(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011295
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】収穫搬送装置およびトウモロコシ収穫機
(51)【国際特許分類】
A01D 45/02 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
A01D45/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113188
(22)【出願日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100129643
【弁理士】
【氏名又は名称】皆川 祐一
(72)【発明者】
【氏名】岩本 瞬
(72)【発明者】
【氏名】山下 直樹
【テーマコード(参考)】
2B075
【Fターム(参考)】
2B075AA10
2B075AC15
(57)【要約】
【課題】ローラにトウモロコシ茎が巻き付くことを抑制できる、収穫搬送装置およびトウモロコシ収穫機を提供する。
【解決手段】ストークローラ23のブレード部63の後方には、ブレード部63に対して後方から対向する対向部92を有するプレート部品91が設けられている。これにより、ストークローラ23の後軸部における対向部92よりも後方の部分にトウモロコシ茎が巻き付くことを抑制できる。また、収穫部フレーム41に対するプレート部品91の取付位置が調整可能であるので、プレート部品91の対向部92とブレード部63との間の距離を適切に調整することができ、対向部92とブレード部63との間で後軸部にトウモロコシ茎が巻き付くことを抑制できる。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トウモロコシ収穫機の前端部に設けられて、トウモロコシ房状体を収穫して搬送する収穫搬送装置であって、
フレームと、
軸部が前記トウモロコシ収穫機の前後方向に延びる回転軸線を中心に回転可能に前記フレームに支持され、前記回転軸線を中心とする回転により、前記軸部から延出するブレード部がトウモロコシ茎に係止して、トウモロコシ茎を引き下げるローラと、
前記フレームに位置調整可能に取り付けられて、前記ブレード部に対して前記前後方向の後側から対向する対向部を有するプレート部品と、を含む、収穫搬送装置。
【請求項2】
前記対向部は、前記トウモロコシ収穫機の左右方向に延びる板状をなし、
前記プレート部品は、
前記対向部の前記左右方向の左側の端から前記前後方向の一方側に延びる板状をなし、上下方向よりも前記前後方向に長い左取付穴が貫通して形成された左取付部と、
前記対向部の前記左右方向の右側の端から前記前後方向の前記一方側に延びる板状をなし、前記上下方向よりも前記前後方向に長い右取付穴が貫通して形成された右取付部と、を有し、
前記左取付穴および前記右取付穴にそれぞれ挿通されるボルトにより、前記フレームに取り付けられる、請求項1に記載の収穫搬送装置。
【請求項3】
前記プレート部品は、前記対向部の前記上下方向の下側の端から前記前後方向の前記一方側と反対側に延び、かつ、前記左右方向に延びる板状の第1補強部、を有する、請求項2に記載の収穫搬送装置。
【請求項4】
前記プレート部品は、前記対向部と前記第1補強部とに跨がって設けられる板状の第2補強部、を有する、請求項3に記載の収穫搬送装置。
【請求項5】
前記第2補強部には、前記上下方向よりも前記前後方向に長い取付穴が貫通して形成されており、
前記プレート部品は、前記取付穴に挿通されるボルトにより、前記フレームに取り付けられる、請求項4に記載の収穫搬送装置。
【請求項6】
前記第2補強部は、前記左右方向に間隔を空けて、2個設けられている、請求項4または5に記載の収穫搬送装置。
【請求項7】
前記プレート部品は、2個の前記第2補強部の間の中央に、前記対向部と前記第1補強部とに跨がって設けられる板状の第3補強部、を有する、請求項6に記載の収穫搬送装置。
【請求項8】
前記ローラは、前記ブレード部に対する先端側に、先端側ほど先細りとなる円錐状の周面に螺旋状の突条が形成されて、トウモロコシ茎を前記ブレード部に案内する案内部を有している、請求項1に記載の収穫搬送装置。
【請求項9】
機体と、
前記機体を支持し、前記機体に備えられる動力源の動力により駆動される左右1対の走行装置と、
前記機体および前記走行装置の前方に設けられて、トウモロコシ房状体を収穫して搬送する収穫搬送装置と、を含み、
前記収穫搬送装置は、
フレームと、
軸部が前後方向に延びる回転軸線を中心に回転可能に前記フレームに支持され、前記回転軸線を中心とする回転により、前記軸部から延出するブレード部がトウモロコシ茎に係止して、トウモロコシ茎を引き下げるローラと、
前記フレームに位置調整可能に取り付けられて、前記ブレード部に対して前記前後方向の後側から対向する対向部を有するプレート部品と、を含む、トウモロコシ収穫機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トウモロコシ房状体を収穫して搬送する収穫搬送装置およびこれを備えるトウモロコシ収穫機に関する。
【背景技術】
【0002】
トウモロコシ収穫機では、その前端に、トウモロコシ房状体(トウモロコシ粒が房状に連なり、それらが包葉によって包まれているもの)を収穫して後方に搬送する収穫搬送装置が設けられている。トウモロコシ房状体は、収穫搬送装置から脱穀装置に搬送されて、脱穀装置による脱穀処理(包葉の皮剥きおよび穀粒の粒取り)を受ける。
【0003】
収穫搬送装置には、複数のデバイダが左右方向(車幅方向)に並べて配置されている。また、収穫搬送装置には、各デバイダ間に対して、左右1対のデッキプレート、左右1対のストークローラおよび左右1対の搬送チェーンが備えられている。左右のデッキプレートの間には、間隔が空けられている。左右のストークローラは、それぞれ左右のデッキプレートの下方において、前後方向に延びる回転軸線を中心に回転可能に設けられている。左のストークローラは、前側から見て時計回りに回転され、右のストークローラは、前側から見て反時計回りに回転される。左右の搬送チェーンは、それぞれ左右のデッキプレートの上方に設けられている。搬送チェーンは、前後方向に間隔を空けて配置される駆動スプロケットおよび従動スプロケットに巻き掛けられている。駆動スプロケットおよび従動スプロケットは、それぞれ上下方向に延びる回転軸線を中心に回転可能に設けられている。左の搬送チェーンは、上側から見て時計回りに周回され、右の搬送チェーンは、上側から見て反時計回りに周回される。
【0004】
圃場では、トウモロコシが整列して植えられている。トウモロコシの収穫の際には、その圃場に植立したトウモロコシの1列(条)が隣り合うデバイダ間に導入され、そのトウモロコシの茎(稈)が左右のデッキプレートの間、左右のストークローラの間および左右の搬送チェーンの間に導入される。ストークローラの回転に伴って、左右のストークローラがトウモロコシの茎に係止し、ブレード部が茎を引き下げる。このとき、茎に付いているトウモロコシ房状体がデッキプレートに受け止められて、トウモロコシ房状体が茎から分離する。茎から分離したトウモロコシ房状体は、搬送チェーンにより、デッキプレート上を後方へ搬送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる構成では、ストークローラの後端部にトウモロコシの茎が巻き付くことがある。ストークローラの後端部に茎が巻き付くと、ストークローラが回転しなくなったり、ストークローラが前方に押されて、ストークローラの前端部を支持するベアリングにスラスト荷重(アキシャル荷重)がかかり、ベアリングの耐久性が低下したりするおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、ローラ(ストークローラ)にトウモロコシ茎が巻き付くことを抑制できる、収穫搬送装置およびトウモロコシ収穫機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、本発明の一の局面に係る収穫搬送装置は、トウモロコシ収穫機の前端部に設けられて、トウモロコシ房状体を収穫して搬送する収穫搬送装置であって、フレームと、軸部がトウモロコシ収穫機の前後方向に延びる回転軸線を中心に回転可能にフレームに支持され、回転軸線を中心とする回転により、軸部から延出するブレード部がトウモロコシ茎に係止して、トウモロコシ茎を引き下げるローラと、フレームに位置調整可能に取り付けられて、ブレード部に対して前後方向の後側から対向する対向部を有するプレート部品とを含む。
【0009】
この構成によれば、ローラの回転に伴って、ローラのブレード部がトウモロコシ茎に係止して、ブレード部がトウモロコシ茎を引き下げる。このとき、トウモロコシ茎に付いているトウモロコシ房状体の下方への移動が阻止されることにより、トウモロコシ房状体がトウモロコシ茎から分離する。
【0010】
ローラの軸部には、少なくとも根元側の端部(後端部)にブレード部の存在しない部分があり、その部分がベアリングなどを介してフレームに支持される。そのため、トウモロコシ房状体がトウモロコシ茎から分離した後、そのトウモロコシ茎が軸部の根元側の端部、つまりブレード部に対する前後方向の後側の部分に巻き付くおそれがある。
【0011】
そこで、ブレード部に対して前後方向の後側から対向する対向部を有するプレート部品が設けられている。これにより、軸部における対向部よりも根元側の部分にトウモロコシ茎が巻き付くことを抑制できる。また、フレームに対するプレート部品の取付位置が調整可能であるので、プレート部品の対向部とブレード部との間の距離を適切に調整することにより、対向部とブレード部との間で軸部にトウモロコシ茎が巻き付くことを抑制できる。
【0012】
よって、ローラにトウモロコシ茎が巻き付くことを良好に抑制できる。その結果、ローラにトウモロコシ茎が巻き付くことによるローラの回転不良の発生を抑制できる。また、ローラに巻き付いたトウモロコシ茎によりブレード部が前方に押されることがなくなり、ローラを支持するベアリングなどにスラスト荷重(アキシャル荷重)がかかることを抑制でき、ベアリングなどの耐久性が向上する。
【0013】
対向部は、トウモロコシ収穫機の左右方向に延びる板状をなし、プレート部品は、対向部の左右方向の左側の端から前後方向の一方側に延びる板状をなし、上下方向よりも前後方向に長い左取付穴が貫通して形成された左取付部と、対向部の左右方向の右側の端から前後方向の一方側に延びる板状をなし、上下方向よりも前後方向に長い右取付穴が貫通して形成された右取付部とを有し、左取付穴および右取付穴にそれぞれ挿通されるボルトにより、フレームに取り付けられる構成であってもよい。
【0014】
この構成により、フレームに対するプレート部品の取付位置を調整することができる。
【0015】
プレート部品は、対向部の上下方向の下側の端から前後方向の一方側と反対側に延び、かつ、左右方向に延びる板状の第1補強部を有していてもよい。
【0016】
この構成により、プレート部品の強度を増すことができる。その結果、トウモロコシ茎でプレート部品の対向部が叩かれることによるプレート部品の変形を抑制できる。
【0017】
プレート部品は、対向部と第1補強部とに跨がって設けられる板状の第2補強部を有していてもよい。
【0018】
この構成により、プレート部品の強度をさらに増すことができる。
【0019】
また、プレート部品が第2補強部を有する構成では、第2補強部に上下方向よりも前後方向に長い取付穴が貫通して形成され、その取付穴に挿通されるボルトにより、プレート部品がフレームに取り付けられてもよい。
【0020】
この構成により、フレームに対するプレート部品の取付強度を増すことができる。
【0021】
第2補強部は、左右方向に間隔を空けて、2個設けられていてもよい。
【0022】
プレート部品は、2個の第2補強部の間の中央に、対向部と第1補強部とに跨がって設けられる板状の第3補強部をさらに有していてもよい。
【0023】
この構成により、プレート部品の強度をより一層増すことができる。
【0024】
ローラは、ブレード部に対する先端側に、先端側ほど先細りとなる円錐状の周面に螺旋状の突条が形成されて、トウモロコシ茎をブレード部に案内する案内部を有していてもよい。
【0025】
ブレード部に対する先端側に案内部が設けられていることにより、軸部におけるブレード部よりも先端側の部分にトウモロコシ茎が巻き付くことを抑制できる。
【0026】
本発明の他の局面に係るトウモロコシ収穫機は、機体と、機体を支持し、機体に備えられる動力源の動力により駆動される左右1対の走行装置と、機体および走行装置の前方に設けられて、トウモロコシ房状体を収穫して搬送する収穫搬送装置とを含み、収穫搬送装置は、フレームと、前後方向に延びる回転軸線を中心とする軸部がフレームに回転可能に支持され、回転軸線を中心とする回転により、軸部の周面から延出するブレード部がトウモロコシ茎に係止して、トウモロコシ茎を引き下げるローラと、フレームに位置調整可能に取り付けられて、ブレード部に対して前後方向の後側から対向する対向部を有するプレート部品とを含む。
【0027】
このトウモロコシ収穫機では、本発明の一の局面に係る収穫搬送装置に関して述べた作用効果と同様の作用効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、ローラにトウモロコシ茎が巻き付くことを抑制できる。その結果、ローラにトウモロコシ茎が巻き付くことによるローラの回転不良の発生を抑制できる。また、ローラを支持するベアリングなどにスラスト荷重がかかることを抑制でき、ベアリングなどの耐久性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の一実施形態に係るトウモロコシ収穫機の右側面図である。
【
図4】収穫搬送装置の一部の正面図(前方から見た図)である。
【
図7】ストークローラの下面図であり、1個のブレード構成部品が取り外された状態を示す。
【
図10】収穫搬送装置の前端部を前後方向に沿った切断面で切断したときの断面を右方から見た断面図である。
【
図11】ストークローラの後端部を左下前方から見た斜視図である。
【
図12】ストークローラの後端部を左下後方から見た斜視図である。
【
図13】プレート部品を左後上方から見た斜視図である。
【
図14】プレート部品を右後上方から見た斜視図である。
【
図15】収穫搬送装置の背面図(後方から見た図)である。
【
図16】オーガならびに搬送部フレームの底板部および後壁部を右前上方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0031】
<トウモロコシ収穫機の全体構成>
図1は、本発明の一実施形態に係るトウモロコシ収穫機1の右側面図である。
図2は、トウモロコシ収穫機1の平面図である。
【0032】
トウモロコシ収穫機1は、圃場を走行しながらトウモロコシ房状体(トウモロコシ粒が房状に連なり、それらが包葉によって包まれているもの)の収穫およびトウモロコシ房状体からの脱穀(包葉の皮剥きおよびトウモロコシ粒の粒取り)を行う農業機械である。
【0033】
なお、以下の説明において、トウモロコシ収穫機1の前進方向を前方とし、トウモロコシ収穫機1の後進方向を後方とする。そして、トウモロコシ収穫機1を後方から見て、幅方向の左側を左方とし、幅方向の右側を右方とする。
【0034】
トウモロコシ収穫機1は、圃場などの不整地を走破する能力を有する走行装置として、左右1対のクローラ走行装置2を採用している。左右のクローラ走行装置2により、機体フレーム3が支持され、クローラ走行装置2には、機体フレーム3上に設けられたエンジン4の動力がトランスミッション5を介して伝達される。
【0035】
また、機体フレーム3上には、キャビン6、脱穀装置7および穀粒タンク8が設けられている。クローラ走行装置2および機体フレーム3の前方には、トウモロコシ房状体を収穫して後方に搬送する収穫搬送装置9が設けられている。脱穀装置7と収穫搬送装置9との間には、トウモロコシ房状体を収穫搬送装置9から脱穀装置7に向けて搬送するフィーダ10が設けられている。
【0036】
キャビン6は、機体フレーム3の前端部上に配置されている。キャビン6は、その内部に運転者が搭乗する空間を提供し、その空間内には、たとえば、運転者が着座する運転席11、運転者が操作する操作レバー12などが配置されている。キャビン6の右側面には、開閉可能なドア13が設けられており、運転者は、ドア13を開いて、キャビン6内に乗り込むことができる。
【0037】
脱穀装置7は、キャビン6の左後方に配置されている。穀粒タンク8は、キャビン6の後方かつ脱穀装置7の右方に配置されている。脱穀装置7では、フィーダ10により搬送されてくるトウモロコシ房状体から包葉が剥き取られ、その包葉が剥き取られたトウモロコシ房状体からトウモロコシ粒(種子粒)が外される。トウモロコシ粒は、脱穀装置7から穀粒タンク8に搬送されて、穀粒タンク8に貯留される。穀粒タンク8には、アンローダ14が接続されており、穀粒タンク8に貯留されたトウモロコシ粒は、アンローダ14により、穀粒タンク8から機外に排出することができる。
【0038】
<収穫搬送装置>
図3は、収穫搬送装置9の上面図である。
図4は、収穫搬送装置9の正面図(前方から見た図)である。
図5は、収穫搬送装置9の下面図である。
【0039】
収穫搬送装置9は、4個のデバイダ21を備えている。4個のデバイダ21は、左右方向に間隔を空けて並べて配置されている。また、収穫搬送装置9は、左右方向に隣り合うデバイダ21の間(以下、単に「デバイダ21間」という。)の個々に対して、左右1対の受止プレート22と、左右1対のストークローラ23と、左右1対の搬送機構24と、オーガ25とを備えている。
【0040】
<デバイダ>
左端のデバイダ21は、平面視において、左端縁31が前後方向に延び、右端縁32が前方ほど左端縁31に近づくように前後方向に対して傾斜して延びている。右端のデバイダ21は、平面視において、右端縁33が前後方向に延び、左端縁34が前方ほど右端縁33に近づくように前後方向に対して傾斜して延びている。左端のデバイダ21と右端のデバイダ21とは、平面視において、収穫搬送装置9の左右方向の中央を通って前後方向に延びる直線に関して左右対称をなしている。
【0041】
左右両端のデバイダ21の間に配置される内側2個のデバイダ21は、同一の構成であり、平面視において、左端縁35および右端縁36が前方ほど互いに近づくようにそれぞれ前後方向に対して傾斜して延びる略二等辺三角形状に形成されている。
【0042】
4個のデバイダ21の先端部は、左右方向に等間隔を空けて、左右方向に延びる直線上に配置されている。4個のデバイダ21の先端部を除いて、内側2個のデバイダ21の左端縁35と右端のデバイダ21の左端縁34とは、平行をなし、内側2個のデバイダ21の右端縁36と左端のデバイダ21の右端縁32とは、平行をなしている。これにより、各デバイダ21間には、後方ほど左右方向の幅が狭くなる案内空間37が生じている。
【0043】
<デッキプレート>
左右1対の受止プレート22は、それぞれ前後方向および左右方向に延びる板状をなし、案内空間37の後方で左右方向に並べて設けられて、収穫搬送装置9の収穫部フレーム41に支持されている。その左右の受止プレート22の間には、間隔を空けることにより、前後方向に直線状に延びる茎進入路42が設けられている。
【0044】
<ストークローラ>
図6は、左右1対のストークローラ23の下面図である。
【0045】
左右1対のストークローラ23は、左右1対の受止プレート22の下方に、左右方向に並べて設けられている。すなわち、左のストークローラ23は、左の受止プレート22の下方に設けられ、左のストークローラ23と対をなす右のストークローラ23は、左の受止プレート22と対をなす右の受止プレート22の下方において、左のストークローラ23と同じ高さの位置に設けられている。
【0046】
【0047】
ストークローラ23は、前後方向に延びる回転軸線を中心に回転可能に設けられる前軸部43と、前軸部43と前後方向に間隔を空けて、前後方向に延びる回転軸線を中心に回転可能に設けられる後軸部44と、前軸部43から前方に突出して設けられる案内部45と、前軸部43と後軸部44とに架設されて、前軸部43および後軸部44の回転方向(周方向)に並べて配置される8個のブレード構成部品46とを備えている。
【0048】
なお、
図7は、1個のブレード構成部品46が取り外された状態を示している。
【0049】
前軸部43は、円筒部51、フランジ部52、大円筒部53および円柱部54を一体に有している。円筒部51は、前軸部43の回転軸線を中心線とする円筒状に形成されている。フランジ部52は、前軸部43の回転軸線を中心線とする円板状に形成され、円筒部51の前端に接続されて、その外周が円筒部51の周面に対して周囲に張り出している。大円筒部53は、フランジ部52の外周縁から前方に延出する円筒状に形成されている。円柱部54は、前軸部43の回転軸線を中心線とする円柱状に形成され、フランジ部52から前方に延びている。
【0050】
後軸部44は、円筒部55およびフランジ部56を一体に有している。円筒部55は、前軸部43の回転軸線を中心線とする円筒状に形成されている。フランジ部56は、円筒部55の外周面の前後方向の中央部から周囲に張り出す円環板状に形成されている。
【0051】
案内部45は、前軸部43のフランジ部52の前方に設けられている。案内部45は、前軸部43の回転軸線を中心線とする円錐状の周面57を有している。周面57には、螺旋状の突条58が形成されている。案内部45には、前軸部43の円柱部54が相対回転不能に結合されており、案内部45は、前軸部43と一体に回転する。
【0052】
ブレード構成部品46は、前軸部43の円筒部51と、後軸部44の円筒部55におけるフランジ部56よりも前方の部分とに跨がって設けられている。ブレード構成部品46は、前後方向に長く延びる矩形板状に形成され、円筒部51,55の外周面に当接する当接部61と、当接部61の短手方向の両端(前軸部43および後軸部44の回転方向の両端)から円筒部51,55の径方向に延びる板状の重合部62とを一体に有している。重合部62は、当接部61の前後方向の全長にわたって形成され、その前端部は、前方ほど先細りとなる三角板状に形成されている。
【0053】
図8は、左右1対のストークローラ23の正面図である。
【0054】
前軸部43および後軸部44の回転方向に隣り合うブレード構成部品46は、それらの重合部62が重ね合わされている。そして、その重ね合わされた重合部62が前後方向に間隔を空けた複数箇所で溶接されることにより、隣り合うブレード構成部品46が互いに固定された状態で連結されている。各ブレード構成部品46の当接部61は、溶接により、前軸部43の円筒部51および後軸部44の円筒部55に固着されている。これにより、8個のブレード構成部品46の当接部61は、前軸部43および後軸部44の回転軸線を中心線とする略八角柱状をなしている。また、重ね合わされた重合部62は、円筒部51,55から円筒部51,55の径方向に延出するブレード部63を構成し、8個のブレード部63は、8回対称をなすように、円筒部51,55から等角度間隔で円筒部51,55の径方向に放射状に延出している。
【0055】
前軸部43の円柱部54には、
図7に示されるように、ベアリング64の内輪が相対回転不能に外嵌されている。ベアリング64の外輪は、
図6に示されるように、収穫部フレーム41に支持されるホルダ65に回転不能に保持されている。一方、後軸部44の円筒部55におけるフランジ部56よりも後方の部分には、
図7に示されるように、カラー59が相対回転可能に外嵌されている。カラー59は、
図6に示されるように、収穫部フレーム41に固定されたギヤケース66に回転不能に保持されている。これにより、ストークローラ23は、前後方向に延びる回転軸線を中心に回転可能、言い換えれば、前軸部43および後軸部44の中心線を回転軸線として回転可能に、収穫部フレーム41に支持されている。
【0056】
なお、図示されていないが、ギヤケース66内において、後軸部44の円筒部55には、駆動伝達部材が相対回転不能に結合され、駆動伝達部材から駆動力が伝達される。円筒部55に伝達される駆動力により、左右1対のストークローラ23において、左のストークローラ23は、時計回りに回転され、右のストークローラ23は、反時計回りに回転される。
【0057】
<搬送機構>
図9は、搬送機構24の構成を示す上面図である。
【0058】
左右1対の搬送機構24は、左右1対の受止プレート22の上方に、左右方向に並べて設けられている。すなわち、左の搬送機構24は、左の受止プレート22の上方に設けられ、左のストークローラ23と対をなす右のストークローラ23は、左の受止プレート22と対をなす右の受止プレート22の上方に設けられている。
【0059】
搬送機構24は、駆動スプロケット71、従動スプロケット72および搬送チェーン73を備えている。
【0060】
ギヤケース66には、図示されない駆動伝達部材から駆動力が伝達される駆動軸74が回転可能に保持されている。駆動軸74は、ギヤケース66から上方に突出しており、駆動スプロケット71は、駆動軸74のギヤケース66から突出した部分に相対回転不能に結合されている。
【0061】
受止プレート22の前端部には、ブラケット75が固定されており、ブラケット75には、図示されないベアリングを介して、従動軸76が回転可能に保持されている。従動軸76は、左右方向に駆動軸74と同じ位置で、駆動軸74に対して前後方向に間隔を空けた位置に配置されている。従動軸76は、受止プレート22の上方に突出し、従動スプロケット72は、従動軸76の受止プレート22の上方に突出した部分に相対回転不能に結合されている。
【0062】
搬送チェーン73は、駆動スプロケット71と従動スプロケット72とに巻き掛けられている。搬送チェーン73には、複数の係止部77が等間隔で設けられている。係止部77は、搬送チェーン73の外周に突出する略三角板状、具体的には、左右1対の搬送機構24の間で後方を向く端面が前後方向に対して相対的に大きく傾斜し、左右1対の搬送機構24の間で前方を向く端面が前後方向に対して相対的に小さく傾斜する略三角板状に形成されている。
【0063】
駆動軸74から駆動スプロケット71に伝達される駆動力により、左右1対の搬送機構24において、左の搬送機構24の搬送チェーン73は、上側から見て時計回りに周回され、右の搬送機構24の搬送チェーン73は、上側から見て反時計回りに周回される。
【0064】
<カバー>
搬送機構24は、
図3に示されるように、各デバイダ21の後方に設けられるカバー81により上方から覆われている。左右方向における内側2個のデバイダ21の後方に設けられるカバー81は、その後部で左右方向に延びる揺動軸82を中心に、搬送機構24を覆う閉姿勢と搬送機構24を露出させる開姿勢とに開閉可能に構成されている。
【0065】
図10は、収穫搬送装置9の前端部を前後方向に沿った切断面で切断したときの断面を右方から見た断面図である。
【0066】
開閉可能に構成されたカバー81内には、開保持機構83が設けられている。開保持機構83には、ガイド部材84および保持棒85が含まれる。ガイド部材84は、収穫部フレーム41に固定されて前後方向および上下方向に延びる部分を有し、その部分には、前後方向に延びるガイド孔86が形成されている。保持棒85の一端部は、カバー81に左右方向に延びる回動軸線を中心に回動可能(揺動可能)に接続されている。保持棒85の他端部は、ガイド孔86に挿通されて、ガイド孔86に沿って移動可能に、ガイド孔86に保持されている。
【0067】
カバー81が閉姿勢の状態では、保持棒85の他端部がガイド孔86の後端部に位置している。カバー81が閉姿勢から開姿勢に回動変位されると、その回動変位に伴って、保持棒85の他端部がガイド孔86を前方に移動する。ガイド孔86の前端部には、ガイド孔86から下方に半円形状に凹んだ下係止部87と、ガイド孔86から上方に半円形状に凹んだ上係止部88とが形成されている。カバー81が開姿勢の状態になると、保持棒85の他端部(下端部)が下係止部87に嵌まり、保持棒85の移動が阻止される。これにより、カバー81が開姿勢の状態で保持される。
【0068】
カバー81が開姿勢から閉姿勢に回動変位される際には、カバー81の前端部が少し持ち上げられて、保持棒85の他端部が下係止部87から離脱される。そして、保持棒85の他端部がガイド孔86に導き入れられて、カバー81が開姿勢から閉姿勢に回動変位されるのに伴い、保持棒85の他端部がガイド孔86を後方に移動する。カバー81が閉姿勢の状態になると、保持棒85の他端部がガイド孔86の後端部に位置した状態に戻る。
【0069】
カバー81が閉姿勢の状態で保持されているときに、カバー81の前端部にその下方から作業者の腕や肩などが当たり、カバー81の前端部が作業者の意図ではなく持ち上がって、保持棒85の他端部が下係止部87から離脱することがある。このとき、下係止部87から離脱した保持棒85の他端部がガイド孔86に入ると、カバー81が自重により、開姿勢から閉姿勢に向けて変位するおそれがある。そのため、上係止部88が形成されている。これにより、カバー81の前端部が作業者の意図ではなく持ち上がって、保持棒85の他端部が下係止部87から離脱しても、保持棒85の他端部が上係止部88に嵌まり、その後、カバー81の前端部が自重により下がると、保持棒85の他端部が下係止部87に再び嵌まる。その結果、カバー81が作業者の意図ではなく開姿勢から閉姿勢に回動変位することを抑制できる。
【0070】
<収穫動作>
圃場では、トウモロコシが整列して植えられている。トウモロコシの収穫の際には、その圃場に植立したトウモロコシ茎(稈)の1列(条)がデバイダ21間の案内空間37に入るように、トウモロコシ収穫機1の左右方向の位置が調整されて、トウモロコシ収穫機1が前進走行される。トウモロコシ収穫機1の前進走行に伴い、トウモロコシ茎は、デバイダ21により案内されて、案内空間37から左右1対の受止プレート22間の茎進入路42、左右1対のストークローラ23の間および左右1対の搬送機構24の間に進入する。その後、トウモロコシ茎が左右のストークローラ23の案内部45の間に到達すると、そのトウモロコシ茎は、案内部45に案内されて、左右のストークローラ23のブレード部63の間に導入される。
【0071】
左右1対のストークローラ23は、
図8に示されるように、それらの回転時に左のストークローラ23のブレード部63が描く円軌跡TLの一部と右のストークローラ23のブレード部63が描く円軌跡TRの一部とがオーバラップするように、両者の回転軸線の間隔、円筒部51,55の外径およびブレード部63の長さが設計されている。また、円軌跡TLの一部と円軌跡TRの一部とのオーバラップ量がさらに調整されることにより、左右1対のストークローラ23は、左右のブレード部63の間に進入したトウモロコシ茎に左右両側からそれぞれ最大2個のブレード部63が係止するように設計されている。したがって、トウモロコシ茎には、合計で最大4個のブレード部63が係止し、ストークローラ23の回転に伴って、ブレード部63により下方に引き下げられる。
【0072】
左右1対の受止プレート22間の茎進入路42の幅は、トウモロコシ房状体が通過不可能な幅に設定されている。そのため、トウモロコシ茎が引き下げられると、トウモロコシ茎に付いているトウモロコシ房状体が受止プレート22に受け止められて、トウモロコシ房状体がトウモロコシ茎から分離する。搬送チェーン73が周回走行し、その周回走行する搬送チェーン73の係止部77がトウモロコシ茎から分離したトウモロコシ房状体に係止することにより、トウモロコシ房状体が受止プレート22上を後方に搬送される。
【0073】
<プレート部品>
図11は、ストークローラ23の後端部を左下前方から見た斜視図である。
図12は、ストークローラ23の後端部を左下後方から見た斜視図である。
【0074】
トウモロコシ茎からトウモロコシ房状体が外された後、トウモロコシ茎は、圃場に植立した状態で残る。そのため、ストークローラ23の後軸部44が露出していると、トウモロコシ茎が左右のストークローラ23のブレード部63の間から抜けた後、トウモロコシ茎が後軸部44に巻き付くおそれがある。
【0075】
そのため、ストークローラ23のブレード部63の後方には、プレート部品91が設けられている。
【0076】
図13は、プレート部品91を左後上方から見た斜視図である。
図14は、プレート部品91を右後上方から見た斜視図である。
【0077】
プレート部品91は、たとえば、金属板の折り曲げ加工により、左右方向および上下方向に延びる板状をなし、左右1対のストークローラ23のブレード部63に対して後方から一括して対向する対向部92と、対向部92の左端から前方に延びる板状をなす左取付部93と、対向部92の右端から前方に延びる板状をなす右取付部94と、対向部92の下端から左右方向に所定の幅で後方に延びる第1補強部95とを有している。
【0078】
左取付部93には、2個の左取付穴96が貫通して形成されている。右取付部94には、2個の右取付穴97が貫通して形成されている。左取付穴96および右取付穴97は、いずれも上下方向よりも前後方向に長い長穴である。
【0079】
また、プレート部品91は、2個の第2補強部98を有している。一方の第2補強部98は、対向部92と第1補強部95の左端部とに跨がって前後方向に延びる略三角板状に形成され、他方の第2補強部98は、対向部92と第1補強部95の右端部とに跨がって前後方向に延びる略三角板状に形成されている。第2補強部98は、対向部92および第1補強部95に溶接により固着されている。第2補強部98には、上下方向よりも前後方向に長い長穴からなる取付穴99が貫通して形成されている。
【0080】
さらに、プレート部品91は、2個の第2補強部98の間の中央に、第3補強部101を有している。第3補強部101は、対向部92と第1補強部95とに跨がって前後方向に延びる略三角板状に形成され、対向部92および第1補強部95に溶接により固着されている。
【0081】
また、対向部92には、左右のストークローラ23の後軸部44のフランジ部56を受け入れる受入部102が上端から下方に凹む凹部として形成されている。その左右のフランジ部56が受入部102に受け入れられるように、プレート部品91の取付位置が調整される。この取付位置の調整により、プレート部品91は、
図11に示されるように、対向部92がストークローラ23のブレード部63に対してトウモロコシ茎が進入可能な隙間を空けずに対向する。そして、プレート部品91は、位置調整された状態で、2個の左取付穴96、2個の右取付穴97および2個の取付穴99にそれぞれ挿通されるボルト103により、プレート部品91が収穫部フレーム41に固定される。
【0082】
<搬送部フレーム>
図15は、収穫搬送装置9の背面図(後方から見た図)である。
【0083】
収穫搬送装置9は、搬送部フレーム111を備えている。搬送部フレーム111は、
図5に示されるように、収穫部フレーム41の後方に設けられている。搬送部フレーム111には、
図15に示されるように、左壁部112、底板部113および後壁部114が含まれる。また、搬送部フレーム111には、図示されていないが、左壁部112に対して右方に間隔を空けて対向して配置される右壁部が含まれる。底板部113は、左壁部112と右壁部との間に跨がって設けられている。後壁部114は、底板部113の後端に連続して上方に延びている。
【0084】
図16は、オーガ25ならびに搬送部フレーム111の底板部113および後壁部114を右前上方から見た斜視図である。
【0085】
底板部113は、前後方向に沿った切断面で切断した断面が下方に膨出する円弧状をなしている。
【0086】
後壁部114には、左端部に矩形状の開口115が貫通して形成されている。開口115の下方の一部は、底板部113により閉塞されており、開口115は、底板部113により閉塞されていない部分がトウモロコシ房状体を排出する排出口として機能する。なお、以下では、開口115における排出口として機能する部分を「排出口115」という。
【0087】
オーガ25は、底板部113の上方かつ後壁部114の前方に配置されている。オーガ25は、左右方向に延びるオーガ軸116と、オーガ軸116の周囲に設けられるオーガ羽根117とを備えている。
【0088】
オーガ軸116は、搬送部フレーム111の左壁部112および右壁部に架設されて、左壁部112および右壁部に回転可能に支持されている。
【0089】
オーガ羽根117は、左オーガ羽根118と右オーガ羽根119とに分かれて構成されている。左オーガ羽根118は、排出口115の左右方向の中央部に対して前方から対向する左対向位置とオーガ軸116の左端部とにわたって、オーガ軸116の周囲に左巻きの螺旋状に形成されている。右オーガ羽根119は、排出口115の左右方向の中央部に対して前方から対向する右対向位置とオーガ軸116の右端部とにわたって、オーガ軸116の周囲に右巻きの螺旋状に形成されている。
【0090】
図15および
図16に示される構成では、左オーガ羽根118の右端が位置する左対向位置と右オーガ羽根119の左端が位置する右対向位置とは、左右方向において同じ位置であり、左右方向において排出口115の中央の位置と同じである。そして、左オーガ羽根118の右端と右オーガ羽根119の左端とは、左右方向に同じ位置で、オーガ軸116の回転方向に位置が異なっている。
【0091】
また、オーガ25には、係止突起121がオーガ軸116の周面とオーガ羽根117とに跨がって設けられている。複数の係止突起121がオーガ軸116の周面と右オーガ羽根119とに跨がる三角板状に形成されて、各係止突起121がオーガ軸116の回転軸線方向、つまり左右方向に延びている。また、1個の係止突起121がオーガ軸116の周面と左オーガ羽根118とに跨がる三角板状に形成されて、その係止突起121が左右方向に延びている。係止突起121が設けられることにより、オーガ羽根117(左オーガ羽根118および右オーガ羽根119)の強度が増す。
【0092】
オーガ軸116には、図示されない駆動伝達機構から駆動力が伝達される。オーガ軸116は、その駆動力により、右方から見て時計回りに回転される。
【0093】
<搬送動作>
左右1対の搬送機構24により後方に搬送されるトウモロコシ房状体は、受止プレート22上から後方に落下して、搬送部フレーム111の底板部113に受け取られる。排出口115よりも左方の位置で底板部113に受け取られたトウモロコシ房状体は、左オーガ羽根118により右方に向けて搬送され、排出口115よりも右方の位置で底板部113に受け取られたトウモロコシ房状体は、右オーガ羽根119により左方に向けて搬送される。そして、排出口115に対して前方から対向する位置まで搬送されたトウモロコシ房状体は、左オーガ羽根118と右オーガ羽根119とに挟まれたような状態となって、左オーガ羽根118および右オーガ羽根119の回転により排出口115を通して排出される。排出口115から排出されるトウモロコシ房状体は、フィーダ10により、脱穀装置7に向けて搬送される。
【0094】
<作用効果1>
以上のように、ストークローラ23のブレード部63の後方には、ブレード部63に対して後方から対向する対向部92を有するプレート部品91が設けられている。これにより、ストークローラ23の後軸部44における対向部92よりも後方の部分にトウモロコシ茎が巻き付くことを抑制できる。また、収穫部フレーム41に対するプレート部品91の取付位置が調整可能であるので、プレート部品91の対向部92とブレード部63との間の距離を適切に調整することができ、対向部92とブレード部63との間で後軸部44にトウモロコシ茎が巻き付くことを抑制できる。
【0095】
よって、ストークローラ23(後軸部44の全体)にトウモロコシ茎が巻き付くことを良好に抑制できる。その結果、ストークローラ23にトウモロコシ茎が巻き付くことによるストークローラ23の回転不良の発生を抑制できる。また、ストークローラ23に巻き付いたトウモロコシ茎によりブレード部63が前方に押されることがなくなり、ストークローラ23を支持するベアリング64などにスラスト荷重(アキシャル荷重)がかかることを抑制でき、ベアリング64などの耐久性が向上する。
【0096】
対向部92は、トウモロコシ収穫機1の左右方向に延びる板状をなし、プレート部品91は、対向部92の左端から前方に延びる板状をなし、上下方向よりも前後方向に長い左取付穴96が貫通して形成された左取付部93と、対向部92の右端から前方に延びる板状をなし、上下方向よりも前後方向に長い右取付穴97が貫通して形成された右取付部94とを有し、左取付穴96および右取付穴97にそれぞれ挿通されるボルト103により、収穫部フレーム41に取り付けられる。かかる構成により、収穫部フレーム41に対するプレート部品91の取付位置を調整することができる。
【0097】
また、プレート部品91は、対向部92の下端から左右方向に所定の幅で後方に延びる第1補強部95を有している。この構成により、プレート部品91の強度を増すことができる。その結果、トウモロコシ茎でプレート部品91の対向部92が叩かれることによるプレート部品91の変形を抑制できる。
【0098】
プレート部品91は、対向部92と第1補強部95とに跨がって設けられる板状の第2補強部98を有している。この構成により、プレート部品91の強度をさらに増すことができる。
【0099】
また、第2補強部98に上下方向よりも前後方向に長い取付穴99が貫通して形成され、左取付穴96および右取付穴97に挿通されるボルト103加えて、取付穴99に挿通されるボルト103により、プレート部品91が収穫部フレーム41に取り付けられる。この構成により、収穫部フレーム41に対するプレート部品91の取付強度を増すことができる。
【0100】
プレート部品91は、2個の第2補強部98の間の中央に、対向部92と第1補強部95とに跨がって設けられる板状の第3補強部101をさらに有している。この構成により、プレート部品91の強度をより一層増すことができる。
【0101】
ストークローラ23は、ブレード部63に対する先端側に、先端側ほど先細りとなる円錐状の周面57に螺旋状の突条58が形成されて、トウモロコシ茎をブレード部63に案内する案内部45を有している。案内部45が設けられていることにより、ストークローラ23の前軸部43にトウモロコシ茎が巻き付くことを抑制できる。
【0102】
<作用効果2>
ストークローラ23のブレード部63は、8回対称をなしている。そして、左右1対のストークローラ23は、それらの回転時に左のストークローラ23のブレード部63が描く円軌跡TLの一部と右のストークローラ23のブレード部63が描く円軌跡TRの一部とがオーバラップするように、両者の回転軸線の間隔、円筒部51,55の外径およびブレード部63の長さが設計されている。これにより、ブレード部63によるトウモロコシ茎の切断を防止することができる。
【0103】
また、ブレード部63が8回対称をなす構成では、左のストークローラ23のブレード部63と右のストークローラ23のブレード部63との衝突を回避するクリアランスを容易に確保できる。
【0104】
ブレード部63によるトウモロコシ茎の切断が防止されることにより、トウモロコシ房状体に切断された茎が付いた状態で搬送されることを抑制でき、収穫搬送装置9内またはトウモロコシ収穫機1の機体内にトウモロコシ房状体から外れた茎が滞留することを抑制できる。
【0105】
左右1対のストークローラ23は、左右1対の受止プレート22のそれぞれの下方に設けられ、受止プレート22間に進入したトウモロコシ茎に左右両側からそれぞれ2個のブレード部63が係止するように設計されている。この構成では、トウモロコシ茎に合計4個のブレード部63が係止するので、ブレード部63からトウモロコシ茎に加わる力を良好に分散させつつ、ブレード部63によりトウモロコシ茎を良好に引き下げることができる。その結果、トウモロコシ房状体をトウモロコシ茎から良好に分離させることができ、収穫搬送装置9内またはトウモロコシ収穫機1の機体内にトウモロコシ房状体から外れた茎が滞留することを一層抑制できる。
【0106】
ブレード部63は、後軸部44から等角度間隔で後軸部44の径方向に放射状に延出していてもよい。
【0107】
また、ストークローラ23は、後軸部44の周囲にその後軸部44の回転方向に並べて設けられる8個のブレード構成部品46を備えている。ブレード構成部品46は、後軸部44に当接する当接部61と、当接部61の回転方向の両端から後軸部44の径方向に延びる板状をなす重合部62とを一体に有している。そして、ブレード部63は、回転方向に隣り合うブレード構成部品46の重合部62を重ね合わせることにより構成されている。この構成により、ブレード部63の強度を増すことができる。
【0108】
<作用効果3>
搬送部フレーム111は、底板部113と、底板部113の後端に連続して上方に延びる後壁部114とを備えている。後壁部114には、排出口115が貫通して形成されている。底板部113の上方かつ後壁部114の前方には、オーガ25が左右方向に延びる回転軸線を中心に回転可能に設けられている。搬送機構24により後方に搬送されるトウモロコシ房状体は、搬送部フレーム111の底板部113に受け取られる。そして、その底板部113に受け取られたトウモロコシ房状体は、オーガ25の回転に伴って、底板部113上を排出口115に向けて搬送され、排出口115を介して排出される。
【0109】
オーガ25は、搬送部フレーム111に回転可能に支持されるオーガ軸116を備えており、オーガ軸116の周囲には、左オーガ羽根118および右オーガ羽根119がそれぞれ互いに逆巻きとなる螺旋状に形成されている。オーガ軸116が回転されると、左オーガ羽根118および右オーガ羽根119がオーガ軸116と一体に回転する。排出口115よりも左方の位置で底板部113に受け取られたトウモロコシ房状体は、左オーガ羽根118により右方に向けて搬送され、排出口115よりも右方の位置で底板部113に受け取られたトウモロコシ房状体は、右オーガ羽根119により左方に向けて搬送される。そして、左オーガ羽根118が排出口115の左右方向の中央部に前方から対向する左対向位置まで形成され、右オーガ羽根119が排出口115の中央部に前方から対向する右対向位置まで形成されていることにより、左対向位置と右対向位置との間の位置まで搬送されたトウモロコシ房状体は、左オーガ羽根118と右オーガ羽根119とに挟まれたような状態となって、左オーガ羽根118および右オーガ羽根119の回転により排出口115を通して排出される。
【0110】
そのため、かかる構成では、従来の構成でトウモロコシ房状体を排出口から排出するために必要とされていた掻き込み羽根が不要である。掻き込み羽根がないので、トウモロコシ房状体がオーガ25によって前方に飛ばされることを抑制できる。その結果、トウモロコシ房状体が前方に飛ばされて圃場に落下することによるヘッドロス(頭部損失)を低減できる。
【0111】
オーガ25は、オーガ軸116の周面と右オーガ羽根119とに跨がって設けられた板状の係止突起121をさらに備えている。
【0112】
排出口115が後壁部114における左右方向の中央より左に片寄った位置に形成された構成では、排出口115が後壁部114における左右方向の中央に形成された構成よりも、右オーガ羽根119によるトウモロコシ房状体の搬送距離が長くなる。板状の係止突起121がオーガ軸116の周面と右オーガ羽根119とに跨がって形成されていることにより、係止突起121がトウモロコシ房状体に係止して、右オーガ羽根119の回転に伴って、トウモロコシ房状体が右オーガ羽根119に対して滑らずに良好に搬送される。その結果、オーガ25によるトウモロコシ房状体の搬送性能を向上できる。
【0113】
<変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
【0114】
たとえば、前述の実施形態では、左オーガ羽根118の右端が位置する左対向位置と右オーガ羽根119の左端が位置する右対向位置とが左右方向において同じ位置であり、また、左右方向において排出口115の中央の位置と同じである構成を取り上げた。しかし、左右方向において、左対向位置と右対向位置とが同じ位置であって、その位置が排出口115の中央の位置と異なっていてもよい。また、左対向位置が排出口115の左右方向の中央の位置よりも左方に位置し、右対向位置が排出口115の左右方向の中央の位置よりも右方に位置していてもよい。
【0115】
また、ストークローラ23のブレード部63がストークローラ23の回転径方向に延びている構成を取り上げたが、ブレード部63がストークローラ23の回転径方向に対して傾斜する方向に延びていてもよい。
【0116】
ストークローラ23のブレード部63は、8回対称をなしていることが好ましいが、4回対称または6回対称、あるいは10回対称以上の回転対称をなしていてもよい。
【0117】
また、従来の構成と同様に、オーガ25には、左オーガ羽根118と右オーガ羽根119との間に、トウモロコシ房状体を排出口115から排出するための掻き込み羽根が設けられていてもよい。
【0118】
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0119】
1:トウモロコシ収穫機
2:クローラ走行装置(走行装置)
4:エンジン(動力源)
9:収穫搬送装置
41:収穫部フレーム(フレーム)
43:前軸部(軸部)
44:後軸部(軸部)
45:案内部
57:周面
58:突条
63:ブレード部
91:プレート部品
92:対向部
93:左取付部
94:右取付部
95:第1補強部
96:左取付穴
97:右取付穴
98:第2補強部
99:取付穴
101:第3補強部
103:ボルト