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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112913
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】ポリエチレン系樹脂フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20240814BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20240814BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
C08J5/18 CES
B32B27/32 Z
B65D65/40 D
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024082668
(22)【出願日】2024-05-21
(62)【分割の表示】P 2021515939の分割
【原出願日】2020-04-03
(31)【優先権主張番号】P 2019085394
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大木 祐和
(72)【発明者】
【氏名】西 忠嗣
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ヒートシール性、耐ブロッキング性及び滑り性に優れ、フィルム焼却時の残渣が極めて少なく、しかも外観と耐スクラッチ性にも優れるポリエチレン系樹脂フィルムを提供すること。
【解決手段】ポリエチレン系樹脂組成物からなるA層を少なくとも有し、前記A層を構成するポリエチレン系樹脂組成物が下記1)~3)を満足し、
かつ前記A層の少なくとも一方の表面が下記4)及び5)をともに満足するポリエチレン系樹脂フィルム。
1)密度が900kg/m以上935kg/m以下であるポリエチレン系樹脂を90重量%以上含む。
2)平均粒径が5~20μmであるポリエチレン系樹脂からなる粒子を含む。
3)有機機系潤滑剤の含有量が0.16重量%以上である。
4)三次元表面粗さSRaが0.05~0.2μmである。
5)最大山高さSRmaxが2~15μmである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレン系樹脂組成物からなるA層を少なくとも有し、前記A層を構成するポリエチレン系樹脂組成物が下記1)~3)を満足し、
かつ前記A層の少なくとも一方の表面が下記4)及び5)をともに満足するポリエチレン系樹脂フィルム。
1)密度が900kg/m以上935kg/m以下であるポリエチレン系樹脂を90重量%以上含む。
2)平均粒径が5~20μmであるポリエチレン系樹脂からなる粒子を含む。
3)有機系潤滑剤の含有量が0.16重量%以上である。
4)三次元表面粗さSRaが0.05~0.2μmである。
5)最大山高さSRmaxが2~15μmである。
【請求項2】
前記ポリエチレン系樹脂からなる粒子の樹脂硬度がD70以下である請求項1に記載のポリエチレン系樹脂フィルム。
【請求項3】
前記ポリエチレン系樹脂からなる粒子の粘度平均分子量が150万以上である請求項1又は2に記載のポリエチレン系樹脂フィルム。
【請求項4】
前記A層を構成するポリエチレン系樹脂組成物中の前記ポリエチレン系樹脂の粒子の含有量は0.2~2.0質量%である請求項1又は2に記載のポリエチレン系樹脂フィルム。
【請求項5】
前記A層表面同士のブロッキング値が200mN/70mm以下である請求項1又は2に記載のポリエチレン系樹脂フィルム。
【請求項6】
前記A層表面同士を安田精機製の学振式磨耗試験機にセットし荷重200gで100回の磨耗後のヘイズの変化量が3%以下である請求項1又は2に記載のポリエチレン系樹脂フィルム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載のポリエチレン系樹脂フィルムと、熱可塑性樹脂組成物からなる基材フィルムを含む積層体。
【請求項8】
請求項7に記載の積層体を含む包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレン系樹脂フィルム、及びそれを用いた積層体、包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、利便性、省資源、環境に対する負荷低減などによりフィルムを用いた包装または容器が広い分野で使用されてきている。フィルムは従来の成形容器、成形物に比べ、軽量、廃棄処理が容易、低コストが利点である。
【0003】
シーラントフィルムは、通常、シーラントフィルムより低温熱接着性の劣る二軸延伸ナイロンフィルム、二軸延伸エステルフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルム等の基材フィルムとラミネートして使用されるのが一般的である。これらの基材フィルムとラミネート加工後にロール状で保管すると、シーラントフィルムと基材フィルムとの間でブロッキングが生じて、製袋加工の前に、ラミネートフィルムを巻き戻しにくい場合があったり、製袋加工中の袋の内面となるシーラントフィルム同士でブロッキングが生じ、食品を充填しにくい場合があった。
そこで、でんぷん等の粉をシーラントフィルムの表面にふりかけることで、前述のようなシーラントフィルムと基材とのブロッキングやシーラントフィルム同士のブロッキングを回避する方策が知られている。
しかし、この方策ではフィルム加工装置周辺を汚染するばかりか、包装食品の外観を著しく悪化させる、あるいはシーラントフィルムに付着した粉末が食品とともに直接包装体内に混入したり、ヒートシール強度が低下するといった問題を生じていた。
【0004】
そこでポリエチレン系樹脂にシリカなどの無機微粉末あるいは無機微粒子を用いたポリエチレン系樹脂フィルム報告されている。
【0005】
しかし、この方策では、ポリエチレン系樹脂フィルムに添加されるシリカなどの無機微粉末あるいは無機粒子を含むフィルム面同士を擦りあわせた時に傷が発生し易く、ラミネート機や製袋加工機などにシーラントフィルあるいは基材フィルムとの積層体が通過する際に、無機微粉末あるいは無機粒子が脱落してキズや異物問題が発生しやすいという問題も有していた。
【0006】
さらに、アクリル系単量体とスチレン系単量体を主成分とする共重体からなる有機架橋粒子を用いたポリエチレン系樹脂フィルムが報告されている。
しかしながら、この方策では、傷つき易さは無機粒子ほど悪くはないものの十分とは言えない。また、粒子の脱落の問題もいまだ残っていた。
【0007】
またさらに、ポリエチレン系樹脂フィルムの耐ブロッキング性を向上させるため、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂に低密度ポリエチレン樹脂あるいは高密度ポリエチレン樹脂を添加したものが報告されている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0008】
しかしながらこれらの方策では、引張強度などの機械強度特性や透明性が悪化するなど問題があった上に、耐ブロッキング性も劣るものであった。
またさらに、分子量が高いポリエチレン樹脂からなる粒子を高密度ポリエチレン樹脂に添加したポリエチレン系樹脂フィルムが報告されている。
しかしながら、この方策では、引裂き強度などの機械強度特性、低温でのヒートシール性及び透明性に劣る上に、ポリエチレン樹脂からなる粒子を添加することにより、かえって耐ブロッキング性や滑り性が不安定になるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10-120849号公報
【特許文献2】特開平10-87909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、外観、ヒートシール性、安定した耐ブロッキング性及び安定した滑り性に優れ、しかも耐スクラッチ性にも優れるポリエチレン系樹脂フィルムを提供することを目的とする。また、このポリエチレン系樹脂フィルムを用いた積層体、さらに包装体を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは鋭意検討した結果、密度が特定の範囲のポリエチレン系樹脂とポリエチレン系樹脂からなる粒子を含有するポリエチレン系樹脂組成物からなる層の表面の突起高さ及び有機機系潤滑剤含有量を制御することにより
、上記課題を解決できることを見出し、本発明を解決するに至った。
【0012】
すなわち本発明は、ポリエチレン系樹脂組成物からなるA層を少なくとも一層有し、前記A層を構成するポリエチレン系樹脂組成物が下記1)~3)を満足し、かつ前記A層の少なくとも一方の表面が下記4)及び5)をともに満足するポリエチレン系樹脂フィルムである。
1)密度が900kg/m以上935kg/m以下であるポリエチレン系樹脂を含む。
2)ポリエチレン系樹脂からなる粒子を含む。
3)有機機系潤滑剤の含有量が0.16重量%以上である。
4)三次元表面粗さSRaが0.05~0.2μmである。
5)最大山高さSRmaxが2~15μmである。
【0013】
また、別の態様は、ポリエチレン系樹脂組成物からなるA層を少なくとも一層有し、前記A層を構成するポリエチレン系樹脂組成物が下記1)~3)を満足し、かつ前記A層の少なくとも一方の表面が下記4)及び5)をともに満足するポリエチレン系樹脂フィルムである。
1)密度が900kg/m以上935kg/m以下である。
2)ポリエチレン系樹脂からなる粒子を含む。
3)有機機系潤滑剤の含有量が0.16重量%以上である。
4)三次元表面粗さSRaが0.05~0.2μmである。
5)最大山高さSRmaxが2~15μmである。
【0014】
この場合において、前記ポリエチレン系樹脂からなる粒子の樹脂硬度がD70以下であることが好適である。請求項1又は2に記載のポリエチレン系樹脂多層フィルム。
また、この場合において、前記ポリエチレン系樹脂からなる粒子の粘度平均分子量が150万以上あり、かつDSCによる融点ピーク温度が150℃以下であることが好適である。
【0015】
さらにまた、この場合において、前記ポリエチレン系樹脂からなる粒子の平均粒径が5~15μmであることが好適である。
【0016】
さらにまた、この場合において、前記A層を構成するポリエチレン系樹脂組成物中の前記ポリエチレン系樹脂からなる粒子の含有量は0.2~2.0重量%であることが好適である。
【0017】
さらにまた、この場合において、前記A層表面同士のブロッキング値が200mN/70mm以下であることが好適である。
【0018】
さらにまた、この場合において、前記A層表面同士を安田精機製の学振式磨耗試験機にセットし荷重200gで100回の磨耗後のヘイズの変化量が5%以下であることが好適である。
【0019】
さらにまた、この場合において、前記のいずれかに記載のポリエチレン系樹脂フィルムと組成物からなる基材フィルムを含む積層体が好適である。
【0020】
さらにまた、この場合において、前記積層体を含む包装袋が好適である。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、外観、ヒートシール性、安定した耐ブロッキング性及び安定した滑り性に優れ、特に耐スクラッチ性も優れるポリエチレン系樹脂フィルムを提供することができる。また、このポリエチレン系樹脂フィルムを用いた積層体、さらに包装体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(ポリエチレン系樹脂組成物からなるA層)
本発明におけるA層はポリエチレン系樹脂組成物からなるが、ポリエチレン系樹脂組成物はポリエチレン系樹脂を主に含有し、ポリエチレン系樹脂からなる粒子も含有する。ポリエチレン系樹脂組成物はポリエチレン系樹脂を50重量%以上含有することが好ましく、70重量%含有することがより好ましく、90重量%以上含有することがさらに好ましい。
(ポリエチレン系樹脂)
本発明におけるポリエチレン系樹脂にはエチレン単量体の単独重合体、エチレン単量体とα-オレフィンとの共重合体及びこれらの混合物のいずれかであり、α-オレフィンとしては、プロピレン、ブテン-1、ヘキセン-1、4-メチルペンテン-1、オクテン-1、デセン-1等が挙げられる。
【0023】
ポリエチレン系樹脂の密度範囲は900~935kg/mがより好ましく、910~933kg/mがさらに好ましく、910~930kg/mが特に好ましい。密度が935kg/m以下のポリエチレン系樹脂は、ヒートシール開始温度が高くなく、製袋加工が容易であり、透明性にも優れる。
さらに重要なことは、密度が935kg/m以下のポリエチレン系樹脂を使用した場合、ポリエチレン系樹脂からなる粒子によって、A層の少なくとも一方の表面の三次元表面粗さSRaが0.05μm以上、最大山高さSRmaxを2μm上とするのが容易になり、ポリエチレン系樹脂フィルムは滑り性、耐ブロッキング性と耐スクラッチ性を得やすくなるため、コート加工や印刷加工、製袋加工においてシワやコブが発生しにくく、透明性も維持しやすいことを本発明者らは見出した。特に耐ブロッキング性は4回測定のそれぞれの測定値で変動しにくく、安定したものとなる。
また、密度が900kg/m以上のポリエチレン系樹脂を使用すると、ポリエチレン系樹脂からなる粒子によって、A層の少なくとも一方の表面の三次元表面粗さSRaを0.2μm以下、最大山高さSRmaxを15μm以下に制御し易すく、透明性、腰を向上させやすい。
【0024】
耐ブロッキング性はフィルムのA層表面同士を重ね合わせたサンプルを、ヒートプレス(テスター産業社製形式:SA-303)において、大きさ7cm×7cm、温度50℃、圧力18MPa、時間15分の加圧処理を行う。この加圧処理でブロッキングしたサンプルとバー(径6mm 材質:アルミ)をバーと剥離面は水平となるように、オートグラフ(島津製作所製形式:UA-3122)へ装着し、バーが速度(200m/分)でブロッキング部を剥離する時の力を4回測定し、その平均をとった値を指標とするものであるが、密度が935kg/m3以下のポリエチレン系樹脂を使用した場合は、4回測定のそれぞれの測定値で変動しにくいだけでなく、ヒートシール開始温度が高くなりにくい傾向が認められた。4回測定のそれぞれの測定値の変動は無機粒子を使用した場合と同等のレベルであることが好ましい。
測定サンプル毎に測定値が変動しにくい理由については、密度が935kg/m3以下のポリエチレンとポリエチレン系樹脂からなる粒子を溶融混合した際に、ポリエチレン系樹脂からなる粒子の粘度平均分子量低下やポリエチレン系樹脂からなる粒子以外のポリエチレン系樹脂との分子鎖の絡み合い等による粒径変化が生じにくく、その結果形成される表面の突起が均一なものになるものと推察している。
【0025】
耐スクラッチ性はポリエチレン系樹脂フィルムのA層表面同士を安田精機製の学振式磨耗試験機にセットし荷重200gで100回の磨耗後のヘイズの変化量で判定した。ヘイズ測定は摩擦台にセットする前のフィルム(幅×長さ=50mm×180mm)の中央部(端に位置を点で摩擦面の反対面からヘイズ測定に影響無い両端に点を記入)のヘイズを測定し、摩擦後に同じ位置のヘイズを測定し差を求めた。
【0026】
ポリエチレン系樹脂としては、製膜性等の点から、メルトフローレート(以下、MFRと記すことがある。)は2.5~4.5g/分程度が好ましい。ここでMFRは、ASTM D1893-67に準拠して測定した。又該ポリエチレン系樹脂は、自体既知の方法で合成される。
【0027】
ポリエチレン系樹脂のMFRが2.5g/10分以下のような低い樹脂を使用する場合は、密度での説明と同様にポリエチレン系樹脂からなる粒子の粘度平均分子量低下やポリエチレン系樹脂からなる粒子以外のポリエチレン系樹脂との分子鎖の絡み合い等による粒径変化が起こりやすくなる為、押出条件には注意が必要である。大型の製膜機で高速製膜する場合はMFRは3~4g/10分程度が製膜性の為には特に好ましい。
【0028】
ポリエチレン系樹脂としては、耐熱性等の点から、融点は85℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましく、特に110℃以上が好ましい。
【0029】
ポリエチレン系樹脂は単一系であってもよいが、上記密度範囲の密度が異なるポリエチレン樹脂を2種以上配合することもできる。密度が異なるポリエチレン系樹脂を2種以上配合した場合、GPC測定や密度測定によりその平均密度、配合比を推測することができる。
【0030】
上述のような密度が900~935kg/mのポリエチレン系樹脂としては、透明で、柔軟性に富み、引裂き強度、引張強度に平均的に優れる高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)、ブテン-1・ヘキセン-1オクテン-1を少量共重合させ、分子鎖に短分子鎖を多く持ち、シール性能、物理的強度に優れた直鎖状短鎖分岐ポリエチレン(LLDPE)、非常にシャープな分子量分布を示し、コモノマーの分布も均一で、引裂・引張・突刺し強度・耐ピンホール特性に優れるメタロセン触媒直鎖状短鎖分岐ポリエチレン(LLDPE)をその用途に応じて選択することができる。
シール層に用いられるポリエチレン系樹脂としては、市販品を用いることも可能であり、例えば、宇部丸善ポリエチレン社製ユメリット(登録商標)2040FC、0540F、3540FC、住友化学社製スミカセン(登録商標)E FV402、E FV405などが挙げられる。
【0031】
(ポリエチレン系樹脂からなる粒子)
A層を構成するポリエチレン系樹脂組成物に含まれるポリエチレン系樹脂からなる粒子はその粘度平均分子量が150万以上であることが好ましく、160万以上であることがより好ましく、170万以上がさらに好ましい。
また、250万以下が好ましく、240万以下であることがより好ましく、230万以下であることがさらに好ましい。
ポリエチレン系樹脂からなる粒子の粘度平均分子量がこの範囲であれば、ポリエチレン系樹脂からなる粒子の平均粒子径の制御が可能になり、特定の密度のポリエチレン系樹脂と併用することでA層の少なくとも一方の表面の三次元表面粗さSRaを0.05~0.2μm、最大山高さSRmaxが2~15μmとすることができる。
その理由はポリエチレン系樹脂からなる粒子とポリエチレン系樹脂からなる粒子以外のポリエチレン系樹脂との分子量の差が非常大きいことから分子が十分に混ざり合わず、溶融混合し、押出して得たフィルム中においてもポリエチレン系樹脂からなる粒子が球状に近い形状を維持することが容易で、また粒子同士の融着や接着等による凝集も起こりにくいため、フィルム表面に形状の制御された突起を形成することができると推定している。
ポリエチレン系樹脂からなる粒子の粘度平均分子量が150万以上であると、ポリエチレン系樹脂からなる粒子以外のポリエチレン系樹脂と溶融混合時の温度がポリエチレン系樹脂からなる粒子の融点ピークより高い場合、大型の押出機によるせん断やドラフト比が高い製膜条件にあっても、熱やせん断による分解またはポリエチレン系樹脂からなる粒子同士の融着凝集や、ポリエチレン系樹脂からなる粒子以外のポリエチレン系樹脂との部分的な相溶によるポリエチレン系樹脂からなる粒子の粒経や形状の変化が発生しにくくなる為、無機粒子や有機架橋樹脂粒子のような形状の制御された突起形成が出来やすくなり、アンチブロッキング剤としての機能が十分でなるだけでなく、透明性などの外観、フィルムの機械的強度、あるいはヒートシール性に影響を及ぼしにくい。
さらに、これも驚くべきことであるが、粘度平均分子量が150万以上のポリエチレン系樹脂からなる粒子はポリエチレン系樹脂中では凝集しにくいという性質があるにもかかわらず、フィルム表面付近のポリエチレン系樹脂から脱落しにくいという、無機粒子や有機架橋樹脂粒子にはない特徴をもつことがわかった。
粘度平均分子量が150万~250万であると、平均粒径を5~20μmとすることが容易になり、シール層原料を溶融混合し、押出ししフィルムを形成する時に、適したフィルム表面突起を形成するのが容易になる傾向がある。
またポリエチレン系樹脂からなる粒子の粘度平均分子量が150万以上であると粒子自身が潤滑性を持ち、耐ブロッキングや滑り性の向上に寄与し、しかもポリエチレン系樹脂からなる粒子は軟らかいため、耐スクラッチ性も向上すると考えられる。
【0032】
ポリエチレン系樹脂からなる粒子の樹脂硬度はD70以下であることが好ましい。硬度が70以下であるとより、フィルムの積層した層、例えば蒸着層に欠損が生じにくくなり、バリア性が低下しにくい。硬度はD68以下がより好ましい。
また、ポリエチレン系樹脂からなる粒子の硬度がD60以上であると滑り性も向上し、フィルム加工時に熱を受けても滑り性が悪化しにくい。
【0033】
ポリエチレン系樹脂からなる粒子は、エチレン単量体の単独重合体、またはエチレン単量体とα-オレフィンとの共重合体、並びにこれらの混合物であり、α-オレフィンとしては、プロピレン、ブテン-1、ヘキセン-1、4-メチルペンテン-1、オクテン-1、デセン-1等を例示することができる。
【0034】
ポリエチレン系樹脂からなる粒子の密度範囲は930~950kg/mが好ましく、935~945kg/mがより好ましく、937~942kg/mがさらに好ましい。密度が930kg/mより小さいポリエチレン樹脂からなる粒子は、粒子が軟らかく、且つ溶融押出時に粒子の形状維持がしにくく耐ブロッキング性が低下しやすい。また、密度が950kg/mより大きいポリエチレン樹脂からなる粒子は、粒子が硬く耐スクラッチ性が低下しやすくなるだけでなくベースとなるポリエチレン樹脂との親和性が下がる為、耐脱落性が低下する可能性がある。
【0035】
A層を構成するポリエチレン系樹脂組成物に含まれるポリエチレン系樹脂からなる粒子の平均粒子径は5μm以上が好ましく、6μm以上がより好ましく、7μm以上がさらに好ましい。また平均粒径が20μm以下が好ましく、17μm以下がより好ましく、15μm以下が特に好ましい。
それに加えて、粒径が30μm以上の粒子を含まないことが好ましい。平均粒径が20μm以下であっても、粒径が30μm以上の粒子を所定量10%以上含むとフィルム表面の最大山高さが15μmを超えやすくなる、そうするとフィルム表面を目視すると、後述するチラツキが発生する。また30μm以上の粒子は、ゲル状の欠点と同様な見た目となり品質が低下するという点でも好ましくない。
【0036】
ポリエチレン系樹脂からなる粒子の平均粒径を5μm以上とすることによって、滑り性、耐ブロッキング性を向上させることができる。
また、平均粒径が20μm以下であると、A層の少なくとも一方の表面の三次元表面粗さSRaと最大突起高さSRmaxが大きくなりすぎず、しかも同じ重量のポリエチレン系樹脂からなる粒子を添加した場合で比較すると、突起数が増えることから、フィルム加工に十分な滑り性、耐ブロッキング性、耐スクラッチ性を得やすい。
【0037】
さらにポリエチレン系樹脂からなる粒子の平均粒径はタルク、炭酸カルシウムなどの比較的軟らかい無機粒子よりも押出し時の混練りによる破砕や凝集で粒径が変わりにくく、平均粒径(押出前後)の制御がしやすく、ポリエチレン系樹脂からなる粒子の平均粒径を5~20μmの範囲にすることで粗大粒子による突起がほぼなくなり、さらに突起自体の硬度が無機粒子に比較して低い為、A層の他方の面、あるいはA層と異なる層に設けたコートに対する悪影響が抑制される。
【0038】
A層を構成するポリエチレン系樹脂組成物におけるポリエチレン系樹脂からなる粒子の含有量としては、ポリエチレン系樹脂組成物に対して0.2重量%以上であるのが好ましく、0.3重量%以上がより好ましく、0.4重量%以上がさらに好ましい。また、2.0重量%以下が好ましく、1.5重量%以下がより好ましく、1.0重量%以下がさらに好ましい。ポリエチレン系樹脂からなる粒子の添加量が0.2重量%以上であるとA層表面少なくとも一方の最大山高さを指定面積(0.2mm)辺り2μm以上とすること容易になり、耐ブロッキング性や滑り性が得られやすくすなる。また、ポリエチレン系樹脂からなる粒子の添加量を2.0重量%以下とするとA層表面の突起が多くなりすぎず、透明性と低温シール性も向上しやすい。
【0039】
A層を構成するポリエチレン系樹脂組成物に有機機系潤滑剤を含有する。フィルムの滑り性や耐ブロッキング効果が向上し、フィルムの取り扱い性がよくなる。その理由として、有機機系潤滑剤がブリードアウトし、フィルム表面に存在することで、滑剤効果や離型効果が発現したものと考える。更に、有機系潤滑剤は常温以上の融点を持つものを添加することが好ましい。有機機系潤滑剤は、脂肪酸アミド、脂肪酸エステルが挙げられる。具体的にはオレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミドなどである。これらは単独で用いても構わないが、2種類以上を併用することで過酷な環境下においても滑性やブロッキング防止効果を維持することができるので好ましい。
【0040】
A層を構成するポリエチレン系樹脂組成物における有機系潤滑剤の含有量の下限は好ましくは0.16重量%以上であり、好ましくは0.18重量%であり、より好ましくは0.19重量%であり、特に好ましくは0.21重量%である。0.16重量%以上であると製膜直後から滑り性が安定しやすい。上限は好ましくは0.3重量%であり、より好ましくは0.25重量%である。0.3重量%以下であると滑りすぎず、経時で白化しにくい。
【0041】
A層において無機粒子を含有する場合、平均粒径がポリエチレン系樹脂からなる粒子の平均粒径よりも十分に小さいことが好ましい。好ましくは無機粒子の平均粒径はポリエチレン系樹脂からなる粒子の平均粒径の50%以下で、かつ平均粒径の2倍以上の粗大粒子を含まないことが好ましい。
A層を構成するポリエチレン系樹脂組成物においては、無機粒子の含有量を0.20重量%以下とするのが好ましく、0.10重量%以下とするのがより好ましく、0.05重量%以下とするのがさらに好ましく、0重量%が最も好ましい。無機粒子の含有量を0.20重量%以下とすることで焼却時の残渣が低減されるだけでなく、耐スクラッチ性や粒子が脱落しないといったポリエチレン樹脂からなる粒子のみ添加する場合と近い効果が得られやすくなる。
【0042】
無機粒子を添加する場合であっても上記の粒径を添加することとフィルム焼却時の残渣が500ppm以下になればフィルムを焼却した場合に従来の無機粒子を含有するフィルムと比較して焼却残渣を極めて少なくすることが出来る。
ここでいう無機粒子とはシリカ、タルク、炭酸カルシウム、珪藻土、ゼオライト等の一般的にアンチブロッキング剤として使用される無機物である。
【0043】
A層において架橋有機粒子を含有する場合、平均粒径がポリエチレン系樹脂からなる粒子の平均粒径よりも十分に小さいことが好ましい。好ましくは架橋有機粒子の平均粒径はポリエチレン系樹脂からなる粒子の平均粒径の50%以下で平均粒径の2倍以上の粗大粒子をほとんど含まないことが好まし
い。
A層を構成するポリエチレン系樹脂組成物における架橋有機粒子の含有量はポリエチレン系樹脂からなる粒子と同量以下であることがダイスのメヤニ抑制やコストから好ましい。
A層を構成するポリエチレン系樹脂組成物においては、無機粒子の場合と同様、耐スクラッチ性や粒子が脱落しないといったポリエチレン樹脂からなる粒子の添加の効果をもっとも得るには、架橋有機粒子も含有しないことがもっとも好ましい。
ここでいう架橋有機粒子とはポリメチルアクリレート樹脂等に代表される有機架橋粒子である。
【0044】
(ポリエチレン系樹脂組成物)
A層を構成するポリエチレン系樹脂組成物の密度範囲は900~935kg/mが好ましく、910~933kg/mがより好ましく、910~930kg/mがさらに好ましく、915~928kg/mが特に好ましく、915~925kg/mが特に好ましい。密度が900kg/mより小さいポリエチレン系樹脂は、耐ブロッキングが低下しやすい。
密度が935kg/m以下のポリエチレン系樹脂組成物は、ヒートシール開始温度が高くなく、製袋加工が容易であり、透明性にも優れる。さらに重要なことは、密度が940kg/m以下のポリエチレン系樹脂を使用した場合、ポリエチレン系樹脂多層フィルムは安定した耐ブロッキング性あるいは安定した滑り性が得やすく、A層を構成するポリエチレン系樹脂組成物に含まれる有機機系潤滑剤とポリエチレン系樹脂の粒子からなる表面突起の相乗効果により、極めて耐スクラッチ性に優れることを本発明者らは見出した。
【0045】
ポリエチレン系樹脂組成物としては、製膜性等の点から、メルトフローレート(以下、MFRと記すことがある。)は2.5~4.5g/分程度が好ましい。ここでMFRは、ASTM D1893-67に準拠して測定した。
【0046】
(多層構成)
本発明のポリエチレン系樹脂フィルムは多層構成でもよい。多層の場合はA層に加えて、他の層を1層あるいは2層以上設けることができる。
このように多層化する具体的な方法として、一般的な多層化装置(多層フィードブロック、スタティックミキサー、多層マルチマニホールドなど)を用いることができる。
例えば、二台以上の押出機を用いて異なる流路から送り出された熱可塑性樹脂をフィールドブロックやスタティックミキサー、マルチマニホールドダイ等を用いて多層に積層する方法等を使用することができる。また、一台の押出機のみを用いて、押出機からT型ダイまでのメルトラインに上述の多層化装置を導入することも可能である。
【0047】
3層構成の場合は他の層をそれぞれ中間層(B層)、ラミネート層(C層)とし、この順序で含む構成とするのが良い。この場合の最外層はそれぞれA層、C層である。
【0048】
中間層(B層)、ラミネート層(C層)使用するポリエチレン系樹脂としては、例えばエチレン・α-オレフィン共重合体、高圧法ポリエチレンから選ばれる1種又は2種以上を混合したものが挙げられる。上記エチレン・α-オレフィン共重合体は、エチレンと炭素数4~18のα-オレフィンとの共重合体であり、α-オレフィンとしてはブテン-1、ヘキセン-1、4-メチルペンテン-1、オクテン-1、デセン-1等が挙げられる。
これらのポリエチレン系樹脂より得られるフィルムは、優れたヒートシール強度、ホットタック性、夾雑物シール性、耐衝撃性を有し、該ポリエチレン系樹脂は、これらの特性を阻害しない範囲で、他の樹脂、例えばエチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体等を混合して使用してもよい。
【0049】
このとき、中間層(B層)、ラミネート層(C層)に使用するポリエチレン系樹脂は同じでも良いし、異なっていてもよい。また、ポリエチレン系樹脂からなる粒子を添加しても良いし、添加しなくても良いがラミネート層には粗大粒子などの粒子径の大きな粒子が存在するとラミ浮きが発生しやすい為、添加しない方が好ましい。
【0050】
この場合において、前記フィルムの各層を構成するポリエチレン樹脂組成物の平均密度がA層≦中間層(B層)≦ラミネート層(C層)であることが好ましい。配合されている有機機系潤滑剤は密度の高い層へは移動しにくいため、ラミネート後のA層の滑り性を維持したり、経時でのラミネート強度を保つのに効果的である。
【0051】
このとき、中間層(B層)を構成するポリエチレン樹脂組成物の密度の下限は好ましくは900kg/mであり、より好ましくは920kg/mであり、さらに好ましくは930kg/mである。上記未満であると腰が弱く、加工しにくいことがある。
中間層(B層)の密度の上限は好ましくは960kg/mであり、より好ましくは940kg/mであり、さらに好ましくは935kg/mである。
【0052】
本発明のポリエチレン系樹脂フィルムの中間層(B層)を構成するポリエチレン系樹脂組成物に上述の有機機系潤滑剤を含有してもよく、有機機系潤滑剤の下限は好ましくは100ppmである。上記未満であると滑り性が悪化することがある。
中間層を構成するポリエチレン樹脂組成物における有機機系潤滑剤の上限は好ましくは2000ppmであり、より好ましくは1500ppmである。上記を越えると滑りすぎて巻きズレや経時での白化の原因となることがある。
【0053】
本発明のフィルムの中間層(B層)に回収樹脂の品質を損なわない程度に配合してもよい。
【0054】
本発明においては、以上に記述したポリエチレン系樹脂フィルムのラミネート層(C層)面にコロナ処理等の活性線処理を行うのが好ましい。該対応によりラミネート強度が向上する。
【0055】
本発明のポリエチレン系樹脂フィルムが2層の場合はA層をシール層とし、他の層をラミネート層(C層)とするのが良い。
【0056】
(三次元表面粗さSRa)
本発明のポリエチレン系樹脂多層フィルムのシール層の三次元表面粗さSRaは、0.05μm以上であることが好ましい。SRaが0.05μm以上の場合は滑り性や耐ブロッキング性に優れる。SRaは0.07μm以上であることがより好ましく、0.1μm以上であることが特に好ましい。
本発明のポリエチレン系樹脂多層フィルムのシール層の三次元表面粗さSRaは、0.2μm以下であることが好ましい。SRaが0.2μm以下の場合、透明性が低下しにくい。SRaは0.18μm以下であることがより
好ましく、0.16μm以下であることが特に好ましい。測定方法は実施に記載の方法で行う。
(最大突起高さSRmax)
本発明ポリエチレン系樹脂フィルムのA層の少なくとも一方の表面の最大突起高さが2μm以上、15μm以下であることが必要である。最大突起高さSRmaxが15μmを超える場合は外観不良を発生させる為、好ましくない。測定方法は実施例に記載の方法で行う。
【0057】
(ヒートシール開始温度)
二軸延伸ナイロンフィルム(15μm)とポリエチレン系樹脂フィルムをラミネートした積層体のポリエチレン系樹脂フィルムのヒートシール開始温度の上限は好ましくは140℃であり、より好ましくは130℃である。上記を超えるとシール加工がしにくくなることがある。
【0058】
(到達ヒートシール強度)
二軸延伸ナイロンフィルム(15μm)とポリエチレン系樹脂フィルムをラミネートした積層体のポリエチレン系樹脂フィルムの150℃における到達ヒートシール強度の下限は好ましくは30N/15mmであり、より好ましくは35N/15mmである。上記未満であると製袋後に袋が破れやすくなることがある。
二軸延伸ナイロンフィルム(15μm)とポリエチレン系樹脂フィルムをラミネートした積層体のポリエチレン系樹脂フィルムの150℃におけるヒートシール強度の上限はラミネートしたナイロン破断強度とほぼ同じになることが好ましい。ナイロンの破断強度と同等の場合、ラミ強度が十分高く、且つシール界面の剥離強度が十分高いことを意味する。測定方法は実施例に記載の方法で行う。
【0059】
(ブロッキング強度)
二軸延伸ナイロンフィルム(15μm)とポリエチレン系樹脂フィルムをラミネートした積層体のポリエチレン系樹脂フィルムのブロッキング強度は小さい程好ましく、より好ましくは200mN/70mm以下であり、さらに好ましくは150mN/70mmである。上記を超えると、ノンパウダー性、製袋品の口開き性などが十分に得られなくなる。測定方法は実施例に記載の方法で行う。
【0060】
(摩擦係数)
二軸延伸ナイロンフィルム(15μm)とポリエチレン系樹脂フィルムをラミネートした積層体のポリエチレン系樹脂フィルムの静摩擦係数の下限は好ましくは0.05であり、より好ましくは0.08である。上記未満であると巻取りの際にフィルムが滑りすぎて巻きズレの原因となることがある。
ラミネート後の静摩擦係数の上限は好ましくは0.70であり、より好ましくは0.5である。上記を越えると製袋後の口開き性や内容物の充填性が悪く、加工時のロスが増加することがある。
測定方法は実施例に記載の方法で行う。
【0061】
(ヘイズ)
本発明のポリエチレン系樹脂フィルムのヘイズの下限は好ましくは3%であり、より好ましくは4%であり、さらに好ましくは5%である。上記未満であるとアンチブロッキング剤が十分表面に存在していない恐れがあり、ブロッキングの原因となることがある。
ヘイズの上限は好ましくは18%であり、より好ましくは16%であり、さらに好ましくは13%である。上記を越えると内容物の視認がしにくいとなることがある。測定方法は実施例に記載の方法で行う。
【0062】
(チラツキ感)
本発明のポリエチレン系樹脂フィルムは、ほとんどチラツキを感じないか、細かいチラツキはあるが均一で特に気にならないのが好ましい。測定方法は実施例に記載の方法で行う。
従来のデンプンなどの粉をフィルム表面に振りかけずとも耐ブロッキング性を有する、いわゆるノンパウダータイプでは、従来は平均粒径が10μm程度の無機粒子を添加したものがあるが、粗大粒子を含むことが多くチラツキ感や透明性が劣りやすい。
【0063】
(耐スクラッチ性)
二軸延伸ナイロンフィルム(15μm)とポリエチレン系樹脂フィルムをラミネートした積層体は、そのポリエチレン系樹脂フィルム面同士が重なるようにこすった後も、ヘイズの変化が3%以下が好ましく、2%以下がより好ましく、1%以下がさらに好ましく、0.5%以下が特に好ましい。測定方法は実施例に記載の方法で行う。
従来のデンプンなどの粉をフィルム表面に振りかけずとも耐ブロッキング性を有する、いわゆるノンパウダータイプでは、従来は平均粒径が10μm程度の無機粒子を添加したものがあるが、無機粒子がポリエチレン樹脂よりも遥かに硬い為、十分な有機機系潤滑剤がフィルム表面に存在しても耐スクラッチ性が劣り易い。
【0064】
(ヤング率)
本発明のポリエチレン系樹脂フィルムのヤング率(MD)の下限は好ましくは60MPaであり、より好ましくは70MPaである。上記未満であると腰が弱すぎて加工しにくいことがある。ヤング率(MD)の上限は好ましくは600MPaであり、より好ましくは500MPaである。
【0065】
本発明のポリエチレン系樹脂フィルムのヤング率(TD)の下限は好ましくは60MPaであり、より好ましくは70MPaである。上記未満であると腰が弱すぎて加工しにくいことがある。ヤング率(TD)の上限は好ましくは600MPaであり、より好ましくは500MPaである。
【0066】
(積層体)
本発明のポリエチレン系樹脂多層フィルムにさらに少なくとも1種の他の基材フィルムを積層した積層体の構成で、包装フィルムまたは包装シートとして使用することもできる。
基材フィルムとしては、特に限定されるものではないが、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム、スチレン系樹脂のフィルム、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステルのフィルム、ナイロン6やナイロン6,6のようなポリアミドのフィルム、またはこれらの延伸フィルム、ポリオレフィンフィルムとポリアミドフィルムやエチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムのようなガスバリヤー性のある樹脂フィルムとの積層フィルム、また必要に応じてアルミニウム等の金属箔、あるいはアルミニウムやシリカ等を蒸着させた蒸着フィルムや紙等が、積層体の使用目的に応じて適宜選択使用される。この基材フィルムは、1種類のみならず、2種類以上を組み合わせて積層して使用することもできる。
【0067】
その場合、ポリエチレン系樹脂多層フィルムのラミネート層側に基材フィルムを隣接することが好ましい。
【0068】
上記基材フィルムにポリエチレン系樹脂多層フィルムを積層する方法としては、基材フィルムとポリエチレン系樹脂多層フィルムとをドライラミネーションする方法を採用することができる。その場合は、ポリエチレン系樹脂多層フィルム/接着層/他の基材フィルムの構成にすることができる。接着層としては、ウレタン系やイソシアネート系接着剤のようなアンカーコート剤を用いたり、不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンのような変性ポリオレフィンを接着性樹脂として用いると、隣接層を強固に接合することができる。
【0069】
積層体の厚みに特に制限はないが、積層体を蓋材等のフィルムとして使用する場合は、好ましくは10~200μm、カップやトレー用シートとして使用する場合は好ましくは200~1000μmである。
【0070】
(包装体)
前記した積層体のシーラント用フィルムのシール層面同士を向かい合わせ、あるいは積層体のシーラント用フィルム層のシール層面と他の基材フィルムとを向かい合わせ、その後、ラミネート層側から所望容器形状になるようにその周囲の少なくとも一部をヒートシールすることによって、容器を製造することができる。また周囲を全てヒートシールすることにより、密封された袋状容器を製造することができる。この袋状容器の成形加工を内容物の充填工程と組み合わせると、すなわち、袋状容器の底部および側部をヒートシールした後内容物を充填し、次いで上部をヒートシールすることで包装体を製造することができる。従って、この積層体は、スナック菓子等の固形物、粉体、あるいは液体材料の自動包装装置に利用することができる。
【0071】
また、真空成形や圧空成形によりカップ状に成形した容器、射出成形やブロー成形で得られた容器、あるいは紙基材から形成された容器等に内容物を充填し、その後本発明の積層体を蓋材として被覆し、ヒートシールすることによっても、内容物を包装した容器が得られる。
【実施例0072】
以下、実施例、および比較例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例によって特に限定を受けるものではない。なお、本発明の詳細な説明および実施例中の各項目の測定値は、下記の方法で測定した。
【0073】
以下、本発明における実施の形態を詳細に説明する。
(1)ポリエチレン系樹脂からなる粒子の測定方法
ポリエチレン系樹脂からなる粒子は加工前の原料樹脂の各物性を測定した。
なお、フィルム成形したあとでも、デカン中で粒子まで完全に溶解させた後、GPC等で分子量の高い部分を分離するなどの方法でポリエチレン系樹脂からなる粒子を分離し、測定することも可能である。
【0074】
(2)ポリエチレン系樹脂からなる粒子の粘度平均分子量 ASTM-D4020に準拠して測定した。
【0075】
(3)ポリエチレン系樹脂からなる粒子の平均粒径
使用前のポリエチレン樹脂からなる粒子の平均粒子径は下記のようにして測定した。
攪拌機を使用して所定の回転速度(約5000rpm)で攪拌したイオン交換水中に粒子を分散させ、その分散液をイソトン(生理食塩水)に加えて超音波分散機で更に分散した後に、コールカウンター法によって粒度分布を求め平均粒子径として算出した。
【0076】
(4)ポリエチレン系樹脂からなる粒子の粒度分布使用前のポリエチレン樹脂からなる粒子のうち30μm以上の粒子径のものの割合はコールカウンター法で求めた粒度分布から算出した。
【0077】
(5)ポリエチレン系樹脂からなる粒子の融点
使用前のポリエチレン樹脂からなる粒子の融点はSII製示差走査型熱量計(DSC)を用い、サンプル量10mg、昇温速度10℃/分で測定した。ここで検知された融解吸熱ピーク温度を融点とした。
【0078】
(6)ポリエチレン系樹脂からなる粒子以外のポリエチレン系樹脂の密度、MFR、融点
フィルム成形前の原料をそれぞれ下記の方法で測定した。
なお、ポリエチレン系樹脂からなる粒子を含む層を形成するポリエチレン系樹脂は単層であれば全層、積層であれば層構成を電子顕微鏡等で確認した後、表面を表面層未満の厚みで削り取り上記(1)で得られたろ過した溶液から溶媒を除去したもので同様に測定出来る。積層から削り取る場合はPETフィルムなどにラミネートした後にカミソリ等で表層を削りとることで行なうことが出来る。
【0079】
(密度)
JIS-K7112に従って密度勾配管法により測定した。
【0080】
(メルトフローレート:MFR)(g/10分)
JIS-K7210に準拠し、温度190℃で測定した。
【0081】
(融点)
SII製示差走査型熱量計(DSC)を用い、サンプル量10mg、昇温速度10℃/分で測定した。ここで検知された融解吸熱ピーク温度を融点とした。
【0082】
(7)無機粒子の樹脂組成物中の含有量(重量%)
無機粒子の樹脂組成物中の含有量は加工前の原料樹脂組成物中の添加量から計算した。
なお、フィルム成形したあとでも、デカンを溶媒として、完全に溶解する温度でフィルムを溶解させ、フィルターのろ過精度1~2μmのフィルターで残留物をろ過するなどの方法で無機粒子を分離し、測定することも可能である。
【0083】
(8)フィルム焼却後の残渣量(ppm)
フィルムを約30gを精密天秤で少数第1桁まで測定し(第2桁に四捨五入する)。事前にルツボを700℃で1時間空焼きし、100℃以下になってからガラスデシケーターで室温になるまでシーズニングしルツボの重量を測定する。その後ルツボにフィルムを入れ700℃×2時間電気炉で焼却し、ヒーターを切ってから100℃程度まで下がってからガラスデシケーターに移して室温になるまで30分シーズニングした後、焼却前後のルツボ重量差を上記フィルム重量で割って残渣量を計算した。
【0084】
(9)フィルター昇圧(製膜加工性)
比較例1のシール層に使用する樹脂組成物をろ過精度120μmのナスロン焼結フィルターに230℃の樹脂温でトラウトン試験機を使用し、ろ過面積81π平方ミリに1kg/時間の吐出量で5時間放流した場合の昇圧量(ΔMPa)を基準(△)として、それぞれ下記◎、○、△、×に分類した。
◎:昇圧量が押出開始時の5%以下である。
○:昇圧量が押出開始時の10%以下である。
△:昇圧量が押出開始時の15%以下である。
×:昇圧量が押出開始時の20%以下である。
【0085】
(10)リップ汚れ(製膜加工性)
シール層に使用する樹脂組成物を20kg/時間の吐出量で5時間押出機でストランドダイ(5mmφで2穴)を利用し230℃で押出した場合のリップの汚れを目視で観察し、それを基準(△)として下記◎、○、△、×に分類した。
◎:ほとんどリップ汚れが確認出来ない。
○:リップ汚れがわずかにみられる。
△:リップ汚れが明らかに確認できる。
×:リップ汚れが成長しストランドに筋状のくぼみが生じた。
【0086】
(11)三次元表面粗さSRa
JIS B0601-1994に準拠し、接触式表面粗さ(小坂研究所製・型式ET4000A)を用い、3cm×3cm四方のフィルム片から任意に測定面1mm×0.2mmの個所を、低域カットオフλs=0.08mm、1000μm長さ、2μmピッチで100本の測定を行った。
得られた断面曲線から3次元表面粗さ解析プログラムTDA-22を用い、JIS B0601-1994に準拠し、ポリエチレン系樹脂多層フィルムのシール層表面の三次元表面粗さSRaを計算した。
上記方法においてn=3で測定を行い、三次元表面粗さSRxの平均値を求めた。
【0087】
(12)最大突起高さSRmax
JIS B0601-1994に準拠し、接触式表面粗さ(小坂研究所製・型式ET4000A)を用い、3cm×3cm四方のフィルム片から任意に測定面1mm×0.2mmの個所を、低域カットオフλs=0.08mm、1000μm長さ、2μmピッチで100本の測定を行った。
得られた断面曲線から3次元表面粗さ解析プログラムTDA-22を用い、JIS B0601-1994に準拠し、及び最大突起高さSRmaxを計算した。
上記方法においてn=3で測定を行い、最大突起高さSRmaxの平均値を求めた。
【0088】
(13)ヒートシール開始温度(℃)
ナイロンフィルム(東洋紡製二軸延伸ナイロンフィルム:N1100、15μm)のコロナ面に東洋モートン製ドライラミネート用接着剤(TM569、CAT-10L)を固形分が3g/m2になるように塗布し80℃のオーブンで溶剤を揮発除去した後、ポリエチレン系樹脂フィルムのコロナ面と接着剤の塗布面とを60℃の温調ロール上でニップしラミネートした。ラミネートした積層フィルムは40℃で2日間エージングした。作成した積層サンプルにシール圧力0.1MPa、シール時間0.5秒、シール温度を90~160℃で10℃ピッチで10mm幅のヒートシールを行った。ヒートシールしたサンプルをヒートシール幅が15mmになるように短冊状にカットしてオートグラフ(島津製作所製形式:UA-3122)にセットして200mm/分の速度でシール面を剥離した強度の最大値をn数3で測定し、各温度でのヒートシール強度とヒートシール温度をプロットした。各プロット間を直線で結んだグラフから4.9N/15mmとなるヒートシール温度を読み取りヒートシール開始温度とした。
【0089】
(14)到達ヒートシール強度(N/15mm)
ナイロンフィルム(東洋紡製二軸延伸ナイロンフィルム:N1100、15μm)のコロナ面に東洋モートン製ドライラミネート用接着剤(TM569、CAT-10L)を固形分が3g/mになるように塗布し80℃のオーブンで溶剤を揮発除去した後、ポリエチレン系樹脂フィルムのコロナ面と接着剤の塗布面とを60℃の温調ロール上でニップしラミネートした。ラミネートした積層フィルムは40℃で2日間エージングした。作成した積層サンプルにシール圧力0.1MPa、シール時間0.5秒、シール温度を120~190℃で10℃ピッチで10mm幅のヒートシールを行った。ヒートシールしたサンプルをヒートシール幅が15mmになるように短冊状にカットしてオートグラフ(島津製作所製形式:UA-3122)にセットして200mm/分の速度でシール面を剥離した強度の最大値をn数3で測定し、最も平均値の高いヒートシール強度を到達シール強度とした。
【0090】
(15)ブロッキング強度(mN/70mm)
ナイロンフィルム(東洋紡製二軸延伸ナイロンフィルム:N1100、15μm)との積層フィルムを下記のようにして作成した。
ナイロンフィルムのコロナ面に東洋モートン製ドライラミネート用接着剤(TM569、CAT-10L)を固形分が3g/mになるように塗布し80℃のオーブンで溶剤を揮発除去した後、ポリエチレン系樹脂フィルムのコロナ面と接着剤の塗布面とを60℃の温調ロール上でニップしラミネートした。ラミネートした積層フィルムは40℃で2日間エージングした。
A層表面同士を重ね合わせたサンプル(10cm×15cm)を、ヒートプレス(テスター産業社製、形式:SA-303)において、サンプル幅(10cm)の中央で長さ方向(15cm)の内側1cmの位置に大きさ7cm×7cmのアルミ板(2mm厚)の端を合わせるように乗せ、温度50℃、ゲージ圧力18MPa、時間15分の加圧処理を行う。
この加圧処理でブロッキングしたサンプルとバー(径6mm 材質:アルミ)をオートグラフ(島津製作所製形式:UA-3122)へ装着し、バーが速度(200m/分)でブロッキング部を剥離する時の力を測定した。
この場合、バーと剥離面は水平であることが前提である。同一サンプルにつき4回の測定をして平均値で表示した。
【0091】
(16)静止摩擦係数
ナイロンフィルム(東洋紡製二軸延伸ナイロンフィルム:N1100、15μm)との積層フィルムを下記のようにして作成した。
ナイロンフィルムのコロナ面に東洋モートン製ドライラミネート用接着剤(TM569、CAT-10L)を固形分が3g/mなるように塗布し80℃のオーブンで溶剤を揮発除去した後、ポリエチレン系樹脂フィルムのコロナ面と接着剤の塗布面とを60℃の温調ロール上でニップしラミネートした。ラミネートした積層フィルムは40℃で2日間エージングした。作成した積層フィルムのポリエチレン系樹脂フィルム面同士の静止摩擦係数をJIS-K-7125に準拠し、23℃65%RH環境下で測定した。
【0092】
(17)ヘイズ
ポリエチレン系樹脂フィルムのみを(株)東洋精機製作所社製の直読ヘイズメーターを使用し、JIS-K-7105に準拠し測定した。
ヘイズ(%)=〔Td(拡散透過率%)/Tt(全光線透過率%)〕x
100
【0093】
(18)チラツキ感
ポリエチレン系樹脂フィルムのみを目視で観察し、チラツキ感を下記◎、○、△、×に分類した。
◎:ほとんど輝点を感じない。
○:細かい輝点はあるが均一で特に気にならない。
△:部分的に輝点があり異物感を感じる。
×:全面に輝点があり透明性が損なわれる。
【0094】
(19)耐スクラッチ性(機械評価)
耐スクラッチ性はフィルムのシール面同士を安田精機製の学振形摩擦試験機(摩擦試験機II形平面摩擦子20×20mm 試験片台平面形摺動弧長100mm)にポリエチレン系樹脂の粒子を添加した面同士を合わせるようにセットし、荷重200gで40回の摩擦後のヘイズの変化量で判定した。ヘイズ測定は摩擦台にセットする前のフィルム(幅×長さ=30mm×180mm、平面摩擦子用は50×50mm)の摩擦台用の中央部のヘイズを測定し、摩擦前後で同じ位置のヘイズを測定し差を求めた。
【0095】
(20)耐スクラッチ性(目視評価)
ナイロンフィルム(東洋紡製二軸延伸ナイロンフィルム:N1100、15μm)との積層フィルムを下記のようにして作成した。
ナイロンフィルムのコロナ面に東洋モートン製ドライラミネート用接着剤(TM569、CAT-10L)を固形分が3g/mになるように塗布し80℃のオーブンで溶剤を揮発除去した後、ポリエチレン系樹脂フィルムのコロナ面と接着剤の塗布面とを60℃の温調ロール上でニップしラミネートした。ラミネートした積層フィルムは40℃で2日間エージングした。作成した積層フィルムのポリエチレン系樹脂フィルム面同士が重なるように指でつまんで10回こすり、目視で観察し、傷のつきやすさを下記◎、○、△、×で分類した。
◎:傷がほとんどつかない。
○:細いスジ状の傷がつくが白化はしない。
△:細いスジ状の密集と部分的に白化が見られる。
×:こすった箇所がほぼ白化する。
【0096】
次に、実施例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
実施例及び比較例では下記の原料を使用した。
(ポリエチレン系樹脂)
(1)宇部丸善ポリエチレン(株)社製ユメリット(登録商標)0540F(メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン、密度904kg/m、MFR4.0g/10min、融点111℃)
(2)住友化学社製スミカセン(登録商標)E FV402(メタロセン触媒系LLDPE、密度:913kg/m、MFR:3.8g/10min、融点:115℃)
(3)住友化学社製スミカセン(登録商標)E FV405(メタロセン触媒系LLDPE、密度:923kg/m、MFR:3.8g/10min、融点:118℃)
(4)住友化学社製スミカセン(登録商標)E FV407(メタロセン触媒系LLDPE、密度:930kg/m、MFR:3.2g/10min、融点:124℃)
(5)宇部丸善ポリエチレン社製ユメリット(登録商標)3540FC(メタロセン触媒系LLDPE、密度:931kg/m、MFR:3.6g/10min、融点:123℃)
(6)宇部丸善ポリエチレン社製ユメリット(登録商標)4540F(メタロセン触媒系LLDPE、密度:944kg/m、MFR:4.0g/10min、融点:128℃)
【0097】
(ポリエチレン系樹脂からなる粒子)
(1)三井化学(株)社製、ミペロンPM200(平均粒径10μm、融点136℃、密度940kg/m、粘度平均分子量180万、30μmを超え
る粒径の粒子の割合が0%、樹脂硬度D65、超高分子量ポリエチレン粒子)
(2)三井化学(株)社製、ミペロンXM221U(平均粒径25μm、融点136、密度940kg/m、粘度平均分子量200万、30μmを超える粒径の粒子の割合が25%、樹脂硬度D65、超高分子量ポリエチレン粒子)
【0098】
(無機粒子)
(1)Grefco.Inc.,製、ダイカライトWF(珪藻土、ピンミル粉砕機で平均粒径5μmに加工して使用)
(2)信越シリコン社製、KMP-130-10(球状シリカ粒子、平均粒径10μm)住友化学製FV402をベースとして15%MBを作成して使用した。
【0099】
(マスターバッチ)
(1)住友化学社製スミカセン(登録商標)E FV405にミペロンPM200を混合して、ミペロンPM200が15重量%含有されたマスターバッチ(1)を作製した。
(2)住友化学社製スミカセン(登録商標)E FV405に、ミペロンXM221Uを混合して、ミペロンXM221Uが15重量%含有されたマスターバッチ(2)を作製した。
(3)住友化学社製スミカセン(登録商標)E FV405に、Grefco.Inc.,製、ダイカライトWFを混合して、Grefco.Inc.,製、ダイカライトWFが20重量%含有されたマスターバッチ(3)を作製した。
(4)住友化学社製スミカセン(登録商標)E FV405に、信越シリコン社製、KMP-130-10を混合して、信越シリコン社製、KMP-130-10が15重量%含有されたマスターバッチ(4)を作製した。
(5)住友化学製スミカセン(登録商標)E FV402に、エルカ酸アミドを混合して、エルカ酸アミドが4重量%含有されたマスターバッチ(5)を作製した。
(6)住友化学製スミカセン(登録商標)E FV402に、エチレンビスオレイン酸アミドを混合して、エチレンビスオレイン酸アミドが2重量%含有されたマスターバッチ(6)を作製した。
【0100】
(実施例1)
[シール層用組成物]
宇部丸善ポリエチレン社製ユメリット(登録商標)0540Fを86.25重量%、マスターバッチ(1)を4重量%と、マスターバッチ(5)を1.25重量%、マスターバッチ(6)を8.5重量%になるよう混合した組成物を用いてシール層用組成物を作製した。
[ラミネート層用組成物]
住友化学社製FV402のみを用いてラミネート層用組成物を作製した。
[中間層用組成物]
住友化学社製FV402を99.4重量%、マスターバッチ(5)を0.5重量%、マスターバッチ(6)を0.1重量%になるよう混合した組成物を用いて中間層用組成物を作製した。
ラミネート層用組成物、中間層用組成物、及びシール層用組成物を、Tダイを有する押出し機を用いて、ラミネート層用組成物、中間層用組成物、及びシール層用組成物の順になるように、かつ、ラミネート層、中間層、シール層の厚み比率が8:34:8になるように240℃で溶融押出した。その後、ラミネート層表面にコロナ放電処理を施した。続いて、速度150m/分でロールに巻き取り、厚み50μm、処理面の濡れ張力が45mN/mのポリエチレン系樹脂多層フィルムを得た。
【0101】
(実施例2)
シール層において、住友化学社製スミカセン(登録商標)E FV402を86重量%と、マスターバッチ(1)を4重量%と、マスターバッチ(5)を1.50重量%と、マスターバッチ(6)を8.5重量%とを混合し、ラミネート層において、住友化学社製スミカセン(登録商標)E FV405のみに変えた以外は実施例1と同様にしてポリエチレン系樹脂多層フィルム及び蒸着フィルムを得た。
【0102】
(実施例3)
シール層において、住友化学社製スミカセン(登録商標)E FV405を87.75重量%と、マスターバッチ(1)を4重量%と、マスターバッチ(5)を1.25重量%と、マスターバッチ(6)を7重量%とを混合し、中間層において、住友化学社製スミカセン(登録商標)E FV402を住友化学社製スミカセン(登録商標)E FV405に変え、ラミネート層において、住友化学社製スミカセン(登録商標)E FV407のみに変えた以外は実施例1と同様にしてポリエチレン系樹脂多層フィルム及び蒸着フィルムを得た。
【0103】
(実施例4)
シール層において、住友化学社製スミカセン(登録商標)E FV405を84.75重量%と、マスターバッチ(1)を8重量%と、マスターバッチ(5)を1.25重量%と、マスターバッチ(6)を6重量%とを混合し、中間層において、住友化学社製スミカセン(登録商標)E FV402を住友化学社製スミカセン(登録商標)E FV405に変え、ラミネート層において、住友化学社製スミカセン(登録商標)E FV407のみに変えた以外は実施例1と同様にしてポリエチレン系樹脂多層フィルム及び蒸着フィルムを得た。
【0104】
(実施例5)
シール層において、宇部丸善ポリエチレン社製ユメリット(登録商標)3540Fを86.75重量%と、マスターバッチ(1)を4重量%と、マスターバッチ(5)を1.75重量%と、マスターバッチ(6)を7.5重量%とを混合し、中間層において、住友化学社製スミカセン(登録商標)E FV402を宇部丸善ポリエチレン社製ユメリット(登録商標)3540Fに変え、ラミネート層において、宇部丸善ポリエチレン社製ユメリット(登録商標
)3540Fのみに変えた以外は実施例1と同様にしてポリエチレン系樹脂多層フィルム及び蒸着フィルムを得た。
【0105】
(実施例6)
シール層において、住友化学社製スミカセン(登録商標)E FV405を86.75重量%と、マスターバッチ(1)を4重量%と、マスターバッチ(3)を0.5重量%と、マスターバッチ(5)を1.25重量%と、マスターバッチ(6)を7.5重量%とを混合し、中間層において、住友化学社製スミカセン(登録商標)E FV402を住友化学社製スミカセン(登録商標)E FV405に変え、ラミネート層において、住友化学社製スミカセン(登録商標)E FV407のみに変えた以外は実施例1と同様にしてポリエチレン系樹脂多層フィルム及び蒸着フィルムを得た。
【0106】
(実施例7)
シール層において、住友化学社製スミカセン(登録商標)E FV405を87.25重量%と、マスターバッチ(1)を4重量%と、マスターバッチ(5)を1.25重量%と、マスターバッチ(6)を7.5重量%とを混合し、中間層において、住友化学社製スミカセン(登録商標)E FV402を住友化学社製スミカセン(登録商標)E FV405に変え、ラミネート層において、住友化学社製スミカセン(登録商標)E FV407のみに変えた以外は実施例1と同様にしてポリエチレン系樹脂多層フィルム及び蒸着フィルムを得た。
【0107】
実施例1~7で得られたポリエチレン系樹脂フィルムは、ポリエチレン系樹脂からなる粒子の粒径より大きい無機粒子をほとんど含有しない為、耐スクラッチ性にも優れ低温ヒートシール性、耐ブロッキング性、滑り性、外観にも優れるものであった。
しかもフィルム焼却時の残渣が極めて少なく、メヤニやフィルター昇圧がほとんどないなど製膜加工性にも優れるものであった。
【0108】
(比較例1)
シール層において、住友化学社製スミカセン(登録商標)E FV405を82.25重量%と、マスターバッチ(3)を2.5重量%と、マスターバッチ(4)を8重量%と、マスターバッチ(5)を1.25重量%と、マスターバッチ(6)を6重量%とを混合し、中間層において、住友化学社製スミカセン(登録商標)E FV402を住友化学社製スミカセン(登録商標)E FV405に変え、ラミネート層において、住友化学社製スミカセン(登録商標)E FV405のみに変えた以外は実施例1と同様にしてポリエチレン系樹脂多層フィルム及び蒸着フィルムを得た。
比較例1で得られたフィルムは耐ブロッキング性と滑り性は優れていたもの、若干チラツキ感があり、焼却後の無機の残渣が多く、耐スクラッチ性が特に劣り製膜加工性も若干劣るものであった。
【0109】
(比較例2)
シール層において、住友化学社製スミカセン(登録商標)E FV405を90.25重量%と、マスターバッチ(3)を2.5重量%と、マスターバッチ(5)を1.25重量%と、マスターバッチ(6)を6重量%とを混合し、中間層において、住友化学社製スミカセン(登録商標)E FV402を住友化学社製スミカセン(登録商標)E FV405に変え、ラミネート層において、住友化学社製スミカセン(登録商標)E FV405のみに変えた以外は実施例1と同様にしてポリエチレン系樹脂多層フィルム及び蒸着フィルムを得た。
比較例2で得られたフィルムは残渣は比較的少なくチラツキ感は優れていたものの、耐ブロッキング性、耐スクラッチ性、滑り性に劣るものであった。
【0110】
(比較例3)
シール層において、住友化学社製スミカセン(登録商標)E FV405を87.75重量%と、マスターバッチ(1)を1重量%と、マスターバッチ(3)を2.5重量%と、マスターバッチ(5)を1.25重量%と、マスターバッチ(6)を7.5重量%とを混合し、中間層において、住友化学社製スミカセン(登録商標)E FV402を住友化学社製スミカセン(登録商標)E FV405に変え、ラミネート層において、住友化学社製スミカセン(登録商標)E FV405のみに変えた以外は実施例1と同様にしてポリエチレン系樹脂多層フィルム及び蒸着フィルムを得た。
比較例3で得られたフィルムは残渣は比較的少なく耐スクラッチ性も若干優れるものの突起が少なく耐ブロッキング性が劣るものであった。
【0111】
(比較例4)
シール層において、宇部丸善ポリエチレン社製ユメリット(登録商標)4540Fを87.25重量%と、マスターバッチ(1)を4重量%と、マスターバッチ(5)を1.25重量%と、マスターバッチ(6)を7.5重量%とを混合し、中間層において、住友化学社製スミカセン(登録商標)E FV402を宇部丸善ポリエチレン社製ユメリット(登録商標)4540Fに変え、ラミネート層において、宇部丸善ポリエチレン社製ユメリット(登録商標)4540Fのみに変えた以外は実施例1と同様にしてポリエチレン系樹脂多層フィルム及び蒸着フィルムを得た。
比較例4で得られたフィルムは残渣は比較的少なく耐スクラッチ性も優れるものの樹脂密度が高いことによりポリエチレン系の粒子による表面突起が安定せず、耐ブロッキング性、滑り性が十分ではなくバラツキも大きいものであった。
【0112】
(比較例5)
シール層において、住友化学社製スミカセン(登録商標)E FV405を87.25重量%と、マスターバッチ(2)を4重量%と、マスターバッチ(5)を1.25重量%と、マスターバッチ(6)を7.5重量%とを混合し、中間層において、住友化学社製スミカセン(登録商標)E FV402を住友化学社製スミカセン(登録商標)E FV405に変え、ラミネート層において、住友化学社製スミカセン(登録商標)E FV407のみに変えた以外は実施例1と同様にしてポリエチレン系樹脂多層フィルム及び蒸着フィルムを得た。
比較例5で得られたフィルムは残渣は少なく耐スクラッチ性も優れるものの添加量は多くても粒子径が大きい為、突起密度が低く、耐ブロッキング性、チラツキ感が劣るものであった。
【0113】
(比較例6)
シール層において、宇部丸善ポリエチレン社製ユメリット(登録商標)0540Fを86.25重量%、マスターバッチ(1)を4重量%と、マスターバッチ(5)を1.25重量%、マスターバッチ(6)を5.0重量%になるよう混合した組成物を用いてシール層用組成物を作製した以外は実施例1と同様にしてポリエチレン系樹脂多層フィルム及び蒸着フィルムを得た。
【0114】
(比較例7)
シール層において、住友化学社製スミカセン(登録商標)E FV402を95.90重量%と、マスターバッチ(1)を4重量%と、マスターバッチ(5)を1.25重量%と、マスターバッチ(6)を5.0重量%とを混合し組成物を用いてシール層用組成物を作製した以外は実施例2と同様にしてポリエチレン系樹脂多層フィルム及び蒸着フィルムを得た。
【0115】
結果を表1、表2に示す。
【0116】
【表1】
【0117】
【表2】
【0118】
以上、本発明のポリエチレン系樹脂フィルムについて、複数の実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、各実施例に記載した構成を適宜組み合わせる等、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明記載のポリエチレン系樹脂フィルムは、その特性に優れるため食品包装用等、広範囲な用途のフィルムに好適に使用できる。