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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112932
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】LED用レンズ
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/58 20100101AFI20240814BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20240814BHJP
   F21V 3/00 20150101ALI20240814BHJP
【FI】
H01L33/58
G02B3/00 Z
F21V3/00 510
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024083724
(22)【出願日】2024-05-23
(62)【分割の表示】P 2021209880の分割
【原出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】507182807
【氏名又は名称】クアーズテック合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100194124
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 まゆみ
(74)【代理人】
【識別番号】100131026
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 博
(72)【発明者】
【氏名】小林 弘明
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレプ ラメッシュ
(72)【発明者】
【氏名】宮本 真太郎
(72)【発明者】
【氏名】横山 優
(72)【発明者】
【氏名】村山 啓人
(57)【要約】
【課題】透過率の低下を抑制することができ、かつ、搬送中及び離脱時における位置ずれを防止し、製造歩留まりを向上させることができるLED用レンズを提供する。
【解決手段】LED用レンズ10は、シリカガラスよりなる本体部11を備える。本体部11は、レンズ部12とフランジ部13とを有している。本体部11は、LEDからの光が出射する表面の少なくとも一部に、複数の凹部が不規則に設けられた凹部形成領域を有し、凹部の幅は3μm以上20μm以下、深さは0.1μm以上1μm以下、存在密度は50個/mm以上1000個/mm以下であり、発光素子からの光が出射する表面における凹部以外の部分の算術平均粗さRa(JIS B 0601-1994)が0.02μm以上0.08μm以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子を覆うLED用レンズであって、
透明部材からなる本体部を備え、
前記本体部は、前記発光素子からの光が出射する表面の少なくとも一部に、複数の凹部が不規則に設けられた凹部形成領域を有し、
前記凹部の幅は3μm以上20μm以下、深さは0.1μm以上1μm以下、存在密度は50個/mm以上1000個/mm以下であり、
前記発光素子からの光が出射する表面における前記凹部以外の部分の算術平均粗さRa(JIS B 0601-1994)が0.02μm以上0.08μm以下である
ことを特徴とするLED用レンズ。
【請求項2】
前記発光素子からの光が出射する表面に反射防止膜が形成されていることを特徴とする請求項1記載のLED用レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED(Light Emitting Diode)用のレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線殺菌は、従来から広く水銀灯が使用されてきたが、「水銀に関する水俣条約」の発効により、2020年以降、水銀製品の製造や輸出入が制限されてきた。そのため、現在使用されている水銀灯の寿命が尽きた後の代替光源として、紫外線LED、特に波長280nm以下の深紫外線LEDが注目されている。LEDは、例えば、基本部材により支持され、透明封止部材などで密閉して用いられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、透明封止部材について、少なくとも発光素子からの光が出射する表面に微小凹部を設け、各微小凹部の平均幅を0.1μm以上2.0μm以下、各微小凹部の平均深さを5nm以上50nm以下、微小凹部の平均存在頻度を1mm当たり、10万個以上300万個以下とすることが記載されている。
【0004】
また、例えば、特許文献2には、透明封止部材を搬送する装置として、吸着パッドを用い真空吸着により透明封止部材を吸着して搬送する装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特再公表2019-12743号公報
【特許文献2】特開平6-320465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の透明封止部材では、平均幅が0.1μm以上2.0μm以下、平均深さが5nm以上50nm以下の非常に微小な凹部が、1mm当たり10万個以上300万個以下と非常に多く存在するので、LED素子からの光が散乱して透過率が低下し、光量が低下するおそれがあった。
【0007】
また、従来は、真空吸着により透明封止部材を搬送中に、表面の滑りにより、搬送位置への位置ずれが発生し、支障を生じてしまうという問題があった。更に、搬送後に透明封止部材を脱離させる時に、透明封止部材が容易に外れずに跳ね上がり、搬送位置への位置ずれが発生して、支障を生じてしまうという問題もあった。そのため、透明封止部材のソーティング工程や、透明封止部材とLED素子を配設した基本部材との接合時に製造歩留まりが低下するおそれがあった。
【0008】
本発明は、このような問題に基づきなされたものであり、透過率の低下を抑制することができ、かつ、搬送中及び離脱時における位置ずれを防止し、製造歩留まりを向上させることができるLED用レンズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のLED用レンズは、発光素子を覆うものであって、透明部材からなる本体部を備え、本体部は、前記発光素子からの光が出射する表面の少なくとも一部に、複数の凹部が不規則に設けられた凹部形成領域を有し、凹部の幅は3μm以上20μm以下、深さは0.1μm以上1μm以下、存在密度は50個/mm2以上1000個/mm2以下であり、発光素子からの光が出射する表面における前記凹部以外の部分の算術平均粗さRa(JIS B 0601-1994)が0.02μm以上0.08μm以下のものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のLED用レンズによれば、この搬送中及び離脱時における位置ずれをより効果的に防止することができると共に、発光素子からの光の散乱を抑制することで透過率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施の形態に係るLED用レンズの構成を表す図である。
図2図1に示したLED用レンズを用いたLED装置の構成を表す断面図である。
図3図1に示したLED用レンズの表面に形成された凹部の構成を模式的に表す図である。
図4】実施例1におけるレンズ部の頂部表面の凹部を表す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係るLED用レンズ10の構成を表すものであり、(A)は断面構成を表し、(B)は上から見た構成を表している。図2は、LED用レンズ10を用いたLED装置20の断面構造を表すものである。図3は、LED用レンズ1の表面に形成された凹部11Aの構成を模式的に表すものである。
【0014】
このLED用レンズ10は、LED21等の発光素子を封止する透明封止部材であり、LED装置20に用いられる。LED装置20は、例えば、LED用レンズ10と、LED21と、LED21を支持する基本部材22とを備え、LED用レンズ10はLED21を覆うように基本部材22に対して配設されている。基本部材22は、例えば、窒化アルミニウム等のセラミックにより構成される。基本部材22には、例えば、LED21を配設する凹状の配設部23が設けられており、配設部23の上部には、例えば、LED用レンズ10を配設するための段差部24が設けられている。基本部材22とLED用レンズ10とは、例えば、AuSnはんだよりなるはんだ層25により溶接されて接合される。段差部24の上面には、はんだとの濡れ性を向上させるために金属よりなるメタライズ層26が形成されていることが好ましい。
【0015】
LED用レンズ10は、透明部材からなる本体部11を備えている。本体部11は、例えば、シリカガラスよりなり、半球体状のレンズ部12と、レンズ部12の平面側周縁部に設けられたフランジ部13とを有している。本体部11は、LED21からの光が出射する表面の少なくとも一部、すなわち、レンズ部12の外側の表面の少なくとも一部に、複数の凹部11Aが不規則に設けられた凹部形成領域を有している。このレンズ部12の外側の表面は、LED用レンズ10を真空吸着により搬送する際の被吸着面でもある。凹部形成領域は、レンズ部12の外側の表面全体に設けられていることが好ましい。なお、図1および図2では、凹部形成領域および凹部11Aの記載を省略している。
【0016】
LED21からの光が出射する表面の少なくとも一部に前記所定の凹部11Aを設けることにより、発光素子からの光の散乱を抑制することで透過率の低下を抑制しつつ、LED用レンズ10を真空吸着で搬送する際に、吸着パットとの摩擦力を増加させることができると共に、吸着パットが凹部11Aに隙間なく変形して食い込むことで密閉性を高めることでき、それにより吸着力を向上させて、搬送中における位置ずれを抑制することができる。また、吸着搬送後にLED用レンズ10と吸着パットとのリークが容易になり、脱離が容易になることで、位置ずれを抑制することができる。
【0017】
更に、凹部11Aを規則的に設けた場合には、吸着パットの微小な位置ずれによって、吸着パットが接触する凹部11Aの数が大きく変り、LED用レンズ10を搬送するための吸着力が変化しやすいのに対して、凹部11Aを不規則に設けることにより、吸着パットが接触する凹部11Aの数が平均化され、吸着パットの位置がずれてもLED用レンズ10を搬送するための吸着力の変化を小さくすることができ、搬送装置の吸着条件を安定させることができる。
【0018】
凹部11Aの幅Wは、3μm以上20μm以下の範囲内であることが好ましい。すなわち、凹部11Aの幅Wの最小値が3μm、最大値が20μmであることが好ましい。幅Wが3μm未満では、吸着パットが凹部に隙間なく変形することができずに、空隙になって、空気漏れにより、吸着力が低下してしまうためである。また、幅Wが20μm超では、吸着パットでLED用レンズ10を吸着した時に、1つの凹部11Aの全体を塞ぐことができない箇所の数が多くなり、空気漏れにより、吸着力が低下してしまうからである。なお、凹部11Aの「幅W」とは、凹部11Aを垂直上方から見たときの表面外周形状の最長長さを意味する。例えば、表面外周形状が円形である場合には、その直径であり、矩形である場合には対角線のうち長い方の長さである。
【0019】
凹部11Aの深さHは0.1μm以上1μm以下の範囲内であることが好ましい。すなわち、凹部11Aの深さHの最小値が0.1μm、最大値が1μmであることが好ましい。深さHが0.1μm未満では、吸着パットの変形量が少なく、十分に吸着力を向上させることが難しく、一方、深さHが1μm超では、吸着パットが凹部11Aに隙間なく変形することができず、空気漏れによる保持力が低下してしまうからである。つまり、この範囲内において凹部11Aに吸着パットが隙間なく変形して密閉性が向上し、吸着力が向上する。また、深さHが1μmを超えると、LED21からの光が散乱しやすくなり透過率が低下する。
【0020】
凹部11Aの存在密度は50個/mm以上1000個/mm以下であることが好ましい。存在密度が50個/mm未満では、吸着力の向上が見込まれず、搬送中の搬送位置への位置ずれが発生しやすく、また、搬送後にLED用レンズ10を脱離させる時に、LED用レンズ10が容易に外れずに搬送位置への位置ずれが発生しやすいからである。一方、存在密度が1000個/mm超では、凹部11Aの増加によるLED21からの光の散乱が多くなり、透過率が低下し、また、吸着搬送時に空気漏れが多くなり、吸着力が不安定になりやすいからである。
【0021】
なお、凹部11Aの存在密度は、凹部形成領域において、1mm×1mmの大きさの任意の5箇所の測定領域について測定し、5箇所の測定領域のいずれもが50個/mm以上1000個/mm以下の範囲内であれば上述した効果を得ることができる。具体的には、凹部形成領域において、1mm×1mmの大きさの任意の5箇所の測定領域で凹部11Aの存在密度を測定し、いずれも50個/mm以上1000個/mm以下の範囲内であれば、凹部形成領域における凹部11Aの存在密度は50個/mm以上1000個/mm以下であると判断する。
【0022】
凹部11Aの表面外周形状は、凹部11Aを垂直上方から見たとき、曲線又は曲線と直線との組み合わせからなる角部が存在しない形状よりなることが好ましく、凹部11Aの内面形状は、凹部11Aの任意の垂直断面において、曲面又は曲面と平面との組み合わせからなる角部が存在しない形状よりなることが好ましい。これにより、角部の存在でLED21からの光が散乱し、透過率が低下するのをより防止することができる。また、角部の存在により、凹部11Aに吸着パッドが隙間なく変形できずに空隙ができ、空気漏れにより、搬送中に位置ずれが発生しやすくなると共に、凹部11Aに吸着パットが接触した時にLED用レンズ10の欠けや亀裂が発生しやすくなるのを、より効果的に防止できる。更に、吸着パットが当該角部に引っ掛かって摩耗し、吸着パットの屑がLED用レンズ10の表面に付着しやすくなり、外観検査等で支障が生じるのを防止できる。
【0023】
凹部11Aの上端外縁は、全周にわたり、まるめられており、鋭角部を有さない湾曲形状であることが好ましい。吸着パットの密着性を向上させることができると共に、摩耗を低減させることができるからである。
【0024】
レンズ部12の外側の表面における凹部11A以外の部分の算術平均粗さRa(JIS B 0601-1994)は、0.02μm以上0.08μm以下であることが好ましい。算術平均粗さRaが0.02μm以上であることにより、別途、高精度な研磨を必要とせず、高い生産性が得られる。一方、算術平均粗さRaを0.08μm以下とすることにより、光の散乱を抑え、より高い透過率が得られる。
【0025】
また、少なくともレンズ部12の外側の表面には、反射防止膜(図示せず)が形成されることが好ましい。反射防止膜により、凹部11Aの曲面を形成した時の微小な段差、例えば、加工ツール跡の段差がゆるやかになり、より吸着パットの密着性を向上させることができるからである。また、凹部11Aの上端外縁の角がなめらかになり、吸着パッドの摩耗を低減させることができると共に、LED用レンズ10のカケや亀裂も低減させることができるからである。反射防止膜は、MgF等の低屈折率材料からなる単層膜により構成するようにしてもよく、また、MgF、Al、SiO等の低屈折率材料と、Nb,TiO、ZrO、Ta等の高屈折率材料とを組み合わせた多層膜により構成するようにしてもよい。
【0026】
フランジ部13は、例えば、レンズ部12を基本部材22に配設するためのものであり、段差部24にフランジ部13の底面を当接させて配設される。フランジ部13の底面、すなわち段差部24との当接面には、例えば、はんだとの濡れ性を向上させるために金属よりなるメタライズ層14が形成されていることが好ましい。メタライズ層14は、例えば、枠状に形成されており、本体部11の側から順に、下地層、中間層、及び、表面層を有していることが好ましい。下地層は、Cr層及びTi層のうちの少なくとも1層を含むことが好ましく、中間層は、Ni層及びTi層のうちの少なくとも1層を含むことが好ましく、表面層は、Auにより構成することが好ましい。
【0027】
このLED用レンズ10は、例えば、次のようにして製造することができる。まず、本体部11の金属型を形成し、この金属型のレンズ部12に該当する部分の表面に機械加工により複数の凹部11Aに該当する窪みを不規則に形成する。凹部11Aに該当する窪みの形状や密度は上述した通りである。次いで、作製した金属型に樹脂を流し込み、金属型の形状を転写し、転写した樹脂型にシリカ粉を含むスラリーを流し込み、ゲルキャスト法にて本体部11を形成する。続いて、例えば、本体部11の底面を研磨加工し、フランジ部13の厚みを調整し、フランジ部13の底面に、例えば、真空蒸着法又はスパッタリング法によりメタライズ層14を形成する。その後、必要に応じて、レンズ部12の表面に反射防止膜を形成する。
【0028】
このように本実施の形態によれば、LED21からの光が出射する表面の少なくとも一部に、複数の所定の大きさの凹部11Aが設けられた凹部形成領域を有するようにしたので、発光素子からの光の散乱を抑制することで透過率の低下を抑制しつつ、LED用レンズ10を真空吸着で搬送する際に、吸着パットとの摩擦力を増加させることができると共に、密閉性を高めることでき、搬送中における位置ずれを抑制することができる。また、吸着搬送後に透明封止部材と吸着パットとのリークが容易になり、離脱が容易となるので、離脱時における位置ずれを抑制することができる。よって、製造歩留まりを向上させることができる。
【0029】
更に、凹部を不規則に設けるようにしたので、吸着パットが接触する凹部の数が平均化され、吸着パットの位置がずれても透明封止部材を搬送するための吸着力の変化を小さくすることができ、搬送装置の吸着条件を安定させることができる。
【0030】
加えて、凹部の存在密度を所定の範囲内とするようにしたので、搬送中及び離脱時における位置ずれをより効果的に防止することができると共に、発光素子からの光の散乱を抑制し、透過率の低下を抑制することができる。
【0031】
更にまた、凹部の表面外周形状を曲線又は曲線と直線との組み合わせからなる角部が存在しない形状とし、凹部の内面形状を曲面又は曲面と平面との組み合わせからなる角部が存在しない形状とすれば、発光素子からの光の散乱をより抑制することができると共に、吸着パットの吸着力をより向上させることができる。また、凹部に吸着パットが接触した時に欠けや亀裂が発生することを抑制することができると共に、吸着パットが引っ掛かって摩耗し、吸着パットの屑が透明封止部材の表面に付着することを抑制することができる。
【実施例0032】
(実施例1)
図1に示したようなLED用レンズ10を作製した。まず、本体部11の金属型をニッケルにより形成し、この金属型のレンズ部12に該当する部分の外側の表面全体に、幅Wが3μm~16μm、深さHが0.3μm~0.8μmの凹部11Aに該当する窪みを100個/mm~200個/mmの密度で不規則的に機械加工により形成した。作製した金属型にシリコーンゴムを流し込み、金属型の形状を転写した。転写したシリコーンゴム型にシリカ粉を含むスラリーを流し込み、ゲルキャスト法にて、本体部11を成形した。成形した本体部11を焼成し、フランジ径3.5mm×3.5mm、フランジ厚1.0mmのフランジ部13と、レンズ径φ3mm、レンズ高さ1.5mmのレンズ部12とを有するシリカガラス製の本体部11を作製した。得られた本体部110の底面を研磨加工し、フランジ厚を0.5mmに調整した。
【0033】
得られた本体部11を、株式会社キーエンスのレーザー顕微鏡(VK-9700)を用い、UVレーザー光(波長:408nm)照射して、レンズ部12の外側表面の凹部11Aを撮影し、凹部11Aの存在密度、幅Wおよび深さHの計測を行った。レンズ部12の頂部表面の撮影写真を図5に示す。
【0034】
凹部11Aの存在密度、幅Wおよび深さHの測定方法は、以下の通りである。
まず、LED用レンズ10を傾斜治具に設置し、レンズ部12の頂部表面の凹部11Aを観察した。
具体的には、対物レンズ×10で、レンズ部12の頂部の1mm×1mmの測定領域にある幅W3μm~20μmの凹部11Aの個数をカウントし、更に、対物レンズ×50にて、幅W3μm~20μmの凹部11Aの深さHを測定した。レンズ部12の頂部の測定領域における凹部11Aの個数は124個であった。
次に、LED用レンズ10を傾斜させて、同様の方法で、順に、1mm×1mmの測定領域を他の4箇所について凹部11Aを観察した。
各凹部11Aの個数は、2箇所目が156個、3箇所目が82個、4箇所目が62個、5箇所目が183個であった。5箇所の平均値は121個であった。各凹部11Aの幅Wを測定したところ、いずれでも3μm~20μmの範囲内にあった。各凹部11Aの深さHを測定したところ、いずれも0.1μm~1μmの範囲内にあった。
なお、顕微鏡による観察から、各凹部11Aの上端外縁は、いずれも、全周、鋭角部を有さない湾曲形状であることが確認された。また、各凹部11Aの表面外周形状は、曲線又は曲線と直線との組み合わせからなる角部が存在しない形状であり、各凹部11Aの内面形状は、曲面又は曲面と平面との組み合わせからなる角部が存在しない形状であることが確認された。
【0035】
次に、アメテックス社のフォームタリサーフ(PGI830)でレンズ部12の外側表面における凹部11A以外の部分の算出平均粗さRaを測定した。測定はカットオフ0.25mm、基準長さ0.25mm、評価長さ1.25mm、フィルター処理はガウシアンフィルターを使用した。その結果、算術平均粗さRaは0.033μmであった。
【0036】
続いて、フランジ部13の底面に、スパッタリング装置で、厚み50nmのCr層、厚み150nmのNi層、厚み300nmのAu層をこの順に成膜した。成膜した本体部11に感光性レジストを塗布し、フォトリソグラフィにて、外径3.3mm×3.3mm、内径2.7mm×2.7mmの枠状のメタライズ層14を形成した。
【0037】
作製したLED用レンズ10について、UVテープを貼りつけた6インチのウエハーリングに等間隔で順にソーティングする搬送試験を行った。ソーティングはゴム製吸着パットをレンズ部12の外側表面に吸着させて1000個搬送した。ソートした1000個のLED用レンズ10に位置ずれは見られなかった。
【0038】
また、ソートしたLED用レンズ10にUV光を照射し、UVテープの粘着力を低下させた後、窒化アルミニウムよりなる基本部材22と接合するために、外径3.2mm×3.2mm、内径2.8mm×2.8mm、厚み20μmの枠状のAuSnはんだよりなるはんだ層25を、フランジ部13と基本部材22の段差部24との間に挿入し、温度300℃、圧力0.5MPa、30秒間のプレス条件下で接合し、LED装置20を得た。その際、ゴム製吸着パットをレンズ部12の外側表面に吸着させて、接合装置の基本部材22の上に搬送した。LED装置20を100個作製したところ、接合位置のずれによる製造不良は発生しなかった。
【0039】
更に、作製したLED用レンズ10の透過率を評価するために、前記実施例1と同等の凹部を一面に形成した平板を実施例1と形状以外は同様の方法で作製し、凹部を形成した面の裏面を研磨加工して、30mm×30mm×2.0mm(レンズ高さ1.5mm+フランジ厚0.5mmに相当)の平板に加工した。作製した平板をアメテックス社のフォームタリサーフ(PGI830)で、凹部を形成した面における凹部以外の部分の算術平均粗さRaを測定した。算術平均粗さRaは0.045μmであり、上記LEDレンズ10のレンズ部12の外側表面と同等であった。また、凹部の存在密度を同様に5箇所測定した平均値は132個、各凹部の幅Wはいずれも3μm~20μmの範囲内、各凹部の深さHはいずれも0.1μm~1μmの範囲内であり、上記LEDレンズ10と同等であった。得られた平板の透過率を株式会社日立製作所製の分光光度計(UH4150)で測定した。測定した結果、波長300nmの透過率は92.8%であった。
【0040】
(比較例1)
シリカガラス製のブロックを切削、研磨加工して、レンズ部とフランジ部とを有し、レンズ部に凹部が無いシリカガラス製の本体部を作製した。作製した本体部は、凹部が無いことを除き、実施例1と同様である。
得られた本体部のレンズ部の外側表面における算出平均粗さRaを実施例1と同様に測定した。算術平均粗さRaは0.003μmであった。
続いて、実施例1と同様にしてフランジ部の底面に、メタライズ層を形成し、凹部が無いLEDレンズを作製した。
【0041】
比較例1のLED用レンズについても、実施例1と同様にして1000個について搬送試験を行った。その結果、ソートティング中にLED用レンズが吸着パットから滑って斜めになり、UVテープに張り付けた時に、指定貼り付け位置からの位置ずれが発生した。1000個中170個についてずれがあることを確認した。
【0042】
また、比較例1のLED用レンズについても、実施例1と同様にして、LED装置を100個作製した。比較例1では、レンズ部の外側表面を吸着して基本部材の上に搬送した時に、LED用レンズが吸着パットから滑って斜めになり、位置ずれが発生した状態で接合された。比較例1では、100個中23個について接合位置のずれによる製造不良が発生した。
【0043】
また、作製した比較例1のLED用レンズの透過率を評価するために、前記比較例1と同様にして30mm×30mm×2.0mmの凹部が無い平板を作製し、実施例1と同様にして透過率を測定した。測定した結果、波長300nmの透過率は93.0%であり、実施例1と大きな差異は見られなかった。
【0044】
(比較例2)
実施例1に記載したニッケル製の本体部の金属型の表面に凹部を形成せずシリコーンゴム型を作製し、かつ原料となるシリカ粉の粒径を調整し、ゲルキャスト法により、レンズ部の外側表面に、幅が0.1μm~2.0μm、深さが5nm~50nmの凹部を約25万個/mmの存在密度で有し、レンズ部の外側表面の算術平均粗さRaが0.020μmとなるシリカガラス製の本体部を作製した。作製した本体部は、凹部の構成が異なることを除き、実施例1と同様である。作製した比較例2の本体部の透過率を評価するために、実施例1と同様に、前記比較例2と同等の凹部を一面に形成した平板を比較例2と形状以外は同様の方法で作製し、分光光度計で波長300nmの透過率を測定した。その結果、透過率は88%と実施例1および比較例1に比べて低いものであった。これは、凹部の数が透過率に影響していると考えられる。
【0045】
(比較例3)
本体部の金属型の表面に幅1μm、深さ0.05μmの凹部を50個/mm形成し、レンズ部の外側表面に幅1μm、深さ0.05μmの凹部を50個/mm形成したことを除き、実施例1と同様にLED用レンズを作製した。比較例3のLED用レンズについても、実施例1と同様にして1000個について搬送試験を行った。その結果、ソートティング中にLED用レンズが吸着パットから滑って斜めになり、UVテープに張り付けた時に、指定貼り付け位置からの位置ずれが発生した。1000個中100個についてずれがあることを確認した。
【0046】
また、比較例3のLED用レンズについても、実施例1と同様にして、LED装置を100個作製した。比較例3では、レンズ部の外側表面を吸着して基本部材の上に搬送した時に、LED用レンズが吸着パットから滑って斜めになり、位置ずれが発生した状態で接合された。比較例3では、100個中16個について接合位置のずれによる製造不良が発生した。
【0047】
(比較例4)
本体部の金属型の表面に幅5μm~30μm、深さ0.3μm~1μmの凹部を2000個/mm形成し、レンズ部の外側表面に幅5μm~30μm、深さ0.3μm~1μmの凹部を2000個/mm形成したことを除き、実施例1と同様にLED用レンズを作製した。比較例4のLED用レンズについても、実施例1と同様にして1000個について搬送試験を行った。その結果、ソートティング中にLED用レンズが吸着パットから外れて落下し、1000個中720個が搬送できなかった。
【0048】
また、比較例4のLED用レンズについても、実施例1と同様にして、LED装置を100個作製した。比較例4では、レンズ部の外側表面を吸着して基本部材の上に搬送した時に、LED用レンズが吸着パットから外れて落下し、100個中69個は接合することができなかった。
【0049】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。
【0050】
例えば、上記実施の形態では、LED用レンズ10の構成について具体的に説明したが、他の構成を有していてもよい。例えば、上記実施の形態及び実施例では、フランジ部13,33の外周形状が正方形の場合について説明したが、円形でもよく、正方形以外の多角形でもよい。また、フランジ部13,33は設けられていなくてもよい。その場合には、例えば、レンズ部12の平面部の周縁部や、キャップ部32の開口端部を基本部材22に当接させて配設することができる。更に、上記実施の形態では、レンズ部12の形状が半球状の場合について説明したが、非球面や半長球状等、半球(球面)以外の形状であってもよい。
【0051】
加えて、上記実施の形態では、基本部材22の構成について具体的に説明したが、他の構成を有していてもよい。例えば、上記実施の形態では、平板の一面にLED21を配設する凹状の配設部23が設けられた場合について説明したが、配設部23が形成されていない平板の上にLED21を配設するようにしてもよく、また、筐体状としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、LED用のレンズに用いることができる。
【符号の説明】
【0053】
10…LED用レンズ、11…本体部、11A…凹部、12…レンズ部、13…フランジ部、14…メタライズ層、20…LED装置、21…LED、22…基本部材、23…配設部、24…段差部、25…はんだ層、26…メタライズ層
図1
図2
図3
図4