(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112983
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】バイオ補助剤としてのバイオ界面活性剤を含有する水性コーティング、及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
C09D 121/02 20060101AFI20240814BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20240814BHJP
C09D 5/14 20060101ALI20240814BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20240814BHJP
C09D 133/00 20060101ALI20240814BHJP
C09K 23/56 20220101ALI20240814BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20240814BHJP
A01N 43/80 20060101ALI20240814BHJP
A01N 25/30 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
C09D121/02
C09D5/02
C09D5/14
C09D7/63
C09D133/00
C09K23/56
A01P3/00
A01N43/80 102
A01N25/30
【審査請求】有
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024087238
(22)【出願日】2024-05-29
(62)【分割の表示】P 2021523488の分割
【原出願日】2019-11-01
(31)【優先権主張番号】62/755,738
(32)【優先日】2018-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】508079739
【氏名又は名称】ローディア オペレーションズ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(72)【発明者】
【氏名】ローラ ゲージ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥニ ベンドゥジャック
(72)【発明者】
【氏名】ホマユン ジャマスビ
(57)【要約】
【課題】コーティング又は塗料組成物中の必要な殺生物剤濃度を低下させる。
【解決手段】一実施形態ではモノラムノリピッドである、ラムノリピッド及び/又はソホロリピッドバイオ界面活性剤と共重合又はブレンドされた少なくとも1つのモノマー由来の少なくとも1つのラテックスポリマーを含む水性コーティング組成物が開示される。バイオ界面活性剤と共重合又はブレンドされた少なくとも1つのモノマー由来の少なくとも1つのラテックスポリマー、少なくとも1つの顔料、及び水を含む水性建築用コーティング組成物も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性コーティング組成物であって、
水性コーティング組成物は、
(a)少なくとも1つのラテックスポリマーと、
(b)殺生物剤と、
(c)バイオ界面活性剤であって、前記バイオ界面活性剤を含まない類似組成物と比較して、前記コーティング組成物中で前記必要な殺生物剤の濃度を低減するのに有効な量のモノラムノリピッドを含む、バイオ界面活性剤と、
(d)水と、を含む分散液を含み、
バイオ界面活性剤はジラムノリピッドを更に含み、
モノラムノリピッド対ジラムノリピッドの重量%比が、それぞれ80:20~99.9:0.1の範囲内にあり、
殺生物剤がメチルイソチアゾリノン、またはベンズイソチアゾリノン、またはメチルクロロイソチアゾリノンとメチルイソチアゾリノンの混合物を含む、水性コーティング組成物。
【請求項2】
モノラムノリピッド対ジラムノリピッドの重量%比が、それぞれ90:10~99:1の範囲内にある、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
モノラムノリピッド対ジラムノリピッドの重量%比が、それぞれ85:15~99.5:0.5の範囲内にある、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記バイオ界面活性剤の有効量が、組成物の5000ppm、3000ppm、2000ppm、1000ppm、800ppm、500ppm、300ppm、200ppm、又は100ppm未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記バイオ界面活性剤の有効量が、組成物の60ppm未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記バイオ界面活性剤の有効量が、組成物の1ppm~60ppmである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記バイオ界面活性剤の有効量が、組成物の10ppm~50ppmである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記バイオ界面活性剤の有効量が、組成物の20ppm~50ppmである、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記バイオ界面活性剤の有効量が、組成物の25ppm~45ppmである、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
少なくとも1つの顔料を更に含み、前記ラテックスポリマーが少なくとも1つのアクリルモノマー単位を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記ラテックスポリマーは、更に、スチレン、α-メチルスチレン、塩化ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタクリル酸ウレイド、酢酸ビニル、分枝3級モノカルボン酸のビニルエステル、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、エチレン、及びC4~C8共役ジエンからなる群から選択される1つ以上のモノマーに由来する、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
少なくとも1つのバイオ界面活性剤を含む少なくとも1つのラテックスポリマー水性分散液を少なくとも1つの殺生物剤と接触させることを含む、水性コーティング組成物を調製する方法であって、前記バイオ界面活性剤は、前記バイオ界面活性剤を含まない類似組成物と比較して、前記コーティング組成物中で前記必要な殺生物剤の濃度を低減するのに有効な量のモノラムノリピッドを含み、バイオ界面活性剤はジラムノリピッドを更に含み、モノラムノリピッド対ジラムノリピッドの重量%比が、それぞれ80:20~99.9:0.1の範囲内にあり、
殺生物剤がメチルイソチアゾリノン、またはベンズイソチアゾリノン、またはメチルクロロイソチアゾリノンとメチルイソチアゾリノンの混合物を含む、方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つのラテックスポリマーは、純アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、ビニルアクリル樹脂、及びアクリル化エチレン酢酸ビニルコポリマーからなる群から選択される少なくとも1つの部材を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つのラテックスポリマーは、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、及びメタクリル酸エステル、スチレン、ビニルトルエン、ビニルアセテート、酢酸より高級なカルボン酸のビニルエステル、バーサチック酸ビニル、アクリロニトリル、アクリルアミド、ブタジエン、エチレン、塩化ビニル、並びにこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのモノマーに由来する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
分散剤、界面活性剤、レオロジー変性剤、消泡剤、増粘剤、追加の殺生物剤、着色剤、ワックス、香料、及び補助溶剤からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤を、前記ラテックスポリマー及び水を含む混合物に添加することを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1つの顔料を添加することを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記モノラムノリピッドの前記有効量は、前記コーティング組成物中で前記必要な殺生物剤の濃度を、前記バイオ界面活性剤を含まない類似組成物と比較して20%、30%、40%、又は50%を超える量で低減させる、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記モノラムノリピッドの前記有効量は、前記コーティング組成物中で前記必要な殺生物剤の濃度を、前記バイオ界面活性剤を含まない類似組成物と比較して60%、又は70%、又は80%を超える量で低減させる、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
モノラムノリピッド対ジラムノリピッドの重量%比が、それぞれ90:10~99:1の範囲内にある、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
モノラムノリピッド対ジラムノリピッドの重量%比が、それぞれ85:15~99.5:0.5の範囲内にある、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
前記バイオ界面活性剤の有効量が、組成物の5000ppm、2000ppm、1000ppm、800ppm、500ppm、300ppm、200ppm、又は100ppm未満である、請求項12に記載の方法。
【請求項22】
前記バイオ界面活性剤の有効量が、組成物の60ppm未満である、請求項12に記載の方法。
【請求項23】
前記バイオ界面活性剤の有効量が、組成物の1ppm~60ppmである、請求項12に記載の方法。
【請求項24】
前記バイオ界面活性剤の有効量が、組成物の10ppm~50ppmである、請求項12に記載の方法。
【請求項25】
前記モノラムノリピッドの前記有効量は、前記コーティング組成物中で前記必要な殺生物剤の濃度を、前記バイオ界面活性剤を含まない類似組成物と比較して20%、30%、40%、又は50%を超える量で低減させる、請求項1に記載の組成物。
【請求項26】
前記モノラムノリピッドの前記有効量は、前記コーティング組成物中で前記必要な殺生物剤の濃度を、前記バイオ界面活性剤を含まない類似組成物と比較して60%を超える量で低減させる、請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、その全体が参照により本明細書に援用される2018年11月5日出願の米国特許仮出願第62/755,738号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、例えば塗料などの建築用コーティング向けバイオ界面活性剤を組み込んだ組成物、及びその使用方法に関する。具体的には、本発明は、水性ラテックス分散液、水性ラテックスコーティング、水性ラテックスバインダー、及び水性ラテックス塗料を製造するためのエマルション重合における乳化剤としてバイオ界面活性剤を使用することに関する。更に、本発明は、水性ラテックス分散液、水性ラテックスコーティング、水性ラテックスバインダー、及び水性ラテックス塗料のための添加剤、及び/又は補助剤としてバイオ界面活性剤を使用することに関する。バイオ界面活性剤は、典型的にはラムノリピッド又はソホロリピッドを含む。
【背景技術】
【0003】
塗料は、薄層中の基材に塗布した後で固形膜に変換する、任意の液状、液化可能、又はマスチック組成物である。これは、物体を保護、着色、又はそれに質感を提供するために通常用いられる。塗料は、バインダー(展色剤又は樹脂としても知られる)、希釈剤又は溶剤、顔料又は体質顔料を含有し、更にその他の添加剤も有し得る。一般的に展色剤と呼ばれるバインダーは、塗料の膜形成構成要素である。これが、存在しなくてはならない唯一の構成要素である。下記で列挙する構成要素は、硬化した膜の所望の特性に応じて任意選択的に含まれる。
【0004】
バインダーは接着性を付与し、また、光沢、耐久性、可撓性、及び強靭性などの特性に大きな影響を与える。ラテックス塗料中では、バインダーはラテックスを含む。
【0005】
ラテックスは、水性媒体中のポリマー微小粒子の安定した分散液(コロイドエマルション)である。したがって、これは水中のゴム又はプラスチックポリマー微小粒子の懸濁液/分散液である。ラテックスは、天然であっても合成であってもよい。重合は、エマルションポリマー及びポリマーラテックスを製造するのに用いられる好ましい技法である。
【0006】
ラテックス塗料はサブマイクロメートルのポリマー粒子の水系分散液である。塗料に関連する用語「ラテックス」は、単に水性分散液を意味し、ラテックスゴム(歴史的にラテックスと称されるゴムノキの樹液)が原料ではない。基材用の塗料又はコーティングの生産における、エマルション重合によって生成されるラテックスの使用は、当該技術分野で周知されている。
【0007】
ラテックス塗料は、内装及び外装並びに平坦な半光沢及び光沢用途を含む様々な用途に使用される。ラテックス塗料は、凝集と呼ばれるプロセスによって硬化し、ここでは最初に水、続いて微量又は凝集溶剤が蒸発して一体に引き寄せ合い、ラテックスバインダー粒子を軟化させ、これらを一体に融合して不可逆的に結合した網目構造体にし、その結果、塗料は、元々これを担持していた溶剤/水中に再溶解することはない。これは、例えば水性のデスクトップインクジェットプリンタ用インクとの違いを際立たせる塗料の特性である。しかしながら、こうした塗料又はコーティングは、エマルション重合プロセスに必要な乳化剤の存在による悪影響を受ける。更に、ラテックス重合においては、界面活性剤は、安定したモノマーのプレエマルション、重合中の安定性、及び最終ラテックスの全体的安定性を提供するのに必要である。塗料中の残留界面活性剤、及び一部のポリマーの加水分解効果により、塗料が軟化し易く、且つ経時的に水により分解し易いままとなる場合がある。
【0008】
希釈剤の主な目的は、ポリマーを溶解し、且つ塗料の粘度を調節することである。これは揮発性であり、塗料膜の一部とはならない。これはまた、流動特性及び塗布特性を制御し、一部の場合では液性状態にある塗料の安定性に影響を及ぼし得る。その主要な機能は、非揮発性構成要素のための担体としてのものである。油性内装用家屋塗料中のより重い油(例えばアマニ油)を塗るためには、より薄い油が必要である。これらの揮発性物質は、その特性を一時的に付与し、溶剤が一旦蒸発すると、残りの塗料は表面に固定される。この構成要素は任意選択的であり、一部の塗料は希釈剤を有さない。水は、共溶剤型であっても、水系塗料の主な希釈剤である。油性とも称される溶剤系塗料は、脂肪族化合物、芳香族化合物、アルコール、ケトン、及びホワイトスピリットを含む、希釈剤としての有機溶剤の様々な組み合わせを有することができる。特定の例は、石油蒸留物、エステル、グリコールエーテルなどの有機溶剤である。場合により、揮発性の低分子量合成樹脂も希釈剤としての役割を果たす。
【0009】
顔料は、色彩に寄与するために塗料に組み込まれる粒状固体である。体質顔料は、強靭性、質感を付与するため、塗料に特別な特性を与えるため、又は塗料のコストを低減するために組み込まれる粒状固体である。或いは、一部の塗料は、顔料の代わりに、又は顔料と組み合わせて染料を含有する。顔料は天然型又は合成型のいずれかに分類され得る。天然顔料としては、様々なクレー、炭酸カルシウム、雲母、シリカ、及びタルクが挙げられる。合成物質としては、改変分子、焼成クレー、沈降硫酸バリウム、沈降炭酸カルシウム、及び合成焼成シリカが挙げられる。不透明塗料の製造においては、隠蔽性顔料も、紫外線の有害な効果から基材を保護する。隠蔽性顔料としては、二酸化チタン、フタロブルー、赤色酸化鉄、及びその他多くが挙げられる。体質顔料は、膜を肥厚させ、その構造を支持し、且つ塗料の体積を増加させる役割を果たす特殊なタイプの顔料である。体質顔料は、珪藻土、タルク、石灰、重晶石、クレーなどの、一般的には安価であり、且つ不活性の材料である。摩耗に晒される床用塗料は、体質顔料として微細珪砂を含有する場合がある。全ての塗料が体質顔料を含むわけではない。一方、一部の塗料は、大部分の顔料/体質顔料、及びバインダーを含有する。
【0010】
成分の3つの主な部類の他に、塗料は、通常は少量添加されるが、生成物に大きな効果を提供する、多種多様なその他の添加剤を有し得る。一部の例としては、表面張力を改質する、流動性を改善する、完成外観を改善する、濡れ縁部を増加させる、顔料安定性を増加させる、凍結防止特性を付与する、起泡性を制御する、皮張りを制御する、などを行う添加剤が挙げられる。他のタイプの添加剤としては、触媒、増粘剤、安定剤、乳化剤、テクスチャライザー、接着促進剤、UV安定剤、フラットナー(脱光沢剤)、細菌増殖に対抗する殺生物剤などが挙げられる。添加剤は、一般的に、配合物中の個々の構成要素の百分率を著しく変えることはない。界面活性剤は、様々な用途における多くの配合物の重要な成分である。
【0011】
塗料及びコーティング添加剤市場において、界面活性剤及び殺生物剤は、様々な理由により配合物中の重要な構成要素である。界面活性剤は、湿潤剤、消泡剤、及び分散剤として用いられる。殺生物剤は、微生物の腐敗を防止するために用いられ、黴の増殖から乾燥膜を保護する。
【0012】
殺生物剤及び殺黴剤は、2つの主な目的のために塗料缶中で用いられる抗菌剤の2つのクラスである。缶中防腐剤としても知られる殺生物剤は、湿潤塗料を細菌増殖による劣化から保護するために用いられ、これに対し、殺黴剤は、乾燥膜を真菌劣化から保護するために用いられる。ホルムアルデヒド放出剤、イソチアゾリノン、カルバメート、及びチオールなどの様々なクラスの化学的構造に属する殺生物剤が、それらの様々な特性のために用いられる。化学的構造のうちいくつかは、発がん性物質であるか、又は腐食剤及び増感剤のいずれかとして列挙されている。
【0013】
台風、暴風、洪水、及びその他の類似する天災による浸水及び建物の損傷のために、乾燥膜の殺真菌剤又は殺黴剤の使用が増加した。しかしながら、一部の場合では、地下室、浴室、及びキッチン用の家屋、ホテルの部屋、学校の建物、並びに病院環境における内装用塗料は、環境に優しくない、又は、取扱安全性に問題を有し、感作反応を生じさせる殺黴剤を含んで配合されている。
界面活性剤は、個々の極性成分上の荷電の性質に応じて分類することができる。アニオン性界面活性剤は、一般的にスルホン酸基又は硫黄基のために負に荷電している。非イオン性界面活性剤はイオン成分を含んでおらず、全ての非イオン性物質(non-ionics)の大半は、1,2-エポキシエタンの重合生成物である。カチオン性界面活性剤は、正に荷電した第4級アンモニウム基を特徴とする。最後に、両性界面活性剤は、同じ分子内に正及び負に荷電した部分の両方を有する。バイオ界面活性剤も2つの部類、すなわち、(1)低い表面及び界面張力を有する低分子質量分子と、(2)表面にしっかりと結合する高分子質量ポリマーと、に分類され得る。低分子質量分子の例は、ラムノリピッド及びソホロリピッドである。高分子質量ポリマーの例は、食品乳化剤及びバイオ分散剤(biodispersants)である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許出願公開第2011/0270207号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2011/0237531号明細書
【発明の概要】
【0015】
本発明は、コーティング又は塗料組成物中の必要な殺生物剤濃度を低下させるために(モノラムノリピッド、ジラムノリピッド、及び/又はソホロリピッドが挙げられるがこれらに限定されない)バイオ界面活性剤(すなわち、補助剤又はバイオ補助剤効果を有する)を用いる。本発明は、コーティング又は塗料組成物中の必要な殺生物剤の最小量を低下させるために(モノラムノリピッド、ジラムノリピッド、及び/又はソホロリピッドが挙げられるがこれらに限定されない)バイオ界面活性剤(すなわち、補助剤又はバイオ補助剤効果を有するバイオ界面活性剤)を用いる。この点において、ラムノリピッド及び/又はソホロリピッドバイオ界面活性剤は、「環境に優しい(green)」界面活性剤であり、コーティング又は塗料に有利な特徴を有する。
【0016】
本発明は、エマルションポリマー及び結果として得られるエマルションポリマー生成物を生成するためにバイオ界面活性剤を用いるプロセスを提供する。具体的に、本発明は、ラテックスバインダー、塗料、及びコーティングを合成するためのバイオ界面活性剤の使用を目的とする。バイオ界面活性剤は、非イオン性又はアニオン性であってよい。
【0017】
本発明によれば、バイオ界面活性剤を含む水性コーティング組成物(例えばラテックス塗料)は安定している。
【0018】
バイオ界面活性剤は、ラテックスバインダーを含有する塗料及びコーティングを改善するための組成物及び方法において、多くの方法で採用され得る。
【0019】
本発明は、ラテックスポリマーを形成するためのエマルション重合中の界面活性剤(乳化剤)としてバイオ界面活性剤を採用することができる。別の実施形態では、本発明は、ラテックスポリマー含有水性分散液に対する添加剤としてバイオ界面活性剤を採用することができる。
【0020】
本発明の水性コーティング組成物は、バイオ界面活性剤、及び少なくとも1つのラテックスポリマーを含む。水性コーティング組成物中の少なくとも1つのラテックスポリマーは、純アクリル、スチレンアクリル、ビニルアクリル又はアクリル化エチレン酢酸ビニルコポリマーであり得、より好ましくは純アクリルである。少なくとも1つのラテックスポリマーは、好ましくは、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、及びメタクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも1つのアクリルモノマーに由来する。例えば、少なくとも1つのラテックスポリマーは、アクリル酸ブチル/メタクリル酸メチルコポリマー、又はアクリル酸2-エチルヘキシル/メタクリル酸メチルコポリマーであってよい。典型的には、少なくとも1つのラテックスポリマーは、更に、スチレン、α-メチルスチレン、塩化ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタクリル酸ウレイド、酢酸ビニル、分枝3級モノカルボン酸のビニルエステル、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、エチレン、及びC4~C8共役ジエンからなる群から選択される1つ以上のモノマーに由来する。
【0021】
ラテックス塗料配合物は、典型的には添加剤、例えば少なくとも1つの顔料を含む。本発明の好ましい実施形態では、少なくとも1つの顔料は、TiO2、CaCO3、クレー、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、タルク、重晶石、酸化亜鉛、亜硫酸亜鉛、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの顔料を含む。より好ましくは、少なくとも1つの顔料は、TiO2、炭酸カルシウム、又はクレーを含む。
【0022】
上記の構成要素に加えて、水性コーティング組成物は、分散剤、界面活性剤、レオロジー変性剤、消泡剤、増粘剤、追加の殺生物剤、追加の殺黴剤、着色剤、ワックス、香料、及び補助溶剤からなる群から選択される1つ以上の添加剤を含み得る。
【0023】
一態様では、少なくともバイオ界面活性剤を含有する組成物から形成される少なくとも1つのラテックスを含有するコーティング又は塗料組成物が本明細書で説明される。
【0024】
本発明は、乳化剤、又は乳化剤ブレンドの一部としてバイオ界面活性剤を用いる水性コーティング組成物の調製方法を含む。一実施形態では、バイオ界面活性剤は、ラテックスポリマーを製造するために用いられるエマルション重合反応中に乳化剤として用いられる。方法は、少なくとも1つの開始剤、及び上記の少なくとも1つのバイオ界面活性剤(乳化剤)化合物の存在下でラテックスモノマーを反応器に供給すること、並びにラテックスモノマーを重合してラテックスポリマーとバイオ界面活性剤とのブレンドを含むラテックスバインダーを生成することによる、エマルション重合を用いたポリマーラテックスバインダーを調製することを含む。続いて、少なくとも1つの顔料及びその他の添加剤を、得られたラテックスバインダーと混合して、水性コーティング組成物を生成することができる。ポリマーラテックスバインダーを調製する工程は、開始剤を含む開始剤溶液を調製することと、乳化剤ブレンドの一部として、モノマー、及びバイオ界面活性剤(乳化剤)化合物、並びに共乳化剤としての任意選択的な追加の界面活性剤を含むモノマープレエマルションを調製することと、開始剤溶液を反応器に添加することと、モノマープレエマルションを反応器に添加することと、を含み得る。
【0025】
ラテックスポリマーを形成するためのエマルション重合中に、乳化剤として又は乳化剤ブレンドとして、バイオ界面活性剤及び任意選択的な追加の界面活性剤を採用する場合、ラテックスポリマーは、バイオ界面活性剤乳化剤又は乳化剤ブレンド(バイオ界面活性剤乳化剤及び1つ以上の追加の界面活性剤を含有する)の合計が、バインダーのラテックスポリマーを形成するために用いられるモノマー100重量部あたり0.5~10、好ましくは1~8、又は2~6、又は1.5~3重量部である組成物から調製される。例えば、プレエマルションは、典型的には、バインダーのラテックスポリマーを製造するために用いられるモノマーの合計重量に対して0.5重量%~6重量%の合計乳化剤又は乳化剤ブレンドから製造される。一般的に、2つ以上の界面活性剤、例えば非イオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤がエマルション重合で用いられる。この場合、バイオ界面活性剤が非イオン性界面活性剤となる。一実施形態では、乳化剤ブレンドは、バイオ界面活性剤及び少なくとも1つのアニオン性界面活性剤を含む。別の実施形態では、乳化剤ブレンドは、バイオ界面活性剤、少なくとも1つのアニオン性界面活性剤、及び少なくとも1つの非イオン性界面活性剤を含む。一実施形態では、エマルション重合中に採用される乳化剤ブレンドの少なくとも1重量%、又は少なくとも2重量%、又は少なくとも4重量%、又は少なくとも5重量%、より典型的には少なくとも10重量%、又は少なくとも15重量%、更により典型的には少なくとも20重量%、又は少なくとも30重量%、又は少なくとも50重量%が、少なくとも1つのバイオ界面活性剤である。別の実施形態では、エマルション重合中に採用される乳化剤ブレンドの少なくとも0.1重量%、又は少なくとも0.2重量%、又は少なくとも0.4重量%、又は少なくとも0.5重量%、又は少なくとも1.5重量%、又は少なくとも2重量%、又は少なくとも4重量%、又は少なくとも6重量%、又は少なくとも8重量%が、少なくとも1つのバイオ界面活性剤である。一実施形態では、バイオ界面活性剤はモノラムノリピッドである。別の実施形態では、バイオ界面活性剤は、モノラムノリピッド、ジラムノリピッド、及びソホロリピッドからなる群から選択される。別の実施形態では、バイオ界面活性剤はモノラムノリピッドを含む。
【0026】
好適なアニオン性乳化剤としては、アルカリ金属アルキルアリールスルホン酸塩、アルカリ金属アルキル硫酸塩、及びスルホン化アルキルエステルが挙げられる。具体例としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジ第二級ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸二ナトリウム、n-オクタデシルスルホサクシナメート二ナトリウム、及びジオクチルスルホコハク酸ナトリウムが挙げられる。好適な非イオン性乳化剤としては、例えば、ポリエチレンオキシド又はオリゴ糖親水性ヘッドに基づく共通構造が挙げられる。
【0027】
反応混合物中にバイオ界面活性剤(乳化剤)化合物を組み込むことにより、水性コーティング組成物の安定性を望ましいレベルに維持しながら、コーティング組成物がより低いVOC含有量を有することが可能となる。反応混合物中にバイオ界面活性剤(乳化剤)化合物を組み込むことにより、必要な殺生物剤及び/又は防腐剤の濃度を低下させながらも、コーティング組成物が許容され得る殺生物剤及び殺黴剤の特性を維持することも可能となり、ここでバイオ界面活性剤は補助剤又はバイオ補助剤としての役割を果たす。
【0028】
別の実施形態では、上記のバイオ界面活性剤は、既に形成された水性ラテックスポリマー分散液に対する、又は塗料若しくはコーティング組成物の配合中における、添加剤として用いられる。(配合は、添加剤がベース水性ラテックスポリマー分散液に添加されて、これを最終塗料又はコーティング生成物にする段階である。)これにより、バイオ界面活性剤及びラテックスポリマーを含む組成物がもたらされる。バイオ界面活性剤が、既に形成されたラテックスポリマー分散液に対する添加剤として採用される場合、得られる組成物は、ラテックスポリマー分散液100重量部当たり、又はコーティング組成物の合計重量の、約0.001~10、例えば0.01~2、又は0.1~0.6部の量でバイオ界面活性剤を有する(水を含む合計組成物を基準にして)。典型的には、バイオ界面活性剤の添加される量は、組成物の1重量%未満(組成物の10000ppm未満)である。
【0029】
必要に応じて、バイオ界面活性剤は、既に形成されたラテックスポリマー分散液に対する添加剤として採用され得る。本実施形態では、ラムノリピッド及びソホロリピッドからなる群から選択される少なくとも1つのバイオ界面活性剤化合物が既に形成されたラテックスポリマー分散液に添加されると、ラテックスバインダーが生成される。続いて、少なくとも1つの顔料及びその他の添加剤を、得られたラテックスバインダーと混合して、塗料又は水性コーティング組成物を生成することができる。
【0030】
別の実施形態では、上記のバイオ界面活性剤は、塗料又は水性コーティング組成物の配合中に添加剤として用いられる。バイオ界面活性剤が塗料又は水性組成物、例えば水性ラテックスポリマー分散液の配合中に添加剤として採用される場合、得られる組成物は、ラテックスポリマー分散液100重量部当たり、又はコーティング組成物の合計重量の、約0.001~10、例えば0.01~2、又は0.1~0.6部の量でバイオ界面活性剤を有する(水を含む合計組成物を基準にして)。典型的には、バイオ界面活性剤の添加される量は、組成物の1重量%未満(組成物の10000ppm未満)である。
【0031】
この方法は、水性ラテックス塗料又は水性コーティング組成物の配合中に、最終塗料又は水性コーティング組成物を生成するために、ラムノリピッド及びソホロリピッドからなる群から選択される少なくとも1つのバイオ界面活性剤をバイオ補助剤として添加することを含む。少なくとも1つの顔料及びその他の添加剤をラテックスバインダーの前又は後で混合して、塗料又は水性コーティング組成物を生成することができる。ラテックス塗料又は水性コーティング組成物の配合中にバイオ界面活性剤を添加することにより、水性コーティング組成物の安定性が望ましいレベルで維持され、且つバイオ補助剤特性が提供される。つまり、反応混合物にバイオ界面活性剤を含む乳化剤化合物を組み込むことにより、必要な殺生物剤及び/又は防腐剤の濃度を低下させながらも、ラテックス組成物又はコーティング組成物が許容され得る殺生物剤及び殺黴剤の特性を維持することも可能となり、ここでバイオ界面活性剤は補助剤又はバイオ補助剤としての役割を果たす。
【0032】
一実施形態では、乳化剤として利用されようと、又は添加剤として利用されようとも、バイオ界面活性剤は少なくとも1つのモノラムノリピッドを含む。一実施形態では、乳化剤として利用されようと、又は添加剤として利用されようとも、バイオ界面活性剤は、少なくとも1つのモノラムノリピッド、及び少なくとも1つのジラムノリピッド、並びに任意選択的に少なくとも1つのソホロリピッドを含む。
【0033】
一実施形態では、乳化剤として利用されようと、又は添加剤として利用されようとも、バイオ界面活性剤は少なくとも1つのモノラムノリピッド及び少なくとも1つのジラムノリピッドを含み、ここでモノラムノリピッド対ジラムノリピッドの重量%比が、それぞれ約90:10~99:1の範囲内にある。
【0034】
一実施形態では、乳化剤として利用されようと、又は添加剤として利用されようとも、バイオ界面活性剤は少なくとも1つのモノラムノリピッド及び少なくとも1つのジラムノリピッドを含み、ここでモノラムノリピッド対ジラムノリピッドの重量%比が、それぞれ約85:15~99.5:0.5の範囲内にある。
【0035】
一実施形態では、乳化剤として利用されようと、又は添加剤として利用されようとも、バイオ界面活性剤は少なくとも1つのモノラムノリピッド及び少なくとも1つのジラムノリピッドを含み、ここでモノラムノリピッド対ジラムノリピッドの重量%比が、それぞれ約80:20~99.9:0.1の範囲内にある。
【0036】
一実施形態では、乳化剤として利用されようと、又は添加剤として利用されようとも、バイオ界面活性剤は少なくとも1つのモノラムノリピッド及び少なくとも1つのジラムノリピッドを含み、ここでモノラムノリピッド対ジラムノリピッドの重量%比が、それぞれ約50:50~99.9:0.1の範囲内にある。
【0037】
一実施形態では、乳化剤として利用されようと、又は添加剤として利用されようとも、バイオ界面活性剤は少なくとも1つのモノラムノリピッド及び少なくとも1つのジラムノリピッドを含み、ここでモノラムノリピッド対ジラムノリピッドの重量%比が、それぞれ約40:60~99.9:0.1の範囲内にある。
【0038】
一実施形態では、モノラムノリピッドは、コーティング組成物中で必要な殺生物剤の濃度を低下させるように設計されたバイオ補助剤としての役割を果たす。ラテックス組成物を作製するためのエマルション重合プロセスで用いられる場合、反応混合物中にバイオ界面活性剤を含む乳化剤化合物を組み込むことにより、必要な殺生物剤及び/又は防腐剤の濃度を低下させながらも、ラテックス組成物が許容され得る殺生物剤及び/又は殺黴剤の特性を維持することも可能となり、ここでバイオ界面活性剤は補助剤又はバイオ補助剤としての役割を果たす。
【0039】
一実施形態では、補助剤として用いられる場合、バイオ界面活性剤は抗菌特性を保有しない。
【0040】
別の実施形態では、本発明のバイオ界面活性剤は、金属キレート化が細菌増殖の必要な構成要素を妨害(tie up)するように働く位置で細菌増殖に必要な金属及び/又は栄養素と結合すると考えられるモノラムノリピッドを含む。
【0041】
一実施形態では、CMC以下の低レベルで用いられる場合はモノラムノリピッドであってもよいバイオ界面活性剤は、様々な微生物の増殖に対して中立的効果を示すか、又は全く効果を示さない。
【0042】
一実施形態では、(CMC値未満又はその付近の)レベルで用いられる場合、ラムノリピッドは、ラテックスコーティング及び塗料を適切に保存するのに必要なイソチアゾリノンの量を低減させるように作用する。そして最後に、可能な作用機序に関して、Solvayは、ラムノリピッドが、部分的に、有益な金属を微生物にキレート化するように作用することを示唆する要約及び文献引用を提供している。
【0043】
一実施形態では、本明細書で説明されるバイオ界面活性剤は活性成分ではなく、むしろ、物理作用により活性成分の活性を強化又は延長するように働く化合物である。換言すると、補助剤生成物として利用されるモノラムノリピッド(及びその混合物)は、他の場合では塗料又はコーティングを微生物分解から保護するために必要な殺生物剤(又は防腐剤)の量を低減させるように作用する。
【0044】
一実施形態では、少なくとも1つのモノラムノリピッドであるバイオ界面活性剤の有効量は、コーティング組成物中で必要な殺生物剤の濃度を、バイオ界面活性剤を含まない類似組成物と比較して20重量%、又は30重量%、又は40重量%、又は50重量%超の量で低下させる。
【0045】
一実施形態では、少なくとも1つのモノラムノリピッドであるバイオ界面活性剤の有効量は、コーティング組成物中で必要な殺生物剤の濃度を、バイオ界面活性剤を含まない類似組成物と比較して60重量%、又は70重量%、又は80重量%超の量で低下させる。別の実施形態では、バイオ界面活性剤の有効量は、コーティング組成物中で必要な殺生物剤の濃度を、バイオ界面活性剤を含まない類似組成物と比較して55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、又は95重量%超の量で低下させる。
【0046】
一実施形態では、バイオ界面活性剤の有効量は、組成物又は分散液の5000ppm、2000ppm、3000ppm、1000ppm、800ppm、500ppm、300ppm、200ppm、又は100ppm未満である。
【0047】
別の実施形態では、バイオ界面活性剤の有効量は、組成物の100ppm、又は90ppm、又は80ppm、又は70ppm、又は60ppm未満である。なお別の実施形態では、バイオ界面活性剤の有効量は、組成物の約1ppm~約60ppmである。更なる実施形態では、バイオ界面活性剤の有効量は、組成物の約10ppm~約50ppmである。別の実施形態では、バイオ界面活性剤の有効量は、組成物の約20ppm~約50ppmである。なお別の実施形態では、バイオ界面活性剤の有効量は、組成物の約25ppm~約45ppmである。
【0048】
別の実施形態では、バイオ界面活性剤の有効量は、組成物の5000ppm、又は4000ppm、又は3000、又は2000ppm、又は1000ppm未満である。
【0049】
別の実施形態では、バイオ界面活性剤の有効量は、組成物の900ppm、又は800ppm、又は500ppm、又は300ppm、又は200ppm未満である。
【0050】
本発明の組成物及び方法で使用される場合、ラムノリピッド及び/又はソホロリピッドからなる群から選択されるバイオ界面活性剤が、唯一のバイオ界面活性剤/界面活性剤であり得る。一実施形態では、本発明の組成物は、バイオポリマーが欠如している、例えばデキストランが欠如している場合がある。
【0051】
本発明の組成物は、Uenoの米国特許第7,348,382B2号明細書の要約におけるものなどのポリビニルアルコール系ブロックコポリマーが欠如している場合がある。
【0052】
一態様では、
(a)少なくとも1つのラテックスポリマーと、
(b)殺生物剤と、
(c)バイオ界面活性剤組成物であって、一実施形態では、バイオ界面活性剤を含まない類似組成物と比較して、コーティング組成物中で必要な殺生物剤の濃度を低減するのに有効な量のモノラムノリピッドを含む、バイオ界面活性剤組成物と、
(d)水と、を含むコーティング組成物が本明細書で説明される。
【0053】
別の態様では、エマルションが、反応混合物を重合してラテックスポリマーを調製する工程を含み、上記の反応混合物が、少なくとも1つのモノマーと少なくとも1つのバイオ界面活性剤組成物とを含む、重合中にバイオ界面活性剤組成物を用いるためのプロセスが本明細書で説明される。一実施形態では、バイオ界面活性剤組成物はモノラムノリピッドを含む。
【0054】
なお別の態様では、少なくとも1つのバイオ界面活性剤を含む少なくとも1つのラテックスポリマー水性分散液を少なくとも1つの殺生物剤と接触させることを含む、水性コーティング組成物を調製する方法であって、バイオ界面活性剤は、バイオ界面活性剤を含まない類似組成物と比較して、コーティング組成物中で必要な殺生物剤の濃度を低減するのに有効な量で存在する、方法が本明細書で説明される。一実施形態では、バイオ界面活性剤はモノラムノリピッドを含む。
【0055】
本発明のこれら及びその他の特徴及び利点は、本発明の好ましい実施形態及び代替的実施形態の両方を説明する以下の詳細な説明を考慮すれば、当業者にはより容易に明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【発明を実施するための形態】
【0057】
本発明は、ラテックス分散液、バインダー、塗料、及びコーティングのためのバイオ界面活性剤の特定のファミリーの使用に関する。本発明は、従来の水性コーティング組成物と同等の低いVOC含有量、並びに有益な殺生物剤及び殺黴剤特性を有する水性組成物、例えば水性コーティング組成物を提供する。本発明の水性組成物は、バイオ界面活性剤の特定のファミリー、例えばラムノリピッドと共重合又はブレンドされた少なくとも1つのラテックスポリマーを含む水性ポリマー分散液である。本発明の塗料又はその他の水性コーティングは、典型的には、少なくとも1つの顔料を更に含む。典型的には、ラテックスは10℃未満、より典型的には5℃未満、更により典型的には5~-10℃の範囲内、例えば0℃のTgを有する。
【0058】
バイオ界面活性剤の特定のファミリーのメンバーは、ラテックス水性分散液、バインダー、コーティング、及び塗料を改善するための多くの方法で採用され得る。本発明は、(1)ラテックスポリマー形成中に存在する界面活性剤(乳化剤)、及び/又は(2)ラテックスポリマー若しくはコポリマーを含む水性分散液、バインダー、コーティング、若しくは塗料に対する添加剤、としてバイオ界面活性剤を採用することができる。
【0059】
本明細書で使用するとき、用語「アルキル」は、一価の直鎖又は分岐鎖飽和炭化水素ラジカル、より典型的には、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ヘキシル、オクチル、ヘキサデシル、オクタデシル、エイコシル、ベヘニル、トリコンチル、及びテトラコンチルなどの、一価の直鎖又は分岐鎖の飽和(C1~C40)炭化水素ラジカルを意味する。
【0060】
本明細書で使用するとき、用語「アルコキシル」は、任意選択的に、そのラジカルの1つ以上の炭素原子上で更に置換されていてもよい、例えばメトキシル、エトキシル、プロポキシル、イソプロポキシル、又はブトキシルなどの、アルキル基で置換されたオキシラジカルを意味する。
【0061】
本明細書で使用するとき、用語「アルコキシアルキル」は、1つ以上のアルコキシ置換基で置換されているアルキルラジカル、より典型的には、メトキシメチル、及びエトキシブチルなどの、(C1~C22)アルキルオキシ-(C1~C6)アルキルラジカルを意味する。
【0062】
本明細書で使用するとき、用語「アルケニル」は、不飽和の直鎖又は分岐鎖炭化水素ラジカル、より典型的には、例えば、エテニル、n-プロペニル、イソ-プロペニルなどの1つ以上の炭素-炭素二重結合を含有する、不飽和の直鎖、分岐鎖(C2~C22)炭化水素ラジカルを意味する。
【0063】
本明細書で使用するとき、用語「水性媒体」及び「水性媒体(複数)」は、本明細書では、水が主構成要素である任意の液状媒体を指すために用いられる。よって、この用語は、本質的に水、並びに水溶液及び分散系を包含する。
【0064】
本明細書で使用するとき、用語「アリール」は、例えばフェニル、メチルフェニル、メトキシフェニル、ジメチルフェニル、トリメチルフェニル、クロロフェニル、トリクロロメチルフェニル、トリイソブチルフェニル、トリスチリルフェニル、及びアミノフェニルなどの、不飽和が3つの共役二重結合で表されてもよく、環の炭素の1つ以上の上でヒドロキシ、アルキル、アルコキシル、アルケニル、ハロ、ハロアルキル、単環式アリール、又はアミノで置換されていてもよい、1つ以上の6員環炭素環を含有する一価の不飽和炭化水素ラジカルを意味する。
【0065】
本明細書で使用するとき、用語「アラルキル」は、1つ以上のアリール基で置換されたアルキル基、より典型的には、例えば、フェニルメチル、フェニルエチル、及びトリフェニルメチルなどの1つ以上の(C6~C14)アリール置換基で置換された(C1~C18)アルキルを意味する。
【0066】
本明細書で使用するとき、用語「アリールオキシ」は、例えば、フェニルオキシ、メチルフェニルオキシ、イソプロピルメチルフェニルオキシなどの、アリール基で置換されたオキシラジカルを意味する。
【0067】
用語「バイオポリマー」としては、多糖類、例えばデキストラン、タンパク質、及びポリエステル、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0068】
本明細書で使用するとき、有機基に関連した専門用語「(Cx~Cy)」(式中、x及びyはそれぞれ整数である)は、この基が、基当たりx個の炭素原子からy個の炭素原子を含有し得ることを指す。
【0069】
本明細書で使用するとき、用語「シクロアルケニル」は、シクロヘキセニル、シクロヘプテニルなどの、1つ以上の環状アルケニル環を含有し、また環の1つ以上の炭素原子上で1炭素原子当たり1つ又は2つの(C1~C6)アルキル基で任意選択的に置換されていてもよい、不飽和の炭化水素ラジカル、典型的には不飽和の(C5~C22)炭化水素ラジカルを意味し、「ビシクロアルケニル」は、ビシクロヘプテニルなどの、2つの縮合環を含むシクロアルケニル環系を意味する。
【0070】
本明細書で使用するとき、用語「シクロアルキル」は、例えば、シクロペンチル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどの、1つ以上の環状アルキル環を含み、環の1つ以上の炭素原子上で1炭素原子当たり1つ又は2つの(C1~C6)アルキル基で任意選択的に置換されていてもよい、飽和炭化水素ラジカル、より典型的には、飽和(C5~C22)炭化水素ラジカルを意味し、「ビシクロアルキル」は、ビシクロヘプチルなどの、2つの縮合環を含むシクロアルキル環系を意味する。
【0071】
本明細書で使用するとき、臨界ミセル濃度(CMC)とは、これを超えるとミセルが形成され、また、系に添加された全ての追加界面活性剤がミセルに移行する、界面活性剤の濃度である。CMCに到達する前は、表面張力は界面活性剤の濃度によって大きく変化し、一方でCMCに到達した後は、表面張力は比較的一定を保つか又はより低い勾配で変化する。
【0072】
本明細書で使用するとき、組成物が特定の材料を「含まない(free)」という指摘は、その組成物がその材料の測定可能な量を含まないことを意味する。
【0073】
本明細書で使用するとき、用語「複素環式」とは、例えばチオフェニル、ベンゾチフェニル(benzothiphenyl)、チアンスレニル、ピラニル、ベンゾフラニル、キサンテニル、ピロリジニル、ピロリル、ピラジニル(pyradinyl)、ピラジニル(pyrazinyl)、ピリマジニル、ピリダジニル、インドリル、キノニル、カルバゾリル、フェナトロリニル(phenathrolinyl)、チアゾリル、オキサゾリル、フェノキサジニル、又はホスファベンゼニルなどの、環又は縮合環系を含み、典型的には環又は環系当たり4~16の環原子を含む、飽和又は不飽和の有機ラジカルを意味し、かかる環原子は、環又は環系当たり、炭素原子、及び例えばO、N、S、又はPなどの少なくとも1つのヘテロ原子を含み、これは任意選択的に環原子のうち1つ以上の上で置換されてもよい。
【0074】
本明細書で使用するとき、用語「ヒドロキシアルキル」は、アルキルラジカル、より典型的には、例えば、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、及びヒドロキシデシルなどの、1つ以上のヒドロキシル基で置換されている(C1~C22)アルキルラジカルを意味する。
【0075】
本明細書で使用するとき、用語「(メタ)アクリレート」は、集合的且つ二者択一的にアクリレート及びメタクリレートを指し、用語「(メタ)アクリルアミド」は、集合的且つ二者択一的にアクリルアミド及びメタクリルアミドを指し、故に、例えば、「ブチル(メタ)アクリレート」は、アクリル酸ブチル及び/又はメタクリル酸ブチルを指す。
【0076】
本明細書で使用するとき、ポリマー又はその任意の部分に関する「分子量」は、上記のポリマー又は部分の重量平均分子量(「Mw」)を意味し、ここでポリマーのMwは、ポリマーの組成に応じて水性溶出剤又は有機溶出剤(例えばジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドなど)を用いたゲル透過クロマトグラフィー、光散乱法(DLS、或いはMALLS)、粘度測定法、又は多くの他の標準的技法により測定された値であり、また、ポリマーの一部分のMwは、上記の部分を作製するために用いられたモノマー、ポリマー、開始剤、及び/又は移動剤の量から既知の技法に従って計算された値である。
【0077】
本明細書で使用するとき、ラジカルが、「任意選択的に置換されてもよい」又は「任意選択的に更に置換されてもよい」という指摘は、一般的に、明確に又はこうした言及の文脈により更に制限されていない限り、こうしたラジカルが、例えば、アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、アルカリル、ヘテロ原子若しくはヘテロシクリルなどの1つ以上の無機若しくは有機置換基で置換されてもよい、或いはヒドロキシル、カルボニル、カルボキシル、アミノ、イミノ、アミド、ホスホン酸、スルホン酸、若しくはアルセナートなどの金属イオンに配位結合することができる1つ以上の官能基、又はそれらの無機及び有機エステル、例えば、スルフェート若しくはホスフェート、若しくはそれらの塩で置換されていてもよいことを意味する。
【0078】
本明細書で使用するとき、組成物が特定の物質を「実質的に含まない」という指摘は、組成物がその物質を微量(insubstantial amount)までしか含まないことを意味し、「微量」とは組成物の所望の特性に測定可能な影響を及ぼさない量を意味する。
【0079】
本明細書で使用するとき、用語「界面活性剤」とは、水に溶解すると表面張力を低下させる化合物を意味する。
【0080】
「有効量」とは、殺生物剤の濃度を低下させるのに必要なバイオ界面活性剤の量を意味するか、又は、殺生物剤の濃度を低下させるのに必要なバイオ界面活性剤の最小量を意味する。
【0081】
「界面活性剤有効量」とは、ポリマーのエマルションの安定性を強化するための界面活性剤効果を提供する界面活性剤の量を意味する。
【0082】
本明細書で使用するとき、用語「建築用コーティング」は、適度に流動性であり、基材に塗布されると薄く接着性の層を提供する、樹脂と、任意選択的に顔料と、好適な液体展色剤と、の混合物を包含することが意図される。したがって、用語「建築用コーティング」は、塗料、ラッカー、ワニス、ベースコーティング、透明コーティング、プライマーなどを包含することが意図される。
【0083】
溶剤の蒸発により乾燥し、溶剤中に溶解した固形バインダーを含有する塗料は、ラッカーとして既知である。溶剤が蒸発すると固形膜が形成されるが、この膜は溶剤に再溶解し得るため、ラッカーは耐化学性が重要な用途に適さない。
【0084】
ラテックス塗料はサブマイクロメートルのポリマー粒子の水系分散液である。塗料に関連する用語「ラテックス」は、単に水性分散液を意味し、ラテックスゴム(歴史的にラテックスと称されるゴムノキの樹液)が原料ではない。これらの分散液はエマルション重合により調製される。ラテックス塗料は、凝集と呼ばれるプロセスによって硬化し、ここでは最初に水、続いて微量又は凝集溶剤が蒸発して一体に引き寄せ合い、ラテックスバインダー粒子を軟化させ、これらを一体に融合して不可逆的に結合した網目構造体にし、その結果、塗料は、元々これを担持していた溶剤/水中に再溶解することはない。塗料中の残留界面活性剤、及び一部のポリマーの加水分解効果により、塗料が軟化し易く、且つ経時的に水により分解し易いままとなる。
【0085】
エマルション重合
第1の実施形態では、ラムノリピッド及び/又はソホロリピッド(ソホロースリピッドとしても知られる)バイオ界面活性剤は、ラテックスポリマーを製造するために用いられるエマルション重合反応中に乳化剤として用いられる。
【0086】
エマルション重合は、参照によりその開示が本明細書に組み込まれる、G.Pohleinの「Emulsion Polymerization」,Encyclopedia of Polymer Science and Engineering,vol.6,pp.1-51(John Wiley & Sons,Inc.,NY,NY,1986)で説明される。エマルション重合は、不飽和モノマー又はモノマー溶液が乳化剤系の助けで連続相中に分散され、フリーラジカル又はレドックス開始剤と重合する不均一反応プロセスである。生成物である、ポリマー又はポリマー溶液のコロイド分散液は、ラテックス又はラテックス分散液と呼ばれる。
【0087】
エマルション重合に典型的に採用されるモノマーとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、その他のアクリル酸塩類、メタクリル酸塩類、及びそれらのブレンド、アクリル酸、メタクリル酸、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、酢酸より高級なカルボン酸のビニルエステル、例えばバーサチック酸ビニル、アクリロニトリル、アクリルアミド、ブタジエン、エチレン、塩化ビニルなど、並びにこれらの混合物などのモノマーが挙げられる。これは下記の「ラテックスモノマー」と題する項でより詳細に論じられる。
【0088】
上記のプロセスにおいては、好適な開始剤、還元剤、触媒、及び界面活性剤は、エマルション重合の技術分野で周知されている。典型的な開始剤としては、過硫酸アンモニウム(APS)、過酸化水素、ナトリウム、カリウム又はアンモニウムペルオキシ二硫酸、過酸化ジベンゾイル、過酸化ラウリル、ジ第3級過酸化ブチル、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、t-ブチルヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイルなどが挙げられる。一般的に用いられるレドックス開始系は、例えば、A.S.Sarac,Progress in Polymer Science 24(1999),1149-1204によって説明される。
【0089】
好適な還元剤は重合速度を増加させるものであり、これとしては、例えば亜硫酸水素ナトリウム、ヒドロ亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、アスコルビン酸、イソアスコルビン酸、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0090】
好適な触媒は、重合速度を増加させ、且つ、上記の還元剤と組み合わせて、反応条件下で重合開始剤の分解を促進する化合物である。好適な触媒としては、例えば、硫酸第一鉄七水和物、塩化第一鉄、硫酸銅、塩化第二銅、酢酸コバルト、硫酸第一コバルト、及びこれらの混合物などの遷移金属化合物が挙げられる。
【0091】
ラムノリピッドは、1つ又は2つのβヒドロキシ脂肪酸に連結した1つ又は2つのL-ラムノース単位からなるバイオ界面活性剤である。したがって、ラムノリピッド混合物は、様々な条件に応じて異なる比率で最大4つの同族体を含有することができる。本発明の発見は、特定の同族体が微生物を死滅させるために必要な殺生物剤の量を低下させることに驚くほど役立つ方法において、これらの好ましい同族体を従来の殺生物剤に対する補助剤として使用する事に関連する。例えば、ジ-ラムノ-モノ-リピッドは、劣った補助剤特性を示し、一方でモノ-ラムノ-モノ-リピッドは優れた強化を示した。これらの発見は、ラムノリピッド混合物中では、特定の同族体のみが実際に補助剤特性に寄与していることを示唆する。
【0092】
しかしながら、いくつかの実施形態では、いくつかのタイプの微生物(この用語は、少なくとも特定の細菌及び糸状菌(fungi mold)を包含する)の場合、モノラムノリピッドとジラムノリピッドとを混合するときに相乗効果が存在する。
【0093】
エマルション重合は、乳化剤の存在下で発生する。バイオ界面活性剤モノマーは、乳化剤として、追加の乳化剤の有無に関わらずポリマーのエマルションの安定性を強化するための有効量で添加される。ラムノリピッド及び/又はソホロースリピッド(ソホロリピッドとしても知られる)バイオ界面活性剤は、唯一の乳化剤であってもよく、或いは、ラムノリピッド及び/又はソホロースリピッドバイオ界面活性剤以外の追加の乳化剤(共乳化剤として)と共に採用されてもよい。
【0094】
ラテックスポリマーを形成するためのエマルション重合中に、乳化剤として又は乳化剤ブレンドとして、バイオ界面活性剤及び任意選択的な追加の界面活性剤を採用する場合、ラテックスポリマーは、バイオ界面活性剤乳化剤又は乳化剤ブレンド(バイオ界面活性剤乳化剤及び1つ以上の追加の界面活性剤を含有する)の合計が、バインダーのラテックスポリマーを形成するために用いられるモノマー100重量部あたり0.5~10、好ましくは1~8、又は2~6、又は1.5~3重量部である組成物から調製される。例えば、プレエマルションは、典型的には、バインダーのラテックスポリマーを製造するために用いられるモノマーの合計重量に対して0.5重量%~6重量%の合計乳化剤又は乳化剤ブレンドから製造される。一般的に、2つ以上の界面活性剤、例えば非イオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤がエマルション重合で用いられる。この場合、バイオ界面活性剤が非イオン性界面活性剤となる。一実施形態では、乳化剤ブレンドは、バイオ界面活性剤及び少なくとも1つのアニオン性界面活性剤を含む。別の実施形態では、乳化剤ブレンドは、バイオ界面活性剤、少なくとも1つのアニオン性界面活性剤、及び少なくとも1つの非イオン性界面活性剤を含む。典型的には、エマルション重合中に採用される乳化剤ブレンドの少なくとも1重量%、又は少なくとも2重量%、又は少なくとも4重量%、又は少なくとも5重量%、より典型的には少なくとも10重量%、又は少なくとも15重量%、更により典型的には少なくとも20重量%、又は少なくとも30重量%、又は少なくとも50重量%が、少なくとも1つのバイオ界面活性剤である。
【0095】
典型的な任意選択的な追加の乳化剤は、重合中に重合性又は非重合性のイオン性又は非イオン性界面活性剤である。好適なイオン性及び非イオン性界面活性剤は、ラウリル、トリデシル、オレイル、及びステアリルアルコールのエトキシル化生成物などのアルキルポリグリコールエーテル;オクチル又はノニルフェノール、ジイソプロピルフェノール、トリイソプロピルフェノールのエトキシル化生成物などのアルキルフェノールポリグリコールエーテル;アルキル、アリール、又はアルキルアリールスルホネート、サルフェート、ホスフェートなどのアルカリ金属又はアンモニウム塩、例えばラウリル硫酸ナトリウム、オクチルフェノールグリコールエーテル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルジグリコール硫酸ナトリウム、並びにアンモニウムトリターシャリーブチルフェノール並びにペンタ及びオクタグリコールスルホネート、スルホスクシネート塩、例えばスルホコハク酸の二ナトリウムエトキシ化ノニルフェノール半エステル、n-オクチルデシルスルホコハク酸二ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムなどである。
【0096】
一実施形態では、アニオン性乳化剤としては、アルカリ金属アルキルアリールスルホン酸塩、アルカリ金属アルキル硫酸塩、及びスルホン化アルキルエステルが挙げられる。具体例としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジ第二級ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸二ナトリウム、n-オクタデシルスルホサクシナメート二ナトリウム、及びジオクチルスルホコハク酸ナトリウムが挙げられる。更なる実施形態では、非イオン性乳化剤としては、例えば、ポリエチレンオキシド又はオリゴ糖親水性ヘッドに基づく共通構造が挙げられる。
【0097】
ポリマーラテックス又はポリマーラテックスバインダーは、最初に、開始剤と水とを含む開始剤溶液を調製することによって生成することができる。モノマープレエマルションは、1つ以上の界面活性剤の少なくとも一部、モノマー、水、及びNaOH、連鎖移動剤などの追加の添加剤を含んでも調製される。モノマープレエマルション中の1つ以上の界面活性剤は、バイオ界面活性剤及び上記の任意選択的な追加の界面活性剤を含む。
【0098】
したがって、エマルション重合の典型的なプロセスは、好ましくは、水を反応器に投入することと、別個の流れとしてモノマーのプレエマルション及び開始剤の溶液を供給することと、を伴う。具体的には、ポリマーラテックスバインダーは、少なくとも1つの開始剤及び少なくとも1つのバイオ界面活性剤の存在下でラテックスバインダーを形成するために用いられるモノマーを反応器に供給し、モノマーを重合してラテックスバインダーを生成することにより、エマルション重合を用いて調製することができる。典型的には、開始剤溶液及びモノマープレエマルションが、所定の期間にわたって(例えば1.5~5時間)連続的に反応器に添加されると、ラテックスモノマーの重合が引き起こされて、ラテックスポリマーが生成される。
【0099】
開始剤溶液及びモノマープレエマルションを添加する前に、ポリスチレンシードラテックスなどのシードラテックスを反応器に添加してもよい。例えば、少量のプレエマルション及び開始剤の一部分を反応温度で最初に投入して、「シード」ラテックスを生成することができる。「シード」ラテックス手順により、より優れた粒径再現性がもたらされる。
【0100】
開始剤が熱によって活性化される開始条件である「通常の」開始条件下では、重合は、通常は約60~90℃で実施される。例えば、典型的な「通常の」開始プロセスは、80±2℃の反応温度にて、開始剤として過硫酸アンモニウムを採用することができる。「レドックス」開始条件、すなわち、開始剤が還元剤によって活性化される開始条件下では、重合は、通常は約60~70℃で実施される。通常、還元剤は別個の溶液として添加される。例えば、典型的な「レドックス」開始プロセスは、65±2℃の反応温度にて、開始剤として過硫酸カリウム、及び還元剤としてメタ重亜硫酸ナトリウムを採用することができる。
【0101】
反応器は、少なくともポリマーラテックスバインダーを生成するために全てのモノマーが供給されるまで所望の反応温度で操作される。一旦ポリマーラテックスバインダーが調製されたら、ポリマーラテックスバインダーは、好ましくは化学的にストリッピングされ(stripped)、それにより、その残留モノマー含有量は低減する。好ましくは、ポリマーラテックスバインダーは、ペルオキシド(例えばt-ブチルヒドロペルオキシド)などの酸化剤及び還元剤(例えばアセトン亜硫酸水素ナトリウム)、又はA.S.Sarac,Progress in Polymer Science 24(1999),1149-1204によって説明されるものなどの別のレドックス対を、高温で、且つ所定の期間(例えば0.5時間)、連続的にラテックスバインダーに添加することによって化学的にストリッピングされる。続いて、化学的ストリッピング工程の後に、ラテックスバインダーのpHを調節して、その他の添加剤を添加してもよい。
【0102】
上記のエマルション中では、ポリマーは、好ましくは水中に分散した直径約50ナノメートル~約500ナノメートルの略球状粒子として存在する。
【0103】
ポリマーラテックスバインダーを調製するために反応器に供給されるモノマーは、好ましくは、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、及びメタクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも1つのアクリルモノマーを含む。加えて、モノマーとしては、スチレン、酢酸ビニル、又はエチレンを挙げることができる。モノマーとしては、スチレン、(α)-メチルスチレン、塩化ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタクリル酸ウレイド、酢酸ビニル、分枝3級モノカルボン酸のビニルエステル、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、及びエチレンからなる群から選択される1つ以上のモノマーも挙げることができる。1,3-ブタジエン、イソプレン、又はクロロプレンなどのC4~C8共役ジエンを挙げることも可能である。好ましくは、モノマーとしては、アクリル酸n-ブチル、メタクリル酸メチル、スチレン、及びアクリル酸2-エチルヘキシルからなる群から選択される1つ以上のモノマーが挙げられる。
【0104】
アクリル系塗料の製造において一般的に用いられるモノマーは、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチルなどである。アクリル系塗料組成物中では、ポリマーは、アクリル又はメタクリル酸の1つ以上のエステル、典型的には混合物からなり、例えば、重量基準で約50/50の高Tgのモノマー(例えばメタクリル酸メチル)、及び低Tgのモノマー(例えばアクリル酸ブチル)、並びに少ない割合、例えば約0.5重量%~約2重量%のアクリル酸又はメタクリル酸からなる。ビニル-アクリル系塗料は、通常、酢酸ビニル、並びにアクリル酸ブチル、及び/又はアクリル酸2-エチルヘキシル、及び/又はバーサチック酸ビニルを含む。ビニル-アクリル系塗料組成物中では、形成されたポリマーの少なくとも50%が酢酸ビニルからなり、残部はアクリル酸又はメタクリル酸のエステル類から選択される。スチレン/アクリルポリマーは、典型的にはアクリルポリマーに類似しているが、そのメタクリル酸塩モノマーの全部又は一部がスチレンで置換されている。
【0105】
ラテックスポリマー分散液(本明細書では用語「ラテックス分散液」と互換的に用いられる)は、好ましくは、約30~約75%の固形分、及び約70~約650nmの平均ラテックス粒径を含む。ラテックスポリマーは、好ましくは、約5~約60重量%、より好ましくは約8~約40重量%(すなわち、コーティング組成物の合計重量を基準にした乾燥ラテックスポリマーの重量百分率)の量で水性コーティング組成物中に存在する。
【0106】
水性コーティング組成物は、例えば、紙、木材、コンクリート、金属、ガラス、セラミック、プラスチック、漆喰、及びルーフィング基材、例えばアスファルトコーティング、ルーフィングフェルト、発泡ポリウレタン絶縁材などの多種多様な材料、又は予め塗布、地塗り、下塗り、摩耗、又は風化された基材に塗布可能な安定した流体である。本発明の水性コーティング組成物は、例えば、ブラシ、ローラー、モップ、空気補助又は無気スプレー、静電スプレーなどといった、当該技術分野で周知される様々な技法によって材料に塗布可能である。
【0107】
ラムノリピッド:
ラムノリピッドバイオ界面活性剤は、微生物によって放出される表面活性化合物である。これらは生物分解性の非毒性且つ環境に優しい材料である。これらの生成は、発酵条件、環境要因、及び栄養素利用性に依存している。バイオ界面活性剤は、溶剤抽出手順を用いて、無細胞上清から抽出される。
【0108】
シュードモナス・アエルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)DSI0-129を用いてラムノリピッドを生成した(Rahman et al.,2002a,b,2003)。ラムノリピッドは、Pattanathu,Production,Characterisation and Applications of Biosurfactants-Review,Biotechnology7(2):360-370,2008,ISSN1682-296X(2008)Asian Network for Scientific Informationに従って、シュードモナスsp(Pseudomonas sp)、セラチア・ルビデア(Serratia rubidea)から生成することもできる。
【0109】
シュードモナス・アエルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)から分泌されるラムノリピッドバイオ界面活性剤は、土壌中及び植物上に見出される天然の細胞外糖脂質である。ラムノリピッドバイオ界面活性剤は、抗菌及び抗真菌活性、並びに低い毒性レベルを提供する。
【0110】
ラムノリピッドは、特定のタイプの細菌、ウイルス、及び真菌と戦うために医療分野で使用されてきた。DeSantoの米国特許出願公開第2011/0270207A1号明細書は、生活及び職場環境用に消毒し、殺菌し、消臭し、且つ抗菌及び抗真菌剤として作用するラムノリピッド系配合物を開示している。更に、上記明細書は、表面に適用されると細菌及び真菌の増殖を防ぐバイオ膜を作製するラムノリピッドの使用を開示している。この技法は、医療処置、化学分析、食品調製中、並びにデイケア施設及び病院向けの清潔な表面領域を作製するのに有用であると断定されている。シュードモナス・アエルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)DS10-129によって生成されたラムノリピッドバイオ界面活性剤は、ガソリンが流出した土壌及び石油油性スラッジ中の炭化水素のバイオレメディエーションにおける重要な用途を示した。ラムノリピッドバイオ界面活性剤は、土壌マトリクスから風化油を放出することによってバイオレメディエーションプロセスを強化し、また、微生物分解に対する炭化水素のバイオアベイラビリティを強化する。これは、炭化水素で汚染された場所のレメディエーションにおける潜在的な用途を有する。バイオ界面活性剤ラムノリピッドは、農業用途のバイオ殺真菌薬としての使用に関してEPAに登録された生成物である。
【0111】
シュードモナス(Pseudomonas)属の細菌は、ラムノース、及び3-ヒドロキシ脂肪酸を含有する糖脂質界面活性剤を生成することが知られている(Lang and Wullbrandt,1999;Rahman et al.,2002b)。シュードモナス・アエルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)によって生成されたラムノリピッドは、広く研究されており、同種のRL1(RhC10C10,)、RL2(RhC10,)、RL3(Rh2C10C10)、及びRL4(Rh2C10)の混合物として報告されている(Syldatk and Wagner,1987;Lang and Wagner,1987;Rahman et al.,2002b)。バージンオリーブ油を使用して(Healy et al.,1996)、ラムノリピッドを、メチルペントース単糖であるシュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)NCIMB11712によって生成した。2モルのラムノース糖を縮合することにより二糖ラムノリピッドが形成され、アセタール基が疎水性基に結合する。しかしながら、分子の脂質部分はエステル及びカルボキシル基を含有する。シュードモナス・アエルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)によって生成されたラムノリピッドは、汚染された土壌から疎水性化合物を除去するために適用されたときに最も効果的な界面活性剤のうちの1つである(Rahman et al.,2006)。これらは、(30~32mN m-1)の低い平均最低表面張力、(10.4~15.5U mL-1濾液)の高い平均乳化活性、低い臨界ミセル濃度(CMC)(5~65mg L-1)、及び疎水性有機分子に対する高親和性を有する(Van Dyke et al.,1993)。
【0112】
構造式Iは、典型的なモノラムノリピッド、RLL、又はR1の構造を示す(α-L-ラムノピラノシル-β-ヒドロキシデカノイル-β-ヒドロオキシデカノエート、C26H48O9(504g/mol)。
【化1】
【0113】
構造IIは、典型的なジラムノリピッド、RRLL、又はR2の構造を示す(2-O-α-L-ラムノピラノシル-α-L-タムノピラノシル-β-ヒドロキシデカノイル-β-ヒドロオキシデカノエート、C32H58O13(650g/mol):
【化2】
【0114】
上述したように、ラムノリピッドの2つの主な群:モノラムノリピッド及びジラムノリピッドが存在する。
【0115】
モノラムノリピッドは単一のラムノース糖環を有する。基本式(殆どの場合P.アエルギノーザ(P.aeruginosa)によって生成される)は、以下の通りである:C26H48O9の式を有するL-ラムノシル-β-ヒドロキシデカノイル-β-ヒドロキシデカノエート(Rha-C10-C10と称される場合が多い)。IUPAC名は、3-[3-[(2R,3R,4R,5R,6S)-3,4,5-トリヒドロキシ-6-メチルオキサン-2-イル]オキシデカノイルオキシ]デカン酸である。
【0116】
ジラムノリピッドは2つのラムノース糖環を有する。基本式は以下の通りである:C32H58O13の式を有するL-ラムノシル-L-ラムノシル-β-ヒドロキシデカノイル-β-ヒドロキシデカノエート(Rha-Rha-C10-C10と称される場合が多い)。IUPAC名は、3-[3-[4,5-ジヒドロキシ-6-メチル-3-(3,4,5-トリヒドロキシ-6-メチルオキサン-2-イル)オキシオキサン-2-イル]オキシデカノイルオキシ]デカン酸である。
【0117】
更なる一般的なジラムノリピッドのいくつかの他の形態又は名称としては、以下が挙げられる:
L-ラムノピラノシル-L-ラムノピラノシル-β-ヒドロキシデカノイル-β-ヒドロキシデカノエート(Rha-Rha-C10-C10と称される場合が多い)
L-ラムノピラノシル-L-ラムノピラノシル-β-ヒドロキシデカノイル-β-ヒドロキシドデカノエート(Rha-Rha-C10-C12と称される場合が多い)
L-ラムノピラノシル-L-ラムノピラノシル-β-ヒドロキシテトラデカノイル-β-ヒドロキシテトラデカノエート(Rha-Rha-C14-C14と称される場合が多い)。
【0118】
ラムノリピッドの更に他の具体的な命名法としては、以下が挙げられる:
デカン酸,3-[[6-デオキシ-2-O-(6-デオキシ-α-L-マンノピラノシル)-α-L-マンノピラノシル]オキシ]-,1-(カルボキシメチル)オクチルエステル、
1-(カルボキシメチル)オクチル3-[(6-デオキシ-α-L-マンノピラノシル)オキシ]デカノエート、
3-[3’-(L-ラムノピラノシルオキシ)デカノイルオキシ]デカン酸
3-[3’-(2’’-O-α-L-ラムノピラノシル-α-L-ラムノピラノシルオキシ))デカノイルオキシ]デカン酸
【0119】
ラムノリピッドは、以下の脂肪酸の組み合わせと共に見出されている:
ヒドロキシオクタノイル=C8
ヒドロキシデカノイル=C10 ヒドロキシデカノエート=C10
ヒドロキシドデカノイル=C12 ヒドロキシドデカノエート=C12
ヒドロキシテトラデカノイル=C14 ヒドロキシテトラデカノエート=C14
【0120】
合計炭素数が同じであるが、C10-C12がC12-C10に切り替えられた化合物は、構造異性体と呼ばれ、これは、式が両方の分子で同じであるが、結合又は連結が異なって接続されていることを意味する。
【0121】
様々な論文で、Rha-としてのモノラムノリピッドの代わりに、Rh又はRL2と略される場合もある。同様に、ジラムノリピッドを指定するRha-Rha-の代わりに、Rh-Rh-又はRL1が用いられる。歴史的な理由により、「ラムノリピッド2」はモノラムノリピッドであり、「ラムノリピッド1」はジラムノリピッドである。これは、実際のところ、文献における用法、すなわち「RL1」及び「RL2」に何らかの不明瞭性をもたらす。本明細書の目的のための「ラムノリピッド1」又は「RL1」はモノラムノリピッドであり、「ラムノリピッド2」又は「RL2」はジラムノリピッドである。
【0122】
様々な研究において、以下の細菌によって生成されるものとして以下のラムノリピッド類が検出されている:(C12:1、C14:1は、二重結合を有する脂肪族アシル鎖を指す)。
【0123】
P.アエルギノーザ(P.aeruginosa)によって生成されるラムノリピッド(モノラムノリピッド):
Rha-C8-C10、Rha-C10-C8、Rha-C10-C10、Rha-C10-C12、Rha-C10-C12:1、Rha-C12-C10、Rha-C12:1-C10
【0124】
P.アエルギノーザ(P.aeruginosa)によって生成されるラムノリピッド(ジラムノリピッド):
Rha-Rha-C8-C10、Rha-Rha-C8-C12:1、Rha-Rha-C10-C8、Rha-Rha-C10-C10、Rha-Rha-C10-C12:1、Rha-Rha-C10-C12、Rha-Rha-C12-C10、Rha-Rha-C12:1-C12、Rha-Rha-C10-C14:1
【0125】
P.アエルギノーザ(P.aeruginosa)によって生成されるラムノリピッド(モノラムノリピッド又はジラムノリピッドのいずれかであると特定されていない):
C8-C8、C8-C10、C10-C8、C8-C12:1、C12:1-C8、C10-C10、C12-C10、C12:1-C10、C12-C12、C12:1-C12、C14-C10、C14:1-C10、C14-C14。
【0126】
P.クロロラフィス(P.chlororaphis)によって生成されるラムノリピッド類(モノラムノリピッドのみ):
Rha-C10-C8、Rha-C10-C10、Rha-C12-C10、Rha-C12:1-C10、Rha-C12-C12、Rha-C12:1-C12、Rha-C14-C10、Rha-C14:1-C10
【0127】
バークホルデラ・シュードマレイ(Burkholdera pseudomallei)によって生成されるラムノリピッド(ジラムノリピッドのみ):
Rha-Rha-C14-C14
【0128】
バークホルデラ(シュードモナス)プランタリ(Burkholdera(Pseudomonas)plantarii)によって生成されるラムノリピッド(ジラムノリピッドのみ):
Rha-Rha-C14-C14
【0129】
本発明で乳化剤又は添加剤として使用するためのラムノリピッド配合物は、粗製ラムノリピッドであっても高度に精製されたラムノリピッドであってもよい。粗製ラムノリピッド配合物は、多くの外来不純物を有するラムノリピッド、及び/又は多種多様なラムノリピッド混合物を含有し、このため、配合物に対する効果が低下する。高度に精製されたラムノリピッド配合物は、その外来不純物が除去されたラムノリピッドを含有し、且つ/又はこのラムノリピッドは、ジラムノリピッド、モノラムノリピッド、又は両方の特定の混合物を含む配合物に対する効果を増加させるような特定のパラメーターを満たすように精製されている。
【0130】
ラムノリピッド配合物は、不要な不純物を初期混合物から除去し、続いて最終混合物中に内在するラムノリピッドの百分率及びタイプを確立し、ラムノリピッド調製物をキャリア又は希釈剤、好ましくは水又はエタノールで単に希釈することによって製造される。本発明は、キャリア又は希釈剤として水及びエタノールを使用することに限定されない。本発明は、ラムノリピッドと適合性がある限りあらゆるキャリア又は希釈剤の使用を企図する。
【0131】
一般的に、ラムノリピッド配合物(「粗製」又はそれから部分的に精製された)は、最終ラムノリピッド配合物中で70%未満、例えば約5%~約70%ラムノリピッドの最終濃度に希釈される。
【0132】
本発明においては、用語「ラムノリピッド」の使用は、区別なしで粗製ラムノリピッド又は高度に精製されたラムノリピッド、及びラムノリピッド構成要素の様々な混合物を暗示する。
【0133】
上述したように、ラムノリピッドはシュードモナス・アエルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)から分泌する。典型的にはシュードモナス・アエルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)菌は、好適な培地で培養され、所望の密度まで増殖させられる。遠心分離法などの当該技術分野で既知の任意の方法によって、細菌自体を培地から除去する。上清を粗製配合物としてそのまま用いてもよく、又は当業者に周知される更なる加工工程(例えば濃縮、濾過、カラムクロマトグラフィーなど)を実施してもよい。しかし、とりわけ、最終ラムノリピッド配合物は、高度に精製されておらず、「粗製ラムノリピッド」と称され、典型的には、モノラムノリピッド及びジラムノリピッドの両方、並びにその他の化合物の混合物を含有する。当業者は培養の正確な詳細を理解し、また、部分的精製法は多少変化してもなお本発明の範囲内にあることができる。
【0134】
粗製ラムノリピッド配合物及び高度に精製されたラムノリピッド配合物の調製は、当業者に周知される方法によって調製され得る。
【0135】
本発明の組成物は、1つ以上のタイプのラムノリピッドを含んでもよい。これらのラムノリピッドは、モノラムノリピッド、ジラムノリピッド、又はこの2つの組み合わせであり得る。
【0136】
ソホロリピッド:
ソホロリピッド(ソホロースリピッド又はSLとしても知られる)は、βグリコシド結合によって連結された二量体糖(ソホロース)及びヒドロキシル脂肪酸からなるバイオ界面活性剤の一群である(Asmer et al.,1988)。
【0137】
Hu and Ju(2001)、並びにYanagisawa et alの米国特許出願公開第2011/0237531号明細書によれば、2つのタイプのSL、すなわち酸性(非ラクトン性)SL及びラクトン性SLが存在する。酸性SLのヒドロキシル脂肪酸部分は遊離カルボン酸官能基を有し、ラクトン性SLのヒドロキシル脂肪酸部分は、分子内エステル化によってソホロースの4’’-ヒドロキシル基を有する大環状ラクトン環を形成する。ソホロースリピッドは、糖脂質バイオ界面活性剤の1つのタイプであり、一般的に2つの形態へと分類される:以下の構造式(III)によって表されるラクトン形態:
【化3】
(式中、R1及びR2はそれぞれH又はCOCH3を表し、R3はH又はCH3を表し、R3がHである場合、R4は飽和又は不飽和C12~16炭化水素基を表し、R3がCH3である場合、R4は飽和又は不飽和C11~15炭化水素基を表す)、及び以下の式(IV)によって表される酸形態:
【化4】
(式中、R1~R4は上記で定義した通りである)。
【0138】
上記から明らかであるように、ソホロースリピッドは、アセチル基の位置及び数、脂肪酸側鎖における二重結合の有無、脂肪酸側鎖の炭素鎖の長さ、脂肪酸側鎖におけるグリコシドエーテル結合の位置、ラクトン環の一部分であるソホロース部分上のヒドロキシル基の位置、並びにその他の構造的パラメーターを特徴とする多くの誘導体を有する。ソホロースリピッドは、一般的に、これらの化合物の混合物として生じる。一般的に、ソホロースリピッドは、取り扱いが困難な高粘性の油形態で生成される。しかしながら、疎水性が比較的高いジアセチルラクトン形態のソホロースリピッドは、固形形態で生成され得る。
【0139】
本発明のソホロースリピッドバイオ界面活性剤は、糖脂質バイオ界面活性剤を生成することが可能な微生物を培養することにより生成され得る。糖脂質バイオ界面活性剤を生成することが可能な任意の微生物を、ソホロースリピッドの生成に用いることができる。米国特許出願公開第2011/0237531号明細書によれば、ソホロースリピッドバイオ界面活性剤は、カンジダ(Candida)属、例えばカンジダ・ボンビコラ(Candida bombicola)、トルロプシス(Torulopsis)属、例えばトルロプシス・アピコラ(Torulopsis apicola)、ウィッカハミエラ(Wickerhamiella)属、及びスターメレラ(Starmerella)属の酵母菌により生成され得る。これらは、Pattanathu,Production,Characterisation and Applications of Biosurfactants-Review,Biotechnology7(2):360-370,2008,ISSN1682-296X (2008)Asian Network for Scientific Informationに従って、トルロプシスsp(Torulopsis sp)、カンジダ・アピコラ(Candida apicola)、カンジダ・リポリティカ(Candida lipolytica)、カンジダ・ボゴリエンシス(Candida bogoriensis)、又はトルロプシス・ボンビコラ(Torulopsis bombicola)によって生成することができる。
【0140】
ソホロースリピッドは、上記の微生物を培地中で培養することにより生成することができる。本発明の培養プロセスの場合、一般的に、酵母細胞が同化できる栄養源を含有する限りにおいて任意の培地を用いてもよい。
【0141】
ラテックスモノマー
本明細書の目的のために、ラテックスポリマーが由来し得るモノマーは「ラテックスモノマー」と称される。
【0142】
好ましくは、これらのラテックスモノマーは、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、及びメタクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも1つのアクリルモノマーを含む。更に、ラテックスポリマーを製造するためのその他のモノマーは、任意選択的に、スチレン、α-メチルスチレン、塩化ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタクリル酸ウレイド、酢酸ビニル、分枝3級モノカルボン酸のビニルエステル(例えばShell Chemical CompanyからVEOVAの商標で市販されるビニルエステル、又はExxonMobil Chemical CompanyよりEXXAR neoビニルエステルとして販売されるビニルエステル)、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、及びエチレンからなる群から選択される1つ以上のモノマーから選択され得る。1,3-ブタジエン、イソプレン、及びクロロプレンなどのC4~C8共役ジエンを挙げることも可能である。
【0143】
好ましくは、ラテックスモノマーとしては、アクリル酸n-ブチル、メタクリル酸メチル、スチレン、及びアクリル酸2-エチルヘキシルからなる群から選択される1つ以上のモノマーが挙げられる。ラテックスポリマーは、典型的には、純アクリル(主モノマーとしてアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、及び/又はメタクリル酸エステルを含む)、スチレンアクリル(主モノマーとしてスチレン、並びにアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、及び/又はメタクリル酸エステルを含む)、ビニルアクリル(主モノマーとして酢酸ビニル、並びにアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、及び/又はメタクリル酸エステルを含む)、及びアクリル化エチレン酢酸ビニルコポリマー(主モノマーとしてエチレン、酢酸ビニル、並びにアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、及び/又はメタクリル酸エステルを含む)からなる群から選択される。当業者には容易に理解されるように、モノマーとしては、アクリルアミド及びアクリロニトリルなどの他の主モノマー、並びにイタコン酸及びメタクリル酸ウレイドなどの1つ以上の官能性モノマーも挙げることができる。特に好ましい実施形態では、ラテックスポリマーは、アクリル酸ブチル及びメタクリル酸メチルを含むモノマーに由来するアクリル酸ブチル/メタクリル酸メチルコポリマーなどの純アクリルである。
【0144】
既に形成された水性ラテックス分散液に対する添加剤
別の実施形態では、既に形成されたラテックスポリマーの水性分散液に対する添加剤として上記のバイオ界面活性剤を用いることができる。これにより、バイオ界面活性剤化合物及びラテックスポリマーを含む水性組成物がもたらされる。ラテックスポリマーが形成される元となる典型的なモノマーは、上記の「エマルション重合」と題する項で説明されている。
【0145】
例えば、本発明は、上記の少なくとも1つのバイオ界面活性剤(乳化剤)をラテックスポリマーの水性分散液に添加して、ラテックスバインダーを生成することを含む、ラテックス組成物又はラテックスポリマー分散液を調製する方法を更に含む。バイオ界面活性剤化合物が、既に形成された水性ラテックス分散液に対する添加剤として採用される場合、得られる組成物は、ラテックスポリマー分散液100重量部当たり、又はコーティング組成物の合計重量の、約0.001~10、例えば0.01~2、又は0.1~0.6部の量でバイオ界面活性剤を有する(水を含む合計組成物を基準に)。典型的には、バイオ界面活性剤の添加される量は、組成物の1重量%未満(組成物の10,000ppm未満)である。例えば、一実施形態では、バイオ界面活性剤の添加される量は、組成物の50~1000ppmである。バイオ界面活性剤は、配合中又は乳化中に全て添加されてもよく、一部分が乳化中に添加され、残部が配合中に添加されて、得られる組成物のバイオ界面活性剤の量に達してもよい。
【0146】
続いて、任意の適切な順序で、少なくとも1つの顔料及びその他の添加剤を、得られたラテックスバインダーと混合して、水性コーティング組成物を生成することができる。バイオ界面活性剤をラテックスポリマーに添加することで、混合物の安定性を望ましいレベルに維持しながらも低いVOC含有量を有する混合物が形成される。
【0147】
塗料又は水性コーティング組成物を配合中の添加剤
別の実施形態では、上記のバイオ界面活性剤は、塗料又は水性コーティング組成物の配合中に添加剤として用いられてもよい。配合は、添加剤がベース水性ラテックスポリマー分散液に添加されて、これを塗料又はコーティングなどの最終生成物にする段階である。例えば、顔料は、未加工の水性ラテックスポリマー分散液から塗料を配合する間に添加される典型的な添加剤である。塗料又は水性コーティング組成物、例えば水性ラテックスコーティング分散液へと配合する間にバイオ界面活性剤化合物が添加される場合、得られる組成物は、ラテックスポリマー分散液100重量部当たり、又はコーティング組成物の合計重量の、約0.001~10、例えば0.01~2、又は0.1~0.6部の量でバイオ界面活性剤を有する(水を含む合計組成物を基準にして)。典型的には、バイオ界面活性剤の添加される量は、組成物の1重量%未満(組成物の10,000ppm未満)である。例えば、一実施形態では、バイオ界面活性剤の添加される量は、組成物の50~1000ppmである。一実施形態では、バイオ界面活性剤の有効量は、組成物の1000ppm、800ppm、500ppm、300ppm、200ppm、又は100ppm未満である。別の実施形態では、バイオ界面活性剤の有効量は、組成物の100ppm、又は90ppm、又は80ppm、又は70ppm、又は60ppm未満である。なお別の実施形態では、バイオ界面活性剤の有効量は、組成物の約1ppm~約60ppmである。更なる実施形態では、バイオ界面活性剤の有効量は、組成物の約10ppm~約50ppmである。別の実施形態では、バイオ界面活性剤の有効量は、組成物の約20ppm~約50ppmである。なお別の実施形態では、バイオ界面活性剤の有効量は、組成物の約25ppm~約45ppmである。
【0148】
バイオ界面活性剤は、配合中に全て添加されてもよく、或いは一部分が乳化中に添加され、残部が配合中に添加されて、得られる組成物のバイオ界面活性剤の量に達してもよい。
【0149】
本発明は、少なくとも1つの顔料及びその他の添加剤を含む塗料又は水性コーティング組成物の配合中に上記のバイオ界面活性剤を添加して、最終塗料又は水性コーティング組成物を生成することを含む、塗料又は水性コーティング組成物を調製する方法を更に含む。
【0150】
その他の添加剤
上述したように、本発明の水性コーティング組成物は、例えばアクリルモノマー及び/又はその他の上記のラテックスモノマーなどの少なくとも1つのラテックスモノマーに由来する少なくとも1つのラテックスポリマーを含む。
【0151】
本発明の水性コーティング組成物は、水性コーティング組成物の合計重量を基準にして2重量%未満、好ましくは1.0重量%未満の不凍剤を含む。例えば、水性コーティング組成物は不凍剤を実質的に含まなくてもよい。
【0152】
水性コーティング組成物は、典型的には少なくとも1つの顔料を含む。本明細書で使用するとき、用語「顔料」とは、顔料、増量剤、及び体質顔料などの非膜形成固形分を含む。少なくとも1つの顔料は、好ましくは、TiO2(アナスターセ(anastase)及びルチル形態の両方)、クレー(ケイ酸アルミニウム)、CaCO3(粉末及び沈殿形態の両方)、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、タルク(ケイ酸マグネシウム)、重晶石(硫酸バリウム)、酸化亜鉛、亜硫酸亜鉛、酸化ナトリウム、酸化カリウム、及びこれらの混合物からなる群から選択される。好適な混合物としては、MINEX(Unimin Specialty Mineralsから市販されるケイ素、アルミニウム、ナトリウム、及びカリウムの酸化物)、CELITES(Celite Companyから市販される酸化アルミニウム及び二酸化ケイ素)、ATOMITES(English China Clay Internationalから市販される)、及びATTAGELS(Engelhardから市販される)の商標で販売されるものなどの金属酸化物類のブレンドが挙げられる。より好ましくは、少なくとも1つの顔料は、TiO2、CaCO3、又はクレーを含む。一般的に顔料の平均粒径は約0.01~約50マイクロメートルの範囲である。例えば、水性コーティング組成物中に用いられるTiO2粒子は、典型的には約0.15~約0.40マイクロメートルの平均粒径を有する。顔料は、粉末として又はスラリー形態で水性コーティング組成物に添加され得る。顔料は、好ましくは、約5~約50重量%、より好ましくは約10~約40重量%の量で水性コーティング組成物中に存在する。
【0153】
コーティング組成物は、任意選択的に、1つ以上の膜形成助剤又は凝集剤(coalescing agents)などの添加剤を含有してもよい。好適な膜形成助剤又は凝集剤としては、可塑剤及び乾燥遅延剤、例えば高沸点極性溶剤が挙げられる。例えば、分散剤、追加の界面活性剤(すなわち湿潤剤)、レオロジー改質剤、消泡剤、増粘剤、追加の殺生物剤、追加の殺黴剤、着色顔料及び染料などの着色剤、ワックス、香料、共溶剤などの他の従来のコーティング添加剤もまた、本発明に従って使用され得る。例えば、非イオン性及び/又はイオン性(例えば、アニオン性又はカチオン性)界面活性剤が、ポリマーラテックスを生成するために使用され得る。これらの添加剤は、典型的には、コーティング組成物の合計重量を基準に0~約15重量%、より好ましくは約1~約10重量%の量で水性コーティング組成物中に存在する。
【0154】
水性コーティング組成物は、典型的には、水性コーティング組成物の合計重量を基準に10%未満の不凍剤を含む。例示的な不凍剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール(1,2,3-トリヒドロキシプロパン)、エタノール、メタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、及びFTS-365(Inovachem Specialty Chemicals製の凍結融解安定剤)が挙げられる。より好ましくは、水性コーティング組成物は、不凍剤を5.0%未満で含むか、又は実質的に含まない(例えば0.1%未満を含む)。したがって、本発明の水性コーティング組成物は、好ましくは約100g/L未満、より好ましくは約50g/L以下のVOCレベルを有する。
【0155】
本発明の水性コーティング組成物の残部は水である。水の大半は、ポリマーラテックス分散液、及び水性コーティング組成物の他の構成要素中に存在するが、一般的に水はまた、水性コーティング組成物と別に添加される。典型的に、水性コーティング組成物は、約10重量%~約85重量%、より好ましくは約35重量%~約80重量%の水を含む。換言すると、水性コーティング組成物の合計固形含有量は、典型的には約15%~約90%、より好ましくは約20%~約65%である。
【0156】
コーティング組成物は、典型的には、乾燥したコーティングが、顔料の形態で、少なくとも10体積%の乾燥ポリマー固形分及び更に5~90体積%の非ポリマー固形分を含むように配合される。乾燥したコーティングはまた、コーティング組成物を乾燥させても蒸発しない、可塑剤、分散剤、界面活性剤、レオロジー改質剤、消泡剤、増粘剤、追加の殺生物剤、追加の殺黴剤、着色剤、ワックスなどの添加剤も含むことができる。
【0157】
本発明の好ましい一実施形態では、水性コーティング組成物は、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、及びメタクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも1つのアクリルモノマーに由来する少なくとも1つのラテックスポリマー、並びに少なくとも1つの重合性アルコキシル化界面活性剤、少なくとも1つの顔料、及び水を含むラテックス塗料組成物である。上述したように、少なくとも1種のラテックスポリマーは、純アクリル、スチレンアクリル、ビニルアクリル、又はアクリル化エチレン酢酸ビニルコポリマーであってもよい。
【0158】
本発明は、少なくとも1つのモノマーに由来し、且つ上記の少なくとも1つのバイオ界面活性剤と共重合及び/又はブレンドされた少なくとも1つのラテックスポリマーと、少なくとも1つの顔料と、を一体に混合することによる水性コーティング組成物の調製方法を更に含む。好ましくは、ラテックスポリマーはラテックスポリマー分散液の形態である。上記の添加剤は、任意の好適な順序でラテックスポリマー、顔料、又はこれらの組み合わせに添加されて、水性コーティング組成物中にこれらの添加剤を提供することができる。塗料配合物の場合、水性コーティング組成物は、好ましくは7~10のpHを有する。
【0159】
大半のラテックスエマルションは水系であり、微生物の攻撃を受け易い。殺生物剤は、典型的には、全ての加工が完了した後でラテックスを微生物の攻撃から保護するために完成したラテックスに添加される。殺生物剤は、細菌、真菌、及び藻類などの微生物を死滅させるか、又はその増殖を阻害する物質である。これらの殺生物剤は、塩素化炭化水素、有機金属、ハロゲン放出化合物、金属塩、四級アンモニウム化合物、フェノール、及び有機硫黄化合物からなる群のうち1つ以上の部材から選択され得る。有機硫黄化合物の例は、イソチアゾリノン(イソチアゾロチオンとしても知られる)構造系化合物である。
【0160】
本発明の利点は、バイオ界面活性剤を使用することで、環境に対する優しさがより低い可能性のある殺生物化学薬品(殺生物剤)の使用を低減することができることである。例えば、本発明者は、バイオ界面活性剤、例えばモノラムノリピッドの組み合わせにより、缶中で使用されるイソチアゾリノン殺生物剤を低減させることが可能になることを発見した。
【0161】
Brown et al.の米国特許第5373016号明細書は、イソチアゾリノン殺生物剤を開示している。これらの化合物の殺生物活性は、活性のためにスルフヒドリル基を必要とする微生物代謝の必須酵素の不活性化に影響を受ける。これらの酵素としては、ホスホエノールピルビン酸トランスホスホラーゼ、及び多くのデヒドロゲナ-ゼが挙げられる。イソチアゾリノン又はイソチアゾロチオン化合物のチオ部分は、酵素の遊離スルフヒドリル基と反応して、酵素分子とイソチアゾリノン又はイソチアゾロチオン分子との間でジスルフィド結合を形成し、そのスルフヒドリルを基質又はエフェクター分子との相互作用に利用できなくする。
【0162】
ラテックス防腐剤として広く用いられている殺生物剤としては、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン(BIT)の活性成分を有するPROXEL GXL、2-メチル-4,5-トリメチレン-4-イソチアゾリン-3-オンの活性成分を有するPROMEXAL W50、並びに5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン及び2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン活性成分のブレンドであるKATHON LXが挙げられる。
【0163】
典型的なイソチアゾリノン又はイソチアゾロチオンは、一般式(V):
【化5】
又はその塩若しくは錯体によって表され、
式中、Xは酸素又は硫黄であり、Rは水素、置換若しくは非置換のヒドロカルビル基、置換若しくは非置換のヒドロカルビルチオ基、置換若しくは非置換のヒドロカルビルオキシ基、又はカルバモイル基であり、A及びDはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン原子、シアノ基、置換若しくは非置換のヒドロカルビル基、又はA若しくはDのもう一方に対する直接結合である。
【0164】
R、A、及びDが置換ヒドロカルビル基であるか又はこれを含む場合、置換基は、好ましくは独立して、ハロゲン、アルコキシ又はアルキルチオであり、ここでアルキル基は1~4の炭素原子を含有する。Rがカルバモイル基である場合、好ましくは、これは一般式--CON(H)(R1)からなり、式中、R1は、ハロゲン、アルコキシ、又はアルキルチオ置換基で置換され得る水素原子又はヒドロカルビル基である。一般的に、Rは、水素原子、又は1~4個の炭素原子の低級アルキル基であることが好ましい。最も好ましくは、Rは水素又はメチル基である。
【0165】
好ましくは、A及びDは、これらが結合している炭素原子と共に、5又は6員の置換又は非置換環を形成する。この環置換基は、好ましくは、ハロゲン、1~4個の炭素原子のアルキル、1~4個の炭素原子のアルコキシ、又は1~4の炭素原子のアルキルチオである。この環は、炭素原子と置き換えて窒素原子などのヘテロ原子を含有してもよい。最も好ましくは、A及びDは、炭化水素環、例えば、ベンゼン、シクロペンテン、又はシクロヘキセンを形成する。
【0166】
或いは、A及びDは別個の基である。好ましくは、A及びDのうち少なくとも1つは水素原子でなく、最も好ましくは、A及びDのうち少なくとも1つはハロゲン原子、又は1~4個の炭素原子のアルキル基である。
【0167】
殺生物性イソチアゾリノン化合物としては、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(式中、Rはメチルであり、Aは水素であり、Dは塩素である)、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(式中、Rはメチルであり、A及びDはどちらも水素である)、4,5-ジクロロ-2-メチルイソチアゾリン-3-オン(式中、Rはメチルであり、A及びDはどちらも塩素である)、2-n-オクチルイソチアゾリン-3-オン(式中、Rはn-オクチルであり、A及びDはどちらも水素である)、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン(式中、Rは水素であり、A及びDはそれらが結合している炭素原子と共にベンゼン環を形成する)、4,5-トリメチレン-4-イソチアゾリン-3-オン(式中、Rは水素であり、A及びDはそれらが結合している炭素原子と共にシクロペンテン環を形成する)、及び2-メチル-4,5-トリメチレン-4-イソチアゾリン-3-オン(式中、Rはメチルであり、A及びDはそれらが結合している炭素原子と共にシクロペンテン環を形成する)が挙げられる。
【0168】
本発明で追加の殺生物化合物として使用され得るこのファミリーの典型的な殺生物化合物は、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン及び4,5-トリメチレン-4-イソチアゾリン-3-オンの化合物におけるような、Rが水素であり、A及びDが共に非置換の5員又は6員環炭化水素環を形成しているものである。
【0169】
殺生物化合物として使用することができるイソチアゾリノン又はイソチアゾロチオン化合物のうち特定のものは、塩又は錯体の形態であるときに改善された水溶性を有することができる。塩又は錯体は、アミン(アルカノールアミンを含む)又は金属などの任意の好適なカチオンとのものであってよい。好ましくは、任意の金属塩又は錯体が、アルカリ金属などの一価金属を含有する。アルカリ金属は、リチウム、ナトリウム、又はカリウムであってよい。最も好ましくは、それから塩を調製するのに好適なナトリウム化合物の入手し易さを考慮すると、アルカリ金属塩はナトリウム塩である。
【0170】
殺生物化合物として有用な特定のイソチアゾリノン化合物は、アルカリの存在下で分解する。アルカリ感受性化合物の例は、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン及び2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンである。したがって、アルカリ感受性である本発明の組成物のpHは約8以下の値に維持されるべきである。
【0171】
乳化後にバイオ界面活性剤を添加する場合、典型的には、バイオ界面活性剤は合計組成物の0.1~1000ppm、好ましくは0.1~500ppm、より好ましくは0.1~100ppm、より典型的には1~100ppm、又は1~50ppmの量で添加される。イソチアゾリノンは、合計組成物の0.5~200ppm、より典型的には0.5~100ppm、若しくは1~100ppm、又は0.5~25ppmの量で存在してもよい。
【0172】
典型的には、バイオ界面活性剤対イソチアゾリノンの重量比は、0.8:1~325:1、より典型的には20:1~35:1である。
【0173】
特に細菌を処理する場合、水性コーティング組成物は、イソチアゾリノン殺生物剤を更に含み、典型的には、バイオ界面活性剤対イソチアゾリノン殺生物剤の重量比は200~500:0.3~1である。
【0174】
酵母及び真菌を処理する場合、水性コーティング組成物は、イソチアゾリノン殺生物剤を更に含み、典型的には、バイオ界面活性剤対イソチアゾリノン殺生物剤の重量比は200~500:5~30である。
【0175】
ここで、本発明を以下の非限定的な実施例によって更に詳細に説明する。
【実施例0176】
微生物学において、最小発育阻止濃度(MIC)は、終夜又はそれよりも長いインキュベーションの後で微生物の増殖を阻止する抗菌剤の最低濃度として定義される。最小発育阻止濃度は、抗菌剤に対する微生物の抵抗性を確認する、及び、更に、新規な抗菌剤の活性を監視するために、診断研究室において重要である。より低いMICは、一般的に許容可能な性能に必要とされるため、より良好な抗菌剤の指標である。MIC判定は、一般的に、生物に対する抗菌剤の活性の基礎的な又は標準の研究室測定であると見なされる。
【0177】
試験手順及びプロトコル
試験された殺生物剤:
メチルクロロイソチアゾリノン/メチルイソチアゾリノン(CMIT/MIT)(KATHONとしても知られる):
ベンズイソチアゾリノン[BIT]
メチルイソチアゾリノン[MIT]
【0178】
3-クロロメチルイソチアゾリノンは式Aを有する。
【化6】
メチルイソチアゾリノンは式Bを有する。
【化7】
BIT[ベンズイソチアゾリノン]は式Cを有する。
【化8】
【0179】
使用された微生物:シュードモナス・アエルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)ATCC9027
試験されたバイオ界面活性剤:
1.R95D90(SigmaAldrich)90%ジラムノリピッド優勢の純度95%のラムノリピッド
2.R95M90(SigmaAldrich)90%モノラムノリピッド優勢の純度95%のラムノリピッド
3.天然のサポニン
【0180】
MIC試験は、試験生物を阻止又は死滅させるために必要な化合物の最小発育阻止濃度を判定するための方法である。MIC50試験は、試験生物の50%を阻止又は死滅させるために必要な化合物の最小発育阻止濃度を判定するための方法である。
【0181】
詳細な手順
1.方法は、適切な培地中で調製され、96ウェルマイクロタイタープレート中で試験された標準の2倍希釈液によるMIC(最小発育阻止濃度)判定に基づいていた。
【0182】
2.バイオ界面活性剤原液[400ppm]からの活性物質の4倍濃縮を調製して、カラム4~6内に分配した。
【0183】
3.プレートを4つの区画に分割した。特に明記しない限り、カラム1~3はバイオ界面活性剤と殺生物剤との組み合わせを受容し、カラム4~6は殺生物剤のみを受容し、カラム7~9はバイオ界面活性剤のみを受容した。カラム10は空のままとし、カラム11はブランク培地であり、カラム12は生物の懸濁液を加えた培地であった。
【0184】
5.1つの試験生物及び殺生物剤あたり1つのマイクロタイタープレートを使用した。希釈スキームは、別途のPDFファイル「希釈スキーム」として添付されている。
【0185】
6.100μLの滅菌水を、12チャネルピペッターの助けを借りてカラム4~6、11、及び12にアリコートし、50μLをカラム1~3及び7~9にアリコートした。
【0186】
7.50μLの適切な殺生物剤(MIT、BIT、又はKathon)の8倍原液を、列Aのカラム1~3に分配した。
【0187】
8.マルチチャネルピペッターの助けを借りて混合した後、列Aのウェルから50μLを第2の列[B]に移し、混合後、50μLを列Cに移し、この操作を列Gに至るまで繰り返して、H列(最後の列)からの50μLは廃棄した。
【0188】
9.バイオ界面活性剤のそれぞれの4倍原液[400ppm]を作製する。対応するプレートのそれぞれで、カラム7~9中の4つの異なる96ウェルプレートに50μLのバイオ界面活性剤を分配した。
【0189】
10.ウェル4~6中で、100μLの4倍濃度の個々の殺生物剤を最上の列Aに添加し、続いて列Hに至るまで連続的に希釈し、一方で列Hから最後の100μLを廃棄した。
【0190】
11.カラム1~3及び7~9は、50μLの4倍バイオ界面活性剤を受容した。
【0191】
12.別個の管中で、細菌用の2倍トリプシン大豆ブロス培地に細胞を懸濁させることにより、24時間増殖した培養液から細菌接種剤を調製した。
【0192】
13.濁度を測定することにより、細菌接種剤を、5~6log cfu/mlに調整した。
【0193】
14.マルチチャネルピペッターの助けを借りて、100μLの生物のアリコートを、各ウェルに分配した(ブランク培地を添加したカラム11を除く)。
【0194】
15.細菌増殖のためにプレートを35℃で24時間インキュベートした。
【0195】
16.ウェル中の陽性又は陰性増殖を目視で記録した。660nmの吸光度で測定し、レザズリン染料を添加することにより生存度を評価した。注意:細菌増殖の場合、10μLのレザズリン原液[250mg/50mL]を添加し、青色からピンク色への色彩の変化により判定して、陽性及び陰性増殖を判定した。MICは、増殖が全く観察されない殺生物剤の最低濃度として判定される。濁度測定値を各濃度領域に対して平均化し、試験バイオ界面活性剤を含む及び含まない各殺生物剤のMIC50を判定した。
【0196】
結果:
50ppm活性レベルにおける市販のモノラムノリピッドは、MIT、BIT、及びKathonを含む3つの試験された殺生物剤の全てのMIC50値を低下させるのに有効であった。
【0197】
表1、及び
図1~3で分かるように、50ppmにおける95%研究グレードモノラムノリピッド優勢バイオ界面活性剤(R95M90)のみも、3つ全ての試験された殺生物剤のMIC値を低下させるのに有効であった。一方で、精製ジラムノリピッド優勢(R95D90)バージョンは、BIT殺生物剤のみの濃度を低下させることができた。
【0198】
精製されたジ-モノラムノリピッド及びモノラムノリピッド優勢を同じ割合で一体に混合することによって(R95M90+R95D90)補助剤の効果は回復し、これは、ラムノリピッドバイオ界面活性剤の補助剤特性は、主にモノラムノリピッド同族体の活性によるものであることを示唆している。
【0199】
【0200】
全てのバイオ界面活性剤は、50ppm活性の最終濃度で試験された。用語「BS」は「バイオ界面活性剤」を表す。各データ点は、シュードモナス・アエルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)に対して試験されたMIC値(ppm単位)である。モノラムノリピッド構成要素のみが十分であるものと思われる。
【0201】
【0202】
【0203】
【0204】
上記の詳細な説明で、本発明の実施を可能にするために好ましい実施形態を詳細に説明した。本発明を、これらの特定の好ましい実施形態を参照して説明したが、本発明は、これらの好ましい実施形態に限定されないことは理解されるであろう。むしろ、以下の詳細な説明を考慮すれば明らかとなるように、本発明は多数の代替物、修正物、及び等価物を含む。本発明の上記の説明を読めば、当業者がこれから変更及び変形をなし得ることが理解される。これらの変更及び変形は以下に添付される特許請求の範囲の趣旨及び範囲に含まれるものとする。
【0205】
本発明は、次の実施態様を含む。
[1]水性コーティング組成物であって、
(a)少なくとも1つのラテックスポリマーと、
(b)殺生物剤と、
(c)バイオ界面活性剤であって、前記バイオ界面活性剤を含まない類似組成物と比較して、前記コーティング組成物中で前記必要な殺生物剤の濃度を低減するのに有効な量のモノラムノリピッドを含む、バイオ界面活性剤と、
(d)水と、を含む分散液を含む水性コーティング組成物。
[2]ジラムノリピッドを更に含み、モノラムノリピッド対ジラムノリピッドの重量%比が、それぞれ約90:10~99:1の範囲内にある、[1]に記載の組成物。
[3]ジラムノリピッドを更に含み、モノラムノリピッド対ジラムノリピッドの重量%比が、それぞれ約85:15~99.5:0.5の範囲内にある、[1]に記載の組成物。
[4]ジラムノリピッドを更に含み、モノラムノリピッド対ジラムノリピッドの重量%比が、それぞれ約80:20~99.9:0.1の範囲内にある、[1]に記載の組成物。
[5]ジラムノリピッドを更に含み、モノラムノリピッド対ジラムノリピッドの重量%比が、それぞれ約50:50~99.9:0.1の範囲内にある、[1]に記載の組成物。
[6]前記バイオ界面活性剤の有効量が、組成物の5000ppm、3000ppm、2000ppm、1000ppm、800ppm、500ppm、300ppm、200ppm、又は100ppm未満である、[1]に記載の組成物。
[7]前記バイオ界面活性剤の有効量が、組成物の60ppm未満である、[1]に記載の組成物。
[8]前記バイオ界面活性剤の有効量が、組成物の約1ppm~約60ppmである、[1]に記載の組成物。
[9]前記バイオ界面活性剤の有効量が、組成物の約10ppm~約50ppmである、[1]に記載の組成物。
[10]前記バイオ界面活性剤の有効量が、組成物の約20ppm~約50ppmである、[1]に記載の組成物。
[11]前記バイオ界面活性剤の有効量が、組成物の約25ppm~約45ppmである、[1]に記載の組成物。
[12]前記少なくとも1つの殺生物剤がイソチアゾリノン殺生物剤を含む、[1]に記載の組成物。
[13]少なくとも1つの顔料を更に含み、前記ラテックスポリマーが少なくとも1つのアクリルモノマー単位を含む、[1]に記載の組成物。
[14]前記ラテックスポリマーは、更に、スチレン、α-メチルスチレン、塩化ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタクリル酸ウレイド、酢酸ビニル、分枝3級モノカルボン酸のビニルエステル、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、エチレン、及びC4~C8共役ジエンからなる群から選択される1つ以上のモノマーに由来する、[13]に記載の組成物。
[15]エマルションが、反応混合物を重合してラテックスポリマーを調製する工程を含み、前記反応混合物が、少なくとも1つのモノマーとモノラムノリピッドを含む少なくとも1つのバイオ界面活性剤とを含む、重合のためにバイオ界面活性剤を用いるためのプロセス。
[16]前記エマルションが重合することが、前記少なくとも1つのモノマー及び前記バイオ界面活性剤から安定した水性プレエマルションを形成することと、前記プレエマルション、開始剤、及び水を含む前記反応混合物を形成することと、を含む、[15]に記載のプロセス。
[17]前記エマルションが重合することが、前記開始剤を含む開始剤溶液を形成することと、前記少なくとも1つのモノマー及び前記バイオ界面活性剤を含む安定した水性安定プレエマルションを形成することと、前記開始剤溶液を反応器に添加することと、前記プレエマルションを前記反応器に添加して前記反応混合物を形成することと、を含む、[15]に記載のプロセス。
[18]少なくとも1つの顔料を更に含む、[15]に記載のプロセス。
[19]前記少なくとも1つの顔料は、TiO2、クレー、CaCO3、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、タルク(ケイ酸マグネシウム)、重晶石(硫酸バリウム)、酸化亜鉛、亜硫酸亜鉛、酸化ナトリウム、酸化カリウム、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの顔料を含む、[18]に記載のプロセス。
[20]前記ラテックスポリマーが、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、及びメタクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも1つのアクリルモノマー由来である、[15]に記載のプロセス。
[21]前記モノマーは、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、ビニルトルエン、ビニルアセテート、酢酸より高級なカルボン酸のビニルエステル、バーサチック酸ビニル、アクリロニトリル、アクリルアミド、ブタジエン、エチレン、塩化ビニル、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの第1のモノマーを含む、[15]に記載のプロセス。
[22]前記少なくとも1つのラテックスポリマーは、純アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、ビニルアクリル樹脂、アクリル化エチレン酢酸ビニルコポリマー、及びアクリル酸ブチル/メタクリル酸メチルコポリマーからなる群から選択される、[15]に記載のプロセス。
[23]-前記少なくとも1つの第1のモノマー、少なくとも1つの第2のモノマー、及び前記バイオ界面活性剤から安定した水性プレエマルションを形成することと、
-前記プレエマルション、開始剤、及び水を含む前記反応混合物を形成することと、を含み、
-前記少なくとも1つの第1のモノマーは、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、及びメタクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも1つのアクリルモノマーであり、
-前記少なくとも1つの第2のモノマーは、スチレン、α-メチルスチレン、塩化ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタクリル酸ウレイド、酢酸ビニル、分枝3級モノカルボン酸のビニルエステル、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、エチレン、及びC4~C8共役ジエンからなる群から選択される、[15]に記載のプロセス。
[24]前記開始剤は、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、ナトリウム、カリウム、アンモニウムペルオキシ二硫酸、過酸化ジベンゾイル、過酸化ラウリル、ジ第3級過酸化ブチル、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、t-ブチルヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル、及びこれらの混合物からなる群から選択される、[23]に記載のプロセス。
[25]前記プレエマルションは、水性プレエマルションの合計重量に対して0.001~10重量%の前記バイオ界面活性剤から製造される、[23]に記載のプロセス。
[26]前記水性コーティング組成物は、前記ラテックスポリマーを形成するために用いられるモノマー100重量部あたり0.5~10重量部の界面活性剤を含み、前記界面活性剤は、(i)前記バイオ界面活性剤と、(ii)少なくとも1つの非イオン性界面活性剤又はアニオン性界面活性剤と、を含む乳化剤ブレンドであり、前記水性プレエマルションは、前記水性プレエマルションを安定化するのに十分な乳化剤ブレンドを含む、[23]に記載のプロセス。
[27]前記乳化剤ブレンドの少なくとも5重量%は前記バイオ界面活性剤である、[26]に記載のプロセス。
[28]重合後に、イソチアゾリノン及び/又はイソチアゾロチオン殺生物剤を前記エマルションに添加することを更に含む、[23]に記載のプロセス。
[29]前記エマルションが重合することは、
a)モノマー及び前記バイオ界面活性剤から安定した水性プレエマルションを形成する工程と、
b)前記プレエマルション、開始剤、及び水を含む前記反応混合物を形成する工程と、
c)前記反応混合物を反応器に導入し、1~10重量%の前記プレエマルションを前記反応混合物に添加する工程と、
d)工程c)の最後で得られた前記反応混合物を40℃~90℃の温度に加熱して、前記水中の分散液中のラテックス粒子から形成されるシードを生成する工程と、の一連の工程を含む、[23]に記載のプロセス。
[30]少なくとも1つのバイオ界面活性剤を含む少なくとも1つのラテックスポリマー水性分散液を少なくとも1つの殺生物剤と接触させることを含む、水性コーティング組成物を調製する方法であって、前記バイオ界面活性剤は、前記バイオ界面活性剤を含まない類似組成物と比較して、前記コーティング組成物中で前記必要な殺生物剤の濃度を低減するのに有効な量のモノラムノリピッドを含む、方法。
[31]前記少なくとも1つのラテックスポリマーは、純アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、ビニルアクリル樹脂、及びアクリル化エチレン酢酸ビニルコポリマーからなる群から選択される少なくとも1つの部材を含む、[30]に記載の方法。
[32]前記少なくとも1つのラテックスポリマーは、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、及びメタクリル酸エステル、スチレン、ビニルトルエン、ビニルアセテート、酢酸より高級なカルボン酸のビニルエステル、バーサチック酸ビニル、アクリロニトリル、アクリルアミド、ブタジエン、エチレン、塩化ビニル、並びにこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのモノマーに由来する、[30]に記載の方法。
[33]分散剤、界面活性剤、レオロジー変性剤、消泡剤、増粘剤、追加の殺生物剤、着色剤、ワックス、香料、及び補助溶剤からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤を、前記ラテックスポリマー及び水を含む混合物に添加することを更に含む、[30]に記載の方法。
[34]少なくとも1つの顔料を添加することを更に含む、[30]に記載の方法。
[35]前記モノラムノリピッドの前記有効量は、前記コーティング組成物中で前記必要な殺生物剤の濃度を、前記バイオ界面活性剤を含まない類似組成物と比較して20%、30%、40%、又は50%を超える量で低減させる、[30]に記載の方法。
[36]前記モノラムノリピッドの前記有効量は、前記コーティング組成物中で前記必要な殺生物剤の濃度を、前記バイオ界面活性剤を含まない類似組成物と比較して60%、又は70%、又は80%を超える量で低減させる、[30]に記載の方法。
[37]ジラムノリピッドを更に含み、モノラムノリピッド対ジラムノリピッドの重量%比が、それぞれ約90:10~99:1の範囲内にある、[30]に記載の方法。
[38]ジラムノリピッドを更に含み、モノラムノリピッド対ジラムノリピッドの重量%比が、それぞれ約85:15~99.5:0.5の範囲内にある、[30]に記載の方法。
[39]ジラムノリピッドを更に含み、モノラムノリピッド対ジラムノリピッドの重量%比が、それぞれ約80:20~99.9:0.1の範囲内にある、[30]に記載の方法。
[40]ジラムノリピッドを更に含み、モノラムノリピッド対ジラムノリピッドの重量%比が、それぞれ約50:50~99.9:0.1の範囲内にある、[30]に記載の方法。
[41]前記バイオ界面活性剤の有効量が、組成物の5000ppm、2000ppm、1000ppm、800ppm、500ppm、300ppm、200ppm、又は100ppm未満である、[30]に記載の方法。
[42]前記バイオ界面活性剤の有効量が、組成物の60ppm未満である、[30]に記載の方法。
[43]前記バイオ界面活性剤の有効量が、組成物の約1ppm~約60ppmである、[30]に記載の方法。
[44]前記バイオ界面活性剤の有効量が、組成物の約10ppm~約50ppmである、[30]に記載の方法。
[45]前記モノラムノリピッドの前記有効量は、前記コーティング組成物中で前記必要な殺生物剤の濃度を、前記バイオ界面活性剤を含まない類似組成物と比較して20%、30%、40%、又は50%を超える量で低減させる、[1]に記載の組成物。
[46]前記モノラムノリピッドの前記有効量は、前記コーティング組成物中で前記必要な殺生物剤の濃度を、前記バイオ界面活性剤を含まない類似組成物と比較して60%を超える量で低減させる、[1]に記載の組成物。