(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112965
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】画像解析装置
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/04 20060101AFI20240814BHJP
G06V 20/69 20220101ALI20240814BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240814BHJP
【FI】
C12Q1/04
G06V20/69
G06T7/00 630
G06T7/00 350B
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024086153
(22)【出願日】2024-05-28
(62)【分割の表示】P 2022553451の分割
【原出願日】2021-04-27
(31)【優先権主張番号】P 2020163306
(32)【優先日】2020-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003993
【氏名又は名称】弁理士法人野口新生特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤田 隆二
(72)【発明者】
【氏名】山本 周平
(72)【発明者】
【氏名】大野 剛士
(57)【要約】 (修正有)
【課題】機械学習を用いた画像解析におけるユーザの作業負担を軽減する画像解析装置を提供する。
【解決手段】画像を保持する画像保持部と、機械学習により作成された学習済みモデルを登録するように構成された学習済みモデル登録部と、登録された学習済みモデルを保持する学習済みモデル保持部と、画像の解析処理を実行するための複数の解析アルゴリズムを保持するアルゴリズム保持部と、画像保持部に保持されている画像のうちから任意に選定された解析対象画像に対し、選定された学習済みモデル、及び、任意に選定された解析アルゴリズムを組み合わせ、前記解析対象画像の解析をするための解析レシピを作成するように構成されたレシピ作成部と、レシピ作成部により作成された解析レシピに基づいて前記解析対象画像の解析を実行するように構成された解析実行部と、を備えている画像解析装置である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞培養プレートに設けられている複数の細胞培養ウェル内をそれぞれ撮像して得られた複数の画像を、撮像されている細胞培養ウェル内の細胞の培養条件とそれぞれ関連付けた状態で保持する画像保持部と、
前記画像保持部に保持されている画像のうちから任意に選定された複数の解析対象画像に対応する複数の学習用画像を選定し、各画像に関連付けられている前記培養条件に基づいて互いに対応する前記解析対象画像と前記学習用画像とを組み合わせて複数の学習用データセットを作成し、前記学習用データセットを用いた機械学習を行なって画像解析のための学習済みモデルを作成する解析レシピを作成するように構成されたレシピ作成部と、
前記レシピ作成部により作成された解析レシピに基づいて前記学習済みモデルを作成するように構成された解析実行部と、を備えている画像解析装置。
【請求項2】
前記レシピ作成部は、複数の前記学習用データセットを作成したときに、各学習用データセットを構成している前記解析対象画像及び前記学習用画像の一覧を、各学習用データセットに関連付けられている培養条件とともにユーザに対して提示するように構成されている、請求項1に記載の画像解析装置。
【請求項3】
前記レシピ作成部は、ユーザによって入力された情報に基づいて、複数の前記学習用データセットの一部を、作成された学習済みモデルの評価を行なうための評価用データセットとするように構成されており、
前記解析実行部は、前記学習用データセットを用いて前記機械学習を行なうことにより学習済みモデルを作成し、作成した前記学習済みモデルについて前記評価用データセットを用いた評価を実行するように構成されている、請求項1に記載の画像解析装置。
【請求項4】
前記レシピ作成部は、前記評価用データセットとする前記学習用データセットの自動選択をユーザが所望したときに、複数の前記学習用データセットを前記培養条件によって複数の区分に分類し、各区分に属する少なくとも1つの前記学習用データセットを前記評価用データセットとするように構成されている、請求項3に記載の画像解析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像解析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像処理を用いた解析では、解析対象画像に移っている細胞やその核といった解析対象物の領域や位置を推定する推定処理を行なうが、この推定処理には解析対象物とそうでない部分とを区別するためのパラメータが必要であり、そのようなパラメータの設定は容易でなく、時間を要する作業であった。
【0003】
近年、機械学習を用いた画像解析が提案されており、実施もなされている(特許文献1参照)。機械学習を用いた画像解析では、解析対象画像とラベル画像(その解析対象画像に写っている解析対象物の境界等を示す画像)とをコンピュータに比較させることによって、解析対象画像中で解析対象物の領域や特定部位の位置を特定するために必要なパラメータ等をコンピュータが自動的に取得する。そして、その取得結果を学習済みモデルとしてコンピュータに覚え込ませ、他の解析対象画像に対して学習済みモデルを適用することで、解析対象画像中における解析対象物の領域や特定位置の推定もコンピュータに自動で行わせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解析対象画像に対してどのような解析を実行するかはユーザによって異なる。しかしながら、既存の画像解析装置では、解析対象画像に適した学習済みモデルを新規に作成したり、作成した新規の学習済みモデルに所望の解析処理を自由に組み合わせたりすることは容易でなく、ユーザの作業負担が大きいという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、機械学習を用いた画像解析におけるユーザの作業負担を軽減することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る画像解析装置の第1実施形態は、画像を保持する画像保持部と、機械学習により作成された学習済みモデルを登録するように構成された学習済みモデル登録部と、前記学習済みモデル登録部により登録された学習済みモデルを保持する学習済みモデル保持部と、画像の解析処理を実行するための複数の解析アルゴリズムを保持するアルゴリズム保持部と、前記画像保持部に保持されている画像のうちから任意に選定された解析対象画像に対し、前記学習済みモデル保持部に保持されている学習済みモデルから選定された学習済みモデル、及び、前記アルゴリズム保持部に保持されている解析アルゴリズムのうちから任意に選定された解析アルゴリズムを組み合わせ、前記解析対象画像の解析をするための解析レシピを作成するように構成されたレシピ作成部と、前記レシピ作成部により作成された解析レシピに基づいて前記解析対象画像の解析を実行するように構成された解析実行部と、を備えている。
【0008】
ここで、「解析レシピ」とは、解析対象画像に対して所望の解析を実行するために必要な複数のアルゴリズムのセットを意味する。
【0009】
本発明に係る画像解析装置の第2実施形態は、細胞培養プレートに設けられている複数の細胞培養ウェル内をそれぞれ撮像して得られた複数の画像を、撮像されている細胞培養ウェル内の細胞の培養条件とそれぞれ関連付けた状態で保持する画像保持部と、前記画像保持部に保持されている画像のうちから任意に選定された複数の解析対象画像に対応する複数の学習用画像を選定し、各画像に関連付けられている前記培養条件に基づいて互いに対応する前記解析対象画像と前記学習用画像とを組み合わせて複数の学習用データセットを作成し、前記学習用データセットを用いた機械学習を行なって画像解析のための学習済みモデルを作成する解析レシピを作成するように構成されたレシピ作成部と、前記レシピ作成部により作成された解析レシピに基づいて前記学習済みモデルを作成するように構成された解析実行部と、を備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る画像解析装置の第1実施形態によれば、既存の学習済みモデルだけでなく新規の学習済みモデルを学習済みモデル保持部に保持させておくことができ、解析対象画像に対して学習済みモデルに保持されている学習済みモデルとアルゴリズム保持部に保持されている解析アルゴリズムのうちの任意の解析アルゴリズムを組み合わせて解析レシピを作成することができるので、ユーザの所望する解析処理を実行するために必要な解析レシピを容易に作成することができる。これにより、機械学習を用いた画像解析におけるユーザの作業負担が軽減される。
【0011】
本発明に係る画像解析装置の第2実施形態によれば、画像に関連付けられている培養条件に基づいて複数の解析対象画像のそれぞれに対応する学習用画像が自動的に選定され、機械学習のための学習用データセットが作成されるので、学習済みモデルの作成に関するユーザの作業負担が軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】画像解析装置の一実施例を示すブロック図である。
【
図2】同実施例における画像解析までの動作の一例を概略的に示すフローチャートである。
【
図3】学習済みモデルを用いた画像解析の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図4】機械学習による学習済みモデルの作成に関する一連の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図5】学習済みモデルの作成に使用する学習用データセットの一覧表示の一例を示すフローチャートである。
【
図6】ラベル画像の作成手順の一例を示す概念図である。
【
図7】学習用データセットの一覧表示の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る画像解析装置の一実施例について図面を参照しながら説明する。
【0014】
【0015】
画像解析装置1は情報処理装置2及び情報表示装置4を備えている。情報処理装置2は、画像取得部6で取得された画像データを取り込んで解析処理を行なう機能を有するものである。情報処理装置2は、ハードディスクドライブなどの情報記憶媒体及びCPU(中央演算装置)を備えた電子回路を備えたコンピュータ装置(例えば、パーソナルコンピュータ)であって、後述する各機能を実現するためのコンピュータプログラムが導入されたものである。情報表示装置4は情報処理装置2と通信可能に接続されたディスプレイ(例えば、液晶ディスプレイ)である。画像取得部6としては、細胞培養プレートの各ウェル内を撮像するための顕微鏡(例えば、位相差顕微鏡、蛍光顕微鏡)が挙げられる。
【0016】
情報処理装置2は、画像保持部8、学習済みモデル登録部10、学習済みモデル保持部12、アルゴリズム保持部14、アルゴリズム登録部16、レシピ作成部18及び解析実行部20を備えている。学習済みモデル登録部10、アルゴリズム登録部16、レシピ作成部18及び解析実行部20は、情報処理装置2に導入されている所定のコンピュータプログラムがCPUによって実行されることで実現される機能である。画像保持部8、学習済みモデル保持部12及びアルゴリズム保持部14は、情報処理装置2内の情報記憶媒体の一部の記憶領域によって実現される機能である。
【0017】
画像保持部8には、細胞培養プレートに設けられている複数の細胞培養ウェル内をそれぞれ位相差顕微鏡により撮像した画像、同じ細胞培養ウェル内の細胞や核を蛍光染色して蛍光顕微鏡により撮像した画像、蛍光顕微鏡画像を加工して得られたラベル画像などが、各細胞培養ウェル内の細胞の培養条件と関連付けられた状態で保持される。画像と培養条件との関連付けは、例えば、所定の規則にしたがって画像データのファイル名に培養条件が付されることで実現することができる。
【0018】
学習済みモデル登録部10は、画像解析に必要な新規の学習済みモデルを登録するように構成されている。学習済みモデルとは、ある画像とその画像のラベル画像とを用いて実行された機械学習により取得される、画像解析に必要なパラメータ等の情報である。学習済みモデルを別の解析対象画像に適用することにより、解析対象画像に写っている細胞領域の推定を行なうことができ、その推定結果を用いて画像中における細胞領域の面積を求める、細胞核の数をカウントする、といった解析を行なうことができる。学習済みモデル登録部10により登録される学習済みモデルは、この画像解析装置1によって作成されたものであってもよいし、別の画像解析装置によって作成されたものであってもよい。学習済みモデル10によって登録された学習済みモデルは、学習済みモデル保持部12に保持される。
【0019】
アルゴリズム保持部14は、画像解析を実行するために必要な複数種類の解析アルゴリズムを保持している。アルゴリズム保持部14に保持されている解析アルゴリズムには、学習済みモデルを用いた解析対象画像中における細胞領域の推定、画像中における細胞領域の面積の計算、細胞数のカウント、といった解析処理を実行するためのアルゴリズムのほか、解析対象画像とラベル画像を用いて学習済みモデルを作成する学習処理を実行するためのアルゴリズムも含まれる。すなわち、この画像解析装置1は、既存の学習済みモデルが存在しなくても、解析対象画像とラベル画像を用いて新規の学習済みモデルを作成し、その学習済みモデルを用いて所望の解析処理を実行する機能を有する。
【0020】
アルゴリズム登録部16は、新規の解析アルゴリズムを登録するように構成されている。アルゴリズム登録部16により登録された解析アルゴリズムはアルゴリズム保持部14に保持される。
【0021】
レシピ作成部18は、解析対象画像に対してユーザが所望する解析処理を実行するために必要な解析レシピを作成するように構成されている。解析レシピの作成に際し、ユーザは、解析対象画像に対して適用したい学習済みモデル、実行したい解析処理のアルゴリズムを任意に選定することができ、レシピ作成部18は、ユーザにより選定された学習済みモデル、解析アルゴリズムを組み合わせて、解析対象画像に対する解析処理の解析レシピを作成する。
【0022】
解析実行部20は、レシピ作成部18により作成された解析レシピに基づいて、解析対象画像に対する解析処理を実行するように構成されている。
【0023】
解析対象画像に対して解析処理を実行するまでの一連の流れについて、
図2のフローチャートを用いて説明する。
【0024】
レシピ作成部18は、情報表示装置4に解析対象画像、学習済みモデル、解析アルゴリズムを選択するための入力画面を表示し、その画面上で、ユーザが解析対象画像の選定(ステップ101)、学習済みモデルの選定(ステップ102)、解析アルゴリズムの選定(103)を行なう。なお、学習済みモデルの選定に際し、既存の学習済みモデルは存在しない場合、解析対象画像に対して適用すべき学習済みモデルが存在しない場合、学習済みモデルの適用による推定処理を必要としない画像解析を所望する場合などに、ユーザはいずれの学習済みモデルも選択しないことが可能である。また、解析アルゴリズムの選定に際し、ユーザは複数の解析アルゴリズムを選択することができる。
【0025】
レシピ作成部18は、ステップ101~103におけるユーザからの入力情報に基づいて新規の学習済みモデルを作成する必要があるか否かを判断し(ステップ104)、新規の学習済みモデルを作成する必要がなければ、選定された学習済みモデルを使用した推定処理を含む解析レシピ、又は、学習済みモデルを使用しない(学習済みモデルが選定されていない場合)解析レシピを作成する(ステップ105)。解析実行部20は、解析レシピ作成部18により作成された解析レシピに従って、選定されている解析アルゴリズムを用いた解析処理を実行する(ステップ106)。
【0026】
また、レシピ作成部18は、新規の学習済みモデルを作成する必要があると判断した場合(ステップ104:Yes)、学習済みモデルの作成に必要な学習用データセットの作成等を行なった上で、機械学習を含む解析レシピを作成する(ステップ107)。解析実行部20は、解析レシピ作成部18により作成された解析レシピに従って、学習済みモデルを作成し(ステップ108)、作成した学習済みモデル及び選定されている解析アルゴリズムを用いた解析処理を実行する(ステップ109)。
【0027】
図3は学習済みモデルを用いた解析に関するフローの一例である。
【0028】
学習済みモデルを用いた解析処理では、解析対象画像に対して学習済みモデルを適用し(ステップ201)、学習済みモデルの各パラメータ情報を用いて解析対象画像中における細胞領域の境界位置、細胞核の位置等を推定する(ステップ202)。その後の解析処理では、推定処理により推定された細胞領域の境界位置、細胞核の位置等を使用し、細胞領域の合計面積、細胞核のカウント等を行なう(ステップ203)。
【0029】
学習済みモデルの作成に関する一連の動作について、
図5~
図7を
図4のフローチャートとともに参照して説明する。
【0030】
学習済みモデルを作成するためには、
図5に示されているように、解析対象画像と各解析対象画像に対応するラベル画像が必要である。ラベル画像は、
図6に示されているように、解析対象画像と同じ細胞培養ウェル内の細胞や核を蛍光染色して蛍光顕微鏡により撮像した蛍光染色画像のそれぞれに対して二値化処理などの加工を施して各画像中の解析対象部分の境界部分を数値化し、数値化された加工済み画像を合成することによって取得することができる。
【0031】
ここで、各解析対象画像とともに機械学習に使用するラベル画像又はラベル画像の基となる画像(例えば、蛍光染色画像)を「学習用画像」と定義する。そして、解析対象画像とそれに対応するラベル画像若しくはラベル画像の基となる画像のセットを「学習用データセット」と定義する。
【0032】
図4のフローチャートに沿って説明すると、レシピ作成部18は、機械学習を含む解析レシピの作成に際し、各解析対象画像とともに機械学習に使用する学習用画像を、画像保持部8に保持されている画像の中から選定する(ステップ301)。画像保持部8に保持されている各画像には、その画像に写っている細胞の培養条件に関する情報が関連付けられているので、各画像に関連付けられている培養条件を参照することによって、各解析対象画像に対応する学習用画像を特定することができる。レシピ作成部18は、同じ培養条件(ウェルの位置等)の解析対象画像と学習用画像とを組み合わせることによって学習用データセットを作成し(ステップ302)、各学習用データセットを構成する解析対象画像及び学習用画像が目視で認識しやすいように、情報表示装置4に一覧で表示する(ステップ303)。ユーザは、情報表示装置4の一覧表示を確認しながら、必要に応じて、各学習用データセットを構成する画像を変更するなどの編集を行なうことができる(ステップ304)。学習用画像がラベル画像の基となる画像である場合には、その画像をラベル画像にするための加工処理もユーザが選択することができる。
【0033】
図7の一覧表示の例では、各学習用データセットが縦方向に並んで表示されており、最も左側の欄に各データセットの培養条件に関する情報が表示される。各データセットを構成する解析対象画像、学習用画像が横に並んで表示され、各画像の下に各画像に関連付けられている培養条件等の情報が表示される。
【0034】
さらに、この一覧表示では、各学習用データセットの用途を設定する項目が表示されており、各学習用データセットを「学習」、「評価」、「テスト」のいずれかに割り当てることができる。「学習」に割り当てられた学習用データセットは、機械学習による学習済みモデルの作成に使用され、「評価」に割り当てられた学習用データセット(評価用データセットともいう)は、作成された学習済みモデルを評価するために使用される。複数の学習用データセットが「学習」に割り当てられた場合、複数の学習済みモデルが作成されることになるが、各学習済みモデルを評価データセットを用いて評価し、評価の最も高い学習済みモデルのみが最終的に採用される。「テスト」に割り当てられた学習用データセット(テスト用データセットともいう)は、最終的に採用された学習済みモデルのテストに使用される。
【0035】
各学習用データセットへの用途の割当ては、ユーザが任意に行なうことができるが、ユーザが所望した場合には、レシピ作成部18が自動的に実行することもできる。各学習用データセットへの用途の自動割当てが所望された場合、レシピ作成部18は、各学習用データセットを培養条件に違いによって複数の区分に分類し、「学習」、「評価」、「テスト」のそれぞれに割り当てられる学習用データセットが各区分に略均等に存在するように、各学習用データセットに用途を割り当てる。
【0036】
以上のようにして、学習用データセットの編集が完了(レシピの作成が完了)すると、解析実行部20は、必要に応じて各画像の前処理(例えば、蛍光検出画像の二値化処理等)を行なった後、「学習」に割り当てられた各学習用データセットを用いた機械学習を実行し(ステップ306)、学習済みモデルを作成する(ステップ307)。その後、作成した学習済みモデルについて評価用データセットを用いた評価を実施する(ステップ308)。学習済みモデル登録部10は、最も評価の高い学習済みモデルを登録し、学習済みモデル保持部12に保持させる(ステップ309)。
【0037】
以上において説明した実施例は、本発明に係る画像解析装置の実施形態の例示に過ぎず、本発明に係る画像解析装置の実施形態は以下に示すとおりである。
【0038】
本発明に係る画像解析装置の第1実施形態では、画像を保持する画像保持部と、機械学習により作成された学習済みモデルを登録するように構成された学習済みモデル登録部と、前記学習済みモデル登録部により登録された学習済みモデルを保持する学習済みモデル保持部と、画像の解析処理を実行するための複数の解析アルゴリズムを保持するアルゴリズム保持部と、前記画像保持部に保持されている画像のうちから任意に選定された解析対象画像に対し、前記学習済みモデル保持部に保持されている学習済みモデルから選定された学習済みモデル、及び、前記アルゴリズム保持部に保持されている解析アルゴリズムのうちから任意に選定された解析アルゴリズムを組み合わせ、前記解析対象画像の解析をするための解析レシピを作成するように構成されたレシピ作成部と、前記レシピ作成部により作成された解析レシピに基づいて前記解析対象画像の解析を実行するように構成された解析実行部と、を備えている。
【0039】
上記第1実施形態における第1態様では、前記アルゴリズム保持部は、機械学習を行なって学習済みモデルを作成するための解析アルゴリズムを保持しており、前記レシピ作成部は、ユーザによって入力された情報に基づいて学習済みモデルを作成する必要があると判断した場合に、前記解析対象画像の前記学習済みモデルを作成する機械学習を含む解析レシピを作成するように構成され、かつ、前記機械学習を含む解析レシピの作成に際し、前記画像保持部に保持されている画像の中から前記機械学習に使用する学習用画像を選定し、前記学習用画像と前記解析対象画像からなる学習用データセットを作成するように構成されており、前記学習済みモデル登録部は、前記学習用データセットを用いた前記機械学習により作成された学習済みモデルを登録するように構成されている。このような態様により、ユーザは、解析対象画像に対応する学習用画像を用意するだけで、機械学習に必要なデータセットが自動的に作成され、そのデータセットに基づいた機械学習が自動的に実行され、新規の学習済みモデルを取得することができる。
【0040】
上記第1態様における第1実施例として、前記画像は、細胞培養プレートに設けられている複数の細胞培養ウェル内をそれぞれ撮像して得られた画像であり、各画像は、撮像されている細胞培養ウェル内の細胞の培養条件と関連付けられた状態で前記画像保持部に保持されており、前記レシピ作成部は、前記機械学習を含む前記解析レシピの作成に際し、前記解析対象画像及び前記学習用画像がそれぞれ複数存在する場合に、各画像に関連付けられている前記培養条件に基づいて互いに対応する前記解析対象画像と前記学習用画像とを組み合わせて複数の前記学習用データセットを作成するように構成されている例が挙げられる。多数の解析対象画像及び学習用画像が存在する場合、それらの解析対象画像と学習用画像とを紐づけて機械学習用のデータセットを作成する作業には時間を要し、解析対象画像と学習用画像との組み合わせを間違う可能性もあるが、この第1実施例では、各画像に関連付けられている培養条件によって解析対象画像と学習用画像とが自動的に組み合わされて学習用データセットが作成されるので、機械学習を実行する際のユーザの作業負担が大幅に軽減される。
【0041】
上記第1実施例において、前記レシピ作成部は、複数の前記学習用データセットを作成したときに、各学習用データセットを構成している前記解析対象画像及び前記学習用画像の一覧を、各学習用データセットに関連付けられている培養条件とともにユーザに対して提示するように構成されていてもよい。このような態様により、自動的に作成された各学習用データセットの詳細をユーザが目視によって容易に確認することができる。
【0042】
また、上記第1実施例において、前記レシピ作成部は、ユーザによって入力された情報に基づいて、複数の前記学習用データセットの一部を、作成された学習済みモデルの評価を行なうための評価用データセットとするように構成されていてもよく、その場合、前記解析実行部は、前記学習用データセットを用いて前記機械学習を行なうことにより学習済みモデルを作成し、作成した前記学習済みモデルについて前記評価用データセットを用いた評価を実行するように構成され、前記学習済みモデル登録部は、前記評価の結果が最も高い前記学習済みモデルを登録するように構成されていてもよい。このような態様により、解析対象画像に対して高い解析精度が得られる学習済みモデルを取得することができる。
【0043】
上記の場合、前記レシピ作成部は、前記評価用データセットとする前記学習用データセットの自動選択をユーザが所望したときに、複数の前記学習用データセットを前記培養条件によって複数の区分に分類し、各区分に属する少なくとも1つの前記学習用データセットを前記評価用データセットとするように構成されていてもよい。このような態様により、広い培養条件に対して適用可能な学習済みモデルを取得することができる。
【0044】
上記第1実施形態における第2態様では、前記アルゴリズム保持部に保持されていない新規の解析アルゴリズムを登録するように構成されたアルゴリズム登録部をさらに備え、前記アルゴリズム保持部は前記アルトリズム登録部により登録された解析アルゴリズムを保持するように構成されている。このような態様により、解析対象画像に対して実行可能な解析アルゴリズムを増やすことができる。
【0045】
本発明に係る画像解析装置の第2実施形態では、細胞培養プレートに設けられている複数の細胞培養ウェル内をそれぞれ撮像して得られた複数の画像を、撮像されている細胞培養ウェル内の細胞の培養条件とそれぞれ関連付けた状態で保持する画像保持部と、前記画像保持部に保持されている画像のうちから任意に選定された複数の解析対象画像に対応する複数の学習用画像を選定し、各画像に関連付けられている前記培養条件に基づいて互いに対応する前記解析対象画像と前記学習用画像とを組み合わせて複数の学習用データセットを作成し、前記学習用データセットを用いた機械学習を行なって画像解析のための学習済みモデルを作成する解析レシピを作成するように構成されたレシピ作成部と、前記レシピ作成部により作成された解析レシピに基づいて前記学習済みモデルを作成するように構成された解析実行部と、を備えている。
【0046】
上記第2実施形態の第1態様では、前記レシピ作成部は、複数の前記学習用データセットを作成したときに、各学習用データセットを構成している前記解析対象画像及び前記学習用画像の一覧を、各学習用データセットに関連付けられている培養条件とともにユーザに対して提示するように構成されている。このような態様により、自動的に作成された各学習用データセットの詳細をユーザが目視によって容易に確認することができる。
【0047】
また、上記第2実施形態の第2態様では、前記レシピ作成部は、ユーザによって入力された情報に基づいて、複数の前記学習用データセットの一部を、作成された学習済みモデルの評価を行なうための評価用データセットとするように構成されており、前記解析実行部は、前記学習用データセットを用いて前記機械学習を行なうことにより学習済みモデルを作成し、作成した前記学習済みモデルについて前記評価用データセットを用いた評価を実行するように構成されている。このような態様により、学習済みモデルの評価を自動的に実行することができる。
【0048】
上記第2態様において、前記レシピ作成部は、前記評価用データセットとする前記学習用データセットの自動選択をユーザが所望したときに、複数の前記学習用データセットを前記培養条件によって複数の区分に分類し、各区分に属する少なくとも1つの前記学習用データセットを前記評価用データセットとするように構成されていてもよい。このような態様により、作成された学習済みモデルが広い培養条件に対して適用可能か否かを評価することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 画像解析装置
2 情報処理装置
4 情報表示装置
6 画像取得部
8 画像保持部
10 学習済みモデル登録部
12 学習済みモデル保持部
14 アルゴリズム保持部
16 アルゴリズム登録部
18 レシピ作成部
20 解析実行部