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特開2024-112944ニキビの治療のためのプロピオニバクテリウム・アクネスに対する細菌療法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112944
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】ニキビの治療のためのプロピオニバクテリウム・アクネスに対する細菌療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/74 20150101AFI20240814BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240814BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240814BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20240814BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240814BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240814BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20240814BHJP
   A61P 17/10 20060101ALI20240814BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20240814BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20240814BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20240814BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20240814BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240814BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20240814BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20240814BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240814BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20240814BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20240814BHJP
   C07K 14/31 20060101ALI20240814BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20240814BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
A61K35/74 A ZNA
A61P27/02
A61P29/00
A61P17/06
A61P31/04
A61P17/00
A61P37/08
A61P17/10
A61K38/17
A61K9/107
A61K9/06
A61K9/12
A61K9/14
A61K9/19
A61K9/70 401
A61K9/08
A23L33/135
C12N1/20 A
C07K14/31
G01N33/50 Q
G01N33/68
A61K35/74 A
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024084404
(22)【出願日】2024-05-23
(62)【分割の表示】P 2021512838の分割
【原出願日】2019-09-13
(31)【優先権主張番号】62/730,999
(32)【優先日】2018-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】110003007
【氏名又は名称】弁理士法人謝国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ギャロ、リチャード エル
(72)【発明者】
【氏名】ナカツジ、テルアキ
(72)【発明者】
【氏名】オニール、アラン オー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】皮膚疾患及び皮膚障害を治療するための組成物及び方法、ならびにニキビの治療に有用な組成物を提供する。
【解決手段】S. capitis N030_E12、S. epidermidis AMT5_C5、S. epidermidis N009_G7、S. epidermidis N018_F3、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される微生物を含む、本質的にこれらからなる、またはこれらからなる局所プロバイオティクス組成物、ならびに該組成物の有効量を、それを必要とする対象の皮膚又は粘膜に適用することにより、皮膚又は粘膜感染症、アトピー性皮膚炎、乾癬、乳房炎、ニキビ、又はヒト又は他の哺乳動物における皮膚の異常に関連する他の障害を治療する方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
請求項1:
S. capitis N030_E12、S. epidermidis AMT5_C5、S. epidermidis N009_G7、S. epidermidis N018_F3、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される微生物を含む、本質的にこれらからなる、またはこれらからなる局所プロバイオティクス組成物。
請求項2:
請求項1に記載のプロバイオティック組成物の発酵抽出物を含む、ポストバイオティック組成物。
請求項3:
請求項1または2に記載のポストバイオティックのプロバイオティクス及び薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
請求項4:
1つまたは複数のプロバイオティック細菌株、及び任意選択で、プレバイオティック化合物、保護剤、保湿剤、皮膚軟化剤、研磨剤、塩、及び/または界面活性剤の増粘局所製剤を含む組成物であって、
該1つまたは複数のプロバイオティック細菌株は、S. capitis、S. epidermidis、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つまたは複数の細菌株を含み;
該組成物は、皮膚、頭皮、または粘膜の異常の障害の局所治療のために処方され;
および
該組成物は、アクネ菌(C. acnes)の増殖を抑制する、組成物。
請求項5:
1つまたは複数のプロバイオティック細菌株が、S. capitis N030_E12、S. epidermidis、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項4に記載の組成物。
請求項6:
S. epidermidisの1つまたは複数のプロバイオティクス細菌が、S. epidermidis AMT5_C5、S. epidermidis N009_G7、S. epidermidis N018_F3、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項5に記載の組成物。
請求項7:
1つまたは複数のプロバイオティック細菌株が、S. epidermidis AMT5_C5、S. epidermidis N009_G7、S. epidermidis N018_F3、及びそれらの任意の組み合わせを含む、請求5に記載の組成物。
請求項8:
各プロバイオティクス細菌株が、アクネ菌の増殖を抑制する、請求項5に記載の組成物。
請求項9:
1つまたは複数のプロバイオティック細菌株が生きた形で提供される、請求項4に記載の組成物。
請求項10:
1つまたは複数のプロバイオティクス細菌株が、凍結乾燥またはフリーズドライまたはスプレードライの形態で提供される、請求項4に記載の組成物。
請求項11:
プロバイオティック細菌は生きた形に再構成することができる、請求項10に記載の組成物。
請求項12:
請求項4~11のいずれか1項に記載の組成物の有効量を、それを必要とする対象の皮膚または粘膜に適用することにより、皮膚または粘膜感染症、アトピー性皮膚炎、乾癬、乳房炎、ニキビ、またはヒトまたは他の哺乳動物における皮膚の異常に関連する他の障害を治療する方法。
請求項13:
組成物が局所的に適用される、請求項12に記載の方法。
請求項14:
組成物が、クリーム、軟膏、膏、スプレー、粉末、油、増粘製剤または湿布として処方される、請求項13に記載の方法。
請求項15:
請求項1、2または4~11のいずれか一項に記載の組成物、またはアクネ菌の増殖、生存能力または活性を抑制する医薬組成物の有効量を投与することを含む、アクネ菌に関連する皮膚障害を治療する方法。
請求項16:
皮膚障害が、ニキビ、慢性眼瞼炎及び眼内炎からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
請求項17:
投与が局所適用によるものである、請求項12に記載の方法。
請求項18:
S. capitis N030_E12、 S. epidermidis AMT5_C5、S. epidermidis N009_G7、 S. epidermidis N018_F3及び担体から選択される1つまたは複数の細菌からなる局所用組成物。
請求項19:
担体がローション、チンキ剤、クリームまたは軟膏を形成する、請求項18に記載の局所組成物。
請求項20:
S. capitis N030_E12、 S. epidermidis AMT5_C5、S. epidermidis N009_G7、 S. epidermidis N018_F3またはそれらの任意の組み合わせの培養物から得られた無細胞発酵抽出物を含む組成物。
請求項21:
請求項20に記載の組成物及び薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
請求項22:
請求項20に記載の組成物及び薬学的に許容される担体を含む、局所適用の製剤。
請求項23:
組成物または製剤が、複数のフェノール可溶性モジュリンペプチド(PSM)を含む、請求項20または21に記載の組成物、または請求項22に記載の製剤。
請求項24:
PSMが、PSMβ1、 PSMβ3、PSMβ4、 PSMβ6、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるPSMである、請求項23に記載の組成物または製剤。
請求項25:
組成物または製剤がPSMβ1、3、4及び6を含む、請求項24に記載の組成物または製剤。
請求項26:
製剤が、クリーム、軟膏、膏、スプレー、粉末、油、増粘製剤または湿布を含む、請求項25に記載の製剤。
請求項27:
アクネ菌の増殖、生存率または活性を抑制する、請求項20~26のいずれか1項に記載の組成物または製剤の有効量を投与することを含む、アクネ菌に関連する皮膚障害を治療する方法。
請求項28:
対象者の皮膚からのサンプル中のPSMβの量を測定することを含む、皮膚疾患または障害を診断する方法であって、測定により、PSMβ1、PSMβ3、PSMβ4、PSMβ6及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるPSMのレベルを決定し、前記レベルを、PSMβ1、PSMβ3、PSMβ4、PSMβ6及びそれらの任意の組み合わせの正常な対照レベルと比較し、サンプルのレベルが低い場合は、皮膚疾患または障害を示す、方法。
請求項29:
皮膚疾患または障害が、アクネ菌感染症である、請求項28に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【連邦政府が後援する研究に関する声明】
【0001】
本発明は、国立衛生研究所による授与番号AI118816、AR067547、AI117673-02、AR06781、及びAI052453、及びAI052453の政府の支援を受けてなされた。政府は本発明において一定の権利を有する。
【関連出願】
【0002】
この出願は、35 U.S.C.§119に基づいて、2018年9月13日に出願された米国仮特許出願第62/730,999号の優先権を主張する。その開示は、参照により本明細書組み入れるものとする。
【配列表の参照による組み込み】
【0003】
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出された配列表を含み、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。2019年9月13日に作成された該ASCIIコピーは、00015-354WO1_SL.txtと命名され、サイズは12,125,812バイトである。
【技術分野】
【0004】
本開示は、皮膚の疾患及び障害を治療するための組成物及び方法、ならびにニキビを治療するための組成物及び製剤に関する。
【背景】
【0005】
ヒトの皮膚は、病原体から宿主を防御するための自然免疫バリアの重要な要素を構成する多様な微生物群集を宿している。
【要約】
【0006】
本開示は、S. capitis N030_E12、 S. epidermidis AMT5_C5、 S. epidermidis N009_G7、 S. epidermidis N018_F3及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される微生物を含む、本質的にそれからなる、または微生物からなる局所プロバイオティクス組成物を提供する。
【0007】
本開示は、S. capitis N030_E12、 S. epidermidis AMT5_C5、 S. epidermidis N009_G7、 S. epidermidis N018_F3及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択された微生物を含む、本質的にそれからなる、またはそれからなるプロバイオティック組成物の発酵抽出物を含むポストバイオティック組成物を提供する。
【0008】
本開示はまた、本開示のポストバイオティックのプロバイオティクス及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0009】
本開示はまた、アクネ菌(C. acnes(P. acnes))に関連する皮膚障害を治療する方法であって、アクネ菌(C. acnes)の増殖、生存率または活性を抑制する本開示の組成物または医薬組成物の有効量を投与することを含む方法を提供する。一実施形態では、皮膚障害は、ニキビ、慢性眼瞼炎及び眼内炎からなる群から選択される。別のまたはさらなる実施形態では、投与は、局所適用によるものである。
【0010】
本開示はまた、S. capitis N030_E12, S. epidermidis AMT5_C5, S. epidermidis N009_G7, S. epidermidis N018_F3及び担体から選択された1つまたは複数の細菌からなる局所組成物を提供する。一実施形態では、局所組成物は、ローション、チンキ剤、クリームまたは軟膏を含む。
【0011】
本開示はまた、S. capitis N030_E12, S. epidermidis AMT5_C5, S. epidermidis N009_G7, S. epidermidis N018_F3またはそれらの任意の組み合わせから得られる無細胞発酵抽出物を含む組成物を提供する。
【0012】
本開示は、主に皮膚の毛包に存在するグラム陽性嫌気性細菌であるPropionibacterium acnes (P. acnes)の強力な抑制剤であるCoNS株を提供する。本開示は、P. acnesに対して強力な抗菌活性を示すCoNSの14株を提供する(表1)。これらのCoNS株は、スクリーニングされ、ヒトの皮膚から分離され、Staphylococcus epidermidis、Staphylococcus hominis、Staphylococcus warneri、Staphylococcus capitis、Staphylococcus lugdinensisなどの多様な菌種に由来している。これらの抗P. acnes CoNS株は、炎症性ニキビの患者を治療するためにP. acnesを標的とする細菌療法に使用できる。
【0013】
本開示は、ニキビ及びC. acnesの感染を治療するのに有用な方法及び組成物を提供する。
【0014】
本開示は、S. capitis N030_E12、 S. epidermidis AMT5_C5、 S. epidermidis N009_G7、 S. epidermidis N018_F3及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される微生物を含む、本質的にそれからなる、または微生物からなる局所プロバイオティック組成物を提供する。
【0015】
本開示はまた、S. capitis N030_E12、 S. epidermidis AMT5_C5、 S. epidermidis N009_G7、 S. epidermidis N018_F3及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される微生物を含む、本質的にそれからなる、またはそれからなるプロバイオティック組成物の発酵抽出物を含むポストバイオティック組成物を提供する。
【0016】
本開示はまた、薬学的に許容し得る担体と組み合わせた上記のいずれかの医薬組成物を提供する。
【0017】
本開示は、1つまたは複数のプロバイオティック細菌株、及び任意選択で、プレバイオティック化合物、保護剤、保湿剤、皮膚軟化剤、研磨剤、塩、及び/または界面活性剤の増粘局所製剤を含む組成物を提供する。ここで、1つまた複数のプロバイオティック細菌株は、S. capitis, S. epidermidis及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1つまた複数の細菌株を含む。ここで、該組成物は、皮膚、頭皮、または粘膜の異常の障害の局所治療のために処方される。ここで、該組成物は、C. acnesの増殖を抑制する。一実施形態では、1つまたは複数のプロバイオティクス細菌株は、S. capitis N030_E12、S. epidermidis及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。別のまたはさらなる実施形態では、S. sepidermidisの1つまたは複数のプロバイオティクス細菌は、S. sepidermidis AMT5_C5、S. sepidermidis N009_G7、S. sepidermidis N018_F3及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。さらに別の実施形態では、1つまたは複数のプロバイオティクス細菌株は、S. capitis N030_E12、S. epidermidis AMT5_C5、S. epidermidis N009_G7、S. epidermidis N018_F3及びそれらの任意の組み合わせを含む。別の実施形態では、各プロバイオティクス細菌株は、C. acnesの増殖を抑制する。さらに別のまたはさらなる実施形態では、1つまたは複数のプロバイオティック細菌株が生きた形で提供される。さらに別の実施形態では、1つまたは複数のプロバイオティック細菌株は、凍結乾燥、フリーズドライ、またはスプレードライの形で提供される。さらなる実施形態では、プロバイオティック細菌は、生きた形に再構成することができる。
【0018】
本開示はまた、本明細書に記載された組成物または製剤の有効量を、それを必要とする対象に皮膚または粘膜に適用することによって、ヒトまたは他の哺乳類における皮膚または粘膜の感染症、アトピー性皮膚炎、乾癬、乳腺炎、ニキビ、または皮膚異常に関連する他の障害を治療する方法を提供する。一実施形態では、組成物は局所的に適用される。別のまたはさらなる実施形態では、組成物は、クリーム、軟膏、膏スプレー、粉末、油、増粘製剤または湿布として処方される。
【0019】
本開示はまた、C. acnesの増殖、生存率または活性を抑制する、本明細書に記載の組成物またはその医薬組成物の有効量を投与することを含む、C. acnesに関連する皮膚障害を治療する方法を提供する。一実施形態では、皮膚障害は、ニキビ、慢性眼瞼炎及び眼内炎からなる群から選択される。別のまたはさらなる実施形態では、投与は、局所適用によるものである。
【0020】
本開示はまた、S. capitis N030_E12、S. epidermidis AMT5_C5、S. epidermidis N009_G7、S. epidermidis N018_F3及び担体から選択される1つまたは複数の細菌からなる局所組成物を提供する。一実施形態では、担体は、ローション、チンキ剤、クリームまたは軟膏を形成する。
【0021】
本開示はまた、S. capitis N030_E12、S. epdermidis AMT5_C5、S. epidermidis N009_G7、 S. epidermidis N018_F3またはそれらの任意の組み合わせの培養物から得られる無細胞発酵抽出物を含む組成物を提供する。本開示はまた、S. capitis N030_E12、S. epidermidis AMT5_C5、S. epidermidis N009_G7、S. epidermidis N018_F3またはそれらの任意の組み合わせの培養物から得られた無細胞発酵抽出物及び薬学的に許容し得る担体を含む医薬組成物を提供する。
【0022】
本開示はまた、S. capitis N030_E12, S. epidermidis AMT5_C5、 S. epidermidis N009_G7、S. epidermidis N018_F3またはそれらの任意の組み合わせの培養物から得られた無細胞発酵抽出物及び薬学的に許容し得る担体を含む局所適用のための製剤を提供する。一実施形態では、組成物または製剤は、複数のフェノール可溶性モジュリンペプチド(PSMs)を含む。別のまたはさらなる実施形態では、PSMは、PSMβ1、PSMβ3、PSMβ4、PSMβ6及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるPSMである。別の実施形態では、組成物または製剤は、PSMβ1、3、4及び6を含む。さらなる実施形態では、製剤は、クリーム、軟膏、膏スプレー、粉末、油、増粘製剤または湿布を含む。
【0023】
本開示は、C. acnesの増殖、生存率または活性を抑制する本開示の組成物または製剤の有効量を投与することを含む、C. acnesに関連する皮膚障害を治療する方法を提供する。
【0024】
本開示はまた、対象者の皮膚からのサンプル中のPSMβの量を測定することを含む、皮膚疾患または障害を診断する方法であって、測定により、PSMβ1、PSMβ3、PSMβ4、PSMβ6及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるPSMのレベルを決定し、そのレベルをPSMβ1、PSMβ3、PSMβ4、PSMβ6及びそれらの任意の組み合わせの正常な対照レベルと比較することを含み、サンプル中でより低いレベルが皮膚疾患または障害を示す方法を提供する。一実施形態では、皮膚の疾患または障害は、C. acnes感染症である。
【0025】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、添付の図面及び以下の説明に記載されている。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、説明及び図面、ならびに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1A-1B】S. capitis N030_E12における予測されたNPRSクラスターのドメインアーキテクチャを示す。A. いくつかの遺伝子には、抗菌ペプチドの合成に関与するドメインが含まれる。AMP結合ドメインは、アシルキャリアータンパク質(ACP)の上流でのアシルCoA合成酵素活性を示唆する。縮合ドメインは、ペプチド抗生物質を合成する多くのマルチドメイン酵素に見られ、非リボソームペプチド生合成において、ペプチド結合を形成する縮合反応を触媒する。また、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)結合ドメインが存在し、これには短鎖脱水素酵素/還元酵素(SDR)スーパーファミリーのドメインが含まれる。B.細菌の二次代謝産物遺伝子を迅速に検出及び解析するバイオインフォマティクスツール天然物ドメインシーカー(NaPDos)を用いて、縮合ドメインを含むS. capitis遺伝子と既知の参照遺伝子との配列比較の結果は、既知の抗菌製品との類似性が明らかになった。
【0027】
図2A-2B】S. epidermidis株における予測されるトランス-AT PKSクラスターのドメインアーキテクチャを示す。A.ポリケチド合成酵素(PKS)は、単純な脂肪酸を重合して、ポリケチドと呼ばれる多種多様な天然物を作り出す。PKS酵素内の中で注目すべきドメインには、デヒドラターゼ(DH)及びケトレダクターゼ(KR)が含まれる。B. NaPDosを用いて、既知の参照遺伝子に対するS. epidermidis PKS_KS含有遺伝子の配列比較の結果は、既知の抗菌製品との類似性が明らかになった。
【0028】
図3】複数の異なるC. acnes株の滅菌上清におけるC. acnesの増殖抑制を示す。病変ニキビ関連菌株(C. acnes 25及び26)及び健康関連菌株(C. acnes 27) の増殖は、RCM培地で7日間培養した示されたC.acnes株の100%滅菌上清で72時間培養した後、OD600によって測定した。健康関連株C.acnes_UCSD_HI12及びC.acnes_UCSD_HI30(それぞれ単一遺伝子座配列タイプD1及びA5)の上清は、C. acnes増殖の強力な抑制剤であり、ニキビ生物療法の魅力的な候補として選択された(矢印とボックスで示されている)。
【0029】
図4】正常なヒトの皮膚から分離したコアグラーゼ陰性staphylococcus 24株のProprionibacterium acnes 2菌株(ATCC6919およびATCC29322)に対する抗菌活性を示す。各CoNSクローンの抗-P. acnes活性は、放射状拡散アッセイにより測定した。簡単に説明すると、各CoNSクローンの一晩培養液5μl(各四角の中の白い点)を、示されたP. acnesの菌株を含むブルセラブロス寒天プレートにスポットした。P. acnesを増殖させるために、この寒天プレートを37℃の嫌気状態で72時間培養した。黒い部分はP. acnesの増殖抑制ゾーンを表している(矢印参照)。各番号は、表Aに記載されているCoNS株のキー番号を表している。
【0030】
図5A-5F】C. acnesを標的とする抗菌性CoNS種を同定するための機能スクリーニング方法及び結果を示す。(A)ハイスループット抗菌機能スクリーニングの概略図であり、2つの異なる健康な皮膚部位からのCoNS株の収集及び選択、並びに寒天上での共培養またはCoNSの滅菌調整上清中での増殖を介してC.acnesに対する抗菌活性を検出するためのアッセイのの概要を示す。(B、C)CoNS株ライブラリーの50%滅菌ろ過上清での24時間のインキュベーション後のC.acnesの増殖(B)または寒天でのCoNS共培養によるC. acnesの増殖(C)。最も強力な抗菌CoNS分離株が選択され、S. capitis E12(赤)と同定されたが、S. hominus A9(青)はC. acnesに対して活性を示さなかった。(D)健康な皮膚及びニキビ皮膚から分離されたC. acnesのいくつかの株を含むいくつかの皮膚常在菌及び病原菌に対するS. capitis E12およびS. hominusA9の抑制活性を、抗菌性寒天アッセイによるゾーン抑制の大きさで測定した結果を示す表(+小、++中、+++大)。(E)培地のみ、またはS. capitis E12またはS. hominus A9の滅菌上清の濃度を上げた培地で24時間培養した後のC. acnes C2の増殖。(F)濃度を上げたS. capitis E12の滅菌上清で24時間処理した後の数種のstaphylocci及びC. acnesの生存率を、適切な選択寒天にプレーティングされた生存CFUの数で測定した。
【0031】
図6A-6H】S. capitis E12抗菌ペプチドの精製及び同定を示す。(A、B)S. capitis E12の60%硫酸アンモニウム沈殿上清をHLBカラムにロードし、80%アセトニトリルで溶出した。HLB溶出液をC8カートリッジにロードし、50%アセトニトリルで溶出した。寒天アッセイ(A)及び液体培養(B)により、C. acnesに対する活性について画分を測定した。(C)S. capitisで処理または未処理の上清の総タンパク質含有量、及びSPEフロースルー及び溶出画分の銀染色。(D)S. capitis上清のHPLC精製により、いくつかのペプチドピークが同定され、そのうちの1つの画分(21)が抗C. acnes活性を有すことが同定された(E)。画分21を5回の別々のHPLC分析からプールし、2番目のステップのHPLCで精製して、抗C. acnes活性(G)を示す2つの画分(15及び16)を得た。対照として4つの非活性画分を含む活性画分15及び16に対してMSを実施し、抗菌ペプチドの有望な候補として4つの異なるPSMβペプチドを同定した。(H)HPLC精製された活性画分(15及び16)及び対照の非活性画分(13、14、17及び18)のMS検出からの上位8ペプチドヒットの結果は、「抗菌性タンパク質」に対応するペプチドが見つかり、後にPSMβペプチドであることが確認された。
【0032】
図7A-7D】S. capitis E12の全ゲノム配列解析により、PSMβペプチドの配列及び予測される特性を明らかにすることを示す。(A)6つの遺伝子をコードするPSMβペプチド(PSMβ1-6)を含むS. capitis E12遺伝子クラスターを強調する概略図。(B)各ペプチドの予測された電荷を含む6つすべてのPSMβペプチド(配列番号:9437、9439、9441、9443、9445、9447)の多重配列アラインメント(ClustalW)。(C)PSMβ遺伝子を欠くATCC S.capitis株35661及び27840とのライブ共培養または滅菌上清曝露中のC. acnesに対する抗菌活性の欠如。(D)予測された両親媒性構造を示すPSMβ1の代表的なヘリカルホイールプロット(Heliquest)。
【0033】
図8A-8F】尋常性ざ瘡の治療薬としてのPSMβペプチド及び抽出物の前臨床効果を示す。(A)S. capitis E12抽出物または合成ペプチドPSMβ1、PSMβ4、PSMβ6の個別(A)または3つ全ての組み合わせの存在下で72時間培養後のC. acnes C2の抑制。(B)S. capitis抽出物、またはいくつかの異なる抗生物質の存在下で72時間培養後のC. acnes C2の増殖。(C)S. capitis E12、S.epidermidis C5、S. epidermidis 1457、及びS. capitis 35561の上清で24時間処理したNHEKsの細胞毒性は、最大LDH放出の百分率として表される。(D)S. capitis E12、S. epidermidis C5、S. epidermidis 1457及びS. capitis 35661の1x107 CFUを24時間接種した後のSKH1マウスの背部皮膚の紅斑の視覚的表現。(E)S. capitis E12抽出物(10 mg/mL)またはPBSコントロールによる処理の24時間後のex vivoブタ皮膚外植片上のC. acnes C2の生存CFUの総数。(F)S. capitis E12抽出物(10 mg/mL)またはPBSコントロールで処理した24時間後のSKH1マウスの背部皮膚におけるC. acnes C2の生存CFUの総数。
【0034】
図9A-9C】S. capitis活性分子の生物学的性質の特徴づけを示す。(A)S. capitis E12上清を未処理、90℃で15分間煮沸したもの、または10 kDaまたは3 kDa MWCOカラムで保持画分またはフロースルー画分に分離したものを用いて、またはそうでないものを用いて、液体培養でC. acnes C2の増殖を測定した。(B)抗菌活性を測定するために、S. capitis E12及び対照S. hominus A9の上清を、37℃で45分間パパインまたはプロテイナーゼKタンパク質分解消化(200 μg/ml)にかけ、C. acnesを含む寒天に接種した。(C)CoNS上清を異なる飽和量の硫酸アンモニウムで沈殿させ、各沈殿物の抗菌活性を処理後72時間のC. acnes C2の増殖によって測定した。
【0035】
図10A-10B】PSMβペプチドが、S. capitis E12上清のn-ブタノール処理によって抽出されることを示す。(A)C. acnes C2に対する抗菌活性は、S. capitis E12の無菌上清からPSMβをブタノール抽出した後も保持及び増強され、ランチビオティックを産生するS. hominus A9では増強されない。ブタノール抽出前後のS. capitis E12上清の総タンパク質含有量の銀染色は、小さなPSMβペプチドの濃縮を示す。
【0036】
図11】PSMβが宿主LL-37抗菌ペプチドと相乗作用しないことを示す。示された濃度でのS.capitis E12抽出物及びヒトLL-37抗菌ペプチドからのC.acnes C2に対する相乗的抗菌活性の評価。詳細な説明
【0037】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が別途に明示をしない限り、複数の指示語を含む。従って、例えば、「薬剤」という記載には、複数のそのような薬剤を含み、「微生物」という記載には、当業者に知られている1つまたは複数の微生物及びその同等な物を含む。
【0038】
また、「または」の使用は、特に記載しない限り、「及び/または」を意味する。同様に、「含む」、「含んでいる」、「包含する」、及び「包含している」は言い換えが可能であり、限定を意図するものではない。
【0039】
様々な実施形態の説明が「含む」という用語を使用する場合、当業者は、いくつかの特定の例において、その代わりに、実施形態が「本質的にからなる」または「からなる」という用語を使用して実施形態を説明できることを理解するであろう。
【0040】
別途に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する当業者により一般に理解されるものと同様な意味を有する。本明細書に記載の方法及び試薬と類似または同等の任意の方法及び試薬を、開示された方法及び組成物の実施に使用することができる。
【0041】
C. acnes菌(C. acnes;以前はPropionibacterium acnes; C. acnes 及び P. acnes、本明細書では言い換え可能に使用される)は、皮膚のニキビに関連する増殖の遅い、耐気性の嫌気性グラム陽性菌である。また、慢性眼瞼炎や眼内炎を引き起こす可能性があり、後者は特に眼内手術後に発生する。P. acnesは、正常な皮膚常在菌叢のメンバーであるが、微生物が毛包脂腺単位内で増殖する時に、炎症性ニキビの発症に重要な役割を果たす。炎症性ニキビは、人間の皮膚の最も一般的な病気であり、生涯を通じて最大80%の人が苦しんでいる。
【0042】
上述のように、C. acnesは、微生物が毛包脂腺単位内で増殖する時に、炎症性ニキビの発症に重要な役割を果たす。炎症性ニキビは、人間の皮膚の最も一般的な病気であり、生涯を通じて最大80%の人が苦しんでいる。ニキビには、面皰、丘疹、膿疱、結節、嚢胞、毛包脂腺炎など、様々な症状がある。これらの中で、ニキビの炎症性病変は、ニキビの瘢痕化につながる可能性があり、それによって心理的な悪影響を引き起こす可能性があるため、患者にとって深刻な懸念事項である。細菌のゲノムは解読されており、いくつかの遺伝子が皮膚を分解する酵素と免疫原性(免疫系を活性化する)のタンパク質を生成できることが研究によって示されている。この細菌は主に常在菌であり、ほとんどの健康な成人の皮膚に存在する皮膚フローラの一部である。通常、この細菌は健康な思春期前の子供の皮膚ではかろうじて検出できる。それは、とりわけ、毛包の皮脂腺によって分泌される皮脂中の脂肪酸に主に住んでいる。また、胃腸管全体に見られることもある。
【0043】
P. acnesの生存率の低下は、患者のニキビの臨床的改善と相関している。全身性抗生物質は、数十年にわたってニキビの治療に使用されており、ニキビ患者に依然として広く処方されている。局所抗生物質も有効であり、酸化剤である過酸化ベンゾイル(BPO)は、ニキビ治療に最も頻繁に使用されている局所薬の一つである。局所薬による治療は、軽度から中等度のニキビに苦しむ患者の第一選択治療としてよく使用される。しかし、現在の抗生物質治療には大きな欠点がある。全身性抗生物質は、微生物生態系を非特異的に破壊し、抗生物質耐性を促進する。局所抗生物質は、皮膚表面のP. acnesを殺すのに非常に弱い。
【0044】
本開示は、皮膚に通常存在するS. epidermidis及びS. capitisnoyouna のようなコアグラーゼ陰性Staphylococci(CoNS)種が、C. acnesを抑制する因子を産生することによってC. acnesから保護することを実証する。従って、本開示は、C. acnesの感染を治療するため、及び/またはC. acnesの増殖を抑制するために使用することができるプレバイオティクス、プロバイオティクス、及びポストバイオティクスを提供する
【0045】
本開示は、例えば、S. capitis E12が、C. acnesを殺すのに十分な量の抗菌ペプチドを常に産生することを示す。驚くべきことに、0.6倍濃度のS. capitis E12上清をニキビに関連するC. acnesの菌株とインキュベートすると、疾患に関連する細菌の生存が4 ログ以上減少し、24日後に培養物が完全に滅菌された。もう1つの魅力的な特徴は、C. acnes C2が20代まで耐性の獲得を示さなかったことである。S. capitis E12によって産生される、例えば、PSMを含む薬剤からの耐性を誘導する効力及び乏しい能力はこれらのペプチドの両親媒性構造であるαヘリックスの作用機序と一致している。このような構造は多くの抗菌ペプチドに共通しており、細菌膜の挿入及び不安定化を可能にする。このような直接的な膜破壊のメカニズムは、上皮表面に作用する抗菌剤にとって理想的である。
【0046】
S. capitisゲノムは最大6つのPSMをコードする遺伝子のクラスターを含むが、PSMβ1、3、4及び6は、精製された活性画分のMS分析によって容易に検出された。合成ペプチドPSMβ1、4、及び6を使用した抗菌アッセイは、細菌を3つ全ての組み合わせで処理した場合に、C. acnesに対してより高い活性を示した。同様に、各PSMβの予想される全体的な電荷は、微妙に異なるため、疎水性カラムへの結合能力や細菌膜との相互作用に影響を与える可能性がある。個々に、合成PSMペプチドは抽出物よりもはるかに強力ではなかった。PSMβ2及びPSMβ5もS. capitisによって分泌される可能性があるが、それ自体は生物学的に活性ではないが、PSMβ1、3、4、及び6の活性を増加させる異なる画分に溶出されると考えられる。βクラスのPSMは他のstaphylococciに見られ、通常は2~4個である。しかし、その正確な役割は不明のままであり、より小型のPSMαとは異なり、病原性には関与しているとは考えられない。S. aureusには2つのβPSM(PSMβ1/2)が存在するが、どちらも抗菌作用があるとは報告されていない。他の研究では、他の合成PSMβペプチドがin vitroでS. aureusを抑制することが示されているが、C. acnesに対して活性があることは知られていない。従って、現在のスクリーニング手法を採用することで、遺伝子スクリーニングの手法だけでは検出できなかった活性が確認された。個々のペプチドではなく、組み合わせの最適な殺傷効果と特異性は、複数のPSMsまたは生きている生物自体を組み合わせた治療アプローチが最も効果的である可能性があることを示唆している。このように、本開示は、皮膚マイクロバイオームが、特定の病原体に対して顕著な選択性を持ち、尋常性ざ瘡などの皮膚疾患と闘う上で価値のある新規抗菌剤を発見するための貴重な資源であることを示す。
【0047】
「接触する」という用語は、組成物が皮膚上のC. acnesを殺すかまたは抑制することができるように、局所的なプレバイオティック、プロバイオティック及び/またはポストバイオティック組成物を皮膚に曝露させることを指す。
【0048】
本明細書で使用される用語「発酵抽出物」は、培養物中及び適切な発酵条件下でプロバイオティック常在皮膚細菌を発酵させた生成物を意味する。例えば、S. capitis N030_E12、S. epidermidis AMT5_C5、S. epidermidis N009_G7及び/またはS. epidermidis N018_F3を培養することにより、C. acnesの増殖及び生存を抑制するのに有用な因子を産生できる。S. capitis N030_E12、S. epidermidis AMT5_C5、S. epidermidis N009_G7及び/またはS. epidermidis N018_F3からの抽出物を皮膚に塗布して、C. acnesの増殖及び/または感染を抑制し、及び/または尋常性ざ瘡を治療することができる。いくつかの実施形態では、発酵抽出物は、PSMβ-1、-2、-3、-4、-5、-6及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるPSMのうちの1つ以上を含む。
【0049】
「抑制する」または「抑制有効量」という用語は、1つまたは複数のプロバイオティック微生物及び/または発酵培地もしくは抽出物及び/または発酵副産物(例えば、PSMβs)及び/または合成分子からなる、本質的にこれらからなる、またはこれらからなるプレバイオティック、プロバイオティック及び/またはポストバイオティック皮膚組成物が、例えば皮膚上のC. acnesの成長、増殖または存在を抑制するのに十分な量を意味する。また、「抑制する」という用語には、障害(例えば、ニキビ、痛みなど)の兆候または症状を防止または改善することも含まれる。
【0050】
「フェノール可溶性モジュリン」または「PSM」という用語は、フェノールに可溶で、staphylococcusが産生するタンパク質毒素のファミリーを指す。PSMsのタンパク質配列は様々である。本開示では、C. acnesの増殖及び生存を抑制する一連のPSMsが同定される。これらのPSMsは、図7Bで同定される(例えば、PSMβ1~6)。本開示のPSMsは、ペプチドシンセサイザーを用いて合成することができ、または、例えば、S. capitis E12を用いた培養物の発酵抽出物から精製することができる。あるいは、本開示は、本開示のPSMsのコーディング配列を提供する。このようなコーディング配列は、組換え分子生物学技術によってPSMsを生成するために使用することができる。例えば、当業者であれば、1つまた複数のPSMsのコーディング配列を発現ベクターに挿入し、次いで、適切な宿主細胞(例えば、細菌細胞)を、その組換え細菌細胞が1つまた複数のPSMsを発現するように、ベクターでトランスフェクトまたは形質転換することができる。そのような組換え細菌細胞は、本開示のプロバイオティクスで使用することができ、またはニキビの治療において本明細書に記載の方法に適したポストバイオティクス(例えば、抽出物)を製造するために使用することができる。
【0051】
本明細書で使用される用語「ポストバイオティック」、「ポストバイオティック組成物」または「局所的ポストバイオティック組成物」または「ポストバイオティック皮膚組成物」は、プロバイオティクス皮膚常在菌発酵抽出物及び薬学的担体を含むプロバイオティクス生物からの非生存細菌産物または代謝副産物を指す。
特定の実施形態では、ポストバイオティックは、PSMβ1、3、4、及び/または6の少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つを含む。
【0052】
本明細書で使用される用語「ポリヌクレオチド」は、独立した断片の形で、またはより大きな遺伝子構築物の成分として(例えば、プロモーターを本開示のペプチドをコードするポリヌクレオチドに動作可能に連結することによって)、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドのポリマーを指す。多数の遺伝子構築物(例えば、プラスミド及び他の発現ベクター)が当技術分野で知られており、無細胞系または原核生物もしくは真核生物(例えば、酵母、昆虫、または哺乳類)の細胞で本開示のペプチドを製造するために使用することができる。遺伝暗号の縮重を考慮することにより、当業者は、本開示のペプチドをコードするポリヌクレオチドを容易に合成することができる。本開示のポリヌクレオチド(添付の配列表に記載されているもの)は、プローブ、プライマー、及び発現構築物の生成を含む従来の分子生物学において容易に使用することができる。
【0053】
本明細書で使用される用語「プレバイオティクス」は、本開示のS. epidermidis及び/またはS. capitisの増殖及び/または活性を刺激する化合物または薬剤である。例えば、ニキビまたはC. acesの感染に悩まされている対象者は、プレバイオティクスが、本開示のS. epermidis及び/またはS. capitisの増殖及び活性を刺激するように、例えば、その皮膚にプレバイオティクスを適用することができる。従って、刺激されたS. epidermidis及び/またはS. capitisの増殖及び活性は、C. acnes感染に対する抑制効果を生み出し、それにより、ニキビを治療するであろう。プレバイオティック化合物は、多糖類、加水分解物、塩、ハーブ抽出物、または関連するプロバイオティクス株(例えば S. capitis N030_E12、S. epidermidis AMT5_C5、S. epidermidis N009_G7、S. lugdnensis N028_E7、及び/またはS. epidermidis N018_F3)の増殖を十分に促進する他の化合物を含み得る。その菌株と組み合わせて使用する場合、例えば、約40%(w/w)未満の濃度の酵母加水分解物、約10%(w/w)未満の濃度の微結晶セルロース、及び/または約10%(w/w)未満の濃度のショ糖などが挙げられる。皮膚細菌での使用に適合させることができるプレバイオティクスの他の例には、イヌリン、グルコオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ラクトスクロース、ポリデキストロース、大豆オリゴ糖、及びキシロオリゴ糖、ならびにGibson, G.R.及びRoberfroid, M,(Eds.) Handbook of Prebiotics, CRC press (2008)、Roberfroid, M, J. Nutr. 137(3):830S-837(2007)及びSlavin, J. Nutrients 5(4):1417-1435(2013)に開示されているものが含まれ、これらの各情報は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0054】
本明細書で使用される用語「プロバイオティクス」、「プロバイオティクス組成物」または「局所プロバイオティクス組成物」または「プロバイオティクス皮膚組成物」は、プロバイオティクス常在皮膚細菌、C. acnesの増殖または感染を抑制する薬剤(例えば、本明細書に記載されているPSMβの少なくとも2つ以上)を発現する弱毒性または人工的な微生物、及び皮膚常在菌の生存率を維持する医薬担体を含む。いくつかの実施形態では、プロバイオティクスは、製剤成分のための適切な薬学的に許容される担体を含み、少なくとも50~80%、85%、87%、90%、92%、95%、98%または100%の精製度で本開示のプロバイオティック常在菌を含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のプロバイオティクス組成物は、プロバイオティクス生物からなるか、またはそれからなる。さらなる実施形態では、プロバイオティクス生物は細菌である。さらなる実施形態では、細菌は、正常な皮膚フローラの成分を含む。さらなる実施形態では、細菌は、staphylococcus hominisの菌株からなるか、またはそれからなる。他の実施形態では、細菌は、Staphylococcus epidermidisの菌株からなるか、またはそれからなる。さらに別の実施形態では、細菌は、Staphylococcus capitisの菌株からなるか、またはそれからなる。さらに別の実施形態では、細菌は、Staphylococcus lugdnensisの菌株からなるか、またはそれからなる。他の実施形態では、プロバイオティクスは、株の混合物からなるか、またはその混合物からなる。いくつかの実施形態では、株の混合物は、S. hominisの複数の菌株からなるか、またはそれからなる。他の実施形態では、株の混合物は、S. epidermidisの複数の菌株からなるか、またはそれからなる。他の実施形態では、株の混合物は、S. capitisの複数の菌株からなるか、またはそれからなる。他の実施形態では、株の混合物は、S. lugdnensisの複数の菌株及び/またはS. capitisの1つまたは複数の菌株及び/またはS. lugdnensisの1つまた複数の菌株からなるか、またはそれらからなるものである。他の実施形態では、株の混合物は、S. hominisの1つまた複数の菌株及びS. epidermidisの1つまた複数の菌株からからなるか、またはそれらからなる。いくつかの実施形態では、組成物は、S. hominis、S. epidermidis、S. capitis及び/またはS. lugdnensisに加えて、1つまたは複数の菌株からからなるか、またはそれからなる。いくつかのさらなる実施形態では、追加の株(複数可)は、Staphylococcus属、Lactobacillus属またはLactococcus属からの1つまたは複数の菌株からなる。特定のプロバイオティクス製剤は、S. capitis N030_E12、S. idermidis AMT5_C5、S. idermidis N009_G7、S. gdnensis N028_E7、及び/またはS. dermidis N018_F3からなるか、またはこれらからなる。このような製剤は、典型的には、対象者の皮膚に適用したときに103~106 CFU/cm2の最終密度を提供するような十分な量の細菌細胞を含む。このような製剤は、約104~約107 CFU/gの濃度、または代わりに、10~約105 CFU/gの濃度、または代わりに、約105~約109 CFU/gの濃度を含み得る。このような製剤は、S. hominis、S. epidermidis、S. capitis、及び/またはS. lugdnensisの複数の菌株を含み得、さらに、Lactococcus lactis、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus rhamnosus、Lactobacillus acidophilus、及び/または、正常の健康な皮膚または粘膜のフローラの一部を形成することが当技術分野で知られている他の菌種または菌株を含み得る。いくつかの実施形態では、S. hominis(例えば、表Aに記載されている株-A12、-C2、-D12、及び/または-G1)は、製剤中の細菌細胞の100%を構成する。いくつかのさらなる実施形態では、S. hominisの染色は、所定の製剤中の細菌細胞の90~100%、85~95%、70~80%、75~85%、60~70%、65~75%、50~60%、55~65%、40~50%、45~55%、30~40%、35-~45%、20~30%、25~35%、10~20%、15~20%、1~10%、5~15%、または1%未満を構成し、これらのコロニー形成単位の残りは、S. epidermidis、S. capitis、及び/またはS. lugdnensis、あるいはLactococcus lactis、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus rhamnosus、Lactobacillus acidophilus、及び/または正常の健康な皮膚または粘膜のフローラの一部を形成することが当技術分野で知られている他のそのような株によって提供される。
【0056】
いくつかの実施形態では、S. hominis、S. epidermidis、S. capitis及び/またはS. lugdnensis以外の細菌は、製剤中の細菌細胞の約50%以下を含む。くつかの実施形態では、前記細菌は、所定の製剤中の細菌細胞の50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、または1%未満を含む。いくつかの実施形態では、S. hominis、S. epidermidis、S. capitis及び/またはS. lugdnensis以外の細菌は、Lactococcus lactis、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus rhamnosus、Lactobacillus acidophilus、及び/または、正常な健康な皮膚または粘膜のフローラの一部を形成することが当技術分野で知られている他のそのような種または株を含み得る。いくつかの実施形態では、製剤は、S. hominis、S. epidermidis、S. capitis及び/またはS. lugdnensisの菌株の2つまたは4つの組み合わせを、特定の菌株の約1%~99%の任意の割合(例えば、S.hominis約25%、S.epidermidis約25%、S.capitis約25%及びS.lugdnensis約25%)で含み得る。C.acnesの正の阻害を示す菌株のうち、任意の2つ以上(例えば、2、3、4)の割合または比率が、本明細書において企図される。いくつかの実施形態では、製剤は、上記に挙げた菌株のうち約50%のS.capitis及び約50%のS.epidermidisを含む。いくつかの実施形態では、製剤は、上記に列挙された菌株の約40%のS.capitis及び約60%のS.epidermidisを含む。いくつかの実施形態では、製剤は、上記に記載された菌株の約70%のS.capitis及び約30%のS.epidermidisを含む。いくつかの実施形態では、製剤は、上記に記載された菌株の約30%のS.capitis及び約70%のS.epidermidisを含む。いくつかの実施形態では、製剤は、上記に記載された菌株の約80%のS.capitis及び約20%のS.epidermidisを含む。いくつかの実施形態では、製剤は、上記に列挙された菌株の約20%のS.capitis及び約80%のS.epidermidisを含む。いくつかの実施形態では、製剤は、上記に記載された菌株の約90%のS.capitis及び約10%のS.epidermidisを含む。いくつかの実施形態では、製剤は、上記に記載された菌株の約90%以上のS.capitis及び約10%未満のS.epidermidisを含む。いくつかの実施形態では、製剤は、上記に列挙された菌株の約10%未満のS.capitis及び約90%以上のS.epidermidisを含む。
【0057】
本明細書で使用される用語「プロバイオティクス常在皮膚細菌」は、皮膚ミクロビオームの微生物を含む。プロバイオティクス常在皮膚細菌は、C. acnesの増殖または感染を抑制し、または、C. acnesを殺す細菌の組成物を含むことができる。一実施形態では、プロバイオティック常在皮膚細菌は、S. capitis N030_E12、S. epidermidis AMT5_C5、S. epidermidis N009_G7及びS. epidermidis N018_F3からなる群から選択される1つまた複数の細菌を含む。
【0058】
本明細書で使用される用語「精製された」及び「実質的に精製された」は、in vivoで産生された薬剤が自然に関連する自然環境で見られる他の細胞または成分を実質的に含まない微生物または生物学的薬剤(例えば、発酵培地及び抽出物、分画された発酵培地、発酵副産物、ペプチド、ポリペプチド、遺伝子、ポリヌクレオチドなど)の培養物、または共培養物を指す。精製のレベルは、ある種の微生物または薬剤の約50~80%の純度から100%の純度まで変化する可能性がある。
【0059】
C. acnesの過剰増殖または感染に起因する疾患または障害に罹患している対象者の治療のために本明細書で使用される用語「治療上有効な量」は、疾患または障害の徴候または症状を改善するのに十分なプレバイオティクス、プロバイオティクス及び/またはポストバイオティクス皮膚組成物またはその抽出物の量を意味する。例えば、治療上有効な量は、対象者のニキビの症状を軽減するのに十分な量として測定することができる。典型的には、対象者は、疾患または障害の症状を少なくとも50%、90%または100%減少させる量で治療される。一般的に、最適な投与量は、障害や、対象者の体重、細菌の種類、対象者の性別、症状の程度などの要因に依存する。それにもかかわらず、当業者であれば、適切な投与量を容易に決定することができる。
【0060】
本明細書で使用される用語「局所的」は、本明細書に記載された局所プロバイオティクス組成物が皮膚及び真皮層と直接接触するような、外部からの皮膚への投与、ならびに浅い注射(例えば、皮内及び病変内)を含むことができる。
【0061】
本開示は、S. capitis N030_E12、S. epidermidis AMT5_C5、S. epidermidis N009_G7及び/またはS. epidermidis N018_F3の実質的に均質または実質的に純粋な調製物を含む全細胞調製物を提供するものである。このような調製物は、ニキビ、炎症及び微生物感染症の治療のための組成物の調製に使用することができる。全細胞調製物は、S. capitis N030_E12、S. epidermidis AMT5_C5、S. epidermidis N009_G7及び/またはS. epidermidis N018_F3を含むことができる。本開示はまた、皮膚におけるC. acnesの増殖または生存率を低下させる薬剤を含む、そのような全細胞に由来する画分を提供する。
【0062】
第2の細菌組成物(例えば、C. acnes)の活性を抑制する第1の細菌組成物(例えば、S. capitis)の能力は、例えば、プロバイオティクスまたはポストバイオティクスを、例えば、C. acnesと接触させ、プロバイオティクスまたはポストバイオティクスとの接触の前及び後に、C. acnesの増殖または生存率を測定することによって決定することができる。本開示の局所用プロバイオティクス組成物と生物の接触は、例えば、局所用プロバイオティクスまたはポストバイオティクス組成物を細菌培養物に添加することにより、in vitroで起こり得る。あるいは、接触は、例えば、局所用プロバイオティクスまたはポストバイオティクス組成物を、皮膚疾患または障害に罹患している対象者と接触させることによって、in vivoで起こり得る。
【0063】
プロバイオティック常在皮膚細菌調製物またはポストバイオティック組成物は、様々な方法で調製することができる。一実施形態では、プロバイオティック常在皮膚細菌製剤は、S. capitis N030_E12、S. epidermidis AMT5_C5、S. epidermidis N009_G7、S. epidermidis N018_F3及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される細菌株を培養及び分離し、細菌株(複数可)を適切な担体に再懸濁することによって調製される。別の実施形態では、S. capitis N030_E12、S. epidermidis AMT5_C5、S. epidermidis N009_G7、S. epidermidis N018_F3及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される常在細菌株を、発酵生成物を得る条件で培養し、発酵抽出物の無細胞調製物を得て、その抽出物を適切な担体と組み合わせることにより、ポストバイオティクス組成物は調製される。
【0064】
当技術分野で知られている様々な方法のいずれかを用いて、局所的なプロバイオティクスまたはポストバイオティクス組成物を対象者に投与することができる。例えば、本開示のプロバイオティクスまたはポストバイオティクス皮膚組成物または抽出物または合成製剤は、局所投与のために(例えば、ローション、クリーム、スプレー、ゲル、または軟膏として)処方され得る。そのような局所製剤は、皮膚上の微生物、真菌、ウイルスの存在または感染症または炎症を治療または抑制するのに有用である。 製剤の例としては、外用ローション、クリーム、石鹸、ワイプなどが挙げられる。
【0065】
さらに別の実施形態では、複種のプロバイオティック常在皮膚細菌を含む、局所用プロバイオティック組成物が提供される。ニキビまたはC. acneのレベルまたは活動の増加に関連する他の皮膚疾患または障害の治療に使用される場合、組成物は、皮膚上のそのようなC. acnesを抑制する1つまたは複数の細菌を含む。そのような例では、プロバイオティック皮膚常在菌は、コアグラーゼ陰性Staphylococcus spである。一実施形態では、プロバイオティック常在皮膚細菌は、S. capitis N030_E12、S. epidermidis AMT5_C5、S. epidermidis N009_G7、S. epidermidis N018_F3及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0066】
別の実施形態では、局所用プロバイオティクス組成物は、皮膚上のC. acnesの増殖または活性を抑制するポストバイオティクス皮膚常在菌発酵抽出物を含む。様々な局面において、抽出物が産生される細菌は、S. capitis N030_E12、S. epidermidis AMT5_C5、S. epidermidis N009_G7及び/またはS. epidermidis N018_F3を含む。
【0067】
さらなる実施形態によれば、上記の局所組成物は、ローション、シェイクローション、クリーム、軟膏、ゲル、フォーム、粉末、固体、ペーストまたはチンキ剤として処方することができる。
【0068】
別の実施形態では、上記の局所プレバイオティック、プロバイオティック及び/またはポストバイオティック組成物を含む絆創膏またはドレッシングが提供される。様々な実施形態において、絆創膏またはドレッシングが提供され、その主成分は、マトリックス及び皮膚上のC. acnesを抑制するプロバイオティック皮膚常在菌を含む。様々な実施形態において、絆創膏またはドレッシングが提供され、その主成分は、マトリックス及び皮膚上のC. acnesを抑制するポストバイオティクスを含む。
【0069】
常在菌(例えば、S. capitis N030_E12、S. epidermidis AMT5_C5、S. epidermidis N009_G7及び/またはS. epidermidis N018_F3)を含む、本明細書に開示されるプロバイオティック皮膚組成物を含む医薬組成物は、局所的または全身的な効果を得るための局所投与に適した任意の剤形で処方され得る。例えば、乳液、溶液、懸濁液、クリーム、ゲル、ヒドロゲル、軟膏、粉剤、ドレッシング、エリキシル、ローション、懸濁液、チンキ、ペースト、フォーム、フィルム、エアロゾル、イリゲーション、スプレー、座薬、絆創膏、皮膚パッチなどが挙げられる。また、本明細書に開示されるプロバイオティクスを含む局所製剤は、リポソーム、ミセル、ミクロスフェア、ナノシステム、及びこれらの混合物を含み得る。
【0070】
「薬学的に許容される担体」は、溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤(それらがプロバイオティック常在菌に悪影響を与えない限り、必要に応じて)、等張剤及び吸収遅延剤などを含むことを意図している。薬学的に活性物質のためのそのような媒体及び薬剤の使用は、当技術分野でよく知られている。従来の媒体または薬剤が医薬組成物と適合しない場合を除いて、治療組成物及び治療方法におけるそれらの使用が企図される。補足的な活性化合物もまた、組成物に組み込むことができる。
【0071】
本明細書に開示される局所製剤での使用に適した薬学的に許容される担体及び賦形剤には、水性ビヒクル、水混和性ビヒクル、非水性ビヒクル、安定剤、溶解度増強剤、等張剤、緩衝剤、抗酸化剤、局所麻酔薬、懸濁剤及び分散剤、湿潤剤または乳化剤、複合剤、封入剤またはキレート剤、浸透促進剤、凍結防止剤、凍結乾燥防止剤、増粘剤、及び不活性ガスが含まれるが、これらに限定されない。
【0072】
プロバイオティクスを含む医薬組成物は、軟膏、クリーム、スプレー及びゲルの形で処方することができる。適切な軟膏ビヒクルには、ラード、ベンゾイン化ラード、オリーブ油、綿実油などの油、白色ペトロラタムなどの油性または炭化水素ビヒクル;親水性ペトロラタム、硫酸ヒドロキシステアリン、グリセロール、無水ラノリンなどの乳化性または吸収性ビヒクル;親水性軟膏などの水除去性ビヒクル;分子量の異なるポリエチレングリコールなどの水溶性軟膏ビヒクル;セチルアルコール、モノステアリン酸グリセリル、ラノリン、ステアリン酸などの油中水型(W/O)エマルションまたは水中油型(O/W)エマルションのいずれかのエマルションビヒクルが含まれる(参照、Remington: The Science and Practice of Pharmacy)。これらのビヒクルは皮膚軟化剤であるが、一般的に酸化防止剤及び防腐剤の添加が必要である。
【0073】
適切なクリームベースは、水中油型または油中水型であり得る。クリームビヒクルは水洗可能であり得、油相、乳化剤、及び水相を含む。油相は「内部」相とも呼ばれ、一般にペトロラタム及びセチルまたはステアリルアルコールのような脂肪アルコールで構成される。水相は通常、必ずしもそうではないが、体積が油相を超えており、一般に保湿剤を含有する。クリーム配合物中の乳化剤は、非イオン性、陰イオン性、陽イオン性、または両性の界面活性剤であり得る。
【0074】
ゲルは、半固体の懸濁液タイプのシステムである。単相ゲルは、液体担体全体に実質的に均一に材料を含む。適切なゲル化剤としては、架橋アクリル酸ポリマー、例えばカーボマー、カルボキシポリアルキレン、CarbopolRTM;親水性ポリマー、例えばポリエチレンオキシド、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー、ポリビニルアルコール;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルセルロースなどのセルロース系ポリマー;トラガカント、キサンタンガムなどのガム類;アルギン酸ナトリウム;ゼラチンなどが挙げられる。均一なゲルを調製するために、アルコールやグリセリンのような分散剤を添加したり、トリチュレーション、機械的な混合、及び/または攪拌によってゲル化剤を分散させることができる。
【0075】
別の実施形態では、本明細書に開示されたプレバイオティクス、プロバイオティクス及び/またはポストバイオティクスを含む医薬組成物は、単独で、または化学療法剤、抗生物質(プロバイオティクスの利点を破壊しない限り)、抗真菌剤、抗掻痒剤、鎮痛剤、プロテアーゼ阻害剤及び/または抗ウイルス剤を含む(ただしこれに限定されない)1つまたは複数の追加の治療剤と組み合わせて処方することができる。
【0076】
本明細書で使用される局所投与には、皮膚内、結膜内、角膜内、眼内、眼球、耳介、経皮、鼻腔、膣、尿道、呼吸器、及び直腸投与が含まれる。このような局所製剤は、眼、皮膚、及び粘膜(例えば、口、膣、直腸)の感染症の治療または抑制に有用である。市販されている製剤の例としては、局所ローション、クリーム、石鹸、ワイプなどがある。
【0077】
加圧容器、ポンプ、スプレー、噴霧器、またはネブライザーで使用するための溶液または懸濁液は、エタノール、水性エタノール、または本明細書に開示される有効成分の放出を分散、可溶化、または延長するための適切な代替薬剤、溶媒としての推進剤;及び/またはソルビタントリオレエート、オレイン酸、またはオリゴ乳酸のような界面活性剤を含むように製剤化され得る。
【0078】
侵食性マトリックスの形成に有用な材料としては、キチン、キトサン、デキストラン及びプルラン;寒天ガム、アラビアガム、カラヤガム、ローカストビーンガム、トラガカントガム、カラギーナン、ガティガム、グアーガム、キサンタンガム、及びスクレログルカン;デキストリン及びマルトデキストリンなどのデンプン類;ペクチンなどの親水性コロイド;レシチンなどのリン酸塩;アルギン酸塩;アルギン酸プロピレングリコール;ゼラチン;コラーゲン;及びエチルセルロース(EC)、メチルエチルセルロース(MEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、CMEC、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、セルロースアセテート(CA)、セルロースプロピオネート(CP)、酪酸セルロース(CB)、酢酸セルロース(CAB)、CAP、CAT、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、HPMCP、HPMCAS、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートトリメリテート(HPMCAT)、及びエチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)などのセルロース系化合物;ポリビニルピロリドン;ポリビニルアルコール;ポリビニルアセテート;グリセリン脂肪酸エステル;ポリアクリルアミド;ポリアクリル酸;エタクリル酸またはメタクリル酸のコポリマー(EUDRAGIT、Rohm America、Inc.、ニュージャージー州ピスカタウェイ);ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート);ポリラクチド;L-グルタミン酸とエチル-L-グルタミン酸とのコポリマー;分解性乳酸-グリコール酸コポリマー;ポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸;及び他のアクリル酸誘導体、例えば、ブチルメタクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、(2-ジメチルアミノエチル)メタクリレート、及び(トリメチルアミノエチル)メタクリレートクロライドのホモポリマー及びコポリマーなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
必要に応じて、適切な治療レジメンは、本開示のプレバイオティック、プロバイオティック、及び/またはポストバイオティック組成物の投与を、1つまた複数の追加治療薬(例えば、TNFの阻害剤、抗生物質など)と組み合わせることができる。ペプチド(複数可)、他の治療薬、及び/または抗生物質は、同時に投与することができるが、連続して投与することもできる。適切な抗生物質には、アミノグリコシド(例えば、ゲンタマイシン)、ベータラクタム(例えば、ペニシリン及びセファロスポリン)、キノロン(例えば、シプロフロキサシン)、及びノボビオシンが含まれる。一般的に、抗生物質は殺菌量で投与される。「殺菌量」は、治療を受ける対象者において殺菌濃度を達成するのに十分な量である。その従来の定義によれば、本明細書で使用される「抗生物質」は、希釈溶液中で、微生物の増殖を抑制するか、または微生物を殺す化学物質である。当技術分野で知られている合成抗生物質(例えば、類似体)もこの用語に含まれる。
【0080】
本明細書で提供される組成物は、スルファメチゾール、スルフィソキサゾール、スルファモノメトキシン、スルファメチゾール、サラゾスルファピリジン、スルファジアジン銀などのスルファ薬;ナリジクス酸、ピペミド酸三水和物、エノキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、トスフロキサシントシレート、塩酸シプロフロキサシン、塩酸ロメフロキサシン、スパルフロキサシン、フレロキサシンなどのキノリン抗菌剤;イソニアジド、エタンブトール(塩酸エタンブトール)、p-アミノサリチル酸(p-アミノサリチル酸カルシウム)、ピラジナミド、エチオナミド、プロチオナミド、リファンピシン、硫酸ストレプトマイシン、硫酸カナマイシン、サイクロセリンなどの消炎剤;ジアフェニルスルホン、リファンピシンなどの抗酸菌細菌薬;イドクスウリジン、アシクロビル、ビダラビン、ガンシクロビルなどの抗ウイルス薬;ジドブジン、ジダノシン、ザルシタビン、硫酸インジナビルエタノラート、リトナビルなどの抗HIV剤;抗スピロヘータ薬;塩酸テトラサイクリン、アンピシリン、ピペラシリン、ゲンタマイシン、ジベカシン、カネンドマイシン、リビドマイシン、トブラマイシン、アミカシン、フラジオマイシン、シソマイシン、テトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、ロリテトラサイクリン、ドキシサイクリン、アンピシリン、ピペラシリン、チカルシリン、セファロチン、セファピリン、セファロリジン、セファクロル、セファレキシン、セフロキサジン、セファドロキシル、セファマンドール、セフォトアム、セフロキシム、セフォチアム、セフォチアムヘキセチル、セフロキシムアクセチル、セフジニル、セフジトレンピボキシル、セフタジジム、セフピラミド、セフスロジン、セフィノキシム、セフポドキシムプロキセチル、セフピロム、セフゾプラン、セフピム、セフスロジン、セフィノキシム、セフィネタゾール、セフミノックス、セフォキシチン、セフブペラゾン、ラタモキセフ、フロモキセフ、セファゾリン、セフォタキシム、セフォペラゾン、セフチゾキシム、モキサラクタム、チエナマイシン、スルファゼシン、アズトレオナムまたはそれらの塩、グリセオフルビン、ランカシジン基などの抗生物質を含む他の抗菌剤と同時に使用することができる。
【0081】
さらに別の実施形態では、本明細書で提供される組成物(例えば、本明細書で提供されるプレバイオティクス、プロバイオティクス及び/またはポストバイオティクス組成物)は、アルドステロン、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、酢酸デオキシコルチコステロン、酢酸フルドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン(コルチゾール)、プレドニゾロン、プレドニゾン、メチルプレニゾロン、デキサメタゾン、及びトリアムシノロンを含む(これらに限定されない)当技術分野で知られている1つまたは複数のステロイド薬と組み合わせることができる。
【0082】
さらに別の実施形態では、本明細書で提供される組成物(例えば、プレバイオティック、プロバイオティック及び/またはポストバイオティック組成物)は、アモロルフィン、アンホテリシンB、アニデュラファンギン、ビフォナゾール、
ブテナフィン、ブトコナゾール、カスポファンギン、シクロピロックス、クロトリマゾール、エコナゾール、フェンチコナゾール、フィリピン、フルコナゾール、イソコナゾール、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ミカファンギン、ミコナゾール、ナフチフィン、ナタマイシン、ナイスタチン、オキシコナゾール、ラブコナゾール、ポサコナゾール、リモシジン、セルタコナゾール、スルコナゾール、テルビナフィン、テルコナゾール、チオコナゾール、及びボリコナゾールを含む(これらに限定されない)、1つまたは複数の抗真菌剤と組み合わせることができる。
【0083】
本明細書に記載されている治療用アプリケーションに使用するためのキット及び製品も本明細書に記載される。そのようなキットは、バイアル、チューブなどのような1つまたは複数の容器を受け入れるために区画化された担体、パッケージ、または容器を含むことができ、各容器は、記載された方法で使用される別個の要素のうち1つを含む。適切な容器には、例えば、ボトル、バイアル、注射器、及び試験管が含まれる。容器は、ガラスやプラスチックなどの様々な材料で形成できる。
【0084】
例えば、容器は、本明細書で提供される1つまたは複数の組成物(例えば、プレバイオティック、プロバイオティック及び/またはポストバイオティック組成物)を、任意に本明細書に開示される別の薬剤と組み合わせて含むことができる。このようなキットは、任意に本明細書に開示される組成物と本明細書に記載されている方法での使用に関する説明文やラベル、指示書を共に含む。
【0085】
本開示は、C. acnesを殺す及び/またはC. acnesの増殖を抑制するための、より選択的かつ強力な方法を提供する。本開示は、病原性細菌株に対して選択的な抗菌活性を産生するが、皮膚ミクロフローラの他のメンバーに対しては抗菌活性を産生しない皮膚常在菌株を提供する。従って、常在菌株を用いた抗菌療法は、標的となる微生物の株を選択的に殺傷することになる。正常な微生物叢よりも病原菌を選択的に殺傷する能力は恒常性を維持し、正常な細菌叢を形成するのに役立つ可能性があるため、非常に望ましい。CoNSの皮膚常在菌株の多くは、複数の抗菌剤を産生する。この場合、常在菌株を用いた抗菌療法は、抗生物質に対する耐性変異体を生成するリスクが低いと考えられる。ここで提供されるCoNSの菌株は、もともと正常なヒトの皮膚から分離されたものであるため、宿主に対する毒性は低い。本開示は、生きた細菌の用途として、または細菌の滅菌抽出物(例えば、発酵抽出物)として、または精製された活性タンパク質として、または合成ペプチドとして使用され得る。
【0086】
本開示は、いくつかのコアグラーゼ陰性Staphylococci(CoNS)株、ならびにニキビ関連のC. acnes株の強力な拮抗薬である2つのCutibacterium acnes(C. acnes)株を提供するものである。
【0087】
表Aは、抗P. acnes活性を有する複数のコアグラーゼ陰性Staphylococci(CoNS)株を提供する。
【0088】
表A
【0089】
表Aの#17(S. epidermidis A11)は、登録番号PTO-125202としてATCCに寄託されており、表Aの#23(S. hominis A9)は、登録番号PTA-125203としてATCCに寄託されており、表Aの#24は、抗菌活性を有しないネガティブコントロール株として使用した。2つのP. acnesに対する抗菌活性の効力については、図4を参照のこと。
【0090】
本開示は、皮膚由来のCoNSの4菌株を例示する:S. capitis N030_E12、S. epidermidis AMT5_C5、S. epidermidis N009_G7及びS. epidermidis N018_F3である。前述の各菌株から検出された全てのオープンリーディングフレームからなる配列のリストは、本開示に添付され、あらゆる目的のために本明細書に組み込まれる。従って、本開示の菌株(例えば、S. capitis N030_E12、S. epidermidis AMT5_C5、S. epidermidis N009_G7及びS. epidermidis N018_F3)は、様々なプローブ及び配列技術、ならびに本明細書で提供される配列リストを用いて同定することができる。例えば、S. capitis N030_E12株は、分離されたS. capitis菌株が配列番号1~2377で同定される核酸配列の1つまたは複数を発現するか、またはPSMβ1、3、4及び6を産生するかを判定することによって同定することができる(例えば、配列番号:9437、9441、9443及び9447を参照)。 同様に、S. epidermidis AMT5_C5、S. epidermidis N009_G7及びS. epidermidis N018_F3株は、分離されたS. epidermidis AMT5_C5、S. epidermidis N009_G7及びS. epidermidis N018_F3株が、配列番号2378~4765(S. epi C5);4766~7145(S. epi, G7);または7146~9435(S. epi F3)で同定される核酸配列の1つまたは複数を発現するかどうかを判定することによって同定することができる。
【0091】
これらの菌株は、健康な及びニキビの皮膚から分離されたC. acnesの複数の異なる菌株タイプに対して幅広い抗菌活性を示したが、他のグラム陽性の皮膚常在菌やグラム陰性菌に対しては効力が低かったため、生物療法の魅力的な候補である(表1)。さらに、C. acnesの2つの菌株:C. acnes_UCSD_HI12及びC. acnes_UCSD_HI30は、放射状拡散アッセイ(表2)と液体培養(図3)によって異なるC. acnes株の強力な抑制効果を示したことも記載されている。選択されたCoNSまたはC. acnes株を皮膚ターゲットに塗布・接触させ、ニキビの原因菌であるC. acnesを排除し、健康に有益な役割を果たす他の皮膚常在菌は排除しない。
【0092】
表1:放射状拡散アッセイによる複数の異なる細菌種に対するCoNSの拮抗作用の結果。放射状拡散による殺傷/抑制のゾーン:+ 小++中+++大。
【0093】
表2:健康な人(HI)の皮膚から分離されたいくつかの別個のC. acnes株は、健康な皮膚及びニキビの両方の皮膚からの異なるC. acnes株の増殖を抑制することも見出された。C. acnesの2つ異なる株: C. acnes_UCSD_HI12及びC. acnes_UCSD_HI30は、C. acnesのいくつかの株に対して強力な阻害産物を産生した。両方の菌株の生きた培養菌及び滅菌上清の両方は、寒天(表2)及び液体培養(図3)での放射状拡散によって測定されたC. acnesの増殖を抑制することが見出された。
【0094】
本開示に含まれる4つのStaphylococcal株は、配列決定され、予測される非リボソームペプチド合成酵素(NRPSs)及び/またはポリケチド合成酵素(PKS)をコードするいくつかの生合成遺伝子クラスターを含むことが見出された。これらは、抗菌ペプチド、抗生物質、シデロホアなどの二次代謝産物を合成する主要なマルチモジュラー酵素複合体である。NRPSクラスターの各モジュールは、異なるアミノ酸またはカルボキシル酸を活性化し、続いてそれらを順次縮合させて、直鎖状または環状の天然物を合成する(図1を参照)。図1は、antiSMASHによって同定されたS. capitis N030_E12のこのようなNRPSクラスターを強調したものである。これは、細菌ゲノムの二次代謝産物生合成遺伝子クラスターのゲノムワイドな同定、アノテーション、及び解析を可能にする包括的なリソースである。S. capitis NRPSクラスターには、グラミシジンやチロシジンなどの抗菌ペプチドの合成に関与する可能性のある特定のシグネチャードメインを持ついくつかの遺伝子が含まれる。図2は、antiSMASHによって同定されたS. epidermidis AMT5_C5、N009_G7、N018_F3株のトランス-ATポリケチド合成酵素(PKS)クラスターを強調したものである。PKS機構には、アシル基転移酵素(AT)、アシル基キャリアータンパク質(ACP)、ケトシンターゼ(KS)の3つの必須ドメインが含まれる。例えば、Bacillus属によって産生されるいくつかのポリケチドには、ディフィシジンやマクロラクチンなどがある。従って、3つ全てのS. epidermidis種内に存在するこのPKSクラスターは、新規抗菌ペプチドのための供給源であり得る。
【0095】
一実施形態では、本開示は、本開示のCoNS皮膚常在菌(例えば、S. capitis N030_E12、S. epidermidis AMT5_C5、S. epidermidis N009_G7及び/またはS. epidermidis N018_F3)を含む、局所送達のためのプロバイオティクス組成物を提供する。さらなる実施形態では、局所組成物は、S. capitis N030_E12、S. epidermidis AMT5_C5、S. epidermidis N009_G7及びS. epidermidis N018_F3からなる群から選択される菌株のうち、1、2、3または4のみを含む。さらに別の実施形態では、本開示の局所プロバイオティクス組成物は、S. capitis N030_E12、S. epidermidis AMT5_C5、S. epidermidis N009_G7及びS. epidermidis N018_F3からなる群から選択される皮膚常在菌、及び前記の任意の組み合わせを含むか、またはそれらからなることができる。ここで、皮膚常在菌は実質的に純粋である(例えば、対象者の皮膚に見られる他の菌種の80%、85%、87%、90%、92%、95%、98%、または100%純粋)。
【0096】
いくつかの実施形態では、組成物は、クリーム、軟膏、油懸濁液、または膏からなり、ここでプロバイオティック菌(例えば。S. capitis N030_E12、S. epidermidis AMT5_C5、S. epidermidis N009_G7、S. lugdnensis N028_E7、及び/またはS. epidermidis N018_F3)が、上記のように以下及びNakatsujiら(2016) Nature Medicineに記載されているような保湿剤またはエマルジョン内に組み込まれる。いくつかの実施形態では、組成物は、細菌が適切な賦形剤と組み合わされ、布、ゲルマトリックス、またはポリマーシート内に組み込まれたパッチまたは湿布を含む。局所投与のための適切な賦形剤及び担体は、当技術分野で知られており、増粘剤、乳化剤、脂肪酸、多糖類、ポリオール、ポリマー及びコポリマーが含まれ、これらには、アルギン酸、微結晶性セルロース、ポリ乳酸、ポリ乳酸-コ-グリコール酸、ペトロラタム、及び当技術分野で知られている多数の他のものが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0097】
いくつかの実施形態では、組成物は、細菌培養培地、馴化細菌培養培地、及び/または細菌培養液を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、細菌培養培地の濾液または上清を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、凍結乾燥培養培地を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、細菌培養培地の濾液または上清から生成された凍結乾燥馴化培地を含む。
【0098】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、対象者の皮膚の健康をサポートすることを含む。さらなる実施形態では、この方法は、皮膚常在菌の異常及びそれに起因する障害(例えば、ニキビ)の治療を提供することを含む。いくつかの実施形態では、この方法は、皮膚の細菌感染(例えば、C. acne感染または異常増殖)の治療を提供することを含む。いくつかの実施形態では、この治療は、以下のステップを含む。皮膚常在菌の異常、細菌感染症、ニキビを有する対象者を特定する。そして、本明細書に開示されるようなプロバイオティック組成物を治療する必要とする状態の部位に投与する。所与の製剤(軟膏、ゲル、パッチなど)の適切な投与形態の決定は、皮膚感染症を治療する当業者によって行うことができる。いくつかのさらなる実施形態では、プロバイオティック組成物は、定期的な間隔で再適用される。いくつかの実施形態では、プロバイオティクス組成物は、3日ごとに再適用される。いくつかの実施形態では、プロバイオティクス組成物は、2日ごとに再適用される。いくつかの実施形態では、プロバイオティクス組成物は、2日ごとに再適用される。いくつかの実施形態では、プロバイオティクス組成物は、毎日再適用される。いくつかの実施形態では、プロバイオティクス組成物は、1日に1回以上再適用される。いくつかの実施形態では、プロバイオティック組成物は毎週再適用される。いくつかの実施形態では、プロバイオティック組成物は、一度だけ適用される。
【0099】
いくつかの実施形態では、本方法は、C. acnes感染症の治療を提供することを含む。いくつかのさらなる実施形態では、本方法は、以下のステップを含む。C. acnes感染症を診断する。そして、本明細書に開示されるプロバイオティクス及び/またはプレバイオティクス組成物を感染部位に適用する。ここで、このような組成物は、抗菌化合物の産生、皮膚または粘膜の生物群系内での資源の競合、または他の手段のいずれかによって、C. acnesを殺すか、または増殖を抑制することができる。所与の製剤(軟膏、ゲル、パッチなど)の適切な投与方法の決定は、皮膚感染症を治療する技術に精通した当業者が行うことができる。いくつかのさらなる実施形態では、プロバイオティクス組成物は、定期的なタイミングの間隔(例えば、毎日、2日ごと、3日ごと、毎週など)で再適用される。他の実施形態では、類似または同一のステップを適用して、C. acnesの治療を提供することができることは、当業者には明らかであろう。いくつかの実施形態では、本方法は、未知のまたは特徴付けられていない病原体による感染症の治療を提供することを含む。いくつかの実施形態では、この方法は、慢性皮膚病の治療を提供することを含む。
【0100】
本開示の常在細菌は、ヒトの皮膚から分離し、本明細書に記載の方法を用いて同定することができる。例えば、本開示は、例えばフォームチップスワブを使用してヒトの皮膚表面をスワブすることにより、本明細書に記載の常在細菌を入手、同定、及び培養する方法を提供する。スワブをトリプティックソイブロスに入れた。このブロスを、3%の卵黄を添加したマンニット食塩寒天培地(MSA)で希釈する。コアグラーゼ陰性Staphylococci(CoNS)株を表すハローのないピンク色のコロニーを採取し、トリプティックソイブロス(TSB)で増殖させる。その後、図4に記載されているように、その菌株をアッセイすることができる(図5Aも参照)。C. acnesを強く抑制した菌株は、DNAの分離及びシーケンシング、またはPCR、サザンブロット、ノーザンブロットによって、さらに特徴づけることができる。さらに、フェノール可溶性モジュリンの発現プロファイルの測定も可能である。いくつかの実施形態では、PSMβ1、3、4及び6(例えば、配列番号:9437、9441、9443、及び9447)を発現する生物は、S. capitisとして同定され得る。S. epidermidis由来のPSMβは、配列番号:9449、9451及び9453で提供される。
【0101】
gDNAは、任意の数の市販のキット(例えば、DNeasy UltraClean Microbial Kit、Qiagen)を用いて分離することができる。 gDNAは、様々な配列プラットフォームを使用してシーケンスできる(例えば、MiSeq;Illumina Inc.、カリフォルニア州サンディエゴ、2サイクル、2x250 bpペアエンドリードを生成できる)。アダプタは cutadaptを用いて削除する(例えば、world-wide-web の cutadapt.readthedocs.io/en/stable/ を参照)。 低品質の配列は、Trim Galore(例えば、world-wide-web at cutadapt.readthedocs.io/en/stable/)をデフォルトのパラメータで使用して削除できる。 Bowtie2プログラム(バージョン2.28)(I)を用いて、パラメータ(-D 20 -R 3 -N 1 -L 20 -非常に敏感なローカル)及びヒト参照ゲノムhg19を使用して、ヒトゲノムにマッピングされている配列を品質トリミングされたデータセットから削除される。フィルタリングされたリードは、SPAdes(バージョン3.8.0)を用いて、k-merの長さが33~127の範囲でde novoアセンブルされる。ゲノムのアノテーションは、サブシステム技術による微生物ゲノムの迅速なアノテーション(RASY)を用いて、デフォルトパラメータで行う。予測されたアミノ酸配列及び/または核酸配列を、本明細書に添付された配列リストと比較して、S. capitis N030_E12、S. epidermidis AMT5_C5、S. epidermidis N009_G7及びS. epidermidis N018_F3を同定することができる。
【0102】
本開示はまた、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または少なくとも6つのPSMβを含む組成物を提供する。いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも4つのPSMβを含む。さらに他の実施形態では、組成物は少なくとも5つのPSMβを含む。前述の実施形態のいずれかにおいて、PSMβは、PSMβ1、2、3、4、5、及び6から選択される。特定の実施形態では、組成物は、少なくともPSMβ1、3、4、及び6を含む。
【0103】
本開示はまた、少なくとも2つのPSMβを含むことを含む局所投与用のための製剤を提供する。いくつかの実施形態では、製剤は、少なくとも3つのPSMβを含む。さらに他の実施形態では、製剤は少なくとも4つのPSMβを含む。前述の実施形態のいずれかにおいて、PSMβは、S. capitis E12から産生されたPSMβ1、2、3、4、5、及び6から選択され、及び/または配列番号:9437、9439、9441、9443、9445、9447のそれぞれに記載されているPSMと少なくとも85%、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である配列を有する。特定の実施形態では、製剤は、少なくともPSMβ1、3、4、及び6を含む。いくつかの実施形態では、製剤は、PSMβ1、3、4、及び6のうちの少なくとも3つと、本開示のプロバイオティクス、プレバイオティクス、またはポストバイオティクスを含む。
【0104】
本開示はまた、皮膚の異常及び/またはC. acnes感染のリスクを診断する方法を提供する。この方法は、対象者の皮膚から生物学的サンプルを得ることと、サンプル中の常在菌の相対的な存在量を決定することを含み、存在量は、少なくともS. capitis及びS. epidermidisの存在量を決定することを含む。より具体的には、判定は、S. capitis N030_E12、S. epidermidis AMT5_C5、S. epidermidis N009_G7、及びS. epidermidis N018_F3からなる群から選択される細菌のうち、少なくとも1~4(例えば、1、2、3または4)の存在量を測定することができる。S. capitisまたはS. epidermidies(例えば、S. capitis N030_E12、S. epidermidis AMT5_C5、S. epidermidis N009_G7、S. epidermidis N018_F3)のレベルまたは存在量が、50%、40%、30%、20%、10%、5%、2.5%、1%、0.5%、0.1%未満の閾値を下回った場合、対象者はC. acnesの感染症にかかるリスクがあると考えられる。
【0105】
別の実施形態では、対象者がC. acnesの感染を有するか、またはそのリスクがあるかを判定する際に、対象者からのサンプルにおいて、S. capitis E12によって産生される1つまたは複数のPSMβの存在を判定することができる。例えば、サンプルは、対象者の皮膚から得て、n-ブタノールで抽出し、本明細書に記載されているようにPSMβの存在を測定することができる。サンプル中にPSMβ1、3、4及び6の存在は、感染のリスクが低減していることを示す。対照的に、無または低レベル(通常の平均対照を下回るレベル)は、C. acnesの感染を有するまたはリスクのある対象を示す。「正常」または「平均対照」レベルとは、C. acnesの感染を有さない対象者の集団における全PSMβの平均レベルまたは各種類のPSMβ(例えば、PSMβ1、3、4、及び/または6)の平均レベルであるPSMβ(例えば、PSMβ1、3、4、及び/または6)のレベルである。一実施形態では、抽出物サンプル中に存在する各PSMβの配列を決定し、次いで、配列番号:9437、9439、9441、9443、9445、9447に記載されているような配列と比較して、どのタイプのPSMβが存在するかを決定できる。
【0106】
さらなる実施形態では、診断及び/または予後の方法は、対象者が本明細書に記載されたプレバイオティクス、プロバイオティクスまたはポストバイオティクス療法を必要とするかを決定するために使用することができる。
【0107】
以下の実施例は例示的なものであり、請求項の発明を限定することを意図したものではなく、本開示の組成物の方法を例示するものである。
実施例
【0108】
ヒト対象者及びサンプルスワブの収集
ヒトを対象とした全ての実験は,カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)IRB(Project#140144)によって承認されたプロトコルに従って実施された。12名の健康な成人を対象に、上腕部及び顔面からスワブを採取した。スワブを3%トリプティックソイブロス(TSB)で培養し、短時間ボルテックスした後、staphylococcal種の選択的増殖のため卵黄加マンニット食塩寒天(MAY)培地にプレーティングした。S. aureusは、マンニトール代謝及び卵黄反応により、CoNSと区別された。C. acnesの臨床分離株は、10名ニキビ患者の顔面の病変部及び非病変部と、6名健康なボランティアの顔面の皮膚をスワブで採取して得られたものである。スワブを強化クロストリジウムメディア(RCM)で培養した後、ボルテックスし、ビタミンK、ヘミン、5%シープス血液を添加したブルセラ血液寒天培地にプレーティングし、37℃で5日間培養した。
【0109】
皮膚由来のCoNSからの抗菌活性のスクリーニング
各皮膚部位から選択されたCoNSの 24個の個別分離コロニーをMAY培地からランダムに採取し、96ウェルの深型プレートのTSB(1 mL)に移した。各プレートには、他のstaphylococciに対して抗菌活性を示さないS. epidermidis ATCC1457(陰性対照)と、S. aureusを殺すランチオバイオティクスを産生することが以前に示されたS. hominus A9(陽性対照)を含む、以前に特徴づけられたCoNS株が含まれた。CoNSプレートを滅菌エアラシールフィルム(シグマ社製)で密封し、250 rpmで振盪しながら37℃で一晩培養した。細菌の増殖はOD600を測定することによって評価され、高密度(OD600> 6.0)に増殖したCoNSのみがその後の分析に使用された。分泌された上清の抗菌活性を測定するために、一晩培養したCoNSの上清を回収し、滅菌ろ過した。生きて成長中のCoNSからの抗菌活性を測定するために、一晩培養した細菌を遠心分離によってペレット化し、次に上清を捨て、細菌を新しいTSBに再懸濁した。
【0110】
質量分析
対象フラクションの一部(<1 μg)を真空下で乾燥させ、5%ギ酸を含む5 μLの5%アセトニトリルに再懸濁した。次に、インラインのEasy-nLC 1000(Thermo Fisher Scientific社製)を備えたOrbitrap Fusion(Thermo Fisher Scientific社製)質量分析計で85分間のデータ取得を通して各サンプルの1/5で個別のLC-MS実験を実施した。ホームプル及びパックされた30 cmのカラムに、それぞれ0.5 cm、0.5 cm、及び30 cmの5μm C4、3μm C18、及び1.8μm C18をトリプルパックし、分析カラムとして使用するために60℃に加熱した。ペプチドを最初に500 barでロードし、続いて70分間で6~25%アセトニトリルの範囲のクロマトグラフィーグラジエントを行い、続いて10分間保持した100%アセトニトリルへの5分間グラジエントを行った。エレクトロスプレーイオン化は、分析カラム及びEasy-nLCシステムを接続するステンレス製のT字型接合部を介して2000 Vの電圧をかけることによって実施された。各サンプルは、3~100%のアセトニトリルへのグラジエントで15分間以上、さらに100%アセトニトリルで10分経過した後、2回の洗浄を行った。2~6の電荷状態を持つペプチドを375~1500 m/zの範囲でスキャンした。ピークの定量にはセントロイドデータを使用した。取得はデータ依存のポジティブイオンモードで実行された。生のスペクトルは、Proteome Discovererバージョン2.1で、Staphylococcus capitisのuniprot参照データベース(UniprotプロテオームUP000042965、2018年10月1日アクセス)に対して、ペプチド及びタンパク質の誤検出を1%に制御するために使用される逆データベースアプローチと共にSequestアルゴリズムを使用して検索された。検索で酵素は指定されず、最小ペプチド長さは6アミノ酸に設定されました。検索パラメータには、50 ppmのプリカーサー質量許容値及び0.6 Daのフラグメント質量許容値、及び変更のための可変酸化が含まれた。
【0111】
In vitro抗菌アッセイ
最初のCoNS抗菌スクリーニングのために、S. aureus 113またはC. acnes HL110PA3(健康関連、SLST K1)もしくはC. acnes HL096PA1(ニキビ関連、SLST C2)のいずれかを用いて放射状拡散寒天アッセイを実施した。放射状拡散寒天アッセイでは、溶かしたTSBまたはRCM寒天(12 mL)をS. aureusまたはC. acnes(1x106 CFU)と混合し、10 cm四方のペトリディッシュに注ぎ込んだ。寒天が固まったら、10 μlのアリコートの細菌を1枚のグリッドに接種した。プレートを37℃で一晩振とう(S. aureusの場合)、あるいは2.5 Lのアネロパック(サーモサイエンティフィック社)(C. acnesの場合)中で37℃で3日間培養して、細菌の目に見える増殖を可能にした。抗菌活性は、コロニーを取り囲む寒天内の明確な抑制ゾーンがあることで示された。抑制ゾーンの大きさを抗菌活性の指標として記録した(+軽度、++中等度、+++強力)。液体培養アッセイでは、CoNSを一晩培養して得られたコンディショニング上清を採取し、滅菌ろ過した(0.22 μm)。96ウェル丸底プレートに、50%のコンディショニング上清を、1X105 CFU/mLのS. aureusまたはC. acnesを含む50%の新しいTSBまたはRCMと混合した。S. aureusのプレートは37℃で一晩振とうして培養し、C. acnesのプレートは嫌気チャンバー内で37℃で静置して培養した。細菌の増殖はOD600によって測定され、陽性の抗菌株は、細菌の増殖を陰性対照株で測定された増殖の50%(I50)未満に抑制したものとして特定された。細菌の生存率は、TSBプレート(S. aureus)またはBrucella血液寒天プレート(C. acnes)上のCFU数をカウントすることにより測定された。細菌の上清または抽出物で処理した後の選択された時間に、CFUの数は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で段階希釈し、適切な寒天培地にプレーティングすることによって決定された。細菌の生存率は、ミリリットルあたりのCFUの総数として測定された。
【0112】
CoNS株によって産生される抗菌剤の精製
陽性対照抗菌S. hominusA9株を含む選択された抗菌S. capitis E12株の一晩培養物からの条件培地を、最初に0.22 μmミリポアフィルターでろ過することにより滅菌した。最初の特性評価では、滅菌細菌上清を100℃で15分間煮沸するか、タンパク質分解酵素であるパパイン及びプロテイナーゼKを200μg/mL、37℃で60分間インキュベートした。抗菌活性は放射状拡散アッセイにより測定した。抗菌性分子のサイズ排除のために、20 mLの条件培地を3、10及び30 kDa分子量カットオフ(MWCO)カラム(Pierce)にロードし、4000xgで15分間遠心分離した。フロースルー画分は取っておき、保持された画分はPBSで2回洗浄し、20 mLのTSBで再懸濁した。抗菌活性は両方の画分について評価された。活性分子を沈殿させるために、硫酸アンモニウムを滅菌上清(30~80%飽和)に加え、室温で一定の回転下で1時間培養した後、4000xgで45分間遠心分離した。得られたペレットを水で3回洗浄し、水で再構成した。抗菌活性は、寒天及び液体培養におけるS. aureus及びC. acnesの増殖によって決定された。
【0113】
上清の固相抽出(SPE)及びHPLC精製
10 kDa MWCOカラムに保持され、60% ASで沈殿したS. capitis E12滅菌上清を、Oasis HLBカートリッジ(Waters)に適用した。カートリッジを水中の20%アセトニトリルで洗浄し、水中の80%アセトニトリルで溶出した。溶出した画分を凍結乾燥し、水で再構成した。次に、80%画分をC8 Sep-Pakカートリッジ(Waters)にロードし、20%アセトニトリルで洗浄し、50%アセトニトリルで溶出した。この画分を凍結乾燥させ、水で再構成し後、製造元の指示に従って抗菌活性を評価し、銀染色(Pierce)で可視化した。最初のステップのHPLC精製は、S. capitis E12のブタノール抽出物1 mgをCapCel Pak C8(5 μm, 300オングストローム, 4.6x250 mm)(株式会社資生堂)にロードし、0.8 mL/minの0.1%(v/v)TFA中の10%~60%のアセトニトリルの直線勾配を行った。画分を凍結乾燥させ、水で再懸濁し、液体培養アッセイにより抗菌活性を評価した。2番目のステップのHPLC用に各単一の抗菌画分を一緒にプールして、最大5つの連続精製を実行した。2回目の精製では、25%~50%のアセトニトリルの直線勾配を採用した。
【0114】
豚の皮膚及びマウスへの抗菌CoNSの移植
生きた動物の作業を含む全ての実験は、カリフォルニア大学サンディエゴ校の「施設内動物管理及び使用ガイドライン」の承認に従った。新鮮な凍結した豚の皮膚シートは、ロレッタトムリンアニマルテクノロジーズ(カリフォルニア州リバモア)から入手し、3%のクロロキシレノールを含ませた手術用ブラシで消毒した。皮膚シートを2.5 cmx2.5 cmにカットし、滅菌したPBSで20回以上リンスした。1x107 CFUのC. acnes (ATCC6919)を豚の皮膚に1時間かけてチャレンジし、100 μlのS. capitis E12抽出物(10 mg/mL)またはPBS対照を24時間かけて塗布した。生菌をスワッブで採取し、C. acnesの生存率を測定する。マウス実験では、ヘアレスSKH1マウスの背中をアルコールワイプでこすり洗いし、滅菌ガーゼパッドに1x107 CFU C. acnesを接種し、テガダームフィルムで24時間固定した。C. acnesを含むガーゼパッドを取り外し、100 μlのS. capitis E12抽出物(10 mg/mL)またはPBS対照を新しいガーゼパッドに接種し、同じ背部皮膚部位に戻し、テガダームフィルムでさらに24時間固定した。接種の48時間後、C. acnesの生存CFUを測定するために、皮膚を拭いた。
【0115】
ヒト皮膚細菌からの抗菌活性のスクリーニングは、C. acnesに対して強力かつ選択的な活性を有するS. capitis株を同定する。
288のCoNS分離株のライブラリーが、健康なボランティアの前腕及び顔面の皮膚スワブから収集された。抗C. acnes活性の偏りのない分析は、C. acnesを含む寒天上で増殖するCoNS分離株とのライブ共培養によって行われ、滅菌濾過された50% v/v調製されたCoNS上清の添加後のC. acnesの増殖を測定した(図5A)。機能スクリーニングの結果は、液体アッセイ及び寒天共培養の両方でC. acnesの増殖に対して活性を示す合計13分離株が見つかった(図5B、C)。抗菌活性を有するCoNS分離株から抽出したDNAを16Sシーケンスにかけたところ、ヒトの皮膚によく寄生するとされるS. epidermidisやS. hominisなど、いくつかの異なる種が同定された。最も強力な分離物はStaphylococcus capitis(S. capitis strain E12)と同定され、さらなる特徴付けのために用いられた。同定された13の抗菌性菌株のうち、すべてが前腕部から分離された。顔面から分離物のいずれも、C. acnesの増殖を抑制することが見出されなかった。興味深いことに、S. aureusに有効なランティビオティクスを産生するS. hominus A9株はC. acnesには効果がなく、皮膚の混合細菌群に由来する抗菌剤の選択性を示す。
【0116】
次に,複数の異なるCoNS常在種及び一般的な皮膚病原体の増殖を抑制するS. capitis E12の選択性を寒天アッセイで試験した。S. hominus A9がS. aureus及びGASの増殖を強力に抑制したのに対し、S. capitis E12はCoNSに対して弱い活性しか示さず,他の皮膚病原菌に対しては無効であった(図5D)。驚くべきことに、S. capitis E12は、ニキビ患者の病変部及び非病変部のいずれかから分離された株を含む、広範囲のC. acnes株に対して強力な活性を示した。S. capitis E12の未濃縮培地の滅菌上清の50%希釈は、C. acnesの増殖を抑制するのに十分であり、従って、機能的スクリーニングから得られた知見が検証され、通常の増殖条件下では、このS. capitis菌株がC. acnesを打ち負かす十分な抗菌活性を発揮できることが示された(図5E)。抗菌性上清が殺菌性であるかを調べるために、S. capitis E12の濃度を増加させて24時間処理した後、生き残ったC. acnesコロニーの数を計数した。機能的スクリーニングの結果と一致して、S. capitisの上清は他のCoNS種に対しては一般的に殺菌性を示さず、例外的にS. hominus 菌株27844に対しては最高の10倍濃度でのみ殺菌性を示した。しかし、S. capitis E12の上清はC. acnesに対して殺菌性であり、0.6X(60%)の上清及び最高濃度での培養物の完全な滅菌の曝露中にC. acnesの6ログの減少を示した(図5F)。
【0117】
PSMβ抗微生物ペプチドの精製及び同定
抗菌因子の性質を最初に調べたところ、熱処理には耐性があるが、タンパク質分解には敏感であり、タンパク質性の分子であることが示唆された(補足図、図1A、B)。さらに、60-80%硫酸アンモニウム(AS)でインキュベートした際の上清から抗菌因子が析出し、遠心分離で濃縮された(図9C)。次に,固相抽出法を用いて,濃縮されたASの沈殿物からサンプルの調製を行った。サンプルを親水性-親油性バランス(HLB)カラムにロードし、C. acnes寒天培地(図6A)またはC. acnes液体培養(図6B)に接種してから72時間後に測定したところ、抗C. acnes分子は80%のアセトニトリルで溶出されることが分かった。続いて、活性溶出液を疎水性のC8カートリッジにロードし、抗C.acnes分子は50%アセトニトリルで溶出された(図6A、B)。この画分の総タンパク質染色により、約4~5 kDaの大きさの高度に濃縮されたバンドが明らかになり、その後の溶出ステップではより高い純度が見られた(図5C)。逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)はいくつかのピークを明らかにし、そのうちの単一の画分(画分21)が液体培養でのC. acnesの増殖を抑制することが見出された(図5D)。その後、最高の純度を確保するために、4回の別々のHPLC分析から活性画分を一緒にプールし、2番目のステップのHPLC精製を実施した。今回は、いくつかの小さなピークが可視化され(図6F)、2つの画分(画分15及び16)が液体培養でのC. acnesの増殖を抑制することが分かった(図6G)。活性画分(15、16)及び対照の非活性画分(13、14、17、18)の質量分析(MS)により、それぞれ5 kDaの大きさの「抗菌タンパク質」と呼ばれる4つの候補ペプチドが明らかになった(図6H)。ペプチドの配列のBLAST検索した結果、これらのペプチドは、複数のStaphylococcal属に存在するフェノール可溶性モジュリン(PSMβ)のβクラスファミリーに属することが判明した。
【0118】
4つの異なるPSMβペプチドがMSによって検出されたが、S. capitis E12ゲノムの分析は、オペロン様構造内に含まれる最大6つのPSMβをコードする遺伝子を明らかにした(図7A)。6つのPSMβをコードする遺伝子は全て密接に関連し、56%~91%のアミノ酸配列同一性及び-1から+1までの予測電荷を有する(図7B)。さらなる分析により、これらの遺伝子はS. capitis 35661及び27844のATCC株のゲノムに存在せず、実際にこれらの実験室株のC. acnesに対する抗菌活性が検出されなかった(図7C)。アルファヘリックスホイールプロット(Heliquest)は、これらのペプチドが各PSMβに対してα-ヘリックスの両親媒性のような構造を形成し、ペプチドの長軸の反対側に別々の疎水性面と親水性面があることも予測した。 この両親媒性構造は、多くのよく特徴付けられた抗菌ペプチドの間で共通である(図、7D)。
【0119】
PSMβは、C. acnesによる皮膚コロニー形成を抑制する。
S. capitis E12の調製された上清を、PSMペプチドを濃縮する手順であるn-ブタノールで抽出された。その結果、全てのPSMβペプチドが濃縮された比較的純粋な抽出液が得られ、C. acnesに対する活性が保持された(図10)。PSMβペプチドが抗C. acnes分子として活性であることを確認するために、及びどのペプチドが最適な活性を有するかを特定するために、精製された活性画分(15及び16、図6H)から最も豊富な分子であるPSMβ1と6、及びあまり豊富ではなかったPSMβ4を個別に合成した。3つのPSMsはすべて、in vitroで抗菌活性を有することが示された(図8A)。PSMβ1と6は両方とも62 μg/mlでC. acnesの増殖を効果的に抑制したが、PSMβ4はそれほど強力ではなく、125 μg/mlで抑制した。興味深いことに、3つのペプチドの組み合わせは、C. acnesに対して最適な活性を示し、31 μg/mlで増殖を抑制した。しかし、これは、8 μg/mlで阻害した同じ濃度のブタノール抽出物と比較して阻害性ではなかった。この違いは、抽出液に含まれる追加の4つ目のPSMβペプチド(PSMβ3)の存在が原因である可能性がある。いくつかの細菌性抗菌剤は、ディフェンシンやLL37などのヒト抗菌剤と相乗作用することが示されている。しかし、LL-37ペプチドの有無にかかわらず、S. capitisの抽出物へのC. acnesの暴露は、殺傷活性の向上をもたらさなかった(図11)。合成的に生成されたPSMβペプチドと比較して、PSMβ含有抽出物のより大きな効力及び相対的な純度を考えると、その後の実験では、抽出物を用いて、in vitro及びin vivo実験におけるS. capitis E12の有効性及び効力を調べた。
【0120】
次に,S. capitis E12の抽出物を、ニキビ治療によく使われるいくつかの抗生物質と比較した。抽出物は,ニキビ治療に一般的に処方される抗生物質であるエリスロマイシン、クリンダマイシン、テトラサイクリンよりもC. acnesに対して強力であった(図8B)。さらに、20代までの抽出物での処理中にC. acnesのMIC(≦16 μg/mL)の増加は記録されなかった。これは、耐性を促進することが比較的できないことを示す。さらに、初代ヒトケラチノサイト(NHEK)を抽出物に曝露しても、乳酸脱水素酵素(LDH)放出によって測定されるように、これらの表皮細胞から有意な細胞毒性応答は生じなかった(図8C)。同様に、異なるCoNS株に24時間曝露されたマウスの背中の皮膚では、S. capitis E12は観察可能な紅斑または傷害を誘発しなかったことを示した(図8D)。最後に、この皮膚常在菌が表皮によく受け入れられるという期待される結果を確認した上で、C. acnesを皮膚に塗布して、ex vivoの豚皮膚または生きたSKH1マウスの背中の皮膚にコロニーを形成し、次に、S. capitis E12の抽出物を塗布した。1回の処理で両方のモデルにおいて、C. acnesのCFUが有意に減少した(図8E、F)。全体として、これらの結果は、S. capitis E12由来のPSMβがC. acnesを殺傷する能力を有することを示し、治療法の開発のためにヒトの皮膚で自然に発生する微生物イベントを利用する可能性を示す。
【0121】
本開示のいくつかの実施形態が記載されている。それにもかかわらず、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変更がなされ得ることが理解されよう。従って、他の実施形態は、以下の請求の範囲の範囲内である。
図1A-1B】
図2A-2B】
図3
図4
図5A
図5B-5C】
図5D
図5E
図5F
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A-8B】
図8C-8D】
図8E-8F】
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図11
【配列表】
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