(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113004
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】活電極物質
(51)【国際特許分類】
H01M 4/485 20100101AFI20240814BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240814BHJP
H01M 10/054 20100101ALI20240814BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240814BHJP
C01G 33/00 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
H01M4/485
H01M10/052
H01M10/054
H01M4/36 C
C01G33/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】32
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024088524
(22)【出願日】2024-05-31
(62)【分割の表示】P 2023509494の分割
【原出願日】2021-08-27
(31)【優先権主張番号】2013576.0
(32)【優先日】2020-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】PCT/GB2020/052487
(32)【優先日】2020-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】PCT/GB2020/052485
(32)【優先日】2020-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】PCT/GB2020/052486
(32)【優先日】2020-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2104508.3
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2105091.9
(32)【優先日】2021-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】522145144
【氏名又は名称】エチオン テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196597
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】グルームブリッジ,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ツァイ,ジーホン
(72)【発明者】
【氏名】マーティン,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】バッバル,プリンス
(57)【要約】 (修正有)
【課題】エネルギー密度の高い活電極物質およびその製造方法を提供する。
【解決手段】一般式M1aM22-aM3bNb34-bO87-c-dQdで表される活電極物質を提供する。式中、M1とM2は異なり、M1は、Mg、Ca、Sr、Y、La、Ce、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co等及びそれらの混合物から選択され、M2はZnまたはCuであり、M3は、Mg、Ca、Sr、Y、La、Ce、Ti、Zr、Hf、V、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co等及びそれらの混合物から選択され、Qは、F、Cl、Br、I、N、S、Se、及びそれらの混合物から選択され、0≦a<1.0、0≦b≦3.4、-0.5≦c≦4.35、0≦d≦4.35であり、a、b、c、及びdの1つ以上が0と等価ではなく、かつa、b、及びdが0の場合、cは0より大きい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニオブ混合酸化物を含む活電極物質であって、前記ニオブ混合酸化物は、組成M1aM
22-aM3bNb34-bO87-c-dQdを有し、式中、
M1とM2は異なり、
M1は、Mg、Ca、Sr、Y、La、Ce、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、C
r、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Cd、B、Al、Ga、In、S
i、Ge、Sn、Pb、P、Sb、Bi及びそれらの混合物から選択され、
M2はZnまたはCuであり、
M3は、Mg、Ca、Sr、Y、La、Ce、Ti、Zr、Hf、V、Ta、Cr、M
o、W、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Cd、B、Al、Ga、In、Si、G
e、Sn、Pb、P、Sb、Bi及びそれらの混合物から選択され、
Qは、F、Cl、Br、I、N、S、Se、及びそれらの混合物から選択され、
0≦a<1.0、0≦b≦3.4、-0.5≦c≦4.35、0≦d≦4.35であり
、
a、b、c、及びdの1つ以上が0と等価ではなく、かつ
a、b、及びdが0の場合、cは0より大きい、前記活電極物質。
【請求項2】
(i)a>0、及び/または
(ii)0≦a≦0.6及び/または
(iii)0≦a≦0.2である、請求項1に記載の活電極物質。
【請求項3】
(i)b>0、及び/または
(ii)0≦b≦1.5、及び/または
(iii)0≦b≦0.3、または
(iv)b=0である、先行請求項のいずれかに記載の活電極物質。
【請求項4】
(i)c≠0、または
(ii)0≦c≦4.35、または
(iii)0<c≦4.35である、先行請求項のいずれかに記載の活電極物質。
【請求項5】
(i)d>0、及び/または
(ii)0≦d≦3.0、及び/または
(iii)0≦d≦2.17、または
(iv)d=0である、先行請求項のいずれかに記載の活電極物質。
【請求項6】
a及びbの少なくとも1つが0超、またはaとbの両方が0超のときである、先行請求
項のいずれかに記載の活電極物質。
【請求項7】
M1が、
(i)Mg、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、
Ni、Cu、Zn、Cd、B、Al、Ga、Si、Ge、Sn、P、及びそれらの混合物
、または
(ii)Mg、Ti、Zr、V、Nb、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Cu
、Zn、B、Al、Si、Ge、P、及びそれらの混合物、または
(iii)Mg、Zr、V、Cr、Mo、W、Fe、Cu、Zn、Al、Ge、P、及び
それらの混合物から選択される、先行請求項のいずれかに記載の活電極物質。
【請求項8】
M2がZnである、先行請求項のいずれかに記載の活電極物質。
【請求項9】
M3が、
(i)Mg、Ti、Zr、Hf、V、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、
Cu、Zn、Cd、B、Al、Ga、Si、Sn、P、及びそれらの混合物、または
(ii)Mg、Ti、Zr、V、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn
、Cd、B、Al、Si、P、及びそれらの混合物、または
(iii)Ti、Zr、V、Cr、Mo、W、Fe、Cu、Zn、Al、P、及びそれら
の混合物から選択される、先行請求項のいずれかに記載の活電極物質。
【請求項10】
(i)M1は6配位のイオン半径0.1<r<1.0オングストロームを有し、及び/ま
たは
(ii)M1は、6配位のM22+とは異なる6配位のイオン半径を有し、任意選択で6
配位のM22+よりも小さい6配位のイオン半径を有する、及び/または
(iii)M1は6配位のイオン半径0.52<r<0.84オングストロームを有する
、先行請求項のいずれかに記載の活電極物質。
【請求項11】
(i)M3は6配位のイオン半径0.1<r<1.0オングストロームを有し、及び/ま
たは
(ii)M3は、6配位のNb5+とは異なる6配位のイオン半径を有し、任意選択で6
配位のNb5+よりも大きい6配位のイオン半径を有する、及び/または
(iii)M3は6配位のイオン半径0.54<r<0.74オングストロームを有する
、先行請求項のいずれかに記載の活電極物質。
【請求項12】
(i)M1は2+と同等またはそれより高い原子価を有し、任意選択でそれより高い原子
価を有する、または
(ii)M3は5+より低い原子価を有する、または
(iii)M1は、2+と同等またはそれより高い原子価を有し、M3は5+より低い原
子価を有する、先行請求項のいずれかに記載の活電極物質。
【請求項13】
M1がNbを含まず、M3がZn及び/またはCuを含まない、先行請求項のいずれか
に記載の活電極物質。
【請求項14】
(i)Qは、F、Cl、N、S、及びそれらの混合物から選択される、または
(ii)Qは、F、N、及びそれらの混合物から選択される、または
(iii)QはFである、先行請求項のいずれかに記載の活電極物質。
【請求項15】
M1は、Cr、Al、Ge、及びそれらの混合物から選択され、
M3は、Ti、Zr、Fe、及びそれらの混合物から選択され、任意選択にTiを含み
、
0<a<1.0、
0<b≦1.5、
-0.5≦c≦4.35、
d=0である、先行請求項のいずれかに記載の活電極物質。
【請求項16】
M1はCrであり、
M2はZnであり、
M3は、Ti、Zr、及びそれらの混合物から選択され、任意選択にTiを含み、
0.01<a<1.0、
0.01<b<1.0、
-0.5≦c≦2、
d=0である、先行請求項のいずれかに記載の活電極物質。
【請求項17】
前記ニオブ混合酸化物が酸素欠乏であり、任意選択に、前記ニオブ混合酸化物が酸素欠
乏を誘発する、先行請求項のいずれかに記載の活性電極物質。
【請求項18】
前記ニオブ混合酸化物が炭素でコーティングされている、先行請求項のいずれかに記載
の活電極物質。
【請求項19】
前記炭素コーティングが多芳香族sp2炭素を含み、任意選択で前記炭素コーティング
がピッチ炭素に由来する、請求項18に記載の活電極物質。
【請求項20】
前記ニオブ混合酸化物が粒子形態であり、任意選択で前記ニオブ混合酸化物が0.1~
100μm、または0.5~50μm、または1~20μmの範囲のD50の粒径を有す
る、先行請求項のいずれかに記載の活電極物質。
【請求項21】
前記ニオブ混合酸化物は、0.1~100m2/g、または0.5~50m2/g、ま
たは1~20m2/gの範囲のBET表面積を有する、先行請求項のいずれかに記載の活
電極物質。
【請求項22】
前記ニオブ混合酸化物がLi及び/またはNaをさらに含む、先行請求項のいずれかに
記載の活電極物質。
【請求項23】
X線回折によって決定される前記ニオブ混合酸化物の結晶構造が、Zn2Nb34O8
7及びCu2Nb34O87の1つまたは複数の結晶構造に対応する、または、Zn2N
b34O87の結晶構造に対応する、先行請求項のいずれかに記載の活電極物質。
【請求項24】
前記ニオブ混合酸化物及び少なくとも1つの他の成分を含み、任意選択で、前記少なく
とも1つの他の成分が、結合剤、溶媒、導電性添加剤、異なる活電極物質、及びそれらの
混合物から選択される、先行請求項のいずれかに記載の活電極物質。
【請求項25】
前記少なくとも1つの他の成分は、先行請求項のいずれかによって定義される組成を有
する異なるニオブ混合酸化物、リチウムチタン酸化物、ニオブ酸化物、及びそれらの混合
物から選択される異なる活電極物質である、請求項24に記載の活電極物質。
【請求項26】
集電体と電気的に接触している、請求項1~25のいずれかに記載の活電極物質を含む
電極。
【請求項27】
アノード、カソード、及び前記アノードと前記カソードとの間に配置された電解質を含
む電気化学デバイスであって、
前記アノードが、請求項1~25のいずれかに記載の活電極物質を含み、任意選択で、
前記電気化学デバイスがリチウムイオン電池またはナトリウムイオン電池である、前記電
気化学デバイス。
【請求項28】
20mA/gで190mAh/gより大きい可逆的アノード活性物質比容量を有するリ
チウムイオン電池であり、
20mA/gで初期のセル容量の70%以上を保持しながら、前記電池は、200mA
/g以上、または1000mA/g以上、または2000mA/g以上、または4000
mA/g以上の前記アノード活性物質に対する電流密度で充電及び放電することができる
、請求項27に記載の電気化学デバイス。
【請求項29】
請求項1~23のいずれかにより定義されたニオブ混合酸化物の製造方法であって、前
記方法は、
1つ以上の前駆体物質を得るステップ、
前記前駆体物質を混合して、前駆体物質混合物を形成するステップ、及び
前記前駆体物質混合物を400℃~1350℃または800℃~1250℃の温度範囲
で熱処理して、前記ニオブ混合酸化物を得るステップ
を含む、前記方法。
【請求項30】
前記ニオブ混合酸化物を、元素Qを含む前駆体と混合して、さらなる前駆体物質混合物
を得るステップ、及び
任意選択に還元条件下で、300~1200℃または800~1200℃の温度範囲で
前記さらなる前駆体物質混合物を熱処理し、元素Qを含む前記ニオブ混合酸化物を得るス
テップ
をさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記ニオブ混合酸化物または前記元素Qを含むニオブ混合酸化物を還元条件下で400
~1350℃または800~1250℃の温度範囲で熱処理し、前記ニオブ混合酸化物に
酸素空孔を誘発するさらなるステップを含む、請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
前記ニオブ混合酸化物または前記元素Qを含むニオブ混合酸化物を、多芳香族sp2炭
素を含む炭素前駆体と組み合わせて、中間物質を形成するステップ、及び
還元条件下で前記中間物質を加熱して前記炭素前駆体を熱分解し、前記ニオブ混合酸化
物に炭素コーティングを形成し、前記ニオブ混合酸化物に酸素空孔を誘発するステップ
をさらに含む、請求項29から31のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活電極物質と活電極物質の製造方法とに関する。このような関心物質は、例
えば、リチウムイオン電池池のアノードの物質として、リチウムイオン電池またはナトリ
ウムイオン電池の活電極物質として注目されている。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン(Li-ion)電池は、一般的に使われている充電式電池の一種であ
り、世界市場は2030年には2000億ドルに成長すると予測されている。Li-io
n電池は、技術的能力から環境への影響まで複数の要求がある電気自動車に最適な技術で
あり、環境に優しい自動車産業が実現可能な道程を授ける。
【0003】
典型的なリチウムイオン電池は、直列または並列に接続された複数のセルで構成されて
いる。個々のセルは、通常、アノード(負極性電極)とカソード(正極性電極)とで構成
されており、多孔質の電気絶縁膜(セパレータと呼ばれる)で分離され、リチウムイオン
の輸送を可能にする液体(電解液と呼ばれる)に浸されている。
【0004】
ほとんどのシステムでは、電極は、電気化学的に活性な物質で構成されており、このこ
とはリチウムイオンと化学的に反応して、それらを制御された状態で可逆的に吸蔵及び放
出できることを意味し、これは必要に応じて導電性添加剤(炭素など)及び高分子結合剤
と混合される。これらの成分のスラリーが集電体(一般的には銅またはアルミニウムの薄
箔)に薄膜としてコーティングされ、そのため乾燥時に電極を形成する。
【0005】
既知のLiイオン電池技術においては、黒鉛アノードは電池充電時の安全性の限界があ
り、高出力の電子機器、自動車及び産業への応用の大きな障害となっている。最近提案さ
れた様々な有望な代替物の中で、チタン酸リチウム(LTO)及びニオブ混合酸化物が、
黒鉛に代わる、高出力で早い充電の用途に最適な活物質として有力な候補である。
【0006】
黒鉛アノードに依存する電池は、根本的に充電レートの点で制限される。公称条件下で
は、充電時にリチウムイオンがアノード活物質に挿入される。充電レートが高くなると、
一般的な黒鉛の電圧プロファイルは、過電圧によりアノードの部位の電位がLi/Li+
に対して0Vよりも低くなる危険性が高いものになり、リチウムイオンが代わりにリチウ
ム金属として黒鉛電極の表面に析出するリチウムデンドライト電気メッキと呼ばれる現象
を引き起こす。この結果、活性リチウムが不可逆的に失われ、したがってセルの容量が急
速に低下する。場合によって、これらの樹枝状の析出物は非常に大きなサイズに成長する
ので、電池のセパレータを貫通してしまい、セルの短絡につながる可能性がある。これが
引金となり、セルが突発的に故障し、出火または破裂が生じることもある。そのため、黒
鉛アノードを有する最も速く充電が可能な電池では、充電レートが5~7Cに制限されて
いるが、たいていはそれよりも大幅に低くされている。
【0007】
チタン酸リチウム(LTO)アノードは、高電位(Li/Li+に対して1.6V)の
ために高充電レートでのデンドライト電気メッキの影響を受けず、3D結晶構造に対応し
ているためリチウムイオンのインターカレーション時に活物質の大幅な体積膨張の影響を
受けないので優れたサイクル寿命を有する。これら2つの理由から、LTOセルは一般に
安全性の高いセルと見なされている。しかし、LTOは比較的劣った電子伝導体及びイオ
ン伝導体であるため、物質をナノ化して比表面積を大きくし、炭素被覆して電子的伝導率
を高めない限り、高レートでの容量維持率及び得られる電力の能力に限界がある。この粒
子レベルの材料工学により、活物質の多孔性と比表面積が増加し、電極で達成可能な充填
密度が大幅に低下する。このことは、電極の密度が低くなり、電気化学的に不活性な物質
(例えば結合剤、炭素添加剤)の割合が高くなり、重量エネルギー密度と体積エネルギー
密度が大幅に低下するに至るためである。
【0008】
アノードの能力の重要な指標は、電極の体積比容量(mAh/cm3)、つまり、アノ
ードの単位体積あたりに蓄積できる電荷(つまりリチウムイオン)の量である。この量は
、カソード及び適切なセル設計パラメータと組み合わせたとき、体積ベースでの電池全体
のエネルギー密度(Wh/L)を決定する重要な要素である。電極の体積比容量は、電極
密度(g/cm3)、活物質の比容量(mAh/g)、及び電極内の活物質の割合の積と
して概算できる。LTOアノードは通常、比容量が比較的小さく(約165mAh/gで
あり、黒鉛の約330mAh/gと比較)、これが上記の小さい電極密度(通常2.0g
/cm3未満)及び活物質の小さい割合(90%未満)と相まって、体積比容量が非常に
小さくなり(300mAh/cm3未満)、したがって電池エネルギー密度も小さくなり
、様々な用途において金額のkWhあたりのコストが高くなる。結果的として、LTO電
池/セルは、長いサイクル寿命、急速充電性能、及び高い安全性にもかかわらず、ニッチ
な特定の用途に一般に限定されている。
【0009】
ニオブ混合酸化物構造は、Liイオンセルでの使用に最近関心が持たれている。Zhu
etal., J. Mater. Chem. A,2019, 7,25537及
びZhu etal., Chem. Commun., 2020,56, 7321
-7324は、考えられる活電極物質としてZn2Nb34O87及びCu2Nb34O
87を開示している。これらの論文は、複雑な粒子レベルの工学に依存しており、その称
するところでは、例えば粒子の空隙率や形態を制御しようとしながら、優れた特性を達成
するという。これらの物質の特性は改善できると考えられている。例えば、これらの物質
は、商業用のLiイオンセルで効率的な充電と放電を可能にするのに十分な電子伝導性を
有していない可能性があり、その結果、過剰なインピーダンスが生じる。さらに、Liイ
オンの容量、クーロン効率、及び充電と放電の電圧プロファイルの調整においても、依然
として改善の余地がある。大規模なナノスケールまたは粒子レベルの工学を必要とせず、
コーティングも必要としない、本明細書に記載されているこれらの改善を行うことは、マ
スマーケットでの採用に向けた低コストのバッテリー物質への重要なステップである。こ
れらの改善に対処しない場合、得られるデバイスに過剰な電気抵抗が生じ、エネルギー密
度が低下し、分極の増加、電力密度の低下、エネルギー効率の低下、及びコストの増加に
つながる。したがって、Zn2Nb34O87及びCu2Nb34O87の特性を、リチ
ウムイオン電池で使用するために改善する必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0010】
第1の態様では、本発明は、ニオブ混合酸化物を含む活電極物質を提供し、ニオブ混合
酸化物は、組成M1aM22-aM3bNb34-bO87-c-dQdを有し、式中、
M1とM2は異なり、
M1は、Mg、Ca、Sr、Y、La、Ce、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr
、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Cd、B、Al、Ga、In、Si
、Ge、Sn、Pb、P、Sb、Bi及びそれらの混合物から選択され、
M2はZnまたはCuであり、
M3は、Mg、Ca、Sr、Y、La、Ce、Ti、Zr、Hf、V、Ta、Cr、Mo
、W、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Cd、B、Al、Ga、In、Si、Ge
、Sn、Pb、P、Sb、Bi及びそれらの混合物から選択され、
Qは、F、Cl、Br、I、N、S、Se、及びそれらの混合物から選択され、
0≦a<1.0、0≦b≦3.4、-0.5≦c≦4.35、0≦d≦4.35であり、
a、b、c、及びdの1つ以上が0と等価ではなく、また
a、b、及びdが0の場合、cは0より大きい。
【0011】
ニオブ混合酸化物の組成は、化学量論的なZn2Nb34O87またはCu2Nb34O
87に対応していないことが理解されよう。本発明者らは、さらなる陽イオン(M1及び
/またはM3)を組み込むことによりZn2Nb34O87またはCu2Nb34O87
を改変することによって、及び/または誘発された酸素欠乏または過剰を作り出すことに
よって、及び/または陰イオン混合物質(OとQを含む)を形成することによって、結果
として得られる物質は、電気化学的特性が改善され、特にアノード物質として使用した場
合の電気化学的特性を改善したことを見出した。a>0のとき、ニオブ混合酸化物は、M
1による M2(ZnまたはCu)の部分的な置換によって改変される。b>0のとき、
ニオブ混合酸化物は、M3によるNbの部分的な置換によって、改変される。c≠0の場
合、ニオブ混合酸化物は酸素の欠損または過剰により改変される。d>0のとき、ニオブ
混合酸化物は、OをQで部分的に置換することによって改変される。本発明者らは、本実
施例によって示されるように、本発明による物質が、改変されていない「ベース」Zn2
Nb34O87と比較して、電子伝導性が改善され、クーロン効率が改善され、高Cレー
トでの脱リチウム化電圧が改善されるということを発見した。これらは、高速充電/放電
用に設計された高出力電池で使用する際の本発明の物質の利点を実証する上で重要な結果
である。
【0012】
本発明の活電極物質は、電極において特に有用であり、好ましくはリチウムイオンまた
はナトリウムイオン電池のアノードにおいて使用するために有用である。したがって、本
発明のさらなる実施態様において、第1の態様の活電極物質は、ニオブ混合酸化物及び少
なくとも1つの他の成分を含む。場合により、少なくとも1つの他の成分が、結合剤、溶
媒、導電性添加剤、異なる活電極物質、及びそれらの混合物から選択される。このような
組成物は、電極の製造に有用である。本発明のさらなる実施態様は、集電体と電気的に接
触している第1の態様の活電極物質を含む電極である。本発明のさらなる実施態様は、ア
ノード、カソード、及びアノードとカソードとの間に配置された電解質を含む電気化学デ
バイスであり、アノードは、第1の態様による活電極物質を含み、任意選択で、電気化学
デバイスは、リチウムイオン電池またはナトリウムイオン電池である。
【0013】
第2の態様で、本発明は第1の態様により定義されたニオブ混合酸化物の製造方法を提
供し、方法は、1つ以上の前駆体物質を得るステップ、当該前駆体物質を混合して、前駆
体物質混合物を形成するステップ、及び前駆体物質混合物を400℃~1350℃または
800~1350℃の温度範囲で熱処理して、それによってニオブ混合酸化物を得るステ
ップを含む。これは、第1の態様の活電極物質を製造する便利で効率的な方法を表す。
【0014】
本発明は、本明細書に記載する態様及び特徴の組み合わせが明らかに許されないか、ま
たは明示的に回避される場合を除き、そのような組み合わせを含むものである。
【0015】
これより、添付の図面を参照しながら、本発明の原則について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付の図面を参照して、本発明の態様及び実施形態について説明する。当業者に
とって、さらなる態様及び実施形態が明らかになる。本文で言及されているすべての文書
は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0018】
「ニオブ混合酸化物」(MNO)という用語は、ニオブと少なくとも1つの他の陽イオ
ンとを含む酸化物を示し得る。MNO物質は、リチウム0.8V超に対して高い酸化還元
電圧を有し、バッテリーセルの高速充電に不可欠な、安全で長寿命の動作を可能にする。
さらに、ニオブ陽イオンは原子あたり2つの酸化還元反応を起こすことができ、LTOな
どよりも高い理論容量になる。本明細書に記載のニオブ混合酸化物は、Zn2Nb34O
87またはCu2Nb34O87の基本構造に由来する。
【0019】
Zn2Nb34O87またはCu2Nb34O87は、ReO3由来のMO3-x結晶
構造を有すると考えられ得る。好ましくは、ニオブ混合酸化物はWadsley-Rot
h結晶構造を有する。Wadsley-Roth結晶構造は、結晶学的せん断を含むMO
3(ReO3)結晶構造の結晶学的オフストイキオメトリであると考えられており、MO
3-xの簡略化された式がある。結果として、これらの構造には通常、結晶構造に[MO
6]の八面体サブユニットが含まれる。これらの構造を有するMNO物質は、例えばリチ
ウムイオン電池において活電極物質として使用するのに有利な特性を有すると考えられて
いる。
【0020】
また、MNO物質の開いたトンネル様のMO3結晶構造は、高容量のLiイオン貯蔵と
高い比率の交換可能なインターカレーション/デインターカレーションを実現するための
理想的な候補にもなる。MNO構造に存在する結晶学的オフストイキオメトリは、Wad
sley-Rothの結晶学的超構造を引き起こす。これらの上部構造は、ヤーン・テラ
ー効果や、複数の混合陽イオンを利用することによりいっそう結晶学的に無秩序になるこ
となどの他の特性によって複合され、結晶を安定させ、インターカレーション中にトンネ
ルを開いて安定性を保ち、高いリチウム拡散レート(約10-13cm2s-1と報告)
による非常に高いレートの能力を可能にする。
【0021】
Zn2Nb34O87またはCu2Nb34O87の結晶式は、[MO6]八面体で構
成される3x4x∞の結晶学的ブロック構造を有すると説明でき、それにおいてMはCu
、Zn、またはNbである。CuとZnの八面体は、構造内にランダムに分布している場
合もあれば、ブロックのエッジやコーナーなどの特定の場所を好む場合もある。これは、
ブロックあたり1つのZnまたはCu陽イオンの2/3に等しい。Zn2Nb34O87
の結晶式は、Cu2Nb34O87との等構造相として説明できるが、結合の長さと結合
エンタルピーにわずかな違いがある。
【0022】
本明細書に記載される物質の全結晶組成は、好ましくは中性の電荷であり、上記の説明
に従うのに熱力学的に有利である。MxOyがMxOy-δになるように物質の電気抵抗
を減少させる場合、例えば酸素空孔の箇所の欠陥を導入することによる酸素欠乏構造が好
ましい。酸素欠乏構造はせん断欠陥を含み得る。陽イオン(すなわちZn、Cu、及びN
b)または陰イオン(すなわちO)が置換された構造は、整合する原子価(つまり、4+
と6+陽イオンの等しい割合に対し5+陽イオン)で、または等価の結晶部位で置換が行
われる場合に酸素の欠乏または過剰を誘発し得る、整合していない原子価でそのようにな
され得る。置換はまた、中間の部位などの異なる結晶の部位で生じる場合がある。
【0023】
物質の結晶構造は、広く知られているように、X線回折(XRD)のパターンの分析に
よって決定することができる。例えば、特定の物質から得られたXRDのパターンを既知
のXRDのパターンと比較して、例えばICDD結晶学データベースなどの公開データベ
ースを介して結晶構造を確認できる。リートベルト解析は、物質の結晶構造、特に単位格
子パラメータを決定するためにも使用できる。したがって、活電極物質は、X線回折によ
って決定されるように、Wadsley-Roth結晶構造を有し得る。
【0024】
好ましくは、ニオブ混合酸化物の結晶構造は、X線回折によって決定され、Zn2Nb
34O87またはCu2Nb34O87、最も好ましくは、Zn2Nb34O87の結晶
構造に対応する。このように、活電極物質として使用するのに有利な特性を有すると考え
られる結晶構造に大きな影響を与えることなく、「ベース」物質が変更されたことを確認
できる。Zn2Nb34O87の結晶構造は、ICDD結晶学データベースエントリJC
PDS28-1478で見出すことができる。
【0025】
陽イオン/陰イオンの交換を伴うニオブ混合酸化物は、単位格子パラメータa、b、及
びcを有することができ、aは15.52~15.58オングストローム、好ましくは1
5.53~15.57オングストロームであり、bは3.79~3.84オングストロー
ム、好ましくは3.80~3.83オングストロームであり、cはc=20.53~20
.66オングストローム、好ましくは20.54~20.65オングストロームである。
ニオブ混合酸化物は、それぞれ約90°である単位格子パラメータα及びγを有すること
ができ、好ましくはα=γ=90°であり、一方でβは113.05~113.750、
好ましくは113.08~113.690であり、単位格子体積は1115~1135オ
ングストローム3、好ましくは1117~1133オングストローム3である。単位格子
パラメータは、X線回折によって決定することができる。ニオブ混合酸化物は、シェラー
の式に従って決定される、5~150nm、好ましくは30~60nmの微結晶サイズを
有することができる。
【0026】
ここで、「対応する」という用語は、X線回折のパターンにおけるピークが、上段に挙
げられている物質のX線回折のパターンにおける対応するピークから、0.5度以下だけ
シフトしてよい(好ましくは0.25度以下、より好ましくは0.1度以下だけシフトし
てよい)ということを反映させることを意図している。
【0027】
ニオブ混合酸化物は、組成M1aM22-aM3bNb34-bO87-cdQdを有
し、式中
M1とM2は異なり、
M1は、Mg、Ca、Sr、Y、La、Ce、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr
、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Cd、B、Al、Ga、In、Si
、Ge、Sn、Pb、P、Sb、Bi及びそれらの混合物から選択され、
M2はZnまたはCuであり、
M3は、Mg、Ca、Sr、Y、La、Ce、Ti、Zr、Hf、V、Ta、Cr、Mo
、W、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Cd、B、Al、Ga、In、Si、Ge
、Sn、Pb、P、Sb、Bi及びそれらの混合物から選択され、
Qは、F、Cl、Br、I、N、S、Se、及びそれらの混合物から選択され、
0≦a<1.0、0≦b≦3.4、-0.5≦c≦4.35、0≦d≦4.35であり、
a、b、c、及びdの1つ以上が0と等価ではなく、また
a、b、及びdが0の場合、cは0より大きい。
【0028】
「及びその混合物」は、M1、M3、及びQが各々、個々に列挙したものに由来する2
つ以上の要素を表すことができることを意図している。そのような物質の例は、Mg0.
1Ge0.1Zn1.8Nb34O87.1である。ここで、M1はMga’Gea’’
(a’+’’=a)、M2はZn、a=0.2、b=0、c=-0.1、d=0である。
ここで、cは、各陽イオンがその典型的な酸化の状態、すなわちMg2+、Ge4+、亜
鉛2+、及びNb5+を採用すると仮定して計算されている。
【0029】
定義された範囲内のa、b、c、dの正確な値は、電荷バランスされた、または実質的
に電荷バランスされた結晶構造を提供するように選択され得る。さらに、または代わりに
、定義された範囲のa、b、c、dの正確な値を選択して、熱力学的に安定または熱力学
的に準安定している結晶構造を得るよう選択することができる。
【0030】
構造内の陽イオンまたは陰イオンの交換(つまり、Zn、Cu、Nb、O)が最初の原
子価を保持せずに発生した場合、それは酸素の欠乏と過剰の両方を発生する可能性がある
。例えば、ある程度Zn2+をGe4+によって代替する物質は、わずかな酸素の過剰(
つまり、ZnO対GeO2)を示し、一方でNb5+のAl3+による置換は、軽度の酸
素欠乏(つまり、Nb2O5対Al2O3)を示す。酸素の欠乏は、不活性または還元条
件での熱処理によっても誘発される可能性があり、その結果、構造内に酸素空孔欠陥が誘
発される。
【0031】
初期の原子価を保持しない、交換を補う部分的な酸化または部分的な還元があってもよ
い。例えば、Ge4+によるZn2+の置換は、一部のNb5+からNb4+の還元によ
り、少なくとも部分的に補い得る。
【0032】
M2はZnまたはCuである。好ましくは、M2はZnであり、この場合、物質はZn
2Nb34O87に基づく。
【0033】
M1は、結晶構造においてM2を置換する陽イオンである。M1は、Mg、Ti、Zr
、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Cd
、B、Al、Ga、Si、Ge、Sn、P、及びそれらの混合物、好ましくは、Mg、T
i、Zr、V、Nb、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、B、Al
、Si、Ge、P、及びそれらの混合物、最も好ましくは、Mg、Zr、V、Cr、Mo
、W、Fe、Cu、Zn、Al、Ge、P、及びそれらの混合物から選択することができ
る。M1はM22+とは異なる原子価を有し得る。これにより、酸素欠乏または過剰が生
じる。任意選択で、M1はM22+と同等またはそれより高い原子価を有し、好ましくは
それより高い原子価を有する。
【0034】
M1はまた、実施例においてそれ自体として使用される特定の元素のそれぞれから選択
され得る。
【0035】
1より多い元素がM1またはM3として存在するとき、原子価は全体としてM1または
M3を指すことが理解される。例えば、25at%のM1がTiであり、75at%のM
1がWである場合、M1の原子価は0.25×4(Tiからの寄与)+0.75×6(W
からの寄与)となる。
【0036】
M1はM22+とは異なるイオン半径を有することが好ましく、最も好ましくはより小
さいイオン半径を有する。これにより、単位格子の大きさに変化が起こり、結晶構造に局
所的な歪みが生じ、本明細書で説明する利点をもたらす。本明細書で言及するイオン半径
は、イオンがニオブ混合酸化物の結晶構造に採用することが予想される配位及び原子価で
のShannonのイオン半径(R. D. Shannon, Acta Cryst
., A32, 1976, 751-767)で入手可能)である。例えば、Zn2N
b34O87の結晶構造にはNb5+O6八面体とZn2+O6八面体が含まれる。した
がって、M3がZrの場合、イオン半径は6配位のZr4+のイオン半径と見なされる。
これは、Zn2Nb34O87のNbを置換する場合のZrの典型的な原子価と配位であ
るためである。
【0037】
M1の量はaによって定められ、基準0≦a<1.0.aを満たす。aは、0≦a≦0
.6、好ましくは0≦a≦0.2であり得る。最も好ましくは、a>0、例えばa≧0.
01である。M1がM2と同じ原子価を有する場合、aのより高い値がより容易に達成さ
れ得る。M1が2+の原子価(例えばMg)の陽イオンを含むとき、aは0≦a<1.0
であり得る。M1が2+原子価の原子価の陽イオンを含まないとき、aは0≦a≦0.1
5であり得る。
【0038】
M3は、結晶構造においてNbを置換する陽イオンである。M3は、Mg、Ti、Zr
、Hf、V、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Cd、B、
Al、Ga、Si、Sn、P、及びそれらの 混合物、好ましくは、Mg、Ti、Zr、
V、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Cd、B、Al、Si、P
、及びそれらの混合物、最も好ましくは、Ti、Zr、V、Cr、Mo、W、Fe、Cu
、Zn、Al、P、及びそれらの混合物から選択することができる。M3はNb5+とは
異なる原子価を有し得る。これにより、酸素の欠乏または過剰が生じる。好ましくは、M
3はNb5+より低い原子価を有する。これは、酸素の欠乏、すなわち、本明細書で議論
される利点をもたらす酸素空孔の存在を生じさせる。
【0039】
M3はまた、実施例においてそれ自体として使用される特定の元素のそれぞれから選択
され得る。
【0040】
M3はNb5+とは異なるイオン半径を有することが好ましく、最も好ましくはより大
きいイオン半径を有する。これにより、単位格子の大きさに変化が起こり、結晶構造に局
所的な歪みが生じ、本明細書で説明する利点をもたらす。
【0041】
M3の量はbによって定められ、基準0≦b≦3.4を満たし、bは0≦b≦1.5、
好ましくは0≦b≦0.3であってよい。これらの場合のそれぞれにおいて、b>0、例
えばb≧0.01であり得る。M3がNb5+と同じ原子価を有する場合、bのより高い
値がより容易に達成され得る。M3が5+の原子価(例えばTa)の陽イオンを含むとき
、bは0≦b<3.4であり得る。M3が5+原子価の原子価の陽イオンを含まないとき
、bは0≦b≦0.2であり得る。
【0042】
驚くべきことに、本発明による陽イオン置換アプローチは、未改変の「ベース」物質よ
りも経済的に合成されるニオブ混合酸化物をもたらすことができることが見出された。任
意選択で、aとbの両方が0超である。aとbの両方が0超であるとき、「ベース」物質
は、M2の部位とNbの部位の両方で置換されている。
【0043】
cは、ニオブ混合酸化物の酸素含有量を反映している。cが0より大きい場合、それは
酸素欠乏物質を形成する、すなわち、この物質は酸素空孔を有する。そのような物質は、
陽イオンの酸素状態を変化させずに正確な電荷バランスを有しているのではないが、上述
のように「実質的に電荷バランスされた」と考えられる。あるいは、cは0に等しくても
よく、その場合、それは酸素欠乏物質ではない。cは0未満の場合があり、これは酸素過
剰の物質である。cは-0.25≦c≦4.35であり得る。
【0044】
cが4.35の場合、酸素空孔の数は5%結晶構造の全酸素の5%に等しい。cは、0
.0435より大きい、0.087より大きい、0.174より大きい、または0.43
5より大きい場合がある。cは、0から2の間、0から0.75の間、0から0.5の間
、または0から0.25の間であり得る。例えば、cは、0.01≦c≦4.35を満た
し得る。物質が酸素欠乏である、例えば酸素欠乏が誘発された場合、物質の電気化学的特
性が改善されることがあり、例えば、抵抗測定では同等の非酸素欠損の物質と比較して、
導電性が改善されることがある。理解されるように、本明細書で表されるパーセントの値
は原子百分率である。
【0045】
本発明は、酸素空孔(酸素欠乏ニオブ混合酸化物)を含み得る、または酸素過剰を有し
得るニオブ混合酸化物に関する。酸素空孔は、上述のようにベース物質の副次的原子価の
置換によってニオブ混合酸化物において形成され得、酸素過剰は、増加した原子価の置換
によってニオブ混合酸化物において形成され得る。酸素空孔は、ニオブ混合酸化物を還元
条件下で加熱することによって形成することもでき、これは誘発された酸素欠乏の形成と
呼ぶことができる。酸素空孔及び過剰の量は、ベース物質における酸素の総量、すなわち
非置換物質(例えば、Zn2Nb34O87)の酸素の量に対して表すことができる。
【0046】
酸素の欠乏、例えば酸素空孔が物質に存在するかどうかを判定するための多くの方法が
存在する。例えば、熱重量分析(TGA)を実行して、空気雰囲気で加熱されたときの物
質の質量変化を測定することができる。酸素空孔を含む物質は、空気中で加熱すると、物
質が「再酸化」し、酸素空孔が酸化物陰イオンで満たされるため、質量が増加する可能性
がある。質量増加の大きさは、物質の酸素空孔の濃度を定量化するために使用できる。こ
れは、全面的に酸素空孔が満たされるために、質量の増加が起こると仮定した場合である
。酸素空孔を含む物質は、酸素空孔が満たされ、初期の質量が増加し、その後、物質が熱
分解を受けると、より高い温度で質量が減少する可能性があることに留意されたい。さら
に、質量損失プロセスと質量増加プロセスが重複し得る、つまり、酸素空孔を含む一部の
物質は、TGA分析中に質量の増加を示さない(また、場合によっては質量損失も質量増
加も示さない)場合がある。
【0047】
酸素空孔などの酸素欠乏が存在するかどうかを判断する他の方法には、ラマン分光法、
電子常磁性共鳴(EPR)、X線光電子分光法(XPS、例えば酸素1sのXPS、及び
/または及び混合酸化物の陽イオンのXPS)、X線吸収端近傍構造(XANES、例え
ば混合金属酸化物の陽イオンのXANES)、及びTEM(例えば、高角度環状暗視野(
HAADF)を備えた走査型TEM(STEM)及び環状明視野(ABF)検出器)が含
まれる。酸素欠乏の存在は、同じ物質の非酸素欠乏サンプルと比較して物質の色を評価す
ることによって定性的に判断でき、光との相互作用による電子バンド構造の変化を示す。
例えば、酸素欠乏でない化学量論的Zn2Nb34O87は白色を有する。酸素欠乏が誘
発されたZn2Nb34O<87は、灰色/黒を有する。空孔の存在はまた、酸素欠乏物
質の特性と比較した化学量論的物質の特性、例えば電気伝導率から推測することもできる
。
【0048】
d>0のとき、追加の陰イオンQがニオブ混合酸化物に導入される。それらの電子構造
が異なる(つまりF-対O2-)、またイオン半径が異なる(6座標O2-=1.40オ
ングストローム、6座標F-=1.33オングストローム)ため、それらは、活物質の電
気化学的能力を向上させ得る。これは、異なるイオン半径で単位格子の特性を変更し、L
iイオン容量の改善、または可逆性の改善を可能にするためである。それらは、結晶の電
子構造を変更することによって(すなわち、ドーピング効果)、酸素空孔欠陥、または亜
原子価陽イオン置換に関して、電気伝導性をさらに改善し得る。dは、0≦d≦3.0、
または0≦d≦2.17の場合がある。これらの場合のそれぞれで、d>0であり得る。
Qは、F、Cl、N、S、及びそれらの混合物、またはF、N、及びそれらの混合物から
選択され得る、またはQがFである。
【0049】
任意選択でd=0で、この場合、物質は組成M1aM22-aM3bNb34-bO8
7-cを有し、M1、M2、M3、a、b、及びcは本明細書で定義される通りである。
有利にも、d=0の物質は、陰イオンQを含まず、合成が容易であり得る。
【0050】
a>0でb=d=0のとき、物質はM1aM22-aNb34O87-cの成分を有し
、M1、M2、a及びcは本明細書で定義される通りであり、例えば、0≦c≦4.35
である。これは、M2の部位で変更され、必要に応じて誘発された酸素欠乏によって変更
された物質を表す。そのような物質は、単純な合成手段によって「ベース」の酸化物M2
2Nb34O87の特性を改善する特に効果的な方法を表す。ここで、M1は、Ti、M
g、V、Cr、W、Zr、Mo、Cu、Ga、Ge、Ni、Al、Hf、Ta、Zn及び
それらの混合物、好ましくは、Ti、Mg、V、Cr、W、Zr、Mo、Ga、Ge、A
l、Zn、及びそれらの混合物を表すことができる。
【0051】
a=b=d=0でc>0のとき、物質は、組成M22Nb34O87-cを有し、M2
及びcは、本明細書で定義される通りである。これは、酸素欠乏を誘発することによって
のみ改変された物質を表し、実施例に示されるように改善された特性を付与する。例えば
、a=b=d=0でc>0である物質は、驚くほど電子伝導性が向上していることがわか
っている。
【0052】
組成の変数(M1、M2、M3、Q、a、b、c、及びd)の議論は、組み合わせて読
むことを意図していることを理解されたい。例えば、好ましくは、M1はMg、Ti、Z
r、V、Nb、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、B、Al、Si
、Ge、P、及びそれらの混合物から選択され、M3はMg、Ti、Zr、V、Cr、M
o、W、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Cd、B、Al、Si、P、及びそれら
の混合物から選択され、QはF、Cl、N、S、及びそれらの混合物から選択される。0
≦a≦0.6、0≦b≦1.5、0≦c≦4.35、及び0≦d≦3.0であることが好
ましい。
【0053】
例えば、ニオブ混合酸化物は、組成M1aM22-aM3bNb34-bO87-cd
Qdを有することができ、式中
M1とM2は異なり、
M1は、Mg、Ti、Zr、V、Nb、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Cu
、Zn、B、Al、Si、Ge、P、及びそれらの混合物から選択され、
M2はZnまたはCuであり、
M3は、Mg、Ti、Zr、V、Nb、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Cu
、Zn、Cd、B、Al、Si、P、及びそれらの混合物から選択され、
Qは、F、N、及びそれらの混合物から選択され、
0≦a≦0.6、0≦b≦1.5、-0.5≦c≦4.35、0≦d≦4.35であり、
a、b、c、及びdの1つ以上が0と等価ではなく、また
a、b、及びdが0の場合、cは0より大きい。
【0054】
例えば、ニオブ混合酸化物は、組成M1aZn2-aM3bNb34-bO87-c-d
Qdを有することができ、式中
M1は、Mg、Zr、V、Cr、Mo、W、Fe、Cu、Al、Ge、P、及びそれらの
混合物から選択され、
M3は、Ti、Zr、V、Cr、Mo、W、Fe、Cu、Zn、Al、P、及びそれらの
混合物から選択され、
Qは、F、N、及びそれらの混合物から選択され、
0<a≦0.2、0≦b≦0.3、0≦c≦4.35、0≦d≦3.0である。
【0055】
M1、M3、及びQはまた、実施例においてこれらのドーパントとして使用される特定の
元素のそれぞれから選択され得る。
【0056】
任意選択に、ニオブ混合酸化物はチタンを含まない。
【0057】
ニオブ混合酸化物は、組成M1aM22-aM3bNb34-bO87-cを有し、式中
M1は、Cr、Al、Ge、及びそれらの混合物から選択され、好ましくは、M1はCr
であり、
M2はZnまたはCuであり、好ましくは、M2はZnであり、
M3は、Ti、Zr、Fe、及びそれらの混合物から選択され、場合によりTiを含み、
好ましくは、M3は、Ti、Zr、及びそれらの混合物から選択され、場合によりTiを
含み、最も好ましくは、M3はTiであり、
0<a<1.0、好ましくは0.01<a<1.0、
0<b≦1.5、好ましくは0.01<b<1.0、
-0.5≦c≦4.35、好ましくは-0.5≦c≦2、最も好ましくはc=0である。
【0058】
ニオブ混合酸化物は、組成CraZn2-aM3bNb34-bO87-cを有し、式中
M3は、Ti、Zr、及びそれらの混合物から選択され、任意選択にTiを含み、好まし
くはM3がTiであり、
0.01<a<1.0、好ましくは0.1<a<1.0、
0.01<b<1.0、好ましくは0.1<b<1.0、
-0.5≦c≦2、好ましくはc=0である。
【0059】
ニオブ混合酸化物はさらにLi及び/またはNaを含んでもよい。例えば、Li及び/
またはNaは、ニオブ混合酸化物を金属イオン電池の電極に用いると、結晶構造に入り込
むことがある。
【0060】
ニオブ混合酸化物は粒状であることが好ましい。物質は、0.1~100μm、または0
.5~50μm、または1~20μmの範囲のD50の粒径を有し得る。これらの粒子サ
イズは、電極への加工及び製造が容易であるため有利である。さらに、これらの粒子サイ
ズにより、複雑な方法、及び/またはナノサイズの粒子をもたらすための高額な方法を使
用する必要性がなくなる。ナノサイズの粒子(例えば、100nm以下のD50の粒径を
有する粒子)は、通常、合成がより複雑であり、さらに安全性を考慮する必要がある。
【0061】
ニオブ混合酸化物は、少なくとも0.05μm、または少なくとも0.1μm、または
少なくとも0.5μm、または少なくとも1μmのD10の粒径を有し得る。D10の粒
径をこれらの範囲に維持することにより、表面積の減少によるLiイオンセルの寄生反応
の可能性が低減され、より少ない電極スラリーの結合剤で、加工がより容易になる。
【0062】
ニオブ混合酸化物は、200μm以下、100μm以下、50μm以下、または20μ
m以下のD90の粒径を有し得る。D90の粒径をこれらの範囲に維持することによって
、大きな粒径での粒径分布の割合が最小化され、物質を均質な電極に製造することがより
容易になる。
【0063】
「粒径」という用語は、等しい球の直径(esd)、すなわち所与の粒子と同じ体積を
有する球の直径を指し、粒子の体積は、いずれかの粒子内細孔の体積を含むと理解される
。「Dn」及び「Dnの粒径」という用語は、それ未満で粒子集団のn%が見出される直
径を指す。すなわち、「D50」及び「D50の粒径」という用語は、それ未満で粒子集
団の50体積%が見出される、体積ベースの中央値の粒径を指す。物質が二次粒子に凝集
した一次微結晶を含む場合、粒径は二次粒子の直径を指すことが理解されるであろう。粒
径は、レーザー回折によって決定できる。粒径はISO13320:2009に準拠して
測定可能であり、例えば、ミー理論を使用する。
【0064】
ニオブ混合酸化物は、0.1~100m2/g、または0.5~50m2/g、または
1~20m2/gの範囲のBET表面積を有することができる。一般に、ニオブ混合酸化
物と電解質との反応を最小限に抑えるために、例えば、物質を含む電極の最初の充放電サ
イクル中の固体電解質相間(SEI)層の形成を最小限に抑えるために、低いBET表面
積が好ましい。しかし、BET表面積が小さすぎると、ニオブ混合酸化物の大部分が周囲
の電解質中の金属イオンに接近できないため、許容できないほど低い充電レート及び容量
が生じる。
【0065】
「BET表面積」という用語は、Brunauer-Emmett-Tellerの理
論を使用して、固体表面でのガス分子の物理的吸着の測定から計算された、単位質量あた
りの表面積を指す。例えば、BET表面積は、ISO9277:2010に準拠して求め
ることができる。
【0066】
ニオブ混合酸化物の比容量/可逆性の脱リチウム化容量は180mAh/g以上、19
0mAh/g以上、または197mAh/g以上であり得る。ここで、比容量は、半電池
においてLi/Li+に対して1.1~3.0Vの電圧の枠で0.1Cのレートで、半電
池の定電流サイクル試験の2番目のサイクルにおいて測定されたものとして定義される。
高い比容量を有する物質を得ることは、ニオブ混合酸化物を含む電気化学デバイスにおい
て改善された能力を備えることができるため、有利であり得る。
【0067】
下段の説明によると、電極として(任意選択で、導電性炭素添加剤及び結合剤物質と共
に)配合またはコーティングされる場合、実施例に定義されるものとして測定される、活
電極物質のシート抵抗率は、平方当たり2.5kΩ以下、より好ましくは平方当たり1.
2kΩ以下であり得る。シート抵抗率は、そのような物質の電子的伝導率の代理測定とし
て有用である。好適に低いシート抵抗率を有する物質を備えることは、ニオブ混合酸化物
を含む電気化学デバイスにおいて改善された能力をもたらすことができるので、有利であ
り得る。
【0068】
ニオブ混合酸化物は、10-15cm2s-1より大きい、またはより好ましくは10
-13cm2s-1より大きいリチウム拡散レートを有することができる。好適に高いリ
チウム拡散レートを有する物質を設けることは、ニオブ混合酸化物を含む電気化学デバイ
スにおいて改善された能力をもたらすことができるので、有利であり得る。
【0069】
ニオブ混合酸化物は、以下の説明に従って適切な結合剤及び導電性添加剤を含む複合電
極を形成して、カレンダー加工後、2.5g/cm3以上の電極密度をもたらし得る場合
がある。これにより、高いエネルギー及び高い出力のセルの産業的な要件に沿った、30
~40%の範囲の電極空隙率(測定された電極密度/各成分の真の密度の平均によって計
算)を備える複合電極が可能になる。例えば、最大2.9g/cm3の電極密度が達成さ
れている。そのような電極密度を有する物質を備えることは、ニオブ混合酸化物を含む電
気化学デバイスにおいて改善された能力をもたらすことができるので、有利であり得る。
具体的には、電極密度が高い場合、重量容量×電極密度×ニオブ混合酸化物分率=体積容
量として、高い体積容量を達成できる。
【0070】
初期のクーロン効率は、半電池のC/10での第1の充電/放電サイクルにおけるリチ
ウム化容量と脱リチウム化容量の差として測定されるリチウム化容量と脱リチウム化容量
の差として測定されている。活電極物質の初期のクーロン効率は、97.9%より大きく
ても、または98.8%より大きくてもよい。好適に高い初期のクーロン効率を有する物
質を設けることは、ニオブ混合酸化物を含む電気化学デバイスにおいて改善された能力を
もたらすことができるので、有利であり得る。
【0071】
本発明の第1の態様の活電極物質は、ニオブ混合酸化物及び少なくとも1つの他の成分
を含み、任意選択で、少なくとも1つの他の成分が、結合剤、溶媒、導電性添加剤、異な
る活電極物質、及びそれらの混合物から選択される。このような組成物は、電極、例えば
リチウムイオン電池用のアノードを作成するのに有用である。好ましくは、異なる活電極
物質は、第1の態様によって定義される組成を有する異なるニオブ混合酸化物、リチウム
チタン酸化物、ニオブ酸化物、及びそれらの混合物から選択される。あるいは、活電極物
質は、ニオブ混合酸化物からなっていてもよい。
【0072】
活電極物質は、ニオブ混合酸化物とリチウムチタン酸化物、好ましくはニオブ混合酸化
物とリチウムチタン酸化物との混合物を含むことができる。
【0073】
リチウムチタン酸化物は、好ましくは、例えばX線回折によって決定されるように、ス
ピネルまたはラムスデライト結晶構造を有する。スピネル結晶構造を有するリチウムチタ
ン酸化物の例は、Li4Ti5O12である。ラムスデライト結晶構造を有するリチウム
チタン酸化物の例は、Li2Ti3O7である。これらの物質は、活電極物質として使用
するための優れた特性を有することが示されている。したがって、リチウムチタン酸化物
は、Li4Ti5O12及び/またはLi2Ti3O7に対応するX線回折によって決定
される結晶構造を有し得る。リチウムチタン酸化物は、Li4Ti5O12、Li2Ti
3O7、及びそれらの混合物から選択することができる。
【0074】
リチウムチタン酸化物は、追加の陽イオンまたは陰イオンでドープされ得る。リチウム
チタン酸化物は、酸素欠乏であり得る。リチウムチタン酸化物はコーティングを含むこと
ができ、任意選択に、コーティングは、炭素、ポリマー、金属、金属酸化物、半金属、リ
ン酸塩、及びフッ化物から選択される。
【0075】
リチウムチタン酸化物は、従来のセラミック技術、例えば固相合成またはゾルゲル合成
によって合成することができる。あるいは、リチウムチタン酸化物は商業的供給業者から
得ることができる。
【0076】
リチウムチタン酸化物は粒状であることが好ましい。リチウムチタン酸化物は、0.1
~50μm、または0.25~20μm、または0.5~15μmの範囲のD50の粒径
を有し得る。リチウムチタン酸化物は、少なくとも0.01μm、または少なくとも0.
1μm、または少なくとも0.5μmのD10の粒径を有し得る。リチウムチタン酸化物
は、100μm以下、50μm以下、または25μm以下のD90の粒径を有し得る。D
90の粒径をこの範囲に維持することにより、ニオブ混合酸化物粒子との混合物における
リチウムチタン酸化物粒子の充填が改善される。
【0077】
リチウムチタン酸化物は、通常、物質の電子伝導率が低いため、小さな粒子サイズで電
池のアノードに使用される。対照的に、本明細書で定義されているニオブ混合酸化物は、
典型的にはリチウムチタン酸化物よりも高いリチウムイオン拡散係数を有するので、より
大きい粒径で使用することができる。有利なことに、組成物において、リチウムチタン酸
化物は、ニオブ混合酸化物よりも小さい粒子サイズを有し得、例えばニオブ混合酸化物の
D50の粒径に対するリチウムチタン酸化物のD50の粒径の比率が、0.01:1~0
.9:1、または0.1:1~0.7:1の範囲であるようにする。このようにして、よ
り小さいリチウムチタン酸化物粒子は、より大きいニオブ混合酸化物粒子間の空隙に収容
され得、組成物の充填効率を増加させる。
【0078】
リチウムチタン酸化物は、0.1~100m2/g、または1~50m2/g、または
3~30m2/gの範囲のBET表面積を有することができる。
【0079】
ニオブ混合酸化物に対するリチウムチタン酸化物の質量比は、0.5:99.5~99
.5:0.5の範囲であってよく、好ましくは2:98~98:2の範囲である。1つの
実施態様では、活電極物質は、ニオブ混合酸化物よりも高い比率のリチウムチタン酸化物
を含み、例えば、少なくとも2:1、少なくとも5:1、または少なくとも8:1の質量
比である。有利なことに、これにより、製造技術を大幅に変更する必要なく、ニオブ混合
酸化物をリチウムチタン酸化物に基づく既存の電極に徐々に導入することができ、既存の
電極の特性を改善する効率的な方法が得られる。別の実施態様では、活電極物質は、リチ
ウムチタン酸化物よりもニオブ混合酸化物の割合が高く、例えばニオブ混合酸化物に対す
るリチウムチタン酸化物の質量比が、1:2未満、または1:5未満、または1:8未満
である。有利なことに、このことは、ニオブ混合酸化物の一部をリチウムチタン酸化物で
置き換えることにより、活電極物質のコストを削減することを可能にする。
【0080】
活電極物質は、ニオブ混合酸化物及びニオブ酸化物を含むことができる。ニオブ酸化物
は、Nb12O29、NbO2、NbO、及びNb2O5から選択することができる。好
ましくは、ニオブ酸化物はNb2O5である。
【0081】
ニオブ酸化物は、例えば、ニオブ酸化物の結晶構造がNb及びOからなる酸化物の結晶
構造、例えば、Nb12O29、NbO2、NbO、及びNb2O5に対応するという条
件で、追加の陽イオンまたは陰イオンでドープされてもよい。ニオブ酸化物は、酸素欠乏
であり得る。ニオブ酸化物はコーティングを含んでもよく、任意選択に、コーティングは
、炭素、ポリマー、金属、金属酸化物、半金属、リン酸塩、及びフッ化物から選択される
。
【0082】
ニオブ酸化物は、X線回折によって決定されるように、Nb12O29、NbO2、N
bO、またはNb2O5の結晶構造を有することができる。例えば、ニオブ酸化物は、斜
方晶Nb2O5の結晶構造または単斜晶Nb2O5の結晶構造を有することができる。好
ましくは、ニオブ酸化物は単斜晶Nb2O5の結晶構造を有し、最も好ましくはH-Nb
2O5の結晶構造を有する。Nb2O5の結晶構造に関するさらなる情報は、Griff
ith et al., J. Am. Chem. Soc.2016, 138,
28, 8888-8899で見出すことができる。
【0083】
ニオブ酸化物は、従来のセラミック技術、例えば固相合成またはゾルゲル合成によって
合成することができる。あるいは、ニオブ酸化物は商業供給者から入手することができる
。
【0084】
ニオブ酸化物は粒状であることが好ましい。ニオブ酸化物は、0.1~100μm、ま
たは0.5~50μm、または1~20μmの範囲のD50の粒径を有し得る。ニオブ酸
化物は、少なくとも0.05μm、または少なくとも0.5μm、または少なくとも1μ
mのD10の粒径を有し得る。ニオブ酸化物は、100μm以下、50μm以下、または
25μm以下のD90の粒径を有し得る。D90の粒径をこの範囲に維持することにより
、ニオブ混合酸化物粒子との混合物におけるニオブ酸化物粒子の充填が改善される。
【0085】
ニオブ酸化物は、0.1~100m2/g、または1~50m2/g、または1~20
m2/gの範囲のBET表面積を有することができる。
【0086】
ニオブ混合酸化物に対するニオブ酸化物の質量比は、0.5:99.5~99.5:0
.5の範囲、または2:98~98:2の範囲、または好ましくは15:85~35:5
5の範囲であってもよい。
【0087】
本発明はまた、集電体と電気的に接触している本発明の第1の態様の活電極物質を含む
電極を提供する。電極はセルの一部を形成することができる。電極は、金属イオン電池、
場合によりリチウムイオン電池の一部としてアノードを形成することができる。
【0088】
本発明はまた、任意選択に金属イオン電池がリチウムイオン電池である、金属イオン電
池用のアノードにおける本発明の第1の態様の活電極物質の使用を提供する。
【0089】
本発明のさらなる実施態様は、アノード、カソード、及びアノードとカソードとの間に
配置された電解質を含む電気化学デバイスであり、アノードは、本発明の第1の態様によ
る活電極物質を含み、任意選択で、電気化学デバイスは、リチウムイオン電池またはナト
リウムイオン電池などの金属イオン電池である。好ましくは、電気化学デバイスは、20
mA/gで190mAh/gより大きい可逆的アノード活性物質比容量を有するリチウム
イオン電池であり、20mA/gで初期のセル容量の70%以上を保持しながら、電池は
、200mA/g以上、または1000mA/g以上、または2000mA/g以上、ま
たは4000mA/g以上のアノード活性物質に対する電流密度で充電及び放電すること
ができる。本発明の第1の態様の活電極物質を使用することにより、この特性の組み合わ
せを有するリチウムイオン電池の製造が可能になり得、高い充電電流密度と放電電流密度
が所望されている用途での使用に特に適したリチウムイオン電池を表すことが見出された
。特に、実施例は、本発明の第1の態様による活電極物質が、改善された電子伝導性を有
し、高いCレートで改善された脱リチウム化電圧を有することを示した。
【0090】
ニオブ混合酸化物は、従来のセラミック技術によって合成することができる。例えば、
物質は、固体合成またはゾルゲル合成のうちの1つ以上によって作製される。物質は、水
熱合成またはマイクロ波水熱合成、ソルボサーマル合成またはマイクロ波ソルボサーマル
合成、共沈合成、スパークまたはマイクロ波プラズマ合成、燃焼合成、エレクトロスピニ
ング、及びメカニカルアロイングなど、一般的に使用される代替技術の1つまたは複数に
よってさらに合成され得る。
【0091】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様により定義されたニオブ混合酸化物の製造
方法を提供し、方法は、1つ以上の前駆体物質を得るステップ、当該前駆体物質を混合し
て、前駆体物質混合物を形成するステップ、及び前駆体物質混合物を400℃~1350
℃または800~1350℃の温度範囲で熱処理して、それによってニオブ混合酸化物を
得るステップを含む。
【0092】
元素Qを含むニオブ混合酸化物を得るために、方法は、ニオブ混合酸化物を、元素Qを
含む前駆体と混合して、さらなる前駆体物質混合物を得るステップと、任意選択に還元条
件下で、300~1200℃または800~1200℃の温度範囲でさらなる前駆体物質
混合物を熱処理し、それによって元素Qを含むニオブ混合酸化物を得るステップとをさら
に含み得る。
【0093】
例えば、元素QとしてNを含むニオブ混合酸化物を得るために、方法は、混合酸化ニオ
ブを、Nを含む前駆体(例えば、メラミン)と混合して、さらなる前駆体物質混合物を得
るステップと、さらなる前駆体材料混合物を、還元条件下(例えば、N2において)で3
00~1200℃の温度範囲で熱処理し、それにより、元素QとしてNを含む混合酸化ニ
オブを得るステップをさらに含み得る。
【0094】
例えば、元素QとしてFを含むニオブ混合酸化物を得るために、方法は、混合酸化ニオ
ブを、Fを含む前駆体(例えば、ポリフッ化ビニリデン)と混合して、さらなる前駆体物
質混合物を得るステップと、さらなる前駆体材料混合物を、酸化条件下(例えば、空気中
)で300~1200℃の温度範囲で熱処理し、それにより、元素QとしてFを含む混合
酸化ニオブを得るステップとをさらに含み得る。
【0095】
方法は、ニオブ混合酸化物または元素Qを含むニオブ混合酸化物を還元条件下で400
~1350℃または800~1350℃の温度範囲で熱処理し、それによってニオブ混合
酸化物に酸素空孔を誘発するさらなるステップを含んでもよい。誘発された酸素空孔は、
ニオブ混合酸化物にすでに存在している、例えば、M2及び/またはNbとM1及び/ま
たはM3との副次的原子価の置換によってすでに存在している酸素空孔に加えて存在し得
る。あるいは、誘発された酸素空孔は、例えば、M1及びM3がM2及びNbと同じ原子
価を有する場合、新しい酸素空孔であり得る。誘発された酸素空孔の存在は、本明細書で
議論される利点をもたらす。
【0096】
前駆体物質は、1つ以上の金属酸化物、金属水酸化物、金属塩またはアンモニウムを含
むことができる。例えば、前駆体物質は、異なる酸化状態及び/または異なる結晶構造の
1つ以上の金属酸化物または金属塩を含むことができる。適切な前駆体物質の例には、N
b2O5、Nb(OH)5、ニオブ酸、NbO、シュウ酸ニオブ酸アンモニウム、NH4
H2PO4、(NH4)2PO4、(NH4)3PO4、P2O5、H3PO3、Ta2
O5、WO3、ZrO2、TiO2、MoO3、V2O5、ZrO2、CuO、ZnO、
Al2O3、K2O、KOH、CaO、GeO2、Ga2O3、SnO2、CoO、Co
2O3、Fe2O3、Fe3O4、MnO、MnO2、NiO、Ni2O3、H3BO3
、ZnO、及びMgOを含むが、これらに限定されない。前駆体物質は、金属酸化物を含
まなくてもよく、または酸化物以外のイオン源を含んでもよい。例えば、前駆体物質は、
金属塩(例えばNO3
-、SO3
-)または他の化合物(例えばシュウ酸塩、炭酸塩)を
含み得る。酸素アニオンを他の電気陰性アニオンQで置換するために、元素Qを含む前駆
体は、1つ以上の有機化合物、ポリマー、無機塩、有機塩、ガス、またはアンモニウム塩
を含み得る。元素Qを含む適切な前駆体物質の例には、メラミン、NH4HCO3、NH
3、NH4F、PVDF、PTFE、NH4Cl、NH4Br、NH4I、Br2、Cl
2、I2、オキシ塩化アンモニウムアミド、及びヘキサメチレンテトラミンを含むが、こ
れらに限定されない。
【0097】
前駆体物質の一部または全部は、粒状物質であってもよい。それらが粒状物質である場
合、好ましくは、それらは直径20μm未満、例えば10nm~20μmのD50の粒径
を有する。このような粒径を有する粒状物質を得ることは、前駆体物質のより密接な混合
を促進するのに役立ち、それによって、熱処理ステップの間のより効率的な固相反応をも
たらすことができる。しかし、前駆体物質混合物を形成するために当該前駆体物質を混合
するステップの間に、1つ以上の前駆体物質の粒子サイズを機械的に減少させることがで
きるので、前駆体物質が20μm未満の初期の粒子サイズを有することは必須でない。
【0098】
前駆体物質を混合して前駆体物質混合物及び/またはさらなる前駆体物質混合物を形成
するステップは、乾式または湿式遊星ボールミリング、ローリングボールミリング、高エ
ネルギーボールミリング、高せん断ミリング、エアジェットミリング、スチームジェット
ミリング、遊星型ミキシング、及び/または衝撃ミリングから選択される(ただしこれら
に限定されない)プロセスによって実行され得る。混合/ミリングに用いる力は、前駆体
物質の形態に依存し得る。例えば、前駆体物質の一部またはすべてが、より大きな粒子サ
イズ(例えば、20μmを超えるD50の粒径)を有する場合、ミリング力は、前駆体物
質混合物の粒径が直径20μm以下に減少するように、前駆体物質の粒径を減少させるよ
うに選択され得る。前駆体混合物の粒子の粒径が20μm以下であると、熱処理ステップ
の間、前駆体混合物の前駆体物質の固相反応を、より効率的に促進することができる。固
相合成は、前駆体粉末から高圧(10MPa超)で形成されたペレットで行うこともでき
る。
【0099】
前駆体物質混合物及び/またはさらなる前駆体物質混合物を熱処理するステップは、1
時間~24時間、より好ましくは3時間~18時間の時間で行うことができる。例えば、
熱処理ステップを、1時間以上、2時間以上、3時間以上、6時間以上、または12時間
以上行ってもよい。熱処理ステップは、24時間以下、18時間以下、16時間以下、ま
たは12時間以下行われ得る。
【0100】
前駆体物質混合物を熱処理するステップは、気体雰囲気、好ましくは空気中で行うこと
ができる。好適な気体雰囲気は、空気、N2、Ar、He、CO2、CO、O2、H2、
NH3及びそれらの混合物を含む。気体雰囲気は、還元性雰囲気であってもよい。酸素欠
損物質を作製することが望まれる場合、好ましくは、前駆体物質混合物を熱処理するステ
ップは、不活性雰囲気または還元性雰囲気で行われる。
【0101】
さらなる前駆体物質混合物を熱処理するステップは、還元条件下で実施される。還元条
件には、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスの下、または不活性ガスと水素の混
合気の下、または真空下が含まれる。好ましくは、さらなる前駆体物質混合物を熱処理す
るステップは、不活性ガスの下で加熱することを含む。
【0102】
ニオブ混合酸化物及び/または元素Qを含むニオブ混合酸化物を還元条件下で熱処理す
るさらなるステップは、0.5時間から24時間、より好ましくは2時間から18時間の
時間にわたって行うことができる。例えば、熱処理ステップを、0.5時間以上、1時間
以上、3時間以上、6時間以上、または12時間以上行ってもよい。さらなるステップの
熱処理は、24時間以下、18時間以下、16時間以下、または12時間以下行われ得る
。還元条件には、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスの下、または不活性ガスと
水素の混合気の下、または真空下が含まれる。好ましくは、還元条件下での加熱は、不活
性ガス下での加熱を含む。
【0103】
いくつかの方法では、2ステップの熱処理を行うことが有益であり得る。例えば、前駆
体物質混合物及び/またはさらなる前駆体物質混合物を第1の温度で第1の時間加熱し、
続いて第2の温度で第2の時間加熱することができる。好ましくは、第2の温度は第1の
温度よりも高い。このような2ステップの熱処理を行うことにより、固相反応を補助して
所望の結晶構造を形成することができる。これは、連続して実施することができ、または
中間の再粉砕ステップで実施することができる。
【0104】
この方法は、ニオブ混合酸化物の形成後に1つ以上の後処理のステップを含むことがで
きる。場合によっては、この方法は、「アニーリング」と呼ばれることもあるニオブ混合
酸化物を熱処理する後処理ステップを含むことができる。この後処理の熱処理ステップは
、ニオブ混合酸化物を形成するために前駆体物質混合物を熱処理するステップとは異なる
ガス雰囲気で実行され得る。後処理の熱処理ステップは、不活性ガス雰囲気または還元ガ
ス雰囲気で実施することができる。このような後処理の熱処理ステップは、500℃を超
える温度、例えば約900℃で行うことができる。後処理の熱処理ステップを含むことは
、例えば、酸素欠乏を誘発するなど、ニオブ混合酸化物に欠乏または欠陥を形成するのに
、または形成されたニオブ混合酸化物で陰イオン交換、例えばO陰イオンのN交換を実行
するのに、有益であり得る。
【0105】
この方法は、ニオブ混合酸化物をミリング及び/または分級して(例えば、インパクト
ミリング、ジェットミリング、スチームジェットミリング、高エネルギーミリング、高せ
ん断ミリング、ピンミリング、空気分級、ホイール分級、ふるい分け)、上記の粒子サイ
ズパラメータのいずれかを有する物質を得るステップを含むことができる。
【0106】
ニオブ混合酸化物を炭素でコーティングして、表面の電気伝導性を向上させる、電解質
との反応を防止するステップがある場合がある。これは、典型的には、ニオブ混合酸化物
を炭素前駆体と組み合わせて、ミリング、好ましくは高エネルギーミリングを含み得る中
間物質を形成することから構成される。代替的または追加的に、ステップは、水、エタノ
ールまたはTHFなどの溶媒中でニオブ混合酸化物を炭素前駆体と混合することを含んで
もよい。これらは、ニオブ混合酸化物と炭素前駆体との均一な混合を確実にする効率的な
方法を表している。
【0107】
多芳香族sp2炭素を含む炭素前駆体は、本発明の第1の態様のニオブ混合酸化物に、
特に有益な炭素コーティングを設けることが見出された。したがって、ニオブ混合酸化物
を製造する方法は、ニオブ混合酸化物または元素Qを含むニオブ混合酸化物を、多芳香族
sp2炭素を含む炭素前駆体と組み合わせて、中間物質を形成するステップと、中間物質
を還元条件下で加熱して炭素前駆体を熱分解し、ニオブ混合酸化物に炭素コーティングを
形成し、ニオブ混合酸化物に酸素空孔を誘発するステップとをさらに含み得る。
【0108】
中間物質は、ニオブ混合酸化物と炭素前駆体の総重量に基づいて、炭素前駆体を最大2
5wt%、または0.1~15wt%、または0.2~8wt%の量で含むことができる
。ニオブ混合酸化物上の炭素コーティングは、ニオブ混合酸化物の総重量に基づいて、最
大10wt%、または0.05~5wt%、または0.1~3wt%の量で存在し得る。
これらの量の炭素前駆体及び/または炭素コーティングは、ニオブ混合酸化物の割合を過
度に減少させることによってニオブ混合酸化物の容量を過度に減少させることなく、炭素
コーティングによる電子伝導性の改善との間の良好なバランスをもたらす。熱分解中に失
われる炭素前駆体の質量は、30~70wt%の範囲であり得る。
【0109】
還元条件下で中間物質を加熱するステップは、400~1,200℃、または500~
1,100℃、または600~900℃の範囲の温度で実施され得る。還元条件下で中間
物質を加熱するステップは、30分~12時間、1~9時間、または2~6時間の範囲の
持続時間で実行され得る。
【0110】
還元条件下で中間物質を加熱するステップは、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性
ガス下で行うことができるか、または、不活性ガスと水素の混合気の下で行うことができ
るか、または真空下で行うことができる。
【0111】
多芳香族sp2炭素を含む炭素前駆体は、ピッチ炭素、酸化グラフェン、グラフェン、
及びそれらの混合物から選択することができる。おそらく、多芳香族sp2炭素を含む炭
素前駆体は、ピッチ炭素、酸化グラフェン、及びそれらの混合物から選択することができ
る。最も好ましくは、多芳香族sp2炭素を含む炭素前駆体は、ピッチ炭素から選択され
る。ピッチ炭素は、コールタールピッチ、石油ピッチ、メソフェーズピッチ、ウッドター
ルピッチ、等方性ピッチ、ビチューメン、及びそれらの混合物から選択することができる
。
【0112】
ピッチカーボンは、分子量の異なる芳香族炭化水素の混合物である。ピッチカーボンは
、石油精製所からの低コストの副産物であり、広く入手可能である。ピッチは酸素含有量
が少ないので、ピッチ炭素の使用は有利である。したがって、還元条件下で中間物質を加
熱することと組み合わせて、ピッチの使用は、ニオブ混合酸化物における酸素空孔の形成
に有利に働く。
【0113】
他の炭素前駆体は、通常、かなりの量の酸素を含んでいる。例えば、グルコースやスク
ロースなどの炭水化物は、炭素前駆体としてよく使用されている。これらは経験式Cm(
H2O)nを有し、したがってかなりの量の共有結合酸素を含む(例えば、スクロースは
式C12H22O11を有し、約42重量%の酸素である)。かなりの量の酸素を含む炭
素前駆体の熱分解は、ニオブ混合酸化物の還元を防止または阻害するか、さらには酸化に
つながると考えられているが、これは、ニオブ混合酸化物に酸素空孔が誘発されない可能
性があることを意味している。したがって、炭素前駆体は、10wt%未満、好ましくは
5wt%未満の酸素含有量を有し得る。
【0114】
炭素前駆体は、sp3炭素を実質的に含まなくてもよい。例えば、炭素前駆体は、10
wt%未満のsp3炭素源、好ましくは5wt%未満のsp3炭素源を含むことができる
。炭水化物は、sp3炭素の供給源である。炭素前駆体は、炭水化物を含まなくてもよい
。本発明で使用されるいくつかの炭素前駆体は、sp3炭素の不純物、例えば3wt%ま
での炭素を含み得ることが理解される。
【0115】
本発明の第1の態様のニオブ混合酸化物は、炭素コーティングを含んでもよい。炭素コ
ーティングは、多芳香族sp2炭素を含むことが好ましい。sp2ハイブリダイゼーショ
ンは熱分解する間に大部分が保持されるため、多芳香族sp2炭素を含む炭素前駆体を、
好ましくは還元条件下で熱分解することによって、このようなコーティングは形成される
。通常、還元条件下での多芳香族sp2炭素前駆体の熱分解は、sp2芳香族炭素のドメ
インのサイズの増加をもたらす。したがって、ポリ芳香族sp2を含む炭素コーティング
の存在は、コーティングを作製するために使用される前駆体を知ることによって確立する
ことができる。炭素コーティングは、多芳香族sp2炭素を含む炭素前駆体の熱分解から
形成される炭素コーティングとして定義することができる。好ましくは、炭素コーティン
グはピッチ炭素に由来する。
【0116】
多環芳香族sp2炭素を含む炭素コーティングの存在は、通常の分光技術によって確立
することもできる。例えば、ラマン分光法は特徴的なピーク(1,000~3,500c
m-1の領域で最も多く見られる)をもたらし、これを使用して様々な形態の炭素が存在
することを識別することができる。sp3炭素(ダイヤモンドなど)の結晶性の高いサン
プルでは、約1332cm-1で狭い特徴的なピークを得る。多芳香族sp2炭素は通常
、特徴的なD、G、及び2Dピークを得る。D及びGピークの相対的な強度(ID/IG
)は、sp2炭素対sp3炭素の相対的な比率に関する情報を得られる。ニオブ混合酸化
物は、ラマン分光法によって見られる場合、0.85~1.15、または0.90~1.
10、または0.95~1.05の範囲のID/IGの比率を有し得る。
【0117】
X線回折もまた、炭素コーティングのタイプに関する情報を得るために使用することが
できる。例えば、炭素コーティングを施したニオブ混合酸化物のXRDのパターンを、コ
ーティングされていないニオブ混合酸化物のXRDパターン及び/または炭素コーティン
グをするために使用される炭素前駆体の熱分解サンプルのXRDパターンと比較すること
ができる。
【0118】
炭素コーティングは半結晶性であってもよい。例えば、炭素コーティングは、幅(半値
全幅)が少なくとも0.20°、または少なくとも0.25°、または少なくとも0.3
0°で、約26°の2θが中心であるニオブ混合酸化物のXRDのパターンのピークを得
ることができる。
【実施例0119】
ニオブ混合酸化物は、固相の経路によって合成された。最初のステップで、前駆体物質
(Nb2O5、GeO2、ZnO、TiO2、Cr2O3、Al2O3、Fe2O3、Z
rO2、及びCuO)を、20μm未満のD50(v/v)の粒子サイズにミリングした
。物質を化学量論比で混合し(合計50g)、20,000rpmのインパクトミルによ
り均一な粉末混合物に混ぜ合わせた。得られた粉末は、マッフル炉のアルミナるつぼで、
空気中、0.5~24時間、T1=600~1350°Cで熱処理され、所望のWads
ley-Roth相を得た。選択されたサンプル(9~11)は、熱処理後に炉から取り
出され、20,000rpmでインパクトミルによって粉砕され、その後、同様の条件下
で熱処理が繰り返された。具体的には、前駆体混合物をランプレート5°/分で800°
C以下の温度まで、その後1°/分のランプレートで保持期間の最高温度まで、加熱した
。場合によっては、T2=600~1350°CのN2雰囲気下で0.5~12時間、追
加の熱処理ステップもまた適用された。陰イオンを含めるために、T2a/T2b=30
0~1200°Cで0.5~12時間、N2または空気雰囲気で1または2ステップで熱
処理する前に、前駆体との追加のミリング/混合ステップがあった(Fの質量比が1:1
0のPVDF、Nが必要な場合は、母材に対して質量比が1:3のC3H6N6を使用可
能)。
【0120】
必要に応じて、衝撃ミリングまたはジェットミリングによって最終的な解凝集ステップ
を利用して、所望の粒子サイズ分布に調整した。具体的には、物質は、20,000RP
Mで10秒間の衝撃ミリングによって解凝集された。粒子サイズの分布は、Horiba
社製の乾燥粉末用レーザー回折式粒子分析器で取得した。空気圧は0.3MPaに保った
。結果を表1に示す。
【表1】
【0121】
物質の特性評価
サンプルの相純度を、Rigaku社製Miniflex粉末X線回折計を用いて、2
θ範囲(10~70°)をスキャンレート1°/分で分析した。
【0122】
図1は、サンプル1~4の測定されたXRD回折パターンを、
図2はサンプル5~12の
測定されたXRD回折パターンを示す。回折パターンは同じ位置にピークを有し(結晶の
改変による幾分かのシフトがあり、最大で約0.2°)、結晶学データベースエントリJ
CPDS 28-1478と一致する。特定のサンプルは、同じWadsley-Rot
hブロック構造(Zn
2Nb
34O
87)の単斜晶(JCPDS 28-1478、参照
a)と斜方晶(PDFカード、04-021-7859、参照b)の結晶構造の混合相で
あることが見出され、この混合物に精製されている。非晶質のバックグラウンドノイズは
なく、ピークは鋭く強い。これは、すべてのサンプルが結晶質であり、シェラーの式によ
ると結晶子径が45~55nmであり、結晶構造がZn
2Nb
34O
87に一致すること
を示す。これにより、Wadsley-Roth結晶構造の存在が確認される。
【表2】
【0123】
電気化学特性評価
リチウムイオン電池の充電率は、通常「Cレート」で表される。1C充電レートとは、
セルが1時間で完全に充電されるような充電電流を意味し、10C充電とは、電池が1時
間の1/10(6分)で完全に充電されることを意味する。ここでのCレートは、2回目
の脱リチウム化サイクルで適用される電圧制限内でアノードに見られる可逆容量から定義
される、つまり、1.1~3.0Vの電圧制限内で1.0mAh cm-2の容量を示す
アノードの場合、1Cレートは、1.0mA cm-2の印加された電流密度に相当する
。本明細書に記載の典型的なMNO物質では、これは約200mA/g活物質に相当する
。
【0124】
分析のため、ハーフコインセル(CR2032サイズ)で電気化学試験を行った。ハー
フコイン試験では、活物質を電極でLi金属電極に対して試験して、活物質の基本的能力
を評価する。以下の例では、試験しようとしている活物質組成物をN-メチルピロリドン
(NMP)、導電性添加剤として作用するカーボンブラック(Super P)、ポリ(
ビニルジフルオライド)(PVDF)結合剤と組み合わせ、実験室規模の遠心式遊星型ミ
キサでスラリー状に混合した。スラリーの非NMP組成は、92wt%の活物質、3wt
%の導電性添加剤、5wt%の結合剤であった。このスラリーをドクターブレードコーテ
ィングによりAl箔集電体に所望の塗布量69~75gm2までコーティングし、加熱に
より乾燥させた。次に、電極を80°Cで2.6~2.9gcm-3の密度にカレンダー
加工して、35~40%という目標の空隙率を達成した。電極を所望の大きさに打ち抜き
、スチール製コインセルケース内でセパレータ(Celgard社製多孔質PP/PE)
、Li金属、及び電解質(EC/DEC中に1.3MのLiPF6)と組み合わせ、圧力
下で密封した。その後、23°Cで、低電流レートにて(C/10)、サイクルを1.1
~3.0Vの間でリチウム化と脱リチウム化の2回のフルサイクルで実行した。その後、
電流密度を上げてセルの能力を試験した。これらの試験の間、セルは23°Cで非対称サ
イクルにかけられ、リチウム化が遅くなり(C/5)、その後、脱リチウム化のレートを
上げて(例えば、1C、5C、10C)、容量を維持し、公称電圧を5Cにした。Li/
Li+に対する公称電圧は、脱リチウム化の間の5Cでの総容量で割ったV/Q曲線の積
分から計算している。定電圧ステップは使用しなかった。データは、同じ電極コーティン
グから調製された5つのセルから平均化されており、誤差は標準偏差から示されている。
したがって、データは、従来の物質と比較して、本発明による物質によって改善が達成さ
れたことを示す揺るぎない研究であることを表す。これらのデータを表4及び5に示す。
【0125】
セル抵抗は、ハーフコインセルの直流内部抵抗(DCIR)から計算されている。典型
的な測定では、セルは100%の充電状態(SOC)までリチウム化され、次にC/10
のレートで50%のSOCまで脱リチウム化され、その後、0.5時間の休憩の後、5C
脱リチウム化パルスが10秒間適用され、その後、さらに0.5時間の休憩が続く。DC
IRが、次いでV=IRから計算され、パルスからのピーク直前の電圧、及びパルスの間
に測定された最大電圧を使用する。
【0126】
電極コーティングの電気抵抗率は、23°CでOssila機器(T2001A3-U
K)を使用した4点プローブ法によって個別に評価された。スラリーが形成された(試験
しようとしている活物質組成物をN-メチルピロリドン(NMP)、導電性添加剤として
作用するカーボンブラック、ポリ(ビニルジフルオライド)(PVDF)結合剤と組み合
わせ、実験室規模の遠心式遊星型ミキサでスラリー状に混合し、スラリーの非NMP組成
は80w.%、活物質は10w.%、導電性添加剤は10w.%の結合剤であった)。次
に、スラリーを誘電体マイラーフィルムに1mg/cm2の負荷でコーティングした。そ
の後、電極サイズのディスクを打ち抜き、4点プローブを用いてコーティングされたフィ
ルムの抵抗値を測定した。シート抵抗(Ω/スクエア)の結果を表3に略記する。誤差は
、3回の測定の標準偏差に基づいている。
【0127】
また、CuとAl両方の集電体箔に均質で平滑なコーティングを行い、目に見える欠陥
または凝集体のないコーティングを、遠心式遊星型ミキサを用いて、活物質最大94wt
%、導電性添加剤4wt%、結合剤2wt%の組成で、それらのサンプルに対して上記の
ように調製し得る。これらはPVDF(つまりNMPベース)及びCMC:SBR-ベー
ス(すなわち水性)の結合剤系両方で調製され得る。コーティングは、PVDFの場合は
80°C、CMC:SBRの場合は35~40%の気孔率に、1.0から5.0mAh
cm
-2の負荷で50°Cで、カレンダー加工できる。これは、活物質含有量が高く、高
エネルギーと高出力の両方の用途でこれらの物質の実行可能性を実証するために重要であ
る。
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【0128】
考察
ニオブ混合酸化物サンプル1*は、Ge4+で置換された陽イオンZn2+において焦
点を当てられた、サンプル3での陽イオン置換アプローチを通して改変されている。サン
プル5~8では、変数aとbの広い範囲にわたって、陽イオンZn2+は陽イオンCr3
+で置換され、陽イオンNb5+が陽イオンTi4+で置換されている。サンプル10は
、Nb5+をFe3+で置換している。サンプル11は、Zn2+をAl3+で置換して
いる。サンプル12はCu2Nb34O87に基づいており、陽イオンCu2+はCr3
+で置換され、陽イオンNb5+は陽イオンTi4+で置換されている。原子価の増加は
、部分的な酸素過剰(つまり、c<0)及び/またはNb5+の部分的な還元によって補
われることができる。空孔の減少は、酸素空孔の形成(つまり、c>0)によって補い得
る。これらの改変は、(a)変更されたイオン半径、(b)変更された原子価、及び(c
)変更された電圧の組み合わせによって、サンプル1*の基本的な結晶構造に対して利点
をもたらすと予想される。変更されたイオン半径は、単位格子サイズの変更と結晶構造の
局所的な歪みにより、電気化学的能力に有益な変化をもたらす可能性があり、利用可能な
リチウム化部位またはリチウム化経路を変更し、クーロン効率、容量、高速での能力、及
び寿命を改善する可能性がある。変更された原子価は、電荷キャリアに利用可能な中間エ
ネルギーレベルを与えるため、物質の導電率を大幅に改善する。これらの効果は、改変さ
れたサンプル対サンプル1*の表3で見られる低い抵抗率によって、また、表4~6で見
られる比容量、クーロン効率、5Cでの脱リチウム化電圧、及び1C、5C、及び10C
での容量保持の改善によって、示される。これらは、高速充電/放電用に設計された高出
力のLiイオンセルで使用するための、本発明による改変されたニオブ混合酸化物の有用
性を実証する重要な結果である。
【0129】
表2は、陽イオン交換時に見られる単位格子パラメータの変化を示している。これは、
これらの物質のイオン半径と電子構造の変化によって見られる。
【0130】
Liイオンセルで使用するためのこの物質について説明した陽イオン交換アプローチで
、同様の利点が見られることが期待される。
【0131】
ニオブ混合酸化物サンプル1*は、不活性または還元性雰囲気での熱処理による誘発さ
れた酸素欠乏の導入によって改変され、サンプル2を得る。「ベース」酸化物を不活性ま
たは還元雰囲気で、高温で処理することにより、これは部分的に還元され、室温に戻って
空気雰囲気にさらされたときに維持できる。これには明らかな色の変化が伴い、例えば、
サンプル2は灰色/黒であるのに対し、サンプル1*の色は白である。この色の変化は、
物質の電子構造が大きく変化したことを示しており、バンドギャップの減少により、可視
光の様々なエネルギー(つまり波長)と相互作用できるようになっている。これはサンプ
ル2に反映されており、セルの分極レベルの低下に対応する5Cのレートでの脱リチウム
化電圧の改善を示している。
【0132】
誘発された酸素欠乏は、例えば酸素陰イオンが除去された結晶構造の欠陥をもたらし、
陽イオンの全体的な酸化還元状態が順に減少する。これにより、物質の電気伝導性を大幅
に改善する追加のエネルギー状態が得られ、色の変化によって示されるようにバンドギャ
ップエネルギーが変化する。これは、サンプル2とサンプル1*に対して表3で見られる
より低い抵抗率によって示される。誘発された酸素欠乏が5原子%を超えて存在する場合
(つまり、c>4.35)、結晶構造の安定性が低下する可能性がある。
【0133】
ニオブ混合酸化物サンプル1*は陰イオン置換(F-によるO2-の置換)によって改
変され、サンプル4を得る。比容量の改善が見られた(表4及び5)。
【0134】
Liイオンセルで使用するための記載された制限の中で、M1、M2、M3、Q、a、
b、c、及びdの任意の組み合わせを利用する、記載されたニオブ混合酸化物のいずれに
おいても、同様の利点が見られることが期待される。
【0135】
LTOとの混合物
改変されたニオブ混合酸化物は、市販の物質と組み合わせて活電極物質として試験され
、既存の電池技術への組み込みと改善のための改変されたニオブ混合酸化物の有用性を実
証した。
【0136】
商用グレードのLTO(Li4Ti5O12)は、Targray Technolo
gy International Incから購入し、表E1(サンプルE1)に概要
を示す特性を備えている。Wadsley-Roth物質は、固体の経路によって社内で
合成された。最初のステップでは、前駆体物質(Nb2O5、Cr2O3、ZnO、及び
TiO2)を化学量論比(合計200g)で混合し、550rpmで、10:1の粉末に
対するボールの比にて3時間ボールミリングした。得られた粉末は、マッフル炉のアルミ
ナるつぼで、空気中、12時間、T1=1100°Cで熱処理され、所望のWadsle
y-Roth相を得た。
【0137】
MNOとLTOの活電極物質混合物は、低エネルギーから高エネルギーまでの粉末混合
/ブレンド技術により、例えば、多方向での回転混合、単一軸での回転V型ブレンド、遊
星混型合、遠心遊星混合、高剪断混合、及びその他の典型的な混合/ブレンド技術によっ
て得られた。この場合、混合は遠心式遊星型ミキサを使用して、物質の5gバッチで達成
され、2000rpmで3分間、10回混合された。
【表7】
【0138】
物質の特性評価
サンプルの相純度を、2θの範囲(20~70°)においてスキャンレート1°/分で
、Rigaku社製Miniflex粉末X線回折計を用いて分析した。サンプルE1の
回折パターンは、Li4Ti5O12のスピネル結晶構造に対応するJCPDS結晶学デ
ータベースエントリJCPDS49-0207と一致する。非晶質のバックグラウンドノ
イズはなく、ピークは鋭く強い。これは、サンプルが結晶質であり、シェラーの式による
と結晶子径が43±7nmであることを意味する。サンプルE2の回折パターンは、所望
のWadsley-Roth結晶構造Zn2Nb34O87が存在していることを確認す
る。非晶質のバックグラウンドノイズはなく、ピークは鋭く強い。これは、サンプルが相
純粋かつ結晶質であり、シェラーの式によると結晶子径が49±6nmであることを意味
する。
【0139】
粒子サイズの分布は、Horiba社製の乾燥粉末用レーザー回折式粒子分析器で取得
した。空気圧は0.3MPaに保った。結果を表E1に示す。77.35KでBELSO
RP-miniX装置のN2を使用して、BET表面積の分析を実施し、表E1に示す。
【0140】
電気化学的特性評価
分析のため、ハーフコインセル(CR2032サイズ)で電気化学試験を行った。上記
のサンプル1~12で使用された試験方法にはいくつかの違いがある。つまり、結果を直
接比較できない場合がある。ハーフコイン試験では、物質を電極でLi金属電極に対して
試験して、物質の基本的能力を評価する。以下の例では、試験しようとしている活物質組
成物をN-メチルピロリドン(NMP)、導電性添加剤として作用するカーボンブラック
、ポリ(ビニルジフルオライド)(PVDF)結合剤と組み合わせ、実験室規模の遠心式
遊星型ミキサでスラリー状に混合した。スラリーの非NMP組成は、90wt%の活物質
、6wt%の導電性添加剤、4wt%の結合剤であった。このスラリーをドクターブレー
ドコーティングによりAl箔集電体に所望の塗布量5.7~6.5mg cm-2へとコ
ーティングし、乾燥させた。次に、電極を80°Cで2.00~3.75g cm-3(
物質の密度に依存)の密度にカレンダー加工して、35~40%の目標空隙率を達成した
。空隙率は、測定された電極密度を複合電極コーティングフィルムの各成分の加重平均密
度で除算して計算した。電極を所望の大きさに打ち抜き、スチール製コインセルケース内
でセパレータ(Celgard社製多孔質PP/PE)、Li金属、及び電解質(EC/
DEC中に1.3MのLiPF6)と組み合わせ、圧力下で密封した。その後、低電流レ
ートにて(C/10)、サイクルを1.1~3.0Vの間でリチウム化と脱リチウム化の
2回のフルサイクルで実行した。その後、電流密度を上げてセルの能力を試験した。レー
ト試験中、セルは非対称に循環し、リチウム化が遅くなり(1.1VのCVステップのC
/5からC/20の電流密度)、続いて、脱リチウム化レート試験のために脱リチウム化
のレートを上げる。すべての電気化学試験は、23oCに温度管理された環境で実施され
た。
【0141】
最初のサイクル効率は、C/10での最初のサイクルの脱リチウム化容量/リチウム化
容量の割合として計算された。各Cレートでの公称電圧は、電圧-容量曲線を統合し、次
いでそれを総容量で割ることによって決定された。
【0142】
見られたデータの違いの重要性を定量化するために、誤差の計算が実行され、比容量の
値に適用された。これらの誤差は、使用した微量天びん(±0.1mg)と14mmの電
極ディスクの最小負荷電極(5.7mgcm
-2)で、可能な最大誤差として概算された
。これにより、±1.1%の誤差が生じ、これは、各容量測定に適用されている。クーロ
ン効率、容量保持、及び電圧の誤差は、測定器の精度が記載された有効数字をはるかに超
えており、値がバランス誤差とは無関係であるため、試験されたセルでは無視できると想
定されていた。
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【0143】
本発明は、上述した例示的な実施形態と併せて説明されてきたが、この開示が与えられ
れば、多くの同等の修正及び変形が当業者には明らかとなるであろう。したがって、上段
に記載された本発明の例示的な実施形態は、例示であって、限定的なものではないと考え
られる。記載された実装形態に対する種々の変更は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱する
ことなく行うことができる。疑問を避けるために、本明細書で提示されている理論的説明
は、読者の理解を向上させる目的で提示されている。本発明者らは、これらの理論的説明
のいずれにも拘束されることを望まない。本明細書で使用されているいずれのセクション
の見出しも、組織的な目的のためのものであり、記載されている主題を限定するものと解
釈されるものではない。