車両
2:荷室開口部
10:車両後部構造
24:リアホイールハウス(前方接続部)
24a:ホイールハウス本体
24b:ダンパベース(ダンパ荷重受部)
26:リアパネル(後方接続部)
35:頂壁部
36:コーナ部
42:リアパネルセンタメンバ
43:リアピラー
50:リアパネル支え部材
55:稜線部
図1
図2
図3
図4