(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112985
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】石炭を高価値製品に精製するための系及び方法
(51)【国際特許分類】
C10G 1/00 20060101AFI20240814BHJP
C10G 1/02 20060101ALI20240814BHJP
C10G 1/04 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
C10G1/00 Z
C10G1/02
C10G1/04 Z
【審査請求】有
【請求項の数】26
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024087362
(22)【出願日】2024-05-29
(62)【分割の表示】P 2020515212の分割
【原出願日】2018-09-12
(31)【優先権主張番号】62/557,804
(32)【優先日】2017-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】508206955
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ ワイオミング
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】アッカーマン, ジョン
(72)【発明者】
【氏名】マイヤーズ, ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ホーナー, リチャード
(72)【発明者】
【氏名】バウアー, カール
(72)【発明者】
【氏名】ベル, デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン, パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ガンダーソン, ティモシー
(72)【発明者】
【氏名】バッシャム, セス
(57)【要約】 (修正有)
【課題】石炭の高価値製品への変換のための統合的熱化学プロセスを提供する。
【解決手段】石炭を複数の高価値石炭製品及び抽出物に変換するための方法であって、少なくとも部分的に石炭に由来する原料を用意するステップと、熱分解と溶媒抽出との組合せを含む前記原料を加工するステップとを含み、前記熱分解及び前記溶媒抽出が、複数の高価値石炭製品を生成するための条件下で統合及び実行される、方法である。
【効果】記載される系及び方法は、汎用性があり、化学製品、ポリマー複合材製品、黒鉛製品、農業資材、建材、炭素繊維、及び燃焼により生成したエネルギーよりも実質的に価値のある他の製品を含む、様々な高価値製品を生成するために使用することができる。さらに、これらの系及び方法は特に、高度に分岐し、且つ高度にフレキシブルであるように設計され、原料と比較して製品の価値を増大させるための高選択性及び最適化を可能にする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭を複数の高価値石炭製品及び抽出物に変換するための方法であって、
少なくとも部分的に石炭に由来する原料を用意するステップと、
熱分解と溶媒抽出との組合せを含む前記原料を加工するステップと
を含み、
前記熱分解及び前記溶媒抽出が、複数の高価値石炭製品を生成するための条件下で統合及び実行される、方法。
【請求項2】
前記高価値石炭製品の乾燥量基準で50質量%以上が、標準温度圧力で液体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
加工する前記ステップが、高度に分岐し、且つ高度に選択的である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記熱分解が、0.5atm~15atmの範囲から選択される圧力で行われる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記熱分解が、400℃~1200℃の範囲から選択される温度で行われる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記熱分解が、5秒間以下の時間行われる、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記熱分解が、前記溶媒抽出と統合される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記熱分解が、水蒸気を除外して、25%以下の質量百分率の気体を生成する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記熱分解が、水素ガス、メタン、合成ガス又はこれらの任意の組合せの存在下で行われる、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記熱分解が、フラッシュ熱分解である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記溶媒抽出が、少なくとも1種の液体溶媒で行われる、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1種の溶媒が、脂肪族溶媒、芳香族溶媒、極性溶媒、水素供与性溶媒、イオン性液体溶媒及びこれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記溶媒抽出が、少なくとも2種の液体溶媒で行われる、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
第1の溶媒が、極性溶媒であり、且つ第2の溶媒が、水素供与性溶媒であるか、又はその反対である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記溶媒抽出が、単一段階溶媒抽出、複数の単一段階溶媒抽出、単一の多段階溶媒抽出、複数の多段階溶媒抽出又は単一段階及び多段階溶媒抽出の組合せである、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記溶媒抽出が、前記少なくとも1種の溶媒の臨界温度未満の温度で行われる、請求項11~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記溶媒抽出が、350℃以下の温度で行われる、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記溶媒抽出が、水蒸気を除外して、5%以下の質量百分率の気体を生成する、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1種の溶媒のうちの1種が、テトラリン(1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン)、1-メチル-ナフタレン、トルエン、ジメチルホルムアミド(DMF)又はこれらの任意の組合せを含む、請求項11~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記溶媒抽出が、前記熱分解の上流で行われる、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記熱分解が、前記溶媒抽出の上流で行われる、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記熱分解ステップの生成物の一部が、前記溶媒抽出に再利用される、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記加工ステップが、複数の溶媒抽出を含み、且つ後の溶媒抽出からの生成物が、先の溶媒抽出又は前記熱分解に再利用されるか、又は上流のさらなる加工のための中間体として使用される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
少なくとも部分的に石炭に由来する前記原料が、90重量%以上の未精製石炭である、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記未精製石炭が、加工する前記ステップの前に物理、化学又は熱的に前加工される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記原料の一部が、前記熱分解、前記溶媒抽出からの1つ若しくは複数の生成物流、再利用流又はこれらの組合せである、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
少なくとも部分的に石炭に由来する前記原料が、亜瀝青炭を含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
少なくとも部分的に石炭に由来する前記原料が、切込炭に由来する、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記高価値石炭製品が、10%以下の燃料製品を含む、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記高価値石炭製品が、ポリマー又はポリマー前駆体を含む、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記高価値石炭製品が、ポリウレタンを含む、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記高価値石炭製品が、複合ポリウレタンフォームを含む、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記高価値石炭製品が、ポリアミド類を含む、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記高価値石炭製品が、ポリエステル類を含む、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記高価値石炭製品が、接着剤を含む、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記高価値石炭製品が、芳香族化合物を含む、請求項1~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記高価値石炭製品が、ベンゼン、トルエン、キシレン、フェノール類、クレゾール類、キシレノール酸類、ナフテノール(naphthenol)類、C9単環芳香族化合物、C10単環芳香族異性体又はこれらの任意の組合せを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記高価値石炭製品が、パラフィン類、オレフィン類又はこれらの組合せを含む、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記高価値石炭製品が、アスファルテン類を含む、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記高価値石炭製品が、コールタール、留出物、ピッチ、炭素繊維又はこれらの任意の組合せを含む、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記高価値石炭製品が、土壌改良材を含む、請求項1~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記高価値石炭製品が、建材を含む、請求項1~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記高価値石炭製品のかなりの部分が、固形物である、請求項1~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
請求項1~43のいずれか一項に記載の方法により生成される樹脂、液体又は他の副生成物を組み合わせた場合、前記固形物を、建築材、複合材、液体添加剤又はこれらの任意の組合せに変換することができる、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記抽出物が、金属及び希土類元素を含み得る、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
石炭を複数の高価値石炭製品に変換するための方法であって、
少なくとも部分的に石炭に由来する主原料を用意するステップと;
前記主原料を加工するステップであり、前記加工の順序が、
10秒間以下の時間行われ、水素リッチ雰囲気において行われる熱分解ステップ;及び
少なくとも1種の液体溶媒で行われ、前記液体溶媒が極性溶媒、水素供与性溶媒及びこれらの任意の組合せからなる群から選択される、溶媒抽出ステップ
である、ステップと
を含み、
前記熱分解ステップが前記主原料について行われる第1のプロセスステップであり、前記溶媒抽出ステップが前記熱分解ステップから生成した固形チャーについて行われる第2のプロセスステップであり、
前記熱分解ステップ及び前記溶媒抽出ステップが複数の高価値石炭製品を生成するための条件下で統合及び実行される、方法。
【請求項47】
前記熱分解ステップが、フラッシュ熱分解プロセスである、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記溶媒ステッププロセスが、単一段階溶媒抽出、複数の単一段階溶媒抽出、単一の多段階溶媒抽出、複数の多段階溶媒抽出又は単一段階及び多段階溶媒抽出の組合せである、請求項46又は47に記載の方法。
【請求項49】
前記溶媒抽出ステップが、2種以上の溶媒を使用する、請求項46~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記原料を加工するステップが、前記熱分解ステップ後、前記溶媒抽出ステップ後又は複数の溶媒抽出の間に行われる、1つ又は複数の分離ステップをさらに含む、請求項46~49のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願の相互参照]
[0001]本特許出願は、2017年9月13日出願の米国特許仮出願第62/557804号の利益及び優先権を主張し、当該出願は、本明細書と矛盾しない限り、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[発明の背景]
[0002]石炭鉱業及び石炭生産は、米国及び国外の両方において大規模な、価値のある産業である。この石炭の大部分は燃焼されて、エネルギーを生成する。現在、新しい石炭火力発電所の建設に対して多くの経済的且つ政治的圧力が存在している。したがって、燃焼以外で石炭をさらに利用するために、化学製品、プラスチック、建材、及び発電所により生成されるエネルギーの価値よりも顕著に高い価値を有し得る製品の生成のための方法を含む、他の方法のための原料としての使用を検討することは、益々魅力的になっている。
【0003】
[0003]化学製品及び他の材料の生成のための原料としての石炭についての研究開発は、およそ50年以上になる。この分野への興味は典型的に、1970年代のように、伝統的な石油原料が高い原油価格のための高価になってきた期間中に増大している。例えば、米国特許第4346077号は、液体炭化水素及び蒸気を生成する石炭の熱分解を説明している。米国特許第9074139号は、液化及び水素化分解を利用する石炭からの芳香族化合物の生成を記載している。これらの参考文献及びほとんどの石炭変換技術で共通することは、コールタールが後に石油製油所で加工され得るように石油系炭化水素を模倣するために、石炭がコールタールに変換されることである。より大量の固形製品を生成し、且つ典型的に、高硫黄含有量及び一部の金属を含有する石炭は、多くの場合、油系原料のために設計されたプロセスについては比較的粗悪な代用品である。
【0004】
[0004]石炭を中間及び完成高価値製品へ計画的に熱化学変換し、それによって、燃焼により生成される、相当の石炭系エネルギーよりもはるかに価値のある材料を生成するための系及び方法について当該技術分野における要求が残っていることが上記から理解され得る。さらに、製品への有効な変換を達成するために石炭及び石炭系原料について特に適合及び/又は個別化され、収率、効率、変換率、及び販売され得る卓越した商品の製造を考慮する分離及びプロセスの系及び方法が必要とされる。
【0005】
[発明の概要]
[0005]熱分解と溶媒抽出との組合せを使用した、石炭の高価値製品及び商品への計画的分解、抽出及び変換のための統合的熱化学プロセスが本明細書に記載される。記載される系及び方法は、汎用性があり、計画的であり、化学製品(芳香族化合物;アスファルテン類;ナフタレン類(napthalenes);フェノール類;及びポリアミド類、ポリウレタン類、ポリエステル類、黒鉛材の生成のための前駆体)、ポリマー複合材製品(樹脂、コーティング、接着剤)、農業資材、建材、炭素繊維、グラフェン製品、及び燃焼により生成したエネルギーよりも実質的に価値のある他の材料を含む、様々な中間及び完成高価値製品を生成するために使用することができる。さらに、これらの系及び方法は、高度に分岐するように(すなわち、合わせて、同じ原料から広範な製品タイプ及び仕様を生成するのに適しているプロセスステップ)、且つ相乗的であるように(例えば、石炭から生成された樹脂系を石炭由来の固形炭素材料と組み合わせて、複合材を製造することを可能にすること)、特に設計される。したがって、系及び方法は、市場に高度に適応性でき、且つ製品要求に対応する。したがって、原料と比較して実際の製品の価値を増大させるための、高い選択性及び最適化を可能にする。これらの製品の一部は、金属及び希土類元素などの石炭抽出物であってもよい。
【0006】
[0006]提供される熱化学プロセスは、石炭原料の大部分及び石炭からの抽出物を付加価値製品に変換し、固形材料のうちの高い百分率(例えば、乾燥量基準で50%を超える)の流体への変換に焦点を当てることができる。これらの系及び方法は、高価な、エネルギー集約的水素化分解及び水素化処理プロセスを避けることができる。本明細書に記載される熱化学プロセスは、熱プロセスと化学プロセスとの統合的組合せを使用して、生成された商品の総価格により動機付けられる有利な製造を達成するように最適化され得る高価値製品の選択的且つ切り替え可能な混合物への、石炭の制御された計画的変換及び石炭からの抽出を提供する。
【0007】
[0007]一態様において、石炭を複数の高価値石炭製品に変換するための方法であって、i)少なくとも部分的に石炭に由来する原料を用意するステップと;ii)熱分解と溶媒抽出との組合せを含む原料を加工するステップとを含み、熱分解及び溶媒抽出が複数の高価値石炭製品を生成するための条件下で統合及び実行される、方法が提供される。標準温度圧力で液体である高価値石炭製品の百分率は、乾燥量基準で50%以上、60%以上、又は任意選択で70%以上であることがある。加工するステップは、高度に分岐し、差別化でき、且つ広範囲であってもよく、それでも高度に選択的であってもよい。
【0008】
[0008]熱分解は一般に、石炭に通常見られる複雑な分子のサイズ又は長さを低減させるために、且つ抽出物を濃縮するために、記載される系において使用される。本明細書に記載される熱分解とは、例えば、高温で短い滞留時間(秒の単位)を有するフラッシュ熱分解を指すことがある。本明細書に記載される熱分解プロセスは、一部の実施形態において、触媒の使用を特に除外してもよく、一部の実施形態において、触媒の使用を特に含んでもよい。本明細書に記載される熱分解プロセスは、一部の実施形態において、高度に選択的であってもよい。
【0009】
[0009]熱分解は、単一段階熱分解、複数の単一段階熱分解、単一の多段階熱分解、複数の多段階熱分解又は単一段階及び多段階熱分解ステップの組合せであってもよい。各熱分解又は熱分解ステップは独立して、0.5atm~15atm、0.9atm~15atm又は0.9atm~10atmの範囲から選択される圧力で行ってもよい。各熱分解又は熱分解ステップは、400℃~1200℃、750℃~1200℃又は任意選択で900℃~1100℃の範囲から選択される温度で行ってもよい。一実施形態において、熱分解のための滞留時間は、30分間~0.1秒間及び任意選択で10秒間以下、5秒間以下、2秒間以下又は1秒間以下の範囲にわたり選択される。熱分解は、前処理又は後処理として、溶媒抽出と統合してもよい。各熱分解又は熱分解ステップは独立して、0.5atm~15atm、0.9atm~15atm又は0.9atm~10atmの範囲から選択される圧力で行ってもよい。
【0010】
[0010]溶媒抽出は、水蒸気を除外して、25%以下、15%以下、10%以下、5%以下、又は任意選択で3%以下の質量百分率の気体を生成することがある。溶媒抽出は、溶媒それ自体を最大で100%含んでも、除外してもよい質量百分率の液体を生成することがあり、液体それ自体は、商品及び製品へのさらなる加工のための前駆体又は中間体になる。熱分解は、窒素、空気若しくは水素ガスの存在下などの水素供与性環境、メタン、合成ガス又はこれらの任意の組合せにおいて行ってもよい。熱分解は、フラッシュ熱分解であってもよい。
【0011】
[0011]溶媒抽出は一般に、中間体及び最終製品を含む固形原料の様々な成分を除去及び/又は分離するために使用される。一部の場合、溶媒抽出は、固形材料の液体への変換を含む化学反応を促進し、加工される様々な成分を化学変換し得ることに留意するべきである。脂肪族、芳香族、水素供与性、非極性溶媒、極性溶媒及びイオン性液体溶媒を含む、当該技術分野で公知の様々な溶媒を使用することができる。溶媒抽出は、熱分解の前又は後の多段階抽出及び複数の溶媒抽出ステップを含んでもよい。溶媒抽出は、超臨界流体ステップを含んでもよい。また、溶媒抽出は、分画、又は様々な温度及び圧力での複数の溶媒抽出ステップの使用を利用してもよい。溶媒再利用を含む、溶媒回復の様々な使用は、溶媒がそれ自体でさらなる加工のための前駆体又は中間生成物であることに加えて、さらなる効率及びコスト節約を提供することができる。
【0012】
[0012]本明細書に記載される溶媒抽出は、少なくとも1種の液体溶媒で行ってもよい。少なくとも1種の溶媒は、脂肪族溶媒、芳香族溶媒、極性溶媒、水素供与性溶媒、イオン性液体溶媒及びこれらの任意の組合せからなる群から選択することができる。溶媒抽出は、少なくとも2種の液体溶媒を使用してもよい。第1の溶媒は、極性溶媒、別々に適用される極性溶媒及び芳香族溶媒を含み得る溶媒の組合せであってもよい。第2の溶媒は、水素供与性溶媒であってもよく、その反対であってもよい。溶媒抽出物それ自体は、最終製品にさらに加工される中間体であることがある。
【0013】
[0013]溶媒抽出は、単一段階溶媒抽出、複数の単一段階溶媒抽出、単一の多段階溶媒抽出、複数の多段階溶媒抽出又は単一段階及び多段階溶媒抽出の組合せであってもよい。溶媒抽出は、溶媒の臨界温度未満の温度で行ってもよい。各溶媒抽出又はステップは独立して、400℃以下、350℃以下、又は任意選択で300℃以下の温度で行ってもよい。溶媒抽出は、水蒸気を除外して、10%以下、5%以下、又は任意選択で1%以下の質量百分率の気体を生成することがある。
【0014】
[0014]本明細書に記載される溶媒は、テトラリン(1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン)、1-メチル-ナフタレン、トルエン、ジメチルホルムアミド(DMF)又はこれらの任意の組合せを含んでもよい。溶媒は、例えば、再利用又は分離非効率のために、不純であってもよい。
【0015】
[0015]記載される系及び方法はフレキシブルであり、溶媒抽出ステップは、熱分解ステップの前に行ってもよく、その反対でもよい。さらに、より複雑な系は、任意の組合せの複数の熱分解ステップ及び/又は複数の溶媒抽出ステップを利用してもよく、例えば、第1の熱分解ステップに第1の溶媒抽出及びその後第2の熱分解ステップが続いてもよい。加えて、1つのステップ(熱分解又は溶媒抽出のいずれか)からの出力の一部が、再利用され、前のステップ、次のステップ又は現ステップのための入力として、又は入力の一部として使用され得るような、再利用流を利用してもよい。溶媒抽出及び熱分解ステップは、熱分解及び/又は溶媒抽出が単独では達成できない、統合的達成結果として考えることができる。
【0016】
[0016]溶媒抽出は、熱分解の上流で行ってもよい。熱分解は、溶媒抽出の上流で行ってもよい。熱分解ステップからの生成物の一部は、溶媒抽出に再利用してもよい。溶媒抽出からの生成物の一部は、熱分解に再利用するか、又はさらなる下流の加工に移送してもよい。加工ステップは、複数の溶媒抽出を含んでもよく、後の溶媒抽出からの溶媒は、先の溶媒抽出又は熱分解ステップに再利用してもよい。
【0017】
[0017]本明細書に記載される主原料は一般に、切込炭及び/又は石炭を含む、石炭又は石炭系であり、石炭又は石炭系は、乾燥及び蒸気回復を含み得る物理、化学及び/又は熱的前加工をされていてもよい。前加工として、粉砕、灰分除去及び/又は乾燥を挙げることができる。記載される系及び方法はフレキシブルであり、亜炭、亜瀝青炭及び瀝青炭を含む任意の主原料と共に使用してもよい。副原料含有物は、バイオマス及び油母頁岩などの他の炭化水素源、並びに/又は下流プロセスからの二次再利用流の含有物、例えば、合成ガス、並びに重炭酸ソーダ石などの他の反応性鉱物資源を含んでもよい。
【0018】
[0018]本明細書に記載される高価値石炭製品は、主原料を燃やすか、又は燃焼させることにより生成されるエネルギーの価値よりも顕著に高い金銭的又は経済的価値を有する。高価値石炭製品は、燃料製品及び/又は混合成分の少量の製造品、例えば、10%以下の燃料製品及び/若しくは混合製品、5%以下の燃料製品及び/若しくは混合製品又は任意選択で以下の燃料製品及び/若しくは混合製品を含んでもよい。高価値石炭製品は、ポリマー又はポリマー前駆体を含んでもよい。高価値石炭製品は、ポリウレタンを含んでもよい。高価値石炭製品は、複合ポリウレタンフォームを含んでもよい。高価値石炭製品は、ポリアミド類を含んでもよい。高価値石炭製品は、ポリエステル類を含んでもよい。高価値石炭製品は、芳香族化合物を含んでもよい。高価値石炭製品は、ベンゼン、トルエン、キシレン類(異性体を含む)、フェノール類、クレゾール類、キシレノール酸類(異性体を含む)、ナフテノール(naphthenol)類、C9単環芳香族化合物(異性体を含む)、C10単環芳香族化合物(異性体を含む)又はこれらの任意の組合せを含む。高価値石炭製品は、パラフィン類、オレフィン類、アスファルテン類、ナフテン類(napthenes)又はこれらの組合せを含んでもよい。高価値石炭抽出製品は、金属及び希土類元素を含んでもよい。
【0019】
[0019]高価値石炭製品は、アスファルテン中間体及び/又は最終製品を含んでもよい。高価値石炭製品は、道路舗装及び屋根ふきの中間体、添加剤又は最終製品を含んでもよい。高価値石炭製品は、コールタール、留出物、ピッチ、アスファルト、黒鉛材、炭素繊維又はこれらの任意の組合せを含んでもよい。高価値石炭製品は、土壌改良材及び肥料製品を含んでもよい。高価値石炭製品は、建材を含んでもよい。高価値石炭製品のかなりの部分は固形物であることがあり、例えば、10%以上の固形物、20%以上の固形物又は任意選択で30%以上の固形物であることがある。固形物は、樹脂、液体、又は本明細書に記載される方法により生成される他の副生成物を組み合わせた場合、黒鉛材、建築材、複合材、液体添加剤又はこれらの任意の組合せに変換されることがある。高価値製品は、合成ガス、尿素、CO2及び/又はアセチレンを含んでもよい。
【0020】
[0020]一態様において、石炭を複数の高価値石炭製品に変換するための方法であって、i)少なくとも部分的に石炭に由来する主原料を用意するステップと;ii)主原料を加工するステップであり、加工の順序がa)10秒間以下の時間行われ、水素リッチ雰囲気において行われる熱分解ステップ;及びb)少なくとも1種の液体溶媒で行われ、液体溶媒が極性溶媒及び/若しくは水素供与性溶媒並びに/又はこれらの任意の組合せからなる群から選択される、溶媒抽出ステップである、加工するステップとを含み;c)熱分解ステップが主原料について行われる第1のプロセスステップであり、溶媒抽出プロセスが熱分解から生成した固形チャーについて行われる第2のプロセスステップであり;d)熱分解及び溶媒抽出プロセスが複数の高価値石炭製品を生成するための条件下で統合及び実行される、方法が提供される。
【0021】
[0021]熱分解ステップは、フラッシュ熱分解プロセスであってもよい。溶媒抽出ステップは、単一段階溶媒抽出、複数の単一段階溶媒抽出、単一の多段階溶媒抽出、複数の多段階溶媒抽出又は単一段階及び多段階溶媒抽出の組合せであってもよい。溶媒抽出ステップは、2以上の溶媒を使用してもよい。原料の加工は、熱分解後、溶媒抽出プロセス後又は複数の溶媒抽出の間に行われる1つ又は複数の分離ステップをさらに含んでもよい。
【0022】
[0022]任意の特定の理論に束縛されるものではないが、本明細書で開示されるデバイス及び方法に関する根底にある原理の確信又は理解について本明細書の説明が存在し得る。任意の機構的説明又は仮説の最終的な正確さにかかわらず、本発明の実施形態は、それでもなお、有効且つ有用であり得ることが認識される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】液体及び固形製品を生成するための追加の後加工を含む、記載されるプロセスの概要を示す図である。
【
図2】熱分解に溶媒抽出が続く、加工ステップの一例を示す図である。
【
図3】抽出有効性を増大させるために2種の異なる溶媒が使用される多段階溶媒抽出ステップの一例を示す図である。
【
図5】溶媒抽出及び熱分解を利用する高度に分岐した高選択的プロセスの一例を示す図である。
【
図6】溶媒抽出及び熱分解を利用する高度に分岐した高選択的プロセスの一例を示す図である。
【
図7】製品及び追加のプロセスについての詳細を有する概要の一例を示す図である。
【
図8】統合的多段階加工ステップの追加の例を示す図である。
【0024】
[発明の詳細な説明]
[0032]一般に、本明細書で使用される用語及び句は、それらの当該技術分野で認識される意味を有し、意味は、当業者に公知の標準のテキスト、雑誌参考文献及び文脈を参照することにより見出すことができる。以下の定義は、本発明の文脈におけるそれらの特定の使用を明確にするために示される。
【0025】
[0033]本明細書で使用される場合、「少なくとも部分的に石炭に由来する原料」とは、原炭源から生成された固形物、粉末、スラリー、液体、流体又は他の材料を指す。例えば、原炭は、加工前に粉末に粉砕されることがある。原料は、例えば、フラッシュ熱分解及び溶媒抽出による、原料の加工をさらに促進するための当該技術分野で公知の様々な物理的、熱的及び化学的前処理を有してもよい。また、より価値がないか、又は不必要な中間生成物を再加工することにより追加の製品、例えば、液体製品が販売促進され得るように、原料は、下流プロセス又は中間体(例えば、溶媒抽出後に残る固形材料)のうちの1つ又は複数からの再利用流として機能してもよい。
【0026】
[0034]「石炭」とは、いくらかの量の流体材料を含有し得る主に固形の炭化水素を指す。石炭は一般に、水素、炭素、硫黄、酸素及び窒素からなる。石炭とは、本明細書に記載されるように、瀝青炭、亜瀝青炭及び亜炭を指すことがある。石炭とは、灰又は泥炭を指すこともある。
【0027】
[0035]本明細書に記載される「フラッシュ熱分解」とは、原料又は中間生成物が、原料又は中間体を迅速に加熱するのに十分なエネルギーに曝露される熱プロセスを指す。フラッシュ熱分解は、例えば、750℃を超える、900℃を超える、1050℃を超える、又は任意選択で1200℃を超える温度まで熱を供給するか、又は加工される材料を加熱することがある。フラッシュ熱分解とは、60秒間未満、10秒間未満、5秒間未満、1秒間未満又は任意選択で0.5秒間未満の加熱又は共振時間を指すことがある。フラッシュ熱分解は、真空下で、空気の存在下で、又は任意選択で水素若しくはメタンなどの精製気体若しくは合成ガスの存在下で行ってもよい。また、フラッシュ熱分解は、不活性雰囲気において、特に1200℃を超える非常に高温で行ってもよい。
【0028】
[0036]「溶媒抽出」とは、原料又は中間生成物を通して、又はこれらにわたり液体溶媒を流動させて、化学反応を介した材料の成分の抽出及び/又は溶媒中での溶解性を介した物質移動を促進するプロセスを指す。本明細書に記載されるように、溶媒抽出は、同じ又は類似する溶媒が材料に対して反復して使用される多段階溶媒抽出における溶媒抽出ステップを含む、1つ又は複数の溶媒抽出ステップにおいて1つ又は複数の固形物を利用することがある。溶媒は、本明細書に記載されるように、本明細書に記載されるプロセスにより生成される液体炭化水素の混合物を含む混合物であってもよい。溶媒は、本明細書に記載されるように、いくつかの溶媒の混合物であってもよい。溶媒は、当該技術分野で公知のように再利用及び再使用してもよい。溶媒抽出は、亜臨界温度であってもよい。溶媒抽出は、減圧、大気圧又は増圧で行ってもよい。
【0029】
[0037]本明細書に記載される「溶媒」とは、石炭中に存在する炭化水素若しくは他の種及び分子について溶解性を有する液体若しくは液体の混合物又は混液を指す。溶媒とは、一般に沸点範囲により定義される炭化水素混合物を含む、液体の複雑な混合物を指すことがある。溶媒は、本質的に極性、パラフィン系、芳香族、アルコール、イオン性及び/又は水素供与性であってもよい。2以上の溶媒を利用する実施形態において、溶媒は、組成、添加剤、分子設計、沸点範囲又はこれらの組合せにより区別することができる。
【0030】
[0038]「高価値石炭製品」とは、石炭又は少なくとも部分的に石炭に由来する原料よりも価値のある、本明細書に記載されるプロセスにより生成される化学製品及び材料(固形物及び液体の両方)について記載する。高価値石炭製品とは、主に固形石炭から生成した液体製品を指すことがある。本明細書に記載される高価値石炭製品は、原料で供給される石炭又は原炭材料と比較して、1.5倍、2倍、3倍、5倍、10倍又は任意選択で少なくとも50倍の金銭的価値を有することがある。高価値石炭製品とは、石炭を燃やすことを介して生成され得るエネルギーよりも1.5倍、2倍、3倍、5倍、10倍又は任意選択で少なくとも50倍価値のある石炭製品を指すことがある。高価値石炭製品とは、燃料(例えば、エネルギーを生成するために燃やす目的のために創出された)ではない製品を指すことがある。高価値石炭製品の例として、ポリマー(例えば、ポリウレタン、ポリエステル類、ポリアミド類)、高価値化学製品(BTX、パラフィン類、オレフィン類、アスファルテン類)、複合材、炭素繊維、グラフェン、建材、道路舗装及び屋根ふき材並びに土壌改良材が挙げられる。高価値石炭製品は、原料から変換された全材料の小部分、例えば、乾燥量基準で全生成物の50%、乾燥量基準で全生成物の70%、乾燥量基準で全生成物の80%又は任意選択により乾燥量基準で全生成物の90%であってもよい。
【0031】
[0039]「水素リッチ環境」とは、水素ガスの大きな組成を含む雰囲気を指す。水素リッチ環境とは、50モルパーセント以上の水素、又は一部の実施形態では、70モルパーセント以上の水素を含む雰囲気を指すことがある。水素リッチ環境とは、熱分解が行われるチャンバー又は容器の雰囲気又は状態を指すことがある。
【0032】
[0040]「不活性雰囲気」とは、気相が、存在する原料(複数可)と化学的に不活性である環境を指す。
【0033】
[0041]本明細書に記載される圧力値は、別に指定しない限り、絶対圧力値として示される。
【0034】
[0042]以下の実施例は、本発明をさらに例示するが、もちろん、本発明の範囲を限定するとはいかなるようにも解釈されるべきではない。
【0035】
(実施例1-石炭精製プロセスの概要)
[0043]この実施例は、石炭又は石炭系原料の計画的に選択された高価値製品への熱化学分解のための方法の高レベルの概要を説明する。
図1は、概要図を示す。
図1で、少なくとも部分的に石炭に由来する原料は、熱分解及び溶媒抽出を含む加工ステップ100に供給される。一般に、熱分解及び溶媒抽出のステップは、任意の順序で起こってもよく、多段階プロセス、熱分解及び/又は溶媒抽出の追加のステップ、再利用流及び分離を含んでもよい。プロセス及び方法の観点から、溶媒抽出及び熱分解ステップは統合される。主加工ステップ100は、少なくとも1つの固形物出力及び液体出力を生成するが、主加工ステップ100の構成に基づいて複数の固形物及び液体出力流を生成することがある。一部の場合、液体は、追加の液体加工102を受け、任意選択で、液体再利用流106が、特定の液体画分を主加工100に戻す。一部の場合、溶媒再利用流を含む液体再利用流106は、下流プロセスの中間体として、又は製品として有用であることがあり、別々に販売又は加工されることがある。同様に、固形物は、任意選択の再利用流104を伴う、追加の固形物加工104を受けてもよい。最終結果は、少なくとも1種の高価値液体製品及び少なくとも1種の高価値固形製品であるが、典型的に、記載されるプロセスは、様々な高価値製品及びより低価値の製品(原料コストと比較して)を生成し、より低価値の製品は再加工又は販売しても、しなくてもよい。
【0036】
[0044]加工ステップ100の一例は、
図2で示される。第1に、石炭系原料は、炭素鎖長を低減し、原料の一部を液化又は気化させる熱分解200を介して処理される。この実施例では、熱分解は、400~1200℃で、且つ大気圧で行われる。フラッシュ熱分解(例えば、1分間未満の共振時間)又は低共振時間(例えば、15分間未満)での熱分解は、エネルギー要求及びそれゆえ、コストを低減させる一方で、効率の増大、製品製造及び収率の変更、及び/又は加工時間の減少のために使用されることがある。熱分解プロセス200からの流体は、下流工程においてさらに加工される(例えば、分離、重合など)ことがある。熱分解プロセス200からの固形物は、溶媒抽出ユニット210に移送される。溶媒抽出210は、固形材料から流体成分をさらに除去し、炭素鎖長を低減する化学反応、水素/炭素比を増大させる化学反応、又は硫黄及び酸素結合と相互作用する化学反応などの一部の化学反応、及び金属及び希土類元素の回復を与えることがある。溶媒抽出ステップ210からの残留固形物は、本明細書に記載されるようにさらに処理してもよく、より軽い化合物への追加の変換のためのプロセスを通して再利用してもよく、他の高価値製品に変換してもよい。溶媒抽出器210からの流体流は、例えば、蒸留カラム220で分離してもよい。流体流は、揮発性に基づいて1つ又は複数の生成物流に分割してもよく、溶媒は、回復し、溶媒抽出器210に戻してもよい。
図8は、統合的多段階加工ステップの追加の例を示し、様々なプロセスステップの順序での汎用性をさらに例示する。
【0037】
(実施例2-熱分解)
[0045]記載される系及び方法で使用される熱分解は、石炭に見られる複雑な炭化水素の熱分解を与え、固形石炭材料の一部を液体及び蒸気に変換することを補助する。本明細書に記載される熱分解は一般に、高温であるが燃焼を避けるのに十分に低い、例えば、400℃を超える、800℃を超える、又は任意選択で1000℃を超える温度で行われる。さらに、効率を増大させ、且つエネルギーコストを低減させるために、記載される方法の熱分解は一般に、低滞留時間、例えば、1時間未満、又は一部の場合、15分間未満を有する。本発明の一部の実施形態は、1分間未満、又は好ましくは15秒間未満の滞留時間を有し得るフラッシュ熱分解を利用する。記載される熱分解ステップは、大気圧で、若しくは大気圧付近で、又は加圧環境で行ってもよく、一部の実施形態では、水素ガスを含む水素リッチガス、メタン、天然ガス又は合成ガスの存在下で行うことを含む。
【0038】
[0046]特定の熱分解パラメーターは、入力又は供給流に依存する。例えば、熱分解が記載される方法の第1のステップである実施形態では、供給材料は、主に石炭又は石炭由来材料である。しかしながら、1つ又は複数の溶媒抽出が行われる場合には、残留固形材料は顕著に異なる組成を有することがあり、したがって、プロセスパラメーターは変更する必要がある。
【0039】
[0047]石炭熱分解実験を、Cordero Rojo亜瀝青炭について行った。25gの石炭を、アルゴン下で100℃にて一晩乾燥させた。乾燥石炭重量を決定し、これは以下の収率計算の基礎になる。その後、内容物を、垂直管炉内で500℃まで40分間加熱した。生成した熱分解蒸気を、0℃の冷却トラップに移送して、タールを濃縮し、残留気体を通気した。
【0040】
[0048]以下は、上記の実験手技に基づく乾燥石炭についての重量基準の収率結果である:
【表1】
【0041】
(実施例3-溶媒抽出)
[0049]溶媒抽出は、主に固形の原料又は中間体から望ましく、且つ価値のある流体成分を回復するための有効なコスト効率的方法を与える。さらに、溶媒の選択及び設計は、いくらかの化学反応性を与えることがあり、石炭に多くの場合見られる複雑な炭化水素分子のサイズ又は長さの低減、及び又は金属及び希土類元素の実利的回復の実現を与えることがある。
【0042】
[0050]様々な溶媒は、石炭系原料又は中間石炭生成物(例えば、熱分解後)の処置に有用である。極性溶媒、水素供与性溶媒、脂肪族溶媒、芳香族溶媒、イオン性液体溶媒及び超臨界流体抽出(他の溶媒を含む)の全ては、ある特定の製品又は製品タイプの生成の促進において高い適応性を可能にし、溶媒系又はプロセスパラメーターの変化は、様々な石炭原料間及びタイプ間の差を説明することができる。溶媒抽出の温度及び圧力は多くの場合、使用される溶媒に結び付けられるが、亜臨界及び超臨界溶媒抽出の両方が実施されることがある。
【0043】
[0051]様々な溶媒系及び/又はプロセスパラメーターでの複数の溶媒抽出は、固形材料を、より容易に加工される、且つ潜在的により価値のある流体出力に変換することにおいてより高い効率を可能にする。複数の単一段階溶媒抽出の一例は、
図3に示される。供給材料201(石炭系原料、熱分解及び溶媒抽出の両方を含む複数のプロセスステップを受けた熱分解生成物又は中間体であり得る)は、第1の溶媒抽出器210に供給される。溶媒抽出器210は、特定の溶媒タイプ、例えば、芳香族化合物などのある特定の石炭成分をターゲットにする極性溶媒を使用する。第1の抽出物は、その後、1つ又は複数の分離ステップ220、例えば蒸留カラムで分割され、軽流体出力及び重流体出力の両方をもたらす。溶媒は、再利用して溶媒抽出器210に戻してもよい。溶媒抽出210後に残る固形物は、その後、固形物中に残る追加の流体を抽出するために、異なる溶媒タイプ、例えば、水素供与性溶媒を使用する第2の溶媒抽出プロセス211で加工される。重要なことに、溶媒抽出プロセスの順序は、ある特定の炭化水素の量を増大させ、多様な製品選択を可能にするために逆転又は変更してもよい。また、第2の溶媒抽出211からの抽出物は、分離ステップ221(複数可)に供給され、軽及び重流体出力の両方、並びに溶媒を再利用する能力を与える。多段階溶媒抽出後に残る固形物は、さらに加工してもよく(例えば、熱分解又は追加の溶媒抽出)、本明細書に記載されるように固形製品として加工してもよい。
【0044】
[0052]単一溶媒が全抽出及び分画を増大させるために複数回適用され、単一溶媒が様々な温度で適用される多ステップ溶媒抽出も、一部の実施形態で利用することができる。
【0045】
[0053]Cordero Rojoの亜瀝青炭(実施例2及び表1に記載されるのと同じ石炭)でのテトラリン及び1-メチル-ナフタレンの抽出効率を調査するために溶媒抽出実験を行った。実験手技は、石炭を流動アルゴン流下で90℃にて36時間乾燥させることであり;これは、1(重量)%未満の水分を有する石炭をもたらした。乾燥後、乾燥石炭を秤量し、これは、水分0%を仮定して以下の収率計算の基礎になる。約100gの石炭を、圧力容器に入れ、圧力容器をその後、オーブンに入れた。所望の溶媒を毎分0.1ml/乾燥石炭1gの速度で、所望の温度での沸点を超える圧力までポンプ注入する。オーブンを点け、容器を被制御360℃まで加熱する。この温度に達した後2時間、溶媒流を継続する。わずかな(0と仮定される)気体流が認められた。2時間後、溶媒流を停止し、オーブンを切り、このようにして容器を冷却させる。圧力は、大気圧まで降下する。溶媒の沸点未満まで冷却した後、アルゴンを、容器を通して36時間流動させて、固形残留物からの残留溶媒を除去する。得られた残留物を秤量して、収率を決定する。
【0046】
[0054]以下は、上記の実験手技に基づく、乾燥石炭についての重量基準の収率結果である:
【表2】
【0047】
(実施例4-統合的熱化学加工)
[0055]その後、熱分解(実施例2)及び溶媒抽出(実施例3)実験から収集した固形物を、第2の加工選択肢に供した。換言すれば、溶媒抽出固形残留物を熱分解し、熱分解チャーを溶媒抽出した。
図1、2及び8を参照されたい。
【0048】
[0056]溶媒抽出実験手技及び条件は、乾燥が必要とされないことを除いては、溶媒抽出(実施例)に記載される実験手技及び条件と同じであった。
【0049】
[0057]熱分解実験手技及び条件は、乾燥が必要とされないことを除いては、熱分解実施例に記載される実験手技及び条件と同じであった。
【0050】
[0058]以下は、上記の実験手技に基づく、乾燥熱分解チャーについての重量基準のテトラリン溶媒抽出収率結果である:
【表3】
【0051】
[0059]以下は、上記の実験手技に基づく、テトラリンに基づく溶媒抽出乾燥残留物についての重量基準の熱分解収率結果である:
【表4】
【0052】
[0060]以下は、上記の結果、及び石炭熱分解及び石炭溶媒抽出実施例からの結果に基づく、組み合わせた2段法全体の重量基準の収率結果である。使用された溶媒は、テトラリンであった。
【表5】
【0053】
[0061]両方の場合において、2段法からのタール収率は、熱分解のみ又は溶媒抽出のみのプロセスからの収率よりも大きいことに留意するべきである。
【0054】
(実施例5-分岐プロセス)
[0062]追加の加工ステップを含めることにより、熱分解と溶媒抽出との組合せ後にステップを含めることは、ある範囲の製品の産出、又は製造された同じファミリーの製品タイプについての異なる仕様及び機能性をもたらし得る、高度に分岐したプロセスを実現する。これらの追加のプロセスは、熱化学処理(
図2で示される)から得られた中間生成物を変換する。中間体により供給される最終製品製造プロセス(配合)は、製品に基づく市場要求を満たすことを可能にする製品流通及び状態への調整を有して、経済的安定性を確実にする性能を示す製品の量を製造する高選択性能力を実現する。
【0055】
[0063]
図9は、様々な高価値及び有用製品を生成するための追加の後加工を伴う、高度に分岐した高選択的プロセスの一例を示す。記載されるプロセスは、統合された3段階:熱及び化学分解、蒸気-液体分離、並びに単一の直接的プロセス又は中間生成物の生成後の高価値誘導体又は最終製品を製造するためのさらなる加工であり得る製品製造/配合からなる。
【0056】
[0064]熱及び化学分解セクションは、最小で2つの加工ステップ、熱分解及び溶媒抽出からなり、さらなる後処理ステップの追加の可能性を有し、これらは連続で行われる。このプロセスは、(分離セクションからの)最大液体中間体収率を実現し、この液体中間体は、蒸気-液体製品製造又は配合の主供給材料である。熱及び化学分解ステップは、熱分解後の熱分解チャーの溶媒抽出から、又は主原料の溶媒抽出後の溶媒抽出固形残留物の熱分解からなる。熱分解は、中性又は水素供与性雰囲気(水素リッチガス、合成ガス又はメタンなど)における、主原料又は溶媒抽出残留物の直接的又は間接的加熱である。気体及び固形生成物が、熱分解から生じる。溶媒抽出は、主原料、又は複数のステップであり得る石炭熱分解チャーを様々な溶媒と接触させることからなる。溶媒は、分離セクションで回復され、溶媒リッチ流は、溶媒抽出に再利用される。次の加工ステップに持ち越される溶媒は、最小限にされる。溶媒抽出は、ほとんど気体を生成せず、熱分解温度未満の温度で作動し、抽出液体流及び固形残留物流を含有する溶媒を生成する。
図8は、統合的熱及び化学分解ステップを例示する。
【0057】
[0065]分離セクションは、熱及び化学分解セクションからの蒸気及び液体中間体を加工して、製品配合セクションに供給される中間体を製造する。熱分解反応器内の雰囲気のタイプにより、分離セクションからの気体を加工し、熱分解反応器に再利用してもよい。溶媒リッチ流は、分離セクションで回復され、溶媒抽出セクションに再利用されるか、又は最終製品へのさらなる加工のための中間生成物として使用される。分離セクションは、変換セクション(温度、圧力、加工順序、熱分解雰囲気及び溶媒スキーム)及び製品配合セクションの両方に依存する。どの高価値製品が計画的に選択されるか、及びどれが副生成物又は共生成物になるかに応じて、熱分解蒸気及び溶媒抽出の抽出物を混合して、単一の分離セクションに供給してもよく、又は熱分解蒸気及び溶媒抽出の抽出物を、別々の並行する分離セクションに供給してもよい。蒸留塔は、熱及び化学分解セクションからの気体生成物を除去し、様々な液体中間体を生成するための、分離セクションにおける第1のユニット工程であることがある。側面ストリッパー及び側面アブソーバーが存在してもよい。この第1の塔からの下部(残留生成物)は、最も重い材料をさらに精製するために、高真空蒸留塔に移送することができる。製品配合の仕様によっては、液体中間体をさらに分離又は加工して、特定の製品配合のための所望の中間供給材料を生成してもよい。これらの下流分離は、吸着、分画、結晶化、共沸分画、抽出蒸留、液体-液体デカンテーション及び抽出からなってもよく、これらの組合せを含む。使用されなかった(製品配合のために)中間体(例えば、より高い沸点範囲の中間体)は、熱及び化学分解セクションに再利用して、この材料をより使用可能な中間体にさらに加工してもよい。
【0058】
[0066]製品配合は、2つの主要なサブセクション:中間体(液体)及び気体製品配合並びに固形物からなり、これらを後処理配合で加工して、最終製品を製造する。最終配合は、分離セクションからの中間体を加工して、2~10種の高価値製品及び場合により追加のより低価値の製品を生成する。これらの高価値製品の例は、石油化学製品、炭素繊維、ポリマー、複合材、アスファルテン類、バインダ、コークス及びその他であってもよい。これらの高価値製品の各々は、分離セクションからの個別化供給材料を使用する別々の加工ユニットで生成される。熱及び化学分解セクションからの固形物は、固形物配合に移送される。ここでもまた、いくつかの製品が、別々の加工ユニットで製造される。より低価値の製品の例として、排煙を伴う水、鉱物及び粘土が挙げられる。高価値製品抽出物の例として、金属及び希土類元素が挙げられる。
【0059】
[0067]本明細書に記載されるプロセスは、原油精製にいくらか類似しており、原油精製は、原油が供給され、複数の変換ステップ、多くの分離(特に分画)ステップ、生成される多くの中間体、及び一般に主プロセスステップとしての蒸留を使用して製造される多数の誘導生成物が存在して、中間体を製造し、その後不連続の水素化分解、水素化処理及び水素化加工により最終製品を製造する。しかしながら、本明細書に記載されるプロセスは、熱化学プロセスの別個のユニークな統合を必要とする、固形、高炭素含有量原料に特に適合されており、この熱化学プロセスは、技術的若しくは経済的に、又はこれらの両方で、石油精製で派生させることができない顕著な量の固形高価値製品、液体製品を生成し、逆に少量の燃料製品及び/又は燃料混合成分を生成する。
【0060】
[0068]
図5~7は、高価値製品の特定の例を提供する、可能性のあるプロセス統合のより詳細な例を示す。
図7では、石炭系原料を、乾燥器に入れて、含水量の約90%を除去する。次に、乾燥させた石炭を、この例では完全に統合された2つの溶媒抽出ステップ及び単一の熱分解ステップからなる熱化学加工ステップで変換する。第1の溶媒抽出は、極性溶媒(例えば、DMF、エタノール、水)を利用して、酸素含有分子を回復する。第2の溶媒抽出は、非極性溶媒(例えば、混合硬化油、テトラリン、超臨界燃料、1-メチル-ナフタレン)を使用する。溶媒抽出残留物の熱分解を、400~1200°Fで行って、土壌改良材製品及び建材、並びにさらなる加工のための中間体としての蒸気を含有する価値のある炭化水素を生成する。
【0061】
[0069]熱化学加工後、様々な流れは、例えば、蒸留、真空蒸留、溶媒抽出、結晶化、ワイプ-フィルム蒸発、液体-液体抽出及びデカンテーションを含む公知の技術により分離される。一部の実施形態では、分離される生成物は、所望の組成、変換又は沸点範囲が達成されるまで、熱化学加工ステップに再利用してもよい。一部の場合、分離は、熱化学加工ステップの間に行ってもよい(すなわち、溶媒抽出1-分離-熱分解-溶媒抽出2)。タール流については、真空蒸留を使用して、流れの沸点に基づいて様々な生成物を生成してもよい。分離ステップ(複数可)から出る燃料気体は、望ましくない気体(例えば、二酸化炭素並びにSOx及びNOx汚染物質)を除去するためのアミン処理、スクラビング又は膜濾過などの気体クリーンアップステップで加工してもよい。クリーニング後、また、燃料気体は、ドライメタン改質(DMR)又はメタン水蒸気改質法(SMR)を使用してさらに変換し、加工ステップに配置しても、販売してもよい。
【0062】
[0070]熱化学加工ステップからの固形生成物は、最終製品に配合してもよく、最終製品が製造又は販売され得る中間体として使用してもよい。生成物の例として、建材のための炭素フィルター副生成物があり、さらに加工して環境管理のための活性炭製品を生成するか、又は土壌改良材を製造するために使用されるか、又はさらにか焼してコークスを生成する。
【0063】
(実施例6-熱化学石炭加工からの分岐)
[0071]
図5及び6を参照して、この実施例は、本明細書で定義される熱化学プロセスのユニークな統合的且つ相乗的工程に基づいて、多数の特有の製品製造アウトカムを生成するために、石炭の熱化学加工をどのように適合させることができ、石炭の熱化学加工がどのようにフレキシブルあるかを説明する。実施例は、概念の証明、及び石炭系材料の高需要高価値製品への追加の変換の実行可能性を実証する、実験室スケールの実験を記載する。
【0064】
〔石炭剥離物〕
[0072]極性及び非極性分子が高剥離特性及び高表面領域フォームで抽出された、石炭固形物が記載され、これらは、土壌浄化添加剤、気体/流体吸収剤、グラフェンオキシドスプレイスラリー、及び気化及び水素化のためのチャーとして使用することができる。
【0065】
[0073]実験的に、2ステップ実験プロセスは、1)DMFを140℃で1atmにて使用する連続抽出を介した極性分子の除去、及び2)40℃で75atmの超臨界CO2抽出を介した非極性分子の除去を含む。2つのステップは、任意の順序で適用することができる。
【0066】
〔室温ウレタンフォーム複合材合成〕
[0074]スキン/マトリックス構造複合材における充填材として、又は音響変調、断熱、弾道衝撃軽減又は浮揚性のための独立式フォームとして機能するのに十分な構造的強度を有する補強粒子を充填した有機マトリックスからなる有機複合材が記載される。これらの石炭系機能化炭素粒子は、石炭由来ウレタンマトリックスと共に、非常に望ましい特性を有する低コストポリマーマトリックス複合材(PMC)を生成することができる。
【0067】
[0075]室温で2つの溶液を反応させて、数分のうちに顕著に大量の高耐久性フォームを形成することにより、抽出物のその個々の化学又は沸点範囲構成要素への中間分離を伴わずに、有機石炭抽出物からウレタン複合材を生成するプロセスが本明細書に記載される。このプロセスは、フォーム合成ステップ中に苛性試薬又は危険な試薬を必要とせず、抽出物のアルコール/フェノールOH基を使用し、標準の様式でそれらをジイソシアネート架橋剤と反応させて、優れた熱性能並びに適度な靭性、抗張力及び弾性を有する非差別化ポリウレタンを生成する。また、このプロセスは、Hummer法を介して石炭から生成されたグラフェンオキシド又は石炭から生成された黒鉛状石炭チャーのアルコール/フェノールOH基を利用する。グラフェンオキシド又は黒鉛状石炭チャーの添加は、石炭PMCの強度を大いに増大し得る。
【0068】
[0076]実験的に生成される石炭抽出物は、ジメチルホルムアミドを溶媒とする標準の蒸発器、凝縮器及びフィルター/サイホンスキームを使用する連続ソックスレープロセスで製造される。その後、石炭抽出物の一部は、850℃で10~15分間湿式熱分解され、その後、200メッシュサイズまで粉砕される。実験室の例として、グラフェンオキシドは、石炭から標準のHummer法を介して生成される。0.5gの水及び1%(w/w%)グラフェンオキシド又は1%(w/w%)黒鉛状石炭チャー、0.1gのジブチル錫ジラウレート並びに2gの石炭抽出物の混合物を準備する。約14gのトルエンd-イソシアネートを混合物に添加し、手動で激しく撹拌し、これにより溶液を泡立たせ、その後、室温まで冷却させる。
【0069】
〔石炭からのポリアミドの生成〕
[0077]抽出物のその個々の化学又は沸点範囲構成要素への中間分離を伴わずに、有機石炭抽出物からポリアミドを生成するプロセスが記載される。このプロセスは、抽出物のカルボン酸基を利用し、標準の様式でそれらをジアミン架橋剤と反応させて、優れた熱性能並びに適度な靭性、抗張力及び弾性を有する非差別化ポリアミドを生成する。
【0070】
[0078]石炭を高温、高圧テトラリンに懸濁することにより、石炭抽出物を製造する。温度及び圧力を低減すると、溶解した抽出物が溶液から沈殿する。実験室スケールの例として、その後0.5gの固形抽出物をDMFに溶解し、0.5gのヘキサメチレンジアミンと共に還流しながら130℃で4時間加熱する。その後、溶液を加熱したペトリ皿に入れ、DMFを蒸発させて、ポリアミドの沈殿物を生成する。
【0071】
[0079]10gの石炭を室温でジメチルホルムアミドに懸濁することにより、ポリアミドの第2の試料を製造する。この溶解した抽出物を、濾過により固形物から分離し、その後0.5gのヘキサメチレンジアミンと150℃及び1気圧で直接反応させる。溶液を、4時間還流し、加熱したペトリ皿に入れて、上記のようにポリアミド沈殿物を形成した。
【0072】
[0080]化学組成、反応条件及び溶媒系を変化させることにより、得られるポリマーの可撓性、抗張力、ガラス遷移温度のような、様々な物理的、化学的及び本質的特性を有する、改変ポリアミドを生成することができる。
【0073】
〔石炭由来の伝導性複合材〕
[0081]コンピュータCPU、携帯電話、電子レンジなどから発生する電磁放射を遮蔽するために十分な電気伝導性を有する有機複合材について現在技術的な要求が存在している。中コストカーボンブラックを充填した高コスト熱可塑性プラスチックが通常使用されるが、市場は、より低い充填体積でより高い伝導性を有する充填材を求めている。グラフェン及び多重壁又は単一壁カーボンナノチューブは、この役割において完璧に機能する;しかしながら、それらの高価格のために、それらは広範な使用を達成することができない。扁長又は扁円形状を有する石炭系炭素粒子は、顕著により低い価格で、電気伝導性複合材においてより低い体積充填を達成することができる。
【0074】
[0082]石炭系ポリマーベース及び第2の石炭系炭素充填材を利用して、電気伝導性複合材を形成する、石炭系由来ポリマーマトリックス複合材(PMC)からなる電気伝導性有機複合系を製造するための3段法が記載される。
【0075】
[0083]プロセススキームは、3段階、つまり1)有機残留物の抽出、2)得られた固形物の機能化黒鉛状チャーへの変換、及び3)残留物及び機能化チャーをジイソシアネートと反応させて、ウレタン系ポリマー複合材を製造することからなる。
【0076】
[0084]実験的に、石炭残留物を、最高で450℃までの温度で、溶媒としてDMFを使用して抽出し、ここで150℃を超える温度は、圧力容器を必要とし、抽出物体積の収率の増大は高温で達成可能である。その後、この溶液を複合材の製造において使用する。残留物抽出後に残る固形物を、850℃で10~15分間熱分解し、その後チャーを、200メッシュサイズまで挽き、担体流体としてエタノールを添加してボールミルでさらに挽く。16時間の製粉化後、チャーを濾過して、溶媒を除去し、その後ステンレススチールボムレットに1/10等重量のジイソシアネートと共に入れる。ボムレットを密閉し、400℃まで加熱して、チャーを機能化する。その後、チャーをいくつかの一定分量のアセトンで洗浄して、余分なジイソシアネートを除去し、乾燥させる。
【0077】
〔石炭由来ポリエステル〕
[0085]抽出物のその個々の化学構成要素への中間分離を伴わずに、有機石炭抽出物からポリエステルを生成するプロセスが記載される。このプロセスは、抽出物のカルボン酸基を利用し、標準の様式でそれらをジオール架橋剤と反応させて、優れた熱性能並びに適度な靭性、抗張力及び弾性を有する非差別化ポリエステルを生成する。
【0078】
[0086]石炭を高温、高圧テトラリンに懸濁することにより、石炭抽出物を製造する。温度及び圧力を低減すると、溶解した抽出物が溶液から沈殿する。実験的に、0.5gの固形抽出物をDMFに溶解し、0.35gのエチレングリコールと共に還流しながら130℃で4時間加熱する。その後、溶液を加熱したペトリ皿に入れ、DMFを蒸発させて、ポリエステルの沈殿物を生成する。
【0079】
[0087]10gの石炭を室温でジメチルホルムアミドに懸濁することにより、ウレタンの第2の試料を製造し、抽出物を、濾過により固形物から分離し、その後0.35gのエチレングリコールと150℃及び1気圧で直接反応させる。溶液を、4時間還流し、加熱したペトリ皿に入れて、上記のようにポリエステル沈殿物を形成した。
【0080】
[0088]望ましい特性を制御するために、ポリエチレングリコールなどの他のグリコール、ベンゼンジオール又はビスフェノールでの置換は、同様のポリマーをもたらすことができ、それは、ジオールの混合物と組み合わせて、得られるポリマーの可撓性、抗張力、ガラス遷移温度のような、望ましい特性を制御するために使用することができる。
【0081】
〔構造フォーム(STUCTURAL FOAM)複合材〕
[0089]1)低級石炭からの極性有機残留物の液体抽出、2)高揮発性有機物及びトルエン並びに他の選択された芳香族化合物を回復するための極性抽出物の蒸留又は他の分離、3)酸性ニトロ化、その後水素化を介したこれらの残留芳香族化合物のジイソシアネートへの変換、その後ホスゲンカルボキシル化、4)残留固形物の機能化黒鉛状チャーへの変換及び5)残留物、ジイソシアネート及び機能化チャーを反応させて、ウレタン系ポリマー複合材を製造することを含む多段法が記載される。
【0082】
[0090]石炭残留物を、最高で450℃までの温度で、溶媒としてDMFを使用して抽出し、ここで150℃を超える温度は、圧力容器を必要とし、抽出物体積の収率は、温度と共に増大する。複合材を形成するための反応前に、溶媒中の残留物濃度は、残留物1g/溶媒2gに近づけるべき、すなわち、可能な限り飽和に近くするべきである。この溶液を使用して、複合材を製造する。
【0083】
[0091]トルエンを、HNO3/H2SO4溶液でニトロ化し、二硝酸塩を圧力容器内で500℃にて水素により水素化してジアミンにする。ジアミンを、250℃でのホスゲンへの曝露によりジイソシアネートに変換する。
【0084】
[0092]その後、残留物抽出後に残る固形物を、850℃で10~15分間湿式熱分解し、その後200メッシュサイズまで粉砕する。この粉末を、担体流体としてエタノールを添加してボールミルでさらに挽く。16時間の製粉化後、チャーを濾過して、溶媒を除去し、その後ステンレススチールボムレットに等重量の抽出した残留物及び等(残留物+チャー)重量のジイソシアネートと共に入れる。ボムレットを密閉し、180℃まで加熱して、複合材を形成する。
【0085】
[0093]得られたフォームは、0.33g/ccの密度及び150PSIを超える圧壊強度を有した。
【0086】
〔石炭由来ウレタン〕
[0094]抽出物のその個々の化学構成要素への中間分離を伴わずに、有機石炭抽出物からウレタンを生成するプロセスが記載される。このプロセスは、抽出物のアルコール/フェノールOH基をジイソシアネート架橋剤と反応させて、優れた熱性能並びに適度な靭性、抗張力及び弾性を有する非差別化ポリウレタンを生成する。
【0087】
[0095]実験的に、石炭を高温、高圧テトラリン溶液に懸濁することにより、石炭抽出物を製造し、これにより、温度及び圧力を低減すると、溶解した抽出物が溶液から沈殿した。実験的に、その後0.5gの固形抽出物をアセトンに溶解し、0.25gのトルエンジイソシアネートと共に還流しながら60℃で4時間加熱する。その後、溶液を加熱したペトリ皿に入れ、アセトンを蒸発させて、ウレタンのフィルムを生成する。10gの石炭を室温でジメチルホルムアミドに懸濁することにより、ウレタンの第2の試料を製造する。この溶解した抽出物を、濾過により固形物から分離し、その後0.5gのトルエンジイソシアネートと150℃及び1気圧で直接反応させる。溶液を、4時間還流し、加熱したペトリ皿に入れて、上記のようにウレタンフィルムを形成する。
【0088】
[0096]触媒として2滴のジブチル錫ジラウレートをイソシアネート混合物に添加し、溶媒を蒸発させるために、溶液を皿に入れる前に1時間のみ還流することを除いては、試料2と同様に、第3の試料を製造する。
【0089】
[0097]1,6-ジイソシアナートヘキサンなどの他のジイソシアネートでの置換は、同様のポリマーをもたらすことができ、イソシアネートのその混合物は、得られるポリマーの可撓性、抗張力、ガラス遷移温度のような、望ましい特性を制御するために使用することができる。
【0090】
〔石炭由来グラフェン/グラフェンオキシドフィルム及び粉末〕
[0098]石炭からのグラフェン粉末及びフィルムの合成のための多段法が記載され、且つ石炭から酸化黒鉛粉末及び還元グラフェンオキシドフィルムを合成するための経路が概略される。プロセスは、1)850℃で30分間の石炭からの有機材料の揮発性物質の焼き切り及び2)ステップ1から得られた固形物を含有する黒鉛るつぼの誘導加熱(2500℃を超える)を介した、得られた固形物の不活性真空環境における高温黒鉛化を含む。
【0091】
[0099]その後、3)スプレイ親和性溶媒(エタノール及びイソプロピルアルコール)中での得られた材料のチップ式/浴式超音波処理、4)上清中のナノフレーク材料を選択するための材料の遠心分離、その後下部固形材料を除去するための溶液のデカンテーション、5)上清の真空乾燥により、グラフェンフレーク粉末を生成すること(粉末合成)、6)加熱した基材上へのステップ4からの上清の強制的噴霧により、変動可能な厚さ及び伝導性の伝導性フィルムを形成すること、及び7)その後、合成されたフィルムを、800~1450℃で焼鈍する管状炉を介してさらに焼鈍したこと(フィルム合成)により、グラフェン粉末又はフィルムを生成する。
【0092】
[00100]或いは、酸化黒鉛粉末及びグラフェンオキシドフィルムは、3)強酸化剤を使用する可変時間の、又は溶液の強酸化が起こるまでの材料の酸化を介して生成することができる。酸化溶液は、98%硫酸、過マンガン酸カリウム及び硝酸ナトリウムからなった。4)固形物を遠心分離により回収し、脱イオン水で3回、各洗浄後に遠心分離して、洗浄し、5)溶液上清を捨て、固形物を凍結乾燥により乾燥させた(粉末合成)。
【0093】
(実施例7-工業分析及び元素分析)
〔熱分解チャーの分析〕
[00101]試料番号:CE-16-Pc(チャー)
【表6】
【0094】
[0100]報告された水素及び酸素値は、試料に伴う付着水分中の水素及び酸素は含まない。報告された結果は、ASTM D3180により計算される。結果は、2回の平均値である。
【0095】
〔溶媒抽出石炭の熱分解残留物からの熱分解チャーの分析〕
[0101]試料番号:CE-13-Res-Pc(チャー)
【表7】
【0096】
[0102]報告された水素及び酸素値は、試料に伴う付着水分中の水素及び酸素は含まない。報告された結果は、ASTM D3180により計算される。結果は、2回の平均値である。
【0097】
〔表6で試験した熱分解チャーの溶媒抽出からの残留物の分析〕
[0103]試料番号:CE-16-Res
【表8】
【0098】
[0104]報告された水素及び酸素値は、試料に伴う付着水分中の水素及び酸素は含まない。報告された結果は、ASTM D3180により計算される。結果は、2回の平均値である。
【表9】
【0099】
(参照による組込み及び変形形態についての説明)
[0105]本明細書で引用される出版物、特許出願及び特許を含む全ての参考文献は、各参考文献が個々に、且つ特に参照により組み込まれることが示され、且つ本明細書でその全体が示されているのと同様に参照により本明細書に組み込まれる。
【0100】
[0106]本発明を記載する文脈における(特に、以下の特許請求の範囲の文脈における)「a」及び「an」及び「the」及び「少なくとも1つ(種)の」という用語並びに同様の指示物の使用は、本明細書で別に指定されるか、又は明らかに文脈により否定されない限り、単数及び複数の両方を含むと解釈されるべきである。1つ又は複数の項目の列挙が後に続く「少なくとも1つの」という用語の使用(例えば、「A及びBのうちの少なくとも1つ」)は、本明細書で別に指定されるか、又は明らかに文脈により否定されない限り、列挙される項目から選択される1つの項目(A又はB)又は列挙される項目のうちの2つ以上の任意の組合せ(A及びB)を意味すると解釈されるべきである。「~を含む(comprising)」、「~を有する」、「~を含む(including)」及び「~を含有する」という用語は、別に指定されない限り、制限のない用語(すなわち、「~を含むが、これらに限定されない」を意味する)として解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書で別に指定されない限り、範囲内に入る各別々の値を個々に言及する簡略化法として機能することが単に意図され、各別々の値は、その値が本明細書で個々に引用されているのと同様に本明細書に組み込まれる。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書で別に指定されるか、又はそうでなければ、明らかに文脈により否定されない限り、任意の適切な順序で行うことができる。本明細書で示される任意及び全ての例又は例示的言語(例えば、「~などの」)の使用は、単に本発明をより良好に明らかにすることを意図し、別に請求されない限り、本発明の範囲に対して限定を設けるものではない。本明細書中の言語は、任意の請求されない要素を本発明の実施に本質的であるものとして示すとは解釈されるべきではない。
【0101】
[0107]本発明を行うための本発明者らに知られる最良の様式を含む、本発明の好ましい実施形態が、本明細書に記載される。それらの好ましい実施形態の変形形態は、上記の記載を読めば当業者に明らかになり得る。本発明者らは、熟練した当業者がそのような変形形態を適宜使用することを予測し、本発明者らは、本発明が本明細書で特に記載されているのとは異なって実施されることを意図する。したがって、本発明は、準拠法により許可される、本明細書に附属の特許請求の範囲で列挙される主題の全ての変更形態及び均等形態を含む。さらに、上記要素の任意の組合せは、その全ての可能な変形形態で、本明細書で別に指定されるか、又はそうでなければ、明らかに文脈により否定されない限り、本発明に包含される。
【0102】
[0108]本出願全体を通した全ての参考文献、例えば、発行又は認可された特許を含む特許文書又は同等物;特許出願公開公報;及び非特許文献文書又は他の資料は、各参考文献が本出願における開示と少なくとも部分的に矛盾しない範囲内で、参照により個々に組み込まれているのと同様に、それらを全体として本明細書における参照により本明細書に組み込まれる(例えば、部分的に矛盾する参考文献は、参考文献の部分的に矛盾する部分を除いて、参照により組み込まれる)。
【0103】
[0109]本明細書で使用された用語及び表現は、説明の用語として使用され、限定の用語としては使用されず、そのような用語及び表現の使用において、示され、説明される特徴又はその部分の任意の均等形態を除外する意図はないが、様々な変更形態が、請求される本発明の範囲内で可能であることが認識される。したがって、本発明は、好ましい実施形態によって詳細に開示されたが、本明細書で開示される概念の例示的な実施形態並びに任意選択の特徴、変更形態及び変形形態に、当業者は頼ることができ、そのような変更形態及び変形形態は、附属の特許請求の範囲により定義される本発明の範囲内であると考えられることが理解されるべきである。本明細書で示される特定の実施形態は、本発明の有用な実施形態の例であり、本発明は、本明細書に示されるデバイス、デバイス構成成分、方法ステップの多数の変形形態を使用して行うことができることが当業者に明らかである。当業者に明らかである通り、本方法に有用な方法及びデバイスは、多数の任意選択の組成並びに加工要素及びステップを含み得る。
【0104】
[0110]置換基の群が本明細書で開示される場合、任意の異性体を含む、その群及び全ての下位群の全ての個々の構成員が、別々に開示されることが理解される。マーカッシュ群又は他の群が本明細書で使用される場合、群の全ての個々の構成員並びに群の全ての可能性のある組合せ及び下位の組合せが、本開示に個々に含まれると意図される。化合物が、その化合物の特定の異性体が、例えば、式で、又は化学名で特定されずに本明細書に記載される場合、その記載は、個々に記載される化合物の各異性体又は任意の組合せの異性体を含むと意図される。加えて、別に指定されない限り、本明細書で開示される化合物の全ての同位体バリアントは、本開示により包含されると意図される。例えば、開示される分子内の任意の1つ又は複数の水素は、重水素又はトリチウムで置換され得ることが理解される。分子の同位体バリアントは一般に、分子のアッセイにおいて、且つ分子又はその使用に関する化学及び生物学的研究において標準として有用である。そのような同位体バリアントを製造するための方法は、当該技術分野で公知である。当業者が同じ化合物を異なって命名し得ることが公知であるので、化合物の特定の名称は、例示であると意図される。
【0105】
[0111]本明細書で開示される分子の多くは、1つ又は複数のイオン化可能基[プロトンが除去され得る基(例えば、-COOH)若しくはプロトンが付加され得る基(例えば、アミン)又は四級化され得る基(例えば、アミン)]を含有する。そのような分子の全ての可能なイオン形及びその塩は、本明細書の開示において個々に含まれることが意図される。本明細書の化合物の塩について、当業者は、多種多様な使用可能な対イオンの中から、所与の適用のための本発明の塩の調製に適切なものを選択することができる。特定の適用において、塩の調製のための所与のアニオン又はカチオンの選択は、その塩の溶解性の増大又は減少をもたらすことができる。
【0106】
[0112]本明細書に記載又は例示される構成成分のどの配合又は組合せも、別に示されない限り、本発明を実施するために使用することができる。
【0107】
[0113]本明細書で範囲、例えば、温度範囲、圧力範囲、時間範囲又は組成若しくは濃度範囲が与えられる場合、全ての中間範囲及び下位範囲並びに与えられるそれらの範囲内に含まれる全ての個々の値は、本開示に含まれると意図される。本明細書中の記載に含まれる任意の下位範囲、又は範囲又は下位範囲内の個々の値は、本明細書の特許請求の範囲から除外され得ることが理解される。
【0108】
[0114]本明細書で言及される全ての特許及び出版物は、本発明が属する技術分野の当業者のレベルを示すものである。本明細書で引用される参考文献は、それらを全体として参照により本明細書に組み込まれ、それらの出版日又は出願日の当該技術分野の状態を示し、この情報は、必要に応じて、先行技術に存在する特定の実施形態を除外するために、本明細書で使用され得ることが意図される。例えば、物質組成が請求される場合、本明細書で引用される参考文献で、特別の機能を与える開示が提供されている化合物を含む、出願人の発明より前の当該技術分野で公知且つ使用可能な化合物は、本明細書の物質組成の請求に含まれないと意図されることが理解されるべきである。
【0109】
[0115]本明細書で使用される場合、「~を含む(comprising)」は、「~を含む(including)」、「~を含有する」又は「~を特徴とする」と同義であり、包括的であるか、又は制限がなく、追加の列挙されていない要素又は方法ステップを除外しない。本明細書で使用される場合、「~からなる」は、特許請求の範囲の要素で特定されていない任意の要素、ステップ又は成分を除外する。本明細書で使用される場合、「~から本質的になる」は、特許請求の範囲の基礎的且つ新規の特徴に実質的に影響を与えない材料又はステップを除外しない。本明細書の各場合に、「~を含む(comprising)」、「~から本質的になる」及び「~からなる」という用語のいずれかは、他の2つの用語のいずれかと置換することができる。本明細書で例示的に記載される本発明は適切に、本明細書で特に開示されていない任意の要素(単数又は複数)、限定(単数又は複数)の非存在下で実施することができる。
【0110】
[0116]当業者は、特に例示されているもの以外の出発材料、生物学的材料、試薬、合成方法、精製方法、分析方法、アッセイ方法及び生物学的方法を、過度の実験に頼ることなく、本発明の実施において使用することができることを理解する。任意のそのような材料及び方法の全ての当該技術分野で公知の機能的均等形態は、本発明に含まれると意図される。使用された用語及び表現は、説明の用語として使用され、限定の用語としては使用されず、そのような用語及び表現の使用において、示され、説明される特徴又はその部分の任意の均等形態を除外する意図はないが、様々な変更形態が、請求される本発明の範囲内で可能であることが認識される。したがって、本発明は、好ましい実施形態により詳細に開示されたが、本明細書で開示される概念の任意選択の特徴、変更形態及び変形形態に、当業者は頼ることができ、そのような変更形態及び変形形態は、附属の特許請求の範囲により定義される本発明の範囲内であると考えられることが理解されるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭由来ポリマー物品を生成する方法であって、
400℃以下の温度で1つ又は複数の溶媒と接触させることにより石炭系原料を抽出して、抽出物及び残留物を生成するステップであって、前記抽出物が、カルボン酸基及び/又はフェノール基を含む官能基を有する分子を含有し、前記石炭系原料は、少なくとも部分的に石炭に由来する、ステップと、
前記抽出物を架橋剤との接触により反応させて、前記官能基の少なくとも一部を反応させて、前記石炭由来ポリマー物品を生成するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記反応ステップの前に、前記抽出物を前記残留物から分離するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記石炭系原料が、石炭である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記石炭由来ポリマー物品が、ポリウレタン類、ポリアミド類、及び/又はポリエステル類を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記石炭系原料が、少なくとも部分的に亜瀝青炭又はその誘導体に由来する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記石炭系原料が、物理的、熱的及び/又は化学的前処理により生成される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記1つ又は複数の溶媒が、1つ又は複数の脂肪族溶媒、芳香族溶媒、水素供与性溶媒、非極性溶媒、極性溶媒及び/又はイオン性液体溶媒を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記1つ又は複数の溶媒が、テトラリン及び/又はジメチルホルムアミドを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記反応が、前記抽出物の中間分離を伴わずに起こる、請求項1、3~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記抽出物の少なくとも一部を熱分解して熱分解生成物を生成するステップを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記残留物の少なくとも一部を熱分解して熱分解生成物を生成するステップを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記石炭由来ポリマー物品が、前記熱分解生成物を含む、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記熱分解生成物を前記架橋剤との接触により反応させて、前記石炭由来ポリマー物品を生成するステップを含む、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記架橋剤が、ジアミン架橋剤、ジオール架橋剤、及び/又はジイソシアネート架橋剤を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記架橋剤が、ジイソシアネート架橋剤である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記架橋剤が、トルエンジイソシアネート及び/又は1,6-ジイソシアナートヘキサンを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記架橋剤が、ジブチル錫ジラウレートを含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記抽出物を反応させるステップの前に、前記抽出物を石炭由来固形物と混合するステップを含み、
前記石炭由来ポリマー物品が、前記石炭由来固形物を含むポリマー複合材物品である、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記抽出物を反応させるステップが、前記石炭由来固形物をポリマーマトリックス中にトラップして、前記ポリマー複合材物品を生成するステップを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記石炭由来固形物が、電気伝導性である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記ポリマー複合材物品が、電気伝導性である、請求項18~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記石炭由来固形物が、グラフェン又はカーボンナノチューブを含む、請求項18~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記電気伝導性石炭由来固形物が、扁長又は扁円形状を有する石炭系炭素粒子を含む、請求項18~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記石炭由来固形物が、石炭チャーを含む、請求項18~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記ポリマー複合材物品が、ウレタン系ポリマー複合材である、請求項18~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記ポリマー複合材物品が、構造フォーム複合材物品である、請求項18~25のいずれか一項に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0110
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0110】
[0116]当業者は、特に例示されているもの以外の出発材料、生物学的材料、試薬、合成方法、精製方法、分析方法、アッセイ方法及び生物学的方法を、過度の実験に頼ることなく、本発明の実施において使用することができることを理解する。任意のそのような材料及び方法の全ての当該技術分野で公知の機能的均等形態は、本発明に含まれると意図される。使用された用語及び表現は、説明の用語として使用され、限定の用語としては使用されず、そのような用語及び表現の使用において、示され、説明される特徴又はその部分の任意の均等形態を除外する意図はないが、様々な変更形態が、請求される本発明の範囲内で可能であることが認識される。したがって、本発明は、好ましい実施形態により詳細に開示されたが、本明細書で開示される概念の任意選択の特徴、変更形態及び変形形態に、当業者は頼ることができ、そのような変更形態及び変形形態は、附属の特許請求の範囲により定義される本発明の範囲内であると考えられることが理解されるべきである。
(付記1)
石炭を複数の高価値石炭製品及び抽出物に変換するための方法であって、
少なくとも部分的に石炭に由来する原料を用意するステップと、
熱分解と溶媒抽出との組合せを含む前記原料を加工するステップと
を含み、
前記熱分解及び前記溶媒抽出が、複数の高価値石炭製品を生成するための条件下で統合及び実行される、方法。
(付記2)
前記高価値石炭製品の乾燥量基準で50質量%以上が、標準温度圧力で液体である、付記1に記載の方法。
(付記3)
加工する前記ステップが、高度に分岐し、且つ高度に選択的である、付記1又は2に記載の方法。
(付記4)
前記熱分解が、0.5atm~15atmの範囲から選択される圧力で行われる、付記1~3のいずれか一項に記載の方法。
(付記5)
前記熱分解が、400℃~1200℃の範囲から選択される温度で行われる、付記1~4のいずれか一項に記載の方法。
(付記6)
前記熱分解が、5秒間以下の時間行われる、付記1~5のいずれか一項に記載の方法。
(付記7)
前記熱分解が、前記溶媒抽出と統合される、付記1~6のいずれか一項に記載の方法。
(付記8)
前記熱分解が、水蒸気を除外して、25%以下の質量百分率の気体を生成する、付記1~7のいずれか一項に記載の方法。
(付記9)
前記熱分解が、水素ガス、メタン、合成ガス又はこれらの任意の組合せの存在下で行われる、付記1~8のいずれか一項に記載の方法。
(付記10)
前記熱分解が、フラッシュ熱分解である、付記1~9のいずれか一項に記載の方法。
(付記11)
前記溶媒抽出が、少なくとも1種の液体溶媒で行われる、付記1~10のいずれか一項に記載の方法。
(付記12)
前記少なくとも1種の溶媒が、脂肪族溶媒、芳香族溶媒、極性溶媒、水素供与性溶媒、イオン性液体溶媒及びこれらの任意の組合せからなる群から選択される、付記1~11のいずれか一項に記載の方法。
(付記13)
前記溶媒抽出が、少なくとも2種の液体溶媒で行われる、付記1~12のいずれか一項に記載の方法。
(付記14)
第1の溶媒が、極性溶媒であり、且つ第2の溶媒が、水素供与性溶媒であるか、又はその反対である、付記13に記載の方法。
(付記15)
前記溶媒抽出が、単一段階溶媒抽出、複数の単一段階溶媒抽出、単一の多段階溶媒抽出、複数の多段階溶媒抽出又は単一段階及び多段階溶媒抽出の組合せである、付記1~14のいずれか一項に記載の方法。
(付記16)
前記溶媒抽出が、前記少なくとも1種の溶媒の臨界温度未満の温度で行われる、付記11~15のいずれか一項に記載の方法。
(付記17)
前記溶媒抽出が、350℃以下の温度で行われる、付記1~16のいずれか一項に記載の方法。
(付記18)
前記溶媒抽出が、水蒸気を除外して、5%以下の質量百分率の気体を生成する、付記1~17のいずれか一項に記載の方法。
(付記19)
前記少なくとも1種の溶媒のうちの1種が、テトラリン(1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン)、1-メチル-ナフタレン、トルエン、ジメチルホルムアミド(DMF)又はこれらの任意の組合せを含む、付記11~18のいずれか一項に記載の方法。
(付記20)
前記溶媒抽出が、前記熱分解の上流で行われる、付記1~19のいずれか一項に記載の方法。
(付記21)
前記熱分解が、前記溶媒抽出の上流で行われる、付記1~20のいずれか一項に記載の方法。
(付記22)
前記熱分解ステップの生成物の一部が、前記溶媒抽出に再利用される、付記1~21のいずれか一項に記載の方法。
(付記23)
前記加工ステップが、複数の溶媒抽出を含み、且つ後の溶媒抽出からの生成物が、先の溶媒抽出又は前記熱分解に再利用されるか、又は上流のさらなる加工のための中間体として使用される、付記22に記載の方法。
(付記24)
少なくとも部分的に石炭に由来する前記原料が、90重量%以上の未精製石炭である、付記1~23のいずれか一項に記載の方法。
(付記25)
前記未精製石炭が、加工する前記ステップの前に物理、化学又は熱的に前加工される、付記24に記載の方法。
(付記26)
前記原料の一部が、前記熱分解、前記溶媒抽出からの1つ若しくは複数の生成物流、再利用流又はこれらの組合せである、付記1~25のいずれか一項に記載の方法。
(付記27)
少なくとも部分的に石炭に由来する前記原料が、亜瀝青炭を含む、付記1~26のいずれか一項に記載の方法。
(付記28)
少なくとも部分的に石炭に由来する前記原料が、切込炭に由来する、付記1~27のいずれか一項に記載の方法。
(付記29)
前記高価値石炭製品が、10%以下の燃料製品を含む、付記1~28のいずれか一項に記載の方法。
(付記30)
前記高価値石炭製品が、ポリマー又はポリマー前駆体を含む、付記1~29のいずれか一項に記載の方法。
(付記31)
前記高価値石炭製品が、ポリウレタンを含む、付記1~30のいずれか一項に記載の方法。
(付記32)
前記高価値石炭製品が、複合ポリウレタンフォームを含む、付記1~31のいずれか一項に記載の方法。
(付記33)
前記高価値石炭製品が、ポリアミド類を含む、付記1~32のいずれか一項に記載の方法。
(付記34)
前記高価値石炭製品が、ポリエステル類を含む、付記1~33のいずれか一項に記載の方法。
(付記35)
前記高価値石炭製品が、接着剤を含む、付記1~34のいずれか一項に記載の方法。
(付記36)
前記高価値石炭製品が、芳香族化合物を含む、付記1~35のいずれか一項に記載の方法。
(付記37)
前記高価値石炭製品が、ベンゼン、トルエン、キシレン、フェノール類、クレゾール類、キシレノール酸類、ナフテノール(naphthenol)類、C9単環芳香族化合物、C10単環芳香族異性体又はこれらの任意の組合せを含む、付記36に記載の方法。
(付記38)
前記高価値石炭製品が、パラフィン類、オレフィン類又はこれらの組合せを含む、付記1~37のいずれか一項に記載の方法。
(付記39)
前記高価値石炭製品が、アスファルテン類を含む、付記1~38のいずれか一項に記載の方法。
(付記40)
前記高価値石炭製品が、コールタール、留出物、ピッチ、炭素繊維又はこれらの任意の組合せを含む、付記1~39のいずれか一項に記載の方法。
(付記41)
前記高価値石炭製品が、土壌改良材を含む、付記1~40のいずれか一項に記載の方法。
(付記42)
前記高価値石炭製品が、建材を含む、付記1~41のいずれか一項に記載の方法。
(付記43)
前記高価値石炭製品のかなりの部分が、固形物である、付記1~42のいずれか一項に記載の方法。
(付記44)
付記1~43のいずれか一項に記載の方法により生成される樹脂、液体又は他の副生成物を組み合わせた場合、前記固形物を、建築材、複合材、液体添加剤又はこれらの任意の組合せに変換することができる、付記43に記載の方法。
(付記45)
前記抽出物が、金属及び希土類元素を含み得る、付記44に記載の方法。
(付記46)
石炭を複数の高価値石炭製品に変換するための方法であって、
少なくとも部分的に石炭に由来する主原料を用意するステップと;
前記主原料を加工するステップであり、前記加工の順序が、
10秒間以下の時間行われ、水素リッチ雰囲気において行われる熱分解ステップ;及び
少なくとも1種の液体溶媒で行われ、前記液体溶媒が極性溶媒、水素供与性溶媒及びこれらの任意の組合せからなる群から選択される、溶媒抽出ステップ
である、ステップと
を含み、
前記熱分解ステップが前記主原料について行われる第1のプロセスステップであり、前記溶媒抽出ステップが前記熱分解ステップから生成した固形チャーについて行われる第2のプロセスステップであり、
前記熱分解ステップ及び前記溶媒抽出ステップが複数の高価値石炭製品を生成するための条件下で統合及び実行される、方法。
(付記47)
前記熱分解ステップが、フラッシュ熱分解プロセスである、付記46に記載の方法。
(付記48)
前記溶媒ステッププロセスが、単一段階溶媒抽出、複数の単一段階溶媒抽出、単一の多段階溶媒抽出、複数の多段階溶媒抽出又は単一段階及び多段階溶媒抽出の組合せである、付記46又は47に記載の方法。
(付記49)
前記溶媒抽出ステップが、2種以上の溶媒を使用する、付記46~48のいずれか一項に記載の方法。
(付記50)
前記原料を加工するステップが、前記熱分解ステップ後、前記溶媒抽出ステップ後又は複数の溶媒抽出の間に行われる、1つ又は複数の分離ステップをさらに含む、付記46~49のいずれか一項に記載の方法。
【外国語明細書】