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特開2024-112994リチウムイオン電池用のアルミニウムアノード集電体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112994
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池用のアルミニウムアノード集電体
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/66 20060101AFI20240814BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240814BHJP
【FI】
H01M4/66 A
H01M10/052
【審査請求】有
【請求項の数】44
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024088018
(22)【出願日】2024-05-30
(62)【分割の表示】P 2022550169の分割
【原出願日】2021-03-08
(31)【優先権主張番号】62/987,103
(32)【優先日】2020-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/107,289
(32)【優先日】2020-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】506110243
【氏名又は名称】ノベリス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NOVELIS INC.
(71)【出願人】
【識別番号】505477235
【氏名又は名称】ジョージア テック リサーチ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】マジュンダル,ディプタルカ
(72)【発明者】
【氏名】スンダラム,ベンカテシュ
(72)【発明者】
【氏名】マクドウェル,マシュー
(72)【発明者】
【氏名】キンテロ コルテス,フランシスコ ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】カン・デフン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電気化学セルなどの電極で使用されるアルミニウム集電体を提供する。
【解決手段】説明されているのは、保護蒸着層とも呼ばれる、伝導性コーティングを有するアルミニウム合金層を含む基板である。伝導性コーティングは、電子のアルミニウム合金への透過を可能にしながら、特定の材料がアルミニウム合金層と接触するのを防止することができる。基板は、例えば、電池、電気化学セル、コンデンサ、スーパーコンデンサ等用の集電体または電極等の電子機器用途で使用され得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム合金層と、
アルミニウム合金層と接触している伝導性保護層
を含む、基板。
【請求項2】
伝導性保護層が、アルミニウム合金層へのリチウム原子またはリチウムイオンの透過を防止する、請求項1に記載の基板。
【請求項3】
伝導性保護層に、リチウム原子またはリチウムイオンのアルミニウム合金層への透過を可能にする欠陥がない、または実質的にない、請求項1に記載の基板。
【請求項4】
伝導性保護層に、アルミニウム合金層に面する伝導性保護層の表面と、伝導性保護層の反対側の表面との間に広がる欠陥がない、または実質的にない、請求項1に記載の基板。
【請求項5】
伝導性保護層が、アルミニウム合金層にコーティングを含む、請求項1に記載の基板。
【請求項6】
伝導性保護層が、アルミニウム合金層の全てまたは一部をコーティングする、請求項1に記載の基板。
【請求項7】
アルミニウム合金層が、伝導性保護層にコーティングを含む、請求項1に記載の基板。
【請求項8】
伝導性保護層が、アルミニウム合金層の全てまたは一部を覆う完全なカプセル化層を含む、請求項5に記載の基板。
【請求項9】
伝導性保護層が、リチウムと合金化しない材料を含む、請求項1に記載の基板。
【請求項10】
伝導性保護層が、リチウムと合金化する材料を含まない、請求項1に記載の基板。
【請求項11】
伝導性保護層がアルミニウム、亜鉛、マグネシウム、シリコン、ゲルマニウム、スズ、インジウム、アンチモン、または炭素を含まない、請求項1に記載の基板。
【請求項12】
伝導性保護層が70重量%以上の純度を有する、請求項1に記載の基板。
【請求項13】
伝導性保護層が、Li/Liに対して0V~5Vの電位でリチウムと反応しない材料を含む、請求項1に記載の基板。
【請求項14】
伝導性保護層が、チタン、クロム、鉄、ニッケル、モリブデン、タングステン、銅、または窒化チタンの1つまたは複数を含む、請求項1に記載の基板。
【請求項15】
伝導性保護層が複合構造を含む、請求項1に記載の基板。
【請求項16】
複合構造が少なくとも第1の副層及び第2の副層を含み、第1の副層及び第2の副層が同じ材料または異なる材料を含む、請求項15に記載の基板。
【請求項17】
複合材料の1つまたは複数の副層が、それぞれ独立して70重量%以上の純度を有する、請求項15に記載の基板。
【請求項18】
伝導性保護層が、物理蒸着層、スパッタ蒸着層、気化蒸着層、化学蒸着層、電着蒸着層、電気めっき層、化学気相蒸着層、または原子層蒸着層を含む、請求項1に記載の基板。
【請求項19】
伝導性保護層が、結晶構造または多結晶構造を含む、請求項1に記載の基板。
【請求項20】
伝導性保護層が、30重量%以下の酸素含有量を有する、請求項1に記載の基板。
【請求項21】
伝導性保護層が、1重量%以下の不純物含有量を有する金属層を含む、請求項1に記載の基板。
【請求項22】
伝導性保護層が、10S/m~10S/mの導電率または10-8Ω・m~10-6Ω・mの電気抵抗率を有する、請求項1に記載の基板。
【請求項23】
伝導性保護層が10nm~100μmまたは1μm~500μmの厚さを有する、請求項1に記載の基板。
【請求項24】
伝導性保護層が金属もしくは金属合金シートまたは金属もしくは金属合金箔である、請求項1に記載の基板。
【請求項25】
伝導性保護層が第1の箔を含み、アルミニウム合金層が第2の箔を含み、第1の箔と第2の箔が互いに結合される、請求項1に記載の基板。
【請求項26】
アルミニウム合金層が、アルミニウム合金シートまたはアルミニウム合金箔を含む、請求項1に記載の基板。
【請求項27】
アルミニウム合金層が10nm~100μmまたは1μm~500μmの厚さを有する、請求項1に記載の基板。
【請求項28】
電子基板を含むか、または電子基板に対応する、請求項1に記載の基板。
【請求項29】
集電体を含むか、または集電体に対応する、請求項1に記載の基板。
【請求項30】
電気化学セル、コンデンサ、またはスーパーキャパシタ用の集電体を含むか、または集電体に対応する、請求項1に記載の基板。
【請求項31】
リチウムイオン電気化学セル用の集電体を含むか、または集電体に対応する、請求項1に記載の基板。
【請求項32】
アノード集電体もしくはカソード集電体を含むか、またはアノード集電体もしくはカソード集電体に対応する、請求項1に記載の基板。
【請求項33】
アルミニウム合金層であって、電極用の集電体に対応するアルミニウム合金層と、
アルミニウム合金層と接触している伝導性保護層と、
伝導性保護層と接触している電極活物質
を含む、デバイス。
【請求項34】
電気化学セル電極を含むか、または電気化学セル電極に対応する、請求項33に記載のデバイス。
【請求項35】
電極活物質がリチウムイオンカソード活物質またはリチウムイオンアノード活物質を含む、請求項33に記載のデバイス。
【請求項36】
電気化学セルもしくは電池を含むか、または電気化学セルもしくは電池に対応する、請求項33に記載のデバイス。
【請求項37】
アルミニウム合金層、伝導性保護層、及び電極活物質が、第1の電気化学セル電極を含むか、または第1の電気化学セル電極に対応し、デバイスが、
第2の電気化学セル電極と、
第1の電気化学セル電極と第2の電気化学セル電極との間に配置された電解質と
をさらに含む、請求項33に記載のデバイス。
【請求項38】
第1の電気化学セル電極または第2の電気化学セル電極と直接的または間接的に電気通信し、第1の電気化学セル電極または第2の電気化学セル電極から電流を引き出すもしくは受け取る電子機器回路
をさらに備える、請求項37に記載のデバイス。
【請求項39】
携帯用電子機器を備えるか、または携帯用電子機器に対応する、請求項33に記載のデバイス。
【請求項40】
アルミニウム合金層及び伝導性保護層が、請求項1~32のいずれかに記載の基板を含むか、または基板に対応する、請求項33に記載のデバイス。
【請求項41】
アルミニウム合金層を提供することと、
アルミニウム合金層を伝導性保護層と接触させることと
を含む、基板を製造する方法。
【請求項42】
接触させることが、物理蒸着プロセス、スパッタ蒸着プロセス、気化蒸着プロセス、化学蒸着プロセス、電着プロセス、電気めっきプロセス、化学気相蒸着プロセス、または原子層蒸着プロセスの1つまたは複数を使用して、アルミニウム合金層にコーティングとして伝導性保護層を蒸着させることを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
接触させることが、複数の別々のコーティングプロセスとして伝導性保護層を蒸着させることを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
伝導性保護層が複合構造を含み、接触させることが、
アルミニウム合金層に第1の副層を蒸着させることと、
第1の副層に第2の副層を蒸着させることと
を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
接触させることが、物理蒸着プロセス、スパッタ蒸着プロセス、気化蒸着プロセス、化学蒸着プロセス、電着プロセス、電気めっきプロセス、化学気相蒸着プロセス、または原子層蒸着プロセスの1つまたは複数を使用して、伝導性保護層にコーティングとしてアルミニウム合金層を蒸着させることを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
アルミニウム合金層がアルミニウム合金箔を含み、伝導性保護層がアルミニウム合金箔にコーティングを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項47】
伝導性保護層が、金属または金属合金箔を含み、アルミニウム合金層が金属または金属合金箔にコーティングを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項48】
アルミニウム合金層が第1の箔を含み、伝導性保護層が第2の箔を含み、接触させることが、第1の箔及び第2の箔を結合することを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項49】
基板が、請求項1~32のいずれかに記載の基板を含む、請求項41に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年3月9日に出願された米国仮特許出願第62/987,103号、及び2020年10月29日に出願された米国仮特許出願第63/107,289号の優先権及び利益を主張し、それらの全体は参照として本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、電気化学セル用の集電体に関し、より具体的には電気化学セルの電極で使用されるアルミニウム集電体に関する。
【背景技術】
【0003】
従来のリチウムイオン電池では、アノード集電体として銅が使用され、カソード集電体としてアルミニウムが使用される。アルミニウムは、アノード電位でのリチウムによるアルミニウムの反応性の合金化のため、一般にリチウムイオン電池のアノード側の集電体として使用することはできない。リチウムイオン電池でアルミニウムをアノード集電体として使用する場合、進歩が必要とされる。
【発明の概要】
【0004】
実施形態という用語及び同様の用語は広義には、本開示の主題の全て及び以下の特許請求の範囲を指すものとする。これらの用語を含む記述は、本明細書に記載された主題を限定するものでもなく、以下の特許請求の範囲の意味または範囲を限定するものでもないと理解されるべきである。本明細書で網羅される本開示の実施形態は、この発明の概要ではなく、以下の特許請求の範囲によって定義される。この発明の概要は、開示の様々な態様の高レベルの概要であり、以下の発明を実施するための形態の節でさらに説明される概念のいくつかを紹介する。この発明の概要は、特許請求された主題の重要な、または本質的な特徴を特定することを意図しておらず、また、特許請求された主題の範囲を決定するために単独で使用されることも意図されていない。この主題は、本開示の明細書全体、任意または全ての図面、及び各請求項の適切な部分を参照することによって理解されるべきである。
【0005】
本明細書に説明されるのは、電子基板、電池電極、電池集電体、コンデンサ電極、コンデンサ集電体等の用途に有用なアルミニウム合金ベースの基板である。いくつかの例では、基板はアルミニウム合金層を含み、伝導性保護層(導電性保護層)はアルミニウム合金層と接触している。
【0006】
伝導性保護層(導電性保護層)は、伝導性保護層の外部からアルミニウム合金層への電子の透過を可能にし得、それ以外の場合、下にあるアルミニウム合金層を、腐食条件、破壊条件にさらされること、非導電性にされること、またはアルミニウム合金層を腐食、破壊、または非導電性にする場合がある材料との接触から保護するのに役立ち得る。いくつかの例では、伝導性保護層は、10S/m~10S/mの導電率、または10Ω・m~10Ω・mの電気抵抗率を有する場合がある。伝導性保護層は、例えば、リチウム原子またはリチウムイオンのアルミニウム合金層への透過を防止し得る。導電層には、アルミニウム合金層へのリチウム原子またはリチウムイオンの透過を可能にする欠陥がないか、または実質的にない場合がある。例えば、伝導性保護層には、アルミニウム合金層に面する伝導性保護層の表面と伝導性保護層の反対側の表面との間に広がる欠陥がないか、または実質的にない場合がある。伝導性保護層が、アルミニウム合金層にコーティングを含む場合がある、またはアルミニウム合金層が、伝導性保護層にコーティングを含む場合がある。伝導性保護層は、構成に応じて、アルミニウム合金層の全てまたは一部のみをコーティングする場合がある。例えば、いくつかの場合、伝導性保護層は、アルミニウム合金層の全てまたは一部を覆う完全なカプセル化層を含む場合がある。他の場合、伝導性保護層は、アルミニウム合金層の一部を覆い得、アルミニウム合金層は、例えば外部回路と接触するために等、伝導性保護層からまたは伝導性保護層を超えて広がる場合がある。
【0007】
伝導性保護層は導電性でありうるが、全ての導電性材料が伝導性保護層として有用であるとは限らない。例えば、アルミニウムの伝導性保護層は、下にあるアルミニウム合金層の適切な保護を提供しない場合がある。いくつかの例では、伝導性保護層は、リチウムと合金化しない材料を含む。別の言い方をすれば、いくつかの実施形態では、伝導性保護層は、リチウムと合金化する材料を含まない。例えば、様々な実施形態では、伝導性保護層は、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、シリコン、ゲルマニウム、スズ、インジウム、アンチモン、または炭素を含まない。任意選択で、伝導性保護層は、例えば、0V~1V、1V~2V、2V~3V、3V~3.2V、3.2V~4V、または4V~5 V(Li/Liに対して全て)の電位で等、Li/Liに対して0V~5Vの電位でリチウムと反応しない材料を含む。いくつかの例では、伝導性保護層は、チタン、クロム、鉄、ニッケル、モリブデン、タングステン、銅、または窒化チタンの1つまたは複数を含む。
【0008】
そのように限定されないが、伝導性保護層は、例えば71重量%以上、72重量%以上、73重量%以上、74重量%以上、74重量%以上、75重量%以上、76重量%以上、77重量%以上、78重量%以上、79重量%以上、80重量%以上、81重量%以上、82重量%以上、83重量%以上、84重量%以上、85重量%以上、86重量%以上、87重量%以上、88重量%以上、89重量%以上、90重量%以上、91重量%以上、92重量%以上、93重量%以上、94重量%以上、95重量%、96重量%以上、97重量%以上、98重量%以上、99重量%以上、99.9重量%以上、または99.99重量%以上等、70重量%以上の純度を有し得る。伝導性保護層は、30重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、15重量%以下、10重量%以下、9重量%以下、8重量%以下、7重量%以下、6重量%以下、5重量%以下、4重量%以下、3重量%以下、2重量%、1重量%以下、0.1重量%以下、または0.01重量%以下の不純物含有量を有する金属層を含み得る。いくつかの構成では、伝導性保護層内の酸素の量を制限することが望ましい場合がある。例示的な伝導性保護層は、30重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、15重量%以下、10重量%以下、9重量%以下、8重量%以下、7重量%以下、6重量%以下、5重量%以下、4重量%以下、3重量%以下、2重量%、1重量%以下、0.1重量%以下、または0.01重量%以下の酸素含有量を含み得る。
【0009】
伝導性保護層は、例えば伝導性保護層が互いに接触して配置された2つ以上の異なる材料から成る等、任意選択で複合構造を含み得る。いくつかの例では、伝導性保護層は、各副層が他の層とは異なる場合がある複数の副層を含み得る。そのような伝導性保護層の副層のそれぞれは、独立して、他の副層とは異なる純度を有し得る。任意選択で、複合構造は、少なくとも第1の副層及び第2の副層を含み、第1の副層及び第2の副層は、同じ材料または異なる材料を含む。任意選択で、各副層は、独立して、70重量%以上、75重量%以上、または80重量%以上の純度を有する。
【0010】
任意選択で、アルミニウム合金層は、任意の適切な技術を使用して伝導性保護層に生成され得る。アルミニウム合金層の例は、物理蒸着層、スパッタ蒸着層、気化蒸着層、化学蒸着層、電着蒸着層、電気めっき層、化学気相蒸着層、または原子層蒸着層を含むが、これらに限定されない。任意選択で、アルミニウム合金層は、結晶構造または多結晶構造を含む。任意選択で、アルミニウム合金層は、金属または金属合金箔を含む伝導性保護層を覆う蒸着コーティングを含む。
【0011】
任意選択で、伝導性保護層は、任意の適切な技術を使用してアルミニウム合金層に生成され得る。伝導性保護層の例は、物理蒸着層、スパッタ蒸着層、気化蒸着層、化学蒸着層、電着蒸着層、電気めっき層、化学気相蒸着層、または原子層蒸着層を含むが、これらに限定されない。任意選択で、伝導性保護層は、結晶構造または多結晶構造を含む。任意選択で、伝導性保護層は、アルミニウム合金箔を含むアルミニウム合金層を覆う蒸着コーティングを含む。
【0012】
伝導性保護層またはその1つまたは複数の副層は、適切な伝導率及び保護を提供するために任意の適切な厚さを有し得る。例えば、伝導性保護層またはその1つまたは複数の副層は、例えば10nm~50nm、10nm~100nm、10nm~1μm、10nm~5μm、10nm~10μm、10nm~50μm、10nm~100μm、50nm~100nm、50nm~500nm、50nm~1μm、50nm~5μm、50nm~10μm、50nm~50μm、50nm~100μm、100nm~500nm、100nm~1μm、100nm~5μm、100nm~10μm、100nm~50μm、100nm~100μm、500nm~1μm、500nm~5μm、500nmnm~10μm、500nm~50μm、500nm~100μm、1μm~5μm、1μm~10μm、1μm~50μm、1μm~100μm、5μm~10μm、5μm~50μm、5μm~100μm、10μm~50μm、10μm~100μm、または50μm~100μm等、約10nm~約100μmの厚さを有し得る。任意選択で、伝導性保護層は、例えば1μm~2μm、1μm~5μm、1μm~10μm、1μm~20μm、1μm~50μm、1μm~100μm、1μm~200μm、1μm~500μm、2μm~5μm、2μm~10μm、2μm~20μm、2μm~50μm、2μm~100μm、2μm~200μm、2μm~500μm、5μm~10μm、5μm~20μm、5μm~50μm、5μm~100μm、5μm~200μm、5μm~500μm、10μm~20μm、10μm~50μm、10μm~100μm、10μm~200μm、10μm~500μm、20μm~50μm、20μm~100μm、20μm~200μm、20μm~500μm、50μm~100μm、50μm~200μm、50μm~500μm、100μm~200μm、100μm~500μm、または200μm~500μm等、約1μm~約500μmの厚さを有し得る。
【0013】
アルミニウム合金は、本明細書で提供される基板の構成要素として有用であり得る。いくつかの場合、アルミニウム合金は、そのような材料が良好な電子伝導率、重量、及び他の材料特性(例えば、強度、展性等)を示し得るため、有利であり得る。これらの利点にも関わらず、アルミニウムは、リチウムイオン電池におけるアノード条件下で腐食、合金化、またはそれ以外の場合、損傷もしくは破壊される可能性があるため、アルミニウム合金は一般に現在の最先端技術のリチウムイオン電池ではアノード集電体として使用されない。
【0014】
しかしながら、本開示では、アルミニウム合金を使用することができる。いくつかの例では、アルミニウム合金層は、アルミニウム合金シートまたはアルミニウム合金箔を含み得る。アルミニウム合金層は、任意の適切な厚さまたは横方向の寸法を有し得る。いくつかの場合、アルミニウム合金シートまたはアルミニウム合金箔のような比較的薄い製造物が使用され得るか、またはアルミニウム合金シートやアルミニウム合金プレートのような厚い製造物よりも好まれる場合もある。これらのより厚い製造物は、シートまたは箔よりも著しく優れた導電率を提供しない可能性があるが、より多くの空間を占有し、より重量があるためである。しかしながら、いくつかの場合、アルミニウム合金板またはアルミニウム合金シートがアルミニウム合金層に使用される場合がある。いくつかの例では、アルミニウム合金層は、例えば1μm~2μm、1μm~5μm、1μm~10μm、1μm~20μm、1μm~50μm、1μm~100μm、1μm~200μm、1μm~500μm、2μm~5μm、2μm~10μm、2μm~20μm、2μm~50μm、2μm~100μm、2μm~200μm、2μmμm~500μm、5μm~10μm、5μm~20μm、5μm~50μm、5μm~100μm、5μm~200μm、5μm~500μm、10μm~20μm、10μm~50μm、10μm~100μm、10μm~200μm、10μm~500μm、20μm~50μm、20μm~100μm、20μm~200μm、20μm~500μm、50μm~100μm、50μm~200μm、50μm~500μm、100μm~200μm、100μm~500μm、または200μm~500μm等、約1μm~約500μmの厚さを有し得る。任意選択で、アルミニウム合金層は、例えば10nm~50nm、10nm~100nm、10nm~1μm、10nm~5μm、10nm~10μm、10nm~50μm、10nm~100μm、50nm~100nm、50nm~500nm、50nm~1μm、50nm~5μm、50nm~10μm、50nm~50μm、50nm~100μm、100nm~500nm、100nm~1μm、100nm~5μm、100nm~10μm、100nm~50μm、100nm~100μm、500nm~1μm、500nm~5μm、500nm~10μm、500nm~50μm、500nm~100μm、1μm~5μm、1μm~10 μm、1μm~50μm、1μm~100μm、5μm~10μm、5μm~50μm、5μm~100μm、10μm~50μm、10μm~100μm、または50μm~100μm等、約10nm~約100μmの厚さを有し得る。
【0015】
いくつかの場合、例えば第1の箔及び第2の箔が互いに結合される場合等、伝導性保護層は第1の箔を含み得、アルミニウム合金層は第2の箔を含み得る。
【0016】
実施形態では、基板は電子基板を含むか、またはそれに対応し得る。実施形態では、基板は、集電体を含むか、またはそれに対応し得る。実施形態では、基板は、電気化学セル、コンデンサ、またはスーパーキャパシタ用の集電体を含むか、またはそれに対応し得る。実施形態では、基板は、リチウムイオン電気化学セル用の集電体を含むか、またはそれに対応し得る。実施形態では、基板は、アノード集電体またはカソード集電体を含むか、またはそれに対応し得る。
【0017】
例えば、本明細書に説明されているそれらの基板のいずれか等の基板を含むデバイス等のデバイスも本明細書に説明されている。いくつかの例では、デバイスは、例えば電極用の集電体に対応するアルミニウム合金層等のアルミニウム合金層、アルミニウム合金層と接触する伝導性保護層、及び伝導性保護層と接触する電極活物質を含む。そのようなデバイスは、電気化学セル電極を含むか、またはそれに対応し得る。任意選択で、電極活物質は、リチウムイオンカソード活物質またはリチウムイオンアノード活物質を含む。任意選択で、デバイスは、電気化学セルまたは電池を含むか、またはそれに対応し得る。
【0018】
いくつかの例では、アルミニウム合金層、伝導性保護層、及び電極活物質は第1の電気化学セル電極を含むか、またはそれに対応し、デバイスは、第2の電気化学セル電極、及び第1の電気化学セル電極と第2の電気化学セル電極との間に配置された電解質をさらに含み得る。このようにして、デバイスは、任意選択で電気化学セルに対応し得る。
【0019】
任意選択で、デバイスは、第1の電気化学セル電極または第2の電気化学セル電極と直接的または間接的に電気通信し、第1の電気化学セル電極または第2の電気化学セル電極から電流を引き出すもしくは受け取る電子機器回路をさらに含み得る。例えば、デバイスは、携帯用電子機器を含み得るか、またはそれに対応し得る。
【0020】
別の態様では、例えば基板、集電体、電極、または電気化学セルを製造するための方法等の方法が本明細書に説明されている。本態様の例示的な方法は、アルミニウム合金層を提供すること、及びアルミニウム合金層を伝導性保護層と接触させるか、または伝導性保護層を提供すること、及び伝導性保護層をアルミニウム合金層と接触させることを含む。接触させることは、物理蒸着プロセス、スパッタ蒸着プロセス、気化蒸着プロセス、化学蒸着プロセス、電着プロセス、電気めっきプロセス、化学気相蒸着プロセス、または原子層蒸着プロセスの1つまたは複数を使用して、伝導性保護層またはアルミニウム合金層を蒸着させることを含み得る。いくつかの場合、接触させることは、例えば同じである場合もあれば、異なる場合もある第1のコーティングプロセス及び第2のコーティングプロセス等の複数の別々のコーティングプロセスを含み得る。一例では、第1のコーティングプロセスは気化蒸着プロセスを含み得、第2のコーティングプロセスはスパッタ蒸着プロセスを含み得る。別の例では、第1のコーティングプロセスはスパッタ蒸着プロセスを含み得、第2のコーティングプロセスは気化蒸着プロセスを含み得る。そのような技術は、アルミニウム合金箔を含むアルミニウム合金層にコーティングとして伝導性保護層を形成するために、または金属もしくは金属合金箔を含む伝導性保護層にコーティングとしてアルミニウム合金層を形成するために有用であり得る。一例では、伝導性保護層は第1の箔を含み、アルミニウム合金層は第2の箔を含み、接触させることは第1の箔及び第2の箔を結合することを含み得る。
【0021】
いくつかの例では、伝導性保護層は複合構造を含む。いくつかの例では、アルミニウム合金層をコーティングすることは、アルミニウム合金層に第1の副層を蒸着させること、及び第1の副層に第2の副層を蒸着させることを含む。
【0022】
本態様の方法によって製造された基板は、本明細書に説明される基板のいずれかを含み得る。
【0023】
他の目的及び利点は、非限定的な例の以下の詳細な説明から明らかになる。
【0024】
本明細書は、以下の添付の図を参照しており、異なる図中での同様の参照番号の使用は、同様のまたは類似の構成要素を例示することを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】A及びBは、アルミニウム合金層及び伝導性保護層を含む例示的な基板の概略断面図を示す。
【0026】
図2】A及びBは、アルミニウム合金層、及び複合構造を有する伝導性保護層を含む例示的な基板の概略断面図を示す。
【0027】
図3】例示的な電気化学セル電極の概略断面図を示す。
【0028】
図4】A及びBは、例示的な電気化学セルの概略断面図を示す。
【0029】
図5A】作用電極としてのアルミニウム箔上の伝導性保護層として異なる材料を使用したリチウム半電池のサイクリックボルタモグラムを示す。
図5B】作用電極としてのアルミニウム箔上の伝導性保護層として異なる材料を使用したリチウム半電池のサイクリックボルタモグラムを示す。
図5C】作用電極としてのアルミニウム箔上の伝導性保護層として異なる材料を使用したリチウム半電池のサイクリックボルタモグラムを示す。
【0030】
図6】いくつかの例による、Cu及び裸Alと比較した、Al上のFe保護層の挙動を示すデータ及び写真を示す。
【0031】
図7】いくつかの例による、電気化学的試験の前後のスパッタリングされたFe膜の走査型電子顕微鏡画像を示す。
【0032】
図8】いくつかの例による、浸水したセル構成、セル写真、ならびに電流及び電荷密度の変化を示すデータを示している。
【0033】
図9】いくつかの例による、様々な電気化学セルにおける電流密度の変化に対するエポキシの影響を示すデータ及び写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本明細書に説明されているのは、特定の材料がアルミニウム合金層と接触するのを防止することができる導電性コーティングまたは保護蒸着層と接触しているアルミニウム合金層を含む基板である。基板は、例えば、電池、電気化学セル、コンデンサ、スーパーキャパシタ等用の集電体または電極等の電子機器用途で使用され得る。
【0035】
リチウムまたはリチウムイオン電池という観点から、アルミニウムはカソード側の集電体として一般に使用されている。アルミニウムの軽量化、低コスト化、及び良好な導電率にも関わらず、通常、銅がアノード側の集電体として使用される。銅は、一般にアノード電位で非反応性であり、良好な導電率を提供するため、一般に、銅がアノード側の集電体として使用される。他方、アルミニウムは、アノード側で共通の電位で反応性である可能性があり、その結果、リチウムによるアルミニウムの合金化が起こり、これにより、そのようなアルミニウムアノード集電体は、アルミニウムアノード集電体を有する電池を動作不可にするであろうレベルまで劣化するか、または損傷を受ける。いくつかの場合、カソード集電体として使用されるアルミニウムは、通常は、電池の操作性に影響を与えない場合がある少量であっても、何らかの腐食または劣化を受ける可能性がある。
【0036】
これらの難題にも関わらず、アルミニウムは、電気化学セルのカソード側及びアノード側の集電体として使用することができる。アルミニウム集電体は、アルミニウムを覆う伝導性保護層を設けること、アルミニウムがアノード活物質でリチウムと接触するのを防止もしくは遮断すること、またはそれ以外の場合、重量を減らし、全体的な良好な安定性及び循環性を達成しながらも、アルミニウム層の腐食、劣化、もしくは合金化を防止もしくは制限することによって達成可能である。
定義及び説明:
【0037】
本明細書で使用される場合、「発明」、「本発明(the invention)」、「本発明(this invention)」、及び「本発明(the present invention)」という用語は、本特許出願の主題及び以下の特許請求の範囲の全てを広く指すことが意図される。これらの用語を含む記述は、本明細書で説明されている主題を制限するもの、または以下の特許請求の範囲の意味もしくは範囲を制限するものではないと理解されるべきである。
【0038】
本明細書において、例えば「シリーズ」または「1xxx」等の、AA番号及び他の関連する記号によって特定される合金に対する言及がなされる場合がある。アルミニウム及びその合金の命名及び特定において最も一般的に使用されている番号指定システムの理解のため、“International Alloy Designations and Chemical Composition Limits for Wrought Aluminum and Wrought Aluminum Alloys”または“Registration Record of Aluminum Association Alloy Designations and Chemical Compositions Limits for Aluminum Alloys in the Form of Castings and Ingot”(いずれもアルミニウム協会によって発行されている)を参照されたい。
【0039】
本明細書で使用される場合、プレートは一般に、約15mmを超える厚さを有する。例えば、プレートは、約15mmを超える、約20mmを超える、約25mmを超える、約30mmを超える、約35mmを超える、約40mmを超える、約45mmを超える、約50mmを超える、または約100mmを超える厚みを有するアルミニウム製造物を指し得る。
【0040】
本明細書で使用される場合、シェート(shate)(シートプレートとも称される)は通常、約4mm~約15mmの厚さを有する。例えば、シェートは、約4mm、約5mm、約6mm、約7mm、約8mm、約9mm、約10mm、約11mm、約12mm、約13mm、約14mm、または約15mmの厚さを有し得る。
【0041】
本明細書で使用される場合、シートは一般に、約4mm未満の厚みを有するアルミニウム合金製造物を指す。例えば、シートは、約4mm未満、約3mm未満、約2mm未満、約1mm未満、約0.5mm未満、または約0.3mm未満、(例えば、約0.2mm)の厚みを有し得る。用語シートはまた、例えば、約1μm~約500μm等、最大500μmの厚さを有し得る箔と称される場合があるアルミニウム合金製造物を含む。
【0042】
本明細書で使用される場合、「鋳造金属製造物」、「鋳造製造物」、「鋳造アルミニウム合金製造物」等の用語は、互換可能であり、直接チル鋳造(直接チル共流延を含む)または半連続鋳造、連続鋳造(例えば、双ベルト鋳造機、双ロール鋳造機、ブロック鋳造機、または他の任意の鋳造機の使用によるものを含む)、電磁鋳造、ホットトップ鋳造、または他の任意の鋳造法によって製造された製造物を指す。
【0043】
本明細書に開示する範囲は全て、それらに包含される任意のあらゆる部分的な範囲を包含すると理解されるべきである。例えば、記載された範囲「1~10」は、最小値1と最大値10の間の(かつこれらを含む)ありとあらゆる部分的な範囲を含むと考えられるべきであり、すなわち、全ての部分的な範囲は、1以上の最小値、例えば、1~6.1から始まり、かつ、10以下の最大値、例えば、5.5~10で終わる。特に明記しない限り、元素の組成量を指す場合の「最大」という表現は、その元素が任意であり、その特定の元素のゼロパーセント組成を含むことを意味する。特に明記されていない限り、全ての組成パーセンテージは重量パーセント(wt.%)である。
【0044】
本明細書で使用される場合、「a」、「an」及び「the」の意味には、文脈が別段明らかに示さない限り、単数及び複数の言及が含まれる。
【0045】
アルミニウム合金製造物を製造する方法
例えば、アルミニウムシートメタル及びアルミニウム箔等の本明細書に説明されるアルミニウム合金製造物は、当業者に既知の任意の適切な鋳造方法を使用して作成することができる。いくつかの非限定的な例として、鋳造プロセスは、直接チル(DC)鋳造プロセスまたは連続鋳造(CC)プロセスを含む場合がある。連続鋳造システムは、一対の可動対向鋳造面(例えば、可動対向ベルト、ロールまたはブロック)、一対の可動対向鋳造面間の鋳造キャビティ、及び溶融金属インジェクタを含むことができる。溶融金属インジェクタは、溶融金属が溶融金属インジェクタを出て鋳造キャビティに注入され得る、端部開口部を有する場合がある。
【0046】
鋳造インゴット、鋳造スラブ、または他の鋳造製造物は、任意の適切な手段によって加工することができる。そのような加工ステップは、均質化、熱間圧延、冷間圧延、溶体化熱処理、及び任意選択の予備時効ステップを含むが、これらに限定されない。
【0047】
簡略には、均質化ステップでは、鋳造製造物は、約400℃~約550℃の範囲の温度に加熱される。例えば、鋳造製造物は、約400℃、約410℃、約420℃、約430℃、約440℃、約450℃、約460℃、約470℃、約480℃、約490℃、または約500℃の温度に加熱できる。製造物は次に、均質化した製造物を形成するために所定期間浸漬されてもよい(すなわち、指示された温度で保持されてもよい)。いくつかの例では、加熱及び浸漬の段階を含む均質化ステップのための総時間は、最大で24時間であり得る。例えば、製造物は、均質化ステップのために最大18時間の総時間、最大500℃まで加熱して浸漬できる。
【0048】
均質化ステップに続いて、熱間圧延工程を実行できる。熱間圧延を開始する前に、均質化された製造物を300℃~450℃の間の温度に冷却させてもよい。例えば、均質化された製造物は、325℃~425℃の間または350℃~400℃の間の温度に冷却させてもよい。均質化された製造物は次に、300℃と500℃との間の温度で熱間圧延して、熱間圧延プレート、熱間圧延シェート、または3mmと200mm(例えば、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、15mm、20mm、25mm、30mm、35mm、40mm、45mm、50mm、55mm、60mm、65mm、70mm、75mm、80mm、85mm、90mm、95mm、100mm、110mm、120mm、130mm、140mm、150mm、160mm、170mm、180mm、190mm、200mm、またはその間のいずれか)の間のゲージを有する熱間圧延シートを形成することができる。
【0049】
任意選択で、鋳造製造物は、約300℃と約450℃の間の温度に冷却してもよい連続鋳造製造物であり得る。例えば、連続鋳造製造物は、325℃と425℃との間または350℃と400℃との間の温度に冷却されてもよい。連続鋳造製造物は次に、300℃と500℃との間の温度で熱間圧延して、熱間圧延プレート、熱間圧延シェート、または3mmと200mm(例えば、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、15mm、20mm、25mm、30mm、35mm、40mm、45mm、50mm、55mm、60mm、65mm、70mm、75mm、80mm、85mm、90mm、95mm、100mm、110mm、120mm、130mm、140mm、150mm、160mm、170mm、180mm、190mm、200mm、またはその間のいずれか)の間のゲージを有する熱間圧延シートを形成することができる。熱間圧延中、温度及び他の稼働パラメータは、熱間圧延ミルから出るときの熱間圧延中間製造物の温度が470℃以下、450℃以下、440℃以下、または430℃以下となるように制御できる。
【0050】
鋳造、均質化、または熱間圧延された製造物は、冷間圧延機を使用して冷間圧延され、例えば冷間圧延されたシート等のより薄い製造物にすることができる。冷間圧延されたシートは、約0.1~10mmの間、例えば、約0.7~6.5mmの間のゲージを有することができる。任意選択で、冷間圧延製造物は、0.2mm、0.5mm、1.0mm、1.5mm、2.0mm、2.5mm、3.0mm、3.5mm、4.0mm、4.5mm、5.0mm、5.5mm、6.0mm、6.5mm、7.0mm、7.5mm、8.0mm、8.5mm、9.0mm、9.5mm、または10.0mmのゲージを有することができる。箔の場合、冷間圧延されたシートは、10μm~100μm等の約1μm~500μmのゲージを有することができる。冷間圧延は、冷間圧延の開始前のゲージと比較して最大85%(例えば、最大10%、最大20%、最大30%、最大40%、最大50%、最大60%、最大70%、最大80%、または最大85%の削減)以上のゲージ削減を表す最終ゲージ厚を生じさせるために実行できる。
【0051】
いくつかの場合、熱処理プロセスが冷間圧延プロセスの後に続く場合がある。例えば、熱処理プロセスは、圧延製造物を約300℃から約450℃の温度に加熱することを含み得る。圧延製造物が所望の熱処理温度に達すると、圧延製造物は、例えば約0.5時間~約6時間等の特定の期間、目標温度で浸漬または保持され得る。そのような熱処理プロセスは、以下に説明する溶体化熱処理プロセスとは異なる場合がある。
【0052】
箔の作成のために、冷間圧延中に、例えば約0.2mm等の小さなゲージを達成することができ、その後、冷間圧延製造物を約1μm~約300μm(例えば、0.001mm~0.30mm)のゲージに圧延することができる別の箔圧延プロセスが続く。いくつかの例では、箔は、箔圧延プロセスを使用して、1μm、1.5μm、2μm、2.5μm、3μm、3.5μm、4μm、4.5μm、5μm、5.5μm、6μm、6.5μm、7μm、7.5μm、8μm、8.5μm、9μm、9.5μm、10μm~50μm、50μm~100μm、100μm~150μm、150μm~200μm、200μm~250μm、または250μm~300μmのゲージに圧延され得る。
【0053】
いくつかの例では、鋳造製造物、均質化製造物、または圧延製造物は、溶体化熱処理ステップを受けることができる。溶体化熱処理ステップは、可溶性粒子の溶解(solutionizing)をもたらすシートの任意の適切な処理であり得る。鋳造製造物、均質化製造物、または圧延製造物は、最大590℃(例えば、400℃~590℃)のピーク金属温度(PMT)まで加熱し、PMTで一定時間浸漬して高温の製造物を形成することができる。例えば、鋳造製造物、均質化製造物、または圧延製造物は、最大30分の浸漬時間(例えば、0秒、60秒、75秒、90秒、5分、10分、20分、25分または30分)480℃で浸漬することができる。加熱及び浸漬後、高温の製造物は、200℃/秒を超える速度で500と200℃との間の温度に急速に冷却されて、熱処理された製造物を形成する。一例では、高温の製造物は、450℃と200℃との間の温度で200℃/秒を超える焼き入れ速度で冷却される。任意選択で、冷却速度は、他の場合ではより速い場合がある。
【0054】
焼き入れ後、熱処理された製造物は、任意選択で、コイリングの前の再加熱によって予備時効処理を受ける場合がある。予備時効処理は、約70℃~約125℃の温度で最大約6時間実行できる。例えば、予備時効処理は、約70℃、約75℃、約80℃、約85℃、約90℃、約95℃、約100℃、約105℃、約110℃、約115℃、約120℃、または約125℃の温度で実行できる。任意選択で、予備時効処理は、約30分、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、または約6時間実行できる。予備時効処理は、加熱処理した製造物を、放射熱、対流熱、誘導熱、赤外線熱等を放出する装置等の加熱装置に通過させることによって実施できる。
【0055】
開示されたアルミニウム合金製造物の使用方法
本明細書に説明されているアルミニウム合金製造物は、電子機器の用途に使用できる。例えば、本明細書に説明されているアルミニウム合金製造物及び方法は、電池、携帯電話、及びタブレットコンピュータを含む電子機器用の構成要素を作成するために使用できる。いくつかの例では、アルミニウム合金製造物を使用して、携帯電話、タブレットコンピュータ等で使用できる電気化学セル、コンデンサ、または電池で使用される集電体及び電極を作成することができる。
【0056】
金属合金
本明細書に説明されているのは、アルミニウム合金を処理する方法及び結果として生じた処理済みのアルミニウム合金である。いくつかの例では、本明細書に説明される方法で使用するための金属は、1xxxシリーズのアルミニウム合金、2xxxシリーズのアルミニウム合金、3xxxシリーズのアルミニウム合金、4xxxシリーズのアルミニウム合金、5xxxシリーズのアルミニウム合金、6xxxシリーズのアルミニウム合金、7xxxシリーズのアルミニウム合金、または8xxxシリーズのアルミニウム合金を含むことができる。
【0057】
非限定例として、例示的な1xxxシリーズアルミニウム合金は、AA1100、AA1100A、AA1200、AA1200A、AA1300、AA1110、AA1120、AA1230、AA1230A、AA1235、AA1435、AA1145、AA1345、AA1445、AA1150、AA1350、AA1350A、AA1450、AA1370、AA1275、AA1185、AA1285、AA1385、AA1188、AA1190、AA1290、AA1193、AA1198、またはAA1199を含むことができる。
【0058】
非限定的な例示的な2xxxシリーズアルミニウム合金は、AA2001、A2002、AA2004、AA2005、AA2006、AA2007、AA2007A、AA2007B、AA2008、AA2009、AA2010、AA2011、AA2011A、AA2111、AA2111A、AA2111B、AA2012、AA2013、AA2014、AA2014A、AA2214、AA2015、AA2016、AA2017、AA2017A、AA2117、AA2018、AA2218、AA2618、AA2618A、AA2219、AA2319、AA2419、AA2519、AA2021、AA2022、AA2023、AA2024、AA2024A、AA2124、AA2224、AA2224A、AA2324、AA2424、AA2524、AA2624、AA2724、AA2824、AA2025、AA2026、AA2027、AA2028、AA2028A、AA2028B、AA2028C、AA2029、AA2030、AA2031、AA2032、AA2034、AA2036、AA2037、AA2038、AA2039、AA2139、AA2040、AA2041、AA2044、AA2045、AA2050、AA2055、AA2056、AA2060、AA2065、AA2070、AA2076、AA2090、AA2091、AA2094、AA2095、AA2195、AA2295、AA2196、AA2296、AA2097、AA2197、AA2297、AA2397、AA2098、AA2198、AA2099、またはAA2199を含むことができる。
【0059】
非限定的な例示的な3xxxシリーズアルミニウム合金は、AA3002、AA3102、AA3003、AA3103、AA3103A、AA3103B、AA3203、AA3403、AA3004、AA3004A、AA3104、AA3204、AA3304、AA3005、AA3005A、AA3105、AA3105A、AA3105B、AA3007、AA3107、AA3207、AA3207A、AA3307、AA3009、AA3010、AA3110、AA3011、AA3012、AA3012A、AA3013、AA3014、AA3015、AA3016、AA3017、AA3019、AA3020、AA3021、AA3025、AA3026、AA3030、AA3130、またはAA3065を含むことができる。
【0060】
非限定的な例示的な4xxxシリーズアルミニウム合金は、AA4004、AA4104、AA4006、AA4007、AA4008、AA4009、AA4010、AA4013、AA4014、AA4015、AA4015A、AA4115、AA4016、AA4017、AA4018、AA4019、AA4020、AA4021、AA4026、AA4032、AA4043、AA4043A、AA4143、AA4343、AA4643、AA4943、AA4044、AA4045、AA4145、AA4145A、AA4046、AA4047、AA4047A、またはAA4147を含むことができる。
【0061】
非限定的な例示的な5xxxシリーズアルミニウム合金は、AA5182、AA5183、AA5005、AA5005A、AA5205、AA5305、AA5505、AA5605、AA5006、AA5106、AA5010、AA5110、AA5110A、AA5210、AA5310、AA5016、AA5017、AA5018、AA5018A、AA5019、AA5019A、AA5119、AA5119A、AA5021、AA5022、AA5023、AA5024、AA5026、AA5027、AA5028、AA5040、AA5140、AA5041、AA5042、AA5043、AA5049、AA5149、AA5249、AA5349、AA5449、AA5449A、AA5050、AA5050A、AA5050C、AA5150、AA5051、AA5051A、AA5151、AA5251、AA5251A、AA5351、AA5451、AA5052、AA5252、AA5352、AA5154、AA5154A、AA5154B、AA5154C、AA5254、AA5354、AA5454、AA5554、AA5654、AA5654A、AA5754、AA5854、AA5954、AA5056、AA5356、AA5356A、AA5456、AA5456A、AA5456B、AA5556、AA5556A、AA5556B、AA5556C、AA5257、AA5457、AA5557、AA5657、AA5058、AA5059、AA5070、AA5180、AA5180A、AA5082、AA5182、AA5083、AA5183、AA5183A、AA5283、AA5283A、AA5283B、AA5383、AA5483、AA5086、AA5186、AA5087、AA5187、またはAA5088を含むことができる。
【0062】
非限定的な例示的な6xxxシリーズアルミニウム合金は、AA6101、AA6101A、AA6101B、AA6201、AA6201A、AA6401、AA6501、AA6002、AA6003、AA6103、AA6005、AA6005A、AA6005B、AA6005C、AA6105、AA6205、AA6305、AA6006、AA6106、AA6206、AA6306、AA6008、AA6009、AA6010、AA6110、AA6110A、AA6011、AA6111、AA6012、AA6012A、AA6013、AA6113、AA6014、AA6015、AA6016、AA6016A、AA6116、AA6018、AA6019、AA6020、AA6021、AA6022、AA6023、AA6024、AA6025、AA6026、AA6027、AA6028、AA6031、AA6032、AA6033、AA6040、AA6041、AA6042、AA6043、AA6151、AA6351、AA6351A、AA6451、AA6951、AA6053、AA6055、AA6056、AA6156、AA6060、AA6160、AA6260、AA6360、AA6460、AA6460B、AA6560、AA6660、AA6061、AA6061A、AA6261、AA6361、AA6162、AA6262、AA6262A、AA6063、AA6063A、AA6463、AA6463A、AA6763、A6963、AA6064、AA6064A、AA6065、AA6066、AA6068、AA6069、AA6070、AA6081、AA6181、AA6181A、AA6082、AA6082A、AA6182、AA6091、またはAA6092を含むことができる。
【0063】
非限定的な例示的なAA7xxxシリーズアルミニウム合金は、AA7011、AA7019、AA7020、AA7021、AA7039、AA7072、AA7075、AA7085、AA7108、AA7108A、AA7015、AA7017、AA7018、AA7019A、AA7024、AA7025、AA7028、AA7030、AA7031、AA7033、AA7035、AA7035A、AA7046、AA7046A、AA7003、AA7004、AA7005、AA7009、AA7010、AA7011、AA7012、AA7014、AA7016、AA7116、AA7122、AA7023、AA7026、AA7029、AA7129、AA7229、AA7032、A7033、AA7034、AA7036、AA7136、AA7037、AA7040、AA7140、AA7041、AA7049、AA7049A、AA7149、AA7204、AA7249、AA7349、AA7449、AA7050、AA7050A、AA7150、AA7250、AA7055、AA7155、AA7255、AA7056、AA7060、AA7064、AA7065、AA7068、AA7168、AA7175、AA7475、AA7076、AA7178、AA7278、AA7278A、AA7081、AA7181、AA7185、AA7090、AA7093、AA7095、またはAA7099を含むことができる。
【0064】
非限定的な例示的な8xxxシリーズアルミニウム合金は、AA8005、AA8006、AA8007、AA8008、AA8010、AA8011、AA8011A、AA8111、AA8211、AA8112、AA8014、AA8015、AA8016、AA8017、AA8018、AA8019、AA8021、AA8021A、AA8021B、AA8022、AA8023、AA8024、AA8025、AA8026、AA8030、AA8130、AA8040、AA8050、AA8150、AA8076、AA8076A、AA8176、AA8077、AA8177、AA8079、AA8090、AA8091、またはAA8093を含むことができる。
【0065】
基板
本明細書に説明される、例えば箔、シート、またはコーティング等のアルミニウム合金製造物は、集電体、または例えば電極、電気化学セル、もしくはコンデンサ等のそのような集電体を組み込んだデバイスとしての用途での使用に適し得る、例えば電子基板等の基板を製造するために使用できる。いくつかの例では、アルミニウム合金は、シートまたは箔として提供され得るが、本明細書では、一般に、基板という観点から層と称される。基板としての使用のために、アルミニウム合金層は、本明細書では保護層または伝導性保護層と称される場合もある導電層でコーティングされる、または導電層に接触する場合がある。アルミニウム合金は、代わりに、任意選択で金属または金属合金箔を含み得る伝導性保護層を覆うコーティングとして提供され得る。いくつかの場合、アルミニウム合金と伝導性保護層の両方とも箔を含み得る。
【0066】
導電層は、例えば電気化学セルまたはコンデンサ用の集電体用途において等、材料がアルミニウム合金層に接触するのを防止するために役立つ場合がある。いくつかの例では、導電層は、例えば特定の材料と下にあるアルミニウム合金層との接触を制限するために等、特定の材料の透過を遮断またはそれ以外の場合防止するために役立つ場合がある。いくつかの例では、アルミニウム合金層をリチウム原子及び/またはリチウムイオンと接触させることは有害であり、アルミニウム合金のリチウムとの腐食、反応、及び/または合金化を引き起こす場合がある。
【0067】
リチウムまたはリチウムイオン電池でのアノード用の集電体としてのアルミニウムの使用は、アノード電位で発生する可能性のある腐食、反応、及び/または合金化のために、一般に望ましくない。例えば、リチウムによるアルミニウム合金の腐食または合金化の結果、非導電性材料が形成される場合があり、これは、アルミニウム合金による電気伝導を妨害もしくは阻害するか、またはアルミニウム合金の導電率を低下させる場合がある。しかしながら、導電性コーティング層を使用すると、アルミニウム層による電流の大量の透過を可能にしつつも、リチウムまたはリチウムイオンによるアルミニウム合金層の接触、腐食、反応、及び/または合金化を制限することによってアルミニウム合金層を保護することができる。
【0068】
図1Aは、アルミニウム合金層105、及びアルミニウム合金層105をコーティングする導電層110を含む、断面で概略で示される基板100の例を示す。基板100では、導電層110は、アルミニウム合金層105の片面または側面のみと接触して示されているが、導電層110がアルミニウム合金層105の異なる端縁、表面、または面と接触している他の構成も使用され得る。
【0069】
しかしながら、いくつかの態様は、伝導性保護層に対して任意選択で有用であり得る。一例として、伝導性保護層は導電性でなければならない。例示的な伝導性保護層は、10S/m~10S/mの導電率、または10Ω・m~10Ω・mの電気抵抗率を有する場合がある。そのような導電率または電気抵抗率は、大量の伝導が発生する可能性があるアルミニウム合金層への伝導性保護層を通る電子の伝導を可能にするほど十分であり得る。
【0070】
別の例として、導電層の表面から、アルミニウム合金層との接合面での、もしくはアルミニウム合金層に面する内面へ等、アルミニウム合金層へのリチウム原子またはリチウムイオンの透過を可能にする欠陥がないまたは実質的に欠陥がないことが伝導性保護層にとって有益である場合がある。本明細書で使用される場合、句、実質的にないは、ある条件の絶対的な不在が存在しないが、それにとって不在が有害ではなく、故障、劣化、または使いやすさの欠如をもたらさない場合を指す。例えば、欠陥が実質的にない導電性コーティング層は、いくつかの欠陥を含む可能性があるが、含まれる欠陥は、コーティング層が下にあるアルミニウム合金層を保護することを妨害しない。例示的な欠陥は、空隙、溝、亀裂、成長欠陥、ノジュラ欠陥、トラフ、または転位、積層欠陥、もしくは粒界等の結晶学的欠陥を含み得るが、これに限定されない。いくつかの場合、欠陥は、欠陥を含む第1の副層を覆う導電性の第2の副層を蒸着させることによって、充填、被覆、またはそれ以外の場合密封もしくは効果的に除去することができる。
【0071】
例えば、30重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、15重量%以下、10重量%以下、9重量%以下、8重量%以下、7重量%以下、6重量%以下、5重量%以下、4重量%以下、3重量%以下、2重量% 、1重量%以下、0.1重量%以下、または0.01重量%以下の不純物の量を有する等、高純度の層を含むことが、伝導性保護層にとって有益である場合もある。
【0072】
いくつかの場合、導電性コーティング層を作成すると、欠陥が作り出される機会が存在し、これらの欠陥は、下にあるアルミニウム合金層へのリチウム汚染の経路をほとんどまたはまったく提供しないために、最小限に抑えられ得る、制限され得る、または排除され得る。例えば、アルミニウム合金層を覆う導電性コーティングを蒸着させるためのいくつかの技術では、蒸着は、柱状の構造の基部に存在する欠陥が蒸着材料のかなりの深さ/厚さまで広がる可能性がある、垂直の柱状タイプの結晶構造として発生し得る。製作中にこれらの欠陥を制限することは役立つ場合がある。いくつかの場合、導電性コーティング全体に広がる傾向がある欠陥の作成を回避できる多結晶構造を形成することができる。伝導性保護層を作成するためのいくつかの例示的な技術は、物理蒸着プロセス、スパッタ蒸着プロセス、気化蒸着プロセス、化学蒸着プロセス、電着プロセス、電気めっきプロセス、化学気相蒸着プロセス、または原子層蒸着プロセスを含むが、これらに限定されない。
【0073】
いくつかの場合、伝導性保護層の欠陥は、伝導性保護層として金属または金属合金箔を使用し、次に伝導性保護層をアルミニウム合金コーティングでコーティングするか、または伝導性保護層をアルミニウム合金箔に結合することによって低減または大幅に排除され得る。
【0074】
基板100等の基板は、アルミニウム合金層105の片側のみを覆う導電層110を蒸着させることによって作成され得る。導電層は、任意の適切な厚さを有することができる。例示的な厚さは、例えば10nm~50nm、10nm~100nm、10nm~500nm、10nm~1μm、10nm~10μm、10nm~50μm、10nm~100μm、50nm~100nm、50nm~500nm、50nm~1μm、50nm~10μm、50nm~50μm、50nm~100μm、100nm~500nm、100nm~1μm、100nm~5μm、100nm~10μm、100nm~50μm、100nm~100μm、500nm~1μm、500nm~5μm、500nmnm~10μm、500nmnm~50μm、500nmnm~100μm、1μm~5μm、1μm~10μm、1μm~50μm、1μm~100μm、5μm~10μm、5μm~50μm、5μm~100μm、10μm~50μm、10μm~100μm、または50μm~100 μm等、約10nm~約100μmであり得る。
【0075】
いくつかの場合、例えばアルミニウム合金層を望ましくない物質と接触させる可能性のある任意の経路を制限するために等、導電層によるアルミニウム合金層の部分的なまたは完全なカプセル化を達成することが望ましい場合がある。図1Bに断面で、概略で示される別の基板150は、導電層160によって完全に覆われたアルミニウム合金層155を含み得る。そのような構成は、例えば、液相プロセスであり、導電層160によるアルミニウム合金層155の完全なコーティングまたはカプセル化を生じさせる場合がある、例えば電着プロセス等の無指向性蒸着技術を使用することによって達成され得る。
【0076】
導電層に有用な材料は、リチウムと合金化しない材料を含み得る。別の言い方をすれば、導電層がリチウムと合金化する材料を含まないことが有用である場合がある。例として、伝導性保護層が、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、シリコン、ゲルマニウム、スズ、インジウム、アンチモン、及び/または炭素を欠くか、または含まないことが有用である場合がある。
【0077】
導電層に有用な材料は、Li/Liに対して0V~5Vの電位でリチウムと非反応性である材料を含み得る。いくつかの場合、これらの材料が伝導性保護層で使用または含まれると、そのような材料はリチウム原子またはリチウムイオンによって攻撃され、その結果、リチウム原子またはリチウムイオンがアルミニウム合金層に到達し、アルミニウム合金層を腐食させる、それと合金化する、または別様にそれを劣化させる場合がある。伝導性保護層に有用な特定の材料は、チタン、クロム、鉄、ニッケル、モリブデン、タングステン、銅、窒化チタン、またはこれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない。伝導性保護層に有用な材料は、例えば70重量%を超える、75重量%を超える、80重量%を超える、85重量%を超える、90重量%を超える、または95重量%を超える等の高純度を有するものを含む。しかしながら、いくつかの場合、伝導性保護層は、例えばチタン、クロム、鉄、ニッケル、モリブデン、タングステン、または銅の1つまたは複数の合金または混合物等の合金または材料の混合物を含み得るか、または含み得る。
【0078】
いくつかの場合、伝導性保護層に複合構造を含めることが役立つ場合がある。例えば、伝導性保護層は、2つまたは最大10または20または100の副層等の複数の個別の副層を含み得る。各副層は、任意の他の副層と同じまたは異なる組成を有する場合がある。各副層は、任意の他の副層に使用されるのと同じまたは異なるプロセスを使用して、及び/または任意の他の副層に使用されるのと同じまたは異なる材料を使用して生成され得る。いくつかの例では、2つ以上の副層を使用すると、ある副層が、別の副層の欠陥を被覆、充填、またはそれ以外の場合密封して、下にあるアルミニウム合金層に到達する望ましくない材料の透過を低減する、最小限に抑える、または制限することが可能になり得る。
【0079】
図2Aは、アルミニウム合金層205及び複合導電層210を含む別の基板200の断面概略図を示す。図2Aに示される複合導電層210は、第1の副層215、第2の副層220、及び第3の副層225を含む。図2Bは、アルミニウム合金層255が、第1の副層265及び第2の副層270を含む複合導電層によって完全にカプセル化された、別の基板250の断面概略図を示す。
【0080】
上記のように、本明細書に説明される基板は、例えば集電体用に、または電気化学セル及びコンデンサの電極部品として等、電子基板として使用することができる。図3は、電気化学セル(例えば、一次電気化学セルまたは二次電気化学セル)の構成要素であり得る電極300に対応する例示的なデバイスの断面概略図を示す。電極300は、アルミニウム合金層305、伝導性保護層310、及び活物質315を含む。活物質315は、電気化学反応が、電気化学セルの充電または放電中に発生する材料に対応し得る。活物質315は、異なる実施形態ではカソード活物質またはアノード活物質に対応し得る。電極活物質315の例示的な材料は、例えばグラファイトのようなインターカレーション材料等のリチウム電池アノード活物質を含む。いくつかの場合、金属リチウムアノード活物質は、例えば一次電池用に等、使用され得る。電極活物質315のための例示的な材料は、例えばリチウムコバルト酸化物、リチウム鉄リン酸塩、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物等のようなリチウムベースの材料等のリチウムイオン電池カソード活物質を含む。
【0081】
図4Aは、電気化学セル400に対応する例示的なデバイスの断面概略図を示す。電気化学セル400は、いくつかの例ではアノードに対応する場合がある第1の電極402、及びいくつかの例ではカソードに対応し得る第2の電極404を含む。電気化学セル400の第1の電極402は、アルミニウム合金層405及び伝導性保護層410を含む第1の集電体406を含む。電気化学セル400の第1の電極402はまた、例えばアノード活物質等の第1の活物質415を含む。電気化学セル400の第2の電極404は、アルミニウム合金層420(第2の集電体として)、及び例えばカソード活物質等の第2の活物質435を含む。電気化学セル400はまた、構成要素435として示される分離器及び/または電解質を含む。分離器及び/または電解質は、充電または放電中にイオンが運ばれることを可能にしながらも、第1の電極活物質及び第2の電極活物質が互いと接触するのを防止するために役立つ。例示的な分離器は、例えばポリプロピレン、ポリム(メタクリル酸メチル)、またはポリアクリロニトリルのような高分子膜等の非反応性多孔材料であるか、またはそれらを含む場合がある。例示的な電解質は、例えばエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、もしくはジエチルカーボネート等の有機溶媒、または固体もしくはセラミックの電解質であるか、またはそれらを含み得る。電解質は、例えばLiPF、LiBF、またはLiClO等の溶解リチウム塩及びその他の添加剤を含む場合がある。
【0082】
図4Bは、別の例示的な電気化学セル450の断面概略図を示している。電気化学セル450は、いくつかの例ではアノードに対応する場合がある第1の電極452、及びいくつかの例ではカソードに対応し得る第2の電極を含む。電気化学セル450の第1の電極452は、アルミニウム合金層455及び伝導性保護層460を含む第1の集電体456を含む。電気化学セル450の第1の電極452はまた、例えばアノード活物質等の第1の活物質465を含む。電気化学セル450 の第2の電極454は、アルミニウム合金層470及び伝導性保護層475を含む第2の集電体458を含む。電気化学セル450の第2の電極452はまた、例えばカソード活物質等の第2の活物質480を含む。電気化学セル450はまた、構成要素485として示されている分離器及び/または電解質を含む。第1の集電体456のアルミニウム合金層455は、第2の集電体458のアルミニウム合金層470と同じ材料または異なる材料(例えば、異なる合金)である場合がある。第1の集電体456の伝導性保護層460は、第2の集電体458の伝導性保護層475と同じ材料または異なる材料である場合がある。
【0083】
集電体406の伝導性保護層410、第1の集電体456の伝導性保護層460、及び第2の集電体458の伝導性保護層475は、図4A及び図4Bで単一の材料として示されているが、これらの伝導性保護層は代わりに、例えば上述され、図2A及び図2Bに示される等、例えば1つまたは複数の副層を含む等、複合構造に対応する。
【0084】
さらに、電気化学セル400及び450は、例えば携帯用電子機器、携帯電話、タブレットコンピュータ等の他のデバイス内で、またはそれらの構成要素として使用され得る。例えば、電気化学セル450の第1の集電体456及び第2の集電体458は、電子機器または電子機器の回路と直接的にまたは間接的に通信し、電流を受け取るか、または電子機器もしくは電子機器の回路に電流を提供して配置され得る。
【0085】
アルミニウム合金層及び伝導性保護層を接触させることは、本明細書に説明される基板を達成するために任意の適切なプロセスまたはプロセスの組み合わせを含み得る。いくつかの例では、上述のように、接触プロセスは、アルミニウム合金層(例えば、アルミニウム合金箔)を伝導性保護層でコーティングすることを含み得る。任意選択で、接触プロセスは、伝導性保護層(例えば、金属または金属合金箔)をアルミニウム合金層でコーティングすることを含み得る。伝導性保護層及びアルミニウム合金層がともに箔を含むとき、例えばロールボンディングプロセス等の結合プロセスは、箔間に強力な冶金学的結合を作り出すために使用され得る。
【0086】
本明細書に開示される実施例は、さらに本発明の態様を説明するのに役立つが、同時に、それのいかなる制限にもならないであろう。これに対して、本明細書の説明を読んだ後に、本発明の趣旨から逸脱することなく当業者にそれ自体を示唆し得る、様々な実施形態、それらの改変物及び均等物が用いられ得ると明らかに理解されるべきである。本明細書に記載の実施例及び実施形態はまた、特に明記しない限り、従来の手順を利用し得る。手順の一部は、例示の目的のために本明細書に説明されている。
実施例1-半電池の電気化学セルテスト
【0087】
異なる伝導性保護層の有効性をテストするために、アルミニウム合金層を作用電極とし、リチウム金属を対電極とし、分離器を、アルミニウム合金層とリチウム金属との間の電解質で浸漬した半電池が構築された。アルミニウム合金を含む様々なアルミニウム合金層が、伝導性保護層なしでテストされ、アルミニウム合金層は、約300nmの厚さを有する銅、窒化チタン、または鉄の導電性コーティングで保護されていた。
【0088】
サイクリックボルタモグラムは、ポテンシオスタットで印加電圧または電流を制御して、どの保護層が、リチウムイオン電気化学セルのアノード側の低電位と同様に低電位での集電体としてのアルミニウム合金の安定性を向上させるのかを決定することによって得られた。
【0089】
図5Aは、Li/Liに対して0Vと1Vの間でのサイクルのために、構築された半電池を使用して得られた異なるサイクリックボルタモグラムのセットを示している。0V~1V及び1V~0Vへの掃引中の電流の大きさは、リチウムのアルミニウム合金作用電極との反応性を反映する。図5Aでは、「裸Al」と名前が付けられた線は、保護コーティングのないアルミニウム合金電極に対応し、それはリチウムとの有意な反応性を示している。銅コーティング(「Al上のCu」)と名前が付けられた線)による保護は、アルミニウム合金層の保護の小さな変化を示している。より多くの保護が、窒化チタンコーティング(「Al上のTIN」と名前が付けられた線)によって提供される。「Al上のFe」と名前が付けられた線は、伝導性保護層として鉄を使用して得られたボルタモグラムに対応し、リチウムとの反応性での著しい向上を示している。
【0090】
比較として、作用電極として銅箔(「Cu箔」と名前が付けられた線)を使用するサイクリックボルタモグラムも得られ、それは、鉄で保護されたアルミニウム合金層とともに図5Bに示され、縦軸は図5Aに比較してズームされている。これは、鉄でコーティングされたアルミニウム合金層が銅箔と比較しても著しく反応性が低いことを示している。図5Cは、鉄でコーティングされたアルミニウム合金層のサイクリックボルタモグラムのさらなる拡大図を示している。
【0091】
作用電極としての鉄でコーティングされたアルミニウム合金層及びコーティングされていないアルミニウム合金層のさらなるテストが実行された。ここでは、作用電極は、作用電極のリチウムとの反応性を評価するために、Li/Li に対して10mVに保持された。これらの状態では、裸アルミニウムはきわめて反応性であることが分かった。一方、鉄でコーティングされたアルミニウム合金層(Fe保護された)ははるかに反応性が低かった。
実施例2
【0092】
商用リチウムイオン電池は、1991年にSony Corporationによって最初に導入され、家電製品または電気自動車の主要な電池化学になっている。エネルギー密度、安全性、及びコストを改善するために1980年代半ばに設計された最初の商用電池から、大きな進歩がなされてきた。リチウムイオン電池のエネルギー密度は、1991年から2005年の間に毎年10%の割合で着実に増加した。これらの改善は、アノード及びカソードの材料を設計し、液体電解質の組成を最適化することによって得られた。例えば、アノード材料は硬質炭素からグラファイトに変更され、LiCoOカソード材料の組成は、Ni、Mn、及びAlを組み込むことによって設計され、液体電解質の組成は、SEI形成を制御するために異なる塩及び添加剤で修正されている。電池構成要素の残りにおけるこれらの変化にも関わらず、米国特許第4,668,595号に説明される最初のインターカレーションベースの充電式のLiイオン電池の集電体は、一般に今日使用されている標準的な集電体、つまり、アノード用の10μmのCu箔及びカソード用の15μmのAl箔と同じである。
【0093】
集電体の役割は、活物質を外部回路に接続することである。このため、集電体は導電性が高く、かつ電極材料を支持するために機械的に堅牢で、接着性である必要がある。Cu箔は、Li/Liに対して低電位でのその電気化学的安定性のため、アノード集電体として使用される。Al合金は、LiがLi/Liに対して0.2V未満であるが、それは高電位で安定しているため、それはカソード側に使用される。電気化学安定性は別にして、Cu箔のコストはAl箔の4倍であり、密度は3倍であるため、Cu集電体をAlに置き換えると、リチウムイオン電池の重量及びコストを削減できる。これは、従来の電池及び次世代のリチウムベースの電池に、重力エネルギー密度の全体的な向上を提供し得る。
【0094】
リチウムイオン電池でのアノード集電体としてのAlの使用が検討されてきた。その電気化学安定性ウィンドウを所与とすると、Alは、Li/Liに対して1.5Vでリチウムを挿入する、例えばチタン酸リチウム等のより高電圧のアノード材料用のアノード集電体として使用できる。別の方式は、活性金属集電体としてAlを使用することであった。Li-Al合金反応は、993mAh g-1の理論容量及び90%の体積膨張を有し、これがアノード材料としてのAlのサイクル性を制限している。
【0095】
この例では、保護層を使用して商業的に適切な期間、Alアノード集電体の安定性を拡張することが検討される。この保護層は導電性である必要があり、Liと反応してはならず、リチウムの拡散を遮断する必要がある。Cuは、明らかな候補であるように見える場合があるが、リチウムが集電体として使用されると、リチウムがこの材料の中に拡散する可能性があることが実証されている。リチウムと反応しない金属は、Mo、Nb、Ti、Ni、Cr、またはFeを含む。Feの場合、Liの拡散が非常に遅い場合がある。
【0096】
この例では、例えばFe等のリチウムと反応せず、リチウムの拡散を遮断する導電性薄膜が、アノード集電体でLiとAlとの間の合金反応を防止できるかどうかがテストされる。Li/Liに対して10mVでの定電位保持は、完全に充電された電池の電気化学的環境をシミュレートするために使用される。これらのテストは、厚さサブミクロンのFe膜が、現在の技術である、銅アノード集電体に匹敵する電流密度で、Alアノード集電体の安定性を数百時間に延長することを明らかにしている。これらの新しい材料を市販の電池に実装すると、セルの重量を改善するために役立つ場合があり、その結果、全体的な重量測定能力が向上する可能性がある。
【0097】
方法。試料準備:Al箔基板の厚さは15μmであった。スパッタリングの前に、箔は粘着テープによってステンレス鋼またはスライドガラスに固定された。使用したAl箔は2つの異なる側面を有し、一方は他方よりも光沢があった。全ての場合において、Fe膜はより光沢のある側にスパッタされた。コイン電池を構築するために、Al箔が、両面導電性カーボンテープを使用してステンレス鋼スペーサ(直径1.55cm)に固定された。箔、テープ、及びステンレス鋼スペーサの面積はほぼ同じであった。浸水したセルの場合、Al箔の片は、Al片と同じ幅の両面カプトンテープを使用してガラススライドにテープで貼り付けられた。Al片は、電気接続を行うためにAl片がテープで貼り付けられたスライドガラスよりも長かった。箔を固定した後、箔は、平らな面を確保にするために、圧縮窒素でテープにしっかりと押し付けられた。スパッタに試料を装填する直前に、試料はイソプロピルアルコールで濯がれ、窒素で乾燥された。
【0098】
スパッタリング:Fe膜は、DCマグネトロンスパッタリングを使用してAl箔基板上にスパッタされた。
【0099】
セルの構築:電気化学セルは、対電極及び基準電極として金属Li、電解質としてエチレンカーボネート及びジエチルカーボネート(1:1の体積比、Sigma)中のヘキサフルオロリン酸リチウムの1.0M溶液、ならびに作用電極としてテスト箔を使用して構築された。コイン電池及び浸水したセルの2つのタイプのセルが使用された。CR2032コイン電池は、ステンレス鋼ケースの内側で、ステンレス鋼バネ、テスト箔、電解液に浸漬したセルガード分離器、Li金属電極の積み重ね順で乾燥したArグローブボックス内に構築された。Feで保護したAl箔の場合、スパッタされた箔が、スパッタリング後1時間未満同じArグローブボックスに保管された。Li金属電極は通常、セルガード分離器を備えた、コイン電池に収まるほど小さい円盤であった。分離器は、箔の端縁から離して配置され、Li電極は分離器の中心に配置された。
【0100】
浸水したセルは、図8、パネルcに示されるように構築された。石英管が、エポキシを使用してテスト箔に接着され、室温で、約12時間周囲空気中で硬化させた後、同じ条件で第2の層が塗布され、硬化させた。この後、セルはグローブボックスに入れられた。テスト箔の露出領域を覆うために、ガラス繊維の小さな正方形が石英管の内側に配置された。この後、適切な量の電解質がピペットで管に入れられた。Li金属電極が細かく切断され、研磨され、Cuワイヤの端部に巻き付けられ、その先端を完全に覆った。Cuワイヤは石英管に挿入され、Li金属電極がガラス繊維分離器に押し付けられ、電解液に完全に浸水されたことを確実にする。Cuワイヤの他方の端は、石英管の開口部を越えて延ばされた。セルは最終的にグローブボックス内部で同じエポキシで密封され、電気化学的試験の前に少なくとも12時間室温で硬化された。浸水したセルを使用した各実験の電流密度を計算するために使用される領域は、セルの底部でのテスト箔の露出領域であった。
【0101】
電気化学的試験:全てのセルは、線形掃引ボルタンメトリに続いて室温での定電位保持を受けた。線形掃引ボルタンメトリの速度は、開回路電位から10mVまで0.1mVs-1であった。その後、電圧は障害まで10mVに保たれた。
【0102】
表面特性化:走査電子顕微鏡(SEM)及びX線光電子分光法(XPS)を使用して、Feで保護されたAl箔の表面を精査した。試料は空気中に移された。電気化学テストを受けた試料の場合、移動時間を30秒未満に短縮するように注意が払われた。
【0103】
結果及び考察。図6は、裸Al及びCu集電体と比較した、Fe保護されたAl箔の安定性を示している。このテストでは、800nmのFeが市販のAl箔にスパッタされた。箔は、対電極として金属リチウムを使用したコイン電池の作用電極として使用された。図6に示すLi/Liに対する10mVでの定電位保持の前に、セルは、0.1mV/秒の速度での線形電圧掃引によって開回路電位(約3V)からもたらされた。このプロトコルは電池の充電に似ており、次にアノードが長時間完全にリチウム化されたときの集電体の電気化学的環境をシミュレートする。図6、パネルaの比較は、Fe保護されたアルミニウム集電体の電流の変化が、本質的に標準的な銅集電体の場合に同一であることを示している。比較すると、裸アルミニウムは、銅の終電体について観察されるものよりも2桁高い電流密度を発生させる。裸アルミニウムでのこの大きな電流密度は、図6、パネルdに示されるように箔の大きな形態学的変化に関連する。この場合、裸Al箔は、リチウムとの反応中に完全に粉砕され、Li電極の真下の反応領域に穴を残した。
【0104】
対照的に、図6、パネルc及びパネルeに示されるように、より低い電流密度は箔の形態または機械的完全性に目に見える変化がないことと相互に関連付けられている。Fe保護されたAl箔の場合、粉砕は発生しなかった。箔は、Cu箔と比較して平坦に見えないが、これはAl箔の分解によるものではない。代わりに、それは、Al箔がスパッタリングの前にステンレス鋼スペーサ上のカーボンテープで支持されていたという事実によるものである。コイン電池の製作中、分離器及びLi電極は箔に対して押し付けられ、下にあるカーボンテープを変形させる。Cu箔または裸Al箔の場合、カーボンテープは使用されなかった。これが、それらの箔が、電気化学的試験手順後に平坦に見える理由である。
【0105】
観察される電流は、様々なソースから発生する可能性がある。裸Alの場合、電流の大部分はLiとの反応から発生し、一方、裸Cuの場合、電流はおそらく電解質の分解から発生する。図6のパネルbは、図6、パネルaの電流密度プロットに対応して伝達された累積電荷密度を示している。AlがLiと反応して、理論容量が993 mAh cm-3のLiAlを形成すると仮定すると、15μm箔のリチウム化中に移動する面電荷密度は約4mAh cm-であるはずである。裸Al箔が5時間未満内にその電荷密度に到達し、Alの急速なリチウム化を示唆することがわかる。このリチウム化は90%の体積変化を引き起こし、図6、パネルdで観察される破壊と一致する、Alアノードの粉砕を誘発することが知られている。
【0106】
Cu集電体の電流の変化には別の起源がある。図6、パネルa及びパネルbに示されるように、Cuの電流密度及び累積電荷密度は、Alのそれよりも大幅に低いが、それはゼロではない。これは、Al箔のリチウム化からではなく、CuがCu面で電解質と連続的に反応することから生じていると考えられる。
【0107】
Fe膜の機械的安定性は、電子顕微鏡によってさらに確認された。図7の上の画像は、Al箔上の元の状態のFe膜の形態を示している(上面図)。膜の断面は、膜の多結晶構造と、Al基板に垂直な粒界の存在量を示している。図7の下の画像は、試料を水とアセトンで濯いで、あらゆるSEIを取り除いた後に得られた、10mVでの定電位保持の120時間後の膜の上面図を示しており、元の状態のFe膜として非常に類似した構造を示している。元の状態の試料と比較されたとき、Fe膜には損傷(亀裂またはフレーク等)の証拠は発見されなかった。
【0108】
浸水したセルに対する電気化学的試験は、Al集電体の安定性の拡張が可能である旨の証拠を提供する。このセル構成で実証された障害までの最長時間は1000時間を超え、保護がない場合よりも3桁以上長かった。この実験的証拠は、Feが実際にAlのリチウム化を防止し得ることを示している。
【0109】
図8のパネルa及びパネルbは、長期間にわたる浸水したセルの電流過渡を示している。低電流密度が数百時間観察され、終わりに向かって劇的に増加した。0.1mA cm-2を超える電流密度のこの増加は、障害を示している。図8、パネルeは、障害後の浸水したセルの裏側を示している。点線の円は、箔の機械的完全性の明らかな変化を示している。これは、漸次的な過程ではなく、Liが欠陥を介していったんAlに達すると、反応が急激に順次起こることを示唆している。これは、リチウム化時にAlの体積膨張のために発生する場合がある。この体積膨張は、保護膜を破壊し、より多くの欠陥を誘発するように作用し、より多くのAlを液体電解質及びLiリザーバにさらすであろう。
【0110】
浸水したセルの分析における重要な考慮事項は、浸水したセルを密封するために使用されるエポキシの役割である。エポキシはFe保護層及び液体電解質とじかに接触し、これは、エポキシが同じ電気化学環境にさらされ、分解を受けやすいことを意味する。この可能性を検討するために、エポキシを含む、及びエポキシを含まないコイン電池が構築され、比較され、結果が図9に示されている。図9、パネルaから、エポキシを含むCuセルが、エポキシを含まないCuセルと比べて約1桁高い電流密度を発生させることが明らかである。この結果は、Feで保護されたAlにつながる。さらに、エポキシを含むFeで保護されたAlセルは、厚さが数ミクロンであるSEI層を形成する。そのような厚いSEIは、エポキシを含まないセルでは見えず、これは、エポキシ分子がSEIを形成するために還元されていることを示唆している。この観察は、浸水したセルで得られた電流密度値が誇張されている場合があることを示している。さらに、浸水したセルで障害が観察されたという事実は、エポキシの分解がそれらのセルの安定性を拡張する際に役割を果たしていないことを示唆している。これらの実験は、将来の用途でのFe保護されたAl集電体の端縁及び背面を保護するための材料及び戦略の慎重な選択の重要性を浮き彫りにしている。
【0111】
結論。この実施例は、Feが低電位でのAl箔のリチウム化を防止するために適した材料であることを実証している。Li/Liに対する10mVでの定電位保持は、Feで保護されたAl箔がCu集電体に匹敵する電流密度を生じさせ、1000時間以上安定したままとなることができることを示している。100時間以上の定電位保持後、明らかな形態学的変化は観察されなかった。障害が発生すると、電流密度は突然上昇し、障害の過程が急激に順次起こることを示唆している。この障害は、Fe膜の欠陥の存在に起因する場合がある。ここに示す結果は、Liイオン電池におけるCuの代替品としてAlアノード集電体を使用することを裏付けている。
【0112】
図のキャプション。図6。Cu及び裸Alと比較したAl上のFe保護層の性能。パネルa:Cu、裸、及びFeで保護されたAlの10mVでの定電位保持の120時間にわたる電流密度の変化。濃い青色の線は、同じ実験条件の3回の繰り返しの平均を表し、明るい青色の領域は標準偏差を示している。パネルb:パネルaの実験に対応する移動電荷密度の変化。10 mVでの定電位保持後のCu(パネルc)、裸Al(パネルd)、Feで保護されたAl(パネルe)の写真。Li電極の形状と位置に一致しているパネルdの穴に注目されたい。箔は、鋼集電体上でカーボンテープにより固定されており、一方、他の試料にはカーボンテープがなかったため、分離器及びLi電極の刻印はパネルeでのみ目に見える。
【0113】
図7。スパッタされたFe膜の走査電子顕微鏡画像。上の画像:元の状態のFe膜試料の上面図。下の画像:水とアセトンで濯いだ10mVで120時間の定電位保持後のFe保護フィルムの上面図。下の画像は、Li電極の真下にある領域から撮影された。
【0114】
図8。浸水したセルの構成及び長期安定性の実証。パネルa:10mVでの定電位保持中の浸水したセル内の様々な箔の電流密度の変化。パネルb:パネルaの実験に対応する電荷密度の変化。パネルc:浸水したセルの構成の概略図。パネルd:浸水したセルの写真。パネルe:障害時のFe保護されたAl箔の裏側。点線の円は、浸水したセルの活成分の場所を記している。
【0115】
図9。電流密度の変化に対するエポキシの影響。パネルa:エポキシを含む、及びエポキシを含まない様々なコイン電池の電流密度の変化。パネルb:箔の中心領域に厚い灰色のSEIを示している、10 mVで120時間定電位保持した後、エポキシで密封されたFe保護箔の写真。
実例となる態様
【0116】
以下で使用されるように、一連の態様(例えば、「態様1~4」)または態様の列挙されていないグループ(例えば、「任意の前記または後続の態様」)の参照は、選言的にそれらの態様のそれぞれへの参照として理解されるべきである(例えば、「態様1~4」は「態様1、2、3、または4」として理解されるべきである)。
【0117】
態様1は、アルミニウム合金層と、前記アルミニウム合金層と接触している伝導性保護層とを含む基板である。
【0118】
態様2は、前記伝導性保護層が、前記アルミニウム合金層へのリチウム原子またはリチウムイオンの透過を防止する、任意の前記または後続の態様の基板である。
【0119】
態様3は、前記伝導性保護層に、リチウム原子またはリチウムイオンの前記アルミニウム合金層への透過を可能にする欠陥がない、または実質的にない、任意の前記または後続の態様の基板である。
【0120】
態様4は、前記伝導性保護層に、前記アルミニウム合金層に面する前記伝導性保護層の表面と、前記伝導性保護層の反対側の表面との間に広がる欠陥がない、または実質的にない、任意の前記または後続の態様の基板である。
【0121】
態様5は、前記伝導性保護層が、前記アルミニウム合金層にコーティングを含む、任意の前記または後続の態様の基板である。
【0122】
態様6は、前記伝導性保護層が、前記アルミニウム合金層の全てまたは一部をコーティングする、任意の前記または後続の態様の基板である。
【0123】
態様7は、前記アルミニウム合金層が、前記伝導性保護層にコーティングを含む、任意の前記または後続の態様の基板である。
【0124】
態様8は、前記伝導性保護層が、前記アルミニウム合金層の全てまたは一部を覆う完全なカプセル化層を含む、任意の前記または後続の態様の基板である。
【0125】
態様9は、前記伝導性保護層が、リチウムと合金化しない材料を含む、任意の前記または後続の態様の基板である。
【0126】
態様10は、前記伝導性保護層が、リチウムと合金化する材料を含まない、任意の前記または後続の態様の基板である。
【0127】
態様11は、前記伝導性保護層がアルミニウム、亜鉛、マグネシウム、シリコン、ゲルマニウム、スズ、インジウム、アンチモン、または炭素を含まない、任意の前記または後続の態様の基板である。
【0128】
態様12は、前記伝導性保護層が70重量%以上の純度を有する、任意の前記または後続の態様の基板である。
【0129】
態様13は、前記伝導性保護層が、Li/Li+に対して0V~5Vの電位でリチウムと反応しない材料を含む、任意の前記または後続の態様の基板である。
【0130】
態様14は、前記伝導性保護層が、チタン、クロム、鉄、ニッケル、モリブデン、タングステン、銅、または窒化チタンの1つまたは複数を含む、任意の前記または後続の態様の基板である。
【0131】
態様15は、前記伝導性保護層が複合構造を含む、任意の前記または後続の態様の基板である。
【0132】
態様16は、前記複合構造が少なくとも第1の副層及び第2の副層を含み、前記第1の副層及び前記第2の副層が同じ材料または異なる材料を含む、任意の前記または後続の態様の基板である。
【0133】
態様17は、前記複合材料の1つまたは複数の副層が、それぞれ独立して70重量%以上の純度を有する、任意の前記または後続の態様の基板である。
【0134】
態様18は、前記伝導性保護層が、物理蒸着層、スパッタ蒸着層、気化蒸着層、化学蒸着層、電着蒸着層、電気めっき層、化学気相蒸着層、または原子層蒸着層を含む、任意の前記または後続の態様の基板である。
【0135】
態様19は、前記伝導性保護層が、結晶構造または多結晶構造を含む、任意の前記または後続の態様の基板である。
【0136】
態様20は、前記伝導性保護層が、30重量%以下の酸素含有量を有する、任意の前記または後続の態様の基板である。
【0137】
態様21は、前記伝導性保護層が、1重量%以下の不純物含有量を有する金属層を含む、任意の前記または後続の態様の基板である。
【0138】
態様22は、前記伝導性保護層が、105S/m~108S/mの導電率または10-8Ω・m~10-6Ω・mの電気抵抗率を有する、任意の前記または後続の態様の基板である。
【0139】
態様23は、前記伝導性保護層が10nm~100μmまたは1μm~500μmの厚さを有する、任意の前記または後続の態様の基板である。
【0140】
態様24は、前記伝導性保護層が金属もしくは金属合金シートまたは金属もしくは金属合金箔である、任意の前記または後続の態様の基板である。
【0141】
態様25は、前記伝導性保護層が第1の箔を含み、前記アルミニウム合金層が第2の箔を含み、前記第1の箔と前記第2の箔が互いに結合される、任意の前記または後続の態様の基板である。
【0142】
態様26は、前記アルミニウム合金層が、アルミニウム合金シートまたはアルミニウム合金箔を含む、任意の前記または後続の態様の基板である。
【0143】
態様27は、前記アルミニウム合金層が10nm~100μmまたは1μm~500μmの厚さを有する、任意の前記または後続の態様の基板である。
【0144】
態様28は、電子基板を含むか、または電子基板に対応する、任意の前記または後続の態様の基板である。
【0145】
態様29は、集電体を含むか、または集電体に対応する、任意の前記または後続の態様の基板である。
【0146】
態様30は、電気化学セル、コンデンサ、またはスーパーキャパシタ用の集電体を含むか、または集電体に対応する、任意の前記または後続の態様の基板である。
【0147】
態様31は、リチウムイオン電気化学セル用の集電体を含むか、または集電体に対応する、任意の前記または後続の態様の基板である。
【0148】
態様32は、アノード集電体もしくはカソード集電体を含むか、またはアノード集電体もしくはカソード集電体に対応する、任意の前記または後続の態様の基板である。
【0149】
態様33は、アルミニウム合金層が電極用の集電体に対応する前記アルミニウム合金層と、前記アルミニウム合金層と接触している伝導性保護層と、前記伝導性保護層と接触している電極活物質とを含むデバイスである。
【0150】
態様34は、電気化学セル電極を含むか、または電気化学セル電極に対応する、任意の前記または後続の態様のデバイスである。
【0151】
態様35は、前記電極活物質がリチウムイオンカソード活物質またはリチウムイオンアノード活物質を含む、任意の前記または後続の態様のデバイスである。
【0152】
態様36は、電気化学セルもしくは電池を含むか、または電気化学セルもしくは電池に対応する、任意の前記または後続の態様のデバイスである。
【0153】
態様37は、前記アルミニウム合金層、前記伝導性保護層、及び前記電極活物質が、第1の電気化学セル電極を含むか、または第1の電気化学セル電極に対応し、前記デバイスが、第2の電気化学セル電極と、前記第1の電気化学セル電極と前記第2の電気化学セル電極との間に配置された電解質とをさらに含む、任意の前記または後続の態様のデバイスである。
【0154】
態様38は、前記第1の電気化学セル電極または前記第2の電気化学セル電極と直接的または間接的に電気通信し、前記第1の電気化学セル電極または前記第2の電気化学セル電極から電流を引き出すもしくは受け取る電子機器回路をさらに備える、任意の前記または後続の態様のデバイスである。
【0155】
態様39は、携帯用電子機器を備えるか、または携帯用電子機器に対応する、任意の前記または後続の態様のデバイスである。
【0156】
態様40は、前記アルミニウム合金層及び前記伝導性保護層が、任意の前記または後続の態様の基板を含むか、またはそれに対応する、任意の前記または後続の態様のデバイスである。
【0157】
態様41は、基板を製造する方法であり、アルミニウム合金層を提供することと、前記アルミニウム合金層を伝導性保護層と接触させることとを含む、任意の前記または後続の態様の方法である。
【0158】
態様42は、前記接触させることが、物理蒸着プロセス、スパッタ蒸着プロセス、気化蒸着プロセス、化学蒸着プロセス、電着プロセス、電気めっきプロセス、化学気相蒸着プロセス、または原子層蒸着プロセスの1つまたは複数を使用して、前記アルミニウム合金層にコーティングとして前記伝導性保護層を蒸着させることを含む、任意の前記または後続の態様の方法である。
【0159】
態様43は、前記接触させることが、複数の別々のコーティングプロセスとして前記伝導性保護層を蒸着させることを含む、任意の前記または後続の態様の方法である。
【0160】
態様44は、前記伝導性保護層が複合構造を含み、前記接触させることが、前記アルミニウム合金層に第1の副層を蒸着させることと、前記第1の副層に第2の副層を蒸着させることとを含む、任意の前記または後続の態様の方法である。
【0161】
態様45は、前記接触させることが、物理蒸着プロセス、スパッタ蒸着プロセス、気化蒸着プロセス、化学蒸着プロセス、電着プロセス、電気めっきプロセス、化学気相蒸着プロセス、または原子層蒸着プロセスの1つまたは複数を使用して、前記伝導性保護層にコーティングとして前記アルミニウム合金層を蒸着させることを含む、任意の前記または後続の態様の方法である。
【0162】
態様46は、前記アルミニウム合金層がアルミニウム合金箔を含み、前記伝導性保護層が前記アルミニウム合金箔にコーティングを含む、任意の前記または後続の態様の方法である。
【0163】
態様47は、前記伝導性保護層が、金属または金属合金箔を含み、前記アルミニウム合金層が前記金属または金属合金箔にコーティングを含む、任意の前記または後続の態様の方法である。
【0164】
態様48は、前記アルミニウム合金層が第1の箔を含み、前記伝導性保護層が第2の箔を含み、前記接触させることが、前記第1の箔及び前記第2の箔を結合することを含む、任意の前記または後続の態様の方法である。
【0165】
態様49は、前記基板が、任意の前記態様に記載の前記基板を含む、任意の前記または後続の態様の方法である。
【0166】
本明細書に引用された全ての特許及び刊行物は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。例示された実施形態を含む実施形態の上述の説明は、例示及び説明の目的のためにのみ提示されており、網羅的であること、または開示された正確な形態に限定することを意図するものではない。多数の修正、適合、及びそれらの使用は、当業者には明らかであろう。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2024-06-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム合金層と、
アルミニウム合金層と接触している伝導性保護層
を含む、基板であって、
伝導性保護層が鉄を含み、
伝導性保護層が、Li/Li に対して0V~5Vの電位でリチウムと反応しない材料を含み、
伝導性保護層がアルミニウム、亜鉛、マグネシウム、シリコン、ゲルマニウム、スズ、インジウム、アンチモン、または炭素を含まない、基板
【請求項2】
伝導性保護層が、アルミニウム合金層へのリチウム原子またはリチウムイオンの透過を防止する、請求項1に記載の基板。
【請求項3】
伝導性保護層に、リチウム原子またはリチウムイオンのアルミニウム合金層への透過を可能にする欠陥がない、または実質的にない、請求項1に記載の基板。
【請求項4】
伝導性保護層に、アルミニウム合金層に面する伝導性保護層の表面と、伝導性保護層の反対側の表面との間に広がる欠陥がない、または実質的にない、請求項1に記載の基板。
【請求項5】
伝導性保護層が、アルミニウム合金層にコーティングを含む、請求項1に記載の基板。
【請求項6】
伝導性保護層が、アルミニウム合金層の全てまたは一部をコーティングする、請求項1に記載の基板。
【請求項7】
アルミニウム合金層が、伝導性保護層にコーティングを含む、請求項1に記載の基板。
【請求項8】
伝導性保護層が、アルミニウム合金層の全てまたは一部を覆う完全なカプセル化層を含む、請求項5に記載の基板。
【請求項9】
伝導性保護層が、リチウムと合金化しない材料を含む、請求項1に記載の基板。
【請求項10】
伝導性保護層が、リチウムと合金化する材料を含まない、請求項1に記載の基板。
【請求項11】
伝導性保護層が70重量%以上の純度を有する、請求項1に記載の基板。
【請求項12】
伝導性保護層が複合構造を含む、請求項1に記載の基板。
【請求項13】
複合構造が少なくとも第1の副層及び第2の副層を含み、第1の副層及び第2の副層が同じ材料または異なる材料を含む、請求項1に記載の基板。
【請求項14】
複合材料の1つまたは複数の副層が、それぞれ独立して70重量%以上の純度を有する、請求項1に記載の基板。
【請求項15】
伝導性保護層が、物理蒸着層、スパッタ蒸着層、気化蒸着層、化学蒸着層、電着蒸着層、電気めっき層、化学気相蒸着層、または原子層蒸着層を含む、請求項1に記載の基板。
【請求項16】
伝導性保護層が、結晶構造または多結晶構造を含む、請求項1に記載の基板。
【請求項17】
伝導性保護層が、30重量%以下の酸素含有量を有する、請求項1に記載の基板。
【請求項18】
伝導性保護層が、1重量%以下の不純物含有量を有する金属層を含む、請求項1に記載の基板。
【請求項19】
伝導性保護層が、10S/m~10S/mの導電率または10-8Ω・m~10-6Ω・mの電気抵抗率を有する、請求項1に記載の基板。
【請求項20】
伝導性保護層が10nm~100μmまたは1μm~500μmの厚さを有する、請求項1に記載の基板。
【請求項21】
伝導性保護層が金属もしくは金属合金シートまたは金属もしくは金属合金箔である、請求項1に記載の基板。
【請求項22】
伝導性保護層が第1の箔を含み、アルミニウム合金層が第2の箔を含み、第1の箔と第2の箔が互いに結合される、請求項1に記載の基板。
【請求項23】
アルミニウム合金層が、アルミニウム合金シートまたはアルミニウム合金箔を含む、請求項1に記載の基板。
【請求項24】
アルミニウム合金層が10nm~100μmまたは1μm~500μmの厚さを有する、請求項1に記載の基板。
【請求項25】
電子基板を含むか、または電子基板に対応する、請求項1に記載の基板。
【請求項26】
集電体を含むか、または集電体に対応する、請求項1に記載の基板。
【請求項27】
電気化学セル、コンデンサ、またはスーパーキャパシタ用の集電体を含むか、または集電体に対応する、請求項1に記載の基板。
【請求項28】
リチウムイオン電気化学セル用の集電体を含むか、または集電体に対応する、請求項1に記載の基板。
【請求項29】
アノード集電体もしくはカソード集電体を含むか、またはアノード集電体もしくはカソード集電体に対応する、請求項1に記載の基板。
【請求項30】
請求項1~29のいずれかに記載の基板を含むデバイスであって
デバイスが、
電極用の集電体に対応するアルミニウム合金層と、
アルミニウム合金層と接触している伝導性保護層と、
伝導性保護層と接触している電極活物質
を含む、デバイス。
【請求項31】
電気化学セル電極を含むか、または電気化学セル電極に対応する、請求項3に記載のデバイス。
【請求項32】
電極活物質がリチウムイオンカソード活物質またはリチウムイオンアノード活物質を含む、請求項3に記載のデバイス。
【請求項33】
電気化学セルもしくは電池を含むか、または電気化学セルもしくは電池に対応する、請求項3に記載のデバイス。
【請求項34】
アルミニウム合金層、伝導性保護層、及び電極活物質が、第1の電気化学セル電極を含むか、または第1の電気化学セル電極に対応し、デバイスが、
第2の電気化学セル電極と、
第1の電気化学セル電極と第2の電気化学セル電極との間に配置された電解質と
をさらに含む、請求項3に記載のデバイス。
【請求項35】
第1の電気化学セル電極または第2の電気化学セル電極と直接的または間接的に電気通信し、第1の電気化学セル電極または第2の電気化学セル電極から電流を引き出すもしくは受け取る電子機器回路
をさらに備える、請求項3に記載のデバイス。
【請求項36】
携帯用電子機器を備えるか、または携帯用電子機器に対応する、請求項3に記載のデバイス。
【請求項37】
アルミニウム合金層を準備することと、
アルミニウム合金層を伝導性保護層と接触させるこ
を含む、請求項1~29のいずれかに記載の基板を製造する方法。
【請求項38】
接触させることが、物理蒸着プロセス、スパッタ蒸着プロセス、気化蒸着プロセス、化学蒸着プロセス、電着プロセス、電気めっきプロセス、化学気相蒸着プロセス、または原子層蒸着プロセスの1つまたは複数を使用して、アルミニウム合金層にコーティングとして伝導性保護層を蒸着させることを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
接触させることが、複数の別々のコーティングプロセスとして伝導性保護層を蒸着させることを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
伝導性保護層が複合構造を含み、接触させることが、
アルミニウム合金層に第1の副層を蒸着させることと、
第1の副層に第2の副層を蒸着させることと
を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
接触させることが、物理蒸着プロセス、スパッタ蒸着プロセス、気化蒸着プロセス、化学蒸着プロセス、電着プロセス、電気めっきプロセス、化学気相蒸着プロセス、または原子層蒸着プロセスの1つまたは複数を使用して、伝導性保護層にコーティングとしてアルミニウム合金層を蒸着させることを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項42】
アルミニウム合金層がアルミニウム合金箔を含み、伝導性保護層がアルミニウム合金箔にコーティングを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項43】
伝導性保護層が、金属または金属合金箔を含み、アルミニウム合金層が金属または金属合金箔にコーティングを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項44】
アルミニウム合金層が第1の箔を含み、伝導性保護層が第2の箔を含み、接触させることが、第1の箔及び第2の箔を結合することを含む、請求項37に記載の方法。