(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011291
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】試験用シート、試験用シートの製造方法および計測方法
(51)【国際特許分類】
G01L 1/00 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
G01L1/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113176
(22)【出願日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金丸 訓明
(57)【要約】
【課題】対象物に生じる応力に対して高い感度を有する応力発光膜を、対象物の表面に容易に形成するための技術を提供する。
【解決手段】
試験用シート10は、剥離基板1と、剥離基板1上に形成された粘着層2と、粘着層2上に形成された、応力発光材料を含む応力発光層3と、少なくとも応力発光層3上に配置された転写膜4とを備える。試験用シート10を対象物に貼付する工程は、剥離基板1を剥離して、粘着層2を露出させる工程と、粘着層2の露出面を、対象物の表面に接着する工程と、転写膜4を除去して、応力発光層3を対象物に転写する工程とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に貼付される試験用シートであって、
剥離基板と、
前記剥離基板上に形成された粘着層と、
前記粘着層上に形成された、応力発光材料を含む応力発光層と、
少なくとも前記応力発光層上に配置された転写膜とを備える、試験用シート。
【請求項2】
前記応力発光層は、前記粘着層に直接的に接して形成される、請求項1に記載の試験用シート。
【請求項3】
前記粘着層は、10μm以上35μm以下の厚みを有する、請求項1または2に記載の試験用シート。
【請求項4】
前記試験用シートの平面視において、前記応力発光層は、前記粘着層と重なっている、請求項1または2に記載の試験用シート。
【請求項5】
前記応力発光層は、10μm以下の厚みを有する、請求項1または2に記載の試験用シート。
【請求項6】
前記応力発光材料は、単斜晶系の粒子を有し、平均粒子径が100~900nmである、請求項5に記載の試験用シート。
【請求項7】
前記応力発光層と前記転写膜との間の密着強度は、前記剥離基板と前記粘着層との間の密着強度よりも大きい、請求項1または2に記載の試験用シート。
【請求項8】
剥離層上に粘着層を形成する工程と、
前記粘着層上に、応力発光材料を含む応力発光層を形成する工程と、
少なくとも前記応力発光層上に、転写膜を配置する工程とを備える、試験用シートの製造方法。
【請求項9】
前記応力発光層を形成する工程は、
前記粘着層上に、前記応力発光材料と溶媒との混合物をスクリーン印刷法により印刷する工程を含む、請求項8に記載の試験用シートの製造方法。
【請求項10】
前記応力発光層を形成する工程は、
単斜晶系の粒子を有する前記応力発光材料を細粒化する工程と、
細粒化された前記応力発光材料と前記溶媒とを混合する工程とをさらに含む、請求項9に記載の試験用シートの製造方法。
【請求項11】
対象物に生じる応力を計測する方法であって、
前記対象物に、応力発光層を有する試験用シートを貼付する工程と、
前記試験用シートに励起光を照射して前記応力発光層を励起する工程と、
前記対象物に荷重を加える工程と、
前記荷重が加えられているときの前記応力発光層を撮影する工程と、
撮影された前記応力発光層の発光画像に基づいて、前記対象物に生じる応力を計測する工程とを備え、
前記試験用シートは、
剥離基板と、
前記剥離基板上に形成された粘着層と、
前記粘着層上に形成された、応力発光材料を含む応力発光層と、
少なくとも前記応力発光層上に配置された転写膜とを含み、
前記試験用シートを貼付する工程は、
前記剥離基板を剥離して、前記粘着層を露出させる工程と、
前記粘着層の露出面を、前記対象物の表面に接着する工程と、
前記転写膜を除去して、前記応力発光層を前記対象物に転写する工程とを含む、計測方法。
【請求項12】
前記接着する工程は、前記転写膜を介して前記粘着層を押圧する工程を含む、請求項11に記載の計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、試験用シートおよびその製造方法、ならびに試験用シートを用いた計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開2015-75477号公報(特許文献1)には、対象物の表面に形成された応力発光膜の発光現象を利用して、対象物の欠陥を検知する応力発光評価装置が開示されている。対象物に荷重がかかると、対象物の変形に応じて応力発光膜も変形するため、応力発光膜が発光する。応力発光膜の発光強度に基づいて、対象物に生じる応力を計測することができる。
【0003】
対象物に生じる微小な応力の変化を確実に捉えるためには、応力発光膜の厚みが薄く、かつ、均一であることが求められる。これは、応力発光膜の厚みが厚くなるに従って、強い応力発光が得られる一方で、当該応力発光が応力発光膜に発生する応力由来のものとなってしまい、対象物に生じる応力に対する感度が低下する虞があるためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
応力発光膜に含有される応力発光材料はそれ自体では接着能を持たない。そのため、特許文献1では、応力発光材料を樹脂材料に分散させた塗料を、対象物に塗布し、乾燥させることによって、対象物の表面に応力発光膜を形成している。応力発光膜を形成する方法としては、スプレー法やスクリーン印刷等を用いることができる。
【0006】
しかしながら、応力発光材料を含有する塗料を対象物に塗布する手法では、対象物の形状や大きさによっては、厚みが薄くかつ均一な応力発光膜を形成するために、高度な技術を要することが懸念される。特に、対象物の複数箇所に応力発光膜を形成する場合には、複数箇所の間で応力発光膜の厚みを等しくすることが必要となるため、技術難度をさらに上昇させる可能性が懸念される。また、計測のたびに塗料を対象物に塗布する作業が必要となるため、計測に手間がかかるという問題がある。
【0007】
本開示はこのような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、対象物に生じる応力に対して高い感度を有する応力発光膜を、対象物の表面に容易に形成するための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1の態様に係る試験用シートは、対象物に貼付される。試験用シートは、剥離基板と、剥離基板上に形成された粘着層と、粘着層上に形成された、応力発光材料を含む応力発光層と、少なくとも応力発光層上に配置された転写膜とを備える。
【0009】
本開示の第2の態様に係る試験用シートの製造方法は、剥離層上に粘着層を形成する工程と、粘着層上に、応力発光材料を含む応力発光層を形成する工程と、少なくとも応力発光層上に、転写膜を配置する工程とを備える。
【0010】
本開示の第3の態様に係る計測方法は、対象物に生じる応力を計測する方法であって、対象物に、応力発光層を有する試験用シートを貼付する工程と、試験用シートに励起光を照射して応力発光層を励起する工程と、対象物に荷重を加える工程と、荷重が加えられているときの応力発光層を撮影する工程と、撮影された応力発光層の発光画像に基づいて、対象物に生じる応力を計測する工程とを備える。試験用シートは、剥離基板と、剥離基板上に形成された粘着層と、粘着層上に形成された、応力発光材料を含む応力発光層と、少なくとも応力発光層上に配置された転写膜とを含む。試験用シートを貼付する工程は、剥離基板を剥離して、粘着層を露出させる工程と、粘着層の露出面を対象物の表面に接着する工程と、転写膜を除去して、応力発光層を対象物に転写する工程とを含む。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、対象物に生じる応力に対して高い感度を有する応力発光膜を、対象物の表面に容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施の形態に係る試験用シートの厚み方向における断面を示す概略断面図である。
【
図2】試験用シートの製造方法を説明するフローチャートである。
【
図3】試験用シートの製造方法を説明する断面図である。
【
図4】応力発光層を形成する工程(
図2のS30)の処理手順の一例を説明するフローチャートである。
【
図5】本実施の形態に係る計測方法を説明するフローチャートである。
【
図7】試験用シートを対象物に貼付する工程(
図5のS50)の処理手順を説明するフローチャートである。
【
図8】試験用シートを対象物に貼付する工程(
図5のS50)を説明する断面図である。
【
図9】本実施の形態に係る計測方法に用いられる計測装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0014】
<試験用シートの構成>
最初に、
図1を参照して、本実施の形態に係る試験用シートの構成例を説明する。
【0015】
図1は、本実施の形態に係る試験用シート10の厚み方向における断面を示す概略断面図である。試験用シート10は、対象物(図示せず)に貼付されて、対象物に荷重を加えたときに対象物に生じる応力を計測するために使用される。
【0016】
図1に示すように、試験用シート10は、剥離基板1と、粘着層2と、応力発光層3と、転写膜4とを備える。粘着層2は、剥離基板1上に形成される。応力発光層3は、粘着層2上に形成される。転写膜4は、少なくとも応力発光層3上に配置される。
図1の例では、転写膜4は、応力発光層3および剥離基板1上に配置されている。
【0017】
なお、本明細書において「第1の層上に形成された第2の層」との記載は、第1の層と第2の層との間に位置関係として広義に解釈されてもよい。すなわち、当該記載は、第1の層および第2の層が、試験用シート10の厚み方向において、少なくとも互いの一部が重なるように配置されていることを含み得る。また、当該記載は、第1の層と第2の層との間の少なくとも一部に、他の物質が配置されることを含み得る。さらには、当該記載は、第1の層と第2の層との間に、第3の層が配置されることも含み得る。
【0018】
(剥離基板1)
剥離基板1は、粘着層2および応力発光層3を支持することができる。剥離基板1は、その表面が剥離可能な程度の接着力を有しており、粘着層2および転写膜4に対して剥離可能に構成されている。
【0019】
剥離基板1は、可撓性を有するフィルムであることができる。剥離基板1としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンアフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオフィレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、プリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂等からなるフィルムであることができる。
【0020】
(粘着層2)
粘着層2は、剥離基板1が剥離された状態の試験用シート10を対象物に貼付するときに、試験用シート10と対象物とを接合する層である。好ましくは、粘着層2は、剥離基板1に直接的に接して形成される。
【0021】
粘着層2の厚みは、10μm以上35μm以下であることが好ましく、5μm以上25μm以下であることがより好ましい。なお、本明細書において「厚み」とは、試験用シート10の表面に垂直な方向における寸法をいう。
【0022】
粘着層2は、試験用シート10を対象物に接着させるあらゆる材料によって構成され得る。粘着層2は、例えば、アクリル系粘着剤、または、ポリウレタン系粘着剤等を含有することができる。
【0023】
(応力発光層3)
応力発光層3は、応力発光材料を含有する。応力発光材料とは、外部から加えられた力(引張、圧縮、変位、摩擦、衝撃等)の機械的な刺激によって発光する材料である。応力発光材料は、無機結晶(母材)の骨格中に発光中心となる元素を固溶したものであり、代表的なものに、ユーロピウムをドープしたアルミン酸ストロンチウムがある。その他、遷移金属または希土類をドープした硫化亜鉛、チタン酸バリウム・カルシウム、アルミン酸カルシウム・イットリウム等がある。本実施の形態では、応力発光材料は公知のものを用いることができる。
【0024】
応力発光層3の発光強度は、加えられる力の大きさに比例して増加する。応力発光層3は粘着層2を介して対象物に接合されているため、応力発光層3と対象物とは等しく変形する。したがって、変形により対象物に生じる応力を、応力発光層3の発光によって画像化(可視化)することができる。
【0025】
試験用シート10の平面視において、応力発光層3は、粘着層2と重なっていることが好ましい。このようにすると、試験用シート10を対象物に貼付するときに、粘着層2を用いて、応力発光層3全体を対象物に接着させることができる。対象物に生じる応力を応力発光層3全体に伝搬させることで、対象物の表面に生じる応力の分布を反映した発光パターンを出現させることができる。
【0026】
好ましくは、応力発光層3は、粘着層2に直接的に接して形成される。応力発光層3の厚みは、10μm以下であることが好ましく、3μm以上7μm以下であることがより好ましい。
【0027】
応力発光層3を粘着層2に直接的に接して形成することで、試験用シート10を対象物に貼付したときに、対象物と応力発光層3との間隔を、粘着層2の厚み相当まで縮めることができる。対象物と応力発光層3との間隔を縮めることによって、対象物に生じる微小な応力も応力発光層3に伝搬することができるため、対象物の表面に生じる微小な応力の変化を画像化することが可能となる。
【0028】
また、応力発光層3の厚みを厚くするに従って、応力発光層3に蓄積されるエネルギー量が増えるため、強い発光が観察される一方で、対象物の表面に生じる微小な応力の変化を捉えにくくなる。その要因として、応力発光層3の厚みが厚くなると、計測対象に力を加えたときの発光が応力発光層3に発生する応力由来のものとなることがある。また、応力発光層3の厚みが厚くなることで、応力発光層3が対象物に加えられる力を抑制する可能性も懸念される。
【0029】
応力発光層3の厚みを10μm以下とすることで、対象物の表面に生じる微小な応力の変化を応力発光で画像化することができる。これは、応力発光層3の厚みを薄くしても膜厚比に依存しない応力発光量を保っていることによる。さらに、応力発光層3の厚みが薄くなるに従って、発光特性においてベースラインとなる残光量が小さくなるため、全発光強度に占める応力発光量の比率が高くなり、結果的に発光強度のコントラストが高められることによる。
【0030】
(転写膜4)
転写膜4は、試験用シート10を対象物に転写するときに、試験用シート10から除去される膜である。転写膜4は、応力発光層3に対して剥離可能に構成されている。
【0031】
転写膜4は、可撓性を有する薄膜のフィルムであることができる。転写膜4としては、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエステル等からなるフィルムであることができる。
【0032】
転写膜4と応力発光層3との間の密着強度は、粘着層2と剥離基板1との間の密着強度よりも大きくすることができる。これによると、試験用シート10から剥離基板1を剥離したときに、転写膜4が応力発光層3から剥離するのを抑制できる。
【0033】
<試験用シートの製造方法>
次に、試験用シート10の製造方法について説明する。
【0034】
図2は、試験用シート10の製造方法を説明するフローチャートである。
図3は、試験用シート10の製造方法を説明する断面図である。
【0035】
図2に示すように、試験用シート10の製造方法は、剥離基板1を準備する工程(S10)、粘着層2を形成する工程(S20)、応力発光層3を形成する工程(S30)、および、転写膜4を配置する工程(S40)を主に有している。
【0036】
まず、剥離基板1を準備する工程(S10)が実施される。剥離基板1は、可撓性を有するフィルムであり、
図3(a)に示すように、第1面1aと、第1面1aと反対の第2面1bとを有している。
【0037】
次に、粘着層2を形成する工程(S20)が実施される。この工程(S20)では、
図3(b)に示すように、剥離基板1の第1面1a上に粘着層2が形成される。粘着層2は、剥離基板1の第1面1aに対向する第1面2bと、第1面と反対の第2面2aとを有している。
【0038】
粘着層2を形成する方法には、アクリル系粘着剤、または、ポリウレタン系粘着剤等を含有する塗料を剥離基板1の第1面1aに塗布することにより、第1面1aに粘着層2を印刷する方法等を採用することができる。粘着層2の印刷には、例えば、スクリーン印刷またはインクジェット印刷等を用いることができる。
【0039】
次に、応力発光層3を形成する工程(S30)が実施される。この工程(S30)では、
図3(c)に示すように、粘着層2の第2面2a上に応力発光層3が形成される。
【0040】
応力発光層3を形成する方法には、応力発光材料を含有する塗料を粘着層2の第2面2aに塗布することにより、第2面2aに応力発光層3を印刷する方法等を採用することができる。応力発光層3の印刷には、例えば、スクリーン印刷またはインクジェット印刷等を用いることができる。
【0041】
図4は、応力発光層3を形成する工程(
図2のS30)の処理手順の一例を説明するフローチャートである。
【0042】
図4に示すように、応力発光層3を形成する工程(S30)は、応力発光材料を細粒化する工程(S31)、応力発光材料と溶媒とを混合する工程(S32)、スクリーン板に塗料を充填する工程(S33)、塗料を粘着層2に転写する工程(S34)、スクリーン板を隔離する工程(S35)、および、応力発光層3を乾燥する工程(S36)を主に有している。
【0043】
まず、応力発光材料を細粒化する工程(S31)が実施される。応力発光材料は、粉末状であり、ミクロンオーダーの粒子径を有するセラミック粒子から構成されている。最近では、2~3μm程度の粒子径を有する応力発光粒子の合成が行われている。しかしながら、合成される応力発光粒子の粒子径が小さくなるに従って、粒子同士が凝集しやすくなるという課題がある。応力発光粒子が凝集体を形成することによって、応力発光体中に応力発光粒子を均一に分散させることが困難となるため、応力発光体の発光強度に基づいた測定に影響を及ぼすことが懸念される。
【0044】
工程(S31)では、合成された応力発光粒子を粉砕することにより、粒子径の小さい応力発光材料を生成する。これは、単斜晶を有する粒子を粉砕しても、その結晶構造が変化しないために応力発光能が損なわれることなく、かつ、粉砕後の粒子同士の凝集を抑制することができるという本発明者らの知見に基づいている。この工程(S31)では、例えば、2~10μm程度の粒子径を有する応力発光粒子を粉砕することにより、1.3~4μm程度の粒子径を有する応力発光材料を生成する。
【0045】
応力発光材料の粉砕は、公知の粉砕装置を用いて行うことができる。ただし、応力発光材料は耐水性が低く、かつ、加熱により変質して応力発光能が低下する可能性がある。そのため、粒子同士を高速で衝突させて粉砕することができる粉砕装置を用いることが好ましい。粉砕の条件は特に限定されることなく、粉砕前の応力発光材料の粒子径および粒度分布などを考慮して設定すればよい。
【0046】
次に、粉砕後の応力発光材料と溶媒とを混合する工程(S32)により、塗料が生成される。この工程(S32)では、応力発光材料を溶媒に分散させたスラリー状態で解砕することにより、応力発光材料と溶媒とを混合する。溶媒は、被膜形成性樹脂を含有する。溶媒には、必要に応じて、溶剤、分散剤、充填剤、および増粘剤などの塗料添加剤を含有させることができる。解砕の方法は特に限定されないが、例えば、ローラミルまたはボールミルなどを用いることができる。
【0047】
塗料における応力発光材料の含有量は、適宜調整することができる。例えば、被膜形成性樹脂を主成分とする溶媒に対して、応力発光材料を150PHR(溶媒100部に対して応力発光材料150部、すなわち60重量%)とすることができる。
【0048】
塗料における応力発光材料の配合率は20重量%以上が好ましく、40重量%以上がより好ましく、50重量%以上がさらにより好ましい。応力発光材料の配合率が20重量%未満になると、応力発光材料の粒子の粒間隔が大きくなり、応力発光層3に伝搬された応力が溶媒中に逃げてしまうため、応力発光能が低下することが懸念される。
【0049】
次に、スクリーン板に塗料を充填する工程(S33)が実施される。この工程(S33)では、粘着層2の表面に接触してスクリーン板を配置した状態で、スクリーン板に塗料が供給される。スクリーン板は、二次元の網目状の構造を有しており、複数の貫通孔がマトリクス状に形成されている。各貫通孔の大きさ、および隣接する貫通孔の間隔は、応力発光層3の厚みに応じて設定することができる。
【0050】
この状態で、平板形状のスキージの下端部をスクリーン板に当接させて、スクリーン板上を水平方向にスキージを移動させることにより、スクリーン板の各貫通孔に塗料が充填される。塗料を粘着層2に転写する工程(S34)では、この状態でスキージをさらに水平方向に繰り返し移動させることにより、各貫通孔に充填された塗料が粘着層2の表面に転写される。スクリーン板を隔離する工程(S35)では、スクリーン板を粘着層2の表面から隔離させる。塗料がスクリーン板から除去されて粘着層2の表面上に転写される。これにより、粘着層2の表面に応力発光塗膜が形成される。
【0051】
次に、応力発光層3を乾燥する工程(S36)が実施される。この工程(S36)では、乾燥によって溶媒中の溶剤および水分が蒸発することにより、応力発光塗膜が硬化する。その結果、粘着層2上に応力発光層3が形成される。なお、乾燥後の応力発光層3の膜厚は、スクリーン板の厚みおよび、塗料の沸点および粘度を変更することによって調整することができる。
【0052】
図2に戻って、次に、転写膜4を配置する工程(S40)が実施される。この工程(S40)では、少なくとも応力発光層3の第2面3a上に転写膜4が配置される。
図3(d)に示すように、応力発光層3の第2面3aおよび剥離基板1の第1面1a上に転写膜4を配置することができる。
【0053】
なお、
図2および
図3では、剥離基板1上に、粘着層2、応力発光層3および転写膜4を順番に形成する処理手順について説明したが、転写膜4上に、応力発光層3、粘着層2および剥離基板1を順番に形成する処理手順とすることもできる。
【0054】
<計測方法>
次に、本実施の形態に係る試験用シート10を使用して対象物に生じる応力を計測する方法について説明する。
【0055】
図5は、本実施の形態に係る計測方法を説明するフローチャートである。
図5に示すように、本実施の形態に係る計測方法は、試験用シート10を対象物に貼付する工程(S50)、励起光を照射する工程(S60)、消光する工程(S70)、荷重を付与する工程(S80)、応力発光を撮影する工程(S90)、および応力を算出する工程(S100)とを主に有している。
【0056】
最初に、試験用シート10を対象物に貼付する工程(S50)が実施される。
図6は、対象物の一例を模式的に示す図である。対象物20には、例えば、日本工業規格(JIS)Z-2201「金属材料引張試験片」に規定されているものを使用することができる。本実施の形態では、荷重(引張荷重)による破断に至るまでのひずみを対象物20に与えることにより、金属材料の機械的性質を計測する。
【0057】
図6の例では、対象物20は、JIS13B号の板状試験片であり、全長L=220mm、標点間距離Lo=50mm、平行部の長さLc=75m、幅W=25mm、平行部の幅D=12.5±0.04mm、肩部の半径R=25mm、板厚t=1mmである。
【0058】
対象物20の表面の所定領域には、試験用シート10が貼付される。所定領域は、対象物20の平行部を覆うように位置しており、幅80mm、長さ12.5mmの矩形形状を有している。
【0059】
図7は、試験用シート10を対象物に貼付する工程(
図5のS50)の処理手順を説明するフローチャートである。
図8は、試験用シート10を対象物に貼付する工程(
図5のS50)を説明する断面図である。
【0060】
図7に示すように、試験用シート10を対象物に貼付する工程(S50)は、剥離基板1を剥離する工程(S51)、粘着層2を対象物に接着する工程(S52)、および転写膜4を除去する工程(S53)を主に有している。
【0061】
最初に、剥離基板1を剥離する工程(S51)が実施される。この工程(S51)では、
図8(a)に示す試験用シート10から剥離基板1が剥離される。これにより、
図8(b)に示すように、粘着層2の第1面2bが露出する。なお、転写膜4と応力発光層3との間の密着強度は、粘着層2と剥離基板1との間の密着強度よりも大きいため、試験用シート10から剥離基板1を剥離したときに、転写膜4が応力発光層3から剥離することがない。
【0062】
次に、粘着層2を対象物に接着する工程(S52)が実施される。この工程(S52)では、
図8(c)に示すように、粘着層2が露出した試験用シート10が対象物20の表面に貼付(転写)される。対象物20は、試験用シート10が転写される被転写体である。この工程(S52)では、ヘラ等により転写膜4の表面4aを押圧することにより、対象物20の表面に粘着層2を均一に密着させてもよい。
【0063】
次に、転写膜4を除去する工程(S53)が実施される。この工程(S53)では、
図8(d)に示すように、対象物20に貼付(転写)された試験用シート10から転写膜4が剥離される。転写膜4を剥離することにより、応力発光層3の第2面3aが露出する。なお、粘着層2の第1面2bと対象物20の表面とは強固に接合されているため、試験用シート10から転写膜4を除去したときに、試験用シート10が対象物20から剥離することはない。
【0064】
以上の手順によって対象物20に試験用シート10が貼付される。試験用シート10から剥離基板1および転写膜4が剥離されることによって、試験用シート10は、最終的に、粘着層2および応力発光層3により構成される(
図8(d)参照)。すなわち、応力発光層3が、対象物20の表面に粘着層2を介して接合された状態となる。この状態で、応力発光層3の発光現象を利用して、対象物20に荷重を付与したときに対象物20に生じる応力が計測される。応力の計測には、
図9に示すような計測装置100を用いることができる。
【0065】
図9は、本実施の形態に係る計測方法に用いられる計測装置100の構成例を示す図である。計測装置100は、対象物20に引張荷重を付与したときの応力を計測するために用いることができる。
【0066】
図9に示すように、計測装置100は、引張試験機40、制御装置60、撮影装置70、光源30、駆動装置32、制御装置80、および記憶装置90を含んで構成される。計測装置100のうち少なくとも引張試験機40、撮影装置70および光源30は、暗室内に設置される。
【0067】
引張試験機40は、対象物20に引張荷重を加えて、対象物20の引張強度、降伏点、伸び、絞りなどの機械的性質を計測するための装置である。例えば、引張試験機40には、精密万能試験機(製品名:オートグラフAG-Xplus、株式会社島津製作所製)が用いられる。
【0068】
引張試験機40は、テーブル41、クロスヘッド42、一対のねじ棹44,46、上掴み具48、下掴み具50、およびロードセル52を有する。一対のねじ棹44,46は、テーブル41の上に鉛直方向を向く状態で回転可能に立設されている。一対のねじ棹44,46は、ボールねじからなる。
【0069】
クロスヘッド42は、図示しないナットを介して各ねじ棹44,46に連結されている。クロスヘッド42は、一対のねじ棹44,46に沿って鉛直方向に移動可能に構成されている。テーブル41内には、クロスヘッド42を昇降させるための負荷機構(図示せず)が搭載されている。
【0070】
上掴み具48は、クロスヘッド42に接続されており、対象物20の上端部を把持する。下掴み具50は、テーブル41に接続されており、対象物20の下端部を把持する。上掴み具48と下掴み具50との間隔L1=120mmである。引張試験機40は、引張試験の際、対象物20の両端部を上掴み具48および下掴み具50により把持した状態で、制御装置60の制御に従って、クロスヘッド42を上昇させることにより、対象物20に引張力を加える。
【0071】
ロードセル52は、対象物20に与えられた引張荷重である試験力を検出するためのセンサである。ロードセル52は、検出された試験力を示す信号を制御装置60に出力する。
【0072】
制御装置60は、引張試験機40と通信接続され、引張試験機40による引張動作を制御する。制御装置60は、引張試験の試験条件を含む各種パラメータの設定操作および実行指示操作などのユーザ操作を受け付け、その受け付けたユーザ操作に従って負荷機構を制御する。制御装置60はさらに、引張試験機40からロードセル52の出力信号およびクロスヘッド42の変位量を示す信号を含む各種信号を受信し、試験力の検出値などのデータを解析する。
【0073】
制御装置60は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサと、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などのメモリと、周辺機器を接続するためのインターフェイス回路と、表示部62とを有する。プロセッサがメモリに記憶された引張試験プログラムを実行することにより、上述した各種機能が実現される。
【0074】
表示部62は、制御装置60に入力される信号に基づいて各種情報を表示する。例えば、表示部62は、引張試験の実行中、ロードセル52により検出される試験力を表示する。また表示部は、クロスヘッド42の変位(ストローク)を示す変位量を表示する。
【0075】
光源30は、対象物20に対向して配置されており、対象物20上の試験用シート10に対して励起光を照射するように構成される。光源30は、例えば、青色LED(Light Emitting Diode)である。光源30から照射される励起光を受けて、試験用シート10の応力発光層3は励起状態に遷移する。光源30の数は限定されない。
【0076】
駆動装置32は、光源30を駆動するための電力を供給するとともに、光源30のオン/オフを制御する。駆動装置32は、光源30から照射される励起光の光量および励起光の照射時間などを制御することができる。
【0077】
撮影装置70は、対象物20の少なくとも所定領域を撮影視野に含むように配置される。撮影装置70は、レンズなどの光学系および撮像素子を含む。撮像素子は、光学系を介して対象物20から入射される光を電気信号に変換することによって撮影画像を生成する。
【0078】
制御装置80は、撮影装置70による撮影動作および駆動装置32による光源30の駆動を制御する。制御装置80は、引張試験機40の制御装置60と通信線15により接続されている。制御装置80は、通信線15を介して制御装置60との間でデータを遣り取りすることにより、引張試験機40、撮影装置70および光源30を統括的に制御することができる。制御装置80および制御装置60間の通信は、無線通信で実現されてもよい。なお、本実施の形態では、光源30および撮影装置70の制御装置80と、引張試験機40の制御装置60とが別体に設けられているが、制御装置80および制御装置60が一体であってもよい。
【0079】
制御装置80は、CPUなどのプロセッサと、ROMおよびRAM等のメモリと、周辺機器を接続するためのインターフェイス回路と、表示部82とを有する。表示部82は、制御装置80に入力される信号に基づいて各種情報を表示する。例えば、表示部82は、制御装置60から通信線15を介して入力されるデータ(ロードセル52により検出される試験力、およびクロスヘッド42の変位(ストローク)を示す変位量など)を表示することができる。また、表示部82は、撮影装置70によって撮影された応力発光層3の画像(発光画像)を表示することができる。表示部82は、撮影装置70によって撮影された発光画像をリアルタイムに表示することができる。
【0080】
記憶装置90は、不揮発性の記憶装置であって、制御装置80のCPUにより実行される応力計測プログラム、制御装置80と制御装置60との間で遣り取りされるデータ、および、撮影装置70によって撮影された画像データを格納する。
【0081】
図5に戻って、応力を計測するにあたり、最初に、励起光を照射する工程(S60)が実施される。この工程(S60)では、対象物20の表面に対して、光源30から励起光が照射される。対象物20の所定領域(平行部)に貼付された試験用シート10に励起光を照射することにより、応力発光層3が励起状態とされる。
【0082】
次に、消光する工程(S70)が実施される。この工程(S70)では、光源30を停止させ、励起後の応力発光層3の発光強度が安定化するまで待機する。
【0083】
次に、荷重を付与する工程(S80)が実施される。この工程(S80)では、引張試験機40を駆動することにより、対象物20に引張荷重が加えられる。引張試験の条件として、引張速度および最大荷重が設定される。
【0084】
次に、応力発光を撮影する工程(S90)が実施される。この工程(S90)では、撮影装置70より、対象物20の所定領域が撮影される。すなわち、撮影装置70により応力発光層3の発光が撮影される。撮影装置70には、例えば、産業用カメラを用いており、フレームレートを1fpsに設定して応力発光層3の撮影が行われる。
【0085】
次に、応力を算出する工程(S100)が実施される。この工程(S100)では、応力発光を撮影する工程(S90)において撮影装置70により撮影された発光画像を用いて、対象物20に生じる応力が計測される。
【0086】
具体的には、撮影装置70によって撮影された画像データ(動画像データ)がフレーム単位で切り出される。そして、1フレームの発光画像について、ROI(Region Of Interest)内の発光強度が算出される。この取得されたROI内の発光強度の算出値と、記憶装置90に予め格納されている検量線データ(発光強度と応力との関係を示す関数)とを用いて、ROIに生じる応力が算出される。
【0087】
なお、対象物20の表面に複数のROIが設定されている場合には、各ROI内に生じる応力が算出される。そして、各ROIの位置情報と応力の算出値とに基づいて、対象物20の表面における応力分布が算出される。
【0088】
1フレームの発光画像に対し、ROI内の応力の算出値が紐付けられて記憶装置90に保存される。すなわち、記憶装置90には、1フレームの発光画像が得られたタイミングにおいて、引張荷重によって対象物20に生じる応力を示すデータが保存される。各タイミングのデータを得られた順序に従って観察することにより、引張荷重による応力の時間的変化を評価することができる。
【0089】
なお、上述した計測方法では、対象物20の一箇所に試験用シート10を貼付する構成例(
図6参照)について説明したが、対象物20の複数箇所に試験用シート10を貼付する構成とすることも可能である。この場合には、複数の試験用シート10に同時に励起光を照射した後に、対象物20に荷重を付与しながら、複数の試験用シート10の応力発光が撮影される。各試験用シート10における応力発光層3の発光強度に基づいて、対象物20の複数箇所における応力分布を取得することができる。
【0090】
このように対象物20の複数箇所に試験用シート10を貼付する構成によれば、当該複数箇所に応力発光材料を含有する塗料を塗布して応力発光膜を形成する構成と比較して、均一性の高い応力発光膜を容易に形成することができる。対象物20の形状によっては、複数箇所の間で応力発光膜の厚みが互いに等しくなるように塗料を塗布するのに高い技術が求められる場合がある。一方、本実施の形態では、複数箇所の各々に試験用シート10を貼付することで、複数箇所における応力発光膜の厚みを容易に揃えることができる。
【0091】
[態様]
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0092】
(第1項)一態様に係る試験用シートは、対象物に貼付される。試験用シートは、剥離基板と、剥離基板上に形成された粘着層と、粘着層上に形成された、応力発光材料を含む応力発光層と、少なくとも応力発光層上に配置された転写膜とを備える。
【0093】
第1項に記載の試験用シートによれば、剥離基板が剥離された試験用シートを対象物に貼付することによって、対象物の表面に応力発光層を転写することができる。これによると、応力発光材料を含有する塗料を対象物に塗布する手法と比較して、厚みの均一性の高い応力発光膜を対象物の表面に容易に形成することができる。また、塗料を対象物に塗布する手法として、応力発光膜の厚みの再現性を高めることができる。
【0094】
(第2項)第1項に記載の試験用シートにおいて、応力発光層は、粘着層に直接的に接して形成される。
【0095】
これによると、対象物と応力発光層との間隔を、粘着層の厚み相当まで縮めることができるため、対象物に生じる微小な応力を応力発光層に伝搬することができる。その結果、応力発光層によって対象物の表面に生じる微小な応力の変化を捉えることが可能となる。
【0096】
(第3項)第1項または第2項に記載の試験用シートにおいて、粘着層は、10μm以上35μm以下の厚みを有する。
【0097】
これによると、対象物に生じる微小な応力を応力発光層に伝搬できるため、対象物の表面に生じる応力の分布を画像化することが可能となる。
【0098】
(第4項)第1項または第2項に記載の試験用シートの平面視において、応力発光層は、粘着層と重なっている。
【0099】
これによると、試験用シートを対象物に貼付するときに、粘着層を介して、応力発光層全体を対象物に接着させることができる。対象物に生じる応力を応力発光層全体に伝搬させることで、対象物の表面に生じる応力の分布を反映した発光パターンを出現させることができる。
【0100】
(第5項)第1項から第3項に記載の試験用シートにおいて、応力発光層は、10μm以下の厚みを有する。
【0101】
これによると、応力発光画像のコントラストが高くなるため、微小な応力の変化に基づく応力発光を高い感度で計測することができる。
【0102】
(第6項)第1項から第4項に記載の試験用シートにおいて、応力発光材料は、単斜晶系の粒子を有し、平均粒子径が100~900nmである。
【0103】
これによると、10μm以下の均一性の高い厚みを有する応力発光層を形成することができる。
【0104】
(第7項)第1項から第6項に記載の試験用シートにおいて、応力発光層と転写膜との間の密着強度は、剥離基板と粘着層との間の密着強度よりも大きい。
【0105】
これによると、試験用シートから剥離基板を剥離したときに、転写膜が応力発光層から剥離するのを抑制できる。
【0106】
(第8項)一態様に係る試験用シートの製造方法は、剥離層上に粘着層を形成する工程と、粘着層上に、応力発光材料を含む応力発光層を形成する工程と、少なくとも応力発光層上に、転写膜を配置する工程とを備える。
【0107】
第8項に記載の試験用シートの製造方法によれば、厚みの均一性が高く、かつ、厚みの再現性に優れた応力発光膜を対象物の表面に容易に形成することができる。
【0108】
(第9項)第8項に記載の試験用シートの製造方法において、応力発光層を形成する工程は、粘着層上に、応力発光材料と溶媒との混合物をスクリーン印刷法により印刷する工程を含む。
【0109】
これによると、粘着層の表面に、均一な厚みを有する応力発光層を容易に形成することができる。
【0110】
(第10項)第9項に記載の試験用シートの製造方法において、応力発光層を形成する工程は、単斜晶系の粒子を有する応力発光材料を細粒化する工程と、細粒化された応力発光材料と溶媒とを混合する工程とをさらに含む。
【0111】
これによると、細粒化された粒子は、単斜晶の結晶構造が保たれており、かつ、粒子同士の凝集が抑制されるため、10μm以下の均一な厚みを有し、かつ、高い応力発光能を発揮する応力発光層を形成することができる。
【0112】
(第11項)一態様に係る計測方法は、対象物に生じる応力を計測する方法であって、対象物に、応力発光層を有する試験用シートを貼付する工程と、試験用シートに励起光を照射して応力発光層を励起する工程と、対象物に荷重を加える工程と、荷重が加えられているときの応力発光層を撮影する工程と、撮影された応力発光層の発光画像に基づいて、対象物に生じる応力を計測する工程とを備える。試験用シートは、剥離基板と、剥離基板上に形成された粘着層と、粘着層上に形成された、応力発光材料を含む応力発光層と、少なくとも応力発光層上に配置された転写膜とを含む。試験用シートを貼付する工程は、剥離基板を剥離して、粘着層を露出させる工程と、粘着層の露出面を、対象物の表面に接着する工程と、転写膜を除去して、応力発光層を対象物に転写する工程とを含む。
【0113】
第11項に記載の計測方法によれば、厚みの均一性が高く、かつ、厚みの再現性に優れた応力発光膜を対象物の表面に容易に形成することができるため、当該応力発光膜の発光画像に基づいて対象物に生じる応力を容易かつ高い感度で計測することができる。
【0114】
(第12項)第11項に記載の計測方法において、接着する工程は、転写膜を介して粘着層を押圧する工程を含む。
【0115】
これによると、応力発光層を粘着層を介して強固に対象物に接合させることができる。
【0116】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0117】
1 剥離基板、2 粘着層、3 応力発光膜、4 転写膜、10 試験用シート、15 通信線、20 対象物、30 光源、32 駆動装置、40 引張試験機、41 テーブル、42 クロスヘッド、44,46 ねじ棹、48 上掴み具、50 下掴み具、52 ロードセル、60,80 制御装置、62,82 表示部、70 撮影装置、90 記憶装置、100 計測装置。